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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20221026BHJP
   H01C 7/02 20060101ALI20221026BHJP
   H01C 3/00 20060101ALI20221026BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01K7/22 N ZAB
H01C7/02
H01C3/00 Z
H01C7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513344
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020073409
(87)【国際公開番号】W WO2021037689
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】202019104670.8
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019129521.1
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】コー,エイブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ペルマナ,アンジー
(72)【発明者】
【氏名】シュトロールホーファー,ヘインツ
【テーマコード(参考)】
2F056
5E034
【Fターム(参考)】
2F056QF02
2F056QF05
5E034AA09
5E034BA09
(57)【要約】
センサ(1)を提供する。これはセンサ素子(2)と電気リード(3)とを有し、センサ素子(2)は電気リード(3)に接続される。また、ハウジング(4)が設けられ、これは開口部を有し、センサ素子(2)は電気リード(3)が開口部から突出するようにハウジング(4)に配置される。ハウジング(4)はエポキシ樹脂(5)が充填され、エポキシ樹脂(5)がセンサ素子(2)と電気リード(3)をハウジング(4)に固定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサであって、
センサ素子と、
電気リードであって、前記センサ素子が前記電気リードに接続される電気リードと、
ハウジングであって、前記ハウジングは開口部を有し、前記センサ素子は前記電気リードが前記開口部から突出するように前記ハウジング内に配置されるハウジングと、
エポキシ樹脂であって、前記ハウジングは前記エポキシ樹脂で充填され、前記エポキシ樹脂は前記ハウジングにおいて前記センサ素子と前記電気リードとを固定する、エポキシ樹脂とを有する、
センサ。
【請求項2】
前記センサ素子はNTCセンサ素子である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記開口部を有する第1部分と前記開口部の側に対向する第2部分との2つの部分を有し、前記第2部分は前記第1部分よりも直径が小さく、前記センサ素子は前記ハウジングの前記第2部分に配置される、請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記ハウジングの外形は半径方向に対称でない、請求項1ないし3いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記ハウジングの輪郭は互いに対向する少なくとも2つの平坦化されたセグメントを有する、請求項1ないし4いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記ハウジングの内面に、前記開口部から長手方向軸線に沿って前記ハウジングに延在する2つの溝を有する、請求項1ないし5いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電気リードは前記ハウジングの内側に位置する部分にキンクを有する、
請求項1ないし6いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ハウジングの肉厚が2mmより小さい、請求項1ないし7いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記ハウジングは金属製である、請求項1ないし8いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記ハウジングは金属酸化物製である、請求項1ないし8いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂は2成分のエポキシ樹脂である、請求項1ないし10いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項12】
前記センサ素子を封入する材料は、前記ハウジングの内側に接触し、前記センサ素子を前記ハウジングに固定するものと同一材料である、
請求項1ないし11いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項13】
前記センサはピックアンドプレースマシンによる取り付けに適している、
請求項1ないし12いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項14】
装置であって、
請求項1ないし13いずれか一項に記載のセンサと、
プリント回路基板(PCB)であって、前記センサは前記PCB上に配置され、前記PCBに電気的に接続される、
装置。
【請求項15】
請求項1ないし13いずれか一項に記載のセンサ、または請求項14に記載の装置を有する、スマートパワーメータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサに関する。また、本発明は、センサを利用する構成およびセンサを組み立てる方法に関する。
【0002】
今日、センサは、ほぼすべての種類の新しいアプリケーションおよび機器で利用されている。スマートセンサーだけで、世界の販売数量は、2010年の60億センサから2019年には推定260億に増加している。
【0003】
現代のスマートフォンは、それ自体が、少なくとも近接センサ、輝度センサ、傾斜センサ、回転センサ、加速度計、GPSセンサ、磁気センサ、および温度計を内蔵していることが多い。
【0004】
センサについては、センサを一方で保護し、他方でセンサの信頼性のある再現可能な測定を提供する設計を見出すことが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、頑強で、保護され、信頼できる測定を可能にするセンサを提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1に記載のセンサによって解決される。
【0007】
さらに有利な設計および潜在的な構成は、係属中の請求項に見出される。
【0008】
センサを提供する。これはセンサ素子と電気リードとを有し、センサ素子は電気リードに接続される。また、ハウジングが設けられ、これは開口部を有し、センサ素子は電気リードが開口部から突出するようにハウジングに配置される。ハウジングはエポキシ樹脂が充填され、エポキシ樹脂がセンサ素子と電気リードをハウジングに固定する。
【0009】
例えば、酸化アルミナまたは酸化シリコンのようなセンサ用の一般的な充填材料は、処理されるべきトルエン、キシレンまたはIPAのような溶媒を必要とする。その結果、空隙、小胞および気泡が硬化後に生じるが、これは避けられない。これらの介在物は、使用されるセンサ素子の周囲が不均一となる。その結果、センサでの測定は充填材中の不均一性の数と空間分布に強く依存した。従って、これらのセンサでは、応答時間と測定値が変化し、信頼性の高い測定を行うことができない。センサのハウジング内の充填および固定材料としてエポキシ樹脂を利用することによって、空隙、ベシクルおよび他の不均一性が回避される。エポキシ樹脂は溶剤を使用しないため、空隙や気泡を避けられる。均一なエポキシ樹脂は、環境からセンサ素子への均一な熱伝達を引き起こし、その結果、センサの熱応答が速くなり、応答時間の変動が少なくなる。その結果、本発明によるセンサの測定の信頼性が向上する。
【0010】
センサ素子は、NTCセンサ素子であってもよい。NTCセンサは周囲の温度を測定するために使用されるので、方向に依存しない測定を可能にすることが要求される。特に、温度上昇によってトリガされるセキュリティシステムでは、信頼性が高く方向に依存しない測定を可能にすることが必要である。
【0011】
あるいは、センサ素子は、PTCセンサ素子又は白金の電気抵抗の温度依存性を使用するセンサ素子であってもよい。
【0012】
好ましくは、前記ハウジングは、前記開口部を有する第1部分と前記開口部の側に対向する第2部分との2つの部分を有し、前記第2部分は前記第1部分よりも直径が小さく、前記センサ素子は前記ハウジングの前記第2部分に配置される。第2の部分に配置されたセンサ素子は、第1の部分と比較して、センサ素子を取り囲む材料が少ない。これにより、センサの測定精度が向上し、応答時間も短くなる。同時に、ハウジングの第1の部分は、より大きな直径を有し、センサのより良い取扱いのための手段を提供し、センサ素子に接続されたリードを安定させる。2つの部分を有するハウジングの形状の別の利点は、センサ及びそれが面する方向が、ピックアンドプレースマシンのような機械によって容易に認識され、従って、容易に処理できることである。
【0013】
さらに、ハウジングの外形は半径方向に対称でなくてもよい。さらに、ハウジングは、長手方向軸を有することができ、ハウジングは、180°以外の回転角度だけの長手方向軸線のまわりの回転に対して、半径方向に対称でなくてもよい。従って、センサ素子がハウジング内で面する方向、および装置内のハウジングの方向は、回転非対称性に対して相対的に決定および固定され得る。センサ素子の信号出力は、測定されるイベントまでの距離だけでなく、センサ素子がそのイベントに面する角度にも依存することが多い。例えば、熱源に直接面するNTCセンサ素子は、熱源に垂直に配向されるNTCセンサよりも多くの熱エネルギーに曝される。ハウジング内のセンサ素子の方向および装置内のハウジングの方向をその外形によって決定することによって、センサ素子が動作し、信頼性があり再現可能な値を測定することを確実にする。さらに、半径方向に対称でない外形を有するハウジングは、ポカヨーク(poka yoke)に適合する。装置を組み立てる際に、センサが使用されるが、ハウジングへの適切な接続を使用することによって、ミスを避けることができる。
【0014】
さらに、ハウジングの輪郭は、互いに対向する少なくとも2つの平坦化されたセグメントを有することができる。センサは、平坦化されたセグメントが安定したグリップのための手段を提供するので、平坦化されたセグメントで確実にピック(pick)することができる。従って、センサはまた、ピックアンドプレースマシンによって容易に装置に取り付けられる(mounted and installed)。
【0015】
前記ハウジングは、前記ハウジングの内面に、前記開口部から長手方向軸線に沿って前記ハウジングに延在する2つの溝を有する。溝の内側に、センサ素子に接続された電気リードを配置することができる。このようにして、ハウジング内のセンサ素子の向きは、ハウジングに対して相対的に固定される。
【0016】
さらに、電気リードは、ハウジングの内側に配置された電気リードの一部でキンク(kink)してもよい。リードをキンクすることによって、両方のリードが互いに接触せず、短絡しないことを確実にすることができる。さらに、リード線をキンク(kink)して、ハウジングの内側の潜在的な溝に電気リード線のラッチを支持する横方向の力を誘発することがある。同様に、キンクによって生成された電気リードのバネ張力は、センサ素子がハウジング内にデポジットされるポッティングプロセス(potting process)中にセンサ素子を取り扱うのに役立ち、また、センサがアプリケーション内に取り付けられるか取り付けられる場合にはセンサ全体を取り扱うのに役立つ。
【0017】
ハウジングの肉厚は2mmより小さくてもよい。一方では、ハウジングの壁厚は、ハウジング内のセンサ素子を保護するのに十分厚くなければならない。一方、ハウジングは、センサの感度を損なわないように、センサ素子から環境を隔離してはならない。2mm未満の肉厚が有利であることが証明されている。特に、1mmより小さく、0.5mmより大きい肉厚が有利である。
【0018】
ハウジングは金属で作ることができる。ハウジングは、金属製であれば、肉厚が小さくても良好な安定性を示す。また、有害な外部環境の影響を受けにくい。NTCセンサ素子または他の温度測定センサ素子が使用される場合、金属ハウジング材料は、それが高い熱伝導率を有するので、特に好適である。これにより、温度センサをより高感度にすることができる。
【0019】
反対に、ハウジングを金属酸化物製とすることは有益である。金属酸化物はまた、高い安定性と比較的高い熱伝導率という有利な特性を有する。また、電気絶縁体としても優れており、高電圧用途にも適している。しかし、ハウジングが導電体で構成されている場合、数kVの電圧は、特に突出したリード線とハウジングとの間の短絡を招く可能性がある。金属酸化物がハウジング材料として使用されるとき、センサは10 kVまでの電圧で動作させることができる。
【0020】
ハウジングに充填されたエポキシ樹脂は、2成分のエポキシ樹脂であってもよい。2成分エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂と多機能性硬化剤または酸、酸無水物、フェノール類、アルコール類、アミン類、およびチオール類としての硬化剤からなる。硬化剤に対するエポキシ樹脂の比率の変化は、硬度、弾性、耐湿性、耐酸性および他の特性に影響を及ぼす可能性がある。2成分エポキシ樹脂を使用することによって、センサは、適用されるセンサ素子およびセンサが対象とするデバイスに合わせてカスタマイズすることができる。
【0021】
さらに、センサ素子を封入する材料は、ハウジングの内側に接触し、センサ素子をハウジングで固定するものと同じ材料であってもよい。ハウジング内で同じ材料を使用することにより、2つの異なる材料を使用した場合に生じる境界面が無くなる。
【0022】
センサは、ピックアンドプレースマシンによって取り付けられるのに適している。このようにして、装置にセンサを取り付けるための処理時間を、自動化により短縮することができる。本発明によるセンサは、一般的なセンサよりも信頼性が高いため、多数の改良された用途および機器を製造することができる。
【0023】
装置であって、請求項1ないし13いずれか一項に記載のセンサと、プリント回路基板(PCB)であって、前記センサは前記PCB上に配置され、前記PCBに電気的に接続される、装置は、有益であり得る。PCBは、抵抗、コイル、またはプロセッサのなどのようなチップとして、多数の熱発生部品を備えている。このコンポーネントの温度などの特性を監視することができると、PCBを使用するデバイスが温度上昇後にシャットダウンできるので、セキュリティが向上する。本発明によるセンサは、より信頼性が高いため、特に好適である。
【0024】
同様に、本発明によるセンサを備えるスマートパワーメータ、または本発明によるセンサを備える構成は、好適であり得る。特にビル用のスマートメーターでは、電力網からの電力が異なる家庭に分配されると、大電流と電圧が発生する。このため、断線や腐食などの災害は、火災のような重大な故障につながる可能性がある。したがって、外乱を熱発生として確実に測定することができるセンサを使用して、警告するかまたは電力をシャットダウンすることができる。
【0025】
記載されたセンサの1つの利点は、その組み立てが安全な方法で行うことができることである。
【0026】
方法は次のステップを含む。
a) 電気的リード線にセンサ素子を、例えばハンダにより接続すること、
b) センサ素子をエポキシ樹脂に浸漬すること、
c) センサ素子上のエポキシ樹脂を硬化させること、
d) 電気リードが開口部から突出するように開口部を有するハウジング内にセンサを配置すること、
e) ハウジングにエポキシ樹脂を充填すること、
f) ハウジング内のエポキシ樹脂を硬化すること。
【0027】
このプロセスは、組立プロセスにおける損失率を最小限に抑える。センサ素子をエポキシ樹脂に浸漬し、その後、ステップb)及びc)で硬化させることにより、センサ素子とリードとの接続強度が向上する。硬化は、例えば、80℃で3時間行うことができる。従って、ステップd)においてセンサ素子がハウジング内に配置されている場合、センサ素子とリード線との間の接続は、破損するリスクが非常に低い。加えて、センサ素子を電気リードでカプセル封止し、ハウジングを充填するものと同じ材料であるエポキシ樹脂が使用されるので、センサの感度が改善される。同一の材料を使用することにより、2つの異なる材料を使用した場合に生じる境界面が無くなる。結果として、センサ素子は、より感度が高く、例えば、発生する温度差に対してより短い応答時間を有する。
【0028】
以下、実施形態に基づいて、図面を参照して、本発明および製造方法を説明する。同一の部品または同等の効果を有する部品は、同一の参照番号によって参照される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面は、単に本発明を説明するためのものであり、したがって、単に概略図であり、縮尺通りに描かれていない。部品によっては、寸法を大きくしたり、歪ませたりするものがある。したがって、図から絶対寸法も相対寸法も取ることはできない。同一または同一作用のパーツには、同一の参照番号を付す。
図1】本発明によるセンサの第1の実施形態の簡略化された断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態によるセンサの簡略化された断面図を示す。
図3】本発明によるセンサ用ハウジングの第1実施形態の断面図である。
図4図2に示す第2の実施形態によるセンサのハウジングの断面図である。
図5】本発明によるセンサの第1の実施形態のハウジングの平面図を示す。
図6図2に示される第2の実施形態によるセンサのハウジングの平面図である。
図7】本発明によるセンサの第1の実施形態のハウジングの斜視図を示す。
図8図2に示される第2の実施形態によるセンサのハウジングの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に、本発明の第1の実施形態によるセンサ1の簡略化された断面図を示す。センサ1は、センサ素子2及び電気リード3を含む。センサ素子2は、例えばはんだ付けによって電気リード3に接続される。開口部を有するハウジング4の内部では、電気リード3がハウジング4の開口部から突出するようにセンサ素子2が配置されている。従って、センサ1は、容易に取り付けることができ、装置に接続することができる。ハウジング4は、エポキシ樹脂5で満たされ、エポキシ樹脂5は、センサ素子2及び電気リード3をハウジング4に固定する。
【0031】
特に、電気リード3に接続されたセンサ素子2は、まずエポキシ樹脂に浸漬されて硬化され、エポキシ樹脂封止材5aを形成する。その後、封止されたセンサ素子2はハウジング4に配置され、ハウジング4はエポキシ樹脂充填材5bで充填される。エポキシ樹脂封止材5aとエポキシ樹脂充填材5bとが一緒にハウジング4の内部にエポキシ樹脂5を形成する。このように、センサ素子2を封止する材料は、ハウジング4の内側に接触し、ハウジング4内にセンサ素子2を固定する同じ材料である。ハウジング内で同じ材料を使用することにより、2つの異なる材料を使用した場合に生じる境界面が生じない。
【0032】
通常、金属酸化物のような材料がセンサに使用される。特に、温度センサについては、それらが比較的高い熱伝導性を提供する。これらの材料は、トルエン、キシレン、IPAなどの溶媒を処理する必要がある。従って、空隙、小胞および気泡が硬化中に発生し、これは避けられない。これらの介在物は、センサ素子2の周囲を不均一にする。センサ1を用いた測定は、センサ素子2の周りに不均一性を有し、充填材料中の不均一性の数及び空間分布に強く依存して変動する。その結果、共通センサでは、応答時間と測定値が変化し、信頼性の高い測定ができない。センサ1のハウジング4内の充填材および固定材料としてエポキシ樹脂5を使用するセンサ1では、空隙、ベシクル(vesicles)および他の不均一性が回避される。その結果、本発明によるセンサ1の測定の信頼性及び再現性が向上する。他の点では、エポキシ樹脂5は、それによって、センサ1は、湿度に対する感度が低くなり、湿度環境でより信頼性高く作動することができる。
【0033】
図1のセンサ素子2は、NTCセンサ素子2である。NTCセンサ素子2は、環境の温度を測定する。従って、NTCセンサにとって、方向に依存しない測定が望ましい。特に、温度上昇によってトリガされるセキュリティシステムは、信頼性のある方向に依存しない測定を必要とし、緊急事態の場合に再現可能な挙動を提供する。
【0034】
ハウジング4が充填されるエポキシ樹脂5は、2成分エポキシ樹脂5である。エポキシ樹脂5は、エポキシ樹脂成分と硬化剤からなる。硬化剤酸として、酸無水物、フェノール類、アルコール類、アミン類、およびチオール類を使用することができる。エポキシ樹脂成分と硬化剤の硬度比を変えることにより、エポキシ樹脂5の弾性、耐湿性、耐酸性、およびさらに別の特性を改良する。従って、本発明によるセンサ1は、適用されるセンサ素子2に合わせてカスタマイズすることができ、センサ1は、2成分エポキシ樹脂5の比率を最適化することを意味する。
【0035】
図2には、本発明によるセンサ1の第2の実施形態の簡略化された断面図が示されている。材料、寸法および機能性は、図1に示される第1の実施形態に類似している。
【0036】
第2実施形態のハウジング4の内径は、第1実施形態と区別されるように、第1部分と第2部分とで同一である。これにより、ハウジング4の長手方向軸線に沿って開口部から底部まで延びる2つの溝9を、ハウジング4の内面に配置することができる。あるいは、溝は、開口を形成する第1の部分のように、ハウジングの一部にあるだけでもよい。さらに、電気リード3は、ハウジング4の内部に各2つのキンク(kink)10を有する。
【0037】
これにより、電気リード3は、互いに離れる方向に力を及ぼすバネ状の要素を形成する。その結果、両方の電気リード3は、離れて広がり、短絡する可能性は低い。同様に、電気リード3のキンク10によって生じる横方向の力は、電気リード3をハウジング4の内側の溝9に押し込む。このようにして、センサ素子2の方向は、ハウジング4に対して固定される。加えて、電気リード3に加わる横方向の力は、センサ1又はセンサ素子2を扱い易くするので、ポッティング又は取り付けプロセスの間に便利である。
【0038】
図3に、本発明の第1の実施形態によるセンサ1のハウジング4の断面図を示す。ハウジング4は、上側に開口部を有する第1の部分6と、開口部の側に対向する第2の部分7の2つの部分を有し、第2の部分7は、第1の部分6よりも小さな直径を有する。センサ素子2は、より小さな直径を有するハウジング4の第2の部分7に配置されている。センサ素子2は、それを取り囲む材料が少ないので、第2の部分7と比較して、センサ1の測定精度は高く、応答時間は速い。ハウジング4の第1の部分6は、より大きな直径を有すが、センサ素子2に接続された電気リード3を安定化させる。さらに、ハウジング4の第2の部分7の壁厚は、第1のハウジング4の壁厚よりも小さく、周囲からセンサ素子2への熱伝導率を改善し、センサ1の応答時間を改善する。
【0039】
図3に示すハウジング4の壁厚は、0.7mmである。ハウジング4の壁厚は、センサ素子2を保護するために、センサ1を設置または取り付ける際にセンサ1に加えられる圧力を抑えるのに十分に強固であるべきである。それとは別に、ハウジング4は、高感度を提供するために、環境をセンサ素子2に熱的に接続することが必要である。2mm未満の壁厚は、特に温度センサにとって有利であることが示されている。図3の0.7mmのように、1mmより小さく0.5mmより大きい壁厚が特に有利である。
【0040】
図4は、図2にも示した第2の実施の形態によるセンサ1のハウジング4の断面図である。図3に示した第1の実施の形態の断面図と比較して、ハウジング4は、ハウジング4の第1の部分と第2の部分の内径が同じである。ハウジング4の内面に配置された2つの溝9は、開口部から底部までハウジング4の全長にわたって延びている。代替的に、溝10は、例えば、開口部を形成する第1の部分と同様に、ハウジング4の一部に存在するだけであってもよい。
【0041】
図5に、本発明の第1の実施形態によるセンサ1のハウジング4の平面図を示す。中央に円形の開口部を形成する、ハウジング4の第1の部分6を示す。第1の部分6の外形及び輪郭は、半径方向に対称ではない。ハウジング4の輪郭は、互いに対向する2つの平坦なセグメント8を有する。このようにして、センサ1は、平坦化されたセグメント8が安定したグリップのための手段を提供するので、平坦化されたセグメント8においてしっかりとピック(pick)することができる。従って、センサ1は、また、ピックアンドプレースマシンによって容易に装置に取り付け(mounted and installed)られる。
【0042】
半径方向に対称でないハウジング4を使用することによって、ハウジング4内でセンサ素子2が向いている方向、及び装置内でハウジング4の方向が決定され、固定される。その結果、センサ1の位置及び方向は、装置において全く同じである。センサ素子2は、しばしば、それらが測定すべきイベントに面する角度に大きく依存する。一例として、大きな表面を有する熱源に面する平面温度センサ素子2は、熱源に垂直に向くNTCセンサよりも多くの熱エネルギーを吸収する。ハウジング4内のセンサ素子2の方向及び装置内のハウジング4の方向を、その外形及び輪郭によって決定することによって、センサ素子2が作動し、それによってセンサ1自体が作動し、信頼性及び再現性のある値を測定することが保証される。
【0043】
図6には、図2および図4にも示されている、第2の実施形態によるセンサ1のハウジング4の平面図が示されている。図5に示す第1の実施形態とは対照的に、ハウジング4の内面に配置された2つの溝9が主な相違点である。溝9は、ハウジング4の外側の輪郭の一部である平坦化されたセグメント8に対して相対的に中央に配置される。電気リード3が溝9にラッチされ、溝が平坦化されたセグメント8と比較して固定されているので、ハウジング4内のセンサ素子2の配向は、平坦化されたセグメント8と比較して予め決められている。
【0044】
このようにして、センサ1は、ハウジングの配向および位置が特定される所与の環境において再現可能であることが保証される。
【0045】
図7は、図3および図5に示すセンサ1のハウジング4の斜視図を示す。図3及び図5について説明したように、ハウジング4は、2つの部分を有し、半径方向に対称的ではなく、第1の部分6上に2つの平坦化されたセグメント8を有する。金属酸化物である酸化アルミナから作られ、96%がアルミナ、4%が酸素である。金属酸化物は高い安定性と比較的高い熱伝導率を提供する。
【0046】
さらに、金属酸化物は電気絶縁体である。従って、金属酸化物製のハウジング4を有するセンサ1は、高電圧用途に便利である。高電圧が印加されると、特に突出した電気リード3とハウジング4との間に、容易に短絡を生じさせるので、電気絶縁体で作られたハウジング4が有利である。図7に示すハウジング4を用いたセンサ1は、金属酸化物で作られており、10 kVまでの電圧で動作可能である。図8に示す第2の実施形態では、図7と同様のハウジングが示されている。両方の実施形態は、ハウジング4の内面に配置される2つの溝9が異なる。電気リード3は、この溝9にラッチし、それによって、ハウジング4内のセンサ素子2の向きを固定することができる。
【0047】
別の実施形態では、用途に応じて、ハウジング4は金属で作ることができる。金属は強固(robust)であり、熱伝導性が高い。また、有害な外部環境の影響を受けにくい。
【0048】
特に、熱センサにおいては、金属ハウジング材料が好適であるのは、そのようなセンサ1がより感度が高いからである。
【符号の説明】
【0049】
1 センサ
2 センサエレメント
3 電気リード
4 ハウジング
5 エポキシ樹脂
5a エポキシ樹脂封止材
5b エポキシ樹脂充填材
6 第1部分
7 第2部分
8 平坦なセグメント
9 溝
10 キンク(kink)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサであって、
センサ素子と、
電気リードであって、前記センサ素子が前記電気リードに接続される電気リードと、
ハウジングであって、前記ハウジングは開口部を有し、前記センサ素子は前記電気リードが前記開口部から突出するように前記ハウジング内に配置されるハウジングと、
エポキシ樹脂であって、前記ハウジングは前記エポキシ樹脂で充填され、前記エポキシ樹脂は前記ハウジングにおいて前記センサ素子と前記電気リードとを固定する、エポキシ樹脂とを有する、
センサ。
【請求項2】
前記センサ素子はNTCセンサ素子である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記開口部を有する第1部分と前記開口部の側に対向する第2部分との2つの部分を有し、前記第2部分は前記第1部分よりも直径が小さく、前記センサ素子は前記ハウジングの前記第2部分に配置される、請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記ハウジングの外形は半径方向に対称でない、請求項1ないし3いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記ハウジングの輪郭は互いに対向する少なくとも2つの平坦化されたセグメントを有する、請求項1ないし4いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記ハウジングの内面に、前記開口部から長手方向軸線に沿って前記ハウジングに延在する2つの溝を有する、請求項1ないし5いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電気リードは前記ハウジングの内側に位置する部分にキンクを有する、
請求項1ないし6いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ハウジングの肉厚が2mmより小さい、請求項1ないし7いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記ハウジングは金属製である、請求項1ないし8いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記ハウジングは金属酸化物製である、請求項1ないし8いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂は2成分のエポキシ樹脂である、請求項1ないし10いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項12】
前記センサ素子を封入する材料は、前記ハウジングの内側に接触し、前記センサ素子を前記ハウジングに固定するものと同一材料である、
請求項1ないし11いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項13】
前記センサはピックアンドプレースマシンによる取り付けに適している、
請求項1ないし12いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項14】
前記ハウジングは、前記ハウジングの内面に、前記開口部から長手軸に沿って前記ハウジングに延在する2本の溝を有し、前記電気リードは、前記ハウジング内にある部分にキンクを有し、前記電気リードは、前記溝内に配置され、前記電気リードのキンクにより横方向の力が発生し、前記溝における前記電気リードのラッチを支持する、
請求項1ないし13いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項15】
前記エポキシ樹脂は、2成分エポキシ樹脂であり、エポキシ樹脂と、多機能性硬化剤よりなる、請求項1ないし14いずれか一項に記載のセンサ。
【請求項16】
装置であって、
請求項1ないし15いずれか一項に記載のセンサと、
プリント回路基板(PCB)とを有し、前記センサは前記PCB上に配置され、前記PCBに電気的に接続される、
装置。
【請求項17】
請求項1ないし15いずれか一項に記載のセンサ、または請求項16に記載の装置を有する、スマートパワーメータ。
【国際調査報告】