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特表2022-546074ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法、ならびにその製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法、ならびにその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/75 20060101AFI20221026BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C07C45/75
C07C47/22 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513393
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2020073343
(87)【国際公開番号】W WO2021037669
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19194674.8
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ブアクハート
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン チュンケ
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアート ルンダール
(72)【発明者】
【氏名】トーステン パナク
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヘルムート ケーニッヒ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC45
4H006AD11
4H006BA50
4H006BA51
4H006BB31
4H006BC10
4H006BD81
(57)【要約】
本発明は、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法、ならびにその製造装置に関する。本方法を、良好なエネルギー収支で実施し、問題となる廃水の生成量を可能な限り低く抑えることができ、装置に関して可能な限り簡単に実施できるようにするため、反応混合物をメタクロレイン後処理装置に導入し、これをその中で第1の蒸留塔で頂部に気相として存在する第1の蒸留物質混合物と、底部に液相として存在する第2の蒸留物質混合物とに分離し、第1の蒸留物質混合物を凝縮させ、第1の相分離器で有機相(第1の分離物質混合物)と凝縮液の水相(第2の分離物質混合物)とに互いに分離し、第2の分離物質混合物をメタクロレイン後処理装置に付属しない第2の蒸留塔に導入し、そこで頂部に気相として存在する第3の蒸留物質混合物と、底部に存在する第4の蒸留物質混合物とに分離し、第3の蒸留物質混合物をメタクロレイン後処理装置に導入することが提案される。さらに、本発明による方法を実施することができる製造装置が提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法であって、前記方法は、
- ステップS1:ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、水、および均一系触媒を反応器(1)に導入するステップ、
- ステップS2:前記反応器(1)内で液相にて液体の反応混合物を製造し、その際、前記反応混合物は、メタクロレインに加えて、同伴成分、例えば水、触媒、未反応ホルムアルデヒド、および未反応プロピオンアルデヒドをも含むものとするステップ、
- ステップS3:反応混合物をメタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)に導入し、前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)内で、前記反応混合物に含まれる同伴成分を少なくとも部分的に分離し、その際、前記少なくとも部分的な分離は、
・ステップS3.i:前記反応混合物の少なくとも一部を、前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)に属する第1の蒸留塔(11)に導入し、導入された物質混合物を少なくとも、第1の蒸留物質混合物と第2の蒸留物質混合物とに分離し、その際、前記第1の蒸留物質混合物は、前記第1の蒸留塔(11)の頂部(12)に気相として存在し、かつメタクロレインを含み、前記第2の蒸留物質混合物は、前記第1の蒸留塔(11)の底部(13)に液相として存在し、かつ水および触媒を含むものとするステップと、
・ステップS3.ii:前記第1の蒸留塔(11)の頂部(12)から排出された前記第1の蒸留物質混合物を、前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)に属する第1の冷却器(9)に導入し、かつ前記第1の冷却器(9)で、排出された前記第1の蒸留物質混合物を凝縮させるステップと、
・ステップS3.iii:前記第1の冷却器(9)から凝縮液を排出し、前記凝縮液を、前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)に属する第1の相分離器(18)に導入し、前記第1の相分離器(18)で、前記凝縮液を第1の分離物質混合物と第2の分離物質混合物とに分離し、その際、前記第1の分離物質混合物は、メタクロレインを含む有機相として存在し、前記第2の分離物質混合物は、水相として存在するものとするステップと、
・ステップS3.iv:前記第2の蒸留物質混合物を前記第1の蒸留塔(11)の底部(13)から排出するステップと
を含むものとするステップ、
- ステップS4:ステップ(3.iv)で排出された前記第2の蒸留物質混合物の少なくとも一部を前記反応器(1)に導入するステップ、
- ステップS5:前記第2の分離物質混合物を第2の蒸留塔(23)に導入し、導入された前記第2の分離物質混合物を少なくとも、第3の蒸留物質混合物と第4の蒸留物質混合物とに分離し、その際、前記第3の蒸留物質混合物は、前記第2の蒸留塔の頂部(24)に気相として存在し、かつメタクロレインを含み、前記第4の蒸留物質混合物は、前記第2の蒸留塔(23)の底部(25)に液相として存在し、かつ水を含むものとするステップ、
- ステップS6:第3の蒸留物質混合物を前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から排出し、排出された前記第3の蒸留物質混合物を、前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)に導入するステップ、ならびに
- ステップS7:前記第4の蒸留物質混合物を前記第2の蒸留塔(23)の底部(25)から排出するステップ
を含み、前記反応器(1)内の圧力は、前記第1の蒸留塔(11)内の圧力よりも高い、方法。
【請求項2】
ステップS6において、前記第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を前記第1の冷却器(9)に導入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップS6において、前記第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を、前記メタクロレイン後処理装置(210,710)に属する第2の冷却器(51)に導入してそこで凝縮させ、前記第2の冷却器(51)から凝縮液を排出して前記第1の相分離器(18)に導入する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステップS6において、前記第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を、前記メタクロレイン後処理装置(310,810)に属する第2の冷却器(51)に導入してそこで凝縮させ、前記第2の冷却器(51)から凝縮液を排出して、前記メタクロレイン後処理装置(310,810)に属する第2の相分離器(61)に導入し、前記第2の相分離器(61)で、第3の分離物質混合物と第4の分離物質混合物とに分離し、その際、前記第3の分離物質混合物は、メタクロレインを含む有機相として存在し、前記第4の分離物質混合物は、水相として存在する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップS6において、前記第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を、前記第1の蒸留塔(11)に導入する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
- 前記反応混合物を減圧し、それによって、減圧により気相に移行する前記反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、液相に残る前記反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とを生成し、
- 前記第1の減圧物質混合物および第2の減圧物質混合物を、前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510)に属する減圧容器(5)で分離し、
- 前記第1の減圧物質混合物を前記第1の冷却器(9)に導入し、
- 前記第2の減圧物質混合物を前記第1の蒸留塔(11)に導入する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ステップS6において、前記第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を、前記減圧容器(5)に導入する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ステップS3.ivで排出された第2の蒸留物質混合物の少なくとも一部を膜装置(28)に導入し、導入された前記第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部を前記膜装置(28)内に保持し、保持された前記触媒を含む濃縮液物質混合物と透過液物質混合物とを前記膜装置(28)から排出する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下で、出発材料であるホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造するための製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)、特に請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施するための製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)において、前記製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)は、
- 反応器(1)であって、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを形成する反応を液相で実施することができる、反応器(1)、
- 前記反応混合物または前記反応混合物の画分において同伴成分、例えば水、触媒、未反応ホルムアルデヒド、および未反応プロピオンアルデヒドが占める割合を低減するためのメタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)であって、前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)は、
・頂部(12)および底部(13)を有する第1の蒸留塔(11)であって、これにより、供給された反応混合物または供給された反応混合物の画分を少なくとも、気相として存在し、かつメタクロレインを含む第1の蒸留物質混合物と、液相として存在し、かつ水および触媒を含む第2の蒸留物質混合物とに分離することができる、第1の蒸留塔(11)と、
・第1の冷却器(9)であって、これにより、供給された第1の蒸留物質混合物を凝縮させることができ、前記第1の冷却器(9)は、凝縮液出口(16)を有する、第1の冷却器(9)と、
・第1の相分離器(18)であって、これにより、前記第1の冷却器(9)から供給された凝縮液に含まれる有機相の第1の分離物質混合物と、前記第1の冷却器(9)から供給された凝縮液に含まれる水相の第2の分離物質混合物とを分離することができ、その際、前記第1の相分離器(18)は、第1の分離物質混合物を排出するための第1の出口(19)と、第2の分離物質混合物を排出するための第2の出口(20)とを有する、第1の相分離器(18)と、
・第1の相分離器排出管設備(21)であって、前記第1の相分離器(18)の前記第1の出口(19)に流体的に接続されており、これを通じて第1の分離物質混合物を前記第1の相分離器(18)から排出することができる、第1の相分離器排出管設備(21)と、
・第2の相分離器排出管設備(22)であって、前記第1の相分離器(18)の前記第2の出口(20)に流体的に接続されており、これを通じて第2の分離物質混合物を前記第1の相分離器(18)から排出することができる、第2の相分離器排出管設備(22)と、
・第1の蒸留塔排出管設備(14)であって、これにより前記第1の蒸留塔(11)の頂部(12)と前記第1の冷却器(9)とが流体的に接続されており、これを通じて第1の蒸留物質混合物を前記第1の蒸留塔(11)から前記第1の冷却器(9)に送ることができる、第1の蒸留塔排出管設備(14)と、
・第2の蒸留塔排出管設備(15)であって、これにより前記第1の蒸留塔(11)の底部(13)と前記反応器(1)とが流体的に接続されており、これを通じて第2の蒸留物質混合物を前記第1の蒸留塔(11)から前記反応器(1)に送ることができる、第2の蒸留塔排出管設備(15)と、
・第1の冷却器排出管設備(17)であって、これにより前記第1の冷却器(9)の前記凝縮液出口(16)と前記第1の相分離器(18)とが流体的に接続されており、これを通じて前記第1の冷却器(9)の凝縮液を前記第1の冷却器(9)から前記第1の相分離器(18)に送ることができる、第1の冷却器排出管設備(17)と
を有するものとする、メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)、
- 頂部(24)および底部(25)を有する第2の蒸留塔(23)であって、これにより、第2の分離物質混合物を少なくとも、気相として存在し、かつメタクロレインを含む第3の蒸留物質混合物と、液相として存在し、かつ水を含む第4の蒸留物質混合物とに分離することができ、その際、前記第2の相分離器排出管設備(22)を通じて、前記第1の相分離器(18)の前記第2の出口(20)と前記第2の蒸留塔(23)とが流体的に接続されており、第2の分離物質混合物を、前記第1の相分離器(18)の前記第2の出口(20)から前記第2の相分離器排出管設備(22)を通じて前記第2の蒸留塔(23)に送ることができるものとする、第2の蒸留塔(23)、
- 第3の蒸留塔排出管設備(26,50,70,80)であって、前記第3の蒸留塔排出管設備(26,50,70,80)は、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)に流体的に接続されており、これを通じて、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)とが流体的に接続されており、その際、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記第3の蒸留塔排出管設備(26,50,70,80)を通じて前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510,610,710,810,910)に送ることができる、第3の蒸留塔排出管設備(26,50,70,80)、ならびに
- 第4の蒸留塔排出管設備(27)であって、前記第4の蒸留塔排出管設備(27)は、前記第2の蒸留塔(23)の底部(25)に流体的に接続されており、これを通じて第4の蒸留物質混合物を前記第2の蒸留塔(23)から排出することができる、第4の蒸留塔排出管設備(27)
を有する、製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)。
【請求項10】
前記第3の蒸留塔排出管設備(26)を通じて、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記第1の冷却器(9)とが流体的に接続されており、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記第3の蒸留塔排出管設備(26)を通じて前記第1の冷却器(9)に送ることができる、請求項9記載の製造装置(100,600)。
【請求項11】
- 前記製造装置(200,700)は、前記メタクロレイン後処理装置(210,710)に属する第2の冷却器(51)を有し、
- 前記第3の蒸留塔排出管設備(50)を通じて、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記第2の冷却器(51)とが流体的に接続されており、その際、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記第3の蒸留塔排出管設備(50)を通じて前記第2の冷却器(51)に送り、前記第2の冷却器(51)で凝縮させることができ、
- 前記第2の冷却器(51)は、前記第1の相分離器(18)と流体的に接続されており、それにより、前記第2の冷却器(51)の凝縮液を、前記第2の冷却器(51)からさらに前記第1の相分離器(18)に送ることができる、請求項9または10記載の製造装置(200,700)。
【請求項12】
- 前記製造装置(300,800)は、前記メタクロレイン後処理装置(310,810)に属する第2の冷却器(51)を有し、
- 前記第3の蒸留塔排出管設備(50)を通じて、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記第2の冷却器(51)とが流体的に接続されており、その際、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記第3の蒸留塔排出管設備(50)を通じて前記第2の冷却器(51)に送り、前記第2の冷却器(51)で凝縮させることができ、
- 前記第2の冷却器(51)は、前記メタクロレイン後処理装置(310,810)に属する第2の相分離器(61)と流体的に接続されており、それにより、前記第2の冷却器(51)の凝縮液を、前記第2の冷却器(51)からさらに前記第2の相分離器(61)に送ることができ、前記第2の相分離器(61)により、前記第2の冷却器(51)から供給された凝縮液に含まれる有機相の第3の分離物質混合物と、前記第2の冷却器(51)から供給された凝縮液に含まれる水相の第4の分離物質混合物とを分離することができ、その際、前記第2の相分離器(61)は、第3の分離物質混合物を排出するための第1の出口(62)と、第4の分離物質混合物を排出するための第2の出口(63)とを有する、請求項9から11までのいずれか1項記載の製造装置(300,800)。
【請求項13】
前記第3の蒸留塔排出管設備(70)を通じて、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記第1の蒸留塔(11)とが流体的に接続されており、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記第3の蒸留塔排出管設備(70)を通じて前記第1の蒸留塔(11)に送ることができる、請求項9から12までのいずれか1項記載の製造装置(400,900)。
【請求項14】
前記メタクロレイン後処理装置(110,210,310,410,510)は、減圧容器(5)を有し、前記減圧容器(5)により、前記反応混合物の減圧により気相に移行する前記反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、前記反応混合物の減圧後に液相に残る前記反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とを互いに分離することができ、その際、前記減圧容器(5)は、第1の減圧物質混合物を排出するための第1の出口(6)と、第2の減圧物質混合物を排出するための第2の出口(7)とを有し、前記第1の出口(6)は、前記第1の冷却器(9)と流体的に接続されており、それにより、前記第1の出口(6)を通じて、第1の減圧物質混合物を前記第1の冷却器(9)に送ることができ、前記第2の出口(7)は、前記第1の蒸留塔(11)と流体的に接続されており、それにより、前記第2の出口(7)を通じて、第2の減圧物質混合物を前記第1の蒸留塔(11)に送ることができる、請求項9から13までのいずれか1項記載の製造装置(100,200,300,400,500)。
【請求項15】
前記第3の蒸留塔排出管設備(80)を通じて、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)と前記減圧容器(5)とが流体的に接続されており、第3の蒸留物質混合物を、前記第2の蒸留塔(23)の頂部(24)から前記第3の蒸留塔排出管設備(80)を通じて前記減圧容器(5)に送ることができる、請求項14記載の製造装置(500)。
【請求項16】
前記第1の蒸留塔(11)の底部(13)と前記反応器(1)とが流体的に接続されており、それにより第2の蒸留物質混合物を前記反応器(1)に送ることができる、請求項9から15までのいずれか1項記載の製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)。
【請求項17】
前記製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)は、前記第1の蒸留塔(11)の底部(13)と流体的に接続された膜装置(28)を有し、前記膜装置(28)により、前記膜装置に供給された第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部を保持することができ、前記膜装置(28)は、保持された前記触媒を含む濃縮液物質混合物を排出するための第1の出口(33)と、透過液物質混合物を排出するための第2の出口(34)とを有する、請求項9から16までのいずれか1項記載の製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)。
【請求項18】
メタクロレインを製造するための、特に、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造するための、請求項9から17までのいずれか1項記載の製造装置(100,200,300,400,500,600,700,800,900)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法、ならびにその製造装置に関する。
【0002】
製造装置から出る廃水に含まれる触媒の濃度が一定以上になると、この廃水は環境面での問題が大きすぎるため、自治体の排水処理施設に送って廃棄処理することができなくなる。問題のある成分を問題のない物質に変換するために、多額の費用をかけて処理するか、焼却しなければならない。どちらも技術的コストおよびエネルギーコストがかかる。触媒が製造装置から排出された場合、これは製造装置から失われる。そのため、新たな触媒を使用する必要がある。これにはコストがかかる。
【0003】
独国特許出願公開第3213681号明細書から、管状反応器において、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下で、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドから液相にて過圧下でメタクロレインを製造する方法が知られている。反応混合物が常圧へと減圧され、第1の蒸留塔に送られる。第1の蒸留塔の頂部からメタクロレインと水とを含むガス状の頂部流が排出される。底部には水および触媒が溜まる。このように、均一系触媒の分離は第1の蒸留塔で行われる。また、独国特許出願公開第3213681号明細書では、少量の触媒のみで良好な反応結果が得られる反応器運転が提案されている。このように、すでに最初から、必要な触媒は少ない。独国特許出願公開第3213681号明細書では、均一系触媒を含む分離された水相、すなわち缶出液の取り扱いについて、いくつかの変形例が提案されている。第1の変形例では、缶出液が完全に廃棄される。第2の変形例では、缶出液の一部が廃棄され、残りの部分が反応器に返送される。第3の変形例では、缶出液は第2の蒸留塔に供給され、頂部を通じて蒸留により水が分離される。よって、第2の蒸留塔の缶出液中の触媒の濃度は、第1の蒸留塔の缶出液中の触媒の濃度よりも高い。第2の蒸留塔の缶出液は、反応器に返送される。第4の変形例では、第2の蒸留塔の缶出液の一部のみが反応器に返送され、残りの部分は廃棄される。製造装置という観点から考えると、第3および第4の変形例と比較して、第1および第2の変形例はエネルギー的に有利であり、設備的にもはるかに単純である。しかし、第3および第4の変形例に比べて、より多くの触媒が失われ、つまりより多くの新たな触媒が必要となる。第1の変形例では、缶出液全体が廃棄され、第2の変形例では、任意に多くの水を反応器に返送できるわけではないため、返送可能な触媒の量がより少ない。しかし、第1の蒸留塔の缶出液中の触媒の含有量が多く、缶出液が廃水として自治体の排水処理施設に放出できない場合、第2、第3および第4の変形例は、第1の変形例に比べて、排出される問題のある廃水の量を減少させるのに適している。このことは、第2の変形例では、第1の蒸留塔の缶出液の一部を反応器に返送することによって達成され、第3の変形例では、第2の蒸留塔の缶出液全体を蒸留での水の分離により反応器に返送することができ、その結果、問題となる廃水が生じないことによって達成され、第4の変形例では、蒸留での水の分離および第2の蒸留塔の缶出液の反応器への部分的な返送により、問題となる廃水の量が第2の変形例よりもさらに減少することによって達成される。第1の蒸留塔の頂部流は、冷却器で凝縮される。凝縮液は、液-液相分離器で、メタクロレインを主に含む液体の有機相と液体の水相とに分離される。有機相は、生成物として収集タンクに収集される。水相は、第1の蒸留塔に返送される。
【0004】
国際公開第2016/042000号にも、管状反応器において、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下で、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドから液相にて過圧下でメタクロレインを製造し、反応混合物を減圧して第1の蒸留塔に送る方法が記載されている。第1の蒸留塔の頂部流は、凝縮される。凝縮液は、液-液相分離器に送られ、そこで液体の有機相と液体の水相とに互いに分離される。有機相にはメタクロレインが高濃度で含まれているため、生成物流として排出される。水相の全てまたは一部が、第1の蒸留塔に返送される。第1の蒸留塔の缶出液には、水および触媒が蓄積される。第1の蒸留塔の缶出液は、第1の塔に返送される部分を除き、少なくとも部分的に反応器に返送される。反応器に返送されなかった部分は、後処理あるいは廃棄処理される。後処理は、第2の蒸留塔または膜分離段階で行うことができる。第2の蒸留塔の缶出液および膜分離段階の濃縮液において、触媒はより高濃度で存在する。第2の蒸留塔の缶出液および膜分離段階の濃縮液は、反応器に送られる。
【0005】
欧州特許出願公開第2829531号明細書からは、管状反応器において、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下で、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドから液相にて過圧下でメタクロレインを製造し、反応混合物を減圧し、蒸留塔に送る方法が知られている。蒸留塔の頂部流は、凝縮される。凝縮液は、液-液相分離器に送られ、そこで液体の有機相と液体の水相とに互いに分離される。有機相にはメタクロレインが高濃度で含まれているため、生成物流として排出される。水相は、第1の蒸留塔に返送される。第1の蒸留塔の缶出液には、水および触媒が蓄積される。底部流の一部は、反応器に返送される。残りの部分は、膜分離段階による後処理に供給される。触媒が濃縮された濃縮液は、少なくとも一部が反応器に返送される。濃縮液のうち返送されなかった部分は、廃棄処理される。透過液は、汚染度の低い水相として別途廃棄処理される。この方法の第1の変形例では、2つの膜分離段階が設けられている。この方法の第2の変形例では、反応混合物が強度に冷却され、減圧される。強力な冷却により、副反応および/またはジメタクロレインの生成が大幅に低減される。これにより、反応混合物をさらに後処理する時間が得られる。冷却された反応混合物は、蒸留塔の上流にある液-液相分離器に送られ、そこで液体の有機相と液体の水相とに互いに分離される。有機相は蒸留塔に送られ、水相の全てまたは一部が膜分離段階に送られる。蒸留塔の缶出液を、液-液相分離器、膜分離段階、もしくは反応器に送るか、または廃棄処理することができる。
【0006】
国際公開第2018/217961号には、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が開示されており、反応は、100℃より高い温度、例えば150~220℃の範囲の温度、および液相での過圧で実施される。均一系触媒を含む反応混合物が強度に冷却され、すなわち15℃未満、好ましくは5℃未満まで冷却され、次いで減圧される。この強冷却により、副反応および/またはジメタクロレインの生成が大幅に低減される。これにより、反応混合物をさらに後処理する時間が得られる。冷却された反応混合物は、第1の液-液相分離器に送られ、そこで、メタクロレインを高い割合で含む液体の有機相と、均一系触媒を含む液体の水相とに互いに分離される。このようにして、水と触媒との第1の効果的な分離が行われ、その際、第1の液-液相分離器における分離工程は、液体の搬送以外にエネルギーを必要としない。水相は、第1の蒸留塔に送られる。第1の蒸留塔の缶出液の一部は反応器に返送され、もう1つの部分は排出され、残りの部分は第1の蒸留塔に返送される。第1の蒸留塔から水性の側方流を排出して、第1の蒸留塔の缶出液の水分量を減少させる。これにより、第1の蒸留塔の缶出液中の触媒濃度が高まるが、任意に多くの水を反応器に返送できるわけではないため、これによって反応器に返送できる触媒の量が増え、廃棄処理しなければならない問題のある廃水の量が低減される。第1の蒸留塔の頂部流は、凝縮されて第2の液-液相分離器に送られ、液体の有機相と液体の水相とに互いに分離される。第2の液-液相分離器に水を追加で供給することで、第1の蒸留塔の頂部流に含まれるメタノールが除去される。液体の水相は排出される。第2の液-液相分離器からの液体の有機相および第1の液-液相分離器からの液体の有機相が、第2の蒸留塔に送られる。第2の蒸留塔の頂部流は、凝縮されて第1の液-液相分離器に送られる。主にメタクロレインを含む第2の蒸留塔の缶出液は、第2の蒸留塔に返送される部分を除き、第3の蒸留塔に送られる。第3の蒸留塔の底部を通じて、望ましくない有機成分が分離される。第3の蒸留塔の頂部流は凝縮され、高純度のメタクロレインを含む。
【0007】
国際公開第2018/127963号から、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が知られており、この方法は特に、第1の蒸留塔の頂部流がその凝縮後に第2の液-液相分離器に送られず、第2の生成物流として排出されるという点で、国際公開第2018/217961号から知られる方法と相違している。
【0008】
国際公開第2018/217964号には、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が開示されており、この方法は特に、
- 第2の蒸留塔の頂部流が、第1および第2の蒸留塔の上流の液-液相分離器に、部分的に返送されずに、完全に第1の生成物流として排出され、かつ
- 第2の蒸留塔の缶出液が、第3の蒸留塔に送られずに、廃棄物流として排出される
という点で、国際公開第2018/127963号から知られる方法と相違している。
【0009】
国際公開第2015/065610号から、水の存在下、かつ均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法が知られており、この方法は特に、
- 第2の蒸留塔の缶出液が第3の蒸留塔に送られず、すでに生成物流として排出され、
- 第2の蒸留塔の凝縮された頂部流の一部が、第2の蒸留塔に返送され、かつ
- 第1の蒸留塔の頂部流が、第2の生成物流として排出されずに、一部が、第1の蒸留塔と、第1および第2の蒸留塔の上流にあるデカンタとして設計された液-液相分離器とに送られる
という点で、国際公開第2018/127963号から知られる方法と相違している。この方法はさらに、第2の蒸留塔の凝縮された頂部流の一部を別のデカンタに送り、このデカンタで分離された液体の有機相を第2の蒸留塔に送り、かつ/または第2の蒸留塔の底部流に加えるという構成であってもよい。さらに、第1の蒸留塔の凝縮された頂部流の一部をさらに別のデカンタに送り、このデカンタで分離された液体の有機相を第2の蒸留塔に送り、このデカンタで分離された液体の水相を第1の蒸留塔に送るという構成であってもよい。
【0010】
本発明は、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する方法であって、良好なエネルギー収支で実施することができ、問題となる廃水の生成量を可能な限り低く抑えることができ、装置に関して可能な限り簡単に実施することができる方法を提供するという課題に基づく。また本発明は、それに対応する製造装置を提供するという課題にも基づく。
【0011】
本発明によれば、方法上の課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。第2の分離物質混合物を第2の蒸留塔に導入することによって、第2の分離物質混合物を第1の蒸留塔に導入する場合と比較して、第1の蒸留塔に供給される水が少なくなる。このため、第2の蒸留物質混合物の生成量が相応してより少なくなり、第2の蒸留物質混合物は、相応してより高濃度の触媒を有する。反応器に返送できる水の量が限定的であることから、触媒の濃度がより高いためにより多くの触媒を反応器に返送することができ、それによって新たな触媒が節約される。また、第2の蒸留物質混合物の生成量がより少ないため、廃棄の可能性がある問題となる廃水の量が低減されている。
【0012】
第2の蒸留物質混合物の一部を反応器に導入することで、第2の蒸留物質混合物のこの部分に含まれる触媒が再利用される。
【0013】
第1の相分離器によって、メタクロレインを高い割合で含み得る第1の分離物質混合物から、容易かつ効果的に第2の分離物質混合物、ひいては多くの水が分離される。
【0014】
第2の蒸留塔ではさらに、第2の分離物質混合物に含まれるメタクロレインの大部分を分離することができる。
【0015】
第3の蒸留物質混合物をメタクロレイン後処理装置に導入することにより、メタクロレイン含有相である第3の蒸留物質混合物がさらなる後処理に供給され、同伴成分量が低減される。
【0016】
第4の蒸留物質混合物に含まれる触媒の量を少なく抑えることができ、このことは、第4の蒸留物質混合物の廃棄の点で有利である。
【0017】
好ましくは、ステップS6において、第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を第1の冷却器に導入することができる。これにより、第3の蒸留物質混合物用の専用の冷却器および相分離器が不要となり、この点で、設備コストが削減されている。第1の冷却器では、第3の蒸留物質混合物がその凝縮液に合流し、これが第1の相分離器に送られる。
【0018】
特に好ましくは、ステップS6において、第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部をメタクロレイン後処理装置に属する第2の冷却器に導入してそこで凝縮させ、第2の冷却器から凝縮液を排出して第1の相分離器に導入することができる。第2の冷却器では、第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器と独立して凝縮させることができる。さらに、第3の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔に少なくとも部分的に再循環させるために、第2の冷却器を利用することができる。第2の冷却器の凝縮液を第1の相分離器に導入することで、第2の冷却器の凝縮液用の専用の相分離器が不要となり、この点で、設備コストが削減されている。
【0019】
特に有利には、ステップS6において、第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を、メタクロレイン後処理装置に属する第2の冷却器に導入し、そこで凝縮させることができ、凝縮液を、第2の冷却器から排出して、メタクロレイン後処理装置に属する第2の相分離器に導入し、第2の相分離器において第3の分離物質混合物と第4の分離物質混合物とに分離することができ、その際、第3の分離物質混合物は、メタクロレインを含む有機相として存在し、第4の分離物質混合物は、水相として存在する。第2の相分離器によって行われる物質分離によって、第3の分離物質混合物を、第1の分離物質混合物とは別の、十分に後処理されたメタクロレインの生成物流として利用することも、第1の分離物質混合物と統合して、十分に後処理されたメタクロレインの共通の生成物流を形成することもできる。つまり、第3の分離物質混合物を、必ずしも第1の相分離器に導入する必要はない。さらに、特に、第2の冷却器および第2の相分離器により、第3の蒸留物質混合物の一部、すなわち第4の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔に返送し、それによって第2の蒸留塔で特に良好な物質分離、特に一方ではメタクロレインの、他方では水の良好な分離を実施できる可能性がある。
【0020】
特に有利には、ステップS6において、第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を第1の蒸留塔に導入することができる。このようにして、第3の蒸留物質混合物は、特に、第1の蒸留塔および第1の相分離器によって行われる後処理に供給される。
【0021】
好ましくは、
- 反応混合物を減圧することができ、それによって、減圧により気相に移行する反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、液相に残る反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とが生成され、
- 第1および第2の減圧物質混合物を、メタクロレイン後処理装置に属する減圧容器で分離することができ、
- 第1の減圧物質混合物を第1の冷却器に導入することができ、
- 第2の減圧物質混合物を第1の蒸留塔に導入することができる。
【0022】
反応器から出る反応混合物は、液体であり、圧力下にある。これが減圧されると、減圧によって反応混合物の一部が気相に移行し、それによって、第1の減圧物質混合物、すなわち減圧により気相に移行する反応混合物の画分と、第2の減圧物質混合物、すなわち液相に残る反応混合物の画分とが生じる。第1の減圧物質混合物中のメタクロレイン割合は、第2の減圧物質混合物中よりも多い。その結果、減圧は、すでにメタクロレイン含有量の高い物質混合物を得るためのステップとなっている。第1の減圧物質混合物と第2の減圧物質混合物とが、減圧容器内で互いに分離される。減圧は、すでに冷却を伴っている。そのため、この冷却のために追加のエネルギーコストや設備コストは必要ない。また、減圧に伴う冷却にもかかわらず、減圧に相当するエネルギー量が系内に残る。第2の減圧物質混合物のみを第1の蒸留塔に送り、蒸留プロセスのために加熱すれば済む。第1の減圧物質混合物は直ちに第1の冷却器に送られ、そこで第1の蒸留塔の頂部から来る第1の蒸留物質混合物と共に凝縮される。
【0023】
有利には、ステップS6において、第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を減圧容器に導入することができる。このようにして、第3の蒸留物質混合物は、減圧容器を経由して、特に第1の相分離器によって行われる後処理に供給される。
【0024】
特に好ましくは、ステップS3.ivで排出された第2の蒸留物質混合物の少なくとも一部を膜装置に導入し、導入された第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部を膜装置内に保持し、保持された触媒を含む濃縮液物質混合物と透過液物質混合物とを膜装置から排出することが可能である。濃縮液物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりも触媒濃度が高く、また反応器に返送できる水の量が限定的であるため、濃縮液物質混合物を用いて反応器に触媒を返送すると、より多くの触媒を反応器に返送することができる。濃縮液物質混合物の量は、膜装置に供給される第2の蒸留物質混合物の量よりも少ないため、透過液物質混合物が問題となる廃水に分類されなければ、廃棄の可能性がある問題となる廃水の量が低減されている。透過液物質混合物が問題のある廃水に分類される場合、その後処理は、特に触媒の含有量が減少しているため、おそらく少なくともより容易である。
【0025】
本発明によれば、製造上の課題は、請求項10の特徴を有する製造装置によって解決される。第2の相分離器排出管設備を通じて、第2の分離物質混合物を第2の蒸留塔に導入することができる。これを行った場合、この量の第2の分離物質混合物を第1の蒸留塔に送る場合と比較して、第1の蒸留塔に供給される水の量が少なくなる。このため、第1の蒸留塔で生成される第2の蒸留物質混合物の量が相応してより少なくなり、第2の蒸留物質混合物は、相応してより高濃度の触媒を有する。反応器に返送できる水の量が限定的であることから、触媒の濃度が高いためにより多くの触媒を反応器に返送することができる。また、第2の蒸留物質混合物の生成量がより少ないため、廃棄の可能性がある問題となる廃水の量が低減されている。
【0026】
第1の相分離器によって、メタクロレインを高い割合で含み得る第1の分離物質混合物から、容易かつ効果的に第2の分離物質混合物、ひいては多くの水が分離される。
【0027】
第2の蒸留塔ではさらに、第2の分離物質混合物に含まれるメタクロレインの大部分を分離することができる。
【0028】
第3の蒸留塔排出管設備を通じて、第3の蒸留物質混合物をメタクロレイン後処理装置に送ることができる。これにより、メタクロレイン含有相である第3の蒸留物質混合物をさらなる後処理に供給し、同伴成分量を低減することができる。
【0029】
第2の蒸留塔には、触媒量が少ない第2の分離物質混合物が供給されるため、第4の蒸留物質混合物に含まれる触媒量は少量である。このことは、第4の蒸留物質混合物の廃棄の点で有利である。
【0030】
好ましくは、第3の蒸留塔排出管設備は、第2の蒸留塔の頂部と第1の冷却器とを流体的に接続することができ、第3の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔の頂部から第3の蒸留塔排出管設備を通じて第1の冷却器に送ることができる。第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器に導入することができるため、第3の蒸留物質混合物用の専用の冷却器および相分離器が不要となり、この点で、設備コストが削減されている。第1の冷却器では、第3の蒸留物質混合物がその凝縮液に合流し、これを第1の相分離器に送ることができる。
【0031】
好ましくは、
- 製造装置は、メタクロレイン後処理装置に属する第2の冷却器を有することができ、
- 第3の蒸留塔排出管設備は、第2の蒸留塔の頂部と第2の冷却器とを流体的に接続することができ、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から第3の蒸留塔排出管設備を通じて第2の冷却器へ送り、第2の冷却器において凝縮することができ、
- 第2の冷却器は、第1の相分離器と流体的に接続されていてよく、それによって、第2の冷却器の凝縮液を、第2の冷却器から第1の相分離器へとさらに送ることができる。
【0032】
第2の冷却器で、第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器と独立して凝縮することができる。さらに、第3の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔に少なくとも部分的に再循環させるために、第2の冷却器を利用することができる。さらに、この構成では、凝縮された蒸留物質混合物用の専用の相分離器は不要である。この点で設備コストが削減されている。
【0033】
特に好ましくは、
- 製造装置は、メタクロレイン後処理装置に属する第2の冷却器を有することができ、
- 第3の蒸留塔排出管設備は、第2の蒸留塔の頂部と第2の冷却器とを流体的に接続することができ、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から第3の蒸留塔排出管設備を通じて第2の冷却器へ送り、第2の冷却器において凝縮することができ、
- 第2の冷却器は、メタクロレイン後処理装置に属する第2の相分離器と流体的に接続されていてよく、それによって、第2の冷却器の凝縮液を、第2の冷却器から第2の相分離器へとさらに送ることができ、この第2の相分離器で、第2の冷却器から供給された凝縮液に含まれる有機相の第3の分離物質混合物と、第2の冷却器から供給された凝縮液に含まれる水相の第4の分離物質混合物とを分離することができ、その際、第2の相分離器は、第3の分離物質混合物を排出するための第1の出口と、第4の分離物質混合物を排出するための第2の出口とを有する。
【0034】
この構成では、第3の蒸留物質混合物の少なくとも一部を第2の冷却器に導入してそこで凝縮させ、第2の冷却器から凝縮液を排出して第2の相分離器に導入し、そこで第3の蒸留物質混合物と第4の蒸留物質混合物とを分離することができる。第2の相分離器によって行われる物質分離によって、第3の分離物質混合物を、第1の分離物質混合物とは別の、十分に後処理されたメタクロレインの生成物流として利用することも、第1の分離物質混合物と統合して、十分に後処理されたメタクロレインの共通の生成物流を形成することもできる。つまり、第3の分離物質混合物を、必ずしも第1の相分離器に導入する必要はない。さらに、特に、第2の冷却器および第2の相分離器により、第3の蒸留物質混合物の一部、すなわち第4の分離物質混合物を第2の蒸留塔に返送し、それによって第2の蒸留塔で特に良好な物質分離、特に一方ではメタクロレインの、他方では水の良好な分離を実施できる可能性がある。
【0035】
特に有利には、第3の蒸留塔排出管設備は、第2の蒸留塔の頂部と第1の蒸留塔とを流体的に接続することができ、第3の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔の頂部から第3の蒸留塔排出管設備を通じて第1の蒸留塔に送ることができる。このようにして、第3の蒸留物質混合物を、特に第1の相分離器で行われる後処理に供給することができる。
【0036】
好ましくは、メタクロレイン後処理装置は、減圧容器を有することができ、この減圧容器では、反応混合物の減圧により気相に移行する反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、反応混合物の減圧後に液相に残る反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とを互いに分離することができ、その際、減圧容器は、第1の冷却器と流体的に接続された、第1の減圧物質混合物を排出するための第1の出口であって、これを通じて第1の減圧物質混合物を第1の冷却器に送ることができる第1の出口と、第1の蒸留塔と流体的に接続された、第2の減圧物質混合物を排出するための第2の出口であって、これを通じて第2の減圧物質混合物を第1の蒸留塔に送ることができる第2の出口とを有する。反応器から出る反応混合物は、液体であり、圧力下にある。これが減圧されると、減圧によって反応混合物の一部が気相に移行し、それによって、第1の減圧物質混合物、すなわち減圧により気相に移行する反応混合物の画分と、第2の減圧物質混合物、すなわち液相に残る反応混合物の画分とが生じる。第1の減圧物質混合物中のメタクロレイン割合は、第2の減圧物質混合物中よりも多い。その結果、減圧は、すでにメタクロレイン含有量の高い物質混合物を得るためのステップとなっている。減圧容器により、第1の減圧物質混合物と第2の減圧物質混合物とを互いに分離し、これらを別個に減圧容器から排出することができる。第1の出口が第1の冷却器と流体的に接続されていることによって、第1の減圧物質混合物を第1の冷却器に送ることができる。そこで、これを、第1の蒸留塔の頂部から来る第1の蒸留物質混合物と共に凝縮することができる。第2の出口が第1の蒸留塔と流体的に接続されていることによって、第2の減圧物質混合物を第1の蒸留塔に送ることができ、第2の減圧物質混合物のみを第1の蒸留塔に送り、相応して蒸留プロセスのために加熱すれば済む。
【0037】
有利には、第3の蒸留塔排出管設備は、第2の蒸留塔の頂部と減圧容器とを流体的に接続することができ、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔の頂部から第3の蒸留塔排出管設備を通じて減圧容器に送ることができる。これにより、第3の蒸留物質混合物を、減圧容器を経由して、特に第1の相分離器によって行われる後処理に供給することができる。
【0038】
有利には、第1の蒸留塔の底部は、反応器と流体的に接続されていてよく、それによって第2の蒸留物質混合物を反応器に送ることができる。この構成により、第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒を再利用することができる。
【0039】
好ましくは、製造装置は、第1の蒸留塔の底部と流体的に接続された膜装置を有し、この膜装置により、膜装置に供給される第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部を保持することができ、膜装置は、保持された触媒を含む濃縮液物質混合物を排出するための第1の出口と、透過液物質混合物を排出するための第2の出口とを有することができる。膜装置を利用することで、より多くの触媒を反応器に返送することが可能になる。これは、反応器に返送できる水の量が限定的であるためである。濃縮液物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりも触媒濃度が高く、触媒を反応器に返送するために使用することができる。また、膜装置を使用することにより、透過液物質混合物が問題となる廃水に分類されなければ、廃棄の可能性がある問題となる廃水の量を低減することができる。なぜならば、濃縮液物質混合物の量は、膜装置に供給される第2の蒸留物質混合物の量よりも少ないためである。透過液物質混合物が問題のある廃水に分類される場合、その後処理は、特に触媒の含有量が減少しているため、おそらく少なくともより容易である。
【0040】
特に好ましくは、製造装置は、メタクロレインを製造するための、特に、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造するための、記載した構成の選択肢により可能な全ての変形例で使用することができる。
【0041】
図面に、本発明のいくつかの可能な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】概略フロー図に基づく本発明の第1の実施形態を示す図である。
図2】概略フロー図に基づく本発明の第2の実施形態を示す図である。
図3】概略フロー図に基づく本発明の第3の実施形態を示す図である。
図4】概略フロー図に基づく本発明の第4の実施形態を示す図である。
図5】概略フロー図に基づく本発明の第5の実施形態を示す図である。
図6】概略フロー図に基づく本発明の第6の実施形態を示す図である。
図7】概略フロー図に基づく本発明の第7の実施形態を示す図である。
図8】概略フロー図に基づく本発明の第8の実施形態を示す図である。
図9】概略フロー図に基づく本発明の第9の実施形態を示す図である。
【0043】
図1図9の概略フロー図において、矢印は、当該処理を行う際の各媒体の流れ方向を示している。矢印を省略した場合、図1図9は、本発明の第1~第9の実施形態の製造装置を概略的に表したものとなる。
【0044】
図1図9において、破線は、各製造装置のどの部分が当該製造装置のメタクロレイン後処理装置に属するかを示している。
【0045】
図1を参照する。ここで例示された本発明の第1の実施形態の製造装置100は、過圧下で液相での反応を行うことができる反応器1を有し、この反応では、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインが生成される。反応器排出管設備2は、反応器1と減圧弁3とを流体的に接続し、それによって反応器排出管設備2を通じて反応器1から減圧弁3へ反応物混合物を送ることができる。減圧弁3により、反応器1から来て過圧の状態にある反応混合物を低圧に減圧させることができ、その際、減圧弁3により同時に反応器1内の圧力を調整することができる。減圧弁3は、圧力保持/減圧弁とも呼ぶことができる。
【0046】
減圧弁3は、メタクロレイン後処理装置110と流体的に接続されており、メタクロレイン後処理装置110により、反応混合物または反応混合物の一部のうち、同伴成分、例えば水、触媒、未反応ホルムアルデヒドおよび未反応プロピオンアルデヒドが占める割合を低減することができる。メタクロレイン後処理装置110は、減圧容器5を含む。この減圧容器5と減圧弁3とは、減圧弁排出管設備4を通じて流体的に接続されている。減圧容器5では、反応混合物の減圧により気相に移行する反応混合物の画分である第1の減圧物質混合物と、反応混合物の減圧後に液相に残る反応混合物の画分である第2の減圧物質混合物とを互いに分離することができる。減圧容器5は、減圧ドラムとして示すこともでき、その際、これはドラム形状を有する必要はなく、またフラッシュボックスとして示すこともできる。
【0047】
減圧容器5は、第1の減圧物質混合物を排出するための第1の出口6と、第2の減圧物質混合物を排出するための第2の出口7とを有する。
【0048】
メタクロレイン後処理装置110はさらに、第1の冷却器9を有する。減圧容器5の第1の出口6は、第1の減圧容器排出管設備8を通じて第1の冷却器9に流体的に接続されており、これにより減圧容器5から第1の冷却器9に第1の減圧物質混合物を送ることができる。第1の冷却器9により、第1の減圧物質混合物を凝縮させることができる。
【0049】
メタクロレイン後処理装置110はさらに、頂部12と底部13とを有する第1の蒸留塔11を有する。減圧容器5の第2の出口7は、第2の減圧容器排出管設備10を通じて第1の蒸留塔11と流体的に接続されており、その際、第2の減圧物質混合物を、減圧容器5から第2の減圧容器排出管設備10を通じて第1の蒸留塔11に送ることができる。第1の蒸留塔11では、第2の減圧物質混合物を、気相として存在し、かつメタクロレインを含む第1の蒸留物質混合物と、液相として存在し、かつ水および触媒を含む第2の蒸留物質混合物とに分離することができる。
【0050】
第1の蒸留塔11の頂部12は、第1の蒸留塔排出管設備14を通じて第1の冷却器9と流体的に接続されている。第1の蒸留塔排出管設備14を通じて、第1の蒸留塔11の頂部12から第1の冷却器9に第1の蒸留物質混合物を送ることができる。第1の冷却器9では、供給された第1の蒸留物質混合物を凝縮させることができる。
【0051】
第1の減圧容器排出管設備8および第1の蒸留塔排出管設備14は、それぞれ第1の冷却器9のそれぞれの専用の入口と接続されている。
【0052】
第1の蒸留塔11の底部13は、第2の蒸留塔排出管設備15を通じて反応器1と流体的に接続されている。第2の蒸留塔排出管設備15を通じて、第1の蒸留塔11から第2の蒸留物質混合物を反応器1に送ることができる。
【0053】
メタクロレイン後処理装置110はさらに、第1の相分離器18を有する。第1の相分離器18は、冷却器排出管設備17を通じて第1の冷却器9の凝縮液出口16に流体的に接続されている。冷却器排出管設備17を通じて、第1の冷却器9の凝縮液を第1の冷却器9から第1の相分離器18に送ることができる。第1の相分離器18により、第1の冷却器9の凝縮液に含まれる有機相の第1の分離物質混合物と、第1の冷却器9の凝縮液に含まれる水相の第2の分離物質混合物とを分離することができる。第1の相分離器18は、第1の分離物質混合物を排出するための第1の出口19と、第2の分離物質混合物を排出するための第2の出口20とを有する。第1の相分離器排出管設備21は、第1の相分離器18の第1の出口19に流体的に接続されており、これを通じて第1の分離物質混合物を第1の相分離器18から排出することができる。第2の相分離器排出管設備22は、第2の出口20に流体的に接続されており、これを通じて第2の分離物質混合物を第1の相分離器18から排出することができる。
【0054】
製造装置100はさらに、頂部24と底部25とを有する第2の蒸留塔23を有する。第2の蒸留塔23は、メタクロレイン後処理装置110に付属していない。第1の相分離器18の第2の出口20は、第2の相分離器排出管設備22を通じて第2の蒸留塔23に流体的に接続されている。第2の相分離器排出管設備22を通じて、第2の分離物質混合物を、第1の相分離器18の第2の出口から第2の蒸留塔23に送ることができる。第2の蒸留塔23では、第2の分離物質混合物を少なくとも、気相として存在しメタクロレインを含む第3の蒸留物質混合物と、液相として存在し水を含む第4の蒸留物質混合物とに分離することができる。
【0055】
第2の蒸留塔23の頂部24には、第3の蒸留塔排出管設備26が流体的に接続されている。第2の蒸留塔23の頂部24は、第3の蒸留塔排出管設備26を通じてメタクロレイン後処理装置110に流体的に接続されており、その際、第3の蒸留物質混合物を、第3の蒸留塔排出管設備26を通じて、第2の蒸留塔23の頂部24からメタクロレイン後処理装置110に送ることができる。第3の蒸留塔排出管設備26は、第2の蒸留塔23の頂部24と第1の冷却器9とを流体的に接続し、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔23の頂部24から第3の蒸留塔排出管設備26を通じて第1の冷却器9に送ることができる。
【0056】
第3の蒸留塔排出管設備26は、第1の冷却器9の専用の入口に接続されている。
【0057】
第2の蒸留塔23の底部25には、第4の蒸留塔排出管設備27が流体的に接続されており、これを通じて第2の蒸留塔23から第4の蒸留物質混合物を排出することができる。
【0058】
製造装置100は、第1の蒸留塔11の底部13に流体的に接続されている膜装置28を有する。膜装置28は、第2の蒸留塔排出管設備15によって第1の蒸留塔11の底部13と流体的に接続されており、その際、第2の蒸留塔排出管設備15を通じて第1の蒸留塔11の底部13から膜装置28に第2の蒸留物質混合物を送ることができる。
【0059】
第2の蒸留塔排出管設備15を通じて、第2の分離物質混合物を製造装置100から排出することもできる。
【0060】
図1に示す実施形態の第2の蒸留塔排出管設備15は、第1のセクション29、第2のセクション30、第3のセクション31、および第4のセクション32を有する。第1のセクション29は、一方では第1の蒸留塔11の底部13と流体的に接続されており、他方では第2のセクション30、第3のセクション31および第4のセクション32と流体的に接続されている。第2のセクション30は、反応器1と流体的に接続されており、これにより、第2の蒸留物質混合物を、第1の蒸留塔11の底部13から第2の蒸留塔排出管設備15の第1のおよび第2のセクション29、30を経由して、第1の蒸留塔11の底部13から反応器1へ送ることができる。第2の蒸留塔排出管設備15の第1および第3のセクション29、31を経由して、第2の蒸留物質混合物を製造装置100から排出することができる。第4のセクション32は、膜装置28と流体的に接続されており、それにより、第2の蒸留物質混合物を、第1の蒸留塔11の底部13から第2の蒸留塔排出管設備15の第1および第4のセクション29、32を経由して膜装置28に送ることができる。
【0061】
膜装置28により、膜装置28に供給された第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部を保持することができる。膜装置28は、保持された触媒を含む濃縮液物質混合物を排出するための第1の出口33と、透過液物質混合物を排出するための第2の出口34とを有する。第1の出口33は、第1の膜装置排出管設備35に流体的に接続されており、これにより濃縮液物質混合物を膜装置28の第1の出口33を通じて膜装置28から排出することができる。
【0062】
図1に示す実施例では、第1の膜装置排出管設備35は、第1のセクション36、第2のセクション37、および第3のセクション38を有する。第1のセクション36は、一方では膜装置28の第1の出口33に、他方では第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37および第3のセクション38に流体的に接続されている。第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37は、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に流体的に接続されており、それにより、濃縮液物質混合物を、膜装置28からその第1の出口33、第1の膜装置排出管設備35の第1および第2のセクション36、37を経由して第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。第1の膜装置排出管設備35の第1および第3のセクション36、38を経由して、濃縮液物質混合物を製造装置100から排出することができる。
【0063】
膜装置28の第2の出口34には、第2の膜装置排出管設備39が流体的に接続されており、その際、透過液物質混合物を、膜装置28の第2の出口34から第2の膜装置排出管設備39を通じて製造装置100から排出することができる。
【0064】
図1に示す本発明の実施形態では、ホルムアルデヒド供給源40は、ホルムアルデヒド供給管設備41を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、ホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒド供給管設備41を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。プロピオンアルデヒド供給源42は、プロピオンアルデヒド供給管設備43を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、プロピオンアルデヒドを、プロピオンアルデヒド供給源42からプロピオンアルデヒド供給管設備43を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。塩基供給源44は、塩基供給管設備45を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、塩基を、塩基供給管設備45を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。酸供給源46は、酸供給管設備47を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に流体的に接続されており、それにより、酸を、酸供給管設備47を通じて第2の蒸留塔排出管設備15に送ることができ、これを通じてさらに反応器1に送ることができる。
【0065】
製造装置100により、例えば、水の存在下、かつ少なくとも酸および塩基をベースとする均一系触媒の存在下でホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドからメタクロレインを製造する後述の方法を実施することができる。
【0066】
第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30を通じて、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、水、および均一系触媒が反応器1に導入される。ここで、新たなホルムアルデヒドがホルムアルデヒド供給源40からホルムアルデヒド供給管設備41を通じて第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入され、新たなプロピオンアルデヒドがプロピオンアルデヒド供給源42からプロピオンアルデヒド供給管設備43を通じて導入され、新たな塩基が塩基供給源44から塩基供給管設備45を通じて導入され、新たな酸が酸供給源46から酸供給管設備47を通じて導入される。ホルムアルデヒド、酸および塩基は、それぞれ水溶液中に存在し、すなわち、これらの水溶液は水を含む。酸は、均一系触媒の塩基と組み合わせられる。
【0067】
適切なホルムアルデヒド水溶液は、例えば、ホルムアルデヒドの含有量がホルムアルデヒド溶液の全質量に対して30~55質量%であり、好ましくはメタノールの含有量がホルムアルデヒド溶液の全質量に対して例えば0.3~10質量%と低いものである。
【0068】
プロピオンアルデヒドは、高濃度で入手可能である。プロピオンアルデヒド原料混合物は、例えば、残留水分量がプロピオンアルデヒド原料混合物の全質量に対して0.1~2.5質量%であり、プロピオン酸含有量がプロピオンアルデヒド原料混合物の全質量に対して0.01~1質量%であるものが入手可能である。
【0069】
反応器入口で、ホルムアルデヒドは、プロピオンアルデヒドよりわずかに過剰であることが好ましい。特に好ましくは、反応器入口でのホルムアルデヒドに対するプロピオンアルデヒドのモル比は、0.90~0.99、非常に好ましくは0.95~0.98の範囲となるように選択される。これにより、一方では、低いホルムアルデヒド消費量で良好な転化率が達成できる。他方では、同時にさらに触媒が保護される。これは、ホルムアルデヒドの含有量が多すぎると、ジメチルアミンからトリメチルアミンへの変換が促進されるためである。
【0070】
適切な酸は、特に無機酸、有機モノカルボン酸、有機ジカルボン酸および有機ポリカルボン酸である。その他の有機酸も原理的には使用可能であるが、コスト上の理由で通常は使用されない。好ましくは有機モノカルボン酸が使用される。
【0071】
無機酸としては、例えば、硫酸および/またはリン酸を使用することができる。
【0072】
有機モノカルボン酸のうち、脂肪族有機モノカルボン酸が好ましい。脂肪族モノカルボン酸のうち、2~10個の炭素原子を有するものが好ましく、特に2個、3個または4個の炭素原子を有するものが好ましい。
【0073】
脂肪族ジカルボン酸およびポリカルボン酸のうち、2~10個の炭素原子を有するものが好ましく、特に2個、4個、5個または6個の炭素原子を有するものが好ましい。有機ジカルボン酸および有機ポリカルボン酸は、芳香族カルボン酸、芳香脂肪族カルボン酸および脂肪族カルボン酸であってよく、脂肪族ジカルボン酸およびポリカルボン酸が好ましい。
【0074】
例えば、酢酸、プロピオン酸、メトキシ酢酸、n-酪酸、イソ酪酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸またはフマル酸を用いることができるが、酢酸を用いることが好ましい。
【0075】
また、2種類以上の酸の混合物を用いてもよい。
【0076】
適切な塩基は、特に有機塩基であり、アミンが好ましい。アミンのうち、第二級アミンが好ましく、特に式RNHのものが好ましく、ここで、RおよびRは、
- 同一であっても異なっていてもよく、
- それぞれ、以下のものを表すことができる:
・1~10個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、特に好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であって、その際、炭素原子は、エーテル基、ヒドロキシ基、第二級アミノ基または第三級アミノ基により、好ましくはこれらの基のうち1つまたは2つの基により置換されていてもよく、
・7~12個の炭素原子を有するアラルキル基、
・5~7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
・隣接する窒素と一緒に、複素環、好ましくは5~7員環の要素となっており、該環はさらに、窒素原子および/または酸素原子を含んでいてもよく、かつ1~4個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル基またはアルキル基によって置換されていてもよい。
【0077】
1種以上の塩基を使用することができる。
【0078】
アミンとして、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、メチルイソプロピルアミン、メチルイソブチルアミン、メチル-sec-ブチルアミン、メチル-(2-メチルペンチル)アミン、メチル-(2-エチルヘキシル)アミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルピペラジン、N-ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルシクロヘキシルアミン、メチルシクロペンチルアミンまたはジシクロヘキシルアミンを使用することができる。
【0079】
また、2種以上の塩基の混合物を使用することもできる。
【0080】
アミンの混合物を使用する場合、使用するアミンの少なくとも1つがヒドロキシ基を有しないように選択することが好ましい。特に好ましくは、反応器中の少なくとも1つのヒドロキシ基を有するアミンの割合は、使用するアミンの質量に対して、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0081】
反応器中のプロピオンアルデヒドに対する酸(合計)の割合は、好ましくは0.1~20モル%の範囲、特に好ましくは0.5~10モル%の範囲、非常に特に好ましくは1~5モル%の範囲にある。反応器内の酸の量、つまり触媒の量が少なすぎると、反応器をかなり大型に建造し、かなり高温で運転しなければならなくなる。酸の量、つまり触媒の量が多すぎると、反応器がかなり高温になる。
【0082】
反応器内で、酸を塩基に比べて若干多くすることが推奨される。マンニッヒ反応にはプロトンが必要なため、このことが有利となる。また、酸は塩基と結合することができる。例えば、酸として酢酸を、塩基としてジメチルアミンを選択すると、酢酸が易揮発性のジメチルアミンと結合する。これにより、易揮発性成分であるジメチルアミンが第1の蒸留塔11の頂部に達することが防止される。例えば、酸として酢酸、塩基としてジメチルアミンを選択した場合、反応器入口でのジメチルアミンに対する酢酸のモル比は、2.0~1.1の範囲が好適であり、ジメチルアミンに対する酢酸のモル比が1.1であることが特に好ましい。
【0083】
反応器入口でのプロピオンアルデヒドに対する塩基(合計)の割合は、好ましくは反応器の入口でのプロピオンアルデヒドのモル数に対して0.1~20モル%の範囲であり、特に好ましくは反応器の入口でのプロピオンアルデヒドのモル数に対して0.5~15モル%の範囲であり、非常に特に好ましくは反応器の入口でのプロピオンアルデヒドのモル数に対して1~10モル%の範囲である。塩基の使用量が少なすぎると、反応の選択性が低くなり、反応器をより高温で運転する必要がある。塩基の使用量が多すぎると、反応の実施はますます不経済になり、廃水がさらに汚染される。例えば、ジメチルアミンを塩基として用いる場合、反応器入口でのプロピオンアルデヒドに対するジメチルアミンのモル比は、好ましくは0.08~0.12、特に好ましくは0.08~0.1の範囲である。
【0084】
マンニッヒ塩基を分解するのに十分な酸度を有し、特に易揮発性の塩基を使用した場合に塩基を良好に結合させることができ、第1の蒸留塔の底部13に良好に移行させることができ、かつそこから排出させることができるようにするためには、塩基に対する酸の化学量論比を1より大きくすることが好ましい。
【0085】
反応器1では、液相でマンニッヒ反応が行われ、その際、ホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドを水の存在下、かつ均一系触媒の存在下で反応させてメタクロレインを生成する。反応器1の反応ゾーンの出口での反応温度は、好ましくは100℃~210℃の範囲、特に好ましくは110℃~200℃の範囲、非常に特に好ましくは120℃~190℃の範囲、非常に殊に好ましくは130℃~180℃の範囲となるように選択される。これにより、高い転化率および良好な収率を達成することができる。反応器1内の圧力は、反応器1内の反応混合物が液体のままとなるように、少なくとも十分に高く選択される。この前提の下で、反応器1内に適切な圧力が設定され、この圧力は、好ましくは15~100barの範囲、特に好ましくは18~80barの範囲、非常に特に好ましくは22~50barの範囲、非常に殊に好ましくは25~40barの範囲にある。圧力は、絶対圧である。
【0086】
液体反応混合物が反応器1の反応ゾーンを出た後でも、特に反応混合物が反応ゾーン内を支配している圧力下にあり続け、反応ゾーンを出るときに有する温度を実質的に有し続けるならば、マンニッヒ反応および他の後続反応、例えばメタクロレインからジメタクロレインへの反応またはメタクロレインのオリゴマー化がさらにかなりの程度進行し得る。反応滞留時間とは、ここでは、反応器1の反応ゾーンに出発材料が進入してから減圧弁3で反応混合物の減圧が開始されるまでの平均時間であると理解される。反応ゾーンでの滞留時間は、好ましくは0.001分~25分の範囲、特に好ましくは0.001分~10分の範囲、非常に特に好ましくは0.1秒~300秒、非常に殊に好ましくは1秒~50秒、さらに好ましくは5秒~20秒の範囲である。こうすることで、良好な収率で、副反応および後続反応を良好に制限することができる。
【0087】
反応混合物は、メタクロレイン、同伴成分である水、未反応ホルムアルデヒド、未反応プロピオンアルデヒド、および触媒を含む。また、1種以上の以下のさらなる同伴成分を含むことができる:
- 新たなホルムアルデヒド水溶液にメタノールが含まれていた場合には、メタノール
- ジメタクロレイン
- ジメチルアミンを塩基として使用する場合には、トリメチルアミン
- 高沸点物質、特に高沸点アルドール化生成物
- オリゴマー、特にメタクロレインのオリゴマー
- 安定剤(例えば、Tempol)
- プロピオンアルデヒドの二量体
【0088】
反応混合物は、反応器排出管設備2を通じて減圧弁3に送られ、減圧弁3により所望の圧力、例えば500mbar(絶対圧)から常圧の範囲の圧力に減圧される。減圧によって反応混合物の少なくとも一部が液相から気相に移行し、それによって、第1の減圧物質混合物、すなわち減圧により気相に移行する反応混合物の画分が形成される。減圧後に液相に残る反応混合物の画分は、第2の減圧物質混合物である。メタクロレインと水との共沸混合物は水よりも沸点が低く、したがって水よりも蒸発し易いため、第1の減圧物質混合物は、第2の減圧物質混合物よりもメタクロレインの質量割合が多い。この場合、反応混合物に含まれる全メタクロレインの90質量%超が第1の減圧物質混合物に移行することができる。すなわち、減圧弁3が本発明によるメタクロレイン後処理装置110に付属していないにもかかわらず、減圧弁3による減圧は、すでにメタクロレインを精製するための第1のステップである。減圧と、反応混合物の一部の気相への移行とによって、気相に移行する反応混合物の部分(第1の減圧物質混合物)と、液相に残る反応混合物の部分(第2の減圧物質混合物)の温度が低下する。その結果、この冷却効果のために他の冷却を必要としない。好ましくは、本方法は、第1および第2の減圧物質混合物が、減圧後に約60~120℃の範囲の温度、好ましくは約70~110℃の範囲の温度、特に好ましくは約80~90℃の範囲の温度を有するように運転される。これらの温度範囲では、起こり得る望ましくない副反応および後続反応の程度は、考えられているよりも重大ではないことがわかっている。特に、第1および第2の減圧物質混合物は、数分間、好ましくは0.1~15分間、特に好ましくは1~5分間、なおより好ましくは0.5~3分間、示した温度範囲に留まっていてもよい。これらは、望ましくない副反応および後続反応に関して十分に認容できる滞留時間である。好ましくは、減圧容器5における第1の減圧物質混合物の滞留時間は、第2の減圧物質混合物の滞留時間よりも短い。
【0089】
減圧弁3に供給された反応混合物が、例えば165℃の温度および35bar(絶対圧)の圧力を有し、組成物がその全質量に対して63.51質量%の水および29.04質量%のメタクロレインを含む場合、0.85bar(絶対圧)への急速な減圧によって、第1および第2の減圧物質混合物の温度は78.9℃となり得る(本発明による試験例を参照のこと)。
【0090】
第1の減圧物質混合物および第2の減圧物質混合物は、減圧弁排出管設備4を通じて減圧容器5に送られる。減圧容器5では、第1の減圧物質混合物と第2の減圧物質混合物とが互いに分離される。
【0091】
第1の減圧物質混合物は、減圧容器5の第1の出口6および第1の減圧容器排出管設備8を通じて第1の冷却器9に送られる。第2の減圧物質混合物は、減圧容器5の第2の出口7および第2の減圧容器排出管設備10を通じて第1の蒸留塔11に送られる。
【0092】
好ましくは、減圧容器5は、第2の減圧物質混合物が十分な充填レベルでその中に存在するように運転され、その際、減圧容器5における第2の減圧物質混合物の滞留時間は、第1の減圧物質混合物の滞留時間よりも著しく高い。
【0093】
第1の冷却器9において、第1の減圧物質混合物が凝縮される。
【0094】
第1の蒸留塔11において、第2の減圧物質混合物は、第1の蒸留物質混合物と第2の蒸留物質混合物とに分離され、その際、第1の蒸留物質混合物は、第1の蒸留塔11の頂部12に気相として存在し、第2の蒸留物質混合物は、第1の蒸留塔11の底部13に液相として存在する。第1の蒸留物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりもメタクロレインの質量割合が高い。第1の蒸留物質混合物はさらに、未反応プロピオンアルデヒドおよび未反応ホルムアルデヒドを含む。第2の蒸留物質混合物は、第1の蒸留物質混合物よりも水の質量割合が高い。さらに、第2の蒸留物質混合物は、第1の蒸留物質混合物と比較して、第2の減圧物質混合物によって供給された触媒の少なくともより大きい部分を含む。さらに、第2の蒸留物質混合物は、未反応ホルムアルデヒドを含む。
【0095】
第2の減圧物質混合物によって供給された触媒のほぼ全てが第1の蒸留塔11の底部13に存在するように、第1の蒸留塔11のプロセスを設計することができる。
【0096】
例えば、第1の蒸留塔11を、その底部13の温度が100℃をわずかに超えるように、常圧で運転することができる。(常圧で)100℃をわずかに超える上昇は、底部13に存在する触媒分によって第2の蒸留物質混合物の沸点が相応に上昇することによるものである。
【0097】
第1の蒸留塔11の頂部12の温度は、常圧で68~98℃の範囲で、好ましくは80~90℃の範囲で選択することができる。その結果、頂部12の温度が低いときよりも多くの水が頂部12に達する。
【0098】
第1の蒸留塔排出管設備14を通じて、第1の蒸留物質混合物は第1の冷却器9に送られ、そこで同様に凝縮される。第1の冷却器9の凝縮液は、メタクロレインを含む有機相(第1の分離物質混合物)と、水相(第2の分離物質混合物)とを含む。
【0099】
第1の冷却器9の凝縮液は、その凝縮液出口16および冷却器排出管設備17を通じて第1の相分離器18に送られる。そこで有機相と水相、すなわち第1の分離物質混合物と第2の分離物質混合物とが互いに分離される。有機相、すなわち第1の分離物質混合物は、第1の相分離器18の第1の出口19および第1の相分離器排出管設備21を通じて、例えばタンクまたはさらなる処理装置、例えばメチルメタクリレート製造用装置へ排出される。水相、すなわち第2の分離物質混合物は、第1の相分離器18の第2の出口20および第2の相分離器排出管設備22を通じて、第2の蒸留塔23に送られる。第2の分離物質混合物中の水の含有量は、第2の分離物質混合物の全質量に対して75質量%以上であり得る。第2の分離物質混合物中のメタクロレインの含有量は、第2の分離物質混合物の全質量に対して2~10質量%の範囲であり得る。第2の分離物質混合物中のメタノールの含有量は、第2の分離物質混合物の全質量に対して1~10質量%の範囲であり得る。第2の分離物質混合物は、ホルムアルデヒドを含むこともできる。当然のことながら、第2の分離物質混合物の全成分を合わせたものが、第2の分離物質混合物の全質量に対して100質量%を占める。
【0100】
第2の分離物質混合物が第1の蒸留塔11ではなく第2の蒸留塔23に送られることにより、第1の蒸留塔11に達する水が少なくなる。これにより、第1の蒸留塔11の底部13における触媒の濃度が、第2の分離物質混合物が第1の蒸留塔11に送られる場合よりも高くなる。反応器1に返送できる水の量は限定的であるため、反応器1に返送できる第2の蒸留物質混合物の量も、そこに含まれる水の量によって抑制されている。本発明による第2の蒸留物質混合物は、より高い割合の触媒を含むため、この触媒のより高い割合を反応器1に返送することができる。そのため、新たな触媒を節約することができる。
【0101】
第1の蒸留塔11に供給される水の量が少ないため、第2の蒸留物質混合物の生成量も少なくなる。したがって、第2の蒸留物質混合物を廃棄する場合は、より少ない量の第2の蒸留物質混合物を廃棄すれば済む。
【0102】
第2の蒸留塔23で、第2の分離物質混合物は、第3の蒸留物質混合物と第4の蒸留物質混合物とに分離され、その際、第3の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の頂部24に気相として存在し、かつメタクロレインを含み、第4の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の底部25に液相として存在し、かつ水を含む。触媒の大部分は第1の蒸留塔11の底部13に達するため、それに応じて、第2の蒸留塔23の底部25に達する触媒はわずかである。したがって、第4の蒸留物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりもその環境特性の点で問題が少ない。第2の減圧物質混合物に含まれる触媒のほぼ全量が第1の蒸留塔11の底部13に集まるように第1の蒸留塔11を運転することができ、またそれに加えてさらに、減圧容器5内の第2の減圧物質混合物の液滴がその第1の出口6を通じて外に出ることを十分に効率的に防止できるため、触媒をわずかにのみ含むか、または触媒がほとんど含まれない第4の蒸留物質混合物を得ることが可能となる。このように、触媒の環境負荷がわずかであるかまたは実質的にない第4の蒸留物質混合物を得ることができ、その点で、例えば自治体の排水処理施設に放出することで容易に廃棄処理することができる。
【0103】
第2の蒸留塔23は、例えばメタノールやメタクロレインなどの低沸点物質が第2の蒸留塔の頂部24に達することを促進するために、その底部25において約100~102℃の範囲の温度が優勢になるように、例えば常圧で運転することができる。第2の蒸留塔の頂部24の温度は、常圧で65~99℃の範囲、好ましくは70~95℃の範囲に選択することができる。これにより、廃水中の低沸点物質の十分な減少が促進される。
【0104】
例えば、その全質量に対して30質量%超のメタクロレインと、40質量%超の水とを含む第3の蒸留物質混合物を得ることができる。さらなる成分として、第3の蒸留物質混合物は主にメタノールを含むことができる。ここで、例えば、その全質量に対して98質量%超の水と、1質量%未満のメタノールとを含み、かつメタクロレインをほとんど含まない第4の蒸留物質混合物を得ることができる。
【0105】
第3の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の頂部24から第3の蒸留塔排出管設備26を通じて第1の冷却器9に送られ、そこで凝縮される。
【0106】
第4の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔23の底部25から第4の蒸留塔排出管設備27を通じて製造装置から排出される。これをタンクに収集してもよいし、さらなる処理装置、例えばメチルメタクリレートを製造するための製造装置に供給してもよく、その際、第4の蒸留物質混合物に含まれるメタクロレインは、メチルメタクリレート製造の出発材料である。
【0107】
第2の蒸留物質混合物は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクションを経由して送られる。その後、
- 第2の蒸留物質混合物のうち反応器1に送られる部分が、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に、ひいては反応器1に送られ、
- 第2の蒸留物質混合物のうちメタクロレイン後処理装置110から排出される部分が、第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31に送られ、
- 第2の蒸留物質混合物のうち膜装置28に送られる部分が、第2の蒸留塔排出管設備15の第4のセクション32に送られる。
【0108】
本発明の第1の実施形態のように、第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31が、メタクロレイン後処理装置110の外だけでなく、製造装置100全体の外にも通じている場合、第2の蒸留物質混合物のうち第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31に導かれる部分は、第2の蒸留物質混合物のうち製造装置100全体から排出される部分である。
【0109】
膜装置28では、第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の少なくとも一部が保持される(濃縮液物質混合物)。したがって、濃縮液物質混合物は、第2の蒸留物質混合物よりも触媒濃度が高い。これに対応して、膜装置28の透過液物質混合物は触媒の割合が低い。したがって、透過液物質混合物は、その触媒含有量の点で、濃縮液物質混合物よりも環境への負荷が低い。適切に効果的な膜装置を用いれば、触媒濃度が非常に低い透過液物質混合物を得ることが可能であり、例えば、透過液物質混合物を自治体の排水処理施設に放出ことによって、その触媒濃度に関して問題なく廃棄処理することができる。
【0110】
膜装置としては、逆浸透膜装置が好ましい。
【0111】
濃縮液物質混合物は、膜装置28の第1の出口33を通じて、第1の膜装置排出管設備35の第1のセクション36に送られる。濃縮液物質混合物のうち反応器1に送られる部分は、第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37を経由して、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送られる。濃縮液物質混合物のうち製造装置100から排出される部分は、第1の膜装置排出管設備35の第3のセクション38を経由して製造装置100から排出される。透過液物質混合物は、膜装置28の第2の出口34および第2の膜装置排出管設備39を通じて製造装置100から排出される。
【0112】
透過液物質混合物の触媒含有量が十分に少ない場合は、少なくともその触媒含有物に関しては、公共の排水処理施設に放出して廃棄処理することができる。
【0113】
第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒、トリメチルアミンおよび/または望ましくない高沸点物質を廃棄処理することが問題である場合、濃縮液物質混合物の廃棄処理は、第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31を経由して第2の蒸留物質混合物を直接廃棄処理することに比べて、濃縮液物質混合物が同じ量の触媒、トリメチルアミンおよび/または望ましくない高沸点物質に対してより少ない水を含むという点で、より有利である。例えば、燃焼部に加えることにより廃棄処理する場合、第2の蒸留物質混合物を燃焼部に加えることにより同じ量の触媒、トリメチルアミンおよび/または望ましくない高沸点物質を廃棄処理する場合よりも、水を一緒に蒸発させる量が少なくて済むため、濃縮液物質混合物の廃棄処理に必要なエネルギーはより少ない。
【0114】
ジメチルアミンがトリメチルアミンに変換されることにより、第2の蒸留物質混合物および/または濃縮液物質混合物を反応器1に返送することによって、ジメチルアミンの含有量を犠牲にして第2の蒸留物質混合物中のトリメチルアミンの含有量が増加する。トリメチルアミンのためにジメチルアミンを減少させすぎると、それに伴って反応器1でのメタクロレイン収率が低下し、あるいは反応器1でのメタクロレイン収率の低下を十分に打ち消すために、それに対応して反応温度を上昇させることが必要となる。しかし、反応温度が高すぎると、望ましくない副生成物の発生が促進される。反応器1に返送されるトリメチルアミンの量は、特に、第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31を経由して第2の蒸留物質混合物を排出すること、および/または第1の膜装置排出管設備35の第3のセクション38を経由して濃縮液物質混合物を排出することによって減少させることができる。このように、失われた触媒は、新たな触媒を反応器1に供給することによって補うことができる。
【0115】
反応器1に返送できる水の量は限定的である。得られた第2の蒸留物質混合物に含まれる水の量が、反応器1に返送できるまたは返送される水の量よりも多いために、得られた第2の蒸留物質混合物の全てを反応器1に返送することができないか、または返送されない場合には、得られた第2の蒸留物質混合物に含まれる触媒の全てを再利用できるわけでない。反応器1に返送される第2の蒸留物質混合物の量を減らし、反応器1に導入される濃縮液物質混合物の量を増やすことにより、得られる第2の蒸留物質混合物に含まれる、反応器1に返送できる触媒の量を増やすことができる。
【0116】
特に、未反応ホルムアルデヒド、水および触媒は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29および/または膜装置排出管設備35の第2のセクション37から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入された物質混合物と共に反応器1に返送される。
【0117】
酸供給源46および塩基供給源44から適切な量の酸および塩基を反応器1に送ることによって、新たな触媒を反応器1に供給することができる。
【0118】
出発材料であるホルムアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドは、ホルムアルデヒド供給源40およびプロピオンアルデヒド供給源42から反応器1に供給される。
【0119】
図2を参照する。ここでフロー図で概略的に示されている本発明の第2の実施形態の製造装置200は、本発明の第1の実施形態の製造装置100と一部のみ異なる。以下、相違点のみを説明する。
【0120】
本発明の第1の実施形態の製造装置100とは異なり、第2の実施形態の製造装置200は、メタクロレイン後処理装置210を有し、このメタクロレイン後処理装置210は、さらに第2の冷却器51を有する。ここで、本発明の第1の実施形態の第3の蒸留塔排出管設備26とは対照的に、第2の蒸留塔23の頂部24を、第1の冷却器9とではなく第2の冷却器51に流体的に接続する第3の蒸留塔排出管設備50が設けられており、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔23の頂部24から、本発明の第2の実施形態の第3の蒸留塔排出管設備50を通じて第2の冷却器51に送ることができる。第2の冷却器51では、第3の蒸留物質混合物を凝縮させることができる。第2の冷却器51は、第2の冷却器排出管設備53によって第1の相分離器18に流体的に接続されている凝縮液出口52を有し、その際、第2の冷却器51の凝縮液を、第2の冷却器51から第2の冷却器排出管設備53を通じて第1の相分離器18に送ることができる。
【0121】
第2の冷却器51により、第3の蒸留物質混合物を第1の冷却器9とは独立して凝縮させることができる。第2の冷却器51は第1の相分離器18に流体的に接続されているため、第1の相分離器18を、第2の冷却器51の凝縮液のさらなる後処理にも使用することができる。つまり、第2の相分離器が不要になる。
【0122】
図3を参照する。ここでフロー図で概略的に示されている本発明の第3の実施形態の製造装置300は、本発明の第2の実施形態の製造装置200と一部のみ異なる。以下、相違点のみを説明する。
【0123】
図2に示す本発明の第2の実施形態の製造装置200とは異なり、本発明の第3の実施形態の製造装置300のメタクロレイン後処理装置310は、第2の相分離器61をさらに有し、この第2の相分離器61により、第2の冷却器51の凝縮液に含まれる有機相(第3の分離物質混合物)と、第2の冷却器51の凝縮液に含まれる水相(第4の分離物質混合物)とを分離することができる。ここで、第2の冷却器51の凝縮液出口52を、第1の相分離器18に代えて第2の相分離器61に流体的に接続する第2の冷却器排出管設備60が設けられており、それにより、第2の冷却器51の凝縮液を第2の冷却器51から第2の冷却器排出管設備60を通じて第2の相分離器61に送ることができる。第2の相分離器61は、分離された有機相を排出するための、すなわち第3の分離物質混合物を排出するための第1の出口62と、水相を排出するための、すなわち第4の分離物質混合物を排出するための第2の出口63とを有する。第2の相分離器61の第1の出口62は、第3の相分離器排出管設備64によって第1の相分離器排出管設備21に流体的に接続されており、それにより、第3の分離物質混合物を第3の相分離器排出管設備64を通じて第1の相分離器排出管設備21に導入し、第1の分離物質混合物と共に、下流側の合流点に続く第1の相分離器排出管設備21のセクションを経由して排出することができる。
【0124】
第2の冷却器51の凝縮液は、第2の相分離器61に送られる。そこで、第3の分離物質混合物と第4の分離物質混合物とが分離され、その際、第3の分離物質混合物は、第4の分離物質混合物よりもメタクロレインを多く含み、第4の分離物質混合物は、第3の分離物質混合物よりも水を多く含む。第1の分離物質混合物と同様に、第3の分離物質混合物も十分なメタクロレイン含有量を有し、例えばメチルメタクロレインを製造するためのさらなる処理に使用することができる。
【0125】
本発明の第3の実施形態では、第3の分離物質混合物は、第3の相分離器排出管設備64を通り、下流側の合流点に続く第1の相分離器排出管設備21のセクションを経由して送られる。すなわち、本発明の第3の実施形態では、第1および第3の分離物質混合物が合流させられる。
【0126】
第2の相分離器61の第2の出口63は、第4の相分離器排出管設備65を通じて第2の蒸留塔23に流体的に接続されており、その際、第4の分離物質混合物を、第2の相分離器61から第4の相分離器排出管設備65を通じて第2の蒸留塔23に送ることができる。第4の分離物質混合物を第2の蒸留塔23に導入することにより、第4の分離物質混合物に含まれるメタクロレインと、第4の分離物質混合物に含まれる水とを分離することができる。
【0127】
図4を参照する。図4に概略的に示されている本発明の第4の実施形態は、図1に示されている本発明の第1の実施形態と一部のみ異なる。以下、本発明の第1の実施形態に対する本発明の第4の実施形態の相違点のみを説明する。
【0128】
本発明の第4の実施形態の製造装置400において、第2の蒸留塔23の頂部24を第1の冷却器9に代えて本発明の第4の実施形態のメタクロレイン後処理装置410の第1の蒸留塔11に流体的に接続する第3の蒸留塔排出管設備70が設けられており、その際、第3の蒸留物質混合物を、第2の蒸留塔23の頂部24から第3の蒸留塔排出管設備70を通じて第1の蒸留塔11に送ることができる。第3の蒸留物質混合物を第1の蒸留塔11に導入することにより、第3の蒸留物質混合物は、適切なさらなる後処理に供給される。確かに、第3の蒸留物質混合物には水も含まれている。しかし、第1の蒸留塔11への、これに伴う水の導入量は管理可能であり、第2の分離物質混合物が第1の蒸留塔11に導入される場合よりも著しく少ないものである。第2の分離物質混合物を第1の蒸留塔11ではなく第2の蒸留塔23に導入することによって得られる利点は、良好に維持される。
【0129】
図5を参照する。本発明の第5の実施形態は、本発明の第4の実施形態と一部のみ異なる。以下、相違点のみを説明する。
【0130】
本発明の第5の実施形態の製造装置500では、本発明の第4の実施形態の製造装置400とは異なり、第2の蒸留塔23の頂部24を第1の蒸留塔11に代えて減圧容器5に接続する第3の蒸留塔排出管設備80が設けられている。この第3の蒸留塔排出管設備80を通じて、第3の蒸留物質混合物を第2の蒸留塔23の頂部24から減圧容器5へ送ることができる。第3の蒸留物質混合物を減圧容器5に導入することにより、第3の蒸留物質混合物は、適切なさらなる後処理に供給される。特に、第3の蒸留物質混合物はガス状であるため、第1の減圧物質混合物と共に第1の減圧容器排出管設備8を通じて第1の冷却器9に流れ込み、そこで凝縮される。第1の冷却器9の凝縮液の一部として、凝縮された第3の蒸留物質混合物は、第1の冷却器排出管設備17を通じて第1の相分離器18に送られ、そこで分離工程を通過する。
【0131】
図6図9を参照する。ここで示されている第6、第7、第8、および第9の実施形態の製造装置600、700、800、900は、メタクロレイン後処理装置610、710、810、910を有する。これらのメタクロレイン後処理装置610、710、810、910は、減圧容器5を有しておらず、したがって、第1および第2の減圧容器排出管設備8、10を有しない。これらの実施形態では、減圧弁3を第1の蒸留塔11に流体的に接続する減圧弁排出管設備90が設けられている。これを通じて、減圧された反応混合物を第1の蒸留塔11に送ることができる。こうして、これは第1の蒸留塔11の中へと減圧される。他の点では、
- 本発明の第6の実施形態の製造装置600は、本発明の第1の実施形態の製造装置100に対応し、
- 本発明の第7の実施形態の製造装置700は、本発明の第2の実施形態の製造装置200に対応し、
- 本発明の第8の実施形態の製造装置800は、本発明の第3の実施形態の製造装置300に対応し、
- 本発明の第9の実施形態の製造装置900は、本発明の第4の実施形態の製造装置400に対応する。
【0132】
本発明の第6~第9の実施形態では、第1の蒸留物質混合物の組成は、本発明の第1~第5の実施形態の第1の蒸留物質混合物の組成と同様であり、第2の蒸留物質混合物の組成は、本発明の第1~第5の実施形態の第2の蒸留物質混合物の組成と同様である。
【0133】
本発明の第6~第9の実施形態では減圧容器が設けられていないため、本発明のこれらの実施形態の第1の蒸留塔には、より多くの量のガスが流れる。これに対応するために、第1の蒸留塔は、例えば上方に向かって広くなるように構成されていてよく、かつ/またはさらに気相の側方出口を有していてもよい。
【0134】
さらなる可能な変形例を以下に説明するが、これらは個別に、または任意の組み合わせで実施することができる。
【0135】
第1、第2、第3、第4、および第5の実施形態の複数または全てを互いに組み合わせた製造装置や、第6、第7、第8、および第9の実施形態の複数または全てを互いに組み合わせた製造装置が可能である。
【0136】
一部または全ての蒸留塔は、各底部物質混合物を通してその中で加熱するリボイラ循環部を備えることができる。
【0137】
一部または全ての蒸留塔は、各メタクロレイン後処理装置に対して個別の冷却器循環部を有することができ、この循環部により頂部物質混合物が凝縮されて当該蒸留塔に返送され、その際、個別の冷却器循環部は、専用の冷却器を有する。また、第1の蒸留塔の頂部物質混合物を凝縮させるために第1の冷却器9を併用することも可能であり、すなわちこの場合、個別の冷却器は不要である。さらに、本発明の第2、第3、第7および/または第8の実施形態の第2の蒸留塔の頂部物質混合物を凝縮させるために、それぞれの第2の冷却器51を併用することも可能であり、すなわちこの場合、個別の冷却器は不要である。
【0138】
一部または全ての蒸留塔はそれぞれ、液滴保持ユニットを有することができ、それにより、液滴がその頂部を通じて当該蒸留塔から離れることを防止することができる。液滴保持ユニットは、例えば、ファインメッシュスクリーン、いわゆるデミスタ、または液体放出ユニットとして形成されていてよく、それにより、当該蒸留塔の内部で蒸留塔の底部の方向に液体が放出され、その際、この液体が、上昇する液滴を捕捉し、それによって液滴の液体が底部の方向に移動させられる。液滴保持ユニットにより、当該蒸留塔の分離効率が向上する。
【0139】
第2の蒸留塔23は、充填塔もしくはトレイ塔、またはそれらの混合形態であってよい。
【0140】
一部または全ての蒸留塔は、不規則充填物および/または規則充填物を含むことができる。
【0141】
冷却器9、51の1つ以上は、1つ以上の反応の廃ガスを排出することができる排気口を有することができる。
【0142】
冷却器9、51の1つ以上は、多段、例えば2段に形成されていてよい。2段式の場合、第1の冷却器段で例えば約30~40℃まで冷却し、第2の冷却器段で例えば約3~10℃、好ましくは4℃まで冷却することができる。多段式とすることで、冷却ブラインを節約することができる。多段式冷却器を使用する場合、凝縮液の一部を第1の冷却段に返送し、重合防止安定剤と混合することができる。
【0143】
冷却器9、51の1つ以上は、当該冷却器中に存在する気相をこの冷却器から排出することができる気相排出ユニットを有することができる。
【0144】
第2の分離物質混合物には、重合に対抗する薬剤、例えばメタクロレインおよび/またはジメチルアミンの重合に対抗する薬剤を混合することができる。この改良された第2の分離物質混合物を1つまたは複数の冷却器に導入して、すでにそこで重合に対抗することができる。
【0145】
反応器1に導入された物質を、例えば約130℃の温度まで予熱することができる。
【0146】
反応器1は、管状反応器として形成されていてよい。
【0147】
反応器1に導入された、塩基供給源44からの塩基、酸供給源46からの酸、ならびに/または第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29および/もしくは第1の膜装置排出管設備35の第2のセクション37から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30を経由して反応器1へ導入される返送流を、ホルムアルデヒド供給源40およびプロピオンアルデヒド供給源42から反応器1に導入される新たなホルムアルデヒドおよび新たなプロピオンアルデヒドよりも強度に予熱することができる。ここで、酸、塩基および/または前記返送流を、これらを新たなホルムアルデヒドおよび新たなプロピオンアルデヒドと混合した後にのみ所望の予混合温度に達する程度に加熱することができる。このようにして、新たなホルムアルデヒドおよび新たなプロピオンアルデヒドは、所望の予混合温度よりも低い温度でより長く留まる。また、前記返送物質を予熱することもできる。
【0148】
第1の蒸留塔11の底部13から排出される第2の蒸留物質混合物から熱を取り出して、反応器1に導入される物質の少なくとも一部を予熱するために少なくとも部分的に利用することができる。
【0149】
減圧容器5が存在する場合、一部または全ての減圧容器5は、液滴保持ユニットを有することができ、それにより、第2の減圧物質混合物の液滴が、その第1の出口6を通じて第1の減圧物質混合物と共に減圧容器5から離れることを防止することができる。液滴保持ユニットは、例えば、ファインメッシュスクリーンとして形成されていてよい。液滴保持ユニットにより、減圧容器5の分離効率が向上する。したがって、減圧容器5からその第1の出口6を通じて出て行く触媒の量も減少する。減圧容器5の液滴保持ユニットは、いわゆるデミスタとして形成されていてよい。
【0150】
また、減圧容器5は、液滴保持ユニットの効果を高めるために、液滴保持ユニットに下方から液体を噴霧することができる噴霧ユニットを有することができる。この液体は、例えば、第2の減圧物質混合物、またはメタクロレインおよび/もしくはジメチルアミンの重合に対抗する薬剤を含む液体であってよい。
【0151】
必要であれば、安定剤を、例えば、第1の冷却器9および/または第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に加えることができる。
【0152】
本発明の第1~第5の実施形態では、図1図5に示すように、減圧弁3は、減圧容器5の外側に配置されている。しかし、減圧弁3を減圧容器5の内部に配置することや、その壁面に一体化させることもできる。その場合、減圧弁排出管設備を省略できる構成も可能である。
【0153】
本発明の第6~第9の実施形態では、図6図9に示すように、減圧弁3は、第1の蒸留塔11の上流に配置されている。しかし、これを第1の蒸留塔11の内部に設けることや、第1の蒸留塔11の壁面に一体的に設けることもできる。ここで、減圧弁排出管設備を省略できる変形例も可能である。
【0154】
本発明の第1~第5の実施形態では、第1の減圧容器排出管設備8および第1の蒸留塔排出管設備14は、別個に第1の冷却器9に通じている。しかし、第1の減圧容器排出管設備8と第1の蒸留塔排出管設備14とが一体となって、第1の冷却器9の共通の入口に接続されている、すなわちこの共通の入口に流体的に接続されていることも可能である。
【0155】
本発明の第1および第6の実施形態では、第3の蒸留塔排出管設備26は、別個に第1の冷却器に通じている。しかし、第3の蒸留塔排出管設備26と第1の蒸留塔排出管14とが一体となって、第1の冷却器9の共通の入口に接続されている、すなわちこの共通の入口に流体的に接続されていることも可能である。
【0156】
本発明の第1~第9の実施形態において、第2の蒸留塔排出管設備15が設けられている。しかし、2つの別個の第2の蒸留塔排出管設備を設けることもでき、その際、一方は、本発明の第1~第9の実施形態の第2の蒸留塔排出管設備15の第1および第2のならびに任意に第3のセクション29、30、31を有し、結果として、第1の蒸留塔11の底部13と特に反応器1とを流体的に接続し、他方は、第1の蒸留塔11の底部13と膜装置28とを流体的に接続する。
【0157】
本発明の第2、第3、第7、および第8の実施形態において、第3の蒸留塔排出管設備50は、第2の蒸留塔23の頂部24を第2の冷却器51のみと接続する。また、第2の蒸留塔23の頂部24を第1の冷却器9と第2の冷却器51との双方に流体的に接続する第3の蒸留塔排出管設備を設けることもできる。
【0158】
本発明の第3および第8の実施形態では、第1および第3の分離物質混合物が合流させられる。しかし、第3の相分離器排出管設備が第1の相分離器排出管設備21に流体的に接続されておらず、これとは別個にタンクまたはさらなる処理装置に流体的に接続されているように、第3の相分離器排出管設備を設けることもできる。
【0159】
膜装置28は常に任意であり、省略することもできる。
【0160】
膜装置28は、単段式または多段式に形成されていてよい。
【0161】
好ましくは、膜装置は3段式の逆浸透膜装置であり、その第1の段は80~120bar(絶対圧)の圧力範囲で運転され、その第2の段は20~80bar(絶対圧)の圧力範囲で運転され、その第3の段は20~40bar(絶対圧)の圧力範囲で運転される。塩基としてジメチルアミン、酸として酢酸を用いた場合、このように運転される逆浸透膜装置により、第2の蒸留物質混合物に含まれるジメチルアミンを99%超、第2の蒸留物質混合物に含まれる酢酸を約80%、第2の蒸留物質混合物に含まれるホルムアルデヒドを約70~80%保持することができる。
【0162】
膜装置28は、特に膜装置の動作温度を調節することができる冷却装置を有することができる。
【0163】
本発明の第1~第9の実施形態において、ホルムアルデヒド供給管設備41、プロピオンアルデヒド供給管設備43、塩基供給管設備45、および酸供給管設備47は、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に流体的に接続されている。あるいは、ホルムアルデヒド供給管設備41、プロピオンアルデヒド供給管設備43、塩基供給管設備45および/または酸供給管設備47を反応器1に直接流体的に接続することも可能であり、それにより、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、塩基および/または酸を反応器1に直接導入することができる。
【0164】
本発明の第1~第9の実施形態では、新たなホルムアルデヒド、新たなプロピオンアルデヒド、新たな酸および新たな塩基は、別個の供給源から供給される。また、
- 新たなホルムアルデヒドと新たなプロピオンアルデヒドとを予混合すること、もしくは適切な供給源からホルムアルデヒドとプロピオンアルデヒドとの混合物を供給すること、および/または
- 新たな酸と新たな塩基とを予混合すること、もしくは適切な供給源から酸と塩基との混合物を供給すること
も可能である。
【0165】
酸と塩基との予混合が行われない場合には、まず酸を第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送り、その後、塩基を第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に送ることができる。この順序により、局所的な塩基過剰に対抗することがより容易に可能となる。
【0166】
[本発明による試験例]
Aspen Technologies, Inc.のシミュレーションプログラムAspen Plus V8.8を使用して、以下に示す変更を除いては本発明の第1の実施形態に従って本発明による製造装置の本発明による運転をシミュレーションしたが、その際、これらの変更にもかかわらず、以下では本発明の第1の実施形態の参照符号が使用される:
- 製造装置は、膜装置を有しない。
- ホルムアルデヒド供給管設備とプロピオンアルデヒド供給管設備とが一体となって、ホルムアルデヒド-プロピオンアルデヒド供給管設備となり、これが、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に通じている。
- 第1の冷却器9は、気相を燃焼させるための燃焼装置に流体的に接続されている気相排出ユニットを有する。
- 第1の冷却器9は、その第1の出口6の上流に配置された液滴保持ユニットを有し、これはいわゆるデミスタとして形成されている。
- 第1の冷却器9は、第1の減圧物質混合物、第1の蒸留物質混合物および第3の蒸留物質混合物の流入をまとめる集合入口を有する。
- 第1の冷却器9は、2段式で形成されている。
【0167】
第1の蒸留塔11の底部13から、返送流が、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30を経由して反応器1に向かって流れる。酸供給源44から、酢酸水溶液が、酸供給管設備45を通じて第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入される。塩基供給源46から、塩基供給管設備47を通じて、ジメチルアミン水溶液が第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入される。そのようにして得られた物質混合物が130℃に予熱される。ホルムアルデヒド水溶液が、ホルムアルデヒド供給源40からホルムアルデヒド供給管設備41を通じてホルムアルデヒド-プロピオンアルデヒド供給管設備に導入され、プロピオンアルデヒド水溶液が、プロピオンアルデヒド供給源42からプロピオンアルデヒド供給管設備43を通じてホルムアルデヒド-プロピオンアルデヒド供給管設備に導入される。そのようにして得られたホルムアルデヒド溶液とプロピオンアルデヒド溶液との混合物は、130℃に予熱され、第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に導入される。この時点で第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30に存在する物質混合物が、本発明による本試験例では管状反応器として形成されている反応器1に導入される。
【0168】
反応器1内の滞留時間は9.5秒であり、反応器内の圧力は35bar(絶対圧)である。ほぼ完全な転化が達成される。反応器から排出される反応混合物の温度は、165℃である。反応混合物を減圧容器5で0.85bar(絶対圧)まで減圧させる。
【0169】
第1の冷却器9の第1の段は冷却水で冷却され、その第2の段は温度が4℃の冷却ブラインで冷却される。
【0170】
第1の冷却器内に存在する気相は、気相排出ユニットを通じて燃焼部に供給される。
【0171】
以下の表1に、本発明による試験例のいくつかの流れのマスフロー、圧力、温度、および組成を示す。表1において、
- 「流れA」は、塩基供給管設備47を通るジメチルアミン溶液流を意味し、
- 「流れB」は、酸供給管設備45を通る酢酸溶液流を意味し、
- 「流れC」は、プロピオンアルデヒド供給管設備43を通るプロピオンアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れD」は、ホルムアルデヒド供給管設備41を通るホルムアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れE」は、反応器1に入る流れを意味し、
- 「流れF」は、反応器排出管設備2を通る反応混合物流を意味し、
- 「流れG」は、第1の減圧容器排出管設備8を通る第1の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れH」は、第2の減圧容器排出管設備10を通る第2の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れI」は、第1の蒸留塔排出管設備14を通る第1の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れJ」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29を通る第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れK」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30へ流れる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れL」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31に流入して廃棄部に送られる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れM」は、第1の冷却器9の集合入口を通る流れを意味し、
- 「流れN」は、第1の相分離器排出管設備21を通る第1の分離物質混合物流を意味し、
- 「流れO」は、第2の相分離器排出管設備22を通る第2の分離物質混合物流を意味し、
- 「流れP」は、第3の蒸留塔排出管設備26を通る第3の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れQ」は、第4の蒸留塔排出管設備27を通る第4の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「%」の表示は、当該流れの全質量に対する質量%を表し、
- 小数点以下の桁数は、数値の正確さを表す。
【0172】
【表1】
【0173】
[本発明によらない比較試験例]
Aspen Technologies, Inc.のシミュレーションプログラムAspen Plus V8.8を使用して、本発明によらない比較試験例として、本発明によらない製造装置の運転もシミュレーションした。本発明による試験例とは対照的に、本発明によらない比較試験例の製造装置は、第2の蒸留塔を有しておらず、第2の相分離器排出管設備は、第1の蒸留塔に流体的に接続されている。よって、本発明によらない比較試験例の製造方法は、本発明による試験例の製造方法と異なる。これらの変更にもかかわらず、以下では本発明の第1の実施形態の参照符号が使用される。
【0174】
以下の表2に、本発明によらない比較試験例のいくつかの流れのマスフロー、圧力、温度、および組成を示す。表2において、
- 「流れA」は、塩基供給管設備47を通るジメチルアミン溶液流を意味し、
- 「流れB」は、酸供給管設備45を通る酢酸溶液流を意味し、
- 「流れC」は、プロピオンアルデヒド供給管設備43を通るプロピオンアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れD」は、ホルムアルデヒド供給管設備41を通るホルムアルデヒド溶液流を意味し、
- 「流れE」は、反応器1に入る流れを意味し、
- 「流れF」は、反応器排出管設備2を通る反応混合物流を意味し、
- 「流れG」は、第1の減圧容器排出管設備8を通る第1の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れH」は、第2の減圧容器排出管設備10を通る第2の減圧物質混合物流を意味し、
- 「流れI」は、第1の蒸留塔排出管設備14を通る第1の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れJ」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29を通る第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れK」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第2のセクション30へ流れる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れL」は、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29から第2の蒸留塔排出管設備15の第3のセクション31に流入して廃棄部に送られる第2の蒸留物質混合物流を意味し、
- 「流れM」は、第1の冷却器9の集合入口を通る流れを意味し、
- 「流れN」は、第1の相分離器排出管設備21を通る第1の分離物質混合物流を意味し、
- 「流れO」は、第2の相分離器排出管設備22を通る第2の分離物質混合物流を意味し、
- 「%」の表示は、当該流れの全質量に対する質量%を表し、
- 小数点以下の桁数は、数値の正確さを表す。
【0175】
【表2】
【0176】
[本発明による試験例と本発明によらない比較試験例との比較]
本発明による試験例と、本発明によらない比較試験例とを比較すると、本発明による試験例では、第2の蒸留塔排出管設備15の第1のセクション29を通る第2の蒸留物質混合物流(流れJ)のマスフローがより低く、これは特に水の絶対量が少ないためであり、またジメチルアミンおよび酢酸の濃度がより高いことが明らかである。そのため、本発明による試験例では、水の絶対量に対してより多くの触媒を反応器に返送することができる。第2の蒸留物質混合物を燃焼部に供給して廃棄処理する場合、本発明による試験例では、ジメチルアミンの絶対量または酢酸の絶対量あたりのエネルギーコストがより低い。なぜならば、ジメチルアミンの絶対量または酢酸の絶対量あたりの、蒸発させなければならない水の絶対量がより少ないためである。
【0177】
それぞれの塩基供給管設備47を通るジメチルアミン溶液流(流れA)と、それぞれの酸供給管設備45を通る酢酸溶液流(流れB)とを比較すると、本発明による試験例では、第1の相分離器排出管設備21を通る第1の分離物質混合物流(流れN)に含まれるメタクロレインの絶対量に対して使用されるジメチルアミンおよび酢酸が大幅に少ないことが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】