(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(54)【発明の名称】トロイダル巻線を有する機械
(51)【国際特許分類】
H02K 5/18 20060101AFI20221026BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H02K5/18
H02K9/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513532
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 FR2020051501
(87)【国際公開番号】W WO2021038168
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501377391
【氏名又は名称】ムービング マグネット テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】タヴェルニエ,ステファヌ
(72)【発明者】
【氏名】アンドゥリュ,ガエル
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605AA08
5H605AA11
5H605CC01
5H605CC10
5H605DD12
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP08
5H609PP09
5H609QQ02
5H609RR35
(57)【要約】
本発明は、N個のトロイダルコイルを支持するヨークと、永久磁石を備える中央ロータと、を備える電気機械を開示する。前記ヨークは、少なくとも1つのコイルを支持する軟質強磁性材料から作られる少なくとも1つのステータコアを備える複数のステータモジュールからなる。前記少なくとも1つのステータコアは、その前端部において、磁気的および機械的連続性を提供する相補的な結合表面を有する。この機械は、熱伝導性材料から作られる円筒状外側ケーシングと、複数の連続かつ中実の縦方向リブと、をさらに備える。当該複数の連続かつ中実の縦方向リブは、半径方向に延在し、かつ、前記円筒状外側ケーシングと複数の前記ステータモジュールとの間に位置し、その結果、当該外側ケーシングに対する前記ヨークの機械的位置決めを確実にし、かつ、前記ヨークから当該外側ケーシングの方への熱の熱伝導を促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個のトロイダルコイル(211、261;227、231;241、251)を支持するヨークと、
永久磁石を備える中央ロータ(100)と、
を備え、
前記ヨークは、少なくとも1つのコイル(211、261;227、231;241、251)を支持する軟質強磁性材料から作られる少なくとも1つのコア(216、218、226、228、240、250)を有する複数のステータモジュールからなる、
電気機械において、
複数の前記ステータモジュールは、前記少なくとも1つのコア(216、218、226、228、240、250)の前端部において、磁気的および機械的連続性を提供する複数の相補的な結合表面を有し、
前記機械は、
熱伝導性材料から作られる円筒状外側ケーシング(200)と、
複数の連続かつ中実の縦方向リブ(212、312、232、332、252、352)と、
をさらに備え、
当該複数の連続かつ中実の縦方向リブ(212、312、232、332、252、352)は、半径方向に延在し、かつ、前記円筒状外側ケーシング(200)と複数の前記ステータモジュールとの間に位置し、その結果、前記円筒状外側ケーシングに対する前記ヨークの機械的位置決めを確実にし、かつ、複数の前記ステータモジュールから前記円筒状外側ケーシング(200)の方への熱の熱伝導を促進する、
ことを特徴とする、電気機械。
【請求項2】
複数の前記縦方向リブ(212、312、232、332、252、352)は、前記円筒状外側ケーシング(200)もしくは軟質強磁性材料から作られる複数の前記ステータモジュールのうちの1つのステータモジュールのいずれか一方が半径方向に延在するものであるか、または、前記円筒状外側ケーシング(200)と複数の前記ステータモジュールとの間の境界に配置された伝導性材料の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
前記コイルは、半径方向平面において、前記コイルの中央横断平面との角度が両側に向けて大きくなるごとに設けられる複数の平面に沿って線が巻かれる形態であり、当該コイルの半径方向厚さが前記ヨークの外側よりも内側において大きくなるような形態であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気機械。
【請求項4】
前記ヨークは、アームと呼ばれる2つのステータコア(216、218;226、228;240、250)を有する軟質強磁性材料から作られるN/2個のステータモジュール(215、225、245)から構成され、
2つの前記アームは、半径方向の中央平面に対して対称的に延在し、
複数の前記アームの各々は、コイル(211、261;227、231;241、251)を支持しており、
複数の前記アームは、それらの前端部において、磁気的連続性を提供する複数の相補的な組立てゾーンを有する、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項5】
軟質強磁性材料から作られる複数の前記ステータモジュールは、
前記ロータの反対側の方を向くリブの両側に延在し、かつ、熱伝導性材料から作られる前記円筒状外側ケーシングの内側表面と接触する、2つのステータコアを有する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電気機械。
【請求項6】
熱伝導性材料から作られる前記円筒状外側ケーシングは、半径方向に延在する複数のリブを有し、その前端部は、隣り合う2つのステータモジュールの交差部において、軟質強磁性材料から作られる複数の前記ステータコアと接触することを特徴とする、請求項4に記載の電気機械。
【請求項7】
複数の前記リブおよび/または複数の前記前端部は、前記円筒状外側ケーシング内への前記ヨークの強制的な導入を可能にするための面取りを有することを特徴とする、請求項6に記載の電気機械。
【請求項8】
複数の前記リブは、連続する2つのステータコアの複数の横方向端部と接触しており、その結果、前記ヨークを構成する複数の前記ステータコアの位置決めを確実にしていることを特徴とする、請求項6に記載の電気機械。
【請求項9】
前記ヨークは、N個のステータモジュールから構成され、各ステータモジュールは、コイルを支持する軟質強磁性材料から作られるステータコアを有し、当該コイルの巻線は、前記コイルの中央横断平面との角度が両側に向けて大きくなるごとに設けられる複数の平面内に配置されており、
複数の前記ステータコアは、それらの前端部において、磁気的連続性を提供する複数の相補的な組立てゾーンを有し、
前記機械は、N個の縦方向リブを有する円筒状外側ケーシング(200)をさらに備え、その内側前表面は、隣り合う2つのステータコアの接続ゾーンの外側表面と接触し、その結果、前記円筒状外側ケーシング(200)に対する前記ヨークの機械的な楔止め、および、前記ヨークから前記円筒状外側ケーシング(200)への熱の熱伝導を確実にする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気機械。
【請求項10】
空気よりも優れた熱伝導体である非磁性材料から作られた軸方向の積層シート(400)が、前記円筒状外側ケーシング(200)と前記コイル(211、261;227、231;241、251)との間の境界に配置されており、
前記積層シート(400)は、前記円筒状外側ケーシング(200)および前記コイル(211、261;227、231;241、251)と優先的に接触している、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気機械。
【請求項11】
熱伝導性材料が、前記円筒状外側ケーシング(200)と前記コイル(211、261;227、231;241、251)との間の境界に配置されており、
前記熱伝導性材料(401)は、前記円筒状外側ケーシング(200)および前記コイル(211、261;227、231;241、251)と優先的に接触している、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、ヨークからなるブラシレス永久磁石電気機械の分野に関する。当該ヨークは、多角形断面または円形断面の構造を形成するモジュールであって、この構造のアームを取り囲むトロイダルコイルを受ける当該モジュールからなる。
【0002】
直径円筒磁石を備えるロータは、電気コイルによって生成される回転磁場と相互作用する。このタイプの電気機械(electric machine)は、磁極歯(pole teeth)の間に磁力線を作る巻かれたヨークを有する他のノッチ付き機械(notched machine)とは異なっている。これらのトロイダル構造は特に、高速で回転するモータにとって好ましい。それは、ステータおよびロータにおけるさまざまな鉄損および残留トルク(電流なし)を最小化するからである。これは、回転磁石の近くに歯がないこと、および、より大きな磁気エアギャップによるものである。
【0003】
[従来技術]
従来技術において知られているのは、ステータと、ロータと、を備える、ターボチャージャ用の高速多相モータを記載する、米国特許出願US2012128512である。前記ロータにはタービンが備えられている。前記ステータは、強磁性コアと、巻線と、を備える。前記巻線は、ステータコアの周囲にトロイダルに(環状に)巻かれ、かつオープンスペースを形成するように物理的に分離された一連のコイルとして構成されている。シェルは、前記ステータコアと前記シェルとの間に追加のオープンスペースをつくり出すように構成されている。このオープンスペースは、前記ロータおよび前記ステータコアによって、内部に閉じ込められた冷却チャネルから構成されている。
【0004】
また、欧州特許出願第EP0754365号も知られている。これは、
-ボアシールチューブと、
-前記ボアシールチューブ内に配置された一対の同一の同軸円筒状双極永久磁石セクションを含む単一のロータと、
-ボアシールチューブ内に配置された非磁気保持フープと、
-ボアシールチューブ内に配置され、かつ非磁気保持フープによって支持される一対の非磁気スタブシャフトであって、前記非磁気スタブシャフトの各々は、前記一対のセクションの対応する永久磁石セクションの一端部に配置される一対の非磁気スタブシャフトと、
-一対の永久磁石セクションを分離し軸方向に位置決めするために前記ボアシールチューブ内に配置された非磁性セパレータと、
-各ステータが前記一対のセクションの対応する磁化セクションと動作可能な関係において前記ボアシールチューブの外側に配置されている一対のステータと、
-前記一対のステータを取り囲む保持器と、
を備える、電気モータであって、
前記非磁性保持フープは、複数の前記永久磁石セクション、複数の前記スタブシャフトおよび前記非磁性セパレータを取り囲んで保持し、
前記保持器および前記ボアシールチューブは、前記単一のロータの対応する複数の磁化セクションと動作可能な関係において前記一対のステータを保持するように協働し、前記複数の磁化セクションおよび複数の対応する前記ステータは、それによって、縦列に保持され、冗長な電気モータ構成を提供する、電気モータを記載している。
【0005】
特許出願US2018175706は、組み立てられてステータコアを形成するために使用されるステータアセンブリを記載している。前記ステータアセンブリは、歯とヨークとを備える。前記歯の一端部は、前記ヨークに接続されている。前記ヨークは、内側部、外側部、第1の結合側部および第2の結合側部を有する。前記第1の結合側部は、第1の係合構造をさらに含み、前記第2の結合側部は、第2の係合構造をさらに含む。前記第2の係合構造は、前記第1の係合構造に対応する。前記外側部は、溝を有する。前記溝は、側面および底面を有する。前記側面と前記底面との間に角度が定められ、前記角度は、135°~165°の範囲内にある。
【0006】
日本特許出願JPS5970154には、モータの別の実施例が記載されている。当該モータは、単にステータコアに非磁性スペーサリングを装着した後に当該コアにトロイダル巻線を巻くことによって、組立てられ、分解され得る。分割された当該コアの2つの部分は、スロットの内周上ならびに上端面および下端面の両方の上に複数の絶縁層を有するように形成される。当該コアの複数の分割部分と同様に分割された複数のスペーサリングはそれぞれ、複数の当該コアの複数の外側半径表面上に装着されている。複数の当該リングが装着された後、複数の当該コアのすべてにおいて各スロットについてヨーク上にトロイダル巻線が形成される。前記巻線の完成後、分割された複数の当該コアは円形状に接着され、鋼板フレームが複数の当該リングの突起部の外周上に装着され、ステータが完成する。
【0007】
特許出願US2002089242は、第1の端部および第2の端部を有し、かつその内に複数の巻線を有するステータコアを備え、複数の前記巻線の複数の終わりの巻き(エンドターン:end turns)が前記ステータコアの前記第1の端部および前記第2の端部から突出している電気機械を記載している。ロータは、前記ステータコア内に回転可能に配置されている。積層アルミニウムリングの第1および第2の組は、ハウジングに接触している前記ステータコアの前記第1の端部および前記第2の端部に向かってそれぞれ配置されている。熱伝導性のポッティング材料(potting material)が、前記複数の終わりの巻きと前記ステータコアの前記第1の端部および前記第2の端部におけるそれぞれの第1および第2のリングアセンブリとの間に配置されており、それによって、前記複数の終わりの巻きから、前記ポッティング材料および複数の前記リングアセンブリを通って、前記ハウジングへの複数の放熱経路がつくり出されている。
【0008】
[従来技術の欠点]
それにもかかわらず、従来技術のソリューションには、例えば材料の複数の薄いストリップの間の流体の強制循環により、ヨークの接合部において発生する磁気ノイズによる騒音公害の源が存在する。さらに、当該機械が小さな直径(典型的には100mm未満)で数キロワットのパワーを供給しなければならない場合、放熱は決して十分ではない。それは、電気導体が外側媒体(ハウジングまたはフランジ)との小さな交換表面を有するという事実のためである。さらに、従来技術による電気機械の製造および組立て、特に、外部環境へのその組み込みは、比較的に複雑である。
【0009】
特に、米国特許第2012128512号によって提案されたソリューションでは、空気中の対流によって、管状冷却空間内の熱を放散するフィンによって、巻かれたステータの熱が放出される。これは、十分な効率を保証することを可能としないか、または、この管状空間内における空気流の循環を必要とする。
【0010】
[本発明が提供する解決手段]
本発明は、これらの欠点に対処することを目的とする。この目的のために、本発明は、その最も一般的な意味において、N個のトロイダルコイルを支持するヨークと、永久磁石を備える中央ロータと、を備え、
前記ヨークは、少なくとも1つのコイルを支持する軟質強磁性材料から作られる少なくとも1つのコアを有する複数のステータモジュールからなる電気機械において、
複数の前記ステータモジュールは、前記少なくとも1つのコアの前端部において、磁気的および機械的連続性を提供する複数の相補的な結合表面を有し、
‐前記機械は、熱伝導性材料から作られる円筒状外側ケーシングと、
‐複数の連続かつ中実の縦方向リブと、をさらに備え、当該複数の連続かつ中実の縦方向リブは、半径方向に延在し、かつ、前記円筒状外側ケーシングと複数の前記ステータモジュールとの間に位置し、その結果、前記円筒状外側ケーシングに対する前記ヨークの機械的位置決めを確実にし、かつ、複数の前記ステータモジュールから前記円筒状外側ケーシングの方への熱の熱伝導を促進する、
ことを特徴とする電気機械に関する。
【0011】
本発明の意味において、「複数の連続かつ中実の縦方向リブ」は、突出部分を意味する。当該突出部分は、空隙のないブロックを形成する圧延シートのまとまり、または材料のブロックを形成する突出部分である。
【0012】
一実施形態では、
・前記ヨークは、アームと呼ばれる軟質強磁性材料から作られる2つのステータコアを有するN/2個のステータモジュールからなり、
・2つの前記アームは、半径方向の中央平面に対して対称的に延在し、
・複数の前記アームの各々は、コイルを支持しており、
・複数の前記アームは、それらの前端部において、磁気的連続性を提供する複数の相補的な組立てゾーンを有する。
【0013】
あるいは、複数の前記ステータモジュールは、前記ロータの反対側の方を向く連続かつ中実のリブの両側に延在し、かつ、熱伝導性材料から作られる前記円筒状外側ケーシングの内側表面と接触する、軟質強磁性材料から作られる2つのステータコアを有する。
【0014】
前記円筒状外側ケーシングは、半径方向に延在する複数のリブを有する熱伝導性材料から作られてもよく、その前端部は、隣り合う2つのアームの交差部において、軟質強磁性材料から作られる複数の前記ステータコアと接触する。
【0015】
全般的に、ヨークと円筒状外側ケーシングとの間に熱伝導を提供する複数の縦方向接続部、または複数の縦方向リブは、連続かつ中実である。「連続かつ中実」とは、これらの接続部が、エアナイフによって分離された材料の複数のストリップから構成されるのではなく、コイルを支持するヨークと外側ケーシングとの間の熱伝導性を促進するように材料の連続性を有する、ということを意味する。例として、これらの縦方向接続部は、一ピースの材料から、複数の一ピースの要素のアセンブリから、または、積層シートから作られてもよい。しかしながら、これらの例は、本発明に関して限定するものではない。外側ケーシングに向かって熱を放出するように縦方向接続部を介してヨークからの熱を排出することを促進するために当業者が考えるであろう任意の設計が想定される。逆に、流体による伝導または自然対流もしくは強制対流によって、縦方向接続部を介して直接的に熱を放出することを目的とする設計は、所望の趣旨ではない。したがって、縦方向接続がエアギャップによってわずかに分離した複数の半径方向要素から構成されている場合、これは、特許請求された趣旨に関して、熱の放出のための利点をもたらさない。
【0016】
任意選択的に、複数の前記リブおよび/または複数の前記前端部は、前記円筒状外側ケーシング内への前記ヨークの強制的な導入を可能にするための面取りを有し、かつ/または、連続する2つのステータモジュールの複数の横方向端部と接触しており、その結果、前記ヨークを構成する複数の前記ステータモジュールの位置決めを確実にしている。
【0017】
代替の実施形態では、前記ヨークは、N個のステータモジュールから構成され、各ステータモジュールは、コイルを支持する軟質強磁性材料から作られるステータコアを有し、当該コイルの巻線は、前記コイルの中央横断平面との角度が両側に向けて大きくなるごとに設けられる複数の平面内に配置されており、
‐複数の前記ステータコアは、それらの前端部において、磁気的連続性を提供する複数の相補的な組立てゾーンを有し、
‐前記機械は、N個の縦方向リブを有する円筒状外側ケーシングをさらに備え、その内側前表面は、隣り合う2つのステータコアの接続ゾーンの外側表面と接触し、その結果、当該外側ケーシングに対する前記ヨークの機械的な楔止め、および、前記ヨークから前記円筒状外側ケーシングへの熱の熱伝導を確実にする。
【0018】
別の実施形態では、空気よりも優れた熱伝導体である非磁性材料から作られた軸方向の積層シートが、当該ケーシングと前記コイルとの間の境界に配置されており、前記積層シートは、当該外側ケーシングおよび前記コイルと優先的に接触している。
【0019】
変形形態では、熱伝導性材料が、当該外側ケーシングと前記コイルとの間の境界に配置されており、前記熱伝導性材料は、当該外側ケーシングおよび前記コイルと優先的に接触している。
【0020】
[発明の非限定的な実施例の詳細な説明]
本発明は、添付の図面を参照しつつ、以下の本発明の非限定的な実施例の詳細な説明を読むことにより、より良く理解されるだろう。
【0021】
【0022】
[
図2]
図2は、第1の変形実施形態の断面図を示す。
【0023】
[
図3]
図3は、第2の変形実施形態の断面図を示す。
【0024】
[
図4]
図4は、第3の変形実施形態の断面図を示す。
【0025】
[
図5]
図5は、第4の変形実施形態の断面図を示す。
【0026】
[
図6]
図6は、第5の変形実施形態の断面図を示す。
【0027】
[
図7]
図7は、第6の変形実施形態の断面図を示す。
【0028】
[本発明の一般的原理]
本発明は、全てが同一の複数のモジュールによって形成されたヨークを備えるステータの構成に関する。各ステータモジュールは、少なくとも1つのステータコア(218)の中央を通る半径に対して垂直に延在する当該少なくとも1つのステータコア(218)を有する。当該少なくとも1つのステータコア(218)は、コイル(211)により取り囲まれている。
【0029】
このステータコア(218)は、連続かつ中実の縦方向接続部を介して当該ステータを取り囲む円筒状外側ケーシング(200)に対して、機械的かつ熱的に結合されている。当該連続かつ中実の縦方向接続部は、長方形断面を有し、
a)円筒状外側ケーシング(200)の内側表面と、
b)2つのステータコア(218、226)の接合ゾーンと、
の間に、当該ステータの全長にわたって延在する。
【0030】
これらの縦方向接続部は、二重の機能を提供する:
-円筒状外側ケーシング(200)に対する複数のステータモジュールの機械的な楔止め(wedging)、
-コイル(211)により生み出された熱の円筒状外側ケーシング(200)への熱伝達。したがって、縦方向接続部は、ステータのヨークと円筒状外側ケーシング(200)との間の熱伝導性を最大にするように、連続かつ中実であって、場合によっては積層されている。円筒状外側ケーシング(200)は、それ自体、冷却されたハウジング、フィンと結合されているか、または、モータの外部への熱の放出を直接的に確実にする。
【0031】
この目的のために、複数のステータモジュールと円筒状外側ケーシング(200)との間の接続は、材料の連続性か、強磁性材料との直接的な接触を確実にするしまりばめ(tight fit)かのいずれかにより、なされる。
【0032】
以下の説明は、この一般的原理に基づく、種々の代替実施形態を示す:
-複数のステータモジュールは、コイルによって取り囲まれたコアにより形成されており、
縦方向接続部は、円筒状外側ケーシング(200)の内側表面を延在させた複数の一体式の(モノリシックな:monolithic)リブであり、
これらのリブは、その外側縁部が遊びなしに2つの連続するステータコア(218、226)にはまる(フィットする)縦方向の溝を有する、
または、
-複数のステータモジュールは、「Y」字形断面を有し、
その足は、縦方向接続を形成しており、
その前表面は、円筒状外側ケーシング(200)の内側表面に密着して当接しており、
2つのアーム(腕)は、2つのステータコア(216、218)の各々がコイルを支持する当該2つのステータコア(216、218)を構成しており、
隣り合う2つのステータモジュールの複数のアームの複数の縦方向前表面は、密着するようになっている、
または、
-複数のモジュールは、「U」字形断面を有し、
「U」の2つの枝は、連続かつ中実の縦方向接続を形成しており、
その前表面は、円筒状ケーシング(200)の内側表面に密着して当接しており、
「U」の2つの枝を接続するゾーンは、コイルを支持するコア(218)を構成しており、
隣り合う2つのステータモジュールの複数のアームの複数の縦方向前表面は、密着するようになっている、
または、
-これら2つのソリューションの混合であって、
「Y」字構成と、円筒状外側ケーシング(200)上に形成されたリブと、を交互に有する。そして、より一般的には、任意の構成は、
a)複数のコア(218)の縦方向前端部間に、強磁性的、熱的および機械的連続性を遊びなしに有する連続性またはアセンブリ;
b)2つの連続するステータコア(218、226)の縦方向前接合ゾーンと円筒状外側ケーシング(200)との間に、熱的および機械的連続性を遊びなしに有する連続性またはアセンブリ、
を確実にする。
【0033】
アセンブリは、コイル(211、261、227、231、241、251)を設けた複数のステータモジュールの円筒状外側ケーシング(200)内の縦方向のスライドによって、複数のモジュールの配置後に当該アセンブリに遊びがないように、組み立てることができる。
【0034】
[第1の実施形態の詳細な説明]
図1は、第1の実施形態の断面図を示す。
【0035】
電気機械(electric machine)は、直径方向に磁化された管状磁石を有するロータ(100)を備える。これは、フープ(図示せず)で覆われており、その結果、高速機械のための遠心力の影響を受けて粒子が引き出されることが防止される。
【0036】
当該電気機械は、金属の円筒状外側ケーシング(200)を備える。当該金属の円筒状外側ケーシングは、例えば、成形、鋳造、またはプロファイリング(profiling)によって製造される。当該金属の円筒状外側ケーシングは、トロイダルコイル(211、261;227、231;241、251)と、「Y」字形断面を有する3つの縦方向ステータモジュール(215、225、245)のセットの形態のヨークと、を備えるステータを取り囲んでいる。当該3つの縦方向ステータモジュール(215、225、245)は、それぞれの2つのステータコア(216、218;226、228;240、250)のいずれかの側に延在するリブを有する。これらのステータコアは、軟質強磁性材料から作られるが、好ましくは積層シートである。ステータコア(216、218、226、228、240、250)の各々は、コイル(211、261;227、231;241、251)のそれぞれにより、取り囲まれている。
【0037】
コイル(211、261、227、231、241、251)は、電気伝導性材料(例えば、銅またはアルミニウム)の巻きにより形成される。当該巻きの傾きは、変化する。巻線の始まりにおいて巻きによって形成される平面(302)は、半径方向平面(300)と開いた角度をなす。この角度は、平面が半径方向平面(300)と一致する中央の巻きについてゼロになるように減少する。次に、巻きの平面と半径方向平面(300)との間のこの角度は、巻線の終わりまで(反対方向に)再び増大する。ここで、巻き(303)の角度は再び、半径方向平面(300)に対して開いた角度を有する。さらに、巻線のセクションは、ステータコア(216、218;226、228;240、250)の両側において、ステータの内側と外側とで同一ではない。実際、当該機械の全体積を最適化するために、そして同時に、モータの性能を最適化するために、ステータコア(216、218;226、228;240、250)の外側の巻きは、形成される多角形の辺の全長にわたって分布する。この構成は、当該機械の外径および体積を制限しつつ、巻線の銅体積を最大化することを可能にする。
【0038】
円筒状ケーシング(200)に対する複数のステータモジュールの楔止めは、この実施形態では、断面において「Y」の足を形成する複数の縦方向リブ(312、332、352)の前表面の外部形状により、確実となる。当該複数の縦方向リブ(312、332、352)は、円筒状外側ケーシング(200)と接触する。円筒状外側ケーシング(200)は、一般に、例えばアルミニウム等の、優れた熱伝導特性を有する材料で作られる。これにより、複数のステータモジュール(215、225、245)は、機械動作中にコイル(211、261、227、231、241、251)により生成される熱流束を伝導することが可能になる。
【0039】
[第2の変形実施形態の詳細な説明]
図2に示す実施形態では、円筒状外側ケーシング(200)に対する複数のステータモジュールの楔止めは、第一に、円筒状外側ケーシング(200)の内側表面を延在させた複数の縦方向リブ(212、232、252)により、確実となる。当該複数の縦方向リブ(212、232、252)は、隣り合う2つのステータモジュールの接続ゾーンの外側表面を受け入れるように構成された内側境界を有する。
【0040】
この目的のために、複数の縦方向リブ(212、232、252)は、「V」字形状の溝(213、233、253)を有する。当該溝において、隣り合う2つのステータコア(216、250;218、226;228、240)によって形成される縁部は、組立ての間に縦方向にスライドすることができ、円筒状外側ケーシング(200)の内側に設置した後に、楔止めを確実にすることができる。
【0041】
楔止めはまた、3つのステータモジュール(215、225、245)の外側縦方向表面によって確実になる。当該外側縦方向表面は、丸みを帯びた接触表面を有し、円筒状外側ケーシング(200)の内側表面の曲率半径に対応する曲率半径を有する。
【0042】
3つのステータモジュール(215、225、245)と円筒状外側ケーシング(200)との間の接触、および、複数の縦方向リブ(212、232、252)と複数のステータコア(218、226、228、240、250、216)の縁部との間の接触は、機械的な楔止めおよび熱伝導のブリッジ(橋渡し:bridges)を提供する。当該ブリッジにより、当該機械の電気コイル(211、261、227、231、241、251)によって生成される熱の放出が可能となる。
【0043】
[第3の変形実施形態の詳細な説明]
図3は、前の複数の実施形態とは異なる一実施形態の断面図を示す。当該一実施形態は、円筒状外側ケーシング(200)と、リブを有しないステータコア(218、226、228、240、250、216)との間の楔止め要素および熱接触として、当該円筒状外側ケーシング(200)を半径方向に延在させた複数の縦方向リブ(212、312、232、332、252、352)のみを備える点において、異なっている。
【0044】
複数のリブ(212、312、232、332、252、352)の端部は、有利には、組立ての時の相対的な位置決めを容易にするための面取りを有する。
【0045】
特に、これらのリブ(212、312、232、332、252、352)は、隣り合う2つのステータコアの接続ゾーンの楔止めを確実にするための「V」字形溝(213、313、233、333、253、353)を有する。
【0046】
ステータのヨークは、円筒状外側ケーシング(200)内の軸方向スライドによって挿入されてもよく、ステータコア(216、218、226、228、240、250)の接続ゾーンは、複数の縦方向リブ(212、312、232、332、252、352)の「V」字形溝(213、313、233、333、253、353)内をスライドする。
【0047】
これらの半径方向要素によって熱伝達が確実となる。これにより、円筒状外側ケーシング(200)に対するヨークの機械的な楔止めもまた、確実となる。
【0048】
[他の実施形態の詳細な説明]
図4~
図6は、円筒状外側ケーシング(200)の方への当該機械の放熱性能の向上を目的とした変形実施形態を示す。このために、当該機械と円筒状外側ケーシング(200)との間の自由な空間(free space)を、熱伝導性であるが非磁性の材料により満たすことが提案される。当該熱伝導性であるが非磁性の材料は、当該機械の動作中の誘導電流の発生を最小限に抑える。本例では、アルミニウムの積層シート(400、410、420、430、440、450、401)が提案されている。その結果、熱伝導は、当該機械の動作を阻害することなしに最大化される。シート(400、410、420、430、440、450、401)を軸方向、モータの磁力線の大部分に対して垂直な方向に積み重ねることは、誘導電流の発生を制限することになり、したがって、損失を制限することになるからである。
【0049】
これらの積層シート(400、410、420、430、440、450、401)の形状は、さまざまであってよい。
図4の第1の例では、形状は、コイル(211、261、227、231、241、251)およびステータコア(216、218、226、228、240、250)に可能なかぎり密接している。これらの積層シート(400、410、420、430、440、450)は、円筒状外側ケーシング(200)の内側表面に接して2つの連続するリブの間にそれらを収容することを可能にする、弓形のブレード形状を有する。積層シート(400)は、放熱の源であるコイルに対して、可能なかぎり近くにある。
【0050】
図5の第2の例では、積層シート(401)は、円筒状ケーシング(200)の内側に同軸的に収容されるリングを形成している。このシートのリングは、複数のリブ(212、312、232、332、252、352)を有する。当該複数のリブ(212、312、232、332、252、352)は、ステータの機械的な楔止め、および、コイルを支持するステータのヨークと円筒状外側ケーシング(200)との間の熱の伝達を、確実にする。
【0051】
図6の第3の例では、積層シート(400、410、420、430、440、450)は、ケーシング(200)とコイルとの間に局所的に挿入された縦方向ブレードの形態をとる。複数のリブ(212、312、232、332、252、352)は、
図3の例の場合と同様に、円筒状ケーシング(200)の内側延在部である。
【0052】
これらの例は限定的なものではなく、別の変形形態が本発明を逸脱することなしに提案され得る。
【0053】
実際、本発明は、アルミニウムシートの使用に限定されるものではない。積層シートは、空気よりも優れた熱伝導特性による利点のある別の材料から作られてもよい。同様に、空気よりも優れた熱伝導体でありかつ非磁性で電気的に絶縁であるか、または、鉄と比べて磁気的および電気的特性が乏しいものである限り、任意の中実材料が使用されてもよい。
【0054】
[一変形実施形態の詳細な説明]
図7は、前の複数の実施形態とは異なる一実施形態の断面図を示す。当該一実施形態は、ステータコア(218、226、228、240、250、216)が、前記ステータコアに「U」字形状を与える延在部(412、562;422、512;432、522、442、532;452、542;462、552)により、各端部において延在している点で、異なっている。2つの別個のステータコアの前記延在部の対(412、512;422、522;432、532、442、542;452、552;462、562)が組み立てられて、その結果、円筒状外側ケーシング(200)とさまざまなステータコア(218、226、228、240、250、216)との間の楔止め要素および熱接触として、複数の縦方向リブを形成している。
【0055】
ステータのヨークは、ケーシング内で軸方向にスライドすることによって挿入されてもよく、複数のリブは、それらの半径方向端部において、円筒状外側ケーシング(200)と相補的な形状を有する。
【0056】
延在部(412、422、432、442、452、462)および延在部(512、522、532、542、552、562)は、例えばダブテール(dovetail)等の、相補的な形状を有する。当該形状は、軸方向スライドにより協働し、隣り合う2つのステータコアが固定される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【国際調査報告】