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特表2022-546116ADASカメラシステムのための自動車用ガラス材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ADASカメラシステムのための自動車用ガラス材
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20221026BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20221026BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B60J1/00 H
H01L31/02 D
C03C27/12 Z
C03C27/12 Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513864
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 US2020048447
(87)【国際公開番号】W WO2021041839
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/894,027
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522076387
【氏名又は名称】ピッツバーグ グラス ワークス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】ランプマン デウィット
(72)【発明者】
【氏名】ブラック ローレン
(72)【発明者】
【氏名】シムズ ロバート
【テーマコード(参考)】
4G061
5F849
【Fターム(参考)】
4G061AA20
4G061AA25
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
4G061CD20
5F849BA30
5F849BB07
5F849LA01
5F849XB05
(57)【要約】
赤外線放射に応答する種類のカメラを含む自動車用車両に使用されるガラス材は、第1の透明体(22)と、第2の透明体(34)を有する。第1の透明体は、外表面(22a)と内表面(22b)を有する。第1の透明体は、内表面と外表面の間の周縁(22c)を有し、この周縁は、第1の透明体の外周を定める。第1の透明体はまた、その内表面と外表面の間の開口(26)を有し、この開口は、第1の透明体の周縁の内側にある。第2の透明体は、外表面(34a)と内表面(34b)を有する。第2の透明体は、第1の透明体に対して、第2の透明体の内表面が第1の透明体の内表面に向けられるように配置される。第2の透明体の少なくとも一部分は、第1の透明体の開口を覆う。第2の透明体の材料は、硫化亜鉛及びポリカーボネートを含む群から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線放射に応答する種類の感知装置を含む車両に使用されるガラス材であって、
第1の透明体と、第2の透明体を有し、
第1の透明体は、外表面と内表面を有し、第1の透明体の内表面は、第1の透明体において、その外表面の反対側に配置され、第1の透明体は、その内表面と外表面の間の周縁を有し、この周縁は、第1の透明体の外周を定め、第1の透明体はまた、その内表面と外表面の間の開口を有し、この開口は、第1の透明体の周縁の内側にあり、
第2の透明体は、外表面と内表面を有し、第2の透明体の内表面は、第2の透明体において、その外表面の反対側に配置され、第2の透明体は、第1の透明体に対して、第2の透明体の内表面が第1の透明体層の内表面に向けられるように配置され、第2の透明体の少なくとも一部分は、第1の透明体の開口を覆う、ガラス材。
【請求項2】
更に、第3の透明体を有し、
第3の透明体は、外表面と内表面を有し、第3の透明体の内表面は、第3の透明体において、その外表面の反対側に配置され、第3の透明体は、第1の透明体に対して、第3の透明体の内表面が第1の透明体の内表面に向けられるように配置され、第3の透明体の外表面の少なくとも一部分は、第2の透明体の内表面の少なくとも一部分に向けられ、第3の透明体は、第1の透明体の開口と一致する開口を有する、請求項1に記載のガラス材。
【請求項3】
更に、中間層を有し、
中間層は、第1の透明体層の内表面と第3の透明体層の内表面の間に配置され、中間層は、第3の透明体の開口と一致し且つ第1の透明体の開口と一致する開口を有する、請求項2に記載のガラス材。
【請求項4】
第2の透明体は、第3の透明体の開口を覆う、請求項3に記載のガラス材。
【請求項5】
第2の透明体の内表面は、第3の透明体の外表面に結合剤によって固着される、請求項4に記載のガラス材。
【請求項6】
更に、サブフレームを有し、
サブフレームは、第1の透明体の開口の近くで第1の透明体に固着され、サブフレームはまた、第2の透明体を第1の透明体の開口を覆う関係に維持するように、第2の透明体に連結される、請求項4に記載のガラス材。
【請求項7】
更に、シール有し、
シールは、サブフレームと第1の透明体の外表面の間に配置される、請求項6に記載のガラス材。
【請求項8】
サブフレームはまた、第2の透明体を第3の透明体の開口を覆う関係に維持する、請求項6に記載のガラス材。
【請求項9】
赤外線放射に応答する種類の感知装置を含む車両に使用されるガラス材であって、
第1の透明体と、第2の透明体を有し、
第1の透明体は、外表面と内表面を有し、第1の透明体の内表面は、第1の透明体に
おいて、その外表面の反対側に配置され、第1の透明体は、その内表面と外表面の間の周縁を有し、この周縁は、第1の透明体の外周を定め、この外周は、第1の透明体を車両に取付けたときに第1の透明体の頂縁を形成する長さ部分を含み、
第2の透明体は、外表面と内表面を有し、第2の透明体の内表面は、第2の透明体において、その外表面の反対側に配置され、第2の透明体は、第1の透明体に対して、第2の透明体の内表面が第1の透明体の内表面に向けられるように配置され、第2の透明体は、その内表面と外表面の間の周縁を有し、この周縁は、第2の透明体の外周を定め、この外周は、第2の透明体を車両に取付けたときに第2の透明体の頂縁を形成する長さ部分を含み、第1の透明体の頂縁及び第2の透明体の頂縁は、凹形輪郭を有し、電磁照明が、第2の透明体の外表面と第1の透明体の外表面の間において、凹形輪郭の中を伝搬する、ガラス材。
【請求項10】
凹形輪郭は、第1の透明体及び第2の透明体の頂面のノッチの形態をなす、請求項9に記載のガラス材。
【請求項11】
前記感知装置は、8μmよりも長い波長を有する電磁放射に応答する種類のものである、請求項9に記載のガラス材。
【請求項12】
第2の透明体の材料は、硫化亜鉛及びポリカーボネートからなる群から選択される、請求項1に記載のガラス材。
【請求項13】
前記感知装置は、8μmよりも長い波長を有する電磁放射に応答する種類のものである、請求項12に記載のガラス材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年8月30日に出願された米国仮特許出願第62/894027号の優先権を主張し、その全体を本願に援用する。
【0002】
ここに開示する発明は、自動車用ガラス材に関し、特に、自動車用暗視システムに使用される種類の赤外線カメラに対応可能な自動車用ガラス材に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術は、赤外線(IR)カメラによって現像された画像に基づく暗視システムの使用を提案した。一般的には、赤外線カメラは、物体の赤外線放射の痕跡を検出してこの痕跡を電子又は電気信号に変換することが可能なデバイスである。赤外線カメラは、かかる信号を処理して、検出された赤外線照明の相違に一致する画像を生成する。かかるカメラは、しばしば、軍人が使用する種類のような個人用視覚装置と結合され、個人用視覚装置が夜間環境で良好に見えることを可能にする。特許文献1は、赤外線センサを使用して物体を赤外線パターンに従って識別又し又は読取るIR自動車用暗視システムに対応可能である自動車用ガラス材の例を示している。しばしば、IRカメラは、「熱の痕跡」に応答するように記載され、その理由は、赤外線エネルギーは、熱的状態の指標だからである。
【0004】
共通の実施形態では、赤外線カメラは、一定の応答波長内で赤外線エネルギーに応答するセンサのアレイを有する。センサのアレイは、赤外線スペクトルの一定の部分又はバンド内のエネルギーに全体として応答するように組合される。典型的には、サーモグラフィー式暗視システムは、8~15μmの範囲の波長の放射を感知する。
【0005】
自動車用ガラス材と関連させて適用したときのサーモグラフィー式赤外線カメラの使用の困難性は、ガラスが赤外線照明の波長に対して不透明であることである。このことは、長波以上のIR範囲で作動するサーモグラフィー式カメラが、ガラス材のガラス層を透過する視野を有しないことを意味する。
【0006】
赤外線照明に対するガラスの不透明特性は、自動車用ガラス材への暗視カメラの適合性を制限した。しかしながら、自動車用暗視システムへの要求が増加している。かかる要求が増加しているの理由は、夜間ドライバーのための視覚の改善された認知、鋭敏さ、及び範囲のための有利な条件による夜間運転のための暗視システムの限界を含む。別の誘因は、自律作動車両への要求が増加している。
【0007】
従って、従来技術において、暗視カメラを自動車用車両と一緒に使用することを可能にする自動車用ガラス材の要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8164543号明細書
【発明の概要】
【0009】
本明細書で開示する発明によれば、IRカメラに対応可能である自動車用ガラス材は、第1の透明体を含み、第1の透明体は、外表面と内表面を有する。第1の透明体の内表面は、第1の透明体において、その外表面の反対側に配置される。第1の透明体はまた、その内表面と外表面の間の周縁を有し、この周縁は、第1の透明体の外周を定める。加えて、第1の透明体はまた、その内表面と外表面の間のポータル又は開口を有し、この開口は、第1の透明体の周縁の内側に配置される。本明細書で開示する発明の自動車用ガラス材はまた、第2の透明体を含む。第2の透明体も、外表面と内表面を有し、この内表面は、第2の透明体において、その外表面の反対側に配置される。第2の透明体は、第1の透明体に対して、第2の透明体の内表面が第1の透明体の内表面に向けられるように配置され、第2の透明体の少なくとも一部分は、第1の透明体の開口を覆う。第2の透明体の材料は、硫化亜鉛(ZnS)及びポリカーボネート(PC)材料からなる群から選択される。これらの材料は、長波以上の範囲のIRカメラ及びLiDARカメラがガラス材の透明体を透過する視野を形成することを可能にする。
【0010】
また、本明細書で開示する発明によれば、ガラス材はまた、第3の透明体を含むのがよい。第3の透明体も、外表面と内表面を有し、この内表面は、第3の透明体において、その外表面の反対側に配置される。第3の透明体は、第1の透明体に対して、第3の透明体の内表面が第1の透明体の内表面に向けられるように且つ第3の透明体の外表面の一部分が第2の透明体の内表面の一部分に向けられるように配置される。第3の透明体は、その周囲の内側にポータル又は開口を有し、この開口は、第1の透明体の開口と一致する。
【0011】
好ましくは、本明細書で開示するガラス材はまた、第1の透明体の内表面と第3の透明体の内表面の間に配置された中間層を含む。中間層は、第3の透明体の開口及び第1の透明体の開口と一致するポータル又は開口を有する。
【0012】
また、好ましくは、第2の透明体は、第3の透明体によって定められる開口を覆う。第2の透明体の内表面は、第3の透明体の外表面に結合剤によって固着されてもよいし、第1の透明体にサブフレームによって固着されてもよい。
【0013】
加えて、本明細書で開示する発明は、ガラス材を含み、ガラス材において、第1の透明体の周囲は、第1の透明体を車両に取付けたときに第1の透明体の頂縁即ち最上縁を形成する長さ部分を含む。第2の透明体の周囲は、第2の透明体を車両に取付けたときに第2の透明体の頂縁即ち最上縁を形成する長さ部分を含む。第1の透明体の頂縁及び第2の透明体の頂縁は各々、ガラス材の頂部の近くの経路を提供する凹形輪郭を有する。電磁照明は、第2の透明体の外表面と第1の透明体の外表面の間において、凹形輪郭の中を伝搬する。このように、IR放射は、ガラス材の透明体を迂回し、車両のIRカメラに直接伝搬する。
【0014】
本明細書に開示する発明の本明細書の好ましい実施形態を、添付図面と関連して示し且つ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】赤外線スペクトルを強調した電磁スペクトルの説明図である。
図2】本明細書の好ましい実施形態の一例の図である。
図3】本明細書の好ましい実施形態の別の例の図である。
図4】ZnSの透過率を電磁照明の波長の関数として示す図である。
図5】本明細書の好ましい実施形態の別の例の図である。
図6】本明細書の好ましい実施形態の別の例の図である。
図7】本明細書の好ましい実施形態の別の例の図である。
図8】ポリカーボネートの透過率を電磁照明の波長の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
電磁スペクトルを、全体的に図1に示す。図1は、赤外線スペクトルが、全体的に、1μm~1mmの範囲の波長を有する電磁エネルギーを含むことを示す。この周波数範囲のエネルギーを、遠赤外線波帯(15μm~1000μm)、長波帯(8μm~15μm)、中波帯(3μm~8μm)、短波帯(1.4μm~3μm)、近赤外線波帯(0.75μm~1.4μm)の波長帯に更に分離することができる。図1は更に、長波以上の範囲のサーモグラフィー式IRカメラが、典型的には、8μm~15μmの長波帯で作動すること、及び、光検出及び測距(LiDAR)カメラが、一般的には、近赤外線波帯と短波帯の一部分とで作動することを示す。
【0017】
本明細書で開示する実施形態の1つの側面では、ガラス材は、短波帯及び近赤外線波帯の赤外線放射に対して実質的に透明であるレンズを備える。さらに詳細には、レンズは、ガラスで作られ、このガラスの化学組成により、IR放射の約92%の透過率及びIR放射の1%未満の吸収率を得る。
【0018】
或るIR透明ガラスは、眼鏡及び顕微鏡の光学的構成要素等の用途で知られている。しかしながら、かかる種類のIR透明ガラスは、比較的高いコスト及び製造のための寸法制限のため、自動車用ガラス材の用途に受入れられない。
【0019】
本明細書で開示する発明では、IRに対して透明である光検出及び測距(LiDAR)可能なガラスは、フロート炉内において工業規模で生産されるソーダ石灰組成マトリックスで作られる。更に、IRに対して透明である光検出及び測距(LiDAR)可能なガラスは、自動車用ガラス材に通常採用されるプロセス、例えば、切断、研削、曲げ、テンパリング、積層、及びコーティングに対応可能である。
【0020】
長波以上の範囲のIRカメラに対応可能なガラス材であるIR透明ガラスの特徴を組込んだ自動車用ガラス材の例を図2に示す。図2は、標準の自動車用ガラス(即ち、非IRガラス)シート12が開口14を含む自動車用ガラス材10の構成要素を示す。シート12は、IRガラスシート16にPVB層18又は他の積層材料によって積層される。IRガラス16を照明するIRエネルギーは、IRガラス16を実質的に透過するが、開口14のところ以外、シート12によって妨げられる。開口14のところで、IR照明は、開口を通過し、長波以上の範囲のIRカメラによって感知される。
【0021】
さらに詳細に述べると、自動車用ガラス材10は、IRカメラに対応可能である。ガラス材10は、第1の透明体12を含み、第1の透明体12は、外表面12aと内表面12bを有する。内表面12bは、第1の透明体12において、その外表面12aの反対側に配置される。第1の透明体12はまた、内表面12bと外表面12aの間の周縁12cを有し、周縁12cは、第1の透明体12の外周を定める。加えて、第1の透明体12はまた、内表面12bと外表面12aの間の開口14を有し、開口14は、第1の透明体12において、周縁12cの内側に配置される。ガラス材10はまた、第2の透明体16を含む。第2の透明体16は、外表面16aと内表面16bを有し、内表面16bは、第2の透明体16において、その外表面16aの反対側に配置される。第2の透明体16は、第1の透明体12に対して、第2の透明体16の内表面16bが第1の透明体12の内表面12bに向けられるように配置され、第2の透明体16の少なくとも一部分は、第1の透明体12の開口14を覆う。第2の透明体16の材料は、硫化亜鉛(ZnS)又はポリカーボネート(PC)材料からなる群から選択される。これらの材料により、長波以上の範囲のIRカメラ及び光検出及び測距(LiDAR)カメラがガラス材10の透明体を通過する視野を形成することを可能にする。
【0022】
IRガラスシート16は、他の自動車用ガラスと比較して、相対的に高価である。加えて、本明細書において後で説明する変形例のZnSレンズは、多結晶であり且つプレス成形されてから光学的に研磨されたZnSで作られる。この製造方法により、かかるZnSレンズは、シート形態で商業的に入手することができない。この理由で、IRガラスの使用を限定することが好ましい。IRガラスの使用を限定する1つの例として、図3は、本明細書で開示する発明の変形実施形態を示す。
【0023】
図3は、自動車用ガラスの外層20及び自動車用ガラスの内層22を含むガラス材19を示す。外層20及び内層22は、PVBシート24又は他の積層材料と一緒に積層される。3つのすべての層20、22、24は、それぞれの開口26、28、30を有し、開口26、28、30は整列して、全体開口32を形成する。全体開口32は、その中に封入されたIRガラスのレンズ34によって覆われている。IRガラスは、例えば、ZnS材料のものである。
【0024】
更に詳細には、本明細書で開示する発明の実施形態は、ガラス材19を含み、ガラス材19は、第1の透明体22と、第2の透明体34と、第3の透明体20を含む。第3の透明体20は、外表面20aと、内表面20bを有し、内表面20bは、第3の透明体20において、その外表面20aの反対側に配置される。第3の透明体20は、第1の透明体22に対して、第3の透明体20の内表面20bが第1の透明体22の内表面22bに向けられ且つ第3の透明体20の外表面20aの一部分が第2の透明体34の内表面34bの一部分に向けられるように配置される。第3の透明体20は、その周囲20cの内側に開口26を有し、開口26は、第1の透明体22の開口28と一致する。
【0025】
図3はまた、第1の透明体22の内表面22bと第3の透明体20の内表面20bの間に配置された中間層24を示す。中間層24は、第3の透明体20の開口26及び第1の透明体22の開口28と一致する開口30を有する。
【0026】
図4は、ZnSレンズの透過率を波長の関数として示す。図4は、ZnSレンズが8μm~約12μmの長波帯において、良好な透過率を有することを示す。
【0027】
ここに開示する本発明の別の変形実施形態を図5に示す。図5は、図3の実施形態に似ている。図5のZnSのIRレンズ36は、接着材料のリング40と組合わされたサブフレーム38によって、自動車用ガラス材に固着されている。図5の実施形態が図3の実施形態よりも有利である点は、図5のサブフレーム38により、レンズ36を自動車用ガラス材の開口を覆うように比較的容易に固着させることを可能にする点である。このことは、自動車用ガラス材を組立てるプロセスの間、誤用と浪費のリスクを減少させる。
【0028】
更に説明すれば、図5に示す実施形態は、第2の透明体36が、第3の透明体20によって定められる開口26を覆う図3の実施形態と同様のガラス材である。図3に示すように、第2の透明体36の内表面36bは、第3の透明体20の外表面20に結合剤によって固着されてもよい。変形例として、図5に示すように、第2の透明体36は、サブフレーム38によって固着されてもよい。サブフレーム38は、第1の透明体22の開口28の縁の近くで第1の透明体22に固着される。サブフレーム38はまた、第2の透明体36を、第1の透明体22の開口28及び第3の透明体20の開口26を覆う関係に維持するように、第2の透明体36に連結される。幾つかの場合、シール40が、サブフレーム38と第1の透明体22の外表面22aの間に配置されるのがよい。
【0029】
図6及び図7は、ガラスの妨害によって生じる不透明がない自動車用IRカメラのための視野を確立するための更なる変形例を示す。図6及び図7の実施形態は、長波以上の範囲のIRカメラと光検出及び測距(LiDAR)カメラの両方に対応可能であり、その理由は、カメラへの入射である放射が全体的に、自動車用ガラス材を回避するからである。図6及び図7では、ガラス材積層はカメラの視野のための通路を回避するように形成される。図6及び図7の実施形態で表現されている縁輪郭に加えて、ガラス材の上縁の輪郭が長波以上の範囲のIRカメラ及び/又は光検出及び測距(LiDAR)カメラの視野との干渉を回避する他の実施形態も考えられる。かかる実施形態では、ガラス材の上縁の輪郭は、ガラス材の中間部分の近くにおいて、ガラス材のコーナー部分よりもガラス材の下縁に近い。
【0030】
図6では、ガラス材40は、PVB層46又は他の積層によって積層された自動車用ガラス42、44の2つのシートで形成される。ガラス材40の上縁48は、凹形に形成され、IRカメラのIRセンサのアレイをガラス材の凹形縁の上方に位置決めすることができる。図7では、ガラス材50は、図6と同じように自動車用ガラスの2つのシートで形成され、ガラス材50の上縁52は、切欠きを有し、その結果、自動車用暗視システムのIRカメラを上縁52のノッチ53の後方に配置することができる。図6及び図7の両方の実施形態において、暗視システムのIRカメラのアレイへのIR照明は、自動車用ガラス材のガラスによって妨げられない。
【0031】
図7は、ガラス材の頂縁の凹形態が種々の凹形状を有していてもよいことを示し、また、本明細書において使用されている用語「凹形」が、本明細書で開示する発明が数学的意味においてではなく一般的な記載として意図されていることを示す。図7は、ガラス材50が、凹形状を具体化するノッチ53を含む頂縁52有していてもよいことを示す。
【0032】
別の変形実施形態として、IR透過材料は、ZnS以外のものであってもよい。例えば、図8は、照射放射の波長の関数としたポリカーボネート(PC)材料の光透過率を示す。図8は、PC材料が、400nm~1500nmの範囲において高度の透過率を維持し、1800nm~2000nmの範囲において別の比較的高い透過率を維持することを示す。ポリカーボネート材料の例は、シェッフィールドプラスチックス社からMakrolon(登録商標)として商業的に入手可能である。
【0033】
図8に示すような透過率を有するPCで作られたレンズが、図3及び図5に示すZnSレンズと置き換えられてもよい。かかる組合せは、図1と関連して説明した長波帯で作動するIRカメラに対応可能である利点を有する。
【0034】
別の変形実施形態として、光検出及び測距カメラ(LiDARカメラ)と一緒に使用するのに適した構造物を作るように、図3及び図5と関連して説明したZnSレンズとPCレンズを修正してもよい。LiDARカメラは、典型的には、近赤外線の波帯(0.75μm~1.4μm)及び短波帯(1.4μm~3μm)の一部分の赤外線照明に応答する。在来の自動車用ガラス材は、一般的には、この波長帯のIR放射に対して透明ではないが、自動車用ガラスの透過率が比較的高いとき、LiDARカメラの撮像及び測距性能が向上することが分かった。
【0035】
従って、画像及び範囲の情報を現像するためのデータを処理するために、高透過率ガラスのレンズを、図3及び図5と関連して説明したZnS及びPCレンズと置き換えることにより、LiDARカメラが高透過率ガラスのレンズを通して見ることができるガラス材を提供する。かかるガラスの例は、近赤外線波帯と短波帯の低波長部分とにおいて透過率が高いガラスを含む。かかるガラスの例は、商標名「Solarphire(登録商標)PV」として販売されている。「Solarphire(登録商標)PV」ガラスの透過率を更に増大させるために、反射防止コーティングが、光検出及び測距(LiDAR)レーザの作動波長において透過率を増大させるように特に設計されたガラスに塗布されるのがよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】