(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】経時的な血管の径方向剛性における減少を提供する吸収性血管内デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/91 20130101AFI20221027BHJP
【FI】
A61F2/91
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564213
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 US2020047238
(87)【国際公開番号】W WO2021071593
(87)【国際公開日】2021-04-15
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517308415
【氏名又は名称】エフェモラル メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ,ルイス ビー.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA47
4C267AA49
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4C267GG02
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4C267GG34
4C267GG43
4C267HH01
4C267HH08
(57)【要約】
血管ステントは、血管の開存性を維持または強化するために使用され得る。バルーン拡張可能な複数の別個のステント要素を使用することによって、多要素ステントは、従来の自己拡張型ステントよりも強くなり得るが、その多要素構成に起因して、従来のバルーン拡張可能なステントよりも可撓性が高くなり得る。ステント要素は、生体吸収性ポリマー材料から形成される。ステントの径方向剛性は、ポリマーが吸収されるにつれて、血管への移植後に減少するように構成されている。ステントの厚さ、セル形状、ポリマー材料、および/またはポリマー材料の処置は、移植時の血管に対する高い初期径方向剛性、および経時的な血管の径方向剛性における減少を提供するように構成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を通る血流を維持または増強するために、前記血管内に配置するためのデバイスであって、
多要素ステントとして前記血管内に移植されるように構成されている、複数のバルーン拡張可能な生体吸収性血管ステント要素を含み、前記ステント要素が、前記ステント要素が互いに接触しないように離間され、
前記ステント要素が、生体吸収性ポリマー材料から形成され、前記ステント要素が、閉鎖セルを含み、
前記ステント要素の径方向剛性が、前記ポリマーが吸収されるにつれて、血管への移植後に減少するように構成されており、
前記ステント要素の厚さ、前記閉鎖セルの形状、前記ステント要素のセルパターン、および前記ポリマー材料が、約15N/cm以上の移植時の前記血管に対する初期径方向剛性を提供するように構成されており、
前記ステント要素が、約2年の期間にわたって、1N/cm未満の径方向剛性までの前記血管の前記径方向剛性における減少を提供するように構成されており、前記ステント要素の前記厚さ、前記閉鎖セルの前記形状、前記ステント要素の前記セルパターン、前記ポリマー材料、および前記ポリマー材料の処置が、経時的な前記血管の径方向剛性における減少を提供するように構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記閉鎖セルが、ダイヤモンド形状の閉鎖セルである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記閉鎖セルが、閉鎖セルの第1のセットおよび閉鎖セルの第2のセットを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記閉鎖セルの第1のセットが、繰り返し隣接する長手方向に整列されたパターンおよび繰り返し隣接する円周方向に整列されたパターンを有し、前記閉鎖セルの第2のセットが、繰り返し隣接する長手方向に整列されたパターンおよび繰り返し隣接する円周方向に整列されたパターンを有し、前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、円周方向にオフセットされ、前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、螺旋状に整列した繰り返し隣接する交互パターンを有する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、同じ形状およびサイズを有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、ダイヤモンド形状の閉鎖セルである、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、異なる形状およびまたはサイズを有する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ステント要素が、約115~145ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ステント要素が、約95~125ミクロンの幅を有する支柱によって形成される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ステント要素の前記径方向剛性が、その構造ポリマーが結合解除および代謝されるにつれて、ゆっくりと減衰し、そのため、前記ステント要素が、ゆっくりとより可撓性になり、前記血管の適応およびリモデリングならびに前記血管の弾性の回復を引き起こす、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
治療薬をさらに含み、前記治療薬が、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、または血栓症を予防または減衰させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記生体吸収性ポリマー材料が、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)、半結晶性ポリラクチド、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリカプロラクトン(PCL)、サリチレート系ポリマー、ポリジオキサノン(PDS)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、および脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサンおよび置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
血管を通る血流を維持または増進するための方法であって、
バルーンカテーテルを前記血管内に前進させることと、
前記バルーンカテーテル上のバルーンを拡張して、前記血管の内壁に接触させるために、前記バルーン上に配置された複数の生体吸収性血管ステント要素を拡張することであって、前記ステント要素が、前記ステント要素が互いに接触しないように離間されている、拡張することと、
前記血管ステント要素を前記血管内の所定の位置に残したまま、前記バルーンを収縮させることと、
前記血管から前記バルーンカテーテルを取り外すことと、を含み、
前記ステント要素が閉鎖セルを含み、前記ステント要素の径方向剛性が、前記ポリマーが吸収されるにつれて、血管内への移植後に減少するように構成されており、前記ステント要素の厚さ、前記閉鎖セルの形状、前記ステント要素のセルパターン、および前記ポリマー材料が、約15N/cm以上の移植時の前記血管に対する初期径方向剛性を提供するように構成されており、前記ステント要素が、約2年の期間にわたって、1N/cm未満の径方向剛性までの前記血管の前記径方向剛性における減少を提供するように構成されており、前記ステント要素の前記厚さ、前記閉鎖セルの前記形状、前記ステント要素の前記セルパターン、前記ポリマー材料、および前記ポリマー材料の処置が、経時的な前記血管の径方向剛性における減少を提供するように構成されている、方法。
【請求項13】
前記閉鎖セルが、ダイヤモンド形状の閉鎖セルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記閉鎖セルが、閉鎖セルの第1のセットおよび閉鎖セルの第2のセットを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記閉鎖セルの第1のセットが、繰り返し隣接する長手方向に整列されたパターンおよび繰り返し隣接する円周方向に整列されたパターンを有し、前記閉鎖セルの第2のセットが、繰り返し隣接する長手方向に整列されたパターンおよび繰り返し隣接する円周方向に整列されたパターンを有し、前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、円周方向にオフセットされ、前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、螺旋状に整列した繰り返し隣接する交互パターンを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、同じ形状およびサイズを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖セルの第2のセットが、ダイヤモンド形状の閉鎖セルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記閉鎖セルの第1のセットおよび前記閉鎖ドセルの第2のセットが、異なる形状およびまたはサイズを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ステント要素が、約115~145ミクロンの厚さを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記ステント要素が、約95~125ミクロンの幅を有する支柱によって形成される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月11日に提出された「ABSORBABLE INTRAVASCULAR DEVICES THAT PROVIDE A DECREASE IN RADIAL RIGIDITY OF THE VESSEL OVER TIME」と題された米国仮特許出願第62/914,260号の利益と優先順位を主張し、上記の参考出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、概して、医療デバイスの分野に関する。より具体的には、本出願は、血管(動脈および静脈)の開存性(血流)を維持することを意図した血管内ステントの設計および製造に関する。
【背景技術】
【0003】
アテローム性心血管疾患または「動脈硬化」は、世界の主要な死因および障害であり、ヒトの全死亡率のほぼ3分の1を占める。一部の先進国は危険因子の修正およびライフスタイルの行動の変化において著しい進歩を遂げているが、いくつかの推定ではアテローム性疾患の世界的な有病率は依然として上昇しており、2030年までに年間2300万人以上が死亡すると予測されている。経済的負担は驚異的であり、米国だけでも、アテローム性動脈硬化症およびその後遺症の治療にかかる推定年間費用は2,000億ドルを超える。
【0004】
アテローム性動脈硬化症は、病理学的な動脈老化のプロセスである。若年期には、動脈媒体内のしなやかなエラスチン線維が、動脈の脈動および脈波伝達に必要な構造的弾性および適応性を提供する。しかしながら、何十年にもわたって、持続的な圧力および運動が構造基質タンパク質をゆっくりと変性させ、エラスチンの疲労および破壊を引き起こす。その結果、ゆっくりではあるが容赦なく伸展性が失われ、動脈壁は慢性的に硬化する。拍動性と脈波の反射が失われると、流速プロファイルが鈍くなり、流れの反転が失われ、順行性の流れの係数が減衰する。これにより、拡張期に長期間の相対的な停滞が生じ、壁の粒子および細胞での滞留時間が長くなる。停滞した境界層の下の機能不全の壁は、循環するアテローム生成コレステリル脂肪アシルエステルおよびトリグリセリド粒子、特にアポリポタンパク質B含有リポタンパク質を蓄積し始める。リポタンパク質の酸化的修飾は、上にある内皮を活性化してケモカインを分泌し、これは、内皮に沿って転がる血液由来の単球を引き付けて、接着分子および組織因子の曝露によって粘着性になった血管表面につなぎとめる。しっかりと付着した単球の血管外漏出は、肥厚した内皮下腔内に細胞をトラップする。このように開始された進行中の病理学的プロセスは、コレステロール担持泡沫細胞、炎症性および造血細胞の継続的な動員および浸潤、ならびに脂質マトリックスの進行性蓄積および平滑筋増殖を介して脂肪性の閉塞性病変を生成し、これはゆっくりと内皮を上昇させ、動脈内腔に侵入し始める。アテローム性動脈硬化プラークは、重要な臓器への血液と酸素の流れを減らすのに十分な大きさに成長すると、胸痛(狭心症)、ミニストローク(一過性脳虚血発作)、および循環不全(跛行)の慢性臨床症候群を引き起こす。硬直化したコアと変性した線維性被膜を伴うより複雑なプラークは、突然破裂して、それらが存在する動脈の急性閉塞につながる可能性がある。これらは、心臓発作(心筋梗塞)、脳卒中(脳血管障害)および壊疽(重症肢虚血)の重症な生命を脅かす臨床事象を生じさせる。
【0005】
血管内金属ステント
アテローム性動脈硬化プラークの治療に広く適用された最初のステント型は、ステンレス鋼からなるオープンメッシュチューブとして設計されたバルーン拡張可能なステント(BES)であった。血管形成術用バルーンに圧着すると、それは、動脈ツリーを通って同軸方向に前進し、プラーク内に直接展開することができた。ステント移植により、バルーン血管形成術のみと比較して、より大きく、より耐久性のある流路が作成された。
【0006】
現代では、バルーン拡張可能なステントは、経皮的冠動脈介入(PCI)のほぼすべての症例、およびすべての末梢介入処置の約半分において展開されている。
【0007】
開いた大きい動脈を支え、過度の反動および変形を回避するために、末梢BESは硬い医療デバイスである。これらは典型的には、0.5~2x105Pa(375~1500mmHg、0.05~0.2N/mm2)の圧力、人体内で観察される血管内または血管外の圧力をはるかに超える非生理学的力に耐えるように設計されている。実際、BESは、占有する血管の10倍以上硬い。それらは非常に硬いため、BESは限られた数の解剖学的位置、つまり冠状動脈、腎臓動脈、および総腸骨動脈などの最小限または容易に予測可能な動脈運動を伴う場所にのみ移植され得る。そのため、BESの移植は、頸動脈、鎖骨下動脈、外腸骨動脈、総大腿動脈、浅大腿動脈、および膝窩動脈を含む多くの重要な末梢血管床には絶対に勧められない。
【0008】
BESの剛性はまた、使用可能な長さを厳しく制限する。移植されるステントが長すぎると、運動している動脈をねじるまたは裂き、再狭窄、血栓症、仮性動脈瘤の形成、場合によってはデバイスの破損および移動につながる。ステント製造業者は、その危険性を認識して、制限された長さのデバイスを利用できるようにしている。末梢動脈のアテローム性動脈硬化症の病変は数百mmの長さになる可能性があるが、利用可能な最長のBESは60mmにすぎない。それらは、200mmを超える病変が日常的に発生する脚への介入には明らかに不十分である。
【0009】
早くも1969年には、血管内ステントは剛性ではなく可撓性にするべきであることが理論化された。航空宇宙用途向けに最初に開発されたニチノールと呼ばれるニッケルチタン製の等原子合金は、血管の足場に理想的な機械的特性を例示すると考えられた。1つの特性は、超弾性、すなわち大幅な変形後に金属が元の形状に戻る能力であった。これにより、人体内で運動している動脈内の可撓性が保証された。他の特性は、形状記憶、すなわち、ある温度でアニーリングし、低温で十分に変形し、次に、加熱すると元の形状に戻る合金の能力であった。これにより、ニチノールステントを低温で圧縮して送達システムにし、次に、移植時に温かい哺乳類環境内で解放して拡張することができた。
【0010】
臨床使用が承認された最初の自己拡張型ニチノールステント(SES)は、ニチノール製の単純なコイル状ワイヤであった。これは、1992年にアメリカ市場に導入された。ニチノールのシームレスチューブが利用可能になった後、程なくして、レーザカットの管状ニチノールステントの開発が可能になった。現代では、管状のニチノールSESは、外腸骨動脈および浅大腿動脈などの長く、柔軟な血管に展開される最も一般的なデバイスである。
【0011】
SESはBESほど力を生成しないため、血管を完全に拡張することはほとんどない。それらをより完全に拡張させるために、SESは、展開後に大きい直径のバルーンで定期的に後拡張される。しかしながら、バルーン拡張を繰り返した後でも、比較的弱いSESは、反動動脈の内向きの力に打ち勝つことができず、処置後の直径が不十分になる。これは、特に重大なアテローム性動脈硬化疾患に患っている末梢動脈において、SES展開後に驚くほど頻繁に発生する。ある研究では、石灰化動脈にSESを移植した後、70%の症例で、標的病変の不足拡張(≧30%の残存狭窄)が観察された。
【0012】
ニチノールSESの使用の2番目の欠点は、破損に対する不穏な傾向があることである。BESではたまにしか観察されないが、SES破損は驚くほど一般的であり、1つの臨床報告では65%にも上る。完全には理解されていないが、この現象の魅力的な仮説の1つは、破損が下肢にあるステントにかかる固有の生体力学的な力の作用である場合があるというものである。脚の運動は複雑な動きであり、歩行中の股関節および膝の負荷は、動脈を軸方向に繰り返し圧縮し、多次元の曲がり、ねじれ、ならびによじれを生成する可能性さえある。その結果、単一もしくは複数の支柱が破損するか、または重症の場合はステントが完全に切断される。破損は、長いステントおよび/または重なり合うステントの移植後、ならびに、おそらくより活動的な患者により一般的である。血管内ステントの破損は明らかに再狭窄と関連するが、その関係が関連性であるか因果関係であるかについては議論の余地がある。
【0013】
SESの固有のメカニズムおよび設計により、ステント留置された動脈にかかる慢性的な力のパターンがBESの場合とは大きく異なることを確実にする。BESの展開後、動脈にかかる力は静的で一時的なものである。動脈は最初の伸展およびステント展開によって乱されるが、回復すると完全に治癒し、静止状態に戻る。しかしながら、ニチノールSESを収容する血管は、拡大し続けるねじれたデバイスによって加えられる慢性的な外向きの力(COF)に継続的にさらされる。定義上、SESは移植時に「オーバサイズ」でなければならないため、COFはすべてのSES移植に付随する。つまり、ステントの公称直径は、すべての場合において、標的病変の参照血管直径(RVD)を超えていなければならず、そのため、可撓性があり固定されていないデバイスは展開後も所定の位置に留まる。デバイスの最終的な直径は、製造されたときのその公称の「形状記憶」直径よりも常に小さいため、その公称直径に達するときまで(きわめてまれ)、血管壁に外向きに拡大する力を加え続ける。SESが典型的に移植される血管の動きと組み合わせることで、これは、デバイスの展開後、何年にもわたって血管壁の継続的および慢性的な摂動を確実にする。動脈は、慢性炎症、異物反応、平滑筋細胞の増殖および再狭窄で反応する。これは、一般的な大腿動脈など、曲がりやすい、およびねじれやすい解剖学的領域では特に厄介となる。この問題は非常に蔓延しているため、股関節または膝でのニチノールSESの移植は外科的に勧められない。
【0014】
最後に、ニチノールSESはBES対照物よりもはるかに可撓性を有するが、SESで治療された動脈の肥厚が続くと、ステント留置された動脈が最終的にはより硬化することは確かである。いわゆる「可撓性」ステントで治療された動脈でさえ、重大な異物反応を生じさせ、硬化し、ステント留置されていない部分のよじれおよびねじれを誘発する。残りの動脈の誇張された運動は、依然として制限された運動を可能にし、開存性を維持する場合があるが、結果として生じる異常な流れパターンおよび順応性は、血栓症および機能不全につながることが非常に多い。
【0015】
高抵抗末梢血管系におけるSESの非生理学的性質を考えると、それらの全体的な有効性の低さは驚くべきことではない。SESで治療された表在性大腿動脈の1年間の一次開存性は、60%と悲惨なままであり、年を追うごとに低下し続けている。
【0016】
吸収性血管内ステント
永久金属インプラントに関連する無数の問題に対処するために、展開後にゆっくりと溶解するステントが、長い間想像されてきた。いわゆる「生体吸収性血管足場」(BVS)は、(1)金属インプラントの永続性のない効果的な足場、(2)再狭窄の減少および長期開存性の強化につながる炎症および慢性異物反応の減衰、(3)適応血管リモデリングの支援、(4)生理的血管作用機能の回復、ならびに(5)経過観察中の撮像および監視の促進を含む、いくつかの重要な生物学的および生理学的利点を潜在的に提供する。
【0017】
元の生体吸収性デバイスは、「腸線」外科用縫合糸であり、約4千年前の歴史的記録における最初の証拠である。腸線縫合糸は、ヒツジ、ヤギ、またはウシの乾燥した腸に由来するが、おそらく「キット」と呼ばれることもある楽器の弦としても使用されたため、「腸線」という名前が残った。腸線縫合糸は、酵素的に分解され、生体内で再吸収されるため、生体吸収性として分類され得る。より現代的な生体吸収性外科用縫合糸は、合成である。他の最近開発された生体吸収性医療デバイスには、外傷性障害の治療のための生体吸収性ネジおよび骨折プレート、組織工学および再生医療の基礎として機能する留置足場、腫瘍治療のための化学療法担持ポリマー、術後の腹膜癒着の予防のための不活性合成ラップ、上気道および耳管のステント留置用の生体吸収性足場、ならびに生体吸収性血管内足場(ステント)が含まれる。残念ながら、最近のより長期の結果により、第1世代の吸収性冠動脈ステントの安全性および有効性に関する疑問が生じている。
【0018】
したがって、動脈を最大限に拡張して足場にするために、移植時に剛性であるが、剛性がゆっくりと減少して血管が元の健康で柔軟な状態に戻ることを可能にする、血管系において使用するためのステントを有することが有利であろう。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、以下に記載する実施形態によって満たされるであろう。
【発明の概要】
【0019】
本明細書の実施形態は、血管を通る血流を維持または増進するために血管内に配置するためのデバイスについて記載する。デバイスは、多要素ステントとして血管内に移植されるように構成された複数のバルーン拡張可能な生体吸収性血管ステント要素を含み得る。ステント要素は、ステント要素が互いに接触しないように離間され得る。ステント要素は、生体吸収性ポリマー材料から形成される。ステントの径方向剛性は、ポリマーが吸収されるにつれて、血管への移植後に減少するように構成されている。いくつかの実施形態では、ステントは、約15N/cm以上の移植時の血管に対する初期径方向剛性を提供するように構成されている。ステントは、約2年かけて、1N/cm未満までの血管の径方向剛性における減少を提供するように構成することができる。ステントの厚さ、セル形状、ポリマー材料、およびポリマー材料の処置は、経時的な血管の径方向剛性における減少を提供するように構成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、ステントは、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)、半結晶性ポリラクチド、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリカプロラクトン(PCL)、サリチレート系ポリマー、ポリジオキサノン(PDS)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、および脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサンおよび置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、またはこれらの組み合わせを含む材料から形成され得る。
【0021】
一実施形態では、ステントは、治療薬を含む。治療薬は、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、または血栓症を予防し得るか、または減衰させ得る。
【0022】
一実施形態では、ステントの径方向の剛性は、その構造ポリマーが結合解除および代謝されるにつれて、ゆっくりと減衰し、そのため、ステントは、ゆっくりとより可撓性になり、血管の適応およびリモデリングならびに血管の弾性の回復を引き起こす。
【0023】
本開示のこのおよび他の態様が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本実施形態は、添付の図面と併せて解釈すると、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からより容易に明らかになる他の利点および特徴を有する。
【0025】
【
図1】血管内ステントの典型的な径方向抵抗力を示す。
【
図3A-3C】バルーン拡張可能な多要素ステントの展開を描写する。
【
図4A】股関節と膝を完全に屈曲させた状態で、膝窩動脈に移植された多要素ステントを示す。
【
図10】一実施形態による、ステントを作成するために使用されるマイクロステレオリソグラフの概略図である。
【
図11A】本明細書に記載のデバイスで治療されたブタ腸骨大腿動脈の血管造影画像を示す。
【
図11B】自己拡張型ニチノールステントを有する
図11Aと同じブタの腸骨大腿動脈の血管造影像である。
【
図12】経時的なステント留置された動脈の径方向抵抗力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を特定の実施形態を参照して開示してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行い、同等物を置換することができることが当業者によって理解されるであろう。加えて、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の教示に対する特定の状況または材料に適応させるために、多くの改変を行うことができる。
【0027】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈が明らかに別段指示しない限り、本明細書に明示的に関連付けられた意味を取る。「a」、「an」、および「the」の意味には、複数の参照が含まれる。「中」の意味には、「中」および「上」が含まれる。図面を参照すると、同様の番号は、図全体を通して同様の部分を示す。追加的に、単数形への言及は、別段明記しない限り、または本明細書の開示と矛盾しない限り、複数形への言及を含む。
【0028】
「例示的」という単語は、本明細書では、「例、事例、または例示としての役割を果たす」ことを意味するために使用される。本明細書で「例示的」として記載されるいかなる実装も、必ずしも他の実装よりも有利であるとして解釈されるべきではない。
【0029】
本明細書では、図を参照して様々な実施形態について記載する。図は、縮尺通りに描かれておらず、実施形態の説明を容易にすることのみを意図している。それらは、本発明の網羅的な説明として、または本発明の範囲に対する限定として意図されていない。加えて、例示される実施形態は、示されているすべての態様または利点を有する必要はない。特定の実施形態に関連して記載される態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、そのように例示されていなくても、任意の他の実施形態で実施することができる。
【0030】
図1は、血管内ステントの典型的な径方向抵抗力を示す。典型的な「生体吸収性血管足場」(BVS)または吸収性ステントは、2N/cm未満の径方向抵抗力を有する。同様に、典型的な自己拡張型金属ステント(SES)は、2N/cm未満の径方向抵抗力を有する。典型的なバルーン拡張可能な金属ステント(BES)は、径方向の抵抗力がはるかに高く、18N/cmを超える場合がある。
【0031】
本明細書の実施形態は、典型的な吸収性または自己拡張型金属ステント(SES)によって提供されるものよりもはるかに大きく、かつバルーン拡張可能な金属ステント(BES)によって提供されるものに相当する、一時的な剛性の径方向の支持を提供することによって長い血管の流路(開存性)を維持する、新規の血管内吸収性デバイスの設計について記載する。移植されると、吸収性デバイスは、高度の径方向の力を与えて罹患した動脈を開けたままにし、その力は、大径の末梢バルーン拡張可能な金属ステントとほぼ同等である。
【0032】
径方向の力および長手方向の可撓性の両方を組み合わせるように設計されたほとんどのステントパターンとは対照的に、本明細書に記載のパターンは、径方向の力および剛性を最大化し、長手方向および軸方向の可撓性を排除するように特別に調整されている。
【0033】
本明細書に記載のデバイスは、多要素血管ステント(または「血管足場」)である。これらのステントは、互いに分離しているが、まとめて多要素ステントと呼ばれることもある、複数の短い剛性の円筒形ステントセグメントまたは要素で構成されている。
【0034】
概して、本明細書に記載の多要素ステントの各要素は、蛇行性の末梢血管など、それらが配置される血管の応力に耐える所望のレベルの強度を提供するのに十分な剛性があるだろう。同時に、多要素ステントはまた、複数の別個の要素から構成されているため、可撓性であり、したがって、湾曲した蛇行性の血管内に配置することができる。
【0035】
追加的に、バルーン拡張可能なステントは、典型的には、自己拡張型ステントよりも強いため、本明細書に記載の多要素ステントは、通常、自己拡張型ではなくバルーン拡張可能であるだろう。ステントの各バルーン拡張可能な要素は、記載される構造および材料に起因して、比較的高い径方向の力(剛性)を有し得る。ステント要素は、鋼製またはコバルトクロム製などの、従来のバルーン拡張可能な金属ステントと同様またはそれ以上の大きさの自己拡張型ステントよりも径方向の強度が大幅に高い場合、径方向に剛性があると定義される。
【0036】
膨張可能なバルーンに連続して装着すると、長い血管に同時に並べて移植することができる。生物の運動中、要素は、独立して移動し、個々の形状および強度を維持することができ、同時に、血管のステントのない介在要素は、邪魔されずにねじれ、曲がり、かつ回転することができる。その結果、剛性に維持された流路を有する治療済みの血管が得られ、生物が動いている間にも無制限に可撓性である。
【0037】
記載される実施形態は、(1)バルーン拡張を介して展開される剛性デバイスは、動脈壁に対する一時的な影響および正確な移植の相対的な容易さを考慮した血管内ステントの最適設計を表し、(2)長い剛性デバイスは、骨格の運動で曲がるおよびねじれる動脈に安全に移植することができず、(3)曲がるおよびねじれる長い動脈は、ステントのない介在動脈要素が邪魔されずに動くことを可能にする複数の短いBESで効果的に治療することができ、(4)ステント要素の長さ、数、および間隔は、標的の動脈の既知の予測可能な曲げ特性によって決定することができ、(5)動脈は、ほんの一時的に足場を必要とするだけでよく、ステントの溶解が遅れても、治療の長期的な効果にはほとんど影響しない、という原理を利用している。
【0038】
大腿部の浅大腿動脈などの屈曲可能なヒトの動脈内の長い閉塞性病変を治療するために、このデバイスは、単一の長いバルーン上に等間隔で配置された一連の同一またはほぼ同一の剛性要素として形成され得る。多要素ステント内の要素の間隔は、「RADIALLY RIGID AND LONGITUDINALLY FLEXIBLE MULTI-ELEMENT INTRAVASCULAR STENT」と題されたPCT国際出願番号PCT/US16/55953号に記載されており、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
完全に組み立てられたデバイスの一実施形態を
図2Aに示す。単一のバルーンの膨張およびデバイスの展開により、罹患した動脈の長いセグメントを治療しながら、座るまたは歩行するなどの骨格の運動とともに動脈が曲がるという動脈の重要な能力を維持することができる。多要素ステント200は、複数のステント要素201を含む。個々のバルーン拡張可能なステント要素201は、送達を容易にするために、膨張可能なバルーン203に圧着される。
図2Bは、
図2Aのステント要素201の拡大図である。個々の要素201は、バルーン203の長手方向の長さに沿って連続的に位置付けられ、ステント要素201が互いに接触しないように離間されている。さらに、その間隔は、展開後、骨格の運動中にステント要素201が接触または重複しないような間隔である。要素201の数、要素の長さ、および要素201間の間隙202は、標的血管位置に応じて異なり得る。一実施形態では、多要素ステント200における各要素201は、同じ長さを有する。3つ以上の要素201、よって2つ以上の間隙202を有する多要素ステントでは、間隙は、同じ長さであり得る。
【0040】
図3A~
図3Cは、バルーン拡張可能な多要素ステントの展開を描写する。
図3Aでは、バルーンに装着された多要素ステントが、病変まで前進している。
図3Bでは、バルーンおよびステントが、拡張されている。
図3Cでは、バルーンは引き抜かれ、多要素ステントは、依然として動脈内に残される。
【0041】
図4Aは、股関節および膝が完全に屈曲した状態での膝窩動脈に移植された多要素ステントを示す。
図4Bは、三次元で示された
図4Aの移植されたデバイスを描写する。個々のステント要素401は、動脈が大きく曲がっている場合でもそれらが重ならないように離間されている。妨げられていない動脈の動きは、ステントのない間隙402の屈曲または延伸によってもたらされる。
【0042】
本明細書に記載のステントは、様々な異なる材料から形成され得る。一実施形態では、ステントは、ポリマーで形成され得る。様々な代替的な実施形態では、ステントまたはステント要素は、例えば、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネートなどであるがこれらに限定されない、人体に非毒性で溶解するような任意の好適な生体吸収性材料から作製され得る。
【0043】
代替的な実施形態では、任意の好適なポリマーを使用して、ステントを構築することができる。「ポリマー」という用語は、ランダム、交互、ブロック、グラフト、分岐、架橋、混合物、混合物の組成物、およびこれらの変形物を含む、天然または合成に関わらない、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含む、重合反応の生成物を含むことを意図している。ポリマーは、粒子として真溶液中にあるか、飽和しているか、もしくは懸濁されているか、または有益な薬剤中で過飽和であり得る。ポリマーは、生体適合性または生分解性であり得る。限定ではなく例示の目的で、ポリマー材料には、ポリ(D-乳酸)(PDLA)、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)、ポリ(ヨウ素化デスアミノチロシル-チロシンエチルエステル)カーボネート、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、サリチレート系ポリマー、半結晶性ポリラクチド、ホスホリルコリン、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ-D、L-乳酸、ポリ-L-乳酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-co-バレレート)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、および脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、ポリカーボネートウレタンを含むポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリシロキサンおよび置換ポリシロキサンを含むシリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンテレフタレート-co-PEG、PCL-co-PEG、PLA-co-PEG、PLLA-co-PCL、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ならびにこれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。他の好適なポリマーの非限定的な例には、熱可塑性エラストマー全般、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム、およびポリアミドエラストマー、ならびにアクリルポリマーとその誘導体、ナイロン、ポリエステル、およびエポキシを含む生体安定性プラスチック材料が含まれる。いくつかの実施形態では、ステントは、ポリ(D、L-乳酸)(PDLLA)のような材料での、1つ以上のコーティングを含み得る。しかしながら、これらの材料は、単なる例であり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0044】
ステント要素は、様々な形状および構成を含み得る。ステント要素のうちのいくつかまたはすべてが、交差する支柱によって形成された閉鎖セル構造を含み得る。閉鎖セル構造は、ダイヤモンド形、正方形、長方形、平行四辺形、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、クローバ、小葉形、円形、楕円形、および/または卵形の形状を含み得る。閉鎖セルは、H字型スロット、I字型スロット、J字型スロットなどのスロット型形状も含み得る。追加的または代替的に、ステントは、螺旋構造、蛇行構造、ジグザグ構造などの開放セル構造を含み得る。支柱の交差は、尖った、垂直な、丸い、先端の丸い、平坦な、斜角の、および/または面取りされたセル角を形成し得る。一実施形態では、ステントは、異なるセルの形状、配向、および/またはサイズを有する複数の異なるセルを含み得る。様々なセル構造が、PCT国際出願番号第PCT/US16/20743号、発明の名称「MULTI-ELEMENT BIORESORBABLE INTRAVASCULAR STENT」に記載されており、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、ステント要素は、非拡張状態にあるとき、径方向よりも長手方向に長い複数のダイヤモンド形状の閉鎖セルを含み得る。ステント要素はまた、拡張状態において、長手方向よりも径方向に長い、複数のダイヤモンド形状の閉鎖セルを含み得る。
【0045】
ステントパターンの一実施形態を、
図5A~5Fに示す。ステント要素501は、ダイヤモンド形状の閉鎖セルパターンを有する。要素501は、混合されたダイヤモンド形状の閉鎖セル504、505を含む。ダイヤモンド形状のセル504は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。同様に、ダイヤモンド形状のセル505は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。追加的または代替的に、ダイヤモンド形状のセル504およびダイヤモンド形状のセル505は、交互のパターンで螺旋状に整列され得る。一実施形態において、ダイヤモンド形状のセル504およびダイヤモンド形状のセル505は、円周方向にオフセットされている。追加的に、ダイヤモンド形状のセル205は、4つの隣接するダイヤモンド形状のセル504の間の中央位置に形成され得る。長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル504の2つの角の間の支柱506の幅および/または高さは、長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル505の2つの角の間の支柱507の幅および/または高さよりも大きくてもよい。
【0046】
図2Bに戻ると、この例示的な実施形態において、ステント要素201は、ダイヤモンド形状の閉鎖セルパターンを有する。要素201は、混合されたダイヤモンド形状の閉鎖セル204、205を含む。ダイヤモンド形状のセル204は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。同様に、ダイヤモンド形状のセル205は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。追加的または代替的に、ダイヤモンド形状のセル204およびダイヤモンド形状のセル205は、交互のパターンで螺旋状に整列され得る。一実施形態において、ダイヤモンド形状のセル204およびダイヤモンド形状のセル205は、円周方向にオフセットされている。追加的に、ダイヤモンド形状のセル205は、4つの隣接するダイヤモンド形状のセル204の間の中央位置に形成され得る。長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル204の2つの角の間の支柱206の幅は、長手方向に整列されたダイヤモンド形状のセル205の2つの角の間の支柱207の幅よりも大きい。
【0047】
図6A~6Cは、クローバまたは小葉セル構成を有するステント要素の実施形態を示す。
図6A~6Cは4つの小葉を有するセルを描写しているが、セルは任意の数の小葉を有し得る。
図6Aは、小葉セル構造を有する要素の二次元描写である。
図6Bは、
図6Aのセルの拡大図である。
図6Cは、
図6Aのステント要素を円筒形で示しており、
図6Aの2つのダイヤモンド形セルは、左から右に巻き付けられて円筒を形成している。この実施形態では、要素600は、入り混じった小葉状の閉鎖セル601、602を含む。小葉セル601は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。同様に、小葉セル602は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。追加的または代替的に、小葉セル602およびダイヤモンド形セル601は、交互のパターンで螺旋状に整列され得る。一実施形態では、小葉セル602および小葉セル601は、円周方向にオフセットされている。追加的に、ダイヤモンド形セル602は、4つの隣接するダイヤモンド形セル601の間の中央位置に形成され得る。
図6A~6Cに示される実施形態では、長手方向に整列された長手方向小葉603は、円周方向に整列された円周方向小葉604よりも大きい。代替的に、長手方向小葉603は、円周方向小葉604と同じサイズであり得る。隣接する長手方向に整列した小葉セル1001の長手方向小葉603は、長手方向に接続する支柱605によって接続され得る。隣接する円周方向に整列した小葉セル601の円周方向小葉604は、円周方向に接続する支柱606によって接続され得る。一実施形態では、長手方向に接続する支柱605は、円周方向に接続する支柱606よりも幅が広い。代替的に、長手方向に接続する支柱605は、円周方向に接続する支柱606と同じ幅を有し得る。要素600は、拡張されていないバルーンに取り付けられたときに、圧着された形態を取ることができる。同様に、要素600は、バルーンによって拡張されたときに、拡張された形態を取ることができる。小葉セル601が圧着状態から拡張状態に移行するにつれて、凹面607は小葉要素600の中心から離れる。
【0048】
図7A~7Fは、ラチェット構成を有するステント要素の実施形態を示している。
図7A~7Fは、ダイヤモンド形構成のセルを示しているが、セルは任意の閉鎖セル構成を有し得る。
図7Aは、ラチェット構成を有する要素の二次元描写である。
図7Bは、
図7Aのセルの拡大図である。
図7Cは、
図7Aのセルの等角図である。
図7Dは、ラチェット707を示す
図7Cのセルの断面図である。
図7Eは、
図7Dのラチェット707の拡大図である。
図7Fは、断面におけるラチェット707の代替図である。
図7Aのセル構造を有するステント要素は、左から右への巻き付けの向きを有して、円筒を形成し得る。この実施形態では、要素700は、入り混じったラチェットセル701および非ラチェットセル702を含む。ラチェットセル701は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。同様に、非ラチェットセル702は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。追加的または代替的に、非ラチェットセル702およびラチェットセル701は、交互のパターンで螺旋状に整列され得る。一実施形態では、非ラチェット702およびラチェットセル701は、円周方向にオフセットされている。追加的に、非ラチェットセル702は、4つの隣接するラチェットセル701の間の中央位置に形成され得る。
図7A~7Fに示される実施形態では、ラチェットセル701は、非ラチェットセル702と同じまたは同様のサイズを有し得る。代替的に、ラチェットセル701は、非ラチェットセル702よりも大きくても小さくてもよい。隣接する長手方向に整列されたラチェットセル701は、長手方向に接続する支柱705によって接続され得る。隣接する円周方向に整列したラチェットセル701は、円周方向に接続する支柱706によって接続され得る。一実施形態では、長手方向に接続する支柱705は、円周方向に接続する支柱706よりも大きい長さまたは幅を有し得る。代替的に、長手方向に接続する支柱705は、円周方向に接続する支柱706と同じ長さまたは幅を有し得る。ラチェットセル701は、長手方向に整列されたラチェット支柱703を含む。ラチェットセル701および/または長手方向に接続する支柱705の長手方向に整列した角部は、ラチェット支柱703上に線形ラック709を収容するための空洞708を含み得る。つめ710は、線形ラック709の歯711と係合する。要素700は、拡張されていないバルーンに取り付けられたときに、圧着された形態を取ることができる。同様に、要素700は、バルーンによって拡張されたときに、拡張された形態を取ることができる。線形ラック707は、ラチェット要素700が圧着状態から拡張状態に移行するときに、長手方向に空洞708内に移動する(
図7Eでは下から上、
図7Fでは右から左として示されている)。それにより、ラチェット707は、要素700の径方向の強度を増加させ得る。
【0049】
図8A~8Fは、双安定ばねバンド構成を有するステント要素の実施形態を示している。
図8A~8Fは、ダイヤモンド形構成のセルを示しているが、セルは、任意の閉鎖セル構成を有し得る。
図8Aは、双安定ばねバンド構成を有する要素の二次元描写である。
図8Bは、
図8Aのセルの拡大図である。
図8Cは、
図8Aのセルの等角図である。
図8Dは、双安定支柱803の曲率を示す
図8Cのセルの断面図である。
図8Eは、
図8Dの双安定支柱803の拡大図である。
図8Fは、断面における双安定支柱803の代替図である。
図8Aのセル構造を有するステント要素は、左から右への巻き付けの向きを有して、円筒を形成し得る。この実施形態では、要素800は、入り混じった双安定セル801および非双安定セル802を含む。双安定セル801は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。同様に、非双安定セル802は、繰り返しパターンで長手方向および/または円周方向に整列され得る。追加的または代替的に、非双安定セル802および双安定セル801は、交互のパターンで螺旋状に整列され得る。一実施形態では、非双安定802および双安定セル801は、円周方向にオフセットされている。追加的に、非双安定セル802は、4つの隣接する双安定セル801の間の中央位置に形成され得る。
図8A~8Fに示される実施形態では、双安定セル801は、非双安定セル802と同じまたは同様のサイズを有し得る。代替的に、双安定セル1301は、非双安定セル802よりも大きくても小さくてもよい。隣接する長手方向に整列した双安定セル801は、長手方向の接続する支柱805によって接続され得る。隣接する円周方向に整列した双安定セル801は、円周方向に接続する支柱806によって接続され得る。一実施形態では、長手方向に接続する支柱805は、円周方向に接続する支柱806よりも大きい長さまたは幅を有し得る。代替的に、長手方向に接続する支柱805は、円周方向に接続する支柱806と同じ長さまたは幅を有し得る。双安定セル801は、円周方向に整列した双安定支柱803を含む。双安定支柱803は、双安定ばねバンド構成を有する。一実施形態では、双安定支柱803は、凹凸形状を有する。双安定支柱803は、真っ直ぐな形態または曲がった形態を取ることができ、双安定支柱803は、凹方向に曲がる。真っ直ぐな形態の双安定支柱803の剛性は、要素800の径方向の強度を増加させる。
図8C~8Fに示されるように、双安定支柱803の凹状曲面は、長手方向に向けられ、円筒形要素800の近位または遠位の開口部に面し得る。要素800は、拡張されていないバルーンに取り付けられたときに、圧着された形態を取ることができる。同様に、要素800は、バルーンによって拡張されたときに、拡張された形態を取ることができる。双安定支柱803は、圧着された形態で曲がった構成を有し得る。拡張された状態では、双安定支柱は真っ直ぐな構成を有し得る。
【0050】
図9Aおよび9Bは、枢動構成を有するステント要素の実施形態を示している。
図9Aは、枢動構成を有する要素の二次元描写である。
図9Bは、
図9Aのセルの拡大図である。
図9Aのセル構造を有するステント要素は、左から右への巻き付けの向きを有して、円筒を形成し得る。この実施形態では、要素900は、2つのより大きいセル901および1組のより小さいセル902の交互の配列を含む。2つのより大きいセル901は、2つのより大きいセル901を分離する、自由に動く枢動支柱903の曲げを可能にする。要素900は、拡張されていないバルーンに取り付けられたときに、圧着された形態を取ることができる。同様に、要素900は、バルーンによって拡張されたときに、拡張された形態を取ることができる。
図9A~9Bは、要素900が圧着状態にあるときに存在する不安定で剛性の低い構成の枢動支柱903を示している。拡張されると、枢動支柱903の頂点904が
図9Aおよび9Bの向きに基づいて)右から左に移行することになり、それにより、枢動支柱9の剛性が高まり、要素900の径方向強度が増す。
【0051】
本明細書に記載のデバイスは、炎症、細胞機能障害、細胞活性化、細胞増殖、新生内膜形成、肥厚、後期アテローム硬化性変化、および/または血栓症などの管腔内介入の病理学的結果を予防または軽減することを意図とした治療薬の組み込みを含み得る。様々な実施形態において、任意の好適な治療剤(または「薬物」)を、ステントに組み込むか、ステント上にコーティングするか、または別様にステントに取り付けることができる。そのような治療剤の例には、抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗脂質剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症剤、過形成を阻害する薬剤、平滑筋細胞阻害剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞接着促進剤、抗有糸分裂薬、抗フィブリン、抗酸化剤、抗腫瘍剤、内皮細胞回復を促進する薬剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、代謝拮抗物質、抗アレルギー物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞浸透促進剤、血糖降下剤、脂質低下剤、タンパク質、核酸、赤血球新生刺激に有用な薬剤、血管新生剤、抗潰瘍/逆流防止剤、および制嘔吐剤/制吐剤、フェノフィブラートなどのPPARアルファアゴニスト、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンなどの選択されるPPAR-ガンマアゴニスト、ヘパリン二ナトリウム、LMWヘパリン、ヘパロイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バプリプロスト、プロスタサイクリン、およびプロスタシリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、糖タンパク質IIb/IIIa(血小板膜受容体拮抗抗体)、組換えヒルジン、トロンビン阻害剤、インドメタシン、サリチル酸フェニル、ベータ-エストラジオール、ビンブラスチン、ABT-627(アストラセンタン)、テストステロン、プロゲステロン、パクリタキセル、メトトレキサート、フォテムシン、RPR-101511A、シクロスポリンA、ビンクリスチン、カルベジオール、ビンデシン、ジピリダモール、メトトレキサート、葉酸、トロンボスポンジン模倣薬、エストラジオール、デキサメタゾン、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソル、イオキシラン、イオジキサノール、およびイオトロラン、アンチセンス化合物、平滑筋細胞増殖抑制剤、脂質低下剤、放射線不透過剤、抗腫瘍薬、ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、およびフルバスタチンなどのHMG CoAレダクターゼ阻害剤、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
抗血栓剤、抗凝固剤、抗血小板剤、および血栓溶解剤の例には、ヘパリンナトリウム、未分画ヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、レビパリン、アルドパリン、およびセルタパリンなどの低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バプリプロスト、プロスタサイクリン、およびプロスタシリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa(血小板膜受容体拮抗抗体)、組換えヒルジン、およびビバリルジン、トロンビン阻害剤などのトロンビン阻害剤、および血栓溶解剤、ならびにウロキナーゼ、組換えウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、アテプラーゼ、およびテネクテプラーゼなどの血栓溶解剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
細胞増殖抑制剤または抗増殖剤の例としては、エバロリムス、ゾタロリムス、タクロリムス、ノボリムス、およびピメクロリムスを含む、ラパマイシンおよびその類似体、アンジオペプチン、カプトプリル、シラザプリル、またはリシノプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、ニフェジピン、アムロジピン、シルニジピン、レルカニジピン、ベニジピン、トリフルペラジン、ジルチアゼム、およびベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬、線維芽細胞成長因子拮抗薬、魚油(オメガ3-脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン、エトポシドおよびトポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、ならびにタモキシフェンなどの抗エストロゲンが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
抗炎症剤の例には、コルヒチン、ならびにベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、およびヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイドが含まれるが、これらに限定されない。非ステロイド系抗炎症剤には、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、アセトミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラック、メクロフェナム酸、ピロキシカム、およびフェニルブタゾンが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
抗腫瘍薬の例には、アルトレタミン、ベンダムシン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、フォテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、ニムスチン、プレドニムスチン、およびトレオスルフィンを含むアルキル化剤、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセルを含む有糸分裂阻害薬、メトトレキサート、メルカプトプリン、ペントスタチン、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アザチオプリン、およびフルオロウラシルを含む代謝拮抗剤、塩酸ドキソルビシンおよびマイトマイシンなどの抗生物質、ならびにエストラジオールなどの内皮細胞の回復を促進する薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
抗アレルギー剤には、ペミロラストニトロプルシドカリウム、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン、および一酸化窒素が含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
有益な薬剤は、溶媒を含み得る。溶媒は、任意の単一の溶媒または溶媒の組み合わせであり得る限定ではなく例示の目的で、好適な溶媒の例には、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、アセテート、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0058】
ステントは、加算または減算を使用して製造され得る。記載される実施形態のうちのいずれにおいても、ステントまたはステント要素は、シートとして製造される場合があり、円筒形に巻かれ得る。代替的に、ステントまたはステント要素は、追加的な製造プロセスを使用して、円筒形に製造され得る。一実施形態では、ステントは、材料を円筒形の管に押し出すことによって形成され得る。いくつかの実施形態では、より長いステント要素が、製造プロセス中に形成され得、次に、より小さいステント要素/複数の要素に切断されて、多要素ステントを提供し得る。一実施形態では、ステント管は、ステント要素を形成するためのパターンでレーザ切断され得る。
【0059】
ここで、
図10を参照すると、1つの実施形態では、ステントは、マイクロステレオリソグラフィシステム100(または「3Dプリンティングシステム」)を使用して製造され得る。様々な実施形態において使用され得る、現在利用可能なシステムのいくつかの例には、MakiBox A6(Makible Limited,Hong Kong)、CubeX(3D Systems,Inc.,Circle Rock Hill,SC)、および3D-Bioplotter(EnvisionTEC GmbH,Gladbeck,Germany)が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
マイクロステレオリソグラフィシステムは、照明器、動的パターン生成器、画像形成器、およびZステージを含み得る。照明器は、光源、フィルタ、電気シャッタ、コリメートレンズ、および動的マスクを生成するデジタルミラーデバイス(DMD)に均一に強い光を投射する反射鏡を含み得る。
図10は、DMDボード、Zステージ、ランプ、プラットフォーム、樹脂バット、および対物レンズを含む、マイクロステレオリソグラフィシステム100の一実施形態のこれらの構成要素のうちのいくつかを示す。3Dプリンティング/マイクロステレオリソグラフィシステムおよび他の追加的な製造システムの詳細は、当該技術分野でよく知られているため、ここでは記載しない。しかしながら、様々な実施形態によると、現在知られているか、または今後開発されるかに関わらず、本発明の範囲内でステントを製造するために、任意の追加的な製造システムまたはプロセスを潜在的に使用することができる。言い換えれば、本発明の範囲は、いかなる特定の追加的な製造システムまたはプロセスにも限定されない。
【0061】
一実施形態では、システム100は、動的マスク投影マイクロステレオリソグラフィを使用してステントを製造するように構成され得る。一実施形態では、製造方法は、コンピュータプログラムで3Dモデルをスライスし、システム内で層ごとに画像を固化および積層することによって、3D微細構造足場を最初に生成することを含み得る。一実施形態では、システムの反射鏡を使用して、動的マスクを生成するDMD上に均一に強い光を投射する。動的パターン生成器は、マスクと同様の白黒領域を生成することによって、製造モデルのスライスされた区分の画像を作成する。最後に、画像を積層するために、解像度Zステージが上下に移動して、次の硬化のために樹脂表面をリフレッシュする。一実施形態では、Zステージ構築サブシステムは、約100nmの解像度を有し、基板を取り付けるためのプラットフォーム、ポリマー液体溶液を含有するためのバット、および溶液の温度を制御するためのホットプレートを含む。Zステージは、下方に深く移動し、所定の位置まで上方に移動し、次に溶液が均一に分散されるまで一定の時間待機することによって、所望の層厚で新しい溶液表面を作製する。
【0062】
デバイスは完全に生体吸収性の材料から構成されているため、ゆっくりと弱まり、温かく生物学的活性の高い環境にさらされるとすぐに溶解し始める。デバイスは、その構造ポリマーが結合解除および代謝されるにつれて、その剛性がゆっくりと減衰するように設計されている。デバイスが弱くなると、静脈壁への影響が、ゆっくりと解放される。最終的に、デバイスは、その宿主動脈に径方向の影響を与えなくなるため、新生内膜過形成の形成、進行中の肥厚および適応不全に対するいかなる病理学的刺激も完全に取り除く。血管内異物による継続的な刺激の欠如により、その宿主によってさらなるプラークが生成される可能性があるときまで、血管は再び休止状態の開存状態に入ることができる。
【0063】
図11Aは、1年後に、1101において、本明細書に記載のデバイスで治療されたブタ腸骨大腿動脈の血管造影画像を示す。
図11Bは、1年後に、1102において、自己拡張型ニチノールステントで治療された同じブタの腸骨大腿動脈の血管造影画像を示す。自己拡張型ステントを包含する動脈には明らかな新生内膜過形成が見られるが、
図11Aの動脈には見られない。
【0064】
図12は、経時的な、ステント留置された動脈の径方向抵抗力を示す。正常な健康な動脈は、1N/cm未満の径方向抵抗力を有している。プラークを含んだアテローム性動脈硬化症の動脈は、約5N/cmの径方向抵抗力を有している。従来の金属製バルーン拡張型ステントで治療されたアテローム性動脈硬化症の動脈は、約15N/cmの初期径方向抵抗力を有している。金属ステントを包含する脈は、経時的に剛性がより高くなる。自己拡張型ステントで治療されたアテローム性動脈硬化症の動脈は、約7N/cmの初期径方向抵抗力を有し得る。自己拡張型ステントを包含する動脈も同様に、経時的に剛性がより高くなる。
【0065】
本明細書に記載のデバイスで治療されたアテローム性動脈硬化症の動脈は、金属バルーン拡張可能ステントで治療された動脈と同様の初期径方向抵抗力、約15N/cmを有する。他の実施形態では、生体吸収性ステントは、10~20N/cmの範囲の初期径方向抵抗力を引き起こし得る。生体吸収性ステントが溶解すると、ゆっくりと加より可撓性になり、動脈の適応およびリモデリングを可能にし、それにより動脈の弾力性が回復する。一実施形態では、生体吸収性ステントは、約2年の期間にわたって溶解し、ステントの径方向剛性を同じ期間にわたって減少させる。他の実施形態では、生体吸収性ステントは、1.5~3年の範囲の期間にわたって溶解し得る。生体吸収性ステントで治療されたアテローム性動脈硬化症の動脈の径方向抵抗力は、経時的に減少し、1N/cm未満の健康な動脈の剛性に近づく。ステントの厚さ、セル形状、ポリマー材料、および/またはポリマーの処理または処置は、特定の溶解速度を与えるように、かつ経時的な血管の径方向剛性における所望の減少を提供するように構成され得る。
【0066】
特定の実施形態を示し、記載してきたが、それらは、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変を実施形態のうちのいずれに対しても行うことができる。本発明は、代替例、改変例、および同等物を網羅することを意図している。
【国際調査報告】