(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】改善された視覚属性を示すコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20221027BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20221027BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20221027BHJP
C08F 220/56 20060101ALI20221027BHJP
C08F 220/38 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
G02C7/04
A61L27/16
A61L27/50
C08F220/56
C08F220/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569462
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2020057732
(87)【国際公開番号】W WO2021038368
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ブッフ・ジョン・アール
(72)【発明者】
【氏名】キャノン・ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】マハデバン・シブクマル
(72)【発明者】
【氏名】ライト・ドーン・ディー
【テーマコード(参考)】
2H006
4C081
4J100
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB07
4C081AB23
4C081BB03
4C081CA012
4C081CE11
4J100AL08P
4J100AL08T
4J100AL09S
4J100AM15R
4J100BA08T
4J100BA81P
4J100BA81Q
4J100BC83T
4J100CA03
4J100DA61
4J100DA62
4J100FA03
4J100FA18
4J100FA27
4J100JA50
4J100JA51
(57)【要約】
高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物を含有するコンタクトレンズ、及び1つ又は2つ以上の視覚属性を改善するためのその使用について説明する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
前記コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、
高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であり、
前記コンタクトレンズが、400~409nmの波長範囲にわたって0パーセント~70パーセントの光を透過する、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記コンタクトレンズが、280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光を透過する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過する、請求項1又は2に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
光安定性である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記高エネルギー可視光吸収化合物が、静的化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記高エネルギー可視光吸収化合物が、式Iの化合物を含み、
【化1】
式中、
m及びnが、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Tが、結合、O、又はNRであり、
Yが、連結基であり、
P
gが、重合性基であり、
Rが、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2が、存在する場合、各出現時において、独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール(好ましくは、非置換フェニル又はアルキル若しくはハロで置換されたフェニル)、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、又はベンジルであり、R
3及びR
4が、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
m及びnが、各々独立して、0又は1である、請求項6に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
Yが、各出現時において、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせである、請求項6又は7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
P
gが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
UV吸収化合物を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記UV吸収化合物が、式Iの化合物、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又はこれらの混合物を含む、請求項10に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記コンタクトレンズを作製するのに好適な前記重合性化合物が、親水性成分、シリコーン含有成分、又はこれらの混合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
コンタクトレンズ装用者における視覚属性を改善するための方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンタクトレンズを前記コンタクトレンズ装用者に提供することを含み、前記視覚属性が、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上から選択される、方法。
【請求項14】
光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱から選択される少なくとも1つの視覚属性を改善するための、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンタクトレンズの使用。
【請求項15】
コンタクトレンズ装用者における視覚属性を改善するための方法であって、
前記コンタクトレンズ装用者に、
前記コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、
高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であるコンタクトレンズを提供することを含み、
前記視覚属性が、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上から選択される、方法。
【請求項16】
光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱から選択される少なくとも1つの視覚属性を改善するためのコンタクトレンズの使用であって、前記コンタクトレンズが、前記コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である、使用。
【請求項17】
視力属性を改善することが、400~409nmの波長範囲にわたって少なくとも90パーセントの光を透過するコンタクトレンズと比較したときに、コンタクトレンズ装用者によって観察される前記視力属性の改善を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項18】
ある国に輸入される、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記国が、アメリカ合衆国である、請求項18に記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記HEV光吸収化合物が、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルアクリレート、N-(2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)メタクリルアミド、N-(2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)アクリルアミド、2-(2-シアノ-N-メチル-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)-N-(2-(N-ビニルアセトアミド)エチル)アセトアミド、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)-2-メチルプロピルメタクリレート、(E)-2-(2-シアノ-2-(2,4-ジクロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、(E)-2-(2-(2-クロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)-2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート、(E)-2-(2-シアノ-2-(2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、(E)-2-(2-シアノ-2-(4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトキシ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ、方法、又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年7月24日に出願された米国特許出願第16/938,117号及び2019年8月30日に出願された米国特許仮出願第62/893,996号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、高エネルギー可視(high energy visible、HEV)光吸収化合物を含有するコンタクトレンズ、及び1つ又は2つ以上の視覚属性を改善するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
UV光及び高エネルギー可視光などの太陽からの高エネルギー光は、細胞損傷に関与することが知られている。波長が280nm未満の放射線の大部分は、地球の大気によって吸収されるが、280~400nmの範囲の波長を有する光子は、角膜の変性変化、並びに加齢関連白内障及び黄斑変性症を含むいくつかの眼障害に関連している。(Statement on Ocular Ultraviolet Radiation Hazards in Sunlight,American Optometric Association,November 10,1993を参照)。ヒト角膜は、最大320nmの波長の放射線をいくらか吸収する(30%透過)(Doutch,J.J.,Quantock,A.J.,Joyce,N.C.,Meek,K.M,Biophys.J,2012,102,1258-1264)が、320~400nmの範囲の波長の放射線から眼の後方を保護することにおいて非効率的である。
【0004】
コンタクトレンズ規格は、380nmで紫外線波長の上側を規定する。米国検眼協会によって定義された現行のクラスIのUV吸収基準は、280~315nmの放射線(UVB)の>99%及び316~380nmの放射線(UVA)の>90%が、コンタクトレンズによって吸収されることを必要とする。この基準は、角膜の保護(<1%のUVB透過)に効果的に対処するが、網膜損傷に関連するより低エネルギー紫外線(>380かつ<400nm)(Ham,W.T,Mueller,H.A.,Sliney,D.H.Nature 1976;260(5547):153-5)にも高エネルギー可視放射線にもほとんど注意が払われていない。
【0005】
高エネルギー可視(HEV)放射線は、視覚的な不快感又は概日リズムの乱れを引き起こす場合がある。例えば、コンピュータ及び電子デバイススクリーン、フラットスクリーンテレビ、エネルギー効率の高いライト、及びLEDライトは、HEV光を発することが知られている。このようなHEV光源への長期曝露は、眼精疲労を引き起こす場合がある。また、夜間にHEV光を発するデバイスを見ることも、自然な概日リズムを乱して、例えば、睡眠不足につながることが推測される。
【0006】
眼に到達する前に高エネルギー光放射線を吸収することは眼科分野において望ましい目標であり続けている。しかしながら、特定の波長範囲が吸収される程度も重要である。例えば、UVA及びUVBの範囲では、できるだけ多くの放射線を吸収することが望ましい場合がある。一方、HEV光は可視スペクトルの一部を形成するため、HEV光を完全に吸収することは視覚に悪影響を及ぼし得る。したがって、HEV光では、部分吸収がより望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高エネルギー放射線の望ましくない波長の標的吸収を提供し、かつ機能的生成物に加工可能な材料が必要とされている。高エネルギー放射線を吸収又は減衰させる化合物は、眼科用デバイスで使用する場合、角膜、並びに眼環境における内部細胞を、劣化、疲労、及び/又は概日リズムの乱れから保護するのに役立ち得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、約450nmより長い波長で実質的に透過する(例えば、80%を超える透過)一方で、高エネルギー可視(HEV)光、及び任意選択でUV光をフィルタリングするコンタクトレンズに関する。コンタクトレンズは、HEV光をフィルタリングしないコンタクトレンズと比較したときに、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上における改善を含む、多くの視覚属性における有意な改善を提供する。
【0009】
したがって、一態様では、本発明は、コンタクトレンズを提供する。本発明のコンタクトレンズは、コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物(重合性HEV光吸収化合物であり得る)と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である。コンタクトレンズは、400~409nmの波長範囲にわたって0パーセント~70パーセント、又は1パーセント~70パーセントの光を透過し得る。
【0010】
別の態様では、本発明は、コンタクトレンズ装用者における視覚属性を改善するための方法を提供する。この方法は、コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物の量を改善する視覚属性と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であるコンタクトレンズを、コンタクトレンズ装用者に提供することを含み、視覚属性は、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上から選択される。
【0011】
更なる態様では、本発明は、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱から選択される少なくとも1つの視覚属性を改善するためのコンタクトレンズの使用を提供し、コンタクトレンズは、コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視光吸収化合物の量を改善する視覚属性と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例4A及び4BのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
【
図2】実施例4A及び4CのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
【
図3】実施例4A及び4DのシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのUV-VIS透過スペクトルを示す。
【
図4】様々な年齢群における、対照レンズと比較した試験レンズのグレア不快感の臨床結果を示す。
【
図5】様々な年齢群における、対照レンズと比較した試験レンズのグレア減能閾値の臨床結果を示す。
【
図6】様々な年齢群における、対照レンズと比較した試験レンズの異色コントラスト閾値の臨床結果を示す。
【
図7】様々な年齢群における、対照レンズと比較した試験レンズのハローの臨床結果を示す。
【
図8】様々な年齢群における、対照レンズと比較した試験レンズのスターバーストの臨床結果を示す。
【
図9】様々な年齢群における、対照レンズと比較した試験レンズの光散乱の臨床結果を示す。
【
図10】様々な年齢群における、対照レンズと比較した試験レンズの光ストレス回復時間の臨床結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の説明に記載されている構造又はプロセス工程の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、本明細書に記載の教示を用いた様々な方法によって実行又は実施することが可能である。
【0014】
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0015】
別段の定めがある場合を除き、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008,edited by:Richard G.Jones,Jaroslav Kahovec,Robert Stepto,Edward S.Wilks,Michael Hess,Tatsuki Kitayama,and W.Val Metanomskiに開示される定義に一致する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
本明細書で使用するとき、「(メタ)」という用語は、任意選択のメチル置換を意味する。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0017】
どこに化学構造が記載されていようと、構造における置換基について開示された選択肢を任意の組み合わせで組み合わせてもよいことを理解すべきである。したがって、構造が置換基R*及びR**を含有しており、これらの各々が3つの可能性のある基のリストを含有している場合、9とおりの組み合わせが開示される。特性の組み合わせについても同じことが当てはまる。
【0018】
一般式[***]nにおける「n」などの下付き文字が、ポリマーの化学式における繰り返し単位の数を表示するために使用されるとき、式は、巨大分子の数平均分子量を表すと解釈すべきである。
【0019】
「個体」という用語は、ヒト及び脊椎動物を含む。
【0020】
「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用デバイスを指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくはモニタリング、紫外線吸収、可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの任意の組み合わせを含む、矯正的、美容的、又は治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、当技術分野で既知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水量、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理的、機械的、若しくは光学的特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有するハイブリッドレンズであり得る。
【0021】
本発明のレンズは、シリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルからなり得る。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、硬化されたデバイス内で互いに共有結合した、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有成分を含有する。
【0022】
「標的巨大分子」は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、希釈剤などを含む反応性モノマー混合物から合成されている巨大分子を意味する。
【0023】
「重合性化合物」という用語は、1つ又は2つ以上の重合性基を含有する化合物を意味する。この用語は、例えば、モノマー、マクロマー、オリゴマー、プレポリマー、架橋剤などを包含する。
【0024】
「重合性基」は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合、例えばラジカル重合開始条件に供されたときに重合することができる炭素-炭素二重結合などの、連鎖成長重合を受けることができる基である。フリーラジカル重合性基の非限定的な例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、及び他のビニル基が挙げられる。好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、及びスチリル官能基、並びに前述のうちのいずれかの混合物を含む。より好ましくは、フリーラジカル重合性基は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。重合性基は、非置換であってもよく、又は置換されていてもよい。例えば、(メタ)アクリルアミド中の窒素原子は、水素に結合されてもよく、又は水素は、アルキル若しくはシクロアルキル(それ自体が更に置換されてもよい)で置換されてもよい。
【0025】
限定されるものではないが、バルク、溶液、懸濁液、及びエマルジョンを含む、任意の種類のフリーラジカル重合、並びに、安定性フリーラジカル重合、窒素酸化物媒介リビング重合、原子移動ラジカル重合、可逆的付加開裂連鎖移動重合、有機テルル媒介リビングラジカル重合などの、制御ラジカル重合法のいずれかを使用することができる。
【0026】
「モノマー」は、連鎖成長重合、具体的にはフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる単官能性分子である。いくつかのモノマーは、架橋剤として作用することができる二官能性不純物を有する。「親水性モノマー」はまた、5重量パーセントの濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合したときに、透明な単相溶液が得られるモノマーである。「親水性成分」は、5重量パーセントの濃度にて25℃で、脱イオン水を用いて混合したときに、透明な単相溶液が得られる、モノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。「疎水性成分」は、25℃で脱イオン水中でわずかに可溶性又は不溶性である、モノマー、マクロマー、プレポリマー、開始剤、架橋剤、添加剤、又はポリマーである。
【0027】
「巨大分子」は、1500を超える数平均分子量を有する有機化合物であり、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0028】
「マクロモノマー」又は「マクロマー」は、連鎖成長重合、具体的にはフリーラジカル重合を受け、それによって標的巨大分子の化学構造内に繰り返し単位を作り出すことができる1つの基を有する巨大分子である。典型的には、マクロマーの化学構造は、標的巨大分子の化学構造とは異なり、すなわち、マクロマーのペンダント基の繰り返し単位は、標的巨大分子又はその主鎖の繰り返し単位とは異なる。モノマーとマクロマーとの間の差は、ペンダント基の化学構造、分子量、及び分子量分布のうちの1つに過ぎない。結果として、かつ本明細書で使用するとき、特許文献は、約1,500ダルトン以下の比較的低い分子量を有する重合性化合物としてモノマーを定義することがあり、これは、本質的にいくつかのマクロマーを含む。具体的には、モノメタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/モル)(mPDMS)及びモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(分子量=500~1500g/モル)(OH-mPDMS)は、モノマー又はマクロマーと呼ばれ得る。更に、特許文献は、1つ又は2つ以上の重合性基を有するものとしてマクロマーを定義することがあり、マクロマーの一般的な定義を本質的に拡大してプレポリマーを含む。結果として、かつ本明細書で使用するとき、二官能性及び多官能性マクロマー、プレポリマー、及び架橋剤は、互換的に使用され得る。
【0029】
「シリコーン含有成分」は、典型的には、シロキシ基、シロキサン基、カルボシロキサン基、及びこれらの混合物の形態で、少なくとも1つのケイ素-酸素結合を有する、反応性混合物中のモノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、又はポリマーである。
【0030】
本発明において有用なシリコーン含有成分の例は、米国特許第3,808,178号、同第4,120,570号、同第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,760,100号、同第5,849,811号、同第5,962,548号、同第5,965,631号、同第5,998,498号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,943,203号、同第6,951,894号、同第7,052,131号、同第7,247,692号、同第7,396,890号、同第7,461,937号、同第7,468,398号、同第7,538,146号、同第7,553,880号、同第7,572,841号、同第7,666,921号、同第7,691,916号、同第7,786,185号、同第7,825,170号、同第7,915,323号、同第7,994,356号、同第8,022,158号、同第8,163,206号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,415,404号、同第8,420,711号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,568,626号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第8,980,972号、同第9,056,878号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9,156,934号、同第9,170,349号、同第9,217,813号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、及び欧州特許第080539号に見出すことができる。これらの特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
「ポリマー」は、重合中に使用されるモノマーの繰り返し単位から構成される標的巨大分子である。
【0032】
「ホモポリマー」は、1つのモノマーから作製したポリマーであり、「コポリマー」は、2つ又は3つ以上のモノマーから作製したポリマーであり、「ターポリマー」は、3つのモノマーから作製したポリマーである。「ブロックコポリマー」は、組成上異なるブロック又はセグメントから構成される。ジブロックコポリマーは、2つのブロックを有する。トリブロックコポリマーは、3つのブロックを有する。「くし形又はグラフトコポリマー」は、少なくとも1つのマクロマーから作製される。
【0033】
「繰り返し単位」は、特定のモノマー又はマクロマーの重合に対応する、ポリマー内の原子の最小の基である。
【0034】
「開始剤」は、続いてモノマーと反応してフリーラジカル重合反応を開始することができるラジカルに分解可能である分子である。熱開始剤は、温度に応じて特定の速度で分解し、典型例は、1,1’-アゾビスイソブチロニトリル及び4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムなどの過酸、並びに様々な酸化還元系である。光開始剤は、光化学プロセスにより分解し、典型例は、ベンジル、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、及びこれらの混合物の誘導体、並びに様々なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシド、並びにこれらの組み合わせである。
【0035】
「架橋剤」は、分子上の2つ又は3つ以上の位置でフリーラジカル重合を受け、それによって分岐点及びポリマーネットワークを作り出すことができる、二官能性又は多官能性モノマー又はマクロマーである。一般的な例は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレートなどである。
【0036】
「プレポリマー」は、更に反応を受けてポリマーを形成可能な、残存している重合性基を含有するモノマーの反応生成物である。
【0037】
「ポリマーネットワーク」は、膨潤し得るが溶媒に溶解できない架橋巨大分子である。「ヒドロゲル」は、典型的には少なくとも10重量パーセントの水を吸収しながら、水又は水溶液中で膨潤するポリマーネットワークである。「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分と共に少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルである。親水性成分はまた、非反応性ポリマーを含んでもよい。
【0038】
「従来のヒドロゲル」は、いかなるシロキシ、シロキサン、又はカルボシロキサン基も有しない成分から作製されたポリマーネットワークを指す。従来のヒドロゲルは、親水性モノマーを含む反応性混合物から調製される。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、N-ビニルピロリドン(「NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(「DMA」)、又は酢酸ビニルが挙げられる。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。市販の従来のヒドロゲルとしては、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(それらの変形の全てを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるポリマーネットワークを指す。シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変形の全てを含む)に加えて、米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されるようなシリコーンヒドロゲルが挙げられる。これらの特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
「相互貫入ポリマーネットワーク」は、分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合しておらず、制動化学結合なしに分離することができない、2つ又は3つ以上のネットワークを含む。「半相互貫入ポリマーネットワーク」は、1つ又は2つ以上のネットワークと、少なくとも1つのネットワークと少なくとも1つのポリマーとの間の分子レベルで何らかの混合によって特徴付けられる1つ又は2つ以上のポリマーと、を含む。異なるポリマーの混合物は、「ポリマーブレンド」である。半相互貫入ネットワークは、技術的にはポリマーブレンドであるが、場合によっては、ポリマーは、容易に除去することができないように絡まっている。
【0041】
「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」という用語は、一緒に混合され、重合条件に供されたときに、従来のヒドロゲル又は本発明のシリコーンヒドロゲルを形成するとともに、それから作製されるコンタクトレンズを形成する成分(反応性及び非反応性の両方)の混合物を指す。反応性モノマー混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、及び開始剤などの反応性成分、湿潤剤、ポリマー、染料などの添加剤、UV吸収剤、顔料、染料、及びフォトクロミック化合物などの光吸収化合物(これらはいずれも反応性又は非反応性であってよいが、得られるコンタクトレンズ、並びに医薬化合物及び栄養補助化合物内に保持されることが可能である)、並びに任意の希釈剤を含み得る。作製されるコンタクトレンズ及びその意図する用途に基づいて、広範囲の添加物を添加してもよいことが理解される。反応性混合物の成分の濃度は、希釈剤を除いて、反応性混合物中の全ての成分の重量百分率として表される。希釈剤が使用される場合、それらの濃度は、反応性混合物中の全ての成分及び希釈剤の量に基づき重量百分率として表される。
【0042】
「反応性成分」は、共有結合、水素結合、静電相互作用、相互貫入ポリマーネットワークの形成、又は任意の他の手段により、得られるヒドロゲルのポリマーネットワークの化学構造の一部となる、反応性混合物の成分である。
【0043】
「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」という用語は、少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルコンタクトレンズを指す。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、一般に、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過性を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を使用して酸素を眼に送る。
【0044】
「多官能性」という用語は、2つ又は3つ以上の重合性基を有する成分を指す。「単官能性」という用語は、1つの重合性基を有する成分を指す。
【0045】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0046】
「アルキル」は、指定された数の炭素原子を含有する任意選択で置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基を指す。数が指定されていない場合、アルキル(アルキル上の任意選択の置換基を含む)は、1~16個の炭素原子を含有していてよい。好ましくは、アルキル基は、1~10個の炭素原子、代替的に1~8個の炭素原子、代替的に1~6個の炭素原子、又は代替的に1~4個の炭素原子を含有する。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-、sec-及びtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、3-エチルブチルなどが挙げられる。アルキル上の置換基の例としては、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロゲン、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アルキレン」は、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、及び-CH2CH2CH2CH2-などの、二価アルキル基を意味する。
【0047】
「ハロアルキル」は、1個又は2個以上のハロゲン原子で置換された上で定義されるアルキル基を指し、各ハロゲンは、独立して、F、Cl、Br、又はIである。好ましいハロゲンは、Fである。好ましいハロアルキル基は、1~6個の炭素、より好ましくは1~4個の炭素、更により好ましくは1~2個の炭素を含有する。「ハロアルキル」は、-CF3-又は-CF2CF3-などのペルハロアルキル基を含む。「ハロアルキレン」は、-CH2CF2-などの二価ハロアルキル基を意味する。
【0048】
「シクロアルキル」は、指定された数の環炭素原子を含有する任意選択で置換された環状炭化水素を指す。数が指定されていない場合、シクロアルキルは、3~12個の環炭素原子を含有してもよい。好ましくは、C3~C8シクロアルキル基、C3~C7シクロアルキル、より好ましくはC4~C7シクロアルキル、更により好ましくはC5~C6シクロアルキルである。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキル上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「シクロアルキレン」は、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、又は1,4-シクロヘキシレンなどの二価シクロアルキル基を意味する。
【0049】
「ヘテロシクロアルキル」は、少なくとも1つの環炭素が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されている、上で定義されるシクロアルキル環又は環系を指す。ヘテロシクロアルキル環は、任意選択で、他のヘテロシクロアルキル環及び/又は非芳香族炭化水素環及び/又はフェニル環に縮合しているか、又は他の方法で結合される。好ましいヘテロシクロアルキル基は、5~7員を有する。より好ましいヘテロシクロアルキル基は、5又は6員を有する。ヘテロシクロアルキレンは、二価ヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0050】
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を含有する、任意選択で置換された芳香族炭化水素環系を指す。アリール基は、指定された数の環炭素原子を含有する。数が指定されていない場合、アリールは、6~14個の環炭素原子を含有してもよい。芳香環は、任意選択で、他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環に縮合していてもよく、又は他の方法で結合されてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、及びビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニルが挙げられる。アリール上の置換基の例としては、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、チオアルキル、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ、2つ、又は3つの基が挙げられる。「アリーレン」は、二価アリール基、例えば1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、又は1,4-フェニレンを意味する。
【0051】
「ヘテロアリール」は、上で定義したように、少なくとも1つの環炭素原子が、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子で置換されているアリール環又は環系を指す。ヘテロアリール環は、1つ又は2つ以上のヘテロアリール環、芳香族若しくは非芳香族炭化水素環、又はヘテロシクロアルキル環に縮合していてもよく、又は他の方法で結合されてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、及びチエニルが挙げられる。「ヘテロアリーレン」は、二価ヘテロアリール基を意味する。
【0052】
「アルコキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びイソプロポキシが挙げられる。「チオアルキル」は、硫黄架橋を介して親分子に結合しているアルキル基を意味する。チオアルキル基の例としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、及びイソプロピルチオが挙げられる。「アリールオキシ」は、酸素架橋を介して親分子部分に結合しているアリール基を指す。例としては、フェノキシが挙げられる。「環状アルコキシ」は、酸素架橋を介して親部分に結合しているシクロアルキル基を意味する。
【0053】
「アルキルアミン」は、-NH架橋を介して親分子部分に結合しているアルキル基を指す。アルキレンアミンは、-CH2CH2NH-などの二価アルキルアミン基を意味する。
【0054】
「シロキサニル」は、少なくとも1つのSi-O-Si結合を有する構造を指す。したがって、例えば、シロキサニル基は、少なくとも1つのSi-O-Si基(すなわち、シロキサン基)を有する基を意味し、シロキサニル化合物は、少なくとも1つのSi-O-Si基を有する化合物を意味する。「シロキサニル」は、モノマー(例えば、Si-O-Si)並びにオリゴマー/ポリマー構造(例えば、-[Si-O]n-であって、式中、nは2又は3以上である、構造)を包含する。シロキサニル基中の各ケイ素原子は、それらの原子価を完全なものにするために、独立して選択されるRA基(RAは、式Aの選択肢(b)~(i)で定義されるとおりである)で置換されている。
【0055】
「シリル」は、式R3Si-の構造を指し、「シロキシ」は、式R3Si-O-の構造を指し、シリル又はシロキシ中の各Rは、トリメチルシロキシ、C1~C8アルキル(好ましくはC1~C3アルキル、より好ましくはエチル又はメチル)、及びC3~C8シクロアルキルから独立して選択される。
【0056】
「アルキレンオキシ」は、一般式-(アルキレン-O-)p-又は-(O-アルキレン)p-の基を指し、ここで、アルキレンは、上で定義したとおりであり、pは、1~200、又は1~100、又は1~50、又は1~25、又は1~20、又は1~10であり、各アルキレンは、独立して、ヒドロキシル、ハロ(例えば、フルオロ)、アミノ、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル、及びこれらの組み合わせから独立して選択される1つ又は2つ以上の基で任意選択で置換されている。pが1より大きい場合、各アルキレンは、同じであっても異なっていてもよく、アルキレンオキシは、ブロック又はランダム構成であってもよい。アルキレンオキシが分子中に末端基を形成するとき、アルキレンオキシの末端は、例えば、ヒドロキシ又はアルコキシ(例えば、HO-[CH2CH2O]p-又はCH3O-[CH2CH2O]p-)であってもよい。アルキレンオキシの例としては、ポリエチレンオキシ、ポリプロピレンオキシ、ポリブチレンオキシ、及びポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシ)が挙げられる。
【0057】
「オキサアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH2基が、-CH2CH2OCH(CH3)CH2-などの酸素原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。「チアアルキレン」は、1つ又は2つ以上の非隣接CH2基が、-CH2CH2SCH(CH3)CH2-などの硫黄原子で置換されている、上で定義されるアルキレン基を指す。
【0058】
「連結基」という用語は、重合性基を親分子に連結させる部分を指す。連結基は、当該連結基がその一部である化合物に適合し、化合物の重合を不所望に妨害せず、重合条件、更には最終生成物の加工及び保管の条件下で安定である任意の部分であってよい。例えば、連結基は、結合であってもよく、又は1つ若しくは2つ以上のアルキレン、ハロアルキレン、アミド、アミン、アルキレンアミン、カルバメート、エステル(-CO2-)、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アルキレンオキシ、オキサアルキレン、チアアルキレン、ハロアルキレンオキシ(1つ又は2つ以上のハロ基で置換されたアルキレンオキシ、例えば、-OCF2-、-OCF2CF2-、-OCF2CH2-)、シロキサニル、アルキレンシロキサニル、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。連結基は、1つ又は2つ以上の置換基で任意選択で置換されてもよい。好適な置換基としては、アルキル、ハロ(例えば、フルオロ)、ヒドロキシル、HO-アルキレンオキシ、MeO-アルキレンオキシ、シロキサニル、シロキシ、シロキシ-アルキレンオキシ-、シロキシ-アルキレン-アルキレンオキシ-(1つを超えるアルキレンオキシ基が存在してもよく、アルキレン及びアルキレンオキシ中の各メチレンは、独立して、ヒドロキシルで任意選択で置換されている)、エーテル、アミン、カルボニル、カルバメート、及びこれらの組み合わせから独立して選択されるものを挙げることができる。連結基はまた、(メタ)アクリレートなどの重合性基で置換されてもよい(連結基が連結している重合性基に加えて)。
【0059】
好ましい連結基としては、C1~C8アルキレン(好ましくは、C2~C6アルキレン)及びC1~C8オキサアルキレン(好ましくは、C2~C6オキサアルキレン)が挙げられ、これらは各々、ヒドロキシル及びシロキシから独立して選択される1つ又は2つの基で任意選択で置換されている。好ましい連結基としてはまた、カルボキシレート、アミド、C1~C8アルキレン-カルボキシレート-C1~C8アルキレン、又はC1~C8アルキレン-アミドC1~C8アルキレンが挙げられる。
【0060】
連結基が上述のような部分(例えば、アルキレン及びシクロアルキレン)の組み合わせからなる場合、部分は任意の順序で存在してもよい。例えば、下記の式Eにおいて、Lが、-アルキレン-シクロアルキレン-であると示されている場合、Rg-Lは、Rg-アルキレン-シクロアルキレン-、又はRg-シクロアルキレン-アルキレン-のいずれかであってもよい。これにかかわらず、列挙する順序は、連結基が結合している末端重合性基(Rg又はPg)から始まって、その部分が化合物中に現れる好ましい順序を表す。例えば、式E中、L及びL2が、両方ともアルキレン-シクロアルキレンであるとして示されている場合、Rg-Lは、好ましくは、Rg-アルキレン-シクロアルキレン-であり、-L2-Rgは、好ましくは、-シクロアルキレン-アルキレン-Rgである。
【0061】
「電子求引基」(electron withdrawing group、EWG)という用語は、電子求引基が結合している原子又は原子の群から電子密度を求引する化学基を指す。EWGの例としては、シアノ、アミド、エステル、ケト、又はアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいEWGは、シアノ(cyano、CN)である。
【0062】
「高エネルギー可視光吸収化合物」又は「HEV光吸収化合物」という用語は、例えば400~450nmの範囲の高エネルギー可視光の1つ又は2つ以上の波長を吸収する化学材料を指す。ある材料が特定の波長の光を吸収する能力は、そのUV/Vis透過スペクトルを測定することによって決定することができる。特定の波長で吸収を示さない化合物は、その波長で実質的に100パーセントの透過を示す。逆に、特定の波長で完全に吸収する化合物は、その波長で実質的に0%の透過を示す。本明細書で使用するとき、コンタクトレンズの透過の量が、特定の波長範囲にわたって百分率として示される場合、コンタクトレンズが、その範囲にわたる全ての波長でその透過パーセントを示すことを理解されたい。本発明の目的のために、400~450nmの波長範囲にわたって80パーセントを超える透過を有する材料は、HEV光吸収材料ではない。
【0063】
「光安定性(photostable)」、「光安定性(photostability)」という用語、又は類似の表現は、1996年11月に発行されたInternational Conference on Harmonisation(ICH)of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use guideline,Q1B Photostability Testing of New Drug Substances and Productsの条件下で、透明なブリスターパックに包装されたとき、光に曝露した後に、コンタクトレンズ(HEV光吸収化合物を含有する)が、その可視光透過スペクトルにおいて実質的な変化を示さないことを意味する。好ましくは、曝露は、1.5192×106ルクス時の推定照度曝露(168.8時間の曝露時間)及び259.4ワット時/m2の推定紫外線照射曝露(16.2時間の曝露時間)を有するOption2光源を使用して、好ましくは25℃/Amb RHで制御される光安定性チャンバ内、ICH光安定性ガイドラインの下で実施される。ブリスターパック内でレンズを測定する場合、ブリスターパックは、露光中に光源からの照射を最大化するために箔側を下にして曝露される。曝露後、試験レンズのUV/Visスペクトルを収集し、対照レンズ(Q1B条件に供されなかったレンズ)と比較する。光安定性は、選択された波長範囲における対照レンズに対する試験レンズの平均透過の変化パーセントとして表わされ得る。変化は、対照レンズと試験レンズとの間の平均透過(選択された波長範囲にわたる)の差の絶対値として、対照レンズの平均透過(選択された波長範囲における)で割った値として計算され得る。本発明の目的のために、選択された波長範囲(例えば、380~450nm)にわたる平均透過の変化が20パーセント以下、又は15パーセント以下、又は10パーセント以下、又は7パーセント以下、又は5パーセント以下、又は2パーセント以下である場合、コンタクトレンズは、光安定性であると考えられる。測定は、例えば、-1.00ジオプターコンタクトレンズで行うことができる。
【0064】
「フォトクロミック化合物」という用語は、電磁放射線の特定の波長に曝露されると、材料内の光化学反応によって引き起こされる吸収特性(すなわち、色)を可逆的に変化させる材料を指す。例として、フォトクロミック化合物は、UV又はHEV光に曝露されたときに、電磁スペクトルの可視部分(例えば、約380nm~約760nmの波長範囲)における、5%以上、又は10%以上、又は20%パーセント以上の平均透過の可逆的変化を示し得る。「静的化合物」は、フォトクロミックではない材料であり、したがって、その材料は、その色を可逆的に変化させる光化学反応を受けない。
【0065】
別途記載のない限り、比率、百分率、部などは重量による。
【0066】
別途記載のない限り、例えば、「2~10」のような数字範囲は、その範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0067】
上記のように、本発明の一態様は、コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であるコンタクトレンズを提供する。
【0068】
コンタクトレンズは、400~409nmの波長範囲にわたって0パーセント~70パーセント、又は1~70パーセントの光を透過し得る。400~409nmの波長範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、少なくとも2パーセント、又は少なくとも3パーセント、又は少なくとも4パーセントであり得る。400~409nmの範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、最大60パーセント、又は最大50パーセント、又は最大40パーセント、又は最大30パーセント、又は最大20パーセントであり得る。
【0069】
コンタクトレンズは、200~279nmの波長範囲にわたって10パーセント以下の光を透過し得る。200~279nmの波長範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、5パーセント以下、又は1パーセント以下、又は1パーセント未満であり得る。
【0070】
コンタクトレンズは、280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光を透過し得る。280~399nmの波長範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、35パーセント以下、又は25パーセント以下、又は20パーセント以下、又は10パーセント以下、又は5パーセント以下、又は1パーセント以下であり得る。
【0071】
コンタクトレンズは、410~424nmの波長範囲にわたって少なくとも10パーセントの光を透過し得る。410~424nmの波長範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、少なくとも15パーセントであり得る。410~424nmの波長範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、最大95パーセント、最大85パーセント、最大75パーセント、又は最大65パーセントであり得る。
【0072】
コンタクトレンズは、425~449nmの波長範囲にわたって少なくとも50パーセントの光を透過し得る。425~449nmの範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、少なくとも60パーセントであり得る。
【0073】
コンタクトレンズは、450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過し得る。450~800nmの波長範囲にわたるコンタクトレンズの透過は、少なくとも85パーセントであり得る。
【0074】
コンタクトレンズは、400~409nmの波長範囲にわたって1~70パーセントの光、及び280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光を透過し得る。
【0075】
コンタクトレンズは、400~409nmの波長範囲にわたって1~70パーセントの光、280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光、及び450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過し得る。
【0076】
コンタクトレンズは、400~409nmの波長範囲にわたって1~70パーセントの光、280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光、410~424nmの波長範囲にわたって10~95パーセントの光、425~449nmの波長範囲にわたって少なくとも50パーセントの光、及び450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過し得る。
【0077】
コンタクトレンズは、ソフトヒドロゲルコンタクトレンズ、好ましくはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズで有り得る。前述の透過波長及び百分率は、様々な厚さのレンズ上で測定され得る。例えば、中心厚は、70~300ミクロン、又は80~230ミクロン、又は80~110ミクロン、又は90~110ミクロンであり得る。1つ又は2つ以上の高エネルギー可視吸収化合物の濃度は、前述の透過特性を達成するように調整され得る。例えば、濃度は、希釈剤を除く反応性混合物中の全ての成分の重量百分率に基づいて、少なくとも0.01パーセント、又は少なくとも0.1パーセント、又は少なくとも1パーセント、又は少なくとも2パーセント、かつ最大10パーセント又は最大5パーセントの範囲であり得る。典型的な濃度は、1~5パーセントの範囲であり得る。
【0078】
本発明のコンタクトレンズで使用するためのHEV光吸収化合物は、式Iの化合物であり得、
【0079】
【化1】
式中、
m及びnは、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Tは、結合、O、又はNRであり、
Yは、連結基であり、
P
gは、重合性基であり、
Rは、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2は、存在する場合、各出現時において、独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール(好ましくは、非置換フェニル又はアルキル若しくはハロで置換されたフェニル)、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、又はベンジルであり、R
3及びR
4は、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成する。式Iの化合物は、好ましくは、1つ又は2つのY-P
g基を含有する。より好ましくは、化合物は、1つのY-P
g基を含有する。
【0080】
I-1.式Iの化合物は、m及びnが独立して0若しくは1であるか、又は代替的に両方が0である式Iの化合物である、式I-1の化合物を含み得る。
【0081】
I-2.式I及びI-1の化合物は、mが1であり、かつR1がC1~C6アルキル、好ましくはエチル又はメチルである式I、又はI-1の化合物である、式I-2の化合物を含み得る。
【0082】
I-3.式I、I-1、及びI-2の化合物は、nが1であり、かつR2がC1~C6アルキル、好ましくはエチル又はメチルである式I、I-1、又はI-2の化合物である、式I-3の化合物を含み得る。
【0083】
I-4.式I、I-1、I-2、及びI-3の化合物は、RがH、又はC1~C6アルキルである式I、I-1、I-2、又はI-3の化合物である、式I-4の化合物を含み得る。好ましくは、基T中のRは、Hである。
【0084】
I-5.式I、I-1、I-2、I-3、及びI-4の化合物は、Pg(重合性基)が、各出現時において、独立して、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む式I、I-1、I-2、I-3、又はI-4の化合物である、式I-5の化合物を含み得る。重合性基により、本発明の化合物は、モノマー、架橋剤、及びコンタクトレンズの作製に一般に使用される他の成分と反応させたときに共有結合を形成することが可能になる。化合物と反応性混合物との適合性は、重合性基(及び連結基)の選択によって制御することができる。好ましい重合性基としては、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。より好ましい重合性基は、メタクリレートである。
【0085】
I-6.式I、I-1、I-2、I-3、I-4、及びI-5の化合物は、Y(連結基)が、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又は前述の基のいずれかの組み合わせである式I、I-1、I-2、I-3、I-4、又はI-5の化合物である、式I-6の化合物を含み得る。好ましい連結基としては、C1~C8アルキレン(例えば、エチレン又はプロピレン)、C1~C8オキサアルキレン、C1~C8アルキレン-アミド-C1~C8アルキレン、及びC1~C8アルキレン-アミン-C1~C8アルキレンが挙げられる。特に好ましいのは、C1~C8アルキレン、特にエチレン(-CH2CH2-)である。式Iの化合物中のTがOである場合、Oが結合している連結基の炭素原子が妨害されることが好ましい。例えば、TがOであり、Yがアルキレンである場合、好ましいアルキレンは-C(RH)2(CH-2)x-(式中、RHは、独立して、C1~C6アルキル(好ましくは独立してメチル又はエチル)であり、xは1~5である)である。
【0086】
I-7.式I、I-1、I-2、I-3、I-4、I-5、及びI-6の化合物は、Tが結合又はNR(好ましくはNH)である式I、I-1、I-2、I-3、I-4、I-5、又はI-6の化合物である、式I-7の化合物を含み得る。
【0087】
式Iの化合物は、式IIの化合物を含み得、
【0088】
【化2】
式中、
m及びnは、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Yは、連結基であり、
P
gは、重合性基であり、
Rは、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2は、存在する場合、各出現時において、独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール(好ましくは、非置換フェニル又はアルキル若しくはハロで置換されたフェニル)、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、又はベンジルであり、R
3及びR
4は、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成する。式IIの化合物は、好ましくは、1つ又は2つのY-P
g基を含有する。より好ましくは、化合物は、1つのY-P
g基を含有する。
【0089】
II-1.式IIの化合物は、m及びnが独立して0若しくは1であるか、又は代替的に両方が0である式IIの化合物である、式II-1の化合物を含み得る。
【0090】
II-2.式II及びII-1の化合物は、mが1であり、かつR1がC1~C6アルキル、好ましくはエチル又はメチルである式II、又はII-1の化合物である、式II-2の化合物を含み得る。
【0091】
II-3.式II、II-1、及びII-2の化合物は、nが1であり、かつR2がC1~C6アルキル、好ましくはエチル又はメチルである式II、II-1、又はII-2の化合物である、式II-3の化合物を含み得る。
【0092】
II-4.式II、II-1、II-2、及びII-3の化合物は、Rが各出現時において独立してH、又はC1~C6アルキルである式II、II-1、II-2、又はII-3の化合物である、式II-4の化合物を含み得る。好ましくは、Rは、各出現時において、Hである。好ましくは、基T中のRは、Hである。
【0093】
II-5.式II、II-1、II-2、II-3、及びII-4の化合物は、Pg(重合性基)が、各出現時において、独立して、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む式II、II-1、II-2、II-3、又はII-4の化合物である、式II-5の化合物を含み得る。重合性基により、本発明の化合物は、モノマー、架橋剤、及びポリマーデバイスの作製に一般に使用される他の成分と反応させたときに共有結合を形成することが可能になる。化合物と反応性混合物との適合性は、重合性基(及び連結基)の選択によって制御することができる。好ましい重合性基としては、(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。より好ましい重合性基は、メタクリレートである。
【0094】
II-6.式II、II-1、II-2、II-3、II-4、及びII-5の化合物は、Y(連結基)がI、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン(例えば、フェニレン)、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又は前述の基のいずれかの組み合わせである式II、II-1、II-2、II-3、II-4、又はII-5の化合物である、式II-6の化合物を含み得る。好ましい連結基としては、C1~C8アルキレン(例えば、エチレン又はプロピレン)、C1~C8オキサアルキレン、C1~C8アルキレン-アミド-C1~C8アルキレン、及びC1~C8アルキレン-アミン-C1~C8アルキレンが挙げられる。特に好ましいのは、C1~C8アルキレン、特にエチレン(-CH2CH2-)である。
【0095】
式Iの化合物の具体的な例としては、表1に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
【0097】
【0098】
本発明で使用するための高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物は、好ましくは光安定性である。したがって、HEV光吸収化合物を含有する本発明のコンタクトレンズは、対照レンズと比較して、ICH Q1B条件下での曝露後、380~450nmの波長範囲にわたって、その平均透過において、好ましくは、20%以下、代替的に15%以下、代替的に10%以下、代替的に7%以下、代替的に5%以下、又は代替的に2%以下の変化を示す。
【0099】
本発明のコンタクトレンズは、望ましい吸収特徴を提供するために、HEV光吸収化合物に加えて、他の吸収化合物を含んでもよい。例えば、好ましい組成物は、HEV光吸収化合物及びUVを吸収する化合物を含み得る。好適なUV吸収化合物は、当技術分野で既知であり、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又は任意のこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない、いくつかの部類に分類される。好ましい部類のUV吸収化合物は、Norbloc(2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール)などのベンゾトリアゾールである。
【0100】
好ましい組成物は、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレートと、ベンゾトリアゾール、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール)などのUV吸収化合物とを含む。
【0101】
式Iの化合物は、文献の方法を使用して当業者が調製することができる。例として、式Iの様々な化合物は、スキーム1及び関連する説明に示すように調製してもよい。これらの反応の例示的な試薬及び手順は、実施例に示される。
【0102】
【0103】
スキーム1は、本発明の例示的な化合物を調製するための方法を示す。このように、出発材料のカルボニル部分を反応性ジハライド中間体に変換し、これを、更に精製も分離もすることなく、活性メチレン化合物と更に反応させる。反応性混合物を、シアノメチルアミド誘導体との反応が完了するまで、空気及び水分から保護する。本発明の他の化合物は、試薬を適切に置換したスキーム1に示す手順と類似の手順を用いて、当業者によって調製され得る。
【0104】
式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物は、コンタクトレンズを形成するために反応性混合物中に含まれ得る。一般に、高エネルギー可視光吸収化合物は、典型的にはその溶解度の限度までの任意の量で存在することができる。例えば、化合物は、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.5~約5重量%、又は約0.75重量%~約4重量%の範囲の量で存在し得る。上限は、典型的には、反応性モノマー混合物中の化合物と他のコモノマー及び又は希釈剤との溶解度によって決定される。
【0105】
ハードコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズを含む様々なコンタクトレンズを調製してもよい。好ましくは、コンタクトレンズは、従来のヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲル配合物から作製され得るソフトコンタクトレンズである。トーリックヒドロゲルコンタクトレンズ又はトーリックシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどのトーリックコンタクトレンズによるコンタクトレンズ。このようなレンズは、乱視矯正を必要とする装用者の乱視を矯正するために使用してもよい。
【0106】
本発明のコンタクトレンズは、式Iの化合物などの1つ又は2つ以上の高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物と、所望の眼科用デバイスを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物(本明細書では、デバイス形成重合性化合物又はヒドロゲル形成重合性化合物とも呼ばれる)と、任意選択の成分と、を含有する、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物を含む。したがって、反応性混合物は、例えば、上述のような高エネルギー可視光吸収化合物に加えて、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、ポリアミドなどの湿潤剤、架橋剤、並びに希釈剤及び開始剤などの更なる成分のうちの1つ又は2つ以上を含み得る。
【0107】
親水性成分
親水性モノマーの好適なファミリーの例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニル尿素、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0108】
親水性(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドモノマーの非限定的な例としては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド)、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド)、N,N-ビス-2-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0109】
親水性モノマーはまた、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、ベタイン、及びこれらの混合物を含む、イオン性であってもよい。このような荷電モノマーの非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドプロパン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム、N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-、分子内塩(CBT)、1-プロパンアミニウム、N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-、分子内塩(SBT)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム、4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-、分子内塩、4-オキシド(9CI)(PBT)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、及びメタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0110】
親水性N-ビニルラクタムモノマー及びN-ビニルアミドモノマーの非限定的な例としては、N-ビニルピロリドン(NVP)、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-4-メチル-2-カプロラクタム、N-ビニル-3-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-4,5-ジメチル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド(NVA)、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、1-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-メチル-5-メチレン-2-ピロリドン、5-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-エチル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-メチル-3-メチレン-2-ピロリドン、5-エチル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-N-プロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-3-メチレン-2-ピロリドン、1-イソプロピル-5-メチレン-2-ピロリドン、N-ビニル-N-エチルアセトアミド、N-ビニル-N-エチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルイソプロピルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0111】
親水性O-ビニルカルバメートモノマー及びO-ビニルカーボネートモノマーの非限定的な例としては、N-2-ヒドロキシエチルビニルカルバメート及びN-カルボキシ-β-アラニンN-ビニルエステルが挙げられる。親水性ビニルカーボネートモノマー又はビニルカルバメートモノマーの更なる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている。親水性オキサゾロンモノマーは、米国特許第4,910,277号に開示されている。
【0112】
他の親水性ビニル化合物としては、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル(DEGVE)、アリルアルコール、及び2-エチルオキサゾリンが挙げられる。
【0113】
親水性モノマーはまた、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルアミドなどの重合性部分を有する、直鎖若しくは分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの統計的ランダム若しくはブロックコポリマーのマクロマー又はプレポリマーであってもよい。これらのポリエーテルのマクロマーは、1つの重合性基を有し、プレポリマーは、2つ又は3つ以上の重合性基を有し得る。
【0114】
本発明の好ましい親水性モノマーは、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物である。好ましい親水性モノマーとしては、DMA及びHEMAの混合物が挙げられる。他の好適な親水性モノマーは、当業者には明らかとなるであろう。
【0115】
一般に、反応性モノマー混合物中に存在する親水性モノマーの量に関して、特に制限はない。親水性モノマーの量は、含水量、透明性、湿潤性、タンパク質取り込みなどを含む、得られるヒドロゲルの所望の特徴に基づいて選択され得る。湿潤性は、接触角によって測定され得、望ましい接触角は、約100°未満、約80°未満、及び約60°未満である。親水性モノマーは、反応性モノマー混合物中の反応性成分の総重量に基づいて、例えば、約0.1~約100重量パーセントの範囲、代替的に約1~約80重量パーセントの範囲、代替的に約5~約65重量パーセントの範囲、代替的に約40~約60重量パーセントの範囲、又は代替的に約55~約60重量パーセントの範囲の量で存在し得る。
【0116】
シリコーン含有成分
本発明での使用に好適なシリコーン含有成分は、1つ又は2つ以上の重合性化合物を含み、各化合物は、独立して、少なくとも1つの重合性基、少なくとも1つのシロキサン基、及び重合性基(複数可)をシロキサン基(複数可)に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含む。シリコーン含有成分は、例えば、下記に定義される基などの1~220個のシロキサン繰り返し単位を含有してもよい。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1つのフッ素原子も含有し得る。
【0117】
シリコーン含有成分は、上で定義された1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0118】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、スチリル、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0119】
シリコーン含有成分は、独立して、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、又は前述の混合物である1つ又は2つ以上の重合性基、1つ又は2つ以上の任意選択で繰り返しシロキサン単位、及び重合性基をシロキサン単位に接続する1つ又は2つ以上の連結基を含み得る。
【0120】
式A.シリコーン含有成分は、式Aの1つ又は2つ以上の重合性化合物を含んでもよく、
【0121】
【化4】
式中、
少なくとも1つのR
Aは、式R
g-Lの基であり、式中、R
gは、重合性基であり、Lは、連結基であり、残りのR
Aは、各々独立して、
(a)R
g-L-、
(b)1つ又は2つ以上のヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC
1~C
16アルキル、
(c)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC
3~C
12シクロアルキル、
(d)1つ又は2つ以上のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、アミド、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボニル、アルコキシ、アミド、カルバメート、カーボネート、ハロ、フェニル、ベンジル、又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されているC
6~C
14アリール基、
(e)ハロ、
(f)アルコキシ、環状アルコキシ、又はアリールオキシ、
(g)シロキシ、
(h)ポリエチレンオキシアルキル、ポリプロピレンオキシアルキル、又はポリ(エチレンオキシ-コ-プロピレンオキシアルキル)などのアルキレンオキシ-アルキル又はアルコキシ-アルキレンオキシ-アルキル、あるいは
(i)アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、オキサ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、アルコキシ、アミド、カルバメート、ハロ又はこれらの組み合わせで任意選択で置換されている1~100個のシロキサン繰り返し単位を含む一価シロキサン鎖であり、
nは、0~500、又は0~200、又は0~100、又は0~20であり、nが0以外であるとき、nが表示値と同等のモードを有する分布であることが理解される。nが2以上であるとき、SiO単位は、同じ又は異なるR
A置換基を担持してもよく、異なるR
A置換基が存在する場合、n基は、ランダム又はブロック構成であってもよい。
【0122】
式Aにおいて、3つのRAは各々、重合性基を含んでもよく、代替的に2つのRAは各々、重合性基を含んでもよく、又は代替的に1つのRAは、重合性基を含んでもよい。
【0123】
本発明で使用に好適なシリコーン含有成分の例としては、表2に列挙する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。表2中の化合物がポリシロキサン基を含有する場合、このような化合物中のSiO繰り返し単位の数は、別途記載のない限り、好ましくは3~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~20である。
【0124】
【0125】
【0126】
好適なシリコーン含有成分の追加の非限定的な例を、表3に列挙する。別途記載のない限り、適用可能な場合、j2は、好ましくは1~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。j1及びj2を含有する化合物において、j1及びj2の合計は、好ましくは2~100、より好ましくは3~40、又は更により好ましくは3~15である。
【0127】
【0128】
【0129】
シリコーン含有成分の混合物を使用してもよい。例として、好適な混合物としては、4個及び15個のSiO繰り返し単位を含有するOH-mPDMSの混合物などの、異なる分子量を有するモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピルオキシ)-プロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-MPDMS)の混合物;異なる分子量を有するOH-mPDMS(例えば、4個及び15個の繰り返しSiO繰り返し単位を含有する)と、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)などのシリコーン系架橋剤との混合物;2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)と、mPDMS1000などのモノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)との混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0130】
本発明で使用するためのシリコーン含有成分は、約400~約4000ダルトンの平均分子量を有し得る。
【0131】
シリコーン含有成分(複数可)は、反応性混合物(希釈剤を除く)の、全ての反応性成分に基づいて、最大約95重量%、又は約10~約80重量%、又は約20~約70重量%の量で存在し得る。
【0132】
ポリアミド
反応性混合物は、少なくとも1つのポリアミドを含んでいてよい。本明細書で使用するとき、「ポリアミド」という用語は、アミド基を含有する繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーを指す。ポリアミドは、環状アミド基、非環状アミド基、及びこれらの組み合わせを含み得、当業者に既知の任意のポリアミドであってもよい。非環状ポリアミドは、ペンダント非環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。環状ポリアミドは、環状アミド基を含み、ヒドロキシル基との会合が可能である。
【0133】
好適な非環状ポリアミドの例としては、式G1及びG2の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0134】
【化5】
式中、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR
44)-であり、R
44は、C
1~C
3アルキル基であり、R
40は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C
1~C
4アルキル基から選択され、R
41は、H、直鎖又は分岐鎖の置換又は非置換C
1~C
4アルキル基、最大2個の炭素原子を有するアミノ基、最大4個の炭素原子を有するアミド基、及び最大2個の炭素基を有するアルコキシ基から選択され、R
42は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C
1~C
4アルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R
43は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C
1~C
4アルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R
40及びR
41の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下であり、R
42及びR
43の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下である。R
40及びR
41の炭素原子の数は、合計で6以下又は4以下であってよい。R
42及びR
43の炭素原子の数は、合計で6以下であってよい。本明細書で使用するとき、置換アルキル基は、アミン基、アミド基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、若しくはカルボキシル基、又はこれらの組み合わせで置換されているアルキル基を含む。
【0135】
R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C1~C2アルキル基から選択され得る。Xは、直接結合であってもよく、R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C1~C2アルキル基から選択され得る。R42及びR43は、独立して、H、置換又は非置換C1~C2アルキル基、メチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され得る。
【0136】
本発明の非環状ポリアミドは、式LV若しくは式LVIの繰り返し単位の大部分を含み得るか、又は非環状ポリアミドは、少なくとも約70モルパーセント、及び少なくとも80モルパーセントを含む、式G若しくは式G1の繰り返し単位の少なくとも50モルパーセントを含み得る。式G及び式G1の繰り返し単位の具体的な例としては、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチル-プロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチル尿素、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、並びに式G2及びG3の非環状アミドから誘導される繰り返し単位が挙げられる。
【0137】
【0138】
環状ポリアミドを形成するために使用され得る好適な環状アミドの例としては、α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、及びε-ラクタムが挙げられる。好適な環状ポリアミドの例としては、式G4の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0139】
【化7】
式中、R
45は、水素原子又はメチル基であり、fは、1~10の数であり、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR
46)-であり、R
46は、C
1~C
3アルキル基である。式LIX中、fは、7、6、5、4、3、2、又は1を含む、8以下であり得る。式G4中、fは、5、4、3、2、又は1を含む、6以下であり得る。式G4中、fは、2、3、4、5、6、7、又は8を含む、2~8であり得る。式LIX中、fは、2又は3であり得る。Xが直接結合のとき、fは、2であり得る。このような事例において、環状ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)であり得る。
【0140】
本発明の環状ポリアミドは、式G4の繰り返し単位の50モルパーセント以上を含んでもよく、又は環状ポリアミドは、少なくとも70モルパーセント、及び少なくとも80モルパーセントを含む、式G4の繰り返し単位の少なくとも50モルパーセントを含み得る。
【0141】
ポリアミドはまた、環状アミド及び非環状アミドの両方の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。追加の繰り返し単位は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、他の親水性モノマー、及びシロキサン置換(メタ)アクリレートから選択されるモノマーから形成され得る。好適な親水性モノマーとして列挙されるモノマーのいずれも、追加の繰り返し単位を形成するためにコモノマーとして使用され得る。ポリアミドを形成するために使用され得る追加のモノマーの具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。イオン性モノマーも含まれ得る。イオン性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン(VINAL、CAS#148969-96-4)、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドペンタン酸(ACA2)、3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸(AMBA)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(Q塩又はMETAC)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩(CBT、カルボキシベタイン、CAS79704-35-1)、1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-,分子内塩(SBT、スルホベタイン、CAS80293-60-3)、3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム,4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-,分子内塩,4-オキシド(9CI)(PBT、ホスホベタイン、CAS163674-35-9、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3-(ジメチル(4-ビニルベンジル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート(DMVBAPS)、3-((3-アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(AMPDAPS)、3-((3-メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAMPDAPS)、3-((3-(アクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(APDAPS)、メタクリロイルオキシ)プロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート(MAPDAPS)が挙げられる。
【0142】
反応性モノマー混合物は、非環状ポリアミド及び環状ポリアミドの両方又はこれらのコポリマーを含んでもよい。非環状ポリアミドは、本明細書に記載の非環状ポリアミドのいずれか又はこれらのコポリマーであり得、環状ポリアミドは、本明細書に記載の環状ポリアミドのいずれか又はこれらのコポリマーであり得る。ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide、PVMA)、ポリジメチルアクリルアミド(polydimethylacrylamide、PDMA)、ポリビニルアセトアミド(polyvinylacetamide、PNVA)、ポリ(ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリアクリルアミド、並びにこれらのコポリマー及び混合物の群から選択され得る。ポリアミドは、PVP(例えば、PVP K90)とPVMA(例えば、約570KDaのMwを有する)の混合物であってよい。
【0143】
反応性混合物中の全てのポリアミドの総量は、あらゆる場合において、反応性モノマー混合物の反応性成分の総重量に基づいて、1重量パーセント~約15重量パーセントの範囲、及び約5重量パーセント~約15重量パーセントの範囲を含む、1重量パーセント~約35重量パーセントの範囲であり得る。
【0144】
理論に束縛されるものではないが、シリコーンヒドロゲルと共に使用されるとき、ポリアミドは内部湿潤剤として機能する。本発明のポリアミドは、非重合性であってもよく、この場合、半相互貫入ネットワークとしてシリコーンヒドロゲル内に組み込まれる。ポリアミドは、シリコーンヒドロゲル内に封入されるか、又は物理的に保持される。代替的に、本発明のポリアミドは、例えば、ポリアミドマクロマー又はプレポリマーとして重合性であり得、この場合、シリコーンヒドロゲル内に共有結合的に組み込まれる。重合性及び非重合性のポリアミドの混合物もまた使用され得る。
【0145】
ポリアミドが反応性モノマー混合物内に組み込まれているとき、ポリアミドは、少なくとも100,000ダルトン、約150,000超、約150,000~約2,000,000ダルトン、約300,000ダルトン~約1,800,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。反応性モノマー混合物と相溶性である場合、高分子量ポリアミドを使用することができる。
【0146】
架橋剤
一般に、架橋モノマー、多官能性マクロマー、及びプレポリマーとも呼ばれる1つ又は2つ以上の架橋剤を反応性混合物に添加することが望ましい。架橋剤は、二官能性架橋剤、三官能性架橋剤、四官能性架橋剤、及びこれらの混合物から選択されてもよく、これにはシリコーン含有架橋剤及び非シリコーン含有架橋剤が含まれる。非シリコーン含有架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、トリアリルシアヌレート(TAC)、グリセロールトリメタクリレート、メタクリルオキシエチルビニルカーボネート(HEMAVc)、アリルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、及びポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられ、ポリエチレングリコールは、最大約5000ダルトンの分子量を有する。架橋剤は、通常の量、例えば、反応性配合物100グラム当たり約0.000415~約0.0156モルで反応性混合物中に用いられる。代替的に、親水性モノマー及び/又はシリコーン含有成分が分子設計により、又は不純物のために多官能性である場合、反応性混合物への架橋剤の添加は、任意選択である。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への追加の架橋剤の添加を必要としない親水性モノマー及びマクロマーの例としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドでエンドキャップされたポリエーテルが挙げられる。他の架橋剤は当業者に既知となり、本発明のシリコーンヒドロゲルを作製するために使用され得る。
【0147】
配合物中の他の反応性成分のうちの1つ又は2つ以上に対して同様の反応性を有する架橋剤を選択することが望ましい場合がある。場合によっては、得られるシリコーンヒドロゲルのいくらかの物理的、機械的、又は生物学的特性を制御するために、異なる反応性を有する架橋剤の混合物を選択することが望ましい場合がある。シリコーンヒドロゲルの構造及び形態は、使用される希釈剤(複数可)及び硬化条件によっても影響を受け得る。
【0148】
弾性率を更に増加させ、引張強度を維持するために、マクロマー、架橋剤、及びプレポリマーを含む、多官能性シリコーン含有成分も含まれ得る。シリコーン含有架橋剤は、単独で、又は他の架橋剤と組み合わせて使用され得る。架橋剤として作用することができ、存在する場合に反応性混合物への架橋モノマーの添加を必要としないシリコーン含有成分の例としては、α,ω-ビスメタクリルオキシプロピルポリジメチルシロキサンが挙げられる。別の例は、ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(ac-PDMS)である。
【0149】
硬い化学構造、及びフリーラジカル重合を受ける重合性基を有する架橋剤もまた使用され得る。好適な硬い構造の非限定的な例としては、1,4-フェニレンジアクリレート、1,4-フェニレンジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス[4-(2-アクリルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、及び4-ビニルベンジルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせなど、フェニル及びベンジル環を含む架橋剤が挙げられる。硬い架橋剤は、全反応性成分の総重量に基づいて、約0.5~約15、又は約2~10、3~7の量で含まれ得る。本発明のシリコーンヒドロゲルの物理的及び機械的特性は、反応性混合物中の成分を調整することによって特定の用途に最適化され得る。
【0150】
シリコーン架橋剤の非限定的な例としては、式E(及びその下位式)の化合物及び表3に示される多官能性化合物などの、上述の多官能性シリコーン含有成分も含む。
【0151】
更なる構成成分
反応性混合物は、希釈剤、開始剤、UV吸収剤、可視光吸収剤、フォトクロミック化合物、医薬品、栄養補助剤、抗菌物質、着色剤、顔料、共重合性染料、非重合性染料、離型剤、及びこれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されない、追加成分を含有し得る。
【0152】
シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の部類には、2~20個の炭素原子を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。希釈剤は、一級、二級及び三級アルコールであり得る。
【0153】
一般に、反応性成分は、希釈剤中で混合して、反応性混合物を形成する。好適な希釈剤は、当技術分野で既知である。シリコーンヒドロゲルについて、好適な希釈剤は、国際公開第03/022321号及び米国特許第6020445号に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
シリコーンヒドロゲル反応性混合物用の好適な希釈剤の部類には、2~20個の炭素を有するアルコール、一級アミンから誘導される10~20個の炭素原子を有するアミド、及び8~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。一級及び三級アルコールが使用され得る。好ましい部類は、5~20個の炭素を有するアルコール及び10~20個の炭素原子を有するカルボン酸が挙げられる。
【0155】
使用され得る具体的な希釈剤には、1-エトキシ-2-プロパノール、ジイソプロピルアミノエタノール、イソプロパノール、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-デカノール、1-ドデカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、tert-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、エタノール、2-エチル-1-ブタノール、(3-アセトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、1-tert-ブトキシ-2-プロパノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、tert-ブトキシエタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、2-(ジイソプロピルアミノ)エタノール、これらの混合物などが挙げられる。アミド希釈剤の例としては、N,N-ジメチルプロピオンアミド及びジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0156】
好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、エタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、デカン酸、オクタン酸、ドデカン酸、これらの混合物などが挙げられる。
【0157】
より好ましい希釈剤には、3,7-ジメチル-3-オクタノール、1-ドデカノール、1-デカノール、1-オクタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-オクタノール、1-ドデカノール、3-メチル-3-ペンタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、tert-ブタノール、2-ブタノール、1-ブタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-オクチル-1-ドデカノール、これらの混合物などが挙げられる。
【0158】
希釈剤が存在する場合、一般に、希釈剤の存在量に関して、特に制限はない。希釈剤を使用するとき、希釈剤は、(反応性配合物及び非反応性配合物を含む)反応性混合物の総重量に基づいて、約5~約50重量パーセントの範囲及び約15~約40重量パーセントの範囲を含む、約2~約70重量パーセントの範囲の量で存在し得る。希釈剤の混合物を使用してもよい。
【0159】
重合開始剤は、反応性混合物中で使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、イソ-プロピルパーカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどの、中程度の高温でフリーラジカルを発生させるもの、並びに芳香族α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、及び三級アミン+ジケトン、これらの混合物などの光開始剤系のうちの少なくとも1つを挙げることができる。光開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure 819)、2,4,6-トリメチルベンジルジフェニルホス-フィンオキシド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾインメチルエステル、並びにカンファーキノンとエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエートとの組み合わせがある。
【0160】
市販の(IGM Resins B.V.,The Netherlands製の)可視光開始剤系としては、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1700、Irgacure(登録商標)1800、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)1850、及びLucrin(登録商標)TPO開始剤が挙げられる。市販の(IGM Resins B.V.製の)UV光開始剤としては、Darocur(登録商標)1173及びDarocur(登録商標)2959が挙げられる。使用され得るこれらの及び他の光反応開始剤は、Volume III,Photoinitiators for Free Radical Cationic&Anionic Photopolymerization,2nd Edition by J.V.Crivello&K.Dietliker;edited by G.Bradley;John Wiley and Sons;New York;1998.に開示されている。開始剤は、反応性混合物の光重合を開始するのに有効な量、例えば、反応性モノマー混合物の100部当たり約0.1~約2重量部で、反応性混合物中で使用される。反応性混合物の重合は、使用する重合開始剤に応じて熱又は可視光若しくは紫外光又は他の手段を適切に選択して使用して開始することができる。代替的に、開始は、光開始剤なしで電子ビームを使用して実施され得る。しかしながら、光開始剤が使用されるとき、好ましい開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819)、又は1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド(DMBAPO)との組み合わせなどの、ビスアシルホスフィンオキシドである。
【0161】
本発明の眼科用デバイスを作製するための反応性混合物は、高エネルギー可視光吸収化合物に加えて、上述の重合性化合物及び任意選択の成分のいずれかを含み得る。
【0162】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、親水性成分と、を含み得る。
【0163】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、メタクリル酸、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、を含み得る。HEMA及びメタクリル酸の混合物が好ましい。
【0164】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、親水性成分と、シリコーン含有成分と、を含み得る。
【0165】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、親水性成分と、式Aの化合物を含むシリコーン含有成分と、を含み得る。
【0166】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、DMA、NVP、HEMA、VMA、NVA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、式Aの化合物などのシリコーン含有成分と、内部湿潤剤と、を含み得る。
【0167】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、DMA、HEMA、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)、モノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの混合物から選択されるシリコーン含有成分と、湿潤剤(好ましくはPVP又はPVMA)と、を含み得る。親水性成分については、DMA及びHEMAの混合物が好ましい。シリコーン含有成分については、SiMAA及びmPDMSの混合物が好ましい。
【0168】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、DMA及びHEMAの混合物を含む親水性成分と、2~20個の繰り返し単位を有するOH-mPDMSの混合物(好ましくは4個及び15個の繰り返し単位の混合物)を含むシリコーン含有成分と、を含み得る。好ましくは、反応性混合物は、ac-PDMSなどのシリコーン含有架橋剤を更に含む。また好ましくは、反応性混合物は、湿潤剤(好ましくはDMA、PVP、PVMA、又はこれらの混合物)を含有する。
【0169】
好ましい反応性混合物は、式Iの化合物などの高エネルギー可視光吸収化合物と、約1~約15重量%の少なくとも1つのポリアミド(例えば、非環状ポリアミド、環状ポリアミド、又はこれらの混合物)と、4~8個のシロキサン繰り返し単位を有する少なくとも1つの第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは4~8であり、好ましくはnは4である))と、10~200個、又は10~100個、又は10~50個、又は10~20個のシロキサン繰り返し単位を有する単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)である少なくとも1つの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、OH-mPDMS(式中、nは10~200、又は10~100、又は10~50、又は10~20であり、好ましくはnは15である)と、約5~約35重量%の少なくとも1つの親水性モノマーと、任意選択で、10~200個又は10~100個のシロキサン繰り返し単位を有する多官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)(例えば、ac-PDMS)と、を含み得る。好ましくは、第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)及び第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)は、0.4~1.3又は0.4~1.0の第1の単官能性ヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントの第2のヒドロキシル置換ポリ(二置換シロキサン)の重量パーセントに対する比を提供するような濃度で存在する。
【0170】
前述の反応性混合物は、1つ又は2つ以上の開始剤、内部湿潤剤、架橋剤、他のUV又はHEV吸収剤、及び希釈剤などであるがこれらに限定されない、任意選択の成分を含有していてもよい。
【0171】
ヒドロゲルの硬化及びレンズの製造
反応性混合物は、振とう又は撹拌などの当技術分野で既知の方法のいずれかによって形成され、既知の方法によるポリマー物品又はデバイスの形成に使用され得る。反応性成分は、反応性混合物を形成するために、希釈剤を含むか又は含まないかのいずれかで一緒に混合される。
【0172】
例えば、眼科用デバイスは、反応性成分及び任意選択で希釈剤(複数可)を重合開始剤と混合し、適切な条件で硬化させて、後で旋盤加工、切削などによって適切な形状に成形され得る生産物を形成することによって調製することができる。代替的に、反応性混合物は、成形型に入れた後に硬化させ、適切な物品にすることができる。
【0173】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズなどの成形眼科用デバイスを作製する方法は、反応性モノマー混合物を調製することと、反応性モノマー混合物を第1の成形型に移すことと、第2の成形型を、反応性モノマー混合物で充填された第1の成形型の上に配置することと、フリーラジカル共重合によって反応性モノマー混合物を硬化させて、コンタクトレンズの形状でシリコーンヒドロゲルを形成することと、を含み得る。
【0174】
反応性混合物は、回転成形及び静的成形を含む、コンタクトレンズの生成において、反応性混合物を成形するための任意の既知のプロセスを介して硬化されてもよい。回転成形方法は、米国特許第3,408,429号及び同第3,660,545号に開示され、静的成形方法は、米国特許第4,113,224号及び同第4,197,266号に開示されている。本発明のコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルの直接成型により形成してもよく、これは経済的であり、含水レンズの最終形状を正確に制御できる。この方法では、反応性混合物は、所望の最終シリコーンヒドロゲルの形状を有する成形型内に配置され、反応性混合物は、モノマーが重合する条件に供され、それにより所望の最終生成物のおよその形状のポリマーを生成する。
【0175】
硬化後、レンズを抽出に供して、未反応成分を除去し、レンズをレンズ成形型から離型してもよい。抽出は、アルコールなどの有機溶媒など、従来の抽出流体を使用して行われてもよいし、又は水溶液を使用して抽出してもよい。
【0176】
水溶液は、水を含む溶液である。本発明の水溶液は、少なくとも約20重量パーセントの水、又は少なくとも約50重量パーセントの水、又は少なくとも約70重量パーセントの水、又は少なくとも約95重量パーセントの水を含み得る。水溶液はまた、無機塩又は離型剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬成分及び栄養補助剤、これらの組み合わせなどの追加の水溶性配合物を含んでもよい。離型剤は、化合物又は化合物の混合物であり、これは、水と組み合わせると、離型剤を含まない水溶液を使用してコンタクトレンズを離型するのに必要な時間と比較した場合、成形型からコンタクトレンズを離型するのに必要な時間が減少する。水溶液は、精製、再利用又は特別な廃棄処理などの特別な取り扱いを必要としない場合がある。
【0177】
抽出は、例えば、水溶液中にこのレンズを浸漬すること、又は水溶液の流れにレンズをさらすことを介して行なうことができる。抽出はまた、例えば、水溶液を加熱することと、水溶液を撹拌することと、水溶液の離型剤のレベルを、レンズの離型が生じるのに十分なレベルにまで増大させることと、レンズの機械的撹拌又は超音波撹拌と、少なくとも1つの浸出助剤又は抽出助剤を水溶液に組み込んで、未反応成分をレンズから適切に除去することを容易にするのに十分なレベルにすることと、のうちの1つ又は2つ以上を含んでもよい。熱、振動又はその両方の追加の有無にかかわらず、前述は、バッチプロセス又は連続プロセスで実施されてもよい。
【0178】
浸出及び離型を促進するために、物理的撹拌の適用が望ましい場合がある。例えば、レンズが付着しているレンズ成形型部分は、水溶液中で振動させるか又は前後運動させることができる。他の方法には、超音波を水溶液に通すことが含まれてもよい。
【0179】
レンズは、限定されないが高圧蒸気処理などの既知の手段により殺菌してもよい。
【0180】
上記のように、好ましい眼科用デバイスは、コンタクトレンズであり、より好ましくはソフトヒドロゲルコンタクトレンズである。本明細書に記載の透過波長及び百分率は、例えば、実施例に記載される方法を使用して、様々な厚さのレンズ上で測定され得る。例として、ソフトコンタクトレンズにおける透過スペクトルを測定するための好ましい中心厚は、80~100ミクロン、又は90~100ミクロン、又は90~95ミクロンであり得る。典型的には、例えば、4nmの器具スリット幅を使用して、レンズの中心で測定を行ってよい。様々な濃度の1つ又は2つ以上の重合性高エネルギー可視光吸収化合物を使用して、上述の透過特徴を達成してもよい。例えば、濃度は、希釈剤を除く反応性混合物中の全ての成分の重量百分率に基づいて、少なくとも1パーセント、又は少なくとも2パーセント、かつ最大10パーセント又は最大5パーセントの範囲であってよい。典型的な濃度は、3~5パーセントの範囲であってよい。
【0181】
本発明によるシリコーンヒドロゲル眼科用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)は、好ましくは、以下の特性を示す。全ての値の前には「約」が付き、このデバイスは、列挙する特性の任意の組み合わせを有することができる。特性は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許付与前公開第2018/0037690号に記載されているように、当業者に既知の方法によって決定することができる。
水濃度%:少なくとも20%、又は少なくとも25%かつ最大80%、又は最大70%
ヘイズ:30%以下、又は10%以下
前進動的接触角(Wilhelmyプレート法):100°以下、又は80°以下、又は50°以下
引張弾性率(psi):150以下、又は135以下、120以下、又は80~135
酸素透過性(Dk、バーラー):少なくとも60バーラー、又は少なくとも80、又は少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも200
破断伸び:少なくとも100
【0182】
イオン性シリコンヒドロゲルに関しては、(前述したものに加えて)以下の特性もまた好ましい場合がある:
リゾチーム取り込み(μg/レンズ):少なくとも100、又は少なくとも150、又は少なくとも500、又は少なくとも700
ポリクオタニウム1(PQ1)取り込み(%):15以下、又は10以下、又は5以下。
【0183】
本発明のコンタクトレンズを使用して、コンタクトレンズ装用者における1つ又は2つ以上の視覚属性を改善してもよい。視覚属性は、光ストレス回復時間であり得る。視覚属性は、グレア不快感であり得る。視覚属性は、グレア減能閾値であり得る。視覚属性は、異色コントラスト閾値であり得る。視覚属性は、ハローサイズであり得る。視覚属性は、スターバーストサイズであり得る。視覚属性は、光散乱であり得る。視覚属性は、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上であり得る。視覚属性の改善に関する更なる詳細は、以下の実施例に提供される。
【0184】
以下の項目は、本開示の非限定的な実施形態を列挙する。
1. コンタクトレンズ装用者における視覚属性を改善するための方法であって、コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視(HEV)光吸収化合と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であるコンタクトレンズを、コンタクトレンズ装用者に提供することを含み、視覚属性が、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上から選択される、方法。
2. コンタクトレンズが、400~409nmの波長範囲にわたって0パーセント~70パーセントの光を透過する、項目1に記載の方法。
3. コンタクトレンズが、280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光を透過する、項目1又は2に記載の方法。
4. コンタクトレンズが、450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過する、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
5. コンタクトレンズが、光安定性である、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
6. 高エネルギー可視光吸収化合物が、静的化合物である、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
7. 高エネルギー可視光吸収化合物が、式Iの化合物を含み、
【0185】
【化8】
式中、
m及びnが、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Tが、結合、O、又はNRであり、
Yが、連結基であり、
P
gが、重合性基であり、
Rが、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2が、存在する場合、各出現時において、独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール(好ましくは、非置換フェニル又はアルキル若しくはハロで置換されたフェニル)、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、又はベンジルであり、R
3及びR
4が、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成する、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。式Iの化合物は、好ましくは、1つ又は2つのY-P
g基を含有する。より好ましくは、化合物は、1つのY-P
g基を含有する。
8. m及びnが、各々独立して、0又は1である、項目7に記載の方法。
9. Yが、各出現時において、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせである、項目7又は8に記載の方法。
10. P
gが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、項目7~9のいずれか一項に記載の方法。
11. 光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱から選択される少なくとも1つの視覚属性を改善するためのコンタクトレンズの使用であって、コンタクトレンズが、コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である、使用。
12. コンタクトレンズが、400~409nmの波長範囲にわたって0パーセント~70パーセントの光を透過する、項目11に記載の使用。
13. コンタクトレンズが、280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光を透過する、項目11又は12に記載の使用。
14. コンタクトレンズが、450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過する、項目11~13のいずれか一項に記載の使用。
15. コンタクトレンズが、光安定性である、項目11~14のいずれか一項に記載の使用。
16. 高エネルギー可視光吸収化合物が、静的化合物である、項目11~15のいずれか一項に記載の使用。
17. 高エネルギー可視光吸収化合物が、式Iの化合物を含み、
【0186】
【化9】
式中、
m及びnが、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Tが、結合、O、又はNRであり、
Yが、連結基であり、
P
gが、重合性基であり、
Rが、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2が、存在する場合、各出現時において、独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール(好ましくは、非置換フェニル又はアルキル若しくはハロで置換されたフェニル)、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、又はベンジルであり、R
3及びR
4が、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成する、項目11~16のいずれか一項に記載の使用。式Iの化合物は、好ましくは、1つ又は2つのY-P
g基を含有する。より好ましくは、化合物は、1つのY-P
g基を含有する。
18. m及びnが、各々独立して、0又は1である、項目17に記載の使用。
19. Yが、各出現時において、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせである、項目17又は18に記載の使用。
20. P
gが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、項目17~19のいずれか一項に記載の使用。
21. コンタクトレンズであって、
コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、
高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であり、コンタクトレンズが、トーリックコンタクトレンズである、コンタクトレンズ。
22. 400~409nmの波長範囲にわたって0パーセント~70パーセントの光を透過する、項目21に記載のコンタクトレンズ。
23. 280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光を透過する、項目21又は22に記載のコンタクトレンズ。
24. 450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過する、項目21~23のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
25. 光安定性である、項目21~24のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
26. 高エネルギー可視光吸収化合物が、静的化合物である、項目21~25のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
27. 高エネルギー可視光吸収化合物が、式Iの化合物を含み、
【0187】
【化10】
式中、
m及びnが、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Tが、結合、O、又はNRであり、
Yが、連結基であり、
P
gが、重合性基であり、
Rが、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2が、存在する場合、各出現時において、独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール(好ましくは、非置換フェニル又はアルキル若しくはハロで置換されたフェニル)、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、又はベンジルであり、R
3及びR
4が、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成する、項目21~26のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
28. m及びnが、各々独立して、0又は1である、項目27に記載のコンタクトレンズ。
29. Yが、各出現時において、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせである、項目27又は28に記載のコンタクトレンズ。
30. P
gが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、項目27~29のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
31. UV吸収化合物を更に含む、項目21~30のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
32. UV吸収化合物が、式Iの化合物、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又はこれらの混合物を含む、項目31に記載のコンタクトレンズ。
33. コンタクトレンズを作製するのに好適な重合性化合物が、親水性成分、シリコーン含有成分、又はこれらの混合物を含む、項目21~32のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
【0188】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例にて詳細に記述する。
【実施例】
【0189】
試験方法
溶液中の化合物の紫外線可視スペクトルは、Perkin Elmer Lambda 45又はAgilent Cary 6000i UV/VIS走査型分光計で測定した。使用前に、器具を少なくとも30分間熱平衡化させた。Perkin Elmer器具では、走査範囲は200~800nmであり、走査速度は、毎分960nmであり、スリット幅は4nmであり、モードは透過又は吸光度に設定し、ベースライン補正を選択した。Cary器具では、走査範囲は200~800nmであり、走査速度は600nm/分であり、スリット幅は2nmであり、モードは透過又は吸光度であり、ベースライン補正を選択した。自動ゼロ関数を使用してサンプルを分析する前に、ベースライン補正を実行した。
【0190】
請求された組成物から部分的に形成されたコンタクトレンズの紫外線可視スペクトルは、パッキング溶液を使用し、Perkin Elmer Lambda 45 UV/VIS又はAgilent Cary 6000i UV/VIS走査型分光計で測定した。使用前に、器具を少なくとも30分間熱平衡化させた。Perkin Elmer器具では、走査範囲は200~800nmであり、走査速度は、毎分960nmであり、スリット幅は4nmであり、モードを透過に設定し、ベースライン補正を選択した。ベースライン補正は、プラスチック2ピース型レンズホルダー及び同じ溶媒が含有されているキュベットを使用して実行した。これらの2ピース型コンタクトレンズホルダーは、入射光ビームが横断する位置にサンプルを石英キュベット内に保持するように設計した。参照キュベットはまた、2ピース型ホルダーも収容していた。サンプルの厚さが一定であることを確実にするために、全てのレンズを同一の成形型を使用して作製した。コンタクトレンズの中心厚は、電子式厚さ計を使用して測定した。報告された中心厚及び透過スペクトルパーセントは、3つの個々のレンズデータを平均化することによって得られる。
【0191】
キュベットの外面が完全に清潔で乾燥し、キュベット内に気泡が存在しないことを確実にすることが重要である。参照キュベット及びそのレンズホルダーが一定のままであり、全てのサンプルが同じサンプルキュベット及びそのレンズホルダーを使用するときに、測定の再現性が改善され、キュベットの両方が器具に適切に挿入されることを確実にする。
【0192】
以下の略語は、実施例及び図面を通して使用され、以下の意味を有する。
BC:バック又はベースカーブプラスチック成形型
FC:フロントカーブプラスチック成形型
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド(Jarchem)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Bimax)
PVP:ポリ(N-ビニルピロリドン)(ISP Ashland)
PDMA:ポリジメチルアクリルアミド
PVMA:ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide)
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
TEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
Irgacure 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(BASF又はCiba Specialty Chemicals)
Irgacure 1870:ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとのブレンド(BASF又はCiba Specialty Chemicals)
mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Mn=800~1000ダルトン)(Gelest)
HO-mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピルオキシ)-プロピル末端ポリジメチルシロキサン(Mn=400~1500ダルトン)(Ortec又はDSM-Polymer Technology Group)
ac-PDMS:ビス-3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(Evonik製のTegomer V-Si 2250)
Blue HEMA:米国特許第5,944,853号に記載されたような、1-アミノ-4-[3-(4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)-6-クロロトリアジン-2-イルアミノ)-4-スルホフェニルアミノ]アントラキノン-2-スルホン酸
Da:ダルトン又はg/モル
kDa:キロダルトン、又は1,000ダルトンに等しい原子質量単位
SiMAA:2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(Toray)、又は3-(3-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)プロポキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
RB247:1,4-ビス[2-メタクリルオキシエチルアミノ]-9,10-アントラキノン
BHT:-ブチル化ヒドロキシトルエン
D3O:3,7-ジメチル-3-オクタノール(Vigon)
DIW:脱イオン水
MeOH:メタノール
IPA:イソプロピルアルコール
HCl:塩酸
CH2Cl2又はDCM:塩化メチレン又はジクロロメタン
SOCl2:塩化チオニル
mCPBA:m-クロロ過安息香酸
EtOAc:酢酸エチル
NH2CH2CH2OH:エタノールアミン又は2-アミノエタノール
Norbloc:2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Janssen)
PP:プロピレンのホモポリマーであるポリプロピレン
TT:水添スチレンブタジエンブロックコポリマーであるTuftec(Asahi Kasei Chemicals)
Z:ポリシクロオレフィン熱可塑性ポリマーであるZeonor(Nippon Zeon Co Ltd)
TL03光:Phillips TLK 40W/03電球
LED:発光ダイオード
1N NMR:プロトン核磁気共鳴分光法
UV-VIS:紫外線-可視分光法
L:リットル
mL:ミリリットル
Equiv.又はeq.:当量
kg:キログラム
g:グラム
mol:モル
mmol:ミリモル
min:分
nm:ナノメートル
TLC:薄層クロマトグラフィー
ホウ酸塩緩衝パッキング溶液:18.52グラム(300mmol)のホウ酸、3.7グラム(9.7mmol)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197mmol)の硫酸ナトリウムを、十分な脱イオン水に溶解させて、2リットルのメスフラスコを満たした。
【0193】
実施例1-スキーム2に示すような2-(2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート(A)及び2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート(B)の合成
【0194】
【化11】
シアン酢酸メチル(40グラム、0.4037モル)及び25mLのジクロロメタンを、窒素環境下で還流凝縮器を備えた3つ口の500mL丸底フラスコ内において撹拌した。2-アミノエタノール(23.8グラム、0.3897モル、約0.97当量)を添加漏斗を介して溶液に添加した後、温度が上昇し、塩化メチレンが還流し始めた。発熱が止まった後、外部熱を印加して、合計2時間にわたって穏やかな還流を継続した後、薄層クロマトグラフィーによってエタノールアミンは観察されなかった。
【0195】
反応はまた、室温で実施してもよく、数時間以内に完了する。
【0196】
混合物を室温まで冷却し、減圧下で塩化メチレンを全て蒸発させた。残留油状物を50mLの酢酸エチルで3回洗浄して、未反応の出発材料及び非極性不純物を除去した。次いで、残留酢酸エチルを減圧下で除去し、得られた油状物を、更に精製することなくアシル化に使用した。
【0197】
粗N-2-ヒドロキシエチルアセトアミド誘導体を、還流凝縮器、添加漏斗、及び磁気撹拌子を備えた3つ口丸底フラスコ内の、40グラムのピリジン(約0.5モル)を含有するジクロロメタン150mLに溶解させた。フラスコを氷浴に浸漬し、約0℃まで冷却した。塩化メタクリロイル(45.76g、約0.44モル)を添加漏斗から滴下し、系を絶えず撹拌しながら、得られた反応性混合物を室温まで加温した。メタノール(20mL)をフラスコに添加して、任意の未反応の塩化メタクリロイルをクエンチした。減圧下でロータリーエバポレーションによって揮発性成分を除去し、粗生成物を800mLの希HCl水溶液に溶解させた。得られた水溶液を分液漏斗内において100mLのヘキサンで3回抽出して、任意の非極性不純物を除去した。有機層を廃棄した。塩化ナトリウムを水層に添加し、次いで、これを300mLの酢酸エチルで3回抽出した。約50ミリグラムのBHTを、合わせた有機画分に阻害剤として加え、減圧下でロータリーエバポレーションにより酢酸エチルを除去した。溶媒除去中に粗生成物が溶液から結晶化した。約100mLの酢酸エチルがフラスコ内に残っていたとき、250mLのヘキサンを添加し、フリットガラス漏斗を使用して真空濾過により粗生成物を単離した。薄層クロマトグラフィーは、単一の化合物の存在を示した。濾過ケーキを150mLのヘキサンで2回洗浄し、次いで、40℃で真空乾燥し、53グラム(約70%収率)の2-(2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート(A)を得た。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ1.93(3H,s,CH3)、3.36(2H,s,CNCH2)、3.60(2H,dd,CH2NH)、4.26(2H,t,CH2OC=O)、5.59(1H,m,vinylic)、6.11(1H,bs,vinylic)、6.52(1H,bs,NH)。
【0198】
9H-チオキサンテン-9-オン(2.12グラム、0.01モル)及び塩化チオニル(5mL、8.2グラム、約0.07モル)の混合物を、50mL丸底フラスコ内において、窒素雰囲気下で絶えず撹拌しながら還流させた。2時間後、赤色の溶液を蒸発乾固させ、確実に未反応の塩化チオニルを全て系から除去した。2-(2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート(A)(2.3グラム、0.0117モル、約1.17当量)及び15mLのジクロロメタンを添加し、得られた反応性混合物を窒素ブランケット下で加熱還流させた。反応を薄層クロマトグラフィーによりモニタリングした。2時間後、クロマトグラムに変化が観察されなかったので、反応性混合物を室温まで冷却した。短いシリカゲルカラム(CH
2Cl
2、続いてCH
2Cl
2中8重量%EtOAc)に通した後、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート(B)を黄色の結晶(3.2グラム、82%収率)として単離した。化合物Bの0.2mMメタノール溶液のUV-VIS透過スペクトルを
図1に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ1.84(3H,s,CH
3)、3.47(2H,m,CH
2NH)、4.01(2H,t,CH
2OC=O)、5.55(1H,m,vinylic)、5.91(1H,bs,NH)、5.98(1H,bs,vinylic)、7.24(1H,t,Ar-H)、7.31(1H,t,Ar-H)、7.39(2H,m,Ar-H)、7.49(1H,d,Ar-H)、7.55(1H,m,Ar-H)、7.61(1H,d,Ar-H)、8.04(1H,m,Ar-H)。
【0199】
実施例2-スキーム3に示すような2-(2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート(F)及びN-(2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)メタクリルアミド(G)の合成
【0200】
【化12】
シアン酢酸メチル(22グラム、0.22モル)及び250mLのジクロロメタンを、窒素環境下で還流凝縮器を備えた3つ口の500mL丸底フラスコ中において撹拌した。溶液を水浴中で冷却し、1,2-ジアミノエタン(12グラム、0.2モル、約0.9当量)を混合物に添加する。反応が進行するにつれて、混合物はますます不均質に見えるようになり、生成物が溶液から析出する(crashing out of solution)。室温で4時間撹拌した後、揮発物を減圧下で蒸発させ、残渣をフリットガラス漏斗上で酢酸エチルで洗浄し、更に使用する前に50℃で乾燥させる。
1H NMR(500MHz,D
2O)δ2.74(2H,t,CH
2NH
2)、3.29(2H,t,CH
2NH)、3.38(2H,s,CH
2CN)。
【0201】
2-アミノエチルシアノアセトアミド(12.7g、0.1モル)及び12.0グラムの炭酸ナトリウムを、氷浴中で冷却しながら150mLのメタノール中で撹拌する。反応温度を常に30℃未満で維持しながら、塩化メタクリロイル(11.5g、1.1当量)を懸濁液に滴下により添加する。反応が完了したら、全ての揮発物を減圧下で蒸発させ、アセトニトリル中に生成物を再溶解させ、溶液を濾過して、存在する全ての塩を除去する。アセトニトリルを減圧下で蒸発させ、得られた固体をフリットガラス漏斗上で酢酸エチルで洗浄して、所望の2-(2-シアノアセトアミド)エチルメタクリルアミド(F)を得る。1H NMR(500MHz,CD3OD)δ1.86(3H,s,CH3)、3.22-3.26(4H,m,NH,CH2CN)、3.29(4H,m,CH2NH)、5.31(1H,m,vinylic)、5.63(1H,m,vinylic)。
【0202】
チオキサントン(4.24g、0.02モル)と8mLの塩化チオニル(13.12g、約0.11モル)との混合物を、窒素雰囲気下で絶えず撹拌しながら穏やかに還流させた。2時間加熱した後、溶液を減圧下で蒸発乾固させ、確実に未反応の塩化チオニルを全て除去した。2-(2-シアノアセトアミド)エチルメタクリルアミド(F)(4.2グラム、約1.1当量)及び20mLの脱気した塩化メチレンをフラスコに添加し、TLCにより進行をモニタリングしながら、混合物を窒素環境下で3時間穏やかに還流させた。減圧下で揮発物を蒸発させ、有機物を酢酸エチルで洗浄する。主生成物が濃縮された大量の沈殿物が観察された。懸濁液を濾過し、真空オーブン内で乾燥させる前に残留固形物を酢酸エチルで洗浄した。化合物Gの0.2mMメタノール溶液のUV-VIS透過スペクトルを
図2に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ1.89(3H,s,CH
3)、3.26(2H,m,CH
2NH)、3.32(2H,m,CH
2NH)、5.33(1H,m,vinylic)、5.68(1H,m,vinylic)、6.63(1H,m,NH)、6.49(1H,m,NH)、7.25(1H,m,Ar-H)、7.33(1H,dt,Ar-H)、7.39(2H,m,Ar-H)、7.51-7.59(3H,m,Ar-H)、8.05(1H,m,Ar-H)。
【0203】
実施例3-スキーム4に示すような2-(2-シアノアセトキシ)エチルメタクリレート(K)及び2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトキシ)エチルメタクリレート(L)の合成
【0204】
【化13】
2-(2-シアノアセトキシ)エチルメタクリレート(K)を、以下のようにシアノ酢酸を2-ヒドロキシエチルメタクリレートとカップリングさせることによって調製した。シアノ酢酸(9g、0.106モル)及び13gの2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMAを250mLのジクロロメタン中で撹拌し、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミドヒドロクロリド(EDC)を、各々5グラムを4バッチ(20g、0.104モル)で懸濁液に添加する。混合物は、より極性の低い誘導体が形成されるにつれて徐々により均質になり、反応の完了後に揮発物を減圧下で蒸発させる。生成物を、酢酸エチルとヘキサンとの25:75(重量)混合物に再溶解させ、脱イオン水で数回抽出して、任意の残留塩及び未反応のHEMAを除去する。少量の4-メトキシヒドロキノン(<20mg)を有機層に添加し、減圧下で溶媒を蒸発させた後に純粋な生成物を得る。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ1.92(3H,m,CH
3)、3.47(2H,S,NCCH
2)、4.36(2H,m,OCH
2)、4.44(2H,m,OCH
2)、4.59(1H,m,vinylic)、6.10(1H,m,vinylic)。
【0205】
チオキサントン(4.24g、0.02モル)と8mLの塩化チオニル(13.12g、約0.11モル)との混合物を、窒素雰囲気下で絶えず撹拌しながら穏やかに還流させた。2時間加熱した後、溶液を減圧下で蒸発乾固させ、確実に未反応の塩化チオニルを全て除去した。20mLの脱気した塩化メチレン中2-(2-シアノアセトキシ)エチルメタクリレート(K)(4.33グラム、約1.1当量)の溶液をフラスコに添加し、TLCにより進行をモニタリングしながら、混合物を窒素環境下で3時間穏やかに還流させた。残渣をメタノールで洗浄して、未反応の出発チオキサントンの大部分を除去し、再濃縮し、粗生成物をシリカゲルプラグ上でクロマトグラフィーにより精製し、一晩真空乾燥させた。ジクロロメタン中化合物Lの0.2mM溶液のUV-VIS透過スペクトルを
図2に示す。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ1.92(3H,s,CH
3)、4.36(2H,m,CH
2)、4.44(2H,m,CH
2)、5.59(1H,m,vinylic)、6.10(1H,m,vinylic)、7.24-7.62(7H,m,Ar-H)、8.1(1H,m,Ar-H)。
【0206】
実施例4-化合物(B)を含むシリコーンヒドロゲル配合物
77重量パーセントの表4に列挙される配合物及び23重量パーセントの希釈剤D3Oから構成される反応性モノマー混合物を調製した。反応性モノマー混合物を、個々に、圧力下でステンレス鋼シリンジを使用して3μmフィルタを通して濾過した。
【0207】
【0208】
配合物4A~4Dを、真空(40トル)を45分間印加することによって、周囲温度で脱気した。次いで、窒素ガス雰囲気及び約0.1~0.2パーセント未満の酸素ガスの入ったグローブボックス内で、室温でエッペンドルフピペットを使用して、約75μLの反応性混合物を、90:10(w/w)Zeonor/TTブレンドで作製されたFCに投入した。次いで、90:10のZ:TTブレンドから成るBCをFC上に配置した。成形型を、分注前にグローブボックス内で最低12時間平衡化させた。8つの成形型アセンブリを収容するパレットを、各々、65℃に維持された隣接するグローブボックスに移し、トレイの位置で約2mW/cm2の強度を有する435nmのLED光を使用して、15分間、上部及び底部から硬化させた。
【0209】
大部分のレンズがFCに付着した状態で、レンズを手で型から取り出し、レンズを約1リットルの70パーセントIPA中に約1時間浮かせることによって離型し、続いて、30分間新たな70パーセントIPAに2回、次いで、15分間新たなDIWに2回、次いで、30分間パッキング溶液に2回浸漬した。レンズを平衡化し、ホウ酸塩緩衝パッキング溶液中で保管した。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型工程の目的は、レンズの全てを損傷することなく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークからパッケージ溶液で膨潤したヒドロゲルに移行させることである。各レンズセットの平均中心厚を測定した。4A=87.7ミクロン、4B=85.3ミクロン、4C=87.3ミクロン、及び4D=85.7ミクロン。
【0210】
図1~3は、配合物4A~4Dから作製されたレンズのUV-VISスペクトルを示し、これは、化合物(B)又は化合物(B)及びNorbloc(登録商標)の組み合わせが、300nm~400nmで完全又はほぼ完全な吸収を提供し得ると共に、400nm~450nmの高エネルギー可視領域で若干吸収することを実証する。
【0211】
実施例5-光安定性
化合物(B)を含有する反応性混合物から作製されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、上述のような光安定性試験に供した。化合物(B)を含有するが露光無しのコンタクトレンズに対して、ICH-Q1b条件下で露光された化合物(B)を含有するレンズの380~450nmのにおけるスペクトル透過を表5に示す。データは、本明細書に記載のHEV光吸収化合物を含有するレンズが光安定性であることを実証する。
【0212】
【0213】
実施例6-臨床試験
3重量パーセントの化合物(B)を含有する反応性混合物から作製されたシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである試験レンズを、以下に記載の様々な臨床研究において評価した。研究の目的は、400~409nmの範囲において吸収する化合物を含有しないレンズと直接比較して、400~409nmの波長範囲を含む、HEV光を吸収する試験レンズを装用する視覚効果を査定することであった。対照レンズは、Johnson&Johnson Vision Care,Inc.から入手可能なAcuvue(登録商標)OASYSレンズである。
【0214】
この研究は、本発明のレンズが、対照レンズに対して、例えば、光散乱、スターバースト、ハロー、グレア不快感の低減などの1つ又は2つ以上の望ましい属性を改善することによって、又は装用者のグレア減能閾値及び/若しくは異色コントラスト、又は光ストレス回復時間を改善することによって、コンタクトレンズ装用者における視覚性能の改善を提供し得ることを示す。データは、例示の目的で本明細書に提示されるものとして理解されるべきであり、開示された技術の範囲を任意の方法で限定するものとして、又は任意の代替的若しくは追加的な実施形態を除外するものとして解釈されるべきではない。
【0215】
この研究は、単一部位、単一回、対側、非投与、無作為化、制御、及び単一マスク式の研究である。一回で、被験者は、2つのレンズ装用アーム(左:試験、右:対照又は左:対照、右:試験)のうちの1つに無作為に割り当てられ、以下に記載の心理物理学的試験を受ける。この試験には、約60人の被験者が関わった。
【0216】
グレア不快感(Glare Discomfort、GDC)。GDCは、光ストレッサーに対する斜視応答によって評価され得る。斜視応答は、高解像度カメラを各被験者の眼に使用することによって捕捉され得る。次いで、得られた映像が、静止フレームとして分析され得る。斜視応答は、光ストレス曝露中に生成された最大斜視と比較して、通常光条件下での眼瞼裂の高さの計算比率(mm単位)として定量化され得る。より具体的には、グレア不快感(GDC)は、斜視応答及び質問票を使用して定量化される。個人の適応状態を超える光への曝露に伴う不快感は、外眼筋の収縮(斜視)を伴う。斜視応答は、グレア不快感の有効な客観的指標であることが示されている。斜視の程度は、光ストレス曝露中に生成された最大斜視と比較した、通常光条件下での眼瞼裂の高さの比率として計算され得る。高解像度カメラ(AmScope MU300デジタルカメラ、Irvine,CA)を使用し、各試験日の開始前に空間標準に対して較正する。得られた映像を、AmScope測定ソフトウェア(Irvine,CA)を使用して、静止フレームとして分析する。GDCの主観的評定を決定するために、被験者は、単一項目の質問票OD(右目)及びOS(左目):今経験したグレアの煩わしさの程度は?を使用して、光ストレッサーの不快感の程度を格付けするように求められる。被験者は、極めて煩わしい、非常に煩わしい、若干煩わしい、少し煩わしい、全く煩わしくない、の応答選択肢を有する。
【0217】
グレア減能(Glare Disability、GD)閾値。GD閾値は、被験者を白色光環(約10度の直径)の様々な強度に曝露することによって評価され、中心標的を不明瞭にするのに必要な対数相対エネルギーレベルによって定量化され得る。より具体的には、標的刺激を2秒間オン及び1秒間オフにするように提示して、被験者が刺激に馴化する機会を低減させる。第2のチャネルは、約11度の内径及び12度の外径を有する環を提供する。各試行の前に、環は、標的刺激が不明瞭になり得るよりも十分低いレベルに設定される。次いで、実験者は、中性密度ウェッジを介して、標的刺激がもはや見えなくなるまで環の強度を調整する。参加者は、ブザーを押すことによって標的が不明瞭になったことを示す。効果的に、このタスクでは、実験者は、被験者が効果的に見ることができなくなるまで、被験者の試験眼内の光散乱の強度を増加させる。被験者に設定される標準的な光ストレス脱色とは異なり、この試験において強度は変動し、したがって、従属変数の嫌悪感も変動する。
【0218】
異色コントラスト(Hetero Chromatic Contrast、HCC)閾値。HCC閾値は、短波(460nm)の天空光背景上に提示された可変波長中央標的を使用して評価され、黄斑によって吸収された光の量によって定量化され得る。
【0219】
ハロー。ハローは、ハロー画像の外縁の直径(mm)によって定量化され、スターバースト及び光散乱と同じマイクロメーターを使用して測定され得る。より具体的には、被験者は、実験前に視覚補助を使用して説明されるハローの性質を有する。ハロー測定は、スターバースト及び2点測定と同じ光源を利用してハローを生成する。スターバースト試験と同じ較正されたマイクロメーターを使用して、ハロー画像の外縁を画定する(研究者は被験者のフィードバックに基づいて調整する)。限界値の上昇及び下降方法を使用してもよい。この測定は、約10-15分で行われる。値OD(右眼)及びOS(左目)をmm単位(小数点2位)で記録する。被験者は、単一項目のハロー質問票OD及びOS:経験したハローの激しさ/強度の程度は?に応答する。被験者は、重度、中程度、軽度、全く無しの応答選択肢を有する。
【0220】
スターバースト。スターバーストは、光の横方向の広がりの直径によって定量化され得る。較正されたマイクロメーター(反転したねじ山を有する2つの側面)を使用して、中央中間点から2つのポストを広げる。次いで、これらのポストを使用して、スターバースト画像の外側境界(すなわち、直径)を画定することができる。より具体的には、被験者は、実験前に視覚補助を使用して説明されるスターバーストの性質を有する。研究者は、マイクロメーターを調整して、中央中間点から2つのポストを広げる。これらのポストを使用して、スターバースト画像の外側境界を画定する。限界値の上昇及び下降方法を、被験者フィードバックに基づいて使用し得る。この測定は、約10~15分で行われる。値OD(右眼)及びOS(左目)をmm単位(小数点2位)で記録する。被験者は、単一項目のスターバースト質問票OD及びOS:経験したスターバーストの激しさ/強度の程度は?に応答する。被験者は、重度、中程度、軽度、全く無しの応答選択肢を有する。
【0221】
光散乱。光散乱(2点光広がり関数)は、2点の光が完全に別個である最小距離(mm)として定義される。これらの2点閾値は、光の波長を変化させ、ひいては散乱の出現を変化させる干渉フィルタの追加を伴って及び伴わずに測定することができるより具体的には、閾値は、2点の光が完全に別個である最小距離として定義される。限界値の上昇方法を使用する。試験は、光路内に403nm干渉フィルタを存在させて及び存在させずに行う。簡潔に述べると、研究者は、2点の光が互いに0mmで開始する。被験者が位置決めされる距離において、この初期位置は、単一点の光として現れる。研究者は、参加者が黒色空間によって分離された2つの別個の点の光を見るまで、2つの点の間の距離をゆっくりと増加させる。次いで、2つの点の間の距離を被験者の2点閾値として記録する。
【0222】
光ストレス回復時間(Photostress Recovery Time、PRT)。PRTは、被験者を強烈な光源(約4.5log Tdsで10度の円形広帯域白色)に曝露することによって評価され、光ストレッサーへの曝露後に格子の部位を再獲得するのに必要な時間として定量化され得る。より具体的には、PRTを測定するために、参加者は、他の視覚機能試験の各々において使用される同じ標的に曝露される。参加者が標的を快適に視認すると、実験者は、5秒間にわたって、明るい、脱色光を標的に与える。光への曝露は、参加者が標的の視界を瞬間的に見失う原因となり、標的は、残像によって覆われる。残像がなくなるにつれて、参加者は、標的の視覚を徐々に回復することができる。PRTを、脱色光への曝露後に標的の視覚を回復するのにかかる時間として記録する。
【0223】
GD、HCC、PRT、及びGDCの心理物理学的測定値を、HEV光を含有する光源の存在下で記録する。光学ベンチセットアップを使用する。
【0224】
統計分析:
SASソフトウェアバージョン9.4(SAS Institute,Cary,NC)を使用して、全てのデータ要約及び統計分析を実行した。データの分析を通して、各被験者/眼の結果を、要約及び統計分析のために利用可能な場合に使用した。
【0225】
光散乱(mm)。距離フィルタを含む及び距離フィルタを含まない、2つのフィルタ条件下で、2点光広がり関数を査定した。この研究では、多くの高位外れ値が存在し、これにより2点光広がり関数の分布が右に傾斜していた。したがって、線形モデルの計画された分析は、分布が線形混合モデルの正規性仮定を満たさないため、実行することができなかった。代わりに、両方の条件(距離フィルタを含む及び含まない)において、対数変換を2点光広がり関数に使用した。したがって、正規分布を有する線形混合モデルを使用して、変換されたデータを別々に分析した。
【0226】
各モデルは、研究レンズ、優位眼、年齢群、研究レンズと年齢群との間の全ての可能な相互作用、並びに研究レンズと優位眼との間の相互作用を固定効果として含んだ。分母自由度についてKenward and Roger法を使用した。非構造(unstructured、UN)共分散構造を使用して、同じ被験者内の眼の間の残余誤差をモデル化した。非構造(UN)共分散構造は、この構造が最も低い赤池の補正情報基準(Akaike's Information Criterion Corrected、AICC)を戻したため、選択された。
【0227】
ハロー。ハロー(mm)を、線形混合モデルを使用して分析した。モデルは、レンズの種類、優位眼、年齢群、及び双方向相互作用(年齢群によるレンズの種類及び優位眼によるレンズの種類)を固定効果として含んだ。分母自由度についてKenward and Roger法を使用した。化合物対称(compound symmetric、CS)共分散構造を使用して、同じ被験者内の眼の間の残余誤差をモデル化した。化合物対称共分散構造は、この構造が最も低い赤池の補正情報基準(Akaike's Information Criterion Corrected、AICC)を戻したため、選択された。
【0228】
スターバースト。スターバースト(mm)を、線形混合モデルを使用して分析した。モデルは、レンズの種類、優位眼、年齢群、及び双方向相互作用(年齢群によるレンズの種類及び優位眼によるレンズの種類)を固定効果として含んだ。分母自由度についてKenward and Roger法を使用した。化合物対称(CS)共分散構造を使用して、同じ被験者内の眼の間の残余誤差をモデル化した。化合物対称共分散構造は、この構造が最も低い赤池の補正情報基準(Akaike's Information Criterion Corrected、AICC)を戻したため、選択された。
【0229】
光ストレス回復(Photostress Recovery、PR)時間(秒)。この研究では、多くの高位外れ値(長いPR時間)が存在し、これによりPR時間の分布が右に傾斜していた。したがって、線形モデルの計画された分析は、PR時間の分布がもはや線形混合モデルの正規性の仮定を満たさないため、実行することができなかった。代わりに、PR時間を、対数正規分布を有する一般化線形混合モデルを使用して分析した。研究レンズ、年齢群、優位眼、及び研究レンズと年齢群との間の相互作用は、固定効果としてモデルに含まれた。化合物対称(CS)共分散構造を使用して、同じ被験者内の眼の間の残余誤差をモデル化した。分母自由度についてKenward and Roger法(を使用した。
【0230】
グレア減能閾値。グレア減能閾値を、混合モデルを使用して分析した。研究レンズ、年齢群、研究レンズと年齢群との間の相互作用、及び研究レンズと優位眼との間の相互作用は、固定効果として含まれた。化合物対称(CS)共分散構造を使用して、同じ被験者内の眼の間の残余誤差をモデル化した。分母自由度についてKenward and Roger法を使用した。
【0231】
グレア不快感(眼瞼裂高さの変化)。グレア不快感を、混合モデルを使用して分析した。研究レンズ、年齢群、及び研究レンズと年齢群との間の相互作用は、固定効果として含まれた。化合物対称(CS)共分散構造を使用して、同じ被験者内の眼の間の残余誤差をモデル化した。分母自由度についてKenward and Roger法を使用した。異色コントラスト閾値
【0232】
異色コントラスト閾値。HCCを、混合モデルを使用して分析した。レンズの種類、年齢群、及びレンズの種類と年齢群との間の相互作用は、固定効果として含まれた。化合物対称(CS)共分散構造を使用して、同じ被験者内の眼の間の残余誤差をモデル化した。分母自由度についてKenward and Roger法(を使用した。
【0233】
試験結果
グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハロー、スターバースト、及び光散乱、並びに光ストレス回復時間に関する研究結果を
図4~10にそれぞれ示す。いずれの場合も、データは、対照レンズと比較して、試験レンズで改善を実証し、場合によっては臨床的に有意な改善を実証した。したがって、
図4は、対照レンズと比較して、試験レンズで患者がより斜視にならなかったことを示す。
図5は、試験レンズを装用している患者が、標的が消失する前に、対照レンズよりも高い光強度に曝露されることができたことを示す。
図6は、試験レンズを装用している患者が、青色背景から緑色標的が消失する前に、より高い光強度に曝露されることができたことを示す。
図7は、試験レンズを装用している患者が、対照レンズを装用しているときよりも小さいハローを経験したことを示す。
図8は、試験レンズを装用している患者が、対照レンズを装用しているときよりも小さいスターバーストを経験したことを示す。
図9は、試験レンズを装用している患者が、対照レンズを装用しているときよりも小さい光散乱を経験したことを示す。
図10は、改善された光ストレス回復時間に対する傾向を示す。グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱について臨床的に有意な改善が観察された。
【0234】
〔実施の態様〕
(1) コンタクトレンズであって、
前記コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、
高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であり、
前記コンタクトレンズが、400~409nmの波長範囲にわたって0パーセント~70パーセントの光を透過する、コンタクトレンズ。
(2) 前記コンタクトレンズが、280~399nmの波長範囲にわたって45パーセント以下の光を透過する、実施態様1に記載のコンタクトレンズ。
(3) 450~800nmの波長範囲にわたって少なくとも80パーセントの光を透過する、実施態様1又は2に記載のコンタクトレンズ。
(4) 光安定性である、実施態様1~3のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
(5) 前記高エネルギー可視光吸収化合物が、静的化合物である、実施態様1~4のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【0235】
(6) 前記高エネルギー可視光吸収化合物が、式Iの化合物を含み、
【化14】
式中、
m及びnが、独立して、0、1、2、3、又は4であり、
Tが、結合、O、又はNRであり、
Yが、連結基であり、
P
gが、重合性基であり、
Rが、各出現時において、独立して、H、C
1~C
6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はY-P
gであり、
R
1及びR
2が、存在する場合、各出現時において、独立して、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6チオアルキル、C
3~C
7シクロアルキル、アリール(好ましくは、非置換フェニル又はアルキル若しくはハロで置換されたフェニル)、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、NR
3R
4、又はベンジルであり、R
3及びR
4が、独立して、H若しくはC
1~C
6アルキルであるか、又は2つの隣接するR
1若しくはR
2基が、これらが結合している炭素原子と一緒になって、結合してシクロアルキル若しくはアリール環を形成する、実施態様1~5のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
(7) m及びnが、各々独立して、0又は1である、実施態様6に記載のコンタクトレンズ。
(8) Yが、各出現時において、独立して、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、オキサアルキレン、アルキレン-アミド-アルキレン、アルキレン-アミン-アルキレン、又はこれらの組み合わせである、実施態様6又は7に記載のコンタクトレンズ。
(9) P
gが、スチリル、ビニルカーボネート、ビニルエーテル、ビニルカルバメート、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリルアミドを含む、実施態様6~8のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
(10) UV吸収化合物を更に含む、実施態様1~9のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
【0236】
(11) 前記UV吸収化合物が、式Iの化合物、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン、置換アクリロニトリル、サリチル酸誘導体、安息香酸誘導体、桂皮酸誘導体、カルコン誘導体、ジプノン誘導体、クロトン酸誘導体、又はこれらの混合物を含む、実施態様10に記載のコンタクトレンズ。
(12) 前記コンタクトレンズを作製するのに好適な前記重合性化合物が、親水性成分、シリコーン含有成分、又はこれらの混合物を含む、実施態様1~11のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
(13) コンタクトレンズ装用者における視覚属性を改善するための方法であって、実施態様1~12のいずれかに記載のコンタクトレンズを前記コンタクトレンズ装用者に提供することを含み、前記視覚属性が、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上から選択される、方法。
(14) 光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱から選択される少なくとも1つの視覚属性を改善するための、実施態様1~12のいずれかに記載のコンタクトレンズの使用。
(15) コンタクトレンズ装用者における視覚属性を改善するための方法であって、
前記コンタクトレンズ装用者に、
前記コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、
高エネルギー可視(HEV)光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物であるコンタクトレンズを提供することを含み、
前記視覚属性が、光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱のうちの1つ又は2つ以上から選択される、方法。
【0237】
(16) 光ストレス回復時間、グレア不快感、グレア減能閾値、異色コントラスト閾値、ハローサイズ、スターバーストサイズ、及び光散乱から選択される少なくとも1つの視覚属性を改善するためのコンタクトレンズの使用であって、前記コンタクトレンズが、前記コンタクトレンズを作製するのに好適な1つ又は2つ以上の重合性化合物と、高エネルギー可視光吸収化合物と、を含む、反応性混合物のフリーラジカル反応生成物である、使用。
(17) 視力属性を改善することが、400~409nmの波長範囲にわたって少なくとも90パーセントの光を透過するコンタクトレンズと比較したときに、コンタクトレンズ装用者によって観察される前記視力属性の改善を含む、実施態様13~16のいずれかに記載の方法又は使用。
(18) ある国に輸入される、実施態様1~12のいずれかに記載のコンタクトレンズ。
(19) 前記国が、アメリカ合衆国である、実施態様18に記載のコンタクトレンズ。
(20) 前記HEV光吸収化合物が、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルアクリレート、N-(2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)メタクリルアミド、N-(2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチル)アクリルアミド、2-(2-シアノ-N-メチル-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)-N-(2-(N-ビニルアセトアミド)エチル)アセトアミド、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)-2-メチルプロピルメタクリレート、(E)-2-(2-シアノ-2-(2,4-ジクロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、(E)-2-(2-(2-クロロ-9H-チオキサンテン-9-イリデン)-2-シアノアセトアミド)エチルメタクリレート、(E)-2-(2-シアノ-2-(2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、(E)-2-(2-シアノ-2-(4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトアミド)エチルメタクリレート、2-(2-シアノ-2-(9H-チオキサンテン-9-イリデン)アセトキシ)エチルメタクリレート、又はこれらの混合物を含む、実施態様1~19のいずれかに記載のコンタクトレンズ、方法、又は使用。
【国際調査報告】