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2022-546162安定性が改善されたアナモレリン錠剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】安定性が改善されたアナモレリン錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20221027BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 5/06 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K9/20
A61P5/06
A61P1/14
A61P3/02
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/14
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573973
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 IB2020058064
(87)【国際公開番号】W WO2021038519
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/893,822
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505180070
【氏名又は名称】ヘルシン ヘルスケア ソシエテ アノニム
(71)【出願人】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 香
(72)【発明者】
【氏名】林 明日香
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート, エレノア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC14
4C076CC30
4C076DD26Q
4C076DD29Q
4C076DD38Q
4C076DD41Q
4C076DD47Q
4C076DD67Q
4C076EE16Q
4C076EE31Q
4C076EE32Q
4C076EE38Q
4C076EE47Q
4C076FF04
4C076FF36
4C076FF63
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA69
4C086ZC03
4C086ZC22
(57)【要約】
前述の安定性を改善するための製剤及び不純物形成を制御するための分析技術を含む、アナモレリン塩酸塩の最終剤形における不純物の形成を減少させるための方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナモレリン塩酸塩錠剤の製造方法であって、
a)アナモレリン塩酸塩と、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプン、ステアリン酸及びステアリルフマル酸ナトリウムから選択される医薬的に許容される担体の1つ又は組合せとを混合して、混合物を形成すること、並びに
b)前記混合物を錠剤に圧縮すること
を含む、方法。
【請求項2】
アナモレリン塩酸塩と前記医薬的に許容される担体のうちの2つ以上とを混合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アナモレリン塩酸塩と前記医薬的に許容される担体のうちの3つ以上とを混合することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アナモレリン塩酸塩と前記医薬的に許容される担体のうちの4つ以上とを混合することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約0.01~約20重量部の前記医薬的に許容される担体の1つ又は組合せを混合することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約0.5~約10重量部の前記医薬的に許容される担体の1つ又は組合せを混合することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約1~約6重量部の前記医薬的に許容される担体の1つ又は組合せを混合することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物が約0.5~約15kNの圧縮力で錠剤に圧縮される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合物が、約40~約200ニュートンの硬度に圧縮される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬的に許容される担体の前記1つ又は組合せが、不純物Aの形成を予防するのに十分な量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
40℃及び相対湿度75%で2か月~6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.1%未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
40℃及び相対湿度75%で2か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.05%未満である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
不純物Aが、高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対して1.53の応答係数を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
不純物Aが、実施例3に記載の高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対して1.53の応答係数を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
アナモレリン塩酸塩錠剤を製造する方法であって、
(a)アナモレリン塩酸塩と、不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段とを混合して、混合物を形成すること、
(b)前記混合物を錠剤に圧縮すること、
(c)前記錠剤の1つ又はそれ以上におけるアナモレリン塩酸塩から不純物Aを単離すること、
(d)前記1つ又はそれ以上の錠剤中の不純物Aの量を定量すること、及び
(e)場合により工程(b)の6か月後又は1年後に工程(c)及び(d)を繰り返しすこと
を含む、方法。
【請求項16】
前記単離する工程(c)が、前記錠剤の1つ又はそれ以上を有機溶媒に溶解すること、及び高速液体クロマトグラフィーによって前記アナモレリン塩酸塩を前記不純物Aから分離することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬的に許容される担体手段が、前記アナモレリン塩酸塩との完全な混合物中でHCl捕捉剤として作用する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記担体手段が、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプン、ステアリン酸及びステアリルフマル酸ナトリウムから選択される担体の1つ又は組合せを、不純物Aの形成を予防するための予防有効量で含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項19】
前記担体手段が、前記医薬的に許容される担体のうちの2つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記担体手段が、前記医薬的に許容される担体のうちの3つ以上を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記担体手段が、前記医薬的に許容される担体のうちの4つ以上を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約0.01~約20重量部の前記担体手段を混合することを含む、請求項15~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約0.5~約10重量部の前記担体手段を混合することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約1~約6重量部の前記担体手段を混合することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記混合物が約0.5~約15kNの圧縮力で錠剤に圧縮される、請求項15~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物が、約40~約200ニュートンの硬度に圧縮される、請求項15~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬的に許容される担体の前記1つ又は組合せが、不純物Aの形成を予防するのに十分な量で存在する、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
40℃及び相対湿度75%で2か月~6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.1%未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
40℃及び相対湿度75%で2か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.05%未満である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
アナモレリン塩酸塩から単離された不純物A。
【請求項31】
高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対する応答係数が1.53である、請求項30に記載の不純物A。
【請求項32】
実施例3で測定した、高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対する応答係数が1.53である、請求項31に記載の不純物A。
【請求項33】
非極性有機溶媒中における請求項30~32のいずれか一項に記載の不純物A。
【請求項34】
水、トリフルオロ酢酸及びアセトニトリルを含む溶液中における請求項30~32のいずれか一項に記載の不純物A。
【請求項35】
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法により製造されたアナモレリン塩酸塩錠剤。
【請求項36】
アナモレリン塩酸塩を有効成分として含む錠剤であって、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプン、ステアリン酸及びステアリルフマル酸ナトリウムから選択される医薬的に許容される担体をさらに含む、錠剤。
【請求項37】
前記医薬的に許容される担体を2つ以上含む、請求項36に記載の錠剤。
【請求項38】
前記医薬的に許容される担体を3つ以上含む、請求項37に記載の錠剤。
【請求項39】
前記医薬的に許容される担体を4つ以上含む、請求項38に記載の錠剤。
【請求項40】
アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約20重量部の前記医薬的に許容される担体の1つ又は組合せを含む、請求項36~39のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項41】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約0.5~約10重量部の前記医薬的に許容される担体の1つ又は組合せを含む、請求項40に記載の錠剤。
【請求項42】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約1~約6重量部の前記医薬的に許容される担体の1つ又は組合せを含む、請求項41に記載の錠剤。
【請求項43】
不純物Aが実質的に生成されないか、又は40℃及び相対湿度75%で2か月~6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.1%未満である、請求項36~42のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項44】
不純物Aが実質的に生成されないか、又は40℃及び相対湿度75%で2か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.05%未満である、請求項43に記載の錠剤。
【請求項45】
不純物Aが、高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対して1.53の応答係数を有する、請求項43又は44に記載の錠剤。
【請求項46】
不純物Aが、実施例3に記載の高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対して1.53の応答係数を有する、請求項45に記載の錠剤。
【請求項47】
有効成分としてのアナモレリン塩酸塩と、不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段とを含む錠剤。
【請求項48】
前記担体手段が、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプン、ステアリン酸及びステアリルフマル酸ナトリウムのうちの1つ又は組合せから選択される医薬的に許容される担体を含む、請求項41に記載の錠剤。
【請求項49】
前記医薬的に許容される担体手段が、前記アナモレリン塩酸塩との完全な混合物中でHCl捕捉剤として作用し、約0.5~約15kNの圧縮力で前記アナモレリン塩酸塩と共に圧縮されている、請求項47に記載の錠剤。
【請求項50】
前記医薬的に許容される担体手段が、約40~約200ニュートンの硬度に圧縮された前記アナモレリン塩酸塩との完全な混合物中でHCl捕捉剤として作用する、請求項47~49のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項51】
前記医薬的に許容される担体手段が、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプン、ステアリン酸及びステアリルフマル酸ナトリウムから選択される担体の1つ又は組合せを、前記アナモレリン塩酸塩との完全な混合物中に含み、約0.5~約15kNの圧縮力で前記アナモレリン塩酸塩と共に圧縮されている、請求項47に記載の錠剤。
【請求項52】
前記医薬的に許容される担体手段が、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール、コーンスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプン、ステアリン酸及びステアリルフマル酸ナトリウムから選択される担体の1つ又は組合せを、前記アナモレリン塩酸塩との完全な混合物中に含み、約40~約200ニュートンの硬度に圧縮されている、請求項47又は51に記載の錠剤。
【請求項53】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約0.01~約20重量部の前記医薬的に許容される担体手段を含む、請求項47~52のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項54】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約0.5~約10重量部の前記医薬的に許容される担体手段を含む、請求項53に記載の錠剤。
【請求項55】
1重量部のアナモレリン塩酸塩に対して約1~約6重量部の前記医薬的に許容される担体手段を含む、請求項54に記載の錠剤。
【請求項56】
不純物Aが実質的に生成されないか、又は40℃及び相対湿度75%で2か月~6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.1%未満である、請求項47~55のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項57】
不純物Aが実質的に生成されないか、又は40℃及び相対湿度75%で2か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に対して約0.05%未満である、請求項56に記載の錠剤。
【請求項58】
不純物Aが、高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対して1.53の応答係数を有する、請求項47~57のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項59】
不純物Aが、実施例3に記載の高速液体クロマトグラフィー中のアナモレリン塩酸塩に対して1.53の応答係数を有する、請求項58に記載の錠剤。
【請求項60】
がん悪液質の1つ又はそれ以上の症状の改善を必要とする患者においてがん悪液質の1つ又はそれ以上の症状を改善する方法であって、請求項35~59のいずれか一項に記載の錠剤中の治療有効量のアナモレリン塩酸塩を前記患者に投与することを含み、
(a)前記患者が、25未満のボディーマス指数、20~28のがん倦怠感尺度のスコア、又は65~80の抗がん剤で治療されたがん患者の生活の質に関する調査票(QOL-ACD)スコアを特徴とし、
(b)前記症状が、除脂肪体重、食欲、体重、倦怠感及び生活の質からなる群から選択される、方法。
【請求項61】
前記除脂肪体重が二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって推定され、前記倦怠感が前記がん倦怠感尺度によって測定され、前記生活の質が、項目7~11(「身体状態」)、項目8(「食欲は良好でしたか?」)、項目9(「食事は楽しめましたか?」)、及び項目11(「体重は減少しましたか?」)についてのQOL-ACDスコアによって測定される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記患者が、ステージIII又はIVの非小細胞肺がん(NSCLC)又は進行した胃腸(結腸直腸、胃、又は膵臓)がんを有する、請求項60又は61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、アナモレリン塩酸塩、安定性が改善されたアナモレリン塩酸塩の製剤、かかる製剤を製造する方法、かかる製剤を使用する治療方法、並びに不純物形成を低減及び制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アナモレリンは、がん関連悪液質の治療のために目下開発中の成長ホルモン分泌促進剤として1990年代に最初に合成された合成経口活性化合物である。アナモレリンの遊離塩基は、
・(3R)1-(2-メチルアラニル-D-トリプトフィル)-3-(フェニルメチル)-3-ピペリジンカルボン酸1,2,2-トリメチルヒドラジド、
・3-{(2R)-3-{(3R)-3-ベンジル-3-[(トリメチルヒドラジノ)カルボニル]ピペリジン-1-イル}-2-[(2-メチルアラニル)アミノ]-3-オキソプロピル}-1H-インドール、又は
・2-アミノ-N-[(1R)-2-[(3R)-3-ベンジル-3-(N,N’,N’-トリメチルヒドラジノカルボニル)ピペリジン-1-イル]-1-(1H-インドール-3-イルメチル)-2-オキソエチル]-2-メチルプロピオンアミドとして化学的に定義され、以下の化学構造を有する。
【0003】
【化1】
【0004】
市販剤形は、小野薬品工業株式会社(大阪、日本国)及びHelsin Healthcare(Lugano、スイス国)によって塩酸塩として開発されている。
【0005】
Ankersenらの国際公開第01/34593号には、実施例1の工程(j)において中間体として製造された塩酸塩を用いて、フマル酸塩としてアナモレリンを調製する方法が記載されている。Lorimerらの国際公開第2006/016995号には、アナモレリンの遊離塩基の結晶形態を調製する方法が記載されている。Kuwabeらの国際公開第2013/158874号には、塩化物含有量が制御され、残留溶媒が少ないアナモレリン塩酸塩を製造する方法が記載されている。Mannらの国際公開第2016/036598号には、がん悪液質の治療のためにアナモレリン塩酸塩を使用する方法が記載されている。アナモレリンを使用する他の方法は、Polvinoらの国際公開第2010/099522号及びPolvinoらの国際公開第2008/100448号に記載されている。
【0006】
前述の開発にもかかわらず、特に過剰の塩化物を有するアナモレリン塩酸塩が医薬的に許容される剤形に製剤化されるとき、アナモレリン塩酸塩の望ましくない分解物の形成を予防する方法が必要とされる。アナモレリンに対し1.53のHPLC応答係数を有するアナモレリン塩酸塩の類似体及び分解物であるアナモレリン不純物Aの形成を制御することが特に重要になってきている。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
予想外にも、ある種の錠剤化賦形剤を、アナモレリン塩酸塩と共に圧縮して錠剤にすると、アナモレリン塩酸塩の安定性が改善されること、及びこれらの賦形剤により、アナモレリン塩酸塩の不純物Aへの分解が予防されることが発見された。いかなる理論にせよ、それに拘束されることを望むものではないが、これらの賦形剤は、アナモレリン塩酸塩と完全に(intimately)混合されると、塩酸塩をアナモレリン遊離塩基分子から物理的又は化学的に隔離し、それによってアナモレリンの不純物Aへの分解を予防すると考えられる。
【0008】
したがって、第1の主要な実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩錠剤を製造する方法、及びそれによって製造される錠剤を提供するもので、前記方法は、(a)アナモレリン塩酸塩と、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び無水リン酸水素カルシウムから選択される医薬的に許容される担体の1つ又は組合せとを混合して混合物を形成すること、及び(b)前記混合物を圧縮して錠剤にすることを含む。
【0009】
他の実施形態は、不純物Aの発見、及び不純物Aを制御することによってアナモレリン塩酸塩剤形を製造する方法に関する。したがって、第2の主要な実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩錠剤を製造する方法、及びそれによって製造される錠剤を提供するもので、前記方法は、(a)アナモレリン塩酸塩と、不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段とを混合して、混合物を形成すること、(b)前記混合物を錠剤に圧縮すること、(c)前記錠剤の1つ又はそれ以上においてアナモレリン塩酸塩から不純物Aを単離すること、(d)前記1つ又はそれ以上の錠剤中の不純物Aの量を定量すること、及び(e)場合により工程(b)の6か月後又は1年後に工程(c)及び(d)を繰り返すことを含む。
【0010】
他の実施形態は、不純物Aそのものに関する。したがって、第3の主要な実施形態では、本発明は、アナモレリン塩酸塩から単離された不純物Aを提供する。
【0011】
さらに別の実施形態は、アナモレリン塩酸塩錠剤そのものに関する。したがって、第4の主要な実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩を有効成分として含む錠剤であって、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び無水リン酸水素カルシウムから選択される医薬的に許容される担体をさらに含む錠剤を提供する。
【0012】
第5の主要な実施形態において、本発明は、有効成分としてのアナモレリン塩酸塩と、不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段とを含む錠剤を提供する。
【0013】
またさらなる実施形態は、本発明の錠剤を使用してがん悪液質を治療するためのアナモレリン塩酸塩の使用に関する。したがって、第6の主要な実施形態において、本発明は、がん悪液質の1つ又はそれ以上の症状の改善を必要とする患者においてがん悪液質の1つ又はそれ以上の症状を改善する方法であって、本発明による錠剤での治療有効量のアナモレリン塩酸塩を前記患者に投与することを含む方法を提供するもので、(a)前記患者は、25未満のボディーマス指数、20~28のがん倦怠感尺度のスコア、又は65~80の抗がん剤で治療されたがん患者の生活の質に関する調査票(QOL-ACD)スコアを特徴とし、(b)前記症状は、除脂肪体重、食欲、体重、倦怠感及び生活の質からなる群から選択される。
【0014】
本発明のさらなる利点は、一部は以下の説明に記載され、一部はその説明から明らかになるか、又は本発明の実施によって習得され得る。本発明の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されている構成要素及び組合せによって実現及び達成されるはずである。前述の全般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
用語の定義及び用法
【0016】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲で使用される場合、以下の用語は、以下の意味及び用法を有する。
【0017】
単数形の冠詞「a」、「an」、及び「the」には、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の場合も含まれる。
【0018】
「含む(comprise)」という語並びに「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」などの前記の語の変形は、「含むがこれらに限定されない」ことを意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数又は工程を排除することを意図するものではない。構成要素が複数の成分、工程又は条件を含むものとして記載される場合、その構成要素はまた、かかる複数のものの任意の組合せを含むか、又は複数の成分、工程若しくは条件又は組合せ「からなる」若しくは「から本質的になる」ものとして記載され得ることが理解されよう。
【0019】
試験方法が、医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonization)(「ICH」)などの標準設定機関、又はがん倦怠感尺度などの試験方法論を参照することによって行われる場合、本方法は、関連する主題の最先の優先日現在有効な方法に従って行われることが理解されよう。本明細書中で薬学的試験が必要とされるとき、その試験は、関連する主題の最先の優先日の時点で有効なICHガイダンス文書、関連する主題の最先の優先日の時点で有効な米国薬局方(USP)法、又は関連する主題の最先の優先日の時点で有効な米国材料試験協会(ASTM)法に従って行われることが理解されるであろう。
【0020】
「がん倦怠感尺度」とは、奥山徹らにより、「がん倦怠感尺度の開発及び検証:がん患者における倦怠感の評価のための簡単な三次元自己評定尺度」(Development and Validation of the Cancer Fatigue Scale:A Brief,Three-Dimensional,Self-Rating Scale for Assessment of Fatigue in Cancer Patients.)第19巻、1号、2000年1月、Journal of Pain and Symptom Managementで報告された臨床転帰評価を指す。
【0021】
「抗がん剤で治療されたがん患者の生活の質に関する調査票」又は「QOL-ACD」とは、T.Matsumotoらが、「抗がん剤で治療されたがん患者の生活の質に関する調査票(QOL-ACD):進行した非小細胞肺がんの日本人患者における妥当性及び信頼性」(The quality of life questionnaire for cancer patients treated with anticancer drugs(QOL-ACD):validity and reliability in Japanese patients with advanced non-small-cell lung cancer)。Quality of Life Research:an International Journal of Quality of Life Aspects of Treatment,Care and Rehabilitation、2002年7月31日、11(5):483-493において発表した臨床転帰評価をいう。
【0022】
範囲の上端から離して範囲の下端を指定することによって、又は特定の数値を指定することによって範囲が与えられる場合、範囲は、下端変数、上端変数、及び数学的に可能な特定の数値のいずれかを選択的に組み合わせることによって定められ得ることが理解されよう。同様に、ある範囲がある端点から別の端点に及ぶと規定される場合、その範囲はまた、2つの端点の間のスパンを包含し、2つの端点を除外すると理解される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、製造上のばらつき及び時間誘発性の製品分解による製品強度の違いなど、製薬業界で許容され、この業界の製品に固有の変動性を補償することになる。
【0024】
「アナモレリン塩酸塩」は、塩化物の6.08%に相当する、約1:1の比のアナモレリンと塩酸の塩を指す。塩化物含有量は、好ましくは分子の6.3%又は6.2%未満であり、好ましくは5.7~6.3%又は5.8~6.2%の範囲である。あるいは、わずかにモル過剰の塩化物が存在する可能性があり、その場合、塩化物含有量は6.1%~6.3%又は6.1%~6.2%の範囲であり得る。これらの範囲のいずれかによって規定されるアナモレリン塩酸塩は、本発明の方法及び製剤に使用され得る。
【0025】
「不純物A」は、実施例3に記載の条件に従って測定した場合に、アナモレリンに対するHPLC応答係数が1.53であるアナモレリン塩酸塩の分解物/類似体を指す。あるいは、実施例3に記載の条件に従って測定することによりアナモレリン塩酸塩の保持時間が1分であるとき「不純物A」は0.34のHPLC相対保持時間を有する。
【0026】
「不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段」は、アナモレリン塩酸塩と完全に混合され、医薬的に許容される即時放出型錠剤を製造し、その列挙された機能を満たすのに適切な硬度で錠剤に圧縮されたときに予防有効量で存在する、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、及び無水リン酸水素カルシウムの組合せに対応する。予防は、100%の予防を必要とする訳ではないが、0.5:1~10:1の担体手段:アナモレリン塩酸塩の重量比、又はそのような比について本明細書の実施例で報告される安定性と同等の安定性を達成することができる本明細書に記載されるより具体的な比のいずれかを必要とする。「予防有効量」とは、完全な混合物中でアナモレリン塩酸塩と合わせ、錠剤に圧縮したときに、アナモレリン塩酸塩の、特に不純物Aへの分解速度を低下させるのに十分な量を意味する。好ましい実施形態において、予防有効量は、40℃及び相対湿度75%で6か月間貯蔵した後の前記アナモレリン塩酸塩の重量に基づいて約0.1%又は0.05%を超える不純物Aの形成を予防するのに十分な量である。
【0027】
あるいは、「不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段」は、「40℃及び相対湿度75%で6か月間貯蔵した後に不純物Aの形成の200%増加を予防するための医薬的に許容される担体手段」として、又は「40℃及び相対湿度75%で6か月間貯蔵した後に不純物Aの形成の100%増加を予防するための医薬的に許容される担体手段」として表され得、その場合、前記手段はそのような結果を生じることができる製剤に対応する。
【0028】
「賦形剤」及び「担体」という用語は、本明細書では同義的に使用される。
検討
【0029】
本発明は、いくつかの主要な実施形態に基づいて定義され得、本明細書における検討に基づいてさらに定義又は変更することでさらなる実施形態を作成することができる。第1の主要な実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩錠剤を製造する方法、及びそれによって製造される錠剤を提供するもので、前記方法は、(a)アナモレリン塩酸塩と、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び無水リン酸水素カルシウムから選択される医薬的に許容される担体の1つ又は組合せとを混合して混合物を形成すること、及び(b)前記混合物を圧縮して錠剤にすることを含む。
【0030】
第2の主要な実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩錠剤を製造する方法、及びそれによって製造される錠剤を提供するもので、前記方法は、(a)アナモレリン塩酸塩と、不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段とを混合して、混合物を形成すること、(b)前記混合物を錠剤に圧縮すること、(c)前記錠剤の1つ又はそれ以上におけるアナモレリン塩酸塩から不純物Aを単離すること、(d)前記1つ又はそれ以上の錠剤中の不純物Aの量を定量すること、及び(e)場合により工程(b)の6か月後又は1年後に工程(c)及び(d)を繰り返すことを含む。
【0031】
第3の主要な実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩から単離された不純物Aを提供する。
【0032】
第4の主要な実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩を有効成分として含む錠剤であって、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム及び無水リン酸水素カルシウムから選択される医薬的に許容される担体をさらに含む錠剤を提供する。
【0033】
第5の主要な実施形態において、本発明は、有効成分としてのアナモレリン塩酸塩と、不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段とを含む錠剤を提供する。
【0034】
第6の主要な実施形態において、本発明は、がん悪液質の1つ又はそれ以上の症状の改善を必要とする患者においてがん悪液質の1つ又はそれ以上の症状を改善する方法であって、本発明による錠剤での治療有効量のアナモレリン塩酸塩を前記患者に投与することを含む方法を提供するもので、(a)前記患者は、25未満のボディーマス指数、20~28のがん倦怠感尺度のスコア、又は65~80の抗がん剤で治療されたがん患者の生活の質に関する調査票(QOL-ACD)スコアを特徴とし、(b)前記症状は、除脂肪体重、食欲、体重、倦怠感及び生活の質からなる群から選択される。
錠剤の特徴
【0035】
アナモレリン塩酸塩で錠剤に圧縮した場合にアナモレリン塩酸塩の安定性を改善することが分かっている好ましい担体は、微晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスポビドン、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプン、ステアリン酸及びフマル酸ステアリルナトリウムから選択される。錠剤は、本発明の教示及び製薬技術の共通の一般知識に基づいて、医薬的に許容され得、医薬的に安定した製品を製造するために製剤化及び製造され得る。
【0036】
錠剤は、これらの好ましい担体の1つのみ又はこれらの好ましい担体の任意の組合せを含むことができる。したがって、一副実施形態では、錠剤はこれらの好ましい担体のうちの2つ又はそれ以上を含む。別の副実施形態では、錠剤は、これらの好ましい担体のうちの3つ又はそれ以上を含む。別の副実施形態では、錠剤は、これらの好ましい担体のうちの4つ又はそれ以上を含む。
【0037】
しかしながら、本明細書で提供される実施例に基づいて、マンニトール及びHPC又はそれらの医薬的等価物の使用を回避することを選択することができる。したがって、一実施形態において、本発明の製剤は、マンニトールなどの糖アルコールを省いている。別の実施形態において、本発明の製剤は、マンニトール、ソルビトール、及び/又はキシリトールを省いている。さらに別の実施形態において、本発明の製剤はマンニトールを省いている。他の実施形態において、本発明の製剤は、HPC及び/又はHPMCを省いている。
【0038】
錠剤は、好ましくは、保存中のアナモレリン塩酸塩の不純物Aへの分解を予防するのに十分な量(「予防有効量」)で好ましい担体の1つ又は組合せを含む。この「予防有効量」は、アナモレリン塩酸塩に対する製剤中の好ましい賦形剤又は好ましい賦形剤の組合せの量に関してさらに説明され得る。したがって、好ましい賦形剤のいずれかが、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約20重量部の量で使用され得る。あるいは、好ましい賦形剤のいずれかが、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.5~約10重量部の量で使用され得る。別の代替法として、好ましい賦形剤のいずれかが、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約1~約6重量部の量で使用され得る。別の代替法として、好ましい賦形剤のいずれかが、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01、0.1、1、5、10若しくは20重量部又はそれ以上の量で使用され得る。
【0039】
予防有効量はまた、その安定化機能に加えて、希釈剤、崩壊剤、流動促進剤又は潤滑剤として、その従来の錠剤化機能を実施するのに十分な製剤中に存在する好ましい賦形剤の量に基づいて定められ得る。したがって、様々な実施態様では、微晶性セルロース、無水リン酸水素カルシウム、ラクトース一水和物、D-マンニトール又はコーンスターチは、独立して(すなわち、担体のうちの1つのみが存在する)、又は組み合わせた形でアナモレリン塩酸塩1重量部に対して約1~約10重量部の量で存在する。他の実施態様では、クロスカルメロースナトリウムは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.1~約2重量部の量で存在する。他の実施態様では、二酸化ケイ素は、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、ステアリン酸マグネシウムは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、低置換ヒドロキシプロピルセルロースは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、デンプングリコール酸ナトリウムは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、カルメロースカルシウムは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、カルメロースは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、クロスポビドンは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、部分的にアルファ化されたトウモロコシデンプンは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、ステアリン酸は、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。他の実施態様では、フマル酸ステアリルナトリウムは、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約0.2重量部の量で存在する。これらの好ましい賦形剤のいずれかは、単独で、又はこれらの重量部で別の好ましい賦形剤と組み合わせて存在することができることが理解されよう。
【0040】
他の実施形態では、予防有効量は、アナモレリン塩酸塩に対する錠剤中の好ましい担体の組合せ全体の重量に基づく。したがって、一実施態様では、錠剤中の好ましい担体の合計は、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.01~約20重量部である。代替的実施態様では、錠剤中の好ましい担体の合計は、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約0.5~約10重量部である。別の代替的実施態様では、錠剤中の好ましい担体の合計は、アナモレリン塩酸塩1重量部に対して約1~約6重量部である。ここでも、錠剤は、好ましい賦形剤のすべてを含む必要はないが、存在する賦形剤を合計することで、前述の重量部を満たすのが好ましい。
【0041】
別の副実施形態では、錠剤はその安定性によって規定される。したがって、様々な副実施形態において、本発明の錠剤は、不純物Aが実質的に生成されないか、又は40℃及び相対湿度75%で2~6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量が、前記アナモレリン塩酸塩の重量に基づいて約0.3%若しくは0.05%、好ましくは0.1%若しくは0.05%未満である錠剤として規定される。
【0042】
錠剤は、その硬度に関してさらに規定され得る。したがって、本発明の実施形態のいずれにおいても、錠剤は、約40~約200ニュートンの硬度を有することができる。別法として又は加えて、本発明の実施形態のいずれかにおいて、複数の場合もある医薬的に許容される担体を、約0.5~約15kNの圧縮力で、前記アナモレリン塩酸塩と共に圧縮することができる。
【0043】
本発明の実施形態のいずれにおいても、アナモレリン塩酸塩及び好ましい担体は、完全に混合される。すなわち、アナモレリン塩酸塩及び好ましい担体は、錠剤全体に均一に分散される。
【0044】
錠剤はコーティングされていてもコーティングされていなくてもよいが、好ましい実施形態では、錠剤は従来のコーティング賦形剤を使用してコーティングされている。
【0045】
さらに別の実施態様において、錠剤は、その製造方法を特徴とし、本明細書に記載の方法のいずれかによって製造された錠剤を含む。
担体手段
【0046】
本発明の錠剤はまた、驚くべき安定性を達成するために使用される手段に関して記載され得る。この手段は、本明細書では「不純物Aの形成を予防するための医薬的に許容される担体手段」又は単に「担体手段」と称される。本発明の実施形態のいずれかに記載される錠剤は、アナモレリン塩酸塩及びそのような担体手段を予防有効量で含む。本明細書の錠剤の特徴及び製造方法の項で述べたように、これらの好ましい賦形剤は、アナモレリン塩酸塩と完全に混合され、錠剤に圧縮された場合に最も効果的である。具体例としての圧縮力は、約0.5~約15kNである。具体例としての錠剤硬度は、約40~約200ニュートンである。
【0047】
したがって、一実施態様では、医薬的に許容される担体手段は、前記アナモレリン塩酸塩との完全な混合物中にあり、約0.5~約15kNの圧縮力で前記アナモレリン塩酸塩と共に圧縮される。
【0048】
別の実施態様では、医薬的に許容される担体は、前記アナモレリン塩酸塩との完全な混合物中にあり、約40~約200ニュートンの硬度に圧縮されている。
【0049】
さらに別の実施態様において、錠剤は、1重量部のアナモレリン塩酸塩に基づいて、約0.01~約20、約0.5~約10、又は約1~約6重量部の前記医薬的に許容される担体手段又は前記医薬的に許容される担体のうちの1つ若しくは組合せを含む。
【0050】
前述のように、これらの好ましい賦形剤は、塩酸塩をアナモレリン部分から化学的又は物理的に隔離することによって不純物Aの形成を予防すると考えられる。したがって、一実施態様において、医薬的に許容される担体手段はHCl捕捉剤として作用する。
製造方法
【0051】
開示される医薬錠剤は、薬学の周知の技術のいずれかによって調製することができる。薬物の製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、イーストン、ペンシルベニア、1975;Libermanら編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、ニューヨーク、ニューヨーク、1980;及びKibbeら編、Handbook of Pharmaceutical Excipients(第3版)、American Pharmaceutical Association、ワシントン、1999で検討されている。しかしながら、好ましい実施形態において、錠剤は、本発明の主要な実施形態の1つに従って製造される。
【0052】
一実施態様では、好ましくは本明細書の錠剤の特徴の項で検討されている重量比のいずれかでのアナモレリン塩酸塩と、本明細書で検討されている好ましい担体の1つ又は組合せとの完全な混合物が、予防有効量にて、好ましくは約0.5~約15kNの圧縮力で錠剤に圧縮される。別の実施態様では、好ましくは本明細書の錠剤の特徴の項で検討されている重量比でのアナモレリン塩酸塩と、本明細書の担体手段の項で検討されている担体手段との完全な混合物が、予防有効量にて、好ましくは約0.5~約15kNの圧縮力で錠剤に圧縮される。本明細書で検討されている好ましい担体以外の慣用的賦形剤も、既知の医薬品製造技術に従って使用することができる。錠剤はまた、当技術分野で周知の方法に従って1つ又はそれ以上のコーティング賦形剤によってコーティングされ得る。
【0053】
したがって、様々な副実施形態において、製造方法は、アナモレリン塩酸塩と、好ましい担体の2つ以上、3つ以上、又は4つ以上とを混合することによって実施される。他の副実施形態では、医薬的に許容される担体手段は、好ましい担体の2つ以上、3つ以上、又は4つ以上を含む。
【0054】
同様に、製造方法は、1重量部のアナモレリン塩酸塩に基づいて、好ましい担体の1つ又は組合せを約0.01~約20重量部、約0.5~約10重量部、若しくは約1~約6重量部の割合で混合することによって実施することができる。逆に、医薬的に許容される担体手段は、1重量部のアナモレリン塩酸塩に基づいて、好ましい担体の1つ又は組合せを約0.01~約20重量部、約0.5~約10重量部、若しくは約1~約6重量部の割合で含むことができる。
【0055】
いずれの場合でも、好ましい担体又は医薬的に許容される担体手段は、好ましくは、不純物Aの形成を予防するのに十分な量で存在する。40℃及び相対湿度75%で6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの量に関して、適切なパーセンテージは、前記アナモレリン塩酸塩の重量に基づいて、0.5%~0.001%、0.2%~0.001%、及び0.1%~0.001%の範囲である。しかしながら、好適なパーセンテージは、好ましくは0.15%~0.001%、0.10%~0.001%、又は0.07%~0.001%の範囲である。あるいは、剤形の安定性については、40℃及び75%の相対湿度で6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの増加量に関して測定することができる。したがって、代替の実施形態では、40℃及び相対湿度75%で6か月間貯蔵した後に生成される不純物Aの割合は、tでの不純物Aの割合の3倍未満、tでの不純物Aの割合の2倍未満、又はtでの不純物Aの割合の1.5倍未満である。
【0056】
製造されると、不純物Aは、好ましくは本明細書に記載のHPLC方法に従って、好ましくはアナモレリン塩酸塩から単離され、錠剤は、好ましくは、本明細書に記載の方法に従って不純物Aについて分析されることになる。したがって、本発明の方法において不純物Aを分離する場合、1つ又はそれ以上の錠剤を有機溶媒に溶解し、高速液体クロマトグラフィーによってアナモレリン塩酸塩を不純物Aから分離することによって不純物Aを単離することが好ましい。
分析方法
【0057】
本発明の錠剤の予想外の安定性及び純度は、大部分は、不純物Aの発見、HPLCによるアナモレリンからの不純物Aの単離、及びHPLCを使用して所与の錠剤中の不純物Aの量を測定する方法による成果である。したがって、一実施形態において、本発明は、HPLCによって不純物Aの濃度を測定することによって、アナモレリン錠剤中の不純物の形成を制御する方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、アナモレリン塩酸塩から単離された不純物Aを提供する。一実施形態において、不純物Aは、非極性有機溶媒中に存在する。別の実施形態において、不純物Aは、水、トリフルオロ酢酸及びアセトニトリルを含む溶液中に存在する。
【0058】
なおさらなる実施形態において、本発明は、アナモレリン塩酸塩錠剤の製造中及び錠剤の製造後に定められた安定性プログラムで不純物Aを分析する方法を提供する。例えば、所与のバッチからの錠剤は、バッチが製造された6か月後又は1年後に不純物Aについて分析され得る。不純物Aは、高速液体クロマトグラフィー中にアナモレリン塩酸塩に対して1.53の応答係数を有するアナモレリン塩酸塩の類似体又は分解物である。不純物AがHPLC中に1.53の応答係数を示す条件は、本明細書の実施例3でより具体的に詳述されている。
治療方法
【0059】
前述のように、本発明は、本発明の錠剤を使用する治療方法をさらに含む。様々な副実施形態では、除脂肪体重が二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)によって推定され、倦怠感ががん倦怠感尺度によって測定され、生活の質が、項目7~11(「身体状態」)、項目8(「食欲は良好でしたか?」)、項目9(「食事は楽しめましたか?」)、及び項目11(「体重は減少しましたか?」)についてのQOL-ACDスコアによって測定される。他の副実施形態において、患者は、ステージIII又はIVの非小細胞肺がん(NSCLC)又は進行した胃腸(結腸直腸、胃、又は膵臓)がんを有する。
【実施例
【0060】
以下の実施例では、数(例えば、量、温度など)に関して正確さが保証されるように努めているが、いくつかの誤差及び偏差が考慮されるべきである。以下の実施例は、当業者に、本明細書の特許請求の範囲で主張された方法がどのように為され、評価されるかについての完全な開示及び説明を提供するために記載されており、純粋に本発明の具体例として示すことを意図したもので、本発明者らが発明として見なすものの範囲を限定することを意図している訳ではない。
【0061】
実施例1
アナモレリン塩酸塩及び単一の医薬的に許容される担体を含有する錠剤の安定性の評価
アナモレリン塩酸塩(ロットA及びロットB)を異なる賦形剤と1:10又は1:1(アナモレリン塩酸塩:賦形剤)の重量比で混合し、表1及び表2に報告するように、アナモレリン塩酸塩50mgを含有する錠剤に圧縮した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
これらの錠剤の安定性を、密閉ボトル中、ICH Q1A(R2)に記載されている温度及び相対湿度の加速試験条件下で2か月間貯蔵した後に測定し、100%アナモレリン一塩酸塩を含有する錠剤(50mg)の安定性と比較した。実施例3で報告されたHPLC条件下で不純物Aの含有量を測定することによって安定性を判定した。安定性試験の結果を表3及び表4に報告する。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
実施例2
アナモレリン塩酸塩及び医薬的に許容される担体の組合せを含有する錠剤の安定性の評価
実施例1と同じ実験で、医薬的に許容される担体の組合せを、アナモレリン塩酸塩と3つの異なる重量比(1:1、1:3及び1:6)又は(1:1、3:2及び3:1)(アナモレリン:賦形剤混合物)で混合し、混合物を圧縮して、表5、表6及び表7に記録された50mg又は150mgのアナモレリン塩酸塩を含有する錠剤を作製した。
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
これらの錠剤の安定性を、密閉ボトル中、ICH Q1A(R2)に記載されている温度及び相対湿度の加速試験条件下で2か月間貯蔵した後に測定し、実施例1に記載されている比較製剤の安定性と比較した。実施例3で報告したHPLC条件下で不純物Aの濃度を測定することによって、安定性を判定した。安定性試験の結果を表8、表9、表10及び表11に報告する。
【0072】
【表8】
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【0075】
【表11】
【0076】
実施例3
不純物AのHPLC分析方法
各試料を下記の移動相A/移動相B混合液(17:3)に溶解して各試験試料とした。次いで、10μgの各試験試料を表5に記載の条件でHPLCによって試験した。試験試料のピーク面積(At)を自動積分によって測定した。アナモレリン塩酸塩及び不純物Aの濃度を、以下の式により算出した。
・類似体濃度(%)=At/Aa×RRF×100
・At:試験試料の各ピーク面積
・Aa:全ピーク面積の合計
・RRF:相対反応係数(不純物A:1.53)
【0077】
【表12】
【0078】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本発明が関係する最新技術をより完全に説明するために、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本発明に様々な修正及び変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。本発明の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に開示される本発明の実施から当業者には明らかとなるはずである。本明細書及び実施例は、具体例として見なされているに過ぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示されるものとする。
【国際調査報告】