(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】人工心臓弁
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021574851
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 US2020047593
(87)【国際公開番号】W WO2021041294
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノーム・ニア
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC05
4C097CC12
4C097CC18
4C097SB02
(57)【要約】
人工弁アセンブリは、径方向に拡張可能および圧縮可能な環状のフレームを含む。フレームは、複数の内側ストラットおよび複数の外側ストラットを含む複数の相互連結ストラットを含む。内側ストラットは、隣接する外側ストラットに複数のピボットジョイントでオーバーラップする。環状のフレームの径方向の拡張または圧縮によって、内側ストラットが外側ストラットに対してピボットジョイントで枢動する。アセンブリは、フレーム内側に、フレームを通る血流を調節する複数の弁尖を有する弁構造体をさらに含む。ストラットのうちのいくつかは、凹状部分を含み、凹状部分を横切る他のストラットは、ピボットジョイントで凹状部分内に着座されるセグメントを含む。これは、フレームの連続的または同一平面をなす内側表面または外側表面をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
複数のストラットを備える径方向に拡張可能および圧縮可能な環状のフレームであって、前記複数のストラットが互いに別個である内側ストラットと外側ストラットとを備え、前記外側ストラットが、隣接する内側ストラットにピボットジョイントでオーバーラップし、前記環状のフレームの径方向拡張または圧縮によって、前記内側ストラットが前記外側ストラットに対して前記ピボットジョイントで枢動する、フレームと、
前記人工心臓弁を通る血流を調節する、前記フレーム内に取り付けられた弁構造体と
を備え、
前記複数のストラットのうちの少なくともいくつかが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、前記複数のストラットの他のストラットのセグメントが、前記ピボットジョイントで前記凹状部分内に着座される、人工心臓弁。
【請求項2】
少なくともいくつかの前記外側ストラットが、凹状部分を備え、少なくともいくつかの前記内側ストラットのセグメントが、前記凹状部分内に着座される、請求項1に記載の弁。
【請求項3】
少なくともいくつかの前記内側ストラットが、凹状部分を備え、少なくともいくつかの前記外側ストラットのセグメントが、前記凹状部分内に着座される、請求項1に記載の弁。
【請求項4】
少なくともいくつかの前記内側ストラットが、前記外側ストラットのセグメントを受容する凹状部分を備え、少なくともいくつかの前記外側ストラットが、前記内側ストラットのセグメントを受容する凹状部分を備える、請求項1に記載の弁。
【請求項5】
前記凹状部分内に前記セグメントが着座する前記ピボットジョイントが、実質的に連続的な内側または外側の表面を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の弁。
【請求項6】
前記凹状部分内に前記セグメントが着座する前記ピボットジョイントが、概ね連続的な内側表面を有し、したがって前記着座したセグメントの内側表面および前記着座したセグメントに接合された前記ストラットの隣接内側表面が、前記フレームの中心線から概ね等しい径方向寸法を有する、請求項5に記載の弁。
【請求項7】
前記凹状部分内に前記セグメントが着座する前記ピボットジョイントが、概ね連続的な外側表面を有し、したがって前記着座したセグメントの外側表面および前記着座したセグメントに接合された前記ストラットの隣接外側表面が、前記フレームの中心線から概ね等しい径方向寸法を有する、請求項5に記載の弁。
【請求項8】
前記ストラットのうちの少なくともいくつかが、それぞれのピボットジョイントに位置する2つ以上の凹状部分を備え、前記ストラットの他のストラットのセグメントが、前記それぞれのピボットジョイントの前記2つ以上の凹状部分内に着座される、請求項1から7のいずれか一項に記載の弁。
【請求項9】
前記フレームが、前記凹状部分を前記ピボットジョイントで前記凹状部分内に着座した前記セグメントに結合するピンをさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の弁。
【請求項10】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの厚さにほぼ等しい深さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の弁。
【請求項11】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの幅よりも大きな幅を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の弁。
【請求項12】
前記弁構造体の弁尖が、前記凹状部分を含む前記ストラットに取り付けられる、請求項1から11のいずれか一項に記載の弁。
【請求項13】
前記ストラットのうちの少なくともいくつかが、凹状端部分を備え、前記ストラットの他のストラットの端セグメントが、前記凹状端部分内に着座され、前記フレームの先端にピボットジョイントを形成する、請求項1から12のいずれか一項に記載の弁。
【請求項14】
人工弁のための機械的なフレームであって、
径方向に拡張可能および圧縮可能な環状格子を形成し、互いに概ね平行な一組の内側ストラットと互いに概ね平行な一組の外側ストラットとを備え、前記外側ストラットが、隣接する内側ストラットにピボットジョイントでオーバーラップし、前記環状格子の径方向拡張または圧縮によって、前記内側ストラットが前記外側ストラットに対して前記ピボットジョイントで枢動する、複数の相互連結ストラット
を備え、
前記相互連結ストラットのうちの少なくともいくつかが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、前記相互連結ストラットの他の相互連結ストラットのセグメントが、前記ピボットジョイントで前記凹状部分内に着座される、機械的なフレーム。
【請求項15】
少なくともいくつかの前記外側ストラットが、凹状部分を備え、少なくともいくつかの前記内側ストラットのセグメントが、前記凹状部分内に着座される、請求項14に記載のフレーム。
【請求項16】
少なくともいくつかの前記内側ストラットが、凹状部分を備え、少なくともいくつかの前記外側ストラットのセグメントが、前記凹状部分内に着座される、請求項14または15に記載のフレーム。
【請求項17】
少なくともいくつかの前記内側ストラットが、前記外側ストラットのセグメントを受容する凹状部分を備え、少なくともいくつかの前記外側ストラットが、前記内側ストラットのセグメントを受容する凹状部分を備える、請求項14から16に記載のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項18】
前記凹状部分内に前記セグメントが着座する前記ピボットジョイントが、概ね連続的な内側または外側の表面を有する、請求項14から17のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項19】
前記凹状部分内に前記セグメントが着座する前記ピボットジョイントが、概ね連続的な内側表面を有し、したがって前記着座したセグメントの内側表面および前記着座したセグメントに接合された前記ストラットの隣接内側表面が、前記フレームの中心線から概ね等しい径方向寸法を有する、請求項18に記載のフレーム。
【請求項20】
前記凹状部分内に前記セグメントが着座する前記ピボットジョイントが、概ね連続的な外側表面を有し、したがって前記着座したセグメントの外側表面および前記着座したセグメントに接合された前記ストラットの隣接外側表面が、前記フレームの中心線から概ね等しい径方向寸法を有する、請求項18に記載のフレーム。
【請求項21】
前記相互連結ストラットのうちの少なくともいくつかが、それぞれのピボットジョイントに位置する2つ以上の凹状部分を備え、前記相互ストラットの他の相互連結ストラットのセグメントが、前記それぞれのピボットジョイントの前記2つ以上の凹状部分内に着座される、請求項14から20のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項22】
前記凹状部分を前記ピボットジョイントで前記凹状部分内に着座した前記セグメントに結合するピンをさらに備える、請求項14から21のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項23】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの厚さにほぼ等しい深さを有する、請求項14から22のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項24】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの幅よりも大きな幅を有する、請求項14から23のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項25】
前記ストラットのうちの少なくともいくつかが、凹状端部分を備え、前記ストラットの他のストラットの端セグメントが、前記凹状端部分内に着座され、前記フレームの先端にピボットジョイントを形成する、請求項14から24のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項26】
人工弁の機械的なフレームを形成する方法であって、
径方向に拡張可能および圧縮可能な環状格子を形成するように複数のピボットジョイントで一組の内側ストラットを一組の外側ストラットに結合するステップを含み、前記内側ストラットが、互いに概ね平行であり、前記外側ストラットが、互いに概ね平行であり、前記環状格子の径方向の拡張または圧縮によって、前記内側ストラットが前記外側ストラットに対して前記ピボットジョイントで枢動するように、前記外側ストラットが前記ピボットジョイントで前記内側ストラットにオーバーラップし、
前記外側ストラットが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、内側ストラットの直線セグメントが、前記ピボットジョイントで前記外側ストラットの前記凹状部分内に着座されるか、
前記内側ストラットが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、外側ストラットの直線セグメントが、前記ピボットジョイントで前記内側ストラットの前記凹状部分内に着座されるかのどちらかである、方法。
【請求項27】
前記結合するステップが、前記ピボットジョイントを形成するようにピボットピンを用いて前記直線セグメントを前記凹状部分に取り付けるステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記外側ストラットが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、内側ストラットの直線セグメントが、前記ピボットジョイントで前記外側ストラットの前記凹状部分内に着座される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記ピボットジョイントが、実質的に連続的な径方向内側表面を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記直線セグメントの内側表面および前記外側ストラットの隣接内側表面が、前記フレームの中心線からほぼ等しい径方向寸法を有する、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記内側ストラットが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、外側ストラットの直線セグメントが、前記ピボットジョイントで前記内側ストラットの前記凹状部分内に着座される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項32】
前記ピボットジョイントが、実質的に連続的な径方向外側表面を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記直線セグメントの外側表面および前記内側ストラットの隣接外側表面が、前記フレームの中心線からほぼ等しい径方向寸法を有する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記ストラットのうちの少なくともいくつかが、それぞれのピボットジョイントに位置する2つ以上の凹状部分を備え、前記ストラットの他のストラットのセグメントが、前記それぞれのピボットジョイントの前記2つ以上の凹状部分内に着座される、請求項26から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記直線セグメントの厚さにほぼ等しい深さを有する、請求項26から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記直線セグメントの幅よりも大きな幅を有する、請求項26から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ストラットのうちの少なくともいくつかが、凹状端部分を備え、前記ストラットの他のストラットの端セグメントが、前記凹状端部分内に着座されピボットピンによって接合され、前記フレームの先端にピボットジョイントを形成する、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
人工心臓弁を径方向に圧縮する方法であって、
前記人工心臓弁の機械的なフレームの一組の外側ストラットと前記機械的なフレームの一組の内側ストラットを、前記外側ストラットと前記内側ストラットが前記フレームの軸方向寸法に平行に近づき前記フレームの半径が減少するように、前記内側ストラットに前記外側ストラットがオーバーラップする複数のピボットジョイントで互いに対して枢動させるステップを含み、
前記外側ストラットが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、内側ストラットのセグメントが、前記ピボットジョイントで前記外側ストラットの前記凹状部分内に着座され、したがって前記ピボットジョイント間の前記外側ストラットの径方向内側表面が、前記ピボットジョイント間の前記内側ストラットの径方向内側表面と等しい内半径を有し、
前記フレームの前記半径の減少が、前記フレーム内に取り付けられた弁構造体の径方向圧縮を引き起こし、
前記ピボットジョイント間の前記外側ストラットと前記内側ストラットの両方の径方向内側表面が、前記外側および内側ストラットが前記フレームの前記軸方向寸法に平行に近づくとき、前記弁構造体に対する実質的に連続的な径方向接触を維持する、方法。
【請求項39】
前記弁構造体に対する前記実質的に連続的な径方向接触が、前記人工心臓弁の径方向圧縮の間、枢動するストラットが前記弁構造体に剪断力を加えることを防ぐ、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記内側ストラットの着座したセグメントの前記内側表面および前記着座したセグメントに接合された前記外側ストラットの隣接内側表面が、前記フレームの軸方向中心線からほぼ等しい径方向寸法を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記外側ストラットが、それぞれのピボットジョイントに位置する2つ以上の凹状部分をそれぞれ備え、前記内側ストラットが、それぞれのピボットジョイントで前記外側ストラットの前記2つ以上の凹状部分内に着座される、請求項38から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記フレームが、前記外側ストラットの前記凹状部分を前記ピボットジョイントで前記内側ストラットの前記着座したセグメントに結合するピンをさらに備える、請求項38から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの厚さにほぼ等しい深さを有する、請求項38から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの幅よりも大きな幅を有する、請求項38から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記弁構造体の弁尖が、前記ピボットジョイント間で前記外側ストラットに取り付けられる、請求項38から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
少なくともいくつかの前記外側ストラットが、凹状端部分を備え、前記内側ストラットの端セグメントが、前記凹状端部分内に着座され、前記フレームの先端にピボットジョイントを形成する、請求項38から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
人工心臓弁を植え込む方法であって、
前記人工心臓弁を径方向に圧縮した状態で心臓の天然心臓弁領域に位置決めするステップと、
前記人工心臓弁の機械的なフレームの一組の外側ストラットと前記機械的なフレームの一組の内側ストラットを、前記外側ストラットと前記内側ストラットが前記フレームの軸方向寸法から平行に遠ざかり前記フレームが軸方向に拡がるように、前記内側ストラットに前記外側ストラットがオーバーラップする複数のピボットジョイントで互いに対して枢動させるステップと
を含み、
前記内側ストラットが、前記ピボットジョイントに凹状部分を備え、外側ストラットのセグメントが、前記ピボットジョイントで前記内側ストラットの前記凹状部分内に着座され、したがって前記ピボットジョイント間の前記内側ストラットの径方向外側表面が、前記ピボットジョイント間の前記外側ストラットの径方向外側表面と等しい外半径を有し、
前記フレームの径方向拡張によって、前記外側ストラットおよび前記内側ストラットの径方向外側表面が、前記天然心臓弁領域の天然組織に対して均一に押し付けられて、前記フレームが径方向に拡張されると一致して前記天然組織に対する弁傍封止を形成する、方法。
【請求項48】
前記弁傍封止が、前記フレームと前記天然組織との間の血液の弁傍漏洩を防ぐ、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記外側ストラットの前記着座したセグメントの前記径方向外側表面および前記着座したセグメントに接合された前記内側ストラットの隣接外側表面が、前記フレームの軸方向中心線からほぼ等しい径方向寸法を有する、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記内側ストラットが、それぞれのピボットジョイントに位置する2つ以上の凹状部分をそれぞれ備え、前記外側ストラットが、それぞれのピボットジョイントで前記内側ストラットの前記2つ以上の凹状部分内に着座される、請求項47から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記フレームが、前記内側ストラットの前記凹状部分を前記ピボットジョイントで前記外側ストラットの前記着座したセグメントに結合するピンをさらに備える、請求項47から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの厚さにほぼ等しい深さを有する、請求項47から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記凹状部分が、前記凹状部分内に着座される前記セグメントの幅よりも大きな幅を有する、請求項47から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
少なくともいくつかの前記内側ストラットが、凹状端部分を備え、前記外側ストラットの端セグメントが、前記凹状端部分内に着座され、前記フレームの先端にピボットジョイントを形成する、請求項47から53のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる2019年8月29日出願の米国仮特許出願第62/893,621号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、人工心臓弁、関連のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人工心臓弁の機械的なフレームの現在設計は、連結部で互いに取り付けられグリッドを形成する複数の交差ストラットを含む。ストラットのグリッドは、本質的に円筒形であるが任意の特定のフレーム設計ごとに完全な円筒形から変化し得るフレームの壁を形成する。このグリッドは、2層のストラットである、径方向内側層および径方向外側層を有する。各層のすべてのストラットは、互いに本質的に平行であり、他の層のストラットと交差している。内側層ストラットのすべての内面は、フレームの内径面を形成する。外側層ストラットのすべての外面は、フレームの外径面を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第62/854,702号
【特許文献2】米国特許第6,730,118号
【特許文献3】米国特許第7,393,360号
【特許文献4】米国特許第7,510,575号
【特許文献5】米国特許第7,993,394号
【特許文献6】米国特許第8,252,202号
【特許文献7】米国特許出願公開第2018/0325665号
【特許文献8】米国特許出願公開第2018/0153689号
【特許文献9】米国特許出願公開第2018/0344456号
【特許文献10】米国仮特許出願第16/105,353号
【特許文献11】米国仮特許出願第62/748,284号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書には、人工弁、その構成要素、その関連の組み立て方法、送達方法および使用方法の例が記載されている。本明細書で開示される人工弁は、心臓の天然弁のいずれか(例えば、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁および肺動脈弁)に植え込むことができる。いくつかの実施形態では、人工弁は、カテーテルに基づく送達装置などの送達装置を用いて、血管系を通して患者の心臓へと送達されて植え込まれ得る。本明細書で開示されるフレームは、体内の他の管内の人工弁、または弁構造のないステントとして使用することもできる。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態は、人工心臓弁に関する。アセンブリは、径方向に拡張可能および圧縮可能な環状のフレームを含むことができる。フレームは、例えばバルーンもしくは機械的手段によってフレームに径方向外方の力を加えることによって、またはフレームに円周方向の分離力を加えることによって、またはフレームに軸方向の短縮力を加えることによって、植え込み位置において拡張させることができる。
【0007】
フレームは、複数の相互連結ストラットを含むことができる。複数の相互連結ストラットは、複数の内側ストラット、および複数の外側ストラットを含むことができる。内側ストラットは、隣接する外側ストラットに複数のピボットジョイントでオーバーラップすることができ、ストラットを互いに対して枢動可能にするピンまたは他の締結具により一緒に結合される。相互連結ストラットは、各ストラットがフレーム周りに対角線または螺旋に延びる、格子またはグリッドに配列され得る。環状のフレームの径方向の拡張または圧縮によって、内側ストラットが外側ストラットに対してピボットジョイントで枢動することができる。
【0008】
そのような人工弁アセンブリおよび機械的なフレームの一般的な構造に関するさらなる詳細は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる、2019年5月30日出願の米国仮特許出願第62/854,702号において知ることができる。米国仮特許出願第62/854,702号を参照すると、
図1は、ピボットジョイントで枢動可能に結合された相互連結ストラットを備える機械的なフレームを用いた人工弁全体を示し、
図2Aおよび
図2Bは、フレームを示し、径方向に拡張および圧縮された構造を例示し、
図3および
図4は、フレームへの他の構成要素の取り付け方法の例を示し、
図6Aおよび
図6Bは、個々のストラットを示し、
図6Cは、ピボットジョイントの詳細を示している。米国仮特許出願第62/854,702号には、弁尖、内側スカート、外側スカート、フレーム拡張機構、送達デバイス、例示的な材料および寸法、ならびに関連の組み立て方法および使用方法など、弁およびフレームの他の構成要素および詳細も記載されている。本明細書で開示される弁およびフレームは、本明細書に記載される場合を除き、米国仮特許出願第62/854,702号に示されるものと類似の構造を有することができる。弁構造体を人工弁のフレームに取り付けることができるやり方を含む、経カテーテル人工心臓弁に関するさらなる詳細は、例えば、すべて参照により本明細書にその全体が組み込まれる、米国特許第6,730,118号、米国特許第7,393,360号、米国特許第7,510,575号、米国特許第7,993,394号、米国特許第8,252,202号および米国特許出願公開第2018/0325665号において知ることができる。フレームおよび人工弁の構造に関するさらなる詳細は、すべて参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2018/0153689号、米国特許出願公開第2018/0344456号、米国仮特許出願第16/105,353号および米国仮特許出願第62/748,284号に記載されている。
【0009】
本明細書で開示される実施形態では、ストラットのうちの少なくともいくつかは、ピボットジョイントに凹状部分を備え、他のストラットのセグメントは、ピボットジョイントで凹状部分内に着座される。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの外側ストラットは、凹状部分を備え、少なくともいくつかの内側ストラットのセグメントは、凹状部分内に着座される。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの内側ストラットは、凹状部分を備え、少なくともいくつかの外側ストラットのセグメントは、凹状部分内に着座される。いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの内側ストラットは、外側ストラットのセグメントを受容する凹状部分を備え、少なくともいくつかの外側ストラットは、内側ストラットのセグメントを受容する凹状部分を備える。
【0010】
凹状部分内にセグメントが着座するピボットジョイントは、概ね連続的な内側または外側の表面を有するように構成することができ、それによってフレームに対する弁尖またはスカートの取り付けが容易になり、また他の利点も提供することができる。いくつかの実施形態では、凹状部分内にセグメントが着座するピボットジョイントは、概ね連続的な内側表面を有し、したがって着座したセグメントの内側表面および着座したセグメントに接合されたストラットの隣接内側表面はフレームの中心線からほぼ等しい径方向寸法を有する。これは、フレーム内部への弁尖および内側スカートの取り付けの助けとなり得る。いくつかの実施形態では、凹状部分内にセグメントが着座するピボットジョイントは、概ね連続的な外側表面を有し、したがって着座したセグメントの外側表面および着座したセグメントに接合されたストラットの隣接外側表面はフレームの中心線からほぼ等しい径方向寸法を有する。これは、外側スカートの取り付けおよび/または弁傍漏洩防止の助けとなり得る。
【0011】
ストラットは、それぞれのピボットジョイントに位置する複数の凹状部分を備えることができ、すべての交差ストラットのセグメントは、それぞれのピボットジョイントで凹状部分内に着座され得る。
【0012】
凹状部分によって画定される凹部は、ストラット同士の枢動運動を可能にしつつ、交差ストラットのセグメントを受容するようなサイズとすることができる。凹状部分の凹部は、凹状部分内に着座されるセグメントの径方向厚さにほぼ等しい径方向深さを有することができ、したがってそれらの径方向に向く表面は、同一平面または共面になり、したがって全体的に連続的なフレーム表面を提供することができる。凹状部分の凹部は、凹状部分内に着座されるセグメントの幅よりも大きな長さを有することができ、したがって凹部内に着座セグメントの枢動のための空間ができる。
【0013】
本明細書ではさらに、ピボットピンなどによりピボットジョイントで内側ストラットを外側ストラットに結合することによって機械的なフレームを形成する方法が開示される。本明細書ではさらに、機械的なフレームを含む人工心臓弁を圧着または径方向に圧縮する方法が開示され、ここでは、ストラットが同じ円周方向面内で軸方向寸法に平行により近づくことで内部の弁構造に対する鋏様の剪断が回避され得る。本明細書ではさらに、人工心臓弁を植え込む方法が開示され、ここでは、フレームと天然組織との間の弁傍漏洩路を防ぐように機械的なフレームが径方向に拡張され周囲の天然組織に対して均一に押し付けられる。
【0014】
開示の技術のさらなる詳細は、添付の図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】弁尖とスカートをフレームのストラットに連結する方法を示す、人工心臓弁の内部からの図である。
【
図1B】弁尖とスカートをフレームのストラットに連結する方法を示す、人工心臓弁の内部からの図である。
【
図2A】弁尖と相互に向かい合う非平坦なフレーム表面を示す、フレームのストラット同士の交差の概略図である。
【
図2B】ストラットがどのように鋏様の剪断力を生成し得るかを示す、フレームの概略図である。
【
図3】フレームが圧着されるときのフレームの内側および外側のストラットの径方向および円周方向のポジショニングを示す、心臓弁の断面図である。
【
図4】弁傍漏洩経路を示す、外側スカートのない心臓弁の外側の図である。
【
図5】比較的連続的または同一平面をなす全体表面を提供するように1つのストラットが交差ストラットを受容する凹状部分を有する、2つのフレームストラット同士の連結部の図である。
【
図6A】連続的な表面が弁尖に面する内側表面である、
図5のような一対のストラット連結部の図である。
【
図6B】弁尖およびスカート上の剪断力を軽減するストラットのアライメントを示す、
図5のような凹状ストラット連結部を組み入れたフレームの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書には、心臓の天然弁のいずれか(例えば、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁および肺動脈弁)に植え込むことができる人工心臓弁の例が記載されている。本開示はさらに、そのような人工インプラントに用いられるフレームを提供する。本明細書で開示される人工弁は、径方向圧縮状態と径方向拡張状態との間で径方向に圧縮可能および拡張可能とすることができる。したがって、人工弁は、送達の間、径方向に圧縮された状態でインプラント送達装置によって保持され、次いで、人工弁が植え込み部位に到達したら、径方向拡張状態へと拡張させることができる。
【0017】
人工心臓弁の機械的なフレームの従来の設計には、以下の一部または全部を含むことがあるいくつかの欠点がある。その中でも、(1)各弁尖は、一方縁で内側ストラットに連結され、他方縁で外側ストラットに連結され得る。内側ストラットに連結される弁尖の縁は、均一表面に取り付けられ得るが、外側ストラットに連結される縁は、不均一(例えば、外側ストラットが、交差する内側ストラットを乗り越えなければならないので、フレームの中心に対して変化する直径に沿って「ジグザグ」)な表面上にある。そのようなパターンは、弁尖の取り付けの精度および均等性に影響を及ぼすことがある。というのも、(a)それが弁尖にひだを作り出すことがあり、それらが弁尖の形状を変化させ、その運動能力を妨げる、および(b)異なる直径に対する取り付けは、非対称の弁尖を作り出すことがあり、それによって弁尖の接合が最適なものとならないことがあるからである。(2)フレームの総壁厚は、ストラットの厚さの2倍以上となることがあり、これは圧着における非常に大きなファクタである。(3)圧着プロセスの間、隣接する内側ストラットと外側ストラットとの間の相対運動は、鋏様の剪断力を及ぼし、それによって弁尖組織の完全性が損なわれることがある。(4)外側布構成要素または弁傍封止構成要素を含まない設計では、平行外側ストラットが弁傍漏洩チャネルを形成することになる可能性が高い。
【0018】
本出願は、上記の欠点を回避することができる新しいストラット幾何形状を開示する。本明細書で開示される弁フレームは、隣接の交差ストラットのそれぞれの直線中間セグメントを収容するように構成された凹状中間セグメントを有するストラットを含むことができる。交差ストラット同士の連結部は、フレームの一面(外側または内側)だけに隆起し、反対面は、比較的平坦または連続的なままとなり得る。
【0019】
フレームの(弁尖と相互に向かい合う)内側表面か(解剖学的周囲と相互に向かい合う)外側表面のどちらの表面が、平坦/連続的な表面としてもたらされるかの決定は、交差ストラットの配置に基づくことができる。いくつかの実施形態では、外側ストラットは、連続的な内側表面を形成するように「直線の」内側ストラットに載せられる凹状中間セグメント付きで形成され、それによって弁尖の両方の縁が等しい直径の連続的な内側表面に取り付けられ得るようになる。他の実施形態では、内側ストラットは、連続的な外側表面を形成するように「直線の」外側ストラットに載せられる凹状中間セグメント付きで形成され、それによって圧着フレーム内に、内側軟質要素を収容するための追加の腔内自由体積の形成が可能になる。
【0020】
ストラットの凹状部分は、所望の領域で直線ストラットを強打することによって形成することができる。(連続的な外側表面または連続的な内側表面の)幾何形状は両方とも、結果として漏洩チャネルを形成しない1つの層グリッドになる、血管壁部の解剖学的構造に対する密な境界面を提供することができる。
【0021】
図1Aおよび
図1Bは、40a、40b、40c、40dなどの複数の相互連結ストラットを備える人工心臓弁のフレーム10を示している。
図2Aおよび
図2Bは、フレーム10の概略図である。各ストラットは、その2つの端部分間に配置された複数のセグメント、および、ストラットの隣接する2つのセグメント間ごとに配置された42a、42bなどの中間セグメントを含む。各ストラットの端部分および中間セグメントは、アパーチャを備えることができ、それらのアパーチャを通る例えばピンなどの締結具によってストラット同士が連結され、J1、J2などのピボット連結部を形成することができる。
図1Aおよび
図1Bに見られるように、連結部J1、J2の幅は、単一ストラットの幅の2倍あり、結果的に生じるフレームの幾何形状は、連結部がストラットの直線セグメントに対して径方向に隆起している、非平坦な外側および/または内側の表面を形成する。
図2Aは、連結部J1、J2、J3でのフレームの隆起の様子を示している。
【0022】
図1Aおよび
図1Bは、スカラップ縫合線22でスカート部分または布に取り付けられている弁尖20、および外側スカート30を示しており、ここでは、弁尖20および外側スカート30は、32a、32bなどの縫合ループを介してフレーム10の外側ストラット40aに取り付けられ、弁尖20は、フレーム10の内側表面と接触し、外側スカート30は、フレーム10の外側表面と接触している。
図1Aは、連結部J1が径方向内方、すなわちフレーム10の中心線12(
図2B参照)の方に向けて隆起するように、連結部J1で互いに連結されているオーバーラップする外側ストラット40aおよび内側ストラット40bの一例を示している。弁尖20の縁は、縫合ループ32a、32bを介して外側ストラット40aに取り付けられ、縫合ループ32a、32b間における連結部J1の径方向内方隆起は、弁尖20とストラット40aとの間に非連続的な境界面を形成する。
【0023】
図1Bは、連結部J2が径方向外方に隆起するように、ピボット連結部J2で互いに連結されているオーバーラップする内側ストラット40cおよび外側ストラット40dの一例を示す。弁尖20の縁は、縫合ループ32c、32dを介して内側ストラット40cに取り付けられ、この領域の弁尖20とストラット40aとの間に連続的な境界面が形成される。しかし、縫合ループ32c、32d間の連結部J2の径方向外方隆起は、外側スカート30とストラット40cとの間に非連続的な境界面を形成する。
【0024】
図2Bは、フレーム10の構造の他の課題を示しており、ここでは、フレーム10の圧着の間、ストラット40f、40g、40h、40iなどの隣接ストラット40の位置は、フレーム10が圧縮または圧着される間に互いに近づくように変化することがあり、それによってそれに取り付けられている弁尖20か外側スカート30のどちらかに望ましくないひだが形成され、さらに、それらは鋏様の剪断力を及ぼすことがあり、それが弁尖20または外側スカート30にさらなるダメージを与えることがある。
【0025】
図3は、弁尖20またはスカート30の組織にダメージを与えるおそれがある剪断力を及ぼすことがある、弁の圧縮の間の隣接のストラット40f、40g、40h、40iの径方向変位の断面図である。
【0026】
図4は、外側スカートが含まれない、例示的な人工心臓弁を示している。
図4の実施形態における弁尖は、内側スカートを介してフレームに連結されている。この設計の欠点は、平行な外側ストラット40aと、弁がそれに対して拡張される周囲血管壁との間に漏洩チャネルが形成されることがあり、血流がそうしたチャネルを通って矢印92の方向に向けられ、その結果、矢印90の方向の全体的な弁傍漏洩流れになることがあることである。
【0027】
本明細書で開示される新規なフレームは、中間ストラットセグメントのうちのいくつかまたはすべてが、オーバーラップするストラットの直線状またはやはりまた湾曲した中間セグメントを収容するように構成される凹状中間セグメントを形成するように湾曲している、改善されたストラット幾何形状を提供することができる。
【0028】
図5は、直線ストラットの中間セグメント44が連結部JNで凹状中間セグメント52に受容されそれに結合されるように、直線ストラットセグメント40が凹状中間セグメント52を有する湾曲ストラット50の上にある概略図である。
図5に示されないが、湾曲ストラット50の各端部分は凹状端部分を含むこともできる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、凹状中間セグメント52または凹状端部分は、直線ストラットを用意し、そのような望ましい凹部の領域でそれを強打する(例えば、それを塑性的に変形させる)ことによって形成することができる。有利には、比較的直線のストラットは、結果的に生じるフレームの少なくとも1つの表面が連続的または同一平面をなし、その連続的な表面が連結部JN(ならびに先端)に任意の実質的に径方向の突出部を含まないように、凹状中間セグメントを有するストラットの上に置かれる。
【0030】
図6Aに概略的に示されるように、凹状中間セグメントを有するストラット50は、連結部JN1およびJN2が一方側(この図では下側である、フレームの径方向外方側)に向けて隆起し、反対側の表面(この図では上側である、フレームの径方向内方側)が弁尖20に隣接して実質的に連続的なままになるように、ストラット40に結合される。いくつかの実施形態によれば、フレームは、凹状中間セグメント52を有する一組または一層の平行外側ストラット50を、フレームの内側表面が弁尖20に隣接して実質的に連続的になるように、
図6Aに示されるようなやり方で一組または一層の交差平行内側(直線)ストラット40に連結することによって形成される。有利には、弁尖20は、両縁により、そのような幾何形状のフレームの連続的な内側表面に連結され得る。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、フレームは、凹状中間セグメント52を有する一組または一層の平行内側ストラット50を、フレームの外側表面が実質的に連続的になるように、一組または一層の交差平行外側(直線)ストラット40に連結することによって形成される。有利には、弁尖および内側スカートなどの内側軟質要素を収容する追加の内部自由体積が、そのような幾何形状の圧着フレーム内に実現され得る。
【0032】
開示の実施形態のさらなる利点は、フレームの外側表面に沿って形成される漏洩チャネルのリスクのない、外側スカートがない人工心臓弁の採用を可能にすることができることである。これは、(a)外側表面が連続的な(すなわち、連結部JNがフレームのルーメンの方に向けて内方に隆起している)場合、完全に拡張されたフレームと血管壁との間にスペースが形成されず、したがって漏洩チャネルの形成が回避され、(b)内側表面が連続的な(すなわち、連結部JNが血管の壁に向けて外方に隆起している)場合、ストラットのセグメントが血管の壁に対してぴったりと押し付けられるまで、連結部JNが血管の壁を押す(すなわち、血管の内側表面に若干貫入する)ようにフレームがさらに拡張可能であり、それによってそれらの間における漏洩チャネルの形成が回避されるように、ともに上述した提案の組み立てで達成され得る。
【0033】
開示の技術のさらなる利点は、圧縮または圧着の間の弁尖またはスカート(例えば、
図2Bおよび
図3参照)に作用する剪断力のリスクが軽減されることである。
図6Bに示されるように、隣接のストラット40および50は、フレーム圧縮の間、同じ円周方向平面に沿って互いに接近するので、それらの間に配置された軟質層の剪断が回避され、結果的に有害な剪断または「鋏」様の力になり得る隣接ストラット間の径方向変位が実質的に回避される。
【0034】
一般的考慮事項
開示された実施形態を、心臓の自然弁輪(例えば、大動脈弁輪、肺動脈弁輪、僧帽弁輪、および三尖弁輪)のいずれかに人工デバイスを送達し植え込むように適合することができ、また様々な送達アプローチ(例えば、逆行性、順行性、経中隔、経心室、経心房など)のいずれかを用いた人工弁の送達のための様々な送達デバイスのいずれかとともに使用することができることを理解されたい。
【0035】
この説明のために、本明細書には、この開示の実施形態のいくつかの態様、利点、および新規の特徴が記載されている。開示された方法、装置、およびシステムは、いかなる点でも限定と解釈されるべきではない。その代わり、本開示は、様々な開示された実施形態のすべての新規の自明ではない特徴および態様を、単独で、ならびに様々な互いの組合せおよび部分的な組合せで対象とするものである。方法、装置、およびシステムは、任意の特定の態様もしくは特徴またはその組合せに限定されず、また開示された実施形態は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在することまたは問題が解決されることを必要としない。任意の例による技術は、他の例のうちの任意の1つまたは複数において記載された技術と組み合わせることができる。開示された技術の原理が適用される場合がある多数の考えられる実施形態に鑑みて、図示の実施形態が好ましい例に過ぎず、開示された技術の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを認識されたい。
【0036】
開示された実施形態のうちのいくつかの実施形態の動作について、好都合に提示するために特定の順序で説明したが、この説明方法が、本明細書に記載する特定の文言によって特定の順序が必要とされない限り再構成を包含することを理解されたい。例えば、順を追って記載された動作は、場合によっては、再構成されるかまたは同時に実行されてもよい。加えて、便宜上、添付の図は、開示された方法を他の方法とともに使用することができる様々な方法を示さない場合がある。さらに、説明は、場合によっては、開示された方法を説明するために「提供する」または「実現する」のような用語を使用する。これらの用語は、実行される実際の動作を高度に抽象化したものである。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて異なる場合があるが、当業者によって容易に識別可能である。
【0037】
本出願および特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことを示していない限り、複数形を含む。加えて、用語「含む」は、「備える」を意味する。本明細書で使用されるような「および/または」は、「および」または「または」、ならびに「および」および「または」を意味する。さらに、用語「結合される(coupled)」および「連結される(connected)」は一般的に、電気的、電磁気的、および/または物理的(例えば、機械的もしくは化学的)に結合もしくは関連されることを意味し、特定の反対語がない限り、結合または関連付けられている項目の間の中間要素の存在を除外しない。
【0038】
方向および他の相対的基準(例えば、内側、外側、上側、下側など)は、図面および本明細書中の原理の説明を容易にするために使用され得るが、限定を意図するものではない。例えば、「内」、「外」、「上」、「下」、「内部」、「外部」などのいくつかの用語が使用され得る。そのような用語は、適用可能である場合、特に例示した実施形態に関して、相対関係を扱うときにいくらか明確な説明を行うために使用される。しかし、そのような用語は、絶対的な関係、位置、および/または向きを含意することは意図されていない。例えば、ある物体に関して、「上側」部分は、単にこの物体を裏返すことによって、「下側」部分になり得る。それにも関わらず、それは、未だに同じ部分であり、物体は同じままである。
【0039】
本明細書で開示される弁およびフレームは、環状のフレームの中心線および流入端部から流出端部の方に向かう全体的な血流方向によって定められる軸方向、フレームの中心線から垂直方向に放射状に広がるとして定められる径方向、ならびに、軸方向および径方向に対して垂直でありフレームの中心線の周りに延びる円周方向を用いて説明される。用語「内側」は、フレームの中心線近くの物体、表面および領域を指し、用語「外側」は、フレームの中心線から離れた物体、表面および領域を指す。
【0040】
開示された技術の原理が適用される可能性のある多数の実施形態を考慮して、図示の実施形態が技術の好ましい例に過ぎず、技術の範囲を限定すると見なされるべきではないことを認識されたい。むしろ、本開示された技術の範囲は、少なくとも、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物と同じ広さである。
【符号の説明】
【0041】
10 フレーム
12 中心線
20 弁尖
22 縫合線
30 スカート
32a、32b、32c、32d 縫合ループ
40、40a、40b、40c、40d、40f、40g、40h、40i ストラット
42a、42b 中間セグメント
44 中間セグメント
50 湾曲ストラット
52 凹状中間セグメント
90、92 矢印
J1、J2、J3 連結部
JN、JN1、JN2 連結部
【国際調査報告】