(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ジエンの製造用のコークスを含む触媒およびプロセス
(51)【国際特許分類】
B01J 21/18 20060101AFI20221027BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20221027BHJP
C07C 1/24 20060101ALI20221027BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20221027BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
B01J21/18 Z
C07C11/167 ZAB
C07C1/24
C01B32/05
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500620
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 IB2020057922
(87)【国際公開番号】W WO2021038434
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】102019000015069
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(71)【出願人】
【識別番号】519161584
【氏名又は名称】アルマ マータ ストゥディオルム-ウニベルシータ ディ ボローニャ
【氏名又は名称原語表記】ALMA MATER STUDIORUM - UNIVERSITA’ DI BOLOGNA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアナ オチョア ヴェラスケス
(72)【発明者】
【氏名】ファブリッツォ カヴァーニ
(72)【発明者】
【氏名】イレーネ トージ
(72)【発明者】
【氏名】エリカ ファルシ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ヴェッキニ
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G146AA22
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AD17
4G146AD35
4G146BA11
4G146BB06
4G146BB11
4G146BB17
4G146BC03
4G146BC08
4G146BC23
4G146BC26
4G146BC32B
4G146BC50
4G146DA02
4G169AA02
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA05A
4G169BA06A
4G169BA07A
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC32A
4G169BC35A
4G169BC42A
4G169BC43B
4G169BC56A
4G169BC60A
4G169CB21
4G169CB22
4G169CB63
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC27
4G169FA01
4G169FC08
4G169ZA01A
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC13
4H006BA09
4H006BA30
4H006BA71
4H006BC10
4H006BC11
4H006DA10
4H039CA19
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)による分析時に、前記コークスが、1450cm-1~1700cm-1の波長で少なくとも2つのピークを有することを特徴とするコークスを含む触媒に関する。コークスを含む前述の触媒は、ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンの製造プロセスで有利に使用することができ、前記プロセスは、4以上の炭素原子数を有する少なくとも1つのアルケノールの脱水を含む。好ましくは、4以上の炭素原子数を有する前記アルケノールは、生合成プロセスから直接、または少なくとも1つのジオールの接触脱水プロセスを経て得ることができる。前記アルケノールがブテノールである場合、前記ジオールは、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオール、さらにより好ましくはバイオ-1,3-ブタンジオール、すなわち生合成プロセスに由来する1,3-ブタンジオールである。前記ジオールが1,3-ブタンジオール、またはバイオ-1,3-ブタンジオールである場合、本発明によるプロセスで得られるジエンは、それぞれ、1,3-ブタジエン、またはバイオ-1,3-ブタジエンである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークスを含む触媒であって、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)による分析時に、前記コークスが、1450cm
-1~1700cm
-1の波長で少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、コークスを含む触媒。
【請求項2】
前記触媒が、酸化アルミニウム(γ-Al
2O
3)、ケイ酸アルミニウム、シリカ-アルミナ(SiO
2-Al
2O
3)、アルミナ、ゼオライト、金属酸化物(酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銀など)から選択される、好ましくは、シリカ-アルミナ(SiO
2-Al
2O
3)から選択される、少なくとも1つの化合物を含む、請求項1に記載のコークスを含む触媒。
【請求項3】
前記触媒が、
(a)前記触媒の総重量に対して、2重量%~30重量%、好ましくは6重量%~20重量%のコークスと、
(b)前記触媒の総重量に対して、70重量%~98重量%、好ましくは80重量%~94重量%の、酸化アルミニウム(γ-Al
2O
3)、ケイ酸アルミニウム、シリカ-アルミナ(SiO
2-Al
2O
3)、アルミナ、ゼオライト、金属酸化物(酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銀など)から選択される、好ましくは、シリカ-アルミナ(SiO
2-Al
2O
3)から選択される、少なくとも1つの化合物と、
を含み、(a)+(b)の合計が、100である、請求項1または2に記載のコークスを含む触媒。
【請求項4】
ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンの製造プロセスであって、コークスを含む少なくとも1つの触媒存在下で、炭素原子数4以上の少なくとも1つのアルケノールの脱水を含み、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFT)による分析時に、前記コークスが、1450cm
-1~1700cm
-1の波長で少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、ジエンの製造プロセス。
【請求項5】
前記直鎖状または分岐状アルケノールが、一般式C
nH
2nOを有し、式中、nは、4以上8以下の整数であり、好ましくは4以上6以下であり、さらにより好ましくは4である、請求項4に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項6】
前記アルケノールが、炭素原子数4であり、すなわちブテノールであり、好ましくは、前記アルケノールが、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)(2-Bu-1-OH)、3-ブテン-2-オール(メチル-ビニル-カルビノール)(3-Bu-2-OH)、3-ブテン-1-オール(アリルカルビノール)(3-Bu-1-OH)、またはそれらの混合物から選択され;さらにより好ましくは、前記アルケノールが、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)、またはそれらの混合物から選択される、請求項4または5に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項7】
炭素原子数4以上の前記アルケノールが、生合成プロセスから直接、または少なくとも1つのジオールの接触脱水プロセスを経て得られる、請求項4~6のいずれか一項に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項8】
前記アルケノールが、炭素原子数4である、すなわちブテノールである場合、前記ブテノールが、酸化セリウム触媒の存在下で、ブタンジオール、好ましくは1,3-ブタンジオールの接触脱水によって得られ、前記酸化セリウム触媒が、少なくとも1つの塩基の存在下で、少なくとも1つのセリウム含有化合物の沈殿によって得られる、請求項4~7のいずれか一項に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項9】
前記ジオール、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオールが、糖の発酵に由来し、好ましくはバイオマスに由来する糖の発酵に由来し;好ましくは、前記ジオールが、グアユールおよび/またはアザミに、またはその処理に由来する破片、残渣、廃棄物を含むグアユールおよび/またはアザミバイオマスに由来する糖の発酵に由来し;より好ましくは、前記ジオールが、グアユールに、またはその処理に由来する破片、残渣、廃棄物を含むグアユールバイオマスに由来する糖の発酵に由来する、請求項7または8に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項10】
炭素原子数4以上の前記アルケノールが、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)、好ましくはN
2などの不活性ガスから選択される希釈剤と混合される;または、それが、通常の条件下で25℃~150℃の沸騰温度を有する化合物と混合され、好ましくは、通常の条件下で50℃~125℃の沸騰温度を有し、通常の条件下で20℃以下の溶融温度を有する、水、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ベンゼン、またはそれらの混合物から選択される化合物と混合され;好ましくは、前記希釈剤が、窒素(N
2)および水から選択され;さらにより好ましくは、それが水である、請求項4~9のいずれか一項に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項11】
前記希釈剤が不活性ガスから選択される場合、前記プロセスが、0.3より大きい、好ましくは0.5~2の希釈剤とアルケノールとのモル比で実施される;
前記希釈剤が、通常の条件下で25℃~150℃の沸騰温度を有する化合物、好ましくは通常の条件下で50℃~125℃の沸騰温度と20℃以下の溶融温度を有する化合物から選択される場合、前記プロセスが、0.01~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは1~10の希釈剤とアルケノールのモル比で実施される、請求項10に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項12】
前記プロセスが、
250℃~500℃、好ましくは280℃~450℃の温度で;および/または
5kPa~5000kPa、好ましくは30kPa~350kPa、より好ましくは80kPa~250kPaの圧力で;および/または
気相または液/気混合相;および/または
固定床反応器、移動床反応器または流動床反応器中で;および
それが、液/気混合相で実施される場合、コークスを分散させて含む触媒を含む連続撹拌反応器(「連続流撹拌槽型反応器」、CSTR)を使用する;および/または
連続的にまたはバッチ式で、好ましくは連続的に;および/または
連続的に実施される場合、空間速度WHSV(「重量時間空間速度」)、すなわち、前記反応器に供給される反応物の重量と、前記反応器内の触媒の重量との比が、0.5h
-1~10h
-1、好ましくは1h
-1~5h
-1であり;および/または
前記反応条件における前記体積供給流量に対する前記脱水反応器に装填されたコークスを含む触媒の体積の比として計算される接触時間(τ)が、好ましくは0.01秒~10秒、より好ましくは0.05秒~8秒、さらにより好ましくは0.1秒~4秒である、
実施される、請求項4~11のいずれか一項に記載のジエンの製造プロセス。
【請求項13】
コークスを含む触媒の製造プロセスであって、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)による分析時に、前記コークスが、1450cm
-1~1700cm
-1の波長で少なくとも2つのピークを有し、前記プロセスは、酸化アルミニウム(γ-Al
2O
3)、ケイ酸アルミニウム、シリカ-アルミナ(SiO
2-Al
2O
3)、アルミナ、ゼオライト、金属酸化物(酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銀など)から選択される、好ましくは、シリカ-アルミナ(SiO
2-Al
2O
3)から選択される、少なくとも1つの化合物の存在下で、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)および2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)を含むアルケノールの混合物の脱水を含み、前記プロセスは、250℃~500℃、好ましくは280℃~450℃の温度で、2時間~10時間、好ましくは2.5時間~9時間実施される、コークスを含む触媒の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスを含む触媒に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)による分析時に、コークスが1450cm-1~1700cm-1の波長で少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、コークスを含む触媒に関する。
【0003】
コークスを含む前述の触媒は、炭素原子数が4以上の少なくとも1つのアルケノールの脱水を含む、ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンの製造方法において有利に使用することができる。
【0004】
したがって、本発明はまた、コークスを含む前記触媒の存在下で、炭素原子数が4以上の少なくとも1つのアルケノールの脱水を含む、ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンを製造するためのプロセスに関する。
【0005】
好ましくは、炭素原子数が4以上の前記アルケノールは、生合成プロセスから直接、または少なくとも1つのジオールの接触脱水プロセスを経て得ることができる。
【0006】
前記アルケノールがブテノールである場合、前記ジオールは、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオール、さらにより好ましくはバイオ-1,3-ブタンジオール、すなわち生合成プロセスに由来する1,3-ブタンジオールである。
【0007】
前記ジオールが1,3-ブタンジオールまたはバイオ-1,3-ブタンジオールである場合、本発明によるプロセスで得られるジエンは、それぞれ、1,3-ブタジエンまたはバイオ-1,3-ブタジエンである。
【0008】
1,3-ブタジエンは、石油化学産業の基本的な製品であり、これは、他の製品の中でも、クロロプレン、アジポニトリルおよびヘキサメチレンジアミンの調製のための物質である。
【0009】
実際、1,3-ブタジエンは、プラスチック、合成ゴム、樹脂、ラテックス、ターポリマー(例えば、ABS)、塗料および合成繊維などの多くの産業分野で使用することができる。1,3-ブタジエンとスチレンの共重合生成物は、タイヤを製造するためのブレンドの組成物に含まれている。
【0010】
現在、年間生産される1,3-ブタジエンの95%以上は、エチレンおよび他のオレフィンを製造するための「スチームクラッキング」プロセスに由来する副産物として得られ、そこから抽出蒸留によってそれは分離され、少量(<5%)で形成される場合、1,3-ブタジエンは、例えば、ブタンおよび/またはブテンの触媒的/酸化的脱水素化などの他のプロセスを経て、化石源からも得ることができる。これらのプロセスはすべて、特にエネルギーを消費し、大量の二酸化炭素(CO2)の排出を意味する。
【0011】
化学製品の環境への影響を減らす必要があることと、再生可能な資源(例えば、バイオマス)に由来する原材料を使用する必要があることから、バイオ-1,3-ブタジエンを得るために様々なプロセスが使用されてきた。前記プロセスの例は、次のとおりである:バイオマスの発酵から得られたジオールの脱水;バイオマスからバイオ-1,3-ブタジエンへの直接発酵;1段階または2段階でのエタノールからバイオ-1,3-ブタジエンへの変換;バイオマスの発酵またはガス化によって得られたバイオブタノールの脱水とそれに続く脱水素。
【0012】
例えば、バイオマスの発酵から得られたジオールの脱水は、次のスキームに従って、2つの連続した脱水段階を経て実行することができる。
【化1】
説明どおりに運転し、例えば、Sato Sらの論文「ブタンジオールからの1,3-ブタジエンの製造の将来の見通し」、「Chemistry Letters」(2016),Vol.45,1036~1047ページ。
【0013】
不飽和アルコールの脱水によるオレフィンおよび/またはジエン(例えば、1,3-ブタジエン)の製造は、酸触媒の存在下で実施することができる。酸性のタイプ、すなわち、ブレンステッド酸またはルイス酸および酸部位の力は異なる場合がある。一般的に使用される触媒系は、例えば、アモルファス形態での、シリカ(Si)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)などの金属酸化物に基づいているか、またはゼオライトに基づいている。不飽和アルコールの脱水によるオレフィンおよび/またはジエン(例えば、1,3-ブタジエン)の製造はまた、特に2段階プロセスで、セリウム系触媒の存在下で実施することができる。
【0014】
オレフィンおよび/またはジエンを提供するための不飽和アルコールの脱水に適した触媒を特定するために、最先端技術において多くの努力がなされている。
【0015】
例えば、英国特許GB1,275,171号は、ジエンを提供するためのエポキシドまたはジオールの脱水に使用されるリン酸リチウム系触媒を調製するためのプロセスを記載している。ジエンを提供するためのエポキシドまたはジオールの脱水における前記触媒の使用は、副生成物、オレフィンに再変換され得る主にカルボニル生成物が得られることを可能にするとされている。さらに、前記触媒は、その活性を失うことなく600℃でか焼することができ、使用後に再生することができるという利点を有するとされている。
【0016】
米国特許第2,420,477号は、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、またはそれらの合金からなる群より選択される金属の「コア」を含む触媒の存在下、125℃~250℃の温度で、ビニルエチルエーテルをエチレンと反応させることを含むブタジエンを製造するためのプロセスを記載しており、前記「コア」は、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンおよびウランなどの金属の酸化物でコーティングされている。前述のプロセスは、ブタジエンを調製するために通常使用される温度よりも低い温度で実行されるとされており、実質的に副生成物の生成を防ぐことができるとされている。
【0017】
国際公開WO2013/017496号は、アルコールを脱水して低分子量のオレフィンを生成するためにリンで修飾されたゼオライトを含む触媒の使用を記載しており、前記触媒は、容易に再現可能であり、良好な性能レベルの触媒を与えるとされる特定のプロセスを経て得られる。
【0018】
米国特許第4,260,845号は、約1のZnO/Al2O3モル比を有するアルミン酸亜鉛系の脱水触媒の存在下での飽和アルコールのオレフィンへの脱水を記載しており、前記触媒は、空気中で十分な時間および十分な温度で加熱されてそれを活性化する。前述の触媒は、選択性の点で良好な性能レベルを有するとされている。
【0019】
当技術分野でなされた努力にもかかわらず、良好な性能レベルおよびより高い耐久性を有する脱水触媒、および/または前記触媒の耐久性を向上させ、および/または上記のような、触媒の被毒を引き起し得る副生成物の形成を低減し得るプロセスの同定は、いまだに目的であり、したがって非常に興味深いものである。
【0020】
酸触媒の存在下での不飽和アルコールならびに得られる主生成物、すなわちオレフィンおよび/またはジエンの脱水反応において、二次反応も起こり、これは、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸などのカルボニル化合物の形成につながることが知られている。前記カルボニル化合物は、例えば、アルミナおよびシリカ-アルミナなどの一部の脱水触媒に存在する脱水素化成分のおかげで形成することができ、ここで、前記成分は、多かれ少なかれマークされ得る。起こり得る他の二次反応は、オレフィンのオリゴマー化と「クラッキング」現象である。前記二次反応は、コークスの前駆体として作用する化合物をもたらし、そのため、脱水に使用される触媒の活性表面を比較的素早く覆い、それを完全に不活性にするコークスおよび/またはタールの形成により、脱水触媒の不活性化につながる。
【0021】
触媒の失活メカニズムは、文献で広く知られている。前記メカニズムの詳細な説明は、例えば、Petersen Z.およびBell A.T.,「Catalyst Deactivation」(1987),Marcel Dekker,INC,ニューヨーク;Forzatti P.ら、「Catalyst deactivation」、「Catalysis Today」(1999)、Vol.52、165~181ページ;Bartholomew C.H.,「Mechanisms of catalyst deactivation」、「Applied Catalysis A:General」(2001)、Vol.212、17~60ページに見出すことができる。
【0022】
レビュー「Review of old chemistry and new catalytic advances in the on-purpose synthesis of butadiene」、「Chemical Society Reviews」(2014)、Vol.43,7917~7953ページにおいて、Makshina E.V.らは、再生可能資源からの1,3-ブタジエンの製造とその目的で使用される触媒系に関連する最新技術をカバーしている。彼らが参照している参考文献は非常に広範囲であるが(実際に246の論文が言及されている)、使用される触媒の中で、コークスが触媒作用で活性であるコークスを含む触媒は言及されていない。
【0023】
不飽和アルコールの脱水による1,3-ブタジエンの製造、および/または1,3-ブタジエンの製造に使用し得る不飽和アルコールの製造、および/または触媒系に関連する膨大な特許文献もあるが、この場合にも、前記コークスが触媒作用において活性であるコークスを含む触媒は一切言及されていない。例として、以下の米国特許US2,310,809号、US2,426,678号、US4,400,562号、US5,406,007号、US6,278,031号、US9,434,659号;ならびにEP3,262,023号、EP3,230,236号、EP3,142,785号およびWO2018/073282号は、すべて出願人の1人の名前で言及することができる。
【0024】
メタノールおよびジメチルエーテル(DME)からオレフィンへの変換反応(MTO E DTO)の触媒作用で活性なコークスは、Chen D.らによる論文「The Role of Coke Deposition in the Conversion of Methanol to Olefins over SAPO-34」、「Catalyst Deactivation」(1997),Bartholomew CHおよびG.A.Fuentes Eds.,Elsevier Science BV,159~166ページに記載されている。しかしながら、前記論文では、前記コークスがアルケノールの脱水反応においても触媒として活性であり、1,3-ブタジエンを生成する可能性に関して示唆は与えられていない。
【0025】
したがって、出願人は、炭素原子数4以上の少なくとも1つのアルケノール、特に、従来はバイオアルケノールとして知られている、生合成プロセスに由来する少なくとも1つのアルケノールの接触脱水を経てジエン、特に共役ジエン、より具体的には1,3-ブタジエン、さらに特にバイオ-1,3-ブタジエンを製造するためのプロセスにおいて有利に使用することができるコークスを含む触媒を見つける問題を解決することに着手した。
【0026】
出願人は、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)による分析時に、前記コークスが特定の波長範囲に少なくとも2つのピークを有し、ジエンの製造プロセスで有利に使用できるコークスを含む触媒を発見した。特に、コークスを含む前記触媒は、炭素原子数4以上の少なくとも1つのアルケノール、特に、従来はバイオアルケノールとして知られている、生合成プロセスに由来する少なくとも1つのアルケノールの接触脱水を経てジエン、特に共役ジエン、より具体的には1,3-ブタジエン、さらにより具体的にはバイオ-1,3-ブタジエンを製造するためのプロセスにおいて有利に使用することができる。さらに、コークスを含む前記触媒は、高い収率および選択性で1,3-ブタジエンを提供することができる。
【0027】
したがって、本発明の目的は、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)による分析時に、前記コークスが1450cm-1~1700cm-1の波長で少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、コークスを含む触媒である。
【0028】
拡散反射における赤外分光法による分析(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)は、以下の例に記載されているように実施した。
【0029】
本説明および以下の特許請求の範囲の目的のために、数値間隔の定義は、別段の記載のない限り、常に極値を含む。
【0030】
本説明および以下の特許請求の範囲の目的のために、「含む」という用語は、「本質的にからなる」または「からなる」という用語も含む。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、コークスを含む前記触媒は、例えば、酸化アルミニウム(γ-Al2O3)、ケイ酸アルミニウム、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)、アルミナ、ゼオライト、金属酸化物(例えば、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銀)から選択される少なくとも1つの化合物を含むことができ;好ましくは、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)から選択される少なくとも1つの化合物を含むことができる。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施形態では、コークスを含む前記触媒は、
(a)前記触媒の総重量に対して、2重量%~30重量%、好ましくは6重量%~20重量%のコークスと;
(b)前記触媒の総重量に対して、70重量%~98重量%、好ましくは80重量%~94重量%の、例えば、酸化アルミニウム(γ-Al2O3)、ケイ酸アルミニウム、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)、アルミナ、ゼオライト、金属酸化物(例えば、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銀)から選択される少なくとも1つの化合物を含むことができ;好ましくは、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)から選択される少なくとも1つの化合物;好ましくは、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)から選択される少なくとも1つの化合物と;
を含むことができ、(a)+(b)の合計は、100である。
【0033】
本発明の目的のために、コークスを含む前記触媒は、例えば、アルミナ、シリカなどのバインダーを含むことができ、および/または任意に、例えば、軽石、グラファイト、シリカなどの不活性担体に担持することができる。
【0034】
本説明および以下の特許請求の範囲の目的のために、「ゼオライト」という用語は、その最も広い意味で考慮されるべきであり、すなわち、例えば、「ゼオライト類縁」;「ゼオタイプ」;リンまたは例えば、ナトリウム、カリウム、ホウ素などの金属もしくはランタニド系列の金属などで修飾されたゼオライトなどの一般に知られている材料も含む。
【0035】
本発明によるコークスを含む触媒は、少なくとも1つのアルケノール、好ましくは3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)および2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)の接触脱水反応から得ることができ、ジエンを提供し、好ましくは1,3-ブタジエンを提供する。実際、前記触媒に含まれるコークスは、前記脱水反応中に形成される副生成物である。
【0036】
したがって、本発明のさらなる目的は、拡散反射における赤外分光法(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFT)による分析時に、コークスが1450cm-1~1700cm-1の波長で少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、コークスを含む少なくとも1つの触媒の存在下で、炭素原子数4以上の少なくとも1つのアルケノールの接触脱水を含む、ジエン、好ましくは共役ジエン、より好ましくは1,3-ブタジエンを製造するためのプロセスである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、前記アルケノールは、直鎖状または分岐状であり、一般式CnH2nOを有し、式中、nは、4以上8以下の整数であり、好ましくは4以上6以下であり、さらにより好ましくは4である。
【0038】
本発明の目的に特に有用なアルケノールの具体的な例は、2-ブテン-1-オール、3-ブテン-1-オール、3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、4-ペンテン-1-オール、4-ペンテン-2-オール、4-ペンテン-3-オール、3-ペンテン-1-オール、3-ペンテン-2-オール、2-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、5-ヘキセン-2-オール、5-ヘキセン-3-オール、5-ヘキセン-4-オール、4-ヘキセン-1-オール、4-ヘキセン-2-オール、4-ヘキセン-3-オール、3-ヘキセン-1-オール、3-ヘキセン-2-オール、2-ヘキセン-1-オール、2-メチル-3-ペンテン-2-オール、2-メチル-4-ペンテン-2-オール、3-メチル-4-ペンテン-2-オール、6-ヘプテン-1-オール、6-ヘプテン-2-オール、6-ヘプテン-3-オール、6-ヘプテン-4-オール、6-ヘプテン-5-オール、5-ヘプテン-1-オール、5-ヘプテン-2-オール、5-ヘプテン-3-オール、5-ヘプテン-4-オール、4-ヘプテン-1-オール、4-ヘプテン-2-オール、4-ヘプテン-3-オール、3-ヘプテン-1-オール、3-ヘプテン-2-オール、2-ヘプテン-1-オール、7-オクテン-1-オール、7-オクテン-2-オール、7-オクテン-3-オール、7-オクテン-4-オール、7-オクテン-5-オール、7-オクテン-6-オール、6-オクテン-1-オール、6-オクテン-2-オール、6-オクテン-3-オール、6-オクテン-4-オール、6-オクテン-5-オール、5-オクテン-1-オール、5-オクテン-2-オール、5-オクテン-3-オール、5-オクテン-4-オール、4-オクテン-1-オール、4-オクテン-2-オール、4-オクテン-3-オール、3-オクテン-1-オール、3-オクテン-2-オール、2-オクテン-1-オールである。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記アルケノールは、炭素原子数4であり、したがってブテノールである。
【0040】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記ブテノールは、2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)(2-Bu-1-OH)、3-ブテン-2-オール(メチル-ビニル-カルビノール)(3-Bu-2-OH)、3-ブテン-1-オール(アリルカルビノール)(3-Bu-1-OH)またはそれらの混合物から選択することができ、さらにより好ましくは、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)またはそれらの混合物から選択することができる。
【0041】
アルケノールが異なるエナンチオマーまたは立体異性体の形態で存在し得る場合、本発明によるプロセスは、精製された形態と混合物の両方で、これらのタイプのいずれかで実施できることを意味することに留意されたい。
【0042】
例えば、前述のプロセスにおいて、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)のE異性体(トランス)、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)のZ異性体(シス)または前記2つの異性体の混合物は、無差別に使用することができる。同様に、前述のプロセスでは、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)のエナンチオマー(R)、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)のエナンチオマー(S)または前記2つのエナンチオマーのラセミ混合物を使用することができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、炭素原子数4以上の前記アルケノールは、生合成プロセスから直接、または少なくとも1つのジオールの接触脱水プロセスを経て得ることができる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、前記アルケノールの炭素原子数が4である場合、したがって前記アルケノールがブテノールである場合、前記ブテノールは、酸化セリウム系触媒の存在下で、ブタンジオール、好ましくは1,3-ブタンジオールの接触脱水によって得ることができ、前記酸化セリウム系触媒は、少なくとも1つの塩基の存在下で、セリウムを含む少なくとも1つの化合物の沈殿によって得られる。前記プロセスに関連するさらなる詳細は、例えば、出願人の1人の名前でのWO2015/173780号に見出すことができ、参照目的で本明細書に組み込まれる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、前記ジオール、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオールは、糖の発酵から、好ましくはバイオマスに由来する糖の発酵から誘導することができる。
【0046】
本説明および以下の特許請求の範囲の目的のために、「バイオマス」という用語は、以下を含む、植物由来の任意の有機材料を示す:例えば、グアユール、アザミ、トウモロコシ、大豆、綿、亜麻、菜種、サトウキビ、ヤシなどの植物および植物の一部などの農業由来の産物(前記産物またはその処理に由来する破片、残渣、廃棄物を含む);例えば、ススキ、キビ、サトウキビなどのエネルギー使用のために明示的に栽培された植物種の作物に由来する産物(前記産物またはその処理に由来する破片、残渣、廃棄物を含む);林業または林業に由来する産物(前記産物またはその処理に由来する破片、残渣、廃棄物を含む);人間の食品または家畜を対象とした農産物からの破片;製紙業からの残留物;例えば、果物および野菜の破片、紙など、都市ごみの個別の収集からの廃棄物。
【0047】
本発明の特に好ましい実施形態では、前記ジオール、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオールは、グアユールおよび/またはアザミまたはその処理に由来する破片、残渣および廃棄物を含む、グアユールおよび/またはアザミのバイオマスに由来する糖の発酵に由来する。さらにより好ましくは、前記ジオール、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオールは、グアユールまたはその処理に由来する破片、残渣および廃棄物を含む、グアユールバイオマスに由来する糖の発酵に由来する。
【0048】
前述の糖を生産する目的で、前記バイオマスは、物理的処理(例えば、押し出し、「蒸煮爆砕」など)および/または化学的加水分解および/または酵素的加水分解を受けて、炭水化物の混合物、芳香族化合物の混合物ならびにバイオマスに存在するセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンに由来する他の産物の混合物を得ることができる。特に、得られる炭水化物は、例えば、発酵に使用される、スクロース、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、フルクトースを含む、5および6個の炭素原子を有するグルシドの混合物である。バイオマスからの糖、特にリグノセルロースバイオマスからの糖の生産に関連するプロセスは、例えば、本出願人の1人の名前で国際公開WO2015/087254号に記載されており、参照目的のために本明細書に組み込まれる。
【0049】
再生可能資源から出発してバイオ-1,3-ブタンジオールを得るためのさらなる生物学的プロセスは、例えば、米国特許第9,017,983号ならびに米国特許出願公開第2012/0329113号および第2013/0109064号に記載されている。
【0050】
ジオール、好ましくはブタンジオール、より好ましくは1,3-ブタンジオールが生合成プロセス、例えば上記のような糖の発酵に由来する場合、前記ジオールは一般に水性混合物の形態で得られる。対応するアルケノールを得るためのジオールの接触脱水を進める前に、生合成プロセスから得られた前記ジオールを含む前述の水性混合物は、例えば、水および前記混合物に含まれるジオールの全蒸留または部分蒸留などの一般的な分離プロセスを受けることができる。実際、前記水性混合物は、ろ過および脱イオン化後、高価な水除去プロセスを受ける必要なしに、またはしかしながらそのような除去を制限することなく、対応するアルケノールが得られる接触脱水プロセスにおいてそれ自体で有利に使用することができる。
【0051】
次に、アルケノールは、水性混合物の形態で得ることができる。
【0052】
前記水性混合物は、蒸留を受けて、純粋な、または水との共沸混合物の形態で、またはそれ自体で使用して、アルケノールを回収することができる。
【0053】
例えば、1,3-ブタンジオールの接触脱水は、ブテノール[2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)]が得られ、これは水との最小共沸混合物の形態で蒸留を経て分離することができる。ブテノールの共沸混合物は、1,3-ブタジエンを生成するための本発明の接触脱水プロセスで使用するために、それ自体で使用しても、一緒に混合しても、または添加されたブテノールと一緒に混合しても、混合物中でまたは別個に、または添加された水と使用してもよい。
【0054】
本発明の実施形態では、ジエンを製造するための前述のプロセスにおいて、炭素原子数4以上の前記アルケノールは、希釈剤と混合され得、その希釈剤は、例えば、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、好ましくはN2などの不活性ガスから選択される;または通常の条件下で沸騰温度が25℃~150℃である化合物と混合することができ、好ましくは、通常の条件下で沸騰温度が50℃~125℃であり、溶融温度が通常の条件下で20℃以下である化合物と混合することができ、これらは例えば、水、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、ベンゼン、またはそれらの混合物から選択することができる。窒素(N2)および水が好ましく、水が特に好ましい。
【0055】
前記水は、前記少なくとも1つのアルケノールを製造するために使用される生合成プロセスに由来する残留水であり得ることに注意することが重要である。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、希釈剤が不活性ガスから選択される場合、0.3よりも大きい希釈剤とアルケノール(または複数のアルケノール)とのモル比で、好ましくは0.5~2のモル比で、ジエンを製造するための前記プロセスを実施することができる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、ジエンを製造するための前記プロセスは、希釈剤が、通常の条件下で25℃~150℃の沸騰温度を有する化合物、好ましくは通常の条件下で50℃~125℃の沸騰温度と通常の条件下で20℃以下の溶融温度を有する化合物から選択される場合、0.01~100の希釈剤とアルケノール(または複数のアルケノール)とのモル比、好ましくは0.1~50のモル比、より好ましくは1~10のモル比で実施することができる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、ジエンを製造するための前記プロセスは、250℃~500℃、好ましくは280℃~450℃の温度で実施することができる。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、ジエンを製造するための前記プロセスは、5kPa~5000kPa、好ましくは30kPa~350kPa、より好ましくは80kPa~250kPaの圧力で実施することができる。
【0060】
本発明によるジエンの製造方法は、気相または液相/気相混合相で実施することができる。
【0061】
本発明の実施形態では、ジエンを製造するための前述のプロセスは、気相で実施される。
【0062】
ジエンを製造するための前記プロセスは、任意のタイプの反応器、好ましくは固定床反応器、移動床反応器または流動床反応器で実施することができる。
【0063】
本発明の実施形態では、ジエンを製造するための前記プロセスは、固定床反応器で実施することができる。
【0064】
固定床反応器を使用する場合、コークスを含む触媒を様々な床に分割することができる。
【0065】
反応器の設定は、「再循環」反応器構成での反応流出物の一部のまたは触媒材料の一部のリサイクルを含むことができる。
【0066】
本発明の代替の実施形態では、ジエンの製造プロセスが混合液相/気相で実施される場合、コークスを分散させた触媒を含む連続流撹拌槽型反応器(CSTR)を使用することができる。
【0067】
本発明のジエン対象物の製造プロセスにおいて、少なくとも1つのアルケノールが使用され、それは少なくとも1つのジオールの接触脱水に由来するが、後者が得られる場合、少なくとも1つのアルケノールを提供するための少なくとも1つのジオールの脱水と、それに続くジエンを提供するための前記少なくとも1つのアルケノールの脱水は:
同じ反応器で、または異なる反応器で、好ましくは異なる反応器で;
連続的にまたはバッチ式で、好ましくは連続的に、実施され得る。
【0068】
本発明によるジエンの製造プロセスは、
並列の少なくとも2つの反応器、好ましくは並列の2つの固定床反応器であり、一方の反応器が作動しているとき、他方の反応器において、コークスを含む触媒を再生することができる、反応器構成においても連続的に実施することができる。
【0069】
ジエンの製造プロセスが連続的に実行される場合、空間速度WHSV(「重量時間空間速度」)、すなわち、反応器に供給される反応物の重量と、反応器自体中のコークスを含む触媒の重量との比は、0.5h-1~10h-1、好ましくは1h-1~5h-1であり得る。
【0070】
脱水反応器に装填されたコークスを含む触媒の体積と、その反応条件における体積供給流量との比として計算される接触時間(τ)は、好ましくは0.01秒~10秒、より好ましくは0.05秒~8秒、さらにより好ましくは0.1秒~4秒である。
【0071】
上記のように、本発明のコークス対象物を含む触媒は、少なくとも1つのアルケノール、好ましくは3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)および2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)の接触脱水反応から得ることができる。
【0072】
したがって、本発明のさらなる目的は、拡散反射における赤外線分光法(「拡散反射赤外線フーリエ変換分光法」-DRIFTS)による分析時に、前記コークスが1450cm-1~1700cm-1の波長で少なくとも2つのピークを有することを特徴とする、コークスを含む触媒の製造プロセスであり、前記プロセスは、酸化アルミニウム(-Al2O3)、ケイ酸アルミニウム、シリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)、アルミナ、ゼオライト、金属酸化物(例えば、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化タリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銀)から選択される少なくとも1つの化合物、好ましくはシリカ-アルミナ(SiO2-Al2O3)から選択される化合物の存在下、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)と2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)を含むアルケノールの混合物の脱水を含み、前記プロセスは250℃~500℃、好ましくは280℃~450℃の温度で2時間~10時間、好ましくは2.5時間~9時間実施される。
【0073】
コークスを含む触媒を製造するための前述のプロセスの動作条件は、具体的には示されないが、例えば、空間速度WHSV(「重量時間空間速度」)、接触時間(τ)、反応器の種類などは、本発明のさらなる目的であるジエンの製造プロセスの場合の上述の記載と同じである。
【0074】
前述のピークの存在を実証する目的で、以下の例では、個々のブテノール、すなわち、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH))の脱水によって得られたコークスを含む3つの触媒が拡散反射における赤外分光法による分析(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)にかけられたことに留意されたい。
【実施例】
【0075】
本発明を実施し、それをより明確に説明する目的で、以下にいくつかの非限定的な例を示す。
【0076】
例1
(i)未処理ブテノールの混合物の調製
この目的のために、重量で83%の1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)、17%の水の濃度を有する1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)の混合物(混合物1)を実施し、これを脱水反応に使用した。
【0077】
前記脱水反応を行った反応器は、高さ(h)が260mmであり、内径(Φ)が10mmであるAISI 304ステンレス鋼管状要素で構成され、両方とも電気加熱を備えた蒸発器に先行して接続されていた。代わりに、反応器の出口は、受けフラスコにおいて室温(25℃)で液体の形態で第1の脱水反応から得られた生成物の回収を可能にする目的で、受けフラスコに接続され、15℃で作動する第1の凝縮器に接続された。次に、前記受けフラスコを、両端に遮断弁を備える300mlの容量(V)の鋼製シリンダーを含むサンプリングシステムに接続した。第1の脱水反応に由来し、任意に前述のシステムで凝縮されていない蒸気/ガスは、体積計に接続された前述の鋼製シリンダーを通ってさらに流れることができ、したがってその量を測定した。
【0078】
液体の形態と蒸気/ガスの形態の両方で得られた生成物は、以下を使用するガスクロマトグラフィーによって特徴付けられた。
液体形態の生成物の場合、FID検出器とAQUAWAXカラムを備えたThermo Traceガスクロマトグラフ(長さ30m×内径0.53mm×膜厚1.0μm);
ガス形態の生成物の場合、以下のカラムを備えた4つのチャネルを備えた490マイクロGC Varian/Agilentガスクロマトグラフ:Pora PlotQ長さ10m、MolSieve5Å長さ4m、Al2O3長さ10m、「バックフラッシュ」機能付き、CPSil-19CB長さ7.5m。
【0079】
前記脱水反応に使用された触媒は、0.5mm~1mmのサイズの顆粒中の酸化セリウム(CeO2)系材料であり、それは10g(3.5ml)の量で前述の反応器内に装填された。前記触媒は、以下に記載される実験室手順に従って調製した。
【0080】
その目的のために、約30%の水酸化アンモニウム(NH4OH)(28%~30%NH3ベーシスACS試薬 Aldrich)の市販の水溶液500gを、500gの水と、テフロン製の半月型スターラーブレードを備えた第1の3リットルビーカーに添加し、pHを測定するための電極[pHを測定するためのメトロームガラス電極(6.0248.030)、メトローム780pHメーターに接続]を導入した。マグネチックアンカースターラーを備えた第2の2リットルビーカー中で、100gの硝酸セリウム六水和物溶液(99% Aldrich)を1000gの水中で調製した。次に、硝酸セリウム六水和物を室温(25℃)で激しく撹拌して溶解した。得られた溶液を滴下漏斗に挿入し、3リットルのビーカーに含まれる上記の水酸化アンモニウム溶液に2時間かけて激しく撹拌しながら滴下した。得られた懸濁液のpHは、10.2であった。懸濁液中の固体をろ過し、2リットルの水で洗浄し、次にストーブ内で120℃で2時間乾燥させた。2000gの固体が得られるまで合成を繰り返した。
【0081】
このようにして得られた固体1270gを、0.125mmでのスクリーニングにかけて、175.9gの25%水酸化アンモニウム(NH4OH)溶液(28%~30%NH3ベーシスACS試薬 Aldrichで溶液を希釈することによって得られた)も5rpmに設定したWatson Marlowぜん動ポンプを使用して加えた押出機に挿入した。前記添加後、158gの脱塩水も添加し、押出しに適切なコンシステンシーを提供した。押出機の出口で得られた「ペレット」を空気中で乾燥させ、続いて、100gの部分を800℃で1℃/分の傾斜で800℃までか焼し、続いて温度で6時間等温した。か焼した固体を造粒してふるいにかけ、0.5mm~1mmのサイズの顆粒の破片を触媒として使用した。
【0082】
次に、混合物1を、最初に250℃の温度に事前に加熱した前述の蒸発器に供給し、これから、脱水反応中の内部温度が400℃となるように事前に加熱した前述の管状反応器に供給することによって、前記脱水反応を実施した。蒸発器と反応器の両方を大気圧(1バール)に保った。
【0083】
蒸発器に供給した混合物1の流量は100g/hであった一方、WHSVとして表される反応器への流量は10h-1であった。
【0084】
試験は、適切な量の未処理生成物を収集するのに十分な時間実施した。
【0085】
(ii)未処理ブテノールの精製
上記のように得られた未処理ブテノールの混合物を、未反応の1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)を除去する目的で、蒸留による第1の精製にかけた。前記混合物の形態で存在するブテノールは、水と共沸混合物であり、単純な蒸留ではそれらを水から分離して純粋にすることは不可能であることに留意されたい。
【0086】
ボイラーに含まれる前記混合物に3,5-ジ-tert-4-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を加えて、前記混合物中のその濃度が約200ppmになるように、大気圧で蒸留を行った。前記蒸留は、40プレートのオールダーショーカラム(20プレートを備えた2セクション)を使用して実施し、前記混合物を単一のバッチでボイラーに装填し、記録された温度に基づいて様々なヘッドサンプルを採取し、より重い成分のボイラーを徐々に濃縮した。蒸留条件(還流比、ボイラー加熱力、採取した留出物の量)は、分離する種の沸騰温度と記録されたヘッド温度の関数として変化した。
【0087】
蒸留条件を表1に示す。
【0088】
【0089】
特に:
留分1(約84℃以下)は、除去される最も軽い部分に対応し;
留分2と留分3は、最低沸点のアルケノール、つまり3-ブテン-2-オール(メチルビニルカルビノール)(3-Bu-2-OH)と水の間のT=86.5℃~87℃での共沸混合物(前記共沸混合物は、73重量%の3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)と27重量%の水の組成を有する)に対応し;
留分4では、2-ブテン-1-オール(シス型およびトランス型のクロチルアルコール)(2-Bu-1-OH)および少量の3-ブテン-1-オール(アリルカルビノール)(3-Bu-1-OH)が、35重量%の水と一緒に、蒸留を開始し;
留分5では、水がなくなるため、温度が約120℃に上昇し;
留分6および留分7は、95%~97%の2-ブテン-1-オール(クロチルアルコール)(2-Bu-1-OH)に対応する。
【0090】
ブテノールを含む留分を、本発明によるコークスを含む触媒を製造するために使用される混合物を表す単一の留分に結合した。組成を表2に示す。
【0091】
【表2】
(1):低沸点ブテノールの最も軽い化合物、すなわち3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)(沸騰温度=97℃);
(2):高沸点ブテノールの最も軽い化合物、すなわち2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)(沸騰温度=121.5℃);低沸点アルケノール、すなわち3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)(沸騰温度=97℃)より重く、1,3-ブタジエン(1,3-BDE)を除く[中沸点3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)(沸騰温度=113,5)を含む];
(3):高沸点ブテノールのより重い化合物、すなわち2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)(沸騰温度=121.5℃)。
【0092】
例2
コークスを含む触媒の形成と1,3-ブタジエン(1,3-BDE)の製造
最初の試験は、例1で記載したように得られ、表2に示したブテノールの混合物を以下に説明するように得られた、3.8%のAlを含む0.6gのシリカ-アルミナを装填した固定床管状反応器-AISI 316Lステンレス鋼製のPFR(「プラグフロー反応器」)、長さ400mm、直径9.65mmに供給することによって実施した。
【0093】
アルミナ前駆体(Al2O3)として7.55gのアルミニウムトリ-sec-ブトキシド(Aldrich)を第1の500ml丸底フラスコ内に入れ、シリカ前駆体(SiO2)として50.02gのオルトケイ酸(Aldrich、<20メッシュ)を、250.02gの脱塩水とともに第2の500ml丸底フラスコ内に入れた。得られたオルトケイ酸の懸濁液を、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドを含む前記第1の丸底フラスコにゆっくりと(10分)加え、得られた混合物を、激しく撹拌(500rpm)しながら、90℃で約1時間維持した。室温(25℃)に冷却した後、得られた懸濁液をろ過し、得られた固体を5リットルの脱塩水で洗浄し、120℃で一晩乾燥し、続いて500℃で5時間か焼して、無色の粉末(47.95g)(「活性相」として定義)。
【0094】
前述の「活性相」の一部である40.42gを、800mlのビーカー内でバインダーのアルミナ前駆体(Al2O3)として24.43gの擬ベーマイト Versal(商標)V-250(UOP)と、302mlの4%酢酸溶液と混合した。得られた混合物を、撹拌しながら、60℃で2時間保持した。次に、そのビーカーを加熱プレートに移し、激しく撹拌しながら、その混合物を乾燥するまで一晩150℃に加熱した。次に、得られた固体を550℃で5時間か焼し、60.45gの無色の生成物を得て、これを機械的に造粒し、0.1mm~1.0mmの寸法の顆粒の破片を前記管状反応器の脱水触媒として使用した。
【0095】
上記のように調製した触媒(0.6g)を、顆粒の支持体として石英ウールを使用して反応器に挿入し、それらが反応器の等温領域に配置されるようにした。その反応器は、ダウンフロー配置で設定した。
【0096】
触媒を窒素(N2)流下で、300℃でインサイチューで前処理した。
【0097】
ブテノールの前述の混合物の供給は、加熱鋼ラインに接続された注入ポンプと5mLハミルトンポンプを使用して、続いて窒素(N2)流(総体積流量は28mL/分であり、そのうち2体積%はブテノールの前記混合物である)下で反応器に送り、反応物が触媒と接触する前に反応温度に到達することを可能にするために、気化によって大気圧(0.1MPa)で反応器の上部から実施した。前記反応器は、電気オーブンを使用して300℃の温度に加熱され、その温度は、電気オーブンの温度コントローラーに接続された統合熱電対と、触媒床の実際の温度を示し、基準温度として選択された前記管状反応器の内部に配置された第2の軸方向熱電対によって制御された。
【0098】
管状反応器の温度を、上記のように300℃に維持し、接触時間(τ)は、0.67秒であった。
【0099】
反応器の下流で、得られた生成物を分析のためにオンラインのガスクロマトグラフ(GC)でサンプリングした。ガスのオンライン分析は、2つのキャピラリーカラム:水素炎イオン化検出器(FID)に接続されたHP-5カラム(「架橋された」5%フェニルメチルシロキサン)、長さ50m、直径0.2mm、0.33ミクロンの膜と、熱伝導度検出器(TCD)に接続されたHP-Plot-Qカラム(「結合」ポリスチレンジビニルベンゼン)、長さ30m、直径0.32mm、20ミクロンの膜、を備えたAgilent HP6890ガスクロマトグラフ(GC)を使用して実行した。両方のカラムで使用したキャリアは、0.8mL/分(HP-5カラム)および3.5mL/分(HP-Plot-Qカラム)の流量のヘリウムであった。
【0100】
結果を
図1に示す[縦軸に、変換率と収率をパーセント(%)で示し;横軸に、反応時間(時間)を示している]。
【0101】
図1に示す触媒性能レベルは、以下に報告されている式による、アルケノールの変換(C
ALCH)、1,3-ブタジエンへの選択性(S
1,3-BDE)および1,3-ブタジエン(R1,3-BDE)への収率を計算することによって表される。
【0102】
【数1】
式中、
moli
ALCH=アルケノール[3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)および2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)を指す]のモル数;
(moli
ALCH)
in=入口でのアルケノールのモル数;
(moli
ALCH)
оut=出口でのアルケノールのモル数;
moli
1,3-BDE=生成した1,3-ブタジエン(1,3-BDE)のモル数。
【0103】
図1に報告されているデータから、1,3-ブタジエンへの収率(Y 1,3BDE)は、約47%の初期値から始まり、4時間後に約70%に落ち着くと推定できる。4時間後、1,3-ブタジエンへの収率(Y 1,3BDE)は、10時間後に平均値80%で安定するまで、ゆっくりと増加し続ける。
図1は、触媒上に徐々に形成されるコークスの指標を表す炭素損失(C損失)の傾向も示している。
図1では、
X 2-Bu-1-OHは、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)の変換を表し;
X 3-Bu-2-OHは、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)の変換を表し;
X 3-Bu-1-OHは、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)の変換を表す。
【0104】
収量の増加に対するコークスの役割をよりよく強調する目的で、前述の例1を3回繰り返し、3時間、8時間および20時間後に反応を中断した。前記時間に反応器から取り除いた触媒を、吸着されたコークスの量を計算するために空気中で熱重量分析(TGA)にかけた。前記分析は、SDT Q 600装置(TA Instruments製)を使用して、15mgの触媒を装填し、空気流(100mL/分)で、存在する有機残留物を定量化するために、温度傾斜(900℃まで10℃/min、その後900℃で5分間等温線)で行った。その結果を
図2に示す[縦軸にパーセント(%)としての重量損失を示し、横軸に摂氏温度(℃)を示す]。
図2から、コークスの存在に関連する重量損失(380℃を超える温度)を考慮すると、最初の3時間(5%の重量損失)でコークスが急速に形成されると推定でき、この時間間隔まで(
図1に示すように)事前決着値までの収率の最速の増加に対応する。TGAの他の2つの曲線は、3時間を超える値ではコークスが形成され続けるが、ゆっくりと形成されることを示しており、この条件では、完全に安定する前に最大収率値(
図1に示す)での決着が10時間までゆっくりと起こる。
【0105】
例3
触媒作用において活性なコークスを含む触媒のタイプを確認する目的で、例2を繰り返したが、ブテノールの混合物を使用する代わりに、別々に供給される個々の異性体、すなわち3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)および3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)を使用した。使用した条件は例2と同じであった。これらの試験から、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)[
図3では、縦軸にパーセント(%)としての変換率と収率を示し、横軸に時間(時間)を示している]と、2-ブテン1-オール(2-Bu-1-OH)[
図4では、縦軸にパーセント(%)としての変換率と収率を示し、横軸に時間(時間)を示している]の両方が、
図1に示すように、例2で使用したブテノールの混合物と同様の収率プロファイルを有すると推定できる(0~3時間で収率が急速に増加し、その後さらに10時間後に最大値で決着するまで増加する)。
【0106】
3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)の挙動は、完全に異なり[
図5では、縦軸にパーセント(%)としての変換率と収率を示し、横軸に時間(時間)を示している]、これは主にプロピレン(収率40%~50%)と豊富なコークス(C損失)を生成する。
【0107】
図3では、
X 3-Bu-2-OHは、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)の変換を表し、
C損失は、「炭素損失」の傾向を表す。
【0108】
図4では、
X 2-Bu-1-OHは、2-ブテン-1-オール(2-Bu-2-OH)の変換を表し、
C損失は、「炭素損失」の傾向を表す。
【0109】
図5では、
X 3-Bu-1-OHは、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)の変換を表す。
【0110】
3つの異性体によって形成されたコークスを含む触媒を、以下のように動作する拡散反射(「拡散反射赤外フーリエ変換分光法」-DRIFTS)における赤外分光法による分析にかけた。
【0111】
その目的のために、例2に記載のように作動する新鮮な触媒の3つのサンプル(すなわち、3.8%のジAlを含有する0.6gのシリカ-アルミナ)を調製した。各サンプルを臭化カリウム(KBr)で1:10の比で希釈し、ヘリウム(He)中で450℃で20分間処理した後、50℃に冷却した。次に、サンプル上の反応物の、つまり異性体3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)(第1のサンプル)、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)(第2のサンプル)および3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)(第3のサンプル)の「シングルパルス」を行い、その後、温度を上げ、スペクトルを300℃で記録した。前述の分析は、Pike DiffusIRセルとMCT検出器を備えたFT-IR Bruker Vertex 70分光光度計を使用して行った。スペクトルは、OPUSソフトウェアによって取得されたデータの処理を使用して記録および処理した。
分析パラメータは、次のとおりである。
スキャン間隔:4000cm-1~450cm-1;
サンプルあたりのスキャン数:32;
バックグラウンド:開始触媒(コークスなし)をアクセサリハウジング内に配置することによって記録したスペクトル;
スペクトル分解能:4cm-1;
ミラーの調整:3.5mm(DRIFTSアクセサリのミラーは、機器の検出器が最大吸光度を検出できるように調整している)。
【0112】
得られた結果を
図6に示す。
図6では、縦軸に吸光度単位での吸収を示し、横軸にcm
-1単位の波数を示している。
図6に報告されているスペクトルから、事実上、主に1,3-ブタジエン(1,3-BDE)、すなわち3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)(第1のサンプル-3But2olとして
図6に示されている)および2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)(第2のサンプル-2But1olとして
図6に示されている)から形成される2つの異性体の場合では、得られたコークスを含む触媒は、1465cm
-1と1573cm
-1に2つの特徴的なバンドを有するのに対し、異性体の3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)(第3のサンプル-3But1olとして
図6に示されている)(これは、
図5に報告されているように、プロピレンとコークスの形成につながる)は、1650cm
-1にバンドを有し、2種類のコークスの性質が異なることを示している。前記バンドは、「Dual coke deactivation pathways during the catalytic cracking of raw bio-oil and vacuum gasoil in FCC conditions」の論文と「Applied Catalysis B: Environmental」(2016)、第182巻、336~346ページでIbarra A.らの文献で報告されているように、芳香族タイプの伸縮性C=CおよびC-H(「コークスバンド」)に起因する。
【0113】
例4
比較のために、例2を、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)のみを供給して4時間繰り返した。
【0114】
4時間後、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)を、例2で使用したものと同じブテノールの混合物(すなわち、例1で記載したように得られ、表2に示したブテノールの混合物)と交換した。その結果を
図7に示す。
図7では、縦軸にパーセント(%)としての変換率と収率を示し、横軸に時間(時間)を示している。
図7から、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)によって形成されたコークスは、触媒の収率の促進に影響を及ぼさないと推測できる。実際、供給において、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)を例2で使用したものと同じブテノールの混合物で置換するだけで、1,3-ブタジエンへの収率(Y 1,3BDE)の増加が観察され得る。
【0115】
図7では、
X 2-Bu-1-OHは、2-ブテン-1-オール(2-Bu-1-OH)の変換を表し;
X 3-Bu-2-OHは、3-ブテン-2-オール(3-Bu-2-OH)の変換を表し;
X 3-Bu-1-OHは、3-ブテン-1-オール(3-Bu-1-OH)の変換を表し;
C損失は、「炭素損失」の傾向を表す。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図3】
図3は、3-ブテン-2-オールの変換率と収率を示す。
【
図4】
図4は、2-ブテン-1-オールの変換率と収率を示す。
【
図5】
図5は、3-ブテン-1-オールの変換率と収率を示す。
【
図6】
図6は、例3のDRIFTSによる分析の結果である。
【国際調査報告】