(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】水性ポリマー配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/14 20060101AFI20221027BHJP
C08L 23/14 20060101ALI20221027BHJP
D06M 15/227 20060101ALI20221027BHJP
D06M 15/233 20060101ALI20221027BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20221027BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20221027BHJP
C08F 212/08 20060101ALI20221027BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08L33/14
C08L23/14
D06M15/227
D06M15/233
D06M15/263
C08F220/26
C08F212/08
C08L25/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500745
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 CN2019095739
(87)【国際公開番号】W WO2021007692
(87)【国際公開日】2021-01-21
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、イン
(72)【発明者】
【氏名】エグラス、ティエリー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4L033
【Fターム(参考)】
4J002BB092
4J002BB142
4J002BB212
4J002BG011
4J002BG021
4J002BG071
4J002GK02
4J002HA07
4J100AB02Q
4J100AJ02R
4J100AJ08S
4J100AL03P
4J100AL09T
4J100CA03
4J100DA48
4J100DA49
4J100DA50
4J100DA51
4J100EA07
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA20
4J100FA28
4J100FA30
4J100FA37
4J100JA11
4L033AB01
4L033AB04
4L033AC11
4L033CA12
4L033CA13
4L033CA18
(57)【要約】
水性媒体を含み、かつ水性媒体中に分散された、(a)マレイン化ポリオレフィン(a)を含む粒子(a)と、(b)アクリルポリマー(b)を含む粒子(b)と、をさらに含む組成物であって、アクリルポリマー(b)が、アクリルポリマー(b)の固体重量に基づく重量で、(i)ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの0.1%~10%の重合単位、(ii)カルボキシル官能性モノマーの1%~20%の重合単位、および(iii)アクリルモノマー、スチレンモノマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の追加のモノマー(iii)の70%~98.9%の重合単位、を含み、マレイン化ポリオレフィン(a)が、マレイン化ポリオレフィン(a)およびアクリルポリマー(b)の固体重量の合計に基づいて、1重量%~19重量%の量で存在する、組成物が提供される。また、組成物を使用して繊維を結合する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、水性媒体を含み、かつ前記水性媒体中に分散された、
(a)マレイン化ポリオレフィン(a)を含む粒子(a)と、
(b)アクリルポリマー(b)を含む粒子(b)と、をさらに含み、前記アクリルポリマー(b)が、前記アクリルポリマー(b)の固体重量に基づく重量で、
(i)ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの0.1%~10%の重合単位、
(ii)カルボキシル官能性モノマーの1%~20%の重合単位、および
(iii)アクリルモノマー、スチレンモノマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の追加のモノマー(iii)の70%~98.9%の重合単位、を含み、
前記マレイン化ポリオレフィン(a)が、マレイン化ポリオレフィン(a)およびアクリルポリマー(b)の固体重量の合計に基づいて、1重量%~19重量%の量で存在する、組成物。
【請求項2】
前記マレイン化ポリオレフィン(a)が、マレイン化ポリプロピレンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記追加のモノマー(iii)が、0℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記追加のモノマー(iii)が、1つ以上のスチレンモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
繊維を結合する方法であって、水性バインダー組成物を前記繊維と接触させ、次いで、前記水性バインダー組成物から水を蒸発させる、または水の蒸発を可能にすることを含み、前記水性バインダー組成物が、請求項1に記載の組成物である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
繊維を一緒に結合するように作用するポリマーは、織物産業で有用である。しばしば「バインダー」と呼ばれるそのようなポリマーは、不織布マットの形態で、または織物を形成するために織られた糸の形態のいずれかで繊維に適用され得る。そのようなポリマーの存在は、特に布に液体、水(つまり「湿潤強度」)または溶媒(つまり「溶媒強度」)のいずれかを含浸させた場合に、不織布または織布の引張強度を改善するように作用し得る。
【0002】
バインダーポリマーを繊維に適用する便利な方式は、水中に分散した小さな粒子の形態でポリマーを提供することである。粒子は、互いにすべて同じ組成であり得るか、または異なる組成の粒子が存在し得る。そのような水性分散液は、非水性溶媒に溶解した同等のポリマーよりも様々な利点を有し、水性分散液は、一般により低い粘度を有し、より環境にやさしい。
【0003】
水性分散液(エマルジョン、ラテックス、スラリー、別の形態の分散液、またはそれらの組み合わせであり得る)は、繊維に適用され得、次いで水は、蒸発によって除去され得る。ポリマーが蒸発プロセス中または蒸発プロセス後に架橋反応を受けることがしばしば望ましい。そのような架橋反応は、最終的な布の引張強度を増加させると考えられる。過去には、一部のポリマーバインダーは、望ましい架橋を促進するN-メチロールアクリルアミド(NMA)の重合単位を含有したが、そのようなポリマーは、加熱時にホルムアルデヒドを放出し、これは望ましくない。
【0004】
US8,173,744は、2つの酸または無水物で修飾されたポリオレフィンを含有し、かつ1つ以上のアクリルポリマーをさらに含有し得る水系プライマー組成物を記載しており、修飾ポリオレフィンとアクリルポリマーとの固体重量比は、20/80~80/20である。WO2018/176298は、70~99乾燥重量%のアクリルエマルジョン成分、およびポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料を乳化することによって調製された1~30乾燥重量%のポリオレフィンエマルジョン成分を含む硬化性組成物を開示している。WO2018/176298は、硬化性組成物が、皮革、織布もしくは不織布、フェルトおよびマット、または他の繊維の集合体などの可撓性基材、ならびに繊維を処理するために使用され得ることを開示している。以下の利点:NMAの重合単位を含まない、湿潤強度を改善させる、溶媒強度を改善させる、のうちの1つ以上を有する新しいポリマーバインダーを提供することが望ましく、水性分散液の形態で提供される。
【0005】
以下は、本発明の記述である。
【0006】
本発明の第1の態様は、水性媒体を含み、かつ水性媒体中に分散された、
(a)マレイン化ポリオレフィン(a)を含む粒子(a)と、
(b)アクリルポリマー(b)を含む粒子(b)と、をさらに含む組成物であって、アクリルポリマー(b)が、アクリルポリマー(b)の固体重量に基づく重量で、
(i)ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの0.1%~10%の重合単位、
(ii)カルボキシル官能性モノマーの1%~20%の重合単位、および
(iii)アクリルモノマー、スチレンモノマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の追加のモノマー(iii)の70%~98.9%の重合単位、を含み、
マレイン化ポリオレフィン(a)が、マレイン化ポリオレフィン(a)およびアクリルポリマー(b)の固体重量の合計に基づいて、1重量%~19重量%の量で存在する、組成物である。
【0007】
本発明の第2の態様は、水性バインダー組成物を繊維と接触させ、次いで、水性バインダー組成物から水を蒸発させること、または水の蒸発を可能にすることを含む繊維を結合する方法であり、水性バインダー組成物は、請求項1に記載の組成物である。
【0008】
以下は、本発明の詳細な説明である。
【0009】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、文脈が別途明確に示さない限り、指定された定義を有する。
【0010】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」は、より小さい化学繰り返し単位の反応生成物で構成される比較的大きな分子である。ポリマーは、直鎖状、分岐状、星型、ループ状、超分岐状、架橋状、またはそれらの組み合わせである構造を有してもよく、ポリマーは、単一タイプの反復単位(「ホモポリマー」)を有してもよく、またはそれらは2種以上の繰り返し単位(「コポリマー」)を有してもよい。コポリマーは、ランダムに、順番に、ブロックで、他の配置で、またはそれらの任意の混合物もしくは組み合わせで配置された様々なタイプの繰り返し単位を有してもよい。ポリマーは、1,000以上の数平均分子量を有する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「ポリマーの重量」は、ポリマーの乾燥重量を意味する。
【0012】
互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は、本明細書で「モノマー」として知られている。そのように形成された繰り返し単位は、本明細書でモノマーの「重合単位」として知られている。
【0013】
本明細書で使用される場合、アクリルモノマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、アルキル基に1つ以上の置換基を有する(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物から選択されるモノマーである。接頭辞「(メタ)アクリル-」は、「アクリル-またはメタクリル-」を意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、スチレンモノマーは、スチレン、置換スチレン、およびそれらの混合物から選択されるモノマーである。置換スチレンは、芳香環もしくはビニル基またはそれらの組み合わせのいずれかに位置する1つ以上の置換基を有する。
【0015】
ヒドロキシル官能性モノマーは、カルボキシル基の一部ではない1つ以上のペンダントOH基を有するモノマーである。カルボキシル官能性モノマーは、ペンダントカルボキシル基を有するモノマーであり、カルボキシル基は、中性型または陰イオン型であり得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドは、アルキル基が(メタ)アクリルアミド構造の窒素原子に結合し、ヒドロキシル基がそのアルキル基に結合している、アクリルアミドまたはメタクリルアミドの誘導体である。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アクリル」ポリマーは、重合単位の50%以上がアクリルモノマーから選択され、また、重合単位の75%以上がアクリルモノマーおよびスチレンモノマーからなる群から選択されるポリマーである。パーセンテージは、ポリマーの重量に基づく重量によるものである。
【0018】
本明細書で使用される場合、ポリオレフィンは、ポリマーの重量に基づく重量で、重合されたモノマー単位の70%以上が、炭化水素アルケン、炭化水素ジエン、およびそれらの混合物から選択されるポリマーである。マレイン化ポリオレフィンは、カルボキシル基および/または無水物基をポリオレフィンに共有結合させるために無水マレイン酸と反応させたポリオレフィンである。
【0019】
水性媒体は、5℃~50℃の範囲を含む温度範囲にわたって液体である組成物である。水性媒体は、水性媒体の重量に基づいて、50重量%以上の量の水を含む。水性媒体は、個々の分子、原子、またはイオンとして溶解する物質を含む。水性媒体は、例えば、エマルジョン液滴、ラテックス粒子、分散固体粒子、他の形態の分散粒子、およびそれらの組み合わせなどの独立した固体粒子または液滴として存在する物質を含まない。
【0020】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、中点法による動的走査熱量測定によって測定され、10℃/分で走査される。モノマーのTgは、本明細書では、そのモノマーから作製されたホモポリマーのTgとして定義される。
【0021】
「繊維」という用語は、材料の組成に関係なく、特定の幾何学的形状を有する材料を指す。繊維の最長寸法は、最長寸法に垂直な任意の寸法よりも少なくとも100倍長くなる。
【0022】
本明細書に提示される比率は、以下のように特徴付けられる。例えば、比率が3:1以上であるといわれる場合、その比率は、3:1、または5:1、または100:1であり得るが、2:1にはなり得ない。この特徴付けは、以下のように一般用語で記載され得る。本明細書において比率がX:1以上であるといわれる場合、その比率がY:1であることを意味し、式中、YはX以上である。別の例では、比率が15:1以下であるといわれる場合、その比率は、15:1、または10:1、または0.1:1であり得るが、20:1にはなり得ない。概括的に、本明細書において比率がW:1以下であるといわれる場合、その比率がZ:1であることを意味し、式中、ZはW以下である。別段の指定がない限り、比率は重量によるものである。
【0023】
本発明の組成物は、水性媒体を含有する。好ましくは、水性媒体は、水性媒体の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上の量の水を含有する。
【0024】
水性媒体中に分散しているのは、1つ以上のマレイン化ポリオレフィン(a)を含む粒子(a)である。好ましくは、粒子(a)の質量のほとんどまたはすべては、マレイン化ポリオレフィンである。すなわち、好ましくは、粒子(a)中のマレイン化ポリオレフィンの量は、粒子(a)の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上である。
【0025】
ポリマー主鎖の組成によってマレイン化ポリオレフィンを特徴付けることは有用であり、これは、結合した無水マレイン酸基が無視された場合にポリマーが有するであろう組成である。主鎖の組成は、ポリオレフィンが無水マレイン酸と反応する前に有していた組成と同じであると考えられる。好ましいポリオレフィンポリマー主鎖において、プロピレンの重合単位の量は、ポリオレフィンポリマー主鎖の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上である。
【0026】
マレイン化ポリオレフィンは、酸価によって特徴付けられ得る。好ましくは、マレイン化ポリオレフィン(a)の酸価は、35mgKOH/g以上、より好ましくは45mgKOH/g以上、より好ましくは55mgKOH/g以上である。好ましくは、マレイン化ポリオレフィン(a)の酸価は、90mgKOH/g以下、より好ましくは80mgKOH/g以下、より好ましくは70mgKOH/g以下である。
【0027】
水性媒体中に分散しているのは、1つ以上のアクリルポリマー(b)を含む粒子(b)である。好ましくは、粒子(b)の塊のほとんどまたはすべては、アクリルポリマーである。すなわち、好ましくは、粒子(b)中のアクリルポリマーの量は、粒子(b)の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上である。
【0028】
アクリルポリマー(b)は、ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの重合単位を含む。好ましいヒドロキシル官能性アクリルモノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン修飾(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物である。カプロラクトン修飾(メタ)アクリレートは、構造(I)を有する:
【化1】
式中、Rは水素またはメチルであり、nは1~10の整数である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの中で、好ましいアルキル基は、エチルおよびプロピルである。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートである。好ましいカプロラクトン修飾(メタ)アクリレートは、水素であるRを有する。好ましいカプロラクトン修飾(メタ)アクリレートは、5以下、より好ましくは4以下、より好ましくは3以下のnを有する。
【0029】
好ましくは、アクリルポリマー(b)中のヒドロキシル官能性アクリルモノマーの重合単位の量は、アクリルポリマー(b)の重量に基づく重量で、0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.9%以上である。好ましくは、アクリルポリマー(b)中のヒドロキシル官能性アクリルモノマーの重合単位の量は、アクリルポリマー(b)の重量に基づく重量で、10%以下、より好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
【0030】
アクリルポリマー(b)は、カルボキシル官能性モノマーの重合単位も含む。好ましいカルボキシル官能性モノマーは、アクリルモノマーであり、より好ましいのは、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、およびそれらの混合物である。アクリル酸とメタクリル酸との間では、アクリル酸が好ましい。
【0031】
好ましくは、アクリルポリマー(b)中のカルボキシル官能性モノマーの重合単位の量は、アクリルポリマー(b)の重量に基づく重量で、1%以上、より好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上である。好ましくは、アクリルポリマー(b)中のカルボキシル官能性モノマーの重合単位の量は、アクリルポリマー(b)の重量に基づく重量で、20%以下、より好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下である。
【0032】
アクリルポリマー(b)はまた、ヒドロキシル官能性アクリルモノマーでもカルボキシル官能性モノマーでもない、本明細書でラベル付けされたモノマー(iii)である追加のモノマーの重合単位を含有する。追加のモノマー(iii)は、アクリルモノマー、スチレンモノマー、およびそれらの混合物から選択される。
【0033】
好ましくは、モノマー(iii)は、20℃以下、より好ましくは0℃以下、より好ましくは-20℃以下、より好ましくは-40℃以下のTgを有する1つ以上のアクリルモノマーを含有する。好ましくは、モノマー(iii)は、-100℃以上、より好ましくは-80℃以上のTgを有する1つ以上のアクリルモノマーを含有する。好ましくは、モノマー(iii)は、(メタ)アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステル、より好ましくは、アクリル酸の1つ以上の非置換アルキルエステルを含有する。(メタ)アクリル酸の非置換アルキルエステルの中で、好ましいのは、アルキル基が2つ以上の炭素原子を有するものであり、より好ましくは3つ以上の炭素原子を有するものである。(メタ)アクリル酸の非置換アルキルエステルの中で、好ましいのは、アルキル基が12個以下の炭素原子を有するものであり、より好ましくは8つ以下の炭素原子を有するものである。
【0034】
モノマー(iii)の重合単位内で、好ましくは、アクリルモノマーの重合単位の量は、ポリマー(b)の重量に基づく重量で、50%以上、より好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。モノマー(iii)の重合単位内で、好ましくは、アクリルモノマーの重合単位の量は、ポリマー(b)の重量に基づく重量で、95%以下、より好ましくは90%以下である。
【0035】
好ましくは、モノマー(iii)は、1つ以上のスチレンモノマーも含有する。好ましいスチレンモノマーは、スチレン、アルファ-アルキルスチレン、他の置換スチレン、およびそれらの混合物であり、より好ましいのはスチレンである。モノマー(iii)の重合単位内で、好ましくはスチレンモノマーの重合単位の量は、2%以上、より好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。モノマー(iii)の重合単位内で、好ましくはスチレンモノマーの重合単位の量は、50%以下、より好ましくは40%以下、より好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下である。
【0036】
好ましくは、ポリマー(b)中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーの重合単位の量は、ほとんどまたは全くない。すなわち、好ましくは、ポリマー(b)中のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーの重合単位の量は、アクリルポリマー(b)の重量に基づく重量パーセントで、0~0.2%、より好ましくは0~0.1%、より好ましくは0~0.05%、より好ましくはゼロである。
【0037】
好ましくは、アクリルポリマー(b)は、150℃以下、より好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下、より好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下のTgを有する。好ましくは、アクリルポリマー(b)は、-100℃以上、より好ましくは-50℃以上のTgを有する。
【0038】
ポリマー(b)は、水性媒体中に分散した粒子の形態である。ポリマー(b)は、任意の方法で作製および分散形態にされ得る。ポリマー(b)を作製して、それを分散形態にする好ましい方法は、水性乳化重合であり、これは以下に記載されている。水性乳化重合では、1つ以上のモノマーエマルジョンは、水性媒体中に分散された1つ以上のモノマーの液滴から作製される。これらの1つ以上のエマルジョンは、重合開始剤に曝露され、これは、反応して、モノマーのフリーラジカル重合を開始することができる1つ以上のフリーラジカル部分を形成することができる化合物である。モノマーエマルジョンは、例えば、バッチ重合法および連続添加重合法を含む任意の方法によって開始剤に曝露され得る。好ましくは、開始剤は、水溶性である(つまり、2グラム以上が25℃で水に溶解され得る)。ポリマー(b)がフリーラジカル重合によって成長する新しい粒子が形成される。プロセスが完了すると、粒子は、ラテックス粒子として知られ、水性媒体中に分散したポリマー(b)粒子の組成物は、ラテックスとして知られている。
【0039】
水性乳化重合は、単段階プロセスまたは多段階プロセスとして実施され得る。単段階プロセスでは、1つ以上のモノマーエマルジョンが上記のように重合され、得られたラテックスが使用される。二段階プロセスでは、単一のモノマーエマルジョン(またはモノマーエマルジョンの単一混合物)が重合プロセスの完了に達すると(つまり、第1の段階の終わりに)、新しいモノマーエマルジョン(またはモノマーエマルジョンの混合物)は、第1の段階で形成されたポリマーの存在下で開始剤に曝露され、得られた重合の完了は、第2の段階の終わりである。同様に、追加の段階が実行され得る。多段階ポリマーは、2つ以上の段階を有するプロセスによって形成される。
【0040】
マレイン化ポリオレフィン(a)およびアクリルポリマー(b)は、任意の方法によって接合され得る。好ましい方法では、マレイン化ポリオレフィン(a)の粒子の水性分散液が提供され、ポリマー(b)のラテックスは、水性乳化重合によって個別に作製され、2つの分散液が混合される。
【0041】
好ましくは、組成物中のすべての固体ポリマーの総重量は、組成物の総重量のパーセンテージとして、10%以上、より好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。好ましくは、組成物中のすべての固体ポリマーの総重量は、組成物の総重量のパーセンテージとして、50%以下である。
【0042】
マレイン化ポリオレフィン(a)およびアクリルポリマー(b)の相対量は、マレイン化ポリオレフィン(a)およびアクリルポリマー(b)の総固体重量のパーセンテージとしてのマレイン化ポリオレフィン(a)の固体重量として定義される量「PCTa」によって特徴付けられ得る。好ましくはPCTaは、1%以上、より好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上である。好ましくはPCTaは、19%以下、より好ましくは16%以下、より好ましくは13%以下、より好ましくは10%以下である。
【0043】
本発明の組成物は、任意の目的のために使用され得る。好ましい用途は、不織布のバインダーとしてである。例えば、個々の繊維の集合(つまり、糸に紡がれていない繊維)は、例えば、浸漬、計量、噴霧、または他の方法によって、本発明の組成物と接触させ得、本発明の組成物中の水を蒸発させるか、または蒸発を可能にし、不織布マットを作り出す。得られた不織布マットは、水の蒸発前または蒸発中のいずれかに、加熱される場合とされない場合がある(つまり、40℃を超える温度に曝露される)。連続体積のポリマーが複数の繊維に接着し、したがってポリマーが繊維を一緒に結合するように作用すると企図される。
【0044】
ポリマーバインダーの有効性の1つの尺度は、特にマットが水または有機溶媒に曝露されたときの不織布マットの引張強度である。より高い引張強度が望ましい。
【0045】
本発明の組成物によって一緒に結合される繊維は、任意の材料で作製され得る。繊維は、鉱物繊維または有機繊維であり得る。有機繊維は、天然または人工のものであり得る。いくつかの好適な天然有機繊維は、例えば、セルロース、セルロース誘導体、綿、麻、および羊毛で作製される。いくつかの好適な人工有機繊維は、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリルポリマー、およびポリオレフィンで作製される。本発明の実施において、繊維は、好適な繊維の混合物であり得る。
【0046】
以下は、本発明の実施例である。特に記載のない限り、室温(約23℃)で操作を実行した。
【0047】
本明細書で使用される略語は、以下のとおりである:
DI=脱イオン化
SBS=亜硫酸水素ナトリウム
APS=過硫酸アンモニウム
t-BHP=t-ブチルヒドロペルオキシド
FF6=Bruggemann ChemicalからのBRUGGELITE(商標)還元剤
DS-4=Solvayからのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
BA=n-ブチルアクリレート
Sty=スチレン
IA=イタコン酸
AA=アクリル酸
HEMA=ヒドロキシエチルメタクリレート
HEA=ヒドロキシエチルアクリレート
FA2D=カプロラクトン修飾アクリルモノマー(上記の構造(I)、式中、Rは水素であり、nは2である。
AC-597P=無水マレイン酸修飾ポリプロピレン分散液(39重量%の固体ポリマー、酸価63mgKOH/g、Honeywellから供給。
TRITON(商標)X-100=Dow ChemicalCompanyからの界面活性剤
IPA=イソプロパノール
紙=Whatman Ltd.からのWHATMAN(商標)#4紙
【0048】
実施例1:アクリルポリマーラテックスの合成
コポリマーの乾燥重量に基づいて、81重量%のBA、13重量%のSty、2.5重量%のAA、2.5重量%のIA、1重量%のHEMAを含む一段階アクリルラテックス(ラテックスB-1と表記)を以下のプロセスに従って調製した。
【0049】
モノマーエマルジョンB-1の調製:5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解した。乳化されたモノマー混合物は、以下の化学物質を撹拌された溶液にゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、13.7gのHEMA、34.2gのAA、1107.4gのBA、177.7gのSty。
【0050】
50.42gのDS4および370gのDI水を含有する溶液を、熱電対、冷却コンデンサー、および撹拌機を備えた5つ口の5リットル丸底フラスコに入れ、窒素下で70℃まで加熱した。255gの60℃のDI水中の27.4gのイタコン酸(IA)をケトルに充填した。次いで、82.8gのモノマーエマルジョンをケトルに充填した。次いで、25gのDI水中で3.72gのAPSを、20gのDI水中で1.86gの亜硫酸水素ナトリウム(SBS)をケトルに充填した。発熱ピークが発生し、温度が70℃になったら、残りのモノマーエマルジョン、APSの溶液(50gのDI水中の2.48g)およびSBSの溶液(50gのDI水中の1.24g)を120分で供給した。重合反応温度は、69~71℃に維持した。添加が完了した後、モノマーエマルジョンを含有していた容器およびフラスコに通じる供給パイプを90gのDI水ですすぎ、すすぎ液をフラスコに戻した。次いで、70℃で15分間保持した。保持後、t-BHP(70%、5gのDI水中の1.05g)および5gのDI水中のFF6(0.9g)の溶液を充填した。15分間保持し、次いで、t-BHP(70%、38g DI水中の3.98g)およびFF6(42gのDI水中の3.38g)の溶液を60分かけて徐々に添加する。反応物を室温(約23℃)まで冷却した。pH値を6.5~7.5に調整するために15gのアンモニア溶液を添加した。固形分は、45%であった。
【0051】
ラテックスB-2は、5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したモノマーエマルジョンのレシピを除いて、B-1と同じプロセスに従って調製した。乳化されたモノマー混合物は、以下の化学物質を撹拌された溶液にゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、13.7gのFA2D、34.2gの氷酸アクリル酸、1093.8gのアクリル酸ブチル、177.7gのスチレン。
【0052】
ラテックスB-3は、5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したモノマーエマルジョンのレシピを除いて、SWX1307と同じプロセスに従って調製した。乳化されたモノマー混合物は、以下の化学物質を撹拌された溶液にゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、34.2gのHEA、1107.4gのアクリル酸ブチル、191.4gのスチレン。
【0053】
ラテックスB-4は、5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したモノマーエマルジョンのレシピを除いて、SWX1307と同じプロセスに従って調製した。乳化されたモノマー混合物は、以下の化学物質を撹拌された溶液にゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、34.2gのFA2D、1107.4gのアクリル酸ブチル、191.4gのスチレン。
【0054】
比較ラテックスC-1は、5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解したモノマーエマルジョンのレシピを除いて、B-1と同じプロセスに従って調製した。乳化されたモノマー混合物は、以下の化学物質を撹拌された溶液にゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、34.2gの氷酸アクリル酸、1093.8gのアクリル酸ブチル、191.4gのスチレン。
【0055】
ラテックスB-5:90%のBA、5.55%のSty、1.67%のAA、2.78%のIAを有する第1の段階における総モノマーに基づく90%のモノマー、および88%のSty、10%のHEMA、2%のAAを有する第2の段階における総モノマーに基づく10%のモノマーを含む二段階アクリルラテックス(ラテックスB-5と表記)を以下のプロセスに従って調製した。
【0056】
モノマーエマルジョンの調製-段階I(B-5)-5.77gのDS-4を475gの脱イオン水(DI水)に溶解した。乳化されたモノマー混合物は、以下の化学物質を撹拌された溶液にゆっくりと添加することによって調製した:6.84gのIA、20.4gのAA、1107.4gのBA、68.4gのSty。
【0057】
モノマーミックスの調製-段階II(B-5)-120.3gのSty、13.7gのHEMA、および2.7gのAAを一緒に混合した。
【0058】
50.42gのDS4および370gの脱イオン水(本明細書では「DI水」)を含有する溶液を、熱電対、冷却コンデンサー、および撹拌機を備えた5つ口の5リットル丸底フラスコに入れ、窒素下で70℃まで加熱した。255gの60℃のDI水中の27.4gのイタコン酸(IA)をケトルに充填した。次いで、82.8gのモノマーエマルジョン-段階Iをケトルに充填した。次いで、25gのDI水中の3.72gの過硫酸アンモニウム(APS)および20gのDI水中の1.86gの亜硫酸水素ナトリウム(SBS)をケトルに充填した。発熱ピークが発生し、温度が70℃になったら、残りのモノマーエマルジョン-段階I、APSの溶液(50gのDI水中の2.48g)、およびSBSの溶液(50gのDI水中の1.24g)を120分で供給した。重合反応温度は、69~71℃に維持した。添加が完了した後、モノマーエマルジョンを含有していた容器およびフラスコに通じる供給パイプを90gのDI水ですすぎ、すすぎ液をフラスコに戻した。次いで、70℃で15分間保持した。
【0059】
保持後、モノマーミックス-段階IIを充填し、次いで、t-BHP(70%、5gのDI水中の1.05g)および5gのDI水中のFF6(0.9g)の溶液を充填した。15分間保持した後、次いで、t-BHP(70%、38g DI水中の3.98g)およびFF6(42gのDI水中の3.38g)の溶液を60分かけて徐々に添加する。反応物を室温(約23℃)まで冷却した。pH値を6.5~7.5に調整するために15gのアンモニア溶液を添加した。固形分は、45%であった。
【0060】
比較ラテックスC-2は、123gのSty、13.7gのAAを一緒に混合したモノマーミックス-段階IIのレシピを除いて、B-1と同じプロセスに従って調製した。
【0061】
上記のラテックスの組成は、以下の表に要約する。記号「//」は、二段階プロセスでの2つの段階を分離する。示されている量は、重量によるものである。
【表1】
【0062】
実施例2:バインダー組成の試験
ブレンドされたバインダーは、以下のように作製した:11.5重量部の水性分散液AC-579Pを、100重量部の上記の水性ラテックスのうちの1つと15分間撹拌しながら混合した。得られた各混合物において、マレイン化ポリオレフィンおよびアクリルポリマーの固体重量の合計に基づく固体マレイン化ポリオレフィンの重量パーセントは、9.1%であった。
【0063】
ニートアクリルバインダーは、上記のラテックスの各自であり、作製されたまま使用した。
【0064】
バインダーの有効性は、以下のように試験した。WHATMAN(商標)紙の片28cm×46cmを300mLの配合したエマルジョンに浸漬した。処理された基材は、マチスパダーでパディングし、次いで乾燥させ、150℃で3分間硬化した。紙上のポリマーのアドオンは、14~16%(紙の重量に対するポリマーの重量)に制御した。硬化した基材を2.54cm(1インチ)×10.16cm(4インチ)の片に切断し、長さ方向は、紙の幅(CD)方向である。試験片の引張強度は、以下の処理の各々で試験した:Instron(商標)引張試験機での乾燥(未処理)、湿潤(0.1重量%のTritonX-100/水溶液に30分間浸漬した後)、およびIPA(IsoPropanol中に30分間浸漬した後)。湿潤強度は、バインダーの水に対する耐性を反映し、IPA強度は、バインダーの溶媒に対する耐性を反映する。この紙に強度を加えるためのバインダーの有効性は、例えば不織布を含む種々の状況で繊維を一緒に結合するためのバインダーの有効性を示していると考えられる。
【0065】
引張試験結果を以下に報告する。示されている単位は、キログラムの力(kgf)であり、サンプルの幅2.54cm当たりのkgfとして解釈され得る。見出し「ID」は、各バインダーの識別ラベルを指し、「C」で終わるIDラベルは、比較サンプルである。ポリマーの量は、固体重量のパーセント(重量%)で表される。
【表2】
【0066】
すべてのサンプルは、ホルムアルデヒドを含まない。
【0067】
有用な一連の比較の1つは、各々の本発明のブレンドを対応するニートバインダーと比較することである(例えば、ブレンド-1を比較ニート-1Cと比較すること)。ブレンド-1は、許容できるほど高い乾燥引張強度を有するので、ブレンド-1がニート-1Cよりも低い乾燥引張を有するという事実は、重要ではないと考えられる。さらに重要なのは、ブレンド-1が大幅に高い湿潤引張強度(ニート-1Cよりも32%増加)およびIPA引張強度(ニート-1Cよりも37%増加)を有するという事実である。
【0068】
ブレンド-2、ブレンド-3、ブレンド-4、およびブレンド-5の各々を、ニート-2C、ニート-3C、ニート-4C、およびニート-5Cとそれぞれ比較すると、乾式引張、湿潤引張、およびIPA引張がすべて、対応する比較のニートサンプルよりもブレンドサンプルの方が高く、ニートサンプルよりも引張強度が25%~50%増加する。
【0069】
ブレンド例と比較ニート例とのこれらの比較は、マレイン化ポリオレフィンおよびアクリルポリマーの両方を含む本発明のブレンドバインダーが、アクリルポリマーバインダー単独よりも優れた性能を有することを示している。
【0070】
別の有用な比較は、ブレンド-6Cとニート-6Cとを比較することである。これらの比較サンプルは両方とも、ヒドロキシル官能性モノマーを欠いている。ブレンドサンプルは、ニートサンプルよりもいくらか改善された湿潤引張を有する。しかしながら、この湿潤引張の改善は、ニートサンプルよりもわずか7%であり、これはヒドロキシル官能性モノマーを有するサンプル間のニート対ブレンドの比較で見られるよりもはるかに小さい改善である。これは、ヒドロキシル官能性モノマーとマレイン化ポリオレフィンとのブレンドの両方が、優れた性能には必要であることを実証している。ブレンド-7Cとニート-7Cとの比較は、同じ傾向を示し、同じ結論を導く。
【0071】
ニート-6Cとニート-1Cとを比較することも有用である。この比較は、ヒドロキシル官能性モノマーの存在(ニート-1C)または不在(ニート-6C)の影響を示している。これらのサンプルは両方とも、許容できる乾燥引張強度を有する。また、これら2つのサンプルの湿潤引張強度とIPA引張強度とは、ほぼ同一である。したがって、マレイン化ポリオレフィンが存在しない場合、アクリルポリマーにヒドロキシル官能性モノマーを単に含めるだけでは、性能は改善しない。これは、ヒドロキシル官能性モノマーとマレイン化ポリオレフィンの存在との両方が、優れた性能を実現するためには必要であることを再度実証している。
【0072】
ニート-5C、ブレンド-5、ニート-7C、およびブレンド-7Cについての結果を調べることも有用である。ニート-7Cおよびブレンド-7のサンプルは両方とも、ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの重合単位を含まないアクリルポリマーを使用した。ブレンド-7Cは、ニート-7Cよりも高い湿潤引張強度を有するが、湿潤引張強度の改善はわずか14%である。すなわち、アクリルとマレイン化ポリオレフィンとのブレンドは、アクリル単独よりも高い強度を与えるが、ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの重合単位がない場合、マレイン化ポリオレフィンの使用による改善はわずかである。対照的に、ニート-5Cおよびブレンド-5のサンプルは、アクリルポリマーにヒドロキシル官能性アクリルモノマーの重合単位を有し、この場合、ブレンド-5は、ニート-5Cよりも湿潤引張強度におけるより大きな改善を示した(44%の増加)。すなわち、ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの重合単位の存在は、マレイン化ポリオレフィンの存在の効果を強力に増強する。
【国際調査報告】