(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ボイルオフガスの冷却方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20221027BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20221027BHJP
F25J 1/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
B63B25/16 D
F25J1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501001
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 GB2020052041
(87)【国際公開番号】W WO2021038220
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358235
【氏名又は名称】エルジーイー アイピー マネジメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LGE IP Management Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハルクロウ
【テーマコード(参考)】
3E172
4D047
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB03
3E172AB05
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
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3E172EB02
3E172EB08
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3E172HA04
3E172HA14
3E172JA08
4D047AA01
4D047AA10
4D047CA03
4D047CA04
4D047CA13
4D047CA16
(57)【要約】
浮体式輸送船の液化貨物タンク(50)において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を冷却する方法であって:
少なくとも第1圧縮ステージ(65)及び最終圧縮ステージ(75)を含む2つ以上の圧縮ステージにおいて、液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を圧縮して、圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供するステップと;
第1冷却圧縮BOGストリーム(08)からガス状ベントストリーム(51)を提供するステップと;
第2冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供するステップと;
第1膨張冷却BOGストリーム(33)を提供するステップと;
第1膨張加熱BOGストリーム(38)を提供するステップと;及び
冷却ベントストリーム(53)を提供するステップと、
を含み、
第1冷却圧縮BOGストリーム(08)の冷却及びガス状ベントストリーム(51)の冷却は、液化貨物タンク(50)に隣接して配置された熱交換器で行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式輸送船の液化貨物タンク(50)において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を冷却する方法であって、
少なくとも第1圧縮ステージ(65)及び最終圧縮ステージ(75)を含む2つ以上の圧縮ステージにおいて、前記液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を圧縮して、圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供するステップであって、前記第1圧縮ステージ(65)は第1ステージ吸引圧力を有する、及び前記最終圧縮ステージ(75)は最終ステージ吸引圧力を有する、該ステップと;
圧縮BOG排出ストリーム(06)を1つ以上の第1冷却剤ストリーム(202,302)に対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供するステップと;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)からガス状ベントストリーム(51)を提供するステップと;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を第2冷却剤ストリーム(33)に対して冷却して、第2冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供するステップと;
前記第2冷却圧縮BOGストリーム(35)の一部を前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて、第1膨張冷却BOGストリーム(33)を提供するステップと;
前記第1膨張冷却BOGストリーム(33)を第2冷却剤ストリームとして使用して、第1膨張加熱BOGストリーム(38)を提供するステップと;及び
ガス状ベントストリーム(51)を前記第2冷却剤ストリーム(33)に対して冷却して、冷却ベントストリーム(53)を提供するステップと
を含み、
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)の冷却及びガス状ベントストリーム(51)の冷却は、前記液化貨物タンク(50)に隣接して配置された熱交換器で行われる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)の冷却及び前記ガス状ベントストリーム(51)の冷却は、同一の熱交換器内で行われる、方法。
【請求項3】
浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を冷却する方法であって、
少なくとも第1圧縮ステージ(65)及び第2圧縮ステージ(70)を含む2つ以上の圧縮ステージにおいて、前記液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を圧縮して圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供するステップであって、前記第1圧縮ステージ(65)は第1ステージ吸引圧力及び第1ステージ排出圧力を有する、及び前記第2圧縮ステージ(70)は第2ステージ吸引圧力を有する、該ステップと;
前記圧縮BOG排出ストリーム(06)を第1冷却ステージ(400)で1つ以上の第1冷却剤ストリーム(202,302)に対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供するステップと;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を第2冷却ステージ(410)で第2冷却剤ストリームに対して冷却して、第2冷却圧縮BOGストリーム(34)を提供するステップと;
前記第2冷却圧縮BOGストリーム(34)を第3冷却ステージ(420)で第3冷却剤ストリームに対して冷却して、第3冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供するステップと;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)からガス状ベントストリーム(51)を提供するステップと;
前記ガス状ベントストリーム(51)を第2冷却ステージ(410)で第2冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリーム(52)を提供するステップと;
前記冷却ベントストリーム(52)を第3冷却ステージ(420)で第3冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリーム(53)を提供するステップと;
前記第2冷却圧縮BOGストリーム(34)の一部を前記第2冷却ステージ(410)で前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力に膨張させて、第1膨張冷却BOGストリーム(34a)を提供するステップと;
第3冷却圧縮BOGストリーム(35)の一部を前記第3冷却ステージ(420)で前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて、第2膨張冷却BOGストリーム(35a)を提供するステップと;
前記第1膨張冷却BOGストリーム(34a)を第2冷却剤ストリームとして使用して、第1膨張加熱BOGストリーム(39)を提供するステップと;及び
前記第2膨張冷却BOGストリーム(35a)を第3冷却剤ストリームとして使用して、第2膨張加熱BOGストリーム(38)を提供するステップと
を含む、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、前記液化貨物は、エタン、液化石油ガス、プロピレン及びエチレンなどの液化石油化学ガス、並びに液化アンモニアを含む群のうちの1つである、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記液化貨物はエタンである、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記液化エタン貨物は> 0.1mol%のメタンを含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記液化エタン貨物は> 0.5mol%のメタンを含む、方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法であって、3つ又は4つの圧縮ステージを含む、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法であって、
さらに冷却された前記ベントストリーム(53)を分離して、ベント排出ストリーム(55)及び冷却ベントBOGリターンストリーム(57)を提供するステップをさらに含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記冷却ベントBOGリターンストリーム(57)を膨張させて、膨張冷却ベントBOGリターンストリーム(59)を提供するステップと;及び
前記膨張冷却ベントBOGリターンストリーム(59)を貯蔵タンク(50)に送るステップとをさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記圧縮BOG排出ストリーム(06)を1つ以上の前記第1冷却剤ストリーム(202,302)に対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供するステップは、
前記圧縮BOG排出ストリーム(06)を、第1冷却剤ストリームとしての予冷冷却剤ストリーム(202)に対して予冷して、予冷圧縮BOGストリーム(07)を提供するステップと;及び
前記予冷圧縮BOGストリーム(07)を第1冷却剤ストリームとしての前記第1冷媒ストリーム(302)に対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供するステップとを含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記予冷冷却剤ストリーム(202)は、海水ストリーム、空気ストリーム、より具体的には周囲空気ストリーム及び/又は冷媒ストリームから選択される群のうちの1つ以上である、方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法であって、前記第1冷媒ストリーム(302)は、プロパン及びプロピレンから選択される群のうちの1つ以上である、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法であって、前記圧縮ステージ(65,75)は、マルチステージコンプレッサーの圧縮ステージである、方法。
【請求項15】
複数の構成要素を備える浮体式輸送船の液化貨物タンク(50)において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を冷却する装置であって、
圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供するために少なくとも第1圧縮ステージ(65)及び最終圧縮ステージ(75)を含む2つ以上の圧縮ステージを備える、ボイルオフガスストリーム(01)を圧縮する圧縮システム(60)と;
前記圧縮BOG排出ストリーム(06)を冷却して第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供する1つ以上の第1熱交換器(200,300)と;
前記液化貨物タンク(50)に隣接する1つ以上の第2熱交換器であって、前記第2熱交換器は第1冷却圧縮BOGストリーム(08)及びガス状ベントストリーム(51)を冷却剤ストリーム(33)に対してさらに冷却して、第2冷却圧縮BOGストリーム(35)及び冷却ベントストリーム(53)を提供する、該第2熱交換器と
を備える装置。
【請求項16】
浮体式輸送船の液化貨物タンク(50)において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を冷却する装置であって、
2つ以上の圧縮トレイン(60a、60b)を備える、前記ボイルオフガスストリーム(01)を圧縮する圧縮システム(60)であって、各トレインは、圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供するために、少なくとも第1圧縮ステージ(65,65´)及び第2圧縮ステージ(70,70´)を含む2つ以上の圧縮ステージを備え、前記第1圧縮ステージ(65,65´)は第1ステージ吸引圧力及び第1ステージ排出圧力を有する、及び前記第2圧縮ステージ(70,70´)は第2ステージ吸引圧力を有する、該圧縮システム(60)と;
前記圧縮BOG排出ストリーム(06)を冷却して第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供する、1つ以上の第1熱交換器(200,300)を含む第1冷却ステージ(400)と;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を冷却して前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力の間の圧力を有する第2冷却剤ストリーム(34a)を使用して第2冷却圧縮BOGストリーム(34)を提供する、1つ以上の第2熱交換機を備える第2冷却ステージ(410)と;及び
前記第2冷却圧縮BOGストリーム(34)を冷却して前記第1ステージ吸引圧力以下の圧力を有する第3冷却剤ストリーム(35a)を使用して第3冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供する、1つ以上の第3熱交換機を備える第3冷却ステージ(420)と
を備える装置。
【請求項17】
請求項16に記載の装置であって、
前記第2冷却剤ストリーム(34a)の通路から前記第2冷却ステージ(410)を通って提供される第1膨張加熱BOGストリーム(39)を第2圧縮トレイン(60b)に送る、第1通路と、及び
前記第3冷却剤ストリーム(35a)の通路から前記第3冷却ステージ(420)を通って提供される第2膨張加熱BOGストリーム(38)を前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて、さらに膨張したBOGストリームを第1圧縮トレイン(60a)に送る、第2通路と
をさらに備える装置。
【請求項18】
請求項16に記載の装置であって、
前記第2冷却剤ストリーム(34a)の通路から前記第2冷却ステージ(410)を通って提供される第1膨張加熱BOGストリーム(39)の少なくとも一部を前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力の間の圧力まで膨張させ、さらに膨張した加熱BOGストリームを第1圧縮トレイン(60a)に送る、第3通路と;及び
前記第3冷却剤ストリーム(35a)の通路から前記第3冷却ステージ(420)を通って提供される第2膨張加熱BOGストリーム(38)の少なくとも一部を第2圧縮トレイン(60b)に送る、第4通路と
をさらに備える装置。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか一項に記載の装置であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を使用して操作可能である、装置。
【請求項20】
請求項19に記載の装置であって、さらに、前記第2冷却ステージ(410)からの前記第1膨張加熱BOGストリーム(39)及び前記第3冷却ステージ(420)後の前記第2膨張加熱BOGストリーム(38)の、前記第1圧縮トレイン(60a)及び前記第2圧縮トレイン(60b)への通路を制御するコントローラを備える、装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置であって、前記第2冷却ステージ(410)からの前記第1膨張加熱BOGストリーム(39)の前記第1圧縮トレイン(60a)、前記第2圧縮トレイン(60b)又はその両方への通路の制御、及び、前記第3冷却ステージ(420)の後の前記第2膨張加熱BOGストリーム(38)の前記第1圧縮トレイン(60a)、前記第2圧縮トレイン(60b)又はその両方への通路の制御が可能なコントローラを備える、装置。
【請求項22】
膨張加熱ストリームを圧縮トレインに送ることを体系化するコントローラをさらに備える請求項15から18のいずれか一項に記載の装置を使用して、浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からの前記ボイルオフガスストリーム(01)を冷却する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリーム(01)を冷却する方法であって、
2つ以上の圧縮トレインを含む圧縮システム(60)において、前記液化貨物からの前記ボイルオフガスストリーム(01)を圧縮するステップであって、各トレインは、圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供するために、少なくとも第1圧縮ステージ(65,65´)及び第2圧縮ステージ(70,70´)を含む2つ以上の圧縮ステージを含み、前記第1圧縮ステージ(65,65´)は第1ステージ吸引圧力及び第1ステージ排出圧力を有する、及び前記第2圧縮ステージ(70,70´)は第2ステージ吸引圧力を有する、該ステップと;
前記圧縮BOG排出ストリーム(06)を第1冷却ステージ(400)で1つ以上の第1冷却剤ストリーム(202,302)に対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供するステップと;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を第2冷却ステージ(410)で前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力を有する第2冷却剤ストリームに対して冷却して、第2冷却圧縮BOGストリーム(34)を提供するステップと;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(34)を第3冷却ステージ(420)で前記第1ステージ吸引圧力以下を有する第3冷却剤ストリームに対して冷却して、第3冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供するステップと;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム(08)からガス状ベントストリーム(51)を提供するステップと;
前記ガス状ベントストリーム(51)を前記第2冷却ステージ(410)で第2冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリーム(52)を提供するステップと;
前記冷却ベントストリーム(52)を前記第3冷却ステージ(420)で第3冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリーム(53)を提供するステップと;
前記第2冷却圧縮BOGストリーム(34)の一部を前記第2冷却ステージ(410)で前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力に膨張させて、第1膨張冷却BOGストリーム(34a)を提供するステップと;
第3冷却圧縮BOGストリーム(35)の一部を前記第3冷却ステージ(420)で前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて、第2膨張冷却BOGストリーム(35a)を提供するステップと;
前記第1膨張冷却BOGストリーム(34a)を第2冷却剤ストリームとして使用して、第1膨張加熱BOGストリーム(39)を提供するステップと;
前記第2膨張冷却BOGストリーム(35a)を第3冷却剤ストリームとして使用して、第2膨張加熱BOGストリーム(38)を提供するステップと;及び
前記第1膨張加熱BOGストリーム(39)及び前記第2膨張加熱BOGストリーム(38)を、前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力、前記第1ステージ吸引圧力以下の圧力、又はその両方で、2つ以上の圧縮トレインのうちの1つ以上に送るステップと
を含む、方法。
【請求項24】
浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物用の、請求項15から22のいずれか一項に記載の装置を有する、又は請求項1から14及び請求項23のいずれかに一項に記載の方法を用いる、浮体式輸送船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮体式輸送船上の液化貨物からのボイルオフガス(BOG)の冷却方法、特に再液化方法、及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス運搬船及び艀などの浮体式輸送船は、液化状態でさまざまな貨物を輸送することが可能である。現在の状況では、液化貨物の沸点は1気圧で測定したときに-110℃を超え、エタン、液化石油ガス、プロピレン及びエチレンなどの液化石油化学ガス、並びに液化アンモニアが含まれる。
【0003】
1つの特定の貨物は、全体的又は実質的にエタンであり、一般に、>90%エタン、又は>95%エタン、>96%エタン、>97%エタン、>98%エタン、又は>99%エタンである。エタンは、さまざまな工業プロセスに役立つ製品源である。エタンは、天然ガスの生産、水圧破砕、又は原油の精製から抽出することができる。結果として、エタンは他の複数の成分、特にメタンと関連していることがある。エタンは、多くの場合その発生源又はその近くの液化施設で液化することが望ましく、これは、エタンは、気体状よりも液体としての方がその小さい占有体積のために、及び高圧で保管する必要がない場合があるために、長距離(通常は既定のパイプライン距離を超える)でより容易に貯蔵及び輸送できるからである。
【0004】
1気圧で測定したときの沸点が約-87℃の液化エタン貨物の長距離輸送は、液化エタン貨物を保有する1つ以上の貯蔵タンクを備える外航タンカーなどの適切な液化ガス運搬船で行うことができる。これらの貯蔵タンクは、絶縁及び/又は加圧タンクであってもよい。タンクの積み込み及び液化エタン貨物の保管中に、貨物の蒸発によりガスが発生することがある。この蒸発した貨物ガスは、ボイルオフガス(BOG)として知られている。タンク内におけるBOGの蓄積(結果として圧力上昇の問題を生じる)を防ぐために、BOGを再液化して凝縮状態で貯蔵タンクに戻すことができるように、キャリアにシステムを設けてもよい。これは、BOGを圧縮及び冷水源に対して冷却することによって実現することができる。エタンの臨界温度は47.7バールの圧力で32.18℃であるため、同様の温度の海水は主要な冷水源としては不適切である。多くのシステムでは、圧縮BOGは二次冷媒に対して冷却及び凝縮される。
【0005】
液化石油ガスは、暖房器具及び車両などの有用な燃料源であるだけでなく、炭化水素化合物の供給源でもある。LPGは、1つ以上のプロパン、n-ブタン及びi-ブタン、並びに任意選択で、プロピレン、ブチレン及びエタンなどの1つ以上の他の炭化水素を含む。
【0006】
このようなすべての液化貨物の長距離輸送は、ボイルオフガス(BOG)として知られる貨物の蒸発につながる。
【0007】
WO2012/143699Aは、浮体式輸送船の液化貨物からのBOGストリームを再液化する方法及び装置に関するものであり、前記液化貨物の沸点は1気圧で-110℃を超える、ここで、冷却ベントストリームは、圧縮、冷却、そして膨張させられたBOGストリームの一部と熱交換される。これは、1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物に特に適しているものの、冷却方法を改善する必要があり、特に、合理的なOPEX及びCAPEXのもとで、液化エタン貨物からのボイルオフガスを可能な限り再液化する必要があり、特にこのような貨物は、メタンなどのより軽い成分の割合が増加している。
【0008】
WO2016/027098Aは、浮体式輸送船内の液化エタン貨物からのBOGストリームを再液化する改良された方法及び装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際出願公開特許2012/143699号
【特許文献2】国際出願公開特許2016/027098号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、浮体式輸送船においてBOGストリームを再液化する改良された方法及び装置を提供する。
【0011】
第1態様において、本発明は、浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリームを冷却する方法を提供する、前記方法は少なくとも以下のステップを備える:
少なくとも第1圧縮ステージ及び最終圧縮ステージを含む2つ以上の圧縮ステージにおいて、前記液化貨物からのボイルオフガスストリームを圧縮して、圧縮BOG排出ストリームを提供する、ここで、前記第1圧縮ステージは第1ステージ吸引圧力を有する、及び前記最終圧縮ステージは最終ステージ吸引圧力を有する;
前記圧縮BOG排出ストリームを1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記第1冷却圧縮BOGストリームからガス状ベントストリームを提供する;
前記第1冷却圧縮BOGストリームを第2冷却剤ストリームに対して冷却して、第2冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記第2冷却圧縮BOGストリームの一部を前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて、第1膨張冷却BOGストリームを提供する;
前記第1膨張冷却BOGストリームを前記第2冷却剤ストリームとして使用して、第1膨張加熱BOGストリームを提供する;及び
前記ガス状ベントストリームを前記第2冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリームを提供する、
ここで、第1冷却圧縮BOGストリームの冷却及び前記ガス状ベントストリームの冷却は、液化貨物タンクに隣接して配置された熱交換器で行われる。
【0012】
このように、前記第1膨張冷却BOGストリームは、前記第1冷却圧縮BOGストリームに対する熱交換器/交換器の前記第2冷却剤ストリームとして使用されるだけではなく、前記液化貨物タンクに隣接して配置された熱交換器で冷却が行われ、その間における熱伝達放散を最小限に抑える。
【0013】
前記液化貨物は、エタン、液化石油ガス、プロピレン及びエチレンなどの液化石油化学ガス、並びに液化アンモニアからなる群のうちの1つである。
【0014】
本明細書において、貨物の「1気圧で測定したときに沸点が-110℃を超える」という用語は、1気圧で測定したときにマイナス110℃よりも高い、すなわち数値的に高い沸点を有する貨物を意味する。例えば、エタンの沸点は1気圧で測定したときに約-87℃であり、LPGの沸点は1気圧で測定したときに約-42℃である。
【0015】
本明細書で使用される場合、「隣接する」という用語は、隣接又は近接するものとして定義することができる。これは、両方の実在物が接触する又は接続するように、別の実在物の近く又は十分に近接している実在物を指す場合がある。本発明では、液化貨物タンクは熱交換器に隣接して配置される。前記熱交換器は、タンクの上部又はタンクの近くに配置することができる。任意選択で、前記熱交換器はタンクに接触していてもよい。任意選択で、前記熱交換器はタンクに取り付けられていてもよい。
【0016】
したがって、「液化貨物タンクに隣接して配置された熱交換器」という用語は、液化貨物タンクと接触している熱交換器を含むが、これに限定されず、液化貨物タンクに近くに位置すること、若しくはコンプレッサーよりも、又は圧縮BOG排出ストリームを1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却して第1冷却圧縮BOGストリームを提供することよりも、液化貨物タンクに近いことを含む。
【0017】
本明細書で使用される「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、明示的に述べられている場合を除いて、直接シーケンスである場合とそうでない場合もある接続又は関係性を示すことを意図している。つまり、「2番目」の機能と「3番目」の機能の間に、1つ以上の他のステップ、プロセス又は場所が存在する場合がある。これらの用語は、ストリーム内又はストリームの関連する特徴の異なる性質又は存在を明確にするために使用され、本発明はこれらの用語によって限定されない。
【0018】
誤解を避けるために、前記第2冷却剤ストリーム(すなわち、前記第1膨張冷却BOGストリーム)は、前記第1冷却圧縮BOGストリームよりも低い温度にある。
【0019】
別の実施形態によれば、第1冷却圧縮BOGストリームの冷却ステップ及び前記ガス状ベントストリームの冷却は、同一の熱交換器内で行われてもよい。
【0020】
本発明の別の態様によれば、浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリームを冷却する方法を提供する、前記方法は少なくとも以下のステップを備える:
少なくとも第1圧縮ステージ及び第2圧縮ステージを含む2つ以上の圧縮ステージにおいて、前記液化貨物からのボイルオフガスストリームを圧縮して、圧縮BOG排出ストリームを提供する、ここで、前記第1圧縮ステージは第1ステージ吸引圧力及び第1ステージ排出圧力を有する、並びに前記第2圧縮ステージは第2ステージ吸引圧力を有する;
前記圧縮BOG排出ストリームを第1冷却ステージで1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記第1冷却圧縮BOGストリームを第2冷却ステージで第2冷却剤ストリームに対して冷却して、第2冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記第2冷却圧縮BOGストリームを第3冷却ステージで第3冷却剤ストリームに対して冷却して、第3冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記ガス状ベントストリームを前記第2冷却ステージで前記第2冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリームを提供する;
前記冷却ベントストリームを前記第3冷却ステージで前記第3冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリームを提供する;
前記第2冷却圧縮BOGストリームの一部を前記第2冷却ステージで前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力に膨張させて、第1膨張冷却BOGストリームを提供する;
前記第3冷却圧縮BOGストリームの一部を前記第3冷却ステージで前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて、第2膨張冷却BOGストリームを提供する;
前記第1膨張冷却BOGストリームを前記第2冷却剤ストリームとして使用して、第1膨張加熱BOGストリームを提供する;及び
前記第2膨張冷却BOGストリームを前記第3冷却剤ストリームとして使用して、第2膨張加熱BOGストリームを提供する。
【0021】
このようにして、第1ステージ排出圧力と第2ステージ吸引圧力との間の圧力における前記第2冷却圧縮BOGストリームの一部は、中間圧力での圧縮に戻すことができる、及び第1ステージ吸引圧力以下における第3冷却圧縮BOGストリームの一部は、初期圧力での圧縮に戻すことができる。熟練者は、さまざまな圧力膨張を使用してBOGの冷却要件を調整して、最も効率的な冷却体制を実現することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、前記圧縮BOG排出ストリームを1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却して第1冷却圧縮BOGストリームを提供するステップは、以下を含んでもよい:
前記圧縮BOG排出ストリームを、第1冷却剤ストリームとしての予冷冷却剤ストリームに対して予冷して、予冷圧縮BOGストリームを提供する;及び、前記予冷圧縮BOGストリームを第1冷却剤ストリームとしての第1冷媒ストリームに対して冷却して、前記第1冷却圧縮BOGストリームを提供する。
【0023】
つまり、予冷冷却剤ストリームは、圧縮BOG排出ストリームに対する熱交換器/交換器内の1つ以上の第1冷却剤ストリームの1つとして使用され、この熱交換器/交換器は、予冷圧縮BOGストリーム及び加熱予冷冷却剤ストリームを、加熱第1冷却剤ストリームとして提供する。前記予冷冷却剤ストリームは、開放予冷冷却剤システム又は閉塞予冷冷却剤システムの一部であってもよい。前記予冷冷却剤ストリームは、水ストリーム、空気ストリーム又は予冷冷媒ストリームから選択することができ、水ストリーム又は空気ストリームが好ましい。通常、開放予冷冷却剤回路が使用される場合、前記予冷冷却剤ストリームは、海水ストリーム及び周囲空気ストリームから選択されてもよい。通常、閉塞予冷冷却剤回路が使用される場合、前記予冷冷却剤ストリームは、予冷冷媒ストリームから選択されてもよい。前記予冷冷却剤ストリームに対する前記予冷圧縮排出ストリームの冷却は、シェルアンドチューブ熱交換器又はプレート熱交換器などの予冷熱交換器で実施することができる。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、前記1つ以上の第1冷媒ストリームは、単一の冷媒又は混合冷媒を含む第1冷媒などの第1冷媒ストリームを含む。前記第1冷媒は、(i)圧縮システムの排出圧力及び圧縮システムの排出温度で、又は(ii)圧縮システムの排出圧力及び前記予冷圧縮BOGストリームの温度で、液化貨物を凝縮することが可能でなければならない。前記第1冷媒は、1つ以上の有機化合物、アンモニア、特に炭化水素並びにフッ素化炭化水素混合物R-410Aを含む、プロパン、プロピレン、ジフルオロメタン及びペンタフルオロメタンなどのフッ素化炭化水素を含んでもよい。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、前記圧縮BOG排出ストリーム又は前記予冷圧縮排出ストリームの前記第1冷媒ストリームに対する冷却は、シェルアンドチューブ熱交換器、プレート熱交換器又はエコノマイザーなどの排出熱交換器で実施する。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、すべての圧縮BOG排出ストリームは、1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却される。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記液化貨物はエタンであり、エタンは>0.1mol%のメタンを含む。そのような液化エタン貨物は、>0.5mol%、>0.6mol%、>0.7mol%、>0.8mol%、>0.9mol%及び>1.0mol%のメタンを含む、>0.4 mol%のメタンを含んでもよい。本発明は、1~5 mol%のメタン、任意で>5 mol%のメタンを有する液化エタン貨物に拡張される。
【0028】
圧縮ステージの数は、本発明の制限要因ではない。任意選択で、本方法は3つ又は4つの圧縮ステージを備える。
【0029】
任意選択で、前記第1冷却圧縮BOGストリームとして完全に凝縮されたボイルオフガスを提供することが望ましいが、本発明は、1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却した後にボイルオフガスが完全に凝縮されない方法に拡張される。
【0030】
本発明は、特定のタイプの熱交換、特に特定のタイプの熱交換器、より具体的には、温度アプローチがシェル内の流体の組成によって制限される従来のシェルアンドコイルエコノマイザーを使用することの困難を克服する。シェル内の流体の組成が単一成分、つまり十分に「純粋な」ガスである場合、圧縮BOGの膨張部分に対するその冷却はよく知られており、広範囲にわたる。しかしながら、この冷却任務は、多成分混合物では減少し、特にエタンとメタンなどの沸点に有意差がある多成分混合物では劇的に減少する。したがって、本発明は、かなりの量のメタンを含む液化エタン貨物の冷却サイクルの動作係数を改善する、すなわち、本発明は、現在最小と見なされている貨物(例えば、0.1mol%以下のメタン)の動作係数を改善し、はるかに高いメタン含有量(例えば、約0.4又は0.5 mol%以上のメタン)を有する貨物での操作を可能にする。
【0031】
本発明はまた、新しい動作要件を有する新しい機器を導入してどのように使用するかを解明しようとするのではなく、現在の搭載機器及び装置の使用を既知のOPEX及びCAPEXで維持するよう努める。
【0032】
したがって、本発明の別の実施形態によれば、前記第1冷却圧縮BOGストリームの前記第2冷却剤ストリームに対する冷却は、熱交換器内で実施する。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、すべての前記第1冷却圧縮BOGストリームは、前記第2冷却剤ストリームに対して冷却される。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、すべての前記ガス状ベントストリームは、前記第2冷却剤ストリームに対して冷却される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、以下のステップを備える、又はさらに備える:
第1冷却圧縮BOGストリームからガス状ベントストリームを提供する;
第2冷却圧縮BOGストリームの一部を膨張させて、第1膨張冷却BOGストリームを提供する;
前記第1膨張冷却BOGストリームを第2冷却剤ストリームとして使用して前記ガス状ベントストリームを冷却して、冷却ベントストリームを提供する。
【0036】
このようにして、本発明は、以前に考えられていた前記圧縮BOG内の「非凝縮性」又は「凝縮しない」成分の再液化の増進をさらに提供することができる。
【0037】
任意選択で、本発明の方法は、前記冷却ベントストリームを分離して、ベント排出ストリーム及び冷却ベントBOGリターンストリームを提供するさらなるステップを備える。
【0038】
任意選択で、本発明の方法は、前記冷却ベントBOGリターンストリームを膨張して膨張冷却ベントBOGリターンストリームを提供し、前記膨張冷却ベントBOGリターンストリームを貯蔵タンクに送るさらなるステップを備える。
【0039】
任意選択で、本方法は以下のさらなるステップを備える:
冷却ベントBOGリターンストリームを膨張して、膨張冷却ベントBOGリターンストリームを提供する;
冷却ベント排出ストリームを膨張して、膨張冷却ベント排出ストリームを提供する;
熱交換されたベントBOGリターンストリーム及び前記膨張冷却ベント排出ストリームを貯蔵タンクに送る。
【0040】
任意選択で、前記圧縮ステージはマルチステージコンプレッサーの圧縮ステージである。
【0041】
第1冷却圧縮BOGストリームは、少なくとも1つの第2冷却剤ストリームに対して冷却されて、第2冷却圧縮BOGストリームを提供する。前記第2冷却圧縮BOGストリームの一部は、第1ステージ吸引圧力以下に膨張して、第1膨張冷却BOGストリームを提供する。好ましくは、前記第1膨張冷却BOGストリームは、第2冷却剤ストリームとして使用されて、第1膨張加熱BOGストリームを提供する。
【0042】
任意選択で、前記第2冷却剤ストリームとして使用される前記第1膨張冷却BOGストリームは、液相と気相の両方を含む。すなわち前記第2冷却剤ストリームとして使用する前に、前記第1膨張冷却BOGストリームを個別の気相及び液相に分離する必要はない。
【0043】
本発明の別の態様によれば、本発明は、浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリームを冷却する方法を提供する、前記方法は少なくとも以下のステップを備える:
2つ以上の圧縮トレインを備える圧縮システムにおいて、前記液化貨物からのボイルオフガスストリームを圧縮する、各トレインは、圧縮BOG排出ストリームを提供するために、少なくとも第1圧縮ステージ及び第2圧縮ステージを含む2つ以上の圧縮ステージを備える、ここで、前記第1圧縮ステージは第1ステージ吸引圧力及び第1ステージ排出圧力を有し、前記第2圧縮ステージは第2ステージ吸引圧力を有する;
前記圧縮BOG排出ストリームを第1冷却ステージで1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記第1冷却圧縮BOGストリームを、第2冷却ステージで前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力を有する第2冷却剤ストリームに対して冷却して、第2冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記第2冷却圧縮BOGストリームを、第3冷却ステージで前記第1ステージ吸引圧力以下を有する第3冷却剤ストリームに対して冷却して、第3冷却圧縮BOGストリームを提供する;
前記第1冷却圧縮BOGストリームからガス状ベントストリームを提供する;
前記ガス状ベントストリームを、前記第2冷却ステージで前記第2冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリームを提供する;
前記冷却ベントストリームを、前記第3冷却ステージで前記第3冷却剤ストリームに対して冷却して、冷却ベントストリームを提供する;
前記第2冷却圧縮BOGストリームの一部を、前記第2冷却ステージで、前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力に膨張させて、第1膨張冷却BOGストリームを提供する;
前記第3冷却圧縮BOGストリームの一部を、前記第3冷却ステージで前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて、第2膨張冷却BOGストリームを提供する;
前記第1膨張冷却BOGストリームを前記第2冷却剤ストリームとして使用して、第1膨張加熱BOGストリームを提供する;
前記第2膨張冷却BOGストリームを前記第3冷却剤ストリームとして使用して、第2膨張加熱BOGストリームを提供する;及び
前記第1膨張加熱BOGストリーム及び前記第2膨張加熱BOGストリームを、前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力か、前記第1ステージ吸引圧力以下の圧力か、又はその両方で、前記2つ以上の圧縮トレインのうちの1つ以上に送る。
【0044】
このようにして、熟練者は、前記第2及び第3冷却圧縮BOGストリームの一部が、異なる圧力膨張を使用して異なる圧縮ステージで同一又は異なる圧縮トレインに戻ることができる方法をさらに調整して、最も効率的な冷却体制を達成することができる。
【0045】
任意選択で、本方法は、前記第1膨張加熱BOGストリームを前記第2冷却ステージから前記第2圧縮トレインに送り、前記第3冷却ステージ後の前記第3冷却剤ストリームを前記第1ステージ吸引以下に膨張させ、第2膨張加熱BOGストリームを第1圧縮トレインに送ることをさらに備える。
【0046】
代替的又は追加的に、本方法は、前記第2冷却剤ストリームの少なくとも一部を前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力まで膨張させ、前記第1膨張加熱BOGストリームを前記第1圧縮トレインに送ること、及び前記第3冷却ステージ後の前記第3冷却剤ストリームの少なくとも一部を前記第2圧縮トレインに送ることをさらに備える。
【0047】
任意選択で、本方法は、コントローラを使用して、同一又は異なる圧縮ステージで圧縮トレインへの様々なストリームの通路を制御することを備える。
【0048】
例えば、コントローラは、前記第2冷却ステージからの前記第1膨張加熱BOGストリーム及び前記第3冷却ステージ後の前記第2膨張加熱BOGストリームの、前記第1圧縮トレイン及び前記第2圧縮トレインへの通路を制御することができる。
【0049】
あるいは、コントローラは、前記第2冷却ステージから前記第1圧縮トレイン、前記第2圧縮トレイン又はその両方への、前記第1膨張加熱BOGストリームの通路を制御することができる。
【0050】
あるいは、コントローラは、前記第1圧縮トレイン、前記第2圧縮トレイン又はその両方への前記第3冷却ステージ後の前記第2膨張加熱BOGストリームの通路を制御することができる。
【0051】
熟練した読者は、上記の実施形態の変形及び実施例が、浮体式輸送船内の液化貨物からのボイルオフガスストリームを冷却するために必要な熱/エネルギーバランスを改善することが可能であることを理解することができる。
【0052】
本発明の別の態様によれば、浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリームを冷却する装置を提供する、前記装置は少なくとも以下を備える:
少なくとも第1圧縮ステージ及び最終圧縮ステージを含む2つ以上の圧縮ステージを備えて圧縮BOG排出ストリームを提供する、ボイルオフガスストリームを圧縮する圧縮システム;
前記圧縮BOG排出ストリームを冷却して第1冷却圧縮BOGストリームを提供する、1つ以上の第1熱交換器;
前記第1冷却圧縮BOGストリーム及びガス状ベントストリームを冷却剤ストリームに対してさらに冷却して、第2冷却圧縮BOGストリーム及び冷却ベントストリームを提供する、液化貨物タンクに隣接する1つ以上の第2熱交換器。
【0053】
本発明の別の態様によれば、浮体式輸送船内において1気圧で測定したときの沸点が-110℃を超える液化貨物からのボイルオフガスストリームを冷却する、複数の構成要素を備える装置を提供する、前記装置は少なくとも以下を備える:
2つ以上の圧縮トレインを備える、ボイルオフガスストリームを圧縮する圧縮システム、各トレインは、圧縮BOG排出ストリームを提供するために、少なくとも第1圧縮ステージ及び第2圧縮ステージを含む2つ以上の圧縮ステージを備える、ここで、前記第1圧縮ステージは第1ステージ吸引圧力及び第1ステージの排出圧力を有し、前記第2圧縮ステージは第2ステージ吸引圧力を有する;
前記圧縮BOG排出ストリームを冷却して第1冷却圧縮BOGストリームを提供する1つ以上の第1熱交換器を備える第1冷却ステージ;
前記第1冷却圧縮BOGストリームを冷却して、前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力を有する第2冷却剤ストリームを使用して第2冷却圧縮BOGストリームを提供する1つ以上の第2熱交換器を備える第2冷却ステージ;及び
前記第2冷却圧縮BOGストリームを冷却して、前記第1ステージ吸引圧力以下を有する第3冷却剤ストリームを使用して第3冷却圧縮BOGストリームを提供する1つ以上の第3熱交換器を備える第3冷却ステージ。
【0054】
任意選択で、前記装置は、前記第2冷却ステージで一度使用された前記第1膨張加熱BOGストリームを第2圧縮トレインに送る第1通路と、前記第3冷却ステージを通過した後の前記第3冷却剤ストリームを前記第1ステージ吸引圧力以下に膨張させて前記第2膨張加熱BOGストリームを第1圧縮トレインに送る第2通路とをさらに備えてもよい。
【0055】
任意選択で、前記装置は、前記第2冷却ステージを通過した後の前記第2冷却剤ストリームの少なくとも一部を前記第1ステージ排出圧力と前記第2ステージ吸引圧力との間の圧力まで膨張させて、前記第1膨張加熱BOGストリームを前記第1圧縮トレインに送る第3通路と、前記第3冷却ステージを通過した後の前記第3冷却剤ストリームの少なくとも一部を前記第2圧縮トレインに送る第4通路とをさらに備えてもよい。
【0056】
任意選択で、前記装置は、前記第2冷却ステージからの前記第1膨張加熱BOGストリーム及び前記第3冷却ステージ後の前記第2膨張加熱BOGストリームの、前記第1圧縮トレイン及び前記第2圧縮トレインへの通路を制御するコントローラをさらに備えてもよい。
【0057】
任意選択で、前記装置は、前記第2冷却ステージから前記第1圧縮トレイン、前記第2圧縮トレイン又はその両方への前記第1膨張加熱BOGストリームの通路を制御し、前記第3冷却ステージ後の前記第2膨張加熱BOGの前記第1圧縮トレイン、前記第2圧縮トレイン又はその両方への通路を制御することができるコントローラをさらに備えてもよい。
【0058】
本発明の装置は、任意選択でコントローラを使用して、当業者が、第2及び第3冷却圧縮BOGストリームの一部が、異なる圧力膨張を使用して異なる圧縮ステージで同一又は異なる圧縮トレインに戻ることができる方法を調整することを可能にして、最も効率的な冷却体制を達成することができる。
【0059】
任意選択で、本明細書で定義される前記装置は、本明細書で定義される方法を使用して動作可能である。
【0060】
任意選択で、1気圧での沸点が110℃を超え、複数の構成要素で構成された液化貨物など、エタン以外の製品を処理するシステムの要件に応じて、圧縮ステージ後にさらなる熱交換器又は分離器をシステムに導入することができる。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義される装置を有するか、又は本明細書で定義される方法を操作する液化貨物用の浮体式輸送船を提供する。
【0062】
本発明は、液化貨物用の任意の浮体式輸送船に適用可能である。本発明は、液化貨物貯蔵タンクが完全に冷蔵されて温度を下げることによりほぼ大気圧で貨物を液相に維持する浮体式輸送船、及び貯蔵タンク内の貨物が、周囲に対する温度の低下と圧力の上昇の組み合わせによって液相に維持されている船舶で使用することができる。
【0063】
本明細書に開示される方法及び装置の利点を得るために、エコノマイザーの使用は必須ではない。 しかしながら、特定の実施形態において、エコノマイザーなどの熱交換器は、中間圧縮BOGストリームを冷却するために、連続する圧縮ステージの間、例えば、第1ステージと第2ステージとの間に配置することができる。3つ以上の圧縮ステージが存在する場合、中間圧縮BOGストリームの冷却を可能にするエコノマイザーなどの熱交換器又は海水インタークーラーなどのインタークーラーを、第2圧縮ステージと最終圧縮ステージとの間に提供することができる。
【0064】
例えば、インタークーラーは第2圧縮ステージと第3圧縮ステージの間に配置できる。 あるいは、エコノマイザーを第2圧縮ステージと第3圧縮ステージの間、及び第1圧縮ステージと第2圧縮ステージの間に配置することもできる。エコノマイザーでは、冷却圧縮BOGストリームの膨張した、任意選択ではさらに冷却された部分を、中間圧縮BOGストリームと熱交換することができる。さらなる実施形態では、冷却圧縮BOGストリームの膨張した、任意選択ではさらに冷却された部分は、冷却圧縮排出ストリームの任意選択でさらに冷却された部分と熱交換され得る。これにより、動作係数がさらに向上し、冷却能力、特に再液化能力が増進する。
【0065】
本明細書に開示される方法及び装置は、既存の圧縮ステージ数を維持し、第3冷却BOGストリームの膨張部分に対する第2冷却圧縮BOGストリームの冷却を実行するために必要な配管、弁及び制御を追加することによって、レトロフィットとして既存の浮体式輸送船に適用可能であることは明らかである。
【0066】
本明細書で使用される場合、「複数の圧縮ステージ」という用語は、圧縮システムにおける直列の2つ以上の圧縮ステージを定義する。各圧縮ステージは、1つ以上のコンプレッサーによって達成してもよい。各圧縮ステージの1つ以上のコンプレッサーは、それらが別々に駆動されるように、他の圧縮ステージのコンプレッサーから独立していてもよい。あるいは、2つ以上の圧縮ステージは、オプションのギアリングを備える、通常は単一のドライバー及びドライブシャフトによって動力を供給される、連結されたコンプレッサーを利用することができる。そのような連結された圧縮ステージは、本明細書では「圧縮トレイン」とも呼ばれるマルチステージコンプレッサーの一部であってもよい。
【0067】
本明細書で使用される場合、「コントローラ」という用語は、冷却剤ストリームを様々な圧縮トレインに向けることができる任意の装置を定義する。そのような装置は、既知の技術を使用して操作可能であってよい。コントローラは、ストリームの圧力を検出することができる。さらに、コントローラはストリームを特定の圧縮トレインに向けることができる。コントローラは、複数のストリームを同時に編成することができる。コントローラは、複数の圧縮トレインで動作可能である。
【0068】
本明細書に開示される方法及び装置は、少なくとも2つの圧縮ステージを必要とする。最初の圧縮ステージの後、後続の各ステージは、前ステージの排出時の圧力よりも高い圧力を提供する。「連続するステージ」という用語は、隣接する圧縮ステージのペア、すなわち、ステージ(n)及び次の(n + 1)ステージを指し、ここで、「n」は0より大きい整数である。したがって、連続するステージは、例えば、 第1ステージと第2ステージ、第2ステージと第3ステージ、又は第3ステージと第4ステージである。中間圧縮ストリーム(及び冷却中間圧縮ストリーム)は、連続する圧縮ステージを接続するストリームを指す。冷却中間圧縮ストリームに関連して使用される「次の圧縮ステージ」又は「後続の圧縮ステージ」という用語は、中間ストリームを定義する2つの連続するステージの数値的に高い数(及びより高い圧力ステージ)を指す。
【0069】
熱交換ステップは、熱交換に関与する2つ以上のストリームが分離されて直接接触しない間接的なものであってもよい。あるいは、熱交換は直接的であってもよく、その場合は、熱交換に関与する2つ以上のストリームを混合することができ、それによって組み合わされたストリームを生成することができる。
【0070】
ここで、本発明の実施形態を、以下の添付の非限定的図面を参照して、例示としてのみで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本発明の一実施形態による、浮体式輸送船内の液化貨物からのボイルオフガスを冷却、特に再液化するシステムの概略図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による、浮体式輸送船内の液化貨物からのボイルオフガスを冷却、特に再液化するシステムの概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態による、浮体式輸送船内の液化貨物からのボイルオフガスを冷却、特に再液化するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
フローティング再液化システムは、1つ以上の貯蔵タンクからボイルオフガスとしても知られる蒸気を引き出し、ボイルオフガスをコンプレッサーに送る、コンプレッサーでは、圧縮された蒸気をヒートシンク/冷媒としての1つ以上の冷却剤に対して冷却及び凝縮できるように、ボイルオフガスが圧縮される。例えば、海水を使用して、オープンサイクル予冷回路で圧縮蒸気を予冷、通常は過熱防止することができる。次に、予冷された圧縮蒸気を、閉サイクル冷媒回路内の冷媒に対してさらに冷却することができる。
【0073】
本明細書に開示される方法及び装置は、BOGを再液化する改良された方法及び装置を提供することを目的とする。本発明による方法及び装置の実施形態を、
図1に開示する。適切な場合、
図1のものと同一のストリーム名及び構成要素名、並びに同一の参照番号が、残りの図における対応するストリーム及び構成要素に使用される。
【0074】
図1は、エタン又はLPG運搬船などの浮体式輸送船の液化貨物貯蔵タンク(50)を示す。液化エタン貨物は、ある割合でメタンなどの他の成分を含んでもよい。
【0075】
貯蔵タンク(50)からの蒸発した貨物を冷却、特に再液化するために、蒸発した貨物を含むボイルオフガスストリーム(01)が、2つ以上の圧縮ステージを有する圧縮システム(60)に送られる。ボイルオフガスストリーム(01)は、0から500kPaゲージを超える範囲の圧力(「BOG圧力」)を有してもよい。圧縮システム(60)は、2つ以上のステージを含むマルチステージコンプレッサーであってもよい。「マルチステージコンプレッサー」とは、コンプレッサーの各圧縮ステージが同一のドライブシャフトによって駆動されることを意味する(圧縮トレインと呼ばれることもある)。あるいは、圧縮システム(60)は、各圧縮ステージ用に独立して駆動されるコンプレッサーを備えてもよい。圧縮システム(60)がマルチステージコンプレッサーである場合、それは通常、往復コンプレッサーである。
【0076】
図1の実施形態は、第1ステージ(65)、第2ステージ(70)、及び第3且つ最終ステージ(75)を有する圧縮システム(60)を示すが、本明細書に記載の方法及び装置は、2つのステージ又は3つ以上のステージを有するコンプレッサーにも適用可能である。第1圧縮ステージ(65)及び最終圧縮ステージ(75)は、排出時にそれぞれ低圧ストリームと高圧ストリームを提供する。
【0077】
圧縮システム(60)は、ボイルオフガスストリーム(01)を圧縮して、圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供する。圧縮BOG排出ストリーム(06)は、1.5から3.2MPaの範囲以上、例えば最大6MPaの圧力(「最終ステージ圧力」)を有してもよい。
【0078】
圧縮BOG排出ストリーム(06)は、1つ以上の第1熱交換器(200,300)で1つ以上の第1冷却剤ストリーム(202,302)に対して冷却されて、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供する。
【0079】
図1の実施形態では、圧縮BOG排出ストリーム(06)を、1つ以上の第1熱交換器の1つとしての予冷熱交換器(200)に送ることができる。圧縮BOG排出ストリーム(06)は、1つ以上の第1冷却剤ストリームの1つとしての予冷冷却剤ストリームに対して予冷される。予冷冷却剤ストリーム(202)は、周囲空気ストリームなどの空気ストリーム又は海水ストリームなどの水ストリームであってもよい。予冷熱交換器(200)は、シェルアンドチューブ熱交換器又はプレート熱交換器であってもよい。予冷熱交換器は、圧縮BOG排出ストリーム(06)の過熱防止をすることができる。予冷熱交換器(200)は、予冷圧縮BOGストリーム(07)及び加熱予冷冷却剤ストリーム(204)を提供する。通常、予冷冷却剤として使用される海水の温度は+36℃以下、より一般的には+32℃以下である。
【0080】
予冷熱交換器/交換器(200)は、本明細書に開示される方法及び装置において任意である。 これは、後続の冷却ステップの冷却負荷を軽減するため、有利である。しかしながら、これは必須の態様ではなく、代替の実施形態では、圧縮BOG排出ストリーム(06)を排出熱交換器(300)に直接送ることができる。このような状況では、予冷の不存在を補うために、排出熱交換器(300)の冷却能力を増加させる必要がある。
【0081】
次に、予冷圧縮BOGストリーム(07)を、1つ以上の第1熱交換器の別のものとしての排出熱交換器(300)に送ることができる。排出熱交換器(300)は、1つ以上の第1冷却剤ストリームの別のものとしての第1冷媒ストリーム(302)に対して予冷圧縮BOGストリーム(07)を冷却する。排出熱交換器(300)は、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)及び加熱第1冷媒ストリーム(304)を提供する。
【0082】
第1冷媒ストリーム(302)、排出熱交換器(300)及び加熱第1冷媒ストリーム(304)は、第1冷媒システム(図示せず)の一部であってもよい。このような第1冷媒システムは、加熱第1冷媒ストリーム(304)を圧縮して圧縮第1冷媒ストリームを提供する第1冷媒圧縮器、第1冷媒を冷却して冷却圧縮第1冷媒ストリームを提供する第1冷媒冷却器、及び冷却圧縮第1冷媒ストリームを膨張させて第1冷媒ストリーム(302)を提供する第1冷媒膨張装置をさらに備えてもよい。前記第1冷媒システムは、閉鎖システムであってもよい。前記第1冷媒は、1つ以上の有機化合物、特に炭化水素、フッ素化炭化水素混合物R-410Aを含むプロパン、プロピレン、ジフルオロメタン及びペンタフルオロメタンなどのフッ素化炭化水素、並びにアンモニアなどの1つ以上の無機化合物を含んでもよい。
【0083】
冷却圧縮BOGストリーム(08)が完全に凝縮されていない場合、ストリーム(51a)として排出熱交換器(300)から、及び/又はストリーム(51b)として排出レシーバー(305)から、ガス状ベントストリームも提供される。
図1は2つのストリーム(51a,51b)を別々に示しているが、そのようなストリームは、放電熱交換器(300)及び放電レシーバー(305)の性質及び構造に応じて、別々に、組み合わせて、又は区別なしに提供されてもよい。これらの1つ以上のストリームの提供は、当技術分野で知られている。ガス状ベントストリーム(51)は、「非凝縮性」成分と「凝縮不能」成分の両方を含んでもよい。凝縮不能成分は、一般に、特定の浮体式輸送船のBOG冷却システムの範囲内及び動作パラメータ内で圧縮及び凝縮することが実際には不可能であると見なされ、主に窒素に関連する成分である。
【0084】
次に、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)は二度目の冷却を受ける。これは、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を熱交換器(20)に送ることによって達成できる。第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を第2冷却剤ストリームに対して冷却して、第2冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供する。第2冷却剤の作用は、第2冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供することである。このストリーム(35)の一部は、第1ステージ吸引圧力以下に膨張して、第1膨張冷却BOGストリーム(33)を提供する。
【0085】
同一の熱交換器(20)を使用してガス状ベントストリーム(51)を冷却すると、排出熱交換器(300)で凝縮できなかったボイルオフガスの成分の一部を、プロパン又はプロピレンなどの第1冷媒に対して凝縮することができる。そのように形成された冷却ベントストリーム(53)は、通常は、少なくとも部分的に凝縮されたストリームである。
【0086】
本発明の実施形態の特定の特徴は、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)の冷却及びガス状ベントストリーム(51)の冷却が、液化貨物タンク(50)に隣接した熱交換器(20)内で行われることである。従来のシステムでは、熱交換器は通常、コンプレッサーに隣接して配置され、貯蔵タンクは離れた場所に配置されて長いパイプラインを介して接続される。本発明において、貨物タンクに隣接して熱交換器を配置することは、周囲(リターン冷却BOGよりも著しく温かい)からBOGストリーム(11)への熱伝達を低減することによって性能の改善を提供する。熱伝達の減少は、周囲への「失われる」冷却が少なくなり、BOG蒸気へのメタンの蓄積が減少するという、2つの方法で全体的なパフォーマンスを改善する効果がある。
【0087】
図1に示す配置では、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)及びガス状ベントストリーム(51)を冷却する熱交換器(20)は、コンプレッサー(60)よりも液化貨物タンク(50)の近くに配置される、そして、圧縮BOG排出ストリーム(06)を1つ以上の第1冷却剤ストリームに対して冷却して、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供する。このように、
図1に示す全体的な配置の効率は、BOGが比較的高温になっている部分と比較して、配置の「より冷たい」部分の熱損失を減らすことができる。
【0088】
図1は、冷却ベントストリーム(53)が、ガス/液体セパレーターなどのベントストリームセパレーター(150)に任意選択で送られることも示している。ベントストリームセパレーター(150)は、全体的又は実質的に非凝縮性成分であるベント排出ストリーム(55)(通常は蒸気ストリーム)及び冷却ベントBOGリターンストリーム(通常は凝縮ストリーム)を提供し、熱交換器で凝縮されたボイルオフガスのこれらの成分を含む。ベント排出ストリーム(55)の圧力は、例えば、貯蔵タンク(50)に戻すための、他の場所に貯蔵するための、又は通気のための適切な圧力に低下させることができる。
【0089】
任意選択で、セパレーター(150)は、個別のセパレーター装置である、タンクに統合される、又は「緊急ポンプ除去カラム」などのタンクの既存の機能を利用することができる。
【0090】
冷却ベントBOGリターンストリーム(57)は、ジュールトムソンバルブ又はエキスパンダーなどのベントリターンストリーム減圧装置(58)を通過して、膨張冷却ベントBOGリターンストリーム(59)を提供することができる。膨張冷却ベントBOGリターンストリーム(59)は、例えば、膨張冷却BOGリターンストリーム(36)に追加することによって、貯蔵タンク(50)に送ることができる。
【0091】
図2は、本発明の別の方法及び装置を示す。
図1と同様に、
図2は、液化貨物貯蔵タンク(50)を示す、このタンクから、蒸発した貨物を含むボイルオフガスストリーム(01)は、第1ステージ(65)、第2且つ中間ステージ(70)及び第3及び最終ステージ(75)の3つの圧縮ステージを備える圧縮システム(60)に送られる。
【0092】
圧縮システム(60)は、第1冷却ステージ(400)で1つ以上の第1冷却剤ストリーム(202、302)に対して冷却して第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供することができる圧縮BOG排出ストリーム(06)を提供する。次に、第1冷却圧縮ストリーム(08)は、第2冷却ステージ(410)で第2冷却剤ストリームに対して冷却されて、第2冷却圧縮BOGストリーム(34)を提供する。次に、ストリーム(34)は、第3冷却ステージ(42)で第3冷却剤ストリームに対して冷却されて、第3冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供する。
【0093】
ガス状ベントストリーム(51)は、
図1に示す方法と同一の方法で第1冷却圧縮BOGストリーム(08)から提供されて、第2冷却ステージ(410)で第2冷却剤ストリームに対して冷却されて、冷却ベントストリーム(52)を提供する。次に、冷却ベントストリーム(52)は、第3冷却ステージ(420)で第3冷却剤ストリームに対して冷却されて、冷却ベントストリーム(53)を提供する。
【0094】
図2において、第2冷却圧縮BOGストリーム(34)の一部は、第2冷却ステージ(410)で第1ステージ排出圧力と第2ステージ吸引圧力との間の圧力に膨張して、第1膨張冷却BOGストリーム(34a)を提供する。
【0095】
一方、第3冷却圧縮BOGストリーム(35)の一部は、第3冷却ステージ(420)で第1ステージ吸引圧以下に膨張して、第2膨張冷却BOGストリーム(35a)を提供する。
【0096】
次に、第1膨張冷却BOGストリーム(34a)を第2冷却剤ストリームとして使用して、第1ステージ(65)と第2ステージ(70)との間で圧縮システム(60)に戻すことができる第1膨張加熱BOGストリーム(39)を提供する。
【0097】
そして、第2膨張冷却BOGストリーム(35a)は、第3冷却剤ストリームとして使用されて第2膨張加熱BOGストリーム(38)を提供する、これは、第1ステージ(65)の前に圧縮システム(60)に戻すことができる。
【0098】
次に、全体として、ユーザは、第1及び第2膨張冷却BOGストリーム(34a,35)の量を調整して、冷却構成の全体的な効率を改善し、好ましくは最大化して、時間とともに変化する必要なエネルギーの消費を削減することができる。
【0099】
【0100】
図3は、液化貨物貯蔵タンク(50)を示し、そこから蒸発した貨物を含むボイルオフガスストリーム(01)が、各圧縮トレインが2つ以上の圧縮ステージを備える2つ以上の圧縮トレイン(60a,60b)を含む圧縮システム(60)に送られる。各トレインは、少なくとも第1圧縮ステージ(65,65´)及び第2圧縮ステージ(70,70´)を備えており、圧縮BOG排出ストリーム(06)の組み合わせを提供する。
【0101】
圧縮BOG排出ストリーム(06)は、1つ以上の第1熱交換器(200,300)で冷却されて、前述のように、第1冷却圧縮BOGストリーム(08)を提供する。
【0102】
第1冷却圧縮BOGストリーム(08)は、第2冷却ステージ(410)において、第1ステージ排出圧力と第2ステージ吸引圧力との間の圧力を有する第2冷却剤ストリームに対して冷却されて、第2冷却圧縮BOGストリーム(34)を提供する。第2冷却圧縮BOGストリーム(34)は、第3冷却ステージ(420)において、第1ステージ排出圧力と第2ステージ吸引圧力との間の圧力を有する第3冷却剤ストリームに対して冷却されて、第3冷却圧縮BOGストリーム(35)を提供する。
【0103】
任意選択で、ガス状ベントストリーム(51)は、前述のように第1冷却圧縮BOGストリーム(08)から提供されて、及び第2冷却ステージ(410)で第2冷却剤ストリームに対して冷却されて、冷却ベントストリーム(52)を提供する。冷却ベントストリーム(52)は、第3冷却ステージ(420)で第3冷却剤ストリームに対して冷却されて、冷却ベントストリーム(53)を提供する。
【0104】
第2冷却圧縮BOGストリーム(34)の一部は、第2冷却ステージ(410)で、第1ステージ排出圧力と第2ステージ吸引圧力との間の圧力に膨張して、第1膨張冷却BOGストリーム(34a)を提供する。次に、第1膨張冷却BOGストリーム(34a)は第2冷却剤ストリームとして使用されて、第1膨張加熱BOGストリーム(39)を提供する。
【0105】
一方、第3冷却圧縮BOGストリーム(35)の一部は、第3冷却ステージ(420)で膨張して、第2膨張冷却BOGストリーム(35a)を提供する。第2膨張冷却BOGストリーム(35a)は第3冷却剤ストリームとして使用されて、第2膨張加熱BOGストリーム(38)を提供する。
【0106】
第1膨張加熱BOGストリーム(39)及び第2膨張加熱BOGストリーム(38)は、第1ステージ排出圧力と第2ステージ吸引圧力の間の圧力、第1ステージ吸引圧力以下の圧力、又はその両方で、2つ以上の圧縮トレイン(60a、60b)のうちの1つ以上に送られる。これらのストリームは、通路に沿って、そしてバルブ(22)を通過して、圧縮システム(60)の所望の部位に送るための所望の膨張圧力を達成して、冷却構成の効率を改善し、好ましくは最大にすることができる。
【0107】
一例では、第2冷却ステージ(410)からの第1膨張加熱BOGストリーム(39)を第2圧縮トレイン(60b)に送ることができ、第3冷却剤ストリーム(35a)を第3冷却ステージ(420)の後で第1ステージ吸引圧力以下にして、第2膨張加熱BOGストリーム(38)を提供することができ、これは第1圧縮トレイン(60a)に送ることができる。
【0108】
別の例では、第2冷却剤ストリーム(34a)の少なくとも一部は、第2冷却ステージ(410)の後に、第1ステージ排出圧力と第2ステージ吸引圧力との間の圧力に膨張して、第1膨張冷却BOGストリーム(39)を提供することができ、これは第1圧縮トレイン(60a)に送ることができる、及び、第3冷却ステージ(420)後の第3冷却剤ストリーム(35a)の少なくとも一部を第2圧縮トレイン(60b)に送ることができる。
【0109】
さまざまな圧縮トレインへの冷却剤ストリームの通路は、必要なストリームのバランスをとるために必要なバルブを操作することができるコントローラー(図示せず)によって体系化することができる。
【0110】
任意選択で、コンプレッサー及び熱交換器の同一セットが多数提供される。OPEXとCAPEXの利点は、冷却BOGフローを適切に方向付けるためのバルブ又はゲートを提供することを介して、コンプレッサーシステムを統合的に操作することによって得ることができる。ユニットは、必要な冷却能力に応じて、必要に応じて独立して動作可能である。
【0111】
当業者は、本発明が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの様々な方法で実施できることを理解するであろう。例えば、本発明は、本明細書に開示される任意の又は好ましい特徴のうちの1つ以上の組み合わせを包含する。
【国際調査報告】