(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】断熱性のある雪貯蔵所を提供する方法及び機器
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
F16L59/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022502072
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 FI2019050541
(87)【国際公開番号】W WO2021005261
(87)【国際公開日】2021-01-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522013913
【氏名又は名称】スノーセキュア オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティカイネン、ミッコ
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC03
3H036AD01
3H036AE02
(57)【要約】
本発明は、断熱材を備える雪貯蔵所(10)を設ける方法に関し、方法は少なくとも一部が断熱板(16)である断熱材(16、18、20、27、28、29、32)で、雪貯蔵所で作られた貯蔵雪(30)を覆うことを含む。本発明に係る方法において、貯蔵雪(30)の断熱は断熱板マット(20)を用いて実行され、断熱板マット(20)は複数の断熱板(16)、または、複数の断熱板のグループが並んで及び/又は順に合わされて、対向する端部エッジの上コーナー及び下コーナー(21)で枢動結合される。連続する断熱板マット(20)は、複数の断熱板が順にアコーディオン状の断熱板の束(20’)に折り畳まれ、連続する断熱板マット(20)に再度拡げることができる。また、本発明は、断熱材を備えた雪貯蔵所(10)を提供するための機器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材を有する雪貯蔵所(10)を備える方法は、雪貯蔵所において作られた貯蔵雪(30)を断熱材(16,18,20、27、28、29,32)で覆い、前記断熱材は断熱板を含み、
-前記貯蔵雪(30)の断熱は断熱板マット(20)により行われ、前記断熱板マット(20)は、複数の断熱板(16)、又は並んで又は順に合わされた複数の断熱板のグループを有し、前記複数の断熱板(16)又は前記複数の断熱板のグループは対向する横方向端部エッジ(21)の上コーナー又は下コーナーで枢動可能に互いに結び付けられており、連続する断熱板マット(20)は、複数の断熱板が順にアコーディオン状の断熱板の束(20’)に折り畳み可能であり、連続する断熱板マット(20)に再び拡げることが可能であり、
-前記貯蔵雪(30)が断熱される場合は、前記アコーディオン状の断熱板の束(20’)は拡げられて前記貯蔵雪(30)の上に引き上げられて、拡げられて貯蔵雪(30)の上に引っ張られた前記断熱板マット(20)は、前記貯蔵雪の少なくとも一部を覆い
-前記断熱板マット(20)が、雪貯蔵所(10)から撤去される場合は、前記断熱板マット(20)が前記貯蔵雪(30)から引き外され、断熱板の束(20’)に折り畳まれて、アコーディション状の構成となる、方法。
【請求項2】
前記断熱板の束(20’)は、前記貯蔵雪(30)から撤去された後及び前記貯蔵雪(30)に引っ張られる前に、前記貯蔵雪(30)の隣に保管される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記断熱板マット(20)が、前記貯蔵雪(30)上に引っ張られて並んで置かれ、その結果、複数の前記断熱板マット(20)が前記貯蔵雪の上に延び、複数の前記断熱板マット(20)の側縁部(22)が互いに当接または離間する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
断熱材(26、28、29)が、隣接する前記断熱板マット(20)の側縁部(22)間の領域に加えられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溝(27)が、隣接する前記断熱板マット(20)の側縁部(22)間の領域より下の雪の中に押圧され、貯蔵雪(30)の上に延在する密封布(26)が、隣接する前記断熱板マット(20)の接合領域に配置されて、前記貯蔵雪(30)の頂部から、前記側縁部(22)間を通り、前記断熱板マット(20)の下に侵入する水を排水する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2つ以上の連続した前記断熱板マット(20)が、前記貯蔵雪(30)上に引っ張られる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
雪貯蔵所(10)の屋根(11)に横たわる連続する前記断熱板マット(20)間の接合継ぎ目に、少なくともジオテキスタイル、タープ等の接合シールド(32)が設置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
断熱性を備えた雪貯蔵所(10)を供給する機器であって、少なくとも一部が断熱板(16)である断熱材(16、18、27、28、32)を備え、前記断熱材(16、18、27、28、32)は複数の断熱板マット(20)を備え、前記複数の断熱板マット(20)は複数の断熱板(16)、又は複数の断熱板のグループが並んで又は順に互いに合わされて作られ、前記複数の断熱板(16)又は複数の断熱板のグループは横方向端部エッジ(21)の上コーナー又は下コーナーで枢動可能に結び付けられており、連続する断熱板マット(20)は、複数の断熱板(16)が順にアコーディオン状の断熱板の束(20’)に折り畳まれ、連続する断熱板マット(20)に再び拡げることができる、機器。
【請求項9】
前記断熱板マット(20)の連続する断熱板(16)または断熱板の束は、布状材料(19)によって互いに合わされる、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記断熱板マット(20)の前記連続する断熱板(16)または断熱板の束は、防水布状材料(19)からなる袋内に挿入されるか、または、2つの対向端部で開口したスリーブ(19a)内に挿入され、複数の袋またはスリーブ(19a)が、その縁部で互いに接合され、該袋またはスリーブ(19a)内に挿入された前記断熱板(16)は、袋またはスリーブ(19a)間の接合によって、前記断熱板(16)の対向する端部エッジ(21)で、互いに枢動可能に接合される、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
2つ以上の断熱板(16)が単一の袋またはスリーブ(19a)に、次々に、及び /又は並んで挿入される、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
2つの隣接する断熱板マット(20)の側縁部(22)間の領域をシールするための少なくとも1つの密封布(26)、中間断熱部(28)及び/又は接合シールド(29)を備える、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の機器。
【請求項13】
前記機器は、前記雪貯蔵所の端壁(12、13)と側壁(14、15)との間のコーナー(17)を断熱するための三角形のコーナーインサート(18)を備える、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の機器。
【請求項14】
貯蔵雪(30)上に並んで設置された2つの断熱板マット(20)間の接合領域をシールする接合シールド(24)を備える請求項8乃至13のいずれか一項に記載の機器。
【請求項15】
断熱板の束(20’)を断熱板マット(20)に拡げるとともに、前記断熱板マット(20)を貯蔵雪(30)上に引っ張り、貯蔵雪(30)から外すための引張装置を備える、請求項8乃至14のいずれか一項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材を備えた雪貯蔵所を提供するための方法および機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スキースロープやクロスカントリートレール用に作られた雪を、様々な種類のスキーや冬季スポーツリゾートに貯蔵することがますます一般的になってきている。また、都市が作る最初の雪スキー用トラックとしても、例えば夏季に断熱雪貯蔵所に貯蔵することが多くなっている。夏に雪を保つためには、十分な量の適切な断熱材で雪を覆わなければならない。なぜなら、夏にはノルディック諸国でも外気温が+30℃まで上昇する可能性があるからである。また、雪貯蔵所の壁や屋根は夏場には直射日光が多く当たっており、雨天時には雨水で濡れる。
【0003】
雪貯蔵所の断熱は、所望の雪貯蔵所に堆積した貯蔵雪の上に断熱材を加えたものである。断熱材の材料のうち、次のものが最も一般的であり続けている:おがくず、異なる種類の布、ならびにポリスチレンおよび/またはポリウレタン断熱板。適用した方法は、他の面では良好に機能するが、雪貯蔵所を断熱・解体する段階では、多大な人手を要するとともに、様々な断熱材をその貯蔵場所から背面へ運搬するため、多大な労力と運搬費を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、雪貯蔵所を断熱する新規な方法を提供することにより、雪貯蔵所の断熱をより迅速かつ容易に施工・解除することができ、その結果、夏季の雪貯蔵に係る労力及び断熱材取扱費が低減されることを目的とする。特に、本発明は、雪貯蔵所の断熱材の設置・取り外し作業を簡素化する方法を提供することを目的とし、その結果、現在生じている多額の作業および経費を大幅に削減することを目的とする。さらに、本発明は、本発明による方法を実施するための機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る方法は、断熱性を必要とする貯蔵雪の被覆に用いられる断熱材の少なくとも一部を、アコーディオン状に接合された断熱板からなる断熱板マットで構成し、かつ、雪が断熱される場合は、断熱板マットが雪の頂部/側面に次々に引き寄せられて並び、貯蔵された雪を一旦取り出した後、断熱板マットをアコーディオン状に引き戻し、別の雪を覆う。貯蔵所に雪を貯めながら雪が使用されて(すなわちスキーシーズン)、次の季節の貯蔵雪供給を目的とする雪が同一敷地内に貯蔵される。より正確に説明するために、本発明に係る方法及び機器は、それぞれ独立請求項1及び独立請求項8に記載されているものを特徴とする。従属請求項2乃至7及び従属請求項9乃至15は、本発明による方法の好ましい実施例及び本発明による機器の好ましい実施例をそれぞれ開示している。
【0006】
本発明の方法及び機器の利点は、断熱性のある雪貯蔵所が作られるにつれて、個々の断熱板を雪塊の上面及び側面に設置するという、遅くて手間のかかる工程を省き、また、雪を使用するにつれて、個々の断熱板を収集する必要がなくなることである。また、本発明に係る方法で断熱材を保管する結果、断熱材は、保管庫に長距離輸送されて、その後、保管庫から、次の冬季のニーズを意図した新しい雪塊に再設置されるため近くまで戻される必要がなくなる。これらすべての方法は、雪貯蔵所を作り、使用する際の作業工程を削減・簡素化することにより、雪貯蔵所の設定・使用を容易にするものであり、これまで知られていた方法に比べて、夏季を通して貯蔵した雪の使用費用が大幅に削減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下では、添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する:
【
図1】本発明の方法で作成した雪貯蔵所の斜め上面図であって、雪は夏に貯蔵される。
【
図2】
図1の雪貯蔵所において、夏季に貯蔵されている雪塊から断熱材が取り除かれた状態を示す。
【
図3】
図1及び
図2の雪貯蔵所の屋根、端壁及び側壁の断熱材として使用される断熱板マットの長手方向に沿った断面図である。
【
図4】
図1及び
図2の雪貯蔵所の屋根、端壁及び側壁の断熱材として用いた断熱板マットをアコーディオン状に一束に折り畳んだ後の断面図である。
【
図5】
図1及び
図2の雪貯蔵所の断熱板マットの横方向両縁間の領域の断面図であり、
図1のA-A線に沿って切断されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す雪貯蔵所10において、本発明の方法で断熱した場合、屋根11、端壁12、13、ならびに長辺に平行な側壁14、15の断熱は、アコーディオン状に接合された断熱板16からなる断熱板マット20によって行われる。典型的には、断熱板マット20の断熱板16は、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン又は同様の断熱板である。あるいは、断熱板16、またはその一部は、発泡ゴムまたは気泡プラスチックボードのような他の断熱板であってもよい。断熱板マット20の断熱板16の外形寸法を事案ごとに選択することも、標準サイズの断熱板を使用することも可能である。断熱板16は、貯蔵雪30の場所に卓越する気候状態が十分に認識できるほどの厚さでなければならない。
【0009】
図1に示す雪貯蔵所10の側壁14及び15と端壁12及び13の間のコーナー17は、その間に嵌め込まれた三角形のコーナーインサート18によって断熱されている。ここで、コーナーインサート18は、弾性で曲げ可能な断熱材、例えば発泡ゴム又は気泡プラスチック板の一体片で作られている。また、コーナーインサート18の外形寸法及び厚さは、貯蔵雪の大きさ及び断熱要件に応じて変化させることができる。本発明による方法および機器の実施形態において、コーナー17、したがって、端壁12および13も、例えば雪および/または氷から作られた内壁、ならびにその上に蓄積されたおがくずおよび/またはパイクレート、すなわち凍結おがくずを使用して内壁に設けられた断熱層によって断熱することができる。
【0010】
屋根11、端壁12、13、及び側壁14、15の断熱材料は、個々の断熱板16、又はいくつかの接合された断熱板16から構成された断熱板のグループから構成された断熱板マット20を含む。個々の断熱板16または断熱板のグループは、その横方向端部エッジ21の上部コーナーおよび下部コーナーで交互に、互いに枢動可能に接合される。それによって形成され、幾つかの断熱板を備える連続断熱板マット20は、アコーディオンのような断熱板の束20’に折り畳み可能であり、連続断熱板マット20に再び開放可能である(
図3および
図4に示されているように)。枢動可能に接合された部分が、個々の断熱板16ではなく、複数の断熱板16からなる断熱板群である場合、断熱板群内で互いに接合された断熱板は、好ましくは、一体となって固定されるか、又は適当な布から作られた単一の袋又はスリーブ内に挿入されて、それらを互いに保持し、単一の連続したボード片として形成される。
【0011】
図1の雪貯蔵所において、連続する断熱板16は、
図3および
図4に示すように、防水布19(PVC布など)によって互いに枢動可能に接続され、アコーディオン状構造を形成する。この場合、枢動可能な接続は、連続した断熱板を布状材料で作られた袋に挿入することによって、又は、2つの両端部で開口したスリーブ19aに挿入することによって達成され、ここでは、適当なジョイント19bによって、その縁部で互いに接合された、いくつかの袋又はスリーブが次々に存在する。従って、袋又はスリーブ19aに挿入された断熱板16は、袋又はスリーブ19aの間の接合部によって、それらの対向する縁部で互いに枢動可能に接合される。雪貯蔵所10の類似の実施形態では、2つ以上の断熱ボードを、単一の袋またはスリーブ19aに、次々に、および/または並べて、挿入することによって、上述した方法で、断熱板のグループを互いに枢動可能に接続することができる。
【0012】
図1から明らかなように、貯蔵雪30の端部および中央部は、いくつかの隣接する断熱板マット20で覆われている。
図1の貯蔵雪に関しては、3つの連続した断熱板マット20が、貯蔵雪30の上に引っ張られている。そのうちの2つは側面(主に側壁14および15に位置する)に位置し、そのうちの1つは雪貯蔵所10の屋根11に位置し、貯蔵雪30の上部に位置する。別の同様の実施形態では、1つ、2つ又は3つ以上の連続した断熱板マット20も存在し得る。この場合、断熱板マット20の位置は、可能な限り貯蔵雪への雨水の流入を制限するために、場合によって選択されるのが一般的である。
図1及び
図2の貯蔵雪では、雨水の侵入も、貯蔵雪の頂部に設けられた接合シールド24によって制限されている。接合シールド24は、真ん中の断熱板マット20、ならびにそれと最初および最後の断熱板マット20との間の接合部分を覆う。したがって、雨水は、少なくとも非常に容易には、連続する断熱板マット20の間の接合部を通って、貯蔵雪30に入ることができない。
【0013】
図2は、
図1の雪貯蔵所10の図であり、図の方向から見て、前端12とコーナー17に配置された断熱板マット20とコーナーインサート18が、それぞれ除去され、この端面の第1中央断熱板マット20が除去されて、雪貯蔵所10が使用される状態である。
図2では、貯蔵雪の屋根に設けられた接合シールド24と、断熱板マット20間の接合シールド29とが同様に除去されている。
【0014】
本発明による貯蔵雪を断熱するための装置は、様々な断熱材料に加えて、断熱板の束20’を断熱板マット20に拡げ、それを貯蔵雪30上に引っ張るための引張装置を備えることができる。引張装置は、例えば、各断熱板の束20’を拡げて貯蔵雪30上に引っ張ることを可能にする、電気的又は燃焼エンジン駆動のウィンチ等であることができる。代替的に(特により小さな貯蔵雪の場合)、断熱板の束20’の一部または全部を手動引張によって拡げることができる。このような引張ロープ、ワイヤロープ、ストラップ等の適当な引張部材が、断熱板の束20’の端部に取り付けられ、貯蔵雪の上に引き渡されて、引張部材を手動で引っ張ることによって、断熱板の束20’を拡げて貯蔵雪30上に引っ張ることができるようにする。
【0015】
本発明に係る方法により貯蔵所でつくられた貯蔵雪30を断熱する場合、断熱板マット20とコーナーインサート18、ならびに断熱板マット20間の中間領域に設けられた他の異なる種類の断熱材を用いて断熱が行われる。積雪後、貯蔵雪30の隣に設けられ又は持込まれたアコーディオン状の断熱板の束20’は、断熱板マット20に拡げられ、貯蔵雪30上に引っ張られる。
図1及び
図2の雪貯蔵所10に関しては、アコーディオン状の断熱板の束20’が貯蔵雪30の全ての側面に設けられており、各側面用に意図された断熱板の束20’はこの側面の隣に位置している。雪貯蔵所10の屋根11のために意図された断熱板の束20’の位置は、可能な限り容易に貯蔵雪30上に引っ張ることができるように、事案毎に選択される。引き上げ操作を開始する前に、貯蔵雪30の隣に設けられた断熱板の束20’を貯蔵雪30の方に傾斜させて、最も頂部の断熱板で貯蔵雪30の方に引っ張ることによって、それらをより拡げやすくすることができる。断熱板の束20’を引き上げて貯蔵雪30の頂部および側部に横たわるようにする最も一般的な方法は、電気引張ウィンチのような電気引張装置を使用することである。引張ウィンチは、車両に設けられた引張ウィンチとすることができ、例えば、車両は引っ張り方向に対して適切な位置まで駆動可能である。また、断熱板の束20’は、手動で拡げて、貯蔵雪の反対側に貯蔵雪の上に延長された適切な手動引張手段(ロープまたはストラップなど)によって貯蔵雪30上に引っ張ることができる。これにより、貯蔵雪30の頂部および側部の異なる位置に設置されることを意図した断熱板の束20’を、引張手段で引っ張ることによって、これらの所望の位置に都合良く移動させることができる。しばしば、断熱板の束20’のより大きいもの及びより重いものを貯蔵雪30上に拡げて引っ張るために従動引張装置を使用し、それらの中の最も小さいものに手動の力のみを使用することも可能である。
【0016】
断熱板の束20’を貯蔵雪30の上に引っ張る前に、そしてそれらを貯蔵雪30から取り除いた後に、断熱板の束20’は貯蔵雪30の横に格納され、必要な距離にわたって(例えば、スキースロープのトレールから離れて)貯蔵雪30から横方向に移動される。断熱板の束20’が濡れて凍結するのを防止するために、それらは、雪貯蔵所の使用期間(すなわち、大部分がスキー場の全期間)に適した、好ましくは防水シート(プラスチックまたはPVC布のような)で覆われている。
【0017】
図1及び
図2の雪貯蔵所10に関しては、断熱板の束20’の全てが、断熱ステップの開始時に、貯蔵雪上に引っ張る前には貯蔵雪上のそれらの意図された位置を包含する貯蔵雪30の側面に配置される。そして、それらを貯蔵雪30から引き離した後、それらを断熱板の束20’に再度折りたたむ。いくつかの実施態様において、断熱板の束20’の一部を、断熱板の束20’の残りの部分が位置する貯蔵雪30の側とは反対側に格納することも可能である。これを行うために、これらの断熱板の束20’は、貯蔵雪30上に引っ張られるか、または貯蔵雪30から引っ張られるときに、該貯蔵雪30の反対側に格納された断熱板の束20’に対して反対方向に引っ張られる。
【0018】
断熱板マットは、貯蔵雪30の上部に並んで横たわるように引っ張られ、その結果、複数の断熱板マット20が貯蔵雪の上部にあり、断熱板マット20の側縁部22が互いに接する。一般に、隣接する断熱板マットの(長手方向の)側縁部22を互いに取り付ける必要はないが、通常、それらは、対向する側縁部22の間に過度に長い距離(通常0.5m未満)を残さずに、互いの近くに(ウインチまたは手で操作する引張装置によって適切に引っ張ることによって)配置される。隣接する断熱板マット20の間の空間には、断熱材26、28、29からなる適切な断熱構造25が充填されている。
図1の雪貯蔵所については、
図6に示すように、断熱板マット20を貯蔵雪30上に引っ張る前に、それらの側縁部間の領域に密封布26を設けることによって、充填が行われる。密封布26は、防水布又はプラスチック(例えば、約0.5~1mの厚さを有するPVC布片)の単一の細長い片であってもよく、貯蔵雪全体にわたって延びている。貯蔵雪30の表面のこの点に溝を(適当な道具を用いて)押し付けて形成することも可能であり、このようにして密封布26は、断熱板マット20の側縁部22の間の領域にシュートを形成し、貯蔵雪30から、断熱板マット20の間に入った雨水を排出する。その後、断熱板マット20が所定の位置に引っ張られ、次いで接合領域上に引っ張られ、必要に応じて、断熱板マット20の側縁部22の間に、例えばジオテキスタイルで作られた接合シールド29と共に中間断熱材28(発泡ゴムまたは気泡プラスチック断熱材など)が設けられる。一例として、接合シールド29は、断熱板マットの横方向領域に設置された結合部材31、例えば断熱板マット20に対して締め付けられたタイダウンストラップ(
図6に示すように)などによって、断熱板マット上に固定することができる。隣接する断熱板マット20の側縁部22の間のこの充填は、断熱を提供し、隣接する断熱板マット20の間の空間を通して、貯蔵雪30内への雨水の侵入を制限する。しかし、例えば、断熱板マット20を互いに取り付けることが望ましい場合には、接着テープ又はVelcro (登録商標)ファスナーテープ/ストリップなどを断熱板マットに取り外し可能に取り付けることができる。
【0019】
複数の連続した断熱板マット20が貯蔵雪30上に引っ張られると、2つ以上の断熱板マット20が次々と貯蔵雪上に引っ張られ、第1の断熱板マット20の第1の端部が第2の断熱板マット20の第2の端部に当接し、第3の断熱板マット20の後端部が第2の断熱板マット20の第1の端部に当接するように配置される。断熱板マット20を次々に取り付けることが望ましい場合には、それらの側縁部22において、すなわち断熱板マット20の横方向端部エッジ21の間に取り外し可能に設けられた適切な締結具を用いて、それらが並んで取り付けられる方法に類似した方法で行うことができる。雪貯蔵所10は通常非常に大きく、また、貯蔵雪30の一方の側から他方の側への全距離を覆うための単一の断熱板マット20の使用は、数十の断熱板16からなる断熱板マット20を必要とするため、2つ以上の連続した断熱板マット20を使用することが一般的である。これは、断熱板の束20’のサイズが、それらの重量及び寸法によって、貯蔵雪30上に引っ張り且つ貯蔵雪から外すこと、および必要とされる他の操作を実行することをむずかしくする。
【0020】
本発明による方法によって作成される雪貯蔵所10の完成した断熱材は、通常、他の断熱材を断熱板マット20の断熱板層に設ける必要はない。しかし、そうすることが望ましい場合には、断熱板マットの上に、例えばプラスチック又は防水布(例えば、PVC布)のようなジオテキスタイル及び/又は防湿シールドのような断熱布を敷くことができる。これにより、断熱板マット20の側縁部22の間の接合部における接合シールド29が不要となる。
【0021】
図3は、断熱板マットの縦断面図であり、構造オプションとして、防水布19で作られた袋又はスリーブ19a(即ち、横方向に開いた布スリーブ)に挿入された個々の断熱板の束20’を有する断熱板マット20を提示する。ここで、断熱板16を包む防水布19は、断熱板の側縁部に平行に接合部19bを有し、上にある防水布19と断熱板16の下にある防水布19とを互いに接合し、連続する断熱板16の側縁部(すなわち、断熱板マット20の長手方向に垂直な縁部)の間に溶接、接着、または縫い合わせを行う。接合部19bは、連続する接合部19bを断熱板20の下面と上面のレベルで交互にすることによって、織物層の間に配置される。したがって、断熱板20を横切る連結がその間に設けられ、
図4に示すように、断熱板マットをアコーディオン状の断熱板の束20’に折り畳むことができる。
【0022】
本発明による方法および装置の多くの態様は、上述した例示的実施形態から逸脱した方法で実施することができる。場合によっては、断熱板マットは、例えば、完全にセル状プラスチックで作られた単一の一体化された本体であってもよく、又は同様の高断熱軟質及び弾性断熱板材料であってもよい。この一体型断熱板・マットの構造は、他の領域よりも可撓性のある横方向のジョイント又はポイントを備えることができ、断熱板・マットをアコーディオン状に折り畳み、構造に損傷を生じさせることなく、断熱板・マットに再度拡げることができる。このタイプの断熱板マットは、空気で膨らませることも、空気よりも断熱性の良い他のガスで膨らませることもでき、また、収縮させることもできる。貯蔵雪上に引っ張り、拡げてふくらませた後、貯蔵雪から引張る前に収縮させ、アコーディオン状に折りたたむ。このソリューションは、断熱板マットが断熱板の束として折り畳まれた状態にある場合に、少なくとも、簡易で軽量であり、上述のソリューションと比較してより少ないスペースを必要とするという利点を有する。したがって、本発明による方法および機器は、上述の例示的実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲内で変化することができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材を有する雪貯蔵所(10)を備える方法は、雪貯蔵所において作られた貯蔵雪(30)を断熱材(16,18,20、27、28、29,32)で覆い、前記断熱材は断熱板を含み、
-前記貯蔵雪(30)の断熱は断熱板マット(20)により行われ、前記断熱板マット(20)は、複数の断熱板(16)、又は並んで又は順に合わされた複数の断熱板のグループを有し、前記複数の断熱板(16)又は前記複数の断熱板のグループは対向する横方向端部エッジ(21)の上コーナー又は下コーナーで枢動可能に互いに結び付けられており、連続する断熱板マット(20)は、複数の断熱板が順にアコーディオン状の断熱板の束(20’)に折り畳み可能であり、連続する断熱板マット(20)に再び拡げることが可能であり、
-前記貯蔵雪(30)が断熱される場合は、前記アコーディオン状の断熱板の束(20’)は拡げられて
引き上げられ、前記貯蔵雪(30)の上/側部に並んで及び/又は順に置かれ、拡げられて貯蔵雪(30)の上に引っ張られた前記断熱板マット(20)は、前記貯蔵雪の少なくとも一部を覆い
-前記断熱板マット(20)が、雪貯蔵所(10)から撤去される場合は、前記断熱板マット(20)が前記貯蔵雪(30)から引き外され、断熱板の束(20’)に折り畳まれて、アコーディション状の構成となる、方法。
【請求項2】
前記断熱板の束(20’)は、前記貯蔵雪(30)から撤去された後及び前記貯蔵雪(30)に引っ張られる前に、前記貯蔵雪(30)の隣に保管される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記断熱板マット(20)が、前記貯蔵雪(30)上に引っ張られて並んで置かれ、その結果、複数の前記断熱板マット(20)が前記貯蔵雪の上に延び、複数の前記断熱板マット(20)の側縁部(22)が互いに当接または離間する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
断熱材(26、28、29)が、隣接する前記断熱板マット(20)の側縁部(22)間の領域に加えられる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溝(27)が、隣接する前記断熱板マット(20)の側縁部(22)間の領域より下の雪の中に押圧され、貯蔵雪(30)の上に延在する密封布(26)が、隣接する前記断熱板マット(20)の接合領域に配置されて、前記貯蔵雪(30)の頂部から、前記側縁部(22)間を通り、前記断熱板マット(20)の下に侵入する水を排水する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2つ以上の連続した前記断熱板マット(20)が、前記貯蔵雪(30)上に引っ張られる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
雪貯蔵所(10)の屋根(11)に横たわる連続する前記断熱板マット(20)間の接合継ぎ目に、少なくともジオテキスタイル、タープ等の接合シールド(32)が設置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
断熱性を備えた雪貯蔵所(10)を供給する機器であって、少なくとも一部が断熱板(16)である断熱材(16、18、27、28、32)を備え、前記断熱材(16、18、27、28、32)は複数の断熱板マット(20)を備え、前記複数の断熱板マット(20)は複数の断熱板(16)、又は複数の断熱板のグループが並んで又は順に互いに合わされて作られ、前記複数の断熱板(16)又は複数の断熱板のグループは横方向端部エッジ(21)の上コーナー又は下コーナーで枢動可能に結び付けられており、連続する断熱板マット(20)は、複数の断熱板(16)が順にアコーディオン状の断熱板の束(20’)に折り畳まれ、連続する断熱板マット(20)に再び拡げることができる、機器
。
【請求項9】
前記断熱板マット(20)の連続する断熱板(16)または断熱板の束は、布状材料(19)によって互いに合わされる、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記断熱板マット(20)の前記連続する断熱板(16)または断熱板の束は、防水布状材料(19)からなる袋内に挿入されるか、または、2つの対向端部で開口したスリーブ(19a)内に挿入され、複数の袋またはスリーブ(19a)が、その縁部で互いに接合され、該袋またはスリーブ(19a)内に挿入された前記断熱板(16)は、袋またはスリーブ(19a)間の接合によって、前記断熱板(16)の対向する端部エッジ(21)で、互いに枢動可能に接合される、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
2つ以上の断熱板(16)が単一の袋またはスリーブ(19a)に、次々に、及び /又は並んで挿入される、請求項10に記載の機器。
【請求項12】
2つの隣接する断熱板マット(20)の側縁部(22)間の領域をシールするための少なくとも1つの密封布(26)、中間断熱部(28)及び/又は接合シールド(29)を備える、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の機器。
【請求項13】
前記機器は、前記雪貯蔵所の端壁(12、13)と側壁(14、15)との間のコーナー(17)を断熱するための三角形のコーナーインサート(18)を備える、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の機器。
【請求項14】
貯蔵雪(30)上に並んで設置された2つの断熱板マット(20)間の接合領域をシールする接合シールド(24)を備える請求項8乃至13のいずれか一項に記載の機器。
【請求項15】
断熱板の束(20’)を断熱板マット(20)に拡げるとともに、前記断熱板マット(20)を貯蔵雪(30)上に引っ張り、貯蔵雪(30)から外すための引張装置を備える、請求項8乃至14のいずれか一項に記載の機器。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
断熱板マットは、貯蔵雪30の上部に並んで横たわるように引っ張られ、その結果、複数の断熱板マット20が貯蔵雪の上部にあり、断熱板マット20の側縁部22が互いに接する。一般に、隣接する断熱板マットの(長手方向の)側縁部22を互いに取り付ける必要はないが、通常、それらは、対向する側縁部22の間に過度に長い距離(通常0.5m未満)を残さずに、互いの近くに(ウインチまたは手で操作する引張装置によって適切に引っ張ることによって)配置される。隣接する断熱板マット20の間の空間には、断熱材26、28、29からなる適切な断熱構造25が充填されている。
図1の雪貯蔵所については、
図5に示すように、断熱板マット20を貯蔵雪30上に引っ張る前に、それらの側縁部間の領域に密封布26を設けることによって、充填が行われる。密封布26は、防水布又はプラスチック(例えば、約0.5~1mの厚さを有するPVC布片)の単一の細長い片であってもよく、貯蔵雪全体にわたって延びている。貯蔵雪30の表面のこの点に溝を(適当な道具を用いて)押し付けて形成することも可能であり、このようにして密封布26は、断熱板マット20の側縁部22の間の領域にシュートを形成し、貯蔵雪30から、断熱板マット20の間に入った雨水を排出する。その後、断熱板マット20が所定の位置に引っ張られ、次いで接合領域上に引っ張られ、必要に応じて、断熱板マット20の側縁部22の間に、例えばジオテキスタイルで作られた接合シールド29と共に中間断熱材28(発泡ゴムまたは気泡プラスチック断熱材など)が設けられる。一例として、接合シールド29は、断熱板マットの横方向領域に設置された結合部材31、例えば断熱板マット20に対して締め付けられたタイダウンストラップ(
図5に示すように)などによって、断熱板マット上に固定することができる。隣接する断熱板マット20の側縁部22の間のこの充填は、断熱を提供し、隣接する断熱板マット20の間の空間を通して、貯蔵雪30内への雨水の侵入を制限する。しかし、例えば、断熱板マット20を互いに取り付けることが望ましい場合には、接着テープ又はVelcro (登録商標)ファスナーテープ/ストリップなどを断熱板マットに取り外し可能に取り付けることができる。
【国際調査報告】