(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】遺伝子治療のためのAAVカプシドバリアント
(51)【国際特許分類】
C07K 14/015 20060101AFI20221027BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221027BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221027BHJP
A61K 35/748 20150101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221027BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221027BHJP
C12N 15/34 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
C07K14/015
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
A61K35/748
A61P43/00 111
A61P37/02
A61P43/00 105
A61K48/00
C12N15/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022509101
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 US2020046543
(87)【国際公開番号】W WO2021030764
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501453307
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】スウィニー,ヒュー リー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB211
4C084ZC031
4C084ZC191
4C084ZC411
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB21
4C087ZC03
4C087ZC19
4C087ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
アデノ随伴ウイルス(AAV)粒子は、多様な臓器および組織への遺伝子送達のための有用なビヒクルとして登場している。本明細書において提供されるのは、バリアントAAVカプシドタンパク質およびバリアントカプシドタンパク質含有粒子である。これらのバリアントAAV粒子の組成物は、組織向性および形質導入効率を改変するために用いることができる。いくつかの態様において、本願において記載される組成物は、rAAV粒子を生成するために、および/または、1つ以上の目的の遺伝子を標的組織へ送達するために、有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の置換:
A24D、D41N、Q84K、R92K、T158A、K163S、R169K、L189I、A195G、V199L、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、E578Q、I581Q、T591A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733F
のうちのいずれか1つ以上を含む、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型8(AAV8)カプシドタンパク質。
【請求項2】
配列番号12において記載されるようなアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項3】
以下の置換:
K31Q、D41N、G42A、Q84K、R92K、Q105K、T158A、K163S、S180T、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、I581Q、Q588S、Q589A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733F
のうちのいずれか1つ以上を含む、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型8(AAV8)カプシドタンパク質。
【請求項4】
配列番号13において記載されるようなアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項5】
配列番号12、17、23および29のいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列を含む、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型8(AAV8)。
【請求項6】
配列番号13、19、25および31のいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列を含む、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型8(AAV8)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組み換えAAVカプシドタンパク質を含む、バリアント組み換えAAV8粒子。
【請求項8】
目的の遺伝子を含む核酸をさらに含む、請求項7に記載のバリアント組み換えAAV8粒子。
【請求項9】
核酸が、一本鎖である、請求項8に記載のバリアント組み換えAAV8粒子。
【請求項10】
核酸が、二本鎖である、請求項8に記載のバリアント組み換えAAV8粒子。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の複数のバリアント組み換えAAV8粒子を含む、組成物。
【請求項12】
薬学的に受入可能なキャリアをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
目的の遺伝子で細胞を形質導入する方法であって、細胞に、請求項11または12に記載の組成物を提供することを含み、ここで、組成物中のAAV8粒子が、目的の遺伝子を含む、前記方法。
【請求項14】
目的の遺伝子で細胞を形質導入する方法であって、細胞に、請求項1~6のいずれか一項に記載のバリアント組み換えAAV8カプシドタンパク質を含む、複数の組み換えAAV8粒子を含む組成物を提供することを含み、ここで、組成物中のAAV8粒子が、目的の遺伝子を含む、前記方法。
【請求項15】
対象が、哺乳動物である、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物が、ヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
目的の遺伝子が、治療用タンパク質をコードする、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
治療用タンパク質が、抗体または抗体フラグメント、ぺプチボディー、増殖因子、ホルモン、膜タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、細胞表面受容体またはイオンチャネルに対して作用する活性化性または阻害性のペプチド、細胞内プロセスを標的とする細胞浸透性ペプチド、酵素、ヌクレアーゼまたは遺伝子編集のために用いられる他のタンパク質である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか一項に記載の置換を含む血清型8以外の血清型のバリアントrAAVカプシドタンパク質であって、ここで、置換は、AAV8の可変領域に対して相同である血清型8以外の血清型のカプシドタンパク質の可変領域に位置する、前記バリアントrAAVカプシドタンパク質。
【請求項20】
以下の変更:N500I;N263S;S264A;T265S;S266T;G268の欠失;S269A;T270S;およびT274Hのうちのいずれか1つ以上をさらに含む、請求項1に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項21】
配列番号17、23および29のうちのいずれか1つにおいて記載されるようなアミノ酸配列を含む、請求項20に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項22】
以下の変更:N500I;N263S;S264A;T265S;S266T;G268の欠失;S269A;T270S;およびT274Hのうちのいずれか1つ以上をさらに含む、請求項3に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項23】
配列番号19、25および31のうちのいずれか1つにおいて記載されるようなアミノ酸配列を含む、請求項22に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項24】
図1または
図4において示されるような変更のうちのいずれか1つ以上を含む、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型8(AAV8)カプシドタンパク質。
【請求項25】
配列番号11において記載されるようなアミノ酸配列を含む、請求項3に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項26】
以下の変更:N500I;N263S;G264A;T265S;S266T;G268の欠失;T270S;およびT274Hのうちのいずれか1つ以上をさらに含む、請求項24または25に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項27】
配列番号15、21および27のうちのいずれか1つにおいて記載されるようなアミノ酸配列を含む、請求項25に記載のバリアント組み換えrAAV8カプシドタンパク質。
【請求項28】
配列番号11、15、21および27のうちのいずれか1つにおいて記載されるアミノ酸配列を含む、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型8(AAV8)。
【請求項29】
目的の遺伝子が、心保護的遺伝子である、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年8月14日に出願された米国仮出願シリアル番号62/886,915、表題「AAV CAPSID VARIANTS FOR GENE THERAPY」の出願日の、35U.S.C.§119(e)下における利益を主張し、当該仮出願は、本明細書において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、多数の異なる疾患のためにベクターを移送する遺伝子として、臨床に入ってきた。いくつかの場合においては、ベクターは、目的の組織中に直接送達されるが、送達が全身性である疾患が増えている。したがって、様々な組織向性ならびにより高い形質導入の効率を有する新たなAAVバリアントの開発が、高く望まれている。
【発明の概要】
【0003】
要旨
本明細書において開示されるのは、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質、かかるタンパク質をコードする核酸、かかるタンパク質を含む(例えば、目的の遺伝子をコードするrAAVゲノムにカプシド形成する)rAAV粒子である。いくつかの態様において、本願において記載される組成物は、rAAV粒子を生成するために、および/または1つ以上の目的の遺伝子を標的組織に(例えば、筋肉組織、例えば心筋または骨格筋に)送達するために有用である。
【0004】
筋肉疾患の処置のために用いられる場合、身体の骨格筋および/または心筋に形質導入するために、大量のウイルスが必要とされる。残念ながら、大量のウイルスは、患者にとって生命を脅かし得る多数の様々な型の望ましくない免疫応答を引き起こし得る。したがって、目的の組織についてのウイルスの向性を最適化しつつ、一方で、非標的組織におけるウイルスの取り込みを減少させる必要がある。
【0005】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるのは、組織向性(例えば、筋向性)を増強する1つ以上のアミノ酸置換を有する、バリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)血清型8(AAV8)カプシドタンパク質である。いくつかの態様において、rAAVカプシドタンパク質は、脳および/または肝臓への向性を低下させる、1つ以上のさらなるアミノ酸置換を含む。
【0006】
いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、
図1において示されるような変更のうちのいずれか1つ以上の1つ以上を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号11において記載されるようなアミノ酸配列を含む。
【0007】
いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、以下の変更:N500I;N263S;G264A;T265S;S266T;G268の欠失;T270S;およびT274Hのうちのいずれか1つ以上をさらに含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号15において記載されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号21において記載されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号27において記載されるようなアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、以下の置換:A24D、D41N、Q84K、R92K、T158A、K163S、R169K、L189I、A195G、V199L、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、E578Q、I581Q、T591A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733Fのうちの1つ以上を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号12において記載されるようなアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、以下の変更:N500I;N263S;S264A;T265S;S266T;G268の欠失;S269A;T270S;およびT274Hのうちのいずれか1つ以上をさらに含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号17において記載されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号23において記載されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号29において記載されるようなアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、以下の置換:K31Q、D41N、G42A、Q84K、R92K、Q105K、T158A、K163S、S180T、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、I581Q、Q588S、Q589A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733Fのうちの1つ以上を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号13において記載されるようなアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、以下の変更:N500I;N263S;S264A;T265S;S266T;G268の欠失;S269A;T270S;およびT274Hのうちのいずれか1つ以上をさらに含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号19において記載されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号25において記載されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、rAAV8カプシドタンパク質は、配列番号31において記載されるようなアミノ酸配列を含む。
【0012】
さらに開示されるのは、開示されるアミノ酸変更のうちのいずれか1つ以上を含む、血清型8以外の血清型(例えば、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAVanc80L65など)のバリアントrAAVカプシドタンパク質である。いくつかの態様において、アミノ酸置換は、血清型8以外の血清型のカプシドタンパク質における、AAV8中の置換の位置に対応する位置におけるものである。したがって、いくつかの態様において、
図1、
図4、および/または配列番号2、4、6、11~13、15、17、19、21、23、25、27、29、および/または31において示されるアミノ酸置換のうちょの1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多く)は、rAAV8ベースのカプシドタンパク質において含まれていても、または異なる血清型(例えば、配列番号7~10において記載されるカプシドタンパク質)のうちのいずれかに基づくrAAVカプシドタンパク質、および/または関連するrAAV粒子(例えば、目的の遺伝子をコードする核酸を含むもの)において、含まれていてもよい。いくつかの態様において、バリアントカプシドタンパク質は、バリアントVP1、VP2またはVP3のカプシドタンパク質であってよい。いくつかの態様において、バリアントカプシドタンパク質は、
図1および
図4において示されるアミノ酸置換のサブセット、例えば、
図1および
図4において示されるものよりも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10少ないアミノ酸置換を有するサブセットを含む。
【0013】
また開示されるのは、開示される組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質を含む、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)粒子である。いくつかの態様において、AAV(例えばrAAV8)粒子は、目的の遺伝子を含む核酸を含む。いくつかの態様において、核酸は、一本鎖である。いくつかの態様において、核酸は、二本鎖である。
【0014】
また開示されるのは、本明細書において開示される複数のバリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)粒子を含む、組成物である。これらの組成物は、薬学的に受入可能なキャリアを含んでもよい。
【0015】
また開示されるのは、目的の遺伝子で細胞を形質導入する方法であって、該方法は、細胞に、本明細書において開示される組成物を提供することを含み、ここで、組成物中のAAV(例えばrAAV8)粒子は、目的の遺伝子を含む。さらに提供されるのは、目的の遺伝子で細胞を形質導入する方法であって、該方法は、細胞に、本明細書において開示されるバリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質を含む複数の組み換えAAV(例えばrAAV8)粒子を含む組成物を提供することを含み、およびここで、組成物中のAAV(例えばrAAV8)粒子は、目的の遺伝子を含む。いくつかの態様において、目的の遺伝子は、治療用タンパク質をコードする。いくつかの態様において、治療用タンパク質は、抗体または抗体フラグメント、ぺプチボディー、増殖因子、ホルモン、膜タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、細胞表面受容体またはイオンチャネルに対して作用する活性化性または阻害性のペプチド、細胞内プロセスを標的とする細胞浸透性ペプチド、酵素、ヌクレアーゼまたは遺伝子編集のために用いられる他のタンパク質である。いくつかの態様において、対象は、哺乳動物である。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。
【0016】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある側面をさらに実証するために含められる。本開示のある側面は、本明細書において提示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせた、これらの図面のうちの1つ以上への参照により、より良好に理解され得る。図面において図示されるデータは、決して本開示の範囲を限定しないことが、理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1A~1Eは、AAVバリアントSL1.2、SL2およびSL3の、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。赤色は、比較された全てのカプシドにわたり同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較される配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較される配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較される配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図1B】
図1A~1Eは、AAVバリアントSL1.2、SL2およびSL3の、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。赤色は、比較された全てのカプシドにわたり同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較される配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較される配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較される配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図1C】
図1A~1Eは、AAVバリアントSL1.2、SL2およびSL3の、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。赤色は、比較された全てのカプシドにわたり同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較される配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較される配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較される配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図1D】
図1A~1Eは、AAVバリアントSL1.2、SL2およびSL3の、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。赤色は、比較された全てのカプシドにわたり同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較される配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較される配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較される配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図1E】
図1A~1Eは、AAVバリアントSL1.2、SL2およびSL3の、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。赤色は、比較された全てのカプシドにわたり同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較される配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較される配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較される配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【0018】
【
図2】
図2は、AAVバリアントSL1.2、SL2、SL3、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65の、それらのカプシドタンパク質の配列に基づいた「樹形図」を表す。
【
図3】
図3は、AAVバリアントSL1.2、SL2、SL3、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65の配列相同性/分岐(divergence)の%を示す。
【0019】
【
図4A】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4B】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4C】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4D】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4E】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4F】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4G】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4H】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4I】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【
図4J】
図4A~4Jは、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの、他の一般的に用いられるAAVベクターAAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65とのアラインメントを示す。「L」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティングをもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更を指す。「B」という接尾語は、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失を指す。「LB」という接尾語は、より効率の低い肝臓ターゲティング(L)をもたらすことが報告されている単一のアミノ酸変更と、血液脳関門の横断を障害することが報告されている8つのアミノ酸置換/欠失とを組み合わせたものを指す。赤色は、比較された全カプシドの間で同一のアミノ酸を示す;橙色は、比較された配列のうちの1つが異なるアミノ酸を置換することを示す;緑色は、比較された配列のうちの2つが異なるアミノ酸を置換することを示す;青色は、比較された配列のうちの3つ以上が異なるアミノ酸を置換することを示す。
【0020】
【
図5】
図5は、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3B、SL3LB、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65の、それらのカプシドタンパク質の配列に基づいた「樹形図」を表す。
【
図6】
図6は、AAVバリアントSL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3B、SL3LB、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh74およびAAVanc80L65の配列相同性/分岐の%を示す。
【0021】
【
図7】
図7は、
図8において示されるブロットのウェスタンブロット定量を示す。3つのバリアント(SL1.2、SL2およびSL3)の送達を、天然の血清型であるAAV9およびAAVrh10、ならびに操作されたバリアントであるAAVanc80L65の取り込みと比較する。実験は、6月齢のDBA/2Jオスマウスに尾静脈全身送達により投与された、既知の飽和未満の用量(1×10
13vg/kg)を用いて行った。緑色蛍光タンパク質(GFP)を、全組織における発現についてベータ-アクチンプロモーターの制御下においてレポータータンパク質として用いた。バリアントSL2は、対照血清型と比較して、改善された心臓組織における取り込みを有し、一方、SL3は、AAV9により類似した取り込みを有する。SL3は、試験されたAAV血清型のうちのいずれにおいても骨格筋および脳において最も高い取り込みを有する。
【0022】
【
図8】
図8は、
図7において示される定量に対応するウェスタンブロットデータを示す。
【
図9】
図9は、骨格筋および心筋の両方における取り込みにおけるSL3の優位性を示す。心臓および横隔膜のウェスタンブロットおよび定量を示す。データは、6月齢のDBA/2Jオスマウスへの尾静脈(全身送達)により、1×10
13vg/kgのAAV9、SL1.2、SL2またはSL3を注射することにより得た。緑色蛍光タンパク質(GFP)を、全組織における発現についてベータ-アクチンプロモーターの制御下においてレポータータンパク質として用いた。
【0023】
【
図10】
図10は、骨格筋および心筋の両方における取り込みにおけるSL3の優位性を示す。四頭筋のウェスタンブロットおよび定量を示す。データは、6月齢のDBA/2Jオスマウスへの尾静脈(全身送達)により、1×10
13vg/kgのAAV9、SL1.2、SL2またはSL3を注射することにより得た。緑色蛍光タンパク質(GFP)を、全組織における発現についてベータ-アクチンプロモーターの制御下においてレポータータンパク質として用いた。
【0024】
【
図11】
図11は、AAV9、SL1.2、SL2またはSL3の5×10
13vg/kgまたは1×10
14vg/kgでの全身注射後の、骨格筋および心臓内の緑色蛍光タンパク質(GFP;輝度)の分布を示す。発現のパターンは、ウェスタンブロットデータの結論を支持し、SL3が、心臓および骨格筋の形質導入のための優れたベクターであることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
AAV由来のベクターは、他のベクターと比較して低い病原性、エピソームの局在、および安定な導入遺伝子発現に起因して、ヒト遺伝子治療の適用のための有望なツールである。AAV粒子は、治療用遺伝子の送達のための巨大な将来性を示す。AAV粒子の臓器または組織向性は、完全にではないとしても、粒子表面またはカプシドの構造に高度に依存する。本明細書において開示されるのは、AAV形質導入の向性および/または効率をAAV8と比較して改変する、AAVバリアントである。これらのベクターは、獣医学またはヒトのいずれかの使用のために臨床において用いることができる。組織向性は、哺乳動物種に依存して異なり得る。組織向性および効率の差異の基盤は、主に表面ループの配列のバリエーションに依存する。
【0026】
AAV血清型8(AAV8)は、骨格筋、網膜色素上皮、視細胞、心臓組織、および肝細胞に対して向性を有し、これらに遺伝子を送達するために用いることができる。AAVについての典型であるが、AAV8カプシドは、単一のAAVのcap遺伝子の3つの異なるがオーバーラップするトランスクリプトの生成物である3つのタンパク質、VP1、VP2およびVP3から構成される。本明細書において提供されるのは、AAV形質導入の向性および/または効率をAAV8と比較して改変する、バリアント組み換えAAV8様カプシドタンパク質および粒子のための組成物および方法である。本開示は、少なくとも部分的に、野生型rAAV(例えばrAAV8)タンパク質および粒子と比較して、組織向性を改変し、形質導入効率を改変する、組み換えAAV(例えばrAAV8)バリアントタンパク質および粒子の同定に基づく。
【0027】
本明細書において用いられる場合、用語「バリアント」とは、天然に存在するものから逸脱する特徴を有する核酸またはタンパク質を指し、例えば、「バリアント」は、野生型の核酸またはタンパク質に対して、少なくとも約70%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一、少なくとも約96%同一、少なくとも約97%同一、少なくとも約98%同一、少なくとも約99%同一、少なくとも約99.5%同一、または少なくとも約99.9%同一である。例えば、導入遺伝子バリアントは、導入遺伝子のヌクレオチドにおいて、その野生型配列と比較して、1つ以上の置換を含む核酸である。これらの置換は、サイレント、すなわち、それらは任意のコードされるタンパク質のアミノ酸配列を修飾しない(または別段にバリアントアミノ酸配列をもたらさない)ものであってもよい。あるいは、これらの置換は、コードされるタンパク質のアミノ酸配列の修飾をもたらし得、これは、野生型タンパク質配列と比較して、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~15、または15~20アミノ酸の置換を有する)を有する、コードされたタンパク質をもたらす。これらの置換は、化学修飾ならびにトランケーションを含む。この用語は、さらに、野生型の核酸またはアミノ酸の配列の機能的フラグメントを包含する。参照配列のこれらの修飾は、参照配列の5’または3’末端において、またはそれらの位置の間のどこか別の箇所において、参照配列中のヌクレオチドまたはペプチドの間で個々に、または参照配列中の1つ以上の近接した群において、散らばって起こり得る。
【0028】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるバリアント組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)カプシドタンパク質は、血清型8(AAV8)VP1またはVP2またはVP3を含むバックグラウンドにおいて作製された、位置447におけるYからFへの置換および位置494におけるTからVへの置換句を有する。いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、配列番号11において記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、
図1A~1EにおいてSL1.2カプシドタンパク質として同定されるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、以下の置換:K163S、R169K、S180T、L189I、T417Q、Y447F、T462Q、G464L、T494V、D559K、T591AおよびY733Fのうちの1つ以上を含む。一態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、置換K163S、R169K、S180T、L189I、T417Q、Y447F、T462Q、G464L、T494V、D559K、T591AおよびY733Fを含む。
【0029】
いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、以下の置換:A24D、D41N、Q84K、R92K、T158A、K163S、R169K、L189I、A195G、V199L、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、E578Q、I581Q、T591A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733Fのうちの1つ以上を含む。一態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、置換A24D、D41N、Q84K、R92K、T158A、K163S、R169K、L189I、A195G、V199L、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、E578Q、I581Q、T591A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733Fを含む。いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)は、配列番号12において記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、
図1A~1EにおいてSL2カプシドタンパク質として同定されるアミノ酸配列を有する。
【0030】
いくつかの態様において、バリアントrAAVカプシドタンパク質は、血清型8(AAV8)VP1、VP2またはVP3を含むバックグラウンドにおいて作製された、位置447におけるYからFへの置換、および位置494におけるTからVへの置換を有し、以下の置換のうちのいずれか1つ以上を含む:K31Q、D41N、G42A、Q84K、R92K、Q105K、T158A、K163S、S180T、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、I581Q、Q588S、Q589A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733F。一態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、置換K31Q、D41N、G42A、Q84K、R92K、Q105K、T158A、K163S、S180T、P201S、S225A、G264S、A269S、R313K、S315N、E350D、Q362E、Q413E、T415S、T417Q、Y447F、T453S、N459G、T462Q、G464L、N471S、T472N、A474S、N475A、T494V、A507G、G508A、N517D、A520V、T528S、D531E、D532G、N540S、N549G、A551G、A555V、D559K、I581Q、Q588S、Q589A、Q594I、I595V、N665S、S667A、N670A、S712N、V722TおよびY733を含む。いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)は、配列番号13において記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質は、
図1A~1EにおいてSL3カプシドタンパク質として同定されるアミノ酸配列を有する。
【0031】
AAV8の構造およびカプシドタンパク質
野生型AAVゲノムは、ポジティブまたはネガティブセンスのいずれかである一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)から構成される。DNA鎖の各々の末端には、逆位末端反復配列(ITR)がある。ITRの間には、2つのオープンリーディングフレーム(ORF):repおよびcapが存在する。rep ORFは、AAVの生活環のために必要とされるRepタンパク質をコードする4つのオーバライドする遺伝子を含んでなる。cap ORFは、一緒に相互作用して正二十面体対称のカプシドを形成するカプシドタンパク質であるVP1、VP2およびVP3のオーバーラップするヌクレオチド配列を含む。
【0032】
野生型AAV8アミノ酸配列:
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWALKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLQAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEPSPQRSPDSSTGIGKKGQQPARKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPSGVGPNTMAAGGGAPMADNNEGADGVGSSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGATNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLSFKLFNIQVKEVTQNEGTKTIANNLTSTIQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFTYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTQTTGGTANTQTLGFSQGGPNTMANQAKNWLPGPCYRQQRVSTTTGQNNNSNFAWTAGTKYHLNGRNSLANPGIAMATHKDDEERFFPSNGILIFGKQNAARDNADYSDVMLTSEEEIKTTNPVATEEYGIVADNLQQQNTAPQIGTVNSQGALPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPTTFNQSKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTSVDFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号7)
【0033】
野生型AAV9アミノ酸配列:
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWALKPGAPQPKANQQHQDNARGLVLPGYKYLGPGNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLKYNHADAEFQERLKEDTSFGGNLGRAVFQAKKRLLEPLGLVEEAAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSAGIGKSGAQPAKKRLNFGQTGDTESVPDPQPIGEPPAAPSGVGSLTMASGGGAPVADNNEGADGVGSSSGNWHCDSQWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNSTSGGSSNDNAYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTDNNGVKTIANNLTSTVQVFTDSDYQLPYVLGSAHEGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNDGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYEFENVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSKTINGSGQNQQTLKFSVAGPSNMAVQGRNYIPGPSYRQQRVSTTVTQNNNSEFAWPGASSWALNGRNSLMNPGPAMASHKEGEDRFFPLSGSLIFGKQGTGRDNVDADKVMITNEEEIKTTNPVATESYGQVATNHQSAQAQAQTGWVQNQGILPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGMKHPPPQILIKNTPVPADPPTAFNKDKLNSFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSNNVEFAVNTEGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号8)
【0034】
AAVrh10アミノ酸配列:
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEPSPQRSPDSSTGIGKKGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPIGEPPAGPSGLGSGTMAAGGGAPMADNNEGADGVGSSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNEGTKTIANNLTSTIQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFEFSYQFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTQSTGGTAGTQQLLFSQAGPNNMSAQAKNWLPGPCYRQQRVSTTLSQNNNSNFAWTGATKYHLNGRDSLVNPGVAMATHKDDEERFFPSSGVLMFGKQGAGKDNVDYSSVMLTSEEEIKTTNPVATEQYGVVADNLQQQNAAPIVGAVNSQGALPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPTTFSQAKLASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTNVDFAVNTDGTYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号9)
【0035】
AAVrh74アミノ酸配列:
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDNGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLQAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVESPVKTAPGKKRPVEPSPQRSPDSSTGIGKKGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPIGEPPAGPSGLGSGTMAAGGGAPMADNNEGADGVGSSSGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISNGTSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTQNEGTKTIANNLTSTIQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFEFSYNFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTQSTGGTAGTQQLLFSQAGPNNMSAQAKNWLPGPCYRQQRVSTTLSQNNNSNFAWTGATKYHLNGRDSLVNPGVAMATHKDDEERFFPSSGVLMFGKQGAGKDNVDYSSVMLTSEEEIKTTNPVATEQYGVVADNLQQQNAAPIVGAVNSQGALPGMVWQNRDVYLQGPIWAKIPHTDGNFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPADPPTTFTKAKLASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYYKSTNVDFAVNTEGTYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号10)
【0036】
AAVanc80L65アミノ酸配列:
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKKGQQPARKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPAAPSGVGSNTMAAGGGAPMADNNEGADGVGNASGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSQSGGSTNDNTYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKKLNFKLFNIQVKEVTTNDGTTTIANNLTSTVQVFTDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFQFSYTFEDVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLSRTQTTSGTAGNRTLQFSQAGPSSMANQAKNWLPGPCYRQQRVSKTTNQNNNSNFAWTGATKYHLNGRDSLVNPGPAMATHKDDEDKFFPMSGVLIFGKQGAGNSNVDLDNVMITNEEEIKTTNPVATEEYGTVATNLQSANTAPATGTVNSQGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKHPPPQILIKNTPVPANPPTTFSPAKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEIQYTSNYNKSTNVDFAVDTNGVYSEPRPIGTRYLTRNL(配列番号32)
【0037】
バリアント組み換えAAV8カプシドタンパク質
本明細書において提供されるのは、本明細書において開示されるバリアントrAAVカプシドタンパク質のうちのいずれか1つをコードする核酸である。いくつかの態様において、プラスミドは、バリアントrAAVカプシドタンパク質をコードする核酸を含む。
【0038】
バリアントAAVカプシドタンパク質をコードする核酸のいくつかの非限定的な例を、表1において提供する。これらのバリアントは、SL1.2(配列番号1によりコードされる)、SL1.2L(配列番号14によりコードされる)、SL1.2B(配列番号20によりコードされる)、SL1.2LB(配列番号26によりコードされる)、SL2(配列番号3によりコードされる)、SL2L(配列番号16によりコードされる)、SL2B(配列番号22によりコードされる)、SL2LB(配列番号28によりコードされる)、SL3(配列番号5によりコードされる)、SL3L(配列番号18によりコードされる)、SL3B(配列番号24によりコードされる)およびSL2LB(配列番号28によりコードされる)として言及される。
【0039】
AAV粒子の組織向性および形質導入効率は、カプシドの表面において暴露されるアミノ酸残基の性質により決定される(Wu et al., J Virol. 2006、80(22):11393-7)。したがって、カプシドタンパク質のアミノ酸を操作することにより、粒子の組織向性を微調整して、また形質導入効率を改善する機会が提供される。しかし、カプシドタンパク質の特定の操作、例えばアミノ酸の置換は、それがカプシドをミスフォールディングするかまたはカプシドを全く形成しないことを引き起こし得る。
【0040】
本明細書において開示されるのは、野生型AAVと比較して、形質導入効率が増大したrAAVバリアントである。いくつかの態様において、形質導入効率は、AAV8の効率を低下させるリン酸化部位を取り除くことにより増大する。本明細書において開示されるSL1.2は、リン酸化を妨害する配列修飾を有するrAAV8バリアントである。また本明細書において開示されるのは、野生型AAVと比較して組織向性を改変する、rAAVバリアントである。
【0041】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるrAAVバリアントは、野生型AAVと比較して増大した、骨格筋における形質導入効率および/またはこれに対する向性を有する。いくつかの態様において、本明細書において開示されるrAAVバリアントは、野生型AAVと比較して増大した、心臓組織における形質導入効率および/またはこれに対する向性を有する。いくつかの態様において、本明細書において開示されるrAAVバリアントは、野生型AAVと比較して増大した、中枢神経系における形質導入効率および/またはこれに対する向性を有する。いくつかの態様において、本明細書において開示されるrAAVバリアントは、心臓組織における形質導入効率および/またはそれに対する向性は増大しているが、CNS組織における形質導入またはこれに対する向性は増強されていない。いくつかの態様において、本明細書において開示されるrAAVバリアントは、CNS組織における形質導入効率および/またはそれに対する向性は増大しているが、心臓組織における形質導入またはこれに対する向性は増強されていない。
【0042】
したがって、例えばその組織疾患または状態を有する人物を処置するために、CNS、心筋および/または骨格筋組織に遺伝子を送達するために、本明細書において開示されるrAAVバリアントを使用することは有用である。
【0043】
したがって、本明細書において提供されるのは、野生型AAV8配列(例えば、配列番号7において記載されるような)と比較して、変更(例えば置換)を含む、rAAVカプシドタンパク質である。いくつかの態様において、本明細書において開示されるバリアントAAVカプシドタンパク質のうちのいずれか1つにおけるアミノ酸置換は、可変領域に位置する。いくつかの態様において、1つ以上のアミノ酸置換は、AAVカプシド配列中の認識された可変領域または暴露されたループに属する。いくつかの態様において、全てのアミノ酸置換は、AAVカプシド配列中の認識された可変領域または暴露されたループに属する。本明細書において記載されるようなアミノ酸の任意の位置決めは、配列番号7において記載されるような野生型AAV8配列の配列に関するものであることが、理解されるべきである。
【0044】
バリアントAAVカプシドタンパク質のいくつかの非限定的な例を、表1において提供する。これらのバリアントは、SL1.2(配列番号11)、SL1.2L(配列番号15)、SL1.2B(配列番号21)、SL1.2LB(配列番号26)、SL2(配列番号12)、SL2L(配列番号17)、SL2B(配列番号23)、SL2LB(配列番号28)、SL3(配列番号13)、SL3L(配列番号19)、SL3B(配列番号25)およびSL2LB(配列番号31)として言及される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【0045】
本明細書において開示されるバリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)カプシドタンパク質のいずれか1つは、本明細書において記載される任意の単一のアミノ酸置換、または本明細書において記載されるアミノ酸置換の任意の組み合わせを含んでもよいことが、理解されるべきである。
【0046】
例えば、いくつかの態様において、SL1.2、SL2およびSL3を、さらに変異させる。いくつかの態様において、特定の組織(例えば、心臓、神経または他の筋肉組織)に対するバリアントの向性を改変するために、SL1.2、SL2およびSL3を、さらに変異させる。いくつかの態様において、SL1.2、SL2およびSL3のさらなる変異は、目的の組織(例えば、心臓、神経または他の筋肉組織)におけるSL1.2、SL2、および/またはSL3の取り込みを改善する。いくつかの態様において、SL1.2、SL2およびSL3のさらなる変異は、目的のものでない組織(例えば、神経または肝臓組織)におけるSL1.2、SL2、および/またはSL3の取り込みを低下させる。
【0047】
いくつかの態様において、アミノ酸Glu578からGly596に広がるカプシド領域を、SL1.2、SL2、および/またはSL3においてさらに変異させる。いくつかの態様において、1つのアミノ酸を、SL1.2、SL2、および/またはSL3において、アスパラギン500からイソロイシンへさらに変異させる。いくつかの態様において、SL1.2、SL2およびSL3のうちのいずれかに導入されたさらなる変異は、Pulicherla, et al., Mol. Ther. 19:6, 1070-78 (2011)において記載されるものを援用する。いくつかの態様において、L1.2、SL2、および/またはSL3におけるアスパラギン500のイソロイシンへの変異は、肝臓組織向性の低下をもたらす。
【0048】
いくつかの態様において、SL1.2におけるアスパラギン500のイソロイシンへの変異は、配列番号15のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL1.2L」)。いくつかの態様において、SL1.2におけるアスパラギン500のイソロイシンへの変異は、配列番号14の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。いくつかの態様において、SL2におけるアスパラギン500のイソロイシンへの変異は、配列番号17のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL2L」)。いくつかの態様において、SL2におけるアスパラギン500のイソロイシンへの変異は、配列番号16の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。いくつかの態様において、SL3におけるアスパラギン500のイソロイシンへの変異は、配列番号19のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL3L」)。いくつかの態様において、SL3におけるアスパラギン500のイソロイシンへの変異は、配列番号18の配列を有する核酸によりコードされる配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。
【0049】
いくつかの態様において、7つのアミノ酸を、SL1.2においてさらに変異させる:アスパラギン263からセリンへ;グリシン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ(「SL1.2における7つのアミノ酸変異」)。いくつかの態様において、8つのアミノ酸を、SL2においてさらに変異させる:アスパラギン263からセリンへ;セリン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;セリン269からアラニンへ;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ(「SL2における8つのアミノ酸変異」)。いくつかの態様において、8つのアミノ酸を、SL3においてさらに変異させる:アスパラギン263からセリンへ;セリン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;セリン269からアラニンへ;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ(「SL3における8つのアミノ酸変異」)。いくつかの態様において、SL1.2、SL2およびSL3のいずれかに導入されたさらなる変異は、Albright, et al., Mol. Ther. 26:2, 510-23 (2018)において記載されるものを援用する。いくつかの態様において、SL1.2における7つのアミノ酸変異、またはSL2および/もしくはSL3における8つのアミノ酸変異は、脳組織向性の低下をもたらす。
【0050】
いくつかの態様において、SL1.2における7つのアミノ酸変異は、配列番号21のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL1.2B」)。いくつかの態様において、SL1.2における7つのアミノ酸変異は、配列番号20の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。いくつかの態様において、SL2における8つのアミノ酸変異は、配列番号23のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL2B」)。いくつかの態様において、SL2における8つのアミノ酸変異は、配列番号22の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。いくつかの態様において、SL3における8つのアミノ酸変異は、配列番号25のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL3B」)。いくつかの態様において、SL3における8つのアミノ酸変異は、配列番号24の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。
【0051】
いくつかの態様において、8つのアミノ酸を、SL1.2においてさらに変異させる:アスパラギン500からイソロイシンへ;アスパラギン263からセリンへ;グリシン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ(「SL1.2における7つのアミノ酸変異」)。いくつかの態様において、SL1.2における8つのアミノ酸変異は、肝臓および脳組織への向性の低下をもたらす。いくつかの態様において、SL1.2における8つのアミノ酸変異は、配列番号27のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL1.2LB」)。いくつかの態様において、SL1.2における8つのアミノ酸変異は、配列番号26の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。
【0052】
いくつかの態様において、9つのアミノ酸を、SL2においてさらに変異させる:アスパラギン500からイソロイシンへ;アスパラギン263からセリンへ;セリン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;セリン269からアラニンへ;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ(「SL2における9つのアミノ酸変異」)。いくつかの態様において、SL2における9つのアミノ酸変異は、肝臓および脳組織への向性の低下をもたらす。いくつかの態様において、SL2における9つのアミノ酸変異は、配列番号29のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL2LB」)。いくつかの態様において、SL2における9つのアミノ酸変異は、配列番号28の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。
【0053】
いくつかの態様において、9つのアミノ酸を、SL3においてさらに変異させる:アスパラギン500からイソロイシンへ;アスパラギン263からセリンへ;セリン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;セリン269からアラニンへ;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ(「SL3における9つのアミノ酸変異」)。いくつかの態様において、SL3における9つのアミノ酸変異は、肝臓および脳組織への向性の低下をもたらす。いくつかの態様において、SL3における9つのアミノ酸変異は、配列番号31のアミノ酸配列を有するAAVバリアントタンパク質をもたらす(「SL3LB」)。いくつかの態様において、SL3における9つのアミノ酸変異は、配列番号30の配列を有する核酸によりコードされるAAVバリアントタンパク質をもたらす。
【0054】
本明細書において企図されるのはまた、血清型8以外の血清型のバリアントrAAVカプシドタンパク質である。いくつかの態様において、本明細書において記載されるアミノ酸変更のいずれか1つは、血清型8以外の血清型のカプシドタンパク質の可変領域であって、AAV8の可変領域(例えば、1、2、3、3B、4、5、6、7、9、10、11、12または13)に対して相同なものにおけるものである。いくつかの態様において、バリアントrAAVカプシドは、1つの血清型のcap遺伝子が、異なる血清型のrep遺伝子と共に送達されるという背景において作製してもよい。
【0055】
組み換えAAVベクター
本明細書において用いられる場合、用語「ベクター」とは、核酸ベクター(例えば、プラスミドまたは組み換えウイルスゲノム)、野生型AAVゲノム、またはウイルスゲノムを含むウイルスを指し得る。いくつかの態様において、用語「ベクター」とは、AAVウイルス粒子などのウイルス粒子を指し得る。
【0056】
野生型AAVゲノムは、ポジティブまたはネガティブセンスのいずれかである一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)である。ゲノムは、2つの逆位末端反復配列(ITR)をDNA鎖の各々の末端において1つずつ、ならびに2つのオープンリーディングフレーム(ORF):repおよびcapをITRの間に含む。rep ORFは、AAVの生活環にとって必要とされるRepタンパク質をコードする4つのオーバーラップする遺伝子を含む。cap ORFは、カプシドタンパク質:VP1、VP2およびVP3をコードするオーバーラップする遺伝子を含み、これらは、一緒に相互作用してウイルスのカプシドを形成する。VP1、VP2およびVP3は、2つの異なる様式においてスプライシングされ得る1つのmRNAトランスクリプトから翻訳される。より長いまたはより短いイントロンが切り取られて、2つのmRNAのアイソフォーム:約2.3kb長および約2.6kb長のmRNAアイソフォームの形成をもたらす。カプシドは、約60の個々のカプシドタンパク質サブユニットの超分子アセンブリーを、AAVゲノムを保護することができる無エンベロープのT-1正二十面体格子へと形成させる。成熟AAVカプシドは、VP1、VP2およびVP3(それぞれ約87、73および62kDaの分子質量)を、約1:1:10の比で含んでなる。
【0057】
組み換えAAV(rAAV)粒子は、組み換え核酸ベクター(本明細書において以後、「rAAVベクター」として言及される)を含んでもよく、これは、最小限、以下を含んでもよい:(a)導入遺伝子をコードする配列を含む、1つ以上の異種核酸領域;および(b)対象のゲノム中への異種核酸領域の組み込み(任意に、発現を促進する配列を含む1つ以上の核酸領域と共に)を促進する配列を含む、1つ以上の領域。いくつかの態様において、対象のゲノム中への異種核酸領域の組み込み(任意に、発現を促進する配列を含む1つ以上の核酸領域と共に)を促進する配列は、1つ以上の核酸領域(例えば、異種核酸領域)に隣接する逆位末端反復(ITR)配列(例えば、野生型ITR配列または操作されたITR配列)である。
【0058】
いくつかの態様において、rAAV核酸ベクターは、プロモーターに作動的に連結された、目的のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列を含む1つ以上の導入遺伝子を含み、ここで、1つ以上の導入遺伝子は、各々の側において、ITR配列に隣接する。いくつかの態様において、核酸ベクターは、プロモーターに作動的に連結された、本明細書において記載されるようなRepタンパク質をコードする領域をさらに含む(これは、ITRに隣接する領域中に、または当該領域または核酸の外側のいずれかに含まれる)。ITR配列は、任意のAAV血清型(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)に由来するものであっても、または1つより多くの血清型に由来するものであってもよい。いくつかの態様において、ITR配列は、AAV2またはAAV6血清型に由来する。いくつかの態様において、本明細書において提供される第1の血清型は、AAV2またはAAV8血清型ではない。いくつかの態様において、第1の血清型のITR配列は、AAV3、AAV5またはAAV6に由来する。いくつかの態様において、ITR配列は、AAV2、AAV3、AAV5またはAAV6に由来する。いくつかの態様において、ITR配列は、カプシドと同じ血清型である(例えば、AAV6のITR配列およびAAV6カプシドなど)。いくつかの態様において、ITR配列は、AAVrh.10血清型に由来する。
【0059】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるバリアントrAAVカプシドタンパク質のうちのいずれか1つを含有する組み換えAAV(例えばrAAV8)粒子は、血清型8のITRおよび/またはrep ORFを含む。いくつかの態様において、rAAV粒子は、シュードタイピングされたrAAV粒子であって、これは、(a)血清型8の背景において作製された本明細書において記載される修飾を含有するカプシドタンパク質を含んでなるカプシド、および(b)別の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9またはAAV10)からのITRを含む核酸ベクターを含む。
【0060】
本明細書において開示されるrAAV粒子またはrAAV調製物中の粒子は、任意の誘導体またはシュードタイプ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、2/1、2/5、2/8、2/9、3/1、3/5、3/8または3/9)を含む任意のAAV血清型のものであってよい。本明細書において用いられる場合、rAAV rAAV粒子の血清型は、組み換えウイルスのカプシドタンパク質の血清型を指す。いくつかの態様において、rAAV粒子は、rAAV6またはrAAV9である。誘導体またはシュードタイプの非限定的な例として、AAVrh.10、AAVrh.74、AAV2/1、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/8、AAV2/9、AAV2-AAV3ハイブリッド、AAVhu.14、AAV3a/3b、AAVrh32.33、AAV-HSC15、AAV-HSC17、AAVhu.37、AAVrh.8、CHt-P6、AAV2.5、AAV6.2、AAV2i8、AAV-HSC15/17、AAVM41、AAV9.45、AAV6(Y445F/Y731F)、AAV2.5T、AAV-HAE1/2、AAVクローン32/83、AAVShH10、AAV2(Y->F)、AAV8(Y733F)、AAV2.15、AAV2.4、AAVM41およびAAVr3.45が挙げられる。かかるAAV血清型および誘導体/シュードタイプ、ならびにかかる誘導体/シュードタイプを製造する方法は、当該分野において公知である(例えば、Mol Ther. 2012 Apr;20(4):699-708. doi: 10.1038/mt.2011.287. Epub 2012 Jan 24. The AAV vector toolkit: poised at the clinical crossroads. Asokan A1, Schaffer DV, Samulski RJ.を参照)。特定の態様において、本明細書において開示されるrAAV粒子のうちのいずれかのカプシドは、AAVrh.10血清型のものである。いくつかの態様において、カプシドは、AAV2/6血清型のものである。いくつかの態様において、rAAV粒子は、シュードタイピングされたrAAV粒子であり、これは、(a)1つの血清型(例えば、AAV2、AAV3)からのITRを含むrAAVベクター、および(b)別の血清型(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはAAV10)に由来するカプシドタンパク質を含んでなるカプシドを含む。シュードタイピングされたrAAVベクターを生成してこれを用いるための方法は、当該分野において公知である(例えば、Duan et al., J. Virol.、75:7662-7671、2001;Halbert et al., J. Virol.、74:1524-1532、2000;Zolotukhin et al., Methods、28:158-167、2002;およびAuricchio et al., Hum. Molec. Genet.、10:3075-3081、2001を参照)。
【0061】
ITR配列およびITR配列を含むプラスミドは、当該分野において公知であり、市販されている(例えば、Vector Biolabs, Philadelphia, PA; Cellbiolabs, San Diego, CA;Agilent Technologies, Santa Clara, Ca;およびAddgene, Cambridge, MAから入手可能な製品およびサービス;ならびにGene delivery to skeletal muscle results in sustained expression and systemic delivery of a therapeutic protein. Kessler PD, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Nov 26;93(24):14082-7;およびCurtis A. Machida. Methods in Molecular Medicine(商標). Viral Vectors for Gene Therapy Methods and Protocols. 10.1385/1-59259-304-6:201(著作権)Humana Press Inc. 2003. Chapter 10. Targeted Integration by Adeno-Associated Virus. Matthew D. Weitzman, Samuel M. Young Jr., Toni Cathomen and Richard Jude Samulski;米国特許第5,139,941号および同第5,962,313号を参照;これらの全ては本明細書において参考として援用される)。いくつかの態様において、rAAVは、AAV2 ITRを含むプラスミドであるpTR-UF-11プラスミド骨格を含む。このプラスミドは、American Type Culture Collectionから市販されている(ATCC MBA-331)。
【0062】
本明細書において提供されるのは、バリアント組み換えAAV(例えばrAAV8)粒子である。いくつかの態様において、粒子は、空の粒子(例えば、目的の遺伝子を含む核酸ベクターを含まないもの)。いくつかの態様において、AAV8粒子は、目的の遺伝子を含む核酸ベクターを含む。本明細書において用いられる場合、「目的の遺伝子」とは、目的のRNAまたはタンパク質をコードする遺伝子である。
【0063】
したがって、いくつかの態様において、rAAVベクターは、目的の遺伝子の発現を促進する配列を含む1つ以上の領域、例えば核酸に対して作動的に連結されている発現制御配列を含む。多数のかかる配列は、当該分野において公知である。発現制御配列の非限定的な例として、プロモーター、インスレーター、サイレンサー、応答エレメント、イントロン、エンハンサー、開始部位、内部リボソームエントリー部位(IRES)終結シグナル、およびポリ(A)シグナルが挙げられる。かかる制御配列の任意の組み合わせは、本明細書において企図される(例えば、プロモーターおよびエンハンサー)。いくつかの態様において、rAAVベクターは、目的の遺伝子のコード配列に対して作動的に連結されて目的の遺伝子の発現を促進するプロモーターを含む。「プロモーター」とは、本明細書において用いられる場合、そこにおいて核酸配列の残りの転写の開始および速度が制御される、核酸の制御領域を指す。プロモーターは、それが制御する核酸配列の転写を駆動し、したがって、それは、典型的には、遺伝子の転写開始部位において、またはその近傍に位置する。プロモーターは、例えば、100~1000ヌクレオチドの長さを有していてもよい。いくつかの態様において、プロモーターは、核酸、または核酸の配列(ヌクレオチド配列)に作動的に連結されている。いくつかの態様において、1つ以上のプロモーターは、異種の核酸中のコードヌクレオチド配列に作動的に連結されていてもよい。プロモーターは、配列に対してプロモーターが、プロモーターが制御および/または調節する(例えば、その配列の転写開始および/または発現を制御する(「駆動する」)ような正確な機能的な位置および配向にある場合に、それが制御する核酸の配列に「作動的に連結されている」とみなされる。。プロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、または合成プロモーターであってよい。
【0064】
例えば、異なる強度の構成的プロモーターを用いることができる。本明細書において記載される核酸ベクターは、転写を促進することにおいて一般に活性である、ウイルスプロモーターまたは哺乳動物遺伝子からのプロモーターなどの1つ以上の構成的プロモーターを含んでもよい。構成的ウイルスプロモーターの非限定的な例として、単純ヘルペスウイルス(HSV)、チミジンキナーゼ(TK)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、サルウイルス40(SV40)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、Ad E1Aサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターが挙げられる。構成的哺乳動物プロモーターの非限定的な例として、β-アクチンプロモーター(例えば、ニワトリβ-アクチンプロモーター)およびヒト伸長因子-1α(EF-1α)プロモーターにより例示されるような多様なハウスキーピング遺伝子プロモーターが挙げられる。いくつかの態様において、キメラウイルス/哺乳動物プロモーターは、キメラCMV/ニワトリベータアクチン(CBA、CBまたはCAG)プロモーターを含んでもよい。いくつかの態様において、短縮化またはトランケーションされたプロモーターが用いられる。
【0065】
誘導性プロモーターおよび/または調節エレメントもまた、目的のタンパク質またはポリペプチドの適切な発現レベルを達成するために企図され得る。好適な誘導性プロモーターの非限定的な例として、チトクロームP450遺伝子、ヒートショックタンパク質遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、およびエストロゲン遺伝子プロモーターなどのホルモン誘導性遺伝子などの遺伝子からのものが挙げられる。誘導性プロモーターの別の例は、テトラサイクリンに対して応答性であるtetVP16プロモーターである。
【0066】
組織特異的プロモーターおよび/または調節エレメントもまた、本明細書において企図される。いくつかの態様において、プロモーターは、組織特異的プロモーターであってよい。「組織特異的プロモーター」とは、本明細書において用いられる場合、特定の型の組織、例えば心臓においてのみ機能することができるプロモーターを指す。したがって、「組織特異的プロモーター」は、他の型の組織においては導入遺伝子の発現を駆動することはできない。いくつかの態様において、本明細書において開示されるようなバリアントrAAV粒子を、また当該バリアントrAAV粒子と同じ細胞、組織または臓器を標的とするプロモーターと組み合わせることは、有益であり得る。例えば、心臓への向性が改善したバリアントのためには、心臓特異的な発現を達成するための心筋トロポニンTプロモーターの使用が適切であろう。
【0067】
本開示に従って用いることができるプロモーターは、いくつかの態様において、対象の心臓において導入遺伝子の発現を駆動することができる任意のプロモーターを含んでもよい。いくつかの態様において、本開示に従って用いることができるプロモーターは、心臓に限定されたプロモーターである。例えば、プロモーターは、心筋トロポニンC、心筋トロポニンI、および心筋トロポニンT(cTnT)から選択される心臓に限定されたプロモーターである。
【0068】
あるいは、プロモーターは、限定することなく、以下の遺伝子のうちの1つからのプロモーターであってよい:α-ミオシン重鎖遺伝子、6-ミオシン重鎖遺伝子、ミオシン軽鎖2v(MLC-2v)遺伝子、ミオシン軽鎖2a遺伝子、CARP遺伝子、心筋α-アクチン遺伝子、心筋m2ムスカリン性アセチルコリン受容体遺伝子、ANF、心筋トロポニンC、心筋トロポニンI、心筋トロポニンT(cTnT)、心筋小胞体Ca-ATPase遺伝子、骨格α-アクチン;またはMLC-2v遺伝子に由来する人工の心臓プロモーター。
【0069】
いくつかの態様において、本開示のrAAVベクターは、ポリアデニル化(pA)シグナルをさらに含む。真核生物のmRNAは、典型的には、前駆体mRNAとして転写される。前駆体mRNAは、プロセッシングされて成熟mRNAを生じ、これは、ポリアデニル化プロセスを含む。ポリアデニル化のプロセスは、遺伝子の転写が終結するとともに開始する。新たに作られた前駆体mRNAの最も3’側のセグメントが、初めにタンパク質のセットにより切断される。これらのタンパク質は、次いで、RNAの3’末端においてポリ(A)テイルを合成する。切断部位は、典型的には、ポリアデニル化シグナル、例えばAAUAAAを含む。ポリ(A)テイルは、mRNAの核輸送、翻訳および安定性のために重要である。
【0070】
いくつかの態様において、本開示のrAAVベクターは、少なくとも、5’から3’の順に、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)配列、第1の導入遺伝子に作動的に連結されているプロモーター、第2の導入遺伝子に作動的に連結されているIRES、ポリアデニル化シグナル、および第2のAAV逆位末端反復(ITR)配列を含む。
【0071】
いくつかの態様において、rAAVは、環状である。いくつかの態様において、rAAVベクターは、直鎖状である。いくつかの態様において、rAAVベクターは、一本鎖である。いくつかの態様において、rAAVベクターは、二本鎖である。いくつかの態様において、rAAVベクターは、自己相補的rAAVベクターである。本明細書において記載される任意のrAAVベクターは、AAV6カプシドまたは任意の他の血清型(例えば、ITR配列と同じ血清型の血清型)などのウイルスのカプシドにより、カプシド形成されていてもよい。
【0072】
目的のタンパク質は、検出可能マーカーまたは治療用タンパク質であってよい。検出可能マーカーは、可視化することができる(例えば、裸眼を用いて、または顕微鏡下において)分子であってよい。いくつかの態様において、検出可能マーカーは、蛍光分子、生物発光分子、または、色を提供する分子(例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-ラクタマーゼ、β-グルクロニダーゼおよびスフェロイデノン(spheriodenone))である。いくつかの態様において、検出可能マーカーは、蛍光タンパク質またはその機能的ペプチドまたは機能的ポリペプチドである。
【0073】
いくつかの態様において、目的の遺伝子は、治療用タンパク質をコードし、「治療用遺伝子」として言及される。治療用遺伝子は、それが送達される細胞、組織または臓器において治療効果を提供することができる。いくつかの態様において、治療用遺伝子は、抗体、ぺプチボディー、増殖因子、凝固因子、ホルモン、膜タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、細胞表面受容体またはイオンチャネルに対して作用する活性化性または阻害性のペプチド、細胞内プロセスを標的とする細胞浸透性ペプチド、血栓溶解剤、酵素、骨形成性タンパク質、ヌクレアーゼまたは遺伝子編集のために用いられる他のタンパク質、Fc-融合タンパク質、抗凝固剤、ヌクレアーゼ、ガイドRNAまたは遺伝子編集のための他の核酸もしくはタンパク質をコードする。いくつかの態様において、目的の遺伝子は、治療用RNA、例えば、小分子干渉RNAをコードする。
【0074】
いくつかの態様において、治療用遺伝子(例えば、目的の遺伝子)は、心保護的遺伝子である。ヘムオキシゲナーゼ-1を含むいくつかの心保護的遺伝子が知られている。このタンパク質は、酸化促進剤ヘムを分解して、一酸化炭素および抗酸化剤ビリルビンを生じ、虚血/再灌流傷害からの心筋の保護を与える(Franz et al., Circ. Res. 73:629-638, 1993)。炎症性疾患において、HO-1は、細胞保護的遺伝子として増加する。しかし、それは、通常は、炎症を停止させるには不十分な量におけるものである。警戒(vigilant)ベクターは、還元された酸素がHO-1の必要性を示す場合に、増幅された量のHO-1を提供することができる。心保護的遺伝子の別の例は、スーパーオキシドジスムターゼであり、これは、虚血-再灌流の間に生じるスーパーオキシドラジカルから心臓組織を保護する(Chen et al., Circulation 94:11412-11417, 1996;およびWoo et al., Circulation 98:11255-11260, 1998)。心臓の変性および心不全などの他の心疾患状態からの保護的効果を提供する遺伝子もまた、本発明のベクターにおいて用いてよい。心臓の機能を改善する遺伝子の一例は、ホスホランバン(PLN)である。PLN遺伝子生成物は、各々の心拍の強さを調節し、心不全において機能不全となることが知られている(Zvaritch et al., J. Biol. Chem. 275:14985-14991, 2000)。治療有効レベルの保護を提供する任意の好適な心保護的遺伝子を、本発明のベクター中で用いてよい。
【0075】
いくつかの態様において、心保護的遺伝子は、心保護におけるシグナル伝達経路のために重要な遺伝子である。いくつかの態様において、心保護的遺伝子は、以下のいずれか1つである:protectomiRs(例えば、microRNA 125b*)、ZAC1転写因子、ホスホランバン(PLN)、シクロオキシゲナーゼ(COX)-2および誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)などの炎症促進性遺伝子、ヘムオキシゲナーゼ(HO)-1、細胞外スーパーオキシダーゼジスムターゼおよびマンガンスーパーオキシダーゼジスムターゼ(ec-SODおよびMg-SOD)などの抗酸化酵素、ヒートショックタンパク質(HSP)、インスリン様増殖因子(IGF)-1および肝細胞増殖因子(HGF)などの増殖因子、Bcl-2およびBcl-xLなどの抗アポトーシス性タンパク質、FasL、Bcl-2、Bax、カスパーゼ-3およびp53などのアポトーシス促進性タンパク質、ならびにTGFベータなどの血管新生促進性遺伝子、スフィンゴシンキナーゼ1(SPK1)、カスパーゼ動員ドメインを有するアポトーシスリプレッサー(apoptosis repressor with caspase recruitment domain:ARC)、野生型心筋トロポニンT、野生型心筋ミオシン結合タンパク質C、ミオシン軽鎖(調節性または必須のいずれか)、PI3K-Akt、および/またはS100バリアント。
【0076】
本開示により用いてもよいS100ファミリータンパク質として、限定することなく、S100A1、S100A2、S100A3、S100A4、S100A5、S100A6、S100A7(例えば、ソリアシン)、S100A8(例えば、カルグラニュリンA)、S100A9(例えば、カルグラニュリンB)、S100A10、S100A11、S100A12(例えば、カルグラニュリンC)、S100A13、S100A14、S100A15(例えば、コエブネリシン(koebnerisin))、S100A16、S100B、S100P、およびS100Z、またはそのバリアントが挙げられる。
【0077】
いくつかの態様において、S100ファミリータンパク質は、S100カルシウム結合タンパク質A1(S100A1)であってもよい。いくつかの態様において、S100A1は、心臓S100A1(cS100A1)またはそのバリアントである。cS100A1タンパク質は、心筋の収縮性の調節因子である。cS100A1タンパク質レベルは、肺高血圧症のモデルにおいて右室肥大した組織において低下する。さらに、S100A1は、MYH7、ACTA1およびS100Bを含む肥大症遺伝子のアルファ1アドレナリン作動性の刺激を阻害する点において、心肥大の根底にある遺伝プログラムの調節因子である。
【0078】
心筋細胞において、S100A1は、リアノジン受容体2(RYR2)、筋小胞体(sarco/endoplasmic reticulum)のCa2+-ATPase(SERCA)、タイチンおよびミトコンドリアF1-ATPaseの活性の調節を通して、カルシウムにより制御されるSR、サルコメアおよびミトコンドリアの機能のネットワークを調節する。結果として、S100A1の発現が増大した心筋細胞および心臓は、収縮および弛緩の能力の増大を示し、これは、SRのCa2+負荷およびその後の収縮期Ca2+放出の増強に加えて、弛緩期のSRのCa2+漏出の減少およびCa2+再隔離の増強からもたらされる、Ca2+過渡振幅の改善の結果である。同時に、S100A1は、ミトコンドリアの高エネルギーリン酸産生を増大し、それにより、エネルギー供給を、心筋細胞のCa2+ターンオーバーの増強によるアデノシン5’-三リン酸(ATP)要求の増大と協調させる。心筋細胞におけるS100A1発現の低下は、収縮機能の低下と関連し、このことは、このタンパク質の病態生理学的重要性を実証している。
【0079】
いくつかの態様において、開示されるrAAVベクターのうちのいずれかのポリヌクレオチドのS100A1 cDNA(導入遺伝子)配列は、天然に存在するヒト由来のS100A1配列に対して、100%の同一性を有する。他の態様において、S100A1 cDNA配列は、天然に存在するS100A1配列に対して、少なくとも約70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、または少なくとも約99.9%の同一性を有する。
【0080】
いくつかの態様において、S100A1 cDNA配列は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化される。他の態様において、S100A1 cDNA配列は、イヌ細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0081】
本開示の側面は、アポトーシス阻害剤(例えば、抗アポトーシス剤)をコードする遺伝子の送達を含む、組成物および方法を提供する。アポトーシス阻害剤の説明例として、アデノウイルスからのfink、p35、crmA、Bcl-2、Bcl-XL、Mcl-1、E1B-19K、ならびにアポトーシス促進剤のアンタゴニスト(例えば、アンチセンス、リボザイム、抗体など)が挙げられる。いくつかの態様において、アポトーシス阻害剤は、心臓のカスパーゼ動員ドメインを有するアポトーシスリプレッサー(ARC)、またはそのバリアントである。他の態様において、アポトーシス阻害剤は、心臓ARCまたはそのバリアントである。いくつかの態様において、S100ファミリータンパク質とアポトーシス阻害剤とを、別々に送達することが望ましい場合がある。ある態様において、S100ファミリータンパク質をコードする遺伝子は、1つ以上の小分子アポトーシス阻害剤と、同時に、または連続的に送達される。他の例示的な小分子アポトーシス阻害剤として、c-Myc阻害剤、Bax阻害剤、p53阻害剤、tBid阻害剤、カスパーゼ阻害剤、およびアポトーシス促進性のBCL-2ファミリーメンバーの阻害剤が挙げられる。
【0082】
cARCは、筋原細胞においてほぼ排他的に発現される、アポトーシス調節タンパク質である。それは、カスパーゼ動員ドメイン(CARD)を含み、これを通して、それは、いくつかのイニシエーターカスパーゼの活性化を遮断する。ARCはまた、アポトーシスと関連するカスパーゼ非依存的なイベントを遮断する。急性の虚血およびその後の心室リモデリングにより引き起こされるアポトーシスは、心不全のメディエーターとして関連付けられている。虚血後心不全は複数の原因を有し得るが、最近の関心は、アポトーシスまたはプログラム細胞死の寄与を理解することに対して向けられてきている。アポトーシスは、ミトコンドリア膜および筋細胞膜の保存、核クロマチン凝縮、および炎症応答を引き起こさないマクロファージまたは近傍の細胞による食作用により特徴づけられる。アポトーシスの活性化は、不活性な前駆体として合成されてタンパク質分解によりそれらの活性化形態へと切断される、システインプロテアーゼのファミリーであるカスパーゼを含む機構を通して起こることが知られている。ARCは、カスパーゼを遮断することにより、アポトーシスの活性化を遮断することができる。
【0083】
特定の態様において、cARC cDNA配列は、ヒト細胞における発現のためにコドン最適化される。他の態様において、cARC cDNA配列は、イヌ細胞における発現のためにコドン最適化される。
【0084】
いくつかの態様において、目的の遺伝子は、アンチセンス分子をコードする。心保護効果を付与する多数のアンチセンス分子が公知であり、これは、アンギオテンシンIIの1型受容体に対するアンチセンス(Yang et al., Circulation 96:922-926, 1997;およびYang et al., Circ. Res. 83:552-559, 1998)、アドレナリンベータ-1受容体に対するアンチセンス(Chen et al., Pharmacol. Exp. Ther. 294:722-727, 2000)、および虚血再灌流からラットの心臓を保護することが示されているアンジオテンシン変換酵素に対するアンチセンス(Chen et al., Pharmacol. Exp. Ther. 294:722-727, 2000)を含む。いくつかの態様において、アンチセンス分子は、アンギオテンシンIIの1型受容体に対するアンチセンス、アドレナリンベータ-1受容体に対するアンチセンス、またはアンジオテンシン変換酵素に対するアンチセンスである。
【0085】
いくつかの態様において、rAAV(例えばrAAV8)粒子中に含まれる核酸ベクターは、以下の1つ以上を含む:(a)目的の遺伝子を含む1つ以上の異種核酸領域、および(b)1つ以上の核酸領域(例えば、異種核酸領域)に隣接する逆位末端反復(ITR)配列を含む1つ以上の領域(例えば、野生型ITR配列または操作されたITR配列)。いくつかの態様において、rAAV粒子中の核酸ベクターは、異種核酸領域(例えば、プロモーター)の発現を促進する制御配列を含む1つ以上の核酸領域を含む。いくつかの態様において、組み換えAAV(例えばrAAV8)粒子中の核酸ベクターは、対象のゲノム中への異種核酸領域の組み込み(任意に、発現を促進する配列を含む1つ以上の核酸領域と共に)を促進する配列を含む1つ以上の核酸領域を含む。
【0086】
いくつかの態様において、AAVは、本発明により修飾されたcap遺伝子を含む完全に構成されたAAV、またはトランスで供給されたカプシドタンパク質と共に導入遺伝子を担持する、本発明により修飾されたAAVカプシドである。いくつかの態様において、開示される修飾カプシドタンパク質を含む空のカプシドは、形質導入をさらに増強するために、充填されたAAVカプシドの使用の前に前処置するために用いることができる。
【0087】
表1において記載されるのは、例示的な本開示のrAAVカプシドタンパク質または関連する遺伝子配列である。表1において示されるrAAVカプシドタンパク質は、配列番号11~13、15、17、19、21、23、25、27、29および31として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0088】
本開示のrAAVカプシドタンパク質は、配列番号11~13、15、17、19、21、23、25、27、29および31として記載される配列に対して、少なくとも70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、または少なくとも約99.9%の同一性を有するアミノ配列を含んでもよい。
【0089】
表1において示されるrAAVカプシドタンパク質は、配列番号1、3、5、14、16、18、20、22、24、26、28および30として記載される配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる。本開示のrAAVカプシドタンパク質は、配列番号1、3、5、14、16、18、20、22、24、26、28および30として記載される配列に対して、少なくとも70%の同一性、少なくとも約80%の同一性、少なくとも約90%の同一性、少なくとも約95%の同一性、少なくとも約96%の同一性、少なくとも約97%の同一性、少なくとも約98%の同一性、少なくとも約99%の同一性、少なくとも約99.5%の同一性、または少なくとも約99.9%の同一性を有する核酸配列によりコードされていてもよい。
【0090】
現実の問題として、任意の特定の核酸分子が、例えば、導入遺伝子のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータープログラムを慣用的に用いて決定することができる。網羅的配列アラインメントとしても言及される、問い合わせ配列(例えば、本開示の配列)と対象配列との間の最良の全体的な一致を決定するための好ましい方法は、FASTDBまたはblastnコンピュータープログラムを用いて、Brutlagら(Comp. App. Biosci. 6:237-245 (1990))のアルゴリズムに基づいて、決定することができる。配列アラインメントにおいて、問い合わせ配列および対象配列は、いずれもヌクレオチド配列であるか、またはいずれもアミノ酸配列である。前記網羅的配列アラインメントの結果は、パーセント同一性として表される。FASTDBアミノ酸アラインメントにおいて用いられる好ましいパラメーターは、以下のとおりである:Matrix=PAM 0、k-tuple=2、Mismatch Penalty=1、Joining Penalty=20、Randomization Group Length=0、Cutoff Score=1、Window Size=配列の長さ、Gap Penalty=5、Gap Size Penalty=0.05、Window Size=500または対象アミノ酸配列の長さのうちいずれか短い方。ヌクレオチドがマッチ/アラインメントするか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。このパーセンテージを、次いで、特定されるパラメーターを用いて上のFASTDBプログラムにより計算されるパーセント同一性から減算し、最終的なパーセント同一性スコアに到達する。この最終的なパーセント同一性スコアは、本開示の目的のために用いられるものである。問い合わせ配列と比較して5’および/または3’末端においてトランケーションされた対象配列について、パーセント同一性は、問い合わせ配列に対して5’にまたは3’に位置する問い合わせ配列のヌクレオチドであって、対応する対象ヌクレオチドとマッチ/アラインメントしないものの数を、問い合わせ配列の総塩基のパーセントとして計算することにより、補正される。
【0091】
いくつかの態様において、開示されるrAAVアミノ酸ベクター配列のうちのいずれかは、配列番号11~13、15、17、19、21、23、25、27、29および31のうちのいずれか1つの配列と比較して、5’または3’末端においてトランケーションを含む。いくつかの態様において、rAAVベクターのうちのいずれかは、配列番号11~13、15、17、19、21、23、25、27、29および31のうちのいずれか1つの配列と、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または18より多くのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、開示されるrAAV核酸ベクター配列のうちのいずれかは、配列番号1、3、5、14、16、18、20、22、24、26、28および30のうちのいずれか1つの配列と比較して、5’または3’末端においてトランケーションを含む。いくつかの態様において、rAAVベクターのうちのいずれかは、配列番号1、3、5、14、16、18、20、22、24、26、28および30のうちのいずれか1つの配列とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または18より多くの核酸が異なる核酸配列によりコードされる。
【0092】
rAAV粒子を作製する方法
本明細書においてさらに提供されるのは、rAAV粒子を作製する方法である。RAAV粒子は、ウイルスのカプシド、および、ウイルスのカプシドによりカプシド形成された、本明細書において記載されるようなrAAVベクターを含む。rAAV粒子および核酸ベクターを生成する多様な方法は、当該分野において公知であり、市販されている(例えば、Zolotukhin et al. Production and purification of serotype 1, 2, and 5 recombinant adeno-associated viral vectors. Methods 28 (2002) 158-167;およびU.S. Patent Publication Numbers US20070015238 and US20120322861、これらは、本明細書において参考として援用される;ならびにATCCおよびCell Biolabs、Inc.から入手可能なプラスミドおよびキットを参照)。いくつかの態様において、目的の遺伝子を含むベクター(例えばプラスミド)を、例えばrep遺伝子(例えば、Rep78、Rep68、Rep52およびRep40をコードするもの)ならびにcap遺伝子(本明細書において記載されるような修飾されたVP領域を含むVP1、VP2およびVP3をコードするもの)を含む1つ以上のヘルパープラスミドと組み合わせて、核酸ベクターがカプシド内部にパッケージングまたはカプシド形成され、その後精製されるように、ヘルパーまたは産生株細胞と称される組み換え細胞中に遺伝子導入してもよい。
【0093】
哺乳動物ヘルパー細胞の非限定的な例として、HEK293細胞、COS細胞、HeLa細胞、BHK細胞またはCHO細胞(例えば、ATCC(登録商標)CRL-1573(商標)、ATCC(登録商標)CRL-1651(商標)、ATCC(登録商標)CRL-1650(商標)、ATCC(登録商標)CCL-2、ATCC(登録商標)CCL-10(商標)、またはATCC(登録商標)CCL-61(商標))が挙げられる。昆虫ヘルパー細胞の非限定的な例は、Sf9細胞である(例えば、ATCC(登録商標)CRL-1711(商標)を参照)。ヘルパー細胞は、Repタンパク質および/またはCapタンパク質をコードするrepおよび/またはcap遺伝子を含んでもよい。いくつかの態様において、パッケージングは、in vitro(例えば、細胞の外側)で行われる。
【0094】
いくつかの態様において、異種遺伝子を含む核酸ベクター(例えばプラスミド)1つ以上のヘルパープラスミド、例えば、第1の血清型のrep遺伝子、および同じ血清型または異なる血清型のcap遺伝子を含むものと組み合わされて、rAAV粒子がパッケージングされるように、ヘルパー細胞中に遺伝子導入される。いくつかの態様において、1つ以上のヘルパープラスミドは、rep遺伝子およびcap遺伝子を含む第1のヘルパープラスミド、および以下のヘルパー遺伝子:E1a遺伝子、E1b遺伝子、E4遺伝子、E2a遺伝子、およびVA遺伝子のうちの1つ以上を含む第2のヘルパープラスミドを含む。明確性のために、ヘルパー遺伝子とは、ヘルパータンパク質E1a、E1b、E4、E2aおよびVAをコードする遺伝子である。ヘルパープラスミド、およびかかるプラスミドを作製する方法は、当該分野において公知であり、市販されている(例えば、PlasmidFactory, Bielefeld, Germany製のpDF6、pRep、pDM、pDG、pDP1rs、pDP2rs、pDP3rs、pDP4rs、pDP5rs、pDP6rs、pDG(R484E/R585E)およびpDP8.apeプラスミド;Vector Biolabs, Philadelphia, PA;Cellbiolabs, San Diego, CA;Agilent Technologies, Santa Clara, Ca;およびAddgene, Cambridge, MAから入手可能な他の製品およびサービス;pxx6;Grimm et al. (1998), Novel Tools for Production and Purification of Recombinant Adeno associated Virus Vectors, Human Gene Therapy, Vol. 9, 2745-2760;Kern, A. et al. (2003), Identification of a Heparin-Binding Motif on Adeno-Associated Virus Type 2 Capsids, Journal of Virology, Vol. 77, 11072-11081.;Grimm et al. (2003), Helper Virus-Free, Optically Controllable, and Two-Plasmid-Based Production of Adeno-associated Virus Vectors of Serotypes 1 to 6, Molecular Therapy,Vol. 7, 839-850;Kronenberg et al. (2005), A Conformational Change in the Adeno-Associated Virus Type 2 Capside Leads to the Exposure of Hidden VP1 N Termini, Journal of Virology, Vol. 79, 5296-5303;およびMoullier, P. and Snyder, R.O. (2008), International efforts for recombinant adeno-associated viral vector reference standards, Molecular Therapy, Vol. 16, 1185-1188を参照)。特定の血清型についての野生型AAVコード領域をコードするプラスミドもまた、公知であり、入手可能である。例えば、Addgeneカタログ#37825-AAV8.Tは、repおよび野生型AAV8 cap遺伝子を含むヘルパープラスミドを含む(https://www.addgene.org/37825/#37825-AAV8)。
【0095】
ITR配列およびITR配列を含むプラスミドは、当該分野において公知であり、市販されている(例えば、Vector Biolabs, Philadelphia, PA;Cellbiolabs, San Diego, CA;Agilent Technologies, Santa Clara, Ca;およびAddgene, Cambridge, MAから入手可能な製品およびサービス;ならびにGene delivery to skeletal muscle results in sustained expression and systemic delivery of a therapeutic protein. Kessler PD, Podsakoff GM, Chen X, McQuiston SA, Colosi PC, Matelis LA, Kurtzman GJ, Byrne BJ. Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Nov 26;93(24):14082-7;およびCurtis A. Machida. Methods in Molecular Medicine(商標). Viral Vectors for Gene Therapy Methods and Protocols. 10.1385/1-59259-304-6:201(著作権)Humana Press Inc. 2003. Chapter 10. Targeted Integration by Adeno-Associated Virus. Matthew D. Weitzman, Samuel M. Young Jr., Toni Cathomen and Richard Jude Samulski;米国特許第5,139,941号および同第5,962,313号を参照;これらの全ては本明細書において参考として援用される)。
【0096】
AAV血清型1、2、3、3B、4、5、6、7、8、9、10、11、12および13の配列についてのGenebank参照番号は、特許公開WO2012064960において列記され、これは本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0097】
rAAV粒子生成方法の非限定的な方法を、次に説明する。所望されるAAV血清型についてのrepおよびcap ORF、ならびにアデノウイルスのVA、E2A(DBP)およびE4遺伝子を、それらのネイティブのプロモーターの転写制御下においてを含む、1つ以上のヘルパープラスミドを、生成するか取得する。いくつかの態様において、1つ以上のヘルパープラスミドは、rep遺伝子、cap遺伝子、ならびに任意にアデノウイルスのVA、E2A(DBP)およびE4遺伝子のうちの1つ以上を、それらのネイティブのプロモーターの転写制御下において含む。いくつかの態様において、1つ以上のヘルパープラスミドは、所望されるAAV血清型についてのcap ORF(および任意にrep ORF)、ならびにアデノウイルスのVA、E2A(DBP)およびE4遺伝子を、それらのネイティブのプロモーターの転写制御下において含む。cap ORFはまた、本明細書において記載されるような修飾されたカプシドタンパク質を生成するために、1つ以上の修飾を含んでもよい。例として、HEK293細胞(ATCC(登録商標)から入手可能)を、CaPO4媒介性トランスフェクション、脂質またはポリエチレンイミン(PEI)などのポリマー性分子を介して、ヘルパープラスミドおよび核酸ベクターを含有するプラスミドにより、遺伝子導入する。HEK293細胞を、次いで、少なくとも60時間にわたりインキュベートして、rAAV粒子を生成させる。あるいは、HEK293細胞を、上記の方法を介して、1つ以上の目的の遺伝子を含有するAAV-ITR、RepおよびCapタンパク質をコードする遺伝子を含むヘルパープラスミドにより遺伝子導入し、ヘルパーウイルスにより共導入する。ヘルパーウイルスとは、AAVの複製を可能にするウイルスである。ヘルパーウイルスの例は、アデノウイルスおよびヘルペスウイルスである。
【0098】
あるいは、別の例において、Sf9ベースの産生株安定細胞株を、核酸ベクターを含む単一の組み換えバキュロウイルスに感染させる。さらなる代替として、別の例において、HEK293またはBHK細胞株を、核酸ベクターを含むHSV、および任意に本明細書において記載されるようなrepおよびcapのORFならびにアデノウイルスのVA、E2A(DBP)およびE4遺伝子を、それらのネイティブのプロモーターの転写制御下において含む1つ以上のヘルパーHSVに感染させる。HEK293、BHK、またはSf9細胞を、次いで、少なくとも60時間にわたりインキュベートして、rAAV粒子を生成させる。RAAV粒子を、次いで、当該分野において公知であるかまたは本明細書において記載される任意の方法を用いて、例えば、イオジキサノール段階的勾配、CsCl勾配、クロマトグラフィー、またはポリエチレングリコール(PEG)沈殿により、精製してもよい。
【0099】
ヘルペスウイルスベースの系を用いたAAVのラージスケール生成のための方法もまた、公知である。例えば、Clementら(Hum Gene Ther. 2009, 20(8):796-806)を参照。中和性の抗AAV抗体に対してより耐性であり得るエキソソーム関連AAVを生成する方法もまた、もまた、公知である(Hudry et al., Gene Ther. 2016, 23(4):380-92;Macguire et al., Mol Ther. 2012, 20(5):960-71)。
【0100】
シュードタイピングされたrAAVベクターを生成してこれを用いるための方法もまた、当該分野において公知である(例えば、Duan et al., J. Virol., 75:7662-7671、2001;Halbert et al., J. Virol., 74:1524-1532, 2000;Zolotukhin et al., Methods, 28:158-167, 2002;およびAuricchio et al., Hum. Molec. Genet., 10:3075-3081, 2001を参照)。
【0101】
組成物
本開示は、開示されるrAAV粒子または調製物のうちの1つ以上を含む組成物に対して向けられる。いくつかの態様において、rAAV調製物は、第1の血清型(例えば、AAV3、AAV5、AAV6またはAAV9)のITRを含有するrAAVベクター、およびrAAVベクターにカプシド形成するカプシドタンパク質を含む、rAAV粒子を含む。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、第1の血清型(例えば、AAV3、AAV5、AAV6またはAAV9)のものである。いくつかの態様において、調製物は、AAV2 ITRを含有するrAAVベクターを用いて調製された調製物と比較して、少なくとも4倍高い形質導入効率(例えば、Huh7などのヒト肝細胞癌細胞株において)を有する。
【0102】
本明細書において記載される場合、かかる組成物は、医薬用の賦形剤、バッファーまたは希釈剤をさらに含んでもよく、ex vivoでの宿主細胞への、またはin situでの動物への、および特にヒトへの投与のために処方してもよい。かかる組成物は、さらに任意に、リポソーム、脂質、脂質複合体、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノスフェア、またはナノ粒子を含んでもよく、それを必要とするヒト対象の細胞、組織、臓器または身体への投与のために別段に処方してもよい。かかる組成物は、多様な治療における、例えば、ペプチド欠損、ポリペプチド欠損、ペプチド過剰発現、ポリペプチド過剰発現などの状態の、寛解、予防、および/または処置などにおける使用のために処方されてもよく、これは、例えば本明細書において記載されるような疾患または障害をもたらす状態を含む。
【0103】
rAAV粒子の使用を促進するために、多様な処方物が、開発されてきた。例えば、rAAV粒子の注射可能な水溶液の投与のために、溶液を、必要であれば好適に緩衝化してもよく、液体の希釈剤を、初めに十分な食塩水またはグルコースで等張化してもよい。いくつかの態様において、本明細書において提供されるような組成物は、本明細書において開示されるバリアントrAAV粒子のうちのいずれか1つを複数含む。いくつかの態様において、組成物は、本明細書において開示されるバリアントrAAV粒子の1つより多くを複数含む。いくつかの態様において、「投与すること」または「投与」は、薬理学的に有用な様式において材料を対象に提供することを意味する。
【0104】
したがって、いくつかの態様において、バリアントrAAV粒子の組成物は、薬学的に受入可能なキャリアを含む。用語「キャリア」とは、それと共にrAAV粒子が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。かかる医薬用キャリアは、無菌の液体(例えば、水、油脂、食塩水溶液、水性デキストロースおよびグリセロール溶液)、懸濁剤、保存剤(例えば、メチル-、エチル-、およびプロピル-ヒドロキシ-ベンゾエート)、ならびにpH調整剤(無機および有機の酸および塩基など)であってよい。いくつかの態様において、キャリアは、緩衝化食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝化食塩水、HEPES緩衝化食塩水)を含む。USPグレードのキャリアおよび賦形剤は、rAAV粒子のヒト対象への送達のために、特に有用である。かかる組成物は、さらに任意に、リポソーム、脂質、脂質複合体、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノスフェア、またはナノ粒子を含んでもよく、あるいは、それを必要とする対象の細胞、組織、臓器または身体への投与のために、別段に処方されてもよい。かかる組成物を作製するための方法は、周知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第22版、Pharmaceutical Press(2012年)において見出すことができる。
【0105】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるrAAV粒子のうちのいずれか1つを含む組成物は、0.014%のTween 20を添加した平衡化塩溶液(BSS)(ポリソルベート20)を含む。
【0106】
典型的には、組成物は、治療剤(例えば、rAAV粒子)のうちの少なくとも約0.1%またはそれより多くを含んでもよいが、活性成分のパーセンテージは、変化してもよく、便利に、全処方物の重量または容積の約1または2%~約70%または80%またはそれより多くの間であってよい。当然のことながら、各々の治療上有用な組成物中の治療剤(例えば、rAAV粒子)の量は、化合物の任意の所与の単位用量において好適な投与量が得られるであろう方法において調製してもよい。溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与の経路、製品の有効期間、ならびに他の薬理学的配慮などの要因が、かかる医薬処方物を調製する当業者により企図され、したがって、多様な投与量および処置レジメンが望ましい場合がある。
【0107】
注射可能な使用のために好適なrAAV粒子組成物の薬学的形態として、無菌の水溶液または分散が挙げられる。いくつかの態様において、形態は、無菌であり、容易な通針性(syringability)が存在する程度まで液体である。いくつかの態様において、形態は、製造および貯蔵の条件下において安定であり、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対して保存される。いくつかの態様において、形態は、無菌である。キャリアは、例えば、水、食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および/または植物油を含む、溶媒または分散媒であってよい。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0108】
対象への投与のための組成物の調製は、当該分野において公知である。例えば、1投与量を、1mlの等張NaCl溶液中に溶解して、1000mlの皮下点滴液に添加するか、または提案される注入の部位において注射してもよい(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、1035~1038頁および1570~1580頁を参照)。いくつかの投与量のバリエーションは、処置されている対象の状態に依存して、必然的に生じるであろう。投与の責任者は、いずれにしても、個々の対象のために適切な用量を決定するであろう。さらに、ヒトの投与のために、調製物は、例えば、FDA Office of Biologicsの標準により必要とされるような、無菌性、発熱性、ならびに一般的な安全性および純度の標準を満たすべきである。
【0109】
心臓疾患のためのrAAV遺伝子治療
本開示のRAAVベクター、rAAV粒子、またはrAAV粒子を含む組成物は、それを必要とするヒト対象において心臓疾患のための遺伝子治療のために用いてもよい。本開示の方法および組成物を用いて処置してもよい心臓疾患の例として、これらに限定されないが、心筋症および急性虚血が挙げられる。いくつかの態様において、心筋症とは、肥大型心筋症または拡張型心筋症である。心筋症または他の心臓疾患により引き起こされる心不全は、2つの構成成分、カルシウム調節機能不全およびアポトーシスを含む。RAAVベクター、粒子、およびrAAV粒子を含む組成物は、それを必要とする対象に、例えば、冠動脈中への血管送達および/または心臓への直接注射を介して投与される場合、かかる心不全の処置のために用いてもよい。RAAVベクター、粒子、およびrAAV粒子を含む組成物は、対象の心筋細胞におけるcS100A1タンパク質およびARCタンパク質の同時発現を駆動する。S100A1は、カルシウム調節の側面を改善し、これは、筋小胞体のカルシウムの一時滞在(transient)の正常化を含み、これは、収縮機能の正常化をもたらす。ARCは、ミトコンドリア機構および非ミトコンドリア機構により開始されるアポトーシス(伸展により誘導される(stretch-induced)アポトーシスなど)を遮断するのみならず、ミトコンドリアの機能を改善するであろう。したがって、本開示の導入遺伝子により発現される2つのタンパク質の相乗的利益は、心筋症の両方の側面を標的とすることにより、より良好な長期治療成績をもたらすことができる。
【0110】
細胞に形質導入する方法
本明細書において開示されるrAAV粒子のうちのいずれか1つ、またはrAAV粒子のうちのいずれか1つを含む組成物は、細胞、組織または臓器に形質導入するために用いることができる。いくつかの態様において、本明細書において開示されるバリアントrAAV粒子のうちのいずれか1つを用いて形質導入される細胞、組織または臓器は、目的の遺伝子により形質導入され、これは、治療用遺伝子、または研究することが所望されるものであってよい。いくつかの態様において、細胞、組織または臓器は、in vitroのセッティングにおいて形質導入され、ここで、細胞、組織または臓器は、培地と共にインキュベートされるかまたはこれを灌流される。細胞は、特定の条件下において培養された多くの細胞のうちの1つ、または採取された臓器の部分、オルガノイド、または生物の部分であってよい。
【0111】
いくつかの態様において、細胞、組織または臓器は、例えば疾患を処置する目的のために、in vivoで形質導入される。いくつかの態様において、かかるrAAV粒子は、治療用タンパク質またはRNAをコードする目的の遺伝子を含む。
【0112】
いくつかの態様において、本明細書において開示されるバリアントrAAV粒子のうちのいずれか1つ以上を含む組成物は、細胞に提供される。いくつかの態様において、本明細書において開示されるバリアントrAAV粒子のうちのいずれか1つ以上を含む組成物は、CNSにおける組織に、骨格筋に、または心臓組織に提供される。いくつかの態様において、rAAV粒子を含む組成物は、in vivoで、ex vivoで、腹腔内、静脈内、筋肉内、冠内、皮下、クモ膜下内、頭蓋内、小胞内、または経口の送達方法を介して、細胞に提供される。いくつかの態様において、rAAV粒子を含む組成物は、静脈内、筋肉内、冠内またはクモ膜下内の注射または投与により、細胞に提供される。
【0113】
いくつかの態様において、目的の遺伝子で細胞を形質導入する方法は、細胞に、本明細書において提供される組成物のうちのいずれか1つを提供することを含む。いくつかの態様において、目的の遺伝子で細胞に形質導入するために用いられるバリアントrAAV粒子は、配列番号11、12または13を含む。
【0114】
本開示の他の側面は、対象、例えばヒトまたは非ヒト対象、対象におけるin situでの宿主細胞、または対象に由来する宿主細胞による、使用のための方法および調製物に関する。いくつかの態様において、細胞、組織または臓器が形質導入される対象は、脊椎動物(例えば、哺乳動物または爬虫類)である。いくつかの態様において、哺乳動物対象は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ハムスター、マウス、ラット、ブタ、ウマ、ウシ、ラバまたはウサギである。非ヒト霊長類対象の非限定的な例として、マカク(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル)、マーモセット、タマリン、クモザル、ヨザル、サバンナモンキー、リスザル、ヒヒ、ゴリラ、チンパンジーおよびオランウータンが挙げられる。いくつかの態様において、対象は、特定の疾患のための、あるいは薬物動態学および/または目的の遺伝子によりコードされるタンパク質もしくはsiRNAの薬物動態学を研究するために用いられるモデルである。
【0115】
いくつかの態様において、対象は、遺伝子治療により処置してもよい心臓疾患を有するか、またはこれを有することが疑われる。いくつかの態様において、対象は、心不全の任意のステージにおけるものである。いくつかの態様において、心不全は、心筋症により引き起こされる。いくつかの態様において、心不全は、肥大型心筋症または拡張型心筋症である。
【0116】
疾患を「処置する」とは、当該用語が本明細書において用いられる場合、対象により経験される疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重篤度を軽減することを意味する。上または本明細書において他の場所で記載される組成物は、典型的には、望ましい結果を提供することができる量である有効量において、対象に投与される。望ましい結果は、投与されている活性剤に依存するであろう。例えば、rAAV粒子の有効量は、発現コンストラクトを、宿主細胞、組織または臓器に移送できる粒子の量であってよい。治療的に受入可能な量は、疾患を処置することができる量であってよい。医学および獣医学の分野において周知であるとおり、任意の1つ対象のための投与量は、対象のサイズ、体表面積、年齢、投与されるべき特定の組成物、組成物中の活性成分、投与の時間および経路、一般的健康、および同時に投与されている他の薬物を含む、多くの要因に依存する。
【0117】
以下の例は、本開示のある態様の説明的なものとなることを意図され、非限定的であることを意図される。
【0118】
例
例1.
3つのAAVバリアント(「SL1.2」(配列番号11)、「SL2」(配列番号12)、および「SL3」(配列番号13))を、AAV形質導入の向性および/または効率をAAV8と比較して改変するために設計して作製した。AAV8の効率を低下させるリン酸化部位を取り除くことにより形質導入効率を増大させた。向性を改変するために、AAVカプシドの配列の差異と共に、既知のAAV8の向性をAAV5、AAV9、AAVrh10およびAAV_ANC80L65の向性と比較する、合理的な設計アプローチをとった(
図1を参照)。改善された心臓およびCNSへの向性により補正された差異を、次いで、AAV8カプシド配列中に移入する。SL1.2、SL2およびSL3は、段階的に増加するかかる配列の付加を代表する。AAV-SL1.2は、したがって、AAV8に対して配列において緊密に関連し、一方、AAV-SL2およびAAV-SL3は、より相違しているが、AAV9またはAAVanc80L65よりも緊密にAAVr10、AAVrh74およびAAV8に関連している。他のAAV血清型と比較したSL1.2、SL2およびSL3の系統学および分岐の%を、それぞれ、
図2および3において示す。
【0119】
例2.
心保護的遺伝子の心臓への送達を改善するために、変異体カプシドを、天然に存在するAAV血清型との比較に基づいて、心筋での取り込みのために重要であると考えられる領域を改変するように設計した。特に、アミノ酸Glu578からGly596に広がるカプシド領域は、本明細書において記載される3つのバリアント(SL1.2、SL2およびSL3;例1および
図1~3を参照)において異なっていた。
【0120】
図8において示されるブロットのウェスタンブロット定量(
図7)は、3つのバリアント(SL1.2、SL2およびSL3)の送達を、天然の血清型であるAAV9およびAAVrh10、操作されたバリアントであるAAVanc80L65の取り込みと比較した。AAV9およびAAVrh10は、心臓送達のための最良の記載されたAAV血清型のうちの2つであるので、これらを選択した。実験は、尾静脈全身送達により6か月齢のDBA/2Jオスマウスに投与される、既知の飽和未満の用量(1×10
13vg/kg)を用いて行った。緑色蛍光タンパク質(GFP)を、全組織における発現についてベータ-アクチンプロモーターの制御下においてレポータータンパク質として用いた。
図7および8は、バリアントSL2は対照血清型と比較して改善された心臓組織における取り込みを有するが、一方、SL3はAAV9により類似した取り込みを有することを示す。SL3は、試験されたAAV血清型のうちのいずれにおいても骨格筋および脳において最も高い取り込みを有することが観察された。
【0121】
表2において示されるとおり、また、SL2およびSL3中に導入された変異が、生成の効率(例えば、所与の量のDNAについての収量)の実質的な増大をもたらしたことも観察された。SL2およびSL3についての生成の効率は、収量がAAV9およびAAVrh10の収量を1.5~4倍上回るように増大し、これは、合成バリアントAAVanc80L65の収量をはるかに上回る。AAVanc70L65は、AAV8と比較して、心臓送達のためにより有用であることが提案されているが、本明細書において記載される結果に基づいて、実際にはAAV9、AAVrh10、および本発明のバリアントSL2およびSL3よりも劣る。SL2およびSL3のより高い収量は、これらのバリアントは生成するのがより容易かつより安価であることから、全身ヒト遺伝子治療のために必要とされるラージスケール生成のために重要である。
【0122】
骨格筋および心筋の両方における取り込みにおけるSL3の優位性を、
図9(心臓および横隔膜のウェスタンブロットおよび定量)および
図10(四頭筋のウェスタンブロットおよび定量)において示す。
図9および10におけるデータは、1×10
13vg/kgのAAV9、SL1.2、SL2またはSL3を尾静脈(全身送達)により6か月齢のDBA/2Jオスマウスに注射することにより得た。レポーターは、全ての組織において発現についてベータ-アクチンプロモーターの制御下におけるGFPである。
【表2】
【0123】
図11は、5×10
13vg/kgまたは1×10
14vg/kgでのAAV9、SL1.2、SL2またはSL3の全身注射の後の、骨格筋および心臓内の緑色蛍光タンパク質(GFP;輝度)の分布を示す。発現のパターンは、ウェスタンブロットデータの結論を支持し、SL3が、心臓および骨格筋の形質導入のための優れたベクターであることを示す。
【0124】
肝臓以外の組織を標的とすることを意図される新たなAAVベクターを設計する場合、典型的にいかなる他の組織よりも多くのベクターを取り込む肝臓への送達を最小化することが有用である。肝臓によるSL1.2、SL2およびSL3の取り込みを減少させるために、単一のアミノ酸変更(アスパラギン500からイソロイシンへ)をSL1.2、SL2およびSL3の各々に導入した(例えば、Pulicherla、et al., Mol. Ther. 19:6、1070-78 (2011)を参照)。結果として生じたベクターを、本明細書において、「SL1.2L」(配列番号15)、「SL2L」(配列番号17)、および「SL3L」(配列番号19)として指定した。
【0125】
いくつかの適用において、特に中枢神経系(CNS)が標的ではない場合、ウイルスが血液脳関門を通過することを防止して、それにより脳への送達を最小化することが有用である。脳によるSL1.2、SL2およびSL3の取り込みを減少させるために、7つのアミノ酸変更(アスパラギン263からセリンへ;グリシン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ)を、SL1.2に導入し、8つのアミノ酸変更(アスパラギン263からセリンへ;セリン264からアラニンへ;スレオニン265からセリンへ;セリン266からスレオニンへ;グリシン268の欠失;セリン269からアラニンへ;スレオニン270からセリンへ;およびスレオニン274からヒスチジンへ)を、SL2およびSL3の各々へ導入した(例えば、Albright、et al., Mol. Ther. 26:2、510-23 (2018)を参照)。結果として生じたベクターを、本明細書において、「SL1.2B」(配列番号21)、「SL2B」(配列番号23)、および「SL3B」(配列番号25)として指定した。
【0126】
最後に、いくつかの場合において、天然に存在するAAV血清型と比較して、肝臓におけるおよび脳における取り込みがいずれも減少したAAVベクターを利用することが、有用である場合がある。したがって、それぞれ上記の肝臓および脳に関連する、単一のアミノ酸変更および8つのアミノ酸変更を組み込むSL1.2、SL2およびSL3バリアントを、設計した。結果として生じたベクターを、本明細書において「SL1.2LB」(配列番号27)、「SL2LB」(配列番号29)、および「SL3LB」(配列番号31)として指定した。
【0127】
他のAAV血清型と比較した、SL1.2、SL1.2L、SL1.2B、SL1.2LB、SL2、SL2L、SL2B、SL2LB、SL3、SL3L、SL3BおよびSL3LBの系統学および分岐の%を、それぞれ
図5および6において示す。
【0128】
他の態様
本明細書において開示される特徴の全ては、任意の組み合わせにおいて組み合わせてもよい。本明細書において開示される各々の特徴は、同じか、同等か、または類似の目的に役立つ代替的特徴により置き換えられてもよい。したがって、別段に明示的に記述されない限り、開示される各々の特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0129】
上の記載から、当業者は、本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、それを多様な用途および条件に適応させるために、本開示の多様な変更および改変を行うことができる。したがって、他の態様もまた、請求の範囲内である。
【0130】
均等物
いくつかの本発明の態様を、本明細書において記載および説明してきたが、一方で、当業者は、機能を行うため、ならびに/または本明細書において記載される結果および/もしくは利点のうちの1つ以上を得るための、多様な他の手段および/または構造を、容易に想起し、かかるバリエーションおよび/または改変の各々は、本明細書において記載される本発明の態様の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書において記載される全てのパラメーター、寸法、材料および立体構造は、例示的であることを意図されること、ならびに、実際のパラメーター、寸法、材料および/または立体構造は、本発明の教示がそのために用いられる特定の適用に依存するであろうことを、容易に理解するであろう。当業者は、本明細書において記載される本発明の特定の態様に対する多くの均等物を、理解するか、または慣用的な実験のみを用いて確認することができるであろう。したがって、前述の態様は、単に例として提示されるものであること、ならびに、添付の請求の範囲およびそれに対する均等物の範囲内において、本発明の態様は、具体的に記載されるかまたは請求されるものとは別段に実施してもよいことが理解されるべきである。本開示の発明の態様は、本明細書において記載される各々の個々の特徴、系、物品、材料、キットおよび/または方法に対して向けられる。加えて、2つ以上のかかる特徴、系、物品、材料、キットおよび/または方法の任意の組み合わせは、かかる特徴、系、物品、材料、キットおよび/または方法が互いに相反しない場合には、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0131】
全ての定義は、本明細書において定義され用いられる場合、定義される用語の辞書の定義、参考として援用される文書における定義および/または通常の意味に対して優先されることが理解されるべきである。
【0132】
本明細書において開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、各々が引用される主題に関して、参考として援用され、これは、いくつかの場合においては、文書の全体を包含してもよい。
【0133】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書において、明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、逆であることが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0134】
句「および/または」、本明細書において、明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、そのように結合された要素のうちの「いずれかまたは両方」、すなわち、いくつかの場合において接続的に存在し、他の場合においては離接的に存在する要素を意味するものと理解されるべきである。「および/または」により列記される複数の要素は、同じ様式において、すなわち、そのように結合された要素のうちの「1つ以上」において、解釈されるべきである。他の要素は、「および/または」節により特に同定された要素の他に、任意に存在してもよく、これは、特に同定された要素と関連しても関連しなくてもよい。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」についての言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンドの語法と組み合わせて用いられる場合、一態様においては、Aのみ(任意にB以外の要素を含む)を指していてもよく;別の態様においては、Bのみ(任意にA以外の要素を含む)を指していてもよく;さらに別の態様においては、AおよびBの両方(任意に他の要素を含む)を指していてもよい、など。
【0135】
本明細書において、明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、「または」は、上で定義されるような「および/または」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、リストにおいて項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、少なくとも1つの包含として解釈されるべきであるが、また、多数の要素または要素のリストのうちの1つより多く、および任意にさらなる列記されていない項目を含む。「~のうちの1つのみ」または「~のうちの正確に1つ」、または、請求の範囲において用いられる場合、「~からなる(consisting of)」などの、逆であることが明確に示される用語は、多数の要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素の包含を指すであろう。一般的に、用語「または」とは、本明細書において用いられる場合、「~のいずれか」、「~のうちの1つ」、「~のうちの1つのみ」または「~のうちの正確に1つ」などの排他性の用語により先行される場合には、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、請求の範囲において用いられる場合、特許法の分野において用いられる場合のその通常の意味を有するべきである。
【0136】
本明細書において、明細書においておよび請求の範囲において用いられる場合、1つ以上の要素のリストに関する句「少なくとも1つ」は、要素のリスト中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト中に特に列記される各々および全ての要素のうちの少なくとも1つを含むものではなく、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを除外するものではないことが、理解されるべきである。この定義はまた、句「少なくとも1つ」が言及する要素のリスト中に特に同定される要素以外の要素が、特に同定される要素と関連しても関連しなくとも、任意に存在してもよいことを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または、同等に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一態様においては、Bの不在下における(および任意にB以外の要素を含む)、少なくとも1つ(任意に1つより多くを含む)のAを指していてもよく;別の態様においては、Aの不在下における(および任意にA以外の要素を含む)、少なくとも1つ(任意に1つより多くを含む)のBを指していてもよく;さらに別の態様においては、少なくとも1つ(任意に1つより多くを含む)のA、および少なくとも1つ(任意に1つより多くを含む)のB(および任意に他の要素を含む)を指していてもよい;など。
【0137】
また、逆であることが明確に示されない限り、本明細書において請求される任意の方法であって、1つより多くのステップまたは行為を含むものにおいて、当該方法のステップまたは行為の順序は、必ずしも、当該方法のステップまたは行為が記述される順序に限定されないことが、理解されるべきである。
【0138】
請求の範囲において、ならびに上の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「~を含んでなる(composed of)」、および類似のものなどの全ての移行句は、オープンエンドである、すなわち、それを含むがそれに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。米国特許庁特許審査便覧、セクション2111.03において記載されるとおり、移行句「~からなる(consisting of)」および「~から本質的になる(consisting essentially of)」のみが、それぞれ、クローズまたはセミクローズの移行句であるべきである。オープンエンドの移行句(例えば、「含む(comprising)」)を用いて本文書において記載される態様もまた、代替的な態様においては、オープンエンドの移行句により記載される特徴「からなる(consisting of)」およびそれ「から本質的になる(consisting essentially of)」ものとして企図されることが、理解されるべきである。例えば、本開示が「AおよびBを含む組成物」を記載する場合、本開示はまた、代替的な態様「AおよびBからなる組成物」および「AおよびBから本質的になる組成物」を企図する。
【0139】
参考文献
1. Kay CN, Ryals RC, Aslanidi GV, Min SH, Ruan Q, Sun J, Dyka FM, Kasuga D, Ayala AE, Van Vliet K, Agbandje-McKenna M, Hauswirth WW, Boye SL, Boye SE. Targeting photoreceptors via intravitreal delivery using novel, capsid-mutated AAV vectors. PLoS One. 2013 Apr 26;8(4):e62097.
【配列表】
【国際調査報告】