(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】胸骨アセンダー装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
A61B17/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510141
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020047440
(87)【国際公開番号】W WO2021035151
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506243057
【氏名又は名称】エルエスアイ ソルーションズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】特許業務法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サウアー, ジュード, エス.,エムディー
(72)【発明者】
【氏名】デクラーック, マシュー, デービッド
(72)【発明者】
【氏名】マルテラロ, アンジェロ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ボセック, ベンジャミン, ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ウローナ, マシュー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160AA01
4C160AA14
4C160MM33
4C160MM34
(57)【要約】
胸骨エレベータ装置が開示されている。胸骨エレベータは、パネルと、パネルを横切る支持ビームと、パネルの基端に結合されたポストを含む。この装置はまた、胸骨エレベータに結合されたインジケータハンドルと、インジケータハンドルに回動可能に結合されたアクチュエータドライブと、アクチュエータドライブに移動可能に結合されたハウジングを含む。胸骨エレベータ装置は、リニアラックを組み込んだアクチュエータドライブを有していてもよい。ハウジングはさらに、円筒状ギアを含んでいてもよい。円筒状ギアはリニアラックと係合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルと、前記パネルを横切る支持ビームと、前記パネルの基端に結合されたポストとを含む胸骨アセンダーと、
前記胸骨アセンダーに結合されたインジケータハンドルと、
前記インジケータハンドルに回動可能に結合されたアクチュエータドライブと、
前記アクチュエータドライブに移動可能に結合されたハウジングと、
を備えた、胸骨アセンダー装置。
【請求項2】
前記胸骨アセンダーがインジケータハンドルに取り外し可能に結合されている、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項3】
前記ポストがアライメントキーをさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項4】
前記パネルが、前記ポストの先端に角度アライメントフィーチャをさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項5】
前記パネルが複数のテクスチャーフィーチャをさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項6】
前記パネルが、前記パネルの基端にノッチをさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項7】
前記インジケータハンドルが、取付スロットと凹部をさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項8】
前記取付スロットは、前記ポストのアライメントキーを取り外し可能に受け入れるように構成されている、請求項7に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項9】
前記凹部は、前記ポストの前記アライメントキーを取り外し可能に受け入れるように構成されている、請求項8に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項10】
前記インジケータハンドルが、前記胸骨アセンダーの前記パネルに実質的に平行である、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項11】
前記インジケータハンドルの先端が、前記胸骨アセンダーの前記パネルの先端と、実質的に位置合わせされている、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項12】
前記アクチュエータドライブがリニアラックをさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項13】
前記ハウジングが円筒状ギアをさらに含む、請求項12に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項14】
前記円筒状ギアが前記リニアラックと係合している、請求項13に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項15】
前記ハウジングが機器アダプタをさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置
【請求項16】
前記ハウジングが2つの機器アダプタをさらに含む、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項17】
前記インジケータハンドルが爪部材をさらに備え、前記アクチュエータドライブが固定インデックスギアをさらに備えた、請求項1に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項18】
前記固定インデックスギアが、前記インジケータハンドルの前記爪部材と係合するように構成される、請求項17に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項19】
前記インジケータハンドルはスイッチをさらに備え、前記スイッチは、前記爪部材を打ち負かして係合を解除し、これにより前記固定インデックスギアが前記インジケータハンドルに対して自由に回転することを可能にするように構成された、請求項18に記載の胸骨アセンダー装置。
【請求項20】
複数のテクスチャーフィーチャを有するパネルと、前記パネルを横切る支持ビームと、前記パネルの基端に結合されたポストと、を含む胸骨アセンダーと、
前記胸骨アセンダーに取り外し可能に結合されたインジケーターハンドルと、
前記インジケータハンドルに回動可能に結合され、リニアラックを有するアクチュエータドライブと、
前記アクチュエータドライブに移動可能に結合され、円筒状ギアと、2つの機器アダプタを有するハウジングと、
を備えた胸骨アセンダー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低侵襲手術装置、より具体的には、低侵襲手術中に手術可能空間を増大させるために使用される手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲の外科的アプローチは、冠状動脈手術に関連してますます関心を集めている。内胸動脈(ITA)の移植などの冠状動脈血管再生術は、冠状動脈バイパス移植(CABG)手術において、優れた長期開通性と患者の改善を示している。
【0003】
ITA採取への従来のアプローチには、胸骨正中切開または複数の胸骨正中切開が含まれるが、低侵襲アプローチが望ましい。左または右の内胸動脈(ITA)、または左または右の乳腺動脈(IMA)のいずれかを使用した血行再建術に関連する低侵襲手術では、剣状突起下アクセスを介したITAへのアクセスを利用できる。剣状突起下領域の切開を介して内胸動脈にアクセスすることによって、広い手術空間が得られる。
【0004】
左内胸動脈(LITA)または右内胸動脈(RITA)のいずれかを採取すると、左前下行枝(LAD)冠状動脈と右冠状動脈(RCA)への吻合を、心肺バイパス( CPB)なしで実行できる。このアプローチの重要な利点は、完全に採取されたITAの移植血管がLAD動脈またはRCA動脈の通常の部位に完全に吻合されることである。剣状突起下へのアクセスを伴う低侵襲のITA採取手順によれば、優れた美容上の結果をもたらし、痛みが少なく、拍動する心臓に動脈移植を行うことができる。低侵襲のITA採取外科技術の最近のアプローチは、ITAバイパスの有効長の増加、手術時間の短縮、および患者の回復の改善をもたらしている。
【0005】
ITA採取とCABGの低侵襲外科的アプローチが有望であるが、鼓動する心臓への完全内視鏡下での冠状動脈バイパス移植における視覚化、吹込み維持、および冠状動脈吻合のための先端での縫合は、技術的に要求が厳しい。手術中の広い可動領域、ならびに内視鏡、縫合器具などの追加の手術器具のための空間のために、広い作業スペースが必要である。ただし、作業スペースを増やしても、理想的には胸壁の完全性を維持し、心肺バイパス(CPB)を回避する必要がある。同様に、低侵襲の外科的アプローチは、心臓修復の信頼性を損なうべきではない。
【0006】
したがって、ITA採取や他の手術(心外膜リード配置等)に適用可能な低侵襲の手術装置および手術方法にとって、低侵襲の心臓手術や他の手術中に、採取や吻合および他の手術のための操作可能なスペースを増加させ、手術時間を短縮し、患者の転帰を改善することが、必要である。
【発明の概要】
【0007】
胸骨アセンダー装置が開示されている。胸骨アセンダーは、パネルと、前記パネルを横切る支持ビームと、前記パネルの基端に結合されたポストとを含む。装置はさらに、前記胸骨アセンダーに結合されたインジケータハンドルと、前記インジケータハンドルに回動可能に結合されたアクチュエータドライブと、前記アクチュエータドライブに移動可能に結合されたハウジングと、を備えている。胸骨アセンダー装置は、リニアラックを組み込んだアクチュエータドライブを有していてもよい。前記ハウジングは円筒状ギアを含んでいてもよい。この円筒状ギアは前記リニアラックに係合する。
【0008】
他の胸骨アセンダー装置が開示されている。胸骨アセンダーは、複数のテクスチャーフィーチャを有するパネルと、前記パネルを横切る支持ビームと、前記パネルの基端に結合されたポストと、を含む。装置はさらに、前記胸骨アセンダーに取り外し可能に結合されたインジケータハンドルと、前記インジケータハンドルに回動可能に結合され、リニアラックを有するアクチュエータドライブと、前記アクチュエータドライブに移動可能に結合され、円筒状ギアと2つの機器アダプタを有するハウジングと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】右胸骨アセンダーが取り付けられた胸骨アセンダー装置の一実施形態を右上から見た斜視図である。
【0010】
【
図2A】
図1の胸骨アセンダー装置の組立工程を示す分解図である。
【
図2B】同胸骨アセンダー装置の組立工程を示す分解図である。
【
図2C】同胸骨アセンダー装置の組立工程を示す分解図である。
【
図2D】同胸骨アセンダー装置の組立工程を示す分解図である。
【
図2E】同胸骨アセンダー装置の組立工程を示す分解図である。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【
図7A】
図5の右胸骨アセンダーを
図1の胸骨アセンダー装置に装填する手順を示す斜視図である。
【0016】
【
図8】
図1の胸骨アセンダー装置の使用を含む手術セットの斜視図である。
【0017】
【
図9A】手術における胸骨アセンダー装置の使用の手順を示す斜視図である。
【0018】
明確にする目的で、そして適切であると思われる場合、対応するフィーチャを示すために参照番号が図で繰り返されていること、フィーチャをより良く示すために、図面の様々な要素が必ずしも縮尺どおりに描かれていないことを、理解されたい。
【発明の詳細な説明】
【0019】
図1は、右胸骨アセンダーが取り付けられた胸骨アセンダー装置の一実施形態の斜視図である。
図1に示す胸骨アセンダー装置10は、右胸骨アセンダー12を搭載している。右胸骨アセンダー12は、パネル14を画成し、このパネル14はいくつかのテクスチャーフィーチャ15を有している。このテクスチャーフィーチャ15は、胸骨アセンダーアセンブリ10を低侵襲外科手術で使用しているときに、胸郭の下側に人体組織を傷つけずにしっかりしたグリップを提供するように構成されている。右胸骨アセンダー12のパネル14はまた、ノッチ16を画成し、パネル14の下側に支持ビーム18を有する。右胸骨アセンダー12は、基端12Pに取付ポスト20を有する。取付ポスト20は、インジケータハンドル22の取付部24の端部において、インジケータハンドル22の基端22Pに結合されている。右胸骨アセンダー12は可逆的手段によって結合されており、右胸骨アセンダー12を取り外して左胸骨アセンダー(この図には示されていない)と交換することが容易にできるようになっている。「アセンダー(持ち上げ;ascender)」という用語は、エレベータ(elevator)またはリフター(lifter)という用語と互換性を有している。これら用語は、アセンダーおよび関連する装置の意図された機能を同等に表す。上記結合手段については、後でさらに詳しく説明する。結合方法の代替の例は、固定ねじを使用することであるが、他のものも当業者に知られているかも知れない。インジケータハンドル22は、その下側にグリップ26を画成している。このグリップ26は、外科医が使用し易いような人間工学的把持機能を有するように構成される。インジケータハンドル22の先端22Dには、連結端28と押圧可能なスイッチ30がある。インジケータハンドル22の先端22Dには深さ表示マーク27があり、これは、右胸骨アセンダー12の先端12Dと垂直に位置合わせされている。連結端28は、リニアラック(リニアアクチュエータギア)34の対応する連結端32を嵌合によって受け入れる連結点である。ピボットピン40または他の取付手段を、穴または他の取付手段(この図には示されていない)に結合することにより、連結端28は連結端32に回転可能に取り付けられている。押圧可能なスイッチ30を押すことにより(作動させることにより)、インジケータハンドル22の内部にある爪部材(この図には示されていない)を打ち負かすことができる。爪部材は、リニアアクチュエータギア34の連結端32の内部に配置された固定インデックスギアと係合している。このことは、
図2A-2Eを参照しながら後で詳細に説明する。爪部材はスプリング(バイアス要素)を画成する。このスプリングは、静止時に、爪部材によって画成された1つまたは複数の歯を、固定インデックスギアに向けて付勢する。この固定インデックスギア(この図には示されていない)は、リニアアクチュエータギア34の連結端32に結合されている。爪部材の1つまたは複数の歯が、固定インデックスギアによって画成された1つまたは複数の対応する歯(または他のロックフィーチャ)と噛み合うとき、インジケータハンドル22の位置に対するリニアアクチュエータギア34の角度位置をロックする。スイッチ30が押圧されると(作動されると)、爪部材は打ち負かされて固定インデックスギアから一時的に押し退けられ、インジケータハンドル22に対するリニアアクチュエータギア34の自由な角運動が可能となる。スイッチ30を解放すると、爪部材と固定インデックスギアが再び係合し、これにより、インジケータハンドル22に対するリニアアクチュエータギア34の角度位置(スイッチ30が解放されたときの角度位置)を再びロックする。
【0020】
リニアアクチュエータギア34は、シリンダギア(円筒ギア;cylinder gear)122と係合するいくつかの歯36といくつかの凹部38をさらに画成する。リニアアクチュエータギア34は、アクチュエータスロット42を介してデュアルサイドの器具アダプタ44に嵌合している。デュアルサイドの器具アダプタ44は、第1アダプタチャネル46と反対側の第2アダプタチャネル(この図では見えない)を画成する。デュアルサイドの器具アダプタ44はまた、デュアルサイドの器具アダプタ44を各側で手術機器ホルダーにロックするためのいくつかのロック機構100、102を画成する。デュアルサイドの器具アダプタ44が両側で手術機器ホルダーに取り付けられると、手術台を横切って2つの手術機器ホルダーが繋げることによって、器具アダプタ44を患者の上に配置することができる。他の実施形態では、単一の手術機器ホルダーに取り付けるための単一のアダプタチャネルのみを有していてもよい。デュアルサイドの器具アダプタ44には、シリンダギア122を保持するギアハウジング48が取り付けられている。ハンドル(旋回バー)50がシリンダギア122に結合されている。ハンドル50を回すと、シリンダギア122が回転し、それにより、リニアアクチュエータギア34が前後に移動し、アクチュエータドライブを形成する。この実施形態では、患者が低侵襲手術(ITA採取処置または他の手術)を受けていて、剣状突起下のアクセス空間の増加が望まれる状況下において、胸骨アセンダーアセンブリ10が患者の剣状突起下の切開部に挿入される。右胸骨アセンダー12のパネル14を用いて、胸郭を持ち上げることができ、それにより、剣状突起下領域の空間を増やすことができる。胸骨アセンダーアセンブリ10の1つの特徴として、インジケータハンドル22の先端22Dの長さが、右胸骨アセンダー12のパネル14の長さと実質的に同じである。このことは、深さ表示マーク27とともに、外科医に、右胸骨アセンダー12または左胸骨アセンダー(胸骨アセンダー装置10に搭載されている胸骨アセンダー)が、患者の剣状突起下の空洞にどれだけ挿入されたかの視覚的表示を提供する。インジケータハンドル22の先端22Dは、胸骨アセンダー12の先端12Dと実質的に位置合わせされている。インジケータハンドル22はまた、右胸骨アセンダー12のパネル14または左胸骨アセンダーのパネルと実質的に平行である。胸骨アセンダー装置(アセンブリ)10が剣状突起下の空洞に挿入されると、胸骨アセンダーアセンブリ10は1つまたは複数の手術機器ホルダーに取り付けられ、これにより低侵襲手術にわたって力の安定が得られる。さらに、胸骨アセンダーアセンブリ10の位置は、インジケータハンドル22とリニアアクチュエータギア34の結合ジョイントを中心に回動することによって、調節することができる。さらに胸骨アセンダーアセンブリ10は、旋回バー50を回転させ、リニアアクチュエータギア34を先端方向に作動させることによって調整することができる。この操作については、後で詳しく説明する。
【0021】
図2Aー
図2Eは、
図1の胸骨アセンダー装置の一連の組み立て工程を示す分解図である。
図2Aに示されるように、第1ハンドル半体22Aはチャネル(凹部)52を画成する。このチャネル52は、取付スロット54と座部(シート;seat)56を有する。チャネル52によって規定される取付スロット54と座部56は、その形状に基づいてtスロット(Tスロット)とも呼ばれ、左右の胸骨アセンダーのいずれかのポストのアライメントキーを、取り外し可能に収容するように構成されている。第2ハンドル半体22Bも、対応する凹部(この図には示されていない)を画成する。第1ハンドル半体22Aはまた、反対側の端部に、第2の凹部72とギア用凹部74と穴76とを画成する。第2ハンドル半体22Bも、対応する凹部(この図には示されていない)を画成する。第2の凹部72は、スプリング58とスプリングプランジャ60とプランジャハウジング62を収容して保持するように構成されており、これらは最初に一緒に組み立てられる。ギア部66と非ギア部65を有する爪ギア64が、第1ハンドル半体22Aの穴76内に配置される。キー溝70を有する固定インデックスギア(ピボットギア)68が、第1ハンドル半体22Aのギア用凹部74に保持される。爪ギア64は、スプリング58、スプリングプランジャ60、プランジャハウジング62のアセンブリに対峙して保持されており、これにより爪ギア64が押されてスライドするまで、爪ギア64はピボットギア68に向かって付勢されている。爪ギア64がスライドすると、ギア部66はピボットギア68との係合を解除され、ピボットギア68は爪ギア64の非ギア部65と係合する。その結果、ピボットギア68の自由な回転(旋回)が可能となる。爪ギア64が解放されると、ギア部66はピボットギア68を再ロックし、ピボットギア68のさらなる旋回(回転)を禁じる。第2ハンドル半体22Bが第1ハンドル半体22Aに被せられ、第2ハンドル半体22Bの穴84、86、88内に配置・固定されるいくつかのリベット90を用いて固定される。この実施形態では、ハンドル半体22A、22Bを一緒に固定して取り付けるために穴とリベットが使用されるが、溶接、接着剤、または当業者に知られている他の手段を使用することもできる。
【0022】
図2Bは、胸骨アセンダー装置10の器具アダプタアセンブリ116部分の組立工程を示している。いくつかの穴95および横穴97を有する第1アダプタハウジング92は、平坦部96Fを有する第1カム96を穴97内に配置することによって、組み立てられる。キー104を有する第1レバーロック100が穴97および第1カム96内に配置され、これにより、第1レバーロック100を回転させると、第1カム96も穴97内で回転するようになっている。第1レバーロック100は 第1レバーロック100のチャネル106内に配置されるリベット108を用いて、第1アダプタハウジング92に回動可能に取り付けられている。いくつかの穴95および横穴(この図では見えない)を有する第2アダプタハウジング94は、平坦部98Fを有する第2カム98を穴97内に配置することによって組み立てられる。キー110を有する第2レバーロック102が、第2アダプタハウジング94の穴および第2カム98内に配置され、これにより、第2レバーロック102を回転させると、第2カム98も第2アダプタハウジング94の穴内で回転するようになっている。第2レバーロック102は、第2レバーロック102のチャネル112内に配置されるリベット114を用いて、第2アダプタハウジング94に回動可能に取り付けられている。
【0023】
図2Cは、リニアアクチュエータギア34に焦点を合わせた胸骨アセンダー装置10の組立工程を示す。リニアアクチュエータギア34は、連結端32を有しており、さらに、穴136と、いくつかの歯36と、これら歯の間に配置された凹部38を画成する。シリンダギア122は、2つのサイド部130と、サイド部130のサイドチャネル128と、スロット124と、2つのポスト126(そのうちの1つがこの図に見える)とを画成する。シリンダギア122は、隣接する2つの凹部38に2つのポスト126が保持された状態で、リニアアクチュエータギア34に配置される。ドライブボトム134は、リニアアクチュエータギア34の反対側において、2つのリベット132により、シリンダギア122の2つのポスト126に固定されている。完全に組み立てられると、シリンダギア122は時計回りまたは反時計回りの方向に回転され、これにより、リニアアクチュエータギアが前後に移動し、アクチュエータドライブを形成する。シリンダギア122が回転すると、第1ピニオン(ポスト)126は、リニアアクチュエータギア34の凹部38から外れるように回転し、この回転の際に、第2ピンドライバ(この図には見えない)は第2の凹部38内に留まって回転する。第1のポスト126は、第2の凹部38を通過して第3の凹部38内へと回転する。このようにして、回転運動をリニア運動に変換し、リニアアクチュエータギア34をギアハウジング48に対して移動させる。この動作を逆方向に行うと、アクチュエータギア34が逆方向に移動する。次に、中央開口120およびいくつかの穴118を有する上側ラックハウジング48を、リニアアクチュエータギア34およびシリンダギア122に被せ、シリンダギア122を上側ラックハウジング48の中央開口120から突出させる。これにより、シリンダギア122が回転するときに、上側ラックハウジング48がリニアアクチュエータギア34に沿ってスライドできるようにする。
図2Dはハンドル50を示す。このハンドル50は、2つのサイド部130の間においてシリンダギア122に配置され、リベット119をシリンダギア122のサイドチャネル128に通し、かつ旋回バー50の穴138に通すことにより、所定の位置に保持される。中間ラックハウジング140が、リニアアクチュエータギア34の底部に配置されて、上側ラックハウジング48と位置合わせされている。この中間ラックハウジング140は、中央穴142と、いくつかの穴144と、2つのハウジングインサート146を有する。上側ラックハウジング48の穴118は、中間ラックハウジング140の穴144と位置合わせされている。2つのハウジングインサート146は、シリンダギア122のドライブボトム344を拘束し、かつ自由な回転を許容するように構成される。ハンドル(旋回バー)50は、手術中にシリンダギア122を回転させるために使用される。
図2Eに示すように、胸骨アセンダー装置10の組立は、インジケータハンドル22の先端22Dをリニアアクチュエータギア34に挿入することにより完成する。ピボットピン40は、ピボットピンの柱部148がピボットギア68のギアキー溝70に噛み合った状態で、穴136に挿入されている。その機能は
図2Aに示されている。
図2Bに示し説明した機器アダプタアセンブリ116は、中間ラックハウジング140の底部に配置され、機器アダプタアセンブリ116の穴95は、上側ラックハウジング48の対応する穴118と位置合わせされる。次に、いくつかのリベット150を穴118に配置して、器具アダプタアセンブリ116を中間ラックハウジング140と上側ラックハウジング48に固定し結合する。
【0024】
図3は、左胸骨アセンダーの斜視図である。この図は、左胸骨アセンダー152によって画成される種々のフィーチャを示している。左胸骨アセンダー152は、パネル154と、基端152Pのノッチ162と、パネル154の下側を横切る支持ビーム160と、胸骨アセンダー装置に取り付けるための取付ポスト158と、を有している。パネル154は、手術対象となる解剖学的領域の反対側に、いくつかのテクスチャーフィーチャ156を有する。左胸骨アセンダー152のパネル154は、先端152Dにおいて、わずかなエッジがある丸い形状を有する。また、ポスト158により、2つの対向するアライメント・配向フィーチャ164が画成される。これらフィーチャ164は、左胸骨アセンダー152をハンドルに対してアライメントし、スライドさせ、そしてロックするように構成されている。これらのフィーチャ164はほぼT字形をなし、インジケータハンドル22の前述のTスロットに嵌合するように構成されている。このフィーチャの使用については、
図7A-
図7Cを参照してさらに説明する。ポスト158はまた、角度のある前部アライメントフィーチャ166を画成する。このフィーチャ166は、肋骨と胸骨との間に画成された解剖学的ノッチに左胸骨アセンダーをアライメントして配置するのを助ける。これは、胸骨アセンダーを胸骨アセンダー装置の一部として使用するときに、適切な場所に配置する際の触覚補助として役立つ。図示の実施形態はこれらのフィーチャを有するが、胸骨アセンダーのパネルの代替の実施形態は、他の形状または半径を有してもよく、そして鋭利であっても、鋭利でなくてもよい。さらに他の実施形態は、ここに示される長方形のテクスチャーフィーチャ156以外の他のフィーチャを有していてもよく、他の形状のフィーチャを含んでいてもよく、テクスチャーフィーチャを全く含まなくてもよい。左胸骨アセンダーの他の実施形態は、金属、プラスチック、複合材料、またはそれらの組み合わせで形成してもよいし、代替のアライメントやロックの方法およびフィーチャを含んでもよい。
図4A、
図4B、
図4C、
図4D、
図4E、
図4Fは、それぞれ、
図3の胸骨アセンダーの正面図、左側面図、右側面図、背面図、上面図、および底面図である。
【0025】
図5は、右胸骨アセンダーの斜視図である。この図は、右胸骨アセンダー12によって画成される種々のフィーチャを示している。右胸骨アセンダー12は、パネル14と、基端12Pのノッチ16と、パネル14の下側を横切る支持ビーム(この図には示されていない)と、胸骨アセンダー装置に取り付けるための取付ポスト20と、を有している。パネル14は、手術対象となる解剖学的領域の反対側に、いくつかのテクスチャーフィーチャ15を有する。右胸骨アセンダー12のパネル14は、先端12Dにおいて、わずかなエッジがある丸い形状を有する。また、ポスト20により、2つの対向するアライメント・配向フィーチャ168が画成される。これらフィーチャ168は、右胸骨アセンダー12をハンドルに対してアライメントし、スライドさせ、そしてロックするように構成されている。これらのフィーチャ168はほぼT字形をなし、インジケータハンドル22の前述のTスロットに嵌合するように構成されている。このフィーチャの使用については、
図7A-
図7Cを参照してさらに説明する。ポスト20はまた、角度のある前部アライメントフィーチャ170を画成する。このフィーチャ170は、肋骨と胸骨との間に画成された解剖学的ノッチに右胸骨アセンダーをアライメントして配置するのを助ける。これは、胸骨アセンダーを胸骨アセンダー装置の一部として使用するときに、適切な場所に配置する際の触覚補助として役立つ。図示の実施形態はこれらのフィーチャを有するが、代替の実施形態は、他の形状または半径を有してもよく、そして鋭利であっても、鋭利でなくてもよい。さらに他の実施形態は、ここに示される長方形のテクスチャーフィーチャ15以外の他の取付フィーチャを有していてもよく、他の形状のフィーチャを含んでいてもよく、テクスチャーフィーチャを全く含まなくてもよい。右胸骨アセンダーの他の実施形態は、金属、プラスチック、複合材料、またはそれらの組み合わせで形成してもよい。
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、
図6Fは、それぞれ、
図5の胸骨アセンダーの正面図、左側面図、右側面図、背面図、上面図、および底面図である。
【0026】
図7A-
図7Cは、
図5の右胸骨アセンダーを
図1の胸骨アセンダー装置に装填する一連の工程を示す斜視図である。適切な胸骨アセンダー(左または右)が、患者の胸骨を持ち上げる必要がある低侵襲外科手術の対象領域に応じて選択される。
図7Aは、胸骨エレベータ装置10のインジケータハンドル22のTスロット54に位置合わせされ、その近くに配置された右胸骨アセンダー12を示す。右胸骨アセンダー12のポスト20の配向フィーチャ168が方向169に移動し、インジケータハンドル22のスロット54に完全に挿入される。
図7Bに示されるように挿入されると、右胸骨アセンダー12は、インジケータハンドル22のスロット54の座部56に向かって方向171に下向きに引かれ、これにより、右胸骨アセンダー12は所定の位置にロックされる。
図7Cは、右胸骨アセンダー12がインジケータハンドル22に完全に挿入されロックされた状態を示している。
【0027】
図8は、
図1の胸骨アセンダー装置の使用を含む手術セットの斜視図である。図示の手術セットでは、レール176を有する手術台174と、手術を待つ手術台174上の患者172が示されている。レール176には、第1中央手術機器ホルダー182を有する第1手術機器ホルダー装置178に取り付けられている。第1手術機器ホルダー装置178は、第1アダプタチャネル46において胸骨アセンダー装置10に取り付けられている。手術台の反対側では、第2手術機器ホルダー装置180が反対側のレール(この図では見えない)に取り付けられている。第2手術機器ホルダー装置180は第2中央手術機器ホルダー184を有し、胸骨アセンダー装置10の反対側で第2アダプタチャネル(この図では見えない)に、取り付けられている。低侵襲手術または他の手術中に、第1中央手術機器ホルダー182と第2中央手術機器ホルダー184の各々を利用して、胸骨アセンダー装置10や、スコープホルダー、カニューレ、または他の手術機器・器具の1つまたは複数を配置し保持することができる。この構成では、第1中央手術機器ホルダー182と第2中央外手術機器ホルダー184は、患者172を越えて繋がり、これにより、胸骨アセンダー装置10を手術台174上の患者172に対して最初の中央位置にしっかりと配置するようになっている。
【0028】
図9A~9Dは、手術における胸骨アセンダー装置の使用の一連の操作手順を示す斜視図である。
図9A~9Dにおいて、患者172の一部が断面で示され、様々な器具の一部が明確にするために省略して示されている。患者172は、手術の準備ができている状態で示されている。患者には、剣状突起のすぐ下に(胸骨188の近くで胸骨ノッチに)、切開186が形成されている。胸骨エレベータ装置(胸骨持ち上げ装置)10は、手術台174にしっかりと取り付けられている第1中央手術機器ホルダー182と第2中央手術機器ホルダー184に、固定されている。上側ラックハウジング48(アーチのキーストーン)は、歯付きリニアラックの上部にあり、ラック34のその後の上方への移動を可能にする。インジケータハンドル22の角度、ひいては胸骨アセンダー12の角度は、インジケータハンドル22のピボットボタン(押圧スイッチ)30を押して、リニアアクチュエータギア34に対してインジケータハンドル22を可動にすることにより、調節することができる。
図9Bに示されるように、胸骨アセンダー12の先端12Dは、胸骨アセンダー12が胸骨188に沿った所望の位置に来るまで、方向190で切開186に挿入される。胸骨アセンダー12は胸骨188の解剖学的構造と位置合わせされる。この位置合わせに、胸内の胸骨アセンダー12のパネルの先端位置を測定するための深度インジケータ27が用いられる。この時点で、第1中央手術機器ホルダー182と第2中央手術機器ホルダー184は、適切に調節された後ロックされ、所定の位置に固定される。
図9Cは、旋回バー(スイベルバー)50がロック解除されて反時計回り方向192に旋回され、これにより、胸骨アセンダー12およびインジケータハンドル22が方向194に上げられている状態を示す。これにより、胸骨188が後退し、アクセスのための剣状突起下空間198が形成される。ここで説明する手順の最終状態が
図9Dに示されている。この時点で、旋回バー50を完全に上または下の位置に動かして、ギアハウジング48を所定の位置にロックし、胸骨アセンダー12のそれ以上の動きを防ぐことができる。
【0029】
胸骨アセンダー装置の様々な利点を論じた。本明細書で論じられる実施形態は、本明細書では例として説明されている。前述の詳細な開示は、単なる例として提示されることを意図しており、限定するものではないことは、当業者には明らかであろう。一例として、論じてきたエンドエフェクタはしばしばスコープの使用に焦点を合わせていたが、このシステムは他のタイプの手術器具を位置決めするために用いることができる。本明細書に明示的に記載されていないが、様々な変更、改善、および修正を当業者は意図するであろう。本明細書で明示的に述べられていないが、様々な変更、改善、および修正が当業者に意図されるであろう。これらの変更、改善、および修正は、ここに示唆されることを意図しており、クレームされた発明の精神および範囲内にある。図面は必ずしも縮尺通りではない。さらに、要素の処理またはシーケンスの記載された順序、または数字、文字、または他の指定は、したがって、特許請求の範囲で指定されている場合を除き、請求項を任意の順序に限定することを意図しない。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物よってのみ限定される。
【国際調査報告】