(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】フリースタンディングフィルム型リチウム二次電池用正極材、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20221027BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221027BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20221027BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221027BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20221027BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 A
H01M4/40
H01M10/052
H01M10/0566
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511087
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2021006415
(87)【国際公開番号】W WO2021241959
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0063882
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064083
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミンス・キム
(72)【発明者】
【氏名】キュンシク・ホン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AJ11
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ14
5H029HJ15
5H029HJ19
5H050AA14
5H050BA17
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA03
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA14
5H050HA15
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、フリースタンディングフィルム型リチウム二次電池用正極材、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。より詳しくは、上記正極材は加圧条件で硫黄が強い自己凝集力を表し、多孔性炭素材は柔軟性を示す特性を利用して、乾式工程を通じて炭素を含む硫黄溶融物を含むフリースタンディングフィルム形態で製造されることができるし、上記正極材自体で高ローディング量の正極に適用されることができ、簡素化された工程で製造されるので、費用と時間の側面で工程効率を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリースタンディングフィルム形態のリチウム二次電池用正極材であって、
上記正極材は炭素を含む硫黄溶融物を含むものである、リチウム二次電池用正極材。
【請求項2】
上記炭素を含む硫黄溶融物は、上記硫黄溶融物の内部に多孔性炭素材が分散された形態である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極材。
【請求項3】
上記炭素を含む硫黄溶融物は、硫黄50質量%ないし80質量%及び多孔性炭素材20質量%ないし50質量%で構成されたものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極材。
【請求項4】
上記正極材内部の接着力は10gf/cm以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極材。
【請求項5】
上記多孔性炭素材は、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックの中で選択されるカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)及び多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)が選択される炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)及び活性化炭素ファイバー(ACF)の中で選択される炭素繊維;及び活性炭素からなる群から選択される1種以上を含むものである、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極材。
【請求項6】
上記正極材の気孔率は68%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極材。
【請求項7】
(S1)硫黄と多孔性炭素材を混合する段階;
(S2)上記(S1)段階で形成された混合物を熱処理する段階;及び
(S3)上記(S2)段階で形成された硫黄‐炭素複合体を容器に充填した後、加圧して炭素を含む硫黄溶融物を形成する段階;を含むリチウム二次電池用正極材の製造方法。
【請求項8】
上記熱処理は130℃ないし170℃で行われる、請求項7に記載のリチウム二次電池用正極材の製造方法。
【請求項9】
上記加圧は0.8MPaないし15MPaの圧力下で行われる、請求項7に記載のリチウム二次電池用正極材の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の正極材を含む正極;
リチウム金属またはリチウム合金を含む負極;
上記正極と負極の間に位置する分離膜;及び
上記正極、負極及び分離膜が含浸された電解液;
を含むリチウム二次電池。
【請求項11】
上記リチウム二次電池はリチウム‐硫黄二次電池である、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
上記正極のローディング量は3.0mAh/cm
2ないし5.0mAh/cm
2である、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年05月27日付韓国特許出願第2020‐0063882号及び2021年05月18日付韓国特許出願第2021‐0064083号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、フリースタンディングフィルム型リチウム二次電池用正極材、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近電子機器分野と電気自動車分野の急速な発展によって二次電池の需要が増加している。特に、携帯用電子機器の小型化及び軽量化によって、それに応えられる高エネルギー密度を持つ二次電池に対する要求が高まっている。
【0004】
二次電池の中でリチウム‐硫黄二次電池は、硫黄‐硫黄結合を持つ硫黄系化合物を正極活物質で使用し、リチウムのようなアルカリ金属またはリチウムイオンのような金属イオンの挿入及び脱挿入が起きる炭素系物質またはリチウムと合金を形成するシリコーンやスズなどを負極活物質で使う二次電池である。具体的に、還元反応である放電の際に硫黄‐硫黄結合が切れて硫黄の酸化数が減少し、酸化反応である充電の際に硫黄の酸化数が増加して硫黄‐硫黄結合が再び形成される酸化‐還元反応を利用して電気的エネルギーを貯蔵して生成する。
【0005】
特に、リチウム‐硫黄二次電池に正極活物質で使われる硫黄は、理論エネルギー密度が1,675mAh/gで、既存のリチウム二次電池に使われる正極活物質に比べて5倍程度高い理論エネルギー密度を持っていて、高出力、高エネルギー密度の発現が可能な電池である。これに加え、硫黄は安価で埋蔵量が豊かであり、需給が容易で、環境にやさしいという利点のため、携帯用電子機器だけでなく電気自動車のような中大型装置のエネルギー源として注目されている。
【0006】
硫黄は電気伝導度が5×10‐30S/cmで電気伝導性がない不導体なので、電気化学反応で生成された電子の移動が難しい問題がある。ここで、電気化学的反応サイトを提供することができる炭素のような電気伝導性物質とともに複合化されて硫黄‐炭素複合体で使われている。
【0007】
上記硫黄‐炭素複合体を正極材で使うために、導電材及びバインダーとともにスラリーを製造した後、上記スラリーを集電体に塗布するスラリー工程を通じて正極を製造する方式が一般的に使われている。
【0008】
しかし、上記スラリー工程によって製造される正極は、スラリーを製造する時使われる導電材及びバインダーによって正極のローディング量が低下してエネルギー密度も減少する問題がある。また、上記スラリー工程は、混合、コーティング、乾燥及び圧延を含む一連の細部工程に要される時間と費用が増加する問題がある。
【0009】
ここで、簡素な工程で高ローディング量のリチウム二次電池用正極を製造することができる技術開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2019‐0100152号
【特許文献2】中国公開特許第109873120号
【特許文献3】米国公開特許第2018‐0212252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは上記問題点を解決するために多角的に研究した結果、加圧条件で硫黄‐炭素複合体の表面に形成された硫黄が溶融されて周りの硫黄と結集する性質と炭素材の柔軟性を利用し、硫黄‐炭素複合体に加圧条件を与える乾式工程を通じて炭素を含む硫黄溶融物からなるフリースタンディングフィルム型正極材を製造することができるし、上記フリースタンディングフィルム型正極材自体をリチウム二次電池の正極で適用できることを確認した。
【0012】
したがって、本発明の目的は炭素を含む硫黄溶融物を含むフリースタンディングフィルム型リチウム二次電池用正極材及びこの製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は上記フリースタンディングフィルム型リチウム二次電池用正極材を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、フリースタンディングフィルム形態のリチウム二次電池用正極材であって、上記正極材は炭素を含む硫黄溶融物を含むことである、リチウム二次電池用正極材を提供する。
【0015】
本発明は、また、(S1)硫黄と多孔性炭素材を混合する段階;
(S2)上記(S1)段階で形成された混合物を熱処理する段階;及び
(S3)上記(S2)段階で形成された硫黄‐炭素複合体を容器に充填した後、加圧して炭素を含む硫黄溶融物を形成する段階;を含むリチウム二次電池用正極材の製造方法を提供する。
【0016】
本発明は、また、上記正極材を含む正極;リチウム金属またはリチウム合金を含む負極;上記正極と負極の間に位置する分離膜;及び上記正極、負極及び分離膜が含浸された電解液;を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による正極材は、硫黄と多孔性炭素材のみからなる炭素を含む硫黄溶融物を含んで高ローディング量の正極を具現することができる。
【0018】
また、上記正極材は、スラリーを利用して集電体にコーティングする方式ではなく、フリースタンディングフィルム型としてそれ自体で正極として活用可能である。
【0019】
また、上記正極材は、混合、コーティング、乾燥及び圧延を含む一連の細部工程を含むスラリー工程ではなく、硫黄と多孔性炭素材を混合した後、熱処理後加圧する簡素な乾式工程によって製造されることができて、費用及び時間の側面で工程効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】リチウム二次電池用正極材で使われることができる硫黄、炭素及び硫黄‐炭素複合体を加圧する場合の物性変化及び成形性を示す模式図である。
【
図2】実施例1で製造されたフリースタンディングフィルム型正極材の写真である。
【
図4a】実施例及び比較例で製造された正極材を適用したコインセルに対する初期放電容量測定結果を示すグラフである。
【
図4b】実施例及び比較例で製造された正極材を適用したコインセルに対する初期放電容量測定結果を示すグラフである。
【
図4c】実施例及び比較例で製造された正極材を適用したコインセルに対する初期放電容量測定結果を示すグラフである。
【
図4d】実施例及び比較例で製造された正極材を適用したコインセルに対する初期放電容量測定結果を示すグラフである。
【
図4e】実施例及び比較例で製造された正極材を適用したコインセルに対する初期放電容量測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施例2及び比較例2で製造された正極材を適用したコインセルに対する寿命特性測定結果を示すグラフである。
【
図6】製造例1の炭素ナノチューブ(CNT)と硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)に対するSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に対して理解しやすくするために、本発明をより詳しく説明する。
【0022】
本明細書及び請求範囲で使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味で限定して解釈されてはならないし、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈しなければならない。
【0023】
本明細書で使われた用語「フリースタンディングフィルム(free‐standing film)」とは、常温・常圧で別途支持体なしにそれ自体でフィルム形態を維持することができるフィルムを意味する。
【0024】
本明細書で使われた用語「炭素を含む硫黄溶融物」は硫黄と炭素を原料にして、熱処理及び加圧する工程を経た後で製造されたもので、多孔性炭素材が硫黄溶融物の内部に分散された状態の物質を意味する。
【0025】
リチウム二次電池用正極材
本発明はフリースタンディングフィルム形態のリチウム二次電池用正極材であって、上記正極材は炭素を含む硫黄溶融物を含むものであってもよい。上記正極材は硫黄溶融物に多孔性炭素材が分散された形態であってもよい。また、上記正極材は後述するように、硫黄と多孔性炭素材のみを原料にして乾式工程で製造されたもので、もっぱら硫黄と多孔性炭素材のみで構成されたものであってもよい。
【0026】
一般に、リチウム二次電池の正極材で使われる上記硫黄‐炭素複合体は、硫黄が多孔性炭素材に担持されている複合体を意味する。例えば、上記多孔性炭素材の表面に硫黄が均一に付着またはコーティングされている形態であってもよい。また、上記硫黄は上記多孔性炭素材の内部気孔に付着、充填またはコーティングされていてもよい。
【0027】
しかし、本発明で上記正極材は硫黄溶融物の内部に多孔性炭素材が分散された形態の炭素を含む硫黄溶融物を含むものであって、硫黄が加圧条件で溶融されて結集する性質によって成形が容易であり、多孔性炭素材の柔軟性によってフリースタンディングフィルム形態で製造されることができる。
【0028】
上記フリースタンディングフィルム形態の正極材は、集電体にコーティングせずに上記フリースタンディングフィルム形態の正極材自体を正極で活用することもできる。
【0029】
上記正極材は硫黄と多孔性炭素材を原料にして乾式工程によって製造されるので、正極材内に硫黄と多孔性炭素材のみが含まれていて、正極で使用する時ローディング量が高い長所がある。また、上記乾式工程は従来のスラリー工程時に要求される混合、あわ消し、コーティング、乾燥及び圧延のような一連の工程を省略することができて、工程費用の節減が可能である。また、上記乾式工程はスラリーを使わないため、上記乾式工程によって製造された炭素を含む硫黄溶融物にはバインダーが全然含まれていないので、バインダー抵抗による電池性能低下を根本的に取り除くことができる。また、上記乾式工程によって製造された炭素を含む硫黄溶融物には導電材が全然含まれていないので、凝集力が足りない導電材によって成形性が低下する問題が最小化されることがある。
【0030】
また、上記正極材は多孔性炭素材が正極材の骨格をなした状態で上記多孔性炭素材の表面に形成されたり、上記多孔性炭素材を取り囲んだ硫黄溶融物によって繋がってフリースタンディングフィルム形態を示す。
【0031】
また、上記正極材は電極加圧成形後に正極材内の接着力が10gf/cm以上の正極材であってもよい。上記接着力は加圧工程時に硫黄が溶融されて周りの硫黄と結集する性質に基づくことであり、上記正極材の接着力が10gf/cm未満であれば正極の間の接着力不足によって電極成形が難しくなる。具体的に、上記接着力は10gf/cm以上、15gf/cm以上、20gf/cm以上、25gf/cm以上、30gf/cm以上または35gf/cm以上であってもよい。また、上記接着力の上限は50gf/cm以下、60gf/cm以下、70gf/cm以下、80gf/cm以下、90gf/cm以下または100gf/cm以下であってもよいが、これに制限されるものではなく、正極材内の接着力は高いほど成形性、耐久性及び電池性能の側面でよいことがある。
【0032】
また、上記正極材の気孔率は68%以下、65%以下、60%以下、55%以下であってもよく、45%以上または50%以上であってもよい。上記正極材の気孔率が68%超過であれば正極の耐久性が低下することがあるし、45%未満であれば気孔内で電気化学反応が起きる空間が細くなるので、正常的なセルの駆動が難しくなることがある。
【0033】
本発明において、上記硫黄は無機硫黄(S8)、Li2Sn(n≧1、nは整数)、有機硫黄化合物及び炭素‐硫黄ポリマー[(C2Sx)n、2.5≦x≦50、n≧2、x及びnは整数である]からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0034】
また、上記硫黄は上記炭素を含む硫黄溶融物全体質量を基準にして50質量%以上、55質量%以上または60質量%以上可能で、70質量%以下、75質量%以下、80質量%以下可能である。上記硫黄が50質量%未満であれば電気化学的活物質である硫黄の割合が減って多孔性炭素材の表面に形成される硫黄溶融物の厚さが薄くなって、炭素を含む硫黄溶融物がちゃんと成形されにくいか、または硫黄の量が減少して電池容量が低下することがある。また、上記硫黄が80質量%超過であれば、非伝導性の硫黄が多孔性炭素材の導電構造を遮断して電気化学的活性が遮断されるので、電池駆動が制限的である。
【0035】
上記炭素を含む硫黄溶融物で硫黄が50質量%ないし80質量%含まれる時、正極材が強い自己凝集力を示すことができるし、上記多孔性炭素材が硫黄溶融物内でよく分散されることができるので、フリースタンディング形態の正極がよく形成されることができる。
【0036】
本発明において、上記多孔性炭素材は内部に気孔または中孔が形成されている構造であるか、または比表面積が高い多孔性炭素材であってもよく、当業界で通常使われるものであれば、いずれもかまわない。
【0037】
上記多孔性炭素材は、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックの中で選択されるカーボンブラック;単一壁炭素ナノチューブ(SWCNT)及び多重壁炭素ナノチューブ(MWCNT)から選択される炭素ナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)及び活性化炭素ファイバー(ACF)の中で選択される炭素繊維;及び活性炭素からなる群から選択される1種以上であってもよいが、これに制限されない。好ましくは、上記多孔性炭素材は炭素ナノチューブであってもよい。
【0038】
上記炭素ナノチューブは構造的特徴によって連結点が多く、フリースタンディングフィルムの成形時にもっと有利である。具体的に上記炭素ナノチューブは縦横比が1を超える形態を持つので、互いに繋がってフリースタンディングフィルムを形成するに有利である。
【0039】
また、上記グラフェンは炭素原子が2次元相に蜂の巣模様の配列を持つ単一層の形態を意味し、薄くて広い断面積と優れる伝導特性を持ち、撓む特性、光に対する高感度など、優れる物性を示す物質である。本発明において、グラフェンは酸化グラフェンを還元して形成した、還元されたグラフェン及び物理的に剥離されたグラフェンの中で選択される1種以上を全て含む。上記グラフェン薄膜は炭素ナノチューブの外面を包む形態で含まれてもよく、電気伝導経路を補強すると同時に、電池の駆動時に硫黄が電解液に湧出されることを抑制することができる。
【0040】
また、上記多孔性炭素材の含量は上記炭素を含む硫黄溶融物全体質量を基準にして20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上または35質量%以上であってもよく、40質量%以下、45質量%以下または50質量%以下であってもよい。上記多孔性炭素材が20質量%未満であれば溶融された硫黄が充填、付着またはコーティングされることができる表面積と空間の提供が十分ではなく、硫黄の電気化学活用性(反応性)が低下することがある。上記炭素材が50質量%を超えれば硫黄の含量が相対的に低下してリチウム二次電池に適用する時、電池のエネルギー密度が低下しすぎることがある。
【0041】
リチウム二次電池用正極材の製造方法
図1は、リチウム二次電池用正極材で使用されることができる硫黄、炭素及び硫黄‐炭素複合体を加圧する場合の物性変化及び成形性を示す模式図である。
【0042】
上記硫黄は加圧条件で表面が溶融され、周りの硫黄と結集する性質を示して成形は可能だが、柔軟性がないため硫黄単独ではフリースタンディングフィルム形態の正極材(正極)を製造することができない。
【0043】
上記炭素は柔軟性はあるが凝集力が足りないため、加圧時に成形自体がされず、フリースタンディングフィルム形態の正極材(正極)を製造することができない。
【0044】
上記硫黄‐炭素複合体は硫黄と多孔性炭素材が複合されたもので、上記多孔性炭素材の外部表面にも硫黄が存在するので、加圧時に多孔性炭素材の外部表面に存在する硫黄が溶融されるので、多孔性炭素材が硫黄溶融物に分散された形態になって成形が可能であり、上記多孔性炭素材が柔軟性があるので、打ち抜きによるフリースタンディングフィルム形態の正極材(正極)成形も可能である。
【0045】
したがって、本発明は加圧時に上記のような硫黄‐炭素複合体の特徴を利用して硫黄‐炭素複合体を乾式工程に適用し、炭素を含む硫黄溶融物を形成することで、リチウム二次電池用正極材を製造する方法を提供する。
【0046】
上記リチウム二次電池用正極材の製造方法は、下記(S1)ないし(S3)段階を含む:
(S1)硫黄と多孔性炭素材を混合する段階;
(S2)上記(S1)段階で形成された混合物を熱処理する段階;及び
(S3)上記(S2)段階で形成された硫黄‐炭素複合体を容器に充填した後、加圧して炭素を含む硫黄溶融物を形成する段階。
【0047】
以下、各段階別に本発明のリチウム二次電池用正極材の製造方法について、より詳しく説明する。
【0048】
上記(S1)段階では、炭素を含む硫黄溶融物からなる正極材を製造するための原料物質である硫黄と多孔性炭素材を混合した混合物を形成することができる。この時、上記硫黄と多孔性炭素材の種類及び適正質量の範囲は上述したとおりである。
【0049】
上記(S2)段階では、上記(S1)段階で形成された混合物を熱処理することができる。
【0050】
上記硫黄と多孔性炭素材の混合物を加熱すると、硫黄は液体状態に変わるようになって、液体状態の硫黄が多孔性炭素材の内部に入ったり表面にコーティングまたは附着されて、上記多孔性炭素材が液体状態の硫黄に分散された形態になることがある。例えば、上記多孔性炭素材が炭素ナノチューブの場合、液体状態の硫黄が毛細管現象を通じて炭素ナノチューブ内部に吸い込まれて硫黄が炭素ナノチューブに担持され、上記炭素ナノチューブは液体状態の硫黄に分散されるようになる。
【0051】
上記熱処理は硫黄の融点以上で行われることがある。例えば、上記熱処理温度は130℃以上、140℃以上または150℃以上であってもよく、160℃以下、165℃以下または170℃以下であってもよい。上記熱処理温度が130℃未満であれば、硫黄が溶けなくて炭素材に担持されたりコーティングされた形態を形成しにくく、炭素材が硫黄に分散された形態も形成しにくいし、170℃を超えれば硫黄が揮発して硫黄の損失と製造装備の劣化を誘発することができる。
【0052】
また、上記熱処理時間は硫黄が熱処理によって溶けて多孔性炭素材に担持されたり、上記多孔性炭素材が硫黄の内部に分散されることができる程度の適正時間であれば可能であり、25分以上または30分以上可能で、40分以下、45分以下または50分以下可能である。
【0053】
上記(S3)段階では、上記(S2)段階で形成された炭素を含む硫黄溶融物を容器に充填した後、加圧してフリースタンディングフィルム形態の正極材を製造することができる。
【0054】
硫黄と炭素の複合体は、加圧状態で強い自己凝集力を表す特性がある。具体的に、加圧状態で上記硫黄‐炭素複合体表面の硫黄が部分的に溶融され、連結性を与えて強い自己凝集力を表すことができる。よって、硫黄‐炭素複合体に対して圧力をかければ、炭素が分散された硫黄溶融物が形成されて炭素粒子の間に凝集力が発生し、また、炭素材は骨格の機能をして、それ自体で柔軟性を持つので、フリースタンディングフィルムが形成されるようになる。
【0055】
上記加圧時の圧力は硫黄‐炭素複合体の間に凝集力が充分発生してフリースタンディングフィルムを形成する程度の圧力であってもよい。例えば、上記加圧時の圧力は0.8Mpa以上、0.9Mpa以上または1Mpa以上であってもよく、5Mpa以下、8Mpa以下、10Mpa以下、13Mpa以下または15Mpa以下が可能である。上記加圧時の圧力が0.8Mpa未満であれば硫黄‐炭素複合体の間の凝集力が弱くてフリースタンディングフィルムが形成されないこともあって、15Mpaを超えれば正極材の気孔率が低すぎて電極の構造が崩れることがある。
【0056】
リチウム二次電池
本発明はまた、上記のような炭素を含む硫黄溶融物を含むフリースタンディングフィルム型正極材を正極で含むリチウム二次電池に関する。
【0057】
上記フリースタンディングフィルム型正極材を正極で使う場合、正極で正極活物質のローディング量は3.0mAh/cm2ないし5.0mAh/cm2であってもよく、これは上記正極材がバインダーや導電材が必要ない乾式工程で製造されたことに基づく。
【0058】
本発明によるリチウム二次電池は、正極、負極及びこれらの間に介在された電解質を含み、この時、上記正極として前述したようなフリースタンディングフィルム形態の正極材自体を正極で使うことができる。
【0059】
また、本発明によるリチウム二次電池において、負極は負極集電体上に負極活物質を持つ負極活物質層が形成されたり、負極活物質層(一例として、リチウムホイル)を単独で使うことができる。
【0060】
この時、負極集電体や負極活物質層の種類は本発明で特に限定せず、公知の材質が使用可能である。
【0061】
また、負極集電体は当該電池に化学的変化を引き起こさずに導電性を持つものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使われることができる。また、上記負極集電体は、正極集電体と同様、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が使われることができる。
【0062】
また、負極活物質は結晶質人造黒鉛、結晶質天然黒鉛、非晶質ハードカーボン、低結晶質ソフトカーボン、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、スーパー‐P、グラフェン(graphene)、繊維状炭素からなる群から選択される一つ以上の炭素系物質、Si系物質、LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1‐xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li‐Co‐Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などを含むことができるが、これらのみに限定されない。
【0063】
これに加え、負極活物質はSnxMe1‐xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO22、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの酸化物などを使うことができるし、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質が単独で、または2種以上が混用されて使われることができる。
【0064】
また、本発明によるリチウム二次電池において、電解液はリチウム二次電池の製造に通常使われたものなどがいずれも使われることができる。
【0065】
例えば、上記電解液において、電解質として含まれてもよいリチウム塩は、リチウム二次電池用電解液に通常使われるものなどが制限されずに使われてもよく、例えば、上記リチウム塩の陰イオンでは、F‐、Cl‐、Br‐、I‐、NO3
‐、N(CN)2
‐、BF4
‐、ClO4
‐、PF6
‐、(CF3)2PF4
‐、(CF3)3PF3
‐、(CF3)4PF2
‐、(CF3)5PF‐、(CF3)6P‐、CF3SO3
‐、CF3CF2SO3
‐、(CF3SO2)2N‐、(FSO2)2N‐
、CF3CF2(CF3)2CO‐、(CF3SO2)2CH‐、(SF5)3C‐、(CF3SO2)3C‐、CF3(CF2)7SO3
‐、CF3CO2
‐、CH3CO2
‐、SCN‐及び(CF3CF2SO2)2N‐からなる群から選択されたいずれか一つであってもよい。具体的に、上記リチウム塩では、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAl04、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2(Lithium bis(perfluoroethylsulfonyl)imide、BETI)、LiN(CF3SO2)2(Lithium bis(Trifluoromethanesulfonyl)imide、LiTFSI)、LiN(CaF2a+1SO2)(CbF2b+1SO2)(ただし、a及びbは自然数、好ましくは1≦a≦20で、1≦b≦20である)、リチウムポリ[4,4’‐(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノキシ]スルホニルイミド(lithium poly[4,4’‐(hexafluoroisopropylidene)diphenoxy]sulfonylimide、LiPHFIPSI)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2、LiNO3などが使われることができるし、この中でもLiTFSI、BETIまたはLiPHFIPSIなどのようなスルホニル基‐含有イミドリチウム化合物がより好ましい。
【0066】
本発明で使われる電解液において、電解液に含まれる有機溶媒では、リチウム二次電池用電解液に通常使われるものなどが制限されずに使われることができるし、代表的に、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ジオキソラン(DOL)、ジメチルスルファオキサイド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、ガンマ‐ブチロラクトン、プロピレンスルフィド及びテトラヒドロフランからなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらの中で2種以上の混合物などが代表的に使われることができる。特に、上記カーボネート系有機溶媒の中で環形カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは高粘度有機溶媒として誘電率が高く、電解質内のリチウム塩をよく解離させるので好ましく使われることができるし、このような環形カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率線形カーボネートを適当な割合で混合して使用すれば、高い電気伝導率を持つ電解液を作ることができて、より好ましく使われることができる。
【0067】
また、本発明によるリチウム二次電池において、分離膜は従来に分離膜で使われた通常の多孔性高分子フィルムを使うことができる。例えば、上記分離膜はエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、またはこれらを積層して使うことができるし、または通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使うことができるが、これに限定されるものではない。
【0068】
前述したリチウム二次電池の形態は特に制限されないし、例えば、ゼリー‐ロール形、スタック形、スタック‐フォールディング型(スタック‐Z‐フォールディング型を含む)、またはラミネーション‐スタック型であってもよく、好ましくはスタック‐フォールディング型であってもよい。
【0069】
このような上記負極、分離膜及び正極を順次積層して電解液を注入した電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れた後、キャッププレート及びガスケットで密封して組み立て、リチウム二次電池を製造することができる。
【0070】
この時、リチウム二次電池は、使用する正極/負極材質によってリチウム‐硫黄二次電池、リチウム‐空気電池、リチウム‐酸化物電池、リチウム全固体電池など様々な電池で分類可能で、形態によって円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などに分類されることができるし、サイズによってバルク形と薄膜タイプに分けることができる。これらの電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので詳細な説明は省略する。
【0071】
本発明において、リチウム二次電池は正極として炭素を含む硫黄溶融物を含むフリースタンディングフィルム形態の正極材を使用するので、リチウム‐硫黄二次電池であってもよい。上記リチウム‐硫黄二次電池は、負極活物質でリチウム金属を使うことができる。リチウム‐硫黄二次電池の放電時、負極ではリチウムの酸化反応が起きて、正極では硫黄の還元反応が発生する。この時、還元された硫黄は負極から移動されてきたリチウムイオンと結合してリチウムポリスルフィドに変換され、最終的にリチウムスルフィドを形成する反応を伴う。
【0072】
本発明は、また、上記リチウム二次電池を含む電池モジュールに係り、高容量及び高いレート特性などが要求されるデバイスの電源として使われることができる。上記デバイスの具体的な例では、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ‐インハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E‐bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
以下、本発明を理解しやすくするために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明白なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0074】
製造例1:硫黄‐炭素複合体の製造
硫黄(S)と炭素ナノチューブ(CNT)を固体状態で65:35の質量比で均一に混合した後、100rpmの条件で1時間ボールミーリングして混合物を製造した。
【0075】
上記混合物を155℃で35分間熱処理して硫黄をCNTの気孔内に担持、及び表面にコーティングされるようにして硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)を製造した。この時、上記CNTは比表面積350m2/gのものを使用した。
【0076】
実施例1
(1)フリースタンディングフィルム型正極材の製造
上記製造例1の硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)をモールドに充填させた後、油圧プレスを利用して1MPaの圧力で加圧することで炭素を含む硫黄溶融物を形成して、
図2に示すようにフリースタンディングフィルム型正極材を製造した。
【0077】
(2)リチウム‐硫黄二次電池の製造
上記製造されたフリースタンディングフィルム型正極材を正極で用意し、厚さ150μmのリチウム金属を負極で用意した。
【0078】
電解液はテトラエチレングリコールジメチルエテル(TEGDME)/ジオキソラン(DOL)/ジメトキシエタン(DME)を1:1:1の体積比で混合した有機溶媒に1M濃度のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と0.1M濃度の窒化リチウム(LiNO3)を溶解させて製造した。
【0079】
上記正極と負極の間に厚さ20μm及び気孔率45%の多孔性ポリエチレン分離膜を介在して電極組立体を製造し、上記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に上記電解質を注入してリチウム‐硫黄二次電池を製造した。
【0080】
実施例2
上記硫黄‐炭素複合体の加圧時の圧力を1.5Mpaにしたことを除いて実施例1と同様の方法で実施した。
【0081】
実施例3
上記硫黄‐炭素複合体の加圧時の圧力を3Mpaにしたことを除いて実施例1と同様の方法で実施した。
【0082】
比較例1
上記製造例1の硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)、導電材及びバインダーを90:5:5の質量比で混合してスラリーを製造した後、アルミニウムホイルの上にコーティングした後、乾燥及び圧延して正極を製造したことを除いて実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄二次電池を製造した。この時、上記導電材はVGCF(Vapor grown carbon fiber)を使用し、上記バインダーはSBR(Styrene Butadiene Rubber)を使用した。
【0083】
また、上記圧延によって正極の気孔率が68%になるようにした。
【0084】
比較例2
圧延された厚さを比較例1に比べて相対的に減少させ、正極の気孔率が65%になるようにしたことを除いて比較例1と同様の方法でリチウム‐硫黄二次電池を製造した。
【0085】
比較例3
圧延された厚さを比較例2に比べて相対的に減少させ、正極の気孔率が58%になるようにしたことを除いて比較例1と同様の方法でリチウム‐硫黄二次電池を製造した。
【0086】
比較例4
加圧時の圧力を0.5Mpaにしたことを除いて実施例1と同様の方法で実施した。
【0087】
比較例5
加圧時の圧力を20Mpaにしたことを除いて実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄二次電池を製造した。
【0088】
比較例6
硫黄‐炭素複合体と一緒に導電材であるCNTを10質量%のモールドに充填して加圧したことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム‐硫黄二次電池を製造した。この時、導電材の含量は硫黄‐炭素複合体と導電材の全体質量を基準にしたものである。
【0089】
実験例1:工程時間比較
実施例及び比較例で正極材を製造するために工程に要される時間を測定して比べた。工程に必要な時間は下記表1に記載したとおりである。
【0090】
【0091】
上記表1に示すように、実施例1、2及び3は細部工程として充填及び加圧工程のみを含む乾式工程を利用して正極材を製造するので、全体工程時間が1時間未満であることが分かる。
【0092】
一方、比較例1、2及び3は、細部工程として混合、コーティング、乾燥及び圧延工程を含むスラリー工程を利用して正極材を製造するので、全体工程時間がいずれも5時間を超えることが分かる。
【0093】
このような結果から、乾式工程を利用して正極材を製造する場合、工程効率を向上させることができるということを確認することができた。
【0094】
実験例2:正極材の気孔率及び正極材内の接着力測定
実施例及び比較例でそれぞれ製造された正極の気孔率を測定して比べ、その結果は表2に記載したとおりである。
【0095】
上記気孔率は正極の質量と厚さに基づいて正極の密度を計算した後、硫黄と炭素の真密度で逆計算して気孔率を計算した(硫黄の真密度:2.07mg/cc、炭素の真密度:2.00mg/cc)。
【0096】
上記接着力は、接着力測定機器(AMETEK社、LS1)を利用して測定した。
【0097】
【0098】
上記表2に示すように、乾式工程によって正極材を製造した実施例1、2及び3の場合、加圧時の圧力が増加するほど気孔率は減少し、正極材内の接着力は増加することを確認した。
【0099】
また、湿式工程によって正極材を製造した比較例1、2及び3の場合も圧延回数を増加させるほど気孔率が減少し、正極材内の接着力は増加することが分かった。
【0100】
正極材の気孔率が高すぎると耐久性が低下し、低すぎると電気伝導度やイオン伝導度が低くなるので、適正気孔率を示すためには、やはり加圧時の圧力を適切に調節することが必要である。
【0101】
図3は比較例4で得た正極材の写真で、比較例4は加圧時の圧力が低くて硫黄‐炭素複合体の間の結集力不足によって炭素を含む硫黄溶融物が形成されず、正極材が製造されないことが分かる。
【0102】
比較例5は加圧時の圧力が高くて気孔率が顕著に減少し、比較例6は硫黄‐炭素複合体に別途導電材を添加した場合であって、接着力が顕著に減少したことが分かった。
【0103】
実験例3:容量及び充電効率測定
実施例及び比較例で製作された電池に対して25℃で0.1C放電、0.1C充電して容量(Capacity、mAh)を測定し、充放電を繰り返して測定することで容量及び充電効率を測定し、その結果を下記表3及び
図4aないし
図4eに示す。上記表2に示すように、比較例4は加圧圧力が低くて硫黄‐炭素複合体の間の結集力が不足して電極が製造されなかったので、実施例1ないし3と比較例1ないし3及び5と6に対して実験を行った。
【0104】
【0105】
上記表3、
図4a、
図4b及び
図4cを参照すれば、乾式工程によって製造された電極である実施例1、2、3は、湿式工程で製造された比較例1、2、3に比べて初期放電カーブで過電圧が改善されたし、より高い初期放電容量を示すことを確認することができた。
【0106】
一般に、リチウム‐硫黄二次電池では、気孔率が重要な要素である。気孔率が低いほど電池がさらにコンパクト(compact)になることを意味する。しかし、気孔率が低くなるほど反応空間が細くなるので、低い気孔率で正常なセル駆動が難しい状況が発生することがある。
【0107】
しかし、乾式工程によって製造された実施例1、2、3は、湿式工程で製造された比較例1、2、3に比べて同一な気孔率を持つ場合、過電圧が改善され、より高い初期放電容量を示すことを確認した。
【0108】
また、表3及び
図4dを参照すれば、比較例5は正極材の製造時に加えられた圧力が20Mpaと高くて、気孔率が過度に低くなるので、セルが正常に駆動されないことが分かった。
【0109】
また、表3及び
図4eを参照すれば、比較例6は硫黄‐炭素複合体以外に導電材としてCNTをさらに添加して乾式工程で正極材を製造する場合、炭素自体の凝集力の不足によって、加圧時に正極材の成形自体が難しく、正極材の容量が導電材を未添加した実施例1に比べて劣位にあることを確認した。
【0110】
また、
図5は実施例2及び比較例2で製造された正極材を適用したコインセルに対する寿命特性測定結果を示すグラフで、乾式工程によって製造された実施例2の電極を含む電池の寿命特性が改善されたことが分かる。
【0111】
実験例4:正極材の内部形態確認
製造例1で原料として使われた炭素ナノチューブ(CNT)と硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)を加圧工程に適用した後、内部形態を確認した。加圧工程は実施例1の(1)に示すように適用した。
【0112】
上記炭素ナノチューブ(CNT)と硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)をモールドに充填させた後、油圧プレスを利用して1Mpaの圧力で加圧した後、走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で内部形態を確認した。
【0113】
図6は、製造例1の炭素ナノチューブ(CNT)と硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)に対するSEM写真である。
【0114】
図6に示すように、CNTはCNTの間の連結性がなくて、互いに繋がることなく、加圧工程後にも互いに繋がらないことで示された。
【0115】
また、上記硫黄‐炭素複合体(S‐CNT)は硫黄が溶融して形成された硫黄溶融物にCNTが分散されて全体的に繋がったことで示された。これは高い加圧工程中に硫黄の融点が上がって、瞬間的に硫黄‐炭素複合体の表面で硫黄の溶融が起きれば、これによって形成された硫黄溶融物によってCNTが全体的に繋がったのである。すなわち、硫黄溶融物にCNTが分散された形態を示すことが分かる。
【0116】
以上、本発明はたとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されないし、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と下記特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。
【国際調査報告】