(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】光起電力モジュール(photovoltaic module)
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0236 20060101AFI20221027BHJP
H01L 31/049 20140101ALI20221027BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L31/04 280
H01L31/04 562
G02B5/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511250
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(85)【翻訳文提出日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2020072033
(87)【国際公開番号】W WO2021032489
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】クラッベンボルク,スフェン,オレ
(72)【発明者】
【氏名】クェス,ヤン-ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ムンドゥス,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,フィオザ
(72)【発明者】
【氏名】ブヤール,パトリス
【テーマコード(参考)】
2H042
5F151
【Fターム(参考)】
2H042DD04
2H042DE03
5F151HA07
5F151JA02
5F151JA04
5F151JA05
5F151JA23
(57)【要約】
光起電力モジュールが開示され、前記光起電力モジュールは、前側及び後側から入射する光を変換することができるPVセル(3)を含み、前記モジュールは、直射日光を受けるように設計された上部外表面を露出させる前側と、拡散光を受けるように設計された下部外表面を露出させる後側とを備え、前記下部外表面は、少なくとも部分的に、微細構造化層(9)によって形成され、前記微細構造化層(9)は、三角形底部が前記層(9)に固定された錐体の微細構造を含むことを特徴する。前記微細構造化層は異方性透過特性を生じる。前記モジュールは類似の両面PVモジュールに比べて改善された効率を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の両面光起電力セル(3)を含む光起電力モジュールであって、前記モジュールは、直射日光を受けるように設計された上部外表面を露出させる前側と、拡散光を受けるように設計された下部外表面を露出させる後側とを備え、前記下部外表面は、少なくとも部分的に、微細構造化層(9)によって形成され、
前記微細構造化層(9)は、三角形底部が前記層(9)に固定された錐体の微細構造を含むことを特徴とする、光起電力モジュール。
【請求項2】
任意で反射防止層で覆われたフロントプレート(1)であって、前記フロントプレート(1)は前記光起電力セル(3)を覆い、前記セルは封入材(2)に埋め込まれている、前記フロントプレート(1)と、任意のバックシート(7)及び/又は中間層(10)と、を含み、
前記フロントプレート(1)と、前記封入材(2)と、前記光起電力セル(3)と、前記任意の反射防止層と、前記バックシート(7)と、前記中間層(10)は、互いに光学的に接触しており;前記フロントプレート(1)と、前記封入材(2)と、前記任意の反射防止層と前記バックシート(7)と前記中間層(10)は、それぞれ透明な材料で作られており、
前記封入材(2)又は前記バックシート(7)又は前記中間層(10)は、本質的に平坦な後表面を形成し、前記後表面は、少なくとも部分的に、複数の三角形ベースの錐体を有する前記微細構造化層(9)によって覆われている、請求項1に記載の光起電力モジュール。
【請求項3】
前記微細構造化層(9)は、三角形の底部と、前記モジュールの前側から離れる方向を指す頂点と、を有する錐体の微細構造を含む、請求項1又は2に記載の光起電力モジュール。
【請求項4】
前記微細構造化層(9)は前記錐体を含み、前記錐体の側面は、本質的に平面の裏表面によって定義される裏平面に対して、15~89度、好ましくは15~75度、特に25~70度の範囲の角度で傾斜している、請求項2又は3に記載の光起電力モジュール。
【請求項5】
前記錐体の微細構造は、前記微細構造化層(9)の表面の少なくとも90%、特に少なくとも95%を占める、請求項1~4のいずれか1項に記載の光起電力モジュール。
【請求項6】
前記錐体の三角形の底部の長さは、1~600マイクロメートルの範囲であり、前記錐体の頂角は、30度~135度の範囲、特に60度~120度の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光起電力モジュール。
【請求項7】
典型的には1~10mmの幅の隙間によって分離された複数のPVセルを有し、前記微細構造化層(9)は、少なくともこれらの隙間の下に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の光起電力モジュール。
【請求項8】
前記微細構造化層(9)は、前記モジュールのバックシート(7)と光学的に接触するポリマーフィルム(10)を覆うか、又は、前記微細構造化層(9)は、前記封入材(2)と光学的に接触するポリマーフィルム(10)を覆う、請求項1~7のいずれか1項に記載の光起電力モジュール。
【請求項9】
前記微細構造化層(9)が前記モジュールのバックシート(7)を直接覆い、前記バックシート(7)はポリマーシート又はガラスシートである、請求項1~8のいずれか1項に記載の光起電力モジュール。
【請求項10】
透明材料の前記微細構造化層(9)は、化学線放射によって硬化された樹脂又はエンボス加工されたポリマー材料、特にUV放射によって硬化された樹脂、を含む、請求項8に記載の光起電力モジュール。
【請求項11】
前側及び後側から入射する光を変換することができるPVセルを含む光起電力モジュールの製造方法であって、前記方法は、透明なコーティング材料の層の微細構造で前記モジュールの透明な裏側を構造化する工程を含み、前記構造化は、前記コーティング材料を前記モジュールの裏側に適用、構造化及び硬化することによって、又は、透明シートを前記モジュールの裏側に適用することによって行われ、前記シートはUV硬化されたコーティング材料を有する1つの微細構造化表面を含み、前記微細構造は複数の三角形ベースの錐体を有していることを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記モジュールの透明な裏側を構造化する工程は、
(a)透明な放射線硬化性樹脂層をPETフィルムなどのポリマーフィルム上に適用する工程と、
(b)三角形ベースの錐体を含む微細構造を得るために、適切に構造化された成形ツールを用いてインプリントすることによって前記放射線硬化性樹脂層を構造化する工程と、
(c)得られた前記構造化された層を照射によって硬化させて、構造化側と非構造化側を有するポリマーフィルムを得る工程と、
(d)工程(c)で得られた前記ポリマーフィルムの非構造化側をバックシート(7)に適用するか、又は前記ポリマーフィルムの非構造化側を封入材(2)に直接適用する工程であって、工程(d)が、任意で、接着促進剤及び/又は接着剤を適用することを含む、工程と、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モジュールの透明な裏側を構造化する工程は、
(a)透明な放射線硬化性樹脂層を、ガラスシートなどのバックシート(7)に適用する工程と、
(b)三角形ベースの錐体を含む微細構造を得るために、適切に構造化された成形ツールを用いてインプリントすることによって前記放射線硬化性樹脂層を構造化する工程と、
(c)得られた前記構造化された層を照射によって硬化させる工程と、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記錐体の三角形の底部の長さは、1~600マイクロメートルの範囲にあり、前記錐体の頂角は、30度~135度の範囲、特に60度~120度の範囲にある、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前側及び後側から入射する光を変換することができるPVセルを含む光起電力モジュールの製造のための、微細構造化表面を有し、前記表面が複数の三角形ベースの錐体を有する透明なポリマーフィルムの使用であって、特に前記光起電力モジュールのバックシートとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前側及び後側から入射する光を変換することが可能な光起電力(PV)セル(photovoltaic (PV) cell)と、その裏側(back side)にある透明材料の構造化されたリフレクタであって、後方の光の入射とモジュール前側(front side)からセルに向かう使用されなかった光の反射を可能にするリフレクタと、を備えた光起電力モジュールに関し、さらに、その裏側を構造化することによって両面モジュールの効率を向上させる方法、ならびに両面光起電力モジュールの効率を向上させるための透明材料の構造化された層の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュール(solar module)としても知られる典型的な光起電力モジュールは、一般的には、各ストリングが列に配置され且つ電気的に直列に接続された複数のPVセルからなる2つ以上のPVセルの「ストリング」から形成された光起電力(PV)セルの配列を含む。PVセルは、通常、透明ポリマー層上に配置されるか、又はそのような層に封入される。ガラスまたは他の適切なポリマー材料の2つのパネルが、通常、封入材の前側及び裏側に隣接して配置され、接着されている。少なくともフロントパネルは太陽放射に対して透明であり、裏側パネルは透明であってもよく、又は例えば金属層を含有する不透明層として形成されていてもよく;2つのパネルはそれぞれ、前側層又はフロントカバー部材、及び、裏側層又はバックシート(バックプレートとも呼ばれる)として参照される。封入材は、PVセルの周囲に配置された(PVセルを封止するように、セルと光学的に接触している)光透過性ポリマーであり、及び、物理的にセルを封止するように、前側層及びバックシートに接着されている。この積層構造は、セルに機械的支持を与え、及び、風、雪及び氷などの環境要因による損傷からセルを保護する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
原理的には、前側から及び後側から入射した光を変換できる光起電力セル(すなわち、両面PVセル)を搭載したモジュールは、「間違った」側から(すなわち、後側から)セルに到達する光の利用も可能にするため、したがって、効率を向上させる可能性を提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
基本的なモジュール構造では、依然としてモジュールに到達する光の一部が失われる。
図1は、図の左側と右側に示された2つの典型的な種類の両面モジュールにおけるいくつかの可能な光路の概略図を示しており、フロントプレート(1、通常はガラス)、PVセル(3)、封入材(2、例えばEVA)、バックプレート(7、例えば別のガラスプレート)を備えたモジュールの断面図を示している。図の左側にはさらに、追加要素として、バックプレート上の又はバックプレートに組み込まれた反射層(8)が示されており、該層は、セル間の隙間(セルギャップ)を覆ってよく、及び任意でセルの下を覆っていてもよく、及び、バックプレート(7)の上又は要素(2)と(7)の間に配置されていてもよい。
【0005】
モジュールが反射バック層(
図1の左側に示された8)を備えている場合、前側から入射してセルを外れた光は反射され、そして、直接セルに到達するか(光路III)又は前側境界面で反射した後にセルに到達することができ(光路I)、吸収されずにセルを通過する光は、それは近赤外光の場合に発生しやすいが、再びセルに向かって反射される(光路II)。
【0006】
バックプレートが反射層を備えていない場合(8:
図1の右側)、裏側からモジュールに到達する光はセルに到達することができるが(光路IV及びV)、光路I~IIIを辿る光は大きな程度まで失われる。このタイプのモジュールがEP3214659Aで提案されており、その透明なバックプレートは、効率を高めるように、複数の正方形ベースの錐体からなる表面テクスチャで覆われている。
【0007】
光のさらなる損失がPVセルの裏側における反射によって引き起こされる:セルの前側は一般的に反射防止構造を備えているが(このような構造を持つPVセルは「ブラックシリコン」としても知られている)、そのような反射防止構造はセルの裏側にはなく、そのため、特に光路Vについては反射による損失が発生する。
【0008】
構造化された層がモジュールの裏側に適用される場合、該構造化された層は透明であり、したがって、後ろからの光の入射を許すのみでなく、前側からの未使用の光をセルに向けて反射し戻すため、今や
図1に示された両方の構造における欠点が回避され得ることが見出された。この効果は、バックシート表面の構造化によって得られることができ、該構造化は、前側から入射される光の内部反射を提供し、また、透明性とモジュールの裏側からの光の入射を提供する。
【0009】
図2aは、フロントプレート(1、典型的にはガラス)、PVセル(3)、封入材(2、例えばEVA)、バックプレート(7、例えば別のガラスプレート又はPETシートなどのポリマーシート)を備えた本発明のこのような両面モジュールにおける典型的な光路の概略図であり(断面)、バックプレート(7)の外表面の構造化層(9)の断面を示している。前側から入射してセルを外れた光は、追加層(9)の構造によって大きく反射されて、セルに直接に(光路III)到達でき、又は前側境界面で反射された後に到達することができ(光路I)、そして、吸収されずにセルを通過した光は、再びセルに向かって反射され(光路II)、一方、裏側からモジュールに到達する光はセルに到達することができ(光路IV及びV)、セルの裏側から反射された光は、さらにセルに向かって反射され得る(光路VI)。
【0010】
複数の三角形ベースの錐体を有する前記層(9)の構造は、特に効率的な光の使用を可能にし、したがって、異方性リフレクタとして記述されることができ(
図2bに模式的に示す)、それはモジュールの裏側に到達する光に対してよりも、モジュールの前側から来る光に対して高い反射率を提供することが見出された(
図2bに模式的に示す)。
【0011】
したがって、本発明は、主に、1つ以上の両面光起電力セル(3)を含む光起電力モジュールであって、前記モジュールは、直射日光を受けるように設計された上部外表面(upper external surface)を露出させる前側と、拡散光を受けるように設計された下部外表面(lower external surface)を露出させる後側とを備え、前記下部外表面は、少なくとも部分的に、微細構造化層(9)によって形成された、光起電力モジュールに関し、前記微細構造化層(9)は、三角形底部が前記層(9)に固定された錐体の微細構造を含むことを特徴とする。
【0012】
より具体的には、本発明は、任意で反射防止層で覆われたフロントプレート(1)であって、該フロントプレート(1)は光起電力セル(3)を覆い、該セルは封入材(2)に埋め込まれている、フロントプレート(1)と、任意のバックシート(7)及び/又は中間層(10)とを含む光起電力モジュールに関し、フロントプレート(1)と、封入材(2)と、光起電力セル(3)と、任意の反射防止層と、バックシート(7)と、中間層(10)とは、互いに光学的に接触しており;フロントプレート(1)と、封入材(2)と、任意の反射防止層とバックシート(7)と中間層(10)とは、それぞれ透明な材料で作られており、封入材(2)又はバックシート(7)又は中間層(10)は、本質的に平坦な後表面を形成しており、前記後表面は、少なくとも部分的に、複数の三角形ベースの錐体を有する微細構造化層(9)によって覆われている。
【0013】
構造化層(9)は、透明な平面を必要とし、該平面はバックシートに対して、通常15~89度の範囲の角度α(
図4b参照)で傾斜しており、さらに以下を参照されたい。典型的には平坦な透明表面を形成するモジュールのバックシート(7)は、1つ以上の層を含んでよく;該バックシート(7)は構造化層(9)が適用される基板を形成し、又は、バックシート自体が、構造化表面(9)又は表面層(9)を得るために、前述の方法で構造化されることができる。層(9)は、モジュールの下表面(つまり、通常屈折率が1.4~1.7の透明材料と空気の界面、以下を参照)を構成しており、したがって、前側から入射する複数の光に対して全内部反射を提供する。モジュールの裏側にある本構造化層の結果として、前側から垂直に入射してセル間の隙間に入る光の透過が大幅に低下し(
図2bの左側に示すように、通常は入射光の0~60%)、一方、本構造は、モジュールの裏側に垂直に当たる光のほとんど妨げられない透過を可能にする(
図2bの右側に示すように、通常は入射光の80%超、特に80~100%)。全体として、本モジュールの光収率は、以下にさらに示すように、著しくに改善されている。
【0014】
本微細構造は、
図6に例示されているように、少なくともセル(3)間の隙間の下に配置され、好ましくはバックシート(7)全体に配置されている。
【0015】
その結果、本発明による光起電力モジュールは、一般に、金属製又は拡散リフレクタ(すなわち、非透過性材料のリフレクタ)を含まない。
【0016】
本モジュールは、モジュール裏側に当たる光を使用することで特に効率的であるため、モジュールは、5%以上、特に20%以上の反射率(アルベド)を有する表面に取り付けられるのが好ましく;そのような表面の例は、屋根瓦、コンクリート、砂である。モジュールは、反射表面に対して平行に配置されてもよく、又は傾けて配置されてもよい。
【0017】
以下、「フィルム」という用語は、シート及び類似の構造体と同義である。
【0018】
「構造化リフレクタシート」又は「微細構造化リフレクタシート」という表現は、リフレクタシート、構造化リフレクタフィルム、光反射フィルム、構造化層、構造化バックシートと同義である。
【0019】
「上」及び「前」という用語は、入射太陽光に向かう側、「低」「下方」「下」、及び「裏」という用語はその反対側を表す。
【0020】
本発明によるPVモジュールに使用される場合、「バックシート」又は「バックプレート」という用語は、本構造化層がその上に適用される表面を有する、光起電力モジュールの透明な下部カバーを表している(したがって、「基板シート」とも呼ばれる)。基板シートは、1つの層(例えば、ガラスシート)又は2つ以上の層(例えば、ガラスシート又はポリマーシートに加えて1つ以上のポリマー層;バックシートの例として、EVAプライマー、1つ以上の層からなるPETコア、及びそれに続く保護層としてのUVコーティングを含むものがある)からなっていてよい。
【0021】
「裏平面」という用語は、バックシートの下表面を示し、該バックシートの下表面は通常は平坦でPVセルと平行であり、その上に本構造化層が適用される。
【0022】
「太陽電池セル」又は「PVセル」という用語は、単結晶セル、多結晶セル、リボンシリコンセル、薄膜セルなどのあらゆる光起電力セルを指し;本PVモジュールに含まれるセルは、典型的には両面セルによって実現されるように、前側及び後側から入射した光を変換することが可能である。
【0023】
「透明」という用語は、本質的に散乱を伴わない可視光の透過を意味し、典型的には10%未満の散乱をともなって90%超の太陽光の透過を達成する。このように、透明材料は、一般的に光学品質の材料を指す。傾斜平面を含み、かつ、透明材料からなる微細構造は、したがって、一般的には幾何光学にしたがってその各微細平面で光回折を生じつつ、前記材料を通って透過することを提供する。
【0024】
「封入材」という用語は、PVセルをすべての側面から囲む(「埋め込む」)透明なポリマー材料を指し;典型的な封入材はEVAである。
【0025】
「オングストローム」という用語は、10-10メートルの長さを表す。
【0026】
「太陽電池モジュール」という用語は、光起電力モジュール又はPVモジュールと同義である。
【0027】
本太陽電池モジュールを形成するアセンブリは、一般的に前側と裏側を区別して取り付けられる。
【0028】
言及される場合、材料の屈折率は、特に明記されていない限り、589nmの放射線(ナトリウムD線)に対して決定される。
【0029】
本発明による太陽電池モジュールは、直接入射光を受ける前側を有する電気的に相互接続された複数の両面太陽電池セルを有している。太陽電池セルは、少なくとも2つのセルが太陽電池セルを有していない領域によって互いに間隔を置いて配置され、かつ、構造化層が、少なくとも太陽電池セルを有していない領域と重なっている。
【0030】
本発明の原則は、太陽電池モジュールにおける太陽電池セルの現在の伝統的な列/行配列に依存しない。一実施形態によれば、太陽電池セルは行と列に配置されており、行又は列の少なくとも一つが互いに間隔を置いて配置される。
【0031】
本構造化層(9)は、その任意のキャリアフィルム(10)とともに、バックシート(7)及び/又は封入材(すなわち、ポリマー層又はセルの下の最も低いポリマー層)と直接光学的に接触している。
【0032】
本発明による光起電力モジュールは、一般に、フロントプレート(1)を含み、該フロントプレート(1)は有利には反射防止層で覆われ;フロントプレート(1)は、両面光起電力セル(3)を覆っており、該両面光起電力セル(3)は透明ポリマー材料(2)に埋め込まれ、該両面光起電力セル(3)の他の側面(すなわち入射光とは反対側の裏側)は、透明なバックシート(7)で覆われ、該透明なバックシート(7)の表面は、透明な構造化層(9)によって少なくとも部分的に覆われ、該構造化層(9)はモジュールの下表面を形成している。一般的なシリコンベースのPVセルなどのセルは、通常、例えば1~10mmの幅の隙間によって分離され;構造化層(9)は、したがって、少なくともこれらの隙間の下で裏平面を覆っている。
【0033】
本発明の別の実施形態では、モジュールに組み込まれたPVセル(3)は、多くは有機PVセルに基づく薄膜モジュールについて典型的にそのケースであるように、そのような隙間を必要としない。そのような隙間のないPVセルを有する本発明のモジュールでは、構造化層(9)は好ましくは裏平面全体を覆っている。
【0034】
本発明の一実施形態では、それぞれ任意で接着剤の中間層を適用することにより、構造化層(9)は、モジュールのバックシート(7)と光学的に接触しているポリマーフィルム(10)を覆うか、又は構造化層(9)は、封入材(2)と光学的に接触しているポリマーフィルム(7)を覆う。
【0035】
さらなる実施形態では、構造化層(9)がモジュールのバックシート(7)を直接覆い、該バックシート(7)はポリマーシート又はガラスシートである;典型的には、これらの実施形態では、構造化層は、例えばガラスシートもしくはポリマーシート(7)上の構造化放射線硬化コーティング(9)であってもよく、又はポリマーシート(7)上のエンボス層もしくはポリマーシート(7)のエンボス表面であってもよい。
【0036】
構造
本光起電力モジュールの微細構造化層(9)は、三角形の底部とモジュールの前側から離れる方向を指す頂点とを有する錐体の微細構造を含む。典型的には、微細構造化層(9)は錐体を含み、該錐体の側面はそれぞれ、15~89度、好ましくは15~75度、より好ましくは25~70度、最も好ましくは25~65度、特に35~65度の範囲の角度(α)で裏平面に対して傾斜しており;裏平面は本質的に平面の裏表面によって定義されている。
【0037】
錐体の微細構造は、微細構造化層(9)の表面の少なくとも90%、特に少なくとも95%を占める。錐体の三角形の底部の長さは、1~600マイクロメートルの範囲、好ましくは5~400マイクロメートルの範囲、より好ましくは12~200マイクロメートルの範囲、特に20~100マイクロメートルの範囲である。錐体の頂角は、30度~135度の範囲、特に60度~120度の範囲である。
【0038】
したがって、構造化表面(9)は、錐体側面の傾斜平面を含み、その最長の辺の長さ(L)と最短の辺の長さは、通常1~600マイクロメートルの範囲、例えば1~100マイクロメートルの範囲又は10~300マイクロメートルの範囲である。
【0039】
一実施形態では、モジュールの裏側表面は、総表面に基づいて、90%以上、特に95%以上の前記傾斜平面を含んでいる。錐体の高さ(h)は、その3つの面と等しい角度をなす頂点からの線である。完全な錐体(例えば立方体面の間に90度をなす完全な立方体角)の場合、この線はシート基板表面(すなわち裏平面)に対して垂直である。高さは、シート表面の法線から最大25度まで偏差していてよく;好ましい偏差角(カント角としても知られる)は10度、より好ましくは5度以下である。
【0040】
透明な微細構造は錐体を形成し、その三角形底部は裏平面に位置し;その高さは通常、裏平面に対して垂直に起立しているか、又は裏平面の法線から最大25度偏差している。
【0041】
その結果、このような錐体の頂角は30~150度(好ましくは50~120度)の範囲にあり、錐体は10~300マイクロメートルの範囲の典型的な高さを有している。
【0042】
図4aは、三角形底部の錐体を有する「立方体角」構造の例を示している。好ましいのは、(例えば、
図4aに示され、以下でさらに説明されるような)交差した格子によって調製され得る構造である。より好ましいのは、そのような三角形底部の錐体からなる構造であり、その例が
図4aに示されている(「mu」はマイクロメートルを意味し;該構造は、約90度の典型的な頂角の「立方体角」として記述されることができる)。
【0043】
材料と方法
構造化層(9)は、一般的には、透明で、熱および/または放射線の適用により硬化可能な樹脂材料から調製されるか、又は透明なポリマー材料の適切なエンボス加工により調製される。構造化層(9)は、バックシート(7)上に直接適用されてよく、もしくはポリマー製バックシートが使用される場合にはそれにエンボス加工されてもよく、又は、構造化層(9)は透明基板としてのポリマーフィルム(10)上に適用されてもよく、もしくはエンボス加工されてもよく、構造化層(9)を担持するポリマーフィルムは、次に、好ましくはバックシート(7)とキャリアフィルム(10)との間に適切な接着剤を使用して、バックシート(7)に適用される;例を
図5および6に示す。
【0044】
一実施形態においては、本発明による光起電力モジュールは、したがって、化学線、特にUV線によって硬化された樹脂を含む透明な構造化層(9)を含む。後者の実施形態は、特に、UV硬化性樹脂層がPETフィルムなどのポリマーフィルムに適用され、インプリントプロセスによって構造化され、UV光によって硬化され、それによって、前記ポリマーフィルム上に構造化層(9)を形成される場合に、特定の技術的関心を有する。このようにして得られた積層体は、その後、バックシート(7)に適用される。
【0045】
本モジュールの最も好ましい構成は:
- PETコアに構造化UVコーティングからなるバックシート;又は
- 構造化UVコーティングによって覆われたガラス製のバックシートであって、任意でガラス板上に接着剤を有するバックシート、
を含む。
【0046】
その他の好ましい構成は、(ガラス又はポリマーの)バックシート上に接着剤で適用された、PET上の構造化UVコーティングを含む。
【0047】
1つのプロセスは、インプリントプロセスであり得、好ましくは、ロールツーロールインプリントプロセスである。好ましい実施形態では、構造化層(9)を担持する積層体は、UVインプリントプロセスによる単一構造として調製される。別の実施形態では、コーティングされた基板は、放射線硬化性の(メタ)アクリレート材料から調製され、成形された(メタ)アクリレート材料は、化学線への曝露によって硬化される。例えば、硬化性ポリマー材料は基板フィルム(10又は7)上にコーティングされ、微細構造化成形ツールに押し当てられ、例えばUV照射によって硬化されて、基板フィルム上に構造化層(9)を形成してよい。成形ツールを取り外すと、構造化層(9)が形成される。インプリントされた表面(9)の構造は、ツール表面の構造の逆であり、すなわち、ツール表面の突起はインプリント表面の窪みを形成し、ツール表面の窪みはインプリント表面の突起を形成する。
【0048】
任意で、キャリアフィルム(10)と構造化層(9)を含む得られた生成物は、適切なサイズのストリップに切断され、太陽電池セルのない領域と重なるようにバックシート(7)に適用されてよい。好ましくは、ストリップは、太陽電池セルの間の領域と少なくとも同じサイズ及び形状を有する。
【0049】
このようなアセンブリの場合、通常ガラスもしくはポリマーフィルムを有するバックシート(7)への、又は封入材(2)へのより良好な接着は、構造体のない基板側の表面に接着促進剤を塗布することによって達成されることができる(
図5)。
【0050】
別の実施形態では、層(9)は、ガラス又は以下でさらに説明されるポリマー材料であり得るバックシート(7)上に、
図6と同様に全表面にわたって又は順次に直接適用される;
図7は、バックシートの最大部分を覆う層(9)を有する、そのようなアセンブリを示す。
【0051】
図(7)による別の実施形態では、層(9)がバックシート(7)の外層を置き換えるか、又は、特にポリマーフィルムもしくはシート、又はEVAなどの封入材(2)自体もバックシート(7)を形成する場合においては、バックシート(7)の一部である。
【0052】
熱及び/又は放射線硬化樹脂性材料が構造化層(9)の調製に使用される場合は、UV硬化性樹脂が好ましい。この場合、結合剤は、エチレン性不飽和結合を含有するモノマー又はオリゴマー化合物を本質的に含み、これらは適用後に化学線によって硬化され、すなわち架橋された高分子量の形態に変換される。システムがUV硬化である場合、それは一般に光開始剤も含む。対応するシステムは、上述の出版物Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5版 Edition,Vol.A18,451~453頁に記載されている。樹脂組成物は、典型的には、1つ以上の安定剤、例えば、立体障害性アミン及びUV吸収剤をさらに含有する。
【0053】
最初に熱によって、続いてUV照射によって硬化され、又はその逆で硬化される、二重硬化システムは、典型的には光重合開始剤の存在下でUV光照射で反応するエチレン性二重結合を含有する成分を含む。
【0054】
したがって、電磁放射線は好ましくはUV光であり、放射線硬化性コーティングは典型的にはUV硬化性コーティングである。転写工程中のUV硬化性コーティング(UVラッカー)の硬化は、WO12/176126に記載されている方法に類似して達成され得る。好ましい硬化波長は、例えば、短波長範囲220~300nm、特に240~270nm、及び/又は長波長範囲340~400nm、特に、例えばLED硬化によって達成可能な350~380nmである。
【0055】
構造化層(9)は、代替的にエンボス加工によって調製されることができる。この方法では、エンボス加工可能な表面を有する平らなフィルムが、圧力及び/又は熱を加えられて構造化ツールに接触させられ、エンボス加工表面を形成する。平らなフィルム全体がエンボス加工可能な材料を含んでいてもよく、又はエンボス加工可能な表面のみを有していてもよい。エンボス加工可能な表面は、平らなフィルムの材料とは異なる材料の層を含んでよく、つまり、平らなフィルムは、その表面にエンボス加工可能な材料のコーティングを有していてもよい。エンボス加工される表面の構造は、ツール表面の構造の逆であり、すなわち、ツール表面の突起がエンボス加工される表面に窪みを形成し、ツール表面の窪みがエンボス加工される表面の突起を形成する。
【0056】
微細構造化成形ツールを生成するための広範囲の方法は、この分野の当業者に知られている。これらの方法の例は、フォトリソグラフィ、エッチング、放電加工、イオンミリング、マイクロマシニング、ダイヤモンドミリング、ダイヤモンドドリリング、及び電鋳を含むが、これらに限定されない。微細構造化成形ツールは、不規則な形状及びパターンを含む様々な微細構造の表面を、架橋性液状シリコーンゴム、放射線硬化性ウレタンなどからなる群から選択されるものなどの成形可能な材料で、複製することによって調製されることができ、又は、電鋳によってネガティブ又はポジティブのレプリカの中間体又は最終エンボスツール型を生成するように、様々な微細構造を複製することによって調製されることができる。また、ランダムで不規則な形状及びパターンを有する微細構造化金型は、化学エッチング、サンドブラスト、ショットピーニング、又は成形可能な材料中に離散した構造化粒子を沈めることによって生成されることができる。さらに、米国特許第5,122,902号(Benson)に記載されている手順に従って、微細構造化成形ツールのいずれも変更又は修正され得る。ツールは、ニッケル、銅、鋼、金属合金などの金属、又は高分子材料を含む幅広い範囲の材料から調製されることができる。
【0057】
基板(7)は、1つ以上の層を含むことができ、透明材料、例えばガラスおよび/またはポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、もしくは環状オレフィン(co)ポリマー(COC/COP)、又は、ポリイミド(PI)、セルローストリアセテート(TAC)などの熱硬化性樹脂と組み合わされた、または組み合わされていない他の一般的な熱可塑性樹脂から作られることができる。これらの透明材料の屈折率は、多くの場合1.4~1.7、典型的には1.4~1.6の範囲にある。複屈折(特にPET)の特別な場合には、基板の平面に沿った屈折率が1.6よりも高くあり得る。
【0058】
バックシート(7)又はPVセルを埋め込む封入材(2)として使用される任意のポリマー層は、透明なポリマー材料であり、該ポリマー材料は、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばPET)、ポリメチルメタクリレートなどのようなアクリルを含むポリビニルアルコール又はエチレンビニルアセテート(EVA)などのビニルポリマーから選択されることが多い。封入材(2)の例としては、ポリカーボネート、PMMAなどのポリアクリル系、ポリビニルブチラール、シリコーンポリマー、ポリイミド、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、環状オレフィンコポリマー、及び特にEVAがある。PE又はPPなどのいくつかのポリマーの光学品質は、浄化剤の添加によって改善されることができる。封入材は、本発明の構造化層とバックシート及びPVセルと接触する1つのバルク材料(封入材)から構成されてよく、及びそのような材料の2つ以上の層を含んでよい。セルに隣接しかつ光の主入射側と反対側に配置された、構造化層(9)とPVセル(3)の間のポリマー層(7)の厚さは、存在する場合、典型的には2mmに達し、多くの場合、例えば1マイクロメートルから約2mmの範囲であり、好ましくはその厚さは約0.1~1mm、特に0.3~0.5mmである。ポリマーフィルム(10)は、ポリマーバックシート(7)と同じ材料でも異なる材料でもよく;あるいは、それはポリマーバックシート(7)を置き換えてもよい。ポリマーフィルム(10)の典型的な材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。ポリマーフィルム(10)は、1層又は多層であってもよい。同様に、ポリマー基板シート(7)は、1層又は多層であってもよく、又は2層以上のポリマーガラスシート(7)が採用されてもよい。
【0059】
典型的には、フロントプレート(1)は、反射防止要素を担持し、該反射防止要素はフロントプレートのテクスチャ面を形成することができ、又は該反射防止要素は前記フロントプレートに適用された反射防止コーティングであってよい。コーティングは、典型的には、透明、又は、Wicht等(Mac-romolecular Materials and Engineering 295,628(2010))によって開示されている材料などの、例えば適切な結合剤中に二酸化ケイ素又はアルミナなどの適切な誘電体粒子を含む屈折率マッチングな特性を有する半透明な多孔質材料である。コーティングは、MgF2又はフルオロポリマーなどの低屈折率材料で作られていてよい。反射防止要素は、また低屈折率材料と高屈折率材料を交互に有する多層干渉システムからなっていてもよい。反射防止要素は、ナノ構造表面を有するフィルム、例えばモスアイ構造(六角形の凹凸パターンからなる構造)を有するフィルムであってもよい。
【0060】
本発明のさらなる態様は、太陽電池モジュールを調製する方法である。
【0061】
本発明は、前側及び後側から入射する光を変換することができるPVセルを含む光起電力モジュールの製造方法に関し、該方法は、透明なコーティング材料の層の微細構造でモジュールの透明な裏側を構造化する工程を含み、前記構造化は、前記コーティング材料をモジュールの裏側に適用、構造化及び硬化することによって、又は、透明シートをモジュールの裏側に適用することによって行われ、前記シートはUV硬化されたコーティング材料を有する1つの微細構造化表面を含み、前記微細構造化表面は複数の三角形ベースの錐体を有していることを特徴とする。
【0062】
一実施形態では、本発明の方法は以下の工程
(a)透明な放射線硬化性樹脂層をPETフィルムなどのポリマーフィルム上に適用する工程と、
(b)三角形ベースの錐体を含む微細構造を得るために、適切に構造化された成形ツールを用いてインプリントすることによって前記放射線硬化性樹脂層を構造化する工程と、
(c)得られた前記構造化された層を照射によって硬化させて、構造化側と非構造化側を有するポリマーフィルムを得る工程と、
(d)工程(c)で得られた前記ポリマーフィルムの非構造化側をバックシート(7)に適用するか、又は前記ポリマーフィルムの非構造化側を封入材(2)に直接適用する工程であって、工程(d)が、任意で、接着促進剤及び/又は接着剤を、典型的には工程(c)で得られた前記ポリマーフィルムの非構造化側に適用することを含む、工程と、
を含む。
【0063】
別の実施形態では、本方法は
(a)透明な放射線硬化性樹脂層をバックシート(7)に適用する工程であって、前記バックシートは、好ましくは、PVモジュールの調製においてバックシートとして予見されるガラスシートであるか、又はモジュールのガラスの裏側である、工程と、
(b)三角形ベースの錐体を含む微細構造を得るために、適切に構造化された成形ツールを用いてインプリントすることによって前記放射線硬化性樹脂層を構造化する工程と、
(c)得られた前記構造化された層を照射によって硬化させる工程と、
を含む。
【0064】
上記の方法では、構造化(b)及び硬化(c)の工程は、続いて行ってもよく、又は同時に行われてよい。
【0065】
別の実施形態では、構造化は、ポリマーフィルム又はシート(7)又は(10)をエンボス加工することによって行われる。
【0066】
本発明の太陽電池モジュールにおいて、光起電力セル(3)は、好ましくは単結晶セルもしくは多結晶セルなどのシリコンセルであるか、又は有機光起電力材料などのPVセルに用いられる他の任意の半導体材料に基づくセルであり得る。セル(3)は、典型的には、両面セルである。
【0067】
シリコンセルなどの典型的なセルは、長方形又は丸みを帯びたものであり、その最大直径は通常5~20cmの範囲であり、最小直径は通常4~12cmの範囲である。PVセルの厚さは、通常0.1~1mm、特に約200~400μmである。PVセルは通常、EVA又はポリビニルアルコールなどのポリマー材料の層(2)で囲まれており;EVA又はポリビニルアルコールなどのポリマー材料は一般的にはセル間の隙間も埋めており、該隙間は多くの場合は1~10mmの範囲、通常は約2~5mmの範囲である。保護シート、封入材、PVセル、配線及び本構造化層で覆われたバックシートを含む太陽電池モジュールの総厚さは、通常1~20mmの範囲、特に2~8mmの範囲である。
【実施例】
【0068】
1.構造化層
構造化層は、キャリアフォイル(基板)とUV硬化コーティングをインプリントプロセスと組み合わせて利用して調製される。この場合、基板は、総厚175μmの両側に下塗りされたPETホイルである(Mitsubishi Hostaphan GN 175 CT 01B)。UV硬化コーティング(ウレタンアクリレート、アクリレートモノマー、光開始剤、及び各添加剤に基づく)が基板上に適用され、続いて、所望の最終構造のネガティブ構造を有するインプリントツールと接触させられる。インプリントツールと基板は、UV硬化コーティングがインプリントツールのネガティブ構造の空洞を満たすように、互いに押し付けられる。インプリントツールとコーティングされた基板が接触している間に、UV照射を使用して、コーティングを硬化させる。硬化後、インプリントツールとコーティングされた基板は分離され、基板を硬化及び構造化されたコーティング層とともに解放する。全インプリントプロセスの間、コーティングは基板と接触していた。
【0069】
約60マイクロメートルの高さの「立方体角」の錐体からなる得られた層を
図8に示す。
【0070】
反射測定は、UV-Vis分光光度計を用いて、太陽スペクトル(AM1.5)及びPERC太陽電池セルの量子効率で加重されて、250~1200nmの範囲で、光が前構造層とのフィルムの後境界面で反射されないように裏側が塗料で黒くされたサンプルを用いて行われる。
【0071】
前述の構造化層は、加重平均反射が2.2%を示している。
【0072】
比較として、黒くされた裏側を有するフロートガラスの加重反射率は4.5%と決定されている。本構造化層は、このように、フロートガラスと比較して反射率を2.3%低下させ、したがって、例えば
図2aに示す光路IV-VIによる光の入射を増加させる。
【0073】
2.モジュール全体でのテスト
テストは、その裏側全体が実施例1の構造化層でコーティングされたフルサイズ(1.68m×1.0m、60セル)の両面ガラスバックシートモジュールを用いて行われる。
【0074】
効率の測定は、フラッシュライト(ソーラースペクトルAM1.5、1000W/m2)を使用してモジュールの前側又は裏側に垂直に照射して行う。
a)前側照射:モジュールの前側を照射したときのモジュールの出力を測定(それぞれ誤差プラスマイナス1W):
裏側全体に構造化層(発明):284.5W
参考モジュール(フロートガラス裏側):277.8W
b)裏側照射:テストモジュールの両面性(つまり、裏側からの照射と前側からの照射間の出力比(ワット))の測定は、フラッシュライト(ソーラースペクトルAM1.5、1000W/m2)を使用してモジュールの裏側に垂直に照射して行う。実施例1で示した本構造の反射防止効果が太陽電池モジュールの裏側に作用するため、予想される両面性の増加は:
0.023*61%=1.4%.
である。しかし、予想外にも、モジュール全体で測定した両面性は3.1±0.3%であり、つまり、反射防止効果から予想され得たものよりもはるかに高い。
【0075】
本発明のモジュールは、裏側が構造化されていない同じモジュールよりも著しく高い両面性と効率を提供する。
【0076】
3.EP3214659の正方形構造との比較
EP3214659に請求されている正方形構造の性能を、レイトレーシングシミュレーションを用いて、実施例1(三角形のベース)の本「立方体角」構造と比較する。
【0077】
レイトレーシングモデルの説明:構造は、それぞれn=1.5の屈折率で基板の裏側に取り付けられている(周囲の媒体はn=1の空気)。基板は南に向かって28.56°傾いており、これは米国フェニックスにおける非追尾PVモジュールの最適な傾斜角の推定値を示す。基板は、フェニックスの1年間の平均太陽放射によって照射される。(透明な)レシーバを、構造化された裏側に近い基板の内部に設置し、以下の両方(
図3a参照):
a)後側構造に最初に入射する前の光線の光出力と、
b)後側構造に2回目の入射をする前の光線の光出力と、
を測定する。
【0078】
したがって、b)をa)で除算すると、仮想レシーバに2回当たる光出力の比率が得られ(したがって、再帰反射構造により再利用される;例:平坦な後側では、入射出力の0.16%しか再利用されず、仮想レシーバ平面に2回目に当たり、後側と前側で4%が反射する)。この比率が高いほど、構造は良好に機能している。
【0079】
パラメータスペース:シミュレーションは、1)EP3214659に記載されている錐体(底面の角度が30度~60度、頂点の角度が60度~120度)、及び2)底面の角度が10度~80度、頂点の角度が29度~165度の三角形ベースの錐体、の両方の構造について実施した。三角形ベースの長さは両方の構造で30μmである。シミュレーションでは,基板と構造の屈折率はともに1.5である。
【0080】
図3bに示す結果では、再利用出力は、三角形ベースの錐体(黒三角:本発明)の方が既知の四角形ベースの錐体(正方形)と比較して、特に頂角135度までの範囲で著しく高いことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】現在最新のモジュールの2つの変形における典型的な光路;光路I~IIIは、図の右側に示されるバックリフレクタ(8)がない場合には光の損失につながるが、反射される場合にはPV電流に寄与し得る(
図1の左側);光路IV及びVは、透明な裏側のみ可能となる(リフレクタ8がない場合、
図1の右側)。
【
図2】
図2aは、本発明によるPVモジュールの典型的な光路を示しており、光路I~VIをたどる「使用されていない」光がモジュールの効率に寄与し得る。
図2bは、モジュール裏側に本微細構造化層を設けた結果(異方性光の流れ)を示しており、表側から垂直に入射し、セル間の隙間に入る光の透過が大幅に低下しており(
図2bの左側)、一方、本微細構造ではモジュール裏側に垂直に当たる光の透過はほとんど妨げられない(
図2bの右側)。
【
図3a】
図3aは、実施例3で使用される光線追跡モデルの説明図であって;モジュールは、透明なレシーバ(e、実際のモジュールのPVセル3を表す)が埋め込まれた透明基板(d)を含み、微細構造化層(f)はモジュールの裏側に取り付けられ、基板と微細構造化層は両方とも屈折率n=1.5である。太陽源(c)からの入射光の光出力は、後側の微細構造化層への最初の入射(a)前、及び後側の微細構造化層への2回目の入射(b)前に考慮される。
【
図3b】
図3bは、三角形ベースの錐体を含む本微細構造化層(三角形)と、本実施例3の正方形ベースの錐体を含む層(正方形)との比較を示す。
【
図4】
図4aは、底部が図に示すような典型的な寸法(「mu」はマイクロメートルを表す)を有する三角形ベースの錐体(タイプ「立方体角」)の配列からなる本微細構造化層の例を概略上面図(左、寸法入り)及び斜視図(右)を示しており;層(9)のそのような好ましい構造化は、交差した格子によって調製されてよい。
図4aの右側には、形成層(9)の断面を示して構造の「ユニットセル」を示している。
【
図4b】
図4bは、
図4aの構造の拡大部を示し、カット(破線、左側)を示す三角形ベースの錐体の上面図、及び錐体の1つの面の頂角と底角αを定義する、前記錐体の得られた断面図(右側)であり、これは裏平面(すなわち、層(2)又は(7)の下表面によって定義される一般的な後表面)に対する傾斜角である。
【
図5】片面に透明UV硬化樹脂層(厚さ10~100マイクロメートル、頂面に高さHの構造を含む)を担持する、厚さ約200μmの透明基板フィルムと、モジュールの裏側の位置を示して、モジュールの裏シートの反対側に取り付けるための接着促進剤の例を概略的に示す。
【
図6】構造化層(9)を担持した基板フィルム(10)をバックプレート(7)の表面全体(7;図の左側)、又はPVセル間の隙間(図の右側)をカバーするためにバックプレートの特定の領域にのみ貼り付けた状態を示す。
【
図7】構造化されUV硬化された樹脂層(9)を、ポリマー材料又はガラスシートであり得るバックプレート(7)上に直接適用している実施形態を示す。
【
図8】本実施例1及び2の微細構造化層(9)の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0082】
略語
EVA ポリ(エチレン-ビニルアセテート)
PET ポリ(エチレン-テレフタレート)
PV 光起電力
AM1.5 エアマス1.5の照射条件
HRI 高屈折率
Jsc (PVモジュールの)短絡電流密度
TIR 全内部反射
mu マイクロメートル
数字
(1) PVモジュールの透明なフロントシート(フロントプレートともいう)
(2) PVセルを埋め込む封入材
(3) PVセル
(7) バックプレート
(8) 反射層(比較)
(9) 透明構造化層(本発明)
(10) 構造化層(9)の任意のキャリアフィルム
【国際調査報告】