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特表2022-546311分散型利得平坦化を有する光ファイバ増幅器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】分散型利得平坦化を有する光ファイバ増幅器
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20221027BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20221027BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01S3/10 D
H01S3/067
G02B6/02 416
G02B6/02 376Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511258
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 US2020046805
(87)【国際公開番号】W WO2021034830
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/889,819
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ディジョヴァンニ,デヴィッド,ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェストブルック,ポール,エス.
(72)【発明者】
【氏名】チュー,ベンユアン
【テーマコード(参考)】
2H250
5F172
【Fターム(参考)】
2H250AG02
2H250AG03
2H250AG07
2H250AG14
2H250AH23
2H250AH33
5F172AF03
5F172AM08
5F172BB24
5F172BB29
5F172BB85
5F172BB86
5F172BB94
5F172BB96
(57)【要約】
光ファイバ増幅器は、希土類ドープ利得ファイバ自体の中に内接する格子構造を含むように形成され、分散型波長依存フィルタリング(減衰)を提供し、増幅器の出力で使用される任意のタイプの利得平坦化フィルタの必要性を最小限にする。格子構造は、例えば、従来技術の離散GFFのプロファイルと同様に、所望の損失スペクトルを提供する任意の適切な構成のものとすることができる。利得に沿って分散された波長依存フィルタリングを提供するために使用され得る種々のタイプの格子構造には、複数の傾斜格子、複数の弱いブラッグ格子、複数の長周期格子(LPG)、およびこれらの格子構造の任意の適切な組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の動作帯域幅にわたって光信号増幅を提供するための希土類ドープ光ファイバ増幅器であって、
希土類ドープ光ファイバセクションであって、前記希土類ドープ光ファイバセクションの少なくとも一部に沿って組み込まれた格子構造を含むように形成された、希土類ドープ光ファイバセクションと、
増幅された光出力信号を出力として生成し、希土類ドープ光ファイバの前記セクションを通って伝搬する光信号のための利得を生成するのに適した波長のポンプビームを提供するための光源とを含み、
前記希土類ドープ光ファイバセクション内に組み込まれた前記格子構造は、前記希土類ドープ光ファイバ増幅器の前記所定の動作帯域幅内で分散型スペクトルフィルタリングを提供するように構成される、希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項2】
前記格子構造は傾斜格子を含み、前記傾斜格子は、前記所定の動作帯域幅にわたって分散型利得平坦化を提供するように選択される傾斜角および格子周期を有する、請求項1に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項3】
前記格子構造は、前記希土類ドープ光ファイバの前記セクションの大部分に沿って連続して形成された同様の特性を複数有する複数の傾斜格子を含む、請求項2に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項4】
前記格子構造は、前記希土類ドープ光ファイバの前記セクションのドープされたコア領域内に内接する弱いブラッグ格子を含み、前記格子および前記格子周期に沿った屈折率の差は、前記所定の動作帯域幅にわたって分散型スペクトルフィルタリングを提供するように選択される、請求項1に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項5】
前記格子構造は、前記希土類ドープ光ファイバ増幅器の前記所定の動作帯域幅内で分散型スペクトルフィルタリングを提供するように構成された特性を有する複数の長周期格子(LPG)を含む、請求項1に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項6】
前記格子構造が、複数の傾斜格子、複数の弱いブラッグ格子、および複数のLPGからなる群の内の1つ以上の要素を含む、請求項1に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項7】
前記格子構造は、前記所定の動作帯域幅を拡張する分散型スペクトルフィルタリング応答を示すように構成される、請求項1に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項8】
前記格子構造は、前記所定の動作帯域幅にわたって所定の利得プロファイルを生成する分散型スペクトルフィルタリング応答を示すように構成される、請求項1に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【請求項9】
前記所定の利得プロファイルは、利得平坦化プロファイルを含む、請求項8に記載の希土類ドープ光ファイバ増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2019年8月21日に出願され、参照により本明細書に組み込まれた米国仮出願第62/889,819号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、光ファイバ増幅器に関し、より詳細には、増幅器の動作帯域幅にわたる利得の変動を最小化するために、増幅媒体自体の中で分散フィルタリングを利用することに関する。
【0003】
典型的なエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)は、信号波長の関数として発生する利得量の変動を示し、所望の均一な利得プロファイルを提供するために、増幅器出力を超える信号経路において利得平坦化フィルタ(GFF)の使用を必要とする。原理的には、GFFは、様々な波長における利得ピークを低減するように機能し、その結果、増幅器によって提供される出力電力も低減される。この出力電力の低減が問題となる多くの用途、特に複数の増幅器ポンプ源を動作させるために使用される電力が最大DC電圧定格を有する端末局から供給される複数の長距離通信システム(例えば複数の海底ケーブルシステム)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数の光ファイバ増幅器に関し、より詳細には、増幅器の動作帯域幅にわたる利得の変動を制御するために、増幅ファイバ自体の中で分散型スペクトルフィルタリングを利用することに関し、従来技術に残っているニーズに対処する。
【0005】
増幅プロセスに分散型フィルタリングを含めると、ポンプ光の存在により応答性の高いスペクトル内の波長領域の成長が阻害されるので、増幅プロセスの間に分散型フィルタリングを利用することは、増幅器の出力での離散GFFの従来技術の使用に対する改善であると考えられる。したがって、増幅中に利得をチェックせずに増加させ、増幅器の出力に配置された離散的なGFFによってのみ除去するのではなく、本発明の分散型フィルタリングは、第1の例において、より均一な利得プロファイルを生成する効率的な方法を提供する。
【0006】
多くの用途において、本発明によって提供される「分散型スペクトルフィルタリング」のタイプは、ファイバ増幅器の出力において本質的に均一な利得プロファイルを生成するために使用されるが、ドープファイバ増幅器内の分散型スペクトルフィルタリングの発明コンセプトは、増幅器の出力において他のタイプの応答を生成するためにも使用され得ることが理解されるべきである。例えば、分散型スペクトルフィルタリングは、特定の用途での使用に適した特定の不均一利得プロファイルを生成するように構成できる。あるいは、分散型スペクトルフィルタリングは、(均一なゲインプロファイルを維持しようとすることなく)所与の増幅器の帯域幅を拡張するように構成されてもよい。したがって、以下の説明の様々な部分は、特に、希土類ドープ利得ファイバ内で分散型スペクトルフィルタリングを使用して「利得平坦化フィルタリング」を行うことに言及しているが、これは単なる例示であり、本発明全体を説明する手段として使用されることを理解されるべきである。
【0007】
本発明の原理によれば、格子構造は、利得ファイバのかなりの部分に沿って延びるように形成された格子で、希土類ドープ利得ファイバ自体の中に内接している。格子構造は、例えば、従来技術の離散GFFのプロファイルと同様に、所望の損失スペクトルを提供する任意の適切な構成とすることができる。
【0008】
希土類ドープ利得ファイバに沿って分散型波長依存フィルタリングを提供するために使用され得る種々のタイプの格子構造には、複数の傾斜格子、複数の弱いブラッグ格子、複数の長周期格子(LPG)、およびこれらの格子構造の任意の適切な組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。利得ファイバの長さに沿って形成された格子の繰り返しセクションは、同じ損失プロファイルを示すことができ、または異なる波長で異なるレベルの減衰を提供するように構成することができる。格子構造は、描画されるときに利得ファイバ内に形成されてもよく、または形成されているファイバ内に内接されてもよい。格子構造を書き込むプロセスを監視し、必要に応じて格子の特徴を調整して所望の損失スペクトルを提供することができる。
【0009】
本発明のファイバ増幅器の1つの用途は、伝送線路のスパンに沿って設置された複数の増幅器(複数の中継器)内の複数のポンプ源を通電するのに必要な電力に制限を有する長距離伝送システムである。GFFの必要性を排除することにより、分散型フィルタリングを使用する本発明のファイバ増幅器は、長距離システムに(追加のファイバ対に関しては、おそらく)信号容量を付加する、改善された「電力変換効率」(PCE)を可能にする。
【0010】
長距離用途の例示的な構成では、利得プロファイルにおけるリップルを最小化するために、スパンに沿った選択された位置に、少数の小電力GFFを含めることができると考えられる。あるいは、「特殊化された」格子構造を複数の増幅器のサブセット内に形成して、この利得リップルに同様に対処することができる。
【0011】
本発明の例示的な実施形態は、所定の動作帯域幅にわたって光信号増幅を提供する希土類ドープ光ファイバ増幅器の形態をとることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
希土類ドープ光ファイバ増幅器は、希土類ドープ光ファイバセクションと、ポンプビーム入力を提供するための光源を含む。前記希土類ドープ光ファイバセクションは、その長手方向の範囲の少なくとも一部に沿って組み込まれた格子構造を含むように形成される。ポンプビームは、前記希土類ドープ光ファイバセクションを通って伝搬する光信号において利得を生成するのに適した波長で動作し、前記希土類ドープ光ファイバセクション内に組み込まれた前記格子構造は、前記希土類ドープ光ファイバ増幅器の前記所定の動作帯域幅内で分散型スペクトルフィルタリングを提供するように構成される。
【0013】
本発明の他のおよびさらなる態様および利点は、以下の議論の過程において、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】増幅領域の希土類ドープゲ利得ファイバに沿って分散型スペクトルフィルタリングを提供するように構成された例示的なEDFAの図である。
図2】従来技術のEDFAについての波長の関数としての典型的な利得変動のプロットである。
図3】本発明による分散型スペクトルフィルタリングを提供するためにドープ利得ファイバ内に組み込むことができる例示的な格子構造の損失スペクトルを示す。
図4】利得平坦化フィルタ(GFF)および本発明に従って形成された分散型スペクトルフィルタリングEDFAを使用する従来技術EDFAの性能を比較するプロットである。
図5】本発明による分散型スペクトルフィルタリングEDFAを用いた例示的海底ケーブルシステムの伝送容量の改善を示す棒グラフである。
図6】本発明による分散型スペクトルフィルタリングEDFAを使用する例示的な海底ケーブルシステム内に含まれるファイバ対の数の増加を示す棒グラフである。
図7】例示的な大西洋横断海底ケーブルシステムによってサポートされる総ケーブル容量およびファイバ対の数の両方のプロットである。
図8】例示的な太平洋横断海底ケーブルシステムによってサポートされる総ケーブル容量およびファイバ対の数の両方のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、従来技術に見られるような増幅後の離散デバイス(例えば、利得平坦化フィルタ(GFF))の使用に依存する代わりに、増幅プロセス自体の間に伝搬する光入力信号の分散型スペクトルフィルタリングを提供するために、本発明に従って形成された例示的なエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)10の図である。以下の議論は、例示のためにエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)に向けられているが、分散型フィルタリングの原理は、不均一な利得プロファイルを有する問題に対処するために、任意のタイプの希土類ドープファイバ増幅器と共に使用され得る。
【0016】
EDFA10は、格子構造20を組み込むために従来の利得ファイバから改変されたErドープ利得ファイバ12のセクションを含むものとして示されている。以下に詳細に説明するように、格子構造20は、利得ファイバ12の少なくとも一部に沿って形成され、増幅されている伝搬光信号の波長依存フィルタリング(すなわち「スペクトルフィルタリング」)を実行するように機能する。すなわち、回折格子構造20は、EDFAが所望の応答を示すように、特定の波長領域における利得を減衰させるために使用される。所望の増幅器応答は、拡張された帯域幅の利得プロファイル(例えば、均一性)を特に考慮することなく、動作帯域幅の増加(すなわち、関心対象のスペクトルの短波長端および/または長波長端の一方または両方において十分な利得を提供すること)であってもよい。また、所望の増幅器応答は、増幅器の帯域幅にわたって定義された利得プロファイルを達成してもよい。以下に詳細に説明するように、多くの用途は、対象の帯域幅にわたって本質的に均一な利得プロファイルを示すファイバ増幅器の使用を必要とする。
【0017】
格子構造20は、増幅された光信号が利得ファイバを出る直前に増幅された光信号内で発生する付加的な利得変動の機会を最小にするために、利得ファイバの大部分に沿って、及び少なくとも利得ファイバの出力終端セクションに沿って延びるように形成されることが好ましい。
【0018】
典型的な態様では、EDFA10は、入力光信号Iを増幅するために使用され、この入力信号は、Erドープ利得ファイバ12に導入される前に、まず入力アイソレータ13を通過する。図1に示す構成は、順方向にポンピングされたファイバ増幅器であり、適切なポンプ波長(例えば、Erドープ利得ファイバと共に使用する場合は980nm)で動作するポンプビームPも利得ファイバ12の入力に結合される。波長分割マルチプレクサ(WDM)16は、利得ファイバ12への入力に配置され、伝搬する入力信号Iとポンプ源18からのポンプビームPとを結合し、両方を利得ファイバ12に結合するために使用されるように示されている。増幅に続いて、増幅された信号は、出力アイソレータ15を通過し、増幅された出力光信号OとしてEDFA10を出る。
【0019】
図2は、約1527nm~1567nmの特定の波長範囲(Cバンド1550nmスペクトル領域の一例であるこの特定の範囲)内で動作する信号を増幅するために使用される従来のEDFAについて、波長の関数としての利得の典型的な変動のプロットを含む。利得は、この範囲にわたって約2.3dBほど変化することが示されており、この理由により、離散利得平坦化フィルタ(GFF)が、1550nmスペクトル領域にわたってEDFAの性能を幾分平坦化するために、利得プロファイルの少なくともピーク領域を減衰させるために従来技術において使用されてきた。上述し、以下に詳細に説明するように、GFFの必要性は、複数のEDFAの電力変換効率(PCE)を低下させるが、これは、電力バジェットが限られたシステム(長距離伝送システムなど)において問題となる。
【0020】
本発明のEDFA10のErドープ利得ファイバ12内に格子構造20を含めることにより、増幅が行われるのと同時に伝搬する光信号をフィルタリングすることが可能となり、図2に示される変動が第1の例において最小化される。別の言い方をすれば、利得ファイバ12内に格子構造20を含めることは、信号がErドープ利得ファイバ12に沿って伝搬し続ける(そして内部で増幅され続ける)ときに、これらの信号成分の減衰を導入することによって、特定の波長値における利得のチェックされていない成長を阻害する。信号が利得ファイバに沿って伝搬するときに特定の波長成分を減衰させる能力により、全スペクトルにわたってより効率的かつ均一な増幅が、この例では、本質的に均一な利得プロファイルである(あるいは、減衰を制御して増幅器の帯域幅を拡張したり、特定の用途に最適な代替利得プロファイルを提供したりする)EDFA10からの出力に提供される。
【0021】
図3は、Erドープ利得ファイバ12に組み込むことができる例示的な格子構造20の損失スペクトルを示す。このプロットの特定の形状は、従来技術のGFFの形状に類似していてもよいが、この例では、利得ファイバ12の延長部分に沿って繰り返され、利得ファイバ12の比較的長い範囲にわたって所望の分散型フィルタリング能力を提供する。本発明の構成の分散性は、図3において、損失dB/mを表す縦軸に沿って示されている(ここで、利得ファイバの所与のセクションは、数十メートルの長さを有し得る)。この連続型のフィルタリングは、特定の波長領域における大量の利得を除去するように構成する必要がある「従来技術」のGFFとは対照的である。
【0022】
図4は、2つの異なる従来技術のEDFA、ならびに本発明に従って形成された例示的なEDFA10についての波長の関数としての信号利得のプロットを含む。比較のために、図2の「フィルタリングされていない」利得プロファイルを図4のプロットAとして再現する。プロットBも従来のEDFAに関連しているが、この場合、利得ファイバの出力を越えて配置された離散利得平坦化フィルタを含む。応答性の向上は劇的であるが、PCEの低減という代償を伴う。これは、固定電力バジェットを使用した長期間の用途では問題となる。プロットCは、本発明の原理に従って、Erドープ利得ファイバ20内に集積された格子構造20を使用した結果を示す。この分散型フィルタリング手法の結果はまた、いかなるタイプのGFFもないシステムに比べて著しい改善であり、従来技術の離散フィルタ手法と同じPCEペナルティを生じない。特に、離散GFFを使用する従来技術の構成に対するPCEは約34.04%であることが判明したが、利得ファイバに沿った分散型フィルタリングの本発明の構成に対するPCEは約39.45%であることが判明した。以下に詳細に説明するように、PCEのこの増加は、選択されたシステム(海底ケーブルシステムなど)において使用される追加の「複数のファイバ対」を可能にする。
【0023】
格子構造20を形成するために使用可能な格子の1つとして、傾斜格子がある。
傾斜格子では、格子変調の面はファイバの軸(ここでは、Erドープ利得ファイバ12の軸)に対してある角度をなす。このような格子は、光を利得ファイバのクラッディングモードに散乱させ、信号の減衰を引き起こす。波長依存減衰は、異なる周期を有するいくつかの傾斜格子を重ね合わせることによって構成することができる。
典型的な傾斜角は0度から9度の間の範囲である。
【0024】
あるいは、格子構造20は、光を反射して利得ファイバ12のコア領域に戻すように機能する弱いブラッグ格子を含むことができる。そのような格子の強度を調整するために、屈折率変調および/または格子構造20の局所周期を変更することができる。このタイプの格子の全体構造は、したがって、選択された波長成分の減衰を可能にする。
【0025】
傾斜格子および弱いブラッグ格子の使用に加えて、格子構造20は、一組の長周期格子(LPG)を含むことができ、波長依存フィルタリングは、異なる格子周期のいくつかのLPGを含むことによって達成される。
【0026】
一実施形態では、EDFA10のErドープ利得ファイバ12は、LP01コアモードおよびガイド付きLP11モードをサポートするように構成することができる。格子構造20は傾斜格子を含むことができ、格子面の傾斜は、LP01コアモードの後方反射が非常に低くなる一方、前方伝搬LP01コアモードと後方に伝搬するLP11モードとの間の結合は非常に大きくなるように調整される。このようなマルチモード格子構造20の格子周期および強度は、上述したように、過剰レベルの利得が生成される波長において必要な減衰を生成するように調整される。この実施形態の別のバージョンでは、利得ファイバ12の屈折率は、所与のクラッドモード、典型的にはLP11モードへの結合を増加させるように設計される。この場合、このようなゴーストモードへの結合は、所望の減衰を生成するために使用される。これらの実施形態のいずれにおいても、逆反射されたLP11またはゴーストモード光は、利得ファイバ12につながる接合部(減衰を生成するような、異なる屈折率プロファイルを有する2つのファイバ間の接合部の形成を示す図1を参照されたい)で比較的大きな減衰を示し、したがってファイバの所与のセクションの全体的な戻り損失を大幅に減少させる。
【0027】
上述のように、同じ格子パターンがファイバの延長部分に沿って何度も繰り返される(例えば、図3に示す損失特性は、利得ファイバの連続部分にわたって繰り返される)ように、格子構造20を利得ファイバ12内に形成することができ、これにより、「分散型」フィルタリング機能を提供する。あるいは、格子構造20は、各格子の減衰クトルがわずかに異なる、いくつかの異なる複数の格子を含むことができる。いずれの場合も、累積的な効果は、EDFAからの所望の出力応答に必要な特定のタイプのスペクトルフィルタリング(例えば、動作帯域幅の増大、均一な利得プロファイル等)を提供可能なことである。
【0028】
例えば、弱いブラッググレーティングと傾斜グレーティングの組み合わせを使用することができる。このような組み合わせにより、波長依存の減衰を高い精度で達成することができ、同時にファイバ内の複数のコアモード反射(これらの反射が増幅器の性能を劣化させることが知られている)の影響を低減することができる。
【0029】
様々な製造プロセスを使用して、Erドープ利得ファイバ12内に格子構造20を組み込むことができる。例えば、回折格子構造は、光ファイバプリフォームから引き出されるときに利得ファイバ12に書き込まれ得る。あるいは、格子構造20は、高レベルのPCEを示すために必要なEDFA内に含まれ得る利得ファイバ12の長さに沿って内接されてもよい。または、格子構造20は、スプール間プロセスにおいて利得ファイバの全長に沿って内接されてもよい。これらの製造プロセスの全ては、当該技術分野において十分に理解されており、ここで適用可能である。さらに、利得ファイバ12の伝送特性を監視することによって、リアルタイムで格子構造20の詳細(例えば、強度、期間等。)な調整を提供し、必要に応じて格子書き込みプロセスを修正することが可能である。あるいは、最適な性能を達成するために行われるリアルタイム調整を用いて、利得、PCE及び雑音指数のような増幅器特性を格子刻印中に監視することができる。これらの調整は、所望の結果を達成するための(異なる減衰スペクトルを有する)追加の格子の形成を含んでもよく、意図される用途に応じて異なってもよい。
【0030】
上述のように、伝送信号経路に沿って配置された各増幅器(リピータ)の出力で複数の離散GFFを使用する必要性を排除することによって利益を得る多くの長距離通信アプリケーションがある。たとえば、複数の海底送電システムでは、含まれるすべてのEDFAのポンプ電力が端末局から供給されます。増幅器の利得スペクトルを平坦化するために出力に離散GFFを使用せずに増幅器を設計することができれば、増幅器のPCEが改善され、ケーブルの総伝送容量を増加させることができる。
【0031】
海底ケーブル通信の容量需要は、近い将来、指数関数的に増加すると予想される。複数の海底光ファイバケーブルシステムにおける基本的な制約の一つは、上述のように複数のEDFA中継器の電力供給である。これは、電力が遠隔地の複数の陸上基地局から供給され、その結果、ケーブルとリピータの間の電位は、この固定位置の「給電装置」(PFE)の最大定格(通常15kV)を超えることができないためである。したがって、高PCE EDFAリピータを導入できることが非常に重要である。
【0032】
ケーブル全体の総電圧降下がすべてのリピータ全体の総電圧降下と等しい場合、所定のリピータの電力消費は次のように表すことができる。
【数1】
【0033】
ここで、Nfpは、サポートされるファイバ対の数であり、εは、光パワー変換に関係しない制御回路の総リピータ電力の一部を表し、ηは、増幅器の電気-光変換効率である。係数ηは、ドライバ効率、ポンプ経時変化のための電流の変化、(ドライバ電流から光出力への)ポンプ変換効率、上述のEDFA PCEなどの要素を含む。したがって、EDFA PCEを増加させることによるηの改善は、所与のリピータにおける電力消費を低下させる結果となる。あるいは、ηの改善は、同じPrep値に対してより大きなNfpを可能にする。
【0034】
図5および6は、本発明による分散型フィルタリングを組み込んだEDFAの追加能力の表現を含む。図5は、11,000kmの距離を有する典型的な太平洋横断システムおよび6600kmの距離を有する大西洋横断システムを含む、例示的な複数の海底ケーブルシステムの総ケーブル容量の増加のプロットである。太平洋横断システムには、約40nmのオーダーの帯域幅を示す複数のEDFAが含まれる一方、大西洋横断システムに使用されるEDFAは、それよりもわずかに小さい帯域幅(約37nm)を有する。これらのシステムは共に、それらのEDFAに対して順方向ポンピングを利用し、複数のポンプ源を励起するために必要な電気エネルギーは、(その場所の固定された電力供給装置内の)入力陸上端子に位置する。上述したように、典型的に使用されるDC電圧は15kVである。
【0035】
この背景を考慮して、図5は、本発明の原理による分散型スペクトルフィルタリングを使用することによって達成することができる、太平洋横断(11,000km)システムおよび大西洋横断(6600km)システムの両方に対する総ケーブル容量の増加を示す棒グラフを含む。複数の棒IpacおよびIatlは、発射信号電力(典型的には高い信号対雑音比(SNR)領域、例えば約9dBのSNR)を最適化するように構成された分散型スペクトルフィルタリングシステムにおいて利用可能な容量の増加を示す。棒IIpacおよびIIatlは、低SNRレジーム(約2.89dB)で動作するように構成され、空間分割多重化(SDM)方式を利用するシステムに関連する。棒グラフは、本発明の分散型配置を利用する大西洋横断システムが、低SNRレジーム(例えば、約2.89dBのSNR)で動作する場合、約150Tb/秒のオーダーでの容量増加を提供し、SDM伝送アプローチを用いて総ケーブル容量を最大化するように最適化されることを明確に示す。より高いSNR領域(例えば、約9dBのSNR)で動作する場合、約80Tb/秒のオーダーの容量増加が達成される。「低」SNRおよび「高」SNRは、太平洋横断システムの容量をそれぞれ約60Tb/秒および30Tb/秒増加させることが示されている。図6は、この同じデータを見る別の方法であり、太平洋横断および大西洋横断ケーブル内で使用され得るファイバ対の数の増加を示す。
【0036】
図7は、6600kmスパンの全体を通電するために使用される、15kVの固定ケーブル電圧によって再び支持される、例示的な大西洋横断システムによって支持される総ケーブル容量およびファイバ対の数の両方のプロットを含む。図7のプロットは、スパンに沿って97.5kmごとにEDFA「リピータ」を設置することに関連し、Erドープ利得ファイバ内の分散型利得平坦化フィルタリングを利用するために本発明に従って形成された複数の離散GFFおよび複数のEDFAを使用する従来技術の構成の両方の結果を含む。図5および6の棒グラフと同様、図7に示される結果はまた、総容量が、10の追加のファイバ対を含む能力で、低SNR領域で約150Tb/秒だけ増加することを示す。図8は、例示的な太平洋横断システムについての総ケーブル容量およびファイバ対の数の両方のプロットを含む。
【0037】
これらのような用途では、追加の離散GFFを、リピータの小さなサブセット内(たとえば、スパンに沿って4つおきのリピータ内)で使用することが考えられる。これらの追加GFFは、スパンに沿った累積利得リップルの影響を低減するために使用される「クリーンアップ」フィルタと考えることができる。あるいは、スパンに沿った特定の位置に異なる特殊化された格子構造20Aを使用してもよく、この場合、特殊化された格子の損失スペクトルが、このクリーンアップ機能を実行するように構成される。
【0038】
本発明の原理を本明細書で説明してきたが、この説明は例示としてのみ行われ、本発明の範囲を限定するものではないことを当業者は理解すべきである。当業者による修正および置換は、本発明の範囲内にあると考えられるが、これは、以下の請求項による場合を除き、限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】