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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】キメラ抑制性受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221027BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20221027BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221027BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/078
A61K35/17
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511283
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020047274
(87)【国際公開番号】W WO2021035093
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/889,324
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519028678
【氏名又は名称】センティ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】フランケル,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ゴードリー,ラッセル,モリソン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、キメラ抑制性受容体コンストラクト及び組成物、ならびにコンストラクトを含む細胞を提供する。キメラ抑制性受容体コンストラクト及び組成物、ならびにコンストラクトを含む細胞を使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外リガンド結合ドメインと、
膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメインと、
免疫受容体に近接する場合に前記免疫受容体の活性化を阻害する酵素的抑制性ドメインと、を含む、キメラ抑制性受容体。
【請求項2】
前記酵素的抑制性ドメインが酵素触媒ドメインを含み、前記酵素触媒ドメインが、CSK、SHP-1、SHP-2、PTEN、CD45、CD148、PTP-MEG1、PTP-PEST、c-CBL、CBL-b、PTPN22、LAR、PTPH1、SHIP-1、ZAP70、及びRasGAPからなる群から選択される酵素に由来する、請求項1に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項3】
前記酵素的抑制性ドメインが、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内ドメインの少なくとも一部を含む、請求項1または2に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項4】
前記細胞外リガンド結合ドメインが抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、場合により、前記抗原結合フラグメントが、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、または単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項1~3のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項5】
前記細胞外リガンド結合ドメインが、腫瘍細胞で発現されないリガンドに結合し、及び/または前記リガンドが健康な組織の細胞で発現される、請求項1~4のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項6】
前記細胞外リガンド結合ドメインが二量体化ドメインを含み、場合により、前記リガンドが同種の二量体化ドメインをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項7】
前記膜局在化ドメインが、細胞外ドメインの少なくともの一部及び/または細胞内ドメインの少なくとも一部をさらに含み、場合により、前記膜貫通ドメインが、LAX膜貫通ドメイン、CD25膜貫通ドメイン、CD7膜貫通ドメイン、LAT膜貫通ドメイン、LAT変異体由来の膜貫通ドメイン、BTLA膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD3ζ膜貫通ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、4-IBB膜貫通ドメイン、OX40膜貫通ドメイン、ICOS膜貫通ドメイン、2B4膜貫通ドメイン、PD-1膜貫通ドメイン、CTLA4膜貫通ドメイン、BTLA膜貫通ドメイン、TIM3膜貫通ドメイン、LIR1膜貫通ドメイン、NKG2A膜貫通ドメイン、TIGIT膜貫通ドメイン、及びLAG3膜貫通ドメイン、LAIR1膜貫通ドメイン、GRB-2膜貫通ドメイン、Dok-1膜貫通ドメイン、Dok-2膜貫通ドメイン、SLAP1膜貫通ドメイン、SLAP2膜貫通ドメイン、CD200R膜貫通ドメイン、SIRPα膜貫通ドメイン、HAVR膜貫通ドメイン、GITR膜貫通ドメイン、PD-L1膜貫通ドメイン、KIR2DL1膜貫通ドメイン、KIR2DL2膜貫通ドメイン、KIR2DL3膜貫通ドメイン、KIR3DL1膜貫通ドメイン、KIR3DL2膜貫通ドメイン、CD94膜貫通ドメイン、KLRG-1膜貫通ドメイン、PAG膜貫通ドメイン、CD45膜貫通ドメイン、及びCEACAM1膜貫通ドメインからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項8】
前記キメラ抑制性受容体が1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインをさらに含み、場合により前記1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインが、PD-1、CTLA4、TIGIT、BTLA、及びLAIR1からなる群から選択される1つ以上のITIM含有タンパク質、もしくはそのフラグメントを含み、ならびに/または前記1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインが、GRB-2、Dok-1、Dok-2、SLAP1、SLAP2、LAG3、HAVR、GITR、及びPD-L1からなる群から選択される1つ以上の非ITIM足場タンパク質、もしくはそのフラグメントを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項9】
前記細胞外リガンド結合ドメインが細胞外リンカー領域を介して前記膜局在化ドメインに連結され、場合により、前記細胞外リンカー領域が、前記細胞外リガンド結合ドメインと前記膜局在化ドメインとの間に位置して前記細胞外リガンド結合ドメイン及び前記膜局在化ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結され、場合により、前記細胞外リンカー領域が、CD8α、CD4、CD7、CD28、IgG1、IgG4、FcγRIIIα、LNGFR、及びPDGFRからなる群から選択されるタンパク質に由来するか、またはGGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号46)、ESKYGPPCPSCP(配列番号47)、ESKYGPPAPSAP(配列番号48)、ESKYGPPCPPCP(配列番号49)、EPKSCDKTHTCP(配列番号50)、AAAFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号51)、TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号52)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEADAEC(配列番号53)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC(配列番号54)、及びAVGQDTQEVIVVPHSLPFKV(配列番号55)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項10】
前記キメラ抑制性受容体が、前記膜局在化ドメインと前記酵素的抑制性ドメインとの間に位置して前記膜局在化ドメイン及び前記酵素的抑制性ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結された細胞内スペーサー領域をさらに含み、場合により、前記細胞内スペーサー領域が、GGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号46)、ESKYGPPCPSCP(配列番号47)、ESKYGPPAPSAP(配列番号48)、ESKYGPPCPPCP(配列番号49)、EPKSCDKTHTCP(配列番号50)、AAAFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号51)、TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号52)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEADAEC(配列番号53)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC(配列番号54)、及びAVGQDTQEVIVVPHSLPFKV(配列番号55)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項11】
前記免疫受容体がキメラ免疫受容体であり、場合により、前記免疫受容体がキメラ抗原受容体(CAR)、天然の抗原受容体であり、場合により、前記免疫受容体が、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体をコードする、核酸。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項14】
請求項12に記載の核酸、請求項13に記載のベクターを含むか、または請求項1~11のいずれか1項に記載のキメラ抑制性受容体を発現する、遺伝子操作された細胞。
【請求項15】
キメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された細胞であって、前記キメラ抑制性受容体が、
細胞外リガンド結合ドメインと、
膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメインと、
免疫受容体に近接する場合に前記免疫受容体の活性化を阻害する酵素的抑制性ドメインと、を含み、
場合により、前記細胞が免疫受容体をさらに含み、場合により、前記免疫受容体がキメラ抗原受容体または天然の抗原受容体であり、場合により、前記免疫受容体が、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体からなる群から選択され、場合により、前記キメラ抑制性受容体がリガンド結合時の免疫受容体の活性化を阻害する、前記操作された細胞。
【請求項16】
前記細胞が、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、γδT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球、マスト細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、ESC由来細胞、及びiPSC由来細胞からなる群から選択される、請求項14または15に記載の操作された細胞。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか1項に記載の操作された細胞と、薬学的に許容される担体、薬学的に許容される賦形剤、またはそれらの組み合わせと、を含む、医薬組成物。
【請求項18】
免疫受容体の活性化を阻害する方法であって、
請求項14~16のいずれか1項に記載の操作された細胞または請求項17に記載の医薬組成物を、前記キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下で前記同種リガンドと接触させることを含み、
前記キメラ抑制性受容体が、前記操作された細胞の細胞膜上で発現される免疫受容体に近接するように局在化される場合に免疫受容体の活性化を阻害する、前記方法。
【請求項19】
免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体によって誘導される細胞媒介性免疫応答を防止、減弱、または阻害する方法であって、
請求項14~16のいずれか1項に記載の操作された細胞または請求項17に記載の医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体の活性化を防止、減弱、または阻害する方法であって、
請求項14~16のいずれか1項に記載の操作された細胞または請求項17に記載の医薬組成物または請求項17に記載の医薬組成物を、前記キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下で前記キメラ抑制性受容体の前記同種リガンドと接触させることを含み、
前記リガンドの前記キメラ抑制性受容体との結合時に前記酵素的抑制性ドメインが前記腫瘍標的化キメラ受容体の活性化を防止、減弱、または阻害する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
関連出願の相互参照
本出願は、その全容を参照により本明細書に援用するところの2019年8月20日出願の米国特許仮出願第62/889,324号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Web経由で提出され、その全容を参照によって本明細書に援用する配列表を含む。20XX年XX月に作成された前記ASCIIコピーは、XXXXXUS_sequencelisting.txtと名前が付けられており、そのサイズはX,XXX,XXXバイトである。
【0003】
〔背景技術〕
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞などの免疫調節細胞の標的化されたインビボ活性化を可能とする。これらの組換え膜受容体は、抗原結合ドメインと、1つ以上のシグナル伝達ドメイン(例えば、T細胞活性化ドメイン)を有している。これらの特殊な受容体は、T細胞が腫瘍細胞上の特定のタンパク質抗原を認識することを可能とし、T細胞の活性化及びシグナル伝達経路を誘導する。キメラ受容体を発現するT細胞を用いた臨床試験の最近の結果は、がん免疫療法用の薬剤としてのその有用性の説得力ある支持を与えるものである。しかし、これらの有望な結果にもかかわらず、CAR T細胞治療に関連する多くの副作用が特定されており、重大な安全上の懸念が生じている。1つの副作用は、TCR及びCAR操作されたT細胞による「オンターゲット・バット・オフティシュー」(on-target but off-tissue)(本来の標的ではあるものの標的組織外のリガンドに結合する)有害事象であり、CAR T細胞が標的腫瘍組織の外側でそのリガンドに結合して免疫応答を誘導するというものである。したがって、適切なCAR標的を特定できることは、同じ標的抗原を発現する正常細胞に損傷を与えることなく、腫瘍を効果的に標的化して治療するうえで重要である。標的に対する適当な応答を調節してオフターゲットの副作用を低減できることは、TCR、操作されたTCR、キメラTCRなどの他の免疫受容体システムにおいても重要である。
【0004】
抑制性キメラ抗原受容体(iCARとしても知られる)は、標的細胞上の同種リガンドに結合した後、免疫調節細胞の活性を阻害または低下させるタンパク質構造である。現在のiCAR設計では、PD-1細胞内ドメインを阻害に利用しているが、再現が困難であることが示されている。したがって、iCARで使用するための上記に代わる抑制性ドメインが必要とされている。免疫受容体システムのための適当な抑制性ドメイン、手法、及びコンストラクトも必要とされている。
【0005】
〔発明の概要〕
本明細書では、いくつかの態様において、細胞外リガンド結合ドメインと、膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメインと、免疫受容体に近接する場合に免疫受容体の活性化を阻害する酵素的抑制性ドメインと、を含むキメラ抑制性受容体が提供される。
【0006】
本明細書では、他の態様において、本開示の少なくとも1つのキメラ抑制性受容体をコードする核酸が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのキメラ抑制性受容体をコードする核酸は、ベクターである。
【0007】
他の態様では、本開示の少なくとも1つのキメラ受容体をコードするか、または本開示のキメラ抑制性受容体を発現する、ベクターなどの核酸を含む遺伝子操作された細胞が提供される。いくつかの態様では、キメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された細胞が提供され、キメラ抑制性受容体は、細胞外リガンド結合ドメインと、膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメインと、免疫受容体に近接する場合に免疫受容体の活性化を阻害する酵素的抑制性ドメインと、を含む。
【0008】
さらに他の態様では、本開示の遺伝子操作された細胞における免疫受容体の活性化を阻害するための方法が提供される。
【0009】
さらに他の態様では、免疫応答を低減し、及び/または自己免疫疾患を治療するために、本開示の遺伝子操作された細胞または医薬組成物を利用するための方法が提供される。
【0010】
他の態様では、本明細書の組成物のいずれか1つの操作された細胞と、薬学的に許容される担体、薬学的に許容される賦形剤、またはそれらの組み合わせとを含む医薬組成物が提供される。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、タンパク質複合体、タンパク質、ペプチド、受容体結合ドメイン、核酸、小分子、及び化学物質から選択されるリガンドに結合する。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、またはシングルドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0013】
これらの実施形態のいくつかでは、リガンドは腫瘍関連抗原である。これらの実施形態のいくつかでは、リガンドは腫瘍細胞で発現されない。これらの実施形態のいくつかでは、リガンドは非腫瘍細胞で発現される。これらの実施形態のいくつかでは、リガンドは、健康な組織の細胞で発現される。
【0014】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、二量体化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、リガンドは、同種の二量体化ドメインをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、リガンドは細胞表面リガンドである。いくつかの実施形態では、細胞表面リガンドは、免疫受容体の同種リガンドをさらに発現する細胞で発現される。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ受容体の膜局在化ドメインは、細胞外ドメインの少なくとも一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞内ドメインの少なくとも一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞外ドメインの少なくとも一部と細胞内ドメインの少なくとも一部とをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、LAX膜貫通ドメイン、CD25膜貫通ドメイン、CD7膜貫通ドメイン、LAT膜貫通ドメイン、LAT変異体由来の膜貫通ドメイン、BTLA膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD3ζ膜貫通ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、4-IBB膜貫通ドメイン、OX40膜貫通ドメイン、ICOS膜貫通ドメイン、2B4膜貫通ドメイン、PD-1膜貫通ドメイン、CTLA4膜貫通ドメイン、BTLA膜貫通ドメイン、TIM3膜貫通ドメイン、LIR1膜貫通ドメイン、NKG2A膜貫通ドメイン、TIGIT膜貫通ドメイン、及びLAG3膜貫通ドメイン、LAIR1膜貫通ドメイン、GRB-2膜貫通ドメイン、Dok-1膜貫通ドメイン、Dok-2膜貫通ドメイン、SLAP1膜貫通ドメイン、SLAP2膜貫通ドメイン、CD200R膜貫通ドメイン、SIRPα膜貫通ドメイン、HAVR膜貫通ドメイン、GITR膜貫通ドメイン、PD-L1膜貫通ドメイン、KIR2DL1膜貫通ドメイン、KIR2DL2膜貫通ドメイン、KIR2DL3膜貫通ドメイン、KIR3DL1膜貫通ドメイン、KIR3DL2膜貫通ドメイン、CD94膜貫通ドメイン、KLRG-1膜貫通ドメイン、PAG膜貫通ドメイン、CD45膜貫通ドメイン、及びCEACAM1膜貫通ドメインからなる群から選択される膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞外ドメインの少なくとも一部及び/または対応する内ドメインの少なくとも一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、LAT変異体は、LAT(CA)変異体である。
【0018】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、キメラ抑制性受容体を細胞膜のドメインに誘導、及び/または隔離する。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、キメラ抑制性受容体を脂質ラフトまたは重脂質ラフトに局在化させる。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞膜のドメインに局在化された1つ以上の細胞膜成分と相互作用する。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインの同種リガンドへの結合がない状態で酵素的抑制性ドメインによる免疫受容体活性化の構成的阻害を軽減するのに十分である。
【0019】
いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインの同種リガンドへの結合がない状態で免疫受容体の1つ以上の成分によって占められる細胞膜のドメインとは異なる細胞膜のドメインへのキメラ抑制性受容体の局在化を媒介する。
【0020】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、近接タンパク質フラグメントをさらに含む。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質の1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、1つ以上のITIM含有タンパク質、またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のITIM含有タンパク質、またはそのフラグメントは、PD-1、CTLA4、TIGIT、BTLA、及びLAIR1から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、1つ以上の非ITIM足場タンパク質、またはそのフラグメントを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非ITIM足場タンパク質、またはそのフラグメントは、GRB-2、Dok-1、Dok-2、SLAP1、SLAP2、LAG3、HAVR、GITR、及びPD-L1から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ抑制性受容体の細胞外リガンド結合ドメインは、細胞外リンカー領域を介して膜局在化ドメインと連結される。
【0022】
いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域は、細胞外リガンド結合ドメインと膜局在化ドメインとの間に位置し、細胞外リガンド結合ドメイン及び膜局在化ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結される。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域は、CD8α、CD4、CD7、CD28、IgG1、IgG4、FcγRIIIα、LNGFR、及びPDGFRからなる群から選択されるタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域は、AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号46)、ESKYGPPCPSCP(配列番号47)、ESKYGPPAPSAP(配列番号48)、ESKYGPPCPPCP(配列番号49)、EPKSCDKTHTCP(配列番号50)、AAAFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号51)、TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号52)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEADAEC(配列番号53)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC(配列番号54)、及びAVGQDTQEVIVVPHSLPFKV(配列番号55)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域は、GGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号44)、及びEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号45)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、膜局在化ドメインと酵素的抑制性ドメインとの間に位置して膜局在化ドメイン及び酵素的抑制性ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結された細胞内スペーサー領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、GGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号44)、及びEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号45)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号46)、ESKYGPPCPSCP(配列番号47)、ESKYGPPAPSAP(配列番号48)、ESKYGPPCPPCP(配列番号49)、EPKSCDKTHTCP(配列番号50)、AAAFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号51)、TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号52)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEADAEC(配列番号53)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC(配列番号54)、及びAVGQDTQEVIVVPHSLPFKV(配列番号55)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ抑制性受容体の酵素的抑制性ドメインは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内ドメインの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、酵素触媒ドメインを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、酵素の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、酵素の部分は、酵素ドメインまたは酵素フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、酵素の部分は、酵素の触媒ドメインである。
【0026】
いくつかの実施形態では、酵素は、CSK、SHP-1、SHP-2、PTEN、CD45、CD148、PTP-MEG1、PTP-PEST、c-CBL、CBL-b、PTPN22、LAR、PTPH1、SHIP-1、ZAP70、及びRasGAPからなる群から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCSKに由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、SRC相同性3(SH3)欠失を有するCSKタンパク質を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはSHP-1に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ドメインを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはSHP-2に由来する。
【0030】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTENに由来する。
【0031】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCD45に由来する。
【0032】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCD148に由来する。
【0033】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTP-MEG1に由来する。
【0034】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTP-PESTに由来する。
【0035】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはc-CBLに由来する。
【0036】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCBL-bに由来する。
【0037】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTPN22に由来する。
【0038】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはLARに由来する。
【0039】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTPH1に由来する。
【0040】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはSHIP-1に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ドメインを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはZAP70に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、SRC相同性1(SH1)ドメイン、SRC相同性2(SH2)ドメイン、またはSH1ドメインとSH2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、キナーゼドメイン欠失を有するZAP70タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、Tyr492Pheアミノ酸置換、Tyr493Pheアミノ酸置換、またはTyr492Pheアミノ酸置換とTyr493Pheアミノ酸置換を有する変異体ZAP70タンパク質を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはRasGAPに由来する。
【0043】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、基礎阻害を調節する1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の改変は基礎阻害を低下させる。他の実施形態では、1つ以上の改変は基礎阻害を増加させる。
【0044】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、キメラ抑制性受容体が免疫受容体に近接するように動員される際に免疫受容体の活性化を阻害する。
【0045】
いくつかの実施形態では、免疫受容体は、キメラ免疫受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、キメラ抗原受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、天然の免疫受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、非天然の抗原受容体である。
【0046】
いくつかの実施形態では、免疫受容体は、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、免疫受容体は、T細胞受容体である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子操作された細胞は、少なくとも1つの免疫受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫受容体は、キメラ免疫受容体である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫受容体は、キメラ抗原受容体である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫受容体は、天然の免疫受容体である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫受容体は、非天然の抗原受容体である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの免疫受容体は、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ抑制性受容体は、免疫受容体に近接している場合、リガンド結合時の免疫受容体の活性化を阻害する。
【0050】
いくつかの実施形態では、リガンドは細胞表面リガンドである。いくつかの実施形態では、細胞表面リガンドは、同種免疫受容体リガンドをさらに発現する細胞で発現される。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体に対するリガンド結合及び免疫受容体に対する同種免疫受容体リガンド結合は、キメラ抑制性受容体を免疫受容体に近接するように局在化させる。いくつかの実施形態では、免疫受容体に近接するようなキメラ抑制性受容体の局在化は、免疫受容体の活性化を抑制する。
【0051】
いくつかの実施形態では、細胞はT細胞である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、T細胞受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体の活性化はT細胞の活性化である。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子操作された細胞は、免疫調節細胞である。いくつかの実施形態では、免疫調節細胞は、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、γδT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球、マスト細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、ESC由来細胞、及びiPSC由来細胞からなる群から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態では、細胞は自家である。いくつかの実施形態では、細胞は同種である。
【0054】
本明細書では、免疫細胞の活性化を阻害する方法も提供される。方法は、本明細書に開示される遺伝子操作された細胞または医薬組成物を、キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下で接触させることを含み、キメラ抑制性受容体は、操作された細胞の細胞膜で発現される免疫受容体に近接するように局在化される場合に免疫受容体の活性化を阻害する。
【0055】
本明細書では、免疫応答を低下させるための方法も提供される。方法は、本明細書に開示される遺伝子操作された細胞または医薬組成物をかかる治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0056】
本明細書では、免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体によって誘導される細胞媒介性免疫応答を防止、減弱、または阻害するための方法も提供される。方法は、本明細書に開示される遺伝子操作された細胞または医薬組成物をかかる治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0057】
本明細書では、免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体によって誘導される細胞媒介性免疫応答を防止、減弱、または阻害も提供される方法も提供される。方法は、本明細書に開示される遺伝子操作された細胞または医薬組成物を、キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下でキメラ抑制性受容体の同種リガンドと接触させることを含み、リガンドのキメラ抑制性受容体との結合時に酵素的抑制性ドメインが腫瘍標的化キメラ受容体の活性化を防止、減弱、または阻害する。
【0058】
本明細書では、自己免疫疾患または免疫応答を低下させることによって治療可能な疾患を治療する方法も提供される。方法は、本明細書に開示される遺伝子操作された細胞または医薬組成物をかかる治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0059】
これら及びその他の態様については、下記に詳細に説明する。
【0060】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために含まれるものであるが、本開示の特定の態様は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と併せてこれらの図面の1つ以上を参照することによりより深い理解を得ることができる。図面に示されるデータは、いかなる意味でも本開示の範囲を限定するものではない点を理解されたい。
【0061】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕本開示のキメラ抑制性受容体がT細胞活性化を遮断する機構を示す概略図である。
【0062】
図2〕キメラ抑制性受容体の特定の実施形態の組成を示す概略図である。ELBD:細胞外リガンド結合ドメイン(Extracellular Ligand Binding Domain)。例としては、これらに限定されるものではないが、scFv(例えば、腫瘍抗原に対する)、天然の受容体/リガンドドメイン、及び直交二量体化ドメイン(例えば、可溶性標的化分子と結合することができるロイシンジッパー)が挙げられる。MLD:膜局在化ドメイン(Membrane Localization Domain)(場合により、細胞膜のサブドメインへの局在化に関与する近位の細胞内及び細胞外セグメント(例えば、脂質ラフト)を含む)。例としては、これらに限定されるものではないが、LAX、CD25、CD7(Pavel Otahal et al.,Biochim Biophys Acta.2011 Feb;1813(2):367-76)、及びLATの変異体(例えば、LAT(CA)、例えば、本明細書にその全体を援用する、Kosugi A.,et al. Involvement of SHP-1 tyrosine phosphatase in TCR-mediated signaling pathways in lipid rafts,Immunity,2001 Jun;14(6):669-80を参照)の膜貫通ドメインが挙げられる。EID:酵素的抑制性ドメイン(Enzymatic Inhibitory Domain)(例えば、有効性を最大化し、基礎阻害を最小化するように選択された、酵素のドメイン、フラグメント、または変異体を含む、天然のT細胞活性化カスケードを阻害する酵素)。例としては、これらに限定されるものではないが、CSK(Pavel Otahal et al.,Biochim Biophys Acta. 2011 Feb;1813(2):367-76)、SHP-1(例えば、Kosugi A.,et al.Involvement of SHP-1 tyrosine phosphatase in TCR-mediated signaling pathways in lipid rafts,Immunity,2001 Jun;14(6):669-80を参照)、PTEN、CD45、CD148、PTP-MEG1、PTP-PEST、c-CBL、CBL-b、LYP/Pep/PTPN22、LAR、PTPH1、SHIP-1、RasGAP(例えば、本明細書にその全体を援用する、Stanford et al.,Regulation of TCR signaling by tyrosine phosphatases:from immune homeostasis to autoimmunity, Immunology,2012 Sep;137(1):1-19を参照)が挙げられる。
【0063】
図3〕キメラ抑制性受容体(例えば、「拡張型」キメラ抑制性受容体)の特定の実施形態の組成を示す概略図である。図2で述べたような、ELBD、MLD、及びEID。SID:足場抑制性ドメイン(Scaffold Inhibitory Domain)。例としては、これらに限定されるものではないが、ITIMを含むタンパク質ドメイン(例えば、PD-1、CTLA4、TIGIT、BTLA、及び/またはLAIR1の細胞質尾部など、またはそれらのフラグメント(複数可))ならびに、GRB-2、Dok-1、Dok-2、SLAP、LAG3、HAVR、GITR、及びPD-L1を含む、T細胞の活性化を阻害する非ITIM足場タンパク質ドメイン、またはそれらのフラグメント(複数可)が挙げられる。
【0064】
図4〕NOTゲートaCAR/iCARシステムを示す概略図である。T細胞を、CD28-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む共発現されるaCARのシグナル伝達を阻害するEIDドメインとしてCSKドメインを含む抗CD19 iCARを発現するように操作した。標的k562細胞を、aCARに対する同種抗原(CD20)を発現するように操作するか、またはaCARに対する同種抗原(CD20)及びiCARに対する同種抗原(CD19)の両方を発現するように操作した。
【0065】
図5〕CD4+及びCD8+T細胞を形質導入した後、その後の濃縮を行うことなく、非改変細胞よりも高い検出可能なレベルでのiCARコンストラクト抗CD19_scFv-Csk融合体の発現を示す代表的なフローサイトメトリーのプロットである。
【0066】
図6〕aCAR及びiCARコンストラクトのフローサイトメトリーによって評価された発現プロファイルである。図は、aCAR+=aCARを発現する細胞(iCAR有り及び無し)[1番目の柱]、iCAR+=iCARを発現する細胞(aCAR有り及び無し)[2番目の柱]、及び二重+= aCAR及びiCARの両方を発現する細胞[3番目の柱]を示している。
【0067】
図7〕CD19/CD20標的細胞とCD20のみの標的細胞の殺傷比として表される、殺傷効率によって評価したaCARシグナル伝達のiCAR阻害の有効性を示す。図は、aCARコンストラクトのみによる形質導入(左の柱)、CSK酵素的抑制性ドメインを有するiCAR(iCAR31)とaCARによるT細胞の同時形質導入(中央の柱)、SH3欠失を含むCSK酵素的抑制性ドメインを有するiCAR(iCAR26)とaCARによるT細胞の同時形質導入(右の柱)を示している。
【0068】
〔発明を実施するための形態〕
定義
特許請求の範囲及び明細書で使用される用語は、特に断らない限り、以下に記載されるように定義される。
【0069】
本明細書で使用される「キメラ抑制性受容体」または「抑制性キメラ抗原受容体」または「抑制性キメラ受容体」という用語は、免疫エフェクター細胞などの細胞で発現される場合にその細胞に、標的細胞に対する特異性及び細胞内シグナル伝達を負に調節する能力を与えるポリペプチドまたはポリペプチド群を指す。キメラ抑制性受容体は「iCAR」と呼ばれることもある。
【0070】
「腫瘍標的化キメラ受容体」または「活性化キメラ受容体」という用語は、免疫応答の開始をもたらすシグナル伝達またはタンパク質発現の変化を活性化キメラ受容体発現細胞に誘導することができる構造を有する活性化キメラ受容体、腫瘍標的化キメラ抗原受容体(CAR)、または操作されたT細胞受容体を指す。腫瘍標的化キメラ受容体は、「aCAR」と呼ばれる場合もある。
【0071】
本明細書で使用される「膜貫通ドメイン」という用語は、細胞膜にまたがるドメインを指す。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、疎水性のαヘリックスを含む。
【0072】
「腫瘍」という用語は、腫瘍細胞及び関連する腫瘍微小環境(TME)を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍とは、腫瘍細胞または腫瘍塊を指す。いくつかの実施形態では、腫瘍とは、腫瘍微小環境を指す。
【0073】
「発現されない」という用語は、腫瘍標的化キメラ抗原受容体の活性化をもたらす非腫瘍細胞における発現のレベルよりも少なくとも2倍低い発現を指す。いくつかの実施形態では、発現は、腫瘍標的化キメラ抗原受容体の活性化をもたらす非腫瘍細胞における発現のレベルよりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍以上低い。
【0074】
「改善する」という用語は、がん疾患状態の予防、重症度もしくは進行の軽減、寛解、または治癒を含む、疾患状態、例えば、がん疾患状態の治療におけるあらゆる治療上の有益な結果を指す。
【0075】
「インサイチュ」という用語は、例えば組織培養で増殖するなど、生物とは別に増殖する生細胞内で生じるプロセスを指す。
【0076】
「インビボ」という用語は、生体内で生じるプロセスを指す。
【0077】
本明細書で使用される「哺乳動物」という用語は、ヒト及び非ヒトの両方を含み、これらに限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ウシ、ウマ、及びブタを含む。
【0078】
2つ以上の核酸またはポリペプチドの配列との関連での同一率」(%)という用語は、下記の配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTP及びBLASTN、または当業者が利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを用いて、または目視検査により測定される、最大の一致について比較及び整列させた場合に、同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定の比率(%)を有する2つ以上の配列または部分配列のことを指す。用途に応じて、「同一率」(%)は、比較される配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在するか、あるいは、比較される2つの配列の完全長にわたって存在することができる。
【0079】
配列比較では、一般的に、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列(複数可)の配列同一率(%)を算出する。
【0080】
比較を行うための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性の探索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ処理による実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、または目視検査によって(一般的には、下記のAusubel et al.を参照)実施することができる。
【0081】
配列同一率(%)及び配列類似率(%)を決定するのに適したアルゴリズムの1つの例として、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)に記載されるBLASTアルゴリズムがある。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公に入手可能である。
【0082】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生じるのに十分な量、例えば、細胞内のタンパク質凝集を調節するのに十分な量を意味する。
【0083】
「治療有効量」という用語は、疾患の症状を改善するのに有効な量である。予防措置は治療とみなすことができるため、治療有効量とは「予防有効量」でもありうる。
【0084】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈によってそうでない旨が明示されない限り、複数の指示対象を含む点に留意されなければならない。
【0085】
キメラ抑制性受容体
本明細書では、免疫細胞活性を制御するためのNOT論理ゲートとして特に有用であるキメラ抑制性受容体が提供される。キメラ抑制性受容体には、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメイン、及び酵素的抑制性ドメインが含まれる。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、本開示のキメラ抑制性受容体が免疫受容体に近接するように動員される際に免疫受容体の活性化を阻害する。理論に拘束されることを望むものではないが、キメラ抑制性受容体とその同種リガンドとの結合は、一般的に、酵素的抑制性ドメインが免疫受容体及び/または下流のシグナル伝達複合体に近接するような空間的動員を媒介し、それにより、酵素的抑制性ドメインが細胞内シグナル伝達カスケードの調節を行うことができる。近接とは、物理的に相互作用する2つの分子(例えば、タンパク質またはタンパク質ドメイン)を含みうる。近接とは、互いに機能的に相互作用するうえで物理的に十分に近い2つの分子を含みうる。近接とは、例えば足場タンパク質などの共有された中間分子と物理的または機能的に相互作用する2つの分子を含みうる。近接とは、例えばシグナル伝達カスケードなどの共有された複合体と物理的または機能的に相互作用する2つの分子を含みうる。近接とは、一定時間にわたって物理的に相互作用することで互いに相互作用する2つの分子を含みうる。近接とは、互いに機能的に相互作用するうえで一定時間にわたって物理的に十分に近くにある2つの分子を含みうる。近接とは、例えば足場タンパク質などの共有された中間分子と一定時間にわたって物理的または機能的に相互作用する2つの分子を含みうる。近接とは、例えばシグナル伝達カスケードなどの共有された複合体と一定時間にわたって物理的または機能的に相互作用する2つの分子を含みうる。機能的相互作用を媒介する時間の長さとは、確率的相互作用よりも長い相互作用を一般的に指し、持続的な物理的近接、例えば、細胞膜の個別のドメイン(例えば、免疫シナプス)への持続的なリガンド媒介性の局在化を含みうる。免疫受容体に対する近位には、免疫受容体のシグナル伝達活性の直接阻害を可能とする細胞環境への局在化が含まれうる。免疫受容体に対する近位には、免疫受容体によって媒介される細胞内シグナル伝達カスケードの阻害を可能とする細胞環境への局在化が含まれうる。したがって、開示されるキメラ抑制性受容体は、同種リガンドの存在下で免疫応答などの細胞内シグナル伝達を低下させる適切な細胞外リガンド結合ドメインを含むように操作することができる。いくつかの実施形態では、リガンドは細胞表面に位置している。いくつかの実施形態では、リガンドは、細胞表面上にない物質、例えば、小分子、分泌因子、環境シグナル、または酵素的抑制性ドメインが免疫受容体に近接するような空間的動員を媒介する他の可溶性及び/または分泌物質、例えば、酵素的抑制性ドメインが免疫受容体に近接するような空間的動員をそれぞれが媒介することができる架橋試薬、タンパク質ドメインのヘテロ二量体化を媒介する小分子、または抗体である。キメラ抑制性受容体の用途としては、これらに限定されるものではないが、免疫応答を低下させること、T細胞活性化を制御すること、CAR-T応答を制御すること、及び自己免疫疾患または免疫応答を低下させることによって治療可能な任意の疾患を治療すること、が挙げられる。
【0086】
本明細書では、いくつかの態様において、細胞外リガンド結合ドメインと、膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメインと、免疫受容体に近接する場合に免疫受容体の活性化を阻害する酵素的抑制性ドメインと、を含むキメラ抑制性受容体が提供される。
【0087】
酵素的抑制性ドメイン
本明細書で使用される場合、「酵素的抑制性ドメイン」という用語は、細胞内シグナル伝達カスケード、例えば、天然のT細胞活性化カスケードを阻害する酵素機能を有するタンパク質ドメインを指す。例えば、酵素的抑制性ドメインは、酵素、またはその酵素活性が細胞内シグナル伝達の負の調節を媒介する酵素の触媒ドメインであってよい。細胞内シグナル伝達を負に調節することができる酵素及び酵素機能の非限定的な例としては、(1)その酵素的リン酸化活性が細胞内シグナル伝達の負の調節を媒介するキナーゼまたはキナーゼドメイン、(2)その酵素ホスファターゼ活性が細胞内シグナル伝達の負の調節を媒介するホスファターゼまたはホスファターゼドメイン、及び/または(3)その酵素的ユビキチン化活性が細胞内シグナル伝達の負の調節を媒介するユビキチンリガーゼが挙げられる。シグナル伝達の酵素的調節(例えば、細胞内シグナル伝達カスケードの阻害)は、それぞれをあらゆる目的で参照によって本明細書に援用するところの、Pavel Otahal et al.(Biochim Biophys Acta.2011 Feb;1813(2):367-76)、Kosugi A.,et al.(Involvement of SHP-1 tyrosine phosphatase in TCR-mediated signaling pathways in lipid rafts,Immunity,2001 Jun;14(6): 669-80)、及びStanford,et al.(Regulation of TCR signaling by tyrosine phosphatases:from immune homeostasis to autoimmunity,Immunology,2012 Sep;137(1): 1-19)に詳細に記載されている。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ抑制性受容体の酵素的抑制性ドメインは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内ドメインの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、酵素の生物学的活性部分などの酵素の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、酵素の部分は、酵素ドメイン(複数可)、酵素フラグメント(複数可)、またはそれらの変異体(複数可)、例えば、キナーゼドメインまたはホスファターゼドメイン及びそれらの変異体を含む。いくつかの実施形態では、酵素の部分は、キナーゼまたはホスファターゼの触媒活性を有する酵素の部分などの、酵素の触媒ドメインである。いくつかの実施形態では、酵素ドメイン(複数可)、酵素フラグメント(複数可)、またはそれらの変異体(複数可)は、有効性を最大化し、基礎阻害を最小化するように選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、基礎阻害を調節する1つ以上の改変を含む。改変の例としては、これらに限定されるものではないが、トランケーション変異(複数可)、アミノ酸置換(複数可)、翻訳後修飾のための位置の導入(その例は当業者には周知のものである)、及び新しい官能基の付加が挙げられる。いくつかの実施形態では、酵素ドメイン(複数可)、酵素フラグメント(複数可)、またはそれらの変異体(複数可)は、有効性を最大化し、基礎阻害を最小化するように選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の改変は基礎阻害を低下させる。他の実施形態では、1つ以上の改変は基礎阻害を増加させる。非限定的な例示的な例では、理論に拘束されることを望まずに言えば、SH3ドメインの欠失(例えば、CSK酵素の)は、構成的クラスター化/シグナル伝達を最小限に抑えることができ(すなわち、リガンド結合がない場合)、それによりキメラ抑制性受容体の基礎レベルの酵素阻害活性を下げることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体とその同種リガンドとのリガンド結合は、酵素的抑制性ドメインが細胞内シグナル伝達ドメインまたは免疫受容体に近接して免疫受容体のシグナル伝達活性の直接阻害を可能にするような細胞環境へのキメラ抑制性受容体の局在化を媒介することができる。非限定的な例示的な例において、T細胞上に発現されたキメラ抑制性受容体とその同種リガンドとの結合は、酵素的抑制性ドメインをTCRまたはCARの細胞内シグナル伝達ドメインに近接させるような局在化を引き起こし(例えば、免疫シナプスに局在化させる)、それにより、酵素的抑制性ドメインがT細胞シグナル伝達及び/または活性化を負に調節することができるようになる。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体とその同種リガンドとのリガンド結合は、酵素的抑制性ドメインが免疫受容体に近接することで免疫受容体によって媒介される細胞内シグナル伝達カスケードの阻害を可能とするような細胞環境へのキメラ抑制性受容体の局在化を媒介することができる。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体とその同種リガンドとのリガンド結合は、免疫受容体に近接した複数のキメラ抑制性受容体の空間的クラスター化を媒介することができ、それにより、酵素的抑制性ドメインのクラスター化が免疫受容体に対するそれらの阻害活性を促進する。
【0091】
いくつかの実施形態では、酵素は、CSK、SHP-1、SHP-2、PTEN、CD45、CD148、PTP-MEG1、PTP-PEST、c-CBL、CBL-b、PTPN22、LAR、PTPH1、SHIP-1、ZAP70、及びRasGAPから選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、SRC相同性3(SH3)ドメインを有する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、SRC相同性3(SH3)欠失を有するタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ドメインを有する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、SRC相同性1(SH1)ドメイン、SRC相同性2(SH2)ドメイン、またはSH1ドメインとSH2ドメインを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、キナーゼドメインの欠失またはキナーゼ活性を低下させる変異(複数可)を有するタンパク質に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、ドミナントネガティブ型のキナーゼ変異体を生成するキナーゼドメインの欠失またはキナーゼ活性を低下させる変異(複数可)を有するタンパク質に由来する。非限定的な例示的な例において、理論に拘束されることを望まずに言えば、キナーゼドメイン(例えば、ZAP70酵素における)の欠失または変異を有する酵素的抑制性ドメインを含むキメラ抑制性受容体は、ドミナントネガティブ型キナーゼデッドタンパク質として作用して、酵素的抑制性ドメインの由来源である対応する天然の野生型タンパク質と競合することによって細胞内シグナル伝達カスケードを低減または排除することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCSKに由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、SRC相同性3(SH3)欠失を有するCSKタンパク質であるCSKに由来する。
【0095】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはSHP-1に由来する。いくつかの実施形態では、SHP-1に由来する酵素的抑制性ドメインは、チロシンホスファターゼ(PTP)ドメインを有する。
【0096】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはSHP-2に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTENに由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCD45に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCD148に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTP-MEG1に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTP-PESTに由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはc-CBLに由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはCBL-bに由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTPN22に由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはLARに由来する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはPTPH1に由来する。
【0097】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはSHIP-1に由来する。いくつかの実施形態では、SHIP-1に由来する酵素的抑制性ドメインは、プロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ドメインを有する。
【0098】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはZAP70に由来する。いくつかの実施形態では、ZAP70に由来する酵素的抑制性ドメインは、SRC相同性1(SH1)ドメイン、SRC相同性2(SH2)ドメイン、またはSH1ドメインとSH2ドメインを有する。いくつかの実施形態では、ZAP70に由来する酵素的抑制性ドメインは、キナーゼドメインの欠失を有する。いくつかの実施形態では、ZAP70に由来する酵素的抑制性ドメインは、Tyr492Pheアミノ酸置換、Tyr493Pheアミノ酸置換、またはTyr492Pheアミノ酸置換とTyr493Pheアミノ酸置換を有する。
【0099】
いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインはRasGAPに由来する。
【0100】
酵素的抑制性ドメインの例示的な配列を、表1A及び 表1Bに示す。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、表1Aに記載されるアミノ酸配列のいずれかである。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、表1Aに記載されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、表1Bに記載される核酸配列のいずれかと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%同一である核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインは、表1Bに記載される核酸配列のいずれかと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である核酸配列によってコードされる。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
【表11】
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】
【表14】
【0115】
【表15】
【0116】
【表16】
【0117】
細胞外リガンド結合ドメイン
本明細書で使用される場合、「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、特定の細胞外リガンドに結合する本開示のキメラ抑制性タンパク質のドメインを指す。リガンド結合ドメインの例は、当業者には周知のものであり、これらに限定されるものではないが、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、天然の受容体/リガンドドメイン、及び可溶性標的化分子と結合するロイシンジッパーなどの直交二量体化ドメインが挙げられる。
【0118】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、抗原結合ドメインを含む。本開示の抗原結合ドメインとしては、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、コンジュゲート抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ならびに、これらに限定されるものではないが、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、及びラクダ科動物由来ナノボディの可変ドメイン(VHH)などのシングルドメイン抗体(sdAb)を含むそれらの機能的断片などの、抗原に結合する任意のドメイン、ならびに、組換えフィブロネクチンドメイン、T細胞受容体(TCR)、親和性を高めた組換えTCR、またはそれらのフラグメント、例えば、一本鎖TCRなど、抗原結合ドメインとして機能することが当該技術分野で知られている代替的な足場に結合する任意のドメインを挙げることができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、抗体、またはそれらの抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、単鎖可変領域フラグメント(scFv)、またはシングルドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0120】
「単鎖」という用語は、ペプチド結合によって直鎖状に連結されたアミノ酸モノマーを含む分子を指す。特定の実施形態では、アミノ酸モノマーは、これらに限定されるものではないが、表2に示されるアミノ酸配列のいずれかを含むペプチドリンカーによって直鎖状に連結されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、GGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号44)、及びEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号45)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0121】
【表17】
【0122】
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、一本のポリペプチド鎖中に存在する。一実施形態では、Fvポリペプチドは、ScFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。本明細書でより詳細に説明するように、scFvは、ポリペプチド鎖によってそのC末端が重鎖(VH)の可変ドメインのN末端に接続された軽鎖(VL)の可変ドメインを有する。あるいは、scFvは、VHのC末端がポリペプチド鎖によってVLのN末端に接続されているポリペプチド鎖からなる。特定の実施形態では、VHとVLとは、ペプチドリンカーによって分離されている。特定の実施形態では、scFvペプチドリンカーは、表2に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む。特定の実施形態では、scFvは、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、ただし、VHは重鎖可変ドメインであり、Lはペプチドリンカーであり、VLは軽鎖可変ドメインである。いくつかの実施形態では、1つ以上のscFvのそれぞれは、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、ただし、VHは重鎖可変ドメインであり、Lはペプチドリンカーであり、VLは軽鎖可変ドメインである。2つ以上のscFvが互いに連結されている場合、各scFvは、ペプチドが連結された次のscFvに連結することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のscFvのそれぞれは、ペプチドリンカーによって分離されている。
【0123】
「Fabフラグメント」(fragment, antigen-bindingとも呼ばれる)は、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を、軽鎖及び重鎖のそれぞれの可変ドメインVL及びVHとともに含むものである。各可変ドメインは、抗原結合に関与する相補性決定ループ(CDR、超可変領域とも呼ばれる)を含んでいる。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む数個の残基が重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に付加されていることにより、Fabフラグメントとは異なる。特定のそのような実施形態では、単鎖Fab分子においてFab軽鎖のC末端はFab重鎖のN末端に接続される。
【0124】
「F(ab ’)2」フラグメントには、ヒンジ領域の近くでジスルフィド結合によって結合された2つのFab’フラグメントが含まれる。F(ab’)2フラグメントは、例えば、組換え法によって、またはインタクトな抗体のペプシン消化によって生成することができる。F(ab’)フラグメントは、例えば、β-メルカプトエタノールで処理することによって解離させることができる。
【0125】
「Fv」フラグメントは、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの非共有結合により結合された二量体を含む。
【0126】
「シングルドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、抗体の一方の可変ドメインが、他方の可変ドメインの存在なしで抗原に特異的に結合する分子を指す。シングルドメイン抗体、及びそのフラグメントについては、Arabi Ghahroudi et al.,FEBS Letters,1998,414:521-526、及びMuyldermans et al.,Trends in Biochem.Sci.,2001,26:230-245に記載されている。シングルドメイン抗体は、sdAbまたはナノボディとしても知られている。sdAbは比較的安定しており、抗体のFc鎖との融合パートナーとして容易に発現させることができる(Harmsen MM,De Haard HJ(2007)“Properties,production,and applications of camelid single-domain antibody fragments” Appl.Microbiol Biotechnol.77(1): 13-22)。
【0127】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の抗原結合または可変領域など、インタクトな抗体の一部を含む。抗体フラグメントには、例えば、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab ’)2フラグメント、Fab’フラグメント、scFv(sFv)フラグメント、及びscFv-Fcフラグメントが含まれる。
【0128】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、受容体由来のドメインを含み、受容体は、TCR、BCR、サイトカイン受容体、RTK受容体、セリン/スレオニンキナーゼ受容体、ホルモン受容体、免疫グロブリンスーパーファミリー受容体、及び受容体のTNFR-スーパーファミリーからなる群から選択される。
【0129】
いくつかの実施形態では、細胞外リガンド結合ドメインは、二量体化ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞リガンド結合ドメインは、同種の二量体化ドメインをさらに含む。
【0130】
本明細書で使用される場合、「リガンド」という用語は、受容体などの同種タンパク質上の部位(すなわち、同種タンパク質のリガンド結合ドメイン)に結合し、それによって細胞応答/シグナル、細胞間認識、及び/または細胞間相互作用を生じる分子を指す。リガンドは、例えば、1つ以上の二原子原子(例えば、NO、COなど)、小分子(例えば、薬物、医薬品、単糖、ヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、アミノ酸、アミノ酸誘導体、小分子)であり得る。分子ホルモン、小分子神経伝達物質など)、及び/または巨大分子(例えば、脂質、多糖類、ペプチド、可溶性タンパク質、細胞表面タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、酵素など)であってよい。いくつかの実施形態では、リガンドは、天然に存在する生物学的リガンドである(すなわち、リガンドは、細胞によって天然に産生されるものなど、天然に生じるものである)。他の実施形態では、リガンドは、非天然または合成リガンドである(すなわち、リガンドは、化学合成などによって合成されるか、または、通常はそのリガンドを発現しない細胞で発現するように操作されるなど、天然のリガンドとは特定の点で異なるように操作される)。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性タンパク質は、非天然または合成リガンドの結合によってのみ活性化させることができる。合成リガンドの例としては、これらに限定されるものではないが、薬物、医薬品、及び操作された巨大分子(例えば、合成タンパク質)が含まれる。
【0131】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体の細胞外リガンド結合ドメインは、タンパク質複合体、タンパク質、ペプチド、受容体結合ドメイン、核酸、小分子、及び化学物質から選択されるリガンドに結合する。いくつかの実施形態では、リガンドは、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、または酵素である。
【0132】
いくつかの実施形態では、リガンドは細胞表面リガンドである。例えば、キメラ抑制性受容体のリガンドは、非標的細胞表面に存在するか、または発現される。細胞表面リガンドとしては、これらに限定されるものではないが、細胞分化(CD)マーカーなどの細胞表面マーカー、受容体、タンパク質、タンパク質複合体、細胞膜成分(例えば、内在性膜タンパク質、細胞骨格構造、多糖類、脂質、及びそれらの組み合わせなど)、及び膜関連構造に結合する分子(例えば、1つ以上の細胞表面リガンドに結合する可溶性抗体)が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞表面リガンドは、免疫受容体の同種リガンドをさらに発現する細胞で発現される。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体のリガンドは、腫瘍関連抗原である。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体のリガンドは、腫瘍細胞で発現されない。例えば、キメラ抑制性受容体のリガンドは、非腫瘍細胞で発現される。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体のリガンドは、健康な、または一般に健康であると考えられる組織の細胞上に発現される。
【0133】
例示的な例では、キメラ抑制性受容体は、免疫細胞活性などの細胞活性を制御するためのNOT論理ゲートとして有用である。本明細書に記載されるもののような、活性化キメラ受容体とキメラ抑制性受容体との組み合わせを同じ細胞で使用することでオンターゲット・オフターゲット毒性を低減することができる。例えば、非標的細胞が、活性化キメラ受容体によって認識されるリガンドとキメラ抑制性受容体によって認識されるリガンドの両方を発現する場合、活性化キメラ受容体を発現する操作された細胞は、非標的細胞に結合してオフターゲットのシグナル伝達応答を生じる可能性がある。しかしながら、そのような場合、同じ操作された細胞は、非標的細胞上のその同種リガンドに結合することができるキメラ抑制性受容体も発現し、キメラ抑制性受容体の阻害機能が、活性化キメラ受容体によって媒介されるシグナル伝達を低下、現象、防止、または阻害しうる(「NOT論理ゲーティング」)。
【0134】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ抑制性受容体は、正常細胞(例えば、一般的に健康であると考えられる細胞)で発現されるが腫瘍細胞では発現されない1つ以上のリガンドに特異的に結合する。例示的な非限定的な例では、腫瘍標的化活性化キメラ受容体とキメラ抑制性受容体との組み合わせを同じ免疫応答性細胞で使用することでオンターゲット・オフ腫瘍毒性を低減することができる。例えば、健康な細胞が、腫瘍標的化キメラ受容体によって認識される腫瘍関連抗原とキメラ抑制性受容体によって認識される健康な細胞に関連する抗原の両方を発現する場合、腫瘍標的化キメラ受容体(複数可)を発現する操作された免疫応答性細胞は健康な細胞に結合して、オフ腫瘍細胞応答を引き起こす可能性がある。そのような場合、同じ操作された免疫応答性細胞は、健康な細胞上のその同種リガンドに結合できる抑制性キメラ抗原も発現し、キメラ抑制性受容体の阻害機能が、腫瘍標的化キメラ受容体によって媒介される免疫応答性細胞の活性化を低下、減少、防止、または阻害することができる。
【0135】
本明細書で使用される場合、「免疫受容体」という用語は、リガンドに結合し、免疫系の応答を引き起こす受容体を指す。リガンドへの結合は一般的に免疫受容体の活性化を引き起こす。T細胞活性化は、免疫受容体の活性化の一例である。免疫受容体の例は当業者には周知のものであり、これらに限定されるものではないが、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR;NOD様受容体(NLR)及びToll様受容体(TLR)など)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、NK細胞受容体、及びサイトカイン受容体が挙げられる。
【0136】
膜局在化ドメイン
キメラ抑制性受容体には、膜局在化ドメインが含まれる。本明細書で使用される場合、「膜局在化ドメイン」という用語は、受容体を細胞膜に局在化し、少なくとも膜貫通ドメインを含む本開示のキメラ抑制性受容体の領域を指す。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の膜局在化ドメインは、細胞外ドメインの少なくとも一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の膜局在化ドメインは、細胞内ドメインの少なくとも一部をさらに含む。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞外ドメインの少なくとも一部と細胞内ドメインの少なくとも一部とをさらに含む。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、キメラ抑制性受容体を脂質ラフトまたは重脂質ラフトなどの膜の特定のドメインに誘導する、または隔離するのに十分な細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内ドメインの部分を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体の細胞外リガンド結合ドメインは、表2に示されるペプチドリンカーなどの細胞外リンカー領域を介して膜局在化ドメインに連結される。
【0137】
いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、LAX膜貫通ドメイン、CD25膜貫通ドメイン、CD7膜貫通ドメイン、LAT膜貫通ドメイン、LAT変異体由来の膜貫通ドメイン(例えば、Pavel Otahal et al.,Biochim Biophys Acta.2011 Feb;1813(2):367-76を参照)、BTLA膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD3ζ膜貫通ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、4-IBB膜貫通ドメイン、OX40膜貫通ドメイン、ICOS膜貫通ドメイン、2B4膜貫通ドメイン、PD-1膜貫通ドメイン、CTLA4膜貫通ドメイン、BTLA膜貫通ドメイン、TIM3膜貫通ドメイン、LIR1膜貫通ドメイン、NKG2A膜貫通ドメイン、TIGIT膜貫通ドメイン、及びLAG3膜貫通ドメイン、LAIR1膜貫通ドメイン、GRB-2膜貫通ドメイン、Dok-1膜貫通ドメイン、Dok-2膜貫通ドメイン、SLAP1膜貫通ドメイン、SLAP2膜貫通ドメイン、CD200R膜貫通ドメイン、SIRPα膜貫通ドメイン、HAVR膜貫通ドメイン、GITR膜貫通ドメイン、PD-L1膜貫通ドメイン、KIR2DL1膜貫通ドメイン、KIR2DL2膜貫通ドメイン、KIR2DL3膜貫通ドメイン、KIR3DL1膜貫通ドメイン、KIR3DL2膜貫通ドメイン、CD94膜貫通ドメイン、KLRG-1膜貫通ドメイン、PAG膜貫通ドメイン、CD45膜貫通ドメイン、及びCEACAM1膜貫通ドメインから選択される膜貫通ドメインを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なCD8ポリペプチドを使用することができる。例示的なCD8ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_001139345及びAAA92533.1が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なCD28ポリペプチドを使用することができる。例示的なCD28ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_006130.1及びNP_031668.3が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD3ζポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なCD3ζポリペプチドを使用することができる。例示的なCD3ζポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_932170.1及びNP_001106862.1が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD4ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なCD4ポリペプチドを使用することができる。例示的なCD4ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_000607.1及びNP_038516.1が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、4-1BBポリペプチド由来のものである。あらゆる適当な4-1BBポリペプチドを使用することができる。例示的な4-1BBポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_001552.2及びNP_001070977.1が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、OX40ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なOX40ポリペプチドを使用することができる。例示的なOX40ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_003318.1及びNP_035789.1が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、ICOSポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なICOSポリペプチドを使用することができる。例示的なICOSポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_036224及びNP_059508が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CTLA-4ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なCTLA-4ポリペプチドを使用することができる。例示的なCTLA-4ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_005205.2及びNP_033973.2が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、PD-1ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なPD-1ポリペプチドを使用することができる。例示的なPD-1ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_005009及びNP_032824が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、LAG-3ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なLAG-3ポリペプチドを使用することができる。例示的なLAG-3ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_002277.4及びNP_032505.1が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、2B4ポリペプチド由来のものである。あらゆる適当な2B4ポリペプチドを使用することができる。例示的な2B4ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_057466.1及びNP_061199.2が挙げられる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、BTLAポリペプチド由来のものである。あらゆる適当なBTLAポリペプチドを使用することができる。例示的なBTLAポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_861445.4及びNP_001032808.2が挙げられる。あらゆる適当なLIR-1(LILRB1)ポリペプチドを使用することができる。例示的なLIR-1(LILRB1)ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_001075106.2及びNP_001075107.2が挙げられる。
【0139】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、NCBI参照番号NP_001139345、AAA92533.1、NP_006130.1、NP_031668.3、NP_932170.1、NP_001106862.1、NP_000607.1、NP_038516.1、NP_001552.2、NP_001070977.1、NP_003318.1、NP_035789.1、NP_036224、NP_059508、NP_005205.2、NP_033973.2、NP_005009、NP_032824、NP_002277.4、NP_032505.1、NP_057466.1、NP_061199.2、NP_861445.4、またはNP_001032808.2、またはこれらのフラグメントと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相同であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、相同性は、BLASTまたはFASTAなどの標準的なソフトウェアを使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1個の保存的アミノ酸置換、2個以下の保存的アミノ酸置換、または3個以下の保存的アミノ酸置換を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、NCBI参照番号NP_001139345、AAA92533.1、NP_006130.1、NP_031668.3、NP_932170.1、NP_001106862.1、NP_000607.1、NP_038516.1、NP_001552.2、NP_001070977.1、NP_003318.1、NP_035789.1、NP_036224、NP_059508、NP_005205.2、NP_033973.2、NP_005009、NP_032824、NP_002277.4、NP_032505.1、NP_057466.1、NP_061199.2、NP_861445.4、またはNP_001032808.2のアミノ酸少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、少なくとも100個、少なくとも110個、少なくとも120個、少なくとも130個、少なくとも140個、少なくとも150個、少なくとも160個、少なくとも170個、少なくとも180個、少なくとも190個、少なくとも200個、少なくとも210個、少なくとも220個、少なくとも230個、または少なくとも240個の長さの連続的部分であるアミノ酸配列を有することができる。
【0140】
膜貫通ドメインが由来しうる適当なポリペプチドのさらなる例としては、これらに限定されるものではないが、T細胞受容体のα、β、またはζ鎖、CD27、CD3ε、CD45、CD5、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7R、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、及びNG2Cの膜貫通領域(複数可)が挙げられる。
【0141】
いくつかの実施形態では、LAT変異体に由来する膜貫通ドメインは、LAT(CA)変異体由来のものである。例えば、Kosugi A.,et al.Involvement of SHP-1 tyrosine phosphatase in TCR-mediated signaling pathways in lipid rafts,Immunity,2001 Jun;14(6):669-80を参照されたい。
【0142】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、表3に示されるアミノ酸配列から選択される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、表3に示される配列のいずれかと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相同であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、相同性は、BLASTまたはFASTAなどの標準的なソフトウェアを使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1個の保存的アミノ酸置換、2個以下の保存的アミノ酸置換、または3個以下の保存的アミノ酸置換を含むことができる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、表3に記載される核酸配列のいずれかと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%同一である核酸配列である。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、表3に記載される核酸配列のいずれかと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である核酸配列である。
【0143】
【表18】
【0144】
いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、対応する細胞外ドメインの少なくとも一部及び/または対応する細胞内ドメインの少なくとも一部をさらに含む(例えば、本明細書に記載の膜局在化ドメインに由来する本明細書に記載のスペーサー及びヒンジを参照)。
【0145】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、近接タンパク質フラグメントをさらに含む。近接タンパク質フラグメントとは、それらの天然状態で膜貫通ドメインに直接隣接するタンパク質セグメントを指す。例えば、近接タンパク質フラグメントは、タンパク質の膜貫通ドメインの外側にあるか、またはタンパク質の膜貫通ドメインと考えられる従来の配列の境界の外側にあるタンパク質セグメントでありうる。いくつかの実施形態では、近接タンパク質フラグメントは、スペーサーまたはヒンジ配列でありうる。いくつかの実施形態では、近接タンパク質フラグメントは、スペーサーまたはヒンジ配列とは異なりうる。
【0146】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、キメラ抑制性受容体を細胞膜のドメインに誘導するかまたは隔離する。本明細書で使用される場合、「細胞膜のドメイン」という用語は、脂質組成の横方向の不均一性及び細胞膜の物理的特性を指す。細胞膜ドメインの形成は、水素結合、疎水性エントロピー力、電荷対合、及びファンデルワールス力などの複数の力によって引き起こされる場合がある。細胞膜ドメインは、膜内のタンパク質-タンパク質相互作用、膜内のタンパク質-脂質相互作用、または膜内の脂質-脂質相互作用を介して形成されうる。細胞膜ドメインの例は当業者には周知のものであり、これらに限定されるものではないが、脂質ラフト、重脂質ラフト、軽脂質ラフト、カベオラ、パッチ、ポスト、フェンス、格子、ラフト、及び足場が挙げられる。例えば、Nicolson G.L.,The Fluid-Mosaic Model of Membrane Structure:still relevant to understanding the structure,function and dynamics of biological membranes after more than 40 years,Biochim.Biophys.Acta.2014 Jun;1838(6):1451-66を参照されたい。
【0147】
いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、本開示のキメラ抑制性受容体を脂質ラフトに局在化させる。いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、細胞膜のドメインに局在化された1つ以上の細胞膜成分と相互作用する。細胞膜成分の例は当業者には周知のものであり、これらに限定されるものではないが、様々な内在性膜タンパク質、細胞骨格構造、多糖類、脂質、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、Nicolson G.L.,The Fluid-Mosaic Model of Membrane Structure:still relevant to understanding the structure,function and dynamics of biological membranes after more than 40 years,Biochim.Biophys.Acta.2014 Jun;1838(6):1451-66を参照されたい。
【0148】
いくつかの実施形態では、膜局在化ドメインは、免疫受容体によって占められる脂質ラフトとは異なる膜部分など、免疫受容体の1つ以上の成分によって占められる細胞膜のドメインとは異なる細胞膜のドメインへのキメラ抑制性受容体の基礎局在化(すなわち、同種リガンドの非存在下での局在化)を媒介する。いくつかの実施形態では、基礎となる膜局在化ドメインは、酵素的抑制性ドメインによる免疫受容体活性化の構成的阻害を軽減するうえで十分である。
【0149】
本明細書で使用される場合、「免疫受容体活性化」という用語は、最終的に免疫応答をもたらすシグナル伝達カスケードを開始する事象を指す。T細胞活性化は、免疫受容体の活性化の一例である。一般的に、また、理論に拘束されることを望むまずに言えば、膜局在化ドメインが免疫受容体の構成的阻害を軽減することができるのに対して、キメラ抑制性受容体とその同種リガンドとの結合は、一般的に、酵素的抑制性ドメインが免疫受容体及び/または下流のシグナル伝達複合体に近接するような空間的動員を媒介し、それにより、酵素的抑制性ドメインが細胞内シグナル伝達カスケードの調節を行うことができる。非限定的な例示的な例において、キメラ抑制性受容体とその同種リガンドとの結合は、受容体及び酵素的抑制性ドメインを免疫シナプスに局在化して、免疫受容体及び/または細胞内シグナル伝達カスケードに関与する別のシグナル伝達成分に直接作用することにより、免疫受容体のシグナル伝達及び/またはT細胞活性化などの活性化を阻害する(例えば、その同種リガンドに結合したTCRのような、免疫シナプスに存在するTCRを阻害する)ことができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、非特異的な膜貫通ドメインが、酵素的抑制性ドメインがT細胞活性化を構成的に阻害することを防ぐうえで十分である。他の実施形態では、例えば、免疫シナプス以外の細胞膜の領域のような、T細胞受容体の成分によって占められる領域とは物理的に異なる細胞膜の領域への局在化を媒介する膜貫通ドメイン(近接タンパク質フラグメントを含む)を選択することができる(例えば、「古典的な」脂質ラフトの代わりに「重い」脂質ラフトへの隔離;例えば、Stanford et al.,Regulation of TCR signaling by tyrosine phosphatases:from immune homeostasis to autoimmunity,Immunology,2012 Sep;137(1):1-19を参照)。
【0151】
スペーサー及びヒンジドメイン
キメラ抑制性受容体はまた、スペーサーまたはヒンジドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、スペーサードメインまたはヒンジドメインは、キメラ抑制性受容体の細胞外ドメイン(例えば、細胞外リガンド結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインとの間、またはキメラ抑制性受容体の細胞内シグナル伝達ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する。スペーサーまたはヒンジドメインは、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖内の細胞外ドメイン及び/または細胞内シグナル伝達ドメインに連結する機能を有するあらゆるオリゴペプチドまたはポリペプチドである。スペーサーまたはヒンジドメインは、キメラ抑制性受容体またはそのドメインに柔軟性を与えるか、またはキメラ抑制性受容体またはそのドメインの立体障害を防ぐことができる。いくつかの実施形態では、スペーサードメインまたはヒンジドメインは、300個以下のアミノ酸(例えば、10~100個のアミノ酸、または5~20個のアミノ酸)を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のスペーサードメインが、キメラ抑制性受容体の他の領域に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはヒンジドメインは、膜局在化ドメインと同じ由来源に由来する細胞外ドメインの少なくとも一部及び/または細胞内ドメインの少なくとも一部を含む。
【0152】
例示的なスペーサーまたはヒンジドメインのタンパク質配列を表4に示す。例示的なスペーサーまたはヒンジドメインのヌクレオチド配列を表5に示す。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはヒンジドメインは、表4に記載されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはヒンジドメインは、表5に記載される核酸配列のいずれかと少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、または少なくとも85%同一である核酸配列である。いくつかの実施形態では、スペーサーまたはヒンジドメインは、表5に記載される核酸配列のいずれかと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である核酸配列である。
【0153】
【表19】
【0154】
【表20】
【0155】
いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、細胞外リガンド結合ドメインと膜局在化ドメインとの間に細胞外リンカーとも呼ばれるスペーサー領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域は、細胞外リガンド結合ドメインと膜局在化ドメインとの間に位置し、細胞外リガンド結合ドメイン及び膜局在化ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結される。
【0156】
いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、膜局在化ドメインと酵素的抑制性ドメインとの間に細胞内スペーサー領域とも呼ばれるスペーサー領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、膜局在化ドメインと酵素的抑制性ドメインとの間に位置して膜局在化ドメイン及び酵素的抑制性ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結された細胞内スペーサー領域をさらに含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、CD8α、CD4、CD7、CD28、IgG1、IgG4、FcγRIIIα、LNGFR、及びPDGFRからなる群から選択されるタンパク質由来のものである。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号46)、ESKYGPPCPSCP(配列番号47)、ESKYGPPAPSAP(配列番号48)、ESKYGPPCPPCP(配列番号49)、EPKSCDKTHTCP(配列番号50)、AAAFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号51)、TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号52)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEADAEC(配列番号53)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC(配列番号54)、及びAVGQDTQEVIVVPHSLPFKV(配列番号55)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号46と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号47と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%。、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号48と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号49と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号50と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号51と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号52と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号53と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号54と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、配列番号55と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、表2に示されるアミノ酸配列のいずれかのようなペプチドリンカーを含む。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、GGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号44)、及びEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号45)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドリンカーを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、キメラ抑制性受容体の感受性を調節する。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較してキメラ抑制性受容体の感受性を増加させる。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較してキメラ抑制性受容体の感受性を低下させる。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較してキメラ抑制性受容体の効力を調節する。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較してキメラ抑制性受容体の効力を増加させる。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較してキメラ抑制性受容体の効力を低下させる。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、操作された細胞で発現される腫瘍標的化キメラ受容体の活性化の基礎防止、減弱、または阻害を調節する。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、基礎防止、減弱、または阻害を低下させる。いくつかの実施形態では、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域は、細胞外リンカー領域及び/または細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、基礎防止、減弱、または阻害を増加させる。
【0161】
いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置し、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインのそれぞれと機能的に連結されている細胞内スペーサー領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置し、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインのそれぞれと物理的に連結されている細胞内スペーサー領域をさらに含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、キメラ抑制性受容体の感受性を調節する。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、キメラ抑制性受容体の感受性を増加させる。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、キメラ抑制性受容体の感受性を低下させる。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、キメラ抑制性受容体の効力を調節する。
【0163】
いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、キメラ抑制性受容体の効力を増加させる。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、キメラ抑制性受容体の効力を低下させる。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、操作された細胞で発現される場合に操作された細胞で発現される腫瘍標的化キメラ受容体の活性化の基礎防止、減弱、または阻害を調節する。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、基礎防止、減弱、または阻害を低下させる。いくつかの実施形態では、細胞内スペーサー領域は、細胞内スペーサー領域を欠く以外の点では同じキメラ抑制性受容体と比較して、基礎防止、減弱、または阻害を増加させる。
【0164】
細胞内抑制性共シグナル伝達ドメイン
いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、膜局在化ドメインと酵素的抑制性ドメインとの間にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、膜貫通ドメインと酵素的抑制性ドメインとの間にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、酵素的抑制性ドメインのC末端である。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、ペプチドリンカー(例えば、表2を参照)またはスペーサーもしくはヒンジ配列(例えば、表4を参照)を介して他のドメイン(例えば、膜局在化、膜貫通ドメイン、または酵素的抑制性ドメイン)と連結される。いくつかの実施形態では、2つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインが存在する場合、2つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインをペプチドリンカー(例えば、表2を参照)またはスペーサーもしくはヒンジ配列(例えば、表4を参照)を介して連結することができる。
【0165】
いくつかの実施形態では、キメラタンパク質の1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、1つ以上のITIM含有タンパク質、またはそのフラグメントを含む。ITIMは、多くの抑制性免疫受容体の細胞質尾部に見られる保存されたアミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、1つ以上のITIM含有タンパク質、またはそのフラグメントは、PD-1、CTLA4、TIGIT、BTLA、及びLAIR1から選択される。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインは、1つ以上の非ITIM足場タンパク質、またはそのフラグメント(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の非ITIM足場タンパク質、またはそのフラグメントは、GRB-2、Dok-1、Dok-2、SLAP、LAG3、HAVR、GITR、及びPD-L1から選択される。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインとITIM及び/または非ITIM足場の抑制メカニズムは重複しており、例えば、ITIM含有タンパク質は、SHP-1などの酵素的抑制性ドメインが由来する酵素の内因性形態を動員する。いくつかの実施形態では、酵素的抑制性ドメインとITIM及び/または非ITIM足場の抑制メカニズムは異なり、例えば、ITIM含有タンパク質とCskまたはCBL-b由来の酵素的抑制性ドメインの活性は、相補的/相乗的であってよい。
【0166】
免疫受容体
いくつかの実施形態では、免疫受容体は、天然の免疫受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、非天然の抗原受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、T細胞受容体(TCR)、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、NK細胞受容体、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体から選択される。いくつかの実施形態では、免疫受容体はTCRである。
【0167】
いくつかの実施形態では、免疫受容体は、キメラ免疫受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。一般的に、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、CARフォーマットの免疫受容体とは、一般的には、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び、以下に定義される刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含む組換えポリペプチドコンストラクトである活性化CARのことを指す。
【0168】
本開示のCARは、第1、第2、または第3世代のCARであり得る。「第1世代」のCARは、一般的にT細胞受容体鎖に由来する単一の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「第1世代」のCARは一般的に、内因性TCRからのシグナルの主要な伝達物質であるCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖由来の細胞内シグナル伝達ドメインを有している。「第1世代」のCARはデノボ抗原認識を与え、HLAを介した抗原提示とは無関係に、単一の融合分子内のCD3ζ鎖シグナル伝達ドメインを介してCD4及びCD8T細胞の両方の活性化を引き起こす。「第2世代」のCARは、CARの細胞質尾部にさまざまな共刺激分子(CD28、4-1BB、ICOS、OX40など)の1つに由来する第2の細胞内シグナル伝達ドメインを付加することによってT細胞にさらなるシグナルを与えている。「第2世代」のCARは、共刺激(CD28または4-1BBなど)と活性化(CD3ζ)の両方を提供する。前臨床試験において、「第2世代」のCARがT細胞などの免疫応答性細胞の抗腫瘍活性を高めることができることが示されている。「第3世代」のCARは、複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン(CD28及び4-1BBなど)と細胞内活性化シグナル伝達ドメイン(CD3ζ)を有する。
【0169】
いくつかの実施形態では、CARポリペプチドコンストラクト中の各ドメインは同じポリペプチド鎖内にあり、例えば、キメラ融合タンパク質を構成する。いくつかの実施形態では、CARポリペプチドコンストラクト中の各ドメインは互いに隣接しておらず、例えば、異なるポリペプチド鎖にある。いくつかの実施形態では、刺激分子は、T細胞受容体複合体に関連するゼータ鎖である。いくつかの実施形態では、細胞質シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータの一次シグナル伝達ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、細胞質シグナル伝達ドメインは、以下に定義されるような少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、共刺激分子は、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27、ICOS、及び/またはCD28から選択される。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び共刺激分子(複数可)に由来する機能的シグナル伝達ドメインと刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインとを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の共刺激分子(複数可)に由来する2つの機能的シグナル伝達ドメインと刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインとを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の共刺激分子に由来する少なくとも2つの機能的シグナル伝達ドメインと刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインとを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CARは、CAR融合タンパク質のアミノ末端(N-ter)に任意のリーダー配列(シグナル配列とも呼ばれる)を含む。いくつかの実施形態では、CARは細胞外抗原結合ドメインのN末端にリーダー配列をさらに含み、リーダー配列は、CARの細胞プロセシング及び細胞膜への局在化の際に抗原認識ドメイン(例えば、scFv)から場合により切断される。
【0170】
様々なキメラ抗原受容体が当該技術分野では周知であり、これらに限定されるものではないが、ScFv-FcεRIγCAIX、ScFv-FcεRIγ、ScFv-CD3ζ、ScFv-CD28-CD3ζ、ScFv-CD28-CD3ζ、ScFv-CD3ζ、ScFv-CD4-CD3ζ、CD3ζ/CD137/CD28、ScFv-CD28-41BB-CD3ζ、ScFv-CD8-CD3ζ、ScFv-FceRIγ、CD28/4-1BB-CD3ζ、ScFv-CD28mut-CD3ζ、ヘレグリン-CD3ζ、ScFv-CD28、ScFv-CD28-OX40-CD3ζ、ScFv-CD3ξ、IL-13-CD28-4-1BB-CD3ζ、IL-13-CD3ζ、IL-13-CD3ζ、ScFv-FcεRIγ、ScFV-CD4-FcεRIγ、ScFV-CD28-FcεRIγ、Ly49H-CD3ζ、NKG2D-CD3ζ、ScFv-b2c-CD3ζ、及びFceRI-CD28-CD3ζが挙げられる。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、調節エレメントを含むように改変されている。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、分割キメラ抗原受容体である(例えば、WO2017/091546を参照)。
【0171】
いくつかの実施形態では、免疫受容体はキメラTCRである。キメラTCRは、一般的に、TCR鎖、例えば、TCRα鎖またはTCRβ鎖の1つ以上の定常ドメインにグラフトされた細胞外リガンド結合ドメインを含むことで、腫瘍関連抗原などの目的の抗原に特異的に結合するキメラTCRを形成する。理論に拘束されることを望まずに言えば、キメラTCRは、抗原結合時にTCR複合体を介してシグナルを伝達することができると考えられる。例えば、抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)を、TCRα鎖及び/またはTCRβ鎖などのTCR鎖の定常ドメイン(例えば、細胞外定常ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの少なくとも一部)にグラフトすることができる。別の例として、抗体または抗体フラグメントのCDRをTCRα鎖及び/またはβ鎖にグラフトして、抗原に特異的に結合するキメラTCRを形成することもできる。そのようなキメラTCRは、当該技術分野では周知の方法によって作製することができる(例えば、あらゆる目的で本明細書に参照により援用する、Willemsen RA et al.,Gene Therapy 2000;7:1369-1377;Zhang T et al.,Cancer Gene Ther 2004 11:487-496;及びAggen et al.,Gene Ther.2012 Apr;19(4):365-74)。
【0172】
キメラ抗原受容体などの免疫受容体の抗原は、腫瘍関連抗原であってよい。
【0173】
免疫受容体は一般的に、免疫受容体発現細胞におけるシグナル伝達またはタンパク質発現の変化を誘導することができ、これにより、同種のリガンドに結合する際の免疫応答が調節される(例えば、免疫応答を調節、活性化、開始、刺激、増加、防止、減弱、阻害、低下、減少、阻害、または抑制する)。例えば、TCR/CARに存在するCD3鎖がリガンド結合に応答してクラスター化する際、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を介したシグナル伝達カスケードが生じる。具体的には、特定の実施形態において、内因性TCR、外因性TCR、キメラTCR、またはCAR(具体的には活性化CAR)がそれぞれの抗原に結合すると、結合受容体の近くの多くの分子(例:CD4またはCD8、CD3γ/δ/ε/ζなど)のクラスター化を含む免疫シナプスの形成が起こる。膜結合シグナル伝達分子のこのようなクラスター化により、CD3鎖内に含まれるITAMモチーフがリン酸化され、これにより、T細胞活性化経路が開始され、最終的にNF-κB及びAP-1などの転写因子が活性化される。これらの転写因子は、T細胞のグローバルな遺伝子発現を誘導して、マスターレギュレーターT細胞タンパク質の増殖及び発現のためのIL-2産生を増加させることにより、サイトカイン産生及び/またはT細胞媒介傷害などのT細胞媒介免疫応答を開始させることができる。
【0174】
キメラ抑制性受容体をコードする核酸
本明細書では、他の態様において、上記に述べたような少なくとも1つのキメラ抑制性受容体をコードする核酸が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのキメラ抑制性受容体をコードする核酸は、ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはファージベクターから選択される。
【0175】
キメラ抑制性受容体が多鎖受容体である場合、ポリヌクレオチドのセットが使用される。この場合、ポリヌクレオチドのセットを、単一のベクターまたは複数のベクターにクローニングすることができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、キメラ抑制性受容体をコードする配列を含み、細胞外リガンド結合ドメインをコードする配列が、細胞内シグナル伝達ドメイン及び膜局在化ドメインをコードする配列と隣接し、かつ同じリーディングフレーム内にある。
【0176】
ポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞で発現させるためにコドン最適化することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの全配列は、哺乳動物細胞で発現させるためにコドン最適化される。コドン最適化とは、コーディングDNA内の同義コドン(すなわち、同じアミノ酸をコードするコドン)の出現頻度が異なる種で偏っているという発見を指す。そのようなコドン縮重のため、同一のポリペプチドが様々なヌクレオチド配列によってコードされる。様々なコドン最適化の方法が当該技術分野で知られており、例えば、あらゆる目的で参照によって本明細書に援用する、少なくとも米国特許第5,786,464号及び同第6,114,148号に開示される方法が挙げられる。
【0177】
キメラ抑制性受容体をコードするポリヌクレオチドは、標準的な方法を使用して、例えば、ポリヌクレオチドを発現する細胞からのライブラリーをスクリーニングすること、ポリヌクレオチドを含むことが知られているベクターから誘導すること、またはポリヌクレオチドを含む細胞及び組織から直接単離することなどにより、当該技術分野では周知の組換え法を使用して得ることができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、クローニングするのではなく、合成的に生成することもできる。
【0178】
ポリヌクレオチドは、ベクターにクローニングすることができる。いくつかの実施形態では、当該技術分野では周知の発現ベクターを使用する。したがって、本開示は、細胞に直接形質導入することができる、キメラ抑制性受容体を発現するレトロウイルス及びレンチウイルスベクターコンストラクトを含む。
【0179】
本開示には、細胞に直接トランスフェクトすることができるRNAコンストラクトも含まれる。トランスフェクションに使用するためのmRNAを生成する方法では、特別に設計されたプライマーを使用したテンプレートのインビトロ転写(IVT)と、それに続くpolyAの付加を行って、3’及び5’非翻訳配列(「UTR」)(例えば、本明細書に記載される3’及び/または5’UTR)、5’キャップ(例えば、本明細書に記載される5’キャップ)及び/または内部リボソーム進入部位(IRES)(例えば、本明細書に記載のIRES)、発現させようとする核酸、及びpolyAテールを含むコンストラクトを作製する。そのように生成されたRNAは、異なる種類の細胞に効率的にトランスフェクトできる。いくつかの実施形態では、RNAキメラ抑制性受容体ベクターは、エレクトロポレーションによって、例えば、T細胞またはNK細胞などの細胞に形質導入される。
【0180】
いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、分泌を促進するためのシグナル配列、ポリアデニル化シグナル及び転写ターミネーター、エピソーム複製を可能にする因子、及び/または選択を可能にする因子をさらに含むことができる。
【0181】
操作された細胞
本明細書では、本開示の少なくとも1つのキメラ抑制性受容体をコードする核酸を含むか、または本開示のキメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された細胞も提供される。核酸/ベクターを導入する(すなわち、遺伝子操作する)様々な方法が当業者に知られており、これらに限定されるものではないが、形質導入(すなわち、ウイルス感染)、形質転換、及びトランスフェクションが挙げられる。トランスフェクションの機構としては、化学物質を用いたトランスフェクション(例えば、リン酸カルシウム媒介、リポフェクション/リポソーム媒介など)、化学物質を用いないトランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション、セルスクイージング、ソノポレーション、光学的トランスフェクション、プロトプラスト融合、インペールフェクション、ハイドロダイナミックデリバリーなど)、及び粒子を用いたトランスフェクション(例えば、遺伝子銃、マグネトフェクション、パーティクルボンバードメントなど)が挙げられる。
【0182】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子操作された細胞は、免疫調節細胞である。免疫調節細胞としては、これらに限定されるものではないが、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、γδT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球、マスト細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、ESC由来細胞、及びiPSC由来細胞が挙げられる。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子操作された細胞は、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。T細胞の例としては、これらに限定されるものではないが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、エフェクター細胞、ヘルパー細胞(T細胞)、細胞傷害性細胞(T細胞、CTL、Tキラー細胞、キラーT細胞)、メモリー細胞(セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、組織常在型メモリーT細胞、バーチャルメモリーT細胞など)、制御性T細胞(例えば、CD4+、FOXP3+、CD25+)、天然キラーT細胞、粘膜関連不変細胞、及びγδT細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子操作された細胞は、間葉系幹細胞(MSC)、多能性幹細胞、胚性幹細胞、成体幹細胞、骨髄幹細胞、臍帯幹細胞、または他の幹細胞などの幹細胞である。
【0184】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、自家である。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、同種である。
【0185】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、免疫受容体をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、天然の免疫受容体である(例えば、遺伝子操作された細胞が内因性免疫受容体を発現する免疫細胞である)。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、非天然の抗原受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体から選択される。
【0186】
いくつかの実施形態では、細胞の免疫受容体は、キメラ免疫受容体である。いくつかの実施形態では、免疫受容体は、キメラ抗原受容体である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、リガンド結合時の免疫受容体の活性化を抑制する。
【0187】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、外因性免疫受容体を発現するようにさらに操作される。例えば、遺伝子操作された細胞は、CARなどのキメラ免疫受容体を発現するように操作することができる。別の例では、遺伝子操作された細胞は、操作された細胞に対して外因性の天然の免疫受容体を発現するように操作することができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、キメラ抑制性受容体及び外因性免疫受容体を発現するように操作される。遺伝子操作された細胞は、キメラ抑制性受容体と外因性免疫受容体の両方を同時に発現するように操作することができる(例えば、各受容体をコードするポリヌクレオチドを同時に導入する)。遺伝子操作された細胞は、キメラ抑制性受容体と外因性免疫受容体の両方を順次発現するように操作することができる(例えば、最初にキメラ抑制性受容体と外因性免疫受容体のどちらかを発現するように操作し、その後、他の受容体を発現するように操作する)。
【0189】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ抑制性受容体に対するリガンド結合及び免疫受容体に対する同種免疫受容体リガンド結合は、キメラ抑制性受容体を免疫受容体に近接するように局在化させる。いくつかの実施形態では、免疫受容体に近接するようなキメラ抑制性受容体の局在化は、免疫受容体の活性化を抑制する。いくつかの実施形態では、免疫受容体の活性化はT細胞の活性化である。例えば、T細胞のシグナル伝達及び/または活性化の場合、キメラ抑制性受容体及び免疫受容体に結合するそれぞれのリガンドは、免疫シナプス内で免疫受容体に近接するようにキメラ抑制性受容体を局在化させる。
【0190】
製造方法及び使用
別の態様では、本開示は、実験的または治療的使用のためにキメラ抑制性受容体を発現するかまたは発現することが可能な遺伝子操作された細胞(例えば、遺伝子操作された免疫調節細胞)を調製する方法を提供する。別の態様では、本開示は、実験的または治療的使用のためにキメラ抑制性受容体及び免疫受容体を発現するかまたは発現することが可能な遺伝子操作された細胞(例えば、遺伝子操作された免疫調節細胞)を調製する方法を提供する。
【0191】
治療用キメラ抑制性受容体が操作された細胞を作製するためのエクスビボ手順は、当該技術分野では周知のものである。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)から細胞を単離し、本明細書に開示されるキメラ抑制性受容体を発現するベクターを用いて遺伝子操作する(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトする)。キメラ抑制性受容体が操作された細胞は、哺乳動物レシピエントに投与することで治療効果を与えることができる。哺乳動物レシピエントはヒトであってよく、キメラ抑制性受容体修飾細胞は、レシピエントに関して自家であってよい。あるいは、細胞は、レシピエントに関して同種異系、同系または異種であってもよい。造血幹細胞及び前駆細胞のエクスビボ増殖の手順は、参照により本明細書に援用するところの米国特許第5,199,942号に記載されており、本開示の細胞に適用することができる。他の適当な方法が当該技術分野で周知であり、したがって、本開示は、細胞のエクスビボ増殖のいずれの特定の方法にも限定されない。簡単に言えば、エクスビボ培養及び免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)の増殖は、(1)末梢採血または骨髄体外培養物から哺乳動物由来のCD34+造血幹細胞及び前駆細胞を採取することと、(2)そのような細胞をエクスビボで増殖させることと、を含む。米国特許第5,199,942号に記載される細胞増殖因子以外に、flt3-L、IL-1、IL-3及びc-kitリガンドなどの他の因子を細胞の培養及び増殖に使用することができる。
【0192】
いくつかの実施形態では、方法は、細胞の集団(例えば、細胞培地中の)を、所望の細胞密度(例えば、特定の細胞ベースの治療に十分な細胞密度)にまで培養することを含む。いくつかの実施形態では、細胞の集団を、抑制可能なプロテアーゼの活性を抑制する物質の非存在下、または抑制可能なプロテアーゼの活性を抑制する薬剤の存在下で培養する。
【0193】
いくつかの実施形態では、細胞の集団を、出発集団の細胞の少なくとも2倍の数を含む増殖された細胞集団が産生される期間にわたって培養する。いくつかの実施形態では、細胞の集団を、出発集団の細胞の少なくとも4倍の数を含む増殖された細胞集団が産生される期間にわたって培養する。いくつかの実施形態では、細胞の集団を、出発集団の細胞の少なくとも16倍の数を含む増殖された細胞集団が産生される期間にわたって培養する。
【0194】
本明細書では、免疫細胞の活性化を抑制する方法も提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の少なくとも1つのキメラ受容体をコードする核酸を含む遺伝子操作された細胞、本開示のキメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された細胞、または遺伝子を含む医薬組成物を、キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下で同種リガンドと接触させることを含み、キメラ抑制性受容体は、操作された細胞の細胞膜上に発現される免疫受容体に近接するように局在化される場合、免疫受容体活性化を抑制する。
【0195】
本明細書では、免疫応答を低下させる方法も提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の少なくとも1つのキメラ受容体をコードする核酸を含む遺伝子操作された細胞、本開示のキメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された細胞、または遺伝子操作された細胞を含む医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0196】
本明細書では、免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体によって誘導される細胞媒介性免疫応答を防止、減弱、または抑制する方法であって、本開示の少なくとも1つのキメラ受容体をコードする核酸を含む遺伝子操作された免疫調節細胞、本開示のキメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された免疫調節細胞、または遺伝子操作された免疫調節細胞を含む医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む、方法も提供される。
【0197】
本明細書では、免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体によって誘導される細胞媒介性免疫応答を防止、減弱、または抑制する方法であって、本開示の少なくとも1つのキメラ受容体をコードする核酸を含む遺伝子操作された免疫調節細胞、本開示のキメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された免疫調節細胞、または遺伝子操作された免疫調節細胞を含む医薬組成物を、キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下で同種リガンドと接触させることを含み、キメラ抑制性受容体は、操作された細胞の細胞膜上に発現される免疫受容体に近接するように局在化される場合、免疫受容体活性化を抑制する、方法も提供される。
【0198】
本明細書では、自己免疫疾患または免疫応答を低下させることによって治療可能な疾患を治療する方法も提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の少なくとも1つのキメラ受容体をコードする核酸を含む遺伝子操作された細胞、キメラ抑制性受容体を発現する本開示の遺伝子操作された細胞、または遺伝子操作された細胞を含む医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、方法は、免疫受容体をさらに発現するかまたは発現することが可能な遺伝子操作された細胞を投与または接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、免疫受容体を発現するようにさらに操作された遺伝子操作された細胞を投与または接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、キメラ免疫受容体をさらに発現するかまたは発現可能な遺伝子操作された細胞を投与または接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、キメラ免疫受容体を発現するようにさらに操作された遺伝子操作された細胞を投与または接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、CARをさらに発現するかまたは発現することが可能な遺伝子操作された細胞を投与または接触させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、CARを発現するようにさらに操作された遺伝子操作された細胞を投与または接触させることを含む。
【0200】
免疫受容体(例えば、腫瘍標的化キメラ受容体)によって開始される免疫応答の減弱は、免疫受容体の活性化の減少または低下、免疫受容体のシグナル伝達の減少または低下、または操作された細胞の活性化の減少または低下でありうる。抑制性キメラ受容体は、免疫受容体の活性化、免疫受容体によるシグナル伝達、または免疫受容体による操作された細胞の活性化を、抑制性キメラ受容体を欠く操作された細胞と比較した免疫受容体の活性化、シグナル伝達、または操作された細胞の活性化と比較して1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはそれ以上、減弱することができる。いくつかの実施形態では、減弱は、免疫受容体が活性化された後の免疫受容体の活性の減少または低下を指す。
【0201】
免疫受容体(例えば、腫瘍標的化キメラ受容体)によって開始される免疫応答の防止は、免疫受容体の活性化の阻害または低下、免疫受容体のシグナル伝達の阻害または低下、または操作された細胞の活性化の阻害または低下でありうる。抑制性キメラ受容体は、免疫受容体の活性化、免疫受容体によるシグナル伝達、または免疫受容体による操作された細胞の活性化を、抑制性キメラ受容体を欠く操作された細胞と比較した免疫受容体の活性化、シグナル伝達、または操作された細胞の活性化と比較して約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはそれ以上、防止することができる。いくつかの実施形態では、防止は、免疫受容体が活性化される前の免疫受容体の活性の遮断を指す。
【0202】
免疫受容体(例えば、腫瘍標的化キメラ受容体)によって開始される免疫応答の阻害は、免疫受容体の活性化の阻害または低下、免疫受容体のシグナル伝達の阻害または低下、または操作された細胞の活性化の阻害または低下でありうる。抑制性キメラ受容体は、免疫受容体の活性化、免疫受容体によるシグナル伝達、または免疫受容体による操作された細胞の活性化を、抑制性キメラ受容体を欠く操作された細胞と比較した免疫受容体の活性化、シグナル伝達、または操作された細胞の活性化と比較して約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはそれ以上、阻害することができる。いくつかの実施形態では、阻害は、免疫受容体が活性化される前または後の免疫受容体の活性の減少または低下を指す。
【0203】
免疫受容体(例えば、腫瘍標的化キメラ受容体)によって開始される免疫応答の抑制は、免疫受容体の活性化の阻害または低下、免疫受容体のシグナル伝達の阻害または低下、または操作された細胞の活性化の阻害または低下でありうる。抑制性キメラ受容体は、免疫受容体の活性化、免疫受容体によるシグナル伝達、または免疫受容体による操作された細胞の活性化を、抑制性キメラ受容体を欠く操作された細胞と比較した免疫受容体の活性化、シグナル伝達、または操作された細胞の活性化と比較して約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、またはそれ以上、抑制することができる。いくつかの実施形態では、抑制は、免疫受容体が活性化される前または後の免疫受容体の活性の減少または低下を指す。
【0204】
免疫応答は、活性化された免疫調節細胞からのサイトカインまたはケモカインの産生及び分泌でありうる。免疫応答は、細胞媒介性殺傷など、標的細胞に対する細胞媒介性免疫応答でありうる。
【0205】
いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、免疫調節細胞などの活性化された操作された細胞からのサイトカイン産生を抑制することができる。いくつかの実施形態では、キメラ抑制性受容体は、標的細胞に対する細胞媒介性免疫応答を抑制することができ、免疫応答は、操作された細胞の活性化によって誘導される。
【0206】
一態様では、本開示は、免疫細胞などの細胞が本明細書で提供されるキメラ抑制性受容体を発現するように遺伝子操作され、遺伝子操作された細胞がそれを必要とする対象に投与されるタイプの細胞療法を提供する。
【0207】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、増殖された細胞の集団の細胞を、状態または疾患を治療するための細胞ベースの療法を必要とする対象に送達することを含む。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、状態または疾患は、自己免疫状態である。いくつかの実施形態では、状態または疾患は、免疫関連免疫状態である。いくつかの実施形態では、状態または疾患は、がん(例えば、原発性がんまたは転移性がん)である。いくつかの実施形態では、がんは、固形がんである。いくつかの実施形態では、がんは、液体がんである。
【0208】
医薬組成物
キメラ抑制性受容体または遺伝子操作された細胞は、医薬組成物に配合することができる。本開示の医薬組成物は、本明細書に記載されるキメラ抑制性受容体(例えば、iCAR)または遺伝子操作された細胞(例えば、複数のキメラ抑制性受容体発現細胞)を、1つ以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と共に含むことができる。かかる材料は無毒性でなければならず、有効成分の有効性を妨げるものであってはならない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば、経口、静脈内、皮膚または皮下、鼻内、筋肉内、腹腔内経路に依存しうる。特定の実施形態では、組成物は、目的の臓器(例えば、障害に冒された臓器)に直接注射される。あるいは、組成物は、例えば、循環系(例えば、腫瘍血管系)への投与によって、目的の器官に間接的に与えることもできる。インビトロまたはインビボでのT細胞、NK細胞、またはCTL細胞の産生を増加させるために増殖物質及び分化物質を、組成物の投与前、投与中、または投与後に与えることができる。
【0209】
特定の実施形態では、組成物は、免疫調節細胞または免疫細胞などの遺伝子操作された細胞、またはそれらの前駆細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物である。投与は、自家または異種とすることができる。例えば、免疫調節細胞または免疫細胞、または前駆細胞を1人の対象から得て、同じ対象または適合性を有する異なる対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、免疫調節細胞または免疫細胞などの遺伝子操作された細胞、またはそれらの子孫は、末梢血細胞に由来(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロ由来)するものとすることができ、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を含む局所注射によって投与することができる。本開示の治療用組成物(例えば、本開示の遺伝子操作された細胞を含む医薬組成物)を投与する場合、組成物は一般に、単位用量の注射可能な形態(溶液、懸濁液、乳濁液)として製剤化される。
【0210】
本開示の特定の態様は、本開示のキメラ受容体、またはかかるキメラ受容体を発現する遺伝子操作された細胞(例えば、本開示の免疫調節細胞または免疫細胞)を含む組成物の製剤に関する。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞を含む本開示の組成物は、これらに限定されるものではないが、選択されたpHに緩衝することができる等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、及び粘性組成物を含む滅菌液体製剤として提供することができる。液体製剤は、通常、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射による投与により都合がよい場合がある。いくつかの実施形態では、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触時間を与えるような適切な粘度範囲内で製剤化することができる。液体または粘性の組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒であってよい担体を含むことができる。
【0211】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形態とすることができる。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントなどの固体担体を含むことができる。液体医薬組成物は、一般的に、水、石油、動物または植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水、デキストロースまたは他の糖類溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコール類が含まれてもよい。
【0212】
静脈内、皮膚または皮下注射、または患部における注射の場合、有効成分は、パイロジェンフリーであり、適当なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液などの等張性ビヒクルを使用して適当な溶液を容易に調製することができる。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤、及び/または他の添加剤が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、等張性、すなわち、血液及び涙液と同じ浸透圧を有するものとすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、塩化ナトリウム、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機もしくは有機溶質を使用して所望の等張性を得ることができる。
【0213】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、組成物の安定性及び無菌性を高めることができる様々な添加剤をさらに含むことができる。かかる添加剤の例としては、これらに限定されるものではないが、抗細菌菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝液が挙げられる。いくつかの実施形態では、これらに限定されるものではないが、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含む様々な抗細菌剤及び抗真菌剤のいずれかを添加することによって微生物汚染を防止することができる。モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅らせる適切な薬剤の使用によって本開示の注射可能な製剤の長期吸収をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子改変細胞を、必要に応じて異なる量の他の成分と共に十分な量の適切な溶媒に添加することによって滅菌注射溶液を調製することができる。かかる組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適当な担体、希釈剤、または賦形剤と混合することができる。いくつかの実施形態では、組成物は凍結乾燥されてもよい。組成物は、投与経路及び所望の製剤に応じて、湿潤剤、分散剤、pH緩衝剤、及び抗細菌剤などの補助的物質を含むことができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤の成分は、化学的に不活性であり、かつ本開示の遺伝子改変細胞の生存率または有効性に影響を及ぼさないように選択される。
【0215】
本開示の遺伝子操作された細胞の治療的使用に関する1つの考慮事項は、最適な有効性を得るうえで必要とされる細胞の量である。いくつかの実施形態では、投与される細胞の量は、治療される対象によって異なる。特定の実施形態において、それを必要とする対象に投与される遺伝子操作された細胞の量は、1×10細胞~1×1010細胞の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、有効用量とみなされる細胞の正確な量は、特定の対象のサイズ、年齢、性別、体重、及び状態を含む、各対象に固有の要因に基づいたものとすることができる。用量は、本開示及び当該技術分野における知識に基づいて当業者によって容易に決定することができる。
【0216】
個人に投与されるものが本発明によるポリペプチド、抗体、核酸、小分子または他の薬学的に有用な化合物のいずれであるかによらず、投与は、「治療有効量」または「予防有効量」(この場合のように予防は治療とみなすことができるが)であることが好ましく、これは個人に利益を示すのに十分である。実際に投与される量、ならびに投与の速度及び時間経過は、治療されるタンパク質凝集疾患の性質及び重症度によって異なる。治療の処方、例えば用量の決定などは、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、通常、治療される疾患、個々の患者の状態、投与部位、投与方法、及び医師にとっては周知の他の因子を考慮したものである。上記の技術及びプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed),1980に記載されている。
【0217】
組成物は、単独で、または他の治療と併用して、治療される状態に応じて同時または順次に投与することができる。
【0218】
キット
本開示の特定の態様は、がんまたは他の疾患(例えば、免疫関連または自己免疫疾患)の治療及び/または予防のためのキットに関する。特定の実施形態において、キットは、有効量の本開示の1つ以上のキメラ受容体、本開示の単離された核酸、本開示のベクター、及び/または本開示の細胞(例えば、免疫調節細胞または免疫細胞などの遺伝子操作された細胞)を含む治療的または予防的組成物を含む。いくつかの実施形態では、キットは滅菌容器を含む。いくつかの実施形態では、そのような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック、または当該技術分野では周知の他の適当な容器の形態とすることができる。容器は、プラスチック、ガラス、合紙、金属箔、または薬剤を保持するのに適した他の材料で形成することができる。
【0219】
いくつかの実施形態では、治療的または予防的組成物は、がんまたは免疫関連疾患を有するかまたは発症するリスクを有する対象に治療的または予防的組成物を投与するための説明書と共に提供される。いくつかの実施形態では、説明書は、疾患の治療及び/または予防のための組成物の使用に関する情報を含むことができる。いくつかの実施形態では、説明書は、これらに限定されるものではないが、治療的または予防的組成物の説明、投薬スケジュール、疾患またはその症状の治療または予防のための投与スケジュール、予防措置、警告、適応症、禁忌、過剰投与情報、有害反応、動物薬理学、臨床試験、及び/または参考文献を含む。いくつかの実施形態では、説明書は、容器に直接印刷することができ(存在する場合)、または容器に貼付されるラベルとして、または容器内または容器と共に提供される別個のシート、パンフレット、カード、またはフォルダーとして印刷することができる。
【0220】
さらなる実施形態
以下に、本発明の特定の非限定的な実施形態を記載する、番号付けされた実施形態を示す。
【0221】
実施形態1細胞外リガンド結合ドメインと、
膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメインと、
免疫受容体に近接する場合に前記免疫受容体の活性化を阻害する酵素的抑制性ドメインと、を含む、キメラ抑制性受容体。
【0222】
実施形態2前記細胞外リガンド結合ドメインが、タンパク質複合体、タンパク質、ペプチド、受容体結合ドメイン、核酸、小分子、及び化学物質からなる群から選択されるリガンドに結合する、実施形態1に記載のキメラ抑制性受容体。
【0223】
実施形態3前記細胞外リガンド結合ドメインが、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、実施形態1または実施形態2に記載のキメラ抑制性受容体。
【0224】
実施形態4前記細胞外リガンド結合ドメインが、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、単鎖可変フラグメント(scFv)、またはシングルドメイン抗体(sdAb)を含む、実施形態1または実施形態2に記載のキメラ抑制性受容体。
【0225】
実施形態5前記リガンドが腫瘍関連抗原である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0226】
実施形態6前記リガンドが腫瘍細胞で発現されない、実施形態1~4のいずれか1つに 記載のキメラ抑制性受容体。
【0227】
実施形態7前記リガンドが非腫瘍細胞で発現される、実施形態1~4のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0228】
実施形態8前記リガンドが健康な組織の細胞で発現される、実施形態1~4のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0229】
実施形態9前記細胞外リガンド結合ドメインが二量体化ドメインを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0230】
実施形態10前記リガンドが同種の二量体化ドメインをさらに含む、実施形態9に記載のキメラ抑制性受容体。
【0231】
実施形態11前記リガンドが細胞表面リガンドである、実施形態2~10のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0232】
実施形態12前記細胞表面リガンドが、前記免疫受容体の同種リガンドをさらに発現する細胞で発現される、実施形態11に記載のキメラ抑制性受容体。
【0233】
実施形態13前記膜局在化ドメインが細胞外ドメインの少なくとも一部をさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0234】
実施形態14前記膜局在化ドメインが細胞内ドメインの少なくとも一部をさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0235】
実施形態15前記膜局在化ドメインが細胞外ドメインの少なくとも一部と細胞内ドメインの少なくとも一部をさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0236】
実施形態16前記膜局在化ドメインが、LAX膜貫通ドメイン、CD25膜貫通ドメイン、CD7膜貫通ドメイン、LAT膜貫通ドメイン、LAT変異体由来の膜貫通ドメイン、BTLA膜貫通ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD3ζ膜貫通ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、4-IBB膜貫通ドメイン、OX40膜貫通ドメイン、ICOS膜貫通ドメイン、2B4膜貫通ドメイン、PD-1膜貫通ドメイン、CTLA4膜貫通ドメイン、BTLA膜貫通ドメイン、TIM3膜貫通ドメイン、LIR1膜貫通ドメイン、NKG2A膜貫通ドメイン、TIGIT膜貫通ドメイン、及びLAG3膜貫通ドメイン、LAIR1膜貫通ドメイン、GRB-2膜貫通ドメイン、Dok-1膜貫通ドメイン、Dok-2膜貫通ドメイン、SLAP1膜貫通ドメイン、SLAP2膜貫通ドメイン、CD200R膜貫通ドメイン、SIRPα膜貫通ドメイン、HAVR膜貫通ドメイン、GITR膜貫通ドメイン、PD-L1膜貫通ドメイン、KIR2DL1膜貫通ドメイン、KIR2DL2膜貫通ドメイン、KIR2DL3膜貫通ドメイン、KIR3DL1膜貫通ドメイン、KIR3DL2膜貫通ドメイン、CD94膜貫通ドメイン、KLRG-1膜貫通ドメイン、PAG膜貫通ドメイン、CD45膜貫通ドメイン、及びCEACAM1膜貫通ドメインからなる群から選択される膜貫通ドメインを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0237】
実施形態17前記膜局在化ドメインが、対応する細胞外ドメインの少なくとも一部及び/または対応する細胞内ドメインの少なくとも一部をさらに含む、実施形態16に記載のキメラ抑制性受容体。
【0238】
実施形態18前記LAT変異体がLAT(CA)変異体である、実施形態16または実施形態17に記載のキメラ抑制性受容体。
【0239】
実施形態19前記膜局在化ドメインが前記キメラ抑制性受容体を細胞膜のドメインに誘導、または隔離する、実施形態1~18のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0240】
実施形態20前記膜局在化ドメインが、前記キメラ抑制性受容体を脂質ラフトまたは重脂質ラフトに局在化させる、実施形態1~19のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0241】
実施形態21前記膜局在化ドメインが、細胞膜のドメインに局在化された1つ以上の細胞膜成分と相互作用する、実施形態1~20のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0242】
実施形態22前記膜局在化ドメインが、前記細胞外リガンド結合ドメインの同種リガンドへの結合がない状態で前記酵素的抑制性ドメインによる免疫受容体活性化の構成的阻害を軽減するのに十分である、実施形態1~21のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0243】
実施形態23前記膜局在化ドメインが、前記細胞外リガンド結合ドメインの同種リガンドへの結合がない状態で免疫受容体の1つ以上の成分によって占められる細胞膜のドメインとは異なる細胞膜のドメインへの前記キメラ抑制性受容体の局在化を媒介する、実施形態1~21のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0244】
実施形態24前記膜局在化ドメインが近接タンパク質フラグメントをさらに含む、実施形態23に記載のキメラ抑制性受容体。
【0245】
実施形態25前記1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインをさらに含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0246】
実施形態26前記1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインが1つ以上のITIM含有タンパク質またはそのフラグメントを含む、実施形態25に記載のキメラ抑制性受容体。
【0247】
実施形態27前記1つ以上のITIM含有タンパク質またはそのフラグメントが、PD-1、CTLA4、TIGIT、BTLA、及びLAIR1からなる群から選択される、実施形態26に記載のキメラ抑制性受容体。
【0248】
実施形態28前記1つ以上の細胞内抑制性共シグナル伝達ドメインが、1つ以上の非ITIM足場タンパク質、またはそのフラグメントを含む、実施形態25に記載のキメラ抑制性受容体。
【0249】
実施形態29前記1つ以上の非ITIM足場タンパク質またはそのフラグメントが、GRB-2、Dok-1、Dok-2、SLAP1、SLAP2、LAG3、HAVR、GITR、及びPD-L1からなる群から選択される、実施形態28のキメラ抑制性受容体。
【0250】
実施形態30前記細胞外リガンド結合ドメインが細胞外リンカー領域を介して膜局在化ドメインに連結されている、実施形態1~29のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0251】
実施形態31前記細胞外リンカー領域が、前記細胞外リガンド結合ドメインと前記膜局在化ドメインとの間に位置し、前記細胞外リガンド結合ドメイン及び前記膜局在化ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結されている、実施形態30に記載のキメラ抑制性受容体。
【0252】
実施形態32前記細胞外リンカー領域が、CD8α、CD4、CD7、CD28、IgG1、IgG4、FcγRIIIα、LNGFR、及びPDGFRからなる群から選択されるタンパク質に由来する、実施形態30または実施形態31に記載のキメラ抑制性受容体。
【0253】
実施形態33前記細胞外リンカー領域が、AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号46)、ESKYGPPCPSCP(配列番号47)、ESKYGPPAPSAP(配列番号48)、ESKYGPPCPPCP(配列番号49)、EPKSCDKTHTCP(配列番号50)、AAAFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号51)、TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号52)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEADAEC(配列番号53)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC(配列番号54)、及びAVGQDTQEVIVVPHSLPFKV(配列番号55)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態30または実施形態31に記載のキメラ抑制性受容体。
【0254】
実施形態34前記細胞外リンカー領域が、GGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号44)、及びEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号45)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態30または実施形態31に記載のキメラ抑制性受容体。
【0255】
実施形態35前記キメラ抑制性受容体が、前記膜局在化ドメインと前記酵素的抑制性ドメインとの間に位置して前記膜局在化ドメイン及び前記酵素的抑制性ドメインのそれぞれと機能的及び/または物理的に連結された細胞内スペーサー領域をさらに含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0256】
実施形態36前記細胞内スペーサー領域が、GGS(配列番号29)、GGSGGS(配列番号30)、GGSGGSGGS(配列番号31)、GGSGGSGGSGGS(配列番号32)、GGSGGSGGSGGSGGS(配列番号33)、GGGS(配列番号34)、GGGSGGGS(配列番号35)、GGGSGGGSGGGS(配列番号36)、GGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号37)、GGGSGGGSGGGSGGGSGGGS(配列番号38)、GGGGS(配列番号39)、GGGGSGGGGS(配列番号40)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号42)、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号43)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号44)、及びEAAAKEAAAKEAAAKEAAAK(配列番号45)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態34に記載のキメラ抑制性受容体。
【0257】
実施形態37前記細胞内スペーサー領域が、AAAIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号46)、ESKYGPPCPSCP(配列番号47)、ESKYGPPAPSAP(配列番号48)、ESKYGPPCPPCP(配列番号49)、EPKSCDKTHTCP(配列番号50)、AAAFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号51)、TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号52)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEADAEC(配列番号53)、ACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVC(配列番号54)、及びAVGQDTQEVIVVPHSLPFKV(配列番号55)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態34に記載のキメラ抑制性受容体。
【0258】
実施形態38前記酵素的抑制性ドメインが、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内ドメインの少なくとも一部を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0259】
実施形態39前記酵素的抑制性ドメインが酵素触媒ドメインを含む、実施形態38に記載のキメラ抑制性受容体。
【0260】
実施形態40前記酵素的抑制性ドメインが酵素の少なくとも一部を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0261】
実施形態41前記酵素の一部が酵素ドメインまたは酵素フラグメントを含む、実施形態40に記載のキメラ抑制性受容体。
【0262】
実施形態42前記酵素の一部が酵素の触媒ドメインである、実施形態40に記載のキメラ抑制性受容体。
【0263】
実施形態43前記酵素が、CSK、SHP-1、SHP-2、PTEN、CD45、CD148、PTP-MEG1、PTP-PEST、c-CBL、CBL-b、PTPN22、LAR、PTPH1、SHIP-1、ZAP70、及びRasGAPからなる群から選択される、実施形態39~42のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0264】
実施形態44前記酵素的抑制性ドメインがCSKに由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0265】
実施形態45前記酵素的抑制性ドメインが、SRC相同性3(SH3)欠失を有するCSKタンパク質を含む、実施形態44に記載のキメラ抑制性受容体。
【0266】
実施形態46前記酵素的抑制性ドメインがSHP-1に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0267】
実施形態47前記酵素的抑制性ドメインがプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ドメインを含む、実施形態47のキメラ抑制性受容体。
【0268】
実施形態48前記酵素的抑制性ドメインがSHP-2に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0269】
実施形態49前記酵素的抑制性ドメインがPTENに由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0270】
実施形態50前記酵素的抑制性ドメインがCD45に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0271】
実施形態51前記酵素的抑制性ドメインがCD148に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0272】
実施形態52前記酵素的抑制性ドメインがPTP-MEG1に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0273】
実施形態53前記酵素的抑制性ドメインがPTP-PESTに由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0274】
実施形態54前記酵素的抑制性ドメインがc-CBLに由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0275】
実施形態55前記酵素的抑制性ドメインがCBL-bに由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0276】
実施形態56前記酵素的抑制性ドメインがPTPN22に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0277】
実施形態57前記酵素的抑制性ドメインがLARに由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0278】
実施形態58前記酵素的抑制性ドメインがPTPH1に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0279】
実施形態59前記酵素的抑制性ドメインがSHIP-1に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0280】
実施形態60前記酵素的抑制性ドメインがプロテインチロシンホスファターゼ(PTP)ドメインを含む、実施形態60に記載のキメラ抑制性受容体。
【0281】
実施形態61前記酵素的抑制性ドメインがZAP70に由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0282】
実施形態62前記酵素的抑制性ドメインが、SRC相同性1(SH1)ドメイン、SRC相同性2(SH2)ドメイン、またはSH1ドメインとSH2ドメインを含む、実施形態58に記載のキメラ抑制性受容体。
【0283】
実施形態63前記酵素的抑制性ドメインが、キナーゼドメイン欠失を有するZAP70タンパク質を含む、実施形態58に記載のキメラ抑制性受容体。
【0284】
実施形態64前記酵素的抑制性ドメインが、Tyr492Pheアミノ酸置換、Tyr493Pheアミノ酸置換、またはTyr492Pheアミノ酸置換とTyr493Pheアミノ酸置換を有する変異体ZAP70タンパク質を含む、実施形態58に記載のキメラ抑制性受容体。
【0285】
実施形態65前記酵素的抑制性ドメインがRasGAPに由来する、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0286】
実施形態66前記酵素的抑制性ドメインが、基礎阻害を調節する1つ以上の改変を含む、実施形態1~43のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0287】
実施形態67前記1つ以上の改変が基礎阻害を低下させる、実施形態65に記載のキメラ抑制性受容体。
【0288】
実施形態68前記1つ以上の改変が基礎阻害を増加させる、実施形態65に記載のキメラ抑制性受容体。
【0289】
実施形態69前記酵素的阻害ドメインが、免疫受容体に近接するようなキメラ抑制性受容体の動員時に免疫受容体の活性化を阻害する、実施形態1~68のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0290】
実施形態70前記免疫受容体がキメラ免疫受容体である、実施形態1~69のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0291】
実施形態71前記免疫受容体がキメラ抗原受容体である、実施形態70に記載のキメラ抑制性受容体。
【0292】
実施形態72前記免疫受容体が天然の免疫受容体である、実施形態1~69のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0293】
実施形態73前記免疫受容体が天然の抗原受容体である、実施形態72に記載のキメラ抑制性受容体。
【0294】
実施形態74前記免疫受容体が、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体からなる群から選択される、実施形態1~69のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0295】
実施形態75前記免疫受容体がT細胞受容体である、実施形態1~73のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0296】
実施形態76実施形態1~75のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体をコードする、核酸。
【0297】
実施形態77実施形態76に記載の核酸を含む、ベクター。
【0298】
実施形態78実施形態76に記載の核酸を含む、遺伝子操作された細胞。
【0299】
実施形態79実施形態77に記載のベクターを含む、遺伝子操作された細胞。
【0300】
実施形態80実施形態1~75のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体を発現する、遺伝子操作された細胞。
【0301】
実施形態81キメラ抑制性受容体を発現する遺伝子操作された細胞であって、前記キメラ抑制性受容体が、
細胞外リガンド結合ドメインと、
膜貫通ドメインを含む膜局在化ドメインと、
免疫受容体に近接する場合に前記免疫受容体の活性化を阻害する酵素的抑制性ドメインと、を含む、前記操作された細胞。
【0302】
実施形態82前記細胞が免疫受容体をさらに含む、実施形態78~81のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0303】
実施形態83前記免疫受容体がキメラ免疫受容体である、実施形態82に記載の操作された細胞。
【0304】
実施形態84前記免疫受容体がキメラ抗原受容体である、実施形態83に記載の操作された細胞。
【0305】
実施形態85前記免疫受容体が天然の免疫受容体である、実施形態82に記載の操作された細胞。
【0306】
実施形態86前記免疫受容体が天然の抗原受容体である、実施形態85に記載の操作された細胞性受容体。
【0307】
実施形態87前記免疫受容体が、T細胞受容体、パターン認識受容体(PRR)、NOD様受容体(NLR)、Toll様受容体(TLR)、キラー活性化受容体(KAR)、キラー抑制性受容体(KIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体、及びサイトカイン受容体からなる群から選択される、実施形態82のいずれか1つに記載のキメラ抑制性受容体。
【0308】
実施形態88前記キメラ抑制性受容体が、リガンド結合時に免疫受容体の活性化を阻害する、実施形態82~87のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0309】
実施形態89前記リガンドが細胞表面リガンドである、実施形態82~88のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0310】
実施形態90前記細胞表面リガンドが、同種の免疫受容体リガンドをさらに発現する細胞で発現される、実施形態89に記載の操作された細胞。
【0311】
実施形態91前記キメラ抑制性受容体に対するリガンド結合及び前記免疫受容体に対する同種免疫受容体リガンド結合が、前記キメラ抑制性受容体を前記免疫受容体に近接するように局在化させる、実施形態90に記載の操作された細胞。
【0312】
実施形態92前記免疫受容体に近接するような前記キメラ抑制性受容体の局在化が免疫受容体の活性化を阻害する、実施形態91に記載の操作された細胞。
【0313】
実施形態93前記細胞がT細胞である、実施形態88~93のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0314】
実施形態94前記免疫受容体がT細胞受容体である、実施形態93に記載の操作された細胞。
【0315】
実施形態95前記免疫受容体の活性化が、T細胞の活性化である、実施形態94に記載の操作された細胞。
【0316】
実施形態96前記細胞が免疫調節細胞である、実施形態78~92のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0317】
実施形態97前記免疫調節細胞が、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、γδT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球、マスト細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、ESC由来細胞、及びiPSC由来細胞からなる群から選択される、実施形態96に記載の操作された細胞。
【0318】
実施形態98前記細胞が自家である、実施形態78~97のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0319】
実施形態99前記細胞が同種である、実施形態78~97のいずれか1つに記載の操作された細胞。
【0320】
実施形態100実施形態78~99に記載のいずれか1つの操作された細胞と、薬学的に許容される担体、薬学的に許容される賦形剤、またはそれらの組み合わせとを含む医薬組成物。
【0321】
実施形態101免疫受容体の活性化を阻害する方法であって、
実施形態78~99のいずれか1つに記載の操作された細胞または実施形態100に記載の医薬組成物を、前記キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下で前記同種リガンドと接触させることを含み、
前記キメラ抑制性受容体が、前記操作された細胞の細胞膜上で発現される免疫受容体に近接するように局在化される場合に免疫受容体の活性化を阻害する、前記方法。
【0322】
実施形態102免疫応答を低下させるための方法であって、
実施形態78~99のいずれか1つに記載の操作された細胞または実施形態100に記載の医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【0323】
実施形態103免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体によって誘導される細胞媒介性免疫応答を防止、減弱、または阻害する方法であって、
実施形態78~99のいずれか1つに記載の操作された細胞または実施形態100に記載の医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【0324】
実施形態104免疫調節細胞の表面に発現される腫瘍標的化キメラ受容体の活性化を防止、減弱、または阻害する方法であって、
実施形態78~99のいずれか1つに記載の操作された細胞または実施形態100に記載の医薬組成物を、前記キメラ抑制性受容体が同種リガンドに結合するのに適した条件下で前記キメラ抑制性受容体の前記同種リガンドと接触させることを含み、
前記リガンドの前記キメラ抑制性受容体との結合時に前記酵素的抑制性ドメインが前記腫瘍標的化キメラ受容体の活性化を防止、減弱、または阻害する、前記方法。
【0325】
実施形態105自己免疫疾患または免疫応答を低下させることによって治療可能な疾患を治療するための方法であって、
実施形態78~99のいずれか1つに記載の操作された細胞または実施形態100に記載の医薬組成物を、かかる治療を必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【0326】
〔実施例〕
以下は、本開示の方法及び組成物の例である。本明細書に示される一般的な説明を考慮すると、様々な他の実施形態を実施可能であることが理解されよう。
【0327】
以下は、本開示の特許請求される主題を実施するための具体的な実施形態の例である。これらの例はあくまで例示の目的で示されるものにすぎず、本開示の範囲をいかなる意味においても限定しようとするものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保しようと努めてはいるが、ある程度の実験誤差及びばらつきが許容されるべきである点はいうまでもない。
【0328】
実施例1:酵素的抑制性ドメイン(EID)を含むCARによる阻害
CAR-TとK562の共培養法
レンチウイルスの生産:
以下を使用してレンチウイルスを生産した。すなわち、Lenti-X293Tパッケージング細胞株(Clontech、カタログ番号632180);抗生物質を含まないLX293T完全培地;DMEM(高グルコース);1mMピルビン酸ナトリウム;10%FBS(熱不活化したもの);Opti-Mem I低血清培地(Gibco/Thermo Fisher、カタログ番号31985);FuGene HD(Promega、カタログ番号E2311);エンベロープ、パッケージング、及びトランスファーベクタープラスミド;VSV-G-シュードタイプエンベロープベクター(pMD2.G);第2世代及び第3世代のトランスファーベクター(psMAX2)で使用できるGag、Pol、Rev、及びTatを含むパッケージングベクター。90%コンフルエンスにある10cmディッシュから293T(FT)細胞を取り上げ、トランスフェクションの前日の午後遅くに希釈率1:3で分注し、細胞を通常の一晩、37℃、5%CO2でインキュベートした(細胞は翌日のトランスフェクション時に60~85%コンフルエンスに達している必要がある)。
【0329】
以下のプロトコルに従って、10cmディッシュごとにトランスフェクション反応液を調製した。
【0330】
1.別々の1.7mLチューブ中で各10cmディッシュのトランスフェクション反応液を調製する。
【0331】
2.RTで900uLOpti-MemIを加える。
【0332】
3.反応液ごとに9ugのベクターバックボーン(目的の遺伝子を含む)を加える。
【0333】
4.反応液ごとに8ugのパッケージングベクターを加える。
【0334】
5.反応ごとに1ugのエンベロープベクター(pMD2.G)を加える。
【0335】
6.3秒間、高速でボルテックスして、完全に混合する。
【0336】
7.反応ごとに55uLのFugeneHDを加える。
【0337】
8.20~30回すばやく上下にピペッティングして混合する。
【0338】
9.RTで10分間放置する(DNA複合体を形成させる)。
【0339】
10.ディッシュの周りにゆっくりと混合物を滴下して加えた後、5~10秒間、静かに前後上下に揺り動かして混合する(回転させないようにする)。
【0340】
11.ディッシュをウイルスインキュベーターに入れる。
【0341】
血清学的ピペットを使用して、2日目と3日目にウイルス上清を採取した。Millipore steriflip 0.45umフィルターを使用して、細胞破片を除去した。Lenti-Xコンセントレーター(カタログ番号631231及び631232)をプロトコルに従って使用した。1)1体積のLenti-Xコンセントレーターを3体積の清澄化した上清と加え合わせる。穏やかに反転させて混合する。2)混合物を氷上または4℃で30分~一晩インキュベートする。(3)試料を1500×gで45分間、4℃で遠心分離する。(4)ペレットを壊さないように注意しながら、上澄みを注意深く取り除いて捨てる。(5)滅菌PBS+0.1%BSAを使用して、ペレットを最初の体積の1/10~1/100に静かに再懸濁する。
【0342】
形質導入と増殖
初代T細胞をヒトドナーPBMCから単離して凍結した。1日目に、1×10個の精製CD4+/CD8+T細胞を解凍して3×10個のHumanT-Activator CD3/CD28ダイナビーズで刺激し、0.2μg/mLのIL-2を含む1mLのOptimizer CTS T細胞増殖培地(Gibco)中で培養した。2日目に細胞を活性化CAR(aCAR)をコードするレンチウイルス(上記の生産方法を参照)及び/または抑制性CAR(iCAR)をコードするレンチウイルスで同時形質導入して、aCAR+、iCAR+、及びaCAR+/iCAR+(二重+)T細胞を生産した(GoStix(Tekara)によって定量化した各コンストラクト100K)。各CARは構成的SFFVプロモーターの制御下にあった。異なるaCAR及びiCARコンストラクトならびに関連するCARドメインを下記表Aに、完全なコード配列を表Cに示す。3日目に、ダイナビーズを磁石で除去した。T細胞をカウントして継代した(0.5×10細胞/mL)。その後の増殖の間、細胞を2日ごとに継代した(0.5×10細胞/mL)。
【0343】
【表21】
【0344】
共培養アッセイ
7日目に、各細胞集団のアリコートをPE結合抗MYC及びBV421結合抗FLAG抗体(それぞれaCAR及びiCARに対応)で染色し、LX CytoFlexフローサイトメトリー装置を使用してそれらの導入遺伝子発現を定量化した。8日目にT細胞をカウントし、共培養アッセイ用に96ウェルプレートに分配した。各ウェルには、aCAR標的CD20とiCAR標的CD19を共発現するように操作されるか、またはCD20単独を発現するように操作され、CellTrace Violet色素(Invitrogen)で染色した5×10個のK562標的細胞と、5×10個のaCAR+または二重+T細胞とを含むようにした。共培養物(37℃、5%CO)を40時間インキュベートした。10日目に、共培養物中の細胞をNIR生存率色素(Biolegend)で染色し、CytoFlex LXフローサイトメーターを使用して生きた標的細胞の数を定量化した。それぞれの操作されたCAR-T細胞集団の殺傷効率を、CD20を発現するK562標的細胞株のそれぞれに対する生存した野生型K562の比として計算した。正規化した殺傷効率を、単一(CD20+のみ)抗原標的細胞に対する二重(CD20+CD19+)抗原標的細胞のCAR-T殺傷効率の比として計算した。
【0345】
酵素的抑制性ドメインを含むCARの結果
酵素的抑制性ドメイン(EID)を含むCARによるT細胞シグナル伝達の阻害を評価した。一般的な手法を、受容体が標的細胞上に発現された同種リガンドと結合する際に、EIDを含むキメラ受容体によって媒介されるシグナル伝達の阻害を示す図1~3に概略的に示す。
【0346】
EIDを含むキメラ受容体による阻害を評価するためのシステムを確立した。図4は、k562標的細胞を、aCARに対する同種抗原(CD20)を発現するように操作するか、またはaCARに対する同種抗原(CD20)及びiCARに対する同種抗原(CD19)の両方を発現するように操作したシステムを概略的に示す。調べたシステムは、CSKドメインを含む抗CD19iCARが、EIDドメインとして、CD28-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含むaCARのシグナル伝達を阻害する能力を評価するものである。図5は、CD4+及びCD8+T細胞を形質導入した後、その後の濃縮を行うことなく、iCARコンストラクト抗CD19_scFv-Csk融合体が、非改変細胞よりも高い検出可能なレベルで発現されたことを示す代表的なフローサイトメトリーのプロットを示す重要な点として、T細胞は、レンチウイルスによる同時形質導入後にiCAR及びaCARコンストラクトの両方の共発現を示した(図5、右下)。調べた異なるコンストラクトの発現プロファイルをフローサイトメトリーによって評価し、aCAR及びiCARコンストラクトの発現を示す図6に示した。図は、aCAR+=aCARを発現する細胞(iCAR有り及び無し)[1番目の柱]、iCAR+=iCARを発現する細胞(aCAR有り及び無し)[2番目の柱]、及び二重+= aCAR及びiCARの両方を発現する細胞[3番目の柱]を示している。重要な点として、aCAR+集団(1番目の柱)と二重+集団(3番目の柱)の比較によって、aCARを発現する細胞の大部分が二重+(すなわち、iCARも発現している)であることが示され、機能的なiCARによって阻害されない残存するaCARのみの細胞(すなわち、aCARのみを発現する)の存在量が最小であることを示している。
【0347】
次に、iCARコンストラクトを、シグナル伝達を阻害するそれらの能力について評価した。図7に示されるように、aCARコンストラクトによる形質導入は効率的な標的細胞の殺傷のみをもたらした(図7、左の柱、CD20のみの標的細胞に対するCD19/CD20標的細胞の殺傷の比として表される)のに対して、CSK酵素的抑制性ドメインを有するiCAR(iCAR31)によるT細胞の同時形質導入によって殺傷効率は約50%低下した(図7、中央の柱)。CSKのSH3ドメインに欠失を有するCSK酵素的抑制性ドメインを有するiCAR(iCAR26)によるT細胞の同時形質導入は、阻害を示さなかった(図7、右の柱)。したがって、これらのデータは、酵素的抑制性ドメインを含むCARが、活性化CARによって媒介される細胞シグナル伝達をリガンド特異的な形で阻害することができたことを示している。
【0348】
実施例2:酵素的抑制性ドメイン(EID)を含むCARの評価
CAR-TとK562の共培養法
レンチウイルスの生産:
以下を使用してレンチウイルスを生産する。すなわち、Lenti-X293Tパッケージング細胞株(Clontech、カタログ番号632180);抗生物質を含まないLX293T完全培地;DMEM(高グルコース);1mMピルビン酸ナトリウム;10%FBS(熱不活化したもの);Opti-Mem I低血清培地(Gibco / Thermo Fisher、カタログ番号31985);FuGene HD(Promega、カタログ番号E2311);エンベロープ、パッケージング、及びトランスファーベクタープラスミド;VSV-G-シュードタイプエンベロープベクター(pMD2.G);第2世代及び第3世代のトランスファーベクター(psMAX2)で使用できるGag、Pol、Rev、及びTatを含むパッケージングベクター。90%コンフルエンスにある10cmディッシュから293T(FT)細胞を取り上げ、トランスフェクションの前日の午後遅くに希釈率1:3で分注し、細胞を通常の一晩、37℃、5%CO2でインキュベートする(細胞は翌日のトランスフェクション時に60~85%コンフルエンスに達している必要がある)。
【0349】
以下のプロトコルに従って、10cmディッシュごとにトランスフェクション反応液を調製する。
【0350】
1.別々の1.7mLチューブ中で各10cmディッシュのトランスフェクション反応液を調製する。
【0351】
2.RTで900uLOpti-MemIを加える。
【0352】
3.反応液ごとに9ugのベクターバックボーン(目的の遺伝子を含む)を加える。
【0353】
4.反応液ごとに8ugのパッケージングベクターを加える。
【0354】
5.反応ごとに1ugのエンベロープベクター(pMD2.G)を加える。
【0355】
6.3秒間、高速でボルテックスして、完全に混合する。
【0356】
7.反応ごとに55uLのFugeneHDを加える。
【0357】
8.20~30回すばやく上下にピペッティングして混合する。
【0358】
9.RTで10分間放置する(DNA複合体を形成させる)。
【0359】
10.ディッシュの周りにゆっくりと混合物を滴下して加えた後、5~10秒間、静かに前後上下に揺り動かして混合する(回転させないようにする)。
【0360】
11.ディッシュをウイルスインキュベーターに入れる。
【0361】
血清学的ピペットを使用して、2日目と3日目にウイルス上清を採取する。Millipore steriflip 0.45umフィルターを使用して、細胞破片を除去する。Lenti-Xコンセントレーター(カタログ番号631231及び631232)をプロトコルに従って使用する。1)1体積のLenti-Xコンセントレーターを3体積の清澄化した上清と加え合わせる。穏やかに反転させて混合する。2)混合物を氷上または4℃で30分~一晩インキュベートする。(3)試料を1500×gで45分間、4℃で遠心分離する。(4)ペレットを壊さないように注意しながら、上澄みを注意深く取り除いて捨てる。(5)滅菌PBS + 0.1%BSAを使用して、ペレットを最初の体積の1/10~1/100に静かに再懸濁する。
【0362】
形質導入と増殖
初代T細胞をヒトドナーPBMCから単離して凍結する。1日目に、1×10個の精製CD4+/CD8+T細胞を解凍して3×10個のHumanT-Activator CD3/CD28ダイナビーズで刺激し、0.2μg/mLのIL-2を含む1mLのOptimizer CTS T細胞増殖培地(Gibco)中で培養する。2日目に、細胞を活性化CAR(aCAR)をコードするレンチウイルス(上記の生産方法を参照)及び/または抑制性CAR(iCAR)をコードするレンチウイルスで同時形質導入して、aCAR+、iCAR+、及びaCAR+/iCAR+(二重+)T細胞 を生産する(GoStix(Tekara)によって定量化した各コンストラクト100K)。各CARは構成的SFFVプロモーターの制御下にある。異なるaCAR及びiCARコンストラクトならびに関連するCARドメインを下記表Bに示す。3日目に、ダイナビーズを磁石で除去する。T細胞をカウントして継代する(0.5×10細胞/ mL)。その後の増殖の間、細胞を2日ごとに継代する(0.5×10細胞/mL)。
【0363】
共培養アッセイ
7日目に、各細胞集団のアリコートをPE結合抗MYC及びBV421結合抗FLAG抗体(それぞれaCAR及びiCARに対応)で染色し、LX CytoFlexフローサイトメトリー装置を使用してそれらの導入遺伝子発現を定量化する。8日目にT細胞をカウントし、共培養アッセイ用に96ウェルプレートに分配した。各ウェルには、aCAR標的CD20とiCAR標的CD19を共発現するように操作されるか、またはCD20単独を発現するように操作され、CellTrace Violet色素(Invitrogen)で染色した5×10個のK562標的細胞と、5×10個のaCAR+または二重+T細胞とを含むようにする。共培養物(37℃、5%CO)を40時間インキュベートする。10日目に、共培養物中の細胞をNIR生存率色素(Biolegend)で染色し、CytoFlex LXフローサイトメーターを使用して生きた標的細胞の数を定量化する。それぞれの操作されたCAR-T細胞集団の殺傷効率を、CD20を発現するK562標的細胞株のそれぞれに対する生存した野生型K562の比として計算する。正規化した殺傷効率を、単一(CD20+のみ)抗原標的細胞に対する二重(CD20+CD19 +)抗原標的細胞のCAR-T殺傷効率の比として計算する。
【0364】
酵素的抑制性ドメインを含むCARの評価結果
酵素的抑制性ドメイン(EID)を含むCARによるT細胞シグナル伝達の阻害を評価する。評価手法は、実施例1に記載されたものに従う。aCARを単独で発現するか、またはaCAR及びiCARを共発現する操作されたT細胞を、iCAR、aCAR、または両方により認識されるか、またはどちらにも認識されない同種抗原を発現する操作された標的細胞と共培養した場合の細胞毒性、サイトカイン放出、活性化関連マーカーの発現について評価する。評価した例示的なコンストラクトを表Bに示す。また、腫瘍関連抗原を標的とするaCARと、健康な組織及び/または細胞で一般的に発現される抗原を標的とするiCARとの組み合わせについても評価する。
【0365】
操作されたT細胞のフローサイトメトリー分析は、aCARとiCARコンストラクトの共発現を示している。次に、異なるiCARコンストラクトを、シグナル伝達を阻害するそれらの能力について評価する。結果は、酵素的抑制性ドメインを含むCARが、活性化CARの細胞シグナル伝達をリガンド特異的な形で阻害できることを示している。これには、例えば、最も強力なシグナル伝達阻害及び/またはリガンド特異性を示すiCAR機能(EID、追加的ドメイン、ドメイン変性など)を決定することが含まれる。
【0366】
【表22】
【0367】
他の実施形態
本明細書に開示される要素のすべては、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示されるそれぞれの要素は、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替的な要素に置き換えることができる。したがって、そうでない旨が明確に示されない限り、開示されるそれぞれの要素は、一般的な一連の同等または同様の要素の一例にすぎない。
【0368】
上記の説明から、当業者は、本開示の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、開示を様々な変更及び修正を行って様々な用途及び条件に適合させることができる。したがって、他の実施形態もまた特許請求の範囲内にある。
【0369】
均等物
いくつかの発明の実施形態が本明細書で説明及び図示してきたが、当業者であれば、機能を実行する、及び/または本明細書に記載される結果及び/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段及び/または構造が容易に想定されるであろうし、また、そのような変形及び/または改変のそれぞれは、本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲内にあるものとみなされる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例示であることを意味するものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/または構成は本発明の教示が使用される特定の用途に依存する点は直ちに認識されよう。当業者であれば、通常の実験以上のことを行うことなく、本明細書に記載される特定の発明の実施形態の多くの均等物が認識されるか、または確認できるであろう。したがって、上記の実施形態はあくまで例として示されるものであり、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載及び特許請求される以外の形で実施できる点を理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法のそれぞれを対象としている。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法が相互に矛盾しない場合、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0370】
本明細書で定義及び使用されるすべての定義は、辞書における定義、参照により援用される文書における定義、及び/または定義された用語の通常の意味に優先するものとして理解されるべきである。
【0371】
本明細書に開示されるすべての参考文献、特許及び特許出願は、それについて各文献が引用され、場合によっては文書全体を包含しうる主題に関して参照により援用される。
【0372】
本明細書において明細書及び特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、そうでない旨が明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものとして理解されるべきである。
【0373】
本明細書において明細書及び特許請求の範囲で使用される「及び/または」という句は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味するものとして理解されるべきである。「及び/または」を用いて列記される複数の要素は、同様にして、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」として解釈されるべきである。「及び/または」の節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が、具体的に特定される要素に関連するかまたは関連していないかにかかわらず、必要に応じて存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「comprising」(含む)のようなオープンエンドの文言と組み合わせて使用される場合に「A及び/またはB」と言う場合には、一実施形態では、Aのみ(場合によりB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(場合によりA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、A及びBの両方(場合により他の要素を含む)を指す場合がある。
【0374】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「及び/または」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」または「及び/または」は包括的なものとして、すなわち、要素の数またはリストのうちの少なくとも1つを含むだけでなく、複数のものも含み、場合により、追加の列記されていない項目も含むものと解釈されるものとする。「only one of」(~の1つのみ)または「exactly one of」(~のうちの正確に1つ)、または特許請求の範囲で使用される場合には「consisting of」(~からなる)など、そうでない旨が明確に示される用語のみが、所定の数または1群の要素のうちの正確に1つの要素を包含することを指す。一般的に、本明細書で使用される「または」という用語は、「either」(~のどちらか)、「one of」(~のうちの1つ)、「only one of」(~のうちの1つのみ)、または「exactly one of」(~のうちの正確に1つ)のような排他的な用語が先行する場合にのみ、排他的選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すものとして解釈される。「~から本質的にからなる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0375】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関連して「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきであるが、要素のリスト内に具体的に列記されているすべての要素の少なくとも1つを必ずしも含むものではなく、また、要素のリスト内の要素のいずれかの組み合わせを必ずしも除外するものでもない。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が言及する要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、場合により存在しうることを許容する。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも一方」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも一方」、または同等に「A及び/またはBの少なくとも一方」)とは、一実施形態では、少なくとも1つ、場合により複数のAを含み、Bが存在しない(及び場合によりB以外の要素を含む)こと、別の実施形態では、少なくとも1つ、場合により複数のBを含み、Aが存在しない(及び場合によりA以外の要素を含む)こと、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、場合により複数のAを含み、かつ少なくとも1つ、場合により複数のBを含む(及び場合により他の要素を含む)こと、を指すことができるといった要領である。
【0376】
また、そうでない旨が明確に示されていない限り、複数の工程または行為を含む本明細書において特許請求されるいずれの方法においても、方法の工程または行為の順序は、方法の工程または行為が記載される順序に必ずしも限定されない点も理解されなければならない。
【0377】
特許請求の範囲、また、上記の明細書において、「comprising」(~を備える)、「including」(~を含む)、「carrying」(~を保有する)、「having」(~を有する)、「containing」(~を含有する)、「involving」(~を行う)、「holding」(~を保持する)、「composed of」「~で構成される」、及びこれらに類する表現などのすべての移行句は、オープンエンド、すなわち、「それらに限定されるものではないが、含む」ことを意味するものとして理解されるべきである。米国特許庁特許審査手続マニュアルのセクション2111.03に記載されているように、「consisting of」(~からなる)及び「consisting essentially of」(~本質的にからなる)という移行句のみが、それぞれクローズドまたはセミクローズドの移行句であるものとする。オープンエンドの移行句(例えば、「comprising」(~を含む))を使用して本文書に記載される実施形態は、代替の実施形態において、オープンエンドの移行句によって記載される要素「からなる」(consisting of)及び「本質的になる」(consisting essentially of)ものとしても想到される点は理解なければならない。例えば、本開示が「A及びBを含む組成物」(a composition comprising A and B)を記載している場合、本開示は、代替の実施形態である「A及びBからなる組成物」(a composition consisting of A and B)及び「本質的にA及びBからなる組成物」(a composition consisting essentially of A and B)も想到している。
【0378】
さらなる配列
本明細書で参照されるベクター、カセット、及びタンパク質ドメインの特定のさらなる配列を以下に記載し、配列番号で参照する。
【0379】
【表23】
【0380】
【表24】
【0381】
【表25】
【0382】
【表26】
【0383】
【表27】
【0384】
【表28】
【図面の簡単な説明】
【0385】
図1】本開示のキメラ抑制性受容体がT細胞活性化を遮断する機構を示す概略図である。
図2】キメラ抑制性受容体の特定の実施形態の組成を示す概略図である。ELBD:細胞外リガンド結合ドメイン(Extracellular Ligand Binding Domain)。例としては、これらに限定されるものではないが、scFv(例えば、腫瘍抗原に対する)、天然の受容体/リガンドドメイン、及び直交二量体化ドメイン(例えば、可溶性標的化分子と結合することができるロイシンジッパー)が挙げられる。MLD:膜局在化ドメイン(Membrane Localization Domain)(場合により、細胞膜のサブドメインへの局在化に関与する近位の細胞内及び細胞外セグメント(例えば、脂質ラフト)を含む)。例としては、これらに限定されるものではないが、LAX、CD25、CD7(Pavel Otahal et al.,Biochim Biophys Acta.2011 Feb;1813(2):367-76)、及びLATの変異体(例えば、LAT(CA)、例えば、本明細書にその全体を援用する、Kosugi A.,et al. Involvement of SHP-1 tyrosine phosphatase in TCR-mediated signaling pathways in lipid rafts,Immunity,2001 Jun;14(6):669-80を参照)の膜貫通ドメインが挙げられる。EID:酵素的抑制性ドメイン(Enzymatic Inhibitory Domain)(例えば、有効性を最大化し、基礎阻害を最小化するように選択された、酵素のドメイン、フラグメント、または変異体を含む、天然のT細胞活性化カスケードを阻害する酵素)。例としては、これらに限定されるものではないが、CSK(Pavel Otahal et al.,Biochim Biophys Acta. 2011 Feb;1813(2):367-76)、SHP-1(例えば、Kosugi A.,et al.Involvement of SHP-1 tyrosine phosphatase in TCR-mediated signaling pathways in lipid rafts,Immunity,2001 Jun;14(6):669-80を参照)、PTEN、CD45、CD148、PTP-MEG1、PTP-PEST、c-CBL、CBL-b、LYP/Pep/PTPN22、LAR、PTPH1、SHIP-1、RasGAP(例えば、本明細書にその全体を援用する、Stanford et al.,Regulation of TCR signaling by tyrosine phosphatases:from immune homeostasis to autoimmunity, Immunology,2012 Sep;137(1):1-19を参照)が挙げられる。
図3】キメラ抑制性受容体(例えば、「拡張型」キメラ抑制性受容体)の特定の実施形態の組成を示す概略図である。図2で述べたような、ELBD、MLD、及びEID。SID:足場抑制性ドメイン(Scaffold Inhibitory Domain)。例としては、これらに限定されるものではないが、ITIMを含むタンパク質ドメイン(例えば、PD-1、CTLA4、TIGIT、BTLA、及び/またはLAIR1の細胞質尾部など、またはそれらのフラグメント(複数可))ならびに、GRB-2、Dok-1、Dok-2、SLAP、LAG3、HAVR、GITR、及びPD-L1を含む、T細胞の活性化を阻害する非ITIM足場タンパク質ドメイン、またはそれらのフラグメント(複数可)が挙げられる。
図4】NOTゲートaCAR/iCARシステムを示す概略図である。T細胞を、CD28-CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインを含む共発現されるaCARのシグナル伝達を阻害するEIDドメインとしてCSKドメインを含む抗CD19 iCARを発現するように操作した。標的k562細胞を、aCARに対する同種抗原(CD20)を発現するように操作するか、またはaCARに対する同種抗原(CD20)及びiCARに対する同種抗原(CD19)の両方を発現するように操作した。
図5】CD4+及びCD8+T細胞を形質導入した後、その後の濃縮を行うことなく、非改変細胞よりも高い検出可能なレベルでのiCARコンストラクト抗CD19_scFv-Csk融合体の発現を示す代表的なフローサイトメトリーのプロットである。
図6】aCAR及びiCARコンストラクトのフローサイトメトリーによって評価された発現プロファイルである。図は、aCAR+=aCARを発現する細胞(iCAR有り及び無し)[1番目の柱]、iCAR+=iCARを発現する細胞(aCAR有り及び無し)[2番目の柱]、及び二重+= aCAR及びiCARの両方を発現する細胞[3番目の柱]を示している。
図7】CD19/CD20標的細胞とCD20のみの標的細胞の殺傷比として表される、殺傷効率によって評価したaCARシグナル伝達のiCAR阻害の有効性を示す。図は、aCARコンストラクトのみによる形質導入(左の柱)、CSK酵素的抑制性ドメインを有するiCAR(iCAR31)とaCARによるT細胞の同時形質導入(中央の柱)、SH3欠失を含むCSK酵素的抑制性ドメインを有するiCAR(iCAR26)とaCARによるT細胞の同時形質導入(右の柱)を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022546315000001.app
【国際調査報告】