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特表2022-546372組換え繁殖欠損指標バクテリオファージを使用して微生物を検出するためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】組換え繁殖欠損指標バクテリオファージを使用して微生物を検出するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20221027BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221027BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20221027BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20221027BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20221027BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221027BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/90 20060101ALN20221027BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20221027BHJP
   C12R 1/19 20060101ALN20221027BHJP
   C12R 1/42 20060101ALN20221027BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20221027BHJP
   C12R 1/44 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
C12N7/01
C12N15/33
C12N15/11 Z
C12Q1/04
C12Q1/6897 Z
C12Q1/70
C12M1/00 A
C12M1/34 B
C12M1/34 Z
C12N15/90 100Z
C12N15/53
C12R1:19
C12R1:42
C12R1:01
C12R1:44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512781
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 US2020047972
(87)【国際公開番号】W WO2021041524
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/891,701
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
2.FIREWIRE
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ギル, ホセ エス.
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ミン ミンディ バオ
(72)【発明者】
【氏名】ハーン, ウェンディ エス.
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB02
4B029BB13
4B029CC01
4B029FA04
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B063QA07
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ06
4B063QQ10
4B063QQ22
4B063QQ44
4B063QR02
4B063QR32
4B063QR75
4B063QR79
4B063QS05
4B063QS28
4B063QS36
4B063QS38
4B063QS39
4B063QX02
4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA28
4B065CA46
(57)【要約】
繁殖欠損指標バクテリオファージを使用した、微生物の迅速な検出のための組成物、方法、キットおよびシステムが、本明細書に開示されている。特定の目的の微生物の結合および感染に対する斯かる繁殖欠損指標バクテリオファージの特異性は、目的の微生物の標的化されたかつ高感度の検出を可能にする。本開示の例示的な実施形態は、ファージのゲノムの後期遺伝子領域においてインジケーター遺伝子をそれぞれ含む少なくとも2種の組換えファージを含む組成物であって、組換えファージが、繁殖欠損であり、組換えファージが、1種または複数の目的の微生物に特異的に感染することができる、組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファージのゲノムの後期遺伝子領域においてインジケーター遺伝子を含む組換えファージであって、繁殖欠損であり、かつ目的の微生物に特異的に感染することができる、組換えファージ。
【請求項2】
バクテリオファージが、ビリオンアセンブリに要求される後期遺伝子における変更または欠失が原因で繁殖欠損である、請求項1に記載の組換えファージ。
【請求項3】
前記インジケーター遺伝子が、前記組換えファージの後期遺伝子の配列に挿入され、前記後期遺伝子を非機能的にし、前記組換えファージを繁殖欠損にする、請求項1に記載の組換えファージ。
【請求項4】
前記インジケーター遺伝子が、前記組換えファージの後期遺伝子の配列の少なくとも部分に置き換わり、前記組換えファージを繁殖欠損にし、前記後期遺伝子が、ビリオンアセンブリに要求される、請求項1に記載の組換えファージ。
【請求項5】
E.coliまたはSalmonellaまたはListeriaまたはStaphylococcusに特異的なファージに由来する、請求項1に記載の組換えファージ。
【請求項6】
前記後期遺伝子が、ビリオンアセンブリに要求される、請求項1に記載の組換えファージ。
【請求項7】
ファージのゲノムの後期遺伝子領域においてインジケーター遺伝子をそれぞれ含む少なくとも2種の組換えファージを含む組成物であって、前記組換えファージが、繁殖欠損であり、前記組換えファージが、1種または複数の目的の微生物に特異的に感染することができる、組成物。
【請求項8】
前記少なくとも2種の組換えファージのそれぞれが、異なるインジケーター遺伝子を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも2種の組換えファージのそれぞれが、異なる目的の微生物に特異的に感染することができる、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも2種の組換えファージが、複数の目的の微生物に感染することができる、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記目的の微生物が、E.coli、Salmonella、ListeriaおよびStaphylococcusのうち少なくとも1種を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記複数の目的の微生物が、少なくとも2種の異なるカテゴリーの細菌を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記少なくとも2種の異なるカテゴリーの細菌が、少なくとも2種の異なる属の細菌、少なくとも2種の異なる種の細菌、少なくとも2種の異なる株の細菌または少なくとも2種の異なる血清型の細菌のうち1種または複数を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
組換えファージを調製する方法であって、
標的微生物に特異的に感染する親ファージを選択するステップと、
前記親ファージの遺伝子を変更して、組換え繁殖欠損ファージを生成するステップと、
前記繁殖欠損ファージにおいて変異された前記遺伝子の産物を発現することができる前記標的微生物の操作された株を、インジケーター遺伝子および前記インジケーター遺伝子を挟み、前記親ファージにおける所望の配列と相同であるHR配列を含む相同組換え(HR)プラスミドで形質転換するステップと、
形質転換された前記標的微生物を、前記親ファージまたは前記繁殖欠損親ファージに感染させ、前記HRプラスミドおよび前記親ファージまたは前記組換え繁殖欠損ファージのゲノムの間にHRを生じさせるステップと、
繁殖欠損であり、かつ前記インジケーター遺伝子の産物を発現することができる組換えファージの特定のクローンを単離するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記親ファージの前記遺伝子を変更して、前記繁殖欠損ファージを生成するステップが、前記HRプラスミドおよび前記親ファージのゲノムの間に生じる前記HRによって達成され、前記親ファージの前記遺伝子が、前記インジケーター遺伝子による前記親ファージの少なくとも一部の置換えによって変更される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標的微生物の前記操作された株を生成するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記標的微生物の前記操作された株を生成するステップが、前記標的微生物を、前記組換え繁殖欠損ファージにおいて変更された前記遺伝子をコードし、これを発現することができるプラスミドで形質転換するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記操作された株を形質転換するステップが、前記操作された株をトランスプラスミドで形質転換するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記形質転換するステップに先立ち、前記インジケーター遺伝子を含む前記相同組換えプラスミドを調製するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
繁殖欠損であり、かつ前記インジケーター遺伝子の前記産物を発現することができる組換えファージの前記特定のクローンを単離するステップが、前記インジケーター遺伝子の発現を示すクローンを単離するための限界希釈アッセイを行うステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記組換えファージが、E.coliまたはSalmonellaまたはListeriaまたはStaphylococcusに特異的なファージに由来する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
試料における目的の微生物を検出する方法であって、
試料を請求項1に記載の組換えファージと共にインキュベートするステップと、
インジケーター遺伝子の産物を検出するステップであって、前記インジケーター遺伝子の前記産物の陽性検出が、前記目的の微生物が前記試料中に存在することを指し示す、ステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記試料が、食物試料、環境試料、水試料または商業的試料である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試料におけるわずか10、9、8、7、6、5、4、3、2個または単一の微生物を検出する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記目的の微生物が、E.coliまたはSalmonellaまたはListeriaまたはStaphylococcusである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記目的の微生物が、Salmonellaである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
試料における目的の微生物を検出するためのキットであって、請求項1に記載の組換えファージと、インジケーター遺伝子の産物と反応させて、前記インジケーター遺伝子の前記産物を検出するための基質とを含むキット。
【請求項28】
目的の微生物を検出するためのシステムであって、請求項1に記載の組換えファージと、インジケーター遺伝子の産物を検出するための構成成分とを含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による援用
本出願は、2019年8月26日に出願された米国特許仮出願第62/891,701号に対する優先権を主張する。次の米国特許出願の開示は、それらの全体がこれにより参照により組み込まれる:2019年1月14日に出願された米国特許出願第16/247,490号、2019年1月14日に出願された米国特許出願第16/247,486号、2019年3月11日に出願された米国特許出願第16/298,695号、2018年3月9日に出願された米国特許仮出願第62/640,793号、2019年1月30日に出願された米国特許仮出願第62/798,980号、2013年2月21日に出願された米国特許出願第13/773,339号、2015年2月18日に出願された米国特許出願第14/625,481号、2016年9月13日に出願された米国特許出願第15/263,619号、2017年1月18日に出願された米国特許出願第15/409,258号、2018年1月12日に出願された米国特許仮出願第62/616,956号、2018年2月9日に出願された米国特許仮出願第62/628,616号、2018年4月24日に出願された米国特許仮出願第62/661,739号、2018年3月9日に出願された米国特許仮出願第62/640,793号、および2019年1月30日に出願された米国特許仮出願第62/798,980号。
【0002】
発明の分野
本開示は、組換え感染因子(infections agent)を使用した、目的の微生物の検出のための方法、装置、システムに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
生体、食物、水および臨床試料における細菌、ウイルスおよび他の微生物の検出のスピードおよび感度の改善に強い関心が集まっている。微生物病原体は、ヒトおよび飼育動物の間の実質的な病的状態、ならびに莫大な経済的損失を引き起こし得る。ある特定の微生物、例えば、Staphylococcus spp.、Escherichia coliまたはSalmonella spp.で汚染された食物の摂取によって引き起こされる生命を脅かすまたは致死的な疾病の大流行を考慮すると、微生物の検出は、食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)および疾病管理センター(Centers for Disease Control)(CDC)にとって優先順位が高い。
【0004】
細菌の検出のための伝統的な微生物学的検査は、非選択的および選択的集積培養と、それに続く選択的培地での平板培養、ならびに疑われる(suspect)コロニーを確認するためのさらなる検査に頼る。斯かる手順は、数日間を要求する場合がある。種々の迅速な方法が研究され、時間要件を低下させるための実践に導入されてきた。しかし、現在のところ、時間要件を低下させる方法には弱点がある。例えば、直接的なイムノアッセイまたは遺伝子プローブが関与する技法は一般に、適当な感度を得るために一晩の富化ステップを要求し、したがって、同日に結果を出す能力を欠如する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査もまた、増幅ステップを含み、したがって、非常に高い感度および選択性の両方が可能である;しかし、PCR検査に経済的に供することができる試料サイズは、限定されている。PCRに供することができる希薄な細菌懸濁物は、細胞を含まず、したがって、精製および/または長い富化ステップがやはり要求される。
【0005】
伝統的な生物学的富化に要求される時間は、試料の標的細菌集団の成長速度によって、試料マトリックスの効果によって、および要求される感度によって決まる。実際に、最も高い感度の方法は、一晩インキュベーションを用い、全体で約24時間を要する。培養に要求される時間が原因で、これらの方法は、同定されるべき生物および試料の供給源に応じて、最大3日間を要する場合がある。この遅延時間は一般に不適であるが、その理由としては、斯かる遅延により、汚染された食物もしくは水または他の製品が、家畜またはヒトへと進入することが可能になることが挙げられる。加えて、抗生物質耐性細菌および生体防御(biodefense)の検討事項の増加により、水、食物および臨床試料における細菌病原体の迅速な同定は、世界中で、重大な意味を持つ優先事項となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、細菌および他の潜在的に病原性の微生物等の微生物の、より迅速、単純かつ高感度な検出および同定の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示の実施形態は、細菌等が挙げられるがこれに限定されない、微生物の検出のためのデバイス、組成物、方法、装置、システムおよびキットを含む。本開示は、種々の仕方で具体化することができる。本出願の一部の例示的な実施形態について下に記述する。
【0008】
本開示の例示的な実施形態は、ファージのゲノムの後期遺伝子領域においてインジケーター遺伝子を含む組換えファージであって、繁殖欠損であり、目的の微生物に特異的に感染することができる、組換えファージである。一部の実施形態では、組換えバクテリオファージは、ビリオンアセンブリに要求される後期遺伝子における変更が原因で、繁殖欠損である。組換えバクテリオファージの一部の実施形態では、インジケーター遺伝子は、組換えファージの後期遺伝子の配列に挿入され、後期遺伝子を非機能的にし、組換えファージを繁殖欠損にする。組換えバクテリオファージの一部の実施形態では、インジケーター遺伝子は、組換えファージの後期遺伝子の配列の少なくとも部分に置き換わり、組換えファージを繁殖欠損にし、後期遺伝子は、ビリオンアセンブリに要求される。組換えファージは、E.coliまたはSalmonellaまたはListeriaまたはStaphylococcusに特異的なファージに由来する。一部の実施形態では、組換えファージは、E.coliに特異的なファージに由来する。他の実施形態では、組換えファージは、Salmonellaに特異的なファージに由来する。組換えバクテリオファージの一部の実施形態では、後期遺伝子は、ビリオンアセンブリに要求される。
【0009】
本開示の例示的な実施形態は、ファージのゲノムの後期遺伝子領域においてインジケーター遺伝子をそれぞれ含む少なくとも2種の組換えファージを含む組成物であって、組換えファージが、繁殖欠損であり、組換えファージが、1種または複数の目的の微生物に特異的に感染することができる、組成物である。組成物の一部の実施形態では、少なくとも2種の組換えファージのそれぞれは、異なるインジケーター遺伝子を含む。組成物の一部の実施形態では、少なくとも2種の組換えファージのそれぞれは、異なる目的の微生物に特異的に感染することができる。組成物の一部の実施形態では、少なくとも2種の組換えファージは、複数の目的の微生物に感染することができる。組成物の一部の実施形態では、複数の目的の微生物は、少なくとも2種の異なるカテゴリーの細菌を含む。組成物の一部の実施形態では、少なくとも2種の異なるカテゴリーの細菌は、少なくとも2種の異なる属の細菌、少なくとも2種の異なる種の細菌、少なくとも2種の異なる株の細菌、または少なくとも2種の異なる血清型の細菌のうち1種または複数を含む。
【0010】
本開示の例示的な実施形態は、組換えファージを調製する方法である。斯かる方法は、標的微生物に特異的に感染する親ファージを選択するステップと、親ファージ(page)の遺伝子を変更して、組換え繁殖欠損ファージを生成するステップと、繁殖欠損ファージにおいて変異された遺伝子の産物を発現することができる標的微生物の操作された株を、インジケーター遺伝子およびインジケーター遺伝子を挟み、親ファージにおける所望の配列と相同であるHR配列を含む相同組換え(HR)プラスミドで形質転換するステップと、形質転換された標的微生物を、親ファージまたは繁殖欠損親ファージに感染させ、HRプラスミドおよび親ファージまたは組換え繁殖欠損ファージのゲノムの間にHRを生じさせるステップと、繁殖欠損であり、かつインジケーター遺伝子の産物を発現することができる組換えファージの特定のクローンを単離するステップとを含むことができる。組換えファージを調製する方法の一部の実施形態では、親ファージの遺伝子を変更して、繁殖欠損ファージを生成するステップは、HRプラスミドおよび親ファージのゲノムの間に生じるHRによって達成され、親ファージの遺伝子は、インジケーター遺伝子による親ファージの少なくとも一部の置換えによって変更される。一部の実施形態では、遺伝子の変更は、部分的なまたは全体的な親ファージの遺伝子の欠失を含む。よって、一部の実施形態では、本方法は、親ファージのゲノムを変更するステップを含み、親ファージの少なくとも1種の遺伝子が欠失される。一部の実施形態では、少なくとも2、3、4または5種の遺伝子(gen)が欠失される。
【0011】
組換えファージを調製する方法の一部の実施形態は、標的微生物の操作された株を生成するステップをさらに含むことができる。一部の実施形態では、標的微生物の操作された株を生成するステップは、標的微生物を、組換え繁殖欠損ファージにおいて変更された遺伝子をコードし、これを発現することができるプラスミド(「トランスプラスミド(trans plasmid)」)で形質転換するステップを含むことができる。組換えファージを調製する方法の一部の実施形態は、形質転換するステップに先立ち、インジケーター遺伝子を含む相同組換えプラスミドを調製するステップをさらに含むことができる。一部の実施形態では、標的微生物の操作された株を生成するステップは、標的微生物を、トランスプラスミドおよびインジケーター遺伝子を含むHRプラスミドで形質転換するステップを含むことができる。組換えファージを調製する方法の一部の実施形態では、親ファージの遺伝子を変更して、繁殖欠損ファージを生成するステップは、HRが、HRプラスミドおよび親ファージのゲノムの間に生じ得るように、トランスプラスミドおよびHRプラスミドの両方を含有する操作された標的微生物の野生型親ファージでの感染によって達成され、親ファージの遺伝子は、インジケーター遺伝子による親ファージの少なくとも一部の置換えによって変更され、一方、繁殖欠損組換えファージにおいて変更される遺伝子を含有するプラスミド(トランスプラスミド)は、遺伝子をトランスに提供し、繁殖欠損ファージにおける失われたまたは変更された遺伝子を補完する。組換えファージを調製する方法のさらなる実施形態では、親ファージの遺伝子を欠失させて、繁殖欠損ファージを生成するステップは、HRが、HRプラスミドおよび親ファージのゲノムの間に生じ得るように、トランスプラスミドおよびHRプラスミドの両方を含有する操作された標的微生物の野生型親ファージでの感染によって達成され、親ファージのゲノムは、インジケーター遺伝子による親ファージの少なくとも一部の置換えによって変更され、一方、繁殖欠損組換えファージにおいて変更される遺伝子を含有するプラスミド(トランスプラスミド)は、遺伝子をトランスに提供し、繁殖欠損ファージにおける失われたまたは変更された遺伝子を補完する。
【0012】
組換えファージを調製する方法の一部の実施形態では、親ファージの遺伝子を変更して、繁殖欠損ファージを生成するステップは、HRが、HRプラスミドおよび親ファージのゲノムの間に生じ得るように、繁殖欠損ファージにおいて変更される遺伝子をコードし、これを発現することができるプラスミドを含有しないが、HRプラスミドを含有する操作された標的微生物の野生型親ファージでの感染によって達成され、親ファージの遺伝子は、インジケーター遺伝子による親ファージの少なくとも一部の置換えによって変更され、一方、細菌に感染または同時感染する野生型親ファージは、前記遺伝子をトランスに提供し、繁殖欠損ファージにおける失われたまたは変更された遺伝子を補完する。
【0013】
一部の実施形態では、繁殖欠損であり、かつインジケーター遺伝子の産物を発現することができる組換えファージの特定のクローンを単離するステップは、インジケーター遺伝子の発現を示すクローンを単離するための限界希釈アッセイを行うステップを含むことができる。組換えファージは、E.coliまたはSalmonellaまたはListeriaまたはStaphylococcusに特異的なファージに由来する。組換えファージを調製する方法の一部の実施形態では、組換えファージは、Escherichia coliに特異的なファージに由来する。組換えファージを調製する方法の一部の実施形態では、組換えファージは、Salmonellaに特異的なファージに由来する。
【0014】
本開示の例示的な実施形態は、試料における目的の微生物を検出する方法であって、試料を本開示の実施形態に係る組換えファージと共にインキュベートするステップと、インジケーター遺伝子の産物を検出するステップであって、インジケーター遺伝子の産物の陽性検出が、目的の微生物が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法である。試料における目的の微生物を検出する方法の一部の実施形態では、試料は、食物試料、環境試料、水試料または商業的試料であってよい。試料における目的の微生物を検出する方法の一部の実施形態では、本方法は、試料中のわずか10、9、8、7、6、5、4、3、2個または単一の微生物を検出する。試料における目的の微生物を検出する方法の一部の実施形態では、目的の微生物は、Escherichia coliである。試料における目的の微生物を検出する方法の一部の実施形態では、目的の微生物は、Salmonellaである。
【0015】
本開示の例示的な実施形態の中には、試料における目的の微生物を検出するためのキットであって、本開示の実施形態に係る組換えファージと、インジケーター遺伝子の産物と反応させて、インジケーター遺伝子の産物を検出するための基質とを含むキットも含まれる。本開示の例示的な実施形態の中には、目的の微生物を検出するためのシステムであって、請求項1に記載の組換えファージと、インジケーター遺伝子の産物を検出するための構成成分とを含むシステムも含まれる。
【0016】
本開示は、次の非限定的な図面を参照することにより、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、親ファージへの繁殖欠損性およびインジケーター遺伝子の導入が1ステップ組換えプロセスにおいて達成される、組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための例示的な方法を概略的に説明する。
【0018】
図2図2は、ファージ繁殖に要求される遺伝子を発現するプラスミドで形質転換され、繁殖欠損指標ファージに感染した、「許容的」微生物を概略的に説明する。
【0019】
図3図3は、繁殖欠損指標ファージCBA120.Δgp22.NanoLucを産生するための、CBA120 E.coli特異的ファージの同時感染トランス補完による相同組換えを概略的に説明する。
【0020】
図4図4は、定常期E.coli O157:H7 ATCC 43888におけるCBA120.Δgp22.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を説明する表である。
【0021】
図5図5は、gp22プロヘッド(prohead)足場タンパク質を発現するプラスミドで形質転換された操作されたE.coli O157:H7株(「許容的」E.coli O157:H7株)において行われた、E.coli O157:H7血清型に特異的な組換え繁殖欠損指標ファージの増殖を概略的に説明する。
【0022】
図6図6は、繁殖欠損指標ファージの例示的な成長曲線を示し、それによると、ファージは、許容的E.coli O157:H7株における成長に成功した。
【0023】
図7図7は、E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖欠損指標ファージを使用した戦略を概略的に説明する。
【0024】
図8図8は、対数期のE.coli O157:H7において行われた、E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖可能な指標ファージと比較した、繁殖欠損指標ファージを使用した検出アッセイの生のシグナル結果を説明する棒グラフである。
【0025】
図9図9は、対数期のE.coli O157:H7において行われた、E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖可能な指標ファージと比較した、繁殖欠損指標ファージを使用した検出アッセイのシグナル対バックグラウンド結果を説明する棒グラフである。
【0026】
図10図10は、定常期のE.coli O157:H7において行われた、E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖可能な指標ファージと比較した、繁殖欠損指標ファージを使用した検出アッセイの生のシグナル結果を説明する棒グラフである。
【0027】
図11図11は、定常期のE.coli O157:H7において行われた、E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖可能な指標ファージと比較した、繁殖欠損指標ファージを使用した検出アッセイのシグナル対バックグラウンド結果を説明する棒グラフである。
【0028】
図12図12は、E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖欠損指標ファージの特異性決定の結果を説明する折れ線グラフである。
【0029】
図13図13は、繁殖欠損指標ファージTSP1.Δgp22.NanoLucを産生するための、TSP1 Salmonella特異的ファージの同時感染トランス補完による相同組換えを概略的に説明する。
【0030】
図14図14は、gp22プロヘッド足場タンパク質を発現するプラスミドで形質転換された操作されたSalmonella株(「許容的」Salmonella株)において行われた、Salmonellaに特異的な組換え繁殖欠損指標ファージの増殖を概略的に説明する。
【0031】
図15図15は、許容的Salmonellaと比較した、野生型Salmonellaにおける繁殖欠損指標ファージを使用した検出アッセイの生のシグナル結果を説明する棒グラフである。
【0032】
図16図16は、定常期Salmonella typhimurium ATCC 19585におけるSP1.Δgp22.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を説明する表である。
【0033】
図17図17は、対数期Salmonella typhimurium ATCC 19585におけるSP1.Δgp22.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を説明する表である。
【0034】
図18図18は、繁殖欠損指標ファージSEA1.Δgp84.NanoLucを産生するための、SEA1 Salmonella特異的ファージの同時感染トランス補完による相同組換えを概略的に説明する。
【0035】
図19図19は、gp84ベースプレートウェッジ(baseplate wedge)タンパク質を発現するプラスミドで形質転換された操作されたSalmonella株(「許容的」Salmonella株)において行われた、Salmonellaに特異的な組換え繁殖欠損指標ファージの増殖を概略的に説明する。
【0036】
図20図20は、許容的Salmonellaと比較した、野生型SalmonellaにおけるSEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージを使用した検出アッセイの生のシグナル結果を説明する線グラフである。
【0037】
図21図21は、野生型Salmonella株7001、8326、13076および27869における、SEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージを使用した検出アッセイの生のシグナル結果を説明する線グラフである。
【0038】
図22図22は、野生型Salmonella株7001、8326、13076および27869におけるSEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの複製のプラークアッセイを説明する棒グラフである。
【0039】
図23図23は、AmpR pUC57 SEA1.トランスgp84で形質転換された対数期Salmonella newport ATCC 27869におけるSEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を説明する表である。
【0040】
図24図24は、定常期Salmonella chloreaesuis ATCC 7001におけるSEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を説明する表である。
【0041】
図25図25は、対数期Salmonella chloreaesuis ATCC 7001におけるSEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を説明する表である。
【0042】
図26図26Aは、ウェル当たりのSEA1.NanoLuc複製ファージおよびSEA1.Δgp84.NanoLuc非複製CFUの概数を説明する表である。図26Bは、2時間感染後の、Salmonella typhimuriumに特異的なSEA1.NanoLuc複製ファージと比較した繁殖欠損指標ファージと比較した、複製ファージおよびSEA1.Δgp84.NanoLucを使用した検出アッセイのRLUシグナル結果を説明する表である。図26Cは、4時間感染後の、Salmonella typhimuriumに特異的なSEA1.NanoLuc複製ファージと比較した繁殖欠損指標ファージと比較した、複製ファージおよびSEA1.Δgp84.NanoLucを使用した検出アッセイのRLUシグナル結果を説明する表である。
【0043】
図27図27は、繁殖欠損指標ファージを同定するための、一連の逐次感染および希釈ステップを使用した、組換え繁殖欠損指標ファージの単離を描写する。
【0044】
図28図28は、本開示のある実施形態に係る、ルシフェラーゼの検出により目的の微生物を検出するための、可溶性ルシフェラーゼをコードする組換え繁殖欠損指標ファージの使用を描写する。
【0045】
図29図29は、本開示のある実施形態に係る組換え繁殖欠損指標ファージを使用した、目的の微生物を検出するためのフィルタープレートアッセイを描写し、それによると、目的の微生物および組換え繁殖欠損指標ファージが、フィルタープレートにおいてインキュベートされ、インキュベーション培地を除去することなく、インジケータータンパク質が直接的に検出される。
【0046】
図30図30は、本開示のある実施形態に係る組換え繁殖欠損指標ファージを使用して目的の微生物を検出するための「濃縮なし(No Concentration)アッセイ」を描写する。
【0047】
図31図31は、本開示のある実施形態に係る組換え繁殖欠損指標ファージを使用して目的の微生物を検出するためのハイブリッドイムノ-ファージ(Hybrid Immuno-Phage)(HIP)アッセイを描写し、それによると、組換え繁殖欠損指標ファージとのインキュベーションに先立ち、目的の微生物に対する抗体を使用して、アッセイウェルの表面に微生物を捕捉する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
定義
本明細書に他に規定がなければ、本発明に関連して使用される科学および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によってそれ以外のことが要求されなければ、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法およびそれらの技法は、当技術分野で周知かつ一般的に使用される命名法および技法である。公知方法および技法は一般に、他に指し示されない限り、当技術分野で周知の、本明細書を通して記述されている様々な一般のおよびより特異的な参考文献に記載されている従来方法に従って行われる。酵素反応および精製技法は、当技術分野で一般的に達成される通り、または本明細書に記載されている通り、製造業者の明細書に従って行われる。本明細書に記載されている研究室手順および技法に関連して使用される命名法は、当技術分野で周知かつ一般的に使用される命名法である。
【0049】
次の用語は、他に指し示されない限り、次の意味を有すると理解されるものとする:
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、それ以外のことが特に言及されていない限り、1つまたは複数を指すことができる。
【0051】
用語「または」の使用は、二者択一のみを指すまたは二者択一が相互排他的であると明確に指し示されない限り、「および/または」を意味するように使用されるが、本開示は、二者択一のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれよりも多くを意味することができる。
【0052】
本出願を通して、用語「約」は、ある値が、当該値の決定に用いられるデバイス、方法についての固有の誤差変動、または試料間に存在する変動を含むことを指し示すように使用される。
【0053】
用語「固体支持体」または「支持体」は、生体分子が結合され得る基材および/または表面を提供する構造体を意味する。例えば、固体支持体は、アッセイウェル(すなわち、マイクロタイタープレートまたはマルチウェルプレート等)であってよい、あるいは固体支持体は、フィルター、アレイ、またはビーズもしくは膜等の可動性支持体(例えば、フィルタープレートまたはラテラルフローストリップ)上の場所であってよい。
【0054】
用語「結合剤」は、第2の(すなわち、異なる)目的の分子に特異的にかつ選択的に結合することができる分子を指す。相互作用は、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電もしくは疎水性相互作用の結果としての非共有結合性であってよい、あるいは共有結合性であってよい。用語「可溶性結合剤」は、固体支持体と会合(すなわち、共有結合または非共有結合により結合)していない結合剤を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「繁殖欠陥」または「繁殖欠損」または「複製欠陥」または「複製欠損」は、バクテリオファージが繁殖する能力の機能障害を指す。すなわち、繁殖欠陥バクテリオファージは、例えば、カプシドのアセンブリに必要とされるタンパク質が失われたことが原因で、新たなバクテリオファージ粒子を生成することができない可能性がある。バクテリオファージゲノムにおける種々の欠失、挿入または置換は、バクテリオファージを繁殖欠陥にすることができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「分析物」は、測定されている分子、化合物または細胞を指す。目的の分析物は、ある特定の実施形態では、結合剤と相互作用することができる。本明細書に記載されている通り、用語「分析物」は、目的のタンパク質またはペプチドを指すことができる。分析物は、アゴニスト、アンタゴニストまたはモジュレーターであってよい。あるいは、分析物は、生物学的効果がない場合がある。分析物は、小分子、糖、オリゴ糖、脂質、ペプチド、ペプチドミメティック(peptidomimetic)、有機化合物その他を含むことができる。
【0057】
用語「検出可能な部分」または「検出可能な生体分子」または「レポーター」または「インジケーター」または「インジケーター部分」は、定量的アッセイにおいて測定され得る、分子、または分子(酵素等)によって産生される化合物を指す。例えば、インジケーターまたはインジケーター部分は、基質から測定され得る産物への変換に使用され得る酵素を含むことができる。インジケーターまたはインジケーター部分は、生物発光放射を生成する反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)であってよい。あるいは、インジケーターまたはインジケーター部分は、定量化され得る放射性同位元素であってよい。あるいは、インジケーター部分は、フルオロフォアであってよい。あるいは、他の検出可能な分子を使用することができる。用語「インジケーター遺伝子」は、タンパク質、例えば、酵素等のインジケーターをコードする遺伝子を指すように使用される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ファージ」は、生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母および他の顕微鏡レベルの生きている生物に侵入することができる複数のウイルスのうち1種または複数を含む。本開示では、用語「ファージ」および関連用語は、細菌および古細菌に侵入することができるバクテリオファージ、マイコバクテリア(結核の原因因子を含むMycobacterium tuberculosis群のマイコバクテリア、および結核の原因因子を含むMycobacterium avis群のマイコバクテリアを含む、細菌の科)に侵入することができるマイコバクテリオファージ、真菌に侵入することができるマイコファージ(mycophage)、マイコプラズマファージ、ならびに原生動物、酵母および他の顕微鏡レベルの生きている生物に感染することができるウイルス等、ウイルスを含む。ここで、「顕微鏡レベルの(microscopic)」は、最大寸法が、1ミリメートルまたはそれ未満であることを意味する。バクテリオファージは、自身を複製する手段として細菌、マイコバクテリアまたは古細菌を使用するように自然界で進化したウイルスである。自然界で、ファージは、自身を微生物に付着させ、そのDNA(またはRNA)をこの微生物の中に注入し、次いで、ファージを数百またはさらには数千倍に複製するように微生物を誘導することができる。これは、ファージ増幅と称される。例えば、Escherichia coliのよく研究されているファージは、T1、T2、T3、T4、T5、T7およびラムダを含む;ATCCコレクションで入手できる他のE.coliファージは、例えば、phiX174、S13、Ox6、MS2、phiV1、fd、PR772およびZIK1を含む。Salmonellaファージは、TSP1、TSP11、SPN1S、10、イプシロン15、SEA1、TSP1およびP22を含む。Listeriaファージは、P100、LMA8、LMA4、LPES1、LipZ5、P40、vB_LmoM_AG20、P70、P100、LP-JS3、LP-ES1およびA511を含む。Staphylococcusファージは、staphファージISP、P4W、ウイルスK、Twort、phi11、187、P68およびphiWMYを含む。
【0059】
本明細書で使用される場合、「後期遺伝子領域」は、ウイルス生活環の後期に転写されるウイルスゲノムの領域を指す。後期遺伝子領域は典型的に、最も豊富に発現される遺伝子(例えば、バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質)を含む。バクテリオファージの後期遺伝子は、クラスIII遺伝子と同義であり、構造およびアセンブリ機能を有する遺伝子を含む。例えば、後期遺伝子(クラスIIIと同義)は、ファージT7において、例えば、感染8分後から溶解までに、クラスI(例えば、RNAポリメラーゼ)は、初期に4~8分後に、クラスIIは、6~15分後に転写されるため、IIおよびIIIのタイミングには重複が見られる。後期プロモーターは、斯かる後期遺伝子領域に天然に配置された、活性があるプロモーターである。
【0060】
本明細書で使用される場合、「富化のための培養」は、微生物の増殖に都合がよい培地中のインキュベーション等、伝統的な培養を指すものであり、試料の液体構成成分を除去して、その中に含有される微生物を濃縮することによる富化、または微生物増殖の伝統的な促進を含まない他の形態の富化等、単語「富化」の他の可能な使用と混同されるべきではない。ある期間にわたる富化のための培養は、本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において用いることができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「組換え」は、この操作を行わなければ見出されることがないであろう、遺伝材料を1つにまとめるために研究室において通常行われる、遺伝的(すなわち、核酸)改変を指す。この用語は、本明細書において用語「改変された」と互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「RLU」は、ルミノメーター(例えば、GLOMAX(登録商標)96)または光を検出する同様の機器によって測定される相対的光単位を指す。例えば、ルシフェラーゼおよび適切な基質(例えば、NanoGloによるNANOLUC(登録商標))の間の反応の検出は、多くの場合、検出されたRLUで報告される。
【0062】
概説
検査試料(例えば、生体、食物、水および環境)中の細菌および古細菌等の目的の微生物の検出のための驚くべき感度を示す組成物、方法およびシステムが本明細書に開示されている。目的の微生物の一部の非限定的な例は、Bacillus spp.、Bordetella pertussis、Brucella spp.、Campylobacter spp.(Campylobacter jejuni等)、Chlamydia pneumoniae、Cronobacter spp.、Clostridium perfringens、Clostridium botulinum、Enterobacter spp.、Escherichia spp.(Escherichia coli、例えば、E.coli O157:H7ならびにEscherichia coliの他の志賀毒素およびエンテロトキシン産生株等)、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Listeria spp.(Listeria monocytogenes等)、Mycoplasma pneumoniae、Pseudomonas spp.、Salmonella spp.(例えば、Salmonella typhi、Salmonella typhimuriumまたはSalmonella enteritidis)、Shigella sonnei、Yersinia spp.、Vibrio spp.、Staphylococcuss spp.(例えば、Staphylococcus aureus)およびStreptococcus spp.である。検出は、富化のための培養なしで行われるアッセイにおいて遺伝子改変されたファージを使用して以前に可能と考えられていたよりも短い時間枠で、または一部の実施形態では、微生物が潜在的に増えることができる最小のインキュベーション時間で達成することができる。同様に驚くべきことに、検査試料とのインキュベーションのための、潜在的に高い感染多重度(MOI)または高濃度のプラーク形成単位(PFU)の使用に成功した。斯かる高いファージ濃度(PFU/mL)は、「外からの溶菌(lysis from without)」を引き起こすと言われていたため、細菌検出アッセイにおいて有害であると以前に言われていた。しかし、高濃度のファージは、少数の標的細胞を見出し、結合し、感染することを容易にすることができる。
【0063】
本発明の組成物、方法、システムおよびキットは、目的の微生物の検出における使用のための組換えファージを含むことができる。ある特定の実施形態では、本発明は、ファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を有する組換えファージを含む組成物を含むことができる。斯かる組換えファージは、「指標ファージ」と称される。ある特定の実施形態では、宿主微生物の感染後のインジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質産物の産生をもたらす。ある特定の実施形態では、インジケーター遺伝子は、バクテリオファージの後期遺伝子(すなわち、クラスIII)領域に挿入することができる。本発明の実施形態に係る組換えバクテリオファージは、T7、T7様等のポドウイルス、T4、T4様等のマイオウイルス、T5、P70、Saka6等のシホウイルス、および関連ファージ、ViI、ViI様(またはGenBank/NCBIによるVi1ウイルス)、Saka2もしくはSaka4等のCronobacter spp特異的バクテリオファージ、SalmonellaファージSPN1S、Salmonellaファージ10、Salmonellaファージイプシロン15、SalmonellaファージSEA1、SalmonellaファージSpn1s、SalmonellaファージP22、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージP40、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、ListeriaファージP70、ListeriaファージA511、StaphylococcusファージP4W、StaphylococcusファージK、StaphylococcusファージTwort、StaphylococcusファージSA97、Escherichia coli O157:H7ファージCBA120、または別の野生型のもしくは操作されたバクテリオファージに由来することができる。
【0064】
本発明の実施形態に係る指標ファージは、繁殖欠損であり、これは、検出されている目的の微生物に感染した後に効率的に繁殖することができないまたは全く繁殖することができないことを意味する。本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージは、適した遺伝子、例えば、ビリオンアセンブリに要求される後期遺伝子のうち1種または複数の変更が原因で、繁殖欠損にされる。一部の実施形態では、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージは、インジケーター遺伝子の導入とは別々に、適した遺伝子に変異を導入することにより、繁殖欠損にされる。一部の他の実施形態では、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージは、インジケーター遺伝子によって適した遺伝子の少なくとも一部を置き換えることにより、繁殖欠損にされる。本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージは、ファージ繁殖に必要とされる変異した遺伝子の産物を産生するように操作された宿主微生物において増殖または繁殖することができる。斯かる操作された微生物は、「許容的」と命名される。
【0065】
繁殖欠損指標ファージは、以前に記載された指標ファージを上回るいくつかの利点を有する。繁殖欠損指標ファージは、繁殖のために特別な操作された微生物を要求するため、未経験のおよび/または訓練されていない提供者による、その生産および流通のための潜在力は限定される。傷んだおよび低品質の試薬の生産および流通は、診断法の分野において重大な問題である。指標ファージの生産および流通を、ある特定の資格を有し、ある特定の標準を満たす(例えば、公的認可プロセスにより)実体に限定することにより、繁殖欠損指標ファージの提供は、低品質のまたは傷んだ指標ファージが生産され診断オペレーターに流通されるリスクを低下させる。さらに、環境中に見出される宿主微生物において繁殖することができないことから、繁殖欠損指標ファージは、規定濃度および/または量の指標ファージを含有する標準化された診断試薬が、診断手順を行う前に宿主微生物によって汚染され、これにより、試薬中の指標ファージの濃度または量の検出されない増加、その帰結として、不正確な検出データが生じ得るリスクを排除する。この課題は、使用されている指標ファージの濃度または量が、検出されているシグナルの強度と相関する場合の定量的または半定量的検出において特に重要である。またさらに、診断プロセスの際に目的の微生物において繁殖できないことが原因で、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージは、試料における目的の微生物のより正確な定量的または半定量的検出を可能にする。精度における改善は、検出プロセスを通して試料中に見出される繁殖欠損指標ファージの量を制御する能力に起因する。新たな生存可能指標ファージが、検出プロセスの際に生成されないため、最初に使用された繁殖欠損指標ファージのみが、感染後にインジケーター遺伝子産物を発現することができる。後期遺伝子に固有の高発現レベルが原因で、また、初期遺伝子の欠失が、多くの場合、ゲノム複製をもたらさず、各細胞におけるインジケーター遺伝子のコピー数を低下させるため、初期遺伝子と比較して、後期遺伝子の欠失および置換えは、インジケーター遺伝子の高発現を保証する。感染後の指標ファージの繁殖は、診断プロセスの際に産生されるインジケーターシグナルの量に著しい可変性を導入し得る。よって、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージの使用は、定量的および半定量的検出のより容易な標準化をもたらし、検出結果の精度を改善する。
【0066】
一部の態様では、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を含む。本方法は、目的の微生物の検出のためのファージを使用することができる。よって、ある特定の実施形態では、本方法は、目的の微生物に感染する組換え繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートすることによる、試料における目的の微生物の検出を含むことができる。一部の実施形態では、組換え繁殖欠損指標ファージは、バクテリオファージである。インジケーター遺伝子は、ある特定の実施形態では、宿主微生物の感染後にインジケーター遺伝子の発現がインジケーター遺伝子産物の産生をもたらすように、バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入することができる。本方法は、インジケーター遺伝子産物を検出するステップであって、インジケーター遺伝子産物の陽性検出が、目的の微生物が試料中に存在することを指し示す、ステップを含むことができる。一部の実施形態では、インジケーター遺伝子産物は、タンパク質である。一部の実施形態では、インジケーター遺伝子産物は、可溶性タンパク質である。
【0067】
ある特定の実施形態では、本発明は、システムを含むことができる。本システムは、本発明の組成物の少なくとも一部を含有することができる。また、本システムは、本方法を行うための構成成分の少なくとも一部を含むことができる。ある特定の実施形態では、本システムは、キットとして処方される。よって、ある特定の実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物の迅速な検出のためのシステムであって、繁殖欠損指標ファージがインジケーター遺伝子を含む、目的の微生物に特異的な繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするための構成成分と、インジケーターを検出するための構成成分とを含むシステムを含むことができる。さらに他の実施形態では、本発明は、本方法またはシステムによる使用のためのソフトウェアを含む。
【0068】
本発明の一部の実施形態は、細菌の存在を指し示す検出可能なシグナルを増幅するためのバクテリオファージに基づく方法を使用することにより、微生物検出の分野における必要を解決する。ある特定の実施形態では、ほんの1個の細菌が検出される。本明細書に適用される原理は、種々の微生物の検出に適用することができる。微生物の表面におけるファージに対する多数の結合部位、およびコードされたインジケーターの高レベル発現の潜在力のため、インジケーターは、微生物それ自体よりも容易に検出可能であり得る。このようにして、本発明の実施形態は、単一の感染細胞からであっても膨大なシグナル増幅を達成することができる。
【0069】
本明細書に開示および記載されている本発明の一部の実施形態は、単一の微生物が、本発明の実施形態に係る複数の組換え繁殖欠損指標ファージに結合することができるという事実を利用する。組換え繁殖欠損指標ファージによる感染後に、これは、組換え繁殖欠損指標ファージによってコードされ、微生物において発現されるインジケーターにより検出される。この原理は、微生物表面受容体の特異的認識に基づく、1個または数個の細胞からのインジケーターシグナルの増幅を可能にする。例えば、単一の細菌細胞であっても、複数の繁殖欠損指標ファージに曝露し、その後、コードされたインジケーター遺伝子産物を発現させることにより、インジケーターシグナルは、目的の微生物が高い感度で検出可能となるように増幅される。例えば、試料中に存在する単一の細菌は、本発明の実施形態を使用して検出可能であり得る。本発明の実施形態は、試料中の特異的微生物を検出および/または定量化する仕方として、特定の微生物に結合することができるファージの高い特異性を利用する。一部の実施形態では、本発明は、繁殖欠損指標ファージの高い特異性を利用する。
【0070】
本発明の方法およびシステムの実施形態は、食物、水および商業的試料からの病原体の検出を含むがこれらに限定されない、種々の状況における種々の微生物(細菌および古細菌等が挙げられるがこれらに限定されない)の検出および定量化に適用することができる。本発明の方法は、高い検出感度および特異性ならびに迅速な検出を提供する。
【0071】
試料
本発明の組成物、方法、キットおよびシステムの実施形態のそれぞれは、試料における目的の微生物の迅速な検出および/または定量化を可能にする。例えば、本発明の実施形態に係る方法は、優れた結果を伴いつつ短縮された期間で行うことができる。
【0072】
本発明の実施形態を使用して試料において検出可能な微生物は、食物または水媒介性病原体である細菌を含むがこれに限定されない。本発明によって検出可能な細菌は、Bacillus spp.、Bordetella pertussis、Brucella spp.、Campylobacter spp.(Campylobacter jejuni等)、Chlamydia pneumoniae、Cronobacter spp.、Clostridium perfringens、Clostridium botulinum、Enterobacter spp.、Escherichia spp.(Escherichia coli、例えば、E.coli O157:H7ならびにEscherichia coliの他の志賀毒素およびエンテロトキシン産生株等)、Klebsiella pneumoniae、Listeria spp.(Listeria monocytogenes等)、Mycoplasma pneumoniae、Salmonella spp.(例えば、Salmonella typhi、Salmonella typhimuriumまたはSalmonella enteritidis)、Shigella sonnei、Yersinia spp.、Vibrio spp.、Staphylococcuss spp.(例えば、Staphylococcus aureus)およびStreptococcus spp.を含むがこれらに限定されない。
【0073】
試料は、環境試料、食物試料または水試料であってよいが、これらに限定されない。一部の実施形態は、医学的または獣医学的試料を含むことができる。試料は、液体、固体または半固体であってよい。試料は、固体表面のスワブであってよい。試料は、水試料、または空気試料から得たフィルター、またはサイクロン集塵器(cyclone collector)から得たエアロゾル試料等、環境材料を含むことができる。試料は、魚、牛肉、豚肉もしくはラム肉等の肉(meet)、家禽(poultry)、加工食品、ピーナッツバター、乳児用調製粉乳(powdered infant formula)、粉ミルク、茶、デンプン、卵、ミルク、チーズまたは他の乳製品の試料であってよい。医学的または獣医学的試料は、血液、痰、脳脊髄液、糞便試料および灌注洗浄物を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、灌注は、生体試料の収集に使用される。灌注は、開放創または植え込まれた装具の全体にわたり溶液(例えば、生理食塩水)を流すことである。よって、一部の実施形態では、生体試料は、創傷洗浄剤または装具洗浄剤である。一部の実施形態では、試料は、異なる型のスワブであってよい。
【0074】
一部の実施形態では、試料は、調製、濃縮または希釈なしで、本発明の実施形態に係る検出方法において直接的に使用することができる。例えば、ミルクおよびジュースを含むがこれらに限定されない、液体試料は、直接的にアッセイすることができる。他の実施形態では、試料は、緩衝溶液または細菌培養培地を含むことができるがこれらに限定されない溶液に希釈または懸濁することができる。固体または半固体である試料は、固体を液体中で刻む、混合するまたは液浸軟化することにより、液体に懸濁することができる。一部の実施形態では、試料は、宿主細菌細胞への組換えバクテリオファージ付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。一部の実施形態では、好まれるpH範囲は、細菌細胞に付着するバクテリオファージに適した範囲であってよい。試料はまた、Na、Mg2+およびKを含むがこれらに限定されない、適切な濃度の二価および一価カチオンを含有するべきである。
【0075】
一部の実施形態では、試料は、試料中に存在するいずれかの病原体細胞の生存度を維持する温度で維持される。バクテリオファージが細菌細胞に付着しているステップにおいて、試料は、バクテリオファージ活性を容易にする温度で維持することができる。斯かる温度は、少なくとも約25℃かつ約45℃以下である。一部の実施形態では、試料は、約37℃で維持される。一部の実施形態では、試料は、組換えバクテリオファージ結合または感染において、穏やかな混合または振盪に供される。
【0076】
本発明の実施形態は、様々な適切な対照試料を利用することができる。例えば、ファージを含有しない対照試料または目的の微生物なしでファージを含有する対照試料は、バックグラウンドシグナルレベルのための対照としてアッセイすることができる。
【0077】
繁殖欠損指標ファージ
本明細書においてより詳細に記載されている通り、本発明の実施形態に係る組成物、方法、システムおよびキットは、病原性微生物の検出における使用のための繁殖欠損指標ファージを含むことができる。ある特定の実施形態では、本発明は、インジケーター遺伝子を含み、ファージを繁殖欠損にするための遺伝子改変(単数または複数)を有する組換え繁殖欠損指標バクテリオファージを含む。上述の遺伝子改変は、1回の遺伝子改変ステップにおいてまたは複数回の遺伝子改変ステップ(2回またはそれよりも多い遺伝子改変ステップ等)において導入することができる。一部の実施形態では、本発明は、繁殖欠損指標ファージを含む組成物を含むことができる。
【0078】
組換え繁殖欠損指標ファージは、レポーターまたはインジケーター遺伝子を含むことができる。感染因子のある特定の実施形態では、インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。例えば、ある特定の実施形態では、細菌等の宿主微生物の感染後のインジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質産物をもたらす。ある特定の実施形態では、インジケーター遺伝子は、繁殖欠損指標ファージの後期遺伝子領域に挿入することができる。後期遺伝子は、構造タンパク質をコードするため、一般に、他のファージ遺伝子よりも高いレベルで発現される。
【0079】
本発明の実施形態に係る組換え繁殖欠損指標ファージは、組換えファージを宿主生物感染後に繁殖できないようにする変更を含む。適した遺伝子および変更は、多数の検討事項に従って選択される。変更に適したファージ遺伝子は、感染後に宿主微生物において繁殖するファージ能力に影響を与えるが、宿主微生物に感染する組換え繁殖欠損ファージの能力には影響を与えない遺伝子である。一部の実施形態では、組換えファージを繁殖欠損にするために変更されるべき遺伝子は、ファージのゲノム複製に要求されないように選ばれる。このことは、組換えファージゲノムが、典型的高コピー数まで複製され、高コピー数のインジケーター遺伝子をもたらすことを確実にする。初期および最初期遺伝子は多くの場合、ファージのゲノム複製に要求される遺伝子のカテゴリーに納まる。初期および最初期遺伝子(例えばT7 RNAポリメラーゼ)は、組換えファージにおけるインジケーター遺伝子等、後期遺伝子プロモーターによって制御される遺伝子の発現に要求される場合もある。したがって、クラスIまたはクラスII遺伝子としても公知の最初期および初期遺伝子は、変更に適さない場合もある。一部の実施形態では、組換えファージを繁殖欠損にするために変更されるべき遺伝子は、成熟ファージビリオン産生に要求されるため選ばれる。例えば、変更または欠失に適した遺伝子は、ビリオンアセンブリに要求される遺伝子等、構造的に重要な遺伝子であってよい。一部の実施形態では、成熟ファージビリオン産生に要求されるが高コピー数で発現されない後期遺伝子である、組換えファージを繁殖欠損にするために変更されるべき遺伝子が選ばれる。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、2種以上の(すなわち、1種または複数の)変更された遺伝子を含むことができる。組換えファージを繁殖欠損にするための変更または欠失に適する可能性がある遺伝子の一部の例を次に示す:バクテリオファージT4および関連ファージならびにT4ウイルス(例えば、SEA1、Saka4およびTSP12ファージ)ならびに近縁のViu様ウイルス(Viulikevirus)(例えば、CBA120、TSP1ファージ)において、変更に適する可能性がある遺伝子の一部は、頭部完成(head completion)タンパク質をコードするgp4;ポータル頂点(portal vertex)タンパク質をコードするgp20;プロヘッドコア足場タンパク質およびプロテアーゼをコードするgp21;プロヘッド足場タンパク質をコードするgp22;ベースプレートウェッジサブユニットをコードするgp25;ベースプレートハブサブユニットをコードするgp26;ベースプレートウェッジ構成成分をコードするgp53;ベースプレート・尾管(tail tube)イニシエータをコードするgp54である。ポドウイルス(podavirus)(T7、MP87ファージ)において、変更に適する可能性がある遺伝子の一部は、ビリオンタンパク質をコードするgp6.7;尾部タンパク質をコードするgp7.3;頭部・尾部コネクタタンパク質をコードするgp8;足場タンパク質をコードするgp9;gp13である。シホウイルス(T5、P70関連ファージ)において、変更に適する可能性がある遺伝子の一部は、プロヘッドプロテアーゼをコードするGp150およびポータルタンパク質をコードするgp152である。上述のリストが非限定的であり、他の遺伝子が種々のファージにおいて変更され得ることを理解されたい。
【0080】
一部の実施形態では、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージは、適した遺伝子に変異を含む。斯かる変異は、アンバー変異、オーカー変異、塩基置換、欠失もしくは挿入、または上述の型の変異のいずれかの組合せであってよい。変異またはそれらの組合せは、変更のために選ばれた遺伝子を、コードされたタンパク質構造を変更することにより機能障害性にし、変更されている遺伝子の転写または発現を抑制し(例えば、プロモーターの変化により)、転写または発現の中途終止等を引き起こすことができる。一部の他の実施形態では、繁殖欠損指標ファージにおいて、適した遺伝子は、適した遺伝子の少なくとも一部をインジケーター遺伝子によって置き換えることにより変更される。結果として、組換えファージは、繁殖欠損になり、インジケーター遺伝子配列を取り込む。一部の実施形態では、適した遺伝子における1種または複数の変異の復帰変異または抑制および繁殖適格性への組換えファージの回復を回避するために、適した遺伝子に1種または複数の変異を導入するよりもむしろ、ファージにおける適した遺伝子の少なくとも一部を、インジケーター遺伝子によって置き換えることが好ましいことがある。
【0081】
一部の実施形態では、繁殖欠損指標バクテリオファージは、T7、T7様等のポドウイルス、T4、T4様等のマイオウイルス、ViI、ViI様(またはGenBank/NCBIによるVi1ウイルス)、Saka2もしくはSaka4等のCronobacter spp特異的バクテリオファージ、SalmonellaファージSPN1S、Salmonellaファージ10、Salmonellaファージイプシロン15、SalmonellaファージSEA1、SalmonellaファージSpn1s、SalmonellaファージP22、SalmonellaファージTSP1、SalmonellaファージTSP11、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージP40、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、ListeriaファージP70、ListeriaファージA511、ListeriaファージLMA4、ListeriaファージLMA8、ListeriaファージLPES1、ListeriaファージLPJP1、StaphylococcusファージP4W、StaphylococcusファージK、StaphylococcusファージTwort、StaphylococcusファージSA97、StaphylococcusファージISP、Escherichia coli O157:H7ファージCBA120、または別の野生型のもしくは操作されたバクテリオファージに由来することができる。一部の実施形態では、指標バクテリオファージは、T7、T7様等のポドウイルス、T4、T4様等のマイオウイルス、ViI、ViI様(またはGenBank/NCBIによるVi1ウイルス)、Saka2もしくはSaka4等のCronobacter spp特異的バクテリオファージ、SalmonellaファージSPN1S、Salmonellaファージ10、Salmonellaファージイプシロン15、SalmonellaファージSEA1、SalmonellaファージSpn1s、SalmonellaファージP22、ListeriaファージLipZ5、ListeriaファージP40、ListeriaファージvB_LmoM_AG20、ListeriaファージP70、ListeriaファージA511、StaphylococcusファージP4W、StaphylococcusファージK、StaphylococcusファージTwort、StaphylococcusファージSA97、Escherichia coli O157:H7ファージCBA120、または別の野生型のもしくは操作されたバクテリオファージに由来し得るゲノムに対して少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%相同性を有するゲノムを有するバクテリオファージに由来する。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、特定の微生物に高度に特異的なファージに由来する。例えば、繁殖欠損指標バクテリオファージは、ある特定の環境中に見出される細菌に特異的な環境に由来するバクテリオファージから調製することができる。
【0082】
繁殖欠損指標ファージに挿入されるべきインジケーター遺伝子の選択は、種々の検討事項によって導くことができる。例えば、大部分のファージは、その天然ゲノムよりも数パーセント大型のDNAをパッケージすることができる。この検討事項から、より小型のインジケーター遺伝子は、バクテリオファージ、特に、より小型のゲノムを有するそれの改変のためのより適切な選択であってよい。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、わずか約20kDa(コードするためにおよそ500~600bp)であり、一方、FLucは、約62kDa(コードするためにおよそ1,700bp)である。比較のため、T7のゲノムは、40kbp前後であり、一方、T4ゲノムは、約170kbpである。さらに、レポーター遺伝子は、細菌によって内在性に発現されるべきではなく(すなわち、細菌ゲノムの一部ではない)、高いシグナル対バックグラウンド比を生成するべきであり、時宜を得た様式で容易に検出可能となるべきである。PROMEGA(登録商標)によるNANOLUC(登録商標)は、改変されたOplophorus gracilirostris(深海エビ)ルシフェラーゼである。一部の実施形態では、NanoGlo(同様にPROMEGA(登録商標)による)、イミダゾピラジノン基質(フリマジン(furimazine))と組み合わせたNANOLUC(登録商標)は、低いバックグラウンドで頑強なシグナルを提供することができる。一部の実施形態では、2種以上のインジケーター遺伝子を繁殖欠損ファージに挿入することができる。例えば、2コピー以上(2コピー等)の同じインジケーター遺伝子を挿入することができ、これにより、繁殖欠損指標ファージを使用したアッセイのシグナル強度および/またはシグナル対ノイズ比を改善することができる。別の例では、2種の異なるインジケーター遺伝子等、異なるインジケーター遺伝子を挿入することができ、これにより、二峰性シグナル検出が可能であり得る。例えば、NANOLUC(登録商標)遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子と共に挿入することができる、またはNANOLUC(登録商標)遺伝子は、ホタルルシフェラーゼ等、異なるルシフェラーゼをコードする遺伝子と共に挿入することができる。
【0083】
インジケーター遺伝子は、種々の生体分子をコードすることができる、またはそれ自体が検出可能な生体分子であってよい。例えば、インジケーター遺伝子は、検出可能なポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる。別の例では、インジケーター遺伝子は、検出可能な産物または検出可能な産物を産生する酵素を発現する遺伝子であってよい。さらに1つの例では、インジケーター遺伝子は、検出可能な核酸をコードすることができる、または検出可能な核酸を含むことができる。例えば、インジケーター遺伝子は、RNA Mango等、検出可能なアプタマーをコードすることができる、またはインジケーター遺伝子は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)により検出可能な核酸配列を含有することができる。一部の実施形態では、インジケーター遺伝子の産物は、検出可能な酵素であってよい。インジケーター遺伝子産物は、光を生じることができる、および/または色の変化によって検出可能であり得る。アルカリホスファターゼ(AP)、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)またはルシフェラーゼ(Luc)等、様々な適切な酵素が市販されている。一部の実施形態では、これらの酵素は、インジケーター部分として機能することができる。例えば、一部の実施形態では、インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする。様々な型のルシフェラーゼを使用することができる。ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼまたは操作されたルシフェラーゼのうち1種であってよい。一部の実施形態では、ホタルルシフェラーゼがインジケーター部分である。一部の実施形態では、ルシフェラーゼ遺伝子は、Oplophorusに由来する。一部の実施形態では、インジケーター遺伝子は、NANOLUC(登録商標)等、遺伝子改変されたルシフェラーゼ遺伝子である。他の操作されたルシフェラーゼまたは検出可能なシグナルを生成する他の酵素も、適切なインジケーター部分であってよい。
【0084】
繁殖欠損指標バクテリオファージへの遺伝子改変は、核酸の小型断片、遺伝子の相当な部分または遺伝子全体の挿入、欠失または置換を含むことができる。一部の実施形態では、挿入または置換された核酸は、非ネイティブ配列を含む。例えば、非ネイティブインジケーター遺伝子は、バクテリオファージプロモーターの制御下に置かれるように、バクテリオファージゲノムに挿入することができる。非ネイティブインジケーター遺伝子は、後期ファージ遺伝子の配列の少なくとも一部に置き換わるように挿入することができ、インジケーター遺伝子の挿入は、その結果得られる組換えファージを繁殖欠損にする。インジケーター遺伝子の全3個の読み枠に停止コドンを含むことは、漏出発現としても公知のリードスルーを低下させることにより、発現増加に役立つことができる。この戦略は、ファージから分離することができないバックグラウンドシグナルとして顕在化するであろう、低レベルで作製される融合タンパク質の可能性を排除することもできる。よって、一部の実施形態では、非ネイティブインジケーター遺伝子は、融合タンパク質の一部ではない。すなわち、一部の実施形態では、遺伝子改変は、インジケータータンパク質産物が、ファージのポリペプチドを含まないように構成され得る。一部の実施形態では、本発明は、後期(クラスIII)遺伝子領域に非バクテリオファージインジケーター遺伝子を含む遺伝子改変された繁殖欠損指標バクテリオファージを含む。一部の実施形態では、非ネイティブインジケーター遺伝子は、後期プロモーターの制御下にある。ウイルス後期遺伝子プロモーターを使用することは、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)が、ウイルスカプシドタンパク質のように高レベルで発現されるだけでなく、同様の内在性細菌遺伝子または初期バクテリオファージ遺伝子としてシャットダウンも行わないことを確実にする。一部の実施形態では、後期プロモーターは、T4、T7もしくはViI様プロモーター、または野生型ファージにおいて見出されるものと同様の別のファージプロモーターである。
【0085】
一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージによる感染後の目的の微生物における繁殖欠損指標ファージのインジケーター遺伝子の発現は、可溶性タンパク質産物の産生をもたらす。一部の実施形態では、非ネイティブインジケーター遺伝子は、構造ファージタンパク質をコードする遺伝子と近接しておらず、したがって、融合タンパク質を生じない。カプシドタンパク質への検出部分の融合体(融合タンパク質)を用いるシステムとは異なり、本発明の一部の実施形態は、可溶性インジケーターまたはレポーター(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)を発現する。一部の実施形態では、インジケーターまたはレポーターは理想的には、ファージ構造を含まない。すなわち、インジケーターまたはレポーターは、ファージ構造に付着していない。したがって、インジケーターまたはレポーターのための遺伝子は、繁殖欠損指標ファージのゲノムにおける他の遺伝子と融合されていない。このことは、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージが使用される検出アッセイの感度を大幅に増加させ(感度は、試料中の単一の微生物の検出に至るまで増加し得る)、アッセイを単純化し、検出可能な融合タンパク質を産生する構築物により要求される追加的な精製ステップが原因の数時間とは反対に、一部の実施形態について2時間またはそれ未満でアッセイを完了させることができる。さらに、例えば、酵素活性部位のコンフォメーションまたは基質へのアクセスを変更し得るタンパク質フォールディング制約が原因で、融合タンパク質は、可溶性タンパク質よりも活性が低くなる場合がある。濃度が、試料1mLあたり10個の細菌細胞の場合、例えば、2時間未満が、アッセイに十分となり得る。
【0086】
さらに、融合タンパク質は、定義によると、バクテリオファージにおけるタンパク質のサブユニットに付着した部分の数を限定する。例えば、融合タンパク質のためのプラットフォームとして機能するように設計された市販のシステムの使用は、各T7バクテリオファージ粒子における約415コピーの遺伝子10Bカプシドタンパク質に対応する、約415コピーの融合部分をもたらすであろう。この制約なしで、感染した細菌は、バクテリオファージに適合し得るものよりもさらに多くのコピーの検出部分(例えば、ルシフェラーゼ)を発現することが予想され得る。
【0087】
組換え繁殖欠損指標ファージの一部の実施形態では、後期プロモーター(クラスIIIプロモーター、例えば、T7、T4、ViIまたはSaka由来等)は、インジケーター遺伝子の転写に使用される。斯かるより後期のプロモーターは、ファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質のための遺伝子を転写する、同じファージのRNAポリメラーゼに対して高い親和性を有する。各ファージ粒子は、数ダースまたは数百コピーのこれらの分子を含むため、このようなタンパク質は、ファージによって作製される最も豊富なタンパク質である。ウイルス後期プロモーターの使用は、ルシフェラーゼ等のインジケーター遺伝子産物の最適に高レベルの発現を確実にすることができる。繁殖欠損指標ファージが由来する本来の野生型バクテリオファージに由来する、それに特異的な、またはその下で活性がある後期ウイルスプロモーター(例えば、T4、T7、ViIまたはSakaに基づくシステムによるT4、T7、ViIまたはSaka後期プロモーター)の使用は、検出部分の最適な発現をさらに確実にすることができる。標準細菌(非ウイルス/非バクテリオファージ)プロモーターの使用は、一部の場合では、発現に有害となり得るが、その理由として、これらのプロモーターが、多くの場合、バクテリオファージ感染の際に下方調節されることが挙げられる(バクテリオファージが、ファージタンパク質産生のための細菌資源に優先順位を付けるために)。よって、一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、好ましくは、ファージ構造構成成分のサブユニットの数に発現を限定しないゲノムにおける設置を使用して、可溶性(遊離)インジケーター部分をコードしこれを高レベルで発現するように操作される。
【0088】
一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、目的の微生物の検出のためのアッセイにおける使用のために望ましい形質を最適化するように設計される。一部の実施形態では、遺伝子改変のバイオインフォマティクスおよび以前の解析を用いて、望ましい形質を最適化する。例えば、一部の実施形態では、ファージ尾部タンパク質をコードする遺伝子は、特定の種の細菌を認識し、これに結合するように最適化することができる。他の実施形態では、ファージ尾部タンパク質をコードする遺伝子は、属全体の細菌または属内の種の特定の群を認識し、これに結合するように最適化することができる。このようにして、ファージは、病原体のより広いまたはより狭い群を検出するように最適化することができる。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、レポーター遺伝子の発現を改善するように設計することができる。その上および/またはその代わりに、一部の例では、繁殖欠損指標ファージは、検出を改善するためにファージのバーストサイズを増加させるように設計することができる。感染後に増加したコピー数のファージゲノムを産生するように、または後期遺伝子の発現レベルを増加させるように設計された繁殖欠損指標ファージの設計は、増加したバーストサイズをもたらすであろう。
【0089】
一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージの安定性は、有効期間を改善するように最適化することができる。例えば、その後のファージ安定性を増加させるために、エンザイバイオティック(enzybiotic)溶解度を増加させることができる。その上および/またはその代わりに、繁殖欠損指標ファージの熱安定性を最適化することができる。熱安定性ファージは、貯蔵中の機能的活性をよりよく保存し、これにより、有効期間を増加させる。よって、一部の実施形態では、熱安定性および/またはpH耐性を最適化することができる。
【0090】
本発明の組成物は、1種または複数の繁殖欠損指標バクテリオファージおよび1種または複数のインジケーター遺伝子を含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、異なる目的の微生物に特異的な異なる繁殖欠損指標ファージのカクテルを含むことができる。斯かるカクテルは、複数の目的の微生物の同時検出に使用することができる。一部の実施形態では、組成物は、同じまたは異なるインジケータータンパク質をコードしこれを発現することができる異なる繁殖欠損指標ファージのカクテルを含むことができる。一部の実施形態では、繁殖欠損バクテリオファージのカクテルは、少なくとも2種の異なる型の繁殖欠損指標バクテリオファージを含む。
【0091】
繁殖欠損指標バクテリオファージを調製(作製)する方法
本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージを作製するための方法の実施形態は、遺伝子改変のための親ファージの選択から始まることができる。例えば、一部のバクテリオファージは、標的微生物に高度に特異的であり、これは、特定の株または血清型の標的微生物に対する特異性を含むことができる。これは、高度に特異的な検出のための機会を提示する。親ファージは、いずれかの環境中に見出される野生型ファージまたは操作されたファージであってよい。本発明の実施形態に係る方法は、シグナルを増幅し、これにより、試料中に存在する低レベルの微生物(一部の場合では、単一の微生物に至るまでの)を検出する手段として、特定の目的の微生物を認識しこれに結合するバクテリオファージに関連する結合の高い特異性を利用する。例えば、バクテリオファージは、特定の微生物の表面受容体を特異的に認識し、よって、このような微生物に特異的に感染する。したがって、バクテリオファージは、目的の微生物の標的化に適切である。本発明の一部の実施形態は、目的の目的の微生物に感染しその検出を容易にするための迅速なかつ高感度の標的化のために、指標バクテリオファージの結合の特異性および高レベル遺伝的発現能力を利用する。したがって、組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、目的の標的微生物に特異的に感染する親ファージを選択することに関連するステップを含むことができる。
【0092】
組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、親ファージの遺伝子を変更して、組換え繁殖欠損ファージを生成するステップ(単数または複数)を含む。例えば、一部の実施形態は、親ファージを繁殖欠損にするために、適した遺伝子に1個または複数の変異を導入するステップ(単数または複数)を含むことができる。斯かる適した遺伝子および変異は、本文書の他の箇所に記載されている。
【0093】
組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、親ファージの遺伝子を変更して、組換え繁殖欠損ファージを生成するステップを含む。繁殖のために、繁殖欠損ファージは、ファージを繁殖欠損にするために変更された遺伝子の産物を発現することができる、ファージの宿主微生物(細菌等)の操作された株を要求する。斯かる操作された株は、「許容的」と命名することができる。したがって、組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、宿主微生物の斯かる許容的な操作された株を生成するステップを含むことができる。組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、宿主微生物の許容的な操作された株を繁殖欠損指標ファージに感染させるステップを含むことができる。組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、インジケーター遺伝子を含む相同組換えプラスミド/ベクターを調製するステップを含むことができる。組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、繁殖欠損指標ファージに感染した許容的な操作された宿主微生物へと相同組換えプラスミド/ベクターを形質転換するステップを含むことができる。組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の他の実施形態は、許容的な操作された宿主微生物へと相同組換えプラスミド/ベクターを形質転換するステップと、その後、形質転換された許容的な操作された宿主微生物を繁殖欠損指標ファージに感染させるステップを含むことができる。一部の実施形態では、許容的な操作された宿主微生物の感染および許容的な操作された宿主微生物への相同組換えプラスミド/ベクターの形質転換は、同じステップにおいて達成することができる。他の実施形態では、許容的な操作された宿主微生物の感染および許容的な操作された宿主微生物への相同組換えプラスミド/ベクターの形質転換は、2ステップまたは3以上のステップにおいて達成される。許容的な操作された宿主微生物が、繁殖欠損ファージおよび相同組換えプラスミド/ベクターを受容すると、プラスミド/ベクターおよびファージゲノムの間に相同組換えが生じる。次に、インジケーター遺伝子を含む組換え組換え欠損ファージ(繁殖欠損指標ファージ)を単離することができる。
【0094】
一部の実施形態では、ファージを繁殖欠損にするために変更される親ファージの遺伝子は、インジケーター遺伝子による親ファージの少なくとも一部の置換えによって変更することができる。したがって、組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、これを繁殖欠損にするために親ファージにおける欠失に標的化された遺伝子の配列によって挟まれたインジケーター遺伝子を含む相同組換えプラスミド/ベクターを調製するステップを含む。次に、相同組換えプラスミド/ベクターを、親ファージに感染した許容的な操作された宿主微生物へと形質転換し、これにより、プラスミド/ベクターおよび親ファージゲノムの間に相同組換えを生じさせることができる。組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の他の実施形態は、許容的な操作された宿主微生物へと相同組換えプラスミド/ベクターを形質転換するステップと、続いて、形質転換された許容的な操作された宿主生物を繁殖欠損指標ファージに感染させ、これにより、プラスミド/ベクターおよび親ファージゲノムの間に相同組換えを生じさせるステップを含むことができる。一部の実施形態では、許容的な操作された宿主微生物の感染および許容的な操作された宿主生物への相同組換えプラスミド/ベクターの形質転換は、同じステップにおいて達成し、これにより、プラスミド/ベクターおよび親ファージゲノムの間に相同組換えを生じさせることができる。次に、インジケーター遺伝子を含む組換え組換え欠損ファージ(繁殖欠損指標ファージ)を単離することができる。
【0095】
組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態では、親ファージへの繁殖欠損性およびインジケーター遺伝子の導入は、1ステップ組換えプロセスにおいて達成される。斯かるプロセスのための組換え戦略は、図1に説明される。このような実施形態の利点は、繁殖欠損指標ファージを生成するためのプロセスの単純化である。斯かる実施形態の別の利点は、レポーター遺伝子が、繁殖欠損指標ファージの検出および単離の両方のために使用されることを可能にすることである。遺伝的変更が、インジケーター遺伝子を含む繁殖可能なファージ(繁殖可能な指標ファージ)において繁殖欠損性を付与するために導入される場合、繁殖欠損性変更を有するファージおよび有しないファージの両方が成長し、指標ファージのためのスクリーニングをより困難なものとする。
【0096】
図3は、本発明の実施形態の1つに係る指標ファージの生成をもたらす、宿主微生物における相同組換え(HR)プラスミドおよび親ファージ(phase)ゲノムの間に生じる相同組換えプロセスを概略的に説明する。説明される相同組換えプロセスにおいて、ファージは、CBA120 E.coliファージであり、レポーター遺伝子は、NANOLUC(登録商標)レポーター遺伝子である。したがって、宿主微生物は、説明される実施形態においてE.coliである。図3が、例示的かつ非限定的であることが意図されること、また、他のファージ、対応する宿主生物およびレポーター遺伝子を使用することができることを理解されたい。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージの産生のために環境から単離されたファージを利用することが好まれ得る。このようにして、天然に由来する微生物に特異的な繁殖欠損指標ファージを生成することができる。
【0097】
相同組換えプラスミドを設計および調製するための様々な方法が公知である。熱ショック、F線毛媒介性細菌接合、電気穿孔および他の方法を含む、プラスミドで細菌を形質転換するための様々な方法が公知である。相同組換え後に特定のクローンを単離するための様々な方法も公知である。本明細書に記載されている実施形態の一部の方法は、特定の戦略を利用する。
【0098】
繁殖欠損指標バクテリオファージを調製するための方法の一部の実施形態は、目的の標的微生物に特異的に感染する親ファージを選択するステップと、選択された親ファージのゲノムの後期領域における天然配列を決定するステップと、ゲノムをアノテートし、選択された親ファージの適した後期遺伝子を同定するステップであって、適した後期遺伝子の変更が、親ファージを繁殖欠損にすることが意図される、ステップと、主要後期遺伝子に隣接し、かつコドン最適化されたレポーター遺伝子を含む、相同組換えのための配列を設計するステップと、相同組換えのために設計された配列をプラスミド/ベクターに取り込むステップと、機能的な適した後期遺伝子をコードするプラスミドを含む標的微生物へとプラスミド/ベクターを形質転換するステップと、形質転換された標的微生物について選択するステップと、形質転換された微生物を選択された親ファージに感染させ、これにより、プラスミドおよびファージゲノムの間に相同組換えを生じさせるステップと、その結果得られる組換えファージライセートの力価を決定するステップと、限界希釈アッセイを行って、組換えファージを富化および単離するステップとを含むことができる。親ファージ画分を上回る繁殖欠損組換えファージ画分の富化は、トランスプラスミドを含有する許容的標的細胞において全体的にまたは部分的に行うことができる。一部の実施形態は、適宜組換えファージが混合物の検出可能な画分を表すまで必要とされる場合、第1の限界希釈アッセイの後に、限界希釈および力価測定(titer)ステップをさらに反復するステップを含む。例えば、一部の実施形態では、限界希釈および力価測定ステップは、組換えファージの特定のクローンを単離する前に、混合物中のファージの少なくとも1/30が組換え体になるまで反復することができる。1:30の組換え体:親の比は、一部の実施形態では、96個のプラーク(例えば、96ウェルプレートにおける)当たり平均3.2形質導入単位(TU)を生じると予想される。組換え体の親ファージに対する初期比は、米国特許出願第15/409,258号に以前に記載された通り、TCID50(組織培養感染量50%)に基づく限界希釈アッセイを行うことにより決定することができる。ポアソン分布によって、1:30比は、96ウェルのいずれかにおける少なくとも1TUを観察する96%の確率を生成する。
【0099】
一部の実施形態は、インジケーター遺伝子の挿入に必要な相同組換えのための配列の設計(および必要に応じて調製)を含む。一部の実施形態では、相同組換え配列は、親ファージを繁殖欠損にするために、後期遺伝子に置き換わるように設計される。一部の実施形態では、インジケーター遺伝子の配列は、非翻訳領域が先行した、コドン最適化されたレポーター遺伝子を含む。非翻訳領域は、ファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含むことができる。一部の実施形態では、挿入された遺伝的構築物は、インジケーター遺伝子の発現を駆動するために、それ自体の外因性の専用のプロモーターをさらに含む。外因性プロモーターが、ファージゲノムにおけるいずれかの内在性プロモーターに加えて含まれる。ファージは、ポリシストロニックmRNA転写物を産生するため、単一のプロモーターのみが、転写物における第1の遺伝子/シストロンの上流に要求される。従来の組換え構築物は、挿入された遺伝子を駆動するために、内在性ファージプロモーターのみを使用する。レポーター遺伝子およびリボソーム結合部位の上流への追加的なプロモーターの付加は、転写のための二次開始部位として作用することにより、遺伝子発現を増加させることができる。
【0100】
プラスミドを調製するための多数の公知方法および商業的製品がある。例えば、PCR、部位特異的変異誘発、制限酵素消化、ライゲーション、クローニングおよび他の技法を組み合わせて使用して、プラスミドを調製することができる。合成プラスミドを商業的に注文することもできる(例えば、GeneWiz)。コスミドを用いることもできる、またはCRISPR/CAS9システムを使用して、バクテリオファージゲノムを選択的に編集することができる。指標バクテリオファージを調製する方法の一部の実施形態は、出発バクテリオファージゲノムと容易に組み換えて組換えゲノムを生成することができるプラスミドを設計するステップを含む。プラスミドの設計において、一部の実施形態は、ルシフェラーゼ遺伝子等のコドン最適化されたレポーター遺伝子の付加を含む。一部の実施形態は、上流非翻訳領域へのエレメントの付加をさらに含む。例えば、上流非翻訳領域は、NANOLUC(登録商標)レポーター遺伝子の開始コドンをコードする配列の前に付加することができる。非翻訳領域は、T4、T4様、T7、T7様、ViIまたはViI様プロモーター等、プロモーターを含むことができる。非翻訳領域は、細菌システムによる「シャイン・ダルガーノ配列」としても公知のリボソーム進入/結合部位(RBS)を含むこともできる。これらのエレメントのいずれか一方もしくは両方、または他の非翻訳エレメントは、ファージゲノムの残りとほぼ同じGC含量を含むランダム配列でできた短い上流非翻訳領域内に埋め込むことができる。ATG配列は開始コドンとして作用することになるため、ランダム領域は、ATG配列を含むべきではない。
【0101】
本文書の他の箇所に記述される通り、本発明の実施形態に係る組換え繁殖欠損指標ファージの単離および増殖は、繁殖欠損指標ファージを繁殖欠損にするために変更された遺伝子(単数または複数)を発現する「許容的」宿主微生物のみにおいて行うことができる。斯かる「許容的」微生物、例えば、細菌は、ファージ繁殖に要求される遺伝子を発現するプラスミドでこれを形質転換することにより操作することができる。図2は、ファージ繁殖に要求される遺伝子を発現するプラスミドで形質転換され、また、繁殖欠損指標ファージに感染した斯かる「許容的」微生物の細胞を説明する。ファージ繁殖に要求される遺伝子を含有するプラスミドは、ファージゲノムへのインジケーター遺伝子の挿入に使用される相同組換えプラスミドと適合性となるように選ばれる。例えば、ファージ繁殖に要求される遺伝子を発現するプラスミドおよび相同組換えプラスミドは、両方のプラスミドが宿主生物において同時に維持され得るように、異なる抗生物質耐性マーカーを含有するように選ぶことができる。別の例では、ファージ繁殖に要求される遺伝子を発現するプラスミドおよび相同組換えプラスミドは、互いに干渉しないように、適合性複製起点を含有するように選ばれる。適合性プラスミドの例は、ori複製起点を使用したpUC由来プラスミド、およびRCR(ローリングサークル複製)複製起点を使用したpBAV1k-T5-GFPプラスミドである。繁殖欠損ファージは、繁殖するために宿主微生物の操作された「許容的」株を要求するため、組換え繁殖欠損指標ファージを調製するための方法の一部の実施形態は、これを繁殖欠損にするために繁殖欠損ファージにおいて変更される遺伝子の産物を発現することができる標的微生物の操作された株を生成するステップ(単数または複数)を含む。一部の実施形態では、標的微生物の操作された株を生成するステップは、標的微生物を、組換え繁殖欠損ファージにおいて変更される遺伝子(単数または複数)をコードし、これを発現することができるプラスミドで形質転換するステップを伴う。その代わりに、要求される遺伝子は、トランスポゾン、相同組換え、部位特異的組換え/組込みまたはその他による等、様々な他の方法によって標的微生物ゲノムに組み込むことができる。
【0102】
図27は、相同組換えに起因する親ファージおよび繁殖欠損指標ファージの混合物からの繁殖欠損組換えファージの単離のプロセスの例を概略的に説明する。第1のステップ(402)において、相同組換えプラスミドおよび要求されるファージ遺伝子を発現するプラスミドで形質転換された許容的宿主微生物は、親ファージに感染され、親対繁殖欠損指標ファージの非常に低い比の親および繁殖欠損組換え指標ファージの混合物を有する子孫ファージをもたらす(434)。その結果得られるファージミックスを希釈して(404)、96ウェルプレート(406)に入れて、プレート当たり平均5の組換え形質導入単位(TU)を得る(9.3PFU/ウェル)。次に、後述する通り、レポーター遺伝子活性について96ウェルプレートをアッセイして、親ファージを含有するウェル(440)と比較して、繁殖欠損指標ファージを含有するウェル(436)を同定する。要求されるファージ遺伝子を発現するプラスミドを含有する許容的宿主微生物(438)を各ウェルに添加する(408);例えば、宿主微生物が細菌である場合、各ウェルは、約50μLの混濁した細菌培養物を含有することができる。このことは、繁殖欠損指標ファージが、複製し、可溶性レポーター遺伝子産物(442)を産生することを可能にする。インキュベーションステップ(410)(例えば、37℃で5時間のインキュベーション)の後に、ウェルを、レポーター遺伝子産物(442)の存在についてスクリーニングすることができる。いずれかの陽性ウェルは、単一の繁殖欠損指標ファージを播種された可能性があり、このステージにおいて、混合物は、本来の比を上回る富化である、およそ10親ファージ:1組換え体の比を含有することができる。必要であれば(例えば、組換え体:総計の比が、1:30よりも低い場合)、この集積培養物(412)の子孫を追加的な限界希釈アッセイ(複数可)に供して(414)、比を増加させ、組換え繁殖欠損指標ファージ形質導入単位の実際の濃度を決定することができる。例えば、比が、1:384の組換え体:PFU(許容的細菌において行われたプラークアッセイによって決定されたPFUによる)であった場合、約5の組換えTUを、96ウェルプレート(416)当たり1920個の混入総ファージ(5×384=1920)と共に、以前の陽性ウェルからアリコートに分け(414)、およそ、第2の希釈アッセイプレート(420)のウェル当たり20個の大部分は親ファージである播種をもたらすことができる(1920PFU/96ウェル=20PFU/ウェル)。いずれかの陽性ルシフェラーゼウェルは、19個の親ファージと共に単一の組換え繁殖欠損指標ファージを播種された可能性がある。これらのウェルは、ルシフェラーゼの存在について解析することができる(442)。
【0103】
宿主微生物の添加およびインキュベーション後に(418)、可溶性レポーター遺伝子産物およびファージは、およそ20;1で存在する(420)。この比は、組換え体のためのTU50滴定、細胞死滅の代わりにレポーター遺伝子産物活性についてスコア付けする組織培養感染量50(TCID50)アッセイに基づく限界希釈アッセイ、および総PFUについてのプラークアッセイによって検証することができる。最後に、プラークアッセイを行って(422)、レポーター遺伝子産物を発現する組換え体についてスクリーニングすることができる(446)。少数の個々の(例えば、n=48)プラークは、個々に採集し、第3のマルチウェルプレート(426)において、ルシフェラーゼ活性についてスクリーニングすることができる(436)。一部の実施形態では、このアプローチは、十分なプラークがスクリーニングされることを確実にするべきであるため、組換え体の総ファージに対する公知の比に基づき、約3個の指標バクテリオファージが、スクリーニングされているプラークのミックス中にある。プレートから1個のプラークを取り出し、96ウェルプレートの各ウェルに入れることができ(424)、レポーター遺伝子産物アッセイを行って(426)、どのウェルが、レポーター遺伝子産物活性を呈示するファージを含有したかを決定することができる(442)。斯かる活性を示すウェル(428)は、純粋な組換え繁殖欠損指標ファージ(434)を表す一方、斯かる活性なしのウェル(430)は、純粋な親ファージ(432)を表す。次に、個々のプラークを緩衝液(例えば、100μLの緩衝液)または培地に懸濁し、アリコート(例えば、約5μL)を、宿主微生物培養物を含有するウェルに添加し、インキュベーション(例えば、37℃で約45分間~1時間)後にアッセイすることができる。陽性ウェルは、繁殖欠損指標ファージの純粋培養物を含有することが予想される。ある特定の実施形態は、追加的なラウンドのプラーク精製を含むことができる。よって、図27によって説明される通り、親ファージゲノムとの組換えのために設計されたプラスミドの相同組換えによって生成された繁殖欠損指標ファージは、非常に低いパーセンテージ(例えば、0.005%)の指標バクテリオファージを含む混合物から単離することができる。
【0104】
単離後に、大規模産生を行って、本発明の実施形態に係る検出方法における使用に適切な高力価繁殖欠損指標ファージストックを得ることができる。繁殖欠損指標ファージストックの産生および調製は、細菌培養物における繁殖欠損指標バクテリオファージの産生の際に産生されたいずれかの遊離検出部分からの繁殖欠損指標バクテリオファージの精製を含むことができる。ショ糖密度勾配遠心分離、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィーおよび透析または派生技術(Amiconブランド濃縮器 - Millipore、Inc.等)等、標準ファージ精製技法を用いて、本発明に係るファージの一部の実施形態を精製することができる。精製手順の結果として、繁殖欠損指標ファージストックは、産生の際に生成されるいかなるレポーター産物遺伝子も実質的に含まなくてよい。繁殖欠損指標ファージストックに存在する残渣インジケーター遺伝子産物の除去は、繁殖欠損指標ファージが試料における目的の微生物の検出に使用される場合に観察されるバックグラウンドシグナルを実質的に低下させることができる。
【0105】
微生物を検出するために繁殖欠損指標ファージを使用する方法
本明細書に言及される通り、ある特定の実施形態では、本発明は、微生物を検出するために繁殖欠損指標ファージを使用する方法を含むことができる。本発明の実施形態に係る微生物を検出するために繁殖欠損指標ファージを使用する方法は、種々の仕方で具体化することができる。
【0106】
一実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物を検出するための方法であって、目的の微生物に感染する繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするステップであって、目的の微生物の感染後のインジケーター遺伝子の発現が、インジケーター遺伝子産物の産生をもたらすように、繁殖欠損指標ファージが、インジケーター遺伝子を含む、ステップと、インジケーター遺伝子産物を検出するステップであって、陽性検出(すなわち、インジケーター遺伝子産物の存在、量またはレベルの検出)が、目的の微生物が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含むことができる。さらに一実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物を検出するための方法であって、目的の微生物に感染する繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするステップであって、目的の微生物の感染後のインジケーター遺伝子の発現が、可溶性インジケーター遺伝子産物の産生をもたらすように、繁殖欠損指標ファージが、インジケーター遺伝子を含む、ステップと、可溶性インジケーター遺伝子産物を検出するステップであって、陽性検出(すなわち、可溶性インジケーター遺伝子産物の存在、量またはレベルの検出)が、目的の微生物が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含むことができる。さらに一実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物を検出するための方法であって、目的の微生物に感染する繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするステップであって、目的の微生物の感染後のインジケーター遺伝子の発現が、可溶性インジケーター遺伝子産物の産生をもたらすように、繁殖欠損指標ファージが、インジケーター遺伝子を含む、ステップと、可溶性インジケーター遺伝子産物を検出するステップであって、陽性検出(すなわち、可溶性インジケーター遺伝子産物タンパク質の存在、量またはレベルの検出)が、目的の微生物が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含むことができる。上述の実施形態の変形形態では、目的の微生物は、目的の細菌であってよい。例えば、例示的な実施形態では、本発明は、試料における目的の細菌を検出するための方法であって、目的の細菌に感染する繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするステップであって、目的の細菌の感染後のインジケーター遺伝子の発現が、可溶性インジケーター遺伝子産物の産生をもたらすように、繁殖欠損指標ファージが、インジケーター遺伝子を含む、ステップと、インジケーター遺伝子産物を検出するステップであって、インジケーター遺伝子産物の陽性検出が、目的の細菌が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含むことができる。
【0107】
ある特定の実施形態では、目的の微生物を検出するために繁殖欠損指標ファージを使用する方法(斯かる方法は、「アッセイ」と称することができる)を行って、異なる試料の型またはサイズおよびアッセイ形式に適応するように改変され得る一般概念を利用することができる。本発明の繁殖欠損指標バクテリオファージ(すなわち、指標バクテリオファージ)を用いる実施形態は、試料の型、試料サイズおよびアッセイ形式に応じて、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20.0、21.0、21.5、22.0、22.5、23.0、23.5、24.0、24.5、25.0、25.5または26.0時間を下回る総アッセイ時間で、特異的細菌株の迅速な検出を可能にすることができる。例えば、要求される時間量は、バクテリオファージの株およびアッセイにおいて検出されるべき細菌の株、検査されるべき試料の型およびサイズ、標的の生存度に要求される条件、物理的/化学的環境の複雑さ、ならびに「内在性」非標的細菌夾雑物の濃度に応じて、若干より短くまたはより長くなることができる。
【0108】
図28は、本発明の実施形態に係る可溶性ルシフェラーゼを産生する繁殖欠損指標ファージを使用する戦略を示す。本方法において、繁殖欠損指標ファージは、可溶性ルシフェラーゼを発現するように操作することができる。ルシフェラーゼの発現は、ウイルスカプシドプロモーター(例えば、バクテリオファージT7またはT4後期プロモーター)によって駆動され、高発現を生じる。図28において説明される実施形態では、検出されるべき微生物(502)を含む試料(500)の少なくとも一部が、スピンカラムフィルターに置かれ、遠心分離されて過剰な液体を除去し、可溶性ルシフェラーゼ(503)を発現するように遺伝子操作された適切な多重度の繁殖欠損指標ファージ(504)が添加される。感染した細胞は、感染が生じるのに十分な時間インキュベートすることができる(例えば、37℃で30~240分間)。一部の実施形態では、細胞溶解が生じ得る。他の実施形態では、細胞は溶解しなくてよい。次に、ライセート中の繁殖欠損指標ファージ(504)および遊離ルシフェラーゼ(503)は、例えば、遠心分離によって収集することができ、濾液中のルシフェラーゼのレベルは、ルミノメーター(518)を使用して定量化することができる。その代わりに、ハイスループットな方法を用いることができ、それによると、試料が、96ウェルフィルタープレートに添加され、上に収載されている全操作が行われた後に、最終遠心分離ステップなしで、本来の96ウェルフィルタープレートにおいてルシフェラーゼについて直接的にアッセイすることができる。あるいは以前に記載された通り、他の単純化されたまたは内蔵型(self-contained)の形式を用いることができる。斯かる方法は、繁殖欠損指標ファージによる感染後にいずれかの構成成分の遠心分離または他の分離を要求しない場合がある。一部の実施形態では、2、3、4個またはそれよりも多い区画を有する単一のデバイスを使用して、アッセイの感染およびインキュベーションステップと、続いて適切なデバイスによる検出、例えば、ハンドヘルドルミノメーターによるルミネセンスの検出を行うことができる。
【0109】
図29は、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージを使用して目的の微生物を検出するためのフィルタープレートアッセイを描写する。簡潔に説明すると、目的の微生物(618)を含む試料(616)を、マルチウェルフィルタープレート(604)のウェル(602)に添加し、スピン(606)して、試料から液体を除去することにより試料を濃縮することができる。繁殖欠損指標ファージ(620)がウェルに添加され、吸着に十分な、十分な時間添加しておく追加的な培地と共にインキュベートされ(608)、続いて、繁殖欠損指標ファージが、感染サイクル後期に通常起こる後期遺伝子産生を達成するために(ただし、繁殖欠損指標ファージによるいかなる成熟ウイルス粒子の産生も伴わない)、目的の標的微生物の感染およびファージ生活環の前進(610)(例えば、ほぼ45分間~2時間)が為される。最後に、ルシフェラーゼ基質が添加され、存在するいずれかのルシフェラーゼ(624)と反応する。その結果得られる放射が、ルシフェラーゼ活性(626)を検出するルミノメーター(614)において測定される。
【0110】
ある特定の実施形態では、アッセイは、捕捉表面でまたはその付近で目的の微生物を濃縮することなく行うことができる。図30は、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージを使用して目的の目的の微生物を検出するための「濃縮なしアッセイ」を説明する。繁殖欠損指標ファージ(714)のアリコートは、マルチウェルプレート(704)の個々のウェル(702)に分配され、次いで、目的の微生物(712)を含有する検査試料アリコートが添加され、ファージが可溶性インジケーター(716)(例えば、ルシフェラーゼ)を生成するのに十分な期間、インキュベートされる(706)(例えば、37℃で45分間)。次に、可溶性インジケーターおよび繁殖欠損指標ファージを含有するプレートウェル(708)を、アッセイして(710)、プレート(718)におけるインジケーター活性を測定することができる(例えば、ルシフェラーゼアッセイ)。本実施形態では、検査試料は、濃縮されない(例えば、遠心分離によって)が、ある期間にわたり繁殖欠損指標ファージと共に直接的に単純にインキュベートされ、その後、ルシフェラーゼ活性についてアッセイされる。
【0111】
一部の実施形態では、試料は、成長を促す条件下でのインキュベーションによって、検査に先立ち富化することができる。斯かる実施形態では、富化期間は、試料の型およびサイズに応じて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15もしくは16時間またはそれよりも長くなることができる。
【0112】
一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、検出可能なインジケーター部分を含み、単一の病原性細胞(例えば、細菌)の感染は、インジケーター部分により生成された増幅されたシグナルによって検出することができる。よって、本方法は、繁殖欠損指標ファージ感染の際に産生されたインジケーター部分を検出するステップを含むことができ、インジケーターの検出は、目的の細菌等の目的の微生物が試料中に存在することを指し示す。例示的な実施形態では、本発明は、試料における目的の細菌を検出するための方法であって、目的の細菌に感染する繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするステップであって、目的の細菌の感染後のインジケーター遺伝子の発現が、可溶性インジケーター遺伝子産物の産生をもたらすように、繁殖欠損指標ファージが、ファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む、ステップと、インジケーター遺伝子産物を検出するステップであって、インジケーター遺伝子産物の陽性検出(すなわち、存在、レベルまたは量の検出)が、目的の細菌が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含むことができる。一部の実施形態では、検出されるインジケーター部分の量は、試料中に存在する目的の細菌の量に対応する。
【0113】
本明細書においてより詳細に記載されている通り、本発明の実施形態に係る方法およびシステムは、ある濃度範囲の繁殖欠損指標ファージを利用して、試料中に存在し得る目的の微生物(細菌等)を感染させることができる。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージが、単一の細胞等、極めて少ない数で試料中に存在する標的微生物(細菌等)を迅速に見出し、結合し、感染するのに十分な濃度で試料に添加される。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージの濃度は、1時間未満で標的細菌を見出し、結合し、感染するのに十分であってよい。他の実施形態では、これらの事象は、試料への繁殖欠損指標ファージの添加後に2時間未満または3時間未満で生じ得る。例えば、ある特定の実施形態では、インキュベートステップのための繁殖欠損指標ファージ濃度は、1×10PFU/mL超、1×10PFU/mL超、1×10PFU/mL超または1×10PFU/mL超である。
【0114】
試料における目的の微生物を検出するための方法の一部の実施形態では、目的の微生物に感染する繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするステップに先立ち、繁殖欠損指標ファージは、感染因子ストックの産生の際に生成され得るいかなる残渣インジケータータンパク質も含まないように精製することができる。よって、ある特定の実施形態では、本方法は、繁殖欠損指標ファージを精製するステップを含むことができる。組換え繁殖欠損指標ファージは、様々な方法によって、例えば、試料とのインキュベーションに先立ち塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用することにより精製することができる。精製は、DNAを持たないファージ(すなわち、空ファージまたは「ゴースト」)除去の付加利益を有することができる。
【0115】
本発明の方法の一部の実施形態では、微生物は、試料からの微生物のいかなる単離または精製も用いずに検出することができる。例えば、ある特定の実施形態では、1個または数個の目的の微生物を含有する試料は、スピンカラム、マイクロタイターウェルまたはフィルター等のアッセイ容器に直接的に添加することができ、アッセイは、このアッセイ容器において実行される。斯かるアッセイの様々な実施形態は、本明細書に開示されている。
【0116】
本方法の多くの実施形態では、マルチウェルプレートを使用して、アッセイを実行する。例えば、検査試料のアリコートは、マルチウェルプレートのウェルに直接的に分配することができ、繁殖欠損指標ファージがウェルに添加され、感染に十分な期間の後、溶解緩衝液をインジケーター部分のための基質(例えば、ルシフェラーゼインジケーターのためのルシフェラーゼ基質)と共に添加し、インジケーターシグナルの検出についてアッセイすることができる。本方法の一部の実施形態は、フィルタープレートにおいて行うことができる。本方法の一部の実施形態は、繁殖欠損指標ファージによる感染前に、試料の濃縮ありまたはなしで行うことができる。
【0117】
プレート(または検出を行うことができる他のいずれかの容器)の選択は、検出ステップに影響を与えることができる。例えば、一部のプレートは、光放射の検出に影響を与え得る、有色または白色のバックグラウンドを含むことができる。一般的に言えば、白色プレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルも生じる。他の色のプレートは、より低いバックグラウンドシグナルを生成することができるが、ややより低い感度も有する。その上、バックグラウンドシグナルの理由の1つは、あるウェルから別の隣接するウェルへの光の漏出である。白色ウェルを有するいくつかのプレートがあるが、残りのプレートは黒色である。このことは、ウェル内側の高いシグナルを可能にするが、ウェル間の光漏出を防止し、よって、バックグラウンドを減少させることができる。よって、プレートまたは他のアッセイ容器の選択は、アッセイの感度およびバックグラウンドシグナルに影響され得る。
【0118】
本発明の実施形態に係る方法は、感度を増加させる様々な他のステップを含むことができる。例えば、本明細書においてより詳細に記述される通り、方法は、過剰な繁殖欠損指標ファージおよび/またはルシフェラーゼ、または繁殖欠損指標ファージ調製物を混入した他のレポータータンパク質を除去するために、繁殖欠損指標ファージを添加した後に、ただしインキュベートする前に、捕捉され感染した微生物(細菌等)を洗浄するためのステップを含むことができる。
【0119】
本発明の実施形態に係る方法は、「サンプリング」または「サンプリングステップ」と称することができる、試料調製に関連する1種または複数のステップを含むことができる。一部の実施形態では、試料は、調製、濃縮または希釈なしで、本発明の実施形態に係る方法において直接的に使用することができる。例えば、液体試料は、直接的にアッセイすることができる。他の実施形態では、試料は、緩衝溶液または細菌培養培地を含むことができるがこれらに限定されない溶液に希釈または懸濁することができる。液体中で固体を刻む、混合するまたは液浸軟化することにより、固体または半固体である試料を液体に懸濁することができる。一部の実施形態では、試料は、目的の細菌等の目的の微生物への繁殖欠損指標ファージの付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。一部の実施形態では、好まれるpH範囲は、繁殖欠損指標ファージが細菌細胞に付着するのに適した範囲であり得る。試料はまた、Na+、Mg2+およびK+を含むがこれらに限定されない、適切な濃度の二価および一価カチオンを含有するべきである。
【0120】
好ましくは検出アッセイを通して、試料は、試料中に潜在的に存在するいずれかの目的の微生物の生存度を維持する温度に維持される。繁殖欠損指標ファージが細菌細胞に付着するステップにおいて、繁殖欠損指標ファージの活性を容易にする温度に試料を維持することが好ましい。斯かる温度は、少なくとも約25℃かつ約45℃以下である。一部の実施形態では、試料は、約37℃に維持される。一部の実施形態では、試料は、目的の微生物への繁殖欠損指標ファージの結合または付着の際に、穏やかな混合または振盪に供される。
【0121】
サンプリングは、種々の仕方を使用して行うことができる。一部の実施形態では、試料(例えば、食物試料)は先ず液化され、固体支持体、例えば、固体支持体またはビーズが、液体試料に浸される。一部の実施形態では、固体支持体は先ず、サンプリング前に管内の培養培地に漬けられる。一部の実施形態では、固体支持体は、サンプリング前に乾燥している。一部の実施形態では、液体試料は先ず、ある期間、例えば、24時間未満、12時間未満、9時間もしくはそれ未満、8時間もしくはそれ未満、7時間もしくはそれ未満、6時間もしくはそれ未満、5時間もしくはそれ未満、4時間もしくはそれ未満、3時間もしくはそれ未満または2時間もしくはそれ未満の富化期間未満にわたり培養される(「培養富化」)。他の実施形態では、試料は、固体支持体における目的の微生物の捕捉後に富化することができる。一部の実施形態では、微生物を有する固体支持体は、成長培地においてインキュベートして、微生物の数を増やすことができる。このステップは、「インキュベーション富化」と称される。斯かる実施形態では、富化期間は、試料の型およびサイズに応じて、1、2、3、4、5、6、7もしくは最大8時間またはそれよりも長くなることができる。
【0122】
一部の実施形態では、目的の微生物の検出は、微生物の集団を増加させる仕方として試料を培養する必要なく完了することができる。例えば、ある特定の実施形態では、検出に要求される総時間は、26.0、25.0、24.0、23.0、22.0、21.0、20.0、19.0、18.0、17.0、16.0時間、15.0時間、14.0時間、13.0時間、12.0時間、11.0時間、10.0時間、9.0時間、8.0時間、7.0時間、6.0時間、5.0時間、4.0時間、3.0時間、2.5時間、2.0時間、1.5時間、1.0時間、45分間未満または30分間未満である。結果を得るまでの時間の最小化は、様々な適用、例えば、病原体に関する食物および環境検査において重要である。
【0123】
本発明の実施形態に係る方法は、繁殖欠損指標ファージを目的の微生物に感染させることが意図されるステップを含むことができる。例えば、繁殖欠損指標ファージは、そのうちいくつかが本文書に記載されている公知方法によって、目的の微生物と接触されるまたは接触させることができる。目的の微生物との接触の際に、繁殖欠損指標ファージは、目的の微生物に感染し、インジケーター遺伝子を発現する。感染時間、すなわち、試料が繁殖欠損指標ファージと最初に接触される時点と検出ステップが開始される(例えば、酵素インジケーター部分のための基質が、繁殖欠損指標ファージと接触された試料に添加される)時点との間の期間は、繁殖欠損指標ファージの型および試料における目的の微生物の濃度に応じて変動し得る。細菌等の目的の微生物が固体支持体に捕捉されている装置の使用は、感染に要求される時間を著しく低下させることができ、例えば、感染時間は、1時間またはそれ未満であってよく、一方、細菌の捕捉に固体支持体が使用されない標準アッセイにおいて、感染は典型的に、少なくとも4時間である。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されている方法のための感染の時間は、6.0時間、5.0時間、4.0時間、3.0時間、2.5時間、2.0時間、1.5時間、1.0時間、45分間未満または30分間未満である。一部の実施形態では、感染の時間は、約1時間、約2時間または約3時間である。
【0124】
本発明の実施形態に係る方法は、インジケーターによって産生されたシグナルの検出に関連するさらに1ステップを含むことができる。インジケーター遺伝子の発現によって産生されたインジケーターは、公知方法を使用して検出することができる。例えば、1種または複数のシグナル産生構成成分を、インジケーターと反応させて、検出可能なシグナルを生成することができる。一部の実施形態では、インジケーターは、生物発光化合物であってよい。インジケーターが酵素である場合、検出可能なシグナルの増幅は、酵素を1種もしくは複数の基質または追加的な酵素および基質と反応させて、検出可能な反応産物を産生することにより得られる。別のシグナル産生システムにおいて、インジケーターは、蛍光化合物であってよく、この場合、検出可能なシグナルを産生するためにインジケーターの酵素の操作は要求されない。例えば、フルオレセインおよびローダミンならびにこれらの誘導体およびアナログを含む蛍光分子は、斯かるシステムにおけるインジケーターとしての使用に適する。さらに別の実施形態では、インジケーター部分は、補因子であってよく、よって検出可能なシグナルの増幅は、補因子を酵素および1種もしくは複数の基質または追加的な酵素および基質と反応させて、検出可能な反応産物を産生することにより得られる。一部の実施形態では、検出可能なシグナルは比色定量的(colorimetric)である。特定のインジケーターの選択は、本発明にとって重大な意味を持たないが、インジケーターは、それ自体が検出可能なシグナルを生成することができる、または機器により検出可能である、または酵素/基質シグナル産生システム等の1種もしくは複数の追加的なシグナル産生構成成分と併せて検出可能となるであろうことに留意されたい。一部の実施形態では、検出ステップは、作用するためにインジケーター酵素のための基質の添加を要求するであろう。基質は、種々の仕方で添加することができる。一部の実施形態では、インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、30分間またはそれよりも多く継続することができ、様々な時点における検出が、感度の最適化に望ましいことがある。一部の実施形態では、ルミノメーター読み取り値は、最初に、および反応が完了するまで3または5または10または15分間間隔で取ることができる。
【0125】
本発明の方法の一部の実施形態は、「検出」と称することができる、インジケーターのシグナルの検出に関連する1種または複数のステップを含む。産物インジケーター遺伝子を検出するステップは、その酵素活性を検出するステップを含むことができる。インジケーター遺伝子の産物を検出するステップは、光の放射を検出するまたは光学密度を検出するステップを含むことができる。一部の実施形態では、装置または容器の区画から試料を除去する必要がなく、感染およびその後の基質とのインキュベーションに起因するいかなる光学シグナルも検出可能となるように、基質が検査試料と混合される装置または容器の区画は透明である。この場合、シグナルは、装置または容器の区画の壁を通して検出することができる。一部の実施形態では、反応した試料を含有する装置または容器は、生じたシグナルを検出するための機器に挿入される。他の実施形態では、検出機器は、反応した試料を含有する装置の走査に使用される。
【0126】
一部の実施形態では、ルミノメーターを使用して、インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応を検出することができる。RLUの検出は、ルミノメーターにより達成することができる、または他の機械もしくはデバイスを使用することもでき、一部の例は、PROMEGA(登録商標)(Madison、WI)のGLOMAX(登録商標)20/20およびGLOMAX(登録商標)である。一部の実施形態では、分光光度計、CCDカメラまたはCMOSカメラは、色の変化および他の光放射を検出することができる。絶対的RLUは、検出に重要であるが、単一の細胞または少数の細胞が確実に検出されるためには、シグナル対バックグラウンド比も高い(例えば、>2.0、>2.5または>3.0)必要がある。バックグラウンドシグナルは、上に記載されているものと同じ手順を使用して、微生物を含有しない対照試料を測定することにより得ることができる。一部の実施形態では、レポーターまたはインジケーター遺伝子からのシグナルの検出は、例えば、光ダイオードまたはPMT(光電子増倍管)技術を用いる機器の使用を含むことができる。一部の実施形態では、ハンドヘルドルミノメーターをシグナルの検出に用いることができる。適したPMTハンドヘルドルミノメーターは、3M(Maplewood、MN)、BIOCONTROL(登録商標)(Seattle、WA)およびCHARM SCIENCES(登録商標)(Lawrence、MA)から入手できる。適した光ダイオードハンドヘルドルミノメーターは、HYGIENA(登録商標)(Camarillo、CA)およびNEOGEN(登録商標)(Lansing、MI)から入手できる。これらのハンドヘルドルミノメーターは典型的に、同じ試料について、伝統的なルミノメーター(GLOMAX(登録商標)またはGLOMAX(登録商標)20/20等)と比較して、はるかにより低い読み取り値を産生するが、複数の実験は、産生されたシグナルが、これらのハンドヘルドルミノメーターによって検出されるのに十分であったことを示した。微生物を検出するためにこれらのハンドヘルドデバイスを使用できることはまた、伝統的な非ハンドヘルド検出デバイスを使用した検出方法には欠如することが多い便宜および柔軟性を提供する。
【0127】
一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、ファージが特異的に認識および感染する微生物の感染の際にのみ産生される、ルシフェラーゼ等の酵素のための遺伝子を含有するように遺伝子操作される。一部の実施形態では、インジケーター部分は、ウイルス生活環の後期に発現される。一部の実施形態では、本明細書に記載されている通り、インジケーターは、可溶性タンパク質(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)であり、そのコピー数を限定するファージ構造タンパク質と融合されていない。よって、繁殖欠損指標ファージを利用する一部の実施形態では、本発明は、目的の微生物を検出するための方法であって、少なくとも1個の目的の試料微生物を捕捉するステップと、少なくとも1個の目的の微生物を複数の繁殖欠損指標ファージと共にインキュベートするステップと、感染および可溶性インジケーター部分の発現のための時間を与えるステップと、インジケーター部分を検出するステップであって、インジケーター部分の検出が、目的の微生物が試料中に存在することを実証する、ステップとを含む方法を含む。
【0128】
例えば、一部の実施形態では、目的の検査試料微生物は、プレートの表面に結合させることによりまたは細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔径スピンフィルターまたはプレートフィルター)を通して試料を濾過することにより捕捉することができる。ある実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、フィルターにおいて直接的に捕捉された試料に最小体積で添加される。ある実施形態では、フィルターまたはプレート表面に捕捉された微生物をその後、1または複数回洗浄して、過剰な結合していない繁殖欠損指標ファージを除去する。ある実施形態では、培地(例えば、本明細書でLBとも呼ばれるルリア・ベルターニ(Luria-Bertani)ブロス、本明細書でBPWとも呼ばれる緩衝ペプトン水、または本明細書でTSBとも呼ばれるトリプシン大豆ブロスもしくはトリプトン大豆ブロス)を、さらなるインキュベーション時間にわたり添加して、インジケーター部分をコードする遺伝子の十分に高レベルの発現を可能にすることができる。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージとのインキュベーションステップは、インジケーター部分から検出可能な指定のレベルのシグナル(例えば、約100~10000RLU/秒または約200~5000RLU/秒)または指定のレベルのシグナル対ノイズ比(例えば、1~500、5~200または10~100)を可能にするために、インジケーター部分をコードする遺伝子の十分なレベルの発現を達成するのに十分なほど長いことのみを必要とする。
【0129】
一部の実施形態では、目的の微生物を含む検査試料のアリコートは、スピンカラムに添加することができ、繁殖欠損指標ファージによる感染およびいずれか過剰な繁殖欠損指標ファージを除去するための必要に応じた洗浄後に、検出される可溶性インジケーターの量は、感染した目的の微生物における繁殖欠損指標ファージの量に比例するであろう。
【0130】
次に、細菌の溶解の際に周囲の液体中に放出される可溶性インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)を測定および定量化することができる。ある実施形態では、フィルターを通して溶液をスピンし、インジケーター酵素のための基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)の添加後に、新たなレセプタクル(例えば、ルミノメーター内の)内にアッセイのために濾液を収集する。その代わりに、インジケーターシグナルは、フィルターにおいて直接的に測定することができる。よって、例示的な実施形態では、インジケーター基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)は、フィルター上に残るまたはプレート表面に結合した試料の部分と共にインキュベートすることができる。したがって、一部の実施形態では、固体支持体は、96ウェルフィルタープレート(または通常の96ウェルプレート)であり、基質反応は、ルミノメーター内に直接的にプレートを置くことにより検出することができる。例えば、ある実施形態では、本発明は、目的の目的の微生物を検出するための方法であって、96ウェルフィルタープレートに捕捉された目的の微生物の細胞を、感染後にルシフェラーゼを発現することができる複数の繁殖欠損指標ファージに感染させるステップと、過剰な繁殖欠損指標ファージを洗浄除去するステップと、LBブロスを添加し、繁殖欠損指標ファージがルシフェラーゼを発現し、目的の微生物を溶解するための時間(例えば、30~120分間、60~120分間または80~100分間、例えば、約90分間)を与えるステップと、ルシフェラーゼ基質を添加し、96ウェルプレートにおいて直接的にルシフェラーゼ活性を測定することによりインジケータールシフェラーゼを検出するステップであって、ルシフェラーゼ活性の検出が、目的の細菌が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含むことができる。
【0131】
別の実施形態では、本発明は、目的の目的の微生物を検出するための方法であって、96ウェルプレートにおける液体の溶液または懸濁物中の細胞を、感染後にルシフェラーゼを発現することができる複数の繁殖欠損指標ファージに感染させるステップと、繁殖欠損指標ファージが、ルシフェラーゼを発現し、目的の微生物を溶解するための時間(例えば、30~120分間;60~120分間または80~100分間、例えば、約90分間)を与えるステップと、ルシフェラーゼ基質を添加し、96ウェルプレートにおいて直接的にルシフェラーゼ活性を測定することにより、インジケータールシフェラーゼを検出するステップであって、ルシフェラーゼ活性の検出が、目的の微生物が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含むことができる。斯かる実施形態では、捕捉ステップは必要ない。一部の実施形態では、液体の溶液または懸濁物は、野菜洗浄液(vegetable wash)等、消費できる検査試料であってよい。一部の実施形態では、液体の溶液または懸濁物は、濃縮LBブロス、トリプシン/トリプトン大豆ブロス、ペプトン水または栄養素ブロスで強化された野菜洗浄液であってよい。一部の実施形態では、液体の溶液または懸濁物は、LBブロスに希釈された細菌であってよい。
【0132】
一部の実施形態では、目的の微生物の溶解は、検出ステップの前、その間またはその後に生じ得る。感染した溶解していない細胞は、一部の実施形態では、ルシフェラーゼ基質の添加後に検出可能であり得る。完全な細胞溶解なしで、ルシフェラーゼは、細胞から出ることができる、および/またはルシフェラーゼ基質は、細胞に進入することができる。よって、ライセートに放出されたルシフェラーゼのみがルミノメーターにおいて解析される(まだ無傷細菌の内側にあるルシフェラーゼは解析されない)スピンフィルターシステムを利用する実施形態のため、検出のために溶解が要求される。しかし、無傷および溶解された細胞に満ちた本来のプレートがルミノメーターにおいて直接的にアッセイされる、溶液または懸濁物中に試料を有するフィルタープレートまたは96ウェルプレートを利用する実施形態のため、溶解は検出に必要ではない。
【0133】
一部の実施形態では、インジケーター部分(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、30分間またはそれよりも多く継続することができ、様々な時点での検出が、感度の最適化に望ましくなることができる。例えば、固体支持体として96ウェルフィルタープレートを、また、インジケーターとしてルシフェラーゼを使用した実施形態では、ルミノメーター読み取り値は、最初に、および反応が完了するまで10または15分間間隔で取ることができる。
【0134】
驚くべきことに、検査試料の感染に利用される高濃度の繁殖欠損指標ファージは、非常に短い時間枠での極めて少ない数の標的微生物の検出の達成に成功した。検査試料とファージとのインキュベーションは、一部の実施形態では、単一のファージ生活環に十分な長さであることのみを必要とする。一部の実施形態では、このインキュベートステップのための繁殖欠損指標ファージ濃度は、7×10、8×10、9×10、1.0×10、1.1×10、1.2×10、1.3×10、1.4×10、1.5×10、1.6×10、1.7×10、1.8×10、1.9×10、2.0×10、3.0×10、4.0×10、5.0×10、6.0×10、7.0×10、8.0×10、9.0×10または1.0×10PFU/mLを超える。
【0135】
本発明の方法の実施形態は、個々の微生物を検出することができる。よって、ある特定の実施形態では、本方法は、試料中に存在する微生物の≦10個の細胞(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9個の微生物)を検出することができる。例えば、ある特定の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、目的の細菌に高度に特異的である。ある実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、他の型の細菌の存在下で目的の細菌を区別することができる。ある特定の実施形態では、繁殖欠損指標ファージを使用して、試料中の特異的な型の単一の細菌を検出することができる。ある特定の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、試料中のわずか2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90または100個の特異的な細菌を検出する。
【0136】
感染に利用される多数のファージは、標的細胞を死滅させ、これにより、有用なシグナルの生成を防止した「外からの溶菌」に以前に関連付けられた。本明細書に記載されている繁殖欠損指標ファージの調製されたストックのクリーンアップ(clean-up)は、この問題の軽減に役立つことができる(例えば、塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離によるクリーンアップ)。繁殖欠損指標ファージに関連するあらゆる混入ルシフェラーゼの除去に加えて、このクリーンアップは、ゴースト粒子(DNAを失った粒子)を除去することもできる。ゴースト粒子は、「外からの溶菌」により細菌細胞を溶解し、細胞の早発性の死滅を引き起こし、これにより、インジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡は、粗ファージライセート(すなわち、塩化セシウムクリーンアップ前の)が、50%超のゴーストを有し得ることを実証する。これらのゴースト粒子は、細胞膜を穿刺する多くのファージ粒子の作用により、微生物の早発性の死滅に寄与することができる。よって、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題に寄与していた可能性がある。さらに、繁殖欠損指標ファージの精製された調製物は、アッセイが、洗浄ステップなしで行われることを可能にし、これにより、アッセイを初期濃縮ステップなしで行うことが可能になる。しかし、本発明の方法の一部の実施形態が、初期濃縮ステップを含み、一部の実施形態では、この濃縮ステップが、より短い富化インキュベーション時間を可能にすることを理解されたい。
【0137】
本発明の方法の一部の実施形態は、確認アッセイをさらに含むことができる。通常より後期の時点で初期結果を確認するための種々のアッセイが、当技術分野で公知である。例えば、実施例に記載されている通りに試料を培養することができ(例えば、CHROMAGAR(登録商標)、DYNABEADS(登録商標)アッセイ)、PCRを利用して、微生物DNAの存在を確認することができる、または他の確認アッセイを使用して、初期結果を確認することができる。
【0138】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、感染因子による検出に加えて、試料から目的の細菌等の目的の微生物を精製および/または濃縮するための結合剤(例えば、抗体)の使用を組み合わせる。例えば、ある特定の実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物を検出するための方法であって、目的の細菌等の目的の微生物に特異的な捕捉抗体を使用して、前の(prior)支持体において試料から微生物を捕捉するステップと、目的の細菌に感染する繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするステップであって、目的の細菌の感染後のインジケーター遺伝子の発現が、可溶性インジケータータンパク質産物をもたらすように、繁殖欠損指標ファージが、繁殖欠損指標ファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む、ステップと、インジケータータンパク質産物を検出するステップであって、インジケータータンパク質産物の陽性検出が、目的の細菌が試料中に存在することを指し示す、ステップとを含む方法を含む。
【0139】
例えば、図31は、本発明の実施形態に係る繁殖欠損指標ファージを使用して、目的の微生物を検出するためのハイブリッドイムノファージ(HIP)アッセイを描写する。試料は先ず、微生物特異的抗体でコーティングされたマイクロタイタープレートウェルに添加される(802)。次に、プレートを洗浄して、捕捉抗体への目的の微生物の結合を容易にする(804)。完全な捕捉を可能にする十分な時間の後に、微生物特異的繁殖欠損指標ファージを含有する溶液を、各試料に添加する(806)。ファージとのインキュベーションは、捕捉された微生物への単一のまたは複数のファージの結合および付着をもたらす(808)。最後に、試料をインキュベートして、ルシフェラーゼ発現を容易にし、これにより、細胞溶解および可溶性ルシフェラーゼの放出がもたらされる(810)。
【0140】
システムおよびキット
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に開示されている方法を行うための構成成分を含むシステム(例えば、自動化されたシステムまたはキット)を含む。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージが、本発明に係るシステムまたはキットに含まれる。本明細書に記載されている方法は、斯かる繁殖欠損指標ファージシステムおよび/またはキットを利用することもできる。本明細書に記載されている一部の実施形態は、本方法を行うために要求される最小量の試薬および材料を考慮すると、自動化および/またはキットに特に適する。ある特定の実施形態では、キットの構成成分のそれぞれは、第1の部位から第2の部位へと送達可能な内蔵型ユニットを含むことができる。
【0141】
一部の実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物の迅速な検出のためのシステムまたはキットを含む。本システムまたはキットは、ある特定の実施形態では、目的の微生物に特異的な繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするための構成成分であって、繁殖欠損指標ファージがインジケーター部分を含む、構成成分と、インジケーター部分を検出するための構成成分とを含むことができる。本発明のシステムおよびキットの両方の一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、目的の細菌に特異的に感染することができ、微生物の感染の際のインジケーター遺伝子の発現が、可溶性インジケータータンパク質産物をもたらすように、インジケーター部分として繁殖欠損指標ファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む。一部のシステムは、固体支持体に目的の微生物を捕捉するための構成成分をさらに含む。本システムまたはキットは、ある特定の実施形態では、細胞結合構成成分と、シグナル検出構成成分とを含む、固体支持体を含む装置であって、シグナル検出構成成分が、繁殖欠損指標ファージによる試料中の微生物の感染から産生されたインジケーター遺伝子産物を検出することができる、装置を含むことができる。一部の実施形態では、シグナル検出構成成分は、ハンドヘルドデバイスであり得るルミノメーターである。
【0142】
他の実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物の迅速な検出のための方法、システムまたはキットであって、目的の微生物に特異的な繁殖欠損指標ファージ構成成分であって、繁殖欠損指標ファージがインジケーター部分を含む、繁殖欠損指標ファージ構成成分と、インジケーター部分を検出するための構成成分とを含む方法、システムまたはキットを含む。ある特定の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、細菌等の特定の微生物に高度に特異的である。一部の実施形態では、繁殖欠損指標ファージは、他の型の微生物の存在下で、細菌等の目的の微生物を区別することができる。ある特定の実施形態では、システムまたはキットは、試料中のわずか2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90または100個の特異的な目的の微生物を検出する。
【0143】
ある特定の実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物の迅速な検出のためのシステムまたはキットであって、繁殖欠損指標ファージを含む第1の区画を有する装置を含むシステムまたはキットを含むことができる。装置は、基質を含有する第2の区画および/または培地を含有する第3の区画をさらに含むことができる。これらの区画のうち1個または複数は、スナップ式封着によって封着され、装置の他の部分から隔てられ、スナップ式封着の破損は、区画の内容物を区画から出し、試料と混合させる。その代わりに、システムまたはキットは、基質および/または培地を含有する別々の容器をさらに含むことができる。
【0144】
ある特定の実施形態では、システムおよび/またはキットは、捕捉された微生物試料を洗浄するための構成成分をさらに含むことができる。その上またはその代わりに、本システムおよび/またはキットは、インジケーター部分の量を決定するための構成成分であって、検出されたインジケーター部分の量が、試料中の微生物の量に対応する、構成成分をさらに含むことができる。例えば、ある特定の実施形態では、本システムまたはキットは、ルミノメーターまたはルシフェラーゼ酵素活性を測定するための他のデバイスを含むことができる。
【0145】
一部の実施形態では、システムおよび/またはキットは、試料中の他の構成成分から目的の微生物を単離するための構成成分を含むことができる。一部のシステムおよび/またはキットでは、同じ構成成分を複数のステップのために使用することができる。一部のシステムおよび/またはキットでは、ステップは、自動化されている、またはコンピュータ入力によりユーザーによって制御される、および/または液体取り扱いロボットが、少なくとも1ステップを行う。コンピュータ化されたシステムにおいて、本システムは、完全に自動化されていても、半自動化されていても、コンピュータを介してユーザーによって指示されてもよい(またはこれらのいくつかの組合せ)。
【0146】
よって、ある特定の実施形態では、本発明は、試料における目的の微生物の迅速な検出のためのシステムまたはキットであって、目的の微生物に特異的な繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするための構成成分であって、繁殖欠損指標ファージがインジケーター部分を含む、構成成分と、固体支持体上で試料から目的の微生物を捕捉するための構成成分と、捕捉された目的の微生物を洗浄して、結合していない繁殖欠損指標ファージを除去するための構成成分と、インジケーター部分を検出するための構成成分とを含むシステムまたはキットを含むことができる。一部の実施形態では、同じ構成成分を、捕捉および/またはインキュベートおよび/または洗浄するステップのために使用することができる(例えば、フィルター構成成分)。一部の実施形態はその上、試料中の目的の微生物の量を決定するための構成成分であって、検出されたインジケーター部分の量が、試料中の微生物の量に対応する、構成成分を含む。斯かるシステムは、微生物の迅速な検出方法のための上に記載されているものに類似した様々な実施形態および下位実施形態(subembodiment)を含むことができる。ある実施形態では、微生物は、細菌である。コンピュータ化されたシステムにおいて、本システムは、完全に自動化されていても、半自動化されていても、コンピュータを介してユーザーによって指示されてもよい(またはこれらのいくつかの組合せ)。一部の実施形態では、本システムは、試料中の他の構成成分から目的の微生物を単離するための構成成分を含むことができる。
【0147】
ある実施形態では、本開示は、目的の微生物を検出するための構成成分を含むシステムまたはキットであって、試料中の他の構成成分から少なくとも1個の微生物を単離するための構成成分と、少なくとも1個の微生物を複数の繁殖欠損指標ファージに感染させるための構成成分と、少なくとも1個の感染した微生物を溶解させて、微生物中に存在する繁殖欠損指標ファージを放出させるための構成成分と、繁殖欠損指標ファージを、またはおそらくより優れた感度で、繁殖欠損指標ファージによってコードされ発現された可溶性タンパク質を検出するための構成成分であって、繁殖欠損指標ファージまたは繁殖欠損指標ファージの可溶性タンパク質産物の検出が、微生物が試料中に存在することを指し示す、構成成分とを含むシステムまたはキットを含む。繁殖欠損指標ファージは、NANOLUC(登録商標)インジケーター遺伝子を運ぶNANOLUC(登録商標)繁殖欠損指標ファージであってよい。
【0148】
他の実施形態では、本開示は、試料における目的の微生物の迅速な検出のためのキットであって、目的の微生物に特異的な繁殖欠損指標ファージと共に試料をインキュベートするための構成成分であって、繁殖欠損指標ファージがインジケーター部分を含む、構成成分と、固体支持体上で試料から目的の微生物を捕捉するための構成成分と、捕捉された目的の微生物を洗浄して、結合していない繁殖欠損指標ファージを除去するための構成成分と、インジケーター部分を検出するための構成成分とを含むシステムを含むことができる。一部の実施形態では、同じ構成成分を捕捉および/またはインキュベートおよび/または洗浄するステップのために使用することができる。一部の実施形態はその上、試料中の目的の微生物の量を決定するための構成成分であって、検出されたインジケーター部分の量が、試料中の目的の微生物の量に対応する、構成成分を含む。斯かるキットは、微生物の迅速な検出方法のための上に記載されているものに類似した様々な実施形態および下位実施形態を含むことができる。ある実施形態では、微生物は、細菌である。一部の実施形態では、キットは、試料中の他の構成成分から目的の微生物を単離するための構成成分を含むことができる。
【0149】
本開示のこれらのシステムおよびキットは、様々な構成成分を含む。本明細書で使用される場合、用語「構成成分」は、広く定義されており、列挙された方法の実行に適したいずれか適した装置または装置の集合を含む。構成成分は、いずれか特定の仕方で、互いに対して一体的に接続または位置付けされている必要はない。本開示は、互いに対する構成成分のいずれか適した配置を含む。例えば、構成成分は、同じ部屋にある必要はない。しかし一部の実施形態では、構成成分は、一体的ユニットにおいて互いに接続されている。一部の実施形態では、同じ構成成分が、複数の機能を果たすことができる。
【0150】
コンピュータシステムおよびコンピュータ可読媒体
ある特定の実施形態では、本開示は、システムを含むことができる。本システムは、本開示の組成物の少なくとも一部を含むことができる。また、本システムは、本方法を行うための構成成分の少なくとも一部を含むことができる。ある特定の実施形態では、本システムは、キットとして処方される。よって、ある特定の実施形態では、本開示は、試料における目的の微生物の迅速な検出のためのシステムを含むことができる。本システムは、本開示の組成物の少なくとも一部を含むことができる。また、本システムは、本方法を行うための構成成分の少なくとも一部を含むことができる。ある特定の実施形態では、本システムは、キットとして処方される。よって、ある特定の実施形態では、本開示は、試料における目的の微生物の迅速な検出のためのシステムであって、上に記載されている装置を含むシステムを含むことができる。例えば、装置は、バクテリオファージゲノムに挿入された遺伝的構築物を有する組換えバクテリオファージを含む第1の区画であって、構築物が、プロモーターおよびインジケーター遺伝子を含み、固体支持体が、細胞結合構成成分を含む、第1の区画を含むことができる。一部の実施形態では、本システムは、ハンドヘルド検出デバイスも含む。
【0151】
本技法に記載されているシステム、またはその構成成分のいずれかは、コンピュータシステムの形態で具体化することができる。コンピュータシステムの典型的な例は、汎用コンピュータ、プログラムされたマイクロプロセッサー、マイクロコントローラー、周辺集積回路エレメント、および本技法の方法を構成するステップを実装することができる他のデバイスまたはデバイスの配置を含む。
【0152】
コンピュータシステムは、コンピュータ、入力デバイス、ディスプレイユニットおよび/またはインターネットを含むことができる。コンピュータは、マイクロプロセッサーをさらに含むことができる。マイクロプロセッサーは、通信バスに接続され得る。コンピュータは、メモリを含むこともできる。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)を含むことができる。コンピュータシステムは、記憶デバイスをさらに含むことができる。記憶デバイスは、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光ディスクドライブ等、ハードディスクドライブまたはリムーバブル記憶ドライブであってよい。記憶デバイスは、コンピュータシステムにコンピュータプログラムまたは他の命令をローディングするための他の同様の手段であってもよい。コンピュータシステムは、通信ユニットを含むこともできる。通信ユニットは、コンピュータを、I/Oインターフェースを介して他のデータベースおよびインターネットに接続させる。通信ユニットは、データの他のデータベースへの転送と共に、他のデータベースからのデータの受信を可能にする。通信ユニットは、モデム、イーサネット(登録商標)カード、またはLAN、MAN、WANおよびインターネット等のデータベースおよびネットワークにコンピュータシステムを接続させることができるいずれか同様のデバイスを含むことができる。よって、コンピュータシステムは、I/Oインターフェースを介してシステムにアクセス可能な入力デバイスを介したユーザーからの入力を容易にすることができる。
【0153】
コンピューティングデバイスは典型的に、当該コンピューティングデバイスの一般管理および演算のための実行可能プログラム命令を提供するオペレーティングシステムを含み、典型的に、サーバーのプロセッサーによって実行されると、コンピューティングデバイスにその意図される機能を遂行させる命令を記憶するコンピュータ可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ等)を含むであろう。オペレーティングシステムに適した実装およびコンピューティングデバイスの一般機能性は、公知であるまたは市販されており、特に、本明細書における開示を踏まえて、当業者によって容易に実装される。
【0154】
コンピュータシステムは、入力データを処理するために、1個または複数の記憶エレメントに記憶された命令のセットを実行する。記憶エレメントは、所望に応じて、データまたは他の情報を保持することもできる。記憶エレメントは、処理機械に存在する情報源または物理メモリエレメントの形態であってよい。
【0155】
環境は、上に記述されている通り、種々のデータ記憶ならびに他のメモリおよび記憶媒体を含むことができる。これらは、コンピュータのうち1個もしくは複数にとってローカルな(および/またはその中に存在する)、またはネットワークを通じてコンピュータのいずれかもしくは全てからリモートにある記憶媒体上等、種々の場所に存在することができる。特定のセットの実施形態では、情報は、当業者によく知られている記憶領域ネットワーク(「SAN」)に存在することができる。同様に、コンピュータ、サーバーまたは他のネットワークデバイスに帰属する機能を遂行するための任意の必要なファイルは、適宜ローカルにおよび/またはリモートに記憶することができる。システムが、コンピューティングデバイスを含む場合、斯かるデバイスのそれぞれは、バス経由で電気的にカップルされ得るハードウェアエレメントを含むことができ、このエレメントは、例えば、少なくとも1個の中央処理ユニット(CPU)、少なくとも1個の入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラー、タッチスクリーンまたはキーパッド)および少なくとも1個の出力デバイス(例えば、ディスプレイデバイス、プリンターまたはスピーカー)を含む。斯かるシステムは、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)またはリードオンリーメモリ(「ROM」)等、ディスクドライブ、光記憶デバイスおよびソリッドステート記憶デバイス等、1個または複数の記憶デバイス、ならびにリムーバブル媒体デバイス、メモリカード、フラッシュカード等を含むこともできる。
【0156】
斯かるデバイスは、上に記載されている通り、コンピュータ可読記憶媒体リーダー、通信デバイス(例えば、モデム、ネットワークカード(無線または有線)、赤外線通信デバイス等)およびワーキングメモリを含むこともできる。コンピュータ可読記憶媒体リーダーは、リモート、ローカル、固定および/またはリムーバブル記憶デバイスを表すコンピュータ可読記憶媒体、ならびにコンピュータ可読情報を一時的におよび/またはより永続的に含有、記憶、送信および検索するための記憶媒体と接続され得る、またはこれを受信するように構成され得る。システムおよび様々なデバイスはまた、典型的に、クライアントアプリケーションまたはウェブブラウザー等のオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを含む少なくとも1個のワーキングメモリデバイス内に位置する多数のソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービスまたは他のエレメントを含むであろう。代替実施形態が、上に記載されているものの多数の変形形態を有することができることを認めるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアが使用されてもよい、および/または特定のエレメントが、ハードウェア、ソフトウェア(アプレット等のポータブルソフトウェアを含む)もしくは両方において実装され得る。さらに、ネットワーク入力/出力デバイス等、他のコンピューティングデバイスへの接続が用いられてよい。
【0157】
コードまたはコードの部分を含有するための非一過性記憶媒体およびコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報の記憶に使用され得、システムデバイスによってアクセスされ得る他のいずれかの媒体を含む、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールまたは他のデータ等、情報の記憶および/または伝送のためのいずれかの方法または技術において実装される揮発性および非揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブル媒体等が挙げられるがこれらに限定されない、記憶媒体および通信媒体を含む、当技術分野で公知のまたは使用されるいずれか適切な媒体を含むことができる。本明細書に提供される開示および教示に基づき、当業者であれば、様々な実施形態を実装するための他の仕方および/または方法を認めるであろう。
【0158】
コンピュータ可読媒体は、プロセッサーにコンピュータ可読命令を提供することができる電子、光、磁気または他の記憶デバイスを含むことができるがこれらに限定されない。他の例は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、コンテントアドレッサブルメモリ(「CAM」)、DDR、NANDフラッシュもしくはNORフラッシュ等のフラッシュメモリ、ASIC、構成されたプロセッサー、光記憶、磁気テープもしくは他の磁気記憶、またはコンピュータプロセッサーが命令を読み取ることができる他のいずれかの媒体を含むがこれらに限定されない。一実施形態では、コンピューティングデバイスは、ランダムアクセスメモリ(RAM)等、単一の型のコンピュータ可読媒体を含むことができる。他の実施形態では、コンピューティングデバイスは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ディスクドライブおよびキャッシュ等、2またはそれよりも多い型のコンピュータ可読媒体を含むことができる。コンピューティングデバイスは、外部ハードディスクドライブまたは外部DVDもしくはブルーレイドライブ等、1個または複数の外部コンピュータ可読媒体と通信することができる。
【0159】
上に記述されている通り、実施形態は、コンピュータ実行可能プログラム命令を実行するようにおよび/またはメモリに記憶された情報にアクセスするように構成されたプロセッサーを含む。命令は、例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)およびActionScript(Adobe Systems、Mountain View、Calif.)を含むいずれか適したコンピュータプログラミング言語で書き込まれたコードからのコンパイラおよび/またはインタープリターによって生成されたプロセッサー特異的命令を含むことができる。ある実施形態では、コンピューティングデバイスは、単一のプロセッサーを含む。他の実施形態では、デバイスは、2個またはそれよりも多いプロセッサーを含む。斯かるプロセッサーは、マイクロプロセッサー、デジタルシグナルプロセッサー(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および状態機械を含むことができる。斯かるプロセッサーは、PLC、プログラマブル割り込みコントローラー(PIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的にプログラマブルなリードオンリーメモリ(EPROMまたはEEPROM)または他の同様のデバイス等のプログラマブル電子デバイスをさらに含むことができる。
【0160】
コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェースを含む。一部の実施形態では、ネットワークインターフェースは、有線または無線通信リンク経由で通信するために構成されている。例えば、ネットワークインターフェースは、イーサネット(登録商標)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、802.16(Wi-Max)、ブルートゥース(登録商標)、赤外線等経由のネットワーク上の通信を可能にすることができる。別の例として、ネットワークインターフェースは、CDMA、GSM(登録商標)、UMTSまたは他のセルラー通信ネットワーク等のネットワーク上の通信を可能にすることができる。一部の実施形態では、ネットワークインターフェースは、ユニバーサルシリアルバス(USB)、1394 FireWire、シリアルもしくはパラレル接続、または同様のインターフェース経由等、別のデバイスとのポイントツーポイント接続を可能にすることができる。適したコンピューティングデバイスの一部の実施形態は、1個または複数のネットワーク上の通信のための2個またはそれよりも多いネットワークインターフェースを含むことができる。一部の実施形態では、コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェースに加えてまたはこれに代えて、データ記憶を含むことができる。
【0161】
適したコンピューティングデバイスの一部の実施形態は、マウス、CD-ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディオスピーカー、1個もしくは複数のマイクロホン、または他のいずれかの入力もしくは出力デバイス等の多数の外部または内部デバイスを含むことができる、またはこれと通信することができる。例えば、コンピューティングデバイスは、様々なユーザーインターフェースデバイスおよびディスプレイと通信することができる。ディスプレイは、LCD、LED、CRTその他を含むがこれらに限定されない、いずれか適した技術を使用することができる。
【0162】
コンピュータシステムによる実行のための命令のセットは、本技法の方法を構成するステップ等の特異的タスクを行うように処理機械に命令する様々なコマンドを含むことができる。命令のセットは、ソフトウェアプログラムの形態であってよい。さらに、ソフトウェアは、本技法に見られるように、別々のプログラムの集合、より大型のプログラムを有するプログラムモジュールまたはプログラムモジュールの部分の形態であってよい。ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミングの形態のモジュラープログラミングを含むこともできる。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、以前の処理の結果、または別の処理機械によって為される要求に応答することができる。
【0163】
本開示は、ある特定の実施形態を参照して開示されてきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲および精神から逸脱することのない、記載されている実施形態に対する多数の改変、変更および変化が可能である。したがって、本開示が、記載されている実施形態に限定されないが、その全範囲が、次の特許請求の範囲およびその均等の文言によって定義されることが意図される。
【実施例
【0164】
次の実施例は、結果を得るまでの短縮された時間での少数の細胞、さらに言えば単一の細菌の検出について記載するものであり、本開示を限定ではなく説明するためのものである。
【0165】
(実施例1 E.coli O157:H7血清型に特異的なバクテリオファージからの繁殖欠損指標ファージの創出および単離)
図3に説明されている相同組換えを使用することにより、E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖欠損指標ファージを、E.coli O157:H7血清型に特異的な親ファージから構築した。繁殖欠損指標ファージを生成するために、親ファージのgp22プロヘッド足場タンパク質のコード配列を、NANOLUC(登録商標)コード配列に置き換えた。E.coli O157:H7を、gp22を挟むマッチする細菌ゲノム配列に挟まれたNANOLUC(登録商標)遺伝子を含有する相同組換えプラスミド(図3におけるHRプラスミド)、およびgp22の発現カセットを含有するプラスミド(図3におけるpBAV.gp22)の両方により、それぞれ別々の抗生物質選択下で形質転換して、形質転換された細菌が、両方のプラスミドを含有することを確実にした。これらの二重に形質転換された細菌を親ファージに感染させて、HRプラスミドとの相同組換えを可能にし、gp22のファージのコピーを欠失させ、gp22は次いで、gp22コードプラスミドによってトランスで提供される。相同組換え後に、一連の力価測定および富化ステップを使用して、NANOLUC(登録商標)を発現する特異的組換えバクテリオファージを単離した。大規模産生を行って、検出アッセイにおける使用に適切な繁殖欠損指標ファージの高力価ストックを得た。図5において説明される通り、繁殖欠損指標ファージ(CBA120Δgp22 NanoLucと命名)は、野生型E.coli O157:H7において増殖できないため、gp22プロヘッド足場タンパク質を発現する高コピーpUCに基づくプラスミドで形質転換された操作されたE.coli O157:H7株(「許容的」E.coli O157:H7株)において増殖を行った。図6に示す成長曲線によって説明される通り、繁殖欠損指標ファージは、許容的E.coli O157:H7株における成長に成功した。塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して、混入したルシフェラーゼタンパク質からファージ粒子を分離して、バックグラウンドを低下させた。
【0166】
(実施例2 検出アッセイにおけるE.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖欠損指標ファージの検査)
E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖欠損指標ファージCBA120Δgp22 NanoLucを使用する戦略を図7に示す。E.coli O157:H7の感染後に、繁殖欠損指標ファージは、可溶性ルシフェラーゼを産生した。繁殖欠損指標ファージは、失われたgp22タンパク質が原因でファージ頭部を形成することができなかった。繁殖欠損指標ファージは、生存可能な娘ファージを産生しなかった。
【0167】
CBA120Δgp22 NanoLuc繁殖欠損指標ファージの活性を評価するために、その検出活性を、T4後期遺伝子プロモーターの制御下で、主要カプシドタンパク質遺伝子であるgp23の後に挿入されたNANOLUC(登録商標)遺伝子を有する、E.coli O157:H7に特異的な繁殖可能な指標ファージであるCBA120 NanoLucと比較した。E.coli O157:H7(ATCC 43888)の対数期および定常期培養物を希釈して、100μlの試料が使用された場合の、図8図11のx軸に指し示すCFUのおよその数を得た。各試料を、CBA120 NanoLucまたはCBA120Δgp22 NanoLucのいずれかに2時間37℃で感染させた。溶解緩衝液およびルシフェラーゼ基質を添加し、ルミノメーターにおいて試料を読み取った。5回の反復の測定を、各ファージにつき各CFUレベルで行った。各CFUについてのRLU値を平均した。各CFUレベル読み取り値における平均値を使用して、0 CFU読み取り値の平均で割って、図8図11のy軸にプロットされたシグナル/バックグラウンド値を計算した。
【0168】
細菌細胞が典型的に、高レベルの転写およびタンパク質発現が原因でより高いシグナルレベルを生成する、対数期のE.coli O157:H7培養試料において、上述の実験を行った。結果を図8および図9に説明する。細菌細胞が典型的に、より低いレベルの転写およびタンパク質発現が原因でより低いシグナルレベルを生成する、定常期のE.coli O157:H7培養試料においても、上述の実験を行った。結果を図10および図11に説明する。図8および図9において、白色バーは、繁殖欠損指標ファージ(CBA12.Δgp22.NLと標識)について得られた結果を指し示し、塗りつぶされたバーは、陽性対照(CBA120NLと標識)についての結果を指し示す。図8図11は、繁殖欠損指標ファージが、陽性対照に匹敵する成績を示したことを示す。
【0169】
(実施例3 E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖欠損指標ファージの特異性の検査)
E.coli O157:H7血清型に特異的な繁殖欠損指標ファージの特異性を検査した。前の実施例に記載されている通りに検出アッセイを行って、ある範囲の細菌を検出した。結果を図12に説明する。ルシフェラーゼシグナルは、E.coli O157:H7または操作された許容的E.coli O157:H7の検出の際に産生された。ルシフェラーゼシグナルは、いくつかのE.coli血清型を含む非標的細菌の検出の試みの際に検出されなかった。
【0170】
(実施例4 Salmonellaに特異的なTSP1バクテリオファージからの繁殖欠損指標ファージの創出および単離)
図13に説明されている相同組換えを使用することにより、Salmonellaに特異的な繁殖欠損指標ファージを、Salmonellaに特異的な親ファージから構築した。繁殖欠損指標ファージを生成するために、親ファージのgp22プロヘッド足場タンパク質のコード配列を、野生型TSP1においてNANOLUC(登録商標)コード配列に置き換えた。Salmonella ATCC 19585を、gp22を挟むマッチする細菌ゲノム配列(すなわち、gp21プロヘッドコアおよびプロテアーゼと、gp23主要カプシドタンパク質)に挟まれたNanoLuc遺伝子を含有する相同組換え(HR)プラスミドにより形質転換した(図13)。形質転換された細菌を、親ファージに感染させて、HRプラスミドとの相同組換えを可能にし、gp22のファージのコピーを欠失させ、これにより、同時に、繁殖欠損変異体を創出し、インジケーター遺伝子(すなわち、NANOLUC(登録商標))を挿入して、繁殖欠損指標ファージを創出した。感染した細胞は、およそ1:8の組換え:野生型ファージの比で野生型および組換えバクテリオファージのミックスを産生した。野生型ファージの同時感染は、失われたgp22遺伝子をトランスで補完することにより、組換え体複製を支持する。相同組換え後に、一連の力価測定および富化ステップを使用して、NANOLUC(登録商標)を発現する特異的組換えバクテリオファージを単離した。大規模産生を行って、検出アッセイにおける使用に適切な繁殖欠損指標ファージの高力価ストックを得た。図14において説明される通り、繁殖欠損指標ファージ(TSP1.Δgp22 NanoLucと命名)は、野生型Salmonella 19585において増殖できないため、gp22プロヘッド足場タンパク質を発現する高コピーpUCに基づくプラスミドで形質転換された操作されたSalmonella株(「許容的」Salmonella株)において増殖を行った。
【0171】
単離されたTSP1.Δgp22.NanoLucプラークを、TMS緩衝液に懸濁し、野生型または許容的Salmonella 19585培養物のいずれかに播種し、3時間37℃でインキュベートした。NanoGlo(PROMEGA(登録商標))アッセイを10μl試料において行った。野生型および許容的Salmonellaの両方のTSP1.Δgp22.NanoLuc感染は、バックグラウンドよりも高いシグナルをもたらした(100RLU/秒)(図15)。
【0172】
(実施例5 Salmonellaに特異的な繁殖欠損TSP1指標ファージの検出限界の検査)
定常期SalmonellaにおけるTSP1.Δgp22.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を評価するために、Salmonella Typhimurium ATCC 19585を、定常期になるまで18~20時間育成した。定常期培養物をTSBに希釈し、細胞を、図16に示すプレートレイアウトに従って96ウェルプレートに移した。TSP1.Δgp22.NanoLucファージを、Salmonella定常期培養物に添加し、2時間37℃でインキュベートした。ファージによる感染後に、溶解緩衝液、アッセイ緩衝液および基質を添加し、プレートをルミノメーターにおいて1秒間読み取った。結果を図16に示す。
【0173】
対数期SalmonellaにおけるTSP1.Δgp22.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を評価するために、Salmonella Typhimurium ATCC 19585を、定常期になるまで18~20時間育成した。次に、定常期細胞培養物をTSBに希釈し、初期対数期まで育成した。次に、対数期Salmonella培養物をTSBに希釈し、細胞を、図17に示すレイアウトに従って96ウェルプレートに移した。TSP1.Δgp22.NanoLucファージを、Salmonella対数培養物に添加し、2時間37℃でインキュベートした。ファージによる感染後に、溶解緩衝液、アッセイ緩衝液および基質を添加し、プレートをルミノメーターにおいて1秒間読み取った。結果を図17に示す。
【0174】
(実施例6 Salmonellaに特異的なバクテリオファージからの繁殖欠損SEA1指標ファージの創出および単離)
図18に説明されている相同組換えを使用することにより、Salmonellaに特異的な繁殖欠損指標ファージを、Salmonellaに特異的な親ファージから構築した。繁殖欠損指標ファージを生成するために、親ファージのgp84ベースプレートウェッジサブユニットタンパク質のコード配列を、野生型SEA1においてNANOLUC(登録商標)コード配列に置き換えた。Salmonella 27869を、gp84を挟むマッチする細菌ゲノム配列(すなわち、gp83頭部完成タンパク質と、gp85ベースプレートハブサブユニットおよび尾部リゾチーム)に挟まれたNanoLuc遺伝子を含有する相同組換え(HR)プラスミドの両方により形質転換した(図18)。次に、このような形質転換された細菌を、親ファージに感染させて、HRプラスミドとの相同組換えを可能にし、gp84のファージのコピーを欠失させ、これにより、同時に、繁殖欠損変異体を創出し、インジケーター遺伝子(すなわち、NANOLUC(登録商標))を挿入して、繁殖欠損指標ファージを創出した。感染した細胞は、野生型および組換えバクテリオファージのミックスを産生した。野生型ファージの同時感染は、失われたgp84遺伝子をトランスで補完することにより、組換え体複製を支持する。相同組換え後に、一連の力価測定および富化ステップを使用して、NANOLUC(登録商標)を発現する特異的組換えバクテリオファージを単離した。大規模産生を行って、検出アッセイにおける使用に適切な繁殖欠損指標ファージの高力価ストックを得た。図19において説明される通り、繁殖欠損指標ファージ(SEA1.Δgp84.NanoLucと命名)は、野生型Salmonella 27869において増殖できないため、gp84ベースプレートウェッジサブユニットタンパク質を発現する高コピーpUCに基づくプラスミドで形質転換された操作されたSalmonella株(「許容的」Salmonella株)において増殖を行った。
【0175】
(実施例7 野生型および許容的Salmonellaに特異的な繁殖欠損SEA1指標ファージの検査)
野生型Salmonella 27869の時間経過感染を、pUC57.トランス.SEA1.gp84形質転換27869許容的細胞と比較した。1.0×10個の細胞/ウェルの野生型Salmonella 27869(200μlのTSBにおける)またはpUC57.トランス.SEA1.gp84形質転換27869許容的細胞(200μlのTSB+carbにおける)のいずれかを、組換えバクテリオファージ(0.1のMOI)と共に三連でインキュベートした。4時間にわたり37℃で、NanoGloアッセイを10μl試料において行った。野生型Salmonellaにおける繁殖欠損組換えファージによって産生されたシグナルは、初期に低い状態でプラトーに達し、野生型Salmonellaにおけるファージの持続した成長の欠如を実証する(図20)。しかし、許容的Salmonellaにおけるシグナルは、経時的に増加を継続し、複数ラウンドの感染および継続した成長を指し示す(図20)。
【0176】
次に、野生型Salmonella株7001、8326、13076および27869の時間経過感染を行った。1.0×10個の細胞/ウェルの各野生型Salmonella株を、100μlのTSBにおいて組換えバクテリオファージ(0.01のMOI)と共にインキュベートした。0、1、2および5時間目に37℃でNanoGloアッセイを10μl試料において行った。野生型Salmonellaにおける繁殖欠損組換えファージによって産生されたシグナルは、初期に低い状態でプラトーに達した(図21)。
【0177】
5時間野生型培養物(40μl培養物)のプラークアッセイを行うことにより、野生型Salmonella株におけるSEA1.Δgp84.NanoLucバクテリオファージの複製を評価した。野生型Salmonella株7001、8326、13076および27869の培養物からプラークは形成されず(図22)、野生型Salmonella株におけるSEA1.Δgp84.NanoLucの複製の欠如を確認した。
【0178】
(実施例8 Salmonellaに特異的な繁殖欠損SEA1指標ファージの検出限界の検査)
SEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を評価するために、Salmonella Newport ATCC 27869を、AmpR puc57.SEA1.トランスgp84で形質転換した。対数期培養物をTSBに希釈し、細胞を、図23に示すプレートレイアウトに従って96ウェルプレートに移した。SEA1.Δgp84.NanoLucファージをSalmonella対数期培養物に添加し、2時間37℃でインキュベートした。ファージによる感染後に、溶解緩衝液、アッセイ緩衝液および基質を添加し、プレートをルミノメーターにおいて1秒間読み取った。結果を図23に示す。
【0179】
定常期SalmonellaにおけるSEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を評価するために、Salmonella chloreaesuis ATCC 27869を、定常期になるまで18~20時間育成した。次に、定常期細胞をTSBに希釈し、細胞を、図24に示すプレートレイアウトに従って96ウェルプレートに移した。SEA1.Δgp84.NanoLucファージをSalmonella定常期培養物に添加し、2時間37℃でインキュベートした。ファージによる感染後に、溶解緩衝液、アッセイ緩衝液および基質を添加し、プレートをルミノメーターにおいて1秒間読み取った。結果を図24に示す。
【0180】
対数期SalmonellaにおけるSEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの検出限界を評価するために、Salmonella chloreaesuis ATCC 27869を、定常期になるまで18~20時間育成した。次に、定常期細胞をTSBに希釈し、初期対数期まで育成した。次に、対数期培養物をTSBに希釈し、細胞を、図25に示すプレートレイアウトに従って96ウェルプレートに移した。SEA1.Δgp84.NanoLucファージをSalmonella定常期培養物に添加し、2時間37℃でインキュベートした。ファージによる感染後に、溶解緩衝液、アッセイ緩衝液および基質を添加し、プレートをルミノメーターにおいて1秒間読み取った。結果を図25に示す。
【0181】
(実施例9 検出アッセイにおけるSalmonellaに特異的な繁殖欠損SEA1指標ファージの検査)
SEA1.Δgp84.NanoLuc繁殖欠損指標ファージの活性を評価するために、その検出活性を、gp84の後に挿入されたNANOLUC(登録商標)遺伝子を有するSalmonellaに特異的な繁殖可能な指標ファージであるSEA1 NanoLucと比較した。各試料を、SEA1 NanoLucまたはSEA1.Δgp84.NanoLucのいずれかに2時間および4時間37℃で感染させた。溶解緩衝液およびルシフェラーゼ基質を添加し、ルミノメーターにおいて試料を読み取った。図26Aに示す通り、5回の反復の測定を、各ファージにつき各CFUレベルで行った。各CFUについてのRLU値を図26B(2時間感染)および図26C(4時間感染)に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図18
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【国際調査報告】