(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】変形性関節症を治療するための治療用アポトーシス細胞
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20221027BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221027BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20221027BHJP
C12N 5/078 20100101ALN20221027BHJP
【FI】
A61K35/12
A61P19/02
A61P19/00
A61P43/00 111
A61K35/15
C12N5/078
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512861
(86)(22)【出願日】2020-08-23
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 IL2020050919
(87)【国際公開番号】W WO2021044405
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515153004
【氏名又は名称】エンリヴェックス セラピューティクス アールアンドディー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メヴォラッチ、ドロール
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィック、シャイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BA30
4B065BD13
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZC41
(57)【要約】
本開示は、治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患を治療するための方法であって、治療を必要とする関節もしくはその近く、または治療を必要とする骨組織もしくはその近くに、初期アポトーシス細胞組成物を直接投与するステップを含む方法を提供する。本開示の方法は、痛み、腫れ、軟骨変性、及び骨びらんを軽減する、並びに、患部の関節の動きの自由度を向上させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法であって、
初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清を含む組成物を、前記対象の関節、または消失性骨疾患の疾患部位に直接投与するステップを含み、
前記組成物の投与により、前記対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
変形性関節症を治療する場合、
変形性関節症の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、関節軟骨の進行性変性の抑制、関節軟骨の進行性変性の軽減、生活の質の向上、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって
消失性骨疾患を治療する場合、
消失性骨疾患の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、骨組織のびらんの抑制、骨組織のびらんの遅延、骨折の軽減、骨折の抑制、骨破壊の軽減、骨破壊の抑制、骨量減少の抑制、骨量減少の軽減、骨密度低下の抑制、骨密度低下の軽減、生活の質の向上、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
当該方法は、前記関節の動きを向上させるものであり、
前記関節の動きの向上は、可動域の増加、または、痛みの軽減を伴う動きの増加、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記関節は、滑膜関節を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記滑膜関節は、膝関節、股関節、肩関節、頸部椎骨間の関節、肘関節、足首関節、手首関節、指関節、足指関節、親指関節、手関節、足関節、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
消失性骨疾患の前記疾患部位は、肩、頭蓋骨、骨盤帯、顎、肋骨、鎖骨、脊椎、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記組成物の前記関節への直接投与は、前記初期アポトーシス細胞集団または前記アポトーシス上清の注入または注射を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記初期アポトーシス細胞集団は、
(a)24時間を超えて安定している自己由来の初期アポトーシス細胞集団、または、
(b)24時間を超えて安定している同種異系の初期アポトーシス細胞集団
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記アポトーシス上清は、培養されたアポトーシス細胞、培養された初期アポトーシス細胞、または、白血球と共に培養されたアポトーシス細胞から収集される、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記アポトーシス上清は、プールされる、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記初期アポトーシス細胞集団は、初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記初期アポトーシス細胞のプールされた集団は、放射線照射された前記初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、
前記初期アポトーシス細胞のプールされた集団は、単一ドナーまたは複数ドナーの単核細胞から調製されたアポトーシス細胞を含む、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記初期アポトーシス細胞集団は、放射線照射された前記初期アポトーシス細胞集団を含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、
前記対象は、ヒト対象である、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記組成物の投与は、前記初期アポトーシス細胞集団または前記アポトーシス上清の単回投与を含む、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、
前記組成物の投与は、前記初期アポトーシス細胞集団または前記アポトーシス上清の複数回投与を含む、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、
前記複数回投与は、毎日または毎週の投与を含む、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、
前記組成物の各回の用量は、1×10
6±20%~1×10
9±20%個の初期アポトーシス細胞/kg対象を含む、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、
前記組成物の各回の用量は、約1×10
6±20%~1×10
9±20%のアポトーシス細胞/kg対象を含む培養物から収集された上清を含む、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、
前記組成物の投与は、前記関節内に存在する滑液中の少なくとも1つの炎症性または抗炎症性のサイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患を治療するための組成物または方法に関する。本開示の方法は、治療を必要とする関節もしくはその近く、または治療を必要とする骨組織もしくはその近くに、初期アポトーシス細胞組成物を直接投与することを含む。本開示の方法は、痛み、腫れ、軟骨変性、及び骨びらんを軽減することを含む。
【背景技術】
【0002】
アポトーシス細胞のインビボ特性及びインビトロ特性は、炎症性疾患、自己免疫性疾患、及びサイトカインストーム関連疾患の幅広い範囲における、それらの使用の可能性を示唆する。アポトーシス細胞は、様々な機序を用いて、クロファージ及び樹状細胞(DC)において免疫恒常性抗炎症状態を作り出している。これらには、ホスファチジルセリン(PtdSer)への直接的結合、及び、Tyro3、Axl、及びMer(TAM)受容体への間接的結合、並びに、オプソニン/架橋分子を介したシグナル伝達が含まれ、これらの分子は、さらなるインテグリン及びスカベンジャー受容体(ScR)を用いて、Toll様受容体(TLR)並びにNF-κb、STAT1、及びIFNシグナル伝達を阻害し、肝臓X受容体(LXR)、サイトカインシグナル伝達の抑制(SOCS1/3)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)-δ、及び肝臓成長因子(HGF)を活性化する。これらの事象の総和が、マクロファージ及びDCの炎症特性の下方制御、修復、及び、末梢寛容をもたらす。
【0003】
実際に、自己免疫性疾患及び自己炎症性疾患、例えば、非肥満性糖尿病マウスにおける1型糖尿病、実験的自己免疫性脳脊髄炎、関節炎、大腸炎、肺線維症、劇症肝炎、接触過敏症、急性移植片拒絶反応、慢性移植片拒絶反応、造血細胞移植、急性移植片対宿主病(GvHD)、及び、急性心筋梗塞後の梗塞サイズの減少などが、アポトーシス細胞の注入によって極めて良好に治療された(「Saas et al., (2016) "Concise Review: Apoptotic Cell‐Based Therapies-Rationale, Preclinical Results and Future Clinical Developments." Stem Cells Volume 34(6): 1464-1473」)。報告された研究の大部分において、アポトーシス細胞の投与は全身投与であり、関節炎の治療を特に検討した研究では、アポトーシス細胞の投与は、静脈内注入(iv)または腹腔内注入(ip)であった。
【0004】
自己免疫性疾患及び自己炎症性疾患のうち、関節リウマチ(RA)モデルが、Saasらの報告(Saasetal.、ibid)に含まれていた。Grayらは、コラーゲン誘発性関節炎(CIA)モデルにおいて、RAにおける作用機序を明らかにした(「M. Gray, K. Miles, D. Salter, D. Gray, and J. Savill. (2007) "Apoptotic cells protect mice from autoimmune inflammation by the induction of regulatory B cells." Proc Natl Acad Sci U S A. Aug 28; 104(35): 14080-14085」)。Greyらが提示したデータは、2つの異なるモデル系及び3つの異なる系統のマウスにおいて、アポトーシス細胞の投与は脾臓B細胞に影響を与え、脾臓B細胞がIL-10を分泌し、抗原特異的エフェクターCD4+T細胞からの免疫抑制性サイトカインIL-10の分泌を促進することを示した。加えて、それらは、強力なアジュバントであるCFAの存在下での免疫化にもかかわらず、炎症性関節炎の重症化と病原性自己抗体の生成を抑制した。このように、アポトーシス細胞の投与、または、AC処理マウスからのB細胞の受動伝達は、マウスをコラーゲン誘発性関節炎(CIA)から保護した。アポトーシス細胞自体は、IL-10やTGF-βなどの免疫抑制性サイトカインを分泌せず、受動的誘発性関節炎の進行に影響を与えることはできなかった。これは、アポトーシス細胞は、B細胞機能やサイトカイン産生に直接影響を与え、制御性B細胞を誘導することができることを示す。さらに、CIAモデルでは、アポトーシス細胞の静脈内注入(iv)または腹腔内注入(ip)は、どちらの場合もアポトーシス細胞を脾臓に送達するので、保護効果があることが分かった。Greyらは、もし選択された投与経路が、アポトーシス細胞がB細胞と相互作用することができるようにアポトーシス細胞を脾臓に送達しないならば、保護作用が誘起される可能性が低いことを明確に示唆している。
【0005】
連鎖球菌細胞壁(SCW)誘発性関節炎を用いた実験的研究により、RAモデルにおけるアポトーシス細胞の効果は、リンパ系器官を経由し、腹腔内注入(ip)(静脈内注入(iv)と同等)経路で起こることが改めて実証された(「Perruche et al. (2009), Sylvain Perruche, Philippe Saas, and Wanjun Chen. "Apoptotic cell-mediated suppression of streptococcal cell wall-induced arthritis is associated with alteration of macrophage function and local regulatory T-cell increase: a potential cell-based therapy?" Arthritis Res Ther. 11(4): R104」)。Perrucheらは、腹腔内注入(ip)によって投与されるアポトーシス細胞のみが、SCW誘発性関節炎の急性期及び慢性期に一般的に観察される関節の腫れ及び破壊を著しく抑制することを明らかにした。このことは、リンパ系器官、特に排出リンパ節でFoxp3+Tregが増加した結果であることを示唆する。
【0006】
最後に、Notleyらは、炎症性関節炎のAg誘導モデルを用いて、アポトーシス細胞の全身注入によって駆動される排出リンパ節及び脾臓辺縁帯B細胞からのT細胞によるIL-10の産生の増加が、天然IgMの非存在下で抑制されることを明らかにした(「Notley CA1, Brown MA, Wright GP, Ehrenstein MR. (2011) "Natural IgM is required for suppression of inflammatory arthritis by apoptotic cells." J Immunol. Apr 15;186(8):4967-72. doi: 10.4049/jimmunol.1003021」)。アポトーシス細胞は、静脈内投与され、投与直後に脾臓辺縁帯に存在した。
【0007】
瀕死細胞の除去は、炎症時のトレランス(免疫寛容)の再確立に不可欠であり、強力な免疫調節結果をもたらす。天然のIgMはアポトーシス細胞の除去において重要な役割を果たすため、Notelyらは、アポトーシス細胞の免疫調節作用が天然IgMに依存するかどうかを調べた(同書)。Notelyらは、炎症性関節炎のAb非依存性、Ag誘発性モデルを使用して、自然のIgMがアポトーシス細胞の関節炎抑制作用に必須であるかどうかを試験した。アポトーシス細胞の投与は、Th17応答の抑制を伴って、正常マウスの関節の炎症と損傷を軽減したが、分泌型IgM欠損(Sμ(-))マウスでは、保護作用を与えなかった。アポトーシス細胞の注入により駆動された、排出リンパ節及び脾臓辺縁帯B細胞からのT細胞によるIL-10の産生増強は、天然IgMの非存在下では消失した。アポトーシス細胞は投与直後に脾臓辺縁帯に存在しており、これにより、天然IgMは、脾臓IL-10分泌B細胞及びT細胞を促進し、炎症の発生を抑制するアポトーシス細胞の投与により誘発される一連のイベントにおける重要な因子であると結論付けられた。
【0008】
これらの結果を総合すると、アポトーシス細胞はB細胞及びT細胞に対する脾臓作用を介してRAを調節し、それによって自己免疫を調節することが示唆される。非自己免疫疾患に対する直接的な関節内作用は予期されていない。
【0009】
変形性関節症は、最も一般的な筋骨格系疾患であり、現在、疾患修飾療法が確立されていない疾患の1つである。変形性関節症の疾患機序については、変形性関節症の間に影響を受ける関節軟骨の発生と維持に関する知見が不足しているため、現在では理解が限られている。変形性関節症の間、関節軟骨は、一過性の軟骨分化のマーカーを発現する。さらに、一過性軟骨分化の阻害は、実験的変形性関節症の進行を止めるのに十分である。組織微小環境の修復、人工軟骨による補充、及び一過性の軟骨分化を防止するために組み込まれた機構を組み合わせた発生生物学に触発されたアプローチは、変形性関節症に対する疾患修飾療法を開発するための手段となり得るであろう。非ステロイド性抗炎症薬は、痛みを和らげることはできるが、関節軟骨の進行性変性を止めることはできない。したがって、非ステロイド性抗炎症薬またはコルチコステロイドは、変形性関節症の治療に役立つとは考えられておらず、その点で、アポトーシス細胞を免疫調節因子と見なしても、変形性関節症を改善することは実際には予期されていない。
【0010】
消失性骨疾患は、主に股関節及び肩関節に影響を与えるが、他の関節にも影響を与える臨床症状であり、主にびらん性変形性関節症に起因する急速破壊性関節炎(「Mavrogenis AF, Flevas DA, Panagopoulos GN, et al. (2015) "Rapid destructive arthritis of the hip revisited." Eur J Orthop Surg Traumatol. 25:1115-20」)、またはリンパ管腫組織の増殖に起因する自然骨溶解症、すなわち、Gorham-stout変異体(「Dellinger MT, Garg N, Olsen BR. (2014) "Viewpoints on vessels and vanishing bones in Gorham-Stout disease." Bone 63:47-52」)から発生する可能性がある。これらの症状に対する有効な治療法は確立されていない。
【0011】
したがって、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、関節軟骨の進行性変性の抑制または遅延、骨組織の侵食の抑制または遅延、及び可動域の増加を含む動きの向上のための治療を含む、変形性関節症及び消失性骨疾患などの非自己免疫性疾患の治療のための組成物及び治療方法に対するニーズが依然として存在する。関節へのアポトーシス細胞の直接注入は、骨と関節における免疫応答のバランスを取り戻すための新規で安全な治療を提供する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2014/087408号
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0156794A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2014/106666号
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/0275175A1号明細書
【特許文献5】米国特許第6、489、311号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様では、本開示は、治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法であって、初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清を含む組成物を、対象の関節、または消失性骨疾患の疾患部位に直接投与するステップを含み、組成物の投与により、対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する、方法を提供する。
【0014】
関連する態様では、変形性関節症を治療する場合、変形性関節症の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、関節軟骨の進行性変性の抑制、関節軟骨の進行性変性の軽減、生活の質の向上、またはそれらの任意の組み合わせを含む。関連する態様では、消失性骨疾患を治療する場合、消失性骨疾患の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、骨組織のびらんの抑制、骨組織のびらんの遅延、骨折の軽減、骨折の抑制、骨破壊の軽減、骨破壊の抑制、骨量減少の抑制、骨量減少の軽減、骨密度低下の抑制、骨密度低下の軽減、生活の質の向上、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0015】
別の関連する態様では、本開示の方法は、関節の動きを向上させるものであり、関節の動きの向上は、可動域の増加、または、痛みの軽減を伴う動きの増加、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
関連する態様では、関節は、滑膜関節を含む。さらなる関連する態様では、滑膜関節は、膝関節、股関節、肩関節、頸部椎骨間の関節、肘関節、足首関節、手首関節、指関節、足指関節、親指関節、手関節、足関節、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0017】
関連する態様では、消失性骨疾患の疾患部位は、肩、頭蓋骨、骨盤帯、顎、肋骨、鎖骨、脊椎、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
関連する態様では、組成物の関節への直接投与は、初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清の注入または注射を含む。
【0019】
関連する態様では、初期アポトーシス細胞集団は、(a)24時間を超えて安定している自己由来の初期アポトーシス細胞集団、または、(b)24時間を超えて安定している同種異系の初期アポトーシス細胞集団を含む。さらなる関連する態様では、アポトーシス上清は、培養されたアポトーシス細胞、培養された初期アポトーシス細胞、または、白血球と共に培養されたアポトーシス細胞から収集される。別の関連する態様では、アポトーシス上清は、プールされる。別の関連する態様では、初期アポトーシス細胞集団は、初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む。別の関連する態様では、初期アポトーシス細胞のプールされた集団は、放射線照射された初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む。別の関連する態様では、初期アポトーシス細胞のプールされた集団は、単一ドナーまたは複数ドナーの単核細胞から調製されたアポトーシス細胞を含む。別の関連する態様では、初期アポトーシス細胞集団は、放射線照射された初期アポトーシス細胞集団を含む。
【0020】
関連する態様では、対象は、ヒト対象である。
【0021】
関連する態様では、組成物の投与は、初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清の単回投与を含む。さらなる関連する態様では、組成物の投与は、初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清の複数回投与を含む。別の関連する態様では、複数回投与は、毎日の投与または毎週の投与を含む。
【0022】
関連する態様では、組成物の各回の用量は、1×106±20%~1×109±20%個の初期アポトーシス細胞/kg対象を含む。さらなる関連する態様では、組成物の各回の用量は、約1×106±20%~1×109±20%のアポトーシス細胞/kg対象を含む培養物から収集された上清を含む。
【0023】
関連する態様では、組成物の投与は、関節内に存在する滑液中の少なくとも1つの炎症性または抗炎症性のサイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
発明と見なされる主題は、明細書の結論部分で特に指摘され、明確に主張されている。しかしながら、本発明は、構成及び動作方法の両方に関して、また、その目的、特徴、及び利点と共に、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによって最もよく理解されるであろう。
【0025】
【
図1】
図1は、初期アポトーシス細胞集団の作製プロセスのいくつかの実施形態における各ステップのフローチャートを示し、このプロセスでは、抗凝固剤の添加が含まれている(別の実施形態の詳細については、実施例1及び2を参照)。収集された単核細胞は、自己由来または同種異系であり得、いくつかの実施形態では、非適合単核細胞が使用される。複数の細胞供給源を使用する場合、追加のステップは、細胞に放射線照射し、非適合細胞をプールすることを含む。
【
図2-1】
図2-1は、初期アポトーシス細胞での処理前後の右肩関節におけるサイトカイン/ケモカインのレベルを示す一連の棒グラフを示す。サイトカイン/ケモカインの測定はLuminex MAGPIXシステムを用いて行い、分析は、Milliplexソフトウェアを用いて行った(実施例4参照)。
【
図2-2】
図2-2は、初期アポトーシス細胞での処理前後の右肩関節におけるサイトカイン/ケモカインのレベルを示す一連の棒グラフを示す。サイトカイン/ケモカインの測定はLuminex MAGPIXシステムを用いて行い、分析は、Milliplexソフトウェアを用いて行った(実施例4参照)。
【
図2-3】
図2-3は、初期アポトーシス細胞での処理前後の右肩関節におけるサイトカイン/ケモカインのレベルを示す一連の棒グラフを示す。サイトカイン/ケモカインの測定はLuminex MAGPIXシステムを用いて行い、分析は、Milliplexソフトウェアを用いて行った(実施例4参照)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明では、本発明に係る初期アポトーシス細胞集団及び変形性関節症を治療するためのその使用についての完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細を用いることなく実施してもよいことは、当業者には理解されるであろう。他の例では、よく知られている方法、手順、及び構成要素は、本発明を不明瞭にしないように、詳細に記載されていない。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法であって、初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清を含む組成物を、対象の関節、または消失性骨疾患の疾患部位に直接投与するステップを含み、組成物の投与により、治療を必要とする対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する、方法である。他の実施形態では、本明細書に開示されるのは、治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法であって、アポトーシス上清を含む組成物を、対象の関節、または消失性骨疾患の疾患部位に直接投与するステップを含み、組成物の投与により、治療を必要とする対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する、方法である。
【0028】
関節リウマチとは異なり、変形性関節症や消失性骨疾患は、炎症性の自己免疫疾患とは見なされない。本明細書に開示される方法は、自己免疫疾患の治療に限定されず、様々な治療方法に対応する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、有効な治療の必要な要素としての、全身性免疫系及びその任意の応答の必要性を回避する。いくつかの実施形態では、治療は、初期アポトーシス細胞集団またはそれを含む組成物を、変形性関節症または消失性骨疾患の部位に直接投与することによって実施される。いくつかの実施形態では、治療は、アポトーシス細胞上清またはそれを含む組成物を、変形性関節症または消失性骨疾患の部位に直接投与することによって実施される。
【0029】
アポトーシス細胞
【0030】
本明細書に開示される組成物及び方法に用いられるアポトーシス細胞(「ApoCell」)の作製は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献1に記載されており、また、後記する実施例1で簡潔に説明する。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、当分野で既知の任意の方法で作製される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、治療を受けている対象の自己由来である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、治療を受けている対象の同種異系である。別の実施形態では、本開示の組成物に含有される初期アポトーシス細胞は、本明細書に開示される初期アポトーシス細胞、または当分野で既知の初期アポトーシス細胞を含む。
【0031】
当業者であれば、「自己由来(自家)」という用語が、ドナーとレシピエントとが同一の個体である組織、細胞、核酸分子、またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。
【0032】
当業者であれば、「同種異系」という用語が、同一種の別個の個体に由来する組織、細胞、核酸分子、またはポリペプチドを包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、同種異系ドナー細胞は、レシピエントとは遺伝的に異なる。
【0033】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス集団のための細胞供給源は、単核濃縮細胞(mononuclear-enriched cell)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法による単核濃縮細胞組成物を得るステップは、白血球アフェレーシス(白血球除去)によって達成される。当業者であれば、「白血球アフェレーシス」という用語が、ドナーの血液から白血球を分離するアフェレーシス処置を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ドナーの血液は白血球アフェレーシスに供され、これにより、本明細書に開示される作製方法により単核濃縮細胞組成物が得られる。収集された細胞の凝固を防ぐために、当分野で知られているように、白血球アフェレーシス中に少なくとも1つの抗凝固剤の使用が必要であることに留意されたい。
【0034】
いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシス処置は、本明細書に開示される作製方法により単核濃縮細胞組成物を収集することを可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、白血球アフェレーシスによって得られた細胞収集物は、少なくとも65%の単核細胞を含む。他の実施形態では、本明細書に開示されるように、白血球アフェレーシスによって得られた細胞収集物は、少なくとも70%、または少なくとも80%の単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法の単核濃縮細胞組成物を得るステップと並行して、細胞ドナーから血漿が収集される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法の単核濃縮細胞組成物を得るステップと並行して、細胞ドナーから約300~600mlの血漿が収集される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される作製方法の単核濃縮細胞組成物を得るステップと並行して収集された血漿は、凍結培地及び/または培養培地の一部として使用される。本明細書に開示される組成物及び方法に用いられるアポトーシス細胞の濃縮された単核細胞集団を得る追加の詳細な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献1に記載されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、少なくとも85%の単核細胞を含む。さらなる実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、少なくとも85%の単核細胞、90%の単核細胞、または90%超の単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、少なくとも90%の単核細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、少なくとも95%の単核細胞を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、細胞収集時の単核濃縮細胞調製物は、少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%の単核細胞を含むが、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞の作製方法により得られた最終的な医薬集団は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の単核細胞を含むことに留意されたい。
【0037】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞の組成物の作製に使用される単核濃縮細胞調製物は、細胞収集時に少なくとも50%の単核細胞を含む。特定の実施形態では、ドナーの末梢血から少なくとも50%の単核細胞を含む単核濃縮細胞調製物を得るステップを含む、医薬集団の作製方法が本明細書に開示される。特定の実施形態では、少なくとも50%の単核細胞を含む単核濃縮細胞調製物を凍結(冷凍保存)するステップを含む、医薬集団の作製方法が本明細書に開示される。
【0038】
いくつかの実施形態では、細胞調製物は少なくとも85%の単核細胞を含み、調製物中の細胞の少なくとも40%は初期アポトーシス状態にあり、調製物中の細胞の少なくとも85%は生細胞である。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞調製物は、15%以下のCD15high発現細胞を含む。
【0039】
当業者であれば、「初期アポトーシス状態」という用語が、アポトーシスの後期徴候は示さず、アポトーシスの初期徴候を示す細胞を包含し得ることを理解するであろう。細胞におけるアポトーシスの初期兆候の例には、ホスファチジルセリン(PS)の暴露、及びミトコンドリア膜電位の喪失が含まれる。後期イベントの例には、ヨウ化プロピジウム(PI)の細胞内への侵入、及び最終的なDNA切断が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞が「初期アポトーシス」状態にあることを証明するために、アネキシンV及びPIの染色によるPS曝露検出が用いられ、アネキシンVでは染色されるが、PIでは染色されない(またはPIでは最小限しか染色されない)細胞は、「初期アポトーシス細胞」(An+PI-)と見なされる。いくつかの実施形態では、最小限のPI染色は、細胞集団内で、15%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、最小限のPI染色は、細胞集団内で、10%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、最小限のPI染色は、細胞集団内で、5%以下のPI+細胞を含む。別の実施形態では、アネキシンV FITC及び高PIの両方によって染色される細胞は、「後期アポトーシス細胞」と見なされる。一実施形態では、高PI染色は、細胞集団内で15%超のPI+細胞を含む。一実施形態では、高PI染色は、細胞集団内で16%以上のPI+細胞を含む。別の実施形態では、アネキシンVまたはPIのいずれによっても染色されない細胞は、非アポトーシス生細胞と見なされる。
【0040】
一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも40%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも45%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも50%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも55%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも60%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも65%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも70%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも75%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも80%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも85%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも90%は、初期アポトーシス状態にある。一実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも95%は、初期アポトーシス状態にある。
【0041】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、15%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、10%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、9%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、8%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、7%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、6%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、5%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、4%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、3%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、2%以下のPI+細胞を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞調製物は、1%以下のPI+細胞を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも40%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも45%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも50%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも55%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも60%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも65%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも70%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも75%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも80%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の≦15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%の細胞がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも85%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の<15%、または≦14%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも90%が初期アポトーシス状態(An+)にあり、そして、細胞の<10%、または≦9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、または0%がPI+である。いくつかの実施形態では、調製物中の細胞の少なくとも95%は、初期アポトーシス状態(An+)にあり、ここで、細胞の<5%、または≦4%、3%、2%、1%、または0%はPI+である。
【0043】
いくつかの実施形態では、「アポトーシス細胞」、「初期アポトーシス細胞」、「Allocetra」、「Autocetra」、「ALC」、及び「ApoCell(アポ細胞)」という用語、並びにその文法的変形は、「初期アポトーシス細胞」の集団を表すために互換的に使用され得ることを当業者であれば理解するであろう。上記の細胞集団は、単核細胞が豊富であり、独特の特徴を有している(例えば、実施例1を参照)。
【0044】
いくつかの実施形態では、Allocetraは、単一の同種異系ドナーから得られた初期アポトーシス細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、Allocetraは、複数の同種異系ドナーから得られた初期アポトーシス細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、Allocetraは、複数の同種異系ドナーから、または血液バンクから得た細胞から得られた初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む。いくつかの実施形態では、Allocetraは、同一の同種異系ドナーから得られた初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む。いくつかの実施形態では、Allocetraは、初期アポトーシス細胞の放射線照射された集団を含む。いくつかの実施形態では、「Allocetra」という用語は、「Allocetra-OTS」という用語と互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、「Allocetra」及び「Allocetra-OTS」という用語は、実施例1に記載されるようにして調製された単核初期アポトーシス細胞を包含し、該細胞の供給源とは無関係である。
【0045】
いくつかの実施形態では、Autocetraは、自己由来ドナーから単一の提供物として得られた初期アポトーシス細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、Autocetraは、自己由来ドナーから複数の提供物として得られた初期アポトーシス細胞の集団を含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療するための方法に用いられる自己由来ドナー由来の初期アポトーシス細胞は、放射線照射される。いくつかの実施形態では、Autocetraは、初期アポトーシス細胞の放射線照射された集団を含む。いくつかの実施形態では、「Autocetra」という用語は、「Autocetra-OTS」という用語と互換的に使用され得る。
【0046】
本明細書に記載の組成物及び方法が、いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含むことを当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、初期アポトーシス細胞は、初期アポトーシス細胞を含む組成物のレシピエント(治療を必要とする対象)にHLA適合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、初期アポトーシス細胞は、初期アポトーシス細胞を含む組成物のレシピエント(治療を必要とする対象)に適合しない。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞(治療を必要とする対象)を含む組成物のレシピエントに適合しない初期アポトーシス細胞は、本明細書に詳細に記載されるように放射線照射される。いくつかの実施形態では、放射線照射された適合しない細胞は、「Allocetra-OTS」または「ALC-OTS」と称される。
【0047】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、初期アポトーシス状態の細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、該細胞の少なくとも90%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、該細胞の少なくとも80%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、該細胞の少なくとも70%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、該細胞の少なくとも60%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、該細胞の少なくとも50%が初期アポトーシス状態にある細胞を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、抗凝固剤をさらに含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞は安定的である。いくつかの実施形態では、安定的は、例えば、約2℃~約8℃での保管時の初期アポトーシス細胞特性の維持などの、経時的な初期アポトーシス細胞特性の維持を包含することを当業者であれば理解するであろう。いくつかの実施形態では、安定的は、凍結温度、例えば、0℃以下の温度での保管時の初期アポトーシス細胞特性の維持を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞の作製方法により得られた単核濃縮細胞集団は、凍結培地で凍結される。いくつかの実施形態では、凍結は段階的に行われる。いくつかの実施形態では、細胞収集後、細胞は、凍結されるまで室温で維持される。いくつかの実施形態では、細胞調製物は、細胞収集後、かつ凍結前に、洗浄培地中で少なくとも1回の洗浄ステップに供される。
【0051】
本明細書で使用するとき、「細胞を得る」及び「細胞収集」という用語や表現は、互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、収集後の3~6時間以内に凍結される。いくつかの実施形態では、細胞調製物は、細胞収集後の最大6時間以内に凍結される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、収集後の1、2、3、4、5、6、7、または8時間以内に凍結される。他の実施形態では、細胞調製物の細胞は、収集後の8、12、24、48、または72時間以内に凍結される。他の実施形態では、細胞収集後、細胞は、凍結されるまで2℃~8℃に維持される。
【0052】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で凍結するステップと、次いで、細胞調製物を約-80℃で凍結するステップと、最終的に、細胞調製物を解凍するときまで液体窒素中に保管するステップとを含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で少なくとも2時間凍結するステップと、次いで、細胞調製物を約-80℃で少なくとも2時間凍結するステップと、最終的に、細胞調製物を解凍するときまで液体窒素中に保管するステップとを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、解凍するときまで少なくとも8、10、または12時間、液体窒素中に保管される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、解凍してアポトーシス誘導培養培地で培養するときまで、液体窒素中に保管される。いくつかの実施形態では、細胞調製物の細胞は、造血幹細胞移植の当日まで、液体窒素中に保管される。非限定的な例では、細胞収集及び凍結から最終集団の調製までの期間は、1~50日間、または6~30日間であり得る。別の実施形態では、細胞調製物は、少なくとも数ヶ月間などの、より長い期間にわたって液体窒素中に保管され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で少なくとも0.5、1、2、または4時間凍結するステップを含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-18℃~約-25℃で約2時間凍結するステップを含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製方法の凍結ステップは、細胞調製物を約-80℃で少なくとも0.5、1、2、4、または12時間凍結するステップを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または20ヶ月間にわたって凍結状態に維持される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、または5年間にわたって凍結状態に維持される。特定の実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも20ヶ月間にわたって凍結状態に維持される。
【0055】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも8、10、12、18、または24時間凍結される。特定の実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも8時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも約10時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、少なくとも約12時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、約12時間凍結される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物の総凍結期間(約-18℃~約-25℃、約-80℃、及び液体窒素中)は、少なくとも8、10、12、18、または24時間である。
【0056】
いくつかの実施形態では、凍結は、単核濃縮細胞組成物の細胞において、初期アポトーシス状態を少なくとも部分的に誘導する。いくつかの実施形態では、凍結培地は、L-グルタミン、Hepes、Hes、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び血漿を含有するRPMI-1640培地を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中の血漿は、集団の単核濃縮細胞を提供したドナーの自己由来血漿である。いくつかの実施形態では凍結培地は、2mMのL-グルタミン、10mMのHepes、5%のHes、10%のジメチルスルホキシド、及び20v/v%の血漿を含有するRPMI-1640培地を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、凍結媒体は、抗凝固剤を含む。特定の実施形態では、凍結培地、培養培地、及び洗浄培地を含む、初期アポトーシス細胞集団の作製時に使用される培地の少なくともいくつかは、抗凝固剤を含有する。特定の実施形態では、抗凝固剤を含有する、初期アポトーシス細胞集団の作製時に使用されるすべての培地は、同一濃度の抗凝固剤を含有する。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、細胞集団の最終的な懸濁培地には添加されない。
【0058】
いくつかの実施形態では、少なくとも凍結培地への抗凝固剤の添加により、細胞調製物の収率が向上する。他の実施形態では、凍結培地への抗凝固剤の添加により、高いトリグリセリド濃度の存在下で細胞調製物の収率が向上する。本明細書で使用するとき、細胞調製物の収率の向上は、凍結細胞中の生細胞の割合、生細胞中の初期状態にあるアポトーシス細胞の割合、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つの向上に関する。
【0059】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞は、少なくとも24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、24時間を超えて安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、少なくとも36時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、36時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、36時間を超えて安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、少なくとも48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、48時間を超えて安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、少なくとも72時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、72時間にわたって安定的である。別の実施形態では、初期アポトーシス細胞は、72時間を超えて安定的である。
【0060】
当業者であれば、「安定的」という用語が、PS陽性(ホスファチジルセリン陽性)が維持され、かつ、PI陽性(ヨウ化プロピジウム陽性)の割合が非常に小さいアポトーシス細胞を包含することを理解するであろう。PI陽性細胞は、膜の安定性の指標を提供し、PI陽性細胞は、細胞への侵入が可能となり、膜の安定性が低いことを示す。いくつかの実施形態では、安定的な初期アポトーシス細胞は、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、または少なくとも72時間にわたって、初期アポトーシス状態が維持される。別の実施形態では、安定的な初期アポトーシス細胞は、24時間、36時間、48時間、または72時間にわたって、初期アポトーシス状態が維持される。別の実施形態では、安定的な初期アポトーシス細胞は、24時間、36時間、48時間、または72時間を超えて、初期アポトーシス状態が維持される。別の実施形態では、安定的な初期アポトーシス細胞は、長期間にわたってその状態が維持される。
【0061】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、細胞凝集体を欠いている。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、大きな細胞凝集体を欠いている。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、ドナーからの細胞収集(白血球アフェレーシス)以外のステップで抗凝固剤を添加することなく調製されたアポトーシス細胞集団と比較して、細胞凝集体の数が少ない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団またはそれを含む組成物は、抗凝固剤を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、細胞凝集体を欠いており、アポトーシス細胞は、血中トリグリセリド濃度が高い対象から得られる。いくつかの実施形態では、対象の血中トリグリセリド濃度は、150mg/dL超である。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞集団は、細胞凝集体を欠いており、アポトーシス細胞集団は、正常な血中トリグリセリド濃度を有する対象から得られた細胞から調製される。いくつかの実施形態では、対象の血中トリグリセリド濃度は、150mg/dL以下である。いくつかの実施形態では、細胞凝集体は、アポトーシス細胞の作製方法の実施中に細胞損失を生じる。
【0063】
当業者であれば、「凝集体」または「細胞凝集体」という用語が、低い剪断力下または静止状態での血球の可逆的な凝集を包含し得ることを理解するであろう。細胞凝集体は、アポトーシス細胞の作製の培養ステップ中に、視覚的に観察することができる。細胞凝集は、当分野で既知の任意の方法、例えば、光学顕微鏡下でサンプルを視覚的に画像化する方法、またはフローサイトメトリー法を用いて測定することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸性クエン酸デキストロース(ACD)-A、及びそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0065】
初期アポトーシス細胞集団及びそれを含む組成物を調製する方法のいくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地に抗凝固剤が添加される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、凍結培地、洗浄培地、アポトーシス誘導培養培地、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。当分野で既知の他の抗凝固剤、これに限定しないが、例えば、フォンダパリヌクス、ビバリルジン、及びアルガトロバンなどを使用してもよいことに留意されたい。
【0067】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、10U/mlのヘパリンを含有する5%のACD-A溶液を含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、細胞集団の最終的な懸濁培地には添加されない。本明細書で使用するとき、「最終的な懸濁培地」及び「投与培地」という用語は互換的に使用され、すべて同一の性質及び意味を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、0.1~2.5U/mlの濃度のヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地は、1~15v/v%の濃度のACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、凍結媒体は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地と培養培地との両方が、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、凍結媒体中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、酸-クエン酸-デキストロース(ACD)-Aの溶液である。いくつかの実施形態では、細胞集団の調製時に使用される少なくとも1つの培地に添加される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含むACD-Aである。
【0070】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製に使用されるアポトーシス誘導培養培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製に使用される凍結培地及びアポトーシス誘導培養培地の両方が抗凝固剤を含む。いかなる理論及び機序にも拘束されることを望まないが、異なる細胞組成物において高いかつ安定した細胞収率を維持するために、細胞収集プロトコルに関係なく、いくつかの実施形態では、抗凝固剤の添加は、アポトーシス細胞集団の作製時における凍結培地及びアポトーシス誘導培養培地の両方への抗凝固剤の添加を含む。いくつかの実施形態では、細胞組成物内の高いかつ安定した細胞収率は、アポトーシス誘導に使用される初期細胞集団の少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、一般的には少なくとも50%の細胞収率を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、凍結培地及び培養培地の両方が抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地及び凍結培地の両方への抗凝固剤の添加により、これに限定しないが、例えば、細胞収集中に抗凝固剤を添加するタイミングや添加される抗凝固剤の種類などの細胞収集条件に関係なく、集団の異なる調製物間で高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、培養培地及び凍結培地の両方への抗凝固剤の添加により、白血球アフェレーシス中に抗凝固剤を添加するタイミング及び/または添加される抗凝固剤の種類に関係なく、細胞調製物の高いかつ安定した収率が得られる。いくつかの実施形態では、高いトリグリセリド濃度の存在下での細胞調製物の作製は、異なる調製物間で低い及び/または不安定な細胞収率をもたらす。いくつかの実施形態では、高いトリグリセリド濃度を有するドナーの血液からの細胞調製物の作製は、細胞調製物の低い及び/または不安定な細胞収率をもたらす。いくつかの実施形態では、「高いトリグリセリド濃度」という用語とは、同一の性別及び年齢の健康な対象の正常濃度を上回るトリグリセリド濃度を指す。いくつかの実施形態では、「高いトリグリセリド濃度」という用語は、約1.7mM/Lを超えるトリグリセリド濃度を指す。本明細書で使用するとき、高いかつ安定した収率とは、対象に投与したときに治療効果を示す用量の調製を可能にするのに十分高い、集団における細胞収率を指す。いくつかの実施形態では、治療効果とは、対象の免疫疾患、自己免疫疾患、または炎症性疾患を治療、予防、または改善する能力を指す。いくつかの実施形態では、高いかつ安定した収率とは、最初に凍結させた細胞からの集団における細胞の、少なくとも30%、場合によっては少なくとも40%、一般的には少なくとも50%の細胞収率である。
【0072】
いくつかの実施形態では、高いトリグリセリド濃度を有するドナーから細胞調製物が得られる場合、ドナーは、トリグリセリド低下薬(これに限定しないが、例えば、スタチン及び/またはベザフィブラートなど)の献血前の服用、献血前の少なくとも8、10、または12時間の断食、献血前の少なくとも24、48、または72時間の血中トリグリセリド濃度を下げるための適切な食事の摂取、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの措置をとる。
【0073】
いくつかの実施形態では、細胞集団における細胞収率は、アポトーシス誘導に供される細胞の最初の数のうちの組成物中の細胞数に関連する。本明細書で使用するとき、「初期アポトーシス状態の誘導」及び「アポトーシスの誘導」という用語は、互換的に使用され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、凍結及び解凍後に培養培地で培養される。いくつかの実施形態では、解凍と培養との間に少なくとも1つの洗浄ステップが存在する。本明細書で使用するとき、「培養培地」及び「アポトーシス誘導培養培地」という用語は互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、培養培地は、L-グルタミン、Hepes、メチルプレドニゾロン、及び血漿を含有するRPMI-1640培地を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、2mMのL-グルタミン、10mMのHepes、及び10v/v%血漿を含む。いくつかの実施形態では、培養培地中の血漿は、細胞調製物の細胞が由来するドナーと同一のドナーに由来する。いくつかの実施形態では、血漿は、培養の当日に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、培養は、37℃及び5%CO2で行われる。
【0075】
いくつかの実施形態では、培養培地は、メチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地内のメチルプレドニゾロンは、単核濃縮細胞組成物中の細胞をさらに誘導して、初期アポトーシス状態にする。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物中の細胞は、メチルプレドニゾロンの存在下での凍結と、培養との両方によって初期アポトーシス状態にするように誘導される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製は、有利なことに、壊死を実質的に誘発することなく初期アポトーシス状態に誘導することを可能にする。細胞は、調製後の約24時間、初期アポトーシス状態で安定した状態に維持される。
【0076】
いくつかの実施形態では、培養培地は、約10~100μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、約40~60μg/ml、または約45~55μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地は、50μg/mlの濃度のメチルプレドニゾロンを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、培養は、約2~12時間、場合によっては4~8時間、一般的には約5~7時間行われる。いくつかの実施形態では、培養は、約6時間行われる。いくつかの実施形態では、培養は、少なくとも6時間行われる。好ましい実施形態では、培養は、6時間行われる。
【0078】
いくつかの実施形態では、培養培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地への抗凝固剤の添加により、細胞調製物の収率が向上する。いくつかの実施形態では、培養培地中の抗凝固剤の濃度は、凍結培地中の抗凝固剤の濃度と同一である。いくつかの実施形態では、培養培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、培養培地で使用される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含有するACD-Aである。
【0079】
いくつかの実施形態では、培養培地は、ヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/ml、場合によっては0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlである。特定の実施形態では、培養培地中のヘパリンの濃度は、約0.5U/mlである。
【0080】
いくつかの実施形態では、培養培地は、ACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%、場合によっては4~7v/v%、一般的には約5v/v%である。いくつかの実施形態では、培養培地中のACD-Aの濃度は、約5v/v%である。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞調製物の収率の向上は、その調製物を産生した凍結細胞の数のうちの、調製物の初期アポトーシス生細胞の数の向上を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、凍結培地への抗凝固剤の添加により、医薬集団の異なる調製物間で高いかつ安定した収率が得られる。好ましい実施形態では、少なくとも凍結培地及び培養培地への抗凝固剤の添加により、使用される細胞収集プロトコルに関係なく、医薬組成物の異なる調製物間で高いかつ安定した収率が得られる。
【0083】
いくつかの実施形態では、凍結培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、凍結培地で使用される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含有するACD-Aである。いくつかの実施形態では、凍結培地は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含有するACD-A溶液を5v/v%の濃度で含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、凍結培地は、ヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/ml、場合によっては0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlである。特定の実施形態では、凍結培地中のヘパリンの濃度は、約0.5U/mlである。
【0085】
いくつかの実施形態では、凍結培地は、ACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%、場合によっては4~7v/v%、一般的には約5v/v%である。いくつかの実施形態では、凍結培地中のACD-Aの濃度は、約5v/v%である。
【0086】
いくつかの実施形態では、培養培地及び/または凍結培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセリド濃度に関係なく、集団内で高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、培養培地及び/または凍結培地への抗凝固剤の添加により、正常なまたは高いトリグリセリド濃度を有するドナーの血液から得られる場合、本発明の組成物内で高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、少なくとも培養培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセリド濃度に関係なく、組成物内で高いかつ安定した細胞収率が得られる。いくつかの実施形態では、凍結培地及び培養培地への抗凝固剤の添加により、ドナーの血液中のトリグリセリド濃度に関係なく、組成物内で高いかつ安定した細胞収率が得られる。
【0087】
いくつかの実施形態では、凍結培地及び/または培養培地及び/または洗浄培地は、少なくとも0.1U/ml、場合によっては少なくとも0.3U/ml、一般的には少なくとも0.5U/mlの濃度のヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、凍結培地及び/または培養培地及び/または洗浄培地は、少なくとも1v/v%、場合によっては少なくとも3v/v%、一般的には少なくとも5v/v%の濃度のACD-Aを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、細胞収集後、かつ、凍結培地中で再懸濁されて凍結される前に、少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、凍結及び解凍の後に、少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、洗浄ステップは、単核濃縮細胞の組成物の遠心分離を含み、その後、上清の抽出及び洗浄培地中での再懸濁が行われる。
【0089】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、初期アポトーシス細胞集団の作製の各段階の間に少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、初期アポトーシス細胞集団の作製過程の洗浄ステップ中に、洗浄培地に添加される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞組成物は、培養後に少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、PBSを用いて、培養後に少なくとも1回の洗浄ステップに供される。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、投与培地中の細胞調製物の再懸濁前の最終洗浄ステップでは添加されない。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、投与培地中の細胞調製物の再懸濁前の最終洗浄ステップで使用されるPBSには添加されない。特定の実施形態では、抗凝固剤は、投与培地に添加されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、培養中の細胞濃度は、約5×106細胞/mlである。
【0091】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、凍結、解凍、及び培養後に投与培地中で懸濁され、それにより、医薬集団が得られる。いくつかの実施形態では、投与培地は、適切な生理学的緩衝液を含む。適切な生理学的緩衝液の非限定的な例は、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩溶液(HBSS)などである。いくつかの実施形態では、投与培地は、PBSを含む。いくつかの実施形態では、投与培地は、細胞の生存率の維持を助けるサプリメントを含む。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、投与前に濾過される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、少なくとも200μmのフィルタを使用して投与前に濾過される。
【0092】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞集団は、得られる細胞調製物の最終体積が100~1000ml、場合によっては200~800ml、一般的には300~600mlになるように、投与培地中で再懸濁される。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞収集とは、単核濃縮細胞の組成物を得ることを指す。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製時に実施される洗浄ステップは、洗浄培地中で行われる。特定の実施形態では、初期アポトーシス細胞集団の作製における培養ステップが洗浄培地中で実施されるまで、洗浄ステップが実施される。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、L-グルタミン及びHepesが補充されたRPMI-1640培地を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、2mMのL-グルタミン及び10mMのHepesが補充されたRPMI-1640培地を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、洗浄培地は、抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地は、ヘパリン、ACD-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤を含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中の抗凝固剤の濃度は、凍結媒体中の抗凝固剤の濃度と同一である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中の抗凝固剤の濃度は、培養培地中の抗凝固剤の濃度と同一である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中で使用される抗凝固剤は、ヘパリンを10U/mlの濃度で含むACD-Aである。
【0095】
いくつかの実施形態では、洗浄培地は、ヘパリンを含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/mlである。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のヘパリンの濃度は、0.1~2.5U/ml、場合によっては0.3~0.7U/ml、一般的には約0.5U/mlである。特定の実施形態では、洗浄培地中のヘパリンの濃度は、約0.5U/mlである。
【0096】
いくつかの実施形態では、洗浄培地は、ACD-Aを含む。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aの濃度は、1~15v/v%、場合によっては4~7v/v%、一般的には約5v/v%である。いくつかの実施形態では、洗浄培地中のACD-Aの濃度は、約5v/v%である。
【0097】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への集団の投与の数時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、約33℃~約39℃で解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、約30~240秒間、好ましくは40~180秒間、最も好ましくは50~120秒間解凍される。
【0098】
いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への集団の投与の少なくとも10時間前、あるいは対象への集団の投与の少なくとも20、30、40または50時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への集団の投与の少なくとも15~24時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への集団の投与の少なくとも約24時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への集団の投与の少なくとも20時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、対象への集団の投与の30時間前に解凍される。いくつかの実施形態では、単核濃縮細胞の組成物は、解凍の前及び/または後に洗浄培地中で洗浄する少なくとも1つの洗浄ステップに供される。
【0099】
いくつかの実施形態では、組成物は、メチルプレドニゾロンをさらに含む。いくつかの実施形態では、メチルプレドニゾロンの濃度は、30μg/mlを超えない。
【0100】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、高用量で使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、高濃度で使用される。いくつかの実施形態では、ヒトアポトーシス多形核好中球(PMN)が使用される。いくつかの実施形態では、50%がアポトーシス細胞である細胞群が使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、メイギムザ染色された細胞標本(サイトプレップ)によって確認される。いくつかの実施形態では、細胞の生存率は、トリパンブルー色素排除試験法によって評価される。いくつかの実施形態では、細胞のアポトーシス及び壊死状態は、FACSによる検出を伴うアネキシンV/ヨウ化プロピジウム染色によって確認される。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるアポトーシス細胞は、壊死細胞を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、1%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、2%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、3%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、4%未満の壊死細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞は、5%未満の壊死細胞を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、それが投与される対象以外の対象から得られた細胞から調製される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献2に記載された1以上のステップを含む、同種異系ドナー細胞の拒絶反応の克服に有用な追加のステップを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞(いくつかの実施形態では同種異系のアポトーシス細胞である)の投与前に、完全または部分的なリンパ球枯渇化(lymphodepletion)ステップを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇化(リンパ球除去)は、同種異系のアポトーシス細胞がサイトカイン放出を制御するのに十分な期間、宿主対移植片反応を遅延させるように調節される。いくつかの実施形態では、本方法は、リンパ節からの同種異系アポトーシスT細胞の放出を遅延させる薬剤を投与するステップを含む。そのような薬剤には、2-アミノー2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール(FTY720)、5-[4-フェニル-5-(トリフルオロメチル)チオフェン-2-イル]-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル-1]-1,2,4-オキサジアゾール(SEW2871)、3-(2-(-ヘキシルフェニルアミノ)-2-オキソエチルアミノ)プロパン酸(W123)、2-アンモニオ-4-(2-クロロ-4-(3-フェノキシフェニルチオ)フェニル)-2-(ヒドロキシメチル)リン酸水素ブチル(KRP-203リン酸塩)、または当分野で既知の他の薬剤などが含まれる。そのような薬剤は、本明細書に開示される組成物及び方法の一部として使用されることにより、効力を有し、かつ移植片対宿主病を開始させない同種異系アポトーシス細胞の使用を可能にする、別の実施形態では、同種異系アポトーシスT細胞によるMHC発現をサイレンシングして、同種異系細胞の拒絶反応を低減する。
【0103】
いくつかの実施形態では、本方法は、非静止非アポトーシス生細胞の割合が減少した、非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された、非アポトーシス生細胞の増殖が低下した、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団を作製するステップを含む。本方法は、末梢血の単核濃縮細胞集団を収集するステップと、単核濃縮細胞集団を、抗凝固剤を含む凍結培地中で凍結するステップと、単核濃縮細胞集団を解凍するステップと、約10~100μg/mLの最終濃度のメチルプレドニゾロン及び抗凝固剤を含むアポトーシス誘導培養培地で、単核濃縮細胞集団を培養するステップと、アポトーシス細胞集団を投与培地中で再懸濁するステップと、単核濃縮集団を不活化させるステップと、を含み、不活化ステップは、アポトーシス誘導の後に行わる。本方法により、非静止非アポトーシス生細胞の割合が減少した、非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された、非アポトーシス生細胞の増殖が低下した、またはそれらの任意の組み合わせを含む単核アポトーシス細胞集団が作製される。
【0104】
いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞の集団を対象に投与する前に、同一の対象に由来するアポトーシス細胞の集団を放射線照射するステップを含む(自己由来アポ細胞;Autocetra)。いくつかの実施形態では、本方法は、アポトーシス細胞の集団をレシピエントに投与する前に、対象に由来するアポトーシス細胞の集団を放射線照射するステップを含む(同種異系アポ細胞;Autocetra)。
【0105】
いくつかの実施形態では、細胞は、アポトーシス細胞集団内の残存生細胞の増殖及び/または活性化を抑制する方法で放射線照射される。いくつかの実施形態では、細胞は、集団内の非アポトーシス生細胞の割合を減少させる方法で放射線照射される。
いくつかの実施形態では、不活化された初期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の50%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された初期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の40%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された初期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の30%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された初期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の20%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された初期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の10%未満に減少する。いくつかの実施形態では、不活化された初期アポトーシス細胞集団内の非アポトーシス生細胞の割合は、集団の0%に減少する。
【0106】
別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞は、それらの初期のアポトーシス特性、免疫調節特性、安定性特性のすべてを維持する。別の実施形態では、本方法の放射線照射ステップは、UV線照射を使用する。別の実施形態では、本方法の放射線照射ステップは、γ線照射を使用する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、割合が減少した非アポトーシス生細胞、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の増殖が低下した調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約1%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約2%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約3%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約4%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約5%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約6%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約7%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約8%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約9%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約10%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約15%を超えて増加させない。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の放射線照射は、放射線照射されていないアポトーシス細胞と比較して、死細胞の集団(PI+)を、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%を超えて増加させない。
【0108】
いくつかの実施形態では、非アポトーシス生細胞の割合が減少した、または非アポトーシス生細胞が存在しない細胞集団は、一実施形態では、生細胞を有していない単核初期アポトーシス細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、非アポトーシス生細胞の割合が減少した、または非アポトーシス生細胞が存在しない細胞集団は、一実施形態では、レシピエントにおいてGVHDを誘発しない単核アポトーシス細胞集団を提供する。
【0109】
いくつかの実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞を使用することにより、アポトーシス集団(生細胞のごく一部を含む)の使用によって生じ得る移植片対白血病効果が排除される。このことにより、実施例(実施例3を参照)に示す効果が、アポトーシス細胞によってもたらされ、かつ、アポトーシス細胞集団内に存在する、細胞活性を有する生存可能な増殖細胞集団からはもたらされないことが実証される。
【0110】
別の実施形態では、本方法は、レシピエントへの投与の前に、ドナーからのWBCに由来するアポトーシス細胞を放射線照射するステップを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、アポトーシス細胞集団内の、残存する生細胞の増殖及び/または活性化を回避する方法で放射線照射される。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞は、それらの初期のアポトーシス特性、免疫調節特性、安定性特性のすべてを維持する。別の実施形態では、放射線照射するステップは、UV線照射を使用する。別の実施形態では、放射線照射するステップは、γ線照射を使用する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、割合が減少した非アポトーシス生細胞、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の細胞活性化が抑制された調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する非アポトーシス生細胞の増殖が低下した調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、プールされた単核アポトーシス細胞の調製物を含む。いくつかの実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞の調製物は、初期アポトーシス状態の単核細胞を含み、プールされた単核アポトーシス細胞は、割合が減少した非アポトーシス生細胞、細胞活性化が抑制された非アポトーシス生細胞を有する調製物、増殖が低下した非アポトーシス生細胞を有する調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞は、放射線照射される。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、プールされた単核アポトーシス細胞調製物であって、いくつかの実施形態では、提供された血液から得られた白血球画分(WBC)に由来するものである。
【0112】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞調製物は、放射線照射される。別の実施形態では、放射線照射は、γ線照射、またはUV線照射を含む。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して、非アポトーシス細胞の数が減少している。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して、増殖した細胞の数が減少している。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞集団と比較して、潜在的に免疫学的に活性な細胞の数が減少している。
【0113】
いくつかの実施形態では、プールされた血液は、ドナーとレシピエントとが一致しない第三者の血液(同種異系)を含む。
【0114】
当業者であれば、「プールされた」という用語が、複数のドナーから収集され、後で使用するために調製され、保存された血液を包含し得ることを理解するであろう。この収集された血液のプールを後で処理することにより、プールされた単核アポトーシス細胞調製物が作製される。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、単核アポトーシス細胞の容易に利用可能な供給を確実にする。別の実施形態では、細胞は、アポトーシスが誘導される培養ステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、培養ステップ後に再懸濁のステップでプールされる。別の実施形態では、細胞は、放射線照射ステップの直前にプールされる。別の実施形態では、細胞は、放射線照射ステップ後にプールされる。別の実施形態では、細胞は、本作製方法における任意のステップでプールされる。
【0115】
いくつかの実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞の集団は、プールされた初期アポトーシス細胞を作製するプロセス内の任意の段階からの血液またはアポトーシス細胞または細胞を含む。一実施形態では、細胞は、同種異系である。一実施形態では、細胞は、自己由来である。
【0116】
いくつかの実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~25単位の血液中に存在する細胞に由来する。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2~5、2~10、2~15、2~20、5~10、5~15、5~20、5~25、10~15、10~20、10~25、6~13、または6~25単位の血液に存在する細胞から構成される。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25単位の血液中に存在する細胞から構成される。必要な血液の単位数は、血液からのWBC回収率にも依存する。例えば、WBC回収率が低い場合には、単位数を多くする必要があるが、WBC回収率が高い場合には、必要な単位数は少なくする。いくつかの実施形態では、各単位は、血液バッグである。別の実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、少なくとも25単位の血液、少なくとも50単位の血液、または少なくとも100単位の血液中に存在する細胞から構成される。
【0117】
いくつかの実施形態では、血液の単位は、献血からの白血球(WBC)画分を含む。別の実施形態では、献血は、血液センターまたは血液バンクから得られたものであり得る。別の実施形態では、献血は、プールされたアポトーシス細胞調製物の調製時に集められた病院のドナーから得られたものであり得る。別の実施形態では、複数のドナーから得られたWBCを含む血液の単位は、本明細書に開示される組成物及び方法の目的のために設立された独立した血液バンクで保存及び維持される。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法の目的のために設立された血液バンクは、複数のドナーからのWBCを含む血液単位を供給することができ、また、白血球アフェレーシス装置を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、プールされたWBCの単位は、HLA適合によって制限されない。したがって、結果として得られるプールされたアポトーシス細胞調製物は、HLA適合によって制限されない細胞集団を含む。したがって、特定の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、同種異系細胞を含む。
【0119】
HLA適合によって制限されないプールされたWBCに由来するプールされた単核アポトーシス細胞調製物の利点は、WBC供給源の利用が容易であること、及びWBC取得コストを削減できることである。
【0120】
いくつかの実施形態では、プールされた血液は、HLA適合とは無関係の複数のドナーからの血液を含む。別の実施形態では、プールされた血液は、レシピエントとのHLA適合が考慮された複数のドナーからの血液を含む。例えば、ドナーとレシピエントとの間で、1つのHLA対立遺伝子、2つのHLA対立遺伝子、3つのHLA対立遺伝子、4つのHLA対立遺伝子、5つのHLA対立遺伝子、6つのHLA対立遺伝子、または7つのHLA対立遺伝子が適合している。別の実施形態では、複数のドナーが部分的に適合し、例えば、いくつかのドナーがHLA適合しており、1つのHLA対立遺伝子、2つのHLA対立遺伝子、3つのHLA対立遺伝子、4つのHLA対立遺伝子、5つのHLA対立遺伝子、6つのHLA対立遺伝子、または7つのHLA対立遺伝子が、いくつかのドナーとレシピエントとの間で適合している。各可能性は、本明細書に開示される実施形態を含む。
【0121】
特定の実施形態では、いくつかの非アポトーシス生細胞(アポトーシス抵抗性)は、後述するアポトーシスの誘導ステップ後に残存し得る(実施例1)。これらの非アポトーシス生細胞の存在は、いくつかの実施形態では、放射線照射ステップの前に観察される。これらの非アポトーシス生細胞は、増殖または活性化され得る。いくつかの実施形態では、複数のドナーに由来するプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、宿主に対して活性化されるか、互いに活性化されるか、またはその両方であり得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される放射線照射された細胞調製物は、放射線照射されていない細胞調製物と比較して、細胞活性化が抑制され、増殖が低下した。別の実施形態では、放射線照射は、γ線照射またはUV線照射を含む。別の実施形態では、放射線照射された細胞調製物は、放射線照射されていない細胞調製物と比較して、非アポトーシス細胞の数が減少した。いくつかの実施形態では、放射線照射は、約10~60グレイ単位(Gy)で行われる。いくつかの実施形態では、放射線照射は、約10~6グレイ(Gy)で行われる。いくつかの実施形態では、放射線照射は、約10~50グレイ(Gy)で行われる。いくつかの実施形態では、放射線照射は、約10~40グレイ(Gy)で行われる。いくつかの実施形態では、放射線照射は、約10~30グレイ(Gy)で行われる。いくつかの実施形態では、放射線照射は、約10~20グレイ(Gy)で行われる。いくつかの実施形態では、放射線照射は、約10~15グレイ(Gy)で行われる。
【0123】
別の実施形態では、放射線照射は、約10グレイ単位(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約15グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約20グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約25グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約30グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約35グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約40グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約50グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約55グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射は、約60グレイ(Gy)で行われる。別の実施形態では、放射線照射されたプールされたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないプールされたアポトーシス細胞調製物と同一または類似のアポトーシスプロファイル、安定性、及び有効性を維持する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも24時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、24時間を超えて安定的である。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大36時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、少なくとも36時間にわたって安定的である。実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、36時間を超えて安定的である。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、最大48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は少なくとも48時間にわたって安定的である。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、48時間を超えて安定的である。
【0125】
いくつかの実施形態では、プールされた細胞調製物を作製する方法は、細胞調製物を放射線照射するステップを含み、それにより、単一の適合ドナーに由来するアポトーシス調製物において観察される初期アポトーシス特性、免疫調節特性、及び安定性を維持する。なお、細胞調製物を放射線照射するステップは、含まなくてもよい。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物は、移植片対宿主病(GVHD)応答を誘発しない。
【0126】
細胞調製物への放射線照射は、当分野では安全であると考えられている。現在、WBCへの反応を防ぐために、献血された血液に対する放射線照射処置が日常的に行われている。
【0127】
別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核アポトーシス細胞調製物中のアポトーシス細胞の割合は100%に近く、それにより細胞調製物中の非アポトーシス生細胞の割合を減少させる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも40%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも50%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも60%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも70%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも80%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも90%である。別の実施形態では、アポトーシス細胞の割合は、少なくとも99%である。したがって、非アポトーシス生細胞の割合が減少した、または非アポトーシス生細胞が存在しない細胞調製物は、一実施形態では、レシピエントにおいてGVHDを誘発しないプールされた単核アポトーシス細胞調製物を提供し得る。各可能性は、本明細書で開示される実施形態を表す。
【0128】
あるいは、別の実施形態では、非アポトーシス性の生WBCの割合は、例えば標的沈殿により、生細胞集団を特異的に除去することによって減少させる。別の実施形態では、ホスファチジルセリンに結合する磁気ビーズを使用して、非アポトーシス生細胞の割合を減少させてもよい。別の実施形態では、アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーに結合するが、非アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーには結合しない磁気ビーズを使用して、非アポトーシス生細胞の割合を減少させてもよい。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーに結合するが、非アポトーシス細胞の細胞表面上のマーカーには結合しない磁気ビーズを使用して、さらなる調製のために選択されてもよい。別の実施形態では、非アポトーシス性の生WBCの割合は、超音波の使用によって減少させる。
【0129】
一実施形態では、アポトーシス細胞は、プールされた第三者のドナーから得られる。
【0130】
いくつかの実施形態では、プールされた細胞調製物は、リンパ球、単球、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される少なくとも1つの細胞型を含む。別の実施形態では、プールされた細胞調製物は、単核細胞の濃縮された集団を含む。いくつかの実施形態では、プールされた単核は、リンパ球、単球、及びナチュラルキラー細胞からなる群から選択される細胞型を含む単核濃縮細胞調製物である。別の実施形態では、単核濃縮細胞調製物は、顆粒球(すなわち、好中球、好塩基球、及び好酸球)としても知られている15%以下、あるいは10%以下、一般的には5%以下の多形核白血球を含む。別の実施形態では、プールされた単核細胞調製物は顆粒球を欠いている。
【0131】
別の実施形態では、プールされた単核濃縮細胞調製物は、15%以下、あるいは10%以下、一般的には5%以下のCD15高発現細胞を含む。いくつかの実施形態では、プールされたアポトーシス細胞調製物は、15%未満のCD15高発現細胞を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも80%の単核細胞、少なくとも85%の単核細胞、あるいは少なくとも90%の単核細胞、または少なくとも95%の単核細胞を含む。各可能性は、本明細書に開示される別個の実施形態である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物は、少なくとも85%の単核細胞を含む。
【0133】
別の実施形態では、最終的に少なくとも80%の単核細胞がプールされた任意のプールされた細胞調製物が、本明細書に開示されるプールされた単核濃縮細胞調製物と見なされる。したがって、多形核細胞(PMN)が増加した多形核細胞を有する細胞調製物を、多数の単核細胞を有する細胞調製物とプールし、その結果、少なくとも80%の単核細胞を「プール」することにより、本明細書に開示される調製物が得られる。いくつかの実施形態では、単核細胞は、リンパ球及び単球を含む。
【0134】
当業者であれば、「単核細胞」という用語が、1つの葉状の核を有する白血球を包含し得ることを理解するであろう。別の実施形態では、本明細書に開示されるプールされたアポトーシス細胞調製物は、5%未満の多形核白血球を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、T細胞である。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、CAR-T細胞と同一の、プールされた第三者ドナーのT細胞に由来する。別の実施形態では、アポトーシス細胞は、CAR-T細胞集団に由来する。
【0136】
上清:アポトーシス細胞上清、及び、アポトーシス細胞-食細胞上清
【0137】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、本明細書に開示される方法及び治療において使用され、アポトーシス細胞上清及びアポトーシス食細胞上清を含む。いくつかの実施形態では、上清が収集される細胞は、患者からの自己由来である。いくつかの実施形態では、上清が収集される細胞は、ドナーからの同種異系である。いくつかの実施形態では、上清が収集される細胞は、血液バンクから収集された細胞からの同種異系である。
【0138】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)上記のステップ(a)で提供されたアポトーシス細胞を培養するステップと、(c)培養されたアポトーシス細胞から上清を分離するステップと、を含む方法によって得られる。特定の実施形態では、上清を得るために使用されるアポトーシス細胞は、本明細書に開示される方法のいずれかによって調製される。特定の実施形態では、上清を得るために使用されるアポトーシス細胞は、当分野で既知の任意の方法によって調製される。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清の作製に使用されるアポトーシス細胞は、治療を受けている対象からの自己由来である。別の実施形態では、本明細書に開示されるアポトーシス細胞上清の作製に使用されるアポトーシス細胞は、治療を受けている対象と同種異系である。
【0140】
アポトーシス細胞上清が得られる「アポトーシス細胞」は、当業者に知られているアポトーシスを誘導する方法に供された、対象の任意の細胞型、または任意の市販の細胞株から選択される細胞であり得る。アポトーシスを誘導する方法は、低酸素、オゾン、熱、放射線、化学物質、浸透圧、pHシフト、X線照射、ガンマ線照射、UV線照射、血清枯渇、コルチコイド、またはそれらの任意の組み合わせ、あるいは、本明細書に記載のまたは当分野で既知の任意の他の方法であり得る。別の実施形態では、アポトーシスを誘導する方法は、初期アポトーシス状態にあるアポトーシス細胞を作製する。
【0141】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、白血球である。
【0142】
一実施形態では、アポトーシス白血球は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。別の実施形態では、アポトーシス白血球は、プールされた第三者ドナーからのものである。別の実施形態では、アポトーシス白血球は、同種異系である。
【0143】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、非付着性白血球を選択し、選択された非付着性白血球をアポトーシス誘導に供し、その後、培養培地で細胞培養ステップを施すことによって提供される。アポトーシス細胞-食細胞上清の作製に使用される「白血球」は、免疫系及び/または造血系の有核細胞の任意の系統または亜系統、これに限定しないが、例えば、樹状細胞、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、造血幹細胞、骨髄細胞、ナチュラルキラー細胞などに由来し得る。白血球は、用途及び目的、所望の白血球系統などに応じて、一般的に実施されている様々な方法のいずれかにしたがって、様々な好適な解剖学的区画のいずれかから、様々な好適な方法のいずれかによって、誘導または取得することができる。いくつかの実施形態では、ソース白血球は、初代白血球である。別の実施形態では、ソース白血球は、初代末梢血白血球である。
【0144】
初代リンパ球及び単球は、末梢血から簡単に得られる。末梢血白血球としては、70~95%のリンパ球、及び5~25%の単球が挙げられる。
【0145】
血液から特定の種類のソース白血球を取る方法は、日常的に行われている。ソースリンパ球及び/または単球の取得は、例えば、ヘパリンまたはクエン酸などの抗凝固剤の存在下で血液を収集することによって達成される。次いで、収集した血液をフィコールクッション上で遠心分離すると、勾配界面にリンパ球と単球が、ペレットに好中球及び赤血球が分離される。
【0146】
白血球は、それらの特異的な表面マーカーにしたがって、標準的な免疫磁気選択法または免疫蛍光フローサイトメトリー技術によって、あるいは遠心溶出法によって、互いに分離される。例えば、単球はCD14+分画として選択され、Tリンパ球はCD3+分画として選択され、Bリンパ球はCD19+分画として選択され、マクロファージはCD206+分画として選択される。
【0147】
リンパ球及び単球は、これらの細胞を、組織培養処理された培養レシピエントにおける静置培養などの基質付着条件に供し、単球の細胞付着性基質への選択的な付着をもたらすことによって(リンパ球は細胞付着性基質に付着しない)、互いに分離される。
【0148】
白血球はまた、末梢血単核細胞(PBMC)からも得られ、本明細書に記載されるようにして単離させることができる。
【0149】
当業者は、本明細書に開示される所望の量の培養ソース白血球を作製するために初代白血球を適切に培養するために必要な専門知識を有し、そのような培養方法を実施するための十分な指針が当分野の文献から得られるであろう。
【0150】
当業者であれば、アポトーシス白血球を誘導するための好適な確立された白血球細胞株を確立、購入、または他の方法で取得するために必要な専門知識を有するであろう。好適な白血球細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)などの供給業者から入手することができる。ソース白血球は、該白血球がアポトーシス性白血球を産生する能力を著しく阻害する技術を用いて取得するべきではないことは、当業者には明らかであろう。
【0151】
別の実施形態では、アポトーシス細胞は、アポトーシスリンパ球であり得る。初代リンパ球などのリンパ球のアポトーシスは、初代リンパ球を血清枯渇、コルチコステロイド、または放射線照射で処理することによって誘導され得る。別の実施形態では、コルチコステロイドでの処理によって初代リンパ球のアポトーシスを誘導することは、初代リンパ球をデキサメタゾンで処理することによってもたらされる。別の実施形態では、初代リンパ球を約1マイクロモルの濃度のデキサメタゾンで処理する。別の実施形態では、放射線照射によって初代リンパ球のアポトーシスを誘導することは、初代リンパ球をガンマ線照射で治療することによってもたらされる。別の実施形態では、初代リンパ球を約66ラジアンの線量で放射線照射する。このような処理により、食細胞との共培養ステップに好適なアポトーシスリンパ球が作製される。
【0152】
さらなる実施形態では、アポトーシス細胞は、初代単球などのアポトーシス単球であり得る。アポトーシス単球を作製するために、単球は、血清枯渇の条件下で基質/表面付着のインビトロ条件に供される。このような処理により、食細胞との共培養ステップに好適な非炎症性アポトーシス単球が作製される。
【0153】
他の実施形態では、アポトーシス細胞は、同種異系アポトーシス細胞、第三者のアポトーシス細胞、及びアポトーシス細胞のプールを含む、本明細書に記載の任意のアポトーシス細胞であり得る。
【0154】
他の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞を他の細胞と共培養することによって得ることができる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞と白血球との共培養によって得ることができる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞と樹状細胞との共培養によって得ることができる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞とマクロファージとの共培養によって得ることができる。マクロファージは、M1マクロファージ及びM2マクロファージを含む様々な方法で産生することができる。
【0155】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞またはその断片を摂取した白血球の培養によって得ることができる。一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞またはその断片を摂取した樹状細胞の培養によって得ることができる。一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、アポトーシス細胞またはその断片を摂取したマクロファージの培養によって得ることができる。
【0156】
したがって、いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)他の細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップと、を含む方法によって得られるアポトーシス細胞上清である。
【0157】
当業者であれば、本明細書において特定の実施形態で使用するとき、「上清」という用語は、「アポトーシス細胞上清」、「アポトーシス上清」、「アポトーシス食細胞上清」、「アポトーシス白血球上清」、「アポトーシス-マクロファージ上清」、「アポトーシス-樹状上清」などの用語と互換的に使用することができ、それらのすべては、上清の供給源及び調製方法が異なっていても、サイトカイン放出に影響を与える、あるいは、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療するための同じ意味及び性質を有することを理解するであろう。
【0158】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞と共培養される他の細胞は、白血球である。いくつかの実施形態では、白血球は、マクロファージ、単球、または樹状細胞などの食細胞であり得る。いくつかの実施形態では、白血球は、B細胞、T細胞、またはナチュラルキラー(NK細胞)であり得る。
【0159】
特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)白血球を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)食細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)マクロファージを提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)樹状細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)単球を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)B細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)T細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。特定の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、(a)アポトーシス細胞を提供するステップと、(b)ナチュラルキラー(NK)細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップとを含む方法によって得られたアポトーシス細胞-白血球上清である。
【0160】
細胞上清を得る方法のいくつかの実施形態では、白血球がアポトーシス細胞またはその一部を摂取するように、まず、アポトーシス細胞を白血球と共培養する。
【0161】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法及び治療で使用される組成物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献3に記載されるアポトーシス細胞-食細胞上清を含む。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるアポトーシス細胞-食細胞上清は、当分野で既知の任意の方法を用いて作製される。
【0162】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清は、食細胞とアポトーシス細胞との共培養によって得られる。
【0163】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清は、(a)食細胞を提供するステップと、(b)アポトーシス細胞を提供するステップと、(c)任意選択で上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を洗浄するステップと、(d)上記のステップ(a)及びステップ(b)で提供された細胞を共培養するステップと、任意選択で、(e)共培養した細胞から上清を分離するステップと、を含む方法によって得られる。
【0164】
「食細胞」という用語は、有害な異物、細菌、及び、死滅した細胞または死にかけている細胞を摂取(貪食)することによって体を保護する細胞を意味する。食細胞としては、例えば、好中球、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び肥満細胞と呼ばれる細胞、優先的には、樹状細胞及び単球/マクロファージが挙げられる。食細胞は、樹状細胞(CD4+ HLA-DR+ 系統-BDCA1/BDCA3+)、マクロファージ(CD14+ CD206 +HLA-DR+)であり得るか、または単球由来(CD14+)であり得る。これらの様々な食細胞を区別するための技術は、当業者には知られている。
【0165】
一実施形態では、単球は、プラスチック付着ステップによって得られる。単球は、マーカーCD14+によって、B細胞とT細胞とを区別することができる。不要なB細胞は、CD19+及びT細胞CD3+を発現する。マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)誘導成熟後、得られたマクロファージは、いくつかの実施形態では、マーカーCD14+、CD206+、HLA-DR+に対して陽性である。
【0166】
一実施形態では、食細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来する。
【0167】
食細胞は、食細胞を得るための当分野で既知の任意の方法によって提供することができる。いくつかの実施形態では、マクロファージまたは樹状細胞などの食細胞は、対象から直接単離されるか、または成熟ステップによって前駆細胞から誘導される。
【0168】
いくつかの実施形態では、マクロファージは、対象の腹腔から直接単離され、完全RRPMI培地で培養される。マクロファージは、脾臓から単離させることもできる。
【0169】
食細胞は、末梢血単球からも得ることができる。その場合、単球は、その培養時に、細胞培養培地に、これに限定しないが例えばマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を添加すると、単球由来のマクロファージに分化する。
【0170】
例えば、食細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来し得る。例えば、PBMCは、フィコール勾配遠心分離によって個体からのサイタフェレーシスバッグから単離され、完全RPMI培養培地(10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン)中で、90分間の細胞付着ステップによって播種される。付着していないT細胞は、プラスチック付着ステップによって除去され、付着したT細胞は、組換え型ヒトM-CSFを補充した完全RPMI環境で培養される。培養期間後、単球由来のマクロファージが得られる。
【0171】
食細胞は、細胞付着ステップによって選択することができる。「細胞付着ステップ」とは、培養細胞を、或る表面、すなわち、細胞付着表面(例えば、組織培養皿、マトリックス、ナイロンまたはプラスチック製の適切なタイプのサックまたはバック)に付着させることを可能にする培養状態によって、食細胞または食細胞に成熟することができる細胞を選択することを意味する。当業者であれば、「細胞付着表面」という用語が、親水性及び負に帯電したものを包含し得、当分野で知られている様々な方法のいずれかによって得られ、別の実施形態では、例えば、コロナ放電、またはガスプラズマを使用してポリスチレン表面を改変することによって得られることを理解するであろう。これらのプロセスは、表面が親水性になり、かつ負に帯電するように表面のポリスチレン鎖にグラフトする、高エネルギーの酸素イオンを生成する。細胞付着を促進するように設計された培養レシピエントは、様々な供給業者(例えば、Corning、Perkin-Elmer、Fisher Scientific、Evergreen Scientific、Nuncなど)から入手可能である。
【0172】
B細胞、T細胞、及びNK細胞は、そのような細胞を得るための当分野で知られている任意の方法によって提供され得る。いくつかの実施形態では、B細胞、T細胞、またはNK細胞は、対象から直接単離されるか、または成熟ステップによって前駆細胞から誘導することができる。別の実施形態では、B、T、またはNK細胞は、B細胞株、T細胞株、またはNK細胞株に由来し得る。当業者であれば、好適な確立されたB細胞、T細胞、及び、NK細胞株を確立、購入、または他の方法で取得するために必要な専門知識を有するであろう。好適な細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)などの供給業者から入手することができる。
【0173】
一実施形態では、食細胞、B細胞、T細胞、またはNK細胞などのアポトーシス細胞及び白血球は、共培養ステップ(d)の前に個別に培養される。
【0174】
食細胞の細胞成熟は、例えば培地への成熟因子の添加により、細胞培養中に行われる。一実施形態では、成熟因子は、M-CSFであり、例えば、単球由来のマクロファージを得るために使用され得る。
【0175】
食細胞の成熟または選択に使用される培養ステップは、数時間から数日間にわたって行われ得る。別の実施形態では、未成熟食細胞は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、または58時間にわたって、適切な培養培地で培養される。
【0176】
食細胞の培養培地は当業者に知られており、これに限定しないが、例えば、RPMI、DMEM、X-vivo、及び超培養環境であり得る。
【0177】
一実施形態では、アポトーシス細胞と食細胞との共培養は、生理学的溶液中で行われる。
【0178】
この「共培養」の前に、細胞は、洗浄ステップに供され得る。いくつかの実施形態では、白血球(例えば、食細胞)及びアポトーシス細胞は、共培養ステップの前に洗浄される。別の実施形態では、細胞は、PBSで洗浄される。
【0179】
共培養の間、白血球(例えば、マクロファージ、単球、または食細胞などの食細胞類、あるいは、B細胞、T細胞、またはNK細胞)及びアポトーシス細胞は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、または1:1の比率、あるいは、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10の比率(白血球:アポトーシス細胞)で混合され得る。一例では、白血球とアポトーシス細胞との比率は、1:5である。
【0180】
細胞の共培養は、数時間から数日間行われ得る。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、または52時間培養される。当業者であれば、抗炎症化合物の存在、白血球の生存量、及び、除去されなかったアポトーシス細胞の量を測定することによって、共培養の最適な時間を評価することができるであろう。食細胞によるアポトーシス細胞の除去は、アポトーシス細胞の消失に起因して、光学顕微鏡で観察可能である。
【0181】
いくつかの実施形態では、白血球(例えば、マクロファージ、単球、または食細胞などの食細胞類、あるいは、B細胞、T細胞、またはNK細胞)を含む培養物との共培養などの、アポトーシス細胞の培養は、例えば、対象への注射などの投与に適合する培養培地及び/生理学的溶液中で行われる。
【0182】
当業者であれば、「生理学的溶液」が、培養時間内に白血球を死滅させない溶液を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、生理学的溶液は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、または52時間にわたって白血球を死滅させない。他の実施形態では、生理学的溶液は、48時間、または30時間にわたって白血球を死滅させない。
【0183】
いくつかの実施形態では、白血球(例えば、マクロファージ、単球、または食細胞などの食細胞類、あるいは、B細胞、T細胞、またはNK細胞)と、アポトーシス細胞とは、生理学的溶液中で少なくとも30分間培養される。この培養時間により、食作用の開始、並びに、サイトカイン及び他の有益な物質の分泌が可能となる。
【0184】
一実施形態では、このような生理学的溶液は、白血球由来マクロファージによるアポトーシス性白血球除去を阻害しない。
【0185】
培養または共培養ステップの終わりに、上清は、任意選択で、培養されたアポトーシス細胞または共培養された細胞から分離される。細胞から上清を分離する技術は、当分野で知られている。例えば、細胞及びデブリを除去するために、上清の収集、濾過、及び/または遠心分離を行うことができる。例えば、上清は、それを細胞から分離するために、室温で15分間、3000rpmで遠心分離され得る。
【0186】
上清は、使用前に、例えば放射線照射によって、「不活化」され得る。したがって、アポトーシス細胞上清を調製する方法は、任意選択の追加の放射線照射ステップ(f)を含み得る。「放射線照射」ステップは、血液製剤を不活化させるために日常的に行われているような、微生物を殺滅するのに十分な量のX線照射(25~45Gy)を使用する消毒方法と考えることができる。
【0187】
上清への放射線照射は、当分野では安全であると考えられている。現在、WBCへの反応を防ぐために、献血された血液に対する放射線照射処置が日常的に行われている。
【0188】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、本明細書で詳細に説明されるように、対象への投与に適した医薬組成物に製剤化される。
【0189】
いくつかの実施形態では、最終産物は、+4℃で保存される。別の実施形態では、最終産物は、次の48時間で使用するためのものである。
【0190】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞-食細胞上清などのアポトーシス細胞上清、または、その上清を含む医薬組成物は、例えば-80℃での保存のために凍結乾燥され得る。
【0191】
具体的な一実施形態では、特許文献3の実施例1に記載されているように、アポトーシス細胞-食細胞上清は、アポトーシス細胞として胸腺細胞を使用して作製することができる。単離後、胸腺細胞を放射線照射し(例えば、35X-Grayの放射線照射で)、次いで、完全DMEM培地で例えば6時間培養し、アポトーシスを発生させる。それと並行して、腹腔からマクロファージを分離し、洗浄し、完全RPMI(10%FBS、Peni-Strepto、EAA、Hepes、NaP、及び2-MercaptoEthanol)中で培養する。次に、マクロファージ及びアポトーシス細胞を洗浄し、フェノールを含まないX-vivo培地で、1/5のマクロファージ/アポトーシス細胞比で、さらに48時間共培養する。その後、上清を収集し、遠心分離してデブリを除去し、保存のために冷凍または凍結乾燥させる。マクロファージの濃縮は、FACSによるF4/80の陽性染色を使用して確認することができる。アポトーシスは、7AAD除去及びAnnexin-V陽性染色を使用したFACSによって確認することができる。
【0192】
一実施形態では、アポトーシス細胞上清は、別々に培養したマクロファージまたはアポトーシス細胞のいずれかから得られた上清と比較して、TGF-βの活性型及び潜在型の両方でTGF-β濃度が高い。一実施形態では、IL-10濃度も、単独で培養されたマクロファージと比較して増加し、かつ、単独で培養されたアポトーシス細胞と比較して劇的に増加する。別の実施形態では、IL-6などの炎症性サイトカインは検出されず、また、IL-1β及びTNFは検出されないか、または非常に低濃度である。
【0193】
一実施形態では、TGF-β及びIL-10に加えて、炎症を制御するための上清の寛容原性の役割に関与していると考えられるL-1ra、TIMP-1、CXCL1/KC、及びCCL2/JE/MCP1の濃度が、アポトーシス細胞上清は、単独で培養されたマクロファージまたは単独で培養されたアポトーシス細胞からの上清と比較して増加する。
【0194】
別の特定の実施形態では、特許文献3の実施例3に記載されているように、ヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、末梢血単核細胞(PBMC)に由来するマクロファージと、アポトーシスPBMCとの共培養から作製することができる。したがって、PBMCは、例えば、フィコール勾配遠心分離によって、健康なボランティアからのサイタフェレーシスバッグから単離される。次に、PBMCを完全RPMI培養培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)中で90分間播種する。次いで、付着しないT細胞を除去し、例えば35Gy用量のX線照射を使用してアポトーシスを発生させ、アポトーシスの発生を可能にするために、完全RPMI環境で4日間培養する(最初の48時間培養後の細胞洗浄を含む)。それと並行して、付着したT細胞は、最初の48時間培養後の細胞洗浄を含む4日間、50μg/mLの組換え型ヒトM-CSFを補充した完全RPMI環境で培養される。4日間の培養期間の終了後、単球由来のマクロファージ及びアポトーシス細胞を洗浄し、X-vivo培地で再び48時間、マクロファージ:アポトーシス細胞を1:5の比率にして、共培養する。その後、後者の培養物からの清を収集し、遠心分離して細胞及びデブリを除去し、保存及びその後の使用のために凍結または凍結乾燥させる。
【0195】
一実施形態では、特許文献3に記載されているように、アポトーシス細胞-食細胞上清は、末梢血単核細胞(PBMC)から6日で得られる。培養物にM-CSF添加を使用してPBMC由来マクロファージを得るために4日、0日目に単離された非付着性PBMCに対応するアポトーシス細胞とPBMC由来マクロファージとの共培養にさらに2日である。
【0196】
一実施形態では、特許文献3に記載されているように、標準化されたヒトアポトーシス細胞-食細胞上清は、ドナーまたはPBMCの供給源(サイタフェレーシスまたはバフィーコート)とは無関係に得られる。プラスチック付着ステップは、濃縮された単球の有意な出発集団(プラスチック培養皿に付着後のCD14+細胞の20~93%)を得るのに十分である。加えて、そのような付着性T細胞は、B細胞及びT細胞の存在が非常に少ないことを示す(CD19+B細胞は1.0%、CD3+T細胞は12.8%)。M-CSFの存在下で付着性T細胞を4日間培養した後、単球由来マクロファージの割合は、CD14+CD206+HLA-DR+マクロファージの0.1%~77.7%に大幅に増加する。そして、単球由来マクロファージをアポトーシス非付着性PBMC(Annexin-V染色及び7AAD除去によって示されるように、47.6%のアポトーシス)と48時間共培養することにより、アポトーシス細胞-食細胞上清を作製することができる。
【0197】
一実施形態では、収集されたアポトーシス細胞-食細胞上清は、単球由来マクロファージ単独、または炎症状態(+LPS)で処理した単球由来マクロファージの培養上清よりも有意に多くの潜在的TGFを含み、IL-1βやTNFなどの炎症性サイトカインは微量または低濃度でのみ含む。
【0198】
別の実施形態では、後記する実施例3で説明するように、アポトーシス上清は、初期アポトーシス細胞及び単球により調製される。
【0199】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、抗凝固剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗凝固剤は、ヘパリン、酸性クエン酸デキストロース(ACD)-A、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0200】
別の実施形態では、抗凝固剤は、アポトーシス細胞を作製するプロセス中に添加される。別の実施形態では、添加される抗凝固剤は、ACD、ヘパリン、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される。別の実施形態では、ACDの濃度は、1%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、2%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、3%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、4%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、5%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、6%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、7%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、8%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、9%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、10%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約1~10%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約2~8%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約3~7%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約1~5%である。別の実施形態では、ACDの濃度は、約5~10%である。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.5U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.1~1.0U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.2~0.9U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.3~0.7U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.1~0.5U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.5~1.0U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、約0.01~1.0U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.1U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.2U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.3U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.4U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.5U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.6U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.7U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.8U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、0.9U/mlである。別の実施形態では、ヘパリンの最終濃度は、1.0U/mlである。別の実施形態では、ACDの濃度は5%であり、ヘパリンの最終濃度は0.5U/mlである。
【0201】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清を含む組成物は、メチルプレドニゾロンをさらに含む。いくつかの実施形態では、メチルプレドニゾロンの濃度は、30μg/mlを超えない。
【0202】
アポトーシス細胞の投与
【0203】
驚くべきことに、アポトーシス細胞は、炎症性及び/または抗炎症性のサイトカイン/ケモカインの産生を減少させる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、炎症性サイトカイン/ケモカイン、これに限定しないが、例えば、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFαのいずれかまたはそれらの任意の組み合わせの産生を減少させる。一実施形態では、アポトーシス細胞は、滑液中のサイトカイン発現レベルに影響を与える。一実施形態では、アポトーシス細胞は、関節液中のサイトカイン発現レベルに影響を与える。
【0204】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1以上の炎症性サイトカインまたは抗炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1以上の炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1以上の抗炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、炎症性または抗炎症性のサイトカインは、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞の投与は、1以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する少なくとも1つのサイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する各サイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞の投与によって下方制御される。
【0205】
いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する少なくとも1つの抗炎症性サイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する少なくとも1つの炎症性サイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する炎症性サイトカインまたはケモカインと抗炎症性サイトカインまたはケモカインとの組み合わせは、アポトーシス細胞の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFαのいずれかまたはそれらの任意の組み合わせであって、例えば、関節領域の滑液または関節液において異常な発現または含有量を有するものは、アポトーシス細胞の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFαのいずれかまたはそれらの任意の組み合わせであって、例えば、消失性骨疾患の領域において異常な発現または含有量を有するものは、アポトーシス細胞の投与によって下方制御される(実施例4を参照)。
【0206】
いくつかの実施形態では、約100×106~210×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約140×106~210×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約100×106~140×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約10×106~100×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0207】
いくつかの実施形態では、約1×106~約1×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約10×106~約1×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×106~約1×108個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107~約1×108個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×106~約1×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107~約1×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×108~約1×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0208】
いくつかの実施形態では、約20×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約30×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約40×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約50×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約60×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約70×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約80×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約90×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107~約15×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約10×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約11×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約12×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約13×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約14×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約15×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0209】
いくつかの実施形態では、10×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×108個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1010個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1011個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1012個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×105個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×104個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×103個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×102個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0210】
いくつかの実施形態では、高用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、35×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、210×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、70×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、140×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、35×106~210×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0211】
いくつかの実施形態では、単回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、複数回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、2回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、3回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、4回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、5回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、6回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、7回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、8回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、9回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、10回用量以上のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、複数回用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、複数回用量のアポトーシス細胞が、治療を必要とする対象の治療中に投与される。
【0212】
本明細書に記載される用量の各々は、いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の用量の±約5%、±約10%、±約15%、±約20%、または±約25%であり得る。一実施形態では、アポトーシス細胞の用量は、アポトーシス細胞の用量の±約5%である。一実施形態では、アポトーシス細胞の用量は、アポトーシス細胞の用量の±約10%である。一実施形態では、アポトーシス細胞の用量は、アポトーシス細胞の用量の±約15%である。一実施形態では、アポトーシス細胞の用量は、アポトーシス細胞の用量の±約20%である。一実施形態では、アポトーシス細胞の用量は、アポトーシス細胞の用量の±約25%である。一実施形態では、アポトーシス細胞の用量は、アポトーシス細胞の用量の±約5%~±約25%である。例えば、これに限定しないが、アポトーシス細胞の用量は、約100×106~210×106個±20%の用量、または約100×106個±約20%の用量、または約120×106個±約20%の用量、または約140×106個±約20%の用量、または約160×106個±約20%の用量、または約180×106個±約20%の用量、または約200×106個±約20%の用量などであり得る。類似の実施形態は、±5%、±10%、±15%、±20%、または±25%の用量を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞が、毎日投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞が、毎週投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞が、半週ごとに(週2回)投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞が、隔週(2週間毎)で投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞が、毎月投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞が、不定期なレジメで投与され、例えば、所定の期間にわたって毎日投与した後、半週ごと、毎週、隔週で、毎月、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。
【0214】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、それを必要な領域に直接適用することができる当分野で既知の任意の方法、これに限定しないが例えば注射や注入などによって投与される。いくつかの実施形態では、投与は、関節への直接的な注射及び/または注入を含む。いくつかの実施形態では、投与は、関節に隣接する部位への注射及び/または注入を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位への直接的な注射及び/または注入を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位に隣接する部位への注射及び/または注入を含む。注射用のアポトーシス細胞は、無菌注射用溶液として製剤化された医薬組成物の形態であり得る。
【0215】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、局所投与によって投与され、アポトーシス細胞またはそれを含む医薬組成物は、必要とされる領域に直接適用される。いくつかの実施形態では、投与は、関節の部位への直接的な局所適用を含む。いくつかの実施形態では、投与は、関節に隣接する部位での局所適用を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位への直接的な局所適用を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位に隣接する部位への局所適用を含む。局所適用のためのアポトーシス細胞は、局所軟膏、クリーム、オイル、パッチ、または皮膚パッチとして処方される医薬組成物の形態であり得る。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞は、必要とされる領域の軟骨に浸潤させることによって投与され、アポトーシス細胞またはそれを含む医薬組成物は、必要とされる領域を標的として直接投与される。いくつかの実施形態では、投与は、関節に、アポトーシス細胞またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。いくつかの実施形態では、投与は、関節に隣接する組織に、アポトーシス細胞またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位の領域に、アポトーシス細胞またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位に隣接する組織に、アポトーシス細胞またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の適用は、局所的な使用のために行われる。
【0217】
アポトーシス細胞上清の投与
【0218】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、炎症性及び/または抗炎症性のサイトカイン/ケモカインの産生を減少させる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、炎症性サイトカイン/ケモカイン、これに限定しないが、例えば、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFαのいずれかまたはそれらの任意の組み合わせの産生を減少させる。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、滑液中のサイトカイン発現レベルに影響を与える。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、関節液中のサイトカイン発現レベルに影響を与える。
【0219】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、1以上の炎症性サイトカインまたは抗炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、1以上の炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、1以上の抗炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、炎症性または抗炎症性のサイトカインは、L-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、1以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する少なくとも1つのサイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞上清の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する各サイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞上清の投与によって下方制御される。
【0220】
いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する少なくとも1つの抗炎症性サイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞上清の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する少なくとも1つの炎症性サイトカインまたはケモカインは、アポトーシス細胞上清の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、異常な発現または含有量を有する炎症性サイトカインまたはケモカインと抗炎症性サイトカインまたはケモカインとの組み合わせは、アポトーシス細胞上清の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFαのいずれかまたはそれらの任意の組み合わせであって、例えば、関節領域の滑液または関節液において異常な発現または含有量を有するものは、アポトーシス細胞上清の投与によって下方制御される。いくつかの実施形態では、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFαのいずれかまたはそれらの任意の組み合わせであって、例えば、消失性骨疾患の領域において異常な発現または含有量を有するものは、アポトーシス細胞上清の投与によって下方制御される。
【0221】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清またはそれを含む組成物は、対象の体重1キログラムあたり約2億個の細胞(70kgの対象の場合)に相当するサイタフェレーシスによって得られた約14×109個のCD45+細胞の共培養に由来するアポトーシス細胞上清の総用量またはアリコートで使用され得る。一実施形態では、そのような総用量は、対象の体重1キログラムあたり約1億個の細胞に由来する上清の単位用量として投与され、及び/または週間隔で単位用量として投与される。この実施形態による好適な総用量には、対象の体重1キログラムあたり約1000万~約40億個の細胞に由来する上清の総用量が含まれる。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約4000万~約10億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約8000万~約5億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約1億6000万~約2億5000万個の細胞に由来する。この実施形態による好適な単位用量には、対象の体重1キログラムあたり約400万~約4億個の細胞に由来する上清の単位用量が含まれる。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約800万~約2億個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約1600万~約1億個個の細胞に由来する。別の実施形態では、上清は、対象の体重1キログラムあたり約3200万~約5000万個の細胞に由来する。
【0222】
別の実施形態では、約10×106個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×107個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×108個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×109個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×1010個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×1011個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×1012個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×105個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×104個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×103個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、10×102個のアポトーシス細胞の共培養に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。
【0223】
いくつかの実施形態では、35×106個のアポトーシス細胞に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、210×106個のアポトーシス細胞に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、70×106個のアポトーシス細胞に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、140×106個のアポトーシス細胞に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。別の実施形態では、35×106~210×106個のアポトーシス細胞に由来する所定の用量のアポトーシス細胞上清が投与される。
【0224】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清またはそれを含む組成物が投与され得る。
【0225】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清は、IL-6などのサイトカインストームに関連するサイトカインの産生を減少させる(実施例3を参照)。
【0226】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清は、マクロファージ及びDCにおけるサイトカイン発現レベルに影響を与えるが、T細胞自体におけるサイトカイン発現レベルには影響を与えない。
【0227】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、サイトカイン発現レベルの変化を介さずに、T細胞の死を引き起こす。
【0228】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清は、サイトカインを分泌するためのマクロファージ及び樹状細胞のプライミングに拮抗する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清は、炎症反応を抑制する及び/またはサイトカインの過剰な放出を防ぐTregを増加させる。
【0229】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清、例えばアポトーシス細胞-食細胞上清の投与は、1以上の炎症性サイトカインを阻害する。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、IL-1β、IL-6、TNF-α、IFN-γ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与は、1以上の抗炎症性サイトカインの分泌を促進する。いくつかの実施形態では、抗炎症性サイトカインは、TGF-β、IL-10、PGE2、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0230】
別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、潜在的に寛容原性の樹状細胞が産生され、その樹状細胞は、いくつかの実施形態では、移動可能であり、いくつかの実施形態では、移動はCCR7に起因する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、様々なシグナル伝達事象が誘発され、そのシグナル伝達事象は、一実施形態では、TAM受容体シグナル伝達(Tyro3、Axl、及びMer)であり、それは、いくつかの実施形態では、抗原提示細胞の炎症を抑制する。いくつかの実施形態では、Tyro-3、Axl、及びMerは、付着分子様細胞外ドメイン及びキナーゼドメイン内の保存配列によって特徴付けられる受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAMファミリーを構成する。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、MerTKを介したシグナル伝達が活性化される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)/AKT経路が活性化され、いくつかの実施形態では、NF-κBが負に調節される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、一実施形態では炎症性サイトカイン分泌、DC成熟、またはそれらの組み合わせの阻害をもたらすインフラマソームが負に調節される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、Nr4a、Thbs1、またはそれらの組み合わせなどの抗炎症遺伝子の発現が上方制御される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、いくつかの実施形態ではパネキシン1依存的に蓄積される高レベルのAMPが誘導される。別の実施形態では、アポトーシス細胞上清の投与により、炎症が抑制される。
【0231】
いくつかの実施形態では、単回用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、複数回用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、2用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、3用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、4用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、5用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、6用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、7用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、8用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、9用量のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、10用量以上のアポトーシス細胞上清が投与される。いくつかの実施形態では、複数回用量のアポトーシス細胞上清が投与される。くつかの実施形態では、複数回用量のアポトーシス細胞上清が、治療を必要とする対象の治療中に投与される。
【0232】
本明細書に記載される用量の各々は、いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清の用量の±約5%、±約10%、±約15%、±約20%、または±約25%であり得る。一実施形態では、アポトーシス細胞上清の用量は、アポトーシス細胞上清の用量の±約5%である。一実施形態では、アポトーシス細胞上清の用量は、アポトーシス細胞上清の用量の±約10%である。一実施形態では、アポトーシス細胞上清の用量は、アポトーシス細胞上清の用量の±約15%である。一実施形態では、アポトーシス細胞上清の用量は、アポトーシス細胞上清の用量の±約20%である。一実施形態では、アポトーシス細胞上清の用量は、アポトーシス細胞上清の用量の±約25%である。一実施形態では、アポトーシス細胞上清の用量は、アポトーシス細胞上清の用量の±約5%~±約25%である。例えば、これに限定しないが、アポトーシス細胞上清の用量は、約100×106~210×106個±20%の用量、または約100×106個±約20%の用量、または約120×106個±約20%の用量、または約140×106個±約20%の用量、または約160×106個±約20%の用量、または約180×106個±約20%の用量、または約200×106個±約20%の用量などであり得る。類似の実施形態は、±5%、±10%、±15%、±20%、または±25%の用量を含む。
【0233】
いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞上清、毎日投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞上清が、毎週投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞上清が、半週ごとに(週2回)投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞上清が、隔週(2週間毎)で投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞上清が、毎月投与される。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞上清のが、不定期なレジメで投与され、例えば、所定の期間にわたって毎日投与した後、半週ごと、毎週、隔週で、毎月、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。
【0234】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、それを必要な領域に直接適用することができる当分野で既知の任意の方法、これに限定しないが例えば注射や注入などによって投与される。
【0235】
いくつかの実施形態では、投与は、関節への直接的な注射及び/または注入を含む。
いくつかの実施形態では、投与は、関節に隣接する部位への注射及び/または注入を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位への直接的な注射及び/または注入を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位に隣接する部位への注射及び/または注入を含む。注射用のアポトーシス細胞上清は、無菌注射用溶液として製剤化された医薬組成物の形態であり得る。
【0236】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、局所投与によって投与され、アポトーシス細胞上清またはそれを含む薬学的組成物は、必要とされる領域に直接適用される。いくつかの実施形態では、投与は、関節の部位への直接的な局所適用を含む。いくつかの実施形態では、投与は、関節に隣接する部位での局所適用を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位への直接的な局所適用を含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位に隣接する部位への局所適用を含む。局所適用のためのアポトーシス細胞上清は、局所軟膏、クリーム、オイル、パッチ、または皮膚パッチとして処方される医薬組成物の形態であり得る。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清は、必要とされる領域の軟骨に浸潤させることによって投与され、アポトーシス細胞上清またはそれを含む医薬組成物は、必要とされる領域を標的として直接投与される。いくつかの実施形態では、投与は、関節に、アポトーシス細胞上清またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。いくつかの実施形態では、投与は、関節に隣接する組織に、アポトーシス細胞上清またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位の領域に、アポトーシス細胞上清またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。いくつかの実施形態では、投与は、消失性骨疾患の部位に隣接する組織に、アポトーシス細胞上清またはそれを含む医薬組成物を浸潤させることを含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞上清の適用は、局所的な使用のために行われる。
【0238】
組成物
【0239】
本明細書で使用するとき、「組成物」及び「医薬組成物」という用語は、いくつかの実施形態では、互換的に使用され、すべて同一の性質及び意味を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような疾患を治療するための医薬組成物が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、変形性関節症を治療するため医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、消失性骨疾患を治療するための医薬組成物である。
【0240】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、上記で詳細に説明した初期アポトーシス細胞集団を含む。他の実施形態では、薬学的組成物は、上記で詳細に説明した初期アポトーシス細胞集団から得た上清を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、上記で詳細に説明したアポトーシス上清を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、上記で詳細に説明したアポトーシス-食細胞上清を含む。
【0241】
別の実施形態では、本明細書に記載の変形性関節症及び消失性骨疾患を治療するための薬学的組成物は、有効量の初期アポトーシス細胞集団と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、例えば、変形性関節症によって引き起こされる疼痛を治療するための本明細書に開示される方法において使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、変形性関節症の疼痛を軽減する方法において使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、変形性関節症によって引き起こされる関節の炎症を軽減する方法において使用される。くつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、変形性関節症によって引き起こされる関節内または関節周囲の腫れを軽減する方法において使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、関節における関節軟骨の進行性変性を抑制または遅延させる方法において使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、消失性骨疾患によって引き起こされる骨組織の進行性びらんを抑制または遅延させる方法において使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、変形性関節症に罹患した関節における動きを増加させる方法において使用される。いくつかの実施形態では、アポトーシス細胞を含む組成物は、変形性関節症に罹患した関節における可動域を増加させる方法において使用される。
【0242】
初期アポトーシス細胞の用量は、上記に詳細に説明した通りである。初期アポトーシス細胞集団の有効量は、上記の用量、例えば、これに限定しないが、約10×106個±20%~1×109個±20%の範囲の細胞数の初期アポトーシス細胞の用量を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、有効量の初期アポトーシス細胞集団と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0243】
いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、初期アポトーシス状態のアポトーシス細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、プールされた第三者ドナー細胞である。いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、同種異系ドナー細胞である。いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、自己由来ドナー細胞である。いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、プールされた自己由来ドナー細胞である。いくつかの実施形態では、組成物に含まれるアポトーシス細胞は、放射線照射される。
【0244】
別の実施形態では、本明細書に記載の変形性関節症及び骨疾患消失を治療するための薬学的組成物は、有効量の初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、例えば変形性関節症によって引き起こされる疼痛を治療するための本明細書に開示される方法において使用される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、変形性関節症の疼痛を軽減する方法において使用される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、変形性関節症によって引き起こされる関節の炎症を軽減する方法において使用される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、変形性関節症によって引き起こされる関節内または関節周囲の腫れを軽減する方法において使用される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、関節における関節軟骨の進行性変性を抑制または遅延させる方法において使用される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、消失性骨疾患によって引き起こされる骨組織の進行性びらんを抑制または遅延させる方法において使用される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、変形性関節症に罹患した関節における動きを増加させる方法において使用される。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、変形性関節症に罹患した関節における可動域を増加させる方法において使用される。
【0245】
初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清の用量は、上記に詳細に説明した通りである。初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清または、アポトーシス-食細胞上清の有効量は、上記の用量、例えば、これに限定しないが、約10×106個±20%~1×109個±20%の範囲の細胞数の初期アポトーシス細胞の培養物またはアポトーシス-食細胞培養物から収集した用量を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、有効量の初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、組成物に含まれる初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清は、初期アポトーシス状態のアポトーシス細胞から収集された上清を含む。いくつかの実施形態では、組成物に含まれる初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清は、プールされた第三のドナー細胞から収集された上清を含む。いくつかの実施形態では、組成物に含まれる初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清は、同種異系ドナー細胞から収集された上清を含む。一実施形態では、組成物に含まれる初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清は、自己由来ドナー細胞から収集された上清を含む。いくつかの実施形態では、組成物に含まれる初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清は、プールされた自己由来ドナー細胞から収集された上清を含む。一実施形態では、組成物に含まれる初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清は、放射線照射された細胞から収集された上清を含む。
【0247】
当業者であれば、「医薬組成物」という用語が、生理学的に適切な担体及び賦形剤などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の1以上の活性成分の調製を包含し得ることを理解するであろう。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0248】
当業者であれば、「生理学的に許容される担体」、「薬学的に許容される担体」、「生理学的に許容される賦形剤」、及び「薬学的に許容される賦形剤」という用語や表現は互換的に使用することができ、生物に大きな刺激を引き起こさず、投与された有効成分の生物学的活性及び特性を無効にしない、担体、賦形剤、または希釈剤を包含し得ることを理解するであろう。
【0249】
当業者であれば、「賦形剤」が、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を包含し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、賦形剤には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な種類の糖及びデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0250】
薬物の製剤化及び投与の技術は、参照により本明細書に組み込まれる、米国ペンシルバニア州イーストン所在のマック・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)の「Remington's Pharmaceutical Sciences」の最新版に記載されている。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、治療用組成物を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、治療効果をもたらす。
【0252】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、1回投与される。別の実施形態では、組成物は、2回投与される。別の実施形態では、組成物は、3回投与される。別の実施形態では、組成物は、4回投与される。別の実施形態では、組成物は、少なくとも4回投与される。別の実施形態では、組成物は、5回以上投与される。別の実施形態では、組成物は、複数回投与される。
【0253】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、毎日、毎週、毎月、または、特定の人における基礎疾患に適合する間隔で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、毎日投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、半週ごとに投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、毎週投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、隔週で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、毎月投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、これに限定しないが、例えば、まず、毎日投与され、その後、所定期間の経過後に、半週ごとに、毎週、または隔週での投与に変更される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、特定の人における基礎疾患、これに限定しないが例えば変形性関節症に適合する間隔で投与される。
【0254】
いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、関節に注射される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、関節に隣接した領域に注射される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、関節軟骨変性の部位に注射される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、関節軟骨変性部位に隣接した領域に注射される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、骨びらん部位に注射される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、骨びらん部位に隣接した領域に注射される。
【0255】
いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、関節に注入される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、関節に隣接した領域に注入される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、関節軟骨変性の部位に注入される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、関節軟骨変性部位に隣接した領域に注入される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、骨びらん部位に注入される。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、骨びらん部位に隣接した領域に注入される。
【0256】
いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、関節に浸透(湿潤)させられる。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、関節に隣接した領域に浸透(湿潤)させられる。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、関節軟骨変性の部位に浸透(湿潤)させられる。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、関節軟骨変性部位に関節に隣接した領域に浸透(湿潤)させられる。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位、例えば、骨びらんの部位に浸透(湿潤)させられる。いくつかの実施形態では、組成物は、必要な部位の近く、例えば、骨びらん部位に隣接した領域に浸透(湿潤)させられる。
【0257】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、滑膜、軟骨、または任意の関節成分、あるいはそれらの任意の組み合わせからの、炎症性または抗炎症性のサイトカインまたはケモカインの放出を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、滑膜、軟骨、または任意の関節成分、あるいはそれらの任意の組み合わせからの、炎症性サイトカインまたはケモカインの放出を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、滑膜、軟骨、または任意の関節成分、あるいはそれらの任意の組み合わせからの、抗炎症性サイトカインまたはケモカインの放出を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、関節における免疫応答のバランスを取り戻す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、関節内に存在する滑液中の免疫応答のバランスを取り戻す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、関節液中の免疫応答のバランスを取り戻す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、関節内の軟骨における免疫応答のバランスを取り戻す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、消失性骨疾患の部位における免疫応答のバランスを取り戻す。
【0258】
製剤
【0259】
初期アポトーシス細胞集団を含む、あるいは、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス-貪食上清を含む本明細書に開示される医薬組成物は、無菌液体製剤、例えば、選択されたpHに緩衝され得る、等張性水溶液、懸濁液、エマルション、分散液、または粘性組成物として便利に提供することができる。液体製剤は、通常、ゲル、他の粘性組成物、及び固体組成物よりも調製が容易である。加えて、液体組成物は、特に注射によって投与することが、幾分より便利である。一方、粘性組成物は、特定の組織との接触期間をより長くするために、適切な粘度範囲内で調製することができる。液体組成物または粘性組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る担体を含むことができる。
【0260】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物、あるいは、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス-食細胞上清を含む組成物は、乳酸リンゲル液中に含まれる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物、あるいは、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス食細胞上清を含む組成物は、既知の緩衝液、これに限定しないが、例えば、正常生理食塩水またはPBSを含む。
【0261】
無菌注射液は、本開示の方法の実施に用いられる、本明細書に記載される初期アポトーシス細胞集団、または、本明細書に記載される初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス上清、またはアポトーシス-食細胞上清を、所望に応じて様々な量の他の成分を含有する必要量の適切な溶媒に組み込むことによって調製することができる。このような組成物は、適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどと混合してもよい。このような組成物は、投与経路及び所望の調製に応じて、湿潤剤、分散剤、乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化または粘度増強添加剤、防腐剤、香味料、着色料などの補助物質を含んでもよい。参照により本明細書に組み込まれる「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE", 17th edition, 1985」などの標準的なテキストを、過度の実験なしに適切な製剤を調製するために参照してもよい。
【0262】
抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、及び緩衝液を含む組成物の安定性及び無菌性を高める様々な添加剤を加えてもよい。微生物の作用は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実に防止することができる。注射可能製剤の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。しかしながら、本明細書の開示によれば、使用する媒体、希釈剤、または添加剤は、遺伝子組み換え型免疫応答性細胞またはその前駆体に適合する必要がある。
【0263】
本明細書に記載される組成物または製剤は、等張性であり得る、すなわち、血液及び涙液と同一の浸透圧を有し得る。本明細書に開示される組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウム、または、他の薬学的に許容される薬剤、例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機溶質もしくは有機溶質など、使用して達成することができる。ナトリウムイオンを含む緩衝液の場合、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0264】
組成物の粘度は、所望に応じて、薬学的に許容される増粘剤を使用して、選択したレベルに維持することができる。メチルセルロースは、容易かつ経済的に入手可能であり、扱いやすいので、好ましい。
【0265】
他の適切な増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。増粘剤の好ましい濃度は、選択した薬剤に依存する。重要な点は、選択した粘度を達成する量を使用することである。適切な担体及び他の添加剤の選択は、正確な投与経路と、例えば液体剤形などの特定の剤形の性質(例えば、組成物が、溶液、懸濁液、ゲル、または別の液体剤形、例えば、持続放出形態や液体充填形態など、に製剤化されるかどうか)とに依存することは明らかである。
【0266】
当業者であれば、本明細書に開示される方法で使用するために、組成物または製剤の成分は、化学的に不活性であり、本明細書に記載の初期アポトーシス細胞集団の生存率または効力に影響を与えないように選択されるべきであることを理解するであろう。このことは、化学的及び薬学的原理の当業者に対して問題を提示しないであろう。または、本開示及び本明細書が引用した文献から、標準的なテキストを参照するか、または(過度の実験を伴わない)単純な実験によって、問題を容易に回避することができるであろう。
【0267】
本明細書に開示される初期アポトーシス細胞の治療的使用に関する1つの考察事項は、最適な効果を達成するために必要な細胞の量である。同様に、本明細書に開示される上清の治療的使用に関する考察事項は、最適な効果を達成するために必要な、上清が収集される細胞の量である。投与される細胞の量、または上清が収集される細胞の量は、いくつかの実施形態では、治療される対象に応じて異なる。加えて、関節への局所投与の場合、いくつかの実施形態では、関節の大きさが考慮される。
【0268】
いくつかの実施形態では、105~1010個、106~109個、または106~108個の初期アポトーシス細胞が、ヒト対象に投与される。いくつかの実施形態では、105~1010個、106~109個、または106~108個の初期アポトーシス細胞、アポトーシス細胞、またはアポトーシス食細胞から収集した上清が、ヒト対象に投与される。投与されるアポトーシス細胞の数、または、投与される上清を収集するためのアポトーシス細胞の数は、一実施形態では、所定の範囲を含み得る。
【0269】
いくつかの実施形態では、1×106~1×109±20%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×108±20%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×107±20%である。いくつかの実施形態では、1×107~1×109±20%である。いくつかの実施形態では、1×108~1×109±20%である。いくつかの実施形態では、10×106~500×106±20%である。いくつかの実施形態では、10×106~210×106±20%、約10×106±約20%の用量、12×106±約20%の用量または12×106±約20%の細胞から収集した用量、14×106±約20%の用量または14×106±約20%の細胞から収集した用量、16×106±約20%の用量または16×106±約20%の細胞から収集した用量、18×106±約20%の用量または18×106±約20%の細胞から収集した用量、20×106±約20%の用量または20×106±約20%の細胞から収集した用量である。いくつかの実施形態では、100×106~210×106±20%、約100×106±約20%の用量、120×106±約20%の用量または120×106±約20%の細胞から収集した用量、140×106±約20%の用量または140×106±約20%の細胞から収集した用量、160×106±約20%の用量または160×106±約20%の細胞から収集した用量、180×106±約20%の用量または180×106±約20%の細胞から収集した用量、200×106±約20%の用量または200×106±約20%の細胞から収集した用量、1×106±約20%の用量または1×106±約20%の細胞から収集した用量、1×107±約20%の用量1×107±約20%の細胞から収集した用量、1×108±約20%の用量または1×108±約20%の細胞から収集した用量、1×109±約20%の用量または1×109±約20%の細胞から収集した用量である。
【0270】
いくつかの実施形態では、1×106~1×109±5%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×108±5%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×107±5%である。いくつかの実施形態では、1×107~1×109±5%である。いくつかの実施形態では、1×108~1×109±5%である。いくつかの実施形態では、10×106~500×106±5%である。いくつかの実施形態では、10×106~210×106±5%、約10×106±約5%の用量、12×106±約5%の用量または12×106±約5%の細胞から収集した用量、14×106±約5%の用量または14×106±約5%の細胞から収集した用量、16×106±約5%の用量または16×106±約5%の細胞から収集した用量、18×106±約5%の用量または18×106±約5%の細胞から収集した用量、20×106±約5%の用量または20×106±約5%の細胞から収集した用量である。いくつかの実施形態では、100×106~210×106±5%、約100×106±約5%の用量、120×106±約5%の用量または120×106±約5%の細胞から収集した用量、140×106±約5%の用量または140×106±約5%の細胞から収集した用量、160×106±約5%の用量または160×106±約5%の細胞から収集した用量、180×106±約5%の用量または180×106±約5%の細胞から収集した用量、200×106±約5%の用量または200×106±約5%の細胞から収集した用量、1×106±約5%の用量または1×106±約5%の細胞から収集した用量、1×107±約5%の用量1×107±約5%の細胞から収集した用量、1×108±約5%の用量または1×108±約5%の細胞から収集した用量、1×109±約5%の用量または1×109±約5%の細胞から収集した用量である。
【0271】
いくつかの実施形態では、1×106~1×109±10%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×108±10%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×107±10%である。いくつかの実施形態では、1×107~1×109±10%である。いくつかの実施形態では、1×108~1×109±10%である。いくつかの実施形態では、10×106~500×106±10%である。いくつかの実施形態では、10×106~210×106±10%、約10×106±約10%の用量、12×106±約10%の用量または12×106±約10%の細胞から収集した用量、14×106±約10%の用量または14×106±約10%の細胞から収集した用量、16×106±約10%の用量または16×106±約10%の細胞から収集した用量、18×106±約10%の用量または18×106±約10%の細胞から収集した用量、20×106±約10%の用量または20×106±約10%の細胞から収集した用量である。いくつかの実施形態では、100×106~210×106±10%、約100×106±約10%の用量、120×106±約10%の用量または120×106±約10%の細胞から収集した用量、140×106±約10%の用量または140×106±約10%の細胞から収集した用量、160×106±約10%の用量または160×106±約10%の細胞から収集した用量、180×106±約10%の用量または180×106±約10%の細胞から収集した用量、200×106±約10%の用量または200×106±約10%の細胞から収集した用量、1×106±約10%の用量または1×106±約10%の細胞から収集した用量、1×107±約10%の用量または1×107±約10%の細胞から収集した用量、1×108±約10%の用量または1×108±約10%の細胞から収集した用量、1×109±約10%の用量または1×109±約10%の細胞から収集した用量である。
【0272】
いくつかの実施形態では、1×106~1×109±15%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×108±15%である。いくつかの実施形態では、1×106~1×107±15%である。いくつかの実施形態では、1×107~1×109±15%である。いくつかの実施形態では、1×108~1×109±15%である。いくつかの実施形態では、10×106~500×106±15%である。いくつかの実施形態では、10×106~210×106±15%、約10×106±約15%の用量、12×106±約15%の用量または12×106±約15%の細胞から収集した用量、14×106±約15%の用量または14×106±約15%の細胞から収集した用量、16×106±約15%の用量または16×106±約15%の細胞から収集した用量、18×106±約15%の用量または18×106±約15%の細胞から収集した用量、20×106±約15%の用量または20×106±約15%の細胞から収集した用量である。いくつかの実施形態では、100×106~210×106±15%、約100×106±約15%の用量、120×106±約15%の用量または120×106±約15%の細胞から収集した用量、140×106±約15%の用量または140×106±約15%の細胞から収集した用量、160×106±約15%の用量または160×106±約15%の細胞から収集した用量、180×106±約15%の用量または180×106±約15%の細胞から収集した用量、200×106±約15%の用量または200×106±約15%の細胞から収集した用量、1×106±約15%の用量または1×106±約15%の細胞から収集した用量、1×107±約15%の用量1×107±約15%の細胞から収集した用量、1×108±約15%の用量または1×108±約15%の細胞から収集した用量、1×109±約15%の用量または1×109±約15%の細胞から収集した用量である。より効果的な細胞または細胞上清を、より少ない数で投与してもよいし、または、より少ない数の細胞から収集してもよい。正確な有効量は、各対象の個々の因子、例えば、対象の大きさ、年齢、性別、体重、対象の特定の疾患、適用部位、例えば、治療される滑膜関節または骨の領域の大きさなどに基づいて決定することができる。投薬量は、本開示及び当業者の知識から、当業者であれば容易に把握することができるであろう。
【0273】
当業者であれば、本明細書に開示される方法で投与される組成物中の細胞数または上清の量、及び、任意選択の添加剤、ビヒクル、及び/または担体を容易に決定することができるであろう。一般的に、任意の添加剤(活性細胞及び/または薬剤に加えて)は、リン酸緩衝生理食塩水中の0.001~50%(重量)の量で存在し、有効成分は、約0.0001~約5wt%などのマイクログラムからミリグラムのオーダーで存在する。別の実施形態では、約0.0001~約1重量%である。別の実施形態では、約0.0001~約0.05重量%、または約0.001~約20重量%である。別の実施形態では、約0.01~約10重量%である。別の実施形態では、約0.05~約5重量%である。当然ながら、動物またはヒトに投与される任意の組成物、及び任意の特定の投与方法については、毒性(適切な動物モデル、例えばマウスなどのげっ歯類における致死量(LD)及びLD50を測定することにより決定する)、並びに、適切な反応を引き出すための、組成物の投与量、該組成物に含まれる成分の濃度、及び該組成物の投与タイミングを決定することが好ましい。そのような決定は、当業者の知識、本開示、及び本明細書に引用された文献から過度の実験を必要としない。さらに、順次投与の時間は、過度の実験なしに把握することができる。
【0274】
使用方法
【0275】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法であって、初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清を含む組成物を、対象の関節、または消失性骨疾患の疾患部位に直接投与するステップを含み、上記の組成物の投与により、治療を必要とする対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法である。
【0276】
当業者であれば、「関節の疾患または障害」という用語が、関節の正常な機能または使用が損なわれている疾患を包含することを理解するであろう。機能が損なわれたり失われたりすると、関節またはその周囲に不快感や痛みが生じることがある。関節の疾患及び障害は、骨、関節包、軟骨、腱、靱帯、腱鞘、嚢、滑液、患部の内部またはその周囲に影響を及ぼすことがある。関節の一般的な疾患としては、変形性関節症、関節リウマチ、痛風、ループス、腱炎、滑液包炎、手根管症候群、捻挫などが挙げられる。いくつかの実施形態では、関節の疾患または障害は、変形性関節症を含む。
【0277】
いくつかの実施形態では、変形性関節症を治療するための本明細書に開示される治療方法は、炎症性変形性関節症を治療する。いくつかの実施形態では、変形性関節症を治療するための本明細書に開示される治療方法は、びらん性変形性関節症(EOA)を治療する。いくつかの実施形態では、変形性関節症を治療するための本明細書に開示される治療方法は、炎症性変形性関節症を伴うゴーラム病を治療する。いくつかの実施形態では、変形性関節症は、炎症性関節炎、びらん性変形性関節症、及び消失性骨疾患を含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症は、炎症性関節炎、びらん性変形性関節症、及び消失性骨疾患の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症は、炎症性関節炎、またはびらん性変形性関節症、または消失性骨疾患、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0278】
初期アポトーシス細胞の直接投与を含む治療方法は、いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療にも有用である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、治療を必要とする対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法であって、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物を、対象の関節、または消失性骨疾患の部位に直接投与するステップを含み、上記の組成物の投与により、治療を必要とする対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、治療を必要とする対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法であって、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス細胞上清、またはアポトーシス細胞-食細胞上清を含む組成物を、対象の関節、または消失性骨疾患の部位に直接投与するステップを含み、上記の上清の投与により、治療を必要とする対象における変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法である。
【0279】
いくつかの実施形態では、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせの治療は、変形性関節症または消失性骨疾患に罹患している対象における、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、関節軟骨の進行性変性の抑制、関節軟骨の進行性変性の軽減、骨組織のびらんの抑制、骨組織のびらんの遅延、骨折の軽減、骨折の抑制、骨破壊の軽減、骨破壊の抑制、生活の質の向上、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法を用いて変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療することにより、関節内または骨組織内、またはそれに隣接する組織内、あるいはそれらの任意の組み合わせにおける免疫応答のバランスを取り戻す。
【0280】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、長期治療を提供する。いくつかの実施形態では、治療の効果は、投与後少なくとも1ヵ月間持続する。いくつかの実施形態では、治療の効果は、投与後少なくとも2カ月間持続する。いくつかの実施形態では、治療の効果は、投与後少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、または11ヵ月間持続する。いくつかの実施形態では、治療の効果は、投与後少なくとも1~6ヵ月間持続する。いくつかの実施形態では、治療の効果は、投与後少なくとも1ヵ月間~1年間持続する。いくつかの実施形態では、治療の効果は、投与後少なくとも1年間持続する。いくつかの実施形態では、治療の効果は、投与後1年以上持続する。
【0281】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、対象の変形性関節症を治療する方法であって、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物を対象の関節に直接投与するステップを含み、上記の組成物の投与により、対象の変形性関節症を治療する方法である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるのは、対象の変形性関節症を治療する方法であって、初期アポトーシス細胞上清、アポトーシス細胞上清、またはアポトーシス細胞-食細胞上清を含む組成物を対象の関節に直接投与するステップを含み、上記の上清の投与により、対象の変形性関節症を治療する方法である。いくつかの実施形態では、変形性関節症は、変性変形性関節症を含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症は、炎症性変形性関節症を含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症は、びらん性変形性関節症(EOA)を含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症は、炎症性変形性関節症を伴うゴーハム消失性骨疾患を含む。
【0282】
変形性関節症は、膝関節、股関節、肩関節、肘関節、足首関節、手首関節、指関節、親指関節、足指関節、首関節、手関節、足関節、脊椎、またはそれらの任意の組み合わせを含む滑膜関節でしばしば罹患される。滑膜関節は、関節軟骨で覆われた2つの骨端から構成されている。変形性関節症は、半月板や靱帯の損傷、化膿性感染症、靱帯の不安定性、関節骨折、肥満、または自然変性が原因で生じることがある。変形性関節症は、しばしばこれらの関節または関節内の関節軟骨の進行性変性を含む。変形性関節症に罹患した関節では、痛み、炎症、腫れ、可動域の減少が見られる。
【0283】
変形性関節症の症状の例としては、これに限定しないが、以下のものが挙げられる。股関節の変形性関節症では、痛み、こわばり、重度の障害を引き起こすことがある。患者は、股関節、鼠径部、内股、殿部、または膝に痛みを感じることがある。手指の変形性関節症では、指の腫れや節くれを引き起こすことがある。その場合、指の末端関節に小さな骨のコブができることがある。また、指が痛みを感じたり、こわばったり、しびれたりすることがある。女性は男性よりも手指の変形性関節症に罹患しやすく、特に閉経後に発症する。親指の関節の付け根も、変形性関節症に罹患することがある。頸部や脊椎の変形性関節症では、頸部や腰がこわばったり痛みを感じたりすることがある。また、腕や脚の筋力低下やしびれを引き起こすこともある。頸部及び脊椎の変形性関節症では、しばしば衰弱したり、寝たきりになったりすることがある。
【0284】
変形性関節症の好発部位の1つは膝である。膝関節の変形性関節症では、膝のこわばり、腫れ、痛みを伴い、歩いたり、登ったり、椅子に座ったり、浴槽への出入りが困難になることがある。膝関節の変形性関節症は、治療しなければ、恒久的な障害となり、生活の質が低下する可能性がある。
【0285】
いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、滑膜関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、膝関節、股関節、肩関節、頸部椎骨間の関節、肘関節、足首関節、手首関節、指関節、足指関節、親指関節、手関節、足関節、またはそれらの任意の組み合わせから選択される滑膜関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、膝関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、股関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、肩関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、頸部椎骨間の関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、肘関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、足首関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、手首関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、指関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、足指関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、手関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、足関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、親指関節における変形性関節症を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、上記の滑膜関節のうちの任意の組み合わせにおいて変形性関節症を治療することを含む。
【0286】
当業者であれば、「治療する」という用語及びその文法的変形は、治療的処置及び予防的(防止的)処置の両方を包含することができ、その目的は、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせの標的となる病的状態または障害を予防または軽減することであることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、治療は、変形性関節症または消失性骨疾患に関連する症状の直接的な影響または治療、抑制、阻害、予防、重症度の低下、発症の遅延、症状の軽減、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、「治療する」は、進行の遅延、回復の迅速化、代替治療の有効性の増大もしくは代替治療に対する抵抗性の低下、またはそれらの任意の組み合わせを包含し得る。いくつかの実施形態では、「予防する」は、症状の発症を遅らせること、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせの再発を予防すること、再発症の数または頻度を減少させること、発症間の潜伏時間を増加させること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、「抑制する」または「阻害する」は、症状の重篤度を低下させること、急性発症の重篤度を低下させること、症状の数を低下させること、疾患関連症状の発生率を低下させること、症状の潜伏期間を低下させること、症状を改善すること、二次症状を低下させること、二次感染を低下させること、患者の生存を延長させること、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0287】
いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される関節またはその周囲における、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、関節軟骨の進行性変性の抑制、関節軟骨の進行性変性の軽減、またはそれらの任意の組み合わせを含む。関節機能は、関節可動域や動作時の不快感または疼痛の有無などのパラメータを評価することによって、または、関節可動域自体を評価することによって測定することができる。
【0288】
いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される関節及び/またはその周囲における、痛みの軽減を含む。いくつかの実施形態では、治療は、関節の周囲に局在する痛みを軽減する。痛みの緩和または軽減は、いくつかの実施形態では、関節の動作時の痛みの軽減または緩和と関連し得る。痛みの緩和または軽減は、いくつかの実施形態では、静的条件下での関節における痛みの軽減または緩和と関連し得る。いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される関節の内部またはその周囲におけるこわばりの軽減を含む。
【0289】
いくつかの実施形態では、痛みの軽減または緩和は、関節の可動域の増加を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される初期アポトーシス細胞またはアポトーシス上清を直接投与する方法を用いた変形性関節症の治療は、治療される関節の動きを向上させる。いくつかの実施形態では、関節の動きの向上は、可動域の増加、痛みの軽減を伴う動きの増加、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、関節の動きの向上は、可動域の増加を含む。いくつかの実施形態では、関節の動きの向上は、痛みの軽減を伴う。
【0290】
いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される関節及び/またはその周囲における炎症の軽減を含む。いくつかの実施形態では、治療による炎症の軽減は、炎症性サイトカインまたはケモカインの分泌を減少させた結果であり得る。例えば、これに限定しないが、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを減少させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞の直接投与による変形性関節症の治療は、治療される関節に関連する滑液中の炎症性または抗炎症性のサイトカインまたはケモカインを減少させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス上清による治療後に減少した炎症性サイトカインまたはケモカインは、任意の炎症性サイトカインまたはケモカインを含む。
【0291】
当業者であれば、治療される関節に関連する滑液中のサイトカイン及び/またはケモカインの濃度を測定することによって、治療効果の測定を行うことができることを理解するであろう。サイトカイン及び/またはケモカインの存在及び濃度を測定する方法は、当分野ではよく知られており、任意の既知の方法を用いることができる。いくつかの実施形態では、関節液中の様々なサイトカイン及び/またはケモカインを測定するために、滑液が収集される。いくつかの実施形態では、関節液中の様々なメタロプロテイナーゼを測定するために、滑液が収集される。いくつかの実施形態では、関節液中の様々な炎症性サイトカインを測定するために、滑液が収集される。いくつかの実施形態では、関節液中の様々な抗炎症性サイトカインを測定するために、滑液が収集される。いくつかの実施形態では、関節液中の様々な炎症性または抗炎症性のサイトカインを測定するために、滑液が収集される。いくつかの実施形態では、関節液中のIL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを測定するために、滑液が収集される。
【0292】
いくつかの実施形態では、滑液は、治療前に収集され、アッセイされる。いくつかの実施形態では、滑液は、治療前及び治療中に収集され、アッセイされる。いくつかの実施形態では、滑液は、治療前、治療中、及び治療完了後の経過観察として収集され、アッセイされる。
【0293】
いくつかの実施形態では、滑膜生検は、治療前に採取される。いくつかの実施形態では、滑膜生検は、治療前及び治療中に採取される。いくつかの実施形態では、滑膜生検は、治療前及び治療中に、及び治療が完了した後の経過観察として採取される。
【0294】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中の炎症性または抗炎症性のサイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清での治療後に減少した炎症性サイトカインまたはケモカインは、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中の炎症性または抗炎症性のサイトカインまたはケモカインの濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞での治療後に濃度が変化した炎症性サイトカインまたはケモカインは、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0295】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-1の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-6の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-8の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-10の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-1βの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-2の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-15の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-22の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-9の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のMIP-1βの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のMCP-1の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のMDCの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIP-10の濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のフラクタルカインの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のTNFαの濃度を低下させる。
【0296】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-1の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-6の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-8の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-10の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-1βの濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-2の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-15の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIL-22の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のMIP-1βの濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のMCP-1の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のMDCの濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のIP-10の濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のフラクタルカインの濃度を変化させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の直接投与によって変形性関節症を治療する方法は、治療される関節に関連する滑液中のTNFαの濃度を変化させる。
【0297】
いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%~90%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%~80%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%~70%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%~60%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%~99%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約50%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約60%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約70%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約90%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約95%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約99%である。
【0298】
当業者であれば、各サイトカインまたはケモカインは、様々な割合で減少し得ることを理解するであろう。各サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%~90%であり得る。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%~80%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%~70%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%~60%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%~99%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約50%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約60%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約70%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約90%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約95%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約99%である。
【0299】
いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される関節及び/またはその周囲の腫れを軽減させる。いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される関節における関節軟骨の進行性変性を抑制する。いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される関節における関節軟骨の進行性変性を軽減させる。
【0300】
当業者であれば、軟骨の大きさを測定する超音波、MRI、X線分析、またはそれらの任意の組み合わせを用いて進行性変性の抑制を測定することができることを理解するであろう。さらに、対象が感じる痛みの大きさを測定するために当分野で使用される疼痛スケールを使用して、治療の効果及び痛みの軽減を測定することができる。加えて、流体分析を実施して、例えば、検体(これに限定しないが、例えば、滑液または関節液など)中の様々な成分を分析することにより、サイトカイン濃度、ケモカイン濃度、メタロプロテアーゼ濃度、またはそれらの任意の組み合わせを測定することができる。
【0301】
いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における変形性関節症を治療する方法は、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物を、対象の関節に直接投与するステップを含み、上記の組成物の投与により、変形性関節症を治療する。いくつかの実施形態では、関節は、滑膜関節を含む。いくつかの実施形態では、滑膜関節は、膝関節、股関節、肩関節、頸部椎骨間の関節、肘関節、足首関節、手首関節、指関節、足指関節、親指関節、手関節、足関節、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、対象は、単一の関節で罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、複数の関節で罹患している。
【0302】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、滑膜関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、膝関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、股関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、肩関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、頸部椎骨間の関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、肘関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、足首関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、手首関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、指関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、足指関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、親指関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、手関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、足関節への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、膝関節、股関節、肩関節、頸部椎骨間の関節、肘関節、足首関節、手首関節、指関節、足指関節、親指関節、手関節、足関節、またはそれらの任意の組み合わせへの直接投与を含む。
【0303】
当業者であれば、「直接」という用語が、治療される関節で、または治療される関節にすぐ隣接する領域に、初期アポトーシス細胞、アポトーシス細胞上清、またはそれらを含む組成物の投与を包含することを理解するであろう。関節の直接治療は、全身投与、これに限定しないが例えば静脈内注射または腹腔内注入とは対照的である。いくつかの実施形態では、変形性関節症を治療するための、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、全身投与を含まない。
【0304】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、関節への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注射を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、関節に隣接する組織への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注射を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、関節への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注入を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法では、直接投与は、関節に隣接する組織への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注入を含む。
【0305】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の、関節の軟骨組織への浸潤を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の、関節に隣接する軟骨組織への浸潤を含む。
【0306】
ゴーハム症候群(Gorham-Stout syndrome)としても知られる消失性骨疾患、消失骨疾患、または大量骨溶解症は、骨基質の破壊及び血管構造の増殖を特徴とする原因不明の希少疾患であり、進行性骨量減少を特徴とする。消失性骨疾患に罹患している対象の骨組織は、時間とともに蝕まれる。
【0307】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療方法は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、関節軟骨の進行性変性の抑制、関節軟骨の進行性変性の軽減、骨組織のびらんの抑制、または骨組織のびらんの遅延、またはそれらの任意の組み合わせを含む。罹患者は、進行性の骨の破壊及び吸収を経験する。複数の骨が罹患することがある。好発部位は、肋骨、脊椎、骨盤、頭蓋骨、鎖骨、肩、顎などである。患部に痛みや腫れが生じることがある。罹患した骨は、骨量の減少(骨減少症)及び骨折が発生しやすい。重症度は個人差があり、この疾患は、患部の外観を損なったり機能障害を引き起したりする可能性がある。
【0308】
いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、肩の骨、頭蓋骨、骨盤帯もしくはその一部、顎、肋骨もしくはその一部、鎖骨もしくはその一部、脊椎、またはそれらの任意の組み合わせに存在する消失性骨疾患を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、肩の骨を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、頭蓋骨を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、骨盤帯またはその一部を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、顎を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、肋骨またはその一部を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、鎖骨またはその一部を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、脊椎を治療することを含む。いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、肩の骨、頭蓋骨、骨盤帯もしくはその一部、顎、肋骨もしくはその一部、鎖骨もしくはその一部、または脊椎の任意の組み合わせを治療することを含む。
【0309】
いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、骨組織のびらんの抑制、骨組織のびらんの軽減、罹患部位における骨折の抑制、罹患部位における骨折の軽減、罹患部位における骨破壊の抑制、罹患部位における骨破壊の軽減、罹患部位における骨吸収の抑制、罹患部位における骨吸収の軽減、罹患部位における骨量減少の抑制、罹患部位における骨量減少の遅延、罹患部位における骨密度低下の抑制、罹患部位における骨密度低下の軽減、またはそれらの任意の組み合わせを含む。骨量及び骨密度の測定方法は、当分野で公知の任意の方法を含み得る。
【0310】
いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、治療される骨の内部及び周囲における痛みの軽減を含む。いくつかの実施形態では、治療は、骨の周囲に局在する痛みを軽減する。いくつかの実施形態では、痛みの緩和または軽減は、いくつかの実施形態では、関節の動作時の痛みの軽減または緩和と関連し得る。痛みの緩和または軽減は、いくつかの実施形態では、静的条件下での関節における痛みの軽減または緩和と関連し得る。いくつかの実施形態では、変形性関節症の治療は、治療される骨の内部及び周囲におけるこわばりの軽減を含む。
【0311】
いくつかの実施形態では、痛みの軽減または緩和は、骨またはそれに隣接する領域の可動域の増加を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される初期アポトーシス細胞を直接投与する方法を用いた消失性骨疾患の治療は、治療される骨またはそれに隣接する領域における動きを向上させる。いくつかの実施形態では、動きの向上は、動き範囲の増加、痛みの減少を伴う動き増加、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、動きの向上は、可動域の増加を含む。いくつかの実施形態では、運動の増加は、痛みの軽減を伴う。
【0312】
いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、治療される骨の内部及び周囲における炎症の軽減を含む。いくつかの実施形態では、治療による炎症の軽減は、抗炎症性または炎症性のサイトカインまたはケモカイン、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を減少させた結果であり得る。例えば、これに限定しないが、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを減少させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の直接投与による消失性骨疾患の治療は、治療される骨に隣接する組織内の炎症性サイトカインまたはケモカインを減少させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清による治療後に減少した炎症性サイトカインまたはケモカインは、任意の炎症性サイトカインまたはケモカインを含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清による治療後に減少した炎症性サイトカインまたはケモカインは、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0313】
いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%~90%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%~80%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%~70%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%~60%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%~99%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約50%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約60%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約70%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約90%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約95%である。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約99%である。
【0314】
当業者であれば、各サイトカインまたはケモカイン、様々な割合で減少し得ることを理解するであろう。各サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%~90%であり得る。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%~80%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%~70%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%~60%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%~99%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約10%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約20%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約30%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約40%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約50%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約60%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約70%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約80%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約90%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約95%である。いくつかの実施形態では、各サイトカインまたはケモカインの減少は、約99%である。
【0315】
いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、治療される骨の内部及び周囲における炎症の減少を含む。いくつかの実施形態では、治療による炎症の軽減は、炎症性サイトカインまたはケモカインの分泌を調節した結果であり得る。例えば、これに限定しないが、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせの分泌を調節する。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の直接投与による消失性骨疾患の治療は、治療される骨に隣接する組織内の炎症性サイトカインまたはケモカインを調節する。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清での治療後に調節された炎症性サイトカインまたはケモカインは、任意の炎症性サイトカインまたはケモカインを含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清での治療後に調節された炎症性サイトカインまたはケモカインは、IL-1、IL-6、IL-8、IL-10、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、MCP-1、MDC、IP-10、フラクタルカイン、IL-9、TNFα、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0316】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の組成物を投与する方法は、関節に存在する滑液中の少なくとも1つの炎症性サイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の組成物を投与する方法は、罹患した骨に隣接する細胞から分泌される少なくとも1つの炎症性サイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の組成物を投与する方法は、関節に存在する滑液中の少なくとも1つの抗炎症性サイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。一実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の組成物を投与する方法は、罹患した骨に隣接する細胞から分泌される少なくとも1つの抗炎症性サイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の組成物を投与する方法は、関節に存在する滑液中の少なくとも1つの炎症性サイトカインまたはケモカイン、及び少なくとも1つの抗炎症性サイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞またはアポトーシス細胞上清の組成物を投与する方法は、罹患した骨に隣接する細胞から分泌される少なくとも1つの炎症性サイトカインまたはケモカイン、及び少なくとも1つの抗炎症性サイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる。
【0317】
いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、治療される骨の内部及び周囲における腫れの軽減を含む。
【0318】
いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、治療される骨の進行性びらんの抑制を含む。びらんは、いくつかの実施形態では、罹患した骨における、骨量減少、骨密度低下、及び、骨折または骨破壊の発生増加をもたらすことがある。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、治療される骨の進行性びらんの軽減を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、骨組織のびらんの軽減を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨折の抑制を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨折の軽減を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨破壊の抑制を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨破壊の軽減を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨吸収の抑制を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨吸収の軽減を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨量減少の抑制を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨量減少の軽減を遅らせることを含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨密度低下の抑制を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、罹患部位における骨密度低下の軽減を含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、骨組織のびらんの抑制、骨組織のびらんの軽減、罹患部位における骨折の抑制、罹患部位における骨折の軽減、罹患部位における骨破壊の抑制、罹患部位における骨破壊の軽減、罹患部位における骨吸収の抑制、罹患部位における骨量減少の抑制、罹患部位における骨量減少の遅延、罹患部位における骨密度低下の抑制、罹患部位における骨密度低下の軽減の任意の組み合わせを含む。
【0319】
いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における消失性骨疾患を治療する方法は、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物を、治療を必要とする対象における罹患部位に直接投与するステップを含み、上記の投与により、消失性骨疾患を治療する。いくつかの実施形態では、骨は、肩の骨、頭蓋骨、骨盤帯もしくはその一部、顎、肋骨もしくはその一部、鎖骨もしくはその一部、脊椎、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0320】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、肩の骨、頭蓋骨、骨盤帯もしくはその一部、顎、肋骨もしくはその一部、鎖骨もしくはその一部、脊椎、またはそれらの任意の組み合わせの部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、肩の骨の部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、頭蓋骨の部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、骨盤帯またはその一部の部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、顎またはその一部の部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、肋骨またはその一部の部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、鎖骨またはその一部の部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、脊椎またはその一部の部位への直接投与を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、消失性骨疾患の複数の部位への直接投与を含む。
【0321】
当業者であれば、「直接」という用語が、治療される骨またはそれに隣接する部位に、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物を投与することを包含することを理解するであろう。骨の直接治療は、全身投与、これに限定しないが例えば静脈内注射または腹腔内注入とは対照的である。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患の治療のための、初期アポトーシス細胞集団を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の投与は、全身投与を含まない。
【0322】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、罹患した骨部位への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注射を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、罹患した骨に隣接する部位への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注射を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、罹患した骨部位への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注入を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法における直接投与は、罹患した骨に隣接する部位への、初期アポトーシス細胞を含む組成物またはアポトーシス細胞上清を含む組成物の注入を含む。
【0323】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する本明細書中に開示された方法は、関節または罹患した骨部位への直接投与を含み、上記の投与は、初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス細胞上清の注入または注入を含む。
【0324】
初期アポトーシス細胞集団は、上記において、これに限定しないが、例えば、初期アポトーシス細胞を調製する方法、その組成物、及びその治療的有効用量などにおいて、詳細に記載されている。本明細書に開示される方法は、いくつかの実施形態では、上記の初期アポトーシス細胞集団またはその組成物のいずれか、これに限定しないが、例えば、アポ細胞(ApoCell)、Allocetra、Allocetra-OTS、Autocetra、及びAutocetra-OTSなどを用いることができる。一実施形態では、初期アポトーシス細胞は、放射線照射された同種異系または自己由来細胞を含む。同様に、初期アポトーシス細胞集団、アポトーシス細胞集団、またはアポトーシス食細胞培養物から収集された上清は、上記において、これに限定しないが、これらの上清及びその組成物を調製する方法、並びにそれらの治療有効用量などにおいて、詳細に記載されている。本明細書に開示される方法は、上記の上清またはそれを含む組成物、これに限定しないが、例えば、アポ細胞(ApoCell)、Allocetra、Allocetra-OTS、Autocetra、Autocetra-OTS、アポトーシス細胞、プールされたアポトーシス細胞集団、及びアポトーシス-食細胞培養物から収集された上清を用いることができる。いくつかの実施形態では、上清を作製するための培養に使用されるアポトーシス細胞は、放射線照射されている。
【0325】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用される初期アポトーシス細胞集団は、自己由来の初期アポトーシス細胞集団または同種異系の初期アポトーシス細胞集団を含む。本明細書に記載される治療方法で使用される初期アポトーシス細胞集団は、いくつかの実施形態では、24時間を超える長期間にわたって、初期アポトーシス段階で安定的であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用される初期アポトーシス細胞集団は、24時間を超えて安定的である自己由来の初期アポトーシス細胞集団、または24時間を超えて安定的である同種異系の初期アポトーシス細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用される上清は、自己由来の初期アポトーシス細胞集団または同種異系の初期アポトーシス細胞集団から収集される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用される上清は、アポトーシス細胞集団、またはプールされたアポトーシス細胞集団から収集される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用される上清は、アポトーシス細胞-食細胞培養物から収集される。
【0326】
初期アポトーシス細胞集団を含む組成物で変形性関節症または骨疾患を治療する方法は、単一の供給源または複数の供給源から得られた単核濃縮細胞の使用を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞は、初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞は、初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含み、単核濃縮細胞の出発集団は、単一の供給源から得られる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞は、初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含み、単核濃縮細胞の出発集団は、複数の供給源から得られた。細胞は、アポトーシスの誘導前または誘導前後にプールされ得る。いくつかの実施形態では、細胞の単一の供給源は、非適合ドナー由来の細胞を含む。
【0327】
いくつかの実施形態では、消失性骨疾患または変形性関節症を治療する方法は、放射線照射された初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む、プールされた初期アポトーシス細胞集団を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、消失性骨疾患または変形性関節症を治療する方法は、放射線照射された初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む、プールされた初期アポトーシス細胞集団から収集された上清、または放射線照射されたアポトーシス細胞のプールされた集団から収集された上清の投与を含む。
【0328】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または骨疾患を治療する方法は、放射線照射された初期アポトーシス細胞の使用を含み、初期アポトーシス細胞は、アポトーシス細胞集団内の残存する生細胞の増殖及び/または活性化を低下させる方法で照射される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に用いられる初期アポトーシス細胞は、集団中の生存可能な非アポトーシス性細胞の割合を減少させる方法で照射される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法では、不活性化された初期アポトーシス細胞集団中の生存する非アポトーシス細胞の割合は、集団の50%未満に減少する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法では、不活性化された初期アポトーシス細胞集団中の生存する非アポトーシス細胞の割合は、集団の40%未満に減少する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法では、不活性化された初期アポトーシス細胞集団中の生存する非アポトーシス細胞の割合は、集団の30%未満に減少する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法では、不活性化された初期アポトーシス細胞集団中の生存する非アポトーシス細胞の割合は、集団の20%未満に減少する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法では、不活性化された初期アポトーシス細胞集団中の生存する非アポトーシス細胞の割合は、集団の10%未満に減少する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法では、不活性化された初期アポトーシス細胞集団中の生存する非アポトーシス細胞の割合は、集団の0%に減少する。
【0329】
別の実施形態では、本明細書に開示される方法において、放射線照射されたアポトーシス細胞は、それらの初期アポトーシス特性、免疫調節特性、安定性特性のすべてを維持する。別の実施形態では、本方法の放射線照射ステップ、UV線照射を使用する。別の実施形態では、本方法の放射線照射ステップは、ガンマ線照射を使用する。別の実施形態では、本明細書に開示される方法において、アポトーシス細胞は、割合が減少した生存する非アポトーシス細胞、アポトーシス細胞調製物内に存在する任意の生きている非アポトーシス細胞の細胞活性化が抑制された調製物、アポトーシス細胞調製物内に存在する任意の生きている非アポトーシス細胞の増殖が低下した調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0330】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法において、生きている非アポトーシス細胞の割合が減少したまたは生きている非アポトーシス細胞が存在しない細胞集団は、一実施形態では、生きている細胞/生細胞を含まない単核初期アポトーシス細胞集団を提供し得る。
【0331】
いくつかの実施形態では、実施例(単一の供給源から得られた、放射線照射された、自己由来の初期アポトーシス細胞集団の使用については実施例3を参照されたい)に示す放射線照射されたアポトーシス細胞の使用は、アポトーシス細胞集団内に存在する細胞活性を有する細胞の生存増殖集団からではなく、アポトーシス細胞から生じたものである。
【0332】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるアポトーシス細胞は、プールされた単核アポトーシス細胞調製物を含む。いくつかの実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、初期アポトーシス状態の単核細胞を含み、プールされた単核アポトーシス細胞は、割合が減少した生きている非アポトーシス細胞、細胞活性化が抑制された任意の生きている非アポトーシス細胞を有する調製物、増殖が低下した任意の生きている非アポトーシス細胞を有する調製物、またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞は、放射線照射されている。別の実施形態では、本明細書に開示されるのは、プールされた単核アポトーシス細胞調製物であって、いくつかの実施形態では、提供された血液から得られた白血球分画(WBC)に由来するものである。
【0333】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるアポトーシス細胞調製物は、放射線照射される。別の実施形態では、放射線照射は、ガンマ線照射またはUV照射を含む。さらに別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して、非アポトーシス細胞の数が減少している。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞調製物と比較して、増殖した細胞の数が減少している。別の実施形態では、放射線照射されたアポトーシス細胞調製物は、放射線照射されていないアポトーシス細胞集団と比較して、潜在的に免疫学的に活性な細胞の数が減少している。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法は、照射された初期アポトーシス細胞の集団を含む初期アポトーシス細胞集団を含有する組成物の直接投与を含む。
【0334】
いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞は、単一の自己由来ドナーから収集されたプールされた血液、または複数のドナーから収集されたプールされた血液から調製され、場合によっては、その後の使用のために貯蔵される。この収集された血液のプールを後で処理することにより、プールされた単核アポトーシス細胞調製物が作製される。別の実施形態では、プールされた単核アポトーシス細胞調製物は、変形性関節症または消失性骨疾患させる方法のための、単核アポトーシス細胞の容易に利用可能な供給を確実にする。
【0335】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法は、単一のドナーから得られた単核細胞から調製されたアポトーシス細胞を含むプールされた初期アポトーシス細胞集団を含む組成物を直接投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法は、複数のドナーから得られた単核細胞から調製されたアポトーシス細胞を含むプールされた初期アポトーシス細胞集団を含む組成物を直接投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法は、単一のドナーまたは複数のドナーから得られた単核細胞から調製されたアポトーシス細胞を含むプールされた初期アポトーシス細胞集団を含む組成物を直接投与するステップを含む。
【0336】
いくつかの実施形態では、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法は、本明細書に開示される任意のアポトーシス上清、これに限定しないが、例えば、アポトーシス細胞、初期アポトーシス細胞、プールされたアポトーシス細胞、またはアポトーシス細胞-食細胞培養から収集された上清を使用することができる。
【0337】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失結合疾患を治療する方法において、対象は、哺乳動物対象である。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失結合疾患を治療する方法において、対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、子供である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、成人である。
【0338】
初期アポトーシス細胞の用量または上清の用量は、上記に詳細に記載した通りである。本明細書に記載される用量は、いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療するために、本明細書に記載される方法において使用され得る。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患させる方法における、初期アポトーシス細胞を含む組成物または上清を直接投与するステップは、初期アポトーシス細胞集団細胞または上清の単回投与を含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症または骨疾患を治療する方法における、初期アポトーシス細胞を含む組成物または上清を直接投与するステップは、アポトーシス細胞集団または上清の複数回の投与を含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、単回の直接投与は、罹患した関節に対して行われる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、単回の直接投与は、罹患した骨にごく近い組織に対して行われる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、単回の直接投与は、罹患した関節に隣接する組織に対して行われる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、単回の直接投与は、罹患した骨に隣接する組織に対して行われる。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、複数回の直接投与は、罹患した関節に対して行われる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、複数回の直接投与は、罹患した骨にごく近い組織に対して行われる。本明細書に記載する方法のいくつかの実施形態では、複数回の直接投与は、罹患した関節に隣接する組織に対して行われる。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、複数回の直接投与は、罹患した骨に隣接する組織に対して行われる。いくつかの実施形態では、複数回の直接投与は、罹患した関節または関節に隣接する部位に対して行われる。いくつかの実施形態では、複数回の直接投与は、罹患した骨にごく近い組織、及び罹患した骨に隣接する組織に対して行われる。
【0339】
投薬計画は、上記に詳細に記載した通りである。変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法は、いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞または上清を使用して上記のような投薬計画を実施する。
【0340】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法における、初期アポトーシス細胞を含む組成物または上清を含む組成物を直接投与するステップは、毎日または毎週の投与を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、所定の用量のアポトーシス細胞または上清を毎日投与する。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法における、初期アポトーシス細胞を含む組成物または上清を含む組成物を直接投与するステップは、1用量のアポトーシス細胞または上清の毎週の投与を含む。初期アポトーシス細胞または上清の組成物の直接投与を含む、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法において、いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞または上清を、半月ごとに(週2回)投与する。一実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞または上清を、隔週(2週間毎)で投与する。一実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞または上清を、毎月投与する。いくつかの実施形態では、所定の用量のアポトーシス細胞または上清が、不定期なレジメで投与され、例えば、所定の期間にわたって毎日投与した後、半週ごと、毎週、隔週で、毎月、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。
【0341】
初期アポトーシス細胞または上清の用量は、上記に詳細に記載した通りである。変形性関節症または消失結合疾患を治療するための方法のいくつかの実施形態では、上記に記載したような、初期アポトーシス細胞または上清の用量を使用することができる。
【0342】
いくつかの実施形態では、変形性関節症または骨疾患を治療する方法は、約100×106~210×106個のアポトーシス細胞から収集された上清を含む組成物を直接投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症または骨疾患を治療する方法は、約1×106~1×109個のアポトーシス細胞から収集された上清を含む組成物を直接投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、約1×106~1×108個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×106~1×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107~1×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107~1×108個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×108~1×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×108個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0343】
いくつかの実施形態では、約140×106~210×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約100×106~140×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約10~100×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約20×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約30×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約40×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約50×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約60×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約70×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約80×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約90×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約1~15×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約10×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約11×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約12×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約13×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約14×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、約15×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、1×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、10×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×107個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×108個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×109個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1010個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1011個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×1012個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×105個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×104個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×103個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、10×102個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0344】
いくつかの実施形態では、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法は、高用量のアポトーシス細胞を投与する。いくつかの実施形態では、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法は、関節の大きさに応じて、より低い用量のアポトーシス細胞を投与する。いくつかの実施形態では、10×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、15×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、20×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、25×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、30×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、35×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、50×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、100×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、150×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。いくつかの実施形態では、200×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、210×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、70×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、140×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。別の実施形態では、35~210×106個の用量のアポトーシス細胞が投与される。
【0345】
いくつかの実施形態では、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法は、約100×106~210×106個のアポトーシス細胞から収集された上清を含む、本明細書に開示される上清を含む組成物を直接投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症または消失性骨疾患を治療する方法は、約1×106~1×109個のアポトーシス細胞から収集された上清を含む組成物を直接投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、約1×106~1×108個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×106~1×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107~1×109個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107~1×108個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×108~1×109個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×108個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1×109個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。
【0346】
いくつかの実施形態では、約140×106~210×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約100×106~140×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約10~100×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約20×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約30×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約40×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約50×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約60×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約60×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約70×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約80×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約90×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約1~15×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約10×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約11×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約12×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約13×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約14×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、約15×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、1×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、10×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×107個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×108個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×109個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×1010個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×1011個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×1012個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×105個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×104個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×103個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、10×102個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。
【0347】
いくつかの実施形態では、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法は、アポトーシス細胞またはアポトーシス-食細胞培養から収集された高用量の上清を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、変形性関節症、消失性骨疾患、またはそれらの組み合わせを治療する方法は、関節の大きさに依存して、アポトーシス細胞またはアポトーシス-食細胞培養物から収集されたより低い用量の上清を投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、10×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、15×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、20×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、25×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、30×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、35×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、50×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、100×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、150×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。いくつかの実施形態では、200×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、210×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、70×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、140×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。別の実施形態では、35~210×106個のアポトーシス細胞から収集した上清が投与される。
【0348】
本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞の数は、細胞数の±5%、±10%、±15%、または±20%を含む。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、アポトーシス細胞の数は、細胞数の±5%、±10%、±15%、または±20%を含む。例えば、これに限定しないが、各投与量は、約50×106±5%~200×106±5%個の初期アポトーシス細胞/kg対象、50×106±10%~200×106±10%個の初期アポトーシス細胞/kg対象、50×106±15%~200×106±15%個の初期アポトーシス細胞/kg対象、または、50×106±20%~200×106±20%個の初期アポトーシス細胞/kg対象を含む。同様に、上清を、細胞数の±5%、±10%、±15%、または±20%の範囲の数のアポトーシス細胞の培養物から収集してもよい。
【0349】
実施例
【0350】
実施例1:アポトーシス細胞の作製
【0351】
目的:放射線照射された初期アポトーシス細胞を含む初期アポトーシス細胞を作製する。
【0352】
方法:初期アポトーシス細胞集団を作製する方法は、特許文献1及び特許文献4に詳細に記載されており、例えば、実施例に先行する方法セクションの「初期アポトーシス細胞集団の作製」及び「アポトーシス細胞の作製」(段落[0223]~[0288])、並びに、実施例11、12、13及び14を参照されたい(これらの記載内容の全体は本明細書に援用される)。
【0353】
図1に示すフローチャートは、初期アポトーシス細胞集団の作製プロセス中に用いられるステップの一実施形態の概要を提供し、本実施形態では、解凍ステップ及びアポトーシス誘導ステップにおいて、抗凝固剤が添加される。特許文献1の実施例14及び特許文献4に詳細に記載されているように、凍結時、培養時、または、凍結時及び培養時の両方において抗凝固剤を添加して、初期アポトーシス細胞集団を作製した。使用した抗凝固剤は酸クエン酸デキストロースであり、NIH-A(ACD-A)にヘパリン10U/mlを添加して、総量の最終濃度が、ACD5%、ヘパリン0.5U/mlとなるようにした。
【0354】
出発集団として使用される細胞集団は、特定の実施形態において異なり得るが、本明細書に記載される初期アポトーシス細胞を作製する方法によれば、同一の品質及び特性を有する最終産物が得られる。いくつかの実施形態では、初期アポトーシス細胞を作製するために使用される細胞は、自己由来、ドナーからの同種異系、または血液バンクからの同種異系であり得る。
【0355】
簡潔な説明:細胞を収集し、次いで、5%の抗凝固剤クエン酸デキストロース-A及び10U/mlヘパリン(ACDhep)を凍結培地に添加して凍結(冷凍保存)した。そして、解凍し、5%のACDHepを含有するアポトーシス誘導培地中で培養し、最終産物の作製は閉鎖系内で行った。
【0356】
アポトーシス及び生存率の分析、効力アッセイ、及び細胞集団の特徴付けを各実験において行った。初期アポトーシス細胞産物の作製における一貫性を確立するために、アポトーシス細胞の初期バッチの最終産物(FP)を2~80℃で保存し、t0、t24h、t48h及びt72hの時点で調べた。各時点のアポトーシス分析において、ショート効力アッセイ(出願人のCD14+凍結細胞)、トリパンブルー測定、及び細胞集団の特徴付けを行った。FPの細胞数を調べて、保存中、アポトーシス分析中、及び生存率分析中の平均細胞喪失(平均細胞損失)を評価した。
【0357】
前述の特許文献1の方法セクション及び実施例11及び特許文献4に、抗凝固剤の非存在下でのアポトーシス細胞集団の他の実施形態の作製方法の詳細が記載されている(これらの記載内容の全体は本明細書に援用される)。
【0358】
特定の例では、初期アポトーシス細胞は、それらの調製後(アポトーシス誘導後)、すなわち、
図1に示した最後のステップの後に放射線照射された。他の実施形態では、放射線照射は、放射線照射された初期アポトーシス細胞を作製する手順の初期段階で行われ得る。
【0359】
放射線照射されたアポトーシス細胞を作製する方法:同様の方法を用いて、不活性化されたアポトーシス細胞集団を作製した。単一の供給源、または複数の供給源からの単核初期アポトーシス細胞集団は、非静止非アポトーシス細胞の割合の減少、任意の生存非アポトーシス細胞の細胞活性化の抑制、任意の生存非アポトーシス細胞の増殖の低下、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0360】
簡潔に説明すると、白血球アフェレーシス処置を用いて、健康な適格ドナーから濃縮単核細胞分画を収集した。アフェレーシスの完了後、細胞を洗浄し、5%の抗凝固剤クエン酸デキストロース溶液-A(ACD-A)、及び0.5U/mlのヘパリンを含有する凍結培地中で再懸濁した。その後、細胞を段階的に凍結し、液体窒素中で長期間期保存した。いくつかの実施形態では、異なるドナーまたは同一のドナーからの複数の画分をプールした。
【0361】
放射線照射されたアポ細胞(ApoCell)の作製のために、凍結保存した細胞を解凍し、洗浄し、5%のACD-A、0.5U/mlのヘパリンナトリウム、及び50μg/mlのメチルプレドニゾロンを含有するアポトーシス誘導培地中で再懸濁した。その後、細胞を、5%のCO2中で37°Cにて6時間培養した。培養の終了後、細胞を収集し、洗浄し、細胞処理システム(ドイツ国、Fresenius Kabi)を使用してハルトマン溶液中で再懸濁した。いくつかの実施形態では、収集したアポトーシス細胞画分をプールし、プールされたアポトーシス細胞画分を作製した。作製の完了後、放射線治療ユニット(Hadassah Ein Kerem)のg-カメラを使用して、4000cGyでアポ細胞に放射線照射した。アネキシンV(Annexin-V)及びPI(米国マサチューセッツ州、MBL)染色(それぞれ、40%以上及び15%以下)を使用して、アポ細胞のアポトーシス及び生存率をフローサイトメトリーによって測定した。その結果を、FCS Expressソフトウェアを用いて解析した。いくつかの実施形態では、放射線照射後、単一供給源を放射線照射し、アポトーシス細胞をプールした。供給源は、同一または異なるドナーであった。他の実施形態では、複数の単一供給源または複数の異なる供給源のアポトーシス細胞は、放射線照射する前にプールした。
【0362】
この放射線照射されたアポ細胞集団は、初期アポトーシス細胞を含み、存在する生存細胞の細胞活性が抑制され、増殖能力が低下または抑止されたと考えられる。特定の場合では、アポ細胞集団は、生存する非アポトーシス細胞を有していない。
【0363】
結果:
【0364】
凍結時及び培養時(アポトーシス誘導時)に抗凝固剤を添加して作製し、2~8°Cで保存した最終産物(FP)の安定性を、下記の表1に示す。
【0365】
【0366】
誘導培地に抗凝固剤を添加せずに細胞を作製した場合、その細胞は、24時間にわたって安定的であり、その後、不安定になった。表1に示すように、予期せぬことに、抗凝固剤の使用により、アポトーシス細胞集団の安定性が少なくとも72時間に延長された。
【0367】
【0368】
表2の結果は、最終産物(FP)の生存率が、少なくとも72時間にわたって高レベルに維持されたことを示す。
【0369】
【0370】
表3の結果は、アポトーシス細胞対壊死細胞の割合が、初期アポトーシス細胞の割合と同様に、細胞の作製後少なくとも72時間の長期間にわたって維持されたことを示す。
【0371】
表3のデータから、作製した集団中の細胞の大部分が初期アポトーシス状態にあることが確認された。集団中の初期アポトーシス状態にある細胞の割合(An+PI-)は50%超であり、いくつかの例では60%超であった。作製された細胞集団は、後期アポトーシス細胞または死滅細胞を最小の割合で含む(6%以下)。
下記の表5も参照されたい。
【0372】
凍結時とアポトーシス誘導時との両方において抗凝固剤を添加した場合に、安定的な初期アポトーシス細胞が、最も一貫して高い収率で得られた(初期アポトーシス細胞の平均収率61.3±2.6%対48.4±5.0%、100%の収率は凍結時の細胞数に基づく)。この高収率は、2~8°Cで72時間保存した後も維持された。
【0373】
次に、凍結時、解凍時、またはその両方における抗凝固剤の含有量を比較し、収集率(%)及び安定性を測定した。抗凝固剤は、すべての集団において、アポトーシスの培養混合物に含まれていた。下記の表4は、これらの試験結果を示す。
【0374】
【0375】
抗凝固剤を添加して作製した初期アポトーシス細胞集団(細胞バッチ)と、抗凝固剤を添加しないで作製した初期アポトーシス細胞集団(細胞バッチ)とのさらなる集団分析比較は、これらの結果の一貫性を示す。
【0376】
【0377】
抗凝固剤の存在下または非存在下における最終産物細胞(収率)の割合:表1に示した上記の結果と同様に、表4に示したデータは、抗凝固剤の存在下で凍結された細胞から作製された初期アポトーシス細胞が、抗凝固剤の非存在下で凍結された細胞と比較して、新鮮な最終産物(FP)の平均収率において有益な効果を有することを示している。有益効果は、抗凝固剤を凍結時にのみ使用した場合(61.3±2.6%対48.4±5.0%)と、抗凝固剤を凍結時及び解凍時の両方において使用した場合(56.5±5.2%対48.4±5.0%)とで見られた。抗凝固剤を解凍時にのみ使用した場合には、有益効果はそれほど顕著ではなかった(44.0±8.5%対48.4±5.0%)。これらは、非高トリグリセリド試料であった。
【0378】
凝集に対する抗凝固剤の効果:これらの3例の非高トリグリセリド試料、または21例の追加試料では、細胞凝集は見られなかった(データは示さず)。しかしながら、抗凝固剤の非存在下で作製した別の41例の非高トリグリセリド試料では、軽度の凝集が10例(24.4%)で見られ、重度の凝集が5例(12.2%)で見られた(データは示さず)。したがって、抗凝固剤は、完全な細胞凝集を阻止した。
【0379】
安定性に対する抗凝固剤の効果:抗凝固剤の存在下または非存在下で作製した新鮮な最終産物(FP)を、2~8°Cで24時間保存し、作製手順にACDhepを添加するとFPの安定性が損なわれるかどうかを調べた。24時間保存後、細胞をサンプリングし、収率を細胞数で計算した。表1に示した長期間(最大72時間)についての結果と同様に、表4は、抗凝固剤を凍結時にのみ使用した場合(59.8±2.1%対47.5±4.7%)と、抗凝固剤を凍結時及び解凍時の両方において使用した場合(56.4±5.3%対47.5±4.7%)とで、有益効果が維持及び観察されたことを示している。抗凝固剤を解凍時にのみ添加した場合には、有益効果はそれほど顕著ではなかった(42.4±6.1%対47.5±4.7%)。これらはすべて、非高トリグリセリド試料であった。これらの結果は、凍結中及び解凍中の両方において抗凝固剤で処理した細胞は、24時間のFP保存後の細胞喪失(細胞損失)が、すべての処理中で最小であるという有意な利点を有することを示す。凍結時のみに抗凝固剤で処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合の1.9±3.3%と比較して2.3±3.2%であった。解凍時のみに抗凝固剤で処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合の1.9±3.3%と比較して3.0±4.7であった。また、凍結時及び解凍時の両方においてACDHepで処理した細胞の平均喪失は、抗凝固剤非存在下の場合の1.9±3.3%と比較して0.2±0.4%であった。要約すると、収率における抗凝固剤の有益効果は、少なくとも24時間維持された。
【0380】
最終産物(FP)の代表的な細胞集団の特徴を、下記の表6に示す。
【0381】
【0382】
表6の結果は、凍結時または解凍時に抗凝固剤を添加して、または添加せずに作製した最終産物(FP)の細胞特性を示す。バッチを採取し、単核マーカーを染色し、フローサイトメトリーによって分析して各試料の細胞分布を測定し、抗凝固剤の添加が細胞集団に影響を及ぼすかどうかを調べた。表5に示すように、凍結時または解凍時に抗凝固剤を添加して、または添加せずに作製した細胞集団において、有意差は検出されなかった。新鮮なFPにおける平均T細胞集団(CD3+細胞)は、凍結前の62.9±1.1%と比較して、処理間で62.3±1.2%であった。平均B細胞集団(CD19+細胞)は、凍結前の3.1±0.8%と比較して、処理間で8.3±2.5%であった。平均ナチュラルキラー細胞集団(CD56+細胞)は、凍結前の12.9±0.5%と比較して、処理間で9.5±0.7%であった。平均単球細胞集団(CD14+細胞)は、凍結前の17.5±0.3%と比較して、処理間で13.8±0.5%であった。平均顆粒球集団(CD15+細胞)は、新鮮FPでは0.0%、凍結時では0.35±0.2%であった。
【0383】
また、初期アポトーシス集団の効力も調べた。
【0384】
【0385】
表7に示す結果は、各最終産物における、LPSで刺激した後の未成熟樹状細胞(iDC)における寛容原性状態を強化する能力を測定するために実施された効力アッセイによって得られたものである。寛容原性効果は、初期アポトーシス細胞集団との相互作用及びLPS上方制御をもたらす様々な処理後に、iDCにおける共刺激分子HLA-DR及びCD86発現の下方制御を評価することによって測定した。DCsign+細胞の分析を行った。結果は、初期アポトーシス細胞集団との相互作用後、及びLPSの添加後の、LPS誘導成熟の遅延の割合を表す。実験では、抗凝固剤の存在下または存在下で作製した新鮮なFP(t0)の効力を試験した。表7に示した結果は、抗凝固剤の存在下または非存在下で作製されたアポトーシス細胞が、両方の共刺激マーカーの耐性効果を用量依存的に高めることを示す。
【0386】
作製された初期アポトーシス細胞は、非高トリグリセリド試料由来であった。この安定な初期アポトーシス細胞の一貫した高収率は、ドナー血漿のトリグリセリド濃度が高い場合でも得られた(例えば、特許文献1の実施例12及び13及び特許文献4を参照されたい)。なお、抗凝固剤は、投与される最終初期アポトーシス細胞の作製に使用されたPBS培地には添加しなかったことに留意されたい。
【0387】
要約:
【0388】
本研究の目的は、安定的で高収率の初期アポトーシス細胞集団を作製することであった。抗凝固剤の使用の合理的な理由は、凝集体が、まず高トリグリセリドの患者で見られ、その後、他の患者のかなりの部分で見られることであった。ここでの懸念事項は、特許文献5における、抗凝固剤の使用が細胞アポトーシスを防止するという開示であった。
【0389】
手短に説明すると、抗凝固剤を添加した場合には、最終産物中の収集された細胞数(収率)において少なくとも10~20%の有意な向上があり、かつ、細胞の組成、生存率、安定性、及びアポトーシス性に対する影響は最小限であった。本研究では、収率において最大で13%の増加が示され、制御された条件下では収率の26.8%の増加を示し、実際のGMP条件下では最大で33%の増加を示し、細胞数のより多くの増加が単一の収集において得られた。この効果は、ドナーからの2回目のアフェレーシスの必要性を回避することができるので、極めて重要である。
【0390】
予想される影響は中程度の凝集体の溶解であったので、この効果は驚くべきものであった。抗凝固剤を添加して作製し凍結した細胞を解凍すると、凝集体の量が減少するという仮説が立てられていた。凝集体が形成されると、最終的に大量の細胞喪失がもたらされる。抗凝固剤を添加せずに作製し凍結した細胞は、解凍し、洗浄した直後に凝集体の形成を示した。さらに、抗凝固剤を添加せずに作製し凍結し、抗凝固剤を含有する培地中で再懸濁した細胞においても、高レベルの凝集体が検出された。抗凝固剤を添加して作製し凍結し、抗凝固剤を含有する培地中で再懸濁した細胞には、凝集体は見られなかった。まとめると、凍結時及びアポトーシス誘導時の抗凝固剤の添加は非常に重要であり、かつ、細胞集団に対する初期アポトーシスの誘導に悪影響を与えないように思われるという結論に達した。
【0391】
初期アポトーシス細胞の回復率を、安定性を目的として、例えば2~8°Cで24時間保存した後にさらに試験した。その間の平均細胞喪失は、作製条件にかかわらず3~4.7%であり、抗凝固剤を含有する培地で凍結及び解凍した細胞については良好な結果が得られた(24時間のFP保存後において、0.2±0.4%の細胞喪失)。これにより、凍結時及び解凍時の抗凝固剤の添加が重要であり、最終的に作製された後は、初期アポトーシス細胞集団が安定的であることが示唆された。延長時点の実験は、この安定性が少なくとも72時間の時点まで持続することを示した。
【0392】
FP(最終産物)のアポトーシス及び生存性並びに細胞組成は、凍結段階及び/または解凍段階での抗凝固剤の添加による有意な影響を受けなかった。幅広い特性から測定された値は類似しており、これは、ACDhepは初期のアポトーシス細胞特性を変化させず、最終産物が、アポトーシス細胞40%以上という合格基準を満たしていることを示す。
【0393】
アポトーシス細胞の効力を試験するために用いたアッセイは、食作用、抗原提示、及びサイトカイン産生などの機能によって特徴付けられるDCである、未成熟樹状細胞(iDC)に基づいている。
【0394】
HLA-DR(MHCクラスII)膜分子及び共刺激分子CD86が、抗原提示細胞(APC)の寛容原性効果を検出するマーカーとして選択された。フローサイトメトリーを用いて、iDC上のHLA-DR及びCD86の発現の変化を、LPSでの刺激後に測定し、また、抗凝固剤の存在下または非存在下で作製し、LPSで刺激した初期アポトーシス細胞集団の存在下で測定した。初期アポトーシス細胞集団は、iDC:初期アポトーシス細胞集団の比率が、1:2、1:4、及び1:8でDCに提供された。表6に示すように、初期アポトーシス細胞集団は、刺激されたDCにおいて、寛容原性効果を用量依存的に高め、凍結時及びアポトーシス誘導時の両方において抗凝固剤の存在下で作製した初期アポトーシス細胞集団では、わずかに良好な結果を示した。
【0395】
まとめると、凍結時及びアポトーシス培地への抗凝固剤の添加は、細胞の回収率を高め、凝集体に起因する大量の細胞喪失を回避し、かつ、多くの場合はドナーからの2回目のアフェレーシスを回避するために重要であるという結論に達した。すべての細胞が、有効なFPの合格基準を満たしていることが示され、抗凝固剤を添加してもFPが損なわれないことが示された。
【0396】
実施例2:プールされたアポトーシス細胞の調製及び使用
【0397】
目的:放射線照射された複数ドナー単一アポトーシス細胞輸液(プールされた放射線照射された単核アポトーシス細胞調製物)を作製する。
【0398】
方法:アポトーシス細胞は、今回の実験では複数(4人)のドナーから同時に調製したこと以外は、上記の実施例1にしたがって調製した。4人のドナーからの調製に続いて、細胞調製物を、最後の工程(放射線照射前)で組み合わせ、その直後に放射線照射して、使用できる状態にした。放射線照射は、25Gyであった。
【0399】
結果と概要:
【0400】
GvHDマウスモデルにおける分析は、放射線照射された複数ドナーアポトーシス細胞の単回注入が成功し、GvHDのマウスモデルにおける寿命を有意に改善することを示した(データは示さず)。
【0401】
実施例3:アポトーシス細胞上清の調製
【0402】
目的:初期アポトーシス細胞及び単球/マクロファージ/樹状細胞から上清を得る。
【0403】
方法:アポトーシス細胞からの調製:CD14+単球及び他の単核濃縮白血球を培養して、アポトーシスを誘発させた。アポトーシス細胞の数は、12ウェルプレートの1ウェル当たり100万~1億個であった。いくつかの例では、1ウェル当たり800万個の細胞が培養された。24、36、及び48時間の培養後、細胞を遠心分離した(290g、4度、10分)。上清を収集し、使用するまで-80°Cでアリコート中に凍結(冷凍保存)した。
【0404】
方法:単球/マクロファージ/樹状細胞及びアポトーシス細胞からの調製:CD14+単球を、上記のように調製したアポトーシス細胞と1:16の比で、24時間または36時間または48時間培養した。単球細胞の数は12ウェルプレートの1ウェル当たり50万個であり、アポトーシス細胞の数は12ウェルプレートの1ウェル当たり800万個であった。24時間の培養後、細胞を遠心分離した(290g、4度、10分)。上清を収集し、使用するまで-80°Cでアリコート中に凍結した。同様の手順は、異なる比率の単球:アポトーシス細胞、及び/または、単球由来の他の細胞源、例えば、M1/M2及び樹状細胞を含む様々な種類のマクロファージなどを用いて実施することができる。
【0405】
結果:アポトーシス単核から、または、単球/マクロファージ/樹状細胞と共培養したアポトーシス単核から調製したアポトーシス上清は、サイトカインストームの状況下で炎症性サイトカインを下方制御することができた(データは示さず)。これらのアポトーシス上清は、特定の実施形態では、変形性関節症を治療するために本明細書に開示された方法において効果的に使用することができる。
【0406】
実施例4:変形性関節症を治療するためのアポトーシス細胞の使用
【0407】
目的:他の治療に反応しなかった患者の変形性関節症を治療する。
【0408】
方法:初期アポトーシス細胞を実施例1で上述したようにして調製する。
【0409】
治療対象の患者は、甲状腺機能低下症の70歳女性であった。患者は、4年前から右肩に炎症性及びびらん性の症状を訴えて来院した。患者は、2015年に、右上肢の腫れと右肩の可動域制限を経験したが、既知の損傷はなかった。X線で上腕骨頭の完全破壊が、MRIで有意な炎症反応が認められ、また、赤血球沈降速度(ESR)及びC反応性蛋白質(CRP)の有意な上昇が認められた。関節の針吸引では、血清自己抗体または細菌増殖は、検出されなかった。ESR及びCRPは、ステロイドの全身投与によって低下したが、有意な臨床的改善は認められなかった。無事なリバース型人工肩関節全置換術の後、腫れ、ESR、及びCRPの上昇は徐々に治まった。2年後、患者は、肩の腫れと有意なCRP上昇を訴えて再来院した。反復吸引、デブリドマン(創面切除)、最終的には人工関節の除去を行い、その後、感染の可能性を考慮して長期間の抗生物質治療を行った。腫れとCRP値は、連続的な肩ドレナージによってのみ改善した。過去1年間、患者は、9ヵ月以上入院していた。彼女自身の放射線照射されたアポトーシス細胞を使用した救済的治療が、倫理委員会により承認された。
【0410】
放射線照射された、自己由来の初期アポトーシス細胞を、上記の実施例1と同様に調製した(
図2において「Allocetra-OTS」と称する)。患者は出発物質を得るために白血球アフェレーシスに供され、この出発物質から、放射線照射された初期アポトーシス細胞を作製した。放射線照射された初期アポトーシス細胞(100×10
6)を右肩関節に関節内注射により5週間連続して投与した。具体的には、投与さした初期アポトーシス細胞の各用量は、15mlの乳酸リンゲル液中に100×10
6±20%の放射線照射された初期アポトーシス細胞を含んでいた。投与は、関節内輸液を用いて行った。
【0411】
滑液中に存在するサイトカイン及びケモカインの測定は、Milliplexソフトウェア(Merck)を用いてLuminex MAGPIXシステム(Luminex USA)によって行った。
【0412】
結果:
【0413】
週1回のアポトーシス細胞の関節内注入を5週間連続して行ったところ、患者は劇的に改善し、6週間にわたり肩の腫れ、発赤、及びこわばりが有意に減少した。肩からの体液排出量は、150~250ml/日から60ml/日未満に減少した。CRPは、治療前の7.34から0.49に低下した(正常範囲≦0.5)。滑液サンプルは、治療前と治療中/後に毎週採取した。単球、マクロファージ、樹状細胞、破骨細胞、好中球、及びT細胞活性化に関連する炎症性サイトカイン/ケモカインの測定は、放射線照射された初期アポトーシス細胞の2回の注射後に、IL-6、IL-8、IL-1β、IL-2、IL-15、IL-22、MIP-1β、IL-9、及びTNFαの下方制御を示した(
図2)。
図2は、最も注目すべき、IL-22(滑膜組織の創傷治癒の調節不全)、IL-8(好中球走化性因子)、IL-6(自然免疫)、IL-9(アポトーシス防止)及びMIP-1-β(慢性炎症)が下方調節されたことを示す。
【0414】
血液生化学及びCBCに、有意な変化は見られなかった。治療終了から3週間後のドレイン誘導性感染の発症は、抗生物質、デブリドマン及びドレイン交換により治療した。排液量が少なくなったので治療の3ヵ月後にドレインを抜去し、入院はもはや不要となった。6ヵ月間の経過観察で、CRPは低いままであった。
【0415】
治療を開始した5週間後で観察された効果は9ヵ月間維持され、患者は介入治療後も自宅で安定した状態を保っていた。驚くべきことに及び予期せぬことに、IL-6及びおそらくIL-8は、消失性骨疾患に記載されており、上昇することが予測されるサイトカインであるが、滑膜治癒不全に関連する高IL-22は、これが最初の記載である。その上昇も初期アポトーシス細胞による処理の効果も、予期せぬものであった。炎症細胞のアポトーシスを回避して慢性炎症を維持することができるIL-9についても同じことが言えるが、IL-9の下方制御は、活性化誘導細胞死を引き起こし、免疫応答を終了させる可能性がある。加えて、TNFが全く上昇しなかったのは意外であった。その点で、抗TNFや抗IL-6のような抗サイトカインは良い選択ではなく、アポトーシス細胞だけがこのような全体的な効果を発揮する。
【0416】
要約:
【0417】
HLA適合アポトーシス細胞注入は、移植片対宿主病(「Mevorach D, Zuckerman T, Reiner I, et al. (2014) "Single infusion of donor mononuclear early apoptotic cells as prophylaxis for graft-versus-host disease in myeloablative HLA-matched allogeneic bone marrow transplantation: a phase I/IIa clinical trial." Biol Blood Marrow Transplant., 20:58-65」)の予防において安全かつ有益であることがこれまでに報告されているが、本明細書に記載されるように特別に調製した自己初期アポトーシス細胞を関節内輸液として使用するのは、これが初めてのことである。
【0418】
この患者の治療のために調製された初期アポトーシス細胞調製物は自己由来であったが、当業者であれば、これらの初期アポトーシス細胞の非自己調製物を投与しても同じ結果を達成することが可能であったことを理解するであろう。初期のアポトーシス細胞は、第三者の対象(被験者)から得てもよいし、または第三者のプールされた細胞アポトーシス調製物(同種)であってもよく、その後、投与前の放射線照射ステップに供され、変形性関節症の治療の成功がもたらされる。
【0419】
この治療の作用機序には、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び破骨細胞のシグナル伝達が関与していることが示唆されている(「Trahtemberg U, Mevorach D. (2017) "Apoptotic cells induced signaling for immune homeostasis in macrophages and dendritic cells." Front Immunol., 8:1356」)。
【0420】
もし選択された投与経路が、アポトーシス細胞がB細胞と相互作用することができるようにアポトーシス細胞を脾臓に送達しなければ、保護作用が誘起される可能性が低いというGreyらの結論を考慮すると(同書)、関節内注入によって投与されたアポトーシス細胞は脾臓または免疫器官へのアクセスを有さないので、びらん性変形性関節症などの非自己免疫疾患への関節内注入が成功することは非常に予期せぬことであった。したがって、関節内注入によって、滑液中の炎症性または抗炎症性のサイトカイン/ケモカイン放出が増加したことは、驚くべきことかつ予期せぬことであった。特に、滑膜治癒不全に関連する高IL-22や、炎症細胞のアポトーシスを回避することによって慢性炎症を維持することができるIL-9の下方制御は、慢性炎症の終息をもたらすことができる。
【0421】
本明細書で使用するとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、[その(the)]は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形も含むことを意図している。
【0422】
本出願の全体を通じて、本発明の様々な実施形態を範囲形式で示すことがある。範囲形式での記載は単に便宜上及び簡潔性のためのであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定と解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲形式での記載は、その範囲内に含まれる個々の数値だけでなく、その範囲内に含まれるすべての可能な部分的な範囲を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1から6までという範囲の記載は、1から3まで、1から4まで、1から5まで、2から4まで、2から6まで、3から6まで、・・・、という部分的な範囲、並びに、その範囲内に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5、及び6)を具体的に開示したものと見なされるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0423】
本明細書において数値範囲を指定している場合は常に、指定された数値範囲内に含まれるすべての数値(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指定数と第2の指定数と「の間の範囲」という表現、及び第1の指定数「から」第2の指定数「までの範囲」という表現は、本明細書では相互交換的に使用されており、第1の指定数及び第2の指定数、並びにこれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0424】
本明細書では、本発明の特定の特徴を図示し、説明してきたが、様々な改変、置換、変更、及び均等物が、当業者であれば想到し得るであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の要旨の範囲内に含まれるそのような全ての改変及び変更を包含することを意図していることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象における変形性関節症または消失性骨疾患
の治療
に使用するための組成物であって、
初期アポトーシス細胞集団またはアポトーシス上清を含
み、
前記初期アポトーシス細胞集団または前記アポトーシス上清は、前記対象の関節、または消失性骨疾患の疾患部位に直接投与するために製剤化されている、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の
組成物であって、
変形性関節症を治療する場合、
変形性関節症の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、関節軟骨の進行性変性の抑制、関節軟骨の進行性変性の軽減、生活の質の向上、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の
組成物であって
消失性骨疾患を治療する場合、
消失性骨疾患の治療は、痛みの軽減、炎症の軽減、腫れの軽減、骨組織のびらんの抑制、骨組織のびらんの遅延、骨折の軽減、骨折の抑制、骨破壊の軽減、骨破壊の抑制、骨量減少の抑制、骨量減少の軽減、骨密度低下の抑制、骨密度低下の軽減、生活の質の向上、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれかに記載の
組成物であって、
前記治療は、前記関節の動きを向上させるものであり、
前記関節の動きの向上は、可動域の増加、または、痛みの軽減を伴う動きの増加、またはそれらの組み合わせを含む、
組成物。
【請求項5】
請求項1
~4のいずれかに記載の
組成物であって、
前記関節は、滑膜関節を含む、
組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の
組成物であって、
前記滑膜関節は、膝関節、股関節、肩関節、頸部椎骨間の関節、肘関節、足首関節、手首関節、指関節、足指関節、親指関節、手関節、足関節、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項7】
請求項1
、及び3~6のいずれかに記載の
組成物であって、
消失性骨疾患の前記疾患部位は、肩、頭蓋骨、骨盤帯、顎、肋骨、鎖骨、脊椎、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
組成物。
【請求項8】
請求項1
~7のいずれかに記載の
組成物であって、
前記組成物の前記関節への直接投与は、前記初期アポトーシス細胞集団または前記アポトーシス上清の注入または注射を含む、
組成物。
【請求項9】
請求項1
~8のいずれかに記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞集団は、
(a)24時間を超えて安定している自己由来の初期アポトーシス細胞集団、または、
(b)24時間を超えて安定している同種異系の初期アポトーシス細胞集団
を含む、
組成物。
【請求項10】
請求項1
~8のいずれかに記載の
組成物であって、
前記アポトーシス上清は、培養されたアポトーシス細胞、培養された初期アポトーシス細胞、または、白血球と共に培養されたアポトーシス細胞から収集される、
組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の
組成物であって、
前記アポトーシス上清は、プールされる、
組成物。
【請求項12】
請求項1
~9のいずれかに記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞集団は、初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む、
組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞のプールされた集団は、放射線照射された前記初期アポトーシス細胞のプールされた集団を含む、
組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞のプールされた集団は、単一ドナーまたは複数ドナーの単核細胞から調製されたアポトーシス細胞を含む、
組成物。
【請求項15】
請求項1
~9のいずれかに記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞集団は、放射線照射された前記初期アポトーシス細胞集団を含む、
組成物。
【請求項16】
請求項1
~15のいずれかに記載の
組成物であって、
前記対象は、ヒト対象である、
組成物。
【請求項17】
請求項1
~16のいずれかに記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞集団または前記アポトーシス上清
は、単回投与
のために製剤化されている、
組成物。
【請求項18】
請求項1
~16のいずれかに記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞集団または前記アポトーシス上清
は、複数回投与
のために製剤化されている、
組成物。
【請求項19】
請求項
18に記載の
組成物であって、
前記複数回投与は、毎日または毎週の投与を含む、
組成物。
【請求項20】
請求項1
~19のいずれかに記載の
組成物であって、
前記初期アポトーシス細胞集団は、
1×10
6±20%~1×10
9±20%個の初期アポトーシス細胞/kg対象
の用量での投与のために製剤化されている、
組成物。
【請求項21】
請求項1
~19のいずれかに記載の
組成物であって、
前記アポトーシス上清は、
約1×10
6±20%~1×10
9±20%のアポトーシス細胞/kg対象を含む培養物から収集された上清を含む
用量での投与のために製剤化されている、
組成物。
【請求項22】
請求項1
~21のいずれかに記載の
組成物であって、
前記
治療は、前記関節内に存在する滑液中の少なくとも1つの炎症性または抗炎症性のサイトカインまたはケモカインの濃度を低下させる、
組成物。
【国際調査報告】