IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシーヴ バイオサイエンシズ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニーの特許一覧

特表2022-546400高濃度の薬理学的に活性な抗体の新規製剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】高濃度の薬理学的に活性な抗体の新規製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221027BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K9/08
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/18
A61P37/08
A61P11/06
A61P17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513090
(86)(22)【出願日】2020-08-29
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 IB2020058080
(87)【国際公開番号】W WO2021038532
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】201921035059
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520460959
【氏名又は名称】カシーヴ バイオサイエンシズ,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・ウィーバー
(72)【発明者】
【氏名】オム・ナラヤン
(72)【発明者】
【氏名】スミット・マヘシュクマール・シャー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC50
4C076DD09F
4C076DD26Z
4C076DD51Q
4C076EE23F
4C076EE49F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF61
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC05
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
(57)【要約】
高濃度の薬理学的に活性な抗体の新規製剤
本開示は、抗体の薬学的に安定な高濃度液体製剤を記載する。かかる製剤は、前記抗体に加えて、アルギニン又はリジンから選択される少なくとも1つの抗凝集剤、バッファー、及びポロキサマー188を含む。更に、本開示は、高量のモノマーと、低量の凝集体と、望ましい粘度とを有する高濃度抗体製剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬安定液体製剤であって、
a.IgEに結合する薬理学的に活性な抗体;
b.リン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される好適な凝集阻害剤;
d.好適な界面活性剤;及び
e.pH6.0~7.0を含み、
抗体濃度が少なくとも100mg/mlであることを特徴とする、医薬安定液体製剤。
【請求項2】
前記IgEに結合する薬理学的に活性な抗体が、オマリズマブである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記オマリズマブが、少なくとも約100mg/ml~約200mg/mlで存在する、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記オマリズマブが、少なくとも約150mg/mlで存在する、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記リン酸バッファーが、約5mg/ml~約20mg/mlで存在する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
凝集阻害剤としての前記アルギニンが、約100mM~約200mMで存在する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項7】
凝集阻害剤としての前記アルギニンが、約200mMで存在する、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
凝集阻害剤としての前記リジンが、約100mM~約200mMで存在する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項9】
凝集阻害剤としての前記リジンが、約200mMで存在する、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記アルギニン若しくはリジンの好適な塩が、アルギニンHCl若しくはリジンHClである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記界面活性剤が、約0.02%~約0.04%で存在する、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記界面活性剤が、ポリソルベート又はポロキサマー188から選択される、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記界面活性剤が、ポロキサマー188である、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記pHが、6.0である、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項15】
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;
e.pH6.0を含む、請求項1に記載の医薬液体製剤。
【請求項16】
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのアルギニン又はアルギニンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;
e.pH6.0を含む、請求項1に記載の医薬液体製剤。
【請求項17】
a.約150mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.約20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む、請求項15に記載の医薬液体製剤。
【請求項18】
a.約150mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.約20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての約200mMのアルギニン又はアルギニンHCl;
d.約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む、請求項16に記載の医薬液体製剤。
【請求項19】
ヒスチジンバッファーを含まない、請求項1に記載の医薬液体製剤。
【請求項20】
請求項1に記載の医薬液体製剤を含むことを特徴とする、薬物送達デバイス。
【請求項21】
喘息、蕁麻疹、アレルギー、慢性特発性蕁麻疹から選択される疾患を有する患者に請求項1に記載の医薬液体製剤を投与して、前記患者の前記疾患を治療することを含む、治療方法。
【請求項22】
約20cs以下の動粘度を有する、請求項1に記載の医薬液体製剤。
【請求項23】
約10csの動粘度を有する、請求項22に記載の医薬液体製剤。
【請求項24】
医薬安定液体製剤であって、
a.IgEに結合する薬理学的に活性な抗体;
b.ヒスチジンバッファー;
c.凝集阻害剤としてのリジン又はその好適な塩;
d.好適な界面活性剤;及び
e.pH6.0~7.0を含み、
抗体濃度が少なくとも100mg/mlであることを特徴とする、医薬安定液体製剤。
【請求項25】
前記IgEに結合する薬理学的に活性な抗体が、オマリズマブである、請求項24に記載の医薬製剤。
【請求項26】
前記オマリズマブが、少なくとも約100mg/ml~約200mg/mlで存在する、請求項25に記載の医薬製剤。
【請求項27】
前記オマリズマブが、少なくとも約150mg/mlで存在する、請求項26に記載の医薬製剤。
【請求項28】
前記ヒスチジンバッファーが、約5mg/ml~約20mg/mlで存在する、請求項27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
凝集阻害剤としての前記リジンが、約100mM~約200mMで存在する、請求項28に記載の医薬製剤。
【請求項30】
凝集阻害剤としての前記リジンが、約200mMで存在する、請求項29に記載の医薬製剤。
【請求項31】
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのヒスチジンバッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む、請求項24に記載の医薬液体製剤。
【請求項32】
a.約150mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.約20mMのヒスチジンバッファー;
c.凝集阻害剤としての約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む、請求項31に記載の医薬液体製剤。
【請求項33】
アルギニンを含まない、請求項24に記載の医薬液体製剤。
【請求項34】
請求項24に記載の医薬液体製剤を含むことを特徴とする、薬物送達デバイス。
【請求項35】
喘息、蕁麻疹、アレルギー、慢性特発性蕁麻疹から選択される疾患を有する患者に請求項24に記載の医薬液体製剤を投与して、前記患者の前記疾患を治療することを含む、治療方法。
【請求項36】
約10csの動粘度を有する、請求項24に記載の医薬液体製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度の薬理学的に活性な抗体を含む新規液体製剤に関する。本発明は更に、凝集度、粘度が低く、オスモラリティーが低い薬理学的に活性な抗体を含む安定な液体製剤を提供する。
【背景技術】
【0002】
これまで、抗体製剤は、抗体の凍結乾燥により安定化され、使用前に適切な溶媒系にて再構成されていた。しかし、時間の経過と共に、静脈内注射に比べて短時間で皮下投与できることから、安定した高濃度液体製剤の要求が高まっている。更に、患者は自宅で皮下投与することができ、クリニックに訪問する必要がなくなる。しかし、高濃度抗体製剤は、小体積に約100mg/ml超の高量の抗体を含み、タンパク質-タンパク質相互作用と粘度上昇をもたらす。粘度は、治療用タンパク質の生物物理学的及び生化学的性質に関して問題であるだけでなく、かかる高濃度タンパク質溶液の送達及び製造にとっても問題である。溶液の粘度が高いほど、シリンジと針による、かかる粘稠溶液の注射にかかる時間が長くなる。更に、高濃度抗体製剤におけるタンパク質-タンパク質相互作用は、オリゴマーや凝集体を形成する傾向があり、それによって不安定な製剤を生成する。抗体の凝集、粘度、断片化、不溶性、及び分解などの問題は、通常、製剤中の抗体の濃度が上昇するにつれて大きくなる。更に、抗体の凝集は、保管寿命を含む保管における安定性に影響を及ぼす。医薬用の安定した高濃度溶液を提供するための、あらゆるタイプの抗体について有効な標準的製剤戦略がないことはよく認識されている。
【0003】
特定の医薬賦形剤を使用してタンパク質製剤を安定化できることは、先行技術において十分に確立されている。医薬製剤の主要な目標は、製品の保管寿命全体に亘って望ましい形態で抗体を提供できる、最も高い安定性を備えた製剤を調製することである。
【0004】
特許文献1は、皮下投与に特に適した抗体の高濃度製剤を開示している。更に、アルギニン-HCl、ヒスチジン、及びポリソルベートなどの様々な賦形剤を使用したオマリズマブの製剤についても記載している。
【0005】
特許文献2は、アルギニン又はヒスチジンに由来するバッファーで、モノクローナル抗体製剤の粘度を低下させる方法を開示している。
【0006】
抗体を含む高濃度液体製剤の需要の増加に基づき、高濃度の薬理学的に活性な抗体を含む安定な液体製剤を調製する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第10034940号明細書
【特許文献2】米国特許第8703126号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、高濃度の薬理学的に活性な抗体を含む新規な安定液体製剤及びその調製のためのプロセスに関する。
【0009】
一態様では、本開示は、
a.IgEに結合する薬理学的に活性な抗体;
b.リン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される好適な凝集阻害剤;
d.好適な界面活性剤;及び
e.pH6.0~7.0を含み、
抗体濃度が少なくとも100mg/mlである医薬安定液体製剤を提供する。
【0010】
別の態様では、本開示は、
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;
e.pH6.0を含む医薬液体製剤を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのアルギニン又はアルギニンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む医薬液体製剤を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、
a.IgEに結合する薬理学的に活性な抗体;
b.ヒスチジンバッファー;
c.凝集阻害剤としてのリジン又その好適な塩;
d.好適な界面活性剤;及び
e.pH6.0~7.0を含み、
抗体濃度が少なくとも100mg/mlである医薬液体製剤を提供する。
【0013】
別の態様では、本開示は、液体医薬組成物を製造する方法であって、オマリズマブと、リン酸バッファーと、アルギニン若しくはリジン又はそれらの塩から選択される凝集阻害剤と、界面活性剤とを共に混合することを含む方法を提供する。本明細書に定義される液体医薬組成物を製造する方法によって得ることができる、得られる、又は直接得られる液体医薬組成物も提供される。
【0014】
別の態様では、本開示は、本明細書に定義される液体医薬組成物を含む薬物送達デバイス(例えば、プレフィルドシリンジ若しくはペン、又は静注バッグ)を提供する。
【0015】
別の態様では、本開示は、高量のモノマーと、より少量の凝集体、断片とを含む安定な医薬液体製剤を提供する。
【0016】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書で使用される用語は、一般に、本発明の文脈において、及び各用語が使用される特定の文脈において、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明を説明するために使用される特定の用語は、本発明の説明に関して実務者に更なるガイダンスを提供するために、以下又は本明細書の他の箇所で論じられる。特定の用語の同義語が与えられる。1以上の同義語の記載は、他の同義語の使用を排除しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書の任意の箇所での例の使用は、例示に過ぎず、本発明又は任意の例示された用語の範囲及び意味を何ら限定しない。本発明は、本明細書に与えられる様々な実施形態に限定されない。特段の断りがない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語はいずれも、本発明が関連する技術分野における通常の知識を有する者によって通常理解される意味と同一の意味を有する。矛盾が生じる場合には、定義を含む本明細書が優先される。
【0017】
用語「凡そ」、「約」、又は「略」は、通常、記載された値又は範囲の20パーセント以内、10パーセント以内、5、4、3、2、又は1パーセント以内を意味するものとする。記載された数値は、近似値であり、明示的に記載されていない場合には、用語「凡そ」、「約」、又は「略」の数値であると推測することができる。
【0018】
用語「オマリズマブ」、又は「オマリズマブモノマー」、又は「モノマー」は、オマリズマブと等価である。オマリズマブは、ヒト免疫グロブリン(IgE)に選択的に結合する組換えDNA由来のヒト化IgG1Kモノクローナル抗体である。抗体の分子量は、約149kDである。Xolairは、チャイニーズハムスターの卵巣細胞によって産生される。本願の目的のために、本明細書で使用される用語「オマリズマブ」は、市販されているXolairの、限定するものではないが、高濃度製剤、注射可能な使用準備済み製剤;水、アルコール、及び/又は他の成分、及びその他で再構成される製剤と同様の性質を有する。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「酸性バリアント」又は「酸性種」及び「AV」は、全体的な酸性電荷によって特徴付けられるタンパク質、例えば、抗体又はその抗原結合部分のバリアントを意味する。例えば、モノクローナル抗体(mAb)調製物では、かかる酸性種は、イオン交換(例えば、HPLC(弱カチオン交換クロマトグラフィー)であるWCX、又はIEF(等電点電気泳動))などの様々な方法で検出できる。抗体の酸性バリアントは、それぞれ脱アミド化やシアル化などの化学的及び酵素的修飾によって形成され、抗体の正味の負電荷の上昇をもたらし、pI値を低下させ、それによって酸性バリアントが形成される。C末端のリジン切断により、正味の正電荷が失われ、酸性バリアントが形成される。酸性バリアントを生成するための別のメカニズムは、様々なタイプの共有結合性付加体の形成、例えば、糖化であり、グルコース又はラクトースが、グルコースが豊富な培養培地での製造中、又は還元糖が製剤に存在する場合の保管中に、リジン残基の第一級アミンと反応することがある(MAbs. 2010 Nov-Dec; 2(6): 613-624)。
【0020】
用語「酸性バリアント」は、プロセス関連不純物を含まない。
【0021】
本明細書に使用される用語「プロセス関連不純物」は、タンパク質を含む組成物中に存在するが、タンパク質それ自体に由来しない不純物を意味する。
【0022】
プロセス関連不純物としては、限定するものではないが、宿主細胞タンパク質(HCP)、宿主細胞核酸、クロマトグラフィー材料、及び培地成分が挙げられる。
【0023】
「サイズバリアント」として使用される用語は、LMW、HMW、又は凝集体を意味する。
【0024】
「低分子量(LMW)種」として使用される用語は、タンパク質の骨格がトランケートされた断片であり、且つ抗体のサイズ不均一性をもたらす生成物関連不純物とみなされる。LMW種は、前記抗体の単量体型に比べて活性が低い又は大幅に低下していることが多く、免疫原性をもたらす、又はインビボでの薬物動態特性に潜在的に影響を与え得る。その結果、LMW種は、医薬品開発中、及び製造中の精製医薬品の放出試験の一部として、定期的にモニターされる重大な品質属性とみなされる。
【0025】
「高分子量又はHMW」として使用される用語は、抗体製品のサイズ不均一性をもたらす製品関連不純物である。タンパク質の凝集の結果としての治療用抗体医薬品内におけるHMW種の形成は、有効性と安全性の両方を潜在的に損なわせ得る(例えば、望ましくない免疫原性応答を誘発する)。HMWは、医薬品開発中、及び製造中の精製医薬品の放出試験の一部として、定期的にモニターされる重大な品質属性とみなされる
【0026】
「凝集体」として使用される用語は、相互作用のタイプと溶解度に基づいて分類される。可溶性凝集体は目に見えない粒子であり、フィルターで除去することができない。不溶性凝集体は、ろ過によって除去することができ、ヒトの目に見える場合が多い。いずれの凝集体のタイプも、バイオ医薬品開発に問題を引き起こす。共有結合性凝集体は、特定のペプチドの複数のモノマー間の共有結合の形成から生じる。遊離チオールのジスルフィド結合形成は、共有結合性凝集の一般的メカニズムである。チロシン残基の酸化は、凝集をもたらすことが多いビチロシンを形成し得る。可逆的なタンパク質凝集は、特に、二量体、三量体、多量体などのタンパク質相互作用がより弱いことに通常起因する。
【0027】
「塩基性バリアント」として使用される用語は、追加の正電荷の導入又は負電荷を除去する、C末端リジン又はグリシンの存在、アミド化、スクシンイミド形成、アミノ酸酸化又はシアル酸の除去から生じ得るバリアントを意味し、いずれのタイプの修飾も、pI値の上昇をもたらす。
【0028】
「安定性」として使用される用語又は同様の用語は、オマリズマブモノマーが保管中に様々な望ましくない変化を受ける傾向を示す。かかる変化としては、オリゴマー及び高分子量凝集体(以下、本質的にインタクトなオマリズマブモノマーの複数のコピーが、様々な非共有結合(例えば、静電的相互作用)を介して互いに不可逆的に会合する「凝集体」をいう)の形成を含む。保管中の望ましくない変化には、オマリズマブモノマーのより小さな断片及び/又はクリップされた種(clipped species)への分解も含まれ得る。理想的には、オマリズマブの製剤は、保管中に、凝集体、ミスフォールドされたタンパク質、オリゴマー、チャージバリアント、及び/又はオマリズマブの断片の形成をもたらす製剤の傾向を可能な限り最小限にする必要がある。望ましくない凝集体又は断片の形成を低減することができることから生じる重要な利益は、薬物の潜在的な毒性及び/又は免疫原性の低減である。
【0029】
長期保管に関する用語「安定な」又は「安定した」は、医薬組成物に含まれるオマリズマブが、保管開始時の組成物の活性と比較して20%、より好ましくは15%、更により好ましくは10%、最も好ましくは5%を超えて、その活性を失わないことを意味すると理解される。
【0030】
用語「製剤」は、当技術分野において従来用いられている薬学的に許容される担体又は賦形剤などの担体を通常含み、治療、診断、又は予防目的で対象に投与するのに適した混合物を意味する。それは、培養培地中の細胞に由来するオマリズマブ又はポリペプチドを含み得る。
【0031】
用語「薬学的に許容される担体」は、非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、製剤補助剤、又は任意の従来タイプの賦形剤を意味する。薬学的に許容される担体は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに無毒であり、製剤の他の成分と相溶である。
【0032】
用語「医薬製剤」と「組成物」は、互換可能に使用される。
【0033】
用語「凝集阻害剤」は、オマリズマブなどの抗IgE抗体の凝集を防ぐ賦形剤を意味する。凝集阻害剤は、一般に、製剤中に高濃度で使用されたときに安定化するのに有用である。好適な凝集阻害剤は、アルギニン又はリジンである。しかし、バッファー、界面活性剤、及びpHなどの好適な賦形剤と組み合わせられる凝集阻害剤の選択は、望ましい結果をもたらす。本発明は、アルギニン又はアルギニンHClなどのその塩を、リン酸バッファー及びポロキサマー188と共にpH6.0で使用したときに、望ましい結果をもたらす。或いは、本発明は、リジン又はリジンHClなどのその塩を、リン酸バッファー又はヒスチジンバッファー及びポロキサマー188と共にpH6.0で使用したときに、望ましい結果をもたらす。
【0034】
用語「凝集阻害剤」と「安定剤」は、互換可能に使用される。
【0035】
本発明は、高濃度の薬理学的に活性な抗体を含む新規液体製剤を提供する。
【0036】
本発明は、好適なバッファー中に、高濃度の治療用タンパク質、好ましくはモノクローナル抗体と、1以上の好適な凝集阻害剤と、好適な界面活性剤及び等張化剤から任意に選択される他の賦形剤とを含む、任意に凍結乾燥することができる新規で改良された液体製剤を提供する。安定な製剤は、望ましい粘度を提供し、且つタンパク質の凝集体の形成を防ぐ。
【0037】
特定の実施形態では、本発明の新規製剤は、皮下投与に適している。本発明の新規製剤は安定であり、薬理学的に活性な抗体の沈殿又は凝集を回避又は低減する。
【0038】
特定の実施形態では、本発明の新規製剤は安定であり、薬理学的に活性な抗体の断片化又はLMWの形成を回避又は低減する。
【0039】
特定の実施形態では、本発明の新規製剤は安定であり、所望の電荷不均一性を維持する。
【0040】
特定の実施形態では、本発明は、室温で安定である。特定の実施形態では、本発明の新規製剤は、2℃~8℃で安定である。特定の実施形態では、本発明製剤は、37℃で少なくとも15日間、又は好ましくは30日間安定である。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の新規製剤は、高濃度の薬理学的に活性な抗体と、バッファーと、凝集阻害剤と、界面活性剤とを含む。
【0042】
特定の実施形態では、本発明の新規製剤は、任意に、Ca+2又はMg+2塩を含む。任意に、本発明の新規製剤は添加剤を含む。
【0043】
特定の実施形態では、前記薬理学的に活性な抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はそれらの断片から選択される。特定の実施形態では、前記薬理学的に活性な抗体は、アレルギー症状を治療するためにIgEに結合する。特定の実施形態では、前記薬理学的抗体は、オマリズマブ又はリゲリズマブである。
【0044】
本発明の新規製剤は、限定するものではないが、喘息、アレルギー、及び慢性特発性蕁麻疹の治療に主に有用である。
【0045】
一実施形態では、前記薬理学的に活性な抗体は、50mg/ml~200mg/mlから選択される高濃度で存在する。特定の実施形態では、前記薬理学的に活性な抗体は、80mg/ml~200mg/mlから選択される高濃度で存在する。特定の実施形態では、前記薬理学的に活性な抗体は、100mg/ml~200mg/mlから選択される高濃度で存在する。特定の実施形態では、前記薬理学的に活性な抗体は、125mg/ml~200mg/mlから選択される高濃度で存在する。特定の実施形態では、前記薬理学的に活性な抗体は、150mg/mlから選択される高濃度で存在する。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、リン酸塩、クエン酸塩、リン酸塩-クエン酸塩、ヒスチジン及び酢酸塩、並びにそれらの塩から選択される好適なバッファーを含む新規安定製剤を提供する。
【0047】
特定の実施形態では、本発明は、複数のバッファーを含む新規安定製剤を提供する。
【0048】
特定の実施形態では、また、リジン又はリジンHClが凝集阻害剤として使用されるとき、ヒスチジンを、ヒスチジン塩酸塩などのその塩の形態で使用することができる。
【0049】
特定の実施形態では、前記バッファーは、少なくとも1mg/mlの濃度で存在する。特定の実施形態では、前記バッファーは、1mg/ml~20mg/mlの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記バッファーは、1mg/ml~10mg/mlの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記バッファーは、1mg/ml~5mg/mlの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記バッファーは、4mg/mlの濃度で存在する。特定の実施形態では、前記バッファーは、3.7mg/mlの濃度で存在する。
【0050】
特定の実施形態では、前記バッファーは、少なくとも5mMの濃度で存在する。特定の実施形態では、前記バッファーは、5mM~15mMの範囲で存在する。
【0051】
特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、アルギニン、リジン、メチオニン、グリシン、及びそれらの好適な塩から選択される。
【0052】
好ましい実施形態では、前記製剤に使用される前記凝集阻害剤は、リジン及び/又はアルギニン、又はその塩形態(例えば、リジン塩酸塩又はアルギニン塩酸塩)から選択される。
【0053】
特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、少なくとも1mg/mlの濃度で存在する。特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、1mg/ml~75mg/mlの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、10mg/ml~50mg/mlの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、20mg/ml~50mg/mlの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、30mg/ml~45mg/mlの範囲で存在する。
【0054】
一実施形態では、前記凝集阻害剤は、40mg/mlの範囲で存在する。
【0055】
前記凝集阻害剤は、少なくとも1mMの濃度で使用される。特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、1mM~200mMの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、1mM~150mMの範囲で存在する。特定の実施形態では、前記凝集阻害剤は、1mM~100mMの範囲で存在する。好ましい実施形態では、前記凝集阻害剤の量は、200mMである。特定の実施形態では、前記界面活性剤は、ポリソルベート及びポロキサマー188から選択される。特定の実施形態では、前記界面活性剤は、各種グレードのポリソルベートから選択され、例えば、限定するものではないが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、又はそれらの混合物を使用することができる。好ましい実施形態では、前記界面活性剤は、ポロキサマー188である。
【0056】
特定の実施形態では、前記界面活性剤は、0.01%~0.20%の量で存在する。特定の実施形態では、前記界面活性剤は、0.02%~0.04%の量で存在する。実施形態では、前記界面活性剤の量は、0.04%である。特定の実施形態にでは、前記界面活性剤は、0.1mg/ml~0.5mg/mlの量で存在する。一実施形態では、前記界面活性剤の量は、約0.4mg/mlである。特定の実施形態では、Ca+2又はMg+2塩を使用して、所望のオスモラリティーを達成する。特定の実施形態では、本発明に係るCa+2又はMg+2塩は、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムである。
【0057】
本発明において使用される添加剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、スクロース、プロリン、グリシン、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、及び硫酸ナトリウムから選択される。
【0058】
特定の実施形態では、本発明の新規製剤は、pH5~pH7を有する。特定の実施形態では、本発明の新規製剤は、pH5.5~pH6.5を有する。特定の実施形態では、本発明の新規製剤は、pH6.2を有する。実施形態では、本発明の新規製剤は、pH6.0を有する。特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、少なくとも5cpの粘度を有する。特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、10cps~20cpsの粘度を有する。特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、10cps~15cpsの粘度を有する。特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、10cps~12cpsの粘度を有する。特定の実施形態では、前記製剤は、10cpの粘度を有する。
【0059】
かかる実施形態の一態様では、前記粘度は、10cp、11cp、12cp、13cp、14cp、15cp、16cp、17cp、18cp、19cp、及び20cpから選択される。
【0060】
粘度の値は、温度、せん断速度、及び使用されるせん断応力など、測定が行われた条件に依存することが理解される。見かけの粘度は、加えられたせん断速度に対するせん断応力の比として定義される。見かけの粘度を測定するための代替方法が、いくつか存在する。例えば、粘度は、好適なコーン及びプレート、平行プレート、又は他のタイプの粘度計若しくはレオメーターによって試験することができる。
【0061】
特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、350~410mOsmから選択されるオスモラリティーを有する。特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、370~410mOsmから選択されるオスモラリティーを有する。特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、390~410mOsmから選択されるオスモラリティーを有する。特定の実施形態では、前記安定な医薬新規液体製剤は、400~410mOsmから選択されるオスモラリティーを有する。
【0062】
本発明は、ポロキサマー、バッファー、及び凝集阻害剤の累積的効果を提供する。
【0063】
一実施形態では、本発明は、
a.IgEに結合する薬理学的に活性な抗体;
b.リン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される好適な凝集阻害剤;
d.好適な界面活性剤;及び
e.pH6.0~7.0を含み、
抗体濃度が少なくとも100mg/mlである医薬安定液体製剤を提供する。
【0064】
前記IgEに結合する薬理学的に活性な抗体は、オマリズマブ又はリゲリズマブである。
【0065】
かかる実施形態の一態様では、前記製剤は、ヒスチジンバッファーを含まない。
【0066】
かかる実施形態の別の態様では、前記製剤は、高量のモノマーと、低量の凝集及びLMWとを有する。
【0067】
一実施形態では、本発明は、
a.125mg/ml~約160mg/mlのオマリズマブ;
b.リン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される好適な凝集阻害剤;
d.好適な界面活性剤;及び
e.pH6.0~7.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0068】
一実施形態では、本発明は、
a.125mg/ml~約160mg/mlのオマリズマブ;
b.リン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される好適な凝集阻害剤;
d.ポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0069】
一実施形態では、本発明は、
a.150mg/ml~約160mg/mlのオマリズマブ;
b.リン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される好適な凝集阻害剤;
d.ポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0070】
一実施形態では、本発明は、
a.オマリズマブ;
b.リン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される、約1mM~約200mMの濃度の好適な凝集阻害剤;
d.ポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0071】
一実施形態では、本発明は、
a.オマリズマブ;
b.5mg/ml~約20mg/mlのリン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される、約1mM~約200mMの濃度の好適な凝集阻害剤;
d.ポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0072】
一実施形態では、本発明は、
a.オマリズマブ;
b.5mg/ml~約20mg/mlのリン酸バッファー;
c.アルギニン若しくはリジン又はそれらの好適な塩から選択される、約1mM~約200mMの濃度の好適な凝集阻害剤;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0073】
一実施形態では、本発明は、
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0074】
一実施形態では、本発明は、
a.約150mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.約20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0075】
かかる実施形態の一態様では、前記製剤は、アルギニンを含まない。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのアルギニン又はアルギニンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、
a.約150mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.約20mMのリン酸バッファー;
c.凝集阻害剤としての約200mMのアルギニン又はアルギニンHCl;
d.約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む医薬安定液体製剤を提供する。
【0078】
かかる実施形態では、本発明は、少なくとも90%超の高量のモノマーと、低量の凝集体、HMW、及びLMWとを提供する。かかる製剤の特定の実施形態では、酸性バリアントが20%未満である望ましいチャージバリアントを更に提供する。かかる製剤の特定の実施形態では、塩基性バリアントが25%未満である望ましいチャージバリアントを更に提供する。かかる製剤の特定の実施形態では、粘度は、15cp未満である。かかる製剤の特定の実施形態では、オスモラリティーは、約390~410mOsmである。
【0079】
好適には、本発明の液体医薬組成物は、2~8℃の温度で、少なくとも3ヶ月間、好適には少なくとも6ヶ月間、好適には少なくとも12ヶ月間、より好適には少なくとも24ヶ月間の保管寿命を有する。
【0080】
好適には、本発明の液体医薬組成物は、37℃の温度で、少なくとも7日間、好適には少なくとも15日間、好適には1ヶ月間の保管寿命を有する。
【0081】
一実施形態では、本発明は、
a.約50mg/ml~150mg/mlの量の高濃度の薬理学的に活性な抗IgE抗体;
b.少なくとも約8mM又は20mMの量のヒスチジン又はヒスチジンHClを含む好適なバッファー;
c.好適な凝集阻害剤としてリジン又はリジンHCL;
d.ポリソルベート又はポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む新規医薬安定製剤を提供する。
【0082】
一実施形態では、NaCl、マンニトール、スクロース、プロリン、及びグリシンを含む適切な添加剤。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、
a.高濃度の薬理学的に活性な抗体;
b.好適なバッファーとしてメチオニン;
c.好適な凝集阻害剤としてアルギニン又はアルギニンHCl;
d.ポリソルベート又はポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む新規医薬安定製剤を提供する。
【0084】
別の実施形態では、本発明は、
a.高濃度の薬理学的に活性な抗体;
b.好適なバッファーとしてメチオニン及びリン酸塩;
c.好適な凝集阻害剤としてアルギニン又はアルギニンHCl;
d.ポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む新規医薬安定製剤を提供する。
【0085】
別の実施形態では、本発明は、
a.高濃度の薬理学的に活性な抗体;
b.好適なバッファーとしてヒスチジン;
c.好適な凝集阻害剤としてリジン又はリジンHCl;
d.ポロキサマー188;及び
e.pH6.0~7.0を含む新規医薬安定製剤を提供する。
【0086】
別の実施形態では、本発明は、
a.100~160mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.5mM~20mMのヒスチジンバッファー;
c.凝集阻害剤としての100mM~約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.0.02%~約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む新規医薬安定製剤を提供する。
【0087】
別の実施形態では、本発明は、
a.約150mg/mlのオマリズマブ抗体;
b.約20mMのヒスチジンバッファー;
c.凝集阻害剤としての約200mMのリジン又はリジンHCl;
d.約0.04%のポロキサマー188;及び
e.pH6.0を含む新規医薬安定製剤を提供する。
【0088】
かかる実施形態では、本発明は、アルギニンを含まない薬学的に安定な製剤を提供する。本発明は更に、少なくとも90%超の高量のモノマーと、低量の凝集体、HMW、及びLMWとを提供する。かかる製剤の特定の実施形態では、酸性バリアントが20%未満である望ましいチャージバリアントを更に提供する。かかる製剤の特定の実施形態では、塩基性バリアントが25%未満である望ましいチャージバリアントを更に提供する。かかる製剤の特定の実施形態では、粘度は、15cp未満である。かかる製剤の特定の実施形態では、オスモラリティーは、約390~410mOsmである。
【0089】
更に、20mMのリン酸バッファー、200mMのグリシンHCl、及びポロキサマー188をpH6.0で添加する製剤調製も試みた。しかし、バルク溶液の濃縮中に、前記製剤の粘度が大幅に増加し、オマリズマブ濃度を所望濃度、即ち、145~155mg/mLに調整することができなかった。したがって、この製剤は、安定性試験用にインキュベートしなかった。
【0090】
更なる態様では、本発明は、本明細書に定義される液体医薬組成物を含む薬物送達デバイスを提供する。好ましくは、前記薬物送達デバイスは、前記医薬組成物が収容されるチャンバーを含む。より好ましくは、前記薬物送達デバイスは、無菌である。
【0091】
前記薬物送達デバイスは、バイアル、アンプル、シリンジ、注射ペン、オートインジェクター(例えば、本質的にシリンジを含む)であることができる。、前記薬物送達デバイスがシリンジである場合、注射ペンであることが好ましい。ここで、前記シリンジは、ガラス製又はプラスチック製のシリンジである。
【0092】
更に別の態様では、本発明は、薬物送達デバイス(前記液体医薬組成物は含まれていない)と、本明細書に定義される液体医薬組成物(任意に、別体のパッケージ又は容器に含まれる)と、任意に、前記液体医薬組成物の投与(例えば、皮下又は静脈内)に関する説明を含む指示書セットとを含むキットオブパーツを提供する。次いで、ユーザーは、投与前に、前記薬物送達デバイスに前記液体医薬組成物(バイアル又はアンプルなどに提供され得る)を充填することができる。
【0093】
また、記載されるパッケージは、本明細書に定義される液体医薬組成物を含む。好適には、前記パッケージは、本明細書に定義される薬物送達デバイス、好適には複数の薬物送達デバイスを含む。前記パッケージは、1以上の薬物送達デバイスを収容するための任意の好適な容器を含むことができる。
【0094】
本明細書に定義される液体医薬組成物は、前述の疾患又は医学的障害のいずれか1以上を治療するために使用することができる。具体的な実施形態では、前記液体医薬組成物は、喘息、蕁麻疹、アレルギー、慢性特発性蕁麻疹を治療するために使用される。
【0095】
前記液体医薬組成物は、静脈内注射又は皮下注射のいずれか、好ましくは皮下注射を介して、好適に非経口投与される。
【0096】
本発明は、以下、例示目的のために実施例を提供するが、発明の範囲は、例示的な実施例に限定されない。
【実施例
【0097】
実施例1
オマリズマブ注射用製剤を、皮下投与用に150mg/mLの抗体濃度で調製した。
【0098】
製剤は、20mMのリン酸バッファー、200mMのアルギニンHCl、及びポロキサマー188をpH6.0で添加して調製した。バルク溶液を、0.2μmのPVDFフィルターでろ過してろ過溶液を得、1mLのろ過溶液を1mLのガラス製PFSに充填した。製剤の組成は以下の通りである。
【表1】
【0099】
安定性試験を37℃で1ヶ月間行った。以下は、分析データをまとめたものである。
【表2】
【0100】
前記結果に基づくと、前記製剤は、1ヶ月間後、モノマー%及びHMW%がそれぞれ98.08%及び0.36%であり、37℃で保管された1ヶ月間の間、安定であった。
【0101】
実施例2
オマリズマブ注射用製剤を、皮下投与用に150mg/mLの抗体濃度で調製した。
【0102】
製剤は、20mMのリン酸バッファー、200mMのリジンHCl、及びポロキサマー188をpH6.0で添加して調製した。バルク溶液を、0.2μmのPVDFフィルターでろ過してろ過溶液を得、1mLのろ過溶液を1mLのガラス製PFSに充填した。製剤の組成は以下の通りである。
【表3】
【0103】
安定性試験を37℃で1ヶ月間行った。以下は、分析データをまとめたものである。
【表4】
【0104】
前記結果に基づくと、前記製剤は、1ヶ月間後、モノマー%及びHMW%がそれぞれ98.39%及び0.36%であり、37℃で保管された1ヶ月間の間、安定であった。
【0105】
実施例3
オマリズマブ注射用製剤を、皮下投与用に150mg/mLの抗体濃度で調製した。
【0106】
製剤は、20mMのヒスチジンバッファー、200mMのリジンHCl、及びポロキサマー188をpH6.0で添加して調製した。バルク溶液を、0.2μmのPVDFフィルターでろ過してろ過溶液を得、1mLのろ過溶液を1mLのガラス製PFSに充填した。製剤の組成は以下の通りである。
【表5】
【0107】
安定性試験を37℃で1ヶ月間行った。以下は、分析データをまとめたものである。
【表6】
【0108】
前記結果に基づくと、前記製剤は、1ヶ月間後、モノマー%及びHMW%がそれぞれ98.09%及び0.35%であり、37℃で保管された1ヶ月間の間、安定であった。
【0109】
実施例4
前記3種類の製剤(実施例1~3)の安定性試験を、冷蔵庫(2℃~8℃)で3ヶ月間行った。得られたデータをまとめたものを、以下の表7に示す。
【表7】
【0110】
3種類の製剤(実施例1~3)はいずれも、2℃~8℃で3ヶ月間の保管後、安定であることが分かった。3種類の製剤はいずれも、SEC-HPLCで測定されたモノマーの割合が高いことを示している。更に、HMW、LMW、及びチャージバリアントも3ヶ月間保管後、非常に低く、前記製剤を、より長期間、安定性の高いものにする。
【0111】
3種類の製剤はいずれも、持続的な長期安定性を発揮するようにチャージされた。
【0112】
実施例5
実施例1、実施例2、及び実施例3に記載される3種類の製剤はいずれも、タンパク質のフォールディング状態及び熱安定性を分析するために、示差走査蛍光定量法(DSF)によって更に評価される。これは、温度上昇範囲(例えば、25℃~95℃)におけるタンパク質の安定性、タンパク質の制御された加熱(例えば、0.5℃/分)による熱タンパク質アンフォールディングを調べるための高速で高信頼性の強力なツールである。サンプルのタンパク質濃度を分析前に規格化した。
【0113】
200mMのアルギニンHCl、20mMのヒスチジンバッファー、及び0.4mg/mlのポリソルベート20に配合された150mg/mlのオマリズマブを含むF1製剤に加えて、実施例1~3を用いてこの試験を行った。データを表8にまとめる。
【表8】
【0114】
前記データに基づくと、3種類の製剤(実施例1~3)のいずれの開始温度も、F1製剤より高いことが明らかであり、3種類全ての製剤(実施例1~3)がF1製剤より熱的に安定であることが示された。
【0115】
実施例6
製剤は、20mMのヒスチジンバッファー、200mMのリジンHCl、及びポロキサマー188をpH6.0で添加して調製した。バルク溶液を、0.2μmのPVDFフィルターでろ過してろ過溶液を得、1mLのろ過溶液を1mLのガラス製PFSに充填した。
【0116】
ポリソルベート20とポロキサマー188の、製剤の安定性に対する効果を評価した。この試験では、以下の組成物を使用した。
【表9】
【0117】
両製剤は、37℃で15日間安定な状態でチャージされた。結果は、以下の通りである。
【表10】
【0118】
表10は、37℃で15日間インキュベートした後、ポリソルベート20の方がポロキサマー188よりもHMW%が高かったことを示す。
【0119】
実施例7
F2製剤を、20mMのヒスチジンバッファー、200mMのアルギニンHCl、及びポロキサマー188をpH6.0で添加して調製した。バルク溶液を、0.2μmのPVDFフィルターでろ過してろ過溶液を得、1mLのろ過溶液を1mLのガラス製PFSに充填した。
【0120】
F2製剤と実施例1~3の安定性を、37℃で1か月間チャージして評価した。
【0121】
以下は、全製剤のデータをまとめたものである。
【表11】
【0122】
実施例6においてポリソルベート20に対してポロキサマー188の示された効果から、本発明者らは、凝集阻害剤及びバッファーとポロキサマーとの組合せ効果を更に評価した。表11から、実施例1及び実施例2は、F2と比較して、低量のHMW及びLMWを有することが明らかであり、このことは、実施例1及び実施例2で使用されるポロキサマー188と組み合わせられたリン酸バッファーの改善効果を示す。
【0123】
実施例3は、F2製剤と比較してより低量のHMW及びLMWを有し、このことは、F2で使用されるアルギニン及びポロキサマー188に対するリジン及びポロキサマー188の効果を示している。
【0124】
LMWの割合が低いことは、安定な製剤を調製するためにも重要である。これは、LMWが高量であると抗体の断片化が生じ、製剤の保管寿命が短縮されるだけでなく、製剤の効力を低下させるためである。
【国際調査報告】