(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ウイルス感染症を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20221027BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221027BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20221027BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20221027BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20221027BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20221027BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20221027BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221027BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20221027BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221027BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221027BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221027BHJP
【FI】
C12N15/113 100Z
C12N15/63 Z ZNA
C12N7/04
C12N15/88 Z
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/20
A61P1/16
A61P31/16
A61P31/18
A61P35/02
A61K48/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513124
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020048370
(87)【国際公開番号】W WO2021041787
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521544296
【氏名又は名称】ジー・テック・バイオ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】セルハト・グムルーク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
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4C084AA13
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4C084ZA751
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4C087ZA75
4C087ZB33
(57)【要約】
本開示は、ウイルスポリメラーゼの存在下でのみ転写され得る形でケモカイン、サイトカイン、またはアポトーシス誘導タンパク質(例えば、カスパーゼ9(Casp9))、または他の毒素をコードする組換え核酸コンストラクトまたは複製不全ウイルス様粒子を利用する方法及び組成物を提供する。これらの方法は、多くのウイルス感染症を標的化し、かつウイルス量を減少させるか、または除去するために適合させることができ、ウイルス感染症のための基本的に異なる処置を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え核酸分子であって、
第1及び第2のウイルス転写認識シグナルにより挟まれている、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)、またはそれらの任意の組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子;
前記第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーター;及び
ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)、またはそれらの任意の組合せをコードする前記ネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーター
を含む前記組換え核酸分子。
【請求項2】
前記ネガティブストランド核酸分子が、ネガティブセンスRNA、ネガティブセンスDNA、ノンコーディングネガティブセンスRNAを発現する一本鎖もしくは二本鎖DNA、またはそれらの任意の組合せである、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項3】
前記第1及び第2のウイルス転写認識シグナルが、ネガティブストランドウイルス、RNA逆転写ウイルス、またはDNA逆転写ウイルスから選択されるウイルスから選択される、請求項1または2に記載の組換え核酸分子。
【請求項4】
ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードする前記ネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子の下流(3’側)にポリAテールをさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の組換え核酸分子。
【請求項5】
前記アポトーシス誘導タンパク質が、BAX、BID、BAK、BAD、カスパーゼ2、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、シトクロムC、SMAC、及びアポトーシス誘導因子、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項6】
前記第1のプロモーターが、TBG(チロキシン結合グロブリン)、アルブミンプロモーター及び/または増強要素、AFP(アルファ-フェトプロテイン)プロモーター、AAT(アルファ-1-アンチトリプシン)プロモーター、ApoE(アポリポタンパク質E)プロモーターまたはPEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)プロモーターからなる群から選択される強力なユビキタスプロモーターまたは肝臓組織特異的プロモーターを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項7】
前記第2のプロモーターが伸長因子1アルファ結合配列(EFS)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項8】
前記ケモカインがCCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2、及びCX3CL1から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項9】
前記サイトカインが、IL-15、IL-2、IL-8、IL-10、IL-12、IL-6、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、CD40L、Mig、及びCrg-2からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項10】
前記ウイルス転写認識シグナルが、配列番号1に記載のとおりのイプシロン認識シグナルまたは配列番号25、配列番号26、配列番号28、及び配列番号30からなる群から選択されるコロナウイルス認識配列を含む、請求項3に記載の組換え核酸分子。
【請求項11】
前記ウイルスが、コロナウイルス、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト呼吸系発疹ウイルス、水疱性口内炎インドウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ハンタンウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、砂バエ熱シチリアウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、Mason-Pfizerサルウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒトスプーマウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、コロナウイルス、及びそれらの任意の組合せである、請求項3に記載の組換え核酸分子。
【請求項12】
ウイルスポリメラーゼ、逆転写酵素、カプシド、エンベロープ、パッケージングシグナル、または転座モチーフのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない、請求項1~11のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸配列を含むベクター。
【請求項14】
哺乳類細胞に送達するための送達ベクターまたはビヒクルを含む、請求項13に記載のベクター。
【請求項15】
VLP、アデノ随伴ウイルス(AAV)、リポソーム、ナノ粒子、ミセル、ポリマーベシクル、またはポリマーソームを含む、請求項14に記載の送達ベクターまたはビヒクル。
【請求項16】
請求項1~12に記載の組換え核酸配列のいずれか1つ、または請求項13~15に記載のベクターのいずれか1つを含む医薬組成物。
【請求項17】
複製不全ウイルス様粒子(VLP)であって、
B型肝炎ウイルスカプシドもしくはD型肝炎ウイルスカプシドからのカプシドタンパク質またはコロナウイルス融合タンパク質に融合している任意選択の転座モチーフ(TLM);及び
第1及び第2のウイルス転写認識シグナルにより挟まれている、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)、またはそれらの任意の組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子;
前記第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーター:及び
ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)、またはそれらの任意の組合せをコードする前記ネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーター
を含む、前記複製不全ウイルス様粒子(VLP)。
【請求項18】
複製不全ウイルス様粒子(VLP)であって、
第1及び第2の標的ウイルス転写認識シグナルにより挟まれている、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)、またはそれらの任意の組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子;
前記第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーター;及び
ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)、またはそれらの任意の組合せをコードする前記ネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーター
を含み、その際、前記VLPが標的ウイルス感染細胞について指向性を示す、前記複製不全ウイルス様粒子(VLP)。
【請求項19】
前記ネガティブストランド核酸分子が、ネガティブセンスRNA、ネガティブセンスDNA、ノンコーディングネガティブセンスRNAを発現する一本鎖もしくは二本鎖DNA、またはそれらの任意の組合せである、請求項17または18に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項20】
ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードする前記ネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子の下流(3’側)にポリAテールをさらに含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項21】
前記第1のプロモーターが、TBG(チロキシン結合グロブリン)、アルブミンプロモーター及び/または増強要素、AFP(アルファ-フェトプロテイン)プロモーター、AAT(アルファ-1-アンチトリプシン)プロモーター、ApoE(アポリポタンパク質E)プロモーターまたはPEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)プロモーターからなる群から選択される強力なユビキタスプロモーターまたは肝臓組織特異的プロモーターを含む、請求項17~20のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項22】
前記第2のプロモーターが伸長因子1アルファ結合配列(EFS)を含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項23】
前記ウイルス転写認識シグナルが、ネガティブストランドウイルス、RNA逆転写ウイルス、またはDNA逆転写ウイルスから選択されるウイルスから選択される、請求項17~22のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項24】
前記ウイルス転写認識シグナルが、前記イプシロン認識シグナル(配列番号1)または配列番号25もしくは配列番号26などのコロナウイルスのウイルス認識配列を含む、請求項23に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項25】
前記アポトーシス誘導タンパク質が、BAX、BID、BAK、BAD、カスパーゼ2、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、シトクロムC、SMAC、及びアポトーシス誘導因子からなる群から選択される、請求項17~24のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項26】
前記ケモカインが、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2、及びCX3CL1から選択される、請求項17~25のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項27】
前記サイトカインが、IL-15、IL-2、IL-8、IL-10、IL-12、IL-6、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、CD40L、Mig、及びCrg-2からなる群から選択される、請求項17~26のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項28】
前記ウイルスが、コロナウイルス、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト呼吸系発疹ウイルス、水疱性口内炎インドウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ハンタンウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、砂バエ熱シチリアウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、Mason-Pfizerサルウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒトスプーマウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、コロナウイルス、及びそれらの任意の組合せである、請求項17~27のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項29】
前記核酸分子が、ウイルスカプシド、ポリメラーゼ、逆転写酵素、エンベロープ、パッケージングシグナル、または転座モチーフのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない、請求項17~28のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子。
【請求項30】
請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子を含む医薬組成物。
【請求項31】
それを必要とする対象においてウイルス感染症を処置する方法であって、前記対象に、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子を投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
前記ウイルス感染症が、ボルチモア分類IV、V、VI、またはVIIに分類されるウイルスからの感染症を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルス感染症が、コロナウイルス、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト呼吸系発疹ウイルス、水疱性口内炎インドウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ハンタンウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、砂バエ熱シチリアウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、Mason-Pfizerサルウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒトスプーマウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、及びそれらの組合せからなる群から選択されるウイルスからの感染症を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ウイルス感染症が、フィロウイルス、パラミクソウイルス、モルビリウイルス、ルブラウイルス、ニューモウイルス、ベシクロウイルス、リッサウイルス、エフェメロウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、ハンタウイルス、ナイロウイルス、フレボウイルス、オルトヘパドナウイルス、アビヘパドナウイルス、哺乳類B型レトロウイルス、哺乳類C型レトロウイルス、鳥類C型レトロウイルス、D型レトロウイルス、BLV-HTLVレトロウイルス、レンチウイルス、スプーマウイルス、及びそれらの組合せからなる群から選択されるウイルスからの感染症を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記核酸分子、ベクター、医薬組成物、または複製不全ウイルス様粒子が、投与されると、肝臓細胞に侵入する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記核酸分子、ベクター、医薬組成物、または複製不全ウイルス様粒子が、投与されると、前記核酸分子を肝臓細胞に送達して、前記核酸分子が前記肝臓細胞で発現される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、急性、慢性、または潜伏ウイルス感染症を有する、請求項31~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
投与が、前記ウイルス感染症を引き起こしているウイルスに感染している細胞に対する免疫応答を誘導する、請求項31~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
投与が、前記ウイルス感染症を引き起こしているウイルスに感染している細胞においてアポトーシスを誘導する、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
それを必要とする対象において、ウイルスに感染している細胞に対する免疫応答を誘導する方法であって、前記対象を、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子と接触させることを含む、前記方法。
【請求項41】
それを必要とする対象において、ウイルスに感染した細胞に対するアポトーシス応答を誘導する方法であって、前記対象を、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、または請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子を含む医薬組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項42】
前記ウイルスが、コロナウイルス、インフルエンザ、HBV、HDV、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、またはそれらの任意の組合せである、請求項31~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
対象において、B型肝炎、インフルエンザ、またはコロナウイルス感染症を処置する方法であって、前記対象に、前記対象を、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、または請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子を投与することを含む、前記方法
【請求項44】
少なくとも1種の抗ウイルス薬、HBVポリメラーゼ阻害薬、インターフェロン、TLR-7アゴニストまたはTLR-9アゴニストなどのTLR調節薬、治療用ワクチン、ある特定の細胞ウイルスRNAセンサーの免疫活性化因子、ウイルス侵入阻害薬、ウイルス成熟阻害薬、別個のカプシドアセンブリ調節薬、別個または未知の機構の抗ウイルス化合物、及びそれらの任意の組合せを投与することをさらに含む、請求項31~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1種の抗ウイルス薬3TC、FTC、L-FMAU、インターフェロン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン(L-dT)、バルトルシタビン(3’-バリニルL-dC)、ベータ.-D-ジオキソラニル-グアニン(DXG)、ベータ.-D-ジオキソラニル-2,6-ジアミノプリン(DAPD)、ベータ.-D-ジオキソラニル-6-クロロプリン(ACP)、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ロブカビル、ガンシクロビル、リバビリン、テノフォビル、ビクテグラビル、エムトリシタビン、ビクタルビ、及びそれらの任意の組合せを投与することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
それを必要とする対象において、インフルエンザウイルスに感染した細胞に対するアポトーシス応答を誘導する方法であって、前記対象を、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、または請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子と接触させることを含む、前記方法。
【請求項47】
インフルエンザウイルスを含む前記ウイルスが、インフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザC、またはそれらの任意の組合せである、請求項31~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
対象においてインフルエンザを処置する方法であって、前記対象に、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、または請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子を投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
少なくとも1種の抗ウイルス薬3TC、FTC、L-FMAU、インターフェロン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン(L-dT)、バルトルシタビン(3’-バリニルL-dC)、ベータ.-D-ジオキソラニル-グアニン(DXG)、ベータ.-D-ジオキソラニル-2,6-ジアミノプリン(DAPD)、ベータ.-D-ジオキソラニル-6-クロロプリン(ACP)、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ロブカビル、ガンシクロビル、リバビリン、テノフォビル、ビクテグラビル、エムトリシタビン、ビクタルビ、及びそれらの任意の組合せを投与することをさらに含む、請求項31~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
それを必要とする対象において、コロナウイルスに感染した細胞に対するアポトーシス応答を誘導する方法であって、前記対象を、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、または請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子と接触させることを含む、前記方法。
【請求項51】
対象においてコロナウイルス感染症を処置する方法であって、前記対象に、請求項1~12のいずれか1項に記載の組換え核酸分子、または請求項13~15のいずれか1項に記載のベクター、または請求項16もしくは30に記載の医薬組成物、または請求項17~29のいずれか1項に記載の複製不全ウイルス様粒子を投与することを含む、前記方法。
【請求項52】
前記処置を、維持処置として、または安定しているか、もしくは検出不可能な疾患を達成するために患者が必要とする限り毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1か月に1回、2か月ごとに1回、3か月ごとに1回、4か月ごとに1回、5か月ごとに1回、6か月ごとに1回、または7か月ごとに1回、または8か月ごとに1回、または9か月ごとに1回、または10か月ごとに1回、または11か月ごとに1回、または1年に1回を含めて定期的に投与する、請求項31~51のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月29日出願の米国特許仮出願第62/893,460号;2020年1月31日出願の米国特許仮出願第62/968,387号;2020年2月14日出願の米国特許仮出願第62/976,491号;及び2020年3月5日出願の米国特許仮出願第62/985,597号の優先権を主張し、これらはそれぞれ、それらの全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、ウイルスポリメラーゼの存在下でのみ転写される形でケモカイン、サイトカイン、またはアポトーシス誘導タンパク質(例えば、カスパーゼ9(Casp9))をコードする組換え核酸コンストラクトまたは複製不全ウイルス様粒子を利用する方法及び組成物を提供する。これらの方法は、多くのウイルス感染症を標的化し、かつウイルス量を減少させるか、または除去するために適合させることができ、ウイルス感染症のための基本的に異なる処置を提供する。
【背景技術】
【0003】
ウイルス感染症は、世界規模の公衆衛生上の困難な課題である。いくつかのウイルス感染症の処置については多少進歩しているが、これらの処置の多くは効果がないか、または世界のほとんどで費用が掛かり過ぎる。例えば、処置が困難な慢性ウイルス感染症のモデルとみなされるB型肝炎ウイルス(HBV)感染症は依然として、大変な公衆衛生上の問題である。HBVワクチン接種の導入以来、垂直母子伝染及び水平伝染を含む伝染のリスクは劇的に低下している。しかしながら、全世界で2億4800万人がいまだにHBVに慢性感染していると推定される。これは、風土性の領域及び国々に高い社会経済的負担を課している。慢性B型肝炎(CHB)の臨床成果は、B型肝炎の自発的消散から肝不全、硬変、及び肝細胞癌(HCC)の発生を含む重篤で有害な結果に及ぶ範囲まで、大きく変化する。宿主抗ウイルス免疫により媒介される持続性または再発性肝壊死性炎症が疾患進行の主な原因であり、最終的には進行線維症及び肝臓の発癌現象をもたらす。CHBの重篤で不利な結果の生涯リスクは、15%~40%と高い。不利な臨床成果の発生を防ぐためには、リスクを有する人を早期診断し、適時に抗ウイルス処置することが必要とされる。
【0004】
したがって、HBVなどのウイルス感染症を処置するために、新たな、より有効で、より広く利用可能な処置が必要とされている。有効なウイルス処置の開発における困難な側面の1つは、宿主細胞のライフサイクルと緊密に結びついているウイルスの複雑なライフサイクルである。例えば、感染肝細胞におけるHBVの存続は、ウイルスRNAの転写のためのテンプレートである共有結合閉環状DNA(cccDNA)の存在による。ヌクレオシド類似体を用いる抗ウイルス治療は、感染細胞の細胞質に存在するカプシド内のHBV DNAの複製を阻害するが、核cccDNAを減少させる、または破壊することはない。多少の進歩にも関わらず、抗ウイルス薬は現在、わずかなウイルス性疾患に対してのみ有効である。
【0005】
したがって、ウイルス感染症を処置するための展望を変化させるためには、基本的に異なる処置アプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
第1及び第2のウイルス転写認識シグナルにより挟まれている、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子を含み、さらに、第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーターと、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接している5’側の第2のプロモーターとを含む、組換え核酸配列を本明細書では提供する。
【0007】
ある特定の実施形態では、ネガティブストランド核酸分子は、ネガティブセンスRNA、ネガティブセンスDNA、ノンコーディングネガティブセンスRNAを発現する一本鎖もしくは二本鎖DNA、またはpgRNA、またはそれらの任意の組合せである。
【0008】
追加の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、ネガティブストランドウイルス、RNA逆転写ウイルス、またはDNA逆転写ウイルスから選択されるウイルスから選択される。
【0009】
追加の実施形態では、組換え核酸は、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子の下流(3’側)にポリAテールをさらに含む。
【0010】
追加の実施形態では、アポトーシス誘導タンパク質は、BAX、BID、BAK、BAD、カスパーゼ2、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、シトクロムC、SMAC、及びアポトーシス誘導因子、またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0011】
さらに追加の実施形態では、第1のプロモーターは、TBG(チロキシン結合グロブリン)、アルブミンプロモーター及び/または増強要素、AFP(アルファ-フェトプロテイン)プロモーター、AAT(アルファ-1-アンチトリプシン)プロモーター、ApoE(アポリポタンパク質E)プロモーターまたはPEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)プロモーターからなる群から選択される強力なユビキタスプロモーターまたは肝臓組織特異的プロモーターを含む。
【0012】
さらに追加の実施形態では、第2のプロモーターは、伸長因子1アルファ結合配列(EFS)を含む。
【0013】
追加の実施形態では、ケモカインは、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2、及びCX3CL1から選択される。
【0014】
さらなる実施形態では、サイトカインは、IL-15、IL-2、IL-8、IL-10、IL-12、IL-6、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、CD40L、Mig、及びCrg-2からなる群から選択される。
【0015】
追加の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、イプシロン認識シグナル(配列番号1)を含む。
【0016】
追加の実施形態では、ウイルスは、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト呼吸系発疹ウイルス、水疱性口内炎インドウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ハンタンウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、砂バエ熱シチリアウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、Mason-Pfizerサルウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒトスプーマウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、及びそれらの組合せである。
【0017】
追加の実施形態では、核酸分子は、ウイルスポリメラーゼ、逆転写酵素、カプシド、エンベロープ、パッケージングシグナル、または転座モチーフのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。
【0018】
本明細書に記載の組換え核酸配列のいずれかを含むベクターを本明細書では提供する。
【0019】
追加の実施形態では、ベクターは、哺乳類細胞に送達するための送達ベクターまたはビヒクルを含む。
【0020】
追加の実施形態では、ベクターまたはビヒクルは、VLP、アデノ随伴ウイルス(AAV)、リポソーム、ナノ粒子、ミセル、ポリマーベシクル、またはポリマーソームを含む。
【0021】
本明細書に記載の組換え核酸配列のいずれかまたは本明細書に記載のベクターのいずれかを含む医薬組成物を本明細書では提供する。
【0022】
複製不全ウイルス様粒子(VLP)であって、
B型肝炎ウイルスカプシドまたはD型肝炎ウイルスカプシドからのカプシドタンパク質に融合している任意選択の転座モチーフ(TLM);及び
第1及び第2のウイルス転写認識シグナルにより挟まれている、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子
を含み、
さらに、第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーターと、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーターと
を含む、前記複製不全ウイルス様粒子(VLP)を本明細書では提供する。
【0023】
複製不全ウイルス様粒子(VLP)であって、
第1及び第2の標的ウイルス転写認識シグナルにより挟まれている、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子
を含み、
さらに、
第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーターと、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーターと
を含み、その際、VLPが、標的ウイルス感染細胞について指向性を示す、前記複製不全ウイルス様粒子(VLP)をさらに本明細書では提供する。
【0024】
追加の実施形態では、ネガティブストランド核酸分子は、ネガティブセンスRNA、ネガティブセンスDNA、ノンコーディングネガティブセンスRNAを発現する一本鎖もしくは二本鎖DNA、またはpgRNA、またはそれらの任意の組合せである。
【0025】
追加の実施形態では、複製不全ウイルス様粒子(VLP)は、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子の下流(3’側)にポリAテールをさらに含む。
【0026】
追加の実施形態では、第1のプロモーターは、TBG(チロキシン結合グロブリン)、アルブミンプロモーター及び/または増強要素、AFP(アルファ-フェトプロテイン)プロモーター、AAT(アルファ-1-アンチトリプシン)プロモーター、ApoE(アポリポタンパク質E)プロモーターまたはPEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)プロモーターからなる群から選択される強力なユビキタスプロモーターまたは肝臓組織特異的プロモーターを含む。
【0027】
追加の実施形態では、第2のプロモーターは、伸長因子1アルファ結合配列(EFS)を含む。
【0028】
追加の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、ネガティブストランドウイルス、RNA逆転写ウイルス、またはDNA逆転写ウイルスから選択されるウイルスから選択される。
【0029】
追加の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、イプシロン認識シグナル(配列番号1)を含む。
【0030】
追加の実施形態では、アポトーシス誘導タンパク質は、BAX、BID、BAK、BAD、カスパーゼ2、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、シトクロムC、SMAC、及びアポトーシス誘導因子、またはそれらの組合せからなる群から選択される。
【0031】
追加の実施形態では、ケモカインは、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2、及びCX3CL1から選択される。
【0032】
追加の実施形態では、サイトカインは、IL-15、IL-2、IL-8、IL-10、IL-12、IL-6、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、CD40L、Mig、及びCrg-2からなる群から選択される。
【0033】
追加の実施形態では、ウイルスは、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト呼吸系発疹ウイルス、水疱性口内炎インドウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ハンタンウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、砂バエ熱シチリアウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、Mason-Pfizerサルウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒトスプーマウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、及びそれらの組合せである。
【0034】
追加の実施形態では、核酸分子は、ウイルスカプシド、ポリメラーゼ、逆転写酵素、エンベロープ、パッケージングシグナル、または転座モチーフのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。
【0035】
本明細書に記載の不全ウイルス様粒子のいずれかを含む医薬組成物をさらに提供する。
【0036】
対象に、本明細書に記載の組換え核酸分子、または本明細書に記載のベクター、または本明細書に記載の医薬組成物、または本明細書に記載の複製不全ウイルス様粒子を投与することを含む、それを必要とする対象においてウイルス感染症を処置する方法をさらに提供する。
【0037】
追加の実施形態では、ウイルス感染症は、ボルチモア分類IV、V、VI、またはVIIに分類されるウイルスからの感染症を含む。
【0038】
追加の実施形態では、ウイルス感染症は、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト呼吸系発疹ウイルス、水疱性口内炎インドウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ハンタンウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、砂バエ熱シチリアウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、Mason-Pfizerサルウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒトスプーマウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、及びそれらの組合せからなる群から選択されるウイルスからの感染症を含む。
【0039】
追加の実施形態では、ウイルス感染症は、インフルエンザA、B、C、及び/または任意のコロナウイルス、及び/またはボルチモア分類第IV群からの任意のウイルスからなる群から選択されるウイルスからの感染症を含む。
【0040】
追加の実施形態では、ウイルス感染症は、フィロウイルス、パラミクソウイルス、モルビリウイルス、ルブラウイルス、ニューモウイルス、ベシクロウイルス、リッサウイルス、エフェメロウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、ハンタウイルス、ナイロウイルス、フレボウイルス、オルトヘパドナウイルス、アビヘパドナウイルス、哺乳類B型レトロウイルス、哺乳類C型レトロウイルス、鳥類C型レトロウイルス、D型レトロウイルス、BLV-HTLVレトロウイルス、レンチウイルス、スプーマウイルス、及びそれらの組合せからなる群から選択されるウイルスからの感染症を含む。
【0041】
一部の実施形態では、ウイルス感染症は、COVID-19、SARS、またはMERSと称されるウイルスなどのコロナウイルスからの感染症を含む。
【0042】
追加の実施形態では、核酸分子、ベクター、医薬組成物、または複製不全ウイルス様粒子は投与されると、肝臓細胞に侵入する。
【0043】
追加の実施形態では、核酸分子、ベクター、医薬組成物、または複製不全ウイルス様粒子は投与されると、核酸分子を肝臓細胞に送達し、その核酸分子は肝臓細胞中で発現される。
【0044】
追加の実施形態では、対象は、急性、慢性、または潜伏ウイルス感染症を有する。
【0045】
追加の実施形態では、投与は、ウイルス感染症を引き起こしているウイルスに感染している細胞に対する免疫応答を誘導する。
【0046】
追加の実施形態では、投与は、ウイルス感染症を引き起こしているウイルスに感染している細胞においてアポトーシスを誘導する。
【0047】
対象を本明細書に記載の組換え核酸分子、または本明細書に記載のベクター、または本明細書に記載の医薬組成物、または本明細書に記載の複製不全ウイルス様粒子のいずれかと接触させることを含む、それを必要とする対象において、ウイルスに感染している細胞に対する免疫応答を誘導する方法をさらに提供する。
【0048】
対象を本明細書に記載の組換え核酸分子、または本明細書に記載のベクター、または本明細書に記載の医薬組成物、または本明細書に記載の複製不全ウイルス様粒子のいずれかと接触させることを含む、それを必要とする対象において、ウイルスに感染している細胞に対するアポトーシス応答を誘導する方法をさらに提供する。
【0049】
追加の実施形態では、ウイルスは、HBV、HDV、A型肝炎ウイルス(HAV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、またはそれらの任意の組合せである。
【0050】
対象に、本明細書に記載の組換え核酸分子、または本明細書に記載のベクター、または本明細書に記載の医薬組成物、または本明細書に記載の複製不全ウイルス様粒子を投与することを含む、対象においてB型肝炎を処置する方法をさらに提供する。
【0051】
追加の実施形態では、前記方法は、少なくとも1種の抗ウイルス薬、HBVポリメラーゼ阻害薬、インターフェロン、TLR-7アゴニストまたはTLR-9アゴニストなどのTLR調節薬、治療用ワクチン、ある特定の細胞ウイルスRNAセンサーの免疫活性化因子、ウイルス侵入阻害薬、ウイルス成熟阻害薬、別個のカプシドアセンブリ調節薬、別個または未知の機構の抗ウイルス化合物、及びそれらの任意の組合せを投与することをさらに含む。
【0052】
追加の実施形態では、前記方法は、少なくとも1種の抗ウイルス薬3TC、FTC、L-FMAU、インターフェロン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン(L-dT)、バルトルシタビン(3’-バリニルL-dC)、ベータ.-D-ジオキソラニル-グアニン(DXG)、ベータ.-D-ジオキソラニル-2,6-ジアミノプリン(DAPD)、ベータ.-D-ジオキソラニル-6-クロロプリン(ACP)、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ロブカビル、ガンシクロビル、リバビリン、及びそれらの任意の組合せを投与することをさらに含む。
【0053】
追加の実施形態では、維持処置として、または安定しているか、もしくは検出不可能な疾患を達成するために患者が必要とする限り毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1か月に1回、2か月ごとに1回、3か月ごとに1回、4か月ごとに1回、5か月ごとに1回、6か月ごとに1回、または7か月ごとに1回、または8か月ごとに1回、または9か月ごとに1回、または10か月ごとに1回、または11か月ごとに1回、または1年に1回を含めて定期的に処置を投与する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】A及びBは、AAV8-HBV-DRS2コンストラクト(6005bp)の特徴を示すプラスミドマップ及び組換えコンストラクト図を含む。
【
図2A】実験1での非限定的プラスミドマップを示している。
【
図2B】実験1でのHepG2(野生型)及びHepAD38細胞における試験及び対照コンストラクトの生細胞データを示すグラフを示している。
【
図3】A及びBは、実験2での非限定的プラスミドマップ及びカスパーゼ-9阻害薬の化学構造式ならびにHepG2(野生型)細胞における試験及び対照コンストラクトの生細胞データを示すグラフを示している。
【
図4A】実験2での非限定的プラスミドマップ及びカスパーゼ-9阻害薬の化学構造式を示している。
【
図4B】実験2でのHepAD38細胞(HBVモデル細胞)における試験及び対照コンストラクトの生細胞データを示すグラフを示している。
【
図5】実験2でのプラスミドマップ(A)ならびにHepG2対HepAD38細胞における試験及び対照コンストラクトでの結果を示す比較グラフ(B)を示している。
【
図6A】実験3での試験コンストラクトAAV-HBV-DRS2(TBG>HBV-rcCasp9)のプラスミドマップ及びカスパーゼ-9阻害薬の化学構造式を示している。
【
図6B】実験3でのHepG2対HepAD38細胞(HBVモデル細胞)における試験及び対照コンストラクトの生細胞データを示す比較グラフを示している。
【
図7-1】AAV8-HBV-DRS1コンストラクト及び配列の特徴を示すプラスミドマップ及びコンストラクト図を示している。
【
図8-1】AAV8-HBV-DRS2コンストラクト及び配列の特徴を示すプラスミドマップ及びコンストラクト図を示している。
【
図9】標的化組換えコンストラクトの分布、有効性、特異性/機能性、及び安全性を評価するための、モデルマウスを利用するインビボ試験を示す図である。
【
図10A】「インフルエンザハイジャック/スーサイドベクター」がどのようにウイルス機構をハイジャックして、感染細胞においてアポトーシスを誘導するかを示す図及びグラフである。
【
図10B】インフルエンザポリメラーゼと連結するようにトランスで送達された試験コンストラクトが、ウイルス機構をハイジャックして、未処置感染細胞よりも40%急速にインフルエンザ感染細胞の細胞死を誘導することを示すインビトロ結果である。
【
図11A】マウスモデルにおいてHBVハイジャックコンストラクトを使用した結果を示すイメージである。
【
図11B】マウスモデルにおいてHBVハイジャックコンストラクトを使用した結果を示すグラフである。
【
図11C】マウスモデルにおいてHBVハイジャックコンストラクトを使用した結果を示す図である。
【
図12】コロナウイルス「ハイジャック-RNA」コンストラクトのための設計の概観を示す図である。
【
図13】SARS-CoV-2感染細胞におけるSARS-CoV-2ハイジャックRNAの作用機序を示す図を示している。
【
図14-1】Cov-2ハイジャックDTAインビトロ転写ベクターの特徴及び配列を示す非限定的プラスミドマップ及びコンストラクト図を示している。
【
図15-1】SARS-CoV-2ハイジャックRNAコンストラクトの特徴及び配列を示す非限定的プラスミドマップ及びコンストラクト図を示している。
【
図16】試験または対照コンストラクトでの処置後のSARS-CoV-2感染または非感染細胞の生存度を示す比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ある特定の実施形態では、ウイルスポリメラーゼの存在下でのみ転写されるケモカイン、サイトカイン、またはアポトーシス誘導タンパク質(例えば、本明細書において提供されるとおりのカスパーゼ9(Casp9)など)をコードする組換え核酸コンストラクトまたは複製不全ウイルス様粒子を利用する方法及び組成物を提供する。ある特定の実施形態では、コンストラクトは、ウイルス感染細胞の死滅をもたらすCasp9をコードする配列を担持する。これらの方法は、多くのウイルス感染症を標的化し、ウイルス量を減少させる、または除去するように適合させることができ、かつウイルス感染症のための基本的に異なる処置を提供する。
【0056】
ウイルス感染細胞を破壊するためにウイルス機構を利用する
理論に束縛されることは望まないが、本方法及び組成物は、少なくとも一部では、感染細胞の細胞質に典型的に存在するウイルス機構を利用することに基づく。ある特定の実施形態では、組換え核酸コンストラクトまたは複製不全ウイルス様粒子(VLP)をウイルス感染細胞に向ける、または注入することであって、コンストラクトまたはVLPは、B型肝炎イプシロンシグナル結合配列により挟まれているケモカイン、サイトカイン、またはアポトーシス誘導タンパク質、例えば、Casp9(及びそのプロモーター)をコードする配列を含有する一本鎖RNA核酸コンストラクトを含んでいて、B型肝炎逆転写酵素により認識されたときにのみ転写される、ウイルス感染細胞に向ける、または注入することは、イプシロン配列がセグメントを転写することを保証して、B型肝炎感染細胞のアポトーシスを誘引するCasp9のためのコーディング配列の翻訳をもたらす。これらのコンストラクトは、非ウイルス感染細胞では別段に分解されるであろう「ウイルス特異的スーサイドコンストラクト」として効果的に機能することとなる。
【0057】
したがって、ある特定の実施形態では、本組成物及び方法は、B型肝炎感染細胞を標的化するように設計された組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子を包含する。HBVは、一本鎖RNA中間体により複製する二本鎖DNAウイルスを包含するボルチモア第VII群からのものである。B型肝炎ウイルスが例として示される、この小さなウイルス群は、ウイルスmRNA及びサブゲノムRNAを生成するためのテンプレートとして役立つ、後で埋められて共有結合閉環を形成する二本鎖ギャップ付ゲノム(cccDNA)を有する。プレゲノムRNAは、DNAゲノムを生成するためのウイルス逆転写酵素のためのテンプレートとして役立つ。このウイルスポリメラーゼは、本明細書に記載の組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子中のフランキングイプシロン配列を認識して、毒性作用物質の生成をもたらすものである。したがって、ウイルス感染細胞のみが、ケモカイン、サイトカイン、またはアポトーシス誘導タンパク質(例えば、カスパーゼ9(Casp9))の産生により死滅することとなる。
【0058】
一部の実施形態では、ケモカイン、サイトカイン、またはアポトーシス誘導タンパク質は、ウイルス5’UTR及びウイルス3’UTRにより挟まれていて、したがって、核酸は、式X-Y-Zにより表され得て、式中、Xはウイルス5’UTRであり、Yは、ケモカイン、サイトカイン、またはアポトーシス誘導タンパク質(例えば、カスパーゼ9または本明細書において提供されるとおりの他のもの、またはジフテリア毒素A断片)などの目的のタンパク質であり、かつZは、ウイルス3’UTRである。5’UTRと、目的のタンパク質との間、または3’UTRと、目的のタンパク質との間に介在配列が存在してもよい。転写物が細胞により認識されると、これは、目的のタンパク質をコードする5’-3’逆相補体を産生することとなる。これは、AAV発現ベクターまたは他の適切なウイルスベクターでも送達することができる。
【0059】
一部の実施形態では、5’-UTRは、COVID-19(またはCOVD-19)、SARS、またはMERSと称されるウイルスなどのコロナウイルスの5’リーディング配列である。一部の実施形態では、5’-UTRは、
【化1】
の配列、またはその相補体を含む。
【0060】
一部の実施形態では、3’UTRは、
【化2】
の配列、またはその相補体を含む。
【0061】
一部の実施形態では、ジフテリア毒素A断片をコードする核酸配列は、
【化3】
の配列(またはその相補体)を含む。
【0062】
一部の実施形態では、
【化4】
の配列を含む組成物を提供し、これは、5’UTR、3’UTR及び本明細書において提供されるとおりの任意の配列であってよい目的のタンパク質をコードする。上の例では、配列は、ジフテリア毒素A断片をコードする。
【0063】
一部の実施形態では、ジフテリア毒素A断片をコードする核酸配列を、
【化5】
の配列を含み得る逆相補体として提供する。
【0064】
一部の実施形態では、配列を
【化6】
の配列を含み得る逆相補体として提供する。
【0065】
本明細書において提供される(上及び下の)配列はDNA配列として表されているが、対応するRNA配列も提供する。
【0066】
「核酸配列」及び「核酸分子」という用語は、本明細書で使用される場合、互換的に使用され得る。
【0067】
一部の実施形態では、第1及び第2のウイルス転写認識シグナルにより挟まれているケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子を含み、かつさらに、第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーターと、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)、またはそれらの任意の組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーターとを含む組換え核酸配列を提供する。ケモカイン、サイトカイン、及びアポトーシス誘導タンパク質の非限定的例を本明細書において提供する。第1及び第2のウイルス転写認識シグナルにより挟まれている実際のタンパク質は、任意の適切なタンパク質であってよい。このコードされるタンパク質は、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはジフテリア毒素A(またはその断片)をコードするものではない、任意の目的のタンパク質で置き換えられてもよい。
【0068】
本明細書において提供されるとおり、ネガティブストランド核酸分子は、ネガティブセンスRNA、ネガティブセンスDNA、ノンコーディングネガティブセンスRNAを発現する一本鎖もしくは二本鎖DNA、またはpgRNA、またはそれらの任意の組合せであってよい。一部の実施形態では、ネガティブストランド核酸分子は、ネガティブセンスRNAである。一部の実施形態では、ネガティブストランド核酸分子は、ネガティブセンスDNAである。一部の実施形態では、ネガティブストランド核酸分子は、ノンコーディングネガティブセンスRNAを発現する一本鎖または二本鎖DNAである。一部の実施形態では、ネガティブストランド核酸分子は、pgRNAである。
【0069】
本明細書において提供されるとおり、一部の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、例えば、ネガティブストランドウイルス、RNA逆転写ウイルス、またはDNA逆転写ウイルスであるウイルスに由来するか、またはそれに基づく。一部の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、ネガティブストランドウイルスウイルス転写認識シグナルである。一部の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、RNA逆転写ウイルスウイルス転写認識シグナルである。一部の実施形態では、ウイルス転写認識シグナルは、DNA逆転写ウイルスウイルス転写認識シグナルである。
【0070】
一部の実施形態では、組換え核酸配列は、毒素、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せなどの目的のタンパク質もコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子の下流(3’側)にポリAテールを含む。
【0071】
アポトーシス誘導タンパク質は、細胞におけるその発現に基づきアポトーシスを誘導し得る任意のタンパク質であり得る。例には、これに限定されないが、BAX、BID、BAK、BAD、カスパーゼ2、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、シトクロムC、SMAC、及びアポトーシス誘導因子、またはそれらの組合せが含まれる。したがって、これらのタンパク質は、感染個体に投与されるか、または感染細胞と接触するコンストラクトにおいて目的のタンパク質として発現されて、これらの目的のタンパク質の発現により細胞死を誘導し得る。
【0072】
一部の実施形態では、目的のタンパク質はウイルスタンパク質ではない。
【0073】
本実施形態により使用され得るか、またはコードされ得るケモカインの例には、これに限定されないが、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CCL10、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、XCL1、XCL2、及び/またはCX3CL1が含まれる。一部の実施形態では、サイトカインは、IL-15、IL-2、IL-8、IL-10、IL-12、IL-6、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF-α、CD40L、Mig、及びCrg-2からなる群から選択される。
【0074】
本明細書において提供されるとおり、一部の実施形態では、組換え核酸配列は、細胞において核酸配列の発現を指示するプロモーターをさらに含み得る。一部の実施形態では、プロモーターは構成的プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは肝臓組織特異的プロモーターである。肝臓組織特異的プロモーターの例には、これに限定されないが、TBG(チロキシン結合グロブリン)、アルブミンプロモーター及び/または増強要素、AFP(α-フェトプロテイン)プロモーター、AAT(アルファ-1-アンチトリプシン)プロモーター、ApoE(アポリポタンパク質E)プロモーターまたはPEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)プロモーターが含まれる。これらのプロモーターを、本明細書において称されるとおりの第1のプロモーターとして使用することができる。
【0075】
一部の実施形態では、組換え核酸配列は第2のプロモーターを含む。そのような第2のプロモーターの非限定的例は、伸長因子1アルファ結合配列(EFS)である。
【0076】
一部の実施形態では、ウイルス転写認識シグナル(配列)は、イプシロン認識シグナル(配列番号1)またはコロナウイルス認識配列(配列番号25、配列番号26、配列番号28、または配列番号30において見い出されるものなど)を含む。他のウイルス転写認識シグナル配列を使用し、処置されるウイルスまたはウイルス感染症に特異的なものの代わりに用いることもできる。
【0077】
本明細書において提供されるとおり、本実施形態は、ウイルス感染症を処置するために使用することができる。そして一部の実施形態では、前記組成物及び方法は、ウイルス感染細胞を特異的に死滅させるために使用することができる。ウイルス感染細胞を特異的に死滅させることの利点は、ウイルスを保持している細胞のみの破壊をもたらし得ることである。ウイルス転写認識シグナルのために使用することができるウイルスの例には、これに限定されないが、コロナウイルス(例えば、COVID-19、SARS、MERS)、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒト呼吸系発疹ウイルス、水疱性口内炎インドウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ハンタンウイルス、ナイロビヒツジ病ウイルス、砂バエ熱シチリアウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスC、トゴトウイルス、マウス乳癌ウイルス、マウス白血病ウイルス、トリ白血病ウイルス、Mason-Pfizerサルウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒトスプーマウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、コロナウイルス、及びそれらの組合せが含まれる。何らかの特定の理論に束縛されることはないが、ウイルス転写認識シグナル配列の選択を使用して、どの種類のウイルス感染症を処置するかを決定することができる。例えば、ウイルス転写認識シグナル配列がCOVID-19ウイルス転写認識シグナル配列であるならば、本明細書において提供される核酸分子は、COVID-19に感染した細胞でのみ発現されるであろう。COVID-19は非限定的例として使用されたにすぎず、本明細書において提供される実施形態を限定するために使用されるべきではない。
【0078】
一部の実施形態では、核酸分子は、ウイルスポリメラーゼ、逆転写酵素、カプシド、エンベロープ、パッケージングシグナル、または転座モチーフのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。一部の実施形態では、組換え核酸分子は、ウイルスポリメラーゼのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。一部の実施形態では、組換え核酸分子は、逆転写酵素のための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。一部の実施形態では、組換え核酸分子は、カプシドタンパク質のための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。一部の実施形態では、組換え核酸分子は、エンベロープタンパク質のための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。一部の実施形態では、組換え核酸分子は、パッケージングシグナルのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。一部の実施形態では、組換え核酸分子は、転座モチーフのための配列(コーディングまたはノンコーディング)を含まない。
【0079】
本明細書において提供される組換え核酸分子は、ベクター中で提供することができる。ベクターは例えば、例えば、ヒト細胞などの哺乳類細胞に送達するための送達ベクターまたはビヒクルであってよい。一部の実施形態では、細胞は、シノ(cyno)(例えば、サル)細胞である。一部の実施形態では、ベクターは、組換え核酸分子をヒト及びシノ細胞に送達することができるベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、組換え核酸分子をシノ細胞ではなくヒト細胞に送達することができるベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、組換え核酸分子をヒト細胞ではなくシノ細胞に送達することができるベクターである。
【0080】
一部の実施形態では、送達ベクターまたはビヒクルは、VLP、アデノ随伴ウイルス(AAV)、リポソーム、ナノ粒子、ミセル、ポリマーベシクル、またはポリマーソームである。一部の実施形態では、送達ベクターまたはビヒクルはAAVベクターである。一部の実施形態では、送達ベクターまたはビヒクルはリポソームである。一部の実施形態では、送達ベクターまたはビヒクルはナノ粒子である。一部の実施形態では、送達ベクターまたはビヒクルはミセルである。一部の実施形態では、送達ベクターまたはビヒクルはポリマーベシクルである。一部の実施形態では、送達ベクターまたはビヒクルはポリマーソームである。送達ベクターまたはビヒクルの非限定的例には、米国特許出願公開第20200206362号、米国特許出願公開第20200246267号、米国特許出願公開第20170273907号、及び米国特許第10,556,018号に記載のものが含まれ、これらはそれぞれ、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0081】
17.本明細書において提供される組換え核酸分子を含んでよい複製不全ウイルス様粒子(VLP)も本明細書において提供する。一部の実施形態では、VLPは、目的のウイルスからのカプシドタンパク質に融合している任意選択の転座モチーフ(TLM)を含む。例えば、カプシドタンパク質は、B型肝炎ウイルスカプシドまたはD型肝炎ウイルスカプシドまたはコロナウイルス融合タンパク質であってよい。
【0082】
一部の実施形態では、VLPにより提供される組換え核酸分子は、目的のタンパク質をコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子である。本明細書において提供されるとおり、目的のタンパク質は、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、ジフテリア毒素A(またはその断片)またはそれらの組合せである。本明細書において提供されるとおり、目的のタンパク質をコードする配列は、第1及び第2のウイルス転写認識シグナルにより挟まれていてよく、さらに、第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーターと、目的のタンパク質(例えば、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せ)をコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーターとを含む。ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せの非限定的例は本明細書において提供されている。
【0083】
一部の実施形態では、第1及び第2の標的ウイルス転写認識シグナルにより挟まれている目的のタンパク質(例えば、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せ)をコードする本明細書において提供されるものなどの組換え核酸分子(例えば、ネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子)を含み、かつさらに、第1のウイルス転写認識シグナルの上流(5’側)の第1のプロモーターと、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子に隣接する5’側の第2のプロモーターとを含み、その際、VLPが標的ウイルス感染細胞について指向性を示す複製不全ウイルス様粒子(VLP)を提供する。指向性は、VLPの表面上に発現されるウイルスタンパク質の発現により、さらに、組換え核酸分子によりコードされるウイルス転写認識シグナル配列の供給源による核酸分子の発現の制御により制御することができる。
【0084】
本明細書において提供されるとおり、一部の実施形態では、ネガティブストランド核酸分子は、ネガティブセンスRNA、ネガティブセンスDNA、ノンコーディングネガティブセンスRNAを発現する一本鎖もしくは二本鎖DNA、またはpgRNA、またはそれらの任意の組合せである。
【0085】
一部の実施形態では、複製不全ウイルス様粒子は、ケモカイン、サイトカイン、アポトーシス誘導タンパク質、またはそれらの組合せをコードするネガティブストランド核酸分子またはpgRNA核酸分子の下流(3’側)にポリAテール配列をさらに含む。
【0086】
一部の実施形態では、複製不全ウイルス様粒子は、プロモーター(例えば、第1のプロモーター及び第2のプロモーター)を含む。そのようなプロモーターの非限定的例は、本明細書において提供されている。
【0087】
本明細書に記載のとおりの全体設計及び組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子を、ボルチモア第IV、V、VI、及びVII群のウイルスを包含するように適合させることができる。第IV~VII群のウイルスの1つを標的化するために、例えば、HBV例のために記載したとおりのイプシロン認識シグナル配列(配列番号1)に置き換わるであろう特異的ウイルスポリメラーゼ認識シグナルを利用する。ボルチモア群は次のとおり記載される:
【0088】
ボルチモア第IV群ウイルス:ポジティブセンス一本鎖RNAゲノムを持ち、ピコルナウイルス(A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルス、及び手足口病ウイルスのような周知のウイルスを含むウイルスの科である)、SARSウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、及び風疹ウイルスが含まれる。この群には、コロナウイルス、ヘペウイルス(E型肝炎)、さらにデング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、及びジカウイルスなどのフラビウイルスも含まれる。
【0089】
ボルチモア第V群ウイルス:一本鎖RNAウイルス;ネガティブセンス(例えば、オルトミクソウイルス、ラブドウイルス)。
【0090】
ボルチモア第VI群ウイルス:DNA中間体を介して複製するポジティブセンス一本鎖RNAウイルス(例えば、レトロウイルス)。
【0091】
ボルチモア第VII群ウイルス:一本鎖RNA中間体を介して複製する二本鎖DNAウイルス。
【0092】
NSVライフサイクル及び複製
ネガティブストランドRNAウイルス(NSV、またはボルチモア第V群ウイルス)は、21の別個の科に分類され得る。非セグメント化ゲノムからなる科には、ラブドウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科及びボルナウイルス科が含まれる。オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科はそれぞれ、6~8つ、3つ、または2つのネガティブセンスRNAセグメントのゲノムを含有する(Palese, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11354-11358, 1996;及びBoritz, Eli et al. Journal of Virology. 73 (8): 6937-6945, 1999)を参照されたい)。
【0093】
呼吸系発疹ウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルスなどの多くの高度に流行性のヒト病原体がNSV内に包含される。NSVのライフサイクルはいくつかのステップを有する。ウイルスは始めに、ウイルス表面糖タンパク質を介して宿主細胞受容体に結合することにより宿主細胞に感染する。酸性環境下での糖タンパク質ウイルス膜と宿主細胞の形質膜との融合が、細胞質へのウイルスリボ核タンパク質(RNP)複合体の放出を可能にする。多くのNSVは、感染細胞の細胞質において複製する。新たに合成されたRNP複合体は、形質膜で、またはゴルジ体の膜でウイルス構造タンパク質と共に組み立てられる。このすべての後に、新たに合成されたウイルスの放出が続く。
【0094】
非セグメント化NSVの複製及び転写に関して、これらのNSVの遺伝子は、3つの調節領域:遺伝子末端シグナル、遺伝子間領域、及び遺伝子開始シグナルから成る。遺伝子末端シグナルの一例は、高度に保存的遺伝子末端シグナルを含有する水疱性口内炎ウイルス(VSV)と呼ばれる特異的ウイルス中にある。遺伝子間領域は高度に可変的であり、保存ジヌクレオチド、トリヌクレオチド、または最高143のヌクレオチドの領域からなる。様々な長さの遺伝子間領域が転写減衰と相関しているが、しかしながら、多様な遺伝子間領域が遺伝子発現を変更することはない。最初の3つのヌクレオチドが遺伝子発現に重要であるので、遺伝子開始シグナルは高度に特異的である。
【0095】
ヘパドナウイルス科のメンバーであるB型肝炎ウイルス(HBV)は、レトロウイルスと同様の稀な特徴を伴う小さなDNAウイルスである。HBVは、RNA中間体を介して複製し、宿主ゲノムに取り込まれ得る。HBV複製サイクルの独特の特徴により、ウイルスが感染細胞において存続する別個の可能性がもたらされる。HBV関連疾患の様々な形態を診断し、慢性B型肝炎感染症を処置するために、ウイルス学的及び血清学的アッセイが開発されている。HBV感染症は、急性(劇症肝不全を含む)から慢性肝炎、硬変、及び肝細胞癌までに及ぶ範囲の幅広いスペクトルの肝疾患をもたらす。急性HBV感染症は、無症候性であり得るか、または症候性急性肝炎を引き起こし得る。ウイルスに感染した成人の多くは回復するが、5%~10%は、ウイルスを除去することができず、慢性的に感染する。慢性的に感染した人の多くは、長期罹患または死亡をほとんど伴わないか、まったく伴わない軽度肝疾患を有する。慢性HBV感染している他の個体は、硬変及び肝臓癌へと進行し得る活動性疾患を発症する。加えて、一部の個体は、HBVに加えて、A型肝炎、(HAV)、C型肝炎(HCV)、D型肝炎(HDV)、またはE型肝炎(HEV)などの他の肝炎ウイルスに感染する。したがって、HBVを処置することは、これらの同時感染症、特に、その複製のためにHBVを必要とするHDVの克服において助けとなるであろう。HBVを処置することで、発癌異常及び硬変の可能性も小さくなるはずである。
【0096】
本発明がより容易に理解され得るように、ある特定の技術及び科学用語を下で具体的に定義する。この文書の他の箇所で具体的に定義されていない限り、本明細書において使用される他の技術及び科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者が一般に理解する意味を有する。
【0097】
本明細書で使用される場合、別段に示されていない限り、「約」という用語は、それが修飾している値の±5%を意味することが意図されている。したがって、約100は、95~105を意味する。加えて、「約」という用語は、「約1、2、3、4、または5」などの一連の用語中の用語を修飾し、これは、「約」という用語が、そのリスト中のメンバーのそれぞれを修飾していると理解されるべきであり、したがって、「約1、2、3、4、または5」は、「約1、約2、約3、約4、または約5」を意味すると理解され得る。同じことが、「少なくとも」という用語またはこれに限定されないが、「未満」、「超」などの他の定量修飾語句により修飾されているリストについても当てはまる。
【0098】
本明細書で、及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に別段に記述していない限り、複数の言及も含む。
【0099】
本明細書で使用される場合、「含む」、「有する(have)」、「有する(has)」及び「包含する」という用語ならびにそれらの複合は、本明細書で使用される場合、「含むが、これに限定されない」を意味する。様々な組成物、及び方法を、様々な構成要素またはステップを「含む」(「含むが、これに限定されない」を意味すると解釈される)という観点から記載するが、その組成物、方法、及びデバイスは、様々な構成要素及びステップ「から本質的になる」または「からなる」こともでき、そのような用語は、本質的に閉じたメンバー群を定義するものと解釈されるべきである。
【0100】
本明細書に記載の組み換えバリアントを試験するために使用される例示的なコンストラクトのベクターマップが、
図1A、
図1B、
図2A、
図3A、
図4A、
図5A、
図6A、
図7、及び
図8に示されている。他方で、これらのコンストラクトを試験した結果のグラフが、
図2B、
図3B、
図4B、
図4C、
図5B、
図6B及び
図6Cに示されている。これらのコンストラクトにおいて有用な例示的な配列は、配列番号l~9に提供されている。これらは、非限定的例であり、処置されるべき目的のウイルスに基づき、変更するか、または適合させることができる。
【0101】
「同時投与」などの用語は、複数の選択された治療薬を一人の患者に投与することを包含することが意味されており、複数の薬剤を同じか、もしくは異なる投与経路により、または同じか、もしくは異なる時間に投与する処置レジメンを含むことが意図されている。
【0102】
本明細書で使用される場合、「アゴニスト」という用語は、その存在が、そのタンパク質のために天然に存在するリガンドの存在に起因する生物学的活性と同じであるタンパク質の生物学的活性をもたらす化合物を指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「部分アゴニスト」という用語は、その存在が、そのタンパク質のために天然に存在するリガンドの存在に起因するのと同じ種類ではあるが、より低い規模のタンパク質の生物学的活性をもたらす化合物を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト」という用語は、その存在が、タンパク質の生物学的活性の規模の縮小をもたらす化合物を指す。ある特定の実施形態では、アンタゴニストの存在は、タンパク質の生物学的活性の完全な阻害をもたらす。ある特定の実施形態では、アンタゴニストは阻害薬である。
【0105】
「投与すること」は、治療用組成物(例えば、組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子ならびにこれらの生成物を含む組成物)と併せて用いられる場合、標的組織中に、もしくはその上に直接、治療を投与するか、または患者に治療を投与して、それにより、治療が標的化されている組織にプラスの影響を及ぼすことを意味する。
【0106】
「対象」または「患者」という用語には、本明細書で使用される場合、これに限定されないが、ヒトならびに野生、家畜、及び牧畜動物などの非ヒト脊椎動物が含まれる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の対象または患者は動物である。ある特定の実施形態では、対象または患者は哺乳類である。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象または患者は、非ヒト動物である。ある特定の実施形態では、対象または患者は非ヒト哺乳類である。ある特定の実施形態では、対象または患者は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの家畜化動物である。ある特定の実施形態では、対象または患者は、イヌまたはネコなどのコンパニオン動物である。ある特定の実施形態では、対象または患者は、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの牧畜動物である。ある特定の実施形態では、対象または患者は、動物園の動物である。別の実施形態では、対象または患者は、げっ歯類、イヌ、または非ヒト霊長類などの研究用動物である。ある特定の実施形態では、対象または患者は、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックブタなどの非ヒトトランスジェニック動物である。
【0107】
「阻害する」という用語は、症状の発症を予防する、症状を緩和する、または疾患、状態もしくは障害を除去するための本明細書の実施形態の治療の投与を含む。
【0108】
「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤または添加剤が、治療の他の成分と適合性でなければならず、かつその受容者に対して有害でないことを意味する。
【0109】
「処置する」、「処置される」、または「処置すること」という用語は、本明細書で使用される場合、治療的処置と、予防的または防止的方策との両方を指し、その際、目的は、不所望の生理学的状態、障害もしくは疾患を阻害する、予防する、もしくは減速させる(軽減する)こと、または有利もしくは所望の臨床結果を改善する、阻害する、もしくは別段に得ることである。本発明の目的では、有利または所望の臨床結果には、これに限定されないが、症状の改善または緩和;状態、障害または疾患の程度の縮小;状態、障害または疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させない);状態、障害または疾患の発症の遅延またはその進行の減速;状態、障害または病態の寛解;及び検出可能であっても検出不可能であっても、状態、障害または疾患の寛解(部分的でも全部でも)、またはその増強もしくは改善が含まれる。処置には、過剰なレベルの副作用を伴わずに臨床的に有意な応答を誘発することが含まれる。処置には、処置を受けない場合に予測される生存と比較しての生存の延長も含まれる。
【0110】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源に、または組み換え源に由来するインタクトな免疫グロブリンであってよく、かつインタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であってよい。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab及びF(ab)2、さらには一本鎖抗体及びヒト化抗体を含む様々な形態で存在してよい。
【0111】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部を指し、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、これに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、scFv抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0112】
「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答は、抗体産生か、または特異的免疫学的完全細胞の活性化か、またはその両方のいずれかに関係し得る。当業者であれば、実際的にすべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原としての機能を果たし得ることを理解するであろう。さらに、抗原は、組み換えまたはゲノムDNAに由来してよい。当業者であれば、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAはしたがって、その用語が本明細書において使用されるとおりである「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者であれば、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列により単独でコードされる必要はないことを理解するであろう。実施形態が、これに限定されないが、1つよりも多い遺伝子からなる部分ヌクレオチド配列の使用を含むこと、及びこれらのヌクレオチド配列が様々な組合せでアレンジされて所望の免疫応答を誘発することは容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が全部「遺伝子」によりコードされる必要がないことを理解するであろう。抗原が合成で生成されてもよいし、または生体試料に由来してもよいことは容易に明らかである。そのような生体試料には、これに限定されないが、組織試料、ウイルスを含有することが疑われる組織試料、細胞または生体液が含まれ得る。
【0113】
「抗原」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫応答を誘発する分子と定義される。この免疫応答は、抗体産生か、または特異的免疫学的コンピテント細胞の活性化か、またはその両方のいずれかに関係し得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「ex vivo」という用語は、身体の「外側」を指す。
【0115】
「疾患」は、対象がホメオスターシスを維持することができず、疾患が寛解しなければ、動物の健康が悪化し続ける対象の健康状態である。対照的に、対象における「障害」は、対象がホメオスターシスを維持することができるが、対象の健康状態が障害の非存在下においてよりも好ましくない健康状態である。未処置のままであっても、障害は対象の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こさない。
【0116】
「有効量」は、本明細書で使用される場合、治療上または予防上の利点をもたらす量を意味する。
【0117】
「コードすること」は、ヌクレオチドの規定の配列(すなわち、rRNA、tRNA及びmRNA)またはアミノ酸の規定の配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおいて他のポリマー及び高分子を合成するためのテンプレートとして機能するための遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特異的配列の固有の特性、及びそこから生じる生物学的特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を産生するならば、遺伝子はタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、かつ配列表で通常示されるコーディング鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして用いられるノンコーディング鎖との両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称され得る。
【0118】
本明細書で使用される場合、「内在性」は、生体、細胞、組織または系に由来するか、その内側で産生される任意の物質を指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、「外在性」という用語は、生体、細胞、組織または系から導入されるか、またその外側で産生される任意の物質を指す。
【0120】
「発現」という用語は、本明細書で使用される場合、そのプロモーターにより駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/または翻訳と定義される。
【0121】
「発現ベクター」は、発現されるべきヌクレオチド配列に作動可能に連結されている発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性要素を含み;発現のための他の要素は、宿主細胞により、またはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターには、組み換えポリヌクレオチドを組み込まれるコスミド、プラスミド(例えば、ネイキッドか、またはリポソームに含まれる)及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などの当技術分野で公知のものすべてが含まれる。
【0122】
「相同な」は、2つのポリペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性または配列同一性を指す。2つの比較される配列の両方における位置が同じ塩基またはアミノ酸単量体サブユニットにより占められている場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおける位置がアデニンにより占められているならば、それらの分子は、その位置において相同である。2つの配列間の相同性のパーセントは、2つの配列が共有するマッチング数または相同な位置を、比較された位置の数で割って100を掛けた関数である。例えば、2つの配列内の位置の10のうちの6つがマッチしたか、または相同であるならば、それら2つの配列は60%相同である。例として、DNA配列ATTGCC及びTATGGCは50%相同性を共有している。一般に、最大の相同性が得られるように2つの配列をアラインさせて、比較は行われる。
【0123】
一部の実施形態では、タンパク質は、本明細書において提供される配列に対して少なくとも、または約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%相同性である。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0124】
「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体として機能するタンパク質の群と定義される。B細胞により発現される抗体はときに、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と称される。この群のタンパク質に含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、及びIgEである。
【0125】
「単離された」は、天然状態から変えられた、または取り除かれたことを意味する。例えば、生体動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離され」ていないが、その天然状態の共存する物質から部分的に、または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離され」ている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在してもよいし、または例えば、宿主細胞などの非天然環境に存在してもよい。「単離された」生物学的構成要素(核酸、タンパク質または細胞など)は、他の生物学的構成要素(細胞破片、他のタンパク質、核酸または細胞型など)から実質的に分離されているか、または精製されている。「単離されている」生物学的構成要素には、標準的な精製方法により精製された構成要素が含まれる。
【0126】
疾患を予防すること、処置すること、または寛解すること:疾患を「予防すること」は、疾患の完全な発生を阻害することを指す。「処置すること」は、発生が始まった後に、疾患または病的状態の徴候または症状を寛解する治療介入を指す。「寛解すること」は、疾患の徴候または症状の数または重症度を低下させることを指す。
【0127】
本明細書で使用される場合、組換え体は一般に、次を指す:組換え核酸またはタンパク質は、天然に存在しない配列を有するものであるか、または2つの別段には分離されている配列のセグメントを人工的に組み合せることにより作製されている配列を有する。この人工的な組合せは多くの場合に、化学合成により、または核酸の単離されたセグメントを人工的に操作することにより、例えば、遺伝子工学技術により達成される。
【0128】
本明細書で使用される場合、一般に存在する核酸塩基のために次の略語を用いる。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0129】
「白血球(leukocytes)」または「白血球(white blood cell)」という用語は、本明細書で使用される場合、単球、好中球、好酸球、好塩基球、及びリンパ球を含む任意の免疫細胞を指す。「リンパ球」という用語は、本明細書で使用される場合、リンパで普通は見い出される細胞を指し、それには、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞、及びB細胞が含まれる。上に列挙された免疫細胞の種類をさらなるサブセットに分けることができることは当業者には分かるであろう。
【0130】
「腫瘍浸潤白血球」という用語は、本明細書で使用される場合、固形腫瘍に存在する白血球を指す。
【0131】
「血液試料」という用語は、本明細書で使用される場合、血漿、血液から単離された血液細胞などの血液から調製される任意の試料を指す。
【0132】
「精製試料」という用語は、本明細書で使用される場合、1種または複数の細胞サブセットが富化された任意の試料を指す。試料を、サイズ、タンパク質発現などの特徴に基づく細胞の除去または単離により精製することができる。
【0133】
薬学的に許容されるビヒクル:本開示で有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は、従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 15th Edition (1975)は、1種または複数の治療用組成物、及び追加の医薬品の医薬送達に適切な組成物及び製剤を記載している。
【0134】
一般に、送達のための適切な担体またはビヒクルの性質は、用いられる特定の投与様式に依存することとなる。例えば、非経口製剤は通常、水、生理学的生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的及び生理学的に許容される液体をビヒクルとして含む注射可能な液体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル剤形態)では、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含んでよい。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどの少量の非毒性補助物質を含んでよい。
【0135】
一部の実施形態では、組成物は、溶液、懸濁液または他の同様の形態であってもなくても、次のうちの1種または複数を含んでよい:DMSO、注射用水、生理食塩水、好ましくは生理学的生理食塩水などの滅菌希釈剤、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒として役立ち得る合成モノまたはジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌薬;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤及び塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性を調節するための薬剤。
【0136】
本明細書に記載の組成物及び方法が処置することができる疾患には、ウイルス感染症などの微生物感染症が含まれる。
【0137】
「ウイルス感染症」とは、身体内にウイルスが存在することが原因である感染症を意味する。ウイルス感染症には、宿主に感染して、致命的となるまで長期間、通常は数週間、数か月または数年にわたって宿主の細胞内で増殖することができるウイルス感染症である慢性または持続性ウイルス感染症が含まれる。
【0138】
慢性感染症をもたらすウイルスには、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペス、及び他のヘルペスウイルス、B及びC型肝炎のウイルス、さらには、他の肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、及び麻疹ウイルスが含まれ、これらはすべて、重要な臨床的疾患を生じさせ得る。長期感染症は、例えば、C型肝炎ウイルスの場合であれば、患者にとって致命的である肝臓癌であり得る疾患の誘導に最終的につながり得る。本発明に従って処置することができる他の慢性ウイルス感染症は、本明細書に記載のとおりの不活性な組み換えヌクレオチドベクター/VLPを転写するための活性化酵素として使用することができるウイルス特異的ポリメラーゼを利用する任意の第V~VII群ウイルスを含む。
【0139】
ある特定の実施形態では、組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子、またはそのようなコンストラクト/粒子を含む組成物を、抗微生物薬、抗ウイルス薬及び/または他の治療薬と同時に投与することができる。別法では、抗微生物薬、抗ウイルス薬及び/または他の治療薬を投与する時間に先立って、コンストラクト/粒子またはそのようなコンストラクト/粒子を含む組成物を、選択された時間に投与することができる。
【0140】
抗ウイルス薬には、これに限定されないが、リトナビル、アシクロビル、シドホビル、ガンシクロビル、ホスカルネット、ジドブジン、リバビリン、及びヒドロキシクロロキンが含まれる。
【0141】
抗ウイルス薬には、次のものなどのHIV処置がさらに含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
低分子HIV融合または侵入阻害薬には:ベビリマット(DSB;PA-457);ビクリビロック、マラビロク(ケモカイン受容体アンタゴニスト」または「CCR5阻害薬」)、T-20(エンフビルチド、フゼオン、Roche及びTrimerisが開発)、TRI-1144、及びTRI-999(Qian, K et al, Med Res Rev. 2009 Mar;29(2):369-393、及びHaggani and Tilton, Antiviral Res. 2013 May;98(2): 158-70を参照されたい)が含まれる。同様に、抗HIVmAbの例には、CCR5及びCD4に対するものが含まれ、具体的には:イバリズマブ(商品名Trogarzo)は、CD4に結合する非免疫抑制ヒト化モノクローナル抗体である;PRO140は、CCR5に対して標的化されたヒト化モノクローナル抗体である。
【0143】
併用処置のための抗ウイルス薬には、HBVポリメラーゼ阻害薬、インターフェロン、TLR-7アゴニストまたはTLR-9アゴニストなどのTLR調節薬、治療用ワクチン、ある特定の細胞ウイルスRNAセンサーの免疫活性化因子、ウイルス侵入阻害薬、ウイルス成熟阻害薬、別個のカプシドアセンブリ調節薬、別個または未知の機構の抗ウイルス化合物のいずれか1つまたはその組合せが含まれ得る。
【0144】
抗ウイルス薬は、3TC、FTC、L-FMAU、インターフェロン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン(L-dT)、バルトルシタビン(3’-バリニルL-dC)、ベータ.-D-ジオキソラニル-グアニン(DXG)、ベータ.-D-ジオキソラニル-2,6-ジアミノプリン(DAPD)、ベータ.-D-ジオキソラニル-6-クロロプリン(ACP)、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ロブカビル、ガンシクロビル、リバビリン、テノフォビル、ビクテグラビル、エムトリシタビン、ビクタルビ、及びそれらの任意の組合せのうちのいずれか1種またはそれらの組合せであってもよい。
【0145】
一部の実施形態では、「治療有効量」は、本発明の組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子、またはそのようなコンストラクト/粒子を含む組成物を投与されていない動物または動物群(例えば、2、3、5、10またはそれ以上の動物)におけるウイルス力価または微生物力価と比べて、組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子、またはそのようなコンストラクト/粒子を含む組成物を投与されて、本明細書に記載の関連方法で処置された対象/患者/動物におけるウイルス力価の少なくとも2.5%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の減少をもたらす本明細書に記載のとおりの組換え核酸コンストラクト及び複製不全ウイルス様粒子、またはそのようなコンストラクト/粒子を含む組成物の量である。
【0146】
ウイルスベクター媒介移入の方法の例
ある特定の実施形態では、組換え核酸コンストラクトを、細胞への遺伝子移入を媒介するためのウイルス様粒子(自己複製するその能力を欠いている)に組み込む。典型的には、ウイルスを単純に、ウイルスの取り込みを可能にする生理的条件下で、適切な宿主細胞に暴露する(米国特許第9,089,520号を参照されたい)。組換えコンストラクトを下で論述するとおりの所望の細胞標的に送達するために、本方法は、様々なウイルスベクターまたはウイルス様粒子を利用するように適合させることができ、不全、または非複製VLPであるように最適化されているアデノウイルスベクターシステムを含む。
【0147】
1.アデノウイルス
アデノウイルスは、その中規模DNAゲノム、操作の容易さ、高い力価、広い標的細胞幅、及び高い感染力により、遺伝子移入ベクターとして使用するために特に適切である。およそ36kbウイルスゲノムは、ウイルスDNA複製及びパッケージングに必要なシス作用性要素がその中に含まれる100~200塩基対(bp)末端逆位配列(ITR)と境を接している。異なる転写ユニットを含有するゲノムの初期(E)及び後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始により区分される。
【0148】
E1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスゲノム及びいくつかの細胞遺伝子の転写の調節を担うタンパク質をコードする。E2領域(E2A及びE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成をもたらす。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現、及び宿主細胞シャット・オフに関係する(Renan, M. J. (1990) Radiother Oncol., 19, 197-218)。大部分のウイルスカプシドタンパク質を含む後期遺伝子(LI、L2、L3、L4及びL5)の産物は、主要後期プロモーター(MLP)によりもたらされる単一一次転写物の重要なプロセシングの後に初めて発現される。MLP(16.8マップ単位に位置する)は、感染の後期相の間に特に有効であり、このプロモーターからもたらされるmRNAはすべて、翻訳についてそれらを有用にする5’三分節リーダー(TL)配列を持つ。
【0149】
ある特定の事例では、大きなDNAのセグメントを含ませることができるので、AAVの運搬能を最大化することが役立ち得る。ある特定のアデノウイルス産物と関連する毒性及び免疫反応を低下させることも非常に望ましい。これら2つの目標は、アデノウイルス遺伝子の排除が両方の目的に役立つことにおいて、ある程度、同一延長にある。
【0150】
ウイルスDNA複製のために必要とされるシス要素はすべて、線状ウイルスゲノムのいずれかの末端にある末端逆位配列(ITR)(100~200bp)に局在するので、DNAの大きな置き換えが可能である。ITRを含有するプラスミドは、非欠陥アデノウイルスの存在下で複製し得る(Hay, R. T., et al., J Mol. Biol. 1984 Jun. 5;175(4):493-510)。したがって、これらの要素のアデノウイルスベクターからの欠失は、独立した複製を防ぐこととなる。
【0151】
加えて、ウイルス封入のためのパッケージングシグナルは、ウイルスゲノムの左端の194~385bp(0.5~1.1マップ単位)に局在する(Hearing et al., J. (1987) Virol., 67, 2555-2558)。このシグナルは、左端に近いが付着末端配列の外側の特異的配列が、頭部構造へのDNAの挿入に必要とされるタンパク質への結合を媒介する、バクテリオファージラムダDNAにおけるタンパク質認識部位を模倣している。AdのE1置換ベクターは、ウイルスゲノムの左端の450bp(0~1.25マップ単位)断片が293細胞においてパッケージングを指示し得ることを実証している(Levrero et al., Gene, 101:195-202, 1991)。
【0152】
以前に、アデノウイルスゲノムのある特定の領域が、哺乳類細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより、コードされている遺伝子が発現され得ることが示されている。これらの細胞系は、その細胞系によりコードされる、アデノウイルス機能を欠いたアデノウイルスベクターの複製を支持することができる。「補助」ベクター、例えば、野生型ウイルスまたは条件欠陥性変異体による複製欠損性アデノウイルスベクターの補完の報告も存在する。
【0153】
VLP/複製欠損性アデノウイルスベクターをインビトロで生成するために、これらの欠損性ベクターをヘルパーウイルスによりトランスで補完することができる。しかしながら、これは、複製欠損性ベクターの単離を可能にするものではなく、しかしながら、それというのも、複製機能を提供するために必要とされるヘルパーウイルスの存在が、何らかの調製物を汚染するであろうためである。したがって、特異性を複製欠損性ベクターの複製及び/またはパッケージングに加えるであろう追加の要素が必要とされる。その要素は、アデノウイルスのパッケージング機能に由来する。
【0154】
アデノウイルスに対するパッケージングシグナルは、従来のアデノウイルスマップの左端に存在することが判明している(Tibbetts et. al. (1977) Cell, 12, 243-249)。後の研究から、ゲノムのE1A(194~358bp)領域に欠失を有する変異体が、初期(E1A)機能を補完した細胞系においてさえ不十分にしか成長しないことが示された(Hearing and Shenk, (1983) J. Mol. Biol. 167, 809-822)。代償的な(compensating)アデノウイルスDNA(0~353bp)が、その変異体の右端に組み換えられたとき、そのウイルスは、正常にパッケージングされた。さらなる変異解析から、Ad5ゲノムの左端に、短い反復性の位置依存性要素が同定された。その反復は、ゲノムのいずれかの末端に存在する場合、効率的なパッケージングには1コピーで十分であるが、Ad5 DNA分子の内側に向かって移動した場合は、そうではないことが見出された(Hearing et al., J. (1987) Virol., 67, 2555-2558)。
【0155】
パッケージングシグナルの変異バージョンを使用することにより、様々な効率でパッケージングされるヘルパーウイルスを作製することが可能である。典型的には、変異は、点変異または欠失である。パッケージングが低効率であるヘルパーウイルスをヘルパー細胞内で成長させるとき、そのウイルスは、野生型ウイルスと比べて低い速度であったとしてもパッケージングされ、それにより、ヘルパーの繁殖が可能となる。しかしながら、これらのヘルパーウイルスを、野生型パッケージングシグナルを含有するウイルスと共に細胞内で成長させるとき、その野生型パッケージングシグナルは、変異バージョンよりも優先的に認識される。パッケージング因子の量が限られていることを考慮すると、野生型シグナルを含有するウイルスは、ヘルパーと比べて選択的にパッケージングされる。優先性が十分大きい場合、均質に近い系統が達成され得る。
【0156】
特定の組織または種に対するADVコンストラクトの指向性を改善するために、受容体結合ファイバー配列は多くの場合に、アデノウイルス分離株の間で置換され得る。例えば、アデノウイルス5において見出されたコクサッキー-アデノウイルス受容体(CAR)リガンドは、アデノウイルス35由来のCD46結合ファイバー配列の代わりに用いられ、ヒト造血細胞に対する結合親和性が大幅に改善されたウイルスが作製され得る。生じた「偽型」ウイルスであるAd5f35は、いくつかの臨床的に開発されたウイルス分離株の基礎となっている。さらに、標的細胞に対してウイルスを再標的化することを可能にするファイバーを改変する様々な生化学的方法が存在する。方法は、二機能性抗体(一方の末端はCARリガンドに結合し、もう一方の末端は標的配列に結合する)の使用、及びカスタマイズされたアビジンベースのキメラリガンドとの会合を可能にするファイバーの代謝性のビオチン化を含む。別法では、リガンド(例えば、抗CD205)をヘテロ二官能性リンカー(例えば、PEG含有)によりアデノビリオンに付着することができる。
【0157】
2.レトロウイルス
レトロウイルスは、そのRNAを逆転写のプロセスにより感染細胞において二本鎖DNAに変換する能力により特徴づけられる一本鎖RNAウイルスの群である(Coffin, (1990) In: Virology, ed., New York: Raven Press, pp. 1437-1500)。次いで、生じたDNAは、プロウイルスとして細胞染色体内に安定に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成を指示する。その組み込みにより、レシピエント細胞及びその子孫においてウイルス遺伝子配列が保持される。レトロウイルスゲノムは、それぞれカプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素及びエンベロープ構成要素をコードする3つの遺伝子gag、pol及びenvを含む。psiと呼ばれる、gag遺伝子から上流に見い出される配列は、ゲノムをビリオンにパッケージングするためのシグナルとして機能する。2つの長い末端反復(LTR)配列が、ウイルスゲノムの5’及び3’末端に存在する。これらは、強力なプロモーター配列及びエンハンサー配列を含有し、宿主細胞ゲノムへの組み込みにも必要とされる(Coffin, 1990)。
【0158】
レトロウイルスベクターをコンストラクトするために、プロモーターをコードする核酸を、ウイルスゲノム内のある特定のウイルス配列の位置に挿入して、複製欠損性であるウイルスを生成する。ビリオンを生成するために、gag、pol及びenv遺伝子を含むがLTR及びpsi成分を含まないパッケージング細胞系をコンストラクトする(Mann et al., (1983) Cell, 33, 153-159)。ヒトcDNAを含有する組換えプラスミドを、レトロウイルスLTR配列及びpsi配列と一緒に、この細胞系に導入するとき(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)、そのpsi配列は、その組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子内にパッケージングさせ、次いで、それを培養培地中に分泌させる(Nicolas, J. F., and Rubenstein, J. L. R., (1988) In: Vectors: a Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Rodriquez and Denhardt, Eds.). Nicolas and Rubenstein;Temin et al., (1986) In: Gene Transfer, Kucherlapati (ed.), New York: Plenum Press, pp. 149-188;Mann et al., 1983)。組換えレトロウイルスを含む培地を捕集し、任意選択で濃縮し、遺伝子移入のために使用する。レトロウイルスベクターは、幅広い種類の細胞型に感染することができる。しかしながら、多くの種類のレトロウイルスの組み込み及び安定な発現は、宿主細胞の分裂を必要とする(Paskind et al., (1975) Virology, 67, 242-248)。レトロウイルスベクターの特異的標的化を可能にするように設計されたアプローチが、ウイルスエンベロープへのガラクトース残基の化学的付加によるレトロウイルスの化学修飾に基づいて最近開発された。アシアロ糖タンパク質受容体を介した肝細胞などの細胞の特異的感染を可能にし得るこの修飾が望まれることがある。
【0159】
組換えレトロウイルスの標的化に対する異なるアプローチがデザインされており、そのアプローチでは、レトロウイルスエンベロープタンパク質に対するビオチン化抗体及び特異的細胞受容体に対するビオチン化抗体を使用した。それらの抗体は、ストレプトアビジンを使用することによりビオチン構成要素を介して結合された(Roux et al., (1989) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 86, 9079-9083)。主要組織適合性複合体クラスI及びクラスII抗原に対する抗体を使用して、それらの表面抗原を有する様々なヒト細胞がインビトロにおいてエコトロピックウイルスに感染することが実証された(Roux et al., 1989)。
【0160】
3.アデノ随伴ウイルス
AAVは、約4700塩基対の線状一本鎖DNAを利用する。末端逆位反復配列は、ゲノムに隣接している。2つの遺伝子が、ゲノム内に存在し、いくつかの異なる遺伝子産物を生じる。第1に、cap遺伝子は、VP-1、VP-2及びVP-3と命名された3つの異なるビリオンタンパク質(VP)を生成する。第2に、rep遺伝子は、4つの非構造タンパク質(NS)をコードする。これらのrep遺伝子産物の1種または複数は、AAV転写のトランス活性化を担う。
【0161】
AAVにおける3つのプロモーターは、ゲノム内のそれらの位置により、マップ単位で命名されている。これらは、左から右へ、p5、p19及びp40である。転写により、6つの転写物が生じ、2つは、3つの各プロモーターにおいて開始され、各対の一方がスプライシングされる。マップ単位42~46に由来するスプライス部位は、各転写物で同じである。4つの非構造タンパク質は、より長い転写物に由来するとみられ、3つのビリオンタンパク質のすべてが、最も小さい転写物から生じる。
【0162】
AAVは、ヒトにおけるいかなる病的状態にも関連しない。興味深いことに、効率的な複製のために、AAVは、単純ヘルペスウイルスI及びII、サイトメガロウイルス、仮性狂犬病ウイルス、ならびに当然のことながらアデノウイルスなどのウイルスからの「補助」機能を必要とする。それらのヘルパーのうち最も特徴付けられたものは、アデノウイルスであり、このウイルスに対する多くの「初期」機能は、AAVの複製を支援すると示されている。AAV repタンパク質の低レベルの発現は、AAV構造発現を抑制すると考えられており、ヘルパーウイルス感染は、この阻止を排除すると考えられている。
【0163】
AAVベクターの末端反復配列は、AAVまたは改変されたAAVゲノムを含むp201などのプラスミドの制限エンドヌクレアーゼ消化により(Samulski et al., J. Virol., 61:3096-3101 (1987))またはこれに限定されないが、AAVの公開配列に基づく末端反復配列の化学的合成もしくは酵素的合成を含む他の方法により得ることができる。それは、例えば、機能、すなわち安定した部位特異的な組み込みを可能にするために必要とされるAAV ITRの最小の配列または一部を、欠失分析により決定することができる。また、安定した部位特異的な組み込みを指示する末端反復配列の能力を維持しつつ、配列のどの軽微な改変が許容され得るかを決定することもできる。
【0164】
AAVベースのベクターは、インビトロにおいて遺伝子送達するための安全で有効なビヒクルであることが証明されており、これらのベクターは、開発中であり、エキソビボとインビボの両方における潜在的な遺伝子治療において広範囲に適用するために前臨床段階及び臨床段階において試験されている(Carter and Flotte, (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci., 770;79-90;Chatteijee, et al., (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci., 770, 79-90;Ferrari et al., (1996) J. Virol., 70, 3227-3234;Fisher et al., (1996) J. Virol., 70, 520-532;Flotte et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 90, 10613-10617, (1993);Goodman et al. (1994), Blood, 84, 1492-1500;Kaplitt et al., (1994) Nat’l Genet., 8, 148-153;Kaplitt, M. G., et al., Ann Thorac Surg. 1996 December;62(6): 1669-76;Kessler et al., (1996) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 93, 14082-14087;Koeberl et al., (1997) Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 94, 1426-1431;Mizukami et al., (1996) Virology, 217, 124-130)。
【0165】
肺におけるAAV媒介性の効率的な遺伝子移入及び発現は、嚢胞性線維症の処置のための臨床試験に至っている(Carter and Flotte, 1995;Flotte et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 90, 10613-10617, (1993))。同様に、骨格筋へのジストロフィン遺伝子のAAV媒介遺伝子送達による筋ジストロフィーの処置、脳へのチロシンヒドロキシラーゼ遺伝子送達によるパーキンソン病の処置、肝臓への第IX因子遺伝子送達による血友病Bの処置、及び潜在的に、心臓への血管内皮成長因子遺伝子による心筋梗塞の処置の見込みは、これらの器官におけるAAV媒介導入遺伝子発現が高度に効率的であると最近示されたので、有望であるとみられる(Fisher et al., (1996) J. Virol., 70, 520-532;Flotte et al., 1993;Kaplitt et al., 1994;1996;Koeberl et al., 1997;McCown et al., (1996) Brain Res., 713, 99-107;Ping et al., (1996) Microcirculation, 3, 225-228;Xiao et al., (1996) J. Virol., 70, 8098-8108)。
【0166】
肝臓指向遺伝子治療と関連する課題は、肝細胞の効率的な標的化、ベクターゲノムの安定性、及び高レベルの発現の持続である。これらの障害の多くをアデノ随伴ウイルス(AAV)遺伝子移入で克服することができる。インビボ使用のために開発された第1のAAV遺伝子移入ベクターは、AAV2血清型に基づいた。AAV2は幅広い指向性を有し、インビボで相対的に効率的に、肝細胞を含む多くの細胞型に形質導入する。カプシドタンパク質は血清プロファイルを付与し、少なくとも12の霊長類AAV血清型が既に特徴づけられている。重要なことに、種々のカプシドタンパク質での組み換えAAVベクターの偽型化により、指向性が劇的に変化し得る。AAV8及びAAV9は両方とも、肝細胞について、AAV2と比較した場合に、より高い親和性を有する。特に、AAV8は、AAV2と比較した場合に、3~4倍多く肝細胞を形質導入することができ、形質導入される細胞1個あたり3~4倍多いゲノムを送達する(Mark S. Sands, Methods Mol. Biol. 2011;807: 141-157を参照されたい)。用量に応じて、AAV8は、門脈内静脈注射後に、マウス肝臓中の肝細胞のうちの最高90~95%を形質導入することができる。興味深いことに、静脈内注射の後に、匹敵するレベルの形質導入を達成することができる。AAVベクターの直接的な実質内注射も、相対的に高レベルで長期間の発現を媒介する。AAV8カプシドタンパク質と併せて肝臓特異的プロモーターを使用することにより、追加の特異性を付与することができる。原発性肝細胞障害を処置することに加えて、肝臓クッパー細胞の固定組織マクロファージを回避すること、及び発現を肝細胞に限定することにより、導入遺伝子産物に対する免疫反応を最小化することができる。AAV血清型及び肝臓特異的プロモーターの使用により、肝細胞を標的化することができることで、新規の治療アプローチの試験が可能となる。
【0167】
4.レンチウイルスベクター
ある特定の実施形態では、電気穿孔により、または核酸、タンパク質、部位特異的ヌクレアーゼ、自己複製RNAウイルスもしくは組込み欠損性レンチウイルスベクター(そのようなベクターについては、米国特許第10,131,876号を参照されたい)のトランスフェクションにより、組換え核酸または複製不全VLPを標的細胞に形質導入する。
【0168】
ある特定の実施形態では、レンチウイルス、ガンマ-、アルファ-レトロウイルスもしくはアデノウイルスを用いて、または核酸(DNA、mRNA、miRNA、アンタゴミル、ODN)、タンパク質、部位特異的ヌクレアーゼ(亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALEN、CRISP/R)、自己複製RNAウイルス(例えば、ウマ脳症ウイルス)もしくは組込み欠損性レンチウイルスベクターによる電気穿孔もしくはトランスフェクションを用いて、形質導入を行う。
【0169】
さらなる実施形態では、レンチウイルスベクターで前記細胞を形質導入することにより、組換え核酸または複製不全VLPの送達を行うことができる(Cockrell Adam S et al., “Gene delivery by lentivirus vectors”, Molecular Biotechnology, vol. 36, No. 3, Jul. 2007.を参照されたい)。
【0170】
VSVG偽型を伴うレンチウイルスベクターは、自動製造方法下での効率的な形質導入を可能にする。しかしながら、本方法は、任意の種類のレンチウイルスベクター(例えば、麻疹ウイルス(ML-LV)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、ネコ内在性レトロウイルス(RD114)、ヒヒ内在性レトロウイルス(BaEV)誘導偽型エンベロープを用いる)の使用に全く適している。ガンマまたはアルファレトロウイルスベクターなどの他のウイルスベクターを使用することもできる。本発明に記載の自動製剤を使用することが必要な場合には、形質導入促進試薬を添加することができる。
【0171】
5.他のウイルスベクター
他のウイルスベクターも、本方法及び組成物において発現コンストラクトとして用いることができる。ワクシニアウイルス(Ridgeway, (1988) In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses, pp. 467-492;Baichwal and Sugden, (1986) In, Gene Transfer, pp. 117-148;Coupar et al., Gene, 68:1-10, 1988)カナリアポックスウイルス及びヘルペスウイルスなどのウイルスに由来するベクターが使用される。これらのウイルスは、様々な哺乳類細胞への遺伝子移入において使用するためのいくつかの特徴を提供する。
【0172】
疾患を処置するための方法
本方法は、組換え核酸、VLP生成物、または医薬組成物の投与を様々な有効量で送達することができる、ウイルス疾患または状態を処置または予防する方法も包含する。
【0173】
「単位用量」という用語は、それが接種源に関するとき、哺乳類のための単位投与量として適切な物理的に別個の単位を指し、その際、各単位は、必要とされる希釈剤とともに、所望の免疫刺激効果をもたらすと計算された所定の量の医薬組成物を含有する。接種源の単位用量に対する詳述は、医薬組成物の固有の特徴及び達成されるべき特定の免疫学的効果により規定され、それらに依存する。
【0174】
組換え核酸、VLP生成物またはその医薬組成物の有効量は、ウイルス感染した細胞、例えば、HBV、Covid-19などに感染した細胞60%、70%、80%、85%、90%、95%もしくは97%超が死滅するような量であろう。この用語は、「十分な量」とも同義である。
【0175】
任意の特定の用途での有効量は、処置される疾患もしくは状態、投与される特定の組成物、対象の体格、及び/または疾患もしくは状態の重症度などの因子に応じて変動し得る。本明細書中に提示される特定の組成物の有効量は、過度の実験を必要とせずに、経験的に決定され得る。
【0176】
「接触させる」及び「曝露させる」という用語は、細胞、組織または生体に適用されるとき、医薬組成物及び/または別の薬剤、例えば、抗ウイルス薬などが、標的細胞、組織もしくは生体に送達されるプロセス、または標的細胞、組織もしくは生体のすぐ近位に配置されるプロセスを記述するために本明細書において使用される。細胞の死滅または静止を達成するために、組換え核酸、VLP生成物またはその医薬組成物、及び/または追加の薬剤(複数可)を、ウイルス感染細胞(複数可)を死滅させるのに有効であるか、またはそれらの細胞の分裂を防ぐのに有効な合計量で1つまたは複数の細胞に送達する。組換え核酸、VLP生成物、または医薬組成物の投与は、数分から数週間の範囲の間隔だけ、他の薬剤(複数可)より先に行われ得る、他の薬剤(複数可)と同時であり得る、及び/または他の薬剤(複数可)の後に行われ得る。医薬組成物及び他の薬剤(複数可)が別々に細胞、組織または生体に適用される実施形態では、その医薬組成物及び薬剤(複数可)がなおも、有利に組み合わされた効果をその細胞、組織または生体に対して発揮することができ得るように、各送達の時点の間に有効時間が満了しないことが一般に保証されるであろう。例えば、そうした場合には、2、3、4つまたはそれより多くの様式を用いて、細胞、組織または生体を実質的に同時に(すなわち、約1分未満以内に)医薬組成物と接触させ得ることが企図される。他の態様では、1種または複数の薬剤を、組換え核酸、VLP、または医薬製品を投与する前及び/または投与した後に、実質的に同時に、約1分以内から、約24時間、約7日間、約1~約8週間またはそれより長くまで、及びそれらの中の任意の導き出せる範囲で投与してもよい。またさらに、本明細書において提示される医薬組成物と、1種または複数の薬剤との様々な併用レジメンを用いてよい。
【0177】
患者に投与するための製剤及び経路
臨床適用が企図される場合、医薬組成物(発現コンストラクト、発現ベクター、融合タンパク質、トランスフェクトまたは形質導入された細胞)を、意図される用途に適切な形態で調製する必要があり得る。一般に、これは、発熱物質ならびにヒトまたは動物にとって有害であり得る他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することを伴うであろう。
【0178】
組換え核酸、VLP生成物またはその医薬組成物を例えば、1用量あたり約1~500万粒子の用量で送達することができる。生成物を例えば、バイアル1本あたり約0.25ml~約10ml、例えば、約0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10ml、例えば、約2mlの体積で含有するバイアルまたは他の容器を提供することができる。
【0179】
組換え核酸またはVLP生成物を患者に導入するときに、適切な塩及び緩衝剤を用いることが一般に望ましいことがある。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与するときに不利か、アレルギー性か、または他の有害な反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体には、あらゆるすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は既知である。任意の従来の媒体または薬剤がベクターまたは細胞と不適合ではない限り、治療用組成物におけるその使用が企図される。補充的活性成分を組成物に組み込むこともできる。
【0180】
製剤化されたら、溶液を、投与製剤に適合した様式で、及び治療上有効であるような量で投与することとなる。それらの製剤は、注射用液剤、薬物放出カプセル剤などの様々な剤形で容易に投与される。例えば、水性液剤での非経口投与では、その液剤は、必要な場合には適切に緩衝され得、最初に、液体希釈剤が、十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にされ得る。これらの特定の水性液剤は、静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に特に適している。この文脈では、滅菌された水性媒体を使用することができる。例えば、1投与量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注入液に加えることができるか、または提案される注入部位に注射することができる(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences” 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。処置されている対象の状態に応じて、投与量のいくつかのバリエーションが必然的に生じる。いずれにしても、投与を担う者が、個々の対象に対する適切な用量を決定することとなる。さらに、ヒトへの投与では、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準により要求されるとおりの無菌性、発熱性ならびに一般的な安全性及び純度の基準を満たし得る。
【0181】
組成物を、対象にエアロゾル化送達するために製剤化することができる。エアロゾル送達では、記載の組成物を水などの水溶液中で、またはハンクス液、リンゲル液、または生理学的生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性の緩衝液中で製剤化することができる。溶液は、懸濁剤、安定化剤または分散剤などの1種または複数の製剤用薬剤を含有してよい。
【0182】
本開示のポリヌクレオチドを対象の所望の細胞に送達する本開示の送達系は、本開示のVLPに限定されない。一部の実施形態では、送達ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、リポソーム、ナノ粒子、ミセル、ポリマーベシクルまたはポリマーソームを含む。
【0183】
一部の実施形態では、送達ベクターは、AAVに由来するベクターを含む。AAVベクターは、遺伝子治療のために最も頻繁に使用されるベクターの1つである。AAVは、小さな非エンベロープII群ウイルスであり、そのゲノムは、1つの長い一本鎖DNA分子でコードされる。AAV由来ベクターは、標的細胞に付着及び侵入し、遺伝物質を核に移入する能力を有し、かつその情報を一般的に毒性を伴わずに、持続した期間にわたって発現させる。AAV由来ベクターは典型的には、宿主ゲノムへの部位特異的組込みに必要なAAV構成要素をコードせず、典型的には、染色体外要素として存続する。AAVベクターは、選択的組織及び器官標的化もある程度可能である。したがって、AAVベクターは、対象の所望の細胞への本開示の一本鎖DNAポリヌクレオチドのための可能な送達機構である。
【0184】
一部の実施形態では、本開示の組換えポリヌクレオチドを、対象の所望の標的細胞に送達される非ウイルス送達系にパッケージングすることができる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドを、対象の所望の標的細胞に送達されるナノ粒子、ミセル、ポリマーベシクルまたはポリマーソームにパッケージングする。一部の実施形態では、これらの生成物を、吸入器により、またはナノ粒子により送達するためのエアロゾルへと製剤化することができる。追加の送達経路には、局所、経皮、静脈内、皮下、及び髄腔内送達が含まれる。一部の実施形態では、ナノ粒子は、治療物質をコードするssRNAを封入し、次いで、これを、エアロゾル送達などにより、全身または局所投与することができる。エアロゾル送達を使用して、治療物質を、コロナウイルスなどの本明細書において提示されているとおりのウイルスに感染している患者の肺に送達することができる。
【0185】
加えて、ある特定の患者では、いずれの残りのウイルス/ビリオンも減少させる、または除去するために、この処置が定期的に繰り返されるであろうと予測される。そのような定期的な処置は、維持処置として、安定しているか、または検出不可能な疾患を達成するために患者が必要とする限り、1週間ごとに1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1か月ごとに1回から、2か月ごとに1回、3か月ごとに1回、4か月ごとに1回、5か月ごとに1回、6か月ごとに1回、または7か月ごとに1回、または8か月ごとに1回、または9か月ごとに1回、または10か月ごとに1回、または11か月ごとに1回、または年に1回まで変動し得る。
【0186】
併用及び交替治療
HIV、HBV及びHCVを含む多くのウイルス感染症の薬物耐性バリアントは抗ウイルス薬での長期間の処置後に発生し得ることが認められている。薬物耐性は最も典型的には、ウイルス複製で使用される酵素、最も典型的には、HIVの場合には、逆転写酵素、プロテアーゼ、もしくはDNAポリメラーゼ、及びHBVの場合には、DNAポリメラーゼ、またはHCVの場合には、RNAポリメラーゼ、プロテアーゼ、もしくはヘリカーゼなどのタンパク質をコードする遺伝子の変異により起こる。最近では、基本薬により引き起こされるものとは異なる変異を誘導する第2、及びことによると第3の抗ウイルス化合物と組み合わせて、またはそれと交替で化合物を投与することにより、HIV感染症に対する薬物の有効性が延長され得る、増大し得る、または回復し得ることが実証されている。組合せのために使用することができる化合物は、HBVポリメラーゼ阻害薬、インターフェロン、TLR-7アゴニストまたはTLR-9アゴニストなどのTLR調節薬、治療用ワクチン、ある特定の細胞ウイルスRNAセンサーの免疫活性化因子、ウイルス侵入阻害薬、ウイルス成熟阻害薬、別個のカプシドアセンブリ調節薬、別個または未知の機構の抗ウイルス化合物、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。別法では、そのような組合せまたは交替治療により、薬物の薬物動態、生体内分布、または他のパラメーターを変更することができる。一般に、併用治療が典型的には、交替治療よりも好ましく、それというのも、それがウイルスに対して複数の同時ストレスを誘導するためである。
【0187】
ある特定の実施形態では、前記方法は、患者をコンストラクトの送達中にテノフォビルなどの抗ウイルス処置下に維持すること;次いで、患者を、2週間から1か月の範囲の期間にわたって抗ウイルス処置から離して回帰させて、ウイルス複製を可能にし、ウイルス細胞死を制限することにより細胞死を制御するレジメンを含むので、圧倒的なウイルス肝細胞死の状況、または同様の細胞死は存在しない。
【0188】
そのような回帰の後に、患者を抗ウイルス処置に戻して、組織の修復を可能にし;患者にとって利益がある限り、8週間ごと、12週間ごと、16週間ごと、20週間ごとなどのサイクルを繰り返す。
【0189】
HBVを処置するための併用または交替治療のための追加の化合物には、3TC、FTC、L-FMAU、インターフェロン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、テルビブジン(L-dT)、バルトルシタビン(3’-バリニルL-dC)、ベータ.-D-ジオキソラニル-グアニン(DXG)、ベータ.-D-ジオキソラニル-2,6-ジアミノプリン(DAPD)、ベータ.-D-ジオキソラニル-6-クロロプリン(ACP)、ファムシクロビル、ペンシクロビル、ロブカビル、ガンシクロビル、及びリバビリンが含まれる。
【0190】
キット
加えて、これらの組換え核酸、VLP生成物またはその医薬組成物のある特定の構成要素または実施形態をキットで提供することができる。例えば、組換え核酸、またはVLP生成物のいずれも、凍結して、単独で、または前処理もしくは後処理ステップからの他の薬剤のいずれかの別々の容器、及び任意選択の取扱説明書と共にパッケージングしてキットとして提供することができる。
【0191】
一部の実施形態は、キット内の前述の組成物のいずれかを対象とする。一部の実施形態では、キットは、アンプル、使い捨てシリンジ、カプセル、バイアル、管などを含んでよい。一部の実施形態では、キットは、本明細書の実施形態の局所製剤を含む単回用量容器または複数回用量容器を含んでよい。一部の実施形態では、各用量容器は、1回または複数回単位用量を含有してよい。一部の実施形態では、キットは、アプリケーターを含んでよい。一部の実施形態では、キットは、処理/処置の段階で必要とされる構成要素のすべてを含む。一部の実施形態では、細胞組成物は、防腐剤を含有してもよいし、または防腐剤非含有(例えば、単回使用容器において)であってもよい。一部の実施形態では、組換え核酸またはVLP生成物を、病院または処置センターに配送するために適切な所望の段階で調製及び凍結してよい。
【0192】
加えて、ある特定の患者では、ウイルス薬剤(複数可)に対する免疫系の応答をブーストするために、前記方法または処置レジメンのいずれかが定期的に繰り返されるであろうと予測される。そのような定期的な処置は、維持処置として、患者が必要とする限り、1週間、1か月ごとに1回から、2か月ごとに1回、3か月ごとに1回、4か月ごとに1回、5か月ごとに1回、6か月ごとに1回、または7か月ごとに1回、または8か月ごとに1回、または9か月ごとに1回、または10か月ごとに1回、または11か月ごとに1回、または年に1回まで変動し得る。
【0193】
本発明を様々な好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明はそれらに限定されることは意図されておらず、むしろ、当業者は、本発明の意図及び添付の特許請求の範囲内で変形及び変更を行うことができることを認めるであろう。
【0194】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の試験コンストラクトは、AAV8を送達ベクターとして利用するが、それというのも、それが肝臓細胞を標的化するためである。非特異的標的化を、示されているとおりの様々な対照において試験する。TBG(チロキシン結合グロブリン)を肝臓特異的プロモーターとして利用し、これは、肝臓細胞でのみ作製される特異的転写因子により活性化する。これは、逆相補構造にある組換え転写物の発現を駆動し、したがって、非機能性と考えられ、さらに、この場合はイプシロン配列(配列番号1)であるウイルス転写認識シグナルが存在しないと分解される。
【0195】
試験コンストラクトが、HBV DNAポリメラーゼが存在し、埋没HBVイプシロン転写認識配列と相互作用して、HBV「ウイルススーサイド」転写物を転写するHBV感染肝臓細胞でのみ発現されることを示すように、これらの実験を設計する。このプロセスの後に、センスHBV転写物(Casp9をコードするイプシロン配列により認識されるセンス転写物である)が次いで転写され、かつ宿主細胞機構により翻訳されて、他のいずれの非感染細胞もアポトーシスさせることなく、強力な構成的活性型EFSプロモーター下にあり、ウイルス感染宿主細胞のプログラム細胞死-アポトーシスを開始させるCasp9をコードし得る。
【0196】
これらの結果は、
図1~12の図、マップ、グラフ及び表に図示されており、下の実施例1~6にさらに十分に説明されている。
【実施例】
【0197】
実施例1
HepAD38は、テトラサイクリンで調節され得る条件下でヒトB型肝炎ウイルス(HBV)を複製する細胞系である。抗生物質の存在下では、この細胞系は、プレゲノミック(pg)RNA合成の抑制により、ウイルスを含有しない。培養培地からテトラサイクリンを除去すると、この細胞はウイルスpgRNAを発現し、ウイルス複製に特徴的なDNA中間体を含有する細胞質内でサブウイルス粒子を蓄積し、ウイルス様粒子を上清に分泌する。HepAD38細胞系は、高レベルのHBV DNAを産生し得るので、同期でウイルスDNA合成に依存するウイルス複製周期の解析に有用であるはずである。加えて、この細胞系は、新たな群のHBV複製の阻害薬のために多様な化合物ライブラリの大規模スクリーニングを可能にするハイスループット細胞ベースアッセイへとフォーマットされている。Ladner S.K. et al. Antimicrob Agents Chemother. 1997 Aug;41(8):1715-20を参照されたい。したがって、HepAD38細胞系は、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)を研究するための適切なインビトロモデルシステムである。
【0198】
Hep G2は、高分化型肝細胞癌を有する15歳の欧州系アメリカ人青年の肝臓組織に由来した不死細胞系である。これらの細胞は、形態的に上皮性であり、55のモダール染色体数を有し、ヌードマウスでは腫瘍発生性ではない。この細胞は、様々な主要な血漿タンパク質、例えば、アルブミン、及び急性期タンパク質フィブリノーゲン、アルファ2-マクログロブリン、アルファ1-アンチトリプシン、トランスフェリン及びプラスミノーゲンを分泌する。これらは、大規模培養システムにおいて成功裏に成長している。B型肝炎ウイルス表面抗原は、これらの細胞上で検出されていない。Hep G2は、ヒト成長ホルモンでの刺激に対して応答する。したがって、Hep G2細胞は、分極ヒト肝細胞を研究するための適切なインビトロモデルシステムである。
【0199】
本明細書に記載の「ウイルス特異的細胞傷害性」コンストラクトを試験するために、HepG2細胞を利用することは、正常で健康な肝臓細胞のための対照として役立つ。HepG2細胞は、HBVに感染していない肝臓細胞であるので、それらが、実験1において使用される試験複製不全:AAV8-HBV-DRS1(EFla>HBV-rcCasp9)により影響されることはないはずであり、結果は
図2A及び
図2Cに示されている。
【0200】
対照的に、HepAD38細胞系を、本明細書に記載の「ウイルス特異的細胞傷害性」コンストラクト:複製不全コンストラクト:AAV8-HBV-DRS1(EFla>HBV-rcCasp9)の1つ(
図2Aに示されているベクター)を試験するためのHBV+モデルとして利用した。結果が実験1について示されており、群1~3は、
図2Bのグラフデータならびに
図2Cに記載の対応する細胞数及び生存率に示されているとおり、HepAD38細胞中の群2の試験コンストラクトAAV8-HBV-DRS1(EFla>HBV-rcCasp9)がウイルス特異的細胞死を示すことを示している。
【0201】
実施例2
加えて、
図3A及び
図3B、ならびに
図4A、
図4B及び
図4Cにおいて示されている実験2では、AAV8-HBV-DRS1(EFla>HBV-rcCasp9)コンストラクトをHepG2細胞及びHepAD38細胞においてさらに試験し、かつある特定の試験群では、カスパーゼ-9阻害薬Z-LEHD-FMKを使用して、死滅がCasp9発現の結果であることを示した(群3及び群5を参照されたい)。これらの実験からの結果は、群2のHepAD38細胞におけるウイルス特異的細胞死を示しており、これはほぼ80%の割合の細胞死を示した。
図5Aはベクターマップであり、
図5Bは、AAV8-HBV-DRS1(EFla>HBV-rcCasp9)コンストラクトに感染したHepAD38細胞における徹底的な細胞死を強調するための、HepG2細胞及びHepAD38細胞における試験コンストラクト及び様々な対照の作用を示す重ね合わせグラフである。
【0202】
実施例3
最後に実験3では、AAV8-HBV-DRS2(TBG>HBV-rcCasp9)コンストラクトを試験した。このコンストラクトは、肝臓特異的プロモーター、チロキシン結合グロブリン(TBG)を含有する。これらの実験からの結果は、群2のHepAD38細胞におけるウイルス特異的細胞死を示しており、これはほぼ80%の割合の細胞死を示した(
図6A及び
図6B)。このグループ分けでは、群1の細胞は形質導入されてなく、群2の細胞は、AAV8-HBV-DRS2(TBG>HBV-rcCasp9)で形質導入された試験細胞であり;群3の細胞は、Casp9阻害薬z-LEHD.fmkの付加を伴う同じものであり;群4の細胞は、対照としてCasp9阻害薬z-LEHD.fmkのみと接触させており;群5の細胞は、コンストラクト発現をさらに追跡するために、GFPを含有するコンストラクトで形質導入され;群6の細胞は、同じGFPコンストラクトで形質導入され、Casp9阻害薬z-LEHD.fmkと共にインキュベートもされた。
【0203】
実験2~3における試験ベクター+Casp9阻害薬対照群は、細胞死がカスパーゼ-9で開始されていて、ベクター/DNA毒性からではないことを示した。
【0204】
実験2~3におけるGFP-AAV対照群は、細胞死がAAV毒性によるものではないことを示した。
【0205】
実施例4
実験4では、HBV感染またはHBV産生細胞を、本明細書において提供されるとおりのHBV RNAで処置し、平均細胞死パーセントを細胞生存に基づき計算した。4日までに、様々なHBV産生細胞における平均細胞死は92%であった(88.6%から95.8%の範囲)。非感染細胞では、有意な細胞死は観察されなかった。RT及び汎カスパーゼ阻害薬は個々に、AAV処置された感染細胞において細胞死を阻止した。これらの結果は、HBV RNAコンストラクトがHBV感染または産生細胞を選択的に死滅させることを示している。
【0206】
実施例5
インビボマウス肝炎モデル実験
これらのコンストラクトをインビボマウスモデルにおいてさらに試験したところ、結果は、試験コンストラクトAAV8-HBV-DRS1(EFla>HBV-rcCasp9)及びAAV8-HBV-DRS2(TBG>HBV-rcCasp9)でのウイルス特異的細胞死を示している(
図9)。
【0207】
上のセクションにおいて、感染肝細胞のアポトーシスを誘導するためのB型肝炎ウイルス(HBV)ポリメラーゼ(pol)を選出する新規のインビトロ実証実験からの結果が示されている。HBVトランスジェニックマウスモデルも使用して、インビボでこれらのコンストラクト及びアプローチの機構の有効性及び特異性を評価した。
【0208】
方法
AAV粒子に、HBV pol(HBV pol/RT)の逆転写酵素(RT)ドメインに特異的な配列の間に挟まれた非機能性ノンコーディング(nc)RNAを発現する特許権下のベクターコンストラクトをパッケージングした。ncRNAは、HBV pol/RTにより認識され、カスパーゼ-9(casp-9)を過剰発現するようにコードされた二本鎖(ds)DNAに逆転写されるであろう(
図1A及び
図IB)。1群あたり5匹のHBV遺伝子導入マウスに、EFlaまたは肝臓特異的チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター下でベクターを発現するAAV粒子、GFPベクターまたはプラセボを注射する。末梢血を肝臓酵素及びHBeAgについて毎週モニターした。14または28日目に心臓、肺、腎臓及び肝臓を採取し、IHC及びウェスタンブロットによりAAV VPの組織分布を評価した。Casp-9、カスパーゼ切断産物及びcasp-9でのHBVコアタンパク質の二重染色もIHCにより評価した。加えて、HBV pol発現または非発現HepG2-Red-Fluc細胞をヌードマウスの肝臓に、局所腫瘍成長を促進するためのマトリゲルと共に移植した。次いで、マウスを、試験ベクターを発現するAAVで処置した。様々な時点で、マウスにD-ルシフェリン基質を注射して、IVIS Lumina S5イメージングシステムを用いて腫瘍サイズの変化を定量化した。
【0209】
結果
処置後14日目に遺伝子導入マウスから採取した器官は、HBVを発現する肝臓及び腎臓細胞では有意なcasp-9発現を示したが、HBVを発現しないものでは示さなかった。TBGプロモーターを含むベクターで処置されたマウスの腎臓組織は、未処置及びGFP対照と比較してcasp-9発現の増加がなかった。さらに、処置AAV粒子について陽性に染色された他の器官の細胞は、casp-9過剰発現を示さなかった。処置後28日目に採取された肝臓は、処置群では広範なアポトーシス好中球浸潤範囲を示したが、対照では示さなかった(
図11A)。4週目に処置群では、GFP-AAV及びプラセボ対照と比較して、ALTレベルが1.8~2.2倍上昇し、ASTレベルが1.4倍上昇した(
図1IB)。末梢HBeAgにおいて、有意な変化はなかった。ヌードマウス異種移植治癒研究の結果を評価する。
【0210】
結論
HBV polをハイジャックするための新規のAAVベクターは、インビトロ及びインビボでHBV発現細胞においてCasp-9の過剰発現及びアポトーシスを特異的に誘導した。このプロセスの概観を示す図が
図11Cに示されている。遺伝子導入マウスにおける肝臓組織の再生が抗原を構成的に発現するので、末梢HBeAgの低下の欠如が予測された。これらのデータは、HBV感染症を処置または治癒するための潜在的に新しい経路を示唆している。
【0211】
配列
配列番号1:HBV RNAポリメラーゼイプシロンシグナル
【化7】
【0212】
【0213】
配列番号3:カスパーゼ9(Casp9)ヒトORF
【化9】
【0214】
【0215】
配列番号5:EFSプロモーターの逆相補体
【化11】
【0216】
【0217】
【0218】
配列番号8:コンストラクト(転写物):(1746bp)
【化14】
【0219】
配列番号9
HBVイプシロンシグナルの間に挟まれた「zsGreen遺伝子を駆動するEFSプロモーター」の逆相補配列:
【化15】
【0220】
実施例6
インフルエンザ特異的Casp9コンストラクト及び実験
インフルエンザウイルスを処置するために設計された試験コンストラクトを試験するために、次の配列及びコンストラクトを利用することとする。インフルエンザウイルスは、ウイルスタンパク質を発現するか、またはそのウイルスゲノムを複製するためにインフルエンザポリメラーゼ複合体を利用する一本鎖ネガティブセンスRNAウイルスであるので、ネガティブセンスノンコーディング(nc)RNAを発現するベクターコンストラクトは、インフルエンザポリメラーゼと連結するように設計されている(実施例1~4に記載のとおりのHBVについて特異的に設計されたものと同様の手法で)。ncRNAは、ウイルス機構を「ハイジャック」して、感染細胞において特異的にアポトーシス誘導し、これは、潜在的な抗ウイルス処置である(
図10A及び
図10B)。
【0221】
方法
多くのインフルエンザウイルス株で高度保存されているインフルエンザゲノムRNAノンコーディング配列(NCS)領域の間にあるzsGreenマーカー(AAV.infv.rcZsGreen)またはカスパーゼ-9(casp9)遺伝子(AAV.infv.rcCasp9)の逆相補鎖を転写する、ncRNAを発現する新規のベクター(これはインフルエンザ「ハイジャックRNA」、またはインフルエンザ感染細胞のためのRNAスーサイドベクターと考えられ得る)で、アデノ随伴ウイルス(AAV)をパッケージングした。これらの配列の実施形態は、下で配列番号10~24として示されている。これらのインフルエンザ(nc)RNAコンストラクトを試験するためにインビトロ系として、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞をインフルエンザA H1N1もしくはH3N2、またはインフルエンザBウイルスに0.1MOIで感染させた。インフルエンザ感染細胞についてのハイジャックベクター、またはRNAスーサイドベクターの機能性を決定するために、casp9阻害薬Z-LEHD-FMKの存在及び非存在下で、インフルエンザ感染及び非感染MDCK細胞をAAV.infv.rcZsGreenベクターで、及びAAV.infv.rcCasp9で形質導入した。zsGreen発現を決定するために、フローサイトメトリーを使用した。細胞生存及び増殖をFACS、アネキシンアッセイ、及び自動細胞カウントにより毎日評価した。
【0222】
結果
すべてのAAV.infv.rcZsGreenベクター形質導入されたインフルエンザ感染細胞はzsGreenタンパク質を成功裏に産生し、ハイジャック/スーサイドRNAコンストラクトが認識されて、各インフルエンザ株においてポリメラーゼ複合体により転写されたことが確認された。インフルエンザ感染により、非処置細胞のうちの60%~68%が6日目までに死滅した。インフルエンザ感染後24時間目にcasp9ハイジャック/スーサイドベクターで処置された感染細胞のうちの91%~95%が処置後3日目に死滅した。培養物におけるCasp-9阻害はベクター誘導細胞死を救済して、感染細胞の寿命を5~6日まで延長した(
図10B)。非感染対照群では、有意な細胞死はなかった。
【0223】
結論
インフルエンザポリメラーゼと連結するようにトランスで送達されたベクターはウイルス機構をハイジャックして、インフルエンザ感染細胞の死滅を非処置感染細胞よりも40%急速に誘導した。この効果は、おそらくインフルエンザポリメラーゼの保存性によりウイルス株全体で見られた。この新規のアプローチを、インフルエンザのための有効な処置を開発するために使用することができるであろう。
【0224】
配列
配列番号10
ベクターの3’ノンコーディング領域
【化16】
【0225】
配列番号11
ベクターの5’ノンコーディング領域
【化17】
【0226】
配列番号12
インフルエンザ特異的Casp9ベクター
【化18】
【0227】
重要な特徴5’:
配列番号13:ベクターの5’ノンコーディング領域:AGTAGAAACAAGG
配列番号14:非特異的緩衝配列GTG
配列番号15:逆転写中にポリAシグナルで「どもる(stuttered)」U5~7リピート:TTTTTT
配列番号16:インフルエンザ種で最も一般的な非特異的緩衝配列:ATCA
配列番号17:「最終+センスCasp9転写物」の停止コドン:TTA
【0228】
重要な特徴3’:
配列番号18:「最終+センスCasp9転写物」の開始コドン:CAT
配列番号19:非特異的緩衝配列:TCC
配列番号20:ベクターの3’ノンコーディング領域:CCTGCTTTTGCT
【0229】
配列番号21
インフルエンザポリメラーゼ複合体認識及び逆転写のための(-)ssRNA転写物
(試験ベクターにより発現される転写物)
【化19】
【0230】
一般的なベクター構造
一部の実施形態では、一般的なベクター構造は、次の式:
配列番号22-ORF-配列番号23
を有し、式中、
配列番号22は、AGTAGAAACAAGGGTGTTTTTTATCATTAであり;
ORFは、任意のタンパク質コーディング配列であり;かつ
配列番号23は、CATTCCCCTGCTTTTGCTである。
【0231】
配列番号24
実験的検出のためのGFPマーカーコンストラクト(Casp9の代わり)
【化20】
【0232】
実施例7
この実験では、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞をインフルエンザA(H1N1またはH3N2)またはインフルエンザBウイルスに感染させなかったか、感染させた。次に、非感染及び感染細胞を、ヒトcasp9をコードするハイジャックRNAを含むAAV粒子またはGFPを含むAAV粒子で処置した。これらの独立した実験をそれぞれ3連で実行した。
【0233】
Casp9発現及びその切断産物(カスパーゼ3及び7)をフローサイトメトリーにより測定した。Casp9発現は、非感染細胞と比較して、H1N1インフルエンザ感染で4倍増加した。ハイジャックRNA AAVは、非感染細胞には作用しなかったが、感染細胞で使用したときには、「ハイジャック」RNA AAVはcasp9を非感染細胞と比較して10倍増加させ、かつ非処置感染細胞と比較して3倍増加させた。
【0234】
ハイジャックRNA AAVの有効性を、自動細胞カウント及びFACS解析で細胞生存及び増殖をモニタリングすることにより毎日測定した。「ハイジャック」RNA AAVでの非感染細胞の処置は、細胞生存に対して作用をもたらさなかった。しかしながら、ハイジャックRNA AAVでのインフルエンザB、H1N1、またはH3N2感染細胞の処置は、細胞生存を非処置感染細胞、またはGFP AAV処置感染細胞と比較して120時間ほど増大させた。
【0235】
培養物における感染細胞パーセンテージを、FACS解析を使用して、インフルエンザ核タンパク質細胞内染色を介してモニターした。ハイジャックRNA AAVでの処置は、72時間までにH1N1、H3N2、またはインフルエンザB感染細胞のパーセンテージを低下させ、96時間までにインフルエンザ感染を完全に撲滅した。
【0236】
これらの結果は、カスパーゼ-9を発現するハイジャックRNA AAVが細胞培養においてインフルエンザ感染を効果的に死滅させることを示している。
【0237】
実施例8
コロナウイルスコンストラクト設計
CoVポリメラーゼ(RNA依存性RNA-ポリメラーゼまたはRdRp)を介しての(+)ssRNAからのサブゲノム(-)ssRNA合成。コロナウイルスRdRpは、遺伝子間テンプレート-スイッチングドナーシグナルで休止し、コピー選択機構により、5’末端リーダーをコピーするためのゲノムの5’末端近位の高度に相似のアクセプター部位へと移入される。転写調節配列(TRS)は、テンプレートスイッチングシグナルとして機能する。TRSは、ポジティブストランドでは5’ACGAAC3’(配列番号31)であり、ネガティブストランドでは3’UGCUUG5’(配列番号32)である。サブゲノムmRNA(sgmRNA)がその中に複数のTRSをまだ有するならば、RdRpは、新たなsmRNAを小さなゲノムとして認識し、その上でネガティブストランド合成を開始し、内部ドナーシグナルでテンプレートをスイッチし、ネガティブストランドテンプレートを作製して、より短い内部にネストされた(internally nested)sgmRNAを合成する。リーダーRNA(60~80nt)配列は常に、サブゲノムネガティブストランドの3’末端及びサブゲノムのmRNAの5’末端にとどまる。
【0238】
サブゲノム(-)ssRNAは、ウイルスタンパク質合成のための新たなmRNAを生成するための中間体である。したがって、リーダーRNA及びTRS配列を模倣するが、目的の遺伝子(例えば、カスパーゼ-9)のネガティブストランドを持つ(-)ssRNAであるコロナウイルス「ハイジャックRNA」を設計することができる。この戦略の概観は、
図12A及び
図12Bに示されている。
【0239】
標準的な方法
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook, Fritsch and Maniatis (1982 & 1989 2nd Edition, 2001 3rd Edition) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Wu (1993) Recombinant DNA, Vol. 217, Academic Press, San Diego, CA)に記載されている。標準的な方法は、Ausbel, et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vols.1-4, John Wiley and Sons, Inc. New York, NY(細菌細胞でのクローニング及びDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳類細胞及び酵母でのクローニング(Vol.2)、グリココンジュゲート及びタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載)にもある。
【0240】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、及び結晶化を含むタンパク質精製のための方法は、(Coligan, et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 1, John Wiley and Sons, Inc., New York)に記載されている。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化は記載されている(例えば、Coligan, et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vol. 2, John Wiley and Sons, Inc., New York;Ausubel, et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 3, John Wiley and Sons, Inc., NY, NY, pp. 16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich, Co. (2001) Products for Life Science Research, St. Louis, MO;pp. 45-89;Amersham Pharmacia Biotech (2001) BioDirectory, Piscataway, N.J., pp. 384-391を参照されたい)。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の生成、精製、及び断片化は記載されている(Coligan, et al. (2001) Current Protcols in Immunology, Vol. 1, John Wiley and Sons, Inc., New York;Harlow and Lane (1999) Using Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;Harlow and Lane,前出)。リガンド/受容体相互作用を特徴づけるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coligan, et al. (2001) Current Protocols in Immunology, Vol. 4, John Wiley, Inc., New Yorkを参照されたい)。
【0241】
本明細書において引用される参照文献はすべて、それぞれ個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列またはGenelDエントリ)、特許出願、または特許が具体的かつ個別に、参照により援用されると示されている場合と同程度に参照により援用される。参照により援用されるというこの陳述は、37C.F.R.§1.57(b)(1)に従って、いずれもすべて個々の刊行物、データベースエントリ(例えば、Genbank配列またはGenelDエントリ)、特許出願、または特許に関することが出願人により意図されており、これらはそれぞれ、そのような引用が参照により援用されるという専用の陳述に直接隣接していなくても、37C.F.R.§1.57(b)(2)に従って明確に同定される。本明細書内に、参照により援用されるという専用の陳述が含まれたとしても、それは、参照により援用されるというこの一般的陳述を何ら弱めるものではない。本明細書における参照文献の引用は、その参照文献が関連する先行技術であることを容認することを意図したものでもなければ、これらの刊行物または文献の内容または日付について何らかの承認を構成するものでもない。
【0242】
実施例9
この実験では、SARS-CoV-2 RNA依存性RNA-ポリメラーゼ(RdRp)により認識されるように設計された合成RNA(「ハイジャックRNA」)を、細胞培養においてSARS-CoV-2感染を撲滅するその能力について試験した。認識により、ハイジャックRNAは、ジフテリア毒素断片A(DT-A)に転写されて、特異的に感染細胞においてアポトーシスを誘導するであろうので、これは、潜在的な処置であり得るであろう(
図13)。
【0243】
方法
DT-A cDNAの逆相補鎖及びSARS-CoV-2 sgRNAの二次構造を含有する、SARS-CoV-2ハイジャックRNAを発現する新規のベクター(
図15)で、アデノ随伴ウイルス(AAV)をパッケージングした。ベロ細胞をSARS-CoV-2USA-WA1/2020株に0.1MOIで感染させた。SARS-CoV-2感染及び非感染ベロ細胞を試験(
図15)または対照(GFP)AAVで形質導入した。非感染ジャーカット、HEK及びBHK-21細胞も試験AAVで形質導入して、非感染細胞におけるハイジャックRNAの潜在的なオフターゲット作用をさらに調査した。FACS及び自動細胞カウントにより毎日、細胞死及び生存を評価した。細胞イメージングを介して細胞変性効果(CPE)を観察することにより、かつウイルスタンパク質の細胞内染色を介してのFACSにより、細胞培養における感染の根絶を確立した。感染及び非感染細胞におけるDT-A産生を、培養物上清及び細胞溶解産物のウェスタンブロット(WB)分析により測定した。様々な(0~100ng)濃度のインビトロ転写されたハイジャックRNA(
図14)で細胞をトランスフェクトすることにより、同じ実験を繰り返した。ハイジャックRNAのRdRp特異的発現を評価するために、SARS-CoV-2RdRpを発現する安定なベロ及びジャーカット細胞系も生成した。
【0244】
結果
SARS-CoV-2感染は、試験AAV形質導入から48時間以内に培養物から成功裏に根絶され、細胞増殖アッセイ及び細胞イメージにおけるCPEの非存在、さらにはFACS解析により確認された(
図16A)。同じ結果が、ハイジャックRNAトランスフェクションから24時間以内に観察された。試験AAVまたはハイジャックRNAは、非感染細胞に対して作用を有さなかった(
図16B)。RdRp発現において同様の結果が観察され、仮定されていた作用機序が確認された。
【0245】
結論
SARS-CoV-2RdRpと連結するようにトランスで送達されるか、発現されるRNAは、ウイルス機構をハイジャックし、感染細胞において急速な死滅を誘導したが、非感染細胞においては誘導しなかった。いくつかの異なる細胞系において実証されたとおり、ハイジャックRNAの死滅分子(kill molecule)DT-Aへの翻訳はウイルスRdRpに依存し、この処置の特異性及び感受性が確認された。この新規のアプローチは、COVID-19感染を根絶するための有効な処置を開発するために使用することができるであろう。
【0246】
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施形態により範囲を限定されるべきではない。実際に、本明細書に記載のものに加えて、前述の記載及び添付の図面から、当業者には本発明の様々な変更が明白になるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内に該当することが意図されている。
【配列表】
【国際調査報告】