(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】真空回折格子および製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20221027BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20221027BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
G02B27/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513163
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020048590
(87)【国際公開番号】W WO2021041949
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509325972
【氏名又は名称】ディジレンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウォルダーン, ジョナサン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】グラント, アラステア ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ポポヴィッチ, ミラン モムシロ
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム, シブ
(72)【発明者】
【氏名】ヒル, ベダン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ホー, ツン-ジュイ
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA30
2H199CA42
2H199CA50
2H199CA54
2H199CA67
2H199CA68
2H199DA12
2H199DA25
2H199DA26
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA55
2H249AA62
(57)【要約】
導波路で使用するための回折格子の改良、およびそれらを製造する方法が、本明細書に記載される。深い表面レリーフ回折格子(SRG)は、従来のSRGおよびブラッグ回折格子よりも多くの利点を提供し得、重要な利点は、より高いS回折効率である。一実施形態では、深いSRGは、ポリマー表面レリーフ回折格子または真空ブラッグ回折格子(EBG)として実装され得る。EBGは、まず、ホログラフィックポリマー分散型液晶(HPDLC)回折格子を記録することによって、形成され得る。硬化した回折格子から液晶を除去することにより、ポリマー表面レリーフ回折格子が提供される。ポリマー表面レリーフ回折格子は、導波路ベースのディスプレイでの使用を含む多くの用途を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路デバイスであって、
前記導波路中を全反射で伝播する光を回折するためのポリマー回折格子構造を支持する導波路を備え、
前記ポリマー回折格子構造が、
ポリマーネットワークと、
前記ポリマーネットワークの隣接部分間の空隙と、
を備える、導波路デバイス。
【請求項2】
前記ポリマー回折格子構造が、前記ポリマーネットワークの隣接部分間に等方性材料をさらに備え、前記等方性材料が、前記ポリマーネットワークの前記屈折率よりも高いか、または低い屈折率を有する、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項3】
前記等方性材料が、前記ポリマーネットワークの隣接部分間の空間の底部部分の前記空間を占有し、空気が、前記等方性材料の上面の上方から変調深さまでの前記空間を占有する、請求項2に記載の導波路デバイス。
【請求項4】
前記等方性材料が、複屈折結晶材料を含む、請求項2に記載の導波路デバイス。
【請求項5】
前記複屈折結晶材料が、液晶材料を含む、請求項4に記載の導波路デバイス。
【請求項6】
前記ポリマー回折格子構造が、可視光の波長よりも大きい変調深さを有する、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項7】
前記ポリマー回折格子構造が、変調深さと、回折格子ピッチと、を備え、前記変調深さが、前記回折格子ピッチよりも大きい、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項8】
前記導波路が、2つの基板を備え、前記ポリマー回折格子構造が、前記2つの基板の間に挟まれるか、またはいずれかの基板の外面上に位置決めされている、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項9】
前記ポリマーネットワークのブラッグフリンジ間隔が、0.35μm~0.8μmであり、前記ポリマーネットワークの回折格子深さが、1μm~3μmである、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項10】
前記ポリマーネットワークの回折格子深さと前記ブラッグフリンジ間隔との比が、1:1~5:1である、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項11】
画像生成ユニットをさらに備え、前記ポリマー回折格子構造が、導波路回折格子を備える、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項12】
前記導波路回折格子が、多重回折格子として構成されている、請求項11に記載の導波路デバイス。
【請求項13】
前記導波路回折格子が、複数の画像を含む前記画像生成ユニットから、光を受け取るように構成されている、請求項12に記載の導波路デバイス。
【請求項14】
前記導波路回折格子が、前記導波路から光を外結合するように構成されている、請求項11に記載の導波路デバイス。
【請求項15】
前記導波路回折格子が、ビームエキスパンダとして構成されている、請求項11に記載の導波路デバイス。
【請求項16】
前記導波路回折格子が、前記画像生成ユニットから生成された画像データを含む光を内結合するように構成されている、請求項11に記載の導波路デバイス。
【請求項17】
前記導波路回折格子が、高効率でS偏光光を内結合するようにさらに構成されている、請求項16に記載の導波路デバイス。
【請求項18】
前記回折格子が、ブラッグ角度で70%~95%の効率でS偏光光を内結合するようにさらに構成されている、請求項17に記載の導波路デバイス。
【請求項19】
前記回折格子が、ブラッグ角度で25%~50%の効率でP偏光光を内結合するようにさらに構成されている、請求項17に記載の導波路デバイス。
【請求項20】
前記ポリマーネットワークと前記空隙との間の前記屈折率の差が、0.25~0.4である、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項21】
前記ポリマーネットワークと前記複屈折結晶材料との間の前記屈折率の差が、0.05~0.2である、請求項3に記載の導波路デバイス。
【請求項22】
前記ポリマー回折格子構造が、二次元格子構造または三次元格子構造を備える、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項23】
別の回折格子構造をさらに備える、請求項1に記載の導波路デバイス。
【請求項24】
前記ポリマー回折格子構造が、内結合する回折格子を備え、前記別の回折格子構造が、ビームエキスパンダまたは外結合する回折格子を備える、請求項23に記載の導波路デバイス。
【請求項25】
導波路デバイスであって、
前記導波路中を全反射で伝播する光を回折するためのポリマー回折格子構造を支持する導波路を備え、
前記ポリマー回折格子構造が、
ポリマーネットワークと、
前記ポリマーネットワークの隣接部分間の複屈折結晶材料であって、前記複屈折結晶材料が、前記ポリマーよりも高い屈折率を有する、複屈折結晶材料と、
を備える、導波路デバイス。
【請求項26】
深い表面レリーフ回折格子(SRG)を作製するための方法であって、
モノマーと液晶との混合物を提供することと、
基板を提供することと、
前記基板の表面上に前記混合物の層をコーティングすることと、
前記層にホログラフィック記録ビームを当てて、交互するポリマーリッチ領域および液晶リッチ領域を備えるホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を形成することと、
前記液晶リッチ領域の前記液晶の少なくとも一部分を除去して、ポリマー表面レリーフ回折格子を形成することと、
を含む、方法。
【請求項27】
前記モノマーが、アクリレート、メタクリレート、ビニル、イソシネート、チオール、イソシアネート-アクリレート、および/またはチオリンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記混合物が、光開始剤、共開始剤、または追加の添加剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記チオールが、チオール-ビニル-アクリレートを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記光開始剤が、感光性成分を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記感光性成分が、色素および/またはラジカル発生剤を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
モノマーと液晶との混合物を提供することが、
前記モノマーと、液晶と、光開始剤、共開始剤、多官能性チオール、または追加の添加剤のうちの少なくとも1つと、を混合することと、
前記混合物を、22℃以下の温度で、光のない場所に保管することと、
追加のモノマーを添加することと、
0.6μm以下のフィルタを通して前記混合物を濾過することと、
前記濾過された混合物を光のない場所に保管することと、
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記基板が、ガラス基板またはプラスチック基板を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記基板が、透明基板を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記混合物を、内部寸法を維持するための1つ以上のスペーサを用いて前記基板と別の基板との間に挟むことをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記別の基板の一方の表面上に非粘着剥離層を被着することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記非粘着剥離層が、フルオロポリマーを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記液晶リッチ領域を、液晶材料で再充填することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記液晶材料が、前記以前に除去された液晶とは異なる分子構造を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記液晶の少なくとも一部分を除去することが、前記液晶リッチ領域の前記液晶の実質的にすべてを除去することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
前記液晶の少なくとも一部分を除去することが、前記ポリマーリッチ領域に前記液晶の少なくとも一部分を残すことをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項42】
前記深いSRGの上に保護層を被着することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
前記保護層が、反射防止層を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記保護層が、ケイ酸塩または窒化ケイ素を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
保護層を被着することが、前記深いSRG上に前記保護層を堆積することを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記保護層を堆積することが、化学気相堆積を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記化学気相堆積が、ナノコーティングプロセスである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記保護層が、パリレンコーティングを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記液晶リッチ領域が、前記液晶リッチ領域の前記液晶の少なくとも一部分を除去した後の空隙を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項50】
前記空隙に真空を作り出すこと、または前記空隙を不活性ガスで充填することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
液晶の少なくとも一部分を除去することが、前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を溶剤で洗浄することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項52】
前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を洗浄することが、前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を前記溶剤に浸漬することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記溶剤が、イソプロピルアルコールを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記溶剤が、前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を洗浄しながら、室温よりも低い温度で保持される、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記液晶の少なくとも一部分を除去することが、前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を高流量空気源で乾燥させることをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を硬化させることをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項57】
前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を硬化させることが、前記ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を約1時間の期間にわたって低強度白色光に曝露することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記ポリマー表面レリーフ回折格子が、70%~95%の効率でS偏光光を内結合するように構成されている、請求項26に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリマー表面レリーフ回折格子が、25%~50%の効率でP偏光光を内結合するようにさらに構成されている、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ポリマーネットワークと前記空隙との間の前記屈折率の差が、0.25~0.4である、請求項26に記載の方法。
【請求項61】
前記ポリマーネットワークと前記液晶材料との間の前記屈折率の差が、0.05~0.2である、請求項38に記載の方法。
【請求項62】
前記ポリマー表面レリーフ回折格子が、0.35μm~0.8μmのブラッグフリンジ間隔と、1μm~3μmの回折格子深さとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項63】
前記ポリマー表面レリーフ回折格子が、1:1~5:1のブラッグフリンジ間隔と回折格子深さとの比を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項64】
前記モノマーと液晶との混合物中の液晶含有量が、およそ20%~50%である、請求項26に記載の方法。
【請求項65】
前記モノマーと液晶との混合物中の前記液晶が、単体液晶を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項66】
前記単体液晶が、シアノビフェニルおよび/またはペンチルシノビフェニルを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
深いSRGを作製するための方法であって、
モノマーと物質との混合物を提供することと、
基板を提供することと、
前記基板の表面上に前記混合物の層をコーティングすることと、
ホログラフィック記録ビームを前記層に当てて、交互するポリマーリッチ領域および物質リッチ領域を備えるホログラフィックポリマー分散回折型格子を形成することと、
前記物質リッチ領域の前記物質の少なくとも一部分を除去して、ポリマー表面レリーフ回折格子を形成することと、
を含む、方法。
【請求項68】
前記モノマーが、前記ホログラフィック記録ビームに対して反応性であり、前記物質が、前記ホログラフィック記録ビームに対して非反応性である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記モノマーおよび前記物質が、前記ホログラフィック記録ビームを当てる前に混和性混合物であり、前記モノマーおよび前記物質が、前記ホログラフィック記録ビームを当てた後に不混和性混合物になる、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記物質が、液晶を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記物質が、単体液晶を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記物質が、等方性材料、溶剤、非反応性モノマー、無機物、および/またはナノ粒子を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
導波路ディスプレイであって、
第1の波長帯域の光を放出する発光アレイと、
前記発光アレイからの画像変調された光を視野上に投影するためのコリメーションレンズと、
導波路であって、
前記第1の波長帯域のS偏光光に対して高回折効率を有する入出力SBG、および
前記第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入出力SBGを支持する導波路と、
を備える、導波路ディスプレイ。
【請求項74】
前記導波路が、前記発光アレイによって放出される第2の波長帯域のS偏光光およびP偏光光を回折するためのSBGをさらに支持する、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項75】
前記発光アレイが、OLEDアレイである、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項76】
前記導波路が、少なくとも1つの平面内で湾曲している、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項77】
前記導波路が、プラスチックから作製されている、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項78】
前記発光アレイが、前記導波路の湾曲した表面によって生じる波面歪みを予め補償するように空間的に歪んでいる、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項79】
前記発光アレイが、前記導波路の湾曲した表面によって生じる波面歪みを予め補償するように、湾曲したまたは可撓性の基板上に形成されている、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項80】
前記回折格子のうちの少なくとも1つが、フォトポリマーに記録されたブラッグ回折格子、液晶およびモノマー混合物に記録するブラッグ回折格子、深い表面レリーフ回折格子、ハイブリッド表面レリーフ/ブラッグ回折格子のうちの1つである、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項81】
前記導波路が、眼処方光学表面を支持する、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項82】
前記発光が、画素アレイであって、同一のサイズのポリゴン、同一の形状のポリゴン、前記アレイ全体にわたってサイズが変動するポリゴン、前記アレイ全体にわたって形状が変動するポリゴン、ペンローズタイル、および非繰り返しパターンを形成する要素の群から選択される少なくとも1つを含む要素の多重性を使用してパターン化された画素アレイを有する、請求項73に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項83】
導波路を使用して画像を形成するための方法であって、
第1の波長帯域の光を放出する発光アレイと、コリメーションレンズと、前記第1の波長帯域のS偏光光に対して高回折効率を有する入出力回折格子を支持し、かつ前記第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入出力定格を支持する導波路と、を提供することと、
前記コリメーションレンズを使用して、前記発光アレイによって放出された画像光をコリメートすることと、
前記S回折入力回折格子を使用して、OLEDアレイからの画像変調されたS偏光光を、前記導波路の全反射経路に結合することと、
前記P回折入力回折格子を使用して、前記OLEDアレイからの画像変調されたP偏光光を、前記導波路の全反射経路に結合することと、
映示のために、前記導波路からのS偏光光をビーム拡大し、引き出すことと、
映示のために、前記導波路からのP偏光光をビーム拡大し、引き出すことと、
を含む、方法。
【請求項84】
前記発光アレイが、OLEDアレイである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記導波路によって支持される湾曲した光学表面を提供するステップと、前記発光アレイ上で前記画素パターンを予め歪ませるステップと、前記コリメーションレンズを使用して、予め歪んだ波面を形成するステップと、前記湾曲した光学表面で前記予め歪んだ波面の光を反射するステップと、前記湾曲した光学表面の屈折力を使用して、前記予め歪んだ波面から平面波面を形成するステップと、をさらに含む、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記湾曲した光学表面が、処方光学表面である、請求項83に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月29日に出願された米国特許出願第62/893,715号の優先権を主張し、その開示は、参照によってその全体が本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、概して、導波路および導波路を作製するための方法、より具体的には、1つの材料成分タイプが除去された多成分混合物で形成された回折格子を含む導波路ディスプレイ、および当該回折格子を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
導波路は、波動を閉じ込め、導く(すなわち、波動が伝播することができる空間領域を制限する)能力を伴う構造と称することができる。1つのサブクラスは、電磁波、典型的には、可視スペクトルでのそれらを導くことができる構造である、光導波路を含む。導波路構造は、多数の異なる機構を使用して、波動の伝播経路を制御するように設計することができる。例えば、平面導波路は、回折格子を利用し、入射光を回折して導波路構造内に結合するように設計することができ、その結果、内部結合された光は、全反射(TIR)を介して平面構造内で進み続けることができる。
【0004】
導波路の作製は、導波路内または導波路の表面上のホログラフィック光学素子の記録を可能にする材料系の使用を含むことができる。そのような材料の1つのクラスは、光重合性モノマーおよび液晶を含有している混合物である、ポリマー分散型液晶(PDLC)混合物を含む。そのような混合物のさらなるサブクラスは、ホログラフィックポリマー分散型液晶(HPDLC)混合物を含む。体積位相回折格子などのホログラフィック光学素子は、2つの相互にコヒーレントなレーザービームを材料に照射することによって、そのような液体混合物中に記録することができる。記録プロセスの間、モノマーは、重合し、混合物は、光重合誘発相分離を受け、クリアなポリマーの領域が点在する、液晶(LC)微小液滴が密集した領域を形成する。交互する液晶豊富な領域と液晶枯渇の領域は、格子の縞面を形成する。
【0005】
上記に説明されたものなどの導波路光学系は、様々なディスプレイおよびセンサー用途に考慮することができる。多くの用途では、複数の光学機能をエンコードする1つ以上の回折格子層を含む導波路は、様々な導波路アーキテクチャおよび材料系を使用して実現することができ、拡張現実(AR)および仮想現実(VR)のための接眼ディスプレイ、航空および道路輸送のためのコンパクトヘッドアップディスプレイ(HUD)、ならびに生体認証およびレーザーレーダー(LIDAR)用途のためのセンサーでの新たな革新を可能にする。これらの用途の多くが消費者製品を対象とするため、大量のホログラフィック導波路を製造するための効率的で低コストの手段に対する要求が高まっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
多くの実施形態は、ポリマー回折格子構造、それらの設計、製造方法、および材料を対象とする。
【0007】
様々な実施形態は、
・当該導波路中を全反射で伝播する光を回折するためのポリマー回折格子構造を支持する導波路を含む導波路ベースのデバイスを対象とし、
・ポリマー回折格子構造は、
○ポリマーネットワークと、
○ポリマーネットワークの隣接部分間の空隙と、を備える。
【0008】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー回折格子構造は、ポリマーネットワークの隣接部分間に等方性材料をさらに含み得、等方性材料は、ポリマーネットワークの屈折率よりも高いか、または低い屈折率を有する。
【0009】
さらに様々な他の実施形態では、等方性材料は、ポリマーネットワークの隣接部分間の空間の底部部分の空間を占有し得、空気が、等方性材料の上面の上方から変調深さまでの空間を占有し得る。
【0010】
さらに様々な他の実施形態では、等方性材料は、複屈折結晶材料を含み得る。
【0011】
さらに様々な他の実施形態では、複屈折結晶材料は、液晶材料を含み得る。
【0012】
さらに様々な他の実施形態では、複屈折結晶材料は、ポリマーよりも高い屈折率の材料であってもよい。
【0013】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー回折格子構造は、可視光の波長よりも大きい変調深さを有し得る。
【0014】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー回折格子構造は、変調深さおよび回折格子ピッチを含み得、変調深さは、回折格子ピッチよりも大きい。
【0015】
さらに様々な他の実施形態では、導波路は、2つの基板を含み得、ポリマー回折格子構造は、2つの基板の間に挟まれるか、またはいずれかの基板の外面上に位置決めされ得る。
【0016】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマーネットワークのブラッグフリンジ間隔は、0.35μm~0.8μmであってもよく、ポリマーネットワークの回折格子深さは、1μm~3μmであってもよい。
【0017】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマーネットワークの回折格子深さとブラッグフリンジ間隔との比は、1:1~5:1であってもよい。
【0018】
さらに様々な他の実施形態では、導波路ディスプレイは、画像生成ユニットをさらに含み得、ポリマー回折格子構造は、導波路回折格子を含み得る。
【0019】
さらに様々な他の実施形態では、導波路回折格子は、多重回折格子として構成され得る。
【0020】
さらに様々な他の実施形態では、導波路回折格子は、複数の画像を含む画像生成ユニットからの光を受け取るように構成され得る。
【0021】
さらに様々な他の実施形態では、導波路回折格子は、導波路から光を外結合するように構成され得る。
【0022】
さらに様々な他の実施形態では、導波路回折格子は、ビームエキスパンダとして構成され得る。
【0023】
さらに様々な他の実施形態では、導波路回折格子は、画像生成ユニットから生成された画像データを含む光を内結合するように構成され得る。
【0024】
さらに様々な他の実施形態では、導波路回折格子は、高効率でS偏光光を内結合するようにさらに構成され得る。
【0025】
さらに様々な他の実施形態では、回折格子は、ブラッグ角度で70%~95%の効率でS偏光光を内結合するようにさらに構成され得る。
【0026】
さらに様々な他の実施形態では、回折格子は、ブラッグ角度で25%~50%の効率でP偏光光を内結合するようにさらに構成され得る。
【0027】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマーネットワークと空隙との間の屈折率の差は、0.25~0.4であってもよい。
【0028】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマーネットワークと複屈折結晶材料との間の屈折率の差は、0.05~0.2であってもよい。
【0029】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー回折格子構造は、二次元回折格子構造または三次元回折格子構造を含み得る。
【0030】
さらに様々な他の実施形態では、導波路ディスプレイは、別の回折格子構造をさらに含み得る。
【0031】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー回折格子構造は、内結合する回折格子を含み得、別の回折格子構造は、ビームエキスパンダまたは外結合する回折格子を備える。
【0032】
さらに、様々な実施形態は、
・当該導波路中を全反射で伝播する光を回折するためのポリマー回折格子構造を支持する導波路を含む導波路ディスプレイを対象とし、
〇ポリマー回折格子構造は、
■ポリマーネットワークと、
■ポリマーネットワークの隣接部分間の複屈折結晶材料であって、複屈折結晶材料が、ポリマーよりも高い屈折率を有する、複屈折結晶材料と、を含む。
【0033】
さらに、様々な実施形態は、深い表面レリーフ回折格子(SRG)を作製するための方法を対象とし、この方法は、
・モノマーと液晶との混合物を提供することと、
・基板を提供することと、
・基板の表面上に混合物の層をコーティングすることと、
・層にホログラフィック記録ビームを当てて、交互するポリマーリッチ領域および液晶リッチ領域を備えるホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を形成することと、
・液晶リッチ領域の液晶の少なくとも一部分を除去して、ポリマー表面レリーフ回折格子を形成することと、を含む。
【0034】
さらに様々な他の実施形態では、モノマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニル、イソシネート、チオール、イソシアネート-アクリレート、および/またはチオリンを含む。
【0035】
さらに様々な他の実施形態では、混合物は、光開始剤、共開始剤、または追加の添加剤のうちの少なくとも1つをさらに含み得る。
【0036】
さらに様々な他の実施形態では、チオールは、チオール-ビニル-アクリレートを含み得る。
【0037】
さらに様々な他の実施形態では、光開始剤は、感光性成分を含み得る。
【0038】
さらに様々な他の実施形態では、感光性成分は、色素および/またはラジカル発生剤を含み得る。
【0039】
さらに様々な他の実施形態では、モノマーと液晶との混合物を提供することは、
・モノマーと、液晶と、光開始剤、共開始剤、多官能性チオール、または追加の添加剤のうちの少なくとも1つと、を混合することと、
・混合物を、22℃以下の温度で、光のない場所に保管することと、
・追加のモノマーを添加することと、
・0.6μm以下のフィルタを通して混合物を濾過することと、
・濾過された混合物を光のない場所に保管することと、を含み得る。
【0040】
さらに様々な他の実施形態では、基板は、ガラス基板またはプラスチック基板を含み得る。
【0041】
さらに様々な他の実施形態では、基板は、透明基板を含み得る。
【0042】
さらに様々な他の実施形態では、方法は、混合物を、内部寸法を維持するための1つ以上のスペーサを用いて基板と別の基板との間に挟むことをさらに含み得る。
【0043】
さらに様々な他の実施形態では、方法は、別の基板の一方の表面上に非粘着剥離層を被着することをさらに含み得る。
【0044】
さらに様々な他の実施形態では、非粘着剥離層は、フルオロポリマーを含み得る。
【0045】
さらに様々な他の実施形態では、方法は、液晶リッチ領域を液晶材料で再充填することをさらに含み得る。
【0046】
さらに様々な他の実施形態では、液晶材料は、以前に除去された液晶とは異なる分子構造を有し得る。
【0047】
さらに様々な他の実施形態では、液晶の少なくとも一部分を除去することは、液晶リッチ領域の液晶の実質的にすべてを除去することを含み得る。
【0048】
さらに様々な他の実施形態では、液晶の少なくとも一部分を除去することは、ポリマーリッチ領域に液晶の少なくとも一部分を残すことをさらに含み得る。
【0049】
さらに様々な他の実施形態では、本方法は、深いSRGの上に保護層を被着することをさらに含み得る。
【0050】
さらに様々な他の実施形態では、保護層は、反射防止層を含み得る。
【0051】
さらに様々な他の実施形態では、保護層は、ケイ酸塩または窒化ケイ素を含み得る。
【0052】
さらに様々な他の実施形態では、保護層を被着することは、深いSRG上に保護層を堆積することを含み得る。
【0053】
さらに様々な他の実施形態では、保護層を堆積することは、化学気相堆積を含み得る。
【0054】
さらに様々な他の実施形態では、化学気相堆積は、ナノコーティングプロセスであってもよい。
【0055】
さらに様々な他の実施形態では、保護層は、パリレンコーティングを含み得る。
【0056】
さらに様々な他の実施形態では、液晶リッチ領域は、液晶リッチ領域の液晶の少なくとも一部分を除去した後の空隙を含み得る。
【0057】
さらに様々な他の実施形態では、方法は、空隙に真空を作り出すこと、または空隙を不活性ガスで充填することをさらに含み得る。
【0058】
さらに様々な他の実施形態では、液晶の少なくとも一部分を除去することは、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を溶剤で洗浄することを含み得る。
【0059】
さらに様々な他の実施形態では、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を洗浄することは、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を溶剤に浸漬することを含み得る。
【0060】
さらに様々な他の実施形態では、溶剤は、イソプロピルアルコールを含み得る。
【0061】
さらに様々な他の実施形態では、溶剤は、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を洗浄しながら、室温よりも低い温度で保持され得る。
【0062】
さらに様々な他の実施形態では、液晶の少なくとも一部分を除去することは、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を高流量空気源で乾燥させることをさらに含み得る。
【0063】
さらに様々な他の実施形態では、方法は、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を硬化させることをさらに含み得る。
【0064】
さらに様々な他の実施形態では、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を硬化させることは、ホログラフィックポリマー分散型液晶回折格子を約1時間の期間にわたって低強度白色光に曝露することを含み得る。
【0065】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー表面レリーフ回折格子は、70%~95%の効率でS偏光光を内結合するように構成され得る。
【0066】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー表面レリーフ回折格子は、25%~50%の効率でP偏光光を内結合するようにさらに構成され得る。
【0067】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマーネットワークと空隙との間の屈折率の差は、0.25~0.4であってもよい。
【0068】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマーネットワークと液晶材料との間の屈折率の差は、0.05~0.2であってもよい。
【0069】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー表面レリーフ回折格子は、0.35μm~0.8μmのブラッグフリンジ間隔、および1μm~3μmの回折格子深さを含み得る。
【0070】
さらに様々な他の実施形態では、ポリマー表面レリーフ回折格子は、1:1~5:1のブラッグフリンジ間隔と回折格子深さとの比を含み得る。
【0071】
さらに様々な他の実施形態では、モノマーと液晶との混合物中の液晶含有量は、およそ20%~50%であってもよい。
【0072】
さらに様々な他の実施形態では、モノマーと液晶との混合物中の液晶は、単体液晶(liquid crystal singles)を含み得る。
【0073】
さらに様々な他の実施形態では、単体液晶は、シアノビフェニルおよび/またはペンチルシノビフェニルを含み得る。
【0074】
さらに、様々な実施形態は、深いSRGを作製するための方法を対象とし、この方法は、
・モノマーと物質との混合物を提供することと、
・基板を提供することと、
・基板の表面上に混合物の層をコーティングすることと、
・ホログラフィック記録ビームを層に当てて、交互するポリマーリッチ領域および物質リッチ領域を備えるホログラフィックポリマー分散型回折格子を形成することと、
・物質リッチ領域の物質の少なくとも一部分を除去して、ポリマー表面レリーフ回折格子を形成することと、を含み得る。
【0075】
さらに様々な他の実施形態では、モノマーは、ホログラフィック記録ビームに対して反応性であってもよく、物質は、ホログラフィック記録ビームに対して非反応性であってもよい。
【0076】
さらに様々な他の実施形態では、モノマーおよび物質は、ホログラフィック記録ビームを当てる前に混和性混合物であり、モノマーおよび物質は、ホログラフィック記録ビームを当てた後に不混和性混合物になってもよい。
【0077】
さらに様々な他の実施形態では、物質は、液晶を含み得る。
【0078】
さらに様々な他の実施形態では、物質は、単体液晶を含み得る。
【0079】
さらに様々な他の実施形態では、物質は、溶剤、非反応性モノマー、無機物、および/またはナノ粒子を含み得る。
【0080】
さらに、様々な実施形態は、導波路ディスプレイを対象とし、
・第1の波長帯域の光を放出する発光アレイと、
・当該発光アレイからの画像変調された光を視野上に投影するためのコリメーションレンズと、
・導波路であって、
〇当該第1の波長帯域のS偏光光に対して高回折効率を有する入出力SBG、および
〇当該第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入出力SBGを支持する導波路と、を含み得る。
【0081】
さらに様々な他の実施形態では、当該導波路は、当該発光アレイによって放出される第2の波長帯域のS偏光光およびP偏光光を回折するためのSBGをさらに支持し得る。
【0082】
さらに様々な他の実施形態では、当該発光アレイは、OLEDアレイであってもよい。
【0083】
さらに様々な他の実施形態では、当該導波路は、少なくとも1つの平面内で湾曲し得る。
【0084】
さらに様々な他の実施形態では、当該導波路は、プラスチックから作製され得る。
【0085】
さらに様々な他の実施形態では、当該発光アレイは、当該導波路の湾曲した表面によって生じる波面歪みを予め補償するように空間的に歪ませられ得る。
【0086】
さらに様々な他の実施形態では、当該発光アレイは、当該導波路の湾曲した表面によって生じる波面歪みを予め補償するように、湾曲したまたは可撓性の基板上に形成され得る。
【0087】
さらに様々な他の実施形態では、当該回折格子のうちの少なくとも1つは、フォトポリマーに記録されたブラッグ回折格子、液晶およびモノマー混合物に記録するブラッグ回折格子、深い表面レリーフ回折格子、ハイブリッド表面レリーフ/ブラッグ回折格子のうちの1つであってもよい。
【0088】
さらに様々な他の実施形態では、当該導波路は、眼処方光学表面を支持し得る。
【0089】
さらに様々な他の実施形態では、当該発光は、画素アレイであって、同一のサイズのポリゴン、同一の形状のポリゴン、アレイ全体にわたってサイズが変動するポリゴン、アレイ全体にわたって形状が変動するポリゴン、ペンローズタイル、および非繰り返しパターンを形成する要素の群から選択される少なくとも1つを含む要素の多重性を使用してパターン化された画素アレイを有し得る。
【0090】
さらに、様々な実施形態は、導波路を使用して画像を形成するための方法を対象とし、この方法は、
・第1の波長帯域の光を放出する発光アレイと、コリメーションレンズと、当該第1の波長帯域のS偏光光に対して高回折効率を有する入出力回折格子を支持し、かつ当該第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入出力定格を支持する導波路と、を提供することと、
・コリメーションレンズを使用して、発光アレイによって放出された画像光をコリメートすることと、
・S回折入力回折格子を使用して、当該OLEDアレイからの画像変調されたS偏光光を、導波路の全反射経路に結合することと、
・P回折入力回折格子を使用して、当該OLEDアレイからの画像変調されたP偏光光を、導波路の全反射経路に結合することと、
・映示のために、導波路からのS偏光光をビーム拡大し、引き出すことと、
・映示のために、導波路からのP偏光光をビーム拡大し、引き出すことと、を含む。
【0091】
さらに様々な他の実施形態では、当該発光アレイは、OLEDアレイであってもよい。
【0092】
さらに様々な他の実施形態では、方法は、当該導波路によって支持される湾曲した光学表面を提供するステップと、当該発光アレイ上で画素パターンを予め歪ませるステップと、当該コリメーションレンズを使用して、予め歪んだ波面を形成するステップと、当該湾曲した光学表面で当該予め歪んだ波面の光を反射するステップと、当該湾曲した光学表面の屈折力を使用して、当該予め歪んだ波面から平面波面を形成するステップと、をさらに含み得る。
【0093】
さらに様々な他の実施形態では、当該湾曲した光学表面は、処方光学表面であってもよい。
【0094】
説明は、本発明の例示的な実施形態として提示され、本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない、以下の図およびデータグラフを参照して、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1A】本発明の実施形態による、透明基板上に堆積されたモノマーと液晶との混合物をホログラフィック露光ビームに曝露する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図1B】本発明の実施形態による、透明基板上に形成されたHPDLCブラッグ回折格子から表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図1C】本発明の実施形態による、HPDLCブラッグ回折格子から液晶を除去してポリマー表面レリーフ回折格子を形成する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図1D】本発明の実施形態による、表面レリーフ回折格子を保護層で被覆するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図2】本発明の実施形態による、透明基板上に形成されたHPDLCブラッグ回折格子からポリマー表面レリーフ回折格子を形成するための方法を概念的に例示するフローチャートである。
【
図3】ポリマー表面レリーフ回折格子または真空ブラッグ回折格子の例示的な実装態様である。
【
図4A】本発明の実施形態による、透明基板上に堆積されたモノマーと液晶との混合物をホログラフィック露光ビームに曝露する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図4B】本発明の実施形態による、透明基板上に形成されたHPDLCブラッグ回折格子から表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図4C】本発明の実施形態による、HPDLCブラッグ回折格子から液晶を除去してポリマー表面レリーフ回折格子を形成する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図4D】本発明の実施形態による、表面レリーフ回折格子を液晶で部分的に再充填してハイブリッド表面レリーフブラッグ回折格子を形成する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図4E】本発明の実施形態による、ハイブリッド表面レリーフ-ブラッグ回折格子を保護層で被覆する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップを概念的に例示している。
【
図5】本発明の実施形態による、ハイブリッド表面レリーフ-ブラッグ回折格子を形成するための方法を概念的に例示するフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態による、1マイクロメートル厚の深い表面レリーフ回折格子に対する、計算されたP偏光およびS偏光回折効率対入射角を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施形態による、2マイクロメートル厚の深い表面レリーフ回折格子に対する、計算されたP偏光およびS偏光回折効率対入射角を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施形態による、3マイクロメートル厚の深い表面レリーフ回折格子に対する、計算されたP偏光およびS偏光回折効率対入射角を示すグラフである。
【
図9A-9B】異なるチオール濃度を含む複数の実施形態の走査型電子顕微鏡画像を例示している。
【
図10A-10B】HPDLCブラッグ回折格子と、ポリマー表面レリーフ回折格子または真空ブラッグ回折格子と、を比較する画像である。
【
図11A-11B】HPDLCブラッグ回折格子と、ポリマー表面レリーフ回折格子または真空ブラッグ回折格子と、を比較する2つのプロットである。
【
図12A-12B】異なる深さを有する2つの例示的なポリマー表面レリーフ回折格子のS回折効率およびP回折効率の2つのプロットである。
【
図13A-13B】異なる初期液晶濃度で生成された様々な例示的なポリマー表面レリーフ回折格子のS回折効率およびP回折効率の2つの異なるプロットである。
【
図14A-14B】異なる初期液晶濃度で生成された様々な例示的なポリマー表面レリーフ回折格子のS回折効率およびP回折効率の2つの異なるプロットである。
【
図15】本発明の実施形態による導波路ディスプレイを概念的に例示している。
【
図16】本発明の実施形態による、空気を隔てて置かれた2つの導波路層を有する導波路ディスプレイを概念的に例示している。
【
図17】本発明の実施形態による、導波路ディスプレイのための典型的な光線経路を概念的に例示している。
【
図18】本発明の実施形態による、導波路が湾曲した光学表面を支持する導波路ディスプレイを概念的に例示している。
【
図19】本発明の実施形態による、導波路が上部および下部の湾曲した光学面表を支持する導波路ディスプレイを概念的に例示している。
【
図20】本発明の実施形態による、導波路が湾曲した光学表面を支持し、かつ入力画像を、画素アレイを使用して、湾曲した光学表面によって導入される収差を補償するために予め歪ませて提供する、導波路ディスプレイを概念的に例示している。
【
図21】本発明の実施形態による、導波路が湾曲した光学表面を支持し、かつ入力画像を、湾曲した基板によって支持された画素アレイを使用して、かつ湾曲した光学表面によって導入される収差を補償するために予め歪ませて提供する、導波路ディスプレイを概念的に例示している。
【
図22】本発明の実施形態による、S回折格子およびP回折格子を含む導波路を使用して、映示のための画像光を投影するための方法を概念的に例示するフローチャートである。
【
図23】本発明の実施形態による、光学処方表面を支持し、かつS回折格子およびP回折格子を含む導波路を使用して、映示のための画像光を投影するための方法を概念的に例示するフローチャートである。
【
図24A】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための異なるサイズおよびアスペクト比の矩形要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24B】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するためのペンローズタイルを有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24C】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための六角形要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24D】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための正方形要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24E】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するためのダイヤモンド形状要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24F】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための二等辺三角形要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24G】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための、水平に偏ったアスペクト比を有する六角形要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24H】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための、水平に偏ったアスペクト比を有する矩形要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24I】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための、水平に偏ったアスペクト比を有するダイヤモンド形状要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図24J】本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための、水平に偏ったアスペクト比を有する三角形を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【
図25】本発明の実施形態による、異なる画素が異なる放射特性を有することができるダイヤモンド形状要素を有する画素パターンの一部分を概念的に例示している。
【発明を実施するための形態】
【0096】
多様な機能を提供するために、導波路上の様々な回折格子の使用に対する関心が高まっている。これらの回折格子として、角度多重化回折格子、色多重化回折格子、折り返し回折格子、二重相互作用回折格子、回転Kベクトル回折格子、交差折り返し回折格子、モザイク状回折格子、チャープ回折格子、空間的に変動する屈折率変調を有する回折格子、空間的に変動する回折格子厚さを有する回折格子、空間的に変動する平均屈折率を有する回折格子、空間的に変動する屈折率変調テンソルを有する回折格子、および空間的に変動する平均屈折率テンソルを有する回折格子が挙げられる。特定の例では、光の様々な偏光(例えば、S偏光およびP偏光)の回折のための回折格子は、有益であり得る。S偏光光またはP偏光光のいずれかを回折する回折格子を有することが特に有利であろう。この技術の具体的な用途は、拡張現実ディスプレイおよび仮想現実ディスプレイなどの導波路ベースのディスプレイを含む。一例は、S偏光光またはP偏光光のうちの一方または両方を導波路に入力するために使用され得る入力回折格子である。しかしながら、多くの場合、S偏光光およびP偏光光のいずれかを回折する回折格子を有することが有利であろう。例えば、OLED光源などの非偏光光源を使用する導波路ディスプレイは、S偏光光とP偏光光との両方を生成し、したがって、S偏光光とP偏光光との両方を回折することができる回折格子を有することが有利であろう。
【0097】
1つの特定のクラスの回折格子は、P偏光光またはS偏光光のいずれかを回折するために使用され得る表面レリーフ回折格子(SRG)を含む。別のクラスの回折格子は、通常、P偏光選択性であり、有機発光ダイオード(OLED)および発光ダイオード(LED)などの非偏光光源で50%の効率損失につながる表面レリーフブラッグ回折格子(SBG)である。S偏光回折格子とP偏光回折格子との合成物を混成することは、P回折格子のみを使用する導波路よりも理論的に2倍の改善を提供することができる。したがって、高効率のS偏光回折格子を有することが有利であろう。多くの実施形態では、S偏光回折格子を、ホログラフィックフォトポリマーに形成されたブラッグ回折格子によって提供することができる。いくつかの実施形態では、S偏光回折格子を、液晶(LC)ダイレクタを再配列させるための配列層または他のプロセスを使用して改変された複屈折を有するホログラフィックポリマー分散型液晶(HPDLC)に形成されたブラッグ回折格子によって提供することができる。いくつかの実施形態では、S偏光回折格子を、相分離下でS回折格子に自然に組織化する液晶、モノマー、および他の添加剤を使用して形成することができる。いくつかの実施形態では、これらのHPDLC回折格子は、優れたS偏光回折効率を有する深いSRGを形成し得る。
【0098】
1つのクラスの深いSRGは、高いS回折効率(最大99%)および低いP回折効率を呈し得、かつ導波路の入力回折格子として実装され得る、ポリマー-空気SRGまたは真空ブラッグ回折格子(EBG)である。このような回折格子を、液晶とモノマーとの混合物のホログラフィック相分離から形成されるSBGから液晶を除去することによって、形成することができる。このようなプロセスによって形成される深いSRGは、典型的には、0.35~0.80マイクロメートルのブラッグフリンジ間隔を有する、1~3マイクロメートルの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態では、回折格子深さとブラッグフリンジ間隔との比は、1:1~5:1であってもよい。容易に認識することができるように、そのような回折格子を、所与の用途の特定の要件に応じた異なる寸法で形成することができる。SRGの厚さが、結果として得られる異なる回折効率をどのようにもたらし得るかの例が、
図6~8に関連して記載される。
【0099】
多くの実施形態では、深いSRGの条件は、高回折格子深さ対フリンジ間隔比によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、深いSRGを形成するための条件は、回折格子深さが回折格子周期のおよそ2倍であることである。Kogelnik理論を使用してこのような深いSRGをモデリングすることは、典型的にはマクスウェルの方程式の数値解を伴う、より高度なモデリングの必要性を回避して、かなり正確な回折効率の推定値を与えることができる。HPDLC回折格子から除去可能な液晶を使用して達成され得る回折格子深さは、深いSRG(典型的には、回折格子周期350~460nmに対して250~300nmの深さのみを提供する)の条件を達成することができない従来のナノインプリントリソグラフィ法を使用して可能なものを大幅に上回る。(Pekka Ayras,Pasi Saarikko,Tapani Levola,”Exit pupil expander with a large field of view based on diffractive optics”,Journal of the SID 17/8,(2009),pp659-664)。ここで強調するべきことは、本出願内では、S偏光回折する深いSRGが強調されているが、深いSRGは、以下で考察するように、回折格子処方の厚さ、特に回折格子深さに応じて、様々な偏光応答特性を提供することができることである。したがって、深いSRGを、多様な異なる用途で実装することができる。
【0100】
文献は、深いSRGとブラッグ回折格子との等価性を支持している。1つの参考文献(Kiyoshi Yokomori,“Dielectric surface-relief gratings with high diffraction efficiency“Applied Optics;Vol.23;Issue 14;(1984);pp.2303-2310)は、マクスウェルの方程式を数値的に解くことによる誘電体表面レリーフ回折格子の回折特性の検討を開示している。回折格子周期の約2倍の溝深さを有する回折格子の回折効率は、体積位相型回折格子の効率と同等であることが分かった。Yokomoriによるモデリングは、フォトレジストに位相干渉方式によって記録された誘電体表面レリーフ回折格子が、最大94%(スループット効率85%)の高い回折効率を備え得ることを予測した。深いSRGとブラッグ回折格子との等価性は、Golubによる別の論文(M.A.Golub,A.A.Friesem,L.Eisen“Bragg properties of efficient surface relief gratings in the resonance domain”,Optics Communications;235;(2004);pp261-267)でも考察されている。Gerritsenによるさらなる論文は、フォトレジストでのブラッグ様SRGの形成を考察している(Gerritsen HJ,Thornton DK,Bolton SR;“Application of Kogelnik’s two-wave theory to deep,slanted,highly efficient,relief transmission gratings”Applied Optics;Vol.30;Issue 7;(1991);pp 807-814)。
【0101】
本開示の多くの実施形態は、スラント型回折格子のためのナノインプリントリソグラフィプロセス粒子に対して非常に有意な利点を提供することができる、深いSRGなどのSRGを作るための方法を提供する。任意の複雑さのブラッグ回折格子を、干渉、またはマスターおよび接触コピー複製を使用して作ることができる。いくつかの実施形態では、LCを除去した後、SRGを、LCに対して異なる特性を有する材料で埋め戻すことができる。これにより、回折格子形成に必要な回折格子化学によって制限されない変調特性を有するブラッグ回折格子が可能になる。
【0102】
いくつかの実施形態では、埋め戻し材料は、LC材料でなくてもよい。いくつかの実施形態では、埋め戻し材料は、導波路の角度帯域幅を増加させ得る、空気よりも高い屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、深いSRGを、LCで部分的に埋め戻して、ハイブリッドSRG/ブラッグ回折格子を提供することができる。代替的に、いくつかの実施形態では、再充填ステップを、HPDLCのLCリッチ領域からLCのわずかな部分を除去して、ハイブリッドSRG/ブラッグ回折格子を提供することによって、回避することができる。再充填アプローチは、異なるLCを使用してハイブリッド回折格子を形成することができるという利点を有する。この材料を、インクジェット堆積プロセスを使用して堆積することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して、フォトニック結晶を形成し得る。フォトニック結晶を実装して、ブラッグ回折格子を含む多種多様な回折構造を形成し得る。ブラッグ回折格子を回折格子として使用して、限定されるものではないが、入力回折格子、出力回折格子、ビーム拡大回折格子、2つ以上の原色の回折を含む機能を提供し得る。フォトニック結晶を、基本的なブラッグ回折格子では達成できない回折能力を有することができる三次元回折格子構造とすることができる。フォトニック結晶は、すべての2Dおよび3Dのブラベー格子を含む多くの構造を含むことができる。そのような構造の記録は、3つ以上の記録ビームから利益を得ることができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、フォトニック結晶を組み込んだ導波路を、各々が固有のスペクトル帯域幅を回折するための回折格子処方を有する、導波路のスタックで配置することができる。多くの実施形態では、液晶抽出によって形成されるフォトニック結晶は、深いSRGを提供する。多くの実施形態では、液晶抽出プロセスを使用して形成された深いSRGは、典型的には、0.35ミクロン~0.80ミクロンのブラッグフリンジ間隔を有する1~3ミクロンの範囲の厚さを有することができる。多くの実施形態では、深いSRGの条件は、高回折格子深さ対フリンジ間隔比によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、深いSRGを形成するための条件は、回折格子深さが回折格子周期のおよそ2倍であり得ることである。ここで強調するべきことは、本出願内では、S偏光回折する深いSRGに主に関心があるが、深いSRGは、以下で考察するように、回折格子処方の厚さ、特に回折格子深さに応じて、様々な偏光応答特性を提供することができることである。深いSRGを従来のブラッグ回折格子と併用して、導波路ディスプレイの色、均一性、および他の特性を向上させることもできる。
【0105】
深いSRGは、レーザーホログラフィック露光(O.Sakhno,L.M.Goldenberg,M.Wegener,J.Stumpe,“Deep surface relief grating in azobenzene-containing materials using a low intensity 532 nm laser”,Optical Materials:X,1,(2019),100006,pp3-7を使用して、ガラス質モノマーアゾベンゼン材料で作製されている。Sakhnoの参考文献はまた、2つの直交する直線偏光レーザービームを使用してSRGをホログラフィックフォトポリマーに記録することができる方法を開示している。
【0106】
この開示は、特にスラント型回折格子のための、ナノインプリントリソグラフィプロセスに対して非常に有意な利点を提供することができる表面レリーフ回折格子を作るための方法を提供する。任意の複雑さのブラッグ回折格子を、干渉、またはマスターおよび接触コピー複製を使用して作ることができる。いくつかの実施形態では、LCを除去した後、SRGを、LCに対して異なる特性を有する材料で埋め戻すことができる。これにより、回折格子形成に必要な回折格子化学によって制限されない変調特性を有するブラッグ回折格子が可能になる。いくつかの実施形態では、SRGを、LCで部分的に埋め戻して、ハイブリッドSRG/ブラッグ回折格子を提供することができる。代替的に、いくつかの実施形態では、再充填ステップを、HPDLCのLCリッチ領域からLCのわずかな部分を除去して、ハイブリッドSRG/ブラッグ回折格子を提供することによって、回避することができる。再充填アプローチは、異なるLCを使用してハイブリッド回折格子を形成することができるという利点を有する。この材料を、発明者らによる以前の出願に開示されているように、インクジェットプロセスを使用して堆積することができる。いくつかの実施形態では、再充填材料は、回折格子の回折効率を増加させ得る、空気よりも高い屈折率を有し得る。
【0107】
本開示は、深いSRGを作製する文脈において行われてきたが、本明細書に記載される手法を使用して多くの他の回折格子構造を製造し得ることは認識される。例えば、回折格子深さが回折格子周波数よりも小さいSRGを含む任意のタイプのSRG(例えば、ラマン-ナス回折格子)が、同様に作製され得る。
【0108】
図1A~1Dは、実施形態による、深いSRGまたはEBGを作製するための方法で使用され得る処理装置を例示している。
図1Aは、本発明の実施形態による、透明基板192上に堆積されたモノマーと液晶との混合物191をホログラフィック露光ビーム193、194に曝露する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップで使用され得る装置190Aを概念的に例示している。いくつかの例では、混合物はまた、光開始剤、共開始剤、多官能性チオール、接着促進剤、界面活性剤、および/または追加の添加剤のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、モノマーは、イソシアネート-アクリレート系またはチオレン系であってもよい。いくつかの実施形態では、液晶は、完全液晶混合物、または完全液晶混合物の一部分のみを含む単体液晶であってもよい。単体液晶の様々な例としては、シアノビフェニルまたはペンチルシアノビフェニルの一方または両方が挙げられる。いくつかの実施形態では、液晶は、曝露中にモノマーと相分離する別の物質に取り替えられて、ポリマーリッチ領域および物質リッチ領域を形成し得る。有利に、物質および単体液晶は、以下に記載されるように、後のステップで除去される完全液晶混合物に対する費用対効果の高い代替物であり得る。
【0109】
図1Bは、本発明の実施形態による、ホログラフィック露光ビームを使用して、透明基板上に形成されたHPDLCブラッグ回折格子195から表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップで使用され得る装置190Bを概念的に例示している。ホログラフィック露光ビームは、いくつかのエリアにおいてモノマーをポリマーに変換し得る。ホログラフィック露光ビームは、交差記録ビームを含み、交互する明照射領域および暗照射領域を含み得る。重合駆動拡散プロセスは、モノマーおよびLCの反対方向への拡散を引き起こし、モノマーは、ゲル化を受けて(明領域に)ポリマーリッチ領域を形成し、液晶は、ポリマーマトリックスにトラップされて(暗領域に)液晶リッチ領域を形成し得る。
【0110】
図1Cは、本発明の実施形態による、
図1BのHPDLCブラッグ回折格子から液晶を除去してポリマー表面レリーフ回折格子を形成する、深いポリマー表面レリーフ回折格子196またはEBGを作製するための方法のステップで使用され得る装置190Cを概念的に例示している。有利に、ポリマー表面レリーフ回折格子196は、深いSRGを形成するために、比較的小さい回折格子周期を有する大きい深さを含み得る。液晶は、イソプロピルアルコール(IPA)などの溶剤で洗浄することによって除去され得る。溶剤は、液晶を洗い流すには十分に強いが、ポリマーを維持するには十分に弱いのがよい。いくつかの実施形態では、溶剤は、回折格子を洗浄する前に、室温未満で冷却され得る。
図1Dは、本発明の実施形態による、ポリマー表面レリーフ回折格子を保護層197で被覆する、ポリマー表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップで使用され得る装置190Dを概念的に例示している。
【0111】
図2は、実施形態による、透明基板上に形成されたHPDLCブラッグ回折格子から深いSRGを形成するための方法を概念的に例示している。示されるように、深いSRGまたはEBGを形成する方法200が提供される。フロー図を参照すると、方法200は、少なくとも1つのモノマーと少なくとも1つの液晶との混合物を提供すること(201)を含む。少なくとも1つのモノマーは、イソシアネート-アクリレートモノマーまたはチオレンを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの液晶は、完全液晶混合物であってもよく、または液晶混合物の単一成分などの液晶混合物の一部分のみを含み得る単体液晶であってもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの液晶は、曝露中にモノマーと相分離し得る溶液に置き換えられ得る。このような溶液の基準は、曝露中にモノマーと相分離する能力、硬化後および洗浄中の除去の容易さ、および取り扱いの容易さを含み得る。例示的な代替溶液としては、溶剤、非反応性モノマー、無機物、およびナノ粒子が挙げられる。
【0112】
モノマーと液晶との混合物を提供することはまた、以下のもの:光開始剤または共開始剤などの開始剤、多官能性チオール、色素、接着促進剤、界面活性剤、および/または他の架橋剤などの追加の添加剤、のうちの1つ以上を、少なくとも1つのモノマーおよび液晶と混合することを含み得る。この混合物は、共開始剤がモノマーとチオールとの間の反応を触媒することを可能にするために、沈静され得る。沈静期間は、暗い空間または赤色光(例えば、赤外線)のある空間で、およそ8時間にわたる低温(例えば、20℃)で行われ得る。沈静後、追加のモノマーが、モノマーに混合され得る。次いで、この混合物は、小孔径(例えば、0.45μmの孔径)を有するフィルタを通して漉し取るか、または濾過され得る。漉し取った後、この混合物は、コーティングの前に、暗い空間または赤色光のある空間に、室温で保管され得る。
【0113】
次に、透明基板を提供することができる(202)。特定の実施形態では、透明基板は、ガラス基板またはプラスチック基板であってもよい。基板の表面上に、混合物の層を堆積するか、またはコーティングすることができる(203)。いくつかの実施形態では、混合物を、内部寸法を維持するためのガラススペーサを使用して、透明基板と別の基板との間に挟む。混合物が挟まれる前に、非粘着性コーティングは、この別の基板に被着され得る。非粘着性コーティングは、OPTOOL UD509(Daikin Chemicals製)、Dow Corning 2634、Fluoropel(Cytonix製)、およびEC200(PPG Industries社製)などのフルオロポリマーを含み得る。混合層にホログラフィック記録ビームを当てることができる(204)。ホログラフィック記録ビームは、LCおよびポリマーの相分離を引き起こし得る2ビーム干渉パターンであってもよい。ホログラフィック記録ビームに応答して、液体モノマーは、固体ポリマーに変化するのに対して、中性非反応性物質(例えば、LC)は、重合によって駆動される化学ポテンシャルの変化に応答してホログラフィック露光中に拡散する。LCは、中性非反応性物質の1つの実装態様であり得るが、他の物質もまた、使用され得る。物質およびモノマーは、ホログラフィック露光の前に混和性混合物を形成し、ホログラフィック露光時に非混和性になり得る。
【0114】
ホログラフィック記録ビームを当てた後に、混合物は、硬化され得る。硬化プロセスは、混合物が完全に硬化するまでの期間、混合物を低強度白色光の下に放置することを含み得る。低強度白色光はまた、フォトブリーチ色素プロセスを引き起こし得る。したがって、交互するポリマーリッチ領域および液晶リッチ領域を有するHPDLC回折格子を形成することができる(205)。いくつかの実施形態では、硬化プロセスは、2時間以下で行われ得る。硬化後、基板のうちの1つは、HPDLC回折格子を露光することによって除去され得る。有利に、非粘着性コーティングは、HPDLC回折格子を残したまま、他の基板を除去することを可能にし得る。
【0115】
HPDLC回折格子は、液晶リッチ領域およびポリマー領域の交互する区画を含み得る。深いSRGとして使用され得るポリマー表面レリーフ回折格子またはEBGを形成するために、液晶リッチ領域の液晶を除去することができる(206)。液晶は、回折格子をIPAなどの溶剤中に穏やかに浸漬することによって除去され得る。IPAは、冷却され得、回折格子がIPAに浸漬されている間、室温よりも低い温度に保たれ得る。次いで、回折格子を溶剤から除去し、乾燥させる。いくつかの実施形態では、回折格子は、圧縮空気などの高流量空気源を使用して乾燥される。LCが回折格子から除去された後、ポリマー-空気表面レリーフブラッグ回折格子が形成される。
【0116】
図1A~1Dに示されるように、形成された表面レリーフ回折格子を、保護層でさらに被覆することができる。いくつかの事例では、保護層は、耐傷能力を有する水分および酸素バリアであってもよい。いくつかの事例では、保護層は、かつて除去されたLCが存在した空隙領域を充填しないコーティングであってもよい。コーティングは、低温プロセスを使用して堆積され得る。いくつかの実装態様では、保護層は、反射防止(AR)特性を有し得る。コーティングは、ケイ酸塩または窒化ケイ素であってもよい。コーティングプロセスは、ナノコーティングプロセスなどのプラズマアシスト化学気相堆積(CVD)プロセスによって予め形成され得る。コーティングは、パリレンコーティングであってもよい。保護層は、ガラス層であってもよい。保護層が実装される前に、真空または不活性ガスが、かつて除去されたLCが存在したギャップを充填し得る。いくつかの実施形態では、コーティングプロセスは、LC除去プロセス(206)と統合され得る。例えば、コーティング材料は、回折格子からLCを洗浄するために使用される溶剤と混合され得る。
【0117】
図3は、導波路3002上に実装されたポリマー-空気表面レリーフブラッグ回折格子3000の例示的な実施形態の断面概略図を例示している。ポリマー-空気表面レリーフブラッグ回折格子3000は、周期的ポリマー区画3004aを含む。隣接するポリマー区画は、空気区画3004bを挟んでいる。空気区画3004bは、ポリマー区画3004aによって挟まれている。空気区画3004bおよびポリマー区画3004aは、異なる屈折率を有する。有利に、ポリマー空気表面レリーフブラッグ回折格子3000は、深いSRGを形成し得る高回折格子深さ3006a対ブラッグフリンジ間隔3006b比で形成され得る。以前に考察したように、深いSRGは、典型的なSRG内に存在しない場合がある高いS回折効率などの多くの有益な品質を呈し得る。
【0118】
一例では、ポリマー空気表面レリーフブラッグ回折格子3000は、0.35μm~0.8μmのブラッグフリンジ間隔3006bと、1μm~3μmの回折格子深さと、を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリマー区画3004aは、
図2に関連して記載されるステップ206の間に液晶が完全に除去されないとき、少なくともいくらかの残留液晶を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーリッチ領域内の残留LCの存在は、最終的なポリマーSRGの屈折率変調を増加させ得る。いくつかの実施形態では、空気区画3004bは、液晶がステップ206の間にこれらの空気区画3004bから完全に除去されない場合に、いくらかの残留液晶を含み得る。いくつかの実施形態では、空気区画3004b内にいくらかの残留液晶を残すことによって、
図4~5に関連して記載されるようなハイブリッド回折格子が形成され得る。
【0119】
上で考察したように、多くの実施形態では、本発明はまた、ハイブリッド表面リリーフ/ブラッグ回折格子を作製するための方法を提供する。
図4Aは、本発明の実施形態による、透明基板212上に堆積されたモノマーと液晶との混合物211がホログラフィック露光ビーム213、214に曝露されるハイブリッド表面レリーフ回折格子(ハイブリッドSRG)を作製するための方法のステップで使用され得る装置210Aを概念的に例示している。
図4Bは、本発明の実施形態による、ホログラフィック露光ビームを使用して、透明基板上に形成されたHPDLCブラッグ回折格子215からハイブリッドSRGを作製するための方法のステップで使用され得る装置210Bを概念的に例示している。
図4Cは、本発明の実施形態による、HPDLCブラッグ回折格子から液晶を除去してポリマー-空気SRG216を形成する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップで使用され得る装置210Cを概念的に例示している。これらのポリマー-空気SRG216またはEBGは、深いSRGであってもよい。
図4A~4Cに例示され、かつこれらに関連して記載されるステップは、ポリマー-空気SRGを形成するためのプロセスにおいて、
図2A~2Cに例示され、かつこれらに関連して記載されるステップに概ね対応し、したがって、以前の説明は、
図4A~4Cに適用可能であることが認識される。
【0120】
加えて、
図4Dは、ハイブリッド回折格子を形成するために実行され得る追加のステップを概念的に例示している。本発明の実施形態による、表面レリーフ回折格子を少なくとも部分的に液晶で再充填してハイブリッドSRG217を形成する表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップにおいて、装置210Dを使用することができる。再充填された液晶は、
図4Cで以前に除去された、以前に除去された液晶とは異なる一貫性を有し得る。さらに、
図3Cで除去された液晶は、ハイブリッドSRG217を形成する代替的な方法で部分的にのみ除去され得ることが認識される。加えて、
図4Eは、本発明の実施形態による、
図4Dに例示されるステップで形成されたハイブリッドSRG217を保護層218で被覆する、表面レリーフ回折格子を作製するための方法のステップにおいて使用され得る装置210Eを概念的に例示している。
【0121】
図5は、本発明の実施形態による、透明基板上に形成されたHPDLCブラッグ回折格子からハイブリッド表面レリーフブラッグ回折格子を形成するための例示的な方法を示すフローチャートである。示されるように、ハイブリッド表面レリーフブラッグ回折格子を形成する方法220が提供される。フロー図を参照すると、方法220は、少なくとも1つのモノマーと少なくとも1つの液晶との混合物を提供すること(221)を含む。少なくとも1つのモノマーは、イソシアネート-アクリレートモノマーを含み得る。モノマーと液晶との混合物を提供することはまた、以下のもの:光開始剤、共開始剤、多官能性チオール、および/または追加の添加剤、のうちの1つ以上を、少なくとも1つのモノマーおよび液晶と混合することを含み得る。この混合物は、共開始剤がモノマーとチオールとの間の反応を触媒することを可能にするように、沈静させ得る。沈静期間は、暗い空間または赤色光(例えば、赤外線)のある空間で、およそ8時間にわたる低温(例えば、20℃)で行われ得る。沈静後、追加のモノマーが、モノマーに混合され得る。次いで、この混合物は、小孔径(例えば、0.45μmの孔径)を有するフィルタを通して漉し取るか、または濾過され得る。漉し取った後、この混合物は、コーティングの前に、暗い空間または赤色光のある空間に、室温で保管され得る。
【0122】
次に、透明基板を提供することができる(222)。特定の実施形態では、透明基板は、ガラス基板またはプラスチック基板であってもよい。混合物を基板上にコーティングする前に、非粘着性コーティングが、透明基板に被着され得る。基板の表面上に、混合物の層を堆積することができる(223)。いくつかの実施形態では、混合物を、内部寸法を維持するためのガラススペーサを使用して、透明基板と別の基板との間に挟む。混合層にホログラフィック記録ビームを当てることができる(224)。ホログラフィック記録ビームは、LCおよびポリマーの相分離を引き起こし得る2ビーム干渉パターンであってもよい。ホログラフィック記録ビームを当てた後に、混合物は、硬化され得る。硬化プロセスは、混合物が完全に硬化する下での期間、混合物を低強度白色光の下に放置することを含み得る。低強度白色光はまた、フォトブリーチ色素プロセスを引き起こし得る。したがって、交互するポリマーリッチ領域および液晶リッチ領域を有するHPDLC回折格子を形成することができる(225)。いくつかの実施形態では、硬化プロセスは、2時間以下で行われ得る。硬化後、基板のうちの1つは、HPDLC回折格子を露光することによって除去され得る。
【0123】
HPDLC回折格子は、液晶リッチ領域およびポリマー領域の交互する区画を含み得る。深いSRGの形態であるポリマー表面レリーフ回折格子またはEBGを形成するために、液晶リッチ領域の液晶を除去することができる(226)。液晶は、回折格子をイソプロピルアルコール(IPA)などの溶剤中に穏やかに浸漬することによって除去され得る。回折格子がIPAに浸漬されている間、IPAは、より低い温度に保たれ得る。回折格子は、溶剤から取り出されたそれらであり、乾燥される。いくつかの実施形態では、回折格子は、圧縮空気などの高流量空気源を使用して乾燥される。LCが回折格子から除去された後、ポリマー-空気表面レリーフブラッグ回折格子が形成される。
図5のステップ221~226は、ポリマー-空気SRGを形成する際の
図2に関連して記載されたステップに概ね対応し、したがって、これらの説明は、
図5に適用可能である。
【0124】
さらに、方法220は、ハイブリッドSRGを形成するために、クリアされた液晶リッチ領域を液晶で少なくとも部分的に再充填すること(227)を含む。再充填された液晶は、ステップ226で以前に除去された、以前に除去された液晶とは異なる一貫性を有し得る。さらに、ステップ226で除去された液晶は、ハイブリッドSRGを形成する代替的な方法で部分的にのみ除去され得ることが認識される。有利に、ハイブリッドSRGは、SRGの特定の有益な特徴を調整する能力を提供し得る。少なくともいくらかの液晶がSRG内に含まれることによって改善され得る1つの特定の特徴は、ヘイズ特性の低下である。
【0125】
図4Eに示されるように、形成された表面レリーフ回折格子を、保護層でさらに被覆することができる。いくつかの事例では、保護層は、耐傷能力を有する水分および酸素バリアであってもよい。いくつかの事例では、保護層は、かつて除去されたLCが存在した空隙領域を充填しないコーティングであってもよい。コーティングは、低温プロセスを使用して堆積され得る。いくつかの実装態様では、保護層は、反射防止(AR)特性を有し得る。コーティングは、ケイ酸塩または窒化ケイ素であってもよい。コーティングプロセスは、プラズマ処理ナノコーティングプロセスなどのプラズマアシスト化学気相堆積(CVD)プロセスによって予め形成され得る。コーティングは、パリレンコーティングであってもよい。保護層は、ガラス層であってもよい。保護層が実装される前に、真空または不活性ガスが、かつて除去されたLCが存在したギャップを充填し得る。いくつかの実施形態では、コーティングプロセスは、LC除去プロセス(226)と統合され得る。例えば、コーティング材料は、回折格子からLCを洗浄するために使用される溶剤と混合され得る。いくつかの実装態様では、コーティング材料は、ポリマーよりも低いかまたは高い屈折率を有する材料であってもよく、隣接するポリマー部分間の空間を充填することができる。ポリマーとコーティング材料との間の屈折率の差により、ポリマーSRGが回折し続けることが可能になり得る。
【0126】
図1~5は、深いSRGおよびハイブリッド表面レリーフ/ブラッグ回折格子を形成するための特定の方法および装置を例示しているが、異なるステップまたはそのようなステップの修正を実装する様々な製造方法を利用することができる。容易に認識できるように、特定のプロセスは、所与の用途の具体的な要件に依存し得る。例えば、多くの実施形態は、保護層として別の回折格子を利用する。
【0127】
浅いSRG構造を有するハイブリッドSRG/ブラッグ回折格子は、低SRG回折効率につながり得る。本開示に開示される方法は、SRGが高い深さ対回折格子ピッチ比を有すると同時に、ブラッグ回折格子が効率的な回折のために十分に厚いことを可能にするように、液晶リッチ領域の液晶の深さを最適化することによって、より効果的なSRG構造を形成することを可能にする。多くの実施形態では、ハイブリッド回折格子のブラッグ回折格子コンポーネントは、1~3マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、ハイブリッド回折格子のSRGコンポーネントは、0.25~3マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。初期のHPDLC回折格子であれば、最終的なSRGおよびブラッグ回折格子コンポーネントの合計に等しい厚さを有するであろう。容易に認識できるように、2つの回折格子の厚さ比は、導波路の用途に依存し得る。いくつかの実施形態では、SRGとブラッグ回折格子との組み合わせを使用して、回折格子構造の角度帯域幅を微調整し得る。いくつかの場合、SRGは、回折格子構造の角度帯域幅を増加させることができる。
【0128】
多くの実施形態では、
図4A~4Eに示されるハイブリッドSRGでは、回折格子の液晶領域の再充填深さを、回折格子全体にわたって変動させて、空間的に変動する相対SRG/ブラッグ回折格子強度を提供することができる。いくつかの実施形態では、ステップ206、226、および227で定義されるような液晶除去および再充填の間、液晶リッチ回折格子領域の液晶を、完全にまたは部分的に除去することができる。いくつかの実施形態では、液晶がクリアされた領域を再充填するか、または部分的に再充填するために使用される液晶は、初期HPDLC回折格子を形成するために使用される液晶とは異なる化学組成を有することができる。様々な実施形態では、モノマーと同等の相分離特性を有する第1の液晶を、最適な変調および回折格子定義を有するHPDLC回折格子を提供するように指定することができる一方、第2の再充填液晶を、最終的なハイブリッド回折格子において所望の指標変調特性を提供するように指定することができる。いくつかの実施形態では、ハイブリッド回折格子のブラッグ部分は、基板およびカバー層の表面に被着された電極で切り替え可能であり得る。多くの実施形態では、再充填液晶は、限定されるものではないが、スイッチング電圧、スイッチング時間、偏光、透明度、および他のパラメータを改善する特徴を含み得る添加剤を含有することができる。再充填プロセスを使用して形成されるハイブリッド回折格子であれば、LCが(LC液滴のアセンブリではなく)連続体を形成し、それによってヘイズを低減するというさらなる利点を有するであろう。
【0129】
深いSRG、EBG、および/またはハイブリッドSRGは、S回折格子およびP回折格子の文脈で記載され得るが、これらの回折格子は、多くの他の回折格子タイプに適用可能性を有する。これらとして、限定されるものではないが、角度多重化回折格子、色多重化回折格子、折り返し回折格子、二重相互作用回折格子、回転Kベクトル回折格子、交差折り返し回折格子、モザイク状回折格子、チャープ回折格子、空間的に変動する屈折率変調を有する回折格子、空間的に変動する回折格子厚さを有する回折格子、空間的に変動する平均屈折率を有する回折格子、空間的に変動する屈折率変調テンソルを有する回折格子、および空間的に変動する平均屈折率テンソルを有する回折格子が挙げられる。さらに、深いSRG、EBG、および/またはハイブリッドSRGは、それらの特定の実装態様に応じて、切り替え可能または非切り替え可能な回折格子であってもよい。深いSRG、EBG、および/またはハイブリッドSRGは、プラスチック基板またはガラス基板上に作製され得る。また、これらの回折格子は、1つの基板上に作製され、別の基板に移され得る。
【0130】
深いSRGまたはEBGの様々な実装態様の考察
多くの実施形態では、深いSRGは、導波路における偏光を制御するための手段を提供することができる。SBGは通常、P偏光選択性であり、OLEDおよびLEDなどの非偏光光源では50%の効率損失につながる。それゆえ、S偏光回折格子とP偏光回折格子とを組み合わせることは、P回折格子のみを使用する導波路よりも理論的に2倍の改善を提供することができる。いくつかの実施形態では、S偏光回折格子を、従来のホログラフィックフォトポリマーで形成されたブラッグ回折格子によって提供することができる。いくつかの実施形態では、S偏光回折格子を、液晶ダイレクタを再配列させるための配列層または他のプロセスを使用して改変された複屈折を有するHPDLCに形成されたブラッグ回折格子によって提供することができる。いくつかの実施形態では、S偏光回折格子を、相分離下でS回折格子に自然に組織化する液晶、モノマー、および他の添加剤を使用して形成することができる。多くの実施形態では、S偏光回折格子をSRGによって提供することができる。上述したプロセスを使用して、液晶とモノマーとの混合物のホログラフィック相分離から形成されたSBGから液晶を除去することによって、高いS回折効率(最大99%)および低いP回折効率を呈する深いSRGを形成することができる。
【0131】
深いSRGはまた、他の偏光応答特性を提供することができる。Moharamによる論文(M.G.et al.“Diffraction characteristics of photoresist surface -relief gratings”,Applied Optics,Vol.23,page 3214,Sep 15,1984)などのいくつかの先行技術の理論的な研究は、Sが支配的であるS感度とP感度との両方を有する深い表面レリーフ回折格子に指向している。いくつかの実施形態では、深いSRGは、S偏光応答を提供する能力を例証している。ただし、深いSRGはまた、他の偏光応答特性を提供し得る。多くの実施形態では、Sが支配的であるS感度とP感度との両方を有する深い表面レリーフ回折格子が実装される。いくつかの実施形態では、SRGの厚さを、多様なSおよびP回折特性を提供するように調節することができる。いくつかの実施形態では、回折効率は、一定のスペクトル帯域幅および角度帯域幅にわたってPに関して高く、同じスペクトル帯域幅および角度帯域幅にわたってSに関して低くなり得る。いくつかの実施形態では、回折効率は、一定のスペクトル帯域幅および角度帯域幅にわたってSに関して高く、同じスペクトル帯域幅および角度帯域幅にわたってPに関して低くなり得る。いくつかの実施形態では、S偏光光とP偏光光との両方に対して高い効率を提供することができる。0.532ミクロンの波長に対して0度の入射角および45度の回折角を有する、0.48ミクロン周期の、空気に浸漬された1.6の屈折率のSRG(それゆえ、1.3の平均の回折格子屈折率を提供する)の理論的解析を
図5~7に示す。
図5は、1マイクロメートル厚の深いレリーフ回折格子についての、計算されたP偏光およびS偏光の回折効率対入射角を示すグラフであり、この場合、高いSおよびP応答を達成することができることを例証している。
図6は、計算された2マイクロメータ厚の深い表面レリーフ回折格子についての、P偏光およびS偏光の回折効率対入射角を示すグラフであり、この場合、S偏光応答が回折格子の角度範囲のほとんどにわたって支配的であることを例証している。
図7は、3マイクロメートル厚についての、計算されたP偏光およびS偏光の回折効率対入射角を示すグラフであり、この場合、P偏光応答が回折格子の角度範囲のかなりの部分にわたって支配的であることを例証している。
【0132】
多くの実施形態では、フォトニック結晶は、LC抽出プロセスによって形成される反射ブラッグ回折格子または深いSRGであり得る。相分離と続くLC取り除きとを使用して作られた深い反射SRGは、広い角度およびスペクトル帯域幅を可能にすることができる。多くの実施形態では、現行の入力SBGを反射フォトニック結晶に取り替えることを使用して、ピクチャ生成ユニット(PGU)から導波路への光路を低減することができる。いくつかの実施形態では、PGU瞳と導波路とを、接触させることができる。多くの実施形態では、反射深いSRGは、厚さがおよそ3ミクロンであり得る。LCが抽出されたブラッグ回折格子の回折特性は、(典型的なSRGの場合のように、回折格子の深さからではなく)主にポリマーと空気との間の屈折率ギャップから結果として生じる。
【0133】
初期混合物内のチオール添加剤の考察
図9Aおよび9Bは、ポリマー-空気SRGを作製するために使用される例示的な混合物の比較の散乱電子顕微鏡(SEM)画像を例示している。以前に考察したように、初期混合物内のモノマーは、アクリレートまたはチオレン系であってもよい。アクリレート系モノマーなどのいくつかのモノマーでは、ホログラフィック露光後、洗浄中に、溶剤が液晶材料だけでなく不完全なポリマーも除去することが見出されている。多官能性チオール添加剤は、ポリマーを強化し、したがって、溶剤洗浄に耐えるのに十分な強度であることを可能にすることによって、この問題を解決し得ることが見出されている。任意の特定の理論に限定されず、チオール添加剤は、低官能性アクリレートモノマーからなる配合物の機械的強度を向上させることができ、これらのモノマーは、架橋の低減に起因して機械的に弱いポリマーを形成する傾向がある。アクリレートモノマー配合物は、より低ヘイズで高い回折効率を呈し得るため、有利であり得る。したがって、チオールを添加すれば、アクリレートモノマー形成が、ポリマーSRGの作製における実行可能な選択肢となることが可能となり得る。
【0134】
相分離、回折格子形成、および異なる配合物間の機械的強度の間にトレードオフがあり得る。回折格子形成は、ホログラフィック露光中に反応が遅くなり、架橋の形成が少なくなり、かつ非反応性成分(例えば、LC)のより大きい拡散を許容する低官能性モノマーを含有する混合物から利益を得ることができる。逆に、高官能性モノマーからなる混合物は、より大きい架橋に起因して、より良好な相分離およびポリマー機械的強度を呈し得るが、非反応性成分が拡散するのに十分な時間がなく、したがって、結果としてより低い回折効率を呈し得るほどに急速に反応し得る。
【0135】
任意の特定の理論に限定されず、チオール添加剤は、ホログラフィック露光の前にアクリレートまたはイソシアネート-アクリレートと反応して緩い足場を形成することによって、これらの制限を回避し得る。この足場は、硬化ポリマーの機械的強度および均一性を改善し得る。したがって、この機械的強度は、モノマー混合物の平均の官能性を著しく上昇させて回折格子形成を妨害することなく、チオール官能性および濃度のわずかな調節を通じて調整され得る。
【0136】
図9Aは、初期混合物を例示しているが、
図9Bは、1.5重量%のチオールを含む比較混合物を例示している。ただし、チオール添加剤の他の重量百分率も企図される。例えば、チオール添加剤の重量百分率は、1%~4%または1.5%~3%であってもよい。いくつかの実施形態では、多官能性チオールは、トリメチルロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオン酸塩)であってもよい。
図9Aおよび9Bの両方は、ポリマー高密度領域902a/902b、および空気領域904a/904bを含む。例示されるように、添加されたチオールは、
図9Aのポリマー高密度領域902bよりも、
図9Bのポリマー高密度領域902a内に、回折格子性能を向上させ得る、より高密度のポリマー構造を生成し得る。チオール添加剤の重量百分率は、ポリマー構造内に溶剤洗浄に耐えるように安定性を提供するが、液晶を溶剤洗浄中に放出させないように、剛性にしないために、バランスをとられるべきであることが見出されている。
【0137】
HPDLC回折格子性能とポリマー-空気SRG性能との比較
図10Aおよび10Bは、HPDLC回折格子およびポリマーSRGまたはEBGの比較例の画像を例示している。
図10Aは、液晶が除去されていない例示的なHPDLC回折格子の性能を例示している。
図10Aの回折格子は、公称またはほぼ0%のS回折効率を呈しながら、20~30%のP回折効率を含む。
図10Bは、LCが除去された例示的なポリマー-空気SRGの性能を例示している。
図10Bの回折格子は、51~77%のS回折効率を呈しながら、18~28%のP回折効率を含む。したがって、LCが除去されたポリマー-空気SRGは、同等のP回折効率を維持しながら、比較的高いS回折効率を例証している。さらに、
図10Bの回折格子は、0.11~0.15%のP回折ヘイズと、0.12~0.16%のS回折ヘイズと、を含む。
【0138】
図11Aおよび11Bは、液晶が除去されていないHPDLC回折格子と、液晶が除去されたポリマーSRGまたはEBGと、の比較例のプロットを例示している。
図11Aは、液晶が残っているHPDLC回折格子のP回折効率およびS回折効率を例示している。第1のライン1102aは、P回折効率に対応し、第2のライン1104aは、S回折効率に対応する。
図11Bは、液晶が除去されたポリマーSRGまたはEBGのP回折効率およびS回折効率を例示している。第1のライン1102bは、P回折効率に対応し、第2のライン1104bは、S回折効率に対応する。例示されるように、S回折効率は、液晶を除去した後に劇的に増加する一方、P回折効率は、同程度のままである。
【0139】
いくつかの実施形態では、S回折効率とP回折効率との比は、異なる回折格子周期、回折格子スラント角、および回折格子厚さを使用することによって調節され得る。
【0140】
様々な例示的な深いSRG深さ
図12Aおよび12Bは、様々な深さの深いSRGでのP回折効率およびS回折効率の様々な比較例を例示している。これらのプロットの各々は、回折効率対角度を示す。
図12Aでは、深いSRGは、およそ1.1μmの深さを有する。第1のライン1102aは、S回折効率を表し、第2のライン1104aは、P回折効率を表す。例示されるように、ピークS回折効率は、およそ58%であり、ピークP回折効率は、23%である。この例では、S回折のヘイズは、0.12%であり、P回折のヘイズは、0.11%であることが注目される。そのような、低ヘイズでの高回折効率は、およそ1.1μmの深さを有する深いSRGを、多重化回折格子に特に好適なものとし得る。
【0141】
図12Bでは、深いSRGは、およそ1.8μmの深さを有する。第1のライン1102bは、S回折効率を表し、第2のライン1104bは、P回折効率を表す。例示されるように、ピークS回折効率は、およそ92%であり、ピークP回折効率は、63%である。この例では、S回折のヘイズは、0.34%であり、P回折のヘイズは、0.40%であることが注目される。したがって、S回折効率とP回折効率との両方が、回折格子深さの増加に伴って劇的に増加する。ヘイズは、回折格子深さの増加に伴って増加するように見えることが注目される。
【0142】
混合物中の様々な例示的な初期LC濃度
図13Aおよび13Bは、初期混合物中の様々な初期LC濃度を有する様々なEBGの比較研究の結果を例示している。
図13Aは、S回折効率対角度を例示している。
図13Bは、P回折効率対角度を例示している。
図13Aでは、第1のライン1202aは、20%の初期LC含有量に対応し、第2のライン1204aは、30%の初期LC含有量に対応し、第3のライン1206aは、40%の初期LC含有量に対応する。
図13Bでは、第1のライン1202bは、20%の初期LC含有量に対応し、第2のライン1204bは、30%の初期LC含有量に対応し、第3のライン1206bは、40%の初期LC含有量に対応する。表1は、比較研究の様々な結果の概要を例示している。
【表1】
【0143】
図13Aおよび13Bに例示され、かつ表1に特記されるように、最大S回折および最大P回折は、S回折ヘイズおよびP回折ヘイズがほぼ一定のままでありながら、より高い初期LC含有量で両方とも増加するように見える。
【0144】
図14Aおよび14Bは、様々な初期LC濃度の追加の例示的なS回折効率およびP回折効率を例示している。
図14Aは、様々な初期LC含有量を含む様々な例示的なEBGのS回折効率を例示している。
図14Bは、様々なLC含有量を含む様々な例示的なEBGのP回折効率を例示している。
図14Aおよび14Bの両方について、上から下へ順に、ラインは、32%LC含有量、30%LC含有量、28%LC含有量、26%LC含有量、24%LC含有量、22%LC含有量、および20%LC含有量を表す。例示されるように、S回折効率およびP回折効率は、LC含有量の量に直接関連する(例えば、LC含有量が高いほど、より高いS回折およびP回折効率が得られる)。
【0145】
任意の特定の理論に限定されるものではないが、初期LC含有量は、ホログラフィック露光プロセスおよび重合プロセス中に生じるLCとモノマーとの間の相分離の量に関連する。したがって、より高いLC含有量は、洗浄後により多くの空気領域を作るために除去されるLCリッチ領域の量を増加させるであろう。増加した空気領域は、空気領域(以前は液晶リッチ領域)とポリマーリッチ領域との間でより大きい屈折率の差(Δn)を生じさせ、S回折効率とP回折効率との両方を増加させる。いくつかの実施形態では、ポリマーSRGの平均屈折率を、初期中性物質(例えば、LC)含有量を調節することによって調節し、それによって、中性物質の除去後のポリマーの体積を増加させるか、または減少させ得る。さらに、初期中性物質含有量を増加させることは、機械的強度に影響を及ぼし得る。したがって、機械的強度の増加または減少のバランスをとるために、チオール添加剤などの機械的強化剤の増加または減少が使用され得る。
【0146】
画像生成器としてのOLEDアレイを含む実施形態
導波路ディスプレイにおける画像生成器としての有機発光ダイオード(OLED)アレイの使用への関心が高まっている。OLEDは、導波路ディスプレイ用途において多くの利点を有する。発光技術として、OLEDは、光源を必要としない。OLEDを、大面積にわたって優れた費用対効果で印刷することができる。湾曲したまたは可撓性の基板上に、非矩形画素アレイパターンを印刷することができる。以下で考察するように、画素アレイを予め歪ませて湾曲した焦点面を形成する能力は、導波路によって支持される湾曲した導波路および処方レンズによって引き起こされる、導かれるビーム波面の歪みを補償することを可能にすることができる新しい設計寸法を追加する。4Kx4K画素の解像度を有するOLEDは、短期的にはより高い解像度の見込みを伴って現在入手可能であり、シリコン基板液晶(LCoS)、およびデジタル光処理(DLP)デバイスなどの微小電気機械システム(MEMS)デバイスなどの技術によって提供され得るよりも、高解像度の広視野FOV ARディスプレイへのより高速のルートを提供する。LCoSに対する別の有意な利点は、OLEDが(LCデバイスでのミリ秒と比較して)マイクロ秒で切り替わり得ることである。
【0147】
OLEDは、特定の欠点を有する。それらの基本的な形態では、OLEDは、ランバート発光体であり、効率的な光収集をLCoSおよびDLPマイクロディスプレイよりもはるかに困難にする。OLEDの赤色、緑色、および青色のスペクトル帯域幅は、発光ダイオード(LED)のものよりも広く、ホログラフィック導波路でのさらなる光管理問題を提示する。OLEDの最も重大な欠点は、P偏光選択性である傾向があるスイッチ可能ブラッグ回折格子(SBG)などのHPDLC回折格子を使用する導波路では、OLEDから利用可能な光の半分が無駄になることである。したがって、本発明の多くの実施形態は、非偏光光に対して高い光効率を提供することができる発光非偏光画像源とともに使用するための導波路ディスプレイを対象とし、そのような導波路ディスプレイを製造する関連する方法を対象とする。
【0148】
実施形態を説明する目的のために、光学設計および視覚ディスプレイの当業者に既知の光学技術のいくつかの周知の特徴は、本発明の基本原理を曖昧にしないために、省略されるか、または簡略化される。特に明記しない限り、光線またはビーム方向に関連する「軸上」という用語は、本発明に関連して記載される光学構成要素の表面に対して直角の軸に平行な伝播を指す。以下の説明では、光、光線、ビーム、および方向という用語は、直線軌道に沿った電磁放射の伝播の方向を示すために、互換的に、および互いに関連して使用され得る。光および照射という用語は、電磁スペクトルの可視および赤外線帯域に関連して使用され得る。以下の説明の一部は、光学設計の当業者によって一般的に採用される専門用語を使用して提示される。本明細書で使用される場合、回折格子という用語は、いくつかの実施形態では、回折格子のセットから構成された回折格子を包含し得る。例示的目的のために、図面は、特に明記しない限り、縮尺どおりに描かれていないことを理解されたい。
【0149】
ここで、図面を参照すると、本発明の様々な実施形態による、発光入力画像パネルを使用して導波路ディスプレイを提供するための方法および装置が例示されている。
図15は、本発明の実施形態による導波路ディスプレイを概念的に例示している。示されるように、装置100は、第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子102および出力回折格子103を支持する導波路101と、第1の波長帯域のS偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子104および出力回折格子105と、を含む。
【0150】
装置100は、第1の波長帯域と、OLEDマイクロディスプレイ106からの光を視野に投影するためのコリメーションレンズ107と、を含む、発光スペクトル帯域幅を有する非偏光光を放出するOLEDマイクロディスプレイ106をさらに含む。例示的な実施形態では、S回折格子およびP回折格子102~105を、空隙を必要とせずに層状にすることができる。他の実施形態では、回折格子層を、空隙または透明層によって分離することができる。S回折格子およびP回折格子102~105は、上述した深いSRGまたはEBGであってもよい。
【0151】
図16は、P回折格子およびS回折格子が空気を隔てて置かれた別個の導波路層に配設されている、本発明の実施形態による導波路ディスプレイを概念的に例示している。示されるように、装置110は、空隙113によって分離された上部導波路層111および下部導波路層112(それぞれ、回折格子102、103および104、105を支持する)を備える。回折格子102、103および104、105は、上述した深いSRGおよびEBGであってもよい。
【0152】
図17は、本発明の実施形態による、導波路ディスプレイの典型的な光線経路を概念的に例示している。
図17に例示される実施形態120では、マイクロディスプレイ106は、コリメータレンズ107によって視野内にコリメートされ投影される第1の波長帯域の非偏光光121を放出するように構成されている。マイクロディスプレイ106からのS偏光放出を、S回折入力回折格子104によって導波路101の全反射経路に結合し、S回折出力回折格子105によって導波路101から引き出すことができる。マイクロディスプレイ106からのP偏光光を、同様の様式で、P回折入力回折格子および出力回折格子102、103を使用して内結合し、引き出すことができる。入力回折格子および出力回折格子の空間周波数が一致することを条件に、S光とP光との両方に対して分散を補正することができる。入力回折格子および出力回折格子102、103は、上述した深いSRGまたはEBGであってもよい。
【0153】
図15~17は、特定の導波路ディスプレイ構成を示すが、示されるものに対する修正を含む様々な構成を実装することができ、その特定の実装態様は、所与の用途の特定の要件に依存し得る。さらに、そのようなディスプレイを、いくつかの異なる方法を使用して製造することができる。例えば、多くの実施形態では、2つの回折格子層は、インクジェット印刷プロセスを使用して形成される。
【0154】
多くの実施形態では、導波路は、単色帯域で動作する。いくつかの実施形態では、導波路は、緑色帯域で動作する。いくつかの実施形態では、赤色、緑色、および青色(RGB)などの異なるスペクトル帯域で動作する導波路層は、3層導波路構造を提供するために積層することができる。さらなる実施形態では、層は、導波路層間の空隙とともに積層される。様々な実施形態では、導波路層は、2つの導波路層解決策を提供するために、青色-緑色および緑色-赤色などのより広い帯域で動作する。他の実施形態では、格子は、格子層の数を減らすために色多重化される。様々なタイプの格子を、実装することができる。いくつかの実施形態では、各層の少なくとも1つの格子は、スイッチ可能格子である。
【0155】
本発明を、文献に開示されるものを含む、多様な導波路アーキテクチャを使用して適用することができる。多くの実施形態では、導波路は、角度多重化回折格子、色多重化回折格子、折り返し回折格子、二重相互作用回折格子、回転Kベクトル回折格子、交差折り返し回折格子、モザイク状回折格子、チャープ回折格子、空間的に変動する屈折率変調を有する回折格子、空間的に変動する回折格子厚さを有する回折格子、空間的に変動する平均屈折率を有する回折格子、空間的に変動する屈折率変調テンソルを有する回折格子、および空間的に変動する平均屈折率テンソルを有する回折格子のうちの少なくとも1つを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、導波路は、半波長板、4分の1波長板、反射防止コーティング、ビーム分割層、アライメント層、グレア低減のためのフォトクロミックバック層、およびグレア低減のためのルーバーフィルム、のうちの少なくとも1つを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、導波路は、異なる偏光に対して別個の光路を提供する回折格子を支持することができる。様々な実施形態では、導波路は、異なるスペクトル帯域幅のために別個の光路を提供する回折格子を支持することができる。いくつかの実施形態では、本発明で使用するための回折格子は、HPDLC回折格子、HPDLCに記録されたスイッチング回折格子(そのようなスイッチ可能ブラッグ回折格子)、ホログラフィックフォトポリマーに記録されたブラッグ回折格子、または表面レリーフ回折格子であり得る。
【0156】
多くの実施形態では、導波路ディスプレイは、少なくとも50°の斜めの画像視野を提供することができる。さらなる実施形態では、導波路ディスプレイは、少なくとも70°の斜めの画像視野を提供することができる。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイは、4000ニットより大きい輝度および4kx4k画素の解像度を有することができる。いくつかの実施形態では、導波路は、輝度4000ニットのOLEDディスプレイを使用して、400ニットより大きい画像輝度を提供できるように、10%より大きい光学効率を有することができる。P回折格子を実装した導波路ディスプレイは、典型的には、5%~6.2%の導波路効率を有する。上で考察したようにS回折格子を提供することは、導波路の効率を2倍増加させることができる。様々な実施形態では、25mmよりも大きいアイレリーフを伴う10mmより大きいアイボックスを提供することができる。多くの実施形態では、導波路厚は、2.0~5.0mmであり得る。
【0157】
図18は、導波路光学表面のうちの少なくとも1つの少なくとも1つの部分が湾曲している、本発明の実施形態による導波路ディスプレイ、および導かれるビーム波面への湾曲した表面部分の効果を概念的に例示している。示されるように、装置130は、湾曲した表面部分132を支持する導波路131を含む。例示的な実施形態では、導波路131は、第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子102および出力回折格子103と、第1の波長帯域のS偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子104および出力回折格子105と、を支持する。画素133の矩形アレイを表示するマイクロディスプレイ106は、第1の波長帯域の非偏光光134を放出し、非偏光光134は、コリメータレンズ107によってコリメートされ、視野内に投影される。マイクロディスプレイ106からのP偏光放出を、P回折入力回折格子102によって導波路内の全反射経路に結合し、P回折出力回折格子103によって導波路から引き出すことができる。導波路での任意の非平面表面の存在は、アイボックスから見たときの出力光がデフォーカス、幾何学的歪み、および他の収差を呈するように、導かれた光のウォーターフロントを歪ませることができる。例えば、
図18では、単一の画素からコリメータレンズ107によって投影される光は、平面波面135を有し、平面波面135は、TIR経路136に沿って導波路131を伝播した後、湾曲した出力波面139Aに対して垂直である非平行出力光線137~139を形成する。一方、完全な平面導波路であれば、代わりに平行ビーム拡大光を提供するであろう。
図19は、導波路基板141が2つの重なり合う上部の湾曲した表面142および下部の湾曲した表面143を支持する導波路のバージョン140を概念的に例示している。
【0158】
図20は、湾曲した表面部分によって導入される収差を、OLEDマイクロディスプレイの画素パターンを予め歪ませることによって補正することができる、本発明の実施形態による導波路ディスプレイを概念的に例示している。例示的な実施形態では、導波路装置150は、
図18に例示されるものと同様である。示されるように、装置150は、予め歪んだ画素パターン152を支持するマイクロディスプレイ151を含む。マイクロディスプレイによって放出される非偏光の第1の波長光153は、レンズ107によって集束され、レンズ107は、少量だけ予め歪んでいる波面154を形成しながら、導波路に入るビームを実質的にコリメートする。内結合と導波路131を通る伝播155との後、予め歪んだ波面は、湾曲した表面132によって集束されて、平面出力波面159に対して垂直である平行出力光線156~158を形成する。
【0159】
図21は、湾曲した表面部分によって導入される収差を、湾曲した表面上に形成されたOLEDマイクロディスプレイの画素パターンを予め歪ませることによって補正することができる、本発明の実施形態による導波路ディスプレイを概念的に例示している。湾曲したマイクロディスプレイ基板は、歪んだ画素パターンと関連して、焦点誤差像面湾曲、歪み、および他の収差を補正するのに役立ち得る。例示的な実施形態では、導波路装置160は、
図18に例示されるものと同様である。示されるように、湾曲した基板マイクロディスプレイ161は、予め歪んだ画素パターン164を支持する。マイクロディスプレイによって放出される非偏光の第1の波長光163は、レンズ107によって集束されて、わずかに予め歪んだ波面164を有する実質的にコリメートされた導かれるビームを形成し、このビームは、内結合と導波路131を通る伝播165との後、平面出力波面169に対して垂直である平行出力光線166~168を形成する。
【0160】
図18~21は、湾曲した表面を有する導波路の特定の構成を示すが、多くの他の異なる構成および修正を実装することができる。例えば、そのような実施形態に例示される技術および基礎理論を、眼処方光学表面を支持する導波路に適用することもできる。多くの実施形態では、処方導波路基板を、眼処方眼鏡の製造で使用されるものと同様のプロセスを使用してカスタム製造することができ、標準的なベースライン処方は、個々のユーザ要件に微調整される。いくつかの実施形態では、導波路回折格子を、標準的なベースライン処方でインクジェット印刷することができる。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイを、予め歪んだ画素パターンを形成してカスタム印刷することができる。様々な実施形態では、OLEDディスプレイを、湾曲したバックプレーン基板上に印刷することができる。いくつかの実施形態では、追加の屈折または回折予補償要素を、導波路によって支持することができる。多くの実施形態では、追加の補正機能を、入力回折格子および出力回折格子のうちの少なくとも1つに符号化することができる。入力回折格子および出力回折格子は、上述した深いSRGもしくはEBGまたはハイブリッド回折格子であってもよく、
図1~5に関連して記載される方法で製造され得る。入力回折格子および出力回折格子はまた、
図6~8に関連して記載される厚さを有し得る。
【0161】
図22は、本発明の実施形態による、S回折格子およびP回折格子を含む導波路を使用して、映示のための画像光を投影するための方法を概念的に例示するフローチャートである。示されるように、画像を形成する方法170が提供される。フロー図を参照すると、方法170は、第1の波長範囲の光を放出するOLEDアレイと、コリメーションレンズと、第1の波長帯域のS偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子および出力回折格子、ならびに第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子および出力回折格子を支持する導波路と、を提供すること(171)を含む。いくつかの実施形態では、入力回折格子および出力回折格子は、以前に考察した深いSRG、EBG、またはハイブリッド回折格子であってもよい。OLEDアレイによって放出された画像光を、コリメーションレンズを使用してコリメートすることができる(172)。S偏光光を、S回折入力回折格子を使用して導波路の全反射経路に結合することができる(173)。P偏光光を、P回折入力回折格子を使用して導波路の全反射経路に結合することができる(174)。S偏光光を、映示のために導波路からビーム拡大し、引き出すことができる(175)。P偏光光を、映示のために導波路からビーム拡大し、引き出すことができる(176)。
【0162】
図23は、本発明の実施形態による、光学処方表面を支持し、かつS回折格子およびP回折格子を含む導波路を使用して、映示のための画像光を投影するための方法を概念的に例示するフローチャートである。示されるように、画像を形成する方法180が提供される。フロー図を参照すると、方法180は、第1の波長範囲の光を放出する予め歪んだ画素パターンを有するOLEDアレイと、コリメーションレンズと、第1の波長帯域中へのS偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子および出力回折格子、ならびに第1の波長帯域のP偏光光に対して高回折効率を有する入力回折格子および出力回折格子を支持する導波路と、を提供すること(181)と、導波路によって支持された処方光学表面をさらに提供すること(182)と、を含む。いくつかの実施形態では、入力回折格子および出力回折格子は、以前に考察した深いSRG、EBG、またはハイブリッド回折格子であってもよい。OLEDアレイによって放出された画像光を、コリメーションレンズを使用してコリメートすることができる(183)。S偏光光を、S回折入力回折格子を使用して導波路の全反射経路に結合することができる(184)。P偏光光を、P回折入力回折格子を使用して導波路の全反射経路に結合することができる(185)。予め歪んだ波面を、処方表面で反射することができる(186)。処方表面の光学力を使用して、予め歪んだ波面から平面波面を形成することができる(187)。S偏光光を、映示のために導波路からビーム拡大し、引き出すことができる(188)。P偏光光を、映示のために導波路からビーム拡大し、引き出すことができる(189)。
【0163】
種々の画素幾何学形状を含む実施形態の考察
本開示で考察される様々な装置は、幾何学的制約およびアレイの実装における実用的な問題によってのみ制限される、多くの異なる幾何学形状の入力画素アレイを有する発光ディスプレイを使用して適用され得る。多くの実施形態では、画素アレイは、非周期的(非反復的)である画素を含むことができる。そのような実施形態では、幾何学形状における非対称性および画素の分布を使用して、導波路からの出力照射の均一性を生成することができる。最適な画素サイズおよび幾何学形状は、出力回折格子および入力回折格子(および使用される場合、折り返し回折格子)を通してアイボックスから画素アレイ上への逆ベクトル光線追跡を使用して決定され得る。本発明では多様な非対称画素パターンを使用することができる。例えば、
図24Aは、本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するための異なるサイズおよびアスペクト比の矩形要素230A~230Fを含む画素パターンの部分230を概念的に例示している。いくつかの実施形態では、画素アレイは、多角形基底要素の有限集合に基づく非繰り返しパターンに基づき得る。例えば、
図24Bは、本発明の実施形態による、発光ディスプレイパネルで使用するためのペンローズタイル240A~240Jを有する画素パターンの部分240を概念的に例示している。タイルは、“Set of tiles for covering a surface”と題されたPenroseによる米国特許第4,133,152号に開示された原理に基づき得る。ハニカムが周知の例である、自然界に存在するパターンを多くの実施形態で使用することもできる。
【0164】
多くの実施形態では、画素は、同一の正多角形のアレイを含むことができる。例えば、
図24Cは、本発明の実施形態による、六角形要素を有する画素パターンの部分250を概念的に例示している。
図24Dは、本発明の実施形態による、正方形要素250A~250Cを有する画素パターンの部分260を概念的に例示している。
図24Eは、本発明の実施形態による、ダイヤモンド形状要素270A~270Dを有する画素パターンの部分270を概念的に例示している。
図24Fは、本発明の実施形態による、二等辺三角形要素280A~280Hを有する画素パターンの部分280を概念的に例示している。
【0165】
多くの実施形態では、画素は、垂直にまたは水平に偏ったアスペクト比を有する。
図24Gは、水平に偏ったアスペクト比の六角形要素290A~290Cを有する画素パターンの部分290を概念的に例示している。
図24Hは、本発明の実施形態による、水平に偏ったアスペクト比の矩形要素300A~300Dを有する画素パターンの部分300を概念的に例示している。
図24Iは、本発明の実施形態による、水平に偏ったアスペクト比のダイヤモンド形状要素310A~310Dを有する画素パターンの部分310を概念的に例示している。
図24Jは、本発明の実施形態による、水平に偏ったアスペクト比の三角形要素320A~320Hを有する画素パターンの部分320を概念的に例示している。
【0166】
多くの実施形態では、OLEDを、OLEDのスペクトル放射特性を成形するためのキャビティ形状および多層構造を用いて作製することができる。いくつかの実施形態では、狭スペクトル帯域幅を提供するように最適化されたマイクロキャビティOLEDを使用することができる。いくつかの実施形態では、スペクトル帯域幅は、40nm未満であり得る。いくつかの実施形態では、20nm以下のスペクトル帯域幅を提供することができる。いくつかの実施形態では、OLEDを、3つの原色のうちの1つに対応する、選択されたスペクトル領域の近くに中心を置く比較的狭い帯域で電気発光放出を提供する材料から作ることができる。
図25は、異なる画素が異なる放射特性を有し得る画素パターンを概念的に例示している。いくつかの実施形態では、画素は、画素アレイにおけるそれらの位置に従って、異なるスペクトル放射特性を有し得る。いくつかの実施形態では、画素は、画素アレイにおけるそれらの位置に従って、異なる角度放射特性を有し得る。いくつかの実施形態では、画素は、画素アレイの全体にわたって空間的に変動するスペクトル放射特性と角度放射特性との両方を有することができる。画素パターンは、
図24A~
図24Jに例示されるパターンのいずれかに基づき得る。多くの実施形態では、異なるサイズおよび幾何学形状の画素を、最終的な画像における均一性を制御するための空間放射変動を提供するように配置することができる。
【0167】
多くの実施形態では、OLEDは、所与の光分布をカスタマイズされた形態に変換するように設計されたキャビティ構造を有することができる。これは、典型的には、ウェアラブルディスプレイ用途には嵩張り得る二次光学素子によって達成される。そのような設計はまた、最終的な光源が単一の恒久的動作モードに制限されるという問題に苦しみ、これは、機械的に調節可能な光学素子を用いることによってのみ克服することができる。いくつかの実施形態では、OLEDは、二次光学素子に依存することなく、かつ任意の機械的調節を使用することなく、ビーム形状のリアルタイム調節を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、OLEDを、Friesによる論文(Fries F.et al,“Real-time beam shaping without additional optical elements”,Light Science & Applications,7(1),18,(2018))に開示されるような任意の設定で高い量子効率を維持しながら、前方軸と軸外の主放射方向との間で連続的に調整することができる。
【0168】
重要なOLED開発、「マイクロキャビティOLED」は、いくつかの実施形態では、より制御されたスペクトル帯域幅および放射角度の可能性を提供し得る。しかしながら、マイクロキャビティOLEDは、商業的利用の準備がまだできていない。(屈折率変調0.1、平均屈折率1.65、および45度の波導における入射角を有する2ミクロン回折格子に対応する)一実施形態では、SBGの回折効率は、OLED発光スペクトル全体(ピークポイントの25%間)にわたって75%よりも大きい。より深いキャビティ構造を使用したより狭い帯域幅のOLEDは、帯域幅を40nm以下低減するであろう。
【0169】
有利に、本発明は、460nmの青色で使用するために最適化されたOLEDを使用することができ、この青色は、より一般的に使用される440nmのOLEDよりも、昼間のARディスプレイ用途におけるより優れた青色コントラスト、ならびにより優れた信頼性および寿命を提供する。
【0170】
いくつかの実施形態では、発光ディスプレイは、Kopin Corporation(Westborough、MA)によって開発されたものと同様のOLEDフルカラーシリコンバックプレーンマイクロディスプレイであり得る。Kopinマイクロディスプレイは、0.99インチの画像対角および2490画素/インチの画素密度を提供する。このマイクロディスプレイは、Kopinの特許権利化されたPantile(商標)拡大レンズを使用して、コンパクトなフォームファクターを可能にする。
【0171】
本発明について、入力画像源としてOLEDマイクロディスプレイを使用する実施形態の観点から考察してきたが、多くの他の実施形態では、本発明を、任意の他のタイプの発光マイクロディスプレイ技術とともに適用することができる。いくつかの実施形態では、発光マイクロディスプレイは、マイクロLEDであり得る。マイクロLEDは、電力消費の低減から利益を得、OLEDディスプレイよりも高い明るさで効率的に動作することができる。しかしながら、マイクロLEDは、元来、典型的にはLEDの色を変換するために使用されるモノクロ蛍光体であり、小さいサイズには十分にスケールせず、マイクロディスプレイ用途にスケールダウンすることが困難な、より複雑であるデバイスアーキテクチャにつながる。
【0172】
ポリマー回折格子構造について、OLEDアレイベースの導波路ディスプレイ内での使用の観点から考察してきたが、ポリマー回折格子構造は、他のクラスのディスプレイとの有利な相乗効果の用途を有する。これらのディスプレイの例としては、LCoSおよびMEMSベースのディスプレイなどの非発光ディスプレイ技術を使用する画像生成器が挙げられる。LCoSベースのディスプレイは、典型的には、ポリマー回折格子構造の偏光ベースの利点を適用性の低いものにし得る偏光光を放出するが、ポリマー回折格子構造は、従来の刷り込み回折格子よりも有利な効率および製造コストの節減を提供し得る。さらに、ポリマー回折格子構造は、導波路センサーおよび/または導波路照射デバイスなどの様々な他の非ディスプレイ導波路ベースの実装態様において適用可能であり得る。
【0173】
均等論
上記の説明は、本発明の多くの具体的実施形態を包含するが、これらは、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではなく、むしろ、その一実施形態の実施例として解釈されるべきである。したがって、本発明が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、具体的に記載された方法以外の方法で実施され得ることを理解されたい。このように、本発明の実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、例示された実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって決定されるべきである。
【国際調査報告】