(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221027BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20221027BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221027BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20221027BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20221027BHJP
G01N 33/577 20060101ALI20221027BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/10 ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 S
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P31/12
A61P31/18
G01N33/577 B
G01N33/543 545A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513241
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020073805
(87)【国際公開番号】W WO2021037883
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518068833
【氏名又は名称】ディアキュレート
【氏名又は名称原語表記】DIACCURATE
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ポトリヒト,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】テゼ,ジャック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZC55
4C084ZC75
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗体及びその使用に関する。特に、本発明は、gp41の特定のドメインに対する抗体、それを含む医薬組成物、キット又は装置、及びそれらの使用に関する。本発明は、特に、単独又は他の処置/薬剤と組み合わせて、対象におけるAIDSを処置(例えば治療若しくは予防)、検出又はモニタリングするのに有益である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV gp41タンパク質のエピトープに結合する単離されたモノクローナル抗体又はその変異体若しくは断片であって、
前記エピトープは、gp41タンパク質のPEP3ドメインの少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、
前記モノクローナル抗体又はその変異体若しくは断片は、gp41がC1qRに結合するのを阻害する、単離されたモノクローナル抗体又はその変異体若しくは断片。
【請求項2】
HIV gp41タンパク質のPEP3の1つ以上のアミノ酸残基において該HIV gp41タンパク質に結合する単離されたモノクローナル抗体又はその変異体若しくは断片であって、
gp41がC1qRに結合するのを阻害する、単離されたモノクローナル抗体又はその変異体若しくは断片。
【請求項3】
軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体であって、
前記軽鎖可変領域は、(i)配列番号15、21、27、33、39若しくは45から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなるCDR-L1、及び/又は(ii)配列番号16、22、28、34、40若しくは46から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなるCDR-L2、及び/又は(iii)配列番号17、23、29、35、41若しくは47から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなるCDR-L3を含む、モノクローナル抗体。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域は、
配列番号15、16及び17、
配列番号21、22及び23、
配列番号27、28及び29、
配列番号33、34及び35、
配列番号39、40及び41、又は、
配列番号45、46及び47、で示されるCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
重鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域は、(i)配列番号18、24、30、36、42若しくは48から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなるCDR-H1、及び/又は(ii)配列番号19、25、31、37、43若しくは49から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなるCDR-H2、及び/又は(iii)配列番号20、26、32、38、44若しくは50から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなるCDR-H3を含む、請求項3又は4に記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
前記重鎖可変領域は、
配列番号18、19及び20、
配列番号24、25及び26、
配列番号30、31及び32、
配列番号36、37及び38、
配列番号42、43及び44、又は、
配列番号48、49及び50、で示されるCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3を含む、請求項5に記載のモノクローナル抗体。
【請求項7】
配列番号3、5、7、9、11及び13から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなる軽鎖可変領域、並びに/又は配列番号4、6、8、10、12及び14から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなる重鎖可変領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
配列番号3及び4、
配列番号5及び6、
配列番号7及び8、
配列番号9及び10、
配列番号11及び12、又は、
配列番号13及び14、で示される軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む、請求項7に記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
HIV gp120タンパク質に実質的に結合しない、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
4G1、8D5、3A2、15B4、5E12及び9B12から選択され、好ましくは4G1、8D5、3A2及び15B4から選択される、請求項8に記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
ヒト化された、請求項1~10のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項12】
Fab、Fab’2、ScFv、ナノボディ又はCDRである、請求項1~11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体の断片。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、その軽鎖若しくは重鎖、又はその可変領域をコードするヌクレオチド。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、その変異体若しくは断片、又は請求項13に記載のヌクレオチドを含む組成物。
【請求項15】
医薬的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
(i)抗ウイルス剤又は(ii)抗PLA2-GIB抗体をさらに含む、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
容器中に請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体又はその変異体若しくは断片を含むキット。
【請求項18】
免疫反応を行うための1つ以上の試薬、好ましくは基質若しくはラベル及び/又はマーカー抗体をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
ELISA反応のための試薬を含む、請求項17又は18に記載のキット。
【請求項20】
処置を必要とする対象に対してHIVの処置をするために用いるための請求項14~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
サンプル中のHIV gp41タンパク質を検出する方法であって、
(i)前記サンプルを請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、その変異体又は断片に接触するステップと、
(ii)ステップ(i)において形成された抗体と抗原との複合体の存在を検出するステップとを含む、方法。
【請求項22】
モニタリングを必要とする対象におけるHIV疾患の進行をモニタリングする方法であって、
請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、その変異体又は断片を用いて異なる時間間隔で前記対象から得た血漿サンプル中のgp41をインビトロで定量することを含む、方法。
【請求項23】
抗HIV処置の有効性をモニタリングするための、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
HIVに感染された対象が抗PLA2-GIB免疫療法、好ましくは抗PLA2-GIB抗体療法又はトランスCD4免疫療法の効果を得ているかどうかを決定するための、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記サンプル中の請求項1~12のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体、その変異体若しくは断片の参照値と比較して増大された結合レベルを重症度の指標とする、前記対象におけるHIV疾患の重症度を決定するための請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記参照値は、同一の対象から得た初期段階のサンプルで測定された値又は平均値である、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体及びその使用に関する。特に、本発明は、gp41の特定のドメインに対する抗体、それを含む医薬組成物、キット又は装置、及びそれらの使用に関する。本発明は、特に、単独又は他の処置/薬剤と組み合わせて、対象におけるAIDSを処置(例えば治療若しくは予防)、検出又はモニタリングするのに有益である。
【背景技術】
【0002】
sPLA2-GIBがHIVに感染された患者におけるCD4T細胞の不活性化に関わることが、本発明者らにより文書化されている(WO2015/097140号を参照)。sPLA2-GIBモジュレータが、例えば免疫不全に関連する障害等の哺乳動物における疾病を処置するのに有効であることが、本発明者らにより提示及び文書化されている。彼らの研究を継続して、出願人はsPLA2-GIBの効果は、疾病に罹った対象に存在するコファクターにより媒介され及び/又は増幅され、そのようなコファクターはT細胞の表面におけるgCiq受容体を通って作用することを発見した(PCT/EP2019/054686を参照)。そのようなコファクターのモジュレータが、例えば免疫不全に関連する障害といった哺乳動物における疾病の処置に有効であることが本発明者らにより提示及び文書化されている。HIVウイルス血症の患者に関して、gp41がヒトCD4T細胞におけるsPLA2-GIBの阻害効果を増大するコファクターとして作用することがより具体的に開示されている。また、gp41由来PEP3ペプチド単独でもsPLA2-GIB活性を増大することも示されており、PEP3gp41配列がgp41コファクター活性のための重要なドメインであることが提示されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、PEP3配列に特異的な新規の抗gp41抗体を開示する。本発明は、そのような抗体、その変異体、その製造、それを含む組成物又は装置、及び例えば検出、モニタリング又はHIV障害を処置するためのその使用に関する。
【0004】
より具体的に、本発明は、gp41タンパク質、特にgp41のPEP3ドメインに結合するために選択された抗体及びその変異体を提供する。本発明は、上記抗体の配列、並びに例えばそのgp120に対する相対的な特異性、CD4T細胞におけるHIVウイルス血症患者の血漿の阻害活性の抑制能、及び/又はHIVウイルス血症患者の血漿におけるgp41産物の定量能といった機能的特徴を開示する。
【0005】
全体的に、これらの抗体は、HIV患者の血漿又は他のサンプル中のgp41濃度を追うために、及びHIV疾患の重症度又はHIVウイルス血症患者の予後を予測するために用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1はCD4T細胞におけるsPLA2-GIB活性のgp41による制御のモデル図である。このモデル図は、CD4T細胞におけるPLA2-GIBの作用機構を要約する。ヒトにおけるインビボで、小サイズ(平均直径100nm)の生理学的細胞膜マイクロドメイン(pMMDs)は、ガンマcサイトカイン(例えばIL-7、IL-2及びIL-4)及びCD4T細胞におけるT細胞受容体(TCR)の活性化により誘導され、それらのシグナル経路のために必要である。HIVウイルス血症患者の血漿において、PLA2-GIBは、生理学的受容体を捕捉及び不活性化する大サイズ(直径が200nmより大きい)の異常細胞膜マイクロドメイン(aMMDs)を誘導するようにgp41と協力する。マウスにおけるインビボ、又はマウス及びヒト精製CD4T細胞におけるインビトロにおいて、高濃度のPLA2-GIBは単独で、ガンマcサイトカイン及びTCR刺激に対するCD4T細胞応答を阻害できる。ウイルス血症の血漿に存在するような、HIVウイルス血症の血漿単独、並びに低濃度PLA2-GIB及びgp41は、ガンマcサイトカインシグナリング経路の効率を低減する。このモデル図は、どのようにPLA2-GIBがHIVに感染された患者において観察されるアネルギー及びリンパ球減少に関係するかを説明する。
【
図2】
図2はPLA2-GIB活性とgp41との間の相乗効果を示す。(A)組換型gp41タンパク質は、IL-7に応答したリン酸化STAT5の核移行(pSTAT5NT)におけるPLA2-GIBの阻害活性に対するCD4T細胞の感受性を引き起こす。IL-7に応答したpSTAT5NTにおけるPLA2-GIB活性の組換型gp41タンパク質の用量効果が示されている。健康なドナーからの精製CD4T細胞を種々の量のgp41又はバッファー(PBS/1%BSA)で前処理を15分間行い、5nMのPLA2-GIBの存在下又は非存在下(w/o)で30分間インキュベートし、IL-7で15分間刺激した。pSTAT5NTを共焦点顕微鏡により分析した。3つの試験のうちの1つの代表的試験を示す。(B)3人の独立した健康なドナーのCD4T細胞を34nMのgp41で15分間処理し、5nMのPLA2-GIBで30分間処理し又は処理せず(w/o)、IL-7で15分間処理した試験の要約を示す。A及びBにおいて、IL-7を含むバッファーに応答したpSTAT5NTで正規化されたpSTAT5NTの阻害の割合を示す結果である。(B)3人のドナーからのCD4T細胞におけるpSTAT5NT細胞阻害の割合の平均±SDとしての結果を示す。PLA2-GIBで処理せずgp41単独の場合と比較したgp41及び5nMのPLA2-GIBの阻害の差異の統計分析は、two tailed unpaired t検定により行われ、*はp<0.05を意味する。(C)IL-7に応答したpSTAT5NTの阻害割合において、PLA2-GIB活性におけるPEP3及びCTLペプチドの用量効果を示す。健康なドナーからの精製CD4T細胞に対して、種々の用量のPEP3若しくはCTLペプチド又はバッファー(PBS/1%BSA)で前処理を15分間行い、5nMのPLA2-GIBで30分間処理し又は処理せず(w/o)、IL-7で15分間処理した。pSTAT5NTを共焦点顕微鏡により分析した。2つの試験のうちの1つの代表的試験を示す。(D)4人の独立した健康なドナーのCD4T細胞に対して、275nMのPEP3を5nMのPLA2-GIB45を含む又は含まず(w/o)に45分間処理し、IL-7で15分間刺激した試験の要約を示す。C及びDは、IL-7を含むバッファーに応答したpSTAT5NTで正規化されたpSTAT5NTの阻害割合として結果を示す。(D)4人の健康なドナーからのCD4T細胞におけるpSTAT5NT細胞阻害の割合の平均±SDとして結果を示す。PLA2-GIBで処理せずPEP3単独の場合と比較したPEP3及び5nMのPLA2-GIBの阻害の差異の統計分析は、two tailed unpaired t検定により行われ、**はp<0.01を意味する。
【
図3】
図3は抗gp41抗体によるウイルス血症患者の血漿の免疫除去がCD4T細胞においてpSTAT5NTにおけるPLA2-GIBの阻害活性を抑制すること(すなわち、PLA2-GIBによる不活性化に対するCD4T細胞の耐性の回復)を示す。(A)ヤギ抗gp41pAbは、gp120ではなくgp41に結合する。抗gp41pAbを用いたイムノブロット:100ng及び200ngのD117IIIgp120又は100ngのMNgp41組換型タンパク質を、還元条件における4%~20%のTris-BisSDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写した。抗gp41pAb(5μg/ml)の結合を、ロバ抗ヤギIgG-HRP(1:10000)で検出した。(B)3人の独立した健康なドナーのからの精製CD4T細胞を、3つの独立した試験において、PLA2-GIBに対する感受性の陽性対照としてPLA2-GIB単独、健康なドナー(HD)の血漿又はウイルス血症患者(VP)の血漿で30分間処理し、事前に、抗gp41ポリクローナルを用いた枯渇(pAb anti-gp41)、対照ポリクローナル抗体(pAb ctrl)での処理又は抗体(単独)の処理をせず、またIL-7で15分間刺激した。IL-7を含むバッファーに応答したpSTAT5NTで正規化されたpSTAT5NTの阻害割合を結果として示す。pAb anti-gp41で処理されたウイルス血症の血漿と比較したpAb ctrlでのpSTAT5NT阻害の差異の統計分析は、two tailed unpaired t検定により行われ、**はp<0.01を意味し、***はp<0.001を意味する。
【
図4】
図4は、クマシーブルーにより染色されたSDS-PAGEポリアクリルアミドゲルにおける抗PEP3mAbの特徴付けを示す。6つの抗PEP3mAbである、3A2(レーン3)、4G1(レーン4)、8D5(レーン5)、9B12(レーン6)、5E12(レーン7)及び15B4(レーン8)は、クマシーブルー染色後にSDS-PAGEポリアクリルアミドゲルにおいて予測されるパターンを示す。分子量タンパク質ラダー(レーン1)、対照マウスIgG(レーン2)及び選択された6つの精製抗PEP3mAbを(A)還元条件(13.5%ポリアクリルアミド)及び(B)非還元条件(7.5%ポリアクリルアミド)においてSDS-PAGEポリアクリルアミドゲルで分離した。
【
図5A-F】
図5A-Fは、PEP3ペプチド及びgp41組換型タンパク質のELISAによる抗PEP3gp41mAbの特徴付けを示す。ELISAマイクロタイタープレートを、1μg/mlの(A)HIV MNgp41又は(B)BSA-PEP3ペプチドの溶液50μlでコーティングした。PEP3配列は下記パネルAで詳しく示す。100~0.0001μg/mlである6つのmAbの種々の希釈液50μlの結合を、ヤギ抗マウスIgGのHRPコンジュゲートF(ab)’2断片を用いて試験して示した。(C)MNgp41(E.Coliで生成)及びBSA-PEP3に対する6つの抗PEP3mAb結合のEC50を抗体のμg/mlで示す。ELISAマイクロタイタープレートを、1μg/mlの(D)HIV MNgp41(S2細胞で生成)又は(E)HXB2 gp41(293細胞で生成)の100μl溶液でコーティングした。(D)100~0.0001μg/ml及び(E)100~10
-10μg/mlの6つのmAbの種々の希釈液100μlの結合を、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgGを用いて試験して示す。(F)MNgp41(S2細胞で生成)及びHXB2に対する6つの抗PEP3mAbの結合のEC50を、抗体のμg/mlで示す。
【
図6A-F】
図6A-Fは、4G1軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変領域の配列を示す。(A~C)4G1VLは再配列され、生産的IGK配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いカッパアイソタイプである。(A)4G1VL領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。4G1VL可変領域の配列は黒字であり、定常領域Ckの部分配列、マウスIGKC
*01アレルは、赤字及びイタリックである。(B)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する4G1VLの比較を示す。(C)4G1VLの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。(D~F)4G1VHは再配列され、生産的IGH配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いIgG2bアイソタイプである。(D)4G1VH領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。VH可変領域の配列は黒字であり、定常領域CH1の部分配列、マウスIGHG2b
*02アレルは赤字及びイタリックである。(E)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する4G1VHの比較を示す。(F)4G1VHの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。
【
図7A-F】
図7A-Fは、3A2軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変領域の配列を示す。(A~C)3A2VLは再配列され、生産的IGK配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いカッパアイソタイプである。(A)3A2VL領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。3A2VL可変領域の配列は黒字であり、定常領域Ckの部分配列、マウスIGKC
*01アレルは赤字及びイタリックである。(B)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する3A2VLの比較を示す。(C)3A2VLの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。(D~F)3A2VHは再配列され、生産的IGH配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いIgG2cアイソタイプである。(D)3A2VH領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。VH可変領域の配列は黒字であり、定常領域CH1の部分配列、マウスIGHG2c
*02アレルは赤字及びイタリックである。(E)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する3A2VHの比較を示す。(F)3A2VHの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。
【
図8A-F】
図8A-Fは、8D5軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変領域の配列を示す。(A~C)8D5VLは再配列され、生産的IGK配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いカッパアイソタイプである。(A)8D5VL領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。8D5VL可変領域の配列は黒字であり、定常領域Ckの部分配列、マウスIGKC
*01アレルは赤字及びイタリックである。(B)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する8D5VLの比較を示す。(C)8D5VLの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。(D~F)8D5VHは再配列され、生産的IGH配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いIgG2bアイソタイプである。(D)8D5VH領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。VH可変領域の配列は黒字であり、定常領域CH1の部分配列、マウスIGHG2b
*01アレルは赤字及びイタリックである。(E)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する8D5VHの比較を示す。(F)8D5VHの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。
【
図9A-F】
図9A-Fは、15B4軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変領域の配列を示す。(A~C)15B4VLは再配列され、生産的IGK配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いカッパアイソタイプである。(A)15B4VL領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。15B4VL可変領域の配列は黒字であり、定常領域Ckの部分配列、マウスIGKC
*01アレルは赤字及びイタリックである。(B)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する15B4VLの比較を示す。(C)15B4VLの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。(D~F)15B4VHは再配列され、生産的IGH配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いIgG2bアイソタイプである。(D)15B4VH領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。VH可変領域の配列は黒字であり、定常領域CH1の部分配列、マウスIGHG2b
*01アレルは赤字及びイタリックである。(E)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する15B4VHの比較を示す。(F)15B4VHの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。
【
図10A-F】
図10A-Fは、5E12軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変領域の配列を示す。(A~C)5E12VLは再配列され、生産的IGK配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いカッパアイソタイプである。(A)5E12VL領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。5E12VL可変領域の配列は黒字であり、定常領域Ckの部分配列、マウスIGKC
*01アレルは赤字及びイタリックである。(B)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する5E12VLの比較を示す。(C)5E12VLの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。(D~F)5E12VHは再配列され、生産的IGH配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いIgG1アイソタイプである。(D)5E12VH領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。VH可変領域の配列は黒字であり、定常領域CH1の部分配列、マウスIGHG1
*01アレルは赤字及びイタリックである。(E)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する5E12VHの比較を示す。(F)5E12VHの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。
【
図11A-F】
図11A-Fは、9B12軽鎖(VL)及び重鎖(VH)可変領域の配列を示す。(A~C)9B12VLは再配列され、生産的IGK配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いカッパアイソタイプである。(A)9B12VL領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。9B12VL可変領域の配列は黒字であり、定常領域Ckの部分配列、マウスIGKC
*01アレルは赤字及びイタリックである。(B)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する9B12VLの比較を示す。(C)9B12VLの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。(D~F)9B12VHは再配列され、生産的IGH配列であり、データベース(Uniprotデータバンク-UniprotKB)に同等物が無いIgG2cアイソタイプである。(D)9B12VH領域のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。VH可変領域の配列は黒字であり、定常領域CH1の部分配列、マウスIGHG2c
*01アレルは赤字及びイタリックである。(E)マウス初期配列(http://www.imgt.org/IMGT_vquest/share/textes/)に対する9B12VHの比較を示す。(F)9B12VHの代表的な機能的構造及びモデルを示す(IMGT Colliers de Perles)。
【
図12】
図12は、4G1への抗PEP3mAb親和性及び特異性の要約を示す。(A)BSA-PEP3、MNgp41(E.Coliで生成)、MNgp41(S2で生成)及びHXB2 gp41、並びに抗体アイソタイプでのコーティングに対する結合の6つのmAbのEC50の要約を示す。4G1、8D5、3A2及び15B4の4つのmAbは、gp41組換型タンパク質及びPEP3ペプチドの両方に結合する。最初に行われたELISAでgp41タンパク質及びPEP3ペプチドに対して最も高い結合効率を有するため、4G1が選択された(E.Coliで生成されたMN gp41)。5E12及び9B12の2つのmAbは、PEP3ペプチドに結合するがgp41タンパク質には結合しない又は非常に低い効率で結合する。(B、C)抗PEP3gp41mAb4G1は、gp41に結合するがgp120には結合しない。(B)ELISA:マイクロタイタープレートのウェルを10μgのD117IIIgp41又はD117IIIgp120組換型タンパク質で一晩中コーティングし、タンパク質に対する4G1(1μg/well)の結合をヤギ抗マウスIgG-HRPを用いて明示化した。トリプリケートの平均±SDで結果を示す。(C)4G1mAbを用いたイムノブロット:500ng又は1μgのD117IIIgp120又はMNgp41組換型タンパク質を、還元条件において4%~20%のTris-BisSDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写した。抗体の結合を1μg/mlで試験し、ヤギ抗マウスIgG-HRP(1:10000)で明示化した。
【
図13】
図13は、4G1抗PEP3によるウイルス血症の血漿の免疫除去がCD4T細胞におけるpSTAT5NTに対するPLA2-GIBの阻害活性を抑制することを示す。3人の独立した健康なドナーからの精製CD4T細胞を、3つの独立した試験において、PLA2-GIBに対する感受性の陽性対照としてPLA2-GIB単独、健康なドナー(HD)の血漿若しくはウイルス血症患者(VP)の血漿単独(w/oAb)、又は10~30kDaのHD若しくはVP断片で30分間処理し、事前に4G1抗PEP3mAb又は対照mAb(mAb ctrl)で処理し、IL-7で15分間刺激した。IL-7を含むバッファーに応答したpSTAT5NTで正規化されたpSTAT5NTの阻害割合の平均±SDで結果を示す。4G1で処理された10~30kDaのVP血漿と比較したmAb ctrl処理でのpSTAT5NT阻害の差異の統計分析は、two tailed unpaired t検定により行われ、**はp<0.01を意味し、***はp<0.001を意味する。
【
図14】
図14は、ヤギ抗gp41抗体又は4G1抗PEP3によるウイルス血症の血漿の免疫除去が、CD4T細胞におけるpSTAT5NTに対するPLA2-GIBの阻害活性を同様に抑制することを示す。4G1及びヤギ抗gp41抗体の効果と比較するため、
図3及び
図13で示された結果の要約を示す。(A、B)CD4T細胞において抗gp41(gp41)ポリクローナル抗体(pAb)(A)若しくは4G1抗PEP3mAb(抗PEP3)(B)を用いて除去された、又は対照(ctrl)若しくは除去しない(w/o Ab)場合の1%又は3%の血漿の阻害活性を示す。(A、B)3人のドナーにおけるpSTAT5NT細胞阻害の割合の平均±SDとして結果を示す。two tailed unpaired t検定により、**はp<0.01を意味し、***はp<0.001を意味する。
【
図15】
図15は、4G1抗PEP3mAb及びヤギ抗gp41pAbを用いたサンドイッチELISAを示す。(A)ELISAの概略図を示す。(B)4G1は、ELISAによりMNgp41を定量するためにヤギ抗gp41pAbと共に用いられ得る。MNgp41抗原を用いるヤギ抗gp41pAbと4G1との結合の試験である。マイクロタイタープレートを、10μg/mlの4G1を用いて100μl/wellでコーティングし、ブロッキング後、種々の量のMNgp41組換体(S2細胞で生成)を加えた。コーティングされた4G1に対して結合されたgp41の検出を、5μg/mlのビオチン化ヤギ抗gp41pAbを用いて100μl/wellで行い、1:20000のHRPストレプトアビジンで明示化した。(C、D)4G1、8D5、3A2及び15B4は、HXB2 gp41抗原を定量するためにヤギ抗gp41pAbと共に用いられ得る。(C)HXB2 gp41抗原を用いるヤギ抗gp41pAbと4G1、3A2、8D5及び15B4の結合の試験である。マイクロタイタープレートを、10μg/mlの4G1、3A2、8D5及び15B4mAbを用いて100μl/wellでコーティングし、ブロッキング後、種々の量のHXB2 gp41組換体を加えた。コーティングされた抗PEP3mAbに対して結合されたgp41の検出を、5μg/mlのビオチン化ヤギ抗gp41pAbを用いて100μl/wellで行い、1:20000のHRPストレプトアビジンで明示化した。(D)Cで示されたgp41のμg/mlにおけるHBX2 gp41検出のEC50を示す。(E)4G1は、HBX2 gp41を定量するために他の抗PEP3mAbと共に用いられ得る。HXB2 gp41抗原を用いる3A2、8D5及び15B4と4G1との結合の試験を示す。マイクロタイタープレートを、(E)10μg/mlの3A2、8D5及び15B4mAbを用いて100μl/wellでコーティングし、ブロッキング後、種々の量のHXB2 gp41組換体を加えた。コーティングされた抗PEP3mAbに対して結合されたgp41の検出を、20μg/mlのビオチン化4G1を用いて100μl/wellで行い、1:20000のHRPストレプトアビジンで明示化した。
【
図16A-B】
図16A-Bは、ELISAによるHIVウイルス血症患者の血漿におけるgp41を検出するための追加の抗gp41mAbの開発を示す。(A)gp41配列におけるPEP3及び5184-3ペプチドの位置を示す。両方のペプチドは、MNgp41の外部ドメインに位置する。(B)PEP3及び5184-3ペプチドの分子局在を示す。PEP3は、HR2のC末部(=C末端ヘプタッドリピート)におけるgp41ループ及び5184-3ペプチドのC末部に位置する。
【
図17】
図17は、抗HR2 gp41ハイブリドーマの特徴付けを示す。(A)マウスの免疫付与のために用いられた5184-3ペプチドの配列及びHXB2組換型タンパク質における対応配列を示す。HXB2におけるアミノ酸置換を赤字で示す。(B)MN及びHXB2 gp41組換型タンパク質におけるハイブリドーマ上清を用いたELISAを示す。マイクロタイタープレートを1μg/mlのBSA-5184-3ペプチド、MN及びHXB2 gp41組換型タンパク質の50μl溶液でコーティングした。ハイブリドーマ上清を、そのまま又は1:10で試験した。抗体の結合は、HRP-抗マウスIgGを用いて明示化した。ハイブリドーマ上清で生成された抗体のアイソタイプが示されている。63G4ハイブリドーマは、主にIgG1および多少のIgM抗体を含むポリクローナルである。63G4、67D7及び69D9は、全てマウスS12由来である。72D7はマウスS13由来である。
【
図18A-C】
図18A-Cは、腹水からのマウスにおけるインビボで生成された精製抗HR2ハイブリドーマAb及び4G1は、ビオチン化され又はされず、ELISAによってgp41ペプチド及びHXB2 gp41で検証された。(A)4つの抗HR2抗体における精製抗体の純度及び量を示す。67D7及び72D7における良好な収率及び95%を超える純度は、これらの抗体のビオチン化を可能とする。(B、C)gp41ペプチド及びHXB2 gp41タンパク質に対する抗体の結合の試験を示す。(B)マイクロタイタープレートを50μlのPEP3(2μg/ml)又はBSA-5184-3(1μg/ml)でコーティングした。4G1及びビオチン化4G1(4G1-biot)をPEP3でコーティングされたウェルで試験した。72D7及び67D7ビオチン化(72D7-biot、67D7-biot)又は非ビオチン化を、BSA-5184-3ペプチドでコーティングされたウェルで試験した。(C)マイクロタイタープレートを50μlのHXB2 gp41(1μg/ml)でコーティングした。(B、C)1μg/ml抗体における100~0.0001の種々の希釈液50μlの結合をビオチン化抗体のためのHRP-ストレプトアビジン(1:1000)又は非ビオチン化抗体のためのHRP-抗マウスIgG(1:5000)で明示化した。
【
図19A-E】
図19A-Eは、サンドイッチELISAによる抗HR2及び4G1抗体の結合の試験を示す。捕捉抗体としての72D7及び検出抗体としてのビオチン化4G1は、HXB2 gp41の定量を可能とする。捕捉抗体(A)抗PEP3 4G1(10μg/ml)、(B)抗HR2 63G4(10μg/ml)、(C)抗HR2 67D7(20μg/ml)、(D)抗HR2 69D6(10μg/ml)、又は(E)抗HR2 72D7(10μg/ml)におけるビオチン化4G1(0.1μg/ml)、72D7(50μg/ml)及び67D7(100μg/ml)の結合の試験を示す。(A~E)マイクロタイタープレートを50μlの捕捉Ab溶液でコーティングした。HXB2 gp41の種々の希釈液(0、0.1、1及び10μg/ml)50μlを加えた。その結合を、ビオチン化検出Abを加えることによるサンドイッチELISAにより試験し、HRP-ストレプトアビジン(1:1000)で明示化した。
【
図20】
図20は、抗HR2 72D7及び4G1mAb又はヤギ抗gp41pAbを用いたサンドイッチELISAを示す。72D7は、HXB2 gp41を定量するために4G1mAb又はヤギ抗gp41pAbと共に用いられ得る。HXB2 gp41抗原を用いた4G1mAb又はヤギ抗gp41pAbと抗HR2 72D7mAbの結合の試験を示す。マイクロタイタープレートを10μg/mlの72D7を用いて100μl/wellでコーティングし、ブロッキング後に、種々の量のHXB2 gp41組換体を加えた。コーティングされた72D7に結合されたgp41の検出を、20μg/mlのビオチン化4G1mAb又は5μg/mlのビオチン化ヤギ抗gp41pAbの100μl/wellを用いて行い、1:20000のHRP-ストレプトアビジンで明示化した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、概して新規抗体及びその使用に関する。本発明は特に、HIVウイルス血症患者におけるgp41コファクター活性を阻害するために用いられ得る抗PEP3抗体を開示する。さらに、これらの抗体は、HIVウイルス血症患者の血漿におけるgp41の定量、及び抗レトロウイルス処置の際のgp41濃度の結果を追求するのに用いられ得る。
【0008】
定義
本明細書で用いられる「gp41」の用語は、HIVウイルスによりコードされる実質的に41kDaの糖タンパク質を示す。gp41の配列は、Genbankの例えばNo.AAC31817.1で得られる。代表的なgp41タンパク質のアミン酸配列は配列番号1として示される。配列番号1(配列番号2)のアミノ酸97~111番目は、PEP3配列又はドメイン又はペプチドを指すgp41のドメインを示す。
【0009】
gp41の用語は、多型又はスプライシングから生じる変異体等の、その自然変異体を含むタンパク質の形態を示す。「gp41」の用語は、配列番号1の配列を含むタンパク質、又は多型若しくはスプライシングから生じる変異体等のその自然変異体を典型的に示す。
【0010】
一般に、「抗体」の用語は、重鎖及び軽鎖を含むイムノグロブリン型分子を示す。典型的な抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる基本的な単量体の「H2L2」構造を有する。重鎖のそれぞれは軽鎖と結合する。重鎖及び軽鎖は、「可変領域」又は「可変ドメイン」を含む。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれ得る。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれ得る。これらのドメインは、一般に抗体の最も変化可能な領域であり、抗原結合サイトを含む。軽鎖又は重鎖可変領域(VL又はVH)は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる3つの超可変領域によって分断されたフレームワーク領域からなる。
【0011】
抗体の「断片」は、抗原結合を与える抗体の部分を示す。断片は典型的に、Fab、Fab’2、ScFv、ナノボディ又はCDRを示す。
【0012】
本明細書で用いられる抗体の「変異体」は、参照抗体の抗原特異性を維持するが、典型的にはその特性が改善するように1つ以上のアミノ酸残基が(例えば化学的に又は生物学的に)修飾された抗体を意味する。そのような化学的修飾の例は、例えばアルキル化、PEG化、アシル化、エステル又はアミド形態等を含む。特に変異体は、水溶性ポリマー等の1つ以上の追加の非タンパク質性成分を含むように修飾された本明細書で開示されるような抗体である。水溶性ポリマーの例は、以下に限られないが、PEG、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン及びポリビニルアルコールを含む。
【0013】
また、変異体は、抗体がグリコシル化される程度を増大又は減少するように生成され得る。抗体に対するグリコシル化サイトの追加又は除去は、1つ以上のグリコシル化サイトを生成又は除去するようにアミノ酸配列を変更することにより便利に達成され得る。抗体がFc領域を含む場合、それに付加された糖質は変更され得る。哺乳動物細胞により生成されたネイティブの抗体は、典型的に、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN-結合により結合された分枝型の二分枝オリゴ糖を含む(例えばWright et al. TIBTECH, 1997, 15:26-32を参照)。オリゴ糖は、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、並びに二分枝オリゴ糖構造の「幹」におけるGlcNAcに結合されたフコースといった種々の糖質を含み得る。いくつかの実施形態において、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体変異体を生成するために行われ得る。
【0014】
一実施形態において、変異体は、(FcガンマRIII結合の変更を介して)ADCCを変更するために修飾されたFc領域を有する。
【0015】
一実施形態において、抗体変異体は、Fc領域に(直接又は間接に)結合されたフコースを欠損する糖質構造を有するように提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%又は20%~40%であり得る。フコースの量は、MALDI-TOF質量分析法により測定されるようなAsn297に結合された全ての糖構造(例えば複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計と比較した、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することにより決定される。Asn297は、Fc領域における概ね位置297番目に配置されたアスパラギン残基を意味するが(Fc領域残基のEuナンバリング)、抗体における小さい配列変異に起因してAsn297は297番目の位置の約±3アミノ酸分の上流又は下流に配置されてもよく、すなわち、294~300番目の位置に配置されていてもよい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関する公開の例は、以下に限らないが、Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336: 1239-1249 (2004)及びYamane-Ohnuki N, Satoh M. mAbs. 2009;1:230-236を含む。脱フコシル化抗体を生成できる細胞株の例は、タンパク質フコシル化が欠損したLed3CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986))、及びα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子であるFUT8ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(例えばYamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004); Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006)を参照)を含む。
【0016】
特定の実施形態において、それは、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基に置換された、例えば「thioMABs」といったシステイン改変抗体を生成するのに望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換される残基は、抗体のアクセス可能サイトで生じる。システインでそれらの残基を置換することによって、反応的チオール基は、抗体のアクセス可能サイトに配置され、さらに本明細書で記載されるようにイムノコンジュゲートを生成するために、薬物成分又はリンカー-薬物成分等の他の成分に抗体をコンジュゲートするのに用いられ得る。特定の実施形態において、1つ以上の下記残基がシステインに置換され得る:軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン改変抗体は、例えば米国特許第7521541号明細書に記載されるように生成され得る。
【0017】
また、「変異体」の用語は、以下に限定されないが細胞毒性剤、蛍光成分、診断用放射性同位体若しくはイメージング剤等の検出可能成分、又はアガロースビーズ等の固体担体を含む1つ以上の異種分子にコンジュゲートされた上記のような抗体を含むイムノコンジュゲートを含む。細胞毒性剤の例は、以下に限定されないが、化学療法剤若しくは薬物、増殖阻害剤、毒物(例えばタンパク質毒物、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素活性毒物、又はそれらの断片)、又は放射性同位体を含む。抗体及び細胞毒性剤のコンジュゲートは、当業者に周知の種々の二官能性タンパク質カップリング剤を用いて作製され得る。リンカーは、細胞内において細胞毒性剤の放出を促進する「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52: 127-131 (1992))が用いられ得る。誘導体は、二重特異性抗体であってもよい。特定の誘導体は、抗体の検出又は捕捉を可能とするラベル(マーカー、トレーサー、タグ)をもつ標識化抗体である。そのような誘導体の例は、融合分子の検出又は定量を可能とするレポーターペプチド等の1つ以上のタンパク質又はペプチドと抗体との共有又は非共有結合により形成された融合分子を含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗体誘導体は、検出可能及び/又は定量可能にするために、ビオチン化等の操作がなされ得る。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明の抗体、断片及び誘導体は単離されている。「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。特に、抗体は、例えば電気泳動(例えばSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えばイオン交換又は逆相HPLC)により決定されるような95%以上又は99%以上の純度に精製され得る。抗体の純度の評価の方法のレビューのために、例えばFlatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照できる。
【0019】
そのような抗体が他の分子と比較して抗原に対して優先的な結合を示す場合、抗体は高原に対して「選択的」である又は抗原に「選択的に結合する」。選択性は、競合的ELISA又はBiacoreアッセイにより決定され得る。選択性を表す親和性/結合性の差異は、例えば1:1.1以上の比、又は約1:5、1:10、1:100、1:1000以上の比等の検出可能な優先度であり得る。
【0020】
「gC1qR」又は「gC1q受容体」は、特にCD4T細胞といった細胞の表面における補体C1qに対する受容体、特にヒト形態の受容体を示す。また、gC1qRは、C1q結合タンパク質(C1QBP)、ASF/SF2結合タンパク質p32(SF2P32)、糖タンパク質gC1qBP、ヒアルロン酸結合タンパク質1(HABP1)、ミトコンドリアマトリクスタンパク質p32、gC1q-Rタンパク質、p33、C1qBP及びGC1QBPとしても知られている。受容体のアミノ酸配列は本分野において開示されている。ヒトgC1qRの代表的なアミノ酸配列は、配列番号65に示されている。
【0021】
gC1qRの用語は、上記配列番号65(受入番号UniProtKB/Swiss-Prot:Q07021.1)の受容体、並びにその切断形態及び変異体を示す。変異体は、例えば配列番号65と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する自然起源の変異体を含む。
【0022】
出願人は、以前にgp41がGc1qRに結合することを書面化し、それは、細胞内小胞のエキソサイトーシスを起こすシグナル経路を発動する。Gc1qRに対するgp41の結合の阻害は、そのような結合の好ましくは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%の抑制といった阻害レベルを示す。そのような活性は、本技術分野において周知の方法を用いてインビトロで確かめられ得る。
【0023】
抗PEP3抗体
特定の態様において、本発明は、抗gp41抗体、その変異体又は断片に関する。そのような抗体は、PEP3ペプチドを用いた免疫化により生成され、その後、gp41及び/又はPEP3ドメインを結合する能力に基づいて選択された。抗体は、C1qRに対するgp41の結合を阻害する能力及び/又は生物学的サンプルにおける反応的gp41を効率的に定量する能力でさらに選択された。本発明の抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列が決定され、その組換え生成物及びその変異体の生成を可能とした。試験に基づいて、これらの抗体がgp41及び/又はPEP3に結合できることを確認した。また、本発明の抗体がCD4T細胞におけるHIVウイルス血症の血漿の抑制的影響を有効に阻害することも見られた。従って、これらの抗体は、治療的及び診断的使用において優れた特性を示す。
【0024】
これらの抗体の軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号3~14に提供される(図面も参照)。また、各可変領域のCDRドメインも同定され、配列番号15~50に提供される。
【0025】
特定の態様において、本発明は、配列番号15~50のいずれかから選択された配列からなる又は実質的に該配列からなるCDRを含むgp41結合抗体に関する。
【0026】
さらに特定の実施形態において、本発明は、軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体に関し、該軽鎖可変領域は、(i)配列番号15、21、27、33、39若しくは45から選択される配列からなる又は実質的に該配列からなるCDR-L1、及び/又は(ii)配列番号16、22、28、34、40若しくは46から選択される配列からなる又は実質的に該配列からなるCDR-L2、及び/又は(iii)配列番号17、23、29、35、41若しくは47から選択される配列からなる又は実質的に該配列からなるCDR-L3を含む。
【0027】
さらに特定の実施形態において、軽鎖可変領域は、以下のCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3を含む:
配列番号15、16及び17、
配列番号21、22及び23、
配列番号27、28及び29、
配列番号33、34及び35、
配列番号39、40及び41、又は、
配列番号45、46及び47。
【0028】
さらに特定の実施形態において、本発明は、重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体に関し、該重鎖可変領域は、(i)配列番号18、24、30、36、42若しくは48から選択される配列からなる又は実質的に該配列からなるCDR-H1、及び/又は(ii)配列番号19、25、31、37、43若しくは49から選択される配列からなる又は実質的に該配列からなるCDR-H2、及び/又は(iii)配列番号20、26、32、38、44若しくは50から選択される配列からなる又は実質的に該配列からなるCDR-H3を含む。
【0029】
さらに特定の実施形態において、軽鎖可変領域は、以下のCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3を含む:
配列番号18、19及び20、
配列番号24、25及び26、
配列番号30、31及び32、
配列番号36、37及び38、
配列番号42、43及び44、又は、
配列番号48、49及び50。
【0030】
さらに特定の実施形態において、本発明は、上記のような軽鎖及び重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体に関する。より具体的に、本発明の特定のモノクローナル抗体は、
(i)配列番号15、21、27、33、39若しくは45から選択されるCDR-L1、及び/又は(ii)配列番号16、22、28、34、40若しくは46から選択されるCDR-L2、及び/又は(iii)配列番号17、23、29、35、41若しくは47から選択されるCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
(i)配列番号18、24、30、36、42若しくは48から選択されるCDR-H1、及び/又は(ii)配列番号19、25、31、37、43若しくは49から選択されるCDR-H2、及び/又は(iii)配列番号20、26、32、38、44若しくは50から選択されるCDR-H3を含む重鎖可変領域と、を含む。
【0031】
さらに特定の実施形態において、本発明は、配列番号3、5、7、9、11及び13から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなる軽鎖可変領域、並びに/又は配列番号4、6、8、10、12及び14から選択される配列からなる若しくは実質的に該配列からなる重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体に関する。
【0032】
さらに特定の実施形態において、本発明は、以下のような軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体に関する:
配列番号3及び4、
配列番号5及び6、
配列番号7及び8、
配列番号9及び10、
配列番号11及び12、又は、
配列番号13及び14。
【0033】
本発明の抗体の特定の例は、4G1、8D5、3A2、15B4、5E12及び9B12抗体である。
【0034】
上述のように、また、実施例で示すように、本発明の抗体は、gp41及び/若しくはPEP3に結合し、並びに/又はGc1qRに対するgp41の結合を阻害し、並びに/又はCD4T細胞におけるHIVウイルス血症の血漿の抑制的影響を阻害する。
【0035】
他の実施形態において、本発明は、配列番号63又は64の1つ以上のアミノ酸残基を含むgp41のエピトープを結合する抗gp41抗体に関する。
【0036】
核酸、ベクター及び宿主細胞
また、本発明は、上記のような抗体又は断片をコードする核酸、核酸等を含むクローニング又は発現ベクター、及び組換え宿主細胞に関する。
【0037】
他の態様において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸分子、又は該コード配列に相補的な核酸に関する。好ましくは、核酸は単離されている又は精製された核酸である。
【0038】
核酸は、DNA(cDNA若しくはgRNA)、RNA又はそれらの混合物であってもよい。それは、1本鎖形態若しくは2本鎖形態又はそれら2つの混合物であってもよい。それは、例えば修飾結合、修飾プリン若しくはピリミジン塩基、又は修飾糖を含む修飾ヌクレオチドを含んでもよい。それは、化学合成、組換え及び突然変異誘発を含む本技術分野において当業者に周知の方法により準備され得る。本発明に係る核酸は、本発明に係る抗体の配列から推定されてもよく、コドン使用頻度は、その核酸の転写がなされるであろう宿主細胞に従って適合され得る。これらのステップは、本技術分野において当業者に周知の方法に従って行われてもよく、それらのうちのいくつかは参照マニュアルSambrook et al. (Sambrook J, Russell D (2001) Molecular cloning: a laboratory manual, Third Edition Cold Spring Harbor)に記載されている。
【0039】
本発明の核酸は、抗体の軽鎖を含むアミノ酸配列及び/若しくは抗体の重鎖を含むアミノ酸配列をコードしてもよく、又はそのようなコード配列と相補的であってもよい。
【0040】
そのような核酸配列の特定の例は、配列番号51~62のいずれかを含む配列、及びそれらに相補的な配列を含む。さらに、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。任意に、ベクターは、本発明のいくつかの核酸を含んでもよい。特に、ベクターは、制御領域、すなわち1つ以上の制御配列を含む領域に操作可能に結合された本発明の核酸を含み得る。任意に、ベクターは、いくつかの制御領域に操作可能に結合された本発明のいくつかの核酸を含み得る。
【0041】
「制御配列」の用語は、コード領域の発現に必要な核酸配列を意味する。制御配列は、内因性又は異種性であってもよい。周知の制御配列及び本技術分野において当業者により一般に用いられている制御配列が好ましいであろう。そのような制御配列は、以下に限定されないが、プロモーター、シグナルペプチド配列及び転写ターミネーターを含む。
【0042】
「操作可能に結合」の用語は、制御配列がコード領域の発現を指示するように、制御配列がコード配列に対して適切な位置に配置されている構成を意味する。
【0043】
さらに、本発明は、宿主細胞の形質転換、トランスフェクト又は形質導入のための本発明に係る核酸又はベクターの使用に関する。
【0044】
また、本発明は、本発明の1つ若しくはいくつかの核酸及び/又は本発明の1つ若しくはいくつかのベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0045】
また、「宿主細胞」の用語は、複製の際に起こる変異による親宿主細胞と同一ではない親宿主細胞の子孫を含む。抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適切な宿主細胞は、本明細書に記載された原核細胞又は真核細胞を含む。
【0046】
例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合、細菌において生成され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、米国特許第5648237号明細書、米国特許第5789199号明細書及び5840523号明細書を参照できる(Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 245-254, describing expression of antibody fragments in E. coli.も参照)。発現後、抗体は、可溶性画分において細菌細胞溶解物から単離されてもよく、さらに精製され得る。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母等の真核微生物は、抗体をコードするベクターの適切なクローニング又は発現のための宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」されて部分的に又は完全にヒトグリコシル化パターンを含む抗体を生成する真菌及び酵母株を含む。Gerngross, Nat. Biotech. 22: 1409-1414 (2004), and Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)を参照できる。また、グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)由来である。無脊椎動物細胞の例は、植物及び昆虫細胞を含む。多くのバキュロウイルス株は、昆虫細胞にコンジュゲートするのに、特にツマジロクサヨトウ細胞のトランスフェクションのため用いられることができるとして同定された。植物細胞培養物も、宿主細胞として用いられ得る。例えば、米国特許第5959177号明細書、米国特許第6040498号明細書、米国特許第6420548号明細書、米国特許第7125978号明細書及び米国特許第6417429号明細書を参照できる。また、脊椎動物細胞も宿主として用いられ得る。例えば、懸濁液において増殖するのに適合する哺乳動物細胞株は有益となり得る。有益な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(例えばGraham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載されている293又は293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えばMather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されているTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頚部カルシノーマ細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(HepG2)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562)、例えばMather et al., Annals N. Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載されているようなTRI細胞、MRC5細胞及びFS4細胞である。他の有益な哺乳動物宿主細胞は、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及びY0、NS0及びSp2/0等のミエローマ細胞株を含む。抗体の生成に適切な特定の哺乳動物宿主細胞のレビューのために、例えばYazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255- 268 (2003)を参照できる。また、本発明は、抗体の発現に適切な条件下で上記のような本発明の核酸又は本発明のベクターを含む宿主細胞を培養すること、及び任意に宿主細胞又は宿主細胞の培養培地から抗体を回収することを含む本発明の抗体を生成するための方法に関する。任意に、回収された抗体は、さらに精製又は単離され得る。適切な培地、培養条件及び生成方法は、当業者に周知であり、宿主細胞及び生成されるための抗体に従って容易に選択され得る。
【0047】
医薬及び診断組成物
さらに、本発明は、本発明の抗体、核酸、ベクター又は宿主細胞を含む医薬又は診断組成物に関する。組成物は、本発明の1つ又はいくつかの抗体、本発明の1つ又はいくつかの核酸、本発明の1つ又はいくつかのベクター及び/又は本発明の1つ又はいくつかの宿主細胞を含み得る。好ましくは、組成物は、本発明の1つ又はいくつかの抗体を含む。
【0048】
医薬組成物は、本発明の抗体及び適切な賦形剤を含む。通常、抗体は、所望の純度を有し、任意に例えば水溶液、凍結乾燥又は他の乾燥剤形の形態で生理学的に許容可能な担体、ビヒクル又は安定剤と混合される(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition (2000))。
【0049】
許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、採用される用量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、以下に限定されないが、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、等張剤、非イオン性界面活性剤、酸化防止剤及び他の添加剤を含む。
【0050】
緩衝剤は、生理条件に近似する範囲内にpHを維持することを助ける。それらは、約1mM~約50mMの範囲の濃度で存在することが好ましい。本発明で用いるのに適切な緩衝剤は、以下に限定されないが、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、シュウ酸、乳酸及び酢酸緩衝剤、並びにリン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤及びTris等のトリメチルアミン塩等の有機酸及び無機酸の両方及びそれらの塩を含む。防腐剤は、微生物の増殖を阻害するために添加されてもよく、0.2%~1%(w/v)の範囲の量で添加され得る。本発明で用いるのに適切な防腐剤は、以下に限定されないが、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メタクレゾール、メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ベンズアルコニウムハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ヘキサメトニウム又はベンゼトニウム塩化物、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール及び3-ペンタノールを含む。
【0051】
等張剤は、本発明の液体組成物の等張性を保証するために添加されてもよく、グリセリン、エリトリトール、キシリトール及びマンニトール等の多価糖アルコール、好ましくは3価又はそれ以上の糖アルコールを含む。
【0052】
安定剤は、充填剤から治療剤を可溶化する又は変性若しくは容器の壁への付着の防止を助ける添加剤までの機能の範囲に及ぶ賦形剤の広いカテゴリーを意味する。代表的な安定剤は、多価糖アルコール(上記のもの);アルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン等のアミノ酸;イノシトール等のシクリトールを含むラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、グリセロール等の有機糖又は糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム等の還元剤含有硫黄;低分子量のポリペプチド(すなわち10残基未満);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又はイムノグロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース等の単糖類;ラクトース、マルトース、スクロース等の二糖類;ラフィノース等の三糖類;並びにデキストラン等の多糖類であり得る。安定剤は、治療剤の1重量部毎に0.1~10000重量部の範囲で存在し得る。
【0053】
非イオン性界面活性剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の可溶化を助けるために、及び撹拌誘導性の凝集に対して治療タンパク質を保護するために添加され得る。適切な非イオン性界面活性剤は、以下に限定されないが、ポリソルベート(20、80等)、ポロキサマー(184、188等)、PLURONIC(登録商標)、ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80等)を含む。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在し得る。
【0054】
追加の種々の賦形剤は、以下に限定されないが、充填剤(例えばデンプン)、キレート剤(例えばEDTA)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)及び共溶媒を含む。
【0055】
また、活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセルとポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルとのそれぞれ、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンに封入され得る。そのような技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th edition (2000)に開示されている。本発明の医薬組成物は、局所、経口、非経口、経鼻、静脈内、筋肉内、皮下又は眼球内等の投与用に製剤化され得る。
【0056】
好ましくは、医薬製剤は、注射可能な製剤である。これらは、特に等張で無菌の生理食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等、又はそのような塩の混合物)、又は場合によって滅菌水又は生理食塩水の添加で注射溶液の構成を可能とする乾燥、特に凍結乾燥組成物であってもよい。
【0057】
無菌注射溶液は、上述の種々の他の成分を含む適切な溶媒内で必要とされる量で活性化合物を組み込み、必要に応じてろ過滅菌をすることにより調製され得る。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合において、調製の好ましい方法は、先のろ過滅菌溶液から追加の所望成分を含む活性成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。
【0058】
静脈内又は筋肉内投与等の非経口投与のために製剤化された組成物に加え、他の医薬的に許容可能な形態は、例えば、経口投与のための錠剤又は他の固体、徐放性カプセル及び現在用いられている他の形態を含む。
【0059】
本発明の医薬組成物は、本発明の1つ又はいくつかの抗体を含み得る。
【0060】
さらに、医薬組成物は、1つ又はいくつかの追加の活性化合物を含み得る。追加の活性化合物の例は、以下に限定されないが、化学療法薬、抗体、抗寄生虫剤、抗真菌剤又は抗ウイルス剤を含む。
【0061】
特定の障害又は状態の処置に有効となるであろう本発明の抗体の量は、その障害又は状態の特性に依存し、標準の臨床技術により決定され得る。好ましい実施形態において、各用量は、約0.1mg/kg(体重)~約25mg/kg(体重)の抗体の範囲であってもよく、より好ましくは、約1mg/kg(体重)~約10mg/kg(体重)の範囲であってもよい。投与計画は、疾病の型、疾病の重症度及び治療剤に対する対象の感受性を含む多くの臨床因子に依存して1月に1回から毎日まで異なり得る。
【0062】
検出、投薬、診断の方法
更なる態様において、本発明は、上記のような抗体、その断片又は変異体を用いてgp41を検出又は定量する方法に関する。その方法は、対象におけるHIV感染の重症度又は進行度をモニターするために、及びそのような感染の予後を予測する又は最適な処置を決定するために用いられ得る又は実施され得る。
【0063】
特定の実施形態において、その方法は、a)サンプルを準備すること、及びb)上記のような抗体又はその断片を用いてサンプル内におけるgp41タンパク質の存在又は量を検出することを含む。
【0064】
一般に、検出ステップb)は、(i)サンプル又はサンプルの生物的複製物を本明細書で記載されたモノクローナル抗体又はその断片若しくは変異体のいずれかに接触させること、及び(ii)ステップ(i)において形成された抗体:抗原複合体の存在を検出することを含む。
【0065】
抗体:抗原複合体の存在を検出することは、当業者により周知の技術、及び本明細書に広く記載された技術により行われ得る。一般に、検出は、gp41に対する2次抗体、好ましくは1次捕捉抗体のエピトープとは別の(且つ離れた)エピトープに結合する2次抗体を用いて行われ得る。代替的に、捕捉抗体は標識されてもよく、検出ステップは、典型的には非結合抗体を除去した後の反応における標識の量を測定することを含んでもよい。
【0066】
抗体は、表面若しくはは粒子に固定されていてもよく、又はされていなくてもよい。反応は、マイクロプレート、チップ、ボトル等の適切な担体又は容器において行われ得る。また、特定の実施形態において、検出ステップ(ii)は、レポーティング基にコンジュゲートされた又は検出可能に操作された抗体等の標識化抗体を用い、より好ましくはその抗体はビオチン化されている。
【0067】
その方法では、血清サンプル、血漿サンプル、全血、生物学的流体等の生物学的サンプル等のサンプルが用いられ得る。特定の実施形態において、用いられるサンプルは、対象から得られる。サンプルは、希釈、濃縮等により検出前に処理され得る。それは、本発明の方法に用いる前に凍結乾燥、滅菌、凍結等がなされ得る。
【0068】
特定の実施形態において、本発明は、
(i)本発明のモノクローナル抗体、変異体又は断片にサンプルを接触させることと、
(ii)ステップ(i)において形成された抗体:抗原複合体の存在を検出することと、を含むHIVの検出のための方法に関する。
【0069】
本発明は、本発明の抗体がgp41の適切な(又は反応性の)形態を検出できる又は定量できるため特に適切である。実際に、PEP3ドメインを標的化することにより、本質的に反応性のgp41タンパク質が測定され、従って、それは疾病/患者の状態についての関連情報を提供する。
【0070】
従って、本発明は、それを必要とする対象におけるHIV疾患の進行をモニタリングする方法に関し、それは、本発明のモノクローナル抗体、変異体又は断片を用いて対象からの血漿サンプルにおいて異なる時間間隔でgp41をインビトロで定量することを含む。
【0071】
本発明の方法は、例えば抗HIV処置の有効性をモニタリングするために用いられ得る。
【0072】
また、本発明の方法は、HIVに感染された対象が抗PLAG1B免疫療法、好ましくは抗PLA2G1B抗体療法又はトランスCD4免疫療法から利益を受けることができるかどうかを決定するために用いられ得る。
【0073】
また、本発明の方法は、対象におけるHIV疾患の重症度を決定するために用いられてもよく、サンプル内における本発明のモノクローナル抗体、変異体又は断片の参照値と比較して増大した結合レベルは、重症度の指標である。本発明における使用において、参照値は、同一の対象からのサンプルにおけるより早い段階で決定された値又は平均値であってもよい。
【0074】
また、本発明は、抗レトロウイルス分子で処置されたHIVに感染された患者の血漿におけるgp41(断片)の量をモニタリング/追跡するために、並びにgp41レベルをPLA2GIB活性及び疾病の予後と関連付けるために用いられ得る。
【0075】
さらなる態様において、本発明は、容器(プレート、マイクロプレート、チューブ、ボトル、フラスコ等)中に少なくとも1つの本明細書に記載されるような抗体又はその変異体若しくは断片を含むキットに関する。本発明のキットは、免疫反応物又は抗体-抗原複合体を実施、検出又は定量するための1つ以上の試薬をさらに含むことが好ましい。1つ以上の試薬は、ELISA、RIA等の免疫反応に適合する例えば希釈液、基質、ラベル、マーカー抗体等から選択され得る。
【0076】
HIVを処置する方法
本発明の抗体及び組成物は、それを必要とする対象におけるHIVを処置するためにさらに用いられ得る。
【0077】
さらなる態様において、本発明は、上記のような組成物、又は抗体又はその断片若しくは変異体を、それを必要とする対象に投与することを含むHIVを処置するための方法に関する。さらなる態様において、本発明は、HIV疾患を処置するために使用するための上記のような組成物、又は抗体又はその断片若しくは変異体に関する。
【0078】
本明細書において用いられる「処置」又は「処置する」は、処置される個体の自然経過を変更するための試みにおける臨床的介入を意味し、予防又は治療目的のために行われ得る。処置の所望の効果は、以下に限定されないが、疾病の発生又は再発の予防、症状の緩和、疾病の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、ウイルスの量、複製又は毒性の抑制、疾病進行速度の低減、疾病状態の改善又は緩和、及び寛解又は改善された予後を含む。いくつかの実施形態において、本発明の組成物及び方法は、疾病若しくは障害の発生を遅らせるために、又は疾病若しくは障害の進行を遅らせるために用いられる。
【0079】
本発明の化合物又は組成物の投与期間、容量及び頻度は、対象及び疾病に従って適合され得る。処置は、単独で、又は他の活性成分と組み合わせて同時に若しくは別々に若しくは順次用いられ得る。
【0080】
本発明のさらなる態様及び利点は、以下の実施例の項で開示される。
【実施例】
【0081】
材料及び方法
組換えタンパク質及びペプチド-ヒトPLA2-GIBをE.coli(Gerard Lambeauから贈られた、純度>98%)又はCHO-S(純度>98%)で産生した。HIV-1 MN gp41(Genbank accession #AAC31817.1)組換えタンパク質を、E.coliで産生し、抗体オンラインから得た(MN gp41(565-771デルタ642-725),ABIN2129703,lot 93-482,純度>95%)。HXB2 gp41組換えタンパク質(GenBank accession #AAB50262.1,a.a.534-681,純度>95%)を293細胞培養物から精製し、抗体オンラインから購入した(ABIN1605865)。HIV-1 MN gp41(Genbank accession #AAC31817.1,a.a.542-666)、D117 III gp41(GenBank accession #AAM08364.1,a.a.532-656)(用いられる組換えタンパク質のアライメントを参照、方法をスライドする)、及びD117 III gp120(Genbank accession #AAM08364.1,a.a.31-482)をS2細胞で産生し、DIACCURATEで精製した(純度>98%)。PEP3ペプチドのNH2-PWNASWSNKSLDDIW-COOH及び対照ペプチド(CTL)のNH2-PWNATWTQRTLDDIW-COOHをCovalabから注文した(純度98%)。
【0082】
抗gp41抗体の開発-HIV-1 MN株gp41におけるPEP3配列(PWNASWSNKSLDDIW)に特異的な抗体をKLHにコンジュゲートされたNH2-C-PWNASWSNKSLDDIW-COOHのペプチド(KLH-PEP3)を用いたOF1マウスの免疫化によってBIOTEM(フランス)で生成した。マウスを3週間ごとに5回免疫化した。最初の免疫化は、50μgのペプチド及び完全フロイントアジュバントを皮下及び腹腔内投与した。その後、マウスに対して50μgのペプチド及び不完全フロイントアジュバントを腹腔内に3回注射した。血清中の抗体力価は、PEP3及びMN gp41タンパク質(ABIN2129703)におけるELISAにより評価した。タンパク質及びペプチドにおける最も良い力価を有するマウスを選択し、5μgのKLH-PEP3のみを静脈内注射した。3日後、脾臓を回収し、細胞をミエローマ細胞(Sp2/0-Ag14)と融合してハイブリドーマを生成した。1072の融合からの1093の上清がBSA-PEP3ペプチドに陽性であった。最も良い123個を選択し、BSA-PEP3ペプチド及びMN gp41において再度試験した。27個のクローンのアイソタイプを決定し、細胞培養液で維持された6つのクローンを含むそれらを凍結して、安定クローンを得た(表1)。これら6つのクローンである4G1、8D5、3A2、15B4、5E12及び9B12を細胞培養のためにHigh Yielding Performance Flask(hyperflask)に播種して、10%の低IgGウシ胎児血清(FBS)含有DMEM培地を含む560mlの上清を生成した。低エンドトキシン条件(<10EU/mg、LALテスト)においてタンパク質Aでのアフィニティークロマトグラフィーにより上清からIgGを精製した。BSA-PEP3、MN gp41及びHXB gp41に結合する抗体を本特許で示すように試験し、これらの抗体の可変領域をコードするcDNA配列を決定した(以下参照)。
【0083】
HIV-1 MN株gp41における配列5184-3(HR2領域におけるEKSQTQQEKNEQELLELDK,a.a.648-666)抗HR2抗体は、KLHにコンジュゲートされたNH2-C-EKSQTQQEKNEQELLELDK-COOHのペプチド(KLH-5184-3)を用いたOF1マウスの免疫化によってBIOTEM(フランス)で生成した。3匹のマウスを5回免疫化し、そのうち最初の3回の間隔及び4回目と5回目との間を3週間空けて、3回目と4回目の間を4か月空けた。最初の免疫化では、20μg(S11及びS12マウス)又は50μg(S13マウス)のペプチド並びに完全フロイントアジュバントを皮下及び腹腔内投与した。2回目の免疫化では、20μg(S11及びS12マウス)又は50μg(S13マウス)のペプチド並びに不完全フロイントアジュバントを皮下及び腹腔内投与した。3回目及び4回目の注射は、10μgのペプチド及び不完全フロイントアジュバントを腹腔内投与した。血清中の抗体力価を、5184-3ペプチド、MN Gp41及びHXB2 gp41でのELISAにより評価した。マウスS12及びS13は最も良好な力価を有した。従って、それら療法に、2.5μgのMN gp41及びHXB2 gp41の両方を静脈内注射した。3日後に脾臓を回収し、細胞にミエローマ(Sp2/0-Ag14)細胞を融合し、ハイブリドーマを生成した。S12マウス細胞の融合からの515個の上清のうち、ELISAによるBSA-5184-3ペプチドで3つが陽性であり、BSA-5184-3、MN gp41(S2細胞で生成)及びHXB2 gp41タンパク質(63G4、69D6及び67D7)でのELISAにより確認した。S13マウス細胞の融合からの301個の上清のうち、ELISAによるBSA-5184-3ペプチドで1つが陽性であり、BSA-5184-3、MN gp41及びHXB2 gp41タンパク質(72D7)でのELISAにより確認した。我々は、抗HR2Ab(抗5184-3)を生成する4つのクローンを得た。それらを凍結し、アイソタイプを決定した。
【0084】
ELISA-ペプチド又はタンパク質に対するELISAを、BSA-PEP3及びMN gp41タンパク質(抗PEP3Abのスクリーニング、
図5A~C)、又はBSA-5184-3、MN gp41及びHXB2 gp41タンパク質(抗HR2Abのスクリーニング、
図17、18B、18C)のPBS(pH7.4)溶液50μlを用いて室温(RT)で一晩中コーティングされたマイクロタイタープレートで行った。洗浄後、ウェルを150μlのPBS/2.5%スキムミルク(抗PEP3Abのスクリーニング)、又はPBS/1%BSA(抗HR2Abのスクリーニング)を用いてRTで1時間ブロッキングした。洗浄後、100~0.0001μg/mlの抗体のPBS/0.05%Tween20/0.5%BSAによる種々の希釈液50μlをRTで2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、抗体の結合を、非ビオチン化AbにおいてはHRPコンジュゲートaffiniPure F(ab)’2断片ヤギ抗マウスIgG(1:5000,Jackson 115-036-008)、又はビオチン化AbにおいてはHRP-ストレプトアビジン HRP(1:1000)を含む50μlのPBS/0.05%Tween20/0.5%BSAを用いて1時間インキュベートし、TMBを添加して(室温で10分、SureBlue TMB Microwell Peroxidase Substrate Kit,KPL 52-00-01,VWR)、発現させた。
【0085】
MN gp41(S2細胞で生成)又はHXB2 gp41(
図5D~F)のコーティング上での抗PEP3mAbを用いたELISAを、1μg/mlのタンパク質組換体を含むカルボネートバッファーpH9.6溶液100μlを用いて4℃で一晩中コーティングされたマイクロタイタープレートで行った。非特異的結合サイトを300μlのPierceブロッキングバッファー(37572、Pierce)を用いてブロッキングした。洗浄後、Abを含むPierceブロッキングバッファーの種々の希釈液(MN gp41で100~0.0001μg/ml;HXB2 gp41で100~10
-10μg/ml)100μlをRTで2時間、4通りでインキュベートした。結合した抗体を、ヤギ抗マウスHRPコンジュゲート抗体と相互作用させた後、100μl/wellのTMB基質(UP664781,Interchim)を添加して検出した。
【0086】
抗PEP3mAbのさらなる研究のために、それらのビオチン化4G1又はビオチン化ヤギ抗gp41pAb(PA1-73100,Thermofisher Scientific)との結合をサンドイッチELISAにより試験した(
図15A~E)。10μg/mlで捕捉抗体(4G1、3A2、8D5又は15B4)を含む100μlのカルボネートバッファーpH9.6でマイクロタイタープレートをコーティングした。非特異的結合サイトを300μlのPierceブロッキングバッファー(37572、Pierce)を用いてブロッキングした。洗浄後、Abを含むPierceブロッキングバッファーによる非タグ化MN gp41(0.5~0.00391μg/ml、S2細胞で生成)又はHXB2 gp41(10~10
-6μg/ml)の種々の希釈液100μlを、RTで2時間、4通りでインキュベートした。非タグ化MN gp41タンパク質をエンテロキナーゼ(P8070、NEB)による切断下で得た。2μMのCaCl2を含むPBSに含まれる100μg/mlのMN gp41を、1:300でのエンテロキナーゼの添加により37℃で16時間切断した。検出Abを100μlのPierceブロッキングバッファーに、ビオチン化ヤギ抗gp41pAbの場合は5μg/ml、又はビオチン化4G1Abの場合は20μg/mlとなるように加えた。結合した抗体を、HRPストレプトアビジン(1:20000、UP395888,Interchim Uptima)と相互作用させた後、100μl/wellのTMB基質(UP664781,Interchim)を添加して検出した。
【0087】
4G1と抗HR2Ab(抗5184-3Ab)との間のサンドイッチELISAの実行可能性を試験するために、4つの抗HR2ハイブリドーマをヌードマウスに注射して腹水中にAbを生成した。2mlの腹水を回収し、抗体をタンパク質Aでのアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。抗体量が十分な場合、それらをビオチン化した(67D7及び72D7)。また、4G1もビオチン化した。ビオチン化された又はされていない抗体を、1μg/mlのBSA-5184-3ペプチド(全ての抗HR2Ab)、2μg/mlのPEP3(4G1及び4G1-biot)又は1μg/mlのHXB2(全ての抗体)を含む50μlのPBS(pH7.4)でコーティングされたマイクロタイタープレートでまず試験し、HXB2及び5184-3ペプチドでそれらの反応性を検証した。捕捉抗体としての種々の抗HR2又は4G1と検出Abとしてのビオチン化Ab(67D7-biot、72D7-biot及び4G1-biot)との間の結合を、10μg/mlの4G1、63G4、69D6及び72D7又は20μg/mlの67D7捕捉抗体のPBS希釈液50μlをコーティングすることにより試験した(
図19A~E)。PBS/1%BSAを用いてRTで1時間ブロッキングした後、種々の濃度のHXB2 gp41(50μlのPBS中で0、0.1及び10μg/ml)をRTで2時間インキュベートした。PBS/0.05%Tween20/0.5%BSAで希釈された50μlの検出AbをRTで1時間インキュベートし、サンドイッチをHRPストレプトアビジン(1:1000、RTで1時間)及びTMB(RTで10分、SureBlue TMB Microwell Peroxidase Substrate Kit,KPL 52-00-01,VWR)を用いて、発現させた。
【0088】
4G1又はヤギ抗gp41pAbと72D7との結合をさらに試験するために、72D7を捕捉Abとして試験し、ビオチン化4G1又は抗gp41pAbを検出Abとして試験した(
図20)。マイクロタイタープレートを、10μg/mlの72D7を含むカルボネートバッファーpH9.6希釈液100μlを用いてコーティングした。非特異的結合サイトを300μlのPierceブロッキングバッファー(37572、Pierce)を用いてブロッキングした。洗浄後、Abを含むPierceブロッキングバッファーによるHXB2 gp41の種々の希釈液(10~10
-6μg/ml)100μlを室温で2時間、4通りでインキュベートした。検出Abを、ビオチン化ヤギ抗gp41pAbの場合は5μg/mlとなるように、ビオチン化4G1Abの場合は20μg/mlとなるように100μlのPierceブロッキングバッファーに加えた。結合した抗体を、HRPストレプトアビジン(1:20000、UP395888,Interchim Uptima)と相互作用させた後、100μl/wellのTMB基質(UP664781,Interchim)を添加して検出した。
【0089】
6つの抗PEP3mAbの可変領域をコードするcDNAのシークエンシング及び分析-RNAをクローン化ハイブリドーマから抽出し、ハイフィデリティ逆転写酵素を用いてBIOTEM(フランス)でcDNAに逆転写した。cDNAをハイフィデリティTaqポリメラーゼ、並びに軽鎖及び重鎖可変領域の近傍の縮重プライマーを用いたPCRにより増幅した。PCR産物のバルクの両方の鎖を、直接に配列決定した。配列を、定常領域の一部の配列を含む軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の可変領域をコードする配列を得るためにアライメントした。これらのヌクレオチド配列に基づいて、タンパク質配列を推測し、軽鎖及び重鎖のアイソタイプを確認した。IMGTウェブサイト(国際ImMunoGeneTics情報システムhttp://www.imgt.org)を用いて、抗PEP3mAbのVL及びVH配列とマウス初期配列との間の同一性割合を決定し、機能構造サブドメインFR1~FR4及びCDR1~3並びにcolliers de Perles(IMGT Colliers de Perles)における3D構造の代表的モデルを予測した。
【0090】
gp41及びgp120組換えタンパク質に対するモノクローナル4G1の抗gp41特異性の特徴付け-組換体MN gp41、D117III gp41及びD117III gp120をS2細胞で生成した。マイクロタイタープレートをカルボネートバッファーpH9.6に含まれる組換体D117III gp120又は組換体D117III gp41を10μg/wellで3通りでコーティングした。4℃で一晩中コーティングした後、非特異的結合サイトをPierceブロッキングバッファー(37572、Pierce)を用いてブロッキングした。抗PEP3mAb4G1を含むブロッキングバッファー最終希釈液を1μg/wellで添加した。結合した抗体を、ヤギ抗マウスHRPコンジュゲート抗体と相互作用させ、TMB基質(UP664781,Interchim)を100μl/well添加することにより検出した。反応を0.1MのH2SO4を50μl添加することにより停止し、O.D.450nmをTecan Infinite M1000 Proを用いて測定した。ウエスタンブロット分析を、500ng又は1μgの組換体MN gp41又はD117III gp120タンパク質を還元条件下で4%~20%のTris-Bis SDS-PAGE(BIO-RAD)ゲルで行った。抗原をTrans-Blot Turbo(BIO-RAD)を用いてPVDF膜(BIO-RAD)に転写した。5%スキムミルク/0.05%Tween20を含むPBSを用いて非特異的結合サイトをブロッキングした後、抗体の結合を、4G1の場合は1μg/ml及びポリクローナル抗gp41(PA1-7219,Thermofisher)の場合は5μg/mlで試験した。ヤギ抗マウス(31430、Pierce)及びロバ抗ヤギ(705-035-003、Jackson Immunoresearch)HRPコンジュゲート抗体を1:10000希釈で用いた。検出をSuperSignal West Pico Plus Substrate(34580,ThermoScientific)を用いて膜で直接に行った。
【0091】
ヒトCD4Tリンパ球の精製-EFS(Etablissement Francais du Sang,Centre Necker-Cabanel,Paris)を通じて健康なボランティアから静脈血を得た。CD4T細胞をRosetteSep Human CD4+ T cell Enrichment Cocktail (Stem Cell, 15062)を用いて全血から精製した。このカクテルは、マウスの腹水又はハイブリドーマの培養上清から、タンパク質A又はタンパク質Gセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製されたマウス及びラットのモノクローナル抗体を含む。これらの抗体は、ヒト造血細胞における細胞表面抗原(CD8、CD19、CD36、CD56、CD66b、TCRγ/δ)及び赤血球におけるグリコホリンAを標的とする二重特異的四量体抗体複合体に結合される。rosetteSep抗体カクテルは、ヒト全血における望まない細胞を多数の赤血球にクロスリンクしてイムノロゼットを形成する。これは、望まない細胞の密度を増大し、それらはリンパ球分離培地(Eurobio,CMSMSL01-01)等の浮遊密度培地で遠心分離処理をすると、遊離する赤血球と共にペレットを形成する。
【0092】
全血を、50μl/mlの濃度でRosetteSep Human CD4+ T cell Enrichment Cocktailを用いて緩やかな撹拌条件下(100rpm)で室温で20分間インキュベートし、同体積のPBS/2%FBSで希釈し緩やかに混合した。その希釈サンプルに対して、リンパ球分離培地の上面において1200×gで20分間の遠心分離処理をした。濃縮細胞を血漿界面で密度培地から回収し、PBS/2%FBSで2回洗浄した。その後、細胞を、5%FBS、50mMのHEPES pH7.4、グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシン及びファンギゾンを含む(完全培地)RPMI1640培地(Lonza)に再懸濁し、Moxi Z mini automated cell counter(ORFLO,MXZ000)を用いてカウントした。細胞懸濁液を、7×106cell/mlに調節し、5%CO2の湿気のある雰囲気下で37℃で少なくとも2時間の平衡化を行った。
【0093】
濃縮CD4T細胞群をcytoflex(Beckman coulter)においてフローサイトメトリーにより回収した。回収されたCD4T細胞の静止状態を低レベルのIL-2Rα(CD25)により制御した。CD4T細胞を、抗ヒトCD3eFluor780(eBioscience,clone UCHT1,47-0038-42)、抗ヒトCD25-PE(Biolegend,clone BC96,302605)、及び抗ヒトCD4-PerCP(BD,clone SK3,345770)を用いて標識した。濃縮CD4T細胞群は、95%を超えるCD3+CD4+及び8%未満のCD25+を含む。
【0094】
CD4T細胞におけるPLA2-GIBバイオアッセイ及び光学顕微鏡のための特異的タンパク質の標識-平衡化された精製CD4T細胞を、温度調節水において37℃条件下で、24ウェルポリスチレンプレートにおけるポリLリシンコーティング(Sigma,P8920)された円形カバーガラス(直径14mm、Marienfeld)上にロードし、ペプチド、組換えタンパク質と共に組換体PLA2-GIBを含む若しくは含まない、又はウイルス血症患者の血漿(1又は3%)若しくは健康なドナーの血漿を含むPBS/1%BSAの50μl懸濁液と混合した。細胞懸濁液を、40μlのペプチド、組換えタンパク質若しくはHIV-1 NDK粒子を含むPBS/1%BSA、又はPBS/1%BSA擬似希釈液で15分間の前処理を行い、その後、10μlのPLA2-GIB(最終5nM)で30分間処理する又はペプチド若しくは組換えタンパク質をPLA2-GIB(最終5nM)と共に含むPBS BSA1%希釈液50μlで直接に45分間処理した。細胞を、2nM組換えグリコシル化ヒトIL-7(Accrobio System)を用いて15分間活性化した。細胞上清を除去し、細胞を、4%パラホルムアルデヒドを含むPBS溶液(Fisher,PFA 32% Electron Microscopy Science,15714)500μlの添加により37℃で15分間の固定をし、その後、500μlの氷冷90%メタノール/水溶液で一晩中の透過処理を行った。
【0095】
その後、細胞を、5%FBSを含むPBSで15分間の再水和をした後に標識化した。そして、スライドを、PBS中のメタノール処理後に2度洗浄し、5%FBSを含むPBSを用いて室温で15分間の再水和を行った。スライドに対し、5%FBSを含む60μlのPBSで希釈された1次抗体(1/120)で1時間の標識化を行い、PBSバッファーで15回洗浄し、PBS/FBSバッファーで5回洗浄し、その後、2次抗体(1/300)で1時間の染色を行った。スライドをPBS5%FBSバッファーで5回洗浄し、PBSで15回リンスし、その後、共焦点顕微鏡観察のために新鮮なProlong Gold Antifade (ThermoFisher Scientific,P36930)マウンティング培地にマウントした。用いた1次抗体は、ウサギ抗pSTAT5(pY694,9359,Cell Signalling)、マウス抗CD4(BD Pharmingen,555344)からなり、2次抗体は、ロバ抗マウスIgG-AF488(Invitrogen,A21202)及びロバ抗ラビットIgG-AF555(Invitrogen,A31572)であった。
【0096】
共焦点顕微鏡-PFA固定細胞のための、油浸プランアポクロマート63x/1.4NA対物レンズ(Zeiss)を含む倒立型共焦点レーザ走査顕微鏡(LSM700、Zeiss)において回折限界を超えて画像を得た。画像を、ZENソフトウェア(Zeiss)を用いて獲得及び分析した。
【0097】
健康なドナーCD4T細胞におけるgp41及びPEP3血漿コファクターペプチド活性の測定-PLA2-GIB活性の制御因子としての血漿gp41の役割は、特異的抗体を用いた内因性gp41の免疫除去により評価した。簡単に言うと、1mlのVP又はHD血漿を、100μgのヤギ抗gp41ポリクローナル抗体(PA1-7219,Thermofisher)又は対照ヤギポリクローナル抗体(preimmune,AB108-C,R&D Systems)を用いてインキュベートして、1.5mlのエッペンドルフチューブ内で4℃で一晩中のgp41の免疫除去を行った(Test tube-rotor,34528,Snijders,Netherland)。0.1%アジ化ナトリウムを最初に含むヤギ抗gp41pAbにおいて、それを16100×g、2分4℃の遠心分離によって10kDaのAmicon(051828,Millipore)スピンフィルタを用いてPBSで5回洗浄し、免疫除去の進行前にアジ化ナトリウムを除去した。正常ヤギIgG対照を、抗gp41pAbと同様に処理した。その後、PBS/1%BSAで3回洗浄された200μlのタンパク質Gセファロース4Fast Flow beads(17-0618-01,GE healthcare)を各サンプルに加え、サンプルを4℃で3時間インキュベートした。サンプルを400×g、4℃で2分の遠心分離処理によりビーズを除去し、その後、16100×g、4℃で15分の遠心分離処理で上清を回収した。ヤギ抗gp41pAbは、組換えgp41に特異的に結合するが、gp120には結合しない(
図3A)。3つのVP及び3つのHDからのVP又はHD血漿(500μl)を、30kDaカットオフのAmiconスピンフィルタ(051850,Millipore)、その後10kDaカットオフのAmiconスピンフィルタ(051828,Millipore)で分画した。10~30kDa画分を回収し、対照アイソタイプ(マウスIgG2b/k、16-4732-85,Thermofisher)で処理、又はgp41を上記のように100μgの4G1で免疫除去した。4G1mAbは、組換えgp41に特異的に結合するが、gp120には結合しない(
図12B及び12C)。
【0098】
ペプチド、組換えタンパク質と共に組換えPLA2-GIB、VP又はHD血漿を含む若しくは含まないPBS/1%BSA、又はgp41を予め除去した若しくはしていない10~30kDaの画分で精製CD4T細胞をインキュベートすることにより、CD4T細胞のPLA2-GIB活性におけるgp41の効果を評価した。PLA2-GIB活性における組換えgp41及びPEP3 gp41ペプチドの効果を、40μlの組換えgp41タンパク質又はペプチドを用いて細胞懸濁液を15分間処理し、その後、10μlのPLA2GIBを添加して30分処理することにより試験した(
図2A~D)。内因性gp41によるPLA2-GIBの制御を、予めgp41を除去した又は除去していない50μlの血漿希釈液又は10~30kDaの血漿画分で細胞懸濁液を30分間処理することにより試験した(
図3B、13及び14)。pSTAT5 NT阻害を、上記のように顕微鏡により試験した。
【0099】
結果及び検討
1.HIV-1 gp41はIL-7で刺激されたCD4T細胞におけるpSTAT5NTに対するPLA2-GIBの阻害活性を増大する
我々は、コファクターの非存在下でpSTAT5を阻害できない一用量のPLA2-GIB(5nM)を組換えgp41タンパク質と共に前処理若しく組換えgp41タンパク質無しで前処理をし、又はgp41タンパク質のみでPLA2-GIB無しで前処理をした(w/oGIB)細胞におけるIL-7に対するpSTAT5NT反応を分析した。
図2に示すように、gp41タンパク質単独では、IL-7に応答したpSTAT5NTに対して僅かな阻害効果を示し、34nMのgp41では10%のみの阻害、17~3.4nMのgp41では8%未満の阻害であった(
図2A及び2B)。対照的に、5nMのPLA2-GIBの存在下で、0.34nMのgp41では18%の阻害を示し(
図2A)、34nMのgp41タンパク質は、pSTAT5NTの60%以上の阻害を示し(p<0.05、n=3ドナー、
図2B)、用量依存的阻害を示す。
【0100】
2.gp41におけるPEP3モチーフは、IL-7により刺激されたCD4T細胞におけるpSTAT5NTを阻害する
gC1qR結合エレメント及び高度に保存されたSWSNKSモチーフを含むgp41の15アミノ酸ペプチドドメインにCD4T細胞を曝露した。また、5nMのPLA2-GIB有り(5nM)又は無し(w/o)と共に対照ペプチド(CTL)を細胞に曝露した(
図2C)。CTLペプチドのみ若しくはそれとPLA2-GIB、又はPEP3のみではpSTAT5NTに対して効果を示さなかったが、PEP3及び5nMのPLA2-GIBによる処理では、1375~13.75nMのPEP3それぞれでpSTAT5NTに対して51%~18%のPEP3用量依存的阻害を示した(
図2C)。
図2Dに要約するように、275nMのPEP3のみの処理では、CD4T細胞におけるpSTAT5の4%の阻害を示し、5nMのPLA2-GIBと共に275nMのPEP3を処理すると51%の阻害を示した(P<0.01、n=4ドナー)。
【0101】
3.HIV-1 gp41タンパク質はIL-7で刺激したCD4T細胞におけるpSTAT5NTに対するウイルス血症患者の血漿の阻害活性において重要な役割を果たす
まず、我々は、イムノブロットにおいて、HIVエンベロープの別のサブユニットであるgp120と比較してgp41に特異的であるポリクローナル抗体を同定した(
図3A)。その後、gp41タンパク質がウイルス血症患者の血漿においてPLA2-GIBのコファクターとなり得ることを実証するために、我々は、gp41に対するポリクローナル抗体(pAb抗gp41)又は対照ポリクローナル抗体(pAb ctrl)を用いてウイルス血症患者の血漿を枯渇した。健康なドナー血漿を、陰性対照として同様に処理した。
図3Bに示すように、pSTAT5NTの阻害は、予想通り75nMのPLA2-GIBで49%示し、250nMのPLA2-GIBで80%示し、また、抗体無しで1%のウイルス血症患者の血漿で47%示し、3%のウイルス血症患者の血漿で60%示した。健康なドナーの血漿は、抗体無し、対照ポリクローナル抗体と共に、又は抗gp41ポリクローナル抗体と共に処理でIL-7に対するpSTAT5NT応答の阻害効果は見られず、それは、抗体がCD4T細胞に対する毒性を有しないことを証明する(
図3B)。対照ポリクローナル抗体と共にするウイルス血症患者の血漿による処理は、1%及び3%の血漿でそれぞれ49%及び60%の阻害であり阻害活性を変更しなかった(
図3B)。特に、抗gp41ポリクローナル抗体を用いた免疫除去は、1%及び3%の免疫除去血漿による12%及び14%の残余の阻害活性によりウイルス血症患者の血漿の阻害活性をほぼ抑制した(p<0.01及びp<0.001、pAb抗gp41対pAbctrl処理血漿のそれぞれ、
図3B)。全体として、これらの結果は、gp41がウイルス血症患者の血漿におけるPLA2-GIBのコファクターであることを証明する。
【0102】
4.抗PEP3モノクローナル抗体の開発
単独のPEP3ペプチドがPLA2-GIBの阻害活性を増大できる(
図2C及びD)という上記証明は、この配列がHIVウイルス血症の血漿gp41タンパク質に存在すること、及び血漿PLA2-GIBに対するコファクター効果に関連する可能性があることを提示する。我々は、PEP3配列に特異的な新規の抗gp41抗体を開発した。KLHにコンジュゲートしたPEP3配列のみを含むペプチドを用いてOF1マウスを免疫化した。1093個のハイブリドーマのうち1072個がELISAでBSA-PEP3に陽性であった。最も良好な123個を、ELISAによりBSA-PEP3ペプチド及びMN gp41タンパク質に対してさらに確認した。我々は、27クローンを選択し(表1)、凍結し、それらのアイソタイプを決定した。それらのうち6クローンを細胞培養液で維持し、安定クローンを得た:4G1、8D5、3A2、15B4、5E12及び9B12。これら6クローンから多量の抗体を精製した。それらについて、BSA-PEP3ペプチド、MN及びHXB2 gp41組換えタンパク質に対するELISAによって、抗体結合のEC50を算出して十分に特徴付けした(
図5)。それらの可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)領域の配列決定を行った(
図6~
図11)。これは、軽鎖アイソタイプ(
図6~
図11A及びB)及び重鎖アイソタイプ(
図6~
図11D及びE)を確認し、それらの機能的サブドメインFR1~FR4及びCDR1~3の予測を可能とし、VL(
図6~
図11C)及びVH(
図6~
図11F)の3D構造(IMGT colliers de Perles)の再現モデルの構築を可能とする。マウス初期配列に対するVL配列(
図6~
図11B)及びVH配列(
図6~
図11E)の同一性の分析は、データベース(Uniprot databank-UniportkB)に予め記載されている同等配列が無いことを証明する。いくつかのMN及びHXB gp41組換えタンパク質及びBSA-PEP3と6つの抗PEP3mAbの軽鎖及び重鎖のアイソタイプとのEC50結合の結果は、
図12Aに要約する。まず、我々は、我々が試験した(
図12A)BSA-PEP3及び第1のMN gp41(E.coliで生成)に対して最も高いEC50を有するため、4G1mAbに対する我々の関心を集中し、次に、それが追加分析でELISAにより試験された全てのgp41組換えタンパク質に対して最も高いEC50のうちの1つを有することを確認した(
図12A)。我々は、この抗体がHIVエンベロープgp41タンパク質に特異的であることを、組換体gp41及びgp120タンパク質に対するELISA及びイムノブロットにより確認した(
図12B及びC)。全体として、これらの結果は、PEP3 gp41配列に対する4G1mAbの特異性及び高い親和性を示す。
【0103】
5.4G1抗PEP3mAbはIL-7で刺激されたCD4T細胞におけるpSTAT5に対するウイルス血症患者の血漿の阻害活性をほぼ抑制する
我々は、4G1抗PEP3mAb(抗PEP3mAb)又は対照アイソタイプ(mAb ctrl)を用いて、ウイルス血症患者(VP)の血漿を枯渇した。健康なドナー(HD)の血漿を陰性対照として同様に処理した。pSTAT5NTの阻害は、75nMのPLA2-GIBで47%であり、250nMのPLA2-GIBで67%であり、抗体無しの1%のVP血漿で49%であり、3%のVP血漿で58%であった(
図13)。健康なドナー(HD)の血漿では、抗体無しでIL-7に応答したpSTAT5NTに対する僅かな阻害効果を示しただけであった。同様に、両方の抗体で処理されたHD血漿の画分は、pSTAT5NTに対して阻害活性を示さず、これは抗体がCD4T細胞に対して毒性が無いことを証明する(
図13)。興味深いことに、VP血漿の画分の対照アイソタイプによる処理は、1%のVP血漿の画分で48%、3%のVP血漿の画分で61%の阻害活性であり、阻害活性を変更しなかった。このレベルの阻害は、VP血漿全体のみの場合と非常に類似しており、それはVP血漿活性が10~30kDaの画分によるといった我々の先の発見をさらに支持する(
図13)。特に、4G1免疫除去は、1%及び3%の免疫除去血漿により9%及び19%の残余阻害活性を示し、VP血漿の阻害活性を非常に低減させた(p<0.001及びp<0.01、4G1抗PEP3対ctrlmAb処理血漿のそれぞれ、
図13)。VP阻害活性における4G1及びヤギ抗gp41pAbの効果を比較するために、我々は、
図3B及び13に示すデータを
図14に結合した。全体として、これらのデータは、ヤギ抗gp41(
図14A)及び4G1抗PEP3mAb(
図14B)の両方がVP阻害活性を非常に抑制することを示す。これは、PEP3配列を含むgp41断片によるウイルス血症の血漿におけるPLA2-GIB活性の我々の制御モデルを確認する。
【0104】
6.HIVウイルス血症の血漿の検出:抗gp41Abの開発及びELISA
他の試みは、HIVウイルス血症患者の血漿におけるgp41産物の定量である。HIVウイルス血症患者の血漿における抗gp41抗体の存在は、よく説明されている(Boyd and James, 1992; Butler et al., 2019; Mikell et al., 2011; Trama et al., 2014; Vaidya et al., 2018; Williams et al., 2015)。急性HIV-1感染者の血漿細胞から観察された最初の抗HIVタンパク質モノクローナル抗体は、gp41を主に標的とするものであった(Butler et al., 2019; Trama et al., 2014)。しかしながら、我々の知る限り、gp41タンパク質は、HIVに感染された患者の血漿で検出されたことは無く、それはgp41の濃度が極めて小さい、並びに/又は開発された抗gp41抗体が血漿中のgp41を検出できないくらい低い親和性を有することを提示する。我々が開発した6つの抗PEP3mAbのうち、gp41タンパク質に対して最も高い親和性で結合する4つのmAbは、4G1、8D5、3A2及び15B4である(
図12A)。ELISAに用いられる抗体の可能性を評価するために、我々は、これらの抗PEP3mAb及びヤギ抗gp41pAbを組換えMN gp41又はHXB2 gp41に対するサンドイッチELISAで試験した(
図15A~D)。全ての抗体は、gp41の捕捉及びビオチン化ヤギpAbによる検出が可能である(
図15A~D)。4G1、3A2及び8D5は、15B4よりもHXB gp41に対する算出されたEC50が低い(
図15C及びD)。しかしながら、検出されたgp41の最低量は高いままであり、捕捉Abとして4G1、8D5及び3A2を用いた場合は1ng/mlであり、15B4を用いた場合は10ng/ml以上である(
図15B及びC)。また、我々は、捕捉Abとして15B4、8D5及び3A2、並びに検出Abとしてビオチン化4G1を試験した。検出されたgp41の最低量は、捕捉Abとして8D5を用いた場合は37.5ng/mlであり、捕捉Abとして3A2を用いた場合は150ng/mlであった(
図15E)。15B4は、試験条件下で4G1とサンドイッチを形成しなかった。
【0105】
ELISAでgp41を検出するための抗体の効率をさらに増大するために、我々は、gp41に対する追加の抗体を生成した。我々の試験は、VP血漿におけるgp41断片がPEP3配列を含み、VP血漿の10~30kDa画分に含まれることを示した。このため、我々は、それがgp41タンパク質の一部又はエクトドメインであり得るとの仮説を立てた。従って、我々は、gp41の第2の7回繰り返し配列領域(HR2)のC末部分に存在する我々が5184-3と命名したペプチドに対してOF1マウスを免疫化することを決めた(
図16A及びB)。我々は、5184-3ペプチド及びHXB2 gp41タンパク質に対するそれらの血清の力価に基づいて2匹のマウス(S12及びS13)を選択した。816個の上清のうち、抗HR2Ab(抗5184-3)を生成した4つのクローンは、ELISAでBSA-5184-3ペプチドに対して陽性であり、BSA-5184-3、MN gp41(S2細胞で生成)及びHXB2 gp41タンパク質(マウスS12からの63G4、69D6及び67D7並びにマウスS13からの72D7、
図17)に対するELISAで確認した。それらのアイソタイプを決定し、それらを凍結した。その後、我々は、4G1mAbを用いたサンドイッチELISAで用いるための4つの抗HR2Abの能力を試験した。これらの抗HR2抗体の小産物は、ヌードマウスへのハイブリドーマの注射後にインビボで実施された。得られた純度及び量は、67D7及び72D7では高く、63G4及び69D6では低かった(
図18A)。従って、67D7及び72D7のみをビオチン化した(67D7-biot及び72D7-biot)。ビオチン化された又はされていない精製抗体の結合を、5184-3(
図18B)又はHXB2 gp41タンパク質(
図18C)で確認した。4G1及びビオチン化4G1(4G1-biot)群のPEP3ペプチド及びHXB2 gp41タンパク質に対する結合も確認した(
図18B及び
図18C)。その後、捕捉Abとしての4G1、63G4、69D6、67D7及び72D7と検出Abとしての72D7-biot及び67D7-biotとの結合を、HXB2-gp41抗原を用いて試験した(
図19A~E)。唯一観察された結合は、捕捉Abとしての72D7と検出Abとしての4G1-biotであった。72D7と4G1-biotとの結合は、HXB2 gp41タンパク質の種々の希釈液で確認され、ヤギ抗gp41pAbと比較された(
図20)。特に、72D7は、検出Abとしての4G1-biot及びヤギ抗gp41pAb-biotの両方と共に捕捉Abとして用いることが可能であり、EC50は非常に類似しており、抗gp41pAb-biotを用いた場合は0.56μg/mlであり、4G1-biotを用いた場合は0.34μg/mlであった(
図20)。
【0106】
7.単一分子アレイ(SIMOA)技術を用いたHIV血症の血漿におけるgp41断片の検出及び定量の試験
HIVウイルス血症の血漿におけるgp41の濃度はおそらく非常に低く、それは、抗gp41抗体がウイルス血症患者の血漿でよく説明されているとしても、gp41タンパク質自体が従来のELISA又はイムノブロットアッセイで検出されていないことの説明となるであろう。抗PEP3及び72D7mAbは、一般にELISAと比較して感度を1000倍増大する超高感度技術のSIMOAを用いたVP血漿中のgp41を検出するのに用いられ得る。
【0107】
【0108】
【0109】
【配列表】
【国際調査報告】