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特表2022-546434イソシアネート系発泡体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】イソシアネート系発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20221027BHJP
   C08G 18/46 20060101ALI20221027BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20221027BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20221027BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20221027BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
C08G18/00 F
C08G18/46 007
C08G18/50 003
C08G18/76 057
C08G18/10
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513252
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 CA2020051165
(87)【国際公開番号】W WO2021035350
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/922,801
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511122651
【氏名又は名称】プロプライアテクト・エル.ピー.
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ、ウェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スメイアヌ、オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ミン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ゲリー
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA03
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DG01
4J034DG04
4J034DG09
4J034DN01
4J034DQ05
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034EA11
4J034EA12
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB11
4J034HB15
4J034HB17
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC24
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA42
4J034NA01
4J034NA03
4J034PA05
4J034QA01
4J034QA03
4J034QB01
4J034QB13
4J034QB16
4J034QB17
4J034QC01
4J034QD03
4J034RA15
(57)【要約】
(i)ASTM D2863-17Aに従って測定した限界酸素指数(LOI)が26.5%以上、及び(ii)VDA 277に従って測定した総揮発性有機物含有量(TVOC)が225μg/g C以下であるイソシアネート系ポリマー発泡体が記載される。好ましくは、発泡体は:イソシアネート;(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する反応性化合物;水と二酸化炭素の一方又は両方を含む成泡剤;並びに触媒を含む発泡性組成物から製造され;ここで、反応性化合物の存在量は、発泡性組成物中に存在する場合は、水を除く総ISO当量の約30%~約95%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ASTM D2863-17aに従って測定した限界酸素指数(LOI)が26.5%以上、及び(ii)VDA 277に従って測定した総揮発性有機物含有量(TVOC)が225μg/g C以下、であるイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項2】
LOIが26.5%~35.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項3】
LOIが27.0%~35.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項4】
LOIが27.0%~34.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項5】
LOIが27.0%~33.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項6】
LOIが27.0%~32.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項7】
LOIが27.0%~31.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項8】
LOIが27.0%~31.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項9】
LOIが27.0%~30.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項10】
LOIが27.5%~30.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項11】
LOIが28.0%~30.0%である、請求項1に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項12】
TVOCが50~225μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項13】
TVOCが50~215μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項14】
TVOCが50~180μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項15】
TVOCが50~170μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項16】
TVOCが50~150μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項17】
TVOCが60~150μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項18】
TVOCが70~150μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項19】
TVOCが70~140μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項20】
TVOCが70~130μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項21】
TVOCが70~120μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項22】
TVOCが70~110μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項23】
TVOCが70~100μg/g Cである、請求項1~11のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項24】
(a)イソシアネート;
(b)(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する反応性化合物;
(c)水と二酸化炭素の一方又は両方を含む成泡剤;並びに
(d)触媒;
を含む発泡性組成物から製造され、
ここで、前記反応性化合物の存在量は、前記発泡性組成物中に存在する場合は、水を除く総ISO当量の約30%~約95%である、請求項1~23のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項25】
(a)イソシアネート;
(b)(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する反応性化合物;
(c)水と二酸化炭素の一方又は両方を含む成泡剤;並びに
(d)触媒;
を含む発泡性組成物から製造され、
ここで、前記反応性化合物の存在量は、前記発泡性組成物中に存在する場合は、水を除く総ISO当量の約30%~約95%である、イソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項26】
前記反応性化合物の存在量は、水を除く総ISO当量の約40~約90%である、請求項24又は25に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項27】
前記反応性化合物の存在量は、水を除く総ISO当量の約45~約85%である、請求項24又は25に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項28】
前記反応性化合物が、以下の部分:ヒドロキシル(R-OH)、アミノ(R-NH)及びイミニル(R=NH)、の1つ以上を含有する、請求項24~27のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項29】
前記反応性化合物が、ハロゲン化芳香族エステル、ハロゲン化芳香族エーテル、ハロゲン化脂肪族エステル、ハロゲン化脂肪族エーテル、ハロゲン化リン酸エステル、非ハロゲン化リン酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項24~27のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項30】
前記発泡性組成物が、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジエン及びポリカプロラクトンからなる群から選択されるヒドロキシル末端骨格を含むポリオールを実質的に完全に含まない、請求項24~29のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項31】
前記イソシアネートがプレポリマーを含み、前記イソシアネートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、フルフリリデンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’-ジフェニル-3,3’-ジメチルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-ジイソシアネート-5-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアネート-s-トリアジン、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、ビス-(4-イソシアネートフェニル)メタン、ビス-(3-メチル-4-イソシアネートフェニル)メタン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項24~30のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項32】
前記イソシアネートが、(i)2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物;並びに(ii)2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択されるイソシアネートと(i)の混合物から本質的になる群から選択される、請求項24~30のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項33】
前記イソシアネートが、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物から本質的になる群から選択される、請求項24~30のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項34】
イソシアネートが、約60~約200のイソシアネート指数を提供する量で存在する、請求項24~33のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項35】
イソシアネートが、約80~約160のイソシアネート指数を提供する量で存在する、請求項24~33のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項36】
イソシアネートが、約100~約150のイソシアネート指数を提供する量で存在する、請求項24~33のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項37】
水が、唯一の成泡剤として前記発泡性組成物中に存在する、請求項24~36のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項38】
前記水の存在量が、イソシアネートを除く前記発泡性組成物の約3.0~約15重量%である、請求項37に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項39】
前記水の存在量が、イソシアネートを除く前記発泡性組成物の約4.0~約8.0重量%である、請求項37に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項40】
前記水の存在量が、イソシアネートを除く前記発泡性組成物の約4.0~約6.0重量%である、請求項37に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項41】
密度が約8.0~約48kg/mである、請求項1~40のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項42】
密度が約16~約40kg/mである、請求項1~40のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【請求項43】
密度が約24~約32kg/mである、請求項1~40のいずれか一項に記載のイソシアネート系ポリマー発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2019年8月30日に出願された仮特許出願第62/922,801号の利益を主張し、その内容は本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ある側面では、本発明は、イソシアネート系発泡体に関する。別の側面では、本発明は、イソシアネート系発泡体の製造方法に関する。さらに別の側面では、本発明は、改善された可燃特性を有するイソシアネート系発泡体に関する。さらに別の側面では、本発明は、改善された可燃特性を有する噴霧可能なイソシアネート系発泡体に関する。
【0003】
先行技術の説明
イソシアネート系ポリマーは、当技術分野で公知である。一般に、当業者は、イソシアネート系ポリマーが、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイソシアヌレート及びこれらの混合物であることを理解している。
【0004】
発泡型イソシアネート系ポリマーを製造することも当技術分野で公知である。実際、他の系統のポリマーと比較したイソシアネート系ポリマーの利点の1つは、重合及び発泡化がin situで起こり得ることである。これは、ポリマーが形成され、膨張している間に、ポリマーを成型する能力をもたらす。
【0005】
ポリウレタン発泡体を製造する従来の方法の1つは、「ワンショット」技術として公知である。この技術では、イソシアネート、好適なポリオール、触媒、水(反応性「成泡」剤として作用し、場合によっては、1つ以上の物理的成泡剤と共に追加することができる)及び他の添加剤は、例えば衝突混合(例.高圧)により、同時に混合される。一般に、ポリ尿素を製造する場合、ポリオールは、好適なポリアミンで置きかえられる。ポリイソシアヌレートは、イソシアネート成分の環状三量化法で得てもよい。ウレタン変性ポリ尿素又はポリイソシアヌレートは、当技術分野で公知である。いずれのシナリオにおいても、反応物は、好適な混合技術により非常に迅速に密接に混合される。
【0006】
低密度の噴霧ポリウレタン発泡体(SPF)は、導入中に膨張し、二酸化炭素で満たされた小さい開放セルを生じる、スポンジ様の外観を伴う半硬質材料である。反応中に膨張するその能力により、それは、ひび割れ、裂け目及び空隙を満たし、不均整の表面又は基体に接着して、空気封入型の断熱材料を形成する。
【0007】
導入又は適用した場合、SPFは、空気もれを阻止し、吸収することにより、空気隔壁及び吸音材として作用する。SPFは広範な用途を有する断熱材料である。公知の用途の1つは、大量輸送車両、例えばバス、列車等の内装壁に噴霧することである。
【0008】
噴霧ポリウレタン発泡体は、あらゆる断熱製品の中ではるかに高いR値を有する。R値は、単に製品の断熱化力である。独立した研究所は、繊維ガラス及びセルロースなどの他の材料と比較した、噴霧ポリウレタン発泡体のR値に関するさまざまな研究を行っており、代表的なR値が6~7の噴霧ポリウレタン発泡体は非常に有利であるという結果がある。
【0009】
今日までに成し遂げられた進歩にもかかわらず、改善の余地がある。具体的には、公知のSPFは高度に可燃性であり、及び/又は多量の揮発性有機炭素化合物を含有する。これらの問題は、SPFが、大量輸送車両、例えばバス、列車等の内装壁に適用される場合、特に重大である。
【0010】
可燃性が低く、揮発性有機化合物の含有量が少ない噴霧発泡体(ポリウレタン又は他のもの)に対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
先行技術の上述した欠点の少なくとも1つを取り除き、又は軽減することが本発明の目的である。
【0012】
新規なイソシアネート系ポリマー発泡体を提供することが、本発明のもう1つの目的である。
【0013】
イソシアネート系ポリマー発泡体を製造する新規な方法を提供することが、本発明のさらに別の目的である。
【0014】
したがって、一側面では、本発明は:(i)ASTM D2863-17aに従って測定した限界酸素指数(LOI)が26.5%以上、及び(ii)VDA 277に従って測定した総揮発性有機物含有量(TVOC)が225μg/g C以下、であるイソシアネート系ポリマー発泡体を提供する。
【0015】
別の側面では、本発明は:
(a)イソシアネート;
(b)(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する反応性化合物;
(c)水と二酸化炭素の一方又は両方を含む成泡剤;並びに
(d)触媒;
を含む発泡性組成物から製造されるイソシアネート系ポリマー発泡体を提供し、
ここで、反応性化合物の存在量は、発泡性組成物中に存在する場合は、水を除く総ISO当量の約30%~約95%である。
【0016】
本明細書において、ISO当量という用語は百分率であり、以下のように決定してもよい:
ある化合物の当量%=(ある化合物の当量)/合計(樹脂調合物中の水を除く全化合物の当量)×100
ここで:
化合物のイソシアネート当量=(樹脂調合物中の化合物の重量)/化合物の当量重量
である。
【0017】
したがって、本発明者らは、市販の公知のSPFに対して著しい改善を示す噴霧可能な発泡体組成物を製造する新規な方法を発見した。具体的に、本発明者らは、従来のポリオール(以下に詳細に説明)が、発泡性組成物から除かれて、特定の種類の反応性化合物で置きかえられ(又は実質的に完全に置きかえられ)てもよく、他の物理的特性の著しい低下を伴うことなく、LOIとTVOCの非常に望ましい組合せを有するイソシアネート系ポリマー発泡体がもたらされることを発見した。反応性化合物自体は、難燃剤と見なすことができ:(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する。反応性化合物のこの定義は、ポリウレタン発泡体の製造に使用される従来のポリオールを除外する。したがって、厳密に言えば、本発明のイソシアネート系ポリマー発泡体は、ポリウレタン発泡体(すなわち、主要な反応物としてのイソシアネート及び従来のポリオールから製造されるポリマー発泡体)と見なされない場合がある。本発明者らは、LOI又はTVOCは、公知のSPF調合物中の特定の原料を調節するという限られた方法で改善できるものの、従来のポリオールを本明細書に記載の反応性化合物で置きかえる(又は実質的に完全に置きかえる)ことをしない限り、LOI及びTVOCの両者を著しく改善することは不可能であることを更に発見した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一側面では、本発明は:(i)ASTM D2863-17aに従って測定した限界酸素指数(LOI)が26.5%以上、及び(ii)VDA 277に従って測定した総揮発性有機物含有量(TVOC)が225μg/g C以下、であるイソシアネート系ポリマー発泡体に関する。
【0019】
本発明のこの態様の好ましい態様は、以下の特徴のいずれか1つ又はいずれか2つ以上の組合せを含んでいてもよい:
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが26.5%~35.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.0%~35.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.0%~34.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.0%~33.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.0%~32.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.0%~31.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.5%~31.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.0%~30.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが27.5%~30.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、LOIが28.0%~30.0%であり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが50~225μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが50~215μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが50~180μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが50~170μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが50~150μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが60~150μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが70~150μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが70~140μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが70~130μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが70~120μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが70~110μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は、TVOCが70~100μg/g Cであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体の密度は、約8.0~約48kg/mであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体の密度は、約16~約40kg/mであり;
・ イソシアネート系ポリマー発泡体の密度は、約24~約32kg/mであり;及び/又は
・ イソシアネート系ポリマー発泡体は:
(a)イソシアネート;
(b)(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する反応性化合物;
(c)水と二酸化炭素の一方又は両方を含む成泡剤;並びに
(d)触媒;
を含む発泡性組成物から製造され、
ここで、反応性化合物の存在量は、発泡性組成物中に存在する場合は、水を除く総ISO当量の約30%~約95%である。
【0020】
別の側面では、本発明は:
(a)イソシアネート;
(b)(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する反応性化合物;
(c)水と二酸化炭素の一方又は両方を含む成泡剤;並びに
(d)触媒;
を含む発泡性組成物から製造されるイソシアネート系ポリマー発泡体に関し、
ここで、反応性化合物の存在量は、発泡性組成物中に存在する場合は、水を除く総ISO当量の約30%~約95%である。
【0021】
本発明の全ての側面に関する発泡性組成物の好ましい態様は、以下の特徴のいずれか1つ又は2つ以上の組合せを含んでいてもよい:
・ 反応性化合物の存在量は、水を除く総ISO当量の約40~約90%である;
・ 反応性化合物の存在量は、水を除く総ISO当量の約45~約85%である;
・ 反応性化合物は、以下の部分:ヒドロキシル(R-OH)、アミノ(R-NH)及びイミニル(R=NH)、の1つ以上を有する;
・ 反応性化合物は、ハロゲン化芳香族エステル、ハロゲン化芳香族エーテル、ハロゲン化脂肪族エステル、ハロゲン化脂肪族エーテル、ハロゲン化リン酸エステル、非ハロゲン化リン酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選択される;
・ 発泡性組成物は、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジエン及びポリカプロラクトンからなる群から選択されるヒドロキシル末端骨格を含むポリオールを実質的に完全に含まない;
・ イソシアネートは、プレポリマーを含む;
・ イソシアネートは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、フルフリリデンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’-ジフェニル-3,3’-ジメチルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-ジイソシアネート-5-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアネート-s-トリアジン、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、ビス-(4-イソシアナトフェニル)メタン、ビス-(3-メチル-4-イソシアネートフェニル)メタン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択される;
・ イソシアネートは、(i)2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物;並びに(ii)2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択されるイソシアネートと(i)の混合物から本質的になる群から選択される;
・ イソシアネートは、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物から本質的になる群から選択される;
・ イソシアネートは、約60~約200のイソシアネート指数を提供する量で存在する;
・ イソシアネートは、約80~約160のイソシアネート指数を提供する量で存在する;
・ イソシアネートは、約100~約150のイソシアネート指数を提供する量で存在する;
・ 水は、唯一の成泡剤として発泡性組成物中に存在する;
・ 水の存在量は、イソシアネートを除く発泡性組成物の約3.0~約15重量%である;
・ 水の存在量は、イソシアネートを除く発泡性組成物の約4.0~約8.0重量%である;及び/又は
・ 水の存在量は、イソシアネートを除く発泡性組成物の約4.0~約6.0重量%である。
【0022】
イソシアネート
反応混合物中での使用に好適なイソシアネートは、特に限定されず、その選択は当業者に任せられている。一般に、使用に好適なイソシアネート化合物は、一般式:
Q(NCO)
(式中、iは2以上の整数であり、Qはiの原子価を有する有機ラジカルである。Qは、置換されているか又は無置換の炭化水素基(例.アルキレン基又はアリーレン基)であってもよい)
で表すことができる。また、Qは、一般式:
-Z-Q
(式中、Qはアルキレン又はアリーレン基であり、Zは、-O-、-O-Q-、-CO-、-S-、-S-Q-S-、-SO-及び-Q-N=C=N-Q-を含む群から選択される)
で表すことができる。この定義に含まれるイソシアネート化合物の例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-p-メタン、キシリルジイソシアネート、(OCNCHCHCHOCHO)、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、トリフェニル-メタン-4,4’,4”-トリイソシアネート及びイソプロピルベンゼン-アルファ-4-ジイソシアネートが含まれる。
【0023】
別の態様では、Qは、iの原子価を有するポリウレタンラジカルであってもよい。この場合、Q(NCO)は、当技術分野で一般的にプレポリマーと呼ばれる化合物である。一般に、プレポリマーは、化学量論的過剰のイソシアネート化合物(既に定義)と、活性水素含有化合物(以下で定義)、好ましくはポリヒドロキシル含有材料又は以下に記載のポリオールを反応させることにより製造してもよい。この態様では、ポリイソシアネートは、例えば、反応性化合物中の活性水素の比率に関して、約30%~約200%の化学量論的過剰の比率で使用してもよい。本発明の方法はポリ尿素発泡体の製造に関連する可能性があるため、この態様では、プレポリマーを使用してポリウレタン変性ポリ尿素を製造できることが理解される。
【0024】
別の態様では、本発明の方法における使用に好適なイソシアネート化合物は、イソシアネート及びジイソシアネートの、ダイマー及びトリマーから、並びに、一般式:
Q’[(NCO)
(式中、i及びjは2以上の整数であり、Q’は多官能性有機ラジカルである)
を有するポリマー性ジイソシアネート、並びに/又は、反応混合物中の付加的成分として、一般式:
L(NCO)
(式中、iは1以上の整数であり、Lは単官能性又は多官能性の原子又はラジカルである)
を有する化合物から選択してもよい。この定義に含まれるイソシアネート化合物の例には、エチルホスホン酸ジイソシアネート、フェニルホスホン酸ジイソシアネート、=Si-NCO基を含有する化合物、スルホンアミド(QSONCO)、シアン酸及びチオシアン酸から導かれるイソシアネート化合物が含まれる。
【0025】
好適なイソシアネートに関して、例えば英国特許第1,453,258号も参照されたい。
【0026】
好適なイソシアネートの非限定的な例には:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、フルフリリデンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’-ジフェニル-3,3’-ジメチルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性4,4’ -ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-ジイソシアネート-5-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアネート-s-トリアジン、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、ビトリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、ビス-(4-イソシアネートフェニル)メタン、ビス-(3-メチル-4-イソシアネートフェニル)メタン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及びこれらの混合物が含まれる。より好ましいイソシアネートは、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物、並びに粗製MDIとしても公知のポリマー性MDIを含む群から選択される。別のより好ましいイソシアネートは、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート及びこれらの混合物を含む群から選択され、例えば、約75~約85重量%の2,4-トルエンジイソシアネートと約15~約25重量%の2,6-トルエンジイソシアネートを含む混合物である。
【0027】
反応性化合物
従来のポリウレタン発泡体の製造とは異なり、本発明のイソシアネート系ポリマー発泡体の製造に使用される発泡性組成物中の主な反応物は:イソシアネート並びに(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する反応性化合物である。発泡性組成物が、ポリウレタン発泡体の製造に使用される従来のポリオール(以下で説明)を含有しないことが好ましい。
【0028】
好ましくは、反応性化合物は、ハロゲン化芳香族エステル、ハロゲン化芳香族エーテル、ハロゲン化脂肪族エステル、ハロゲン化脂肪族エーテル、ハロゲン化リン酸エステル、非ハロゲン化リン酸エステル及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
従来のポリオール
以下の考察は、いわゆる従来のポリオールに注目している。本発明のイソシアネート系ポリマー発泡体の製造に使用される発泡性組成物は、従来のポリオールを含まないことが好ましいが、一部の態様では、そのようなポリオールが相対的に少量で存在してもよい。
【0030】
「少量」は、発泡性組成物中で水を除く総ISO当量の約30%まで、より好ましくは発泡性組成物中で水を除く総ISO当量の約20%まで、さらにより好ましくは発泡性組成物中で水を除く総ISO当量の約10%まで、最も好ましくは発泡性組成物で水を除く総ISO当量の約5%までを意図する。
【0031】
本発明のポリウレタン発泡体の製造に使用される反応混合物は、酸化プロピレン単位、並びに、酸化エチレン、酸化ブチレン及びこれらの混合物から選択される酸化アルキレン単位から本質的になる第1のポリマー鎖を含む第1のポリオールを含み、ここで、酸化プロピレン単位:酸化アルキレン単位の重量比は約90:10~約25:75であり、ポリマー鎖は酸化エチレン単位で末端キャップされ、第1のポリオールは、第1のポリオールの総ヒドロキシル含有量を基準にして、少なくとも約70%の1級ヒドロキシル含有量を有する。第1のポリオールのこれらの特徴は、成型発泡体を製造するために通常使用されるポリオールに典型的である。
【0032】
第1のポリオールは、単独で、又は酸化プロピレン単位、並びに酸化エチレン、酸化ブチレン及びこれらの混合物から選択される酸化アルキレン単位から本質的になる第2のポリマー鎖を含む第2のポリオールと組み合わせて使用することができ、酸化プロピレン単位:酸化アルキレン単位の重量比は約100:0~約60:40であり、ポリマー鎖は酸化アルキレン単位で末端キャップされ、第2のポリオールは、第2のポリオールの総ヒドロキシル含有量を基準にして、少なくとも約95%の2級ヒドロキシル含有量を有する。第2のポリオールのこれらの特徴は、スラブ(フリーライズ)発泡体を製造するために通常使用されるポリオールに典型的である。
【0033】
第1のポリオール及び第2のポリオールに関するこれらの定義内で、ポリオールは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリジエン及びポリカプロラクトンを含む群から選択されるヒドロキシル末端の骨格部分であってもよい。好ましくは、ポリオールは、ヒドロキシル末端ポリ炭化水素、ヒドロキシル末端ポリホルマール、脂肪酸トリグリセリド、ヒドロキシル末端ポリエステル、ヒドロキシメチル末端ポリエステル、ヒドロキシメチル末端ペルフルオロメチレン、ポリアルキレンエーテルグリコール、ポリアルキレンアリーレンエーテルグリコール及びポリアルキレンエーテルトリオールを含む群から選択される。より好ましいポリオールは、アジピン酸-エチレングリコールポリエステル、ポリ(ブチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びヒドロキシル末端ポリブタジエンを含む群から選択され、例えば、好適なポリオールに関して、英国特許第1,482,213号を参照されたい。好ましくは、そのようなポリエーテルポリオールの分子量は、約100~約10,000、より好ましくは約100~約4,000、最も好ましくは約100~約3,500である。
【0034】
別の態様では、第2のポリオールは、グラフトコポリマーポリオールとしても公知のポリマーポリオールを含んでいてもよい。当技術分野で公知のように、そのようなポリオールは、一般に、他の有機ポリマーで満たされたポリエーテルポリオール分散体である。そのようなポリマーポリオールは、未変性ポリオールを使用する場合と比較して、負荷構築(load building)又は発泡体の硬さを改善するのに有用である。有用なポリマーポリオールの非限定的な例には:鎖成長コポリマーポリオール(例.微粒子状のポリ(アクリロニトリル)、ポリ(スチレン-アクリロニトリル)及びこれらの混合物を含有する)、及び/又は段階成長コポリマーポリオール(例.ポリ尿素(PolyHarnstoff)分散体(PHD)、ポリイソシアネート重付加(PIPA)ポリオール、エポキシ分散体ポリオール及びこれらの混合物)が含まれる。ポリマーポリオールについてはさらに、例えば、FLEXIBLE FOAM FUNDAMENTALS, Herrington et al. (1991)のChapter 2及びそこで引用された参考文献も参照。ポリマーポリオールが使用される場合、ポリマーポリオールとベースのポリオールを混合することが好ましい。一般に、混合物中に存在する未変性ポリオールの約5~約50重量%のポリマーポリオールを含有する混合物を使用してもよい。
【0035】
第2のポリオールはいわゆる生物由来のポリオールであってもよい。本明細書において、用語「生物由来のポリオール」は、植物油といった再生資源、又は別の生物起源の材料から導かれるポリオールを包含することを意図する総称的な用語である。
【0036】
好ましい生物由来のポリオールは、植物油由来のポリオールである。そのようなポリオールが導かれてもよい好適な植物油の非限定的な例には、ダイズ油、ベニバナ油、亜麻仁油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、オリーブ油、キャノーラ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、ナタネ油、桐油、魚油、ピーナッツ油及びこれらの組合せを含む。部分的水素化植物油及び遺伝子改変植物油も有用であり、高オレイン酸ベニバナ油、高オレイン酸ダイズ油、高オレイン酸ピーナッツ油、高オレイン酸ヒマワリ油及び高エルシン酸ナタネ油(ハマナ油)が含まれる。
【0037】
生物由来(例.植物油由来)のポリオールを製造する好適な方法は、植物油(又は植物油の混合物)とペルオキシ酸を反応させ、エポキシ化植物油を得ることを含む。本質的に、植物油中の一部又は全ての二重結合はエポキシ化されてもよい。エポキシ化植物油を、アルコール及び触媒量のフルオロホウ酸、場合によっては、更に水と反応させて、ポリオールを形成してもよい。そのようなポリオールは、全ての2級ヒドロキシル基を有する。
【0038】
これらの生物由来のポリオールを反応混合物に直接使用して、イソシアネート系発泡体、例えばポリウレタン発泡体を製造してもよい。或いは、生物由来のポリオールを、フルオロホウ酸触媒、場合によっては水の存在下で、上記エポキシ化植物油と反応させて、反応混合物における使用に好適な生物由来のポリオールを形成して、イソシアネート系発泡体、例えばポリウレタン発泡体を製造してもよい。
【0039】
そのような製造の例は、例えば、
・ 米国特許第6,686,435号(Petrovicら);
・ 米国特許第6,107,433号(Petrovicら);
・ 米国特許第6,573,354号(Petrovicら);及び
・ 米国特許第6,433,121号(Petrovicら)
に記載されている。或いは、エポキシ化反応は、残留二重結合を有するポリオールをもたらす条件で行ってもよい。
【0040】
好適なポリオールはまた、ヒドロホルミル化で製造される変性植物油由来のポリオールである。この方法では、植物油を、VIII族金属触媒(例.ロジウム触媒)の存在下で一酸化炭素と水素と反応させて、ヒドロホルミル化植物油を得る。次いで、ヒドロホルミル化植物油は水素化され、植物油由来の変性ポリオールとなる。この方法では、全てが1級ヒドロキシル基であるポリオールが製造される。これらのポリオールを反応混合物に直接使用して、イソシアネート系発泡体、例えばポリウレタン発泡体を製造してもよい。或いは、これらのポリオールを、フルオロホウ酸触媒、場合によっては水の存在下で、上記エポキシ化植物油と反応させて、反応混合物における使用に好適なポリオールを形成して、イソシアネート系発泡体、例えばポリウレタン発泡体を製造してもよい。
【0041】
好ましい生物由来のポリオールは、国際公開第2008/106769号(Stanciuら)に記載されている。
【0042】
本発明のイソシアネート系ポリマー発泡体の製造に使用される発泡性組成物において、触媒は、通常、反応混合物に組み込まれる。反応混合物中で使用される触媒は、重合反応及び成泡(発泡化)反応を触媒することができる化合物である。そのような触媒は公知で、反応混合物中のそれらの選択及び濃度は、当業者の純粋な見解内である。例えば、好適な触媒化合物に関して、米国特許第4,296,213号及び第4,518,778号を参照されたい。好適な触媒の非限定的な例は、第3級アミン及び/又は有機金属化合物を含む。加えて、当技術分野で公知のように、目的がイソシアヌレートを製造することである場合、ルイス酸が、触媒として単独又は他の触媒との関連で使用されなければならない。当然のことながら、2つ以上の触媒の組合せが好適に使用されてもよいことが当業者により理解される。
【0043】
ポリウレタン発泡体の製造に使用される反応混合物は、通常、成泡剤を更に含む。当技術分野で公知のように、水は、発泡型イソシアネート系ポリマーの製造において、非直接的又は反応性の成泡剤として使用できる。具体的に、水は、イソシアネートと反応して、最終の発泡型ポリマー製品における効果的な成泡剤として作用する二酸化炭素を形成する。或いは、二酸化炭素は、他の手段、例えば二酸化炭素を生じる不安定な化合物(例.カルバメート等)で発生させてもよい。本発明の発泡型イソシアネート系ポリマーの製造における使用に好ましい成泡剤は水を含む。
【0044】
発泡型イソシアネート系ポリマー(例.ポリウレタン)の製造において、非直接的成泡剤として使用される水の量は、従来、反応混合物中の総活性水素含有化合物含有量の100重量部を基準にして、約0.5~約40以上までの重量部、好ましくは約1.0~約10重量部であることは、当技術分野で公知である。当技術分野で公知のように、発泡型イソシアネート系ポリマーの製造で使用される水の量は、通常、発泡型ポリマーに求められる固定的特性により、及び自己構造形成に向けての発泡体膨張、難燃性等の許容度により制限される。
【0045】
次に、以下の実施例を参照に本発明の態様を説明する。これらの実施例は本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0046】
表1に示される化合物を使用して、さまざまなイソシアネート系ポリマー発泡体を製造した。水を除き、全ての化合物はXanathane Systemsから市販されている。
【0047】
Bolair Fluid Handling Systemsから入手した可変比複数成分噴霧装置を使用して、さまざまなイソシアネート系ポリマー発泡体を製造した。この可変比装置は、Glass-Craft Indianapolis, IN製で、供給ラインの両側で、1~0.50の重量比のイソシアネート/樹脂(すなわち、全ての原料)を供給するように構成された。
【0048】
噴霧装置は、イソシアネートと樹脂の両者のための独立した一次加熱器が備えられていた。イソシアネート及び樹脂を高圧加熱ラインに供給した。
【0049】
噴霧装置は2つの供給ラインを有し、ラインBは樹脂用のGracoダイヤフラム移送ポンプを有し、ラインAもまた、この例で使用されるイソシアネート用のダイヤフラム移送ポンプを有する。
【0050】
最大作動圧力3,500psi及び最大流体温度93℃のFUSION APエアパージ式ガンを使用して、ラインAとラインBからの流体を混合した。
【0051】
噴霧装置は:
ラインAの圧力- 1,200psi;
ラインBの圧力- 1,200psi;
ラインAの温度- 58℃;及び
ラインBの温度- 58℃
に設定した。
【0052】
ラインAとラインBからの供給物を、1:1の体積比で混合し、130cm×50cm×13cmの木製の箱に分注して、試験用の発泡体バンを得た。加えて、ラインAとラインBからの供給物を混合し、-20℃~25℃で、130cm×50cm×0.3cmの金属シート上に噴霧して、金属シートの表面への発泡体の接着性(車両、例えばバス等の骨組みへの適用を模擬)を検討した。システムの反応性プロファイルを実施し、クリーム時間(秒)、ゲル時間(秒)、ライズ時間(秒)及びタックフリー時間(秒)を測定した。
【0053】
発泡体試料の総揮発性有機炭素(TVOC)含有量分析を、VDA-277標準「Determination of Organic Emission of Non-metallic materials from vehicles Interior」に示される手順により行った。VDA-277試験法は、ガスクロマトグラフィーとフレームイオン化検出器を使用して、材料の放出能、放出された物質の排出値の合計を測定する。試験は、120℃で、蒸気スペース分析(ヘッドスペース技術)により行う。TVOC試験用の試料のサイズは10~25gであった。
【0054】
発泡体試料はまた、ASTM D-2863及びJT/T-1905-2016標準に準拠した限界酸素指数(LOI)試験も行った。限界酸素指数(LOI)試験は、ポリマー性材料の相対的可燃性を決定するための試験及び品質管理に広く用いられている火災試験応答手順である。数値的指標であるLOIは、垂直に載置された試験体が下方に燃焼するために必要とされる、酸素-窒素の混合物中の酸素の最小濃度と定義されている。したがって、LOI値が高いほど、難燃性が良好である。LOI試験法は、一般に+0.5%の精確さで再現性がある。本来、プラスチックを試験するために設計されたが、この方法は、ゴム、布地、紙、コーティング及び他の材料の相対的可燃性を評価するために広範に使用されてきた。LOI試験用の試料のサイズは0.25インチ×0.25インチ×6インチであった。
【0055】
例1-比較例
例1では、上記の方法により、Xanathane Systemsが市販する噴霧発泡体調合物から発泡体試料を製造した。したがって、例1は、単に比較的なものであり、そこで製造された発泡体は、本発明の範囲に含まれない。
【0056】
表2に、使用された調合物及び得られた発泡体の特性の一部を示す。
【0057】
より高密度のV2D噴霧発泡体は、望ましいLOIを有したが、TVOCは許容できないほど高かった。補助的炭化水素系成泡剤(Forane 365mfc)の使用は、V2D噴霧発泡体に見られるように、TVOC値を劇的に増加させる。
【0058】
発泡体の密度は重要な特性である。低密度のV-300噴霧発泡体は、FR(難燃剤)負荷が高い、すなわちFRを大量に使用するにもかかわらず、LOIは23.0%であった。この発泡体もTVOCが許容できないほど高かった。
【0059】
V-100噴霧発泡体は、許容できるTVOCを有する唯一の製品であった。しかし、この噴霧発泡体のLOIは許容できないほど低かった。
【0060】
例1の結果は、特定の市販の噴霧発泡体調合物からは:(i)ASTM D2863-17aに従って測定した限界酸素指数(LOI)が26.5%以上、及び(ii)VDA 277に従って測定した総揮発性有機物含有量(TVOC)が225μg/g C以下であるイソシアネート系ポリマー発泡体を製造できなかったことを実証している。
【0061】
例2~4-比較例
これらの例では、例1で製造されたV-100噴霧発泡体試料より改善された可燃特性(高いLOI)を有し、TVOCは維持された発泡体試料を製造することが意図された。具体的に、FR(難燃剤)負荷を高め、水の量を減らした。
【0062】
上記の方法により、Xanathane Systemsが市販する原料から発泡体試料を製造した。これらの例で使用した原料を表3~5に示し、(別途記載がない限り)全ての部は重量部である。
【0063】
これらの表から明らかなように、表3~5中の調合物は、相対的に高量のいわゆる従来のポリエーテルポリオールを含有する。これらのポリエーテルポリオールは、本明細書で使用される「反応性化合物」の定義(すなわち、(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する)に含まれない。表2中の唯一のそのような原料はXB2000である。したがって、例2~4は、単に比較的なものであり、そこで製造された発泡体は、本発明の範囲に含まれない。
【0064】
表3~5に得られた発泡体の特性の一部も示す。これらの表から明らかなように、FR負荷の増加はLOIの望ましい増加をもたらすが、残念ながら、それぞれの密度は許容できないレベルまで増加し、TVOCも同様(すなわち、225μg/g Cをはるかに超える)であった。
【0065】
例5~8-実施例
これらの例では、例1~4で製造された発泡体試料と比較して、改善された可燃特性(26.5%以上のLOI)及び改善されたTVOC特性(225μg/g C以下のTVOC)の発泡体試料を製造することが意図された。具体的に、ポリウレタン発泡体を製造するために使用されるポリエーテルポリオールを取り除き、「反応性化合物」(本明細書で定義する、(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する化合物)XB2000の量を増加させた。
【0066】
上記の方法により、Xanathane Systemsが市販する原料から発泡体試料を製造した。これらの例で使用した原料を表6~8に示し、(別途記載がない限り)全ての部は重量部である。
【0067】
表6~8に得られた発泡体の特性の一部も示す。これらの表から明らかなように、ポリウレタン発泡体を製造するために使用されるポリエーテルポリオールの、かなりの量の「反応性化合物」(本明細書で定義する、(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する化合物)XB2000への変更は、LOI及びTVOCの非常に望ましい組合せをもたらす。具体的に、各発泡体試料は、(i)ASTM D2863-17aに従って測定した限界酸素指数(LOI)が26.5%以上、及び(ii)VDA 277に従って測定した総揮発性有機物含有量(TVOC)が225μg/g C以下であった。
【0068】
例9~10-実施例
これらの例では、例1~4で製造された発泡体試料と比較して、改善された可燃特性(26.5%以上のLOI)及び改善されたTVOC特性(225μg/g C以下のTVOC)の発泡体試料を製造することが意図された。具体的に、ポリウレタン発泡体を製造するために使用されるポリエーテルポリオールを取り除き、「反応性化合物」(本明細書で定義する、(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する化合物)XB2000の量を増加させた。これらの例は、本発明者らが現在企図する本発明の最も好ましい態様を表す。
【0069】
上記の方法により、Xanathane Systemsが市販する原料から発泡体試料を製造した。これらの例で使用された原料を表9~10に示し、全ての部は重量部である。
【0070】
表9~10に得られた発泡体の特性の一部も示す。これらの表から明らかなように、ポリウレタン発泡体を製造するために使用されるポリエーテルポリオールの、かなりの量の「反応性化合物」(本明細書で定義する、(1)イソシアネートと反応性である少なくとも1個の水素、及び(2)ハロゲンとホスフェート部分の一方又は両方を有する化合物)XB2000への変更は、LOI及びTVOCの非常に望ましい組合せをもたらす。具体的に、各発泡体試料は、(i)ASTM D2863-17aに従って測定した限界酸素指数(LOI)が26.5%以上、及び(ii)VDA 277に従って測定した総揮発性有機物含有量(TVOC)が225μg/g C以下であった。
【0071】
本発明は、例示的な態様及び例に関連して記載しているが、本記載は、限定的な意味で解釈されることを意図していない。したがって、例示的な態様、同様に本発明の他の態様のさまざまな修正が、本記載を参照すれば当業者には明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲が、如何なるそのような修正又は態様も包含することが企図される。
【0072】
本明細書で言及する全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、その全容が組み込まれることが詳細に且つ個別に明記されている場合と同じ程度に、その全容が組み込まれる。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【国際調査報告】