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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】追加の共振回路を備える誘導炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 14/14 20060101AFI20221027BHJP
   F27B 14/06 20060101ALI20221027BHJP
   F27D 11/06 20060101ALI20221027BHJP
   H05B 6/24 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F27B14/14
F27B14/06
F27D11/06 A
H05B6/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513314
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 FR2020051492
(87)【国際公開番号】W WO2021038163
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】1909598
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリス・ブラン
(72)【発明者】
【氏名】エミリアン・ソヴァージュ
【テーマコード(参考)】
3K059
4K046
4K063
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB15
3K059AC07
3K059AC16
3K059AD03
3K059AD05
4K046AA01
4K046BA01
4K046BA02
4K046BA03
4K046BA08
4K046CB15
4K046CD02
4K046CD12
4K046EA03
4K063AA04
4K063BA02
4K063BA03
4K063BA04
4K063CA01
4K063FA34
4K063FA42
(57)【要約】
坩堝は、少なくとも2つの電気誘導加熱回路を備え、そのうちの1つは、側壁の周りに配置され、他の1つは、坩堝の床の下又は床に配置される。前記回路(18)の1つは、インダクタ(3)に接続された発電機(15)を備え、他の1つの回路(19)は、発電機を欠いているが、前者と電磁的に結合し、補助インダクタ(7)、及び、総静電容量を調整可能なキャパシタ(17)で構成される。結合条件、2つのインダクタ(3、7)を通過するそれぞれの電力、及び、加熱分布を変更して、加熱を均一化し、又は、坩堝の床に集中させることができる。良好な熱効率を期待することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の循環によって冷却される側壁(1)及び前記側壁(1)の下に配置された床(8)を備えた坩堝(1、8)と、
第1のインダクタ(3)及び発電機(15)を備える第1の誘導加熱電気回路(18)と、
第2のインダクタ(7)を備える第2の誘導加熱電気回路(19)と、
を備え、前記インダクタの一方が、前記側壁の周りに配置され、前記インダクタの他方が、前記床の下又は中にある、誘導炉であって、
前記第2の回路(19)が、発電機を有しないが、前記第1の回路(18)に電磁的に結合され、調整可能な静電容量の電気キャパシタデバイス(17)を備え、前記電気キャパシタデバイスが、前記第2のインダクタ(7)に接続されることを特徴とする、誘導炉。
【請求項2】
前記床(8)が、電気絶縁体(32)によって結合された巻線(31)から構成される螺旋形である、前記インダクタ(7)の1つによって構成されることを特徴とする、請求項1に記載の誘導炉。
【請求項3】
前記電気キャパシタデバイスが、可変の静電容量のキャパシタ(22)を備えることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の誘導炉。
【請求項4】
前記電気キャパシタデバイスが、断路器(21)によって前記第2の回路(19)に接続されるキャパシタ(20)を備えることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の誘導炉。
【請求項5】
前記第1のインダクタ(3)が、前記側壁(2)の周りに配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の誘導炉。
【請求項6】
前記第1のインダクタが、前記床の下又は中に配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の誘導炉。
【請求項7】
発電機を有しないが、インダクタ(24)と、調整可能な総静電容量を有するキャパシタデバイスとを備え、少なくとも前記第1の回路(18)に電磁的に結合された、少なくとも1つの追加の誘導加熱電気回路(23)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の誘導炉。
【請求項8】
少なくとも1つの前記追加の電気回路が、それを開くことを可能にする断路器(26)を備えることを特徴とする、請求項7に記載の誘導炉。
【請求項9】
少なくとも1つの追加回路の前記インダクタが、前記坩堝の上に配置され、前記第2の電気回路に面していることを特徴とする、請求項7または8のいずれか一項に記載の誘導炉。
【請求項10】
前記第2の回路のキャパシタデバイスの総静電容量が、前記炉の最大電気共振状態に調整可能であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の誘導炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追加の共振回路を備える導炉に関する。
【背景技術】
【0002】
それは、溶融のための電磁誘導加熱を備える冷間坩堝炉、特に、例えば、酸化物若しくは酸化物混合物、又は最大約30重量%の金属の比率を有するそのような混合物などの少なくとも1つの導電性材料に関し、これらの混合物は、溶融した炉心溶融物を代表するものである。また、特にガラス産業で使用される炉、たとえば1200Kから3000Kを超える高温で製造されるエナメルまたはその他の高純度の材料の製造にも適用される。誘導周波数は、坩堝のサイズに応じて、一般に100kHz~1000kHzからなる。
【0003】
それは、有害であり、1つのインダクタ又は複数のインダクタの電気回路を構成する構成要素、特に電流発生器に干渉する可能性がある、液体浴若しくは溶融材料の大量の過熱を伴うことなく、又は誘導電流を生成することなく、充填物の温度の良好な均一性を可能にすることによって、特に冷間坩堝炉を改善しなければならず、その結果、坩堝の底部のソールのクラストの厚さが、大量の過熱を伴うことなく減少する可能性がある。得られる利点は、より良好な効率及びより良好な熱均一性に関連しており、それらは、設置を簡素化し、対流による液体浴の混合を改善し、重力による床からの液体の注入を容易にすることを可能にする。
【0004】
誘導オーブンは、鋳造若しくは冶金の分野、又は、材料の製造や均質な混合物の形成のための原子力産業の分野で周知である。それらは、充填物が保持される坩堝と、少なくとも1つのインダクタを備えており、その励起によって充填物に電流が発生し、その電流がその加熱と溶融につながる。この加熱プロセスは実装が簡単で、熱エネルギー源と坩堝との間の接触を回避することができる。
【0005】
坩堝は、典型的には、平らであり得、底部を構成する床に接合された側壁を備える。それが導電性材料である場合、充填物の周りで渦巻く誘導電流の出現及び対応するエネルギー損失を回避するために、それは、しばしばセクターに形成され、すなわち、角度のあるセクター上に延びる部分から構成され、それらの部分は、電気絶縁セパレータによって分離される。
【0006】
一部の坩堝は、ラミングマスやグラファイトなどの耐火材料で構成される。それらの利点は、高い溶融温度であるが、特定の充填物、特に酸化物で構成される充填物は、さらに高い温度、又は少なくとも物理的若しくは化学的に腐食するのに十分な温度で溶融されなければならない。
【0007】
また、本発明が採用する、非常に普及している設計は、水又は別の液体によって冷却され、坩堝内に延びる冷却回路を備えた冷間坩堝の設計である。したがって、坩堝は、プロセスの操作中、充填物の中心よりも遥かに低温のままであり、それに対して存在する充填物からの材料の固化層による腐食又は他の物理的若しくは化学的攻撃から保護されたままであり、それは、坩堝の内壁を構成していると考えることができ、それは、スカル坩堝と呼ばれる。これらの冷間坩堝は、チタン、鋼などの金属、又は、ガラスなどの酸化物、酸化チタン、希土類金属又は混合物で構成される様々な合金、又は、例えば、シリコン又はエナメルなどの導電率の低い材料であり得る反応性の高い材料の高温溶融、例えば、ここでは1500K、又は3000K以上の溶融を可能にする。
【0008】
しかしながら、坩堝内の加熱の均一性に欠陥が見られる場合がある。充填物の最も高温の部分は、対流によって自由表面に上昇する傾向がある。しかしながら、加熱の原因となる誘導電流は、特に酸化物の充填物の高温部分に対応する、最大の導電率の部分に集中する傾向がある。この対流の結果は、不均一な加熱と、金属の場合は床近くの電磁誘導の減少によって強化される可能性があり、坩堝の底で充填物を加熱するのがより困難になり、そこでの温度は低く保たれ、通常、固化した層は、床の上で遥かに厚くなる(坩堝の側壁の反対側の数ミリメートルではなく、数十ミリメートルの場合もある)。冷却された構造における高い電気的損失に関連する、溶融を達成するための、このより大きな困難は、それ自体が有害であり、プロセスの品質に影響を与える可能性がある。実行するのが繊細でしばしば禁止されている、坩堝を逆さにすることによるのではなく、床の中央にあるプラグを開封することによって、坩堝の底部によって溶融された充填物を排出することが提供される場合、それは、さらに大きな障害となる。固化したクラストは、実際のところ、プラグを取り外したときに注ぐのを防ぐことができる。電力を増加させて、坩堝の底部にあるそのクラストを溶かし、中央に加熱を集中させることが想定される場合がある;しかし、特定の酸化物の揮発性を高め、それによって溶融する充填物の組成を変更し、側壁を覆っている充填物の固化層を溶かし、または、セクター間の絶縁体などの、坩堝の特定の構造に損傷を与えながら、他の場所で加熱が過剰になるリスクがある。熱損失はまた、浴の自由表面からの放射、坩堝の壁での伝導、及び周囲の雰囲気との慣習が高い、低効率によって既に特徴付けられているプロセスでは、1.5または2の係数で乗算される可能性がある。
【0009】
誘導周波数に作用して、坩堝の底で充填物が溶けるようにすることも可能である:インダクタが側壁の周りに配置されている場合、これは最も一般的であるが、半径方向の坩堝内の加熱の分布は、インダクタの励起周波数に依存する:これが高いほど、加熱は壁に集中する;したがって、その励起周波数を選択または調整して、溶融浴の体積を調整し、ある程度、坩堝内の温度分布を調整することが可能である;しかし、溶融浴の温度の均一性の欠如は、許容できなくなる可能性がある。実際には、電気回路及び冷却システムは、一般に過大な寸法であり、デバイスのそのような負担は必ずしも満足のいくものではない。
【0010】
この故障は、特にこれらの構造の電気的損失の増加のために、冷間坩堝が銅や特定のグレードのステンレス鋼などの導電性材料でできている現在の場合に特に顕著であるが、それらは、坩堝を構成する材料及びその構造が何であっても存在する。
【0011】
これまでに説明された最も単純な誘導炉の、ここで言及される最後の欠点は、インダクタの高さがかなり異なる場合、それらが可変量の充填物にうまく適合せず、従って坩堝内の高さが異なることである。
【0012】
そのような誘導炉を説明する豊富な先行技術がある。ここで、加熱の均一性を改善すると想定される特定の設計について詳しく説明する。
【0013】
欧州特許第1045216号には、坩堝の側壁を囲む主インダクタに加えて、床下の注入領域の周り、坩堝からの注入を可能にするプラグの周りに配置された補助インダクタが記載されている。これにより、床を通過する注入口の周囲に追加の誘導電流を生成し、そこでの充填物の凝固を防ぎ、プラグが取り外されたときに注入が発生することを保証する。しかしながら、実施の難しさが残っており、このデバイスは、非常に高い融点を有する材料の溶融に必ずしも適しているとは限らない。その効果は限られた時間だけ純粋に局所的であるため、充填物を加熱して溶融させる際の均一性の欠如というより一般的な問題は解決されない。すでに提案されているように、チューブによってより大きな加熱を得ることを期待して、その下部インダクタと注入開口部との間に非冷却金属チューブが提供された場合も同じことが当て嵌まり、さらに後者は、特に高温で急速に腐食するリスクがある。
【0014】
米国特許第6185243号のような特定の設計では、坩堝の側壁の周りに配置された従来のインダクタは、床の下に配置され、その形状が1つ又は複数の螺旋形であるインダクタに置き換えられる。この設計は、直径に比べて高さが小さい浴にのみ適しており、溶融浴の自由表面での対流及び側壁での伝導による高い熱損失を伴う可能性がある。供給される電力は依然として不均一であり、通常はインダクタの巻線より上にあるが、側壁の近く、及び巻線がない場合は坩堝の中央で遥かに弱くなる。
【0015】
さらに、側壁の周りと床の下の両方に延びる単一のインダクタ(米国特許出願公開第1645526号)、又は、それぞれが電源によって作動する2つの別個のインダクタ(米国特許第4609425号、特開平10-253260号公報、米国特許第4687646号)を配置することが提案されている。しかしながら、充填物の加熱がより均一になる可能性は、2つのインダクタ又はインダクタ部品によって生成される電界間の競合によって対抗され、これらの電界は、それらの動作を妨害し、制御電子機器に損傷を与える可能性さえある。最後に、これらの設計の改善が国際公開第2017/093165号で提案されており、磁束収束板と呼ばれる部品が側壁と床の接合部に配置され、それによって2つのインダクタを分離している。この部品は、透磁率の高い材料の静的部分であるため、磁場間の相互作用が減少する。前述の欠点が軽減され、より良い効率が期待される場合がある。残念ながら、特にここで想定されている動作範囲(電源の励起周波数に関する動作範囲)では、その性能を維持するために磁束収束板を冷却する必要があり、状況によっては技術的に困難な場合がある。収束板は、アクセスが困難な領域に配置する必要があり、充填物に対するインダクタの移動が必要になる場合があり、最後に、放射性充填物の場合、照射に対して脆弱である。順序が異なることの欠点の1つは、このデバイスでは2つのインダクタ間で加熱電力を分配できないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第1045216号明細書
【特許文献2】米国特許第6185243号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第1645526号明細書
【特許文献4】米国特許第4609425号明細書
【特許文献5】特開平10-253260号公報
【特許文献6】米国特許第4687646号明細書
【特許文献7】国際公開第2017/093165号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、改良された誘導炉に関するものであり、その最も重要な側面は、2つのインダクタのより好ましい構造により、必要に応じて、溶融充填物を加熱する効果を高めることと、加熱される体積の加熱分布を調整することの両方が可能になり、そのうちの一方のインダクタは、坩堝の側壁の周りに配置され、他方は、床の下(または床の中に)に配置される。以前のデバイスやプロセスよりも高い電気効率が期待される。坩堝の底部でより効果的に加熱することにより、より簡単な注入も期待される。
【0018】
具体的には、それは、流体の循環によって冷却される側壁及び側壁の下に配置された床を備えた坩堝と、第1のインダクタ及び発電機を備える第1の誘導加熱電気回路と、第2のインダクタを備える第2の誘導加熱電気回路と、を備え、インダクタの一方が側壁の周りに配置され、インダクタの他方が床の下又は中にある、誘導炉であって、第2の回路が、発電機を有しないが、第1の回路に電磁的に結合され、調整可能な静電容量の電気キャパシタ装置を備え、電気キャパシタ装置が、第2のインダクタに接続されることを特徴とする、誘導炉に関する。
【0019】
二重回路を備えたこの電気デバイスは、2つの回路の自由な電磁相互作用によって促進される炉の電気共振の現象を利用する。側壁を囲むインダクタと床に割り当てられたインダクタが、互いに接続されている間に同じ電源によって、又は互いに分離されている間に2つの異なる電源によって励起される既知のデバイスとは異なり、それらの接合部での誘導磁場間に競合が観察されず、電気回路への妨害はない。これにより、電気効率が向上し、損失が減少する。
【0020】
本発明の別の利点は、加熱をよりよく分散させるための設備であり、これは、特に、プロセスを改善し、場合によっては注入を容易にするために、中心及び底部において、床のすぐ上で増加させることが可能である。この加熱の分布は、(溶融中に調整可能な)総静電容量の設定に依存し、さらに、良好なレベルの温度均一性を得るか、逆に、本質的に周辺、又は中心、又は溶融充填物の底部のいずれかで加熱することができる範囲で、その静電容量の変動に対して非常に高い感度を示す。
【0021】
第1のインダクタは、主インダクタを構成するため、側壁の周りに配置するのが一般的であり、第2の電気回路は、床に割り当てられる。しかしながら、特に表面積が大きく高さが低い坩堝の場合、批判にさらされることなく、反対の配置に遭遇する可能性がある。
【0022】
坩堝の底部のインダクタは、非常に優れた熱伝導体である電気絶縁体で覆われた螺旋を形成することができる:その場合、坩堝の底部の床を前記インダクタ自体で構成することが可能であり、有利であり、それは、坩堝の設計と加熱の効率を向上させる。
【0023】
誘導炉は、発電機を有さず、インダクタと、調整可能な総静電容量を有するキャパシタデバイスとを備え、少なくとも第1の回路と電磁的に結合された少なくとも1つの追加の回路を含み得る;したがって、この追加の回路又はこれらの追加の回路は、参照される第2の回路と同じ特性を有する。それらは、新たに追加された量の充填物の加熱を改善するために、炉の上部で有用であることが分かるかもしれない。次に、それらは、坩堝の頂点の上に配置され、床の上又は中にあるインジケーターに面して、それに平行にすることができる。
【0024】
次に、追加の1つの回路又は複数の回路は、それらを自由に開くことを可能にする断路器を有利に装備することができる。
【0025】
本発明の様々な態様、特徴及び利点は、純粋に例示的な、その特定の実施形態を表す以下の図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】誘導炉の概観図である。
図2】側方インダクタの図である。
図3】底部インダクタの図である。
図4】電気回路図である。
図5】キャパシタのバンクの実施形態である。
図6】別の実施形態を示す。
図7】第1の加熱状態を示す。
図8】第1の加熱状態を示し、下から見た図である。
図9】第2の加熱状態を示す。
図10】第2の加熱状態を示し、下から見た図である。
図11】第3の加熱状態を示す。
図12】第3の加熱状態を示し、下から見た図である。
図13】坩堝の別の実施形態を示す。
図14】坩堝の第3の実施形態を示す。
図15】第3の実施形態の床を示す。
図16】第1の実施形態の床の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1から図3を用いて一実施形態を説明する。誘導炉のこの実施形態は、側壁1における円形誘導電流の発生を防止するために電気絶縁セパレータによって隣接及び連結された銅又はステンレス鋼の垂直チューブ2からなる側壁1又は円筒形スリーブを備える。チューブ2は、既知の配置に従って、水などの冷却液によって横切られる。冷却回路12は、上端と下端で交互にチューブ2間のコネクタを用いて、液体を交互に上下に循環させることができる。他の可能な構造は、とりわけ、米国特許第6996153号の構造であり、各チューブは、垂直方向の往復トリップを行う回路によって独立して冷却される。
【0028】
側方インダクタ3は、側壁1を取り囲んでいる。ここでは、平行なストランド4が高さ方向に重ねられ、それぞれが坩堝の周りを1回通過する単一の巻線である。それらの端部は、2つの垂直接続部5及び6によって共に結合され、これらはさらに、交流発電機への電気接続及び油圧接続の両方を提供し、ストランド4は、冷却液の循環によっても冷却され、これらは、冷却回路13に接続される。さらに、側方インダクタの他の配置、特に連続した螺旋状に配置された巻線も可能である。
【0029】
坩堝は、主に螺旋状の補助インダクタ7で構成される床8で完成する(図3および16)。補助インダクタ7も水で冷却されるチューブであり、その端部9及び10も冷却回路14につながる。螺旋の巻線31は、電気絶縁性であり、非常に良好な熱伝導体であるセパレータ電気絶縁体32によって結合され、それら全てを分離し、床8に連続構造を与える。さらに、補助インダクタ7は、その上面が、電気絶縁性であり、例えばアルミナから構成される良好な熱伝導体である薄層33で覆われている。このような設計により、従来使用されていた床をなくし、補助インダクタ7によって坩堝の充填物を直接保持することが可能になる。
【0030】
床8と側方の対1の冷却はまた、スカル坩堝の形成をもたらす、すなわち、それらと接触する際の充填物の層は、固体のままであり、それらを腐食から保護する。
【0031】
注入プラグ11は、螺旋の中心に配置されている。ここには示されないが、それは、従来のデバイスによって冷却される。主インダクタ3および補助インダクタ7の側壁1の冷却回路12、13及び14は、ここでは概略的にのみ表されており、既に知られている実施形態によるものであり、それぞれが特に、例えばポンプと熱交換機を含むことが可能である。
【0032】
電気デバイスを図4に示す。主インダクタ3は、交流発電機15の端子に接続されている。キャパシタ16のバンクもまた、主インダクタ3と並列に発電機15の端子に接続されている。アセンブリは、閉じた主電気回路18を形成する。この主電気回路18は、とりわけ、坩堝の構造、そこに含まれる充填物、及び主インダクタ3の抵抗に起因する抵抗を有する。補助インダクタ7は、キャパシタの調整可能なバンク17と共に、閉じた補助電気回路19を形成し、これは、発電機15から物理的に分離されており、それ自体の発電機を有しない。この補助電気回路19は、とりわけ補助インダクタ7に起因する抵抗を有する。インダクタ3及び7が近接しているということは、補助電気回路19に発電機がないにもかかわらず、動作中の電気回路18と19との間に電磁結合が生じることを意味する。この結合は、特に、入力される電力及び坩堝の充填物、並びに、補助電気回路19に接続され、又は、スイッチ21によって分離され得る個々のキャパシタから構成されるキャパシタ17のバンクの総静電容量の設定によって変化する。個々のキャパシタ20は、図5に示されているように、またはそうでなくても、並列に配置され得る。変形例として(図6)、キャパシタ17のバンクは、効果が同じである調整可能なキャパシタ22で置き換えることができる。
【0033】
本発明は、インダクタ3及び7による電気回路18及び19間の電磁結合に基づいて、特に溶融及び混合のプロセス中のその温度を均一化するために、それらによって誘導される電流を調整し、坩堝に含まれる充填物の加熱の分布に作用し、又は、(他の可能性の中でも)注入プラグ11を解放し、注入操作を容易にするために底部での加熱を増加させる。
【0034】
得られた効果は、以下の表1の効果である可能性がある。
【0035】
【表1】
【0036】
第1の行は、補助回路19が開いた状態でのデバイスの動作を表す。主インダクタ3の端子の電圧とそこを流れる電流は高く、補助インダクタ7の端子の電圧は低く、したがって、加熱は、主に主インダクタ3によって行われるが、側壁1における損失が大きく、効率が比較的低い。この動作モードは、既知の条件に類似しており、本発明を代表するものでも、通常、求められているものでもない。図7及び図8は、溶融された充填物の温度分布を上から見た図と下から見た図であり(明るい色調は局所的な加熱が大きいことを示している)、したがって、周辺部での高い加熱を示しており、ここでは中央で弱く、したがって、充填物はそこで遥かに冷たく、特に床のすぐ上の発電機15による非常に弱い加熱を示している。異なる励起周波数を選択すると、加熱の分布が半径方向に変化する可能性があるが、いずれの場合も、坩堝の底部での加熱は依然として弱く、温度の均一性は達成されない。
【0037】
表の次の行は、キャパシタのバンク17又は調整可能なキャパシタ22の静電容量の増加の効果を示している。電磁共振が強まり、主インダクタ3の端子の電圧と電流の値が減少し、補助インダクタ7の端子の電圧とそこを流れる電流の値が増加する。側壁1の損失は大幅に減少し、補助インダクタ7の損失は増加するが、値は遥かに低いままであり、つまり、炉の効率は遥かに高く、ここで推定される値は69.45nFである静電容量で最大85%に達する。したがって、充填物内の加熱の典型的な分布の直径は、図9及び10の直径であり、それぞれ上及び下から見た場合である:充填物内で優れた加熱の均一性が得られ、今回は坩堝の底部が、上にある部分とほぼ同じ温度で加熱されることが観察される。
【0038】
キャパシタ17のバンク又は調整可能なキャパシタ22の静電容量をさらに増やすことにより、坩堝の底の加熱は、残りの部分を損なうために強調される可能性がある:図11及び図12は、90nFの静電容量で得られた状態を示し、これは、この場合、実験的に最大の電気共振に対応し、主インダクタ3の端子の電圧及び電流の値が最小であるのに対し、補助インダクタ7の端子の電圧及びそこに流れる電流は、最大である。図12に示すように、充填物の頂点は、ほとんど加熱されず、加熱は、坩堝の底に集中する。補助電気回路19が最大電力を供給する際に最も機能する、バンク17の高い総静電容量及び最大共振のこの状態を維持することにより、補助電気回路19の近く、すなわち、ここで坩堝の底部に加熱を集中させ、溶融浴の混合を続けながら、固体クラストの溶解を促進することが可能になる。次に、重力による注入は、プラグ11を開くことによって得ることができる。
【0039】
図13は、インダクタ24及びインダクタ24の端子に配置されて回路を閉じるキャパシタ25を備える第2の補助電気回路23の使用を示している。キャパシタ25は、調整可能であってもなくてもよい。インダクタ24は、坩堝の頂点の上に配置され、その反対側に面する補助電気回路19の形状と同様の形状である。第2の補助電気回路23は、発電機を有しない。それはまた、主回路18との共振電磁結合を介して動作し、キャパシタ25の静電容量の賢明な調整または選択により、その上部の坩堝の追加の加熱を確立することを可能にし、これは、坩堝に新たに導入された充填物の一部を予熱するために、例えば、特に充填物が漸進的に導入されるプロセスにおいて、又は、例えば、充填物の体積がより大きく、その高さまで上昇するプロセスで有用であり得る。第2の補助回路26は、断路器26を開くことによって非アクティブ化され得る。
【0040】
本発明は、他の多くの方法で実施することができる。図14及び図15は、次に基準27を支持する床が、1つの水ボックス28から次の水ボックス28への冷却流体の循環のために湾曲したチューブ29によって結合された円形セクターの水ボックス28から構成される実施形態を示す。冷却回路の端部30はまた、前の実施形態のように、キャパシタの調整可能なバンクの接続部として機能する。さらに、このデバイスは前のデバイスと同じであり、操作も同様である;しかし、この実施形態は、補助回路に有利な電磁結合が遥かに良くないので、好ましくない。
【0041】
既知のデバイスの場合と同様に、効率の低下を犠牲にして、補助インダクタを耐火性で電気的に不活性な床の上に配置することは、依然として可能である。
【0042】
インダクタは、任意の既知のタイプのものであり得る。主に想定される補助インダクタは、螺旋形であるが、並列に配置された複数の同心ストランド又は単一のストランドから形成された単一の巻線のインダクタは、想定でき、良好な結果が得られる。ここで想定されている、並列で単一の複数のストランドを持つ主インダクタは、それに応じて、数巻の螺旋インダクタに置き換えることができる。
【0043】
キャパシタ17のバンクを調整することが可能な総静電容量は、体積の大部分における良好な均一性、及び、注ぐことができるように坩堝の底に十分に集中している加熱など、取得したい加熱分布に対応する異なる動作モードを可能にするように選択されなければならない。一般に、補助回路19に最大電力を送ることができるようにするために、回路の最大共振状態が達成され得ることが示される。キャパシタのバンク17の総静電容量の広い範囲の値の範囲内で効率が依然として改善されるので、これが不可欠でなくても、このプロセスの大部分の間、最高の効率に対応する状態が好ましい。
【0044】
主インダクタ(発電機に接続される)と補助インダクタ(調整可能なキャパシタを備える)の位置は、特に、坩堝の構造及び図1から図4に表される電気回路の配置を変更することなく交換することができる。
【0045】
インダクタとコンデンサで構成され、独自の発電機を有しない、主回路と電磁的に結合された他の補助回路も、坩堝の様々な場所で必要な場合に追加することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 側壁、坩堝
3 インダクタ
7 インダクタ
8 床、坩堝
15 発電機
17 電気キャパシタデバイス
18 誘導加熱電気回路
19 誘導加熱電気回路
20 キャパシタ
21 断路器
22 キャパシタ
23 誘導加熱電気回路
24 インダクタ
26 断路器
31 巻線
32 電気絶縁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】