(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】改変された制御性T細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20221027BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221027BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221027BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221027BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221027BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221027BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221027BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221027BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221027BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221027BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20221027BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221027BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20221027BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/63 Z
A61K35/17 A
A61P1/16
A61K47/68
A61P43/00 107
A61K31/7088
A61K48/00
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/725
C07K14/715
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513373
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 GB2020052076
(87)【国際公開番号】W WO2021038249
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500532757
【氏名又は名称】キングス カレッジ ロンドン
【氏名又は名称原語表記】KINGS COLLEGE LONDON
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス‐ローデラ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス‐フエヨ、アルベルト
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC16
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF32
4C076FF34
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB22
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB22
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZB22
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された制御性T細胞(Treg)を提供し、前記CARはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に特異的に結合する抗原認識ドメインを含む。本発明はまた、対象における肝臓組織の修復および/または再生を促進する方法を提供し、前記方法は、CARを含む改変されたTreg、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された制御性T細胞(Treg)であって、前記CARは、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に特異的に結合する抗原認識ドメインを含む、改変された制御性T細胞(Treg)。
【請求項2】
前記抗原認識ドメインが、ASGR1および/またはASGR2、好ましくはASGR1に特異的に結合する、請求項1に記載の改変されたTreg。
【請求項3】
前記抗原認識ドメインが、ヒトASGRに結合する、請求項1または2に記載の改変されたTreg。
【請求項4】
前記抗原認識ドメインが、ヒトASGR1アイソフォームa、ヒトASGR1アイソフォームb、ヒトASGR2アイソフォームa、ヒトASGR2アイソフォームb、ヒトASGR2アイソフォームc、およびヒトASGR2アイソフォームdから選択される1以上のポリペプチドに結合し、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、ヒトASGR1アイソフォームaに結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項5】
前記抗原認識ドメインが、約1pM~約100nM、約1pM~約10nM、または約1pM~約1nMの親和性で、ASGRに結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項6】
前記抗原認識ドメインが、抗体であるか、抗体断片であるか、または抗体由来である、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項7】
前記抗原認識ドメインが、抗原結合断片(Fab)、単鎖抗体(scFv)、または単一ドメイン抗体(sdAb)であり、好ましくは単一ドメイン抗体(sdAb)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項8】
前記抗原認識ドメインが、配列番号11~73、または3個以下のアミノ酸置換を含むそれらの誘導体から選択される1以上のCDR領域を含む、請求項6または7に記載の改変されたTreg。
【請求項9】
前記抗原認識ドメインが、CDR1領域と、CDR2領域と、CDR3領域とを含み、
前記CDR1領域、CDR2領域、CDR3領域は、
それぞれ、配列番号11、12、および13を含み;
それぞれ、配列番号14、15、および16を含み;
それぞれ、配列番号17、18、および19を含み;
それぞれ、配列番号20、21、および22を含み;
それぞれ、配列番号23、24、および25を含み;
それぞれ、配列番号26、27、および28を含み;および/または、
それぞれ、配列番号29、30、および31を含み、
好ましくは、前記抗原認識ドメインが、配列番号11、12、および13をそれぞれ含むCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項10】
前記抗原認識ドメインが、CDR1領域と、CDR2領域と、CDR3領域とを含み、前記CDR1領域と、CDR2領域と、CDR3領域は、下記(i)、(ii)または(iii)を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
(i)それぞれ、配列番号11、12、および13、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25、または、それぞれ、配列番号26、27、および28、またはそれぞれ、配列番号29、30、および31、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、それぞれ、配列番号11、12、および13を含み、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25を含むCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み:
(ii)それぞれ、配列番号14、15、および16、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25、または、それぞれ、配列番号26、27、および28、またはそれぞれ、配列番号29、30、および31、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、それぞれ、配列番号14、15、および16を含み、かつ、それぞれ、配列番号26,27、および28を含むCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み:
(iii)それぞれ、配列番号17、18、および19、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25、または、それぞれ、配列番号26、27、および28、またはそれぞれ、配列番号29、30、および31、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、それぞれ、配列番号17、18、および19を含み、かつ、それぞれ、配列番号26,27、および28を含むCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む。
【請求項11】
前記抗原認識ドメインが、配列番号74~80の一つ以上に対する同一性が少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、配列番号74に対する同一性が少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項12】
前記CARが、膜貫通(TM)ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含み、場合によっては、前記CARがヒンジドメインおよび/または1個以上の共刺激ドメインを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項13】
前記CARが、CD28ヒンジドメイン、CD8αヒンジドメイン、IgGヒンジドメイン、およびIgDヒンジドメインからなる群から選択された1個以上のヒンジドメインを含み、好ましくは、前記CARがCD8αまたはCD28ヒンジドメインを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項14】
前記CARが、CD28膜貫通ドメイン、ICOS膜貫通ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、OX40膜貫通ドメイン、4-1BB 膜貫通ドメイン、およびCD3ゼータ膜貫通ドメインからなる群から選択された1個以上の膜貫通ドメインを含み、好ましくは、前記CARがCD28膜貫通ドメインを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項15】
前記CARが、CD28シグナル伝達ドメイン、ICOSシグナル伝達ドメイン、OX40シグナル伝達ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメイン、CD27シグナル伝達、またはTNFRSF25シグナル伝達ドメインからなる群から選択された1個以上の共刺激ドメインを含み、好ましくは、前記CARがCD28シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項16】
前記CARが、CD3ゼータシグナル伝達ドメインまたはその相同体のいずれか、CD3ポリペプチド、sykファミリーチロシンキナーゼ、srcファミリーチロシンキナーゼ、CD2、CD5、およびCD8からなる群から選択された1個以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含み、好ましくは、前記CARがCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項17】
前記CARが、CD8αまたはCD28ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項18】
前記CARが、自己切断(self-cleaving)ドメインまたは切断(cleavage)ドメインによって連結されたシグナルペプチドおよび/またはレポーターペプチドを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項19】
前記CARが、配列番号149~152または167~169の一つ以上に対する同一性が少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~18のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項20】
前記CARが、STAT5関連モチーフと、JAK1および/またはJAK2結合モチーフとを含むエンドドメインを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項21】
前記エンドドメインがJAK3結合モチーフを含む、請求項20に記載の改変されたTreg。
【請求項22】
前記エンドドメインがSTAT3関連モチーフを含まない、請求項20または21に記載の改変されたTreg。
【請求項23】
前記エンドドメインがアミノ酸配列YXXQ(配列番号133)を含まない、請求項20または21に記載の改変されたTreg。
【請求項24】
前記CARが、STAT5関連モチーフ、JAK1結合モチーフ、および/またはJAK2結合モチーフを含むエンドドメインを含まず、好ましくは前記エンドドメインがSTAT5関連モチーフを含まない請求項1~19のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項25】
前記Tregが、CD4
+CD25
+CD127
-T細胞、および/またはCD4
+CD25
+FOXP3
+T細胞である、請求項1~24のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項26】
前記Tregが、FOXP3ポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の改変されたTreg。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の改変されたTregを含む、医薬組成物。
【請求項28】
対象における肝臓移植組織に対する寛容の誘発に使用するための、または、対象における肝臓移植拒絶反応、肝臓移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫性肝疾患、または炎症性肝障害の治療および/または予防に使用するための、請求項1~26のいずれか一項に記載の改変されたTreg、または請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
対象における肝臓移植組織に対する寛容を誘発する、または、対象における肝臓移植拒絶反応、肝臓移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫性肝疾患、または炎症性肝障害を治療および/または予防する方法であって、前記方法は、請求項1~26のいずれか一項に記載の改変されたTreg、または請求項27に記載の医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項30】
請求項28に記載の自己免疫性肝疾患の治療および/または予防に使用するための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは、請求項29に記載の自己免疫性肝疾患を治療および/または予防する方法であって、前記自己免疫性肝疾患が原発性胆汁性胆管炎および/または原発性硬化性胆管炎である、改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは方法。
【請求項31】
請求項28に記載の肝臓炎症性障害の治療および/または予防に使用するための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは、請求項29に記載の肝臓炎症性障害を治療および/または予防する方法であって、前記肝臓炎症性障害が、肝硬変、急性肝不全、または急性憎悪した慢性肝不全であり、および/または前記肝臓の炎症がアルコール、ウイルス性肝炎、脂肪性肝炎、虚血、または薬物毒性によるものであるか、もしくは前記肝臓の炎症の原因が識別不能である、改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは方法。
【請求項32】
対象の肝臓組織の修復および/または再生に使用するための、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物であって、前記CARが肝臓特異的抗原認識ドメインを含む、改変されたTregまたは医薬組成物。
【請求項33】
対象における肝臓組織の修復および/または再生を促進する方法であって、前記方法は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む、方法。
【請求項34】
前記肝臓が、虚血、部分的肝切除、または炎症により負傷および/または損傷を受けている、請求項32に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記肝臓が、炎症により負傷および/または損傷を受けている、請求項34に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項34に記載の方法であって、前記炎症が、肝硬変、急性肝不全、または急性憎悪した慢性肝不全であり、および/または前記炎症がアルコール、ウイルス性肝炎、脂肪性肝炎、虚血、または薬物毒性によるものであるか、もしくは前記炎症の原因が識別不能である、改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは方法。
【請求項36】
前記対象が、肝臓の再生が弱まっており、好ましくは、その原因が急性肝不全、硬変、急性憎悪した慢性肝不全、肝炎、脂肪症、脂肪性肝炎、および加齢のうちの一つ以上である、請求項32、34、または35のいずれか一項に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、肝硬変、急性肝不全、または急性憎悪した慢性肝不全を有する、請求項32または34~36のいずれか一項に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗原認識ドメインが、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)、ナトリウム/タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)、マンノース-6-リン酸受容体、VI型コラーゲン受容体、PDGF受容体、スカベンジャー受容体クラスA、スカベンジャー受容体クラスBタイプI、へパラン硫酸、グリチルリチン受容体、HDL受容体、LDL受容体、トランスフェリン受容体、インシュリン受容体、アルファ2マクログロブリン受容体、フェリチン受容体、ウロプラスミノゲン受容体、およびトロンビン受容体からなる群から選択された1個以上の肝臓特異的抗原に、特異的に結合し、好ましくは前記抗原認識ドメインが、特異的にASGRに結合する、請求項32または34~37のいずれか一項に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
請求項32、34~38のいずれか一項に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項33~38のいずれか一項に記載の方法であって、前記改変されたTregが、請求項1~26のいずれか一項にしたがって定義される、改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは方法。
【請求項40】
対象の肝臓組織におけるアルブミン産生の増加または刺激に使用するための、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたTreg、または前記改変されたTregを含む医薬組成物であって、前記CARが、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む、改変されたTregまたは医薬組成物。
【請求項41】
対象の肝臓組織におけるアルブミン産生を増加させる、または刺激する方法であって、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたTreg、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARが、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む、方法。
【請求項42】
前記抗原認識ドメインが、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)、ナトリウム/タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)、マンノース-6-リン酸受容体、VI型コラーゲン受容体、PDGF受容体、スカベンジャー受容体クラスA、スカベンジャー受容体クラスBタイプI、へパラン硫酸、グリチルリチン受容体、HDL受容体、LDL受容体、トランスフェリン受容体、インシュリン受容体、アルファ2マクログロブリン受容体、フェリチン受容体、ウロプラスミノゲン受容体、およびトロンビン受容体からなる群から選択された1個以上の肝臓特異的抗原に、特異的に結合し、好ましくは前記抗原認識ドメインが、ASGRに特異的に結合する、請求項40に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項40または42に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項41または42に記載の方法であって、前記改変されたTregが、請求項1~26のいずれか一項にしたがって定義される、改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは方法。
【請求項44】
請求項29~31または33~39または41~43のいずれか一項に記載の方法であって、
(i)対象由来のTreg富化サンプルを単離する、または得る工程と、
(ii)前記Treg細胞に、ポリヌクレオチド、核酸、または前記CARをコ ードするベクターを形質導入または遺伝子導入し、改変されたTreg細胞を得る 工程と、
(iii)前記対象に、前記改変されたTreg細胞を投与する工程とを含む、 方法。
【請求項45】
前記対象が、哺乳動物であり、好ましくはヒトである、請求項28、30~32、または34~40、または42~43のいずれか一項に記載の使用のための改変されたTregまたは医薬組成物、もしくは請求項29~31、または33~39、または41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に特異的に結合する抗原認識ドメインを含み、CD3ゼータシグナル伝達ドメインをさらに含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項47】
STAT5関連モチーフと、JAK1および/またはJAK2結合モチーフとを含むエンドドメインを含む、請求項46に記載のCAR。
【請求項48】
前記エンドドメインが、JAK3結合モチーフを含む、請求項47に記載のCAR。
【請求項49】
前記エンドドメインが、STAT3関連モチーフを含まない、請求項47または48に記載のCAR。
【請求項50】
前記エンドドメインが、アミノ酸配列YXXQ(配列番号133)を含まない、請求項47または48に記載のCAR。
【請求項51】
配列番号149~152または167~169の一つ以上に対する同一性が少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、請求項46に記載のCAR。
【請求項52】
アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に特異的に結合する抗原認識ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記抗原認識ドメインが、請求項10で定義されたCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含み、好ましくは、前記CARが請求項46~51のいずれか一項で定義されたCARである、CAR。
【請求項53】
請求項46~52のいずれか一項に記載のCARをコードする、ポリヌクレオチド、核酸、またはベクター。
【請求項54】
FOXP3ポリペプチドをさらにコードする、請求項53に記載のポリヌクレオチド、核酸、またはベクター。
【請求項55】
請求項1~26のいずれか一項に記載の改変されたTregを作製する方法であって、
(i)対象から細胞含有サンプルを単離する、または細胞含有サンプルを得る工程、および
(ii)前記細胞含有サンプルに、CARをコードするポリヌクレオチド、核酸、またはベクターを形質導入または遺伝子導入し、改変された細胞の集団を提供する工程を含み、
前記細胞含有サンプルがTregを含み、および/または、前記工程(ii)の前または後に、Tregが富化される、および/または、前記細胞含有サンプルから生成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変された制御性T細胞に関し、また、肝臓の免疫介在性の損傷において、かかる細胞を治療目的で使用することに関する。特に、当該発明は、肝臓の細胞を認識することができ、移植拒絶反応または免疫介在性の損傷を治療および/または予防することができ、肝臓の細胞の再生を促進することができる、改変された制御性T細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、体の他の臓器のほぼすべてを支援する、生命の維持に必要な臓器である。その位置が戦略的であり機能が重要であることから、肝臓は、疾患、特に免疫介在性の損傷を受けやすい。世界的には、肝疾患による死亡は、毎年約200万件あり、そのうち100万件は硬変の合併症によるものであり、100万件はウイルス性肝炎と肝細胞癌によるものである。現在、世界的に見て、肝硬変は11番目に多い死因である。肝硬変は、障害調整生命年(disability-adjusted life years)と早死にすることによって失われた年数(years of life lost)の原因の上位20に入り、それぞれ、世界全体での負担の1.6%と2.1%を占めている(Asrani, S.K., et al., 2018. Journal of hepatology, 70, pp. 151-171)。
【0003】
原発性胆汁性胆管炎および原発性硬化性胆管炎など、よくある自己免疫性肝疾患は、肝臓を損傷し、硬変を起こす。原発性胆汁性胆管炎における疾病の負担は、よく、生活の質の低下、健康状態の悪化、および倦怠、かゆみ、鬱病などの重大な症状として現れる。原発性硬化性胆管炎は、胆管細胞癌、胆嚢癌、大腸癌の危険因子であり、若年死亡率を上げる一因となりうる。原発性硬化性胆管炎を有する患者は、母集団と比較して、死亡のリスクが4倍になり、特に胆管細胞癌を発症するリスクが398倍になる(Asrani, S.K., et al., 2018. Journal of hepatology, 70, pp. 151-171)。
【0004】
硬変もまた、ウイルス性肝炎または脂肪性肝炎などの、炎症性肝障害によって起こる。2010年、ウイルス性肝炎による死亡は、一年で30万件になり、1990年から46%増加した。ウイルス性肝炎は、10番目に多い死因であったが(1990年)、増加して2013年には7番目に多い死因となった。2015年、ウイルス性肝炎に関連した疾患による死亡が134万件になり、この数は、結核による死亡数(137万件)と同等であり、HIVによる死亡数(106万件)やマラリアによる死亡数(44万件)を上回った(Asrani, S.K., et al., 2018. Journal of hepatology, 70, pp. 151-171)。
【0005】
また、移植寛容および生存は、肝臓移植中の重要な問題である。免疫抑制療法に基づいてタクロリムスを使用している肝臓移植レシピエントの15~25%に、急性細胞拒絶反応が起こり、一般的にはステロイドの使用により改善する。急性拒絶反応は通常は治療に対してよく応答するが、慢性拒絶反応は困難な状況を呈し、患者のうちのかなりの部分が、免疫抑制を増加しても応答しない。慢性拒絶反応は、再移植をすることになったり、死亡したりすることがよくある(Choudhary, N.S., et al., 2017. Journal of clinical and experimental hepatology, 7(4), pp.358-366)。5年死亡率は、原発性胆汁性胆管炎に対して肝臓移植が行われた患者で最低である。繰り返しうる疾患としては、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、および原発性硬化性胆管炎などがある(Hirschfield, G.M., et al., 2009. BMJ, 338, p.b1670)。
【0006】
肝臓移植もまた、移植片対宿主病によって起こる免疫介在性の損傷を起こしうる。移植片対宿主病は、0.1%~2%で発生すると報告されており、死亡率は75%よりも大きい(Akbulut, S., et al., 2012. World journal of gastroenterology, 18(37), p.5240)。
【0007】
肝臓は、独特な再生能力を有し、これが免疫介在性の損傷を寛解させる一助となりうる。しかしながら、慢性的な免疫介在性の損傷という状況では、肝臓の細胞は老化し、その再生能力が落ち、このため肝不全の発症に寄与し、患者の罹患および死亡を増大させる(Aravinthan, A.D. and Alexander, G.J., 2016. Journal of hepatology, 65(4), pp.825-834)。さらに、免疫介在性の損傷に応じた肝臓の再生は、悪影響を及ぼしかねず、硬変や肝癌に至る可能性がある(Michalopoulos, G.K., 2017. Hepatology, 65(4), pp.1384-1392)。
【0008】
したがって、免疫介在性の損傷を治療および/または予防することができ、肝臓の再生を促進することができる療法が、肝疾患の治療に大きな可能性を有するだろう。そのため、免疫介在性の損傷を治療および/または予防することができ、肝臓の再生を促進することができる療法が求められている。
【発明の概要】
【0009】
第一態様において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された制御性T細胞(Treg)を提供し、前記CARはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に特異的に結合する抗原認識ドメインを含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記CARは、STAT5関連モチーフと、JAK1および/またはJAK2結合モチーフとを含むエンドドメインを含む。いくつかの別の実施形態において、前記エンドドメインは、JAK3結合モチーフを含み、および/またはSTAT3関連モチーフを含まない。
【0011】
好適には、前記CARエンドドメインは、アミノ酸配列YXXQ(配列番号133)を含まない。好適には、前記CARエンドドメインのIL2Rβ部分は、アミノ酸配列YXXQ(配列番号133)を含まない。
【0012】
STAT5シグナリングを備えた、本発明の改変されたTregは、対象のT細胞母集団(general T cell population)と比較して抗原を認識した後に、前記改変されたCAR-Tregに生存有意性を提供することにおいて、特に効果があればよい。特に、免疫抑制剤を使用するとIL-2の獲得を低減する状況、たとえば移植などの状況で、前記CAR-TregのSTAT5シグナルリングは、それが無ければ不利な微小環境において、本発明のTregに対するさらなる生存と機能の効果を提供する。
【0013】
他の態様において、本発明は、本発明に係る改変されたTregを含む医薬組成物を提供する。
【0014】
他の態様において、本発明は、対象における肝臓移植組織に対する寛容の誘発に使用するための、または、対象における肝臓移植拒絶反応、肝臓移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫性肝疾患、または炎症性肝障害の治療および/または予防に使用するための、本発明に係る改変されたTregまたは医薬組成物を提供する。
他の態様において、本発明は、対象における肝臓移植組織に対する寛容を誘発する方法、または、対象における肝臓移植拒絶反応、肝臓移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫性肝疾患、または炎症性肝障害を治療および/または予防する方法であって、前記方法は、本発明に係る改変されたTregまたは医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む方法を、提供する。
【0015】
他の態様において、本発明は、対象の肝臓移植組織に対する寛容を誘発するための薬品を製造するために、または対象における肝臓移植拒絶反応、肝臓移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫性肝疾患、または炎症性肝障害を治療および/または予防する薬品を製造するために、本発明に係る改変されたTregを使用することに関する。
他の態様において、本発明は、対象の肝臓組織の修復および/または再生に使用するための、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を提供し、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0016】
他の態様において、本発明は、対象における肝臓組織の修復および/または再生を促進する方法であって、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を、対象に投与する工程を含む方法を提供し、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0017】
他の態様において、本発明は、対象の肝臓組織の修復および/または再生を促進するための薬品の製造における、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたTregの使用を提供し、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0018】
他の態様において、本発明は、対象における肝硬変、急性肝不全、急性憎悪した慢性肝不全の治療および/または予防に使用するための、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を提供し、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0019】
他の態様において、本発明は、対象における肝硬変、急性肝不全、急性憎悪した慢性肝不全を治療および/または予防する方法を提供し、前記方法は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を、前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0020】
他の態様において、本発明は、対象における肝硬変、急性肝不全、急性憎悪した慢性肝不全を治療および/または予防するための薬品の製造における、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたTregの使用を提供し、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0021】
本発明はまた、キメラ抗原受容体(CAR)を提供し、前記CARはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に特異的に結合する抗原認識ドメインを含み、さらにCD3ゼータシグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記CARは、STAT5関連モチーフと、JAK1および/またはJAK2結合モチーフとを含むエンドドメインを含む。いくつかの別の実施形態において、前記エンドドメインは、JAK3結合モチーフを含み、および/またはSTAT3関連モチーフを含まない。このように、一実施形態において、本発明はCARを提供し、前記CARは抗原認識ドメインを含み、前記抗原認識ドメインは、ASGRに特異的に結合し、STAT5関連モチーフと、JAK1および/またはJAK2結合モチーフとを含み、好ましくはJAK3結合モチーフを含むがSTAT3関連モチーフを含まない。
【0022】
本発明はまた、本発明のCARをコードする、ポリヌクレオチド、核酸、またはベクターを提供する。
【0023】
本発明はさらに、本発明に係る改変されたTregを作製する方法を提供し、前記方法は、
(i)対象から細胞含有サンプルを単離し、または細胞含有サンプルを得る工程 ;および
(ii)前記細胞含有サンプルに対して、ポリヌクレオチド、核酸、またはCA Rをコードするベクターを形質導入または遺伝子導入して、改変された細胞の集団 を得る工程を含み、
前記細胞含有サンプルがTregを含み、および/または、前記工程(ii)の前または後に、Tregを富化する、および/または、Tregを前記細胞含有サンプルから生成する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1-抗ASGR1 CARコンストラクトの設計例抗ASGR1 CARコンストラクトの例の概略図。(A)ASGR1 VH抗原認識ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28TM、CD28シグナル伝達ドメイン、CD3zシグナル伝達ドメイン、P2A切断ドメイン、およびeGFPを含む、抗ASGR1 CARコンストラクト。(B)ASGR1 VH抗原認識ドメイン、CD28ヒンジドメイン、CD28TM、CD28シグナル伝達ドメイン、CD3zシグナル伝達ドメイン、P2A切断ドメイン、およびeGFPを含む、抗ASGR1 CARコンストラクトの例の概略図。
【
図2】
図2-抗ASGR1 CAR-Tregの生成FACS解析による、抗ASGR1 CAR-Tregの生成を示すヒストグラム。(A)形質導入されていないTreg。(B)形質導入されたTreg。CD4+CD25hiCD127細胞を単離し、抗CD3/CD28ビーズで活性化した。活性化の2日後、TregにASGR1-CARとGFPレポーター遺伝子とを含むレンチウイルスを形質導入した。形質導入されたTregと形質導入されていないTregとを10日間培養し、GFPを測定して形質導入の効果を調べた。
【
図3】
図3-HepG2細胞株におけるASGR1の発現の確認FACS解析による、K562細胞およびHepG2細胞でのASGR1レベルを示す、ヒストグラム。(A)K562細胞(B)HepG2細胞
【
図4A】
図4-抗ASGR1 CAR-Tregの抗原特異性の評価(i)培地のみ、(ii)HepG2細胞、および(iii)抗CD3/CD28ビーズを使用した培養に応じた、CD69の発現を示す、FACS解析によるヒストグラム。(A)形質導入されたTreg(GFP
+)。(B)形質導入されたTreg(GFP
-)。(C)形質導入されていないTreg(GFP
-)。培地のみの存在下では、CD69の上方制御は観察されない。HepG2細胞を使用した培養に続き、GFP
+の形質導入されたTreg(ただし、GPF-ネガティブの形質導入された細胞や、形質導入されていない細胞ではない)のみがCD69を上方制御する。これに対して、非特異的な抗CD3/CD28ビーズの刺激で培養された場合、すべての細胞がCD69を上方制御した。
【
図4B】(B)形質導入されたTreg(GFP
-)。
【
図4C】(C)形質導入されていないTreg(GFP
-)。
【
図5】
図5-抗ASGR1 CAR-Treg(1:1 Treg:Teff)の抗原特異性抑制機能の評価FACS解析による、活性化エフェクターCD4+CD25-T細胞の増殖を示す、ヒストグラム。増殖色素で染色し、抗CD3/CD28ビーズで予備活性化させたエフェクターT細胞について、その増殖能力に対する抗ASGR1 CAR-Tregの影響を、抑制アッセイにより示す。抗ASGR1 CAR Tregは、HepG2刺激に応じて、通常T細胞の増殖を効果的に抑制できた。
【
図6】
図6-抗ASGR1 CAR-Treg(1:1、1:2 および 1:5 Treg:Teff)の抗原特異性抑制機能の評価Treg:Teff比が1:1、1:2および1:5のものについての、抑制アッセイの結果。増殖色素で染色し、抗CD3/CD28ビーズで予備活性化させたエフェクターT細胞について、その増殖能力に対する抗ASGR1 CAR-Tregの影響を、抑制アッセイにより示す。抗ASGR1 CAR Tregは、HepG2刺激に応じて、通常T細胞の増殖を効果的に、形質導入されていないTregよりも低い比率で、抑制できた。
【
図7】
図7-抗HLA.A2 IL2R CARコンストラクトの設計例IL2Rエンドドメインの様々な組み合わせを含む抗HLA.A2 CARコンストラクトの例の概略図。(A)dCARコンストラクト:HLA.A2scFv抗原認識ドメイン;CD28ヒンジドメイン;CD28TMおよびeGFP。(B)CD28zコンストラクト:HLA.A2scFv抗原認識ドメイン;CD28ヒンジドメイン;CD28TM;CD28シグナル伝達ドメイン;CD3zシグナル伝達ドメインおよびeGFP。(C)IL2Rコンストラクト1:HLA.A2scFv抗原認識ドメイン;CD28ヒンジドメイン;CD28TM;CD28シグナル伝達ドメイン;切断型(truncated)IL2RBエンドドメイン;CD3zシグナル伝達ドメインおよびeGFP。(D)IL2Rコンストラクト1:HLA.A2scFv抗原認識ドメイン;CD28ヒンジドメイン;CD28TM;CD28シグナル伝達ドメイン;切断型IL2RG;切断型IL2RBエンドドメイン;CD3zシグナル伝達ドメインおよびeGFP。(E)IL2Rコンストラクト1:HLA.A2scFv抗原認識ドメイン;CD28ヒンジドメイン;CD28TM;CD28シグナリングドメイン;切断型IL2RBエンドドメイン;CD3zシグナル伝達ドメイン;FP2A切断ドメイン(cleavage domain)およびeGFP。
【
図8】
図8-抗HLA.A2 IL2R CAR-Tregの生成抗HLA.A2IL2RCAR-Tregの生成および増殖を示す概略図。(A)単離されたCD4+CD25hiCD127low細胞を、単離し抗CD3/CD28ビーズで活性化した。活性化の3日後、Tregを、HLA.A2-CARとGFPレポーター遺伝子とを含むレンチウイルスで形質導入した。新鮮な培地と1000 IU/ml IL-2を2日毎に加えた。形質導入されたTregと形質導入されていないTregとを10日間培養し、GFPを測定して形質導入の効果を調べた。Tregを、新鮮な抗CD3/CD28ビーズを使用してさらに増殖させた。(B)形質導入されていないTregまたは様々なCARコンストラクトで形質導入したTregの、活性化後10日目での倍率変化(fold change)増殖。
【
図9】
図9-抗HLA.A2 IL2Rコンストラクトの形質導入の効果の経時的定量化CARコンストラクトが形質導入されていないTregと、CARコンストラクトを形質導入したTregとについて、GFP発現を、細胞活性化後の異なる時点で解析した。(A)形質導入後7日のHLA-A2 IL2R CAR TregからのGFP発現の典型的な等高線プロット(contour plot)。(B)形質導入後7日の生存CD4+細胞中のGFP
+ CAR Tregの定量化(C)HLA-A2 IL2R CAR TregからのGFP発現の経時的定量化。
【
図10】
図10-形質導入されたTreg上での抗HLA.A2 IL2R CARコンストラクトの細胞表面発現の定量化形質導入されていないTregでの、および形質導入されたTregでの、CARコンストラクトの膜発現を、PEコンジュゲートHLA-A*0201/CINGVCWTVデキストラマー(Immudex、デンマーク、コペンハーゲン)によって解析した。(A)形質導入後7日のGFP+Dextramer+CAR Tregの典型的な等高線プロット。(B)形質導入後7日のGFP+Treg中のDextramer+細胞の定量化。
【
図11】
図11-ポリクローナル細胞増殖後のCAR Tregの表現型の特性評価抗CD3/CD28活性化ビーズおよびIL-2の存在下で15日間、Tregを培養し増殖させた。Treg関連マーカーFOXP3、HELIOS、CTLA4、およびTIGITを、形質導入されていないTreg上と、形質導入されたTreg上とでFACSにより解析し、培養15日目の表現型の系統安定性を調査した。
【
図12A】
図12-抗HLA.A2IL2RCAR Tregの抗原特異性の評価形質導入されていないTregと、形質導入されたTregとを、異なる刺激の存在下で18時間培養した。CD69とCD137活性化マーカーを解析し、特異的な細胞活性化と非特異的な細胞活性化とを調べた。(A)HLA.A1またはHLA.A2分子を形質導入したK562細胞との培養に応じたCD69の発現を示す典型的な等高線プロット。形質導入されたTregを選択するためにGFPシグナルを使用した。
【
図12B】(B)培地のみでの培養(刺激無し)、抗CD3/CD28ビーズを用いた培養(非特異的刺激)、K562-HLA.A1細胞およびK562-HLA.A2細胞を用いた培養の18時間後、TregでのCD69とCD137の発現の定量化。
【
図12C】(C)HLA.A1細胞株およびHLA.A2B細胞株と18時間培養した後のTregでのCD69の発現を示す典型的なヒストグラム。異なる細胞対細胞比を使用した。異なる細胞対細胞比を使用した。
【
図13】
図13-IL2R CARシグナリングの指標としてのSTAT5リン酸化解析形質導入されたCAR Tregを、IL2を含まない培地に一晩置いた。培地のみでの培養、1000 IU/ml IL-2での培養、HLA.A2-Ig系人工APC(DOI:10.3791/2801に記載のプロトコルに従い作製)の存在下での培養の10分後および120分後、FACS解析によりTregのSTAT5リン酸化を調べた。(A)培地のみの培養、1:1比率のHLA.A2ビーズとの培養、1000IU/ml IL-2での培養の10分後の形質導入されたCAR-TregでのGFPおよびphosphoSTAT5の発現を示す典型的な等高線プロット。1:1比率のHLA.A2ビーズとともに、または培地のみ(刺激無し)で、120分間培養したTregのSTAT5のリン酸化を示すヒストグラム。
【
図14】
図14-(i)配列番号11、12、および13をそれぞれ、またはそれらの誘導体IL-2の非存在下での非特異的活性化およびHLA.A2特異的活性化後のTreg生存の評価異なるコンストラクトのCAR形質導入Tregを、抗CD3/28活性化ビーズおよびK562.A2発現細胞と、IL-2の非存在下で培養した。FACS解析により活性化の7日後に細胞の生存を調べた。(A)IL-2を用いない活性化後7日目の生存率色素染色に基づくGFP+細胞の細胞生存率を示すCAR-Tregsの典型的なヒストグラム。(B)IL-2の非存在下で抗CD3/28ビーズおよびK562-HLA.A2細胞との7日間の培養後にGFP+Tregに生存している細胞の率(*p<0.05、Tukey’s post hoc correctionを使用したANOVA分析)。
【
図15】
図15-Treg抑制能試験:B細胞に対する共刺激分子の調節(modulation)の解析によるTregの免疫調節機能の評価Tregとの共培養後の、B細胞のCD80およびCD86発現を解析し、抗原提示細胞での共刺激分子の発現を低減するTregの能力を評価した。一定数の生きているA2発現B細胞(20K/well)を、滴定による数のTreg製品(A2ネガティブドナー)(200、100、50、25、12.5K)と一晩共培養した。B細胞でのCD86およびCD80共刺激マーカーのFACS解析。
【
図16】
図16-初代培養肝細胞によるインビトロでのアルブミン産生について、予備活性化され形質導入されていないTregの効果の評価初代培養肝細胞を、単独で、または、事前に活性化させた制御性T細胞の存在下で、7日間培養した。制御性T細胞を添加した結果、改善されたアルブミンの分泌物が上清の中に検出できた。活性化させた制御性T細胞を含む培養物から得られた馴化培地の存在下で、かつ制御性T細胞の非存在下で、肝細胞を培養すると、同様の効果が見られた。予備活性化され形質導入されていないTregを添加することにより、インビトロでの初代培養肝細胞によるアルブミンの産生が増加することを、この図は示している。
【
図17】
図17-初代培養肝細胞によるインビトロでのアルブミン産生について、予備活性化され形質導入されていないTregとエフェクターT細胞との効果の評価初代培養肝細胞を、単独で、または、事前に活性化させた制御性T細胞の存在下で、予備活性化エフェクターT細胞の存在下で、または両方の存在下で、3日間培養した。制御性T細胞を添加した結果、改善されたアルブミンの分泌物が上清の中に検出できた。肝細胞をエフェクターT細胞とともに培養すると、これは見られず、アルブミンレベルが低下する傾向があった。制御性T細胞を予備活性化エフェクターT細胞と組み合わせても、アルブミンレベルについての制御性T細胞の有利な効果が見られた。予備活性化され形質導入されていないTregを添加し、エフェクターT細胞を添加しないことにより、インビトロでの初代培養肝細胞によるアルブミンの産生が増加することを、この図は示している。
【
図18】
図18-初代培養肝細胞によるインビトロでのアルブミン産生について、抗ASGPR CAR Tregの効果の評価初代培養肝細胞を、単独で、または、休眠状態の未処理の制御性T細胞の存在下で、または抗ASGPR CARを発現するようにレンチウイルス形質導入した休眠中の制御性T細胞の存在下で培養した。抗ASGPRを持ち、したがって肝細胞が発現したASGPRに応じて抗原特異的活性化を行うことができるTregのみが、前記上清のアルブミンレベルに大きな影響を及ぼした。予備活性化され、抗ASGPR CARを発現しているTregを添加することにより、インビトロでの初代培養肝細胞によるアルブミンの産生が増加し、形質導入していないTregを使用する場合に到達するレベルを超えることを、この図は示している。
【0025】
詳細な説明
本発明は、CARを含む改変されたTregを提供するが、当該CARは、それが肝臓特異的抗原(たとえばASGR)に対して結合する時にのみ、アクチベーターシグナルをTregへ提供し、したがって、特に肝臓の微小環境において、前記改変されたTregの貯留、機能、および生存を向上する。本発明の前記改変されたTregは、肝臓特異的抗原(たとえばASGR)へ結合すると、肝臓の再生および組織修復を増加または改善する。
【0026】
本発明の様々な好ましい特徴および実施形態を、非制限的な例示により説明する。
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈において明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本明細書における「comprising」、「comprises」および「comprised of」という用語は、「including」、「includes」、または「containing」、「contains」の同義語で、包括的または非限定的であり、記載されていない付加の部材や素子、方法の工程を除外するものではない。「comprising」、「comprises」および「comprised of」という用語はまた、「consisting of」という用語も含む。
【0027】
本明細書で論じられる出版物は、本願の出願日の前の開示を単に提供する。本明細書のいずれの記載も、かかる出版物が添付の特許請求の範囲に対する先行技術を構成していると認めるものとして解釈されはしない。
【0028】
この開示は、本明細書に開示する前記例示の方法や材料によって制限されず、本明細書に記載された方法や材料と類似の、または等価の方法や材料を、この開示の実施形態の実施や試験に使用できる。数の範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に断らない限り、核酸は左から右へ、5’から3’の方向に、アミノ酸配列は左から右へ、アミノからカルボキシの方向にそれぞれ書く。
【0029】
改変された制御性T細胞(Treg)
制御性T細胞(Treg)は、細胞変性免疫応答を制御し、免疫寛容の維持に必須である、抑制機能を有する免疫細胞である。
【0030】
本明細書において、Tregという用語は、免疫抑制機能を有するT細胞のことである。好適には、「免疫抑制機能」とは、病原体や、抗原、たとえば同種抗原、または自己抗原等の刺激に応答する免疫系によって促進される生理的な細胞の現象が多数ある内の一つ以上を低減または阻害するTregの能力をいうものであってもよい。かかる現象の例には、通常T細胞(Tconv)の増殖、および炎症促進性サイトカインの分泌などがある。かかる現象はいずれも、免疫応答の強さの指標として使用してもよい。Tregの存在下でTconvによる免疫応答が相対的に弱いことは、Tregの免疫応答を抑制する能力を示すといえる。たとえば、サイトカインの分泌が相対的に低下することは、免疫応答の弱まりを示し、したがって、Tregの免疫応答を抑制する能力を示すといえる。Tregは、B細胞、樹状細胞およびマクロファージなど抗原提示細胞(APC)上の共刺激分子の発現を調節することにより、免疫応答を抑制することもできる。CD80およびCD86の発現レベルは、共培養後のインビトロでの活性化されたTregの抑制能を調査するために使用できる。
【0031】
免疫応答の強度の指標を測定し、それによってTregの抑制能を測定するためのアッセイが、当該技術分野で周知である。特に、抗原特異的なTconv細胞は、Tregと共培養してもよく、対応する抗原のペプチドを前記共培養に加えてTconv細胞からの応答を刺激してもよい。Tconv細胞の増殖の度合い、および/または前記ペプチドの追加に応答してTconv細胞が分泌したサイトカインIL-2の量を、共培養したTregの抑制能の指標として使用してもよい。
【0032】
本発明のTregと共培養された抗原特異的なTconv細胞の増殖は、本発明のTregの非存在下で培養された同じTconv細胞の増殖と比較して、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、90%、95%、または99%少なくてもよい。
【0033】
本発明のTregと共培養された抗原特異的なTconv細胞は、本発明のTregの非存在下で培養された対応するTconv細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%少ないエフェクターサイトカインを発現してもよい。
【0034】
エフェクターサイトカインは、IL-2、IL-17、TNFα、GM-CSF、IFN-γ、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、およびIL-13から選択されてもよい。
【0035】
好適には、エフェクターサイトカインは、IL-2、IL-17、TNFα、GM-CSF、およびIFN-γから選択されてもよい。
【0036】
好適には、Tregは、マーカーCD4、CD25、およびFOXP3(CD4+CD25+FOXP3+)を発現するT細胞である。「FOXP3」は、フォークヘッドボックスP3タンパク質の略称である。FOXP3は、転写因子のFOXタンパク質ファミリーのメンバーであり、制御性T細胞の発生(development)と機能において調節経路のマスターレギュレーターとして機能する。
【0037】
マーカーレベルは、当業者に周知のいずれかの方法によって、たとえばフローサイトメトリーによって、決定されてもよい。Tregsはまた、CTLA-4(細胞障害性Tリンパ球関連分子4)および/またはGITR(グルココルチコイド誘導TNF受容体)を発現する。Treg細胞は末梢血、リンパ節、および組織に存在する。
【0038】
好適には、低レベルで発現した表面タンパク質CD127の非存在下で、またはそれとの組み合せで、細胞表面マーカーCD4およびCD25とを使用することにより(CD4+CD25+CD127-、またはCD4+CD25+CD127low、またはCD4+CD25hiCD127-、またはCD4+CD25hiCD127low)、Tregを同定してもよい。かかるマーカーをTregの同定のために使用することは、当該技術分野において周知であり、たとえばLiuら(JEM; 2006; 203; 7(10); 1701-1711)が記載している。
【0039】
前記Tregは、CD4+CD25+FOXP3+T細胞、またはCD4+CD25hiFOXP3+T細胞であってもよい。
【0040】
前記Tregは、CD4+CD25+CD127-T細胞、またはCD4+CD25hiCD127-T細胞であってもよい。前記Tregは、CD4+CD25+FOXP3+CD127-T細胞、またはCD4+CD25hiFOXP3+CD127-T細胞であってもよい。
【0041】
前記TregはTreg特異的な脱メチル化領域(TSDR)を有してもよい。前記TSDRは、FOXP3の発現を調節する、重要なメチル化感受性のある素子である(Polansky, J.K., et al.,2008. European journal of immunology, 38(6), pp.1654-1663)。前記Tregは、天然Treg(natural Treg)または胸腺由来Treg(thymus-derived Treg)であってもよいし、適応性Treg(adaptive Treg)または末梢誘導Treg(peripherally-derived Treg)であってもよいし、またはインビトロ誘導Treg(in vitro-induced Treg)であってもよい(Abbas, A.K., et al., 2013. Nature immunology, 14(4), p.307-308)。好適には、前記Tregは、CD4+CD25+FOXP3+Helios+ニューロピリン1+であってもよい。さらに好適なTregの例としては、Tr1細胞(Foxp3を発現せず、IL-10を高産生する);CD8+FOXP3+T細胞;およびγδFOXP3+T細胞が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
好適には、前記Tregは、対象から得られた末梢血単核細胞(PBMC)から単離される。好適には、前記対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。好適には、前記Tregは、改変されたTregが投与される対象に適合(たとえば、HLA適合)しているか、または、対象自身のものである。好適には、前記改変されたTregが投与される対象は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。前記Tregは、患者本人の末梢血(第一者)から、またはドナー末梢血(第二者)由来の造血性幹細胞移植の環境において、または無関係のドナー(第三者)由来の末梢血からのいずれかで、エクスビボ(生体外)で生成されてもよい。好適には、前記Tregは、改変されたTregが投与される対象自身のものである。好ましい実施形態において、Tregは、対象から得られた末梢血単核細胞(PBMC)から単離されて適合(たとえば、HLA適合)しているか、または、改変されたTregが投与される対象自身のものである。好適には、前記Tregは、Tregの集団の一部である。好適には、Tregの集団は、Tregが少なくとも70%であり、たとえばTregが少なくとも75%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%である。かかる集団を、「富化されたTreg集団」、または「富化されたTregサンプル」と称してもよい。
【0043】
いくつかの態様で、Tregは、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞の、Tregへのエクスビボ分化から由来してもよい。本明細書において、「通常T細胞」またはTconは、αβT細胞受容体(TCR)と、分化抗原群4(CD4)または分化抗原群8(CD8)であってもよい共受容体とを発現し、免疫抑制機能をもたないTリンパ球細胞を意味する。通常T細胞は末梢血、リンパ節、および組織に存在する。好適には、ウイルスベクターを用いた形質導入や、同じまたは異なるベクター上でDNAまたはRNAを用いた遺伝子導入などの多数の手段のうちの一つによって、本明細書に記載のCARをコードするDNAまたはRNAに加えてFOXP3をコードするDNAまたはRNAを導入することにより、改変されたTregが生成されてもよい。または、前記改変されたTregは、IL-2およびTGF-βの存在下でCD4+CD25-FOXP3-細胞のインビトロ培養によってTconから生成されてもよい。
【0044】
前記Tregは、誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞の、Tregへのエクスビボ分化から由来してもよい。本発明のポリヌクレオチドまたはベクターは、Tregへの分化前または後に誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞へ導入してもよい。
【0045】
本明細書における「改変されたTreg」とは、Tregによって自然にコードされたわけではないポリヌクレオチド、特に、上述のCARを、含むかまたは発現するように修飾された(modified)Tregを意味する。Tregを改変する方法は、当該技術分野で周知であり、たとえば、Tregの遺伝子組み換え(genetic modification)があり、それは、たとえば、レトロウイルス形質導入またはレンチウイルス形質導入などの形質導入、リポフェクション法、ポリエチレングリコール法、リン酸カルシウム法およびエレクトロポレーション法などの遺伝子導入(DNAまたはRNAの一過性形質転換など)によるものであるが、これらに限定されるわけではない。核酸配列を細胞に導入するために、いずれかの好適な方法が使用されればよい。
【0046】
キメラ抗原受容体
本明細書における「キメラ抗原受容体」または「CAR」または「CARs」は、抗原特異性を細胞、この場合Treg、に付与する改変された受容体のことである。CARはまた、人工T細胞受容体、キメラT-細胞受容体、またはキメラ免疫受容体として知られている。本発明のCARは、肝臓抗原(たとえばASGR)に特異的な結合ドメインと、場合によってはヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、エンドドメイン(細胞内シグナル伝達ドメインと、場合によっては1個以上の共刺激ドメインとを含む)とを含む。典型的には、本発明のCARは、単一ポリペプチド鎖として発現または存在してもよく、たとえば、肝臓抗原(たとえばASGR)に特異的な結合ドメインと、場合によってはヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、エンドドメイン(細胞内シグナル伝達ドメインと、場合によっては1個以上の共刺激ドメインとを含む)とを含む単一ポリペプチド鎖として発現または存在してもよい。特に、典型的には、前記細胞内シグナル伝達ドメインと、場合によっては1個以上の共刺激ドメインとは、単一ポリペプチド鎖とともに存在してもよい。このように本発明のCARは2つ以上のポリペプチド鎖を含む、例えば、二重のポリペプチドまたはCARの系を含むことが可能であるが、特定の実施形態においては、本発明のCARは二重のCARではない。
【0047】
CARをコードするポリヌクレオチドを、たとえばレトロウイルスベクターを使用して、Tregへ導入してもよい。このように、多数の抗原特異的T細胞が、細胞の養子移入により生成されうる。CARが標的抗原と結合すると、その結果、CARが発現するTregに活性化シグナルが伝達される。このように、CARは、改変されたTregの特異性を、標的抗原を発現する細胞へ向ける。
【0048】
本発明のTregは、本発明のCARのうち1個以上の異なるものを含んでもよく、他のポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。
【0049】
抗原認識ドメイン
本発明のCARは、抗原認識ドメインを含む。本明細書における「抗原認識ドメイン」とは、CARの抗原結合能力を画定する、CARの細胞外部分のことである。本発明のある態様では、抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原に、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に結合する能力を、CARに提供する。このように、前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原を、好ましくはASGRを、標的とする。
【0050】
肝臓特異的抗原は、肝臓組織、たとえば肝細胞、実質細胞、クッパー細胞、星状細胞、および/または肝臓類洞内皮細胞に、優先的に発現するものである。好適には、肝臓特異的抗原は、肝臓組織(たとえば肝細胞、実質細胞、クッパー細胞、星状細胞、および肝臓類洞内皮細胞の少なくとも一つ)において、他の組織と比較して高い発現レベルを有する抗原である。たとえば、肝臓特異的抗原は、他の組織での発現レベルと比較して、少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%高い、少なくとも40%高い、少なくとも50%高い、少なくとも100%高い、少なくとも200%高い、少なくとも300%高い、少なくとも400%高い、少なくとも500%高い、または少なくとも1000%高い、発現レベルを有する抗原であってもよい。好ましくは、肝臓特異的抗原は、肝臓組織だけに発現するもの、すなわち、他の組織で検出可能に発現しないものである。
【0051】
前記肝臓特異的抗原は、Treg細胞にアクセス可能であるだろう(ただし、前記肝臓特異的抗原は、当該抗原を発現する肝臓細胞タイプのすべてにアクセス可能である必要はないだろうことを理解されたい)。たとえば、前記肝臓特異的抗原は、細胞表面に発現してもよい。好適な肝臓特異的抗原の例としては、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)、ナトリウム/タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)、マンノース-6-リン酸受容体、VI型コラーゲン受容体、PDGF受容体、スカベンジャー受容体クラスA、スカベンジャー受容体クラスBタイプI、へパラン硫酸、グリチルリチン受容体、HDL受容体、LDL受容体、トランスフェリン受容体、インシュリン受容体、アルファ2マクログロブリン受容体、フェリチン受容体、ウロプラスミノゲン受容体、およびトロンビン受容体がある。
【0052】
好ましくは、前記抗原認識ドメインは、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に特異的に結合する。最も好ましくは、前記抗原認識ドメインは、ヒトASGRに結合する。いくつかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、ヒトASGRと、他の動物由来のASGR、たとえばマウスASGRとの両方に結合する。好適には、前記抗原認識ドメインは、ヒトASGRに特異的に結合してもよい。
【0053】
アシアロ糖タンパク質受容体(ASGRまたはASGPR)は、C型レクチンであり、肝細胞の類洞面上に原発的に発現する。ASGRは、大きな48kDaサブユニット(ASGR1)と、小さな40kDaサブユニット(ASGR2)から形成される。ASGRの主な役割は、結合、内部移行、および、その後に末端ガラクトースまたはNアセチルガラクトースアミン残基(アシアロ糖タンパク質)を含む糖タンパク質を循環から除去することである(Roggenbuck, D., et al., 2012. Autoimmunity Highlights, 3(3), p.119)。通常の肝細胞では、ASGRは、プラズマ肝細胞膜の類洞面および基底面上に極性的に発現する。しかしながら肝臓の炎症の間は、ASGRの発現は、胆管側膜に向かって移行する。末期の肝疾患(硬変)では、ASGRは過剰発現し、アシアロ糖タンパク質の血清レベルが上昇する(Roggenbuck, D., et al., 2012. Autoimmunity Highlights, 3(3), p.119).
【0054】
抗原認識ドメインはASGR1および/またはASGR2、好ましくはASGR1に結合してもよい。抗原認識ドメインはASGR1および/またはASGR2、好ましくはASGR1に特異的に結合してもよい。
【0055】
ヒトASGR1(UniProt entry P07306)は、ASGR1遺伝子によりコードされる。この遺伝子について、多数のアイソフォームをコードするスプライシング翻訳物の変異体が観察されてきた(Harris, R.L., et al., 2012. Molecular biology international, 2012, Article ID 283974, 10 pages)。長い方の転写産物は、8個のエクソンをすべて含み、はるかに大きく、全長分のASGR1(アイソフォームa、291個のアミノ酸)をコードする。短い方の転写産物は、エクソン3のインフレーム欠失を有し、その結果39個の残基を欠失する(アイソフォームb、252個のアミノ酸)。アイソフォームbは、膜貫通ドメインが欠失しており、可溶性タンパク質として分泌される。ヒトASGR1アイソフォームaおよびbの配列例を以下に示す(それぞれ、配列番号1および2)。
【0056】
配列番号1-ヒトASGR1アイソフォームa(NP_001662.1)
MTKEYQDLQHLDNEESDHHQLRKGPPPPQPLLQRLCSGPRLLLLSLGLSLLLLVVVCVIGSQNSQLQEELRGLRETFSNFTASTEAQVKGLSTQGGNVGRKMKSLESQLEKQQKDLSEDHSSLLLHVKQFVSDLRSLSCQMAALQGNGSERTCCPVNWVEHERSCYWFSRSGKAWADADNYCRLEDAHLVVVTSWEEQKFVQHHIGPVNTWMGLHDQNGPWKWVDGTDYETGFKNWRPEQPDDWYGHGLGGGEDCAHFTDDGRWNDDVCQRPYRWVCETELDKASQEPPLL
配列番号2-ヒトASGR1アイソフォームb(NP_001184145.1)
MTKEYQDLQHLDNEESDHHQLRKDSQLQEELRGLRETFSNFTASTEAQVKGLSTQGGNVGRKMKSLESQLEKQQKDLSEDHSSLLLHVKQFVSDLRSLSCQMAALQGNGSERTCCPVNWVEHERSCYWFSRSGKAWADADNYCRLEDAHLVVVTSWEEQKFVQHHIGPVNTWMGLHDQNGPWKWVDGTDYETGFKNWRPEQPDDWYGHGLGGGEDCAHFTDDGRWNDDVCQRPYRWVCETELDKASQEPPLL
【0057】
前記抗原認識ドメインは、ヒトASGR1アイソフォームaおよび/またはヒトASGR1アイソフォームbに、好ましくはヒトASGR1アイソフォームaに、結合してもよく、好適には特異的に結合してもよい。前記抗原認識ドメインは、配列番号1および/または配列番号2に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である1個以上のポリペプチドに結合してもよく、好適には特異的に結合してもよい。好ましくは、前記抗原認識ドメインは、配列番号1に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるポリペプチドに結合し、好適には、それに特異的に結合してもよい。ヒトASGR2(UniProt entry P07307)は、ASGR2遺伝子によりコードされる。または、この遺伝子について、多数のアイソフォームをコードするスプライシング翻訳物の変異体が観察されてきた(Harris, R.L., et al., 2012. Molecular biology international, 2012, Article ID 283974, 10 pages)。ASGR2は、選択的エクソンスプライシング現象から生じた異なるインフレーム欠失を含む4つのアイソフォーム(a~d)をコードする5つの転写産物(TH2′、T1、T2、T3、およびT4)を生じさせる。アイソフォームa~cは、膜貫通ドメインと前記CRDとの間の結合の近くでタンパク質分解切断シグナルとして働く5個のアミノ酸を含む。アイソフォームbおよびdにはこのシグナルが無いので、タンパク質分解切断されず、膜結合のままであり、ASGR1アイソフォームaとオリゴマー形成して細胞表面で未変性のASGRを形成する。ASGR2アイソフォームa~dの配列例を以下に示す(それぞれ、配列番号3~6)。
【0058】
配列番号3-ヒトASGR2アイソフォームa(NP_001172.1およびNP_550434.1)
MAKDFQDIQQLSSEENDHPFHQGEGPGTRRLNPRRGNPFLKGPPPAQPLAQRLCSMVCFSLLALSFNILLLVVICVTGSQSEGHRGAQLQAELRSLKEAFSNFSSSTLTEVQAISTHGGSVGDKITSLGAKLEKQQQDLKADHDALLFHLKHFPVDLRFVACQMELLHSNGSQRTCCPVNWVEHQGSCYWFSHSGKAWAEAEKYCQLENAHLVVINSWEEQKFIVQHTNPFNTWIGLTDSDGSWKWVDGTDYRHNYKNWAVTQPDNWHGHELGGSEDCVEVQPDGRWNDDFCLQVYRWVCEKRRNATGEVA
配列番号4-ヒトASGR2アイソフォームb(NP_550435.1)
MAKDFQDIQQLSSEENDHPFHQGPPPAQPLAQRLCSMVCFSLLALSFNILLLVVICVTGSQSAQLQAELRSLKEAFSNFSSSTLTEVQAISTHGGSVGDKITSLGAKLEKQQQDLKADHDALLFHLKHFPVDLRFVACQMELLHSNGSQRTCCPVNWVEHQGSCYWFSHSGKAWAEAEKYCQLENAHLVVINSWEEQKFIVQHTNPFNTWIGLTDSDGSWKWVDGTDYRHNYKNWAVTQPDNWHGHELGGSEDCVEVQPDGRWNDDFCLQVYRWVCEKRRNATGEVA
配列番号5-ヒトASGR2アイソフォームc(NP_550436.1)
MAKDFQDIQQLSSEENDHPFHQGPPPAQPLAQRLCSMVCFSLLALSFNILLLVVICVTGSQSEGHRGAQLQAELRSLKEAFSNFSSSTLTEVQAISTHGGSVGDKITSLGAKLEKQQQDLKADHDALLFHLKHFPVDLRFVACQMELLHSNGSQRTCCPVNWVEHQGSCYWFSHSGKAWAEAEKYCQLENAHLVVINSWEEQKFIVQHTNPFNTWIGLTDSDGSWKWVDGTDYRHNYKNWAVTQPDNWHGHELGGSEDCVEVQPDGRWNDDFCLQVYRWVCEKRRNATGEVA
配列番号6-ヒトASGR2アイソフォームd(NP_001188281.1)
MAKDFQDIQQLSSEENDHPFHQGEGPGTRRLNPRRGNPFLKGPPPAQPLAQRLCSMVCFSLLALSFNILLLVVICVTGSQSAQLQAELRSLKEAFSNFSSSTLTEVQAISTHGGSVGDKITSLGAKLEKQQQDLKADHDALLFHLKHFPVDLRFVACQMELLHSNGSQRTCCPVNWVEHQGSCYWFSHSGKAWAEAEKYCQLENAHLVVINSWEEQKFIVQHTNPFNTWIGLTDSDGSWKWVDGTDYRHNYKNWAVTQPDNWHGHELGGSEDCVEVQPDGRWNDDFCLQVYRWVCEKRRNATGEVA
【0059】
前記抗原認識ドメインは、ヒトASGR2アイソフォームa、b、cおよび/またはdに、好ましくはヒトASGR2アイソフォームbおよび/またはdに、結合してもよく、好適には特異的に結合してもよい。前記抗原認識ドメインは、配列番号3~6の一つ以上に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である1個以上のポリペプチドに結合してもよく、好適には特異的に結合してもよい。好ましくは、前記抗原認識ドメインは、配列番号4に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%、もしくは配列番号6に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるポリペプチドに結合し、好適には、それに特異的に結合する。
【0060】
前記抗原認識ドメインは、(a)ヒトASGR1アイソフォームaおよびヒトASGR2アイソフォームbを含むヒトASGR、および/または、(b)ヒトASGR1アイソフォームaおよびヒトASGR2アイソフォームdを含むヒトASGRに、結合してもよく、好適には特異的に結合してもよい。抗原認識ドメインは、(a)(i)配列番号1に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である1個以上のポリペプチド、および(ii)配列番号4に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である1個以上のポリペプチド、および/または(b)(i)配列番号1に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である1個以上のポリペプチド、および(ii)配列番号6に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である1個以上のポリペプチドと結合してもよく、好適には特異的に適合してもよい。いくつかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、ヒトASGR1および/またはASGR2と、他の動物由来のASGR1および/またはASGR2、たとえばマウスASGR1および/またはマウスASGR2との、両方に結合する。このように、いくつかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、ヒトASGRとマウスASGRとの間の交差反応性を示す。たとえば、前記抗原認識ドメインがヒトASGR1アイソフォームaに結合するなら、いくつかの実施形態において、マウスASGR1アイソフォームaにも結合する。マウスASGR1アイソフォームaおよびbと、マウスASGR2アイソフォームaおよびbの例を以下に示す(配列番号7~10)。
【0061】
配列番号7-マウスASGR1アイソフォームa(NP_033844.1およびNP_001278060.1)
MTKDYQDFQHLDNDNDHHQLRRGPPPTPRLLQRLCSGSRLLLLSSSLSILLLVVVCVITSQNSQLREDLLALRQNFSNLTVSTEDQVKALSTQGSSVGRKMKLVESKLEKQQKDLTEDHSSLLLHVKQLVSDVRSLSCQMAAFRGNGSERTCCPINWVEYEGSCYWFSSSVRPWTEADKYCQLENAHLVVVTSRDEQNFLQRHMGPLNTWIGLTDQNGPWKWVDGTDYETGFQNWRPEQPDNWYGHGLGGGEDCAHFTTDGRWNDDVCRRPYRWVCETKLDKAN
配列番号8-マウスASGR1アイソフォームb(NP_001278061.1)
MTKDYQDFQHLDNDNDHHQLRRGPPPTPRLLQRLCSGSRLLLLSSSLSILLLVVVCVITSQNSQLREDLLALRQNFSNLTVSTEDQVKALSTQGSSVGRKMKLVESKLEKQQKDLTEGSERTCCPINWVEYEGSCYWFSSSVRPWTEADKYCQLENAHLVVVTSRDEQNFLQRHMGPLNTWIGLTDQNGPWKWVDGTDYETGFQNWRPEQPDNWYGHGLGGGEDCAHFTTDGRWNDDVCRRPYRWVCETKLDKAN
配列番号9-マウスASGR2アイソフォームa(NP_031519.1、NP_001300854.1、およびNP_001300855.1)
MEKDCQDIQQLDSEENDHQLSGDDEHGSHVQDPRIENPHWKGQPLSRPFPQRLCSTFRLSLLALAFNILLLVVICVVSSQSIQLQEEFRTLKETFSNFSSSTLMEFGALDTLGGSTNAILTSWLAQLEEKQQQLKADHSTLLFHLKHFPMDLRTLTCQLAYFQSNGTECCPVNWVEFGGSCYWFSRDGLTWAEADQYCQLENAHLLVINSREEQDFVVKHRSQFHIWIGLTDRDGSWKWVDGTDYRSNYRNWAFTQPDNWQGHEQGGGEDCAEILSDGHWNDNFCQQVNRWVCEKRRNITH
配列番号10-マウスASGR2アイソフォームb(NP_001300856.1)
MEFGALDTLGGSTNAILTSWLAQLEEKQQQLKADHSTLLFHLKHFPMDLRTLTCQLAYFQSNGTECCPVNWVEFGGSCYWFSRDGLTWAEADQYCQLENAHLLVINSREEQDFVVKHRSQFHIWIGLTDRDGSWKWVDGTDYRSNYRNWAFTQPDNWQGHEQGGGEDCAEILSDGHWNDNFCQQVNRWVCEKRRNITH
【0062】
前記抗原認識ドメインは、マウスASGR1アイソフォームa、マウスASGR1アイソフォームb、マウスASGR2アイソフォームa、および/またはマウスASGR2アイソフォームbに特異的に結合してもよく、好適にはマウスASGR1アイソフォームaに特異的に結合してもよい。前記抗原認識ドメインは、前記同等のヒトタンパク質と結合してもよく、好適には特異的に適合してもよい。前記抗原認識ドメインは、配列番号7~10の一つ以上に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である1個以上のポリペプチドに結合してもよく、好適には特異的に結合してもよい。好ましくは、前記抗原認識ドメインは、配列番号1に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%、および配列番号7に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるポリペプチドに結合し、好適には、それに特異的に結合する。
【0063】
前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原内の、たとえばASGR内の、1個以上の領域またはエピトープと結合してもよく、好適には、特異的に適合してもよい。エピトープは抗原決定基としても知られ、抗原認識ドメイン(たとえば抗体)によって認識される抗原の一部である。つまり、エピトープは抗原認識ドメインが結合する抗原の特定の部分である。好適には、前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原内の、たとえばASGR内の、1個の領域またはエピトープと結合し、好適には特異的に適合する。
【0064】
本発明で使用される前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原、好ましくはASGRに、選択的または特異的に結合してもよく、したがって、肝臓特異的抗原、好ましくはASGRに対する結合親和性が、他のタンパク質/分子に対する結合親和性よりも、大きくてもよい。好適には、本明細書において「特異的に結合する」とは、抗原認識ドメインが他のタンパク質に結合しない、または、それが特異的に結合する抗原への結合と比較して、かなり小さい親和性で(たとえば、それが特異的に結合する抗原への親和性の、10、50、100、500、1000または10000分の1の親和性で)結合する、ということを意味する。したがって、本明細書でいう抗原認識ドメインは、その抗原、たとえばASGRに、他のタンパク質に対する結合の親和性の10、50、100、500、1000または10000分の1以下の親和性で、結合してもよい。前記抗原認識ドメインの結合親和性は、ビアコアシステムを用いた方法など、当該技術分野において周知方法を使用して決定できる。前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原、たとえばASGRに対して、高い結合親和性を有してもよく、すなわち、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、または10-12M以下の範囲のKdを有してもよい。前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原、たとえばASGRに対する、100nM、50nM、20nM、または10nMよりも小さいKdに対応する結合親和性を有してもよく、より好ましくは10、9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、または1nMよりも小さいKdに対応する結合親和性を有してもよく、最も好ましくは0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1nMよりも小さいKdに対応する結合親和性を有してもよい。前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原、たとえばASGRに対する、約1pM~約100nM、約1pM~約10nM、または約1pm~約1nMのKdに対応する結合親和性を有していてもよい。
【0065】
Kdの決定には任意の適切な方法を用いてもよい。ただし、都合に応じて、前記Kdは表面プラズモン共鳴(SPR)解析またはシステム(たとえば、ビアコア解析またはシステム)で決定されてもよい。たとえば、前記Kdは、たとえば、ラインウィーバーバークプロット法を使用するなど、インビトロでの抗原の様々な濃度に対して抗原認識ドメインの様々な濃度をテストすることにより飽和曲線を確立して決定してもよく、またはBIAcore 1000 Evaluationソフトウェアの1:1結合モデルなど、市販の結合モデルソフトウェアを使用することにより決定してもよい。好適には、HBS-P緩衝系(0.01M Hepes、pH 7.4、0.15M NaCl、0.05%界面活性剤P20)が使用される。特に、前述の抗原認識ドメインが抗体または抗体断片であるか、抗体由来である場合、前記抗原認識ドメインが、たとえばscFvまたはsdAbフォーマット、または本明細書中の他の箇所に記載された別のフォーマットなどのなんらかのフォーマットであれば、上記Kdが適切であり得る。
【0066】
前記抗原認識ドメインは、融解温度が50℃、55℃、60℃、65℃、またはそれ以上であり、好ましくは55℃以上であり、たとえば55℃~75℃である。融解温度は、当業者に周知のいずれかの方法によって決定されてもよい。好適には、融解温度は、示差走査熱量測定によって決定される。好適には、前記抗原認識ドメインを、1mg/mLのPBS中で180℃/時間で加熱し、検出可能な熱変化を測定する。遷移中点が、見かけの融解温度となる。
【0067】
前記抗原認識ドメイン(抗原特異的標的ドメインとしても知られる)は、肝臓特異的抗原、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)を特異的に認識しそれと結合する能力を有するタンパク質またはペプチドであってもよい。前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)の、天然由来、合成、半合成、または遺伝子組換えにより作製した結合パートナーを含む。抗原認識ドメインの例としては、抗体または抗体断片または誘導体、受容体の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体用のリガンド、またはその受容体結合ドメイン、および腫瘍結合タンパク質などがある。たとえば、ASGRに適したリガンドとしては、ベータ-D-ガラクトースおよびN-アセチルガラクトースアミン(GalNAc)などがある。
好ましくは、抗原認識ドメインは、抗体(Ab)であるか、または抗体(Ab)由来である。抗体由来の抗原認識ドメインは、抗体の断片、または1個以上の前記抗体の断片の遺伝子改変産物であってもよく、該断片は抗原との結合に関与する。その例としては、ラクダ抗体(VHH)、抗原結合断片(Fab)、可変領域(Fv)、単鎖抗体(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、および相補性決定領域(CDR)などがある。好ましい実施形態において、前記抗原認識ドメインは単鎖抗体(scFv)、または単一ドメイン抗体(sdAb)である。最も好ましくは、前記抗原認識ドメインは単一ドメイン抗体(sdAb)である。
【0068】
抗体は、前記断片抗原結合(Fab)可変領域を介して抗原を認識する。抗体は免疫グロブリン上科に属する糖タンパク質であり、血液タンパク質のガンマグロブリン画分のほとんどを構成し、典型的には、各々が二つの長い重鎖と二つの小さい軽鎖から成る基本構造単位から成る。ラクダ抗体(VHH)は軽鎖が無く、可変ドメインに付着した二つの重鎖から構成されている。
【0069】
「抗原結合断片」(Fab)とは、抗原に結合した抗体上の領域のことであり、重鎖と軽鎖の各々が1個の定常領域と1個の可変領域を有して成る。
【0070】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位をもつ、抗体の最も小さい断片のことである。Fv断片は、一つの重鎖の可変領域に結合した一つの軽鎖の可変領域から成る。「単鎖抗体」(scFv)とは、直接またはペプチドリンカー配列を介して互いに接続された軽鎖可変領域および重鎖可変領域から成る、改変された抗体のことである。前記ペプチドリンカー配列は、通常、約10~25アミノ酸長であり、グリシンが多く柔軟性があり、セリンまたはスレオニンが多く溶解性がある。前記ペプチドリンカー配列は、重鎖可変領域のN末端を、軽鎖可変領域のC末端と繋げる、または、その逆を行うことができる。
【0071】
ナノボディとしても知られている「単一ドメイン抗体」(sdAb)は、単一モノマー可変抗体ドメインから成る抗体断片のことである。したがって、sdAbは重鎖可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)であってもよい。「重鎖可変領域」すなわち「VH」とは、フレームワーク領域として知られる隣接範囲に挟まれた、3個のCDRを含む、抗体の重鎖の断片のことである。前記隣接範囲は、CDRよりも高度に保存され、CDR維持の足場を形成する。「軽鎖可変領域」すなわち「VL」とは、フレームワーク領域に挟まれた、3個のCDRを含む、抗体の軽鎖の断片のことである。
【0072】
抗体またはその抗原結合断片についての「相補性決定領域」すなわち「CDR」とは、抗体の重鎖または軽鎖の可変領域中の超可変ループのことである。CDRは、抗原構造と作用しあうことができ、主として抗原との結合を判定する(ただし、いくつかのフレームワーク領域は、結合に関与していることがわかっている)。重鎖可変領域および軽鎖可変領域はそれぞれ3個のCDRを含んでいる(アミノ末端からカルボキシ末端に向かって付番して、重鎖CDR1、2、および3ならびに軽鎖CDR1、2、および3)。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域のCDRは、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域配列から、当該技術分野で利用可能な予測ソフトウェアを用いて、たとえばAbysisアルゴリズムを用いるか、またはIMGT/V-QUESTソフトウェア、たとえばwww.IMGT.orgで入手可能なIMGTアルゴリズム(ImMunoGeneTics)を用いて予測することができる(たとえばLefranc et al, 2009 NAR 37:D1006-D1012及びLefranc 2003, Leukemia 17: 260-266を参照)。いずれのアルゴリズムによって同定されたCDR領域も、本発明での使用に、等しく好適であると考えられる。CDRは、その予測の元になる抗体に応じて及び重鎖と軽鎖との間で長さが異なり得る。従って、インタクトな抗体の3つの重鎖CDRは、異なる長さであってもよく(または同じ長さであってもよく)、インタクトな抗体の3つの軽鎖CDRは、異なる長さであってもよい(または同じ長さであってもよい)。たとえば、CDRは、2または3アミノ酸長~5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸長の範囲であってもよい。特に、CDRは、3~14アミノ酸長、たとえば少なくとも3アミノ酸、かつ15アミノ酸未満であってもよい。
【0073】
本明細書では、CDRの位置を定義するために必要に応じてKabat命名法に従うことに留意しなければならない(Kabat et al, 1991, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 647-669)。
【0074】
肝臓特異的抗原、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)と特異的に結合する抗体、その誘導体および断片は、当業者に周知の方法を使用して調製できる。かかる方法には、ファージディスプレイ、ヒト抗体またはヒト化抗体を作成する方法、または、ヒト抗体を作るために改変されたトランスジェニック動物または植物を使用する方法などがある。部分的合成抗体または全長合成抗体のファージディスプレイライブラリが利用可能であり、標的分子に結合できる抗体またはその断片について、前記ライブラリをスクリーニングすることが可能である。ヒト抗体のファージディスプレイライブラリもまた利用可能である。前記抗体(もしくはその誘導体または断片)をコードするアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を特定したら、それを単離および/または判定することができる。抗体の配列は、その好適な誘導体または断片を設計するために使用できる。肝臓特異的抗原、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)と特異的に結合する、好適な抗体、その誘導体および断片は、周知である。たとえば、抗NTCP抗体が、Stieger, B., et al., 1994. Gastroenterology, 107(6), pp.1781-1787に記載されている。von Figura, K., et al., 1984. The EMBO journal, 3(6), pp.1281-1286に、抗マンノース-6-リン酸受容体抗体が記載されている。Ogawa, S., et al., 2010. Hepatology Research, 40(11), pp.1128-1141に、抗PDGF受容体抗体が記載されている。Tomokiyo, R.I., et al., 2002. Atherosclerosis, 161(1), pp.123-132に、抗スカベンジャー受容体クラスA抗体が記載されている。Meuleman, P., et al., 2012. Hepatology, 55(2), pp.364-372に、抗スカベンジャー受容体クラスBタイプI抗体が記載されている。また、Gao, W., et al., 2014. Hepatology, 60(2), pp.576-587に、抗へパラン硫酸抗体が記載されている。肝臓特異的抗原に特異的に結合する、抗体、その誘導体および断片は、市販されている。前記周知の抗体の配列は、その好適な誘導体または断片を設計するために使用できる。
【0075】
本発明に使用できる抗体、その誘導体および断片の例を、さらに以下に記載する。
【0076】
抗原認識ドメインは、少なくとも1個のCDR(たとえば、CDR3)を含んでもよく、これは肝臓特異的抗原と結合する抗体から推測でき、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)(または、かかる推測されたCDRの変異体(たとえば、1個、2個、または3個のアミノ酸置換を有する変異体))と結合する抗体から推測できる。3個以下のCDR領域を含む分子(たとえば、1個のCDR、またはその一部)が、CDRの由来元である抗体の抗原結合活性を保持できるだろうということは、理解されるであろう。2個のCDR領域を含む分子は、たとえばミニボディ(minibody)の形態の標的抗原と結合することができる、と当該技術分野では記載されている(Vaughan and Sollazzo, 2001, Combinational Chemistry & High Throughput Screening, 4, 417-430)。1個のCDRを含む分子は、標的に対して強力な結合活性を発揮することができるという記載がある(Nicaise et al, 2004, Protein Science, 13: 1882-91)。これに関して、抗原認識ドメインは、1個以上の可変重鎖CDR、たとえば1個、2個または3個の可変重鎖CDRを含んでいてもよい。または/さらに、抗原認識ドメインは、1個以上の可変軽鎖CDR、たとえば1個、2個または3個の可変軽鎖CDRを含んでいてもよい。抗原認識ドメインは、3個の重鎖CDRおよび/または3個の軽鎖CDR(特に、3個のCDRを含む重鎖可変領域および/または3個のCDRを含む軽鎖可変領域)を含んでもよく、少なくとも1個のCDR、好適にはすべてのCDRが肝臓特異的抗原、好ましくはASGRと結合する抗体由来であってもよく、下記に示すCDR配列の一つから選択されてもよい。抗原認識ドメインは、可変重鎖CDRと可変軽鎖CDRとの組み合わせを含んでもよく、たとえば、1個の可変重鎖CDRと1個の可変軽鎖CDRの組み合わせ、2個の可変重鎖CDRと1個の可変軽鎖CDRの組み合わせ、2個の可変重鎖CDRと2個の可変軽鎖CDRとの組み合わせ、3個の可変重鎖CDRと1個または2個の可変軽鎖CDRとの組み合わせ、1個の可変重鎖CDRと2個または3個の可変軽鎖CDRとの組み合わせ、3個の可変重鎖CDRと3個の可変軽鎖CDRとの組み合わせを含んでいてもよい。好ましくは、抗原認識ドメインは、3個の可変重鎖CDR(CDR1、CDR2、およびCDR3)、または3個の可変軽鎖CDR(CDR1、CDR2、およびCDR3)との組み合わせを含む、すなわち3個のCDRを含む。または、抗原認識ドメインは、3個の可変重鎖CDR(CDR1、CDR2、およびCDR3)と、および3個の可変軽鎖CDR(CDR1、CDR2、およびCDR3)との組み合わせを含むことができ、またはさもなければ6個のCDRを含むことができる。抗原認識ドメインが上記の結合活性を有すればよく、前記ドメインに存在する1個以上のCDRは、すべてが同じ抗体由来でなくてもよい。したがって、あるCDRが肝臓特異的抗原、たとえばASGRと結合する抗体の重鎖または軽鎖から推測されてもよく、一方で同じ肝臓特異的抗原(たとえばASGR)と結合する別の抗体から別のCDRが推測されてもよい。この場合には、CDR3が、肝臓特異的抗原と結合する抗体、たとえはASGRから推測されるのが好ましいだろう。しかしながら、特に1個より多いCDRが抗原認識ドメインに存在すれば、これらCDRが肝臓特異的抗原、たとえばASGRに結合する抗体から推測されるのが好ましい。異なる抗体からの、特に同じ所望の領域またはエピトープと結合する抗体からのCDRの組み合わせが使用されてもよい。CDR配列例や好ましいCDR配列を、本明細書中の他の箇所に記載する。
【0077】
特に好ましい実施形態において、前記抗原認識ドメインは、肝臓特異的抗原、たとえばASGRに結合する抗体の可変重鎖配列から推測される3個のCDR、および/または肝臓特異的抗原、たとえばASGRに結合する抗体(好ましくは同じ抗体)の可変軽鎖配列から推測される3個のCDRを含む。CDR配列例や好ましいCDR配列を、本明細書中の他の箇所に記載する。
【0078】
いくつかの実施形態において、抗原認識ドメインは抗体であるか、または抗体由来であり(たとえば、Fab、scFv、またはsdAbであり)、前記抗体は配列番号11~73、またはその誘導体から選択される、1個以上のCDR領域を含む。換言すると、いくつかの実施形態において、抗原認識ドメインは、配列番号11~73、またはその誘導体から選択される、1個以上のCDR領域を含む。好適には、抗原認識ドメインは、配列番号11~73、またはその誘導体から選択される、3個のCDR領域を含む。
【表1】
【0079】
好適には、抗原結合ドメインは、同じ可変鎖から選択された、CDR(CDR1、CDR2、およびCDR3)、またはその誘導体を含む。たとえば、前記抗原結合ドメインは、配列番号11~13、配列番号14~16、配列番号17~19、配列番号20~22、配列番号23~25、配列番号26~28、配列番号29~31、配列番号32~34、配列番号35~37、配列番号38~40、配列番号41~43、配列番号44~46、配列番号47~49、配列番号50~52、配列番号53~55、配列番号56~58、配列番号59~61、配列番号62~64、配列番号65~67、配列番号68~70、および/または配列番号71~73、またはその誘導体を含んでいてもよい。
【0080】
好ましくは、前記抗原結合ドメインは、配列番号11~13、配列番号14~16、配列番号17~19、配列番号20~22、配列番号23~25、配列番号26~28、および/または配列番号29~31、またはその誘導体を含んでいてもよい。
好ましくは、前記抗原結合ドメインは、配列番号11~13、配列番号14~16、配列番号17~19、配列番号23~25、配列番号26~28、および/または配列番号29~31、またはその誘導体を含んでいてもよい。
【0081】
好ましくは、前記抗原結合ドメインは、配列番号11~13、配列番号14~16、または配列番号17~19、および/または配列番号23~25、配列番号26~28、または配列番号29~31、またはその誘導体を含んでいてもよい。
【0082】
好ましい実施形態において、前記抗原認識ドメインは、配列番号11~31から選択される、1個以上のCDR領域を含む。好適には、前記抗原認識ドメインは、配列番号11~31、またはその誘導体から選択される、3個のCDR領域を含む。
【0083】
好ましい実施形態において、前記抗原認識ドメインは、下記配列を含む:
(i)CDR1配列EKYAMA(配列番号11)、CDR2配列RISARG VT(配列番号12)、およびCDR3配列HKRHEHTRFDS(配列番号1 3)、またはその誘導体;
(ii)CDR1配列RYTMG(配列番号14)、CDR2配列AIGPPG SNTYYADSVKG(配列番号15)、およびCDR3配列WVMLRGRF DY(配列番号16)、またはその誘導体;
(iii)CDR1配列DYGMG(配列番号17)、CDR2配列AIGRN GSQTYYADSVKG(配列番号18)、およびCDR3配列LRRGRGL NTFTLDY(配列番号19)、またはその誘導体;
(iv)CDR1配列AAGMG(配列番号20)、CDR2配列AIGRNG SQTYYADSVKG(配列番号21)、およびCDR3配列LRRGRGLN TFTLDY(配列番号22)、またはその誘導体;
(v)CDR1配列RASQAIGRWLL(配列番号23)、CDR2配列P GSRLRS(配列番号24)、およびCDR3配列QQAYAWPPT(配列番 号25)、またはその誘導体;
(vi)CDR1配列RASQAIGRWLL(配列番号26)、CDR2配列 PGSRLQS(配列番号27)、およびCDR3配列QQAYQLPVT(配列 番号28)、またはその誘導体;および/または
(vii)CDR1配列RASQAIGRWLL(配列番号29)、CDR2配 列PGSRLQS(配列番号30)、およびCDR3配列QQAYSLPPT(配 列番号31)、またはその誘導体。
【0084】
最も好ましくは、前記抗原認識ドメインは、CDR1配列EKYAMA(配列番号11)、CDR2配列RISARGVT(配列番号12)、およびCDR3配列HKRHEHTRFDS(配列番号13)、またはその誘導体を含む。好ましくは、前記抗原認識ドメインは、CDR1配列EKYAMA(配列番号11)、CDR2配列RISARGVT(配列番号12)、およびCDR3配列HKRHEHTRFDS(配列番号13)、またはその誘導体を含むsdAbである。
【0085】
その他の実施形態において、前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、下記(i)、(ii)または(iii)を含む:
(i)それぞれ、配列番号11、12、および13、またはそれらの誘導体、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25、またはそれらの誘導体、または、それぞれ、配列番号26、27、および28、またはそれらの誘導体、またはそれぞれ、配列番号29、30、および31、またはそれらの誘導体、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、それぞれ、配列番号11、12、および13を含み、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25を含むCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む:
(ii)それぞれ、配列番号14、15、および16、またはそれらの誘導体、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25、またはそれらの誘導体、または、それぞれ、配列番号26、27、および28、またはそれらの誘導体、または、それぞれ、配列番号29、30、および31、またはそれらの誘導体、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、それぞれ、配列番号14、15、および16を含み、かつ、それぞれ、配列番号26,27、および28を含むCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む:
(iii)それぞれ、配列番号17、18、および19、またはそれらの誘導体、かつ、それぞれ、配列番号23、24、および25、またはそれらの誘導体、または、それぞれ、配列番号26、27、および28、またはそれらの誘導体、またはそれぞれ、配列番号29、30、および31、またはそれらの誘導体、好ましくは、前記抗原認識ドメインが、それぞれ、配列番号17、18、および19を含み、かつ、それぞれ、配列番号26,27、および28を含むCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む。
【0086】
このように、かかる実施形態において、前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号11、12、および13をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号23、24、および25をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0087】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号11、12、および13をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号26、27、および28をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0088】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号11、12、および13をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号29、30、および31をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0089】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号14、15、および16をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号23、24、および25をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0090】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号14、15、および16をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号26、27、および28をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0091】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号14、15、および16をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号29、30、および31をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0092】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号17、18、および19をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号23、24、および25をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0093】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号17、18、および19をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号26、27、および28をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0094】
前記抗原認識ドメインは、CDR1、CDR2、およびCDR3領域を含み、前記CDR1、CDR2、およびCDR3領域は、配列番号17、18、および19をそれぞれ、またはそれらの誘導体;および配列番号29、30、および31をそれぞれ、またはそれらの誘導体を含む。
【0095】
かかる抗原認識ドメインを含むCARもまた、本発明のさらなる態様を構成する。
【0096】
好ましくは、6個のCDRを含む上記の抗原認識ドメインは、scFvである。
【0097】
本発明は、上述の、および本明細書中の他の箇所に記載された、前記CDR領域(ならびにVHおよびVL(VK)領域、および当該領域内のCDR領域)の「誘導体」を含む。本明細書における「誘導体」という用語は、下記の「変異体、誘導体、および断片」のセクションで定義される。抗原結合能力を保持したままCDR内で1個以上のアミノ酸置換がなされてもよいことは、理解されるであろう。たとえば、CDR誘導体は、3個以下のアミノ酸置換、たとえば、3個のアミノ酸置換、2個のアミノ酸置換、または1個のアミノ酸置換を含んでいてもよい。特に、いくつかの実施形態において、前記CDR誘導体は、1個のアミノ酸置換を含み、かつ抗原結合能力を保持している。前記誘導体は変異体、たとえば前記CDRに対する同一性が少なくとも80%または90%である変異体であってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、配列番号74~94の一つ以上に対する同一性が少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【表2】
【0099】
好ましい実施形態において、前記抗原認識ドメインは、配列番号74~80の一つ以上に対する同一性が少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0100】
最も好ましくは、前記抗原認識ドメインは、ASGR1 VH1(配列番号74)に対する同一性が少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、配列番号74、75、または76のアミノ酸配列、またはその誘導体、および/または配列番号78、79、または80のアミノ酸配列、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。好ましい実施形態において、前記抗原認識ドメインは、配列番号74および78のアミノ酸配列、またはその誘導体;配列番号75および79、またはその誘導体;または配列番号76および80、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。
【0101】
このように、かかる実施形態において、前記抗原認識ドメインは、配列番号74および78、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。前記抗原認識ドメインは、配列番号74および79、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。前記抗原認識ドメインは、配列番号74および80、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。
【0102】
前記抗原認識ドメインは、配列番号75および78、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。前記抗原認識ドメインは、配列番号75および79、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。前記抗原認識ドメインは、配列番号75および80、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。
【0103】
前記抗原認識ドメインは、配列番号76および78、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。前記抗原認識ドメインは、配列番号76および79、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。前記抗原認識ドメインは、配列番号76および80、またはその誘導体を含むか、またはそれからなる。
【0104】
好ましくは、VHおよびVL(VK)ドメインを含む上記の抗原認識ドメインは、scFvである。かかるscFvは、VHドメインとVL(VK)ドメインとのあいだのリンカーを含みうる。
【0105】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号74、またはその誘導体と、配列番号81、82、または88~94、またはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0106】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号75、またはその誘導体と、配列番号81、82、または88~94、またはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0107】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号76、またはその誘導体と、配列番号81、82、または88~94、またはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0108】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号77、またはその誘導体と、配列番号78~82または88~94、もしくはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0109】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号83、またはその誘導体と、配列番号78~82または88~94、もしくはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0110】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号84、またはその誘導体と、配列番号78~82または88~94、もしくはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0111】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号85、またはその誘導体と、配列番号78~82または88~94、もしくはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0112】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号86、またはその誘導体と、配列番号78~82または88~94、もしくはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0113】
前記抗原認識ドメインは、さらに、配列番号87、またはその誘導体と、配列番号78~82または88~94、もしくはその誘導体のいずれか一つとを含んでいてもよい。
【0114】
いくつかのscFv(scFv断片)の例の概略を以下に示す。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQAIGRWLLWYQQKPGKAPKLLIGPGSRLRSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFVTYYCQQAYAWPPTFGQGTKVEIKR(配列番号173)
ELQLLEFGGGLVQPGGSLRLSCTTSGFTFSRYTMGWVRQAPGKGLEWVSAIGPPGSNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWVMLRGRFDYWGQGTLVTVSSLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQAIGRWLLWYQQKPGKAPKHLIGPGSRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQAYQLPVTFGQGTKVEIKR(配列番号174)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEDYGMGWVRQAPGKGLEWVSAIGRNGSQTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKLRRGRGLNTFTLDYWGQGTLVTVSSLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQAIGRWLLWYQQKPGKAPKLLIGPGSRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTIGSLQPEDFATYYCQQAYSLPPTFGQGTKVEIKR(配列番号175)
【0115】
かかる抗原認識ドメインを含むCARもまた、本発明のさらなる態様を構成する。
【0116】
本明細書に記載の前記抗原認識ドメインの変異体は、抗原結合能力を保持する。たとえば、前記変異体は、対応する参照アミノ酸配列の結合レベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のレベルで、ASGRと結合できればよい。前記変異体または誘導体は、対応する参照アミノ酸配列のレベルに類似または同一のレベルでASGRと結合できてもよく、または、対応する参照アミノ酸配列よりも高いレベル(たとえば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)でASGRと結合できればよい。したがって、前記抗原認識ドメインは、前記ASGR1 VH1~4(配列番号11~22)および/またはASGR1 VK1-3(配列番号23~31)(それぞれ、上記の配列番号74~77および配列番号78~80の下線で示した部分)を含むアミノ酸配列を含むか、またはそれから成ってもよい。前記抗原認識ドメインは、前記ASGR1 VH1~3(配列番号11~19)および/またはASGR1 VK1-3(配列番号23~31)(それぞれ、上記の配列番号74~76および配列番号78~80の下線で示した部分)を含むアミノ酸配列を含むか、またはそれから成ってもよい。フレームワーク領域で、1個(またはそれ以上)のアミノ酸残基が置換、変異、修飾、代替、消去および/または添加されてもよい。
【0117】
このように、いくつかの実施形態において、前記抗原認識ドメインは、下記配列を含むか、またはそれから成ってもよい:
(i)ASGR1 VH1(配列番号74)に対する同一性が少なくとも約70 %、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるア ミノ酸配列であって、CDR1配列EKYAMA(配列番号11)、CDR2配列 RISARGVT(配列番号12)、およびCDR3配列HKRHEHTRFDS (配列番号13)を含む、アミノ酸配列;
(ii)ASGR1 VH2(配列番号75)に対する同一性が少なくとも約7 0%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である アミノ酸配列であって、CDR1配列RYTMG(配列番号14)、CDR2配列 AIGPPGSNTYYADSVKG(配列番号15)、およびCDR3配列WV MLRGRFDY(配列番号16)を含む、アミノ酸配列;
(iii)ASGR1 VH3(配列番号76)に対する同一性が少なくとも約 70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であ るアミノ酸配列であって、CDR1配列DYGMG(配列番号17)、CDR2配 列AIGRNGSQTYYADSVKG(配列番号18)、およびCDR3配列L RRGRGLNTFTLDY(配列番号19)を含む、アミノ酸配列;
(iv)ASGR1 VH4(配列番号77)に対する同一性が少なくとも約7 0%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%である アミノ酸配列であって、CDR1配列AAGMG(配列番号20)、CDR2配列 AIGRNGSQTYYADSVKG(配列番号21)、およびCDR3配列LR RGRGLNTFTLDY(配列番号22)を含む、アミノ酸配列;
(v)ASGR1 VK1(配列番号78)に対する同一性が少なくとも約70 %、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるア ミノ酸配列であって、CDR1配列RASQAIGRWLL(配列番号23)、C DR2配列PGSRLRS(配列番号24)、およびCDR3配列QQAYAWP PT(配列番号25)を含む、アミノ酸配列;
(vi)ASGR1 VK2(配列番号79)に対する同一性が少なくとも約70 %、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるア ミノ酸配列であって、CDR1配列RASQAIGRWLL(配列番号26)、C DR2配列PGSRLQS(配列番号27)、およびCDR3配列QQAYQLP VT(配列番号28)を含む、アミノ酸配列;または
(vii)ASGR1 VK3(配列番号80)に対する同一性が少なくとも約 70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であ るアミノ酸配列であって、CDR1配列RASQAIGRWLL(配列番号29) 、CDR2配列PGSRLQS(配列番号30)、およびCDR3配列QQAYS LPPT(配列番号31)を含む、アミノ酸配列。
【0118】
好ましい実施形態において、前記抗原認識ドメインは、ASGR1 VH1(配列番号74)に対する同一性が少なくとも約70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、前記アミノ酸配列は、CDR1配列EKYAMA(配列番号11)、CDR2配列RISARGVT(配列番号12)、およびCDR3配列HKRHEHTRFDS(配列番号13)、またはそれらの誘導体を含む。
【0119】
本発明のCARは、上記に定義したように、1個より多い抗原認識ドメインを含んでもよく、すなわち1個より多い肝臓特異的抗原、または肝臓特異的抗原内の1個より多いエピトープに結合してもよく、たとえば、特定の実施形態において二重または2個のポリペプチドまたはCARの系の一部として結合してもよいが、本発明のCARは、1個のみの、または単一の抗原認識ドメインを含んでいてもよい。
【0120】
ヒンジドメイン
CARはまた、ヒンジドメインを含んでいてもよい。本明細書における、「スペーサドメイン」とも称される前記「ヒンジドメイン」は、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインから隔てるCARの細胞外の一部のことである。前記ヒンジは、標的抗原にアクセスするためのフレキシビリティを提供してもよい。たとえば、長いスペーサはCARに余分なフレキシビリティを提供し、膜に近位のエピトープにアクセスしやすくする。
【0121】
好適なヒンジドメインは、当業者に明らかであろう(たとえば、Guedan, S., et al., 2018. Molecular Therapy-Methods & Clinical Development, 12, 145-156)。好適なヒンジドメインとしては、CD28ヒンジドメイン、CD8αヒンジドメイン、IgGヒンジドメイン、およびIgDヒンジドメインがあるが、これらに限定されるわけではない。好ましくは、前記ヒンジドメインはCD8αまたはCD28ヒンジドメインである。
【0122】
好適には、前記ヒンジドメインは、配列番号95として示されるアミノ酸配列、または配列番号95に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD28ヒンジドメインの例(配列番号95):IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP
【0123】
好適には、前記変異体は、配列番号95に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0124】
好適には、前記ヒンジドメインは、配列番号96として示されるアミノ酸配列、または配列番号96に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD8アルファヒンジドメインの例(配列番号96):
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD
【0125】
好適には、前記変異体は、配列番号96に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0126】
好適には、CARは、c-Mycタグ(EQKLISEEDL-配列番号97)などのタグをコードしてもよい。好適には、前記タグは、CARの細胞外ドメイン、たとえば、細胞外ドメインのヒンジドメインなどに組み込まれてもよい。c-Mycタグが一体化されているCD28ヒンジドメインの例を以下に示す。
c-Mycタグが一体化されているCD28ヒンジドメインの例(配列番号98):
IEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP
【0127】
好適には、前記変異体は配列番号98に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0128】
膜貫通ドメイン
前記CARは、膜貫通ドメインを含んでいてもよい。本明細書における前記「膜貫通ドメイン」は、Tregの細胞膜内にCARを固定する、CARの一部のことである。このように、膜貫通ドメインは、Tregの細胞膜内に及ぶ、または存在することができる。膜貫通ドメインは、細胞外および/または細胞内部分を含むタンパク質から由来してもよく、したがって本明細書における膜貫通ドメインは、前記細胞膜内にあるかまたはそれに及ぶ部分だけでなく、由来元のタンパク質から由来する細胞外および/または細胞内残基にも付着していてもよい。たとえば、膜貫通ドメインは、その由来元のタンパク質から由来するヒンジドメインに付着していてもよく、たとえば、CD8αから由来する膜貫通ドメインがCD8αから由来するヒンジドメインに付着していてもよい。膜貫通ドメインが細胞膜内に存在することは、蛍光顕微鏡を使用した蛍光標識など、当該技術分野で周知のいずれか好適な方法を使用して調べることができる。
【0129】
好適な膜貫通ドメインは、当業者に明らかであろう。前記膜貫通ドメインは、I型膜貫通タンパク質、II型膜貫通タンパク質、またはIII型膜貫通タンパク質などの、膜貫通ドメインを有するタンパク質のいずれかからの膜貫通配列を含んでいてもよい。CARの膜貫通ドメインはまた、人工疎水性配列を含んでいてもよい。膜貫通ドメインは、二量化しないように選択されればよい。
【0130】
CAR構築に使用される膜貫通(TM)ドメインの例を、下記に示す。1)CD28 TMドメイン(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41; Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35; Casucci et al, Blood, 2013, Nov 14;122(20):3461-72.); 2)OX40 TMドメイン(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41); 3)41BB TMドメイン(Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35); 4)CD3 zeta TMドメイン(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41; Savoldo B, Blood, 2009, Jun 18;113(25):6392-402.); 5)CD8 TMドメイン(Maher et al, Nat Biotechnol, 2002, Jan;20(1):70-5.; Imai C, Leukemia, 2004, Apr;18(4):676-84; Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35; Milone et al, Mol Ther, 2009, Aug;17(8):1453-64.); 6)ICOS TMドメイン; 7)CD4 TMドメイン。
【0131】
好適には、CARはCD28膜貫通ドメインを含んでいてもよい。好適には、膜貫通ドメインは配列番号99として示されるアミノ酸配列、または配列番号99に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD28 TMドメイン(AA 153~179)の例(配列番号99):
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
【0132】
好適には、前記変異体は配列番号99に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0133】
好適には、CARはCD8α膜貫通ドメインを含んでいてもよい。好適には、膜貫通ドメインは配列番号165として示されるアミノ酸配列、または配列番号165に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD8α TMドメイン(AA 183~203)の例(配列番号165):
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT
【0134】
好適には、前記変異体は配列番号165に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0135】
好適には、CARはCD28ヒンジおよび膜貫通ドメイン(場合によっては、c-Mycタグを伴う)を含んでいてもよい。好適には、前記ヒンジおよび膜貫通ドメインは、配列番号100または配列番号101として示されるアミノ酸配列、または配列番号100または配列番号101に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD28ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインの例(配列番号100):
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
c-Mycタグを伴うCD28ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインの例(配列番号101):
IEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
【0136】
好適には、前記変異体は配列番号100または配列番号101に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0137】
好適には、CARはCD8αヒンジドメインとCD28膜貫通ドメインとを含んでいてもよい。好適には、前記ヒンジおよび膜貫通ドメインは、配列番号102として示されるアミノ酸配列、または配列番号102に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD8αヒンジドメインとCD28膜貫通ドメインの例(配列番号102):
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
【0138】
好適には、前記変異体は配列番号102に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0139】
好適には、CARはCD28ヒンジドメインとCD8α膜貫通ドメインとを含んでいてもよい。好適には、前記ヒンジおよび膜貫通ドメインは、配列番号166として示されるアミノ酸配列、または配列番号166に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD28ヒンジドメインとCD8α膜貫通ドメインの例(配列番号166):
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPIYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT
【0140】
好適には、前記変異体は配列番号166に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0141】
エンドドメイン
CARは、1個以上の細胞内シグナル伝達ドメインと、場合によっては1個以上の共刺激ドメインとを含むエンドドメインを含んでいてもよい。
【0142】
CARは、1個以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含んでいてもよい。
【0143】
本明細書における「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、肝臓特異的抗原(たとえばASGR)に結合する有効なCARのメッセージをTreg内部に伝達して、たとえば免疫抑制機能などのTreg機能を誘導することにかかわる、CARの細胞内の部分のことである。好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、当業者に明らかであろう。前記細胞内シグナル伝達ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、Tregがその特殊機能を抗原結合の際に発揮するよう指示するために必要である。細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、T細胞受容体またはその相同体(たとえば、η鎖、FcεR1γおよびβ鎖、MB1(Igα)鎖、B29(Igβ)鎖など)のζ鎖エンドドメイン、CD3ポリペプチドドメイン(Δ、δ、およびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70、など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lyn、など)、ならびに、CD2、CD5およびCD28などのT細胞形質導入に関わるその他の分子があるが、これらに限定されない。前記細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメイン、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質側末端、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞質受容体、またはそれらの組み合わせであってもよい。好適には、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータシグナル伝達ドメインの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。好ましくは、前記CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、ASGRに結合するか、または特異的に結合する、抗原認識ドメインと同じポリペプチド鎖にある。好適には、細胞内シグナル伝達ドメインは配列番号103として示されるアミノ酸配列、または配列番号103に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD3ゼータシグナル伝達ドメインの例(配列番号103):
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0144】
好適には、前記変異体は配列番号103に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0145】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28シグナル伝達ドメインを含んでいてもよい。好適には、細胞内シグナル伝達ドメインは配列番号104として示されるアミノ酸配列、または配列番号104に対する同一性が少なくとも80%のである変異体を含んでいてもよい。
CD28シグナル伝達ドメインの例(配列番号104):
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS
【0146】
好適には、前記変異体は配列番号104に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0147】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD27シグナル伝達ドメインを含んでいてもよい。好適には、細胞内シグナル伝達ドメインは配列番号105として示されるアミノ酸配列、または配列番号105に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。CD27シグナル伝達ドメインの例(配列番号105):
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
【0148】
一実施形態において、前記細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号105に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であるシグナリングモチーフを含む。
【0149】
さらに別の細胞内シグナル伝達ドメインは当業者に明らかであろう。これらは本発明の代替の実施形態と関連して用いられてもよい。
【0150】
CARはまた、1個以上の共刺激ドメインを含んでいてもよい。本明細書における「共刺激ドメイン」とは、Treg機能(たとえば免疫抑制機能)、増殖、および/または持続を促進する、CARの細胞内の部分のことである。したがって、CARは、たとえばCD3ζなどの細胞内シグナル伝達ドメインに対して前記1個以上の共刺激ドメインの融合したものを含む化合物エンドドメインを含んでいてもよい。かかる化合物エンドドメインは、抗原認識後に同時に活性化および共刺激シグナルを伝送できる第2世代CARと称されてもよい。最も一般的に使用される共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインである。これは、Treg増殖を誘発する最も強力な共刺激シグナル、すなわち免疫学的シグナル2を供給する。好適な共刺激ドメインは、当業者に明らかであろう。
【0151】
好適には、前記1個以上の共刺激ドメインは配列番号104または105として示されるアミノ酸配列、または配列番号104または105に対する同一性が少なくとも80%(たとえば85、90、95、97、98または99%)である変異体を含んでいてもよい。好適には、前記1個以上の共刺激ドメインは、OX40、4-1BB、ICOS、またはTNFRSF25のシグナル伝達ドメインなど、TNF受容体ファミリーのシグナリングドメインを1個以上含んでいてもよい。
【0152】
OX40、4-1BB、ICOS、またはTNFRSF25のシグナル伝達ドメインの例が、下記に示される。前記1個以上の共刺激ドメインは、配列番号106~109の一つ以上、または配列番号106~109の一つ以上に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
OX40シグナル伝達ドメインの例(配列番号106):ALYLLRRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI
41BBシグナル伝達ドメインの例(配列番号107)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
ICOSシグナル伝達ドメインの例(配列番号108)
CWLTKKKYSSSVHDPNGEYMFMRAVNTAKKSRLTDVTL
TNFRSF25シグナル伝達ドメインの例(配列番号109):
TYTYRHCWPHKPLVTADEAGMEALTPPPATHLSPLDSAHTLLAPPDSSEKICTVQLVGNSWTPGYPETQEALCPQVTWSWDQLPSRALGPAAAPTLSPESPAGSPAMMLQPGPQLYDVMDAVPARRWKEFVRTLGLREAEIEAVEVEIGRFRDQQYEMLKRWRQQQPAGLGAVYAALERMGLDGCVEDLRSRLQRGP
【0153】
前記1個以上の共刺激ドメインは、配列番号106~109のいずれか一つに対する同一性が少なくとも85、90、95、97、98または99%であるOX40、4-1BB、ICOSおよびTNFRSF25シグナル伝達ドメインのうちの1個以上の変異体を含んでいてもよい。
【0154】
CARのエンドドメインは、CD28シグナル伝達ドメインと、CD3ゼータシグナル伝達ドメインとを含んでいてもよい。好適には、前記エンドドメインは配列番号110として示されるアミノ酸配列、または配列番号110に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
CD28シグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータシグナル伝達ドメインの例(配列番号110):
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0155】
好適には、前記変異体は配列番号110に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0156】
いくつかの実施形態において、前記CARは、STAT5関連モチーフと、JAK1および/またはJAK2結合モチーフとを含むエンドドメインを含む。
【0157】
「シグナル伝達性転写因子5」(STAT5)は、IL-2シグナリング経路に関与する転写因子であり、FOXP3、IL2RAおよびBCLXLなどの遺伝子の発現を促進することによって、Tregの機能、安定性、および生存において鍵となる役割を果たす。機能し、かつ核移行するためには、STAT5はリン酸化する必要がある。IL-2ライゲーションの結果、IL-2Rβ鎖およびIL-2Rγ鎖のそれぞれに存在する特異的なシグナル伝達ドメインを介してJak1およびJak3キナーゼを活性化することにより、STAT5がリン酸化する。Jak1(またはJak2)は、Jak3を必要とせずにSTAT5をリン酸化できるが、Jak1とJak3との両方のトランスリン酸化によりSTAT5の活性を増加することができ、これにより活性が安定する。本明細書における「STAT5関連モチーフ」とは、チロシンを含みSTAT5ポリペプチドと結合することのできるアミノ酸モチーフのことである。タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、関連モチーフがSTAT5と結合できるかどうか判定してもよい。たとえば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。
【0158】
本発明は従って、肝臓特異的抗原に、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体に結合する能力を有するCARを含む、改変されたTregを提供し、前記CARはまた、抗原に対してCARが結合する時にのみ、STAT5介在性の生存促進性シグナルをTregへ提供する。特に、抗原認識後、前記CARが密集し、前記CARの細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)を介して、改変されたTregへシグナルが伝達される。前記CARが、STAT5関連モチーフとJAK1結合モチーフおよび/またはJAK2結合モチーフとを含むエンドドメインを含む場合、CARの密集によってSTAT5ならびにJAK1および/またはJAK2が集められ活性化され、微小環境におけるIL-2の獲得に依存することなく、抗原特異的に、前記改変されたTregの機能と生存とを向上する信号を提供する。
【0159】
STAT5シグナリングを備えた、本発明の改変されたTregは、対象のT細胞母集団(general T cell population)と比較して抗原を認識した後に、前記改変されたCAR-Tregに生存有意性を提供することにおいて、特に効果があればよい。特に、免疫抑制剤を使用してIL-2の獲得が減少する状況、たとえば移植などの状況で、前記CAR-TregのSTAT5シグナリングは、それが無ければ不利な微小環境において、本発明の細胞に対するさらなる生存と機能の効果を提供する。
【0160】
好適には、CARエンドドメインは、本明細書において定義された2個以上のSTAT5関連モチーフを含んでいてもよい。たとえば、CARエンドドメインは、本明細書において定義された2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のSTAT5関連モチーフを含んでいてもよい。好ましくは、CARエンドドメインは、本明細書において定義された2個または3個のSTAT5関連モチーフを含んでいてもよい。
【0161】
好適には、前記STAT5関連モチーフは、膜貫通タンパク質の細胞質ドメイン中に内在してもよい。たとえば、前記STAT5関連モチーフは、インターロイキン受容体(IL)受容体エンドドメインまたはホルモン受容体由来であってもよい。
【0162】
前記CARエンドドメインは、STAT5が下流成分であるインターロイキン受容体の鎖のいずれかから選択されたアミノ酸配列を含んでもよく、たとえば、IL-2受容体β鎖のアミノ酸番号266~551(米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)標準配列(REFSEQ):NP_000869.1、配列番号111)、IL-7Rα鎖のアミノ酸番号265~459(NCBI REFSEQ:NP_002176.2、配列番号112)、IL-7RA 2Y鎖切断型(配列番号113)、IL-9R鎖のアミノ酸番号292~521(NCBI REFSEQ:NP_002177.2、配列番号114)、IL-4Rα鎖のアミノ酸番号257~825(NCBI REFSEQ:NPJD00409.1、配列番号115)、IL-3Rβ鎖のアミノ酸番号461~897(NCBI REFSEQ:NP_000386.1、配列番号116)、またはIL-17Rβ鎖のアミノ酸番号314~502(NCBI REFSEQ:NP_061195.2、配列番号117)を含む前記細胞質ドメインが使用されてもよい。インターロイキン受容体鎖の細胞質ドメインの領域全体が使用されてもよい。
配列番号111-IL7RB(NP_000869.1のアミノ酸番号(AA)265~551)
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLLQQDKVPEPASLSSNHSLTSCFTNQGYFFFHLPDALEIEACQVYFTYDPYSEEDPDEGVAGAPTGSSPQPLQPLSGEDDAYCTFPSRDDLLLFSPSLLGGPSPPSTAPGGSGAGEERMPPSLQERVPRDWDPQPLGPPTPGVPDLVDFQPPPELVLREAGEEVPDAGPREGVSFPWSRPPGQGEFRALNARLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
配列番号112-IL7RA(NP_002176.2のAA 265~459)
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
配列番号113-IL7RA 2Y切断型
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
配列番号114-IL9R(NP_002177.2のAA 292~521)
KLSPRVKRIFYQNVPSPAMFFQPLYSVHNGNFQTWMGAHGAGVLLSQDCAGTPQGALEPCVQEATALLTCGPARPWKSVALEEEQEGPGTRLPGNLSSEDVLPAGCTEWRVQTLAYLPQEDWAPTSLTRPAPPDSEGSRSSSSSSSSNNNNYCALGCYGGWHLSALPGNTQSSGPIPALACGLSCDHQGLETQQGVAWVLAGHCQRPGLHEDLQGMLLPSVLSKARSWTF
配列番号115-IL4RA(NPJD00409.1のAA 257~825)
KIKKEWWDQIPNPARSRLVAIIIQDAQGSQWEKRSRGQEPAKCPHWKNCLTKLLPCFLEHNMKRDEDPHKAAKEMPFQGSGKSAWCPVEISKTVLWPESISVVRCVELFEAPVECEEEEEVEEEKGSFCASPESSRDDFQEGREGIVARLTESLFLDLLGEENGGFCQQDMGESCLLPPSGSTSAHMPWDEFPSAGPKEAPPWGKEQPLHLEPSPPASPTQSPDNLTCTETPLVIAGNPAYRSFSNSLSQSPCPRELGPDPLLARHLEEVEPEMPCVPQLSEPTTVPQPEPETWEQILRRNVLQHGAAAAPVSAPTSGYQEFVHAVEQGGTQASAVVGLGPPGEAGYKAFSSLLASSAVSPEKCGFGASSGEEGYKPFQDLIPGCPGDPAPVPVPLFTFGLDREPPRSPQSSHLPSSSPEHLGLEPGEKVEDMPKPPLPQEQATDPLVDSLGSGIVYSALTCHLCGHLKQCHGQEDGGQTPVMASPCCGCCCGDRSSPPTTPLRAPDPSPGGVPLEASLCPASLAPSGISEKSKSSSSFHPAPGNAQSSSQTPKIVNFVSVGPTYMRVS
配列番号116-IL3RB(NP_000386.1のAA 461~897)
RFCGIYGYRLRRKWEEKIPNPSKSHLFQNGSAELWPPGSMSAFTSGSPPHQGPWGSRFPELEGVFPVGFGDSEVSPLTIEDPKHVCDPPSGPDTTPAASDLPTEQPPSPQPGPPAASHTPEKQASSFDFNGPYLGPPHSRSLPDILGQPEPPQEGGSQKSPPPGSLEYLCLPAGGQVQLVPLAQAMGPGQAVEVERRPSQGAAGSPSLESGGGPAPPALGPRVGGQDQKDSPVAIPMSSGDTEDPGVASGYVSSADLVFTPNSGASSVSLVPSLGLPSDQTPSLCPGLASGPPGAPGPVKSGFEGYVELPPIEGRSPRSPRNNPVPPEAKSPVLNPGERPADVSPTSPQPEGLLVLQQVGDYCFLPGLGPGPLSLRSKPSSPGPGPEIKNLDQAFQVKKPPGQAVPQVPVIQLFKALKQQDYLSLPPWEVNKPGEVC
配列番号117-IL17RB(NP_061195.2のAA 314~502)
RHERIKKTSFSTTTLLPPIKVLVVYPSEICFHHTICYFTEFLQNHCRSEVILEKWQKKKIAEMGPVQWLATQKKAADKVVFLLSNDVNSVCDGTCGKSEGSPSENSQDLFPLAFNLFCSDLRSQIHLHKYVVVYFREIDTKDDYNALSVCPKYHLMKDATAFCAELLHVKQQVSAGKRSQACHDGCCSL
【0163】
前記CARエンドドメインは、配列番号111~117の一つとして示されるアミノ酸配列を、または配列番号111~117の一つに対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%である変異体を含む、STAT5関連モチーフを含んでいてもよい。たとえば、前記変異体は、配列番号111~117の一つとして示されるアミノ酸配列の結合レベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のレベルで、STAT5と結合できればよい。前記変異体または誘導体は、配列番号111~117の一つのレベルに類似または同一のレベルでSTAT5と結合できてもよく、または、配列番号111~117の一つとして示されるアミノ酸配列よりも高いレベル(たとえば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)でSTAT5と結合できてもよい。
【0164】
たとえば、前記STAT5関連モチーフは、IL2Rβ、IL7Rα、IL-3Rβ(CSF2RB)、IL-9R、IL-4Rα、IL-17Rβ、エリスロポエチン受容体、トロンボポエチン受容体、成長ホルモン受容体、およびプロラクチン受容体由来であってもよい。
【0165】
前記STAT5関連モチーフは、アミノ酸モチーフYXXF/L(配列番号118)(Xは任意のアミノ酸)を含んでいてもよい。
【0166】
好適には、前記STAT5関連モチーフは、アミノ酸モチーフYCTF(配列番号119)、YFFF(配列番号120)、YLSL(配列番号121)、またはYLSLQ(配列番号122)を含んでいてもよい。
【0167】
好適には、前記STAT5関連モチーフは、アミノ酸モチーフYLSLQ(配列番号122)を含んでいてもよい。
【0168】
前記CARエンドドメインは、アミノ酸モチーフYCTF(配列番号119)、YFFF(配列番号120)、YLSL(配列番号121)、および/またはYLSLQ(配列番号122)を含む前記STAT5関連モチーフを1個以上を含んでいてもよい。
【0169】
前記CARエンドドメインは、アミノ酸モチーフYLSLQ(配列番号122)を含む第1のSTAT5関連モチーフと、アミノ酸モチーフYCTF(配列番号119)またはYFFF(配列番号120)を含む第2のSTAT5関連モチーフとを含んでいてもよい。
【0170】
前記CARエンドドメインは、STAT5関連モチーフである、YLSLQ(配列番号122)、YCTF(配列番号119)、およびYFFF(配列番号120)を含んでいてもよい。
【0171】
本明細書における「JAK1および/またはJAK2結合モチーフ」とは、チロシンキナーゼJAK1および/またはJAK2関連付けをもたらすBOXモチーフのことである。好適なJAK1およびJAK2結合モチーフは、たとえば、Ferrao&Lupardus(Frontiers in Endocrinology; 2017; 8(71);この参照により本明細書に援用される)により記載されている。
【0172】
タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、モチーフがJAK1および/またはJAK2と結合できるかどうか判定してもよい。たとえば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。
【0173】
JAK1および/またはJAK2結合モチーフは、膜貫通タンパク質の細胞質ドメイン内に内在的に発生してもよい。たとえば、JAK1および/またはJAK2結合モチーフは、IFNLR1、IFNAR、IFNGR1、IL10RA、IL20RA、IL22RA、IFNGR2、またはIL10RB由来であってもよい。
【0174】
JAK1結合モチーフは、JAK1と結合できる、配列番号123~129として示されたアミノ酸モチーフまたはその変異体を含んでもよい。たとえば、前記変異体は、配列番号123~129の一つとして示されるアミノ酸配列の結合レベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のレベルで、JAK1と結合できればよい。前記変異体または誘導体は、配列番号123~129の一つのレベルに類似または同一のレベルでJAK1と結合できてもよく、または、配列番号123~129の一つとして示されるアミノ酸配列よりも高いレベル(たとえば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)でJAK1結合できてもよい。
【表3】
【0175】
変異体は、配列番号123~129のいずれかと比較して1個、2個、または3個のアミノ酸の差異を含んでいてもよく、JAK1と結合する能力を保持しうる。
前記変異体は、配列番号123~129のいずれか一つに対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であってもよい。
好ましい実施形態において、JAK1結合ドメインは、JAK1と結合できる、配列番号123またはその変異体を含んでいてもよい。
【0176】
JAK2結合モチーフは、JAK2と結合できる、配列番号130~132として示されたアミノ酸モチーフまたはその変異体を含んでもよい。たとえば、前記変異体は、配列番号130~132の一つとして示されるアミノ酸配列の結合レベルの、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%のレベルで、JAK2と結合できればよい。前記変異体または誘導体は、配列番号130~132の一つのレベルに類似または同一のレベルでJAK2と結合できてもよく、または、配列番号130~132の一つとして示されるアミノ酸配列よりも高いレベル(たとえば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)でJAK2結合できてもよい。
【表4】
【0177】
変異体は、配列番号130~132のいずれかと比較して1個、2個、または3個のアミノ酸の差異を含んでいてもよく、JAK2と結合する能力を保持しうる。
【0178】
前記変異体は、配列番号130~132のいずれか一つに対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0179】
タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、JAK1結合モチーフまたはJAK2結合モチーフがJAK1またはJAK2と結合できるかどうか判定してもよい。たとえば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。
【0180】
好適には、本明細書に記載のCARのエンドドメインは、「シグナル伝達性転写因子3」(STAT3)関連モチーフを含まなくてもよい。STAT3は、Tregの安定と機能のためには有害なシグナルとして記載されてきた。たとえば、STAT3シグナリングは、IL17、IL21、およびIL22などの炎症促進性の遺伝子の発現を促進する。このように、STAT3関連モチーフを含まないCARを使用することは、本発明の改変されたTregにおいて特別な利点をもたらす。
【0181】
STAT3関連モチーフは、STAT3と結合できるアミノ酸配列YXXQ(配列番号133)(Xは任意のアミノ酸)を含んでいてもよい。タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、STAT3関連モチーフがSTAT3と結合できるかどうか判定してもよい。たとえば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。好適には、前記CARエンドドメインは、アミノ酸配列YXXQ(配列番号133)(Xは任意のアミノ酸)を含まない。
【0182】
「STAT3関連モチーフ」とは、チロシンを含み、Tregの中に存在する時にSTAT3ポリペプチドと機能的に結合することのできる(すなわち、STAT3ポリペプチドの活性化をもたらす)をアミノ酸モチーフのことをいうものであってもよい。
好適には、CARエンドドメインは、チロシンを含みSTAT3ポリペプチドと結合することのできるアミノ酸モチーフを含まない。たとえば、好適には、CARエンドドメインは、チロシンを含み、Tregの中に存在する時にSTAT3ポリペプチドと機能的に結合することのできる(すなわち、STAT3ポリペプチドの活性化をもたらす)アミノ酸モチーフを含まない。
【0183】
好適には、当該CARのエンドドメインは、Treg中に発現した時に産生STAT3および/またはSTAT1シグナリングを誘発することができない。換言すれば、Treg中に発現した時に、当該CARは、STAT3および/またはSTAT1に機能的に結合できず、および/またはSTAT3および/またはSTAT1のリン酸化と活性化を誘発することができなくてもよい。好適には、前記CARは、Treg中に発現した時にSTAT3および/またはSTAT1に依存した転写活性化を誘発することができない。
好適には、前記CARのIL2Rβエンドドメイン部分は、本明細書において定義されたSTAT3関連モチーフを含んでいなくてもよい。
【0184】
好適には、前記CARエンドドメインは、IL2Rβエンドドメインを含んでいてもよい。好適には、前記CARエンドドメインは配列番号134として示されるアミノ酸配列、または配列番号134に対する配列同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
IL2Rβエンドドメインの例(配列番号134)
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLLQQDKVPEPASLSSNHSLTSCFTNQGYFFFHLPDALEIEACQVYFTYDPYSEEDPDEGVAGAPTGSSPQPLQPLSGEDDAYCTFPSRDDLLLFSPSLLGGPSPPSTAPGGSGAGEERMPPSLQERVPRDWDPQPLGPPTPGVPDLVDFQPPPELVLREAGEEVPDAGPREGVSFPWSRPPGQGEFRALNARLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
【0185】
前記変異体は、配列番号134に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0186】
好適には、前記CARエンドドメインは、切断型IL2Rβエンドドメインを含んでいてもよい。好適には、前記CARエンドドメインは配列番号135または配列番号136として示されるアミノ酸配列、またはそれに対する配列同一性が少なくとも80%である、配列番号135または配列番号136の変異体を含んでいてもよい。
IL2RB切断型ーY510の例(配列番号135)
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
IL2RB切断型ーY510&Y392の例(配列番号136)
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLDAYCTFPSRDDLLLFSPSLLGGPSPPSTAPGGSGAGEERMPPSLQERVPRDWDPQPLGPPTPGVPDLVDFQPPPELVLREAGEEVPDAGPREGVSFPWSRPPGQGEFRALNARLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV
【0187】
前記変異体は、配列番号135または配列番号136に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0188】
Jak1/2とJak3との両方のトランスリン酸化によりSTAT5の活性を増加することができ、これにより活性が安定する。好適には、本明細書に記載の前記CARエンドドメインは、さらに、JAK3結合モチーフを含んでいてもよい。.本明細書における「JAK3結合モチーフ」とは、チロシンキナーゼJAK3をもたらすBOXモチーフのことである。好適なJAK3結合モチーフは、たとえば、Ferrao&Lupardus(Frontiers in Endocrinology; 2017; 8(71);この参照により本明細書に援用される)により記載されている。
【0189】
タンパク質-タンパク質相互作用を判定するための当該技術分野において周知の方法を用いて、モチーフがJAK3と結合できるかどうか判定してもよい。たとえば、共免疫沈降の後にウエスタンブロットを行ってもよい。
【0190】
JAK3結合モチーフは、膜貫通タンパク質の細胞質ドメイン内に内在的に発生してもよい。たとえば、前記JAK3結合モチーフは、IL-2Rγポリペプチド由来であってもよい。
【0191】
JAK3結合モチーフは、JAK3と結合できる、配列番号137または138として示されたアミノ酸モチーフまたはその変異体を含んでもよい。
JAK3結合モチーフ1(配列番号137)
ERTMPRIPTLKNLEDLVTEYHGNFSAWSGVSKGLAESLQPDYSERLCLVSEI
JAK3結合モチーフ2(配列番号138)
ERTMPRIPTLKNLEDLVTEYHGNFSAWSGVSKGLAESLQPDYSERLCLVSEIPPKGGALGEGPGASPCNQHSPYWAPPCYTLKPET
【0192】
前記変異体は、配列番号137または138に対する同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であってもよい。
いくつかの実施形態において、前記CARは、STAT5関連モチーフ、JAK1および/またはJAK2結合モチーフ、およびJAK3結合モチーフを含むエンドドメインを含む。
【0193】
好ましい実施形態において、前記CARエンドドメインは、1個以上のJAK1結合ドメインと、少なくとも1個のJAK3結合ドメインとを含む。好適には、前記CARエンドドメインは、配列番号139、または、配列番号139に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%である変異体を含んでいてもよい。
配列番号139(CD28、IL2RG-T52、IL2RB-Y510、CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むエンドドメイン配列の例)
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSERTMPRIPTLKNLEDLVTEYHGNFSAWSGVSKGLAESLQPDYSERLCLVSEINCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLVRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0194】
好適には、前記CARエンドドメインは、配列番号140、または、配列番号140に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%である変異体を含んでいてもよい。
配列番号140(CD28、IL2RG-T52、IL7RA-2Y、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むエンドドメイン配列の例)
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSERTMPRIPTLKNLEDLVTEYHGNFSAWSGVSKGLAESLQPDYSERLCLVSEIKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRGSGATNFSLLKQAGDVEENPG
【0195】
その他のドメイン
いくつかの実施形態において、前記CARは、1個以上のシグナルペプチドを含む。
CARは、細胞表面での発現のための小胞体経路に対してCARを向かわせるリーダー配列を含んでいてもよい。リーダー配列の例としては、CD8リーダー(配列番号141)がある。
CD8リーダー(配列番号141)
MALPVTALLLPLALLLHAARP
【0196】
いくつかの実施形態において、前記CARは1個以上のレポータードメインを含み、場合によっては自己切断(self-cleaving)ドメインまたは切断(cleavage)ドメインと組み合わせて含む。
【0197】
好適なレポータードメインは、当該技術分野において周知であり、GFPなどの蛍光蛋白質を含むが、これらに限定されるわけではない。レポータードメインを使用することにより、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターが(コードされているCARが発現するように)導入されているTregを、たとえばフローサイトメトリーなどの一般的な方法を使用して開始細胞集団から選択し単離できるので、選択可能マーカーの使用が有利である。
【0198】
好適には、前記レポータードメインは、たとえばGFP、YFP、RFP、tdTomato、dsRed、またはこれらの変異体などの蛍光蛋白質であってもよい。いくつかの実施形態において、前記蛍光蛋白質はGFP、またはGFP変異体である。好適には、前記GFP変異体は配列番号142として示されるアミノ酸配列、または配列番号142に対する同一性が少なくとも80%である変異体を含んでいてもよい。
eGFPの例(配列番号142)
MVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSKLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK
【0199】
好適には、前記変異体は配列番号142に対する同一性が少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%であってもよい。
【0200】
好適には、前記レポータードメインは、ルシフェラーゼ系レポーター、PETレポーター(たとえば、ヨウ化ナトリウム共輸送体(NIS)、または膜タンパク質(たとえば、CD34、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR))であってもよい。
【0201】
前記CARをコードする核酸配列とレポータードメインとは、共発現部位によって分離されてもよく、それにより各ポリペプチドが個々の実体として発現することが可能になる。好適な共発現部位は当該技術分野で周知であり、たとえば、配列内リボソーム進入部位(IRES)や自己切断ペプチドがある。
【0202】
したがって、前記CARは、さらに自己切断ドメインまたは切断ドメインを含んでいてもよい。かかる配列は、タンパク質作成中に自己切断するか、または細胞中に存在する一般的な酵素により切断されてもよい。したがって、ポリペプチド配列中にかかる自己切断ドメインまたは切断ドメインを含むことにより、第一および第二のポリペプチドが単一のポリペプチドとして発現されるようにでき、前記単一のポリペプチドがその後切断されて、個々の機能的なポリペプチドになる。好適な自己切断ドメインまたは切断ドメインには、P2Aペプチド、T2Aペプチド、E2Aペプチド、F2Aペプチド、およびフューリン部位(配列番号143~148)があるが、それらに限定されるわけではない。
P2Aペプチド-切断ドメイン:GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号143)
T2Aペプチド-切断ドメイン:GSGEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号144)
E2Aペプチド-切断ドメイン:GSGQCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号145)
F2Aペプチド-切断ドメイン:GSGVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号146)
フューリン部位-切断ドメインRXXR(配列番号147)(優先的には、RRKR(配列番号148))
【0203】
CARの例
本発明に使用するためのCARの例を以下に示す。CARは、配列番号149~152または167~169の一つ以上に対する同一性が少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%である配列を有していてもよい。好ましくは、かかる変異体のいずれも、配列番号149~152または167~169と比較して、少なくとも部分的な機能を有する。たとえば、前記変異体は、配列番号149~152または167~169の一つとして示されるアミノ酸配列の機能の、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を有していてもよい。前記変異体または誘導体は、配列番号149~152または167~169の一つのレベルに類似または同一のレベルの機能を有していてもよく、または、配列番号149~152または167~169の一つとして示されるアミノ酸配列よりも高いレベル(たとえば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなったレベル)の機能を有していてもよい。
配列番号149-CAR1の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、CD8αヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号150-CAR2の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSAAAIEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号151-CAR3の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、CD8αヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、CD3z細胞質、FP2Aドメイン、およびGFPを含むCAR
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRRRKRGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPTRGGGATMVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSKLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK
配列番号152-CAR4の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、CD8αヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、CD3z細胞質、FP2Aドメイン、およびGFPを含むCAR
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSAAAIEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRRRKRGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPTRGGGATMVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSKLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK
配列番号167-CAR5の例 CD8リーダー、ASGR1 VH(VH1、配列番号74)、リンカー、ASGR1 VL(VK1、配列番号78)、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQAIGRWLLWYQQKPGKAPKLLIGPGSRLRSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFVTYYCQQAYAWPPTFGQGTKVEIKRAAAIEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号168-CAR6の例 CD8リーダー、ASGR1 VH(VH2、配列番号75)、リンカー、ASGR1 VL(VK2、配列番号79)、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
MALPVTALLLPLALLLHAARPELQLLEFGGGLVQPGGSLRLSCTTSGFTFSRYTMGWVRQAPGKGLEWVSAIGPPGSNTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWVMLRGRFDYWGQGTLVTVSSLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQAIGRWLLWYQQKPGKAPKHLIGPGSRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQAYQLPVTFGQGTKVEIKRAAAIEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
配列番号169-CAR7の例 CD8リーダー、ASGR1 VH(VH3、配列番号76)、リンカー、ASGR1 VL(VK3、配列番号80)、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEDYGMGWVRQAPGKGLEWVSAIGRNGSQTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKLRRGRGLNTFTLDYWGQGTLVTVSSLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQAIGRWLLWYQQKPGKAPKLLIGPGSRLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTIGSLQPEDFATYYCQQAYSLPPTFGQGTKVEIKRAAAIEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0204】
変異体、誘導体、および断片
本明細書で言及されている特異的なタンパク質、ペプチド、およびヌクレオチドに加えて、その誘導体、変異体、および断片の使用も本発明に包含される。本発明のタンパク質またはポリペプチドに関連した、本明細書における「誘導体」という用語は、前記配列からの、または前記配列への、1個(またはそれ以上)のアミノ酸残基の置換、変異、修飾、代替、欠失、および/または付加によって、得られたタンパク質またはポリペプチドは所望の機能を保持するのであれば、かかるアミノ酸残基の1個(またはそれ以上)の置換、変異、修飾、代替、欠失、および/または付加を含む(前記所望の機能は、たとえば、前記誘導体または変異体が抗原結合ドメインの場合、抗原結合ドメインの標的抗原と結合する能力であってもよく、または前記誘導体または変異体がシグナル伝達ドメインの場合、前記所望の機能は前記ドメインが信号を発する(たとえば、下流の分子を活性化または不活性化する)能力であってもよい)。前記変異体または誘導体は、対応する参照配列と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の機能;対応する参照配列と比較して、近いレベル、または同じレベルの機能;または対応する参照配列よりも高いレベルの機能、たとえば、未改変の配列と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなった機能を有していてもよい。
【0205】
典型的には、アミノ酸置換は、それにより改変された配列が求められる活性または能力を保持するなら、たとえば1個、2個または3個から10個または20個の置換からなっていてもよい。たとえば、対応する参照配列と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の活性を保持するなら、または対応する参照配列と比較して、近いレベル、または同じレベルの活性を保持するなら、または対応する参照配列よりも高いレベルの活性、たとえば、未改変の配列と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%高くなった活性を保持するなら、上記置換からなっていてもよい。アミノ酸置換では、天然由来ではない類似体の使用を含んでいてもよい。
【0206】
本発明で使用されるタンパク質またはペプチドもまた、アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を有してもよく、それによりサイレントな変化を生じ、機能的に同等のタンパク質となってもよい。内在的な機能が保持される限り、前記残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または、両親媒性における類似に基づいて、意図的なアミノ酸置換を行ってもよい。たとえば、負帯電アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸などがあり、正帯電アミノ酸としては、リジンおよびアルギニンがあり、類似の親水性値をもつ非荷電の極性先端基を有するアミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシンがある。
【0207】
たとえば下記表にしたがい、保存的置換を行ってもよい。第二欄の同じブロックにあるアミノ酸、好ましくは第三欄の同じ列にあるアミノ酸は、互いに置換できうる。
【表5】
【0208】
前記誘導体は、相同体または変異体でもよい。本明細書における「相同体」または「変異体」という用語は、野生型アミノ酸配列および野生型ヌクレオチド配列と、特定の相同性を有した実体を意味する。「相同性」という用語は、「同一性」と同等視することができる。
【0209】
相同配列または変異型配列は、前記対象配列に対する同一性が少なくとも50%、55%、65%、75%、85%、または90%、好適には少なくとも95%、97%、または99%であってもよいアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を含んでもよい。典型的には、前記相同体は、たとえば、対象のアミノ酸配列、または対象のヌクレオチド配列によってコードされているアミノ酸配列と同じ結合部位などを含むなど、類似の化学的特性/機能を有するだろう。相同性は、類似(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考えることもできるが、本発明の文脈においては、配列同一性の観点から相同性を表すことが好ましい。
【0210】
相同性の比較は、目視で、またはより一般には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実施することができる。これら市販のコンピュータプログラムは、二つ以上の配列間の百分率相同性または同一性の比率を算出できる。百分率相同性は、連続配列に対して算出してもよい。すなわち、一方の配列を他方の配列と整列させ、一方の配列中の各アミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と一残基ずつ直接比較する。これは、「非ギャップ(ungapped)」アライメントと呼ばれる。通常、そのような非ギャップアライメントは、比較的短い数の残基にわたってのみ行われる。
【0211】
これは非常に単純で一貫した方法であるが、たとえば、1個の挿入または欠失を除いては同一の配列対において、該ヌクレオチド配列中のその挿入または欠失が、その後に続くコドンがアライメントから外されうる、すなわちグローバルアライメントが行われた場合に%相同性の大幅な減少を潜在的に生じるということが考慮されていない。その結果、ほとんどの配列比較方法は、全体的な相同性スコアを過度に不利にすることなく、考えられる挿入および欠失を考慮に入れた最適アライメントを作成するように設計される。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入して局所相同性を最大にすることによって達成される。
【0212】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、アライメント中に生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当て、同じ数の同一アミノ酸について、できるだけ少ないギャップの配列アライメント(2つの比較した配列間の類似性が高いことを反映する)が、多くのギャップを持つスコアよりも高いスコアを達成するようにする。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップ内のそれぞれ後続の残基に対してより小さいペナルティを課す「アフィンギャップコスト」が通常使用される。これは、最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、当然ながら、ギャップのより少ない最適化アライメントを作成する。ほとんどのアライメントプログラムは、ギャップペナルティを改変することを可能にする。しかしながら、そのようなソフトウェアを配列比較に使用する際は、デフォルト値を使用することが好ましい。たとえば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する際、アミノ酸配列のデフォルトのギャップペナルティは、ギャップについては-12、それぞれの延長については-4である。
【0213】
最大百分率相同性の算出は、したがって、ギャップペナルティを考慮に入れ、最適アライメントの作成を最初に必要とする。そのようなアライメントを実行するのに好適なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, U.S.A.; Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Res. 12: 387)である。配列比較を行うことができる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al. (1999) ibid - Ch. 18を参照)、FASTA(Atschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 403-410)およびGENEWORKS比較ツール一式が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。BLASTおよびFASTAの両方が、オフラインおよびオンライン検索に利用可能である(Ausubel et al. (1999) ibid, pages 7-58 to 7-60を参照)。しかしながら、いくつかのアプリケーションについては、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST2 Sequencesと呼ばれる別のツールも、タンパク質およびヌクレオチド配列を比較するために利用可能である(FEMS Microbiol. Lett. (1999)174:247-50; FEMS Microbiol. Lett. (1999)177:187-8参照)。
【0214】
最終的な百分率相同性は同一性の観点から測定することができるが、アライメントプロセス自体は、典型的には、オールオアナッシング対比較に基づくものではない。その代わりに、化学的類似性または進化距離に基づいて対ごとの比較にスコアを割り当てるスケール化類似性スコアマトリクスが一般的に使用される。一般に使用されるそのようなマトリクスの一例は、BLOSUM62マトリクス(一連のBLASTプログラムのデフォルトマトリクス)である。GCG Wisconsinプログラムでは、一般的には、パブリックデフォルト値または供給されるのであればカスタムシンボル比較表のいずれかが使用される(さらに詳しくはユーザーマニュアルを参照されたい)。しかしながら、いくつかのアプリケーションについては、GCGパッケージではデフォルト値を使用することが好ましく、他のソフトウェアの場合は、BLOSUM62のようなデフォルトマトリクスを使用することが好ましい。好適には、百分率同一性は、参照配列および/または問い合わせ配列の全体にわたって判断される。
【0215】
ソフトウェアが最適アライメントを作成すると、百分率相同性、好ましくは百分率配列同一性を算出することが可能である。ソフトウェアは、典型的にはこれを配列比較の一部として行い、数値結果を与える。
【0216】
「断片」は、典型的には、機能の点で、着目のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの選択された領域のことである。したがって、「断片」は、全長ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸または核酸の配列のことである。
【0217】
そのような誘導体、変異体、および断片は部位特異的変異誘発などの標準的な組換えDNA技術を使用して調製されてもよい。挿入が作製される場合には、挿入位置のどちらか一方の側で天然由来の配列に対応する5’および3’隣接領域とともに挿入部分をコード
する合成DNAが作製されてもよい。前記隣接領域は、前記配列が適切な酵素(または複数の酵素)で切断され合成DNAが切断場所に連結(ligated)され得るように、天然由来の配列における部位に対応する適当な制限酵素部位を含む。前記DNAは次に、コードされるタンパク質を作製するために本発明に従って発現される。これらの方法はDNA配列操作のための当該技術分野において周知の多数の標準的手法の実例となるだけであり、他の公知の手法もまた使用されてもよい。
【0218】
医薬組成物
本発明の改変されたTregまたはCARを含む医薬組成物もまた提供される。医薬組成物は、治療上有効量の医薬的に活性な薬剤、すなわち前記Tregを含む、またはそれから成る、組成物である。好ましくは、医薬組成物は薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤(それらの組み合わせを含む)を含む。「薬学的に許容可能」とは、製剤が滅菌済であり、発熱物質を含まないという意味を含む。担体、希釈剤および/または賦形剤は、Tregと親和性があり、レシピエントに対して有害ではないという意味において、「許容可能」でなければならない。典型的には、担体、希釈剤および/または賦形剤は、滅菌済であり、発熱物質を含まない生理的媒体または輸液媒体であるが、他の許容可能な担体、希釈剤、賦形剤を用いてもよい。
【0219】
治療目的の使用のために許容可能な担体、希釈剤、および賦形剤は、薬学的技術分野で周知である。薬学的担体、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図する投与経路と標準的な薬務とを考慮して選択できる。前記医薬組成物は、担体、賦形剤、または希釈剤として、またはそれらに加えて、適した結合剤、滑剤、懸濁化剤、コーティング剤、または可溶化剤を含んでいてもよい。
【0220】
薬学的に許容可能な担体の例としては、たとえば、水、塩類溶液、アルコール、シリコーン、蝋、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、珪酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、ペトロエスラル脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどがある。
【0221】
本発明に係るTregまたは医薬組成物は、本明細書に記載の疾患を治療および/または予防するのに適した様式で投与されてもよい。投与量および投与頻度は、対象の状態ならびに対象の疾患の種類および重症度などの要因によって決定されるが、適切な投与量は、臨床治験によって決定されてもよい。前記医薬組成物は、適切に処方されればよい。
本明細書に記載のTregまたは医薬組成物は、非経口投与、たとえば静脈内投与でき、または輸液技術により投与してもよい。前記Tregまたは医薬組成物は、血液と等張にするために、たとえば十分な塩類やグルコースなど、他の物質を含んだ滅菌済水溶液の形態で投与してもよい。前記水溶液は、好適に緩衝してもよい(好ましくはpH3~9)。前記医薬組成物は、適切に処方されればよい。滅菌条件のもとでの好適な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術によって容易に成しえる。
【0222】
前記医薬組成物は、輸液媒体、たとえば滅菌済等張溶液中に本発明のTregを含んでいてもよい。前記医薬組成物は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨て注射器、または複数回投与バイアルに封入してもよい。
【0223】
前記Tregまたは医薬組成物は、単回または複数回で投与されてもよい。特に、前記Tregまたは医薬組成物は、単回の使い切りで投与されてもよい。前記医薬組成物は、適切に処方されればよい。
【0224】
治療する疾患や対象、投与経路によって、前記Tregまたは医薬組成物が様々な投与量(たとえば、細胞数/kg、または細胞数/対象、などで測定)で投与されてもよい。いずれにしても、医師が個体対象にとって最も適した実際の投与量を判定するものであり、それはその対象の年齢、体重、および反応に応じて変わるであろう。しかしながら典型的には、本発明のTregについては、投与量として一人の対象につき5x107~3x109個の細胞、または108~2x109個の細胞が投与されてもよい。前記Tregは、医薬組成物に使用するために適切に変更されてもよい。たとえば、Tregは、対象に注入される前に、凍結保存されて適切な時間に解凍されてもよい。
【0225】
前記医薬組成物はさらに、リンパ球枯渇剤(たとえば、サイモグロブリン、キャンパスー1H、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、シクロホスファミド、フルダラビン)、mTOR阻害剤(たとえば、シロリムス、エベロリムス)、共刺激経路を阻害する薬剤(たとえば、抗CD40/CD40L、CTAL4Ig)、および/または特異的なサイトカイン(IL-6、IL-17、TNFalpha、IL18)などの、一つ以上の他の治療薬を含んでいてもよい。
【0226】
本発明のTregおよび/または医薬組成物を含むキットの使用も、さらに本発明に含まれる。好ましくは、当該キットは、本明細書に記載の前記方法および使用、たとえば、本明細書に記載の治療方法に用いられるためのものである。好ましくは、当該キットは、キットの構成部分の使用についての指示書を含む。
【0227】
疾患の治療および/または予防方法
既存の疾患または病状を持つ対象に、前記疾患に関連する少なくとも一つの症状を少なくしたり、軽くしたり、または改善するために、および/または前記疾患の進行を遅めたり、軽減したり、または止めたりするために、前記改変されたTregを投与してもよい。
【0228】
たとえば、黄疸、暗色尿、かゆみ、腹部膨満、圧痛、倦怠、吐き気または嘔吐、および/または食欲不振などの、疾患の症状の少なくとも一つを少なくしたり、軽くしたり、または改善するために、肝疾患(たとえば、肝臓移植拒絶反応、肝臓GvHD、自己免疫性肝疾患、肝臓の炎症、肝不全など)のある対象に改変されたTregを投与してもよい。少なくとも一つの症状を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%少なくしたり、軽くしたり、または改善してもよく、または、少なくとも一つの症状を完全に癒してもよい。
【0229】
肝疾患(たとえば、肝臓移植拒絶反応、肝臓GvHD、自己免疫性肝疾患、肝臓の炎症、肝不全など)のある対象に、前記疾患の進行を遅めたり、軽減したり、または止めたりするために、改変されたTregを投与してもよい。改変されたTregが投与されない対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%疾患の進行を遅めたり、軽減したり、または止めたりしてもよく、または、前記疾患の進行を完全に止めてもよい。
または、まだ罹患していない、および/または疾患の症状を示していない対象に対して、前記疾患を予防したり、前記疾患に関連する少なくとも一つの症状を軽くしたり、または予防したりするために、前記改変されたTregを投与してもよい。対象は、前記疾患にかかりやすい体質であったり、または、前記疾患を発症する危険性を教示されているかもしれない。
【0230】
たとえば、黄疸、暗色尿、かゆみ、腹部膨満、圧痛、倦怠、吐き気または嘔吐、および/または食欲不振などの、肝疾患の症状の少なくとも一つを軽くしたり、または予防するために、肝疾患(たとえば、肝臓移植拒絶反応、肝臓GvHD、自己免疫性肝疾患、肝臓の炎症、肝不全など)にまだかかっていない、またはその症状を示していない対象に、改変されたTregを投与してもよい。改変されたTregを投与していない対象と比較して、前記少なくとも一つの症状を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽くしてもよく、または、少なくとも一つの症状を完全に予防してもよい。
【0231】
肝疾患(たとえば、肝臓移植拒絶反応、肝臓GvHD、自己免疫性肝疾患、肝臓の炎症、肝不全など)を予防するために、前記肝疾患にまだかかっていない、および/またはその症状を示していない対象に、改変されたTregを投与してもよい。改変されたTregを投与していない対象と比較して、肝疾患を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減じてもよく、または、肝疾患を完全に予防してもよい。
【0232】
肝疾患は、肝臓移植拒絶反応、肝臓GvHD、自己免疫性肝疾患、肝臓の炎症、肝不全などの病状を含み、特に、肝臓の損傷や破壊をもたらしうる、対象の中での免疫応答の望ましくない増加に関連した、肝疾患を含む。特定の実施形態において、肝疾患は、たとえば肝癌を含まなくてもよく、さらに特に、肝細胞癌(HCC)を含まなくてもよい。このように好ましくは、肝疾患は、特に肝臓内部または近くにおいての免疫応答の減少により(たとえば、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、または90%の減少により)治療または予防されてもよい病状を含む。好適には、本発明の治療方法は、本発明に係る、または本発明に係る方法により獲得可能な(たとえば、獲得された)、改変されたTreg、または本明細書において定義された(たとえば、本明細書に記載の医薬組成物中の)ポリヌクレオチドまたはベクターを、対象に投与する工程を含んでいてもよい。
【0233】
好適には、疾患の治療および/または予防のための当該方法は、本発明に係る改変されたTreg(たとえば、本明細書に記載の医薬組成物中の)を、対象に投与する工程を含んでいてもよい。
【0234】
上記方法は、下記の工程を包含していてもよい。
(i)細胞含有サンプルを単離する、または細胞含有サンプルを提供する工程;
(ii)本明細書において定義されたポリヌクレオチドまたはベクターを前記細 胞に導入する工程;および
(iii)対象に、(ii)からの前記細胞を投与する工程。
【0235】
好適には、前記細胞は、本明細書において定義されたTregである。
【0236】
好適には、前記方法の工程(ii)の前に、および/またはその後に、前記細胞含有サンプルから、富化されたTreg集団を単離し、および/または生成してもよい。たとえば、単離および/または生成は、工程(ii)の前に、および/またはその後に行い、富化されたTregサンプルを単離し、および/または生成してもよい。本発明のCAR、ポリヌクレオチド、および/またはベクターを含む細胞および/またはTregについて富化を行うために、工程(ii)の後に富化を行ってもよい。
【0237】
好適には、前記ポリヌクレオチドまたはベクターは、形質導入および/または遺伝子導入によって導入してもよい。
【0238】
好適には、前記細胞は、自家および/または同種細胞である。
【0239】
好適には、改変されたTregは、一つ以上の他の治療薬と組み合わせて投与してもよく、他の治療薬としては、リンパ球枯渇剤(たとえば、サイモグロブリン、campathー1H、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、シクロホスファミド、フルダラビン)、mTOR阻害剤(たとえば、シロリムス、エベロリムス)、共刺激経路を阻害する薬剤(たとえば、抗CD40/CD40L、CTAL4Ig)、および/または特異的なサイトカイン(IL-6、IL-17、TNFalpha、IL18)などがある。改変されたTregは、前記一つ以上の他の治療薬と同時にもしくは逐次的に(つまり、その前、または後に)投与してもよい。
【0240】
肝臓移植
肝臓移植は、末期の肝疾患の患者にとって、現在利用可能な唯一の治療処置の選択肢である。近年の免疫抑制剤の進歩にもかかわらず、急性同種移植拒絶反応は依然として肝臓移植の一般的な合併症であり、その発生率は肝臓移植の20%~40%である。ほとんどの場合、肝臓移植後一ケ月以内に拒絶が発生する。初期の拒絶エピソードが、長期的な移植成功や患者アウトカムを大きく悪化させることはない。これに対して、遅発性の同種移植拒絶反応(肝臓移植後3~6ケ月を超える)は、低い移植生存率と関連している(Dogan, N., et al., 2018. Journal of International Medical Research, 46(9), pp.3979-3990)。
【0241】
本発明は、本発明の改変されたTregまたは医薬組成物を対象に投与する工程を含む、肝臓移植組織に対する寛容を誘発する方法を提供する。好適には、前記対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0242】
本明細書において、「肝臓移植組織に対する寛容を誘導する」とは、レシピエントに移植された肝臓への寛容を誘導することをいう。換言すれば、肝臓移植組織に対する寛容を誘導するとは、ドナー移植臓器に対するレシピエントの免疫応答のレベルを下げることを意味する。移植された肝臓に対する寛容を誘導することで、拒絶反応の発生率を低下させ、移植を受けた患者が必要とする免疫抑制剤の量を減らし、または、免疫抑制剤の中断を可能にしてもよい。
【0243】
本発明はまた、肝臓移植拒絶反応を治療および/または予防する方法を提供し、前記方法は、本発明の改変されたTregまたは医薬組成物を、対象に投与する工程を含む。好適には、前記対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。好適には、肝臓移植拒絶反応を治療および/または予防するというのは、肝臓移植レシピエントが必要とする免疫抑制剤の量を減らすか、または、免疫抑制剤の中断を可能にすることをいうものであってもよい。
【0244】
一実施形態において、対象は免疫抑制治療を受けている肝臓移植レシピエントである。一実施形態において、好ましくは肝臓移植組織に対する寛容を誘導する、または肝臓移植拒絶反応を治療および/または予防することに加えて、本発明は肝臓組織の修復および/または肝臓の再生を促進する。
【0245】
移植片対宿主病
本発明は、肝臓移植片対宿主病を治療および/または予防する方法を提供し、前記方法は、本発明の改変されたTregまたは医薬組成物を、対象に投与する工程を含む。対象は肝臓移植レシピエントであればよい。好適には、前記対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0246】
GvHDは、遺伝的に異なる人物から組織の移植を受けた後に一般的に起こる合併症である。GvHDは、一般的に、骨髄移植に伴って起こるものなど、幹細胞の移植に関連する。GvHDはまた、肝臓移植組織など、移植された組織の他の形態に対しても適用される。ドナーから提供された組織(移植組織)の中に残る、ドナーの免疫システムの白血球細胞が、レシピエント(宿主)を異物(非自己)として認識する。そして、移植された組織の中にある白血球細胞が、レシピエントの体の細胞を攻撃し、GvHDを起こす。典型的な意味で、急性移植片対宿主病の特徴は、肝臓、皮膚、粘膜、および消化管に対する選択的な損傷である。したがって、前記対象は肝臓の損傷、すなわち肝臓GvHDを有していてもよい。
【0247】
いくつかの実施形態において、前記対象は移植レシピエントであり、前記移植は、肝臓、腎臓、心臓、肺臓、膵臓、小腸、胃、骨髄、血管柄付複合組織移植、および皮膚の移植組織から選択される。好ましくは、前記対象は肝臓移植レシピエントである。
【0248】
一実施形態において、対象は免疫抑制治療を受けている肝臓移植レシピエントである。一実施形態において、肝臓GvHDを治療および/または予防することに加えて、本発明は肝臓組織の修復および/または肝臓の再生を促進する。
【0249】
自己免疫性肝疾患本発明は、本発明の改変されたTregまたは医薬組成物を対象に投与する工程を含む、自己免疫性肝疾患を治療および/または予防する方法を提供する。好適には、前記対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0250】
好適には、前記自己免疫性肝疾患は慢性自己免疫性肝疾患である。
【0251】
前記自己免疫性肝疾患は、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、および/または(原発性)硬化性胆管炎の一つ以上から選択されてもよい。自己免疫性肝疾患は、重複した特徴を持ちうる慢性的で進行の遅い炎症性肝疾患である(Decock, S., McGee, P. and Hirschfield, G.M., 2009. Bmj, 339, p.b3305)。
【0252】
自己免疫性肝炎は、通常、再発性の免疫介在性肝炎である。患者は、臨床的には、症状として関節痛と倦怠を訴え、患者の3分の1には硬変がある。検査でわかる初期の異常の特徴は、肝臓酵素(トランスアミナーゼ)の上昇である(Decock, S., McGee, P. and Hirschfield, G.M., 2009. Bmj, 339, p.b3305)。自己免疫性肝炎はまた、急性の疾患として現れ、これは治療せずにいると肝不全および死に至る。
【0253】
原発性胆汁性胆管炎は、進行の遅い慢性の、胆汁うっ滞性の疾患であり、小管肉芽腫性胆管炎(small duct granulomatous cholangitis)および生化学的胆汁うっ滞(アルカリホスファターゼの上昇)という特徴がある。現在、原発性胆汁性胆管炎と診断された患者の60%が、症状が無く、ほとんどが肝硬変ではない疾患を有している。症状がある場合、倦怠、かゆみ、右上腹部の違和感が一般的であるが、疾患の深刻さは示さない。しかし、症状が無い場合でも、原発性胆汁性胆管炎の患者は、母集団と比較して、長期生存率が有意に低下する(Decock, S., McGee, P. and Hirschfield, G.M., 2009. Bmj, 339, p.b3305)。
【0254】
原発性硬化性胆管炎は、肝臓内および/または肝臓外の胆管の線維化炎症性破壊を特徴とする、慢性的な胆汁うっ滞性の肝疾患である。原発性硬化性胆管炎には、今のところ治療法が無い。いったん症状が現れれば、約50%の確率で移植が必要となり、10年間にわたって10%の胆管細胞癌のリスクがある(Decock, S., McGee, P. and Hirschfield, G.M., 2009. Bmj, 339, p.b3305)。
【0255】
一実施形態において、本発明は、自己免疫性肝疾患の治療および/または予防に加えて、肝臓組織の修復および/または肝臓の再生を促進する。
【0256】
肝臓の炎症
本発明は、本発明の改変されたTregまたは医薬組成物を対象に投与する工程を含む、炎症性肝障害を治療および/または予防する方法を提供する。好適には、前記対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
【0257】
肝臓組織の炎症はまた、肝炎としても知られている。肝炎は、急性でも慢性でもありうる。急性肝炎は、自然と治ることもありうるが、慢性肝炎となることもあれば、まれに急性肝不全になることもある。時が経つにつれ、慢性の状態が肝臓の瘢痕(硬変)、慢性肝不全、および/または肝癌になりうる。肝硬変の徴候や症状には、黄疸、腹水貯留(腹腔内の体液の蓄積)、倦怠、肝性脳症(肝不全によって起こる脳の機能不全)などがある。
【0258】
肝炎の原因は、大きくは、感染、代謝、アルコール、虚血、自己免疫、および遺伝というカテゴリーに分けることができる:。このように、いくつかの実施形態において、肝炎は、感染性肝炎、代謝性肝炎、アルコール性肝炎、虚血性肝炎、自己免疫性肝炎、および遺伝性肝炎から選択される。感染性肝炎には、ウイルス性肝炎、寄生虫性肝炎、および細菌性肝炎がある。ウイルス性肝炎は、ウイルス性感染によって起こる肝臓の炎症である。それは、比較的急な発症を伴う新たな感染としての急性の状態を呈しうるか、または慢性の状態を呈しうる。ウイルス性肝炎のもっともよくある原因は、5つの、互いに関連性の無い、肝臓指向性ウイルス肝炎A、B、C、D、およびE型である。サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、および黄熱病など、他のウイルスも肝臓の炎症を起こしうる。また、単純ヘルペスウイルスがウイルス性肝炎を起こした症例も数十例報告されている。
【0259】
寄生虫性肝炎は、寄生虫性感染によって起こる肝臓の炎症である。原生動物のうち、クルーズトリパノソーマ、リーシュマニア属、およびマラリア原虫属はすべて肝臓の炎症の原因となりうる。蠕虫のうち、瓜実条虫は肝臓に感染して、特徴的な肝エキノコックス症を生じさせる。Fasciola hepaticaやClonorchis sinensisなど肝吸虫は、胆管に寄生し、進行した肝炎や肝線維症を起こす。
細菌性肝炎は、細菌性感染によって起こる肝臓の炎症である。急性肝炎は、髄膜炎菌、淋菌、ヘンセラ菌、ライム病ボレリア、サルモネラ属細菌、ブルセラ属細菌、およびカンピロバクター属細菌によって生じる。慢性または肉芽腫性の肝炎は、ミコバクテリア属細菌、トロフェリマ・ホウィップリ、梅毒トレポネーマ、コクシエラ菌、リケッチア属細菌の感染で見られる。
アルコール性肝炎は、アルコールの過剰摂取による肝臓の炎症である。アルコール性肝炎は、肝硬変、肝不全および/または癌に至る可能性のある慢性的な課程を有しうるか、または、急性の症状を示しうる。急性アルコール性肝炎の深刻なケースでは、3カ月死亡率が50%である。薬品、産業毒、ならびに、薬草および栄養補助食品など、多くの化学的薬剤もまた、中毒性肝炎の原因となりうる。
【0260】
ノンアルコール脂肪性肝炎は、代謝性肝炎の最もよくある形態であるが、これは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のスペクトル内にある。非アルコール性脂肪性肝疾患は、アルコールをほとんど使用しないかアルコール使用歴が無いが、かわりにメタボリック症候群、肥満、インシュリン抵抗性および糖尿病、ならびに高トリグリセリド血症との関連が大きい人々に生じる。非アルコール性脂肪性肝疾患の結果、非アルコール脂肪性肝炎になりうる。脂肪性肝炎は、脂肪性肝疾患の一種であり、肝臓の脂肪蓄積を伴う肝臓の炎症が特徴であり、硬変、肝不全、および/または肝癌に至る可能性がある。虚血性肝障害またはショック肝としても知られる虚血性肝炎は、肝臓への不十分な血流(とその結果起こる不十分な酸素輸送)によって生じる急性肝損傷として定義される病状である。
肝炎の遺伝的な原因としては、アルファ1アンチトリプシン欠損、ヘモクロマトーシス、およびウィルソン病がある。
【0261】
いくつかの実施形態において、肝臓の炎症には、識別可能な原因が無い。
【0262】
一実施形態において、本発明は、炎症性肝障害の治療および/または予防に加えて、肝臓組織の修復および/または肝臓の再生を促進する。
【0263】
肝臓の修復または再生
本発明は、本発明の改変されたTregまたは医薬組成物を対象に投与する工程を含む、肝臓組織の修復および/または肝臓の再生を促進する方法を提供する。好適には、前記対象は哺乳動物であり、好ましくはヒトである。前記対象は、肝硬変、急性肝不全、または急性憎悪した慢性肝不全を有していてもよい。
【0264】
本明細書において、「肝臓の再生」とは、損傷後に、肝臓の構造および機能を傷を残さずに再現することをいうものであってもよい(Cordero-Espinoza, L. and Huch, M., 2018. The Journal of clinical investigation, 128(1), pp.85-96)。たとえば、肝臓の再生は、元の肝臓の質量の、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%を回復する結果となればよい。本発明の方法は、最大限の肝臓の質量が達成されるまでにかかる時間を減少させてもよく、たとえば、改変されたTregまたは医薬組成物が投与されない対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少させてもよい。
【0265】
本明細書において、「肝臓組織の修復」とは、損傷(たとえば慢性的損傷)後に、傷(すなわち線維症)とともに、肝臓の構造および機能を再現することをいうものであってもよい(Cordero-Espinoza, L. and Huch, M., 2018. The Journal of clinical investigation, 128(1), pp.85-96)。これは、機能的柔組織を網状の細胞外基質(ECM)と置き換えることを特徴としてもよい。前記肝臓の構造は変えられてもよく、最適な機能が妨げられてもよい。たとえば、肝臓修復は、元の肝臓の機能の、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%を回復する結果となってもよい。本発明の方法は、最大限の肝臓の機能に至るまでにかかる時間を減少させてもよく、たとえば、改変されたTregまたは医薬組成物が投与されない対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少させてもよい。
【0266】
本発明の改変されたTregは、肝臓の再生および組織修復にかかわる遺伝子を発現させて、しっかりした肝臓の修復および/または再生を促進してもよい。
【0267】
主な成人の肝細胞は寿命が長く、正常なら細胞分裂しないが、炎症性の損傷に応じて増殖する、または部分肝切除後に増殖する、能力を維持している。この能力は、齧歯動物での3分の2部分肝切除モデルによって最も明瞭に示されている。このモデルでは、肝臓の3分の2が外科的に除去され、その残りの肝臓が、元の肝臓の質量が回復されるまで大きくなり-手術後おおよそ1週間-、その後再生プロセスが停止する。ヒトでは、虚血または肝炎による肝臓の損傷の後に最もよく肝臓の再生が起こる(Taub, R., 2004. Nature reviews Molecular cell biology, 5(10), p.836-847)。肝臓の腫瘍の治療として部分肝切除を受けているヒトの中で、または、生体肝移植中に、よく似た現象が起こる。さらに、ヒトにおいて、虚血、中毒、および急性または慢性肝炎による肝細胞への損傷後に、肝臓の再生が起こる。
【0268】
好適には、肝臓が傷害、および/または肝炎による損傷されていてもよい。いくつかの実施形態において、肝臓組織の修復および/または肝臓の再生を促進することに加えて、本発明の改変されたTregはさらに、肝炎を治療する。肝炎は、感染性肝炎、代謝性肝炎、アルコール性肝炎、虚血性肝炎、自己免疫性肝炎、および遺伝性肝炎から選択されてもよい。一実施形態において、肝炎は劇症性でなくてもよいし、慢性肝炎でなくてもよい。
【0269】
肝臓の再生のおかげで、移植のために生体ドナーからの肝臓部分を使用することが可能になり、それによって、移植に利用可能な臓器の数を増加させている。肝臓移植の数の増加は、生体血縁ドナーの組織や小型サイズの移植臓器を使用することで行っているが、このためには、少なくともいくらか肝臓を再生したり修復したりすることが移植の成功に必要である(Taub, R., 2004. Nature reviews Molecular cell biology, 5(10), p.836-847)。
【0270】
このように、前記対象は、肝臓移植レシピエント、または部分肝切除を受けている患者(たとえば、肝臓移植のための生体ドナーとして、または外科的切除を必要とする肝臓腫瘍があるため)であってもよい。前記肝臓は、移植された肝臓であってもよい。
硬変(肝臓の線維症)、脂肪症(脂肪肝)や、加齢による症状さえも含まれる、なんらかの肝臓の症状を有するヒトは、肝臓の再生が弱まっており、その結果、肝臓の傷害または損傷に応じて疾病率や死亡率が高まる(Taub, R., 2004. Nature reviews Molecular cell biology, 5(10), p.836-847)。
【0271】
このように、前記対象は、肝臓の再生が弱まっていてもよく、好ましくはその原因が、急性肝不全、硬変、急性憎悪した慢性肝不全、肝炎、脂肪症、脂肪性肝炎、および加齢のうちの一つ以上である。
【0272】
一実施形態において、本発明は、肝臓組織の修復および/または肝臓の再生を促進することに加えて、免疫介在性の損傷を治療および/または予防する。たとえば、本発明は、対象における肝臓移植組織に対する寛容を誘発してもよく、または、対象において肝臓移植拒絶反応、肝臓移植片対宿主病(GvHD)、自己免疫性肝疾患、または炎症性肝障害を治療および/または予防してもよい。
【0273】
修復および/または再生のためのこれらの実施形態(および、本明細書に記載の、修復および/または再生が関わる他の実施形態)で使用するための、好ましいCARは、アルブミン産生を増加または刺激することができ、たとえば、肝臓中で、たとえば肝臓の細胞または肝臓組織、たとえば肝細胞中で、アルブミン濃度やレベルを増加する、および/またはアルブミン産生を刺激することができる。
【0274】
このように、本発明のさらなる他の態様は、対象の肝臓の組織または細胞における、アルブミン産生の増加または刺激に使用するための、またはアルブミン濃度やレベルの増加および/またはアルブミン産生の刺激に使用するための、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を提供し、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0275】
別の観点から、本発明のこの態様は、対象の肝臓の組織または細胞において、アルブミン産生を増加または刺激する方法、またはアルブミンレベルを増加させる方法を提供し、前記方法は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物を前記対象に投与する工程を含み、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。
【0276】
別の観点から、本発明のこの態様は、対象の肝臓の組織または細胞における、アルブミン産生の増加または刺激に使用するための、またはアルブミン濃度やレベルの増加および/またはアルブミン産生の刺激に使用するための、薬品または組成物の製造における、キメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された制御性T細胞(Treg)、または前記改変されたTregを含む医薬組成物の使用を提供し、前記CARは、肝臓特異的抗原認識ドメインを含む。アルブミンレベルが増加されるような態様における使用のための、
適切であり好ましい肝臓特異的抗原認識ドメイン、たとえば、ASGRに特異的に結合する抗原認識ドメインなどが、本明細書中の他の箇所に記載されている。この態様のための他の好ましい実施形態もまた、本明細書中の他の箇所に記載されている。
【0277】
肝細胞は、典型的には、肝臓質量の大半を構成し、肝細胞中の、肝細胞または肝臓組織サンプルをインビトロまたは患者の血液中で培養する場合の上清中の、アルブミンレベルまたはアルブミン濃度は、肝細胞など肝臓の細胞、分化、機能、および生存率のマーカーである。このように、かかる細胞中のアルブミンレベルに対する、キメラ抗原受容体(CAR)を含むTregの効果を判定することにより、抗原の刺激に応じた肝臓の細胞または肝臓組織に対する栄養効果(たとえば、肝細胞機能および/または生存率を促進する栄養シグナル)および/または細胞保護効果を媒介するCAR Tregの能力の測定または指標を提供する。
【0278】
アルブミン産生を増加または刺激できる、またはアルブミンレベルまたは濃度を増加できる、キメラ抗原受容体(CAR)を含むTregは、好適なアッセイを使用して特定できる。好適なアッセイは、当該技術分野においてよく知られている。たとえば、常用手技によって、適切な肝臓の細胞を使用して、これらの細胞中の、またはこれら細胞からの上清中の、アルブミンレベルを(たとえば、分泌されたアルブミンのレベルを調査するために)測定するインビトロアッセイが、容易に使用できるであろう。レベルは、都合に応じて、適切なCAR Tregの存在下および非存在下で測定し比較できるであろう。肝細胞、特にヒト肝細胞、たとえば初代ヒト肝細胞が、特に適切である。実施例14にアッセイの例を示す。上述したように、抗原刺激に応じて、かかるCARが今度は肝臓の細胞に対する栄養および/または細胞保護効果を媒介する能力を有し、それによって、それらを、肝臓の修復および/または再生に関わる本発明の態様における使用にとって特に適切になるようにさせる。本明細書に記載の改変されたTregを使用した治療を受けた後の患者におけるアルブミンレベルまたは濃度は、上述のように、常用手技を使用して血液サンプルを介して測定できる。
【0279】
本明細書でいう、肝臓の細胞または肝臓の組織におけるアルブミン産生またはアルブミンレベルまたは濃度の増加または刺激(またはその等価語)への言及は、適切なコントロールと比較した場合の何らかの測定可能な増加または増大または改善を含む。好ましくは、かかる増加等は有意な増加であり、好ましくは、たとえば適切なコントロールのレベルまたは値と比較した時に確率値が<0.05の、臨床的に有意かつ統計的に有意な増加である。
【0280】
適切なコントロールは、当業者により簡単に見つけられるであろう。たとえば、本発明のCAR Treg(たとえば、本発明の形質導入されたCAR Treg)の存在下で観察されたアルブミンの産生、レベル、または濃度であって、当該CAR Tregの非存在との比較(たとえば、未処理のサンプルとの比較、たとえば適切なコントロール培地のみとの比較)におけるものや、たとえば、本発明のCAR Treg(たとえば、本発明の形質導入されたCAR Treg)の存在下で観察されたアルブミンの産生、レベル、または濃度であって、形質導入されていないTreg(たとえば、活性化された、または非活性化/休眠状態の、形質導入されていないTreg)の存在との比較におけるものを含むであろう。
【0281】
本発明のCAR Treg(たとえば、本発明の形質導入されたCAR Treg)の場合に、肝臓の細胞におけるアルブミンの産生、レベル、または濃度の増加が観察される実施形態において、少なくとも(または最大)1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、または50倍のアルブミンレベルまたは濃度の改善または増加が観察されることが好ましい。たとえば、本発明のCAR Tregの非存在下で観察されるレベルまたは濃度との比較において、たとえば、未処理のサンプルまたは適切なコントロール培地のみの場合と比較して、少なくとも(または最大)5倍、7倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍のアルブミンレベルまたは濃度の改善または増加が、本発明の好ましいCAR Tregの場合に観察されてもよい。たとえば、形質導入されていない、または遺伝子導入されていないTregの場合に観察されるレベルの比較において、たとえば形質導入されていない活性化された、または非活性化/休眠状態のTregと比較した時に、少なくとも(または最大)1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、7倍、10倍のアルブミンレベルまたは濃度の改善または増加が、本発明の好ましいCAR Tregの場合に観察されてもよい。
【0282】
肝線維症、硬変、急性肝不全、および急性憎悪した慢性肝不全
本発明は、肝線維症、肝硬変、急性肝不全、または急性憎悪した慢性肝不全を治療および/または予防する方法を提供する。
【0283】
肝線維症、肝硬変、急性肝不全、または急性憎悪した慢性肝不全を改善するには、典型的には、肝臓の免疫介在性の損傷を治療および/または予防すること、および肝臓の再生を促進することが必要である。
【0284】
肝線維症は、臓器の構造を変えて正常に機能させなくするため、主要な死因の一つである。肝線維症は、ウイルス性肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患や、その他の肝障害などの慢性的な肝臓の疾患に起因する創傷治癒過程の結果、組織に起こったものである。原繊維コラーゲンが豊富な細胞外基質(ECM)の過剰な蓄積が、典型的な肝線維症の所見である。ECMの過剰な蓄積は、肝臓の正常な構造を変化させ、その結果、病態生理学的な損傷を臓器にもたらす(Suk, K.T. and Kim, D.J., 2015. World journal of hepatology, 7(3), p.607)。
【0285】
肝硬変は、肝臓の脈管構造および肝臓の構造の崩壊を伴う、肝線維症の進行した段階と定義される。組織学的には、慢性的な傷害に対して繊維状組織の再生小結節が形成され、肝硬変を起こす。その結果、肝線維症および/または硬変のために肝臓の構造が崩れ、血行動態が不安定になり、門脈圧亢進症を起こす(Suk, K.T. and Kim, D.J., 2015. World journal of hepatology, 7(3), p.607)。
【0286】
急性肝不全は、本明細書では、以前からわかっている肝疾患が無い患者における肝細胞機能障害、特に凝血異常および脳障害の急な発生(development)として定義される。たとえば、「急性肝不全」は、肝臓の症状の発症より26週以内の脳障害の発生として定義されてもよい。これは、8週以内の脳障害の発症が条件である「劇症肝不全」と、8週後26週以前の脳障害の発症を規定する「亜劇症」とにさらに分類されてもよい。別の方法では、7日以内の発症の「超急性」、7日から28日の間の発症の「急性」、および28日から24週の間の発症の「亜急性」を定義する。
【0287】
急性憎悪した慢性肝不全は、臓器の障害と高い短期死亡率に関連づけられる、慢性肝疾患の急性代償不全によって特徴づけられる。アルコールおよび慢性ウイルス性肝炎は、最も多い潜在的な肝疾患である(Hernaez, R., et al., 2017. Gut, 66(3), pp.541-553)。
【0288】
ポリヌクレオチド
本発明はさらに、本発明のCARをコードするポリヌクレオチド提供する。
【0289】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含んでいてもよい。それらは、一本鎖または二本鎖であってもよい。多数の様々なポリヌクレオチドが、遺伝子コードの退化の結果、同じポリペプチドをコードできるポリヌクレオチドが数多く様々あることを、当業者は理解しているであろう。さらに、当業者が常用手技を使用して、本発明のポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換基を作り、本発明のポリペプチドが発現される特定の宿主個体のコドン使用を反映させてもよいことが、理解されるであろう。
【0290】
前記ポリヌクレオチドは、当該技術分野で利用可能な任意の方法で改変してもよい。本発明のポリヌクレオチドのインビボ活性を向上し、または寿命を伸ばすために、かかる改変を行ってもよい。
【0291】
DNAポリヌクレオチドのようなポリヌクレオチドは、遺伝子組換え、合成、または当業者が利用可能な任意の手段によって作成してもよい。標準的な技術でポリヌクレオチドのクローンを作ってもよい。
【0292】
より長いポリヌクレオチドは、一般的に、遺伝子組換え手段を使用して、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技術を使用して作成されるだろう。これは、クローンを作りたい標的配列の横に並べた一対のプライマー(たとえば、ヌクレオチドが約15~30個のもの)を作り、前記プライマーを動物またはヒトの細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅をもたらすような条件でポリメラーゼ連鎖反応を行い、増幅された断片を単離し(たとえば、アガロースゲルで反応混合物を精製することにより)、増幅されたDNAを回収することを含むだろう。前記プライマーは、増幅されたDNAが好適なベクターにクローニングされるように、好適な制限酵素認識部位を含むように設計されてもよい。
【0293】
本発明で使用されるポリヌクレオチドは、コドン最適化されてもよい。コドン最適化は、以前より、WO1999/41397およびWO2001/79518に記載されている。細胞が異なっていれば、特定のコドンの使用も異なる。このコドンバイアスは、細胞タイプにおける特定のtRNAの相対的存在量の偏りに対応している。配列中のコドンを変えて、対応するtRNAの相対的存在量に合うようにコドンを適合させることにより、発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞タイプにおいて少ないとわかっているコドンを故意に選択することによって、発現を減少させることが可能である。このように、翻訳調節の度合いをさらに増やすこともできる。
【0294】
本発明のCARの例(配列番号149~152または167~169)をコードするヌクレオチド配列の例を以下に示す。本発明のCARをコードするポリヌクレオチドは、配列番号153~156または170~172の一つ以上に対する同一性が少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%である配列を有していてもよい。
配列番号153-CAR1の例をコードするヌクレオチド配列の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、CD8αヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGTCTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTGAGAAGTATGCGATGGCGTGGGTCCGCCAGGCCCCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGGTCTCACGGATTTCGGCGAGGGGTGTGACGACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCCGCGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCTGAGGACACCGCGGTATATTACTGTGCGAAACATAAGCGGCACGAGCATACTCGTTTTGACTCCTGGGGTCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGCACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTGGGCGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGCGGAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCCGGCGGCCTGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAA
配列番号154-CAR2の例をコードするヌクレオチド配列の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGTCTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTGAGAAGTATGCGATGGCGTGGGTCCGCCAGGCCCCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGGTCTCACGGATTTCGGCGAGGGGTGTGACGACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCCGCGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCTGAGGACACCGCGGTATATTACTGTGCGAAACATAAGCGGCACGAGCATACTCGTTTTGACTCCTGGGGTCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGCGCGGCCGCCATCGAGGTGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGCTGGACAACGAGAAGAGCAACGGCACCATCATCCACGTGAAGGGCAAGCACCTGTGCCCCAGCCCCCTGTTCCCCGGCCCCAGCAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTGGGCGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGCGGAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCCGGCGGCCTGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAA
配列番号155-CAR3の例をコードするヌクレオチド配列の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、CD8αヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、CD3z細胞質、FP2Aドメイン、およびGFPを含むCAR
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGTCTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTGAGAAGTATGCGATGGCGTGGGTCCGCCAGGCCCCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGGTCTCACGGATTTCGGCGAGGGGTGTGACGACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCCGCGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCTGAGGACACCGCGGTATATTACTGTGCGAAACATAAGCGGCACGAGCATACTCGTTTTGACTCCTGGGGTCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGCACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTGGGCGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGCGGAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCCGGCGGCCTGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCAGGAGAAAAAGAGGAAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTACGCGTGGAGGTGGCGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCAAGCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAA
配列番号156-CAR4の例をコードするヌクレオチド配列の例 CD8リーダー、ASGR1 VH、CD8αヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、CD3z細胞質、FP2Aドメイン、およびGFPを含むCAR
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGTCTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTGAGAAGTATGCGATGGCGTGGGTCCGCCAGGCCCCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGGTCTCACGGATTTCGGCGAGGGGTGTGACGACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCCGCGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCTGAGGACACCGCGGTATATTACTGTGCGAAACATAAGCGGCACGAGCATACTCGTTTTGACTCCTGGGGTCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGCGCGGCCGCCATCGAGGTGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGCTGGACAACGAGAAGAGCAACGGCACCATCATCCACGTGAAGGGCAAGCACCTGTGCCCCAGCCCCCTGTTCCCCGGCCCCAGCAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTGGGCGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGCGGAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCCGGCGGCCTGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCAGGAGAAAAAGAGGAAGCGGAGCTACTAACTTCAGCCTGCTGAAGCAGGCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTACGCGTGGAGGTGGCGCCACCATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGCTGTTCACCGGGGTGGTGCCCATCCTGGTCGAGCTGGACGGCGACGTAAACGGCCACAAGTTCAGCGTGTCCGGCGAGGGCGAGGGCGATGCCACCTACGGCAAGCTGACCCTGAAGTTCATCTGCACCACCGGCAAGCTGCCCGTGCCCTGGCCCACCCTCGTGACCACCCTGACCTACGGCGTGCAGTGCTTCAGCCGCTACCCCGACCACATGAAGCAGCACGACTTCTTCAAGTCCGCCATGCCCGAAGGCTACGTCCAGGAGCGCACCATCTTCTTCAAGGACGACGGCAACTACAAGACCCGCGCCGAGGTGAAGTTCGAGGGCGACACCCTGGTGAACCGCATCGAGCTGAAGGGCATCGACTTCAAGGAGGACGGCAACATCCTGGGGCACAAGCTGGAGTACAACTACAACAGCCACAACGTCTATATCATGGCCGACAAGCAGAAGAACGGCATCAAGGTGAACTTCAAGATCCGCCACAACATCGAGGACGGCAGCGTGCAGCTCGCCGACCACTACCAGCAGAACACCCCCATCGGCGACGGCCCCGTGCTGCTGCCCGACAACCACTACCTGAGCACCCAGTCCAAGCTGAGCAAAGACCCCAACGAGAAGCGCGATCACATGGTCCTGCTGGAGTTCGTGACCGCCGCCGGGATCACTCTCGGCATGGACGAGCTGTACAAGTAA
配列番号170-CAR5の例をコードするヌクレオチド配列の例 CD8リーダー、ASGR1 VH(VH1、配列番号74)、リンカー、ASGR1 VL(VK1、配列番号78)、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGTCTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTGAGAAGTATGCGATGGCGTGGGTCCGCCAGGCCCCAGGGAAGGGTCTGGAGTGGGTCTCACGGATTTCGGCGAGGGGTGTGACGACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCCGCGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCTGAGGACACCGCGGTATATTACTGTGCGAAACATAAGCGGCACGAGCATACTCGTTTTGACTCCTGGGGTCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGCCTGGTGACCGTGAGCAGCGGCGGCGGAGGCAGCGGTGGCGGAGGCAGCGGCGGAGGCGGTAGCGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACCGTGTCACCATTACTTGCCGGGCAAGTCAGGCGATTGGGCGGTGGTTATTGTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCGGTCCGGGTTCCCGGTTGCGAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTACAACCTGAAGATTTTGTTACGTACTACTGTCAACAGGCGTATGCCTGGCCTCCGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGGGCGGCCGCCATCGAGGTGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGCTGGACAACGAGAAGAGCAACGGCACCATCATCCACGTGAAGGGCAAGCACCTGTGCCCCAGCCCCCTGTTCCCCGGCCCCAGCAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTGGGCGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGCGGAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCCGGCGGCCTGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
配列番号171-CAR6の例をコードするヌクレオチド配列の例 CD8リーダー、ASGR1 VH(VH2、配列番号75)、リンカー、ASGR1 VL(VK2、配列番号79)、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGTTGCAGCTGTTGGAGTTTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGTCTCTCCTGTACAACCTCCGGATTCACCTTTTCGAGGTATACTATGGGTTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGTCTAGAGTGGGTCTCAGCCATTGGCCCGCCCGGGTCGAACACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGTCGGTTCACCATCTCCCGCGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCCGAGGACACCGCGGTATATTACTGTGCGAAATGGGTGATGTTGCGGGGGCGCTTTGACTACTGGGGTCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGCCTGGTGACCGTGAGCAGCGGCGGCGGAGGCAGCGGTGGCGGAGGCAGCGGCGGAGGCGGTAGCGACATCCAGATGACCCAGTCCCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACCGTGTCACCATTACTTGCCGGGCAAGTCAGGCGATTGGGCGGTGGTTATTGTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCACCTGATCGGTCCGGGTTCCCGGTTGCAAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCTACGTACTACTGTCAACAGGCGTATCAGCTGCCTGTCACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGGGCGGCCGCCATCGAGGTGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGCTGGACAACGAGAAGAGCAACGGCACCATCATCCACGTGAAGGGCAAGCACCTGTGCCCCAGCCCCCTGTTCCCCGGCCCCAGCAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTGGGCGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGCGGAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCCGGCGGCCTGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
配列番号172-CAR7の例をコードするヌクレオチド配列の例 CD8リーダー、ASGR1 VH(VH3、配列番号76)、リンカー、ASGR1 VL(VK3、配列番号80)、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジ、CD28膜貫通、CD28細胞質、およびCD3z細胞質を含むCAR
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGGAGGTGCAGCTGTTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGCGTCTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTGAGGATTATGGTATGGGGTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGAAAGGGTCTAGAGTGGGTCTCAGCGATTGGCCGCAACGGGTCGCAGACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCCGCGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGCGTGCCGAGGATACCGCGGTATATTACTGTGCGAAACTTCGGAGGGGGCGGGGTCTGAATACGTTTACGTTAGACTACTGGGGTCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCAAGCCTGGTGACCGTGAGCAGCGGCGGCGGAGGCAGCGGTGGCGGAGGCAGCGGCGGAGGCGGTAGCGACATCCAGATGACCCAGTCCCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACCGTGTCACCATTACTTGCCGGGCAAGTCAGGCGATTGGGCGGTGGTTATTGTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCGGTCCGGGTTCCCGGTTGCAAAGTGGGGTCCCATCACGTTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCGGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCTACGTACTACTGTCAACAGGCGTATAGTCTGCCTCCGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGGGCGGCCGCCATCGAGGTGGAGCAGAAGCTGATCAGCGAGGAGGACCTGCTGGACAACGAGAAGAGCAACGGCACCATCATCCACGTGAAGGGCAAGCACCTGTGCCCCAGCCCCCTGTTCCCCGGCCCCAGCAAGCCCTTCTGGGTGCTGGTGGTGGTGGGCGGCGTGCTGGCCTGCTACAGCCTGCTGGTGACCGTGGCCTTCATCATCTTCTGGGTGCGGAGCAAGCGGAGCCGGCTGCTGCACAGCGACTACATGAACATGACCCCCCGGCGGCCTGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCCAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
【0295】
上記に論じたように、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書において定義されたCARに加えてポリペプチドもコードしてもよく、たとえばレポーターまたはマーカーポリペプチドまたはタンパク質をコードしてもよい。特に、本発明のポリヌクレオチドは、さらにFOXP3ポリペプチドをコードしてもよい。
【0296】
一実施形態において、本発明のTregは、本発明のCARとFOXP3ポリペプチド(外因性FOXP3ポリペプチド)をコードする1個以上のポリヌクレオチドを含んでもよく、したがって本発明のTregは、本発明のCARとFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することにより作製してもよい。本発明のCARとFOXP3ポリペプチドは、単一のポリヌクレオチド配列でコードされてもよく、または異なるポリヌクレオチドでコードされてもよい。
【0297】
「FOXP3」は、フォークヘッドボックスP3タンパク質の略称である。FOXP3は、転写因子のFOXタンパク質ファミリーのメンバーであり、制御性T細胞の発生(development)と機能において調節経路のマスターレギュレーターとして機能する。本明細書における「FOXP3」は、FOXP3の変異体、アイソフォーム、および機能的断片を含む。
【0298】
「FOXP3ポリペプチド」は、FOXP3活性を有するポリペプチド、すなわちFOXP3標的DNAに結合できて、Tregの発生(development)と機能を調節する転写因子として機能するポリペプチドである。特に、FOXP3ポリペプチドは、野生型FOXP3(配列番号157)と同じ、または類似の活性を有していてもよく、たとえば、野生型FOXP3ポリペプチドの活性の少なくとも40、50、60、70、80、90、95、100、110、120、130、140、または150%を有していてもよい。このように、本明細書に記載のヌクレオチド配列によってコードされたFOXP3ポリペプチドは、野生型FOXP3と比較して、増加または減少した活性を有していてもよい。転写因子活性を測定する技術が、当該技術分野においてよく知られている。たとえば、転写因子DNA結合活性は、ChIPによって測定されてもよい。転写因子の前記転写調節活性は、それが調節する遺伝子の発現レベルを定量化することにより測定してもよい。遺伝子発現は、ノーザンブロット法、SAGE、qPCR、HPLC、LC/MS、ウエスタンブロット法、またはELISAなどの技術を使用して、mRNAおよび/または前記遺伝子からつ作られるタンパク質のレベルを測定することにより定量化されてもよい。FOXP3により調節される遺伝子には、IL-2、IL-4、およびIFN-γなどのサイトカインなどがある(Siegler et al. Annu. Rev. Immunol. 2006, 24: 209-26, この参照により本明細書に援用される)。下記および上記に詳細に述べられたように、FOXP3またはFOXP3ポリペプチドは、機能的断片、変異体、およびそれらのアイソフォーム、たとえば、配列番号157を含む。
【0299】
「FOXP3の機能的断片」とは、全長FOXP3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと同じかまたは類似の活性を有するFOXP3ポリペプチドをコードするFOXP3ポリペプチドの部分または領域、またはポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチド配列)をいう。前記機能的断片は、全長FOXP3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性の、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%を有していてもよい。当業者は、FOXP3の周知の構造および機能の特徴に基づいて、機能的断片を生成することができるであろう。たとえば、Song, X., et al.,2012.細胞reports, 1(6),pp.665-675; Lopes, J.E., et al.,2006に、それらが記載されている。The Journal of Immunology, 177(5), pp.3133-3142; and Lozano, T., et al, 2013. Frontiers in oncology, 3, p.294。また、NおよびC末端切断FOXP3断片が、WO2019/241549に記載され(この参照により本明細書に援用される)、たとえば下記のように配列番号157を有する。
【0300】
「FOXP3変異体」は、FOXP3ポリペプチド、またはFOXP3ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、たとえば配列番号157に対する同一性が、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%であってもよいアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、含んでいてもよい。FOXP3変異体は、野生型FOXP3と同じ、または類似の活性を有していてもよく、たとえば、野生型FOXP3ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性の少なくとも40、50、60、70、80、90、95、100、110、120、130、140または150%を有していてもよい。当業者は、FOXP3の周知の構造および機能の特徴に基づいて、および/または保存的置換を使用して、FOXP3変異体を生成することができるであろう。野生型FOXP3と比較して、FOXP3変異体は、Treg細胞中で類似または同じの代謝時間(または分解速度)を有していてもよく、たとえば、Treg細胞中での野生型FOXP3の代謝時間の少なくとも40、50、60、70、80、90、95、99、または100%を有していてもよい。いくつかのFOXP3変異体は、野生型FOXP3と比較して代謝時間(または分解速度)が少なくてもよく、WO2019/241549 (この参照により本明細書に援用される)に記載のように、たとえば、配列番号157のアミノ酸418および/または422で、たとえばS418Eおよび/またはS422Aというアミノ酸置換を有するFOXP3変異体があり、配列番号158~160に示されており、配列番号158~160は、aa418変異種(mutant)と、aa422変異種と、aa418およびaa422変異種とをそれぞれ表す。
【0301】
好適には、本明細書に記載の核酸分子、コンストラクトまたはベクトルによってコードされる前記FOXP3ポリペプチドは、UniProtKBアクセッション番号Q9BZS1(配列番号:157)やその機能的断片または変異体などの、ヒトFOXP3のポリペプチド配列を含むかそれから成ってもよい。
【0302】
本発明のいくつかの実施形態において、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号157に対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列またはその機能的断片を含むか、またはそれから成る。好適には、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号157に対する同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列またはその機能的断片を含むか、またはそれから成る。いくつかの実施形態において、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号157またはその機能的断片を含むか、またはそれから成る。
【0303】
いくつかの実施形態において、上述したように、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号157の残基418および/または422に変異を含んでいてもよく、配列番号158、配列番号159、または配列番号160に示されている通りである。
【0304】
本発明のいくつかの実施形態において、FOXP3ポリペプチドは、Nおよび/またはC末端で切断され、その結果、機能的断片が作製されてもよい。特に、FOXP3のNおよびC末端切断機能的断片は、配列番号161、またはそれに対する同一性が少なくとも80、85、90、95または99%である機能的変異体のアミノ酸配列を含むか、またはそれから成ってもよい。
【0305】
好適には、前記FOXP3ポリペプチドは配列番号157の変異体、たとえば自然変異体であってもよい。好適には、前記FOXP3ポリペプチドは配列番号157のアイソフォームであってもよい。たとえば、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号157と比較して72~106位のアミノ酸が欠失していてもよい。または、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号157と比較して246~272位のアミノ酸が欠失していてもよい。
【0306】
好適には、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号162またはその機能的断片を含む。配列番号162は、FOXP3ポリペプチドの例を表す。
【0307】
好適には、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号162に対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列またはその機能的断片を含むか、またはそれから成る。好適には、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号162に対する同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるアミノ酸配列またはその機能的断片を含む。いくつかの実施形態において、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号162またはその機能的断片を含むか、またはそれから成る。
【0308】
好適には、前記FOXP3ポリペプチドは配列番号162の変異体、たとえば自然変異体であってもよい。好適には、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号162またはその機能的断片のアイソフォームである。たとえば、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号162と比較して72~106位のアミノ酸が欠失していてもよい。または、前記FOXP3ポリペプチドは、配列番号162と比較して246~272位のアミノ酸が欠失していてもよい。
【0309】
好適には、FOXP3ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号163に示すヌクレオチド配列を含むか、またはそれから成ってもよく、前記ヌクレオチド配列はFOXP3ヌクレオチド配列の例を表す。
【0310】
本発明のいくつかの実施形態において、前記FOXP3ポリペプチドまたは変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号163に対する同一性が少なくとも70%であるヌクレオチド配列、または機能的FOXP3ポリペプチドをコードするその機能的断片を含む。好適には、前記FOXP3ポリペプチドまたは変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号163に対する同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるポリヌクレオチド配列、または、機能的FOXP3ポリペプチドをコードするその機能的断片を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記FOXP3ポリペプチドまたは変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号163、または機能的FOXP3ポリペプチドをコードするその機能的断片を含むか、またはそれから成る。
【0311】
好適には、FOXP3ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドは、配列番号164に示すポリヌクレオチド配列を含むか、またはそれから成ってもよく、前記ポリヌクレオチド配列はFOXP3ヌクレオチド配列の別の例を表す。
【0312】
本発明のいくつかの実施形態において、前記FOXP3ポリペプチドまたは変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号164に対する同一性が少なくとも70%であるヌクレオチド配列、または機能的FOXP3ポリペプチドをコードするその断片を含む。好適には、前記FOXP3ポリペプチドまたは変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号164に対する同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%であるポリヌクレオチド配列、または、機能的FOXP3ポリペプチドをコードするその機能的断片を含む。本発明のいくつかの実施形態において、前記FOXP3ポリペプチドまたは変異体をコードするポリヌクレオチドは、配列番号164、または機能的FOXP3ポリペプチドをコードするその機能的断片を含むか、またはそれから成る。
【0313】
好適には、前記FOXP3ポリペプチドまたは機能的断片またはその変異体をコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化されていてもよい。好適には、前記FOXP3ポリペプチドまたは機能的断片またはその変異体をコードするポリヌクレオチドは、ヒトの細胞における発現のためにコドン最適化されていてもよい。
配列番号157 FOXP3、UniProtKBアクセッション番号Q9BZS1:
MPNPRPGKPSAPSLALGPSPGASPSWRAAPKASDLLGARGPGGTFQGRDLRGGAHASSSSLNPMPPSQLQLPTLPLVMVAPSGARLGPLPHLQALLQDRPHFMHQLSTVDAHARTPVLQVHPLESPAMISLTPPTTATGVFSLKARPGLPPGINVASLEWVSREPALLCTFPNPSAPRKDSTLSAVPQSSYPLLANGVCKWPGCEKVFEEPEDFLKHCQADHLLDEKGRAQCLLQREMVQSLEQQLVLEKEKLSAMQAHLAGKMALTKASSVASSDKGSCCIVAAGSQGPVVPAWSGPREAPDSLFAVRRHLWGSHGNSTFPEFLHNMDYFKFHNMRPPFTYATLIRWAILEAPEKQRTLNEIYHWFTRMFAFFRNHPATWKNAIRHNLSLHKCFVRVESEKGAVWTVDELEFRKKRSQRPSRCSNPTPGP
配列番号158 FOXP3、aa418変種:
MPNPRPGKPSAPSLALGPSPGASPSWRAAPKASDLLGARGPGGTFQGRDLRGGAHASSSSLNPMPPSQLQLPTLPLVMVAPSGARLGPLPHLQALLQDRPHFMHQLSTVDAHARTPVLQVHPLESPAMISLTPPTTATGVFSLKARPGLPPGINVASLEWVSREPALLCTFPNPSAPRKDSTLSAVPQSSYPLLANGVCKWPGCEKVFEEPEDFLKHCQADHLLDEKGRAQCLLQREMVQSLEQQLVLEKEKLSAMQAHLAGKMALTKASSVASSDKGSCCIVAAGSQGPVVPAWSGPREAPDSLFAVRRHLWGSHGNSTFPEFLHNMDYFKFHNMRPPFTYATLIRWAILEAPEKQRTLNEIYHWFTRMFAFFRNHPATWKNAIRHNLSLHKCFVRVESEKGAVWTVDELEFRKKREQRPSRCSNPTPGP
配列番号159 FOXP3、aa422変種:
MPNPRPGKPSAPSLALGPSPGASPSWRAAPKASDLLGARGPGGTFQGRDLRGGAHASSSSLNPMPPSQLQLPTLPLVMVAPSGARLGPLPHLQALLQDRPHFMHQLSTVDAHARTPVLQVHPLESPAMISLTPPTTATGVFSLKARPGLPPGINVASLEWVSREPALLCTFPNPSAPRKDSTLSAVPQSSYPLLANGVCKWPGCEKVFEEPEDFLKHCQADHLLDEKGRAQCLLQREMVQSLEQQLVLEKEKLSAMQAHLAGKMALTKASSVASSDKGSCCIVAAGSQGPVVPAWSGPREAPDSLFAVRRHLWGSHGNSTFPEFLHNMDYFKFHNMRPPFTYATLIRWAILEAPEKQRTLNEIYHWFTRMFAFFRNHPATWKNAIRHNLSLHKCFVRVESEKGAVWTVDELEFRKKRSQRPARCSNPTPGP
配列番号160 FOXP3、aa418および422変種:
MPNPRPGKPSAPSLALGPSPGASPSWRAAPKASDLLGARGPGGTFQGRDLRGGAHASSSSLNPMPPSQLQLPTLPLVMVAPSGARLGPLPHLQALLQDRPHFMHQLSTVDAHARTPVLQVHPLESPAMISLTPPTTATGVFSLKARPGLPPGINVASLEWVSREPALLCTFPNPSAPRKDSTLSAVPQSSYPLLANGVCKWPGCEKVFEEPEDFLKHCQADHLLDEKGRAQCLLQREMVQSLEQQLVLEKEKLSAMQAHLAGKMALTKASSVASSDKGSCCIVAAGSQGPVVPAWSGPREAPDSLFAVRRHLWGSHGNSTFPEFLHNMDYFKFHNMRPPFTYATLIRWAILEAPEKQRTLNEIYHWFTRMFAFFRNHPATWKNAIRHNLSLHKCFVRVESEKGAVWTVDELEFRKKREQRPARCSNPTPGP
配列番号161 FOXP3、切断型変異体:
GGAHASSSSL NPMPPSQLQL PTLPLVMVAP SGARLGPLPH LQALLQDRPH FMHQLSTVDA HARTPVLQVH PLESPAMISL TPPTTATGVF SLKARPGLPP GINVASLEWV SREPALLCTF PNPSAPRKDS TLSAVPQSSY PLLANGVCKW PGCEKVFEEP EDFLKHCQAD HLLDEKGRAQ CLLQREMVQS LEQQLVLEKE KLSAMQAHLA GKMALTKASS VASSDKGSCC IVAAGSQGPV VPAWSGPREA PDSLFAVRRH LWGSHGNSTF PEFLHNMDYF KFHNMRPPFT YATLIRWAIL EAPEKQRTLN EIYHWFTRMF AFFRNHPATW KNAIRHNLSL HKCFVRVESE KGAVWTVDEL EF
配列番号162 FOXP3、変異体の例:
MPNPRPGKPSAPSLALGPSPGASPSWRAAPKASDLLGARGPGGTFQGRDLRGGAHASSSSLNPMPPSQLQLPTLPLVMVAPSGARLGPLPHLQALLQDRPHFMHQLSTVDAHARTPVLQVHPLESPAMISLTPPTTATGVFSLKARPGLPPGINVASLEWVSREPALLCTFPNPSAPRKDSTLSAVPQSSYPLLANGVCKWPGCEKVFEEPEDFLKHCQADHLLDEKGRAQCLLQREMVQSLEQVEELSAMQAHLAGKMALTKASSVASSDKGSCCIVAAGSQGPVVPAWSGPREAPDSLFAVRRHLWGSHGNSTFPEFLHNMDYFKFHNMRPPFTYATLIRWAILEAPEKQRTLNEIYHWFTRMFAFFRNHPATWKNAIRHNLSLHKCFVRVESEKGAVWTVDELEFRKKRSQRPSRCSNPTPGPEGRGSLLTCGDVEEN
配列番号163 FOXP3、FOXP3ポリヌクレオチドの例
ATGCCCAACCCCAGGCCTGGCAAGCCCTCGGCCCCTTCCTTGGCCCTTGGCCCATCCCCAGGAGCCTCGCCCAGCTGGAGGGCTGCACCCAAAGCCTCAGACCTGCTGGGGGCCCGGGGCCCAGGGGGAACCTTCCAGGGCCGAGATCTTCGAGGCGGGGCCCATGCCTCCTCTTCTTCCTTGAACCCCATGCCACCATCGCAGCTGCAGCTGCCCACACTGCCCCTAGTCATGGTGGCACCCTCCGGGGCACGGCTGGGCCCCTTGCCCCACTTACAGGCACTCCTCCAGGACAGGCCACATTTCATGCACCAGCTCTCAACGGTGGATGCCCACGCCCGGACCCCTGTGCTGCAGGTGCACCCCCTGGAGAGCCCAGCCATGATCAGCCTCACACCACCCACCACCGCCACTGGGGTCTTCTCCCTCAAGGCCCGGCCTGGCCTCCCACCTGGGATCAACGTGGCCAGCCTGGAATGGGTGTCCAGGGAGCCGGCACTGCTCTGCACCTTCCCAAATCCCAGTGCACCCAGGAAGGACAGCACCCTTTCGGCTGTGCCCCAGAGCTCCTACCCACTGCTGGCAAATGGTGTCTGCAAGTGGCCCGGATGTGAGAAGGTCTTCGAAGAGCCAGAGGACTTCCTCAAGCACTGCCAGGCGGACCATCTTCTGGATGAGAAGGGCAGGGCACAATGTCTCCTCCAGAGAGAGATGGTACAGTCTCTGGAGCAGCAGCTGGTGCTGGAGAAGGAGAAGCTGAGTGCCATGCAGGCCCACCTGGCTGGGAAAATGGCACTGACCAAGGCTTCATCTGTGGCATCATCCGACAAGGGCTCCTGCTGCATCGTAGCTGCTGGCAGCCAAGGCCCTGTCGTCCCAGCCTGGTCTGGCCCCCGGGAGGCCCCTGACAGCCTGTTTGCTGTCCGGAGGCACCTGTGGGGTAGCCATGGAAACAGCACATTCCCAGAGTTCCTCCACAACATGGACTACTTCAAGTTCCACAACATGCGACCCCCTTTCACCTACGCCACGCTCATCCGCTGGGCCATCCTGGAGGCTCCAGAGAAGCAGCGGACACTCAATGAGATCTACCACTGGTTCACACGCATGTTTGCCTTCTTCAGAAACCATCCTGCCACCTGGAAGAACGCCATCCGCCACAACCTGAGTCTGCACAAGTGCTTTGTGCGGGTGGAGAGCGAGAAGGGGGCTGTGTGGACCGTGGATGAGCTGGAGTTCCGCAAGAAACGGAGCCAGAGGCCCAGCAGGTGTTCCAACCCTACACCTGGCCCCTGA
配列番号164 FOXP3、FOXP3ポリヌクレオチドの例:
GAATTCGTCGACATGCCCAACCCCAGACCCGGCAAGCCTTCTGCCCCTTCTCTGGCCCTGGGACCATCTCCTGGCGCCTCCCCATCTTGGAGAGCCGCCCCTAAAGCCAGCGATCTGCTGGGAGCTAGAGGCCCTGGCGGCACATTCCAGGGCAGAGATCTGAGAGGCGGAGCCCACGCCTCTAGCAGCAGCCTGAATCCCATGCCCCCTAGCCAGCTGCAGCTGCCTACACTGCCTCTCGTGATGGTGGCCCCTAGCGGAGCTAGACTGGGCCCTCTGCCTCATCTGCAGGCTCTGCTGCAGGACCGGCCCCACTTTATGCACCAGCTGAGCACCGTGGACGCCCACGCCAGAACACCTGTGCTGCAGGTGCACCCCCTGGAAAGCCCTGCCATGATCAGCCTGACCCCTCCAACCACAGCCACCGGCGTGTTCAGCCTGAAGGCCAGACCTGGACTGCCCCCTGGCATCAATGTGGCCAGCCTGGAATGGGTGTCCCGCGAACCTGCCCTGCTGTGCACCTTCCCCAATCCTAGCGCCCCCAGAAAGGACAGCACACTGTCTGCCGTGCCCCAGAGCAGCTATCCCCTGCTGGCTAACGGCGTGTGCAAGTGGCCTGGCTGCGAGAAGGTGTTCGAGGAACCCGAGGACTTCCTGAAGCACTGCCAGGCCGACCATCTGCTGGACGAGAAAGGCAGAGCCCAGTGCCTGCTGCAGCGCGAGATGGTGCAGTCCCTGGAACAGCAGCTGGTGCTGGAAAAAGAAAAGCTGAGCGCCATGCAGGCCCACCTGGCCGGAAAGATGGCCCTGACAAAAGCCAGCAGCGTGGCCAGCTCCGACAAGGGCAGCTGTTGTATCGTGGCCGCTGGCAGCCAGGGACCTGTGGTGCCTGCTTGGAGCGGACCTAGAGAGGCCCCCGATAGCCTGTTTGCCGTGCGGAGACACCTGTGGGGCAGCCACGGCAACTCTACCTTCCCCGAGTTCCTGCACAACATGGACTACTTCAAGTTCCACAACATGAGGCCCCCCTTCACCTACGCCACCCTGATCAGATGGGCCATTCTGGAAGCCCCCGAGAAGCAGCGGACCCTGAACGAGATCTACCACTGGTTTACCCGGATGTTCGCCTTCTTCCGGAACCACCCCGCCACCTGGAAGAACGCCATCCGGCACAATCTGAGCCTGCACAAGTGCTTCGTGCGGGTGGAAAGCGAGAAGGGCGCCGTGTGGACAGTGGACGAGCTGGAATTTCGGAAGAAGCGGTCCCAGAGGCCCAGCCGGTGTAGCAATCCTACACCTGGCCCTGAGGGCAGAGGAAGTCTGCTAACATGCGGTGACGTCGAGGAGAATCC
【0314】
ベクター
本発明はさらに、本発明のCARをコードするベクターを提供する。前記ベクターは、たとえば、本発明のCARをコードし、場合によってはさらに別のポリペプチド、たとえばFOXP3ポリペプチドをコードする、本発明のポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0315】
ベクターは、一つの環境から別の環境へのある実体の移動を可能にする、または容易にするツールである。本発明によれば、例として、組換え核酸技術に使用されるいくつかのベクターは、核酸のセグメント(たとえば、異種cDNAセグメントなどの異種DNAセグメント)などの実体を、標的細胞に移動させることができる。ベクターは、非ウイルス性であってもよいし、ウイルス性であってもよい。組換え核酸技術に使用されるベクトルの例としては、プラスミド、mRNA分子(たとえば、インビトロ転写mRNA)、染色体、人工染色体およびウイルスが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ベクターはまた、たとえば、ネイキッド核酸(たとえば、DNA)であってもよい。もっとも単純な形態では、ベクターそれ自体が、目的のヌクレオチドであってもよい。
【0316】
本発明で使用されるベクターは、たとえば、プラスミド、mRNA、またはウイルスベクターであってもよく、ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、場合によってはそのプロモーターのレギュレーターを含んでいてもよい。
【0317】
本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを、形質転換や形質導入など、当該技術分野で周知の様々な技術を使用して細胞に導入してもよい。いくつかの技術が、当該技術分野で周知である。たとえば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクターなどの組換えウイルスベクターを使用した感染、核酸の直接注入や、遺伝子銃形質転換である。非ウイルス送達システムには、DNA導入法などがあるが、これらに限定されるわけではない。なお、遺伝子導入は、遺伝子を標的細胞へ送達するための非ウイルスベクターを使用したプロセスを含む。非ウイルス送達システムは、リポソームまたは両親媒性細胞浸透性ペプチド、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドと複合されたものを含むことができる。
【0318】
典型的な遺伝子導入法としては、エレクトロポレーション、DNA遺伝子銃、脂質媒介トランスフェクション、圧縮DNA媒介トランスフェクション、リポソーム法、イムノリポソーム法、リポフェクション法、カチオン性薬剤媒介トランスフェクション、カチオン性表面両親媒性物質法(CFAs)(Nat. Biotechnol. (1996) 14: 556)、および、これらの組み合わせがある。
【0319】
たとえば本発明の異なる複数のCARをコードするベクター、または、本発明のCARと、さらに別のポリペプチドとをコードするベクターなど、複数のベクターが、形質導入/遺伝子導入に使用できるであろう。
【0320】
細胞作成方法
ウイルスベクターを用いた形質導入や、DNAまたはRNAを用いた遺伝子導入などの多数の手段のうちの一つによって、本明細書で定義されたCARをコードするDNAまたはRNAを導入することにより、本発明の改変されたTregが生成されてもよい。
本発明の改変されたTregは、本明細書において定義されたポリヌクレオチドまたはベクターをTregに(たとえば、形質導入または遺伝子導入によって)導入することにより、作成される。または、以下にさらに記載するように、本発明の改変されたTregは、本明細書において定義されたポリヌクレオチドまたはベクターを、Tregではない細胞に導入して変換し(たとえば、前記細胞を分化させ、または再プログラムして)Treg表現型を有するようにしてもよい。前記ポリヌクレオチドまたはベクターは、変換前または後に導入してもよい。
【0321】
好適には、前記Tregは、対象から単離されたサンプル由来であってもよい。前記Tregは、いずれかの好適な方法、たとえば磁性分離によって、前記サンプルからさらに分離されてもよい。
【0322】
本発明の改変されたTregは、下記工程を含む方法によって生成されてもよい。
(i)対象から細胞含有サンプルを単離する、または細胞含有サンプルを得る工 程;および
(ii)前記細胞含有サンプルに、ポリヌクレオチド、核酸、または本発明のC ARをコードするベクターを形質導入または遺伝子導入し、改変された細胞の集団 を得る工程。
【0323】
好適には、前記方法の工程(ii)の前、および/またはその後に、Treg富化サンプルを、細胞含有サンプルから単離し、富化し、および/または細胞含有サンプルから生成してもよい。たとえば、Tregの単離、富化、および/または生成は、工程(ii)の前に、および/またはその後に行って、Treg富化サンプルを単離し、富化し、および/または生成してもよい。本発明のCAR、ポリヌクレオチド、および/またはベクターを含む細胞および/またはTregについて富化を行うために、工程(ii)の後に単離および/または富化を行ってもよい。
【0324】
Treg富化サンプルは、当業者に周知のいずれかの方法によって、たとえばFACSおよび/または磁性ビーズ分離によって、単離または富化されてもよい。Treg富化サンプルは、当業者に周知のいずれかの方法によって、細胞含有サンプルから生成されてもよく、たとえば、FOXP3をコードするDNAまたはRNAを導入することによりTcon細胞から、および/または誘導性前駆細胞または胚性前駆細胞のエクスビボ分化から、生成されてもよい。
【0325】
好適には、前記細胞は、本明細書において定義されたTregである。
【0326】
好適には、本発明の改変されたTregは、下記工程を含む方法によって生成されてもよい。
(i)対象からTreg富化サンプルを単離する、またはTreg富化サンプル を得る工程;および
(ii)前記Treg富化サンプルに、ポリヌクレオチド、核酸、または本発明 のCARをコードするベクターを形質導入または遺伝子導入し、本発明に係る改変 されたTreg細胞の集団を提供する工程。
【0327】
本明細書に記載のCARをコードするポリヌクレオチドを導入する前に、または後に、たとえば、抗CD3モノクローナル抗体での処理により、または抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体での処理により、前記細胞および/またはTregを活性化および/または増殖させてもよい。
【0328】
また、抗CD3および抗CD28モノクローナル抗体がIL-2との組み合わせで存在するところで、前記細胞および/またはTregを増殖してもよい。好適には、IL-2はIL-15と置き換えられてもよい。Treg増殖プロトコルで使用されてもよい別の成分としては、ラパマイシン、全トランス型レチノイン酸(ATRA)およびTGFβがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0329】
本明細書において、「活性化される」とは、細胞または細胞の集団が刺激されて、細胞の増殖が起こることを意味する。本明細書において、「増殖される」とは、細胞または細胞の集団の増殖が誘導されることを意味する。細胞の集団の増殖は、たとえば、集団に存在する細胞の数をカウントすることにより測定してもよい。細胞の表現型は、フローサイトメトリーなど当該技術分野で周知の方法によって判定してもよい。
【0330】
前記細胞および/またはTregは、前記方法の各工程の後に、特に増殖の後に、洗浄してもよい。
【0331】
前記改変された細胞またはTregの集団は、当業者に周知のいずれかの方法によって、たとえばFACSおよび/または磁性ビーズ分離によって、さらに富化されてもよい。
作製方法の工程は、閉鎖された無菌の細胞培養系で行われてもよい。
【実施例】
【0332】
本発明を実施例によりさらに説明するが、これは本発明を実施する際に当業者を支援するためのものであり、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0333】
実施例1-抗ASGR1 CARコンストラクトの設計
キメラ抗原受容体(CAR)は、ASGRに特異的に結合することがわかっている単一ドメイン抗体(sdAb)由来の抗原認識ドメインと、CD28(aa153~179)由来の膜貫通ドメイン(TM)と、CD3ζおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインと、を含むように設計された。コンストラクトの例を以下および
図1に示す。
CD8リーダー、ASGR1 VH抗原認識ドメイン、CD8αヒンジドメイン、CD28膜貫通、CD28細胞質シグナル伝達ドメイン、CD3z細胞質シグナル伝達ドメイン、FP2Aドメイン、GFPを含む、抗ASGR1 CARコンストラクト1(配列番号151)
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRRRKRGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPTRGGGATMVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSKLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK
CD8リーダー、ASGR1 VH抗原認識ドメイン、c-Mycタグ付きのCD28ヒンジドメイン、CD28膜貫通、CD28細胞質シグナル伝達ドメイン、CD3z細胞質シグナル伝達ドメイン、FP2Aドメイン、GFPを含む、抗ASGR1 CARコンストラクト2(配列番号152)
MALPVTALLLPLALLLHAARPEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFEKYAMAWVRQAPGKGLEWVSRISARGVTTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKHKRHEHTRFDSWGQGTLVTVSSAAAIEVEQKLISEEDLLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRRRKRGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPTRGGGATMVSKGEELFTGVVPILVELDGDVNGHKFSVSGEGEGDATYGKLTLKFICTTGKLPVPWPTLVTTLTYGVQCFSRYPDHMKQHDFFKSAMPEGYVQERTIFFKDDGNYKTRAEVKFEGDTLVNRIELKGIDFKEDGNILGHKLEYNYNSHNVYIMADKQKNGIKVNFKIRHNIEDGSVQLADHYQQNTPIGDGPVLLPDNHYLSTQSKLSKDPNEKRDHMVLLEFVTAAGITLGMDELYK
【0334】
実施例2-抗ASGR1 CAR-Tregの生成
抗ASGR1 CAR-Tregを生成した。CD4+CD25hiCD127-を単離し、抗CD3/CD28ビーズで活性化した。活性化の2日後、Tregに抗ASGR1 CARとGFPレポーター遺伝子とを含むレンチウイルスを形質導入した。形質導入されたTregと形質導入されていないTregとを10日間培養し、GFPを測定して形質導入の効果を調べた。
図2は、形質導入されたTregの67.3%が、GFPを発現した(すなわち、前記抗ASGR1 CARコンストラクトを含んでいた)ことを示している。
【0335】
実施例3-HepG2細胞株におけるASGR1発現の確認
HepG2細胞は、分極化したヒト肝細胞の研究のための、好適なインビトロモデル系である。HepG2におけるASGR1の発現は、FACSにより確認され、K562細胞、すなわち不死化ヒト骨髄性白血病細胞株と比較された。
図3は、HepG2細胞においてASGR1が高発現したことを示す。HepG2細胞は、下記実験においてCAR-Treg標的細胞として使用される。
【0336】
実施例4-抗ASGR1 CAR-Tregの抗原特異性の評価
ASGR1を発現する細胞株HepG2の培養後に、Tregの活性化および増殖を調べ、抗ASGR1 CARを発現したTregのみがASGR1の刺激に応答してCD69を上方制御することを確認した。
図4は、培地のみの存在下ではCD69の上方制御が観察されないことを示す。HepG2細胞を使用した培養に続き、GFP+の形質導入されたTreg(ただし、GPF-ネガティブの形質導入された細胞や、形質導入されていない細胞ではない)のみがCD69を上方制御する。これに対して、非特異的な抗CD3/CD28ビーズの刺激で培養された場合、すべての細胞がCD69を上方制御した。
【0337】
実施例5-抗ASGR1 CAR-Tregの抗原特異性抑制機能の評価
活性化エフェクターCD4+CD25-T細胞の増殖を抗原特異的に抑制する、抗ASGR1 CAR Tregの能力を調べるため、予備活性化されたCD4+CD25-エフェクターT細胞を、抗ASGR1 CAR Tregと共に、または形質導入されていないTregと共に、HepG2細胞の存在下で共培養した。
Teff予備活性化は、下記条件下で行った。CD4+CD25-T細胞を活性化させた;CD3/CD28ビーズ 1:10;14時間。抑制アッセイの条件は以下の通りであった:3日間の培養;100,000 Teff;30,000 HepG2;形質導入されていないTregと抗ASGR1 CAR-Tregとの比較
増殖色素で染色し、抗CD3/CD28ビーズで予備活性化させたエフェクターT細胞について、その増殖能力に対する抗ASGR1 CAR-Tregの影響を、抑制アッセイ(
図5、
図6)により示す。形質導入されていないTregと比較して、抗ASGR1 CAR Tregは、HepG2刺激に応じて、低いTreg対Tエフェクター比率で、通常T細胞の増殖を効果的に抑制できた。
【0338】
実施例6-抗HLA.A2 IL2RCAR-Tregの生成
STAT5関連モチーフと、JAK1および/またはJAK2結合モチーフとを含む(場合によっては、JAK3結合モチーフを含む、および/またはSTAT3関連モチーフを含まない)エンドドメインの効果を、HLA.A2-CARコンストラクトを使用した実施例6~13に示す。例に挙げた抗原結合ドメインはHLA.A2を標的にしているが、前記エンドドメインは幅広く適用可能であると考えられ、肝臓特異的抗原、たとえば、ASGRなどを標的にする抗原結合ドメインを含むCARコンストラクトに適用可能であると考えられる。
【0339】
CD4+CD25hiCD127low細胞を単離し、抗CD3/CD28ビーズで活性化した。活性化の3日後、TregにHLA.A2-CARコンストラクトとGFPレポーター遺伝子とを含むレンチウイルスを形質導入した(
図7)。ポリクローナル活性化の後の全Tregの細胞増殖は、形質導入されたTregと形質導入されていないTregとでは、有意の差異が示されなかった(
図8)。
【0340】
実施例7-抗HLA.A2 IL2Rコンストラクトの形質導入の効果の経時的定量化
CARコンストラクトが形質導入されていないTregと、CARコンストラクトを形質導入したTregとについて、GFP発現を、細胞活性化後の異なる時点で解析した。
GFP+細胞の頻度を解析し、Treg増殖期間にわたって様々なコンストラクトの形質導入の効果と発現の持続性を評価した。dCAR、CD28z、コンストラクト1、2、および3を含むTregは、形質導入後、同様の発現頻度を示した。すべてのTregにおけるGFP+細胞の割合は、ポリクローナル細胞増殖のあいだ、維持された(
図9)。
【0341】
実施例8-形質導入されたTregの抗HLA.A2 IL2R CARコンストラクトの細胞表面発現の定量化
形質導入されていないTregでの、および形質導入されたTregでの、CARコンストラクトの膜発現を、PEコンジュゲートHLA-A*0201/CINGVCWTVデキストラマー(Immudex、デンマーク、コペンハーゲン)によって解析した。細胞表面にあるCARタンパク質(HLA-A2デキストラマー
+)を発現するTregの頻度は、コンストラクトすべてにおいて同様であった(
図10)。
【0342】
実施例9-ポリクローナル細胞増殖後のCAR Tregの表現型の特性評価
抗CD3/CD28活性化ビーズおよびIL-2の存在下で15日間、Tregを培養し増殖させた。Treg関連マーカーFOXP3、HELIOS、CTLA4、およびTIGITを、形質導入されていないTreg上と、形質導入されたTreg上とでFACSにより解析し、培養15日目の表現型の系統安定性を調査した。
形質導入されていないものと、CAR形質導入されたものとは、Treg系統に関連したタンパク質の発現レベルとポリクローナル増殖後の機能のレベルが同程度であった(
図11)。
【0343】
実施例10-抗HLA.A2 IL2RCAR Tregの抗原特異性の評価
形質導入されていないTregと、形質導入されたTregとを、異なる刺激の存在下で18時間培養した。CD69とCD137活性化マーカーを解析し、特異的な細胞活性化と非特異的な細胞活性化とを調べた。CD28z、コンストラクト1CAR、コンストラクト2CAR、およびコンストラクト3CARを形質導入したTregは、T細胞活性化マーカーの発現に基づくと、HLA-A2分子に対して同様の特異性を示した。CD69およびCD137の発現は、不活性化細胞上で、またはHLA-A1発現細胞との培養後、増加しなかった。dCARコンストラクトは、シグナリングエンドドメインが無いため、活性化を示さなかった(
図12)。
【0344】
実施例11-IL2R CARシグナリングの指標としてのSTAT5リン酸化解析
形質導入されたCAR Tregを、IL2を含まない培地に一晩置いた。培地のみでの培養、1000 IU/ml IL-2での培養、HLA.A2-Ig系人工APC(DOI:10.3791/2801に記載のプロトコルに従い作製)の存在下での培養の10分後および120分後、FACS解析によりTregのSTAT5リン酸化を調べた。
IL2RエンドドメインのCARコンストラクトへの導入は、HLA-A2分子によるCAR活性化後に効率的なSTAT5のリン酸化を示した。HLA-A2ビーズを使用した培養後、IL2Rエンドドメインの無いCAR Treg上では、pSTAT5の有意の増加は検出されなかった(
図13)。
【0345】
実施例12-IL-2の非存在下での非特異的活性化およびHLA.A2特異的活性化後のTreg生存の評価
異なるコンストラクトのCAR形質導入Tregを、抗CD3/28活性化ビーズおよびK562.A2発現細胞と、IL-2の非存在下で培養した。FACS解析により活性化の7日後に細胞の生存を調べた。HLA-A2発現細胞との細胞培養の後、IL2Rエンドドメインを含むCARコンストラクトを発現したTregsは、基準のCD28zと比較して、細胞の生存率の増大を示した。Tregのポリクローナル活性化後は、この差異が見られず、これは前記効果がCARシグナリングに依存していることを示している(
図14)。
【0346】
実施例13-Treg抑制能試験:B細胞に対する共刺激分子の調節(modulation)の解析によるTregの免疫調節機能の評価
Tregとの共培養後の、B細胞のCD80およびCD86発現を解析し、抗原提示細胞での共刺激分子の発現を低減するTregの能力を評価した。
CD28z、コンストラクト1CAR、およびコンストラクト2CARを発現するTregは、形質導入されていないTregやdCAR発現Tregと比較して、抑制機能が大きいことを示した。B細胞でのCD80およびCD86の発現は、CAR分子を介してシグナリングするTregと培養した後にのみ、下方制御している(
図15)。
【0347】
実施例14-肝臓細胞におけるアルブミン産生に対するCAR Tregの効果の評価
方法:
50IU/mLのヒト組換インターロイキン-2(Aldesleukin、Novartis)と共に/無しで、10%FBS、2mM L-グルタミン、1% ITS、10nM Hepes、100U/L ペニシリン/ストレプトマイシンを追加したウィリアムズE培地(Gibco)中の、I型コラーゲン(ラット尾由来)をコーティングしたプレート上に、225K/cm2の細胞密度(ハーフエリア 96ウェルプレートまたはトランスウェルプレートに36K/well)で、凍結保存された成人ヒト初代培養肝細胞(Lonza)を播種した。肝細胞が24時間後に付着すれば、CD4+CD25-エフェクターT細胞の存在下または非存在下で、CD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞を培地に追加した。上清を48時間ごとに交換し、解析用に凍結保存した。HTSトランスウェル膜(孔径0.4μm;CORNING Inc.)を使用して、間接共培養を行った。いくつかの実験用に、抗CD3および抗CD28ビーズの存在下で、制御性T細胞およびエフェクターT細胞を予備活性化した。別の実験用に、予備活性化していない制御性T細胞を、培養プレートに加える前に、抗ASGPR1 CAR(実施例1に記載のコンストラクト1)と共にレンチウイルス形質導入した。いくつかの実験では、増殖した制御性T細胞を含む培地から取得した培養上清と共に、肝細胞を培養した。ヒトアルブミンの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA-Bethyl Laboratories)を使用して、前記培地中で、アルブミン濃度、つまり肝細胞機能および生存率のマーカーを、測定した。統計的な解析のために、クラスカルワリス・ノンパラメトリック検定をダン群間事後検定(Dunn's inter-group post-tests)とともに行った。アステリスクはp<0.05を示す。肝細胞のみのペア単位の比較およびp<0.05を示す。示されたプロットは、3つの独立した実験を表している。
【0348】
結果:抗原刺激に応答して、肝臓の細胞に対する栄養および細胞保護効果を媒介する、抗ASGPR CAR Tregの能力を判定するために、共培養実験を設定し、そこでTregおよび/またはエフェクターT細胞の様々な組み合わせと共に、初代ヒト肝細胞を7日まで培養した。肝細胞表現型の安定性および機能に対する効果を調査するために、肝細胞合成機能、生存率、および系統安定性と相互関連するアルブミンの上清への産生を定量化した。抗CD3/抗CD28ビーズの存在下で事前に活性化したTregを、培養した初代培養肝細胞に添加した結果、アルブミンレベルが増加した。この効果は、共培養の3日後は有意であったが、7日目には有意でなくなっており、これは、肝細胞に対して栄養効果を及ぼすためにTregが繰り返し抗原刺激を受ける必要性を反映している(
図16)Tregの有益な効果は、活性化されたTregから得られた馴化培地で肝細胞を培養することにより複製されることを考えれば、細胞どうしの接触を必要としない(
図17)。注目すべきは、前記馴化培地は、48時間ごとに繰り返し培養プレートに添加され、通常は毎週再活性化が必要な予備活性化されたTregよりも、もっと持続性のある有益な効果を引き起こすことである。Tregとは対照的に、エフェクターT細胞は、アルブミンレベルを増加させる能力がなかった(
図17)。
休眠状態の(予備活性化していない)Tregを使用すると、効果はより弱く、有意ではなかった(
図18)。有意の効果が得られたのは、休眠状態のTregが、培養された肝細胞でASGPRを認識してTregの活性化を起こすことができる抗ASGPR CARを発現した時のみであった(
図18)。
【0349】
これらの結果は、制御性T細胞(Treg)が、肝臓の細胞に対して栄養および細胞保護効果をもたらすことができることを示す。これはTregの活性化を必要とし、細胞どうしの接触の非存在下で起こりうる。Tregの活性化は、抗CD3/抗CD28ビーズなどの通常T細胞刺激物でTregを刺激することによって、またはASGPRなどの肝細胞特異的抗原を認識した後にT細胞活性化を誘発できるCARをTregに形質導入することにより、達成できる。
【0350】
本明細書で言及された刊行物はすべて、この参照により本明細書に援用される。本発明の範囲と趣旨を逸脱しない、本明細書に開示された本発明の方法、細胞、組成物、および使用の様々な変更および変形が、当業者に明らかであろう。本発明は特定の好適な実施形態に関連して開示されているが、請求項に記載されている発明が、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。開示された本発明を実施するための形態の、当業者に自明である様々な変更は、下記の請求項の範囲内のものとする。
【配列表】
【国際調査報告】