(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】電気機械用のロータ、および電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20221027BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513411
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020073653
(87)【国際公開番号】W WO2021037809
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】102019123031.4
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521219051
【氏名又は名称】ヴァレオ、シーメンス、イーオートモーティブ、ジャーマニー、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALEO SIEMENS EAUTOMOTIVE GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】ボリス、ドッツ
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622PP10
(57)【要約】
少なくとも2つの極と、N≧6の偶数個の積層されたロータモジュール(2a~2f)とを有する電気機械(16)用のロータ(1)であって、各極のロータモジュール(2a~2f)が磁石構成要素(3a~3f;3a~3h)を有し、同じ極を具現化する磁石構成要素(3a~3f;3a~3h)が対応する磁石構成要素配置(4a、4b、4f)を形成し、第1から第Nのロータモジュール(2a~2f)が、軸方向に指定の昇順で配置されており、第1から第Nのロータモジュール(2a~2f)の、磁石構成要素配置のうちの1つ(4a)に属する各磁石構成要素(3a~3f;3a~3h)が、それぞれ、周方向に食い違い角α1…αNで配置されており、1≦i≦N/2における食い違い角αiが、値αi=α0+k・βを有し、式中、0≦k≦[(N/2)-1]であり、α0が、周方向の固定角度位置であり、βが、固定オフセット角であり、すべての食い違い角αiが、互いに異なり、[(N/2)+1]≦m≦Nにおける食い違い角αmが、値αm=αN-m+1を有する、ロータ(1)において、磁石構成要素配置(4a)に属する磁石構成要素(3b)のうちの少なくとも2つの食い違い角αiがα0+(i-1)・βと等しくないことを特徴とする、ロータ(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの極と、N≧6の偶数個の積層されたロータモジュール(2a~2f)とを有する電気機械(16)用のロータ(1)であって、各極の前記ロータモジュール(2a~2f)が磁石構成要素(3a~3f;3a~3h)を有し、同じ極を具現化する磁石構成要素(3a~3f;3a~3h)が対応する磁石構成要素配置(4a、4b、4f)を形成し、
前記第1から第Nのロータモジュール(2a~2f)が、軸方向に指定の昇順で配置されており、
前記第1から第Nのロータモジュール(2a~2f)の、前記磁石構成要素配置のうちの1つ(4a)に属する各磁石構成要素(3a~3f;3a~3h)が、それぞれ、周方向に食い違い角α
1…α
Nで配置されており、
1≦i≦N/2における前記食い違い角α
iが、値α
i=α
0+k・βを有し、式中、0≦k≦[(N/2)-1]であり、α
0が、前記周方向の固定角度位置であり、βが、固定オフセット角であり、すべての前記食い違い角α
iが、互いに異なり、
[(N/2)+1]≦m≦Nにおける前記食い違い角α
mが、値α
m=α
N-m+1を有する、ロータ(1)において、
前記磁石構成要素配置(4a)に属する前記磁石構成要素(3b)のうちの少なくとも3つの前記食い違い角α
iがα
0+(i-1)・βと等しくないことを特徴とする、ロータ(1)。
【請求項2】
前記オフセット角βが、前記ロータ(1)の出力側(7)から見て時計回りに正または負である、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
α
1=α
0である、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
N=6である、請求項1から3のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項5】
α
2=α
0+2・β且つα
3=α
0+βである、請求項3および4に記載のロータ。
【請求項6】
N≧8である、請求項1から3のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項7】
N=8である、請求項6に記載のロータ。
【請求項8】
α
2=α
0+β且つα
3=α
0+3・β且つα
4=α
0+2・βである、請求項3および7に記載のロータ。
【請求項9】
α
2=α
0+3・β且つα
3=α
0+2・β且つα
4=α
0+βである、請求項3および7に記載のロータ。
【請求項10】
α
2=α
0+3・β且つα
3=α
0+β且つα
4=α
0+2・βである、請求項3および7に記載のロータ。
【請求項11】
前記第1から第(N/2)のロータモジュール(2a、2b、2c)の[(N/2)-1]個の連続するロータモジュール(3a~3f;3a~3h)の配置ごとに、前記磁石構成要素配置(4a)の最大で[(N/2)-3]対の直接隣接する磁石構成要素(3a~3f;3a~3h)が前記単一のオフセット角βだけ互いにオフセットされている、請求項6から10のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項12】
各ロータモジュール(2a~2f)の軸方向幅が、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mm、特に好ましくは少なくとも15mmおよび/または最大で45mm、好ましくは最大で35mm、特に好ましくは最大で30mmである、請求項1から11のいずれか一項に記載のロータ。
【請求項13】
ステータ(17)と、前記ステータ(17)の内側にある、請求項1から12のいずれか一項に記載のロータ(1)とを備える、電気機械(16)。
【請求項14】
前記ステータ(17)が、歯の角度だけ互いからそれぞれ離間された複数のステータ歯(18)を有し、前記オフセット角βが、前記歯の角度の正の整数倍である、請求項13に記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの極と、N≧6の偶数個の積層されたロータモジュールとを有する電気機械用のロータであって、各極のロータモジュールが磁石構成要素を有し、同じ極を具現化する磁石構成要素が対応する磁石構成要素配置を形成し、第1から第Nのロータモジュールが、軸方向にそれらの指定の昇順で配置されており、第1から第Nのロータモジュールの、磁石構成要素配置のうちの1つに属する各磁石構成要素が、それぞれ、周方向に食い違い角α1…αNで配置されており、1≦i≦N/2における食い違い角αiは、値αi=α0+k・βを有し、式中、0≦k≦[(N/2)-1]であり、α0は、周方向の固定角度位置であり、βは、固定オフセット角であり、すべての食い違い角αiは、互いに異なり、[(N/2)+1]≦m≦Nにおける食い違い角αmは、値αm=αN-m+1を有する、電気機械用のロータに関する。
【0002】
加えて、本発明は、電気機械に関する。
【背景技術】
【0003】
電気機械の動作中のコギングトルクおよびトルクリップルを低減するために、極が軸方向に直線状に連続的に延在しない積層ロータが使用される。
【0004】
独国特許出願公開明細書第102012205191号は、例えば、回転方向に対して垂直に延びる層方向に配置された6つの極構成要素の配置を有するロータを開示している。第1の極構成要素と第2の極構成要素との間、および第3の極構成要素と第2の極構成要素との間にもオフセットが存在する。第4の極構成要素は、第3の極構成要素に対してオフセットを有さない。第5の極構成要素および第6の極構成要素は各々、それらの反対方向の前の極構成要素に対してオフセットを有する。
【0005】
そのような対称的なV字形配置は、ロータの回転動作中に生じる第1のロータモジュールから第3のロータモジュールにかかる軸力を、最初に言及した軸力と実質的に同じ値を有するが反対に向けられた第4のロータモジュールから第6のロータモジュールにかかる軸力によって相殺することを可能にする。しかしながら、これはロータの測定可能な軸方向変形をもたらし、震えや揺れを引き起こす可能性がある。好ましくないシナリオでは、軸力がステータに伝達される可能性があり、その結果、ステータの固有振動数が励起され、これは特にNVHの観点から望ましくない(騒音、振動、ハーシュネス)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開明細書第102012205191号
【発明の概要】
【0007】
ゆえに、本発明の目的は、NVHの観点から考慮されたような改善された方法で電気機械を動作させる方法を説明することである。
【0008】
この問題を解決するために、本発明によれば、冒頭で説明した種類のロータにおいて、磁石構成要素配置に属する磁石構成要素のうちの少なくとも2つの食い違い角αiが、α0+(i-1)・βと等しくないものとする。
【0009】
磁石構成要素配置に属する磁石構成要素は各々、円筒座標系における中心角である食い違い角α1…αNで配置されている。この座標系は、ここでは他のすべての食い違い角について同一である。各食い違い角は、ここでは、磁石構成要素の規定点に基づくものであり、これはすべての磁石構成要素について同じである。例えば、板状磁石構成要素の場合、これは、食い違い角を垂直に配置することができる構成要素の中心点とすることができる。
【0010】
食い違い角αiは、ここでは、第1から第(N/2)のロータモジュールの、磁石構成要素配置に属する磁石構成要素に基づくものである。これらの磁石構成要素は、以下、第1グループとも呼ばれる。食い違い角αiは互いに異なるため、第1グループの各磁石構成要素は異なる食い違い角を有する。言い換えると、どの食い違い角も第1グループにおいて複数回発生しない。
【0011】
食い違い角αmは、第1から第[(N/2)+1]からNのロータモジュールの、磁石構成要素配置に属する、磁石構成要素に基づくものである。これらの磁石構成要素は、以下、第2グループとも呼ばれる。これには、αm=αN-m+1が当てはまる。これは、第2グループが、座標系の軸に垂直であり、第(N/2)のロータモジュールと第[(N/2)+1]のロータモジュールとの間を通る対称面に関して、第1グループに対して鏡面対称に配置されていることを意味する。
【0012】
本発明によるロータは、磁石構成要素配置に属する磁石構成要素のうちの少なくとも2つの食い違い角αiが、α0+(i-1)・βと等しくないことを特徴とする。これは、第1グループが、また鏡面対称配置に起因して、第2グループも、周方向に少なくとも1つのオフセットを有することを意味する。言い換えると、第1グループの磁石構成要素が、それぞれ、先行する磁石構成要素から固定角度だけオフセットされる(本発明によらない)V字形配置の食い違い角と比較して、第1グループの少なくとも1対の食い違い角が入れ替えられる。鏡面対称配置により、本発明によるロータでは、磁石構成要素配置に属する磁石構成要素のM字形、W字形またはジグザグ配置に言及することができる。
【0013】
本発明によるロータでは、回転動作中に第1から第(N/2)のロータモジュール内で反対向きの軸力が形成されるが、V字形配置では、第1から第(N/2)のロータモジュールおよび第[(N/2)+1]から第Nのロータモジュール内の軸力は均一に向けられる。本発明によるロータでは、よって、軸力の少なくとも部分的な補償が、一方では第1から第(N/2)のロータモジュール内で、他方では第[(N/2)+1]から第Nのロータモジュール内ですでに発生しており、これは、有利には、回転動作における騒音および振動の発生に好影響を有する。
【0014】
一般に、N≦20、好ましくはN≦12、特に好ましくはN≦10である。本発明によるロータは、好ましくは少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも6つ、非常に特に好ましくは少なくとも8つの極を有する。各ロータモジュールまたは磁石構成要素配置の極または磁石構成要素は、通常、周方向に互いに等距離に配置される。一般に、N極またはN極を径方向外方に具現化する磁石構成要素配置は、S極またはS極を径方向外方に具現化する磁石構成要素の配置と周方向に交互になっている。隣接する磁石構成要素配置は、通常、重なり合わない。第1の磁石構成要素配置において、α1,n=αn、式中1≦n≦Nであり、2≦p≦Pであるα2,n…αP,nが、それぞれ、第nのロータモジュールの第pの磁石構成要素配置に属する磁石構成要素の食い違い角であり、式中、Pが極の数である場合、これはよって、通常、αp,n=αn+[(p-1)・2π/P]になる。
【0015】
好ましい実施形態では、磁石構成要素配置に属する磁石構成要素のうちの少なくとも3つの食い違い角αiはα0+(i-1)・βと等しくないものとする。第1から第(N/2)のロータモジュールの、磁石構成要素配置に属するすべての磁石構成要素食い違い角αiがα0+(i-1)・βと等しくないことも考えられる。
【0016】
本発明によるロータでは、ロータの出力側から見たオフセット角は、時計回りに正であるものとすることができる。あるいは、ロータの出力側から見たオフセット角は、時計回りに負である。
【0017】
本発明によるロータの好ましい実施形態では、α1=α0である。言い換えると、第1のロータモジュールの磁石構成要素配置に属する磁石構成要素は、周方向のエッジ位置に配置される。
【0018】
本発明によるロータの特に単純な実施形態が、N=6の場合に提供される。しかしながら、この場合には、M字形またはW字形の配置のみを実現することができる。この場合、より具体的には、以下の表の各行で指定された、ロータの以下の実施形態が好ましい。
【0019】
【0020】
これらのうち、α2=α0+2・β、α3=α0+βであれば特に好ましい。
【0021】
一般に、より複雑なロータの場合、N≧8とすることができる。N=8の場合、ロータの複雑さと軸力の分布を修正する可能性との間の良好な妥協点が提供される。
【0022】
8つのロータモジュールを有するロータでは、以下の各実施形態が可能である。
【0023】
【0024】
α1=α0の特に好ましい実施形態として、以下を記す。
α2=α0+β且つα3=α0+3・β且つα4=α0+2・βまたは
α2=α0+3・β且つα3=α0+2・β且つα4=α0+βまたは
α2=α0+3・β且つα3=α0+β且つα4=α0+2・β。
【0025】
第1から第(N/2)のロータモジュールの[(N/2)-1]個の連続するロータモジュールの配置ごとに、磁石構成要素配置の最大で[(N/2)-3]対の直接隣接する磁石構成要素が単一のオフセット角だけ互いにオフセットされる場合、Nが8以上での特にバランスのとれた力分布が生じる。
【0026】
本発明によるロータでは、好都合には、各ロータモジュールの軸方向幅は、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mm、特に好ましくは少なくとも15mmおよび/または最大で45mm、好ましくは最大で35mm、特に好ましくは最大で30mmであるものとする。
【0027】
加えて、本発明によるロータでは、各ロータモジュールは、磁石構成要素が配置された、特に埋め込まれるかまたは表面実装された、部分積層鉄心を有するものとすることができる。部分積層鉄心は、典型的には、凝集ロータ積層鉄心を具現化する。
【0028】
ロータは、シャフトを有することもできる。
【0029】
本発明が基づく目的はさらに、ステータと、ステータの内側に配置された本発明によるロータとを備える電気機械によって達成される。
【0030】
ここでは、ステータが複数のステータ歯を有するものとすることができる。ステータ歯は、好ましくは、歯の角度だけ互いから離間され、オフセット角βは、歯の角度の正の整数倍である。代替的または追加的に、ステータ歯は、軸方向に直線状に延びることもできる。
【0031】
本発明のさらなる利点および詳細は、以下で説明する図面から明らかになる。これらは概略図であり、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明によるロータの第1の例示的な実施形態の側面図である。
【
図3】
図1に示されるロータの軸力の指示を伴う食い違いスキーマの図である。
【
図4】先行技術によるロータの軸力の指示を伴う食い違いスキーマの図である。
【
図5】N=6の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図6】N=6の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図7】N=6の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図8】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の軸力の指示を伴う食い違いスキーマを示す図である。
【
図9】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の軸力の指示を伴う食い違いスキーマを示す図である。
【
図10】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の軸力の指示を伴う食い違いスキーマを示す図である。
【
図11】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図12】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図13】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図14】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図15】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図16】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図17】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図18】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図19】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図20】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図21】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図22】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図23】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図24】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図25】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図26】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図27】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図28】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図29】N=8の本発明によるロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示す図である。
【
図30】本発明による電気機械の例示的な実施形態を示す基本図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、ロータ1の第1の例示的な実施形態の側面図である。
【0034】
本実施形態のロータは、例として、P=6極、N=6個の積層されたロータモジュール2a~2fを有する。ロータ1の各極について、各ロータモジュール2a~2fが磁石構成要素を有し、同じ極を具現化するロータモジュール2a~2fの磁石構成要素は、磁石構成要素配置4a、4b、4fを形成する。明確にするために、
図1では、共に第1の磁石構成要素配置4aを形成する第1のロータモジュール2aの1つの磁石構成要素3a、第2のロータモジュール2bの1つの磁石構成要素3b、第3のロータモジュール2cの1つの磁石構成要素3c、第4のロータモジュール2dの1つの磁石構成要素3d、第5のロータモジュール2eの1つの磁石構成要素3e、および第6のロータモジュール2fの1つの磁石構成要素3fのみが、参照符号を付されている。第1から第6のロータモジュール2a~2fが、軸方向にそれらの指定の昇順で配置されていることが分かる。
【0035】
加えて、
図1は、第2の磁石構成要素配置4bおよび第6の磁石構成要素配置4fも示しており、第3、第4および第5の磁石構成要素配置はロータ1の後側に配置されており、
図1では隠れている。ここでは、単なる例として、第1の磁石構成要素配置4aの磁石構成要素3a~3f、第3の磁石構成要素配置の磁石構成要素、および第5の磁石構成要素配置の磁石構成要素は各々、径方向外方にN極を具現化し、第2の磁石構成要素配置4bの磁石構成要素、第4の磁石構成要素配置の磁石構成要素、および第6の磁石構成要素配置4fの磁石構成要素は各々、径方向外方にS極を具現化する。
【0036】
磁石構成要素3a~3fおよびその他の磁石構成要素は、ロータ1の積層鉄心5に埋め込まれた板状永久磁石として具現化されており、
図1で見えている。ロータ1は、シャフト6も有する。
【0037】
図2は、出力側7(
図1参照)から見たロータ1の切断詳細図である。ここで、
図2は、磁石構成要素3a~3fの突出を示す、第1の磁石構成要素配置4aの領域における扇形状の詳細を示している。
【0038】
第1の磁石構成要素配置4aに属する磁石構成要素3a~3fは各々、円周方向に食い違い角α
1…α
Nで配置されている。
図2は、3つの、円周方向の、基準角度位置12に対して正の角度8、9、10も示している。この場合の角度8は、磁石構成要素3aおよび3fが配置された食い違い角α
1、α
6を示しており、角度9は、磁石構成要素3c、3dが配置された食い違い角α
3、α
4を示しており、角度10は、磁石構成要素3b、3eが配置された食い違い角α
2、α
5を示している。ここで、食い違い角α
3、α
4は、角度11で示されるオフセット角βだけ食い違い角α
1、α
6よりも大きく、食い違い角α
2、α
5は、オフセット角βの2倍だけ前述の食い違い角α
1、α
6よりも大きい。式として表すと以下が当てはまる:α
1=α
0且つα
2=α
0+2・β且つα
3=α
0+βであり、α
0は、角度値が最も小さい磁石構成要素、ここでは磁石構成要素3aの周方向のエッジ位置を表す。
【0039】
ゆえに、1≦i≦3における食い違い角α
iは、値α
i=α
0+k・βを有し、0≦k≦2である。4≦m≦6における食い違い角α
mは、値α
m=α
7-mを有し、よって、これらは対称面13(
図1参照)に関して鏡面対称に分布する。この点において、対称面13の一方の側の最初の3つまたはN/2個の磁石構成要素3a、3b、3cを第1グループと呼ぶこともでき、対称面13の他方の側の最後の3つまたはN/2個の磁石構成要素3d、3e、3fを第2グループと呼ぶこともできる。
【0040】
明らかに、第1の磁石構成要素配置4aに属する磁石構成要素3a、3b、3cについて、食い違い角は、α2=α0+2・β≠α0+(2-1)・β且つα3=α0+β≠α0+(3-1)であることが当てはまる。よって、オフセットが、磁石構成要素3a~3cの配置において実現され、鏡面対称配置により、磁石構成要素3d~3fの配置においても実現される。
【0041】
一般的に言えば、第1の磁石構成要素配置4aについて、1≦i≦N/2の食い違い角αiは、値αi=α0+k・βを有し、式中、0≦k≦[(N/2)-1]であり、すべての食い違い角αiは互いに異なり、[(N/2)+1]≦m≦Nの食い違い角αmは、値αm=αN-m+1を有し、磁石構成要素配置に属する磁石構成要素3b、3cの少なくとも1つの食い違い角αiはα0+(i-1)・βと等しくないことが当てはまる。
【0042】
再び
図1を参照すると、オフセットは、磁石構成要素3a~3fの明瞭に見えるM字形配置をもたらす。残りの磁石構成要素配置4b、4fについては、対応する磁石構成要素は同様に配置されている。その他の磁石構成要素配置4b、4fの磁石構成要素の個々の食い違い角は、ここでは、先行する磁石構成要素配置4a、4bに対して周方向に60°または一般的に360°/Pだけオフセットされている。
【0043】
図3は、ロータ1の回転動作中の軸力の指示を伴うロータ1の食い違いスキーマである。食い違いスキーマは、ここでは、二次元形式でその他の磁石構成要素配置を表す磁石構成要素配置の磁石要素の位置比率を示している。磁石構成要素のオフセット角βおよび軸方向距離は、ここでは純粋に例示的なものである。個々の磁石構成要素のオフセット角βの倍数は、ここでは原則として食い違いスキーマによって定性的に示されている。
【0044】
回転動作中に有効な軸力は、矢印14a、14b、15a、15bで示されている。この場合、矢印14a、14bは、対称面13の第1の側にあるロータモジュール2a、2b、2c内の軸力に関連し、矢印15a、15bは、対称面13の他方の側にあるロータモジュール2d、2e、2f内の軸力に関連する。軸力の指示の方向は、ここではロータ1の回転動作における例示的な作用点に基づくものである。各軸力の指示の方向は他の動作点では反転され得るが、互いに対するそれらの配置は維持される。
【0045】
磁石構成要素3a~3fの鏡面対称配置は、第1に、軸力がロータ1の全長にわたって互いに相殺するという利点を有する。これは、NVH要件を考慮すると大きな利点である。しかしながら、一方の矢印14a、14bで表される軸力と他方の矢印15a、15bで表される軸力とが部分的に互いに補償することも分かる。
【0046】
比較として、
図4に、磁石構成要素のV字形配置を有する先行技術によるロータの食い違いスキーマを示す。ここで見えるのは、特に等しい大きさの、対応する矢印14’、15で示された軸力である。しかしながら、対称面13’の両側のロータモジュール内に補償はない。先行技術によるロータでは、好ましくない振動や騒音を発生させ、ステータに定在波を伝達する可能性のある軸方向変形が、第1の例示的な実施形態によるロータ1よりもはるかに大きい。
【0047】
図4において、二重矢印16’は、磁石構成要素配置に属する磁石構成要素のうちの少なくとも2つの食い違い角α
iがα
0+(i-1)・βに等しくならない条件を、この実施形態および以下の例示的な実施形態において、2つの磁石構成要素の食い違い角の入れ替えとして解釈することができることをさらに示している。
【0048】
図5~
図7は各々、N=6のロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示している。
【0049】
食い違い角α1、α2、α3について、以下が各場合に当てはまる。
【0050】
【0051】
鏡映対称性のために、さらなる食い違い角α
4、α
5、α
6も、当然ながら、そこから同様に決定することができる。ゆえに、
図5および
図7による例示的な実施形態を、W字形配置と解釈することができ、
図6による例示的な実施形態を、M字形配置と解釈することができる。
【0052】
図8~
図29は各々、N=8のロータのさらなる例示的な実施形態の食い違いスキーマを示しており、
図8~
図10には、
図3に対応する軸力がさらに示されている。これらの例示的実施形態では、当然ながら、第7のロータモジュールおよび第8のロータモジュールが設けられている。さらに、第1グループの磁石構成要素3a~3dは、食い違い角α
1、α
2、α
3、α
4を有し、第2グループの磁石構成要素3e~3hは、食い違い角α
5、α
6、α
7、α
8を有する。第1の例示的な実施形態について提供されたその他の記述は、以下で反対のことが記載されない限り、N=8の例示的な実施形態にしかるべく適用される。
【0053】
図8による例示的な実施形態では、α
1=α
0、α
2=α
0+β、α
3=α
0+3・β、およびα
4=α
0+2・βが当てはまる。図から分かるように、一方で矢印14a、14bで表される軸力と矢印15a、15bで表される軸力とは、有利には、対称面13の両側で互いに打ち消し合う。この場合もはやり、M字形配置が提供される。
【0054】
図9による例示的な実施形態では、α
1=α
0、α
2=α
0+3・βおよびα
3=α
0+2・βおよびα
4=α
0+βが当てはまる。図から分かるように、一方で矢印14a、14bで表される軸力と矢印15a、15bで表される軸力とは、有利には、対称面13の両側で互いに部分的に打ち消し合う。この場合もはやり、M字形配置が提供される。
【0055】
図10による例示的な実施形態では、α
1=α
0、α
2=α
0+3・β、α
3=α
0+βおよびα
4=α
0+2・βが当てはまる。図から分かるように、一方で矢印14a、14b、14cで表される軸力と矢印15a、15b、15cで表される軸力とは、有利には、対称面13の両側で互いに部分的に打ち消し合う。この配置は、ジグザグになっていると解釈することができる。
【0056】
図11から
図29による例示的な実施形態では、参照符号3a~3fおよび参照符号13の指示は、明確にするために省略されている。ここで、より具体的には、食い違い角α
1、α
2、α
3、α
4について、以下が当てはまる。
【0057】
【0058】
残りの部分が前述の例示的な実施形態のうちの1つに対応するロータのさらなる例示的な実施形態によれば、磁石構成要素は、表面実装永久磁石として具現化される。
【0059】
図30は、電気機械16の例示的な実施形態の基本図である。
【0060】
電気機械16は、ステータ溝またはステータ歯18を有するステータ17を備える。典型的には、ステータ溝またはステータ歯は、軸方向に真っ直ぐである。前述の例示的な実施形態の1つによるロータ1は、ステータ17の内側に回転可能に配置されている。ステータ歯18は、好ましくは各々、歯の角度だけ互いから離間されており、オフセット角βは、歯の角度の正の整数倍である。
【0061】
電気機械16は、車両、例えば電気自動車やハイブリッド車両を駆動するように設計されている。
【国際調査報告】