(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】磁気手段を用いて分子を捕捉するためのキットおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20221027BHJP
C07K 17/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
C07K17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513479
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2020074233
(87)【国際公開番号】W WO2021038107
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】506079836
【氏名又は名称】アンスティテュー ポリテクニーク ドゥ グルノーブル
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ブレア ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】クガート オルフェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエイユ ヴィクトル
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA30
4H045BA60
4H045BA62
4H045BA63
4H045DA75
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの第1および第2の領域の繰り返し可能な並置を含む少なくとも1つの磁性層によって、試料中に含有される分子を捕捉するためのキットおよび方法に関し、第1の領域は、第1の方向に分極された磁性粒子を含み、第2の領域は、分極されていないか、または第1の領域の磁性粒子の第1の分極方向とは異なる第2の方向に分極された磁性粒子を含み、該少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTの強度の少なくとも1つの変動を有する磁場を生成し、該変動は、該磁場の強度の水準の最大およびそれとともに捕捉支持体上の磁性ナノ粒子を捕捉するためのレベルを規定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に含有される分子を捕捉するためのキットであって、
a)1μm未満の最大寸法を有する磁性ナノ粒子であって、前記ナノ粒子が、それぞれ少なくとも1つの捕捉要素に結合され、前記少なくとも1つの捕捉要素が、前記分子に特異的に結合する、磁性ナノ粒子と、
b)少なくとも1つの磁性層を含むか、またはそれから本質的になる前記磁性ナノ粒子を捕捉するための支持体であって、前記磁性層が、少なくとも第1および第2の領域の繰り返し可能な並置を含み、前記第1の領域が、第1の方向に分極された磁性粒子を含み、前記第2の領域が、分極されていないか、または前記第1の領域の前記磁性粒子の前記第1の分極方向とは異なる第2の方向に分極された磁性粒子を含み、それにより、前記少なくとも1つの磁性層が、前記少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTの強度の少なくとも1つの変動を有する磁場を生成し、前記強度の少なくとも1つの変動が、前記磁場の前記強度の水準の最大および最小を規定し、前記磁場の前記水準の前記最大において、前記捕捉支持体上に前記磁性ナノ粒子を捕捉するためのゾーンを画定する、支持体と
を含む、キット。
【請求項2】
前記少なくとも1つの磁性層が、2000~30,000μm・Gaussの保磁力を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
少なくとも1つの追加の磁場源をさらに含む、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの磁性層が、捕捉面を有し、前記少なくとも1つの磁性層が、非磁性層によって前記捕捉面上で少なくとも部分的に覆われている、請求項1~3のいずれか1つに記載のキット。
【請求項5】
前記非磁性層が、1~300μmの厚さを有する、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
試料中に含有される分子を捕捉する方法であって、前記方法が、
a)前記試料を、請求項1に記載の磁性ナノ粒子と接触させて、前記分子と、前記磁性ナノ粒子に結合された前記少なくとも1つの捕捉要素との間に、少なくとも1つの捕捉複合体を形成するステップ、
b)前記少なくとも1つの捕捉複合体が、請求項1に記載の少なくとも1つの捕捉ゾーンにおいて請求項1~5のいずれか1つに記載の捕捉支持体に対して固定化されるように、ステップa)の間に形成された前記少なくとも1つの捕捉複合体を、前記捕捉支持体の少なくとも1つの磁性層によって生成された前記磁場によって誘引するステップ
を含む、方法。
【請求項7】
ステップb)の間の前記少なくとも1つの捕捉複合体の前記誘引が、前記少なくとも1つの磁性層によって生成された前記磁場と、請求項3に記載の少なくとも1つの追加の磁場源によって生成された前記磁場との共同作用によって実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉支持体が、請求項5に記載の非磁性層をさらに含み、ステップb)の間の前記捕捉支持体による前記少なくとも1つの捕捉複合体の前記誘引が、前記少なくとも1つの追加の磁場源の前記磁場によって誘発される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、前記磁性ナノ粒子と接触させるステップa)の前に前記捕捉支持体に配置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
試料中に含有される分子の前記捕捉のための、有利には、試料中に含有される分子の前記捕捉および検出のための、請求項1~5のいずれか1つに記載の上記で定義されるキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子を捕捉するためのキットに関する。本発明はまた、分子を捕捉するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ELISA試験(「Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay」の頭文字)は、概して、流体、生検、培養物、または任意の他の試料に存在する分子マーカー(抗原、抗体など)を定量的に診断するために使用されている。
【0003】
しかし、この技術は、現在、最も堅牢で、最も普及している診断方法の1つであるが、複雑で、高価なオートマトンを使用し、時間も数時間に及ぶという欠点がある。
【0004】
ELISA試験は、不均一相のイムノアッセイ技術である。すなわち、アッセイされる分子を捕捉するために、好適な分子が事前に結合された固体支持体(通常、複数のウェルを含む滴定プレート)が必要である。
【0005】
対象の分子が該支持体上で捕捉されると、洗浄により、試料の残りの部分を除去し、該分子を検出および定量化するステップに進むことが可能になる。
【0006】
例えば、抗原を溶液中でアッセイすることを可能にする、いわゆる「サンドイッチ型」ELISA試験の場合、支持体の表面は、所定の量のいわゆる捕捉抗体で覆われており、該抗体は、所望の抗原と結合するのに好適である。
【0007】
次に、該抗原を含有し得る溶液が支持体に適用される;該抗原は、支持体の表面上に位置する捕捉抗体に結合する。
【0008】
次いで、支持体を洗浄して、溶液中に残存する任意の非結合抗原が除去される。次に、検出手段に結合した、検出抗体と称される抗体を含有する溶液を支持体上に堆積させ、ここで、当該検出手段は、支持体上に固定された抗原に結合するように適合されている。該検出抗体は、直接マーキングされ、検出可能なシグナルを放出することができるが、基質を触媒して検出可能なシグナルを放出する酵素と結合させることもできる。
【0009】
新たに洗浄ステップを設けることで、検出抗体と結合した抗原が支持体上に保持され、該抗体自体が酵素に結合される。
【0010】
最後に、抗原を検出および定量化するために、基質が支持体上に堆積され、これは、酵素によって、抗原と検出抗体との間の結合を表す検出可能なシグナル(例えば、分光学的にまたは蛍光発光によって分析される色)に変換される。
【0011】
該シグナルは、肉眼で、または分光光度計などの器具によって観察され得る。
【0012】
非特許文献1には、NdFeB磁性粒が固定化されたポリジメチルシロキサン(PDMS)マトリックスの下に配置された流体マイクロチャネル内で該試料を循環させることによって試料中の分子を捕捉する方法が記載されている。
【0013】
特許文献1には、試料中の分子を捕捉する方法であって、該試料を磁性粒子と混合するステップであって、該粒子の各々が、捕捉される該分子に選択的に結合することができる要素と結合して、磁性粒子、該要素、および該要素に結合した該分子を含む少なくとも1つの複合体を形成する、ステップと、該少なくとも1つの複合体を、規則的な磁場微小発生源を含む支持体上に固定化するステップと、を含む方法が記載されている。
【0014】
これらの規則的な磁場微小発生源は、所定のパターンに従って試料と接触するように意図された支持体の表面の近傍に分布し、また所定の磁気配向を有している。
【0015】
この文献に記載された方法は興味深い。しかしながら、捕捉支持体は、特に清浄な環境において、製造および工業化することが困難であり、これは高い製造コストを要することを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】D.Issadoreら著、「Lab Chip」、2011年、第11巻、p.147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、特に、従来技術のこれらの欠点を克服することである。
【0019】
より正確には、本発明の目的は、高性能磁気手段により試料中に含有される分子を捕捉するためのキットおよび方法であって、低コストの生産技術と適合性のある、低減された経済的フットプリントを有するキットおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本発明は、試料中に含有される分子を捕捉するためのキットに関し、当該キットは、
a)1μm未満の最大寸法を有する磁性ナノ粒子であって、該ナノ粒子が、それぞれ少なくとも1つの捕捉要素に結合され、該少なくとも1つの捕捉要素が、該分子に特異的に結合する、磁性ナノ粒子と、
b)少なくとも1つの磁性層を含むか、またはそれから本質的になる該磁性ナノ粒子を捕捉するための支持体であって、該磁性層が、少なくとも第1および第2の領域の繰り返し可能な並置を含み、第1の領域が、第1の方向に分極された磁性粒子を含み、第2の領域が、分極されていないか、または第1の領域の磁性粒子の第1の分極方向とは異なる第2の方向に分極された磁性粒子を含み、それにより、該少なくとも1つの磁性層が、該少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTの強度の少なくとも1つの変動を有する磁場を生成し、該磁場の強度の少なくとも1つの変動が、該磁場の強度の水準の最大および最小を規定し、該磁場の水準の該最大において、捕捉支持体上に磁性ナノ粒子を捕捉するためのゾーンを画定する、支持体と
を含む。
【0021】
本発明者らは、全ての予想に反して、弱い磁気特性を有する磁性粒子を有する磁性層を使用して捕捉要素に結合されたナノ粒子を誘引することが可能であることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明で使用される磁性層は、可撓性であり、特に磁気テープに対応する。本発明の磁性層は、ポリマー中にランダムに分布するか、または別様で予備配向軸に沿って配向されたフェライトなどの磁性複合体材料から構成される。フェライトは、高圧および高温(1000℃超)で酸化鉄Fe2O3XOから成形することによって得られる強磁性セラミックであり、Xはマンガン、亜鉛、コバルト、ニッケル、バリウム、ストロンチウムなどであり得る。
【0023】
したがって、本発明は、溶液中のナノメートル磁性粒子の捕捉に適用するために、消磁することが困難である、堅牢な情報記憶装置(オーディオおよびビデオカセット、クレジットカード、バッジ、輸送チケットなど)に一般に使用される磁気テープの使用を転用することにある。
【0024】
本明細書の残りの部分の明確化のために、本発明による磁性層を構成する磁性粒子は、捕捉要素に結合された「磁性ナノ粒子」と明確に区別するために「粉末」または「磁性粒」と称される。
【0025】
本発明の磁性層は「符号化」されており、すなわち、それらを構成する磁性粒の少なくとも一部が分極/磁化されている。以下、「分極」および「磁化」という用語を同義語とし、一様に用いる。
【0026】
この符号化(またはこの分極)は、ランダムに実行されるのではなく、第1の方向に分極された磁性粒を含む第1の領域と、分極されていないか、または磁性粒の第1の分極方向とは異なる第2の方向に分極された磁性粒を含む第2の領域との少なくとも1つの並置を明らかにし、それによって第1の領域と第2の領域との間に少なくとも1つの接合を画定するように構成される。したがって、各領域は(分極されると)それ自体の磁場を放出し、その結果、磁性層を複数の磁場源としてモデリングすることができる。
【0027】
該少なくとも1つの磁性層を構成する磁性粒の分極は、特に、磁気テープ符号化の分野で周知の書込みヘッドを用いて行われる。通常、局所磁場は、小型電磁石によって磁性層の領域に印加される。
【0028】
第1および第2の分極領域のこの特定の並置により、該少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において、生成される磁場の強度の変動を生じさせ、それにより、磁場の強度の水準の最大および最小を生じさせることが可能になる。磁場の強度の水準は、磁場の強度の絶対値(単位:テスラ)に対応する。本発明では、代わりに「強度の水準」および「水準」という用語を用いることができる。磁場の強度の水準の最大により、該懸濁されたナノ粒子を誘引し、該磁性ナノ粒子は、それらがナノ粒子の磁気エネルギーの「極小値」または「エネルギーシンク」と称されるように、それらの磁気エネルギーを最小にするゾーンを生成する。
【0029】
したがって、該磁性層の表面上への正射影により、磁場の強度の水準の最大は、ナノ粒子の捕捉ゾーンを画定する。したがって、捕捉ゾーンおよびエネルギーシンクは、同じ場所で一致する。
【0030】
これらの捕捉ゾーンは、磁場強度の水準の最大または各最大の該磁性層の表面上の正射影から最大で35μmの距離にわたって延在する。「最大35μm」とは、35μm、34μm、33μm、32μm、31μm、30μm、29μm、28μm、27μm、26μm、25μm、24μm、23μm、22μm、21μm、20μm、19μm、18μm、17μm、16μm、15μm、14μm、13μm、12μm、11μm、10μm、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μmおよび1μmを意味する。
【0031】
ナノ粒子の磁気エネルギー(E)は、以下の式に従って、該少なくとも1つの磁性層によって生成される磁場
【0032】
【0033】
によるナノ粒子
【0034】
【0035】
の磁化の内積の反対に等しい。
【0036】
【0037】
式中、Eはナノ粒子の磁気エネルギー(単位:ジュール)であり、
Mはナノ粒子の磁化(単位:アンペア毎メートル)であり、
Bは磁場の強度(単位:テスラ)である。
【0038】
本発明で使用される磁性を有する材料の場合の磁化は、磁場の強度の厳密に増大する関数であり、その結果、ナノ粒子の磁気エネルギーの最小は、磁場の水準の最大に対応し、したがって捕捉ゾーンに対応する。
【0039】
磁性ナノ粒子が、該少なくとも1つの磁性層によって生成された単一の磁場によって磁化される場合、捕捉ゾーンは、第1の領域および第2の領域の接合部に位置する。
【0040】
該少なくとも1つの磁性層によって生成される磁場は、少なくとも0.1mTかつ最大で1T、有利には少なくとも0.1mTかつ最大で500mT、より有利には少なくとも0.5mTかつ最大で300mT、さらにより有利には少なくとも1mTかつ最大で200mTの強度の変動を示す。
【0041】
磁場の強度におけるこれらの変動は、強い磁場勾配、すなわち、ナノ粒子のブラウン運動に関して有意な捕捉力を発揮するのに十分な磁場勾配を生成することを可能にする。したがって、かかる磁場勾配は局在化される。さらに、該勾配は、捕捉ゾーンを指しており、該少なくとも1つの磁性層から10μmの距離で少なくとも10Tm-1、有利には10T・m-1~105T・m-1、さらにより有利には500T・m-1~5×103T・m-1の値を有する。このようにして、強い磁場勾配は、懸濁されたナノ粒子を該少なくとも1つの磁性層の捕捉ゾーンに向かって誘導する。
【0042】
磁性ナノ粒子が該少なくとも1つの磁性層によって捕捉されると、それらは、その捕捉ゾーンまたは各捕捉ゾーンに位置決めされる。この特定の位置決めは、以下でより詳細に説明するように、捕捉された分子を直接検出および定量化するために非常に興味深い。
【0043】
磁場の強度は、MOIF(Magneto-Optical Imaging Film:磁気光学イメージング膜)と称される磁気光学技術によって測定することができる。
【0044】
MOIF技術はファラデー効果に基づいている。一般に、この技術は、強度を測定しようとする物体の磁場中に、その光学特性が磁場によって既知の方法で影響を受ける材料から構成された平坦膜を浸漬することからなる。通常、該膜は、該物体に付着している。該平坦膜は、試験物体のゾーンの幅および長さと少なくとも等しい幅および長さを有する。この第1のステップに続いて、該平坦膜は、既知の振幅および分極の光のビームによって照射され、このビームは、該平坦膜を通過する。分極および該平坦膜を通過した光ビームの振幅の分析により、その中に存在する磁場の平面成分の測定値が得られる。MOIF技術による物体の磁場の強度の例示的な測定は、論文Grechishkin et al., J. Appl. Phys.120,174502(2016)によって与えられる。
【0045】
実際には、その厚さが典型的には1マイクロメートル未満であり、磁気光学材料(例えば、希土類系ガーネット)から構成される薄い平面膜が、透明な非磁性基板(例えば、ガラス、石英、またはシリカ)上に堆積され、次いで、非常に薄い反射層、ミラー(例えば、金、銀、またはアルミニウム製)で覆われ、その厚さは100nm未満である。したがって、磁気光学材料化合物の膜は、その面の一方が透明な非磁性基板で覆われ、他方の面が反射層で覆われる。このアセンブリは、本発明による捕捉支持体などの磁場を放出する物体に取り付けられている。次いで、磁気光学材料の膜は、最初に透明な非磁性層(その光学容量は磁性物体の磁場の影響を受けず、したがって、該ビームの分極に入射しない)を通過する分極光のビームで照射され、次に光学材料の膜(磁性物体によって生成された磁場が光学特性に影響を及ぼし、したがって、ビームの分極に入射する)を通過し、反射層によって反射され、再び光学材料の膜(ビームの分極に再び影響を及ぼす)を通過し、次に再びガラス(ビームの分極に影響を及ぼさない)を通過して、分極分析器で終了する。入射ビームに対する反射ビームの分極の回転角は、磁場、ガーネットのファラデー回転係数、および磁気光学材料の厚さに比例する。したがって、該少なくとも1つの磁性層によって生成される磁場の強度の分布は、磁場の強度の関数として光ビームのファラデー効果による回転を表す較正曲線によって得られる。この曲線は、使用される磁気光学材料に固有である。
【0046】
特に、磁場の強度は、磁気光学材料の膜としてDLGi5タイプのガーネットを使用し、分極分析器としてモデルCセンサを有する、MATESY GmbH社によって市販されているMagView CMOSシステムを使用するMOIF技術によって測定することができ、その較正曲線は
図11に示されている。この装置では、光を反射させる必要がないように、ミラーはCMOSセンサに置き換えられる。
【0047】
結果は、数値シミュレーションおよび分析シミュレーションによって、例えば、以下の2つのアプローチのうちの1つによって確認され得る:
-COMSOL Multiphysics(登録商標)5.0モデリングソフトウェアを使用して実行される有限要素アプローチ;このソフトウェアは、10mmの厚さを有する二次元環境において数値シミュレーションが実行されることを可能にする;上流では、該少なくとも1つの磁性層の厚さおよび幅が、一方では典型的には明視野顕微鏡画像を使用して光学的に測定され、他方ではその残光値または影響が測定される;より詳細には以下を参照されたい;これらのデータはソフトウェアに入力され、該少なくとも1つの磁性層によって生成された磁場は、定常状態でMFNC(Magnetic Field No Current:磁場無電流)ツールボックスを使用してシミュレートされる、
-いわゆる半分析的アプローチ;このものは、例えば、Chigirinsky S.et al,Advanced Study Center Co.Ltd.,20(2009),85-91の論文において開発されたアプローチに基づいている;ここでも、上流で、該少なくとも1つの磁性層の厚さおよび幅が一方で測定され、該少なくとも1つの磁性層の残留磁気または保磁力の値が他方で測定される;該少なくとも1つの磁性層は、均一な磁化を有する要素の合計に分解され、次いで、各要素の磁場を与える方程式の解析分解が、例えば、Scilab(登録商標)6.02ソフトウェア(発行者Scilab Enterprises)を使用して行われる;該少なくとも1つの磁性層の各要素によって生成された磁場は、空間の各点において該少なくとも1つの磁性層の他の要素の全てによって生成された磁場に追加される;少なくとも1つの追加の磁場源も存在する場合(より詳細には以下を参照されたい)、該少なくとも1つの追加の磁場源によって生成される磁場は、各点において、該少なくとも1つの磁性層によって生成される全磁場に加えられる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、第2の領域は、第1の領域の磁性粒の第1の分極方向に対して少なくとも30°ずれた、有利には30°~180°ずれた第2の異なる方向に分極された磁性粒を含む。本発明において、「30°~180°」とは、30°、31°、32°、33°、34°、35°、36°、37°、38°、39°、40°、41°、42°、43°、44°、45°、46°、47°、48°、49°、50°、51°、52°、53°、54°、55°、56°、57°、58°、59°、60°、61°、62°、63°、64°、65°、66°、67°、68°、69°、70°、71°、72°、73°、74°、75°、76°、77°、78°、79°、80°、81°、82°、83°、84°、85°、86°、87°、88°、89°、90°、91°、92°、93°、94°、95°、96°、97°、98°、99°、100°、101°、102°、103°、104°、105°、106°、107°、108°、109°、110°、111°、112°、113°、114°、115°、116°、117°、118°、119°、120°、121°、122°、123°、124°、125°、126°、127°、128°、129°、130°、131°、132°、133°、134°、135°、136°、137°、138°、139°、140°、141°、142°、143°、144°、145°、146°、147°、148°、149°、150°、151°、152°、153°、154°、155°、156°、157°、158°、159°、160°、161°、162°、163°、164°、165°、166°、167°、168°、169°、170°、171°、172°、173°、174°、175°、176°、177°、178°、179°または180°を意味すると理解される。
【0049】
有利には、第2の領域は、少なくとも60°ずれた、より有利には少なくとも90°ずれた、さらに有利には少なくとも120°ずれた、さらに有利には少なくとも150°ずれた、第2の異なる方向に分極された磁性粒を含む。
【0050】
本発明の有利な実施形態によれば、第2の領域は、第1の領域の磁性粒の分極の第1の方向とは反対の第2の方向に分極された磁性粒、すなわち180°の分極反転を含む。
【0051】
別の実施形態によれば、第2の領域の磁性粒は分極されない。かかる構成はまた、磁場の強度の変動の発生を可能にし、それにより、該少なくとも1つの磁性層によって生成された磁場の強度の水準の最大を可能にする。
【0052】
本発明の1つの実施形態によると、該少なくとも1つの第1の領域および該少なくとも1つの第2の領域は、同じ寸法を有する。あるいは、それらは、異なる寸法、特に異なる幅および/または長さを有する。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの第1の領域および/または該少なくとも1つの第2の領域は、10~500μmの範囲の幅を有する。本発明において、「10~500μm」とは、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm、250μm、260μm、270μm、280μm、290μm、300μm、310μm、320μm、330μm、340μm、350μm、360μm、370μm、380μm、390μm、400μm、410μm、420μm、430μm、440μm、450μm、460μm、470μm、480μm、490μm、500μmを意味すると理解される。
【0054】
有利には、該少なくとも1つの第1の領域および/または該少なくとも1つの第2の領域は、50~250μm、より有利には70~150μm、さらにより有利には90~110μmの範囲の幅を有利に有する。
【0055】
一実施形態によれば、該少なくとも1つの第1の領域と該少なくとも1つの第2の領域とは、同一のパターンを形成する。このパターンは、特に、テープに対応し得る。あるいは、それらは異なるパターンを表す。
【0056】
一実施形態によれば、該少なくとも1つの磁性層は、1μm未満の厚さを有する保護膜でコーティングされる。かかる膜は、有利には、該少なくとも1つの磁性層を保護することを可能にし、しかしながら、その非常に小さな厚みにより、その捕捉/誘引能力を妨げることはできない。
【0057】
該少なくとも1つの磁性層は、それ自体で捕捉支持体を構成することができる。この場合、このものは、有利には少なくとも5μmの厚さを有し、より有利には10~20μmの厚さを有する。
【0058】
該磁性層は、支持部材上に有利に配置される。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、支持部材に使用される材料は、ガラス、シリコン、プラスチック材料のポリマー、紙もしくは竹などの有機材料、石英、金、接着テープ、硬膜もしくはチタンなどの非磁性金属合金、またはこれらの材料の組み合わせのリストから選択される。
【0060】
有利には、ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、ポリエステル、またはこれらの材料の組み合わせのリストから選択される。
【0061】
支持部材は、上記に列挙される材料の単層であり得る。
【0062】
支持部材上に配置された磁性層は、例えば、VHSカセットのような2つの巻線スプールを使用して延伸され得る。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、捕捉支持体は、捕捉分子を含有する試料を受容し、該少なくとも1つの磁性層を含む少なくとも1つの壁によって区切るように構成された捕捉受容体を含む。この捕捉受容体は、最小寸法として、20μm~1000μmの寸法を有する。本発明において、「20μm~1000μm」とは、20μm、40μm、60μm、80μm、100μm、120μm、140μm、160μm、180μm、200μm、220μm、240μm、260μm、280μm、300μm、320μm、340μm、360μm、380μm、400μm、420μm、440μm、460μm、480μm、500μm、520μm、540μm、560μm、580μm、600μm、620μm、640μm、660μm、680μm、700μm、720μm、740μm、760μm、780μm、800μm、820μm、840μm、860μm、880μm、900μm、920μm、940μm、960μm、980μmおよび1000μmを意味すると理解される。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、捕捉支持体は、チャンバ、平行六面体チャンバ、中空直円筒、ウェル、直円錐、特に切頭直円錐または切頭角錐の形態のウェル、マイクロ流体チャネル、滴定プレート、試験管およびマイクロチューブの中から選択される。
【0065】
チャンバおよび平行六面体チャンバの場合、該少なくとも1つの磁性層は、該チャンバの1つの壁に配置され、複数の磁性層が存在する場合、該チャンバの少なくとも1つの壁に配置される。
【0066】
中空直円筒の場合、該少なくとも1つの磁性層は、該円筒の円周壁に配置される。
【0067】
ウェルの場合、該少なくとも1つの磁性層は、該ウェルの1つの壁に配置され、複数の磁性層が存在する場合、該ウェルの少なくとも1つの壁に配置される。有利には、該少なくとも1つの磁性層は、該ウェルの底部を形成する壁に配置される。
【0068】
円錐、特に切頭または切頭角錐直円錐の形態のウェルの場合、該少なくとも1つの磁性層は、該ウェルの1つの壁に配置され、複数の磁性層が存在する場合、該ウェルの少なくとも1つの壁に配置される。
【0069】
マイクロ流体チャネルの場合、該少なくとも1つの磁性層は、該チャネルの1つの壁に配置され、複数の磁性層が存在する場合、該チャネルの少なくとも1つの壁に配置される。
【0070】
複数のウェルを含む滴定プレートの場合、該少なくとも1つの磁性層は、該少なくとも1つのウェルの1つの壁に配置され、複数の磁性層が存在する場合、該少なくとも1つのウェルの少なくとも1つの壁に配置される。有利には、該少なくとも1つの磁性層は、該少なくとも1つのウェルの底部を形成する壁に配置される。
【0071】
試験管またはマイクロチューブの場合、該少なくとも1つの磁性層は、該試験管またはマイクロチューブの1つの壁に配置され、複数の磁性層が存在する場合、該試験管またはマイクロチューブの少なくとも1つの壁に配置される。有利には、該少なくとも1つの磁性層は、該試験管またはマイクロチューブの円周壁に配置される。
【0072】
該少なくとも1つの磁性層は、支持体に固定され得る。有利には、該固定は不可逆的である。この場合、この固定は、例えば、接着、圧延またはスタンピングによって行うことができる。あるいは、該固定は可逆的である。したがって、該少なくとも1つの磁性層は、より概してマジックテープシステムと称されるフック&ループシステムによって、または動物由来の接着剤などの可逆接着剤によって固定され得る。
【0073】
捕捉支持体は、本発明の1つ以上の磁性層を含み得る。
【0074】
一実施形態によれば、該少なくとも1つの磁性層は、該磁性層の一部が別の部分に重ね合わされるように、それ自体の上に折り重ねられる。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、該捕捉支持体は、少なくとも2つの磁性層を含む。有利には、該磁性層は、同じ平面上に配置される。
【0076】
あるいは、該磁性層は、異なる平面上に配置され、該2つまたは少なくとも2つの層が互いに重ね合わされる。
【0077】
本発明の別の実施形態によれば、捕捉支持体は、該磁性ナノ粒子を誘引するための少なくとも1つの壁を含み、該壁は、磁性層の該少なくとも1つを含む。有利には、捕捉支持体は、それぞれ少なくとも1つの磁性層を有する複数の誘引壁を含み、該壁のうちの少なくとも1つは、他の磁性層とは異なる平面上に配置される;有利には、該壁のうちの少なくとも1つは、他の壁のうちの1つまたは少なくとも1つの上に重ね合わされる。あるいは、または相補的な方法で、該壁のうちの少なくとも1つは、他の壁または他の壁のうちの少なくとも1つに直交して配置される。
【0078】
ナノメートル磁性粒子を捕捉するための本発明の磁性層の使用は、一般に、これらのナノ粒子が、例えば希土類系合金で作製された磁性層などの強い磁気特性を有する磁性層によって捕捉される限りにおいて、直観に反するものである。実際、体積が小さいために本来弱い磁化を示すナノ粒子を捕捉するためには、磁気特性の強い磁性層を使用するのが慣例である。希土類をベースとするかかる「強」磁性層の例は、特に文献WO2014/111187に記載されている。強磁性層の残留磁気は0.7T~1.5Tであり、保磁場は600kA/m~2400kA/m3である。
【0079】
本発明による該少なくとも1つの磁性層は、見かけの残留磁気および保磁力について5~15倍低い値を示す。該少なくとも1つの磁性層の保磁場は、10~400kA/m3の範囲である。
【0080】
「見かけの残留磁気」は、該少なくとも1つの磁性層全体の残留磁気を指しており、それを構成する磁性粒の各々の残留磁気ではない。
【0081】
強磁性材料の保磁場は、材料の磁化を打ち消すために、最初に飽和状態でその磁化に達した材料に印加する必要がある磁場の強度を示す。
【0082】
残留磁気は、材料示強変数であり、強い外部磁場を用いて磁化された後に強磁性材料内に持続する磁束の誘導または密度を測定する。残留磁気は、テスラ(T)で測定される。予め磁化された永久磁性材料の試料は、その体積および材料の残留磁気に比例する磁気モーメントを有する。磁気モーメントは、磁気源の強度を特徴付けることを可能にするベクトル量である。この試料によって生じる磁束はそのモーメントに比例する。この磁束は、振動試料磁力計(VSM)、または抽出磁力計、またはSQUID磁力計で測定することができる。通常、十分に強い磁場(典型的には4~6テスラ)をその優先磁化軸に沿って試料に印加してその磁化を飽和させ、次いでこのいわゆる「飽和」磁場を停止させる。飽和後にゼロ磁場(0T)下で試料によって生成される磁束の測定は、試料の残留磁気モーメントを与える。次いで、材料の残留磁気が得られる。材料の残留磁気は、試料のモーメントを試料の体積で除算したものに等しいものである。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの磁性層は、0.6T以下の残留磁気を有し、有利には、0.01T~0.6Tの残留磁気を有する。本発明において、「0.01T~0.6T」とは、0.01T、0.02T、0.03T、0.04T、0.05T、0.06T、0.07T、0.08T、0.09T、0.1T、0.11T、0.12T、0.13T、0.14T、0.15T、0.16T、0.17T、0.18T、0.19T、0.2T、0.21T、0.22T、0.23T、0.24T、0.25T、0.26T、0.27T、0.28T、0.29T、0.3T、0.31T、0.32T、0.33T、0.34T、0.35T、0.36T、0.37T、0.38T、0.39T、0.4T、0.41T、0.42T、0.43T、0.44T、0.45T、0.46T、0.47T、0.48T、0.49T、0.5T、0.51T、0.52T、0.53T、0.54T、0.55T、0.56T、0.57T、0.58T、0.59T、0.6Tを意味すると理解される。
【0084】
より有利には、該少なくとも1つの磁性層は、0.01T~1T、より有利には0.02T~0.5T、さらにより有利には0.05T~0.2Tの残留磁気を示す。
【0085】
該磁性層または全ての磁性層の厚さが薄すぎる場合、すなわち、その厚さよりもはるかに大きい、少なくとも10倍大きい幅および/または長さをそれが有する場合、磁性材料の体積を決定することが困難になり、それにより、その残留磁気を計算することが困難になる。これは、特に、薄い磁性層が基板層上にある市販の磁気テープの場合であり、さらに、これらの2つの層間の境界は、工業的製造プロセスのために評価することが困難であることが多い。この場合、代わりに、磁性層または磁性層のセットの保磁力が測定される。保磁力は、試料の磁気モーメントを試料の表面(もはやその体積ではない)で除算した値に等しい。保磁力は、磁束の表面密度の単位、すなわちpm・Gaussで表される。通常、2mm×2mmの試料(実験室磁力計に収まる典型的なサイズ)は、試験される捕捉支持体から切断される。その正確な面積は光学顕微鏡で測定される。磁性材料の共鳴を得るために従うべき手順は、残留磁気についての手順と同じであり、すなわち、その磁化は、その磁気モーメントを得るために飽和される。
【0086】
したがって、本発明はまた、該少なくとも1つの磁性層が2000~30,000μm・Gaussの保磁力を有する、上記に定義されるキットに関する。本発明において、「2000~30,000μm・Gauss」は、2000μm・Gauss、2500μm・Gauss、3000μm・Gauss、3500μm・Gauss、4000μm・Gauss、4500μm・Gauss、5000μm・Gauss、5500μm・Gauss、6000μm・Gauss、6500μm・Gauss、7000μm・Gauss、7500μm・Gauss、8000μm・Gauss、8500μm・Gauss、9000μm・Gauss、9500μm・Gauss、10,000μm・Gauss、11,000μm・Gauss、12,000μm・Gauss、13,000μm・Gauss、14,000μm・Gauss、15,000μm・Gauss、16,000μm・Gauss、17,000μm・Gauss、18,000μm・Gauss、19,000μm・Gauss、20,000μm・Gauss、21,000μm・Gauss、22,000μm・Gauss、23,000μm・Gauss、24,000μm・Gauss、25,000μm・Gauss、26,000μm・Gauss、27,000μm・Gauss、28,000μm・Gauss、29,000μm・Gauss、30,000μm・Gaussを意味すると理解される。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの磁性層は、5000~20,000μm・Gauss、有利には8000~14,000μm・Gauss、より有利には9000~11,000μm・Gaussの保磁力を有する。捕捉される磁性ナノ粒子は、その最大寸法として、1μm未満の寸法を有する。
【0088】
それらの寸法により、使用される磁性粒子は超常磁性特性を示す。
【0089】
「超常磁性」という用語は、熱撹拌の影響下で、印加された磁場の不在下でランダムに磁化の方向を変化させる小さな寸法の強磁性またはフェリ磁性の材料の粒子の特性を示す。
【0090】
磁性粒子の「超常磁性」特性とは、外部励起磁場がない場合、磁性粒子が正味の磁気モーメントを有さず、互いに誘引しないため、それらの凝集が防止されることを意味する。
【0091】
捕捉要素に結合されたマイクロ粒子と比較して、捕捉要素に結合されたナノ粒子は、特に、より高い拡散係数(10倍)および大幅に増大した(103倍)濃度(m3当たりのlog数)のために、分子捕捉に関してはるかに高い性能を示す。しかし、それらの各々の磁力は103で除算される(1/10に縮小した場合の数値)。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、磁性ナノ粒子は、その最大の寸法として、50nm~500nmの範囲、有利には50nm~250nmの範囲、より有利には100~250nmの範囲、さらに有利には150~200nmの範囲の寸法を有する。
【0093】
一実施形態によれば、磁性ナノ粒子は、10~90%の鉄、有利には30~80%、より有利には50~70%の鉄を含む。ナノ粒子に含有される鉄の量が多いほど、追加の磁場の存在下でのそれらの磁化が大きくなり、該少なくとも1つの磁性層によるそれらの誘引力が強くなる。したがって、鉄の量が多ければ多いほど、以下に示すように、磁化を増大させてそれらがより速く誘引する必要がなくなる。
【0094】
本発明の一実施形態によれば、ナノ粒子はカプセル化される。これらは、特に酸化鉄とポリスチレンの共重合によって得ることができる。このカプセル化により、ナノ粒子からの鉄の放出を制限することが可能となる。実際、かかる放出は、捕捉された分子の検出および定量化を妨害する。
【0095】
磁性ナノ粒子は、平行六面体、円環体、球体などの任意の形状を有し得る。ナノ粒子は、平滑なまたは不規則な表面を有し得る。それらが不規則な表面を有する場合、それらはいわゆる「ジャガイモ様」の形状を有する。
【0096】
有利には、磁性ナノ粒子は球状であり、したがって「ビーズ」に似ている。したがって、粒子は、それらの幾何学形状が完璧な球体ではない場合でも、「ビーズ」と称される場合がある。
【0097】
好ましくは、該ビーズは単分散されており、ビーズの寸法均一性はそれらに同一の特性を与え、それにより、該少なくとも1つの磁性層によるそれらの捕捉のためのビーズの拡散を改善する。「単分散」とは、ビーズの平均直径の標準偏差が、200nmにわたって40nm以下、有利には200nmにわたって20nm以下であることを意味する。
【0098】
一部の場合では、ビーズは、プラスチックポリマー、シリカ(SiO2)などの磁性材料をほとんどまたは全く含まないマトリックス中に分散した形態で市販されている。
【0099】
ビーズは、好ましくは生体適合性であり、すなわち、それらが使用される生物学的媒体を妨害しないか、または分解しない能力をそれらは有する。
【0100】
捕捉要素の磁性ナノ粒子への結合を可能にするために、磁性ナノ粒子の表面は、特に黄色ブドウ球菌のタンパク質AもしくはG、または別様でカルボジイミドによって官能化される。タンパク質AもしくはGが使用される場合、捕捉要素とナノ粒子との間の結合は、カルボジイミドの使用とは異なり、共有結合ではない。
【0101】
種々の捕捉要素をナノ粒子に結合することができる。本発明の一実施形態によれば、捕捉要素は、抗体、抗体のFab断片、F(ab’)2断片、またはFv断片、抗原、核酸配列、特に小胞に相当するオルガネラ、細胞、アプタマーまたは細菌から選択される。
【0102】
抗体または「免疫グロブリン」は、4本のアミノ酸鎖からなり、2本の軽鎖および2本のいわゆる重鎖を区別することができる。各重鎖は、ジスルフィド架橋によって軽鎖に連結される。さらに、重鎖の末端および関連する軽鎖の末端は、超可変領域に起因するパラトープを共に規定する。したがって、抗体は、それぞれ抗原のエピトープとの結合を可能にする2つのパラトープを含む。重鎖は、いわゆるヒンジ領域で相互に連結されている。
【0103】
2つのパラトープのうちの1つに対応する抗体の断片は、断片Fvと称される;それは、エピトープの認識特性を保持する抗体の最小断片である。
【0104】
Fab断片は、軽鎖全体およびこの軽鎖に連結された重鎖の末端に対応する。したがって、Fab断片には、Fv断片が含まれる。抗体のための2つのFab断片が存在する。
【0105】
F(ab’)2断片は、重鎖のヒンジ領域によって一緒に連結された2つのFab断片の会合に対応する。
【0106】
Fv、FabおよびF(ab’)2断片は、完全抗体と同じ抗原に対する親和性を示す。
【0107】
核酸は、ポリマーであり、その基本単位は、クレオチドである。核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)のいずれかであり得る。
【0108】
オルガネラは、真核細胞の細胞質に含有され、特定の生物学的機能が実行される分化した区画である。特に、オルガネラの中には、内質網、ゴルジ装置、ミトコンドリア、リソソーム、およびペルオキシソームがある。
【0109】
小胞は、細胞の細胞質に存在し、少なくとも1つの脂質二重層で構成される区画である。小胞は細胞質内を循環し、貯蔵、輸送、または細胞廃棄物の消化などの種々の機能を有する。
【0110】
細胞は、生体を構成する区画である;それは膜によって制限されており、一方ではその生殖に必要なDNA、他方ではその機能に必要なタンパク質を含む。
【0111】
アプタマーは、合成オリゴヌクレオチドであり、最も多くの場合、特定のリガンドに結合することができ、時にはそのリガンド上で化学反応を触媒し得るRNAである。アプタマーは、概して、「指数的濃縮によるリガンドの系統的進化」(SELEX)と称される反復選択方法によって、ランダム配列の多数の化合物の組み合わせライブラリーからインビトロで単離される合成化合物である。SELEX法を使用したアプタマー合成のさらなる詳細は、「Aptamers and SELEX in Chemistry&Biology」(Chem Biol.2014 Sep 18;21(9):pages 1055-8)の論文において見出すことができる。
【0112】
細菌は、DNAを含有する単一の細胞質区画を含む単細胞の原核微生物である。したがって、このDNAは真核細胞とは異なり、核によって細胞質から単離されない。細菌は、分裂によって半分に分割するだけで繁殖する。
【0113】
使用される捕捉要素の種類は、捕捉分子の種類に応じて、当業者によって容易に適合される。
【0114】
本発明はまた、少なくとも1つの追加の磁場源をさらに含む上記で定義されるキットに関しており、該追加の磁場源は、該少なくとも1つの磁性層の外部にある。
【0115】
該少なくとも1つの追加の磁場源によって生成される磁場は、キットの要素に対して複数の影響を及ぼしており、一方では捕捉支持体によるナノ粒子の捕捉を加速することを可能にし、他方ではより局在化された捕捉ゾーン、すなわちより正確にはより狭い、典型的には該磁性層の表面上の正射影から15μm未満の距離にわたって延在する捕捉ゾーンを得ることを可能にする。
【0116】
一方で、該少なくとも1つの追加の磁場源の磁場を印加することは、有利には、磁性ナノ粒子の磁化を増大させ、それにより、捕捉支持体の該少なくとも1つの磁性層によるそれらの捕捉を加速するか、またはさらには誘発することを可能にする。
【0117】
他方で、該少なくとも1つの磁性層によって生成される磁場の水準以上の水準の追加の磁場の存在が、該少なくとも1つの磁性層によって生成される磁場に追加され、その結果、追加の磁場の配向に基づいて、結果として生じる全磁場の一部のエネルギーシンクの振幅は、該少なくとも1つの磁性層によって生成される唯一の磁場のエネルギーシンクの振幅よりも大きくなり、これもナノ粒子の捕捉の加速に関与する。
【0118】
捕捉ゾーンは、支持体の表面上で強化され、ここで、該少なくとも1つの磁性層によって第1の領域と第2の領域との間の接合部の上方に生成される磁場は、追加の磁場と同じ軸および同じ方向に従う。これにより、磁場の総強度の水準が有意に向上する。反対に、第1および第2の領域の上方では、追加の磁場と該少なくとも1つの磁性層によって生成される磁場との合力の水準は、それらが同一線上にないので、それほど増大しない。したがって、磁場の強度の水準の最大は、最小よりも顕著に増大する;それにより、特定のエネルギーシンクの振幅が強調される。これは、一方では、これらのエネルギーシンクによってより強く誘引されるこれらの捕捉ゾーン上の捕捉を加速し、他方では、捕捉ゾーンの範囲を減少させ、それにより、捕捉ゾーンは、地理的により良好に画定され、より正確なものとなる。
【0119】
支持体の表面において、第1の領域と第2の領域との間の接合部で該少なくとも1つの追加の磁場源により生成される磁場が、同じ軸に沿って、しかし反対方向で該少なくとも1つの磁性層によって生成される磁場よりも大きい場合、捕捉ゾーンは排除される。実際、このレベルで生成される磁場の強度の水準は、もはや最大ではなく、ナノ粒子のエネルギーはもはやそこで最小化されない。
【0120】
第1および第2の領域の分極が支持体の表面と反対および平行である特定の場合では、追加の磁場が、支持体の表面のそれらの接合部で該第1および第2の領域によって共同で生成される磁場と同じ方向に向かうと、他の全ての捕捉ゾーンが強化され、他の全ての捕捉ゾーンが弱化されるか、または上記の理由で相殺される。
【0121】
追加の磁場が、該少なくとも1つの磁場源によって生成された磁場以上である場合、捕捉ゾーンは、追加の磁場が同じ配向を有し、該少なくとも1つの磁気テープによって生成された磁場と同じ方向にある点に位置する。次いで、以下に概説されるように、捕捉ゾーンは、それらの初期位置からオフセットされ得る。
【0122】
物体の磁化は、巨視的スケールで該物体の磁気挙動を特徴付けるベクトル量に対応する。これは、軌道磁気モーメントと電子の磁気スピンモーメントに由来する。これは、1メートル当たりのアンペアで測定され、テスラで測定されることもある。
【0123】
有利には、該少なくとも1つの追加の磁場源は、永久磁石、コイル、または電磁石の中から選択される。
【0124】
一部の磁場源が存在する場合、それらは、少なくとも1つの永久磁石、少なくとも1つのコイル、および/または少なくとも1つの電磁石の組み合わせから選択され得る。特に、それらは、永久磁石、コイル、電磁石のアセンブリ、およびこれらのもののアセンブリの組み合わせから選択することができる。
【0125】
磁場源は、平面内で、特に直線状に、またはそれ以外の場合、三次元形状で並んで配置することができる。磁場源は並べて配置することができる。本発明において、「並べて」は、磁場源が連続しているか、または別様で互いに離間していることを意味すると理解される。特に、隣接する磁場源は、分極反転を示す。
【0126】
永久磁石は、磁場を発生させる持続的な性質を人為的または自然的に獲得した硬質磁性材料から作製される物体である。永久磁石の特異性は、その磁場が一旦得られると、特定の作用を必要とせずに連続的に生成されるという事実にある。硬質磁性材料とは、残留磁化および保磁場がそれぞれ0.3Tおよび250kA/mより大きい材料をいう。
【0127】
硬質磁性材料は、希土類系磁石、3d(Fe、Co、Ni)貴金属(主要元素としてPtまたはPd)系の遷移金属合金、フェライト磁石およびMnBi、MnAI、MnGa、FeGa、AINiCo磁石から選択することができる。材料が希土類磁石である場合、それは、RFeB(RはNd、Pr、Tb、Dyまたはこれらの元素の一部の混合物からなる)、SmCoまたはRCoCu(1/5型の結晶構造)、SmCoCuFe(1/7または2/17型の結晶構造)、RFeN(Rは本質的にSmからなる)から選択され得る。
【0128】
以下の説明では、「永久磁石」という用語は、単に「磁石」と称することができる。
【0129】
該少なくとも1つの追加の磁場源が磁石である場合、それは、別様では「ヨーク」または「磁気回路」と称される、軟質の強磁性要素に有利に結合される。この軟質の強磁性要素は、磁石を延長し、100S.I.(「国際系」、単位なし)を超える透磁性を有し、1.6~2.4Tの飽和度を有する。硬質の強磁性要素とは異なり、軟質の強磁性要素は、低い残留磁化および弱い保磁場を示す。かかる軟質の強磁性要素は、外部磁場が存在しない場合に磁化を示さず、磁石の磁力線を導くことを可能にし、それにより、磁石によって生成される磁場の値を増大させる。
【0130】
コイルは、導電線の巻線からなる。この巻線は、任意に、コアと称される強磁性材料の周りに作製することができる。磁石とは対照的に、コイルは、特定の作用が印加されるとき、この場合、電流が印加され、導電線を通過するときにのみ磁場を放出する。したがって、この電流が印加されなくなると、それ以上の磁場は発生しない。
【0131】
該少なくとも1つの追加の磁場源がコイルである場合、それは有利には平面コイルであり、すなわち、全てのターンは、有利には、1~5つの平面内のうちの少なくとも1つの平面内にある。
【0132】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの磁性層は、捕捉面および反対面である2つの対向する面を有し、該少なくとも1つの追加の磁場源は、該少なくとも1つの磁性層の捕捉面に隣接する平面コイルである。したがって、平面コイルは、該少なくとも1つの磁性層の捕捉面を少なくとも部分的に覆う。かかる場合、ナノ粒子は、捕捉ゾーンにおいて、平面コイル上に少なくとも一部が固定化される。
【0133】
電磁石は、電流が供給されると、磁場を生成する;それは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換する。これは、コイルおよびコアおよび/または軟質の強磁性材料で作製された1つ以上の極磁片で構成されている。したがって、コイルの場合のように、電流がそれを通過しないとき、電磁石は磁場を放出しない。
【0134】
該少なくとも1つの追加の磁場源は、捕捉支持体に取り付けられていても、取り付けられていなくてもよい。
【0135】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの追加の磁場源は、捕捉支持体に固定される。有利には、該固定は可逆的である。したがって、この固定は、捕捉支持体にクリッピングすることによって達成することができる。あるいは、該固定は不可逆的である。したがって、この固定は、支持体に接着することによって達成することができる。
【0136】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの追加の磁場源は、均一な磁場を放出するように構成される。
【0137】
均一とは、その勾配が、該少なくとも1つの追加の磁場源の磁化軸に沿って100T・m-1未満であり、該少なくとも1つの追加の磁場源の表面上の磁化軸に直交する軸に沿って150T・m-1未満である磁場を意味する。本発明において、「100T・m-1未満」とは、100T・m-1、90T・m-1、80T・m-1、70T・m-1、60T・m-1、50T・m-1、40T・m-1、30T・m-1、20T・m-1、10T・m-1または0T・m-1を意味する。本発明において、「150T・m-1未満」とは、150T・m-1、140T・m-1、130T・m-1、120T・m-1、110T・m-1、100T・m-1、90T・m-1、80T・m-1、70T・m-1、60T・m-1、50T・m-1、40T・m-1、30T・m-1、20T・m-1、10T・m-1または0T・m-1を意味する。
【0138】
該少なくとも1つの追加の磁場源によって生成される磁場は、任意の方向をとることができる;有利には、その方向は支持体の表面に直交し、より有利には、その方向およびその向きは、第1の領域と第2の領域との間の接合部における捕捉支持体の表面上の該少なくとも1つの磁性層によって生成されるものと同じである。
【0139】
該少なくとも1つの追加の磁場源は、捕捉支持体の周りの任意の位置に配設され得る。したがって、該少なくとも1つの追加の磁場源は、該少なくとも1つの磁性層の捕捉面に面するように、またはそれ以外の場合、その第2の表面に面するように等しく良好に配置することができる。あるいは、該少なくとも1つの追加の磁場源は、捕捉支持体から距離をおいて、該少なくとも1つの磁性層の第1の捕捉面または第2の捕捉面のいずれとも対向しないように配置することができる。
【0140】
該少なくとも1つの追加の磁場源は、それが面する該少なくとも1つの磁性層の面積の大きさよりも大きい面積を有し得る。この意味で、該少なくとも1つの磁場源が磁性層の下に配置されるとき、その表面は磁性層のいずれかの側に突出する。例えば、追加の磁場源が磁石のアセンブリである場合、磁石の1つまたは少なくとも1つの表面の一部は、該少なくとも1つの磁性層に面していないか、または少なくとも1つの磁石は、該少なくとも1つの磁性層に面している表面を有していない。
【0141】
実際、全ての場合において、この少なくとも1つの磁場源によってもたらされる有意な効果は、一方では磁性ナノ粒子の磁化であり、他方では、上述のように、エネルギーシンクの振幅の増大である。
【0142】
したがって、該少なくとも1つの追加の磁場源は、有利には、キットを使用するときにナノ粒子において1mT~400mTの磁場を生成するように構成されている。磁性層の消磁化のリスクを回避するために、該少なくとも1つの追加磁場源の保磁場の値が、該少なくとも1つの磁性層の保磁場の値の最大90%であることが有利である。
【0143】
本発明において、「1mT~400mT」とは、1mT、5mT、10mT、15mT、20mT、25mT、30mT、35mT、40mT、45mT、50mT、55mT、60mT、65mT、70mT、75mT、80mT、85mT、90mT、95mT、100mT、105mT、110mT、115mT、120mT、125mT、130mT、135mT、140mT、145mT、150mT、155mT、160mT、165mT、170mT、175mT、180mT、185mT、190mT、195mT、200mT、205mT、210mT、215mT、220mT、225mT、230mT、235mT、240mT、245mT、250mT、255mT、260mT、265mT、270mT、275mT、280mT、285mT、290mT、295mT、300mT、305mT、310mT、315mT、320mT、325mT、330mT、335mT、340mT、345mT、350mT、355mT、360mT、365mT、370mT、375mT、380mT、385mT、390mT、395mT、400mTを意味する。
【0144】
有利には、該少なくとも1つの磁場源は、10mT~400mTの磁場を生成するように構成され、より有利には50mT~200mTの磁場を生成するように構成されている。
【0145】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの追加の磁場源は、磁場を連続的に放出するように構成される。
【0146】
あるいは、該少なくとも1つの追加の磁場源は、パルス磁場を放出するように構成されている。有利には、パルスの持続時間は、1ミリ秒以上である。かかる持続時間は、単純なブラウン運動と比較して、磁性ナノ粒子の変位がそれによって影響を受けるのに十分に長い時間にわたって磁性ナノ粒子の磁化を増大させることを可能にする。
【0147】
本発明はまた、上記に定義されるキットであって、該少なくとも1つの磁性層が、捕捉面を有し、該少なくとも1つの磁性層が、非磁性層によって該捕捉面上で少なくとも部分的に覆われている、キットに関する。
【0148】
かかる非磁性層が存在する場合、該少なくとも1つの磁性層のいわゆる「捕捉」面がコーティングされるという事実により、該少なくとも1つのコーティングされた磁性層の一部について、ナノ粒子の捕捉および固定化が非磁性層の表面に対して生じる。
【0149】
この非磁性層の存在は、以下で詳細に見られるように、所望の瞬間に捕捉支持体によるナノ粒子の誘引の誘発を遅らせることが可能であるという点で有利である。
【0150】
本発明の一実施形態によれば、非磁性層の材料は、以下のリスト、すなわち、ガラス、シリコン、プラスチック材料のポリマー、シリコーン紙、接着テープ、硬膜もしくはチタンなどの非磁性金属合金、石英、紙もしくは竹などの有機材料、木材、金、またはこれらの材料の組み合わせから選択される。
【0151】
有利には、ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COC/COP)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、ポリエステル、またはこれらの材料の組み合わせのリストから選択される。
【0152】
一実施形態によれば、該非磁性層は、支持部材と同じ組成を有する。あるいは、該非磁性層は、支持部材の組成とは異なる組成を有する。
【0153】
有利には、該少なくとも1つの磁場源は蛍光を示さない。さらに有利には、これは、光を反射しないように不透明である。
【0154】
有利には、非磁性層の材料は、ポリ塩化ビニル(PVC)の層および接着層、またはポリプロピレンの層およびアクリル接着剤の層の重ね合わせを有する接着テープからなるか、またはそれを含む。
【0155】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの磁性層は、その捕捉面の少なくとも1%にわたって該非磁性層によって覆われる。「少なくとも1%」とは、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を意味すると理解される。
【0156】
有利には、該少なくとも1つの磁性層は、その捕捉面の少なくとも30%、より有利には、その捕捉面の少なくとも50%、さらに有利には、その捕捉面の少なくとも60%、有利には、その捕捉面の少なくとも80%にわたって覆われる。
【0157】
本発明の一実施形態によれば、該少なくとも1つの磁性層の捕捉面は、該非磁性層によって完全に覆われている。
【0158】
本発明はまた、上記で定義されたキットであって、該非磁性層が1~300μmの厚さを有する、キットに関する。本発明において、「1~300μm」とは、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、50μm、51μm、52μm、53μm、54μm、55μm、56μm、57μm、58μm、59μm、60μm、61μm、62μm、63μm、64μm、65μm、66μm、67μm、68μm、69μm、70μm、71μm、72μm、73μm、74μm、75μm、76μm、77μm、78μm、79μm、80μm、81μm、82μm、83μm、84μm、85μm、86μm、87μm、88μm、89μm、90μm、91μm、92μm、93μm、94μm、95μm、96μm、97μm、98μm、99μm、100μm、101μm、102μm、103μm、104μm、105μm、106μm、107μm、108μm、109μm、110μm、111μm、112μm、113μm、114μm、115μm、116μm、117μm、118μm、119μm、120μm、121μm、122μm、123μm、124μm、125μm、126μm、127μm、128μm、129μm、130μm、131μm、132μm、133μm、134μm、135μm、136μm、137μm、138μm、139μm、140μm、141μm、142μm、143μm、144μm、145μm、146μm、147μm、148μm、149μm、150μm、151μm、152μm、153μm、154μm、155μm、156μm、157μm、158μm、159μm、160μm、161μm、162μm、163μm、164μm、165μm、166μm、167μm、168μm、169μm、170μm、171μm、172μm、173μm、174μm、175μm、176μm、177μm、178μm、179μm、180μm、181μm、182μm、183μm、184μm、185μm、186μm、187μm、188μm、189μm、190μm、191μm、192μm、193μm、194μm、195μm、196μm、197μm、198μm、199μm、200μm、201μm、202μm、203μm、204μm、205μm、206μm、207μm、208μm、209μm、210μm、211μm、212μm、213μm、214μm、215μm、216μm、217μm、218μm、219μm、220μm、221μm、222μm、223μm、224μm、225μm、226μm、227μm、228μm、229μm、230μm、231μm、232μm、233μm、234μm、235μm、236μm、237μm、238μm、239μm、240μm、241μm、242μm、243μm、244μm、245μm、246μm、247μm、248μm、249μm、250μm、251μm、252μm、253μm、254μm、255μm、256μm、257μm、258μm、259μm、260μm、261μm、262μm、263μm、264μm、265μm、266μm、267μm、268μm、269μm、270μm、271μm、272μm、273μm、274μm、275μm、276μm、277μm、278μm、279μm、280μm、281μm、282μm、283μm、284μm、285μm、286μm、287μm、288μm、289μm、290μm、291μm、292μm、293μm、294μm、295μm、296μm、297μm、298μm、299μmまたは300μmを意味するものと理解される。
【0159】
有利には、該非磁性層は、1~150μm、より有利には5μm~100μm、さらに有利には10~80μm、より有利には30~60μmの厚さを有する。
【0160】
非磁性層は、薄すぎず厚すぎずが望ましい。実際、該非磁性層が薄すぎる場合、すなわち1μm未満の場合、それは、該少なくとも1つの磁性層によるナノ粒子の誘引を減衰させることに有意な影響を及ぼさない。
【0161】
層の厚さは、該少なくとも1つの磁性層の保磁力および第1および第2の領域の幅に依存することに留意されたい。当業者は、該少なくとも1つの磁性層の領域の保磁力および幅に応じて、磁性層の厚さを容易に適合させることができるだろう。
【0162】
通常、12000μm・Gの保磁力を有し、その第1および第2の領域が50μmの幅を有する磁性層について、非磁性層は、20~60μmの厚さを有利に有する。保磁力のより低い磁性層については、それに応じて磁性層の厚さを低減する必要がある。
【0163】
非磁性層が厚すぎる場合(該少なくとも1つの磁性層の領域の厚さおよび幅に依存する)、強い磁場勾配は、この非磁性層によって隠されることになる。したがって、該非磁性層の表面における磁場は、場合によっては均一であるか、または存在しない。次いで、ナノ粒子は固定化されないか、または別様で、特定のパターンではなく、非磁性層の表面上でランダムに固定化される。
【0164】
該少なくとも1つの追加の磁場源の磁場を適用することは、有利には、かかる場合に、エネルギーシンクの振幅を増大させることによって、非磁性層の表面における強い磁場勾配を「明らかに」することを可能にする。本発明のこの態様は、以下で詳細に見られるように、捕捉ゾーンにおけるナノ粒子の捕捉および固定化を「誘発」することを可能にする。
【0165】
本発明はまた、複数(1~100)のマイクロ流体チャネルを含む捕捉支持体に関し、これは、一方では、少なくとも一部のチャネルに共通の入力または各チャネルについて独立した入力のいずれかを有し、他方では、出口において、チャネル当たり1つのベントまたはチャネルの少なくとも一部に共通の1つのベントを有する。これらのマイクロ流体チャネルは、非磁性層に結合され、非磁性層は、支持部材に結合された磁性層上に堆積される。磁性層は、該磁性層の水平面に沿った磁化と、1つの領域から別の領域まで180°だけ変動する配向とで予め符号化されている。ネオジム-鉄-ホウ素から作製されたセンチメートルまたはミリメートルの磁石が、第1の領域と第2の領域との間の接合部における磁性層の配向および方向と同じ配向および方向を有する外部磁場を印加するための追加の磁場源として使用される。
【0166】
本発明はまた、試料中に含有される分子を捕捉する方法に関し、該方法は、
a)該試料を、上記に定義される磁性ナノ粒子と接触させて、該分子と、該磁性ナノ粒子に結合された該少なくとも1つの捕捉要素との間で、少なくとも1つの捕捉複合体を形成するステップ、
b)該少なくとも1つの捕捉複合体が、上記に定義される少なくとも1つの捕捉ゾーンにおいて該捕捉支持体に対して固定化されるように、ステップa)の間に形成された該少なくとも1つの捕捉複合体を、上記に定義される捕捉支持体の少なくとも1つの磁性層によって生成された前記磁場によって誘引するステップ
を含む。
【0167】
本発明のステップa)の目的は、捕捉要素を介して捕捉されるべき分子をナノ粒子と複合体化することであり、その結果、これらの複合体化された分子は、その後のステップb)において、該少なくとも1つの磁性層によってナノ粒子を介して間接的に誘引され、最終的には支持体に対する固定化によって捕捉され得る。
【0168】
本明細書の残りの部分では、捕捉複合体を単に「複合体」という用語で称することがある。
【0169】
本発明の一実施形態によれば、該捕捉要素は抗体または抗原であり、したがって、ステップa)中に形成される該少なくとも1つの捕捉複合体は、免疫複合体である。
【0170】
本発明において、「試料」は、任意の単純流体または複合流体を意味する。
【0171】
本発明において、「複合流体」とは、2つの相、すなわち固体-液体(ポリマーなどの巨大分子の懸濁液または溶液)、固体-気体(粒状)、液体-気体(発泡体)、または液体-液体(エマルション)が共存する混合物を意味する。複合流体は、応力と剪断速度との間の古典的な線形ニュートン関係から逸脱する。それらは、相の共存が課す幾何学的制約のために適用される応力または歪みに対して異常な機械的応答を示す。この機械的応答は、固体様挙動と流体様挙動との間の遷移ならびに変動を含む。特に、試料は、血液、尿、リンパ、血漿、血清、唾液、涙、精液、膣分泌物、創傷からの膿、胃液または脳脊髄液などの生体液であってもよい。試料はまた、培養培地、または精製もしくは清澄化された培養培地などのバイオプロセスで使用される培地であってもよい。
【0172】
本発明において、「単純流体」とは、その機械的挙動が温度、粘度、流体の「滑り」の尺度の単一の関数によって特徴付けられるニュートン流体を意味する。単純流体に印加される応力は、歪み速度に直接比例する。特に、試料は脱イオン水であり得る。脱イオン水は、ナノ粒子クラスターの形成を大幅に制限するか、または予防するという利点を有する。
【0173】
本発明の一実施形態によれば、ステップa)の間に試料をナノ粒子と接触させると、それを捕捉支持体に配置して、ステップb)の間に該少なくとも1つの捕捉複合体の誘引を可能にする。
【0174】
したがって、ナノ粒子が試料と接触したときに該少なくとも1つの磁性層によって誘引されないように、接触ステップと誘引ステップとは別々に行われる。これにより、有利には、試料中のナノ粒子の均一な分布を得ることが可能となり、それにより、捕捉要素と捕捉分子とのより効率的な複合体形成が可能となる。
【0175】
あるいは、ステップa)の間にナノ粒子と接触させる前に、まず、試料を支持体に配置する。したがって、ステップa)およびb)は、同じ場所、すなわち支持体において実行される。この実施形態は、特にマイクロポンプまたはマイクロバルブタイプのアクチュエータを介して流体を取り扱う必要がないため、特定の用途において非常に興味深い。
【0176】
本発明の一実施形態によれば、ステップa)とステップb)との間で、形成されている可能性がある複合体の任意の凝集体を破壊する目的で、捕捉された懸濁液中のナノ粒子-分子の複合体を含む混合物の超音波処理が行われる。このような凝集体があると、後述する定量化ステップに支障をきたすことになる。この超音波処理は、特に、少なくとも10000Hzの周波数で行われ得る。超音波処理は、連続的な照射、またはパルス的な照射であってもよい。超音波処理がパルス化される際、各超音波処理の持続時間は、200~700ミリ秒、特に300~600ミリ秒、特に500ミリ秒であり、1~6秒、特に1~4秒、特に2秒の間隔であり得る。これらの超音波処理条件により、捕捉要素、捕捉分子および検出要素を変性させ得る媒体の過熱を回避しながら、凝集体を破壊する機能を確実にすることが可能となる。
【0177】
ステップa)の間、ナノ粒子の濃度は、有利には、106~1011粒子/mLである。本発明において、「106~1011粒子/mL」とは、106粒子/mL、107粒子/mL、108粒子/mL、109粒子/mL、1010粒子/mLおよび1011粒子/mLを意味する。
【0178】
106粒子/mLの最小濃度により、試料中に分散される捕捉分子の効率的な捕捉のための十分な濃度が得られる。さらに、1011粒子/mLの最大濃度は、ナノ粒子(15μm以下の直径のクラスター)の過大な凝集を回避することを可能にし、このことは、一方で捕捉要素と捕捉分子との間の結合を破壊し、他方で、捕捉分子の定量化に悪影響を及ぼす。高濃度のナノ粒子は、磁場のスクリーニング、すなわち、磁場を減衰させることにも関与し、ナノ粒子の誘引に悪影響を及ぼす。本発明において、「15μm以下の直径のクラスター」とは、15μm、10μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、0.5μmおよび0.2μmを意味する。
【0179】
一実施形態によれば、ステップa)は、試料を、該分子を検出するための要素と接触させることをさらに含む。
【0180】
この検出要素は、適切な検出手段によって認識されるように、蛍光、発光、または着色され得るマーカーを有する。このマーカーは、酸化還元特性を有する酵素であり得る。
【0181】
ステップa)の間に、磁性ナノ粒子、捕捉要素、捕捉分子、および検出要素によって形成される、いわゆる「サンドイッチ型」複合体が形成される。次いで、捕捉分子は、捕捉要素および検出要素によって「サンドイッチ」されるように取り囲まれる。
【0182】
これらの「サンドイッチ型」複合体の形成では、検出要素が第1のステップからの捕捉分子に付着されており、これは、磁性ナノ粒子の混合物中における良好な拡散特性により可能になる。したがって、磁性マイクロ粒子を用いると、かかる複合体の形成はより困難になる。
【0183】
上述の超音波処理ステップはまた、「サンドイッチ型」複合体の任意の凝集を回避するために、本実施形態において同じ条件下で実施することができる。
【0184】
あるいは、検出要素は、ナノ粒子、捕捉要素、および捕捉分子によって形成される複合体の支持体に対する固定化に続いて、ステップc)の間に捕捉分子の存在下において配置することができる。したがって、上記のようないわゆる「サンドイッチ型」複合体は、このステップc)の間に後置として形成される。
【0185】
最終的に、ステップa)の最後に、ナノ粒子、捕捉要素および捕捉分子の複合体、またはナノ粒子、捕捉要素、捕捉分子および検出要素(かかる検出要素が存在する場合)の複合体を含む混合物が得られる。この混合物中には、単独の捕捉される分子および単独の捕捉要素に結合したナノ粒子、ならびに任意選択の単独の検出要素が残存していてもよい。
【0186】
該混合物は、例えば、ステップb)の間にナノ粒子を固定化するために、捕捉支持体上にピペットによって堆積されてもよい。該混合物はまた、例えば、この捕捉支持体がチャンバである場合、捕捉支持体に注入され得る。
【0187】
該混合物が支持体に配置されると、全ての(複合体化されているかまたは複合体化されていない)磁性ナノ粒子は、該少なくとも1つの磁性層によって誘引され、支持体に対して、より正確には該少なくとも1つの磁性層の捕捉面に対して静止する。
【0188】
それらの固定化の間に、(複合体化されているかまたは複合体化されてない)磁性ナノ粒子は、支持体に対して、より正確には該少なくとも1つの磁性層の捕捉面に対してランダムに分布しない。
【0189】
実際には、ナノ粒子は、本発明で画定される捕捉ゾーンで固定化される。したがって、15%未満のナノ粒子の少数画分のみが、これらの捕捉ゾーンの外側に固定化されるか、または捕捉されないかのいずれかである。
【0190】
したがって、ナノ粒子は、第1および第2の領域の接合部の全てによって画定される特定のパターンに従って、支持体に対して、より正確には該少なくとも1つの磁性層の捕捉面に対して分配される。
【0191】
この分布は、ナノ粒子が捕捉される場所を決定することを可能にし、洗浄ステップを経ることなく該捕捉された分子の直接定量化を可能にするので、非常に興味深い。
【0192】
該少なくとも1つの磁性層の第1および第2の領域の組織化は、捕捉複合体の固定化および検出要素との結合または「サンドイッチ」された捕捉複合体の固定化の直後に支持体を洗浄することなく、検出および定量化を行うことを可能にする。
【0193】
これを行うには、まず、捕捉ゾーンでのマーキングの量を決定し、次に、捕捉ゾーン外でのマーキングの量を決定する必要がある。
【0194】
当業者は、検出要素に結合されたマーカーの種類の関数として実装されるマーキングの量を決定する手段を容易に適合させることができることになる。特に、これらの手段は、走査モードの分光光度計、落射蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、二光子顕微鏡、酵素の酸化還元活性の測定などから選択することができる。
【0195】
例えば、蛍光マーキングの文脈において、当業者は、本明細書の「実施例」部分に提示されるように、電荷結合素子(CCD)またはCMOSカメラに連結された「GFP」キューブ(励起460~490nm)または「PCR」キューブ(励起650nm~発光660nm)を備えた蛍光顕微鏡を使用することから利益を得る。
【0196】
捕捉ゾーン外のマーキング量は、「バックグラウンドシグナル」に対応する。換言すれば、このマーキングは、捕捉複合体に結合していない検出要素および捕捉ゾーンの外側に固定化された複合体の少数画分、ならびにマトリックスの効果(媒体の残留シグナル)に対応する。
【0197】
捕捉ゾーンで放出される特定のマーキングの量を取得するために、捕捉ゾーン以外で取得されたマーキングの量を、捕捉ゾーンで取得されたマーキングから減算する。
【0198】
本発明はまた、上記に定義された捕捉方法であって、ステップb)の間の該少なくとも1つの捕捉複合体の誘引が、該少なくとも1つの磁性層によって生成された磁場と、上記で定義された少なくとも1つの追加の磁場源によって生成された磁場との共同作用によって実行される、方法に関する。
【0199】
上述したように、該少なくとも1つの追加の磁場源は、磁性ナノ粒子の磁化を増大させるか、または飽和させることさえ可能にし、さらに、エネルギーシンクの振幅を増大させ、それにより、該少なくとも1つの磁性層によるナノ粒子の誘引を加速させることを可能にする。
【0200】
さらに、上述したように、追加の磁場は、特定の捕捉ゾーンを補強することを可能にし、それにより、局所捕捉を促進し、それにより、上述したように、捕捉された分子の洗浄なしでの検出を有利にする。
【0201】
この共同作用はまた、ナノ粒子を捕捉支持体に近づけることを目的とした試料からの溶媒の蒸発の使用を回避し、それによってそれらの捕捉を加速することを可能にする。かかる蒸発は、実際には、試料を加熱するか、または非常に長い待機時間を必要とし、これは、捕捉要素/検出要素と捕捉分子との間の結合、したがって捕捉分子の定量化に悪影響を及ぼし得る。
【0202】
したがって、ナノ粒子の誘引は、該少なくとも1つの磁場源および該少なくとも1つの磁性層の共同作用によって達成され、それぞれが異なる作用および機能を発揮する。
【0203】
その機能および作用により、該少なくとも1つの磁場源は、上述のように、捕捉支持体に関して任意の場所に配置することができる。
【0204】
したがって、該少なくとも1つの追加の磁場源は、
-該少なくとも1つの磁性層および/または非磁性層の捕捉面に面して、
-反対面または支持部材に面して、または
-任意の他の位置で、例えば横方向にオフセットされて、
同様に良好に配置することができる。
【0205】
ナノ粒子の有意な磁化は、有利には1mT~400mT、有利には10mT~400mT、より有利には50mT~200mTのレベルで磁場を印加することによって達成される。
【0206】
該少なくとも1つの追加の磁場源の作用は、ステップa)およびb)を通して実行され得る。
【0207】
有利には、これは、ステップb)の間に誘発される。したがって、ステップa)の間、および該少なくとも1つの追加の磁場源の作用を引き起こす前に、磁性ナノ粒子におけるその磁場は、不十分であるか、またはゼロである。
【0208】
ステップb)の間の該少なくとも1つの追加の磁場源の作用の誘発は、磁性ナノ粒子において、1mT~400mT、有利には10mT~400mT、より有利には50mT~200mTの磁場を生成することによって確保される。
【0209】
該少なくとも1つの追加の磁場源の作用を誘発するために、追加の磁場源は、第1の代替形態によれば、捕捉支持体により近づけることができる。この実施形態に関して、該少なくとも1つの追加の磁場源は、有利には、永久磁石である。
【0210】
第2の代替形態によれば、この誘発は、電流を該追加磁場源に通すことによって達成される。この実施形態では、該少なくとも1つの追加の磁場源は、有利には、コイルまたは電磁石であり、誘発は、該追加の磁場源を通る電流の通過によって達成される。
【0211】
有利には、該少なくとも1つの追加の磁場源の作用が、例えば、この磁場源を離れるように移動させることによって、またはそれを通過する電流の通過を停止させることによって、ステップb)の終了時に停止される場合であっても、捕捉されたナノ粒子は、捕捉ゾーンにおいて捕捉支持体に対して定位置に残存する。したがって、これらのナノ粒子の位置に影響を与えることなく、したがって洗浄ステップが損なわれることなく直接検出することなく、捕捉支持体を適切な場所に移動させて検出要素のマーカーを検出することが可能である。
【0212】
本発明はまた、上記で定義された捕捉方法であって、捕捉支持体が、上記で定義された非磁性層をさらに含み、ステップb)の間の捕捉支持体による該少なくとも1つの捕捉複合体の誘引は、該少なくとも1つの追加の磁場源の磁場によって誘発される、方法に関する。
【0213】
この実施形態では、非磁性層の存在は、ナノ粒子が、該少なくとも1つの磁性層によって生成された磁場によってのみ誘引される可能性を低減させるか、またはそれを防止する。
【0214】
このため、有利には、
-一方で、該少なくとも1つの磁性層および該少なくとも1つの追加の磁場源の全てによって生成された磁場は、該非磁性層の捕捉面から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTのその強度の少なくとも1つの変動を有し、その強度の該少なくとも1つの変動は、磁場の強度の水準の最大および最小を規定し、該磁場の水準の該最大において、捕捉支持体上の磁性ナノ粒子の捕捉ゾーンを画定し、
-他方で、該少なくとも1つの磁性層によって生成された磁場は、該非磁性層の表面から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTのその強度の少なくとも1つの変動を示さず、それにより、該少なくとも1つの磁性層によってのみ生成された磁場は、該非磁性層の表面上の磁性ナノ粒子の捕捉ゾーンを画定することを可能にしない。
【0215】
支持体の表面は、ナノ粒子が固定化される表面に対応する。
【0216】
したがって、ステップb)の間の磁性ナノ粒子の誘引は、これらのナノ粒子に対する該少なくとも1つの磁場源の作用、すなわち、
-この磁場源によって生成された磁場による、これらの粒子の磁化の有意な増大、および/または
-エネルギーシンクの振幅の増大
に依存する。
【0217】
本発明のこの態様は、ステップa)の間に該少なくとも1つの磁性層単独の作用によってナノ粒子が誘引され得る可能性を低減または相殺することによって、同じ場所、すなわち捕捉支持体におけるステップa)およびb)の実行を最適化することを可能にするので、非常に興味深い。
【0218】
非磁性層の存在により、ナノ粒子の少なくとも一部(複合体化されているかまたは複合体化されてない)は、該少なくとも1つの磁性層に対してではなく、この非磁性層に対して固定化されることになる。より正確には、捕捉面および該少なくとも1つの磁性層に面する反対面を有する非磁性層は、ステップb)の間、非磁性層の第1の捕捉面に対してナノ粒子の少なくとも一部が固定化される。
【0219】
本発明は、上記で定義される捕捉方法であって、試料を、磁性ナノ粒子と接触させるステップa)の前に捕捉支持体に配置する、方法にも関する。
【0220】
有利には、該少なくとも1つの磁場源の作用は、ステップb)の間に誘発される。
【0221】
したがって、ステップa)の間、磁性ナノ粒子の磁化および/または該少なくとも1つの磁性層のエネルギーシンクの振幅は、該非磁性層によって覆われた該少なくとも1つの磁性層のみの作用による該ナノ粒子の誘引を可能にするのに十分ではない。したがって、ナノ粒子と試料との混合は、該少なくとも1つの追加の磁気源による早期誘引によっては、少しであっても、ほとんど妨害されない。
【0222】
驚くべきことに、本発明者らは、非磁性層の存在と、ナノ粒子上の該少なくとも1つの磁性層の誘引性へのその影響にかかわらず、該少なくとも1つの追加の磁場源によって生成された磁場の作用が、例えば、この磁場源を遠ざけるか、または電流を止めることによって、ステップb)の最後に停止される場合、固定化されたナノ粒子は、捕捉ゾーンでの支持体に対して所定の位置に残存することを発見した。
【0223】
この現象の1つの説明は、該少なくとも1つの磁性層によって生成され、非磁性層の表面上に存在する磁場の勾配が、該非磁性層に対してナノ粒子を所定の位置に保持するのに十分であることである。さらなる説明は、一方では互いに凝集した磁性ナノ粒子と、他方では非磁性層の捕捉面で吸収された粒子との間に、吸着、すなわち化学的/物理的結合が存在することである。
【0224】
したがって、ここでも、これらの粒子の位置に影響を与えることなく、それにより、洗浄ステップが損なわれることなく直接検出することなく、捕捉支持体を適切な場所に移動させて検出要素のマーカーを検出することが可能である。
【0225】
本発明は、上記で定義される捕捉方法であって、支持体に対して捕捉された磁性ナノ粒子を回収ゾーンに変位させる後続のステップc)を含む、方法にも関する。
【0226】
この変位は、「接続ロッドクランク」と称される技術を使用して実行される:
-このクランクは、該少なくとも1つの磁性層の磁気領域によって生成された磁場である;この磁場をb(R)(Rは空間上の点である)とする;該少なくとも1つの磁性層は、磁気エネルギー最小を生成するために、生成された磁場の強度の変動を示す、
-接続ロッドは、該少なくとも1つの追加の磁場源によって生成される(方向および強度において)空間的に均一な磁場である;本出願では、該磁場の振幅および配向を修正することができる。
【0227】
接続ロッドによって生成された「均一な」磁場は、クランクの磁場が生成されるゾーン全体に適用される。したがって、接続ロッドによって生成された磁場は、該少なくとも1つの磁性層によって生成された磁場と空間内に共存するため、それらのベクトル値は、1に等しい相対透磁性の媒体(空気または水など)に直線的に重ね合わされる。
【0228】
接続ロッドによって生成される磁場が変調され得るという事実に起因して、ステップc)中に、接続ロッドを少なくとも1つの回転軸の周りで少なくとも1°時計回りまたは反時計回りに回転させること、および/または該磁場を増幅することが可能である。したがって、接続ロッドの磁場を時間的に変化させることができる。よって、接続ロッドの磁場をB(t)(tは時間である)とする。
【0229】
その結果、クランクの磁場は空間によって変動するが、時間的には変化せず、接続ロッドの磁場は時間的に変動する。
【0230】
したがって、接続ロッドおよびクランクが適用されるゾーンでは、全磁場StはbおよびBのベクトル和、すなわち、BT(R,t)=b(R)+B(t)である。
【0231】
このように、ステップc)の間に、支持体に対する磁性ナノ粒子の捕捉ゾーンの位置を変更することが可能である。
【0232】
本発明において、「1°~360°」とは、1°、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°、19°、20°、21°、22°、23°、24°、25°、26°、27°、28°、29°、30°、31°、32°、33°、34°、35°、36°、37°、38°、39°、40°、41°、42°、43°、44°、45°、46°、47°、48°、49°、50°、51°、52°、53°、54°、55°、56°、57°、58°、59°、60°、61°、62°、63°、64°、65°、66°、67°、68°、69°、70°、71°、72°、73°、74°、75°、76°、77°、78°、79°、80°、81°、82°、83°、84°、85°、86°、87°、88°、89°、90°、91°、92°、93°、94°、95°、96°、97°、98°、99°、100°、101°、102°、103°、104°、105°、106°、107°、108°、109°、110°、111°、112°、113°、114°、115°、116°、117°、118°、119°、120°、121°、122°、123°、124°、125°、126°、127°、128°、129°、130°、131°、132°、133°、134°、135°、136°、137°、138°、139°、140°、141°、142°、143°、144°、145°、146°、147°、148°、149°、150°、151°、152°、153°、154°、155°、156°、157°、158°、159°、160°、161°、162°、163°、164°、165°、166°、167°、168°、169°、170°、171°、172°、173°、174°、175°、176°、177°、178°、179°、180°、181°、182°、183°、184°、185°、186°、187°、188°、189°、190°、191°、192°、193°、194°、195°、196°、197°、198°、199°、200°、201°、202°、203°、204°、205°、206°、207°、208°、209°、210°、211°、212°、213°、214°、215°、216°、217°、218°、219°、220°、221°、222°、223°、224°、225°、226°、227°、228°、229°、230°、231°、232°、233°、234°、235°、236°、237°、238°、239°、240°、241°、242°、243°、244°、245°、246°、247°、248°、249°、250°、251°、252°、253°、254°、255°、256°、257°、258°、259°、260°、261°、262°、263°、264°、265°、266°、267°、268°、269°、270°、271°、272°、273°、274°、275°、276°、277°、278°、279°、280°、281°、282°、283°、284°、285°、286°、287°、288°、289°、290°、291°、292°、293°、294°、295°、296°、297°、298°、299°、300°、301°、302°、303°、304°、305°、306°、307°、308°、309°、310°、311°、312°、313°、314°、315°、316°、317°、318°、319°、320°、321°、322°、323°、324°、325°、326°、327°、328°、329°、330°、331°、332°、333°、334°、335°、336°、337°、338°、339°、340°、341°、342°、343°、344°、345°、346°、347°、348°、349°、350°、351°、352°、353°、354°、355°、356°、357°、358°、359°または360°を意味する。
【0233】
次に、接続ロッドとクランクの磁場のベクトル和算結果が得られ、これは、ステップb)の最後に得られたものとは異なるものであり、接続ロッドおよびクランクのアセンブリによって生成される磁場の強度の水準の最大の位置が移動され、捕捉ゾーンがこのステップb)に対してオフセットされるようになる。したがって、生成された磁場勾配によって誘引されたナノ粒子は、捕捉ゾーンの新しい位置に配置されるまで同時に移動される。
【0234】
有利には、ステップc)は、同じ方向に漸進的に変位しているナノ粒子が回収ゾーンに到達するまで、同じ回転方向に繰り返される。
【0235】
ステップc)を繰り返すことによって、「コンベヤベルト」効果が得られ、ナノ粒子は、回収ゾーンに向かって捕捉支持体の表面に沿って同じ方向に移動される。捕捉分子はナノ粒子と複合体を形成するため、この回収ゾーンでもそれは回収される。
【0236】
最終的に、本発明により、混合物中に含有された分子の全てを変位させる流体流を支持体に適用することなく、捕捉分子を回収することが可能である。
【0237】
本発明はさらに、試料中に含有される分子の捕捉のための、有利には、試料中に含有される分子の捕捉および検出のための、上記で定義されるキットの使用に関する。
【0238】
本発明はまた、1μm未満の寸法を最大寸法として有するナノ粒子を誘引するための磁性層の使用に関し、該磁性層は、少なくとも第1および第2の領域の繰り返し可能な並置を含み、第1の領域は、第1の方向に分極された磁性粒を含み、第2の領域は、分極されていないか、または第1の領域の磁性粒子の第1の分極方向とは異なる第2の方向に分極された磁性粒を含み、それにより、該1つの磁性層は、該少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTのその強度の少なくとも1つの変動を有する磁場を生成し、該その強度の少なくとも1つの変動は、磁場の該強度の水準の最大および最小を規定し、該磁場の水準の該最大において、該磁性層上に磁性ナノ粒子の捕捉ゾーンを画定され、該ナノ粒子はそれぞれ、分子の少なくとも1つの捕捉要素に結合される。
【0239】
別のキットもまた、試料中に含有される分子を捕捉するために記載されており、当該キットは、
a)最大寸法として1μm未満の寸法を有する磁性ナノ粒子であって、該ナノ粒子が、それぞれ少なくとも1つの捕捉要素に結合され、該少なくとも1つの捕捉要素が、該分子に特異的に結合する、磁性ナノ粒子と、
b)少なくとも1つの磁性層を含むか、またはそれから本質的になる該磁性ナノ粒子を捕捉するための支持体であって、該磁性層が、少なくとも第1および第2の領域の繰り返し可能な並置を含み、第1の領域が、第1の方向に分極された磁性粒子を含み、第2の領域が、分極されていないか、または第1の領域の磁性粒子の第1の分極方向とは異なる第2の方向に分極された磁性粒子を含み、それにより、該少なくとも1つの磁性層が、該少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTの強度の少なくとも1つの変動を示さない磁場を生成する、支持体と、
c)少なくとも1つの追加の磁場源であって、該少なくとも1つの磁性層と該少なくとも1つの追加の磁場源とのアセンブリによって生成される磁場が、該少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTのその強度の少なくとも1つの変動を示す、磁場源と
を含み、
強度の該少なくとも1つの変動は、該磁場の強度の水準の最大および最小を規定し、該磁場の水準の該最大において、捕捉支持体上に磁性ナノ粒子を捕捉するためのゾーンを画定する。
【0240】
有利には、該追加の磁場源は、該少なくとも1つの磁性層の外部にある。
【0241】
さらに有利には、該少なくとも1つの磁性層は、捕捉面を有し、該少なくとも1つの磁性層は、該捕捉面上で非磁性層によって少なくとも部分的に覆われ、該少なくとも1つの磁性層および該少なくとも1つの追加の磁場源の全てによって生成された磁場は、該非磁性層の捕捉面から少なくとも1μmの距離で少なくとも0.1mTのその強度の少なくとも1つの変動を示し、その強度の該少なくとも1つの変動は、該磁場の強度の水準の最大および最小を規定し、該磁場の水準の該最大において、捕捉支持体上に磁性ナノ粒子を捕捉するためのゾーンを画定する。
【0242】
捕捉支持体、追加の磁場源、および上述のキットに関連するナノ粒子に関する上述の特徴の全ては、このキットにおいて準用される。
【0243】
本発明はまた、試料中に含有される分子を捕捉する方法に関し、該方法は、
a)該試料を、上記に定義される磁性ナノ粒子と接触させて、該分子と、該磁性ナノ粒子に結合された該少なくとも1つの捕捉要素との間に、少なくとも1つの捕捉複合体を形成するステップ、
b)該少なくとも1つの捕捉複合体が、上記で定義される少なくとも1つの捕捉ゾーンにおいて該捕捉支持体に対して固定化されるように、ステップa)の間に形成された該少なくとも1つの捕捉複合体を、上記で定義される捕捉支持体の少なくとも1つの磁性層と、少なくとも1つの追加の磁場源とのアセンブリによって生成された磁場によって誘引するステップ
を含む。
【0244】
本発明はまた、試料中に含有される分子の捕捉のための、有利には、試料中に含有される分子の捕捉および検出のための、上記で定義されるキットの使用に関する。
【0245】
本発明は、最終的に、最大寸法として1μm未満の寸法を有するナノ粒子を誘引するための磁性層および追加の磁場源を含むアセンブリの使用に関し、該磁性層は、少なくとも第1および第2の領域の繰り返し可能な並置を含み、第1の領域は、第1の方向に分極された磁性粒を含み、第2の領域は、分極されていないか、または第1の領域の磁性粒子の第1の分極方向とは異なる第2の方向に分極された磁性粒を含み、それにより、該1つの磁性層および該追加の磁場源の全てによって生成される磁場は、該少なくとも1つの磁性層から少なくとも1μmの距離において少なくとも0.1mTのその強度の少なくとも1つの変動を示し、該その強度の少なくとも1つの変動が、該磁場の強度の水準の最大および最小を規定し、該磁場の水準の該最大において、該磁性層上に磁性ナノ粒子を捕捉するためのゾーンを画定する。
【0246】
有利には、該ナノ粒子はそれぞれ、分子の少なくとも1つの捕捉要素に結合される。
【0247】
(図面の簡単な説明)
図1は、本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示す。捕捉システムを断面図で示す。磁性層によって放射される磁場の強度は、そのスケールが断面図の右側に提示されるカラーコードによって定義される(単位:T)。磁性層内の矢印は、それを構成する粒の分極方向を表す。
【0248】
図2は、
図1に示すシステムによる捕捉の写真を示す。この写真では白い点がナノ粒子を表している。
【0249】
図3は、本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示し、該層は非磁性層で覆われている。捕捉システムを断面図で示す。磁性層によって生成される磁場の強度は、そのスケールが断面図の右側に提示されるカラーコードによって定義される(単位:T)。ナノ粒子からの矢印は、磁性層によって誘引されたナノ粒子の移動方向を表す。磁性層内の矢印は、それを構成する粒の分極方向を表す。
【0250】
図4は、
図3に示すシステムによる捕捉の写真を示す。この写真では白い点がナノ粒子を表している。
【0251】
図5aは、本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示し、該層は非磁性層で覆われ、捕捉は、追加の磁場源からの磁場の存在下で行われる。捕捉システムを断面図で示す。追加の磁場源によって生成された磁場の方向は、断面図の上に黒い枠線を持つ白い矢印によって示され、磁性層に垂直である。磁性層によって生成される磁場の強度は、そのスケールが断面図の右側に提示されるカラーコードによって定義される(単位:T)。ナノ粒子からの矢印は、磁性層によって誘引されたナノ粒子の移動方向を表す。磁性層内の矢印は、それを構成する粒の分極方向を表す。
【0252】
図5bは、本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示し、該層は非磁性層で覆われ、捕捉は、追加の磁場源からの磁場の存在下で行われる。捕捉システムを断面図で示す。追加の磁場源によって生成された磁場の方向は、断面図の上に黒い枠線を持つ白い矢印によって示され、磁性層に平行である。(磁性層および追加の磁場源によって生成される)全磁場の強度は、そのスケールが断面図の右側に提示されるカラーコードによって定義される(単位:T)。ナノ粒子からの矢印は、磁性層によって誘引されたナノ粒子の移動方向を表す。磁性層内の矢印は、それを構成する粒の分極方向を表す。
【0253】
図6は、
図5aに示すシステムによる捕捉の写真を示す。この写真では白い点がナノ粒子を表している。
【0254】
図7は、
図1~3に示される捕捉の各捕捉の時間(Y軸)の関数として捕捉されたナノ粒子(X軸)の割合(%)を示す。時間は分単位で表される。曲線Aは、
図5aに示す捕捉動態に対応し、曲線Bは、
図1に示す捕捉動態に対応し、曲線Cは、
図3に示す捕捉動態に対応する。
【0255】
図8は、蛍光色素を担持し、抗マウスオボアルブミン捕捉抗体に移植されたナノ粒子複合体に結合した抗マウス検出捕捉抗体を示す。これは、オボアルブミンを移植したナノ粒子でもある。
【0256】
図9は、抗オボアルブミン抗体の濃度(μg/mL)の関数として計算された蛍光量(任意単位)を示すグラフである。
【0257】
図10は、
図8の複合体の捕捉後の写真を示す。各白色点は、
図8の捕捉抗体(抗マウス)によって担持される蛍光色素を表す。
図10Aについては、約50μg/mLのマウス抗オボアルブミン濃度を使用した;
図10Bについては、約25μg/mLの濃度を使用した;
図10Cについては、約12.5μg/mLの濃度を使用した;
図10Dについては、約6.25μg/mLの濃度を使用した;
図10Eは、抗マウスオボアルブミン抗体を使用しない陰性対照である。
【0258】
図11は、MagView CMOS型のMOIF系におけるDLGi5ガーネットの較正曲線を示すグラフである。このグラフは、磁場の強度(テスラ)の関数として、該ガーネットを通過した光ビームの分極の回転(度数)を示す。
【0259】
図12は、マイクロ流体チャンバ内のナノ粒子の捕捉後の写真を示す。白点はナノ粒子を表す。
図12A~12Eは、捕捉動態(A:0秒;B:10秒;C:30秒;D:80秒およびE:120秒)を示す。
【0260】
図13は、追加の磁場源の存在下でのマイクロ流体チャンバ内のナノ粒子の捕捉後の写真を示す。白点はナノ粒子を表す。
図13A~13Fは、捕捉動態(A:0秒;B:2秒;C:5秒;D:12秒;E:34秒およびF:60秒)を示す。
【0261】
図14は、
図12に示される捕捉の時間(X軸)の関数として、捕捉されたナノ粒子(Y軸)の割合(%)を示す。時間は秒単位で表される。
【0262】
図15は、溶液中のナノ粒子のサイズを示す分光分析グラフである。サイズは、動的光散乱技法を使用して決定した。Y軸は、ナノ粒子の相対頻度を割合(%)で表し、X軸は、ナノメートルでナノ粒子のサイズを表す対数スケールである。
【0263】
(実施例)
(実施例1:磁気ストリップによるナノ粒子の捕捉)
磁気カードの磁気ストリップによるナノ粒子の捕捉を最初に試験した。
【0264】
(実験プロトコル)
使用したナノ粒子(Chemicell nanoscreenmag ARA 200nm)は、200nmの平均直径、1.25g/cm3の密度、420,000A/mの飽和磁化、25mg/mLの質量濃度、476nmの長さの発光波長および490nmの励起波長を有する。ナノ粒子を、ddH2O中で、1.1×1012ナノ粒子/gおよび4.4×109ナノ粒子/mLのレベルまで希釈する。
【0265】
存在し得るナノ粒子の凝集体を分解するために、脱イオン水(ddH2O)中に希釈したナノ粒子の溶液を、SONIC RUPTOR 4000ソニケータを使用して混合した。断続的な超音波処理を、チューブ内で400Wの総電力の20%、および20000Hz前後の推定周波数で行った。合計3つの超音波パルスを、2秒ごとに500ミリ秒の持続時間で放出した。
【0266】
捕捉されるナノ粒子がナノ粒子のクラスターの形態ではないことを検証するために、本発明者らは、「回折光散乱」によって溶液中のナノ粒子のサイズを測定した。結果を
図15に示す。
【0267】
捕捉支持体は、PVC支持部材と、同じ平面上に配置された3つの磁性層で構成された磁気ストリップとで構成され、高磁性ポリマーで構成される磁気カードである。支持部材および磁性層を、ISO7811基準に従って組み付けた。磁性層はそれぞれ、MSR605エンコーダを使用して、16進数で文字(LETTER)Fの182倍に対応する一連の「1」で符号化され、これにより、磁場配向を約55μmごとに180度変化させることができる。
【0268】
ナノ粒子の捕捉は、5μLのナノ粒子の溶液を堆積させ、磁気カードの磁性層に液滴を堆積させることによって行われる。
【0269】
この捕捉の概略図を
図1に示している。この図において、ナノ粒子1は溶液中にあり、一部1’は、磁気ストリップ(黒矢印で表される)の磁性層3によって誘引される。磁性層は、粒の分極が反転する第1の領域5および第2の領域7を有する(大きな白い矢印によって表されている)。各領域によって生成される磁場は、領域の一方の側で開始し他方の側で終了する弧に従う小さな白い矢印によって表される。これらの矢印の方向は、生成された磁場の方向を示している。磁場の強度は、カラースケールで表されている。この磁場の強度は、上述したように、COMSOL Multiphysics(登録商標)5.0モデリングソフトウェアを使用して実施した有限要素アプローチによって得られた。白色は磁場の強度が強いことを示している。磁性層3の上には、第1および第2の領域(5,7)によって生成された磁場の強度が見られ、各々が約100μm幅であり、磁場は変動を示している。磁場9の強度の最大の存在は、第1の領域5と第2の領域7との間の接合部の上方に明確に見ることができ、各領域(5,7)自体における磁場の強度はより低い。したがって、磁場9の水準の各最大において、捕捉ゾーン11は、磁性層3の表面上の正射影によって画定され、そこでナノ粒子1’が固定化される。
【0270】
次いで、CCDカメラ(Diagnostic Instruments SPOT RTモノクロデジタルカメラ)に結合された「GFP」キューブ(励起460~発光490nm)を備えた蛍光顕微鏡(Olympus BX41M)で画像を捕捉する。青色励起光源(460~490nm)を使用する。画像は、50倍の合計倍率で、3秒(利得14db)の捕捉時間で捕捉される。画像捕捉の例を
図2に見ることができる。この図において白色の点はナノ粒子を表す。捕捉されたナノ粒子の配列を明確に見ることができる。
【0271】
磁気ストリップによって捕捉されたナノ粒子の割合(%)は、Fratzl et al,Soft Matter(14)2671 2680(2018)の刊行物に記載されているプロトコルに従って定量化される。簡潔に言えば、この定量化は、ナノ粒子によって覆われていない面積に対するナノ粒子によって覆われた面積の比によって得られる。
【0272】
捕捉動態の結果は、
図7に示されており、曲線Bによって表されている。
【0273】
(結果)
図7に見られるように、磁性ナノ粒子の捕捉は、磁性基板上に液滴を堆積させた直後に引き起こされ、2分で40%に達する。
【0274】
さらに、
図15に示される結果は、単一のナノ粒子の直径に対応する、282nm(9.5nm標準偏差)の平均直径を示す懸濁ビーズによる単一のピークを示している。これらの結果は、ナノ粒子が互いに独立しており、クラスターを形成しないことを実証している。
【0275】
(実施例2:非磁性層で覆われた磁気ストリップによるナノ粒子の捕捉)
この例では、非磁性層で覆われた磁気カードの磁気ストリップによるナノ粒子の捕捉を試験する。
【0276】
(実験プロトコル)
使用されるナノ粒子および捕捉支持体は、磁性ストリップが厚さ60μmの黒色ポリマー(ビニル)の自己接着層によって覆われていることを除いて、実施例1で使用されるものと同じである。
【0277】
ナノ粒子の捕捉方法、ならびに捕捉されたナノ粒子の割合(%)の決定は、実施例1と同じである。
【0278】
この捕捉の図を
図3に示している。この図には、
図1に示す要素が含まれる。また、磁性層3の表面には非磁性層13が配置されている。この
図3に見られるように、磁性層3によって生成された磁場の一部のみが非磁性層13の表面上に突出しているため、磁場の水準の最大は非磁性層によって「隠される」。したがって、捕捉支持体の表面から少なくとも1μmの距離において、少なくとも0.1mTの該磁場の強度に変動はなく、したがって捕捉ゾーンも存在しない。したがって、ナノ粒子は、非常に弱く誘引され、磁気ストリップに対してランダムな方法で固定化され、主に溶液中に残存する。
【0279】
得られた捕捉結果の写真は
図4に見られ、白点はナノ粒子を表す。この図では、
図2に見られた配列は消えている。
【0280】
捕捉動態の結果は、
図7に示されており、曲線Cによって表されている。
【0281】
(結果)
図7に見られるように、ナノ粒子は、磁気カードの磁気ストリップにより極めて緩慢に捕捉される。10分後、捕捉はわずか15%に達する。
【0282】
(実施例3:追加の磁場源の存在下で、非磁性層で覆われた磁気ストリップによるナノ粒子の捕捉)
この例では、追加の磁場源の存在下で、非磁性層で覆われた磁気カードの磁気ストリップによるナノ粒子の捕捉を試験する。
【0283】
(実験プロトコル)
使用されるナノ粒子および捕捉支持体は、実施例2で使用されるものと同じである。
【0284】
追加の磁場源は、1mm軸に沿って磁化されたNdFeBマクロ磁石(N35、付着力800g)の平行六面体(20×10×1mm)のヘッドツーテールアセンブリ(垂直/水平磁化)である。
【0285】
磁気カードは、磁性層が該磁場源の反対側に配置されないように、追加の磁場源上に堆積される。
【0286】
ナノ粒子の捕捉方法、ならびに捕捉されたナノ粒子の割合(%)の決定は、実施例1と同じである。
【0287】
この捕捉の図を
図5aおよび5bに示している。
図5aでは、追加の磁場源(図示せず)は、黒い枠線を有する白い矢印で表される、磁性層3に垂直な方向を有する磁場を放出する。
図5bでは、追加の磁場源(図示せず)は、黒い境界を有する白い矢印で表される、磁性層3に平行な方向を有する磁場を放出する。これらの2つの図では、捕捉ゾーンの位置上の追加の磁場源によって生成された磁場の方向の影響を見ることが可能である。
【0288】
これらの図は、
図1および3に示す要素を示している。これらの図は、一方では、非磁性層13の表面で生成される磁場の強度がはるかに強く、磁場9の強度の水準の最大がもはや非磁性層13によって隠されないことを明確に示している。さらに、
図1に最初に示されたものと比較して、磁場9の強度の水準の1つおきの最大のみが存在し、したがって、1つおきの捕捉ゾーン11が存在する。しかしながら、これらの最大9は、
図1に最初に示されたものよりも大きい強度を有する。
【0289】
図5aでは、磁性層3に垂直な追加の磁場により、捕捉ゾーン11は、隣接する領域(5,7)の分極が配向される接合部の上方に位置する。しかしながら、隣接領域の分極が離れて移動する接合部の上では、磁場の水準は最小限に抑えられる。
【0290】
興味深いことに、
図5bにおいて、磁性層3に平行な方向を有する追加の磁場によって、捕捉ゾーン11および磁場9の強度の水準の最大が変位され、もはや第1および第2の領域(5,7)間の接合部に配置されず、第1の領域5自体に配置される。
【0291】
得られた捕捉結果の写真は
図6に見られ、白点はナノ粒子を表している。捕捉配列が存在しない
図4とは異なり、
図6には、
図2において得られた配列とは異なる新たな配列が現れている。ここで、ナノ粒子は規則的に配置された並列バンドを形成し、これらのバンドの外側にはナノ粒子がほとんど存在しないことがわかる。
【0292】
捕捉動態の結果は、
図7に示されており、曲線Aによって表されている。
【0293】
(結果)
この実施例では、磁性ナノ粒子の捕捉は、外部磁場の適用の直後に誘発される。捕捉は2分で100%に近づく。
【0294】
本結果を実施例2の結果と組み合わせることにより、磁性ストリップが非磁性層で覆われている場合、追加の磁場源の磁場を誘発することによって、ナノ粒子の固定化および非常に迅速な捕捉(2分)を誘発することが可能であると結論付けることができる。
【0295】
(実施例4:ナノ粒子に結合した捕捉要素の捕捉および定量化)
最後に、磁性ナノ粒子に結合した複数の濃度の抗マウスオボアルブミン抗体(捕捉要素)の検出および定量化を試験した。
【0296】
各測定は、検出抗体(抗マウス抗体)および総ナノ粒子の数を同一に維持するが、抗マウスオボアルブミン抗体に結合したナノ粒子の量を(オボアルブミンに結合したナノ粒子を補充することによって)変動させることによって行われる。
【0297】
(実験プロトコル)
使用されるナノ粒子(Carboxyl Adembeads 200nm(参照番号02120-Ademtech))は、200nmの直径、約2.0g/cm3の密度、約40emu/gの飽和磁化、約70%の酸化鉄含有量および30mg/mL(3%)の固体含有量を有する。ナノ粒子は、350μmol/gを超える密度を有するCOOHカルボン酸基で覆われている。
【0298】
捕捉支持体は、PVC支持部材から構成される磁気カードであり、磁気カードの上に、同じ平面上に配置され、高保磁力磁性ポリマーから構成される3つの磁性層が乗っている。支持部材および磁性層を、ISO 7811基準に従って組み付けた。磁性層はそれぞれ、実施例1に示すように、MSR605エンコーダを使用して連続1sで符号化される。
【0299】
追加の磁場源は、1mm軸に沿って磁化されたNdFeBマクロ磁石(N35、付着力800g)の平行六面体(20×10×1mm)のヘッドツーテールアセンブリである。
【0300】
捕捉要素は、マウスで産生される抗オボアルブミン(IgG)抗体である。これらの抗体を10μg/mL~50μg/mLの最終濃度でナノ粒子上に移植する。
【0301】
10μg/mLの最終濃度でのナノ粒子上の移植は、以下のプロトコルにより実施される:
・ナノ粒子90μg(すなわち、Ademtechナノ粒子のAdemtech30mg/mLストック溶液3μL)を、EDC(10mg/mL)およびNHS(10mg/mL)を含有する溶液25μLにより活性化する;
・撹拌しながら室温で15分間インキュベートする;
・センチメートル磁石を使用してナノ粒子を捕捉することにより上清を除去する;このセンチメートル磁石は、直径10mmおよび高さ40mmのニッケルめっきされたネオジム磁気円筒である;
・1mg/mLの濃度の抗マウスオボアルブミン抗体の溶液25μL(すなわち、25μg)を添加する;
・撹拌しながら室温で2時間インキュベートする;
・上述のセンチメートル磁石を使用してナノ粒子を捕捉することにより上清を除去する;および
・PBS-Tween0.05%-BSA(1mg/mL)の溶液50μL中にナノ粒子を懸濁する;抗オボアルブミン抗体で官能化されたナノ粒子は、500μg/mlの潜在濃度で得られる。
【0302】
ナノ粒子の他の部分は、オボアルブミン(OVA)で移植される。抗オボアルブミン抗体の溶液25μLを添加する代わりに、1mg/mLの濃度にあるOVA25μL(すなわち25μg)を添加することを除いて、上記と同じプロトコルに従って移植を行う。
【0303】
検出要素は、マウス抗体(したがって、抗オボアルブミン抗体)に対して特異的に指向される抗体であり、検出のためにAlexa 488蛍光色素(最大励起=490nm;最大放出=525nm)に結合される。
【0304】
図8は、蛍光色素17を担持しかつ抗オボアルブミン抗体21によって移植されたナノ粒子複合体19に結合した抗マウス抗体15を示している。抗体間の相互作用の特異性を試験するために使用されるOVA23を移植したナノ粒子19もまた示されている。
【0305】
抗マウスオボアルブミン抗体の検出および定量化は、以下のプロトコルにより実施される:
・0.5mLチューブ中で、抗オボアルブミン抗体および/またはOVAを予め移植したナノ粒子4.5μg;抗マウス検出抗体(最終濃度1μg/mL)2μLおよびPBS20μLを混合する;
・0.5mLチューブ中、周囲温度で15分間インキュベートする;
・溶液5μLを除去し、磁気カードの磁性層上に液滴を堆積させる;
・PVC支持部材が磁性層と追加の磁場源との間に配置されるように、磁気カードを追加の磁場源上に堆積させる。
【0306】
以下の5つの異なる条件が満たされる:
1)抗マウスオボアルブミン抗体を移植したナノ粒子4.5μg(すなわち、約50μg/mLの濃度の抗オボアルブミン抗体);
2)抗マウスオボアルブミン抗体を移植したナノ粒子2.25μgおよびオボアルブミンを移植したナノ粒子2.25μg(すなわち、約25μg/mLの濃度の抗オボアルブミン抗体);
3)抗マウスオボアルブミン抗体を移植したナノ粒子1.125μgおよびオボアルブミンを移植したナノ粒子2.25μg(すなわち、約12.5μg/mLの濃度の抗オボアルブミン抗体);
4)抗マウスオボアルブミン抗体を移植したナノ粒子0.625μgおよびオボアルブミンを移植したナノ粒子2.25μg(すなわち、約6.25μg/mLの濃度の抗オボアルブミン抗体);
5)オボアルブミンに移植したナノ粒子4.5μg(すなわち、ゼロの濃度の抗オボアルブミン抗体)。
【0307】
次いで、CCDカメラ(Diagnostic Instruments SPOT RTモノクロデジタルカメラ)に結合された「GFP」キューブ(励起460~490nm)を備えた蛍光顕微鏡(Olympus BX41M)で磁気カードの磁性層の画像捕捉を行う。青色励起光源(460~490nm)を使用する。画像は、50倍の合計倍率で、5秒(利得1)の捕捉時間で捕捉される。
【0308】
図10に捕捉後の画像を示している。抗マウス抗体に結合されたマウス抗体に結合されたナノ粒子は、バンドの形態で捕捉ゾーンに沿って捕捉されることが明確に観察される。
図10A~10Eは、上述したように、それぞれ条件1)~5)に対応する。検出された抗マウス抗体の量は、条件1)~5)について漸減的であり、これは、各条件において使用される抗オボアルブミン抗体の量と一致する。捕捉抗体が存在しないため、条件5は陰性対照である。これらの結果は、
図9に示された結果にも一致する。
【0309】
蛍光シグナルは、捕捉ゾーンの間で測定される捕捉ゾーン上の蛍光ピークに対応するそれぞれの面積から一般的な「バックグラウンドシグナル」を減算したものを計算することによって定量化される。実際に、ナノ粒子が蛍光性であった実施例1~3とは異なり、ここでは、検出された全ての蛍光は、捕捉された分子(この場合は抗オボアルブミン抗体)に対応するだけでなく、溶液中に残存した検出要素にも対応する。そこで、捕捉された分子に結合した検出要素によって放出される蛍光から、これらの「遊離」検出要素によって放出される蛍光を減算することが必要である。
【0310】
図10に示される捕捉の例をとると、捕捉ゾーンの面積の全蛍光が蛍光バンドの形態で測定され、そこからこれらの領域間で測定された蛍光が減算される。
【0311】
蛍光定量は任意の単位(AU)で得られる。
【0312】
【0313】
(結果)
図9に示すように、得られた捕捉ゾーンの蛍光定量は、混合物に添加された抗オボアルブミン抗体の濃度に比例する(R
2=0.97)。
【0314】
使用した蛍光シグナル定量法(捕捉ゾーンにおける特異的シグナルおよびその外側の非特異的シグナル)から、これらの結果により、検出要素に結合したナノ粒子が実際に捕捉ゾーンに捕捉されていると結論付けることが可能である。
【0315】
しかしながら、これらの結果は、ナノ粒子の固定化と検出要素の検出との間の洗浄ステップなしで捕捉される分子の数を定量化することが可能であると結論付けることができる。
【0316】
(実施例5:マイクロ流体チャンバによるナノ粒子の捕捉)
使用されるナノ粒子は、実施例1で使用されるものと同じであり、脱イオン水(ddH2O)中に500倍希釈して、50μg/mLの濃度を達成した。
【0317】
超音波処理ステップも行われる。
【0318】
捕捉支持体は、それぞれが独立した入口および出口にベントを有する18のマイクロ流体チャンバを含む。各マイクロ流体チャンバは、長さ6mm、幅2.4mmであり、深さ240マイクロメートルを有する。チャンバは、4.5mmのピッチで互いに隣接して配置され、バーを形成する。マイクロ流体チャンバは磁性層に接着され、磁性層は次にPVC支持部材に接着される。支持部材および磁性層を、ISO 7811基準に従って組み付けた。磁性層は、MSR605エンコーダを使用して、16進数で文字Fの182倍に対応する一連の「1」で符号化され、これにより、約55μm毎に180°だけ磁場配向を変動させることが可能になる。
【0319】
6マイクロリットルのナノ粒子溶液を、これらのマイクロ流体チャンバの各々に注入した。チャンバを1つずつ充填した。各充填後、10倍拡大対物レンズを有する蛍光顕微鏡で捕捉を可視化した。1.12フレーム/秒のフレームレートで膜を生成した。記録の時間0、10、30、80および120秒で得られた画像を
図12に示している。
【0320】
(結果)
300μmに近いマイクロ流体チャンバの実質的な深さにもかかわらず、
図12において、ナノ粒子は、捕捉の10秒からマイクロ流体チャンバ(整列した白色ドットのセット)の底部で十分に捕捉されることが分かる。
【0321】
(実施例6:追加の磁場源の存在下でのマイクロ流体チャンバによるナノ粒子の捕捉)
使用されるナノ粒子および捕捉支持体は、実施例5におけるものと同じである。
【0322】
加えて、捕捉支持体は、2mmの軸に沿って磁化され、50メガガウスエルステッドのエネルギー積を有する平行六面体(10×4×2mm)の20個のNdFeBマクロ磁石(Supermagnete、参照番号Q-10-04-02-N)のヘッドツーテールアセンブリ(垂直磁化)に基づいている。20個の磁石は、4mm軸に沿って0.5mmのピッチで並んで配置され、バーを形成する。20個の磁石のうち18個は、18個のマイクロ流体チャンバの各々の下に配置され、2つは各側面に配置される。
【0323】
6マイクロリットルのナノ粒子溶液を、これらのマイクロ流体チャンバの各々に注入した。チャンバを1つずつ充填した。各充填後、10倍拡大対物レンズを有する蛍光顕微鏡で捕捉を可視化した。1秒当たり1.12フレームの速度で、画像捕捉を用いて膜を生成した。時間0、2、5、12、34および60秒で得られた画像を
図13に示している。
【0324】
マイクロ流体チャンバによって捕捉されたナノ粒子の割合(%)は、Fratzl et al,Soft Matter(14)2671-2680(2018)の刊行物に記載されているプロトコルに従って定量化される。捕捉動態を、3つの異なるチャンバにおいて、3回の反復で実行した。捕捉動態の結果を
図14に示している。
【0325】
(結果)
実施例5に関して、ナノ粒子は、マイクロ流体チャンバの底部で十分に捕捉されている。実施例1および3と同様に、ナノ粒子の捕捉は、外部磁場源を用いない実施例5よりもはるかに速い。加えて、
図13に見られるように、マクロ磁石の組み付けによって生成される外部磁場に起因して、
図12に示される1つおきの捕捉ゾーンが消失している(ドットの各線間の間隔は、
図13において2倍になっている)。
【0326】
図14に示される捕捉動態データは、ナノ粒子の捕捉が15秒後に完了したことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0327】
【
図1】本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示す。
【
図2】
図1に示すシステムによる捕捉の写真を示す。
【
図3】本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示し、該層は非磁性層で覆われている。捕捉システムを断面図で示す。
【
図4】
図3に示すシステムによる捕捉の写真を示す。この写真では白い点がナノ粒子を表している。
【
図5a】本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示し、該層は非磁性層で覆われ、捕捉は、追加の磁場源からの磁場の存在下で行われる。捕捉システムを断面図で示す。
【
図5b】本発明による磁性層によるナノ粒子の捕捉を示し、該層は非磁性層で覆われ、捕捉は、追加の磁場源からの磁場の存在下で行われる。捕捉システムを断面図で示す。
【
図6】
図5aに示すシステムによる捕捉の写真を示す。この写真では白い点がナノ粒子を表している。
【
図7】
図1~3に示される捕捉の各捕捉の時間(Y軸)の関数として捕捉されたナノ粒子(X軸)の割合(%)を示す。時間は分単位で表される。曲線Aは、
図5aに示す捕捉動態に対応し、曲線Bは、
図1に示す捕捉動態に対応し、曲線Cは、
図3に示す捕捉動態に対応する。
【
図8】蛍光色素を担持し、抗マウスオボアルブミン捕捉抗体に移植されたナノ粒子複合体に結合した抗マウス検出捕捉抗体を示す。これは、オボアルブミンを移植したナノ粒子でもある。
【
図9】抗オボアルブミン抗体の濃度(μg/mL)の関数として計算された蛍光量(任意単位)を示すグラフである。
【
図10】
図8の複合体の捕捉後の写真を示す。各白色点は、
図8の捕捉抗体(抗マウス)によって担持される蛍光色素を表す。
図10Aについては、約50μg/mLのマウス抗オボアルブミン濃度を使用した;
図10Bについては、約25μg/mLの濃度を使用した;
図10Cについては、約12.5μg/mLの濃度を使用した;
図10Dについては、約6.25μg/mLの濃度を使用した;
図10Eは、抗マウスオボアルブミン抗体を使用しない陰性対照である。
【
図11】MagView CMOS型のMOIF系におけるDLGi5ガーネットの較正曲線を示すグラフである。このグラフは、磁場の強度(テスラ)の関数として、該ガーネットを通過した光ビームの分極の回転(度数)を示す。
【
図12】マイクロ流体チャンバ内のナノ粒子の捕捉後の写真を示す。白点はナノ粒子を表す。
図12A~12Eは、捕捉動態(A:0秒;B:10秒;C:30秒;D:80秒およびE:120秒)を示す。
【
図13】追加の磁場源の存在下でのマイクロ流体チャンバ内のナノ粒子の捕捉後の写真を示す。白点はナノ粒子を表す。
図13A~13Fは、捕捉動態(A:0秒;B:2秒;C:5秒;D:12秒;E:34秒およびF:60秒)を示す。
【
図14】
図12に示される捕捉の時間(X軸)の関数として、捕捉されたナノ粒子(Y軸)の割合(%)を示す。時間は秒単位で表される。
【
図15】溶液中のナノ粒子のサイズを示す分光分析グラフである。サイズは、動的光散乱技法を使用して決定した。Y軸は、ナノ粒子の相対頻度を割合(%)で表し、X軸は、ナノメートルでナノ粒子のサイズを表す対数スケールである。
【国際調査報告】