IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2022-546479カルダノール誘導体修飾ポリマー、及びそれを含むコーティング組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】カルダノール誘導体修飾ポリマー、及びそれを含むコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20221027BHJP
   C09D 201/08 20060101ALI20221027BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20221027BHJP
   C09D 125/08 20060101ALI20221027BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221027BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08F8/14
C09D201/08
C09D133/02
C09D125/08
C09D7/63
C08G63/91
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513484
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020073633
(87)【国際公開番号】W WO2021037799
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/103107
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ハン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゼマン,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4J029
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD02
4J029AE11
4J029BA01
4J029CA06
4J029CD03
4J029FC05
4J029HA01
4J029HB01
4J029HB06
4J029JB042
4J029JB242
4J029JC451
4J038CC021
4J038CG011
4J038CG031
4J038CG042
4J038GA01
4J038GA07
4J038GA09
4J038GA11
4J038JA22
4J038KA03
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA27
4J038PB07
4J038PC02
4J100AB02R
4J100AJ02Q
4J100AL03P
4J100AL04T
4J100AL09S
4J100BA03H
4J100BA15H
4J100BC43H
4J100CA03
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA29
4J100HA11
4J100HA61
4J100HC39
4J100HC75
4J100JA01
(57)【要約】
本発明は、カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基とカルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシル基との反応から得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを提供し、ここで、カルダノール誘導体化合物が、3~10、好ましくは3~6、より好ましくは3~4の炭素数を有するハロアルキレンオキシドで修飾されたカルダノール誘導体の反応生成物である。また、本発明は、カルダノール誘導体修飾ポリマーの調製方法、自動車用コーティングにおけるカルダノール誘導体修飾ポリマーの使用方法、及びその得られたコーティング組成物も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基とカルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシル基との反応から得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーであって、前記カルダノール誘導体化合物が、カルダノールと、3~10、好ましくは3~6の炭素数を有するハロアルキレンオキシドとの反応生成物であり、前記カルボキシル官能性ポリマーの酸価が、100~200mgKOH/g、好ましくは120~180mgKOH/gであり、前記カルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシル基の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%が前記カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基と反応される、カルダノール誘導体修飾ポリマー。
【請求項2】
前記カルボキシル官能性ポリマーの質量平均分子量が、1000g/モル~12000g/モル、より好ましくは1000g/モル~10000g/モル、さらにより好ましくは1000g/モル~5000g/モル、最も好ましくは1500g/モル~3500g/モルである、請求項1に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー。
【請求項3】
前記カルボキシル官能性ポリマーが、カルボキシル官能性ポリアクリル、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリウレタン、及びカルボキシル官能性ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー。
【請求項4】
前記カルボキシル官能性ポリマーが、(メタ)アクリル酸を含み、好ましくはスチレンモノマーをさらに含むモノマーの重合から得られる、請求項1から3のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー。
【請求項5】
前記カルボキシル官能性ポリマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるモノマーと、直鎖又は環状アルキルジカルボン酸又は無水物及びラクトンからなる群から選択されるモノマーとの共重合から得られ、好ましくは、前記直鎖又は環状アルキルジカルボン酸又は無水物が直鎖又は環状C~Cアルキルジカルボン酸又は無水物であり、好ましくは、前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーがヒドロキシC~Cアルキル(メタ)アクリレートであり、好ましくは、ラクトンモノマーが、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプラクトンからなる群から選択され、好ましくは、共重合のためのモノマーが、(メタ)アクリル酸及びスチレンからなる群から選択されるモノマーをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー。
【請求項6】
前記カルボキシル官能性ポリマーが、(メタ)アクリル酸からなる群から選択されるモノマーと、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタアクリレート、アミルアクリレート、アミルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルメタアクリレートからなる群から選択されるモノマーとの共重合から得られ、好ましくは、共重合のためのモノマーがスチレンをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー。
【請求項7】
以下の工程:
i)カルダノール誘導体化合物及びカルボキシル官能性ポリマーを含有し、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリフェニルアンチモン及びクロム(III)アセチルアセトネートから選択される少なくとも1つの触媒をさらに含有する混合物を提供する工程と;
ii)溶媒の存在下で、工程i)で得られた前記混合物を、200℃未満、好ましくは120℃~180℃の温度で加熱する工程と
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマーを調製する方法。
【請求項8】
工程i)で得られた前記混合物において、前記カルダノール誘導体化合物の総エポキシ基と前記カルボキシル官能性ポリマーの総カルボキシ基とのモル比が、1:1以下、好ましくは3:5~1:1である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は請求項7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを含有する、コーティング組成物。
【請求項10】
(A)前記コーティング組成物の総質量に基づいて、30質量%~60質量%、好ましくは40質量%~60質量%の、請求項1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は請求項7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマー、及び
(B)前記コーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて、15質量%~30質量%、好ましくは20質量%~30質量%の硬化剤、及び残りの溶媒
を含み、
好ましくは、前記硬化剤が、イソシアネート硬化剤、アミノプラスト硬化剤、及びアミン硬化剤からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項9に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は請求項7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを自動車用コーティングに導入する工程を含む、自動車用コーティングを調製する方法。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は請求項7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを、自動車のOEM製造又は自動車再仕上げのためのコーティングの調製に使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルダノール誘導体修飾ポリマー、及びカルダノール誘導体修飾ポリマーを含むコーティング組成物、特にカルダノール誘導体修飾ポリマーを含む自動車用コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒型コーティングでは、VOC(揮発性有機化合物)規制がますます厳しくなるため、低VOC又は高固形分を有するコーティングが市場でますます注目されるようになっている。自動車用コーティングの分野における「高固形分」とは、溶媒型コーティング組成物又は塗料において高い不揮発分(例えば、>40質量%)を意味する。通常、不揮発分は、試験サンプルが110℃で60分間加熱されるASTM D2369に従って決定される。
【0003】
しかしながら、「高固形分」を有するコーティング組成物は、粘度も高くなる傾向があり、製造プロセスにおける長い濾過時間、コーティングされる物品へのコーティング組成物の噴霧又は散布の際の低い流動性などの多くの問題をもたらす。
【0004】
例えば、エポキシアクリレート樹脂の場合、従来のタイプ、すなわち、ビスフェノールAエポキシアクリレートは高粘度という問題があり、この問題を克服するために、樹脂の修飾が1つの解決策となる。カルダノールは、カシューナッツ工業の副産物であるカシューナッツ殻から抽出される天然フェノール化合物であり、低価格、自然分解などの利点があるので、カルダノール修飾アクリレート樹脂は良い選択肢である。中国特許出願CN107022061Aには、紫外線硬化バイオマスエポキシアクリレートプレポリマーの合成方法、得られたプレポリマー、並びに、コーティング、インク及び接着剤へのその応用が開示されている。この合成方法は、カルダノールを主原料として使用する工程、カルダノール分子中のフェノールヒドロキシルとエピクロロヒドリンを反応させる工程、カルダノール分子中の二重結合と過酸化水素を反応させて複数のエポキシ基をもたらす工程、及びエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させて、紫外線硬化バイオマスエポキシアクリレートプレポリマーを得る工程を含む。CN107022061Aの表1によれば、到達した最低粘度は5.2Pa・sである。しかしながら、特定の状況下では、CN107022061Aの方法では満たすことができないさらに低い粘度が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】CN107022061A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、さらに低い粘度を達成するためには、新しいタイプのカルダノール修飾アクリレート樹脂が依然として必要である。したがって、低VOCの厳しい要求を達成するために、コーティング組成物はさらに少ない溶媒を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一形態において、本発明は、カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基とカルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシル基との反応から得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを提供し、ここで、カルダノール誘導体化合物が、カルダノールと、3~10、好ましくは3~6、より好ましくは3~4の炭素数を有するハロアルキレンオキシドとの反応生成物である。
【0008】
別の形態において、本発明は、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーを調製する方法を提供する。
【0009】
別の形態において、本発明は、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーを含むコーティング組成物を提供する。
【0010】
別の形態において、本発明は、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーを含むコーティング組成物を調製する方法を提供する。
【0011】
さらなる形態において、本発明は、本発明のコーティング組成物を、自動車のOEM製造又は自動車再仕上げ、特に自動車のクリアコートに使用する方法を提供する。
【0012】
驚くべきことには、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーは、同量の修飾されていない対応するポリマーを含有するコーティング組成物よりも高い不揮発分及び低い粘度を有するコーティング組成物をもたらすことが見出された。その結果、カルダノール誘導体修飾ポリマーを含むコーティング組成物は、より少ない溶媒を必要とし、したがって、低VOCコーティングが得られる。
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されている以下の用語は、以下のように定義される。
【0014】
「a」、「an」、「the」という表現は、用語を定義するために使用される場合、その用語の複数形と単数形の両方を含む。
【0015】
特に明記されていない限り、すべてのパーセンテージ及び比は質量で示されている。
【0016】
「及び/又は」という用語は、「及び」、「又は」、及びまたこの用語に接続される要素の他のすべての可能な組み合わせの意味を含む。
【0017】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、ホモポリマー(すなわち、単一の反応性化合物から調製されるポリマー)、及びコポリマー(すなわち、少なくとも2つのポリマー形成反応性のモノマー化合物の反応によって調製されるポリマー)の両方を含んでいる。
【0018】
「(メタ)アクリル」という用語は、以下、アクリル及び/又はメタクリルを示すことを意図している。「(メタ)アクリレート」という用語は、以下、アクリレート及び/又はメタクリレートを示すことを意図している。
【0019】
特定のパラメータを決定するために本発明の目的のために採用される測定方法は、実施例のセクションに見出すことができる。特に明示しない限り、これらの測定方法は、当該パラメータを決定するために使用されるものである。
【0020】
本発明において、「バインダー」は、コーティング組成物のフィルム形成成分を指す。したがって、樹脂、硬化剤、及びその他のフィルム形成剤はバインダーに含まれるが、溶媒、顔料、添加剤、例えば酸化防止剤、HALS、UV吸収剤、レベリング剤などはバインダーに含まれない。本発明において、言及する場合、「バインダー樹脂」は、コーティング組成物に使用されるポリマー樹脂成分を意味する。
【0021】
本発明の文脈において、基材上のコーティング組成物の「硬化」の概念は、基材に適用されたコーティング組成物のフィルムが、使用可能な状態(service-ready state)、言い換えれば、当該コーティングフィルムを備えた基材が意図した通りに輸送、保管、及び使用することができる状態に変換することを意味する。したがって、硬化したコーティングフィルムは、特にもはや軟質でも粘着性でもなく、代わりに、後述する硬化条件にさらに曝されても、もはや硬度又は基材への接着性などの特性に実質的な変化を示さない固体コーティングフィルムとして調整される。
【0022】
カルボキシル官能性ポリマー
本発明のカルボキシル官能性ポリマーは、バインダー樹脂としてコーティングに使用され、100~200mgKOH/gの酸価を有する任意の種類のカルボキシル基含有ポリマーである。
【0023】
好ましくは、カルボキシル官能性ポリマーは、100~200mgKOH/gの酸価を有する、カルボキシル官能性ポリアクリル(carboxyl-functional polyacrylics)、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリウレタン、及びカルボキシル官能性ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0024】
好ましくは、前記カルボキシル官能性ポリマーの質量平均分子量は、1000g/モル~12000g/モル、より好ましくは1000g/モル~10000g/モル、さらにより好ましくは1000g/モル~5000g/モル、最も好ましくは1500g/モル~3500g/モルである。
【0025】
好ましくは、前記カルボキシル官能性ポリマーは、少なくとも1つのカルボキシル官能性ポリ(メタ)アクリレートを含んでなる。また、本発明に適したカルボキシル官能性ポリポリアクリルは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有するモノマー混合物と、直鎖又は環状アルキルジカルボン酸又はその無水物、例えば直鎖又は環状C~Cアルキルジカルボン酸又はその無水物との重合から得ることができる。さらに、本発明の実施形態において、モノマー混合物は、ラクトンモノマーをさらに含有してもよい。
【0026】
本発明で使用することができるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーの非限定的な例には、ヒドロキシC~Cアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0027】
本発明で使用することができるラクトンモノマーの非限定的な例には、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンが含まれる。
【0028】
本発明で使用することができる直鎖又は環状アルキルジカルボン酸又はその無水物の非限定的な例には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、シクロブタン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらの無水物が含まれる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のカルボキシル官能性ポリマーは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン及び1,2-シクロヘキサンジカルボキシル無水物の重合から得られるものである。本発明の実施形態において、本発明のカルボキシル官能性ポリマーを得るためのモノマー混合物には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン及び1,2-シクロヘキサンジカルボキシル無水物に加えて、(メタ)アクリル酸モノマーも含有することができる。
【0030】
また、本発明に適したカルボキシル官能性ポリアクリルを調製する際に、コモノマーとして他のモノマーを使用してもよい。このようなコモノマーは、例えば、スチレン、(メタ)アクリレートなどであってもよい。例えば、(メタ)アクリレートは、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタアクリレート、アミルアクリレート、アミルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリレート、及び3,3,5-トリメチルヘキシルメタアクリレートからなる群から選択されてもよい。
【0031】
本発明に適したカルボキシル官能性ポリアクリルは、従来のフリーラジカル重合技術を使用して、例えば重合開始剤の存在下でモノマーを加熱することによって調製することができる。当業者は、重合に適切な温度を選択することができる。例えば、温度は、20~200℃の範囲であってよい。フリーラジカル重合のための重合開始剤を使用することができる。典型的な開始剤としては、有機過酸化物、例えば、アルキルペルオキシド、例えばジ-t-ブチルペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、及びt-ブチルペルアセテート、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えばt-ブチルヒドロペルオキシド、及びペルオキシケタール;アゾ化合物、例えば2,2’アゾビス(2-メチルブタンニトリル)及び1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル);及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
本発明のカルボキシル官能性ポリマーは、コーティング組成物におけるバインダー樹脂として使用されるのに適した、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリウレタン、及びカルボキシル官能性ポリアミドであってもよい。これらのカルボキシル官能性ポリマーは、当業者であれば、従来のプロセスに従って得ることができる。
【0033】
好ましくは、カルボキシル官能性ポリマーの酸価は、100~200mgKOH/gの範囲である。例えば、本発明のカルボキシル官能性ポリマーの酸価は、120~180mgKOH/gの範囲、例えば130~150mgKOH/gの範囲である。
【0034】
カルダノール誘導体化合物
カルダノールは、カシューナッツ加工の副産物であるカシューナッツ殻液の主成分であるアナカルド酸から得られるフェノール性脂質である。
【0035】
カルダノールから出発して、少なくとも1つのハロアルキレンオキシドと反応させることにより、カルダノール誘導体化合物が調製される。好ましくは、前記ハロアルキレンオキシドは、3~10、より好ましくは3~6、さらにより好ましくは3~4の炭素数を有する。前記ハロアルキレンオキシド中のハロゲン元素は、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0036】
好ましくは、前記ハロアルキレンオキシドは、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、l-クロロ-3,4-エポキシブタン、1-ブロモ-3,4-エポキシブタン、1-ヨード-3,4-エポキシブタン、1-クロロ-4,5-エポキシペンタン、l-ブロモ-4,5-エポキシペンタン、l-ヨード-4,5-エポキシペンタン、l-クロロ-5,6-エポキシヘキサン、l-ブロモ-5,6-エポキシヘキサン、l-ヨード-5,6-エポキシヘキサンから選択される少なくとも1つである。
【0037】
好ましくは、反応においてカルダノールとハロアルキレンオキシドのモル比は、1:1~1:1.1である。前記カルダノール誘導体の合成方法は、当技術分野で、例えばCN108299165Aで知られている。
【0038】
カルダノール誘導体修飾ポリマー
本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーは、カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基とカルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシル基との反応から、典型的なエポキシ-酸反応に基づいて得ることができる。
【0039】
本発明のエポキシ-酸反応において、カルダノール誘導体化合物からの総エポキシ基とカルボキシル官能性ポリマーからの総カルボキシのモル比は、1:1以下であってもよい。さらに、本発明のカルダノール誘導体化合物からの総エポキシ基と比較して、カルボキシル官能性ポリマーからの総カルボキシはわずかに過剰であることが、本発明の目的には好ましい。例えば、カルダノール誘導体化合物からの総エポキシ基とカルボキシル官能性ポリマーからの総カルボキシのモル比は、2:3~1:1、例えば3:4~1:1の範囲であってもよい。
【0040】
好ましくは、本発明のエポキシ-酸反応において、カルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシの少なくとも60%が、カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基と反応される。例えば、特に、カルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシの少なくとも65%、例えば少なくとも75%が、カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基と反応される。
【0041】
本発明のエポキシ-酸反応は、溶媒の存在下で、200℃より低い温度で行われる。好ましくは、本発明のエポキシ-酸反応は、120℃~180℃、より好ましくは140℃~160℃の温度で行われる。
【0042】
本発明のエポキシ-酸反応に適した溶媒は、エポキシ-酸反応に対して不活性なものである。好適な溶媒の非限定的な例には、芳香族炭化水素、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン、グリコールエーテル、及びグリコールエーテルのエステルが含まれる。具体例には、限定されないが、トルエン、キシレン、エチルアセテート、ブチルアセテート、ヘキシルアセテート、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、m-アミルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、Aromatic 100、Aromatic 150、ナフサ、ミネラルスピリット、ブチルグリコールなどが含まれる。
【0043】
任意に、本発明のエポキシ-酸反応に触媒が使用される。本発明では、エポキシ-酸反応に一般的に用いられる全ての触媒が適用可能であり、例えば、リン含有触媒が挙げられる。本発明の一実施形態において、触媒は、トリフェニルホスフィン、トリフェニルアンチモン及びクロム(III)アセチルアセトネートからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0044】
好適には、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーの質量平均分子量は、1200g/モル~20000g/モル、好ましくは1500g/モル~15000g/モル、より好ましくは2000g/モル~10000g/モル、さらにより好ましくは3000g/モル~5000g/モルであってもよい。
【0045】
本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーは、-30℃~50℃、好ましくは-10℃~50℃、より好ましくは5℃~35℃のガラス転移温度(Tg)を有してもよい。
【0046】
本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーの25℃での粘度は、方法CAP 2000,Brook field,3♯ spinに従って、300~1000mPa・sであり得る。
【0047】
本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーは、コーティング、塗料等の調製に使用することができる。
【0048】
本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーを用いて得られるコーティング剤は、対応する従来のコーティングと比較して、より高い不揮発分及び低下した粘度を有する。
【0049】
コーティング組成物
本発明はさらに、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーを含有するコーティング組成物に関し、ここで、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーが、バインダー樹脂として使用される。本発明の実施形態において、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーは、コーティング組成物の唯一のバインダー樹脂であってよい。
【0050】
本発明のコーティング組成物において、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーの量は、本発明のコーティング組成物の総質量に基づいて、30質量%~60質量%、好ましくは40質量%~60質量%であってもよい。
【0051】
本発明の別の利点は、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーを、コーティング組成物中のバインダー樹脂として使用する場合、2つのアプローチによって硬化させることができることである。本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーは、C=C二重結合及びポリマー中の水酸基によって硬化させることができ、これにより、カルダノール誘導体修飾ポリマーをより効率的に硬化させることができる。
【0052】
本発明のコーティング組成物に適した硬化剤には、特に限定されないが、イソシアネート硬化剤、例えばポリイソシアネート硬化剤又はブロックされたポリイソシアネート硬化剤が含まれる。有用なポリイソシアネート硬化剤には、限定されないが、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、ウレジオン化合物、及びイソシアネート官能性プレポリマー、例えば1モルのトリオールと3モルのジイソシアネートとの反応生成物が含まれる。ポリイソシアネートは、低級アルコール、オキシム、又は硬化温度で揮発してイソシアネート基を再生する他のそのような材料でブロックされてもよい。
【0053】
ポリイソシアネート硬化剤又はブロックされたポリイソシアネート硬化剤は、硬化性バインダー樹脂から利用できるそれと反応する官能基の各当量に対して、0.1~1.1の当量比で、又は0.5~1.0の当量比で使用されてもよい。
【0054】
また、アミノプラストは、本発明のコーティング組成物における硬化剤として使用することもできる。本発明の目的のためのアミノプラストは、活性化窒素を低分子量のアルデヒドと反応させ、任意にさらにアルコール(好ましくは1~4個の炭素原子を有するモノアルコール)と反応させてエーテル基を形成することにより得られる材料である。活性化窒素の好ましい例としては、活性化アミン、例えばメラミン、ベンゾグアナミン、シクロヘキシルカルボグアナミン、及びアセトグアナミン;尿素自体、チオ尿素、エチレン尿素、ジヒドロキシエチレン尿素、及びグアニル尿素を含む尿素;グリコールウリル;アミド、例えばジシアンジアミド;並びに、少なくとも1つの1級カルバメート基又は少なくとも2つの2級カルバメート基を有するカルバメート官能性化合物が挙げられる。
【0055】
活性化窒素は、低分子量のアルデヒドと反応される。アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、又はアミノプラスト樹脂の製造に用いられる他のアルデヒドから選択することができるが、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド、特にホルムアルデヒドが好ましい。活性化窒素基は、アルデヒドで少なくとも部分的にアルキロール化され(alkylolated)、完全にアルキロール化されていてもよく、好ましくは活性化窒素基が完全にアルキロール化される。この反応は、例えば米国特許第3,082,180号(その内容は参照により本明細書に組み込まれている)に教示されているように、酸によって触媒されてもよい。
【0056】
活性化窒素とアルデヒドとの反応により形成されたアルキロール基(alkylol groups)は、1種以上の単官能アルコールで部分的又は完全にエーテル化されてもよい。単官能アルコールの好適な例には、限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が含まれる。1~4個の炭素原子を有する単官能アルコール及びその混合物が好ましい。エーテル化は、例えば、米国特許第4,105,708号及び同第4,293,692号に開示されたプロセス(これらの発明は参照により本明細書に組み込まれている)によって行われてもよい。
【0057】
アミノプラストは、少なくとも部分的にエーテル化されてもよく、異なる実施形態において、アミノプラストは完全にエーテル化されている。
【0058】
アミン硬化剤も、本発明のコーティング組成物に使用されてもよい。アミン硬化剤の例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、m-キシリレンジアミンなどが含まれる。特に、メラミン及びブロックされたイソシアネートは硬化剤として1kコーティングシステムに使用されるが、イソシアネートは2kコーティングシステムに使用される。
【0059】
本発明のコーティング組成物において、硬化剤の量は、本発明のコーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて、15質量%~30質量%、好ましくは20質量%~30質量%であってもよい。
【0060】
本発明のコーティング組成物は、硬化反応を促進するための触媒を含んでもよい。例えば、特にモノマーメラミンが硬化剤として使用される場合、硬化反応を促進するために強酸触媒を利用することができる。このような触媒は、当該技術分野において周知であり、限定されないが、p-トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、モノブチルマレアート、ブチルホスフェート及びヒドロキシホスフェートエステルが含まれる。強酸触媒は、例えばアミンでブロックされることが多い。ポリイソシアネートと好適な硬化性バインダー樹脂官能基との反応において、好適な触媒には、スズ化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、三級アミン、亜鉛塩及びマンガン塩が含まれる。硬化反応中のエポキシド基とカルボキシル基との反応は、三級アミン又は四級アンモニウム塩(例えば、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、トリエチルアミン、N-メチルイミダゾール、テトラメチルアンモニウムブロミド、及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシド)、スズ及び/又はリン錯塩(例えば、(CHSNI、(CHPI、トリフェニルホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムヨウ化物、テトラブチルホスホニウムヨウ化物)等で触媒されてもよい。
【0061】
本発明のコーティング組成物には、溶媒が含有される。コーティング組成物に含有される溶媒は、部分的に、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーの調製からのものであり得る。本発明のコーティング組成物の配合に使用される溶媒は、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーの調製に使用される溶媒と同じであってもよく、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーの調製に適した同じ群の溶媒から選択されてもよい。本発明のコーティング組成物中の溶媒の量は、実際の用途に従って当業者によって選択されてもよい。
【0062】
本発明のコーティング組成物は、任意に、高分子量混合セルロースエステルを含むレオロジー制御剤、例えばCAB-381-0.1、CAB-381-20.1、CAB-381-20、CAB-531-1、CAB-551-0.01、及びCAB-171-15S(EASTMAN Chemical Company,Kingsport,Tennesseeから入手可能)をさらに含んでもよく、これらは、本発明のコーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて、5質量%以下、又は0.1~5質量%、又は1.5~4.5質量%の量で含まれてもよい。さらなる例には、本発明のコーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて5質量%以下の量で含まれてもよい、マイクロゲルレオロジー制御剤、例えば架橋されたアクリルポリマー微粒子;本発明のコーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて2質量%以下の量で含まれてもよい、ワックスレオロジー制御剤、例えばアクリル酸修飾ポリエチレンワックス(例えば、Honeywell A-C(登録商標)Performance Additives)、ポリ(エチレン-ビニルアセテート)コポリマー、及び酸化されたポリエチレンを含むポリエチレンワックス;並びに、本発明のコーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて10質量%以下、又は本発明のコーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて3~12質量%の量で含まれてもよい、ヒュームドシリカが含まれる。
【0063】
本発明のコーティング組成物は、顔料をさらに含有してもよい。好適な顔料の非限定的な例には、無機顔料及び有機顔料、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、黄土、シエナ、アンバー、ヘマタイト、リモナイト、赤色酸化鉄、透明赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化クロムグリーン、ストロンチウムクロメート、リン酸亜鉛、シリカ、例えばヒュームドシリカ、カルシウムカーボネート、タルク、重晶石、フェロシアン化鉄アンモニウム(Prussian blue)、ウルトラマリン、金属化及び非金属化アゾレッド、キナクリドンレッド及びバイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー及びグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリライド及びジアリライドイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジなどが含まれる。顔料は、好ましくは、既知の方法に従って、樹脂又はポリマーに分散され、又は顔料分散剤を用いて分散され、例えば本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーに分散される。一般的には、顔料及び分散性樹脂、ポリマー、又は分散剤を、顔料の凝集体を一次顔料粒子まで破壊し、顔料粒子の表面を分散性樹脂、ポリマー、又は分散剤で濡らすのに十分な高剪断力の下で接触させる。凝集体の破壊及び顔料の一次顔料粒子の濡れは、顔料の安定性及び発色のために重要である。顔料は、コーティング組成物の総質量に基づいて、典型的には40質量%以下の量で利用されてもよい。
【0064】
本発明のコーティング組成物は、さらなる添加剤、例えばヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、安定剤、湿潤剤、接着促進剤等をさらに含有してもよい。当業者は、実際の用途に従って、本発明のコーティング組成物を配合する際に、これらの添加剤の適切な量を選択する。
【0065】
本発明のコーティング組成物は、様々な用途に使用することができる。特に、本発明のコーティング組成物は、自動車用コーティング、例えば自動車のOEM製造(Original Equipment Manufacturing)又は自動車再仕上げのための自動車用コーティングとして使用することができる。本発明の好ましい実施形態において、本発明のコーティング組成物は、自動車クリアコートコーティングとして使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下の実施形態を用いて、本発明をより具体的に説明する。
【0067】
第1実施形態は、カルダノール誘導体化合物中のエポキシ基とカルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシル基との反応から得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーであり、ここで、カルダノール誘導体化合物が、カルダノールと、3~10、好ましくは3~6の炭素数を有するハロアルキレンオキシドとの反応生成物であり、カルボキシル官能性ポリマーの酸価が、100~200mgKOH/g、好ましくは120~180mgKOH/gであり、カルボキシル官能性ポリマー中のカルボキシル基の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%がカルダノール誘導体化合物中のエポキシ基と反応される。
【0068】
第2実施形態は、第1実施形態に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマーであり、ここで、カルボキシル官能性ポリマーのMw(質量平均分子量)が、1000g/モル~12000g/モル、より好ましくは1000g/モル~10000g/モル、さらにより好ましくは1000g/モル~5000g/モル、最も好ましくは1500g/モル~3500g/モルである。
【0069】
第3実施形態は、実施形態1又は2に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマーであり、ここで、カルボキシル官能性ポリマーが、カルボキシル官能性ポリアクリル、カルボキシル官能性ポリエステル、カルボキシル官能性ポリウレタン、及びカルボキシル官能性ポリアミドからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0070】
第4実施形態は、実施形態1から3のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマーであり、ここで、カルボキシル官能性ポリマーが、(メタ)アクリル酸を含み、好ましくはスチレンモノマーをさらに含むモノマーの重合から得られる。
【0071】
第5実施形態は、実施形態1から3のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマーであり、ここで、カルボキシル官能性ポリマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるモノマーと、直鎖又は環状アルキルジカルボン酸又は無水物及びラクトンからなる群から選択されるモノマーとの共重合から得られ、好ましくは、直鎖又は環状アルキルジカルボン酸又は無水物が直鎖又は環状C~Cアルキルジカルボン酸又は無水物であり、好ましくは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーがヒドロキシC~Cアルキル(メタ)アクリレートであり、好ましくは、ラクトンモノマーが、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプラクトンからなる群から選択され、好ましくは、共重合のためのモノマーが、(メタ)アクリル酸及びスチレンからなる群から選択されるモノマーをさらに含む。
【0072】
第6実施形態は、実施形態1から3のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマーであり、ここで、カルボキシル官能性ポリマーが、(メタ)アクリル酸からなる群から選択されるモノマーと、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタアクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタアクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタアクリレート、アミルアクリレート、アミルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルメタアクリレートからなる群から選択されるモノマーとの共重合から得られ、好ましくは、共重合のためのモノマーがスチレンをさらに含む。
【0073】
第7実施形態は、以下の工程:
i)カルダノール誘導体化合物及びカルボキシル官能性ポリマーを含有し、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリフェニルアンチモン及びクロム(III)アセチルアセトネートから選択される少なくとも1つの触媒をさらに含有する混合物を提供する工程と;
ii)溶媒の存在下で、工程i)で得られた混合物を、200℃未満、好ましくは120℃~180℃の温度で加熱する工程と
を含む、実施形態1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマーを調製する方法である。
【0074】
第8実施形態は、実施形態7に記載の方法であり、ここで、工程i)で得られた混合物において、カルダノール誘導体化合物の総エポキシ基とカルボキシル官能性ポリマーの総カルボキシ基とのモル比が、1:1以下、好ましくは3:5~1:1である。
【0075】
第9実施形態は、実施形態1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は実施形態7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを含有するコーティング組成物である。
【0076】
第10実施形態は、
(A)コーティング組成物の総質量に基づいて、30質量%~60質量%、好ましくは40質量%~60質量%の、実施形態1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は実施形態7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマー、及び
(B)コーティング組成物中のバインダーの総質量に基づいて、15質量%~30質量%、好ましくは20質量%~30質量%の硬化剤、及び残りの溶媒
を含み、
好ましくは、硬化剤が、イソシアネート硬化剤、アミノプラスト硬化剤、及びアミン硬化剤からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態9に記載のコーティング組成物である。
【0077】
第11実施形態は、実施形態1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は実施形態7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを自動車用コーティングに導入する工程を含む、自動車用コーティングを調製する方法である。
【0078】
第12実施形態は、実施形態1から6のいずれか一項に記載のカルダノール誘導体修飾ポリマー、又は実施形態7又は8に記載の方法によって得られるカルダノール誘導体修飾ポリマーを、自動車のOEM製造又は自動車再仕上げのためのコーティングの調製に使用する方法である。
【実施例
【0079】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。実施例は、記載され請求された本発明の請求の範囲を限定するものではない。他に定義されない限り、すべての部は、質量部である。
【0080】
酸価の決定方法
DIN EN ISO 2114(日付:2002年6月)に従って、「方法A」を用いて酸価を決定した。酸価は、DIN EN ISO 2114に規定された条件下で、1gの試料を中和するために必要な水酸化カリウムの質量(mg)に対応する。記載されている酸価は、DIN規格に規定された総酸価に対応する。
【0081】
粘度の決定方法
25℃で、Brookfield CAP 2000+回転式粘度計、スピンドル3、せん断速度:10000s-1を用いて、粘度を測定した。
【0082】
Mw(質量平均分子量)の決定方法
DIN 55672-1(日付:2007年8月)に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、Mnを決定した。テトラヒドロフランを溶離液として使用し、ポリスチレンを校正用ポリマーとして使用した。カラム材料は、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーである。
【0083】
不揮発分の決定方法
本発明において、DIN EN ISO 3251(2008年6月1日)に従って、125℃、60分間、初期質量1.0g(DIN EN ISO 3251の表A.2、方法C)で、試料の不揮発分を決定した。DIN EN ISO 3251の表A.1(日付:2008年6月1日)に従って、試料の不揮発分を決定した。この決定では、事前に乾燥させたアルミ皿上に1gの試料を秤量し、130℃の乾燥炉で60分間乾燥させ、デシケーターで冷却し、その後、再び秤量した。導入した試料の総量に対する残留が不揮発分に相当する。
【0084】
ポリマーのTg(ガラス転移温度)の決定方法
本発明の目的のために、DIN 51005「熱分析(TA)-用語」及びDIN 53765(1994年3月)「熱分析-示差走査熱量測定(DSC)」に従って、Tgを実験的に決定した。15mgの試料をサンプルボート中に秤量し、DSC装置に挿入した。開始温度まで冷却した後、50ml/分の不活性ガスブランケット(N)下で、10K/分の加熱速度で、ラン1及び2で測定を行い、各ラン間に開始温度まで冷却した。通常、予想されるガラス転移温度より約50℃低い温度から、ガラス転移温度より約50℃高い温度までの温度範囲で、測定を行った。本発明の目的のための、DIN 53765、セクション8.1に従ったガラス転移温度は、比熱容量の変化の半分(0.5デルタcp)に達した2回目の測定ランでの温度である。これは、DSC図(温度に対する熱流のプロット)から決定した。これは、ガラス転移の前後の外挿されたベースライン間の測定プロットと中心線の交点に対応する温度を表す。
【0085】
実施例1:カルボキシル官能性アクリルポリマーの調製
2Lのガラスフラスコに24.4部の溶媒ナフサを入れ、150℃で温度が安定した時に、5.6部のtert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、及び1.2部の溶媒ナフサをゆっくりとガラスフラスコに滴下した;開始剤投入後15分後に、8.3部のスチレン、18.4部のn-ブチルメタアクリレート、5.1部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2.7部のエチルヘキシルアクリレート、及び18.0部のアクリル酸をゆっくりとガラスフラスコに滴下した;モノマーの投入が完了した後、開始剤の投入をさらに30分間続けた;60分間の1回の後重合後、ガラスフラスコ中の混合物を80℃に冷却し、16.3部の溶媒ナフサを添加した。得られたカルボキシル官能性アクリルポリマーの酸価は134mgKOH/gであった。
【0086】
実施例2:実施例1から得られた生成物をベースとするカルダノール誘導体修飾ポリマーの調製
実施例1から得られたポリマー懸濁液(実施例1から得られたカルボキシル官能性アクリルポリマーの含有量:61.5質量%;溶媒:ナフサ)1Kg、及び0.896KgのCardolite NC513(Cardolite Corporation、Zhuhai、中国)を反応器に投入し(反応器の中の反応システムでは、エポキシ基(Cardolite NC513から)と酸基(実施例1で調製したカルボキシル官能性アクリルポリマーから)のモル比は1:1である)、120℃まで加熱した。0.86gのトリフェニルホスフィンを反応用触媒として添加した。最初の1時間で140℃まで昇温し、その後に140℃~150℃の範囲の温度に維持した。
【0087】
酸価及びEEW(エポキシ当量、Epoxy Equivalent Weight)により、反応の進行をモニターした。EEWが検出できず(すなわち、エポキシ基が完全に消費された)、酸価がわずか1.5mgKOH/gに低下したとき、反応は完了した。得られたポリマーは、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーに対応する、Cardolite NC513修飾カルボキシル官能性アクリルポリマーであった。
【0088】
反応器中の得られた生成物の不揮発分及び粘度を、本明細書に記載の方法に従って測定した。表1は、実施例1及び実施例2から得られた生成物の不揮発分及び粘度の比較を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
実施例3:カルボキシル官能性ポリエステルポリマーの調製
37.4部のヘキサヒドロ無水フタル酸、10.6部のアジピン酸、0.8部のキシレン、17.4部のトリメチロールプロパン及び5部のヘキサンジオールを反応器に投入し、230℃までゆっくり昇温し、カラム分離のヘッド温度を95℃未満に維持した;目標酸価(117~123mgKOH/gの範囲)に達した後、反応器中の混合物を100℃まで冷却し、30.8部のナフサを溶媒として添加した。
【0091】
実施例4:実施例3から得られた生成物をベースとするカルダノール誘導体修飾ポリマーの調製
実施例3から得られたポリマー懸濁液(実施例3から得られたカルボキシル官能性アクリルポリマーの含有量:63.5質量%;溶媒:ナフサ)1Kg、及び0.8KgのCardolite NC513を反応器に投入し(反応器の中の反応システムでは、Cardolite NC513からのエポキシ基:カルボキシル官能性ポリエステルポリマーからの酸基とのモル比は1:1である)、120℃まで加熱した。0.77gのトリフェニルホスフィンを反応用触媒として添加した。最初の1時間で140℃まで昇温し、その後に140℃~150℃の範囲の温度に維持した。
【0092】
酸価及びEEW(エポキシ当量)により、反応の進行をモニターした。EEWが検出できず(すなわち、エポキシ基が完全に消費された)、酸価がわずか3.9mgKOH/gに低下したとき、反応は完了した。得られたポリマーは、本発明のカルダノール誘導体修飾ポリマーに対応する、Cardolite NC513修飾カルボキシル官能性ポリエステルポリマーであった。
【0093】
反応器中の得られた生成物の不揮発分及び粘度を、本明細書に記載の方法に従って測定した。表2は、実施例3及び実施例4から得られた生成物の不揮発分及び粘度の比較を示す。
【0094】
【表2】
【国際調査報告】