(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】温度感応型組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 31/06 20060101AFI20221027BHJP
A61P 41/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221027BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221027BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221027BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221027BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20221027BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20221027BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20221027BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20221027BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61L31/06
A61P41/00
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/34
A61K31/337
A61P35/00
A61K31/7068
A61L31/04 120
A61L31/14 300
A61L31/14 500
A61L31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513910
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 KR2020011633
(87)【国際公開番号】W WO2021040493
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0107356
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522077443
【氏名又は名称】リジェン バイオチャーム カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ミョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン ジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB32
4C076CC27
4C076DD09
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE36
4C076EE37
4C076EE47
4C076EE48
4C076FF32
4C076FF35
4C081BA13
4C081BA16
4C081BB06
4C081CA171
4C081CA181
4C081CC01
4C081CC05
4C081CD042
4C081CD082
4C081CE02
4C081DA12
4C081DC12
4C081EA02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086EA17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA67
4C086NA12
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法に関し、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体、水不溶性ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム及び精製水からなり、分子量が1kDa乃至500kDaであるポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を60℃乃至100℃の温度で1時間乃至2時間にわたって加熱・溶解する共重合体溶解段階と、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に水不溶性ヒアルロン酸を混合し、これを10℃乃至20℃の温度で撹拌するヒアルロン酸混合段階と、前記ヒアルロン酸混合段階を通じて製造された混合物にアルギン酸ナトリウムを混合し、これを5℃乃至20℃の温度で撹拌するアルギン酸ナトリウム混合段階とからなる製造方法を通じて製造される。前記成分及び製造方法からなる組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法は、組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を基本構造体とし、水不溶性ヒアルロン酸及びアルギン酸ナトリウムをブレンディングし、体内の傷部位に均一に塗布される組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体15重量%乃至30重量%、水不溶性ヒアルロン酸2.5重量%乃至4.5重量%、アルギン酸ナトリウム0.1重量%乃至1重量%及び精製水残量からなり、
前記水不溶性ヒアルロン酸は、エタノール水溶液95重量%乃至99重量%に、分子量が500kDa乃至3000kDaであるヒアルロン酸1重量%乃至5重量%を混合することによって混合物を製造し、前記混合物に含有されたヒアルロン酸100重量部に対して架橋剤0.02重量部乃至0.1重量部をさらに混合して製造されることを特徴とする組織癒着防止用ハイドロゲル組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体は、分子量が1kDa乃至500kDaであることを特徴とする、請求項1に記載の組織癒着防止用ハイドロゲル組成物。
【請求項3】
前記エタノール水溶液は、pHが9.5乃至13で、質量濃度が70%乃至80%であることを特徴とする、請求項1に記載の組織癒着防止用ハイドロゲル組成物。
【請求項4】
前記架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルからなることを特徴とする、請求項1に記載の組織癒着防止用ハイドロゲル組成物。
【請求項5】
前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物100重量部に対して難溶性抗癌剤0.1重量部乃至10重量部がさらに含有され、
前記難溶性抗癌剤は、ドセタキセル、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、パクリタキセル水和物、カペシタビン及びカペシタビン水和物からなるグループから選ばれた一つからなることを特徴とする、請求項1に記載の組織癒着防止用ハイドロゲル組成物。
【請求項6】
前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物には、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体100重量部に対して生分解性高分子10重量部乃至50重量部がさらに含有され、
前記生分解性高分子は、PLLA(Poly-L-lactic-Acid)、PLGA(poly-lactic-co-glycolic acid)、PDO(Polydioxanone)及びPCL(polycaprolactone)からなるグループから選ばれた一つからなることを特徴とする、請求項1に記載の組織癒着防止用ハイドロゲル組成物。
【請求項7】
分子量が1kDa乃至500kDaであるポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を60℃乃至100℃の温度で1時間乃至2時間にわたって加熱・溶解する共重合体溶解段階;
前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に水不溶性ヒアルロン酸を混合し、これを10℃乃至20℃の温度で撹拌するヒアルロン酸混合段階;及び
前記ヒアルロン酸混合段階を通じて製造された混合物にアルギン酸ナトリウムを混合し、これを5℃乃至20℃の温度で撹拌するアルギン酸ナトリウム混合段階;からなることを特徴とする組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の製造方法。
【請求項8】
前記共重合体溶解段階と前記ヒアルロン酸混合段階との間には、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に難溶性抗癌剤を混合する難溶性抗癌剤混合段階がさらに進められ、
前記難溶性抗癌剤は、ドセタキセル、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、パクリタキセル水和物、カペシタビン及びカペシタビン水和物からなるグループから選ばれた一つからなることを特徴とする、請求項7に記載の組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の製造方法。
【請求項9】
前記共重合体溶解段階と前記ヒアルロン酸混合段階との間には、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に生分解性高分子を混合する生分解性高分子混合段階がさらに進められ、
前記生分解性高分子は、PLLA(Poly-L-lactic-Acid)、PLGA(poly-lactic-co-glycolic acid)、PDO(Polydioxanone)及びPCL(polycaprolactone)からなるグループから選ばれた一つからなることを特徴とする、請求項7に記載の組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法に関し、組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を基本構造体とし、水不溶性ヒアルロン酸及びアルギン酸ナトリウムをブレンディングし、体内の傷部位に均一に塗布される組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供する組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、手術後に発生する臓器及び組織の癒着は、損傷した組織の細胞が増殖・再生する過程で起こる自然現象の一つであるが、組織の強い癒着又は意図しなかった他の組織及び臓器との癒着は、患者に継続的に不便感や機能障害を起こす。そして、癒着剥離のための再手術が必要でもあり、生命を脅かす要因にもなり得る。このような組織の癒着は、人体の全ての部位で起こり、特に、開腹手術後に70%~95%程度の頻度で癒着が発生する。手術後に発生する癒着の場合は、流入した異物、感染による炎症反応、手術部位の出血、血液凝固、漿膜の破裂などが原因であると知られている。上記の癒着原因から分かるように、出血が癒着の誘発に多くの影響を及ぼすが、体内の温度によって粘度が上昇し、有効成分の浸透効果と癒着防止効果を同時に示す癒着防止剤は未だに存在していない実情である。現在使用される止血剤用材料としては、多糖類を含む生体由来の天然高分子、非生体由来の天然高分子などがある。これらの材料は、単独で又は特定の構造をなして共に使用されている実情である。
【0003】
具体的に、米国特許第7262181号明細書には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル誘導体で構成された止血材料に対して記載しており、その構造は、繊維、織物、不織布、スポンジ、フィルムなどの形態である。前記のようなハイドロゲル、繊維、フォーム、不織布などの形態を有する止血剤は、傷部位に速く且つ正確に塗布されにくく、処置時に医療従事者の接触による感染の危険があるので、効果が確実に発現されにくい。
【0004】
フィルムやメンブレイン形態の癒着防止膜を用いる場合、最も大きい短所としては、適用部位において癒着防止膜の移動を防止するために縫合糸を用いて周辺組織と縫合しなければならないので、縫合部位で組織癒着が頻繁に起こるという点と、適用部位が複雑であったり微細な部分又は導管形態の部分には導入が難しいという点などがある。これを克服するために、ゲル形態のカルボキシメチルセルロース、デキストラン70(dextran 70)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体(polyethylene oxide-polypropylene oxide-polyethylene oxide)から製造したFlowgel、ポリ乳酸を基本にしたAdcon-L(Gliatech)、ヒアルロン酸を基本にしたIntercoat、スプレー形態のポリエチレンオキシドを基本にしたSpraygelなどが市販されている。
【0005】
しかし、ゲル形態の癒着防止剤の場合は、一般に手術部位の傷治癒に7日ほどかかると知られているが、傷が治癒される前に体内(水溶液相)に容易に分解/吸収され、癒着防止剤としての効能が低いという問題を有している(J.M.Becker,et al., presented at clinical congress of Am.College of Surgeons,New Orleans,October 22 (1995))。
【0006】
以上のように、手術後に発生する組織癒着防止に対して多くの研究が進められているが、前記問題を改善できなかった既存の形態の癒着防止剤を使用する場合、高価な費用にもかかわらず、それに相応する効果を示しにくいので、新たな概念の癒着防止剤に対する開発が依然として要求されている実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.M.Becker,et al., presented at clinical congress of Am.College of Surgeons,New Orleans,October 22 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を基本構造体として、水不溶性ヒアルロン酸及びアルギン酸ナトリウムをブレンディングし、体内の傷部位に均一に塗布される組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供する組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体の融点及び高分子相互間の反撥力を用いて難溶性抗癌剤を安定的に放出する組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、生分解性高分子が含有され、優れた生分解性を示す組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体、水不溶性ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム及び精製水からなることを特徴とする組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供することによって達成される。
【0013】
本発明の好ましい特徴によると、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体15重量%乃至30重量%、水不溶性ヒアルロン酸2.5重量%乃至4.5重量%、アルギン酸ナトリウム0.1重量%乃至1重量%及び精製水残量からなる。
【0014】
本発明のさらに好ましい特徴によると、前記ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体は、分子量が1kDa乃至500kDaである。
【0015】
本発明のさらに好ましい特徴によると、前記水不溶性ヒアルロン酸は、エタノール水溶液95重量%乃至99重量%に、分子量が500kDa乃至3000kDaであるヒアルロン酸1重量%乃至5重量%を混合することによって混合物を製造し、前記混合物に含有されたヒアルロン酸100重量部に対して架橋剤0.02重量部乃至0.1重量部をさらに混合してなる。
【0016】
本発明のさらに好ましい特徴によると、前記エタノール水溶液は、pHが9.5乃至13で、質量濃度が70%乃至80%である。
【0017】
本発明のさらに好ましい特徴によると、前記架橋剤は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルからなる。
【0018】
本発明のさらに好ましい特徴によると、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物には、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物100重量部に対して難溶性抗癌剤0.1重量部乃至10重量部がさらに含有され、前記難溶性抗癌剤は、ドセタキセル、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、パクリタキセル水和物、カペシタビン及びカペシタビン水和物からなるグループから選ばれた一つからなる。
【0019】
本発明のさらに好ましい特徴によると、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物には、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体100重量部に対して生分解性高分子10重量部乃至50重量部がさらに含有され、前記生分解性高分子は、PLLA(Poly-L-lactic-Acid)、PLGA(poly-lactic-co-glycolic acid)、PDO(Polydioxanone)及びPCL(polycaprolactone)からなるグループから選ばれた一つからなる。
【0020】
また、本発明の目的は、分子量が1kDa乃至500kDaであるポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を60℃乃至100℃の温度で1時間乃至2時間にわたって加熱・溶解する共重合体溶解段階と、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に水不溶性ヒアルロン酸を混合し、これを10℃乃至20℃の温度で撹拌するヒアルロン酸混合段階と、前記ヒアルロン酸混合段階を通じて製造された混合物にアルギン酸ナトリウムを混合し、これを5℃乃至20℃の温度で撹拌するアルギン酸ナトリウム混合段階とからなることを特徴とする組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の製造方法を提供することによっても達成され得る。
【0021】
本発明の好ましい特徴によると、前記共重合体溶解段階と前記ヒアルロン酸混合段階との間には、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に難溶性抗癌剤を混合する難溶性抗癌剤混合段階がさらに進められ、前記難溶性抗癌剤は、ドセタキセル、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、パクリタキセル水和物、カペシタビン及びカペシタビン水和物からなるグループから選ばれた一つからなる。
【0022】
本発明のさらに好ましい特徴によると、前記共重合体溶解段階と前記ヒアルロン酸混合段階との間には、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に生分解性高分子を混合する生分解性高分子混合段階がさらに進められ、前記生分解性高分子は、PLLA(Poly-L-lactic-Acid)、PLGA(poly-lactic-co-glycolic acid)、PDO(Polydioxanone)及びPCL(polycaprolactone)からなるグループから選ばれた一つからなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法は、組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を基本構造体とし、水不溶性ヒアルロン酸及びアルギン酸ナトリウムをブレンディングし、体内の傷部位に均一に塗布される組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供するという優れた効果を示す。
【0024】
また、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体の融点及び高分子相互間の反撥力を用いて難溶性抗癌剤を安定的に放出する組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供するという優れた効果を示す。
【0025】
また、生分解性高分子が含有され、優れた生分解性を示す組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供するという優れた効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体の濃度含量による組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の粘度変化を示したグラフである。
【
図2】薬物投与による腫瘍抑制効能を比較分析したグラフであるが、VehicleはPBS単独であり、DTX 10mpkはドセタキセル10mg、DTX-88 10mpkは、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたドセタキセル10mg、DTX-88 20mpkは、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたドセタキセル20mgを示し、患部に直接投入した後、30日間にわたる腫瘍の大きさの変化を観察した結果である。
【
図3】患部を切開し、薬物及び組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を直接投入した後、腫瘍の大きさを観察した資料であるが、VehicleはPBS単独であり、DTX 10mpkはドセタキセル10mg、DTX-88 10mpkは、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたドセタキセル10mg、DTX-88 20mpkは、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたドセタキセル20mgを示した図である。
【
図4】患部を切開し、薬物及び組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を直接投入した後、30日後に腫瘍の大きさを観察した資料であって、VehicleはPBS単独であり、DTX 10mpkはドセタキセル10mg、DTX-88 10mpkは、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたドセタキセル10mg、DTX-88 20mpkは、組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたドセタキセル20mgを示した図である。
【
図5】
図4のVehicle(PBS)のみを患部に注入したときの個体の写真である。
【
図6】
図4のDTX-88 10mpkを患部に注入したときの個体の写真である。
【
図7】
図4において患部を切開した後の周囲臓器の癒着有無を確認した資料である。
【
図8】
図4のDTX-88 20mpkを患部に注入したときの個体の写真である。
【
図9】(a)は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド共重合体が15重量%であるとき、生分解性高分子(PLLA)の平均粒径を粒径分析機で測定した資料である。(b)は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドが20重量%であるとき、生分解性高分子(PLLA)の平均粒径を粒径分析機で測定した資料である。(c)は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドが25重量%であるとき、生分解性高分子(PLLA)の平均粒径を粒径分析機で測定した資料である。
【
図10】(a)は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドが20重量%であり、生分解性高分子であるPLLAが含有された組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を光学顕微鏡で測定した写真である。(b)は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドが20重量%であり、生分解性高分子であるPLGAが含有された組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を光学顕微鏡で測定した写真である。(c)は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドが20重量%であり、生分解性高分子であるPDOが含有された組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を光学顕微鏡で測定した写真である。(d)は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドが20重量%であり、生分解性高分子であるPCLが含有された組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を光学顕微鏡で測定した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の好ましい実施例及び各成分の物性を詳細に説明するが、これは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が発明を容易に実施できる程度に詳細に説明するためのものであり、これによって本発明の技術的な思想及び範疇が限定されることを意味するものではない。
【0028】
本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物は、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体、水不溶性ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム及び精製水からなり、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体15重量%乃至30重量%、水不溶性ヒアルロン酸2.5重量%乃至4.5重量%、アルギン酸ナトリウム0.1重量%乃至1重量%、及び精製水残量からなることが好ましい。
【0029】
前記ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体は、15重量%乃至30重量%含有され、分子量が1kDa乃至500kDaであることが好ましいが、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の主材料となる成分であり、生体適合性を有し、優れた組織癒着防止効果を示すハイドロゲル組成物を提供する役割をする。
【0030】
また、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体の融点及び三元共重合体を構成する高分子物質間の反撥力を用いて、難溶性抗癌剤のナノ化を通じて難溶性抗癌剤が安定的に放出される組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供する役割をする。
【0031】
また、前記ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体は、融点及び高分子相互間の反撥力を用いて生分解性高分子を無溶媒状態で粒子化することができ、生分解性に優れた組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を製造可能にする役割をする。
【0032】
このとき、前記ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体の含量が15重量%未満であったり30重量%を超えると、下記の
図1に示したように、加熱された状態でゾル-ゲル作用が誘発されなくなる。
【0033】
前記水不溶性ヒアルロン酸は、2.5重量%乃至4.5重量%含有され、皮膚保湿効果、皮膚再生、抗菌効果を示すだけでなく、水不溶性であるので、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の形態安定性を向上させ、止血作用の役割をする。
【0034】
前記水不溶性ヒアルロン酸は、エタノール水溶液95重量%乃至99重量%に、分子量が500kDa乃至3000kDaであるヒアルロン酸1重量%乃至5重量%を混合することによって混合物を製造し、前記混合物に含有されたヒアルロン酸100重量部に対して架橋剤0.02重量部乃至0.1重量部をさらに混合して製造される。
【0035】
このとき、前記ヒアルロン酸としては、ヒアルロン酸ナトリウム(Sodium Hyaluronate)を使用することが好ましく、前記エタノール水溶液は、pHが9.5乃至13で、質量濃度が70%乃至80%であることが好ましい。
【0036】
前記エタノール水溶液の質量濃度が70%未満であると、ヒアルロン酸の凝集現象が起こる一方で、エタノール水溶液の質量濃度が80%を超えると、エタノール成分を除去する過程でヒアルロン酸の粘度が過度に増加し、架橋剤が部分的に急激に反応するので、均一な粘度が得られなくなる。
【0037】
このとき、前記水不溶性ヒアルロン酸を製造する過程では、陰圧を0.1atm乃至1atmで加えて、撹拌速度は50rpm乃至100rpmに維持すると同時に、架橋剤としては1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルを使用することが好ましい。
【0038】
前記架橋剤の含量が0.02重量部未満であると、架橋度が低くなる一方で、架橋剤の含量が0.1重量部を超えると、部分的に溶液内でゲル現象が誘発され、均一な混合が行われない。
【0039】
前記のような条件で撹拌を進める途中で溶液が透明な状態に変わると、撹拌を中止し、陰圧を除去した状態で反応器の外部温度を40℃乃至60℃に維持しながら24時間停滞させた後、停滞が完了した溶液を7±2kDaの透析膜を用いて2日乃至3日間透析する過程を通じて製造を完了する。
【0040】
前記アルギン酸ナトリウムは、0.1重量%乃至1重量%含有され、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に癒着防止効果を付与するだけでなく、粘度及び接着性を向上させ、体内の傷部位に均一に塗布されるようにする役割をする。
【0041】
このとき、前記アルギン酸ナトリウムは、分子量が300kDa乃至1000kDaであることが好ましい。
【0042】
また、前記アルギン酸ナトリウムの含量が0.1重量%未満であると、癒着防止効果を具現できない一方で、アルギン酸ナトリウムの含量が1重量%を超えると、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の粘度が過度に上昇すると同時に、下限臨界溶液温度(LCST:Lower Critical Solution Temperature)を増加させるようになる。
【0043】
前記アルギン酸ナトリウムを混合するときは、撹拌機の温度を5℃乃至20℃に維持することが好ましく、10℃乃至15℃に維持することがさらに好ましいが、撹拌機の温度が5℃未満であると、混合物に含まれた水が部分的に氷結し得る一方で、撹拌機の温度が20℃を超えると、混合物の粘度が急激に上昇し、バブル現象によって混合が均一に行われない。
【0044】
また、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物には、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物100重量部に対して難溶性抗癌剤0.1重量部乃至10重量部がさらに含有されることもあるが、前記難溶性抗癌剤は、ドセタキセル、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、パクリタキセル水和物、カペシタビン及びカペシタビン水和物からなるグループから選ばれた一つからなり、組織癒着防止効果のみならず、各種癌手術後に手術部位に抗癌剤が持続的に溶出され、優れた抗癌効果を示すハイドロゲル組成物を提供する役割をする。
【0045】
また、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物には、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物に含有されたポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体100重量部に対して生分解性高分子10重量部乃至50重量部がさらに含有され、前記生分解性高分子は、PLLA(Poly-L-lactic-Acid)、PLGA(poly-lactic-co-glycolic acid)、PDO(Polydioxanone)及びPCL(polycaprolactone)からなるグループから選ばれた一つからなるが、前記成分からなる生分解性高分子が含有されると、生分解性に優れた組織癒着防止用ハイドロゲル組成物が提供される。
【0046】
このとき、前記生分解性高分子の含量が10重量部未満であると、前記効果が微々たるものとなる一方で、前記生分解性高分子の含量が50重量部を超えると、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の形態安定性が低下し得る。
【0047】
また、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の製造方法は、分子量が1kDa乃至500kDaであるポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を60℃乃至100℃の温度で1時間乃至2時間にわたって加熱・溶解する共重合体溶解段階と、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に水不溶性ヒアルロン酸を混合し、これを10℃乃至20℃の温度で撹拌するヒアルロン酸混合段階と、前記ヒアルロン酸混合段階を通じて製造された混合物にアルギン酸ナトリウムを混合し、これを5℃乃至20℃の温度で撹拌するアルギン酸ナトリウム混合段階とからなる。
【0048】
前記共重合体溶解段階は、分子量が1kDa乃至500kDaであるポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を60℃乃至100℃の温度で1時間乃至2時間にわたって加熱して行われる。このとき、前記ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体は、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物全体のうち15重量%乃至30重量%を示すように使用されることが好ましいが、三元共重合体の含量が15重量%未満であったり30重量%を超えると、下記の
図1に示したように、加熱された状態でゾル-ゲル作用が誘発されなくなる。
【0049】
前記ヒアルロン酸混合段階は、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に水不溶性ヒアルロン酸を混合し、これを10℃乃至20℃の温度で撹拌する段階であり、前記水不溶性ヒアルロン酸の含量は、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物全体のうち水不溶性ヒアルロン酸の含量が2.5重量%乃至4.5重量%を示すように混合されることが好ましい。
【0050】
このとき、前記水不溶性ヒアルロン酸の製造過程は、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の説明部分に記載した内容と同一であるので、これについての説明は省略する。
【0051】
前記アルギン酸ナトリウム混合段階は、前記ヒアルロン酸混合段階を通じて製造された混合物にアルギン酸ナトリウムを混合し、これを5℃乃至20℃の温度で撹拌する段階であり、このとき、前記アルギン酸ナトリウムは、分子量が300kDa乃至1000kDaであることが好ましい。
【0052】
また、前記アルギン酸ナトリウム混合段階において、アルギン酸ナトリウムの混合量は、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物全体のうちアルギン酸ナトリウムの含量が0.1重量%乃至1重量%を示すように混合されることが好ましいが、前記アルギン酸ナトリウムの含量が0.1重量%未満であると、癒着防止効果を具現できない一方で、アルギン酸ナトリウムの含量が1重量%を超えると、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の粘度が過度に上昇すると同時に、下限臨界溶液温度(LCST:Lower Critical Solution Temperature)を増加させるようになる。
【0053】
また、前記アルギン酸ナトリウム混合段階において、前記撹拌温度が5℃未満であると、混合物に含まれた水が部分的に氷結し得る一方で、撹拌温度が20℃を超えると、混合物の粘度が急激に上昇し、バブル現象によって混合が均一に行われない。
【0054】
また、前記共重合体溶解段階と前記ヒアルロン酸混合段階との間には、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に難溶性抗癌剤を混合する難溶性抗癌剤混合段階がさらに進められることもあるが、前記難溶性抗癌剤は、ドセタキセル、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、パクリタキセル水和物、カペシタビン及びカペシタビン水和物からなるグループから選ばれた一つからなることが好ましい。
【0055】
このとき、前記難溶性抗癌剤混合段階で使用される難溶性抗癌剤の含量及び役割は、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の説明部分に記載した内容と同一であるので、これについての説明は省略する。
【0056】
また、前記共重合体溶解段階と前記ヒアルロン酸混合段階との間には、前記共重合体溶解段階を通じて製造された溶解物に生分解性高分子を混合する生分解性高分子混合段階がさらに進められることもあるが、前記生分解性高分子は、PLLA(Poly-L-lactic-Acid)、PLGA(poly-lactic-co-glycolic acid)、PDO(Polydioxanone)及びPCL(polycaprolactone)からなるグループから選ばれた一つからなることが好ましい。
【0057】
このとき、前記生分解性高分子混合段階で使用される生分解性高分子の含量及び役割は、前記組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の説明部分に記載した内容と同一であるので、これについての説明は省略する。
【0058】
以下では、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の製造方法及びその製造方法を通じて製造された組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の物性について、実施例を挙げて説明する。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
まず、三元共重合体を溶解させた後、PLLAのガラス転移温度付近で生分解性高分子であるPLLAを添加し、これを30分間撹拌した後で製造した。
【0064】
【0065】
まず、三元共重合体を溶解させた後、PLGAのガラス転移温度付近で生分解性高分子を添加し、これを30分間撹拌した後で製造した。
【0066】
【0067】
まず、三元共重合体を溶解させた後、PDOのガラス転移温度付近で生分解性高分子を添加し、これを30分間撹拌した後で製造した。
【0068】
【0069】
まず、三元共重合体を溶解させた後、PCLのガラス転移温度付近で生分解性高分子を添加し、これを30分間撹拌した後で製造した。
【0070】
【0071】
<実施例113>PLLA、PLGA、PDO、PCL粒子の製造
前記実施例65乃至112において、三元共重合体に対して生分解性高分子を投入して粒子化させ、水不溶性ハイドロゲルを添加せずに蒸留水で3回以上洗浄した後、これを-70℃以下で凍結し、-45℃及び1m barで凍結乾燥することによって粒子を製造した。
【0072】
<実験例1>
前記実施例1乃至16で製造された組織癒着防止用ハイドロゲル組成物の均一性を肉眼で確認し、これを下記の表9に示した。
【0073】
【0074】
前記表9に示したように、三元共重合体の含量が15重量%未満であったり30重量%を超えると、ハイドロゲル組成物の状態は均一でなく、水不溶性ヒアルロン酸の濃度が2.5重量%未満であったり4.5重量%を超えるときも、ハイドロゲル組成物の均一性が確保されないことが分かる。
【0075】
<実験例2>複合ハイドロゲルの癒着防止効能を調査するための動物実験-剖検時の肉眼所見
実験例2は、前記実施例6、7、10、11を用いて組織癒着防止効果及び局所出血に対する止血効果に及ぼす影響を検討したものであり、剖検時の肉眼所見の観察を通じて癒着防止効能を調査するための実験を実施し、これを下記の表12に示した。
【0076】
麻酔後、手術部位に除毛を実施し、ポビドンで消毒した後、腹腔の正中線に沿って4cm乃至5cmだけ切開した。盲膓を取り出した後、横1cm×縦2cmの大きさでボーンバー(bone burr)を用いて擦過傷をつけて、向かい合う腹腔膜に同じ大きさで損傷を加えた。二つの損傷面が当接するように摩擦損傷部位から約1cmだけ離れた3ヶ所を縫合糸で固定することによって、組織の癒着を誘導した。これに、それぞれの試験物質を注入した。試験終了日まで生存した動物に対してCO2ガス吸入法を用いて安楽死させた後、部検及び肉眼的病理検査を実施し、個体別に癒着程度、癒着強さ及び癒着面積を記録した。癒着部位組織は、組織学的検査のために10%中性ホルマリンに固定した。
【0077】
このとき、癒着防止効果の測定基準は、下記の表10乃至表11に示した。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
前記表12に示したように、本発明の実施例6乃至7及び実施例10乃至11を通じて製造されたハイドロゲル組成物は、癒着防止効果に優れることが分かる。
【0082】
肉眼所見の観察による癒着の評価は、Vlahos等(Vlahos A,Yu P,Lucas CE,Ledgerwood AM.Effect of a composite membrane of chitosan and Poloxamer gel on post operative adhesive interactions,The American Surgeon 2001,67:15-21)の方法によって実施した。具体的に、癒着面の癒着程度による分類(0~5、表10)、手で癒着面を分離させたとき、二つの面が分離される強さによる分類(1~4、表11)及び癒着部位の面積測定による癒着程度の評価を行い、その結果を表12に示した。
【0083】
<実験例3>複合ハイドロゲルの癒着防止効能及び薬物放出効果を調査するための動物実験
前記実施例17乃至32で製造された複合ハイドロゲルを使用した。
【0084】
実験は、マウスを入庫した後で一週間安定化して行った。MKN74胃癌細胞株に対して皮下注射(subcutaneous injection)を進めた。腫瘍の大きさが平均100mm3になったとき、グループを分けた後、薬物複合ハイドロゲルの投与を進めた。100mm3の大きさから3日間隔で腫瘍の大きさを測定し、マウスの重量を測定した。複合ハイドロゲルを注入した後、マウスへの異常有無を確認し、複合ハイドロゲルの注入が終了した後で腫瘍を摘出し、腫瘍の重さを測定した。そして、摘出された部位の臓器の癒着有無を確認した。実験材料としては6匹のマウスを使用した。実験室の温度は22±2℃に、相対湿度は0±10%にし、飼料としてはピュリナ(Purina)実験動物用ラット飼料を使用し、飲水としてはいずれにおいてもR/O水を供給し、1年に2回水質検査を施行した。微生物検査は、歩哨動物(sentinel animal)を用いて自体的に施行した。実験動物の種及び系統は、マウス、Balb/c nude、及びSPFである。この動物は、中央実験動物SLC(日本)で購入した5週齢の雌である。実験に使用した細胞株は、MKN74(胃癌細胞株、韓国細胞株銀行)であり、RPM1640(Welgene)+10%FBS(ATCC)の培養条件で培養した。
【0085】
下記の
図1乃至
図3に示したように、6日まではグループ間に大きな差が表れなかった。しかし、9日からは、PBS処理群と、抗癌剤が含まれた複合ハイドロゲル処理群との間の腫瘍の大きさにおいて差が表れることが分かる。
【0086】
最終30日に確認した結果、PBS処理群に比べて複合ハイドロゲルの腫瘍の大きさが30%減少することが分かった。
【0087】
また、
図5乃至
図8に示したように、PBS処理群では腸管癒着が発生したが、本発明に係るハイドロゲル組成物の処理群では癒着が発生しないことが分かる。
【0088】
結果的に、
図2乃至
図8に示したように、Vehicle(PBS)処理群と比較したとき、抗癌剤が含まれた処理群で腫瘍の大きさが30%減少した。また、30日後には、臓器内部の癒着が発生しないことが分かる。
【0089】
パクリタキセル及びケパシタビンが含有されたハイドロゲル組成物でも、上記と類似する結果を示した。
【0090】
<実験例4>複合ハイドロゲル製造過程中の生分解性粒子の製造
前記実施例113で製造した粒子を粒径分析機で測定した。また、10倍率のマイクロ顕微鏡で粒子の状態を観測した。
【0091】
図9乃至
図10に示したように、粒子は球状に製造され、平均粒径は10μm乃至100μmを示した。
【0092】
しかし、三元共重合体の含量が高くなるほど粒径が減少し、生分解性高分子の含量が高くなるほど粒径が増加することが分かる。
【0093】
したがって、本発明に係る組織癒着防止用ハイドロゲル組成物及びその製造方法は、組織癒着抑制性能を有するポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体を基本構造体とし、水不溶性ヒアルロン酸及びアルギン酸ナトリウムをブレンディングし、体内の傷部位に均一に塗布される組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供する。
【0094】
また、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシド三元共重合体の融点及び高分子相互間の反撥力を用いて難溶性抗癌剤を安定的に放出する組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供する。
【0095】
また、生分解性高分子が含有され、優れた生分解性を示す組織癒着防止用ハイドロゲル組成物を提供する。
【国際調査報告】