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特表2022-546539粘液腫ウイルスを用いて癌を治療するための新しい腫瘍崩壊ウイルスプラットフォーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】粘液腫ウイルスを用いて癌を治療するための新しい腫瘍崩壊ウイルスプラットフォーム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/863 20060101AFI20221027BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20221027BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20221027BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/28 20060101ALN20221027BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20221027BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20221027BHJP
【FI】
C12N15/863 Z
A61P35/00
A61P35/04
A61K35/768
A61K48/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K35/12
A61K31/7088
C12N7/01
C12N15/28
C12N15/24
C12N15/113 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514014
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 US2020049061
(87)【国際公開番号】W WO2021046125
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/894,925
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/944,233
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504318142
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ アリゾナ ステート ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】522079023
【氏名又は名称】オンコミクス セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】マクファデン,ダグラス グラント
(72)【発明者】
【氏名】ラフマーン,モハメド マスムズール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラ,ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】トーレス-ドミンゲス,リノ
(72)【発明者】
【氏名】フランコ アチュリ,リナ
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,レスリー リン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA55
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA55
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、組換え粘液腫ウイルス(MYXV)および組換えMYXVをコードする核酸構築物である。いくつかの実施形態では、MYXVは、M153タンパク質の活性または発現レベルを不活性化または減弱させるように操作される。いくつかの実施形態では、MYXVは、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン-12(IL-12)、またはデコリンなどの1つ以上の導入遺伝子を発現するように操作される。また、本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、MYXVを使用する方法である。いくつかの実施形態は、本明細書に記載されるようなMYXVを、それを必要とする対象に提供することを含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌活性が増強された粘液腫ウイルス(MYXV)であって、前記粘液腫ウイルスは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作されている、粘液腫ウイルス(MYXV)。
【請求項2】
前記M153タンパク質の活性または発現レベルが少なくとも80%減衰される、請求項1に記載のMYXV。
【請求項3】
前記MYXVは、前記M153タンパク質をコードする核酸に変異を導入するように操作され、ここで、前記変異は、挿入、欠失、または置換変異を含む、請求項1または請求項2に記載のMYXV。
【請求項4】
前記変異が、野生型M153タンパク質に関連して細胞免疫応答活性を増強する、請求項3に記載のMYXV。
【請求項5】
MYXVゲノム中のM153タンパク質をコードする核酸の少なくとも一部がノックアウトされている、請求項1に記載のMYXV。
【請求項6】
前記MYXVが、前記M153転写物を標的とする阻害性分子を含み、それにより、M153タンパク質発現を減衰する、請求項1に記載のMYXV。
【請求項7】
前記阻害性分子が阻害性RNAである、請求項6に記載のMYXV。
【請求項8】
前記阻害性RNAが、dsRNA、siRNA、アンチセンスRNA、またはmiRNAを含む、請求項7に記載のMYXV。
【請求項9】
非ウイルス分子をコードする核酸をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のMYXV。
【請求項10】
前記非ウイルス分子が腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)である、請求項9に記載のMYXV。
【請求項11】
前記TNFαがヒトTNFαである、請求項10に記載のMYXV。
【請求項12】
前記TNFαが可溶性ペプチドである、請求項10または11に記載のMYXV。
【請求項13】
前記TNFαが膜または表面に結合したペプチドである、請求項10~12のいずれかに記載のMYXV。
【請求項14】
前記TNFαが、抗腫瘍免疫細胞を活性化すること、または癌細胞死を誘導することによって、前記MYXVの抗癌活性をさらに増強する、請求項10~13のいずれかに記載のMYXV。
【請求項15】
前記非ウイルス分子がインターロイキン-12(IL-12)である、請求項9に記載のMYXV。
【請求項16】
前記IL-12がヒトIL-12である、請求項15に記載のMYXV。
【請求項17】
前記IL-12が可溶性ペプチドである、請求項15または請求項16に記載のMYXV。
【請求項18】
前記IL-12が膜または表面に結合したペプチドである、請求項15~17のいずれか一項に記載のMYXV。
【請求項19】
前記IL-12が、免疫細胞の分化を促進すること、または免疫細胞の細胞毒性を誘発することによって、前記MYXVの抗癌活性をさらに増強する、請求項15~18のいずれかに記載のMYXV。
【請求項20】
前記非ウイルス性分子がデコリンである、請求項9に記載のMYXV。
【請求項21】
前記デコリンがヒトデコリンである、請求項20に記載のMYXV。
【請求項22】
前記デコリンが可溶性ペプチドである、請求項20または21に記載のMYXV。
【請求項23】
前記デコリンが膜または表面に結合したペプチドである、請求項20~22のいずれかに記載のMYXV。
【請求項24】
前記デコリンが、TGF-βシグナル伝達を遮断または減少させることにより、MYXVの抗癌活性をさらに増強する、請求項20~23のいずれかに記載のMYXV。
【請求項25】
前記核酸が、TNFα、IL-12、およびデコリンからなる群より選択される少なくとも2つの分子をコードする、請求項9に記載のMYXV。
【請求項26】
前記核酸がTNFα、IL-12、およびデコリンをコードする、請求項9に記載のMYXV。
【請求項27】
前記MYXVがLausanne株に由来する、請求項1~24のいずれかに記載のMYXV。
【請求項28】
請求項1~27のいずれかのMYXV、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物。
【請求項29】
全身投与用に製剤化される、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
局所投与用に製剤化される、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
非経口投与用に製剤化される、請求項28~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
複数の細胞を含む組成物であって、前記複数の細胞が、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のMYXVによってエキソビボで処理された、組成物。
【請求項33】
請求項1~27のいずれか一項に記載のMYXVまたは請求項28~32のいずれか一項に記載の組成物を必要とする対象に投与する工程を含む、対象における癌を阻害、軽減、または予防する方法。
【請求項34】
前記対象が癌を有するか、癌を有することが疑われるか、または癌を有するリスクがあり、前記方法は、前記対象を選択する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象がヒトである、請求項33または請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が全身投与である、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が癌細胞の生存率を低下させるか、または前記癌における免疫原性細胞死を活性化する、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記投与が前記対象の生存を改善する、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記癌が固形腫瘍を含む、請求項33~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記癌が骨肉腫、トリプルネガティブ乳癌、または黒色腫である、請求項33~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記癌が前記対象の1つの場所に転移している、請求項33~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記場所が、前記対象の肺、脳、肝臓、および/またはリンパ節を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記対象に追加の治療薬を投与する工程をさらに含む、請求項33~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記追加の治療薬が免疫チェックポイントモジュレーターである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物を投与する前に、前記追加の治療薬が前記対象に投与される、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物を投与した後に、前記追加の治療薬が前記対象に投与される、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記追加の治療薬が、前記組成物との組み合わせとして前記対象に投与される、請求項43または請求項44に記載の方法。
【請求項48】
複数の細胞を含む組成物が前記対象に投与され、前記複数の細胞が前記対象に対して自己である細胞を含む、請求項33~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
複数の細胞を含む組成物が前記対象に投与され、前記複数の細胞が前記対象に対して同種異系である細胞を含む、請求項33~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
MYXVゲノムの少なくとも一部を含む組換え核酸であって、ここで、前記MYXVゲノムは、M153遺伝子の発現を低下させるように改変されている、組換え核酸。
【請求項51】
DNAを含む、請求項50に記載の組換え核酸。
【請求項52】
前記MYXVゲノムの一部が、前記MYXVゲノムの一部におけるM153遺伝子の少なくとも一部をノックアウトするように改変される、請求項50または請求項51に記載の組換え核酸。
【請求項53】
前記組換えMYXVゲノムがTNFαをコードする第1の核酸を含む、請求項50~52のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項54】
前記TNFαがヒトTNFαである、請求項53に記載の組換え核酸。
【請求項55】
前記第1の核酸が、前記MYXVゲノムのM135R遺伝子を置き換えるか、またはこれに隣接する、請求項53または請求項54に記載の組換え核酸。
【請求項56】
前記MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に第1の核酸が挿入されている、請求項53~55のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項57】
前記第1の核酸の発現が、ポックスウイルス合成初期/後期(sE/L)プロモーターによって駆動される、請求項53~56のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項58】
前記組換えMYXVゲノムが、インターロイキン-12サブユニットアルファ(IL-12α)をコードする第2の核酸を含む、請求項50~57のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項59】
前記IL-12αがヒトIL-12αである、請求項58に記載の組換え核酸。
【請求項60】
前記IL-12αの発現が内部リボソーム侵入部位(IRES)によって駆動される、請求項58または請求項59に記載の組換え核酸。
【請求項61】
前記第2の核酸IL-12αが、前記MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する、請求項58~60のいずれか一項に記載の組換え核酸。
【請求項62】
前記組換えMYXVゲノムが、インターロイキン-12サブユニットベータ(IL-12β)をコードする第3の核酸を含む、請求項50~61のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項63】
前記IL-12βがヒトIL-12βである、請求項62に記載の組換え核酸。
【請求項64】
前記第3の核酸の発現が、sE/Lプロモーターによって駆動される、請求項62または請求項63に記載の組換え核酸。
【請求項65】
前記第3の核酸が、前記MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する、請求項62~64のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項66】
前記組換えMYXVゲノムが、デコリンをコードする第4の核酸を含む、請求項50~65のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項67】
前記デコリンがヒトデコリンである、請求項66に記載の組換え核酸。
【請求項68】
前記第4の核酸の発現が、sE/Lプロモーターによって駆動される、請求項66または請求項67に記載の組換え核酸。
【請求項69】
前記第4の核酸が、前記MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する、請求項66~68のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項70】
レポータータグをコードする第5の核酸をさらに含む、請求項50~69のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項71】
前記レポータータグが緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む、請求項70に記載の組換え核酸。
【請求項72】
前記第5の核酸の発現がsE/Lプロモーターによって駆動される、請求項70または請求項71に記載の組換え核酸。
【請求項73】
第2のレポータータグをコードする第6の核酸をさらに含む、請求項70に記載の組換え核酸。
【請求項74】
前記第2のレポータータグが赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む、請求項73に記載の組換え核酸。
【請求項75】
前記第6の核酸の発現が、ポックスウイルスP11後期プロモーターによって駆動される、請求項73または請求項74に記載の組換え核酸。
【請求項76】
前記組換え核酸が、任意選択でGFPを含むvMyx-hTNFaカセットを含む、請求項50~75のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項77】
前記組換え核酸が、任意選択でdsRedを含むhDecorin-hIL-12カセットを含む、請求項50~76のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項78】
前記組換え核酸が、任意選択でdsRedおよび/またはGFPを含むvMyx-hTNFa-hDecorin-hIL-12-M153KO(vMyx-Triple)カセットを含むか、またはそれからなる、請求項50~77のいずれかに記載の組換え核酸。
【請求項79】
請求項50~78のいずれかに記載の組換え核酸を含む組換えMYXV。
【請求項80】
請求項50~79のいずれか一項に記載の組換え核酸または請求項79に記載の組換えMYXVを必要とする対象に投与する工程を含む、対象における癌を阻害、軽減、または予防する方法。
【請求項81】
前記対象が癌を有するか、癌を有することが疑われるか、または癌を有するリスクがあり、前記方法は、前記対象を選択する工程をさらに含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記対象がヒトである、請求項80または81に記載の方法。
【請求項83】
前記投与が全身投与である、請求項80~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記投与が細胞生存率を低下させるか、または癌における免疫原性細胞死を活性化する、請求項80~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記投与が、前記対象のPBMCにおける少なくとも2つのサイトカインの発現を増加させるために有効な用量およびスケジュールで行われる、請求項35~49のいずれか一項または請求項80~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記投与が、前記対象の癌細胞における少なくとも2つのサイトカインの発現を増加させるために有効な用量およびスケジュールで行われる、請求項35~49のいずれか一項または請求項80~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも2つのサイトカインが、IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、またはTNF-αを含む、請求項85または請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記投与が、前記癌の体積を少なくとも10%減少させるために有効な用量およびスケジュールで行われる、請求項35~49のいずれか一項または請求項80~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記投与が、前記癌の増殖を少なくとも10%減少させるために有効な用量およびスケジュールで行われる、請求項35~49のいずれか一項または請求項80~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記IL-12がIL-12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットを含む、請求項15に記載のMYXV。
【請求項91】
前記IL-12αサブユニットおよび前記IL-12βサブユニットがポリペプチドリンカーによって結合されている、請求項90に記載のMYXV。
【請求項92】
前記ポリペプチドリンカーがエラスチンリンカーである、請求項91に記載のMYXV。
【請求項93】
低レベルのIL-12を発現する、請求項15に記載のMYXV。
【請求項94】
高レベルのIL-12を発現する、請求項15に記載のMYXV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年9月2日に出願された米国仮出願第62/894,925号および2019年12月5日に出願された米国仮出願第62/944,233号の利益を主張し、これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2020年9月1日に作成された上記ASCIIコピーは、42206-721_601_SL.txtという名称で、72,925バイトのサイズである。
【0003】
連邦政府により支援された研究に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたP50 CA186781の下での政府支援を用いて行われた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【0004】
分野
本明細書に開示されているのは、組換え粘液腫ウイルス(MYXV)、組換えMYXVをコードする核酸構築物、ならびにその使用方法である。
【背景技術】
【0005】
背景
様々なタイプの癌を治療するために使用される現在の治療は、癌性細胞を中毒にし、または殺傷することによって作用する傾向があるが、癌細胞に毒性のある治療は、通常、健康な細胞にも同様に毒性がある傾向がある。さらに、腫瘍の不均一な性質は、癌の効果的な治療がとらえどころのないままである主な理由の1つである。化学療法や放射線療法などの現在の主流の治療法は、毒性の狭い治療ウィンドウ内で使用される傾向がある。これらのタイプの治療法は、腫瘍細胞のタイプが異なり、これらの治療を実施できるウィンドウが限られているため、適用範囲が限られている。
【発明の概要】
【0006】
要約
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、増強された抗癌活性を有する粘液腫ウイルス(MYXV)であり、この粘液腫ウイルスは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作されている。
【0007】
特定の実施形態において、M153タンパク質の活性または発現レベルは、少なくとも80%減衰される。あるいは、および/またはさらに、MYXVは、M153タンパク質をコードする核酸に変異を導入するように操作され、ここで、変異は、挿入、欠失、または置換変異を含む。いくつかの実施形態において、変異は、野生型M153タンパク質に関連して細胞免疫応答活性を増強する。特定の実施形態では、MYXVゲノム中のM153タンパク質をコードする核酸の少なくとも一部がノックアウトされている。いくつかの実施形態において、MYXVは、M153転写物を標的とする阻害性分子を含み、それによって、M153タンパク質発現を減衰する。いくつかの実施形態において、阻害性分子は、阻害性RNAである。いくつかの実施形態において、阻害性RNAは、dsRNA、siRNA、アンチセンスRNA、またはmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、非ウイルス分子をコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)である。いくつかの実施形態において、TNFαはヒトTNFαである。いくつかの実施形態において、TNFαは可溶性ペプチドである。いくつかの実施形態において、TNFαは、膜または表面に結合したペプチドである。いくつかの実施形態において、TNFαは、抗腫瘍免疫細胞を活性化すること、または癌細胞死を誘導することによって、MYXVの抗癌活性をさらに増強する。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子は、インターロイキン-12(IL-12)である。いくつかの実施形態において、IL-12は、ヒトIL-12である。いくつかの実施形態において、IL-12は、可溶性ペプチドである。いくつかの実施形態において、IL-12は、膜または表面に結合したペプチドである。いくつかの実施形態において、IL-12は、免疫細胞の分化を促進すること、または免疫細胞の細胞毒性を誘発することによって、MYXVの抗癌活性をさらに増強する。いくつかの実施形態において、IL-12は、IL-12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットを含む。いくつかの実施形態において、IL-12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットは、ポリペプチドリンカーによって結合されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチドリンカーはエラスチンリンカーである。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子はデコリンである。いくつかの実施形態において、デコリンはヒトデコリンである。いくつかの実施形態において、デコリンは可溶性ペプチドである。いくつかの実施形態において、デコリンは、膜または表面に結合したペプチドである。いくつかの実施形態において、デコリンは、TGF-βシグナル伝達を遮断または減少させることにより、MYXVの抗癌活性をさらに増強する。いくつかの実施形態において、上記核酸は、TNFα、IL-12、およびデコリンからなる群から選択される少なくとも2つの分子をコードする。いくつかの実施形態において、上記核酸は、TNFα、IL-12、およびデコリンをコードする。いくつかの実施形態において、MYXVはLausanne株に由来する。
【0008】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、上記の実施形態のいずれかのMYXV、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物である。
【0009】
いくつかの実施形態において、組成物は、全身投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、局所投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、非経口投与のために製剤化される。
【0010】
本明細書で開示されるのは、いくつかの態様において、上記の実施形態のいずれかのMYXVによってエキソビボで処理された複数の細胞を含む組成物であり、上記複数の細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0011】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、上記の実施形態のいずれか1つのMYXVまたは組成物を対象に投与する工程を含む、必要とする対象における癌を阻害、軽減、または予防する方法である。
【0012】
いくつかの実施形態において、対象は、癌を有するか、癌を有することが疑われるか、または癌を有するリスクがあり、上記方法は、対象を選択する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は全身投与である。いくつかの実施形態において、投与は、癌細胞の生存率を低下させるか、または癌における免疫原性細胞死を活性化する。いくつかの実施形態において、投与は対象の生存を改善する。いくつかの実施形態において、癌は固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、癌は、骨肉腫、Tripleネガティブ乳癌、または黒色腫である。いくつかの実施形態において、癌は対象の1つの場所に転移している。いくつかの実施形態において、上記場所は、対象の肺、脳、肝臓、および/またはリンパ節を含む。いくつかの実施形態において、上記方法は、対象に追加の治療薬を投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記追加の治療薬は、免疫チェックポイントモジュレーターである。いくつかの実施形態において、上記追加の治療薬は、上記組成物を投与する前に対象に投与される。いくつかの実施形態において、上記追加の治療薬は、上記組成物を投与した後に対象に投与される。いくつかの実施形態において、上記追加の治療薬は、上記組成物との組み合わせとして対象に投与される。いくつかの実施形態において、複数の細胞を含む組成物が、対象に投与され、ここで、上記複数の細胞は、対象に対して自己である細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記複数の細胞を含む組成物は、対象に投与され、ここで、複数の細胞は、対象に対して同種異系である細胞を含む。
【0013】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、MYXVゲノムの少なくとも一部を含む組換え核酸であり、ここで、MYXVゲノムは、M153遺伝子の発現を低減するように改変されている。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態において、MYXVゲノムの一部は、MYXVゲノムの一部におけるM153遺伝子の少なくとも一部をノックアウトするように改変される。いくつかの実施形態において、組換えMYXVゲノムは、TNFαをコードする第1の核酸を含む。いくつかの実施形態において、TNFαはヒトTNFαである。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、MYXVゲノムのM135R遺伝子を置き換えるか、または隣接する。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に挿入されている。いくつかの実施形態において、第1の核酸の発現は、ポックスウイルス合成初期/後期(sE/L)プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、組換えMYXVゲノムは、インターロイキン-12サブユニットアルファ(IL-12α)をコードする第2の核酸を含む。いくつかの実施形態において、IL-12αは、ヒトIL-12αである。いくつかの実施形態において、IL-12αの発現は、内部リボソーム侵入部位(IRES)によって駆動される。いくつかの実施形態において、第2の核酸IL-12αは、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する。いくつかの実施形態において、組換えMYXVゲノムは、インターロイキン-12サブユニットベータ(IL-12β)をコードする第3の核酸を含む。いくつかの実施形態において、IL-12βは、ヒトIL-12βである。いくつかの実施形態において、第3の核酸の発現は、sE/Lプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、第3の核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する。いくつかの実施形態において、組換えMYXVゲノムは、デコリンをコードする第4の核酸を含む。いくつかの実施形態において、デコリンはヒトデコリンである。いくつかの実施形態において、第4の核酸の発現は、sE/Lプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、第4の核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する。いくつかの実施形態において、組換えMYXVゲノムは、レポータータグをコードする第5の核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、レポータータグは、緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む。いくつかの実施形態において、第5の核酸の発現は、sE/Lプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、第2のレポータータグをコードする第6の核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、第2のレポータータグは、赤色蛍光タンパク質(RFP)を含む。いくつかの実施形態において、第6の核酸の発現は、ポックスウイルスP11後期プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、任意選択でGFPを含む、vMyx-hTNFaカセットを含む。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、任意選択でdsRedを含む、hDecorin-hIL-12カセットを含む。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、任意選択でdsRedおよび/またはGFPを含む、vMyx-hTNFa-hDecorin-hIL-12-M153KO(vMyx-Triple)カセットを含むか、またはそれからなる。
【0014】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、上記の実施形態のいずれかの組換え核酸を含む組換えMYXVである。
【0015】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、先行する実施形態のいずれか1つの組換え核酸または組換えMYXVを対象に投与する工程を含む、必要とする対象における癌を阻害、軽減、または予防する方法である。
【0016】
いくつかの実施形態において、対象は、癌を有するか、癌を有することが疑われるか、または癌を有するリスクがあり、上記方法は、対象を選択する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は全身投与である。いくつかの実施形態において、投与は、細胞生存率を低下させるか、または癌における免疫原性細胞死を活性化する。いくつかの実施形態において、投与は、対象のPBMCにおける少なくとも2つのサイトカインの発現を増加させるために有効な用量およびスケジュールで実施される。いくつかの実施形態において、投与は、対象の癌細胞における少なくとも2つのサイトカインの発現を増加させるのに有効な用量およびスケジュールで実施される。いくつかの実施形態において、上記少なくとも2つのサイトカインは、IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、またはTNF-αを含む。いくつかの実施形態において、上記投与は、癌の体積を少なくとも10%減少させるために有効な用量およびスケジュールで行われる。いくつかの実施形態において、上記投与は、癌の増殖を少なくとも10%減少させるために有効な用量およびスケジュールで実施される。
【0017】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、増強された抗癌活性を有する粘液腫ウイルス(MYXV)であり、MYXVは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作される。
【0018】
いくつかの実施形態において、M153タンパク質の活性または発現レベルは、少なくとも80%減衰される。いくつかの実施形態において、MYXVは、M153タンパク質をコードする核酸に変異を導入するように操作され、ここで、変異は、挿入、欠失、または置換変異を含む。いくつかの実施形態において、MYXVゲノム中のM153タンパク質をコードする核酸の少なくとも一部がノックアウトされる。いくつかの実施形態において、MYXVは、M153転写物を標的とする阻害分子を含み、それによって、M153タンパク質発現を減衰し、ここで、阻害分子は、dsRNA、siRNA、アンチセンスRNA、またはmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、非ウイルス分子を発現するようにさらに遺伝子操作されている。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子は、サイトカインまたは細胞マトリックスタンパク質である。いくつかの実施形態において、非ウイルス性分子は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン-12サブユニットアルファ(IL-12α)、インターロイキン-12サブユニットベータ(IL-12β)、またはデコリンである。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子はヒトタンパク質である。いくつかの実施形態において、MYXVは、TNFα、IL-12α、IL-12β、およびデコリンからなる群より選択される少なくとも2つの非ウイルス分子を発現する。
【0019】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、MYXVによってエキソビボで処理された複数の細胞を含む組成物であり、MYXVは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰させ、非ウイルス分子を発現するように遺伝子操作される。
【0020】
いくつかの実施形態において、複数の細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0021】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、MYXVゲノムの少なくとも一部を含む組換え核酸であり、ここで、MYXVゲノムの一部は、M153遺伝子の発現を減少させるように改変される。
【0022】
いくつかの実施形態において、MYXVゲノムの一部は、MYXVゲノムの一部におけるM153遺伝子の少なくとも一部をノックアウトするように改変される。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、非ウイルス分子をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子は、ヒトTNFα、ヒトIL-12α(hTNFα)、ヒトIL-12β、またはヒトデコリンである。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子をコードする核酸は、vMyx-hTNFαカセットを含み、非ウイルス分子をコードする核酸は、MYXVゲノムのM135R遺伝子を置き換えるか、またはこれに隣接している。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子をコードする核酸は、vMyx-hTNFαカセットを含み、非ウイルス分子をコードする核酸は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に挿入される。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子をコードする核酸は、hDecorin-hIL-12カセットを含み、非ウイルス分子をコードする核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子の少なくとも一部を置き換える。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子をコードする核酸は、vMyx-hTNFα-hDecorin-hIL-12-M153KO(vMyx-Triple)カセットを含む。
【0023】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、MYXVまたはMYXVで処理された複数の細胞を対象に投与する工程を含む、必要とする対象における癌を阻害、軽減、または予防する方法であり、MYXVは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰させるように遺伝子操作されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、MYXVは、非ウイルス性分子を発現するようにさらに遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、非ウイルス性分子は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン-12サブユニットアルファ(IL-12α)、インターロイキン-12サブユニットベータ(IL-12β)、またはデコリンである。いくつかの実施形態において、MYXVまたは複数の細胞は、全身投与によって投与される。いくつかの実施形態において、投与は、腫瘍細胞の生存率を低下させるか、または癌における免疫原性細胞死を活性化する。いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍、骨肉腫、Tripleネガティブ乳癌、または黒色腫である。いくつかの実施形態において、癌は、対象の肺、脳、肝臓、またはリンパ節に転移している。いくつかの実施形態において、この方法は、免疫チェックポイントモジュレーターを対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記投与は、対象のPBMCまたは癌細胞における少なくとも2つのサイトカインの発現を増加させるために有効な用量およびスケジュールで実施され、ここで、少なくとも2つのサイトカインは、IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、またはTNF-αを含む。いくつかの実施形態において、投与は、癌の体積を少なくとも10%減少させために有効な用量およびスケジュールで実施される。
【0025】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、増強された抗癌活性を有する粘液腫ウイルス(MYXV)であり、上記粘液腫ウイルスは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作される。
【0026】
いくつかの実施形態において、M153タンパク質の活性または発現レベルは、少なくとも80%減衰される。いくつかの実施形態において、上記MYXVは、M153タンパク質をコードする核酸に変異を導入するように操作され、ここで、上記変異は、挿入、欠失、または置換変異を含む。いくつかの実施形態において、MYXVゲノム中のM153タンパク質をコードする核酸の少なくとも一部がノックアウトされる。いくつかの実施形態において、上記MYXVは、M153転写物を標的とする阻害分子を含み、それによって、M153タンパク質発現を減衰し、ここで、阻害分子は、dsRNA、siRNA、アンチセンスRNA、またはmiRNAを含む。いくつかの実施形態において、上記MYXVは、非ウイルス分子をコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン-12サブユニットアルファ(IL-12α)、インターロイキン-12サブユニットベータ(IL-12β)、またはデコリンである。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子はヒトタンパク質である。いくつかの実施形態において、上記核酸は、TNFα、IL-12α、IL-12β、およびデコリンからなる群から選択される少なくとも2つの非ウイルス分子をコードする。
【0027】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、MYXVによってエキソビボで処理された複数の細胞を含む組成物であり、上記MYXVは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰させるように遺伝子操作され、複数の細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、必要とする対象における癌を阻害、軽減、または予防する際の使用のためであり、複数の細胞は、上記対象に対して自己である細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、必要とする対象における癌を阻害、軽減、または予防する際の使用のためであり、上記複数の細胞は、対象に対して同種異系である細胞を含む。
【0029】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、必要とする対象における癌を阻害、軽減、または予防する際に使用するためのMYXVであり、上記MYXVは、そのM153タンパク質の活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作される。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記MYXVは、全身投与によって上記対象に投与される。いくつかの実施形態において、上記MYXVは、癌細胞の生存率を低下させるか、または癌における免疫原性細胞死を活性化する。いくつかの実施形態において、上記癌は、固形腫瘍、骨肉腫、Tripleネガティブ乳癌、または黒色腫である。いくつかの実施形態において、上記癌は、上記対象の肺、脳、肝臓、またはリンパ節に転移している。いくつかの実施形態において、上記MYXVは、免疫チェックポイントモジュレーターと共に対象に投与される。いくつかの実施形態において、上記MYXVは、対象のPBMCまたは癌細胞における少なくとも2つのサイトカインの発現を増加させるのに有効な用量およびスケジュールで投与され、ここで、少なくとも2つのサイトカインは、IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、またはTNF-αを含む。いくつかの実施形態において、上記MYXVは、癌の体積を少なくとも10%減少させるために有効な用量およびスケジュールで投与される。
【0031】
本明細書に開示されるのは、いくつかの態様において、MYXVゲノムの少なくとも一部を含む組換え核酸であり、上記MYXVゲノムの一部は、M153の発現を低下させるように改変されている。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記MYXVゲノムの一部は、MYXVゲノムの一部におけるM153遺伝子の少なくとも一部をノックアウトするように改変される。いくつかの実施形態において、上記組換え核酸は、非ウイルス分子をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、インターロイキン-12サブユニットアルファ(IL-12α)、インターロイキン-12サブユニットベータ(IL-12β)、またはデコリンである。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子はヒトタンパク質である。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子をコードする核酸は、上記MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に挿入される。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子をコードする核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子の少なくとも一部を置き換えるために挿入される。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子をコードする核酸は、任意選択でGFPを含むvMyx-hTNFαカセットを含み、上記非ウイルス分子をコードする核酸は、上記MYXVゲノムのM135R遺伝子を置き換えるか、またはこれに隣接する。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子をコードする核酸は、vMyx-hTNFαカセットを含み、上記非ウイルス分子をコードする核酸は、上記MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に挿入される。いくつかの実施形態において、上記非ウイルス分子をコードする核酸は、任意選択でdsRedを含む、hDecorin-hIL-12カセットを含み、非ウイルス分子をコードする核酸は、上記MYXVゲノムのM153遺伝子の少なくとも一部を置き換える。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子をコードする核酸は、任意選択でdsRedを含む、vMyx-hTNFα-hDecorin-hIL-12-M153KO(vMyx-Triple)カセットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の特定の実施形態の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において具体性を伴って示されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、およびその添付の図面を参照することによって得られ、その図面の説明は以下の通りである。
図1A】本明細書に開示される粘液腫ウイルス(MYXV)を生成するために使用することができる組換え核酸の構築を示す概略図である。上の画像は、vMyx-hTNFa-GFPカセットおよびM153遺伝子座を含む組換え核酸を示す。組換え核酸は、本開示のMYXV、例えば、vMyx-hTNFa-GFPウイルスのゲノムに存在することができる。真ん中の画像は、MYXVゲノム(M152およびM154)のM153遺伝子に隣接する配列に対応する隣接配列を有するhDecorin-hIL-12-dsRedカセットを含む組換え核酸を示す。この組換え核酸は、MYXVに導入して改変組換えウイルスを生成することができる組換えプラスミドに存在することができる。下の画像は、改変されたvMyx-Triple組換え核酸を示す。組換え核酸は、本開示のMYXVのゲノムに存在することができる。例えば、真ん中の画像に示されている組換えプラスミドは、MYXVに導入できる(例えば、RK13細胞にvMyx-hTNFa-GFPウイルスを感染させることによって、および細胞に組換えプラスミドをトランスフェクトすることによって)。組換えが起こり、vMyx-Triple組換え核酸が生成される可能性がある。vMyx-Triple組換え核酸を含む組換えウイルスは選択マーカー、例えば、dsRedに基づいて同定および精製することができる。
図1B】変異または導入遺伝子の挿入により改変され得る組換え核酸中のM153遺伝子座の概略図である。改変されたM153遺伝子座を有する組換え核酸は、本明細書に開示される方法を使用してMYXVゲノムに導入することができる。
図2A図2A-2Dは、組換えMYXV構築物の遺伝的制御を示すアガロースゲルの画像である。図2Aは、hDecorin-hIL-12の存在を確認するためのプライマーを使用したvMyx-Triple構築物クローンからのゲノムウイルスDNAを示す。
図2B図2A-2Dは、組換えMYXV構築物の遺伝的制御を示すアガロースゲルの画像である。図2BはhTNFaの存在を示す。
図2C図2A-2Dは、組換えMYXV構築物の遺伝的制御を示すアガロースゲルの画像である。図2Cは、遺伝子座M153における修飾、およびvMyx-Triple構築物の純度を示す。
図2D図2A-2Dは、組換えMYXV構築物の遺伝的制御を示すアガロースゲルの画像である。図2Dは、M153が存在しないこと、および組換えvMyx-Triple構築物の純度を示す。レーン1には、MYXV-LauからのDNA、またはhDec-Hil12およびhTNFの発現プラスミドが含まれる。MMは既知のサイズのDNAラダーを表す。
図3図3A-3Cは、vMyx-Tripleウイルスにおける導入遺伝子のタンパク質発現を示すウエスタンブロットの画像である。ウエスタンブロット分析は、vMyx-Tripleウイルス感染細胞の細胞溶解物と上清に対して、3つの導入遺伝子、hTNF(図3A)、hDecorin(図3B)、およびhIL-12(図3C)のタンパク質発現を確認するための特異的抗体を使用して実施した。
図4】組換えvMyx-Tripleウイルスの単一ステップ増殖分析を示すチャートである。vMyx-TripleウイルスのRK13細胞の複製能力は、親ウイルスvMyx-TNF-GFPと同様であった。MOI=1。
図5図5Aおよび5Bは、細胞生存率アッセイの結果を示すグラフである。vMyx-Tripleウイルスの細胞殺傷能力は、CT26(マウス結腸癌)およびHELA(ヒト子宮頸癌)の2つの異なる細胞株でテストした。細胞をMOI=10で48時間感染させた後、MTSアッセイを実施した。
図6】野生型MYXVまたはM153KO MYXVを用いるウイルス感染によって誘導される細胞死を示し、未処理のB16F10細胞(モック)における細胞死を示すチャートである。
図7図7Aおよび7Bは、B16F10マウス細胞においてインビトロでM153KO MYXVによって誘導される免疫原性細胞死を示すグラフである。図7Aは、感染後(p.i.)のさまざまな時間でのドキソルビシン(陽性対照)、wt MYXV、およびM153KO MYXVによって引き起こされたATP放出を示す。バーが存在しない場合、ATPのレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。図7Bは、未処理(モック)、ドキソルビシン処理(陽性対照)、M135KO MYXV感染、およびM153KO MYXV感染細胞のカルレティキュリン外部発現の定量的表示を示す。データは、各細胞を表す核染色(DAPI)に正規化されたシグナルを使用して、処理の36時間後に撮影された共焦点画像に基づいて細胞ごとの外部発現を定量化する。
図8】マウスを、未処理(対照、中央の線)、M153KO MYXVで処理(153KO、右に伸びる線)または第2の対照としてM135KO MYXVで処理した場合(M135KO、左の線)の転移性黒色腫マウスモデル(B16F10)における生存曲線を示すチャートである。日数p.i.=移植後の日数。
図9A図9A-9Dは、本開示のMYXVに感染したベロ細胞の上清中のサイトカインの濃度を示す。図9AはTNF濃度を示す。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図9B図9A-9Dは、本開示のMYXVに感染したベロ細胞の上清中のサイトカインの濃度を示す。図9Bはデコリン濃度を示す。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図9C図9A-9Dは、本開示のMYXVに感染したベロ細胞の上清中のサイトカインの濃度を示す。図9CはヒトIL-12濃度を示す。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図9D図9A-9Dは、本開示のMYXVに感染したベロ細胞の上清中のサイトカインの濃度を示す。図9Dは、マウスIL-12濃度を示す。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図10A】本開示のMYXVに感染したベロ細胞の上清への曝露後のL929細胞の生存率を示し、これは、TNF生物活性を示す。
図10B】本開示のMYXVに感染したベロ細胞の上清へのHEK Blue IL-12細胞の曝露後のレポーター遺伝子の発現を示す。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図11A】vMyx-GFPとの6日間のインキュベーション後のヒト急性骨髄性白血病患者からの細胞の生存率を示す。
図11B】vMyx-Tripleとの6日間のインキュベーション後のヒト急性骨髄性白血病患者からの細胞の生存率を示す。
図12A】感染後4時間で、10のMOIで、示されたMYXVに感染したヒトPBMCの上清中のサイトカインの濃度を示す。平均+/-SDがプロットされる。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図12B】感染後16時間で、10のMOIで、示されたMYXVに感染したヒトPBMCの上清中のサイトカインの濃度を示す。平均+/-SDがプロットされる。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図13A】示された用量のvMyx-Tripleで週に1回(QW)処理された免疫不全マウスにおける経時的なNCI-H1971(肺癌)異種移植腫瘍の体積をプロットする。
図13B】週に1回(QW)、4日ごと(Q4D)、または2日ごと(Q2D)に、示された用量のvMyx-Tripleで処理された免疫不全マウスにおける経時的なA673(肉腫)異種移植腫瘍の体積をプロットする。
図13C】週に1回(QW)、4日ごと(Q4D)、または2日ごと(Q2D)、示された用量のvMyx-Tripleで処理された免疫不全マウスにおける経時的なSJSA(肉腫)異種移植腫瘍の体積をプロットする。
図14A】SJSA-1腫瘍を有する免疫不全マウスからの血清および腫瘍組織において検出されたIL-12およびTNF-αの濃度を示す。マウスを静脈内(IV)または腫瘍内(IT)経路を介してvMyx-Tripleで処理し、処理後4時間(4H)または24時間(24H)にサンプルを収集した。平均±SDがプロットされる。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図14B】A673腫瘍を有する免疫不全マウスからの血清および腫瘍組織において検出されたIL-12およびTNF-αの濃度を示す。マウスを静脈内(IV)または腫瘍内(IT)経路を介してvMyx Tripleで処理し、治療後4時間(4H)または24時間(24H)にサンプルを収集した。平均±SDがプロットされる。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
図15】B16-F10マウス黒色腫細胞を移植され、M153およびM135がノックアウトされたTNF発現MYXV(TNF135/153KO)または両方の遺伝子の野生型コピーを有するTNF発現MYXV(TNF135/153WT)で処理されたC57BL/6マウスの経時的な腫瘍体積をプロットする。
図16図16Aおよび図16Bは、MC38マウス結腸直腸癌細胞を移植されたC57BL/6マウスの経時的な腫瘍体積および生存をプロットする。動物は、2×10FFU/用量の腫瘍内(IT)注射により、4日に1回、示された粘液腫ウイルスを4回投与して処理された。マウスTriple低は、比較的低レベルで、ヒトIL-12ではなくマウスIL-12を発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTriple高は、マウスIL-12を比較的高いレベルで発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTripleウイルスはまた、ヒトのデコリンとTNFも発現し、そしてM153遺伝子をノックアウトする。GFPはvMyx-GFPを指し、いかなるサイトカインもコードせず、インタクトなM153遺伝子を含む。腫瘍体積の測定値は週に3回記録され、図16Aにプロットされている。生存率は図16Bにプロットされている。
図17図17Aおよび図17Bは、B16-F10マウス黒色腫細胞を移植されたC57BL/6マウスの経時的な腫瘍体積および生存をプロットする。動物は、示された粘液腫ウイルスで、1日目および8日目に2×10FFU/用量の腫瘍内注射を介して処理された。マウスTriple低は、比較的低レベルで、ヒトIL-12ではなくマウスIL-12を発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTriple高は、マウスIL-12を比較的高いレベルで発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTripleウイルスはまた、ヒトのデコリンおよびTNFも発現し、M153遺伝子がノックアウトされている。GFPはvMyx-GFPを指し、これはサイトカインをいずれもコードせず、インタクトなM153遺伝子を含む。腫瘍体積の測定値は週に3回記録され、図17Aにプロットされる。生存率は図17Bにプロットされる。
図18A】B16-F10マウス黒色腫細胞を移植され、比較的高レベルのマウスIL-12を発現し、ヒトデコリンとヒトTNFも発現し、M153遺伝子をノックアウトしているMYXVであるマウスTriple高の示された用量で処理されたC57BL/6マウスの経時的な腫瘍体積をプロットする。ウイルスは腫瘍内(IT)または静脈内(IV)に投与された。
図18B】CT26マウス結腸直腸癌細胞を移植され、指示された用量のマウスTriple高で処理されたBalb/cマウスの経時的な腫瘍体積をプロットする。ウイルスは腫瘍内(IT)または静脈内(IV)に投与された。
図19】K7M2肉腫細胞を移植されたBalb/cマウスの生存曲線を示す。マウスの群は、2×10FFU/用量のvMyx-マウスTriple(低IL-12)の眼窩後洞への注射、および/または10mg/kgの抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体の腹腔内注射によって処理された。
図20A】MC38マウス結腸直腸癌細胞を移植されたC57BL/6マウスの経時的な腫瘍体積をプロットする。動物の群は、ランダム化後1日目と8日目に2×10FFU/用量のvMyx-マウスTriple(低IL-12)の腫瘍内注射を介して、および/または10mg/kgの抗PD-1抗体を用いて、4日に1回の4回の投与で処理された。実線で結ばれた円はビヒクル処理、四角はvMyx-マウスTripleのみ、破線の円は抗PD-1、三角形はvMyx-マウスTripleと抗PD-1の組み合わせである。
図20B図20Aの群の生存をプロットする。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本明細書に記載されているのは、腫瘍溶解性ウイルス、具体的には、腫瘍溶解性粘液腫ウイルスなどの腫瘍溶解性ポックスウイルスである。粘液腫ウイルスは、本明細書ではMYXVまたはvMyxと呼ぶことができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、M153遺伝子またはタンパク質の発現を不活性化、破壊、または減衰するように操作される活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作され、例えば、M153遺伝子またはタンパク質の活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作される。本明細書に記載の粘液腫ウイルスへの改変は、改変されていないMYXV、インタクトな野生型M153遺伝子を含むMYXV、または別の遺伝子座で改変されたMYXVと比較した場合、MYXVの腫瘍溶解活性を予想外に改善した。M153遺伝子座での改変に加えて、MYXVはまた、TNFα、IL-12、および/またはデコリンなどの非ウイルス分子をコードする1つ以上の導入遺伝子を含み、腫瘍溶解活性をさらに高め、抗腫瘍免疫応答を増加させ、またはMYXVの有害な副作用を減少させることもできる。
【0035】
いくつかの実施形態は、MYXVなどの三重(triple)導入遺伝子で武装した腫瘍溶解性ウイルス、および転移性癌などの癌の治療のためのそれらの使用方法に関する。いくつかの実施形態は、3つのヒト導入遺伝子である、肺または身体の他の部分に転移する癌の治療の有効性を改善するヒトサイトカイン(hTNF)、抗腫瘍免疫応答を増幅することができるhIL-12、および腫瘍床内のTGF-βシグナル伝達を遮断するヒトデコリン(hDecorin)を発現する組換えMYXV構築物を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるウイルスは、粘液腫ウイルスM153遺伝子またはその少なくとも一部のノックアウト(例えば、欠失または破壊)を有し、これは、いくつかの実施形態において、これらのウイルス構築物を用いる治療後の抗腫瘍免疫応答も改善する。いくつかの実施形態は、MYXVをコードするウイルス三重導入遺伝子構築物などの核酸構築物に関する。いくつかの実施形態において、MYXVに対する導入遺伝子および他の改変は、癌治療の有効性を改善する。
【0036】
定義
本明細書で使用されるセクション見出しは、組織的な目的のためだけであり、記載された主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0037】
以下の用語の説明は、特定の実施形態および例を説明することのみを目的として提供されており、限定することを意図するものではない。
【0038】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。
【0039】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連するリストされた項目の1つ以上の任意のおよびすべての可能な組み合わせ、ならびに代替(「または」)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「1以上」または少なくとも1とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上、任意の数までを意味し得る。
【0041】
「有効量」または「治療有効量」は、治療的および/または有益な効果であり得る所望の効果を生み出すのに十分な本発明の化合物または組成物の量を指す。
【0042】
「それを必要とする対象」または「必要とする対象」は、癌などの疾患または状態を有することが知られているか、または有することが疑われる対象である。
【0043】
本明細書で使用される場合、疾患を「阻害する」または「治療する」という用語は、疾患または状態の完全な発症を阻害することを指す。「治療」とは、疾患または病的状態が発症し始めた後、その疾患または病的状態の兆候または症状を改善する治療的介入を指す。疾患または病的状態に関連する「改善する」という用語は、治療の観察可能で有益なあらゆる効果を指す。有益な効果は、例えば、感受性のある対象における疾患の臨床症状の発症の遅延、疾患の一部またはすべての臨床症状の重症度の低下、転移などの疾患の進行の遅延、対象の全体的な健康または幸福の改善によって、あるいは、特定の疾患に特有である当該技術分野でよく知られている他のパラメーターによって証明することができる。「予防的」治療は、病状、例えば、転移性癌を発症するリスクを低減する目的で、疾患の兆候を示さないか、または初期の兆候のみを示す対象に投与される治療である。
【0044】
MYXVは、不十分な生来の抗ウイルス応答を有する細胞に感染する可能性がある。本明細書で使用される「不十分な生来の抗ウイルス応答」を有することは、ウイルスに曝露されたとき、またはウイルスに侵入されたときに、ウイルス複製の阻害、インターフェロンの産生、インターフェロン応答経路の誘導、およびアポトーシスを含み得る、抗ウイルス防御メカニズムを誘導しない。この用語は、正常細胞、例えば、非感染細胞または非癌細胞と比較して、ウイルスへの曝露またはウイルスによる感染時に、減少したまたは不十分な生来の抗ウイルス応答を有する、癌細胞などの細胞を含む。これには、インターフェロンに反応しない細胞、およびアポトーシス反応の低下または不十分またはアポトーシス経路の誘導を有する細胞が含まれる。欠乏は、感染症、遺伝的欠陥、または環境ストレスを含むさまざまな原因による可能性がある。しかしながら、欠乏が既存の感染によって引き起こされる場合、MYXVによる重感染は除外され得、当業者はそのような例を容易に特定することができることが理解される。当業者は、任意の所定の細胞型が不十分な生来の抗ウイルス応答を有し、したがってMYXVによる感染に対して感受性であるかどうかを過度の実験なしに容易に決定することができる。したがって、特定の実施形態において、MYXVは、不十分な生来の抗ウイルス応答を有する細胞に感染することができる。特定の実施形態において、細胞は、インターフェロンに対して応答しない。特定の実施形態において、細胞は哺乳動物の癌細胞である。特定の実施形態において、細胞は、ヒト固形腫瘍細胞を含むヒト癌細胞である。特定の実施形態において、不十分な生来の抗ウイルス応答を有する細胞は、癌細胞を含む。
【0045】
操作された粘液腫ウイルス
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、粘液腫ウイルス(MYXV)である。MYXVは、MYXVの野生型株を含み得るか、またはMYXVの遺伝子改変株を含み得る。いくつかの実施形態において、MYXVはLausanne株を含む。いくつかの実施形態において、MYXVのLausanne株は、2019年7月11日に公開されたGenBankアクセッション番号AF170726.2を含む。
【0046】
いくつかの場合において、MYXVは、Sylvilagus brasiliensis.の中で移動する南米のMYXV株を含む。いくつかの場合において、MYXVは、Sylvilagus bachmaniを移動するカリフォルニアのMYXV株を含む。いくつかの場合において、MYXVは、遺伝子M009L、M036L、M135R、およびM148Rの改変を含む減衰スペイン野外株(例えば、2019年7月11日に公開されたGenBankアクセッション番号EU552530)である6918を含む。いくつかの場合において、MYXVは6918VP60-T2(2019年7月11日に公開されたGenBankアクセッション番号EU552531)を含む。いくつかの場合において、MYXVは標準実験室株(SLS)を含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、本明細書に記載されるような核酸構築物またはMYXVゲノムを含む。
【0047】
いくつかの場合において、MYXVは、このような開示のために参照により組み込まれる、Cameron,et al.,「The complete DNA sequence of Myxoma Virus」,Virology 264:298-318(1999)に開示されている配列に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、例えば、少なく95%から98%の間、95%から99%の間であって、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を含む、核酸配列同一性を含む。いくつかの場合において、MYXVは、Cameron、et al.,「The complete DNA sequence of Myxoma Virus」,Virology 264:298-318(1999)に開示されている配列を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、MYXVは、ウイルス遺伝子またはタンパク質の活性または発現レベルを不活性化または減衰するように操作される。いくつかの実施形態において、ウイルス遺伝子またはタンパク質は、M153である。いくつかの実施形態において、ウイルス遺伝子またはタンパク質の不活性化または減衰された活性または発現レベルは、野生型MYXVに関して、あるいはウイルス遺伝子またはタンパク質の不活性化または減衰された活性もしくは発現レベルを有さないMYXVに関して、例えば、野生型M153遺伝子を含み、および/または野生型M153タンパク質を発現するMYXVに関して、増強された抗癌活性を示すMYXVをもたらす。いくつかの実施形態において、MYXVは、1つより多くのウイルス遺伝子またはタンパク質の活性または発現レベルを不活性化または減衰するように操作される。
【0049】
いくつかの実施形態において、MYXVは、非ウイルス分子、例えば、サイトカインをコードする導入遺伝子をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、MYXVは、本明細書に記載される導入遺伝子などの導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、腫瘍壊死因子(TNF、例えば、TNFα)、インターロイキン-12(IL-12)、またはデコリンをコードする。いくつかの実施形態において、MYXVは、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の導入遺伝子は、MYXVゲノムにノックインされる。いくつかの実施形態において、導入遺伝子は、MYXVゲノム中の遺伝子を破壊し、例えば、導入遺伝子は、MYXVゲノム中の遺伝子内に挿入されるか、またはその遺伝子の一部を置換し、それによって、遺伝子および/またはそれがコードするタンパク質の発現を破壊する。このような破壊は、ノックアウト(KO)と呼ばれ得る。
【0050】
MYXVは、MYXVの抗癌効果を増強する任意の非ウイルス分子を生成するように改変され得る(例えば、任意の導入遺伝子を有するように改変され得る)。このような非ウイルス分子は、アポトーシスの誘発、または感染細胞を免疫破壊に標的化することに関与することができ、例えば、インターフェロンへの応答を刺激する(例えば、インターフェロンへの応答の欠如を修復する)か、または病原体関連分子パターン、例えば細菌の細胞表面抗原などの抗体応答を刺激する細胞表面マーカーの発現を生じる非ウイルス分子である。MYXVはまた、新生物細胞または癌細胞の増殖および成長を遮断することに関与する非ウイルス分子を生成するように改変することもでき、それによって細胞の分裂を防ぐ。いくつかの実施形態において、MYXVは、化学療法剤の合成に関与する分子などの治療用非ウイルス分子を生成するように改変されるか、または阻害もしくは殺傷される細胞が由来する特定の種の細胞、例えば、ヒト細胞において複製レベルが増加するように改変され得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、MYXVは、1つ、2つ、または3つの別個の非ウイルス分子、例えば、ヒト導入遺伝子(例えば、ヒトTNF、ヒトデコリンおよびヒトIL-12)をコードまたは発現する組換え構築物を含む。いくつかの実施形態において、組換え構築物は、1つ以上のレポータータグ、例えば、eGFPおよびdsRedなどの蛍光タンパク質をさらにコードまたは発現する。
【0052】
いくつかの実施形態において、MYXVは、そのM153遺伝子またはタンパク質の活性または発現レベルを減衰するように遺伝子操作され、例えば、ウイルスM153遺伝子の破壊を含む(M153ノックアウト:M153KO)。いくつかの実施形態において、M153の活性または発現レベルを減衰することは、ウイルスに感染した癌細胞に対するMHC依存性の抗腫瘍免疫応答を改善する。いくつかの実施形態において、MYXVは、癌の治療における使用のための腫瘍溶解性ウイルスを含む。いくつかの実施形態は、M153KOバックボーンを、本明細書に開示される導入遺伝子の免疫増強特性と組み合わせて、MYXVの腫瘍溶解特性を増強する。
【0053】
いくつかの実施形態において、MYXVは、TNF(例えば、TNFα)導入遺伝子、IL-12導入遺伝子、デコリン導入遺伝子、またはそれらのうちの2つ以上の任意の組み合わせをコードする。いくつかの実施形態において、MYXVは、TNF(例えば、TNFα)導入遺伝子、IL-12導入遺伝子、およびデコリン導入遺伝子を含む。いくつかのそのような実施形態において、そのようなMYXVを対象に投与すると、TNFは、抗腫瘍免疫系の先天性および後天性のアームを活性化およびジャンプスタートさせ、バイスタンダー傍分泌様の方法で癌細胞死を促進する。いくつかの実施形態において、IL-12は、生じる抗癌の自然免疫応答および適応免疫応答を増幅する。いくつかの実施形態において、デコリンは、TGF-βによって媒介される局所免疫抑制作用を妨害し、したがって、TNFとIL-12の両方の作用を増強し、そして抗癌免疫応答を促進する。いくつかの実施形態において、3つの導入遺伝子の相乗作用に加えて、腫瘍微小環境(TME)におけるMYXVの効果が、腫瘍溶解性MYXVベクターの免疫療法の可能性を高める。いくつかの実施形態において、非ウイルス分子(hTNF、hIL-12、および/またはhDecorin)をコードするヒト導入遺伝子のMYXVゲノムへの追加は、腫瘍微小環境(TME)において強固な抗腫瘍免疫応答を誘発するMYXVの能力を改善する。
【0054】
いくつかの実施形態において、MYXVは、感染状態の検出の容易さを高めるように改変される。例えば、MYXVは、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡、またはラジオイメージングによって容易に検出できるマーカーを発現するように遺伝子改変され得る。このマーカーは、比色反応または放射性標識反応に関与する発現蛍光タンパク質または発現酵素であり得る。いくつかの実施形態において、マーカーは、試験されている細胞の特定の機能を妨害または阻害する遺伝子産物を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、蛍光タンパク質を含む。例示的な蛍光タンパク質には、TagBFP、Azurite、Sirus、またはSapphireなどの青色/UVタンパク質、ECFP、セルリアン(cerulean)、またはmTurquoiseなどのシアンタンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Emerald、mUKG、mWasabi、またはCloverなどの緑色タンパク質、EYFP、シトリン(citrine)、ヴィーナス(venus)、またはSYFP2などの黄色のタンパク質、単量体Kusabira-Orange、mKO2、またはmOrangeなどのオレンジ色タンパク質、dsRed、mRaspberrym mCherry、mStrawberry、mTangerine、tdTomato、mApple、またはmRubyなどの赤色タンパク質、PA-GFP、PAmCherry1、PATagRFPなどの光活性化タンパク質、ならびにDropnaなどの光スイッチ可能なタンパク質が含まれる。いくつかの実施形態において、MYXVは、1つより多くの蛍光タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、操作されたMYXVは、蛍光タンパク質をコードしない。
【0056】
いくつかの実施形態において、MYXVは、vMyx-hTNFa-GFP-hDecorin-hIL-12-dsRed-M153KO(vMyx-TripleまたはvMyx-Triple-レッド)構築物を含み、そしてvMyx-Tripleウイルスである。いくつかの実施形態において、MYXVは、vMyx-hTNFa-GFP-hDecorin-hIL-12-M153KO(vMyx-Triple-ホワイト)構築物を含み、そしてvMyx-Triple-ホワイトウイルスである。
【0057】
いくつかの実施形態において、MYXVは、ウサギ細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子での、またはそれに隣接する修飾を含む。いくつかの場合において、ウサギ細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子は、M11L、M063、M135R、M136R、M-T2、M-T4、M-T5、またはM-T7を含む。いくつかの場合において、ウサギ細胞向性に関連する1つ以上の遺伝子は、M135R、M136R、またはそれらの組み合わせを含む。
【0058】
MYXVは、当該技術分野において公知である標準的な技術を使用して調製することができる。例えば、ウイルスは、培養ウサギ細胞、または不死化許容ヒトまたは霊長類細胞に、使用されるMYXV株を感染させることによって調製され、ウイルスが培養細胞内で複製して細胞表面を破壊し、それによってウイルス粒子を放出して採取するための当該技術分野で知られている標準的な方法によって、放出できるように感染を進行させることによって調製することができる。一旦採取されると、ウイルス力価は、ウサギ細胞のコンフルエントなローンを感染させ、プラークアッセイを実行することによって決定され得る。
【0059】
M153の改変
M153遺伝子産物は、多様な細胞受容体およびタンパク質のダウンレギュレーション、例えば、ヒト細胞におけるMHCクラスIおよびCD4の分解に関与し得るE3-ユビキチンリガーゼである。いくつかの実施形態において、本開示のMYXVは、M153タンパク質の活性および/または発現レベルの減衰を有する。いくつかの実施形態において、M153タンパク質の活性および/または発現レベルの減衰は、免疫エピトープの提示、例えば、ウイルスおよび/または癌免疫ペプチドのMHC依存性提示を増強することができる。感染した癌細胞による免疫エピトープの提示の増強は、抗癌CD8+T細胞応答などの抗癌T細胞応答を含むより強い免疫応答を誘発できる。いくつかの実施形態において、M153タンパク質の活性および/または発現レベルの減衰は、MHC-IによるM153KOウイルス感染腫瘍細胞からの直接抗原提示を増加させ、MYXVによって媒介される免疫活性化を増強する。
【0060】
いくつかの実施形態において、MYXVは、M153遺伝子の改変を含む。いくつかの場合において、この改変は、M153遺伝子によってコードされるタンパク質の活性または発現レベルを減衰させる(例えば、M153遺伝子によってコードされるタンパク質の機能を損なう)変異である。
【0061】
いくつかの場合において、変異は、欠失、例えば、M153遺伝子によってコードされるタンパク質の活性または発現レベルを減衰する欠失である。いくつかの実施形態において、この変異は、M153遺伝子の核酸配列の少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の欠失である。いくつかの実施形態において、この変異は、M153遺伝子全体の欠失である。いくつかの場合において、この改変は部分的欠失であり、例えば、M153遺伝子の核酸配列の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%の欠失である。いくつかの実施形態において、この欠失は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも7個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも100個、少なくとも200個、または少なくとも300個の核酸の欠失である。いくつかの実施形態において、欠失は、プロモーター(例えば、野生型MYXVにおいてM153の発現を駆動するプロモーター)を破壊する。いくつかの実施形態において、欠失は、終止コドン、例えば、完全長のM153転写物および/またはタンパク質の発現を妨げる時期尚早の終止コドンをM153遺伝子配列に導入する。
【0062】
いくつかの場合において、変異は挿入、例えば、M153遺伝子によってコードされるタンパク質の活性または発現レベルを減衰する挿入である。いくつかの実施形態において、挿入は、非ウイルス分子をコードする導入遺伝子、例えば、TNF、デコリン、IL-12、またはそれらの組み合わせをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は2つの導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は3つの導入遺伝子を含む。導入遺伝子は、ウイルスのM153遺伝子を破壊し(例えば、中断し)、M153転写物および/またはタンパク質の活性または発現レベルを減衰することができる。いくつかの実施形態において、挿入は、TNFをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、IL-12をコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、デコリンをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、TNFをコードする導入遺伝子およびIL-12をコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、TNFをコードする導入遺伝子およびデコリンをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、IL-12をコードする導入遺伝子およびデコリンをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、TNFをコードする導入遺伝子、IL-12をコードする導入遺伝子、およびデコリンをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、挿入は、1つ以上のプロモーターを含む。いくつかの実施形態において、挿入は、プロモーター(例えば、野生型MYXVにおいてM153の発現を駆動するプロモーター)を破壊する。いくつかの実施形態において、M153遺伝子破壊を導入遺伝子発現と組み合わせることは、得られる組換えウイルスの抗腫瘍特性を改善する。
【0063】
いくつかの実施形態において、挿入は、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも7つ、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも100個、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、少なくとも1000個、少なくとも1500個、または少なくとも2000個の核酸の挿入である。
【0064】
いくつかの実施形態において、挿入は、終止コドン、例えば、完全長のM153転写物および/またはタンパク質の発現を妨げる時期尚早の終止コドンをM153遺伝子配列に導入する。いくつかの実施形態において、挿入は、M153遺伝子配列のリーディングフレームを変更し、それによって、M153転写物および/またはタンパク質の発現を破壊する。
【0065】
いくつかの場合において、変異は、置換、例えば、M153遺伝子によってコードされるタンパク質の活性または発現レベルを減衰する置換である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも7つ、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個の核酸が置換されている。いくつかの実施形態において、置換は、終止コドン、例えば、完全長のM153転写物および/またはタンパク質の発現を妨げる時期尚早の終止コドンをM153遺伝子配列に導入する。いくつかの実施形態において、置換は、プロモーター(例えば、野生型MYXVにおいてM153の発現を駆動するプロモーター)を破壊する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される改変または変異は、M153遺伝子および/またはタンパク質の活性レベルを、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%減衰させる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される改変または変異は、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、M153遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルを、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%減衰させる。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるMYXVは、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%減衰されるM153遺伝子および/またはタンパク質の活性レベルを有する。
【0069】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるMYXVは、野生型MYXV、または機能的な野生型M153をコードするMYXVと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%減衰されるM153遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルを有する。
【0070】
TNF
いくつかの実施形態において、MYXVは、非ウイルス分子を含み(例えば、コードし)、例えば、腫瘍壊死因子(TNF)タンパク質をコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、TNFタンパク質は、TNFαタンパク質である。いくつかの実施形態において、TNFαタンパク質は、ヒトTNFαタンパク質である。いくつかの実施形態において、TNFαタンパク質は可溶性である。いくつかの実施形態において、TNFαタンパク質は、膜または表面に結合している。いくつかの実施形態において、TNFαタンパク質は、抗腫瘍免疫細胞を活性化するか、または癌細胞死を誘導することによって、MYXVの抗癌活性を増強する。
【0071】
いくつかの実施形態において、TNFαは、MYXVゲノムのM135R遺伝子を置換するか、またはそれに隣接する遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、TNFα遺伝子は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に挿入される。いくつかの実施形態において、TNFα遺伝子は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間の遺伝子間領域に挿入される。いくつかの実施形態において、TNFαは、MYXVゲノムのM153遺伝子を置換または破壊する遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、TNFα遺伝子は、MYXVゲノムのM153遺伝子を置換または破壊する。
【0072】
いくつかの実施形態において、TNFα遺伝子の発現は、ポックスウイルス合成初期/後期(sE/L)プロモーターなどのプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、TNFα遺伝子の発現は、内部リボソーム侵入部位(IRES)によって駆動される。TNFは、先天性炎症性免疫応答の一部であるサイトカインである。いくつかの実施形態において、TNFは、後天的な(例えば、適応性の)免疫応答の増幅に関与する。TNFは細胞表面免疫リガンドとして発現することができ、例えば、骨髄系の細胞において高レベルで発現している、可溶性リガンドの切断と放出を触媒する変換タンパク質分解酵素(TACEなど)を発現する特定の細胞で産生されると、切断された可溶性三量体サイトカインとして分泌されることもあり得る。1つのTNFエフェクター経路は、TNF受容体-1(TNFR1)経路を通しての細胞死の誘導である。いくつかの実施形態において、TNFによるTNFR1経路の誘導は、アポトーシスまたはネクロトーシスをもたらす。いくつかの実施形態において、TNFは、例えば、抗腫瘍CD8T細胞およびNK細胞を活性化することによって、自然免疫応答および適応免疫応答を活性化する。
【0073】
可溶性TNFの全身投与が強力な抗腫瘍薬としてヒトにおいて機能し得るという初期の希望にもかかわらず、いくつかの臨床試験は、分泌されたサイトカインが可溶性リガンドで全身的に治療された患者において重度の全身毒性を引き起こすことを示した。さらに、全身性TNF治療は、前臨床的に報告された患者に劇的な抗腫瘍効果を誘発しなかった。ウイルス由来のTNFの発現、例えば、TNFの細胞表面膜形態は、全身性のTNFを介した有害な毒性作用を最小限に抑えながら、腫瘍微小環境においてより高度なバイスタンダー細胞殺傷を誘発することによって局所癌細胞死を改善し、また同じ腫瘍床内に存在する様々なクラスの免疫細胞を刺激し得る。
【0074】
いくつかの場合において、TNFタンパク質は、2019年7月3日に公開されたUniProtKB-P01375(エントリーバージョン247)に示される配列に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、2019年7月3日に公開されたUniProtKB-P01375(エントリーバージョン247)に示されている配列に対して、95%から98%の間、または95%から99%の間の配列同一性を含む。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、2019年7月3日に公開されたUniProtKB-P01375(エントリーバージョン247)に示されている配列に対して、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態において、TNFタンパク質は、2019年7月3日に公開されたUniProtKB-P01375(エントリーバージョン247)に示されている配列を含む。
【0075】
いくつかの場合において、TNFタンパク質は、UniProtKB-P01375の残基77~233に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、UniProtKB-P01375の残基77~233に対して95%から98%の間、または95%から99%の間の配列同一性を含む。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、UniProtKB-P01375の残基77-233に対して約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態において、TNFタンパク質は、UniProtKB-P01375の残基77~233を含む。
【0076】
いくつかの場合において、TNFタンパク質は、配列番号12または配列番号24に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む遺伝子によってコードされる。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、配列番号12または配列番号24に対して95%から98%の間、または95%から99%の間の配列同一性を含む遺伝子によってコードされる。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、配列番号12または配列番号24に対して、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を含む遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、TNFタンパク質は、配列番号12または配列番号24を含むか、またはそれらからなる遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、TNFは、配列番号12または配列番号24の配列を含む遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、TNFをコードする遺伝子は、配列番号12または配列番号24の配列と、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列、または上述のパーセンテージの任意の2つによって規定される一定のパーセンテージの範囲を含む。
【0077】
いくつかの場合において、TNFタンパク質は、配列番号31、または配列番号31の残基77~233に対して、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、配列番号31、または配列番号31の残基77~233に対して95%から98%の間の配列同一性を含むか、または95%から99%の間の配列同一性を含む。いくつかの場合において、TNFタンパク質は、配列番号31、または配列番号31の残基77~233に対して、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態において、TNFタンパク質は、配列番号31または配列番号31の残基77~233を含む。
【0078】
IL-12
いくつかの実施形態において、MYXVは、非ウイルス分子を含み(例えば、コードし)、例えば、インターロイキン-12(IL-12)タンパク質をコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質は、ヒトIL-12タンパク質である。いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質は可溶性である。いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質は、膜または表面に結合している。いくつかの実施形態において、IL-12タンパク質は、免疫細胞の分化を促進すること、または免疫細胞の細胞毒性を誘発することによって、MYXVの抗癌活性をさらに増強する。
【0079】
いくつかの実施形態において、IL-12は、IL12αサブユニット(p35サブユニット)を含む。いくつかの実施形態において、IL-12αサブユニットは、IL-12α遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、IL-12α遺伝子は、ヒトIL-12α遺伝子である。いくつかの実施形態において、IL-12α遺伝子は、IRESによって駆動される。いくつかの実施形態において、IL-12α遺伝子は、sE/Lプロモーターなどのプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、IL-12α遺伝子は、M153遺伝子を置換または破壊する。いくつかの実施形態において、IL-12α遺伝子は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間の遺伝子間領域に挿入される。
【0080】
いくつかの実施形態において、IL-12は、IL12β(p40)サブユニットを含む。いくつかの実施形態において、IL-12βサブユニットは、IL-12β遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、IL-12β遺伝子は、ヒトIL-12β遺伝子である。いくつかの実施形態において、IL-12β遺伝子は、IRESによって駆動される。いくつかの実施形態において、IL-12β遺伝子は、sE/Lプロモーターなどのプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、IL-12β遺伝子は、MYXV M153遺伝子を置換または破壊する。いくつかの実施形態において、IL-12β遺伝子は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間の遺伝子間領域に挿入される。
【0081】
いくつかの実施形態において、IL-12は、IL12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットを含む。いくつかの実施形態において、IL12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットは共有結合している。いくつかの実施形態において、IL12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットは共有結合されていない。いくつかの実施形態において、IL12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットは、1つの転写物として発現される。いくつかの実施形態において、IL12αサブユニットおよびIL-12βサブユニットは、1つのポリペプチドとして、例えば、2つのサブユニットを結合するペプチドリンカーと共に発現される。リンカー配列は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50アミノ酸残基の長さであり得る。リンカーは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10アミノ酸残基の長さであり得る。リンカーは、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、最大10、最大15、最大20、最大25、最大30、最大40、または最大50アミノ酸残基の長さであり得る。柔軟なリンカーは、グリシン残基およびセリン残基のストレッチを含む配列を持つことができる。グリシン残基およびセリン残基のサイズが小さいため、柔軟性があり、接続された機能ドメインの移動が可能になる。セリンまたはスレオニンの取り込みは、水分子と水素結合を形成することによって水溶液中のリンカーの安定性を維持し、それによってリンカーとタンパク質部分の間の好ましくない相互作用を減らすことができる。柔軟なリンカーには、柔軟性を維持するためのスレオニンやアラニンなどの追加のアミノ酸、ならびに溶解性を向上させるためのリジンおよびグルタミンなどの極性アミノ酸を含めることもできる。リジッドなリンカーは、例えば、アルファヘリックス構造を有することができる。アルファヘリックスリジッドリンカーは、タンパク質ドメイン間のスペーサーとして機能することができる。リンカーは、配列番号33~43の配列のいずれか、またはその繰り返しを含むことができる。配列番号33~38および43は、柔軟なリンカー配列の例を提供する。配列番号39~42は、リジッドなリンカー配列の例を提供する。
【0082】
いくつかの実施形態において、MYXVは、比較的低レベルのIL-12を発現する。IL-12の比較的低い発現は、例えば、IL-12サブユニットをコードする配列間のIRES配列の使用によって達成することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、比較的高レベルのIL-12を発現する。IL-12の比較的高い発現は、例えば、単一のポリペプチドにおいてIL-12のサブユニットを結合する適切なリンカー、例えば、配列番号43のリンカーなどのエラスチンリンカーの使用によって達成することができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、IL-12発現のレベルは、実施例6のアッセイによって決定され得る。例えば、ベロ細胞は、1のMOIで本開示のMYXVに感染され得、感染から24時間後、上清は採取され得、ELISAでIL-12の量を測定できる。いくつかの実施形態において、低レベルのIL-12発現は、実施例6のアッセイによって決定されるように、50ng/mL未満、40ng/mL未満、30ng/mL未満、20ng/mL未満、10ng/mL未満、または5ng/mL未満のIL-12であり得る。いくつかの実施形態において、高レベルのIL-12発現は、実施例6のアッセイによって決定されるように、20ng/mLを超える、30ng/mLを超える、40ng/mLを超える、50ng/mLを超える、60ng/mLを超える、70ng/mLを超える、80ng/mLを超える、90ng/mLを超える、100ng/mLを超える、または150ng/mLを超えるIL-12であり得る。いくつかの実施形態において、高レベルのIL-12発現は、20ng/mLを超えるIL-12であり、および低レベルのIL-12発現は、20ng/mL未満のIL-12であり得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、IL-12サブユニットの一方または両方を切り詰めることができる。短縮型サブユニットを有するIL-12の例は、配列番号50に提供され、これは、マウスIL-12B(配列番号51)、エラスチンリンカー(配列番号43)、および短縮型マウスIL-12A(配列番号52)を含む。
【0085】
IL-12はサイトカインである。いくつかの実施形態において、IL-12は、Tヘルパー1型(Th1)分化を促進し、ナチュラルキラー(NK)細胞および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の細胞傷害性を増強する。いくつかの実施形態において、このIL-12の作用は、抗癌免疫応答を促進するために、自然免疫および適応免疫の要素間の相互接続の改善を作り出す。いくつかの実施形態において、これが自然免疫および適応免疫を橋渡しすることに起因して、IL-12は、MYXVの抗腫瘍効果を増強する。いくつかの実施形態において、IL-112は、IFN-γ(抗癌防御のメカニズムを調整するサイトカイン)の産生を強力に刺激し、それによって、MYXVの抗腫瘍効果を増強する。
【0086】
組換えIL-12サイトカイン療法の全身送達の臨床試験は、毒性事象、全身投与されたIL-12の一過性の性質、および腫瘍誘発性免疫抑制のために、癌患者において満足のいく結果を誘発しなかった。それにもかかわらず、腫瘍微小環境(TME)内で局所的にIL-12を発現するウイルスは、強力な抗腫瘍効果をもたらす可能性がある。いくつかの実施形態において、導入遺伝子がTME内で局所的に発現されるように、腫瘍床に制限される腫瘍溶解性ウイルスからのIL-12の発現は、このサイトカインの全身送達に関連する毒性効果を低減する。したがって、いくつかの実施形態において、IL-12の2つのサブユニットの共発現は、異なるタイプの癌に対する武装MYXVによって誘導される抗腫瘍免疫を改善する。
【0087】
いくつかの場合において、IL12αサブユニットは、配列番号28、配列番号28の残基35~253、または配列番号28の残基57~253に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。いくつかの場合において、IL12αサブユニットは、配列番号28、または配列番号28の残基35~253、または配列番号28の残基57~253に対して95%~98%、または95%~99%の配列同一性を含む。いくつかの場合において、IL12αサブユニットは、配列番号28、配列番号28の残基35~253、または配列番号28の残基57~253に対して、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態において、IL12αサブユニットは、配列番号28、配列番号28の残基35~253、または配列番号28の残基57~253を含む。
【0088】
いくつかの場合において、IL-12βサブユニットは、配列番号29に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性、または配列番号29の残基23~328を含む。いくつかの場合において、IL-12βサブユニットは、配列番号29に対して95%~98%の間、または95%~99%の間の配列同一性、または配列番号29の残基23~328を含む。いくつかの場合において、IL-12βサブユニットは、配列番号29に対して約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性、または配列番号29の残基23~328を含む。いくつかの実施形態において、IL-12βサブユニットは、配列番号29または配列番号29の残基23~328を含む。
【0089】
デコリン
いくつかの実施形態において、MYXVは、非ウイルス分子を含み(例えば、コードし)、例えば、デコリンをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、デコリンタンパク質は、ヒトデコリンタンパク質である。いくつかの実施形態において、デコリンタンパク質は可溶性である。いくつかの実施形態において、デコリンタンパク質は、膜または表面に結合している。いくつかの実施形態において、デコリンタンパク質は、TGF-βシグナル伝達を遮断または減少させることにより、MYXVの抗癌活性を増強する。
【0090】
いくつかの実施形態において、デコリンタンパク質は、デコリン遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、デコリン遺伝子は、ヒトデコリン遺伝子である。いくつかの実施形態において、デコリン遺伝子は、IRESによって駆動される。いくつかの実施形態において、デコリン遺伝子は、sE/Lプロモーターなどのプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、デコリン遺伝子は、M153遺伝子を置換または破壊する。いくつかの実施形態において、デコリン遺伝子は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間の遺伝子間領域に挿入される。
【0091】
デコリンは、間質組織および上皮細胞内に存在し、機能する細胞外マトリックスプロテオグリカンファミリーのメンバーである。いくつかの実施形態において、デコリンは、細胞増殖、生存、転移および/または血管新生に関与するシグナル伝達分子を直接的または間接的に標的化することによって、異なるタイプの癌の生物学に影響を与える。いくつかの実施形態において、デコリンは、TGF-β誘導性シグナル伝達を遮断する。いくつかの実施形態において、TGF-βは、いくつかの腫瘍微小環境(TME)における免疫抑制に寄与するサイトカインである。いくつかの場合において、TGF-βは、他の場合では、癌細胞を認識して攻撃する可能性があるエフェクターT細胞を、調節(サプレッサー)T細胞に変換し、この調節T細胞は、代わりに、癌細胞を認識および排除するために必要な生来の炎症反応および獲得免疫経路をオフにする。複数の種類の癌では、TGF-βシグナル伝達経路の一部が変異しており、このサイトカインはもはや細胞標的の少なくとも一部を制御していない。これらの癌細胞は増殖し、TGF-βの内因性産生を増加させる可能性があり、これは周囲の間質細胞、免疫細胞、内皮および平滑筋に作用して、癌組織内の局所免疫抑制および腫瘍床血管新生を引き起こし、これは、癌をより侵襲的にさえする。したがって、いくつかの実施形態において、デコリンを発現する腫瘍溶解性MYXVベクターは、TME内で直接TGF-βを遮断し、それによって、デコリンを発現しないMYXVよりも強い抗腫瘍免疫応答を誘導する。
【0092】
さらに、デコリンは、腫瘍細胞の増殖および成長を阻害することができる。さまざまな固形腫瘍へのデコリンのウイルス送達は、腫瘍形成を直接打ち消す可能性がある。いくつかの実施形態において、デコリンは、TGF-βの局所的な過剰発現によって保護される少なくともいくつかのタイプの癌の抗癌標的として使用される。
【0093】
いくつかの実施形態において、デコリンは、配列番号25の配列を含む遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、デコリンをコードする遺伝子は、配列番号25の配列と70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるか、または上述のパーセンテージのいずれか2つで定義されたパーセンテージの範囲で同一である配列を含む。いくつかの場合において、デコリンは、配列番号25と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む遺伝子によってコードされる。いくつかの場合において、デコリンは、配列番号25に対して95%から98%の間、または95%から99%の間の配列同一性を含む遺伝子によってコードされる。いくつかの場合において、デコリンは、配列番号25に対して約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を含む遺伝子によってコードされる。
【0094】
いくつかの場合において、デコリンタンパク質は、配列番号14の残基31~359、または配列番号14~19のいずれかに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を含む。いくつかの場合において、デコリンタンパク質は、配列番号14の残基31~359、または配列番号14~19のいずれか1つに対して、95%~98%の間、または95%~99%の間の配列同一性を含む。いくつかの場合において、デコリンタンパク質は、配列番号14の残基31~359、または配列番号14~19のいずれか1つに対して、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を含む。いくつかの実施形態において、デコリンタンパク質は、配列番号14の残基31~359、または配列番号14~19のいずれか1つを含む。
【0095】
組換え核酸
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、組換え核酸である。いくつかの実施形態は、MYXVゲノムの少なくとも一部を含む組換え核酸に関する。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態において、MYXVゲノムまたはMYXVゲノムの一部は、M153遺伝子の発現を減少させるように改変される。いくつかの実施形態において、M153遺伝子は、MYXVゲノム中のM153遺伝子の少なくとも一部をノックアウトするように改変される。
【0096】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、M153遺伝子に変異を導入するように操作される。変異は、例えば、挿入、欠失、置換(substation)、またはそれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、M153遺伝子が破壊される遺伝子ノックインを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、非ウイルス性分子をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、非ウイルス分子、例えば、タンパク質をコードする導入遺伝子をコードする1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の核酸を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、TNFαは、ヒトTNFαである。いくつかの実施形態において、TNFαをコードする核酸は、MYXVゲノムのM135R遺伝子を置き換えるか、またはそれに隣接している。いくつかの実施形態において、TNFαをコードする核酸は、MYXVゲノムのM135R遺伝子とM136R遺伝子との間に挿入される。いくつかの実施形態において、TNFαの発現は、ポックスウイルス合成初期/後期(sE/L)プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、TNFαをコードする核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子を置き換えるか、またはそれに隣接している。
【0099】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、インターロイキン-12サブユニットアルファ(IL-12α)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、IL-12αは、ヒトIL-12αである。いくつかの実施形態において、IL-12αの発現は、内部リボソーム侵入部位(IRES)によって駆動される。いくつかの実施形態において、IL-12αをコードする核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する。
【0100】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、インターロイキン-12サブユニットベータ(IL-12β)をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、IL-12βは、ヒトIL-12β遺伝子である。いくつかの実施形態において、IL-12βの発現は、sE/Lプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、IL-12βをコードする核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する。いくつかの実施形態において、IL-12βをコードする核酸およびIL-12αをコードする核酸は両方とも、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する。
【0101】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、デコリンをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、デコリンはヒトデコリンである。いくつかの実施形態において、デコリンの発現は、sE/Lプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、デコリンをコードし、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する核酸を含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、レポータータグ、例えば、蛍光タンパク質をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、レポータータグは、緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む。いくつかの実施形態において、レポータータグの発現は、sE/Lプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、第2のレポータータグをコードする核酸をさらに含む。いくつかの実施形態において、第2のレポータータグは、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えば、dsRedを含む。いくつかの実施形態において、第2のレポータータグの発現は、ポックスウイルスP11後期プロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態において、第2のレポータータグをコードする核酸は、MYXVゲノムのM153遺伝子の発現を破壊する。
【0103】
いくつかの実施形態において、組換え核酸は、任意選択でGFPを含む、vMyx-hTNFaカセットを含む。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、任意選択でdsRedを含む、hDecorin-hIL-12カセットを含む。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、任意選択でGFPおよび/またはdsRedを含む、vMyx-hTNFa-hDecorin-hIL-12-M153KO(vMyx-Triple)カセットを含むか、またはそれからなる。
【0104】
組成物および投与
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、本明細書に記載されるようなMYXVを含む組成物である。いくつかの実施形態において、組成物は医薬組成物を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどの注射可能な流体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、粉末、丸薬、錠剤、またはカプセルなどの固形組成物を含む。固形組成物を含むものなどのいくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、マンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体は、生物学的に中性の担体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体または賦形剤の同一性または割合は、投与経路、生ウイルスとの適合性、または標準的な製薬慣行に基づいて決定される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、MYXVの生物学的特性を著しく損なうことのない成分を配合されている。医薬組成物は、有効量の活性物質または複数の物質が薬学的に許容されるビヒクルと混合して組み合わされるように、対象への投与に適した薬学的に許容される組成物を調製するための既知の方法によって調製することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、または希釈剤と関連し、適切なpHおよび生理学的液体と等浸透圧である緩衝溶液に含まれるMYXVの溶液を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、対象への投与のために製剤化される。当業者によって理解されるように、医薬組成物は、選択された投与経路に応じて様々な形態で対象に投与され得る。いくつかの場合において、医薬組成物は全身投与されるか、または全身投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、局所的に投与されるか、または局所投与用に製剤化される。
【0108】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、非経口的に投与されるか、または非経口投与用に製剤化される。非経口投与の例には、静脈内、腫瘍内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、鼻、肺内、髄腔内、直腸および局所の投与様式が含まれる。非経口投与は、選択された期間にわたる持続注入によるものであり得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口投与されるか、または経口投与用に製剤化される。医薬組成物は、例えば、不活性希釈剤または担体と共に経口投与され得るか、またはそれは、ハードシェルまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入され得るか、またはそれは錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の場合、MYXVは賦形剤と一緒に組み込まれ、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形で使用され得る。
【0110】
MYXVの溶液は、生理学的に適切な緩衝液中で調製することができる。いくつかの実施形態において、通常の貯蔵および使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含むが、それは生ウイルスを不活性化しない。いくつかの実施形態において、使用される医薬組成物の用量は、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、体調、サイズおよび体重を含む個々の対象のパラメーター、治療の期間、同時療法(もしあれば)の性質、特定の投与経路、および医療従事者の知識と専門知識の範囲内にある他の同様の要因に依存する。特定の実施形態において、治療用ウイルスは、室温での保存のために凍結乾燥され得る。
【0111】
医薬組成物は、追加の抗癌剤などの追加の治療剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は化学療法剤を含む。化学療法剤は、例えば、対象の癌細胞または腫瘍性細胞に対して腫瘍溶解効果を示し、MYXVの腫瘍殺傷効果を阻害または減少させない実質的に任意の薬剤であり得る。例えば、化学療法剤は、アントラサイクリン、アルキル化剤、アルキルスルホネート、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、抗生物質、代謝拮抗剤、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有剤またはサイトカインであり得るが、これらに限定されない。好ましくは、化学療法剤は、癌性または腫瘍性である特定の細胞型に対して有効であることが知られているものである。いくつかの場合において、追加の治療剤は免疫チェックポイントモジュレーターを含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載のMYXVによってエキソビボで処理された末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄(BM)細胞、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせは、自己細胞を含む。いくつかの実施形態において、PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせは、同種異系ドナーから得られる。いくつかの実施形態において、PBMC、BM細胞、またはそれらの組み合わせは、異種ドナーから得られる。
【0113】
使用の方法
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、本明細書に記載の組成物または医薬組成物を対象に投与する工程を含む、必要とする対象における癌を阻害、軽減、または予防する方法である。特定の実施形態において、この方法は、ヒト対象などの対象に、本明細書に記載のMYXVを投与し、それによって、必要とする対象の癌を治療および/または阻害する工程を含む。
【0114】
いくつかの実施形態は、MYXVを用いる予防的治療を含む。いくつかの実施形態において、対象は、癌を有するか、癌を有する疑いがあるか、または癌を有するリスクがある。いくつかの実施形態は、有することが疑われる対象を選択する工程を含む。いくつかの実施形態は、癌を有するリスクのある対象を選択する工程を含む。いくつかの実施形態において、対象は癌を有する。いくつかの実施形態において、方法は、癌を有する対象を選択する工程を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は患者である。いくつかの実施形態において、対象は動物または非ヒト動物である。非ヒト動物の例には、哺乳動物および非哺乳動物などの脊椎動物が含まれる。哺乳動物のいくつかの例には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、およびマウスやラットなどの齧歯動物が含まれる。
【0116】
いくつかの実施形態において、癌は固形腫瘍である。肉腫および癌腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、骨形成性肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵臓癌、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺腫、髄質癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞腫、胆管癌、絨毛腫、ウィルムス腫瘍、頸部癌、精巣腫瘍、膀胱癌、およびCNS腫瘍(神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、メナンギオーマ、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫など)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、癌は、骨肉腫、Tripleネガティブ乳癌、または黒色腫を含む。
【0117】
いくつかの実施形態において、癌は、対象におけるある場所に転移している。いくつかの実施形態において、場所は、対象の肺、脳、肝臓、および/またはリンパ節を含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、癌は、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫などの血液癌を含む。いくつかの実施形態において、血液癌は、B細胞またはT細胞の血液癌を含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、組成物は、癌細胞の生存率を低下させるか、または癌における免疫原性細胞死を活性化する。いくつかの実施形態において、癌は、組成物の投与時に阻害、軽減、または予防される。いくつかの実施形態において、投与は対象の生存を改善する。
【0120】
MYXVまたはMYXVを含む組成物は、標準的な投与方法を使用して対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、ウイルスまたはウイルスを含む組成物は、全身投与される(例えば、IV注射)。いくつかの実施形態において、ウイルスまたはウイルスを含む組成物は、疾患部位への注射によって(例えば、腫瘍内に)投与される。いくつかの実施形態において、ウイルスまたはウイルスを含む組成物は、経口的または非経口的に、または当該技術分野で知られている任意の標準的な方法によって投与される。特定の実施形態において、MYXVまたはMYXVを含む組成物は、腫瘍および/または転移の部位に投与される。
【0121】
MYXVは、対象の臨床反応に応じて、必要に応じて調整され得る適切な量で最初に投与され得る。ウイルスの有効量は経験的に決定することができ、安全に投与できるMYXVの最大量、および望ましい結果を生み出すウイルスの最小量に依存する。
【0122】
投与されるウイルスの濃度は、投与されるMYXVの特定の株の毒性、および標的とされる細胞の性質に応じて変化し得る。一実施形態では、「感染性ユニット」とも呼ばれる、約3×1010未満の焦点形成単位(「ffu」)の用量が、様々な実施形態においてヒト対象に投与され、約10~約10pfuの間、約10~約10pfuの間、約10~約10pfuの間、または約10~約10pfuの間を単回投与で投与することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、MYXVは、対象における免疫細胞(例えば、PBMC)によるサイトカインの発現を増加させるのに有効な用量およびスケジュールで投与される。免疫細胞によるサイトカインの発現は、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約1000倍だけ増加させることができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、対象の免疫細胞による2、3、4、5、6、またはそれ以上のサイトカインの発現を増加させるのに有効な用量およびスケジュールで投与される。いくつかの実施形態において、MYXVは、対象における免疫細胞による少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、またはそれ以上のサイトカインの発現を増加させるために有効な用量およびスケジュールで投与される。サイトカインは、例えば、IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、TNF-αの発現が増加する。いくつかの実施形態において、IL-12の発現が増加する。いくつかの実施形態において、デコリンの発現が増加する。いくつかの実施形態において、IFN-γの発現が増加する。
【0124】
いくつかの実施形態において、MYXVは、対象における癌細胞によるサイトカインの発現を増加させるために有効な用量およびスケジュールで投与される。癌細胞によるサイトカインの発現は、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約1000倍、または少なくとも約1000倍だけ増加させることができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、対象の癌細胞による2、3、4、5、6、またはそれ以上のサイトカインの発現を増加させるのに有効な用量およびスケジュールで投与される。いくつかの実施形態において、MYXVは、対象における癌細胞による少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、またはそれ以上のサイトカインの発現を増加させるのに有効な用量およびスケジュールで投与される。サイトカインは、例えば、IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-10、IL-12、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態において、TNF-αの発現が増加する。いくつかの実施形態において、IL-12の発現が増加する。いくつかの実施形態において、デコリンの発現が増加する。いくつかの実施形態において、IFN-γの発現が増加する。
【0125】
いくつかの実施形態において、MYXVは、対象における腫瘍の体積を減少させるために有効な用量およびスケジュールで投与される。腫瘍の体積は、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させることができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、MYXVは、対象における腫瘍または癌細胞の増殖速度を低下させるために有効な用量およびスケジュールで投与される。腫瘍または癌細胞の増殖速度は、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%だけ減少させることができる。
【0127】
MYXVは、単独療法として投与することができ、または化学療法、免疫療法および/または放射線療法を含む他の療法と組み合わせて投与してもよい。例えば、MYXVは、原発腫瘍の外科的除去の前または後で、あるいは放射線療法または従来の化学療法薬物の投与などの治療の前、同時、または後のいずれかに投与することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、他の治療の少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1.5週間、2週間、または3週間前に投与することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、他の治療の少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1.5週間、2週間、または3週間後に投与することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、他の治療から1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日以内に投与することができる。いくつかの実施形態において、MYXVは、他の治療と同時に投与することができる。
【0128】
いくつかの実施形態は、対象に追加の治療薬を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、免疫チェックポイントモジュレーターである。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、組成物を投与する前に対象に投与される。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、組成物を投与した後に対象に投与される。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、組成物との組み合わせとして対象に投与される。
【0129】
いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、免疫調節剤、例えば、免疫チェックポイントモジュレーターまたは阻害剤を含む。例示的な免疫チェックポイントモジュレーターには、AstraZenecaのデュルバルマブ(Imfinzi)、Genentechのアテゾリズマブ(MPDL3280A)、EMD Serono/Pfizerのアベルマブ、CytomX TherapeuticsのCX-072、Novartis PharmaceuticalsのFAZ053、3D Medicine/AlphamabのKN035、Eli LillyのLY3300054、またはEMD SeronoのM7824(抗PD-L1/TGFベータトラップ)などのPD-L1阻害剤;GlaxoSmithKlineのAMP-224(Amplimmune)およびrHIgM12B7などのPD-L2阻害剤;Bristol-Myers Squibbのニボルマブ(オプジーボ)、Merckのペムブロリズマブ(キイトルーダ)、AgenusのAGEN 2034、BeiGeneのBGB-A317、Boehringer-Ingelheim PharmaceuticalsのBl-754091、CBT PharmaceuticalsのCBT-501(ジェノリムズマブ)、IncyteのINCSHR1210、Janssen Research & DevelopmentのJNJ-63723283、MedImmuneのMEDI0680、MacroGenicsのMGA 012、Novartis PharmaceuticalsのPDR001、PfizerのPF-06801591、Regeneron Pharmaceuticals/SanofiのREGN2810(SAR439684)、またはTESAROのTSR-042などのPD-1阻害剤;Bristol Meyers Squibbのイピリムマブ(Yervoy(登録商標)、MDX-010、BMS-734016、およびMDX-101としても知られる)、Pfizerのトレメリムマブ(CP-675,206、チシリムマブ)、またはAgenusのAGEN1884などのCTLA-4阻害剤;Bristol-Myers SquibbのBMS-986016、Novartis PharmaceuticalsのIMP701、Novartis PharmaceuticalsのLAG525、またはRegeneron PharmaceuticalsのREGN3767などのLAG3阻害剤;MacroGenicsのエノブリツズマブ(MGA271)などのB7-H3阻害剤;Innate PharmaのLirilumab(IPH2101;BMS-986015)などのKIR阻害剤;urelumab(BMS-663513、Bristol-Myers Squibb)、PF-05082566(抗4-1BB、PF-2566、Pfizer)、またはXmAb-5592(Xencor)などのCD137阻害剤;バビツキシマブなどのPS阻害剤;および抗体またはその断片(例えば、モノクローナル抗体、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体)、RNAi分子、またはTIM3、CD52、CD30、CD20、CD33、CD27、OX40、GITR、ICOS、BTLA(CD272)、CD160、2B4、LAIR1、TIGHT、LIGHT、DR3、CD226、CD2、またはSLAMに対する小分子などの阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
さらに開示されるのは、治療用MYXVウイルスが、癌患者への再注入などの注入の前に、骨髄または末梢血単核細胞のいずれかからの混合白血球に最初にエキソビボで吸着される送達戦略である。この戦略においては、MYXVは、エキソビボでウイルスに事前感染した白血球の移動を介して転移性癌部位に送達することができる。この全身送達法は、ウイルスが患者に注入される前に単離された白血球に最初に送達されるため、「エキソビボウイルス療法」またはEVV(別名EV2)と呼ばれることもある。MYXV構築物およびこの送達戦略は、腫瘍の負担を大幅に軽減し、必要としている対象の生存を増加させ得る。いくつかの実施形態において、BMまたはPBMC細胞は、エキソビボにて1時間MYXV構築物で吸着され、次いで、MYXVがロードされた白血球が、レシピエントに注入されて戻される。
【0131】
特定の実施形態において、単核末梢血細胞および/または骨髄細胞は、例えば、自己細胞として、対象から得られる。いくつかの実施形態において、単核末梢血細胞および/または骨髄細胞は、1つ以上の同種異系ドナー、例えば、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8つのHLA対立遺伝子(HLA-A、HLA-B、HLA-A、および/またはHLA-DR対立遺伝子の一方または両方のコピーなど)についてレシピエントに一致するドナーから得られる。HLA対立遺伝子は、例えば、DNAベースの方法を使用したタイプであり得る。いくつかの実施形態において、単核末梢血細胞および/または骨髄細胞は、1人以上の異種ドナーから得られる。
【実施例
【0132】
これらの実施例は、例示のみを目的として提供されており、本明細書で提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
【0133】
実施例1-ウイルスの構築
組換えプラスミドは、dsRed核酸配列の有無にかかわらず、粘液腫ウイルスM153遺伝子座におけるhDecorinおよびhIL12核酸配列の挿入のために設計した。ヒトデコリン遺伝子は、OHu16408(GenScript)のcDNA ORFクローンからPCR増幅した。ヒトサブユニットIL-12 p35およびp40は、Journal of Virology、2007年11月、P.12704-12708に記載されているvMyx-huIL-12-GFPから得られ、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。赤色蛍光タンパク質(dsRed)遺伝子は、hDecorin-hIL-12発現カセットのすぐ下流に挿入され、その発現はポックスウイルスP11後期プロモーターによって駆動された。この組換え核酸は、vMyx-TripleまたはvMyx-Triple-レッドと称する。MYXV感染はdsRed発現のライブイメージングによってモニタリングできるため、dsRedはインビトロおよびインビボでのMYXV複製の蛍光マーカーとして機能した。この組換え核酸の第2のバージョンは、dsRedマーカーを欠いて作製した(vMyx-Triple-ホワイトと称する)。
【0134】
図1Aは、vMyx-Triple組換え核酸の構築を示す。上の画像は、vMyx-hTNFa-GFPゲノムおよび発現しているhDecorin-hIL-12-dsRedカセットの挿入部位(M153遺伝子座)を示す。真ん中の画像はhDecorin-hIL-12-dsRedカセットを示し、下の画像はvMyx-Triple構築物を示す。hDecorin-hIL-12-dsRedカセットのデコリンおよびIL-12導入遺伝子は、ポックスウイルス合成初期/後期プロモーター(sE/L)の制御下で発現するのに対し、dsRedの発現はポックスウイルス後期プロモーターであるP11によって制御された。vMyx-Triple-ホワイト構築物は、dsRedカセットを欠いている以外は、vMyx-Triple-レッドと同じである。
【0135】
vMyx-TripleおよびvMyx-Tripleホワイトウイルスを作製するために、最初に、ゲートウェイシステム(Gateway System)(ThermoFisher Scientific)を使用して組換えプラスミドを構築した。上流および下流のハイブリダイズする配列をPCRによって増幅し、適切なpDONRベクターを用いたGateway BP組換えによってエントリークローンを生成した。最終的な組換えプラスミドは、3つのエントリークローンをデスティネーションベクターと順次再結合することによって構築した。hDecorin-hIL12-dsRed発現カセットは、RK13細胞にvMyx-hTNFa-GFPウイルスを感染させ、適切な組換えプラスミドでトランスフェクトすることにより、MYXVゲノムに挿入された。蛍光dsRedタンパク質を選択マーカーとして使用して、組換えウイルスの純粋なストックを得るために、複数回の集約型(foci)精製を行った。導入遺伝子の存在は、hTNF、hDecorinおよびhIL-12に特異的なプライマーを使用したPCR(図2Aおよび2B)によって確認された。これらの図に示されているこのPCR分析により、導入遺伝子がさまざまなvMyx-Tripleクローンに存在し、図に示されているバンドが予想されたサイズであることが確認された。表1には、構築物の生成に使用されるプライマー配列が含まれる。
【0136】
【表1】
【0137】
組換えvMyx-TripleおよびvMyx-Tripleホワイトウイルスの純度、およびM153の欠如は、適切なプライマーセットを使用するPCRによって確認した(図2Cおよび2D)。図2Cに示すPCR分析では、135および136遺伝子の隣接領域においてプライマーを使用することにより、クローンに野生型ウイルスが含まれていないことを確認した。ウエスタンブロットにより、3つの導入遺伝子のタンパク質発現が確認された(図3A-3C)。したがって、トランスジェニックヒトTNFα、デコリン、およびIL-12を発現し、M153を欠く組換えMYXVが生成された(vMyx-Triple)。導入遺伝子の発現を検出するために使用された抗体は次のとおりである。ヒトTNF-α:モノクローナルマウスIgG1クローン#28401(MAB610-100、R&D Systems);ヒトデコリン:ウサギポリクローナル抗体(ab175404、Abcam);ヒトIL-12:IL-12 p70抗体(ab25105、Abcam)に対するウサギポリクローナル。
【0138】
ヒトIL-12ではなくマウスIL-12を発現する組換えMYXVは、ヒトIL-12を発現するウイルスのために使用されるのと同じゲートウェイシステム(ThermoFisher Scientific)を使用して生成された。比較的低レベルのマウスIL-12を発現するウイルスは、IL-12のサブユニット間にIRES配列を有する合成初期/後期プロモーター(マウスTriple IL-12低)を使用して生成され、比較的高レベルのマウスIL-12を発現するvMyxv-マウスTripleは、IL-12のサブユニット間にエラスチンリンカーを含むマウスIL-12を含む合成初期/後期プロモーター(マウスTriple IL-12高)を使用して生成された。
【0139】
実施例2-組換えMYXVの複製および細胞殺傷能力
実施例1で調製されたvMyx-Tripleウイルスの複製能力は、RK13細胞で試験された。vMyx-Tripleウイルスの複製能力は、親のvMyx-hTNFa-GFPウイルスと同様であった(図4)。したがって、トランスジェニックヒトTNFα、デコリン、およびIL-12を発現し、M153を欠く組換えMYXVは、宿主細胞で効果的に複製される。
【0140】
次に、vMyx-Tripleウイルスの細胞殺傷能力を、2つの異なる細胞株、CT26(結腸癌)およびHELA(ヒト子宮頸癌)で試験した(図5Aおよび5B)。細胞毒性を測定するために(およびしたがって細胞傷害性)を推測するために、CellTiter96(登録商標)AQueousOne Solution Cell Proliferation Assay(MTS)を使用した(Promega,USA)。CT26およびHELA細胞を、感染多重度(MOI)10で48時間異なるウイルスに感染させた。数時間後、テトラゾリウム基質(MTS)をCT26およびHELA細胞に添加し、生細胞で生成されたA490ホルマザン産物を、2時間のインキュベーション後にマイクロプレートリーダーを使用して測定した。各サンプルを3連で定量し、合計2回の独立した実験を実施した。vMyx-Tripleウイルスは、親ウイルスvMyx-hTNFaと比較して、またvMyx-GFPと比較して、両方の細胞株で同様のレベルの細胞死を誘発した。他のウイルスと比較して、vMyx-Tripleウイルスによる癌細胞殺傷の増加傾向が存在した。したがって、トランスジェニックヒトTNFα、デコリン、およびIL-12を発現し、M153を欠く組換えMYXVは、癌細胞に対して細胞傷害性を示した。
【0141】
実施例3-組換えMYXVの複製および細胞殺傷能力
図1Bは、本開示の組換え核酸およびMYXVにおいて改変され得るM153遺伝子座を示す。改変は、M153配列における変異、例えば、挿入、欠失、置換、またはそれらの組み合わせを含み得る。改変は、M153の活性または発現レベルを減衰することができる。改変には、M153遺伝子の欠失および/またはM153遺伝子の1つ以上の導入遺伝子による置換が含まれ得る。置換遺伝子は、hTNFa、hDecorin、IL-12、または腫瘍溶解活性を増強するか、MYXVの有害な副作用を減少させるのに役立つ別の導入遺伝子から選択することができる。
【0142】
vMyx構築物を作製するために、組換えプラスミドは、最初に、ゲートウェイシステム(ThermoFisher Scientific)を使用して構築され得る。上流および下流のハイブリダイズする配列をPCRによって増幅し、適切なpDONRベクターを用いたゲートウェイBP組換えによってエントリークローンを生成する。最終的な組換えプラスミドは、1つ以上のエントリークローンをデスティネーションベクターと順次再結合することによって構築する。組換えプラスミドは、RK13細胞にvMyxを感染させ、次に適切な組換えプラスミドでトランスフェクトすることにより、MYXVゲノムに挿入する。組換えウイルスの純粋なストックを得るために、複数回の集約型(foci)精製を行う。蛍光タンパク質、例えば、dsRedなどの選択マーカーを使用することができる。導入遺伝子の存在は、PCRおよび/または配列決定によって確認することができる。
【0143】
M153ノックアウトウイルスは、この方法で構築することができる。組換えプラスミドは、M153遺伝子配列なしでM153遺伝子の配列に隣接する配列を含むように設計することができる。任意選択で、蛍光タンパク質の発現カセットを含めることができる。M153ノックアウトは、RK13細胞にMYXVを感染させ、細胞に組換えプラスミドをトランスフェクトすることによって生成できる。複数回の集約型(foci)精製は、M153KOウイルスの純粋なストックを得るために行われ、任意選択で選択マーカーとして蛍光タンパク質を使用する。M153ノックアウトとウイルスの純度は、適切なプライマーを使用するPCR分析によって確認される。
【0144】
改変されたvMyxウイルスの複製能力は、RK13細胞で試験することができる。改変されたvMyxウイルスの複製能力は、親のvMyxウイルスと同様であり得る。次に、改変されたvMyxウイルスの細胞殺傷能力は、2つの異なる癌細胞株でテストされる。細胞生存率を測定する(したがって細胞毒性を推測する)ために、CellTiter96(登録商標)AQueousOne Solution Cell Proliferation Assay(MTS)(Promega,USA)が使用される。癌細胞は、MOI=10で48時間さまざまなウイルスに感染される。48時間後、テトラゾリウム基質(MTS)を細胞に添加し、生細胞で生成されたA490ホルマザン生成物を2時間のインキュベーション後にマイクロプレートリーダーを使用して測定する。各サンプルは3連で定量され、合計2回の独立した実験が実行される。改変されたvMyxウイルスは、親ウイルスvMyxと比較して、またvMyx-GFPと比較して、両方の細胞株で同様のレベルの細胞死、またはより高いレベルの細胞死を誘発することができる。
【0145】
実施例4-M153KO MYXVを使用したインビトロの結果
治療用導入遺伝子は、2つのタイプのゲノム遺伝子座において、すなわち、組換えウイルスがそのウイルス遺伝子の遺伝的「ノックアウト」であるように、その結果、タンパク質コード遺伝子内の破壊構築物として、またはさもなければ、組換えウイルスの生物学や腫瘍溶解の可能性に影響を与えないと予測されている、「無害な」遺伝子間遺伝子座において、MYXVに加えることができる。内在性ウイルス遺伝子がノックアウトされると、新しいノックアウト構築物は、どの導入遺伝子が遺伝子座に挿入されるかに関係なく、癌細胞に対する腫瘍溶解能の点で親ウイルスとは異なるという可能性がある。
【0146】
MYXVのM153遺伝子は、MHCクラスIおよびCD4タンパク質を含む多様な細胞受容体のダウンレギュレーションに関与するE3-ユビキチンリガーゼのファミリーからの免疫調節タンパク質をコードする。理論に拘束されることを望まないが、M153の不活性化またはノックダウンは、MHC-I依存性免疫エピトープの発現の増強、例えば、ウイルスおよび/または腫瘍抗原の直接提示の増加をもたらし、それによって、宿主T細胞によるウイルス感染細胞(例えば、癌細胞)の認識を増加させることができる。これにより、不活性化されたM153遺伝子を有する粘液腫ウイルスが、腫瘍溶解性ベクターとして使用できるようになる。この実施例と次の実施例のデータは、M153ノックアウト粘液腫ウイルス(M153KO MYXV)バックボーンが、免疫応答性モデルにおいてインタクトなM153遺伝子を有する親MYXVよりもインビトロおよびインビボで高い腫瘍溶解活性を示したことを示す。このように、導入遺伝子のないM153KO MYXVは、親のMYXVまたはwtMYXVよりも大きな腫瘍溶解活性を示した。さらに、1つ以上の導入遺伝子を持つM153KO MYXVはまた、親のMYXVまたはwtMYXVよりも腫瘍溶解活性の増強を示すこともあり得る。
【0147】
マウス黒色腫細胞株であるB16F10細胞において、M153KO MYXVは、インタクトな野生型M153(wt MYXV)を含む野生型粘液腫ウイルスと比較して、細胞殺傷の誘導について試験した。このM153KOMYXVには、hTNFa、hDecorin、hIL-12A、またはhIL-12B導入遺伝子は含まれていなかった。M153KO MYXVは、感染後の初期の時点で、感染後約36時間まで、wt MYXVよりもB16F10細胞の細胞生存率を大幅に低下させた(図6)。これらの結果は、M153の不活性化またはノックダウンを伴うMYXVが、野生型またはM153の不活性化を伴わないMYXVよりも大幅に細胞死を誘導することを示唆する。
【0148】
この結果に基づいて、M153KOウイルスが免疫原性細胞死(ICD)と呼ばれる特定のタイプの細胞死を誘発する可能性を評価して、癌細胞においてICDを誘発する腫瘍溶解性ベクターとしてのM153KO MYXVの可能性を決定した。免疫系(例えば、適応免疫系)を刺激することができるICDの誘導を示すことができるインビトロでのさまざまな特徴がある。この場合、2つのシグナル、細胞外環境へのATPの放出、および細胞表面でのカルレティキュリンの発現または外部発現がこの研究の焦点であった。
【0149】
死滅しつつある細胞からのATPの放出は、ICDを示し得る。wt MYXVの感染後に観察されたATP放出は、ネガティブコントロールと有意差はなかった。一方、M153KO MYXV感染後に放出されるATPの量は、未処理の細胞よりも多く、wt MYXVに感染した細胞よりも最大で約4倍高かった(例えば、図7Aを参照、感染後10時間のピーク値)。M153KO MYXV感染のピーク結果は、薬物誘発陽性対照(ドキソルビシン)で得られたピーク値と同様であったが、しかしこれはより後においてであった(図7A、感染後6~10時間の結果を参照)。したがって、M153の不活性化またはノックダウンを伴うMYXVは、wt MYXVと比較して、またはM153の不活性化またはノックダウンを伴わないMYXVと比較して、優れた腫瘍溶解特性を有する。特に、M153の不活性化またはノックダウンを伴うMYXVは、M153の不活性化またはノックダウンを伴わないMYXVまたはWTMYXVよりも大きな程度で免疫原性細胞死を誘導する。
【0150】
カルレティキュリンは、通常、小胞体内で発現されるが、ICDが起こっている場合、それは細胞表面で発現され得る(外部発現)。カルレティキュリンの外部発現は、共焦点顕微鏡を使用して評価され、各細胞を表す核染色(DAPI)のシグナルごとに観察されたカルレティキュリンのシグナルの比率を使用して定量化した。この場合、M135KO MYXVは、親MYXVによって引き起こされる細胞殺傷を変化させず、この点でwt MYXVと同様に動作する、無関係のウイルス遺伝子(M135)に遺伝子ノックアウト病変を有する非武装ウイルスの代表として使用した。M135KO MYXV感染細胞またはドキソルビシン処理細胞よりもM153KOMYXV感染細胞で高いカルレティキュリンの外部発現の誘導(図7B)。
【0151】
全体として、これらの結果は、M153KO MYXVがインビトロでB16F10細胞においてICDの特徴を誘導することができ、そしてインビボで使用される場合に免疫系(例えば、適応免疫系)を誘導し得ることを示した。したがって、M153の不活性化またはノックダウンを伴うMYXVは、黒色腫または癌細胞でICDを誘発する。M153の不活性化またはノックダウンを伴うMYXVもまた、免疫系(適応免疫系など)を刺激することができる。
【0152】
実施例5-M153KOMYXVを使用したインビボの結果
さらに、インビトロ研究に使用されたのと同じマウス癌細胞株、B16F10を使用して、同系の転移性黒色腫マウスモデルを用いて研究を実施した。この場合、C57BL/6マウスにB16F10細胞を尾静脈に静脈内注射して播種し、肺において分散した転移性黒色腫病変を誘発した。黒色腫細胞の移植の3日後、マウスを2×10ffuのM153KO MYXVまたは生理食塩水対照を用いる眼窩後部への静脈内注射を介して治療した。 M153KOウイルスの1回投与で治療されたマウスは、転移性疾患の兆候が少なく、対照マウスよりも長く生存した(図8)。M135KO MYXVは、ウサギの病因に関与する無関係のウイルス遺伝子の遺伝子ノックアウトを含み、M153KOの非存在下でウイルスによって引き起こされる何らかの腫瘍溶解効果を測定するためのコントロールとしてここで使用する。このモデルにおいては、M153KOウイルスは、未処理の対照マウスと比較して有意に長期の生存を提供したが、M135KOウイルスは提供しなかった。
【0153】
これらの結果は、M153KO MYXVが、インタクトなM153遺伝子を有する親MYXVと比較して、またはwt MYXVと比較して、優れた抗癌効果を有する腫瘍溶解性ベクタープラットフォームとして使用できることを示す。したがって、M153の不活性化またはノックダウンを伴うMYXVは、癌(例えば、黒色腫)を有する対象の生存を延長する。癌または黒色腫は転移性である可能性がある。M153ノックアウトで治療されたマウスは、対照群よりも生存率および生存期間の有意な改善を示した。
【0154】
実施例6-感染細胞による導入遺伝子の発現
この実施例は、本開示の粘液腫ウイルスに感染した細胞がTNF、デコリン、およびIL-12を分泌することを実証し、さらに、分泌されたTNFおよびIL-12が生物学的活性を有することを実証する。
【0155】
ベロ細胞を、それぞれMOIが1である、vMyx-Triple(ヒトTripleレッドおよびヒトTripleホワイト)、マウスTriple IL12低、マウスTriple IL-12高に感染させた。対照として、細胞を、サイトカインをコードせず、インタクトなM153遺伝子を含んでいるvMyx-GFPに感染させた。24時間後、上清を採取し、ELISAアッセイを実施して、上清中の各サイトカインの濃度を決定した(図9A~9D)。結果は、さまざまなvMyx-Tripleウイルスに感染した細胞がTNF(図9A)、デコリン(図9B)、およびIL-12(図9C-ヒトIL-12、図9D-マウスIL-12)を分泌することを示す。対照的に、サイトカインは、モック感染細胞、またはvMyx-GFPに感染した細胞では検出されなかった。マウスTriple IL-12高による感染は、マウスTripleIL-12低による感染よりもマウスIL-12のより発現を誘発することが示された。
【0156】
感染細胞によって分泌されたTNFが生物学的に活性であるかどうかを試験するために、感受性TNFであり、生物学的に活性なTNFへの十分な曝露で生存能力を失うL929細胞を利用してアッセイを行った。L292細胞は、示されたウイルスに感染したベロ細胞からの上清に曝露した。図10Aに示すように、さまざまなvMyx-Tripleウイルスに感染した細胞は、生物学的に活性なTNFを生成するが、vMyx-GFPに感染した細胞は生成しない。これらの結果は、TNFをコードする本開示のMYXVが生物学的に活性なTNFの発現を誘発し得ることを示す。
【0157】
感染細胞によって分泌されたIL-12が生物学的に活性であるかどうかを試験するために、HEK Blue IL-12レポーターアッセイを実施した。HEK Blue IL-12細胞は、生物学的に活性なIL-12に応答してレポーター遺伝子を発現し、比色アッセイを使用してレポーター遺伝子を検出できる。図10Bに示すように、vMyx-Tripleウイルスに感染したベロ細胞からの上清はレポーター遺伝子の発現を誘発したが、vMyx-GFPに感染した細胞からの上清を含む対照は誘発しなかった。これらの結果は、IL-12をコードする本開示のMYXVが生物学的に活性なIL-12の発現を誘発できることを示す。
【0158】
実施例7-vMyx-Tripleによるインビトロでの癌細胞株の増殖の阻害
複数の癌細胞株の増殖を阻害するvMyx-Tripleの能力をインビトロで評価した。細胞は、細胞あたり0.1、1、または10のフォーカス形成単位(FFU)の感染多重度(MOI)で感染した。72時間のインキュベーション後、CellTiter-Glo Cell Viability Assayを使用して細胞生存率をテストし、平均増殖阻害を決定した。結果は、vMyx-Tripleが、さまざまな組織に由来する一定範囲のヒトおよびマウスの癌細胞株の増殖を阻害できることを示した。結果を表2に示す。
【0159】
【表2】
【0160】
癌細胞株の増殖を阻害するvMyx-Tripleの能力をさらに特徴づけるために、インビトロで、17例のヒト肺癌細胞株を、0.01FFU/細胞から100FFU/細胞の範囲の9つの異なる感染多重度で感染させた。72時間のインキュベーション後、CellTiter-Glo Cell Viability Assayを使用して細胞生存率を評価した。EC50は、GraphPad Prismソフトウェアを介した非線形回帰分析を使用したカーブフィットによって決定した、最大成長阻害の50%を達成したMOIとして、各細胞株について計算した。vMyx-Tripleは、多くのヒト肺がん腫瘍細胞株の阻害を実証し、EC50を表3に示した。
【0161】
【表3】
【0162】
インビトロで癌細胞株の増殖を阻害するvMyx-Tripleの能力をさらに特徴づけるために、8例のヒト肉腫細胞株を、0.01FFU/細胞から100FFU/細胞の範囲の9つの異なる感染多重度で感染させた。72時間のインキュベーション後、CellTiter-Glo Cell Viability Assayを使用して細胞生存率を評価した。EC50は、GraphPad Prismソフトウェアを介した非線形回帰分析を使用したカーブフィットによって決定された、最大成長阻害の50%を達成したMOIとして、各細胞株について計算した。vMyx-Tripleは、多くのヒト肉腫細胞株の阻害を実証し、EC50を表4に示した。
【0163】
【表4】
【0164】
実施例8-vMyx-Tripleによるエキソビボでのヒト急性骨髄性白血病サンプルの阻害
患者からのヒト癌細胞を殺傷するためのvMyx-Tripleの能力を試験した。ヒト患者からの急性骨髄性白血病(AML)サンプルは、0.01FFU/細胞から100FFU/細胞の範囲の6つの異なる感染多重度(MOI)で、vMyx-Tripleまたは親ウイルスvMyx-GFPにエキソビボで曝露された。6日間の連続培養でのインキュベーション後、CellTiter-Glo Cell Viability Assayを使用して細胞生存率をテストした。IC50は、GraphPad Prismソフトウェアを介した非線形回帰分析を使用したカーブフィットによって決定された、最大成長阻害の50%を達成したMOIとして、各サンプルについて計算した。
【0165】
図11Aに示すように、親ウイルスに曝露された3つのサンプルのうちの2つについてはIC50を計算できなかったが、他のサンプルについては19660のIC50が計算された。図11Bに示すように、vMyx-TripleはヒトAMLサンプルの優れた阻害を示し、IC50は4.203、6.524、および10.25と計算された。結果は、vMyx-Tripleがヒト癌患者からの癌細胞の増殖を阻害でき、TNF、デコリン、IL-12を欠き、インタクトな野生型M153遺伝子を含む親ウイルスと比較して優れた抗癌効果を示すことを示す。
【0166】
実施例9-MYXVに感染したPBMCによるサイトカイン産生
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)によるサイトカイン産生を誘発するvMyx-Tripleの能力を試験した。ヒトPBMCは、それぞれMOIが10のMYXVに感染させた。使用したMYXVは、vMyx-Triple(「ヒトTriple」)、親ウイルスvMyx-GFP(「親MYXV」)、vMyx-hTNFa-GFP(「TNF単独」)、および細胞表面でTNFを発現するMYXV(「膜結合TNF」)であった。細胞表面でTNFを発現するMYXVは、配列番号45のTNFαをコードし、これは、膜に結合したままである変更されたTNFα配列を含む。
【0167】
未処理のPBMCを陰性対照として使用し、抗CD3/抗CD28共刺激によって活性化されたPBMCを陽性対照として使用した。感染後4時間および16時間で、上清を採取し、MesoScale Discovery(MSD)U-Plex6-アッセイ 96-ウェルSECTORプレートを使用して、IFN-γ、IL-10、IL-12p70、IL-2、IL-4、およびTNFαの濃度を分析した。図12Aは、感染後4時間での上清中のサイトカインの平均(+/-SD)濃度を示しているのに対し、図12Bは、感染後16時間での上清中のサイトカインの平均(+/-SD)濃度を示す。バーが存在しない場合、これはサイトカインレベルがアッセイの検出限界を下回っていたことを示す。
【0168】
結果は、vMyx-Tripleウイルスが、IL-12およびTNFαを含むヒトPBMCによるサイトカインの産生を誘発することを実証する。vMyx-Tripleの感染に応答して観察されたIL-12のレベルは、他のウイルスのいずれかで観察されたレベルよりも高かった。さらに、特に感染後4時間で、vMyx-Tripleウイルスに応答して、より高いレベルのIFN-γが観察された。
【0169】
実施例10-ヒト異種移植腫瘍モデルにおけるvMyx-Tripleの抗癌活性
インビボでヒト腫瘍の増殖を阻害するvMYX Tripleの能力を、異種移植モデルで試験した。ヒト癌細胞株NCI-H1971(肺癌)、A673(肉腫)、およびSJSA-1(肉腫)を、免疫不全マウス(NCI-H1975およびSJSA-1の場合は無胸腺ヌードマウス、A673の場合はCD17.SCIDマウス)の脇腹に、マウス当たり500万個の腫瘍細胞を皮下移植した。担癌動物は、平均腫瘍体積が100~150mmである群あたり7~8匹の動物の治療群にランダム化された。動物は、1×10フォーカス形成単位(FFU)または2×10FFUの用量でvMyx-Tripleの腫瘍内注射で処理された。用量は、週に1回(QW)、4日に1回(Q4D)、または2日に1回(Q2D)投与した。腫瘍体積および体重を週に3回測定した。
【0170】
図13Aは、経時的なNCI-H1971(肺癌)異種移植腫瘍の体積をプロットし、このモデルにおいて、vMYXTripleの腫瘍内注射が用量依存的に腫瘍増殖を阻害することを示す。
【0171】
図13Bは、経時的なA673(肉腫)異種移植腫瘍の体積をプロットし、vMYXTripleをより頻繁に投与すると、このモデルにおいて腫瘍増殖のより大きな阻害がもたらされることを示す。
【0172】
図13Cは、経時的なSJSA-1(肉腫)異種移植腫瘍の体積をプロットし、vMYXTripleをより頻繁に投与すると、このモデルにおいて腫瘍増殖のより大きな阻害がもたらされることを示す。
【0173】
これらの結果は、vMYX-Tripleが、免疫不全宿主の状況においてさえ、インビボでヒト腫瘍の増殖を阻害できることを実証する。
【0174】
実施例11-ヒト異種移植腫瘍モデルにおけるIL-12およびTNFαの産生
インビボでIL-12およびTNFα産生を誘発するvMYX Tripleの能力を、異種移植片モデルで試験した。ヒト肉腫癌細胞株SJSA-1およびA673を免疫不全マウス(SJSA-1の場合は無胸腺ヌードマウス、A673の場合はCD17.SCIDマウス)の脇腹に皮下移植した。担癌動物は、移植後1日目に2×10FFUのvMYXTripleの腫瘍内(IT)または静脈内(IV)注射によって治療された(群あたりn=3匹の動物)。血清サンプルは、治療の4時間後と24時間後に収集した。腫瘍は治療の24時間後に収集し、サイトカイン測定のために処理した。サイトカイン分析は、MesoScale Discovery(MSD)U-Plex 6-アッセイ 96-Well SECTORプレートを使用して実行した。
【0175】
図14Aは、SJSA-1腫瘍を有する動物において、治療後4時間および24時間の血清、ならびに治療後24時間の腫瘍において検出されたIL-12およびTNFαの濃度を示す。平均±SDがプロットされる。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
【0176】
図14Bは、A673腫瘍を有する動物において、治療後4時間および24時間の血清、ならびに治療後24時間の腫瘍において検出されたIL-12およびTNFαの濃度を示す。平均±SDがプロットされる。バーが存在しない場合、分析物のレベルはアッセイの検出限界を下回っていた。
【0177】
結果は、vMYX Tripleによる静脈内および腫瘍内治療が、腫瘍内でのIL-12およびTNFα産生、ならびに循環中のサイトカインのレベルの増加を誘発し得ることを実証する。
【0178】
実施例12-インビボでのM153KO MYXVの抗腫瘍効果
この実施例は、ノックアウトされたM153遺伝子を有するMYXVによって達成された腫瘍増殖阻害の程度を、野生型M153を発現するMYXVに対して比較した。両方のMYXVウイルスには、M135領域とM136領域との間に挿入されたTNFの発現のための導入遺伝子が含まれていた。
【0179】
B16-F10マウス黒色腫細胞をC57BL/6マウスに移植した。担癌動物は、平均腫瘍体積が75~100mmである群あたり8匹の動物の治療群にランダム化された。動物は、ランダム化後1日目および8日目に2×10FFU/用量の示された粘液腫ウイルスの腫瘍内注射を介して治療された。
【0180】
図15は、経時的な腫瘍体積をプロットし、M153をノックアウトしたウイルスが、野生型M153を発現するウイルスよりも腫瘍増殖を大幅に阻害したことを示す。
【0181】
実施例13-MC38癌モデルにおけるvMYXマウスTripleの抗腫瘍効力
vMyx-Tripleの抗癌効力をMC38マウスモデルにおいて評価した。C57BL/6マウスにMC38マウス結腸直腸癌細胞を移植した。担癌動物は、平均腫瘍体積が75~100mmである群あたり8匹の動物の治療群にランダム化された。動物は、2×10FFU/用量の腫瘍内(IT)注射を介して、4日に1回、示された粘液腫ウイルスを4回投与して治療した。
【0182】
マウスTriple低は、比較的低レベルで、ヒトIL-12ではなくマウスIL-12を発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTriple高は、ヒトIL-12ではなくマウスIL-12を比較的高いレベルで(IL-12サブユニットにエラスチンリンカーが結合した単一のポリペプチドとして)発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTripleウイルスはまた、ヒトのデコリンおよびTNFも発現し、M153遺伝子をノックアウトする。GFPはvMyx-GFPを指し、これは、いずれのサイトカインもコードせず、インタクトな野生型M153遺伝子を含む。
【0183】
腫瘍体積測定値は、週に3回記録され、図16Aにプロットされている。生存率は図16Bにプロットされている。腫瘍体積が1500mm以上の場合(個々の動物の場合)、または動物が最終的な屠殺のためのIACUCガイドラインを満たした場合、生存エンドポイントが満たされた。
【0184】
これらの結果は、MYXVがインビボで腫瘍増殖を阻害できること、およびより高レベルのマウスIL-12を発現するMYXVがこのモデルにおいて腫瘍増殖のより大きな阻害を示すことを示す。
【0185】
実施例14-B16-F10癌モデルにおけるvMYXマウスTripleの抗腫瘍効力
マウスIL-12を発現するvMyx-Tripleの抗癌効力を、B16-F10マウスモデルで評価した。C57BL/6マウスにB16-F10マウス黒色腫細胞を移植した。担癌動物は、平均腫瘍体積が75~100mmである群あたり8匹の動物の治療群にランダム化された。動物は、示された粘液腫ウイルスで、1日目および8日目に2×10FFU/用量の腫瘍内注射を介して治療された。
【0186】
マウスTriple低は、比較的低レベルで、ヒトIL-12ではなくマウスIL-12を発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTriple高は、比較的高いレベルで、ヒトIL-12ではなくマウスIL-12を(IL-12サブユニットにエラスチンリンカーが結合した単一のポリペプチドとして)発現するvMyx-Tripleを指す。マウスTripleウイルスはまた、ヒトのデコリンおよびTNFも発現し、M153遺伝子をノックアウトする。GFPはvMyx-GFPを指し、いずれのサイトカインもコードせず、インタクトなM153遺伝子を含む。
【0187】
腫瘍体積測定値は、週に3回記録され、17Aにプロットされている。生存率は図17Bにプロットされている。腫瘍体積が1500mm以上の場合(個々の動物の場合)、
または動物が最終的な屠殺のためのIACUCガイドラインを満たした場合、生存エンドポイントが満たされた。
【0188】
結果は、MYXVがインビボでの腫瘍増殖を阻害し、生存を増強することができることを示す。高レベルのマウスIL-12を発現するMYXVは、このモデルで腫瘍増殖のより大きな阻害を示し、他の2つの粘液腫ウイルスと比較してより大きな生存の利益をもたらした。
【0189】
実施例15-静脈内投与経路対腫瘍内投与経路による癌治療としてのvMYXマウスTriple
vMyxマウスTripleの抗腫瘍効力を、静脈内および腫瘍内の投与経路の比較を用いて、マウス同系癌モデルにおいて評価した。C57BL/6マウスにはB16-F10メラノーマ細胞を皮下移植し、Balb/cマウスにはCT26結腸直腸癌細胞を皮下移植した。担癌動物は、平均腫瘍体積が75~100mmである群あたり8匹の動物の治療群にランダム化された。動物は、腫瘍内(IT)または静脈内(IV)注射のマウスTriple高、比較的高レベルのマウスIL-12を発現するMYXV(IL-12サブユニットに結合するエラスチンリンカーを有する単一のポリペプチドとして)を介して治療された。マウスTriple高はまた、ヒトのデコリンおよびTNFも発現し、M153遺伝子がノックアウトされている。2×10フォーカス形成単位(FFU)または1×10FFUを、4日ごとに、4回投与した。腫瘍体積の測定値は、週に3回記録された。
【0190】
図18Aは、B16-F10腫瘍を有するC57BL/6マウスの腫瘍体積を示す。
【0191】
図18Bは、CT26腫瘍を有するBalb/cマウスの腫瘍体積を示す。
【0192】
マウスTriple高は、ビヒクル対照と比較して、試験したすべての用量および投与経路で腫瘍増殖を阻害した。B16-F10モデルにおいて、1回の投与量あたり2×10FFUの腫瘍内注射は、1回の投与量あたり1×10または2×10FFUの静脈内投与よりも腫瘍増殖の抑制が大きかった。
【0193】
実施例16-vMYXマウスTripleプラス免疫チェックポイント阻害剤併用療法
Balb/cマウスに、尾静脈への静脈内注射を介してK7M2肉腫細胞を移植した。腫瘍接種後3日目から、動物(群あたりn=10)を、vMyx-マウスTriple(低IL-12)の2×10FFU/用量の眼窩後洞への注射により治療した。この粘液腫ウイルスは、ヒトデコリン、ヒトTNF、および比較的低レベルのマウスIL-12を発現する。vMyx-マウスTriple(低IL-12)はまたM153遺伝子がノックアウトされている。ウイルスは4日に1回、4回投与された。一部の群には、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体を10mg/kgで、4日に1回、4回腹腔内注射した。
【0194】
図19は、群の生存曲線を示す。未治療の対照群のすべての動物は、移植後約80日までに感染に屈した。移植後130日目に、抗PD-1または抗PD-L1を投与された動物の約30~40%が生存し、vMyx-マウスTriple(低IL-12)で治療された動物の50%超が生存した。また、vMyx-マウスTriple(低IL-12)と抗PD-1または抗PD-L1のいずれかを併用して治療した動物は、約80%以上が生存しており、最も高い生存率を示した。
【0195】
これらのデータは、本開示の粘液腫ウイルスが癌を有する対象の生存を改善することができ、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法が生存をさらに改善することができることを示す。
【0196】
別の実験において、C57BL/6マウスに、MC38マウス結腸直腸癌細胞を脇腹の皮下に移植した。担癌動物は、平均腫瘍体積が75~100mmである群あたり8匹の動物の治療群にランダム化された。
【0197】
動物は、vMyx-マウスTriple(低IL-12)を用いて、無作為化後1日目および8日目に2×10 FFU/用量の腫瘍内注射によって治療された。一部の群には、10mg/kgの抗PD-1抗体を、4日に1回、4回腹腔内注射した。腫瘍の体積と体重を週に3回測定した。
【0198】
図20Aは、経時的な腫瘍体積をプロットしている。ビヒクル処置対照マウスの腫瘍体積は、実線で結ばれた円で示されている。vMyx-マウスTriple単独で処理されたマウス(四角)は、抗PD-1のみで処理されたマウス(破線の円)と同様に、ビヒクルで処理されたコントロールと比較して、腫瘍体積の減少と腫瘍増殖の遅延を示した。腫瘍増殖の最大の阻害は、vMyx-マウスTripleと抗PD-1(三角形)の両方を投与された群で観察された。
【0199】
図20Bは、群の生存曲線を示す。腫瘍体積と同様に、vMyx-マウスTripleと抗PD-1の両方を投与された群は、最高の生存プロファイルを示した。
【0200】
これらのデータは、本開示の粘液腫ウイルスが腫瘍増殖を阻害し、癌を有する対象の生存を増強することができ、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法が相乗効果を有することができることを示す。
【0201】
追加の配列
本明細書に記載の組成物および方法に対応する例示的な配列を表5に示す。
【0202】
【表5】















【0203】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態が単なる例として提供されることは当業者には明らかであろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に今や起こるであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実施する際に使用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物は、それによってカバーされることが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
【国際調査報告】