(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/422 20210101AFI20221027BHJP
A61M 60/135 20210101ALI20221027BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20221027BHJP
A61M 60/211 20210101ALI20221027BHJP
A61M 60/806 20210101ALI20221027BHJP
A61M 60/81 20210101ALI20221027BHJP
A61M 60/876 20210101ALI20221027BHJP
【FI】
A61M60/422
A61M60/135
A61M60/237
A61M60/211
A61M60/806
A61M60/81
A61M60/876
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514168
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020074371
(87)【国際公開番号】W WO2021043776
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】グラウヴィンケル マリウス
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077DD10
4C077EE01
4C077FF04
4C077JJ08
4C077JJ19
4C077KK23
(57)【要約】
本発明は、患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプに関する。血液ポンプは、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2と、回転軸10の周りに回転可能となるよう前述のポンプケーシング2内に配置されたインペラ3と、を備える。インペラ3は、血液を血流入口21から血流出口22へ運搬するためにサイズ設定および形状設定されたブレード31を有する。血液ポンプは、インペラ3を回転させるための駆動ユニット4であって、駆動ユニット4が、回転軸10の周りに配置された複数の柱40を含む、駆動ユニット4を備える。柱40の各々は、インペラ3に面する前面42を有するインペラ3の方に向いたインペラ側端部420を有する。コイル巻線44が、柱40の各々の前面42を貫いて延びる磁力線500を作り出すために柱40の各々の周りに配設されており、回転磁界を作り出すよう制御可能であり、インペラ3は、インペラ3の回転を生じさせるよう回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造32を含む。柱40のうちの少なくとも1本の前面42は、前面42が、前面42を貫いて延びる磁力線500の少なくとも部分を集束させるよう前面42の中心区域に向かって下方へ傾斜しているくぼみを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプ(1)であって、
血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
回転軸(10)の周りに回転可能となるよう前記ポンプケーシング(2)内に配置されたインペラ(3)であって、前記インペラ(3)が、血液を前記血流入口(21)から前記血流出口(22)へ運搬するためにサイズ設定および形状設定されたブレード(31)を有する、インペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させるための駆動ユニット(4)であって、前記駆動ユニット(4)が、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)を含み、前記柱(40)の各々が、前記インペラ(3)に面する前面(42)を有する前記インペラ(3)の方に向いたインペラ側端部(420)を有する、駆動ユニット(4)と、
前記柱(40)の各々の前記前面(42)を貫いて延びる磁力線(500)を作り出すために前記柱(40)の各々の周りに配設されており、回転磁界を作り出すよう制御可能であるコイル巻線(44)と、
を備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)の回転を生じさせるよう前記回転磁界と相互作用するように配置された磁石構造(32)を含み、
前記柱(40)のうちの少なくとも1本の前記前面(42)が、前記前面(42)が、前面(42)を貫いて延びる前記磁力線(500)の少なくとも部分を集束させるよう前記前面(42)の中心区域に向かって下方へ傾斜しているくぼみを含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが前記前面(42)の周囲まで広がっていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが、前記複数の柱(40)のうちの隣り合うものに最も接近した前記前面の少なくとも2つまたはちょうど2つの対辺において前記前面(42)の前記周囲まで広がっていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項2または3に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみの周囲が前記前面(42)の前記周囲と一致することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが平らな底部(42b)を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが、前記前面(42)を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、直線状の傾斜側壁(42a)を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項5に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが、前記前面(42)を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、湾曲した傾斜側壁(42a)を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが、前記前面(42)を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、湾曲した底部を有する湾曲した断面を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが、前記前面(42)を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、三角形断面を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみ内において、前記前面(42)が前記回転軸(10)に対して半径外側方向に下方へ傾斜しており、これにより、前記くぼみ内の前記前面(42)の半径方向内側領域が前記くぼみ内の前記前面(42)の半径方向外側領域よりも軸方向に突出していることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが前記柱(40)のうちの前記少なくとも1本の側面に向かって開いており、前記側面が前記回転軸(10)に対して半径方向外方に位置することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項11に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1本が、3つの側面を有する三角形断面を有し、前記3つの側面のうちの1つが前記3つの側面のうちの他の2つと比べて前記回転軸(10)に対して半径方向外方に位置し、前記くぼみが前記3つの側面のうちの前記1つに向かって開いていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記くぼみが0.05mm~0.3mmの最大深さを有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1本が長手方向軸(LA)を有し、そのインペラ側端部(420)が前記柱(40)のうちの前記少なくとも1本の周りに配設された前記コイル巻線(44)のインペラ側端部(424)を越えて半径方向に広がっておらず、ここで、用語「半径方向に」は、前記長手方向軸(LA)を横切る、好ましくは、それと垂直な方向に関することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱のうちの少なくとも1本が、前記それぞれの柱(40)の長手方向軸(LA)を横切る断面内で電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料を含む、またはそれから成ることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項16】
請求項15に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、少なくとも1つの溶接部(82、83、86)が前記不連続な軟磁性材料の表面(811)に設けられており、前記溶接部(82、83、86)が前記不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する少なくとも1つの不連続を橋絡することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)の各々が後端部(450)を有し、前記駆動ユニット(4)が、前記柱(40)の前記後端部(450)を接続し、中間区域(59)内で前記柱(40)の間に広がったバックプレート(50)を含み、前記柱(40)のうちの少なくとも1本の材料が前記バックプレート(50)の前記中間区域(59)の材料と一体になっていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)の各々が後端部(450)を有し、前記駆動ユニット(4)が、前記柱(40)の前記後端部(450)を接続するバックプレート(50)を含み、前記柱(40)の前記後端部(445)のうちの少なくとも1つが、前記バックプレート(50)と接触した後端面(45)を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血管内の血流を支援するための血管内血液ポンプ、特に、患者の血管内への経皮挿入のための血管内血液ポンプに関する。血液ポンプは、改善された駆動ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心型(すなわち、半径方向)血液ポンプ、あるいは血流が軸方向力および半径方向力の両方によって引き起こされる、混合型血液ポンプなどの、異なる種類の血液ポンプが知られている。血管内血液ポンプは、カテーテルを用いて大動脈などの患者の血管内に挿入される。血液ポンプは、通例、通路によって接続された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。血流入口から血流出口への通路に沿った血流を生じさせるために、インペラまたはロータがポンプケーシング内において回転可能に支持されており、インペラは、血液を運搬するためのブレードを設けられている。
【0003】
血液ポンプは、通例、電気モータであることができる、駆動ユニットによって駆動される。例えば、国際公開第2017/162619(A1)号は、電気モータに磁気結合されるインペラを有する血管内血液ポンプを開示している。インペラは、電気モータ内の電気的に磁化されたゾーンに隣接して配設された磁石を含む。インペラ内およびモータ内の電気的に磁化されたゾーンの間の引力のゆえに、モータの回転がインペラに伝達される。すなわち、駆動ユニットは、インペラの回転軸の周りに配置された複数の固定した柱を有し、各柱は線材コイル巻線を保持し、磁心の役割を果たす。制御ユニットが電圧をコイル巻線に順次に供給し、磁気結合されたインペラが回転させられる回転磁界を作り出す。
【0004】
より具体的には、国際公開第2017/162619(A1)号における血管内血液ポンプは、血流入口および血流出口を有するポンプケーシングと、インペラと、インペラを回転させるための駆動ユニットとを備える。回転軸の周りの、ポンプケーシングの内部におけるインペラの回転によって、血液はインペラのブレードによって血流入口から血流出口へ運搬され得る。駆動ユニットは、6本の柱、および柱の後端部を接続し、ヨークの役割を果たすバックプレートを含む。柱は、回転軸と垂直である平面内で見たときに、回転軸の周りに円状に配置されており、柱の各々は、前述の回転軸と平行である、長手方向軸を有する。柱は、シャフト、およびインペラの方に向いたシャフトのインペラ側端部における傾斜したヘッド部分を各々有し、ヘッド部分は、柱の各々の周りに配設されたコイル巻線のための軸方向阻止体の役割を果たすことができる肩部を形成するようシャフトを越えて半径方向に広がっている。制御ユニットが電圧をコイル巻線に順次に供給し、回転磁界を作り出す。インペラは、回転磁界と相互作用し、これにより、インペラがその回転に追随するように配置された磁石構造を備える。
【0005】
動作時、隣り合う柱は異なる磁化を有し得る。その結果、柱を貫いて延びる磁束は、インペラを避けて、それらの隣り合う柱の間を流れる傾向を有する。このような磁束はトルクの発生にとって損失になる。現行技術の不利点は、シャフトを越えて半径方向に広がるヘッド部分が互いに対して著しく小さい距離を有することである。したがって、トルクの発生にとって損失になる、ヘッド部分の間の相当な寄生磁束が存在する。このような寄生磁束は、磁石などの、磁気絶縁材料をヘッド部分の間に配置することによって相殺され得るが、利用可能な空間は極めて限られており、適度な絶縁を達成するためには、磁石の分極が周期的に変化しなければならないであろうが、これは困難である。本発明は、この点に関して駆動ユニットを改善することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の血液ポンプは上述の血液ポンプに対応し得る。したがって、それは、軸流血液ポンプ、あるいは部分的に軸方向に、および部分的に半径方向に圧送する、斜流血液ポンプであり得る(純粋な遠心型血液ポンプの直径は、通常、血管内の適用物にとって大きすぎる)。しかし、本発明の一態様によれば、柱のうちの少なくとも1本の - 好ましくは、柱の各々の - インペラ側端部の前面は、前面が、前面を貫いて延びる磁力線の少なくとも部分を集束させるよう前面の中心区域に向かって下方へ傾斜しているくぼみを含む。
【0007】
磁性材料で作製された構成要素の表面から出る、およびそれへ入る磁束の磁力線は表面と垂直に延びる。すなわち、それらは表面平面に鉛直に出入りする。柱の前面に、くぼみを、すなわち、前面が前面の中心に向かって下方へ傾斜している区域を有する陥凹を設けることによって、前面を通って柱内へ入る、およびそこから出て行くように延びている磁力線は、柱の中心軸の方により接近して延びるように強制される。その結果、磁力線は決して互いに交差しないため、それらは柱のインペラ側端部の前方で集束させられ、インペラに向けて束として方向付けられる。これにより、隣り合う柱の間の寄生磁束が低減される。
【0008】
くぼみの傾斜は表面平面に対して90°未満、好ましくは、0°~30°である。
【0009】
好ましくは、くぼみは前面の周囲まで広がっている。換言すれば、くぼみは前面の外縁から開始し得る。これは、また、最も外側の磁力線もくぼみの傾斜によって影響を受ける効果を有する。最も外側の磁力線は、隣り合う柱へ橋絡する傾向が最も大きいものである。したがって、くぼみは、それが柱の前面の周囲まで広がっている場合に最も効果が高い。
【0010】
くぼみが、前面の少なくとも2つ、好ましくは、ちょうど2つの対辺において、すなわち、隣り合う柱に最も接近したそれらの辺において柱の前面の周囲まで広がっていれば十分であり得る。これは、特に、柱が、例えば、円柱状になっており、それゆえ、断面が円形であるときに有利であり得る。すなわち、磁力線が、隣り合う柱へ橋絡する危険は、柱が互いからわずかな距離を有する場所で最も大きい。したがって、くぼみは、それが、それぞれの隣り合う柱に最も接近して位置付けられた2つの辺においてのみ柱の前面の周囲まで広がっている場合、十分に効果を有する。
【0011】
それにもかかわらず、くぼみの周囲が前面の周囲と一致することが好ましい。このようにすると、くぼみの傾斜のゆえに、最も外側の磁力線が前面の全周囲に沿って前面の中心に向けて方向付けられる。上述のように、最も外側の磁力線は、インペラを避けるように背を向ける傾向が最も大きいものである。したがって、くぼみは、その周囲が前面の周囲と一致する場合に最も効果が高い。
【0012】
最も外側の磁力線を中心に向けて方向付けることで十分になり得るため、くぼみは平らな底部を有してもよい。それゆえ、少なくとも、くぼみの周囲における領域が下方へ傾斜している。この場合には、くぼみは、前面を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、直線状の傾斜側壁を有し得るか、またはそれは、前面を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、湾曲した傾斜側壁を有し得る。くぼみの周囲に向かって増大する傾斜を有する湾曲した傾斜側壁は、最も外側の磁力線に対する結束効果が最大になる効果を有する。
【0013】
代替的に、くぼみは、前面を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、平らな底部でなく、湾曲した底部を有する湾曲した断面を有し得る。このようにすると、磁力線に対するセンタリング効果はくぼみの周囲からその中心に向かって徐々に減少する。
【0014】
さらに代替的に、くぼみは、前面を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、三角形断面を有し得る。このようにすると、くぼみの最大深さが増大させられ得る。くぼみが深いほど、柱の前面のそれぞれの部分とインペラの磁石構造との間の距離は大きくなり、柱とインペラとの間に発生される軸方向磁気力の低減をもたらす。特に、軸方向磁気力を低減することによって磁気トルクと軸方向磁気力との比を増大させることができ、前述の比は磁気駆動式血管内血液ポンプの発展のために重要な数である。発生することができる磁束は概して制約があり、これにより、そのできるだけ多くをトルク発生のために用いることが望まれるため、前述の比は重要である。くぼみの技術的効果は、モータ動力の損失を伴うことのない、ロータに軸方向に作用する軸方向力の低減、または、代替的に、同じ総磁束におけるモータ動力の増大である。
【0015】
この比は、本発明の好ましい態様によれば、(その中心区域に向かって下方へ傾斜していることに加えて)半径外側方向におけるくぼみ内の前面の下方傾斜によって、いっそう増大させることができる。それゆえ、回転軸に対して、くぼみ内の前面の半径方向内側領域はくぼみ内の前面の半径方向外側領域よりも軸方向に突出している。この場合も先と同様に、その結果は、くぼみの最大深さが増大させられることである。上述のように、くぼみが深いほど、柱の前面のそれぞれの部分とインペラの磁石構造との間の距離は大きくなり、柱とインペラとの間に発生される軸方向磁気力の低減をもたらす。それゆえ、磁気トルクと軸方向磁気力との比は、半径外側方向におけるくぼみ内の前面の下方傾斜によってさらに増大させることができる。
【0016】
半径外側方向における前面の下方傾斜によって達成される別の重要な効果は、集束させられた磁力線の束が半径方向外方へ方向付けられ、それゆえ、水平な前面と比べてインペラの磁石構造に同様に半径方向外方で突き当たることである。これは、達成可能な磁気トルクに対する正の効果を有する。この場合も先と同様に、これは磁気トルクと軸方向磁気力との比の改善をもたらす。それゆえ、磁気トルクと軸方向磁気力との比に対する半径外側方向におけるくぼみ内の前面の下方傾斜の正の効果は二重になっている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、中心方向および半径方向外方への、両方の方向におけるくぼみ内の前面の傾斜の組み合わせは、柱の側面に向かって、すなわち、回転軸に対して半径方向外方に位置する側面に向かって開いたくぼみをもたらす。好ましくは、柱は、3つの側面を有する三角形断面を有し、3つの側面のうちの1つは、他の2つの側面と比べると、回転軸に対して半径方向外方に位置する。このような場合には、くぼみは、柱の半径方向外側に位置する3つの側面のうちの1つに向かって開いている。
【0018】
上述の変形の全てにおいて、くぼみは、好ましくは、0.05mm~0.3mmの最大深さを有し得る。
【0019】
本発明の別の態様によれば、柱は、そのインペラ側端部が、柱の周りに配設されたそれぞれのコイル巻線のインペラ側端部を越えて半径方向に広がっていない。ここで、用語「半径方向に」は、それぞれの柱の長手方向軸を横切る、好ましくは、それと垂直な方向に関する。換言すれば、柱は特別のヘッド部分を有しない。その代わりに、柱は、好ましくは、少なくともそれらのインペラ側端部領域において、より好ましくは、それらの全長に沿って、一定の断面を有する。
【0020】
ヘッド部分を有しない柱の利点は、隣り合う柱の間の寄生磁束に起因する磁気損失が、柱の間のより大きい距離によって低減されることである。結果は、この場合も先と同様に、柱が、それらのインペラ側端部がそれぞれのコイル巻線のインペラ側端部を半径方向に越えた様態で広がっている、国際公開第2017/162619(A1)号において説明されるポンプと比べて、達成可能な磁気トルクと、駆動ユニットとインペラとの間の磁気軸方向力との比が増大させられることである。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、柱は、それぞれの柱の長手方向軸を横切る、好ましくは、それと垂直な断面内で不連続である軟磁性材料を各々含み得、前述の軸は、好ましくは、国際公開第2019/057636(A1)号においてさらに詳細に説明されるように、回転軸と平行である。本発明の意味における「不連続(discontinuous)」は、軟磁性材料の厳密に分離された区域、または分断されているが、異なる場所で接続されている区域を形成するために、軟磁性材料が、長手方向軸を横切る任意の断面内で見たときに、絶縁材料もしくは他の材料または間隙を用いて分断されている、分離されている、区切られている、または同様の様態になっていることを意味する。換言すれば、柱の軟磁性材料は、柱内のそれぞれのコイル巻線によって生じた磁束の方向を横切る、好ましくは、それと垂直な断面内で不連続である。磁束の方向を横切る断面平面内で不連続な軟磁性材料を提供することは渦電流を低減する。これは血管内血液ポンプの有効性をさらに高める。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの溶接部が不連続な軟磁性材料の表面(811)に設けられており、溶接部は不連続な軟磁性材料内の電気伝導率に関する少なくとも1つの不連続を橋絡する。溶接部は不連続な軟磁性材料からの磁心またはそれの部分の容易な製作を可能にする。すなわち、磁心、または磁心のための柱を不連続な軟磁性材料のより大きい被加工物から分離する際に、不連続な軟磁性材料は、分離プロセスの間に被加工物に対して印加される加工力のゆえに、層間剥離するか、または他の様態でその完全性を失い得る。これは、磁心、および特に、その柱の非常に小さい寸法のゆえに特に重大であり、磁心、またはその柱を被加工物から分離するために、放電加工、特に、ワイヤカットによる放電加工が用いられるときにさえ生じ得る。分離ステップの前に被加工物に適用される、溶接部を用いることで、不連続な材料の機械的安定性が改善される。磁心または柱を被加工物から切り出すために放電加工が用いられる場合には、また、切り出しの場所への電流の流れも改善される。溶接部または溶接部群は後に磁心または柱の部分を形成し得る。具体的には、回転軸を横切るように配向された柱のインペラ側端面は不連続な材料を露出させる。したがって、溶接部または溶接部群は柱のインペラ側表面上に配置され得る。
【0023】
駆動ユニットは、柱の後端部を接続するバックプレートを含み得る。柱と同様に、バックプレートは不連続な軟磁性材料を含み得る。バックプレート内の磁束は、回転軸を実質的に横切る、またはそれと垂直であるため、バックプレートの軟磁性材料は回転軸と平行な断面内で不連続に作製され得る。代替的に、柱およびバックプレートは、バックプレートの軟磁性材料および柱の不連続な軟磁性材料が同じ方向において不連続になるよう、好ましくは、回転軸と垂直な断面内で不連続になるよう、不連続な軟磁性材料のモノブロックから作製され得る。それを除いて、以上において柱の不連続な材料に関して述べられた実質的に全ての特徴および説明はバックプレートにも当てはまる。しかし、バックプレートは、代替的に、連続的、すなわち、中実の軟磁性材料で形成されてもよい。
【0024】
柱の後端部を接続するバックプレートを含む駆動ユニットの1つの好ましい実施形態によれば、柱のうちの少なくとも1本の材料はバックプレートの中間区域の材料と一体になっている。ここで、バックプレートの中間区域は、柱の間に配置されたバックプレートの区域である。好ましくは、全ての柱がこのようにバックプレートに一体的に接続されている。換言すれば、駆動ユニットの少なくとも1本の柱およびバックプレート、好ましくは、磁心全体を、モノブロックとも称され得る、単一の材料ブロックで作製することができる。このような磁心の利点は、柱とバックプレートとの間の移行部における磁気抵抗が最小限に抑えられ、それゆえ、磁束が改善されることである。さらに、柱とバックプレートとの間の移行部の良好な機械的剛性を達成することができる。
【0025】
柱の後端部を接続するバックプレートを含む駆動ユニットの別の好ましい実施形態によれば、柱のうちの少なくとも1本、および好ましくは、柱の全ては、それぞれの柱の後端面をもってバックプレートと接触する。これは、柱とバックプレートとの間の磁気的接続の品質を、バックプレートに対する柱の機械的固着の品質から独立させることができるという利点をもたらす。例えば、柱は、バックプレート内の対応する凹部内でバックプレートに機械的に、または柱の後端部の周りに提供される接着剤を用いて固着され得る。それゆえ、良好な磁気的接続、ひいては、良好な磁束を、柱とバックプレートとの間の機械的接続の機械的特性に関する制約を受け入れるよう強制されることなく、バックプレート内への柱の後端面を介して直接達成することができる。さらに、柱の後端部が、バックプレート内の適切にサイズ設定された凹部内に受容される場合には、磁束の周囲伝達に加えて存在し得る、磁束の伝達のための磁路が確立される。
【0026】
それゆえ、この場合には、柱は、バックプレートの対応する接触平面においてバックプレートに磁気的に接続され得る。接触平面は、好ましくは、柱の後端面と平行に配置されている。好ましくは、それは回転軸と垂直に配置されている。好ましくは、柱の後端面の全表面積がバックプレートと接触している。これは柱とバックプレートとの間の接続の磁気抵抗を大幅に低減する。後端面およびバックプレートの接触平面の非平坦性は、好ましくは、生じる間隙が10μm以下になるようになっている。
【0027】
バックプレートは、柱と同様に、好ましくは、電気鋼(磁性鋼)、または磁束回路を閉じるのに適した他の材料、好ましくは、コバルト鋼などの、軟磁性材料で作製されている。バックプレートの直径は、3mm~9mm、例えば、5mmまたは6mm~7mmなどの範囲内にあり得る。バックプレートの厚さは、0.5mm~2.5mm、例えば、1.5mmなどの範囲内にあり得る。血液ポンプの外径は4mm~10mmの範囲内にあり得、好ましくは7mmであり得る。複数の柱の構成の外径は、3mm~8mm、例えば、4mm~7.5mmなどの範囲内にあり得、好ましくは、6.5mmであり得る。
【0028】
上述されたように、柱は電気鋼(磁性鋼)などの軟磁性材料で作製されている。柱およびバックプレートは同じ材料で作製され得る。好ましくは、柱およびバックプレートを含む、駆動ユニットの磁心はコバルト鋼で作製されている。コバルト鋼の使用は、ポンプサイズ、特に、直径の低減に寄与する。全ての磁性鋼の中で最も高い透磁率および最も高い飽和磁束密度を有するため、コバルト鋼は同量の使用材料に対して最大量の磁束を生成する。
【0029】
柱の寸法、特に、長さおよび断面積は変化し、様々な因子に依存し得る。血液ポンプの適用物に依存する、血液ポンプの寸法、例えば、外径とは対照的に、柱の寸法は、駆動ユニットの所望の性能を達成するように調整される、電磁特性によって決定される。因子のうちの1つは、柱の最小の断面積を貫いて達成されるべき磁束密度である。断面積が小さいほど、所望の磁束を達成するために必要な電流は高くなる。しかし、電流が高いほど、電気抵抗のゆえにコイルの線材内に多くの熱を発生する。なおさらに重要な点として、柱の断面が小さすぎる場合には、ステータ材料は急速に磁気的に飽和する。それは、全体サイズを低減するには「細い」柱が好ましいが、これは高い電流を必要とし、それゆえ、望ましくない熱を生じさせるであろうことを意味する。線材内に発生される熱はまた、コイル巻線のために用いられる線材の長さおよび直径にも依存する。巻線損失(通常の場合のように、銅線材が用いられる場合には、「銅損」または「銅電力損」と称される)を最小限に抑えるには、短い線材長および大きい線材径が好ましい。換言すれば、線材径が小さい場合には、同じ電流においてより太い線材と比べてより多くの熱が発生される。好ましい線材径は0.05mm~0.2mm、例えば、0.1mmなどである。柱の寸法および駆動ユニットの性能に影響を及ぼすさらなる因子は、コイルの巻線数、および巻線、すなわち、巻線を含む柱の外径である。各柱の周りに多数の巻線が1つを超える層状に配置され得、例えば、2つまたは3つの層が提供され得る。しかし、層数が多いほど、より大きい巻線径を有する外層内の線材の増大した長さのゆえにより多くの熱が発生されることになる。線材の増大した長さは、より短いものと比べて、長い線材のより高い抵抗のゆえにより多くの熱を発生し得る。それゆえ、小さい巻線径を有する巻線の単一の層が好ましいであろうが、必要とされる動力のゆえに、通常は、1つを超える巻線が提供される。
【0030】
柱の長さに次に依存する、典型的な巻線数は、約50~約150、例えば、56または132であり得る。巻線数とは関係なく、コイル巻線は、電気伝導性材料、特に、銅または銀などの、金属で作製される。銀は、銅の電気抵抗よりも約5%小さい電気抵抗を有するため、銀が銅よりも好ましくなり得る。
【0031】
好ましくは、少なくとも1本の柱、より好ましくは、各柱は、柱の長手方向軸を横切る三角形断面を有する。好ましくは、柱の断面はその全長にわたって三角形である。このような柱は回転軸の周りに高密度に詰めることができるため、三角形の柱はポンプハウジングの内部の利用可能な空間を高い割合まで利用することができる。好ましくは、三角形の1つの辺は、回転軸から見て外方に向いており、湾曲している。湾曲は回転軸の周りに曲がっている。湾曲の半径は、好ましくは、回転軸の周りに配置された複数の柱によって規定される外径の半径に対応する。このような湾曲によって、円筒形ポンプハウジングの内部における空間の利用のさらなる拡大を達成することができる。
【0032】
上述の概要、および好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより深く理解されるであろう。本開示を例示する目的のために、図面を参照する。しかし、本開示の範囲は、図面において開示される特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】駆動ユニット-インペラ構成の第1の実施形態の断面図を示す。
【
図3A】
図1および
図2に係る駆動ユニット-インペラ構成の駆動ユニットの磁心の側面図および斜視図を示す。
【
図3B】
図1および
図2に係る駆動ユニット-インペラ構成の駆動ユニットの磁心の側面図および斜視図を示す。
【
図4】
図3Aおよび
図3Bに示される磁心の6本の柱の巻きを開いたものを概略的に示す。
【
図5A】4つの異なる実施形態に係る柱のインペラ側端部上の側面図を各々示す。
【
図5B】4つの異なる実施形態に係る柱のインペラ側端部上の側面図を各々示す。
【
図5C】4つの異なる実施形態に係る柱のインペラ側端部上の側面図を各々示す。
【
図5D】4つの異なる実施形態に係る柱のインペラ側端部上の側面図を各々示す。
【
図6A】
図2に係る駆動ユニット-インペラ構成のためのスペーサを斜視図で示す図である。
【
図7A】
図2に係る構成の駆動ユニットの柱のための開口部を有するバックプレートの第1の層の斜視図を示す。
【
図7B】
図2の構成の駆動ユニットの柱のための開口部を有しないバックプレートの第2の層の斜視図を示す。
【
図7C】
図7Aおよび
図7Bの第1および第2の層を含む組み立てられたバックプレートの断面図を示す。
【
図8A】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図8B】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図8C】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図8D】
図2に係る構成の駆動ユニットのための柱のさらなる製作のための中間製品を製作する段階を示す図である。
【
図10】
図8A~
図9Cに従って準備されたとおりの中間製品から分離された柱の斜視図を示す。
【
図11】2つの溶接継ぎ目、および中間製品から切り出されることになる柱の2つの断面を有する、
図9Aの中間製品の平面上の正面図を示す。
【
図13】駆動ユニット-インペラ構成の第2の実施形態の断面図を示す。
【
図14A】
図13に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図14B】
図13に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【
図14C】
図13に係る駆動ユニットのための一体化磁心を製作するステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。血液ポンプ1は、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2を備える。血液ポンプ1は、カテーテルポンプとも呼ばれる、血管内血液ポンプとして設計され、カテーテル25を用いて患者の血管内へ展開される。血流入口21は、使用時、大動脈弁などの、心臓弁を貫いて配置され得る可撓性カニューレ23の端部にある。血流出口22はポンプケーシング2の側面内に位置し、大動脈などの、心臓血管内に配置され得る。血液ポンプ1は、以下においてより詳細に説明されるように、駆動ユニット4を用いてポンプ1を駆動するべく血液ポンプ1に電力を供給するためのカテーテル25を通って延びる電気線材26と電気接続されている。
【0035】
血液ポンプ1が、長期間の適用物内で用いられることを意図されている場合には、すなわち、血液ポンプ1が、数週間、またはさらに、数カ月間、患者に埋め込まれている状況では、電力は、好ましくは、電池を用いて供給される。患者がケーブルによって基地点に接続されないため、これは、患者が移動することを可能にする。電池は患者によって携行され得、電気エネルギーを、例えば、無線で、血液ポンプ1に供給し得る。
【0036】
血液は、血流入口21および血流出口22を接続する通路24に沿って運搬される(矢印によって血流が指示されている)。インペラ3が、血液を通路24に沿って運搬するために設けられており、第1の軸受11および第2の軸受12を用いてポンプケーシング2内で回転軸10の周りに回転可能になるように装着されている。回転軸10は、好ましくは、インペラ3の長手方向軸である。軸受11、12は両方とも本実施形態では接触型軸受である。しかし、軸受11、12のうちの少なくとも一方は、磁気または動圧流体軸受などの、非接触型軸受であることができるであろう。第1の軸受11は、回転運動およびある程度の枢転運動を可能にする球面軸受面を有するピボット軸受である。軸受面のうちの1つを形成するピン15が設けられている。第2の軸受12は、インペラ3の回転を安定させるための支持部材13内に配設されており、支持部材13は血流のための少なくとも1つの開口部14を有する。インペラ3が回転すると血液を運搬するためのブレード31がインペラ3上に設けられている。インペラ3の回転は、インペラ3の端部部分において磁石32に磁気結合された駆動ユニット4によって生じる。図示の血液ポンプ1は混合型血液ポンプであり、流れの主方向は軸方向である。血液ポンプ1はまた、インペラ3、特に、ブレード31の構成によっては、純粋に軸方向の血液ポンプにもなり得るであろうことは理解されるであろう。
【0037】
血液ポンプ1はインペラ3および駆動ユニット4を備える。駆動ユニット4は、6本の柱40などの、複数の柱40を含み、そのうちの2本のみが
図1の断面図において可視である。柱40は回転軸10と平行に配置されており、より具体的には、柱40の各々の長手方向軸は回転軸10と平行である。柱40の一方の端部420はインペラに隣接して配設されている。コイル巻線44が柱40の周りに配置されている。コイル巻線44は制御によって、回転磁界を作り出すよう順次に制御される。制御ユニットの部分は、電気線材26に接続されたプリント配線板6である。インペラは、本実施形態では多ピース磁石として形成された、磁石32を有する。磁石32は、駆動ユニット4に面するインペラ3の端部に配設されている。磁石32は、回転軸10の周りのインペラ3の回転を生じさせるよう回転磁界と相互作用するように配置されている。
【0038】
磁束経路を閉じるために、バックプレート50が、柱のインペラ側と反対の柱40の端部に配置されている。柱40は磁心の役割を果たし、好適な材料、特に、鋼または好適な合金、特に、コバルト鋼などの、軟磁性材料で作製されている。同様に、バックプレート50は、コバルト鋼などの、好適な軟磁性材料で作製されている。バックプレート50は磁束を増強し、これは、血管内血液ポンプにとって重要である、血液ポンプ1の全径の低減を可能にする。同じ目的のために、ヨーク37、すなわち、追加のインペラバックプレートが、駆動ユニット4から遠ざかる方に面した磁石32の側でインペラ3内に設けられている。本実施形態におけるヨーク37は、血流をインペラ3に沿って案内するために円錐形状を有する。ヨーク37もコバルト鋼で作製され得る。中心軸受11に向かって延びる1つ以上のウォッシュアウト流路がヨーク37または磁石32内に形成され得る。
【0039】
図2は、
図1に係る血液ポンプのための駆動ユニット-インペラ構成の第1の好ましい実施形態の断面図を示す。
図2において見ることができるように、柱40のインペラ側端部420は巻線44を越えて半径方向に広がっていない。むしろ、柱40の断面は柱40の長手方向軸LAの方向において一定である。かくして、柱40が互いに接近することが回避されている。なぜなら、これは、部分的な磁気短絡を生じさせ、その結果、血液ポンプの電気モータの動力の低減をもたらし得るからである。
【0040】
図2に係る駆動ユニットは少なくとも2本の柱40を含み得る。柱の数は、好ましくは、3の倍数であり、それゆえ、3本、9本、または12本であり得る。代替的に、柱40の数は、2本、4本、6本、8本、10本、または12本などの、2の倍数であり得る。より多数の柱40も可能であり得る。6本の数の柱40が好ましい。断面図のゆえに、2本の柱40のみが可視である。柱40およびバックプレート50は、10mm未満の直径を有し得る駆動ユニット4の磁心400を形成する。
【0041】
柱40は、図示のように、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料から成り得る。不連続な軟磁性材料は、強磁性材料で作製され、互いに積層された複数のシート85を含む。積層方向は柱40の長手方向軸LAの方向に配置されており、矢印DLによって標識されている。図示のように、柱40は回転軸10と平行に配置されている。
【0042】
スペーサ7が柱40の周りに配設されている。それは磁気的に不活性の材料で作製されており、柱40の、それらのインペラ側端部420における距離を一定に保つ目的を有する。スペーサ7は、
図6A~
図6Cに関してさらに詳細に説明されることになる。コイル巻線44のインペラ側端部424はスペーサ7まで広がっている。柱40の他方の端部に、バックプレート50が設けられている。
図2に示される実施形態によれば、バックプレート50は、柱40を内部に受容するための凹部を有する。より具体的には、それは、柱40の後端部450のための開口部511を有する第1の層51を含む。バックプレート50は、
図7A~
図7Cに関してさらに詳細に説明されることになる。
【0043】
3つの上述の特徴:柱のインペラ側端部424が巻線44のインペラ側端部を越えて半径方向に広がっていないこと、柱40の間に磁気的に不活性のスペーサ7を提供すること、および柱40の後端部450を受容するための凹部を有するバックプレート50、の任意の組み合わせを有する血液ポンプ1の実施形態を実現することが想到可能である。
【0044】
図3Aおよび
図3Bは、
図1および
図2に係る駆動ユニット-インペラ構成の駆動ユニット4の磁心400の側面図および斜視図を示す。磁心400の柱40およびバックプレート50は、インペラ3の磁石構造32まで距離を有するように示されている。図から分かるように、柱40のインペラ側端部420の各々の前面42はくぼみを設けられている。この特定の実施形態において、および以下に説明される全ての実施形態において、くぼみは、くぼみの周囲が前面42の周囲と一致するよう前面42全体にわたって広がっている。
【0045】
それゆえ、くぼみの傾斜は前面42の周囲まで広がっている。くぼみは、前面42を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、三角形断面を有し、前述の平面は、図示の実施形態では、それぞれの柱40の長手方向軸と垂直である。これは、国際公開第2017/162619(A1)号において説明されるように、柱40の前面42の各々が、磁心400の円錐形の前方側を共に形成するよう傾斜している実施形態では、異なるであろう。すなわち、国際公開第2017/162619(A1)号では、柱は、シャフト、およびシャフトのインペラ側端部における傾斜したヘッド部分を各々有する。また、それらのヘッド部分の前面も、傾斜しているものの、前面が前面の中心区域に向かって下方へ傾斜しており、前面を貫いて鉛直に延びる断面平面内で見たときに、三角形断面を有する上述のくぼみを設けられ得る。
【0046】
前面の中心区域に向かう下方へのくぼみ内の前面42の傾斜は、以下において
図4に関して説明されるように、前面を貫いて延びる磁力線を集束させ、かくして、それらを束ねる役割を果たす。しかし、くぼみの内部において、前面42は前面42の中心区域に向かって下方へ傾斜しているだけでなく、回転軸10に対して半径外側方向に下方へさらに傾斜している。換言すれば、くぼみ内の前面42の半径方向内側領域はくぼみ内の前面42の半径方向外側領域よりも軸方向に突出している。半径方向外方への下方傾斜の目的は、磁力線をインペラの磁石構造32の外周縁に向けて方向付け、これにより、インペラ3が回転させられるレバーアームを増大させ、それゆえ、トルクを増大させるという目的を含む。したがって、くぼみの傾斜が前面42の中心に向かい、半径方向外方にも向かっていることは、三角形断面を有する柱40にとって、くぼみが、回転軸に対して半径方向外方に位置する柱40の側面に向かって開いているという結果をもたらす。それゆえ、前面42の最大深さの地点はそれぞれの柱40の外周に位置しており、0.05mm~0.3mm、好ましくは、0.1mm~0.2mmの範囲に及び得、最も好ましくは、約0.2mmである。
【0047】
図4は、
図3Aおよび
図3Bに示される磁心400などの、磁心400の6本の柱40a、40bの巻きを開いたものを概略的に示す。回転磁界を作り出すためには、2つの面が重要である。第1に、柱のうちの一部は正の方向に磁化されなければならず、その一方で、他のものは負の方向に磁化され、それゆえ、磁束の磁気流体線が、磁化された柱による正から、インペラ32の磁石構造を通って、負に磁化された柱内に入り、さらに、バックプレート50を通って、正に磁化された柱内へ戻るように延び、これにより、閉じた磁界を作り出すようにする。第2に、柱の磁化方向は、インペラ3の磁石構造32を回転軸10の周りに回転牽引するために、円周方向に柱から柱へと順次に変更されなければならない。これを達成するために、隣り合う柱は、柱40の各々の周りに設けられたコイル巻線44を流れる適切に方向付けられた電流によって反対方向に磁化される。例えば、第1の柱は正に、第2の隣り合う柱は負に、第3の隣り合う柱は正に、第4の隣り合う柱は再び負に、などのように磁化され得る。しかし、好ましい実施形態では、インペラ3の磁石構造32を牽引するために一方の方向に磁化された2本の隣り合う柱が常に存在し、次の後続の柱のうちの1本のみが反対に磁化される。6本の柱の場合には、6本の柱の巻きを開いたものが概略的に表示された
図4において指示されるように、4本の柱40bが一方の方向に磁化され、2本の柱40aが反対方向に磁化される。
図4からさらに分かるように、くぼんだ前面42を貫いて延びる磁力線500は、くぼみ内の傾斜した表面のおかげで、磁力線が束を形成するよう集束させられる。それゆえ、磁力線500が、隣り合う柱40aおよび40bの間を橋絡するという意味での短絡の危険が最小限に抑えられる。
【0048】
図5A~
図5Dは、4つの異なる実施形態に係る柱のインペラ側端部420上の側面図を各々示す。
図5Aに示される実施形態は、以上において説明されたように、前面の周囲と一致する周囲を有し、前面42の中心区域に向かって下方へ傾斜するとともに、回転軸に対して半径方向外方へも傾斜した2つの傾斜側壁42aを有するくぼみを有する上述の実施形態に対応する。その結果、くぼみは、前面42を貫いて鉛直に延びる任意の断面平面内で見たときに、三角形断面を有し、柱の半径方向外側で開いている。
【0049】
図5Bに示される実施形態は、それが平らな底部42bを有することを除いて、
図5Aの実施形態に実質的に対応する。それゆえ、くぼみの三角形断面は回転軸に対して柱の半径方向内側に限定される。さらに半径方向外方では、断面は台形である。それゆえ、底部42bは平らであり、前面42の一般面と平行であり、それに対して、側壁42aは、反対に配向された傾斜を有する直線状の側壁である。
【0050】
図5Cに示される実施形態では、くぼみは、くぼみの傾斜が前面42の周囲において最大になるよう、湾曲した傾斜側壁42aを有する。
【0051】
図5Dに示される実施形態は、
図5Bおよび
図5Cに示される実施形態の組み合わせである。すなわち、くぼみは平らな底部42bおよび湾曲した傾斜側壁42aを有する。
【0052】
図6A~
図6Cは、スペーサ7の斜視図、正面図、および側面図をそれぞれ示す。スペーサ7は、概して、中央に貫通孔75を有する円板または車輪の形態を有する。スペーサ7は柱の各々のための開口部71を含む。6本の柱40を有する実施形態については、図示のように、6つの開口部71が存在する。開口部71の間に、離間スポーク72が配置されている。柱40が開口部71内に挿入されているときに、離間スポーク72は柱40の間の距離を一定に保つ。さらに、スペーサ7は、隣り合う離間スポーク72を接続し、スペーサを安定させる外側リム73および内側リム74を含む。スペーサ7は、柱40のインペラ側端部420の間に配置されたときに磁気短絡を回避する常磁性材料であるチタンで作製されている。チタンは高い機械的強度をもたらし、これにより、それはわずかな厚さのスペーサ7の製作を可能にする。これは構築空間の消費の点で有利である。また、チタンは、渦電流損失が最小限になるよう低い電気伝導率を有し、チタンは機械加工が容易である。しかし、任意の他の非磁性材料が、それが安定しており、高精度で機械加工可能であり、電気を容易に伝導しないことを条件として、同様に用いられ得る。また、反磁性材料の使用も、それが外部磁界を相殺するため、可能である。
【0053】
図7Aはバックプレート50の第1の層51上の斜視図を示す。第1の層51は、中心孔515を有する円板または車輪の全体的形状を有する。第1の層52は、柱40の後端部450が配置されることになる開口部511を含む。第1の層51は、開口部511の間の離間スポーク512を含む。離間スポーク512の1つの目的は、柱40の後端部450の間の距離を一定に保つことである。さらに、第1の層51は、それぞれ、開口部511の外側半径方向端部および内側半径方向端部において離間スポーク512を接続する外側リム513および内側リム514を含む。第1の層51は、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料で作製され得る。それは、いくつかの強磁性シート85、特に、
図7Aに示されるように、3枚のシートを含み得る。シート85は電気的非伝導性材料を用いて互いに積層され、不連続な軟磁性材料を形成する。積層方向DLはシート85と概ね平行であり、シートの主たる広がりの方向が積層平面を規定する。バックプレート50内において、シート85は回転軸10と垂直である。第1の層51の中心において、孔515が配置されている。それは、第1の層51および第2の層52の組み立てを容易にする目的を有し、例えば、それは、第1および第2の層51、52を中心合わせする役割を果たし得る。
【0054】
図7Bに、バックプレート50の第2の層52の斜視図が示されている。第2の層52は、実質的に、第1の層51内の孔515に対応する中心における孔525を有する円板の形態を有する。第2の層52は柱40の後端部のための開口部を全く有しない。代わりに、第2の層52は、柱40の後端部450に面した接触平面526を提供する。柱の後端部450は、駆動ユニットの組み立てられた状態において、バックプレート50の第2の層52の接触平面526と接触しており、柱40の後端部450とバックプレート50との間で磁束を伝達する。柱40の後端部450の全てが接触平面526と接触しているため、柱40の間で磁束を交換することができ、磁気的ゼロ点が第2の層52内に生じ得る。これを可能にするために、第2の層52は軟磁性材料で作製されている。軟磁性材料は、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料であり得、以上において第1の層51に関して説明されたとおりの構造と同様の、互いに積層されたシート85を含み得る。一例として、
図7Bに示されるとおりの3枚のシート85が第2の層52を形成し得る。第2の層52内において、積層方向Dは回転軸10と垂直である。シート85は強磁性かつ電気的に伝導性であり、それに対して、明示的に示されていない、シート85の間の中間層は非強磁性かつ電気的に非伝導性である。この種の不連続な軟磁性材料は、さもなければ磁束の変化によってより大量に発生されるであろう渦電流を低減する。第2の層52の中央における孔525は、第1の層51および第2の層52の組み立てを容易にする目的を有し、例えば、それは、第1および第2の層51、52を中心合わせする役割を果たし得る。
【0055】
図7Cはバックプレート50の断面を示す。それは、最も大きい広がりを有するそれらの主表面において互いに接合された第1の層51および第2の層52で構成されている。バックプレート50の第1の層51と第2の層52との間の接合は第1および第2の層51、52のシート85の間と同じ仕方で確立され得る。第1の層51および第2の層52の貫通孔515および525は、第1および第2の層51、52を中心合わせするために互いに整列させられる。第1および第2の層51、52を積み重ねることによって、開口部511は第2の層52によって一方の端部において閉じられ、これにより、凹部501が柱40の後端部450の収容のために形成される。凹部501の底部は接触平面526を形成する。柱40が凹部501内に挿入されたときに、その後端部450は接触平面526と接触する。さらに、柱40の位置は、柱40の各々を共に包囲する、離間スポーク512によって、ならびに外側および内側リム513、514によって固定される。このように、接触平面526において第2の層52と柱40の後端面45との間で磁気的接続が確立され、加えて、柱40と第1の層51の上述の包囲する部分との間で第2の磁気的接続が確立される。しかし、磁束の主要部分は接触平面526を介して伝えられる。好ましくは、柱40の後端部450における表面、および接触平面526は両方とも既定の平坦性を有する。このように、柱40の後端部450における表面45と接触平面526との間の間隙は、好ましくは10μm未満の特定の値未満に維持され得る。これは柱40とバックプレート50との間の磁束の伝達を改善する。好ましくは、柱40の後端部450における表面45と接触平面526との間に追加の材料は存在しない。本発明の本実施形態では、表面45およびバックプレート50を介した磁束の伝達は、柱40をバックプレート50に留める仕方とは無関係である。
【0056】
図8A~
図8Dは柱40の生成のための準備ステップを示す。
図8Aは、以下において被加工物とも称される、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料で作製されたプレート8の斜視図を示す。
【0057】
図8Aにおいて、プレート8に、被加工物棒材81をプレート8から切り取るための幅Wが標識されている。被加工物棒材81の幅Wは、被加工物棒材81から製作されることになる柱40の長さと同一である。
図8Bに、
図8Aにおいて長方形Rによって標識された部分の拡大図が示されている。ここでは、不連続な軟磁性材料の積み重ねられたシート85が視認できる。積層方向DLはプレート8の主平面に沿って広がり、それゆえ、積層平面を形成する。
【0058】
図8Cは、プレート8から不連続な材料の個片として切り取られた被加工物棒材81を示す。
図8Dに、
図8Cにおいて長方形Rによって標識された部分の拡大図が示されている。被加工物棒材81のシート85がこの図において視認できる。
【0059】
図9Aは、棒材81からの柱40の切り出しに備えた溶接ステップのための基盤を形成する
図8Cおよび
図8Dの被加工物棒材81を示す。
図9Aにおいて左側に向いた棒材81の側面上に、棒材81から製作されるべき柱40の複数の断面84が示されている。柱40は、これらの断面84を棒材81から切り出すことによって製作される。棒材81の幅Wが柱40の長さに対応するため、棒材81の側面811および812は柱40のインペラ側端部420および後端部450における端面になる。
【0060】
図9Bは、柱40を切り出す前の次の準備ステップを示す。2つの溶接継ぎ目82および83が、棒材81の面811上に、互いに距離を置いて、および切り出されるべき柱40の断面84の各々を横切るように溶接される。溶接継ぎ目82および83はシート85の積層方向DLと垂直に延びている。このように、不連続な材料のシートが互いに接続される。2つの溶接継ぎ目の代わりに、単一の溶接継ぎ目が設けられてもよい。加えて、同様の溶接継ぎ目が棒材81の反対の側面812上に設けられてもよい。シート85は溶接継ぎ目82および83のゆえに互いに対してより良好な機械的接続を有し、さらに、電気接続される。後者は、電流が、柱40になる予定の不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば、放電加工のために必要とされ得る、棒材81の電気接続の各位置へ流れることができるという利点を有する。このように、放電加工が大幅に促進される。さらに、切り出された柱40が層間剥離し得ないため、より高いプロセスの信頼性が達成される。好ましくは、レーザ溶接が適用される。溶接パワーを同じ溶接部に2回、またはさらに多数回、印加することが有利であり得る。
図9Cに、長方形Rによって標識された棒材81の部分が拡大されて示されている。
【0061】
それゆえ、
図9Cは、棒材81から切り出されることになる柱40の複数の断面84を示す。断面84は実質的に三角形の形状を有する。図示のように、角部は丸みを有し得る。
図9Cにおける断面84の左側に示された三角形の凸状の辺842は凸状の形を有する。この種の断面84は、円筒形のポンプハウジング2の内部の利用可能な構築空間を十分に利用するために有利である。断面84の凸状の辺842と反対側にある断面84の角部841の二等分線は積層方向DLとそろっている。このように、シート85は断面84を貫いて対称に延びている。
【0062】
図10は、棒材81から切り出された柱40を示す。図から分かるように、溶接継ぎ目82および83は棒材81の後端部450における表面45上に依然として存在する。柱40はその全長に沿って一定の断面84を有する。必要とされる場合には、溶接継ぎ目82および83は、柱40を切り出した後にばりが取り除かれ得る。同時に、またはその後のステップにおいて、
図5A~
図5Dのうちの任意のものに示されるとおりの構造を有する、または異なる構造を有するくぼみが柱40の反対端部における表面内に切り込まれ、該表面は柱40のインペラ側端部420の前面42を後に形成することになる。代替的に、くぼみは、溶接部を提供し、ワイヤ放電加工によるなどして、柱40を棒材81から切り出す前に形成され得る。
【0063】
図11は被加工物棒材81の側面811上の2つの断面84の別の構成を示す。
図9A~
図9Cに示される被加工物棒材81とは対照的に、
図11の被加工物棒材81の側面811は、2つの断面84を積層方向DLと垂直な方向に互いに隣同士に配設することを可能にするサイズを有する。断面84は積層方向DLに対して、断面84の各々の、そのそれぞれの凸状の辺842と反対側の角部の二等分線Bが積層方向DLとそろうように配向されている。断面84を棒材81に沿って配設するこの仕方は材料を節約する。生じる廃棄材料が少なくなる。棒材81の厚さおよび柱40の所要断面寸法によっては、柱40のさらにより多くの断面84を積層方向DLと垂直な方向に積み重ねることが想到可能である。
【0064】
溶接継ぎ目82および83の各々は断面84の各々を横切って延びている。溶接継ぎ目82、83は、積層方向DLと垂直な方向に棒材81の側面811全体を横切って延びている。このように、棒材81の不連続な軟磁性材料の全てのシート85が互いに接続されている。
【0065】
図12は、溶接された棒材81から切り出された柱40の一例、すなわち、柱40の後端面45上の正面図を示す。
図12に示されるように、三角形断面84の高さの約3分の1超を覆い得る、相当な幅の単一の溶接継ぎ目86が断面84の凸状の辺842に沿って延びている。溶接継ぎ目86は、その全てのシートを接続するよう積層方向DLと垂直に延びている。しかし、
図11に示されるとおりの2つの溶接継ぎ目が単一の継ぎ目よりも好ましい。この場合も先と同様に、凸状の辺842と反対側の角部841の二等分線Bは積層方向DLとそろっている。
【0066】
図13は、
図1に係る血液ポンプ1のための駆動ユニット-インペラ構成の第2の実施形態を示す。
図2に示される第1の実施形態と同様に、インペラ側端部420の前面42は、半径外方方向にインペラ3の磁石構造32から遠ざかるよう先細りになったくぼみを有する。加えて、柱40のインペラ側端部420は巻線44を越えて半径方向に広がっていない。むしろ、柱40の断面は柱40の長手方向軸LAの方向において一定である。かくして、柱40が互いに接近することが回避されている。なぜなら、これは、部分的な磁気短絡を生じさせ、それゆえ、血液ポンプの電気モータの動力を低減し得るからである。
【0067】
この場合も先と同様に、
図13に係る駆動ユニットは少なくとも2本の柱40を含み得る。柱の数は、好ましくは、3の倍数であり、それゆえ、3本、9本、または12本であり得る。代替的に、柱の数は、2本、4本、6本、8本、10本、または12本などの、2の倍数であり得る。より多数の柱40も可能であり得る。6本の数の柱40が好ましい。断面図のゆえに、2本の柱40のみが可視である。柱40およびバックプレート50は、10mm未満の直径を有し得る駆動ユニット4の磁心400を形成する。
【0068】
この第2の実施形態は、磁心の異なる構造によって、
図2に示される第1の実施形態とは異なる。ここでは、磁心400は、柱40およびバックプレート50である、駆動ユニット4の磁石構成要素を1つの単一部品またはモノブロックとして含む。モノブロックは不連続な軟磁性材料から成る。不連続な軟磁性材料は電気伝導率に関して不連続である。図示のように、それは、互いに積層され、
図14Cに示されるとおりのモノブロック9を形成する強磁性材料の複数のシート85を含む。積層方向DLは回転軸10と平行である。
【0069】
コイル巻線44は柱40のインペラ側端部420まで延びている。これは、起磁力が柱40全体に沿って発生され得るという利点を有する。磁心400は、柱40から遠ざかる方に半径方向に突出した柱40の後端部450における突出部401を含む。この突出部401は、バックプレート50に向かうコイル巻線44のためのストッパを形成する。一体化した磁心400はバックプレート50および柱40を、高い剛性をもって接続するため、柱のインペラ側端部420における柱40の間のスペーサが省略され得る。一体化した磁心400は、柱40とバックプレート50との間の最適の磁気的接続が達成されるという利点をもたらす。磁心400は10mm未満の直径を有し得る。
【0070】
図14A~
図14Cは、
図13に示されるとおりの駆動ユニット-インペラ構成の駆動ユニット4のための磁心400を製作するステップを示す。
図14Aは、磁心400を製作するための被加工物を形成する立方体形状のモノブロック9の斜視図を示す。モノブロック9は、電気伝導率に関して不連続である不連続な軟磁性材料から成る。それは、シート85の主平面に沿って延びる積層方向DLに配向されたシート85を含む。シート85は各々、
図14A~
図14Cに明示的に示されていない、電気的非伝導性材料の接合層によってそれらのそれぞれの隣り合うシートに接合されている。
【0071】
図14Bは、磁心400を、それが立方体状のモノブロック9から実質的に円柱状の本体94に加工された、半製品状態で示す。この加工ステップにおいて、突出部401が製作される。磁心400の柱40の周囲面を形成する、本体94の低減した直径の区分404は、柱40の最も外側の凸状の側面842の外半径に対応する直径を有するように製作される。
【0072】
次に、本体94は、
図14Cに示されるとおりの磁心400を生成するようにさらに製作される。この生成ステップのために、放電加工を用いることができる。例えば、柱40を互いに分離する溝穴49を生成するために、ワイヤカットによる放電加工を適用することができる。溝穴の内部に、コイル巻線44のための空間が提供される。溝穴49の底部において、一体的バックプレート50の中間区域59が柱40の後端部の間に広がっている。中間区域59は柱40およびバックプレート50と一体になっている。それゆえ、磁心全体がモノブロック9によって形成されている。
【0073】
磁心400内の積層方向DLは、それが回転軸10と平行であるようになっている。ベースプレート50内の積層方向DLがベースプレート50内の柱40の間の磁流に対して平行でないことは許容され得る。また、電気的に非伝導性の層によって分離されたコイル状の軟磁性シート材料から磁心400を製作することも可能である。このとき、ベースプレート50内の積層方向DLは常に、ベースプレート50内の磁束内の渦電流を回避するために有利である周方向になる。
【0074】
図15A~
図15Cは、
図14A~
図14Cに従って製作されるとおりの一体化磁心表面上に1つ以上の溶接部がどのように設けられ得るのかを示す。したがって、図示の実施形態では、3つの溶接継ぎ目82、83が立方体状のモノブロック9の一方の側の面上に設けられている。溶接継ぎ目82、83は、互いに距離を置いて、およびモノブロック9から切り出されるべき本体94の断面を横切って溶接される。溶接継ぎ目82、83はシート85の積層方向DLと垂直に延びている。このように、不連続な軟磁性材料のシートが互いに接続される。3つの溶接継ぎ目の代わりに、より多くの溶接継ぎ目または単一のより幅の広い溶接部が設けられてもよい。加えて、同様の溶接継ぎ目がモノブロック9の反対側に設けられてもよい(図示せず)。反対側の面上の溶接部の代替として、またはそれらに加えて、1つ以上の溶接継ぎ目がバックプレート50のレベルにおいてモノブロック9の側面上に、バックプレート50を完全に、または少なくとも部分的に包囲するように設けられてもよい。シート85は溶接継ぎ目82、83のゆえに互いに対してより良好な機械的接続を有し、さらに、電気接続される。後者は、電流が、不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば、放電加工のために必要とされ得る本体94内の電気接続の各位置へ流れることができるという利点を有する。このように、放電加工が大幅に促進される。さらに、本体94から切り出されるバックプレート-柱ユニットが層間剥離し得ないため、より高いプロセスの信頼性が達成される。好ましくは、レーザ溶接が適用される。溶接パワーを同じ溶接部に2回、またはさらに多数回、印加することが有利であり得る。
【0075】
その後、本体94は、
図15Cに示されるとおりの磁心400を形成するように機械加工される。この第2の実施形態では、柱40の前面42内のくぼみは、全てが、前面の中心に向かう下方傾斜を有する、2つでなく、3つの傾斜側壁を有する。くぼみの外周は柱40の前面42の外周と一致する。しかし、くぼみは柱40のいずれの側面へも開いていない。特に、2つの傾斜側壁のみを有する
図14Cに示されるとおりの実施形態がより効果が高く、したがって、好ましい。
【国際調査報告】