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特表2022-546550上昇したホモシステインレベルを処置するためのシスタチオニンベータ合成酵素による酵素療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】上昇したホモシステインレベルを処置するためのシスタチオニンベータ合成酵素による酵素療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/43 20060101AFI20221027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20221027BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20221027BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20221027BHJP
   C12N 15/60 20060101ALN20221027BHJP
   C12N 9/88 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
A61K38/43
A61P43/00
A61K47/60
A61P25/28
A61P19/00
A61K45/00
A61P7/02
A61K31/4415
A61K31/714
A61K31/519
A61K31/37
G01N33/68
C12N15/60 ZNA
C12N9/88
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514172
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020049156
(87)【国際公開番号】W WO2021046190
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/895,230
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/983,862
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】320003415
【氏名又は名称】トラヴェール セラピューティクス スウィツァランド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRAVERE THERAPEUTICS SWITZERLAND GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】セロス-モウラ、マルシア
(72)【発明者】
【氏名】バブリル、エレズ モシェ
(72)【発明者】
【氏名】グラビン、フランク
【テーマコード(参考)】
2G045
4B050
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA35
2G045DA42
2G045DA77
4B050CC07
4B050DD11
4B050JJ10
4B050LL01
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC21
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA22
4C084BA44
4C084DC01
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA542
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC51
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA19
4C086BC18
4C086CB09
4C086DA39
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA15
4C086ZA96
4C086ZC21
(57)【要約】
本開示は、認知機能を改善する方法および骨格脆弱性を改良する方法を含む、対象におけるホモシスチン尿症または上昇したホモシステインレベルを処置する方法、ならびに患者集団を層別化して、疾患進行もしくは重症度を決定する、および/または処置レジメンを決定する方法を提供する。一部の実施形態では、上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象における認知機能を改善する方法が、認知または行動介入を提供する工程をさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるCBS欠損を処置する方法であって、
a.前記対象における疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルを決定する工程と;
b.治療有効量の医薬製剤を前記対象に投与する工程であって、前記医薬製剤が、
i.配列番号1を含む単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬;
ii.前記CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および
iii.薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバントを含む、工程と
を含み、
前記対象が、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない患者またはCBS欠損を有する遺伝的に定義されていない患者であり、前記治療有効量の医薬製剤が、前記対象における前記疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルに従って調整される前記原薬の投与量を含む、方法。
【請求項2】
前記対象における疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルを決定する工程が、前記対象から血液または血漿試料を得ること、前記試料における疾患重症度または疾患進行の1つまたは複数の代謝指標のレベルを測定すること、および前記疾患重症度または疾患進行の1つまたは複数の代謝指標のレベルを、健康な対象からの対照試料における同じ代謝指標のレベルと比較することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象における前記疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルに従って調整される前記原薬の投与量が、低用量、中用量または高用量の20NHS PEG-CBSを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
低用量の20NHS PEG-CBSが、約0.25mg/kg~約1.0mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
中用量の20NHS PEG-CBSが、約0.5mg/kg~約1.5mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
高用量の20NHS PEG-CBSが、約1mg/kg~約2mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
高用量の20NHS PEG-CBSが、約2mg/kg~約10mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患重症度または疾患進行の代謝指標が、総ホモシステイン(tHcy)、メチオニン、クレアチニン、C反応性タンパク質、ジメチルグリシン、アラニンアミノトランスフェラーゼ、プロテインC、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アンチトロンビンIIIおよび/またはアポリポタンパク質Aである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患重症度または進行の代謝指標が、tHcyであり、20NHS PEG-CBSの投与量が、上昇した低tHcyレベル、上昇した中tHcyレベル、または上昇した高tHcyレベルに従って前記対象に投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象における認知機能を改善する方法であって、
配列番号1を含む単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬;
前記CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバント
を含む治療有効量の医薬製剤を前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項11】
認知または行動介入を提供する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記認知または行動介入が、行動的ペアレントトレーニング(BPT)または行動的学級マネジメント(BCM)を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象における骨格脆弱性を減少させる方法であって、
配列番号1を含む単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬;
前記CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバント
を含む治療有効量の医薬製剤を前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項14】
前記対象の骨格脆弱性が、骨塩密度決定によって評価される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PEG分子が、ME-200GSである、請求項10~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量が、約0.25mg/kg~約10mg/kgの前記原薬の投与量を含む、請求項10~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記投与量が、約0.33mg/kgの前記原薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与量が、約0.66mg/kgの前記原薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記投与量が、約1.0mg/kgの前記原薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記投与量が、約1.5mg/kgの前記原薬である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸塩およびベタインのうちの1つまたは複数を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項10~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、メチオニン(Met)制限食を受けている、請求項10~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記メチオニン制限食を終了するまたは楽にする工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗血小板薬を投与する工程をさらに含む、請求項10~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗血小板薬が、ワルファリン血液希釈剤または抗凝固薬である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約3日に1回実施される、請求項10~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約1日に1回実施される、請求項10~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約1日に2回実施される、請求項10~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約1週間に1回実施される、請求項10~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約1週間に2回実施される、請求項10~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約6週間にわたって繰り返される、請求項10~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約3か月間にわたって繰り返される、請求項10~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が約6か月間にわたって繰り返される、請求項10~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が6か月間超にわたって繰り返される、請求項10~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
治療有効量の前記医薬製剤を投与する前記工程が、前記対象の残りの寿命にわたって繰り返される、請求項10~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象における前記上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルが、約5μmol/L超のtHcyレベルを含む、請求項10~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象における前記上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルが、約10μmol/L超のtHcyレベルを含む、請求項10~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象における前記上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルが、約15μmol/L超のtHcyレベルを含む、請求項10~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する前記対象が、遺伝的に定義されたHCU患者である、請求項10~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する前記対象が、上昇したtHcyレベルを有するかCBS欠損を有する遺伝的に定義されていない患者である、請求項10~38のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、本明細書に記載される医薬品を使用してホモシスチン尿症を処置する、および上昇したホモシステインレベルに関連付けられる状態を処置するための酵素療法のための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書でHCUまたはHCU1型と呼ばれ、シスタチオニンβ合成酵素欠損ホモシスチン尿症(CBSDH)としても知られる、古典的ホモシスチン尿症は、小児と成人の両方で罹患する希少疾患である。HCUは、シスタチオニンβ合成酵素(CBS)酵素の活性低下または非存在による、尿、組織および血漿中の過剰の化合物ホモシステイン(Hcy)を特徴とする稀な常染色体劣性代謝状態である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献1;非特許文献2参照)。
【0003】
HCUの診断は、非特許文献2に記載されるCBS遺伝子の分子遺伝検査によって確認され得る。CBSは、食事中のタンパク質に存在する硫黄アミノ酸メチオニン(Met)の代謝における酵素である(全体が本願明細書に援用される、非特許文献3参照)。
【0004】
HCUは、以下:1)水晶体偏位(眼の水晶体の脱落)および/または重度の近視、無力体質(長身で痩せた)、骨格異常、早発性骨粗鬆症、および/または血栓塞栓性イベント、不明な発達遅延/知的障害を含む臨床所見;2)高メチオニン血症の新生児スクリーニング、または具体的にはCBS欠損の陽性家族歴が発症前患者識別につながり得る;ならびに3)家族歴に基づいて疑われ得る。患者間でこれらの臨床徴候および症状発生年齢の全てにおいてかなりの変動性がある。現在のスクリーニング手法は通常、あまり重度でないCBS欠損を有する新生児を検出することができず、より重度のHCUを有する患者のごく少数を検出するにすぎない(それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6参照)。
【0005】
ホモシスチン尿症(すなわち、診断されたまたは遺伝的に定義されたHCU)の文脈以外で、上昇した総血漿ホモシステインレベルは、骨粗鬆症および/または骨折の増加したリスクに関連付けられている(非特許文献7参照)。さらに加えて、上昇したtHcyは、「認知低下、認知症、およびアルツハイマー病の発症の修飾可能なリスクファクター」である(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】クラウスら(Kraus et al.)、カーメル アール(Carmel R)、ヤコブセン ディーダブリュー(Jacobsen DW)編.Homocysteine in Health and Disease.英国ケンブリッジ:ケンブリッジ大学出版局(Cambridge University Press);2001:223-243
【非特許文献2】サシャロフら(Sacharow et al.)、シスタチオニンベータ合成酵素欠損によって引き起こされるホモシスチン尿症(Homocystinuria Caused by Cystathionine Beta-Synthase Deficiency).アダム エムピー(Adam MP)、アーディンガー エイチエイチ(Ardinger HH)、パゴン アールエー(Pagon RA)、ウォレス エスイー(Wallace SE)、ビーン エルジェイエイチ(Bean LJH)、メフォード エイチシー(Mefford HC)ら編.GeneReviewsTM[インターネット].シアトル(ワシントン州):ワシントン大学(University of Washington)、シアトル、2017
【非特許文献3】マクリーンら(Maclean et al.)J Biol Chem.2012;287(38):31994-32005
【非特許文献4】ヒューマーら(Huemer et al.)J Inherit Metab Dis.2015年11月;38(6):1007-19
【非特許文献5】ヤップ(Yap)、Orphanet Encyclopedia[オンライン定期].2005、1-13頁
【非特許文献6】シッフら(Schiff et al.)Neuropediatrics.2012年12月;43(6):295-304
【非特許文献7】ヴァン メールスら(van Meurs et al.)N Engl J Med 2004;350:2033-2041
【非特許文献8】スミス エー デビッドら(Smith,A.David,et al.)「ホモシステインおよび認知症:国際合意声明(Homocysteine and dementia:an international consensus statement).」Journal of Alzheimer’s Disease 62.2(2018):561-570
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、HCUと診断されていない、またはHCUと遺伝的に定義されていない、CBS欠損および/または上昇したtHcyレベルを有する対象を識別、層別化および処置する方法が、当技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象における認知機能を改善する方法であって、配列番号1を含む単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬;CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバントを含む治療有効量の医薬製剤を対象に投与する工程を含む方法が本明細書で提供される。
【0009】
一部の実施形態では、上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象における認知機能を改善する方法が、認知または行動介入を提供する工程をさらに含む。
一部の実施形態では、認知または行動介入が、行動的ペアレントトレーニング(BPT)または行動的学級マネジメント(behavioral classroom management)(BCM)を含む。
【0010】
上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象における骨格脆弱性を減少させる方法であって、配列番号1を含む単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬;CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバントを含む治療有効量の医薬製剤を対象に投与する工程を含む方法も提供される。
【0011】
一部の実施形態では、対象の骨格脆弱性が骨塩密度決定によって評価される。
一部の実施形態では、CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子がME-200GSである。
【0012】
一部の実施形態では、治療有効量が約0.25mg/kg~約10mg/kgの原薬の投与量を含む。一部の実施形態では、治療有効量が1日2回の約0.25mg/kg~約10mg/kgの原薬の投与量を含む。
【0013】
一部の実施形態では、投与量が約0.33mg/kgの原薬である。一部の実施形態では、投与量が1日2回の約0.33mg/kgの原薬である。
一部の実施形態では、投与量が約0.66mg/kgの原薬である。一部の実施形態では、投与量が1日2回の約0.66mg/kgの原薬である。
【0014】
一部の実施形態では、投与量が約1.0mg/kgの原薬である。一部の実施形態では、投与量が1日2回の約1.0mg/kgの原薬である。
一部の実施形態では、投与量が約1.5mg/kgの原薬である。一部の実施形態では、投与量が1日2回の約1.5mg/kgの原薬である。
【0015】
一部の実施形態では、投与量が自己投与される。
一部の実施形態では、本方法が、ビタミンB6およびベタインのうちの1つまたは複数を対象に投与する工程をさらに含む。
【0016】
一部の実施形態では、対象がメチオニン(Met)制限食を受けている。
一部の実施形態では、本方法が、メチオニン制限食を終了するまたは楽にする工程をさらに含む。例えば、薬学的有効量の本明細書に記載される医薬品を投与すると、対象はメチオニン制限食から離れることができる、または楽にしたメチオニン制限食を受けることができる。
【0017】
一部の実施形態では、本方法が抗血小板薬を投与する工程をさらに含む。
一部の実施形態では、抗血小板薬がワルファリン血液希釈剤または抗凝固薬である。
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約3日に1回行われる。
【0018】
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約2日に1回行われる。一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約1日に1回行われる。
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約1日に2回行われる。
【0019】
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約1週間に1回行われる。
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約1週間に2回行われる。
【0020】
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約6週間にわたって繰り返される。
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約3か月間にわたって繰り返される。
【0021】
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が約6か月間にわたって繰り返される。
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が6か月間超にわたって繰り返される。
【0022】
一部の実施形態では、治療有効量の医薬製剤を投与する工程が対象の残りの寿命にわたって繰り返される。
一部の実施形態では、対象における上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルが約5μmol/L超のtHcyレベルを含む。
【0023】
一部の実施形態では、対象における上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルが約10μmol/L超のtHcyレベルを含む。
一部の実施形態では、対象における上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルが約15μmol/L超のtHcyレベルを含む。
【0024】
一部の実施形態では、上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象が遺伝的に定義されたHCU患者である。
一部の実施形態では、上昇した総血漿ホモシステイン(tHcy)レベルを有する対象が上昇したtHcyレベルを有するかCBS欠損を有する遺伝的に定義されていない患者である。
【0025】
対象における疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルを決定する工程と;(i)配列番号1を含む単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬;(ii)CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および(iii)薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバントを含む治療有効量の医薬製剤を対象に投与する工程とを含み、対象が遺伝的に定義されたHCU患者、または上昇したtHcyレベルを有するかCBS欠損を有する遺伝的に定義されていない患者であり、治療有効量の医薬製剤が、対象における疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルに従って調整される原薬の投与量を含む、対象におけるCBS欠損を処置する方法も提供される。
【0026】
一部の実施形態では、対象における疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルを決定する工程が、対象から血液または血漿試料を得ること、試料における疾患重症度または疾患進行の1つまたは複数の代謝指標のレベルを測定すること、および疾患重症度または疾患進行の1つまたは複数の代謝指標のレベルを、健康な対象からの対照試料における同じ代謝指標のレベルと比較することを含む。
【0027】
一部の実施形態では、対象における疾患重症度または疾患進行の代謝指標のレベルに従って調整される原薬の投与量が、低用量、中用量または高用量の20NHS PEG-CBSを含む。
【0028】
一部の実施形態では、低用量の20NHS PEG-CBSが、1日1回または2回の約0.25mg/kg~約1.0mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む。
一部の実施形態では、中用量の20NHS PEG-CBSが、1日1回または2回の約0.5mg/kg~約1.5mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む。
【0029】
一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、1日1回または2回の約1mg/kg~約2mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む。
一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、1日1回または2回の約2mg/kg~約10mg/kgの20NHS PEG-CBSを含む。
【0030】
一部の実施形態では、疾患重症度または疾患進行の代謝指標が、総ホモシステイン(tHcy)、メチオニン、クレアチニン、C反応性タンパク質、ジメチルグリシン、アラニンアミノトランスフェラーゼ、プロテインC、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アンチトロンビンIIIおよび/またはアポリポタンパク質Aである。
【0031】
一部の実施形態では、疾患重症度または進行の代謝指標がtHcyであり、20NHS PEG-CBSの投与量が上昇した低tHcyレベル、上昇した中tHcyレベル、または上昇した高tHcyレベルに従って対象に投与される。
【0032】
対象におけるクレアチニン、高感度C反応性タンパク質、フィブリノーゲンまたはプロテインC活性のうちの1つまたは複数のレベルを測定する工程と;1つまたは複数のレベルを、ホモシスチン尿症を有さないことが分かっている対象の集団もしくはホモシスチン尿症を有することが分かっている対象の集団、またはその両方における1つまたは複数のレベルについての既知の値の範囲に対して比較する工程と;対象において測定した1つまたは複数のレベルに従って対象における疾患進行または疾患重症度を査定する工程と;疾患進行または疾患重症度に従って対象のための酵素療法の投与量を調整する工程と;酵素療法を対象に投与する工程とを含む、ホモシスチン尿症を有するまたは有する疑いがある対象を処置する方法も本明細書に記載される。これらの方法では、酵素療法を投与する工程が、配列番号1を含むまたは配列番号1からなる単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬を投与することを含み、CBSタンパク質が、CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子を有する。
【0033】
前記のおよび他の目的、特徴および利点は、付随する図面に例示される、本開示の特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではない;代わりに、本開示の様々な実施形態の原理の例示に重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】HCU患者の自然歴研究で検査した一定の生物学的マーカーについて高い、正常な、または低い実験室値を有する患者の数を示す図。図1中、ALT-SGPT=アラニンアミノトランスフェラーゼ-血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ;AST-SGOT=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ-血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ;DMG=ジメチルグリシン;hsCRP=「高感度」C反応性タンパク質;P1NP=1型プロコラーゲンN末端プロペプチド。
図2】骨格脆弱性についての100μM以下および100μM超の血漿tHcyレベルの相関を示す図。
図3】検査した認知機能についてのNIH Toolbox中央スコアおよび四分位スコアを示す図。箱ひげ図の箱は、データの25パーセンタイル~75パーセンタイルを包含し、中央値は箱中で水平線として表される。ひげはデータ最小値および最大値を表す。結晶性認知複合(Crystalized Cognition Composite)=過去の学習および知識を反映する認知区域。流動性認知複合(Fluid Cognition Composite)=学習する、新規な問題を解決する、および記憶を使用する能力を反映する認知区域。
図4】認知機能に対するtHcyレベルの効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
I.導入
シスタチオニンベータ合成酵素欠損ホモシスチン尿症(HCU)は、高レベルのMetおよび低下した濃度のシステイン(Cys)と一緒に、上昇したレベルの血漿ホモシステイン(Hcy)を特徴とする(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;NORD、クラウス ジェイピー(Kraus JP).シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).NORD[定期オンライン]2017参照)。今日までに、HCUに関連付けられるCBS遺伝子の180超の異なる変異が識別されている(全体が本願明細書に援用される、Human Genome Mutation Database.2017.Ref Type:オンラインソース.hgmd.cf.ac.uk/ac/index.phpで入手可能、参照)。ホモシステイン(Hcy)は、セリンと一緒に、CBS酵素の基質として働く、天然に存在するアミノ酸である。CBSは、メチル基転移、硫黄転移および再メチル化経路の交差点で作動することによって、メチオニン(Met)からシステイン(Cys)への硫黄の一方向性流を支配する(全体が本願明細書に援用される、非特許文献3参照)。天然CBSは、アロステリック活性化因子S-アデノシルメチオニン(SAM)の結合によって活性化され、ピリドキサール-5’-リン酸(ピリドキシンまたはビタミンB6)依存的に、セリンがHcyと縮合してシスタチオニン(Cth)を形成するβ置換反応を触媒する。CBSの下流で作動する、シスタチオニンγ-リアーゼ(CGL)は、Cthを基質として使用してCysを作製する。よって、CBSの適した機能は、Hcy、MetおよびCysの代謝の調節にとって重要である。
【0036】
正常な総ホモシステイン(tHcy)レベルは、年齢、性別および栄養状態で変動するが、典型的には4.5~11μmol/Lの間の範囲である(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017;40:49-74参照)。男性は女性よりもわずかに(1~2μmol/L)高いtHcyレベルを有する傾向があり、患者が小児から80歳になるにつれて、平均値のおおよその倍加が観察される(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.) J Inherit Metab Dis 1998;21:738-747参照)。葉酸補充集団では、tHcyレベルの上限(97.5%)が、65歳未満の成人でおおよそ12μmol/L、65歳超の成人で16μmol/Lである。多くのHCU患者が、100μmol/L超の総tHcyレベルで重度の高ホモシステイン血症を呈示するが、軽度~数倍の正常の範囲の上昇を呈す者もいる(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.)J Inherit Metab Dis 2017;40:49-74参照)。tHcyレベルは、疾患の重症度と高度に相関することが観察されている(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-747参照)。
【0037】
HCU徴候および症状の重症度および呈示は、患者間で広く変動する(それぞれ全体が本願明細書に援用される、カラカら(Karaca et al.)Gene 2014;534:197-203;トロンドルら(Trondle et al.)Acta Med Austriaca 2001;28:145-151;クルイトマンら(Kluijtmans et al.)Am J Hum Genet 1999;65:59-67参照)。多くの患者が、100μmol/L超の総ホモシステイン(tHcy)レベルで重度の高ホモシステイン血症を呈示するが、軽度~数倍の正常の範囲のtHcy上昇を呈す者もいる(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al). J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。有意に上昇したtHcyレベルは、通例重度の呈示と相関し、より低いレベルは、典型的にはより軽度の形態の疾患と相関する。
【0038】
HCUは、一般的には、罹患個体が、正常なCBS機能に要求されるCBS酵素補因子であるピリドキシン(ビタミンB6)による総ホモシステイン(tHcy)低下処置に応答するかどうかに従って分類される(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;アボットら(Abbott et al.)Am J Med Genet 1987;26:959-969参照)。通例、ピリドキシンに応答性の患者は、より軽度の形態の障害をもたらす、より低いtHcyレベルを有する。これらの患者は、晩年に、ただ1つのまたは数種のHCU症状を呈示し得、多くは未診断のままである。結果として、ピリドキシンに高度に応答性の患者は、ほとんどの研究で標本として不十分であると考えられる。
【0039】
後ろ向き研究により、最高のtHcyレベルを有する患者(処置または未処置)が、より重度の症状を、人生の早期に呈示することが示されている(共に全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.) J Inherit Metab Dis 1998; 21:738-747;マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。上昇したtHcyレベルを有する未処置個体は、典型的には成長障害、血栓塞栓症、眼の水晶体のその後の脱臼を伴う重度の近視、骨粗鬆症型骨折、マルファン様体質(特に長骨の伸長)、および学習困難を含む精神医学的異常を呈示する(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;NORD、クラウス ジェイピー(Kraus JP.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).NORD[定期オンライン]2017参照)。上昇したtHcyレベルを有する一部の患者は重度の小児発症多系統疾患を有する。より重度の患者では、処置をしないと、平均余命が著しく減少する(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0040】
Hcy由来化合物は、tHcyとして測定され、遊離チオールホモシステイン(Hcy-SHまたはfHcy)、ジスルフィド(ホモシステイン-システインおよびホモシステインなど)およびタンパク質結合ホモシステインからなる(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ウィーランド(Ueland);Nord Med 1989;104:293-298;マッドら(Mudd et al.)N Engl J Med 1995;333:325;マッドら(Mudd et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2000;20:1704-1706参照)。病態生理学的効果の多くはHcy中のスルフヒドリル基の存在に依存するので(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;ウィーランドら(Ueland et al.);Nord Med 1989;104:293-298;マッドら(Mudd et al.)N Engl J Med 1995;333:325参照)、スルフヒドリル型(ホモシステイン;Hcy)とジスルフィド型(ホモシステイン)の区別(全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005参照)が重要である。
【0041】
CBSは主に、肝臓、膵臓、腎臓および脳で発現される(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。触媒ドメインはピリドキサール5’-リン酸(ピリドキシンまたはビタミンB6としても知られる補因子)に結合し、調節ドメインはSAM(アロステリック活性化因子)に結合する。
【0042】
不十分なレベルのCBS酵素活性は、第1の工程で硫黄転移経路を遮断し、Hcy蓄積、上昇したSAHおよびMetレベル、ならびに低下したCthおよびCysレベルをもたらす。これらの臨床的証拠として、本明細書で概説される調節不全Met代謝産物は、上昇したHcy(多くの場合、血漿tHcyとして臨床的に測定される)がHCUの病態生理学に最も強力に関係していることを実証している。
【0043】
正常よりも高いHcyレベルはタンパク質上のスルフヒドリル基を修飾し、正しいタンパク質架橋を妨げ、複数の身体系にわたる構造的異常につながる。上昇したHcyレベルはまた、細胞内シグナル伝達を損ない、内皮機能障害、ならびに最終的には血栓塞栓症および血管疾患をもたらす。HCUでは、Hcyの蓄積が、眼、骨格、血管および心理学的顕在化につながる。
【0044】
HCUの診断は時々、CBS遺伝子の分子遺伝検査によって確認される(全体が本願明細書に援用される、非特許文献2参照)。現在のスクリーニング手法は通常、あまり重度でないCBS欠損を有する新生児を検出することができず、より重度のHCUを有する患者のごく少数を検出するにすぎない(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6参照)。
【0045】
臨床試料中のHcyレベルを決定するために一般的に好まれる測定は、遊離Hcyならびにタンパク質に結合したHcyまたはジスルフィド型のHcyを含むtHcyである。正常なtHcyレベルは、年齢、性別および栄養状態で変動するが、典型的には4.5~11μMの間の範囲である(QUEST DIAGNOSTICS(商標)参照範囲)。多くのHCU患者が、100μM超の総tHcyレベルで重度の高ホモシスチン尿症を呈するが、軽度~数倍の正常の範囲の上昇を呈す者もいる(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。tHcyレベルは、疾患の重症度と高度に相関する(ヤップら(Yap et al.) J Inherit Metab Dis 1998; 21: 738-47参照)。
【0046】
研究により、HCU患者におけるHcyレベルの低下が、臨床症状のあまり重度でない顕在化と相関することが示されている(共に全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47;ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol.2001年12月;21(12):2080-5参照)。ホモシステインレベルがこれらの系に対する損傷を引き起こす経路は広く記載されており(例えば、全体が本願明細書に援用される、アジスら(Ajith et al.) Clin Chim Acta 2015;450:316-321;ベヘラら(Behera et al.) J Cell Physiol 99999:1-6, 2016;サハら(Saha et al.)FASEB J 2016;30:441-456参照)、疾患におけるHcyの有意な病理学的役割を暴く、一般集団におけるHcyの役割を調査する研究につながっている。
【0047】
本明細書に記載される医薬品による処置の1つの目標は、循環におけるCBS酵素活性を増加させて、改善された代謝制御をもたらし、それによって、疾患の臨床的顕在化を改良し、さらなる悪化を遅くさせるまたは予防することである。酵素などの高分子量化合物は、限定された組織浸透能力を有し、よって、血漿中に主に存在する。これらのタンパク質は、典型的には、いくつかの機序によって血流から除去されるので、短期間、循環中に維持される(全体が本願明細書に援用される、ブグメイスターら(Vugmeyster et al.)World J Biol Chem.2012;3(4):73-92参照)。理想的には、投与されたCBSが、硫黄アミノ酸代謝に対する定常的な効果を有するのに十分な時間にわたって血漿中で高い活性を維持するであろう。この目標は、PEG部分のタンパク質表面上への付加であるPEG化によって達成され得る。タンパク質のPEG化は、広く受け入れられており、タンパク質安定性およびサイズを増加させ、腎排出を減少させながら、タンパク質分解、免疫応答および抗原性を最小化することが示されている戦略である(全体が本願明細書に援用される、カンら(Kang et al.)2009;14(2):363-380参照)。本明細書に記載される医薬品は、対象に投与するために製剤化され、長期全身曝露用に設計されたPEG化htCBS C15S酵素である。
【0048】
A.ホモシスチン尿症の臨床的顕在化
HCU患者で一般的に罹患する4つの系(眼、骨格、心血管および神経)における上昇したtHcyレベルおよび負の臨床転帰の因果効果を指し示す有意な証拠がある。これらのデータは、軽度に上昇したレベルのtHcyと負の転帰との間の強力な関係を実証する一般集団における研究によってさらに補足される。
【0049】
1.眼
眼に罹患する異常は、HCUの早期臨床徴候であり得る。多くの個体は、眼球の中心からの眼の水晶体の変位(水晶体偏位)を発症する。罹患個体はまた、通常、重度の近視(近眼)および虹彩振盪(眼の着色部分の震え)を発症する。水晶体偏位および近視は通常、1歳以降で、未処置個体では、10歳前に発症する(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。あまり頻繁でなく起こる他の眼異常には、白内障、視神経変性および緑内障が含まれる。一部の個体は、霧視または視野中の「浮遊物」の出現を引き起こし得る網膜剥離を有し得る(全体が本願明細書に援用される、バークら(Burke et al.)Br J Ophthalmol、1989;73(6):427-31参照)。
【0050】
上昇したHcyレベルは、HCU患者および一般集団において、眼合併症、特に水晶体脱臼の強力な独立したリスクファクターである(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;アジスら(Ajith et al.)Clin Chim Acta 2015;450:316-321;ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315参照)。処方された薬理学的介入および食事介入を用いた場合でさえ、HCU患者の大部分が、最終的に眼合併症を呈示する。Hcyレベルを低下させることが、HCU患者において水晶体脱臼を遅延させ、もしかすると、予防することが観察されている(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47)。
【0051】
2.中枢神経系
認知症状などの発達遅延および学習問題も、1~3歳で起こるHCUの早期徴候であり得る(全体が本願明細書に援用される、Screening,Technology and Research in Genetics(STAR-G)Project.2016.Homocystinuria.newbornscreening.infoで入手可能;米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)(NIH)、米国国立医学図書館(US National Library of Medicine)、Genetics Home Reference.Homocystinuria.2016.ghr.nlm.nih.gov参照)。HCUを有する個体における知能指数(IQ)は、10~138の範囲であると報告されている。最高のtHcyレベルを有する患者は、あまり重度でない罹患患者(平均IQ79)と比較して低いIQを有する可能性が高い(未処置の場合、平均IQ57)(全体が本願明細書に援用される、非特許文献2参照)。
【0052】
発作は、HCUを有する未処置個体のおおよそ20%で起こる(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。多くの個体は、パーソナリティ障害、不安、うつ病、強迫性行動および精神病エピソードを含む精神医学問題を有する(非特許文献2参照)。ジストニアなどの錐体外路徴候も起こり得る(全体が本願明細書に援用される、Screening,Technology and Research in Genetics(STAR-G)Project.2016.Homocystinuria.newbornscreening.infoで入手可能、参照)。
【0053】
研究により、低Met食、葉酸/Bビタミン補充ならびに/あるいはピリドキシンおよびベタイン療法によって誘導されるHcyレベルの早期低下が、様々な神経障害の進行を遅延、および時々、予防または逆転し、HCU患者における正常なIQの発達を可能にすることができることが示された(全体が本願明細書に援用される、エル・バシールら(El Bashir et al.)JIMD Rep 2015;21:89-95;ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447参照)。上昇したHcyレベルと、認知症状、神経変性疾患、発作、ジストニア、精神病、認知障害、認知症およびうつ病を含む中枢神経系(CNS)症状との間の関連は、HCU患者および一般集団において明確に記録されている(全体が本願明細書に援用される、アボットら(Abbott et al.)Am J Med Genet 1987;26:959-969;シムケら(Schimke et al.)JAMA 1965;193:711-719;ヘルマンら(Herrmann et al.)Clin Chem Lab Med 2011;49:435-441参照)。
【0054】
3.骨格系
HCUを有する個体は、種々の骨格異常を頻繁に発症する。罹患個体は、しばしば、長骨の菲薄化および伸長(くも肢)、脚をまっすぐにした場合に、膝が触れるように内側に曲がっている膝(「外反膝」またはX脚)、高度に反った足(凹足)、脊柱の異常な横湾曲(脊柱側弯症)、異常に突き出た胸(鳩胸)または異常に沈んだ胸(漏斗胸)を含む、「マルファン様」体質を有し、長身で痩せている。10代までに、個体の50%が骨粗鬆症の徴候を示す(全体が本願明細書に援用される、Screening,Technology and Research in Genetics(STAR-G)Project.2016.Homocystinuria.newbornscreening.infoで入手可能、参照)。HCUは、部分的には低い骨塩密度に起因し得る骨粗鬆症性骨折の増加したリスクに関連付けられている(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;ウェバーら(Weber et al.)Mol Genet Metab 2016;117:351-354参照)。
【0055】
25年間にわたって追った25人のアイルランド人HCU患者の研究で、骨格異常のリスクが、非遵守患者と比較して、Hcy低下処置を良く遵守している患者でかなり低いことが分かった(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47参照)。
【0056】
4.心血管系
HCUと血管疾患との間の関係は、ホモ接合型HCUにより中等度~重度に上昇したHcyレベルを有する患者における疫学的研究で1985年に最初に実証された(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。血栓塞栓症は、HCUの最も重篤な、しばしば生命を脅かす合併症であり、いずれの血管にも罹患し得る。血栓塞栓症は、HCU患者における罹患率および早死にの主因である(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol.2001年12月;21(12):2080-5参照)。
【0057】
血栓塞栓性イベントのリスクは、16歳までにおおよそ25%、29歳までに50%であった。いくつかの報告が、どのようにtHcyレベルを低下させる処置がHCU患者において罹患率の主因である血管イベントの発生率を有意に減少させたかを記載した(全体が本願明細書に援用される、ウィルケンら(Wilcken et al.)J Inherit Metab Dis 1997;20:295-300;ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol.2001年12月;21(12):2080-5参照)。それ以来、いくつかの他の研究が、HCU患者における血管イベント、特に静脈血栓症の増加したリスクを実証した(全体が本願明細書に援用される、ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279;マグナーら(Magner et al.)J Inherit Metab Dis 2011;34:33-37参照)。
【0058】
5.追加の顕在化
あまり一般的ではないが、極度にきめの細かい脆い皮膚、傷みやすい髪、皮膚の変色(色素沈着減少)、および頬の発疹(頬部潮紅)を含むいくつかの追加の所見が、HCU患者で報告されている。一部の個体は、肝臓の脂肪変化、腹壁の裂傷を通した腸の一部の突出(鼠径ヘルニア)または膵臓の炎症を発症し得る。脊柱の異常な前から後ろへの湾曲(脊柱後弯症)および虚脱肺(自然気胸)もHCUを有する個体で報告されている(全体が本願明細書に援用される、非特許文献5参照)。
【0059】
B.遺伝的に定義されていない患者集団における上昇したホモシステイン
正常なtHcyレベルは、年齢、性別および栄養状態で変動するが、典型的には4.5~11μmol/Lの範囲である(Quest Diagnostics Reference Range、questdiagnostics.com)。男性は女性よりわずかに(1~2μmol/L)高いtHcyレベルを有する傾向があり、患者が小児期から80歳まで年を取るにつれて、平均値のおおよその倍加が観察される(全体が本願明細書に援用される、レフサムら(Refsum et al.)Clin Chem 2004;50:3-32)。葉酸補充集団では、tHcyレベルの上限(97.5%)が、65歳未満の成人でおおよそ12μmol/L、65歳超の成人で16μmol/Lである。
【0060】
正常より上のtHcyレベルを有する対象は、上昇したtHcyに関する合併症を発症するリスクが高い。例えば、上昇した総血漿ホモシステインレベルは、骨粗鬆症および/または骨折の増加したリスクに関連付けられている(全体が本願明細書に援用される、非特許文献7参照)。さらに加えて、上昇したtHcyは、認知症およびアルツハイマー病を含む認知症状の既知のリスクファクターである(全体が本願明細書に援用される、非特許文献8)。
【0061】
よって、上昇したtHcyレベル、すなわち4.5~11μmol/Lの間の正常範囲を超えるtHcyレベルを有する患者を、本明細書に記載される化合物および方法を使用して処置して、シスタチオニンβ合成酵素の遺伝的に定義された欠損にかかわらず、上昇したtHcyレベルの骨格、心血管および/または認知症状を緩和することができる。
【0062】
II.組成物
A.天然ヒトCBS酵素
CBS完全天然酵素は、各単量体(サイズが63kDaである)が3つの機能的ドメインに組織化されている、4つの同一の単量体を含む四量体である。第1は、ヘムに結合し、酸化還元感知および/または酵素折り畳みで機能すると考えられる、約70個のアミノ酸のN末端領域である。第2は、触媒コアを含有し、II型ファミリーPLP(ピリドキサール-5’-リン酸)依存性酵素の折り畳みを示す中心ドメインである。補酵素PLPは、N末端ドメインとC末端ドメインとの間のくぼみに深く埋設されている。第3の領域は、S-アデノシルメチオニン(SAM)に結合すると、酵素を活性化する、CBSモチーフのタンデムペアからなるC末端調節ドメインである。調節領域の除去によって、構成的に活性な酵素が作製される(全体が本願明細書に援用される、マイルズら(Miles et al.)J Biol Chem.2004年7月16日;279(29):29871-4参照)。
【0063】
ピリドキサール-5’-リン酸(PLP)依存性酵素折り畳みはヘム基を含有する。この酵素は、L-ホモシステインをL-セリンと縮合させてL-シスタチオニンを形成するPLP依存性ベータ置換反応を触媒する。この酵素は、S-アデノシル-L-メチオニン(Ado-Met)がC末端調節ドメインに結合して、これらのドメインのコンフォメーション再配列および自己抑制ブロックの放出をもたらすことによって、アロステリックに調節される。CBS活性化は、C末端調節ドメインを完全に除去して、構成的に活性な酵素の二量体形態を作製することによっても達成することができる(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マイルズら(Miles et al.)J Biol Chem.2004年7月16日;279(29):29871-4;エレノ-オルベアら(Ereno-Orbea et al.)Proc Natl Acad Sci USA 111(37)、E3845-3852(2014)参照)。
【0064】
本明細書に記載される医薬品中の活性物質は、本配列表の配列番号2およびポリエチレングリコール(PEG)の付加によって修飾された天然CBSタンパク質を表すアミノ酸配列と比較して、タンパク質のアミノ酸15位でのシステインからセリンへの置換を有する組換えヒト切断型CBSタンパク質(htCBS C15S)である。この酵素はhtCBS C15Sとしても知られる。一定の実施形態では、原薬htCBS C15Sが、配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0065】
この形態の酵素は、凝集に向かう傾向が高く、ヒトCBS(hCBS)の製造および生成に大きな制約を課す。PEG化htCBS C15S(本明細書に定義される「20NHS PEG-CBS」を含む)は、四量体ではなくて凝集の影響を受けにくい二量体を形成するように操作されている。酵素などの高分子量化合物は、タンパク質分解による分解および様々なクリアランス機序によって循環から除去される(全体が本願明細書に援用される、ブグメイスターら(Vugmeyster et al.)World J Biol Chem.2012;3(4):73-92参照)。PEG化は、タンパク質安定性を増加させ、腎排出を減少させながら、タンパク質分解および免疫原性を最小化することが公知である(全体が本願明細書に援用される、カンら(Kang et al.)2009;14(2):363-380参照)。これらの構造修飾は、PEG化htCBS C15Sを含む本明細書に記載される医薬品を、HCUのための酵素療法(ET)として天然hCBSよりも適切な候補にする。
【0066】
天然CBSは細胞内酵素であり、その酵素を細胞外環境からその主な細胞内作用部位に取り込むための機序が存在することは知られていないが、PEG化htCBS C15Sは細胞外で作用する。天然内因性CBSとは異なり、PEG化htCBS C15Sは、循環中で直接的に、および組織中で間接的に作動することによって代謝異常を矯正し、活性化のためにSAMを要求することなくそうする。天然hCBS酵素は、S-アデノシルメチオニン(SAM)がそのC末端調節ドメインに結合すると、細胞内で活性化される。しかしながら、患者と健康な個体の両方において、循環中のSAMレベルは、CBS活性化に要求されるレベルよりはるかに低い(全体が本願明細書に援用される、スタブラーら(Stabler et al.)Metabolism、2002.51(8):981-8頁参照)。したがって、CBSは活性化しないので、天然CBSの循環への投与は無効であろう。PEG化htCBS C15Sは、循環中にとどまり、細胞に進入しないが、CBS C末端調節ドメインの除去によってSAM活性化の必要性を回避して、酵素を構成的に活性にするよう操作されている。
【0067】
B.酵素療法(ET)
PEG化htCBS C15Sは、HCUを処置および/または遺伝的に定義されていない患者における上昇した総血漿ホモシステインを処置するためのETのための、15位でのシステインからセリンへの置換を有するPEG化切断型hCBSである。この修飾は、四量体ではなく二量体を形成するよう酵素を最適化し、構成的に活性である。
【0068】
PEG化htCBS C15Sは、不完全なCBS活性を補充し、それによって、HCUのモデルにおけるホモシステイン(Hcy)およびメチオニン(Met)の血漿レベルを低下させ、シスタチオニン(Cth)レベルを上昇させ、システイン(Cys)レベルを正常化する。総Hcy(tHcy)レベルの低下が現在の処置標的であり(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.)J Inherit Metab Dis.2017年1月;40(1):49-74参照)、臨床(眼、骨格、血管および神経学)転帰の改良と強力に相関する(全体が本願明細書に援用される、非特許文献5)。
【0069】
PEG htCBS C15Sは、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象を含む、上昇したHcyレベルを有する対象におけるホモシステイン(Hcy)の血漿レベルを低下させる。PEG化htCBS C15Sは、天然ヒトCBS酵素の組換え型であり、大腸菌(E.coli)細菌で産生される。天然ヒトCBSのDNA配列(本配列表の配列番号3)を遺伝子改変して、C末端調節領域(アミノ酸414~551)(配列番号4)を除去して、ヒト切断型CBSを形成した。ヒト切断型CBSのDNA配列をさらに改変して、DNAコード領域(配列番号3に対応する)の43位にT→Aの点突然変異を導入して、翻訳されたタンパク質の15位にシステインからセリンへの置換をもたらし、ヒト切断型CBS C15S(htCBS C15S)(配列番号5)を作製した。この変化は、凝集を減少させ、天然hCBSと比較してバッチ間一貫性を可能にする。
【0070】
この酵素を、発現中に大腸菌(E.coli)細菌中でさらに改変して、配列番号1に示されるタンパク質から第1のMetを除去する。その精製後、htCBS C15S酵素を、タンパク質の表面上の第一級アミンと反応するN-ヒドロキシスクシンイミドエステル官能化20kDa PEG部分によるPEG化によってさらに修飾する。おおよその平均で5.1個のPEG分子が、酵素の各単量体単位に付着して、平均分子量290kDaの異種二量体生成物を与える。
【0071】
C.20NHS PEG-CBSを生成するためのhtCBS C15SのPEG化
ME-200GS(メトキシ-PEG-CO(CHCOO-NHSとも呼ばれる)を、htCBS C15SをPEG化するために本明細書で使用する:
【0072】
【化1】
【0073】
ME-200GSは、分子量20kDaおよび化学名α-スクシンイミジルオキシグルタリル-ω-メトキシ,ポリオキシエチレンを有する。ME-200GSは、htCBS C15Sの表面上の遊離アミンを標的化する。アミド結合が、PEGとhtCBS C15S上のリジン残基との間に形成される。得られた分子は、本開示の全体を通して、「20NHS PEG-CBS」と呼ばれ、配列番号1で提供される、切断されていると共にC15S変異を有するPEG化ヒトシスタチオニンベータ合成酵素分子である。
【0074】
D.翻訳後修飾
翻訳後修飾は、修飾ポリペプチドと未修飾ポリペプチドを分離するための追加のバイオプロセス工程を要求し、生物製剤の生成のコストを増加させ、効率を低下させるおそれがある。したがって、一部の実施形態では、翻訳後修飾に影響を及ぼすタンパク質をコードする標的遺伝子の発現をモジュレートすることによって、細胞内でのポリペプチド剤の生成を増強する。追加の実施形態では、第1の翻訳後修飾に影響を及ぼすタンパク質をコードする第1の標的遺伝子の発現をモジュレートし、第2の翻訳後修飾に影響を及ぼすタンパク質をコードする第2の標的遺伝子の発現をモジュレートすることによって、生物製剤の生成を増強する。
【0075】
さらに加えて、原核細胞または真核細胞で発現されるタンパク質は、生物学的生成物の生成ならびに/あるいは構造、生物学的活性、安定性、均一性および/または他の特性を損なうおそれがあるいくつかの翻訳後修飾を受け得る。これらの修飾の多くは、細胞成長およびポリペプチド発現中に自発的に起こり、所与のポリペプチドのペプチド骨格、アミノ酸側鎖、ならびにアミノおよび/またはカルボキシル末端を含むいくつかの部位で起こり得る。加えて、所与のポリペプチドは、いくつかの異なる型の修飾を含み得る。例えば、大腸菌(E.coli)などの細菌細胞で発現されたタンパク質は、アセチル化、ヒストンクリッピング、カルボキシル化および/または脱アミドの対象となり得る(全体が本願明細書に援用される、ヤンら(Yang et al.)、PNAS 111(52)E5633-E5642(2014)参照)。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの鳥類および哺乳動物細胞で発現されるタンパク質は、アセチル化、カルボキシル化、ガンマカルボキシル化、ヒストンクリッピング、脱アミド、N末端グルタミン環化および脱アミド、およびアスパラギン脱アミドの対象となり得る。
【0076】
一部の実施形態では、タンパク質脱アミドに関与するタンパク質をコードする標的遺伝子の発現をモジュレートすることによって、タンパク質の生成を増強する。タンパク質は、N末端グルタミンの環化および脱アミドならびにアスパラギンの脱アミドを含むいくつかの経路を介して脱アミドすることができる。よって、一実施形態では、タンパク質脱アミドに関与するタンパク質がN末端アスパラギンアミノヒドロラーゼである。タンパク質脱アミドは、変更された構造特性、低下した効力、低下した生物活性、低下した有効性、増加した免疫原性および/または他の望ましくない特性につながるおそれがあり、それだけに限らないが、例えばイオン交換クロマトグラフィー、HPLC、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動、ネイティブゲル電気泳動、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、質量分析またはL-イソアスパルチルメチルトランスフェラーゼの使用による、電荷に基づくタンパク質の分離を含むいくつかの方法によって測定することができる。
【0077】
一部の実施形態では、タンパク質分泌に影響を及ぼすタンパク質が、Hsp40、HSP47(セルピンペプチダーゼ阻害剤、クレードH;熱ショックタンパク質47とも呼ばれる)、HSP60、Hsp70、HSP90、HSP100、プロテインジスルフィドイソメラーゼ、ペプチジルプロリルイソメラーゼ、カルネキシン、Erp57(プロテインジスルフィドイソメラーゼファミリーA、メンバー3)、およびBAG1からなる群から選択される分子シャペロンである。一部の実施形態では、タンパク質分泌に影響を及ぼすタンパク質が、γ-セクレターゼ、p115、シグナル認識粒子(SRP)タンパク質、セクレチン、およびキナーゼ(例えば、MEK)からなる群から選択される。
【0078】
ヌクレオチドを体系的に付加または除去してより長いまたはより短い配列を作製し、その点から標的RNAの上または下により長いまたはより短いサイズのウィンドウを進むことによって作製された配列を検査することによって、さらなる最適化を達成することができることが企図される。新たな候補標的を作製することに向けたこの手法を、当技術分野で公知のまたは本明細書に記載される阻害アッセイにおける標的配列に基づくRNAエフェクター分子の有効性についての検査とカップリングすることで、阻害効率におけるさらなる改善につながり得る。なおさらに、例えば本明細書に記載されるもしくは当技術分野で公知の修飾ヌクレオチドの導入、オーバーハングの付加もしくは変化、または発現阻害剤としての分子をさらに最適化する(例えば、血清安定性または循環半減期を増加させる、熱安定性を増加させる、膜横断送達を増強する、特定の位置または細胞型に向けた標的化、サイレンシング経路酵素との相互作用を増加させる、エンドソームからの放出を増加させる等)ための当技術分野で公知のおよび/もしくは本明細書に論じられる他の修飾によって、このような最適化配列を調整することができる。
【0079】
E.安定性
原薬または医薬品は、種々の温度および貯蔵条件で安定である。一部の実施形態では、原薬または医薬品が、-65℃および-20℃で貯蔵した場合に、安定である。あるいは、原薬または医薬品は、約2℃~約8℃の範囲の温度で貯蔵した場合に、安定であり得る。あるいは、原薬または医薬品は、25℃±2℃の範囲の温度で貯蔵した場合に、安定であり得る。例えば、原薬または医薬品は、20℃~25℃の間で安定なままである。一定の実施形態では、原薬または医薬品が、還元条件下で安定である。一定の実施形態では、原薬または医薬品が、非還元条件下で安定である。一部の実施形態では、原薬または医薬品が、少なくとも2日間、少なくとも7日間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、または少なくとも12か月間にわたって安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約2日間にわたる貯蔵中、安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約7日間にわたる貯蔵中、安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約1か月間にわたる貯蔵中、安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約2か月間にわたる貯蔵中、安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約3か月間にわたる貯蔵中、安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約6か月間にわたる貯蔵中、安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約12か月間にわたる貯蔵中、安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、約18か月間にわたる貯蔵中、安定なままである。
【0080】
一部の実施形態では、原薬または医薬品が、-65℃で最大18か月間の貯蔵にわたって安定なままである。一部の実施形態では、原薬または医薬品が、約2℃~約8℃の間で最大3か月間の貯蔵にわたって安定なままである。一部の実施形態では、原薬または医薬品が、25℃±2℃で最大1か月間の貯蔵にわたって安定なままである。
【0081】
一部の実施形態では、原薬または医薬品が、少なくとも3回の凍結および解凍サイクルにわたって安定なままである。一部の実施形態では、原薬または医薬品が、最大6回の凍結および解凍サイクルにわたって安定なままである。例えば、原薬または医薬品は、5回の凍結および解凍サイクルにわたって安定なままである。一定の実施形態では、医薬品が、注射器からの駆出後に安定である。
【0082】
III.医薬組成物
PEG化htCBS C15Sを含む、本明細書に記載される医薬品は、HCU患者においてホモシステインレベルを低下させ、システインレベルを正常化することによって、代謝制御を回復し、疾患の臨床顕在化を改良することを意図している。htCBS C15Sは、大腸菌(E.coli)BL21(DE3)を使用した組換え技術によって製造され、15mMリン酸カリウム、8%(w/v)トレハロース、pH7.5に無菌医薬品として製剤化される。医薬品は、皮下(SC)注射による投与を意図している。
【0083】
循環中のPEG化htCBS C15S活性は、組織中の代謝産物プロファイルも改善した、または完全に正常化さえした(全体が本願明細書に援用される、国際公開第2017/083327号参照)。したがって、医薬品は、必ずしもその自然細胞内環境に送達される必要がない。
【0084】
医薬品は、HCU患者における毒性Hcyの蓄積を減少させる;循環中のCysレベルを正常化する;循環中のCthレベルを上昇させる;ならびに/あるいはHCU顕在化の発生を予防する、遅延するおよび/または逆転させる。医薬品は、患者が正常食を楽しむことを可能にしながら、これらの利益のうちの少なくとも1つを達成する。実際、通常食(例えば、4.0g/kgのMET)を用いた場合でさえ増加したCth活性は、医薬品の増加した活性および/または減少した腎排出の証拠であることが観察された。
【0085】
SEC/UV/MSからの同位体的に平均された分子量から計算された原薬の分子量は、単量体については45.290kDa、二量体については90.58kDaである。
全てのバッチが、実際に目に見える粒子を含まず、暗赤色の透明な液体であった。さらに加えて、還元条件と非還元条件の両方で実施したSDS-PAGEおよびウエスタンブロットによって提供された結果は、各バッチについて互いに一貫性があった。これらの方法の各々を使用して、PEG化バリアントの特有の、均一な、一定のパターンを実証した。抗凝固薬、ビタミンおよびミネラル補充、ベタイン、抗うつ薬を含む併用投薬を本明細書に記載される医薬品と組み合わせて、医薬組成物の有効性を増強することもできる。
【0086】
IV.製剤
上記治療的使用について、投与される投与量は、採用される化合物、投与様式、所望の処置および指し示される障害により変動するであろう。例えば、本開示の化合物の1日投与量は、吸入する場合、1キログラム体重当たり0.05マイクログラム(μg/kg)~1キログラム体重当たり100マイクログラム(μg/kg)の範囲にあり得る。あるいは、化合物を経口投与する場合、本開示の化合物の1日投与量は、1キログラム体重当たり0.01マイクログラム(μg/kg)~1キログラム体重当たり100ミリグラム(mg/kg)の範囲にあり得る。
【0087】
PEG化されて本明細書に記載される原薬を形成する、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質はそのままで使用され得るが、通例、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と合わせて、医薬組成物の形態で投与される。したがって、本開示はさらに、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と合わせて、本明細書に記載される原薬を含む医薬組成物を提供する。
【0088】
本開示の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体は、医薬製剤の分野で慣用的に採用されているものであり、それだけに限らないが、糖、糖アルコール、デンプン、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝液物質、グリセリン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂(ラノリン)を含む。
【0089】
本開示の医薬組成物は、経口、非経口、吸入スプレーにより、経腸、経鼻、頬側、経膣、または埋め込みリザーバーを介して投与され得る。一実施形態では、医薬組成物が経口投与され得る。一実施形態では、医薬組成物が皮下投与され得る。本開示の医薬組成物は、任意の慣用的な非毒性の薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体を含有し得る。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0090】
医薬組成物は、例えば無菌注射水性または油性懸濁液としての、無菌注射調製物の形態であり得る。懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween(登録商標)80など)および懸濁化剤を使用して、当技術分野で公知の技術に従って製剤化され得る。無菌注射調製物は、例えば1,3-ブタンジオール中溶液としての、非毒性の非経口的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体中無菌注射溶液または懸濁液であってもよい。採用され得る許容されるアジュバント、希釈剤および担体の中には、マンニトール、水、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌不揮発性油が、溶媒または懸濁媒として慣用的に採用される。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油が採用され得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は注射剤の調製に有用であり、とりわけそのポリオキシエチル化バージョンのオリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油も同様である。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含有し得る。
【0091】
本開示の医薬組成物は、それだけに限らないが、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤ならびに水性懸濁液および溶液を含む任意の経口的に許容される剤形で経口投与され得る。これらの剤形は、医薬製剤の分野で周知の技術に従って調製される。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体は、ラクトースおよびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も典型的に添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤はラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液を経口投与する場合、活性成分を乳化剤および懸濁化剤と組み合わせる。所望であれば、一定の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0092】
本開示の医薬組成物はまた、直腸投与のために坐剤の形態に製剤化され得る。活性成分を、室温で固体であるが、直腸温度で液体であるので、直腸内で融解して活性成分を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって、これらの組成物を調製することができる。このような材料には、それだけに限らないが、カカオ脂、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0093】
本開示の医薬組成物は、鼻エアゾールまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、医薬製剤の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野で公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を採用して、生理食塩水中溶液として調製され得る。
【0094】
本明細書の医薬組成物は、それぞれ全体が本願明細書に援用される、国際公開第2015/153102号、国際公開第2016/183482号および国際公開第2018/009838号に示される、循環系を通して投与される形態であり得る。CBSタンパク質は、赤血球系細胞または血栓様細胞を含む除核造血細胞(EHC)によって発現される組換え核酸によってコードされ得る。例えば、赤血球系細胞は、赤血球(red blood cell)、赤血球(erythrocyte)、または網状赤血球である。例えば、血栓様細胞は血小板である。一定の実施形態では、コードされるCBSタンパク質が、翻訳された膜アンカーポリペプチドに融合される。一定の実施形態では、CBSタンパク質が、EHCの表面上に局在化される。CBSタンパク質は、細胞外空間で酵素の活性化のために切断され得る。あるいは、内部局在化CBSタンパク質が、EHCの溶解によって細胞外空間に放出され得る。あるいは、CBSタンパク質の酵素標的がEHCに進入し、次いで、変更後に膜を通して出る。一定の実施形態では、CBSタンパク質が、本配列表の配列番号1、配列番号2、配列番号4もしくは配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0095】
投与様式に応じて、医薬組成物は、0.05~99%w(重量パーセント)、より具体的には0.05~80%w、なおより具体的には0.10~70%w、さらにより具体的には0.10~50%wの活性成分(全ての重量パーセンテージは全組成物に基づく)を含む。
【0096】
適切な医薬製剤の選択および調製のための慣用的な手順は、例えば全体が本願明細書に援用される、「医薬-剤形設計の科学(Pharmaceutics-The Science of Dosage Form Design)」、エム イー オールトン(M.E.Aulton)、Churchill Livingstone、1988に記載されている。一定の実施形態では、医薬品が、対象中約50mU/μLの曝露のために製剤化される。凍結乾燥製剤は、再構成でヒトへの投与のために使用され得る。
【0097】
A.凍結乾燥
医薬組成物は凍結乾燥製剤であり得る。一部の実施形態では、凍結乾燥製剤が、原薬と、緩衝液と、賦形剤とを含む。一定の実施形態では、適切な再構成緩衝液、水、または任意の他の薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤もしくは担体中で凍結乾燥製剤を再構成すると、原薬の濃度が約20~30mg/mlの間である。一部の実施形態では、原薬の濃度が、約20mg/ml、約21mg/ml、約22mg/ml、約23mg/ml、約24mg/ml、約25mg/ml、約26mg/ml、約27mg/ml、約28mg/ml、約29mg/ml、または約30mg/mlである。一部の実施形態では、原薬の濃度が約25.4mg/mlである。一定の実施形態では、適切な再構成緩衝液、水、または任意の他の薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤もしくは担体中で凍結乾燥製剤を再構成すると、緩衝液が15mMの濃度のリン酸カリウムである。一定の実施形態では、賦形剤が8%(w/v)の濃度のトレハロースである。一部の実施形態では、製剤が、適切な再構成緩衝液、水、または薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤もしくは担体中で凍結乾燥製剤を再構成すると、スクロースの濃度が5%となるように、スクロースを含む。一部の実施形態では、フリーズドライ顕微鏡法によって決定される崩壊発生温度(Tc,on)が-21℃である。一部の実施形態では、製剤がpH7.5を有する。
【0098】
一部の実施形態では、凍結乾燥プロセスが、結晶ケーク構造の融解なしに、48時間以下で実施され得る。凍結乾燥プロセスは、それだけに限らないが、(i)凍結乾燥製剤の減少した再構成時間(例えば、1分未満)、(ii)より濃縮された医薬品を可能にする減少した粘度、(iii)患者に対する疼痛を最小化するための等張性緩衝液の組み込み、および/または(iv)減少した脱PEG化などの以下のパラメーターまたは特性のうちの1つまたは複数を調整するように最適化され得る。
【0099】
凍結乾燥製剤は、以下のプロトコールを使用して調製され得る。製剤調製の3日前に、20~30mg/mlまたは約25mg/mlの原薬(-80℃で貯蔵)を冷蔵庫中2~8℃で72時間解凍する。解凍後、原薬を穏やかに旋回することによってホモジナイズする。透析を制御された条件下、2~8℃で24時間実施する。20kDaカットオフの透析カセットを使用し、緩衝液を各回1:50以上の体積比で3回交換する。緩衝液は3時間および6時間の全透析時間後に交換する。最後の透析工程を一晩実施する。透析後、製剤を透析カセットから回収し、0.22μmポリビニリデンジフルオリド(PVDF)フィルタを使用することによって濾過する。濾過後、バイアルに層流条件下で1.0mlの充填体積を充填する。
【0100】
凍結乾燥をEpsilon 2-12Dパイロットスケールフリーズドライヤー(マーチンクリスト社(Martin Christ)、ドイツオステローデ)で実施する。チャンバー圧を静電容量ゲージによって制御し、真空ポンプおよび制御窒素投与量によって調節する。
【0101】
バイアルを5℃に平衡化した後、バイアルを-45℃に凍結し、-45℃でさらに5時間平衡化する。棚温度を、一次乾燥で31時間、-15℃に設定する。二次乾燥を棚温度40℃で2.5時間実施する。凍結乾燥プロセスの最後で、チャンバーを窒素で800mbarまで通気し、棚を持ち上げることによってバイアルに栓をする。栓をした後、チャンバーを窒素で大気圧まで通気する。
【0102】
フリーズドライプロセス中、生成物温度、棚温度、冷却器温度およびチャンバー圧(静電容量およびピラニゲージ)を監視する。生成物温度をPt100センサー(オメガ(OMEGA)(商標))によって監視する。
【0103】
V.疾患、障害または状態の処置
HCUを有する個体は、典型的には出生時に無症候性であり、処置しない限り、症状が経時的にこれらの個体で、一部は乳児期という早くに、多くは小児期に現れ、これがスペクトラム疾患である場合には、一部の患者では、症状が成人期でのみ現れる(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ(Yap)、2005;マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;モリスら(Morris et al.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損の診断および管理のためのガイドライン(Guidelines for the diagnosis and management of cystathionine beta-synthase deficiency.)J Inherit Metab Dis 2017;40:49-74;マッドら(Mudd et al.)スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版、ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327参照)。眼、骨格および血管系、ならびにCNSの4つの主な器官系が典型的に関与している。肝臓、膵臓、消化管および皮膚(毛包を含む)などの他の器官も関与し得る(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;ムアセヴィック-カタネックら(Muacevic-Katanec et al.)Coll Antropol 2011;35:181-185;スリら(Suri et al.)J Neurol Sci 2014; 347:305-309参照)。
【0104】
蓄積されたデータは、Hcyレベルの低下が、HCUにおける酵素療法(ET)の成功した適用の指標として役立ち得ることを示している。これは、「医薬品に対する曝露に応じてレベルが変化する薬力学的/応答バイオマーカー」およびなおさらに、HCUのためのETの場合には、薬物作用機序と密接に関連するマーカーのNIH-FDA Biomarker Working Groupによる定義(全体が本願明細書に援用される、FDA-NIH Biomarker Working Group.BEST(Biomarkers,EndpointS,and other Tools)Resource[インターネット].シルバースプリング(メリーランド州):米国食品医薬品局(米国);2016-.Reasonably Likely Surrogate Endpoint.2017年9月25日.米国国立衛生研究所(米国)による共同出版、ベセスダ(メリーランド州).ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK326791/参照)と一貫性がある。したがって、血液または血漿Hcyは、薬力学的研究のための有用なマーカーであるだけでなく、ホモシスチン尿症(HCU)のための「合理的にふさわしい代用エンドポイント」としても以前から認識されている。
【0105】
HCUを有する乳児および小児では、優先事項が、HCUに関連付けられる合併症を予防すること、ならびに適した成長および正常な知能の発達を確保することである(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。晩年に診断された患者では、処置の狙いは、生命を脅かす血栓塞栓症を予防すること、および既に確立された合併症の進行を最小化することであるべきである。これらの目標に対処するために、HCUに関連付けられる生化学的異常を改善、可能であれば、正常化しなければならない(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0106】
HCUの診断および管理のための2016年ガイドライン(2016 Guidelines for the Diagnosis and Management of HCU)によると、Hcyレベルは可能な限り正常に近く維持されるべきである。これは、利用可能な処置を施されたHCU患者で典型的に可能ではないので、ピリドキシン応答性HCU患者で50μmol/L未満、非ピリドキシン応答性患者で100μmol/L未満という野心的な目標が示唆されている(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。前に述べられたように、非ピリドキシン応答性患者は、ピリドキシン応答性患者よりも高いHcyレベルを有する傾向がある。2つの目標が同じ疾患の患者に推奨されているが、これらの目標は、合併症を最小化するために、最適化ではなく達成可能となるよう設計された。
【0107】
全体として、HCUを管理するために要求される長期処置の有効性は、とりわけ最も頻繁には食事制限および補充に依存するので、不足または一貫性のない生涯の遵守の対象となる。HCUのためのETは、これらの落とし穴の多くを回避するであろう。重度のMet制限もCys補充も要求しない機序を通してHCUにおける代謝欠陥を埋め合わせることによって、ETは、Metレベルを危険に上昇させることなく、また食事の自由化または正常化を可能にしながら、より一貫性のあるHcy低下を達成すると予想される。
【0108】
状態の根底にある遺伝的原因を矯正するHCUのための治療法は目下のところないが、通例許容される治療目標は、tHcyレベルを可能な限り低下させることである(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。結果として、現在の治療は、生化学的異常を矯正し、それによって、疾患の有害な臨床的顕在化のリスクを低下させることに向けられている。Hcyレベルは、HCU患者のために現在利用可能な処置によってはめったに完全に正常化されない。
【0109】
ほとんどの患者では、処置標的を達成するために、戦略の組み合わせが要求される。これらの処置戦略には、1)薬理学的用量のピリドキシン(葉酸と合わせて、CBSの補因子であるビタミンB6)をピリドキシン感受性患者に投与することによって、残留CBS活性を増加させること(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol.2001年12月;21(12):2080-5参照);2)代謝遮断を越えて生成品で食事を補充しながら、重度の食事/タンパク質制限を通してメチオニン負荷を減少させること;および3)代替代謝経路を増強してCBS欠損の効果に対抗する、例えばベタイン(メチルドナー)を投与してHcyのMetへの再メチル化を増強することが含まれる。一定の実施形態では、葉酸補充および(必要に応じて)ビタミンB12補充物が提供される(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0110】
A.HCUのための現在の治療
一部の実施形態では、HCU患者が、適当な葉酸補充および(必要に応じて)ビタミンB12補充物を受けるべきである(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。加えて、患者は、ピリドキシン療法(応答性の場合)、Met制限、Cys補充食および/またはベタイン療法で処置されるべきである。ほとんどの患者で、処置標的を達成するために、戦略の組み合わせが要求される。
【0111】
最も一般的な処方される処置は、食事とベタインの組み合わせに、ベタイン単独および食事単独が続くものであった(全体が本願明細書に援用される、アダムら(Adam et al.)Mol Genet Metab 2013;110:454-459参照)。患者が16歳を超えると、Met制限食の成人患者の遵守が不足しているという認識で、これらの患者は多くの場合、食事はなしでベタインのみを処方される。しかしながら、成人におけるベタインの遵守も不足している。中央タンパク質摂取量は、患者間で広く変動し、年齢と共に劇的に増加した。
【0112】
これらの所見と一貫して、近年の報告では、具体的なHCU-適正アミノ酸補充をした低タンパク質食を処方された24人の患者の中のわずか4人の成人患者しかこの処置に従わなかったことが述べられた(全体が本願明細書に援用される、ロレンツィーニら(Lorenzini et al.)J Inherit Metab Dis.2017年10月4日参照)。複数のHCU専門家が、米国において同様に広い変動性を記載している(米国のHCU専門家である医師で構成されたOrphan Technology Scientific Advice Board)。未処置患者のtHcy値と処置患者のtHcy値を比較した研究(それぞれ25人の患者および93人の患者)は、これら2つの群間に有意な差がない(tHcyはそれぞれ15.7~281.4および4.8~312μmol/Lの範囲であり;中央値はそれぞれ125.0および119.0μmol/Lである)と結論付けたが、この研究は患者の処置レジメンについての詳細を提供しなかった(全体が本願明細書に援用される、スタブラーら(Stabler et al.)JIMD Rep 2013;11:149-163参照)。これらの結果は、以下の結論の全部または組み合わせを示唆している:患者は疾患の不均一な呈示を有した、標準的な処置は無効であった、および/または処置の遵守は不足していた。
【0113】
1.ピリドキシン
診断時に、患者はCBSの補因子であるピリドキシンに対する応答性について検査される。薬理学的用量のピリドキシン(ビタミンB6)の投与は、ピリドキシン応答性であると示された個体でCBSの残留活性を増加させる。ピリドキシン応答性の定義はサイトごとに広く変動するが、ホモシスチン尿症およびメチル化欠陥(EHOD)のための欧州ネットワークおよびレジストリーの一部として書かれた、2016年のガイドラインは、ピリドキシン応答性を、ピリドキシン曝露の6週間以内のtHcyレベルの20%の低下として定義した。重度に上昇したtHcyレベルを有する患者および軽度または中等度に上昇したtHcyレベルを有する患者が、非常に異なるtHcyレベルを呈示するにもかかわらず、共に応答性として定義されることがある。さらに、異なる処置センターがピリドキシン応答性を異なって定義しており、したがって、ピリドキシン応答性ではなくtHcyレベルによる患者の分類がより適正かつ厳密である。一般に、ピリドキシンに応答性の患者は、いくらかの残留CBS活性、したがって、より低いtHcyレベルを有し、あまり重度でない呈示をもたらす。
【0114】
ピリドキシンは、通例、HCU患者において安全であると考えられる(全体が本願明細書に援用される、非特許文献5)。その最も一般的に報告される副作用には、900mg/日超として定義される高用量で処置された患者における末梢神経障害(全体が本願明細書に援用される、シャンバーグら(Schaumburg et al.)N Engl J Med 1983;309:445-448;ルドルフら(Ludolph et al.)Eur J Pediatr 1993;152:271参照)、500mg/日のピリドキシンを受けている新生児における無呼吸および不応答(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)、ならびに横紋筋融解症(全体が本願明細書に援用される、ショウジら(Shoji et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:439-440参照)が含まれる。
【0115】
ピリドキシン処置は広く使用されているが、tHcyレベルの控えめな低下を提供し、それらの出発レベルは正常よりも何倍も上であるので、応答性として定義されるほとんどの患者は、ピリドキシン単独でtHcyレベルを有意に低下させることができず、まして正常化することができない(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。長期ピリドキシン処置に加えて、ピリドキシン応答性患者HCU患者は、葉酸および要求に応じてビタミンB12補充も受けることが推奨される。
【0116】
2.食事制限
全てのHCU患者について、生涯の食事制限が以前から推奨されている(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;ウォルターら(Walter et al.)Eur J Pediatr.1998年4月;157 補遺2:S71-6参照)。推奨されている食事は、極度に限定されており、タンパク質含有量の制限によってMet摂取量を減少させることを目指している。
【0117】
HCU患者のための現行の治療の主軸は、Metを含まないL-アミノ酸を補充した、1日当たりわずか5gしか天然タンパク質を含まない生涯の低タンパク質食であり(www.hcunetworkamerica.org)、多くの場合、食事を補充するために追加のCys(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47;モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74)が施される。重度の制限食は、低メチオニン穀物食、低メチオニン果実および野菜、低メチオニン医療食、油および糖からなる。中等度の量のMetを含有する肉、鶏肉、魚、卵、牛乳、ヨーグルト、チーズ、大豆製品、ナッツ、豆類ならびに多くの果実および野菜などの食品は回避すべきである。天然CBSがMet代謝の重要な酵素であるので、多くの食品に見られる必須アミノ酸であるMetの摂取は、上昇したtHcyの血漿濃度ならびに低下した下流代謝産物CthおよびCysの濃度をもたらす。
【0118】
調製食品、パン類、および包装食品は、しばしば牛乳、卵または小麦粉を含有するので、高度に制限しなければならない。各HCU患者によって必要とされるタンパク質および許容されるタンパク質の量は異なり、時と共に変動する可能性がある。この量は、頻繁な血液検査(ASIEM Low Protein Handbook for Homocystinuria)で監視されるtHcyレベルに従って調整される。食事処置を受けている患者の大部分は、二次栄養失調を予防するため、および小児での適した成長のため、成人での適した栄養のために、味のよくない、Metを含まない合成アミノ酸配合物の毎日の消費も要求する(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0119】
ビタミン補充を組み合わせた食事修正は、高度制限食を十分遵守している個体でtHcyレベルをある度合い低下させることができるが、ほとんどのHCU患者のtHcyレベルは、正常の数倍~数桁高いままである。ほとんどの個体にとって、食事修正の完全な生涯の遵守を達成することは高度に困難なことであり、得られる代謝制御が不十分な期間が、累積的な有害効果を有する(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。食事の遵守は、青年期および成人期の間でしばしば不十分であり、通例さらに悪化する(全体が本願明細書に援用される、ウォルターら(Walter et al.)Eur J Pediatr.1998年4月;157 補遺2:S71-6;非特許文献6;ガーランドら(Garland et al.)Paediatr Child Health.1999年11月;4(8):557-62参照)。その上、高Met食品を食べることは、即時の負の身体反応を誘発せず、食事遵守の困難をさらにいっそうひどくする(www.hcunetworkamerica.org)。Met制限は、成長および発達を容易にするために十分なMetを確保する必要があるので、小児でさらにより困難である。食事処置を受けている患者の大部分は、小児での適した成長のため、成人での適した栄養のために、Cysに富む、Metを含まないL-アミノ酸補充物も要求する(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0120】
近年の報告では、具体的なHCU-適正アミノ酸補充をした低タンパク質食を処方された24人の患者の中のわずか4人の成人患者しかこの処置に従わなかったことが述べられた(全体が本願明細書に援用される、ロレンツィーニら(Lorenzini et al.)J Inherit Metab Dis.(2018)41:109-115参照)。複数のHCU専門家が、米国において同様に広い変動性を記載している。
【0121】
3.ベタイン補充
食事に大いに基づく治療に関連付けられる問題は、Hcy低下のための他の手法、最も著しくは1日当たり少なくとも2回投与されるベタイン(N,N,N-トリメチルグリシン、CYSTADANE(商標)として市販されている)の補充を必要としている。ベタインは、単独療法としてはめったに有効ではなく(全体が本願明細書に援用される、坂本ら(Sakamoto et al.)Pediatr Int 2003;45:333-338)、普段はピリドキシンおよび/またはMet制限食に対する補助として使用される(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0122】
ベタインは、根底にあるCBS欠損に対処するのではなく、代替経路を誘導し、HcyのMetへの再メチル化をもたらし、CBS変異体の部分的ミスフォールディングを矯正する(全体が本願明細書に援用される、コペクタら(Kopecka et al.)J Inherit Metab Dis 2011;34:39-48参照)。ベタインの存在下では、酵素ベタインホモシステインメチルトランスフェラーゼ(BHMT)がHcyをMetに再メチル化し(全体が本願明細書に援用される、スィングら(Singh et al.)Genet Med 2004;6:90-95)、よって、既に高度に上昇したMetレベルを上昇させながら、Hcyレベルを部分的に低下させる。CBSの下流の代謝産物はベタイン投与によっては改良されず、Cys補充が必要となり得る。その上、ベタイン処置は、急性脳浮腫を有する(全体が本願明細書に援用される、デブリンら(Devlin et al.)J Pediatr 2004、144:545-548;ヤグマイら(Yaghmai et al.)Am J Med Genet 2002;108:57-63)および有さない(全体が本願明細書に援用される、バタナビチャンら(Vatanavicharn et al.)J Inherit Metab Dis 2008;31 補遺3:477-481;ブレントンら(Brenton et al.)J Child Neurol 2014;29:88-92;ササイら(Sasai et al.)Tohoku J Exp Med 2015;237:323-327)患者における、大脳白質異常-脳における血管損傷の徴候(全体が本願明細書に援用される、プリンスら(Prins et al.)Nat Rev Neurol 2015;11:157-165)に関連付けられている。ベタイン処置はメチオニン蓄積を増悪させることが知られているが、シュワンら(Schwann et al.)は、メチオニンが脳浮腫を引き起こす主要な作用因子であることを示した(全体が本願明細書に援用される、シュワン,ベルント シーら(Schwahn,Bernd C.,et al.)JIMD reports 52.1(2020):3-10参照)。
【0123】
ベタインは味が悪く(全体が本願明細書に援用される、ウォルターら(Walter et al.)Eur J Pediatr. 1998年4月;157 補遺2:S71-6)、不快な魚臭い体臭および/または息をもたらし得る(全体が本願明細書に援用される、マニングら(Manning et al.)JIMD Rep 2012;5:71-75参照)。両効果は、高用量(成人および小児患者で6g/日超)の要求によって潜在的に増悪した。結果として、遵守は通例不足している(全体が本願明細書に援用される、アダムら(Adam et al.)Mol Genet Metab. 2013年12月;110(4):454-9;ウォルターら(Walter et al.)Eur J Pediatr.1998年4月;157 補遺2:S71-6;坂本ら(Sakamoto et al.)Pediatr Int 2003;45:333-338参照)。
【0124】
ベタインの医薬製剤、CYSTADANE(商標)は、2006年にFDAによって承認され、CBS欠損、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)欠損およびコバラミン補因子代謝(cbl)欠陥を含むホモシスチン尿症障害における上昇した血液Hcyを低下させることが指し示されている(全体が本願明細書に援用される、Recordati.CYSTADANETM Product Information(PI).2017.Ref Type:オンラインソース参照)。
【0125】
HCUピリドキシン非応答性患者間での食事習慣に関する現在までの最大の調査は、ベタインが、特に遅く診断された患者、青年および成人において一般的な処置選択肢となることを指し示した。食事なしで施した場合のベタインの長期有効性を調べる対照研究はないので、食事なしで患者の34%における一次療法としてのベタインの使用は、食事の遵守の欠如によると考えられる(全体が本願明細書に援用される、アダムら(Adam et al.)Mol Genet Metab 2013;110:454-459参照)。実際、HCUマウスモデルにおける研究は、ベタイン処置がtHcyを有意に低下させる能力が経時的に低下することを見出した(全体が本願明細書に援用される、マックリーン ケーエヌ(Maclean KN.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損ホモシスチン尿症のベタイン処置:うまくいき、改善するであろうか?(Betaine treatment of cystathionine b-synthase-deficient homocystinuria;does it work and can it be improved?)Dove press 2012;2:23-33参照)。
【0126】
4.抗血小板療法
Hcy低下療法に加えて、不足して制御されたHcyレベルを有する患者および/または血栓症の追加のリスクファクターを有する患者(例えば、第V因子ライデン、以前の血栓症および妊娠)は、抗血小板薬(例えば、アスピリン、ジピリダモールまたはクロピドグレル)による処置から利益を得ることができる(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。COUMADIN(商標)血液希釈剤も、以前静脈血栓症になった患者に使用され得る。しかしながら、抗凝固薬は増加した脳出血のリスクに関連付けられており、その使用は個々の患者に基づいて決定されるべきである(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0127】
5.現在の治療による臨床転帰
HCUの顕在化は、変動する程度の不能に達する古典的臨床症状と共に進行し続け、罹患個体の生活の質に影響する。個体の発生年齢にかかわらず、いずれの年齢における生化学的制御の喪失も、生命を脅かし得る深刻な合併症の発症に関連付けられる(全体が本願明細書に援用される、ウォルターら(Walter et al.)Eur J Pediatr.1998年4月;157 補遺2:S71-6参照)。
【0128】
不足した代謝制御の期間は、重度の合併症および早死につながり得る累積的な有害効果を有するので、処置を、一生を通じて続けなければならない(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。
【0129】
処置をしないと、ピリドキシン非応答性HCUの予後は悪く、患者の平均余命は著しく減少する。HCUが1962年に最初に記載されてから、HCUの食事療法または他の療法の無作為化対照試行が実行されていない(全体が本願明細書に援用される、カーソンら(Carson et al.)Arch Dis Child.1969年6月;44(235):387-92;ガリットソンら(Gerritsen et al.)Biochem Biophys Res Commun.1962年12月19日;9:493-6参照)。しかしながら、いくつかの観察研究しか公開されていない。
【0130】
629人の未処置CBS患者の自然歴を記録した国際研究によって、合併症のリスクが年齢と共に増加することが示された(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。処置(ピリドキシン、Met制限食)は、血漿tHcyレベルを低下させることが観察され、血栓塞栓性イベントおよび水晶体脱臼のリスクを著しく低下させたが、制限食の遵守が不足していることが観察された。
【0131】
ヤップら(Yap et al.)(Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2001年12月;21(12):2080-5)は、158人の処置患者で国際多施設共同研究を実行した。心血管イベントの発生率は、マッドら(Mudd et al.)(全体が本願明細書に援用される、Am J Hum Genet 1985;37:1-31)のヒストリカルコントロールデータと比較すると、この処置群で著しく減少した。この見かけ上の利益は、処置患者におけるより低い(しかし正常化されていない)tHcy血漿レベルと相関していた。要求されるレジメンの一貫性のある遵守は非常に困難であることが注目された。
【0132】
全体として、いくつかのHCU処置戦略が利用可能であるが、これらはほとんどの患者を正常に近いtHcyレベルまで回復することはできない。その上、これらの長期有効性は、不足または一貫性のない生涯の遵守の対象となる。よって、一貫性のあるHcy低下はHCU患者で維持することが困難である。本明細書に記載される医薬品による処置は、これらの落とし穴の多くを回避することを目指している。重度のMet制限もCys補充も要求しない機序を通してHCUにおける代謝欠陥を埋め合わせることによって、酵素療法(ET)という治療は、Metレベルを危険に上昇させることなく、より一貫性のあるHcy低下を達成すると予想される。
【0133】
B.認知機能を改善する方法
本特許出願は、ホモシスチン尿症を有するまたは有する疑いがある対象における認知機能を改善する方法に向けられている。本方法は、単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質(配列番号1)を含む原薬;CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバントを含む治療有効量の医薬製剤を対象に投与する工程を含むことができる。一部の態様では、本明細書に記載されるhtCBS C15Sタンパク質を含む医薬製剤の投与を含む酵素療法を1つまたは複数の認知または行動介入と組み合わせることにより、ホモシスチン尿症を有するまたは有する疑いがある対象における認知機能または行動におけるさらなる改善を提供することができる。一部の実施形態では、神経行動学的もしくは認知処置または介入が、例えば、行動的ペアレントトレーニング(BPT)および行動的学級マネジメント(BCM)などの行動療法を含む、ADHDなどの他の実行機能問題のためのサポートと類似のサポートを含む(例えば、その内容全体が本願明細書に援用される、ペラム ジュニア(Pelham Jr)、ウィリアム イー(William E.)、およびグレゴリー エー ファビアーノ(Gregory A.Fabiano.)「注意欠陥/多動性障害のための証拠に基づく心理社会的処置(Evidence-based psychosocial treatments for attention-deficit/hyperactivity disorder).」Journal of Clinical Child&Adolescent Psychology 37.1(2008):184-214;ならびにフィフナー,リンダ ジェイ(Pfiffner,Linda J.)、およびローレン エム ハーク(Lauren M.Haack.)「ADHDを有する学齢小児のための行動マネジメント(Behavior management for school-aged children with ADHD).」Child and Adolescent Psychiatric Clinics 23.4(2014):731-746参照)。よって、本開示は、ホモシスチン尿症を有するまたは有する疑いがある対象における認知機能をさらに改善するための、神経行動学的または認知療法と組み合わせた、本明細書に記載される酵素療法を伴う併用療法を提供する。このような併用療法は、酵素療法または神経行動学的/認知療法のいずれか単独よりも大きな程度に、小児対象における認知発達を含む、患者認知機能を有効に改善すると予想される。
【0134】
認知機能を改善する方法に使用するための医薬製剤は、PEG分子としてのME-200GSの投与を含むことができる。医薬製剤は、場合により5%スクロース中、約25.4mg/mlの濃度の原薬、約15mMのリン酸カリウム;および約8%(w/v)トレハロースを含むことができる。医薬製剤は凍結乾燥することができる。
【0135】
C.代謝指標に基づく処置方法
対象におけるクレアチニン、高感度C反応性タンパク質、フィブリノーゲンまたはプロテインC活性のうちの1つまたは複数のレベルを測定する工程と;1つまたは複数のレベルを、ホモシスチン尿症を有さないことが分かっている対象の集団もしくはホモシスチン尿症を有することが分かっている対象の集団、またはその両方における1つまたは複数のレベルについての既知の値の範囲に対して比較する工程と;対象において測定した1つまたは複数のレベルに従って対象における疾患進行または疾患重症度を査定する工程と;疾患進行または疾患重症度に従って対象のための酵素療法の投与量を調整する工程と;酵素療法を対象に投与する工程とを含む、ホモシスチン尿症を有するまたは有する疑いがある対象を処置する方法も本明細書に記載される。これらの方法では、酵素療法を投与する工程が、配列番号1を含むまたは配列番号1からなる単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質を含む原薬を投与することを含み、CBSタンパク質が、CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子を有する。
【0136】
本明細書に記載される方法では、600μM以上のメチオニンレベルを使用して、小児および成人HCU対象におけるメチオニン制限食ならびに/あるいはベタインおよび/またはビタミン補充に対する応答に基づいて、対象を識別および層別化することができる。一部の実施形態では、1000μM超のメチオニンレベルを使用して、小児および成人HCU対象におけるメチオニン制限食ならびに/あるいはベタインおよび/またはビタミン補充に対する応答に基づいて、対象を識別および層別化することができる。
【0137】
正常値上限(ULN)より上のジメチルグリシン(DMG)レベルを使用して、小児および成人HCU患者におけるベタインに対する応答に基づいて、対象を識別および層別化することができる。正常値下限(LLN)未満のクレアチニンレベルを使用して、本明細書に記載される方法による酵素療法から利益を得ることができる対象を識別および層別化することができる。一部の実施形態では、ULNより上の高感度C反応性タンパク質(hsCRP)レベルを使用して、本明細書に記載される方法による酵素療法から利益を得ることができる対象を識別および層別化することができる。一部の実施形態では、低いプロテインC活性レベルおよび/または低いフィブリノーゲンレベルを使用して、本明細書に記載される方法による酵素療法から利益を得ることができる対象を識別および層別化することができる。
【0138】
本明細書に記載される方法は、対象のCBS遺伝子の分子遺伝学的検査をさらに含むことができ、CBS遺伝子の変異の識別が、疾患重症度のレベルを指し示す、またはホモシスチン尿症の診断を確認する。CBS遺伝子変異の非限定的な例を表3に提供する。
【0139】
D.骨格脆弱性を改善する方法
一部の実施形態では、本出願は、ホモシスチン尿症を有するまたは有する疑いがある対象における骨格脆弱性を減少させる方法に向けられている。本方法は、単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質(配列番号1)を含む原薬;CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバントを含む治療有効量の医薬製剤を対象に投与する工程を含むことができる。
【0140】
骨格脆弱性を改善する方法に使用するための医薬製剤は、PEG分子としてのME-200GSを含むことができる。医薬製剤は、場合により5%スクロース中、約25.4mg/mlの濃度の原薬、約15mMのリン酸カリウム;および約8%(w/v)トレハロースを投与することを含むことができる。医薬製剤は凍結乾燥することができる。
【0141】
E.心血管症状を改善する方法
一部の実施形態では、本出願は、ホモシスチン尿症を有するまたは有する疑いがある対象における、本明細書に記載される心血管症状および血管合併症を改善する方法に向けられている(共に全体が本願明細書に援用される、非特許文献7、ハンキーら(Hankey et al.)Lancet 1999;354:407-413参照)。本方法は、単離シスタチオニンβ合成酵素(CBS)タンパク質(配列番号1)を含む原薬;CBSタンパク質に共有結合的に結合したPEG分子;および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤またはアジュバントを含む治療有効量の医薬製剤を対象に投与する工程を含むことができる。
【0142】
心血管症状および血管合併症を改善する方法に使用するための医薬製剤は、PEG分子としてのME-200GSを含むことができる。医薬製剤は、場合により5%スクロース中、約25.4mg/mlの濃度の原薬、約15mMのリン酸カリウム;および約8%(w/v)トレハロースを投与することを含むことができる。医薬製剤は凍結乾燥することができる。
【0143】
F.遺伝的に定義されていない患者集団における上昇したtHcyレベルを処置する方法
本明細書に記載される方法は、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない患者集団を処置する工程を含む。「遺伝的に定義されていない患者」または「遺伝的に定義されていない対象」という用語は、シスタチオニンβ合成酵素の遺伝的に定義された欠損を有さないまたは有すると診断されていない(例えば、1つまたは複数のCBS遺伝子の対立遺伝子におけるミスセンスまたは機能喪失型変異を有さない)1人または複数の個体を指す。
【0144】
上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、増加した骨折有病率、減少した骨塩密度、および/または骨粗鬆症などの骨格異常を呈示し得る、またはこれらを発症する増加したリスクを有し得る(例えば、それぞれ全体が本願明細書に援用される、フィリップ,アレクサンドルら(Filip,Alexandru,et al.)「ホモシステインと脆弱性骨折との間の関係-システマティック・レビュー(The Relationship between Homocysteine and Fragility Fractures-A Systematic Review).」Annual Research&Review in Biology(2017):1-8;非特許文献7参照)。よって、本明細書に記載される方法の一部の実施形態は、本明細書に記載される医薬組成物または医薬製剤を対象に投与することによって、上昇したtHcyレベルに関連付けられる骨格症状の処置または緩和を提供する。一部の実施形態では、記載される医薬組成物または医薬製剤を、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象に投与することにより、対象におけるtHcyレベルが低下する。一部の実施形態では、記載される医薬組成物または医薬製剤を、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象に投与することにより、骨折のリスク、減少した骨塩密度、および/または骨粗鬆症を含む、対象における上昇したtHcyレベルに関連付けられる骨格症状が緩和される。
【0145】
上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、認知低下、認知症および/またはアルツハイマー病の増加した有病率などの、認知症状または認知異常を呈示し得る、あるいはこれらを発症する増加したリスクを有し得る(例えば、それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献8;スミス エー デビッド(Smith,A.David)およびヘルガ レフサム(Helga Refsum.)「ホモシステイン、Bビタミン、および認知障害(Homocysteine,B vitamins,and cognitive impairment).」Annual review of nutrition 36(2016):211-239;セティエン-スエロ,エステルら(Setien-Suero,Esther,et al.)「ホモシステインおよび認知:111試験のシステマティック・レビュー(Homocysteine and cognition:a systematic review of 111 studies).」Neuroscience&Biobehavioral Reviews 69(2016):280-298参照)。よって、本明細書に記載される方法の一部の実施形態は、本明細書に記載される医薬組成物または医薬製剤を対象に投与することによって、上昇したtHcyレベルに関連付けられる認知症状の処置または緩和を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法が、アルツハイマー病を含む、上昇したtHcyレベルに関連付けられる神経変性障害の処置もしくは回避またはその進行の遅延を提供する(その開示全体が本願明細書に援用される、ファリーナ,ニコラスら(Farina,Nicolas,et al.)「アルツハイマー病の認知進行におけるホモシステイン濃度(Homocysteine concentrations in the cognitive progression of Alzheimer’s disease).」Experimental Gerontology 99(2017):146-150参照)。一部の実施形態では、記載される医薬組成物または医薬製剤を、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象に投与することにより、対象におけるtHcyレベルが低下する。一部の実施形態では、記載される医薬組成物または医薬製剤を、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象に投与することにより、認知低下、認知症またはアルツハイマー病を含む、対象における上昇したtHcyレベルに関連付けられる認知症状が緩和される。
【0146】
上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、血管疾患を呈示し得る、または血管疾患を発症する増加したリスクを有し得る(例えば、その内容全体が本願明細書に援用される、カン,ス-サン(Kang,Soo-Sang)、およびロバート エス ロセンソン(Robert S.Rosenson.)「高ホモシステイン血症および血管疾患に対するその影響を処置するための分析手法(Analytic approaches for the treatment of hyperhomocysteinemia and its impact on vascular disease).」Cardiovascular drugs and therapy 32.2(2018):233-240参照)。よって、本明細書に記載される方法の一部の実施形態は、血管疾患の処置、緩和または回避を提供する。
【0147】
上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、脳卒中を呈示し得る、または脳卒中を発症する増加したリスクを有し得る(例えば、その内容全体が本願明細書に援用される、スペンス,ジェイ.デビッド(Spence,J.David.)「脳卒中予防のためのホモシステイン低下:証拠の複雑さの解明(Homocysteine lowering for stroke prevention:unravelling the complexity of the evidence).」International Journal of Stroke 11.7(2016):744-747参照)。よって、本明細書に記載される方法の一部の実施形態は、脳卒中の処置、緩和または回避を提供する。
【0148】
上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、眼疾患を呈示し得る、または眼疾患を発症する増加したリスクを有し得る(例えば、その内容全体が本願明細書に援用される、アジス,テックツパラムビル アナンタナラヤナン(Ajith,Thekkuttuparambil Ananthanarayanan.)「眼疾患におけるホモシステイン(Homocysteine in ocular diseases).」Clinica Chimica Acta 450(2015):316-321参照)。よって、本明細書に記載される方法の一部の実施形態は、眼疾患の処置、緩和または回避を提供する。
【0149】
上昇したtHcyレベルは、広範囲の代謝系および生理系に影響を及ぼし得る。したがって、遺伝的に定義されていない対象は、なかでも骨格症状、認知症状、眼症状、心血管症状および生殖症状を含む、様々な表現型転帰を呈示し得る、またはこれらを発症する増加したリスクを有し得る。
【0150】
例えば、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、流産を呈示し得る、または流産の増加したリスクを有し得る(その開示全体が本願明細書に援用される、カヴァッリ-ブスケツ,ペレら(Cavalle-Busquets,Pere,et al.)「中等度に上昇した妊娠初期空腹時血漿総ホモシステインは流産の増加した可能性に関連付けられる。タラゴナ県レウス出生コホート研究(Moderately elevated first trimester fasting plasma total homocysteine is associated with increased probability of miscarriage.The Reus-Tarragona Birth Cohort Study).」Biochimie(2020)参照)。したがって、本明細書に記載される方法は、中等度に上昇した妊娠初期tHcyレベルを有する女性における流産の回避を提供する。
【0151】
上昇したtHcyレベルを有する、小児および青年を含む遺伝的に定義されていない対象は、不安およびうつ病を呈示し得る、またはこれらの増加したリスクを有し得る(その開示全体が本願明細書に援用される、フォルスタイン,マーシャルら(Folstein,Marshal,et al.)「うつ病のホモシステイン仮説(The homocysteine hypothesis of depression).」American Journal of Psychiatry 164.6(2007):861-867;チャン,クオ-スアン(Chung,Kuo-Hsuan)、フン-イ チオウ(Hung-Yi Chiou)、およびイ-フー チェン(Yi-Hua Chen).「台湾の小児および青年の間の血清ホモシステインレベルと不安およびうつ病との間の関連(Associations between serum homocysteine levels and anxiety and depression among children and adolescents in Taiwan).」Scientific reports 7.1(2017):1-7参照;メック,アーノルド ダブリュー(Mech,Arnold W.)、およびアンドリュー ファラー(Andrew Farah.)「MTHFR C677TまたはA1298C多型が陽性であるMDDを有する患者における、還元型Bビタミンによる治療中の臨床応答とホモシステイン低下の相関:無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験(Correlation of clinical response with homocysteine reduction during therapy with reduced B vitamins in patients with MDD who are positive for MTHFR C677T or A1298C polymorphism:a randomized,double-blind,placebo-controlled study).」The Journal of clinical psychiatry 77.5(2016):668-671も参照)。したがって、本明細書に記載される方法は、上昇した妊娠初期tHcyレベルを有する小児および青年における不安またはうつ病の回避を提供する。
【0152】
上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、腎合併症ならびに/あるいは虚血性心疾患および脳卒中を含む心血管疾患および関連する状態を呈示し得る、またはこれらの増加したリスクを有し得る(その開示全体が本願明細書に援用される、グルデナー,コーエン(Guldener,Coen.)「なぜ腎不全でホモシステインが上昇するのか、またホモシステイン低下から何が予想され得るか?(Why is homocysteine elevated in renal failure and what can be expected from homocysteine-lowering?).」Nephrology Dialysis Transplantation 21.5(2006):1161-1166;クラーク(Clarke)、ロバート(Robert)、サラ ルウィントン(Sarah Lewington)、およびマーティン ランドレー(Martin Landray).「ホモシステイン、腎機能、および心血管疾患のリスク(Homocysteine,renal function,and risk of cardiovascular disease).」Kidney international 63(2003):S131-S133;ヤン フイ-ファンら(Yang,Hui-Fang,et al.)「血清ホモシステインは性交頻度と心血管リスクとの間の関係性を説明するか?(Does serum homocysteine explain the connection between sexual frequency and cardiovascular risk?).」The Journal of Sexual Medicine 14.7(2017):910-917参照)。したがって、本明細書に記載される方法は、上昇したtHcyレベルを有する対象における、例えば腎不全および慢性腎疾患を含む腎合併症、ならびに心血管疾患の処置または回避を提供する。
【0153】
VI.用量および投与
一定の実施形態では、医薬品が、皮下(SC)、静脈内(IV)または腹腔内(IP)注射によって対象に投与され得る。一実施形態では、医薬品が、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回または20回、対象に投与され得る。別の実施形態では、医薬品が20回超投与される。別の実施形態では、医薬品が100回超投与される。あるいは、医薬品が、対象の残りの寿命にわたって投与され得る。
【0154】
一定の実施形態では、医薬品の投与が、12時間毎、13時間毎、14時間毎、15時間毎、16時間毎、17時間毎、18時間毎、19時間毎、20時間毎、21時間毎、22時間毎、23時間毎、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、1週間毎、2週間毎、3週間毎および1か月毎に繰り返され得る。一定の実施形態では、医薬品の投与が、3日に1回、2日に1回、または1日に1回実施される。
【0155】
一定の実施形態では、医薬品の投与が、数分、数時間、数日または数週間離れた一連の投与であり得る。例えば、一連の投与の回数は、1回、2回、3回、4回、5回または6回であり得る。非限定的な例として、対象は、24時間離れて3回投与される。別の非限定的な例として、対象は、12時間離れて5回投与される。対象はヒトであり得る。
【0156】
一定の実施形態では、医薬品の投与が、第1の一連の投与と第2の一連の投与との間にギャップを有する一連の投与の投与スケジュールに従い得る。投与間のギャップは、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1か月間、2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、13か月間、14か月間、15か月間、16か月間、17か月間、または18か月間であり得る。一連の投与の回数は2回、3回、4回、5回または6回であり得る。非限定的な例として、対象は、第1の一連の12時間離れた5回の投与を投与され、次いで、第1の投与の14日後、対象は、第2の一連の12時間離れた5回の投与を投与される。別の非限定的な例として、対象は、第1の一連が2週間にわたる1週間に2回の投与1回であり、第2の一連の投与が6週間にわたる1週間に3回である、8週間の期間にわたる2連の投与を投与される。
【0157】
一定の実施形態では、対象にベタインが投与された後、医薬品が少なくとも1回投与され得る。ベタイン投与と医薬品投与との間の時間は、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、1か月間、2か月間、四半期、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、12か月間、13か月間、14か月間、15か月間、16か月間、17か月間、または18か月間であり得る。非限定的な例として、対象にベタインが投与された14日後に、医薬品が投与され得る。別の非限定的な例として、対象にベタインが投与された後、対象に医薬品が2回投与され得る。別の非限定的な例として、ベタイン投与の14または15日後に医薬品が投与され得る。
【0158】
一定の実施形態では、医薬品がベタインと組み合わせて対象に投与され得る。一部の実施形態では、ベタイン投与が市販の補充物の自己投与を伴う。一部の実施形態では、ベタイン投与が、例えばサイスタダン(Cystadane)として処方される。ベタイン投与は、様々な補充物または医薬品を含み得、ベタインHCl、トリメチルグリシン、ベタイン無水物または他の形態を含み得る。ベタインと本明細書に記載される医薬品の組み合わせは、少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回および15回投与され得る。一定の実施形態では、医薬品がベタインと組み合わせて15回超投与され得る。患者に投与され得る追加の併用療法には、医薬品と、非常に低いタンパク質/Met食および/またはビタミン/補充物などのtHcyレベルを低下させるための少なくとも1つの処置が含まれる。
【0159】
一部の実施形態では、対象に投与される医薬品の用量が、年齢、性別および体重のような対象の特徴に基づいて決定される。例えば、医薬品は、剤形の医薬品の量が対象の年齢、対象の体重、および/または対象の性別に基づいて予め決定される、バイアルなどの剤形で提供され得る。医薬品は、経時的な対象の医薬品曝露を調整するために、対象の年齢、対象の体重、対象の性別および/または他の特徴に従って設定された期間にわたっていくつかの剤形で投与され得る。医薬品の剤形は、任意の治療有効量で提供され得る。
【0160】
一部の実施形態では、対象に投与される医薬品の用量が、約0.25mg/kg~約10mg/kgの間であり得る。例えば、用量は、約0.33mg/kg、約0.66mg/kg、1.0mg/kgまたは1.5mg/kgのうちの1つである。あるいは、用量は約2mg/kg、約7mg/kgおよび約10mg/kgである。例えば、用量は約0.5mg/kgであり得る。あるいは、治療有効量は、約5.0mg/kg~約50mg/kgおよび約10.0mg/kg~約25mg/kgの範囲から選択される投与量である。例えば、投与量は、約0.25mg/kg、約0.33mg/kg、約0.66mg/kg、約1.00mg/kg、約1.10mg/kg、約1.20mg/kg、約1.30mg/kg、約1.40mg/kg、約1.50mg/kg、約1.60mg/kg、約1.70mg/kg、約1.80mg/kg、約1.90mg/kg、約2.00mg/kg、約3.00mg/kg、約4.00mg/kg、約5.00mg/kg、約6.00mg/kg、約7.00mg/kg、約8.00mg/kg、約9.00mg/kg、約10.0mg/kg、約11.0mg/kg、約12.0mg/kg、約13.0mg/kg、約14.0mg/kg、約15.0mg/kg、約16.0mg/kg、約17.0mg/kg、約18.0mg/kg、約19.0mg/kg、約20.0mg/kg、約21.0mg/kg、約22.0mg/kg、約23.0mg/kg、約24.0mg/kg、約25.0mg/kg、約26.0mg/kg、約27.0mg/kg、約28.0mg/kg、約29.0mg/kg、約30.0mg/kg、約31.0mg/kg、約32.0mg/kg、約33.0mg/kg、約34.0mg/kg、約35.0mg/kg、約36.0mg/kg、約37.0mg/kg、約38.0mg/kg、約39.0mg/kg、約40.0mg/kg、約41.0mg/kg、約42.0mg/kg、約43.0mg/kg、約44.0mg/kg、約45.0mg/kg、約46.0mg/kg、約47.0mg/kg、約48.0mg/kg、約49.0mg/kg、および約50.0mg/kgからなる群から選択される。本明細書に記載される用量は、1日1回、または一部の実施形態では、1日2回投与され得る。
【0161】
一定の実施形態では、医薬品がメチオニン制限食を受けている対象に投与される。あるいは、医薬品がメチオニン制限食を受けていない対象に投与される。一部の実施形態では、医薬品が上昇したtHcyレベルを有する対象に投与される。一部の実施形態では、対象が遺伝的に定義されたHCU患者でない。
【0162】
一定の実施形態では、医薬品が、HCUを処置するための別の治療薬と共投与され得る。本明細書で使用される場合、「共投与される」とは、2つ以上の構成成分の投与を意味する。共投与するためのこれらの構成成分には、それだけに限らないが、ベタインまたはビタミンB6が含まれる。共投与は、同時のまたは投与間の時間経過、例えば1秒間、5秒間、10秒間、15秒間、30秒間、45秒間、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、20分間、21分間、22分間、23分間、24分間、25分間、26分間、27分間、28分間、29分間、30分間、31分間、32分間、33分間、34分間、35分間、36分間、37分間、38分間、39分間、40分間、41分間、42分間、43分間、44分間、45分間、46分間、47分間、48分間、49分間、50分間、51分間、52分間、53分間、54分間、55分間、56分間、57分間、58分間、59分間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日間、1.5日間、2日間または3日間がある、2つ以上の構成成分の投与を指す。一定の実施形態では、2つ以上の構成成分の投与間の時間経過が3日間超である。
【0163】
一定の実施形態では、医薬品が、1週間に1回の初期投与間隔で皮下(SC)注射を介して慢性的に患者に投与される、非経口剤として使用され得る。例えば、6回の投与にわたって毎週の薬物投与である。一定の実施形態では、対象が18~65歳の年齢範囲内にあり得る。一定の実施形態では、16歳の若さの対象が同様に処置され得る。
【0164】
一定の実施形態では、投与が、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間または6日間にわたって行われる。一定の実施形態では、投与が、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、30週間、31週間、32週間、33週間、34週間、35週間、36週間、37週間、38週間、39週間、40週間、41週間、42週間、43週間、44週間、45週間、46週間、47週間、48週間、49週間、50週間、51週間、または52週間にわたって行われる。
【0165】
一部の実施形態では、遺伝的に定義されたHCU患者、または上昇したtHcyもしくはCBS欠損を有する遺伝的に定義されていない患者を含む、CBS欠損を有する対象が、1つまたは複数の代謝指標もしくは他の指標または疾患重症度もしくは進行のレベルに従って、変動する用量の本明細書に記載される処置を投与される。例えば、対象は、対象のtHcyレベルまたは他の代謝指標レベルの測定に基づいて、予期される治療用量範囲(例えば、1日2回0.25~10mg/kg)内の20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。このようにして、対象は、本明細書に記載される疾患重症度または進行の代謝指標に従って層別化され得、疾患重症度または進行に従って20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。
【0166】
非限定的な例として、CBS欠損を有する対象においてtHcyレベルを測定することができる。測定されたtHcyレベルは、上昇した低(elevated-low)レベル、上昇した中(elevated-medium)レベル、上昇した高(elevated-high)レベルに従って層別化することができる。
【0167】
一部の実施形態では、上昇した低tHcyレベルが、約10μmol/L~約50μmol/Lの範囲内にある、すなわち、約10μmol/L、約15μmol/L、約20μmol/L、約25μmol/L、約30μmol/L、約35μmol/L、約40μmol/L、約45μmol/L、または約50μmol/Lである。
【0168】
一部の実施形態では、上昇した中tHcyレベルが、約50μmol/L~約100μmol/Lの範囲内にある、すなわち、約50μmol/L、約55μmol/L、約60μmol/L、約65μmol/L、約70μmol/L、約75μmol/L、約80μmol/L、約85μmol/L、約90μmol/L、約95μmol/L、または約100μmol/Lである。
【0169】
一部の実施形態では、上昇した高tHcyレベルが、約100μmol/L以上、例えば、約100μmol/L~約1000μmol/Lまたは約100μmol/L~約500μmol/Lの範囲内にある、すなわち、約100μmol/L、約110μmol/L、約120μmol/L、約130μmol/L、約140μmol/L、約150μmol/L、約160μmol/L、約170μmol/L、約180μmol/L、約190μmol/L、約200μmol/L、約210μmol/L、約220μmol/L、約230μmol/L、約240μmol/L、約250μmol/L、約260μmol/L、約270μmol/L、約280μmol/L、約290μmol/L、約300μmol/L、約310μmol/L、約320μmol/L、約330μmol/L、約340μmol/L、約350μmol/L、約360μmol/L、約370μmol/L、約380μmol/L、約390μmol/L、約400μmol/L、約410μmol/L、約420μmol/L、約430μmol/L、約440μmol/L、約450μmol/L、約460μmol/L、約470μmol/L、約4800μmol/L、約490μmol/L、または約500μmol/Lである。
【0170】
一部の実施形態では、予期される治療用量範囲(0.25~10mg/kg)内の20NHS PEG-CBSの投与量が、上昇した低レベル、上昇した中レベル、または上昇した高レベルとしての対象のtHcyレベルの測定に基づいて、対象に投与される。例えば、低用量、中用量、または高用量をそれぞれ対象に投与することができる。一部の実施形態では、低用量の20NHS PEG-CBSが、約0.25mg/kg~約1.0mg/kg、すなわち、約0.25mg/kg、約0.50mg/kg、約0.75mg/kg、または約1mg/kgを含む。一部の実施形態では、中用量の20NHS PEG-CBSが、約0.5mg/kg~約1.5mg/kg、すなわち、約0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、または約1.5mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約1mg/kg~約2mg/kg、すなわち、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.50mg/kg、約1.75mg/kg、または約2mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約2mg/kgより高い用量、すなわち、約2.25mg/kg、約2.50mg/kg、約2.75mg/kg、約3mg/kg、約3.25mg/kg、約3.50mg/kg、約3.75mg/kg、約4mg/kg、約4.25mg/kg、約4.50mg/kg、約4.75mg/kg、もしくは約5mg/kgまたはそれ以上を含む。
【0171】
一定の実施形態では、医薬品が、ピリドキシン(ビタミンB6とも呼ばれる)および/または抗血小板療法との併用療法として投与される。一部の実施形態では、ビタミンB12がピリドキシンおよび/または抗血小板療法との併用療法として投与される。一部の実施形態では、葉酸塩/葉酸がピリドキシンおよび/または抗血小板療法との併用療法として投与される。したがって、本明細書で提供される処置の方法の一部の実施形態は、本明細書に記載される医薬品をピリドキシン、抗血小板療法、ビタミンB12および/または葉酸塩/葉酸のうちの1つまたは複数と投与する工程を含む。
【0172】
VII.患者層別化
本明細書で使用される「患者層別化」は、HCUを有するまたは有する疑いがある患者における疾患進行または疾患重症度の臨床、生化学、分子、行動、認知、または他の指標の使用を指す。一部の実施形態では、疾患進行または疾患重症度の臨床、生化学、分子、行動、認知、または他の指標に従って患者を層別化することが、患者または患者群における疾患進行または疾患重症度の1つまたは複数の臨床、生化学、分子、行動、認知、または他の指標を定量的または定性的に記録すること、ならびに正常な患者集団(すなわち、HCUを有さないことが分かっている患者集団)および/またはHCUを有することが分かっている対照患者集団からの対応する定量的または定性的な記録または観察と比較した、患者または群の記録された定性的または定量的指標に従って、疾患進行または疾患重症度のスケールで患者または群を順位付けすることを含む。本明細書に記載される方法に従って患者を層別化することは、CSBDHの臨床診断、研究調査および/または処置の様々な態様を容易にすることができる。例えば、本明細書に記載される疾患進行または疾患重症度の臨床、生化学、分子、行動、認知、または他の指標に基づく患者層を使用して、臨床試験に対象を登録する、処置の投与量を決定する、処置投与体制を決定する、ならびに/あるいは患者の症状を緩和する、および/または患者の生活の質を改善するために本明細書に記載される酵素療法と組み合わせて使用することができる追加の処置または介入を通知することができる。一定の実施形態では、本明細書に記載される医薬品を使用した有効な酵素療法に適格な個体が、CBS遺伝子の変異分析による遺伝性CBS欠損ホモシスチン尿症の確認および80μM以上の血漿tHcyレベルに基づいて、HCUの診断を有する患者を含む。一定の実施形態では、本明細書に記載される医薬品を使用した酵素療法の臨床試験への登録に適格な個体が、CBS遺伝子の変異分析による遺伝性CBS欠損ホモシスチン尿症の確認および80μM以上の血漿tHcyレベルに基づいて、HCUの診断を有する患者を含む。
【0173】
一部の実施形態では、CBS欠損を有する対象が、1つまたは複数の代謝指標のレベルに従って変動する用量の本明細書に記載される処置を投与される。例えば、対象は、対象のtHcyレベルまたは他の代謝指標レベルの測定に基づいて、予期される治療用量範囲(例えば、1日2回0.25~10mg/kg)内の20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。このようにして、対象は、本明細書に記載される疾患重症度または進行の代謝指標に従って層別化され得、疾患重症度または進行に従って20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。
【0174】
非限定的な例として、CBS欠損を有する対象においてtHcyレベルを測定することができる。測定されたtHcyレベルは、上昇した低レベル、上昇した中レベル、または上昇した高レベルに従って層別化することができる。
【0175】
一部の実施形態では、上昇した低tHcyレベルが、約10μmol/L~約50μmol/Lの範囲内にある、すなわち、約10μmol/L、約15μmol/L、約20μmol/L、約25μmol/L、約30μmol/L、約35μmol/L、約40μmol/L、約45μmol/L、または約50μmol/Lである。
【0176】
一部の実施形態では、上昇した中tHcyレベルが、約50μmol/L~約100μmol/Lの範囲内にある、すなわち、約50μmol/L、約55μmol/L、約60μmol/L、約65μmol/L、約70μmol/L、約75μmol/L、約80μmol/L、約85μmol/L、約90μmol/L、約95μmol/L、または約100μmol/Lである。
【0177】
一部の実施形態では、上昇した高tHcyレベルが、約100μmol/L以上、例えば、約100μmol/L~約1000μmol/Lまたは約100μmol/L~約500μmol/Lの範囲内にある;すなわち、約100μmol/L、約110μmol/L、約120μmol/L、約130μmol/L、約140μmol/L、約150μmol/L、約160μmol/L、約170μmol/L、約180μmol/L、約190μmol/L、約200μmol/L、約210μmol/L、約220μmol/L、約230μmol/L、約240μmol/L、約250μmol/L、約260μmol/L、約270μmol/L、約280μmol/L、約290μmol/L、約300μmol/L、約310μmol/L、約320μmol/L、約330μmol/L、約340μmol/L、約350μmol/L、約360μmol/L、約370μmol/L、約380μmol/L、約390μmol/L、約400μmol/L、約410μmol/L、約420μmol/L、約430μmol/L、約440μmol/L、約450μmol/L、約460μmol/L、約470μmol/L、約4800μmol/L、約490μmol/L、または約500μmol/Lである。
【0178】
一部の実施形態では、予期される治療用量範囲(例えば、1日2回0.25~10mg/kg)内の20NHS PEG-CBSの投与量が、上昇した低レベル、上昇した中レベル、または上昇した高レベルとしての対象のtHcyレベルの測定に基づいて、対象に投与される。例えば、低用量、中用量、または高用量をそれぞれ対象に投与することができる。一部の実施形態では、低用量の20NHS PEG-CBSが、約0.25mg/kg~約1.0mg/kg、すなわち、約0.25mg/kg、約0.50mg/kg、約0.75mg/kg、または約1mg/kgを含む。一部の実施形態では、中用量の20NHS PEG-CBSが、約0.5mg/kg~約1.5mg/kg、すなわち、約0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、または約1.5mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約1mg/kg~約2mg/kg、すなわち、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.50mg/kg、約1.75mg/kg、または約2mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約2mg/kgより高い用量、すなわち、約2.25mg/kg、約2.50mg/kg、約2.75mg/kg、約3mg/kg、約3.25mg/kg、約3.50mg/kg、約3.75mg/kg、約4mg/kg、約4.25mg/kg、約4.50mg/kg、約4.75mg/kg、もしくは約5mg/kgまたはそれ以上を含む。
【0179】
A.臨床的呈示
HCUの診断および管理のためのガイドラインによると、重度のまたは急速に進行するミオパシー、水晶体脱臼および/または発達遅延を呈示する小児で疾患を疑うべきである(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。血栓塞栓症および/または水晶体脱臼を呈示するが、他の症状を呈示していない成人、ならびに眼、結合組織、神経精神および血管合併症を含む多系統疾患を有する成人でも検査が正当化される(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279参照)。
【0180】
B.生化学的分析
1.総ホモシステインレベル
血漿を還元剤で処置した後の全ての遊離ホモシステイン種と結合ホモシステイン種の合計を使用して、血漿tHcyレベルを決定する。安定な食習慣を有する健康な個体では、tHcyレベルは経時的に比較的一定なままである(それぞれ全体が本願明細書に援用される、レフサムら(Refsum et al.)Clin Chem 2004;50:3-32;マッキンリーら(McKinley et al.)Clin Chem 2001;47:1430-1436参照)。しかしながら、タンパク質に富む食事の消費は、tHcyレベルを数時間の期間にわたっておおよそ10%上昇させ得る(全体が本願明細書に援用される、ヴァーホフら(Verhoef et al.)Am J Clin Nutr 2005;82:553-558参照)。高ホモシステイン血症(tHcy>40μmol/L)を有する個体における研究により、個体内tHcyレベルが、4~8か月の期間にわたって最大25%変動することが見出された。しかしながら、データを解釈する能力を妨げる食事、アッセイ方法およびサンプリングの時間の変動性についての情報は提供されなかった(全体が本願明細書に援用される、レフサムら(Refsum et al.)Clin Chem 2004;50:3-32参照)。
【0181】
葉酸補充をしていない集団では、対応する参照上限はそれぞれおおよそ15および20μmol/Lである。新生児におけるCBSの診断を支持するために、血漿中のtHcyは50~100μmol/L超の間であると予想され、血漿中のMetは200~1500μmol/Lの間(すなわち、3~23mg/dL)であると予想される(全体が本願明細書に援用される、非特許文献2参照)。未処置のより高齢の個体におけるCBSの診断を支持するために、血漿中のtHcyは100μmol/L超であると予想され、血漿中のMetは50μmol/L超(すなわち、0.7mg/dL超)であると予想される。対照新生児またはより高齢の個体は、15μmol/L未満の血漿中tHcyおよび10~40μmol/L(0.2~0.6mg/dL)の間のMetを有すると予想される。
【0182】
一部の実施形態では、上昇したtHcyおよび/またはCBS欠損を有する対象が、tHcyレベルに従って変動する用量の本明細書に記載される処置を投与される。例えば、対象は、対象のtHcyレベルの測定に基づいて、予期される治療用量範囲(0.25~10mg/kg)内の20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。このようにして、対象が、本明細書に記載される疾患重症度または進行の代謝指標に従って層別化され得、疾患重症度または進行に従って20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。
【0183】
非限定的な例として、CBS欠損を有する対象においてtHcyレベルを測定することができる。測定されたtHcyレベルは、上昇した低レベル、上昇した中レベル、または上昇した高レベルに従って層別化することができる。
【0184】
一部の実施形態では、上昇した低tHcyレベルが、約10μmol/L~約50μmol/Lの範囲内にある、すなわち、約10μmol/L、約15μmol/L、約20μmol/L、約25μmol/L、約30μmol/L、約35μmol/L、約40μmol/L、約45μmol/L、または約50μmol/Lである。
【0185】
一部の実施形態では、上昇した中tHcyレベルが、約50μmol/L~約100μmol/Lの範囲内にある、すなわち、約50μmol/L、約55μmol/L、約60μmol/L、約65μmol/L、約70μmol/L、約75μmol/L、約80μmol/L、約85μmol/L、約90μmol/L、約95μmol/L、または約100μmol/Lである。
【0186】
一部の実施形態では、上昇した高tHcyレベルが、約100μmol/L以上、例えば、約100μmol/L~約1000μmol/Lまたは約100μmol/L~約500μmol/Lの範囲内にある;すなわち、約100μmol/L、約110μmol/L、約120μmol/L、約130μmol/L、約140μmol/L、約150μmol/L、約160μmol/L、約170μmol/L、約180μmol/L、約190μmol/L、約200μmol/L、約210μmol/L、約220μmol/L、約230μmol/L、約240μmol/L、約250μmol/L、約260μmol/L、約270μmol/L、約280μmol/L、約290μmol/L、約300μmol/L、約310μmol/L、約320μmol/L、約330μmol/L、約340μmol/L、約350μmol/L、約360μmol/L、約370μmol/L、約380μmol/L、約390μmol/L、約400μmol/L、約410μmol/L、約420μmol/L、約430μmol/L、約440μmol/L、約450μmol/L、約460μmol/L、約470μmol/L、約4800μmol/L、約490μmol/L、または約500μmol/Lである。
【0187】
一部の実施形態では、予期される治療用量範囲(0.25~10mg/kg)内の20NHS PEG-CBSの投与量が、上昇した低レベル、上昇した中レベル、または上昇した高レベルとしての対象のtHcyレベルの測定に基づいて、対象に投与される。例えば、低用量、中用量、または高用量をそれぞれ対象に投与することができる。一部の実施形態では、低用量の20NHS PEG-CBSが、約0.25mg/kg~約1.0mg/kg、すなわち、約0.25mg/kg、約0.50mg/kg、約0.75mg/kg、または約1mg/kgを含む。一部の実施形態では、中用量の20NHS PEG-CBSが、約0.5mg/kg~約1.5mg/kg、すなわち、約0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、または約1.5mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約1mg/kg~約2mg/kg、すなわち、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.50mg/kg、約1.75mg/kg、または約2mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約2mg/kgより高い用量、すなわち、約2.25mg/kg、約2.50mg/kg、約2.75mg/kg、約3mg/kg、約3.25mg/kg、約3.50mg/kg、約3.75mg/kg、約4mg/kg、約4.25mg/kg、約4.50mg/kg、約4.75mg/kg、もしくは約5mg/kgまたはそれ以上を含む。
【0188】
2.メチオニンレベル
低~低-正常Cthレベル(参照は、それぞれ0.05~0.08μmol/Lおよび0.35~0.5μmol/Lの範囲である)と組み合わせた高~高-正常Metレベル(参照は、典型的にはそれぞれ40~45μmol/Lおよび12~15μmol/Lの範囲である)は、HCUをHcyメチル化の遺伝障害および栄養障害によって引き起こされるHCUと区別するのに有用であり得る(それぞれ全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;スタブラーら(Stabler et al.)JIMD Rep 2013;11:149-163;バートルら(Bartl et al.)Clin Chim Acta 2014;437:211-217参照)。別の有用な検査は、放射性または重水素標識物質を使用して、培養線維芽細胞中のHcyおよびセリンからのCth生成を決定する(それぞれ全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;クラウス ジェイピー(Kraus JP.)Methods Enzymol 1987;143:388-394;スミスら(Smith et al.)J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci 2012;911:186-191参照)。しかしながら、酵素分析は、ピリドキシン応答性個体と非応答性個体をいつも区別することができるとは限らず、酵素活性は、軽度の場合、正常であり得る(全体が本願明細書に援用される、アルカイデら(Alcaide et al.)Clin Chim Acta 2015;438:261-265参照)。より最近では、器官から血漿中に放出されるCBSの活性を測定する迅速で安定な同位元素アッセイが、ピリドキシン非応答性患者で100%の感度を示したが、ピリドキシン応答者では86%の感度しか示さなかった(共に全体が本願明細書に援用される、アルカイデら(Alcaide et al.)Clin Chim Acta 2015;438:261-265;クライトら(Krijt et al.)J Inherit Metab Dis 2011;34:49-55参照)。
【0189】
実施例4~5で論じられ、表5および図1で実証されるように、天然タンパク質制限食および/またはMetを含まないL-アミノ酸混合物ならびにベタインを含む補充物を使用した処置を受けている患者においてさえ、600μM以上、および場合によっては、1000μM以上のメチオニンレベル、ならびに正常値上限(ULN)より上のジメチルグリシン(DMG)レベルが有意な数で観察される。これらのデータは、現在の食事および治療介入の有効性が不足していることを実証している。特に、ベタインは、通説に反して、それ自体はHCUのための適当な処置ではない。慣用的な処置に対する患者応答と、上昇したメチオニン、DMG、および他の生化学指標との間の相関を理解するためにはさらなる研究調査が必要とされる。本明細書に記載される方法の一部の実施形態では、様々な生化学指標のレベルを測定および追跡することが、疾患重症度および処置に対する患者応答に関してHCU対象を識別および層別化するのに有用となり得る。
【0190】
一部の実施形態では、CBS欠損を有する対象が、メチオニンのレベルに従って変動する用量の本明細書に記載される処置を投与される。例えば、対象は、対象のメチオニンレベルの測定に基づいて、予期される治療用量範囲(0.25~10mg/kg)内の20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。このようにして、対象が、本明細書に記載される疾患重症度または進行の代謝指標に従って層別化され得、疾患重症度または進行に従って20NHS PEG-CBSの投与量を投与され得る。
【0191】
非限定的な例として、CBS欠損を有する対象においてtHcyレベルを測定することができる。測定されたtHcyレベルは、上昇した低レベルまたは上昇した高レベルに従って層別化することができる。一部の実施形態では、上昇した低レベルメチオニンレベルが約10μmol/L~約100μmol/Lであり、上昇した高メチオニンレベルが約100μmol/L~約500μmol/Lである、または約150μmol/Lより高い。
【0192】
3.クレアチニンレベル
正常値下限(LLN)未満のクレアチニンレベルを使用して、メチオニン制限食ならびに/あるいはベタインおよび/またはビタミン補充に対する患者応答に基づく層別化を含めて、小児および成人患者におけるHCUを識別および層別化することができる。低下したクレアチニンレベルは、タンパク質制限食を受けている対象におけるタンパク質制限に続発する低い筋肉量により得る。したがって、LLN未満のクレアチニンレベルを使用して、制限食および/または制限食遵守に従って対象を監視および層別化することができる。
【0193】
4.C反応性タンパク質レベル
ULNより上の高感度C反応性タンパク質(hsCRP)レベルを使用して、メチオニン制限食ならびに/あるいはベタインおよび/またはビタミン補充に対する患者応答に基づく層別化を含めて、患者におけるHCUを識別および層別化することができる。
【0194】
低いプロテインC活性レベルおよび/または低いフィブリノーゲンレベルを使用して、メチオニン制限食ならびに/あるいはベタインおよび/またはビタミン補充に対する患者応答に基づく層別化を含めて、患者におけるHCUを識別および層別化することができる。
【0195】
5.他の代謝指標
いくつかの生化学指標を個別にまたは組み合わせて使用したより洗練された生化学分析を使用して、HCUを診断または処置するために患者を層別化することができる(実施例5、表5、図1参照)。あるいは、生化学マーカーを使用して、伝統的な非ET処置に対する患者応答を監視することができる。本明細書に記載されるET処置法は、場合によっては、メチオニン制限食を受けている対象、またはビタミンもしくはベタイン補充物を摂取している対象におけるこれらの生化学マーカーの正常範囲外の上昇または低下を緩和することができる。上昇したtHcyおよびMetならびに低いシスタチオニンおよび総システインレベルに加えて、以下の生化学指標が、制限食ならびに/あるいはベタインおよびビタミン補充物処置法に対する患者応答に基づくものを含めて、対象におけるHCUを識別および層別化するのを助けることができる。
【0196】
一部の実施形態では、メチオニンレベル、DMGレベル、ALTレベル、クレアチニンレベル、hsCRPレベル、および/またはプロテインC活性レベルを個別にまたは組み合わせて使用して、メチオニン制限食ならびに/あるいはベタインおよび/またはビタミン補充に対する患者応答に基づく層別化を含めて、患者におけるHCUを識別および層別化することができる。これらの生化学指標の複数の使用は、診断および層別化の感度および精度を増加させることができる。これらの生化学指標を、HCU患者における正常範囲内であることが分かっている生化学指標とさらに組み合わせることができる。例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アンチトロンビンIIIおよびアポリポタンパク質Aの正常レベルを使用して、HCU患者をさらに識別および層別化することができる。
【0197】
6.代謝指標によるCBS処置の調整
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCBS欠損のための処置の投与を、本明細書で提供される疾患重症度または進行の1つまたは複数の代謝指標のレベルに従って用量調整することができる。例えば、疾患進行または重症度の1つまたは複数の代謝指標の測定または決定がCBS欠損の重度のまたは前進した進行を指し示す場合、20NHS PEG-CBSなどのCBS処置を低用量、中用量または高用量で投与することができる。一部の実施形態では、低用量の20NHS PEG-CBSが、約0.25mg/kg~約1.0mg/kg、すなわち、約0.25mg/kg、約0.50mg/kg、約0.75mg/kg、または約1mg/kgを含む。一部の実施形態では、中用量の20NHS PEG-CBSが、約0.5mg/kg~約1.5mg/kg、すなわち、約0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、または約1.5mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約1mg/kg~約2mg/kg、すなわち、約1mg/kg、約1.25mg/kg、約1.50mg/kg、約1.75mg/kg、または約2mg/kgを含む。一部の実施形態では、高用量の20NHS PEG-CBSが、約2mg/kgより高い用量、すなわち、約2.25mg/kg、約2.50mg/kg、約2.75mg/kg、約3mg/kg、約3.25mg/kg、約3.50mg/kg、約3.75mg/kg、約4mg/kg、約4.25mg/kg、約4.50mg/kg、約4.75mg/kg、もしくは約5mg/kgまたはそれ以上を含む。
【0198】
C.分子診断
分子遺伝的検査は、単一遺伝子検査によって、または多重遺伝子パネルを使用して実施することができる(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;サシャロフ エスジェイ(Sacharow SJ)、ピッカー ジェイディー(Picker JD)、レヴィ エイチエル(Levy HL).シスタチオニンベータ合成酵素欠損によって引き起こされるホモシスチン尿症(Homocystinuria Caused by Cystathionine Beta-Synthase Deficiency).GeneReviews 2017;モリスら(Morris et al.)J Inherit Metab Dis 2017;40:49-74;カツァニスら(Katsanis et al.)Nat Rev Genet 2013;14:415-426参照)。特定のCBS変異を有するリスクが高い個体は、標的化単一遺伝子検査を使用してスクリーニングすべきである。しかしながら、これは、共通のCBS変異を有する選択された集団(例えば、カタールのHCUを有する個体の93%はp.Arg336Cys;c.1006C>T変異を保有する)および既知の病原性変異体を有する家族の個体でのみ有用である。他の患者では、CBS遺伝子を配列決定し、1つの病原性変異体が見られる場合、または病原体変異体が見られない場合にのみ、遺伝子標的化欠失/複製分析を実施することができる。表3は、患者のHCUを識別および層別化するために使用することができる遺伝子変異の非限定的なリストを提供する。
【0199】
あるいは、複数遺伝子パネルを使用して複数の遺伝子の同時の分子検査を実施することができる。使用される方法には、配列分析、欠失/複製分析および他の配列決定に基づかない検査が含まれ得る(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。通例、分子遺伝的検査は、限定された数の流行性変異を有する高リスク集団のためにある(それぞれ全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;ヒューマーら(Huemer et al.)J Inherit Metab Dis 2015;38:1007-101参照)。
【0200】
D.ピリドキシン応答性検査
ピリドキシン応答性検査は、HCU患者にピリドキシン補充を処方すべきかどうかを決定するために診療所で使用される。異なる処置センターがピリドキシン応答性を異なって定義しているので(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)、ピリドキシン応答性ではなくtHcyレベルによる患者の分類がより厳密である。ピリドキシン応答性は、代謝制御の尺度ではなく、むしろいくらかの残留CBS活性が残っていることの指標である。
【0201】
E.新生児スクリーニング(NBS)
一般に、HCU欠損についてのNBS検査は、乾燥血液スポットを分析してMetレベルを決定することによって遂行される。あるいは、NBSのための乾燥血液スポット中のMetではなくtHcyレベルの評価が世界中の少数のセンターで利用可能である。これは、高Metレベルを有する個体におけるNBSの偽陽性率を低下させるための第2層検査として採用され(全体が本願明細書に援用される、タージオンら(Turgeon et al.)Clin Chem 2010;56:1686-1695参照)、感度を改善するために使用されるわけでもないし、偽陰性率を低下させるために使用されるわけでもない。
【0202】
F.認知機能
低い血漿tHcyレベルを有する患者は、実行機能の測定で良い成績を上げる。NIH Toolboxまたは神経行動学的もしくは認知機能の他の評価を使用して、介入に対する応答の追跡を含む、経時的な認知機能に従って患者を評価および層別化することができる。認知とtHcyレベルとの間の相関をさらに使用して患者を層別化することができる(例えば、表9および図3および図4参照)。本明細書に記載されるET後の対象における低下したtHcyレベルは、対象が神経行動学的または認知介入について改善した転帰を有することの指標として使用することができる。他方で、上昇したtHcyレベルは、対象が本明細書に記載されるETと組み合わせた神経行動学的もしくは認知介入を必要とする、または本明細書に記載されるETと組み合わせた神経行動学的もしくは認知介入から利益を得ることを指し示し得る。例えば、50μM超、60μM超、70μM超、80μM超、90μM超、または100μM超のtHcyレベルを、神経行動学的および認知機能を測定および/または追跡するための閾値として、ならびに/あるいはHCUを有するまたは有する疑いがある患者における神経行動学的もしくは認知処置または介入に対する患者感受性またはこれらの必要性の指標として使用することができる。一部の実施形態では、神経行動学的もしくは認知処置または介入が、例えば、行動的ペアレントトレーニング(BPT)および行動的学級マネジメント(BCM)などの行動療法を含む、ADHDなどの他の実行機能問題のためのサポートと類似のサポートを含む(例えば、それぞれ内容全体が本願明細書に援用される、ペラム ジュニア(Pelham Jr)、ウィリアム イー(William E.)、およびグレゴリー エー ファビアーノ(Gregory A.Fabiano.)「注意欠陥/多動性障害のための証拠に基づく心理社会的処置(Evidence-based psychosocial treatments for attention-deficit/hyperactivity disorder).」Journal of Clinical Child&Adolescent Psychology 37.1(2008):184-214;ならびにフィフナー,リンダ ジェイ(Pfiffner,Linda J.)、およびローレン エム ハーク(Lauren M.Haack.)「ADHDを有する学齢小児のための行動マネジメント(Behavior management for school-aged children with ADHD).」Child and Adolescent Psychiatric Clinics 23.4(2014):731-746参照)。
【0203】
G.遺伝的に定義されていない患者の層別化
ここに記載される組成物および方法は、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象または集団におけるものを含む、上昇したtHcyレベルに関連付けられる合併症または状態を処置または緩和するのに有用である。
【0204】
CBS変異の頻度を保存的にスクリーニングするためにBroad Institute GnomADデータベースを使用すると、米国において、数千人の患者でCBSの機能喪失型および/またはミスセンス変異変異体が流行していると推定される。一部の推定は、CBSの機能喪失型および/またはミスセンス変異変異体を有する個体が4000人超であるとする一方で、他の推定は、CBSの機能喪失型および/またはミスセンス変異変異体を有する個体が14000人超であるとしている。
【0205】
tHcy検査は一般的で、安価である。1年に推定500万人の患者がtHcy検査を受けている。31000~35000人の患者が平均より上の2標準偏差超のtHcyレベルを実証している。上昇したtHcyを有する多くの患者は古典的HCUにも関連付けられる診断歴を有するが、10%未満はHCUまたは硫黄アミノ酸代謝障害の記録された診断を有する。これらの患者の多くは、遺伝的に定義されていない上昇したtHcyレベルを有し得る。
【0206】
本明細書で使用される、上昇したtHcyレベルは、対象の年齢、性別、食事、または他の因子に基づいて対象について予想される正常平均値よりも高いtHcyレベル(すなわち、総血漿ホモシステインレベル)を指す。一部の実施形態では、上昇したtHcyレベルを有する対象が、約4μmol/L超、約5μmol/L超、約6μmol/L超、約7μmol/L超、約8μmol/L超、約9μmol/L超、約10μmol/L超、約11μmol/L超、約12μmol/L超、約13μmol/L超、約14μmol/L超、約15μmol/L超、約16μmol/L超、約17μmol/L超、約18μmol/L超、約19μmol/L超、約20μmol/L超、約21μmol/L超、約22μmol/L超、約23μmol/L超、約24μmol/L超、約25μmol/L超、約26μmol/L超、約27μmol/L超、約28μmol/L超、約29μmol/L超、約30μmol/L超を有する。一部の実施形態では、上昇したtHcyレベルが100μmol/Lにもなり得る。一部の実施形態では、上昇したtHcyレベルが100μmol/L超になり得る。よって、本開示の一部の実施形態は、約4mol/L~最大約100μmol/Lの間、またはそれ以上であるものとしての対象における上昇したtHcyレベルを提供する。
【0207】
したがって、記載される方法および組成物の一部の実施形態は、上昇したtHcyレベルに基づいて患者集団を層別化する工程と、上昇したtHcyレベルに関連付けられる状態および合併症の処置および緩和を含む、上昇したtHcyレベルの処置のための集団内の対象を選択する工程とを含む。一部の実施形態では、上昇したtHcyレベルを有する対象の処置により、根底にある病理学、例えばCBS欠損またはHCUから独立して、認知または骨格異常などの関連する状態および合併症が緩和される。
【0208】
VIII.表現型転帰
後ろ向き研究は、tHcyレベルと転帰との間の比例関係を示している。最高のtHcyレベルを有する患者(処置または未処置)は人生の早期により重度の症状を呈示し、より低いtHcyレベルを有する患者は、より少ない症状を呈示し、あまり急速に進行しない(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。上昇したtHcyレベルを有する個体は、典型的には成長障害、血栓塞栓症、眼の水晶体の後の脱臼を伴う重度の近視、骨粗鬆症型骨折、マルファン様体質(特に長骨の伸長)および/または学習困難などの精神医学異常を呈示する(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;NORD、クラウス ジェイピー(Kraus JP.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).NORD[定期オンライン]2017参照)。CBS欠損のスペクトルを反映して、一部の患者は重度の小児発生多系統疾患を有し、あまり重度に上昇していないHcyを有する患者は成人期まで未診断のままであり得る(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。重度に上昇したHcyレベルを有する患者では平均余命が著しく減少するが、中等度に上昇したtHcyレベルを有する患者でさえ、複数の負の臨床転帰に苦しむ。
【0209】
上昇したtHcyレベルおよびHCU患者で一般的に罹患する4つの系(眼、骨格、心血管および神経)における負の臨床転帰の因果効果を指し示す有意な証拠が観察されている。眼系では、頻繁に観察される表現型転帰には水晶体偏位、虹彩振盪、近視が含まれ、少ない頻度で観察される表現型転帰には緑内障、視神経萎縮、網膜変性、網膜剥離、白内障および角膜異常が含まれる。骨格系では、頻繁に観察される表現型転帰には骨粗鬆症、両凹椎骨、脊柱側弯症、長骨の増加した長さ、不規則に広がった骨幹端、骨幹端針状骨、骨端の異常なサイズ/形状、成長停止線、凹足および高アーチ型口蓋が含まれ、少ない頻度で観察される表現型転帰にはクモ指症、拡大した手根骨、異常な骨年齢、鳩胸/漏斗胸、外反膝、脊柱後弯症および短い第4中手骨が含まれる。血管系では、頻繁に観察される表現型転帰には血管閉塞、頬部潮紅および網状皮斑が含まれる。中枢神経系では、頻繁に観察される表現型転帰には認知症状、精神障害および錐体外路徴候が含まれ、少ない頻度で観察される表現型転帰には発作および異常な脳波が含まれる。追加の身体系では、以下の表現型転帰、すなわち、色が薄く傷みやすい髪、薄い皮膚、肝臓の脂肪変化、鼠径ヘルニア、ミオパシー、内分泌異常、減少した凝固因子および特発性腸穿孔が頻繁に観察される。
【0210】
軽度の上昇したtHcyレベルと負の転帰との間に強力な関係が観察されているが、データは、tHcyレベルの低下が臨床的顕在化にプラスに影響することも指し示している。HCUに関する文献は、疾患の希少性およびその後のより小さな研究に悩まされているが、重度に上昇したHcyレベルを有する集団における臨床転帰の拡大から利益を得ている。逆に、より幅広い集団での研究は大きな症例数から利益を得ているが、tHcyレベルの上昇が小さい。まとめると、これらの研究は一貫して、上昇したtHcyレベルが負の臨床転帰を強力に予測し、これらのレベルを低下させるための薬理学的介入が有益であることを実証している。
【0211】
本明細書に記載される医薬品によるHCUの処置からの潜在的な転帰は、HCUのための他の治療で提供されるよりも高い濃度のMetおよび他の必須アミノ酸を含む、より楽にされた食事を維持しながら、血漿tHcy濃度を可能な最低レベルまで低下させることである。HCUを有する乳児および小児では、優先事項が、HCUに関連付けられる合併症を予防すること、ならびに適した成長および正常な知能の発達を確保することである(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。晩年に診断された患者では、優先事項が、生命を脅かす血栓塞栓症を予防すること、および既に確立された合併症の進行を最小化することであり得る。これらの目標に対処するために、HCUに関連付けられる生化学的異常が改善、可能であれば、正常化され得る(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。8つの欧州の国の29のセンターにわたるHCU患者についての食事管理習慣を比較する調査は、血漿tHcyレベルについての標的範囲に関する処置センターでのコンセンサスがほとんどなく、中央推奨標的が55μM未満および29のセンターの間で20~100μM未満の範囲内であることを見出した(全体が本願明細書に援用される、アダムら(Adam et al.)Mol Genet Metab.2013年12月;110(4):454-9参照)。
【0212】
数か月離れて検査した血漿tHcyレベルでの個人内変動25%を考慮すると、約100μMの前の血漿tHcyレベルを有する患者を除外することを回避して(それぞれ全体が本願明細書に援用される、レフサムら(Refsum et al.)Clin Chem 2004;50:3-32;グットルムセンら(Guttormsen et al.)、J Clin Invest.1996、98(9):2174-83参照)、少数の患者で臨床的に有意な低下を検出するのに十分高いレベルを提供するために、処置の適格性のためのtHcyレベルについて80μM以上のカットオフ値を本明細書で選んだ。数か月離れて検査した血漿tHcyレベルでの個人内変動25%(それぞれ全体が本願明細書に援用される、レフサムら(Refsum et al.)Clin Chem 2004;50:3-32;グットルムセンら(Guttormsen et al.)、J Clin Invest.1996、98(9):2174-83参照)は、部分的には、経時的なHCU患者における食事、投薬、または補充物の変化により得る。
【0213】
未処置の場合、ピリドキシン非応答性HCU患者の予後は暗い(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。1985年に、処置前のイベントが発生するまでの時間分析による、629人の患者でのHCUの自然歴を記録する国際的後ろ向き研究により、患者の70%が10歳までに水晶体脱臼を経験し、85%が12歳までに症状を発症することが示された(共に全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;マッドら(Mudd et al.)、スコビー エフ(Skovby F.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration). スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases.第7版、ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327参照)。全体として、罹患個体の50%が15歳までにX線検査で検出される脊椎骨粗鬆症を有し、ピリドキシン非応答性患者の23%(応答性患者の4%)が30歳までに死亡した(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。
【0214】
全体としてまとめると、利用可能な証拠は、制限食および食事補充物の使用を含む、HCUの処置に向けた現在の手法が、ほとんどの患者で疾患進行の進行停止に無効であることを指し示している。結果として、HCUの代謝異常を改善または正常化し、疾患の臨床的顕在化の進行を遅延させるまたは停止する忍容性が高い治療を識別する実質的なアンメットメディカルニーズが存在する。
【0215】
上昇したHcyレベルと、眼合併症(特に、水晶体脱臼)、骨格転帰(特に、骨粗鬆症)、血管イベント(特に、脳卒中および小血管疾患)および様々なCNS転帰(特に、認知機能)を含むHCUに関連付けられる重要な臨床転帰との間の因果効果が観察されている。上昇したtHcyレベルと負の臨床転帰との間の関係、および逆に、低下したHcyレベルと改善した臨床転帰との間の関係は、一般集団における複数の研究によってさらに強化されている。全体として、これらの臨床所見は、早期HCU診断の必要性を強調し、Hcyレベルを可能な限り正常に近く低下させるための処置を促す。
【0216】
HCU患者の生活の質(QoL)に関する研究は公開されていないが、未公開の報告が、患者およびその介護者が、高度に制限され、社会的に孤立した食事に従い、これを管理することの心理社会的効果に苦しんでおり、疾患の長期医学的結果を極度に心配していることを指し示している。驚くことではないが、患者は、その長期見込みを損なうことなく、食事を楽にすることができることを切望している。
【0217】
HCU患者におけるtHcyレベルと重要な臨床転帰との間の強力な関係は、tHcyレベルの変化が、HCUの臨床エンドポイントの組み合わせについての信頼できる代用マーカーであることを示している。したがって、tHcyレベルの変化は、(i)診療所で患者の進行を監視する、および(ii)臨床試験で新たな処置の臨床利益を予測する、および(iii)治療の有効性を予測するのに有用である。
【0218】
tHcyレベルはまた、遺伝的に定義されていないCBS欠損を有する対象を選択するための信頼できる代理を提供する。本明細書に記載される方法によると、本明細書に記載されるPEG化htCBS C15S医薬品を使用して、上昇したtHcyを有する、および/またはCBS欠損を有する対象を処置して、上昇したtHcyの眼、骨格、心血管、および神経症状を含む、上昇したtHcyに関連付けられる症状を処置または改良することができる。
【0219】
例えば、医薬品は、医薬品を対象に投与する前と比較して、対象の大腿動脈柔軟性を正常化する、または増加させる。例えば、I278Tマウスは、野生型マウスと比較して有意に低い大腿動脈柔軟性を有する。Met制限食は、実際に、医薬品で処置したマウスと処置していないマウスの両方において、通常食と比較してI278Tマウスで小さな大腿動脈直径をもたらし得る。
【0220】
3匹の疾患マウスモデルで以前実行された研究は、全体が本願明細書に援用される、国際公開第2017/083327号に記載されるように、htCBS C15Sが全身投与後に有効であることを実証した。これらの研究は、脳などの組織での細胞外Hcy血漿レベルおよび細胞内Hcyレベルの最大90%の低下を示した。医薬品の投与は、細胞内空間の高濃度から細胞外空間(医薬品がこれをさらに処理することができる)の低濃度までのHcyの流束で、濃度勾配をもたらすことが観察された。細胞外PEG化htCBS C15Sは、Hcy「シンク」として働く。要約すると、医薬品は、HCU動物モデルにおいてMet代謝経路の制御を回復した。
【0221】
これらの研究はまた、HCUマウスモデルにおけるPEG化htCBS C15SのSC投与が、Cthレベルの上昇およびCysレベルの正常化を含め、代謝産物レベルを矯正したことを示している。加えて、PEG化htCBS C15Sは、顔面脱毛症、肝臓組織学、骨粗鬆症、体組成、糖尿病性網膜症(おそらく腎疾患に続発性)、ならびに網膜血管閉塞または非動脈炎性虚血性視神経症による斑状萎縮および視神経萎縮、サイトカインおよび脂質レベルを含む、マウスにおける疾患の表現型発現にプラスの影響を及ぼした。PEG化htCBS C15Sはまた、CBSノックアウト(KO)マウスを早死にから救済した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ルッカーら(Looker et al.)Diabetologia 2003;46:766-772;プスパラジャら(Pusparajah et al.)Front Physiol 2016;7:200;ガースら(Gerth et al.)J AAPOS 2008;12:591-596;スタンガーら(Stanger et al.)Clin Chem Lab Med 2005;43:1020-1025;ケーヒルら(Cahill et al.)Am J Ophthalmol 2003;136:1136-1150;ミンニーティら(Minniti et al.)Eur J Ophthalmol 2014;24:735-743参照)。PEG化htCBS C15Sはまた、疾患動物モデルにおける慢性投与で認められる毒物学的効果がなく忍容性が高いことが観察された。
【0222】
PEG化htCBS C15Sは、細胞外空間で作用し、患者の遺伝学、同時療法、またはベースラインtHcyレベルにかかわらず、tHcy血漿濃度を低下させると予期される。よって、研究の適格集団は、ピリドキシン応答性患者と非応答性患者の両方を含むべきである。
【0223】
健康な個体では、tHcyレベルがおおよそ5~15μMの範囲にあり(全体が本願明細書に援用される、OECD Environmental Health and Safety Publications.Series on Principles of Good Laboratory Practice and Compliance Monitoring.No.1 ENV/MC/CHEM(98)17 Principles of Good Laboratory Practice(1997年に改訂))、その98%がジスルフィド型である、またはタンパク質結合している。tHcyのわずか2%のみが、酵素の基質として働くことができる非結合型の遊離の還元アミノチオールとして存在する(共に全体が本願明細書に援用される、EMA:Guideline on bioanalytical method validation、EMEA/CHMP/EWP/192217/2009、ev.1、2011年7月21日;ATL-15-1419 Atlanbio Study Report「研究529736中に収集されたサル血漿試料中のシスタチオニンβ合成酵素活性の産物としてのシスタチオニンD4のLC-MS/MS決定(LC-MS/MS determination of cystathionine-D4 as product of the cystathionine β-synthase activity in monkey plasma samples collected during the study 529736)」参照)。他方で、HCU患者は、400μM以上に達し得る血漿レベルを呈示するだけでなく、遊離ホモシステインがtHcy値の10~25%に達するという劇的に変更されたバランスも呈示する。
【0224】
マウスモデルでは、PEG化htCBS C15Sの投与が、tHcyレベルの最大90%の低下をもたらした。よって、酵素に利用可能な遊離ホモシステインの初期レベル(全体の10%~25%)だけでは、記録されたtHcyレベルの有意な低下を説明することができず、追加のプールが酵素に利用可能にならなければならない。例えば、PEG htCBS活性の結果として、遊離Hcyは乏しくなるので、血漿中の遊離HcyとHcy付加物(タンパク質結合型Hcyまたはジスルフィド型)との間のバランスは遊離Hcyの作製を支えるように変化し、これが酵素によってさらに処理され得る。
【0225】
A.眼合併症
上昇したHcyレベルは、HCU患者および一般集団において、眼合併症、特に水晶体脱臼の強力な独立したリスクファクターである。薬理学的介入および食事介入を処方された場合でさえ、HCU患者の大部分は最終的に眼合併症を呈示する。Hcyレベルの低下が、HCU患者で水晶体脱臼を遅延させ、もしかすると予防することが示されている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;マルティネス-グティエレスら(Martinez-Gutierrez et al.)Int Ophthalmol(2011) 31:227-232;アジスら(Ajith et al.)Clin Chim Acta 2015;450:316-321;ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315;マルチ-カーバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD006612;スウィーツァーら(Sweetser et al.)N Engl J Med 2016、375:1879-1890;サディクら(Sadiq et al.)Semin Ophthalmol 2013;28:313-320;ライトら(Wright et al.)ホモシステイン、葉酸および眼(Homocysteine,folates,and the eye).Eye(Lond)2008;22:989-993;リーバーマンら(Lieberman et al.)Am J Ophthalmol 1966、61:252-255;ハリソンら(Harrison et al.)Ophthalmology 1998、105:1886-1890;ラムセイら(Ramsey et al.)Am J Ophthalmol 1972;74:377-385;コーサーら(Couser et al.)Ophthalmic Genet 2017、38:91-94;ゴーバニハグジョら(Ghorbanihaghjo et al.)Mol Vis 2008、14:1692-1697;ジャヴァドザデら(Javadzadeh et al.)Mol Vis 2010;16:2578-2584;セドンら(Seddon et al.)Am J Ophthalmol 2006;141:201-203;コーラルら(Coral et al.)Eye(Lond)2006;20:203-207;アクサー-シーゲルら(Axer-Siegel et al.)Am J Ophthalmol 2004、137:84-89;ホイベルガーら(Heuberger et al.)Am J Clin Nutr 2002;76:897-902;ファンら(Huang et al.)Sci Rep 2015;5:10585;センら(Sen et al.)Indian J Clin Biochem 2008;23:255-257;ヨウセフィら(Yousefi et al.)Protein Pept Lett 2013;20:932-941;ガースら(Gerth et al.)J AAPOS 2008;12:591-596;スタンガーら(Stanger et al.)Clin Chem Lab Med 2005、43:1020-1025;ケーヒルら(Cahill et al.)Am J Ophthalmol 2003、136:1136-1150;ミンニーティら(Minniti et al.)Eur J Ophthalmol 2014、24:735-743;タークら(Turkcu et al.)Medicina (Kaunas)2013、49:214-218;ヴェッサーニら(Vessani et al.)Am J Ophthalmol 2003;136:41-46;リーボヴィッツら(Leibovitch et al.)J Glaucoma 2003、12:36-39;リーボヴィッツら(Leibovitzh et al.)Medicine(Baltimore)2016;95:e4858;ミカエルら(Micheal et al.)Mol Vis 2009;15:2268-2278;クレメントら(Clement et al.)J Glaucoma 2009;18:73-78;クムルクら(Cumurcu et al.)BMC Ophthalmol 2006;6:6;ブライヒら(Bleich et al.)J Neural Transm(Vienna)2002;109:1499-1504;リーら(Lee et al.)Curr Eye Res 2017;1-6;ワンら(Wang et al.)Am J Ophthalmol 2004;137:401-406;ガナパシら(Ganapathy et al.)Invest Ophthalmol Vis Sci 2009;50:4460-4470参照)。薬理学的介入および食事介入を処方された場合でさえ、HCU患者の大部分は最終的に眼合併症を呈示する。Hcyレベルの低下が、HCU患者で水晶体脱臼を遅延させ、もしかすると予防することが示されている(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47参照)。
【0226】
HCUの最も一貫して存在し、最も早い顕在化のうちの1つは、水晶体偏位(水晶体脱臼)である(全体が本願明細書に援用される、ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315参照)。これは通常、2歳以降に起こり、未処置のピリドキシン非応答性患者のおおよそ50%で6歳までに、未処置ピリドキシン応答性患者の50%で10歳までに存在する(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。脱臼は部分的(亜脱臼)または完全であり得、下方にまたは鼻側に起こり得るが、通常は両側性である(共に全体が本願明細書に援用される、ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315;スウィーツァーら(Sweetser et al.)N Engl J Med 2016;375:1879-1890参照)。
【0227】
水晶体脱臼はしばしば、急速に進行する近視の期間に引き続いて、著しい乱視、単眼複視および低下した最高矯正視力につながり得る(全体が本願明細書に援用される、サディクら(Sadiq et al.)Semin Ophthalmol 2013;28:313-320参照)。全体として、近視(1ディオプトリー[D]超)は、HCU患者のおおよそ85%で罹患すると考えられ、非常に高い近視(5D超)は患者の50~76%で罹患する。虹彩振盪(眼球を動かした後の光彩の震え)は患者のおおよそ56%で罹患し、球状水晶体(亜脱臼しやすい小さな球状の水晶体)は患者の50%で罹患する(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315参照)。HCUに関連付けられる追加の合併症には、白内障形成、慢性硝子体炎(硝子体液の炎症)および脈絡網膜炎症、急性および/または慢性閉塞隅角緑内障による瞳孔閉鎖、ならびに(小児では)弱視(amblyopia)(弱視(lazy eye))が含まれる(全体が本願明細書に援用される、サディクら(Sadiq et al.)Semin Ophthalmol 2013;28:313-320参照)。
【0228】
HCUを有する24歳未満の25人の患者での長期後ろ向き研究からの証拠は、tHcyレベルを早い年齢から一貫して低下させている患者において、水晶体脱臼を予防する、または少なくとも有意に減少および遅延させることができることを示唆している(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47参照)。早期のHcy低下処置はまた、悪化する近視を含む全体的な眼合併症の低下したリスクにも関連付けられた。裏付けとなる証拠は、32人のHCU患者および25人の同胞対照での症例対照研究から得られ、ここでは早期Hcy低下処置が、晩年に処置されたまたは処置を完全に遵守しなかった患者と比較した眼合併症の有意な減少に関連付けられた(全体が本願明細書に援用される、エル・バシールら(El Bashir et al.)JIMD Rep 2015;21:89-95参照)。
【0229】
上昇したtHcyレベルを同様に特徴とする、コバラミンC欠損を有する25人の患者の眼転帰の現在までの最大かつ最長の縦断的研究は、黄斑変性、視神経蒼白、眼振、斜視および血管変化が全て、患者の大部分に存在することを見出した。
【0230】
HCU患者および一般集団における多数の研究が、上昇したHcyレベルと、近視および水晶体脱臼(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;マルティネス-グティエレスら(Martinez-Gutierrez et al.)Int Ophthalmol 2011;31:227-232;スリら(Suri et al.)J Neurol Sci 2014;347:305-309;ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315;リーバーマンら(Lieberman et al.)Am J Ophthalmol 1966;61:252-255;ハリソンら(Harrison et al.)Ophthalmology 1998;105:1886-1890;ラムセイら(Ramsey et al.)Am J Ophthalmol 1972;74:377-385;コーサーら(Couser et al.)Ophthalmic Genet 2017;38:91-94参照)、虹彩振盪(全体が本願明細書に援用される、ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315参照)、網膜動脈硬化症(全体が本願明細書に援用される、ゴーバニハグジョら(Ghorbanihaghjo et al.)Mol Vis 2008;14:1692-1697参照)、加齢黄斑変性(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ジャヴァドザデら(Javadzadeh et al.)Mol Vis 2010;16:2578-2584;セドンら(Seddon et al.)Am J Ophthalmol 2006;141:201-203;コーラルら(Coral et al.)Eye(Lond)2006;20:203-207;アクサー-シーゲルら(Axer-Siegel et al.)Am J Ophthalmol 2004;137:84-89参照)、加齢黄斑症(AMD)(共に全体が本願明細書に援用される、ホイベルガーら(Heuberger et al.)Am J Clin Nutr 2002;76:897-902;ファンら(Huang et al.)Sci Rep 2015;5:10585参照)、白内障(共に全体が本願明細書に援用される、センら(Sen et al.)Indian J Clin Biochem 2008;23:255-257;ヨウセフィら(Yousefi et al.)Protein Pept Lett 2013;20:932-941参照)、糖尿病性網膜症(おそらく腎疾患に続発性)(共に全体が本願明細書に援用される、ルッカーら(Looker et al.)Diabetologia 2003;46:766-772;プスパラジャら(Pusparajah et al.)Front Physiol 2016;7:200参照)、ならびに網膜血管閉塞または非動脈炎性虚血性視神経症による斑状萎縮および視神経萎縮(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ガースら(Gerth et al.)J AAPOS 2008;12:591-596;スタンガーら(Stanger et al.)Clin Chem Lab Med 2005;43:1020-1025;ケーヒルら(Cahill et al.)Am J Ophthalmol 2003;136:1136-1150;ミンニーティら(Minniti et al.)Eur J Ophthalmol 2014;24:735-743参照)を含む種々の眼障害との間の関係を実証した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;アジスら(Ajith et al.)Clin Chim Acta 2015;450:316-321;ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315;ライトら(Wright et al.)Eye(Lond)2008;22:989-993参照)。
【0231】
629人のHCU患者の後ろ向き研究は、水晶体脱臼が通常、2歳以降に起こり、未処置のピリドキシン非応答性患者のおおよそ50%で6歳までに、未処置ピリドキシン応答性患者の50%で10歳までに存在することを見出した(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。上昇したtHcyレベルを同様に特徴とする、コバラミンC欠損を有する25人の患者の眼転帰の現在までの最大かつ最長の縦断的研究は、黄斑変性、視神経蒼白、眼振、斜視および血管変化が全て、患者の大部分に存在することを見出した(全体が本願明細書に援用される、ブルックスら(Brooks et al.)Ophthalmology.2016年3月;123(3):571-82参照)。
【0232】
HCU患者および一般集団における多数の研究が、上昇したHcyレベルと、近視および水晶体脱臼(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップ エス(Yap S.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症(Homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Orphanet Encyclopaedia[定期オンライン]2005;マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;マルティネス-グティエレスら(Martinez-Gutierrez et al.)Int Ophthalmol 2011;31:227-232;ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315;サディクら(Sadiq et al.)Semin Ophthalmol 2013;28:313-320;リーバーマンら(Lieberman et al.)Am J Ophthalmol 1966;61:252-255;ハリソンら(Harrison et al.)Ophthalmology 1998;105:1886-1890;ラムセイら(Ramsey et al.)Am J Ophthalmol 1972;74:377-385;コーサーら(Couser et al.)Ophthalmic Genet 2017;38:91-94参照)、虹彩振盪(全体が本願明細書に援用される、ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315参照)、網膜動脈硬化症(全体が本願明細書に援用される、ゴーバニハグジョら(Ghorbanihaghjo et al.)Mol Vis 2008;14:1692-1697参照)、加齢黄斑変性(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ジャヴァドザデら(Javadzadeh et al.)Mol Vis 2010;16:2578-2584;セドンら(Seddon et al.)Am J Ophthalmol 2006;141:201-203;コーラルら(Coral et al.)Eye(Lond)2006;20:203-207;アクサー-シーゲルら(Axer-Siegel et al.)Am J Ophthalmol 2004;137:84-89参照)、加齢黄斑症(AMD)(共に全体が本願明細書に援用される、ホイベルガーら(Heuberger et al.)Am J Clin Nutr 2002;76:897-902;ファンら(Huang et al.)Sci Rep 2015;5:10585参照)、白内障(共に全体が本願明細書に援用される、センら(Sen et al.)Indian J Clin Biochem 2008;23:255-257;ヨウセフィら(Yousefi et al.)Protein Pept Lett 2013;20:932-941参照)、糖尿病性網膜症(おそらく腎疾患に続発性)(共に全体が本願明細書に援用される、ルッカーら(Looker et al.)Diabetologia 2003;46:766-772;プスパラジャら(Pusparajah et al.)Front Physiol 2016;7:200参照)、ならびに網膜血管閉塞または非動脈炎性虚血性視神経症による斑状萎縮および視神経萎縮(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ガースら(Gerth et al.)J AAPOS 2008;12:591-596;スタンガーら(Stanger et al.)Clin Chem Lab Med 2005;43:1020-1025;ケーヒルら(Cahill et al.)Am J Ophthalmol 2003;136:1136-1150;ミンニーティら(Minniti et al.)Eur J Ophthalmol 2014;24:735-743参照)を含む種々の眼障害との間の関係を実証した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;アジスら(Ajith et al.)Clin Chim Acta 2015;450:316-321;ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315;ライトら(Wright et al.)Eye(Lond)2008;22:989-993参照)。
【0233】
Hcyレベルと緑内障との間の関連を調査する研究は、一貫性のない結果を提供した。Hcyレベルと正常眼圧緑内障、偽落屑緑内障(PEXG)および原発性開放隅角緑内障(POAG)との間の正の関係を示すものもあったが、示さないものもあった(それぞれ全体が本願明細書に援用される、リーバーマンら(Lieberman et al.)Am J Ophthalmol 1966;61:252-255;タークら(Turkcu et al.)Medicina(Kaunas)2013;49:214-218;ヴェッサーニら(Vessani et al.)Am J Ophthalmol 2003;136:41-46;リーボヴィッツら(Leibovitch et al.)J Glaucoma 2003;12:36-39;リーボヴィッツら(Leibovitzh et al.)男性および女性におけるホモシステインと眼圧との間の関係:集団ベース研究(Relationship between homocysteine and intraocular pressure in men and women:A population-based study).Medicine(Baltimore)2016;95:e4858;ミカエルら(Micheal et al.)Mol Vis 2009;15:2268-2278;クレメントら(Clement et al.)J Glaucoma 2009;18:73-78;クムルクら(Cumurcu et al.)BMC Ophthalmol 2006;6:6;ブライヒら(Bleich et al.)J Neural Transm(Vienna)2002;109:1499-1504;リーら(Lee et al.)Curr Eye Res 2017;1-6;ワンら(Wang et al.)Am J Ophthalmol 2004;137:401-406参照)。しかしながら、網膜神経節細胞(RGC)の喪失-緑内障を有する個体での共通の観察-が、CBS遺伝子欠失によって引き起こされる内因的に上昇したHcyレベルを有するマウスで実証され、HCU患者における緑内障と上昇したtHcyレベルとの間のありそうな関連を示唆した(全体が本願明細書に援用される、ガナパシら(Ganapathy et al.)Invest Ophthalmol Vis Sci 2009;50:4460-4470参照)。
【0234】
1.機序
眼の健康に対する上昇したHcyレベルの効果を説明するいくつかの機序が提案されている(全体が本願明細書に援用される、アジスら(Ajith et al.)Clin Chim Acta 2015;450:316-321参照)。上昇したtHcyの効果を説明する機序には、血管内皮機能障害、網膜神経節細胞のアポトーシス、細胞外マトリックスの変更、低下したリジル酸化酵素活性および酸化ストレス、ならびに水晶体混濁化および視神経損傷に寄与するように見えるHcyの直接的な細胞傷害性効果および炎症促進性効果が含まれる。
【0235】
潜在的な機序には、共に白内障形成に寄与する、カルシウムの細胞流入および増加した活性酸素種(ROS)生成につながる、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の活性化も含まれる。これらの変化は、Hcyの直接的な細胞傷害性効果と一緒に、内皮傷害を引き起こす可能性があり、これが血栓形成およびRGCのアポトーシスを開始し、網膜症および緑内障につながる。上昇したHcyレベルはまた、非対称性ジメチルアルギニン(AMDA)のレベルを上昇させ、一酸化窒素合成酵素(NOS)活性を遮断し、それによって、一酸化窒素(NO)レベルを低下させることによって、血管収縮および視神経萎縮を引き起こすことも示されている。最後に、血管壁上へのホモシステイン化タンパク質の蓄積が、抗Hcy抗体産生および炎症性応答を誘因し、食作用、酸化ストレス、RGCのアポトーシスおよび細胞外マトリックス(ECM)変更につながり得る。まとめると、このような変化が脈管構造、水晶体タンパク質および視神経を損傷し、最終的に視覚機能障害を引き起こす。
【0236】
HCU患者では、水晶体脱臼が、小帯線維の変性変化、特にフィブリリン-1などのCysに富むマルチドメインECMタンパク質によって主に引き起こされると考えられている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、サディクら(Sadiq et al.)Semin Ophthalmol 2013;28:313-320;フブマシェルら(Hubmacher et al.)Biochemistry 2011;50:5322-5332;フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2005;280:34946-34955;フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2010;285:1188-1198参照)。
【0237】
健康な個体では、フィブリリン-1内の多数のドメイン内ジスルフィド結合の形成が、構造的完全性および機能に必須の正確なタンパク質折り畳みを可能にする。次いで、フィブリリン-1鎖は鎖内ジスルフィド結合を形成することができ、ミクロフィブリルとして知られる高分子量多タンパク質集合体の集合につながる(共に全体が本願明細書に援用される、キンゼイら(Kinsey et al.)J Cell Sci 2008;121:2696-2704;フブマシェルら(Hubmacher et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:6548-6553参照)。
【0238】
このプロセスは、フィブリリン-1とフィブロネクチンとの間の相互作用に高度に依存する(全体が本願明細書に援用される、フブマシェルら(Hubmacher et al.)Biochemistry 2011;50:5322-5332参照)。ミクロフィブリルは、皮膚、肺、血管/動脈、靭帯および眼に見られるものなどの弾性線維の形成において必須の工程であるトロポエラスチンの沈着のための足場を形成する(全体が本願明細書に援用される、フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2010;285:1188-1198参照)。フィブリリン-1の重要性は、結合組織機能障害が水晶体脱臼、器官脱出症、骨粗鬆症および関節過度可動性などの症状に関連付けられる、マルファン症候群-フィブリリン-1遺伝子の変異によって引き起こされる状態の患者によって例示される(共に全体が本願明細書に援用される、スクら(Suk et al.)J Biol Chem 2004;279:51258-51265;コロド-ベローら(Collod-Beroud et al.)Hum Mutat 2003;22:199-208参照)。
【0239】
インビトロ研究では、Hcyのフィブリリン-1への付加が、ジスルフィド結合形成を破壊し、今度はこれが異常なタンパク質折り畳み、タンパク質分解に対する増加した感受性ならびにECMおよび弾性線維の異常な形成につながることが示された(共に全体が本願明細書に援用される、フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2010;285:1188-1198;ホワイトマンら(Whiteman et al.)Antioxid Redox Signal 2006;8:338-346参照)。Hcyのヒト皮膚線維芽細胞への付加も、最適以下でフィブリリン-1に結合したフィブロネクチンの還元型に関連付けられ、それによって、ミクロフィブリル形成を予防した(共に全体が本願明細書に援用される、フブマシェルら(Hubmacher et al.)Biochemistry 2011;50:5322-5332;フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2010;285:1188-1198参照)。
【0240】
水晶体脱臼に加えて、HCU患者における小帯線維の変性は、増加した水晶体湾曲、水晶体近視、乱視、網膜剥離、斜視、白内障および虹彩振盪につながり得る(全体が本願明細書に援用される、サディクら(Sadiq et al.)Semin Ophthalmol 2013;28:313-320参照)。未処置の場合、水晶体の前方脱臼が急性瞳孔閉鎖緑内障を引き起こし得る。極端な場合、完全な水晶体脱臼が、おそらく霧視に対する代償反応である、増加した眼軸長に関連付けられる(全体が本願明細書に援用される、ミュルビヒルら(Mulvihill et al.)J AAPOS 2001;5:311-315参照)。
【0241】
国立NBSプログラムまたは臨床的呈示によって、臨床転帰に対するHcy低下療法の効果を調べるための後ろ向き研究が、1971年~1996年の間にアイルランドで検出された25人のHCU症例で実施された(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47参照)。症例の大部分(24例/25例)はピリドキシン非応答性であった。結果として、ほとんどの患者の処置は、Metを含まないCys補充食と、必要に応じて、ビタミンB12および葉酸補充物からなっていた。処置を、患者の6週齢前に開始し、処置が診断時に始まった異なる群および決して処置をしなかった1人の対照患者と比較した。平均フォローアップ期間は、6週齢前に処置した群で14.3年(2.5~23.4の範囲)、他の患者で14.7年(11.7~18.8の範囲)であり、合計365.7患者処置年となった。NBSによって検出された21人の患者のうち、18人は処置中に合併症がないままであった。これらの個体のうち、15人/18人が20:20ビジョンを有し、3人/18人が過去2年間にわたって近視が増加した。
【0242】
マッドら(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)の所見と一貫して、遅くに診断された個体における水晶体脱臼は、およそ2歳で起こった。水晶体脱臼は、治療を良好に遵守した早期処置個体のいずれにおいても報告されなかった。「早期処置患者」のうちの3人(最高レベルのfHcyを有する者)は、水晶体脱臼を有さず近視悪化を有し、これはこの小患者群における比較的高いfHcyレベルのためである可能性が最も高かった。このことにより、進行性の近視が、患者の反対の主張にもかかわらず、食事遵守が不十分なことの、水晶体脱臼前の第1の徴候であり得ることを著者らが示唆することにつながった。これらの患者における近視悪化は、これらの患者の中立の臨床転帰と負の臨床転帰との間のバランスがどれほど薄弱であるかを強調している。遅くに検出された患者は全て水晶体偏位を発症した。このことは、処置が水晶体偏位を予防するのではなくその発生を遅延させることを示唆している。
【0243】
生涯の中央血漿fHcyレベルは、近視のない患者よりも近視のある患者で高かった(それぞれ、18、18および48μmol/L対11μmol/L)。処置が診断時に始まった群で合併症を発症した、NBSによって識別された3人の患者のうち、全員が食事を遵守していなかった。全体として、6人/24人の患者が水晶体脱臼を有し;これらのうち、2人が早期診断を有したが、食事を遵守せず、4人が遅い診断を有し、決して処置されなかった1人を含んでいた。マッドら(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985; 37:1-31参照)の所見と一貫して、遅くに診断された個体(すなわち、2歳より後に合併症を呈示する患者)における水晶体脱臼は、おおよそ2歳で起こった。研究が公開された時、治療を良く遵守している早期処置個体のいずれによっても水晶体脱臼は報告されなかった。
【0244】
遵守患者は、fHcyレベルを120μmol/Lを大いに下回るtHcy等価レベルに維持した。しかしながら、全ての患者が、公開時に24歳未満であり、多くがまだ小児患者であった。タンパク質制限食の遵守は、青年期から成人期までに急速に減少することが示されている。上記の繊細なバランスは、これらの患者によって達成されたtHcyレベルの控えめな減少が、これらの患者が年を取るにつれて、症状の発生を予防するのではなく、これを遅延させ得ることを示唆している。
【0245】
これらの結果(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47;マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)は、32のHCU症例および25の同胞対照における、視覚障害を含む、転帰について報告している、カタールで実行された類似の症例対照研究からの結果(全体が本明細書に援用される、エル・バシールら(El Bashir et al.)JIMD Rep 2015;21:89-95参照)によって支持された。対象の平均年齢は11.2歳(0.6~29の範囲)であり、56%が男性であった。全体として、9症例/32症例(28%)が、NBSによって診断され、生後1か月で処置された。残りは14月齢~240月齢の間で診断された。tHcyレベルおよびMetレベルは、臨床的に診断された者と比較して、NBSを通して診断された者で有意に低かった。これはおそらく、人生の早い段階で食事および投薬を良く遵守したことに起因した。NBSによって識別された9症例のいずれも、遅くに診断された群の18人(78%)と比較して、研究が公開された時に視力の問題を有さなかった(群間でp<0.001)。しかしながら、上記の25人の患者のアイルランドの研究と同様に、この研究の患者は0.6~29歳の範囲であり、長期合併症はまだ分からない。
【0246】
ヤップ(Yap)およびノートン(Naughten)(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47参照)のデータとマッドらによって作成されたカプランマイヤー曲線の比較により、水晶体脱臼および骨粗鬆症を有する処置遵守「早期処置」患者の割合は、未処置HCU患者について予想されるものより有意に低いことが示された(p≦0.001)。
【0247】
したがって、上昇したHcyレベルは、HCU患者および一般集団において、眼合併症、特に水晶体脱臼の強力な独立したリスクファクターであると考えられる(例えば、ヤップら(Yap et al.)およびマッドら(Mudd et al.)に示される)。このことは、早期HCU診断および処置、ならびに患者による処置遵守の必要性を強調している。
【0248】
B.骨格合併症
HCUは、部分的には低い骨塩密度に起因し得る骨粗鬆症性骨折の増加したリスクに関連付けられる(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)およびウェバーら(Weber et al.)Mol Genet Metab 2016;117:351-354参照)。
【0249】
8年間にわたる19人のHCU患者からのデータの後ろ向き診療録レビューは、低い骨塩密度(BMD)が小児HCU患者と成人HCU患者の両方の間で共通していることを見出した(ウェバーら(Weber et al.)参照)。この研究は、骨格成長にとって極めて重要な期間である小児期および青年期中の骨量の自然増加がHCUでは欠損しており、ピーク骨量の実現に負に影響し得ることを示唆した。この研究はまた、正常範囲よりわずか5倍高い中等度に上昇したtHcyレベルを有する、どれほど食事を遵守した患者でさえ小児期に骨格臨床転帰不良で既に苦しんでいることを強調した。
【0250】
マッドら(Mudd et al.)によると、HCU患者の80%が、30歳より前に骨粗鬆症を発症する。その上、上昇したHcyレベルが、HCUを有さない患者においてさえ、骨粗鬆症性骨折の増加したリスクに関連付けられる(それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献7;マクリーンら(McLean et al.)N Engl J Med 2004;350:2042-2049参照)。
【0251】
2002年~2010年の間に臨床的DXA骨密度測定を受けた19人の対象(3.5~49.2歳の年齢の9人の男性)からのデータの後ろ向き診療録レビューは、低いBMDが小児HCU患者と成人HCU患者の両方の間で共通していることを見出した(全体が本願明細書に援用される、ウェバーら(Weber et al.)Mol Genet Metab 2016;117:351-354参照)。最初のDXAスキャンの時点で、平均腰椎(LS)BMD Zスコアは-1.2±1.3であり、股関節BMD Zスコアは-0.89±0.4であり;共にそれぞれp=0.002および0.02で0(一般集団の予想平均Zスコア)より有意に低かった。診断時のLS BMD Zスコアは21歳未満の患者で-1.26±1.4、成人で-1.06±1.1であった。全体として、患者の38%が年齢に対して低いBMDを有していた(-2以下のZスコアによって定義される)。tHcyレベルとMetレベルの両方が、複数の線形回帰モデルにおいてLS BMD Zスコアと正に関連付けられた(全体が本願明細書に援用される、ウェバーら(Weber et al.)Mol Genet Metab 2016;117:351-354参照)。これらの19人の個体についての平均tHcyレベルはわずか59.2μmol/Lであり、19人の患者の大部分が小児であった。この研究は、骨格成長にとって極めて重要な期間である小児期および青年期中の骨量の自然増加がHCUでは欠損しており、ピーク骨量の実現に負に影響し得ることを示唆している。この研究はまた、正常範囲よりわずか5倍高い中等度に上昇したtHcyレベルを有する、どれほど食事を遵守した患者でさえ小児期に骨格臨床転帰不良で既に苦しんでいることを強調している。
【0252】
以前の研究は、高齢集団におけるHcyレベルと骨折リスクとの間の明確な関係を実証した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献7;マクリーンら(McLean et al.)N Engl J Med 2004;350:2042-2049参照)。55歳以上の2406人の対象を含む、2つの前向き集団ベース研究からの結果は、骨折の年齢調整リスクおよび性別調整リスクが、tHcyレベルの各1のSD増加について30%増加することを示した(全体が本願明細書に援用される、ヴァン・メールスら(非特許文献7参照)。最高年齢別四分位数のホモシステインレベルは、骨折リスクの1.9倍の増加に関連付けられた。ホモシステインレベルと骨折リスクとの間の関連は、骨塩密度および骨折の他の潜在的なリスクファクターとは独立しているように見えた。上昇したホモシステインレベルは、骨折および心血管疾患についての確立されたリスクファクターと、大きさにおいて類似した一般集団の高齢男性および女性における骨粗鬆症性骨折の強力な独立したリスクファクターであった(全体が本願明細書に援用される、非特許文献7参照)。さらに、825人の男性および1174人の女性の米国の前向き研究(HOPE-2試行サブスタディ)は、最高四分位数の血清tHcyレベルが、最低四分位数の血清tHcyレベルと比較して、女性の間の股関節骨折の1.9倍増加したリスクおよび男性の間の4倍増加したリスクに関連付けられることを見出した(全体が本願明細書に援用される、サフカら(Sawka et al.)Arch Intern Med.2007年10月22日;167(19):2136-9参照)。tHcyレベルと骨折リスクとの間の関連は、BMDおよび骨折の他の潜在的なリスクファクターとは独立していた(それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献7;マクリーンら(McLean et al.)N Engl J Med 2004;350:2042-2049;サフカら(Sawka et al.)Arch Intern Med.2007年10月22日;167(19):2136-9参照)。
【0253】
これらの結果と一貫して、65歳超の433人の脳卒中患者での研究は、大腿骨頸部骨折について1000人年当たりの年齢調整発生率が、Hcyレベルの最低四分位数で2.89から最高四分位数で27.87までほぼ線形に増加することを見出した。まとめると、これらの結果は、上昇したHcyレベルが、高齢男性および女性における骨粗鬆症性骨折の強力な独立したリスクファクターであることを示唆している。
【0254】
骨格異常は、出生時には存在せず、乳児および非常に幼い小児では珍しい(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。骨格併発の最初の徴候は、通常、外反膝および凹足であり、しばしば思春期近くに発症する、マルファン症候群の典型的な特徴である、長骨の伸長を伴う(全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74参照)。とりわけ椎骨および長骨の、骨粗鬆症は、HCU患者で一般的であり、脊柱側弯症/脊柱後弯症および/または脊椎陥没につながり得る(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;ウェバーら(Weber et al.)Mol Genet Metab 2016;117:351-354参照)。他の骨格顕在化には、突出した上歯および高い口蓋によって引き起こされるマルファン様人相特徴、ならびに漏斗胸または鳩胸などの前胸壁変形が含まれ得る(それぞれ全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;スウィーツァーら(Sweetser et al.)N Engl J Med 2016;375:1879-1890;ブレントンら(Brenton et al.)J Bone Joint Surg Br 1972;54:277-298参照)。マルファン症候群とHCUとの間でのこれらの共有された骨格特徴のために、HCU患者は時々マルファン患者として誤って特徴付けられる。
【0255】
25年にわたって追った25人のアイルランド人HCU患者における研究は、骨粗鬆症のリスクが、非遵守患者または診断が遅い患者と比較して、Hcy低下処置を良く遵守した(食事、ビタミンおよび/またはベタイン)、新生児スクリーニングを通して識別された患者でかなり低いことを見出した(ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47参照)。これらの結果の裏付けとなる証拠は、優れた長期代謝制御をしている5人のHCU患者における小さな韓国の研究から来た。この研究では、早期Hcy低下療法を受けた患者が、遅く診断された患者よりも少ない骨格異常を有していた(全体が本願明細書に援用される、リムら(Lim et al.)Osteoporos Int 2013、24:2535-2538参照)。最後に、HCUのマウスモデルを使用した研究では、CBS ETによる処置によるtHcyレベルの正常化が、骨粗鬆症予防に関連付けられた(全体が本願明細書に援用される、マジタンら(Majtan et al.)酵素置換はマウスホモシスチン尿症における新生仔死亡、肝臓損傷および骨粗鬆症を予防する(Enzyme replacement prevents neonatal death,liver damage,and osteoporosis in murine homocystinuria)、FASEB J 2017参照)。
【0256】
HCU患者において低いBMDおよび骨格脆弱性につながる正確な機序は完全には理解されていない(共に全体が本願明細書に援用される、ウェバーら(Weber et al.)Mol Genet Metab 2016;117:351-354;リム ジェイエス(Lim JS)、リー ディーエイチ(Lee DH).CBS欠損によって引き起こされる十分に制御されたホモシスチン尿症を有する小児の骨塩密度および骨組成の変化(Changes in bone mineral density and body composition of children with well-controlled homocystinuria caused by CBS deficiency).Osteoporos Int 2013;24:2535-2538参照)。しかしながら、HCU患者における結合組織障害の多くは、マルファン症候群で見られるもの、フィブリリン-1遺伝子の変異によって引き起こされ、長骨の伸長および骨粗鬆症型骨折を含む特徴を特徴とする結合組織障害に似ている(共に全体が本願明細書に援用される、フブマシェルら(Hubmacher et al.)Biochemistry 2011;50:5322-5332;フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2010;285:1188-1198参照)。上昇したHcyレベルは、2つの別個の経路を介して骨脆弱性および骨折につながると考えられている(全体が本願明細書に援用される、ベヘラら(Behera et al.)J Cell Physiol 2016参照)。第1は、フィブリリン集合障害を介して小児期および青年期の間に骨量の自然増加の減少をもたらす。第2の経路は、骨リモデリング障害につながり、コラーゲン架橋形成の減少を介して脆い骨をもたらす(共に全体が本願明細書に援用される、ベヘラら(Behera et al.)J Cell Physiol 2016;カンら(Kang et al.)J Clin Invest 1973;52:2571-2578参照)。まとめると、これらのデータは、骨格成長にとって極めて重要な期間である小児期および青年期中の骨量の自然増加がHCU患者では欠損していること、およびこのことがピーク骨量の実現に負に影響することを示唆している。
【0257】
その上、高齢集団では、Hcyレベルと骨折のリスクとの間に強力な関係が存在する(それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献7;マクリーンら(McLean et al.)N Engl J Med 2004;350:2042-2049参照)。55歳以上の2406人の対象を含む、2つの国際的な前向き集団ベース研究からの結果は、最高年齢別四分位数のホモシステインレベルが、骨折リスクの1.9倍の増加に関連付けられることを示した(全体が本願明細書に援用される、非特許文献7参照)。上昇したホモシステインレベルは、骨折(低い骨塩密度、認知障害、最近の転倒)および心血管疾患についての確立されたリスクファクターと、大きさにおいて類似した一般集団の高齢男性および女性における骨粗鬆症性骨折の強力な独立したリスクファクターであった(全体が本願明細書に援用される、非特許文献7参照)。さらに、1999人の対象の米国の前向き研究(HOPE-2試行サブスタディ)は、最高四分位数の血清tHcyレベルが、最低四分位数の血清tHcyレベルと比較して、女性の間の大腿骨頸部骨折の1.9倍増加したリスクおよび男性の間の4倍増加したリスクに関連付けられることを見出した(全体が本願明細書に援用される、サフカら(Sawka et al.)Arch Intern Med.2007年10月22日;167(19):2136-9参照)。tHcyレベルと骨折リスクとの間の関連は、BMDおよび骨折の他の潜在的なリスクファクターとは独立していた(それぞれ全体が本願明細書に援用される、非特許文献7;マクリーンら(McLean et al.)N Engl J Med 2004;350:2042-2049;サフカら(Sawka et al.)Arch Intern Med.2007年10月22日;167(19):2136-9参照)。これらの結果と一貫して、65歳超の433人の脳卒中患者における研究は、大腿骨頸部骨折について1000人年当たりの年齢調整発生率が、Hcyレベルの最低四分位数で2,89から最高四分位数で27.87までほぼ線形に増加することを見出した。まとめると、これらの結果は、上昇したHcyレベルが、高齢男性および女性における骨粗鬆症性骨折の強力な独立したリスクファクターであることを示唆している。
【0258】
HCU患者において低いBMDおよび骨格脆弱性につながる正確な機序は完全には理解されていない(共に全体が本願明細書に援用される、ウェバーら(Weber et al.)Mol Genet Metab 2016;117:351-354;リム ジェイエス(Lim JS)、リー ディーエイチ(Lee DH).CBS欠損によって引き起こされる十分に制御されたホモシスチン尿症を有する小児の骨塩密度および骨組成の変化(Changes in bone mineral density and body composition of children with well-controlled homocystinuria caused by CBS deficiency).Osteoporos Int 2013;24:2535-2538参照)。しかしながら、HCU患者における結合組織障害の多くは、マルファン症候群で見られるもの、フィブリリン-1遺伝子の変異によって引き起こされ、長骨の伸長および骨粗鬆症型骨折を含む特徴を特徴とする結合組織障害に似ている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ブレントンら(Brenton et al.)J Bone Joint Surg Br 1972;54:277-298);フブマシェルら(Hubmacher et al.)Biochemistry 2011;50:5322-5332;フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2010;285:1188-1198参照)。
【0259】
健康な個体では、フィブリリン-1が、コラーゲンおよびエラスチンポリマーと一緒に、集合して、骨形成、恒常性および修復のための構築上の足場であるECMを形成する(全体が本願明細書に援用される、オリビエリら(Olivieri et al.)Fibrogenesis Tissue Repair 2010;3:24参照)。研究は、上昇したtHcyレベルが、多量体化を妨げ、フィブリリン-1分解につながる、フィブリリン-1断片の構造修飾につながり得ることを示している(共に全体が本願明細書に援用される、フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2005;280:34946-34955;フブマシェルら(Hubmacher et al.)J Biol Chem 2010;285:1188-1198参照)。このプロセスは、フィブリリン-1多量体化に必要なフィブロネクチン-フィブリリン複合体の形成を阻むフィブロネクチンのホモシステイン化によってさらに損なわれる(全体が本願明細書に援用される、フブマシェルら(Hubmacher et al.)Biochemistry 2011;50:5322-5332参照)。このような所見は、上昇したHcyレベルがECM形成に対する有害な効果を有することを示唆している。
【0260】
健康な個体では、フィブリリン集合体(すなわち、ミクロフィブリル)が、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)および骨形成タンパク質(BMP)の貯蔵および活性化を通して、骨石灰化において重要な役割を果たす(共に全体が本願明細書に援用される、ニスタラら(Nistala et al.)Ann N Y Acad Sci 2010;1192:253-256;ニスタラら(Nistala et al.)J Biol Chem 2010;285:34126-34133参照)。TGFベータおよびBMPの活性化障害は、マルファン症候群とHCUの両方で観察される骨格表現型に潜在的に寄与する可能性があり、軽度の型のHCUで観察されるように、骨塩量を減少させるおそれもある(全体が本願明細書に援用される、ハーマンら(Herrmann et al.)Clin Chem 2005;51:2348-2353参照)。その上、Hcyが減少したコラーゲン架橋形成を通して骨強度を弱め得るインビボおよびインビトロの証拠がある(全体が本願明細書に援用される、カンら(Kang et al.)J Clin Invest 1973;52:2571-2578参照)。まとめると、これらのデータは、骨格成長にとって極めて重要な期間である小児期および青年期中の骨量の自然増加がHCU患者では欠損していること、およびこのことがピーク骨量の実現に負に影響し得ることを示唆している。
【0261】
上昇したHcyレベルは、骨沈着に対する効果に加えて、破骨細胞(OC)活性を増加させ、骨芽細胞(OB)活性を低下させることによって、骨リモデリング速度を増加させる(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ベヘラら(Behera et al.)J Cell Physiol 2016;ハーマンら(Herrmann et al.)Clin Chem 2005;51:2348-2353;バセクら(Vacek et al.)Clin Chem Lab Med 2013;51:579-590;ヴィジャヤンら(Vijayan et al.)J Endocrinol 2017; 233:243-255参照)。OB活性とOC活性との間の不均衡が、脆い骨および増加した骨折発生率につながり得る。OB活性のHcy媒介低下につながる機序は、減少した骨血流(減少したNO利用可能性の結果として)(全体が本願明細書に援用される、ティアギら(Tyagi et al.)Vasc Health Risk Manag 2011;7:31-35参照)および増加したOBアポトーシス速度(共に全体が本願明細書に援用される、ベヘラら(Behera et al.)J Cell Physiol 2016;キムら(Kim et al.)Bone 2006;39:582-590参照)を含むと考えられている。増強したOC活性につながる機序は、増加したマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)活性を介してOC分化とOC活性の両方を増強する細胞内ROSの上昇したレベル(全体が本願明細書に援用される、バセクら(Vacek et al.)Clin Chem Lab Med 2013;51:579-590参照)およびOCアポトーシスの抑制(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ベヘラら(Behera et al.)J Cell Physiol 2016;ハーマンら(Herrmann et al.)Clin Chem 2005;51:2348-2353;コーら(Koh et al.)J Bone Miner Res 2006;21:1003-1011参照)を含むと考えられている。実際、高Hcy食を与えられたCD1マウスにおける近年の研究は、短期(7日)Hcy投与が組織ミネラル密度(TMD)の喪失および増加したOC数に関連付けられ、長期Hcy投与(30日)がOCリプログラミング、アポトーシスおよび石灰化につながり、TMDを元に戻すが、組織生体力学特性を損なうことを示した(全体が本願明細書に援用される、ヴィジャヤンら(Vijayan et al.)J Endocrinol 2017;233:243-255参照)。
【0262】
よって、上昇したHcyレベルは、2つの別個の経路を介して骨脆弱性および骨折につながり得る(全体が本願明細書に援用される、ベヘラら(Behera et al.)J Cell Physiol 2016参照)。第1は、ECM形成障害ならびにフィブリリン-1関連TGFベータおよびBMPの活性化抑制を介して、小児期および青年期中に骨量の自然増加の減少をもたらす。第2の経路は、増加したOC活性および低下したOB活性を介して、骨リモデリング障害につながり、脆い骨をもたらす。
【0263】
上昇したHcyレベルは、骨微小環境において増加した酸化ストレスに関連付けられる。増加したROSは骨芽細胞アポトーシスを誘導し、それによって、骨芽細胞発生を減少させる。この酸化ストレスの増加は、スーパーオキシドアニオンの生成を通してNO利用可能性をさらに減少させ、これが骨血流および血管新生も減少させ得る。このプロセスによって作製されるROSは、単球融合によって破骨細胞発生を活性化し、BMDの喪失にさらに寄与し、骨粗鬆症につながる。
【0264】
Metを制限しない標準的な齧歯類固形飼料で維持した、新生児CBSノックアウト(KO)マウスにおける近年の研究は、5か月間にわたって組換えPEG化ヒト切断型CBS(PEG-CBS)を使用した、CBS ETの皮下投与が、これらの動物において骨塩密度の減少を予防し、また晩年に処置された動物でこれらの値を正常化し得ることを見出した(全体が本願明細書に援用される、マジタンら(Majtan et al.)酵素置換はマウスホモシスチン尿症における新生仔死亡、肝臓損傷および骨粗鬆症を予防する(Enzyme replacement prevents neonatal death,liver damage,and osteoporosis in murine homocystinuria).FASEB J 2017参照)。この研究では、KOモデルとHCU患者の両方を特徴付ける体組成の変化が予防された。血漿と組織の両方で、tHcyレベルおよびCysレベルが正常化され、Cthレベルが上昇し、SAM/SAH比が改善した。
【0265】
骨格転帰に対するHcy低下の効果の裏付けとなる証拠は、25人のアイルランド人HCU患者の25年調査から得られる(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47参照)。この研究では、骨粗鬆症(DXAではなく放射線検査によって診断される)が、NBSによって識別された3人の処置非遵守患者のうちの1人および診断が遅い(2歳の時)4人の患者のうちの1人に存在していた。早期処置(6週齢から)を遵守した18人の患者のいずれも骨粗鬆症の徴候を示さなかった。
【0266】
3.4年間にわたる代謝制御が良好な、全て若齢で診断された(NBSで3人および7歳時2人)5人のHCU患者(3人の少年および3人の少女)における小研究が韓国で実行された(全体が本願明細書に援用される、リムら(Lim et al.)Osteoporos Int 2013;24:2535-2538参照)。診断時の平均血漿tHcyレベルは34.3±52.6(13~78.6)μmol/Lであった。血漿Metは716±1347.6(24.3~1566)μmol/Lであり、処置はピリドキシン、ベタインおよび葉酸を補充した低Met食を含んでいた。全ての患者について体組成測定値およびBMDは韓国集団についての正常範囲内であり、経時的に骨格形態の有意な変化は観察されなかった。3人の患者(60%)がT-L椎の軽度の脊柱側弯症を有し(コブ角7.3°、7.6°および10.3°)、3人の患者で4回骨折が報告された。これらのうち、2例はスポーツ外傷によって引き起こされ、1例は交通事故によって引き起こされた。腰椎の軽度の圧迫骨折の2つの症例がX線撮影によって検出され、重度の背部痛の病歴が記録された。早期診断を受けた患者は、診断が遅い患者よりも少ない骨格異常を示した。しかしながら、この研究は、食事処置を遵守し、ごくわずか~中等度に上昇したtHcyレベルを有する、NBSによって早期診断を受けた患者でさえ、小児として骨格異常および複数の骨折を既に表示していることを示した。
【0267】
まとめると、これらの所見は、HCU患者における骨格転帰に対する早期Hcy低下処置の有益な効果を示唆している。処置遵守患者では、tHcyレベルが低下したが、正常化はされず、これらの患者ではより少ない骨格異常が存在したが、この大いに若い患者群で有意な負の臨床転帰(骨粗鬆症および骨折)が認められることに留意すべきである。
【0268】
本研究は、HCU患者におけるBMDおよびZスコアと血漿tHcyおよび食事性タンパク質摂取との間の正の相関を実証しており、不十分なタンパク質摂取がこれらの患者における骨格脆弱性の増加において役割を果たし得ることを示唆している。100μM未満の血漿tHcyレベルを有する患者は、100μM超のレベルを有する患者よりもはるかに大きな骨格脆弱性を有していた(実施例6;図2)。検査した3つ骨の位置全てで、血漿tHcyレベルとBMDとの間に正の相関があった(ピアソンのr=0.33~0.51;p<0.03;表8)。その上、高いBMDは多い総食事性タンパク質摂取と相関している。実際、tHcyレベルを制御するために総タンパク質摂取を慢性的に制限すると、患者の骨格脆弱性が増加し得る。
【0269】
本明細書に記載される(実施例6参照)二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)によって評価されるBMDおよびZスコアは、HCU患者における処置の有効性を評価するための信頼できるエンドポイントとなり得る。よって、本明細書に記載される酵素療法を含む処置の方法を使用して、HCU患者の制限食を楽にし、増加したタンパク質消費を許し、患者における骨格脆弱性転帰を改善することができる。BMDおよびZスコア評価と組み合わせた、本明細書に記載されるETを使用して、楽にした食事に対する患者の忍容性および/または制限食の必要性を確かめることができる。
【0270】
C.血管合併症
HCUと血管疾患との間の関係は、ホモ接合性HCUによる中等度から重度に上昇したHcyレベルを有する患者における疫学的研究で、1985年に最初に実証された(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。
【0271】
血栓塞栓症は、HCU患者における罹患率および早死にの主因である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;カラカら(Karaca et al.)Gene 2014; 534:197-203;ヤップ エス(Yap S.)J Inherit Metab Dis 2003;26:259-265参照)。未処置HCUを有する患者における血栓塞栓症イベントの全体的な比率は1年当たりおおよそ10%であり(全体が本願明細書に援用される、カッタネオ エム(Cattaneo M.)Semin Thromb Hemost 2006;32:716-723参照)、リスクは外科手術後および妊娠中または妊娠直後に増加する(共に全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;ノーヴィら(Novy et al.)Thromb Haemost 2010;103:871-873参照)。血栓塞栓症はいずれの血管にも罹患し得るが、HCU患者では、静脈血栓症(特にCSVT)が動脈血栓症よりも一般的である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;カラカら(Karaca et al.)Gene 2014;534:197-203;エスラミエら(Eslamiyeh et al.)Iran J Child Neurol 2015;9:53-57;ソブールら(Saboul et al.)J Child Neurol 2015;30:107-112参照)。脳血管発作、特にCSVTは乳児で記載されているが(全体が本願明細書に援用される、マハレら(Mahale et al.)J Pediatr Neurosci.2017年4月~6月;12(2):206-207参照)、より典型的には若年成人で現れる(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2001;21:2080-2085参照)。
【0272】
血栓塞栓性イベントのリスクは、16歳までにおおよそ25%、29歳までに50%であった。1999年に、ハンキーらは、HCUの全3つの遺伝的原因(HCU、MTHFR欠損およびビタミンB12欠損)が、30歳までに全てのホモ接合体の半分に罹患する、早期心血管(CV)疾患の高いリスクに関連付けられることを報告した(全体が本願明細書に援用される、ハンキーら(Hankey et al.)Lancet 1999;354:407-413参照)。3つ全ての障害に共通するただ1つの生化学的変化は、上昇した血清Hcyレベルである(しばしば100μmol/L超)(全体が本願明細書に援用される、ファエら(Faeh et al.)Swiss Med Wkly 2006;136:745-756参照)。いくつかの報告が、どのようにtHcyレベルを低下させる処置がHCU患者における罹患率の主因である血管イベントの発生率を有意に低下させるかを記載した(共に全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447;ウィルケン ディーイー(Wilcken DE)、ウィルケン ビー(Wilcken B).ホモシスチン尿症における血管疾患の自然歴および処置の効果(The natural history of vascular disease in homocystinuria and the effects of treatment).J Inherit Metab Dis 1997;20:295-300参照)。それ以来、いくつかの他の研究が、HCU患者における血管イベント、特に静脈血栓症の増加したリスクを実証した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、カラカら(Karaca et al.)Gene 2014;534:197-203;ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279;ルサナら(Lussana et al.)Thromb Res 2013;132:681-684;マグナーら(Magner et al.)J Inherit Metab Dis 2011;34:33-37参照)。
【0273】
上昇した血漿tHcyレベルは、血管疾患のリスクファクターおよびHCUを有する場合と有さない場合の両方の冠動脈疾患の患者における死亡率の強力な予測因子である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;カラカら(Karaca et al.)Gene 2014;534:197-203;ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279;ファエら(Faeh et al.)Swiss Med Wkly 2006;136:745-756;ボウシェイら(Boushey et al.)JAMA 1995;274:1049-1057;クラーク アールら(Clarke R et al.)JAMA 2002;288:2015-2022;ハンキーら(Hankey et al.)Lancet 1999;354:407-413;カーンら(Khan et al.)Stroke 2008;39:2943-2949;グラハムら(Graham et al.)The European Concerted Action Project.JAMA 1997;277:1775-1781;クラークら(Clarke et al.)N Engl J Med 1991;324:1149-1155;クラークら(Clarke et al.)Ir J Med Sci 1992;161:61-65;ウッドワードら(Woodward et al.)Blood Coagul Fibrinolysis 2006;17:1-5;レフサムら(Refsum et al.)Annu Rev Med 1998;49:31-62;ヨーら(Yoo et al.)Stroke 1998;29:2478-2483;セルフーブら(Selhub et al.)N Engl J Med 1995;332:286-291;ウォルドら(Wald et al.)BMJ 2002;325:1202;バウティスタら(Bautista et al.)J Clin Epidemiol 2002;55:882-887;ブラットストロームら(Brattstrom et al.)Atherosclerosis 1990;81:51-60;ルサナら(Lussana et al.)Thromb Res 2013;132:681-684;カサスら(Casas et al.)Lancet 2005;365:224-232;マッカリー ケーエス(McCully KS.)Am J Pathol 1969;56:111-128;マグナーら(Magner et al.)J Inherit Metab Dis 2011;34:33-37;ウィルケンら(Wilcken et al.)J Clin Invest 1976;57:1079-1082;ナイガードら(Nygard et al.)N Engl J Med 1997;337:230-236参照)。tHcyレベルとCVリスクとの間の関係についての証拠があるが(全体が本願明細書に援用される、ボウシェイら(Boushey et al.)JAMA 1995;274:1049-1057参照)、tHcyと脳卒中/末梢動脈疾患との間の関係がかなり強力である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、クラークら(Clarke et al.)JAMA 2002;288:2015-2022;カーンら(Khan et al.)Stroke 2008;39:2943-2949;ウォルドら(Wald et al.)BMJ 2002;325:1202;カサスら(Casas et al.)Lancet 2005;365:224-232;ブラットストロームら(Brattstrom et al.)Haemostasis 1989;19 補遺1:35-44参照)。一般集団における大規模研究(NORVIT、HOPE-2、VITATOPS)は、最初に、Hcyレベルの低下が主な血管イベントおよび再発性心血管疾患に対するわずかな効果しか有さないと結論付けたが、データのさらなる、より具体的な分析は、脳卒中に対するtHcy低下の臨床的利益を明確に示した。
【0274】
Hcy低下が、軽度に上昇したtHcyレベルを有する一般集団で脳卒中リスクを低下させるというかなりの証拠がある(それぞれ全体が本願明細書に援用される、サポスニックら(Saposnik et al.)Stroke 2009;40:1365-1372;ホーら(Huo et al.)JAMA 2015;313:1325-1335;ロンら(Lonn et al.)N Engl J Med 2006;354:1567-1577;ハンキーら(Hankey et al.)Lancet Neurol 2012;11:512-520;スペンス ジェイディー(Spence JD)、Lancet Neurol.2007年9月;6(9):830-8参照)。5552人の患者のHOPE-2研究(全体が本願明細書に援用される、サポスニックら(Saposnik et al.)Stroke 2009;40:1365-1372参照)では、tHcyレベルのわずかな低下(プラセボに対し3mmol/L)が脳卒中発生率の有意な減少につながり(27%の相対的リスク低下、1.3%の絶対的リスク低下)、tHcyレベルの小さな低下でさえ有益となり得ることを示唆している。この効果は、4.3%の絶対的リスク低下を有する上位四分位数のベースラインHcyを有する患者で最も明白であった。Hcy低下が軽度に上昇したtHcyを有し、HCUを有さない患者で全体的なCV転帰に影響を及ぼすかどうかは不明確なままであるが(全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD006612参照)、その血管利益はHCU患者で一貫して実証されている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47;エスラミエら(Eslamiyeh et al.)Iran J Child Neurol 2015;9:53-57;ソブールら(Saboul et al.)J Child Neurol 2015;30:107-112;ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2001;21:2080-2085;ウッドら(Woods et al.)BMJ Case Rep 2017;ウィルケンら(Wilcken et al.)J Inherit Metab Dis 1997;20:295-300;ヤップら(Yap et al.)Semin Thromb Hemost 2000;26:335-340;ルホイら(Ruhoy et al.)Pediatr Neurol 2014;50:108-111参照)。
【0275】
1.機序
いくつかの研究により、上昇したHcyレベルが、NF-κBを介した炎症および免疫活性化(共に全体が本願明細書に援用される、ロドリゲス-アヤラら(Rodriguez-Ayala et al.)Atherosclerosis 2005;180:333-340;ヴァン・グルデナーら(van Guldener et al.)Curr Hypertens Rep 2003;5:26-31参照)を含む、酸化ストレス関連機序を通して粥状動脈硬化または血栓症の発症に寄与することが示されている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ファベルザーニら(Faverzani et al.)Cell Mol Neurobiol 2017;ノヴァクら(Nowak et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2017;37:e41-e52;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Mol Genet Metab 2011;104:112-117;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Gene 2014;539:270-274;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Cell Mol Neurobiol 2015;35:899-911参照)。血栓症につながる医学的損傷は、Hcy媒介内皮機能障害(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ジャンら(Jiang et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2005;25:2515-2521;フセインら(Hossain et al.)J Biol Chem 2003;278:30317-30327;カイら(Cai et al.)Blood 2000;96:2140-2148;チャンら(Zhang et al.)J Biol Chem 2001;276:35867-35874;パパペトロプーロスら(Papapetropoulos et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2009;106:21972-21977;サボーら(Szabo et al.)Br J Pharmacol 2011;164:853-865;チクら(Chiku et al.)J Biol Chem 2009;284:11601-11612;ワンら(Wang et al.)Antioxid Redox Signal 2010;12:1065-1077;サハら(Saha et al.)FASEB J 2016;30:441-456;エビングら(Ebbing et al.)JAMA 2008;300:795-804;ボナアら(Bonaa et al.)N Engl J Med 2006;354:1578-1588;マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD006612;セレルマジェルら(Celermajer et al.)J Am Coll Cardiol 1993;22:854-858;ルッバら(Rubba et al.)Metabolism 1990;39:1191-1195参照)、増強された凝固経路(それぞれ全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)Int J Stroke.2016年10月;11(7):744-7;フライアーら(Fryer et al.)Arterioscler Thromb 1993;13:1327-1333;レンツら(Lentz et al.)J Clin Invest 1991;88:1906-1914参照)および増加した血管拡張によって引き起こされると考えられている。このような血栓形成促進性機序は、マルファン患者で観察されるものに類似している(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279;トゥリパーティー ピー(Tripathi P.)International Cardiovascular Forum J 2016;6:13;ヴァン・グルデナーら(van Guldener et al.)Curr Hypertens Rep 2003;5:26-31;ハッカムら(Hackam et al.)JAMA 2003;290:932-940;バウムバッハら(Baumbach et al.)Circ Res 2002;91:931-937;エヴァンジェリスティら(Evangelisti et al.)Int J Cardiol 2009;134:251-254;デ ヴァークら(de Valk et al.)Stroke 1996;27:1134-1136参照)。
【0276】
27の研究(4000人超の患者)からのデータのメタアナリシスに由来するtHcyレベルとCVリスクとの間の因果関係は、CV、脳血管および末梢血管の粥状動脈硬化の等級付けリスクを示し、結果としてHcyの5μMの上昇が女性に80%のリスク増加、男性に60%のリスク増加を付与した(全体が本願明細書に援用される、ボウシェイら(Boushey et al.)JAMA 1995;274:1049-1057参照)。5073件の虚血性心疾患(IHD)イベントおよび1113件の脳卒中に関与する30の前向きまたは後ろ向き研究からのデータのメタアナリシスは、通常より25%低い(回帰希釈バイアスについて補正)Hcyレベル(おおよそ3μmol/L)が、11%(オッズ比(OR)、0.89;95%CI、0.83~0.96)低いIHDリスクおよび19%(OR、0.81;95%CI、0.69~0.95)低い脳卒中リスクに関連付けられることを見出した(全体が本願明細書に援用される、クラーク アールら(Clarke R,et al.)JAMA 2002;288:2015-2022参照)。
【0277】
既存の血管疾患を有するおよび有さない患者における研究は、1人/21人のMIを有する対象(5%)、14人/37人の大動脈腸骨動脈疾患を有する対象(38%)および17人/53人の脳血管疾患を有する対象(32%)におけるMet負荷後の、血漿Hcyの上昇(同等の健康な対照となる対象の最高値を超える)を実証した。このことは、Hcyレベルと末梢動脈疾患(PAD)および脳卒中との間の関連が、HcyレベルとMIとの間の関連よりもかなり大きいことを示唆している(全体が本願明細書に援用される、ブラットストロームら(Brattstrom et al.)Haemostasis 1989;19 補遺1:35-44参照)。Hcyレベルと脳卒中との間の独立した等級付けの関連は、同じコミュニティの457人の脳卒中患者および179人の対照となる対象の英国コホートの間で実行された前向き研究で記載された(カーンら(Khan et al.)Stroke 2008;39:2943-2949参照)。小血管病(SVD)患者で最高Hcyレベルが見られた(年齢、性別、血管リスクファクター、ビタミンレベルおよび腎機能について調整後、脳卒中を有さない対照となる対象の11.8μmol/Lに対して16.2μmol/L、p<0.001)。SVD症例内では、集密的白質病変を有するラクナ梗塞を有する個体で最高Hcyレベルが観察された。その上、Hcyレベルと白質病変の重症度との間に相関があった(r=-0.225;p<0.001)。
【0278】
これらの所見は、Hcy代謝を調節するMTHFR多型と脳卒中リスクとの間の遺伝的関連を実証するメンデル無作為化研究によってさらに支持された(全体が本願明細書に援用される、カサスら(Casas et al.)Lancet 2005;365:224-232参照)。脳卒中リスクにおけるHcyレベルとMTHFR TTおよびCC多型との間の関連に関する全ての関連する研究についての文献検索は、心血管疾患(CVD)を有さない15635人の個体を含む111の研究を識別した。TTホモ接合体とCCホモ接合体との間のHcyレベルの加重平均差は1.93μmol/L(95%CI 1.38~2.47)であった。血漿Hcyレベルの5μmol/Lの上昇が1.59(1.29~1.96)の脳卒中のORに対応する、前向き研究の以前のメタアナリシスからの結果に基づいて、TT遺伝子型を有する健康な個体におけるHcyレベルの1.93μol/Lの上昇は、1.20(1.10~1.31)の脳卒中の予想ORをもたらすであろう(全体が本願明細書に援用される、ウォルドら(Wald et al.)BMJ 2002;325:1202参照)。この結果と一貫して、カーンら(Khan et al.)は、年齢群、民族性または地理的位置にかかわりなく、CCホモ接合体に対するTTホモ接合体の脳卒中の1.26(1.14~1.40)ORを報告した(p=0.29)。まとめると、これらの結果は、一般集団における脳卒中発病における上昇したHcyレベルの因果的役割を示唆した。
【0279】
一般集団で実行されたものよりはるかに小さい研究で血管疾患が調査されたので、ヘテロ接合性HCUを有する患者に典型的な血清Hcyにおける中等度の上昇が。マッドらによると、ヘテロ接合性HCUにより軽度に上昇したtHcyレベルを有する患者(50歳までに5%未満)における血管イベントのリスクは、一般集団におけるリスクと同様である(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1981;33:883-893参照)。これと一貫して、ホモ接合性およびヘテロ接合性HCUを有する個体における超音波研究は、4歳という若さのホモ接合性小児の全身動脈における内皮機能障害を見出したが、ヘテロ接合性成人では、内皮機能は大部分が未罹患であった(全体が本願明細書に援用される、セレルマジェルら(Celermajer et al.)J Am Coll Cardiol 1993;22:854-858参照)。
【0280】
類似の研究がホモ接合体とヘテロ接合体の両方における早期動脈疾患の徴候を実証したが、ホモ接合性障害を有する個体は、はるかに若い年齢(45歳に対して19歳)で徴候を発症し、疾患重症度がかなり高かった(全体が本願明細書に援用される、ルッバら(Rubba et al.)Metabolism 1990;39:1191-1195参照)。
【0281】
全体として、HCU患者における観察は、血管リスクがHcyレベルと共に増加するという以前の研究のものと一貫していた(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ボウシェイら(Boushey et al.)JAMA 1995;274:1049-1057;クラークら(Clarke et al.)JAMA 2002;288:2015-2022;カーンら(Khan et al.)Stroke 2008;39:2943-2949参照)。
【0282】
これらの結果は、上昇したHcyレベルがCV疾患のリスクファクターであることを示唆している。加えて、Hcyレベルの低下が、一般集団およびHCU患者において脳卒中のリスクを有意に低下させることが示された。
【0283】
研究により、HCUによって引き起こされる上昇したHcyレベルが、様々な機序を介して粥状動脈硬化および/または血栓症の発症に潜在的に寄与し得ることが示された。これらには、酸化ストレスのならびにNF-κB(活性化B細胞の核内因子カッパ軽鎖エンハンサー)、炎症促進性および他の損傷関連遺伝子を調節する転写因子の活性化などのその下流効果の誘導などの分子イベントが含まれる。内皮機能障害または動脈スティフネスにつながるものなどの血管壁の生理化学的特性をモジュレートする様々なHcy媒介効果が、高血圧、血栓症または他の血管異常の発症に寄与し得る。最後に、Hcyによる凝固経路、血栓につながるより直接的なルートの直接的誘導の証拠がある(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ファベルザーニら(Faverzani et al.)Cell Mol Neurobiol 2017;ヘインズワースら(Hainsworth et al.)Biochim Biophys Acta 2016;1862:1008-1017;ガングリーら(Ganguly et al.)Nutr J 2015;14:6;トゥリパーティー ピー(Tripathi P.)心血管疾患におけるホモシステインの分子および生化学的側面(Molecular and biochemical aspects of homocysteine in cardiovascular diseases).International Cardiovascular Forum J 2016;6:13;フライアーら(Fryer et al.)Arterioscler Thromb 1993;13:1327-1333参照)。粥状動脈硬化の分子および生化学的機序の簡潔な説明の後、以下の小節は、HCUを有する個体を含む、上昇したtHcyレベルを有する個体において血管疾患につながる潜在的な機序を概説する。
【0284】
2.粥状動脈硬化
血栓症および結果として血管閉塞につながる最も良く研究されている状態の中に、冠動脈、脳および末梢循環に罹患する進行性の炎症性疾患である粥状動脈硬化がある(全体が本願明細書に援用される、リビーら(Libby et al.)Circulation 2005;111:3481-3488参照)。その初期段階では、血管傷害が内皮細胞(EC)活性化、内膜への単球動員およびマクロファージ活性化につながる。単球由来、脂質搭載マクロファージ(泡沫細胞)およびTリンパ球を含む炎症性粥状動脈硬化病変(脂肪線条)が形成される。進行性の脂質蓄積により、線維皮膜によって囲まれた脂質コアが形成される。後期の間に、活性化マクロファージは、線維皮膜を弱める酵素を分泌し、プラーク破綻、出血または血栓症および虚血発作/急性冠動脈症候群につながる。プラーク破綻は、組織因子を動脈内腔内の血液に曝露し、凝固第VII/VIIa因子と複合体を形成することを可能にする。このプロセスは凝固カスケードを開始し、血栓形成につながる。崩壊したプラークは壁在血栓症または閉塞性血栓症につながり、それぞれ部分閉塞または完全閉塞を引き起こし得る。壁在血栓症は不安定狭心症などの虚血性症状を引き起こし、閉塞性血栓症はMIおよび脳卒中などの急性冠動脈イベントにつながる。サイトカインは、粥状動脈硬化の全ての段階に関与しており、その発病に対する深い影響を有する(全体が本願明細書に援用される、ラムジら(Ramji et al.)Cytokine Growth Factor Rev 2015;26:673-685参照)。粥状動脈硬化に続発性であることに加えて、血栓症はまた、例えば、心房細動の結果として、または凝固カスケードの直接的活性化によって、プラーク形成の非存在下で活性化され得る。
【0285】
3.酸化ストレス
上昇したHcyレベルを有する患者における研究により、様々な組織における脂質、タンパク質およびDNA酸化損傷を反映する変更されたバイオマーカーによって証明されるように、処置患者およびとりわけ未処置患者が酸化ストレスに感受性であることが示された(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヴァンジンら(Vanzin et al.)Mol Genet Metab 2011;104:112-117;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Gene 2014;539:270-274;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Cell Mol Neurobiol 2015;35:899-911参照)。酸化還元恒常性の不均衡として定義される酸化ストレスは、低密度リポタンパク質の酸化修飾、内皮活性化および血管炎症応答の開始が関係している、粥状動脈硬化およびその関連血栓症のような血管病理学において重要な役割を果たす(全体が本願明細書に援用される、ノヴァクら(Nowak et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2017;37:e41-e52参照)。酸化ストレスは、上昇したROS(例えば、スーパーオキシド(O2-)およびヒドロキシル(HO)ラジカルならびに過酸化水素(H))レベルおよび/または低下した組織抗酸化剤(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼおよびグルタチオンペルオキシダーゼ)レベルによって引き起こされ得る(共に全体が本願明細書に援用される、ファベルザーニら(Faverzani et al.)Cell Mol Neurobiol 2017;ノヴァクら(Nowak et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2017;37:e41-e52参照)。健康な個体では、ROSが正常な酸化的代謝の副産物として生成される。しかしながら、加えて、ROS生成は、タバコの煙、アルコール消費、高コレステロール血症、高血圧、糖尿病および上昇したHcyレベルのようなCVリスクファクターによって誘因される。
【0286】
分子レベルでは、一部が以前論じられた、Hcyが増加した酸化ストレスを引き起こし得る多数の方法がある。例えば、血管壁における免疫原性ホモシステイン化タンパク質の蓄積は、活性化食細胞による炎症、および結果としてROS(O2-)生成を促進し得る。別の潜在的な機序は、ROS生成につながるシグナル伝達経路を誘因する、NMDA受容体のHcy誘導活性化である。心臓微小血管ECでは、Hcyが、とりわけ活性化細胞で、最高レベルのO2-を生成する細胞表面酵素であるNADPH酸化酵素の上昇したレベルを誘導した。近年の研究(全体が本願明細書に援用される、チェンら(Chen et al.)Sci Rep.2017年7月31日;7(1):6932参照)は、虚血性ラット脳において、Hcyが増加したROS生成の予想される結果で、ミトコンドリア機能障害を誘導することを示唆した。Hcyはまた、有益な血管拡張剤NOのバイオアベイラビリティを低下させると考えられている。O2-はNOと反応して反応性窒素種ペルオキシナイトライトを与え、実際、ペルオキシナイトライト誘導タンパク質損傷の指標であるチロシンニトロ化のHcy誘導増加も報告されている(全体が本願明細書に援用される、ティアギら(Tyagi et al.)Vasc Health Risk Manag 2011;7:31-35参照)。より大まかには、Hcyに関与するチオール-チオール相互作用が、細胞酸化還元状態を攪乱させ、例えば、還元型グルタチオンの利用可能性を潜在的に減少させ、さらにはタンパク質集合および折り畳みを損なうと予想される。
【0287】
処置の前後のHCU患者の研究では、ピリドキシン、葉酸、ベタインおよびビタミンB12補充物による処置が、患者の脂質酸化損傷を減弱したが、共に組織抗酸化能力の指標であるスルフヒドリル含有量も全抗酸化状態も変化させなかった。それにもかかわらず、スルフヒドリル基含有量とHcyレベルとの間の有意な負の相関、および脂質過酸化生成物マロンジアルデヒドのレベルとHcyのレベルとの間の正の相関があった。このことは、HCUで観察された酸化損傷におけるHcyの潜在的な機構的役割を示唆した(全体が本願明細書に援用される、ヴァンジンら(Vanzin et al.)Mol Genet Metab 2011;104:112-117参照)。変更された脂質プロファイル、特に低下した高密度リポタンパク質のレベルおよび炎症促進性脂質種の富化が、未処置HCU患者および処置HCU患者の血漿で観察された(全体が本願明細書に援用される、ヴァンジンら(Vanzin et al.)Cell Mol Neurobiol 2015;35:899-911参照)。別の研究では、健康な個体よりもHCU患者で有意なより多くのDNA損傷が報告された(全体が本願明細書に援用される、ヴァンジンら(Vanzin et al.)Gene 2014;539:270-274参照)。まとめると、これらの所見は、酸化ストレスを上昇したHcyレベルに関連付けられる血管損傷の発病に関係付けている。Metレベルと任意の酸化ストレス関連パラメーターとの間に相関は見られず、Metおよびその誘導体がHCUにおける酸化損傷にほとんど寄与しないことを示唆している(全体が本願明細書に援用される、ヴァンジンら(Vanzin et al.)Mol Genet Metab 2011;104:112-117参照)。
【0288】
大量の他の分子効果の中で、酸化ストレスは、粥状動脈硬化および血栓症の開始および進行に関与することが知られている、サイトカインなどの炎症促進性遺伝子の発現を調節する転写因子の群であるNF-κBの活性化に関連付けられている(全体が本願明細書に援用される、ロドリゲス-アヤラら(Rodriguez-Ayala et al.)Atherosclerosis 2005;180:333-340参照)。インビトロ研究により、HcyによるECの処置がROS生成を介してNF-κβを活性化することが示された(全体が本願明細書に援用される、ヴァン・グルデナーら(van Guldener et al.)Curr Hypertens Rep 2003;5:26-31参照)。遺伝子発現をモジュレートすることに加えて、酸化ストレスによる細胞高分子の化学修飾は、節の残りの部分で論じられるように、脈管構造の構造および機能に直接影響し、他の局所または全身効果を有し得る。
【0289】
4.血管壁の変化
内皮機能障害は、通例、血管収縮性と弛緩をモジュレートする内皮関連因子の間の不均衡として定義される。これらの因子の中でも、NOまたは「内皮由来弛緩因子」が最も周知であり、硫化水素(HS)が近年記載されている別のものである(全体が本願明細書に援用される、ジャンら(Jiang et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2005;25:2515-2521参照)。いくつかのインビトロ研究が、非常に高レベルのHcyを使用するが、内皮機能に対するHcyの効果を調査した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ジャンら(Jiang et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2005;25:2515-2521;フセインら(Hossain et al.)J Biol Chem 2003;278:30317-30327;カイら(Cai et al.)Blood 2000;96:2140-2148;チャンら(Zhang et al.)J Biol Chem 2001;276:35867-35874参照)。1つのこのような研究が、Hcyで処置したヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における折り畳まれていないタンパク質応答およびプログラム細胞死を報告したが、Hcy濃度はHcyレベルが重度に上昇した患者で観察されたものより数倍高かった(全体が本願明細書に援用される、全体が本明細書に援用される、チャンら(Zhang et al.)J Biol Chem 2001; 276:35867-35874参照)。他の報告では、Cth代謝に関与する酵素であるCthガンマリアーゼ(CGL)が、Hcyレベルが上昇した患者で過剰なHSを作製した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、パパペトロプーロスら(Papapetropoulos et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2009;106:21972-21977;サボー シーら(Szabo C et al.)Br J Pharmacol 2011;164:853-865;チクら(Chiku et al.)J Biol Chem 2009;284:11601-11612参照)。上昇したHSレベルが側副血管成長、毛細血管密度および局所的組織血流を有意に増加させることが報告されたので、この観察は重要であった(全体が本願明細書に援用される、ワンら(Wang et al.)Antioxid Redox Signal 2010;12:1065-1077参照)。しかしながら、高いHcyレベル(0.002~2mM)は、インビトロでEC増殖にもホスホ-eNOSレベルにも有意に影響を及ぼさなかった(全体が本願明細書に援用される、サハら(Saha et al.)シスタチオニンベータ合成酵素はタンパク質S-スルフヒドリル化を介して内皮機能を調節する(Cystathionine beta-synthase regulates endothelial function via protein S-sulfhydration).FASEB J 2016;30:441-456参照)。全体として、インビトロで検査したHcyレベルが高いために、HcyがインビボでECに直接影響を及ぼすかどうかはまだ明らかではないが、これらの結果は内皮機能障害におけるHcyの役割の可能性を示唆している。
【0290】
近年の薬理学的および遺伝的研究で、ECにおけるCBS機能の喪失が、細胞ROSレベルの付随的増加と共に細胞HSの50%減少およびグルタチオンの400%の減少に関連付けられた(全体が本願明細書に援用される、サハら(Saha et al.)FASEB J 2016;30:441-456参照)。ECにおけるCBSのサイレンシングは、血管内皮増殖因子(VEGF)に対する表現型応答およびシグナル伝達応答を損ない、この効果は、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR-2)およびニューロピリン-1(NRP-1)、血管新生などの内皮機能を調節する主な受容体の転写減少によって増悪した。VEGFR-2およびNRP-1の転写下方調節は、HSのスルフヒドリル化標的である転写因子特異性タンパク質1(Sp1)の減少した安定性によって媒介された。CBSサイレンシングECにおけるグルタチオンではなくHSの補給は、Sp1レベルおよびVEGFR-2プロモーターへのSp1結合を回復すると同時に、VEGFR-2およびNRP-1発現ならびにVEGF依存性細胞増殖および移動を増加させた。このことは、CBS媒介タンパク質S-スルフヒドリル化が、HCU患者が内皮機能障害を呈すという以前の観察(共に全体が本願明細書に援用される、セレルマジェルら(Celermajer et al.)J Am Coll Cardiol 1993;22:854-858;ルッバら(Rubba et al.)Metabolism 1990;39:1191-1195参照)を支持して、血管の健康および機能を維持するのに重要であることを示唆しており、HCU患者が、他の原因によって上昇したHcyレベルを有する個体で観察された種類の血管損傷に加えて、追加のおよび別個の種類の血管損傷に苦しむ可能性を上げる。
【0291】
内皮機能の調節不全、または血管収縮性に対する他の効果は、血圧(BP)異常につながり得る。血漿HcyレベルはBPに直接関連しており、葉酸を使用したHcy低下はBP低下に関連付けられた(共に全体が本願明細書に援用される、トゥリパーティー ピー(Tripathi P.)心血管疾患におけるホモシステインの分子および生化学的側面(Molecular and biochemical aspects of homocysteine in cardiovascular diseases).International Cardiovascular Forum J 2016;6:13;ハッカムら(Hackam et al.)JAMA 2003;290:932-940参照)。これらの効果につながる機序は不明確であったが、Hcyレベルは、拡張期BPよりも収縮期BPに強力に関連付けられる。このことは、上昇したHcyレベルが動脈スティフネスを増加させることを示唆している。動脈スティフネスの程度は、平滑筋細胞(SMC)の数および機能、ECMにおけるコラーゲン:エラスチン比、コラーゲンの質ならびに内皮機能によって主に決定される(全体が本願明細書に援用される、トゥリパーティー ピー(Tripathi P.)心血管疾患におけるホモシステインの分子および生化学的側面(Molecular and biochemical aspects of homocysteine in cardiovascular diseases).International Cardiovascular Forum J 2016;6:13参照)。
【0292】
潜在的に、高レベルのHcyは、増加したSMC増殖、コラーゲン産生およびエラスチン線維形成のために、増加した動脈スティフネスに関連付けられる(全体が本願明細書に援用される、ヴァン・グルデナーら(van Guldener et al.)Curr Hypertens Rep 2003;5:26-31参照)。しかしながら、Hcyが、コラーゲン架橋を損なうことによって動脈スティフネスを減少させることも可能である。ミニブタで実行された研究では、食事によって誘導されたHcy上昇が、過剰拍動性動脈、収縮期(拡張期ではない)高血圧および大動脈の拡張による導管動脈の延長された反応性充血を伴う「メガ動脈症候群」につながった(全体が本願明細書に援用される、ヴァン・グルデナーら(van Guldener et al.)Homocysteine and blood pressure.Curr Hypertens Rep 2003;5:26-31参照)。大動脈スティフネスと相関した、動脈壁弾性板の破砕もあった。
【0293】
これらの所見と一貫して、HCUを有するおよび有さないマウスで実行された研究は、血管壁の横断面積が、対照食を供給されたCBS+/+(324±18μm)マウスと比較して、対照食を供給されたCBS+/-マウス(437±22μM)ならびに高Met食を供給されたCBS+/+(442±36μm)およびCBS+/-(471±46μm)マウスで有意に大きいことを見出した(p<0.05)(全体が本願明細書に援用される、バウムバッハら(Baumbach et al.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損マウスにおける脳細動脈の構造(Structure of cerebral arterioles in cystathionine beta-synthase-deficient mice).Circ Res 2002;91:931-937参照)。
【0294】
最大血管拡張中、対照食のCBS+/-マウスならびに高Met食のCBS+/+およびCBS+/-マウスの脳細動脈の応力-ひずみ曲線は、対照食のCBS+/+マウスについての曲線の右にシフトした。これは、脳細動脈伸展性が、血漿tHcyレベルが上昇したマウスで大きいことを指し示した。これらの結果は、上昇したHcyレベルが脳血管肥大を誘導し、脳血管力学を変更したことを示唆しており、両効果は、粥状動脈硬化の非存在下でさえ、血栓症、例えば脳卒中の発生率の増加に潜在的に寄与する(全体が本願明細書に援用される、バウムバッハら(Baumbach et al.)Circ Res 2002;91:931-937参照)。
【0295】
血管拡張に対する上昇したHcyの効果のさらなる支持は、HCUを有し、tHcyレベルが193.6~342μmol/Lの範囲の5人のイタリア人患者における研究に由来する(全体が本願明細書に援用される、エヴァンジェリスティら(Evangelisti et al.)Int J Cardiol 2009;134:251-254参照)。患者は、軽度の心臓弁逸脱および/または閉鎖不全ならびに結合組織顕在化の徴候を示した。
【0296】
5.血栓症
複数の研究がMIのリスクとの関連を見出すことができなかったが、上昇したHcyレベルは、深部静脈血栓症、脳静脈洞血栓症および網膜静脈血栓症のより高いリスクと関連付けられている(全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)Lancet Neurol.2007年9月;6(9):830-8参照)。これらの結果と一貫して、小さいが追加の研究が、HCUが血栓症に関連付けられるが、粥状動脈硬化に必ずしも関連付けられないことを示唆している。家族性高コレステロール血症(FH)およびHCUの患者の血管イメージングは、FH患者が血流減少につながる頸動脈のびまん性および限局性の肥厚ならびに内皮機能障害を呈するが、HCU患者が頸動脈にプラークを有し、内中膜複合体厚(IMT)と中大脳動脈における血流速度の両方に関して健康な対照となる対象と類似であることを示した(全体が本願明細書に援用される、ルッバら(Rubba et al.)Stroke 1994;25:943-950参照)。この研究は、典型的な粥状動脈硬化病変がHCUにおける血栓性イベントに先行することを要求せず、血栓症につながる内側損傷が動脈拡張によっても引き起こされ得ることを示唆している。
【0297】
この観察の支持は、正常なMet負荷検査結果を有する12人の健康な対象と比較して、酵素的に証明されたヘテロ接合性HCUを有する13人の患者において、頸動脈および大腿部粥状動脈硬化(IMTおよび足関節上腕血圧指数によって決定される)の有病率を比較する研究に由来する(全体が本願明細書に援用される、バークら(Valk et al.)Stroke 1996;27:1134-1136参照)。5つの動脈セグメントのそれぞれの平均IMT値、IMT度数分布またはIMTにおける有意差は群間で観察されなかった。これらの結果は、ヘテロ接合性個体が構造的血管変化を発症するのには若すぎた(全て50歳未満)という事実によって説明され得るであろう。しかしながら、これらのデータはまた、上昇したHcyレベルが、少なくともより若い患者で、凝固カスケードに主に影響を及ぼし得ることを示唆している。実際、3人の非血縁HCU患者の症例報告は、ある患者が腔内血栓症による脳卒中を経験し、別の患者が頭頸部粥状動脈硬化の証拠なしに、心臓または動脈血栓塞栓症を経験したことを見出した(全体が本願明細書に援用される、ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279参照)。
【0298】
これらの観察と一貫して、HUVECおよびCV1 ECへのHcy添加は、抗凝固剤、プロテインCおよびトロンボモジュリンを不可逆的に不活性化した(全体が本願明細書に援用される、レンツら(Lentz et al.)J Clin Invest 1991;88:1906-1914参照)。その上、培養されたヒトECへのHcy添加によって、凝血原組織因子活性が時間および濃度依存的に増加した(全体が本願明細書に援用される、フライアーら(Fryer et al.)Arterioscler Thromb 1993;13:1327-1333参照)。
【0299】
両研究では、Hcyが、その遊離チオール基に関与する機序を介して凝固経路を増強した。まとめると、これらのデータは、血管凝固剤機序の攪乱がHCU患者における血管リスクの増加に寄与し、これが、粥状動脈硬化に対するHcyの効果が明らかになる前に、HCU患者における早期の役割を果たし得るという仮説を支持する。
【0300】
血漿Hcyレベルの低下はHCU患者および一般集団における血管合併症、特に脳卒中のリスクを低下させる
近年の分析は、上昇したtHcyと脳卒中リスクとの間の一般集団における強力な関連を見出した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、サポスニックら(Saposnik et al.)Stroke 2009;40:1365-1372;スペンス ジェイディー(Spence JD.)脳卒中予防のためのホモシステイン低下:証拠の複雑さの解明(Homocysteine lowering for stroke prevention:Unravelling the complexity of the evidence.) Int J Stroke.2016年10月;11(7):744-7;ハンキーら(Hankey et al.)Lancet Neurol 2012;11:512-520参照)。
【0301】
過去に、一部の研究は血管リスクの低下を示しており(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47;ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2001;21:2080-2085;ウィルケンら(Wilcken et al.)J Inherit Metab Dis 1997;20:295-300;ヤップら(Yap et al.)Semin Thromb Hemost 2000; 26:335-340;サポスニクら(Saposnik et al.)Stroke 2009;40:1365-1372;ホーら(Huo et al.)JAMA 2015;313:1325-1335;ハンキーら(Hankey et al.)Lancet Neurol 2012;11:512-520参照)、他は利益を示さず(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD006612;エビングら(Ebbing et al.)JAMA 2008;300:795-804;ボナアら(Bonaa et al.)N Engl J Med 2006;354:1578-1588;リムら(Liem et al.)Heart 2005;91:1213-1214;トゥールら(Toole et al.)JAMA 2004;291:565-575;脳卒中を予防するためのビタミン(VITATOPS)試行:無作為化、二重盲検、並行、プラセボ対照試行における近年の一過的虚血性発作または脳卒中を有する患者におけるBビタミン(B vitamins in patients with recent transient ischemic attack or stroke in the VITAmins TO Prevent Stroke (VITATOPS)trial: a randomized,double-blind, parallel,placebo-controlled trial)(Lancet Neurol 2010;9:855-865参照;アルバートら(Albert et al.)JAMA 2008;299:2027-2036参照)、Hcyレベルが上昇した患者におけるHcy低下介入の利益が混合しているように見えた。これらの試行の多くは、Hcy低下のためのビタミン介入、主にBビタミン(BおよびB12)および葉酸補充を検査した。結果として、研究転帰は、対象が、葉酸強化が実践される地域に住んでいるかどうか、対象をコバラミン毒性に対してより弱くする腎機能障害を有するかどうか、高齢者に比較的一般的な吸収不良に関連するビタミンB12欠損を有するかどうか、または抗血小板薬投薬を受けているかどうかなどの交絡因子の対象となった。これらの近年の分析はこれらの交絡因子を考慮し、このような重要な可変要素を説明する場合、上昇したtHcyが一般集団で脳卒中のリスクを増加させると結論付けた(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2000;20:1704-1706;スペンス ジェイディー(Spence JD.)Int J Stroke.2016年10月;11(7):744-7;スペンス ジェイディー(Spence JD)、Clin Chem Lab Med.2013年3月1日;51(3):633-7参照)。
【0302】
Hcy低下療法は、HCUを有さない個体でさえ、脳卒中のリスクを低下させる。HOPE-2(心臓転帰予防評価2)試行では、血管疾患または糖尿病の病歴および少なくとも1つの追加のCVリスクファクターを有する55歳以上の5522人の成人を、5年間にわたって、ビタミン補充(葉酸、ビタミンBおよびビタミンB12)またはプラセボに無作為化した(全体が本願明細書に援用される、サポスニクら(Saposnik et al.)Stroke 2009;40:1365-1372参照)。平均ベースラインHcy濃度は両群で11.5μmol/Lであり、ベースラインで0.2mg超の葉酸を含有する毎日のビタミン補充物を服用している患者は試験から除外した。全体として、Hcy低下(プラセボに対して平均3.0μmol/L)は、脳卒中における有意な27%の相対リスク低下(1.3%絶対低下)(HR、0.75;95%CI、0.59~0.97)ならびに虚血性脳卒中(HR、0.81;95%CI、0.60~1.09)および出血性脳卒中(HR、0.80;95%CI、0.32~2.02)における有意でない低下に関連付けられた。亜群分析では、最高四分位数のベースラインHcyレベルを有する患者の間で、脳卒中の相対リスクが最も低下した(4.3%の絶対リスク低下)。処置利益は、69歳未満の患者、葉酸食事強化のない地域の患者および登録時に抗血小板薬も脂質低下薬も受けていない患者で最大であった。よって、HOPE-2試行は、プラセボに対してBビタミンを受けている個体における脳卒中の発生率の減少を報告した(ハザード比(HR)0.75;95%CI、0.59~0.97)が、MIのリスクは両処置群で類似であった(RR0.98;95%CI、0.85~1.14)(共に全体が本願明細書に援用される、サポスニクら(Saposnik et al.)Stroke 2009;40:1365-1372;ロン イー(Lonn E)、ユースフ エス(Yusuf S)、アーノルド エムジェイら(Arnold MJ et al.)血管疾患における葉酸およびBビタミンによるホモシステイン低下(Homocysteine lowering with folic acid and B vitamins in vascular disease).N Engl J Med 2006;354:1567-1577参照)。
【0303】
HOPE-2試行からの結果と一貫して、最近の脳卒中または一過的虚血発作を有する8164人の患者を中央3.4年間にわたって、Bビタミンまたはプラセボによる二重盲検処置に無作為化したVITATOPS試行のサブ分析は、Bビタミンが、ベースラインで抗血小板療法を受けていない患者間で、主要複合転帰(脳卒中、MIまたは血管原因による死亡)を有意に減少させることを見出した(プラセボによる21%に対して17%;HR0.76、0.60~0.96)。抗血小板療法を受けている個体では、Bビタミンの有意な効果は観察されなかった(全体が本願明細書に援用される、ハンキーら(Hankey et al.)以前脳卒中または一過的虚血発作を有した患者における抗血小板療法およびBビタミンの効果:VITATOPS、無作為化、プラセボ対照試行の事後サブ分析(Antiplatelet therapy and the effects of B vitamins in patients with previous stroke or transient ischemic attack:a post-hoc sub-analysis of VITATOPS,a randomized,placebo-controlled trial).Lancet Neurol 2012;11:512-520参照)。この研究では、患者が抗血小板療法を受けたかどうかにかかわらず、tHcyレベルがベースラインで12.4~13.7μmol/Lからビタミン療法後に9.9~10.5μmol/Lに有意に低下した(両処置群についてp<0.0001)(全体が本願明細書に援用される、ハンキーら(Hankey et al.)Lancet Neurol 2012;11:512-520参照)。
【0304】
炎症性カスケードは、虚血性脳卒中発病に寄与すると考えられている。3224人の参加者におけるフラミンガム子孫研究からの報告(全体が本願明細書に援用される、ショアマネシュら(Shoamanesh et al.)Neurology. 2016年9月;87(12):1206-11参照)は、tHcyおよび他の3つの炎症マーカーの上昇したレベルが、虚血性脳卒中のリスクに強力に関連付けられ、フラミンガム脳卒中リスクプロファイルスコアの予測能力を改善することを見出した。
【0305】
VISPおよびVITATOPS研究からのデータのメタアナリシスは、高用量シアノコバラミンに以前曝露されなかった正常な腎機能を有する患者が、高用量シアノコバラミンを含むビタミン療法から有意に利益を得る(0.78、0.67~0.90;相互作用p=0.03)が、高用量シアノコバラミン(ビタミンBの形態)を含むビタミン療法は、腎機能障害を有する個体における脳卒中リスクに対する効果を有さない(RR1.04、95%CI0.84~1.27)ことを見出した(全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)Lancet Neurol.2007年9月;6(9):830-8参照)。これらの結果は、有意な腎機能障害を有する患者における、シアン化物蓄積に関連付けられる、腎毒性として知られる、シアノコバラミンの潜在的交絡効果を示唆した(全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD)、Clin Chem Lab Med.2013年3月1日;51(3):633-7参照)。これと一貫して、DIVINe試行(腎症におけるビタミンによる糖尿病介入)では、1000μgのシアノコバラミンを含む高用量Bビタミンが有害であり、eGFR減少を増悪させた(共に全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)Int J Stroke.2016年10月;11(7):744-7;ハウスら(House et al.)JAMA 2010;303:1603-1609参照)。まとめると、このような所見は、脳卒中のリスクが高い個体、とりわけ腎不全を有する個体におけるHcyレベルを低下させるための、シアノコバラミンの代わりの、メチルコバラミンなどの非シアン化物含有Bビタミンの使用を支持する。
【0306】
シアノコバラミンおよびシアン化物毒性は、CSPPT(中国脳卒中一次予防試行)からの結果により、腎障害の存在下での交絡因子として以前の試行でさらに関係付けられた(全体が本願明細書に援用される、ホーら(Huo et al.)JAMA. 2015年4月7日;313(13):1325-35参照)。CSPPTにおいて腎障害で実証された処置利益は、おそらく後の試行でのシアノコバラミン処置により、DIVINe、VISPおよびVITOPS試行で観察された利益の欠如と正反対であった。
【0307】
中国では、葉酸強化がまだ実践されていなかったので、ここではtHcyレベルの低下に対する葉酸補充の効果を大きな集団で研究することができた。CSPPTは、高血圧を有するが、脳卒中の病歴もMIの病歴も有さない20702人の成人で実行された無作為化二重盲検試行であり、葉酸が最初の脳卒中(葉酸なしの3.4%に対して2.7%、HR0.79;95%CI0.68~0.93)、最初の虚血性脳卒中(葉酸なしの2.8%に対して2.2%、HR0.76;95%CI0.64~0.91)および複合CVイベント(CV死、MIおよび脳卒中;葉酸なしの3.9%に対して3.1%、HR0.80;95%CI0.69~0.92)のリスクを有意に低下させることを実証した。対照的に、2つの群間で出血性脳卒中のリスク、あらゆる原因による死亡およびAEの頻度における有意な差はなかった。CSPPTのサブスタディ(全体が本願明細書に援用される、スーら(Xu et al.)JAMA Intern Med.2016年10月1日;176(10):1443-1450参照)では、腎障害(60mL/分/1.73m未満のeGFR)を有する対象と有さない対象の両方が葉酸から利益を得て、サブスタディはさらに、葉酸で処置された群が葉酸を受けていない群よりもはるかに大きい血清Hcyの降下を有することを確認した(それぞれ1.9対0.2μmol/L、p<0.001)。
【0308】
74422人の参加者が関与する15の無作為化対照試行を分析する、2017コクランレビュー(全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al)Cochrane Database Syst Rev.2017年8月17日;8:CD006612参照)は、脳卒中に対するBビタミンによるHcy低下の効果の小さな差を報告したが、MI、あらゆる原因による死亡またはAEに対する効果はなかった。プラセボ/標準ケアと比較して、Hcy低下介入は、一般集団において、非致死性もしくは致死性脳卒中の減少した発生率に関連付けられた(対照について5.1%に対して4.33%;RR0.90、95%CI0.82~0.99)が、非致死性もしくは致死性MIの発生率(プラセボについて6.0%に対して7.1%;相対リスク(RR)1.02、95%CI0.95~1.10)またはあらゆる原因による死亡(プラセボについて12.3%に対して11.7%;RR1.01、95%CI0.96~1.06)に対する効果を有さなかった。このレビューは、CVイベントに対するHcy低下介入の効果を支持する証拠がないと以前結論付けたが、2015レビューが脳卒中の減少した発生率における有意でない動向を指し示した、3つの前のバージョン(2009、2013および2015)の最新版であった(全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハル(Marti-Carvajal)Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD006612参照)。追加の試行が利用可能になったので、脳卒中に対するHcy低下介入での証拠の強度が強くなった。
【0309】
このレビューに含まれる研究は、Hcy低下療法としてビタミン補充の様々なレジメンを使用した(全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev.2017年8月17日;8:CD006612参照)。2017レビューは、2015レビューの試行に3つの新たな試行を加えた。全体のうち、10の試行がピリドキシン+ビタミンB(葉酸)およびB12を使用し、5つがビタミンB9のみを使用し、10のうちの1つが葉酸の代わりに5-メチルテトラヒドロ葉酸を使用した。一部の試行が併用薬(対照群とビタミン処置群の両方で)を含み、7つの試行が脂質低下を含み、1つが抗高血圧剤を含んでいた。全体として、Hcy低下処置は、平均tHcyレベルの比較的小さな低下をもたらした。その上、3つの研究は葉酸強化集団で実施され、2つは混合集団(一部の対象が強化食を受け、他は受けていない)で実施され、Hcy低下効果を隠したかもしれない。このような研究に影響し得る交絡因子を考慮すると、以前のレビューがビタミン処置レジメンの有意なCV効果を識別しなかったこと、および最新のレビューで脳卒中に対する控えめな効果しか報告されなかったことは驚くべきことではない。上昇したHcyレベルの多くの潜在的な原因がコクランレビューに含まれる研究で調べられなかったことも注目に値する(全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD006612参照)。HCUを有する、一般集団よりも若い年齢の患者における血管リスクの病態生理学に影響を及ぼす追加の因子があり得る。Hcyレベルの控えめな低下さえ、脳卒中リスクの低下に有意に関連付けられることは注目すべきことである。
【0310】
これらの分析のうちのいくつかから生じる興味深い疑問は、なぜ一部の研究が脳卒中に対するHcyレベルの効果を指し示したが、MIに対する効果を指し示さなかったのかである。この疑問に関連して、スペンス(全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)Lancet Neurol.2007年9月;6(9):830-8参照)は、脳梗塞は血栓症/塞栓性イベントに密接に関連付けられるが、in situ血栓症はほぼ全てのMIイベントで冠動脈のプラーク破綻に続発性であるという、MIと脳梗塞との間の重要な差異を指摘した。よって、スペンスは、脳卒中の実質的割合が、上がったtHcyに関連付けられ得る血栓性プロセスに関連すると結論付けた。
【0311】
上昇したtHcyレベルは、心原性脳塞栓症だけでなく、粥状塞栓およびラクナ梗塞においても重要であり得る。抗凝固療法で処置された心房細動を有する高齢患者における研究は、高レベルのtHcy(90パーセンタイル超)が、虚血性合併症の4.7倍増加に関連付けられることを見出した(全体が本願明細書に援用される、ポーリら(Poli et al.)J Am Coll Cardiol 2009; 54:999-1002参照)。原因不明の虚血性脳卒中患者における別の研究は、卵円孔開存(脳梗塞のリスクファクター)を有する患者が、有さない患者よりも有意に高い血漿tHcyレベルを有することを見出した(それぞれ8.9±3対7.9±2.6μmol/L;p=0.021)(全体が本願明細書に援用される、オズデミールら(Ozdemir et al.)J Neurol Sci 2008;275:121-127参照)。このような所見のレビューで、スペンス(全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)脳卒中予防のためのホモシステイン低下:証拠の複雑性の解明(Homocysteine lowering for stroke prevention:Unravelling the complexity of the evidence).Int J Stroke.2016年10月;11(7):744-7参照)は、Hcyが主に赤色血栓(うっ滞の設定で形成する捕らえた赤血球によるフィブリン重合体メッシュ)の形成に影響を及ぼすが、tHcyレベルはまた経頭蓋ドプラ法で微小塞栓を有する患者で有意に高かった(16.2対10.1mmol/L)ので、ラクナ梗塞および頸動脈プラークもtHcyに有意に関連しており、ほとんどのこのような微小塞栓が、二重抗血小板療法によって減少する、血小板凝集体であると考えられることを示唆した(全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)脳卒中予防のためのホモシステイン低下:証拠の複雑性の解明(Homocysteine lowering for stroke prevention:Unravelling the complexity of the evidence).Int J Stroke.2016年10月;11(7):744-7参照)。
【0312】
合計539患者-年について、ピリドキシン、葉酸およびヒドロコバラミンで処置された32人のHCU患者(9~66歳の間)で行われた研究は、処置中の2つの血管イベント(1つは致死性肺塞栓症、1つはMI)を報告した(全体が本願明細書に援用される、ウィルケンら(Wilcken et al.)J Inherit Metab Dis 1997;20:295-300参照)。マッドら(Mudd et al.)による疫学的研究によると、21のイベントは、処置なしでも同じ期間にわたって予想されていた(RR0.09(95%CI0.02~0.38);p=0.0001)。2.5~70歳の間の、3つの国の84人の患者で実行された第2の研究は、1314患者-処置年の間に5症例の静脈塞栓症(VE)を報告し、1症例は肺塞栓症、2症例はMI、2症例は腹部大動脈瘤であった(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)Semin Thromb Hemost 2000;26:335-340参照)。マッドら(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)によると、未処置患者では、53症例のVEが予想されていた(RR0.091(95%CI0.043~0.190);p<0.001)。
【0313】
これらの結果の裏付けとなる証拠は、大部分が10~30歳の範囲である、158人のHCU患者の大規模国際多施設共同観察研究に由来する(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2001;21:2080-2085参照)。この研究では、17件の血管イベントが12人の処置個体間で観察され、3症例が肺塞栓症であり、2症例がMIであり、5症例が深部静脈血栓症であり、3症例が脳血管発作であり、1症例が一過的虚血発作であり、1症例が矢状洞血栓症であり、2症例が腹部大動脈瘤であった。処置なしでは、同様の集団で、112件の血管イベントが予想されていた(RR0.09(95%CI0.036~0.228);p<0.0001)。この研究はまた、処置され、広く従った若年成人HCU患者でさえ一般集団と比較して不十分な臨床転帰にどれほど苦しむかを強調している。
【0314】
上昇した血漿tHcyレベルは、CBSDを有するものと有さないものの両方のCAD患者における血管疾患のリスクファクターおよび死亡率の強力な予測因子である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;カラカら(Karaca et al.)Gene 2014;534:197-203;ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279;ファエら(Faeh et al.)Swiss Med Wkly 2006;136:745-756;ボウシェイら(Boushey et al.)JAMA 1995;274:1049-1057;クラークら(Clarke et al.)JAMA 2002;288:2015-2022;ハンキーら(Hankey et al.)Lancet 1999;354:407-413;カーンら(Khan et al.)Stroke 2008;39:2943-2949;グラハムら(Graham et al.)JAMA 1997;277:1775-1781;クラークら(Clarke et al.)N Engl J Med 1991;324:1149-1155;クラークら(Clarke et al.)Ir J Med Sci 1992;161:61-65;ウッドワードら(Woodward et al.)Blood Coagul Fibrinolysis 2006;17:1-5;レフサムら(Refsum et al.)Annu Rev Med 1998;49:31-62;ヨーら(Yoo et al.)Stroke 1998;29:2478-2483;セルサンら(Selsun et al.)N Engl J Med 1995;332:286-291;ウォルドら(Wald et al.)BMJ 2002;325:1202;バウティスタら(Bautista et al.)J Clin Epidemiol 2002;55:882-887;ブラットストロームら(Brattstrom et al.)Atherosclerosis 1990;81:51-60;ルサナら(Lussana et al.)Thromb Res 2013;132:681-684;カサスら(Casas et al.)Lancet 2005;365:224-232;マッカリー ケーエス(McCully KS.)Am J Pathol 1969;56:111-128;マグナーら(Magner et al.)J Inherit Metab Dis 2011;34:33-37;ウィルケンら(Wilcken et al.)J Clin Invest 1976;57:1079-1082;ナイガードら(Nygard et al.)N Engl J Med 1997;337:230-236参照)。
【0315】
tHcyレベルとCVリスクとの間の因果関係についての証拠(全体が本願明細書に援用される、ボウシェイら(Boushey et al.)JAMA 1995;274:1049-1057参照)のうち、ホモ接合性CBS変異を有する患者およびヘテロ接合性CBS変異を有する患者の両方(全体が本願明細書に援用される、ルッバら(Rubba et al.)Metabolism 1990;39:1191-1195参照)を含めて、tHcyと脳卒中またはPADとの間で最も強力な関係が実証された(それぞれ全体が本願明細書に援用される、クラークら(Clarke et al.)JAMA 2002;288:2015-2022;カーンら(Khan et al.)Stroke 2008;39:2943-2949;ウォルドら(Wald et al.)BMJ 2002;325:1202;カサスら(Casas et al.)Lancet 2005;365:224-232;ブラットストロームら(Brattstrom et al.)Haemostasis 1989;19 補遺1:35-44参照)。
【0316】
上昇したHcyを血管損傷と潜在的に関連させる機序は変動し、複雑である。いくつかの研究が、NF-κBを介した炎症性/免疫活性化(共に全体が本願明細書に援用される、ロドリゲス-アヤラら(Rodriguez-Ayala et al.)Atherosclerosis 2005;180:333-340;ヴァン グルデナーら(van Guldener et al.)Curr Hypertens Rep 2003;5:26-31参照)によるものを含む、酸化ストレスを関係付けた(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ファベルザーニら(Faverzani et al.)Cell Mol Neurobiol 2017;ノヴァクら(Nowak et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2017;37:e41-e52;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Mol Genet Metab 2011;104:112-117;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Gene 2014;539:270-274;ヴァンジンら(Vanzin et al.)Lipid,Cell Mol Neurobiol 2015;35:899-911参照)。このような炎症性プロセスは粥状動脈硬化に特徴的であるが、典型的な粥状動脈硬化病変がHCU患者で血栓性イベントに先行する必要はない(共に全体が本願明細書に援用される、ルッバら(Rubba et al.)Stroke 1994;25:943-950;デ ヴァークら(de Valk et al.)Stroke 1996;27:1134-1136参照)。実際、血栓症につながる中央損傷は、Hcy媒介内皮機能障害(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev 2015;1:CD006612;セレルマジェルら(Celermajer et al.)J Am Coll Cardiol 1993;22:854-858;ルッバら(Rubba et al.)Metabolism 1990;39:1191-1195;ジャンら(Jiang et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2005;25:2515-2521;フセインら(Hossain et al.)J Biol Chem 2003;278:30317-30327;カイら(Cai et al.)Blood 2000;96:2140-2148;チャンら(Zhang et al.)J Biol Chem 2001;276:35867-35874;パパペトロプーロスら(Papapetropoulos et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2009;106:21972-21977;サボーら(Szabo et al.)Br J Pharmacol 2011;164:853-865;チクら(Chiku et al.)J Biol Chem 2009;284:11601-11612;ワンら(Wang et al.)Antioxid Redox Signal 2010;12:1065-1077;サハ エスら(Saha S,et al.)FASEB J 2016;30:441-456;エビングら(Ebbing et al.)JAMA 2008;300:795-804;ボナアら(Bonaa et al.)N Engl J Med 2006;354:1578-1588参照)、増強した凝固経路(それぞれ全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD.)Int J Stroke.2016年10月;11(7):744-7;フライアーら(Fryer et al.)Arterioscler Thromb 1993;13:1327-1333;レンツら(Lentz et al.)J Clin Invest 1991;88:1906-1914参照)、およびマルファン患者に関係している血栓性プロセスに類似の増加した血管拡張(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ケリーら(Kelly et al.)Neurology 2003;60:275-279;トゥリパーティー ピー(Tripathi P.)心血管疾患におけるホモシステインの分子および生化学的側面(Molecular and biochemical aspects of homocysteine in cardiovascular diseases.)International Cardiovascular Forum J 2016;6:13;ヴァン グルデナーら(van Guldener et al.)Curr Hypertens Rep 2003;5:26-31;ハッカムら(Hackam et al.)JAMA 2003;290:932-940;バウムバッハら(Baumbach et al.)Circ Res 2002;91:931-937;エヴァンジェリスティら(Evangelisti et al.)Int J Cardiol 2009;134:251-254;デ ヴァークら(de Valk et al.)Stroke 1996;27:1134-1136参照)によって引き起こされると考えられている。HCU患者における内皮機能障害の観察と一貫して、薬理学および遺伝子研究調査が、CBS媒介タンパク質S-スルフヒドリル化を血管の健康および機能の維持に関係付けた(共に全体が本願明細書に援用される、セレルマジェルら(Celermajer et al.)J Am Coll Cardiol 1993;22:854-858;ルッバら(Rubba et al.)Metabolism 1990;39:1191-1195参照)。よって、HCU患者における血管損傷の機序は、CV疾患を有する一般集団よりも変動する可能性がある。
【0317】
Hcy低下がHCUを有するおよび有さない個体における脳卒中リスクに対して有益であるというかなりの証拠がある(それぞれ全体が本願明細書に援用される、サポスニクら(Saposnik et al.)Stroke 2009;40:1365-1372;ホーら(Huo et al.)JAMA 2015;313:1325-1335;ロンら(Lonn et al.)N Engl J Med 2006;354:1567-1577;ハンキーら(Hankey et al.)Lancet Neurol 2012;11:512-520;スペンス ジェイディー(Spence JD.)Lancet Neurol.2007年9月;6(9):830-8参照)。一般集団で実行された研究では、平均ベースラインHcyレベルが比較的低かったが、脳卒中発生率の減少がHcy低下介入と有意に相関しており、tHcyレベルの小さな減少でさえの利益を指していた。
【0318】
関連する試行の最新のレビューが、脳卒中におけるHcy低下処置の有益な効果を支持している(全体が本願明細書に援用される、マルチ-カルバハルら(Marti-Carvajal et al.)Cochrane Database Syst Rev.2017年8月17日;8:CD006612参照)。患者を高用量シアノコバラミンに対して弱くしておく葉酸強化、ビタミンB12欠損もしくは腎機能不全があるかどうか、または対象が抗血小板薬投薬を受けているかどうかなどの交絡因子が試行転帰をぼやけさせた。近年の分析は、このような因子を説明する場合、一般集団でtHcyと脳卒中リスクとの間の関連が強力であることを実証した(全体が本願明細書に援用される、スペンス ジェイディー(Spence JD)、Clin Chem Lab Med.2013年3月1日;51(3):633-7参照)。しかしながら、重要なことに、一般集団よりもはるかに高いtHcyレベルを有するHCU患者では、Hcy低下の血管利益が一貫して実証されている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 1998;21:738-47;エスラミエら(Eslamiyeh et al.)Iran J Child Neurol 2015;9:53-57;ソブールら(Saboul et al.)J Child Neurol 2015;30:107-112;ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2001;21:2080-2085;ウッズら(Woods et al.)BMJ Case Rep 2017;2017;ウィルケンら(Wilcken et al.)J Inherit Metab Dis 1997;20:295-300;ヤップら(Yap et al.)Semin Thromb Hemost 2000;26:335-340;ルホイら(Ruhoy et al.)Pediatr Neurol 2014;50:108-111参照)。
【0319】
これらの所見は、上昇したHcyレベルが、HCUを有するおよび有さない患者におけるCV疾患、とりわけ脳卒中のリスクファクターであること、および長期Hcy低下療法を通してCVまたは脳血管リスクを低下させることができることを示唆している。
【0320】
血栓塞栓症は、HCU患者における罹患率および早死にの主因である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;カラカら(Karaca et al.)Gene 2014;534:197-203;ヤップ エス(Yap S.)J Inherit Metab Dis 2003;26:259-265参照)。未処置HCUを有する患者における血栓塞栓症イベントの全体的な比率は1年当たりおおよそ10%であり(全体が本願明細書に援用される、カッタネオ エム(Cattaneo M.)Semin Thromb Hemost 2006;32:716-723参照)、リスクは外科手術後および妊娠中または妊娠直後に増加する(共に全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;ノーヴィら(Novy et al.)Thromb Haemost 2010;103:871-873参照)。血栓塞栓症はいずれの血管にも罹患し得るが、HCU患者では、静脈血栓症(特に脳静脈洞血栓症(CSVT))が動脈血栓症よりも一般的である(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31;カラカら(Karaca et al.)Gene 2014;534:197-203;エスラミエら(Eslamiyeh et al.)Iran J Child Neurol 2015;9:53-57;ソブールら(Saboul et al.)J Child Neurol 2015;30:107-112参照)。
【0321】
629人の未処置HCU患者における研究は、観察された253件の血管イベント(158人の患者で起こった)のうち、81件(32%)が脳血管発作であり、130件(51%)が末梢静脈に罹患し(うち32件が肺塞栓症をもたらした)、10件(4%)が心筋梗塞(MI)につながり、28件(11%)が末梢動脈に罹患し、4件(2%)がこれらのカテゴリーのうちのいずれにも入らなかった(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)。脳血管発作、とりわけCSVTは、乳児で記載されている(全体が本願明細書に援用される、マハレら(Mahale et al.)J Pediatr Neurosci.2017年4月~6月;12(2):206-207参照)が、より典型的には若年成人で現れる(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)Arterioscler Thromb Vasc Biol 2001;21:2080-2085参照)。脳血管イベントは、患者のピリドキシン応答カテゴリーにごくわずかに関連していると報告された。
【0322】
血管イベントのリスクは20歳未満の患者でおおよそ30%であり、30歳までに50%に上昇した。しかしながら、症状はいずれの年齢でも起こることがあり、致死性血栓症は6か月という若さの乳児で記載されている(全体が本願明細書に援用される、カルドら(Cardo et al.)Dev Med Child Neurol 1999;41:132-135参照)。10歳より後では、25年当たりに1件の血管イベントが予想される。一般に、小児におけるHCUの最初の徴候は、生後1年もしくは2年の間に発達遅延として呈示する認知症状、および/または水晶体脱臼/高度の近視である。対照的に、成人は血管イベントを呈示する可能性が高い。
【0323】
D.表現型転帰に対する食事の効果
一部の実施形態では、HCUのマウスモデルであるI278Tマウスを使用して、ヒト患者に関連する臨床エンドポイントに対する20NHS PEG-CBSによるHCUのための酵素療法の長期影響を査定した。正常メチオニン摂取(REG)およびメチオニン制限食(MRD)のバックグラウンドでの20NHS PEG-CBS、ならびにMRD単独による有効性。20NHS PEG-CBSによる処置は、血漿ホモシステイン濃度の90%の低下、ならびに学習/認知、内皮機能障害、止血、骨石灰化、およびHCUに関連付けられる体組成表現型の矯正をもたらすことができる。一定の実施形態では、MRDのバックグラウンドでの20NHS PEG-CBSによる処置が血漿Hcyを正常化した。MRD単独では、I278Tマウスにおいて、血漿Hcyを67%低下させ、HCU表現型を矯正することが観察された。しかしながら、MRDは、I278Tマウスと野生型対照の両方で、不安を増加させ、骨塩量を減少させた。したがって、20NHS PEG-CBSが、REGまたはMet制限食のバックグラウンドの対象におけるHCUを処置するのに高度に効果的である。実際、正常Met摂取のバックグラウンドの20NHS PEG-CBSによるETは、Met制限食と比較して、性能が等しい、またはより優れた結果を与える。
【0324】
要約すると、MRD単独では、血漿Hcy濃度を推奨レベル未満に低下させることができず、増加した不安および減少した骨石灰化につながるにもかかわらず、HCUの複数の症状を矯正するのに有効である。他方で、本明細書に記載される20NHS PEG-CBSによる酵素療法は、血漿Hcy濃度を100μM未満に低下させ、HCUの監視される症状全てを矯正した。さらに、20NHS PEG-CBSは、Met制限下でその有効性を保持し、十分に正常化した血漿生化学プロファイルを与える。これらのデータをヒト患者に外挿することによって、結果は、単一終生療法がHCUの臨床症状の予防および矯正に効果的となり得ることを確立している。加えて、20NHS PEG-CBSによる処置は、Met/食事制限を楽にすることを可能にし、よって、今度は、HCU患者およびその家族の生活の質を実質的に改善するはずである。
【0325】
E.神経合併症
研究により、低Met食、葉酸/Bビタミン補充ならびに/またはピリドキシンおよびベタイン療法によって誘導されるHcyレベルの早期低下が、様々な神経障害を予防し、時々、その進行を逆転させ、HCU患者における正常なIQ発達を可能にすることができることが示された(それぞれ全体が本願明細書に援用される、エル・バシールら(El Bashir et al.)JIMD Rep 2015;21:89-95;ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447;メック エーダブリュー(Mech AW)、ファラー エー(Farah A).MTHFR C677TまたはA1298C多型が陽性のMDD患者における還元型Bビタミンによる治療中の臨床応答とホモシステイン低下の相関:無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験(Correlation of clinical response with homocysteine reduction during therapy with reduced B vitamins in patients with MDD who are positive for MTHFR C677T or A1298C polymorphism:a randomized,double-blind,placebo-controlled study).J Clin Psychiatry 2016;77:668-671;グローブ エイチ(Grobe H).Eur J Pediatr 1980;135:199-203参照)。Hcyレベルの有意な低下、さらには正常化がCNS転帰の完全なまたは部分的な矯正をもたらしたさらなる証拠が、HCU患者における症例研究で提供される(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447;ブレントンら(Brenton et al.)J Child Neurol 2014;29:88-92;レザザデら(Rezazadeh et al.)Child Neurol Open 2014;1:2329048X14545870;ケーザーら(Kaeser et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 1969;32:88-93;コラフランセスコら(Colafrancesco et al.)Eur J Pediatr 2015;174:1263-1266;横井ら(Yokoi et al.)Pediatr Int 2008;50:694-695;リら(Li et al.)Pathology 1999;31:221-224参照)。
【0326】
上昇したHcyレベルと、認知症状、神経変性疾患、発作、ジストニア、精神病、認知障害、認知症およびうつ病を含むCNS症状との間の関連付けは、HCU患者および一般集団でよく記録されている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;アボットら(Abbott et al.)Am J Med Genet 1987;26:959-969;マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編.遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327;イダルゴら(Hidalgo et al.)Eur Child Adolesc Psychiatry 2014;23:235-238;スミスら(Smith et al.)PLoS One 2010;5:e12244;セシャドリら(Seshadri et al.)N Engl J Med 2002;346:476-483;ボッティグリエリら(Bottiglieri et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 2000;69:228-232;ビェランら(Bjelland et al.)Arch Gen Psychiatry 2003;60:618-626;トルムネンら(Tolmunen et al.)Am J Clin Nutr 2004;80:1574-1578;カエサルら(Kaeser et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 1969;32:88-93;ゴリムベットら(Golimbet et al.)Psychiatry Res 2009;170:168-171;クラークら(Clarke et al.)Arch Neurol 1998;55:1449-1455;ペルモダ-オシップら(Permoda-Osip et al.)Neuropsychobiology 2014;69:107-111;オリベイラら(Oliveira et al.)BMJ Case Rep 2016;2016;トロエンら(Troen et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:12474-12479;サダスら(Sudduth et al.)J Cereb Blood Flow Metab 2013;33:708-715;ヘインズワースら(Hainsworth et al.)Biochim Biophys Acta 2016;1862:1008-1017;ヘルマンら(Herrmann et al.)Clin Chem Lab Med 2011;49:435-441;キムら(Kim et al.)J Nutr 2007;137:2093-2097;セルフーブら(Selhub et al.)Am J Clin Nutr 2000;71:614S-620S;マッカドンら(McCaddon et al.)Dement Geriatr Cogn Disord 2001;12:309-313;スモールウッドら(Smallwood et al.)Neuropathol Appl Neurobiol 2012;38:337-343;ベイドゥンら(Beydoun et al.)BMC Public Health 2014;14:643;ゲルツら(Gortz et al.)J Neurol Sci 2004;218:109-114;Health Quality O.ビタミンB12および認知機能:証拠に基づく分析(Vitamin B12 and cognitive function:an evidence-based analysis).Ont.Health Technol.Assess.Ser.13(23)、1e45.2013.Ref Type:オンラインソース;サラグレら(Salagre et al.)Eur Psychiatry 2017;43:81-91参照)。Hcyレベルが上昇した個体におけるCNSにつながる機序は、tHcy媒介ニューロン損傷(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編.遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327;ヘインズワースら(Hainsworth et al.)Biochim Biophys Acta 2016;1862:1008-1017;ステファネロら(Stefanello et al.)Metab Brain Dis 2007;22:172-182;トボレクら(Toborek et al.)Atherosclerosis 1995;115:217-224参照)、Hcy媒介酸化ストレスによって引き起こされる血管内皮の損傷(全体が本願明細書に援用される、ビビツキーら(Vivitsky et al.)Am J Physiol Regul IntegrComp Physiol 2004;287:R39-R46参照)、ニューロン喪失(共に全体が本願明細書に援用される、イェガーネら(Yeganeh et al.)J Mol Neurosci 2013;50:551-557;ハイダーら(Heider et al.)J Neural Transm 補遺 2004;1-13参照)およびニューラルネットワーク活性の減弱(全体が本願明細書に援用される、ゲルツら(Gortz et al.)J Neurol Sci 2004;218:109-114参照)に関与すると考えられている。うつ病および痙攣は、少なくとも部分的に、Hcyによって媒介される脳アデノシンレベルの低下とノルエピネフリンおよびドーパミンレベルのその後の低下によって引き起こされると考えられている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、メックら(Mech et al.)J Clin Psychiatry 2016;77:668-671;ドマガラら(Domagala et al.)Thromb Res 1997;87:411-416;ビビツキーら(Vivitsky et al.)Am J Physiol Regul IntegrComp Physiol 2004;287:R39-R46;フォルスタインら(Folstein et al.)Am J Psychiatry 2007;164:861-867参照)。
【0327】
これらの所見が、HCU患者におけるHcyレベルと増加したCNS障害のリスクとの間の強力な相関を実証した。早期Hcy低下療法は、早期発生HCUを有する小児の正常な発達および晩年にHCUと診断された患者におけるCNS障害の矯正または改善に必須である。
【0328】
63人のHCU患者における研究は、51%が不安および挿話性うつ病(10%)、慢性行動障害(例えば、攻撃性および薬物またはアルコール乱用)(17%)、慢性強迫性障害(5%)およびパーソナリティ障害(19%)を含む精神医学障害を有することを見出した(全体が本願明細書に援用される、アボットら(Abbott et al.)Am J Med Genet 1987;26:959-969参照)。精神病は青年期における呈示徴候であり得る(全体が本願明細書に援用される、イダルゴら(Hidalgo et al.)Eur Child Adolesc Psychiatry 2014;23:235-238参照)。
【0329】
未処置の場合、ピリドキシン非応答性患者のおおよそ90%が学習困難を有し(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)Am J Hum Genet 1985;37:1-31参照)、未処置ピリドキシン応答性患者の79および遵守が良好な処置ピリドキシン応答性患者の105と比較して、IQはピリドキシン非応答性個体で典型的には10~138の範囲であり、平均57である(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447参照)。発作は12歳までに非応答性患者の20%で罹患し、ポリミオクローヌス、ジストニアおよびパーキンソン病を含む、大脳基底核梗塞に関連しない運動障害のいくつかの症例が報告された(共に全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;レザザデら(Rezazadeh et al.)Child Neurol Open 2014;1:2329048X14545870参照)。
【0330】
HCUと神経精神症状との間の関連付けは、1965年にシムケらによって最初に記載された(全体が本願明細書に援用される、シムケら(Schimke et al.)JAMA 1965;193:711-719参照)。関連付けは、CBS欠損患者の50%超で精神病理学を報告する研究によって後に支持された(全体が本願明細書に援用される、アボットら(Abbott et al.)Am J Med Genet 1987;26:959-969参照)。それ以来、多数の疫学的研究が、均一な血漿tHcyの軽度の上昇と、認知症状および神経変性疾患を含むCNS障害のリスクとの間の正の用量依存的関係を示した(それぞれ全体が本願明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;セシャドリら(Seshadri et al.)N Engl J Med 2002;346:476-483;クラークら(Clarke et al.)Arch Neurol 1998;55:1449-1455;ヘインズワースら(Hainsworth et al.)Biochim Biophys Acta 2016;1862:1008-1017;ヘルマンら(Herrmann et al.)Clin Chem Lab Med 2011;49:435-441;キム ジェイら(Kim J et al.)J Nutr 2007;137:2093-2097;セルフーブら(Selhub et al.)Am J Clin Nutr 2000;71:614S-620S;マッカドンら(McCaddon et al.)Dement Geriatr Cogn Disord 2001;12:309-313;スモールウッドら(Smallwood et al.)Neuropathol Appl Neurobiol 2012;38:337-343;ベイドゥンら(Beydoun et al.)BMC Public Health 2014;14:643参照)。一般に、Hcyレベルが重度に上昇した(50~200μM/L)患者は発作および精神病を含む急性ニューロン機能障害を呈示する傾向があり、より中等度のHcyレベル(15~50μM/L)は認知障害および認知症に関連付けられている(共に全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327;ゲルツら(Gortz et al.)J Neurol Sci 2004;218:109-114参照)。
【0331】
上昇したHcyレベルは、認知障害(共に全体が本願明細書に援用される、スミスら(Smith et al.)PLoS One 2010;5:e12244;セシャドリら(Seshadri et al.)N Engl J Med 2002;346:476-483参照)、認知症の発生(全体が本願明細書に援用される、Health Quality O.ビタミンB12および認知機能:証拠に基づく分析(Vitamin B12 and cognitive function:an evidence-based analysis).Ont.Health Technol.Assess.Ser.13(23)、1e45.2013.Ref Type:オンラインソース参照)およびアルツハイマー病(全体が本願明細書に援用される、セシャドリら(Seshadri et al.)N Engl J Med 2002;346:476-483参照)の堅牢な独立したリスクファクターとして広く受け入れられている。加えて、上昇したHcyレベル(15μmol/L超)は、うつ病患者の最大90%に存在することが示され(共に全体が本願明細書に援用される、ボッティグリエリら(Bottiglieri et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 2000;69:228-232;ビェランら(Bjelland et al.)Arch Gen Psychiatry 2003;60:618-626参照)、tHcyレベルの上三分位数の男性は下三分位数の男性より2倍超うつ病に苦しむ可能性が高い(全体が本願明細書に援用される、トルムネンら(Tolmunen et al.)Am J Clin Nutr 2004;80:1574-1578参照)。上昇したHcyレベルは、統合失調症、多発性硬化症、パーキンソン病、線維筋痛症/慢性疲労症候群(それぞれ全体が本願明細書に援用される、カエサルら(Kaeser et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 1969;32:88-93;ゴリムベットら(Golimbet et al.)Psychiatry Res 2009;170:168-171;クラークら(Clarke et al.)Arch Neurol 1998;55:1449-1455参照)および脳血管疾患を有さない反復性ジストニア(全体が本願明細書に援用される、シンクレアら(Sinclair et al.)Mov Disord 2006;21:1780-1782参照)の症例で一般的に報告されている。CBS遺伝子のT833C多型と双極性障害との間の考えられる関連付けが記載され(全体が本願明細書に援用される、ペルモダ-オシップら(Permoda-Osip et al.)Neuropsychobiology 2014;69:107-111参照)、近年のメタアナリシスが、双極性疾患を有する個体における上昇したHcyレベルと躁病/気分正常との間の関係を指し示した(全体が本願明細書に援用される、サラグレら(Salagre et al.)Eur Psychiatry 2017;43:81-91参照)。HCUに関連付けられる末梢神経障害の最初に知られた症例は、HCUを有する18歳の男性で近年記載され(全体が本願明細書に援用される、オリベイラら(Oliveira et al.)BMJ Case Rep 2016;2016参照)、精神病の致死性症例は以前診断未確定のHCUを有する17歳で記載された(全体が本願明細書に援用される、イダルゴら(Hidalgo et al.)Eur Child Adolesc Psychiatry 2014;23:235-238参照)。
【0332】
Hcyレベルと認知症との間の関係の直接的な証拠は、Hcy投与が脳病変の発症に関連付けられた動物研究に由来する(それぞれ全体が本願明細書に援用される、トロエンら(Troen et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:12474-12479;サダスら(Sudduth et al.)J Cereb Blood Flow Metab 2013;33:708-715参照)。第1のこのような研究では、Hcyレベルが上昇した(ビタミンB欠損食によって誘導される)雄C57BL6/Jマウスが、併発神経膠腫も神経変性もない海馬微小血管系の有意な粗鬆化と共に、有意に損なわれた空間学習および記憶を有した(全体が本願明細書に援用される、トロエンら(Troen et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:12474-12479参照)。全海馬毛細血管長は、モリス水迷路逃避潜時(r=-0.757、p<0.001)および血漿tHcy(r=-0.631、p<0.007)と逆相関していた。Met富化食を与えられたマウスは、類似であるが、あまり明白でない効果を示した。これらの所見は、上昇したHcyレベルが、神経変性の非存在下のまたは神経変性に先行する認知機能障害につながる脳微小血管粗鬆化に関連付けられることを示唆した。これは、ヒトにおける上昇したHcyレベルと認知低下との間の関連を説明し得る。
【0333】
第2の研究では、健康なマウスに、葉酸、ビタミンBおよびB12が欠損しており、Metを補充した食事を与えて、中等度に上昇したHcyレベルを誘導した(血漿tHcy82.93±3.56μmol/L)。これらのマウスは、2日間のラジアルアーム水迷路で評価される、空間記憶欠損を有した(全体が本願明細書に援用される、サダスら(Sudduth et al.)J Cereb Blood Flow Metab 2013;33:708-715参照)。MRIおよび組織学は、有意な微小出血率を明らかにした。神経炎症ならびにMMP2およびMMP9(両酵素とも脳出血の発病に関係している)の増加した発現および活性も観察された。このことは、上昇したHcyレベルと、アルツハイマー病などの血管性認知症との間の関連を示唆した。
【0334】
ヒトでは、HCUを有する個体(それぞれ全体が本願明細書に援用される、エル・バシールら(El Bashir et al.)JIMD Rep 2015;21:89-95;バタナビチャンら(Vatanavicharn et al.)J Inherit Metab Dis 2008;31 補遺3:477-481;ブレントンら(Brenton et al.)J Child Neurol 2014;29:88-92;ルホイら(Ruhoy et al.)Pediatr Neurol 2014;50:108-111参照)と有さない個体(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ホーゲルフォルストら(Hogervorst et al.)Arch Neurol 2002;59:787-793;クロッペンボルグら(Kloppenborg et al.)Neurology 2014;82:777-783参照)の両方で、白質の変化(血管損傷の徴候)が上昇したHcyレベルに頻繁に関連付けられる。しかしながら、これらの変化は、脳卒中の証拠に必ずしも関連付けられるわけではない。加えて、HCU患者における脳イメージング研究はしばしば、萎縮または静脈閉塞の徴候を示している(全体が本願明細書に援用される、バタナビチャンら(Vatanavicharn et al.)J Inherit Metab Dis 2008;31 補遺3:477-481参照)。
【0335】
スキャンにより、大脳半球、主に頭頂後頭領域の皮質下白質、およびより少ない度合いで、深部白質のびまん性対称異常増加シグナルが明らかになる。
1.機序
上昇したHcyレベルが神経学的健康に影響を及ぼす正確な機序は不明である。いくつかの動物研究により、上昇したtHcyレベルと、神経毒性ならびに付随する神経および精神障害との間の関連付けが示された。
【0336】
早期の研究により、非常に高い腹腔内用量のHcyが、運動皮質にコバルト誘導病変を有するラットで全般痙攣性てんかん重積持続状態を誘導することが示された(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327参照)。発作は、MetおよびビタミンBの添加によって増強され、シナプス後gアミノ酪酸受容体の遮断におけるピリドキサール5’-リン酸およびHcyの相乗効果のいくらかの証拠があった。その上、齧歯類新皮質組織のHcy処置は、AdoHcyの形態でのアデノシン捕集につながった(全体が本願明細書に援用される、ハイネーケら(Heinecke et al.)J Biol Chem 1987;262:10098-10103参照)。著者らは、アデノシンが優勢に脳活動における抑制剤であり、痙攣状態および高レベルのHcyに関連付けられる精神変化が脳アデノシンレベルの低下によって媒介され得ると述べた。
【0337】
Hcyは、神経毒性と脳の形態変化の両方に関連付けられる(全体が本願明細書に援用される、ヘインズワースら(Hainsworth et al.)Biochim Biophys Acta 2016;1862:1008-1017参照)。例えば、ラットおよびウサギにおける研究により、ニューロン損傷が、酸化ストレスの指標である、チオ酪酸反応性物質(TBARS)のHcy媒介増加によって引き起こされることが示された(共に全体が本願明細書に援用される、ステファネロら(Stefanello et al.)Metab Brain Dis 2007;22:172-182;トボレクら(Toborek et al.)Atherosclerosis 1995;115:217-224参照)。経口投与Met負荷後のヒトにおいても血漿TBARSの同様の増加が観察された(全体が本願明細書に援用される、ドマガラら(Domagala et al.)Thromb Res 1997;87:411-416参照)。その上、上昇したHcyレベルについてのマウスモデルにおける研究は、低下したCysレベルが低レベルのニューロングルタチオン、グルタミン酸、Cysおよびグリシンから合成される重要な抗酸化剤をもたらすので、酸化ストレスによって引き起こされる細胞損傷がHCU患者で増強され得ることを示唆した(全体が本願明細書に援用される、ビビツキーら(Vivitsky et al.)Am J Physiol Regul IntegrComp Physiol 2004;287:R39-R46参照)。
【0338】
ラット脳の左室へのインビボHcy注射は用量依存的ニューロン喪失を生成し(全体が本願明細書に援用される、イェガーネら(Yeganeh et al.)J Mol Neurosci 2013;50:551-557参照)、ラットの中脳被蓋ニューロンとHcyのインキュベーションはより少なく、より短いドーパミン作動性神経突起につながった(全体が本願明細書に援用される、ハイダーら(Heider et al.)J Neural Transm 補遺2004;1-13参照)。両研究では、Hcyの効果が、HcyとNMDAおよび代謝調節型グルタミン酸受容体のアンタゴニストの共投与によって鈍らせられ、Hcy誘導ニューロン損傷についてのグルタミン酸受容体媒介経路を示唆した。この経路のさらなる証拠は、Hcy投与がラット脳シナプトソームで用量依存的脂質過酸化につながった研究に由来する(全体が本願明細書に援用される、ハラ-プラドら(Jara-Prado et al.)Neurotox Res 2003;5:237-243参照)。もう一度、NMDA受容体アンタゴニストの投与によって効果が阻害された。
【0339】
自発的活性胚性ラット皮質ニューロンにおける研究により、重度に上昇したHcyの範囲より上のHcyレベルが、ニューロンネットワーク活性の用量依存的抑制を引き起こすことが示された(全体が本願明細書に援用される、ゲルツら(Gortz et al.)J Neurol Sci 2004;218:109-114参照)このような過大なHcyレベルはHCU患者で決して達しないので、この研究で観察される効果は臨床的に関連していなかった。しかしながら、ホモシステインスルフィン酸およびホモシステイン酸(上昇したHcyレベルを有する患者でしばしば見られるHcyの酸化形態)の控えめな上昇が同様の効果を有していた。各症例で、ニューラルネットワークに対する損傷が2-アミノ-5-ホスホノ吉草酸によって阻害され、NMDA受容体をこのHcyによって誘導されるニューロン機能障害のメディエーターとして同様に関係付けている。これらの結果は、上昇したHcyレベルに関連付けられるニューロン機能障害が、Hcy自体ではなくHcyの酸化形態によって引き起こされる可能性があることを示唆した。
【0340】
マルファン症候群および他の結合組織障害を有する患者における認知症状、痙攣および他のCNS障害の非存在は、HCU患者における神経障害が、フィブリリンの欠陥によってもコラーゲンの欠陥によっても引き起こされないことを示唆している(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327参照)。未処置HCUを有する患者では、上昇したSAMレベルおよび低下したSAHレベルが、ミエリン合成に要求されるメチル基転移反応を阻害して、さらなる神経損傷につながる(全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327参照)。減少したミエリン合成は、増加した再メチル化速度により、HCU患者における低いセリンレベルによっても引き起こされ得る(全体が本願明細書に援用される、オレンダックら(Orendac et al.)J Inherit Metab Dis 2003;26:761-773参照)。最後に、Hcy代謝は、ノルエピネフリンおよびドーパミンの生成のためのメチル基を提供することによってモノアミンの合成において重要な役割を果たす(共に全体が本願明細書に援用される、メックら(Mech et al.)J Clin Psychiatry 2016;77:668-671;フォルスタインら(Folstein et al.)Am J Psychiatry 2007;164:861-867参照)。実際、「うつ病のホモシステイン仮説(homocysteine hypothesis of depression)」(全体が本願明細書に援用される、フォルスタインら(Folstein et al.)Am J Psychiatry 2007;164:861-867参照)は、上昇したHcyレベルにより結果として生じる、低レベルのノルエピネフリンおよびドーパミンが、うつ病主因であると述べている。
【0341】
ラット脳生検の電子顕微鏡法は、高Hcy食を8週間与えられた動物における脳血管構造変更を示した。これらの変更は、高血漿tHcyレベルに関連付けられた(全体が本願明細書に援用される、リーら(Lee et al.)J Nutr 2005;135:544-548参照)。さらに8週間の食事性葉酸の消費によって、血漿tHcyレベルが正常レベルに低下し、損傷血管の発生率が有意に低下した。このことは、葉酸補充を使用したHcy低下が、実験的に誘導された上昇したHcyレベルの血管内皮に対する有害な効果を減少させ得ることを示唆した。
【0342】
少なくとも1つのMTHFR多型による、大うつ病性障害(MDD)およびHCUを有する成人(N=330)での単剤療法としての還元型Bビタミンの有効性および安全性を評定するように設計された研究は、還元型Bビタミンの組み合わせによる処置が131人の処置患者(82.4%)でtHcyレベルを有意に低下させる(この亜群における平均低下は25%であった;p<0.001)が、プラセボ処置患者はtHcyレベルの小さな上昇を実証することを見出した(全体が本願明細書に援用される、メックら(Mech et al.)J Clin Psychiatry 2016;77:668-671参照)。処置患者は、平均で、8週目までにモンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)における12ポイントの減少を有し、42%が完全緩解を達成した(p<0.001)。さらなる臨床的改善は、応答者の大部分でtHcyレベルの有意な低下と相関していた。この研究はHCU患者で実行されなかったが、うつ病を有する個体におけるHcy低下についての明確な利益を実証し、「うつ病のHcy仮説(Hcy hypothesis of depression)」(全体が本願明細書に援用される、フォルスタインら(Folstein et al.)Am J Psychiatry 2007;164:861-867参照)を支持した。
【0343】
HCUに関連付けられる精神医学症状を有する個体におけるHcy低下療法の利益は、12人の遅く診断された患者の研究において最初に実証された(全体が本願明細書に援用される、グローブ エイチ(Grobe H).Eur J Pediatr 1980;135:199-203参照)。これらの患者のうちの3人は、決して有効に処置されず、深刻な心理学的障害を有し、早死にした。残りの8人の患者は1~26歳の範囲であり(平均13歳)、全員が被刺激性、ADHD、アパシーおよび精神病を含む精神医学症状を有していた。2~9年間にわたるピリドキシンまたは補充L-システインを用いた低Met食による処置は、生化学的正常化と相関した、行動および知的発達の印象的な改善に関連付けられた。著者らは、研究で観察されたHCUに関連付けられた続発症の可逆性および改善のために、診断時および処置前の年齢にかかわらず、全ての患者を処置する必要性を力説した。
【0344】
アイルランドのスクリーニングプログラムからのさらに最近のデータを使用して、23人のHCUを有するピリドキシン非応答性個体の精神能力(339患者-処置年)を10人の未罹患同胞対照の精神能力と比較した(全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447参照)。識別された23人の患者のうち、19人が、NBSを通してHCUと診断され、人生の早い段階で処置され(生後6週間以内)、2人が後に検出され(年齢2.2歳および2.9歳)、2人が評価時点で未処置であった。全ての患者を、必要に応じて、Metを含まない、システイン補充合成アミノ酸混合物、ビタミンB12および葉酸補充物で処置した。食事の遵守が不足した早期処置患者および後に検出されたHCUを有する全ての患者で、処置の補助として最後の5年でベタインを使用した。
【0345】
全体として、早期処置群(平均年齢14.4歳;4.4~24.9の範囲)の19人の患者のうちの13人は、処置を遵守し(11μmol/L未満の生涯血漿fHcy中央値によって定義される)、合併症を有さなかったが、遵守が不足していた残りの6人(平均年齢19.9歳;13.8~25.5の範囲)は、合併症を発症した。平均全検査IQ(FIQ)は、遵守が不足している群の80.8(40~103の範囲)と比較して、遵守した群で105.8(84~120の範囲)であった。平均年齢19.4歳(9.7~32.9の範囲)の対照群(n=10)は、平均FIQが102(76~116の範囲)であった。18.9歳および18.8歳の、2人の後に検出された患者はそれぞれ、FIQが80および102であり、22.4歳および11.7歳の、2人の未処置患者はそれぞれ、FIQが52および53であった。罹患同胞で有意に高かったFIQを除いて(p=0.0397)、遵守した早期処置個体とその未罹患同胞(対照)との間に有意な差はなかった。比較的少数にもかかわらず、これらの結果は、優れた生化学的制御による早期処置が認知症状を予防することを示唆している。
【0346】
カタールでの32症例のHCUおよび25例の同胞対照における神経発生的、教育的および認知的転帰に関して報告する症例対照研究でも同様の結果が得られた(全体が本願明細書に援用される、エル・バシールら(El Bashir et al.)JIMD Rep 2015;21:89-95参照)。この研究における対象の平均年齢は11.2歳(0.6~29の範囲)であり、56%が男性であった。未罹患同胞と比較して、罹患個体は、低い全IQ(特に短期記憶、定量推理および視覚-空間領域に関して)を有し、有意な数の青年および成人症例が、医学併存症ならびに行動および感情面の問題を有していた。これらのうち、HCUの9症例(28%)がNBSによって診断され、生後1か月で処置された。残りは14~240月齢の間に診断された。おそらく人生の早い段階での食事および投薬の良好な遵守のために、臨床的に診断された者よりもNBSを通して診断された者で処置時tHcyおよびMetレベルが有意に優れていた。早期診断患者と臨床的に診断された患者との間でIQの有意な差異が観察された。言語領域、特殊学校への出席およびクラスの特別なサポートへのアクセスにおける差異は群間で統計学的に有意でなかったが、「臨床的に検出された」群は明らかにより多くの困難を報告した。
【0347】
ここで研究された患者の数は少ないが、出生時に診断された小児と、幼児として診断された小児との間で注目すべき差異が見られる。臨床的に診断された群における115μmol/Lの平均tHcyレベルは、不足しているな臨床転帰および非常に低いIQと関連付けられた。
【0348】
HCU患者における精神病理学でのHcy低下処置の利益のさらなる証拠は、1963年からボストン小児病院で呈示している全HCU患者からのデータの後ろ向き診療録レビューに由来する(エム アルムクビルら(M.Almuqbil et al.)の好意による未公開データ)。全体として、19人のHCU患者が識別され、これらのうちの3人が、HCUに加えておそらくメチルマロン酸血症(同様に心理学的欠陥に関連付けられる)の交絡させる存在のために、分析から除外された。残りの16人の患者のうち、7人(6人がHCUを有し、1人がコバラミン(Cbl)欠損を有する)が、早期処置を良好に遵守した(4人は食事のみ、2人は食事+ベタイン、1人はCbl)。これらの患者のうちの6人は、軽度の認知欠損以外の明らかな精神医学症状を有さなかった。対照的に、9人の患者(7人がピリドキシン非応答性HCUを有し、2人がCblG欠損を有する)が、処置の遵守が不足しているか、または変動的であった(2人がベタインおよび食事、1人が食事のみ、3人がBビタミン、2人が葉酸およびベタイン)。HCUを有し、遵守が不足している7人の患者全員が、うつ病(n=4)、妄想経験(n=2)、妄想症および妄想精神病(n=1)、不安および気分調節不全(n=1)ならびに優れた代謝制御により改善したADHD(n=1)を含む、精神医学的な問題を有していた。2つのCblG症例は著しく不安または興奮型であった。年齢、性別および認知レベルは、精神医学的罹患個体と非罹患個体との間で有意に差別化できるようには見えなかった。これらの結果は、優れた代謝制御(Hcyおよび/またはMet低下)が、HCU患者において精神医学および行動状態の発生を遅延させ、おそらくは予防する潜在力を有することを示唆している。しかしながら、この研究は、制御が不足しているHCUが精神病理学につながるかどうか、または精神病理学との併存症自体が処置転帰の優れた遵守を妨げるかどうかを確認はしなかった。
【0349】
上昇したHcyレベルと、認知症状、神経変性疾患、発作、ジストニア、精神病、認知障害、認知症およびうつ病を含むCNS症状との間の関連付けは、HCUを有するおよび有さない個体でよく記録されている(それぞれ全体が本明細書に援用される、モリスら(Morris et al.) J Inherit Metab Dis 2017; 40:49-74;アボットら(Abbott et al.)Am J Med Genet 1987;26:959-969;マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327;イダルゴら(Hidalgo et al.)Eur Child Adolesc Psychiatry 2014;23:235-238;シムケら(Schimke et al.)JAMA 1965;193:711-719;スミスら(Smith et al.)PLoS One 2010;5:e12244;セシャドリら(Seshadri et al.)N Engl J Med 2002;346:476-483;ボッティグリエリら(Bottiglieri et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 2000;69:228-232;ビェランら(Bjelland et al.)Arch Gen Psychiatry 2003;60:618-626;トルムネンら(Tolmunen et al.)Am J Clin Nutr 2004;80:1574-1578;カエサルら(Kaeser et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 1969;32:88-93;ゴリムベットら(Golimbet et al.)Psychiatry Res 2009;170:168-171;クラークら(Clarke et al.)Arch Neurol 1998;55:1449-1455;シンクレアら(Sinclair et al.)Mov Disord 2006;21:1780-1782;ペルモダ-オシップら(Permoda-Osip et al.)Neuropsychobiology 2014;69:107-111;オリベイラら(Oliveira et al.)BMJ Case Rep 2016;2016;トロエンら(Troen et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 2008;105:12474-12479;サダスら(Sudduth et al.)J Cereb Blood Flow Metab 2013;33:708-715;ヘインズワースら(Hainsworth et al.)Biochim Biophys Acta 2016;1862:1008-1017;ヘルマンら(Herrmann et al.)Clin Chem Lab Med 2011;49:435-441;キムら(Kim et al.)J Nutr 2007;137:2093-2097;セルフーブら(Selhub et al.)Am J Clin Nutr 2000;71:614S-620S;マッカドンら(McCaddon et al.)Dement Geriatr Cogn Disord 2001;12:309-313;スモールウッドら(Smallwood et al.)Neuropathol Appl Neurobiol 2012;38:337-343;ベイドゥンら(Beydoun et al.)BMC Public Health 2014;14:643;ゲルツら(Gortz et al.)J Neurol Sci 2004;218:109-114;Health Quality O.ビタミンB12および認知機能:証拠に基づく分析(Vitamin B12 and cognitive function: an evidence-based analysis.)Ont.Health Technol.Assess.Ser.13(23)、1e45.2013.Ref Type:オンラインソース;サラグレら(Salagre et al.)Eur Psychiatry 2017;43:81-91参照)。Hcyレベルが上昇した個体におけるCNS障害につながる機序は、tHcy媒介ニューロン損傷(それぞれ全体が本願明細書に援用される、マッドら(Mudd et al.)硫黄転移の障害(Disorders of transsulfuration).スクリヴァー シーエル(Scriver CL)、ボーデ エーエル(Beaudet AL)、スライ ダブリューエス(Sly WS)、ヴァレ ディー(Valle D)編 遺伝病の代謝および分子基礎(The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Diseases).第7版 ニューヨーク:マグロウヒル(McGraw Hill);2001;1279-1327;ヘインズワースら(Hainsworth et al.)Biochim Biophys Acta 2016;1862:1008-1017;ステファネロら(Stefanello et al.)Metab Brain Dis 2007;22:172-182;トボレクら(Toborek et al.)Atherosclerosis 1995;115:217-224参照)、Hcy媒介酸化ストレスによって引き起こされる血管内皮の損傷(全体が本願明細書に援用される、ビビツキーら(Vivitsky et al.)Am J Physiol Regul IntegrComp Physiol 2004;287:R39-R46参照)、ニューロン喪失(共に全体が本願明細書に援用される、イェガーネら(Yeganeh et al.)J Mol Neurosci 2013;50:551-557;ハイダーら(Heider et al.)J Neural Transm 補遺2004;1-13参照)およびニューラルネットワーク活性の減弱(全体が本願明細書に援用される、ゲルツら(Gortz et al.)J Neurol Sci 2004;218:109-114参照)に関与すると考えられている。うつ病および痙攣は、少なくとも部分的に、Hcyによって媒介される脳アデノシンレベルの低下とその後のノルエピネフリンおよびドーパミンのレベルの低下によって引き起こされると考えられている(それぞれ全体が本願明細書に援用される、メックら(Mech et al.)J Clin Psychiatry 2016;77:668-671;ドマガラら(Domagala et al.)Thromb Res 1997;87:411-416;ビビツキーら(Vivitsky et al.)Am J Physiol Regul IntegrComp Physiol 2004;287:R39-R46;フォルスタインら(Folstein et al.)Am J Psychiatry 2007;164:861-867参照)。
【0350】
HCUの動物モデル(全体が本願明細書に援用される、リーら(Lee et al.)J Nutr 2005;135:544-548参照)とHCU患者(それぞれ全体が本願明細書に援用される、エル・バシールら(El Bashir et al.)JIMD Rep 2015;21:89-95;ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447;メックら(Mech et al.)J Clin Psychiatry 2016;77:668-671;グローブ エイチ(Grobe H.)Eur J Pediatr 1980;135:199-203参照)の両方での多数の研究により、低Met食、葉酸/Bビタミン補充および/またはピリドキシン/ベタイン療法によって誘導される早期のHcyレベルの低下が、様々な神経障害の進行を予防し、時々、逆転させることができることが示された。さらなる証拠は、Hcyレベルの有意な低下、さらには正常化がCNS転帰の完全なまたは部分的な矯正をもたらした、HCU患者における一連の6症例研究によって提供される(それぞれ全体が本願明細書に援用される、ヤップら(Yap et al.)J Inherit Metab Dis 2001;24:437-447;ブレントンら(Brenton et al.)J Child Neurol 2014;29:88-92;レザザデら(Rezazadeh et al.)Child Neurol Open 2014;1:2329048X14545870;カエサルら(Kaeser et al.)J Neurol Neurosurg Psychiatry 1969;32:88-93;コラフランセスコら(Colafrancesco et al.)Eur J Pediatr 2015;174:1263-1266;横井ら(Yokoi et al.)Pediatr Int 2008;50:694-695;リら(Li et al.)Pathology 1999;31:221-224参照)。
【0351】
これらの所見は、HCU患者および一般集団におけるHcyレベルと増加したCNS障害のリスクとの間の強力な相関を実証している。早期Hcy低下療法は、早期発生HCUを有する小児の正常な発達および晩年にHCUと診断された患者におけるCNS障害の矯正または改善に必須である。
【0352】
IX.定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の言及を含む。
【0353】
値の範囲が提供される場合、範囲の上限と下限との間の各介在値およびその明言される範囲中の任意の他の明言される値または介在値が本開示内に包含され、具体的に開示されることが意図される。例えば、1μm~8μmの範囲が明言される場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μmおよび7μm、ならびに1μm以上の値の範囲および8μm以下の値の範囲も明示的に開示されていることが意図されている。
【0354】
本明細書で使用される場合、「共投与される」または「共投与」は、医薬組成物を含む2種以上の治療用構成成分の投与を意味する。
本明細書で使用される場合、「医薬品」は、配列番号1のアミノ酸配列を有するPEG化ヒト切断型CBSタンパク質(例えば、20NHS PEG-CBS)の原薬を含む医薬組成物の剤形を指す。
【0355】
本明細書で使用される場合、「原薬」は、配列番号1のアミノ酸配列を有するPEG化CBSタンパク質(例えば、20NHS PEG-CBS)を指す。
本明細書で使用される場合、「負の臨床転帰」は、疾患、障害または状態により結果として生じる望ましくない表現型転帰を指す。
【0356】
本明細書で使用される場合、「組換え」は、例えば細胞、核酸、ポリペプチド、発現カセットまたはベクターへの言及で使用される場合、新たな部分の導入もしくは既存の部分の変更によって改変された、またはこれと同一であるが、合成材料から生成されるもしくは合成材料に由来する材料、または自然もしくは天然形態の材料に対応する材料を指す。例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)形態の細胞内で見られない遺伝子(すなわち、「外因性核酸」)を発現する、または異なるレベルで発現される、典型的には低発現または全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0357】
組換え技術は、例えば、発現ベクターなどの発現系に挿入するために、タンパク質をコードするcDNAまたはアンチセンス配列などの組換え核酸の使用を含むことができる;得られた構築物が細胞に導入され、この細胞が核酸および適切な場合、タンパク質を発現する。組換え技術はまた、核酸と、異なる源のコード配列またはプロモーター配列の、融合タンパク質の発現、タンパク質の構成的発現、またはタンパク質の誘導性発現のための1つの発現カセットまたはベクターへのライゲーションを包含する。
【0358】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」または「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物を指す。哺乳動物には、それだけに限らないが、ヒトが含まれる。
【0359】
本明細書で使用される場合、対象、患者およびまたは患者の集団に関して使用される「遺伝的に定義されていない」という用語は、シスタチオニンβ合成酵素の遺伝的に定義された欠損を有さない、または有すると診断されていない(例えば、1つまたは複数のCBS遺伝子の対立遺伝子におけるミスセンスまたは機能喪失型変異を有さない)1人または複数の対象を指す。例えば、上昇したtHcyレベルを有する遺伝的に定義されていない対象は、年齢、性別、食事、および他の因子に基づいて予想される正常範囲より上のtHcyレベルを有するが、1つまたは複数のCBS遺伝子の対立遺伝子における遺伝子欠損を有さない、または有すると診断されていない、すなわち遺伝的に定義されたHCUを有さない対象である。
【0360】
本明細書で使用される場合、「関連付けられる」は、疾患、状態または表現型の発症または顕在化との一致を指す。関連付けは、それだけに限らないが、その変更が種々の疾患および状態の基礎を提供し得るハウスキーピング機能を担う遺伝子、特定の疾患、状態または表現型に関与する経路の一部であるもの、ならびに疾患、状態または表現型の顕在化に間接的に寄与するものにより得る。
【0361】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、場合により本開示の組成物に含まれ得る、患者に対する有意な有害な毒物学的効果を引き起こさない賦形剤を指す。特に、本例では、これが、対象に対する有意な有害な毒物学的効果なしに、活性化合物(ここではPEG化htCBSまたは「20NHS PEG-CBS」)と関連して哺乳動物対象の体に入れられ得る賦形剤を指す。
【0362】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」、「希釈剤」または「担体」という用語は、治療剤を送達するための担体として使用され、対象、例えば哺乳動物への投与に適した、あるいはその取り扱いもしくは貯蔵特性を改善する、または経口投与に適したカプセル剤もしくは錠剤などの離散的物品への組成物の投与単位の形成を可能にするもしくは容易にするために医薬組成物に添加される、それ自体は治療剤ではない任意の物質を意味する。「アジュバント」、「希釈剤」または「担体」という用語は、その用語が本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」、「ビヒクル」、「溶媒」などを含む「賦形剤」を包含する。賦形剤およびビヒクルは、非毒性であり、有害に組成物の他の構成成分と相互作用しない、当技術分野で公知の任意のこのような材料、例えば任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、安定剤などを含む。投与は、経口投与、吸入、経腸投与、給餌、または静脈内注射による接種を意味することができる。賦形剤は、標準的な医薬賦形剤を含み得、ヒトおよび/または動物消費用の食品および飲料、飼料または餌配合物あるいは他の食糧を調製するために使用され得る任意の構成成分も含み得る。
【0363】
本明細書で使用される場合、「薬物」または「活性剤」または任意の他の同様の用語は、それだけに限らないが、(1)生物に対する予防効果を有し、感染症を予防するなど望ましくない生物学的効果を予防する、(2)疾患によって引き起こされる状態を緩和する、例えば疾患の結果として引き起こされる疼痛もしくは炎症を緩和する、および/または(3)疾患を緩和する、減少させるまたは生物から完全に排除することを含み得る、所望の生物学的または薬理学的効果を誘導する、当技術分野で以前から公知の方法および/または本開示で教示される方法による投与に適した、ペプチドを含む、任意の化学的もしくは生物学的材料または化合物を意味する。効果は局所的、例えば局所的麻酔効果を提供する、または全身的であり得る。
【0364】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特に所与の量への言及において、+または-5%の偏差を包含することを意味している。
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、本組成物に関する場合、非毒性であるが、処置される対象において血流中もしくは作用部位で(例えば細胞内)所望のレベルを提供する、および/またはホモシスチン尿症の顕在化の改良などの所望の生理学的、生物物理学的、生化学的、薬理学的もしくは治療的応答を提供するのに十分な活性剤(または活性剤を含有する組成物)の量を指す。要求される正確な量は対象ごとに変動し、活性剤、組成物の活性、採用される送達デバイス、組成物の物理的特性、意図される患者使用(すなわち、1日当たりに投与される投与数)、ならびに対象の種、年齢および全身状態などの患者の考慮事項、処置される状態の重症度、対象によって服用される追加の薬物、投与様式などの多数の因子に依存する。これらの因子および考慮事項は、本明細書で提供される情報に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。任意の個々の症例の適正な「有効」量は、本明細書で提供される情報に基づいて、日常的な実験を使用して、当業者によって決定され得る。
【0365】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、RNAの形態またはDNAの形態であり得、メッセンジャーRNA、合成RNAおよびDNA、cDNA、ならびにゲノムDNAを含み得る。DNAは二本鎖であっても一本鎖であってもよく、一本鎖である場合、コード鎖であっても非コード(アンチセンス、相補)鎖であってもよい。
【0366】
本明細書で使用される場合、「変異体」は、グリコシル化、タンパク質安定化および/またはリガンド結合に関する特性または機能を変更させるように設計または操作された変異タンパク質である。
【0367】
本明細書で使用される場合、所与の細胞、ポリペプチド、核酸、形質または表現型に関する「天然」または「野生型」という用語は、典型的に自然に見られる形態を指す。
本明細書で使用される場合、「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」という用語は、その慣用的な意味を有し、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、脂質修飾、ミリスチル化、ユビキチン化等)にかかわらず、アミド結合によって共有結合的に連結された少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを表すために互換的に使用される。さらに、本明細書に記載されるポリペプチドは、特定の長さに限定されない。D-およびL-アミノ酸、ならびにD-およびL-アミノ酸の混合物がこの定義に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ならびに当技術分野で公知の他の修飾(天然に存在するものと天然に存在しないものの両方)を指さない、またはこれを除外する。ポリペプチドはタンパク質全体であっても、その部分配列であってもよい。ポリペプチドはまた、エピトープ、すなわちポリペプチドの免疫原性特性を実質的に担い、免疫応答を誘起することができる抗原決定基を含むアミノ酸配列を指し得る。
【0368】
本明細書で使用される場合、「~に対応する位置」などは、別の参照核酸分子またはタンパク質における位置に対する核酸分子またはタンパク質における目的の位置(すなわち、塩基番号または残基番号)を指す。対応する位置は、例えば配列間の同一性が90%超、95%超、96%超、97%超、98%超または99%超となるように、合致するヌクレオチドまたは残基の数を最大化するように配列を比較および整列することによって決定することができる。次いで、目的の位置に、参照核酸分子で割り当てられる番号を受け取る。例えば、遺伝子Xにおける特定の多型が配列番号Xのヌクレオチド2073で起こる場合、別の対立遺伝子または単離物の対応するヌクレオチドを識別するために、配列が割り当てられ、次いで、2073に並ぶ位置が識別される。様々な対立遺伝子が異なる長さであり得るので、2073を指定する位置は、ヌクレオチド2073ではない場合があるが、代わりに、参照配列における位置に「対応する」位置である。
【0369】
本明細書で使用される場合、「長期投与」という用語は、6週間以上の期間にわたる、PEG部分にコンジュゲートしたCBS酵素、htCBSまたはhtCBS変異体(例えば、C15S変異を有する)の投与を指す。「長期連続処置」という用語は、皮下注射または埋め込み型浸透圧ポンプを介した、試験の経過全体を通したPEG部分にコンジュゲートしたCBS酵素、htCBSまたはhtCBS変異体(例えば、C15S変異を有する)の繰り返される投与を指す。
【0370】
システインからセリンへのアミノ酸15位の変異を有するPEG化ヒト切断型CBSタンパク質を含む、本明細書に記載される医薬品を用いた酵素療法(ET)を通したホモシスチン尿症および/またはCBS欠損を処置する方法が本明細書に記載される。
【0371】
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の付属の説明に明らかにされる。本明細書に記載されるものと類似のまたは等価な任意の材料および方法を本開示の実施または検査で使用することができるが、好ましい材料および方法をここで記載する。本開示の他の特徴、目的および利点は説明から明らかになるであろう。説明では、単数形が、文脈が別段の指示を明確にしない限り、複数形を含む。特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合は、本説明が優先する。
【0372】
本開示を以下の非限定的な実施例によってさらに例示する。
【実施例
【0373】
実施例1.自然歴研究概要および患者特徴
CBS-HCY-NHS01は、ホモシスチン尿症が経時的にどのように進行するのかを理解し、ホモシスチン尿症を有しながら生活している患者のための新たな処置を識別するために、3年間にわたって本臨床管理習慣下で患者におけるHCUの臨床経過を特徴付けるための、55人の小児(5~17歳)および成人(18歳超)患者を登録した、HCUの進行中の、多施設共同(8現場)、国際的、観察、前向き自然歴研究(「NHS」)である。CBS-HCY-NHS-01は、総Hcy(tHcy)および関連する硫黄代謝産物の血漿濃度の範囲、ならびに疾患の臨床的続発症の変動性を探索する。患者特徴、認知障害および骨格異常を評価する暫定分析を実施した。観察された患者特徴を表1に提供する。
【0374】
【表1-1】
【0375】
【表1-2】
【0376】
55人のHCU患者をこの自然歴研究に登録した。研究の中央時間は暫定分析時で12.2か月であった。疾患は両性別で同様に罹患する(55%男性、45%女性)。研究におけるHCU患者は若齢であり(中央年齢:21.0歳);42%は小児患者(18歳未満)であり、58%は成人患者であった。この集団の中央BMIは正常範囲内(21.5kg/m2)にある。患者の半数(51%;小児の65%;成人の41%)は、生後1年(1歳未満)で診断された。患者の36%はHCUの家族歴を有していた。中央血漿tHcyレベルは、根底にある処置不十分の疾患と一致して、95μM(小児患者で74μM;成人患者で104μM)であった。小児患者の95%は、正常値上限(ULN)よりも高いtHcyを有しており、82%は50μM超のtHcyレベルを有していた(82%)。小児患者のほぼ半数(45%)のtHcyレベルが100μM超であった。全(100%)成人患者がULNより高いtHcyレベルを有しており、93%が50μM超のtHcyレベルを有しており、77%が100μM超のtHcyを有していた(77%)。各臨床訪問前に記録された3日間の食事日記に基づいて、ほとんどの患者(93%;95%小児;91%成人)が天然タンパク質制限食に従っており、ほとんどがMetを含まないLアミノ酸混合物を摂取していた(58%;74%小児;47%成人)。ほとんどの患者(83%;小児の91%;成人の76%)がBビタミン補充物を摂取していた。ほとんどの患者(85%;小児の87%;成人の84%)がベタインを摂取していた(表1)。
【0377】
実施例2.NHS-眼欠陥
歴史的に、患者はしばしば、水晶体偏位により診断されてきた。現在までに実行された最大の後ろ向き調査で、HCU患者の85%が、20歳までにこの状態を発症した(マッド エスエイチら(Mudd SH,et al.)シスタチオニンベータ合成酵素欠損によるホモシスチン尿症の自然歴(The natural history of homocystinuria due to cystathionine beta-synthase deficiency).Am J Hum Genet.1985;37(1):1-31)。対照的に、この管理された集団の成人患者の19%および小児患者の9%のみがこの状態を有し(表2参照)、中央血漿tHcyレベルによって証明されるように、根底にある処置不十分の疾患にもかかわらず、制限食、Bビタミンおよびベタイン補充物が眼欠陥の有効な緩和剤となり得ることを示唆している。
【0378】
【表2】
【0379】
実施例3.NHS-CBS遺伝子変異
試験参加者のCBS遺伝子の変異の分析は、48人の患者で識別された26個のユニークな変異を示し、16人の患者は明らかにホモ接合体であり、32人の患者は明らかに複合ヘテロ接合体であった。DNA変異および得られたCBS変異体タンパク質を、その開示全体が本願明細書に援用される、オギノ シュウジら(Ogino,Shuji,et al.)「分子診断学における標準的な変異命名法:実用的および教育的課題(Standard mutation nomenclature in molecular diagnostics:practical and educational challenges).」The Journal of molecular diagnostics 9.1(2007):1-6によって記載される遺伝子変異についての標準的な命名法を使用して、表3に示す。遺伝的に定義されたHCU患者は、それだけに限らないが、表3に示される変異のいずれかを含む、CBS遺伝子の変異を有する患者を含む。
【0380】
【表3】
【0381】
実施例4.NHS-tHcyレベル
各訪問時にtHcyレベルを決定した(表4)。ほとんどの患者(96%)が、12歳超については14μMのULNおよび0~12歳については9.6μMのULNの5~40倍の血漿tHcyレベルを有していた。患者内変動性は中等度であった。全体として、訪問1で低いtHcyレベルを有する患者は、試験全体を通して低いtHcyレベルを有する傾向があった(逆もまた同様である)(ピアソンのR=0.6294)。一部の患者で観察された大きな訪問間変動性は訪問間の食事/治療遵守の変化に起因し得るものであり、制限食および食事補充物の患者遵守を維持することにおける課題を強調している。
【0382】
【表4】
【0383】
実施例5.NHS-他の代謝指標
試験中、様々な実験室値を決定した(図1および表5参照)。ほとんどの患者が標準治療(タンパク質制限食、Bビタミン、補充物、ベタイン)に従っていたにもかかわらず、疾患のホールマークである、高いtHcyおよびMet、ならびに低いシスタチオニンおよび総システインレベルが観察された。1000μM超のメチオニンレベルが患者の11%(14%小児、10%成人)で観察され、600μM以上のメチオニンレベルが患者の33%(36%小児、33%成人)で観察された。ほとんどの患者が補充物を摂取しているので、予想通り、高いベタイン、ビタミンB12およびB6レベルが観察された。ULNより上のジメチルグリシン(DMG)レベルが患者の76%で観察され、これは一部の患者において急性心筋梗塞の高いリスクにつながり得た(スヴィンゲンら(Svingen et al.)2013)。ULNより上のALTレベルが患者の37%(52%小児;28%成人)で観察された。正常値下限(LLN)未満のクレアチニンレベルが患者の43%(74%小児、21%成人)で観察され、これはタンパク質制限に続発する低い筋肉量により得る。ULNより上のhsCRPレベルが検査した患者の35%で観察された(N=40;13歳以上の患者でのみ検査し、18歳以上の患者でのみ観察された)。低いプロテインC活性レベルが患者の28%で観察され、低いフィブリノーゲンレベルが患者の31%で観察された(N=29;共に13歳以上の患者でのみ検査し、18歳以上の患者でのみ観察された)。
【0384】
AST(患者の89%)(検査した患者全て);アンチトロンビンIII(患者の83%)、およびアポリポタンパク質A(患者の93%)(13歳以上の患者のみをこれらの実験室パラメーターについて検査した);骨特異的アルカリホスファターゼ(患者の97%)、血清CTX(患者の95%)、およびP1NP(患者の87%)(18歳超の患者のみをこれらの実験室パラメーターについて検査した)について、正常レベルが観察された。
【0385】
追加の実験室値を図1に提供し、バーは高い/正常/低い実験室値を有する患者の数を指し示す。
【0386】
【表5】
【0387】
表5および図1は、tHcyに加えて、なかでもメチオニン、シスタチオニン、DMG、ALT、クレアチニン、hsCRP、プロテインC活性、フィブリノーゲン、ALT-SGPT、ベタイン、シスタチオニン、血漿ビタミンB6、総システイン、およびビタミンB12が疾患重症度もしくは進行の代謝指標として有用となり得る、またはそうでなければ個体における疾患重症度もしくは進行を指し示し得ることを実証している。これらの患者特徴は、センターオブエクセレンスで見られ、処置され、天然タンパク質制限食および/またはMetを含まないLアミノ酸混合物および補充物を処方されているにもかかわらず、多くの患者が、tHcyについてのULNの5~40倍の血漿tHcy値、高メチオニン血症(6000μM以上)(患者の33%:36%小児、33%成人で観察された)、眼欠陥、炎症の徴候、タンパク質代謝および/または肝臓機能障害を有することを実証している。これらのデータは、現在の食事および治療介入の有効性が不足していること、ならびに/あるいはセンターオブエクセレンスで頻繁に監視されている患者でさえ、ほとんどの患者が遵守的なままであることができず、高いtHcyレベルにつながることを指し示している。特に、これらのデータは、ベタインがHCUにおいてtHcyレベルの適切な制御をもたらさず、したがって、通説に反して、それ自体はHCUのための適当な処置ではないことも指摘している。その上、この試験は、HCUの診断、疾患進行の監視、処置に対する患者の遵守および反応の監視、生活の質の評価、具体的な患者プロファイルに適するような治療の適合、ならびに新たな処置の有効性を決定するための臨床試験において有用であると予想される、新たなCBS遺伝子変異(表3)および疾患重症度または疾患進行の新たな実験室マーカーまたは代謝指標(表5および図1)を識別した。
【0388】
実施例6.NHS-骨格脆弱性
骨塩密度(BMD)を、ホロジック社(Hologic)またはゼネラル・エレクトリック社(General Electric)/ルナー社(Lunar)濃度計を使用して、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)によって、3つの位置(臀部、腰椎および全身)で、ベースラインおよび1年で評価した。BMDおよびZスコア(年齢および性に正規化した、参照群の平均BMD値から離れた標準偏差の数)を各位置について計算した。-1~-2.5の間のZスコアは骨減少症を指し示し、-2.5未満のZスコアは骨粗鬆症を指し示す。tHcyレベルを血漿で測定し、3日間の食事記録から中央総タンパク質摂取量(g/日)を計算した。総タンパク質摂取量は、食事からの総天然タンパク質と患者が摂取している場合には、Metを含まないLアミノ酸混合物からのタンパク質の合計として定義した。ピアソンの相関係数(R)を使用して、BMDとtHcyまたは食事性タンパク質との間の相関を計算した。表6は、異なるZスコアに関連付けられるパーセンタイル順位を示す。
【0389】
【表6】
【0390】
BMDデータは43人の患者について入手可能であった。中央Zスコアは、全ての体の位置で成人患者と小児患者の両方について負であり(表7)、骨格脆弱性を指し示している。成人患者の46%および小児患者の53%が、少なくとも1つの位置で、15パーセンタイル未満(-1以下のZスコア)の骨密度を有していた(表7)。BMD結果およびZスコアは、各患者について12か月にわたって安定であった(N=15~20;各位置でのBMDについて訪問1と訪問3との間の相関:ピアソンのR=0.94~0.97;p<0.0001)。
【0391】
【表7】
【0392】
100μM未満の血漿tHcyレベルを有する患者は、100μM超のレベルを有する患者よりもはるかに大きな骨格脆弱性を有していた(図2)。3つの位置全てで、血漿tHcyレベルとBMDとの間に正の相関があった(ピアソンのR=0.33~0.51;p<0.03;表8)。これらのデータは、3つの位置全てのBMDと総食事性タンパク質摂取量との間の正の相関(ピアソンのR=0.55~0.76;p<0.011;表8)によって示されるように、BMDがより多い総食事性タンパク質摂取量で改善することを実証している。3つの位置全てのBMDと、炎症のマーカーであるC反応性タンパク質(hsCRP)との間に正の相関があり(ピアソンのR=0.36~0.39;p<0.051;表8)、炎症が高いtHcyまたは増加したタンパク質摂取量と相関し得ることを示唆している。
【0393】
【表8】
【0394】
これらのデータは、ほとんどのHCU患者が、比較的若齢にもかかわらず、骨格脆弱性を有することを実証しており、過去の研究を確認している(パロット エフら(Parrot F,et al.)J Inherit Metab Dis.晩年に診断された成人ホモシスチン尿症患者における骨粗鬆症(Osteoporosis in late-diagnosed adult homocystinuric patients).2000;23:338-40;ウェーバー ディーアールら(Weber DR,et al.)低い骨塩密度はホモシスチン尿症を有する患者における共通の所見である(Low bone mineral density is a common finding in patients with homocystinuria).Med Genet Metab.2016;117:351-4)。各患者について、BMD結果およびZスコアは12か月にわたって安定であった。したがって、DXAによって評価されるBMDおよびZスコアは、HCU患者における将来の臨床試験で調査処置の有効性を評価するための信頼できるエンドポイントとみなすことができる。この集団の骨の健康は、高い総食事性タンパク質摂取量および高いtHcyレベルと相関しており、tHcyレベルを制御するために総タンパク質摂取量を慢性的に制限することによって、患者の骨格脆弱性が増加し得ることを示唆している。
【0395】
一般に、HCU患者は、健康な集団よりも大きな骨格脆弱性を有する。しかしながら、上に論じられるように、患者内では、高いtHcyレベルが骨量と正に相関している。したがって、遺伝的に定義されていないCBS欠損対象を含む、上昇したtHcyレベルを有する対象における骨格症状を、本明細書に記載される方法を使用して処置して、上昇したtHcyレベルに関連付けられる骨格症状を緩和することができる。
【0396】
実施例7.NHS-認知
以前の研究調査により、HCUにおける知的機能の重要な予測因子としての生涯総Hcy(tHcy)間の関連が実証された(アル-デヴィク エヌら(Al-Dewik N,et al.)カタールの集団における古典的ホモシスチン尿症の臨床、生化学および分子特性評価による自然歴(Natural history,with clinical,biochemical and molecular characterization,of classical homocystinuria in the Qatari population).J Inherit Metab Dis.2019年;4月10日;ヤップ エスら(Yap S,et al.)シスタチオニンβ合成酵素欠損によるピリドキシン非応答性ホモシスチン尿症を有する早期処置個体の知的能力(The intellectual abilities of early-treated individuals with pyridoxine-nonresponsive homocystinuria due to cystathionine β-synthase deficiency).J Inher Metabol Dis.2001;24(4):437-47)。この文献から欠けているのは、認知強度または欠陥のプロファイルならびにHCUの近位バイオマーカーと認知能力が関連付けられるかどうかの探索の説明である。
【0397】
実行機能は、努力を必要とし、注意および集中に必要とされるトップダウンの精神プロセスのセットを指す(ダイアモンド エイ(Diamond A.)実行機能(Executive functions).Annu Rev Psychol.2013;64:135-68)。実行機能は、身体的健康の変化に特に感受性であり、HCU重症度のバイオマーカーとの関連を査定するための優れた候補である。全体的知能とは異なり、実行機能は介入を通して改善することができる(ダイアモンド(Diamond)2013)。認知機能を、言語、作業記憶、エピソード記憶、処理速度、セットシフティングおよび抑制制御を評価する、年齢正規化NIH Toolbox Cognition Battery(NIHCB)を使用して、ベースラインで、および6か月毎に評価した(ワイントラウブ エスら(Weintraub S,et al.)NIH Toolboxを使用した認知評価(Cognition assessment using the NIH Toolbox).Neurol 2013:80(11):S54-64;ワイントラウブら(Weintraub et al.)NIH Toolbox Cognition Battery(CB):導入および小児データ(introduction and pediatric data).Monogr Soc Res Child Dev.2013;78(4):1-15)。これらの分析は訪問からの中央スコアを使用した。1~5回の訪問からの患者データが入手可能であった。tHcyレベルを血漿で測定した。ピアソンの相関係数(r)を使用して、認知機能とtHcy、CysおよびMetとの間の相関を計算した。
【0398】
認知機能データは51人の患者について入手可能であった。HCU患者の全体的認知機能が重度に影響を及ぼされた(20パーセンタイル;成人患者については21パーセンタイルおよび小児患者については14パーセンタイルでの中央総認知複合)。影響された認知区域には、流動性認知複合、実行機能、記憶、および処理速度が含まれていた。流動性認知複合は、記憶、実行機能および処理速度の要約スコアである。これには、新たな学習および情報処理の能力が含まれる。中央流動性認知複合は、本試験で10パーセンタイルにあることが見出された。実行機能は、自動応答傾向の阻害、およびタスク要求に基づいて行動を切り替える能力を表す。これには、セットシフティングおよび抑制制御が含まれる。本試験における中央実行機能は、セットシフティングについては18パーセンタイル、抑制制御については9パーセンタイルにあることが見出された。記憶は、情報を短期バッファに入れ、情報を操作する能力、ならびに情報を獲得、保管および検索する能力を表す。これには、作業記憶およびエピソード記憶が含まれる。本試験における中央記憶は、作業記憶については24パーセンタイル、エピソード記憶については32パーセンタイルにあることが見出された。処理速度は、情報を吸収する精神効率を表す。中央処理速度は、本試験において24パーセンタイルにあることが見出された。
【0399】
言語処理機能(受容語彙(Receptive Vocabulary)および単語読み取り)ならびに過去の学習および知識を反映する認知区域(結晶性認知複合)は正常範囲内にあった。
【0400】
NIH Toolbox結果は、訪問間で一貫していた(患者の大部分について10%未満のCV)。クラス内相関(ICC)は0.73(抑制制御)~0.89(総認知複合)の範囲であり、ICCが0.64のエピソード記憶は例外であった。NIH Toolboxの元の検証は、0.4~0.74のICCを適当とみなし、0.75より上を優秀とみなした。図3は、検査した認知機能についてのNIH Toolbox中央スコアおよび四分位スコアを示す。
【0401】
認知と他のパラメーターとの間の相関を決定した。tHcyレベルは、全体的認知(総認知複合)と負に相関していた(r=-0.32;p=0.023;表9);すなわち、tHcyレベルが高いほど、認知スコアが低かった。抑制制御は、tHcyレベルによって最も影響されたドメインであった(r=-0.33;p=0.019;表9)。
【0402】
HCU患者の全体的認知機能は、一般的に重度に影響を及ぼされたが(r=-0.32;p=0.023;表9)、tHcyレベルが上昇すると障害が増加した。100μM超のtHcyレベルを有する患者は、全ての認知区域で、100μM以下のtHcyを有する患者よりも全体的にはるかに不足した認知を有していた。100μM以下のtHcyを有する患者を100μM超のtHcyを有する患者と比較すると、抑制制御および受容語彙のドメインが最も統計学的に有意な差異を示した(図4)。対照的に、血漿Metレベルは全体的認知と負に相関しており(r=-0.28;p=0.049;表9)、tHcyレベルとMetレベルの両方が可能な限り正常に近く保たれるべきであることを示唆している。Cysレベルは全体的認知と正に相関していた(r=0.37;p=0.008;表9)。
【0403】
【表9】
【0404】
低い血漿tHcyレベルを有する患者が実行機能の測定で良い成績を上げ、tHcyレベルの制御が知的機能を平均範囲内に維持するために必須であることを示す以前の研究を拡張している(ウォルター ジェイエイチら(Walter JH,et al.)シスタチオニンβ合成酵素欠損を処置するための戦略:過去30年間にわたるWillink Biochemical Genetics Unitの経験(Strategies for the treatment of cystathionine β-synthase deficiency:the experience of the Willink Biochemical Genetics Unit over the past 30 years).Eur J Pediatr.1998;157(2):S71-6;ヤップら(Yap et al.)2001、アル-デヴィクら(Al-Dewik et al.)2019)。
【0405】
この試験は、NIH Toolboxが、介入に対する応答の追跡を含む、HCUを有する患者における経時的な認知機能を評価するための潜在的な価値を実証する信頼できる手段であることを実証している。
【0406】
この試験の結果は、HCUを管理するための実用的意義を有する。神経心理学的査定は、HCU患者のための医療の重要な構成成分であることが示されており、実行機能(応答阻害を含む)の評価がこれらの査定の一部として含まれるべきである。HCUを有する小児については、ADHDなどの他の実行機能問題を有する小児のためのサポートと類似のサポートを考慮すべきである。
【0407】
HCUにおける具体的な認知欠陥の識別は、HCUによって影響される神経系に焦点を当てた将来の研究に手がかりを提供する。例えば、背側前帯状皮質活性化は、フランカー課題(flanker task)に対する応答阻害の中心的要素である矛盾する情報の監視に関連付けられる(ボトヴィニク エムエムら(Botvinick MM,et al.)矛盾監視および前帯状皮質:更新(Conflict monitoring and anterior cingulate cortex:an update).Trends Cog Sci.2004;8(12):539-46)。
【0408】
tHcyレベルと認知症状との間の有意な相関は、tHcyレベルが認知障害の信頼できる指標であることを示している。したがって、遺伝的に定義されていないCBS欠損対象を含む、上昇したtHcyレベルを有する対象における認知症状を、本明細書に記載される方法を使用して処置して、上昇したtHcyレベルに関連付けられる認知症状を緩和することができる。
【0409】
実施例8.tHcy定量化法の検証
前述の実施例および表5および図1に記載されるものを含む、ホモシステイン、メチオニン、システインおよびCBS欠損に関係するその他などの代謝産物を定量化するための現在の手順は、分析前の全血試料からの血漿の分離を要求する。これは、対象からの血液試料で開始して任意の所与の代謝産物を分析するために、精巧な機器および専門的な技術的知識の必要性を追加する。定量分析のために患者血液試料を収集および調製するための安価で効率的な検証された方法が必要とされている。このような検証された方法は、例えば、患者が、検査施設の必要性なしに、自宅で血液試料を収集することを可能にすることによって、CBS欠損を有する患者を診断するために要求される費用および時間を減少させるだろう。これらの方法はまた、自宅からの複数の試料提出を可能にすることによって、個々の対象および医療専門家が、より効率的に、リアルタイムの疾患状態を監視し、処置を追跡することも可能にするだろう。加えて、このような検証された診断学および診断方法は、対象が、医療専門家の援助なしに、信頼できるように自宅でサンプリングして代謝産物レベルを監視することを可能にすることができる。自宅でのサンプリングは、例えば、フィンガープリックおよび血漿分離デバイス(PSD)などのデバイスを使用した、定量分析のための血液試料の収集および処理を伴う。血漿総ホモシステインを定量化するための現在の標準は、LC-MS/MSによって測定されるtHcyレベルに基づく。したがって、LC-MS/MSによる分析のための全血試料を収集および調製するための代替診断法が必要とされる。1つのこのような代替法は、乾燥血液スポット(「DBS」)の収集を伴う。あるいは、またはさらに加えて、PSDの使用が採用され得る。DBSおよびPSD手法を使用して代謝産物レベルを収集および分析する方法は、例えば、その開示全体が本願明細書に援用される、国際公開第2014150900号および米国特許出願公開第20120318971号に記載されている。しかしながら、これらの代替法は決して検証されておらず、個々の対象による自宅でのサンプリングまたは自宅での検査などの自宅使用のためのこのような適用についての信頼性および有用性は評価されていない。したがって、対象の総ホモシステインレベルを、国際公開第2014150900号に記載されるPSD法を使用して測定し、伝統的な血漿分離LC-MS/MS法と比較した。結果を表10に提供し、「PSD法」は国際公開第2014150900号に記載されるPSD手法を指し、「LC-MS/MS法」は伝統的な血漿分離LC-MS/MS手法を指す。
【0410】
【表10】
【0411】
PSD法と伝統的なLC-MS/MS法を使用して検査した試料間の相関を査定するために単純な線形回帰分析を実施した。最適当てはめ直線は1.096の傾き(1/傾き=0.912)を有し、傾きの標準誤差は0.0804である(傾きの95%信頼区間は0.9302~1.263である)。これらの結果は強力な相関を示し、個々の対象の血液試料からのtHcyの定量化におけるPSD法を検証している。
【0412】
等価物および範囲
当業者であれば、日常的な実験にすぎないものを使用して、本明細書に記載される開示に従って、具体的な実施形態の多くの等価物を認識する、または確かめることができる。本開示の範囲は、上記の説明に限定されることを意図しておらず、むしろ添付の特許請求の範囲に明らかにされる通りである。
【0413】
特許請求の範囲において、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、反対のことを指し示さない限り、また文脈から明らかでない限り、1つまたは2つ以上を意味し得る。反対のことを指し示さない限り、また文脈から明らかでない限り、群のメンバーの1つ、2つ以上、または全てが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用される、または関連する場合に、群の1つまたは複数のメンバー間に「または」を含む特許請求の範囲または説明が満たされるとみなされる。本開示は、群の正確に1つのメンバーが所与の生成物またはプロセスに存在する、採用されるまたは関連する実施形態を含む。本開示は、2つ以上の群のメンバーまたは群のメンバー全体が所与の生成物またはプロセスに存在する、採用されるまたは関連する実施形態を含む。
【0414】
「~を含む」という用語は、オープンであることを意図しており、追加の要素または工程の算入を許すが、要求しないことも留意されたい。「~を含む」という用語が本明細書で使用される場合、「~からなる」という用語も包含および開示される。
【0415】
範囲が施される場合、終点が含まれる。さらに、特に指し示さない限り、また文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値が、文脈上別段の意味を定義することが明らかな場合を除き、本開示の様々な実施形態で明言される範囲内の任意の具体的な値または部分範囲を、その範囲の下限の単位の10分の1まで考えることができることが理解されるべきである。
【0416】
加えて、先行技術内に入る本開示の任意の特定の実施形態は、1つまたは複数の請求項から明示的に除外され得ることが理解されるべきである。このような実施形態は当業者公知と思われるので、除外が本明細書で明示的に明らかにされていない場合であっても、除外され得る。先行技術の存在に関連しようがしまいが、任意の理由で、本開示の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療薬または活性成分;任意の生成方法;任意の使用方法;等)を1つまたは複数の請求項から除外することができる。
【0417】
使用されている単語は限定ではなく説明の単語であること、ならびにその広範な態様において本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲の権限内で変更を行うことができることが理解されるべきである。
【0418】
本開示をいくつかの記載される実施形態に関してある長さで、およびある特殊性で記載してきたが、本開示がこのような詳細もしくは実施形態または任意の特定の実施形態に限定されることを意図しておらず、本開示は、先行技術に照らして添付の特許請求の範囲の最も広い可能な解釈を提供し、したがって、本開示の意図される範囲を有効に包含するようにこのような特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022546550000001.app
【国際調査報告】