(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】櫛形ポリマーおよびブロックコポリマーで安定化された、核酸および他の可溶性親水性化合物を封入するナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 9/51 20060101AFI20221027BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221027BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K47/36
A61K31/7088
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514218
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 US2020048986
(87)【国際公開番号】W WO2021046078
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003552
【氏名又は名称】ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペイゲルス,ロバート,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マークウォルター,チェスター,イー.
(72)【発明者】
【氏名】プリュードム,ロバート,ケー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076EE30
4C076FF36
4C076GG21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA38
4C086NA03
(57)【要約】
水溶性材料を含有する親水性コアおよび疎水性シェルを有するナノ粒子を形成するための沈殿経路が記載される。このプロセスは、より極性の高い領域およびより非極性の領域から構成される安定化ポリマーを必要とする。これらの領域は、直鎖状ブロックコポリマーとして配置されるか、または直鎖状もしくは分岐鎖状の極性骨格と、非極性側鎖もしくは置換基とを有する櫛形ポリマーとして配置され得る。DNAおよびRNAを含む核酸、ならびにタンパク質、ペプチド、および多糖、または組み合わせを、ナノ粒子コア中に封入できる。核酸の封入は、塩基で酸を部分的または完全に中和して、プロセス溶媒流における核酸の溶解度を高めることを必要とし得る。結果として得られるナノ粒子のコアまたはシェルを架橋できる。ナノ粒子は、水中に入れるために追加のポリマーでコーティングされてもよいし、処理してマイクロ粒子またはより大きなモノリスにされてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛形ポリマーによって安定化された親水性コアを含むナノ粒子であって、前記櫛形ポリマーの親水性部分が前記ナノ粒子の中心に向かって配向される、ナノ粒子。
【請求項2】
前記ナノ粒子が架橋されていないか、前記親水性コアの少なくとも一部が架橋されているか、または前記櫛形ポリマーの疎水性部分が架橋されている、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記コポリマーの前記親水性部分が非イオン性ポリマーを含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記親水性部分の非イオン性コポリマーが多糖である、請求項3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記親水性コアが、水溶性小分子、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記核酸がRNAまたはDNAである、請求項5に記載のナノ粒子。
【請求項7】
ナノ粒子を製造するための方法であって、
親水性部分および疎水性部分を有する安定化ポリマーを、第1のプロセス溶媒を有する極性溶媒流に溶解させることによって、第1のプロセス溶液を形成するステップと、
前記第1のプロセス溶媒または異なる極性溶媒であり得る極性溶媒に親水性活性物質を溶解させることによって、第2のプロセス溶液を形成するステップと、
前記親水性活性物質、安定化ポリマー、および溶媒を単数または複数の非プロセス流と組み合わせるステップであって、前記単数または複数の非プロセス流が、前記第1または第2のプロセス溶媒流において使用される前記溶媒よりも非極性である追加の溶媒を含有する、前記組み合わせるステップと、
前記親水性活性物質を沈殿させて親水性コアを形成するステップと、
前記安定化ポリマーの前記親水性部分を前記親水性コア上に沈殿させ、前記疎水性部分に前記コアを安定化させるステップとを含み、
前記安定化ポリマーは、ブロックコポリマーまたは櫛形ポリマーである、方法。
【請求項8】
前記親水性活性物質が、別個の極性プロセス溶媒に添加され、前記2つのプロセス溶媒流および前記非プロセス溶媒流が、連続流条件下で、制限された混合体積内で迅速にマイクロ混合される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記別個の極性プロセス溶媒が前記溶媒と同じである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記親水性活性物質が前記溶媒に添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記親水性活性物質が核酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸が核酸塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸が、前記極性プロセス溶媒に添加される前に中和塩基と組み合わされる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ブロックコポリマーまたは櫛形ポリマーによって安定化された親水性コアを含むナノ粒子であって、
前記親水性コアは核酸を含む、ナノ粒子。
【請求項15】
ナノ粒子を製造するための方法であって、
親水性部分および疎水性部分を有する安定化ポリマーを極性溶媒流に溶解させることによってプロセス溶液を形成するステップであって、前記極性溶媒流が前記貧溶媒流よりも極性の高い溶媒を含有する、前記形成するステップと、
核酸を中和塩基に導入するステップと、
前記中和された核酸、安定化ポリマー、および溶媒を非プロセス流と組み合わせるステップであって、前記非プロセス流が、前記安定化ポリマーよりも非極性である追加の溶媒を含有する、前記組み合わせるステップと、
前記親水性活性物質を沈殿させて親水性コアを形成するステップと、
前記安定化ポリマーの前記親水性部分を前記親水性コア上に沈殿させ、前記疎水性部分に前記コアを安定化させるステップとを含み、
前記安定化ポリマーは、ブロックコポリマーまたは櫛形ポリマーである、方法。
【請求項16】
ナノ粒子を製造するための方法であって、
親水性活性物質と、親水性部分および疎水性部分を有する安定化ポリマーとを、プロセス溶媒を有する極性溶媒流に溶解させることによって、第1のプロセス溶液を形成するステップと、
前記親水性活性物質、安定化ポリマー、および溶媒を単数または複数の非プロセス流と組み合わせるステップであって、前記単数または複数の非プロセス流が、前記プロセス溶媒流において使用される前記溶媒よりも非極性である追加の溶媒を含有する、前記組み合わせるステップと、
前記親水性活性物質を沈殿させて親水性コアを形成するステップと、
前記安定化ポリマーの前記親水性部分を前記親水性コア上に沈殿させ、前記疎水性部分に前記コアを安定化させるステップとを含み、
前記安定化ポリマーは、ブロックコポリマーまたは櫛形ポリマーである、方法。
【請求項17】
前記親水性活性物質が、別個の極性プロセス溶媒に添加され、前記2つのプロセス溶媒流および前記非プロセス溶媒流が、連続流条件下で、制限された混合体積内で迅速にマイクロ混合される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記別個の極性プロセス溶媒が前記溶媒と同じである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記親水性活性物質が前記溶媒に添加される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記親水性活性物質が核酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸が核酸塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記核酸が、前記極性プロセス溶媒に添加される前に中和塩基と組み合わされる、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書においてその全体が引用により援用される2019年9月4日に提出された米国仮特許出願第62/895,695号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、ブロックコポリマーまたは櫛形ポリマーによって安定化された核酸から構成される親水性コアを有するナノ粒子を形成するプロセスと、それらのナノ粒子のその後の処理と、それらの組成物とに関する。本発明は、櫛形ポリマーによって安定化された親水性コアを有するナノ粒子を形成するプロセスと、それらのナノ粒子のその後の処理と、それらの組成物とに関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質、ペプチド、リボ核酸(RNA:ribonucleic acid)、デオキシリボ核酸(DNA:deoxyribonucleic acid)、および多糖を含む生物製剤は、高い効力および特異性を有するため、重要なクラスの医薬品である。しかし、それらはどのように患者に送達され得るかが制限される。ほとんどの生物製剤は、経口的に生体利用可能ではなく、非経口投与を必要とする。ペプチドおよび核酸を含むいくつかの生物製剤は、短い半減期を有し、それぞれプロテアーゼおよびRNaseまたはDNaseによって迅速に分解されて迅速に除去される。核酸およびその他の生物製剤は、免疫系にも認識されて除去され得る。生物製剤のさらなる制限は、それらが高い水溶解度を有するために細胞膜の透過が妨げられることである。したがって、ほとんどの生物学的治療薬は、細胞外受容体を標的とすることに限定されてきた。これらの理由から、生物学的形態の分解を保護し、半減期を延長し、注射の頻度を低減し、かつ/または細胞内送達を可能にするナノキャリアおよびマイクロキャリアを含む送達媒体が必要とされている。
【0004】
本明細書においてその全体が援用される国際公開特許の特許文献1および特許文献2は、ナノ粒子およびマイクロ粒子中に生物製剤を含む親水性化合物を封入するための方法を提示した。この発明は「逆フラッシュナノ沈殿」(iFNP:inverse Flash NanoPrecipitation)と名付けられた。iFNPプロセスにおいて、生物製剤および安定化ブロックコポリマーなどの親水性活性剤は極性溶媒流に溶解されており、それが非極性非溶媒流と迅速に混合される。混合の際に親水性活性物質が沈殿し、ナノ粒子コアを形成する。安定化ポリマーの親水性ブロック(単数または複数)はナノ粒子表面に付着し、安定化ポリマーの疎水性ブロック(単数または複数)は外部水相に面する。
【0005】
現在まで、iFNPによるRNAを含む核酸の封入は実証されていない。ここで本発明者らは、以前に記載されたものと同じ十分に規定されたブロックコポリマー安定剤によってRNAを封入するためにiFNPを使用できることを示す。iFNPプロセスにおいて一般的に使用されるブロックコポリマーはアニオン性の(負に帯電した)セクションを含み、これは負に帯電した核酸との好ましくない相互作用を有することが予期されたため、このことは予想外であった。加えて本発明者らは、iFNPにおいて以前に使用されたことがない新しいクラスの安定剤である櫛形ポリマーを導入し、それらがRNAおよび他の生物製剤を封入するために使用され得ることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/112828(A1)号
【特許文献2】国際公開第2015/200054号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、本発明者らは、ブロックコポリマーまたは櫛形ポリマーによって安定化された親水性コアを含むナノ粒子を記載する。これらのナノ粒子は、サイズが約10nm~約5000nmの範囲であり得る。本発明の実施形態では、親水性コアは、水溶性小分子、タンパク質、ペプチド、DNAおよびRNAを含む核酸、ならびに/または多糖(親水性「薬剤」または「活性物質」または「治療薬」または「生物製剤」とも呼ばれる)を含み得る。
【0008】
本発明の実施形態において、親水性コアはRNAおよび/またはDNAを含む核酸を含み、ナノ粒子は、1つ以上の極性(親水性)ブロックおよび1つ以上の非極性(疎水性)ブロックから構成される直鎖状ブロックコポリマーによって安定化される。この実施形態では、極性ブロックは安定化ポリマーを粒子の親水性コアに固定し、非極性ブロックは外部に面して、非極性または低極性溶媒相中の立体安定性を提供する。
【0009】
本発明の別の実施形態において、親水性コアは、水溶性小分子、タンパク質、ペプチド、DNAおよびRNAを含む核酸、ならびに/または多糖を含み得る。水溶性活性物質は、0.01mg/mLを超える水溶解度および/または3未満のlogP値を有し得る。水溶性活性物質は、0.1mg/mLを超える水溶解度および/または2未満のlogP値を有し得る。水溶性活性物質は、1mg/mLを超える水溶解度および/または1未満のlogP値を有し得る。一般的に、活性物質の水溶解度は、非プロセス溶媒中での活性物質の溶解度ほど処理にとって重要ではない。活性物質が非極性非プロセス溶媒中で低い溶解度を有することが重要である。たとえば、活性物質は、非プロセス溶媒中で1mg/mL未満、0.1mg/mL未満、および/または0.01mg/mL未満の溶解度を有し得る。水溶性活性物質の例としては、タンパク質(例、リゾチームおよびオボアルブミン)、ポリペプチド、直鎖状ポリペプチド(例、タンパク質)、環状ポリペプチド(例、バンコマイシン)、分岐鎖状ポリペプチド、グリコシル化ペプチド(例、バンコマイシン)、ならびにその他の生物製剤および非生物学的分子が挙げられる。たとえば、水溶性活性物質は、約100Da、200Da、500Da、1000Da、2000Da、5000Da、10000Da、20000Da、および40000Daから約1000Da、2000Da、5000Da、10000Da、20000Da、40000Da、100kDa、200kDa、500kDa、1,000kDa、および10,000kDaの分子量を有し得る。この実施形態において、安定化ポリマーは、非極性(疎水性)側鎖を有する極性(親水性)骨格から構成される櫛形ポリマーである。親水性骨格は、安定化ポリマーを粒子の親水性コアに固定し、非極性側鎖は外部に面して、立体安定性を提供する。櫛形ポリマーの親水性骨格は、直鎖状または分岐鎖状であってよい。
【0010】
本発明の実施形態において、櫛形ポリマーの親水性骨格は多糖である。たとえば、骨格はセルロース、デキストラン、マルトデキストリン、デキストリン、硫酸デキストラン、硫酸デキストリン、ヒアルロン酸、ペクチン、アミロペクチン、アミロース、プルラン、キシラン、カラギーナン、キチン、キトサン、デンプン、またはこれらの組み合わせもしくは改変形であり得る。本発明の実施形態において、櫛形ポリマーの親水性骨格は、ポリ(アミノ酸)、たとえばポリ(グルタミン酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(リジン)、ポリ(リジン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(グルタミン)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(システイン)、またはこれらの組み合わせもしくは改変形などである。本発明の実施形態では、非極性側鎖は、ポリ(乳酸)(PLA:poly(lactic acid))、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA:poly(lactic-co-glycolic acid))、ポリカプロラクトン(PCL:polycaprolactone)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ[(カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸]、ポリリン酸エステル、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリビニルアクリレート、ポリ(アミノ酸)、または疎水的に修飾された多糖である。
【0011】
本発明において、本発明者らは、櫛形ポリマーまたは直鎖状ブロックコポリマーによって安定化された親水性コアを含むナノ粒子を作製する方法を記載する。本発明によるプロセス(方法)では、安定化ポリマーをより極性の高い溶媒に溶解してプロセス溶液を形成する。たとえば、極性プロセス溶媒は、水、ジメチルスルホキシド(DMSO:dimethyl sulfoxide)、ジメチルホルムアミド(DMF:dimethylformamide)、メタノール、エタノール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl-2-pyrrolidone)、テトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran)、グリコフロール、またはその混合物であり得るが、これらに限定されない。本発明のある反復において、前述の親水性活性物質も安定化ポリマーと共にプロセス溶液中に含まれる。ある実施形態では、塩などの溶質がプロセス溶媒に含まれる。本発明の別の反復において、親水性活性物質は、コポリマープロセス溶液と同じ溶媒から構成されていてもいなくてもよい別個の極性プロセス溶液中に含まれる。本発明のある反復において、親水性活性物質は核酸である。核酸は、オリゴヌクレオチド、RNA、mRNA、siRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO:antisense oligonucleotide)、DNA、またはプラスミドDNAであり得る。核酸の分子量は、約500Da、1000Da、5000Da、および10000Daから105Da、106Da、107Da、108Da、109Da、1010Da、1011Da、または1012Daの範囲であり得る。本発明の方法において、核酸は酸の形態ではない。たとえば、本発明の方法において、核酸は、たとえばナトリウム、リチウム、トリス、アンモニウム、セシウム、カリウム、第4級アミン、第3級アミン、第2級アミン、または第1級アミン塩などのカチオンで部分的または完全に中和される。本発明の方法において、核酸塩の形態は、極性プロセス溶媒中の核酸の溶解度を高めるように改変される。
【0012】
プロセス溶液は、より非極性の溶媒(非プロセス流)と混合される。たとえば、非極性非プロセス溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン(DCM:dichloromethane)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、酢酸エチル、またはそれらの混合物であり得るが、これらに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、2つ以上の非プロセス流が存在し得る。プロセス流と非プロセス流とを混合するとき、親水性活性物質は急速に沈殿し、ナノ粒子のコアになる。直鎖状ブロックコポリマーの親水性ブロックまたは櫛形ポリマーの親水性骨格は、このナノ粒子コア上に沈殿し、安定化ポリマーの疎水性ブロックまたは分岐部はそれぞれ安定化シェルを形成する。
【0013】
本発明の実施形態において、プロセス溶液および非プロセス溶液は、連続プロセスにおいて迅速に混合される。本明細書で使用されるとき、「迅速に混合する」という用語は、特許文献1、特許文献2、および米国特許第8,137,699号にさらに記載されているとおり、プロセス溶媒/非プロセス溶媒混合の時間がナノ粒子のアセンブリ時間よりも迅速であることを意味する。たとえば、プロセス溶液(単数または複数)はプロセス流(単数または複数)中に存在することができ、非プロセス溶媒(単数または複数)は非プロセス溶媒流(単数または複数)中に存在できる。プロセス流は、制限された混合体積(confined mixing volume)で非プロセス流と連続的に組み合わされてもよく、かつ/または形成されたナノ粒子は、出口流において制限された混合体積から出ることができる。たとえば、プロセス流および非プロセス流は、拘束衝突噴流ミキサー(Confined Impinging Jet Mixer)またはマルチインレットボルテックスミキサー(Multi-Inlet Vortex Mixer)内で連続的に組み合わされることができ、これはリウ(Liu)、Y.、チェン(Cheng)、C.、プリュドム(Prud’homme)、R.K.、およびフォックス(Fox)、R.O.、2008「フラッシュナノ沈殿のためのマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内での混合(Mixing in a multi-inlet vortex mixer(MIVM) for flash nano-precipitation)。」ケミカル・エンジニアリング・サイエンス(Chemical Engineering Science)、63(11)、pp.2829-2842;またはジョンソン(Johnson)、B.K.およびプリュドム、R.K.、2003「拘束衝突噴流における化学処理およびマイクロ混合(Chemical processing and micromixing in confined impinging jets)。」AIChEジャーナル(AIChE Journal)、49(9)、pp.2264-2282に記載および定義されるとおりである。
【0014】
本発明の方法において、非プロセス溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、アルカン、ヘキサン、エーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、グリコフロール、または組み合わせであり得る。たとえば、非プロセス溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、または組み合わせであり得る。たとえば、極性プロセス溶媒および非プロセス溶媒は混和性であり得る。ある実施形態において、プロセス溶媒および非プロセス溶媒は、ナノ粒子形成プロセスにおいて使用される体積比で完全に混和性である。ある実施形態においては、非プロセス溶媒に溶質を添加して、活性物質の沈殿を促進してもよい。代替的には、別の実施形態において、プロセス溶媒は非プロセス溶媒に実質的に可溶性であり、ここで実質的に可溶性とは、ナノ粒子形成プロセスにおいて使用される体積比下でプロセス溶媒の80体積%が非プロセス溶媒に混和性であることと定義される。
【0015】
本発明の方法において、プロセス溶液と非プロセス溶媒との混合時間は、ナノ粒子のアセンブリ時間未満である。親水性活性物質および安定化ポリマーの親水性領域は、溶液中で10~10,000の範囲の過飽和レベルを有し得る。
【0016】
本発明の方法は、ポリマーの架橋によってナノ粒子コアを安定化させることを含む。たとえば、ナノ粒子はアセンブリ中に架橋され得る。架橋はアセンブリ後に起こり得る。
【0017】
本発明の方法は、ポリマーの架橋によってナノ粒子シェルを安定化させることを含む。たとえば、ナノ粒子はアセンブリ中に架橋され得る。架橋はアセンブリ後に起こり得る。
【0018】
本発明の方法では、ナノ粒子を第2の安定化ポリマーでコーティングして親水性シェルを作製してもよい。ある実施形態では、コーティングポリマーは、1つ以上の親水性ブロックおよび疎水性ブロックから構成されるブロックコポリマーである。ある実施形態では、コーティングポリマーの親水性ブロック(単数または複数)はポリ(エチレングリコール)(PEG:poly(ethylene glycol))である。
【0019】
本発明の方法では、ナノ粒子を処理してマイクロ粒子を形成してもよい。ある実施形態では、マイクロ粒子は乳化プロセスで形成され得る。別の実施形態において、マイクロ粒子は噴霧乾燥によって形成され得る。所望の機能性を付与するために、ナノ粒子安定剤と同じタイプまたは異なるタイプのポリマーを含めることができる。得られた粉末は、当業者によく知られている技術に従って処理または製剤化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ブロックコポリマーによって安定化された活性物質充填逆ナノ粒子を作製するためのプロセスを示す図である。この図にはジブロックコポリマーが示されているが、このプロセスはジブロックに限定されない。
【
図2】櫛形ポリマーによって安定化された活性物質充填逆ナノ粒子を作製するためのプロセスを示す図である。この図には直鎖状骨格を有する櫛形ポリマーが示されているが、このプロセスはこの構造に限定されない。
【
図3】直鎖状ブロックコポリマー構築物の例を示す図である。
【
図4】極性骨格が直鎖状である櫛形コポリマー構築物の例を示す図である。
【
図5】極性骨格が分岐鎖状である櫛形コポリマー構築物の例を示す図である。
【
図6】ナノ粒子コアはさまざまな方法によって架橋され得ることを示す図である。架橋は、ナノ粒子アセンブリの間または後に起こり得る。ブロックコポリマーおよび櫛形ポリマーで作製されたナノ粒子の両方に対して、コアが架橋され得る。
【
図7】ナノ粒子シェルはさまざまな方法によって架橋され得ることを示す図である。架橋は、ナノ粒子アセンブリの間または後に起こり得る。ブロックコポリマーおよび櫛形ポリマーで作製されたナノ粒子の両方に対してシェルが架橋され得るが、この図は櫛形ポリマーで作製された粒子を特定的に示している。
【
図8】実施例1のサンプル1A~1Dのコア中にRNAを含有するPS-b-PAA安定化ナノ粒子の動的光散乱によるサイズ分布を示す図である。
【
図9】実施例1のサンプル1Eおよび1Fの、貧溶媒としてTHFを使用したコア中にRNAを含有するPS-b-PAA安定化ナノ粒子の動的光散乱によるサイズ分布を示す図である。
【
図10】実施例2の溶媒対照、RNA対照、および完全ナノ粒子製剤の水性抽出物の吸光度スペクトルを示す図である。260nmにおける吸光度ピークはRNAによるものである。PS-b-PAA安定剤は封入されたRNAの水相への抽出を保護するので、ナノ粒子抽出相はRNA対照と比較してより低い260nm吸光度を有する。
【
図11】実施例3のコア中にRNAを含有するPS-b-PEGコーティングPS-b-PAA安定化ナノ粒子の動的光散乱によるサイズ分布を示す図である。
【
図12】THF中および水中処理後の動的光散乱による実施例4のPAsp-b-PLA-b-PEG安定化RNAナノ粒子のサイズ分布を示す図である。
【
図13】DCM中での動的光散乱による実施例5のPAsp-b-PLA安定化RNAナノ粒子のサイズ分布を示す図である。サンプル5Aは溶媒流中に5v%の水を有し、サンプル5Bは溶媒流中に10v%の水を有した。
【
図14】DCM中での動的光散乱による実施例6のPAsp-b-PLA-b-PAsp安定化RNAナノ粒子のサイズ分布を示す図である。サンプル6AはコアにHRPを有し、サンプル6BはRNAを有し、サンプル6CはHRPおよびRNAを有する。
【
図15】PAsp/PLA/PEGを使用するRNA製剤のためのミキサー入口流の構成および組成(実施例7)を示す図である。
【
図16】表9(実施例7)の製剤によって生成されたクロロホルム中の逆NPを示す図である。
【
図17】5kDaのBDを充填し、Dex-PLAによって安定化させた逆ナノ粒子を示す図である。製剤は表11(実施例9)に与えられている。
【
図18】20kDaのBDを充填し、Dex-PLAによって安定化させた逆ナノ粒子を示す図である。製剤は表11(実施例9)に与えられている。サンプル9E、9F、および9Gはブライン抽出後に測定した。
【
図19】Dex-PLA逆ナノ粒子に封入されたナトリウム-RNAに対する、アセンブリ直後、ブライン抽出後、沈殿およびTHF中の再分散後、ならびに水中のPLA-b-PEGでのコーティング後(実施例11)の粒径分布を示す図である。
【
図20】Dex-PLGA逆ナノ粒子に封入されたナトリウム-RNA(実施例12)に対する、アセンブリ直後および水中のPLA-b-PEGでのコーティング後の粒径分布を示す図である。
【
図21】Dex-PLA逆ナノ粒子に封入されたリチウム-RNA(実施例13)に対する、アセンブリ直後および水中のPLA-b-PEGでのコーティング後の粒径分布を示す図である。
【
図22】非プロセス溶媒としてDCM、酢酸エチル、THF、またはアセトンを使用してDex-PLA逆ナノ粒子に封入されたポリミキシンB(実施例14)の粒径分布を示す図である。すべてのサイズ測定は、それぞれの非プロセス溶媒中で行った。
【
図23】Dex-PLA逆ナノ粒子に封入された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:horseradish peroxidase)(実施例15)に対する、DCM中の逆フラッシュナノ沈殿プロセス後、および水中のPLA-b-PEGでのコーティング後の粒径分布を示す図である。
【
図24】DCM中のDex-PLGA逆ナノ粒子に封入されたRNA(実施例21)の粒径分布を示す図である。RNAは、プロセス流中ではナトリウム塩の形態であり、ナノ粒子アセンブリの際にカルシウム塩に転換された。
【
図25】DCM中のDex-PLGA(10kDaデキストラン、80重量%PLGA、16kDa PLGA側鎖)に封入されたリラグルチド(実施例22、サンプル22F)の粒径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を以下に詳細に考察する。実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が使用される。しかし、本発明がそのように選択された特定の用語に限定されることは意図されていない。当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、他の等価の部分を使用でき、他の方法を開発できることを認識するであろう。本明細書に引用されるすべての参考文献は、あたかも各々が個別に組み込まれているかのように引用により援用される。
【0022】
フラッシュナノ沈殿(FNP):フラッシュナノ沈殿(FNP)は、成分の高過飽和を達成するために、混和性の溶媒流および貧溶媒流の制限されたジオメトリにおける迅速なマイクロ混合を組み合わせるプロセスである。結果として得られる高過飽和によって、得られるナノ粒子の急速な沈殿および成長がもたらされる。製剤中の安定剤は、ナノ粒子の表面上に蓄積し、所望のサイズで成長を停止させる。このプロセスは、両親媒性コポリマーによってナノ粒子組成物を調製するためのプロセスおよび装置ならびにそれらの使用(Process and apparatuses for preparing nanoparticle compositions with amphiphilic copolymers and their use)、BKジョンソン、RKプリュドム、米国特許第8,137,699号、2012年に詳細に記載されている。このプロセスは、サアド(Saad)およびプリュドムによる総説においてさらに説明されている。(ダディオ(D’addio)、S.M.;プリュドムR.K.、「急速な沈殿による薬物ナノ粒子形成の制御(Controlling drug nanoparticle formation by rapid precipitation)。」アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Advanced drug delivery reviews)2011、63(6)、417-426;ジョンソンB.K.;プリュドム、R.K.、「両親媒性コポリマーによってナノ粒子組成物を調製するためのプロセスおよび装置ならびにそれらの使用(Process and apparatuses for preparing nanoparticle compositions with amphiphilic copolymers and their use)。」グーグル・パテント(Google Patents):2012;サアド、W.S.;プリュドム、R.K.、「フラッシュナノ沈殿によるナノ粒子形成の原理(Principles of nanoparticle formation by flash nanoprecipitation)。」ナノ・トゥデイ(Nano Today)2016、11(2)、212-227を参照。)これらの参考文献は、その全体が本出願に含まれる。フラッシュナノ沈殿において、封入された薬剤は疎水性であり、貧溶媒は貧溶媒よりも極性が高い。
【0023】
フラッシュナノ沈殿プロセスは、そのプロセスのための混合体積に入る1つ以上の溶媒流と、混合体積に入る1つ以上の貧溶媒流と、(混合体積から出る)出口流とを有する制限された混合体積を含む。制限された混合体積への入口流の速度は、約0.01m/s~100m/s、または約0.1m/s~50m/s、または約0.1m/s~10m/sであり得る。流れの速度は互いに等しくてもよいし、それらの流れが異なる速度を有していてもよい。速度が等しくない場合、最高流速の速度が規定速度である。
【0024】
逆フラッシュナノ沈殿(iFNP):逆フラッシュナノ沈殿(iFNP)は、フラッシュナノ沈殿と同じ基本原理に従う。しかし、iFNPにおいて、封入された薬剤は親水性であり、貧溶媒は溶媒よりも非極性である。逆フラッシュナノ沈殿プロセスは以下に記載されている。国際公開特許の特許文献2および特許文献1;ペイゲルス(Pagels)、R.F.;プリュドム、R.K.、「ペプチド、生物製剤、および可溶性治療薬の送達のためのポリマーナノ粒子およびマイクロ粒子(Polymeric nanoparticles and microparticles for the delivery of peptides,biologics,and soluble therapeutics)。」ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J Control Release)2015、vol.219、519-535;ペイゲルス、R.F.;プリュドム、R.K.、「生物製剤封入のための逆フラッシュナノ沈殿:ナノ粒子形成および有機溶媒中でのイオン安定化(Inverse Flash NanoPrecipitation for Biologics Encapsulation:Nanoparticle Formation and Ionic Stabilization in Organic Solvents)。」ACSシンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)2017、Vol.1271、11章、pp249-274;マークウォルター(Markwalter)、C.E.;プリュドム、R.K.、「生物製剤封入のための逆フラッシュナノ沈殿:抽出プロトコルによるプロセス損失の理解(Inverse Flash NanoPrecipitation for Biologics Encapsulation:Understanding Process Losses via an Extraction Protocol)。」ACSシンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)2017、Vol.1271、12章、pp275-296。これらの参考文献は、その全体が本出願に含まれる。場合によっては、逆フラッシュナノ沈殿を指すために単にフラッシュナノ沈殿が使用されることに留意されたい。しかし、封入された材料、プロセス溶媒、および非プロセス溶媒から、フラッシュナノ沈殿または逆フラッシュナノ沈殿のいずれが使用されているのかは明らかなはずである。
【0025】
逆フラッシュナノ沈殿プロセスを使用して、親水性コアおよび/または封入された水溶性薬剤、たとえば親水性ペプチド、タンパク質、および核酸などを有する「逆」粒子を作製し得る(
図1および
図2)。安定化コポリマーは、少なくとも0.1重量%の濃度で極性プロセス溶媒に溶解でき、第1のプロセス溶液を形成するためのコポリマーの濃度は少なくとも0.2重量%であり得る。ある実施形態では、コポリマーは、約0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、または20重量%から約0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、または40重量%の範囲の濃度で極性プロセス溶媒に溶解できる。当業者は、プロセスの経済性などの因子が濃度の下限を制約することがあり、プロセス溶液の粘度または極性プロセス溶媒におけるコポリマーの溶解限度などの因子が濃度の上限を制約し得ることを認識するだろう。たとえば、第1のプロセス溶液の粘度が非プロセス溶媒の粘度よりもはるかに大きいときは、第1のプロセス溶液と非プロセス溶媒との混合が抑制されることがある。当業者は、コポリマーの分子量およびコポリマーの組成などの因子が、粘度が高くなりすぎる前にポリマー溶液中で達成され得る最大濃度に影響し得ることを認識するであろう。プロセス溶媒の例としては、水、アルコール、アセトン、アセトニトリル、グリコールエーテル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒中のコポリマーの溶解特性に応じて、ポリマーまたは親水性活性物質の溶解を促進するために、プロセス溶媒を加熱もしくは加圧するか、またはその両方を行うことができる。
【0026】
コポリマーを含有するプロセス溶媒を、たとえばクロロホルム、ジクロロメタン、またはアセトンなどのより極性の低い非プロセス溶媒とマイクロ混合すると、コポリマーの領域または部分の異なる溶解特性が現れ、コポリマーのより極性の高い部分はもはや可溶状態で存在することができなくなるため、「逆」ナノ粒子が沈殿する。
【0027】
ある実施形態では、たとえば親水性ペプチド、タンパク質、またはDNAもしくはRNAなどの核酸などの添加水溶性活性剤を、プロセス溶媒中のコポリマーに添加できる。親水性薬剤の濃度は通常、安定化ポリマーの濃度のオーダー以内である。親水性活性物質の濃度がポリマーの濃度よりもはるかに低いとき、最終的な薬物充填量は低くなる。親水性活性物質の濃度がポリマーの濃度よりもはるかに高いとき、ナノ粒子を安定化するのに十分な安定化ポリマーが存在しない可能性がある。コポリマーによってナノ粒子を作製するとき、添加親水性薬剤はナノ粒子に取り込まれる。非プロセス溶媒に難溶性である親水性薬剤は、粒子状コアとしてコーティングされるか、封入されるか、または閉じ込められ、コポリマーの保護コロイドによって立体的に安定化される。ナノ粒子は、非プロセス溶媒中で小さく安定なサイズを維持する。
【0028】
本発明の実施形態において、活性剤は、たとえばオリゴヌクレオチド、RNA、DNA、プラスミドDNA、mRNA、siRNA、miRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸である。これらの高度に負に帯電した化合物が、すべての他の方法が必要とするカチオン性錯体化を使用することなく、逆フラッシュナノ沈殿プロセスにおいて封入され得ることは、重要かつ予想外である(シン(Shin)、H.ら「ナノ粒子に基づくRNA治療薬およびRNA送達系における近年の進歩(Recent advances in RNA therapeutics and RNA delivery systems based on nanoparticles)。」アドバンスド・セラピューティクス(Adv.Therap.)2018、1、180065を参照)。ここで安定化ポリマーに使用されるアニオン性ポリマーブロック(具体的にはポリ(アスパラギン酸)およびポリ(アクリル酸))は、負に帯電した核酸との好ましくない相互作用を有し、それらの封入を妨げるだろうと以前は考えられていた。同様に、たとえばデキストランなどの中性ポリマーと核酸との特異的相互作用の欠如は、高い封入効率または充填量を妨げるだろうと考えられていた。
【0029】
別の実施形態において、親水性薬剤およびコポリマーは、別個のプロセス溶媒流に溶解される。コポリマーを溶解するために使用されるプロセス溶媒と、親水性活性材料を溶解するために使用されるプロセス溶媒とは同じであってもよいが、そうである必要はない。たとえば、標的材料(水溶性薬剤)を第1の極性プロセス溶媒に溶解して水溶性薬剤溶液を形成でき、かつコポリマーを第2の極性プロセス溶媒に溶解してコポリマー溶液を形成できる。これらの水溶性薬剤溶液およびコポリマー溶液の流れは、非プロセス溶媒と混合され、たとえば同時に混合されて、混合溶液を形成する。第1の極性プロセス溶媒および第2の極性プロセス溶媒は、それらが混合される体積比にて混和性であり得るか、または完全に混和性であり得る(すなわち、別の相が形成されない)。第1の極性プロセス溶媒および非プロセス溶媒は、それらが混合される体積比にて混和性であり得るか、または完全に混和性であり得る(すなわち、別の相が形成されない)。第2の極性プロセス溶媒および非プロセス溶媒は、それらが混合される体積比にて混和性であり得るか、または完全に混和性であり得る(すなわち、別の相が形成されない)。別の実施形態において、親水性活性材料およびコポリマーは、単一のプロセス溶媒流に溶解される。次いで、この流れは非プロセス溶媒と迅速に混合される(すなわち、特許文献1、特許文献2、および米国特許第8,137,699号にさらに記載されているとおり、プロセス溶媒/非プロセス溶媒混合の時間がナノ粒子のアセンブリ時間よりも迅速である)。
【0030】
当業者は、すべての溶媒が互いにある程度混和性であることを認識するであろう。最初のナノ粒子沈殿プロセスでは混和性溶媒が使用される。本明細書で言及される「混和性」溶媒とは、ナノ粒子形成プロセスまたはマイクロ粒子プロセスで使用される比率で混合されたときに、多量相に溶解していない少量相(例、極性プロセス溶媒)の体積が20%以下である溶液を生成するものである。本明細書で言及される完全に混和性の溶媒とは、ナノ粒子形成プロセスまたはマイクロ粒子プロセスで使用される比率で混合されたときに、相分離のない溶液を生成するものである。本明細書で言及される「非混和性」溶媒とは、プロセスで使用される体積比で混合されたときに、多量相への可溶化によって生じる少量相の体積の減少が20%未満のものである。
【0031】
プロセス溶液と非プロセス溶媒との強力なマイクロ混合は、任意の数のジオメトリで行われ得る。本質的な意図は、高速の入口流によって乱流および中央キャビティ内で起こる混合を引き起こすということである。プロセス溶媒/非プロセス溶媒混合の時間は、ナノ粒子のアセンブリ時間よりも迅速である。限定することを意味するものではないが、2つのこうしたジオメトリが以前に記載され、分析されている。すなわち、拘束衝突噴流ミキサー(CIJ)(ジョンソン、B.K.、プリュドム、R.K.「拘束衝突噴流における化学処理およびマイクロ混合(Chemical processing and micromixing in confined impinging jets)。」AIChEジャーナル(AIChE Journal)2003、49、2264-2282;リウ、Y.、フォックス、R.O.「拘束衝突噴流リアクタにおける化学処理のためのCFD予測(CFD predictions for chemical processing in a confined impinging-jets reactor)。」AIChEジャーナル(AIChE Journal)2006、52、731-744)と、マルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)(リウ、Y.、チェン、C.、リウ、Y.、プリュドム、R.K.、フォックス、R.O.「フラッシュナノ沈殿のためのマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内での混合(Mixing in a multi-inlet vortex mixer(MIVM) for flash nano-precipitation)。」ケミカル・エンジニアリング・サイエンス(Chemical Engineering Science)2008、63、2829-2842)とである。これらの例は、限定的または網羅的なものではなく、例示的であることを意味する。
【0032】
このプロセスに関与する高速混合および高エネルギー散逸は、粒子の核形成および成長のための時間スケールよりも短い混合時間スケールを提供し、これは、他の技術によって提供されない活性剤充填含有量およびサイズ分布を有するナノ粒子の形成をもたらす。フラッシュナノ沈殿を介してナノ粒子を形成するとき、凝集の開始前にすべての成分がたとえば10,000などの高さの高い過飽和レベルに達することを十分可能にする高速の混合が起こる。過飽和レベルとは、溶媒中のたとえばコポリマーなどの材料の実際の濃度の、その溶媒中のその材料の飽和濃度に対する比率である。たとえば、過飽和レベルは少なくとも約1、3、10、30、100、300、1000、または3000であってもよく、最大で約3、10、30、100、300、1000、3000、10,000、30,000、または100,000であり得る。親水性活性材料の凝集およびコポリマー自己組織化の時間スケールが釣り合う。したがって、親水性活性材料およびポリマーは同時に沈殿し、低速の溶媒交換(例、透析)に基づく広く使用される技術で見出される低い活性剤取り込みおよび凝集の制限が克服される。フラッシュナノ沈殿プロセスは、成分の化学的特異性に対して非感受性であるため、普遍的なナノ粒子形成技術となる。
【0033】
このプロセスから得られるナノ粒子のサイズは、それらを作製するために使用される混合速度、プロセス溶媒中のコポリマーおよび親水性活性分子の総質量濃度、プロセス溶媒および非プロセス溶媒、コポリマーと親水性活性分子との比率、ならびに非プロセス溶媒と混合する際の親水性活性分子およびコポリマーの非可溶性部分の過飽和度を制御することによって制御され得る。
【0034】
ナノ粒子は、親水性活性材料が添加されていないプロセス溶媒に溶解したコポリマーから生成できる。
【0035】
本発明による方法を使用して、15nm~10500nmの範囲のサイズ、20nm~6000nmの範囲のサイズ、20nm~1000nmの範囲のサイズ、35nm~400nmの範囲のサイズ、または40nm~300nmの範囲のサイズを有する粒子を作製できる。サイズは、動的光散乱によって定められ得る。たとえば、少なくとも約15nm、20nm、35nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、600nm、900nm、1000nm、2000nm、4000nm、または6000nmのサイズを有し、最大で約20nm、35nm、40nm、50nm、100nm、200nm、300nm、400nm、600nm、900nm、1000nm、2000nm、4000nm、6000nm、または10500nmのサイズを有する粒子を作製できる。本明細書で報告および引用されるサイズは、2000nmより小さい粒子についてはマルバーン・ナノサイザー(Malvern Nanosizer)デコンボリューションプログラムによって定められ、2000nmより大きいサイズについては走査型電子顕微鏡または光学顕微鏡およびイメージJ(Image J)を使用した画像解析によって定められた強度の平均報告値である。他の強度重み付けデコンボリューション法を使用して、ナノ粒子のサイズを定めることもできる。
【0036】
逆フラッシュナノ沈殿は、親水性ブロックまたはドメインのブロックまたはドメインから分離された疎水性の別個のブロックまたはドメインを含む安定化ブロックコポリマーの使用を必要とすると以前は考えられていた。これらはジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマーとして、特許文献1および特許文献2の特許実施例に記載および提示された。これらのブロックコポリマーでは、より親水性/極性の高いブロック(単数または複数)がナノ粒子表面上に沈殿し、疎水性ブロックは非プロセス溶媒中に可溶性のままであり、立体シェルを形成した。特許文献2における実施例は、ポリ(n-ブチルアクリレート)-b-ポリ(アクリル酸)のジブロックコポリマーを使用した。使用されてきた他のポリマーとしては、ポリ(スチレン)-b-ポリ(アクリル酸)、ポリ(乳酸)-b-ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)-b-ポリ(アスパラギン酸)、およびポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(乳酸)-b-ポリ(アスパラギン酸)が挙げられる。
【0037】
櫛形ポリマーなどの高度に分岐したポリマーは、櫛形ポリマーの骨格に対する貧溶媒であり分岐部に対する溶媒である溶媒中で単分子ミセルを形成する傾向を有する(ファン(Fan)、X.ら「機能性材料としての単分子ミセルの最近の開発および用途(Recent Development of Unimolecular Micelles as Functional Materials and Applications)。」ポリマー・ケミストリー(Polymer Chemistry)2016、7、5898-5919を参照)。櫛形骨格が不溶性であり、分岐部が可溶性である条件下では、安定化コロナに対する分岐部が単分子ミセルをもたらす一方で骨格が崩壊する。ミセルは凝集しないため、フラッシュナノ沈殿プロセス中に成長するナノ粒子の表面にミセルを固定することはできないと考えられていた。したがって、フラッシュナノ沈殿中に非プロセス溶媒中で骨格が崩壊する櫛形ポリマーを使用して、凝集しない安定なナノ粒子をうまく作製できるという本出願の結果は、予想外であった。
【0038】
以前は、逆フラッシュナノ沈殿によって生成されたナノ粒子をその後のプロセスステップに対して安定にするために、ナノ粒子コアの架橋が必要であると推測されていた(特許文献1および特許文献2、ペイゲルス、R.F.;プリュドム、R.K.、「ペプチド、生物製剤、および可溶性治療薬の送達のためのポリマーナノ粒子およびマイクロ粒子(Polymeric nanoparticles and microparticles for the delivery of peptides,biologics,and soluble therapeutics)。」ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J Control Release)2015、vol.219、519-535;ペイゲルス、R.F.;プリュドム、R.K.、「生物製剤封入のための逆フラッシュナノ沈殿:ナノ粒子形成および有機溶媒中でのイオン安定化(Inverse Flash NanoPrecipitation for Biologics Encapsulation:Nanoparticle Formation and Ionic Stabilization in Organic Solvents)。」ACSシンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)2017、Vol.1271、11章、pp249-274;マークウォルター、C.E.;プリュドム、R.K.、「生物製剤封入のための逆フラッシュナノ沈殿:抽出プロトコルによるプロセス損失の理解(Inverse Flash NanoPrecipitation for Biologics Encapsulation:Understanding Process Losses via an Extraction Protocol)。」ACSシンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)2017、Vol.1271、12章、pp275-296を参照)。ここで本発明者らは、非架橋ナノ粒子を架橋することなく処理して、コーティングされたナノ粒子またはマイクロ粒子にできるという驚くべき結果を示す。このことは、たとえば多糖などの親水性領域が非イオン性かつ非架橋性のポリマーである新たな安定化ポリマーの使用を可能にする。これは、分解に対して感受性である活性材料にとって特に重要である。たとえば、RNAは、Ca2+、Zn2+、およびMg2+などの多価カチオンが存在すると分解することが公知である(ブレスロー(Breslow)、R.、ファン(Huang)、D.-L.、「Mg2+およびランタニドを含む金属イオンのリボヌクレオチドおよびRNAモデル化合物の切断に対する影響(Effects of metal ions,including Mg2+ and lanthanides,on the cleavage of ribonucleotides and RNA model compounds)。」科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)v88、4080-4083、1991を参照)。これらの金属カチオンは、逆フラッシュナノ沈殿によって生成されたナノ粒子コアを架橋するために一般的に使用されてきたので、これらの架橋剤を伴わない粒子が安定に処理され得ることは重要である。しかし、核酸または他の活性物質を含有するナノ粒子は、なおも架橋されてもよい。たとえば、ナノ粒子のコアまたはシェルは架橋されてもよい。
【0039】
活性物質(封入材料)の説明
活性物質とは、所望の性能または結果を与える成分または材料のことである。これは、医薬活性物質(例、薬物、治療薬、または診断(例、追跡)用物質)、芳香剤、化粧品、殺虫剤、除草剤、インクもしくは染料、内密セキュリティ標識を可能にする分子もしくは組成物、または何らかのプロセス事象を受けたときに色の変化を表す分子もしくは組成物であってもよい。本文書において、本発明者らは、親水性活性物質、親水性薬剤、および標的という用語を互換的に使用する。
【0040】
封入される活性物質(標的分子)は、より極性の低い非プロセス溶媒中で急速に沈殿するように十分に極性が高くなければならない。これらの基準を満たさない分子は、自身の水溶解度および有機非プロセス溶媒中で沈殿する傾向を増加させるために化学的に修飾されてもよい。封入され得る生物学的材料の例としては、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、糖類、ならびにそれらの誘導体、コンジュゲート、および/または類似体が挙げられるが、これらに限定されない。小分子水溶性治療薬および造影剤も封入されてもよい。粒子の使用またはその後の処理ステップのために粒子に安定性を提供するために、可溶性安定剤が粒子に封入されてもよい。これらの材料のいずれかが、単一粒子内で共沈してもよい。親水性材料は、後処理中に粒子に安定性を付加する目的のみのために封入されてもよい。たとえば、100~10,000,000ダルトン(Da)の分子量を有する材料が封入されてもよい。250~10,000,000Daの分子量を有する材料が封入されてもよい。100~1,000,000Daの分子量を有する材料が封入されてもよい。250~1,000,000Daの分子量を有する材料が封入されてもよい。100~200,000Daの分子量を有する材料が封入されてもよい。
【0041】
特定の封入材料は、多機能性であってもよい。たとえば、トブラマイシンはカチオン性であり、それ自体がコポリマーと架橋され得る。複数のカチオン性残基を有する他のカチオン性活性材料も同様にアニオン性ポリマーブロックを架橋するだろう。
【0042】
封入材料は、ある範囲の充填量で粒子に取り込まれてもよい。たとえば、封入材料の質量は、コポリマーの質量以上であってもよい。たとえば、第1のプロセス溶液中の封入材料の濃度は、約0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、または20重量%から約0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、または40重量%であってもよい。
【0043】
ここで本発明者らは、封入材料がたとえばRNAまたはDNAなどの核酸であり得ることを初めて実証する。活性物質は、プロセス溶媒流に可溶性でなければならない。一般的なプロセス溶媒としては、DMSO、DMF、NMP、メタノール、エタノール、およびそれらの混合物が挙げられる。場合によっては、少量の水をプロセス溶媒に添加して、活性剤の溶解度を高めることができる。核酸が、これらの一般的なプロセス溶媒に可溶となるために特定の塩形態を必要とすることは予想外であった。ポリ(アクリル酸)およびポリ(アスパラギン酸)を含む他のアニオン性ポリマーは、プロトン化された酸形態でDMSOに可溶であり、ナトリウム塩から(from)は可溶でないので、核酸の酸(プロトン化)形態が、DMSOなどのプロセス溶媒において最も可溶となることが予期された。しかし、逆フラッシュナノ沈殿のためのプロセス溶媒中に核酸を可溶化するためには、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリス、アンモニア、水酸化セシウム、水酸化カリウム、第1級アミン、第2級アミン、第4級アミン、または第3級アミンによる核酸の部分的または完全な中和が必要である。
【0044】
安定化ポリマーの説明
安定化ポリマーは、1つ以上の極性ブロックおよび1つ以上の非極性ブロックから構成される直鎖状ポリマーであり得る(
図3)。たとえば、非極性ブロック(単数または複数)は、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ[(カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸]、ポリリン酸エステル、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリビニルアクリレート、ポリ(アミノ酸)、または疎水的に修飾された多糖であり得る。たとえば、極性ブロック(単数または複数)はポリ(アミノ酸)、たとえばポリ(グルタミン酸)(PGlu:poly(glutamic acid))、ポリ(アスパラギン酸)(PAsp:poly(aspartic acid))、ポリ(リジン)、ポリ(リジン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(グルタミン)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(システイン)、またはこれらの組み合わせもしくは改変形などであり得る。たとえば、極性ブロック(単数または複数)は多糖、たとえばセルロース、デキストラン、マルトデキストリン、デキストリン、硫酸デキストラン、硫酸デキストリン、ヒアルロン酸、ペクチン、アミロペクチン、アミロース、プルラン、キシラン、カラギーナン、キチン、キトサン、デンプン、またはこれらの組み合わせもしくは改変形などであり得る。たとえば、安定化ポリマーは、PAsp-b-PLA、PAsp-b-PLGA、PAsp-b-PCL、PAsp-b-PLA-b-PAsp、PAsp-b-PLGA-b-PAsp、ポリ(エチレングリコール)-b-PLA-b-PAsp、ポリ(エチレングリコール)-b-PLGA-b-PAsp、ポリ(エチレングリコール)-b-PCL-b-PAsp、PGlu-b-PLA、PGlu-b-PLGA、PGlu-b-PCL、PGlu-b-PLA-b-PGlu、PGlu-b-PLGA-b-PGlu、ポリ(エチレングリコール)-b-PLA-b-PGlu、ポリ(エチレングリコール)-b-PLGA-b-PGlu、ポリ(エチレングリコール)-b-PCL-b-PGlu、またはそれらの他の組み合わせであり得る。たとえば、安定化ポリマーは、多糖-b-PLGA、多糖-b-PLA、多糖-b-PCL、または多糖とPLA、PCL、および/もしくはPLGAブロックとから構成されるより高次のブロックコポリマーであり得る。
【0045】
本発明の実施形態において、安定化ポリマーは、親水性骨格および疎水性分岐部またはグラフトからなる櫛形ポリマーである(
図4)。本発明の実施形態において、櫛形ポリマーの骨格は、縮合重合によって生成されるデキストランまたはポリ(アスパラギン酸)と同様に分岐し得る(
図5)。本発明の実施形態において、櫛形ポリマーの骨格は、セルロースと同様に直鎖状であり得る。本発明の実施形態において、櫛形ポリマーの親水性骨格は多糖である。たとえば、骨格はセルロース、デキストラン、マルトデキストリン、デキストリン、硫酸デキストラン、硫酸デキストリン、ヒアルロン酸、ペクチン、アミロペクチン、アミロース、プルラン、キシラン、カラギーナン、キチン、キトサン、デンプン、またはこれらの組み合わせもしくは改変形であり得る。本発明の実施形態において、櫛形ポリマーの親水性骨格は、ポリ(アミノ酸)、たとえばポリ(グルタミン酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(リジン)、ポリ(リジン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、ポリ(グルタミン)、ポリ(アスパラギン)、ポリ(システイン)、またはこれらの組み合わせもしくは改変形などである。本発明の実施形態において、骨格はポリビニルアルコールである。本発明の実施形態では、非極性側鎖は、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ[(カルボキシフェノキシ)プロパン-セバシン酸]、ポリリン酸エステル、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリビニルアクリレート、ポリ(アミノ酸)、または疎水的に修飾された多糖である。櫛形ポリマーは、20、30、40、50、60、70、または80重量%から70、80、90、95重量%の非極性側鎖からなるべきである。櫛形ポリマーの骨格は、500Da、1000Da、2500Da、5000Da、10000Da、または20000Daから20000Da、50000Da、100000Da、または500000Daであり得る。各非極性側鎖またはグラフトは、100、500、1000、5000Da、10000Da、または20000Daから20000Da、50000Da、100000Da、または500000Daであり得る。櫛形ポリマーは、20、30、40、50、60、70、または80重量%から70、80、90、95重量%の非極性側鎖からなるべきである。当業者は、非極性基の適切な重量%をもたらすこととなる極性骨格当たりの非極性側鎖の数が、各々の種の分子量に依存することを認識するであろう。たとえば、安定化ポリマーは、デキストラン-グラフト-PLGA、デキストラン-グラフト-PLA、デキストラン-グラフト-PCL、またはPLA、PCL、もしくはPLGAがグラフト化された別の多糖であり得る。たとえば、安定化櫛形ポリマーは、PAsp-グラフト-PLA、PAsp-グラフト-PLGA、PAsp-グラフト-PCL、またはPLA、PLGA、もしくはPCLがグラフト化された別のポリ(アミノ酸)であり得る。
【0046】
より一般的には、安定化ポリマーは、1つ以上の非極性ブロックと結合した1つ以上の極性ブロックのコポリマーであり得る。「ブロック」という用語は、単一の分子組成を有する別個のドメインとして解釈されてもよいし、主により極性が高い領域と、より極性が低い他の領域とを有するポリマー鎖の領域を意味してもよい。極性は、ポリマー骨格または主ポリマー骨格に付着したグラフト化ペンダント基もしくは鎖を含むモノマーによって付与されてもよい。たとえば、コポリマーは両親媒性(より非極性のブロックは水溶性ではない)であってもよいが、これは必要条件ではなく、ブロックの溶解度が非プロセス溶媒中で有意に異なる限り、コポリマーは完全に水溶性であっても完全に非水溶性であってもよい。コポリマーは、非プロセス溶媒中で自己組織化すべきであり、このときより極性の高いブロックは沈殿し、より非極性のブロックは可溶性のままである。粒子を作製するためにFNPプロセスにおいて使用されるとき、より極性の高いブロックは粒子のコアに行き、より非極性のブロックは立体的に保護的なシェルを形成する。立体的に保護的なシェルは、粒子の凝集を防止し、かつ後処理ステップの際の封入材料の浸出を防止する。
【0047】
開示されたプロセスによって形成されるナノ粒子は、グラフト、ブロック、またはランダムコポリマーによって形成され得る。たとえば、これらのコポリマーは、約1000g/モル~約1,000,000g/モル、または約3000g/モル~約25,000g/モル、または少なくとも約2000g/モルの分子量を有し得る。
【0048】
コポリマーは、異なる溶解度特性を有する繰り返し単位またはブロックを含む。通常、これらの繰り返し単位は、所与の特性のブロックを含む少なくとも2つのグループになっている。合成方法に応じて、これらのブロックは、すべて同じ繰り返し単位であってもよいし、ブロック全体に分散された異なる繰り返し単位を含有してもよいが、依然として極性部分およびより非極性の部分を有するコポリマーのブロックをもたらすものである。これらのブロックは、ブロックコポリマーの骨格を形成する一連の2ブロック(ジブロック)もしくは3ブロック(トリブロック)、またはそれ以上(マルチブロック)として配置され得る。加えてポリマー鎖は、骨格に共有結合またはグラフト化された化学的部分を有し得る。こうしたポリマーはグラフトポリマーである。コポリマーを構成するブロック単位は、規則的な間隔で存在してもよいし、ランダムに存在してランダムコポリマーとなることもできる。加えてグラフト化側鎖は、ポリマー骨格に沿って規則的な間隔で存在してもよいし、ランダムに存在してランダムにグラフト化されたコポリマーとなることもできる。グラフトポリマーにおいて、極性ブロックは非極性ポリマー上にグラフト化されてもよい。より一般的には、非極性ブロックまたは非極性置換基は、より極性の高いポリマー鎖上にグラフト化される。グラフトコポリマーにおいて、グラフト化部分の長さは変動し得る。好ましくは、グラフト化置換基の長さは、2~22エチレン単位と等価である。コポリマーの少なくとも1つの低極性領域を生成するグラフト化疎水性置換基は、トコフェロール、トコフェロール誘導体、脂質、炭素数12~40のアルコール、コレステロール、不飽和および/または水素化脂肪酸、それらの塩、エステルまたはアミド、脂肪酸モノ-、ジ-、またはトリグリセリド、ワックス、セラミド、コレステロール誘導体、または組み合わせを含んでもよい。グラフト化置換基は、一般的に非極性修飾多糖ポリマーを作製するために糖モノマー単位上にグラフト化されるエチル、プロピル、またはブチル基であってもよい。加えて、ポリマー骨格のグラフト化は、溶媒和またはナノ粒子安定化特性を増強するために有用であり得る。
【0049】
本発明の組成物および方法において使用されるコポリマーは、少なくとも2つの繰り返し単位のブロックか、または少なくとも25のエチレン単位と等価の最小輪郭長を有するブロックを含んでもよい。輪郭長とは、ポリマー骨格の線形和であり、その分子寸法は、ここにその全体が引用により援用される「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、第4版、編集J.ブランドラップ(Brandrup)、E.H.イマーグット(Immergut)、およびE.A.グラルケ(Grulke)、共同編集A.エイブ(Abe)、D.R.ブロック(Bloch)、1999、ニューヨーク(New York)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)を用いて概算できる。
【0050】
コポリマー中の好適な非極性ブロックの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート(BA:butyl acrylate)、イソブチルアクリレート、2-エチルアクリレート、およびt-ブチルアクリレートを含むアクリレート類;エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、およびイソブチルメタクリレートを含むメタクリレート類;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;酢酸ビニル、ビニルベルサテート、プロピオン酸ビニル、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルピリジン、ビニルフェノール、およびビニリミダゾール(vinyllimidazole)を含むビニル類;アミノアルキルアクリレート、アミノアルキルスメタクリレート(aminoalkylsmethacrylates)、およびアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを含むアミノアルキル類;スチレン;酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)、およびポリ(オルトエステル)、ポリエステル、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、乳酸、カプロラクトン、グリコール酸、およびそれらのコポリマー(一般的に、イルム(Illum)、L.、デービッズ(Davids)、S.S.(編)「制御された薬物送達におけるポリマー(Polymers in Controlled Drug Delivery)」ライト(Wright)、ブリストル(Bristol)、1987;アルシャディ(Arshady)、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J.Controlled Release)17:1-22、1991;ピット(Pitt)、インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(Int.J.Phar.)59:173-196、1990;ホランド(Holland)ら、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J.Controlled Release)4:155-0180、1986を参照);ポリ(L-アミノ酸)に基づく疎水性ペプチドベースのポリマーおよびコポリマー(ラバサニファー(Lavasanifar)、A.ら(it al.)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)(2002)54:169-190)、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)(poly(ethylene-vinyl acetate))(「EVA」)コポリマー、シリコーンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリジエン類(ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびこれらのポリマーの水素化形態)、ビニルメチルエーテルおよび他のビニルエーテルの無水マレイン酸コポリマー、ポリアミド(ナイロン6,6)、ポリウレタン、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステル尿素)。たとえば、ポリマーブロックとしては、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(D,L-乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(L-乳酸)オリゴマーおよびポリマー、ポリ(グリコール酸)、乳酸とグリコール酸とのコポリマー、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ無水物、ポリ(カプロラクトン)もしくはポリ(乳酸)のコポリマー、またはポリ(プロピレンスルフィド)が挙げられ得る。生物学的に関連しない用途に対するポリマーブロックとしては、たとえばポリスチレン、ポリアクリレート、およびブタジエンなどが挙げられ得る。
【0051】
ポリマーの非極性部分として作用するために十分な疎水性を有する天然産物としては、疎水性ビタミン(たとえばビタミンE、ビタミンK、およびビタミンAなど)、カロテノイド、およびレチノール(たとえばベータカロチン、アスタキサンチン、トランスおよびシス型レチナール、レチノイン酸、葉酸、ジヒドロ葉酸、酢酸レチニル、パルミチン酸レチニル)、コレカルシフェロール、カルシトリオール、ヒドロキシコレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、アルファ-トコフェロール、酢酸アルファ-トコフェロール、ニコチン酸アルファトコフェロール、エストラジオール、脂質、炭素数12~40のアルコール、コレステロール、不飽和および/または水素化脂肪酸、それらの塩、エステル、またはアミド、脂肪酸モノ-、ジ-、またはトリグリセリド、ワックス、セラミド、コレステロール誘導体、またはそれらの混合物が挙げられる。たとえば、天然産物は、ビタミンEコハク酸として容易に得ることができるビタミンEであり、これは活性種上のアミンおよびヒドロキシルに対する機能化を促進する。
【0052】
ブロックコポリマーである両親媒性ポリマー中の好適な極性ブロックの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、およびマレイン酸を含むカルボン酸;ポリオキシエチレンまたはポリエチレンオキシド;ポリアクリルアミドおよびそのジメチル-アミノエチル-メタクリレート、ジアリル-ジメチル-アンモニウムクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリアミデオ(acryamideo)-2-メチルプロパンスルホン酸、およびスチレンスルホネートとのコポリマー、ポリビニルピロリドン、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストランおよびデキストラン誘導体;たとえばポリリジン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸などのポリペプチド;ポリヒアルロン酸、アルギン酸、ポリラクチド、ポリエチレンイミン、ポリイオネン、ポリアクリル酸、およびポリイミノカルボキシレート、ゼラチン、ならびに不飽和エチレン性モノまたはジカルボン酸。アニオン性コポリマーを調製するために、アクリル酸、メタクリル酸、および/またはポリアスパラギン酸ポリマーを使用できる。カチオン性コポリマーを生成するために、DMAEMA(ジメチルアミノエチルメタクリレート(dimethyl aminoethyl methacrylate))、ポリビニルピリジン(PVP:polyvinyl pyridine)、および/またはジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAMAM:dimethyl aminoethyl acrylamide)を使用できる。好適な極性水溶性ポリマーのリストは、「水溶性ゴムおよび樹脂のハンドブック(Handbook of Water-Soluble Gums and Resins)」、R.デビッドソン(Davidson)、マグロウヒル(McGraw-Hill)(l980)に見出すことができる。
【0053】
非極性ポリマーおよび極性ポリマーの上記リストは、互いに排他的であるとみなされるべきではない。単一のリストに与えられた2つのポリマーのコポリマーは、このプロセスで使用される所与の非プロセス溶媒中での溶解度に十分な差異を有してもよい。例示的な実施例として、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(アクリル酸)は両方とも極性ポリマーのリストに与えられている。しかし、ポリ(エチレンオキシド)はクロロホルムおよびアセトンに可溶性であるが、ポリ(アクリル酸)は可溶性ではない。したがって、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(アクリル酸)とのコポリマーは、このプロセスにおいて非プロセス溶媒としてのクロロホルムまたはアセトンと共に使用されてもよい。
【0054】
安定化ランダムコポリマーは、約0.1kDa、1kDa、10kDa、100kDa、または1000kDaから約5kDa、50kDa、100kDa、または1000kDa以上の範囲の分子量を有し得る。
【0055】
プロセス溶媒および非プロセス溶媒の説明
ナノ粒子の形成は、1つ以上のプロセス溶媒および1つ以上の非プロセス溶媒の流れを必要とする。プロセス溶媒および非プロセス溶媒は、純粋な(すなわち、単一の)液体化合物であっても、2つ以上の純粋な液体化合物の混合物であってもよい。流れの溶媒品質を補助する他の非液体化合物が添加されてもよく、これも溶媒の一部とみなされる。たとえば、界面活性剤、塩、または共溶媒を溶媒に添加して、溶媒の一部とみなしてもよい。最終生成物の要件に応じて、これらの賦形剤化合物は、最終ナノ粒子またはマイクロ粒子構築物中にあってもなくてもよい。
【0056】
場合によっては、たとえば核酸を伴う場合には、核酸を可溶化するためにプロセス溶媒中に中和塩または塩基が必要とされる。たとえば、NaOH、LiOH、CsOH、KOH、トリス塩基、水酸化アンモニウム、またはその他の塩基性の有機もしくは無機化合物を添加して、核酸の溶解を助け得る。たとえば、核酸を可溶化するために、第1級、第2級、第4級、または第3級アミンが添加され得る。
【0057】
コポリマーを含有する極性プロセス溶媒は、コポリマーが分子的に溶解されるように選択される。これは、プロセス溶媒がコポリマーのすべての部分を可溶化することを必要とする。封入されるべき材料を含有するプロセス溶媒が存在するときは、このプロセス溶媒も材料を分子的に溶解するように選択される。これらのプロセス溶媒は同じであってもよいが、同じである必要はない。場合によっては、コポリマーおよび封入されるべき材料の両方がプロセス溶媒の単一の溶液に溶解されてもよい。封入されるべき水溶性材料を溶解させるために、プロセス溶媒は非プロセス溶媒よりも極性が高い。プロセス溶媒の例としては、水、アルコール、メタノール、エタノール、グリコールエーテル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセトン、N-メチルピロリドン(NMP)、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。酸、塩基、および塩は、プロセス溶媒におけるコポリマーおよび封入材料の可溶化を補助するために使用され得る添加剤のいくつかの例である。
【0058】
コポリマーおよび封入されるべき材料を含有するプロセス溶媒の溶液は、非プロセス溶媒と混合される。非プロセス溶媒は、コポリマーの局所的分子環境を変化させて、コポリマーの親水性成分の局所的沈殿を引き起こすことができなければならない。非プロセス溶媒は、コポリマーのより極性の高い部分が急速に沈殿する一方で、コポリマーのより非極性の成分が可溶化されたままであるように選択される。よって、非プロセス溶媒中でコポリマーは自己組織化して、所望のナノ粒子形態となる。非プロセス溶媒は、封入されるべき親水性活性材料が最終混合物中で急速に沈殿するように選択される。ほとんどの場合、プロセス溶媒および非プロセス溶媒は、最終組成物において完全に混和性であることが好ましい。場合によっては、最終組成物中で20体積パーセント以下のプロセス溶媒が相分離してもよい。このことは一般的に、相分離した溶媒が粒子のコアに行き、かつ巨視的な分離がないときにのみ許容され得る。たとえば、プロセス溶媒中のいくらかの水は、非プロセス溶媒から相分離して、親水性ナノ粒子コア内に隔離されてもよい。非プロセス溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサンなどのアルカン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。酸、塩基、および塩は、封入材料およびコポリマーのセクションの沈殿を補助するために使用され得る添加剤のいくつかの例である。溶媒の選択は、コポリマーおよび封入材料の溶解度に基づいて行われる。1つの系のプロセス溶媒は、別の系における非プロセス溶媒として良好に作用し得ることに留意することが重要であり、よってプロセス溶媒および非プロセス溶媒について上記に与えられた例は、別個のものとみなされるべきではない。
【0059】
ナノ粒子の架橋
本発明の方法は、コポリマーの架橋によってナノ粒子コアを安定化させることを含む(
図6)。たとえば、ナノ粒子は、ナノ粒子のアセンブリ中に架橋され得る。たとえば、ナノ粒子は、ナノ粒子のアセンブリ後に架橋され得る。架橋は、共有結合架橋であり得る。たとえば、架橋はジスルフィド架橋であり得る。たとえば、架橋は「クリックケミストリー(Click Chemisty)」を通じて起こり得る。架橋は、米国特許出願第13/969,449号、「活性剤の放出のための微粒子構築物(Particulate Constructs for Release of Active Agents)」(ローレンス・メイヤー(Lawrence Mayer)ら)に記載されているタイプの切断可能なエステル結合を含み得る。架橋は、非共有結合であり得る。たとえば、架橋はイオン性架橋、キレート化架橋、酸-塩基架橋、または水素結合架橋であり得る。
【0060】
コポリマーを架橋するために、架橋剤を添加できる。たとえば、架橋剤は、アニオン性の官能性または特性を有するコポリマーの基を架橋するために添加され得る。たとえば、架橋剤は、アルカリ土類ハロゲン化物、ハロゲン化マグネシウム、塩化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム、塩化カルシウム、遷移金属ハロゲン化物、ハロゲン化鉄、塩化鉄(III)、スペルミン、または組み合わせであり得る。たとえば、架橋剤は、金属酢酸塩、アルカリ土類酢酸塩、遷移金属酢酸塩、酢酸カルシウム、または組み合わせであり得る。たとえば、架橋剤は、酢酸クロム(III)または別のクロム(III)塩であり得る。たとえば、架橋剤は、金属硝酸塩、アルカリ土類硝酸塩、遷移金属硝酸塩、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、硝酸鉄、または組み合わせであり得る。たとえば、他の生体適合性の多カチオン性水溶性薬剤を架橋剤として使用して、コポリマーのアニオン性部分を架橋してもよい。たとえば、水溶性薬剤はトブラマイシンを含むことができ、トブラマイシンはコポリマーを架橋できる。1つの例はテトラエチレンペンタミンである。カチオン性架橋剤とコポリマーの親水性基との間のイオン性相互作用を促進するために、それらの親水性基がアニオン性の官能性を有するときは、アンモニアまたは塩基性の特性を有する別の化学物質を添加できる。
【0061】
代替的には、ナノ粒子のシェルを架橋させてナノ粒子の安定性を高めてもよい(
図7)。たとえば、疎水性(非極性)ポリマー鎖またはブロックの末端基またはその他の基を架橋できる。たとえば、架橋はイオン性または共有結合性であり得る。たとえば、2つ以上の疎水性ポリマー鎖が直接架橋されてもよいし、多官能性架橋剤の添加を通じて架橋されてもよい。たとえば、官能性「Y」に対して反応性である官能性「X」を有する基を(鎖末端または鎖全体に)含有する疎水性ポリマーシェルは、2つ以上の「Y」官能基を有する架橋剤を使用して架橋されてもよい。たとえば、XおよびY官能基は、チオールおよびアクリレート、チオールおよびマレイミド、アジドおよびアルキエン(alkyenes)、アミンおよび酸、またはその逆であり得る。官能基XおよびYは、「クリックケミストリー」を通じて反応する基であり得る。シェルの架橋を誘導するために、触媒またはその他の薬剤の添加が必要とされてもよい。
【0062】
本発明者らは、本発明の別の方法において、架橋が必要とされないことを初めて示す。
【0063】
反転(Inverted)ナノ粒子のさらなる処理
ナノ粒子の形成後、望ましい製剤を生成するために追加の処理ステップが行われ得る。ナノ粒子が水非混和性溶媒中に分散されているとき、抽出プロセスを使用して残留DMSOを除去できる。水溶液の組成は、ポリマー安定剤の安定性を促進するように修正され得る。たとえば、水性流は、浸透圧を調整するために150mMの塩化ナトリウムを含有してもよい。糖、PEG、またはその他のオスモライトを使用して同様の効果を達成してもよい。安定剤の溶解度を制限するためにpHを調整できる。酢酸またはクエン酸などの有機酸を使用でき、塩酸などの鉱酸も使用できる。同様に、水酸化アンモニウムおよび水酸化ナトリウムなどの塩基を添加できる。ホウ酸塩またはカルボン酸塩などの緩衝系を使用してもよい。抽出は、処理規模に対して許容される標準的なプロトコルを用いて30分間以上行われ得る。界面と共に水相は廃棄され、有機相はさらなる処理のために保持される。このことは、その全体が包含されているマークウォルター、C.E.;プリュドム、R.K.、「生物製剤封入のための逆フラッシュナノ沈殿:抽出プロトコルによるプロセス損失の理解(Inverse Flash NanoPrecipitation for Biologics Encapsulation:Understanding Process Losses via an Extraction Protocol)。」ACSシンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)2017、Vol.1271、12章、pp275-296に記載されている。
【0064】
製剤の要件に応じて、いくつかの異なる処理経路が想定されてもよい。経路1において、非混和性溶媒相は、界面活性剤を含有する外部水相中で乳化され得る。たとえば、ナノ粒子相は、ポリ(ビニルアルコール)を含有する水中で乳化され得る。小分子またはポリマーを含む疎水性添加剤をナノ粒子油相に添加してもよい。乳化の後に、溶媒を除去してマイクロ粒子を形成できる。このプロセスは、国際公開特許の特許文献1;ペイゲルス、R.F.;プリュドム、R.K.、「ペプチド、生物製剤、および可溶性治療薬の送達のためのポリマーナノ粒子およびマイクロ粒子(Polymeric nanoparticles and microparticles for the delivery of peptides,biologics,and soluble therapeutics)。」ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J Control Release)2015、vol.219、519-535;ペイゲルス、R.F.;プリュドム、R.K.、「生物製剤封入のための逆フラッシュナノ沈殿:ナノ粒子形成および有機溶媒中でのイオン安定化(Inverse Flash NanoPrecipitation for Biologics Encapsulation:Nanoparticle Formation and Ionic Stabilization in Organic Solvents)。」ACSシンポジウム・シリーズ(ACS Symposium Series)2017、Vol.1271、11章、pp249-274に記載されている。これらの参考文献は、その全体が本出願に含まれる。
【0065】
経路2では、有機溶媒を乾燥させて粉末を形成することによってナノ粒子を直接回収して、たとえば追加の賦形剤と共に錠剤化することなどの従来の経路によって処理してもよい。経路3では、(元の有機溶媒から、または溶媒交換後に)ナノ粒子を追加の賦形剤と共に噴霧乾燥して、マイクロ粒子を形成する。
【0066】
しばしば、経路1の処理に進む前に有機流を調整することが望ましい。溶媒を蒸発させて、より濃縮されたナノ粒子分散物を生成できる。追加のポリマーを結合剤、接着剤、または特性改質剤として添加できる。たとえば、乳化の前に追加の腸溶性ポリマーを添加できる。そのポリマーは、ナノ粒子安定剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。乳化は、水中油中ナノ粒子系を形成する。界面活性剤安定剤は、ポリ(ビニルアルコール)、プルロニック、ツイン(Tween)、または別の安定剤であり得る。特定の機能を達成するために、たとえば塩、糖、pH調整剤、オスモライト、または有機溶媒などの添加剤が水相に含まれてもよい。乳化は、当業者によく知られた技術を用いて行われ得る。残留有機相の除去は、好適な条件下での蒸発によって達成され得る。粒子は洗浄されて凍結乾燥されてもよい。
【0067】
経路3は、噴霧乾燥を使用する、マイクロ粒子を形成するための代替的方法である。しばしば、たとえば追加のポリマーなどの追加の賦形剤が含まれる必要があり得る。この場合、元の有機溶媒が溶解度を制限するときは、たとえばテトラヒドロフラン(THF)などの好適な溶媒への溶媒交換を行う必要があり得る。ナノ粒子安定剤の架橋は、このステップにおけるコロイドの安定性を確保すると同時に、噴霧乾燥ステップの前に遊離ポリマーを添加することを可能にする。噴霧乾燥は、当業者によく知られた技術を用いて行われてもよい。
【0068】
水中に分散されたナノ粒子が所望されるとき、経路4は、たとえばPLA-b-ポリ(エチレングリコール)(PEG)、PLGA-b-PEG、PCL-b-PEG、または別の両親媒性ポリマーなどの第2の安定化ポリマーで粒子をコーティングすることを含む。たとえば、非極性溶媒中のナノ粒子および安定剤を、ナノ粒子表面およびコーティングポリマーの非極性ブロックに対する非溶媒である極性溶媒と混合して、コーティングポリマーの非極性部分をナノ粒子の非極性表面に付着させることができる。一実施形態において、極性溶媒は水であるか、または水と他の溶媒もしくは塩との混合物である。これは、たとえばDMSO、DMF、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、エタノール、またはこれらの混合物などの水混和性溶媒中に粒子を分散させることを含み得る。溶媒は、ナノ粒子を溶解しないように選択されるべきである。逆フラッシュナノ沈殿プロセスにおいて水混和性溶媒が使用されたとき、ナノ粒子は水混和性溶媒中に既に分散されていてもよい。そうでないときは、蒸留に基づく溶媒交換を通じて、またはナノ粒子を沈殿もしくは乾燥させ、それらを水混和性溶媒に再懸濁することによって、ナノ粒子を水混和性溶媒中に移し得る。次いで、ナノ粒子をコーティングするために、ナノ粒子分散物およびコーティングポリマーを、水、緩衝剤、塩溶液、または水と別の水混和性溶媒との混合物と混合できる。コーティングされたナノ粒子を凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥生成物を形成してもよい。
【実施例】
【0069】
【実施例1】
【0070】
PS-b-PAAによるRNAの封入
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、ポリスチレン(5kDa)-b-ポリ(アクリル酸)(4.8kDa)(PS-b-PAA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して0.5または1電荷当量のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」)またはアンモニアを含む水に100mg/mLの濃度で溶解した。RNAストック溶液をPS-b-PAAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液で希釈して、5mg/mL RNA、5mg/mL PS-b-PAA、および5v%水のDMSO溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)を拘束衝突噴流(CIJ)ミキサー内で非プロセス溶媒流(0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLの非プロセス溶媒浴中に収集した。非プロセス溶媒は、クロロホルム(CHCl
3)、ジクロロメタン(DCM)、またはテトラヒドロフラン(THF)のいずれかであった。表1に特定の製剤が与えられている。対照として、すべての製剤を任意のブロックコポリマーなしで試験し、結果として大きな可視RNA凝集体が形成された。
【表1】
【0071】
すべての製剤は、可視凝集体のないナノ粒子をもたらした。ナノ粒子サイズ分布は、製剤において使用した非プロセス溶媒中の動的光散乱(DLS:dynamic light scattering)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザー(Malvern Zetasizer)DLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI:polydispersity index)を表2に与えており、サイズ分布はサンプル1A~1Dについて
図8に、サンプル1Eおよび1Fについて
図9に与えている。
【0072】
【実施例2】
【0073】
PS-b-PAA/RNAナノ粒子の金属カチオン架橋および非封入RNAの抽出
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、ポリスチレン(5kDa)-b-ポリ(アクリル酸)(4.8kDa)(PS-b-PAA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して0.5電荷当量のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」)を含む水に100mg/mLの濃度で溶解した。RNAストック溶液をPS-b-PAAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液で希釈して、5mg/mL RNA、5mg/mL PS-b-PAA、および5v%水のDMSO溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)を拘束衝突噴流(CIJ)ミキサー内でCHCl3非プロセス溶媒流(0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLのCHCl3非プロセス溶媒浴中に収集した。なお、これは実施例1のサンプル1Dと同じである。最終的なナノ粒子分散物に、CaCl2、ZnCl2を含有するか、または塩を含有しない100μLのメタノールを撹拌しながら滴下添加して、PAA中の酸基に対して1電荷当量のCa2+またはZn2+が存在するようにした。金属カチオンは、PAAをイオン的に架橋してナノ粒子をさらに安定化できる。対照として、上記のプロセスをブロックコポリマーなし(大きな可視凝集体をもたらす、「RNA対照」)、およびブロックコポリマーもRNAもなし(溶媒および塩のみ、「溶媒対照」)で繰り返した。
【0074】
30分間撹拌した後、5mLの150mM NaClを各5mLナノ粒子(または対照)分散物の頂部に添加した。ブライン相は、DMSOならびに任意の非封入RNAおよび塩を抽出した。任意のブロックコポリマーを伴わない対照の場合、RNAは100%封入されない。溶液を穏やかに撹拌しながら30分間抽出した後、水相を取り出し、水で4倍希釈した。希釈した水相の吸光度を230~350nmで測定した。任意の金属添加のない抽出物(RNAもPS-b-PAAもない溶媒ブランク、PS-b-PAAのないRNA対照、およびRNA/PS-b-PAAナノ粒子)の水相の吸光度スペクトルを
図10に示す。これらのスペクトルから、RNAの大部分がPS-b-PAAブロックコポリマーによって封入されるために、それが水相中に抽出されることが防止されることが明らかである。260nmでの吸光度(Abs:absorbance)を使用して、以下の式を用いて封入効率(encapsulation efficiency)(%EE)を算出した。
%EE=100%-100%*{(Abs
ナノ粒子抽出物-Abs
溶媒対照抽出物)/(Abs
RNA対照抽出物-Abs
溶媒対照抽出物)}
【0075】
逆フラッシュナノ沈殿によって生成された逆ナノ粒子中のRNAの封入効率を表3に与えている。金属カチオン架橋剤の添加によって、%EEは約94%から約98%にわずかに増加したが、測定されたすべての封入効率は非常に高い。
【0076】
【実施例3】
【0077】
PS-b-PAA/RNAナノ粒子のPS-b-PEGによるコーティング
実施例1のサンプル1EをCa
2+で架橋し、ポリスチレン(1.6kDa)-b-ポリ(エチレングリコール)(5kDa)(PS-b-PEG)でコーティングした。CaCl
2(PAAに対して1電荷当量のCa
2+)を含有するメタノール(100μL)を、THF中のナノ粒子の撹拌分散物に滴下添加した。ナノ粒子を30分間架橋させた。架橋後、ナノ粒子をPS-b-PEGのTHF溶液で希釈して、1mg/mLナノ粒子(0.5mg/mL PS-b-PAAおよび0.5mg/mL RNA)および1mg/mL PS-b-PEGの最終溶液を生成した。この溶液をCIJミキサー内で等体積の水と迅速に混合して水浴中に収集して、最終溶媒組成が約25%THFおよび約75%水となるようにした。コーティングされたナノ粒子分散物のサイズ分布を、水中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアにより、PK1直径は約50nmであり、多分散指数(PDI)は0.3であった。サイズ分布を
図11に与えている。可視凝集体は存在せず、>1000nmの広いピークはサンプル中の気泡によるものである。
【実施例4】
【0078】
PAsp-b-PLA-b-PEGによるRNAの封入
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、ポリ(アスパラギン酸)(5kDa)-b-ポリ(乳酸)(10kDa)-b-ポリ(エチレングリコール)(5kDa)(PAsp-b-PLA-b-PEG)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して1電荷当量のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」)を含む水に100mg/mLの濃度で溶解した。RNAストック溶液をPAsp-b-PLA-b-PEGのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液で希釈して、5mg/mL RNA、10mg/mLポリマー、および5v%水のDMSO溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)を拘束衝突噴流(CIJ)ミキサー内で非プロセス溶媒流(THF、0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLのTHF非プロセス溶媒浴中に収集した。THFはRNAおよびトリブロックコポリマーのPAspブロックを沈殿させるが、PLAおよびPEGブロックは可溶性のままである。ナノ粒子サイズ分布は、THF中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI)を表4に与えており、サイズ分布を
図12に与えている。
【0079】
【0080】
形成後、2.85mg/mLの水酸化アンモニウムのメタノール溶液100μLを、撹拌中のナノ粒子溶液に滴下添加した(PAspの酸基に対して0.75当量のアンモニア)。その後、CaCl
2のメタノール溶液100μLを撹拌中のナノ粒子に添加して、最終溶液がPAspの酸基に対して1.2電荷当量のCa
2+(0.6モル当量)を有するようにした。粒子を30分間架橋させた。次いで、架橋ナノ粒子をCIJミキサー内で等体積の水と迅速に混合し、流出物を水浴中に収集して、最終溶液が約75%の水となるようにした。水は内部のPLAブロックを崩壊させる。ナノ粒子サイズ分布は、水中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI)を表4に与えており、サイズ分布を
図12に与えている。水中ではPLA内部ブロックが崩壊してRNA/PAspコアの周囲にガラス質のシェルを形成するため、粒子はTHF中よりも水中の方が小さい。PDIがより高いのは、主に、粒子と水との屈折率の差が小さいことによる低い散乱強度の影響によるものである。
【実施例5】
【0081】
PAsp-b-PLAによるRNAの封入
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、ポリ(アスパラギン酸)(2kDa)-b-ポリ(乳酸)(12kDa)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して1電荷当量のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」)を含む水に100mg/mLの濃度で溶解した。RNAストック溶液をPAsp-b-PLAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液で希釈して、5mg/mL RNA、10mg/mLポリマー、および5v%水(サンプル5A)または10v%水(サンプル5B)のDMSO溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)を拘束衝突噴流(CIJ)ミキサー内で非プロセス溶媒流(DCM、0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLのDCM非プロセス溶媒浴中に収集した。ナノ粒子サイズ分布は、DCM中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI)を表5に与えており、サイズ分布を
図13に与えている。水は親水性コアの一部になるので、ナノ粒子サイズは、プロセス溶媒流中の水が5v%から10v%になると増加した。
【0082】
【実施例6】
【0083】
PAsp-b-PLA-b-PAspによるRNAおよびモデルタンパク質の共封入
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:horse radish peroxidase)をモデルタンパク質として使用した。RNAおよびHRPを、ポリ(アスパラギン酸)(5kDa)-b-ポリ(乳酸)(10kDa)-ポリ(アスパラギン酸)(5kDa)(PAsp-b-PLA-b-PAsp)中に封入した。DMSOプロセス溶媒流組成物を表6に与えている。対照(6D~6G)は安定化ポリマーを含有しなかった。すべての製剤中のRNAを、RNA中のリン酸基に対して1当量のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「トリス」)で中和した。このプロセス溶液(0.5mL)を拘束衝突噴流(CIJ)ミキサー内で非プロセス溶媒流(DCM、0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLのDCM非プロセス溶媒浴中に収集した。サンプル6A~6Cには可視凝集体はなく、ナノ粒子サイズ分布をDCM中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI)を表7に与えており、サイズ分布を
図14に与えている。サンプル6D~6Fは、予想どおり大きな凝集体をもたらした。
【0084】
【0085】
【0086】
すべてのナノ粒子および対照を3mLの150mM NaCl水溶液で抽出して、任意の非封入HRPまたはRNAを取り出した。抽出された相の吸光度を測定し、RNA濃度を測定するために260nmでの吸光度を用い、HRP濃度を測定するために400nmでの吸光度を用いて、実施例2に与えられるとおりにRNAおよびHRPの封入効率を算出した。測定した封入効率を表8に与えている。なお、追加の共コア材料の存在は、RNAまたはHRPのいずれの%EEにも影響を与えない。
【0087】
【実施例7】
【0088】
RNAのPAsp/PLA/PEG NPへの封入
実施例7の方法:トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のリボ核酸(RNA)(Mr5000~8000)を200mg/mlにて水酸化ナトリウム水溶液(18.7mg/ml、RNA酸基に対して0.75当量)に溶解した。25mg/mlのPAsp(5kDa)-PLA(40kDa)-PAsp(5kDa)のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液を調製した。20kDaのPLAブロックを有する以外は類似のブロックコポリマーを12.5mg/mlにてDMSOに溶解した。アンモニアのメタノール溶液(1.48mg/ml、NH3主成分は30%水酸化アンモニウム水溶液を用いて作製した)およびCaCl2二水和物のメタノール溶液(10.67mg/ml)も調製した。
【0089】
RNAを含有する逆NPは、マルチインレットボルテックスミキサー(
図15)内で、製剤成分を含有する1つの溶媒流と、クロロホルムを含有する等しい流速の3つの貧溶媒流とによって製剤化された。溶媒流組成物は、表9に示されるストック溶液から調製した。最終DMSO含有量が10体積%未満となるように、追加のクロロホルムを含有するバイアルに流出液を収集した。粒子アセンブリ後、50μLのカルシウム溶液を添加して、PAsp残基を架橋した。15~30分間のエージング後、50μLのアンモニア溶液を迅速に撹拌しながら滴下添加して架橋を促進した。動的光散乱(DLS)分析後、NPを2~8℃にて一晩エージングさせた。
【0090】
【0091】
30分間穏やかに撹拌しながら3mLの150mM NaCl水溶液で抽出することにより、残留DMSOを除去した。水相のRNA損失をアッセイした。NPバッチと、RNAまたはRNAおよびBCPの両方のいずれかを欠く対照とに対する230nm~330nmのUV-VIS吸光度を収集した。RNAおよびBCPを欠く対照によって定義されるベースラインを用いて、RNAのみを含有する対照から抽出された総量の割合として、NP製剤からの損失を報告した(実施例2を参照)。
【0092】
3.75mgのPLA-b-PEGをテトラヒドロフラン(THF)中でクロロホルム分散物に添加した。次いで、このNP分散物を含有する有機相を、THFを用いた溶媒交換によって処理した。分散物は透明なままであり、凝集体を含まなかった。NPをTHF中で5mg/mlに濃縮し(<5%残留CHCl3)、CIJ中で脱イオン水か、またはオスモライトバランサーとして作用する50mg/ml(300mM)PEG(MW約350g/mol)の脱イオン水溶液のいずれかに対して混合した。分散物は透明であり、凝集体を含まなかった。そのサイズおよびゼータ電位をDLSによって特徴付けた。分散物を300kDaカットオフポール(Pall)フィルターで濾過した。フロースルー(FT:flow-through)またはDMSOで10倍希釈したNP分散物のいずれかのUV-VIS分析によって、EEを決定した。280nmでのUV-VISシグナルを使用して、全溶液に対するFT中の画分含有量を算出した。適切なTHF含有量を含む水溶液を希釈することによって、ベースラインを定めた。
【0093】
実施例7の結果:最初に、PAsp
5-PLA
20-PAsp
5によって安定化された逆NPをある範囲の条件下で合成した(表9、
図16)。最も狭いサイズ分布を有し、凝集体を欠いた候補(製剤「7C」)は、DMSO流中に3.75mM NaClを含有した(より高濃度の水溶液として添加された)。次いで、PAsp
5-PLA
40-PAsp
5BCPを使用して、この製剤を3つ組で調製した(製剤「7D」)。BCP濃度を増加させて、RNAとPAspブロックとの一定の質量比を維持した。表10に要約されるとおり、製剤Dの3つ組をDLSによって特徴付けた。この製剤は非常に小さいが、処理に対して高度に安定であり、再現性があり、かつBCP安定剤を含有しない対照と明確に区別された。逆NPの形成において、これらの対照は大きな凝集体および濁った溶液を生成した。コーティングステップにおいて、PEG BCPのない対照は、高度に負のゼータ電位(-42mV)を有する大きなNP(約400nm)を生成した。
【0094】
【0095】
iFNPおよびコーティングステップの両方について封入効率を測定した。逆NPは、BCPなしの対照に基づいて算出された95%±1%のEEを有した。貧溶媒が脱イオン水であったとき、コーティングステップは48%±7%のEEを有した。NP膨潤を防止するための浸透圧バランスとして作用するPEGオリゴマー溶液(濃度300mM)の使用によって、EEはわずかに増加して52%±3%となった。この濃度は、NPコア中の高濃度の帯電部分によって生じる強力な浸透圧駆動力を克服するために十分な高さではないようだった。このことは、2つの貧溶媒の選択に対するDLS特性の高い一致によってさらに支持される。
【実施例8】
【0096】
デキストラン-分岐-PLGAを合成するための方法
これは、デキストラン骨格およびPLAまたはPLGA側鎖を有する櫛形ポリマーを作製する方法の例であることに留意されたい。しかし、ナノ粒子を安定化するために使用され得る櫛形ポリマーは、これらの組成物またはこの方法によって生成されることに限定されない。
【0097】
ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)酸をデキストラン骨格上にグラフト化して、櫛形ポリマーを生成した。方法1では、最初に単官能性ヒドロキシル末端PLGAを酸末端PLGAに転換する。トルエンから10グラムのモノヒドロキシル末端PLGA(50:50 L:G、約6、約16、または約24kDa)を乾燥させた。PLGAに3モル当量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP:dimethylaminopyridine)および4モル当量の無水コハク酸を添加し、混合物を高真空下で乾燥させた。PLGA、DMAP、および無水コハク酸を20mLの無水DCMに溶解し、次いで3モル当量のトリメチルアミン(trimethylamine)(TEA)を溶液に添加した。反応を48時間進行させた後、溶液を氷上で冷却し、冷0.5M HClで洗浄してDMAPおよびTEAを除去し、続いて冷水で洗浄した。次いで、ポリマーを過剰量の氷冷イソプロピルアルコール(IPA:isopropyl alcohol)中で3回沈殿させ、最後にヘキサン中で沈殿させ、高真空下で乾燥させた。ヒドロキシル基のカルボン酸への転換をNMRによって確認した。ポリマー(1g)を涙形フラスコ中でトルエンから乾燥させ、その後DMAP(2当量)および(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(ethylcarbodiimide hydrochloride)(EDC、3当量)をポリマーに添加し、混合物を高真空下で乾燥させた。デキストラン(約10kDa)を秤量し、丸底フラスコ中でトルエンから乾燥させ、高真空下で乾燥させた。デキストランの質量を変化させて、異なる重量%PLGA(6kDa PLGAについては65、70、75、および80重量%PLGA、16kDa PLGAについては75、80、85、および90重量%PLGA、24kDa PLGAについては80、85、90、および92.5重量%PLGA)を有するデキストラン-分岐-PLGAを標的とした。乾燥後、10mLの無水DMSOをデキストランに添加し、20mLの無水DMSOをPLGA/DMAP/EDCに添加した。すべての材料が溶解してから、PLGA溶液をアルゴン下で撹拌中のデキストラン溶液に滴下添加した。PLGAの酸末端とデキストランのヒドロキシル基とのエステル化を5日間進行させた。完了時に反応物をDCMで4倍希釈し、氷上で冷却した。デキストランはDCM中で崩壊せず、PLGAがコンジュゲートしたことを示した。溶液を氷冷0.1M HClで3回洗浄し、続いて氷冷水で3回洗浄した。ポリマーを含有するDCM相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、0.2ミクロンフィルターで濾過して過剰の硫酸マグネシウムを除去した。次いで、ポリマーを濃縮し、ヘキサン中で沈殿させ、高真空下で乾燥させた。
【0098】
方法2では、同じ手順に従ったが、出発材料は対称的なジヒドロキシ末端HO-PLA-SS-PLA-OHであった。総PLA分子量は20kDaであり、ジスルフィドが切断されたときに2つの10kDaのPLA鎖がもたらされる。方法1において与えられる無水コハク酸の開環によって、PLAのヒドロキシル末端基をカルボン酸に転換した。次いで、方法1において与えられるEDC媒介エステル化によって、PLA上の酸基を10kDaデキストランにコンジュゲートし、かつ方法1において与えられるとおりに精製した。400mgの最終ポリマーは、80重量%PLA、20重量%デキストランであった。ポリマーを、100μLのトリブチルホスフィンを含む20mLの乾燥CHCl3に溶解してジスルフィドを還元した。2時間後、過剰量のヘキサンおよびジエチルエーテル(1:1)のドライアイス冷却混合物中でポリマーを3回沈殿させた。ポリマーを高真空下で一晩乾燥させて、任意の残留溶媒を除去した。PLAコロナを有する逆ナノ粒子では、PLA鎖の末端のチオール基を架橋して、その後の処理ステップ中にナノ粒子を安定化できる。たとえば、チオールは、複数のアクリレート基を有するポリマーまたは小分子(たとえばトリアクリレートなど)を使用して架橋され得る。
【実施例9】
【0099】
デキストラン-分岐-PLAを用いたブルーデキストランの封入および処理
ブルーデキストラン(Blue dextran)(BD、5kDaまたは20kDa)を、デキストラン-分岐-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA側鎖、80重量%PLA)(Dex-PLA)によって安定化された逆ナノ粒子中に封入した。BDおよびDex-PLAを、表11に与えられる濃度でDMSOに溶解した。場合によっては、少量の水がDMSOプロセス溶媒に含まれた(表11を参照)。このプロセス溶液(0.5mL)を拘束衝突噴流(CIJ)ミキサー内で非プロセス溶媒流(表11に示すDCMまたはCHCl
3、0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLの非プロセス溶媒浴(DCMまたはCHCl
3)中に収集した。サンプル9A~9Hには可視凝集体はなく、ナノ粒子サイズ分布をDCM中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI)を表12に与えており、サイズ分布はサンプル9A~9Cについて
図17に、サンプル9D~9Hについて
図18に与えている。
【0100】
【0101】
【0102】
ナノ粒子有機相の頂部に3mLの150mM NaClを添加して、30分間穏やかに撹拌することによってDMSOを抽出した(いわゆる「ブライン抽出」)。抽出後、ナノ粒子を含有する有機相を取り出した。サンプル9Aについては、逆ナノ粒子にTHFを添加し、40℃での回転蒸発によって濃縮し、4回繰り返して水不溶性DCMを除去することによる蒸発溶媒交換を行った。サンプル9B~9Hについては、ナノ粒子を8倍過剰量のヘキサン中で沈殿させ、遠心分離によって回収した。沈殿したナノ粒子をイソプロピルアルコールで洗浄し、次いでポリ(乳酸)(4.6kDa)-b-ポリ(エチレングリコール)(5kDa)(PLA-b-PEG)を含むTHF中に再分散させた。PLA-b-PEG:Dex-PLA:BDの最終比は5:5:2であり、最終総質量濃度(PLA-b-PEG+Dex-PLA+BD)は24mg/mLであった。次いで、ナノ粒子溶液をCIJミキサー内で等体積の水と迅速に混合して水浴中に収集して、最終溶媒混合物が10v%THFとなるようにした。ナノ粒子サイズ分布をDLSによって測定し、マルバーン・ソフトウェアによるPK1直径およびPDIを表13に与えている。封入効率は、300kDa分子量カットオフ(MWCO:molecular weight cut-off)ポールフィルターを使用して、ナノ粒子分散物から非封入BDを分離することによって測定した。ブルーデキストラン濃度はUV-Visによって測定した。結果として得られた封入効率を表13に与えている。全般的に封入効率は高く、65~75%程度であった。いくつかの場合には、過剰なPLA-b-PEGが別個のミセル相(約40nm)を形成したためにPDIが高かった。
【0103】
【実施例10】
【0104】
デキストラン-分岐-PLAを使用したTHF貧溶媒によるブルーデキストランの封入および処理
ブルーデキストラン(BD、20kDa)を、デキストラン-分岐-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA側鎖、80重量%PLA)(Dex-PLA)によって安定化された逆ナノ粒子中に封入した。BD(5mg/mL)およびDex-PLA(12.5mg/mL)をDMSOに溶解した。このプロセス溶液(0.5mL)を拘束衝突噴流(CIJ)ミキサー内でTHF非プロセス溶媒流と迅速に混合し、流出物を空のバイアル(希釈なし)に収集した。ナノ粒子サイズ分布は、THF中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアにより、PK1直径は115nmであり、多分散指数(PDI)は0.07であった。
【0105】
PLA-b-PEG(4mg)をナノ粒子に添加して、5mg/mLのPLA-b-PEGおよび8.75mg/mLのナノ粒子(6.25mg/mLのDex-PLAおよび2.5mg/mLのBD)を含む溶液を生成した。溶液をCIJミキサー内で等体積の水と迅速に混合して水浴中に収集して、最終溶媒組成が1:1:18のTHF:DMSO:水となるようにした。コーティングされたナノ粒子のサイズ分布を、水中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアにより、PK1直径は70nmであり、多分散指数(PDI)は0.15であった。封入効率は、300kDa分子量カットオフ(MWCO:molecular weight cut-off)ポールフィルターを使用して、ナノ粒子分散物から非封入BDを分離することによって測定した。ブルーデキストラン濃度はUV-Visによって測定した。結果として得られた封入効率は53%であった。
【実施例11】
【0106】
デキストラン-分岐-PLAを用いたナトリウム塩形態のRNAの封入および処理
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、Dex-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA分岐部、80重量%PLA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して0.75または1電荷当量のNaOHを含む水に200mg/mLの濃度で溶解して、ナトリウム塩を形成した(表14を参照)。RNAストック溶液を、Dex-PLAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と、水と、300mM NaCl水溶液とで希釈して、5mg/mL RNA、12.5mg/mLポリマー、および5v%水を含み、かつ0、3.75、または7.5mMの総NaCl濃度を有する溶液を生成した(表14を参照)。すべての製剤情報を表14に提供している。このプロセス溶液(0.5mL)をマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内で3つの非プロセス溶媒流(CHCl
3、各0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を3mLのCHCl
3非プロセス溶媒浴中に収集した。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl
3中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI)を表15に与えており、サンプル11Dのサイズ分布を
図19に与えている。サンプル11Aおよび11Dは透明な溶液をもたらしたが、サンプル11Bおよび11Cは濁っていた(サンプル11Bは最も濁っていたため、DLS測定を行わなかった)。
【0107】
【0108】
【0109】
逆ナノ粒子を3mLの150mM NaCl水溶液で抽出して、DMSOおよび任意の非封入RNAを取り出した。ブライン相をUV-Visによって分析して、表16に与える初期逆フラッシュナノ沈殿ステップの封入効率(「iFNP%EE」)を決定した。場合によっては、抽出後のナノ粒子に対してDLS測定を行った(表15)。次いで、ナノ粒子を8倍体積過剰量のヘキサン中で沈殿させ、溶液から遠心分離した。ナノ粒子を乾燥させることなく、ペレットからできる限り多くのヘキサンを除去するように注意した。次いで、5mg/mL PLA-b-PEGを含むTHF中に粒子を再分散させて、5mg/mL PLA-b-PEGおよび7mg/mLナノ粒子(2mg/mL RNAおよび5mg/mL Dex-PLA)を含む溶液を生成した。場合によっては、THF中に再分散させたナノ粒子に対してDLS測定を行った(表15)。この溶液をCIJミキサー内で等体積の水と迅速に混合して水浴中に収集して、最終溶液が10v%THFとなるようにした。300kDa MWCOポールフィルターを使用してナノ粒子から非封入RNAを分離し、封入RNAおよび非封入RNAの量をUV-Visによってアッセイした。コーティングプロセスの封入効率(「コーティング%EE」)を表16に与えている。ナノ粒子サイズ分布を水中でDLSによって測定し、PK1直径およびPDIを表16に与えている。
図19は、CHCl
3中での作製時、ブライン抽出後、THF中の再分散、および水中でのコーティングというプロセス全体にわたるサンプル10Dを示す。
【0110】
【実施例12】
【0111】
デキストラン-分岐-PLGAを用いたナトリウム塩形態のRNAの封入および処理
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、Dex-PLGA(10kDaデキストラン、16kDa PLGA分岐部、80重量%PLGA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して1電荷当量のNaOHを含む水に200mg/mLの濃度で溶解して、ナトリウム塩を形成した。RNAストック溶液を、Dex-PLAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と、300mM NaCl水溶液とで希釈して、5mg/mL RNA、12.5mg/mLポリマー、および5v%水を含み、かつ7.5mMの総NaCl濃度を有する溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)をマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内で3つの非プロセス溶媒流(CHCl
3、各0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を3mLのCHCl
3非プロセス溶媒浴中に収集した。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl
3中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアにより、PK1直径は260nmであり、多分散指数(PDI)は0.27であった。CHCl
3中のナノ粒子のサイズ分布を
図20に与えている。
【0112】
逆ナノ粒子を3mLの150mM NaCl水溶液で抽出して、DMSOおよび任意の非封入RNAを取り出した。ブライン相をUV-Visによって分析して、初期逆フラッシュナノ沈殿ステップの封入効率(「iFNP%EE」)を決定し、これは88%であることが見出された(RNAの12%が抽出された)。次いで、ナノ粒子を8倍体積過剰量のヘキサン中で沈殿させ、溶液から遠心分離した。ナノ粒子を乾燥させることなく、ペレットからできる限り多くのヘキサンを除去するように注意した。次いで、5mg/mL PLA-b-PEGを含むTHF中に粒子を再分散させて、5mg/mL PLA-b-PEGおよび7mg/mLナノ粒子(2mg/mL RNAおよび5mg/mL Dex-PLGA)を含む溶液を生成した。この溶液をCIJミキサー内で等体積の水と迅速に混合して水浴中に収集して、最終溶液が10v%THFとなるようにした。300kDa MWCOポールフィルターを使用してナノ粒子から非封入RNAを分離し、封入RNAおよび非封入RNAの量をUV-Visによってアッセイした。コーティングプロセスの封入効率(「コーティング%EE」)は、66%であることが見出された。ナノ粒子サイズ分布を水中でDLSによって測定し、PK1直径は190nmであり、PDIは0.5であった。
図20は、コーティング後の粒径分布を示す。高いPDIは、有意なPLA-b-PEGミセル集団の存在によるものである。
【実施例13】
【0113】
デキストラン-分岐-PLAを用いたリチウム塩形態のRNAの封入および処理
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、Dex-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA分岐部、80重量%PLA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して1電荷当量のLiOHを含む水に200mg/mLの濃度で溶解して、リチウム塩を形成した。RNAストック溶液を、Dex-PLAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と、300mM LiCl水溶液とで希釈して、5mg/mL RNA、12.5mg/mLポリマー、および5v%水を含み、かつ7.5mMの総LiCl濃度を有する溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)をマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内で3つの非プロセス溶媒流(CHCl
3、各0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を3mLのCHCl
3非プロセス溶媒浴中に収集した。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl
3中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアにより、PK1直径は190nmであり、多分散指数(PDI)は0.28であった。CHCl
3中のナノ粒子のサイズ分布を
図21に与えている。
【0114】
逆ナノ粒子を3mLの150mM NaCl水溶液で抽出して、DMSOおよび任意の非封入RNAを取り出した。ブライン相をUV-Visによって分析して、初期逆フラッシュナノ沈殿ステップの封入効率(「iFNP%EE」)を決定し、これは93%であることが見出された(RNAの7%が抽出された)。次いで、ナノ粒子を8倍体積過剰量のヘキサン中で沈殿させ、溶液から遠心分離した。ナノ粒子を乾燥させることなく、ペレットからできる限り多くのヘキサンを除去するように注意した。次いで、5mg/mL PLA-b-PEGを含むTHF中に粒子を再分散させて、5mg/mL PLA-b-PEGおよび7mg/mLナノ粒子(2mg/mL RNAおよび5mg/mL Dex-PLA)を含む溶液を生成した。この溶液をCIJミキサー内で等体積の水と迅速に混合して水浴中に収集して、最終溶液が10v%THFとなるようにした。300kDa MWCOポールフィルターを使用してナノ粒子から非封入RNAを分離し、封入RNAおよび非封入RNAの量をUV-Visによってアッセイした。コーティングプロセスの封入効率(「コーティング%EE」)は、61%であることが見出された。ナノ粒子サイズ分布を水中でDLSによって測定し、PK1直径は145nmであり、PDIは0.36であった。
図21は、コーティング後の粒径分布を示す。高いPDIは、有意なPLA-b-PEGミセル集団の存在によるものである。
【実施例14】
【0115】
デキストラン-分岐-PLAを用いたポリミキシンBの封入
ポリミキシンB(PMB:Polymyxin B)をモデルペプチド活性物質として使用し、Dex-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA分岐部、80重量%PLA)中に封入した。PMBを30mg/mLにてDMSOに一晩溶解した。PMBストック溶液をDex-PLAのDMSO溶液で希釈して、5mg/mL PMBおよび12.5mg/mLポリマーを含む溶液を生成した。水はプロセス溶媒に添加しなかった。このプロセス溶液(0.5mL)をCIJミキサー内で非プロセス溶媒流(0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLの非プロセス溶媒浴中に収集した。使用した非プロセス溶媒は、ジクロロメタン(DCM)、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトンであった。試験したすべての非プロセス溶媒は、可視凝集体が存在しない透明なナノ粒子溶液をもたらした。ナノ粒子サイズ分布は、非プロセス溶媒中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアによるPK1直径および多分散指数(PDI)を、各製剤について表17に与えている。ナノ粒子のサイズ分布を
図22に与えている。
【0116】
【実施例15】
【0117】
デキストラン-分岐-PLAを用いた西洋ワサビペルオキシダーゼの封入および処理
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)をモデルタンパク質として使用し、Dex-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA分岐部、80重量%PLA)中に封入した。HRPおよびDex-PLAを、10v%の水を含むジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して、5mg/mLのHRP、12.5mg/mLのポリマー、および10v%の水を含む溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)をCIJミキサー内で非プロセス溶媒流(DCM、0.5mL)と迅速に混合し、ミキサーからの流出物を4mLのDCM非プロセス溶媒浴中に収集した。ナノ粒子サイズ分布は、DCM中の動的光散乱(DLS)によって測定した。マルバーン・ゼータサイザーDLSソフトウェアにより、PK1直径は60nmであり、多分散指数(PDI)は0.17であった。DCM中のナノ粒子のサイズ分布を
図23に与えている。
【0118】
逆ナノ粒子を3mLの150mM NaCl水溶液で抽出して、DMSOおよび任意の非封入HRPを取り出した。有機相はHRPのオレンジ-ピンク色を保持し、良好な封入を示した。次いで、ナノ粒子を8倍体積過剰量のヘキサン中で沈殿させ、溶液から遠心分離した。ナノ粒子ペレットをイソプロパノールで1回洗浄した。次いで、5mg/mL PLA-b-PEGを含むアセトン中に粒子を再分散させて、5mg/mL PLA-b-PEGおよび7mg/mLナノ粒子(2mg/mL HRPおよび5mg/mL Dex-PLA)を含む溶液を生成した。ナノ粒子サイズ分布を水中でDLSによって測定し、PK1直径は330nmであり、PDIは0.5であった。
図23は、コーティング後の粒径分布を示す。高いPDIは、有意なPLA-b-PEGミセル集団の存在によるものである。
【実施例16】
【0119】
デキストラン-分岐-PLAを用いた5kDaブルーデキストランの封入およびシェルの架橋
ブルーデキストラン(BD、5kDa)を、デキストラン-分岐-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA側鎖、80重量%PLA)(Dex-PLA)によって安定化された逆ナノ粒子に封入し、ここでPLAは、実施例9のサンプル9Aと同じ製剤および方法を使用してチオール基で終結させた。ナノ粒子アセンブリの後、トリアクリレートを用いてPLAシェルを架橋した。エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(トリアクリレート-6、分子量560Da、3つのアクリレート基を含有し、各々が2つのエチレングリコール繰り返し単位によってトリメチロールプロパンに結合している)を、1mg/mLの濃度でDMSOに溶解した。15μLのトリアシレート-6溶液を2mLのナノ粒子溶液に添加して、アクリレート基対チオール基の1:1モル比をもたらした。反応を触媒するために、1当量のトリエチルアミン(TEA:triethylamine)か、1当量のDMAPか、0.2当量のトリブチルホスフィンか、または0.2当量のヘキシル-アミンのいずれかをナノ粒子に添加した(注:すべての当量はチオール基に対するものである)。対照ナノ粒子溶液は添加触媒を含有しなかった。ナノ粒子分散物を48時間混合して架橋を生じさせた。48時間後、1mLの150mM NaCl水溶液を各ナノ粒子分散物の頂部に添加した。添加触媒を有するナノ粒子分散物は透明のままであったが、添加触媒のない分散物はより乳白色となった/濁った。触媒なしのナノ粒子は水(よって、より不透明な溶液)の存在下で膨潤し得るが、架橋は粒子の膨潤を防止する。
【実施例17】
【0120】
デキストラン-分岐-PLAを用いた20kDaブルーデキストランの封入およびシェルの架橋
ブルーデキストラン(BD、20kDa)を、デキストラン-分岐-PLA(10kDaデキストラン、10kDa PLA側鎖、80重量%PLA)(Dex-PLA)によって安定化された逆ナノ粒子に封入し、ここでPLAは、実施例9のサンプル9Dと同じ製剤および方法を使用してチオール基で終結させた。ナノ粒子アセンブリの後、トリアクリレートを用いてPLAシェルを架橋した。エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート(トリアクリレート-6、分子量560Da、3つのアクリレート基を含有し、各々が2つのエチレングリコール繰り返し単位によってトリメチロールプロパンに結合している)を、1mg/mLの濃度でDMSOに溶解した。エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート(トリアクリレート-15、分子量956Da、3つのアクリレート基を含有し、各々が5つのエチレングリコール繰り返し単位によってトリメチロールプロパンに結合している)を、1mg/mLの濃度でDMSOに溶解した。75μLのトリアシレート-6溶液または127.5μLのトラクリレート(tracrylate)-15溶液を5mLのナノ粒子溶液に添加して、アクリレート基対チオール基の1:1モル比をもたらした。触媒するために、0.2当量のトリブチルホスフィンをナノ粒子に添加した(注:すべての当量はチオール基に対するものである)。対照ナノ粒子溶液は添加触媒を含有しなかった。ナノ粒子分散物を48時間混合して、すべての架橋を生じさせた。48時間後、3mLの150mM NaCl水溶液を各ナノ粒子分散物の頂部に添加した。添加触媒を有するナノ粒子分散物は透明のままであったが、添加触媒のない分散物はより乳白色となった/濁った。触媒なしのナノ粒子は水(よって、より不透明な溶液)の存在下で膨潤し得るが、架橋は粒子の膨潤を防止する。
【実施例18】
【0121】
デキストラン-分岐-PLGAを用いた異なる塩形態のRNAの封入
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、Dex-PLGA(10kDaデキストラン、16kDa PLGA分岐部、80重量%PLGA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して0.9電荷当量の(1)NaOH、(2)N-アセチルヒスタミン(NAH:N-acetyl histamine)、(3)トリエチルアミン(TEA)、または(4)トリエタノールアミン(TEtOHA:triethanolamine)のいずれかを含む水に200mg/mLの濃度で溶解して、異なる塩形態を形成した。RNAストック溶液を、Dex-PLAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と、300mM NaCl水溶液とで希釈して、5mg/mL RNA、12.5mg/mLポリマー、および5v%水を含み、かつ7.5mMの総NaCl濃度を有する溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)をマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内で3つの非プロセス溶媒流(CHCl3、合計4.5mL)と迅速に混合した。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl3中の動的光散乱(DLS)によって測定した(表18)。
【0122】
【実施例19】
【0123】
デキストラン-分岐-PLGAで安定化されたナノ粒子におけるRNA-カルシウム塩の形成
実施例18で作製されたRNA充填ナノ粒子の塩形態を、ナノ粒子アセンブリ後にCa2+を添加することによって変化させた。塩化カルシウム二水和物を19.4mg/mLの濃度でメタノールに溶解し、29.4uLのこの溶液を撹拌中のナノ粒子分散物に添加した(RNA中のリン酸基当たり1電荷当量のCa2+)。粒子を一晩撹拌して、カルシウムをRNAと相互作用させた。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl3中の動的光散乱(DLS)によって測定した(以下の表19を参照)。カルシウムを添加した後にDLS測定の計数率が増加し、新たに形成されたカルシウム-RNA塩によるより大きな散乱を示した(表19)。
【0124】
【実施例20】
【0125】
ポリ(アスパラギン酸)-b-PLGAを用いた異なる塩形態のRNAの封入
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、PAsp-b-PLGA(2kDaポリ(アスパラギン酸)、16kDa PLGA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して0.9電荷当量の(1)NaOH、(2)N-アセチルヒスタミン(NAH)、(3)トリエチルアミン(TEA)、または(4)トリエタノールアミン(TEtOHA)のいずれかを含む水に200mg/mLの濃度で溶解して、異なる塩形態を形成した。RNAストック溶液を、PAsp-b-PLGAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と、300mM NaCl水溶液とで希釈して、5mg/mL RNA、12.5mg/mLポリマー、および5v%水を含み、かつ7.5mMの総NaCl濃度を有する溶液を生成した。このプロセス溶液(0.5mL)をマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内で3つの非プロセス溶媒流(CHCl3、合計4.5mL)と迅速に混合した。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl3中の動的光散乱(DLS)によって測定した(表20)。
【0126】
【0127】
ナノ粒子アセンブリの後、ナノ粒子分散物にカルシウムを添加して、安定化ポリマーのポリ(アスパラギン酸)ブロックの酸基およびRNAのリン酸骨格を架橋した。塩化カルシウム二水和物を19.4mg/mLの濃度でメタノールに溶解した。次いで、この溶液を撹拌中のナノ粒子分散物に添加して、PAspの酸基およびRNAのリン酸基のすべてに対して1電荷当量のCa2+が存在するようにした。ナノ粒子分散物を少なくとも30分間混合して、カルシウムをPAspおよびRNAと相互作用させた。
【実施例21】
【0128】
RNAのカルシウム塩のインサイツ形成およびデキストラン-分岐-PLGAによる封入
トルラ・ユチリス(Torula utilis)由来のRNA(Mr5000~8000)をモデル核酸活性物質として使用し、Dex-PLGA(10kDaデキストラン、16kDa PLGA分岐部、80重量%PLGA)中に封入した。RNAを、RNA中のリン酸基に対して0.9電荷当量のNaOHを含む水に200mg/mLの濃度で溶解して、ナトリウム塩を形成した。RNAストック溶液を、Dex-PLAのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液と、300mM NaCl水溶液とで希釈して、5mg/mL RNA、12.5mg/mLポリマー、および5v%水を含み、かつ7.5mMの総NaCl濃度を有する500uLプロセス溶液を生成した。塩化カルシウム二水和物を19.4mg/mLの濃度でメタノールに溶解し、29.4uLのこの溶液を500uLのクロロホルムに添加して、非プロセス溶媒を生成した。プロセス溶液(500uL)と、カルシウム含有非プロセス溶媒(500uL)と、過剰量の非プロセス溶媒(クロロホルム、2mL)とをMIVM中で迅速に混合した。最終混合物は、ナノ粒子アセンブリ中にRNAのカルシウム塩を形成するために、RNA中のリン酸基当たり1電荷当量のCa
2+を有した。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl
3中の動的光散乱(DLS)によって測定した。PK1直径は90nmであり、PDIは0.22であり、粒径分布は
図24に与えられている。
【実施例22】
【0129】
異なるポリマー安定剤組成を有するデキストラン-分岐-PLGAによるリラグルチドの封入
ペプチド治療薬であるリラグルチドを、異なるポリマー組成を有するDex-PLGAによって安定化されたナノ粒子中に封入した。すべての櫛形ポリマーは、PLGA(1:1のL:G比)側鎖を有する10kDaデキストラン骨格から構成された。PLGA側鎖は、分子量が6.3kDa、16kDa、または23kDaのいずれかであった。櫛形ポリマーの組成は、65~92.5重量%PLGAの範囲であった(以下の表21を参照)。プロセス溶媒流は、5mg/mLリラグルチド(HCl塩)と、5mg/mL Dex-PLGAと、15mM NaClとを含む、10v%の水を含むDMSOであった。このプロセス溶液(0.5mL)をマルチインレットボルテックスミキサー(MIVM)内で3つの非プロセス溶媒流(ジクロロメタン、DCM、合計4.5mL)と迅速に混合した。ナノ粒子サイズ分布は、CHCl
3中の動的光散乱(DLS)によって測定した(表20)。サンプル22Fの粒径分布を
図25に与えている。
【0130】
【実施例23】
【0131】
リラグルチド充填Dex-PLGA安定化逆ナノ粒子のマイクロ粒子へのアセンブリ。
(上記の実施例22の)サンプル22Fのリラグルチド充填ナノ粒子をアセンブルして、デポー送達用途のためのマイクロ粒子にした。
最初に、3mLの150mM NaClをナノ粒子分散物(5mL)の頂部に添加し、穏やかに混合してDMSOを抽出した。1000rcfで5分間遠心分離することによって水相および有機相を分離し、ナノ粒子を含有する有機相を取り出した。デキストラン粉末をナノ粒子分散物に添加して任意の水分を吸収させ、1ミクロンフィルターで濾過することによってデキストラン粉末を除去した。この処理によるリラグルチドの回収率は約70%と測定された。PLGAホモポリマーを、リラグルチドに対して2:1の質量比でナノ粒子分散物に添加した(リラグルチド1mg当たり2mgのPLGA)。トリクロロ(オクタデシル)シランを使用してシラン処理したガラスバイアル中で、35℃および400トルの回転蒸発によって、ナノ粒子およびPLGAを約10mg/mLの総質量濃度まで濃縮した。この有機相(500uL)を、リン酸緩衝食塩水および1重量%ポリビニルアルコールで構成される水相5mLに添加した。この混合物を750rpmで1分間ボルテックスすることによって、水中油型エマルジョンを生成した。このエマルジョンを、攪拌棒を有するロッカー上に置き、300トルで15分間、250トルで15分間、200トルで15分間、150トルで15分間、100トルで30分間、および50トルで1時間(合計時間:2.5時間)の真空下での蒸発によって、室温で有機溶媒をストリッピングして、硬化したマイクロ粒子を生成した。マイクロ粒子を70ミクロンのストレーナーに通して任意の大きな粒子を除去し、10ミクロンのふるい上で水で洗浄して、任意の小さな粒子、断片、または非封入リラグルチドを除去した。洗浄した粒子を凍結乾燥させた。最終粒子は24.3重量%リラグルチドを含んだ。標的充填量は25重量%(25重量%リラグルチド、25重量%Dex-PLGA、および50重量%PLGAホモポリマー)であるため、これは97%の封入効率である。
【0132】
当業者は、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、またはルーチン的な実験のみを使用して確認し得るだろう。こうした等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】