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特表2022-546622胃不全麻痺の治療に使用するための神経毒素組成物
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  • 特表-胃不全麻痺の治療に使用するための神経毒素組成物 図1
  • 特表-胃不全麻痺の治療に使用するための神経毒素組成物 図2
  • 特表-胃不全麻痺の治療に使用するための神経毒素組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】胃不全麻痺の治療に使用するための神経毒素組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20221027BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 1/06 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20221027BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20221027BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20221027BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P1/04
A61P1/12
A61P1/08
A61P1/06
A61P1/14
A61P25/02 101
A61K35/742
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515659
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020049959
(87)【国際公開番号】W WO2021050558
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/897,520
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/950,794
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522077797
【氏名又は名称】イーオン バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス、グレゴリー エフ
(72)【発明者】
【氏名】カーター、エリック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA04
4C084DA33
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA211
4C084ZA661
4C084ZA691
4C084ZA711
4C084ZA731
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC68
4C087CA16
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA21
4C087ZA66
4C087ZA69
4C087ZA71
4C087ZA73
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、胃不全麻痺の治療に使用するための組成物および方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃不全麻痺を治療する方法であって、
第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋へ投与するステップ、および、
第2のボツリヌス毒素を胃底部および近位部へ投与するステップ、
を含み、
それによって、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させる、
方法。
【請求項2】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型、C型、E型、又はF型ボツリヌス毒素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、注射によって投与される、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記胃不全麻痺が、特発性胃不全麻痺を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記胃不全麻痺が、糖尿病性胃不全麻痺を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記症状が腹痛を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記症状が吐き気を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記症状が嘔吐を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記症状が下痢を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記症状が酸逆流を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記症状が胃の腫れを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のボツリヌス毒素が、75から150ユニットの間の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
胃不全麻痺を治療する方法であって、
第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋に投与するステップ、
第2のボツリヌス毒素を幽門洞及び幽門管の少なくとも一つに投与するステップ、および、
第3のボツリヌス毒素を胃底部および近位部に投与するステップ、
を含み、
それによって、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させる、
方法
【請求項23】
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B、C、E又はF型ボツリヌス毒素を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、注射によって投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記症状が腹痛を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記症状が吐き気を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記症状が嘔吐を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記症状が下痢を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記症状が酸逆流を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のボツリヌス毒素が、50ユニット以上200ユニット以下の量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記第2のボツリヌス毒素が、50ユニットから200ユニットの間の量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項39】
前記第3のボツリヌス毒素が、50ユニットから200ユニットの間の量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項40】
胃不全麻痺を治療する方法であって、
第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋に投与するステップ;および、
第2のボツリヌス毒素を幽門及び幽門管の少なくとも一つに投与するステップ、
第3のボツリヌス毒素を十二指腸に投与するステップ、
を含み、
それによって、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させる、
方法。
【請求項41】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B、C、E又はF型ボツリヌス毒素を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、注射によって投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、飲み込む問題、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記症状が腹痛を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記症状が吐き気を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記症状が嘔吐を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記症状が下痢を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記症状が酸逆流を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記第1のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項56】
前記第2のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項57】
前記第3のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項58】
胃不全麻痺を治療する方法であって、
a)第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋に投与するステップ、
b)第2のボツリヌス毒素を幽門管に投与するステップ、
c)第3のボツリヌス毒素を十二指腸に投与するステップ、
d)これにより、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させるステップ、
を含む、
方法。
【請求項59】
第4のボツリヌス毒素を、胃底部、近位部、及び幽門洞の少なくとも1つに投与することをさらに含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、請求項58又は59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B、C、E又はF型ボツリヌス毒素を含む、請求項58又は59に記載の方法。
【請求項63】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが注射によって投与される、請求項58又は59に記載の方法。
【請求項68】
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害及びそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む請求項58又は59の方法。
【請求項69】
前記症状が腹痛を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記症状が吐き気を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記症状が嘔吐を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記症状が下痢を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記症状が酸逆流を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記第1のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
前記第2のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
前記第3のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項77】
2つの異なるボツリヌス毒素の有効性及び安全性を比較する方法であって、
第1のボツリヌス神経毒素の投与により生じる個体の胃不全麻痺症状の軽減を測定するステップ、
第2のボツリヌス神経毒素の投与により生じる個体の胃不全麻痺症状の軽減を測定するステップ、および、
症状の前記軽減を比較して、第1のボツリヌス神経毒素と第2のボツリヌス神経毒素との差を決定するステップ、
を含む、
方法。
【請求項78】
胃不全麻痺の患者における、胃内容排出の改善および幽門洞圧測定で示される幽門過緊張の軽減を示す方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、例えば、胃不全麻痺を治療するために、消化管の特定の部位に投与される神経毒素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
胃の主な機能は、摂取された食物および液体を一時的に貯蔵するとともに、物理的混合および化学的作用によって粥状液(胃液と一部消化された食物とを含み、胃から小腸に向かう脈状の酸性液体)を調製し、小量の粥状液を十二指腸に放出する制御機能である。この栄養素および液体の消化の初期過程には、胃の重なり合った筋肉層の収縮および弛緩、ならびに幽門括約筋の収縮および弛緩が関与し、中枢神経系を介して調整されている。
【0003】
胃不全麻痺は、複雑で消耗性の胃運動障害であり、患者は困難な症状管理に直面している。胃不全麻痺の診断は、胃不全麻痺の症状および徴候の記録された病歴、ならびに機械的閉塞または他の病因がない場合の客観的な胃排出の遅延に基づいている。胃不全麻痺は、胃底部および胃体部近位部の過緊張と関連しており、その結果、受容性弛緩がうまくいかないことを示す証拠が増えてきている。特発性または疾患性の胃不全麻痺では、これらの生理的過程の一つ以上の機能不全により、90%超の患者に吐き気、70-90%の患者に嘔吐、最大85%の患者に上腹部痛などの相互に関連した症状が見られる。
【0004】
したがって、幽門括約筋または近位十二指腸の高張は、胃からの粥状液の秩序ある排出を損なうことがあり、結果として胃内容排出異常となり、この領域での標的注射の根拠となる。胃底部および胃噴門部の弛緩および調節の失敗と関連して、胃内容排出異常は、早期満腹感、食後膨満感、吐き気、嘔吐および上腹部の不快感および疼痛をさらに強調する可能性がある。
【0005】
現在の治療法の有効性が限られていること、および関連する重大な副作用を考慮し、胃不全麻痺の安全かつ効果的な治療の代替治療の選択肢を明らかにするためにかなりの研究が続けられている。胃不全麻痺の本質的なアンメットメディカルニーズに対処するために、さらなる研究および新たな治療の選択肢が必要である。
【0006】
ボツリヌス毒素注射は、消化管平滑筋の過緊張障害の治療に有効であることが示されている。ボツリヌス毒素を用いた幽門の内視鏡下での括約筋内注射は、胃不全麻痺患者における症状、徴候および胃内容排出を改善する。ボツリヌス毒素は、幽門の過緊張性収縮を阻害し、部分的な弛緩をもたらすと考えられ、これがボツリヌス毒素注射後の胃内容うっ滞改善の理由である可能性がある。これは、迷走神経切除、中咽頭嚥下障害、びまん性食道けいれん、食道通過障害、難治性胃不全麻痺および裂肛に伴う食道切除の合併症としての胃内容うっ滞の予防および治療にすでに使用されている。
【0007】
薬物治療が無効である特発性または糖尿病性胃不全麻痺の患者は、ボツリヌス毒素注射療法によって症状および徴候の改善を示している。この改善は、約6-8週間の期間にわたって維持されうる。初回投与で良好な反応を示した患者は、通常、繰り返し注射に反応し続け、再治療がしばしば必要とされる。
【0008】
しかしながら、これらの治療法はすべて、効果の持続期間の短さ、および一貫性のない効果が課題となる。この結果を改善し、胃不全麻痺患者を有効に治療するためには、現在の方法と比較して、より多くの注射部位に、より多くの神経毒素の用量を投与することが必要な場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、神経毒素、例えばボツリヌス毒素を含むクロストリジウム神経毒素を含む組成物および方法、並びに胃不全麻痺を治療するためのそれらの使用であり、治療は、幽門洞および/又は胃底部および近位部への内視鏡下での括約筋内を標的とした注射を介して、胃不全麻痺の兆候および症状の治療および再発防止、並びに胃不全麻痺患者の胃内容排出の定量的指標を改善するために行われる。胃の筋弛緩不能または低下は、注射の標的を胃の近位部とする根拠となる。胃不全麻痺のこれらの相互に関連する共通の徴候および症状は、洞運動不全または洞混合および上腹部痛の不能をもたらす非協調的ぜんどう運動によってさらに悪化することがあり、したがって、胃前庭部としても知られる幽門洞に注射することに合理性を与える。
【0010】
開示された方法は、注射部位を、幽門括約筋の注射部位周囲に、且つ約1センチメートル間隔で投与される、胃大彎上の胃底部および近位部上に局在および分離する、注射パラダイムを含み、固形物および液体を制御された方法で胃から通過させる幽門括約筋の弁様機能、および早期満腹感および胃不全麻痺の他の主要な徴候および症状を防止する食事に対応した胃底部の制御された弛緩の両方を制御する、単離された平滑筋への治療有効量の神経毒素をもたらす。
【0011】
さらに、開示された方法は、第1のボツリヌス毒素投与量を幽門括約筋に投与するステップと、第2のボツリヌス毒素用量を幽門管および/又は幽門洞を含む幽門部に投与するステップと、第3のボツリヌス毒素投与量を胃底部および近位部に投与するステップを含む胃不全麻痺を治療する方法を包み、それによって、腹痛または不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、およびそれらの組み合わせを含む障害の少なくとも1つまたは複数の症状の重症度を減少させるステップと、を含む。
【0012】
さらに、開示された方法は、第1のボツリヌス毒素投与量を幽門括約筋に投与すること、第2のボツリヌス毒素用量を幽門管および/または幽門洞を含む幽門部に投与すること、および第3のボツリヌス毒素用量を十二指腸に投与することを含む胃不全麻痺の治療方法を含み、それによって、腹痛または不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、およびそれらの組み合わせを含む障害の少なくとも1つまたは複数の重症度を減少させる。
【0013】
さらに、開示された方法は、以下の順番で、
a.幽門括約筋にボツリヌス毒素投与量を投与すること、
b.幽門管にボツリヌス毒素投与量を投与すること、
c.初回治療またはフォローアップ治療の間、十二指腸にボツリヌス毒素投与量を投与すること(小腸での化学的消化および吸収の準備を支援するため)、および
d.任意に、ボツリヌス毒素投与量を胃底部、近位部および/または幽門洞に注射し、それによって、腹痛または不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、およびそれらの組み合わせなどの障害の少なくとも一つまたは複数の症状の重症度を減少させること、
を含む胃不全麻痺の治療方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、幽門括約筋と胃底部の位置を含む、胃とその中の関連構造を示す図である。近位部は、胃底部のすぐ「下」に位置する。
【0015】
図2図2は、胃不全麻痺の病態生理と、糖尿病性胃不全麻痺における胃の機能への影響を示している。
【0016】
図3図3は、糖尿病性胃不全麻痺における胃不全麻痺の病態生理および胃機能への影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本開示は、胃不全麻痺に関連する症状の発生および重症度を低減するための方法に関する。
【0018】
本開示の方法は、例えば、幽門括約筋周囲に5~7個の注射部位、および約1センチメートル間隔で投与される、胃の大彎上の胃底部および近位部(幽門括約筋および胃底部は図に示される)に10~30個の注射部位、幽門洞、幽門管および十二指腸に5~30個の注射部位を局所化および分離する注射パラダイムを含み、固形物および液体を胃から制御された方法で通過させる幽門括約筋の弁様機能および早期満腹感および胃不全麻痺の他の主要徴候および症状を防止する食事に対応した胃底部の制御された弛緩の両方を制御する、分離平滑筋への治療有効量の神経毒素の投与が可能である。神経毒素の希釈度は、例えば、200ユニット(U)あたり4~8mL、または100Uあたり2~4mLとすることができ、各注射の深さは、例えば、平滑筋に、治療効果を最大にするため、内視鏡により、先端長2~5mmの23~27ゲージ硬化療法針または同様の針を用いて垂直方向に適用し、安全確保が可能である。神経毒素に対する患者の感受性および耐性は、神経毒素の有効性および安全性を最大にするために、例えば、幽門括約筋の標的部位に50~200U、胃の底部および近位部の標的部位に50~200Uの合計量を投与することにより初期治療において決定することが可能である。
【0019】
(定義)
【0020】
『投与』は、医薬組成物又は有効成分を対象に与える(すなわち、投与する)工程を意味する。本明細書に開示の医薬組成物は、注射又は留置剤の使用などによる、経口、筋肉内、真皮下(subdermal)、又は皮下(subcutaneous)などの投与経路をはじめとする、多数の適切な経路を介して、投与され得る。
【0021】
『ボツリヌス毒素』又は『ボツリヌス神経毒素』は、Clostridium botulinumに由来する神経毒素、並びに、改変ボツリヌス毒素、組換えボツリヌス毒素、ハイブリッドボツリヌス毒素、およびキメラボツリヌス毒素を意味する。組換えボツリヌス毒素は、非クロストリジウム属種を用いた組換えで作られた、それらの軽鎖および/又は重鎖を有し得る。本明細書で使用するとき、『ボツリヌス毒素』は、血清型A、B、C、D、E、F、G、およびHのボツリヌス毒素を包含する。本明細書で使用するとき、『ボツリヌス毒素』は、ボツリヌス毒素複合体(すなわち、300、600、および900kDaの複合体)および純ボツリヌス毒素(すなわち、約150kDaの神経毒素分子)の両方を包含するが、これらの全てが開示された実施形態の実施に有用である。
【0022】
『クロストリジウム神経毒素』は、Clostridium botulinum、Clostridium butyricum、又はClostridium berattiなどのクロストリジウム属細菌から産生される又はこれらに特有の神経毒素、並びに、非クロストリジウム属種を用いた組換えで作られたクロストリジウム神経毒素を意味する。
【0023】
本明細書で使用するとき、『速効型』は、例えばA型ボツリヌス毒素などから製造されたものよりも迅速に患者で効果を奏するボツリヌス毒素を指す。例えば、速効型ボツリヌス毒素(E型ボツリヌス毒素など)の効果は36時間以内に奏され得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、『高速回復型』は、例えばA型ボツリヌス毒素などから製造されたものよりも迅速に患者で効果が減少するボツリヌス毒素を指す。例えば、高速回復型ボツリヌス毒素(E型ボツリヌス毒素など)の効果は、例えば、120時間、150時間、300時間、350時間、400時間、500時間、600時間、700時間、800時間などの時間内に減少し得る。A型ボツリヌス毒素が、多汗症治療などでの腺の治療に用いられる場合に、12ヶ月までの、場合によっては、27ヶ月にわたる、効力を有し得ることが知られている。しかし、A型ボツリヌス毒素の筋肉内注射の通常の持続時間は典型的には約3から4ヶ月である。
【0025】
『神経毒素』は、神経細胞表面受容体への特異的な親和性を有する生物学的活性分子を意味する。神経毒素は、純毒素としてのクロストリジウム毒素および1つ以上の非毒素の毒素関連タンパク質と複合体化されたものとしてのクロストリジウム毒素の両方を含む。
【0026】
『患者』は、医学的又は獣医学的な治療を受けているヒト又は非ヒト対象を意味する。
【0027】
『医薬組成物』は、有効成分がクロストリジウム毒素であり得る製剤を意味する。『製剤』という言葉は、医薬組成物中に、クロストリジウム(例えば、ボツリヌス神経毒素)有効成分に加えて、少なくとも1つの追加成分(例えば、これらに限定されるわけではないものの、アルブミン(ヒト血清アルブミン又は組換えヒトアルブミン)および/又は塩化ナトリウム)が存在することを意味する。これにより、医薬組成物は、ヒト患者などの対象への、診療のため、治療のため、又は美容のための投与に適した製剤である。医薬組成物は、凍結乾燥又は真空乾燥状態、凍結乾燥又は真空乾燥された医薬組成物を例えば生理食塩水又は水によって再構成した後に形成された溶液、又は、再構成を要しない溶液であり得る。既述のように、医薬組成物は、液体、半固体、又は固体であり得る。医薬組成物は、動物性タンパク質不含であり得る。
【0028】
『精製ボツリヌス毒素』は、ボツリヌス毒素が培養又は発酵処理から取得される際にそれに付随し得る他のタンパク質および不純物から単離又は実質的に単離されたボツリヌス毒素複合体又は純ボツリヌス毒素を意味する。そこで、精製ボツリヌス毒素は、非ボツリヌス毒素タンパク質および不純物の、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも99%が、除去されたものであり得る。
【0029】
『治療製剤』は、障害若しくは疾患および/又はそれらに伴う症状を治療し、それにより、緩和するために用いられ得る製剤を意味する。
【0030】
『治療有効量』は、顕著な負の又は有害な副作用を生じることなく、疾患、障害、又は、状態を治療するために必要とされる、剤(例えば、クロストリジウム毒素、又は、クロストリジウム毒素を含む医薬組成物など)のレベル、量、又は濃度を意味する。
【0031】
『治療』は、負傷若しくは損傷組織の治癒、又は、現存している若しくは認知された、症状、疾患、障害、若しくは状態の、変化、変更、増強、改善、寛解、および/又は、美化などにより、所望の治療又は美容結果を実現するための、症状、疾患、障害、又は状態の、緩和又は減少(ある程度の減少、顕著な減少、ほぼ完全な減少、および完全な減少を含む)、回復又は予防(一時的又は持続的)を意味する。
【0032】
『ユニット』又は『U』は、市販のA型ボツリヌス神経毒素(例えば、Onabotulinumtoxin A (BOTOX(登録商標))の1ユニットと等価の神経筋遮断効果を有するように規格化された有効ボツリヌス毒素神経毒素の量を意味する。
【0033】
(神経毒素組成物)
【0034】
本明細書に開示された実施形態は神経毒素組成物を含む。こうした神経毒素は、任意の医薬的に許容可能な形態である任意の医薬的に許容可能な製剤として製剤化され得る。神経毒素は、任意の製造元により供給される任意の医薬的に許容可能な形態で使用され得る。開示された実施形態は、クロストリジウム神経毒素の使用を含む。
【0035】
クロストリジウム神経毒素は、Clostridium botulinum、Clostridium butyricum、又はClostridium berattiの細菌などの、クロストリジウム細菌により作られ得る。また、神経毒素は、そのアミノ酸の少なくとも1つが、天然型又は野生型の神経毒素と比較して、欠損、修飾、又は置換された神経毒素である改変神経毒素であり得る。さらに、神経毒素は、組換えで産生された神経毒素又は誘導体又はその断片であり得る。
【0036】
開示された実施形態では、神経毒素は、単位剤形として製剤化され、例えば、バイアル詰めの無菌溶液として、又は、注射のために生理食塩水などの適切な溶媒内で再構成するための凍結乾燥粉末を含有するバイアル又は袋として、提供され得る。
【0037】
実施形態では、神経毒素、例えばボツリヌス毒素は、毒素を安定化し非特異的吸収による損失を最小化するパスチャライズされたヒト血清アルブミン(Human Serum Albumin、HSA)および生理食塩水を含有する溶液として製剤化される。この溶液は、無菌凍結乾燥粉末を得るために、無菌濾過(0.2μmフィルター)され、個別のバイアルに充填され、その後、真空乾燥され得る。使用時、この粉末は、保管されたものではない無菌の正常生理食塩水(注射では塩化ナトリウム0.9%)の添加により再構成され得る。
【0038】
ある実施形態では、A型ボツリヌス毒素は、pH6.0で、0.03Mのリン酸ナトリウム、0.12Mの塩化ナトリウム、および1mg/mLのHSAの溶液中での5mLバイアル理論濃度が20ng/mLである注射用無菌溶液として供給される。
【0039】
組成物は、一種類の神経毒素のみを、例えば、A型ボツリヌス毒素のみを含有してもよいが、開示された組成物は、障害を治療することにおいて増強された障害治療効果をもたらし得る2種以上の神経毒素を含み得る。例えば、患者に投与された組成物は、A型およびE型又はA型及びB型ボツリヌス毒素を含み得る。2つの異なる神経毒素を含有する単一の組成物を投与することは、所望の治療効果を達成しながらも当該患者に単一の神経毒素が投与される場合よりも、各神経毒素の有効濃度を減少させることを可能とし得る。この種の『組み合わせ』組成物は、両方の神経毒素の利点をも、例えば、長期の持続時間と組み合わされた速い効果をももたらし得る。
【0040】
患者に投与される組成物は、1つ又は複数の神経毒素と組み合わせて、タンパク質受容体又はイオンチャネルモジュレーターなどの他の医薬有効成分も含有し得る。これらのモジュレーターは、種々のニューロン間での神経伝達の減少に寄与する可能性がある。例えば、組成物は、GABA受容体により仲介される阻害効果を増強するγアミノ酪酸(GABA)A型受容体モジュレーターを含有してもよい。GABA受容体は、細胞膜を横切る電流を効率的に短絡することにより神経活動を阻害する。GABA受容体モジュレーターは、GABA受容体の阻害効果を増強し、ニューロンからの電気的又は化学的な信号伝達を減少させる可能性がある。GABA受容体モジュレーターの例は、ジアゼパム、オキサキセパム、ロラゼパム、プラゼパム、アルプラゾラム、ハラゼアパム(halazeapam)、コルジアゼポキシド、およびクロラゼプ酸などの、ベンゾジアゼピンを含む。組成物は、グルタミン酸受容体により仲介される興奮効果を減少させるグルタミン酸受容体モジュレーターを含んでもよい。グルタミン酸受容体モジュレーターの例は、AMPA、NMDA、および/又は、カイニン酸型グルタミン酸受容体を横切る電流を阻害する剤を含む。さらに、開示された組成物は、エスケタミンを含む。
【0041】
開示された神経毒素組成物は、針又は無針装置を用いて患者に注射され得る。ある種の実施形態では、本方法は、組成物を、個体に、真皮下で、注射することを含む。例えば、投与することは、実施形態では、約30ゲージ針以下の針を介して、組成物を注射することを含んでもよい。実施形態では、例えば2-5mmの先端長を有する23から27ゲージの硬化療法針または同様の針を用いて垂直に注射すべきである。ある種の実施形態では、本方法は、ボツリヌス毒素、例えばA型ボツリヌス毒素を含む組成物を投与することを含む。
【0042】
開示された組成物の投与は、シリンジ、カテーテル、針、および、注射のためのその他の手段により、実行され得る。注射は、治療の必要な哺乳類の身体の任意の区域に行われ得るが、開示された実施形態は、患者の胃及びその付近への注射を意図するものである。注射は、表皮、真皮、脂肪、平滑筋、骨格筋、神経接合部、又は、皮下組織などの、任意の特定区域へのものであり得る。
【0043】
2回以上の注射および/又は2箇所以上の注射部位が、所望の結果を実現するために必要となる可能性もある。また、注射される位置に応じて、注射が、細く中空のTeflon(登録商標)コート針の使用を要することもあるかもしれない。ある種の実施形態では、例えば筋電図、または超音波、または透視下ガイド等によりガイドされる注射が採用される。
【0044】
開示された方法の下での注射の頻度および量は、治療される特定の区域の性質および位置に基づき決定され得る。しかし、ある種の場合では、反復注射が最適の結果を実現するために望ましいかもしれない。個々の症例のそれぞれについての注射の頻度および量は、当業者により決定され得る。
【0045】
投与経路および投与量の例を挙げたが、適切な投与経路および投与量は一般的に主治医により個別的に決定される。例えば、本開示発明に基づくクロストリジウム神経毒素の投与のための経路および投与量は、選択された神経毒素の溶解特性並びに治療される状態の強度および範囲などの判断基準に基づき選択され得る。
【0046】
(使用法)
【0047】
本開示の方法は、胃不全麻痺に関連する症状を予防または緩和するために、例えばクロストリジウム毒素、例えばA型ボツリヌス菌、といった神経毒素を患者に投与することを含みうる。例えば、開示された方法は、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下問題、およびこれらの組み合わせを予防または軽減を含みうる。
【0048】
開示された実施形態は、胃不全麻痺の患者において、胃内容排出の改善および幽門洞圧測定で示される幽門過緊張の軽減を示す方法を含む。
【0049】
開示された方法は、例えば、胃不全麻痺を患っている患者を、例えば幽門括約筋において注射部位を円周方向に局在化および分離する注射パラダイムで治療することを含む。開示された実施形態は、例えば、1から5の間の注射部位、5から10の間の注射部位、5から15の間の注射部位、10から20の間の注射部位等の複数の注射を含みうる。実施形態において、幽門括約筋の注射部位の数は、例えば、3から5の間の注射部位、4から6の間の注射部位、5から7の間の注射部位、6から8の間の注射部位、7から9の間の注射部位、8から10の間の注射部位等を含みうる。
【0050】
実施形態において、幽門括約筋の注射部位の数は、例えば、少なくとも1つの注射部位、少なくとも2つの注射部位、少なくとも3つの注射部位、少なくとも4つの注射部位、少なくとも5つの注射部位、少なくとも6つの注射部位、少なくとも7つの注射部位、少なくとも8つの注射部位、少なくとも9つの注射部位、少なくとも10の注射部位等を含みうる。
【0051】
実施形態において、幽門括約筋の注射部位の数は、例えば、1以下の注射部位、2以下の注射部位、3以下の注射部位、4以下の注射部位、5以下の注射部位、6以下の注射部位、7以下の注射部位、8以下の注射部位、9以下の注射部位、10以下の注射部位等を含みうる。
【0052】
実施形態において、幽門括約筋への注射は、例えば、2mm間隔、3mm間隔、4mm間隔、5mm間隔、6mm間隔、7mm間隔、8mm間隔、9mm間隔、10mm間隔、11mm間隔、12mm間隔、13mm間隔、14mm間隔、15mm間隔、20mm間隔、25mm間隔、30mm間隔等の間隔で配置される。
【0053】
実施形態において、幽門括約筋への注射は、例えば、少なくとも2mm間隔、少なくとも3mm間隔、少なくとも4mm間隔、少なくとも5mm間隔、少なくとも6mm間隔、少なくとも7mm間隔、少なくとも8mm間隔、少なくとも9mm間隔、少なくとも10mm間隔、少なくとも15mm間隔、少なくとも20mm間隔、少なくとも25mm間隔、少なくとも30mm間隔等の間隔で配置される。
【0054】
実施形態において、幽門括約筋への注射は、例えば、2mm以下の間隔、3mm以下の間隔、4mm以下の間隔、5mm以下の間隔、6mm以下の間隔、7mm以下の間隔、8mm以下の間隔、9mm以下の間隔、10mm以下の間隔、15mm以下の間隔、20mm以下の間隔、25mm以下の間隔、30mm以下の間隔等の間隔で配置される。
【0055】
実施形態において、各幽門括約筋注射の深さは、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm等であるべきである。
【0056】
実施形態において、各幽門括約筋注射の深さは、例えば、治療部位である平滑筋の中に1から4mmの間、治療部位である平滑筋の中に2から5mmの間、治療部位である平滑筋の中に3から6mmの間、治療部位である平滑筋の中に4から7mmの間であるべきである。実施形態において、治療効果を最大化し、安全性を確保するために、内視鏡により、例えば2-5mmの先端長を有する23から27ゲージの硬化療法針または同様の針を用いて垂直に注射すべきである。
【0057】
実施形態において、幽門括約筋注射部位間の間隔は一定とすることができる。実施形態において、注射部位間の間隔は、例えば部位が患者の特定の解剖学的構造に適合するために調整され得るように、非一定とすることができる。
【0058】
さらに、開示された実施形態は、胃の大湾曲上の胃底部および近位部上に追加の注射部位を含む。例えば、開示された実施形態は、胃底部および近位部上の1-20の注射部位、胃底部および近位部上の5-25の注射部位、胃底部および近位部上の10-30の注射部位、胃底部および近位部上の15-35の注射部位、胃底部および近位部上の20-40の注射部位、胃底部および近位部上の25-45の注射部位等を含む。
【0059】
開示された実施形態は、例えば、胃底部および近位部上の少なくとも2個の注射部位、胃底部および近位部上の少なくとも4個の注射部位、胃底部および近位部上の少なくとも6個の注射部位、胃底部および近位部上の少なくとも8個の注射部位、胃底部および近位部上の少なくとも12個の注射部位、胃底部および近位部上の少なくとも16個の注射部位、胃底部および近位部への少なくとも20個の注射部位、胃底部および近位部への少なくとも24個の注射部位、胃底部および近位部への少なくとも28個の注射部位、胃底部および近位部への少なくとも32個の注射部位、胃底部および近位部への少なくとも36個の注射部位、胃底部および近位部への少なくとも40個の注射部位等を含む。
【0060】
開示された実施形態は、例えば、胃底部および近位部上の4個以下の注射部位、胃底部および近位部上の6個以下の注射部位、胃底部および近位部上の8個以下の注射部位、胃底部および近位部上の12個以下の注射部位、胃底部および近位部上の16個以下の注射部位、胃底部および近位部上の20個以下の注射部位、胃底部および近位部上の24個以下の注射部位、胃底部および近位部上の28個以下の注射部位、胃底部および近位部上の32個以下の注射部位、胃底部および近位部上の36個以下の注射部位、胃底部および近位部上の40個以下の注射部位等である。
【0061】
実施形態において、胃底部および近位部上の注射は、例えば、2mm間隔、3mm間隔、4mm間隔、5mm間隔、6mm間隔、7mm間隔、8mm間隔、9mm間隔、10mm間隔、11mm間隔、12mm間隔、13mm間隔、14mm間隔、15mm間隔、20mm間隔、25mm間隔、30mm間隔等の間隔で配置される。
【0062】
実施形態において、胃底部および近位部上の注射は、例えば、少なくとも2mm間隔、少なくとも3mm間隔、少なくとも4mm間隔、少なくとも5mm間隔、少なくとも6mm間隔、少なくとも7mm間隔、少なくとも8mm間隔、少なくとも9mm間隔、少なくとも10mm間隔、少なくとも15mm間隔、少なくとも20mm間隔、少なくとも25mm間隔、少なくとも30mm間隔等の間隔で配置される。
【0063】
実施形態において、胃底部および近位部上の注射は、例えば、2mm以下の間隔、3mm以下の間隔、4mm以下の間隔、5mm以下の間隔、6mm以下の間隔、7mm以下の間隔、8mm以下の間隔、9mm以下の間隔、10mm以下の間隔、15mm以下の間隔、20mm以下の間隔、25mm以下の間隔、30mm以下の間隔等の間隔で配置される。
【0064】
実施形態において、胃底部および近位部の注射部位間の間隔は、一定とすることができる。実施形態において、注射部位間の間隔は、例えばかかる部位が患者の特定の解剖学的構造に適合するために調整され得るように、非一定とすることができる。
【0065】
実施形態において、各胃底部および近位部注射の深さは、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm等とすべきである。
【0066】
実施形態において、各胃底部および近位部注射の深さは、例えば、治療部位の平滑筋の中に1から4mmの間、治療部位の平滑筋の中に2から5mmの間、治療部位の平滑筋の中に3から6mmの間、治療部位の平滑筋の中に4から7mmの間とすべきである。実施形態において、治療効果を最大化し、安全性を確保するために、内視鏡により、例えば2-5mmの先端長を有する23から27ゲージの硬化療法針または同様の針を用いて垂直に注射すべきである。
【0067】
さらに、開示された実施形態は、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に、追加の注射部位を含む。例えば、開示された実施形態は、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に1-20個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に5-25個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に10-30個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に15-35個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に20-40個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に25-45個の注射部位等を含む。
【0068】
開示された実施形態は、例えば、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも2個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも4個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも6個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも8個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも12個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも16個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも20個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも24個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも28個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも32個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも36個の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に少なくとも40個の注射部位等を含む。
【0069】
開示された実施形態は、例えば、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に4個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に6個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に8個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に12個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に16個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に20個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に24個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に28個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に32個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に36個以下の注射部位、幽門洞および/または幽門管および/または十二指腸上に40個以下の注射部位等を含む。
【0070】
実施形態において、幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸上の注射は、例えば、2mm間隔、3mm間隔、4mm間隔、5mm間隔、6mm間隔、7mm間隔、8mm間隔、9mm間隔、10mm間隔、11mm間隔、12mm間隔、13mm間隔、14mm間隔、15mm間隔、20mm間隔、25mm間隔、30mm間隔等の間隔で配置される。
【0071】
実施形態において、幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸上の注射は、例えば、少なくとも2mm間隔、少なくとも3mm間隔、少なくとも4mm間隔、少なくとも5mm間隔、少なくとも6mm間隔、少なくとも7mm間隔、少なくとも8mm間隔、少なくとも9mm間隔、少なくとも10mm間隔、少なくとも15mm間隔、少なくとも20mm間隔、少なくとも25mmから間隔、少なくとも30mm間隔等の間隔で配置される。
【0072】
実施形態において、幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸上の注射は、例えば、2mm以下の間隔、3mm以下の間隔、4mm以下の間隔、5mm以下の間隔、6mm以下の間隔、7mm以下の間隔、8mm以下の間隔、9mm以下の間隔、10mm以下の間隔、15mm以下の間隔、20mm以下の間隔、25mm以下の間隔、30mm以下の間隔等の間隔で配置される。
【0073】
実施形態において、幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸の注射部位の間の間隔は、一定とすることができる。実施形態において、注射部位間の間隔は、例えばかかる部位が患者の特定の解剖学的構造に適合するために調整され得るように、非一定とすることができる。
【0074】
実施形態において、各幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸の注射の深さは、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm等とすべきである。
【0075】
実施形態において、各幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸の注射の深さは、例えば、治療部位の平滑筋の中に1から4mmの間、治療部位の平滑筋の中に2から5mmの間、治療部位の平滑筋の中に3から6mmの間、治療部位の平滑筋の中に4から7mmの間とすべきである。実施形態において、治療効果を最大化し、安全性を確保するために、内視鏡により、例えば2-5mmの先端長を有する23から27ゲージの硬化療法針または同様の針を用いて垂直に注射すべきである。
【0076】
開示された実施形態は、固形食物および液体を制御された方法で胃から通過させる幽門括約筋の弁様機能および食事に応答する胃底部の制御された弛緩の両方を制御し、早期満腹および胃不全麻痺の他の基幹徴候および症状を予防する、分離された平滑筋に、治療有効量の神経毒素を提供する。
【0077】
実施形態において、神経毒素、例えばA型ボツリヌス菌は、例えば、100U当たり1から5mLの間、または100U当たり2から4mLの間等に希釈され得る。
【0078】
神経毒素の有効性および安全性を最大にするために、幽門括約筋の標的部位に50から200U、胃の底部および近位部の標的部位に50から200Uの合計投与量を投与することによる、初期の治療において、神経毒素に対する患者の感受性および耐性は決定されうる。
【0079】
さらに、開示された方法は、第1のボツリヌス毒素投与量を幽門括約筋に投与するステップ;第2のボツリヌス毒素投与量を幽門管および/または幽門洞を含む幽門部に投与するステップ;および第3のボツリヌス毒素投与量を胃底部および近位部に投与するステップ、を含む胃不全麻痺を治療する方法であって、それによって、腹痛または不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、およびそれらの組み合わせを含む障害の少なくとも1つまたは複数の症状の重症度を低下させる方法、を含む。
【0080】
さらに、開示された方法は、第1のボツリヌス毒素投与量を幽門括約筋の中に投与すること、第2のボツリヌス毒素投与料を幽門管および/または幽門洞を含む幽門部に投与すること、および第3のボツリヌス毒素投与を十二指腸に投与すること、を含む胃不全麻痺を治療する方法であって、それによって、腹痛または不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、およびそれらの組み合わせを含む障害の少なくとも1つまたは複数の症状の重症度を低下させる方法、を含む。
【0081】
さらに、開示された方法は、胃不全麻痺の治療方法であって、
a.幽門括約筋にボツリヌス毒素投与量を投与すること、
b.幽門管にボツリヌス毒素投与量を投与すること、
c.初回またはフォローアップ治療の間に、十二指腸にボツリヌス毒素を投与すること(小腸での化学的消化および吸収の準備を支援するため)、および
d.任意に、ボツリヌス毒素投与量を胃底部、近位部および/または幽門洞に注射し、それによって、腹痛または不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、およびそれらの組み合わせを含む障害の少なくとも一つまたは複数の症状の重症度が減少すること、を順次含む方法を含む。
【0082】
(神経毒素の投薬)
【0083】
神経毒素は、約10-3U/kgと約35U/kgとの間の量で投与することができる。実施形態では、神経毒素は、約10-2U/kgと約25U/kgとの間の量で投与される。別の実施形態では、神経毒素は、約10-1U/kgと約15U/kgとの間の量で投与される。別の実施形態において、神経毒素は、約1U/kgと約10U/kgとの間の量で投与される。多くの実施例において、約1ユニットから約300ユニットのA型ボツリヌス菌などの神経毒素の投与は、有効な治療による軽減を提供する。実施形態において、約50ユニットから約400ユニットのA型ボツリヌス菌などの神経毒素を使用することができ、別の実施形態では、約100ユニットから約300ユニットのA型ボツリヌス菌などの神経毒素を標的組織内に局所的に投与することができる。
【0084】
実施形態において、投与は、治療セッションあたりの総投与量として、約100ユニット、約110ユニット、約120ユニット、約130ユニット、約140ユニット、約150ユニット、約160ユニット、約170ユニット、約180ユニット、約190ユニット、約200ユニット、約210ユニット、約220ユニット、約230ユニット、約240ユニット、約250ユニット、約260ユニット、約270ユニット、約280ユニット、約290ユニット、約300ユニット、約320ユニット、約340ユニット、約360ユニット、約380ユニット、約400ユニット、約450ユニット、約500ユニット等のボツリヌス神経毒素、を含むことができる。
【0085】
実施形態において、投与は、治療セッションあたりの総投与量として、100ユニット以上、110ユニット以上、120ユニット以上、130ユニット以上、140ユニット以上、150ユニット以上、160ユニット以上、170ユニット以上、180ユニット以上、190ユニット以上、200ユニット以上、210ユニット以上、220ユニット以上、230ユニット以上、240ユニット以上、250ユニット以上、260ユニット以上、270ユニット以上、280ユニット以上、290ユニット以上、300ユニット以上、320ユニット以上、340ユニット以上、360ユニット以上、380ユニット以上、400ユニット以上、450ユニット以上、または500ユニット以上等のボツリヌス神経毒素、を含むことができる。
【0086】
実施形態において、投与は、治療セッションあたりの総投与量として、100ユニット以下、110ユニット以下、120ユニット以下、130ユニット以下、140ユニット以下、150ユニット以下、160ユニット以下、170ユニット以下、180ユニット以下、190ユニット以下、200ユニット以下、210ユニット以下、220ユニット以下、230ユニット以下、240ユニット以下、250ユニット以下、260ユニット以下、270ユニット以下、280ユニット以下、290ユニット以下、300ユニット以下、320ユニット以下、340ユニット以下、360ユニット以下、380ユニット以下、400ユニット以下、450ユニット以下、または500ユニット以下等のボツリヌス神経毒素、を含むことができる。
【0087】
実施形態において、幽門括約筋における標的部位に投与される総投与量は、約30ユニット、約40ユニット、約50ユニット、約60ユニット、約70ユニット、約80ユニット、約90ユニット、約100ユニット、約110ユニット、約120ユニット、約130ユニット、約140ユニット、約150ユニット、約160ユニット、約170ユニット、約180ユニット、約190ユニット、約200ユニット、約210ユニット、約220ユニット、約230ユニット、約240ユニット、約250ユニット、約260ユニット、約270ユニット、約280ユニット、約290ユニット、約300ユニット等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0088】
実施形態において、幽門括約筋における標的部位に投与される総投与量は、少なくとも30ユニット、少なくとも40ユニット、少なくとも50ユニット、少なくとも60ユニット、少なくとも70ユニット、少なくとも80ユニット、少なくとも90ユニット、少なくとも100ユニット、少なくとも110ユニット、少なくとも120ユニット、少なくとも130ユニット、少なくとも140ユニット、少なくとも150ユニット、少なくとも160ユニット、少なくとも170ユニット、少なくとも180ユニット、少なくとも190ユニット、少なくとも200ユニット、少なくとも210ユニット、少なくとも220ユニット、少なくとも230ユニット、少なくとも240ユニット、少なくとも250ユニット、少なくとも260ユニット、少なくとも270ユニット、少なくとも280ユニット、少なくとも290ユニット、少なくとも300ユニット等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0089】
実施形態において、幽門括約筋における標的部位に投与される総投与量は、30ユニット以下、40ユニット以下、50ユニット以下、60ユニット以下、70ユニット以下、80ユニット以下、90ユニット以下、100ユニット以下、110ユニット以下、120ユニット以下、130ユニット以下、140ユニット以下、150ユニット以下、160ユニット以下、170ユニット以下、180ユニット以下、190ユニット以下、200ユニット以下、210ユニット以下、220ユニット以下、230ユニット以下、240ユニット以下、250ユニット以下、260ユニット以下、270ユニット以下、280ユニット以下、290ユニット以下、300ユニット以下等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0090】
実施形態において、胃の底部および近位部における標的部位に投与される総投与量は、約30ユニット、約40ユニット、約50ユニット、約60ユニット、約70ユニット、約80ユニット、約90ユニット、約100ユニット、約110ユニット、約120ユニット、約130ユニット、約140ユニット、約150ユニット、約160ユニット、約170ユニット、約180ユニット、約190ユニット、約200ユニット、約210ユニット、約220ユニット、約230ユニット、約240ユニット、約250ユニット、約260ユニット、約270ユニット、約280ユニット、約290ユニット、約300ユニット等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0091】
実施形態において、胃の底部および近位部における標的部位に投与される総投与量は、少なくとも30ユニット、少なくとも40ユニット、少なくとも50ユニット、少なくとも60ユニット、少なくとも70ユニット、少なくとも80ユニット、少なくとも90ユニット、少なくとも100ユニット、少なくとも110ユニット、少なくとも120ユニット、少なくとも130ユニット、少なくとも140ユニット、少なくとも150ユニット、少なくとも160ユニット、少なくとも170ユニット、少なくとも180ユニット、少なくとも190ユニット、少なくとも200ユニット、少なくとも210ユニット、少なくとも220ユニット、少なくとも230ユニット、少なくとも240ユニット、少なくとも250ユニット、少なくとも260ユニット、少なくとも270ユニット、少なくとも280ユニット、少なくとも290ユニット、少なくとも300ユニット等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0092】
実施形態において、胃の底部および近位部における標的部位に投与される総投与量は、30ユニット以下、40ユニット以下、50ユニット以下、60ユニット以下、70ユニット以下、80ユニット以下、90ユニット以下、100ユニット以下、110ユニット以下、120ユニット以下、130ユニット以下、140ユニット以下、150ユニット以下、160ユニット以下、170ユニット以下、180ユニット以下、190ユニット以下、200ユニット以下、210ユニット以下、220ユニット以下、230ユニット以下、240ユニット以下、250ユニット以下、260ユニット以下、270ユニット以下、280ユニット以下、290ユニット以下、300ユニット以下等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0093】
実施形態において、幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸における標的部位に投与される総投与量は、約30ユニット、約40ユニット、約50ユニット、約60ユニット、約70ユニット、約80ユニット、約90ユニット、約100ユニット、約110ユニット、約120ユニット、約130ユニット、約140ユニット、約150ユニット、約160ユニット、約170ユニット、約180ユニット、約190ユニット、約200ユニット、約210ユニット、約220ユニット、約230ユニット、約240ユニット、約250ユニット、約260ユニット、約270ユニット、約280ユニット、約290ユニット、約300ユニット等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0094】
実施形態において、幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸における標的部位に投与される総投与量は、少なくとも30ユニット、少なくとも40ユニット、少なくとも50ユニット、少なくとも60ユニット、少なくとも70ユニット、少なくとも80ユニット、少なくとも90ユニット、少なくとも100ユニット、少なくとも110ユニット、少なくとも120ユニット、少なくとも130ユニット、少なくとも140ユニット、少なくとも150ユニット、少なくとも160ユニット、少なくとも170ユニット、少なくとも180ユニット、少なくとも190ユニット、少なくとも200ユニット、少なくとも210ユニット、少なくとも220ユニット、少なくとも230ユニット、少なくとも240ユニット、少なくとも250ユニット、少なくとも260ユニット、少なくとも270ユニット、少なくとも280ユニット、少なくとも290ユニット、少なくとも300ユニット等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0095】
実施形態において、幽門洞および/又は幽門管および/又は十二指腸における標的部位に投与される総投与量は、30ユニット以下、40ユニット以下、50ユニット以下、60ユニット以下、70ユニット以下、80ユニット以下、90ユニット以下、100ユニット以下、110ユニット以下、120ユニット以下、130ユニット以下、140ユニット以下、150ユニット以下、160ユニット以下、170ユニット以下、180ユニット以下、190ユニット以下、200ユニット以下、210ユニット以下、220ユニット以下、230ユニット以下、240ユニット以下、250ユニット以下、260ユニット以下、270ユニット以下、280ユニット以下、290ユニット以下、300ユニット以下等のボツリヌス神経毒素、とすることができる。
【0096】
実施形態において、投与は、1年の総投与量として、800ユニット以下、900ユニット以下、1000ユニット以下、1200ユニット以下、1400ユニット以下等の神経毒素、例えばA型ボツリヌス神経毒素、を含むことができる。
【0097】
実施形態において、神経毒素の投与量は、タンパク質量または濃度で表される。例えば、実施形態では、神経毒素は、約.2ngと20ngとの間の量で投与することができる。実施形態では、神経毒素は、約.3ngと19ngと、約.4ngと18ngと、約.5ngと17ngと、約.6ngと16ngと、約.7ngと15ngと、約.8ngと14ngと、約.9ngと13ngと、約1.0ngと12ngと、約1.5ngと11ngと、約2ngと10ngと、約5ngと7ngと、等の間の量で、筋肉などの標的組織内に投与される。
【0098】
しかし、最終的には、投与される毒素の量およびその投与の頻度の両方は、治療に責任を負う医師の裁量に委ねられ、安全性および毒素によって生じる効果の問題に見合ったものとなる。
【0099】
開示された実施形態は、繰り返すことができる治療法を含む。例えば、患者が胃不全麻痺の症状を経験し始めた場合、繰り返し治療を行うことができる。しかし、好ましい実施形態は、症状の再発の前に治療を繰り返すことを含む。したがって、開示された実施形態は、例えば、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、18週間、20週間、22週間、24週間、またはそれ以上後に、治療を繰り返すことを含んでいる。繰り返し治療は、前の治療で使用された投与部位と異なる投与部位を含むことができる。
【0100】
本開示に記載の実施形態では、特定の期間にわたって所定の速度で生体内に神経毒素を送達するために、放出制御システムを使用することができる。放出制御システムは、担体に組み込まれた神経毒素を含むことができる。担体は、ポリマーまたはバイオセラミック材料とすることができる。放出制御システムは、患者の身体の選択された場所に注射、挿入または移植することができ、神経毒素が所望の治療効果を提供する方法および濃度でインプラントによって放出される間、長期間そこにとどまることができる。
【0101】
高分子材料は、拡散、化学反応または溶媒の活性化、ならびに磁気、超音波または温度変化といった要因によって神経毒素を放出することができる。拡散は、リザーバーまたはマトリックスからとすることができる。化学的制御は、ポリマーの分解またはポリマーからの薬物の開裂に起因することができる。溶媒の活性化は、ポリマーの膨潤または浸透効果を伴うことができる。
【0102】
開示された実施形態を実施するためのキットも、本開示に含まれる。キットは、30ゲージまたはそれより小さい針および対応するシリンジを含むことができる。キットはまた、A型ボツリヌス毒素組成物などのクロストリジウム神経毒素組成物を含むことができる。神経毒素組成物は、シリンジ内に提供されてもよい。組成物は、針を通して注射可能である。キットは、シリンジおよび針のサイズ、ならびにそこに含まれる注射用組成物の体積に基づいて様々な形態で設計され、これらは、キットが治療するために設計されている特定の症状に基づいている。
【0103】
(実施例)
以下の非限定的な実施例は、代表的な実施形態のより完全な理解を促すために、例示の目的でのみ提供されるものである。実施例は、本開示に記載された実施形態のいずれをも限定するものと解釈されるべきではない。
【0104】
(実施例1)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計50Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、A型ボツリヌス菌計100Uを胃底部および近位部の30箇所(10mm間隔)に注射され、治療される。患者は、治療後8週間、嘔吐や酸の逆流が減少したと報告する。
【0105】
(実施例2)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、E型ボツリヌス菌計80Uを幽門括約筋の円周上3箇所(8mm間隔)に、A型ボツリヌス菌計120Uを胃底部および近位部の20箇所(10mm間隔)に注射される。患者は、治療後10週間、腹痛が減少したと報告する。
【0106】
(実施例3)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計100Uを幽門括約筋の円周上7箇所に、A型ボツリヌス菌計100Uを胃底部および近位部の30箇所(10mm間隔)に注射され、治療される。患者は、治療後16週間、膨満感の減少を報告する。
【0107】
(実施例4)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌合計160Uを幽門括約筋の円周上5箇所に、A型ボツリヌス菌合計80Uを胃底部および近位部の20箇所(10mm間隔)に注射され、治療される。患者は、治療後18週間、膨満感の減少を報告する。
【0108】
(実施例5)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計50Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所に、A型ボツリヌス菌計50Uを幽門洞および幽門管の8箇所(各4箇所)に、およびA型ボツリヌス菌計100Uを胃底部および近位部の30箇所に注射され、治療される。患者は、治療後8週間、嘔吐および酸の逆流の減少を報告する。
【0109】
(実施例6)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計80Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、A型ボツリヌス菌30Uを幽門洞の8箇所、A型ボツリヌス菌計70Uを胃底部および近位部の30箇所(10mm間隔で)に注射され、治療される。患者は、腹痛および吐き気の減少を報告する。
【0110】
(実施例7)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計80Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて7箇所、A型ボツリヌス菌40Uを幽門管の8箇所、およびA型ボツリヌス菌計120Uを胃底部および近位部の30箇所(10mm間隔で)に注射され、治療される。患者は、治療後12週間、膨張感および下痢の減少を報告する。
【0111】
(実施例8)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、B型ボツリヌス菌計50Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、A型ボツリヌス菌計50Uを幽門洞および幽門管の8箇所(各4箇所)、およびE型ボツリヌス菌計100Uを胃底部および近位部の30箇所(10mm間隔)に注射され、治療される。患者は、治療後6週間、腹痛および腹部膨張感膨張感の減少を報告する。
【0112】
(実施例9)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、F型ボツリヌス菌計50Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、E型ボツリヌス菌計50Uを幽門洞の8箇所、A型ボツリヌス菌計100Uを胃底部および近位部の30箇所(10mm間隔で)に注射され、治療される。患者は、治療後8週間、膨張感の減少を報告する。
【0113】
(実施例10)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、F型ボツリヌス菌計50Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて6箇所、E型ボツリヌス菌計60Uを幽門管の9箇所、およびB型ボツリヌス菌計90Uを胃底部および近位部の30箇所(10mm間隔)に注射され、治療される。患者は、治療後14週間、酸の逆流の減少を報告する。
【0114】
(実施例11)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計100Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、A型ボツリヌス菌計50Uを幽門洞および幽門管の8箇所(各4箇所)、A型ボツリヌス菌計100Uを十二指腸の30箇所に注射され、治療される。患者は、治療後8週間、嘔吐および酸の逆流の減少を報告する。
【0115】
(実施例12)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計120Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、A型ボツリヌス菌計30Uを幽門洞の8箇所、A型ボツリヌス菌計70Uを十二指腸の10箇所に注射され、治療される。患者は、腹痛および吐き気の減少を報告する。
【0116】
(実施例13)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計160Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて7箇所、A型ボツリヌス菌計40Uを幽門管の8箇所、およびA型ボツリヌス菌計100Uを十二指腸の15箇所に注射され、治療される。患者は治療後12週間、膨張感および下痢の減少を報告する。
【0117】
(実施例14)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、B型ボツリヌス菌計150Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、A型ボツリヌス菌計50Uを幽門洞および幽門管の8箇所(各4箇所)、およびE型ボツリヌス菌計100Uを十二指腸の20箇所に注射され、治療される。患者は、治療後6週間、腹痛および腹部膨張感の減少を報告する。
【0118】
(実施例15)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、F型ボツリヌス菌計150Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて5箇所、E型ボツリヌス菌計50Uを幽門管の8箇所、およびA型ボツリヌス菌計100Uを十二指腸の20箇所に注射され、治療される。患者は、治療後8週間、膨満感の減少を報告する。
【0119】
(実施例16)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、F型ボツリヌス菌計150Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて6箇所、E型ボツリヌス菌計60Uを幽門管の9箇所、B型ボツリヌス菌計90Uを十二指腸の18箇所に注射され、治療される。患者は、治療後14週間、酸の逆流の減少を報告する。
【0120】
(実施例17)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、F型ボツリヌス菌計150Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて6箇所、E型ボツリヌス菌計60Uを幽門管の9箇所、B型ボツリヌス菌計90Uを十二指腸の30箇所に注射され、治療される。
【0121】
初回治療から2週間後にフォローアップ治療が行われる。フォローアップ治療において、A型ボツリヌス菌70Uが胃底部の10箇所に注射により投与される。
【0122】
患者は、治療後14週間、吐き気の減少を報告する。
【0123】
(実施例18)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、A型ボツリヌス菌計180Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて8箇所に注射し、その後A型ボツリヌス菌計60Uを幽門管の6箇所に注射し、その後A型ボツリヌス菌計90Uを十二指腸の30箇所に注射され、治療される。
【0124】
初回治療から2週間後にフォローアップ治療が行われる。フォローアップ治療において、A型ボツリヌス菌50Uが胃底部および近位部の16箇所に注射により投与される。
【0125】
患者は、治療後10週間、嘔吐の減少を報告する。
【0126】
(実施例19)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、B型ボツリヌス菌計120Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて12箇所に注射され、その後A型ボツリヌス菌計40Uを幽門管の8箇所に注射され、その後A型ボツリヌス菌計60Uを十二指腸の20箇所に注射され、治療される。
【0127】
初回治療から3週間後にフォローアップ治療が行われる。フォローアップ治療において、B型ボツリヌス菌50Uが胃底部および近位部の10箇所に注射により投与される。
【0128】
患者は、治療後20週間、胃痛の減少を報告する。
【0129】
(実施例20)
胃不全麻痺の治療
胃不全麻痺患者は、内視鏡ガイド下で、E型ボツリヌス菌計140Uを幽門括約筋の円周上に間隔をおいて16箇所に注射され、その後E型ボツリヌス菌計40Uを幽門管の8箇所に注射され、その後E型ボツリヌス菌計60Uを十二指腸の20箇所に注射され、治療される。
【0130】
初回治療から3週間後にフォローアップ治療が行われる。フォローアップ治療において、E型ボツリヌス菌80Uが胃底部および近位部の20箇所に注射により投与される。
【0131】
患者は、治療後14週間、一時的な胃の腫れの減少を報告する。
【0132】
最後に、本明細書の側面は特定の実施形態を参照することによって強調されているが、当業者は、これらの開示された実施形態が本開示の内容の原理を例示するに過ぎないことを容易に理解する。したがって、開示された内容は、本開示に記載される特定の方法論、プロトコル、及び/又は試薬等に決して限定されないことを理解されたい。このように、本明細書の精神から逸脱することなく、本開示の教示に従って、開示された内容の様々な修正又は変更又は代替構成を行うことができる。最後に、本開示で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。したがって、本開示の実施形態は、まさに図示及び説明されているものに限定されない。
【0133】
特定の実施形態は、本開示に記載された方法及び装置を実施するために本発明者に知られている最良の態様を含み、本開示に記載されている。もちろん、これらの記載された実施形態に対する変形は、前述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。したがって、本開示は、適用される法律によって許可される、本明細書に添付された請求項に記載された主題のすべての変更および等価物を構成する。さらに、そのすべての可能な変形における、上述の実施形態の任意の組み合わせは、別に本開示に示される場合、または文脈によって明らかに矛盾する場合を除き、本開示に包まれる。
【0134】
本開示の代替的な実施形態、要素、またはステップのグループは、限定として解釈されない。各グループメンバーは、個別に、または本開示の他のグループメンバーとの任意の組み合わせで、参照および請求されてもよい。利便性及び/又は特許性の理由から、グループの1つ又は複数のメンバーがグループに包含され、またはグループから削除され得ることが予想される。そのような包含または削除が行われる場合、本明細書は、修正されたグループを含むとみなされ、したがって、添付の請求項で使用されるすべてのマーカッシュグループの記述に合致する。
【0135】
特に指示しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特性、項目、量、パラメータ、特性、用語などを表すすべての数値は、すべての場合において、用語「約」によって修正されるものと理解される。本開示で使用する場合、用語「約」は、そのように修飾された特性、項目、量、パラメータ、特性、または用語が、記載された特性、項目、量、パラメータ、特性、または用語の値の上下にプラスまたはマイナス10パーセントの範囲を包むことを意味している。従って、反対の指示がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、変動しうる概算値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値表示は、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め技術を適用することにより解釈されるべきものである。本開示の広い範囲を示す数値範囲および数値が近似値であるにもかかわらず、具体例に示される数値範囲および数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、どの数値範囲または値も、本質的に、それぞれの試験測定に見られる標準偏差に起因する一定の誤差を必然的に含む。本書における数値範囲の記載は、単にその範囲に含まれる各個別の数値に個別に言及するための略記法として機能することを意図しています。本明細書で特に指示しない限り、数値範囲の各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0136】
本開示を説明する文脈で(特に以下の請求項の文脈で)使用される用語「a」、「an」、「the」、及び同様の参照語は、本明細書で特に示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数と複数の双方を含むと解釈される。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別途示されるか、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をより良く明らかにすることを意図しており、他に主張される範囲に限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、本開示の実施形態の実施に不可欠な非請求項の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0137】
本開示の特定の実施形態は、特許請求の範囲において、含むまたは、から本質的になる、の文言を用いてさらに限定することができる。特許請求の範囲において使用される場合、出願時のものであれ、補正により追加されたものであれ、移行句「含む」は、特許請求の範囲に規定されていない要素、ステップ、または成分を除外する。移行句「から本質的になる」は、請求項の範囲を、指定された材料またはステップと、基本的かつ新規な特性(複数可)に重大な影響を与えないものに限定する。このように請求された本開示の実施形態は、本開示において本質的にまたは明示的に説明され、有効化される。
【0138】
(付記)
(付記1)
胃不全麻痺を治療する方法であって、
第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋へ投与するステップ、および、
第2のボツリヌス毒素を胃底部および近位部へ投与するステップ、
を含み、
それによって、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させる、
方法。
【0139】
(付記2)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、付記1に記載の方法。
【0140】
(付記3)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、付記2に記載の方法。
【0141】
(付記4)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型、C型、E型、又はF型ボツリヌス毒素を含む、付記1記載の方法。
【0142】
(付記5)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、付記4に記載の方法。
【0143】
(付記6)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、付記4に記載の方法。
【0144】
(付記7)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、付記4に記載の方法。
【0145】
(付記8)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、付記4に記載の方法。
【0146】
(付記9)
前記第1及び第2のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、注射によって投与される、付記2~8のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
(付記10)
前記胃不全麻痺が、特発性胃不全麻痺を含む、付記9に記載の方法。
【0148】
(付記11)
前記胃不全麻痺が、糖尿病性胃不全麻痺を含む、付記9に記載の方法。
【0149】
(付記12)
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、付記9に記載の方法。
【0150】
(付記13)
前記症状が腹痛を含む、付記12に記載の方法。
【0151】
(付記14)
前記症状が吐き気を含む、付記12に記載の方法。
【0152】
(付記15)
前記症状が嘔吐を含む、付記12に記載の方法。
【0153】
(付記16)
前記症状が下痢を含む、付記12に記載の方法。
【0154】
(付記17)
前記症状が酸逆流を含む、付記12に記載の方法。
【0155】
(付記18)
前記症状が胃の腫れを含む、付記12に記載の方法。
【0156】
(付記19)
前記第1のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記1に記載の方法。
【0157】
(付記20)
前記第1のボツリヌス毒素が、75から150ユニットの間の量で投与される、付記1に記載の方法。
【0158】
(付記21)
前記第2のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記1に記載の方法。
【0159】
(付記22)
胃不全麻痺を治療する方法であって、
第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋に投与するステップ、
第2のボツリヌス毒素を幽門洞及び幽門管の少なくとも一つに投与するステップ、および、
第3のボツリヌス毒素を胃底部および近位部に投与するステップ、
を含み、
それによって、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させる、
方法
【0160】
(付記23)
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、付記22に記載の方法。
【0161】
(付記24)
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、付記23に記載の方法。
【0162】
(付記25)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B、C、E又はF型ボツリヌス毒素を含む、付記22に記載の方法。
【0163】
(付記26)
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、付記25に記載の方法。
【0164】
(付記27)
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、付記25に記載の方法。
【0165】
(付記28)
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、付記25に記載の方法。
【0166】
(付記29)
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、付記25に記載の方法。
【0167】
(付記30)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、注射によって投与される、付記23に記載の方法。
【0168】
(付記31)
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、付記30に記載の方法。
【0169】
(付記32)
前記症状が腹痛を含む、付記31に記載の方法。
【0170】
(付記33)
前記症状が吐き気を含む、付記31に記載の方法。
【0171】
(付記34)
前記症状が嘔吐を含む、付記31に記載の方法。
【0172】
(付記35)
前記症状が下痢を含む、付記31に記載の方法。
【0173】
(付記36)
前記症状が酸逆流を含む、付記31に記載の方法。
【0174】
(付記37)
前記第1のボツリヌス毒素が、50ユニット以上200ユニット以下の量で投与される、付記22に記載の方法。
【0175】
(付記38)
前記第2のボツリヌス毒素が、50ユニットから200ユニットの間の量で投与される、付記22に記載の方法。
【0176】
(付記39)
前記第3のボツリヌス毒素が、50ユニットから200ユニットの間の量で投与される、付記22に記載の方法。
【0177】
(付記40)
胃不全麻痺を治療する方法であって、
第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋に投与するステップ;および、
第2のボツリヌス毒素を幽門及び幽門管の少なくとも一つに投与するステップ、
第3のボツリヌス毒素を十二指腸に投与するステップ、
を含み、
それによって、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させる、
方法。
【0178】
(付記41)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、付記40に記載の方法。
【0179】
(付記42)
前記第1、第2、及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、付記41に記載の方法。
【0180】
(付記43)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B、C、E又はF型ボツリヌス毒素を含む、付記40に記載の方法。
【0181】
(付記44)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、付記43に記載の方法。
【0182】
(付記45)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、付記43に記載の方法。
【0183】
(付記46)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、付記43に記載の方法。
【0184】
(付記47)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、付記43に記載の方法。
【0185】
(付記48)
前記第1、第2及び第3のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、注射によって投与される、付記41に記載の方法。
【0186】
(付記49)
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、飲み込む問題、及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む、付記48に記載の方法。
【0187】
(付記50)
前記症状が腹痛を含む、付記49に記載の方法。
【0188】
(付記51)
前記症状が吐き気を含む、付記49に記載の方法。
【0189】
(付記52)
前記症状が嘔吐を含む、付記49に記載の方法。
【0190】
(付記53)
前記症状が下痢を含む、付記49に記載の方法。
【0191】
(付記54)
前記症状が酸逆流を含む、付記49に記載の方法。
【0192】
(付記55)
前記第1のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記40に記載の方法。
【0193】
(付記56)
前記第2のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記40に記載の方法。
【0194】
(付記57)
前記第3のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記40に記載の方法。
【0195】
(付記58)
胃不全麻痺を治療する方法であって、
a)第1のボツリヌス毒素を幽門括約筋に投与するステップ、
b)第2のボツリヌス毒素を幽門管に投与するステップ、
c)第3のボツリヌス毒素を十二指腸に投与するステップ、
d)これにより、障害の少なくとも1つの症状の重症度を減少させるステップ、
を含む、
方法。
【0196】
(付記59)
第4のボツリヌス毒素を、胃底部、近位部、及び幽門洞の少なくとも1つに投与することをさらに含む、付記58に記載の方法。
【0197】
(付記60)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、A型ボツリヌス毒素を含む、付記58又は59に記載の方法。
【0198】
(付記61)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、天然免疫型Aを含む、付記60に記載の方法。
【0199】
(付記62)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B、C、E又はF型ボツリヌス毒素を含む、付記58又は59に記載の方法。
【0200】
(付記63)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、B型ボツリヌス毒素を含む、付記62に記載の方法。
【0201】
(付記64)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、C型ボツリヌス毒素を含む、付記62に記載の方法。
【0202】
(付記65)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、E型ボツリヌス毒素を含む、付記62に記載の方法。
【0203】
(付記66)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが、F型ボツリヌス毒素を含む、付記62に記載の方法。
【0204】
(付記67)
前記第1、第2、第3及び第4のボツリヌス毒素の少なくとも1つが注射によって投与される、付記58又は59に記載の方法。
【0205】
(付記68)
前記治療が、胃不全麻痺の症状を軽減することを含み、前記症状が、胃の腫れ、ガス感、慢性腹痛又は不快感、一時的な胃の腫れ、胃痛、早期膨満感、腹部膨張感、早期満腹感、食後膨満感、食後満腹感、吐き気、嘔吐、酸逆流、下痢、嚥下障害及びそれらの組み合わせのうち少なくとも1つを含む付記58又は59の方法。
【0206】
(付記69)
前記症状が腹痛を含む、付記68に記載の方法。
【0207】
(付記70)
前記症状が吐き気を含む、付記68に記載の方法。
【0208】
(付記71)
前記症状が嘔吐を含む、付記68に記載の方法。
【0209】
(付記72)
前記症状が下痢を含む、付記68に記載の方法。
【0210】
(付記73)
前記症状が酸逆流を含む、付記68に記載の方法。
【0211】
(付記74)
前記第1のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記68に記載の方法。
【0212】
(付記75)
前記第2のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記68に記載の方法。
【0213】
(付記76)
前記第3のボツリヌス毒素が、50から200ユニットの間の量で投与される、付記68に記載の方法。
【0214】
(付記77)
2つの異なるボツリヌス毒素の有効性及び安全性を比較する方法であって、
第1のボツリヌス神経毒素の投与により生じる個体の胃不全麻痺症状の軽減を測定するステップ、
第2のボツリヌス神経毒素の投与により生じる個体の胃不全麻痺症状の軽減を測定するステップ、および、
症状の前記軽減を比較して、第1のボツリヌス神経毒素と第2のボツリヌス神経毒素との差を決定するステップ、
を含む、
方法。
【0215】
(付記78)
胃不全麻痺の患者における、胃内容排出の改善および幽門洞圧測定で示される幽門過緊張の軽減を示す方法。
図1
図2
図3
【国際調査報告】