(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】粗面化防眩ガラス物品、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 15/00 20060101AFI20221027BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C03C15/00 B
G02B5/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515662
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 US2020049863
(87)【国際公開番号】W WO2021050493
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アミン,ジェイミン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ユィホイ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,カール ウィリアム ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】リー,アイザァ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイドマン,デイヴィッド リー
【テーマコード(参考)】
2H042
4G059
【Fターム(参考)】
2H042BA04
2H042BA15
2H042BA20
4G059AA01
4G059AA11
4G059AB11
4G059AC02
4G059BB04
4G059BB12
4G059BB14
(57)【要約】
厚さ、および、主面を有するガラス基板と、主面によって画定された粗面化領域とを含むガラス物品を提供する。粗面化領域は、低空間周波数領域、および、低空間周波数領域内に実質的に重なった高空間周波数領域を含む。更に、低空間周波数領域は、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有する。更に、粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品において、
厚さ、および、主面を有するガラス基板と、
前記主面によって画定された粗面化領域と
を含み、
前記粗面化領域は、低空間周波数領域、および、該低空間周波数領域内に実質的に重なった高空間周波数領域を含むものであり、
前記低空間周波数領域は、前記高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものであり、
前記粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(R
a)を有するものであるガラス物品。
【請求項2】
前記低空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、約5μm以上であり、前記高空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
前記低空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、約10μm以上であり、前記高空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項4】
前記低空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、約20μm以上であり、前記高空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項5】
前記粗面化領域の前記表面粗さ(R
a)は、前記低空間周波数領域に低空間周波数成分(R
a1)、および、前記高空間周波数領域に高空間周波数成分(R
a2)を含み、R
a1は、10nmから1000nmであり、R
a2は、10nmから200nmである、請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項6】
ガラス物品において、
厚さ、および、主面を有するガラス基板と、
前記主面によって画定された粗面化領域と
を含み、
前記粗面化領域は、低空間周波数領域、および、高空間周波数領域を含むものであり、
前記低空間周波数領域は、前記高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものであり、
前記粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(R
a)を有するものであり、
更に、画素出力分布(PPD)によって測定した3%未満のぎらつき、および、70%未満の画像明瞭度(DOI)を有するガラス物品。
【請求項7】
画素出力分布(PPD)によって測定した2%未満のぎらつき、および、60%未満の画像明瞭度(DOI)を有する、請求項6に記載のガラス物品。
【請求項8】
画素出力分布(PPD)によって測定した1%未満のぎらつき、および、50%未満の画像明瞭度(DOI)を有する、請求項6に記載のガラス物品。
【請求項9】
ガラス物品の製造方法において、
ガラス基板の主面を第1のエッチング液で処理して、該主面によって画定された低空間周波数粗面化領域を形成する第1のエッチング工程と、
前記ガラス基板の前記主面を第2のエッチング液で処理して、該主面によって画定されて、前記低空間周波数粗面化領域に実質的に重なった高空間周波数粗面化領域を形成する第2のエッチング工程と
を含み、
前記低空間周波数粗面化領域は、前記高空間周波数粗面化領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものであり、
前記粗面化領域の両方は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(R
a)を有するものである方法。
【請求項10】
前記第1のエッチング液は、塩酸、および、フッ化物塩を含むものであり、
前記フッ化物塩は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、二フッ化アンモニウム、二フッ化ナトリウム、および、二フッ化カリウムからなる群から選択された1つ以上の塩を含むものであり、
前記第2のエッチング液は、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、および、酢酸からなる群から選択された酸を含むものである、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2019年9月9日出願の米国仮特許出願第62/897、620号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、粗面化防眩ガラス物品、および、その製造方法に関し、特に、低いぎらつき度、および、低い画像明瞭度(DOI)特性を有する粗面化ガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
LCDスクリーン、タブレット、スマートフォン、OLED、および、タッチスクリーンなどの表示装置では、周囲光の鏡面反射を防ぐか削減するために、防眩面が用いられることが多い。多くの表示装置において、これらの防眩面は、入射光を拡散および散乱させるために、あるレベルの粗さをガラスの1つ以上の表面に付与することによって形成される。粗いガラス面の形状の防眩面は、これらの表示装置の前面に用いられて、表示部からの外部反射の見かけの視認性を低下させ、異なる照明条件下での表示判読性を改良する。
【0004】
表示の「ぎらつき」または「眩しさ」は、防眩または光散乱面を表示システムに組み込んだ際に生じうる現象である。ぎらつきは、非均一な画素光強度分布の表れである。更に、ぎらつきは、表示部を見る角度の変化に伴って、粒状パターンが移動するように見えうる非常に細かい粒状パターンの出現に関連している。このような種類のぎらつきは、LCDなど、画素化された表示部を、防眩面を通して見た時に観察される。表示装置の解像度は増加し続けているので、特に、手に持つ電子装置において、これらの装置で用いられる画素アレイの画素ピッチが減少し続けて、望ましくない、ぎらつき現象が悪化している。
【0005】
粗面化防眩ガラス面を生成するための従来のアプローチは、優れた防眩特性を有する表面の生成には成功していた。しかしながら、これらの粗面化防眩面は、高い程度のぎらつきを示していた。ぎらつきを削減するための一般的な表面処理および他の処理は、ぎらつきの削減には成功する傾向があるが、DOIなどの防眩特性を犠牲にするものだった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらに鑑みて、低いぎらつき度と低いDOI特性を合わせもつ粗面化ガラス面および物品が必要である。更に、そのような表面および物品を、低コストおよび高い処理能力で製造するのに採用し易い製造方法も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様によれば、厚さ、および、主面を有するガラス基板と、主面によって画定された粗面化領域とを含むガラス物品を提供する。粗面化領域は、低空間周波数領域、および、低空間周波数領域内に実質的に重なった高空間周波数領域を含むものである。更に、低空間周波数領域は、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものである。更に、粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものである。
【0008】
本開示の態様によれば、厚さ、および、主面を有するガラス基板と、主面によって画定された粗面化領域とを含むガラス物品を提供する。粗面化領域は、低空間周波数領域、および、高空間周波数領域を含むものである。低空間周波数領域は、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものである。更に、粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものである。更に、ガラス物品は、画素出力分布(PPD)によって測定した3%未満のぎらつき、および、70%未満の画像明瞭度(DOI)を有する。
【0009】
本開示の他の態様によれば、ガラス基板の主面を第1のエッチング液で処理して、主面によって画定された低空間周波数粗面化領域を形成する第1のエッチング工程と、ガラス基板の主面を第2のエッチング液で処理して、主面によって画定されて、低空間周波数粗面化領域に実質的に重なった高空間周波数粗面化領域を形成する第2のエッチング工程とを含むガラス物品の製造方法を提供する。低空間周波数粗面化領域は、高空間周波数粗面化領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものである。更に、粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものである方法。
【0010】
本開示の第1の態様によれば、厚さ、および、主面を有するガラス基板と、主面によって画定された粗面化領域とを含むガラス物品を提供する。粗面化領域は、低空間周波数領域、および、低空間周波数領域内に実質的に重なった高空間周波数領域を含むものである。更に、低空間周波数領域は、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものである。更に、粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものである。
【0011】
第2の態様によれば、低空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、約5μm以上であり、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、第1の態様のガラス物品を提供する。
【0012】
第3の態様によれば、低空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、約10μm以上であり、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、第1の態様のガラス物品を提供する。
【0013】
第4の態様によれば、低空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、約20μm以上であり、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、第1の態様のガラス物品を提供する。
【0014】
第5の態様によれば、粗面化領域の表面粗さ(Ra)は、低空間周波数領域に低空間周波数成分(Ra1)、および、高空間周波数領域に高空間周波数成分(Ra2)を含み、Ra1は、10nmから1000nmであり、Ra2は、10nmから200nmである、第1から4の態様のいずれか1つのガラス物品を提供する。
【0015】
第6の態様によれば、ガラス基板は、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、および、アルカリアルミノホウケイ酸ガラスからなる群から選択された組成物を含むものである、第1から5のいずれか1つのガラス物品を提供する。
【0016】
第7の態様によれば、ガラス基板は、更に、主面から、選択された深さに延伸する圧縮応力領域を含むものである、第1から6のいずれか1つのガラス物品を提供する。
【0017】
第8の態様によれば、厚さ、および、主面を有するガラス基板と、主面によって画定された粗面化領域とを含むガラス物品を提供する。粗面化領域は、低空間周波数領域、および、高空間周波数領域を含むものである。低空間周波数領域は、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものである。粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものである。更に、ガラス物品は、画素出力分布(PPD)によって測定した3%未満のぎらつき、および、70%未満の画像明瞭度(DOI)を有する。
【0018】
第9の態様によれば、画素出力分布(PPD)によって測定した2%未満のぎらつき、および、60%未満の画像明瞭度(DOI)を有する、態様8のガラス物品を提供する。
【0019】
第10の態様によれば、画素出力分布(PPD)によって測定した1%未満のぎらつき、および、50%未満の画像明瞭度(DOI)を有する、態様8のガラス物品を提供する。
【0020】
第11の態様によれば、約3%から約90%の透過ヘイズを有する、態様8から10のいずれか1つのガラス物品を提供する。
【0021】
第12の態様によれば、画素出力分布(PPD)によって測定した1%未満のぎらつきを有する、態様8のガラス物品を提供する。
【0022】
第13の態様によれば、高空間周波数領域は、低空間周波数領域内に実質的に重なったものである、態様8から12のいずれか1つのガラス物品を提供する。
【0023】
第14の態様によれば、低空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、約20μm以上であり、高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、態様8から13のいずれか1つのガラス物品を提供する。
【0024】
第15の態様によれば、ガラス基板の主面を第1のエッチング液で処理して、主面によって画定された低空間周波数粗面化領域を形成する第1のエッチング工程と、ガラス基板の主面を第2のエッチング液で処理して、主面によって画定されて、低空間周波数粗面化領域に実質的に重なった高空間周波数粗面化領域を形成する第2のエッチング工程とを含むガラス物品の製造方法を提供する。低空間周波数粗面化領域は、高空間周波数粗面化領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものである。更に、粗面化領域の両方は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものである。
【0025】
第16の態様によれば、第1のエッチング液は、サンドブラストエッチング剤、および、低pH溶液エッチング剤を含むものである、態様15の方法を提供する。
【0026】
第17の態様によれば、第1のエッチング液は、塩酸、および、フッ化物塩を含むものであり、フッ化物塩は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、二フッ化アンモニウム、二フッ化ナトリウム、および、二フッ化カリウムからなる群から選択された1つ以上の塩を含むものである、態様15の方法を提供する。
【0027】
第18の態様によれば、第2のエッチング工程は、周囲温度より高いエッチング温度で行われ、第2のエッチング液は、4未満のpHを有する溶液である、態様15から17のいずれか1つの方法を提供する。
【0028】
第19の態様によれば、第2のエッチング液は、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、および、酢酸からなる群から選択された酸を含むものである、態様15から18のいずれか1つの方法を提供する。
【0029】
第20の態様によれば、第2のエッチング液は、多価金属カチオンを含む1つ以上の塩を含むものである、態様15から19のいずれか1つの方法を提供する。
【0030】
第21の態様によれば、第2のエッチング工程のエッチング温度は、約60℃から約100℃である、態様18から20のいずれか1つの方法を提供する。
【0031】
第22の態様によれば、ガラス基板の主面を、9より高いpHを有する水溶液で、周囲温度より高い温度で処理する工程を、更に含み、処理する工程は、第1および第2のエッチング工程の後に行われるものである、態様15から21のいずれか1つの方法を提供する。
【0032】
更なる特徴および利点を、次の詳細な記載に示し、それは、当業者には、その記載から容易に明らかであるか、または、次の詳細な記載、請求項、および、添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって分かるだろう。
【0033】
ここまでの概略的記載および次の詳細な記載の両方が例示に過ぎず、請求した本開示の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると理解すべきである。
【0034】
添付の図面は、本開示の原理の更なる理解のために含められ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を示し、記載と共に、例示により、本開示の原理および動作を説明する役割を果たす。本明細書および図面に開示した本開示の様々な特徴を、任意の、および、全ての組合せで用いうると理解すべきである。限定するのではない例として、以下の態様によれば、本開示の様々な特徴を組み合わせうる。
【0035】
本開示のこれらの、および、他の特徴、態様、および、利点は、次の本開示の詳細な記載を添付の図面を参照して読んだ時に、よく理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品を概略的に示す断面図である。
【
図2】従来の防眩ガラス製品および本開示の態様による防眩ガラス物品について、画素出力分布(PPD)を、画像明瞭度(DOI)の関数として示すプロットである。
【
図3A】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品の概略図であり、反射光束を反射角の関数として示している。
【
図3B】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品および同じ物品の粗面領域成分の概略図であり、ぎらつきレベルを示している。
【
図4A】本開示の任意の物品を組み込んだ例示的な電子装置の平面図である。
【
図5】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図6A】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品の低空間周波数粗面化領域の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図6B】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品の高空間周波数粗面化領域の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図6C】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品の低空間周波数粗面化領域の反射角分布を示している。
【
図6D】本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品の高空間周波数粗面化領域の反射角分布を示している。
【
図7A】低空間周波数粗面化領域、および、本開示の態様による粗面化防眩ガラス物品の低空間周波数粗面化領域と高空間周波数粗面化領域の混成領域の-5°から+5°の反射角分布を示している。
【
図7B】本開示の態様による
図7Aの反射角分布を、-0.5°から+0.5°の小さい角度範囲に拡大して示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の詳細な記載において、説明のためであり限定するものではないが、具体的な詳細事項を開示した例示的実施形態を示して、本開示の様々な原理が完全に理解されるようにする。しかしながら、本開示の恩恵を受けた当業者には、本開示を、本明細書に開示の具体的な詳細事項から逸脱した他の実施形態でも実施しうることが明らかだろう。更に、本開示の様々な原理の記載を不明瞭にしないように、既知の装置、方法、および、材料の記載を省略することがありうる。最後に、類似の参照番号は、可能な限り類似の要素を称している。
【0038】
本明細書において、範囲を、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」他の特定の値までと表しうる。そのような範囲を表した場合、他の実施形態は、一方の特定の値から、および/または、他方の特定の値までを含む。同様に、値を、「約」を用いて近似値で表した場合、その特定の値が、他の実施形態を形成することが理解されよう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係で、および、他方の端点とは独立にとの両方で重要であることが理解されよう。
【0039】
本明細書で用いるような方向を表す用語、例えば、上、下、右、左、前、後、最上部、底部などは、示した図面についての記載にすぎず、絶対的向きを意味することを意図しない。
【0040】
別段の記載がない限りは、本明細書に示した、いずれの方法も、工程が特定の順序で行われることを要すると解釈されることを意図しない。したがって、方法の請求項が、工程の行われる順序を実際に記載しないか、または、そうではなく、請求項または明細書で、工程は特定の順序に限定されると具体的に記載しない場合には、いかなる点でも、順序が推測されることを全く意図しない。このことは、記載がないことに基づく、いずれの解釈にも当てはまり、そのような解釈は、工程の配列または動作フローについての論理事項、文法構造または句読点に由来する単純な意味、並びに、明細書に記載された実施形態の数または種類を含む。
【0041】
本明細書で用いるように、原文の英語で単数を表す不定冠詞および定冠詞は、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、複数のものを含む。したがって、例えば、不定冠詞を付けた「構成要素」は、文脈から、そうでないことが明らかでない限りは、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0042】
本開示の態様は、概して、粗面化防眩ガラス物品に関し、特に、低いぎらつき、および、低い画像明瞭度(DOI)を有する粗面化防眩ガラス物品に関する。これらの防眩ガラス物品は、低空間周波数領域および高空間周波数粗面化領域を含む粗面化領域を有する。本開示の態様は、これらの物品の製造方法を含む。概して、本開示の粗面化防眩ガラス物品を用意するアプローチは、多成分のガラス基板上に、細かい粗面化表面を、約5マイクロメートルより大きい平均横方向特徴物サイズ、および、約5マイクロメートル未満の平均横方向特徴物サイズを、各々有する低空間周波数領域および高空間周波数領域の混成領域で生成する。
【0043】
図1を参照すると、粗面化防眩ガラス物品100を、複数の主面12、14および厚さ13を有するガラス基板10を含むものとして図示している。ガラス物品100は、主面12によって画定された粗面化領域30aも含む。いくつかの実施形態において、
図1に示すように、粗面化領域30aは、基板10から、または、その部分から形成される。いくつかの利用例において(不図示)、粗面化領域30aは、主面14によって画定される。更に、いくつかの利用例において、粗面化領域30aは、主面12、14の両方によって画定される。
【0044】
図1に更に示したように、粗面化領域30aは、低空間周波数領域21、および、高空間周波数領域22を含む。いくつかの実施形態において、高空間周波数領域22は、低空間周波数領域21内に重なる。他の実施形態において、高空間周波数領域22は、低空間周波数領域21と部分的に重なるか、または、低空間周波数領域21と離間して位置する。
図1を再び参照すると、粗面化領域30aの低空間周波数領域21および高空間周波数領域22は、各々、複数の露出特徴物を含む。低空間周波数領域21の露出特徴物は、平均横方向特徴物サイズ31、および、平均表面粗さR
a1を有する。高空間周波数領域22の露出特徴物は、平均横方向特徴物サイズ32、および、平均表面粗さR
a2を有する。更に、粗面化領域30aの平均表面粗さR
aは、低空間周波数領域21と高空間周波数領域22の平均表面粗さ値、つまり、各々、R
a1およびR
a2の関数である。粗面化防眩ガラス物品100のいくつかの実施形態において、低空間周波数領域21の平均横方向特徴物サイズ31は、高空間周波数領域22の平均横方向特徴物サイズ32を超える。他の実施形態において、低空間周波数領域21の平均横方向特徴物サイズ31は、高空間周波数領域22の平均横方向特徴物サイズ32と略同じか、または、それより大きい。したがって、平均横方向特徴物サイズ31は、平均横方向特徴物サイズ32より、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100倍、および、これらの値の間の全ての倍数で、大きいものでありうる。
【0045】
粗面化防眩ガラス物品100のいくつかの利用例によれば、粗面化領域30aの低空間周波数領域21および高空間周波数領域22の、平均横方向特徴物サイズ31、32、および、平均表面粗さ値(Ra1、Ra2)を各々有する露出特徴物は、物品を表示装置に用いた時に、物品に関する、ぎらつきレベル、および、画像明瞭度(DOI)を低下させるように構成される。平均横方向特徴物サイズ31、32は、本開示分野の当業者なら分かる分析および統計抽出技術により測定した、粗面化領域30aの低空間周波数領域21および高空間周波数領域22の各々に関して抽出した特徴物の最大寸法の平均によって与えられる。分析技術について、本開示分野の当業者は、1つ以上の分析器具を用いて、平均横方向特徴物サイズ31、32を測定しうるもので、例えば、特に小さい特徴物(例えば、<10μm)には、原子間力顕微鏡(AFM)を、それより大きいサイズの特徴物(例えば、>10μm)には、干渉計を用いうる。統計技術について、当業者は、平均横方向特徴物サイズを、主面12の画像を撮影し、抽出した少なくとも10個(10)の特徴物の最大寸法を測定することによって取得しうる。他の場合において、本開示の当業者が統計的に有意な結果を取得するのに適切と判断するように、より大きい抽出サイズを採用しうる。したがって、各低空間周波数領域21および高空間周波数領域22の「平均横方向特徴物サイズ」および「平均最大寸法」という用語は、本開示において交換可能である。いくつかの実施形態において、低空間周波数領域21および高空間周波数領域22の複数の特徴物の少なくともいくつかは、山部および谷部を有する。露出特徴物の「最大寸法」は、特徴物の山部の一部分から、その特徴物の山部の他の部分までの最長距離である。
【0046】
粗面化防眩物品100の実施形態において、物品100の粗面化領域30aに関する低空間周波数領域21の平均横方向特徴物サイズ31は、約5マイクロメートル以上である。いくつかの利用例によれば、低空間周波数領域21の平均横方向特徴物サイズ31は、約2.5マイクロメートル以上、5マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、15マイクロメートル以上、20マイクロメートル以上、これらの値の間の全ての平均横方向特徴物サイズ、若しくは、これらの値より大きい値である。更に、低空間周波数領域21の平均横方向特徴物サイズ31は、約100マイクロメートル、90マイクロメートル、80マイクロメートル、70マイクロメートル、60マイクロメートル、50マイクロメートル、40マイクロメートル、30マイクロメートル、20マイクロメートル、10マイクロメートル、5マイクロメートル、1マイクロメートル、0.5マイクロメートル、および、これらの値の間の全ての値でありうる。
【0047】
粗面化防眩物品100の実施形態において、物品100の粗面化領域30aに関する高空間周波数領域22の平均横方向特徴物サイズ32は、約5マイクロメートル以下である。いくつかの利用例によれば、高空間周波数領域22の平均横方向特徴物サイズ32は、約5マイクロメートル以下、4マイクロメートル以下、3マイクロメートル以下、2マイクロメートル以下、1マイクロメートル以下、および、これらの値の間の全ての平均横方向特徴物サイズ、若しくは、これらの値より小さい値である。更に、高空間周波数領域22の平均横方向特徴物サイズ32は、約0.05マイクロメートル、0.1マイクロメートル、0.2マイクロメートル、0.3マイクロメートル、0.4マイクロメートル、0.5マイクロメートル、0.6マイクロメートル、0.7マイクロメートル、0.8マイクロメートル、0.9マイクロメートル、1マイクロメートル、1.5マイクロメートル、2マイクロメートル、2.5マイクロメートル、3マイクロメートル、3.5マイクロメートル、4マイクロメートル、4.5マイクロメートル、5マイクロメートル、および、これらの値の間の全ての値でありうる。
【0048】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100に関する粗面化領域30aを再び参照すると、平均表面粗さは、干渉計またはAFMを用いて、表面粗さR
aとして測定しうる。既に記載したように、粗面化領域30aの平均表面粗さR
aは、低空間周波数領域21と高空間周波数領域22の平均表面粗さ値、つまり、各々、R
a1およびR
a2の関数である。この目的で採用しうる干渉計は、ZYGO(登録商標)Corporationが製造する「ZYGO」NEWVIEW(商標)7300 Optical Surface Profilerである。特に高空間周波数領域22では、より小さい表面粗さ値が明らかなので、AFMを用いて、より正確に表面粗さを特定しうる。別段の記載がない限りは、表面粗さは、平均表面粗さとして報告される。実施形態において、ガラス物品100は、約10ナノメートルから約1000ナノメートル(nm)の平均表面粗さ(Ra)を有する粗面化領域30aを採用しうる。いくつかの利用例によれば、粗面化領域30aに関する平均表面粗さ(R
a)は、約10ナノメートルから約1000ナノメートル、約10ナノメートルから約500ナノメートル、約20ナノメートルから約1000ナノメートル、約20ナノメートルから約500ナノメートル、約50ナノメートルから約500ナノメートル、および、これらの表面粗さレベルの間の全ての値である。例えば、粗面化領域30aに関する平均表面粗さ(R
a)は、約1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、25、10、5、1、0.5、0.1ナノメートル、および、これらのレベルの間の全ての表面粗さ値でありうる。
【0049】
粗面化防眩物品100の実施形態において、物品100の粗面化領域30aに関する低空間周波数領域21の平均表面粗さ(Ra1)は、約10ナノメートルから約1000ナノメートルである。いくつかの利用例によれば、低空間周波数領域21の平均表面粗さ(Ra1)は、約10ナノメートル以上、50ナノメートル以上、100ナノメートル以上、200ナノメートル以上、300ナノメートル以上、400ナノメートル以上、500ナノメートル以上、および、これらの値の間の全ての平均表面粗さ(Ra1)、または、これらの値より大きい値である。更に、低空間周波数領域21の平均表面粗さ(Ra1)は、約1000ナノメートル、900ナノメートル、800ナノメートル、700ナノメートル、600ナノメートル、500ナノメートル、400ナノメートル、300ナノメートル、200ナノメートル、100ナノメートル、50ナノメートル、および、これらの値の間の全ての値でありうる。
【0050】
粗面化防眩物品100の実施形態において、物品100の粗面化領域30aに関する高空間周波数領域22の平均表面粗さ(Ra2)は、約10ナノメートルから約200ナノメートルである。いくつかの利用例によれば、高空間周波数領域22の平均表面粗さ(Ra2)は、約10ナノメートル以上、20ナノメートル以上、30ナノメートル以上、40ナノメートル以上、50ナノメートル以上、60ナノメートル以上、70ナノメートル以上、80ナノメートル以上、90ナノメートル以上、100ナノメートル以上、150ナノメートル以上、および、これらの値の間の全ての平均表面粗さ(Ra2)、または、これらの値より大きい値である。更に、高空間周波数領域22の平均表面粗さ(Ra2)は、約200ナノメートル、150ナノメートル、100ナノメートル、90ナノメートル、80ナノメートル、70ナノメートル、60ナノメートル、50ナノメートル、40ナノメートル、30ナノメートル、20ナノメートル、10ナノメートル、および、これらの値の間の全ての値でありうる。
【0051】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100の利用例によれば、物品は、低いレベルのぎらつきを特徴とする。概して、これらの物品の露出特徴物に関する粗さは、「ぎらつき」と称する画像アーチファクトを生じる複数のレンズのように作用しうる。表示の「ぎらつき」または「眩しさ」は、概して、防眩または光散乱面を画素化された表示システム、例えば、LCD、OLED、タッチスクリーンなどに導入した時に生じうる望ましくない副作用であり、それは、種類や発生源が、投射またはレーザシステムで観察され特徴付けられる「ぎらつき」または「スペックル」と種類が異なる。ぎらつきは、表示部の非常に細かい粒状パターンの出現に関連し、表示部を見る角度の変化に伴って、粒状パターンが移動するように見えうる。表示部のぎらつきは、概して画素レベルの大きさスケールの明るい点と暗い点、または、色の点として現れうる。
【0052】
本明細書で用いるように、「画素出力偏差」および「PPD」という用語は、表示部のぎらつきに関する量的測定のことを称する。更に、本明細書で用いるように、「ぎらつき」という用語は、「画素出力偏差」および「PPD」と交換可能に用いている。PPDは、以下の手順により表示画素を画像分析することによって計算される。各LCD画素の周りにグリッドボックスを引く。次に、各グリッドボックス内の合計出力を、CCDカメラデータから計算し、各画素についての合計出力として割り当てる。したがって、各LCD画素についての合計出力は、数値アレイとなり、それについての平均および標準偏差を計算しうる。PPD値を、画素当たりの合計出力の標準偏差を画素当たりの平均出力で割った値(100倍にする)として定義する。アイシミュレータカメラによって各LCD画素から収集された合計出力が測定され、合計画素出力の標準偏差(PPD)を、典型的には、約30×30のLCD画素を含む測定領域に亘って計算する。
【0053】
PPD値を取得するのに用いる測定システムおよび画像処理計算の詳細は、「Apparatus and Method for Determining Sparkle」という名称の米国特許第9,411,180号明細書に記載されており、PPD測定に関する重要部分は、本明細書に、全体として参照により組み込まれる。更に、別段の記載がない限りは、SMS-1000システム(Display-Messtechnik&Systeme GmbH&Co.KG)を用いて、本開示のPPD測定値を生成して、評価する。PPD測定システムは、各画素に参照符号i、jを付した複数の画素を含む画素化された表示源(例えば、Lenovo Z50 140ppiラップトップ)と、画素化された表示源から始まる光路に沿って、光学的に配置された撮像システムとを含む。撮像システムは、光路に沿って配置された撮像装置であって、各画素に参照符号m、nを付した第2の複数の画素を含む画素化された感知領域を有する撮像装置と、画素化された表示源と撮像装置の間の光路に配置された絞りとを含み、絞りは、画素化された表示源から出力された画像について、調節自在な収集角度を有する。画像処理計算は、透明な試料の画素化された画像を取得する工程であって、画素化された画像は複数の画素を含むものである工程と、画素化された画像において隣接する画素間の境界を確定する工程と、境界内で積分を行って、画素化された画像における各表示源画素について積分エネルギーを取得する工程と、各表示源画素について、積分エネルギーの標準偏差を計算する工程とを含み、標準偏差は、画素当たり出力の分散である。本明細書で用いるように、「PPD」および「ぎらつき」の値、属性および限度は全て、1インチ当り140画素の画素密度(PPI)(本明細書において、「PPD140」とも称する)を有する表示装置を用いた試験構成を用いて、計算評価される。
【0054】
図1に概略的に示したように、粗面化防眩ガラス物品100の粗面化領域30aは、ぎらつきを最小にするように構成されうる。いくつかの実施形態において、粗面化領域30aは、(例えば、DOIについて、本開示で非常に詳細に後述するように)表示装置での利用に適するように眩しさ削減機能を維持しながら、ぎらつきを最小にするように構成される。いくつかの実施形態によれば、粗面化防眩ガラス物品100の粗面化領域30aは、物品がPPD分布によって測定したぎらつきが3%以下であることを特徴とするように構成される。他の態様において、本開示の粗面化防眩ガラス物品100は、PPD分布によって測定した3%以下、2.5%以下、2.0%以下、1.5%以下、1%以下、0.5%以下、および、これらの上限値の間の全てのぎらつきレベルを有するように構成されうる。
【0055】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100を再び参照すると、物品は、低い画像明瞭度(DOI)値によって示される最適な防眩性能を有するようにも構成されうる。本明細書で用いるように、「DOI」は、100×(R
s-R
0.3°)/R
sに等しく、R
sは、本開示の粗面化防眩ガラス物品の粗面化領域に向けられた入射光(法線から30°)から測定した鏡面反射光束であり、R
0.3°は、同じ入射光から、鏡面反射光束R
sから0.3°で測定した反射光束である(
図3A、および、以下の対応する記載も参照)。別段の記載がない限りは、本開示で報告されたDOI値および測定値は、ASTM D5767-18 Standard Test Method for Instrumental Measurement of Distinctness-of-Image(DOI)Gloss of Coated Surfaces using a Rhopoint IQ Gloss Haze & DOI Meter(Rhopoint Instruments Ltd.)により取得される。特に、本開示の粗面化防眩ガラス物品100は、低DOI値が示すように、防眩性能を大きく低下させることなく、低いぎらつき(例えば、3%未満)を示しうる。利用例において、本開示の粗面化防眩ガラス物品100は、70%以下のDOIを有するように構成されうる。他の実施形態において、本開示の粗面化防眩ガラス物品100は、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%未満、および、これらの上限値の間の全てのDOIレベルを有するように構成されうる。
【0056】
本明細書で用いるように、「透過ヘイズ」および「ヘイズ」という用語は、「Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」と称するASTM手順D1003による約±2.5°の角度の円錐の外側に散乱した透過光の百分率のことを称するものであり、その内容は、本明細書に、全体として参照により組み込まれる。光学的に平滑な表面について、透過ヘイズは、概して、ゼロに近い。
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100の利用例によれば、物品は、30%以下のヘイズを特徴としうる。他の利用例において、特定の使用については、本開示の原理と一致する粗面化防眩ガラス物品100を、90%までもの高さのヘイズレベル、3%から90%の範囲のヘイズレベル、3%から30%のヘイズレベル、および、これらの値の間の全てのヘイズレベルを有するように製作しうる。
【0057】
図1を再び参照すると、粗面化防眩ガラス物品100のガラス基板10を、約40モル%から80モル%のシリカ、および、残りは、1つ以上の他の成分、例えば、アルミナ、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、酸化ホウ素などを有する多成分のガラス組成物を用いて構成しうる。いくつかの利用例において、ガラス基板10のバルク組成物は、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、および、リンケイ酸ガラスからなる群から選択される。他の利用例において、ガラス基板10のバルク組成物は、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、および、アルカリアルミノホウケイ酸ガラスからなる群から選択される。更なる利用例において、ガラス基板10は、ガラス系基板であり、限定するものではないが、ガラス成分を約90質量%以上とセラミック成分とを含むガラスセラミック材料を含む。
【0058】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100の一実施形態において、ガラス基板10は、アルミナ、少なくとも1つのアルカリ金属、および、いくつかの実施形態において、50モル%より多くのSiO
2、他の実施形態において、少なくとも58モル%、更に他の実施形態において、少なくとも60モル%のSiO
2を含むアルカリアルミノケイ酸ガラスを含むバルク組成物を有し、(Al
2O
3(モル%)+B
2O
3(モル%))/Σアルカリ金属改質剤(モル%)の比>1であり、改質剤は、アルカリ金属酸化物である。特定の実施形態において、このガラスは、約58モル%から約72モル%のSiO
2、約9モル%から約17モル%のAl
2O
3、約2モル%から約12モル%のB
2O
3、約8モル%から約16モル%のNa
2O、および、0モル%から約4モル%のK
2Oを含むか、それらから実質的になるか、または、それらからなり、(Al
2O
3(モル%)+B
2O
3(モル%))/Σアルカリ金属改質剤(モル%)の比>1であり、改質剤は、アルカリ金属酸化物である。
【0059】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100の他の実施形態において、ガラス基板10は、約61モル%から約75モル%のSiO
2、約7モル%から約15モル%のAl
2O
3、0モル%から約12モル%のB
2O
3、約9モル%から約21モル%のNa
2O、0モル%から約4モル%のK
2O、0モル%から約7モル%のMgO、および、0モル%から約3モル%のCaOを含むか、それらから実質的になるか、または、それらからなるアルカリアルミノケイ酸ガラスを含むバルク組成物を有する。
【0060】
更に他の実施形態において、ガラス基板10は、約60モル%から約70モル%のSiO2、約6モル%から約14モル%のAl2O3、0モル%から約15モル%のB2O3、0モル%から約15モル%のLi2O、0モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約10モル%のK2O、0モル%から約8モル%のMgO、0モル%から約10モル%のCaO、0モル%から約5モル%のZrO2、0モル%から約1モル%のSnO2、0モル%から約1モル%のCeO2、約50ppm未満のAs2O3、および、約50ppm未満のSb2O3を含むか、それらから実質的になるか、または、それらからなるアルカリアルミノケイ酸ガラスを含むバルク組成物を有し、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、かつ、0モル%≦MgO+Ca≦10モル%である。
【0061】
更に他の実施形態において、ガラス基板10は、約64モル%から約68モル%のSiO2、約12モル%から約16モル%のNa2O、約8モル%から約12モル%のAl2O3、0モル%から約3モル%のB2O3、約2モル%から約5モル%のK2O、約4モル%から約6モル%のMgO、および、0モル%から約5モル%のCaOを含むか、それらから実質的になるか、または、それらからなるアルカリアルミノケイ酸ガラスを含むバルク組成物を有し、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%、かつ、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%、かつ、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、かつ、(Na2O+B2O3)-Al2O3≦2モル%、かつ、2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%、かつ、4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%である。
【0062】
他の実施形態において、ガラス基板10は、SiO2、Al2O3、P2O5、および、少なくとも1つのアルカリ金属酸化物(R2O)を含むバルク組成物を有し、0.75>[(P2O5(モル%)+R2O(モル%))/M2O3(モル%)]≦1.2であり、M2O3=Al2O3+B2O3である。いくつかの実施形態において、[(P2O5(モル%)+R2O(モル%))/M2O3(モル%)]=1であり、いくつかの実施形態において、ガラスは、B2O3を含まず、M2O3=Al2O3である。いくつかの実施形態において、ガラス基板は、約40から約70モル%のSiO2、0から約28モル%のB2O3、約0から約28モル%のAl2O3、約1から約14モル%のP2O5、および、約12から約16モル%のR2Oを含む。いくつかの実施形態において、ガラス基板は、約40から約64モル%のSiO2、0から約8モル%のB2O3、約16から約28モル%のAl2O3、約2から約12モル%のP2O5、および、約12から約16モル%のR2Oを含む。更に、ガラス基板10は、限定するものではないが、MgO、または、CaOなどの少なくとも1つのアルカリ土類金属酸化物を含みうる。
【0063】
いくつかの実施形態において、ガラス基板10は、実質的にリチウムを含まないバルク組成物を有する。つまり、そのガラスは、1モル%未満のLi2Oを含み、他の実施形態において、0.1モル%未満のLi2Oを含み、他の実施形態において、0.01モル%のLi2Oを含み、更に他の実施形態において、0モル%のLi2Oを含む。いくつかの実施形態において、そのようなガラスは、ヒ素、アンチモン、および、バリウムの少なくとも1つを含まない。つまり、そのガラスは、1モル%未満、他の実施形態において、0.1モル%未満、更に他の実施形態において、0モル%のAs2O3、Sb2O3、および/または、BaOを含む。
【0064】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100の他の実施形態において、ガラス基板10は、Corning(登録商標)Eagle XG(登録商標)ガラス、「Corning」Gorilla(登録商標)ガラス、「Corning」「Gorilla」Glass2、「Corning」「Gorilla」Glass3、「Corning」「Gorilla」Glass4、または、「Corning」「Gorilla」Glass5のガラス組成物を含むか、それらから実質的になるか、または、それらからなるバルク組成物を有する。
【0065】
他の実施形態によれば、
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100のガラス基板10は、既知の化学的または熱的手段によって強化されたイオン交換可能なガラス組成物を含みうる。一実施形態において、ガラス基板は、イオン交換によって、化学的に強化される。この処理において、ガラス基板10の主面12、および/または、主面14の、または、その近くの金属イオンは、ガラス基板の金属イオンと同じ原子価を有する、より大きいイオンと交換される。交換は、概して、ガラス基板10を、例えば、より大きい金属イオンを含む溶融塩浴などのイオン交換媒体に接触させることによって行われる。金属イオンは、典型的には、例えば、アルカリ金属イオンなどの一価の金属イオンである。限定するものではない一例として、ナトリウムイオンを含むガラス基板10のイオン交換による化学的強化は、ガラス基板10を硝酸カリウム(KNO
3)などの溶融カリウム塩を含むイオン交換浴に浸漬させることによって行われる。特定の一実施形態において、ガラス基板10の表層のイオン、および、より大きいイオンは、Li
+(これが、ガラスに存在する場合)、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+などの一価のアルカリ金属カチオンである。その代わりに、ガラス基板10の表層の一価のカチオンを、Ag
+など、アルカリ金属カチオン以外の一価のカチオンと置き換えうる。
【0066】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100のこれらの実施形態において、イオン交換処理で、小さい金属イオンを、より大きい金属イオンと置き換えることで、ガラス基板10に、主面12から深さ52(「層深さ」とも称する)まで延伸し、圧縮応力を生じた圧縮応力領域50が生成される。圧縮応力領域は、主面14から、圧縮応力領域50と実質的に同等の深さ(
図1に不図示)に延伸してガラス基板に形成されうることも理解すべきである。特に、ガラス基板の主面の圧縮応力は、ガラス基板の内部の引張応力(「中心張力」とも称する)と相殺される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のガラス基板10の主面12は、イオン交換によって強化された時に、少なくとも350MPaの圧縮応力を有し、圧縮応力を生じた領域は、主面12から少なくとも15μmの深さ52、つまり、層深さに延伸する。
【0067】
イオン交換処理は、典型的には、ガラス基板10を、ガラス内のより小さいイオンと交換される、より大きいイオンを含む溶融塩浴に浸漬させることによって行われる。当業者には、限定するものではないが、浴の組成および温度、浸漬時間、ガラスを塩浴(または、浴)に浸漬させる回数、多数の塩浴を使用するか、アニーリング、洗浄などの追加の工程などを含むイオン交換処理のパラメータは、概して、ガラスの組成、並びに、強化操作によってガラスに生じる望ましい層深さ、および、圧縮応力によって決定されることが分かるだろう。例として、アルカリ金属含有ガラスのイオン交換は、限定するものではないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および、塩化物などの塩を含む少なくとも1つの溶融浴に浸漬させることによって行われうる。溶融塩浴の温度は、典型的には、約380℃から約450℃の範囲であり、浸漬時間は、約15分から約16時間の範囲である。しかしながら、上記温度および浸漬時間と異なるものも用いうる。そのようなイオン交換処理を、アルカリアルミノケイ酸ガラスの組成を有するガラス基板10で用いた場合、約10μmから少なくとも50μmの範囲の深さ52(層深さ)を有する圧縮応力領域50を生じ、圧縮応力は、約200MPaから約800MPaの範囲であり、中心張力は、約100MPa未満である。
【0068】
粗面化防眩ガラス物品100の粗面化領域30aを生成するのに用いうるエッチングおよびリーチング処理として、いくつかの実施形態によれば、そうでない場合には、イオン交換処理中に、より大きいアルカリ金属イオンと置き換えられうるアルカリ金属イオンを、ガラス基板10から除去しうるが、粗面化領域30aの形成生成後に、粗面化ガラス物品100に圧縮応力領域50を生成することが優先される。他の実施形態において、粗面化領域30aの生成前に、圧縮応力領域50を、ガラス基板10に、以下に概説する粗面化領域30aの形成に関連した様々な処理に関して領域50の層深さが失われる分を埋め合わせるのに十分な深さ52で生成しうる。
【0069】
図1に示した粗面化防眩ガラス物品100の他の利用例によれば、物品は、更に、粗面化領域30aの上に配置された掃除が容易な(ETC)膜(不図示)を含むうる。ほとんどの実施形態において、ETC膜は、粗面化領域30aの上に、その表面形態が、その下の粗面化領域30aの形態を概して反映するように配置される。一実施形態において、粗面化ガラス物品100aは、更に、粗面化領域30aの少なくとも一部の上に成膜された汚れ防止フッ素系ETC膜を含む。実施形態において、ETC膜は、粗面化領域30aに両疎媒性(つまり、疎水性および疎油性、若しくは、油と水の両方に対して親和性がないこと)を提供するフッ素終端基を有する少なくとも1つの両疎媒性物質を含み、それにより、表面が、水、および/または、油によって濡れるのを最小にする。ETC膜のフッ素終端基は、OH終端基を有する表面より極性が低く、したがって、粒子と液体間の水素結合(つまり、ファンデルワールス)を最小にする。指紋に関連する指紋の油および破片について、結合および接着を最小にする。結果的に、人間の指からETC膜への指紋の油および破片の物質移動を最小にする。一実施形態において、ETC膜は、粗面化ガラス物品100aの粗面化領域30a上のOH終端基に見られる水素を、例えば、フッ素含有モノマー(例えば、フルオロシラン)などのフッ素系機能基と交換することによって形成され、終端フッ素化基を有するガラスを形成する。
【0070】
他の実施形態において、
図1に示した粗面化ガラス物品100aのETC膜は、フッ素終端分子鎖の自己組織化単分子膜を含む。更に他の実施形態において、ETC膜は、薄いフルオロポリマー膜を含み、更に他の実施形態において、ETC膜は、煤粒子にぶら下がるフルオロカーボン基を付加するように処理されたシリカ煤粒子を含む。そのようなETC膜を、ディッピング、蒸着、噴霧、ローラを用いた塗布、または、既知の他の適した方法によって、粗面化ガラス物品100aの粗面化領域30aに付与しうる。ETC膜を加えた後に、約25℃から約150℃の範囲の温度、更に、他の実施形態において、約40℃から約100℃の範囲の温度で「硬化」させうる。硬化時間は、約1時間から約4時間の範囲で、40~95%の湿度を有する雰囲気中で行われうる。硬化後に、ETC膜を有する粗面化ガラス物品100aを溶媒ですすいで、任意の結合しなかった膜を除去し、更に、使用前に空気乾燥させうる。
【0071】
ここで、
図2を参照すると、従来の防眩ガラス物品について、画素出力分布(PPD
140)を画像明瞭度(DOI)の関数として示したプロットを示している。これらの従来の防眩ガラス物品の表面は、以下の任意の処理を通して製作されたものである:(1)サンドブラスト、および、ウェットエッチング(例えば、HFを用いて)、(2)ウェットエッチング(例えば、HF、NH
4Fなどを用いて)、および、(3)シラン前駆体からゾルゲル薄膜成膜。既に概説したように、PPDは、ぎらつきの測定値であり、
図2のデータは、従来の防眩ガラス製品に関するものである。
図2から分かるように、従来の防眩製品は、低いぎらつき(PPD
140)と低いDOI値の両方を合わせて示すものではない。特に、従来の防眩製品には、3.7%未満のぎらつき値、および、77%未満のDOI値を示すものはない。一方、本開示の粗面化防眩ガラス物品100の実施形態(
図1、および、対応する記載を参照)は、3%未満のぎらつき(PPD
140)、および、70%未満のDOIを特徴とし、
図2に示した「DOI<70%、PPD<3%」のボックスに該当する。更に、本開示の粗面化防眩ガラス物品100の実施形態は、2%未満のぎらつき(PPD
140)、および、60%未満のDOIを特徴とし、
図2に示した「DOI<60%、PPD<2%」のボックスに該当する。
【0072】
ここで、
図3Aを参照すると、本開示の実施形態による粗面化防眩ガラス物品を、反射光束を反射角の関数として示して概略的に示している。本明細書で用いるように、「DOI」は、100×(R
s-R
0.3°)/R
sに等しく、但し、R
sは、本開示の粗面化防眩ガラス物品の粗面化領域に向けられた入射光(法線から30°)から測定した鏡面反射光束であり、R
0.3°は、同じ入射光から、鏡面反射光束R
sから0.3°で測定した反射光束である。つまり、DOIは、入射角に対する鏡面反射角(つまり、0°)と0.2°と0.4°の間の相対反射角での光の相対強度差を特定することによって測定される。
図3Aから分かるように、プロファイル2、3、4について観察された反射光束、および、DOIは、プロファイル1に関する反射光束、および、DOIと比べて、低い。プロファイル2、3、4は、大きい、および、中位の大きさの露出特徴物を有する粗面化表面を示すものであり、平均横方向サイズは、約10マイクロメートルから200マイクロメートルで、比較的低空間周波数である。一方、プロファイル1は、非常に大きい露出特徴物を有する粗面化表面を示しており、平均横方向サイズは、約200マイクロメートルから500マイクロメートルである。プロファイル1は、小さい平均横方向特徴物サイズで高空間周波数を有する粗面化表面も同様に示すことに留意すべきである。結果的に、
図3Aから、超大型サイズの特徴物ではなく、中位および大きいサイズの特徴物を有する低空間周波数領域の粗面化表面は、低いDOIレベルを示す傾向があることが分かる。理論に縛られるものではないが、粗面化領域30aの低空間周波数領域21は、本開示の粗面化防眩ガラス物品100が示す低いDOIレベル(<70%)に、非常に大きく影響すると考えられる(
図1を参照)。
【0073】
ここで、
図3Bを参照すると、粗面化防眩ガラス物品、および、その物品の粗面化領域構成要素を概略的に示し、ガラス面のテクスチャーの表示部のぎらつきレベルへの影響を図示して示している。各概略
図A、B、Cにおいて、示した表示画素は、赤色、緑色、青色サブ画素を表している(つまり、各概略図の左側から右側に見て)。更に、これらの各概略図は、緑色サブ画素のみが照らされるものとし、
図3Bの概略
図A、B、Cは、サブ画素の上のガラス基板(例えば、ガラス基板10)に、粗面化領域(例えば、粗面化領域30a)の大きい、小さい、および、混成露出特徴物を付与した場合の緑色サブ画素の光均一性の差を比較している。概略
図Aにおいて、平均横方向特徴物サイズがサブ画素と比べて大きい粗面化ガラス面(例えば、低空間周波数成分のみを有する粗面化領域を示すような)を、緑色サブ画素の最上部に配置する。左側の画素光は拡散して、暗く見え、右側の画素光は合焦されて、人間の目に明るく見える。したがって、概略
図Aは、高いぎらつきレベルで、非均一で粗く見える表示部を示している。概略
図Bにおいて、平均横方向特徴物サイズがサブ画素と比べて小さい粗面化ガラス面(例えば、高空間周波数成分のみを有する粗面化領域を示すような)を、緑色サブ画素の最上部に配置する。左右の画素光は、強度について、同様に見える。したがって、
図3Bの概略
図Bは、低いぎらつきレベルで、均一に見える表示部を示している。しかしながら、
図3Aから、その図中のプロファイル1に示したような高空間周波数領域(更に、追加の対応する低空間周波数領域がない)を有する粗面化表面は、比較的高いDOIを特徴とすることも明らかである。最後に、概略
図Cにおいて、平均横方向特徴物サイズがサブ画素と比べて大きいものと小さいものの両方である粗面化ガラス面(例えば、低空間周波数粗面化領域21と高空間周波数粗面化領域22の両方を有する粗面化防眩ガラス物品100の混成粗面化領域30aを示すような)を、緑色サブ画素の最上部に配置する。露出特徴物の空間周波数は、光が表面から散乱する方向を決定する。更に、
図3Bの概略
図Cから、左右の画素は、同様の均一性および強度を有し、つまり、低いぎらつきを有することが分かる。
【0074】
ここで、
図4Aおよび
図4Bを参照すると、本明細書に開示の粗面化防眩ガラス物品100(
図1を参照)を、表示部を有する物品(または、表示物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む消費者用電子機器)、建築用物品、輸送用物品(例えば、自動車、電車、航空機、船舶など)、家庭用物品、または、何らかの透明性、耐引っ掻き性、耐摩耗性、または、これらの組合せを必要とする任意の物品などの他の物品に組み込みうる。ガラス物品100を含む本明細書に開示の任意のガラス物品を組み込んだ例示的な物品を、
図4A、4Bに示している。具体的には、
図4A、4Bは、前面404、後面406、および、側面408を有する筐体402と、少なくとも部分的に、または、全体が、筐体の内側に位置し、少なくとも制御部、メモリ、および、筐体の前面に、または、そこに隣接した表示部410を含む電気的要素(不図示)と、筐体の前面に、または、その上に、表示部の上になるように位置するカバー基材412とを含む消費者用電子装置400を示している。いくつかの実施形態において、カバー基材412、または、筐体402の一部の少なくとも一方が、本明細書に開示のいずれかのガラス物品を含みうる。
【0075】
ここで、
図5を参照すると、粗面化ガラス物品、例えば、粗面化防眩ガラス物品100(
図1に示したように)の製造方法200の概略的フローチャートを示している。別段の記載がない限りは、
図1、5に示した粗面化防眩ガラス物品100の類似の番号を付した構成要素は、同じ、または、略同様の機能および構成を有する。
図5に示したように、ガラス基板10は、主面12と、反対側の主面14とを有し、更に、厚さ13によって特徴付けられる。更に
図5に示したように、方法200は、ガラス基板10の主面12を、第1のエッチング液でエッチングして、平均表面粗さR
a1、および、平均横方向特徴物サイズ31を特徴とする低空間周波数粗面化領域21を形成する工程202を含む。工程202を、エッチング剤として低pH溶液、エッチング剤としてサンド粒子、および、エッチング剤としてグリットの1つ以上を採用したエッチング処理を用いて行いうる。例えば、工程202は、サンドブラスト媒体、および、低pH溶液を、エッチング剤として、例えば、別々の続く工程で用いたエッチングを含み、低空間周波数粗面化領域21を生成しうる。
【0076】
図5を再び参照すると、ガラス物品の製造方法200は、更に、ガラス基板10の主面12を第2のエッチング液でエッチングして、平均表面粗さR
a2、および、平均横方向特徴物サイズ32を特徴とする高空間周波数粗面化領域22を形成する工程204を含む。工程204を、約4以下のpHを有するエッチング液を用いて行いうる。適したエッチング液は、フッ化水素酸を含まないエッチング液(例えば、クエン酸、塩酸)、および、フッ化水素酸を含むエッチング液を含む。適したフッ化水素酸を含まないエッチング液は、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、および、酢酸を含む。実施形態によれば、エッチング工程204を、周囲温度より高く約110℃までの高められた温度で行う。いくつかの利用例において、エッチング工程204を、約25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、および、これらの値の間の全ての温度で行う。更に、エッチング工程204を、約15分から約100時間行いうる。いくつかの実施形態において、エッチング工程204を、約5時間から約30時間行う。塩酸エッチング液の適した濃度レベルは、いくつかの利用例によれば、約0.5質量%から約15質量%の範囲、例えば、約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、および、これらのレベルの間の全ての塩酸濃度である。他の利用例によれば、クエン酸エッチング液の適した濃度レベルは、約1質量%から30質量%の範囲であり、例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、および、これらのレベルの間の全てのクエン酸濃度である。エッチング工程204を完了すると、粗面化領域30aが粗面化ガラス物品(例えば、粗面化防眩ガラス物品100)に、低空間周波数粗面化領域21、および、高空間周波数粗面化領域22を含むものとして形成される(
図1も参照)。方法200のいくつかの利用例によれば、方法により形成された粗面化防眩ガラス物品100は、高空間周波数領域22の平均横方向特徴物サイズ32を超える平均横方向特徴物サイズ31を有する低粗面化領域21を含む。更に、各粗面化領域21、22は、約10ナノメートルから約1000ナノメートルの表面粗さ(つまり、各々、R
a1およびR
a2)を有するか、まとめて、約10ナノメートルから約1000ナノメートルの平均表面粗さ(R
a)を含みうる。
【0077】
図5に示した粗面化物品の製造方法200の他の実施形態によれば(例えば、粗面化防眩ガラス物品100(
図1に示したように))、エッチング工程204は、厚さ13を有するガラス基板10の主面12を、約4以下のpH、および、添加塩を有する第2のエッチング液でエッチングする工程を含みうる。本明細書で用いるように、「添加塩」という用語は、多価金属カチオン(例えば、Al
3+)、アンモニウムカチオン(例えば、NH
4+)、および、ガラス基板10に存在しないか僅かな量で存在する金属カチオン(例えば、ガラス基板10のある組成物についてのLi
+)の1つ以上を含む塩を含む。いくつかの実施形態において、添加塩は、例えば、NH
4+、Al
3+、Fe
3+、Ca
2+、Mg
2+からなる群から選択された多価の金属イオン、および/または、アンモニウムイオン、並びに、一価のアニオン(例えば、塩化物、フッ化物、フッ化水素)を含む。例えば、添加塩は、NH
4F、NaF、KF、NH
4HF
2、NaHF
2、KHF
2、NH
4Cl、AlCl
3、FeCl
3、CaCl
2、および、MgCl
2でありうる。いくつかの実施形態において、添加塩は、対象ガラス基板10に存在しないか僅かな量で存在するカチオン、例えば、NH
4Cl、LiCl、CsClなどを含む塩も含みうる。いくつかの実施形態によれば、エッチング工程204は、添加塩(塩酸を含まないエッチング液に加えて)を約0.1モル/Lより高く約5モル/Lまでの濃度で用いるように行われる。いくつかの実施形態によれば、多価の金属塩を、エッチング工程204において、約0.1モル/Lより高く約3モル/Lまで、約0.5モル/Lから約2モル/L、約0.5モル/Lから約1.5モル/L、および、これらの範囲の端点の間の全ての濃度値で用いる。添加塩を用いたエッチング工程204のいくつかの利用例において、エッチングを、約75℃から約110℃、約80℃から約110℃、約85℃から約110℃、約90℃から約110℃、および、これらの範囲の端点の間の全ての温度で行う。有利なことに、添加塩をエッチング工程204に組み込むことで、望ましいレベルのテクスチャーを粗面化領域30aの高空間周波数領域22に生成するのに要するエッチング時間を削減しうる(
図1も参照)。添加塩を用いたエッチング工程204のいくつかの利用例によれば、エッチングは、約15分から約10時間行われうる。好ましい利用例において、エッチング工程204は、添加塩を用いて、約15分から約5時間、約30分から約5時間、または、約30分から2時間行われうる。
【0078】
図5に示した方法200を再び参照すると、いくつかの実施形態によれば、方法は、更に、エッチング工程202、および/または、204からの余分なエッチング液、および、浸出した基板の構成成分を除去するように構成された除去工程を含む(不図示)。つまり、方法200の工程202、204の後に、これらの工程からの余分なエッチング液を、基板10からの緩んだ残存成分と共に、主面12上のエッチング液を脱イオン水ですすぐことによって除去する。本開示の分野の当業者には分かるように、様々な機械的な、および/または、水洗浄アプローチを除去工程で用いて、基板10の表面に実質的に影響を与えることなく、余分なエッチング液、および、浸出基板成分を除去しうる。
【0079】
更に、
図5に示した方法200を参照すると、いくつかの実施形態によれば、方法は、更に、基板10の主面12を、9より高いpHを有する水溶液で処理する工程206を含む。これらの実施形態において、処理工程206は、方法200により形成された粗面化ガラス物品、例えば、粗面化防眩ガラス物品100の粗面化領域30aの高空間周波数領域22の形成を補助する(
図1も参照)。特に、エッチング工程202、204の後に、処理工程206を、周囲温度より高い温度で、高pH水溶液(pH>9)を用いて行いうる。実施形態において、工程206中に用いられる高pH水溶液は、約10から約13の範囲のpHを有するアルカリ性水溶液(例えば、NaOH)である。実施形態によれば、処理工程206は、周囲温度より高く約110℃までの高められた温度で行われる。いくつかの利用例において、処理工程206は、約25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、および、これらの値の間の全ての温度で行われる。更に、処理工程206を、約15分から約100時間行いうる。いくつかの実施形態において、処理工程206は、約5時間から約30時間行われる。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は、本開示の様々な特徴および利点を説明するものであり、発明および添付の請求項を限定することを全く意図するものではない。
【0081】
実施例1
約0.6mmの厚さを有する「Corning」「Gorilla」Glass3の粗面化防眩ガラス試料を、本開示の原理に一致するように以下の方法で用意した。特に、試料に、サンドブラストおよびエッチング処理(工程1)を行って、ガラス基板の主面に低空間周波数粗面化領域を形成した。試料(例1A)のいくつかに、本開示の原理に一致するエッチング処理を行って、約6%から7%の透過ヘイズを得た。残りの試料(例1B)に、本開示の原理に一致するエッチング処理を行って、約19%から20%の透過ヘイズを得た。
図6AのSEM顕微鏡写真から分かるように、これらの試料の全て(例1A、1B)の低空間周波数粗面化領域は、約15から20マイクロメートルの平均横方向特徴物サイズを特徴としうる。これらの試料(例1A、1B)の全てのDOIは、<50%だった。更に、第1の群の試料(例1A)のPPDは、約7.6%であり、第2の群の試料(例1B)のPPDは、約5.6%だった。更に、サンドブラストおよびエッチング工程の完了後に、全試料は、厚さが約0.55mmであると測定された。
【0082】
サンドブラストおよびエッチング処理(上記工程1)の完了後に、試料に、低pHエッチング液および添加塩を用いてエッチング処理を行い(工程2)、次に、高pH処理(工程3)を行って、ガラス基板の主面に高空間周波数粗面化領域を形成した。したがって、結果的に、基板は、低空間周波数粗面化領域に追加で、高空間周波数粗面化領域も含む粗面化領域を有する基板になった。特に、工程1からの試料の低空間周波数粗面化領域を、更に、10質量%のHClおよび16.2質量%のFeCl
3の溶液を用いて、95℃で、2.17時間(例1A1、1B1)、2.75時間(例1A2、1B2)、または、3.42時間(例1A3、1B3)、処理した。低pH処理の後に、更に、全試料に、高pH処理を、NaOH溶液を用いて、60℃で10分行った(工程3)。工程2、3の完了後に、全試料(例1A1~A3、1B1~B3)は、
図6BのSEM顕微鏡写真からも分かるように、0.5マイクロメートルから2マイクロメートルの平均横方向特徴物サイズの露出特徴物を有する高空間周波数粗面化領域を示した。尚、
図6Bの試料のSEM顕微鏡写真は、工程2、3のみを行い、工程1を行わない対照試料(例1D1~D3)のものである。
【0083】
本実施例で製作した試料を、DOIおよびPPDについて評価した。表1は、この評価結果の要点を示しており、本実施例の試料についての処理条件を含む。更に、表1は、工程1~3に関するエッチングも処理も行わない対照試料の組である例1C1、および、工程2、3のエッチングおよび処理を行うが、工程1のエッチングは行わない対照試料の組である例1D1~D3についてのDOIおよびPPDの結果も含む。表1から分かるように、低空間周波数粗面化領域のみを含む試料(例1A、1B)は、高いぎらつき(つまり、各々、7.6%および5.6%のPPD)および低いDOI(つまり、各々、6.38%および44.01%)を示した。更に、高空間周波数粗面化領域のみを含む試料(例1D1~D3)は、低いぎらつき(つまり、0.4から0.6%のPPD)および高いDOI(つまり、99.35%から99.79%)を示した。これに反して、低空間周波数粗面化領域および高空間周波数粗面化領域を含む混成粗面化領域を有する試料(例1A1~A3、1B1~B3)は、低いぎらつき(つまり、0.7%から6.2%のPPD)および低いDOI(つまり、約0%)を示した。
【0084】
【0085】
ここで、
図6Cおよび
図6Dを参照すると、本実施例の粗面化防眩ガラス物品の低空間周波数粗面化領域および高空間周波数粗面化領域の各々の反射角分布を示している。特に、
図6Cは、
図6Aに示した低空間周波数粗面化領域を有する試料(例1A、1B)についての反射角分布である。
図6Cから分かるように、これらの試料は、低いDOIを示した(つまり、各々、6.38%および44.01%)。
図6Dについて、このプロットは、
図6Bに示した高空間周波数粗面化領域を有する試料(例1D1~D3)の反射角分布を示している。
図6Dから分かるように、これらの試料は、高いDOIを示した(つまり、100%近く)。
【0086】
ここで、
図7Aを参照すると、低空間周波数粗面化領域と高空間周波数粗面化領域の両方を有する粗面化防眩ガラス試料(例1A1~A3、1B1~B3)の-5°から+5°の反射角分布を示している。更に、
図7Bは、
図7Aの反射角分布を、-0.5°から+0.5°の狭い角度に拡大して示している。これらの図面から分かるように、低空間周波数粗面化領域および高空間周波数粗面化領域を含む混成粗面化領域を有する試料は、低いDOIを示した(つまり、約0%)。更に、表1の結果は、これらの試料は、低いぎらつきも示すことを示している。したがって、本実施例の粗面化防眩ガラス物品は、低いぎらつき(例えば、<3%)および低いDOI(例えば、<70%)を合わせて示すものである。
【0087】
当業者は、上記ガラス物品の表面粗さを測定するには、以下の2つの表面テクスチャー測定法ISO規格を用いうることが容易に分かるだろう:(1)ISO4287:1997「Geometrical Product Specifications(GPS)-Surface texture:Profile Method-Terms,definitions and surface texture parameters」、1997年4月発行、25ページ、および、(2)ISO4288:1996「Geometrical Products Specifications(GPS)-Surface texture:Profile method-Rules and procedures for assessment of surface texture」1996年8月発行、8ページ(これらの文献の内容は、全ての目的で、参照により本明細書に組み込まれる)。特徴物サイズは、現在の位置および高さに基づいて統計的に予想しうるパターンに亘る長さの測定値である相関長さ(Lc)として画定しうる(詳細は、ISO4287および4288規格を参照)。更に、上記ガラス物品の表面粗さを測定する場合に、原子間力顕微鏡(AFM)、または、Zygoなどの具体的な器具を、特徴物サイズに基づいて選択して、表面粗さを測定しうる。実際には、顕微鏡による最初の特徴物サイズの推定値を用いて、適切な器具を、その分解能に基づいて選択し、更に、この選択を、報告された相関長さを用いて確認することが多い。例えば、AFMを用いて、10nmから10μmの特徴物サイズについて、表面粗さを測定しうる。Zygoを用いて、10μm以上の特徴物サイズについて、表面粗さを測定しうる。抽出長さは、10×特徴物サイズとして画定され、次に、それを用いて、上側カットオフ空間周波数λc=1/(抽出長さ)および表面の平均粗さRaを決定する(詳細は、ISO4287および4288規格を参照)。
【0088】
本開示の精神および様々な原理から実質的に逸脱することなく、本開示の上記実施形態に、多くの変形および変更を行いうる。そのような変更および変形の全てが、本開示の範囲に含まれ、以下の請求項によって保護されることを意図する。
【0089】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0090】
実施形態1
ガラス物品において、
厚さ、および、主面を有するガラス基板と、
前記主面によって画定された粗面化領域と
を含み、
前記粗面化領域は、低空間周波数領域、および、該低空間周波数領域内に実質的に重なった高空間周波数領域を含むものであり、
前記低空間周波数領域は、前記高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものであり、
前記粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものであるガラス物品。
【0091】
実施形態2
前記低空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、約5μm以上であり、前記高空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0092】
実施形態3
前記低空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、約10μm以上であり、前記高空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0093】
実施形態4
前記低空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、約20μm以上であり、前記高空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、実施形態1に記載のガラス物品。
【0094】
実施形態5
前記粗面化領域の前記表面粗さ(Ra)は、前記低空間周波数領域に低空間周波数成分(Ra1)、および、前記高空間周波数領域に高空間周波数成分(Ra2)を含み、Ra1は、10nmから1000nmであり、Ra2は、10nmから200nmである、実施形態1から4のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0095】
実施形態6
前記ガラス基板は、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、リンケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、および、アルカリアルミノホウケイ酸ガラスからなる群から選択された組成物を含むものである、実施形態1から5のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0096】
実施形態7
前記ガラス基板は、更に、前記主面から、選択された深さに延伸する圧縮応力領域を含むものである、実施形態1から6のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0097】
実施形態8
ガラス物品において、
厚さ、および、主面を有するガラス基板と、
前記主面によって画定された粗面化領域と
を含み、
前記粗面化領域は、低空間周波数領域、および、高空間周波数領域を含むものであり、
前記低空間周波数領域は、前記高空間周波数領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものであり、
前記粗面化領域は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものであり、
更に、画素出力分布(PPD)によって測定した3%未満のぎらつき、および、70%未満の画像明瞭度(DOI)を有するガラス物品。
【0098】
実施形態9
画素出力分布(PPD)によって測定した2%未満のぎらつき、および、60%未満の画像明瞭度(DOI)を有する、実施形態8に記載のガラス物品。
【0099】
実施形態10
画素出力分布(PPD)によって測定した1%未満のぎらつき、および、50%未満の画像明瞭度(DOI)を有する、実施形態8に記載のガラス物品。
【0100】
実施形態11
画素出力分布(PPD)によって測定した1%未満のぎらつきを有する、実施形態8に記載のガラス物品。
【0101】
実施形態12
約3%から約90%の透過ヘイズを有する、実施形態8から11のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0102】
実施形態13
前記高空間周波数領域は、前記低空間周波数領域内に実質的に重なったものである、実施形態8から12のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0103】
実施形態14
前記低空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、約20μm以上であり、前記高空間周波数領域の前記平均横方向特徴物サイズは、5μm未満である、実施形態8から13のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0104】
実施形態15
ガラス物品の製造方法において、
ガラス基板の主面を第1のエッチング液で処理して、該主面によって画定された低空間周波数粗面化領域を形成する第1のエッチング工程と、
前記ガラス基板の前記主面を第2のエッチング液で処理して、該主面によって画定されて、前記低空間周波数粗面化領域に実質的に重なった高空間周波数粗面化領域を形成する第2のエッチング工程と
を含み、
前記低空間周波数粗面化領域は、前記高空間周波数粗面化領域の平均横方向特徴物サイズを超える平均横方向特徴物サイズを有するものであり、
前記粗面化領域の両方は、約10nmから約1000nmの表面粗さ(Ra)を有するものである方法。
【0105】
実施形態16
前記第1のエッチング液は、サンドブラストエッチング剤、および、低pH溶液エッチング剤を含むものである、実施形態15に記載の方法。
【0106】
実施形態17
前記第1のエッチング液は、塩酸、および、フッ化物塩を含むものであり、
前記フッ化物塩は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、二フッ化アンモニウム、二フッ化ナトリウム、および、二フッ化カリウムからなる群から選択された1つ以上の塩を含むものである、実施形態15に記載の方法。
【0107】
実施形態18
前記第2のエッチング工程は、周囲温度より高いエッチング温度で行われ、前記第2のエッチング液は、4未満のpHを有する溶液である、実施形態15から17のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態19
前記第2のエッチング液は、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、および、酢酸からなる群から選択された酸を含むものである、実施形態15から18のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態20
前記第2のエッチング液は、多価金属カチオンを含む1つ以上の塩を含むものである、実施形態15から19のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態21
前記第2のエッチング工程のエッチング温度は、約60℃から約100℃である、実施形態15から20のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態22
前記ガラス基板の前記主面を、9より高いpHを有する水溶液で、周囲温度より高い温度で処理する工程を、
更に含み、
前記処理する工程は、前記第1および第2のエッチング工程の後に行われるものである、実施形態15から21のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0112】
10 ガラス基板
12、14 主面
21 低空間周波数領域
22 高空間周波数領域
30a 粗面化領域
【国際調査報告】