(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】触媒成分の製造プロセスおよびそれから得られる成分
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20221027BHJP
【FI】
C08F4/654
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527155
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020081034
(87)【国際公開番号】W WO2021099123
(87)【国際公開日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ブリタ、ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】コリーナ、ジャンニ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンジェリスティ、ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ガッディ、ベネデッタ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー、ピエロ
(72)【発明者】
【氏名】モリーニ、ジャンピエロ
(72)【発明者】
【氏名】ソフリッティ、シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチェンツィ、パオロ
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA02
4J128AB02
4J128AC05
4J128BA02A
4J128BB01A
4J128BC15A
4J128BC36A
4J128CB30A
4J128CB43A
4J128DA02
(57)【要約】
【解決手段】MG、TI、および少なくとも電子供与体化合物(ID)を含む触媒成分を製造するプロセスであって、プロセスは、2つ以上の反応ステップを含み、0~150℃の範囲の温度で行われる第1のステップ(A)においては、MG系化合物をTI/MGモル比が3を超えるようにする量で少なくともTI‐CL結合を有するTI化合物と反応させ、MGおよびTIを含有する中間体固体触媒成分を生成し;次のステップ(B)においては、中間体固体触媒成分(A)をガス状分散媒質の中で電子供与体化合物(ID)を含有するガス状ストリームと接触させることにより、0.5:1~20:1の範囲のID/TIモル比を有する最終固体触媒成分を得る、プロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg、Ti、および少なくとも電子供与体化合物(ID)を含む触媒成分を製造するプロセスであって、前記プロセスは、2つ以上の反応ステップを含み、0~150℃の範囲の温度で行われる第1のステップ(a)においては、Mg系化合物をTi/Mgモル比が3を超えるようにする量で少なくともTi‐Cl結合を有するTi化合物と反応させ、MgおよびTiを含有する中間体固体触媒成分を生成し;次のステップ(b)においては、前記中間体固体触媒成分(a)をガス状分散媒質の中で前記電子供与体化合物IDを含有するガス状ストリームと接触させることにより、0.5:1~20:1の範囲のED/Tiモル比を有する最終固体触媒成分を得る、プロセス。
【請求項2】
少なくとも1つの電子供与体化合物(ID)は、好ましくはエステル、ケトン、アミン、アミド、カルバメート、カーボネート、脂肪族エーテル、ニトリル、アルコキシシランおよびグリコールから選択される少なくとも1つの官能基を含有する分子である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ID化合物は、C
2~C
20脂肪族エーテルおよびC
1~C
20脂肪族カルボン酸のアルキルエステルからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ID化合物は、単官能である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
テトラヒドロフラン、メチルホルミエートおよびエチルアセテートエチルホルミエート、メチルアセテート、プロピルアセテート、i‐プロピルアセテート、n‐ブチルアセテート、i‐ブチルアセテート、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
2つ以上のIDが使用される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
1つのIDは、脂肪族エーテル、特にテトラヒドロフランから選択され、別のIDは、脂肪族酸エステル、特にエチルアセテートから選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記Mg化合物は、式MgCl
2(ROH)
m付加物(ここで、R基はC
1~C
20炭化水素基であり、mは0.1~6である)のルイス付加物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記固体中間体は、ステップ(b)にかける前に予備重合される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(b)において、前記触媒成分上に固定されたID化合物の量は、ID/Tiモルが1.0:1~15:1、より好ましくは1.5:1~13:1の範囲となるようにする量である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ガス状ストリームは、ガス状または液体形態の前記ID化合物を運搬する不活性ガスを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記不活性ガスストリーム中の前記ID化合物は、ガス状形態である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記の不活性ガスは、窒素である、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップbは、前記流動化ガスが前記IDを運搬する不活性ガスストリームと同一である気相反応器で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
ステップ(b)における接触温度は、10~120℃の範囲を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オレフィンCH2=CHR重合用の触媒成分の製造プロセスに関し、ここで、Rは、水素または1~12個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルである。特に、本開示は、Ti化合物および1つ以上の電子供与体化合物も含むMgジクロライドに担持された触媒成分の製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合用のチーグラー・ナッタ(Ziegler‐Natta)触媒の1つの類型は、マグネシウムハライドに担持されたチタニウム化合物を含む。このような類型の触媒は、たとえば、米国特許第4,298,718号に記載されている。触媒性能の改質は、固体触媒自体内に「内部供与体」(ID)と呼ばれる有機電子供与体化合物を含むことによって得られる。
【0003】
先行技術には、内部供与体を触媒成分に含めるためのいくつかの方法が記載されている。立体特異性触媒を製造するための1つの一般的なレシピによれば、MgCl2またはその前駆体と電子供与体化合物およびチタニウム化合物(たとえば、TiCl4)の間の最初の接触の後に、こうして得られた固体を高温の液体TiCl4による1回以上にさらに処理する必要がある。このような種類のプロセスに関連される欠点は、高温のTiCl4を使用する連続的な処理によって供与体のかなりの部分が除去されるため、供与体の最終量を微調整することが困難であることである。さらに、特定のクラスの電子供与体は、TiCl4を使用する高温処理下で安定しないため、このようなプロセスにそれらを簡単に使用することはできない。これらの欠点は、多量の供与体を含み、適切に作用する特定の種類のポリエチレン触媒と特に関連がある。触媒成分上に多量の供与体が固定できる1種類の触媒製造は、たとえば、MgCl2に対して溶媒として作用する過量の電子供与体化合物およびチタニウム化合物の使用を含む米国特許第4,521,573号に記載されている。次いで、触媒成分は、沈殿または結晶化によって溶液から分離され得る。このようなプロセスもいくつかの欠点を有する。第一に、特定の供与体は、その化学構造上、溶媒として作用できないため、使用し得ない。第二に、かなりの量の供与体が触媒成分から除去されるか、ひいては触媒が多孔性の不活性担脂体上に堆積されない限り、高い多孔度を有する上記触媒成分を製造することは不可能である。しかしながら、最後の場合には、追加的なステップおよび追加の物質が必要となり、その結果、プロセスの複雑性と費用が増加することになる。
【0004】
国際公開WO2004/106388号は、MgCl2化合物またはその前駆体とTi化合物との間の第1の反応ステップ後に、電子供与体化合物を方法の最終物質として第1のステップから得られた中間体固体に添加する固体触媒成分の製造を記載している。電子供与体化合物は、液体不活性化合物の存在下で固体に添加される。特に、炭化水素溶媒に溶解され、次いで固体中間体と接触する。いくつかの問題はこのような方法と関連されている。第一に、大量生産のためには、多量の溶媒の使用が必要であり、それらは安全に保管および管理しなければならない。このような様態は、当業界で使用される溶媒が可燃性および/または爆発性が高いため、持続性および安全性に影響を及ぼす。さらに、電子供与体の単に一部のみが中間体上に固定されるため、溶媒を再利用するためには残留溶媒/供与体液相を処理しなければならない。さらに、溶媒も副産物が抽出できるため、触媒上に固定されていない未変換の供与体が汚染される場合があり、これは再利用できず、分離して廃棄する必要がある。
【0005】
このようなすべての追加の分離および回収ステップは、プラント複雑性を増加させ、持続性を低下させ、プロセスに必要な原料の量を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、溶媒を取り扱い、未反応の供与体を廃棄することに対する必要性が大幅に減少されるか、または除去される触媒成分を含有する供与体を製造するプロセスが有利であろう。
【0007】
したがって,本開示の様態は、Mg、Ti、および少なくとも電子供与体化合物(ID)を含む触媒成分を製造するプロセスであって、上記プロセスは、2つ以上の反応ステップを含み、0~150℃の範囲の温度で行われる第1のステップ(a)においては、Mg系化合物をTi/Mgモル比が3を超えるようにする量で少なくともTi‐Cl結合を有するTi化合物と反応させ、MgおよびTiを含有する中間体固体触媒成分を生成し;次のステップ(b)においては、中間体固体触媒成分(a)をガス状分散媒質の中で電子供与体化合物(ID)を含有するガス状ストリームと接触させることにより、0.5:1~20:1の範囲のID/Tiモル比を有する最終固体触媒成分を得る、プロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
少なくとも1つの電子供与体化合物(ID)は、好ましくはエステル、ケトン、アミン、アミド、カルバメート、カーボネート、脂肪族エーテル、ニトリル、アルコキシシランおよびグリコールから選択される少なくとも1つの官能基を含有する分子である。ID化合物は、単官能または多官能であり得、これは、分子が上記官能基のうちの1つ以上を含み得ることを意味する。官能基が複数ある場合、それらは同一または異なるクラスに属する場合がある。単官能ID化合物が好ましい。
【0009】
上述のように、電子供与体化合物(ID)は、単独でまたは、特定の実施形態においては、2つ以上の異なるIDの混合物として使用され得る。
【0010】
好ましいクラスのIDの1つは、C1~C20脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、特に、脂肪族モノカルボン酸のC1~C8アルキルエステル、たとえば、エチルアセテート、メチルホルミエート、エチルホルミエート、メチルアセテート、プロピルアセテート、i‐プロピルアセテート、n‐ブチルアセテート、i‐ブチルアセテートである。エチルアセテートが好ましい。
【0011】
好ましいアルコキシシランは、式Ra
5Rb
6Si(OR7)cのものであり、式中、aおよびbは0~2の整数であり、cは1~4の整数であり、合計(a+b+c)は4であり;R5、R6、およびR7は、選択的にヘテロ原子を含有する1~18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。aが0または1であり、cが2または3であり、R6が選択的にヘテロ原子を含有するアルキルまたはシクロアルキル基であり、R7がメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランおよびt-ブチルトリメトキシシランである。
【0012】
好ましいアミンは、式NR4
3のものであり、式中、R4基は独立的に、水素またはC1~C20炭化水素基である(ただし、それらは同時に水素ではない)。好ましくは、R4はC1~C10アルキル基である。具体例は、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミンおよびトリエチルアミンである。
【0013】
好ましいアミドは、式R5CONR6
2のものであり、式中、R5およびR6は、独立的に水素またはC1~C20炭化水素基である。具体例は、ホルムアミドおよびアセトアミドである。
【0014】
好ましいニトリルは、式R3CNのものであり、式中、R3は上記と同じ意味を有する。具体例は、アセトニトリルである。
【0015】
好ましいグリコールは、50未満の総炭素原子数を有するものである。これらの中で、25未満の総炭素原子数を有する1,2または1,3グリコールが特に好ましい。具体例は、エチレングリコール、1,2‐プロピレングリコールおよび1,3‐プロピレングリコールである。
【0016】
好ましい脂肪族エーテルは、C2~C20脂肪族エーテル、特に好ましくは3~5個の炭素原子を有する環状エーテル、たとえば、テトラヒドロフランおよびジオキサンである。線状C2~C20脂肪族エーテルの中で、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびイソアミルエーテルが特に好ましい。
【0017】
本開示の好ましい様態は、触媒成分に固定される2つ以上のIDの使用である。この場合、脂肪族エーテルから選択される1つのIDおよび脂肪族酸エステルから選択される1つのIDを使用することが好ましい。脂肪族酸エステルとしてエチルアセテートおよび脂肪族エーテルとしてテトラヒドロフランを使用することが特に好ましい。上記混合物に使用される場合、最終固体触媒成分に存在する脂肪族酸エステルとエーテルとの間のモル比は、0.2:1~16:1、より好ましくは0.5:1~10:1の範囲である。
【0018】
ステップ(a)において使用可能なチタニウム化合物は、Tiテトラクロライドまたは式TiCln(OR1)4‐nの化合物から選択され得、ここで、0≦n≦3であり、R1はC1~C10炭化水素基である。四塩化チタニウムが好ましい化合物である。
【0019】
ステップ(a)において使用されるMg系化合物は、MgCl2または好ましくは式MgRII
2の前駆体であり得、ここで、RII基は独立して選択的に置換されたC1~C20炭化水素基、‐OR基、‐OCOR基、ハロゲンであり得、ここで、Rは、選択的に置換されたC1~C20炭化水素基である(ただし、RII基は同時にハロゲンではない)。前駆体としても使用できるのは、Mgジハライドとルイス塩基との間のルイス付加物である。特に好ましいクラスはMgCl2(ROH)m付加物によって構成され、ここでR基はC1~C20炭化水素基、好ましくはC1~C10アルキル基であり、mは0.1~6、好ましくは0.5~3、より好ましくは0.5~2である。このような類型の付加物は一般的に付加物と非混和性である不活性炭化水素の存在下でアルコールと塩化マグネシウムとを混合し、付加物の溶融点(100~130℃)にて攪拌条件下で操作することで得られる。次いで、エマルジョンが急速にクエンチングされ、それによって付加物は、球状粒子の形態で固化される。これら球状付加物を製造する代表的な方法は、例えば米国特許第4,469,648号、米国特許第4,399,054号および国際公開公報WO98/44009号に報告されている。上記付加物はまた、国際公開WO2014/048964号、WO2014/161905号、WO2015/135903号、WO2016/050662号、WO2018/011086号に記載されているように、Cu、ZnおよびBiなどの金属の塩または酸化物を少量含有することができる。球状化に使用可能な別の方法としては、例えば米国特許第5,100,849号および第4,829,034号に記述された噴霧冷却法が挙げられる。
【0020】
MgCl2・(EtOH)m付加物が特に興味深く、ここでmは0.15~2.5であり、これはより高いアルコール含量を有する付加物を、アルコール含量が上記の値に減少されるまで50~150℃の間に含まれる温度で窒素流動中で行われる熱脱アルコール化プロセスを受けさせることで得られる。このような類型のプロセスは、EP395083に記述されている。
【0021】
これらの脱アルコール化された付加物はまた、半径最大1μmの空隙による多孔度(水銀法によって測定)が0.15~3.0cm3/g、好ましくは0.25~2.5cm3/gの範囲であることを特徴としてよい。
【0022】
ステップ(a)は、Mg系化合物、好ましくはMgCl2・(EtOH)m付加物をTiCl4に懸濁させて行うことができ;混合物は、80~135℃の範囲の温度まで加熱させ、この温度で0.5~2時間保持させる。他の成分、たとえば、少量のCu、ZnおよびBiなどの金属の塩または酸化物が国際公開WO2018/011086号およびWO2017/042058号に記載されているように、このステージで使用され得る。チタニウム化合物を用いた処理は1回以上行うことができる。好ましくは、2回繰り返される。プロセスの終了時、固体は通常の方法(例えば、液体の沈降および除去、濾過、遠心分離)を通じて懸濁液の分離によって回収され、溶媒を用いて洗浄され得る。洗浄は一般的に不活性炭化水素溶液で行うが、ハロゲン化炭化水素等のようなより極性の溶媒(例えば、誘電率がより高い溶媒)を用いることも可能である。
【0023】
ステップ(a)から得られた上記固体中間体は、ステップ(b)にかける前に、特定の特性を与えるために後処理する場合がある。
【0024】
特定の実施形態において、固体中間体は、予備重合ステップで予備重合され得る。予備重合は、任意のオレフィンCH2=CHR’(ここで、R’はHまたはC1~C10炭化水素基である)で行うことができる。特に、エチレンまたはプロピレン、あるいはこれらの混合物を1つ以上のα‐オレフィンと予備重合することが特に好ましく、上記混合物は、20モル%以下のα‐オレフィンを含み、固体中間体1グラム当たり約0.1g~約1000g、好ましくは固体中間体1グラム当たり約0.5~約500g、特に固体中間体1グラム当たり0.5~50gの量の予備重合体を形成する。予備重合ステップは液相または気相で0~80℃、好ましくは5~70℃の温度で行うことができる。中間体1グラム当たり0.5~20gの範囲の量の重合体を製造するためにエチレンまたはプロピレンによる中間体の予備重合が特に好ましい。予備重合は、以下で詳細に説明する1つ以上の外部供与体と組み合わせても使用され得る有機アルミニウム化合物などの助触媒を使用して行われる。
【0025】
上述のように、ステップ(b)において、それ自体または予備重合された固体中間体生成物は、ID化合物と接触させ、その上に固定される。
【0026】
上述のように、触媒成分上に固定されたID化合物の量は、ID/Tiモルが0.5:1~20:1、好ましくは1.0:1~15:1、より好ましくは1.5:1~13:1の範囲となるようにする量である。
【0027】
特定の実施形態において、ID化合物が脂肪族エーテルから選択される場合、ID/Tiモル比は、3.0:1~15:1、好ましくは5:1~13:1の範囲であり得る。
【0028】
別の特定の実施形態において、ID化合物がC1~C20脂肪族カルボン酸のアルキルエステルから選択される場合、ID/Tiモル比は、1.5:1~7:1、好ましくは2:1~6:1の範囲であり得る。
【0029】
さらに特定の実施形態において、ID化合物が脂肪族エーテルから選択されるIDおよび脂肪族酸エステルから選択されるIDの混合物である場合、ID(全体)/Tiモル比は、1.5:1~6:1、好ましくは2:1~6:1の範囲であり得る。
【0030】
本開示のプロセスにおいて、供与体固定の効率(ステップ(b)で供給される供与体の量に対する固定された供与体の量の間の比)は高いが、ステップ(b)で供給されるIDと固体中間体中のTi原子の量との間のモル比は、好ましくは最終固体触媒成分に対して測定されたものよりも高い。効率が60%よりも高い可能性があるという事実により、当業者は、最終触媒成分に対して所望の量を有するために供給されるIDの量を容易に決定することができる。
【0031】
上述のように、ステップ(a)から生成される固体中間体とID化合物のガス状ストリームとの間の接触は、分散媒質としてのガス状媒質の中で起こる。
【0032】
ガス状ストリームは、ガス状形態の純粋なID(または複数のID)によって、またはID化合物を含み得る不活性ガスストリームによって形成され得る。その後者の場合、不活性ガスストリームは、ガス状または液体形態のID化合物を運搬することができる。
【0033】
ガス状形態の純粋なIDは、所定の圧力での平衡温度よりも十分に高い温度にてこれを提供することによって取得できる。その後、一旦ガス状態になると、IDを固体中間体との接触のために反応器へ供給することができる。
【0034】
好ましい実施形態において、ID化合物を含有する不活性ガスストリームが使用される。
【0035】
特に小規模で作動する場合、これは、たとえば保温されているが、好ましくは沸騰してはいない液体ID化合物の表面上に不活性ガスのストリームを流すことによって取得できる。液体表面上に流れる不活性ガスは、液相と平衡をなすIDのガス部分を除去し、これを固体中間体との接触のために反応器内へ運搬する。
【0036】
特に小規模で作動するときに使用される別の好ましい実施形態において、ID化合物を含有する不活性ガスのストリームは、たとえば、不活性ガスのストリームを大量の液体形態のID内でバブルリングさせ、その後、その中に混入された液体IDの液滴を含有する上記不活性ガスストリームを回収することによって得られる。この場合も、IDを含有するガス状ストリームを固体中間体との接触のために反応器へ供給する。
【0037】
大規模に設定する場合、液体形態の供与体は、質量流量計を介して暖かい不活性ガスのメインストリームが流れ、IDの気化を引き起こすパイプへ供給され得る。
【0038】
一般に、不活性ガスストリームを使用する方法は、触媒の量に関してIDのより正確な投与を可能にし、さらにIDを運搬する不活性ガスも粒子の流動化に寄与することで供与体の均一な分布が保証できるため好ましい。さらに、これらの方法は、IDを激しく加熱する必要がないため、より汎用的である。IDと固体中間体粒子との間の接触が起こるべき所望の温度で不活性ガスストリームを加温することで十分である。
【0039】
不活性ガスは、室温でガス状形態であり、触媒製造に使用される成分に対して反応性ではない任意の物質であり得る。一例として、窒素またはプロパンのような軽質炭化水素が使用され得る。窒素が最も好ましい。
【0040】
ステップ(b)における接触温度は、10~120℃、好ましくは20~100℃、より好ましくは30~80℃の範囲に含まれる。任意の特定試薬の分解または劣化を引き起こす温度は、たとえこの温度が一般的に適切な範囲内に含まれるとしても、回避すべきであるのが一般的である。また、処理時間は試薬の性質、温度、濃度などのような他の条件によって変わり得る。一般的に、この接触ステップは10分~10時間、より頻繁には0.5~5時間持続できる。必要に応じ、最終供与体の含量をさらに増加させるために、このステップが1回以上繰り返されてもよい。
【0041】
接触中に固体中間体の粒子は、ID化合物との優先的な接触ゾーンを回避するために動き続けることが特に好ましい。このような動きは、いくつかの方法で取得できる。たとえば、接触が起こる反応器は、気相反応器であり得、ここで、浮遊された粒子を維持するガスの流れは、浮遊粒子(流動床反応器)の床を生成する垂直流動化ガスの流れを生成するグリッドを介して流動化ガスをポンピングする圧縮機によって生成される。特定の実施形態において、流動化ガスは、不活性ガスストリーム中のIDを運搬するために使用されるものと同一である。
【0042】
特定の実施形態において、接触ステップ(b)は、粒子が重力の作用下に高密度化された形態で流れる高密度化ゾーンおよび粒子が高速流動化条件下で流れる高速流動化ゾーンを含むループ反応器で行われ得る。好ましくは、高速流動化は、窒素などの不活性ガスの流れによって得られる。
【0043】
このステップの最後に、固体粒子は、撹拌または流動化を中止した後に沈降させることによって容易に回収される。
【0044】
固体中間体化合物上に固定されないID化合物は、不活性ガスストリームから凝縮させることによって容易に回収できる。これは、IDを運搬する不活性ガスストリームを熱交換器へ供給することによって取得できる。
【0045】
このような方法に従って動作させることにより、大量の溶媒を回収、分離および/または廃棄する必要はなく、所望の量のIDを有する最終固体触媒成分を得ることが可能である。好ましくは、熱交換器から流出する不活性ガスストリームは、ステップ(b)が起こる反応器に直接リサイクルすることができる。
【0046】
特に、ID化合物がテトラヒドロフランなどの環状脂肪族エーテルから選択される場合、担持されたIDを含有する固体触媒成分は、好ましくは70~150℃、好ましくは80℃~130℃、より好ましくは85~100℃の範囲の温度で熱処理を行う。そのような処理(アニーリング)は、好ましくは流動化不活性ガスの温度を要求された時間に所望の値に上げることにより、ID担持が起こる同一の反応器内にて行う。また加熱時間は固定されていないが、最高到達温度のような他の条件によっても変わり得る。それは一般に0.1~10時間、より具体的には0.5~6時間の範囲である。通常、温度が高いほど加熱時間は短くなり得、逆に温度が低いほど反応時間が長くなることがある。アニーリングプロセスは、供与体担持(donor supportation)後に固体生成物を分離する必要はなく、前のステップの直後に行うことが好ましい。
【0047】
得られた触媒は良好な性能を示す。ある場合には、ステップ(b)が液体分散媒質の中で行われる触媒によって得られた重合体と比較し、より高いバルク密度を有する重合体を生成する。すべての場合に、セーブされた溶媒の量(SSA)は、プロセスの持続可能性が大幅に改善されるようにする量である。
【0048】
本開示による固体触媒成分は、公知の方法に従ってそれらを有機アルミニウム化合物と反応させることにより、オレフィン重合用触媒に変換される。
【0049】
特に、本発明の目的は、以下のものの間の反応生成物を含むオレフィンCH2=CHR重合用の触媒であり、ここで、Rは、水素または1~12個の炭素原子を有するヒドロカルビルラジカルである:
(i) 上述のような固体触媒成分、
(ii) アルキルアルミニウム化合物、および選択的に、
(iii) 外部電子供与体化合物(ED)。
【0050】
アルキル‐Al化合物は、好ましくは、たとえば、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリ‐n‐ブチルアルミニウム、トリ‐n‐ヘキシルアルミニウム、トリ‐n‐オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物から選択され得る。また、アルキルアルミニウムハライドおよび特にアルキルアルミニウムクロライド、例えば、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)、ジイソブチルアルミニウムクロライド、Al-セスキクロライドおよびジメチルアルミニウムクロライド(DMAC)が使用され得る。トリアルキルアルミニウムとアルキルアルミニウムハライドとの混合物を使用することも可能であり、ある場合にはこのような使用が好ましい。それらの中でも混合物TEAL/DEACおよびTIBA/DEACが特に好ましい。
【0051】
外部電子供与体化合物EDは、ステップ(b)で使用される(ID)化合物と等しいか、または異なる場合がある。好ましくは、エーテル、エステル、アミン、ニトリル、シランおよびこれらの混合物からなる群から選択される。特に、これは有利には、C2~C20脂肪族エーテル、特に好ましくは3~5個の炭素原子を有する環状エーテル、たとえば、テトラヒドロフラン、ジオキサンから選択され得る。
【0052】
さらに、電子供与体化合物はまた、有利には、式Ra
5Rb
6Si(OR7)cのケイ素化合物から選択され得、式中、aおよびbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、合計(a+b+c)は4であり、R5、R6、およびR7は、選択的にヘテロ原子を含有する1~18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。分岐状aが0であり、cが3であり、R6が選択的にヘテロ原子を含有する分枝状アルキルまたはシクロアルキル基であり、R7がメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシランおよびテキシルトリメトキシシランである。
【0053】
上述の成分(i)~(iii)は、重合条件下でこれらの活性を利用することができる反応器内に別々に供給することができる。しかしながら、これは上記成分を、選択的には少量のオレフィンの存在下で、0.1~120分の範囲、好ましくは1~60分の範囲の時間で予備接触させる特定の実施形態を構成する。予備接触は、0~90℃の範囲、好ましくは20~70℃の範囲の温度で液体希釈剤の中で行うことができる。
【0054】
そのように形成された触媒システムは、主要重合プロセスで直接使用され得るか、代替的には、特に中間体固体の予備重合がステップ(b)の前に行われなかった場合、予め予備重合され得る。予備重合ステップは、一般的には主要重合プロセスを気相で行う場合に好ましい。予備重合は、任意のオレフィンCH2=CHR(ここで、RはHまたはC1~C10炭化水素基である)で行うことができる。特に、エチレンまたはプロピレン、あるいはこれらの混合物を1つ以上のα‐オレフィンと予備重合することが特に好ましく、上記混合物は、最大20モル%のα‐オレフィンを含み、固体成分1グラム当たり約0.1g~固体触媒成分1グラム当たり最大約1000gの量の重合体を形成する。予備重合ステップは液相または気相で0~80℃、好ましくは5~70℃の温度で行うことができる。予備重合ステップは、連続重合プロセスの一部としてインラインで、またはバッチプロセスにおいて別個に行われ得る。触媒成分1グラム当たり0.5~20gの範囲の量の重合体を製造するための、本開示の触媒とエチレンまたはプロピレンとのバッチ予備重合が特に好ましい。
【0055】
本開示の触媒が使用できる気相プロセスの例は、国際公開WO92/21706号、米国特許第5,733,987号および国際公開WO93/03078号に記載されている。これらのプロセスは、一連の流動床または機械撹拌式床の1つ以上の反応器で触媒成分の予備接触ステップ、予備重合ステップおよび気相重合ステップを含む。
【0056】
一実施形態によれば、オレフィンを重合するための気相プロセスは、下記のプロセスを任意の相互順序で含む:
a) エチレンを、選択的には1つ以上の共単量体とともに、気相反応器で水素および本開示による触媒システムの存在下で重合するステップ;および
b) エチレンを、選択的には1つ以上の共単量体とともに、別の気相反応器で水素およびステップ(a)の触媒システムの存在下で重合するステップ;
(ここで、上記気相反応器のうち、少なくとも1つの反応器において、成長する重合体粒子は、高速流動化または輸送条件下で第1の重合ゾーン(上昇管)を通って上方に流れ、上昇管を離れて第2の重合ゾーン(下降管)に流入され、そこを通って重力の作用下に下方に流れ、下降管を離れて2つの重合ゾーンの間で重合体の循環を確立するために上昇管に再導入される)。
【0057】
第1の重合ゾーン(上昇管)において、高速流動化条件は、1つ以上のオレフィン(すなわち、エチレンおよび共単量体(複数可))を含むガス混合物を重合体粒子の輸送速度よりも速い速度で供給することによって確立され得る。ガス混合物の速度は、0.5~15m/s、たとえば、0.8~5m/sであり得る。用語「輸送速度」および「高速流動化条件」は、たとえば、文献¥[D.Geldart, Gas Fluidisation Technology,, J.Wiley & Sons Ltd.,(1986)]に記載されている。
【0058】
第2の重合ゾーン(下降管)において、重合体粒子は、重合体のバルク密度に近接する高い密度値(反応器の体積当たり重合体の質量で定義される)に到達するように重力の作用下に高密度化された形態で流れる。言い換えれば、重合体がプラグ流れ(充填流れモード)で下降管を通って垂直下向して流れ、その結果、重合体粒子の間に少量のガスが飛沫同伴(entrain)される。
【0059】
気相においてエチレンおよび選択的に共単量体を重合させる場合、水素の使用量、したがって圧力比H2/C2
-は、製造されるポリエチレンの種類、特にASTM-D 1238条件Eに従って決定されるメルトフローレートで示されるそれの所望の分子量に依存する。比較的低い分子量(高いMFR値)のためには、より多量の水素が必要であるので、圧力比H2/C2
-も高くなるであろう。しかしながら、一般的には、0.5~5、好ましくは1~4、より好ましくは1.5~3.5の範囲である。
【0060】
既に説明したように、本開示の触媒は、エチレンと3~12個の炭素原子を有する1つ以上のアルファ-オレフィンとの共重合体からなり、80%超過のエチレン由来単位のモル含量を有する、線状低密度ポリエチレン(LLDPE、0.940g/cm3未満の密度を有する)並びに極低密度および超低密度ポリエチレン(VLDPEおよびULDPE、0.920g/cm3未満~0.880g/cm3の密度を有する)の製造に使用することができる。しかしながら、これらは,例えばエチレン単独重合体および3~12個の炭素原子を有するアルファ-オレフィンとエチレンとの共重合体を含む高密度エチレン重合体(HDPE、0.940g/cm3より大きい密度を有する);エチレン由来単位の重量基準含量が約30~70%である、エチレンとプロピレンのエラストマー性共重合体、およびより小さい割合のジエンとともにエチレンおよびプロピレンのエラストマー三元重合体;を含む広範囲のポリオレフィン製品を製造するために使用され得る。
【0061】
以下の実施例は、本開示をさらに記述するために提供する。
特性決定
【0062】
特性は、次の方法に従って決定される:
溶融指数E:ASTM‐D1238条件E
溶融指数F:ASTM‐D1238条件F
溶融指数P:ASTM‐D1238条件P
バルク密度:DIN-53194
Mg、Ti(tot)の決定:「ICP分光計ARL Accuris」を使用して誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)を介して行った。
【0063】
「フラキシ(Fluxy)」白金るつぼ中で、0.1÷03grの触媒および3gのメタボレート/テトラボレートリチウムの1/1混合物を分析的に秤量することによって試料を製作した。るつぼを燃焼ステップのために弱いブンゼン炎(Bunsen flame)上に置いた後、数滴のKI溶液を加えた後に完全燃焼のために「Claisse Fluxy」装置に挿入した。残渣を5%v/vHNO3溶液で収集した後、次の波長でICPを介して分析した:マグネシウム、279.08nm;チタニウム、368.52nm;アルミニウム、394.40nm。
Clの決定:電位差滴定により行なった。
EDの決定:ガスクロマトグラフィー分析による
付加物および触媒の平均粒子サイズ
【0064】
「Malvern Instr.2600」装置を用いて単色レーザー光の光学回折の原理に基づく方法によって決定された。平均の大きさは、P50として提供される。
水銀による多孔度および表面積:
【0065】
測定は、Carlo Erbaの「Porosimeter 2000シリーズ」を用いて行われる。
【0066】
多孔度は、圧力下での水銀の吸収によって決定される。このような測定のために、水銀のリザーバーおよび高真空ポンプ(1・10‐2mbar)に連結された補正済み膨張計(直径3mm)CD3(Carlo Erba)が用いられる。坪量した量のサンプルを膨張計に入れる。次に、装置を高い真空(<0.1mmHg)の下においてこれらの条件で20分間維持する。次いで、膨張計を水銀貯留槽に接続し、水銀を膨張計上に高さ10cmと表示されたレベルに到逹するまでゆっくりと流入させる。膨張計と真空ポンプを連結するバルブを閉じ、次いで水銀圧力を窒素で漸次的に140Kg/cm2まで上げる。圧力の影響の下、材料の多孔度によって水銀が細孔に入り込んでレベルが下がる。
【0067】
総多孔度および最大1μmの気孔による多孔度(cm3/g)、気孔分布曲線、および平均気孔サイズは、水銀の体積減少および印加された圧力値の関数である積分気孔分布曲線から直接計算される(これらのすべてのデータは、C.Erbaの「MILESTONE200/2.04」プログラムを備えたポロシメーター関連コンピューターによって提供され、精巧化される)。
セーブされた溶媒の量(SSA)
【0068】
これは、標準物の比較例の手順に従って、固体中間体触媒上に電子供与体を担持するために(また、このようなステップが行われるときにアニーリングするために)必要な触媒Kg当たり溶媒の量(リットル)に該当する。
実施例
球状MgCl2(EtOH)付加物の製造のための一般的な手順
【0069】
米国特許第4,399,054号の実施例2に記載されている方法にしたがうが、10000RPMの代わりに2000RPMで操作して2.8モルのアルコールを含有する塩化マグネシウムとアルコールの付加物を調製した。こうして得られた付加物を、窒素ストリーム下で、50~150℃の温度範囲で、熱処理により、25重量%までのアルコール量に脱アルコール化した。
実施例1
中間体の予備重合された固体触媒成分の製造手順
【0070】
窒素でパージした2Lの4口丸フラスコ中に1LのTiCl4を0℃において導入した。次いで、同一の温度において上記のように調製した25重量%のエタノールを含有する70gの球状MgCl2/EtOH付加物を撹拌下で加えた。温度を3時間で130℃に昇温し、60分間保持した。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。新鮮なTiCl4を総容量1Lまで添加し、130℃で60分間の処理を繰り返した。沈降および吸い出しの後、固体残渣を50℃でヘキサンで5回、25℃でヘキサンで2回洗浄し、真空下で30℃において乾燥した。
【0071】
攪拌機が備えられた2L四つ口ガラス反応器に、10℃で812ccのヘキサンを添加し、上記のように製造した50gの触媒成分を10℃で攪拌しながら導入した。内部温度を一定に保持しながら、ヘキサン中15gのトリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)(約80g/l)および例えばTNOA/CMMSモル比が6になる量のシクロヘキシルメチル-ジメトキシシラン(CMMS)を反応器に徐々に導入し、温度を10℃に維持した。10分間攪拌した後、一定速度で6.5時間にかけて同一の温度で総量65gのプロピレンを反応器に導入した。その後、内容物全体を濾過し、30℃(100g/l)の温度でヘキサンで3回洗浄した。乾燥させた後、生成される予備重合された触媒(A)を分析した。その結果(Mg、Ti)は、表1に報告されている。
供与体担持
【0072】
45mmの直径を有する0.8Lの閉回路ジャケット流動床反応器に100gの予備重合された触媒を室温で窒素雰囲気下にロードした。
【0073】
次いで、ガス回路を閉じ、ガスポンプをオンにし、反応器内部の良好な固体流動化に到達するように調整した後、温度を50℃まで上げた。
【0074】
反応器内部の固体が所望の温度に到達したとき、エチルアセテート(EA)およびテトラヒドロフラン(THF)を液体供給システムにロードし、約60分内に窒素ガスストリームを使用して0.25のEA/Mgおよび0.25のTHF/Mgのモル比を有するようにする量で触媒に添加した。暖かい液体表面上に流れる不活性ガスは、液相と平衡をなすIDのガス部分を除去し、これを固体中間体との接触のために反応器内へ運搬した。
【0075】
付加物ルイス塩基添加の後、固体を反応器で60分間50℃で流動化下に残留させ、反応を完結させた(成熟ステップ)。
【0076】
次いで、温度を20℃に下げ、ポンプをオフにし、反応器内部に窒素を供給して固体を排出した。
比較例1
供与体担持
【0077】
実施例1に記載のように製造された約100gの固体予備重合触媒を窒素でパージングしたガラス反応器に充填し、50℃で1.0Lのヘプタンでスラリー化した。
【0078】
次いで、エチルアセテート(EA)およびテトラヒドロフラン(THF)を0.25のEA/Mgおよび0.25のTHF/Mgのモル比を有するようにする量で注意深く滴下した(60分内に)。
【0079】
スラリーを内部温度として50℃を有するようにしながら1.5時間攪拌下に保持させた。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。固体を50℃で容量1Lまで無水ヘプタンを添加しかつ1回の撹拌下で洗浄した後、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。次いで、無水ヘプタンで容量を1Lに復元し、温度を85℃まで上昇させ、撹拌下で2時間維持させた。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。
【0080】
固体を25℃において無水ヘキサン(3×1000mL)で3回洗浄し、回収し、真空下で乾燥させて分析した。その結果は、表1に報告されている。
実施例2
【0081】
エチルアセテートおよびTHFを含有する触媒成分を実施例1に記載のプロセスに従って製造した後、アニーリングした。
【0082】
供与体付加および成熟ステップの後、予備重合された付加触媒に対してアニーリングステップを行なった。
【0083】
温度を50℃から85℃まで上げ、固体をその温度で60分間流動化下に保持した。
【0084】
次いで、温度を20℃に下げ、ポンプをオフにし、反応器内部に窒素を供給して固体を排出した。
実施例3
固体中間体成分の製造。
【0085】
窒素でパージした500ml4口丸フラスコ中に、0℃で、250mlのTiCl4を導入した。次いで、同一の温度において、25重量%のエタノールを含み、約40μmの粒子サイズP50を有する10グラムの球状付加物を撹拌下に添加した。温度を130℃に上げ、その温度で2時間保持した。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。新しい量の新鮮なTiCl4を初期液量に到達するようにフラスコに添加した。温度を110℃で1時間保持した。再び、固体を沈降させ、液体を吸い出した。
【0086】
次いで、固体を無水ヘキサンにて60℃で3回(各々の洗浄時に100mL)および40℃で2回洗浄した。最後に、固体中間体成分を真空下で乾燥させた。
供与体担持
【0087】
0.8LのDN45閉回路ジャケット流動床反応器に50gの固体中間体成分を室温で窒素雰囲気下にロードした。
【0088】
次いで、ガス回路を閉じ、ガスポンプをオンにし、反応器内部の良好な固体流動化に到達するように調整した後、温度を50℃まで上げた。
【0089】
固体が所望の温度に到達したとき、テトラヒドロフラン(THF)を液体供給システムにロードし、約60分内に窒素ガスストリームを使用して0.87のTHF/Mgのモル比を有するようにする量で触媒に添加した。液体表面上に流れる不活性ガスは、液相と平衡をなすIDのガス部分を除去し、これを固体中間体との接触のために反応器内へ運搬した。
【0090】
THF添加の後、温度を50℃から95℃まで上げ、固体をその温度で120分間流動化下に保持した。
【0091】
次いで、温度を20℃に下げ、ポンプをオフにし、反応器内部に窒素を供給して固体を排出した。
比較例2
【0092】
実施例3に記載のように製造された10グラムの固体中間体触媒成分を室温で機械式撹拌機が備えられ、窒素でパージされた500mLの4口丸フラスコに250mLのヘキサンで充填した。同一の温度において、攪拌下にTHFをモル比THF/Mg=0.87を充填する量で滴下した。温度を50℃に上げ、混合物を2時間撹拌した。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。
【0093】
固体を40℃で無水ヘキサン(2×100mL)で2回洗浄し、回収し、真空下で乾燥させた。
アニーリング
【0094】
窒素でパージされた500cm3の4口丸フラスコに、250cm3のヘプタンおよび10gの前のステップで得られた固体を25℃で導入した。撹拌下に、温度を約30分内に95℃に上げ、2時間保持した。次いで、温度を80℃に下げ、撹拌を中止し、固体生成物を30分間沈降させた後、上澄液を吸い出した。固体触媒成分の特性決定は、表1に報告されている。
実施例4
中間体固体触媒成分の製造手順
窒素でパージした2Lの4口丸フラスコ中に1LのTiCl4を0℃において導入した。次いで、同一の温度において上記のように調製した25重量%のエタノールを含有する70gの球状MgCl2/EtOH付加物を撹拌下で加えた。温度を3時間で130℃に昇温し、60分間保持した。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。新鮮なTiCl4を総容量1Lまで添加し、130℃で60分間の処理を繰り返した。沈降および吸い出しの後、固体残渣を50℃でヘキサンで5回、25℃でヘキサンで2回洗浄し、真空下で30℃において乾燥した。
供与体担持
【0095】
45mmの直径を有する0.8Lの閉回路ジャケット流動床反応器に50gの中間体固体触媒を室温で窒素雰囲気下にロードした。ガス回路を閉じ、ガスポンプをオンにし、反応器内部の良好な固体流動化に到達するように調整した後、温度を50℃まで上げた。
【0096】
固体が所望の温度に到達したとき、エチルアセテート(EA)を液体供給システムにロードし、約60分内に窒素ガスストリームを使用して0.625のEA/Mgのモル比を有するようにする量で触媒に添加した。液体表面上に流れる不活性ガスは、液相と平衡をなすIDのガス部分を除去し、これを固体中間体との接触のために反応器内へ運搬した。
【0097】
エチルアセテート添加の後、固体を反応器にて60分間50℃で流動化下に残留させ、反応を完結させた(成熟ステップ)。
【0098】
次いで、温度を20℃に下げ、ポンプをオフにし、反応器内部に窒素を供給して固体を排出した。
比較例3
【0099】
実施例4に記載のように製造された18.75グラムの固体中間体触媒成分を室温で機械式撹拌機が備えられ、窒素でパージされた500mLの4口丸フラスコに250mLのヘキサンで充填した。同一の温度において、攪拌下にエチルアセテート(EA)をモル比EA/Mg=0.625を充填する量で滴下した。温度を50℃に上げ、混合物を2時間撹拌した。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。固体を40℃で無水ヘキサン(2×100mL)で2回洗浄し、回収し、真空下で乾燥させた。固体触媒成分の特性決定は、表1に報告されている。
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg、Ti、および少なくとも電子供与体化合物(ID)を含む触媒成分を製造するプロセスであって、前記プロセスは、2つ以上の反応ステップを含み、0~150℃の範囲の温度で行われる第1のステップ(a)においては、Mg系化合物をTi/Mgモル比が3を超えるようにする量で少なくともTi‐Cl結合を有するTi化合物と反応させ、MgおよびTiを含有する中間体固体触媒成分を生成し;次のステップ(b)においては、前記中間体固体触媒成分(a)をガス状分散媒質の中で前記電子供与体化合物IDを含有するガス状ストリームと接触させることにより、0.5:1~20:1の範囲のED/Tiモル比を有する最終固体触媒成分を得る、プロセス。
【請求項2】
少なくとも1つの電子供与体化合物(ID)は、エステル、ケトン、アミン、アミド、カルバメート、カーボネート、脂肪族エーテル、ニトリル、アルコキシシランおよびグリコールから選択される少なくとも1つの官能基を含有する分子である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ID化合物は、C
2~C
20脂肪族エーテルおよびC
1~C
20脂肪族カルボン酸のアルキルエステルからなる群から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
2つ以上のIDが使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
1つのIDは、脂肪族エーテル、特にテトラヒドロフランから選択され、別のIDは、脂肪族酸エステル、特にエチルアセテートから選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記固体中間体は、ステップ(b)にかける前に予備重合される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ガス状ストリームは、ガス状または液体形態の前記ID化合物を運搬する不活性ガスを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記の不活性ガスは、窒素である、請求項7に記載のプロセス。
【国際調査報告】