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特表2022-546645甜菜及びその品種を食品加工産業で使用可能な製品に加工する方法、該方法で得られた製品、並びに該製品を含む食品
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  • 特表-甜菜及びその品種を食品加工産業で使用可能な製品に加工する方法、該方法で得られた製品、並びに該製品を含む食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(54)【発明の名称】甜菜及びその品種を食品加工産業で使用可能な製品に加工する方法、該方法で得られた製品、並びに該製品を含む食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20221027BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20221027BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022539300
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 SK2020050014
(87)【国際公開番号】W WO2021045695
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】PCT/SK2019/050010
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(31)【優先権主張番号】PP50011-2020
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522082540
【氏名又は名称】ジトニー,ボリス
【氏名又は名称原語表記】ZITNY, Boris
【住所又は居所原語表記】Cajkovskeho 18, 949 01 Nitra SLOVAKIA
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ジトニー,ボリス
【テーマコード(参考)】
4B016
4B035
【Fターム(参考)】
4B016LE02
4B016LG05
4B016LK01
4B016LK03
4B016LK06
4B016LK08
4B016LK20
4B016LP01
4B016LP05
4B016LP08
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG01
4B035LG05
4B035LG19
4B035LG32
4B035LG40
4B035LP05
4B035LP21
4B035LP23
4B035LP55
4B035LP56
4B035LP59
(57)【要約】
本発明に係る方法は、甜菜及びその品種を食品加工産業で使用可能な製品に加工する方法であって、
劣化に対する材料の不活性化工程と、
不活性化工程の前、間、又は後に、甜菜の根を粒子材料に分解する工程であって、粒子寸法の少なくとも1つが50mm以下であり、好ましくは3mm以下であり、最も好ましくは、前記不活性化工程前に材料をペースト状に分解する工程と、
混合物から液相を除去して、40重量%~100重量%の乾燥物含有量を有する製品を生成する工程と
を含み、
前記不活性化工程が、分解に対する材料の不活性化のために、
分子中に1~4つの炭素原子及び1つのヒドロキシル基を含むアルコール群から選択される1種又は複数種のアルコールと、甜菜材料とを、得られる混合物の液相中のアルコールの最小濃度が少なくとも60体積%、好ましくは70体積%、最も好ましくは85体積%以上であるような割合で、-15℃~180℃の温度で混合する工程及び
混合物の全容積において、アルコール濃度が技術的に同じになるまで、前記材料とアルコールとの混合物を維持する工程を含む。
本発明はまた、前記方法で得られた製品に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甜菜及びその品種を食品加工産業で使用可能な製品に加工する方法であって、
(a)劣化に対する甜菜又は甜菜材料の不活性化工程及び望ましくない官能性物質の除去工程を含み、
前記不活性化及び除去工程が、
i.分子中に1~4つの炭素原子及び1つのヒドロキシル基を含むアルコール群から選択される1種又は複数種のアルコールと、甜菜材料とを、得られる混合物の液相中のアルコールの最小濃度が少なくとも60体積%、好ましくは70体積%、最も好ましくは85体積%以上であるような割合で、-15℃~180℃の温度で混合する工程、及び
混合物の全容積において、アルコール濃度が技術的に同じになるまで、前記材料とアルコールとの混合物を維持する工程
を含み、
かつ、該方法が、
(b)不活性化工程の前、間、又は後に、甜菜の根を粒子材料に分解する工程であって、粒子寸法の少なくとも1つが50mm以下であり、好ましくは3mm以下であり、最も好ましくは、前記不活性化工程前に材料をペースト状に分解する工程
を有し、
・分解工程と不活性化工程との間の時間を、最大でも24時間とし、分解した材料の表面が増加するにつれて比例的に短くし、ペーストへの分解工程が不活性化工程に直接続くようにされ、及び/又は、
・分解中又は分解直後で不活性化の前に、分解された材料を、少なくとも80℃、好ましくは80℃~230℃、より好ましくは80℃~180℃、最も好ましくは90℃~110℃の温度に衝撃加熱し、及び/又は
・分解中又は分解直後に、分解された塊を、25℃~180℃の温度で、材料の含水率が最大50重量%に達するまで、一つ又は服すのガス流れで予備乾燥し、ガスが少なくとも12%の酸素を含む場合、乾燥空間のガス流量を5.0m/s~40m/sとし、及び/又は、
・分解から不活性化までの全ての工程を、
・地球大気の酸素含有量に対して少なくとも40%減少した制御された雰囲気中で、場合によっては、さらに、
・100nm~1100nmの波長で放出されるエネルギの量、特に、200nm~420nmの波長及び550nm~650nmの波長での放射線の量が、最大でも300mJ/cm以下、より好ましくは50mJ/cm以下の環境下で
で行い、
かつ、該方法が、
(c)混合物から液相を除去して、40重量%~100重量%の乾燥物含有量を有する製品を生成する工程
を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
不活性化工程におけるアルコールが、エタノール、及び/又はメタノール、及び/又はプロパノールである
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(c)が、
・密閉空間で混合物を85℃~135℃の温度まで加熱し、この温度に達すると、材料中のアルコール含有量が5重量%未満に低下するか、又は混合物中の液体含有量が60重量%未満に低下するまで、発生した蒸気を空間から除去し始め、その後、乾燥物含有量が40重量%~最大99.9重量%に達するまで材料を乾燥させる工程、又は、
・混合物を固相と液相とに分離し、これらをさらに別々に処理する工程であって、
・・固相を乾燥させて、乾燥物含量が40重量%~100重量%の製品を形成し、
・・液相から、アルコールを回収し、アルコールを除去した後の残留物を乾燥させて、40重量%~100重量%の乾燥物含量を有する製品を形成するか、又はそれを結晶化させるようにし、
混合物の分離工程の前及びその間、混合物を、好ましくは-15℃~30℃の間の温度に維持する工程
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)及び/又は予備乾燥工程中に、
混合物/材料を、
50重量%を超える混合物/材料の水分含量で、100℃を超える温度で乾燥させ、かつ、
50重量%未満の混合物/材料の水分含量で、100℃未満の温度で乾燥させる
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)又は(c)からの蒸気をアルコール回収のために捕捉し、アルコール回収工程からの蒸留残渣を乾燥させる
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)を、
大気圧、又は減圧下、又は空間中の酸素濃度を低下させた環境下で、
30℃~160℃の温度で行う
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
液相を回収前に-30℃~10℃、好ましくは-20℃~5℃の範囲の温度で脱ろう処理し、その後、脱ろう処理によって得られた乾燥物の部分を2回目の分離に供し、2回目の分離によって得られた固相を乾燥させて少なくとも40重量%の乾燥物含量を有する製品を生成する
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
材料又は混合物を、15.0kHz~40kHzの周波数で、30J/g~4500J/gの超音波出力で1分~6時間超音波処理する
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
超音波処理の間、混合物の温度を、エネルギの外部作用により60℃~85℃、好ましくは70℃までの温度に維持する
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
予備乾燥工程におけるガスが、空気、酸素含有量が最大12%、好ましくは最大4%の空気、窒素、窒素と二酸化炭素との混合物、最も好ましくは二酸化炭素である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
甜菜の重量に応じて、固体決勝の形態で、甜菜に、
NaS及び/又はKを、分解中又は不活性化前に、0.05重量%までの量で直接添加すること、及び/又は
NaNO及び/又はKNOを0.95重量%までの量で直接添加すること
を特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
不活性化の前に、有機酸又は無機酸を、得られる混合物のpHが2.0~4.9となるような量で材料に添加する
ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)~(c)が、材料と接触する、波長が200nm~420nm、又は200nm~420nm、及び550nm~650nmの電磁放射エネルギが、最大300mJ/cm、好ましくは150mJ/cm未満、より好ましくは50mJ/cm未満、最も好ましくは25mJ/cm未満である環境下で行われる
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
得られた製品を、分子中に1~4つの炭素原子と1つのヒドロキシル基を含むアルコール群から選択される1種以上のアルコールとさらに混合し、前記混合前のアルコールの濃度が、製品及びアルコール比が4:1~1:5で少なくとも70容量%であり、
その後、0℃~90℃の温度で0分~600分間洗浄し、
固相を分離し、その後、乾燥し、同時に液相からアルコールを回収する
ことを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
不活性化工程前に得られた、80重量%以上の乾燥物含量を有する製品又は材料を、その後、粉砕及び分画し、及び/又は、植物性脂肪及び/又は油と、脂肪及び製品比が1:2~1:50で混合する
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載の方法によって得られる甜菜製品であって、
混合物中に単糖及び二糖を少なくとも80重量%、及びミネラルを少なくとも0.15重量%含み、前記ミネラルが、主として、カリウム、鉄、カルシウム、マグネシウム及びそれらの化合物であり、
さらに、少なくとも100mg/kgの総量でベタインを含む
ことを特徴とする甜菜製品。
【請求項17】
請求項1~15の何れか一項に記載の方法によって得られる製品であって、
ペクチン、セルロース及びヘミセルロースの群からの物質、それらのサブユニット及び化合物から成る全繊維を、混合物中に少なくとも40重量%含み、
かつ、単糖類、二糖類及びオリゴ糖を、混合物中に少なくとも5重量%含み、
化学元素であるカリウム、鉄、カルシウム、マグネシウム、及びそれらの化合物を含むミネラルを重量の大部分で含む
ことを特徴とする製品。
【請求項18】
請求項1~10及び12~15に記載の方法によって得られる製品であって、
その色が白の濃淡、又は黄色の濃淡、又はベージュの濃淡であり、
炭水化物、特に、ペクチン物質、ヘミセルロース、セルロース、発熱量を有する単糖類及び二糖類並びにミネラル及びベタインを含み、
混合物中のこれらの物質の総量が、乾燥物で少なくとも80重量%であり、水分含有量が最大で60重量%であり、工程中に添加された亜硫酸塩及び硝酸塩の含有量が0重量%である
ことを特徴とする製品。
【請求項19】
請求項1~3、8~14に記載の方法により得られる製品であって、
分子中にフェノールを含む化合物又は抗酸化活性を示す化合物を乾燥物中に少なくとも1.0%含有する
ことを特徴とする製品。
【請求項20】
請求項16~19に記載の製品を含有することを特徴とする食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甜菜を食品産業及び人間栄養学に適用可能な製品に加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甜菜(砂糖大根)は、甜菜糖を生産する目的で製糖工業用に大量に栽培されている工業作物である。工業用製糖工場における甜菜の処理方法はよく知られており、その工程は文献によく記載されている。
【0003】
糖質の過剰摂取は健康障害や文明病の原因となる。甜菜の根を丸ごと糖源としてだけでなく、栄養素や繊維の供給源として利用することは、栄養的にも経済的にも非常に有益な解決策である。甜菜の根は、多くの必須ミネラル、特にカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、フッ素、亜鉛、銅、マンガン(化学元素は、それぞれK、Na、Mg、Ca、Fe、F、Zn、Cu、Mn)を含んでいる。また、甜菜の根は、ベタイン、ポリフェノール化合物酸、ビタミン類、特にビタミンB群、並びに相当量の水溶性及び不溶性食物繊維も含んでおり、利用可能な科学的及び専門的研究によれば、グリセミック負荷(GI)の低減、血中コレステロールの低下及びプレバイオティクス効果にプラスの影響を与え、同時に食事量及びカロリー摂取量の低減を助けるとされている。
【0004】
甜菜の全根(その非砂糖部分を含む)を食品に使用するための制限要因は、根の組織を破壊(分解)させた後に、根の官能品質の劣化及び腐敗が極めて速いことにあり、特に、甜菜製品の土の味と香りは、好ましくない典型的なネガティブな印象を与える。
【0005】
現在、栄養的に価値があり機能的な食品甘味料である製品を製造するために、甜菜の根全体を加工する方法がいくつかあり、砂糖源としての甜菜の加工に代わるものが提供されている。
【0006】
ロシア特許出願第RU2011122992では、甜菜の根全体を、食品への添加物として、水分含量55~65重量%のペースト状に加工している。有害物質と臭気は、組織の機械的分離と酸性環境下での処理によって除去されている。しかし、機械的な分離は十分に精密な方法とはいえず、得られた製品には感覚的にネガティブな物質がまだ残っている。また、この解決手段の欠点は、自身の酵素による酸化や分解に対する系の安定性が不十分なことであり、ペースト乾燥温度が65℃以上になり、圧力が15kPa以上になると、製品の酸化分解を引き起こす可能性がある。この方法のもう一つの欠点は、高圧のライブスチームの使用に加えて処理中に添加される酵素のために、製品を製造する際のエネルギと処理コストが高いことにある。
【0007】
甜菜加工に非常に類似したアプローチが国際特許出願公開WO2018/203856に記載されており、ここでは、洗浄した甜菜の根全体が、水で調理され、蒸され、ローストされ、又は150℃から350℃の温度でマイクロ波放射により加熱することによって処理されている。甜菜の根を煮ることの欠点は、根を煮た溶液に栄養分、ミネラル及び糖分が溶出し、その処理において貴重な物質が失われることでもある。甜菜の熱処理時間が長いため、処理のエネルギーコストが高くなる。一方、短時間の熱処理では、より広い食品用途に向けた製品の官能品質が十分に得られない。
【0008】
スロバキア特許SK501162014では、甜菜の根全体を、代替甘味料として使用可能な糖繊維製品に加工している。処理手順は、甜菜材料を、0.015~3.0重量%の亜硫酸塩と混合し、その後、pH3~6で1:1~1:10の割合で水と混合して希釈する。その後、該混合物を、102kPa~150kPaの圧力で2~60分間、102~124℃まで加熱し、次いで、50℃~180℃の温度で乾燥させた。この方法の欠点は、多量の亜硫酸塩を使用することにある。また、製品の品質もやはり官能的な欠陥がないとは言えなかった。
【0009】
甜菜の分解を制限するために、甜菜を生蒸気で急速熱処理し、その後添加剤で安定化することが、例えば、ロシア特許RU2292166号や特開平06-303922号から公知である。
【0010】
従来技術の他の方法としては、高用量の防腐剤を用いる方法、及び/又は根の熱処理と組み合わせた化学処理を用いる方法がある。これらのアプローチは、一般に、亜硫酸塩、過酸化物、酸、塩基等の使用した化学物質の残留物により製品を汚染するので、よりコストがかかる。最終製品の官能的な品質もまだ十分とはいえない。
【0011】
本発明の目的は、加工の過程における組織の破壊後の甜菜材料の組織の分解がなく、又はそのような方法の下での最終製品における味、香り、色及び栄養価における負の変化の発現がない最小限の程度でのみ分解変化が起こる甜菜の加工方法を見出すことである。本発明による方法では、フェノール化合物を含む成分の高い品質と量が製造された製品において維持され、材料の色の変化や、得られた甜菜製品におけるネガティブな味と匂いの強まりはない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の方法によって得られた製品は、官能特性が著しく改善され、ネガティブ官能物質の割合が、人間の感覚では既に検出できない限界を超えて減少している。同時に、前記製品は、繊維、ミネラル、ビタミン、ベタイン、炭水化物、及び糖の高い原含有量を保持している。また、前記製品は、フェノール化合物及びアミノ酸もかなりの割合で含有している。このようにして、化学的漂白を行わなければこれまで不可能であった白色系の製品を製造することも可能になる。このようにして得られた製品は、熱、湿気又は大気中の酸素に繰り返し晒されても、食品の品質を損なうことがなく、安定性がある。該製品は、食品産業において甘味料及び/又は強化剤として使用することができ、食品に適用した時に、食品中のGI値を低下させることができる。
【0013】
甜菜の根の組織を破壊した後、気体酸素の存在下で甜菜原料の色が変化することが知られている。また、味や匂いのネガティブ特性が強まる(劣化)ことを特徴とする変化もある。ネガティブに感じられる味や異臭は、甜菜植物の自然な部分(例えば、ジオスミン)である。甜菜の根の組織を破壊した後、特にその加工中に、材料の官能特性が悪化し、この材料のネガティブな味と香りの特性が増加(強化)する。これらの反応は、甜菜根全体の組織を破壊した後に得られる甜菜材料の分解過程の一部である。
【0014】
本発明に基づく方法は、同時に、亜硫酸塩のような還元剤を使用する必要なく、又は、従来技術と比較して著しく減少した量でのみそれらを使用して、甜菜材料の分解及び酸化も防止する。従って、得られた製品は、食品産業におけるそのさらなる応用を不利にする(制限する)ような添加物を多量に含むことはない。
【0015】
従来技術と比較して、製造のためのエネルギーコストを少なくとも25%削減し、最終製品の総製造コストを削減することができる。
【0016】
本発明による方法の利点は、甜菜根全体からの製品の収量が増加することでもある。
【0017】
さらに、本発明による解決手段は、甜菜から得られる製品(濃縮物及び調製物)の品質パラメータを食品製造者の個々のニーズに適合させることにも対処している。本発明による解決手段によれば、製品は、所定の特定の処理の後、特定の食品群の製造及び/又は特定の機能特性を有する製品の強化のための、より好ましい特性を得るために、個々に修正される。
【0018】
この製造方法は、甜菜の根の組織を破壊した後に、自然な処理として起こる甜菜材料の劣化、即ち、分解を防止すると同時に、製品中の甜菜の官能的なネガティブな風味及び香りを除去するものである。
【0019】
本発明の下では、材料の劣化とは、組織破壊のほぼ直後に甜菜の根及びその品種の組織で起こる処理及び反応を意味し、灰色から黒色の色調の甜菜材料の色変化及び酸化生成物の濃度の増加による劣化の外見上の実証を伴うものであり、材料の官能的品質を低下させ、新鮮な甜菜と比較して組織破壊後の変化によって材料におけるネガティブな味及び香を強める原因となり、それにより、製品の官能的品質及び栄養的品質を著しく低下させるものである。また、劣化は、栄養学的に重要な物質、特に選択されたアミノ酸、及び総ポリフェノールの濃度の減少を意味する。
【0020】
ここで、本願において用いられている用語「材料」、通常、機械的作用によって、甜菜の根の組織を破壊した後の甜菜材料を意味する。材料には、既に皮が剥かれた甜菜の根も考慮される。
【0021】
気体酸素が直接材料に触れると酸化反応が始まり、材料が変色することが知られている。この処理は、本願の内容における主要な劣化メカニズムの一つであるが、唯一のものでもない。大気中の酸素による酸化は、ポリフェノール酸化酵素によって酵素的に触媒される。また、酵素的な劣化は、pHの変化や温度上昇によって促進されることが知られている。しかし、劣化反応には酵素的でない物質関連反応も関与しており、その正確なメカニズムは十分に解明されていない。
【0022】
驚くべきことに、材料の劣化は、200nmから1100nmの波長を有する電磁放射線、特に200nmから420nmの波長を有する放射線の存在によっても開始及び/又は加速され、その後、200nmから420nmの放射線の存在下での処理中に、550nmから650nmの波長を有する放射線によっても劣化変化が開始され得ることを発明者等は見出した。
【0023】
記載されている波長の放射線は、材料に部分的に吸収され、劣化変化の開始及び加速のための活性化エネルギとして機能する。
【0024】
放射線による材料の劣化を防止又は遅らせるためには、不活性化工程の前に材料に入射し、かつ、前記波長スペクトルで放射される放射線エネルギを、可能な限り低くし、せいぜい300mJ/cm以下、好ましくは150mJ/cm以下、さらに好ましくは50mJ/cm以下、最も好ましくは25mJ/cm以下とする必要がある。また、好ましくは、上記した波長スペクトルの放射強度は、0.040mW/cmを超えず、より好ましくは、0.015mW/cm以下であり、さらに好ましくは、0.010mW/cm以下である。最も好ましくは、材料中の含水率が30重量%以下になる瞬間まで、又は不活性化段階に至るまで、200nm~420nmの波長スペクトルで放出されるエネルギが40mJ/cmを超えない放射線を、崩壊材料に照射しないようにすることである。
【0025】
劣化を開始及び/又は促進するために必要な放射線エネルギ量は、甜菜の品種、収穫時期及び栽培条件に依存して異なり得る。劣化速度に影響を与えるもう一つの要因は、自然に生じる分解後の材料の含水率である。破壊された組織から放出された水は、劣化反応の速度を高め、同時に反応に関連する組織に由来する物質濃度も増加させる拡散環境を作り出す。
【0026】
知見を参考にすると、放射線エネルギの値は、成長段階及び収穫期間、材料の含水率、材料の温度、並びに、組織破壊の程度に依存して、3.0mJ/cmから300.0mJ/cmまで変化し得る。
【0027】
0℃から80℃の温度では、放射線の影響による劣化よりも、酸素の影響による劣化の方がはるかに激しい。しかし、発明者等は、前述の波長の光放射がない場合、材料の劣化の強さが、酸素の影響によるもののみ、つまり放射線による劣化の強さを単純に差し引くという枠を超えて、低くなることを見出した。
【0028】
しかし、最も有利な解決手段は、酸素と前述の波長の放射線との両方が材料に到達するのを防ぐことに変わりはない。
【0029】
材料の劣化速度は、材料の熱力学的温度、材料における自由液(自由水)の含有量、及び組織破壊時に自由液に放出される組織細胞由来の劣化反応に入る物質の濃度に依存する。
【0030】
自由液とは、甜菜液のうち、組織が破壊された後に組織から放出される部分をいう。
【0031】
約75℃から80℃の温度に到達するまで、温度が上昇するにつれて、劣化の強さと速度とが増加する。80℃±5℃の温度又はそれより高い温度では、材料の劣化プロセスの開始要因の一つである酸化変化を触媒する酵素であるポリフェノール酸化酵素の熱失活が起こる。
【0032】
従って、組織細胞の損傷の度合いに応じて、論理的に劣化の強さが増大する。組織が損傷を受けると、細胞液が放出されるが、この細胞液には材料の劣化に関与する物質(分解物質)の複合体が含まれている。自由液中の劣化物質の濃度が高いほど、材料の劣化は速く、激しくなる。言い換えれば、組織が破壊されればされるほど、より速く材料を不活性化する必要がある。
【0033】
また、発明者等は、材料中の自由液の極性が、材料の劣化反応の強度と経過に影響を与える重要な要因であることも見出した。自由液の化学的極性を下げることで、材料の劣化プロセスを大幅に減速させるか、又は停止させることがでる。ここで、大幅な減速とは、本発明の方法の下で得られる製品の官能的及び栄養的特性に対するそれらの影響が無視できる程度に、劣化プロセスが減速されることを意味する。
【0034】
本発明による方法は、甜菜材料を不活性化する工程を含む。これは、材料の劣化反応を止め、甜菜材料の官能的特性(味、香り)、栄養的特性及び全体的な感覚的特性(色)を改善し、安定させることを目的とする工程である。
【0035】
化学的極性の低減は、分子中に1~4個の炭素原子(好ましくは分子中に1~3個の炭素原子)及び1つの水酸基を含むアルコール(モノヒドロキシアルコール)の群から選ばれた1種又は数種のアルコールと材料を混合することによって達成される。これらは、メタノール、エタノール、プロパノール、tert-ブチルアルコールなどの物質である。最も好ましくは、エタノールが用いられる。
【0036】
ここで、混合物の液相中のアルコールの濃度は、少なくとも60体積%以上、好ましくは70体積%以上、最も好ましくは85体積%以上であることが必要である。本発明において混合物の液相とは、材料とアルコールの混合物中の液体の総量(甜菜中の全水分量+アルコール及び水の添加溶液、任意に純アルコールのみ)を意味する。アルコールの溶液の濃度(材料と混合する前)は、好ましくは70体積%以上である。
【0037】
不活性化処理における温度は、混合物の液相が液体状態であり、そこから処理の過程で気体状態に移行できるような温度でなければならない。実際には、-15℃~180℃の温度が許容されるが、より好ましくはこれらの温度は0℃~160℃、さらに好ましくは20℃~140℃、そして最も好ましくは40℃~125℃の範囲である。不活性化は、70℃~180℃、又は潜在的には85℃~180℃の温度でより集中的に行われる。70℃~120℃、又は潜在的には85℃~105℃の温度範囲が、製品の固体部分を淡い色合いにするのに適しているため好ましい。温度を上げると、不活性化処理が速くなる。100℃を超える高温では、材料にカラメル化が起こる可能性がある。カラメル化は、製品の使用にとって望ましい場合もあれば、そうでない場合もある。
【0038】
混合物の全容量において技術的に均一なアルコール濃度が達成されるまで、上記条件下で維持する必要がある。
【0039】
ペースト状に分解した材料の場合、技術的には、混合直後の混合物の全容量において、全温度範囲(-15℃~180℃)でアルコール濃度を同じにすることが達成される。この場合、ペースト粒子の周囲の液体中のアルコール濃度と、ペースト粒子中のアルコール濃度との間の分析上の差は無視できる程度である。なお、混合液の液量は、液体濾過のような濾過により得ることができる。
【0040】
好ましい実施形態によれば、ペースト状に分解させた材料を、全温度範囲にわたって0分~10分の期間、不活性化することができる。
【0041】
根全体で、閾値温度が-15℃の場合、技術的には、根の大きさに応じて15日~6週間の保持時間で、混合物の全容量においてアルコール濃度を同じにすることが達成される。氷点下では根が凍り、処理が著しく遅くなるため、この手順は好ましくない。根全体で、閾値温度180℃の場合、技術的には根の大きさ応じて、45分±15分の保持時間で、混合物の全容量においてアルコール濃度を同じにすることが達成される。閾値温度に達すると、もともと液相であったものが蒸発することが知られており、180℃の温度に達するためには、処理を密閉空間で昇圧しながら(例えば圧力容器内で)行う必要がある。
【0042】
一般に、不活性化の工程(ii)における保持時間は、温度の上昇に比例して減少し、粒子サイズの上昇に比例して増加する。
【0043】
低温での根全体の不活性化は効果がない。従って、根全体を80℃~180℃の温度で、根の大きさに応じて30分~600分間不活性化することが好ましい。
【0044】
不活性化処理は、密閉空間で行うことが好ましい。密閉空間で混合物を加熱すると、空間内の圧力が上昇するため、混合物の加熱が早くなる。これにより、(蒸発による)アルコール損失も低減される。
【0045】
本発明に係る方法においては、材料を水で希釈する必要はない。甜菜の根は、約75±5重量%の水を含む。分解の際、水の一部は甜菜の組織から放出され、一部は組織内に残る。アルコールと混合すると、これらの水の部分(甜菜からの部分と、場合によっては添加されたアルコールからの部分)の両方が、甜菜材料とアルコールとの混合物の液相の一部となる。
【0046】
材料とアルコールの混合比は、混合物中のアルコールの濃度及び混合物中の液相の極性を目標通りに制御するために使用される。混合物の液相中のアルコール濃度が60体積%以上であれば、劣化プロセスの十分な低減が起こる。70体積%以上のアルコール濃度では、劣化プロセスの大幅な減少が起こる。
【0047】
この結果は、混合物の液相中のアルコール濃度を増加させることにより、液相に溶解している甜菜由来の炭水化物、ミネラル及びベタインの割合が減少し、これは、これらの物質が液相に入ることを制限、又は防止するので、有益であることを示している。逆に、液相に溶解する栄養学的に不利な物質(抗栄養物質)の割合及び官能的にネガティブな物質の割合は、混合物の液相中のアルコール濃度が高くなると増加するので、固相から得られる製品中から、これらを排除することができる。また、フェノールを含む人体に良い影響を与える物質も液相に入る。これらは、アルコール再生工程において、好ましくは減圧下で、かつ、90℃以下の温度で液相から得ることができる。これらの物質は、アルコールによる抽出で得られることが知られているが、発明者等は、劣化反応を起こさない材料であれば、フェノール物質の抽出量が格段に多くなることを見出した。なお、個々の画分の溶解度の傾向は、混合物中のアルコールの量だけでなく、使用するアルコールの種類にも依存する。
【0048】
アルコール及び質量比が不活性化の効果を左右する。材料とアルコールは、70体積%を超える濃度のアルコール溶液を使用して、2:1~1:20の重量比で混合され得る。劣化反応の不活性化効率の観点からは、85容量%を超える濃度のアルコール溶液を用いて、1:4~1:5(材料:アルコール)の重量比で用いることが好ましく、より好ましくは90容量%を超える濃度のアルコール溶液を用いて、1:1.5~1:4(材料:アルコール)の重量比で用いられる。
【0049】
より高濃度(例えば90体積%以上)のアルコール溶液を用いて材料を不活性化し、その後、液相を得た後、70体積%を超えるアルコール濃度の溶液を繰り返し用いて、まだ不活性化されていない材料をさらに不活性化することが有益である。前回の材料の不活性化処理で得られた液相であるアルコールの溶液を用いた不活性化処理を繰り返すたびに、続いて得られる液相の溶液中のアルコール濃度は、不活性化処理中の材料からの水分の割合による濃縮のために、減少する。不活性化工程における液相の、アルコール溶液としての再使用可能回数は、得られた液相中のアルコール濃度が、少なくとも60体積%以上、好ましくは70体積%以上、最も好ましくは85体積%以上であるという条件によって制限される。
【0050】
混合物の液相中の達成されたアルコール濃度は、不活性化にとって決定的なものである。不活性化処理が適切な経過で行われるためには、60体積%以上、好ましくは70体積%以上のアルコール濃度が達成されることが重要である。これより低いアルコール濃度では、劣化に対して安定ではない。
【0051】
不活性化の前に、本発明の方法に従って材料を破壊し、予備乾燥させる場合も同様である。材料が80%以上まで予備乾燥されている場合、不活性化を行うために、材料の乾燥物とアルコールの重量比を3:2~1:2で使用することが有益である。
【0052】
不活性化処理の速度はまた、材料の粒子サイズに依存する。材料の粒子が小さいほど、不活性化処理の速度は速くなる。
【0053】
好ましい実施形態によれば、不活性化工程の後に、混合物がテンパリングされ得、(前述の不活性化のための保持時間を超える)一定の時間、一定の温度に維持される。混合物を特定の温度でテンパリングすることにより、混合物における変化が促進され、混合物における前記変化の経過は、所定の条件下での熱力学的温度に依存する。
【0054】
テンパリングは、冬季のマイナス温度(0℃以下)でも行うことができ、処理のために費やされるエネルギは最小限になる。低温(10℃以下)では、高温で得られる結果と同様の結果を得るために、数時間までテンパリングは延長される。
【0055】
好ましくは、テンパリングの間、混合物は攪拌され得る。好ましくは、テンパリングは、-15℃~135℃の温度で180分までの保持時間、好ましくは80℃~135℃の温度で1分~10分の保持時間で行われる。
【0056】
好ましい実施形態によれば、不活性化の終了時に、混合物はテンパリングされ、一定の攪拌の下で、閉鎖空間において、80℃~135℃の温度範囲で1分間~60分間保持される。好ましくは、その後、温度は、30分未満の保持時間で80℃以上に昇温され、及び/又は、60分未満の保持時間で120℃±15℃まで昇温される。必要な温度と保持時間に達した後、生成された蒸気は、テンパリング装置の外に除去され始める。取り込まれた蒸気は、直接蒸留及び精留され、その後の使用のためのアルコールが生成される。
【0057】
液体の蒸発温度に達すると、アルコールの蒸発部分が水の蒸発部分より大きくなるため、混合物の液相の極性が連続的に大きくなる。このメカニズムは、液相における個々の物質及び甜菜の部分の溶解の度合いも選択的に変化させる。80℃を超える温度、特に100℃~125℃の範囲の蒸発蒸気には、蒸発開始前に混合物の液相に溶解した甜菜の根から自然に発生する官能的にネガティブな物質が常に一定割合含まれている。蒸発中に前記温度範囲に到達することで、官能的にネガティブな物質の除去処理が強化される。
【0058】
混合物中の液相が60重量%以下に低下したとき、又は混合物からアルコールが蒸発した後に、テンパリング工程を終了する。ここで、混合物中の液相中の残留アルコールは5重量%まで、好ましくは1重量%以下であり得る。
【0059】
不活性化工程の前、間、又は後に、甜菜の根を分解させる必要がある。甜菜の根の分解は、甜菜の根を、複数の部分に分割することを目的とした処理である。甜菜の根は、例えば、スライス、切断、粉砕、すりおろし又は均質化によって、分解され、微細なペースト状にされる。ここで、ペーストとは、大気圧条件下で20℃の温度で混成液体(液体懸濁液)として挙動する材料を意味する。ペーストは、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.25mm以下の粒径を有する。
【0060】
本発明に基づく方法において、根は、粒子寸法の少なくとも1つが50mm以下、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下、最も好ましくは3mm以下である粒子を含む材料に分解される。また、甜菜原料は、ペーストの形態であってもよい。
【0061】
ここで、不活性化工程の前に根の分解を起こすためには、以下の条件(a)~(d)のうち少なくとも一つが必要である。
(a)根の分解と不活性化の間の時間が、最大で24時間であり、かつ、ペーストへの分解が不活性化に直接続くように、分解した材料の表面の増加に比例して短くなること、及び/又は
(b)分解中又は分解直後に、分解した材料を、少なくとも80℃、好ましくは80℃~230℃、より好ましくは80℃~180℃、最も好ましくは90℃~110℃の温度に衝撃加熱すること、及び/又は
(c)分解中又は分解直後に、25℃~180℃、好ましくは85℃~120℃の温度で、材料中の含水率が最大50重量%に達するまで、ガス(気体)流を使用して崩壊した材料を予備乾燥すること、ここで、前記ガスが少なくとも12%の酸素を含む場合、乾燥空間のガス流速は、5.0m/s~40m/s、好ましくは5.5m/s~20m/s、さらに好ましくは7.5m/s~15m/sとしなければならず、使用するガスは、好ましくは、空気、さらに好ましくは酸素含有量を12容量%未満の濃度値に低減した空気、窒素、又は窒素と二酸化炭素との混合物、最も好ましくは二酸化炭素であること、及び/又は
(d)分解から不活性化/テンパリング(を含む)までのすべての工程が、以下の環境で行われること。
・制御された雰囲気中、好ましくは二酸化炭素含有量を増加させた制御された雰囲気中、又は減圧された環境下、いずれの場合も酸素含有量が地球の大気の酸素含有量より少なくとも40%、好ましくは60%、最も好ましくは80%以上減少していること、
そして場合により、
・材料の表面に入射する200nm~420nm及び550nm~650nmの波長の放射線の強度が、0.040mW/cm未満、好ましくは0.015mW/cm未満の値で移動し、光放射の前記スペクトルにおいて放出されるエネルギの値が、最大で300mJ/cmまで、好ましくは150mJ/cmまで、さらに好ましくは50mJ/cmまで、最も好ましくは25mJ/cmまでである。
【0062】
不活性化された材料を80℃以上(好ましくは90℃以上)の温度まで加熱することにより、材料の分解に関与する酵素の除去が達成されるので、湿った材料の分解が制限され、同時に材料を加熱乾燥させることが可能になる。
【0063】
好ましくは、材料は少なくとも80℃、好ましくは80℃~230℃、80℃~180℃、85℃~160℃、最も好ましくは90℃~110℃の温度まで加熱されてから分解される。材料の加熱温度は、材料の熱分解によってのみ上記条件で制限され、材料の個々の成分については、180℃~230℃の温度で始まり、より高い温度で継続する。
【0064】
好ましい実施形態によれば、分解工程は不活性化工程で直接行うことができ、したがって、酸素の影響による材料の劣化の開始を著しく制限し、及び/又は分解工程は、上記のように酸素含有量が減少した環境及び/又は光波長放射の強度が減少した環境で行われる。3つの条件の組み合わせが最も望ましい。
【0065】
根全体を不活性化し、その後、根を分解させることも可能であるが、必要エネルギが高くなることを考慮すると、不活性化工程の前又は途中で分解させることがより有益である。
【0066】
本発明に基づく処理の最終工程は、混合物から液相を除去して、40重量%~100重量%、好ましくは60重量%~99重量%の乾物含有量を有する製品を形成することである。
【0067】
混合物からの液相の除去は、従来技術で公知の様々な方法によって達成することができる。例えば、遠心分離、乾燥、分離及びその後の乾燥によるものである。
【0068】
乾燥は、乾燥機で、又は押出と組み合わせて行われる。乾燥機での乾燥は、マイクロ波照射、及び/又は減圧下での真空乾燥、及び/又は空気若しくはガス流の中での流動層乾燥、又は断熱膨張(例えば、材料の押出処理)又は接触加熱を、単独又は組み合わせて行うことができる。また、押出処理は、製品の特性を変化させ、特に、水結合特性を高め、製品の溶解性を向上させる。
【0069】
材料の含水率が5重量%~25重量%である場合、押出処理によって材料の特性を変えると同時に、1つの製造工程で材料を完全に乾燥させることが好ましい。
【0070】
好ましい実施形態では、液相は、液相の割合が50重量%を超える混合物を、まず1つの装置で、液相を集中的に蒸発させて乾燥し、その後、製品を別の装置で乾燥物の所望の値まで完全に乾燥する、複合乾燥によって除去することが可能である。
【0071】
好ましい実施形態によれば、材料は、大気圧又は真空(1.0kPa~60kPa)で、160℃までの温度、さらに好ましくは40℃~120℃の温度で乾燥される。得られる製品の色を明るくするためには、混合物の水分含量が60重量%以下である乾燥の最終段階において、100℃までの温度を使用することが好ましく、乾燥の最終段階において120℃以上で乾燥させた材料は、場合によりカラメル化することがある(製品の特定の使用においてカラメル化が望ましい場合がある)。
【0072】
選択的に、液相は、個々の相の分離及びその後の別々の乾燥によって、混合物から除去することができる。
【0073】
(不活性化工程において)混合物の液相中のアルコールの濃度を高めることにより、相分離の処理において、液相中の乾燥物の部分と比較して、固相中の乾燥物の部分がより多く得られる。これは、液相から製品を得るための工程が、分離後に最終的な乾燥を受けるだけの固相から製品を得る場合よりも、エネルギ及び処理が多いので、有益である。
【0074】
好ましい実施形態では、分離の前に、混合物を30℃未満の温度に冷却することができ、したがって、分離処理における固相の収率を増加させるとともに、必要なエネルギを減少させることができる。好ましくは、混合物の分離工程の前及びその間、混合物は、-15℃~30℃の間の温度に維持される。
【0075】
混合物の分離後に形成された固相は、上記のように乾燥され、40重量%~99重量%、好ましくは60重量%~98重量%の乾燥物含有量を有する製品が形成される。その後、この製品には、粉砕、及び/又は、分画、及び/又は、疎水化、及び/又は洗浄処理が、任意の順番で施され得る。
【0076】
混合物の分離後に形成された液相は、その後、脱ろう処理によって処理され得る。選択的に、液相を移してアルコールを回収し、アルコールを除去した後の残留物を乾燥させて、40重量%~99重量%の乾燥物含有量の製品を形成するか、又は結晶化させる。
【0077】
アルコールの回収は、処理における繰り返し使用に適した濃縮アルコールを生成し、同時に、副産物、通常は蒸留残渣を生成し、これはその後(上記したように)乾燥又は結晶化させることが可能である。乾燥後、このようにして得られた製品をさらに洗浄し、次いで再び分離することが好ましく、ここで分離後に得られた固体部分を乾燥させて製品とし、液体部分を再び回収することが好ましい。このようにして得られた製品は、その後、さらなる食品加工用途に好適である。
【0078】
副産物は、晶析処理によって処理することができる。晶析処理が完了した後、固相及び液相を形成するために分離が行われる。次いで、液相をさらに乾燥させ、洗浄することができる。
【0079】
晶析とは、混合物から液相を除去し、大部分を蒸発させることによって、溶液中に溶解している物質の濃度を高め、飽和溶液を生成する処理であり、多くは温度を下げることによって過飽和溶液となる。次に、スクロース(ショ糖)の過飽和溶液から、結晶化を開始することにより、スクロースを、混合物から分離され得る固体物質(結晶)として得ることが可能であり、固体画分(粗結晶スクロース)及び液体画分を生成する。得られた液相を繰り返し濃縮することで、晶析を繰り返すことも、乾燥と組み合わせることも可能である。また、結晶化後の乾燥液相画分はアルコールで洗浄してもよい。
【0080】
液相の脱ろう処理は、液相において低温での固形部分の溶解度が低いという効果により、液相から乾燥物の固形部分を得ることを目的とした工程である。脱ろう処理中は、液相の温度を-30℃~10℃に下げることが好ましい。
【0081】
析出した乾燥物固形部分を脱ろう処理後に分離し(第2分離)、分離後に乾燥させて乾燥物含量が40重量%~99重量%の製品を生成する。
【0082】
第2分離後の乾燥物は、上記と同様の方法で乾燥させる。乾燥物が異なるだけで、甜菜加工処理では別の画分となる。
【0083】
液相は、アルコールの回収のために、第2分離後に除去することが好ましく、第1分離後と同様の方法で処理される。
【0084】
本発明に基づく方法はまた、製品の品質をさらに向上させる他の任意の工程を含み得、又は、特定の食品の製造に適した特殊な化学的・物理的特性を有する製品を得るために使用され得る。
【0085】
好ましい実施形態によれば、洗浄された甜菜の根は、その分解又は不活性化の前に皮が剥がされ得、それによって、得られる製品中の暗色粒子の部分を減少させることができる。また、一般に、根では、官能的にネガティブな物質及び材料の劣化を引き起こす物質の濃度が、その表面から中心に向かって減少することが知られている。また、例えば、気圧を下げること、雰囲気を制御して酸素濃度を下げること、日射強度を下げること、乾熱により85℃を超える温度で急速に熱処理すること、得られた材料の表面を急速に乾燥させること等によって、根の皮を剥く工程中の劣化を避けることが好ましい。
【0086】
材料の劣化を防ぐ(安定化させる)ために、以下の工程(A)~(C)のうち、1つ又は複数が実施され得る。
【0087】
(A)分解工程において、0.05重量%までの量のNa及び/又はKを材料に直接添加し、及び/又は0.95重量%までの量のNaNO 及び/又はKNOを添加する。ナトリウム塩及びカリウム塩は、固体結晶の化学的に純粋な形態で添加される。亜硫酸塩の量は、処理に入る甜菜の重量を基準にして、0.05重量%まで、さらに好ましくは0.015重量%まで、又、亜硝酸塩の量は、0.50重量%までであることが好ましい。これらの物質の含有量は、食品産業における製品の使用に対する制限因子であり、栄養価の観点から、製品中にこれらの物質が存在することは有益ではない。
【0088】
(B)また、例えば、制御された雰囲気を適用することにより、不活性化(含む)までの処理を通して、酸素濃度を大気中の酸素含有量と比較して、少なくとも40%、理想的には90%以上減少させることが可能である。
【0089】
(C)不活性化(を含む)までの処理全体を通して、100nm~1100nm、特に200nm~420nm、及び/又は550nm~650nmの波長の全放射エネルギを、300mJ/cm未満、好ましくは50mJ/cm未満、最も好ましくは25mJ/cm未満の値に低減することも可能である。また、材料は、不活性化の前に予備乾燥させることができ、理想的には、材料中の乾燥物が50重量%~99.9重量%になるように予備乾燥され得る。発明者等は、水分含量が30重量%以下では、材料中の液体水分が不足するため、材料の劣化反応が止まることを見出した。予備乾燥により、不活性化処理で使用するアルコールの必要量が減り、製品の収量が増加する。また、乾燥させることにより、材料が劣化に対して部分的に安定化する。
【0090】
好ましい実施形態によれば、分解直後に、材料は、前述の乾燥物値に達するまで、25℃~120℃、好ましくは85℃~105℃の温度まで乾熱で加熱される。
【0091】
予備乾燥に12体積%以上の酸素含有量の空気を使用する場合、材料は、分解直後に5.0m/s~40m/s、好ましくは5.5m/s、さらに好ましくは7.5m/sの空気流量で乾燥され、ここで最小空気温度は、乾燥ガスの相対湿度が0%~45%、0%~65%、最大で85%の場合、25℃、30℃、35℃、45℃とすることができる。低い空気温度では、25℃で空気流量が少なくとも12.0m/s以上となるように、比例的に増加させる必要がある。
【0092】
好ましくは、予備乾燥工程は、特に、分解後に形成される粒子寸法の少なくとも1つが3mm以下である場合、工程(B)及び/又は(C)と同時に実行される。
【0093】
材料がペースト状に分解される間、制御された雰囲気と所定の波長の放射線強度が低減された環境において、予備乾燥中に材料を処理することが必要であり、ここで、環境中の酸素濃度が8体積%未満である。
【0094】
予備乾燥後、かつ、不活性化前に、85重量%を超える、好ましくは90重量%を超える乾燥物含量を有する材料を、1.5mm以下の粒子サイズに粉砕し、次いで、形成された粒子を分画し、かつ、それらのみを不活性化することが可能である。予備乾燥材料の粒子径による機械的分画処理は、不活性化されていない乾燥材料を用いるとより速く進行する。
【0095】
粒子の分画(分割)の間、25pm~500pmのサイズのメッシュ開口部のサイズに従って配置された篩、好ましくは50、100、150、200、250、400及び500pmのメッシュサイズを有する一連の篩を使用することが有益である。個々のフラクションは、粒子のサイズ及び/又は密度及び空気漂流閾値によって、繰り返し粉砕及び分画することができる。粉砕及び分画の各繰り返しの後、材料のフラクションが形成され、形成されたフラクションの各々は、形成された他のフラクションとは異なる化学(物質)組成を含有する。
【0096】
発明者等は、乾燥した材料から不活性化の前後に得られた分画の化学組成を比較することにより、不活性化前に同じ手順で分画を行った場合、個々の分画の単糖及び二糖、ミネラル、多糖の含有量の差がアルコールによる不活性化後よりも小さいことを見出した。材料の不活性化後に分画することで、同じ分画手順で得られた個々の画分の質的組成に高い差異を持たせることができる。不活性化前後の分画によって得られた同じ画分を比較した場合にも、画分の化学組成に違いが見られる(製品画分における甜菜乾物からの各物質の表現が異なる)。
【0097】
分解工程で安定化されていない材料は、25℃~180℃、より好ましくは85℃、最も好ましくは95℃の温度で、好ましくは工程(B)及び(C)と同時に予備乾燥される。その後、材料は、完全に乾燥され、1重量%までの水分含量にされ得る。
【0098】
予備乾燥は、乾燥と同様に、複合予備乾燥によって行うこともできる。
【0099】
予備乾燥及び/又は乾燥工程中の温度は、材料の含水率及び/又は材料の粒径に基づいて調節されると有利であり、ここで、高い含水率又は大きい粒径では、材料は最初に100℃以上の高温で乾燥され、材料中の含水率が低下すると、乾燥温度は本発明の下に示された範囲内で下げられる。
【0100】
劣化変化の部分的排除と製品の特殊化により、分解工程における混合物は、有機酸又は無機酸(特にクエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、塩酸、リン酸等)で酸性化され得、材料のpHを2.0~4.9、好ましくは2.0~4.2の範囲内の値に調整することができる。同時に、pHを調整することにより、使用する酸の種類に応じて、製品の味や全体の官能特性をも調整することができる。
【0101】
不活性化、テンパリング、及び乾燥の工程で発生した蒸気は、アルコールの回収のために、大気圧又は40kPaまでの真空下、好ましくは9.9kPa以下の圧力で捕捉され得る。これにより、損失が減少し、さらに使用するためのリサイクルされたアルコールの割合が増加する。アルコールの回収のための蒸気の除去は、生成された蒸気がアルコールを含むすべての工程で行われ得る。
【0102】
好ましい実施形態によれば、分解工程の後(特に、不活性化前又は不活性化処理中)、材料/混合物は超音波処理され得る。
【0103】
超音波処理の前に材料がペースト状に分解され、その後安定化されると有利である。材料がその分解後に安定化されない場合、不活性化の前の超音波処理は、少なくとも80%減少した酸素濃度で行われる。
【0104】
材料/混合物は、10.0kHz~40kHzの周波数で、混合物に対して30J/g~4500J/gの超音波出力で1分~6時間、超音波処理される。
【0105】
超音波処理は、好ましくは15kHz~35kHz、最も好ましくは18kHz~26kHzの超音波周波数で、35J/g~3000J/gの超音波出力で行われる。
【0106】
好ましい実施形態によれば、その粘性を低下させるために、混合物は、超音波処理中、加熱され、その後、50℃~85℃、好ましくは60℃~70℃の温度で維持され得る。この温度は、外部エネルギ源によって維持される。
【0107】
超音波処理は、材料の粘性を低下させながら、物質の水への溶解度を増加させる。発明者等は、超音波処理によって製品の物理化学的特性を変化させることもできることを見出した。超音波処理の性能を上げると、材料の有機的な特性が改善され、特にネガティブな味と香りが除去される。超音波処理された製品は、超音波処理されていない製品よりも速く乾燥し、かつ、乾燥・粉砕後はより微細な構造を持つようになる。水への溶解度、水溶性食物繊維の割合が変化する。
【0108】
好ましい実施形態によれば、乾燥後、製品は洗浄され得る。洗浄の目的は、明るい色相に向けて製品の色強度を低下させ、残留する有機物学的なネガティブな物質を除去することにある。
【0109】
洗浄は、4:1~1:5、好ましくは2:1~1:2(製品:アルコール)の割合でアルコールと混合する工程を繰り返し、アルコール溶液の最小濃度を70容量%とすることにより実施される。その後、混合物は、一定の攪拌下で、0℃~90℃の範囲の温度まで加熱され、0分~600分まで温度が維持される。その後、混合物は分離され、さらに、本明細書に記載したように本発明に係る処理方法で処理される。
【0110】
上述した任意の工程は、すべて自由に組み合わせることができる。
【0111】
乾燥物値60重量%まで乾燥した後の製品は、ペースト状であり、保存性を向上させるために、好ましくは熱間充填密閉容器に収容される。
【0112】
乾燥後の製品、又は予備乾燥後及び不活性化前の材料で、乾燥物含量が80重量%以上、好ましくは90重量%以上の固体材料の形態のものは、その後、所望の粒子径に粉砕することにより調整され得、粉砕により、粉末状の材料にされる。粉砕後、材料を、ふるい上の粒子径に基づいて、又は粒子空気漂流法によって画分に分割することが有利である。
【0113】
その後又は代替的に、製品/材料は、脂肪と混合することによって疎水化され、空気湿度に対するより良い耐性を達成し、空気湿度を有する環境における製品の硬化を制限し得る。
【0114】
粉砕処理では、粒子径に加え、水分量も15重量%~2重量%の範囲に調整される。粉砕処理では、摩擦が発生し、材料の温度が上昇する。また、粉砕中に固体部分から水分が蒸発し得、粉砕材料中の乾燥物部分が増加することもある。また、造粒処理は、材料の水への溶解度や、得られた材料を水と混合して粉砕することによって達成する粘度にも影響を与える。
【0115】
アルコール回収工程における蒸留残渣の液相から得られる製品を除く、本発明に基づく方法を用いて製造された全ての製品は、流体分画工程におけるそれらの粉砕及び/又は篩分け分離後に分画され得、ここで、篩メッシュ開口の大きさによって、篩の上下で生成される画分の大きさが調整される。個々の画分は、粒子径が互いに異なるだけでなく、物質組成や化学的・物理的特性も異なるのが一般的である。分画工程は、食品の食感及び/又は栄養パラメータに異なる要求がある、異なるタイプの食品の製造に使用するための製品の特殊化という理由で有利である。
【0116】
疎水化処理は、高速ミキサ若しくは粉砕機を用いて、又は、油脂のスプレー塗布によって行われる。固体状態で15重量%以下、好ましくは4重量%以下の水分含量を有する完成品は、60℃までの温度で、液体形態の植物性脂肪(油)と、重量比1:2~1:50(油:製品)で混合され、粉末又はペースト状の製品を形成する。粉末状の疎水化製品は、非疎水化製品よりも大気中の水分の吸着が常に少なく、その吸着量の差は80%以上になり得る。ペースト状の最終形態で添加脂肪の割合が高い疎水化製品は、24時間でさらに90%以上の大気水分吸着量の減少を示した。
【0117】
油脂の割合が高い製品は、レシピに植物性油脂の割合が高い食品(例えばチョコレート)に適していた。逆に、脂肪の割合が低い製品は、レシピに植物性脂肪の割合が少ない食品(例えば、ジャム、又はベーカリー製品)に適していた。
【0118】
本発明に基づく方法は、高い栄養的及び官能的品質を有し、光安定な色及び良好な機能的特性を有する製品を製造する。この方法は、食品における広い用途のための製品を提供する。この製品は、官能的にネガティブに感知される物質を全く含まないか、又は閾値だけ含み、微生物学的及び化学的に安定である。
【0119】
本発明の方法に基づいて得られる製品は、製品の乾燥物中の単糖及び二糖の含有量(95重量%まで)、及び/又は製品の乾燥物中の総繊維の含有量(85重量%まで)、製品の乾燥物中の必須ミネラルの含有量(4.5重量%まで)、ベタイン含有量(製品の乾燥物の1500mg/kgまで)、抗酸化能を有するフェノール物質の含有量(5重量%まで)によって特徴付けられる。乾燥物中の物質の含有量は、本発明に基づく方法の様々な任意工程の適用によって変化し得る。しかし、製品中の物質の含有量は、常に、投入された原料中のそのような物質の含有量に依存する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1】本発明による甜菜の処理工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0121】
【実施例1】
【0122】
除葉した甜菜の根を表面の不純物を洗浄した。根全体を厚さ約10mmの削り屑にすりおろした。その後、削り屑を、エタノールの濃度が95体積%であるエタノール溶液と1:1.5(材料:エタノール)の重量比で混合し、かかる混合物を微細なペースト状に均質化させた。その後、前記混合物を、10分間の保持時間及び一定の攪拌下で85℃±5℃まで加熱した。その後、この混合物を25℃まで冷却し、液相と固相とに分離した。
【0123】
固相を100℃±5℃の温度で乾燥させ、最終乾燥物含量が92重量%になるようにしながら、中間固相製品(SP1)を得た。液相は、15kPa±5kPaの真空中で、温度を55℃とし、一定の攪拌下で乾燥させた。液相からアルコールを蒸発させた後、主に甜菜に由来する単糖類及び二糖類、ミネラル及びその他の微量物質の水溶液からなる副生成物を得た。前記副生成物をさらに真空フィルム乾燥機において温度100℃±5℃、圧力15kPa±5kPaで乾燥し、乾燥物含量を94重量%とした。このようにして液相から得られた中間製品をさらに洗浄し、95体積%のエタノールと1:1の重量比で混合した。この混合物を40℃まで加熱し、分離した。この2回目の分離の後、得られた固相を100℃までの温度で乾燥させ、2回目の分離後の液相から中間製品(LP1)を生成した。
【0124】
2回目の分離後の液相から、9.9kPaの圧力でエタノールを回収した。この回収により、1回目の分離後の液相から副生産物と同様の方法で、蒸留残渣(SP2)を生成し、これを乾燥した。
【0125】
全工程で発生した蒸気を捕集し、エタノールの回収を行った。
【0126】
固相生成物(SP1)は、特に甜菜由来のペクチン物質、ヘミセルロース及びセルロースなどの高級多糖類を含み、この画分の乾燥物中80重量%±4重量%を構成していた。固相画分の残りの部分は、単糖類及び二糖類(6重量%±2%)、及び少数ながら甜菜から保持される別の物質で構成されていた。製品は白色であり、ネガティブな官能的物質の痕跡はなかった。
【0127】
液相生成物(LP1)は、乾燥物中に、特に、単糖及び二糖(88重量%)、ミネラル(1.35重量%)、ベタイン(480mg/100g)、及びその他の少数の甜菜由来の物質が含まれていた。製品はイエローベージュを帯びた白色で、官能的にネガティブな物質は微量であった。乾燥後の蒸留残渣(SP2)は、残留糖分やミネラルのほか、抗栄養物質や着色物質を含み、色は緑色で、官能的にネガティブな物質が認識できるほど多く含まれていた。
【0128】
固相(SP1)と液相(LP1)の一部を異なる比率で混合して、2つの画分の混合比率に依存する物質組成を有する、全甜菜根からの製品を得た。ジャムの製造に使用する場合、画分の混合比は約3:1(LP1:SP1)であり、小麦ベーカリー製品に使用する場合、画分の混合比は1:1であった。
【0129】
食品レシピに使用する場合、最終食品(例えば、ベーカリー製品、ジャム、又はチョコレート材料)の製造に適用される処理による更なる処理の間でも、製品の官能的及び全体的な官能パラメータは変化しなかった。
【0130】
「実施例1-2」
実施例1と同様に、甜菜根を同じ処理条件で分解及び不活性化処理した。その後、不活性化直後に、混合物を、減圧環境下、温度80℃±5℃で蒸発させ、処理中にさらに使用するためのアルコールを生成ために混合物から蒸発したアルコールを回収した。混合物中のアルコールを5重量%以下のレベルまで蒸発させた後、混合物を薄膜濃縮器に送り、そこで90重量%±5重量%の乾燥物レベルまで乾燥させた。このようにして得られた生成物は、淡いグリーンベージュの色相を有し、非常に低い、かすかにしか認識できない甜菜の官能的にネガティブな臭気を示した。続いて、この生成物を、1:1の重量比、95%v/vエタノールで、30℃の温度で5分間洗浄した。その後、固相を液相から分離した。前記固相を110℃±5℃で乾燥させ、製品を得た。液相を、温度35℃、9.9kPaの真空下で回収して、濃度95体積%のエタノール及び蒸留残渣を生成した。
【0131】
洗浄後に形成された固相から得た製品/濃縮物は、淡黄色から淡ベージュ色であり、官能的にネガティブな物質及び抗栄養物質の痕跡はなかった。この濃縮物は、乾燥物中の単糖(単糖及び二糖)の部分が62重量%~68重量%、ミネラルの含有量が1.30%±0.12重量%、特にK、Na、Mg、Ca、Fe、F、Zn、Cu、Mnで代表されるものを含んでいた。総繊維含量は約18.8重量%±2.6重量%(総繊維の主成分は:セルロース、ヘミセルロース、ペクチン化合物)、ベタイン含量は685mg/100g±48mg、ビタミンB群含量の合計は14mg/100g±1.9mg/100gと測定された。反復実験における甜菜濃縮物中の物質組成は、処理に入る原料としての甜菜の個々の物質に常に依存したものであった。
【0132】
「実施例1-3」
除葉した甜菜の根を、表面の不純物を洗浄した。この根を、約10×20mmの断面を有する、30~140mmの異なる長さの削り屑に切断した。次に、得られた断片を、一定の攪拌下で15分間、95%v/vエタノールと1:2の割合(乾燥物材料:エタノール)で混合することにより不活性化させた。不活性化期間の終了後、混合物をテンパリングした。テンパリングは、密閉圧力容器内で120℃±10℃の温度まで30分間、一定の攪拌下で徐々に加熱することを含む。保持時間後、生じた蒸気を一定の攪拌下で圧力容器から徐々に取り出し、直接蒸留によって精留し、アルコールとした。蒸発工程は、混合物中のエタノール含量が5重量%以下になった時点で終了した。工程終了後、材料をペースト状に分解し、真空薄膜乾燥機に送り、温度120℃±5℃、圧力20kPa±10kPaで乾燥し、最終乾燥物含量を92重量%とした。
【0133】
このようにして生成された製品は、乾燥後、グリーンベージュ色であり、官能的にネガティブな物質の含有量は低いが許容できるものであった。この製品を、500pm以下の粒子を有する微粉末に粉砕し、続いて、製品を95容量%の濃度のエタノールで洗浄した。その混合割合は、1:2(製品:エタノール)である。この混合物を密閉容器中で85℃の温度に10分間加熱し、保持時間の経過後、混合物を15℃まで冷却し、分離した。得られた固相を乾燥機で乾燥し、分離後の液相を、乾燥機内で100℃の温度で、実施例1と同様にアルコールを回収するために使用した。洗浄後、得られた製品は淡黄白色であり、その洗浄及び乾燥後の製品の味には、官能的にネガティブな物質の痕跡がなく、糖のカラメル化のわずかな心地よい香りと風味を有しているものであった。食品レシピに使用する場合、製品のパラメータは、最終食品(例えば、ベーカリー製品、ジャム、チョコレート等)の製造に適用される処理によってさらに処理される間に変化しなかった。製品の物質組成は、繰り返し実験において、実施例(1.1)の場合と同様に、常に原料の物質組成に依存していた。
【実施例2】
【0134】
ショ糖含量が14重量%のレベルで測定された糖度の除葉した甜菜の根の表面の不純物を除去し、表面の皮を大まかに剥いた。前記甜菜を厚さ20mmにスライスして分解した。このようにスライスした材料を、直ちにいくつかの部分に分け、各部分を、アルコール群:エタノール、メタノール、プロパノール、及びこれらの混合物のうち、常にこの群からの2つのアルコールを1:1の割合で含むものと混合した。続いて、甜菜の断片をアルコール中でさらに均質化して、微細なペーストを形成した。
【0135】
使用したアルコール溶液は、85体積%及び95体積%の2つの様々な濃度で試験された。甜菜ペーストとアルコールとの混合比率は、1:1、1:2、1:5、1:10及び1:15(材料:アルコール)とした。
【0136】
試料の1つのグループでは、不活性化を、温度25℃で、一定の攪拌下で適切なアルコールを添加することにより行った。サンプルの別のグループでは、不活性化処理の間、アルコール・ペースト混合物を、10分の保持時間で、密閉容器内で85℃±5℃の温度まで加熱した。不活性化された混合物の試料を、一定の攪拌下で、10分及び30分の保持時間の間、密閉圧力容器内で110℃±10℃の温度まで加熱することによってテンパリングした。その後、薄膜濃縮器で混合物から液相の大部分を蒸発させ(60重量%の乾燥物含量まで)、さらに100℃±10℃の温度で20kPa±10kPaの減圧下で乾燥させた。乾燥物量が60重量%の場合、得られた製品はペースト状であり、乾燥物量が92重量%±5重量%の場合は粉末状の製品・濃縮物が得られた。得られた製品を、1000pm以下の粒子径を有する所望の粒子に粉砕した。乾燥後に得られた製品の色は、淡緑色からベージュ色であり、水分含量の高い製品は常に暗色であった。また、加熱を繰り返しても製品の色調は変わらなかった。乾燥後の製品の官能特性は、受容可能な範囲にあり、甜菜の臭気強度は非常に低かった。ネガティブな臭気の強度は、不活性化工程で添加される混合物中のアルコールの部分が増加するにつれて減少した。実施例1.3と同様に、その後の洗浄により、製品の色及び官能パラメータの両方が著しく改善された。洗浄後、最終食品(例えば、ベーカリー製品、ジャム、チョコレート)の製造に適用される処理でさらに処理しても、得られた製品のパラメータは変化しなかった。
【0137】
蒸発した水及びアルコールは乾燥工程で集められ、アルコールは真空下(最大9.9kPa)での蒸留・精製工程によって、さらなる使用のために混合物から回収した。その際、蒸気エネルギは回収され、他の処理の加熱に利用した。85%v/vのアルコール溶液を使用することで、濃縮物の最も最適な官能特性は、1:5の混合比率で達成された。官能特性の観点からはプロパノール(C3)ベースの処理が最も評価されたが、エタノールベースの処理が最も有利と評価された。アルコール濃度95容量%において、エタノール(C2)を使用する場合、最も有利な混合比(甜菜ペースト:アルコール)は、1:2の比率であった。メタノール(Cl)又はアルコールの混合物を使用した場合、官能パラメータの評価は悪く、プロパノール(C3)の場合には、官能パラメータの評価は場合によっては良く、エタノール(C2)と同程度であった。メタノールを使用した場合、製品は、検出可能な微量の甜菜のネガティブな官能性物質を示したが、エタノール及びプロパノールの場合、ネガティブな官能性物質は、官能許容範囲に、又は官能許容範囲を超えて抑制された。
【0138】
より好ましい不活性化温度は80℃以上であり、不活性化温度25℃で得られた製品に比べ、洗浄後の製品は常に淡い色調であった。洗浄後、不活性化温度25℃の製品は、より濃い色であった。
【0139】
このようにして得られた製品は、甜菜に由来する栄養素を保持するとともに、酸化スケールによって処理中に最小限の劣化しかしないポリフェノール化合物の含有量も保持していた。材料とアルコールの比が1:2(材料:アルコール)未満の場合、洗浄工程の前の乾燥工程で得られた製品は、緑からベージュの色相に向かって知覚できるわずかな変色を有していた。すべての製品は、その典型的な甘味を保持していた。製品はカラメル化されておらず、その乾燥物には、甜菜食物繊維が比較的多く含まれていた(8%~10%)。得られた製品は、亜硫酸塩、還元剤、添加物を含んでいなかった。得られた製品は、官能的又は栄養的品質を低下させる物質による障害を示さなかった。甜菜に由来するネガティブな官能特性を有する物質は、処理中に除去され、感覚的に顕著ではなかった。
【0140】
得られた濃縮物中の糖類(単糖及び二糖)の含有量は62重量%~68重量%のレベルに達し、ミネラル、特にK、Na、Mg、Ca、Fe、F、Zn、Cu、Mnの含有量は1.10%±0.15重量%であった。総繊維含量は約19.6重量%±2.8重量%(総繊維の主成分:セルロース、ヘミセルロース、ペクチン化合物)、ベタイン含量は588mg/100g±61mg/100g、ビタミンB群含量の合計は10mg/100g±1.6mg/100gと測定された。反復実験における甜菜製品/濃縮物中の物質組成は、処理に入る原料中の個々の物質に常に依存していた。
【実施例3】
【0141】
実施例3では、実施例2と同じ処理を使用したが、その違いは、分解した材料を、アルコール類と混合する前に、制御された雰囲気で、100℃の温度及び6.5m/sの空気流量の空気流の流動層乾燥機を使用して、複合乾燥によって予備乾燥させたことである。制御された雰囲気での流動乾燥は、材料の温度が85℃±5℃になるまで行い、その後、流動層乾燥機で乾燥物値60重量%及び90重量%まで乾燥させた。予備乾燥処理は、二酸化炭素を含む酸素濃度を40%低下させた状態で行った。その他の手順は実施例2と同じである。
【0142】
得られた製品は、95重量%の乾燥物含量を有していた。この製品は同等の官能特性を有し、予備乾燥を行わずに得られた製品と比較して、色合いがわずかに暗くなっていた。実施例2からの得られた製品との違いは、予備乾燥を経た製品の官能的品質(特に味、消費時の香り)が、材料対アルコール比1:1で、添加アルコールの比率を高くして得られた実施例2からの製品の品質に匹敵することであった。テンパリング処理で生じた蒸気は、回収に直接使用するために110℃±10℃の温度で抽出し、アルコールを濃縮して最小80重量%のアルコール濃度の溶液を生成した。得られた製品を、97重量%の乾燥物含有量まで乾燥させた後、洗浄した。製品の洗浄は、その乾燥後、不活性化処理と同様に、製品を2:1又は1:1の比率(製品:アルコール)でアルコールと繰り返し混合する方法で実施した。洗浄中の混合物温度は50℃±10℃であり、10分間、一定攪拌下で行った。その後、混合物を20℃まで冷却し、液相と固相に分離した。分離後、固相を90℃±10℃の温度で乾燥させ、乾燥物値を97重量%とした。得られた製品は、色が薄く、実施例2の製品と同じかそれ以上の官能特性を有し、同等の物質組成を有していた。分離後の液相は、再利用可能なアルコールを得るために回収した。この製品は、原料に由来する全ての物質を含み、この処理により劣化プロセスが停止され、官能的にネガティブな成分及び混合物の色変化の原因となる劣化生成物の一部が除去されている。得られた濃縮物中の糖分は68重量%、ミネラル、特にカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、フッ素、亜鉛、銅、マンガン(K,Na,Mg,Ca,Fe,F,Zn,Cu,Mn)の含有量は1.25重量%であった。総繊維量は20重量%±2%で、主にセルロース、ヘミセルロース、ペクチン化合物からなり、ベタイン量は715mg/100g±55mg/100g、ビタミンB群量は18mg/100g±2mg/100gと測定された。
【実施例4】
【0143】
収穫後に洗浄及び除葉した総乾燥物量24.8重量%の甜菜を、厚さ約3mmの削り屑にすりおろすことによって分解した。得られた原料を直ちに定量的に2つの部分に分けた。一方の部分は、酸素含有量を5体積%に低減した熱ガスで、流動層乾燥機にて、波長200nm~420nm及び550nm~600nmの低光放射強度下で、乾燥温度110℃で予備乾燥した(強度は最大0.010mW/cm、乾燥物50重量%に到達後の全エネルギは20mJ/cm±5mJ/cm)。予備乾燥は、材料内の温度が80℃に達し、材料の乾燥物量が50重量%に増加するまで行い、その後、80℃の温度で材料の乾燥物量が65重量%になるまで追加乾燥を行った。第二の部分は、予備乾燥工程なしで処理した。両方の部分は、実施例2と同様にモノヒドロキシアルコールCl~C3と混合することにより不活性化した。使用したアルコール溶液の濃度は、少なくとも85体積%であった。各混合物は、分解又は予備乾燥後の材料とCl~C3アルコールのいずれかとを、所定の割合で混合することにより調製した。次いで、各混合物を、密閉容器内で、一定の攪拌下で、20分間、90℃の温度まで加熱した。各混合物をフィルタ式遠心分離機で分離し、液相と固相を形成した。材料の予備乾燥した部分の固相を、乾燥物含有量が95重量%になるまで、100℃±10℃の温度で乾燥させた。放出された蒸気は、アルコール類の回収と、熱媒体によるエネルギ回収のために捕捉した。アルコール類とエネルギは共に回収され、処理で再利用された。
【0144】
その分離後、材料の予備乾燥した部分の液相を-18℃の温度で脱ろう処理させた。同じ温度で、次の分離、順に2番目に移し、その分離に続いて、得られた第2の固相を流動層乾燥機で前の工程と同じ条件で乾燥させた。乾燥中、得られた蒸発物を回収し、アルコールの回収に直接使用した。第2分離後に得られた第2の液相を、温度45℃、圧力12.0kPa±5.0kPaで蒸留して、アルコールの回収をした。第2液相の回収後、甜菜乾燥物の一部の濃縮水溶液からなる副産物が生成された。この副産物は、次に、密閉空間内で115℃±10℃の温度まで40分間加熱され、その間に濃縮された。その後、これを乾燥させて、高い抗酸化活性と、1.9重量%±0.15%のレベルのフェノール化合物の含有量を有する中間製品を形成した。こうして第1固相及び第2固相を乾燥した後に得られた製品において、甜菜由来の単糖及び二糖の含有量、総繊維量、ミネラルの複合体及びベタインを測定した。
【0145】
不活性化工程におけるペーストとアルコールの混合比の変化に比例して、製品の個々の部分画分においてモニタした物質の量が変化した。
【0146】
不活性化の間、混合物の液相中のアルコールの比率が増加するにつれて、得られる製品の官能性パラメータは改善された。
【0147】
材料が予備乾燥されなかった場合、最初の分離後の第1の固相部分は、大部分が、製品画分中の乾燥物重量で80%±9%を構成する繊維画分で構成されいた。このようにして得られた製品画分の他の部分は、およそ12%±8%の甜菜の糖及び他の非糖成分で構成されていた。甜菜由来の単糖類及び二糖類の大部分は、液相に溶解していた。予備乾燥を行わない材料からの第1分離後の液相を、第2分離工程で固相収量の最小部分を生成するように脱ろう処理処理した。その後の第2分離後の液相からアルコールを回収する工程において、溶解している物質を液相から蒸留残渣に入れ、さらに処理を行った。残渣を2つに分け、一方の半分を密閉型複式容器内で110℃±10℃の温度まで10分間加熱し、その後90℃の温度で乾燥させた。こうして、回収後に別の中間製品を得た。蒸留残渣の残り半分は、製糖工場でショ糖を得るのと同じ方法で晶析処理し、これにより粗糖を得た。原料糖を得た後の得られた液体の残りは、製品の別の各分を形成する乾燥物を得るために乾燥させた。製品は、緑色-ベージュ色の色調を有し、わずかに認識できる甜菜の臭いを有していた。実施例1と同様にアルコールで洗浄することにより、製品の緑色を除去し、残存する官能的にネガティブな物質を除去することが可能となった。第1及び第2の分離工程で生成された他の製品画分と混合することにより、正確な物質組成を有する最終製品を製造することが可能であった。
【0148】
予備乾燥を行わない材料から第1分離後に得られた固相を、120℃の温度で、得られる乾物含有量が90重量%になるまで乾燥させた。このようにして得られた製品は、甜菜由来の官能的にネガティブな物質の痕跡を全く含まず、実施例2で得られた製品よりも明るい色を有していた。また、上記の手順で得られた製品は、劣化による損傷が見られなかった。得られた製品は、甜菜由来の官能的にネガティブな物質の痕跡がなく、淡いベージュ色であった。材料を予備乾燥させずに1:1~1:1.5の混合比で、液相からアルコールを回収する間に得られた中間製品は、85%±6重量%の高い割合の単糖及び二糖、3.5%~4.1重量%のタンパク質、0.78%~1.1重量%のミネラル及び約620mg/100g±60mg/100gのベタインを含んでいた。物質の部位と量は、常に入れる原料の物質組成に依存していた。
【実施例5】
【0149】
ショ糖含量が15.6重量%の脱葉甜菜を洗浄して表面不純物を除去た。その後、それをすりおろして、分解し、均質化し、粉砕して微細なペーストにした。分解処理では、0.05重量%のKをペーストに添加し、繰り返し実験では、同量のNaS又は0.65重量%のNaNO又は0.05重量%のKNOのいずれかをペーストに添加した。
【0150】
組織破壊後にペースト中で酵素的に触媒される酸化処理を遅らせるために、ナトリウム塩又はカリウム塩を常に固体状態(粉末)で添加した。このようにして調製された混合ペーストを、常に2つの等しい部分に分けた。第一の部分では、(粉末として固体状の)クエン酸の添加により、pH値を3.6に調整し、ペーストの第2の部位では、そのpHは調整しなかった。両部分を、個別に真空乾燥機で0.1bar±0.05barの圧力、80℃±10℃の温度で、90重量%の乾燥物レベルまで予備乾燥した。このようにして得られた材料は、甜菜由来と同様の物質組成を有していたが、pH調整をして製造した材料は、スクロースを犠牲にして42重量%の高いグルコース及びフルクトース単糖の値を含んでいた。どちらの材料もベージュからライトグリーンの色調であった。官能評価では、クエン酸を使用してpH調整した材料は、pH調整なしの製品に比べ、色が薄く、甜菜の官能的にネガティブな物質の含有量が低いことが示された。しかし、このようにして得られた材料の官能特性は、依然として甜菜のネガティブな臭いの官能痕跡が知覚でき、材料の色は依然として食品の色調に影響を与え、その後の適用試験において材料の酸化還元活性を高めた条件下で分解が継続することがわかった。そこで、このようにして得られた含水率10~12重量%の材料を、さらに分子内に1~3個の炭素を有するモノヒドロキシアルコール(Cl~C3)、メタノール、エタノール、プロパノールを、85重量%濃度の液状の形態で用いて処理した。不活性化工程では、これまでの実施例と同様にアルコール溶液を使用した。不活性化処理の終了後、試料を分離するか、又はまず25℃まで冷却し、次にろ過遠心分離機で、又は真空ろ過装置を用いて個別に分離し、常に固相と液相を生成させた。次に、固相部分を、各サンプルについて真空乾燥機で80℃±10℃の温度で乾燥させた。乾燥後の固相部分の乾燥度は製品の90~95重量%であり、製品中の残留アルコールの含有量は常に1.0重量%以下であった。分離された液相部分は、蒸留精留塔又は10kPa±5kPaの圧力の蒸留塔で回収された。使用したアルコールを、それらのさらなる使用のために蒸留工程によって回収し、少なくとも80体積%の濃度のアルコールと、分離工程で液相に渡される甜菜乾燥物物質を含む蒸留残渣とを形成した。アルコールを回収した後、蒸留残渣をさらに100℃±5℃で乾燥し、実施例1.3と同様に洗浄し、単糖及び二糖を高含有し、ミネラル及びベタインを少数含有する甜菜由来の製品(画分)を製造した。
【0151】
不溶性部分である繊維は常に固相に渡された。甜菜製品/濃縮物の官能品質は、他のアルコールに比べ、メタノールを使用した場合に最も低くなった。
【0152】
分離した固相を乾燥し、かつ、処理した液相を乾燥した後に得られた製品の物質組成は、実施例2の製品の概要組成と一致したが、この製品は添加されたアレルゲンを含んでいた。官能特性は、甜菜由来のネガティブな物質によって損なわれることはなかった。
【実施例6】
【0153】
実施例5と同様に甜菜を処理したが、分解処理では亜硫酸塩又は亜硝酸塩を添加せず、分解直後に材料を予備乾燥し、不活性化処理(アルコール類との混合)まで処理した。処理は、制御された雰囲気(気体窒素(N2)雰囲気)の装置内で、又は、減圧下で、かつ、50mJ/cmで波長200nm~400nm及び550nm~650nmの低放射線を用いる装置内で行った。繰り返し実験では、窒素と酸化炭素の比率を1:1(N:CO)とし、かつ、15kPa±5kPaの減圧下で、次の同一試料に対して処理を繰り返した。その目的は、甜菜材料の処理中に、分解された材料に接する雰囲気の酸素濃度を下げることである。なお、空間内の気体の圧力は、100kPa及び200kPaに維持した。実施例5の手順で材料を乾燥させた後、60重量%及び92重量%の乾燥物含有量を含む材料を製造した。予備乾燥後、アルコールを適用する前に得られた材料の色は、実施例5で得られた製品と少なくとも同等であった。その後、処理された材料は、実施例5に従ってアルコール類(Cl~C3)で不活性化され、ここで製品の色はより明るい色合いに変化した。同時に、残留する甜菜のネガティブな臭気及び香りが除去された。物質組成は、比較した濃縮物及び測定した偏差の範囲内で実施例5と同等であったが、処理中の添加した亜硫酸塩又は亜硝酸塩の含有量は重量比で0%であった。
【実施例7】
【0154】
実施例5と同様の方法で甜菜ペーストを調製したが、分解の間、亜硫酸カリウムの代わりに、固体状(粉末)の亜硫酸塩、K及びNaの1:1混合物を甜菜ペーストの重量に対して0.05重量%添加した。
【0155】
その後、得られたペーストの試料を複数に等分し、これをさらに処理した。なお、試料の半分ではクエン酸又は塩酸を用いてpH値をpH=3.6±0.25に調整し、残りの半分ではpH値を調整しなかった。
【0156】
その後、すべてのペースト試料を、得られた水蒸気が容器内の内圧を上昇させるように、一定の攪拌下で、閉鎖系で超音波処理により別々に処理した。各試料は別々に超音波処理された。試料は、15kHz、20kHz及び35kHzの周波数で、調製した混合物の2400J/gまでの超音波処理エネルギで超音波処理され、試料は、混合物の65J/g、混合物の250J/g、混合物の600J/g、混合物の1200J/g及び混合物の2400J/gの超音波処理エネルギに達した後に評価された。混合物1gあたりの超音波照射エネルギの測定における偏差は±12%と算出された(合計2×60個の試料を超音波照射した)。超音波照射の初期数分間は、45℃までの温度で試料の粘度が高いため、超音波照射の出力が変動した。そこで、次の部分では、同じ範囲のパラメータで、2つの方法で試料を超音波処理し、それぞれの方法で超音波処理の強度を増加させた。第1の方法では、試料をさらに水で1:1の割合(甜菜ペースト:水)で希釈した。第2の方法では、試料をさらに均質化し、外部エネルギ源で70℃に加熱し、攪拌して超音波処理を強めた。熱エネルギは、70℃に達するまで超音波処理中に試料に供給した。
【0157】
水で希釈していない試料は、希釈した試料と比較して、同じ超音波処理時間で実際に伝達される音エネルギの強度が低く、総音エネルギにおいて平均38%±12%であることがわかった。外部熱源で加熱した試料は、加熱及び希釈していない試料と比較して、同じ超音波照射時間で実際に伝達される音エネルギの強度が高くなり、総音エネルギで平均26%±12%であった。超音波処理中の混合物の温度上昇は、超音波処理出力と音エネルギに比例した。超音波処理は、密閉容器に入れた各試料で行い、他の同一の甜菜ペーストの試料でこの処理を繰り返した。集中的かつ長時間の超音波処理の間、試料は超音波処理中に過熱した。従って、より長く、より集中的な超音波処理の間、材料の温度が90℃を超えないように、処理の最終段階で試料を冷却することが必要であった。なぜなら、前記温度を超えた後、超音波処理出力は著しく低下したためである。材料の超音波処理後、超音波処理された材料は予備乾燥され、その後、実施例1と同様にアルコールで不活性化された。不活性化後、実施例1と同様に材料を分離し、乾燥させた。このようにして得られた超音波処理された材料を、乾燥工程に必要なエネルギと時間を減らすために減圧下で、100℃±20℃の温度で乾燥し、混合物から50%以上の液体を蒸発させた後、乾燥温度を60℃に維持した。得られた製品の品質に関して、前述のパラメータに従った乾燥の結果は、同じ温度での乾燥に時間がかかり、より多くのエネルギを必要とする大気圧での従来の乾燥の際にも同じであった。処理のエネルギ要求を最適化する手段として、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、伝導乾燥、熱乾燥など、さまざまな乾燥方法を試料で試験し、測定した。乾燥は、乾燥物含有量が60%±5重量%(ゲル状)及び90%±5重量%(乾燥粉末材料)に達した時点で常に終了させた。80%以上の乾燥物含有率まで乾燥させた後、一部の試料を所望の粒径に粉砕し、粉砕工程での摩擦の影響により水分の一部を追加で蒸発させた。
【0158】
このように、超音波処理時間、超音波処理強度(J/g)、超音波処理周波数(kHz)、粉砕時の粒子粒度(μm)に応じて、異なるタイプの材料が得られた。これらの材料は、水と混合したときのレオロジー特性で互いに異なっていた。これらの結果に基づいて、依存関係を定義した。超音波処理された材料の粘度は、個々のサンプルの超音波処理出力及び熱が増加するにつれて減少し、超音波処理出力及び熱に応じて、乾燥物の60%含有量まで乾燥した製品、及び(試料と水の同じ混合比を維持しながら)得られた乾燥粉末甜菜製品/濃縮物を水と混合して得られる溶液の粘度は減少した。この結果は、超音波処理中に材料の乾燥物の平均分子量が低下した結果と推定される。同時に、超音波処理の強度に伴い、乾燥甜菜製品/濃縮物を水に溶解した後、水との溶液又は不可分な微小懸濁液に溶解して移行する、濃縮物の可溶性乾燥物部分が増加することが確認された。材料の超音波処理において音エネルギが増加すると、材料中の不溶性繊維の部分が減少し、より安定な懸濁液が形成され、これはある種の食品への応用という点で重要である。
【0159】
超音波処理周波数は、濃縮液の官能的品質と同様に、達成されたレオロジー的変化に影響を与えた。試料の官能的及びレオロジー的パラメータの調整に関して最悪の結果は、超音波処理周波数35kHzで得られ、最良の結果は、超音波処理周波数20kHzで得られた。20kHzで超音波処理された混合物のレオロジー特性における最初の変化は、音エネルギが140J/g~220J/gの値に達したときに起こった。材料1gあたりの音エネルギが増加すると、粘度が低下し、同時に乾燥後、得られた製品は水への溶解性が高くなった。溶解性は、得られた甜菜濃縮物を水と混合して形成した懸濁液をろ過した後、ろ過界面の不溶性乾燥物の質量部を評価し、水溶液中の溶解乾燥物部分を測定することにより評価した。超音波処理した甜菜濃縮物の変化は、乾燥時及びその後の粉砕時にも観察され、音エネルギー(J/g)が増加すると、調整物は、同じエネルギーパルス及び同じ機械パルスでより速く乾燥し、その後の粉砕工程では,濃縮物の平均粒子径及び粉砕エネルギが超音波処理の強度(J/g)に比例して減少した。この結果は、80m、160m、250m、500mのメッシュサイズの篩システムで測定され、同じ粉砕エネルギで粒径の小さい画分の重量が増加することで、粉砕処理における前記したレオロジー的変化が実証された。
【0160】
材料の超音波処理中の官能特性の変化は、徐々に発生した。色の変化は、音エネルギが700J/g~1280J/gのレベルに達し、個々の試料で超音波処理された内容物が徐々に暗くなり始めたときに、徐々に発生した。この色調変化は、乾燥後の甜菜濃縮物においても明らかであった。色の変化は、超音波処理中のpHに依存するものではなかった。有機的特性(特に、風味及び香り)は、超音波処理した試料における音エネルギの増加とともに改善され、甜菜臭の強度は減少した。甜菜のネガティブな味及び香りの強度が最も低かったのは、不活性化前に評価した周波数20kHz、超音波出力2400J/gの最も強力な超音波処理で達成された。超音波処理中の温度の上昇は、すべての混合物の超音波処理による超音波処理性能の経時的な上昇に比例していた。得られた濃縮物の色は、超音波処理の時間と共に元の薄茶色及び薄緑色の暗い色調に向かって強まったが、その後の不活性化と分離によりこれらの色調変化はなくなった。
【0161】
超音波処理中の甜菜原料の構造変化は、得られた甜菜濃縮物のレオロジー特性の変化をもたらし、特に水との混合物における粘度と溶解度の変化、及び水及び/又は油脂との混合物におけるより安定な懸濁液と乳化物の形成によって顕在化された。その後、超音波処理された製品/濃縮物の乾燥中に、乾燥工程の短縮(同じエネルギーパルスでの水の放出の容易性)及び甜菜濃縮物の粉砕工程でのより微細な結果物が観察された。
【0162】
甜菜濃縮物96重量%の乾燥物中の単糖の含量は、前述の方法の場合、66重量%~72重量%と測定された。また、総繊維含量は乾燥物中16.5重量%~24.2重量%、ミネラル含量は変化が少なく、1.06%±0.18%、ベタイン含量は濃縮乾燥物中486mg/100g±96mgと測定された。得られた甜菜濃縮物の物質組成は、超音波処理の時間、出力、及び温度に依存した。処理手順に使用される甜菜の個々の物質の説明は、得られた甜菜からの濃縮物及び調製物の物質組成に影響を及ぼす重要な要因である。
【実施例8】
【0163】
先の実施例と同様の手順を繰り返したが、甜菜は不活性化後にのみ分解され、この不活性化は95容量%の濃度のエタノールを用いてのみ行われた。不活性化処理は、温度100℃の密閉圧力容器内で行われた。その後、得られた造粒用濃縮物を実施例2の手順で最大粒径250pmに乾燥及び粉砕した後、エタノールを用いた洗浄工程を適用した。
【0164】
甜菜製品/濃縮物を、95体積%の濃度のエタノールと1:1の割合で再混合することにより洗浄を繰り返し、混合物を一定の攪拌下で90℃にて10分間加熱した。その後、混合物を-10℃まで冷却し、フィルタ式遠心分離機で固体部分と液体部分とを分離した。分離後の固体部分は、120℃及び100℃で乾燥し、その際に逃げる蒸気を捕捉してエタノールを回収し、再利用に供した。分離した液体部分を蒸留により回収し、95容量%の濃縮エタノールと、乾燥物中に主に糖類を含む蒸留残渣を得た。
【0165】
乾燥物含量92%±5重量%まで乾燥した後の分離した固体部分は、実施例2のエタノールを用いて得られた濃縮物よりも製品の官能的パラメータが良好で、顕著に明るい色を有する甜菜製品/濃縮物を表わすものであった。このようにして得られた濃縮物の物質組成は、実施例2でエタノールを用いて得られた甜菜濃縮物と比較した場合、偏差の範囲内で類似したものであった。エタノールを用いた洗浄処理を繰り返した結果、より広い範囲の食品の調製に適用可能な、官能特性が改善された甜菜濃縮物を得ることができた。
【実施例9】
【0166】
実施例2と同様に、不活性化工程までに、甜菜試料を、乾燥物60重量%まで予備乾燥処理した。不活性化工程は95容量%の濃度のエタノールを用いて行ったが、全ての試料で不活性化直後に液体部分と固体部分とを濾過により分離した。より効率的な分離は、遠心分離によって行われ、分離した固体部分と液体部分が形成された。
【0167】
遠心分離により、-5℃及び60℃で相を分離した。分離時の温度を下げると、液相に溶解している甜菜乾燥物の部分が減少した。60℃の温度で分離した後に形成された液体部分を2つに分割した。一方は脱ろう処理用に移し、-18℃まで冷却した。残りの半分は蒸留により回収し、さらに使用するための濃縮アルコールと蒸留残渣を形成した。脱ろう処理処理により、液相の混合物の温度が低くなると物質の溶解度が低下する結果、液相から液中に形成される分泌された固形分が得られた。脱ろう処理処理後のこの固形部分は、主に甜菜に由来する単糖と糖類からなり、その後、脱ろう処理処理に近い温度で濾過することによって分離された。脱ろう処理処理後の分離液(濾液)を汲み上げ、更なる使用のためにアルコール溶液を濃縮するために、アルコール類を回収した。
【0168】
その結果、分離における脱ろう処理処理後の液相中の甜菜乾燥物の可溶部量は、不活性化工程(後述)における甜菜ペースト:アルコールの使用比率に依存することが確認された。脱ろう処理処理後に形成された固体部分を、少なくとも95重量%の乾燥物部分に達するまで、先の実施例と同様の方法で直接乾燥した。こうして乾燥後に得られた濃縮物の結果的な粒径は、さらに粉砕によって調整された。
【0169】
固体部分(相)は、複合乾燥、即ち、常に2つの方法(具体的には)、すなわちマイクロ波乾燥、真空乾燥、流動層乾燥又は押出乾燥処理(断熱膨張を使用)を組み合わせた乾燥を使用して、140℃までの温度で乾燥することにより除去された残留液体の25%までを第1の分離後に含有するものであった。複合乾燥では、最初の乾燥工程において、マイクロ波乾燥又は真空乾燥で材料の含水率が50重量%以下になるまで乾燥させ、その後、流動層乾燥機又は押出乾燥処理で材料を乾燥させた。予備乾燥には、マイクロ波照射又は酸素含有量を減らした流動層乾燥(加熱窒素ガス)を使用した。
【0170】
固相の乾燥は、常に乾燥時に生じる蒸発物を捕捉し、大気圧下の精留塔で分離に持ち込むように行ったが、真空下でアルコールを回収する工程の方がエネルギと時間の面で有利であった。濃縮後の回収アルコール濃度は、回収後の混合物中80%v/v以上であった。
【0171】
相の分離後に固体部分から得られる製品の組成は、不活性化工程における甜菜ペーストとエタノールの選択された比率、及び相分離前及び相分離中の温度に比例的に依存する。
【0172】
全体として、分離後の液相及び固相中の物質は、常に工程に入る甜菜ペースト中の物質の量と等しかった(工程における技術的損失を考慮したものである)。このようにして得られた濃縮物の官能特性は、いずれの場合も、実施例2で得られた甜菜濃縮物に関する色及び官能特性と同等であり、満足できるものであった。甜菜のネガティブな物質の含有量は、最小限から皆無であった。
【実施例10】
【0173】
実施例2と同様にして甜菜を処理し、混合物を60重量%に予備乾燥した。不活性化工程では、1:2の割合(材料:アルコール)で濃度95体積%のアルコールを使用して、混合物を85℃±5℃まで10分間加熱した。不活性化工程では、甜菜ペーストとアルコールの混合物を、混合物の温度を最高80℃以下に維持したまま、同時に18kHz及び22kHzの周波数で超音波処理した。続いて、超音波処理後、混合物を2つに分けた。一方の半分を、密閉型複式容器内で120℃±5℃の温度で5分間テンパリングし、その後、乾燥させて乾燥物90重量%を含む粉末状の製品を得た。他方の部分を、10℃まで冷却し、液相の部分から固相の部分を分離する相分離に供し、固相の部分は真空乾燥機で乾燥し、液相の部分は-18℃の温度で脱ろう処理処理に供した。分離後に形成された固相の部分と、脱ろう処理処理されその後の乾燥された後の固相の部分とを混合した。粉砕工程によって、それらの造粒は500pm以下の粒子径に調整された。実施例7の超音波処理と異なる点は、主に、供給した超音波エネルギが1200J/gを超えても、超音波処理した材料が変色しないことであった。超音波処理出力は、70℃に達した後、大きく低下し始めた。この温度では、出力を維持し、超音波処理エネルギを効率的に試料に向けるために、混合物の温度が最大70℃に達した時点で、超音波処理試料の冷却を開始することが必要であった。温度と超音波処理性能との関連における材料の変化は、実施例7と類似していたが、しかし、超音波処理出力は、より低い温度で減少した。食品製造に使用する場合、400J/g以上の超音波処理エネルギ値で集中的に超音波処理を行う工程は、水溶液中の材料の低粘性及び低水結合性が要求される技術(例えば、ビスケット、チョコレート製造)において特に有利であった。逆に、100J/g以下の低い超音波処理エネルギを使用する工程又は超音波処理を行わない工程は、その製造過程において、より粘性の高い水溶液を製造するために高い水結合性及び得られるゲルの安定性を必要とする食品材料及び製品の製造(例えばベーカリー製造又は、ジャム及びフィリングの製造)に好適であった。
【実施例11】
【0174】
実施例10と同様の手順で、甜菜を分解し、甜菜ペーストを加工した。異なる点は、実施例6と同様に、分解処理、不活性化処理、超音波処理、及びテンパリング処理を、雰囲気が制御され、100nm~420nmの波長範囲の光放射にアクセスしない環境下で行ったことである。得られた製品は、実施例7で得られた製品と同じ物質組成及び官能品質を有していたが、色がさらに薄かった。
【実施例12】
【0175】
材料に接触する全放射線エネルギを50mJ/cmに低減し、200nm~420nm、及び550nm~650nmの波長において放射強度が0.040mW/cmを超えない、太陽放射強度が減少した環境において、温度25℃で、少なくとも一つの粒度が3mmである粒子に甜菜を分解した。環境中の雰囲気は、酸素含有量21.8%の大気圧の空気を含む。その後、材料を半分に分割した。一方の部分は日射量を減らさない条件で30分間放置して大まかに保管し、もう一方の部分は日射量を減らした条件で保管した。30分後、日射にさらされた材料には劣化の兆候が見られ、表面の色が白から薄いピンク、赤へとわずかに変化しているのが肉眼で確認できたのに対し、同時に光放射エネルギを低減した空間に保管した材料には、初期の劣化や色変化の兆候は見られないことを発明者等は見出した。その後、両材料を先の実施例と同様にエタノールで不活性化した結果、不活性化工程で太陽光線を浴びた材料は灰色から暗色に変色したのに対し、放射エネルギーを減らした空間に保持された材料は劣化や変色の兆候を示さなかった。これらの特徴は、不活性化及び乾燥後の調製品でも官能及び色調特性の面で検出可能であり、同時に、乾燥工程では材料の品質の差がより顕著になった。
【実施例13】
【0176】
実施例10と同様の方法で甜菜製品/濃縮物を得、500pm以下の粒子径に粉砕したものを、その後、流体トンネル内で可変気流を使用する乾式流体分画を用いて分画した。この方法では、粉砕製品を、材料粒子の密度及び飛散閾値に基づいて分けた。その結果、糖分、繊維、ミネラル、ベタイン及びビタミンの含有量が異なる2種類の画分が生成された。両者とも、甜菜の官能的にネガティブな痕跡は見られなかった。どちらの画分も淡い黄色のクリーム色で、単糖と二糖が濃縮された最初の画分はかなり淡く、白っぽい色をしていた。第1の画分は、80±6重量%の単糖及び二糖、0.92±0.24重量%のミネラル物質、11.2±3.5重量%の全繊維を含んでいた。第2の画分は、淡い黄色のクリーム色で、繊維質(特にペクチン物質、ヘミセルロース及びセルロース)を42±8重量%、ミネラルを1.82±0.14重量%、ベタインを920mg/100g±112mg/100g含有していた。
【実施例14】
【0177】
先の実施例で得られた製品は、いずれも乾燥後の乾燥物含量が90重量%以上であり、吸湿性、即ち通常の大気条件下で大気中の湿度を結合して吸収し、それによって固有の水分含量を増加させる性質を有していた。このため、これらの製品を、パーム油、菜種油又はココアバターと25:1~1:4の割合(甜菜濃縮物:油脂)で、45℃の温度で混合した。この結果、その吸湿性が、上記の実施例に従って製造された任意の甜菜濃縮物と比較して著しく低い混合物が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0178】
上述した解決手段により、本発明の技術的解決手段に従って、全甜菜根又はその個々の画分からなる甜菜濃縮物/製品を得ることが可能となり、前記甜菜濃縮物/製品は、食品製造技術において機能的特性を有する食品成分として、又は砂糖の代替物として適しており、従来の方法で製造された甜菜糖よりも栄養的パラメータ(ミネラル、ベタイン、繊維、ポリフェノールなどの含有量)が良好であり、同時に、得られた製品の官能パラメータは、甜菜の不快な香り若しくは臭気、又は甜菜組織の破壊直後に起こる分解又は酸化生成物によって損なわれることはない。得られた製品の官能的及び栄養的品質は、食品産業において広く適用するのに十分である。このようにして得られた材料/甜菜濃縮物及び調製物の技術的特性は、食品産業の様々な部門(ベーカリー生産、ジャム生産、チョコレート生産、菓子類、ビスケット、乳製品、機能性食品などの生産)において、栄養的利点を有する材料及び甘味料として適用するのに適しており、同時に食品生産工程をより有利なものにすることが可能である。また、ペクチン成分及び水溶性食物繊維の含有により、精製された甜菜糖(結晶性ショ糖)に比べてカロリー負荷やグリセミック指数が低下することも好ましい。
図1
【国際調査報告】