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特表2022-546676経皮神経刺激治療のための方法およびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】経皮神経刺激治療のための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20221028BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510825
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2020057781
(87)【国際公開番号】W WO2021033139
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/888,497
(32)【優先日】2019-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521026367
【氏名又は名称】ニューロリーフ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Neurolief Ltd.
【住所又は居所原語表記】12 Giborei Israel Street,Netanya 4250412,Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ダー,アミット
(72)【発明者】
【氏名】ベルソン,ロン
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,アミール
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053JJ02
4C053JJ21
(57)【要約】
ユーザの頭皮に適用される経皮神経刺激治療のための治療パラメータ値を決定するための方法は、たとえば第1の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、ユーザ固有感覚閾値パラメータ値セットの対応する少なくとも1つのパラメータ値との直接関係を含む相関関係に従って、電気パルスを施術するためにユーザの頭皮の第1の部分と係合した第1の電極アレイに関する上記第1の治療パラメータ値セットを設定することと、第2の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、上記第1の治療パラメータ値セットの上記少なくとも1つのパラメータ値との別の直接関係を含む別の相関関係に従って、電気パルスを施術するためにユーザの頭皮の第2の部分と係合した第2の電極アレイに関する上記第2の治療パラメータ値セットを設定することとを備える。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭皮の複数の位置に適用されるマルチチャネル経皮神経刺激治療のためのユーザ固有治療パラメータ値を決定する方法であって、
a.第1の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、ユーザ固有感覚閾値パラメータ値セットの対応する少なくとも1つのパラメータ値との第1の直接関係を含む第1の相関関係に従って、電気パルスを施術するために前記ユーザの頭皮の第1の部分と係合した第1の電極アレイに関する前記第1の治療パラメータ値セットを設定することと、
b.第2の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、前記第1の治療パラメータ値セットの前記少なくとも1つのパラメータ値との第2の直接関係を含む第2の相関関係に従って、電気パルスを施術するために前記ユーザの頭皮の第2の部分と係合した第2の電極アレイに関する前記第2の治療パラメータ値セットを設定することと
を備える方法。
【請求項2】
各治療パラメータ値セットは、
i.電気パルス周波数の逆数の整数倍である所与の期間にわたる合計電荷の値を有する電荷パラメータ、
ii.電流強度パラメータ、および
iii.パルス持続時間パラメータおよび周波数パラメータ、またはその算術的結合
のうち少なくとも2つの値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)前記頭皮の前記第1の部分は前部であり、前記頭皮の前記第2の部分は後部であり、または(ii)前記頭皮の前記第1の部分は後部であり、前記頭皮の前記第2の部分は前部である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の直接関係は、前記第1および第2の電極アレイのそれぞれの電極表面積の関係に部分的に基づく、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザ固有感覚閾値パラメータ値セットの値は、前記ユーザの頭皮の前記第1および第2の部分の一方に電気パルス列を印加する間に受信された第1のユーザ入力に基づく、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の相関関係は、それぞれの経験的相関関係に基づく直線関係である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の直接関係によると、前記第1の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値は、前記ユーザ固有感覚閾値パラメータ値セットの電荷パラメータ値にAを乗算した数に等しく、Aは1.3以上1.9以下である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第2の直接関係によると、前記第2の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値は、前記第1の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値にBを乗算した数に等しく、Bは1.1以上3.8以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
治療閾値を較正することを更に備え、前記較正することは、
i.前記ユーザの頭皮の前記第1および第2の部分に印加されるそれぞれの治療パラメータ値として前記第1および第2の治療パラメータ値セットを用いる経皮神経刺激較正セッションをアクティブ化することと、
ii.前記較正セッション中にユーザ較正入力を受信することと、
iii.前記ユーザ較正入力を受信することに応答して、前記第1および第2の治療パラメータ値セットの少なくとも1つの値を変更することと
を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の治療パラメータ値セットの前記少なくとも1つの値を変更することは、電流強度ではない少なくとも1つの治療パラメータ値を修正することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記変更は、電荷パラメータ値が所定の範囲内に限定されるように制約を受ける、請求項9または10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記変更は、較正セッションごとの変更の数が所定の変更の数に限定されるように制約を受ける、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記変更は、所定の時間間隔に限定される、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ユーザ較正入力を受信してから前記変更を完了するまでの時間は、1秒未満である、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記経皮神経刺激治療は、三叉神経を標的とする前部に印加される電気パルスと、後頭神経を標的とする後部に印加される電気パルスとを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記電気パルスの施術は、前記ユーザの頭部に装着される、電極を含む装置によってなされ、前記装置はヘッドセットを備える、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のユーザ入力および前記ユーザ較正入力の少なくとも1つは、前記ヘッドセットと電子通信状態にある外部ユーザ操作デバイスで稼働しているコンピュータソフトウェアプログラムを介して受信される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(i)前記ヘッドセットは、前記ヘッドセットに取り付けられたヘッドセット上のユーザインタフェースを備え、(b)前記第1のユーザ入力および前記ユーザ較正入力の少なくとも1つは、前記ヘッドセット上のユーザインタフェースを介して受信される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ユーザの頭皮の複数の位置に適用されるマルチチャネル経皮神経刺激治療のためのユーザ固有治療パラメータ値を決定する方法であって、
a.電気パルスを施術するために前記ユーザの頭皮の第1の部分と係合した第1の電極アレイに関する第1の治療パラメータ値セットを設定することと、
b.第2の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、前記第1の治療パラメータ値セットの前記少なくとも1つのパラメータ値との直接関係を含む第2の相関関係に従って、電気パルスを施術するために前記ユーザの頭皮の第2の部分と係合した第2の電極アレイに関する前記第2の治療パラメータ値セットを設定することと
を備える方法。
【請求項20】
各治療パラメータ値セットは、
i.電気パルス周波数の逆数の整数倍である所与の期間にわたる合計電荷の値を有する電荷パラメータ、
ii.電流強度パラメータ、および
iii.パルス持続時間パラメータおよび周波数パラメータ、またはその算術的結合
のうち少なくとも2つの値を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(i)前記頭皮の前記第1の部分は前部であり、前記頭皮の前記第2の部分は後部であり、または(ii)前記頭皮の前記第1の部分は後部であり、前記頭皮の前記第2の部分は前部である、請求項19または20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記直接関係は、前記第1および第2の電極アレイのそれぞれの電極表面積の関係に部分的に基づく、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記相関関係は、経験的相関関係に基づく直線関係である、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記直接関係によると、前記第2の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値は、前記第1の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値にBを乗算した数に等しく、Bは1.1以上3.8以下である、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記経皮神経刺激治療は、三叉神経を標的とする前部に印加される電気パルスと、後頭神経を標的とする後部に印加される電気パルスとを含む、請求項19~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記電気パルスの施術は、前記ユーザの頭部に装着される、電極を含む装置によってなされ、前記装置はヘッドセットを備える、請求項19~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ユーザの頭皮の複数の位置に適用されるマルチチャネル経皮神経刺激治療のためのユーザ固有治療パラメータを決定する方法であって、
a.第1の増加率で増加する電気パラメータ値を有する第1の電気パルス列を前記ユーザの頭皮に提供することであって、前記それぞれの電気パラメータ値は、電荷パラメータ値および電流強度値の少なくとも1つを備えることと、
b.前記第1の電気パルス列の印加に関連して前記ユーザが皮膚感覚を感じたことを示す第1のユーザ入力を受信することに応答して、感覚閾値パラメータ値セットとして、前記第1のユーザ入力が受信された時の複数のそれぞれの電気パラメータ値を定義することと、
c.第2の増加率で増加するそれぞれの電気パラメータ値を有する信頼性確認電気パルス列を前記ユーザの頭皮に提供することであって、前記それぞれの電気パラメータ値は、電荷パラメータ値および電流強度値の少なくとも1つを備え、前記提供することは、前記信頼性確認列が(i)それぞれの電気パラメータ値が前記感覚閾値パラメータ値に到達する前に休止し、(ii)休止後に再開するようになされることと、
d.前記休止後、前記感覚閾値パラメータ値の付近の所定の値範囲内であるそれぞれの電気パラメータ値において、前記信頼性確認電気パルス列の印加に関連して前記ユーザが皮膚感覚を感じたことを示す第2のユーザ入力を受信することに応答して、前記感覚閾値パラメータ値の信頼性を確認することと、
e.前記信頼性が確認された感覚閾値パラメータ値に基づく治療パラメータ値を用いて、前記マルチチャネル経皮神経刺激治療を適用することと
を備える方法。
【請求項28】
前記治療パラメータ値は、
i.電気パルス周波数の逆数の整数倍である所与の期間にわたる合計電荷の値を有する電荷パラメータ、
ii.電流強度パラメータ、および
iii.パルス持続時間パラメータおよび周波数パラメータ、またはその算術的結合
のうち少なくとも2つの値を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の電気パルス列は、前記ユーザの頭皮の第1の部分に印加され、前記信頼性確認電気パルス列は、前記第1の部分とは異なる前記頭皮の第2の部分に印加される、請求項27または28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の電気パルス列および前記信頼性確認電気パルス列の両方が、前記ユーザの頭皮の第1の部分に印加される、請求項27または28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
(i)前記頭皮の前記第1の部分は前部であり、前記頭皮の前記第2の部分は後部であり、または(ii)前記頭皮の前記第1の部分は後部であり、前記頭皮の前記第2の部分は前部である、請求項27~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記経皮神経刺激治療は、三叉神経を標的とする前部に印加される電気パルスと、後頭神経を標的とする後部に印加される電気パルスとを含む、請求項27~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の電気パルス列を提供することおよび前記信頼性確認電気パルス列を提供することは、前記ユーザの頭部に装着される、電極を含む装置によってなされ、前記装置はヘッドセットを備える、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1のユーザ入力および前記第2の入力の少なくとも1つは、前記ヘッドセットと電子通信状態にある外部ユーザ操作デバイスで稼働しているコンピュータソフトウェアプログラムを介して受信される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(i)前記ヘッドセットは、前記ヘッドセットに取り付けられたヘッドセット上のユーザインタフェースを備え、(ii)前記第1のユーザ入力および前記第2のユーザ入力の少なくとも1つは、前記ヘッドセット上のユーザインタフェースを介して受信される、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2019年8月18日に出願された米国仮特許出願第62/888,497号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、頭部領域に電気刺激を付与するための装置および方法に関し、特に、電気神経刺激を用いる治療に関する電気パラメータを設定し、較正し、その信頼性を確認する方法と、そのような較正を容易にするためのデバイスおよびソフトウェアアプリケーションとに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、神経刺激治療のために頭部領域に電気刺激を付与するための装置および方法に関する。開示される方法およびデバイスは、神経刺激治療のユーザによる較正を含む、末梢神経および脳神経の刺激に用いられる治療パラメータの較正のために用いられ得る。
【0004】
頭部領域における末梢神経および脳神経は、たとえば慢性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、後頭神経痛、線維筋痛症、憂鬱、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安、緊張、双極性障害、統合失調症、強迫性障害(OCD)、不眠症、癲癇、注意欠陥障害(ADD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病、アルツハイマー病、肥満、多発性硬化症、脳卒中、および外傷性脳損傷(TBI)などの様々な症状を治療するために刺激され得る。たとえば後頭神経および三叉神経などの頭部領域における末梢神経および脳神経の解剖図、およびそれらのたとえば青斑核および大縫線核などの脳幹領域への投影図、ならびにたとえば視床および前帯状皮質などの高次脳領域への投影図は、そのような症状を治療するためにこれらの神経を刺激する際に有利であり得る。
【0005】
たとえば後頭神経枝、眼科上神経枝、滑車上神経枝、頬骨側頭神経枝、および耳介側頭神経枝などの頭部領域における表面神経の神経刺激は、侵襲的または非侵襲的に付与され得る。頭髪を介して電流を伝えることは難しいため、たとえば後頭神経(大後頭神経枝、小後頭神経枝、および第3後頭神経枝)など、頭髪に覆われた領域の下にある頭部神経の刺激は、一般に、埋込型または経皮神経刺激装置を用いて実行される。そのようなデバイスは、頭皮の下に挿入され、頭髪および頭皮によって形成される高インピーダンスバリアをバイパスする電極を含む。しかし、埋込型神経刺激はなお侵襲的であり、感染、出血、または皮下液体貯留を含む高率の合併症、ならびにたとえば埋め込まれた導線の移動や破損およびパルス発生器の故障などのハードウェア関連の不具合を伴う、犠牲の大きい処置である。非侵襲的技術を用いる、たとえば後頭神経枝などの頭部神経の経皮刺激は、侵襲的処置に関連する危険性およびコストを伴わず、埋込型刺激装置と同様の臨床的有用性を実現する可能性がある。
【0006】
経皮神経刺激治療は、そのような治療の被験者によって、彼ら自身の快適な個人的環境で実行されることを保証する。しかし、それでもなお経皮治療は、たとえば治療中に直面する電流強度およびパルス持続時間などの一部の治療パラメータのユーザ固有のパーソナライズされた設定を必要とし得ることに留意する。また、ユーザの頭部の様々な部位に向けられた電気刺激は、関与する様々な神経の効果的な刺激のために異なる治療パラメータを必要とし得る。治療パラメータは、治療の効能および治療を受けるユーザの快適性の両方を考慮に入れるために、最適に設定および較正される。
【0007】
したがって、医療従事者および治療のユーザの両方によって効果的に操作され得る、神経刺激治療パラメータの効果的な設定および較正のためのデバイスおよび方法に対する必要性が認識されており、それらを有することは非常に有利である。
【0008】
神経刺激治療の供給のためのシステム、装置、および方法は、出願者の特許US9,433,774号およびUS9,872,979号、および2015年9月16日に出願され、US20170296121号として公開された出願者の同時係属中米国特許出願第15/510,067号、2017年1月26日に出願され、US20190022372号として公開された第16/070,563号、および2017年4月9日に出願され、US20190117976号として公開された第16/093,094号において開示され、上記特許および同時係属中特許出願の各々は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0009】
実施形態によると、ユーザの頭皮の複数の位置に適用されるマルチチャネル経皮神経刺激治療のためのユーザ固有治療パラメータ値を決定する方法が開示される。この方法は、(a)第1の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、ユーザ固有感覚閾値パラメータ値セットの対応する少なくとも1つのパラメータ値との第1の直接関係を含む第1の相関関係に従って、電気パルスを施術するためにユーザの頭皮の第1の部分と係合した第1の電極アレイに関する上記第1の治療パラメータ値セットを設定することと、(b)第2の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、上記第1の治療パラメータ値セットの上記少なくとも1つのパラメータ値との第2の直接関係を含む第2の相関関係に従って、電気パルスを施術するためにユーザの頭皮の第2の部分と係合した第2の電極アレイに関する上記第2の治療パラメータ値セットを設定することとを備える。
【0010】
いくつかの実施形態において、各治療パラメータ値セットは、(i)電気パルス周波数の逆数の整数倍である所与の期間にわたる合計電荷の値を有する電荷パラメータ、(ii)電流強度パラメータ、および(iii)パルス持続時間パラメータおよび周波数パラメータ、またはその算術的結合のうち少なくとも2つの値を含んでよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、(i)頭皮の上記第1の部分は前部であり、頭皮の上記第2の部分は後部であり、または(ii)頭皮の上記第1の部分は後部であり、頭皮の上記第2の部分は前部である。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記第2の直接関係は、上記第1および第2の電極アレイのそれぞれの電極表面積の関係に部分的に基づいてよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、ユーザ固有感覚閾値パラメータ値セットの値は、ユーザの頭皮の第1および第2の部分の一方に電気パルス列を印加する間に受信された第1のユーザ入力に基づく。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記第1および第2の相関関係は、それぞれの経験的相関関係に基づく直線関係であってよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記第1の直接関係によると、上記第1の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値は、上記ユーザ固有感覚閾値パラメータ値セットの電荷パラメータ値にAを乗算した数に等しく、Aは1.1以上3.2以下であってよい。いくつかの実施形態において、Aは1.4以上2.0以下であってよい。いくつかの実施形態において、Aは1.3以上1.9以下であってよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記第2の直接関係によると、上記第2の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値は、上記第1の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値にBを乗算した数に等しく、Bは1.1以上3.8以下であってよい。いくつかの実施形態において、Bは1.4以上3.4以下であってよい。いくつかの実施形態において、Bは1.8以上3.0以下であってよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は更に、治療閾値を較正することを備えてよく、較正することは、(i)ユーザの頭皮の上記第1および第2の部分に印加されるそれぞれの治療パラメータ値として上記第1および第2の治療パラメータ値セットを用いる経皮神経刺激較正セッションをアクティブ化することと、(ii)上記較正セッション中にユーザ較正入力を受信することと、(iii)上記ユーザ較正入力を受信することに応答して、上記第1および第2の治療パラメータ値セットの少なくとも1つの値を変更することとを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記第1および第2の治療パラメータ値セットの上記少なくとも1つの値を変更することは、電流強度ではない少なくとも1つの治療パラメータ値を修正することを含んでよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記変更は、電荷パラメータ値が所定の範囲内に限定されるように制約を受けてよい。いくつかの実施形態において、上記変更は、較正セッションごとの変更の数が所定の変更の数に限定されるように制約を受けてよい。いくつかの実施形態において、上記変更は、所定の時間間隔に限定され得る。いくつかの実施形態において、ユーザ較正入力を受信してから変更を完了するまでの時間は、1秒未満であってよい。いくつかの実施形態において、ユーザ較正入力を受信してから変更を完了するまでの時間は、500msec未満であってよい。いくつかの実施形態において、ユーザ較正入力を受信してから変更を完了するまでの時間は、200msec未満であってよい。
【0020】
いくつかの実施形態において、経皮神経刺激治療は、三叉神経を標的とする前部に印加される電気パルスと、後頭神経を標的とする後部に印加される電気パルスとを含んでよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記電気パルスの施術は、ユーザの頭部に装着される、電極を含む装置によってなされてよく、上記装置はヘッドセットを備える。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記第1のユーザ入力および上記ユーザ較正入力の少なくとも1つは、上記ヘッドセットと電子通信状態にある外部ユーザ操作デバイスで稼働しているコンピュータソフトウェアプログラムを介して受信され得る。いくつかのそのような実施形態において、(i)上記ヘッドセットは、上記ヘッドセットに取り付けられたヘッドセット上のユーザインタフェースを備えてよく、および/または(b)上記第1のユーザ入力および上記ユーザ較正入力の少なくとも1つは、上記ヘッドセット上のユーザインタフェースを介して受信され得る。
【0023】
実施形態によると、ユーザの頭皮の複数の位置に適用されるマルチチャネル経皮神経刺激治療のためのユーザ固有治療パラメータ値を決定する方法が開示される。この方法は、(a)電気パルスを施術するためにユーザの頭皮の第1の部分と係合した第1の電極アレイに関する第1の治療パラメータ値セットを設定することと、(b)第2の治療パラメータ値セットの少なくとも1つのパラメータ値と、上記第1の治療パラメータ値セットの上記少なくとも1つのパラメータ値との直接関係を含む第2の相関関係に従って、電気パルスを施術するためにユーザの頭皮の第2の部分と係合した第2の電極アレイに関する上記第2の治療パラメータ値セットを設定することとを備える。
【0024】
いくつかの実施形態において、各治療パラメータ値セットは、(i)電気パルス周波数の逆数の整数倍である所与の期間にわたる合計電荷の値を有する電荷パラメータ、(ii)電流強度パラメータ、および(iii)パルス持続時間パラメータおよび周波数パラメータ、またはその算術的結合のうち少なくとも2つの値を含んでよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、(i)頭皮の上記第1の部分は前部であり、頭皮の上記第2の部分は後部であってよく、または(ii)頭皮の上記第1の部分は後部であり、頭皮の上記第2の部分は前部であってよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記直接関係は、上記第1および第2の電極アレイのそれぞれの電極表面積の関係に部分的に基づいてよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記相関関係は、経験的相関関係に基づく直線関係であってよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記直接関係によると、上記第2の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値は、上記第1の治療パラメータ値セットの電荷パラメータ値にBを乗算した数に等しく、Bは1.1以上3.8以下であってよい。いくつかの実施形態において、Bは1.4以上3.4以下であってよい。いくつかの実施形態において、Bは1.8以上3.0以下であってよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、経皮神経刺激治療は、三叉神経を標的とする前部に印加される電気パルスと、後頭神経を標的とする後部に印加される電気パルスとを含んでよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記電気パルスの施術は、ユーザの頭部に装着される、電極を含む装置によってなされてよく、上記装置はヘッドセットを備える。
【0031】
実施形態によると、ユーザの頭皮の複数の位置に適用されるマルチチャネル経皮神経刺激治療のためのユーザ固有治療パラメータを決定する方法が開示される。この方法は、(a)第1の増加率で増加する電気パラメータ値を有する第1の電気パルス列をユーザの頭皮に提供することであって、上記それぞれの電気パラメータ値は、電荷パラメータ値および電流強度値の少なくとも1つを備えることと、(b)上記第1の電気パルス列の印加に関連してユーザが皮膚感覚を感じたことを示す第1のユーザ入力を受信することに応答して、感覚閾値パラメータ値セットとして、上記第1のユーザ入力が受信された時の複数のそれぞれの電気パラメータ値を定義することと、(c)第2の増加率で増加するそれぞれの電気パラメータ値を有する信頼性確認電気パルス列をユーザの頭皮に提供することであって、上記それぞれの電気パラメータ値は、電荷パラメータ値および電流強度値の少なくとも1つを備え、提供することは、上記信頼性確認列が(i)それぞれの電気パラメータ値が上記感覚閾値パラメータ値に到達する前に休止し、(ii)休止後に再開するようになされることと、(d)上記休止後、上記感覚閾値パラメータ値の付近の所定の値範囲内であるそれぞれの電気パラメータ値において、上記信頼性確認電気パルス列の印加に関連してユーザが皮膚感覚を感じたことを示す第2のユーザ入力を受信することに応答して、上記感覚閾値パラメータ値の信頼性を確認することと、(e)上記信頼性が確認された感覚閾値パラメータ値に基づく治療パラメータ値を用いて、マルチチャネル経皮神経刺激治療を適用することとを備える。
【0032】
いくつかの実施形態において、上記治療パラメータ値は、(i)電気パルス周波数の逆数の整数倍である所与の期間にわたる合計電荷の値を有する電荷パラメータ、(ii)電流強度パラメータ、および(iii)パルス持続時間パラメータおよび周波数パラメータ、またはその算術的結合のうち少なくとも2つの値を含んでよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記第1の電気パルス列は、ユーザの頭皮の第1の部分に印加され、上記信頼性確認電気パルス列は、第1の部分とは異なる頭皮の第2の部分に印加され得る。いくつかの実施形態において、上記第1の電気パルス列および上記信頼性確認電気パルス列の両方が、ユーザの頭皮の第1の部分に印加され得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、(i)頭皮の上記第1の部分は前部であり、頭皮の上記第2の部分は後部であってよく、または(ii)頭皮の上記第1の部分は後部であり、頭皮の上記第2の部分は前部であってよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、経皮神経刺激治療は、三叉神経を標的とする前部に印加される電気パルスと、後頭神経を標的とする後部に印加される電気パルスとを含んでよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記第1の電気パルス列を提供することおよび上記信頼性確認電気パルス列を提供することは、ユーザの頭部に装着される、電極を含む装置によってなされてよく、上記装置はヘッドセットを備える。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記第1のユーザ入力および上記第2の入力の少なくとも1つは、上記ヘッドセットと電子通信状態にある外部ユーザ操作デバイスで稼働しているコンピュータソフトウェアプログラムを介して受信され得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、(i)上記ヘッドセットは、上記ヘッドセットに取り付けられたヘッドセット上のユーザインタフェースを備えてよく、(ii)上記第1のユーザ入力および上記第2のユーザ入力の少なくとも1つは、上記ヘッドセット上のユーザインタフェースを介して受信され得る。
【0039】
実施形態によると、1または複数のプロセッサによって実行されると、1または複数のプロセッサに、本明細書に開示される方法のいずれかのステップのいずれかを実行させるプログラム命令が格納された非一時的コンピュータ可読記憶媒体が開示される。
【0040】
実施形態によると、経皮神経刺激治療中に用いるためのユーザ入力デバイスは、ユーザインタフェースと、1または複数のプロセッサと、ユーザ入力デバイスの上記1または複数のプロセッサによって実行されると、上記1または複数のプロセッサに、本明細書に開示される方法のいずれかのステップのいずれかを実行させるプログラム命令が格納された非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを備える。いくつかの実施形態において、ユーザ入力デバイスは、ヘッドセットと、ユーザの頭皮に電気パルスを供給するように構成された複数の電極とを備える装置と電子通信状態にあってよい。
【0041】
本発明は、本明細書において、添付図面を参照して単に例として説明される。ここで、特に図面を詳細に参照するが、示される細目は、本発明の好適な実施形態を例示的に説明するためだけに例として示されるものであり、本発明の原理および概念的態様が最も便利かつ容易に理解される説明であると確信されるものを提供するために提示されることを強調する。この点に関して、本発明の基本的な理解のために必要である以上に詳しく本発明の構造的細部を示す試みはなされておらず、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかを当業者に明らかにするために図面と共に説明が示される。図面を通して、同様の参照符号は、必ずしも同一の要素ではないが同様の機能を示すために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本明細書における教示の実施形態に係る神経刺激のための発明的なシステムの実施形態の概略ブロック図である。
図2】遠隔制御ユニット、モバイルフォン、およびコンピュータと通信するように適合された、装着された状態の発明的なヘッドセットの概略斜視図を提供する。
図3】本明細書における教示に係るヘッドセットの形態である図1Aの発明的なシステムの実施形態の斜視概略図である。
図4-13】本発明の実施形態に係る、経皮神経刺激のためのパラメータを定義、設定、試験、確認、較正、および適用するための方法ステップを備える方法構成要素のフローチャートを示す。
図14-19】本発明の実施形態に係る、図4~13の様々な方法ステップおよび方法構成要素を含む方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
末梢神経および/または脳神経の刺激、脳領域の経頭蓋刺激のために、頭部領域に電気刺激を付与し、また、身体パラメータを感知するとともに、組織を監視し、電気刺激信号をユーザの特性および経時変化に適合するシステムおよび方法が説明される。このシステムおよび方法は、頭皮組織の損傷ならびにユーザの不快感を回避しながら効果的な電気刺激を確実にもたらし、安全かつ堅牢な方式で動作する。
【0044】
この発明的方法は、たとえば片頭痛、緊張型頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、後頭神経痛、慢性疼痛、線維筋痛症、緊張、憂鬱、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、不安、強迫性障害(OCD)、不眠症、癲癇、注意欠陥多動性障害(ADHD)、パーキンソン病、アルツハイマー病、肥満、多発性硬化症、外傷性脳損傷(TBI)、および脳卒中などの様々な症状を治療するために、本発明の方法に係る電気刺激を付与するためのプラットフォームとして機能する頭部装着型構造を用いて適用され得る。
【0045】
「ユーザ」という用語は、本明細書において、電気刺激を用いる経皮刺激治療を受けている、または受けようとしている人間を意味する。純粋感覚神経の電気刺激は、付与された電気刺激に反応して神経の分布に沿った錯感覚の広がりを生じさせる。
【0046】
本開示は、ユーザが経皮電気神経刺激の付与に反応して経験し得る、刺痛、穿刺、冷え、炎症、または痺れの1または複数を含み得る「皮膚感覚」に対処し、そのような皮膚感覚は、錯感覚の知覚に相当し得る。
【0047】
ユーザがそのような皮膚感覚または錯感覚を感じ、または感覚を認める最小閾値は、「感覚閾値」と呼ばれ、感覚閾値は、所与の環境および条件下で所与の時間においてユーザに特有であってよい。
【0048】
ここで、本明細書における教示の実施形態に係る、神経刺激のための典型的なシステムの実施形態の概略ブロック図である図1が参照される。
【0049】
示されるように、神経刺激のためのシステム101は、少なくとも2つの刺激電極102を含んでよく、いくつかの実施形態において、少なくとも2つの感知電極104を更に含んでよく、電極102および104の両者は、電子回路106に機能的に関連付けられる。刺激電極102は、後述するように、電流を流すためにユーザの頭皮に係合するように適合される。いくつかの実施形態において、感知電極104の1または複数は、ユーザの皮膚に係合するように適合されてよく、たとえば脳波図(EEG)、皮膚伝導反応(SCR)、インピーダンスプレチスモグラフ(IPG)、筋電図(EMG)など、ユーザの身体部位の少なくとも1つの電気パラメータを感知するように構成され得る。
【0050】
本明細書における教示の特徴によると、システム101、特に電子回路106は、たとえば経頭蓋直流刺激(tDCS)、経頭蓋交流刺激(tACS)、および経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)などの適当な方法を用いて経頭蓋電気刺激を付与するために適合され得る。本明細書で説明される治療または電気刺激の施術がユーザの頭部または頭皮に関する限り、「経皮」および「経頭蓋」という用語は、同義的に用いられ得る。本明細書で用いられる「頭皮」という用語は、この用語の最も広範な意味で理解すべきであり、特に、前額部の皮膚、すなわちユーザの目より上にあるユーザの「顔面」部分を含むものとして理解すべきである。
【0051】
示されるように、電子回路106は、マイクロコントローラ108、高電圧回路110、刺激回路112、内部電源114、無線周波数(RF)トランシーバ116、アナログ信号処理回路118、充電回路122に電気的に関連付けられた再充電可能バッテリ120、加速度計126、温度センサ128、圧力センサ130、および湿度センサ132の1または複数を含むセンサアレイ124、およびユーザインタフェース134の任意の1または複数を含んでよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、電子回路106は、内部電源114に電気接続された再充電可能バッテリ120に電気的に関連付けられ、それによって給電され得る。いくつかの実施形態において、内部電源114は高電圧回路110に電力を供給し、高電圧回路110は刺激回路112に電気接続される。充電回路122は、再充電可能バッテリ120に電気的に関連付けられ、たとえば充電器140などの外部電源とインタフェース接続してよい。高電圧回路110は、1~150Vの範囲内の電圧を有する電流を刺激回路112に提供する。いくつかの実施形態において、再充電可能バッテリ120は、同じ範囲の電圧および電流で動作するように構成された消耗バッテリに置き換えられ得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、刺激回路112は、マイクロコントローラ108から情報および/またはコマンドを受信する。刺激回路112は、刺激電極102を介してユーザの神経組織に電気刺激パルスを提供するように構成される。
【0054】
刺激回路112は、二相性荷電平衡電気パルス、単相性電気パルス、および/または直流刺激を生成するように構成され得る。
【0055】
説明される実施形態の追加の特徴によると、刺激回路112は、0~60mA、0~40mA、0~20mA、または0~15mAの強度範囲内の電気刺激を生成するように構成され得る。
【0056】
説明される実施形態の追加の特徴によると、刺激回路112は、10~1000μsec、50~600μsec、100~500μsecの持続時間を有する刺激パルスを生成するように構成され得る。
【0057】
説明される実施形態の追加の特徴によると、刺激回路112は、1~20,000Hz、1~10,000Hz、1~500Hz、10~300Hz、10~250Hz、20~180Hz、30~180Hz、または40~100Hzの周波数で刺激パルスを生成するように構成され得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、電子回路106は、回路112と同様の2つ以上の高電圧回路(不図示)を含んでよく、各高電圧回路は、1~150V、1~120V、1~100Vの電圧の電流を刺激電極102の少なくとも2つに提供する。いくつかの実施形態において、電子回路106は、少なくとも2つの絶縁出力チャネル(不図示)を含んでよく、各出力チャネルは、刺激電極102の少なくとも2つに出力を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態において、電子回路106は、刺激電極102からの電圧または電流レベル情報を収集し、収集した情報をマイクロコントローラ108に提供するフィードバックおよび測定回路142も含む。マイクロコントローラ108は、提供されたフィードバックを用いて、刺激回路112を介して刺激電極102における電圧および電流レベルを監視および制御する。いくつかの実施形態において、マイクロコントローラ108は、緊急時またはシステムの誤作動時、たとえば可聴または触覚インジケーションを提供することによってユーザに警告してよく、または刺激のための電流の提供を停止してよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、マイクロコントローラ108は、様々なパターンで、および/または様々な期間にわたり電流を出力するように刺激回路112に指示してよく、および/または、たとえば刺激回路によって出力される電流の電流振幅、パルス周波数、位相持続時間、および振幅などの様々な刺激パラメータに関して刺激回路112に指示してよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、マイクロコントローラ108は、複数の作動電極ペアの各々に関して異なるパターンを有する出力信号を提供するように刺激回路112に指示してよい。たとえば、刺激回路112は、50Hzのパルス周波数および300μsecの位相持続時間で1つの電極ペアを刺激し、100Hzのパルス周波数および200μsecの位相持続時間で他方の電極ペアを刺激してよい。いくつかの実施形態において、任意の所与の時間に、マイクロコントローラ108は、1つの電極ペアのみを作動させ、電極の組み合わせを作動させ、および/またはいくつかの電極を同時に、連続的に、または交互に作動させてよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、一部の電極102は出力として交流信号を提供し、他の電極102は出力として直流を提供してよい。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの電極102は、出力として提供される電流の種類を交流と直流とで交互にしてよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、脳の特定の領域より上に位置する電極の極性に基づいて脳のその領域の励起が決定される直流刺激の間、少なくとも1つの電極102は、マイクロコントローラ108によってアノード、すなわち正荷電電極として割り当てられ、少なくとも1つの他の電極102は、カソード、すなわち負荷電電極として割り当てられ得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、マイクロコントローラ108によって決定され、または割り当てられた刺激パターン、ならびに電極102および/または感知電極104から受信したフィードバックデータは、マイクロコントローラ108に、またはマイクロコントローラ108に関連付けられた揮発性または不揮発性メモリ(不図示)に格納され得る。いくつかの実施形態において、格納された刺激パターンは、パーソナライズされた神経刺激治療プロトコルを生成するために用いられ得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、電子回路106は、たとえば感知電極104などの1または複数のセンサから、たとえば脳波(EEG)信号、皮膚伝導反応(SCR)信号、インピーダンスプレチスモグラフ(IPG)信号、筋電図(EMG)信号、または他の生体信号などのアナログ信号入力を受信するように構成されてよく、この生体信号は、神経刺激信号を受信する組織のインピーダンス、組織に提供された電荷などを示し得る。感知電極104から受信したアナログ信号入力は、アナログ信号処理回路118によって処理され、そこからマイクロコントローラ108に転送され得る。いくつかの実施形態において、電子回路106は、ユーザの付近またはその特性を感知するように適合された追加のセンサからのデジタル、アナログ、または他の入力を受信するように構成され得る。いくつかの実施形態において、後述するように、追加のセンサの1または複数から受信した入力によって、1または複数の刺激パラメータがマイクロコントローラ108によって変更され得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、加速度計126、または他の任意の適当な姿勢センサは、ユーザの頭部またはシステム101を具体化する装置(特にユーザの頭部に係合する部分)の角度位置を感知するように構成されてよく、それによってマイクロコントローラ108は、ユーザおよび/またはシステムの条件の変化を識別し、刺激電極102によって提供されるパルスを調整または適合することが可能であってよい。たとえば、ユーザの位置の変化は、電極に加わる圧力の変化をもたらし得るので、後述するように、電極がどの程度ユーザの皮膚に接近するかが変更され、その結果、システム内のインピーダンスが変化し、電極を介して組織に印加されるパルスの適合が必要である。いくつかの実施形態において、振動構造微小電気機械システム(MEMS)ジャイロスコープ127は、加速度計126によって提供される動きおよび姿勢情報に加えて角運動情報を提供するように構成され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、温度センサ128は、システム101または刺激電極102の近傍における温度を感知するように構成されてよく、それによってマイクロコントローラ108は、ユーザおよび/またはシステムの条件の変化を識別し、刺激電極102によって提供されるパルスを調整または適合することが可能であってよい。たとえば、ユーザまたは電極102の近傍における温度の上昇は、電極または電極に塗布された導電材料の急速な脱水をもたらし得るので、後述するように、システム内のインピーダンスが増加し、電極を介して組織に印加されるパルスの適合が必要である。
【0068】
いくつかの実施形態において、圧力センサ130は、電極102の近傍においてユーザの頭部に加わる圧力または電極102に直接加わる圧力を感知するように構成されてよく、それによってマイクロコントローラ108は、ユーザおよび/またはシステムの条件の変化を識別し、刺激電極102によって提供されるパルスを調整または適合することが可能であってよい。たとえば、電極102に加わり電極102をユーザの頭皮の方に押す圧力の大きさの増加は、電極と頭皮との間の距離、場合によっては電極と標的神経との間の距離を低減することが予想されるので、システム内のインピーダンスが減少し、電極を介して組織に印加されるパルスの適合が必要または可能である。
【0069】
いくつかの実施形態において、湿度センサ132は、システム101または刺激電極102の近傍における湿度または湿気レベルを感知するように構成されてよく、それによってマイクロコントローラ108は、ユーザおよび/またはシステムの条件の変化を識別し、刺激電極102によって提供されるパルスを調整または適合することが可能であってよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、ユーザインタフェース134は、たとえば痛みのインジケーション、不快感のインジケーション、または錯感覚(皮膚感覚)の減少または不在のインジケーションなど、ユーザが感じている感覚のインジケーションをユーザから受信するように構成され得る。そのようなユーザが感じる感覚における変化に関するユーザからのインジケーションによって、マイクロコントローラ108は、刺激電極102によって提供されるパルスを調整または適合し、または、本開示のどこかで説明するように、感覚および治療閾値および閾値のユーザ較正を評価することが可能であってよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、RFトランシーバ116によって、マイクロコントローラ108は、無線周波数を用いて、たとえばモバイルフォン、タブレット、コンピュータ、またはクラウドベースのデータベースなどの外部デバイス150のインタフェースと通信することが可能であってよい。RFトランシーバ116は、たとえばシステム101によって提供される神経刺激治療のパーソナライズのために、マイクロコントローラ108にデジタル情報を送信し、マイクロコントローラ108からデジタル情報を受信してよい。RFトランシーバ116は、Wi-fi、WLAN、PDA、VoIP、およびBluetoothを含むがこれに限定されない、当技術分野において知られている無線通信プロトコルのいずれかで送信/受信するように動作可能であってよい。
【0072】
デバイス150のインタフェースは、たとえばインターネットなどの容易にアクセス可能なリソースからダウンロード可能であり得るソフトウェアアプリケーションを備えてよい。インタフェースは、たとえばアクティブな刺激チャネル、刺激強度、アクティブプログラム、治療時間、バッテリ状態、およびRF通信状態に関する情報、ならびに、たとえば電極の接触品質および適切または不適切な頭部へのシステムアライメントに関する警告などの様々な警告を含む、システム101の状態のインジケーションを、たとえばディスプレイを用いてユーザに提供してよい。加えて、インタフェースは、たとえば毎日の刺激時間、刺激中に用いられた刺激パラメータ、および用いられた治療プログラムに関する情報などの使用ログおよび/または報告を、たとえばディスプレイを用いてユーザに提供してよい。またインタフェースは、装置に含まれる、または関連付けられたセンサから受信した生情報または処理された情報をユーザに表示、または他の方法で提供してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、システムは、外部デバイス150のインタフェースを介して遠隔で制御され得る。たとえば、外部インタフェースは、ユーザがシステムをアクティブ化またはオフにし、刺激を開始または休止し、1または複数のチャネルに関する刺激強度を調整し、治療プログラムを選択することを可能にしてよい。いくつかの実施形態において、マイクロプロセッサ108によって収集された情報は、外部インタフェースを介して、たとえばクラウドベースのポータルなどの遠隔位置に送信されてよく、そこで情報は格納され、または分析および/または監視され得る。
【0074】
ここで、神経刺激治療システムのいくつかの構成要素を示す図2Aを参照する。ヘッドセット100は、ユーザの頭部90に装着される。いくつかの実施形態において、ヘッドセット100は、通信チャネル(複数も可)80を用いて1または複数の外部デバイス150と無線通信するように構成され得る。任意の通信チャネル80が、(たとえばwi-fiまたはBluetoothまたはIRまたは他の任意の無線デバイス間通信または有線通信による)直接デバイス間通信と、(たとえばサーバおよび/またはルータおよび/または他のローカルネットワークデバイスおよびインターネットデバイスを介してルート指定される)間接通信との任意の組み合わせを用いてよい。
【0075】
外部デバイス150の例は、コマンドおよび他の入力をヘッドセット100に送信するためにユーザによって用いられ得る遠隔制御装置560である。遠隔制御装置560は、ヘッドセット100の状態に関するユーザのための様々な視覚および聴覚インジケーションを提示してもよい。追加または代替として、ヘッドセット100は、モバイルフォン570と無線通信するように構成され得る。モバイルフォンインタフェースは、たとえばヘッドセット100の状態に関する視覚および聴覚インジケーションおよび使用ログなど、ヘッドセット100によって無線送信された様々なデータを提示するために用いられ得る。たとえば図2Bにおけるモバイルフォン570などの典型的なハンドヘルドデバイスのブロック図に示すように、モバイルフォン570は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体50を含み、そこに、モバイルフォン570の1または複数のプロセッサ54によって実行するためのプログラム命令51が格納される。プログラム命令51は、モバイルフォン570および/またはヘッドセット100に、神経刺激治療セッションを制御させてよく、たとえば治療セッションの前に治療プロトコルパラメータを決定させ、ユーザ命令および他の入力を捕捉させ、および/または治療プロトコルパラメータを決定させることを含む。図2Bのモバイルフォン570は更に、(特に)ヘッドセット100と通信するための通信構成53と、タッチスクリーンを含み得るユーザインタフェース52とを含む。ユーザインタフェース52は、ユーザと、プログラム命令51を備えるソフトウェアプログラムとの間の任意の方式のインタラクションのために用いられてよく、ユーザインタフェース52は、たとえばヘッドセット100の状態に関する視覚および聴覚インジケーションおよび使用ログなど、ヘッドセット100によって無線送信された様々なデータを提示するために用いられ得る。
【0076】
なお図2Aを参照すると、ヘッドセット100は、追加または代替として、ラップトップ/PC580と無線通信するように構成され得る。モバイルフォン570と同様に、ラップトップ/PC580は、プログラム命令51が格納される非一時的コンピュータ可読記憶媒体を有して構成され得る。
【0077】
図2Aに示された「ユーザ入力デバイス」150の任意の1または複数(モバイルフォン570、遠隔制御装置560、およびPC/ラップトップ580)は、本明細書に開示される方法を実行する上で相互置換的に用いられ得る。本明細書に開示される方法を実行するために適したヘッドセット100は、出願人の特許US9,433,774号およびUS9,872,979号、および2015年9月16日に出願され、US20170296121号として公開された出願人の同時係属中米国特許出願第15/510,067号、および2017年1月26日に出願され、US20190022372号として公開された第16/070,563号、および2017年4月9日に出願され、US20190117976号として公開された第16/093,094号に開示されるヘッドセットのいずれかを含む。
【0078】
ここで、図1のシステム101を実装するヘッドセット100の非限定的かつ典型的な実施形態の斜視概略図である図3を参照する。示されるように、ヘッドセット100は、各々が後部材166を終端とする中間部材とも呼ばれ得る可撓性アーム部材164のペアに連結された前部材162を含むように構成され得る。前部材162、可撓性アーム部材164、および後部材166は、一体となってヘッドセット本体を形成する。いくつかの実施形態において、電極システム172は、三叉神経枝を刺激するためにその部分を覆う頭部の眼窩上領域に位置するように適合された前部電極を備えてよく、または、脳の前頭部および前部前頭葉部の経頭蓋刺激に適した電極であってよい。いくつかの実施形態において、電極システム174は、後頭神経枝を刺激するためにその部分を覆う頭部の後頭部領域に位置するように適合された後部電極を備えてよく、または、脳の後頭部領域の経頭蓋刺激に適した電極であってよい。
【0079】
理解されるように、ヘッドセット100は、電極システム172および174と同様の構造および/または機能を有する追加の電極を含んでよい。更に理解されるように、電極システム172および/または174は省かれてよく、あるいは、特定の神経または神経セットまたは特定の脳領域を刺激するために適したように、ヘッドセット100の他の位置に動かされてよい。たとえば、電極システム174は、可撓性アーム部材164に沿って動かされ得る。他の例として、ヘッドセット100は、アーム部材164上に位置する1つの電極システムペアのみを含んでよく、この電極は、ヘッドセットの装着時に頭髪の下に位置するように構成されてよく、電極システム172および174は省かれ得る。いくつかの実施形態において、電極は、前部および/または後部神経の刺激への追加または代替として、脳の側方領域に位置する神経を刺激するように向けられ得る。
【0080】
前部材162は、導電ワイヤ(不図示)によって、たとえば図1のバッテリ120と同様のバッテリなどの電源177、および電極システム172および174に電気的に結合されるように構成され得る、図1の電子回路106と同様の電子回路176を含むように構成され得る。いくつかの実施形態において、導電ワイヤの少なくとも一部は、アーム部材164を介して後部電極システム174まで延びる。
【0081】
いくつかの実施形態において、電子回路176および/またはバッテリ177は、ヘッドセット100の外部にあってよく、および/またはヘッドセット100と遠隔で通信してよい。
【0082】
図1を参照して上述したように、電子回路176は、刺激回路、マイクロプロセッサ、充電回路、およびユーザインタフェースを含んでよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、ヘッドセット100は、外部電子回路および/または刺激回路に接続することにより、外部刺激装置からの電流を電極システム172および/または174に転送するように構成され得る。いくつかの実施形態において、ヘッドセット100は、身体の様々な領域に位置し得る少なくとも1つの外部電極に接続するように構成され得る。いくつかの実施形態において、ヘッドセット100は、ヘッドセット100に配置されたセンサからの信号を外部プロセッサに転送するために、外部電子回路およびプロセッサに接続するように構成され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、バッテリ177は、前部材162内に配置されてよく、特定の実施形態によると、後部材162に位置する充電ポート178に充電器をプラグインすることによって再充電され得る。
【0085】
前部材162は、その外側表面に、図1のユーザインタフェース134と同様であってよいユーザ制御装置およびインタフェース180を含むようにも構成され得る。ただし、いくつかの実施形態において、たとえば後部材166またはアーム164などのヘッドセット100の他の部分が、ユーザインタフェース180を含むように構成され得る。たとえば、神経刺激治療を制御するため、または1または複数の治療関連パラメータを設定するためにユーザ入力の受信を可能にすることなど、オンボード(すなわち永続的または取外し可能に取付けまたは設置された)ユーザインタフェース180、134の機能の一部は、外部デバイス150のユーザインタフェース52の機能と重複してよい。いくつかの実施形態において、ユーザは、ヘッドセット上のユーザインタフェース180およびデバイス上のユーザインタフェース52の両方を用いてよいが、他の実施形態において、2つのユーザインタフェース180、52のうち1つのみがユーザに利用可能である。
【0086】
電子回路176およびユーザインタフェース180は、ヘッドセット100に含まれる電極を制御および/またはアクティブ化するように構成され得る。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェース180は、少なくとも2つ、いくつかの実施形態では2より多い数の電極ペアを制御および/またはアクティブ化するように構成される。よって、いくつかの実施形態において、刺激回路および/またはユーザインタフェース180は、特定の電極または特定のペアまたはチャネルの電極のアクティブ化、ならびにアクティブ化した電極によって供給される電流の強度またはアクティブ化した電極の他の刺激パラメータの調整、およびたとえば痛みのユーザインジケーション、不快感のユーザインジケーション、または錯感覚の増減のユーザインジケーションなどのユーザインジケーションの提供を可能にするように構成される。いくつかの実施形態において、任意の電極サブセットが同時にアクティブ化されてよく、いくつかの実施形態において、たとえば電子回路176の製造時に、特定のサブセットが事前定義される。いくつかのそのような実施形態において、ユーザインタフェース180は、特定の電極または特定のチャネルの制御のみではなく、アクティブ化した電極サブセットの制御も可能にする。
【0087】
いくつかの実施形態において、ユーザ制御装置およびインタフェース180は、前部電極システム172によって提供される刺激の強度をそれぞれ増大および低下させるための前部強度ボタン181aおよび181bのペア、および後部電極システム174によって提供される刺激の強度をそれぞれ増大および低下させるための後部強度ボタン182aおよび182bのペアを含む。理解されるように、ユーザ制御装置およびインタフェース180は、ヘッドセット100に含まれる各電極のための同様の強度ボタンを含んでよい。
【0088】
ユーザ制御装置およびインタフェース180は更に、電子回路176をアクティブ化および無効化するため、ならびにヘッドセット100の動作モードを変更するためのモード変更ボタン184を含んでよい。たとえば、ヘッドセット100は、たとえばスリープモード、メンテナンスモード、および治療モードなどの複数の事前設定された動作モードを有してよく、ボタン184を繰り返し作動させることにより、ヘッドセットをオンおよびオフにすることに加えて、これらのモードが切り換えられ得る。
【0089】
たとえばユーザが痛み、不快感、または錯感覚の減少を示すユーザインジケーションを提供することを可能にするユーザインジケーションボタンは、ユーザ制御装置およびインタフェース180の一部を形成してよく、前部材162の外側表面に配置され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、ユーザ制御装置およびインタフェース180は更に、たとえばヘッドセットのアクティブ化、ヘッドセットのシャットダウン、インタフェース180のボタンの押下、刺激モードの変更のインジケーションなど、ヘッドセット180の使用の可聴インジケーションをユーザに提供するための、たとえばスピーカまたはブザーなどのオーディオ要素(不図示)を含んでよい。
【0091】
上述したように、電子回路およびユーザインタフェースは、ヘッドセット100に含まれる電極を制御および/またはアクティブ化するように構成される。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェースは、少なくとも2つ、いくつかの実施形態では2より多い数の電極ペアを制御および/またはアクティブ化するように構成される。よって、いくつかの実施形態において、刺激回路および/またはユーザインタフェースは、特定の電極または特定のペアまたはチャネルの電極のアクティブ化、ならびに、アクティブ化した電極によって供給される電流の強度またはアクティブ化した電極の他の刺激パラメータの調整を可能にするように構成される。いくつかの実施形態において、電極の任意のサブセットが同時にアクティブ化されてよく、いくつかの実施形態において、たとえば電子回路の製造中に特定のサブセットが事前定義される。いくつかのそのような実施形態において、ユーザインタフェースは、特定の電極または特定のチャネルの制御だけではなく、アクティブ化した電極サブセットの制御も可能にする。
【0092】
いくつかの実施形態において、電子回路176は、外部デバイス150と遠隔で通信するように構成された、図1のトランシーバ116と同様のトランシーバ196を含む。
【0093】
本発明の実施形態によると、神経刺激治療セッションに関する治療パラメータを設定するための方法は、第1の複数の電極によって生成された電気刺激パルス列に基づいて感覚閾値を決定することと、決定された感覚閾値の信頼性を試験することと、決定された感覚閾値の信頼性を確認することとを含み得る。このプロセスにおける任意の時点で、すなわち決定、試験、または確認の後、感覚閾値に基づいて、第1の治療閾値(推奨される初期パラメータ)が設定され得る。第2の治療閾値は、第1の治療閾値に基づいて設定され得る。第1の治療閾値に基づく第2の治療閾値の設定は、2つの間の直接関係、たとえば経験的に導出された直接関係に基づき得る。感覚閾値は、単調増加する電流強度で提供される電気刺激パルス列に関連する錯感覚(または、より一般的には皮膚感覚)を感じることをユーザが示す時の治療パラメータまたは複数の治療パラメータであってよい。
【0094】
本明細書で使用される用語としての治療パラメータは、以下のいずれか(または全て)を意味し得る。
・電荷パラメータ。電荷パラメータは、所与の期間にわたる合計電荷の値を有してよく、所与の期間は、一般に、(パルスの「期間」と呼ばれ得る)電気パルス周波数の逆数の整数倍である。典型的な例として、パルスの周波数が50Hzである場合、周波数の逆数は20ミリ秒(msec)であり、選択される所与の期間は1secであってよい。より粒度の高い解像度の場合、所与の期間は、単一の「期間」と同じ短さであってよく、この場合、20msecであってよい。電荷パラメータの単位は、1秒当たりのクーロン(たとえばミリクーロンなどのより小さな区分)であってよく、所与の期間にわたる(たとえばミリアンペア単位の)供給電流を平均または積分することによって計算され得る。
・電流強度パラメータ、たとえば、電気パルスのピーク電流または平均電流または定常状態電流。
・パルス持続時間パラメータおよび周波数パラメータ、またはその算術的結合。パルス幅とも呼ばれるパルス持続時間は、一般に、マイクロ秒(μsec)単位で測定される。これは、たとえばパルスが印加されている各期間の比を導出するために、期間(周波数の逆数)と共にパラメータ化され得る。例として、50Hzの周波数を有する50μsecのパルス持続時間(パルス幅)は、20msecの期間のうちの0.5msec、すなわち2.5%の時間、パルスが印加されていることを意味する。
【0095】
パルス列を特徴付けるための上記電気パラメータのいずれか2つ以上を用いることが望ましい。たとえば、電流強度および電荷、または電流強度およびパルス持続時間と周波数の逆数との比、および電荷およびパルス持続時間と周波数の逆数との比は、パルス列を特徴付けるために用いられ得る3つの典型的な電気パラメータセットである。当業者が理解するように、上記セットのいずれかは、他のパラメータを計算するためにも用いることができ、たとえば、パルスの平均電流強度および期間ごとの電荷が知られている場合、(各期間のうちの)パルスが印加されている時間の比が計算され得る。
【0096】
いくつかの例において、電流強度は、本明細書において、様々な実施形態における電気パラメータの使用、たとえば感覚閾値を設定、試験、確認、または較正するための方法における単調増加する電流強度の使用を示すために用いられる。そのような例において、電流強度の例示的な使用は、限定的であることは意図されず、適用可能であれば、他の電気パラメータまたは電気パラメータのセットが電流強度に代替し得る。
【0097】
感覚閾値は、典型的な実施形態において、前部に配置された電極、たとえば図3の電極172によって生成された電気刺激パルスを用いて測定され得る。他の実施形態において、電極は、追加または代替として側方に配置され得るが、これは図3には示されない。
【0098】
したがって、そのような実施形態において、第1の治療閾値は、治療プロトコルの前部に向けられるパルスに関し、第1の経験的に展開された直接関係を用いて感覚閾値から計算され得る。そのような実施形態における第2の治療閾値は、治療プロトコルの後部に向けられるパルスに関し、第2の経験的に展開された直接関係を用いて第1の治療閾値から計算され得る。他のいくつかの実施形態において、第1の治療閾値は、治療プロトコルの後部に向けられるパルスに関し、第2の治療閾値は、治療プロトコルの前部に向けられるパルスに関してよい。また他の実施形態において、第1および第2の治療閾値は、それぞれ、前部に向けられるパルスおよび側部に向けられるパルス、後部に向けられるパルスおよび側部に向けられるパルス、側部に向けられるパルスおよび前部に向けられるパルス、側部に向けられるパルスおよび後部に向けられるパルス、またはユーザの頭部の両側で側部に向けられるパルスに関してよい。第1および第2の直接関係は、顕著な錯感覚をもたらすために必要な最小値より高くユーザの痛みまたは過剰な不快感をもたらす閾値より低い電流強度を有する効果的な範囲内であることが知られている治療閾値に基づいて、経験的に導出された関係であってよい。上述したステップのいずれかは、本明細書で説明されたヘッドセット100のいずれかを含む頭部装着型装置を用いて行われ得る。好適な実施形態によると、治療セッションの前に、ユーザは、特にユーザの快適性に基づいて治療パラメータ(たとえば電流強度またはパルス周波数)を増減することによって、初期治療パラメータ、すなわち、上記説明に従って設定された第1および第2の治療閾値を「較正」することができる。この方法の実施形態は、たとえばモバイルフォン570などの外部デバイス150に格納されたプログラム命令51を実行することによって行われてよく、プログラム命令51の実行は、本開示で後述するように、デバイス150の1または複数のプロセッサによって行われる。
【0099】
ここで、図4~9を参照すると、本発明の様々な実施形態に従って、特にユーザ固有の感覚および治療閾値を定義および設定することに関する方法のフローチャートおよび方法の「構成要素」が示される。示されるように、各構成要素、すなわち1または複数の方法ステップのグループには、様々な方法構成要素の様々な組み合わせを提示する後述の図面を簡略化するために、ブロック符号(たとえばブロックAなど)を付けられる。各構成要素は、様々な組み合わせでブロックが結合された図14~19のフローチャートにおける容易かつ便利な識別のために、簡単なテキスト説明(たとえばブロックA(頭部の装置))を含む。ただし、ブロック名称に伴うこれらの簡単なテキスト説明は、図14~19の容易な理解を可能にするためだけに提供されており、対応する方法ステップおよび構成要素の範囲を線引きまたは限定することは意図されていない。個々の構成要素のいずれも、本発明に係る方法を構成することができ、構成要素の任意の組み合わせは、そのような方法が本明細書で明示および/または説明されるかにかかわらず、本発明に係る方法を共に構成し得る。
【0100】
ここで図4を参照すると、「ブロックA(頭部の装置)」は、経皮神経刺激治療で用いられる種類の、電気刺激パルスを提供するように構成された電極を備える装置を、ユーザの頭部に装着することを含むステップS01を備える。いくつかの実施形態において、装置は、電極と、電極を電源に接続するワイヤとを備える。いくつかの実施形態において、装置は更に、制御回路を備える。装置は更に、たとえばヘッドバンドまたは伸縮バンドなど、ユーザの頭皮と接触する、電極を定位置に保持するための要素を備えてよい。いくつかの実施形態において、装置は、たとえば本開示で上述したヘッドセット100のいずれかなどのヘッドセットであってよい。以下でヘッドセットという用語が用いられる場合、この用語は、電極を備える任意の装置を含み、必ずしも、たとえば図3のヘッドセット100の例に示すようなフル機能のヘッドセットの他の従装具の一部または全てを有するわけではないことが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、ブロックAは追加または代替として、そのような装置がユーザの頭部に装着されていることを確認することを含むステップS01aを備える。例として、ユーザがまだ装置を装着していない場合、まずステップS01が行われる。対照的に、ユーザが既に装置を装着している場合、まずステップS01aが行われる。当然、(ユーザが装置を装着する)ステップS01および(装置の装着が確認される)ステップS01aの両方を行うことも可能である。いくつかの実施形態において、確認することは、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれる。いくつかのそのような実施形態において、確認することは、たとえば感知電極104などのセンサから確認情報を受信することを含み得る。他のそのような実施形態において、確認することは、モバイルデバイス570のユーザインタフェース52においてユーザ入力を受信することを含み得る。確認することは、更に、ユーザ入力を受信する前にユーザインタフェース52においてユーザ入力を懇請することを含み得る。追加または代替として、確認することは、オンボードインタフェース180を介してユーザ入力を受信することを含み得る。
【0101】
ブロックB(感覚閾値の定義)は、図5に示すように、特定のユーザに関する感覚閾値を決定するための方法ステップのグループを備える。
【0102】
ステップS05において、刺激電極102のセットによって電気刺激パルス列が提供され、いくつかの実施形態において、刺激電極102のセットは、複数の前部に配置された電極を含む。この列は、好適には、微弱パルス、すなわち、ユーザがパルスに関連する任意の皮膚感覚を経験する時の、たとえば電流強度閾値または「経時的電荷閾値」などの選択された電気パラメータを下回るパルスで開始する。その後、パルスは、列の進行と共に選択された電気パラメータ(複数も可)が単調的に増加する。いくつかの実施形態において、パルスの他のパラメータ(たとえばパルス幅、位相幅、および周波数)は、不変のままである。
【0103】
ステップS06は、パルス列に関連する皮膚感覚、たとえば錯感覚をユーザが経験したことを示すユーザ入力を受信することを備える。代替ステップS06’は、ユーザの頭皮の特定の領域または複数領域(たとえば前部領域)に複数の刺激電極102によって印加された、経時的に電流強度または電荷が増加する電気刺激パルス列の間、ユーザがパルス列に関連する皮膚感覚を経験したことを示すユーザ入力を受信することを備える。ステップS06’は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。ステップS06またはステップS06’のユーザ入力は、好適には、モバイルデバイス570のユーザインタフェース52および/またはオンボードインタフェース180を介して受信される。
【0104】
ただし、たとえばS06’など、本開示で用いられる参照番号が数字の後にアポストロフィを含む場合、これは、特に、たとえばモバイルフォンなどのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサによって実行されるプログラム命令に含まれることが意図される、たとえばS06などのステップの代替バージョンを示す。各例において、たとえばS06およびS06’などのペアにおける対応するステップの各々に関して、技術的概念は同じである。
【0105】
ステップS06またはS06’の第1のユーザ入力の受信に応答して、ステップS07において感覚閾値が定義され、任意の電気パラメータまたは電気パラメータセットに関する感覚閾値は、ユーザ入力が受信された時のそれぞれのパラメータ値に等しい。すなわち、感覚閾値は、ユーザが電気刺激パルス列による顕著な皮膚感覚(たとえば錯感覚)を経験する電気パラメータに対応する。
【0106】
図6を参照すると、ブロックC(第1の治療閾値の設定)は、第1の治療閾値と感覚閾値との関係に基づいて第1の治療閾値を設定することを含むステップS08を備える。好適な実施形態において、この関係は、経験的データから導出された直接関係である。第1の治療閾値は、頭皮の特定の領域または複数領域に向けられた特定の複数の電極、たとえば電極172によって提供される電気刺激パルスに関する治療閾値であってよい。いくつかの実施形態において、第1の治療閾値は、たとえば前頭部を含む頭皮の前部領域(複数も可)に向けられた電気刺激パルスを生成する、前部に配置された電極172に関する。治療閾値は、効果的な経皮神経刺激治療を提供すると見なされた電流強度の値または値範囲を備えてよい。たとえば、治療閾値は、ユーザが知覚する錯感覚に関する最小値より上かつユーザの痛みおよび/または不快感に関する最大値より下で求められ得る。いくつかの実施形態において、治療閾値に関する値は、上記最小値および最大値に関してユーザに試験することによって経験的に決定される。
例1
【0107】
例において、第1の治療閾値と感覚閾値との直接関係が、経皮神経刺激のためのヘッドセット100の24人のユーザから成るサンプルグループを用いて経験的に確立された。以下の表は、ユーザの各々に関してステップS07の教示に従って定義されたミリアンペア(mA)単位の感覚閾値(Tto)、mA単位の第1の治療閾値(Tt)、および各ユーザに関するTt対Ttoの比をまとめたものである。
【表1】
【0108】
24人のユーザに関する結果から、Tt対Ttoの比は、最小値1.3、最大値2.8、および平均値1.7を有することが分かる。
【0109】
ステップS08の第1の治療閾値は、ユーザに関して定義された感覚閾値に、経験的データに示されるTtとTtoとの関係に基づいて乗数Aを乗算することによって計算され得る。経験的データに基づく乗率Aは、ユーザのそれぞれの好適な治療閾値の全てまたは大部分を包括する値範囲内のどこかに設定され得る。たとえば、Aは、1.0~3.2の範囲内であってよく、例1における全24人のユーザに関する好適な治療閾値がこの範囲内にある。あるいは、Aは、1.3~2.8の範囲内のどこかに設定されてよく、この場合も、例1における全24人のユーザに関する好適な治療閾値がこの範囲内にある。あるいは、Aは、1.4~2.0の範囲内のどこかに設定されてよく、24人中19人のユーザが、この範囲内に最適な治療閾値を有する。またあるいは、Aは、1.3~1.9の範囲内のどこかに設定されてよく、24人中21人のユーザが、この範囲内に最適な治療閾値を有する。代替または追加として、TtとTtoとの関係は、たとえば上述した経験的パラメータのいずれかなどの他の電気パラメータを含み得る。
【0110】
ステップS07およびS08は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、感覚閾値、すなわち、皮膚感覚を感じるユーザのインジケーション(すなわちステップS06またはS06’で受信された第1のユーザ入力)が受信された時の電流強度の信頼性を試験することが望ましい。図7に示すブロックD(信頼性の決定)は、感覚閾値の信頼性を試験することに関する方法ステップを備える。
【0112】
ステップS101において、複数の電極、たとえばステップS05においてパルスのために用いられたのと同じ複数の電極によって、追加の電気刺激パルス列が提供される。ステップS102は、ステップS101の追加のパルス列に関連してユーザが皮膚感覚、たとえば錯感覚を経験したことを示す追加のユーザ入力を受信することを備える。
【0113】
代替ステップS102’は、ユーザの頭皮の特定の領域または複数領域(たとえば前部領域)に複数の刺激電極102によって印加される、電流強度が増加する追加の電気刺激パルス列の間、ユーザがパルス列に関連する皮膚感覚を経験したことを示す追加のユーザ入力を受信することを備える。ステップS102’は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。ステップS101またはステップS102’のパルスは、ステップS05またはステップS06’の第1のパルス列の増加率と同じ、または異なってよい増加率で、列の進行と共に電流強度が単調増加する。ステップS101またはステップS102’のユーザ入力は、好適には、モバイルデバイス570のユーザインタフェース52および/またはオンボードインタフェース180を介して受信される。
【0114】
ステップS101またはステップS102’において追加のユーザ入力が受信されると、ステップS103において、センサ閾値の信頼性が決定され得る。これは、追加のユーザ入力が受信された時の電流強度と、ステップS07において定義された感覚閾値とを比較することを含み得る。ステップS103およびS08は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。いくつかの実施形態において、追加のユーザ入力の電流強度が、ステップS07において定義された感覚閾値の±10%の範囲内である場合、感覚閾値は、信頼できると決定され得る。いくつかの実施形態において、追加のユーザ入力の電流強度が、ステップS07において定義された感覚閾値の±20%の範囲内である場合、感覚閾値は、信頼できると決定され得る。いくつかの実施形態において、追加のユーザ入力の電流強度が、ステップS07において定義された感覚閾値の±30%の範囲内である場合、感覚閾値は、信頼できると決定され得る。
【0115】
後述するように、ブロックDの方法ステップは、ユーザに関する感覚閾値の信頼性を試験するために、任意の回数、反復され得る。所望の数の反復後、感覚閾値を信頼できると決定することができなかった場合、デフォルト値に基づく治療プロトコルが作成および/または実施され得る。デフォルト値は、格納されたユーザ情報に基づいて修正され得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、感覚閾値、すなわち皮膚感覚を感じるユーザのインジケーション(すなわち、ステップS06またはS06’において受信された第1のユーザ入力)が受信された時の電流強度の信頼性を確認することが望ましい。図8に示すブロックE(信頼性の確認)は、感覚閾値の信頼性を確認することに関する方法ステップを備える。
【0117】
ステップS201において、複数の電極、たとえばステップS05においてパルスのために用いられたのと同じ複数の電極によって、追加の電気刺激パルス列が提供される。いくつかの実施形態において、パルスは、ステップS05においてパルスのために用いられたものと異なる複数の電極によって提供され得る。例において、ステップS05におけるパルスは、前部に配置された複数の電極によって提供され、ステップS201におけるパルスは、後部に配置された複数の電極によって提供され得る。後述するように、ステップS201における異なる複数の電極の使用を補足するために、前部に配置された複数の電極および後部に配置された複数の電極に関して設定されたそれぞれの治療パラメータセットの間には、いくつかの実施形態において経験的に導出される、直接関係が存在し得る。ステップS202は、ステップS201の追加のパルス列に関連する皮膚感覚、たとえば錯感覚をユーザが経験したことを示す追加のユーザ入力を受信することを備える。代替ステップS202’は、ユーザの頭皮の特定の領域または複数領域(たとえば前部領域)に複数の刺激電極102によって印加される、電流強度が増加する追加の電気刺激パルス列の間、ユーザがパルス列に関連する皮膚感覚を経験したことを示す追加のユーザ入力を受信することを備える。ステップS202’は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。ステップS201またはステップS202’のユーザ入力は、好適には、モバイルデバイス570のユーザインタフェース52および/またはオンボードインタフェース180を介して受信される。
【0118】
ステップS201またはステップS202’のパルスは、ステップS05またはS06’の第1のパルス列の増加率と同じ、または異なってよい増加率で、列の進行と共に電流強度が単調増加する。これらの他のステップとは対照的に、ステップS201またはステップS202’のパルスは、ステップS07において定義された感覚閾値のレベルまで電流強度が増加する前に、休止によって中断される。好適には、休止は、感覚閾値のレベルに到達するより十分に前に発生するので、電流強度は、感覚閾値と実質的に同じにはならない(たとえば感覚閾値の10%以内、感覚閾値の20%以内、または感覚閾値の30%以内)。1秒未満、または1秒以上、または数秒間であり得る休止の後、パルス列(および電流強度の増加)は、ステップS202またはステップS202’において、ユーザが皮膚感覚(たとえば錯感覚)を経験したことを示すユーザ入力が受信されるまで継続する。ステップS202またはS202’のユーザ入力が、休止後のパルスの再開後に(かつ感覚閾値から許容可能な範囲内の電流強度値で)受信された場合、ステップS203において、感覚閾値が確認される。一方、ステップS202またはS202’のユーザ入力が、休止前または休止中、すなわちパルスがステップS07において定義された感覚閾値に到達するより十分に前に受信された場合、ステップS204において、感覚閾値は確認されない。
【0119】
ステップS203およびS204は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。
【0120】
後述するように、ブロックEの方法ステップは、ブロックBのステップ(感覚閾値の定義)の後、または1または複数のブロックDのサイクル/反復(感覚閾値の信頼性の決定)の後に行われ得る。いくつかの実施形態において、ブロックC(第1の治療閾値の設定)の前にブロックEを行うことが好適であり得る。
【0121】
図9を参照すると、ブロックF(第2の治療閾値の設定)は、第2の治療閾値と第1の治療閾値との関係に基づいて第2の治療閾値を設定することを含むステップS301を備える。好適な実施形態において、この関係は、経験的データから導出された直接関係である。第2の治療閾値は、頭皮の特定の領域または複数領域に向けられた特定の複数の電極、たとえば電極174によって提供される電気刺激パルスに関する治療閾値であってよい。いくつかの実施形態において、第2の治療閾値は、頭皮の後部領域(複数も可)に向けられた電気刺激パルスを生成する、後部に配置された電極に関する。治療閾値は、効果的な経皮神経刺激治療を提供すると見なされる電流強度の値または値範囲を備えてよい。たとえば、治療閾値は、ユーザが知覚する錯感覚に関する最小値より上かつユーザの痛みおよび/または不快感に関する最大値より下で求められ得る。いくつかの実施形態において、治療閾値の値は、上記最小値および最大値に関してユーザに試験することによって経験的に決定される。
例2
【0122】
例2は、第2の治療閾値と第1の治療閾値との直接関係が、経皮神経治療のためのヘッドセット100の24人のユーザから成る同じサンプルグループを用いて経験的に確立されたという点で、例1の拡張である。以下の表は、ユーザの各々に関してステップS07の教示に従って定義されたミリアンペア(mA)単位の第1の治療閾値(Tt)、mA単位の第2の治療閾値(Ot)、およびOt対Ttの比をまとめたものである。
【表2】
【0123】
24人のユーザに関する結果から、Ot対Ttの比は、最小値1.9、最大値3.4、および平均値2.4を有することが分かる。
【0124】
ステップS301の第2の治療閾値は、経験的データに示されるOtとTtとの関係に基づいて、ユーザに関する第1の治療閾値に乗数Bを乗算することによって計算され得る。経験的データに基づく乗率Bは、ユーザのそれぞれの好適な治療閾値の全てまたは大部分を包括する値範囲内のどこかに設定され得る。たとえば、Bは、1.1~3.8の範囲内であってよく、例2における全24人のユーザに関する好適な治療閾値が、この範囲内にある。あるいは、Bは、1.4~3.4の範囲内のどこかに設定されてよく、この場合も、例2における全24人のユーザに関する好適な治療閾値が、この範囲内にある。あるいは、Bは、1.8~3.0の範囲内のどこかに設定されてよく、24人中21人のユーザが、この範囲内に最適な治療閾値を有する。代替または追加として、OtとTtとの関係は、たとえば上述した電気パラメータのいずれかなどの他の電気パラメータを含み得る。
【0125】
ステップS301は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。
【0126】
ここで、図10~13を参照すると、本発明の様々な実施形態に従って、特に治療閾値の較正に関する方法ステップのフローチャートおよび方法ステップの「構成要素」が示される。
【0127】
図10を参照すると、ブロックG(頭部の装置)は、経皮神経刺激治療において用いられる種類の、電気刺激パルスを提供するように構成された電極を備える装置を、ユーザの頭部に装着することを含むステップS305を備える。実施形態において、この装置は、たとえば本開示において上述したヘッドセット100のいずれかなどのヘッドセットであってよい。装置は、本開示の前述における図4およびブロックAを参照して説明した装置のいずれかであってよい。装置は、ブロックAにおいて用いられた装置と同じであってよく、ブロックAのステップ(および/または他の任意の方法ステップ)から未だ定位置にあってよい。いくつかの実施形態において、ブロックGは、追加または代替として、そのような装置がユーザの頭部に装着されていることを確認することを含むステップS305aを備える。いくつかの実施形態において、確認することは、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれる。いくつかのそのような実施形態において、確認することは、たとえば感知電極104などのセンサから確認情報を受信することを含み得る。他のそのような実施形態において、確認することは、モバイルデバイス570のユーザインタフェース52においてユーザ入力を受信することを含み得る。確認することは、更に、ユーザ入力を受信する前にユーザインタフェース52においてユーザ入力を懇請することを含み得る。追加または代替として、確認することは、オンボードインタフェース180を介してユーザ入力を受信することを含み得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、専用較正セッションにおいて、ステップS08およびS301で設定された治療閾値をユーザに較正させることが望ましい。ユーザによる較正は、治療中の快適レベルを高めるために、治療プロトコルパラメータ、たとえば電流強度を変更することを含み得る。場合によっては、ユーザは、電流強度を増大させることを好み、他の例では、ユーザは、電流強度を低下させること、または他の電気パラメータを修正することを好み得る。たとえば、経時的に電荷を減少させることは、電流強度を5%増大させる一方、パルスの持続時間を10%短縮することを含み得る。他の例において、ユーザは、経皮神経刺激治療の電気刺激パルスを短くまたは長く、および/または高頻度または低頻度にすることを望み得る。いくつかの実施形態において、システム101は、そのようなユーザからの較正入力を受信し、それに応じて、極めて迅速に(たとえばユーザが変更を完了してから1秒未満、または500ミリ秒未満、または200ミリ秒未満で)要求された変更を行うように構成され得る。いくつかの実施形態において、システム101は、ユーザ較正入力に応答して、ユーザによって直接変更されたパラメータの値だけではなく、少なくとも1つの追加のパラメータの値も調整するように構成され得る。たとえば、ユーザが電流強度治療プロトコルパラメータの値を変更すると、システム101は、たとえばパルス幅(持続時間)、位相幅、および/または周波数を調整するように構成され得る。1または複数の追加のパラメータは、治療目標に適うように、ユーザ較正入力に応答して自動的に変更され得る。たとえば、治療中の全体平均電流が所定の値に留まるように全体平均電流を維持することが治療目標であってよい。(平均電流を計算する方法の1つは、位相幅とパルス幅との比を電流強度に乗算することであり、平均電流は、一般にミリアンペア単位で測定される。)したがって、電流強度を低下させることにより、位相幅の増加がトリガされ得る。他の例として、所定の値の許容可能な分散範囲内(たとえば±30%、±20%、または±10%)に平均電流を維持することが治療目標であってよい。これらの例のどちらでも、所定の値は、ユーザ較正入力より前の全体平均電流値であってよい。
【0129】
いくつかの実施形態において、専用ユーザ較正セッションは、治療セッションの直前に行われてよく、他の実施形態において、較正セッションは、システム101およびたとえばヘッドセット100などの構成要素との独立したインタラクションであってよく、モバイルデバイス570は、1または複数のプロセッサ54によってコマンドプログラム命令51で実行することによってユーザ入力デバイスとしての機能を果たす。いくつかの実施形態において、較正セッションは、ステップS301(第2の治療閾値の設定)の遂行の直後またはすぐ後に行われ得る。
【0130】
ここで、図11を参照すると、ブロックH(治療閾値の変更)は、治療閾値のユーザ較正に関する方法ステップのグループを備える。
【0131】
ステップS310において、較正セッションがアクティブ化され、いくつかの実施形態において、基本(初期)治療閾値は、ステップS08およびS301において設定されたものであり、他のいくつかの実施形態において、初期治療閾値の1または両方は、過去の較正セッションにおいて既に変更されている。較正は、ユーザによって起動されてよく、または、ユーザ入力デバイス(たとえばモバイルデバイス570)上でアプリを稼働する(プログラム命令51を実行する)システムによって起動され得る。実施形態によると、較正セッション中、ユーザの頭皮の2つの部分(たとえば前部および後部)に電気刺激パルスが供給される。
【0132】
ステップS311は、ユーザからのユーザ較正入力を受信することを備え、上述したような任意の治療パラメータの値にユーザ起動の変更が行われ得る。代替ステップS311’は、ユーザの頭皮の2つの部分(たとえば前部および後部)に印加されたそれぞれの初期電流強度として第1および第2の電流強度治療閾値および/または他の電気パラメータ閾値を用いて、または同等に、以前の較正セッションにおいてユーザによって過去に変更された現在の強度治療閾値を用いて、較正セッションのアクティブ化後にユーザ較正入力を受信することを備える。全てのユーザ入力、感覚閾値、治療閾値、ユーザ較正入力、およびシステム101に関連する、および/またはシステム101によって生成された他のデータは、外部デバイス150のいずれか1つに、ならびにクラウド(不図示)内の外部サーバに格納され得る。ステップS311’は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。ステップS311またはステップS311’のユーザ較正入力は、好適には、モバイルデバイス570のユーザインタフェース52および/またはオンボードインタフェース180を介して受信される。
【0133】
治療セッション中にユーザ較正入力を受信すること(ステップS311またはS311’)に応答して、ステップS312において、少なくとも1つの治療閾値に変更が実施される。上述したように、1または複数の他のパラメータは、たとえば全体平均電流を所定の範囲内に保つことによって治療効能を維持するために修正され得る。ステップS312は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。
【0134】
ここで、ステップS320を備える方法ステップブロックI(範囲外インジケーション)を示す図12を参照する。いくつかの実施形態において、ステップS320は、代替または追加として、ステップS311またはS311’においてユーザ較正入力を受信することに応答して、較正セッション中に受信した較正ユーザ入力において具体化された変更要求が、効果的な神経刺激治療のための推奨範囲外の治療パラメータであるというインジケーションをユーザに提供することを含む。たとえばモバイルデバイス570のユーザインタフェース52を介してそのようなインジケーションを受信するユーザは、推奨範囲内のパラメータ値に留まるように較正ユーザ入力を「補正」する機会を与えられ得る。ステップS320は、たとえばモバイルフォン570などのユーザ入力デバイスの1または複数のプロセッサ54によって実行されるプログラム命令51に含まれ得る。
【0135】
図13に示すブロックJ(治療セッションのアクティブ化)は、較正セッションにおいて変更された1または複数の治療パラメータを用いて経皮神経刺激治療をアクティブ化することを含むステップS401を備える。
【0136】
ここで、実施形態に係る、図4~13を参照して説明した方法ステップの構成要素を含む方法の例を示す図14~17を参照する。
【0137】
図14A~Dは、様々な実施形態に従って治療閾値を設定するためのいくつかの選択肢を示す。
【0138】
図14Aにおいて、典型的な方法は、ヘッドセットを装着すること/ヘッドセットが装着されていることを確認すること(ブロックA)と、感覚閾値を定義すること(ブロックB)と、第1の治療閾値を設定すること(ブロックC)と、第2の治療閾値を設定すること(ブロックF)とを含むように示される。
【0139】
図14Bにおいて、他の典型的な方法は、ヘッドセットを装着すること/ヘッドセットが装着されていることを確認すること(ブロックA)と、感覚閾値を定義すること(ブロックB)と、感覚閾値の信頼性を決定すること(ブロックD)と、第1の治療閾値を設定すること(ブロックC)と、第2の治療閾値を設定すること(ブロックF)とを含むように示される。
【0140】
図14Cにおいて、また他の典型的な方法は、ヘッドセットを装着すること/ヘッドセットが装着されていることを確認すること(ブロックA)と、感覚閾値を定義すること(ブロックB)と、感覚閾値の信頼性を確認すること(ブロックE)と、第1の治療閾値を設定すること(ブロックC)と、第2の治療閾値を設定すること(ブロックF)とを含むように示される。
【0141】
図14Dにおいて、また他の典型的な方法は、ヘッドセットを装着すること/ヘッドセットが装着されていることを確認すること(ブロックA)と、感覚閾値を定義すること(ブロックB)と、感覚閾値の信頼性を決定すること(ブロックD)と、感覚閾値の信頼性を確認すること(ブロックE)と、第1の治療閾値を設定すること(ブロックC)と、第2の治療閾値を設定すること(ブロックF)とを含むように示される。
【0142】
図15は、ヘッドセットを装着すること/ヘッドセットが装着されていることを確認すること(ブロックA)と、感覚閾値を定義すること(ブロックB)と、感覚閾値の信頼性を決定すること(ブロックD)とを含む他の典型的な方法を示し、ブロックDの方法ステップはn回反復され、nは1より大きい整数である(いくつかの実施形態においてnは10以下であり、他の実施形態において8以下であり、また他の実施形態において6以下である)。n回の反復後、ステップS103において、信頼性が所定の範囲内にあることが決定されない、たとえば感覚閾値が±30%、±20%、または±10%の精度で反復される場合(分岐Q1)、初期(較正前)治療閾値としてシステムデフォルト値のセットを用いることを含むステップS500が実行される。Q1の答えが肯定である場合、図15の方法は、感覚閾値の信頼性を確認すること(ブロックE)へ進む。信頼性を確認することができなかった(すなわち、ステップS204が実行されていた)場合、ステップS500(デフォルト初期治療閾値に戻ること)が行われる。Q2の答えが肯定である場合、方法の実行は更に、第1の治療閾値を設定する方法ステップ(ブロックC)および第2の治療閾値を設定する方法ステップ(ブロックF)を実行することを含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、開示される方法ステップおよび方法ステップの構成要素の他の組み合わせが行われてよく、それらは全て、本発明の範囲内である。明確化のために、典型的な方法のいずれかの遂行に不連続性が存在する場合常に、ブロックAの方法ステップが実行され得ることが言及される。
【0144】
図16~17は、様々な実施形態に従って治療閾値の較正を完了するための選択肢を示す。
【0145】
図16において、典型的な方法は、ヘッドセットを装着すること/ヘッドセットが装着されていることを確認すること(ブロックG)と、較正セッションにおいて少なくとも1つの治療閾値を変更すること(ブロックH)と、ユーザ較正入力が範囲外の値を取ることを示すこと(ブロックI)と、較正セッションにおいて変更された1または複数の値に基づいて治療セッションをアクティブ化すること(ブロックJ)とを含むように示される。全ての実施形態において方法の全てのステップおよびブロックが行われる必要はない。たとえば、いくつかの実施形態において、ヘッドセットが既に定位置にある図13~15の方法の1つ(またはその均等物)の後に連続して方法が行われない場合のみ、ブロックGが行われる。ブロックIは、受信したユーザ較正入力が所望の範囲外の治療パラメータを取る場合のみ行われる。較正セッションは、実際の経皮神経刺激セッションに直接続かず行われてもよいので、ブロックJは任意選択である。
【0146】
図17は、ヘッドセットを装着すること/ヘッドセットが装着されていることを確認すること(ブロックG)を任意選択的に含み、較正セッションにおいて少なくとも1つの治療閾値を変更すること(ブロックH)を含む他の典型的な方法を示す。(Q3において)変更に関する受信入力が範囲外である場合、ブロックIが実行される。(Q3において)変更に関する範囲外の受信入力がない場合、方法は継続し、ブロックJ(少なくとも1つの変更された治療パラメータで実際の治療セッションをアクティブ化すること)が任意選択的に実行され得る。分岐Q3においてブロックIが呼び出された場合、新たなユーザ較正値を受信するステップS321が行われ得る。(Q4において)ステップS321において新たなまたは「適切な」(範囲内の)ユーザ較正入力が受信された場合、ブロックJ(少なくとも1つの変更された治療パラメータで実際の治療セッションをアクティブ化すること)が任意選択的に実行されてよく、新たな/適切な/範囲内のユーザ較正が受信されていない(すなわちQ4においてそのように決定された)場合、ステップS501において、システムは、デフォルトで過去に設定された治療閾値を保持する。
【0147】
図18は、それぞれ図14A~Dを参照して説明した4つの方法のいずれか1つが図16の方法と「端と端とが」結合され得る他の典型的な方法を概略的に示す。
【0148】
図19もまた、図15の方法が図17の方法と「端と端とが」結合され得る他の典型的な方法を概略的に示す。
【0149】
図13~19に示す方法のいずれか、またはその均等物は、モバイルデバイス570の1または複数のプロセッサ54によって実行するための(たとえばアプリ用)プログラム命令51に含まれ得る。
【0150】
当業者には明らかであるように、本明細書で説明される例および実施形態は、本開示の大部分を通して便宜上用いられた、「最初に前部閾値を設定し、次に後部閾値を設定する」という範例に限定されない。
【0151】
例として、後部に向けられた電極セットを用いて感覚閾値が決定され、その後、その感覚閾値が後部治療閾値に「変換」され、その後部治療閾値が前部治療閾値に「変換」されてよく、両方の「変換」は、それぞれの電流強度閾値の経験的に導出された関係に基づく。
【0152】
他の例として、経皮神経刺激治療の標的である任意の数の様々な脳神経または末梢神経が所望の順序で対処されてよく、治療閾値は、その所望の順序で、様々な領域または神経(または神経グループ)間の経験的に導出された関係に従って設定され得る。いくつかの実施形態において、標的神経枝は、ユーザの頭部の左側および右側に横方向に位置し得る。
【0153】
以下は、ユーザの頭皮の様々な神経枝または領域に関して治療閾値が決定され得る順序の例であり、頭皮の2つの領域を標的とする2つの複数の電極に関して(A=前部、P=後部、LL=左側部、RL=右側部)、A-P、A-LL、A-RL、P-A、P-LL、-RL、LL-A、LL-P、LL-RL、RL-A、RL-P、およびRL-LLである。頭皮の3つ以上の領域が標的である場合、対応する数の電極が用いられ、それに応じて可能な組み合わせの数も増加することが明らかである。
【0154】
また明らかであるように、実施形態はユーザの頭部に限定されず、任意の体肢および身体領域に適用されてよく、その場合も、感覚閾値および治療閾値の間で、また様々な治療閾値の間で経験的関係が導出され得る。
【0155】
本明細書に開示される方法およびデバイスに適用される任意のそのような変形例は、明らかに、本発明の範囲内である。
【0156】
本明細書で用いられるように、所与の方法ステップまたは所与の方法ステップのグループがプログラム命令に「含まれ」得ると記述される場合常に、所与の方法ステップまたは所与の方法ステップのグループを行うための命令は、上記プログラム命令に含まれてよく、上記プログラム命令の(たとえば必要に応じて1または複数のコンピュータプロセッサまたはモバイルデバイスの1または複数のプロセッサによる)実行は、必要に応じて、1または複数のプロセッサに、所与の方法ステップまたは所与の方法ステップのグループを行わせ、または1または複数のプロセッサに、所与の方法ステップまたは所与の方法ステップのグループの実行を生じさせることが理解されるべきである。
【0157】
本明細書および以下の特許請求の範囲で用いられる場合、「または」という用語は、包括的であると見なされるので、「AまたはB」という表現は、「A」、「B」、および「AおよびB」のグループのいずれかを意味する。
【0158】
本明細書および以下の特許請求の範囲で用いられる場合、「パルス」という用語は、たとえば電極を介して印加される、または電極によって感知される電気信号に関する。
【0159】
理解されるように、明確性のために個別の実施形態の文脈で説明された本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈で説明された本発明の様々な特徴は、個別に、または任意の適当な部分的組み合わせで提供されてもよい。同様に、1または複数の特定のクレームに従属するクレームの内容は、一般に、他の明示されていないクレームに従属してよく、または、それらの間に特定の明らかな不一致が存在しなければ、その内容と組み合わせられてよい。
【0160】
本発明は、特定の実施形態と共に説明されたが、多数の変更、修正、および変形例が当業者に明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨および広範な範囲に収まる全てのそのような変更、修正、および変形例を包括することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
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図16
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図18
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【国際調査報告】