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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 25/00 20060101AFI20221028BHJP
   H01Q 25/02 20060101ALI20221028BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20221028BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
H01Q25/00
H01Q25/02
H01Q21/24
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511092
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020074248
(87)【国際公開番号】W WO2021038110
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】19194584.9
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519024245
【氏名又は名称】シバース ワイヤレス アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ホーカン バリ
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021AB06
5J021DB03
5J021FA05
5J021FA32
5J021GA02
5J021JA05
(57)【要約】
本発明は、複数のエッジを有するパッチ、パッチの第1のエッジで第1の接続ポートに接続された第1の送信経路及びパッチの第1のエッジで第2の接続ポートに接続された第2の送信経路を有するアンテナ部分を備えるアンテナ装置に関する。第1の接続ポート及び第2の接続ポートは、第1のエッジに沿って互いに距離を置いて配置され、第1の送信機は及び第2の送信機は、アンテナ部分に接続される。第1の送信経路は、第1の送信機及び第2の送信機並びに第1の接続ポートに接続された第1の信号結合器を備える。第2の送信経路は、第1の送信機及び第2の送信機並びに第2の接続ポートに接続された第2の信号結合器を備える。第1の信号結合器は、第1の送信機から発信される信号と第2の送信機から発信される信号との差を生成するように配置される。第2の信号結合器は、第1の送信機から発信される信号と第2の送信機から発信される信号の和を生成するように配置される。これにより、二つの異なる信号を同時に送信することが可能である。装置によって無線周波数信号を送信するための方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエッジを有するパッチ、前記パッチの第1のエッジで第1の接続ポートに接続された第1の送信経路及び前記パッチの前記第1のエッジで第2の接続ポートに接続された第2の送信経路を有するアンテナ部分を備え、前記第1の接続ポート及び前記第2の接続ポートは、前記第1のエッジに沿って互いに距離を置いて配置され、第1の送信機は、少なくとも前記第1の送信経路に接続され、第2の送信機は、少なくとも前記第2の送信経路に接続される、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の送信経路は、前記第1の送信機及び前記第2の送信機並びに前記第1の接続ポートに接続された第1の信号結合器を備え、前記第2の送信経路は、前記第1の送信機及び前記第2の送信機並びに前記第2の接続ポートに接続された第2の信号結合器を備え、前記第1の信号結合器は、前記第1の送信機から発信される信号と前記第2の送信機から発信される信号との差を生成するように配置され、前記第2の信号結合器は、前記第1の送信機から発信される信号と前記第2の送信機から発信される信号の和を生成するように配置される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の送信経路は、第1の移相器を備え、前記第2の送信経路は、第2の移相器を備える、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の移相器は、前記第1の信号結合器及び前記第1の接続ポートに接続され、前記第2の移相器は、前記第2の信号結合器及び前記第2の接続ポートに接続される、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の移相器は、前記第1の送信機並びに前記第1の信号結合器及び前記第2の信号結合器に接続され、前記第2の移相器は、前記第2の送信機並びに前記第1の信号結合器及び前記第2の信号結合器に接続される、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
各送信経路の移相器に接続されたビームコントローラを備える、請求項3から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
複数のアンテナ部分を備え、前記第1の送信機及び前記第2の送信機は、同様に全てのアンテナ部分に接続されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
無線周波数信号を送信する方法であって、
複数のエッジを有するパッチ、前記パッチの第1のエッジで第1の接続ポートに接続された第1の送信経路及び前記パッチの前記第1のエッジで第2の接続ポートに接続された第2の送信経路を有するアンテナ部分を備え、前記第1の接続ポート及び前記第2の接続ポートは、前記第1のエッジに沿って互いに距離を置いて配置された、アンテナ装置を設けることと、
第1の送信機によって第1の送信信号を生成することと、
第2の送信機によって第2の送信信号を生成し、前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号を前記アンテナ部分に供給することと、
を備える方法。
【請求項9】
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号との和を含むシグマ信号を生成することと、
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号との間の差を含むデルタ信号を生成することと、
前記シグマ信号を前記第1の接続ポートに供給することと、
前記デルタ信号を前記第2の接続ポートに供給することと、
を更に備え、それにより、第1の偏波を有する第1の無線周波数信号及び前記パッチからの前記第1の偏波に直交する第2の偏波を有する第2の無線周波数信号を送信する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の送信信号と前記第2の送信信号との間の位相差を制御することを備える、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記位相差を制御することは、前記位相差を0°及び180°のうちの一つに制御することを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の送信信号及び前記第2の送信信号は、前記シグマ信号及び前記デルタ信号を生成する前に位相シフトを受ける、請求項8から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記シグマ信号及び前記デルタ信号は、前記第1の接続ポート及び前記第2の接続ポートに供給される前に位相シフトを受ける、請求項8から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記アンテナ装置は、複数のアンテナ部分を備え、前記第1の送信機及び前記第2の送信機は、全てのアンテナ部分に接続され、前記アンテナ装置の出力信号のビームフォーミングを行うために前記アンテナ部分の間の位相差を制御することを備える、請求項7から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数パッチアンテナ装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
パッチアンテナは、一般的には、上部の導電及び放射パッチと下部のグランドプレーンとの間に挟まれた誘電体基板によって構成される。パッチの通常の材料は、銅及び金である。通常、パッチは、正方形であるが、ほとんど全ての形状をとることができ、パッチの一方の端の近くで給電される。共振している場合は、パッチの中央で電流が最大になるとともにエッジで電圧が最大になる定在波が発生する。図1を参照。電流と電圧との比率が適切に整合している場合、パッチは、効果的に放射を行う。給電をいくつかの方法で行うことができるが、例えば、マイクロストリップ接続によるパッチの端の電気接続ポート、又は、例えば、基板の下のスロットまで延在するマイクロストリップによるパッチの下のスロットを介した磁気接続ポートが一般的である。同軸ケーブルのような他のフィーダーも使用されることがある。
【0003】
水平電界と垂直電界の両方で信号を送信するために又は同一のアンテナで二つの異なる送信信号を送信するために、パッチアンテナは、二重偏波アンテナとして実現される。この場合、追加の接続ポートが設けられる。追加の電気接続は、第1の接続のエッジに隣接するとともにそれに垂直な別のエッジで行われる。追加の磁気接続は、第1のスロットに垂直であるとともにそれに交差する追加のスロットによって行われる。したがって、従来、二重偏波アンテナは、二つの送信経路によって独立して給電される一つのパッチとして実現されている。
【0004】
オン又はオフにできるとともにそれぞれの接続ポートに接続されている二つの送信機の場合、パッチアンテナの送信電力は、それらの一つからの電力に制限される。両方の送信機が対角偏波(linear polarization)を送信するためにアクティブになる場合、パッチは、対角方向に強制的に共振するが、これは最適ではない。そうである場合、パッチは、対角方向に共振するように設計される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許出願公開第2013/0057449号明細書は、単一のパッチに接続された二つの電気接続ポートを有するそのようなパッチアンテナを開示している。接続ポートは、パッチの第1の励起ユニット及び第2の励起ユニットに接続され、互いに直交する第1の直線偏波及び第2の直線偏波を生成する。生成された出力信号は、二つの信号に分割され、第1の励起ユニット及び第2の励起ユニットにそれぞれ供給される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アンテナの効率を上げることは有利となる。この問題に対処するために、本発明の第1の態様では、複数のエッジを有するパッチ、パッチの第1のエッジで第1の接続ポートに接続された第1の送信経路及びパッチの第1のエッジで第2の接続ポートに接続された第2の送信経路を有するアンテナ部分を備え、第1の接続ポート及び第2の接続ポートは、第1のエッジに沿って互いに距離を置いて配置され、第1の送信機は及び第2の送信機は、アンテナ部分に接続される、アンテナ装置を提供する。
【0007】
両方の送信経路を同一のエッジで接続することにより、両方の接続が同相で駆動されるモードを取得することができる。これにより、パッチが一つの接続のみで駆動されるときに比べて各ポートで更に高いインピーダンスが得られる。それを、第1の場合と比べて直交な偏波をもたらすディファレンシャルモードで駆動することもできる。
【0008】
アンテナ装置の一実施形態によれば、第1の送信経路は、第1の送信機及び第2の送信機並びに第1の接続ポートに接続された第1の信号結合器を備え、第2の送信経路は、第1の送信機及び第2の送信機並びに第2の接続ポートに接続された第2の信号結合器を備え、第1の信号結合器は、第1の送信機から発信される信号と第2の送信機から発信される信号との差を生成するように配置され、第2の信号結合器は、第1の送信機から発信される信号と第2の送信機から発信される信号の和を生成するように配置される。信号結合器によって、直交偏波で二つの無線周波数信号を同時に送信するためにアンテナ装置を使用することができる。
【0009】
アンテナ装置の実施形態によれば、第1の送信経路は、第1の移相器を備え、第2の送信経路は、第2の移相器を備える。これにより、送信信号の簡単な制御が得られる。
【0010】
アンテナ装置の一実施形態によれば、第1の移相器は、第1の信号結合器及び第1の接続ポートに接続され、第2の移相器は、第2の信号結合器及び第2の接続ポートに接続される。
【0011】
アンテナ装置の一実施形態によれば、第1の移相器は、第1の送信機並びに第1の信号結合器及び第2の信号結合器に接続され、第2の移相器は、第2の送信機並びに第1の信号結合器及び第2の信号結合器に接続される。
【0012】
アンテナ装置の一実施形態によれば、アンテナ装置は、各送信経路の移相器に接続されたビームコントローラを備える。これにより、制御されたビームフォーミングが可能になる。アンテナ装置が複数のアンテナ部分を備えるとき、好適には、アンテナ部分のパッチは、所望の構成のアレイとして配置される。
【0013】
アンテナ装置の実施形態によれば、各パッチの第1の送信経路及び第2の送信経路は、コモンモード及びディファレンシャルモードを含むいくつかの異なるモードでパッチに同一の送信信号を供給するように配置される。
【0014】
本発明の第2の態様では、無線周波数信号を送信する方法であって、複数のエッジを有するパッチ、パッチの第1のエッジで第1の接続ポートに接続された第1の送信経路及びパッチの第1のエッジで第2の接続ポートに接続された第2の送信経路を有するアンテナ部分を備え、第1の接続ポート及び第2の接続ポートは、第1のエッジに沿って互いに距離を置いて配置された、アンテナ装置を設けることを備える方法を提供する。さらに、方法は、第1の送信機によって第1の送信信号を生成することと、第2の送信機によって第2の送信信号を生成し、第1の送信信号及び第2の送信信号をアンテナ部分に供給することと、を備える。
【0015】
この方法は、上記のアンテナ装置と同一の利点を提供するとともに上記のアンテナ装置と同一の問題を解決する。
【0016】
この方法の実施形態によれば、方法は、第1の送信信号と第2の送信信号との和を含むシグマ信号を生成することと、第1の送信信号と第2の送信信号との間の差を含むデルタ信号を生成することと、シグマ信号を第1の接続ポートに供給することと、デルタ信号を第2の接続ポートに供給することと、を更に備え、それにより、第1の偏波を有する第1の無線周波数信号及びパッチからの第1の偏波に直交する第2の偏波を有する第2の無線周波数信号を送信する。
【0017】
本発明を、添付の図面を参照しながら更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】パッチアンテナの原理を示す。
図2】好適なアンテナ装置の構造のパッチの動作原理を示す。
図3図2の構造のブロック図である。
図4】アンテナ装置の別の構造のブロック図である。
図5】パッチに関連する対策を示す。
図6図4の構造を説明するための別のブロック図である。
図7】アンテナ装置の別の構造のブロック図である。
図8】アンテナ装置の別の構造のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3に示すアンテナ装置1の第1の構造は、パッチの同一のエッジに関連付けられた二つの接続ポートを使用するためのいくつかの原理を示す。アンテナ装置1は、いくつかのエッジを有するパッチ3を有するアンテナ部分2を備える。図面中、パッチを、正方形のパッチとして示す。当業者によって理解されるように、多くの異なる形状が実現可能であるが、長方形又は修正された長方形の形状が好ましい。アンテナ部分2は、パッチ3の第1の接続ポート5に接続された第1の送信経路4と、パッチ3の第2の接続ポート7に接続された第2の送信経路6と、を更に備える。第1の接続ポート5及び第2の接続ポート7は、パッチ3の第1のエッジ8に設けられ、それは、第1のエッジ8に沿って互いに距離を置いて配置される。図5を参照すると、第1の接続ポート5が第1のエッジ8の一方の端部から距離d1で配置される場合、第2の接続ポート7は、同一の端部から距離d2で配置され、ここで、d2>d1である。d1とd2との間又はこれらの距離とエッジの全長Lとの間には、一般的に好ましい特別な関係はないが、設計作業の一環として、個々の状況ごとに最も望ましい測定値を決定する必要がある。それは、インピーダンスレベルに依存し、インピーダンスレベルは、基板の厚さ、誘電率等に依存する。当然、給電端子のスペースがないため、インピーダンスレベルを近づけすぎることは実用的ではない。さらに、本願で使用される「第1のエッジで」という表現は、接続ポート5,7を、第1のエッジ8に関連する動作の観点から第1のエッジ8の正確な位置から第1のエッジ8からずれた位置までの任意の場所に配置することを含むことに留意されたい。例えば、同軸給電端子を使用する場合、接続ポート5,7は、通常、パッチ3の中心に向かって変位したエッジからの距離に配置される。マイクロストリップを使用する場合、パッチ3は、通常、接続ポート5,7の入力インピーダンスを低減するためにマイクロストリップの側面にインセット(inset)が設けられる。
【0020】
アンテナ装置1がアンテナ部分2に接続された送信機21を備える単一のアンテナ部分2のアンテナ装置1は、アンテナ装置1の基本的な代替である。しかしながら、更なる操作上の代替のために、アンテナ部分2の各送信経路4,6は、移相器9、10を備え、アンテナ装置1は、第1の接続ポート5及び第2の接続ポート7に供給される送信信号の位相をそれぞれ制御するために移相器9,10に接続されたビームコントローラ20を更に備える。
【0021】
さらに、本発明の有利な応用は、ビームフォーミング機能を有するアンテナアレイとしてのものである。したがって、図3にも示すように、アンテナ装置1は、一般的には、一次元又は二次元アレイを形成する別のアンテナ部分13を備える。別のアンテナ部分13の各々は、パッチ14の第1のエッジ19に配置された第1の接続ポート17及び第2の接続ポート18にそれぞれ接続された第1の送信経路15及び第2の送信経路16を備える。別のアンテナ部分13の各々の送信経路15,16はそれぞれ、ビームコントローラ20に接続された移相器11,12を備える。移相器11,12は、送信機21にも接続される。
【0022】
図4に示すように、アンテナ装置30の第2の構造によれば、アンテナ装置30は、二つの送信機、すなわち、第1の送信機31及び第2の送信機33を備える。第1の送信機は、第1の送信経路32に接続され、第2の送信機33は、第2の送信経路34に接続される。複数のアンテナ部分39を含むアンテナアレイに拡大するとき、第1の送信機は、各アンテナ部分39の第1の送信経路32に接続され、第2の送信機33は、各アンテナ部分39の第2の送信機33に接続される。ビームコントローラ42は、第1の構造と同様に、移相器40,41に接続される。
【0023】
図7に示すように、アンテナ装置50の第3の構造によれば、アンテナ装置30は、一つ以上のアンテナ部分63と、各アンテナ部分63に接続された第1の送信機51及び第2の送信機53と、を備える。更に具体的には、各アンテナ部分63は、パッチ65、パッチの第1の接続ポート61に接続された第1の送信経路52及びパッチ65の第2の接続ポート62に接続された第2の送信経路54を備える。上記の構造と同様に、接続ポート61,62は、両方ともパッチ65の同一のエッジに関連付けられる。第1の送信経路52は、第1の接続ポート61に接続された第1の移相器55と、第1の接続ポート61に接続された第1の信号結合器57と、を備える。第2の送信経路54は、第2の接続ポート62に接続された第2の移相器56と、第2の移相器56に接続された第2の信号結合器59と、を備える。
【0024】
第1の送信機51は、第1の送信経路52と第2の送信経路54の両方に接続される。第2の送信機53も、第1の送信経路52と第2の送信経路54の両方に接続される。更に具体的には、第1の送信機51及び第2の送信機53は、信号結合器57,59に接続される。第1の信号結合器57は、デルタ要素、すなわち、第1の送信機51から受信した第1の送信信号と第2の送信機53から受信した第2の送信信号との間の差を構成するここではデルタ信号と呼ばれる出力信号を生成するように配置された減算器である。第2の信号結合器59は、ガンマ要素、すなわち、第1の送信機51から受信した第1の送信信号及び第2の送信機53から受信した第2の送信信号の和を構成するここではシグマ信号と呼ばれる出力信号を生成するように配置された加算器である。
【0025】
さらに、他の構造と同様に、アンテナ装置は、全ての移相器55、56に接続されたビームコントローラ64を備える。
【0026】
アンテナ装置50がアレイに配置された複数のアンテナ部分63を備えるとき、第1の送信機51は、各アンテナ部分63の第1の送信経路52及び第2の送信経路54に接続され、第2の送信機53は、各アンテナ部分63の第1の送信経路52及び第2の送信経路54に接続される。ビームコントローラ64は、他の構造と同様に、全てのアンテナ部分63の移相器55、56に接続される。更に具体的には、各アンテナ部分63は、パッチ65と、パッチ65の接続ポート61,62に接続された第1の移相器55及び第2の移相器56と、を備える。第1の信号結合器57は、全てのアンテナ部分63によって共有される、すなわち、第1の信号結合器57の出力部58は、各アンテナ部分63の第1の移相器55に接続される。同様に、第2の信号結合器59は、全てのアンテナ部分63によって共有される、すなわち、第2の信号結合器59の出力60は、各アンテナ部分63の第2の移相器56に接続される。
【0027】
図8に示すように、アンテナ装置70の第4の構造によれば、アンテナ装置70は、一つ以上のアンテナ部分76と、各アンテナ部分76に接続された第1の送信機71及び第2の送信機72と、を備える。更に具体的には、各アンテナ部分76は、パッチ77、パッチ77の第1の接続ポート78に接続された第1の送信経路74及びパッチ77で第2の接続ポート79に接続された第2の送信経路75を備える。上記の構造と同様に、接続ポート78,79は、両方ともパッチ77の同一のエッジに関連付けられる。第1の送信経路74は、第1の接続ポート78に接続された第1の信号結合器82を備え、第2の送信経路75は、第2の接続ポート79に接続された信号結合器84を備える。さらに、第1の送信経路74は、第1の信号結合器82及び第2の信号結合器84に接続された第1の移相器80を備え、第2の送信経路75は、第2の信号結合器84及び第1の信号結合器82の両方に接続された第2の移相器81を備える。
【0028】
第1の送信機71は、第1の送信経路74と第2の送信経路75の両方に接続される。対応して、第2の送信機72は、第1の送信経路74に接続され、第2の移相器81を介して第2の送信経路75に接続される。更に具体的には、第1の送信機71は、第1の移相器80に接続され、第1の移相器80を介して第2の信号結合器84に接続される。第2の送信機72は、第2の移相器81に接続され、第2の移相器81を介して第1の信号結合器82に接続される。第3の構造と同様に、第1の信号結合器82は、デルタ要素であり、第2の信号結合器84は、シグマ要素である。
【0029】
さらに、他の構造と同様に、アンテナ装置70は、全ての移相器80、81に接続されたビームコントローラ73を備える。
【0030】
アンテナ装置1の第1の構造は、以下のように動作する。各アンテナ部分2,13について、送信機21からの第1の送信信号及び第2の送信信号は、第1の送信経路4,15及び第2の送信経路6,16を介してパッチ3,14に供給される。信号は、同一のソースから発信される。第1及び第2の送信信号が、コモンモードで、すなわち、同一の位相及び同一の振幅でパッチ3,14に供給される場合、パッチ3,14は、エッジで単一のポートを有する従来技術のパッチと同様に機能するが、各接続ポート5,7,17,18のインピーダンスは、単一ポートのインピーダンスの2倍である。しかしながら、パッチ3,14によって送信される合計電力も2倍になる。すなわち、両方の送信信号からの電力が同相で加算され、それによって、送信電力が2倍になる。合計送信電力は、両方の接続ポート5,7,17,18が並列に動作するためにそれらの電力の和となる。パッチ3から送信される無線周波数信号はy偏波になる。図6を参照。
【0031】
第1の送信信号及び第2の送信信号がディファレンシャルモードで二つのポート5,7に供給される場合、すなわち、振幅は同一であるが180°の位相差があることを意味する極性が反対である場合、図2の右側の図に示すように、ポート5,7の対称面に最大電流が存在する。この場合も、送信電力は、両方のポート5,7の電力の合計になる。パッチ3から送信される無線周波数信号は、x偏波を有する。図6を参照。したがって、結果として得られる送信無線周波数信号の両方の偏波、すなわち、x偏波及びy偏波について、出力電力は、二つのポート5,7の電力の和になる。
【0032】
各パッチ3,14に供給される第1の送信信号と第2の送信信号との間の相対位相を制御することに加えて、ビームコントローラ20は、アンテナ装置1から送信された最終的な信号に対して所望のビームフォーミングを行うために、アンテナ部分2,13の位相を相互に区別する。これは、当技術分野の当業者に周知の方法に従って行われるので、ここではそれ以上説明しない。
【0033】
図4に示す第2の構造では、二つの送信機31,33が同一の信号を送信するために使用されるとき、二つの送信機31,33によって供給される合計電力は、パッチ37によって送信される。第1の送信機Tx1,31は、各アンテナ部分39の第1の送信経路32に含まれ、それは、各アンテナ部分39の第1の移相器40に接続され、第1の移相器40は、第1のポート35に接続される。第2の送信機Tx2,33は、各アンテナ部39の第2の送信経路に含まれ、それは、各アンテナ部39の第2の移相器41に接続され、第2の移相器41は、第2のポート36に接続される。第1の送信機31及び第2の送信機33は、同一の信号を送信し、位相コントローラ42は、ビーム方向を形成するとともに偏波を決定するために移相器40,41の位相を制御する。
【0034】
更に具体的には、アンテナ装置30の一つのアンテナ部分39を示す図6に示すように、第1の移相器40と第2の移相器41との間の位相差がゼロであるとき、パッチは、y方向の偏波を生じる。位相差が180°になると、パッチ37は、x方向の偏波を生じる。両方の偏波で、合計の送信電力は両方のアンテナ経路の電力の和になる。それに対し、二つのポートがパッチの異なるエッジに配置されている従来技術のアンテナでは、通常、ポートは、交互にアクティブ化されてx偏波若しくはy偏波で送信を行う、又は、共にアクティブ化されて一方の送信信号の電力を有する対角偏波で送信を行う。その理由は、両方のケースにおいて、両方のポートがアクティブ化されるときに同相で加算が行われないからである。
【0035】
ビームフォーミングは、当業者に知られている任意の適切な一般的な技術のビームフォーミング方法に従ってアンテナ部分39の間に位相差を設けることによって、同一の位相コントローラ42により行われる。
【0036】
アンテナ装置の第3の構造は、次のように動作する。第1の送信機51から出力された第1の送信信号は、第1の信号結合器57及び第2の信号結合器59に供給される。第2の送信機53から出力された第2の送信信号は、第2の信号結合器59に供給される。各アンテナ部分63について、第1の信号結合器57から出力されたデルタ信号は、第1の送信経路52の第1の移相器55に供給され、さらに、経路65の第1の接続ポート61に供給される。第2の信号結合器59から出力されるシグマ信号は、第2の移相器56に供給され、さらに、第2の接続ポート62に供給される。第1の移相器55及び第2の移相器56を、パッチ65から送信された無線周波数信号の極性を変更するために、又は、複数のアンテナ部分63の場合にアンテナ装置50から送信されたビームを導くために、デルタ信号及びシグマ信号を相互に位相シフトするのに使用してもよい。
【0037】
デルタ信号をtxΔで示し、シグマ信号をtxΣで示し、第1の送信信号をtx1で示し、第2の送信信号をtx2で示す場合、次のようになる。
txΔ=tx1-tx2 (式1)
txΣ=tx1+tx2 (式2)
【0038】
したがって、第1の送信信号tx1を、第1接続ポート61及び第2の接続ポート62においてコモンモードで受信し、第2の送信信号tx2を、ディファレンシャルモードで受信する。その結果、上記で説明したように、第1の送信信号tx1は、パッチ65からy偏波の無線周波数信号として送信され、第2の送信信号tx2は、パッチ65からx偏波で送信される。両方の信号は同時に送信される。必要に応じて、移相器55,56によって、第1の送信信号tx1がx偏波で送信されるとともに第2の送信信号tx2がy偏波で送信されるように、送信信号の偏波を切り替えることができる。
【0039】
第3の構造と同様に、アンテナ装置70の第4の構造は、二つの同時に送信される無線周波数信号を生成し、それは、直交偏波、すなわち、x偏波及びy偏波で送信され、一方は、第1の送信機71から発信され、他方は、第2の送信機72から発信される。各送信経路74,75の信号結合器82,84及び移相器80,81のシフトされた位置によって引き起こされる第3の構造との違いは、送信信号tx1と送信信号tx2との間の改善された分離である。
【0040】
当業者には明らかなように、アンテナ装置は、無線周波数信号を受信するためにも使用することができる。第3の構造によるアンテナ装置50及び第4の構造によるアンテナ装置70では、パッチ65,77の二つの偏波間の固有の分離により、送信信号tx1が送信機TX2のインピーダンスと無関係である。これにより、アクティブでない経路でのインピーダンス整合が不十分になることなく異なる偏波で又は時分割モードで信号を同時に送受信することができる。
【0041】
その結果、本発明によれば、アンテナアレイは、両方の偏波で全てのチャネルからの電力を送信しながらビーム方向及び偏波の両方を制御するために多数のビームフォーミングチャネルを利用できるように設計される。二つの送信機を使用するとともに信号結合器を組み込むことにより、二つの送信機の相互の偏波を制御することができる。
【0042】
以前の解決に対するこの解決の利点の一つは、二つの偏波で2倍の電力を送信できることである。
【0043】
本発明を図面及び上記の説明において詳細に例示及び説明したが、そのような例示及び説明は、実例又は回折のためのものであり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。
【0044】
開示された実施形態に対する他の変形を、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許発明を実施する当業者によって理解することができるとともに実施することができる。請求項において、「備える」という語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載したいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の測定値が相互に異なる従属クレームに記載されているという単なる事実は、これらの測定値の組合せを有利に使用できないことを示すものではない。特許請求の範囲内の参照記号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】