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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】質量分析のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20221028BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20221028BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20221028BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N30/72 C
H01J49/04 310
H01J49/00 310
H01J49/00 360
H01J49/00 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512786
(86)(22)【出願日】2020-08-22
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 IB2020057883
(87)【国際公開番号】W WO2021038418
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/894,356
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ル ブランク, イブ
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041DA18
2G041EA04
2G041GA03
2G041GA09
(57)【要約】
一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、イオン源デバイスが、液体サンプル送達デバイスから水性移動相溶液を受容し、その化合物をイオン化し、イオンビームを生成する。タンデム質量分析計が、既知の水性移動相溶液化合物に対応する2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、イオンビームに対して中性損失または前駆イオン走査を実施する。2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値が、これらの測定値がオリフィス汚染を示す閾値時間を決定するために、以前に記憶された強度と比較される。閾値時間が、次いで、既知の着目化合物のm/z値および2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および閾値時間に基づいて、バッチサンプルの既知の着目化合物に関して予測される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための装置であって、
イオン源デバイスであって、前記イオン源デバイスは、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、前記液体サンプル送達デバイスから水性移動相溶液を受容し、前記水性移動相溶液の化合物をイオン化し、水性移動相溶液化合物のイオンビームを生成する、イオン源デバイスと、
タンデム質量分析計であって、前記タンデム質量分析計は、前記一連のバッチサンプルの各サンプルが、前記液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、前記イオン源デバイスから前記水性移動相溶液化合物のイオンビームを受容し、前記イオンビームの既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なる質量/電荷比(m/z)値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施し、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値を生成し、メモリデバイス内に前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の前記測定された強度および時間を記憶し、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度がタンデム質量分析計のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される閾値時間が、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの前記測定された強度を、前記メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較し、既知の着目化合物のm/z値および前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および前記閾値時間に基づいて、前記バッチサンプルの既知の着目化合物の強度が前記オリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間を予測する、タンデム質量分析計と
を備える、装置。
【請求項2】
ディスプレイデバイスをさらに備え、前記タンデム質量分析計は、前記既知の着目化合物の強度が前記オリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間を前記ディスプレイデバイス上に表示する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記タンデム質量分析計はさらに、前記既知の着目化合物の強度が前記オリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間の前に、前記タンデム質量分析計を清浄にするための警告を前記ディスプレイデバイス上に表示する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記一連のバッチサンプルの各サンプルが、前記液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、前記タンデム質量分析計は、2つまたはそれを上回る期間にわたる前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンの各測定された強度の変化率が、閾値変化率を下回って減少するまで、前記2つまたはそれを上回る期間において前記中性損失または前駆イオン走査を実施する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記2つまたはそれを上回る期間にわたる前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンの各測定された強度の前記変化率が、変化率の前記閾値変化率を下回って減少するとき、前記タンデム質量分析計は、メモリデバイス内に前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の前記2つまたはそれを上回る期間のうちの最新のものからの測定された強度および時間を記憶する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記2つまたはそれを上回る期間にわたる前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンの各測定された強度の前記変化率が、変化率の前記閾値変化率を下回って減少するとき、前記タンデム質量分析計は、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が前記オリフィスの汚染に起因して前記閾値強度を下回って低減される閾値時間が、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の前記2つまたはそれを上回る期間のうちの最新のものからの測定された強度を、前記メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記水性移動相溶液化合物は、既知の溶媒の二量体、三量体、または四量体を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記既知の水性移動相溶液化合物は、既知の溶媒を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記既知の溶媒は、メタノールを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記既知の溶媒は、アセトニトリルを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記既知の溶媒は、イソプロピルアルコール(IPA)またはアセトンのうちの1つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記既知の水性移動相溶液化合物は、既知の移動相添加剤を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記既知の移動相添加剤は、蟻酸、酢酸、および蟻酸アンモニウムのうちの1つを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための方法であって、
プロセッサを使用して、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、前記液体サンプル送達デバイスから水性移動相溶液を受容し、前記水性移動相溶液の化合物をイオン化し、水性移動相溶液化合物のイオンビームを生成するようにイオン源デバイスに命令することと、
前記一連のバッチサンプルの各サンプルが、前記液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、前記イオン源デバイスから前記水性移動相溶液化合物のイオンビームを受容し、前記イオンビームの既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なる質量/電荷比(m/z)値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施し、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値を生成し、メモリデバイス内に前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の前記測定された強度および時間を記憶するようにタンデム質量分析計に命令することと、
前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が前記タンデム質量分析計のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される閾値時間が、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの前記測定された強度を、前記メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較することと、
前記プロセッサを使用して、既知の着目化合物のm/z値および前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および前記閾値時間に基づいて、前記バッチサンプルの既知の着目化合物の強度が前記オリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間を予測することと
を含む、方法。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品は、非一過性および有形コンピュータ可読記憶媒体を備え、前記非一過性および有形コンピュータ可読記憶媒体は、そのコンテンツが、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための方法を実施するために、プロセッサ上で実行されている命令を伴うプログラムを含み、前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つまたはそれを上回る明確に異なるソフトウェアモジュールを備え、前記明確に異なるソフトウェアモジュールは、制御モジュールと、分析モジュールとを備える、ことと、
前記制御モジュールを使用して、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、前記液体サンプル送達デバイスから水性移動相溶液を受容し、前記水性移動相溶液の化合物をイオン化し、水性移動相溶液化合物のイオンビームを生成するようにイオン源デバイスに命令することと、
前記制御モジュールを使用して、前記一連のバッチサンプルの各サンプルが、前記液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、前記イオン源デバイスから前記水性移動相溶液化合物のイオンビームを受容し、前記イオンビームの既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なる質量/電荷比(m/z)値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施し、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値を生成し、メモリデバイス内に前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の前記測定された強度および時間を記憶するようにタンデム質量分析計に命令することと、
前記分析モジュールを使用して、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が前記タンデム質量分析計のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される閾値時間が、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで、前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの前記測定された強度を、前記メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較することと、
前記分析モジュールを使用して、既知の着目化合物のm/z値および前記2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および前記閾値時間に基づいて、前記バッチサンプルの既知の着目化合物の強度が前記オリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間を予測することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、その内容が、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2019年8月30日に出願された、米国仮特許出願第62/894,356号の利益を主張する。
【0002】
緒言
本明細書の教示は、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための質量分析装置に関する。より具体的には、イオン源デバイスおよびタンデム質量分析計が、一連のバッチサンプルの各サンプルが、既知の化合物に関して分析される前に、液体サンプル送達デバイスの水性移動相溶液のプロトン化溶媒関連イオンを測定するために使用される。プロトン化溶媒関連イオンの測定値は、既知の化合物の測定値がタンデム質量分析計のオリフィスの汚染によって影響を受けるであろうときを予測するために使用される。
【0003】
本明細書に開示される装置および方法は、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または図1のコンピュータシステム等のコンピュータシステムと併せて実施されることができる。
【背景技術】
【0004】
質量分析の背景技術
質量分析(MS)は、化学化合物から形成されるイオンのm/z値の分析に基づく、それらの化合物の検出および定量化のための分析技法である。MSは、前駆イオンを生成する、サンプルからの1つまたはそれを上回る着目化合物のイオン化と、前駆イオンの質量分析とを伴う。
【0005】
タンデム質量分析計または質量分析/質量分析(MS/MS)は、サンプルからの1つまたはそれを上回る着目化合物のイオン化と、1つまたはそれを上回る化合物の1つまたはそれを上回る前駆イオンの選択と、生成イオンへの1つまたはそれを上回る前駆イオンの断片化と、生成イオンの質量分析とを伴う。
【0006】
MSおよびMS/MSの両方は、定性的および定量的情報を提供することができる。測定された前駆または生成イオンスペクトルは、着目分子を同定するために使用されることができる。前駆イオンおよび生成イオンの強度もまた、サンプル中に存在する化合物の量を定量化するために使用されることができる。
タンデム質量分析は、多くの異なるタイプの走査モードを使用して実施されることができる。例えば、四重極タンデム質量分析計は、典型的には、生成イオン走査、中性損失走査、前駆イオン走査、および選択的反応監視(SRM)または多重反応監視(MRM)走査を実施することができる。
【0007】
生成イオン走査は、典型的には、上記に説明されるMS/MS方法に従う。前駆イオンの集合が、四重極質量フィルタによって選択される。集合の前駆イオンはそれぞれ、四重極衝突セル内で断片化される。前駆イオン毎の結果として生じる生成イオンは全て、次いで、選択され、四重極質量分析器を使用して質量分析され、前駆イオン毎に生成イオンスペクトルを生成する。生成イオン走査が、例えば、特定の前駆イオンの生成物の全てを同定するために使用される。
【0008】
中性損失走査では、第1の質量分析器(Q1)および第2の質量分析器(Q3)の両方が、固定質量だけ離れた質量範囲を走査する。Q1四重極によって選定された前駆イオンが、規定された中性損失(固定質量)を喪失することによって断片化する場合、応答または強度およびm/zが、前駆イオンに関して観察または測定される。本走査は、前駆イオンの存在を確認するために、またはより一般的には、共通の中性損失を共有する化合物を同定するために使用される。
【0009】
前駆イオン走査では、Q3の第2の質量分析器は、規定された質量/電荷比において固定され、具体的生成イオンを透過させ、Q1の質量分析器は、ある質量範囲を走査する。具体的生成イオンが、見出される場合、応答または強度およびm/zが、前駆イオンに関して観察または測定される。本走査は、前駆イオンの存在を確認するために、またはより一般的には、共通の生成イオンを共有する化合物を同定するために使用される。
【0010】
SRMまたはMRM走査では、少なくとも1つの前駆イオンおよび生成イオン対が、前もって既知である。四重極質量フィルタは、次いで、1つの前駆イオンを選択する。四重極衝突セルは、前駆イオンを断片化する。しかしながら、前駆イオンおよび生成イオン対の生成イオンのm/zを伴う生成イオンのみが、選択され、四重極質量分析器を使用して質量分析され、前駆イオンおよび生成イオン対の生成イオンに関する強度を生成する。言い換えると、1つの生成イオンのみが、監視される。SRMまたはMRM走査は、例えば、主として、定量化のために使用される。
液体サンプル送達デバイスの背景技術
【0011】
図2は、質量分析計に関する液体サンプル送達デバイス200の例示的略図である。液体サンプル送達デバイス200は、2つの別個のデバイスを含む。これは、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)デバイス210と、直接注入または投入デバイス220とを含む。
【0012】
HPLCデバイス210では、2つの溶媒211または212のうちの1つが、弁215を使用して選択される。溶媒211または212は、それぞれ、ポンプ213および214を使用して、弁215に移動される。サンプル216が、ミキサ217を使用して、選択された溶媒と混合され、結果として生じる混合物は、液体クロマトグラフィ(LC)カラム218を通して送出される。サンプル216は、例えば、オートサンプラ219を使用して選択される。
【0013】
直接注入または投入デバイス220では、サンプルは、流体ポンプ221内で溶媒とすでに混合されている。流体ポンプ221は、シリンジポンプとして示されるが、任意のタイプのポンプであり得る。
【0014】
HPLCデバイス210または直接注入または投入デバイス220の使用は、弁230を使用して選択される。選択された混合物または移動相組成物は、弁230から質量分析計(図示せず)のイオン源(図示せず)に送出される。
【0015】
移動相添加剤(図示せず)もまた、LCカラム218の前のHPLCデバイス210の混合物に、または直接注入または投入デバイス220の流体ポンプ221内にすでにある混合物に添加されることができる。
バッチ実行汚染問題
【0016】
液体サンプル送達デバイスが質量分析計に結合されるときに遭遇される1つの問題は、質量分析計のオリフィスの汚染である。具体的には、本汚染は、経時的なオリフィス上の電荷の蓄積である。電荷の本蓄積は、液体サンプル送達デバイスによって提供されるサンプルの連続的イオン化に起因する。オリフィスが、電荷蓄積に起因して汚染されるにつれて、低質量サンプル化合物の強度が、質量分析計によって検出可能ではない点まで影響を受け始める。最終的に、液体サンプル送達デバイスの移動相から検出されるより高質量のイオンでさえもまた、付加的電荷蓄積がオリフィス上に蓄積されるにつれて、遮断され、透過されない。結果として、結合されたシステムの全体的性能は、経時的に劣化する。
【0017】
現在、液体サンプル送達結合質量分析計システムの性能が劣化しているかどうか、および性能が劣化している率を査定することは、困難である。殆どの液体サンプル送達結合質量分光分析は、バッチモードにおいて実施される。これは、多数の(>100)サンプル実験が、システムによって連続して分析されることを意味する。典型的には、システムの性能は、バッチ実行の開始に先立ってのみ査定される。システムの性能が、バッチ実行の持続時間にわたって維持されるであろうことが予期される。加えて、性能のいずれの損失も、バッチサンプルへの内部標準の添加によって補正され得ることが予期される。
【0018】
これらの条件下では、質量分析測定の感度の損失に起因して、バッチ実行が、適切に完了せず、データが、破棄される状況に陥ることは、珍しくない。これは、サンプルの高価かつ時間のかかる再分析につながる。結果として、付加的システムおよび方法が、バッチ分析の間に液体サンプル送達結合質量分析システムの性能を査定し、質量分析計のオリフィス汚染がサンプル分析に影響を及ぼすであろうときを予測するために必要とされる。
【0019】
国際特許出願公開第WO2017034972号(以降では「第’972号公開」)は、大気圧イオン化(API)システムの性能を監視する方法を説明している。具体的には、第’972号公開は、APIシステムにおいて形成されるイオン分子クラスタが監視される方法を提供する。いったんイオン分子クラスタが、同定されると、これは、SRM走査を使用して、サンプルイオンとともに監視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2017034972号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための装置、方法、およびコンピュータプログラム製品が、開示される。本装置は、イオン源デバイスと、タンデム質量分析計とを含む。
【0022】
一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、イオン源デバイスは、液体サンプル送達デバイスから水性移動相溶液を受容し、水性移動相溶液の化合物をイオン化する。水性移動相溶液化合物のイオンビームが、生成される。
【0023】
また、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、タンデム質量分析計は、イオン源デバイスから水性移動相溶液化合物のイオンビームを受容する。タンデム質量分析計は、イオンビームの既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なるm/z値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施する。2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値が、生成される。タンデム質量分析計は、メモリデバイス内に2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の測定された強度および時間を記憶する。
【0024】
タンデム質量分析計は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度を、メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較する。比較は、閾値時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで実施される。閾値時間は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が、タンデム質量分析計のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される時間である。最後に、タンデム質量分析計は、バッチサンプルの既知の着目化合物の強度がオリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間を予測する。予測は、既知の着目化合物のm/z値および2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および閾値時間に基づく。
【0025】
本出願人の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
当業者は、下記に説明される図面が、例証のみを目的とすることを理解するであろう。図面は、いかようにも本教示の範囲を限定することを意図していない。
【0027】
図1図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステムを図示する、ブロック図である。
【0028】
図2図2は、質量分析計に関する液体サンプル送達デバイスの例示的略図である。
【0029】
図3図3は、種々の実施形態による、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための装置の概略図である。
【0030】
図4図4は、種々の実施形態による、質量分析計のオリフィス汚染が最初に既知の着目化合物に影響を及ぼすであろうときを予測するために、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、診断実験が実施される方法を示す、概略図である。
【0031】
図5図5は、種々の実施形態による、時間の関数としてプロットされる、既知の水性移動相溶液化合物に対応する3つの前駆イオンの仮説的強度の例示的プロットであり、仮説的強度がそれぞれ、オリフィス汚染によって影響を受ける様子を示す。
【0032】
図6図6は、種々の実施形態による、それらの仮説的閾値時間の関数としてプロットされる、既知の水性移動相溶液化合物に対応する3つの前駆イオンの仮説的m/z値の例示的プロットであり、これらのm/z値および閾値時間が、既知の着目化合物の閾値時間を予測するために使用され得る方法を示す。
【0033】
図7図7は、種々の実施形態による、サンプル分析の前、サンプル分析の間、およびサンプル分析の後の領域を示す、メタノールに関する中性損失クロマトグラムの例示的プロットである。
【0034】
図8図8は、種々の実施形態による、液体サンプル送達デバイスが動作の定常状態に到達したかどうかを決定するための、サンプルが液体サンプル送達デバイスの中に導入される前の複数の中性損失または前駆イオン走査を示す、概略図である。
【0035】
図9図9は、種々の実施形態による、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための方法を示す、フローチャートである。
【0036】
図10図10は、種々の実施形態による、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための方法を実施する1つまたはそれを上回る明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システムの概略図である。
【0037】
本教示の1つまたはそれを上回る実施形態が、詳細に説明される前に、当業者は、本教示が、それらの適用において、以下の詳細な説明に記載される、または図面に図示される、構造の詳細、コンポーネントの配列、およびステップの配列に限定されないことを理解するであろう。また、本明細書に使用される語句および専門用語が、説明を目的とし、限定として見なされるべきではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0038】
種々の実施形態の説明
コンピュータ実装システム
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を図示する、ブロック図である。コンピュータシステム100は、バス102または情報を通信するための他の通信機構と、情報を処理するためにバス102と結合される、プロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令を記憶するためにバス102に結合される、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得る、メモリ106を含む。メモリ106はまた、プロセッサ104によって実行されるべき命令の実行の間に一時変数または他の中間情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータシステム100はさらに、プロセッサ104に関する静的情報および命令を記憶するためにバス102に結合される、読取専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスを含む。磁気ディスクまたは光学ディスク等の記憶デバイス110が、提供され、情報および命令を記憶するためにバス102に結合される。
【0039】
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、ブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112にバス102を介して結合されてもよい。英数字および他のキーを含む、入力デバイス114が、情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するためにバス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信し、ディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御装置116である。本入力デバイスは、典型的には、本デバイスが平面内の位置を規定することを可能にする、2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)における2自由度を有する。
【0040】
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装と一貫して、結果が、プロセッサ104がメモリ106内に含有される1つまたはそれを上回る命令の1つまたはそれを上回るシーケンスを実施することに応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ可読媒体からメモリ106に読み込まれてもよい。メモリ106内に含有される命令のシーケンスの実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを実施させる。代替として、有線回路が、本教示を実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて使用されてもよい。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の具体的組み合わせに限定されない。
【0041】
種々の実施形態では、コンピュータシステム100は、ネットワーク化システムを形成するために、ネットワークを横断して、コンピュータシステム100のような1つまたはそれを上回る他のコンピュータシステムに接続されることができる。ネットワークは、私設ネットワークまたはインターネット等の公衆ネットワークを含むことができる。ネットワーク化システムでは、1つまたはそれを上回るコンピュータシステムが、データを記憶し、他のコンピュータシステムにサービス提供することができる。データを記憶およびサービス提供する1つまたはそれを上回るコンピュータシステムは、クラウドコンピューティングシナリオでは、サーバまたはクラウドと称され得る。1つまたはそれを上回るコンピュータシステムは、例えば、1つまたはそれを上回るウェブサーバを含むことができる。データをサーバまたはクラウドに、およびそれから送信および受信する他のコンピュータシステムは、例えば、クライアントまたはクラウドデバイスと称され得る。
【0042】
本明細書に使用されるような用語「コンピュータ可読媒体」は、実行のためにプロセッサ104に命令を提供することに関わる、任意の媒体を指す。そのような媒体は、限定ではないが、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含む、多くの形態をとってもよい。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス102を備えるワイヤを含む、同軸ケーブル、銅ワイヤ、および光ファイバを含む。
【0043】
コンピュータ可読媒体またはコンピュータプログラム製品の一般的な形態は、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD-ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、Blu-ray(登録商標) Disc、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、またはそれからコンピュータが読み取り得る任意の他の有形媒体を含む。
【0044】
種々の形態のコンピュータ可読媒体が、実行のためにプロセッサ104に1つまたはそれを上回る命令の1つまたはそれを上回るシーケンスを搬送することに関与してもよい。例えば、命令は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で搬送されてもよい。遠隔コンピュータは、モデムを使用して、電話回線を経由して、命令をその動的メモリにロードし、命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルのモデムが、電話回線上でデータを受信し、赤外線送信機を使用し、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合される赤外線検出器が、赤外線信号において搬送されるデータを受信し、データをバス102上に置くことができる。バス102は、データをメモリ106に搬送し、そこから、プロセッサ104は、命令を読み出し、実行する。メモリ106によって受信された命令は、随意に、プロセッサ104による実行の前または後のいずれかで、記憶デバイス110上に記憶されてもよい。
【0045】
種々の実施形態によると、方法を実施するためにプロセッサによって実行されるように構成される命令が、コンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータ可読媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであり得る。例えば、コンピュータ可読媒体は、ソフトウェアを記憶するための当技術分野において公知であるようなコンパクトディスク読取専用メモリ(CD-ROM)を含む。コンピュータ可読媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
【0046】
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。これは、網羅的ではなく、本教示を開示される精密な形態に限定しない。修正および変形例が、上記の教示に照らして可能性として考えられる、または本教示の実践から入手され得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェアのみで実装されてもよい。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向プログラミングシステムの両方を用いて実装されてもよい。
オリフィス汚染を予測するための装置
【0047】
上記に説明されるように、液体サンプル送達デバイスが質量分析計に結合されるときに遭遇される1つの問題は、質量分析計のオリフィスの汚染である。具体的には、本汚染は、経時的なオリフィス上の電荷の蓄積である。電荷の本蓄積は、液体サンプル送達デバイスによって提供されるサンプルの連続的イオン化に起因し、電荷の本蓄積は、結合されたシステムの全体的性能を経時的に低減させ得る。
【0048】
殆どの液体サンプル送達結合質量分光分析は、バッチモードにおいて実施され、典型的には、システムの性能は、バッチ実行の開始に先立ってのみ査定される。これらの条件下では、質量分析測定の感度の損失に起因して、バッチ実行が、適切に完了せず、データが、破棄される状況に陥ることは、珍しくない。これは、サンプルの高価かつ時間のかかる再分析につながる。
【0049】
結果として、付加的システムおよび方法が、バッチ分析の間に液体サンプル送達結合質量分析システムの性能を査定し、質量分析計のオリフィス汚染がサンプル分析に影響を及ぼすであろうときを予測するために必要とされる。第’972号公開は、大気圧イオン化(API)システムの性能を監視し、サンプルが以前に正しく実行されたかどうかを決定するための方法を説明している。しかしながら、第’972号公開は、質量分析計のオリフィス汚染がサンプル分析に影響を及ぼすであろうときを予測することを対象としていない。その結果、付加的方法が、バッチ分析の間に質量分析計のオリフィス汚染がサンプル分析に影響を及ぼすであろうときを予測するために必要とされる。
【0050】
種々の実施形態では、装置および方法が、サンプルの既知の着目化合物の強度が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときを予測するために提供される。一連のバッチサンプルの各サンプルの前に、本装置および方法は、2つまたはそれを上回る既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なるm/z値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、2回またはそれを上回る中性損失または前駆イオン走査を実施する。2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値が、取得および記憶される。
【0051】
2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の現在の強度測定値は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が、閾値強度を下回って低減される、閾値時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで、以前に記憶された強度測定値と比較される。言い換えると、強度が、最初に、質量分析計のオリフィス汚染に起因して低減される、閾値時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出される。
【0052】
バッチサンプルの既知の着目化合物の強度が低減されるときの時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および閾値時間に基づいて、予測される。言い換えると、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンは、既知の着目化合物の前にオリフィス汚染によって影響を受けるため、既知の着目化合物が影響を受ける時間が、これが起こる前に予測されることができる。
【0053】
時間の関数として感度損失を査定する本能力は、システムが保守のために停止される必要がある時間に関する指針を提供する、またはサンプル導入の関数としての減衰率に基づいて、ユーザがそれらのバッチを停止するべきであるときを予測する。例えるなら、これは、ガス欠しそうであるときに作動する警告灯を有するようなものである。次のガソリンスタンドに到着するために十分なガスが、依然として存在するが、その時点で移動の延長を計画するべきではない。
【0054】
LC-MS分析の大部分に関して、例えば、使用される一般的な溶媒は、水およびメタノールまたは水およびアセトニトリルの混合物である。付加的移動相添加剤または緩衝物が、これらの溶媒と組み合わせて頻繁に使用される。移動相イオンが、エレクトロスプレーイオン化(ESI)または大気圧化学イオン化(APCI)のいずれかにおいて、源によって発生されるとき、源によって自然に発生される一連のプロトン化溶媒関連イオン(および二量体、三量体、および四量体)を監視することが、可能である。これらの溶媒関連イオンは、概して、着目化合物よりも低い質量またはm/zを有する。殆どの移動相方法によって発生されるこれらの低質量化合物をMS/MSを介して選択的に監視することが、可能である。これらの低質量化合物は、着目化合物よりもフロントエンド汚染に敏感であり、LC-MSシステムが、現在監視されている1つまたはそれを上回る着目化合物と関連付けられる信号を失うであろう時点を予測するために使用されることができる。
【0055】
例えば、m/z41(アセトニトリルの質量)の前駆イオン走査を実施することによって、41~200m/zに及ぶ一連の低質量イオンが、経時的にシステムの感度を追跡するために使用されることができる。オリフィスが、電荷蓄積に起因して汚染されるにつれて、低質量化合物の強度は、検出されない点まで影響を受けるであろう。最終的に、移動相から検出されるより高質量のイオンでさえもまた、付加的電荷蓄積がオリフィス上に蓄積されるにつれて、遮断され、透過されないであろう。
【0056】
種々の実施形態では、これらの質量の消失率を使用して、他の質量が本蓄積によって影響を受けるであろう点を予測することが、可能である。MS/MS走査(前駆イオン走査または中性損失走査)の使用は、スペクトルを大幅に簡略化し、オリフィス汚染を追跡するために使用され得るいくつかのみの信頼性のある質量をもたらす。
【0057】
種々の実施形態では、本MS/MS情報は、各サンプル分析の前に(例えば、オートサンプラがサンプルを選んでいるときに)収集される。サンプルのバッチの一部である各サンプルの前にこれらの低質量の感度を経時的に監視することによって、システムがある点を越えて性能を損失するであろうときを予測することが、可能である。本情報は、汚染がそれらのアッセイに悪影響を及ぼすであろうときをユーザに知らせ、質量分析計が「清浄にされる」べきであるときの時間をユーザに提案するために使用される。
【0058】
種々の実施形態では、本診断情報は、ユーザによって供給される情報を殆どまたは全く伴わない非依存的方法で提供される。本診断情報は、任意のバッチ分析において通常提供される実験条件に基づいて、および典型的な水性移動相溶液についての既知の情報に基づいて提供される。
汚染予測装置
【0059】
図3は、種々の実施形態による、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための装置の概略図300である。本装置は、イオン源デバイス310と、タンデム質量分析計320とを含む。
【0060】
イオン源デバイス310は、好ましくは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源デバイスまたは大気圧化学イオン化(APCI)イオン源デバイスである。種々の代替実施形態では、イオン源デバイス310は、任意のタイプのイオン源デバイスであり得る。
【0061】
タンデム質量分析計320は、好ましくは、三段四重極(QqQ)デバイスまたは四重極四重極線形イオントラップ(QqLIT)デバイスである。種々の代替実施形態では、タンデム質量分析計320は、中性損失走査または擬似中性損失走査を実施することが可能な任意のタイプのタンデム質量分析計であり得る。例えば、四重極飛行時間デバイス(QTOF)が、擬似中性損失走査が、厳密なm/z偏移に基づく低高衝突エネルギー(CE)走査および整合を実施することによって行われ得る場合に使用されることができる。
【0062】
一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入される前に、イオン源デバイス310は、液体サンプル送達デバイス330から水性移動相溶液を受容し、水性移動相溶液の化合物をイオン化し、水性移動相溶液化合物のイオンビームを生成する。液体サンプル送達デバイス330は、例えば、図2の液体サンプル送達デバイスである。
【0063】
また、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入される前に、タンデム質量分析計320は、イオン源デバイス310から水性移動相溶液化合物のイオンビームを受容する。タンデム質量分析計320は、イオンビームの既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なる質量/電荷比(m/z)値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施し、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値を生成する。タンデム質量分析計320は、メモリデバイス(図示せず)内に2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の測定された強度および時間を記憶する。メモリデバイスは、例えば、プロセッサ340のメモリデバイスであり得る。
【0064】
タンデム質量分析計320は、閾値時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度を、メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較する。閾値時間は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が、タンデム質量分析計320のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される時間である。最後に、タンデム質量分析計320は、既知の着目化合物のm/z値および2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および閾値時間に基づいて、バッチサンプルの既知の着目化合物の強度がオリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間を予測する。
【0065】
図4は、種々の実施形態による、質量分析計のオリフィス汚染が最初に既知の着目化合物に影響を及ぼすであろうときを予測するために、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、診断実験が実施される方法を示す、概略図400である。例えば、診断実験410が、一連のバッチサンプルのサンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入される前に実施される。
【0066】
上記に説明されるように、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入される前に、タンデム質量分析計320は、既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なる質量/電荷比(m/z)値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施し、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値を生成する。診断実験410において、タンデム質量分析計320は、既知の水性移動相溶液化合物に関する中性損失または前駆イオン走査を実施する。中性損失または前駆イオンスペクトル411が、生成され、3つの異なる前駆イオンに関する強度を示す。
【0067】
診断実験410の後、サンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入され、サンプル実験420が、実施される。サンプル実験420において、液体サンプル送達デバイス330のオートサンプラは、サンプル1を選択し、本サンプルは、LC-MSを使用して分析される。例えば、クロマトグラム421が、サンプル1のLC-MS分析から生成される。
【0068】
サンプル実験420の後、診断実験430が、水性移動相溶液のみに対して実施される。診断実験430において、タンデム質量分析計320は、再び、既知の水性移動相溶液化合物に関する同一の中性損失または前駆イオン走査を実施する。中性損失または前駆イオンスペクトル431が、生成され、再び、3つの異なる前駆イオンに関する強度を示す。
【0069】
診断実験430において、スペクトル431の3つの異なる前駆イオンの強度は、スペクトル411の3つの異なる前駆イオンの強度と比較される。これらの強度は、3つの異なる前駆イオンのうちの1つまたはそれを上回るものに関する閾値時間を見出すために比較される。上記に説明されるように、閾値時間は、前駆イオンの測定された強度が、タンデム質量分析計320のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される時間である。
【0070】
スペクトル431をスペクトル411と比較することは、第1の前駆イオンの強度が、実験410においてよりも実験430において有意に低いことを示す。客観的に、本強度が、閾値強度を下回る場合、本第1の前駆イオンは、実験430の間に閾値時間を有することが見出される。言い換えると、スペクトル431の第1の前駆イオンは、実験430の間にタンデム質量分析計320のオリフィスの汚染に起因して低減されることが見出される。
【0071】
しかしながら、サンプル分析が、継続する。例えば、別のサンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入され、サンプル実験440が、実施される。サンプル実験440において、液体サンプル送達デバイス330のオートサンプラは、サンプル2を選択し、本サンプルは、LC-MSを使用して分析される。例えば、クロマトグラム441が、サンプル2のLC-MS分析から生成される。
【0072】
サンプル実験が続く診断実験は、閾値時間が、例えば、スペクトル431の3つの前駆イオン毎に見出されるまで継続する。いったん閾値時間が、3つの前駆イオン毎に見出されると、タンデム質量分析計320は、バッチサンプルにおける既知の着目化合物もまたオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときの時間を予測する。例えば、これは、既知の着目化合物のm/z値および3つの前駆イオンの閾値時間およびm/z値から既知の着目化合物の閾値時間を外挿する。
【0073】
上記に説明されるように、より低いm/z値を伴うイオンは、より高いm/z値を伴うイオンの前にオリフィス汚染によって影響を受ける。結果として、既知の着目化合物のm/z値が、使用される前駆イオンのm/z値を上回る限り、既知の着目化合物の汚染が、これが起こる前に、またはこれが現在分析されているバッチに対して悪影響を及ぼす前に予測されることができる。
【0074】
図5は、種々の実施形態による、時間の関数としてプロットされる、既知の水性移動相溶液化合物に対応する3つの前駆イオンの仮説的強度の例示的プロット500であり、仮説的強度がそれぞれ、オリフィス汚染によって影響を受ける様子を示す。3つの前駆イオンの強度は、例えば、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に挿入される前に、前駆イオン走査を使用して、仮説的に測定された。強度510、520、および530は、それぞれ、41、110、および230のm/z値を伴う前駆イオンに関するものである。図5は、41m/zにおける前駆イオンの強度510が、時間10において10%を上回る閾値強度を下回って減少することを示す。本時間は、41m/zにおける前駆イオンに関する閾値時間である。同様に、図5は、110m/zにおける前駆イオンが、27の閾値時間を有し、230m/zにおける前駆イオンが、57の閾値時間を有することを示す。これらの3つの前駆イオンのそれぞれのm/z値および閾値時間から、既知のm/z値を伴う既知の着目化合物に関する閾値時間が、予測されることができる。
【0075】
図6は、種々の実施形態による、それらの仮説的閾値時間の関数としてプロットされる、既知の水性移動相溶液化合物に対応する3つの前駆イオンの仮説的m/z値の例示的プロット600であり、これらのm/z値および閾値時間が、既知の着目化合物の閾値時間を予測するために使用され得る方法を示す。前駆イオン610は、41のm/z値と、10の閾値時間とを有する。前駆イオン620は、110のm/z値と、27の閾値時間とを有する。前駆イオン630は、230のm/z値と、57の閾値時間とを有する。
【0076】
一連のバッチサンプルにおける既知の着目化合物640が、400のm/z値を有する場合、その閾値時間またはこれが汚染によって影響を受けるときの時間が、これらの前駆イオン値から予測されることができる。例えば、図6の前駆イオン610、620、および630は、汚染の閾値時間が、m/z値に伴って線形に変動するように見えることを示す。結果として、400のm/z値を伴う既知の着目化合物640の汚染の閾値時間は、前駆イオン610、620、および630の値から外挿することによって見出されることができる。本線形外挿から、既知の着目化合物640の閾値時間は、100であると見出される。言い換えると、前駆イオン610、620、および630のm/zおよび閾値時間値から、既知の着目化合物640が、時間100においてオリフィス汚染によって影響を受けることが予測される。
【0077】
図3に戻ると、種々の実施形態では、本装置はさらに、ディスプレイデバイスを含み、タンデム質量分析計320は、既知の着目化合物の強度がオリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間をディスプレイデバイス上に表示する。ディスプレイデバイスは、例えば、プロセッサ340のディスプレイデバイスであり得る。
【0078】
種々の実施形態では、タンデム質量分析計320はさらに、既知の着目化合物の強度がオリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間の前に、タンデム質量分析計320を清浄にするための警告をディスプレイデバイス上に表示する。
【0079】
図7は、種々の実施形態による、サンプル分析の前、サンプル分析の間、およびサンプル分析の後の領域を示す、メタノールに関する中性損失クロマトグラムの例示的プロット700である。クロマトグラム710は、サンプル分析の前の領域720と、サンプル分析の後の領域730とを含む。領域730もまた、別の異なるサンプル分析の前の領域である。領域720では、クロマトグラム710は、有意に変化しておらず、したがって、初期定常状態条件を示す。しかしながら、領域730では、クロマトグラム710は、最初に、領域720における強度よりも低い強度を有するが、類似する強度まで上昇する。言い換えると、クロマトグラム710は、領域720において初期定常状態条件にあるが、領域730では、クロマトグラム710は、領域730における初期定常状態条件に類似する条件まで増加している。
【0080】
図7は、サンプル実験の合間に測定された強度が、液体サンプル送達デバイスが動作の定常状態に戻るにつれて、定常状態レベルまで増加するための時間を必要とし得ることを示す。結果として、種々の実施形態では、2回またはそれを上回る中性損失または前駆イオン走査が、サンプル実験の合間に分析されている水性移動相溶液化合物に対応するイオンの強度が、定常状態に到達したかどうかを決定するために実施される。
【0081】
図8は、種々の実施形態による、液体サンプル送達デバイスが動作の定常状態に到達したかどうかを決定するための、サンプルが液体サンプル送達デバイスの中に導入される前の複数の中性損失または前駆イオン走査を示す、概略図800である。例えば、診断実験810、820、および830が、サンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入される前に実施される。
【0082】
各診断実験において、タンデム質量分析計320は、第1の中性損失または前駆イオン走査を実施する。各診断実験の後、2つまたはそれを上回る前駆イオンに関して測定された強度は、以前の診断実験において測定された強度と比較される。例えば、診断実験820において、スペクトル821における3つの前駆イオンの強度は、診断実験810に関するスペクトル811における3つの前駆イオンの強度と比較される。本比較は、これらの強度が、診断実験810から診断実験820まで有意に増加することを示す。言い換えると、最初の2つの診断実験の間のこれらの強度の変化率は、高い。これは、液体サンプル送達デバイス330が、定常状態に到達していないことを意味する。
【0083】
これらの強度の変化率をより客観的に測定するために、各強度の変化率は、閾値変化率と比較される。強度のうちのいずれかの変化率が、閾値変化率を超える場合、液体サンプル送達デバイス330が、定常状態に到達していないと決定される。
【0084】
診断実験810と診断実験820との間のスペクトル821における3つの前駆イオンの強度の変化率は、閾値変化率を超えるため、付加的診断実験830が、実施される。診断実験830において、スペクトル831における3つの前駆イオンの強度は、診断実験820に関するスペクトル821における3つの前駆イオンの強度と比較される。本比較は、これらの強度が、診断実験820から診断実験830までわずかにのみ増加したことを示す。言い換えると、診断実験820と830との間のこれらの強度の変化率は、閾値変化率を下回る。これは、液体サンプル送達デバイス330が、現在定常状態に到達しており、スペクトル831の強度が、既知の着目化合物の測定値がオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときを予測するために使用され得ることを意味する。
【0085】
診断実験830の後、サンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入され、サンプル実験840が、実施され、クロマトグラム841を生成する。付加的サンプル実験が、例えば、サンプル実験840の後に実施される。各サンプル実験の合間に、類似する複数の診断実験が、実施されることができる。
【0086】
より具体的には、図3に戻ると、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイス330の中に導入される前に、タンデム質量分析計320は、2つまたはそれを上回る期間にわたる2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンの各測定された強度の変化率が、閾値変化率を下回って減少するまで、2つまたはそれを上回る期間において中性損失または前駆イオン走査を実施する。
【0087】
種々の実施形態では、2つまたはそれを上回る期間にわたる2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンの各測定された強度の変化率が、変化率の閾値変化率を下回って減少するとき、タンデム質量分析計320は、メモリデバイス(図示せず)内に2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の2つまたはそれを上回る期間のうちの最新のものからの測定された強度および時間を記憶する。
【0088】
また、2つまたはそれを上回る期間にわたる2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンの各測定された強度の変化率が、変化率の閾値変化率を下回って減少するとき、タンデム質量分析計320は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が、オリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される、閾値時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の2つまたはそれを上回る期間のうちの最新のものからの測定された強度を、メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較する。
【0089】
種々の実施形態では、水性移動相溶液化合物は、限定ではないが、既知の溶媒の二量体、三量体、または四量体であり得る。
【0090】
種々の実施形態では、水性移動相溶液化合物は、既知の溶媒である。既知の溶媒は、限定ではないが、メタノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコール(IPA)、またはアセトンであり得る。
【0091】
種々の実施形態では、水性移動相溶液化合物は、既知の移動相添加剤である。既知の移動相添加剤は、限定ではないが、蟻酸、酢酸、または蟻酸アンモニウムであり得る。
【0092】
種々の実施形態では、プロセッサ340は、イオン源デバイス310およびタンデム質量分析計への命令を制御または提供し、収集されたデータを分析するために使用される。プロセッサ340は、例えば、1つまたはそれを上回る電圧、電流、または圧力源(図示せず)を制御することによって、命令を制御または提供する。プロセッサ340は、図3に示されるような別個のデバイスであり得る、またはタンデム質量分析計320の1つまたはそれを上回るデバイスのプロセッサまたはコントローラであり得る。プロセッサ340は、限定ではないが、コントローラ、コンピュータ、マイクロプロセッサ、図1のコンピュータシステム、または制御信号およびデータを送信および受信することが可能な任意のデバイスであり得る。
汚染予測のための方法
【0093】
図9は、種々の実施形態による、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための方法を示す、フローチャート900である。
【0094】
方法900のステップ910において、イオン源デバイスが、プロセッサを使用して、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、液体サンプル送達デバイスから水性移動相溶液を受容し、水性移動相溶液の化合物をイオン化し、水性移動相溶液化合物のイオンビームを生成するように命令される。
【0095】
ステップ920において、タンデム質量分析計が、プロセッサを使用して、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、いくつかのステップを実施するように命令される。これは、イオン源デバイスから水性移動相溶液化合物のイオンビームを受容するように命令される。これは、イオンビームの既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なるm/z値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施し、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値を生成するように命令される。最後に、これは、メモリデバイス内に2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の測定された強度および時間を記憶するように命令される。
【0096】
ステップ930において、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が、プロセッサを使用して、メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較される。本比較は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が、タンデム質量分析計のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される、閾値時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで実施される。
【0097】
ステップ940において、バッチサンプルの既知の着目化合物の強度がオリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間が、プロセッサを使用して、既知の着目化合物のm/z値および2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および閾値時間に基づいて予測される。
汚染予測のためのコンピュータプログラム製品
【0098】
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品が、そのコンテンツが、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行されている命令を伴うプログラムを含む、有形コンピュータ可読記憶媒体を含む。本方法は、1つまたはそれを上回る明確に異なるソフトウェアモジュールを含むシステムによって実施される。
【0099】
図10は、種々の実施形態による、既知の着目化合物の測定値が質量分析計のオリフィス汚染によって影響を受けるであろうときをバッチサンプル分析の間に予測するための方法を実施する1つまたはそれを上回る明確に異なるソフトウェアモジュールを含む、システム1000の概略図である。システム1000は、制御モジュール1010と、分析モジュール1020とを含む。
【0100】
制御モジュール1010は、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、液体サンプル送達デバイスから水性移動相溶液を受容し、水性移動相溶液の化合物をイオン化し、水性移動相溶液化合物のイオンビームを生成するようにイオン源デバイスに命令する。
【0101】
制御モジュール1010は、一連のバッチサンプルの各サンプルが、液体サンプル送達デバイスの中に導入される前に、いくつかのステップを実施するようにタンデム質量分析計に命令する。これは、イオン源デバイスから水性移動相溶液化合物のイオンビームを受容するように命令される。これは、イオンビームの既知の水性移動相溶液化合物に対応する異なるm/z値を伴う2つまたはそれを上回る前駆イオンの強度を測定するために、中性損失または前駆イオン走査を実施し、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の強度測定値を生成するように命令される。最後に、これは、メモリデバイス内に2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎の測定された強度および時間を記憶するように命令される。
【0102】
分析モジュール1020は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度を、メモリデバイス内に記憶された以前に測定された強度と比較する。本比較は、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれの測定された強度が、タンデム質量分析計のオリフィスの汚染に起因して閾値強度を下回って低減される、閾値時間が、2つまたはそれを上回る異なる前駆イオン毎に見出されるまで実施される。
【0103】
分析モジュール1020は、既知の着目化合物のm/z値および2つまたはそれを上回る異なる前駆イオンのそれぞれのm/z値および閾値時間に基づいて、バッチサンプルの既知の着目化合物の強度がオリフィスの汚染に起因して低減されるときの時間を予測する。
【0104】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示が、そのような実施形態に限定されることを意図していない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0105】
さらに、種々の実施形態を説明する際に、本明細書は、方法および/またはプロセスをステップの特定のシーケンスとして提示した場合がある。しかしながら、本方法またはプロセスが、本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない範囲について、本方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに限定されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも、可能性として考えられ得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に対する限定として解釈されるべきではない。加えて、本方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、記載される順序におけるそれらのステップの実施に限定されるべきではなく、当業者は、シーケンスが、変動され得、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内に留まることを容易に理解することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】