(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】新規化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 487/14 20060101AFI20221028BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221028BHJP
A61P 5/24 20060101ALI20221028BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221028BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20221028BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20221028BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
C07D487/14 CSP
A61K31/519
A61P5/24
A61P25/16
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514214
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 US2020049141
(87)【国際公開番号】W WO2021046179
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507401225
【氏名又は名称】イントラ-セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INTRA-CELLULAR THERAPIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,ロバート
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB05
4C050CC05
4C050DD02
4C050EE05
4C050FF01
4C050GG04
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB06
4C086GA20
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA18
4C086ZC11
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、ドパミンD1受容体細胞内経路の障害を伴う疾患、例えば、とりわけ、パーキンソン病、うつ病、ナルコレプシー、精神病、認知機能への障害(例えば統合失調症における)、またはプロゲステロンシグナル伝達経路の増強により寛解し得る障害の治療に有用なPDE1阻害性化合物、ならびに、医薬品としてそれらの使用およびそれらを含む医薬組成物に関する。そのような化合物に関する製造方法および使用方法もさらに記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、式1a:
【化1】
[式中、
(i) R
2およびR
5は、独立して、H、Dまたはヒドロキシであり、R
3およびR
4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する[好ましくは、R
3およびR
4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R
2およびR
3はそれぞれメチルであり、R
4およびR
5はそれぞれHであるか;または、R
2、R
4およびR
5はHであり、R
3はイソプロピルであり[好ましくは、R
3を担持している炭素はR配置を有している];
(ii) R
6は、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C
1-4アルキル、またはC
1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R
10は、C
1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立してCまたはNであり;
ここで、R
2およびR
5は、独立して、Dまたはヒドロキシであるか;または、R
6はヒドロキシ置換フェニルアミノまたはヒドロキシ置換ベンジルアミノであり;
少なくとも1つの炭素原子が炭素14([
14C])で置換されていてもよい]
で示される化合物。
【請求項2】
R
2およびR
5が、独立して、Dまたはヒドロキシである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R
6がヒドロキシ置換フェニルアミノまたはヒドロキシ置換ベンジルアミノである、いずれかの前記請求項に記載の化合物。
【請求項4】
R
6がヒドロキシ置換フェニルアミノである、いずれかの前記請求項に記載の化合物。
【請求項5】
R
2およびR
5が、独立して、H、Dまたはヒドロキシであり、R
3およびR
4が一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する、いずれかの前記請求項に記載の化合物。
【請求項6】
R
2およびR
5がともにDである、いずれかの前記請求項に記載の化合物。
【請求項7】
R
2およびR
5がともにDであり、R
3およびR
4が一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する、いずれかの前記請求項に記載の化合物。
【請求項8】
R
2およびR
5のうち少なくとも1つがヒドロキシである、請求項1~5のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
R
2およびR
5のうち1つがヒドロキシであり、R
3およびR
4が一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する、請求項1~5または8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
R
2がヒドロキシである、請求項1~5または8~9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
R
5がヒドロキシである、請求項1~5または8~9のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化2】
である、前記の請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化3】
である、前記の請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
1個の炭素原子が炭素14([
14C])で置換されている、前記の請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
PDE1阻害剤、例えば請求項1に記載のPDE1阻害剤の代謝を阻害する方法であって、PDE1阻害剤を重水素化して1つ以上の代謝物の形成を阻止することを含む、方法。
【請求項17】
PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の式:
【化5】
で示される化合物である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
PDE1阻害剤の重水素化が、
【化6】
を
【化7】
と反応させて、
【化8】
を形成することを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
該反応が、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、THFおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン中にて行われる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
【化9】
がTHF中にて塩化チオニルと反応して、
【化10】
を形成する、請求項18または19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、以下に記載される式Iaで示されるPDE1阻害性化合物、それらの製造方法、医薬品としてのそれらの使用、およびそれらを含む医薬組成物に関する。これらの化合物は、例えば、ドパミンD1受容体細胞内経路の障害を伴う疾患、例えば、とりわけ、パーキンソン病、うつ病、ナルコレプシー、精神病、認知機能への障害(例えば統合失調症における)、またはプロゲステロンシグナル伝達経路の増強により寛解し得る障害(例えば、女性の性機能障害)の治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホスホジエステラーゼ(PDE)の11のファミリーが同定されているが、Ca2+/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ(CaM-PDE)であるファミリーIのPDEのみが、Ca2+/カルモジュリンによって活性化され、カルシウムおよび環状ヌクレオチド(例えば、cAMPおよびcGMP)シグナル伝達経路を媒介することが示されている。したがって、これらのPDEは、細胞内カルシウムレベルが上昇する刺激状態において活性になり、環状ヌクレオチドの加水分解を増加させることになる。3つの既知のCaM-PDE遺伝子、PDE1A、PDE1BおよびPDE1Cは、全て、中枢神経系組織において発現する。脳内では、PDE1Aの主な発現は皮質および新線条体においてであり、PDE1Bは新線条体、前頭前皮質、海馬および嗅結節において発現し、PDE1Cはより遍在的に発現する。
【0003】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼは、細胞内cAMPおよびcGMPシグナル伝達を、これらの環状ヌクレオチドをそれらのそれぞれの不活性5'-一リン酸(5'AMPおよび5'GMP)に加水分解することにより減少させる。CaM-PDEは、特に大脳基底核または線条体として知られている脳の領域内で、脳細胞におけるシグナル伝達の媒介において重要な役割を果たしている。例えば、NMDA型グルタミン酸受容体活性化および/またはドパミンD2受容体活性化により、細胞内カルシウム濃度が上昇し、カルモジュリン依存性キナーゼII(CaMKII)およびカルシニューリンなどのエフェクターが活性化され、CaM-PDEが活性化され、cAMPおよびcGMPが減少する。一方、ドパミンD1受容体活性化により、ヌクレオチドシクラーゼが活性化され、cAMPおよびcGMPが増加する。これらの環状ヌクレオチドは、次に、DARPP-32(ドパミンおよびcAMP調節性リン酸化タンパク質)およびcAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)などの下流シグナル伝達経路エレメントをリン酸化するプロテインキナーゼA(PKA;cAMP依存性プロテインキナーゼ)および/またはプロテインキナーゼG(PKG;cGMP依存性プロテインキナーゼ)を活性化する。リン酸化DARPP-32は、次に、リン酸タンパク質-1(PP-1)の活性を阻害し、それにより、プロゲステロン受容体(PR)などの基質タンパク質のリン酸化状態を高め、生理学的反応を誘導する。げっ歯動物における研究において、ドパミンD1またはプロゲステロン受容体の活性化を介するcAMPおよびcGMP合成の誘導は、一部のげっ歯動物における交尾に対する受容性に関連するロードシス反応を含む、様々な生理学的反応に関連するプロゲステロンシグナル伝達を増強することが示唆されている。Mani, et al., Science (2000) 287: 1053(その内容は出典明示により本明細書の一部とする)を参照。
【0004】
したがって、CaM-PDEは、大脳基底核(線条体)におけるドパミン調節性および他の細胞内シグナル伝達経路に影響を与えることができ、該細胞内シグナル伝達経路としては、一酸化窒素、ノルアドレナリン、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタミン酸(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、BNP、CNP)、DARPP-32、およびエンドルフィンの細胞内シグナル伝達経路が挙げられるがこれらに限定されない。
【0005】
ホスホジエステラーゼ(PDE)活性、特に、ホスホジエステラーゼ1(PDE1)活性は、脳組織において、自発運動活性および学習および記憶の調節因子として機能している。PDE1は、好ましくは神経系における、細胞内シグナル伝達経路の調節のための治療標的であり、該細胞内シグナル伝達経路としては、ドパミンD1受容体、ドパミンD2受容体、一酸化窒素、ノルアドレナリン、ニューロテンシン、CCK、VIP、セロトニン、グルタミン酸(例えば、NMDA受容体、AMPA受容体)、GABA、アセチルコリン、アデノシン(例えば、A2A受容体)、カンナビノイド受容体、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、ANP、GNP、CNP)、およびエンドルフィンの細胞内シグナル伝達経路、ならびにプロゲステロンシグナル伝達経路が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、PDE1Bの阻害は、cGMPおよびcAMPを分解から保護することによってドパミンD1アゴニストの効果を増強するように作用し、同様に、PDE1活性を阻害することによってドパミンD2受容体シグナル伝達経路を阻害する。細胞内カルシウムレベルの慢性的上昇は、多くの障害において、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病などの神経変性疾患、ならびに脳卒中および心筋梗塞につながる循環器系の障害において、細胞死に関連している。したがって、PDE1阻害剤は、パーキンソン病、下肢静止不能症候群、うつ病、ナルコレプシーおよび認知機能障害などのドパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下を特徴とする疾患に潜在的に有用である。PDE1阻害剤はまた、女性の性機能障害などの、プロゲステロンシグナル伝達の増強によって軽減し得る疾患にも有用である。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、式1aで示される置換4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジンの主要な代謝経路がシクロペンチル環および/またはフェニルアミノ環でのヒドロキシル化によることを予想外に見出した。例えば、以下に示すように、化合物1は代謝して式M-I、M-IIおよびM-IIIで示される化合物を生じる:
【化1】
本発明者らは、さらに、式M-Iで示される代謝物が、化合物1の経口投与後にヒト血漿中の総循環薬物関連物質の84%を占めていることを見出した。
【0007】
理論に拘束されることなく、本発明は、これらの経路によって生じる代謝を特異的に制限および/または防止する化合物を提供する。通常の水素原子(1H)と比較して重水素(2H)原子の特性が非常に類似しているため、水素の代わりに重水素が用いられた薬物化合物は、一般的に非重水素化類似体と同様の生物活性を有するが、薬物動態的特性が改善される可能性があると考えられている。このような置換が薬物動態的活性を過度に著しく損失することなく薬物動態的特性の改善をもたらす程度は様々である。したがって、ある状況では、結果として生じる重水素化化合物は、薬物動態的安定性の適度な増加を示すだけであるが、他の状況では、結果として生じる重水素化化合物は、有意に改善された安定性を有し得る。さらにまた、同時重水素置換の影響を確実に予測することは困難であり得る。これらは、代謝安定性の相加的(相乗的)改善をもたらすかどうか分からない。
【0008】
様々な実施態様において、本発明は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、本発明化合物、例えば、式Iaまたは1.1~1.26のいずれかに従う化合物の有効量を、必要とするヒト患者または動物患者に投与することを含む以下の状態のうちいずれか1つ以上の治療に用いるための種々のPDE1阻害性化合物を提供する:
(i) パーキンソン病、下肢静止不能、振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病および薬物誘発性運動障害を包含する、神経変性疾患;
(ii) うつ病、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極性疾患(bipolar illness)、不安、睡眠障害、例えば、ナルコレプシー、認知機能障害、例えば統合失調症の認知機能障害、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、精神刺激薬離脱および薬物依存を包含する、精神障害;
(iii) 国際出願第PCT/US2014/16741号(その内容は出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている心血管疾患および関連障害を包含する、脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧症、肺高血圧症(例えば、肺動脈性肺高血圧症)および性機能障害を包含する、循環および心血管障害;
(iv) 喘息、慢性閉塞性肺疾患およびアレルギー性鼻炎、ならびに自己免疫および炎症性疾患を包含する、呼吸器および炎症性障害;
(v) 女性の性機能障害などのプロゲステロンシグナル伝達の増強によって軽減され得る疾患;
(vi) 精神病、緑内障または眼内圧亢進などの疾患または障害;
(vii) 外傷性脳損傷;
(viii) 癌または腫瘍、例えば、脳腫瘍、神経膠腫(例えば、上衣腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、脳幹神経膠腫、視神経膠腫、または混合膠腫、例えば乏突起星細胞腫)、星細胞腫(例えば、多形神経膠芽腫)、骨肉腫、黒色腫、白血病、神経芽腫または白血病;
(ix) 腎臓障害、例えば、腎線維症、慢性腎疾患、腎臓不全、糸球体硬化症および腎炎;
(x) PDE1を発現している細胞内での低レベルのcAMPおよび/またはcGMP(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路の阻害)を特徴とする疾患または状態;ならびに/または
(xi) ドパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下を特徴とする疾患または状態。
【0009】
様々な実施態様において、本発明は、以下の化合物:
【化2】
の代謝物の形成を予防する方法であって、該PDE1阻害剤を重水素化して1つ以上の代謝物の形成を阻止することを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明のさらなる実施態様は、以下の詳細な説明および本明細書の実施例に示されるかまたはそれらから明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示の化合物
一の実施態様では、本開示は、本明細書に記載の方法において用いるためのPDE1阻害剤が、エナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体を含む、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、式1a:
【化3】
[式中、
(i) R
2およびR
5は、独立して、H、Dまたはヒドロキシであり、R
3およびR
4は一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成している[好ましくは、R
3およびR
4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]か;または、R
2およびR
3はそれぞれメチルであり、R
4およびR
5はそれぞれHであるか;または、R
2、R
4およびR
5はHであり、R
3はイソプロピルであり[好ましくは、R
3を担持している炭素はR配置を有している];
(ii) R
6は、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニルアミノ、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ベンジルアミノ、C
1-4アルキル、またはC
1-4アルキルスルフィドであり;例えば、フェニルアミノまたは4-フルオロフェニルアミノであり;
(iii) R
10は、C
1-4アルキル、メチルカルボニル、ヒドロキシエチル、カルボン酸、スルホンアミド、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)フェニル、(ハロ置換またはヒドロキシ置換されていてもよい)ピリジル(例えば、6-フルオロピリダ-2-イル)、またはチアジアゾリル(例えば、1,2,3-チアジアゾール-4-イル)であり;
XおよびYは、独立してCまたはNである]
であることを提供する。
【0012】
本発明は、さらに、以下のとおりの式Iaの化合物を提供する:
【0013】
1.1 R2およびR5が独立してDまたはヒドロキシであるか;またはR6がヒドロキシ置換フェニルアミノまたはヒドロキシ置換ベンジルアミノである、式1aに従う化合物。
【0014】
1.2 R2およびR5が独立してDまたはヒドロキシである、式Iaまたは1.1に従う化合物。
【0015】
1.3 R6がヒドロキシ置換フェニルアミノまたはヒドロキシ置換ベンジルアミノである、式Iaまたは1.1~1.2に従う化合物。
【0016】
1.4 R6がヒドロキシ置換フェニルアミノである、式Iaまたは1.1~1.3に従う化合物。
【0017】
1.5 R6がヒドロキシ置換ベンジルアミノである、式Iaまたは1.1~1.3に従う化合物。
【0018】
1.6 R2およびR5が独立してH、Dまたはヒドロキシであり、R3およびR4が一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成している[好ましくは、R3およびR4を担持している炭素がそれぞれR配置およびS配置を有している]、式Iaまたは1.1~1.5に従う化合物。
【0019】
1.7 R2およびR5のうち少なくとも1つがDである、式1aまたは1.1~1.6に従う化合物。
【0020】
1.8 R2およびR5がともにDである、式1aまたは1.1~1.7に従う化合物。
【0021】
1.9 R2およびR5がともにDであり、R3およびR4が一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する、式1aまたは1.1~1.8に従う化合物。
【0022】
1.10 R2およびR5のうち少なくとも1つがヒドロキシである、式1aまたは1.1~1.5に従う化合物。
【0023】
1.11 R2およびR5のうち少なくとも1つがヒドロキシであり、R3およびR4が一緒になってトリメチレン架橋またはテトラメチレン架橋を形成する、式1a、1.1~1.5または1.10に従う化合物。
【0024】
1.12 R2がヒドロキシである、式1a、1.1~1.5または1.10~1.11に従う化合物。
【0025】
1.13 R5がヒドロキシである式1a、1.1~1.5または1.0~1.11に従う化合物、。
【0026】
1.14 R10がピリジルである、式1aまたは1.1~1.11に従う化合物。
【0027】
1.15 R10がハロ置換またはヒドロキシ置換ピリジルである、式1aまたは1.1~1.12に従う化合物。
【0028】
1.16 R10がハロ置換ピリジルである、式1aまたは1.1~1.12に従う化合物。
【0029】
1.17 R10がヒドロキシ置換ピリジルである、式1aまたは1.1~1.12に従う化合物。
【0030】
1.18 R10が6-フルオロピリダ-2-イルである、式1aまたは1.1~1.12に従う化合物。
【0031】
1.19 XおよびYがともにCである、式1aまたは1.1~1.18に従う化合物。
【0032】
1.20 PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化4】
【化5】
である、式1aまたは1.1~1.19に従う化合物。
【0033】
1.21 PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化6】
【化7】
である、式1aまたは1.1~1.20に従う化合物。
【0034】
1.22 PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化8】
である、式1aまたは1.1~1.21に従う化合物。
【0035】
1.23 PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化9】
である、式1aまたは1.1~1.22に従う化合物。
【0036】
1.24 PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化10】
である、式1aまたは1.1~1.22に従う化合物。
【0037】
1.25 PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化11】
である、式1aまたは1.1~1.22に従う化合物。
【0038】
1.26 PDE1阻害剤が、下記の化合物:
【化12】
である、式1aまたは1.1~1.21に従う化合物。
【0039】
1.27 化合物が重水素化されており、例えば、分子内の特定の位置での重水素:プロチウム比が、天然の同位体比よりも有意に高く、例えば少なくとも2倍、例えば少なくとも10倍高い、いずれかの上記化合物。
【0040】
別の実施態様では、本開示は、さらに、式1aまたは1.1~1.26に従う、例えば本明細書に記載されている方法に用いるための、放射能標識PDE1阻害剤[化合物2]を提供する。
【0041】
2.1 少なくとも1個の炭素原子が炭素14([14C])で置換されている、化合物2。
【0042】
2.2 1個の炭素原子が炭素14([14C])で置換されている、上記化合物のいずれか。
【0043】
2.3 放射能標識PDE1阻害剤が下記の化合物:
【化13】
またはその薬学的に許容される塩である、上記化合物のいずれか。
【0044】
2.4 化合物が塩形態である、化合物2.3。
【0045】
2.5 化合物がリン酸塩形態である、化合物2.4。
【0046】
2.6 化合物が一リン酸塩形態である、化合物2.5。
【0047】
一の実施態様では、上記式(例えば、式Iaまたは1.1~1.26)で示される選択的PDE1阻害剤は、cGMPのホスホジエステラーゼ媒介(例えば、PDE1媒介、特にPDE1B媒介)加水分解を阻害する化合物であり、例えば、好ましい化合物は、遊離形態または塩形態で、固定化金属親和性粒子試薬PDEアッセイにおいて、1μM未満、好ましくは500nM未満、好ましくは50nM未満、好ましくは5nM未満のIC50を有する。
【0048】
別段の指定がない場合、または文脈から明らかでない場合、本明細書における以下の用語は、以下の意味を有する:
【0049】
「アルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは1~6個の炭素原子を有しており、直鎖または分枝鎖であってよく、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、モノ置換、ジ置換またはトリ置換されていてもよい。
【0050】
「シクロアルキル」とは、本明細書で用いられる場合、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。シクロアルキルがNおよびOおよび/またはSから選択される1個以上の原子を含んでいてもよい場合、該シクロアルキルはヘテロシクロアルキルであってもよい。
【0051】
「ヘテロシクロアルキル」とは、特記しない限り、飽和または不飽和非芳香族炭化水素部分であり、好ましくは飽和であり、好ましくは3~9個の炭素原子を含んでおり、それらのうち少なくともいくつかが非芳香族単環式または二環式または架橋の環状構造を形成しており、少なくとも1個の炭素原子がN、OまたはSに置き換わっており、ヘテロシクロアルキルは、例えばハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0052】
「アリール」とは、本明細書で用いられる場合、単環式または二環式芳香族炭化水素であり、好ましくはフェニルであり、例えばアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン(例えば、クロロまたはフルオロ)、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシ、カルボキシ、またはさらなるアリールもしくはヘテロアリール(例えば、ビフェニルまたはピリジルフェニル)で置換されていてもよい。
【0053】
「ヘテロアリール」とは、本明細書で用いられる場合、芳香環を構成する原子の1個以上が炭素ではなくて硫黄または窒素である芳香族部分であり、例えばピリジルまたはチアジアゾリルであり、例えばアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシまたはカルボキシで、置換されていてもよい。
【0054】
アルキレン、フェニレンまたはアリールアルキレンなど置換基が「エン」で終わる場合、該置換基は、他の2つの置換基を架橋するかまたは接続することが意図されている。したがって、メチレンは-CH2-を意図し、フェニレンは-C6H4-を意図し、アリールアルキレンは-C6H4-CH2-または-CH2-C6H4-を意図している。
【0055】
本発明化合物、例えば、置換4,5,7,8-テトラヒドロ-2H-イミダゾ[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジンまたは4,5,7,8,9-ペンタヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピロロ[3,4-e]ピリミジン、例えば、式Iaで示される化合物は、遊離形態または塩形態で、例えば酸付加塩として、存在し得る。本明細書では、特記しない限り、「本発明化合物」などの文言は、何らかの形態、例えば遊離形態または酸付加塩形態の化合物、または化合物が酸性置換基を含有する場合には塩基付加塩形態の化合物を包含すると解されるべきである。本発明化合物は、医薬品としての使用を目的としているので、薬学的に許容される塩が好ましい。医薬用途に適さない塩は、例えば遊離の本発明化合物またはそれらの薬学的に許容される塩の単離または精製のために有用であり得、したがって、該塩も包含される。
【0056】
本発明化合物は、場合によっては、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本発明化合物に変換される化合物である。例えば、本発明化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含有する場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、自体が投与されるべき用量で生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明化合物の場合)を生成する、本発明化合物のエステルを意味する。したがって、本発明化合物がヒドロキシ基を含有する場合、例えば化合物-OHである場合、該化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を形成し、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本発明化合物がカルボン酸を含有する場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0057】
別の実施態様では、本発明は、さらに、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の本発明化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む、PDE1によって媒介される疾患または障害の治療において用いるための医薬組成物を提供する。
【0058】
本発明化合物は、場合によっては、プロドラッグ形態でも存在し得る。プロドラッグ形態は、体内で本発明化合物に変換される化合物である。例えば、本発明化合物がヒドロキシ置換基またはカルボキシ置換基を含有する場合、これらの置換基は、生理学的に加水分解可能で許容されるエステルを形成し得る。本明細書で用いる場合、「生理学的に加水分解可能で許容されるエステル」とは、生理学的条件下で加水分解可能であり、自体が投与されるべき用量で生理学的に許容される酸(ヒドロキシ置換基を有する本発明化合物の場合)またはアルコール(カルボキシ置換基を有する本発明化合物の場合)を生成する、本発明化合物のエステルを意味する。したがって、本発明化合物がヒドロキシ基を含有する場合、例えば化合物-OHである場合、該化合物のアシルエステルプロドラッグ、すなわち、化合物-O-C(O)-C1-4アルキルは、体内で加水分解して、一方では生理学的に加水分解可能なアルコール(化合物-OH)を形成し、他方では酸(例えば、HOC(O)-C1-4アルキル)を形成することができる。別法として、本発明化合物がカルボン酸を含有する場合、例えば化合物-C(O)OHである場合、該化合物の酸エステルプロドラッグ、化合物-C(O)O-C1-4アルキルは、加水分解して、化合物-C(O)OHおよびHO-C1-4アルキルを形成することができる。したがって、理解されるように、この用語は、慣用の医薬プロドラッグ形態を包含する。
【0059】
別の実施態様では、本発明は、さらに、遊離形態、薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の本発明化合物を薬学的に許容される担体と混合して含む、PDE1によって媒介される疾患または障害の治療において用いるための医薬組成物を提供する。
【0060】
本発明化合物の製造方法
本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩は、本明細書に記載および例示されているような方法を用いて、また、それらと同様の方法によって、また、化学技術分野で既知の方法によって、製造され得る。このような方法としては、下記の方法が挙げられるが、これらに限定されない。これらのプロセスの出発物質は、市販されていない場合には、既知の化合物の合成方法と同様または類似の技術を用いる化学技術から選択される手順によって製造され得る。
【0061】
種々の出発物質および/または本発明化合物は、米国特許出願公開第2008-0188492号(A1)、米国特許出願公開第2010-0173878号(A1)、米国特許出願公開第2010-0273754号(A1)、米国特許出願公開第2010-0273753号(A1)、国際公開第2010/065153号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065151号、国際公開第2010/065149号、国際公開第2010/065147号、国際公開第2010/065152号、国際公開第2011/153129号、国際公開第2011/133224号、国際公開第2011/153135号、国際公開第2011/153136号、国際公開第2011/153138号、および米国特許第9,073,936号(それぞれの記載内容は出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されている方法を使用して製造することができる。
【0062】
T本発明化合物には、それらのエナンチオマー、ジアステレオ異性体およびラセミ体、ならびにそれらの多形体、水和物、溶媒和物および複合体が含まれる。本発明の範囲内のいくつかの個々の化合物は、二重結合を含み得る。本発明における二重結合の表現は、二重結合のE異性体およびZ異性体の両方を含むことを意味する。さらに、本発明の範囲内のいくつかの化合物は、1つ以上の不斉中心を含み得る。本発明は、光学的に純粋な立体異性体のいずれか、および立体異性体の組み合わせの使用を含む。
【0063】
本発明化合物がその安定な同位体および不安定な同位体を包含することも意図されている。安定な同位体は、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、1個のさらなる中性子を含有する非放射性同位体である。このような同位体を含む化合物の活性は保持され、このような化合物は非同位体類似体の薬物動態を測定するための有用性も有すると考えられる。例えば、本発明化合物のある位置の水素原子を重水素(非放射性の安定な同位体)に置き換えることができる。既知の安定な同位体の例としては、重水素、13C、15N、18Oが挙げられるが、これらに限定されない。別法として、同じ種(すなわち、元素)の豊富な核種と比較して、さらなる複数の中性子を含有している放射性同位体である不安定な同位体、例えば123I、131I、125I、11C、18Fは、I、CおよびFの対応する豊富な種と置き換わってもよい。本発明の化合物の有用な同位体の別の例は、11C同位体である。これらの放射性同位体は、本発明の化合物の放射線画像処理および/または薬物動態学的研究に有用である。
【0064】
融点は未補正であり、(dec)は分解を示す。温度は摂氏(℃)で示される;特記しない限り、操作は、室温または周囲温度で、すなわち18~25℃の範囲の温度で行われる。クロマトグラフィーとは、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーを意味し;薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲルプレートで行われる。NMRデータは、内部標準としてのテトラメチルシラン(TMS)に対して百万分率(ppm)で表される主要な診断用プロトンのデルタ値で示される。シグナル形状の慣用の略語が使用される。結合定数(J)は、Hzで表される。質量スペクトル(MS)について、同位体分割によって複数の質量スペクトルピークが生じる分子については最小質量の主要イオンが報告される。溶媒混合物の組成は、体積百分率または体積比として示される。NMRスペクトルが複雑な場合には、特徴的な信号のみが報告される。
【0065】
本発明化合物を使用する方法
本発明化合物は、例えばドパミンおよび一酸化窒素(NO)などの環状ヌクレオチド合成の誘導剤の阻害またはレベル低下に起因するPDE1の発現の増加またはcAMPおよびcGMPの発現の減少の結果としてのcAMPおよびcGMP媒介経路の破壊または損傷を特徴とする疾患の治療に有用である。PDE1によるcAMPおよびcGMPの分解を防止し、cAMPおよびcGMPの細胞内レベルを増加させることによって、本発明化合物は環状ヌクレオチド合成誘導剤の活性を増強する。
【0066】
本発明は、遊離形態または薬学的に許容される塩形態またはプロドラッグ形態の、本発明化合物、例えば、式Iaまたは1.1~1.26のいずれかに従う化合物の有効量を、必要とするヒト患者または動物患者に投与することを含む以下の状態のうちいずれか1つ以上の治療の方法を提供する:
(i) パーキンソン病、下肢静止不能、振戦、ジスキネジア、ハンチントン病、アルツハイマー病および薬物誘発性運動障害を包含する、神経変性疾患;
(ii) うつ病、注意欠陥障害、注意欠陥多動障害、双極性疾患(bipolar illness)、不安、睡眠障害、例えば、ナルコレプシー、認知機能障害、例えば統合失調症の認知機能障害、認知症、トゥレット症候群、自閉症、脆弱X症候群、精神刺激薬離脱および薬物依存を包含する、精神障害;
(iii) 国際出願第PCT/US2014/16741号(その内容は出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている心血管疾患および関連障害を包含する、脳血管疾患、脳卒中、うっ血性心疾患、高血圧症、肺高血圧症(例えば、肺動脈性肺高血圧症)および性機能障害を包含する、循環および心血管障害;
(iv) 喘息、慢性閉塞性肺疾患およびアレルギー性鼻炎、ならびに自己免疫および炎症性疾患を包含する、呼吸器および炎症性障害;
(v) 女性の性機能障害などのプロゲステロンシグナル伝達の増強によって軽減され得る疾患;
(vi) 精神病、緑内障または眼内圧亢進などの疾患または障害;
(vii) 外傷性脳損傷;
(viii) PDE1を発現している細胞内での低レベルのcAMPおよび/またはcGMP(またはcAMPおよび/またはcGMPシグナル伝達経路の阻害)を特徴とする疾患または状態;ならびに/または
(ix) ドパミンD1受容体シグナル伝達活性の低下を特徴とする疾患または状態。
【0067】
本発明化合物は、炎症性疾患または状態、特に、神経炎症性疾患または状態の治療において有用である。したがって、本明細書に記載される好ましいPDE1阻害剤、例えば上記のPDE1阻害剤、例えば式Iaで示される化合物の投与または使用は、炎症を調節する(例えば、神経炎症および神経炎症に関連する疾患または障害を防止、軽減および/または逆転する)手段を提供し、特定の実施態様では、種々の炎症性疾患および障害の治療を提供する。特定の実施態様では、炎症性疾患または状態は、本発明のPDE1阻害剤(例えば、本明細書に記載される式Iaで示されるPDE1阻害剤)の有効量、例えば、(i)M1ミクログリアの活性化を低減または阻害するのに有効な量、および/または(ii)1つ以上の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL1β、TNFαおよびCcl2、またはそれらの組合せ)のレベルを低下させるのに有効な量を、それを必要としている患者に投与することを含む、下記のものから選択される:
a. 神経変性状態、例えばアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および脱髄性状態、例えば多発性硬化症(MS)、およびプリオン病;
b. 脳卒中、心停止、低酸素、脳内出血または外傷性脳損傷;
c. うつ病、統合失調症、外傷後ストレス障害、不安、注意欠陥障害、および双極性疾患を含む、異常な神経伝達物質産生および/または反応を特徴とする状態;例えば、上記のいずれかは神経炎症と関連している;
d. 慢性CNS感染症、例えば、ライム病、または免疫抑制状態に起因するCNS感染症、例えば、HIV認知症;
e. 化学療法に起因する神経炎症。
【0068】
本発明化合物は、癌または腫瘍の治療、例えば癌性または腫瘍性の細胞の増殖の阻害に有用である。したがって、癌または腫瘍の治療または予防における、本明細書に記載されている好ましいPDE1阻害剤、例えば上記のPDE1阻害剤、例えば式Iaで示される化合物の投与または使用。
【0069】
本開示の化合物が、聴神経腫瘍、星細胞腫、脊索腫、リンパ腫(例えば、CNSリンパ腫、ホジキンリンパ腫または非ホジキンリンパ腫)、頭蓋咽頭腫、神経膠腫(例えば、脳幹神経膠腫、上衣腫、混合膠腫、視神経膠腫)、上衣下腫、髄芽腫、髄膜腫、転移性脳腫瘍、乏突起神経膠腫、下垂体腫瘍、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)、シュワン細胞腫、腺腫(例えば、好塩基性腺腫、好酸性腺腫、嫌色素性腺腫、副甲状腺腺腫、膵島腺腫、線維腺腫)、類線維腫(線維性組織球腫)、線維腫、血管腫、脂肪腫(例えば、血管脂肪腫、骨髄脂肪腫、線維脂肪腫、紡錘細胞脂肪腫、褐色脂肪腫、非定型脂肪腫)、粘液腫、骨腫、前白血病、横紋筋腫、乳頭腫、脂漏性角化症、皮膚付属器腫瘍、肝腺腫、腎尿細管腺腫、胆管腺腫、移行細胞乳頭腫、胞状奇胎、神経節神経腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経線維腫、C細胞過形成、褐色細胞腫、インスリノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド、ケモデクトーマ、傍神経節腫、母斑、光線角化症、子宮頚部異形成、化生(例えば、肺の化生)、白斑症、血管腫、リンパ管腫、カルシノーマ(例えば、扁平上皮癌腫、類表皮癌腫、腺癌、ヘパトーマ、肝細胞癌腫、腎細胞癌腫(renal cell carcinoma)、胆管細胞癌、移行上皮癌腫、胚性細胞癌腫(embryonal cell carcinoma)、副甲状腺癌腫、甲状腺髄様癌腫、気管支カルチノイド、燕麦細胞癌腫、膵島細胞癌腫、悪性カルチノイド、メルケル細胞癌腫)、肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、血管肉腫(hemangiosarcoma)、血管肉腫(angiosarcoma)、リンパ管肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、神経線維肉腫)、芽細胞腫(例えば、髄芽腫および神経膠芽腫、脳腫瘍の類型(types of brain tumor)、網膜芽細胞腫、眼の網膜の腫瘍、骨芽細胞腫、骨腫瘍、神経芽腫)、胚細胞腫瘍、中皮腫、悪性皮膚付属器腫瘍、グラヴィッツ腫瘍(hypernephroma)、精上皮腫、神経膠腫、悪性髄膜腫、悪性シュワン細胞腫、悪性褐色細胞腫、悪性傍神経節腫、黒色腫、メルケル細胞新生物(Merkel cell neoplasm)、葉状嚢肉腫(cystosarcoma phylloides)、またはウィルムス腫瘍のうち1つ以上から選択される腫瘍または癌の治療に用いられ得ることが企図されている。さらなる治療としては、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、尿路上皮癌、頭頸部癌、または白血病(例えば、リンパ球性白血病または骨髄性白血病)、結腸癌(例えば、結腸直腸癌)および腎臓、尿管、膀胱もしくは尿道の癌が挙げられる。
【0070】
本発明はまた、PDE1阻害剤の代謝を特異的に制限および/または防止する化合物ならびに関連する方法を提供する。したがって、一の実施態様では、本発明は、PDE1阻害剤、例えば、式1aまたは1.1~1.26に従うPDE1阻害剤の代謝を阻害する方法であって、PDE1阻害剤を重水素化して1つ以上の代謝物の形成を阻止することを含む、方法(方法1)を提供する。
【0071】
1.1. PDE1阻害剤が、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、下記の式:
【化14】
に従う化合物である、方法1。
【0072】
1.2. PDE1阻害剤の重水素化が、
【化15】
を
【化16】
と反応させて、
【化17】
を形成するを含む、上記方法のいずれか。
【0073】
1.3. PDE1阻害剤の重水素化が、
【化18】
を
【化19】
と反応させて、
【化20】
を形成することを含む、上記方法。
【0074】
1.4. 該反応が、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、THFおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン中にて行われる、上記方法。
【0075】
1.5.
【化21】
がTHF中にて塩化チオニルと反応して、
【化22】
を形成する、2つの上記方法。
【0076】
1.6. 該反応が、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、THFおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン中にて行われる、方法1.2。
【0077】
1.7.
【化23】
がTHF中にて塩化チオニルと反応して、以下の生成物:
【化24】
を形成し、該生成物をキラルカラム分離に供して、
【化25】
を得る、方法1.2または1.6。
【0078】
「本発明化合物」もしくは「本発明のPDE1阻害剤」というフレーズまたは同様の用語は、本明細書に開示されている化合物のすべて、例えば、式Iaまたは1.1~1.26で示される化合物を包含する。
【0079】
「治療」および「治療すること」という用語は、適宜、疾患の症状の予防および治療または寛解、ならびに疾患の原因の治療を包含するものとして理解されるべきである。
【0080】
治療方法について、「有効量」という用語は、特定の疾患もしくは障害、および/またはその症状を治療または軽減するための、ならびに/または患者もしくは対象体におけるPDE1発現を阻害するための治療有効量を包含することが意図している。
【0081】
「患者」という用語は、ヒト患者または非ヒト(すなわち、動物)患者を含む。特定の実施態様では、本発明は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を包含する。別の実施態様では、本発明は、非ヒト動物を包含する。他の実施態様では、当該用語は、ヒトを包含する。
【0082】
「含む(comprising)」という用語は、本開示で用いる場合、制限が無いことを意図しており、言及されていないさらなる要素または方法ステップを除外するものではない。
【0083】
本発明化合物、例えば、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の上記されている式Iaおよび1.1~1.26は、単独の治療剤として使用できるが、他の活性剤と組み合わせてまたは共投与のために使用することもできる。
【0084】
例えば、特定の実施態様では、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、本発明化合物、例えば本明細書に記載されている式Iaまたは1.1~1.26は、他の活性剤、例えば1つ以上の抗うつ剤、例えば選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、c)三環系抗うつ剤(TCA)、および非定型抗精神病薬から選択される、遊離形態または薬学的に許容される塩形態の、1以上の化合物と組み合わせて投与される(例えば、順次または同時にまたは24時間以内に投与される)。
【0085】
本発明を実施する際に用いられる用量は、もちろん、例えば治療される特定の疾患または状態、使用される特定の本発明化合物、投与様式、および所望の療法に応じて変化する。本発明化合物は、経口、非経口、経皮、または吸入を含む好適な経路によって投与され得るが、好ましくは経口投与される。一般に、例えば上記のような疾患の治療のための、満足のいく結果は、約0.01~2.0mg/kgのオーダーの用量で経口投与により得られることが示されている。大きな哺乳動物、例えばヒトでは、経口投与のための指示された日用量は、それに応じて、約0.75~150mg(投与される薬物および治療される状態に依存する、例えば化合物214の場合には、PDE1媒介状態の治療のために、例えば一リン酸塩形態で、1日につき、0.5~25mg、例えば1~10mg)の範囲であり、好都合には1日1回投与されるか、または1日2~4回の分割用量で投与されるか、または徐放性剤形で投与される。したがって、経口投与用の単位剤形は、例えば薬学的に許容される希釈剤または担体と一緒に、本発明化合物約0.2~75または150mg、例えば約0.2または2.0~50、75または100mg(1、2.5、5、10または20mg)を含むことができる。
【0086】
本発明化合物を含む医薬組成物は、慣用の希釈剤または賦形剤、およびガレノス技術分野で知られている技術を使用して調製され得る。したがって、経口剤形としては、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤などを挙げることができる。
【実施例】
【0087】
実施例1
IMAPホスホジエステラーゼアッセイキットを使用するインビトロでのPDEIB阻害の測定
ホスホジエステラーゼIB(PDEIB)は、環状グアノシン一リン酸(cGMP)を5'-グアノシン一リン酸(5'-GMP)に変換するカルシウム/カルモジュリン依存性ホスホジエステラーゼ酵素である。PDEIBはまた、蛍光分子cGMP-フルオレセインなどの修飾cGMP基質を対応するGMP-フルオレセインに変換することができる。cGMP-フルオレセインからのGMP-フルオレセインの生成は、例えばIMAP(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)固定化金属親和性粒子試薬を使用して、定量化することができる。
【0088】
簡単に説明すると、IMAP試薬は、GMP-フルオレセインに存在するがcGMP-フルオレセインには存在しない遊離5'-リン酸に高い親和性で結合する。結果として生じるGMP-フルオレセイン-IMAP複合体はcGMP-フルオレセインに比べて大きい。大きくてゆっくりとタンブリングする複合体に結合している小さなフルオロフォアは、蛍光を発する時に放出される光子が蛍光を励起するために使用される光子と同じ極性を保持するため、結合していないフルオロフォアと区別することができる。
【0089】
該ホスホジエステラーゼアッセイにおいて、IMAPに結合することができないためにほとんど蛍光偏光を保持しないcGMP-フルオレセインは、GMP-フルオレセインに変換され、これがIMAPに結合すると蛍光偏光(Amp)の大きな増加をもたらす。したがって、ホスホジエステラーゼの阻害は、Ampの減少として検出される。
【0090】
酵素アッセイ
材料: Molecular Devices(Sunnyvale, CA)から入手可能なIMAP試薬(反応バッファー、結合バッファー、FL-GMPおよびIMAPビーズ)を除いて、全ての化学物質はSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から入手できる。
【0091】
アッセイ: 以下のホスホジエステラーゼ酵素を使用することができる: 3',5'-環状ヌクレオチド特異的ウシ脳ホスホジエステラーゼ(Sigma, St. Louis, MO)(主にPDEIB)および組換え完全長ヒトPDE1AおよびPDE1B(それぞれ、r-hPDE1Aおよびr-hPDE1B)(例えば、当該技術分野の当業者によってHEK細胞またはSF9細胞において産生され得る)。PDE1酵素は、50%グリセロールで2.5U/mlに再構成される。1ユニットの酵素は、pH7.5、30℃で毎分1.0μmolの3',5'-cAMPを5'-AMPに加水分解する。酵素1部を反応バッファー(30μM CaCl2、10U/mlのカルモジュリン(Sigma P2277)、10mM Tris-HCl pH7.2、10mM MgCl2、0.1%BSA、0.05%NaN3)1999部に添加して、最終濃度1.26mU/mlを得る。希釈した酵素溶液99μlを平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに添加し、これに、100%DMSOに溶解した試験化合物1μlを添加する。室温で10分間、化合物を酵素と混合してプレインキュベートする。
【0092】
384ウェルマイクロタイタープレートにおいて、酵素および阻害剤の混合物4部と基質溶液(0.225μM)1部を合わせることによってFL-GMP変換反応を開始させる。該反応を暗所にて室温で15分間インキュベートする。該384ウェルプレートの各ウェルに結合試薬(1:1800希釈の消泡剤を添加した結合バッファーによる1:400希釈のIMAPビーズ)60μLを添加することによって反応を停止させる。該プレートを室温で1時間インキュベートしてIMAP結合を進行させて完了させ、次いで、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)に入れて蛍光偏光(Amp)を測定する。
【0093】
Ampの減少として測定されるGMP濃度の減少は、PDE活性の阻害を示している。0.0037nM~80,000nMの範囲の8~16種類の濃度の化合物の存在下で酵素活性を測定し、次いで、薬物濃度対AmPをプロットすることによってIC50値を決定し、これにより、非線形回帰ソフトウェア(XLFit;IDBS, Cambridge, MA)を用いてIC50値を推定することができる。
【0094】
本開示の化合物を、PDE1阻害活性について本明細書に記載されているかまたは同様に記載されているアッセイで試験する。例えば、化合物1、2および3は、以下の構造を有する特定のPDE1阻害剤の代謝物として同定される:
【化26】
【化27】
【化28】
【0095】
下記の表に示すように、これらの化合物は、ナノモルまたはサブナノモルのレベルでPDE1に対して効力を有し、他のPDEファミリーよりも一般に高い選択性を有している:
【表1】
【0096】
実施例2
(6aS,9aR)-6a,9a-ジジュウテリオ-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オンの合成
標記化合物は、一般にスキーム1に従って実施される。
【0097】
【0098】
2-(ヒドロキシイミノ)シクロペンタノン(2)。0℃でのNaOH(2.816g、70.42mmol)の水(30mL)中溶液に2-オキソシクロペンタンカルボン酸エチル(10.0g、64.02mmol)と亜硝酸ナトリウム(4.417g、64.02mmol)の水(25mL)中溶液とを連続して20分間にわたって滴下する。反応混合物を室温で2日間撹拌し、0℃に冷却する。冷却した混合物を6N H2SO4(8mL、48.0mmol)でpH=5に酸性化する。ジエチルエーテル(100mL)を添加し、有機層を分取する。水相をジエチルエーテル(2×100mL)で抽出する。該抽出物を合わせ、減圧濃縮する。残留物を、さらに、溶離液としてヘキサン中0~100%酢酸エチルの勾配液を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。標記化合物2が薄茶色の固体として得られる(2.41g、33%)。MS (ESI) m/z [M + H]+。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 2.83 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.49 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.12 - 2.03 (m, 2H)。
【0099】
2-アミノ-1,2-ジジュウテリオシクロペンタノール(3)。0℃での2-(ヒドロキシイミノ)シクロペンタノン2(1.16g、10.26mmol)のCH3OD(7mL)中溶液にNaBD4(646mg、15.38mmol)を少量ずつ添加する。結果として生じる混合物を0℃で1時間撹拌し、NiCl2を添加し、次いで、NaBD4(646mg、15.38mmol)を少量ずつ添加する。該混合物を0℃で0.5時間撹拌し、室温で2時間撹拌する。溶媒を減圧除去し、残留物をCH2Cl2およびCH3OHの混合物(10:1、3×70mL)で抽出する。合わせた抽出物を蒸発させ、さらに、高真空下で乾燥させて、標記化合物3を薄いピンク色の固体として得る(0.88g、粗)。MS (ESI) m/z 104.04 [M + H]+。この粗生成物を、さらなる精製を行わずに直接、次反応のために使用する。
【0100】
3-クロロ-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-7-(4-メトキシベンジル)-5-メチル-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン(5)。2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-7-(4-メトキシベンジル)-5-メチル-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン4(9.04g、38.2mmol)のTHF(100mL)中溶液をアルゴン下にて0℃に冷却し、トルエン中のリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1M、25.5mL、25.5mmol)をシリンジによって滴下する。反応混合物を0℃で4時間撹拌し、水(30mL)でクエンチする。該混合物を室温で5分間撹拌し、沈殿物を濾過する。濾過ケーキをを水(100mL)で洗浄し。酢酸エチル(100mL)に懸濁させる。該混合物を濾過し、濾過ケーキを高真空下で乾燥させて、標記化合物を白色の固体として得る(4.78g、収率45%)。MS (ESI) m/z 506.14 [M + H]+。
【0101】
2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-7-(4-メトキシベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン(6)。3-クロロ-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-7-(4-メトキシベンジル)-5-メチル-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン5(4.37g、8.65mmol)、アニリン(1.18mL、13mmol)、炭酸セシウム(5.63g、17.3mmol)、XPhos(1.6g、3.37mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(2.37g、2.6mmol)のDMF(40mL)中懸濁液を室温にて5分間アルゴンで通気し、100℃まで加熱する。該混合物をこの温度で、反応が完了するまで5時間撹拌する。溶媒を蒸発させ、残留物を、ヘキサン中0~50%酢酸エチルの勾配液を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。標記化合物がオフホワイト色の固体として得られる(4.34g、収率89%)。MS (ESI) m/z 563.2019 [M + H]+。
【0102】
2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン(7)。室温でアルゴン下での2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-7-(4-メトキシベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン6(3.44g、6.11mmol)のDCM(6mL)中溶液にトリフルオロ酢酸(6.09mL、79.4mmol)を添加し、次いで、トリフルオロメタンスルホン酸(1.96mL、22mmol)を添加する。結果として生じる溶液を室温で2時間撹拌し、溶媒を減圧除去する。残留物をメタノール中7Nアンモニアで中和し、混合物を蒸発乾固させる。残留物に酢酸エチル(30mL)を添加し、結果として生じる混合物を濾過する。濾過ケーキを水(60mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させて、標記化合物1.21gを得る。濾液を合わせ、蒸発乾固させる。残留物をメタノール(60mL)に懸濁させ、懸濁液を濾過する。濾過ケーキを真空乾燥させて、標記化合物0.94gを得る。(合計2.15g、収率79%)。MS (ESI) m/z443.1474 [M + H]+。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 11.52 (s, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.12 - 8.03 (m, 1H), 7.99 (d, 2H), 7.90 (dd, J = 7.6, 2.6 Hz, 1H), 7.25 (d, 2H), 7.18 (dd, J = 8.5, 7.2 Hz, 2H), 7.13 (dd, J = 8.1, 2.7 Hz, 1H), 6.91 - 6.75 (m, 3H), 5.27 (s, 2H), 3.34 (s, 2H), 3.08 (s, 3H), 2.63 - 2.41 (m, 2H).。
【0103】
6-((1,2-ジジュウテリオ-2-ヒドロキシシクロペンチル)アミノ)-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4(5H)-オン(8)。室温での2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン7(0.8g、粗)およびBOP(1.04g、2.35mmol)の無水THF(4mL)中懸濁液にアルゴン雰囲気下で8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(0.83mL、5.45mmol)を添加する。反応混合物を室温で5分間撹拌した後、固体2-アミノ-1,2-ジジュウテリオシクロペンタノール(372mg、粗)を添加する。混合物を室温で3日間撹拌する。溶媒を除去し、残留物を、溶離液としてCH2Cl2中0~100%混合溶媒(CH2Cl2:CH3OH:メタノール中7N NH3 = 10:1:0.1)の勾配液を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。得られた生成物(1.80g、茶色の固体)は、他の不純物を含有しており、それを、さらなる精製を行わずに直接、次反応のために使用する。MS (ESI) m/z 528.2061 [M + H]+。
【0104】
6a,9a-ジジュウテリオ-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン(9)。室温でアルゴン雰囲気下の6-((1,2-ジジュウテリオ-2-ヒドロキシシクロペンチル)アミノ)-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4(5H)-オン8(1.80g、粗)の無水DMF(10mL)中撹拌溶液に塩化チオニル(0.360mL、4.96mmol)を滴下する。反応混合物を2時間撹拌し、溶媒を減圧除去する。残留物を、酢酸エチル中0~100%混合溶媒(酢酸エチル:メタノール:メタノール中7Nアンモニア = 10:1:0.1)の勾配液を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製する。得られた生成物(332mg)を、さらに、16分間にわたって0.1%ギ酸含有水中0~30%アセトニトリルの勾配液を用いてセミ分取HPLCシステムによって精製する。標記化合物がオフホワイト色の固体として得られる(60mg)。MS (ESI) m/z 510.2071 [M + H]+。
【0105】
(6aS,9aR)-6a,9a-ジジュウテリオ-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン。6a,9a-ジジュウテリオ-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オン9(60mg)をヘキサン、イソプロパノールおよびジエチルアミンンの混合物(体積40:60:0.1)(10mL)に溶解する。溶液を、chiralpak AD-Hカラム(20×250mm)を用いてセミ分取HPLCシステムにかけ、混合溶媒(ヘキサン、イソプロパノールおよびジエチルアミン(体積40:60:0.1)で溶離する。標記化合物が白色固体として得られる(19mg、収率32%)。MS (ESI) m/z 510.2743 [M + H]+。1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.92 - 7.86 (m, 2H), 7.86 - 7.80 (m, 1H), 7.58 (dd, J = 7.6, 2.4 Hz, 1H), 7.31 - 7.26 (m, 2H), 7.13 - 7.07 (m, 1H), 7.07 - 7.02 (m, 2H), 6.97 - 6.90 (m, 2H), 6.89 - 6.81 (m, 2H), 4.94 (s, 2H), 3.34 (s, 3H), 1.96 (s, 1H), 1.86 - 1.79 (m, 1H), 1.77 - 1.70 (m, 2H), 1.63 - 1.52 (m, 2H)。
【0106】
実施例3: 新規[14C]放射能標識PDE1阻害剤の合成
新規放射能標識PDE1阻害剤は、下記のスキームに従って合成される:
【0107】
【0108】
既知の方法に従って、例えば国際公開第2009/075784号(A1)または国際公開第2014/205354号(A1)(ともに、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に記載されているように、(6aR,9aS)-3-クロロ-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(2H)-オンを合成する。この化合物を[14C]アニリン、炭酸カリウム、キサントホスおよびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)の混合物に添加し、2-メチル-2-ブタノール(21mL)に溶解し、冷凍し、高真空下でポンピングする。該混合物を窒素でパージし、加熱し、濾過し、エタノールで洗浄する。
【0109】
濾液を、まず、酢酸エチル:エタノールで溶離するシリカによるカラムクロマトグラフィーによって精製し、次いで、水性トリフルオロ酢酸:アセトニトリルで溶離するC18カラムによる逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製する。該混合物を、炭酸カリウムを用いて塩基性化し、次いで、酢酸エチルと水の間で分離させる。有機層から溶媒を真空除去して、[14C]遊離塩基((6aR,9aS)-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-([U-14C]-フェニルアミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4-(2H)-オン)を得る。
【0110】
遊離塩基をアセトニトリルに溶解する。該混合物を加熱し、リン酸のアセトニトリル中溶液を窒素下にて添加する。次いで、該混合物を窒素下にて撹拌する。該混合物を濾過し、アセトニトリルで洗浄する。固体を五酸化二リンで乾燥させて、リン酸塩((6aR,9aS)-2-(4-(6-フルオロピリジン-2-イル)ベンジル)-5-メチル-3-([U-14C]-フェニルアミノ)-5,6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4-(2H)-オン・リン酸塩)を得る。
【国際調査報告】