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特表2022-546717USP30阻害剤としての活性を有する置換シアノピロリジン類
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】USP30阻害剤としての活性を有する置換シアノピロリジン類
(51)【国際特許分類】
   C07D 413/12 20060101AFI20221028BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221028BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221028BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
C07D413/12 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/14
A61P9/10
A61P9/00
A61P27/02
A61P3/10
A61P13/12
A61P3/00
A61P9/04
A61P25/18
A61P35/02
A61P17/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P11/00
A61P1/16
A61P9/10 101
A61P17/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K31/4245
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514513
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020074540
(87)【国際公開番号】W WO2021043870
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】1912674.7
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517299582
【氏名又は名称】ミッション セラピューティクス リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ポール ウィリアム トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー アンドリュー ラックハースト
(72)【発明者】
【氏名】マーク イアン ケンプ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC58
4C063DD03
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC71
4C086GA09
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC21
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、ミトコンドリア機能障害、癌、及び線維症を含む状態などの様々な治療分野において有用性を有する、脱ユビキチン化酵素USP30の阻害剤としての活性を有する置換シアノピロリジンのクラスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
1は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、及びCH2OCH3から選択され;
2、R3、及びR4はそれぞれ、水素とフッ素から独立して選択され;そして
5は、水素、フッ素、(C1~C4)アルコキシ、及びシクロプロポキシから選択される)
の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
【請求項2】
1が、メチル、CH2F、CHF2、CF3、及びCH2OCH3から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1がメチルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
2、R3、及びR4がそれぞれ水素である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
5が、水素、フッ素、メトキシ、及びシクロプロポキシから選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
5が水素である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
以下:
N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(フルオロメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;及び
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド、
から選択される、請求項1に記載の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
【請求項8】
薬剤として使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
【請求項9】
ミトコンドリア機能障害、癌、又は線維症を含む状態の治療又は予防に使用するための、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩。
【請求項10】
ミトコンドリア機能障害、癌、又は線維症を含む状態の治療又は予防に使用するための薬剤の製造における、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩の使用。
【請求項11】
ミトコンドリア機能障害、癌、又は線維症を含む状態の治療又は予防のための方法であって、有効量の、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与する工程を含む方法。
【請求項12】
ミトコンドリア機能障害を含む前記状態が以下:CNS障害;神経変性疾患;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症;ハンチントン病;虚血;脳卒中;レビー小体型認知症;前頭側頭型認知症;多発性硬化症;ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス及び脳卒中様エピソード症候群;母性遺伝性糖尿病及び難聴;レーバー遺伝性視神経症;癌;神経障害、運動失調、網膜色素変性症-母性遺伝性リー症候群;ダノン病;糖尿病;糖尿病性腎症;代謝障害;心不全;心筋梗塞につながる虚血性心疾患;精神疾患、統合失調症;多種スルファターゼ欠損症;ムコリピドーシスII;ムコリピドーシスIII;ムコリピドーシスIV;GMLガングリオシドーシス;神経セロイドリポフシノース;アルパー病;バース症候群;ベータ酸化欠陥;カルニチンアシルカルニチン欠損症;カルニチン欠損症;クレアチン欠損症候群;コエンザイムQ10欠損症;複合体I欠損症;複合体II欠損症;複合体III欠損症;複合体IV欠損症;複合体V欠損症;COX欠損症;慢性進行性外眼筋麻痺症候群;CPTI欠損症;CPTII欠損症;グルタル酸尿II型;カーンズ・セイヤー症候群;乳酸アシドーシス;長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;リー疾患又は症候群;リー症候群フランス系カナダ人変種;致死性乳児心筋症;ルフト病;グルタル酸尿症II型;中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;ミオクローヌスてんかん及び赤色ぼろ繊維症候群(ragged-red fiber syndrome);ミトコンドリア細胞傷害;ミトコンドリア劣性運動失調症候群;ミトコンドリアDNA枯渇症候群;筋神経胃腸障害及び脳症;ピアソン症候群;ピルビン酸脱水素酵素欠損症;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;POLG変異;中/短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素欠損症;及び極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;ペルオキシソーム障害;メチルマロン酸血症;認知機能と筋力の年齢依存性の低下、から選択される、請求項9~11のいずれか1項に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項13】
前記神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、虚血、脳卒中、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症;並びにα-シヌクレイン、パーキン、PINK1、GBA、及びLRRK2の突然変異に関連するパーキンソン病、及びパーキンが変異している常染色体劣性若年性パーキンソン病から選択される、請求項12に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項14】
前記神経変性疾患が、リー症候群又は疾患、X連鎖性リー疾患、リー症候群フランス系カナダ人変種、及び/又はリー疾患に関連する症状である、請求項12に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項15】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、結腸癌、精巣癌、頭頸部癌、膵臓癌、脳癌、黒色腫、骨癌、肝臓癌、軟部組織癌、組織臓器の癌、血液細胞の癌、CML、AML、マントル細胞リンパ腫、神経芽細胞腫、黒色腫、軟組織肉腫、脂肪肉腫、線維芽細胞肉腫、平滑筋肉腫、肝細胞癌、骨肉腫、食道癌、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、転移性癌、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、鼻咽頭癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、アポトーシス経路が調節不全である癌、及びBCL-2ファミリーのタンパク質が変異しているか又は過剰若しくは過小発現されている癌から選択される、請求項9~11のいずれか1項に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項16】
前記線維症が、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞過形成、及び新生物形成の後に発生する細胞外マトリックス成分の蓄積に関連する線維症又は線維性障害から選択される、請求項9~11のいずれか1項に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項17】
前記線維症が、主要な臓器疾患に関連する線維症又は線維性障害、線維増殖性障害、及び外傷に関連する瘢痕から選択される、請求項16に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項18】
前記線維症が、間質性肺疾患、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患、及び非アルコール性脂肪性肝炎、腎臓病、急性腎傷害、慢性腎臓病、腎臓移植片機能の遅延、心臓又は血管疾患、眼の疾患、全身性及び局所性強皮症、ケロイド、肥大性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、デュプイトレン収縮、外科的合併症、化学療法剤誘発性線維症、放射線誘発性線維症、事故による傷害及び火傷、腹膜後線維症、及び腹膜線維症/腹膜瘢痕に関連する線維症又は線維性障害から選択される、請求項17に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項19】
間質性肺疾患に関連する前記線維症が、サルコイドーシス、ケイ酸症、薬物反応、感染症、コラーゲン血管疾患、関節リウマチ、全身性硬化症、強皮症、肺線維症、特発性肺線維症、通常の間質性肺炎、間質性肺疾患、潜在性線維性肺胞炎、閉塞性気管支炎、及び気管支拡張症から選択される、請求項18に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項20】
前記腎臓病が急性腎障害又は慢性腎臓病である、請求項18に記載の化合物、使用、又は方法。
【請求項21】
請求項1~7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩を、1種以上の薬学的に許容される賦形剤とともに含む医薬組成物。
【請求項22】
式(II)及び(III):
【化2】
(式中、
PGは保護基であり、
1、R2、R3、R4、及びR5は、請求項1~7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の塩について定義される通りであり、そして
保護基は、好ましくは、tert-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、カルバメート、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、トシル、トリクロロエトキシカルボニル、4-ニトロベンゼンスルホニル、及び2-ニトロフェニルスルフェニルから選択される)
から選択される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ユビキチン特異的ペプチダーゼ30(USP30)としても知られている脱ユビキチン化酵素であるユビキチンC末端加水分解酵素30の阻害剤としての活性を有する置換シアノピロリジンのクラス、その使用、その調製方法、及び前記阻害剤を含む組成物に関する。これらの阻害剤は、ミトコンドリア機能障害、癌、線維症などのさまざまな治療分野で有用性がある。
以下に引用又は信頼されているすべての刊行物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ユビキチンは、細胞内のタンパク質機能の調節に重要な76個のアミノ酸からなる小さなタンパク質である。ユビキチン化と脱ユビキチン化は酵素媒介性のプロセスであり、これにより、ユビキチンは脱ユビキチン化酵素(DUB)によって標的タンパク質に共有結合されるか又は標的タンパク質から切断される。この酵素については、ヒト細胞には約100個のDUBがあり、配列相同性に基づいてサブファミリーに分けられる。USPファミリーは、DUB活性に重要なCys残基とHis残基を含む共通のCysとHisボックスによって特徴付けられる。ユビキチン化と脱ユビキチン化プロセスは、細胞周期の進行、アポトーシス、細胞表面受容体の修飾、DNA転写とDNA修復の調節を含む多くの細胞機能の調節に関係している。従って、ユビキチン系は、炎症、ウイルス感染、代謝機能障害、CNS障害、及び発癌を含む多数の病状の病因に関係している。
【0003】
ユビキチンはミトコンドリア活動力の優れた調節物質である。ミトコンドリアは動的な細胞オルガネラであり、その生合成、融合、分裂事象は、ミトフシン(mitofusin)などの多くの重要な因子のユビキチン化を介する翻訳後調節によって調節されている。ヒトでは、USP30はミトコンドリア外膜に存在する517個のアミノ酸のタンパク質である(Nakamura et al, 2008, Mol Biol 19:1903-11)。これは、ミトコンドリアアドレッシングシグナルを有する唯一の脱ユビキチン化酵素であり、多くのミトコンドリアタンパク質を脱ユビキチン化することが示されている。USP30はパーキン媒介性マイトファジー(mitophagy)に対抗し、USP30活性の低下は、パーキン媒介性マイトファジーの欠陥をレスキューすることができることが証明されている(Bingol et al, 2015, Nature 510:370-5; Gersch et al, 2017, Nat Struct Mol Biol 24(11): 920 930; Cunningham et al, 2015, Nat Cell Biol 17(2): 160-169)。USP30の不活性化は、おそらくはTOMタンパク質のユビキチン化を介して、ミトコンドリアタンパク質の移入を増加させることもできる(Jacoupy et al, 2019, Sci Rep 9(1): 11829)。USP30の一部は、ミトコンドリアとER小胞の融合によって生成されるペルオキシソームに局在しており、USP30がPex2/ペキソファジー経路に拮抗している可能性がある(Riccio et al, 2019, J Cell Biol 218(3): 798-807)。E3UbリガーゼMarch5とデユビキチナーゼUSP30はトランスロカーゼと結合し、ミトコンドリア移入を調節し、March5はミトコンドリアの移入に拮抗し、基質の分解を指令するが、USP30は基質を脱ユビキチン化してそれらの移入を促進する(Phu et al, 2020, Molecular Cell 77, 1107-1123)。
【0004】
ミトコンドリア機能障害は、ミトコンドリア含有量の減少(マイトファジー又はミトコンドリア生合成)、ミトコンドリア活性及び酸化的リン酸化の低下として定義できるが、活性酸素種(ROS)生成の調節としても定義できる。従って、非常に多くの老化プロセス及び病理において、ミトコンドリア機能障害の役割がある。
【0005】
例えば、パーキンソン病は世界中で約1,000万人が罹患しており(Parkinson’s Disease Foundation)、黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの消失を特徴としている。パーキンソン病の根底にある正確なメカニズムは不明であるが、ミトコンドリア機能障害は、PDにおけるドーパミン作動性ニューロン感受性の重要な決定因子としての認識が増加しつつあり、家族性かつ散発性疾患であり、並びに毒素誘発性パーキンソン病における特徴である。パーキン(parkin)は、早期発症型PDに関係があるとされる多くのタンパク質の1つである。ほとんどのPD症例はアルファシヌクレイン(alpha-synuclein)の欠陥に関連しているが、パーキンソン病症例の10%は特定の遺伝的欠陥に関連しており、そのうちの1つはユビキチンE3リガーゼパーキンにある。パーキンとプロテインキナーゼPTEN誘導性推定キナーゼ1(PINK1)は協力して、傷害されたミトコンドリアのミトコンドリア膜タンパク質をユビキチン化して、マイトファジーを引き起こす。マイトファジーの調節不全は酸化ストレスの増加をもたらし、これはPDの特徴として説明されている。従って、USP30の阻害は、PDの治療のための潜在的な戦略となり得る。例えば、活性の低下につながるパーキン変異を有するPD患者は、USP30の阻害によって治療を補うことができるであろう。
【0006】
USP30の枯渇は、ミトコンドリアのマイトファジークリアランスを促進し、パーキン誘発性の細胞死も促進することが報告されている。USP30は、パーキンの過剰発現とは独立してBAX/BAK依存性アポトーシスを調節することも示されている。USP30の枯渇は、パーキン過剰発現を必要とせずに、ABT-737などのBH-3模倣物に対して癌細胞を感作する。このようにUSP30について抗アポトーシス的役割が証明されており、従ってUSP30は抗癌治療のための潜在的な標的である。
【0007】
ユビキチン-プロテアソーム系は、多発性骨髄腫の治療のためのプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブ(bortezomib)(Velcade(登録商標))の承認後、癌治療の標的として関心を集めている。ボルテゾミブによる長期治療は、関連する毒性と薬剤耐性によって制限される。しかし、DUBなどのプロテアソームの上流にあるユビキチン-プロテアソーム経路の特定の側面を標的とする治療戦略は、より良好に許容されると予測される(Bedford et al, 2011, Nature Rev 10:29-46)。
【0008】
腎線維症、肝線維症、及び肺線維症などの線維性疾患は、罹患率と死亡率の主な原因であり、すべての組織と臓器系に影響を与える可能性がある。線維症は、細胞外マトリックス沈着、血管/尿細管/管/気道開存性の低下、及び最終的に臓器不全をもたらす機能障害を特徴とする、組織又は臓器への急性又は慢性ストレスの結果であると考えられている。多くの線維性状態は、生活様式又は環境要因によって促進される。しかし、線維性状態の一部は、遺伝的トリガーを介して開始されるか、実際に特発性と見なされている(すなわち、原因不明)。特発性肺線維症(IPF)などの特定の線維性疾患は、非特異的キナーゼ阻害剤(ニンテダニブ)又は十分に特性解析された作用機序のない薬剤(ピルフェニドン)を用いて治療することができる。腎繊維症又は肝線維症などの臓器線維症の他の治療法は、臓器自体への圧力を軽減する(例えば、肝硬変のベータ遮断薬、慢性腎臓病のアンギオテンシン受容体遮断薬)。グルコースや食事管理などの生活様式要因への注意も、病気の経過と重症度に影響を与える可能性がある。
【0009】
ミトコンドリアの機能障害は多くの線維性疾患に関係しており、機能障害の下流の酸化ストレスが、ATP産生の低下と共に、主要な病原性メディエーターである。前臨床モデルでは、マイトファジー経路の破壊(パーキン又はPINK1のいずれかの突然変異又はノックアウトによる)は、肺線維症及び腎線維症を悪化させ、酸化ストレスの増加の証拠がある。
【0010】
Kurita et al, 2017, Respiratory Research 18:114は、線維化促進性筋線維芽細胞の蓄積がIPFにおける線維性リモデリングの重要なプロセスであることを開示している。最近の知見では、IPFの病因において、リソソーム分解機構の一部であるオートファジー/マイトファジーが関与していることと、マイトファジーが、ミトコンドリアの活性酸素種(ROS)媒介性の血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)活性化の調節を通じて筋線維芽細胞の分化に関与していると言われている。Kuritaの結果は、ピルフェニドンがPARK2媒介性のマイトファジーを誘発し、マイトファジーが不十分な状況で肺線維症の発症を阻害することを示唆しており、これは、IPF治療の抗線維化メカニズムを少なくとも部分的に説明できるかも知れない。
【0011】
Williams et al, 2015, Pharmacol Res. December; 102: 264-269は、マイトファジーを介して傷害されたミトコンドリアを除去することにより、アルコール及びアセトアミノフェン誘発性肝障害に対して保護する上でのPINK1-パーキン媒介オートファジーの役割について考察している。USP8の薬理学的安定化又はUSP15及びUSP30の不活性化は、パーキン誘発性マイトファジーをアップレギュレートするための治療標的である可能性があり、次に薬物誘発性肝傷害に対して保護することが示唆されている。しかし、DUBは転写と翻訳後の両方で制御されているため、これらの特定の酵素を標的とする薬剤開発は困難になる可能性があり、さらにリン酸化ユビキチンはDUBに耐性があることが示された。著者らは、PINK1の安定化又はキナーゼ活性のアップレギュレーションが、DUBを阻害するよりも、より効果的な標的である可能性があると結論付けている。
【0012】
Williams et al, 2015, Biomolecules 5, 2619-2642, and Williams et al, 2015, Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 309: G324-G340は、肝臓におけるミトコンドリアのホメオスタシスの調節に関与するメカニズムと、これらのメカニズムがアルコール誘発性肝疾患をどのように保護するかをレビューしている。
【0013】
Luciani et al, 2020, Nat. Commun. 11, 970は、最終分化細胞におけるミトコンドリアネットワークの規制解除が、メチルマロン酸血症(MMA)を含む広範囲の障害に寄与することを報告している。MMAは、ミトコンドリアのメチルマロニル補酵素Aムターゼ(MMUT)の欠乏による、最も一般的な先天性代謝障害の1つである。MMUTの欠損は、PINK1/パーキン媒介性マイトファジーの異常によって悪化する代謝及びミトコンドリアの変化を誘発し、機能障害ミトコンドリアの蓄積を引き起こして、これが上皮ストレスと最終的には細胞傷害を引き起こす。原発性MMUT欠損症、疾患ミトコンドリア、マイトファジー機能障害、及び上皮ストレスの間の関連が示唆されており、MMAの潜在的な治療的展望が提供されている。
【0014】
Kluge et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2018, 28 2655-2659は、USP30の選択的阻害剤がマイトファジーを加速することを報告している。
【0015】
シアノ置換複素環の一連の誘導体は、PCT出願WO2016/046530(US15/513125、US15/894025、US16/448066)、WO2016/156816(US15/558632、US16/297937、US16/419558、US16/419747、US16/788446)、WO2017/009650(US15/738900)、WO2017/093718(US15/776149)、WO2017/103614(US15/781615)、WO2017/149313(US16/078518)、WO2017/109488(US16/060299)、WO2017/141036(US16/070936)、WO2017/163078(US16/087515)、WO2017/158381(US16/080229)、WO2017/158388(US16/080506)、WO2018/065768(US16/336685)、WO2018/060742(US16/336202)、WO2018/060689(US16/334836)、WO2018/060691(US16/336363)、WO2018/220355(US16/615040)、及びWO2018/234755(US16/615709)において、脱ユビキチン化酵素阻害剤として開示されており、これらの各出願は、参照により本明細書に組み込まれる。参照により明示的に本明細書に組み込まれるPCT出願WO2019/171042は、線維性疾患の治療のためのUSP30の阻害剤として、置換シアノピロリジン類の使用を開示している。
【0016】
Falgueyret et al, 2001, J. Med. Chem. 44, 94-104、及びPCT出願WO01/77073は、シアノピロリジン類を、骨粗鬆症及びその他の骨吸収関連状態の治療に有用である可能性がある、カテプシンK及びLの阻害剤として言及している。PCT出願WO2015/179190は、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療において有用である可能性がある、N-アシルエタノールアミン加水分解性酸アミダーゼ阻害剤に言及している。PCT出願WO2013/030218は、キナゾリン-4-オン化合物を、癌、神経変性疾患、炎症性疾患、及びウイルス感染症の治療に有用である可能性がある、USP7などのユビキチン特異的プロテアーゼの阻害剤として言及している。PCT出願WO2015/017502及びWO2016/019237は、自己免疫疾患、炎症性疾患、及び癌などの疾患の治療において有用である可能性がある、ブルトン型チロシンキナーゼの阻害剤に言及している。PCT出願WO2009/026197、WO2009/129365、WO2009/129370、及びWO2009/129371は、シアノピロリジン類を、COPDの治療において有用である可能性がある、カテプシンCの阻害剤として言及している。米国特許出願US2008/0300268は、多芳香族化合物を、チロシンキナーゼ受容体PDGFRの阻害剤として言及している。PCT出願WO2019/222468、WO2019/071073、WO2020/036940、WO2020/072964、及びRusilowicz-Jones et al, 2020, bioRxiv 2020.04.16.044206は、シアナミド含有化合物をUSP30阻害剤として言及している。
【0017】
PCT出願WO2015/183987は、癌、線維症、自己免疫疾患又は状態、炎症性疾患又は状態、神経変性疾患又は状態、又は感染症を治療する方法において、デユビキチナーゼ阻害剤及びヒト血清アルブミンを含む医薬組成物に言及している。UCHL5/UCH37、USP4、USP9X、USP11、及びUSP15を含む脱ユビキチナーゼは、TGF-ベータシグナル伝達経路の調節に関与し、その破壊は、神経変性疾患及び線維性疾患、自己免疫機能障害、及び癌を引き起こすと言われていることが注目されている。
【0018】
PCT出願WO2006/067165は、インドリノンキナーゼ阻害剤を使用して線維性疾患を治療するための方法に言及している。PCT出願WO2007/119214は、エンドセリン受容体拮抗薬を使用して初期段階の肺線維症を治療するための方法に言及している。PCT出願WO2012/170290は、THC酸を使用して線維性疾患を治療するための方法に言及している。PCT出願WO2018/213150は、ミトコンドリア欠損を含む状態の治療において有用である可能性があるスルホンアミドUSP30阻害剤に言及している。Larson-Casey et al, 2016, Immunity 44, 582-596は、マクロファージAkt1キナーゼ媒介性のマイトファジー、アポトーシス抵抗性、及び肺線維症に関する。Tang et al, 2015, Kidney Diseases 1, 71-79は、腎臓の病態生理におけるマイトファジーの潜在的な役割をレビューしている。
【0019】
ミトコンドリア機能障害、癌及び線維症を含む状態、並びにそれらに関連する様々な症状及び状態の治療又は予防のための安全な、代替的、及び/又は改善された方法及び組成物の必要性が存在する。特定の理論又は機序に拘束されることを望まないが、本発明の化合物は、酵素USP30を阻害するように作用し、それが次にパーキン誘発性マイトファジーをアップレギュレートすると考えられる。
【0020】
急性腎障害(AKI)は、7日以内に発生する腎機能の急激な低下として定義され、「腎疾患改善グローバル成果(Kidney Disease Improving Global Outcomes:KDIGO)」ガイドラインに記載されているように、血清クレアチニン(SCr)の増加と尿量の減少に基づいて傷害の重症度がステージ分類されている。AKIは年間約1,330万人に発生し、その85%が発展途上国に住んでおり、毎年約170万人が死亡していると考えられている(Mehta et al, 2015, Lancet 385(9987): 2616-2643)。AKIは、永続的な腎障害(すなわち、慢性腎疾患;CKD)を引き起こす可能性が高く、腎臓以外の臓器に傷害を引き起こす可能性もある。AKIは、特に偶発的CKD、進行性CKD、末期腎疾患、及び心血管事象を発症している患者の絶対数を考慮すると、公衆衛生上の重大な懸念事項である。
【0021】
AKIとCKDは、同じ疾患範囲の連続体と見なされる(Chawla et al, 2017, Nat Rev Nephrol 13(4): 241-257)。冠状動脈バイパス移植(CABG)を受けている患者は、腎障害のリスクが高い。AKIの治療及び/又は予防のための医薬品の開発には、明らかな満たされていない医療ニーズがある。
【0022】
腎臓は代謝需要の高い部位であり、生体内で高いマイトファジー率が証明されている(McWilliams et al, 2018, Cell Metab 27(2): 439-449 e435)。溶質/イオン交換に重要なATP要求性を有する細胞型である腎近位尿細管上皮細胞(RPTEC)は、ミトコンドリアが豊富で、腎臓の急性腎障害(AKI)の主要なエフェクター細胞である。前臨床AKI及びCKDモデルからの複数の証拠と、患者の生検における異常なミトコンドリア表現型を示すデータの両方を通じて、ミトコンドリア機能障害はAKI/CKDメカニズムに関係しているとされている(Emma et al, 2016, Nat Rev Nephrol 12(5): 267-280; Eirin et al, 2017, Handb Exp Pharmacol 240: 229-250)。さらに、原発性ミトコンドリア病は、しばしば、MELAS/MIDD患者の巣状分節性糸球体硬化症(Kawakami et al, 2015, J Am Soc Nephrol 26(5): 1040-1052)などの腎症状や、コエンザイムQ欠損症患者の原発性尿細管病変にも現れる。mtDNAの変異は、母性遺伝性尿細管間質性疾患を引き起こす可能性がある(Connor et al, 2017, PLoS Genet 13(3): e1006620)。
【0023】
腎障害におけるミトコンドリアの品質制御に関して(Tang et al, 2018, Autophagy 14(5): 880-897)は、PINK1KOマウスとPARK2KOマウスの両方で虚血性AKI後に腎障害が悪化したことが示されており、PINK1/PARKIN媒介性のマイトファジーが、腎臓でIRI後に保護的な役割を果たすことを示唆している。さらに、パーキン/PINK1マイトファジーは、シスプラチン誘発性腎傷害から保護する(Wang et al, 2018, Cell Death Dis 9(11): 1113)。マイトファジーの研究に利用可能なCKDモデルは限られており、線維症におけるミトコンドリアの品質制御を裏付ける証拠は、COPDやIPFなどの線維性肺疾患に関する研究から得られている。パーキンノックアウト動物は、ブレオマイシンに応答して肺線維症の悪化を示す(Kobayashi et al, 2016, J Immunol, 197:504-516)。同様に、パーキンノックアウト(KO)動物の気道上皮細胞は、タバコの煙に対して線維性及び老化応答の悪化を示す(Araya et al, 2019, Autophagy 15(3): 510-526)。
【0024】
ヒトの状態と一致する線維症の病理(例えば、コラーゲン沈着)をモデル化する能力を通じて、新規治療薬候補を研究するために前臨床モデルが利用可能である。前臨床モデルは、毒素媒介性(例えば、肺及び皮膚線維症の場合はブレオマイシン)、外科的(例えば、急性尿細管間質性線維症の場合の虚血/再灌流傷害モデル及び片側尿管閉塞モデル)、及び遺伝性(例えば、糖尿病性腎症の場合の糖尿病(db/db)マウス))であり得る。例えば、示されたIPF治療について既に示されている両方の例(ニンテダニブとピルフェニドン)は、ブレオマイシン肺線維症モデルで有効性を示している。
【0025】
従って、USP30の阻害が示される状態の治療又は予防のために、USP30の阻害剤である化合物が必要である。特に、標的疾患に対する有効性を最大化するために、適切な及び/又は改善された特性を有するUSP30阻害剤に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0026】
(発明の要約)
本発明は、式(I)
【化1】
の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩に関し、式中、
1は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、及びCH2OCH3から選択され;
2、R3、及びR4はそれぞれ、水素とフッ素から独立して選択され;及び
5は、水素、フッ素、(C1~C4)アルコキシ、及びシクロプロポキシから選択される。
【0027】
本発明はまた、特にミトコンドリア機能障害、癌、及び線維症を含む状態の治療における式(I)の化合物の使用、並びにそれらの調製方法、及び前記化合物を含む医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、標的疾患に対する有効性を最大化するための適切な及び/又は改善された特性を有するUSP30阻害剤に関する。そのような特性には、例えば、効力、選択性、物理化学的特性、PK(薬物動態)プロフィールを含むADME(吸収、分布、代謝、及び排泄)特性、及び安全性プロフィールが含まれる。
【0029】
一般に、患者に投与される有効な/効き目のある投与量を下げるために、関連するアッセイにおいて標的酵素に対する薬物分子の効力を最大化することが望ましい。本発明の化合物は、本明細書に記載のインビトロ生化学的蛍光偏光(FP)アッセイを使用して、USP30親和性について試験することができる。
【0030】
USP30は、細胞内に存在するエネルギー産生細胞小器官であるミトコンドリアの外膜にある膜貫通タンパク質である。従って、これは、標的をその生理学的設定(すなわち、ここでUSP30阻害剤化合物は細胞に浸透することができる)に拘束するより大きな能力を示し得る多くの構成要素の1つであるため、インビトロで細胞活性を示すことができることは有利である。本明細書に記載のUSP30細胞ウエスタンブロット(WB)アッセイは、USP30活性をモニターするための不可逆的活性プローブを使用して、細胞内のUSP30に対する化合物の活性を試験することを目的としている。細胞ウエスタンブロットアッセイと同様に、標的エンゲージメント評価(エクスビボ)は、本明細書に記載されたアッセイを使用して、化合物を投与された動物からの脳又は腎臓組織試料のいずれかで実施され得る。
【0031】
標的結合の知識を下流の薬物動力学に拡張するために、TOM20(ミトコンドリア外膜タンパク質)ユビキチン化の評価を行うことができる。
【0032】
一般に、薬物はその目的の標的酵素に対して可能な限り選択的であることが重要である。追加の活性は副作用を引き起こす可能性がある。多くのDUBの正確な生理学的役割はまだ完全には決定されていないが、これらのDUBが果たす役割の有無に関係なく、任意の薬剤が、未知の生理学的機能の関連するメカニズム的標的に対して選択性を有することを保証することは、医薬品化学の正しい認識である。本発明の化合物をスクリーニングされ得るDUB酵素の代表的な例は、UCHL1、UCHL3、UCHL5、YOD1、SENP2、SENP6、TRABID、BAP1、Cezanne、MINDY2/FAM63B、OTU1、OTUD3、OTUD5、OTUD6A、OTUD6B、OTUB1/UBCH5B、OTUB2、CYLD、VCPIP、AMSH-LP、JOSD1、JOSD2、USP1/UAF1、USP2、USP4、USP5、USP6、USP7、USP8、USP9x、USP10、USP11、USP12/UAF1、USP13、USP14、USP15、USP16、USP19、USP20、USP21、USP22、USP24、USP25、USP28、USP32、USP34、USP35、USP36、USP45、USP46/UAF1、USP47、及びUSP48である。好ましくは、本発明の化合物は、これらの1種以上のDUB酵素よりもUSP30に対して良好な選択性を有する。
【0033】
他のDUB酵素に対する選択性は別として、薬物は、他の標的に対しては低い親和性を有することが重要であり、標的のパネルに対して薬理学的プロファイリングを実行して、潜在的なオフターゲット効果の可能性を評価し、最小限に抑えることができる。本発明の化合物をスクリーニングすることができる標的の例は、業界標準のEurofins-Cerep SafetyScreen44パネルの標的であり、これは、GPCR受容体、トランスポーター、イオンチャネル、核内受容体、及びキナーゼと非キナーゼ酵素の代表的な選択例として44の標的を含む。このスクリーニングパネルの標的に対する本発明の化合物の親和性は、小さいことが好ましい。本発明の化合物をスクリーニングすることができる標的のさらなる例は、キナーゼ酵素の代表的な選択例として39の標的を含む、Thermo Fisher SelectScreenキナーゼプロファイリングパネルのキナーゼである。このスクリーニングパネルの標的に対する本発明の化合物の親和性は、小さいことが好ましい。さらに、本発明の化合物をスクリーニングすることができる特定の酵素クラスの例は、カテプシン類(例えば、カテプシンA、B、C、H、K、L、S、V、及びZ)である。好ましくは、本発明の化合物は、これらの酵素の1つ以上よりもUSP30に対して良好な選択性を有する。
【0034】
経口投与に適した好ましい薬物動態特性を有する化合物も必要である。経口投与された薬剤は、優れた生物学的利用能を備えている必要がある。これは、胃腸(GI)管を容易に通過し、GI管から体循環に移行するときに広範な代謝を受けない能力である。薬物が体循環に入ると、体内での薬物の滞留時間を決定する上で代謝速度も重要である。
【0035】
従って、薬物分子が消化管を容易に通過することができ、体内でゆっくり代謝されるだけであるという特性を有することは明らかに好ましい。Caco-2アッセイは、特定の分子が消化管を通過する能力を予測するための広く受け入れられているモデルである。薬物分子の代謝の大部分は一般に肝臓で行われ、全細胞の肝細胞(動物又はヒト)を使用するインビトロアッセイは、肝臓での代謝に対する特定の分子の感受性を測定するための広く受け入れられている方法である。このようなアッセイは、肝細胞で算出されたクリアランス値からインビボクリアランスを予測することを目的としている。
【0036】
良好なCaco-2フラックスを有し、肝細胞に対して安定である化合物は、良好な経口バイオアベイラビリティ(肝臓を通過する際の化合物の消化管を介する良好な吸収及び最小限の抽出)、及び薬が効果的であるために十分な体内での長い滞留時間を有すると予測される。
【0037】
化合物の溶解度は、予想される薬理学的反応のために、体循環で所望の薬物濃度を達成する上で重要な要素である。低い水溶性は、新しい化学物質の製剤開発で遭遇する問題であり、薬物は吸収されるためには、吸収部位に溶液の形で存在しなければならない。化合物の動的溶解度は、比濁法的溶解度アッセイを使用して測定でき、このデータは、Caco-2透過性データと組み合わせて使用して、用量依存的なヒト腸管吸収を予測することもできる。
【0038】
化合物の曝露プロフィールを示す標準的なアッセイを使用して測定できる他のパラメーターには、例えば、血漿安定性(半減期測定)、血中AUC、Cmax、Cmin、及びTmax値が含まれる。
【0039】
アルツハイマー病、パーキンソン病、及び本明細書に記載の他の障害を含むCNS障害の治療には、脳を標的とする薬物分子が必要であり、これには血液脳関門の適切な通過が必要である。従って、有効な血液脳関門通過特性を有し、脳内での適切な滞留時間を提供するUSP30阻害剤が、効果的であるために必要である。化合物が血液脳関門を通過できる確率は、MDR1-MDCK細胞単層(MDR-1でトランスフェクトされたMadin-Darby Canine Kidney細胞がヒト排出トランスポーターP糖タンパク質の過剰発現をもたらす)を利用するインビトロフラックスアッセイによって測定することができる。さらに、インビボ動物モデルを使用して、脳及び血漿で直接、曝露を測定することもできる。
【0040】
様々な標準的なインビトロ及びインビボの方法によって測定され得る、好ましい安全性プロフィールを有する化合物も必要である。細胞毒性カウンタースクリーニングを使用して、ミトコンドリア活性に応答したレザスリン(alamarBlue)からレソフリンへの蛍光検出により、特定の細胞株(例えば、HCT116)における抗増殖/細胞毒性作用をアッセイすることができる。
【0041】
毒性及び安全性試験を実施して、副作用の可能性のある標的臓器を特定し、治療指数を定義して、臨床試験の初期開始用量を設定することもできる。規制要件では、一般に、1つの齧歯動物(ラット又はマウス)と1つの非齧歯動物(ウサギ、イヌ、非ヒト霊長類、又はその他の適切な種)の少なくとも2つの実験動物種で、試験を実施する必要がある。
【0042】
細菌の逆突然変異アッセイ(エームス試験)を使用して、通常、アミノ酸ヒスチジンの生合成のための突然変異体である細菌株サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)を使用することにより、本発明の化合物の突然変異誘発特性を評価することができる。
【0043】
小核アッセイを使用して小核の存在を評価することにより、化合物が遺伝子毒性であるかどうかを決定することができる。小核には、DNAの破壊によって生成された染色体断片(染色体異常誘発物質)又は有糸分裂装置(異数性誘発物質)の破壊によって生成された染色体全体が含まれている可能性がある。
【0044】
hERG予測アッセイは、カリウムチャネルへの試験化合物の結合の可能性と心エコー図でのQT延長の可能性に関する貴重な情報を提供する。hERG電流の抑制は、QT間隔の延長を引き起こし、致命的な心室性頻脈性不整脈(トルサード・ド・ポアン)を引き起こす可能性がある。通常、アッセイデータは自動パッチクランプアッセイプラットフォームから生成される。
【0045】
従って、本発明は、標的疾患に対する有効性を最大化するために適切な及び/又は改善された特性を有するUSP30阻害剤に関する。そのような特性には、例えば、効力、選択性、物理化学的特性、PK(薬物動態)プロフィールを含むADME(吸収、分布、代謝、及び排泄)特性、及び安全性プロフィールが含まれる。
【0046】
本発明の化合物は、重要かつ予想外の両方である上記で同定された特性の1つ以上を示すことが見出された。例えば本発明のすべての例は、本明細書に記載の生化学的アッセイで測定されるように、USP30に対して非常に効力が高い。本発明のすべての例は、他のDUB及びカテプシンよりも、USP30に対して著しくより選択的である。
【0047】
この本発明の化合物の重要で予想外の特性は、これらを、UP30活性に関連する疾患の治療及び/又は予防における使用に特に適したものにする。
【0048】
第1の態様において、本発明は、式(I)
【化2】
の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩を提供し、式中、
1は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、及びCH2OCH3から選択され;
2、R3、及びR4はそれぞれ、水素とフッ素から独立して選択され;そして
5は、水素、フッ素、(C1~C4)アルコキシ、及びシクロプロポキシから選択される。
【0049】
式(I)の化合物は、示されている絶対立体化学を有する単一の立体異性体として存在する。
【0050】
アルキル基とアルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖でもよく、1~4個の炭素原子を含む。アルキルの例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、及びsec-ブチルが含まれる。アルコキシの例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、及びt-ブトキシが含まれる。
【0051】
フルオロアルキル基は、1つ以上のフッ素置換基を含み得る。例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルがある。
【0052】
特に明記しない限り、置換という用語は、1つ以上の定義された基によって置換されることを意味する。基が複数の選択肢から選択される場合、選択される基は同じでも異なっていてもよい。「独立して」という用語は、複数の可能な置換基から複数の置換基が選択される場合、それらの置換基は同じであっても異なっていてもよいことを意味する。
【0053】
式(I)の化合物の好適な実施態様を以下に定義する。
好ましくは、R1は、メチル、CH2F、CHF2、CF3、及びCH2OCH3から選択される。
より好ましくは、R1は、メチル、CH2F、及びCH2OCH3から選択される。
最も好ましくは、R1はメチルである。
好ましくは、R2は水素である。
好ましくは、R3は水素である。
好ましくは、R4は水素である。
好ましくは、R5は、水素、フッ素、メトキシ、及びシクロプロポキシから選択される。
より好ましくは、R5は水素及びメトキシから選択される。
最も好ましくは、R5は水素である。
【0054】
本発明の1つの好適な実施態様において、
1はメチルである;
2、R3、及びR4はそれぞれ、水素とフッ素から独立して選択される;及び
5は、水素とメトキシから選択される。
【0055】
本発明のさらに好適な実施態様において、
1は、CH2Fである;
2、R3、及びR4はそれぞれ、水素とフッ素から独立して選択される;及び
5は、水素とメトキシから選択される。
【0056】
本発明のさらに好適な実施態様において、
1は、CH2OCH3である;
2、R3、及びR4はそれぞれ、水素とフッ素から独立して選択される;及び
5は水素とメトキシから選択される。
【0057】
本発明の式(I)の好ましい化合物は、以下の化合物、
N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(フルオロメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;及び
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド;
その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩から選択される。
【0058】
本発明の式(I)の最も好ましい化合物は、
N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩である。
【0059】
式(I)の化合物の医薬的に許容される塩には、その酸付加及び塩基性塩(二塩を含む)が含まれる。
【0060】
適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例としては、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、水素リン酸塩、イセチオン酸塩、D及びL-乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、パルメート(palmate)、リン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、D-及びL-酒石酸塩、及びトシル酸塩が含まれる。
【0061】
適切な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム塩、アンモニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩、亜鉛塩などが含まれる。
【0062】
適切な塩の総説については、Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley-VCH, Weinheim, Germany (2002)を参照されたい。
【0063】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(I)の化合物の溶液と、適宜所望の酸又は塩基とを一緒に混合することによって、容易に調製することができる。塩は溶液から沈殿され得るか、濾過によって収集され得るか、又は溶媒の蒸発によって回収され得る。
【0064】
本発明による医薬的に許容される溶媒和物には、結晶化の溶媒が同位体的に置換され得る、例えばD2O、アセトン-d6、DMSOd6などの水和物及び溶媒和物が含まれる。
【0065】
また、本発明の範囲内には、包接体、薬物-宿主包接複合体があり、ここで、前述の溶媒和物とは対照的に、薬物及び宿主は非化学量論量で存在する。このような複合体の総説については、J. Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288 by Haleblian (August 1975)を参照されたい。
【0066】
以下、式(I)の化合物についてのすべての言及は、その塩、並びに式(I)の化合物とその塩の溶媒和物及び包接体についての言及を含む。
本発明は、前に定義された式(I)の化合物のすべての多形を含む。
【0067】
また、本発明の範囲内には、式(I)の化合物のいわゆる「プロドラッグ」が含まれる。従って、それ自体が薬理学的活性をほとんど又は全く持たない式(I)の化合物の特定の誘導体は、体内に又は体に投与して代謝されると、所望の活性を有する式(I)の化合物を生じ得る。そのような誘導体は「プロドラッグ」と呼ばれる。
【0068】
本発明によるプロドラッグは、例えば式(I)の化合物に存在する適切な官能基を、例えばH Bundgaardによる"Design of Prodrugs" (Elsevier, 1985)に記載されているような「プロ部分」として当業者に知られている特定の部分で、置き換えることによって製造することができる。最後に、式(I)の特定の化合物は、それ自体が式(I)の他の化合物のプロドラッグとして作用し得る。
【0069】
窒素原子を含む式(I)の化合物の特定の誘導体はまた、その対応するN-オキシドを形成することができ、そしてそのような化合物もまた本発明の範囲内にある。
本発明の範囲内に含まれるのは、式(I)の化合物のすべての互変異性形態である。
【0070】
個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来の技術は、例えばキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用する、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成又はラセミ体(又は塩又は誘導体のラセミ体)の分割を含む。あるいはラセミ体(又はラセミ前駆体)を、アルコールなどの適切な光学活性化合物と反応させるか、又は式(I)の化合物が酸性又は塩基性部分を含む場合、1-フェニルエチルアミンや酒石酸などの塩基又は酸と、反応させることができる。得られたジアステレオ異性体混合物は、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶化によって分離することができ、ジアステレオ異性体の一方又は両方を、当業者に公知の手段によって対応する純粋な鏡像異性体に変換することができる。本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、クロマトグラフィー、典型的にはHPLCを使用して、不斉樹脂上で、炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンからなる移動相(0~50容量%のイソプロパノール、典型的には2%~20%、及び0~5容量%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含有する)を用いて、鏡像異性的に濃縮された形態で得られ得る。溶出液を濃縮すると、濃縮された混合物が得られる。本発明は、そのラセミ体及びラセミ混合物(集合体)を含む式(I)の化合物のすべての結晶形を含む。立体異性体の集合体は、当業者に公知の従来の技術によって分離することができる。例えば、E. L. Eliel and S. H. Wilenによる"Stereochemistry of Organic Compounds" (Wiley, New York, 1994)を参照されたい。
【0071】
式(I)の化合物は、R1及びアミドで置換されたピロリジン環の炭素原子に2つのキラル中心を含み、前記立体中心は(R)又は(S)配置のいずれかで存在し得る。IUPAC命名法に従った立体異性体の絶対配置(R)及び(S)の指定は、置換基の性質及びシーケンス規則手順の適用に依存する。従って、式(I)の化合物は4つの立体異性体の形で存在する可能性がある。
【0072】
本発明の式(I)の化合物は、単一の立体異性体として存在する。アミド置換基のピロリジン炭素原子は(R)-立体中心として存在するが、R1基のピロリジン炭素原子の指定は置換基の性質に依存する。式(I)の化合物は単一の立体異性体として単離され、少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、例えば96%、97%、98%、99%、又は100%の立体異性体過剰で存在し得る。
【0073】
追加のキラル中心は、式(I)の化合物のR1置換基自体に存在し得る。本発明の範囲内には、式(I)の化合物のそのような立体異性体のすべてが含まれる。
【0074】
本発明はまた、式(I)の化合物のすべての薬学的に許容される同位体変化を含む。同位体変化とは、少なくとも1つの原子が同じ原子番号を有する原子に置き換えられているものとして定義されるが、原子量は通常自然界に見られる原子量とは異なる。
【0075】
本発明の化合物に含めるのに適した同位体の例には、2H及び3Hなどの水素、13C及び14Cなどの炭素、15Nなどの窒素、17O及び18Oなどの酸素、32Pなどのリン、35Sなどの硫黄、18Fなどのフッ素、及び36Clなどの塩素の同位体が含まれる。
【0076】
本発明の化合物を重水素などの同位体で置換することにより、代謝安定性の向上、例えば、インビボ半減期の増加又は必要な投与量の減少から生じる特定の治療上の利点が得られ、従って、状況によっては好ましい場合がある。
【0077】
式(I)の化合物の特定の同位体変化、例えば放射性同位体を取り込んだものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において有用である。放射性同位体であるトリチウム及び14Cは、それらの取り込みの容易さ及び容易な検出手段の観点から、この目的に特に有用である。
【0078】
式(I)の化合物の同位体変種は、一般に、当業者に公知の従来の技術によって、又は適切な試薬の適切な同位体変種を使用する添付の実施例及び調製に記載されるものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0079】
式(I)の化合物は、脱ユビキチン化酵素USP30の阻害剤である。
さらなる態様において、本発明は、薬剤として使用するための、本明細書で定義される式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、USP30の阻害が、哺乳動物において有益な効果を生み出すことが知られているか又は示すことができる障害又は状態の治療又は予防の方法を提供し、この方法は、前記哺乳動物に、治療有効量の本明細書で定義される式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩を投与することを含む。本発明のすべての態様の1つの好適な実施態様において、障害又は状態はCNSの兆候である。本発明のすべての態様のさらに好適な実施態様において、障害又は状態は末梢の兆候である。
【0081】
さらなる態様において、本発明は、USP30の阻害が有益な効果を生み出すことが知られているか又は示すことができる障害又は状態の治療又は予防のための薬剤の製造において、本明細書で定義される式(I)の化合物、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩の使用を提供する。薬剤の製造には、特に、式(I)の化合物又はその塩の化学合成、又は前記化合物若しくは塩を含む組成物若しくは製剤の調製、又は化合物を含む任意の薬剤のパッケージ化が含まれ得る。本発明のすべての態様の1つの好適な実施態様において、障害又は状態はCNSの兆候である。本発明のすべての態様のさらに好適な実施態様において、障害又は状態は末梢の兆候である。
【0082】
USP30活性の恩恵を受ける障害又は状態は、ミトコンドリア機能障害、癌、及び線維症を含む状態から選択される。
【0083】
本発明のすべての態様の1つの好適な実施態様において、USP30活性の恩恵を受ける障害又は状態は、ミトコンドリア機能障害を含む状態である。ミトコンドリア機能障害を伴う状態は、CNS徴候又は末梢徴候である可能性がある。
【0084】
ミトコンドリアの機能障害は、赤血球を除く体のすべての細胞に存在する特殊な区画であるミトコンドリアの欠陥に起因する。ミトコンドリアが機能しなくなると、細胞内で生成されるエネルギーがますます少なくなり、細胞の傷害や細胞死さえも起こる。このプロセスが全身で繰り返されると、これが起きている被験者の生活が著しく障害される。ミトコンドリアの疾患は、脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、内分泌系、呼吸器系などの非常にエネルギーを必要とする臓器に最も頻繁に現れる。
【0085】
ミトコンドリア機能障害を伴う状態は、マイトファジー欠陥を伴う状態、ミトコンドリアDNAの変異を伴う状態、ミトコンドリア酸化ストレスを伴う状態、ミトコンドリア膜電位の欠損を伴う状態、ミトコンドリア生合成、ミトコンドリアの形状又は形態の欠損を伴う状態、及びリソソーム貯蔵欠陥を伴う状態から選択することができる。
【0086】
特に、ミトコンドリア機能障害を伴う状態は、神経変性疾患;多発性硬化症(MS);ミトコンドリア脳症、乳酸アシドーシス及び脳卒中様エピソード(MELAS)症候群;母性遺伝性の糖尿病及び難聴(MIDD);レーバー遺伝性視神経症(LHON);癌(例えば、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、結腸癌、精巣癌、頭頸部癌、膵臓癌、脳癌、黒色腫、骨又は他の組織臓器の癌、及び血液細胞の癌、例えばリンパ腫及び白血病、多発性骨髄腫、転移性癌、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、鼻咽頭癌、結腸直腸癌、及び非小細胞肺癌);神経障害、運動失調、網膜色素変性症、母性遺伝性リー脳症(NARP-MILS);ダノン病;糖尿病;糖尿病性腎症;代謝障害;心不全;心筋梗塞につながる虚血性心疾患;統合失調症などの精神疾患;多種スルファターゼ欠損症(MSD);ムコリピドーシスII(ML II);ムコリピドーシスIII(ML III);ムコリピドーシスIV(ML IV);GMIガングリオシドーシス(GM1);神経セロイドリポフシノース(NCL1);アルパース病;バース症候群;ベータ酸化欠陥;カルニチンアシルカルニチン欠損症;カルニチン欠損症;クレアチン欠損症候群;コエンザイムQ10欠損症;複合体I欠損症;複合体II欠損症;複合体III欠損症;複合体IV欠損症;複合体V欠損症;COX欠損症;慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO);CPTI欠損症;CPTII欠損症;グルタル酸尿症II型;カーンズ・セイヤー症候群;乳酸アシドーシス;長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(LCHAD);リー疾患又は症候群;リー症候群フランス系カナダ人(LSFC)亜種;致死性乳児心筋症(LIC);ルフト病;グルタル酸尿症II型;中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD);ミオクローヌスてんかん及び赤色ぼろ繊維(MERRF)症候群;ミトコンドリア細胞傷害;ミトコンドリア劣性運動失調症候群;ミトコンドリアDNA枯渇症候群;筋神経胃腸障害及び脳症;ピアソン症候群;ピルビン酸脱水素酵素欠損症;ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症;POLG変異;中/短鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(M/SCHAD)欠損症;極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症;ペルオキシソーム障害;メチルマロン酸血症;認知機能と筋力の年齢依存性の低下から選択することができる。
【0087】
ミトコンドリア機能障害を伴う状態は、CNS障害、例えば神経変性疾患である可能性がある。
神経変性疾患には、限定されるものではないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、虚血、脳卒中、レビー小体型認知症、多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、及び前頭側頭型認知症が含まれる。
【0088】
特に、本発明の化合物は、限定されるものではないが、α-シヌクレイン、パーキン、PINK1、GBA、及びLRRK2の突然変異に関連するPD、及びパーキンが変異している常染色体劣性若年性パーキンソン病(AR-JP)を含むパーキンソン病の治療又は予防に有用であり得る。
【0089】
本明細書に記載の本発明の化合物又はその医薬組成物は、ミトコンドリア機能障害を伴う状態の治療又は予防に使用される場合、1種以上の追加の薬剤と組み合わせることができる。化合物は、レボドパ、ドーパミンアゴニスト、モノアミノオキシゲナーゼ(MAO)B阻害剤、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、抗コリン作動薬、リルゾール、アマンタジン、コリンエステラーゼ阻害剤、メマンチン、テトラベナジン、抗精神病薬、ジアゼパム、クロナゼパム、抗うつ薬、及び抗けいれん薬から選択される1種以上の追加の薬剤と組み合わせることができる。これらの化合物は、神経変性疾患の病原性タンパク質凝集体を減少/除去する薬剤、例えばパーキンソン病、多系統萎縮症、又はレビー小体型認知症のアルファシヌクレインを減少/除去する薬剤;アルツハイマー病又は進行性核上性麻痺のタウを減少/除去する薬剤;ALS又は前頭側頭型認知症のTDP-43を減少/除去する薬剤と組み合わせることができる。
【0090】
本発明のすべての態様の別の好適な実施態様において、USP30活性の恩恵を受ける障害又は状態は癌である。癌は、ミトコンドリアの機能障害に関連している可能性がある。好ましい癌には、例えば、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、結腸癌、精巣癌、頭頸部癌、膵臓癌、脳癌、黒色腫、骨又は他の組織臓器の癌、及び血液細胞の癌、例えばリンパ腫及び白血病、多発性骨髄腫、転移性癌、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、鼻咽頭癌、結腸直腸癌、及び非小細胞肺癌が含まれる。
【0091】
特に、本発明の化合物は、アポトーシス経路が調節不全である場合、より具体的には、BCL-2ファミリーのタンパク質が変異している場合、又は過剰若しくは過少発現されている場合の癌の治療又は予防に有用であり得る。
【0092】
線維症は、外傷、炎症、組織修復、免疫反応、細胞過形成、及び新生物形成の後に発生する細胞外マトリックス成分の蓄積を指す。本発明の化合物及び組成物によって治療され得る線維性障害には、特に、主要な臓器疾患、例えば、間質性肺疾患(ILD)、肝硬変、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)(肝線維症)、腎臓病(腎線維症)、急性腎臓障害(AKI)、慢性腎臓病(CKD)、腎臓移植片機能の遅延、心臓又は血管疾患(心臓線維症)、及び目の疾患;線維増殖性障害、例えば、全身性及び局所性強皮症、ケロイド及び肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、及びデュピュイトラン収縮;外傷に関連する瘢痕、例えば、外科的合併症、化学療法剤誘発性線維症(例えば、ブレオマイシン誘発性線維症)、放射線誘発性線維症、事故による傷害及び火傷;後腹膜線維症(オーモンド病);及び、通常、腎移植後に腹膜透析を受けている患者の腹膜線維症/腹膜瘢痕、に関連する繊維症/繊維性障害が含まれる。例えば、Wynn et al, 2004, Nat Rev Immunol. August; 4(8): 583-594を参照されたい。従って本発明は、主要な臓器、例えば肺、肝臓、腎臓、心臓、皮膚、眼、胃腸管、腹膜、及び骨髄を含む臓器の及び/又はこれらに関連する線維症/線維性障害、及び本明細書に記載の他の疾患/障害の治療又は予防の方法、並びに前記方法で使用される化合物及び組成物に関する。
【0093】
これらの化合物は、抗糖尿病薬、心血管疾患薬、及び酸化ストレスなどの疾患関連経路(限定されるものではないが、nrf2/keap-1経路を含む)及び抗アポトーシス経路(限定されるものではないが、抗p53剤を含む)を標的とする新規薬剤を含む、腎疾患の治療薬として使用される薬剤と組み合わせることができる。
【0094】
間質性肺疾患(ILD)には、肺の炎症と線維症が病理の最終的な一般的な経路である障害、例えば、サルコイドーシス、ケイ酸症、薬物反応、感染症、及びコラーゲン血管疾患、例えば関節リウマチや全身性硬化症(強皮症)が含まれる。肺の線維性障害には、例えば、肺線維症、特発性肺線維症(IPF)、通常型間質性肺炎(UIP)、間質性肺疾患、潜在性線維性肺胞炎(CFA)、閉塞性気管支炎、及び気管支拡張症が含まれる。
特発性肺線維症(IPF)は、最も一般的なタイプのILDであり、原因はわかっていない。
【0095】
化合物は、ニンテダニブ及びピルフェニドンを含む、IPF及び潜在的にILDの治療薬である薬剤と組み合わせることができる。
肝硬変はILDと同様の原因があり、例えば、ウイルス性肝炎、住血吸虫症、慢性アルコール依存症に関連する肝硬変が含まれる。
【0096】
腎臓病は糖尿病と関連している可能性があり、これは腎臓を傷害して瘢痕化し、進行性の機能喪失を引き起こし、また高血圧性疾患を引き起こす可能性がある。腎線維症は、偶発的CKDや進行性CKDなどの慢性腎臓病(CKD)から末期腎疾患(ESRD)まで、腎疾患のどの段階でも発生する可能性がある。腎線維症は、高血圧や糖尿病などの心血管疾患の結果として発症する可能性があり、どちらも腎機能に多大な負担をかけ、線維化応答を促進する。しかし、腎線維症は特発性(既知の原因なし)である可能性もあり、特定の遺伝性ミトコンドリア病も腎線維症の症状及び関連する症状を示す。
【0097】
心臓病は、心臓のポンプ能力を損なう可能性のある瘢痕組織をもたらす可能性がある。
眼の疾患には、例えば、黄斑変性症、並びに視力を損なう可能性のある網膜及び硝子体網膜症が含まれる。
【0098】
好適な実施態様において、本発明は、特発性肺線維症(IPF)の治療又は予防に関する。
別の好適な実施態様において、本発明は、腎線維症の治療又は予防に関する。
【0099】
別の好適な実施態様において、本発明は、特に高リスク患者における急性腎障害(AKI)の治療又は予防に関する。例としては、手術、例えば臓器移植後のAKI、例えば虚血再灌流傷害、移植片機能の遅延;化学療法によるAKIなどの腫瘍;造影剤誘発性腎症、例えば直接尿細管細胞毒性、血行力学的虚血、及び浸透圧作用;及び、薬物や感染症などによる急性間質性腎炎が含まれる。特定の高リスク患者サブグループは、心臓手術、例えば冠状動脈バイパス移植及び/又は弁手術を受けている患者である。65歳以上、インスリン依存性糖尿病、CKD(推定糸球体濾過率[eGFR]が60ml/分/1.73m2未満の成人は特にリスクがある)、心不全、肝疾患、AKIの病歴などのAKIの静的危険因子が確立されている。
【0100】
別の好適な実施態様において、本発明は、例えば尿細管間質性線維症及び糖尿病性腎症を含む、そのようなAKIに起因する慢性腎疾患(CKD)の治療又は予防に関する。
【0101】
リー症候群は、中枢神経系に影響を及ぼすまれな遺伝性神経代謝障害である。この進行性障害は、3か月~2歳の乳児に始まる。まれに10代の若者や成人に発生する。リー症候群は、ミトコンドリアタンパク質をコードする核DNAの変異、ミトコンドリアDNAの変異(母性遺伝性リー症候群-MILS)、又はX染色体の短腕にあるピルビン酸脱水素酵素と呼ばれる酵素の欠乏(X染色体連鎖リー症候群)によって引き起こされ得る。リー症候群の症状は、通常急速に進行する。最も初期の兆候は、吸引能力の低下、及び頭の制御と運動能力の喪失であり得る。これらの症状は、食欲不振、嘔吐、神経過敏、泣き続けること、及び発作を伴う場合がある。その障害が進行するにつれて、症状は、全身衰弱、筋緊張の欠如、及び乳酸アシドーシスのエピソードも含む場合があり、これは呼吸機能と腎機能の障害につながる可能性がある。
【0102】
母性遺伝性リー症候群(MILS)では、ミトコンドリアDNAの遺伝的変異(90%を超える高い割合で)が、運動動作で役割を果たす脳の領域で細胞を動かすエネルギー源を妨害する。ミトコンドリアDNAの遺伝的変異は、これらの細胞のエネルギーの慢性的な欠如をもたらし、それが中枢神経系に悪影響を及ぼし、運動機能の進行性の変性を引き起こす。MILSを引き起こすミトコンドリアDNAの遺伝子変異が少ない場合(90%未満)、その状態は神経障害性運動失調及び色素性網膜炎(NARP)として知られている。細胞代謝に重要な物質の別のグループを生成する遺伝子の突然変異の結果であるリー疾患(X連鎖リー疾患と呼ばれる)の形態もある。LRPPRCと呼ばれる遺伝子の突然変異を特徴とする、フランス系カナダ人変種と呼ばれるリー症候群のさらなる変種が存在する。同様の神経学的症状はリー症候群の症状と同様に表されるが、脂肪肝はフランス系カナダ人変種でも一般的に観察される。
【0103】
好適な実施態様において、本発明は、例えばX連鎖リー疾患、リー症候群フランス系カナダ人変種、及び/又はリー疾患に関連する症状を含む、リー症候群又は疾患の治療又は予防に関する。
【0104】
化合物は、限定されるものではないが、ニコチンアミドリボシドを含むミトコンドリア病の治療として使用され得る新規薬剤と組み合わせることができる。
【0105】
「治療」への言及には、一時的又は永続的に、症状を改善、緩和、症状の原因を排除する手段が含まれる。本発明の化合物は、ヒト及び他の哺乳動物における本明細書に開示された疾患の治療に有用である。
【0106】
別の実施態様において、本発明は、本明細書に開示された疾患の予防的治療を包含し、指定された障害又は状態の症状の出現を予防又は遅らせる手段を含む。本発明の化合物は、ヒト及び他の哺乳動物における本明細書に開示された疾患の予防に有用である。
【0107】
治療又は予防を必要とする患者は、例えば、その状態に罹患しているか、又はその状態に罹患するリスクのあるヒト又は他の哺乳動物であり得る。
【0108】
さらなる態様において、本発明は、本明細書で定義される式(I)の化合物、又は前記化合物若しくは互変異性体の薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される希釈剤又は担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0109】
本発明の医薬組成物は、任意の薬学的に許容される担体、補助剤、又はビヒクルと組み合わされた本発明の任意の化合物を含む。薬学的に許容される担体の例は当業者に公知であり、投与方法及び剤形の性質に応じて、限定されるものではないが、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤、及び分散剤が含まれる。組成物は、例えば錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、エリキシル剤、トローチ剤、坐剤、シロップ剤、並びに懸濁液及び液剤を含む液体調製物の形態であり得る。本発明の文脈における「医薬組成物」という用語は、活性物質を含み、さらに1種以上の医薬的に許容される担体を含む組成物を意味する。組成物は、投与方法及び剤形の性質に応じて、例えば希釈剤、補助剤、賦形剤、ビヒクル、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤、及び分散剤から選択される成分をさらに含み得る。
【0110】
本明細書に記載の本発明の化合物又はその医薬組成物は、単独で使用することも、1種以上の追加の薬剤と組み合わせて使用することもできる。化合物は、追加の抗腫瘍治療薬、例えば化学療法剤又は他の調節タンパク質の阻害剤と組み合わせることができる。1つの実施態様において、追加の抗腫瘍治療薬はBH-3模倣物である。さらなる実施態様において、BH-3模倣物は、限定されるものではないが、ABT-737、ABT-199、ABT-263、及びオバトクラックス(Obatoclax)のうちの1つ以上から選択され得る。さらなる実施態様において、追加の抗腫瘍剤は化学療法剤である。化学療法剤は、限定されるものではないが、オラパリブ、マイトマイシンC、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、イオン化放射線(IR)、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、テモゾロミド、タキサン類、5フルオロピリミジン類、ゲムシタビン、及びドキソルビシンから選択することができる。
【0111】
線維性障害の治療又は予防のために、例えば、本明細書に記載の本発明の化合物又はその医薬組成物は、単独で使用されるか、又は抗コリン作用薬、ベータ-2模倣薬、ステロイド、PDE-IV阻害剤、p38 MAPキナーゼ阻害剤、NK1拮抗薬、LTD4拮抗薬、EGFR阻害薬、及びエンドセリン拮抗薬からなる群から選択される1種以上の追加の医薬品と組み合わせて使用され得る。
【0112】
特に、本明細書に記載の本発明の化合物又はその医薬組成物は、単独で使用するか、又はコルチコステロイドなどの一般的な免疫抑制剤、又は免疫抑制若しくは細胞毒性剤、又はピルフェニドンなどの抗線維化薬、又は非特異的キナーゼ阻害剤(例えばニンテダニブ)からなる群から選択される1種以上の追加の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0113】
本発明の医薬組成物は、経口、非経口、局所、吸入、鼻内、直腸内、膣内、眼、及び耳などの任意の適切に効果的な方法で投与することができる。本発明の化合物の送達に適した医薬組成物及びそれらの調製方法は、当業者には容易に明らかであろう。そのような組成物及びそれらの調製のための方法は、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences", 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)に見出すことができる。
【0114】
経口投与
本発明の化合物は経口投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下することを含み得るか、又は化合物が口から直接血流に入る頬又は舌下投与が採用され得る。
【0115】
経口投与に適した製剤には、錠剤、粒子、液剤、若しくは粉末を含むカプセル剤、トローチ剤(液体充填物を含む)、噛み物、多粒子及びナノ粒子、ゲル、フィルム(粘膜接着剤を含む)、卵形製剤、噴霧剤、及び液体製剤などの固体製剤が含まれる。
【0116】
液体製剤には、懸濁剤、液剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が含まれる。このような製剤は、ソフトカプセル又はハードカプセルの充填剤として使用でき、通常、担体、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は適切な油、並びに1つ以上の乳化剤、及び/又は懸濁剤を含む。液体製剤はまた、例えば小袋からの固体の復元によって調製され得る。
【0117】
本発明の化合物はまた、Liang and Chen によるExpert Opinion in Therapeutic Patents, 11 (6), 981-986 (2001)に記載されているような、急速に溶解し急速に崩壊する剤形で使用することができる。
【0118】
典型的な錠剤は、製剤化学者に知られている標準的なプロセス、例えば直接圧縮、造粒(乾燥、湿式、又は溶融)、溶融凝固、又は押出しを使用して調製することができる。錠剤製剤は、1つ以上の層を含んでよく、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよい。
【0119】
経口投与に適した賦形剤の例には、担体、例えばセルロース、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、マンニトール、及びクエン酸ナトリウム、造粒結合剤、例えばポリビニルピロリジン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びゼラチン、崩壊剤、例えばデンプングリコレートナトリウム及びケイ酸塩、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸、湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、保存剤、酸化防止剤、香味剤、及び着色剤が含まれる。
【0120】
経口投与用の固形製剤は、即時放出及び/又は徐放性であるように製剤化することができる。徐放性製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、標的化放出、及びプログラム放出が含まれる。高エネルギー分散液、浸透圧及び被覆粒子などの適切な徐放性技術の詳細は、Verma et al, Pharmaceutical Technology On-line, 25 (2), 1-14 (2001)に記載されている。他の徐放性製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。
【0121】
非経口投与
本発明の化合物はまた、血流、筋肉、又は内臓に直接投与することができる。非経口投与に適した手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、及び皮下投与が含まれる。非経口投与に適した器具には、針(マイクロニードルを含む)インジェクター、無針インジェクター、及び注入技術が含まれる。
【0122】
非経口製剤は、通常、塩、炭水化物、緩衝剤(好ましくはpH3~9)などの賦形剤を含み得る水溶液であるが、一部の用途では、これらは、無菌の非水溶液として、又は無菌のパイロジェンフリー水などの適切なビヒクルと組み合わせて使用される乾燥形態として、より適切に製剤化することができる。
【0123】
例えば凍結乾燥による無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に公知の標準的な医薬技術を使用して容易に達成することができる。
【0124】
非経口溶液の調製に使用される式(I)の化合物の溶解度は、適切な処理、例えば高エネルギー噴霧乾燥分散液の使用によって、及び/又は溶解度増強剤の使用などの適切な配合技術の使用によって増加させることができる。
【0125】
非経口投与用の製剤は、即時放出及び/又は徐放性になるように製剤化することができる。徐放性製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御二重放出、標的化放出、及びプログラム放出が含まれる。
【0126】
本発明の医薬組成物はまた、血液脳関門をバイパスするための当技術分野で知られている組成物及び方法を含むか、又は脳に直接注射することができる。注射に適した領域には、大脳皮質、小脳、中脳、脳幹、視床下部、脊髄、脳室組織、及び頸動脈小体と副腎髄質を含む末梢神経系の領域が含まれる。
【0127】
投与量
化合物の有効用量の大きさは、もちろん、治療される状態の重症度の本質及び投与経路によって異なる。適切な投与量の選択は、医師の権限の範囲内である。1日あたりの用量範囲は、ヒト及び非ヒト動物の体重1kgあたり約10μg~約100mgであり、一般に1用量につき体重1kgあたり約10μg~30mgであり得る。上記の用量は、1日1~3回投与することができる。
【0128】
例えば、経口投与は、5mg~1000mg、例えば5~500mgの総1日用量を必要とし得るが、静脈内投与は、0.01~30mg/kg体重のみ、例えば0.1~10mg/kg、より好ましくは0.1~1mg/kg体重を必要とし得る。総1日用量は、単回又は分割用量で投与することができる。当業者はまた、特定の状態の治療又は予防において、本発明の化合物を「適宜」(すなわち、必要に応じて又は所望に応じて)単回用量として服用できることを理解するであろう。
【0129】
合成方法
式(I)の化合物は、一般的な反応スキーム及び代表的な例において、以下に記載されるような方法を使用して調製することができる。該当する場合、スキーム内の個々の変換は異なる順序で完了することができる。本発明は以下の非限定的な例によって示され、そこでは以下の略語及び定義が使用される。化合物は、液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)又は1HNMR又はその両方によって特性解析された。
【0130】
さらなる態様において、本発明は、式(IV)の化合物(ここでYはOHである)を式(V)のアミンと反応させることを含む、式(I)の化合物の調製方法を提供し、ここで、PGは、式(III)のアミドを与えるためのBOC又はCbzなどの保護基である(スキーム1)。アミドカップリング反応は、標準的な方法を使用して、例えばDCC、HATU、HBTU、EDCなどのカップリング試薬を使用する反応によって、又は混合無水物を介して実施することができる。あるいは、酸(IV)(ここでYはOHである)は、SOCl2、PCl3、又はPCl5を使用して、酸塩化物(IV)(ここでYはClである)に変換でき、これは、適切な溶媒中で適切な塩基の存在下でアミン(V)と反応させることができる。あるいは、化合物(IV)(ここでYはエステルを形成する)は、好ましくは適切な溶媒中でアミン(V)と直接反応させることができる。
【0131】
式(III)の化合物は、標準的方法を使用して脱保護してアミン(II)を得ることができ、次にこれを臭化シアンと反応させて、式(I)の対応する化合物を得ることができる。
【化3】
【0132】
さらなる態様において、本発明は、式(II)及び(III)から選択される化合物を提供する:
【化4】
式中、PGは保護基であり、R1、R2、R3、R4、及びR5は、式(I)の化合物、及びその好適な実施態様、その互変異性体、又は前記化合物若しくは互変異性体の塩について本明細書で定義したものである。
【0133】
保護基は、好ましくはtert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、p-メトキシベンジルカルボニル(MeOZ)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、カルバメート、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)、トリクロロエトキシカルボニル(Troc)、4-ニトロベンゼンスルホニル(Nosyl)、及び2-ニトロフェニルスルフェニル(Nps)から選択される。最も好ましいのはBOCとCbzである。
【0134】
【表1】
【0135】
LCMS法
方法C
【0136】
【表2】
【0137】
方法H
【0138】
【表3】
【0139】
方法H1
【0140】
【表4】
【0141】
方法J
【0142】
【表5】
【0143】
方法Y3
【0144】
【表6】
【0145】
方法Y4
【0146】
【表7】
【0147】
方法Y9
【0148】
【表8】
【0149】
中間体A
5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル
【化5】
スキーム:(i)ヒドラジン水和物、MeOH、0℃から室温;(ii)クロロオキソ酢酸エチル、K2CO3、DCM、0℃から室温;(iii)TsCl、TEA、DCM、0℃から室温。
【0150】
工程1
3-シアノベンゾヒドラジド
MeOH(1500mL)中の3-シアノ安息香酸メチル(CAS 13531-48-1、CombiBloxsから、150.0g、930.5mmol)の攪拌溶液に、NH2NH2.H2O(99%水溶液、114.3mL、2326.3mmol)を0℃で加えた。混合物を室温で16時間撹拌し、次に減圧下で濃縮し、水(2000mL)で希釈し、DCM(3×800mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、3-シアノベンゾヒドラジド(138g、857.1mmol、92%の収率)を得た。
LCMS: 方法C、1.23分、MS: ES+ 162.2; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 10.01 (s, 1H), 8.22 (s, 1H), 8.13 - 8.15 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.00 - 8.02 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.70 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 4.60 (s, 2H).
【0151】
工程2
2-(2-(3-シアノベンゾイル)ヒドラジニル)-2-オキソ酢酸エチル
DCM(1960mL)中の3-シアノベンゾヒドラジド(131.0g、813.7mmol)の撹拌溶液に、K2CO3(168.4g、1220.5mmol)を加えた。混合物を室温で15分間撹拌し、次に0℃に冷却し、クロロオキソ酢酸エチル(203.6mL、1790.1mmol)を0℃で滴加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次に水(5000mL)で希釈し、DCM(5×4000mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、2-(2-(3-シアノベンゾイル)ヒドラジニル)-2-オキソ酢酸エチル(251.9g)を得た。粗製物を次の工程で使用した。
LCMS: 方法C、1.35分、MS: ES+ 262.2; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 11.08 (s, 1H), 10.85 (s, 1H), 8.28 (s, 1H), 8.10 - 8.20 (m, 2H), 7.77 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 4.29 - 4.35 (m, 2H), 1.32 (t, 3H).
【0152】
工程3
5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル
DCM(4000mL)中の2-(2-(3-シアノベンゾイル)ヒドラジニル)-2-オキソ酢酸エチル(251.0g、工程2からの粗製物)の撹拌溶液に、TEA(269.8mL、1923.4mmol)を0℃で加えた。混合物を0℃で15分間撹拌し、次に4-トルエンスルホニルクロリド(91.7g、480.8mmol)を0℃で加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次に水(4000mL)で希釈し、DCM(2×5000mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中の25%EtOAc)によって精製して、5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル(105.6g、434.6mmol、2工程で53%の収率)を得た。
LCMS: 方法C、1.58分、MS: ES+ 244.2; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 8.51 (s, 1H), 8.38 - 8.40 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.18 - 8.20 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.87 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 4.46 - 4.51 (m, 2H), 1.39 (t, 3H).
【0153】
中間体B
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル
【化6】
スキーム:(i)COガス、PdCl2(dppf)DCM錯体、MeOH、NaOAc、70℃;(ii)ヒドラジン水和物、MeOH、0℃から室温;(iii)塩化エチルオキサリル、K2CO3、DCM、0℃から室温;(iv)TsCl、TEA、DCM、0℃から室温。
【0154】
工程(i)
5-シアノ-2-メトキシ安息香酸メチル
オートクレーブ中の、MeOH(20mL)中の3-ブロモ-4-メトキシベンゾニトリル(CAS 117572-79-9、2.0g、9.48mmol)の撹拌溶液に、NaOAc(3.88g、47.40mmol)を加え、反応混合物をN2で20分間脱気した。ジクロロメタン(1.54g、1.89mmol)との錯体である[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を、反応混合物に室温で加えた。反応混合物を、CO(ガス)圧力(20kg/Cm2)下で70℃で36時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。残留物を水(50mL)に注ぎ、EtOAc(3×70mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中40%EtOAc)により精製して、5-シアノ-2-メトキシ安息香酸メチル(1.1g、5.75mmol、60%の収率)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 8.07 (s, 1H), 8.03 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.35 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.92 (s, 3H), 3.81 (s, 3H).
【0155】
工程(ii)
5-シアノ-2-メトキシベンゾヒドラジド
MeOH(11mL)中の5-シアノ-2-メトキシ安息香酸メチル(1.1g、5.75mmol)の撹拌溶液に、ヒドラジン水和物(0.72mL、14.37mmol)を0℃で加えた。混合物を室温まで加温し、16時間撹拌し、次に減圧下で濃縮して、5-シアノ-2-メトキシベンゾヒドラジド(1.0g、5.23mmol、90%の収率)を得た。
LCMS: 方法C、1.24分、MS: ES+ 190.3.
【0156】
工程(iii)
2-(2-(5-シアノ-2-メトキシベンゾイル)ヒドラジネイル)-2-オキソ酢酸エチル
DCM(10mL)中の5-シアノ-2-メトキシベンゾヒドラジド(1.0g、5.23mmol)の撹拌溶液に、K2CO3(1.44g、10.47mmol)を加え、次に塩化エチルオキサリル(1.16mL、10.47mmol)を0℃で滴加した。混合物を室温まで加温し、1時間撹拌し、次に水(50mL)に注ぎ、DCM(3×150mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、2-(2-(5-シアノ-2-メトキシベンゾイル)ヒドラジネイル)-2-オキソ酢酸エチル(1.2g、4.12mmol、78%の収率)を得た。
LCMS: 方法J、3.08分、MS: ES+ 292.0.
【0157】
工程(iv)
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル
DCM(12mL)中の2-(2-(5-シアノ-2-メトキシベンゾイル)ヒドラジネイル)-2-オキソ酢酸エチル(1.2g、4.12mmol)の撹拌溶液に、TEA(1.72mL、12.37mmol)及びTsCl(0.78g、4.12mmol)を0℃で少しずつを加えた。混合物を室温まで加温し、2時間撹拌し、次に水(50mL)に注ぎ、EtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮し、次に残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中43%EtOAc)を使用して精製して、5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル(0.64g、2.34mmol、56%の収率)を得た。
LCMS: 方法J、3.94分、MS: ES+ 274.0.
【0158】
実施例1
N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
【化7】
スキーム:(i)TBD、THF、0℃から室温;(ii)TFA、DCM、0℃から室温;(iii)K2CO3、CNBr、0℃から室温。
【0159】
工程(i)
(2R,4R)-4-(4-(3-シアノフェニル)ピコリナミド)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
THF(4.0 mL)中の5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル(0.15g、0.617mmol、1.0当量)及び(2R,4R)-4-アミノ-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(CAS 348165-63-9、CombiBlocksから、0.123g、0.617mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、TBD(0.103g、0.741mmol、1.2当量)を0℃で加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、次に水(100mL)に注ぎ、EtOAc(2×100mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(60-120#シリカゲル、ヘキサン中40%EtOAc)により精製して、(2R,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.115g、0.289mmol、47%の収率)を得た。
LCMS: 方法C、1.69分、MS: ES- 396.6 (M-1).
【0160】
工程(ii)
5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5R)-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩
DCM(5 mL)中の(2R,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.115g、0.289mmol、1.0当量)の撹拌溶液に、TFA(0.35 mL、3容量)を0℃で滴加した。混合物を室温で40分間撹拌し、次にDCM(2×50mL)を用いて減圧下で濃縮して、5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5R)-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.10g、0.24mmol、84%の収率)を得た。
LCMS: 方法C、1.28分、MS: ES+ 298.0.
【0161】
工程(iii)
N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
THF(5mL)中の5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5R)-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.10g、0.243mmol、1.0当量)の攪拌溶液に、K2CO3(0.168g、1.22mmol、5当量)を室温で少しずつ加えた。混合物を0℃に冷却し、臭化シアン(0.026g、0.243mmol、1当量)を0℃で加えた。混合物を室温で40分間撹拌し、次に水(80mL)に注ぎ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機相を合わせ、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(60-120#シリカゲル、ヘキサン中35%EtOAc)により精製して、N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド(0.07g、0.217mmol、89%の収率)を得た。
融点=152℃~154℃。[α]D25=-31°(c=0.05g/100cm3、ジクロロメタン)。
LCMS: 方法H1、3.15分、MS: ES- 322.1; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.75 - 9.77 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 8.50 (s, 1H), 8.39 - 8.41 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.16 - 8.18 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.86 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 4.51 - 4.54 (m, 1H), 3.88 - 3.94 (m, 1H), 3.77 - 3.81 (m, 1H), 3.43 - 3.46 (m, 1H), 2.14 - 2.19 (m, 1H), 1.76 - 1.83 (m, 1H), 1.25 - 1.26 (d, J = 6.4 Hz, 3H).
【0162】
実施例2
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
【化8】
スキーム:(i)TBD、THF、0℃;(v)TFA、DCM、0℃から室温;(vi)K2CO3、CNBr、0℃。
【0163】
工程(i)
(2S,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
THF(3.0mL)中の5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル(0.15g、0.62mmol)及び(2S,4R)-4-アミノ-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(CAS 1207853-53-9、0.14g、0.62mmol)の攪拌溶液に、TBD(0.13g、0.92mmol)を0℃で加えた。混合物を0℃で10分間撹拌し、次に水(50mL)に注ぎ、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中50%EtOAc)により精製して、(2S,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.07g、0.17mmol、28%の収率)を得た。
LCMS: 方法C、1.62分、MS: ES- 426.1.
【0164】
工程(ii)
5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5S)-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩
DCM(3mL)中の(2S,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.07g、0.16mmol)の攪拌溶液に、TFA(0.35mL、5容量)を0℃で滴加した。混合物を室温で2時間撹拌し、次に減圧下で濃縮して、5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5S)-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.12g、定量的収量)を得た。
LCMS: 方法C、1.27分、MS: ES+ 328.0.
【0165】
工程(iii)
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
THF(5mL)中の5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5S)-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.11g、0.25mmol)の攪拌溶液に、K2CO3(0.1g、0.75mmol)を室温で少しずつ加えた。10分後、臭化シアン(0.02g、0.19mmol)を0℃で加えた。混合物を0℃で45分間撹拌し、次に水(50mL)に注ぎ、EtOAc(3×40mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中70%EtOAc)により精製して、N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3)-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド(0.02g、0.07mmol、2工程で43%の収率)を得た。
LCMS: 方法H、2.47分、MS: ES- 351.1; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.75 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 8.50 (s, 1H), 8.40 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.86 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 4.48 - 4.58 (m, 1H), 3.98 - 4.08 (m, 1H), 3.70 - 3.74 (m, 1H), 3.43 - 3.50 (m, 3H), 3.32 (s, 3H), 2.09 - 2.14 (m, 1H), 1.96 - 2.02 (m, 1H);キラルSFC: 方法Y4、4.30分.
【0166】
実施例3
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(フルオロメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
【化9】
スキーム:(i)TBD、THF、0℃から室温;(v)TFA、DCM、0℃から室温;(vi)K2CO3、CNBr、0℃から室温。
【0167】
工程(i)
(2S,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(フルオロメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
THF(5.0mL)中の5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル(0.15g、0.62mmol)及び(2S,4R)-4-アミノ-2-(フルオロメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(CAS 1207853-03-9、Angeneから、0.11g、0.49mmol)の撹拌溶液に、TBD(0.1g、0.74mmol)を0℃で加えた。混合物を室温まで加温し、1時間撹拌し、次に水(50mL)に注ぎ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中50%EtOAc)により精製して、(2S,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(フルオロメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.1g、0.25mmol、40%の収率)を得た。
LCMS: 方法C、1.66分、MS: ES- 414.1.
【0168】
工程(ii)
5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5S)-5-(フルオロメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩
DCM(5mL)中の(2S,4R)-4-(5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(フルオロメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.1g、0.24mmol)の攪拌溶液に、TFA(1.0mL、10容量)を0℃で滴加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次に減圧下で濃縮して、5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5S)-5-(フルオロメチル)-ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.12g、定量的収量)を得た。
LCMS: 方法C、1.31分、MS: ES+ 316.2.
【0169】
工程(iii)
N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(フルオロメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
THF(5mL)中の5-(3-シアノフェニル)-N-((3R,5S)-5-(フルオロメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.12g、0.28mmol)の攪拌溶液に、K2CO3(0.12g、0.84mmol)を室温で少しずつ加え、10分間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、臭化シアン(0.03g、0.28mmol)を加え、混合物を室温まで加温し、1時間撹拌した。混合物を水(50mL)に注ぎ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中70%EtOAc)により精製して、N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(フルオロメチル)ピロリジン-3-イル)-5-(3-シアノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド(0.03g、0.10mmol、2工程で41%の収率)。
LCMS: 方法H、2.51分、MS: ES- 338.9; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.81 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 8.51 (s, 1H), 8.40 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.87 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 4.43 - 4.67 (m, 3H), 4.13 - 4.26 (m, 1H), 3.75 - 3.79 (m, 1H), 3.46 - 3.53 (m, 1H), 2.13 - 2.23 (m, 1H), 2.01 - 2.06 (m, 1H);キラルSFC: 方法Y3、3.57分.
【0170】
実施例4
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
【化10】
スキーム:(i)TBD、THF、0℃から室温;(v)TFA、DCM、0℃から室温;(vi)K2CO3、CNBr、0℃から室温。
【0171】
工程(i)
(2S,4R)-4-(5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
THF(2.9mL)中の5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル(0.29g、1.06mmol)及び(2S,4R)-4-アミノ-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(CAS 1207853-53-9、0.24g、1.06mmol)の撹拌溶液に、TBD(0.18g、1.27mmol)を0℃で加えた。混合物を室温まで加温し、室温で1時間撹拌し、次に水(50mL)に注ぎ、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中70%EtOAc)により精製して、(2S,4R)-4-(5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.16g、0.35mmol、33%の収率)を得た。
LCMS: 方法J、4.34分、MS: ES- 455.6.
【0172】
工程(ii)
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩
DCM(1.6 mL)中の(2S,4R)-4-(5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-(メトキシメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.16g、0.35mmol)の撹拌溶液に、TFA(1.6mL、10容量)を0℃で滴加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次に減圧下で濃縮して、5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.15g、定量的収量)を得た。
LCMS: 方法J、2.92分、MS: ES+ 357.4.
【0173】
工程(iii)
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
THF(1.5mL)中の5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.15g、0.32mmol)の撹拌溶液に、K2CO3(0.13g、0.95mmol)を室温で少しずつ加え、10分間撹拌した。臭化シアン(0.04g、0.38mmol)を0℃で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を水(50mL)に注ぎ、EtOAc(3×150mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中90%EtOAc)により精製して、5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5S)-1-シアノ-5-(メトキシメチル)ピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド(0.06g、0.17mmol、2工程で48%の収率)を得た。
LCMS: 方法H、2.38分、MS: ES+ 383.1; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.74 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 8.35 (s, 1H), 8.16 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.48 - 4.57 (m, 1H), 4.02 (br s, 4H), 3.69 - 3.73 (m, 1H), 3.43 - 3.51 (m, 3H), 3.33 (s, 3H), 2.10 - 2.17 (m, 1H), 1.96 - 2.02 (m, 1H);キラルSFC: 方法Y9、5.42分.
【0174】
実施例5
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
【化11】
スキーム:(i)TBD、THF、0℃から室温;(v)TFA、DCM、0℃から室温;(vi)K2CO3、CNBr、0℃から室温。
【0175】
工程(i)
(2R,4R)-4-(5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
THF(6.0mL)中の5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボン酸エチル(0.31g、1.13mmol)及び(2R,4R)-4-アミノ-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(CAS 348165-63-9、0.23g、1.13mmol)の撹拌溶液に、TBD(0.19g、1.36mmol)を0℃で加えた。混合物を室温まで加温し、1時間撹拌し、次に水(30mL)に注ぎ、EtOAc(3×50mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中65%EtOAc)により精製して、(2R,4R)-4-(5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.13g、0.30mmol、27%の収率)を得た。
LCMS: 方法J、4.45分、MS: ES+ 426.2.
【0176】
工程(ii)
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5R)-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
DCM(1.3mL)中の(2R,4R)-4-(5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.13g、0.30mmol)の攪拌溶液に、TFA(1.3mL、10容量)を0℃で滴加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次に減圧下で濃縮して、5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N -((3R,5R)-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.13g、定量的収量)を得た。
LCMS: 方法J、2.85分、MS: ES+ 328.0.
【0177】
工程(iii)
5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド
THF(1.3mL)中の5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5R)-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミドTFA塩(0.13g、0.29mmol)の攪拌溶液を、K2CO3(0.12g、0.88mmol)を室温で少しずつ加え、10分間撹拌した。臭化シアン(0.04g、0.35mmol)を0℃で加え、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を水(40mL)に注ぎ、EtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、n-ヘキサン中70%EtOAc)により精製して、5-(5-シアノ-2-メトキシフェニル)-N-((3R,5R)-1-シアノ-5-メチルピロリジン-3-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボキサミド(0.01g、0.03mmol、2工程で11%の収率)を得た。
LCMS: 方法H、2.57分、MS: ES+ 353.2; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.77 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.35 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.16 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.48 - 4.55 (m, 1H), 4.02 (s, 3H), 3.88 - 3.93 (m, 1H), 3.76 - 3.80 (m, 1H), 3.43 - 3.46 (m, 1H), 2.15 - 2.18 (m, 1H), 1.75 - 1.82 (m, 1H), 1.25 (d, J = 6.4 Hz, 3H);キラルSFC: 方法Y4、4.65分.
【0178】
本発明の化合物の生物学的活性
略語:
TAMRA カルボキシテトラメチルローダミン
PBS リン酸緩衝化生理食塩水
EDTA エチレンジアミン四酢酸
トリス 2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール
NP-40 ノニデットP-40、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール
BSA ウシ血清アルブミン
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
DMSO ジメチルスルホキシド
YFP イエロー蛍光タンパク質
VME ビニルメチルエステル
HA 血球凝集素
Ahx アミノヘキサン酸
【0179】
USP30生化学的IC 50 アッセイ
希釈プレートを、96ウェルのポリプロピレンV底プレート(Greiner #651201)中の50%DMSOで、最終濃度の21倍(最終濃度100μMの場合は2100μM)で調製した。典型的な8点希釈系列は、最終的に100、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03μMになるであろう。反応は、黒色の384ウェルプレート(少量、Greiner 784076)中で、二重測定で21μlの最終反応容量で行なった。1μlの50%DMSO又は希釈化合物をプレートに添加した。USP30(Boston Biochem #E582)を反応緩衝液(40mMトリス、pH7.5、0.005%ツイーン20、0.5mg/ml BSA、5mMベータメルカプトエタノール)で希釈して、4nMの最終アッセイ濃度を達成し、希釈したUSP30の10μlを化合物に加えた。酵素と化合物を室温で30分間インキュベートした。蛍光偏光基質として、イソペプチド結合を介してユビキチンに結合した50nMのTAMRA標識ペプチドを添加して,反応を開始した。基質を添加した直後と、室温で2時間インキュベートした後、反応を読み取った。読み取りは、Pherastar Plus(BMG Labtech)で行なった。励起波長 540nm;発光波長 590nm。
【0180】
USP30生化学的IC50アッセイにおける例示的な化合物の活性:
【0181】
【表9】
【0182】
参照例
USP30生化学的IC50アッセイにおける化合物の活性
【0183】
【表10】
【0184】
オフターゲット薬理学
DUB生化学的IC50アッセイにおける活性:
【0185】
【表11】
【0186】
実施例1を、Eurofins CEREP SafetyScreen44パネルで薬理学的プロファイリングに供した。10μMの単一濃度では、パネル内のすべての標的に対して、結合又は酵素活性の25%未満の阻害が観察された。
実施例1は、これらのスクリーニングパネルの標的に対する親和性が低いため、オフターゲット相互作用の可能性が低くなっている。
【0187】
安全性薬理学
実施例1は、安定して発現されたCHO細胞においてhERGカリウムチャネルへの影響について、0.01~30μMの濃度で評価した。実施例1は、30μMのhERG電流振幅で、それぞれ7.7%と18.8%の最大抑制値を与え、QT間隔に影響を与える傾向がほとんどないことを示している。
【0188】
遺伝毒性学
実施例1は、細菌の逆突然変異アッセイ(Ames)及びインビトロ小核アッセイで評価した。すべてのインビトロ試験は、外因性代謝活性化有り又は無しで、細胞毒性又は不溶性によって制限される濃度までの濃度を使用して実施した。実施例1は、代謝活性化有り又は無しで、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)株TA98、TA100、TA1535、及びTA97a、並びに大腸菌(Escherichia coli)株WP2uvrA pKM101の逆突然変異アッセイで、100μg/ウェル(5000μg/プレートに相当)まで試験した場合、突然変異を誘発しなかった。
【0189】
染色体障害の誘発は、TK6細胞におけるインビトロ小核アッセイを使用して評価された。実施例1は、外因性代謝活性化の存在下で3時間インキュベートした後に27時間回復した場合、及び外因性代謝活性化の非存在下で27時間インキュベートした後に27時間回復した場合にも、小核の誘導について陰性であった。
【0190】
TOM20ユビキチン化アッセイ
ヒト細胞株は、ミトコンドリア脱分極剤(イオノフォア(例えばCCCP、バリノマイシン)、ミトコンドリア複合体阻害剤(オリゴマイシン、アンチマイシンA))で抗原刺激してTOM20のユビキチン化を誘導し、次に、これをUSP30阻害剤の存在下でさらに促進する。TOM20ユビキチン化は、次に細胞溶解物のウエスタンブロッティングによって評価され、添加したユビキチンの各分子の分子量が8kDa増加するためTOM20ユビキチン化付加物の検出が可能になり、TOM20免疫反応性バンドのラダリング(laddering)をもたらす。TOM20-ユビキチン化レベルは、ラダリングされた免疫反応性バンドの化学発光デンシトメトリーを使用して定量化することができる。
【0191】
USP30内因性細胞標的エンゲージメントアッセイ(target engagement assay)
YFP-Parkinを安定して過剰発現するHela細胞を6ウェルディッシュに播種した。接着後、細胞を適切な濃度の試験化合物又はビヒクル対照で、37℃、5%CO2で1時間処理した。全細胞溶解物は、細胞を冷PBS中にこすり落とし、遠心分離し、溶解緩衝液(50mM トリス塩基、pH7.5、50mM NaCl、1% NP-40/Igepal CA-630、2mM MgCl2、10%グリセロール、5mMベータメルカプトエタノール、cOmpleteミニ錠剤EDTAフリー(Roche)、PhosStop錠剤(Roche))中で10分間溶解して、調製した。清澄化した細胞溶解物からの20μg相当量のタンパク質を、最終濃度2.5μMのHA-Ahx-Ahx-Ub-VMEプローブで室温でインキュベートした。5xSDS試料ローディング緩衝液を添加して反応を停止させ、SDS PAGEとウエスタンブロッティングによりタンパク質を分離した。USP30は、抗USP30ヒツジS746D抗体(MRC PPU Reagents and Services)及びウサギ抗ヒツジ二次IgG(H+L)西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体(Thermo #31480)を使用して検出され、GE LAS4000イメージャーでECL試薬(GE #RPN2109)を使用して視覚化された。USP30及びUb-VMEプローブに結合したUSP30に対応するバンドの定量化と、ビヒクルで処理した対照と比較したこの比率の発現によって、標的エンゲージメントを測定した。
【0192】
USP30腎臓組織標的エンゲージメントアッセイ
50~100mgの組織を、3×容量の溶解緩衝液(50mMトリス、pH7.5、50mM NaCl、0.1% NP-40/Igepal CA-630、0.5% CHAPS、2mM MgCl2、5mMベータ-メルカプトエタノール、cOmpleteミニ錠剤EDTAフリー(Roche)、PhosStop錠剤(Roche))中で、Retch Mixer Mill(MM400)を使用してホモジナイズした。60μgのタンパク質を含む溶解物を、最終濃度6μMのHA-Ahx-Ahx-Ub-VMEプローブで室温で15分間インキュベートした。5×SDS試料ローディング緩衝液を加えて反応を停止させ、SDS PAGEとウエスタンブロッティングによりタンパク質を分離した。USP30は、抗USP30ヒツジS746D抗体(MRC PPU Reagents and Services)及びウサギ抗ヒツジ二次IgG(H+L)西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体(Thermo #31480)を使用して検出され、GE LAS4000イメージャーでECL試薬(GE #RPN2109)を使用して視覚化された。USP30及びUb-VMEプローブに結合したUSP30に対応するバンドの定量化と、ビヒクルで処理した対照と比較したこの比率の発現によって、標的エンゲージメントを測定した。
【0193】
インビトロ細胞毒性(Cell Tox):アッセイエンドポイントとしてalamarBlueを使用して、HCT116ヒト結腸直腸癌細胞で測定された。化合物の細胞毒性は、96時間の連続的化合物曝露期間にわたって測定された。
【0194】
さらなる研究
logP:分配係数;親油性の測定。
logD:分布係数;親油性の測定。
TPSA:トポロジー極性表面積。
比濁法溶解度:水性緩衝液に希釈したDMSOで調製された試験化合物溶液。
比濁法は、620nmでの吸光度を測定することによりエンドポイントとして使用される。
FaSSIF:pH6.5で測定される絶食状態のシミュレートされた腸液。
HepClマウス:マウス細胞におけるインビトロ肝細胞クリアランス。
HepClヒト:ヒト細胞におけるインビトロ肝細胞クリアランス。
血漿fu,p:インビトロ平衡透析によって決定された血漿調製物中の化合物の遊離画分。結合していない(遊離の)化合物のみが標的とエンゲージメントすることができると理解される。
脳fu,br:インビトロ平衡透析によって決定された脳組織ホモジネート調製物中の化合物の遊離画分。結合していない(遊離の)化合物のみが標的とエンゲージメントすることができることが理解される。
【0195】
Clu:インビトロクリアランス。ここで定義されているCluは、調整されたクリアランスであり、固有のクリアランスから計算される。固有のクリアランスは、肝細胞調製物中の化合物のインキュベーションから決定される、肝代謝反応による予測クリアランスである。mL/分/kgの値が低いほど、化合物はより安定している。
Clインビボクリアランス:単位時間あたりに物質が完全に除去される血漿(又は任意のマトリックス)の容量の薬物動態測定値。mL/分/kgの値が低いほど、化合物はより安定している。
【0196】
経口F:経口バイオアベイラビリティ。
MDR1-MDCK(Madin-Darbyイヌ腎臓細胞単層)(インビトロ)フラックスアッセイ。
【0197】
Cell TE WB:USP30内因性細胞標的エンゲージメントウエスタンブロット(WB)アッセイ。USP30活性をモニターするために不可逆活性プローブを使用して、細胞内のUSP30に対する化合物の活性をアッセイする。
TEエクスビボ:USP30腎臓組織標的エンゲージメントアッセイ。
Kpu,uは、脳内の非結合薬物と血漿中の非結合薬物の比率であり、末梢及び/又はCNS適応症を治療する可能性を示し得る。
【0198】
【表12】
【0199】
実施例1は、他の化合物に対する潜在的な優位性を証明する有益な特性を有する。例えば、マウスで測定したように、観察された23mL/分/kgのIV血漿クリアランスは低く、貴重な血漿安定性を示しており、この化合物は48%という非常に優れた経口バイオアベイラビリティを有する。
【0200】
シミュレートされた腸液(絶食状態)で測定されたように、415μMの実施例1の高い熱力学的溶解度は、腸管から肝門脈への吸収が大きいことを示している可能性がある。溶解度が高いほど、他のすべての要因が等しい用量漸増時に、溶解度に制限された全身曝露のプラトーを回避できる可能性も高くなる。
【0201】
【表13】
【表14】
【表15】
【0202】
比較データ
参考例A、B、C、D、E、F、及びGは、USP30の阻害剤として活性であると同定され、本発明の化合物とある程度の構造的類似性を共有し、シアナミド構造の特徴を有する既知のDUB阻害剤である。参考例E、F、及びGは、WO2016/046530においてUCHL1阻害活性を有すると開示されている。
【0203】
USP30の効力
本発明の実施例1~5のすべては、生化学的アッセイで測定されるように、参照例A、E、F、及びGよりも、USP30に対して顕著に効力が高い。例えば、実施例1は、参照例A、E、F、及びGよりも、それぞれ2.4、10.7、24、及び152倍効力が高い。実施例3は、すべての参照例よりもUSP30に対して著しく効力が高く、参照例A、B、C、D、E、F、及びGよりも、それぞれ5.4、3.4、2、3.2、24、54、及び338倍効力が高い。
【0204】
USP2、USP10、USP16、USP21、USP22、USP25、USP28、USP35、及びUSP46よりもUSP30に対する選択性
実施例1~5はすべて、参照例A、B、C、及びDと比較して、9つのDUB(USP2、USP10、USP16、USP21、USP22、USP25、USP28、USP35、及びUSP46;C及びDのデータが不完全な場合がある)よりも、USP30に対して、顕著により選択的である。実施例1~5は、9つのDUBのそれぞれに対するよりも、USP30に対して少なくとも186倍効力が高い。これは、A、B、C、及びDよりも顕著な利点であり、A、B、C、及びDは、9つのDUBの1つに対して、それぞれ2.7、8、0.96、及び4.6倍効力が高い(Cは同等の効力である)。
【0205】
UCHL1よりもUSP30に対する選択性
実施例1~5はすべて、参照例E、F、及びGと比較して、UCHL1よりもUSP30に対して顕著に選択的である。実施例1~5は、UCHL1よりもUSP30に対して少なくとも8100倍効力が高いが、E、F、及びGはそれぞれ、わずか0.8、4.6、及び1.5倍効力が高いのみである(Eは同等の効力である)。従って、実施例1~5は、少なくとも、E、F、及びGよりも、UCHL1に対するよりもUSP30に対して1700倍選択的である。
【0206】
カテプシンB、K、L、S、及びVよりもUSP30に対する選択性
実施例1~5のすべては、参照例A、B、C、D、E、及びF(D及びEのデータが不完全な場合がある)と比較して、カテプシン(B、K、L、S、及びV)よりもUSP30に対して顕著により選択的である。実施例1~5は、少なくとも、各カテプシンに対してよりもUSP30に対して720倍効力が高い。これは、A、B、C、D、E、及びFよりも顕著な利点であり、A、B、C、D、E、及びFは、1つのカテプシンに対してそれぞれ11、18、58、56、3.2、及び0.34倍効力が高い。
【0207】
例えば、実施例1は、A、B、C、D、E、及びFよりも、カテプシンLよりもUSP30に対して、それぞれ27、59、18、19、333、及び3135倍選択的である。
【0208】
先行技術の参照例に対する本発明の化合物の上記で特定された利点は、顕著かつ予想外である。この優位性は、それ自体で及び特に組み合わせると、本発明の化合物をUP30活性に関連する疾患の治療又は予防における使用に特に適したものにしている。
【0209】
前臨床インビボモデル
本発明の化合物は、例えば以下を含む公表された文献からの標準的な試験方法を使用して、代表的なインビボ疾患モデルにおける有効性について試験することができる:
(a)ブレオマイシン誘発性肺線維症モデル。これは、特発性肺線維症の主要な前臨床インビボモデルである。[Kobayashi et al, 2016, J Immunol, 197(2):504-516]
(b)NAFLDの食事誘発モデル及びグルコース恒常性。[Nishida et al, 2013, Lab Invest; Feb;93(2):230-41]
(c)パーキンソン病のMPTPモデル。これは、化学的に誘発されたミトコンドリア機能障害によって引き起こされる、脳のドーパミン作動系の神経変性を調べるために一般的に使用されるパラダイムである。[Karuppagouner et al, 2014, Sci Rep. 2014 May 2;4:4874]
(d)Ndufs4KOリー症候群モデル。[Kruse et al, 2008, Cell Metab. Apr;7(4):312-20]
(e)老齢マウスモデル:認知及び運動機能への影響。[Kobilo et al, 2014, Learn Mem. Jan 17;21(2):119-26; Creed et al, 2019, Neuroscience. Jun 15;409:169-179]
(f)片側尿管閉塞性腎疾患モデル(UUO)。[Chevalier et al, 2009, Kidney Int 75(11): 1145-1152]
【0210】
UUOは、尿細管細胞傷害、間質性炎症、及び線維症を特徴とする腎傷害を引き起こす。これは、不可逆的な腎急性障害(AKI)後のモデルとして機能する。実験的UUOは、アポトーシス、炎症、線維症の分子メカニズムを示しており、これらはすべて、一次傷害に関係なく、腎障害の重要なプロセスである。従って、UUOモデルは、障害を超えた情報を研究者に提供する。
【0211】
実施例1をUUOモデルで評価して、進行性尿細管間質性線維症及び慢性腎臓病(CKD)を軽減する化合物の能力を決定した。
【0212】
試験の1日目に、成体のC57BL/6マウスに、以下の投与計画の1つに従って強制経口投与を行った;ビヒクル又は5mg/kgの実施例1、1日2回。1日目の投与の2時間後、試験マウスを手術して、2点で左尿管を結紮した。UUO手術の成功は、後に水腎症による腎盂の拡張の観察によって確認された。動物は処方された計画に従って10日間投与され、その時点で腎臓が採取されたか、又は組織病理学的評価、及びタンパク質/RNA評価を行なった。ピクロシリウスレッド染色を実施してコラーゲン沈着の程度を評価し、IHCを使用して相対的なα-平滑筋アクチン(αSMA)発現を評価した。
【0213】
結果は、1日2回投与した5mg/kgの実施例1(経口投与)が、結紮された腎臓におけるピクロシリウスレッド染色の減少によって証明されるように、コラーゲン沈着を統計的に減少させることを示した。α-SMA染色の評価により、5mg/kgの実施例1の1日2回の経口投与も、ビヒクルで処理した対照と比較した場合、UUO傷害腎臓のα-SMAレベルを統計的に低下させることが明らかになった。
(g)虚血誘発性急性腎障害モデル(AKI)。
【国際調査報告】