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特表2022-546718官能化ポリ(アリールエーテルスルホン)コポリマー及びそれから得られるポリマー付加物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】官能化ポリ(アリールエーテルスルホン)コポリマー及びそれから得られるポリマー付加物
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20221028BHJP
   C09D 171/10 20060101ALI20221028BHJP
【FI】
C08G65/40
C09D171/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514524
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2020075237
(87)【国際公開番号】W WO2021048229
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/897,450
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19208913.4
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ナイル, カムレシュ
【テーマコード(参考)】
4J005
4J038
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB02
4J005BD06
4J005BD08
4J038DF051
4J038DK011
4J038GA13
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA19
4J038NA05
4J038NA12
4J038NA14
4J038PA17
4J038PC10
(57)【要約】
本発明は、特定の刺激下で架橋反応を受けることができる部位を含み、それにより溶媒に対する耐性、向上した熱性能及び表面への向上した接着性などの改善された又は追加的な特性を有するポリマー付加物を形成するコポリマーに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 式(M):
【化1】
の繰り返し単位(RP1)、
- 式(N):
【化2】
の繰り返し単位(R*P1
(式中、
- Gは、以下の式:
【化3】
の少なくとも1つからなる群から選択され、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
- 各iは、0~4から独立して選択され、
- Rは、-(CH)r-Si(OCHであり、ここで、rは、1~5から選択され、
- Rは、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、
- 各kは、1~4から独立して選択され、
- 各jは、3~7から独立して選択され、及び
- T及びQは、結合、-CH-、-O-、-SO-、-S-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-N=N-、-RC=CR-(ここで、各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ若しくはC6~C18-アリール基である)、-(CH-及び-(CF-(ここで、mは、1~6の整数である)、最大で6つの炭素原子の直鎖又は分岐の脂肪族二価基並びにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される)
を含むコポリマー(P1)を架橋することによって得られるポリマー付加物。
【請求項2】
繰り返し単位(RP1)におけるTは、結合、-SO-及び-C(CH-からなる群から選択される、請求項1に記載の付加物。
【請求項3】
繰り返し単位(R*P1)の式(GN1)、(GN2)及び/又は(GN3)におけるQは、結合、-SO-及び-C(CH-からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の付加物。
【請求項4】
iは、前記コポリマー(P1)の繰り返し単位(RP1)及び繰り返し単位(R*P1)の各Rについてゼロである、請求項1~3のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項5】
繰り返し単位(R*P1)において、kは、0であり、及びjは、3である、請求項1~4のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項6】
繰り返し単位(RP1)/繰り返し単位(R*P1)のモル比は、0.01/100~100/0.01、好ましくは1/100~100/1、より好ましくは1/1~10/1で変動する、請求項1~5のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項7】
繰り返し単位(RP1)は、式(M1):
【化4】
に従う、請求項1~6いずれか一項に記載の付加物。
【請求項8】
前記コポリマー(P1)の繰り返し単位(R*P1)におけるRは、-(CH-Si(OCHである、請求項1~7のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項9】
前記コポリマー(P1)の総モル数に基づいて合計で少なくとも50モル%の繰り返し単位(RP1)及び(R*P1)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項10】
前記コポリマー(P1)の架橋は、以下:
- 60℃~250℃、好ましくは65℃~200℃の範囲の温度で加熱すること、
- 酸性/塩基性条件、それぞれpH<5又はpH>9に曝すこと、及び/又は
- 少なくとも30%の湿度パーセントの湿度に曝すこと
の少なくとも1つによって得られる、請求項1~9のいずれか一項に記載の付加物。
【請求項11】
表面をコーティングするための方法であって、
a)任意選択で1つ以上の溶媒及び/又は添加剤と組み合わせて、請求項1~10のいずれか一項に記載のコポリマー(P1)を前記表面に塗布すること、
b)60℃~250℃、好ましくは65℃~200℃の範囲の温度で前記表面を加熱し、且つ/又は少なくとも30%の湿度パーセントの湿度に前記表面を曝すこと
を含む方法。
【請求項12】
コーティングとして、フィラーとポリマーマトリックスとの間の結合を改善するための複合材料における添加剤として又は複合生成物を調製するための自己架橋性樹脂として使用される付加物の調製における、請求項1~10のいずれか一項に記載のコポリマー(P1)の使用。
【請求項13】
サイジング繊維を加熱し、且つ/又は前記サイジング繊維を少なくとも30%の湿度パーセントの湿度に曝すことにより、樹脂と前記サイジング繊維との間の適合性を改善するための、前記樹脂を含むサイジング配合物における、請求項1~10のいずれか一項に記載のコポリマー(P1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年9月9日に出願された米国仮特許出願第62/897,450号及び2019年11月13日に出願された欧州特許出願公開第19208913.4号に対する優先権を主張し、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定の刺激下で架橋反応を受けることができる部位を含み、それにより溶媒に対する耐性、向上した熱性能及び表面への向上した接着性などの改善された又は追加的な特性を有するポリマー付加物を形成するコポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
特定のポリマーは、例えば、湿度、pH、UV光又は熱などの特定の条件下でその特性を変化させることができる。一例として、透水性若しくは酸性/塩基性pHの条件下での分子構造の変化を利用して特定のポリマーを設計するか、又は結合若しくは反応をその場で生じさせることができる。分子構造におけるこのような変化の一例は、特定の条件下又は処理下で架橋を受けることができる架橋可能な部位を含むポリマーに存在する。
【0004】
シラノール側鎖で官能化されたポリオレフィンは、架橋可能な部位を含むこのようなポリマーの一例である。ポリオレフィンの熱寸法安定性は、側鎖の架橋によって大幅に改善できる。このような架橋可能なポリオレフィンは、フリーラジカル開始剤及びシラノール架橋剤を用いてポリオレフィンを溶融押出しすることによって調製され得るか、又は電子ビームに曝され得る。ポリオレフィン骨格は、プロトンの引き抜きを受け、シラノール架橋剤と反応してシラノール官能化ポリオレフィンを形成し、シラノール官能化ポリオレフィンは、次いで、熱及び湿気の存在下で架橋され得る。しかしながら、溶融押出し調製プロセスは、芳香族ポリ(アリールエーテルスルホン)ポリマー(PAES)などの全てのタイプのポリマーに適用されない。実際、開始剤及びシラノール架橋剤の存在下でポリマーを溶融押出しすると、引き抜かれて、その後の機能化につながり得るプロトンは、ポリフェニルスルホン(PPSU)及びポリエーテルスルホン(PES)などのほとんどのポリスルホンの主鎖で不足していることから、実際には、このような側鎖の官能化は、生じない。
【0005】
本発明は、架橋可能なスルホンポリマーを調製するための別の手法を提供する。
【0006】
NI JINGらの論文(J.Mater.Chem、2010、20、6352-6358)は、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)に基づく架橋されたハイブリッド膜に関する。この論文では、ジアリルビスフェノールA(daBPA)、4,4-ジフルオロベンゾフェノン(DFB)及び5,5-カルボニル-ビス(2-フルオロベンゼンスルホネート)(SDFR)から出発する、その一部がスルホン化されているPEEK繰り返し単位を含むコポリマーの調製並びにこのコポリマー、更にリンタングステン酸(PWA)及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KH570)から出発する膜の調製について記載している。
【0007】
XUEHONG HUANGらの論文(Applied Surface Science 258、2012、2312-2318)は、側鎖型イオン交換膜の合成に関する。この論文では、DFB、ビスフェノールA及びジアリルビスフェノールAから出発するコポリマーの調製について記載しており、このコポリマーのグラフト反応は、スルホン酸ナトリウムスチレン及びKH570の存在である。
【0008】
DING FCらの論文(Journal of Power Sources 170、2007、20-27)は、ジアリルビフェノール(daBP)を使用した、プロトン交換膜のための架橋されたスルホン化フルオレン含有PEEKの製造に関する。
【0009】
これらの論文では、膜を調製するための官能化PEEKポリマーの調製について記載している。しかしながら、PEEKポリマーは、半結晶性ポリマーであり、良好な一連の機械的特性を備えた膜を調製するために必要な伸び及び柔軟性に欠けている。
【0010】
国際公開第2005095491号パンフレット(Gharda)及び米国特許出願公開第20050228149号明細書(Solvay)は、ポリスルホンのファミリー、即ちスルホン結合を含むポリマー、特にポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)及びポリフェニレンスルホン(PPSU)におけるブロックコポリマーを調製するためのプロセス並びにそれから調製されたブロックコポリマーに関する。これらの文献は、シラノールチオエーテル側鎖が、官能化された繰り返し単位を有するスルホンコポリマーについて記載していない。
【0011】
YAN LIらの論文(J.Mater.Chem.A、2017、5、17549-17562)は、ワンポット合成でのエポキシ/ポリシロキサンモノマー(SH-EP)に基づくネットワークの合成について記載している。韓国特許出願公開第20170075105A号明細書(Samyang Corp)は、アルコキシシリルアルキル-S-アルキル基を有するビスフェノール系のエポキシ化合物及びその製造方法並びに硬化された生成物に関する。これらの文献のいずれも、本発明の側鎖が官能化されたコポリマーは言うまでもなく、スルホンコポリマーを記載していない。これらの系は、架橋可能な構造を形成するための小分子に基づく。これらの小分子は、2つの異なる官能基、1つのエポキシ及び1つのシラノールを有し、エポキシ基には、ジアミン又はジアルコールなどの適合性のある架橋剤が必要である。このような構造の架橋は、それらが小分子の前駆体に基づいているため、もろい構造をもたらす。更に、このような系の熱耐性は、低いと予想される。
【0012】
本発明の1つの目的は、非晶性スルホン繰り返し単位に基づくコポリマーの架橋から得られる付加物であり、このような付加物は、特に、必要な一連の機械的特性(例えば、伸び及び曲げ強度)を有する膜を調製するのに非常に適している。
【発明の概要】
【0013】
本開示の一態様は、
- 式(M):
【化1】
の繰り返し単位(RP1)、
- 式(N):
【化2】
の繰り返し単位(R*P1
(式中、
- Gは、以下の式:
【化3】
の少なくとも1つからなる群から選択され、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
- 各iは、0~4から独立して選択され、
- Rは、-(CH)r-Si(OCHであり、ここで、rは、1~5から選択され、
- Rは、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、
- 各kは、1~4から独立して選択され、
- 各jは、3~7から独立して選択され、
- T及びQは、結合、-CH-、-O-、-SO-、-S-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-N=N-、-RC=CR-(ここで、各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ若しくはC6~C18-アリール基である)、-(CH-及び-(CF-(ここで、mは、1~6の整数である)、最大で6つの炭素原子の直鎖又は分岐の脂肪族二価基並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される)
を含むコポリマー(P1)を架橋することによって得られるポリマー付加物に関する。
【0014】
本発明は、コーティングとして、フィラー(ガラス繊維又は炭繊維など)とポリマーマトリックスとの間の結合を改善するための複合材料における添加剤として及び複合生成物を調製するための自己架橋性樹脂として使用される付加物の調製における、本明細書に記載のコポリマー(P1)の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載のコポリマー(P1)は、官能化されたポリマー側鎖間の反応を介して効果的に架橋されて、ポリマー付加物を形成することができる。
【0016】
これらの付加物の形成は、溶融相又は液相において、より低い分子量のポリマーから高分子量のポリマー構造、即ち付加物を得る便利な方法を表す。それは、穏やかな条件下で付加物の形成が起こるため、ポリマーの繰り返し単位の再配列及びランダム化を行わずに高分子量のポリマー構造を得る好都合な方法も表す。それは、コポリマー(P1)を含む組成物をその場で架橋することによって物品の表面を強化するための有用な方法も表す。
【0017】
更に、この化学的性質は、例えば、コポリマー(P1)を、サイジング繊維の表面に位置するサイジング剤と反応させることにより、ポリマーと無機フィラー(例えば、ガラス繊維)との間の結合を増加させるために使用することができる。樹脂とフィラーとの間の相互作用を増やすと、得られる生成物の組み合わせの機械的性能が向上する。
【0018】
本発明は、いわゆる例えばシラノールチオエーテル側鎖で官能化された、架橋可能な部位を含むコポリマーであるコポリマー(P1)の架橋に基づく。架橋中、シラノール官能基は、特に自己凝縮し、アルコール分子の脱離を伴う-Si-O-Si-結合を形成することができる。その結果、ポリマー鎖は、溶剤に対する耐性及び熱性能などの興味深い特性を有する強力な共有結合によって共に架橋される。
【0019】
シラノールチオエーテル側鎖には、いくつかの技術的利点がある。シラノール基は、水分及び酸触媒の存在下で穏やかな条件を使用して自己架橋し、例えば架橋されたコーティング、複合材料を形成することができ、他の構造の中で積層され得る。ネットワーク構造を形成するために追加の架橋剤が必要とされない。付加物は、コポリマー、即ちモノマー又は小分子と比較して特定の分子量を有する実体に基づいているため、このようなコポリマーの架橋から得られる付加物は、ポリマーマトリックスに起因する衝撃強度などの熱機械的特性を保持する。シラノール基は、炭素繊維及びガラス繊維などの無機フィラーと結合し、フィラー及びポリマー構造の界面間の結合が増加するため、複合構造の機械的特性を向上させるという利点も呈する。
【0020】
本発明のコポリマーは、ポリマーブレンド、特に非相溶性ポリマーブレンドのための相溶化剤として使用することもできる。ポリマーの分子量及び結果として生じる高い熱安定性のため、本明細書に記載のコポリマーは、本発明のコポリマーのシラノール基間の化学的相互作用を作り出すことにより、耐熱性ポリマーブレンドを、ブレンドされる他のポリマー構造の鎖末端で相溶化するために使用することができる。
【0021】
「架橋可能」とは、ポリマーが依然として硬化又は架橋されていないこと並びにポリマーが、このような処理(例えば、熱、湿度及び/又は水に曝されること)に供されるか又は曝されると、実質的な架橋を引き起こすか又は促進する部位を含むことを意味する。
【0022】
「架橋された」とは、コポリマーが、その架橋可能な部位の架橋を誘発する処理に供されたか又は曝されたことを意味する。
【0023】
本出願では、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に企図される関連する実施形態では、要素又は成分は、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つでもあり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 本明細書での端点による数値範囲のいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0024】
本発明は、側鎖が官能化されたコポリマー(P1)を架橋することによって得られるポリマー付加物に関する。このコポリマー(P1)は、少なくとも2つのタイプの繰り返し単位、即ち以下に記載される式(M)の繰り返し単位(RP1)及び式(N)の繰り返し単位(R*P1)を含む。繰り返し単位(R*P1)は、-(CH)j-S-Rであるチオエーテル官能基で官能化され、この場合、jは、1~4で変動し、及びRは、-(CH)r-Si(OCHであり、ここで、rは、1~5から選択され、好ましくは、rは、1、2又は3である。
【0025】
コポリマー(P1)の官能基は、コポリマー主鎖内の内部官能化である。内部官能化は、反応混合物中のアリル置換モノマーの含有量を変えることによって官能基の含有量を調節することができるため、有利には系を多目的なものにする、アリル置換モノマーの存在下での逐次重合に由来する。アリル置換モノマーは、本発明によれば、3~7つの炭素原子をそれぞれ含む2つのペンダントアリル基側鎖を含む。
【0026】
本発明のコポリマー(P1は、
- 式(M):
【化4】
の繰り返し単位(RP1)、
- 式(N):
【化5】
の繰り返し単位(R*P1
(式中、
- Gは、以下の式:
【化6】
の少なくとも1つからなる群から選択され、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
- 各iは、0~4から独立して選択され、
- Rは、-(CH)r-Si(OCHであり、ここで、rは、1~5から選択され、
- Rは、アルキル基、アリール基又はハロゲン基であり、
- 各kは、1~4から独立して選択され、
- 各jは、3~7から独立して選択され、
- T及びQは、結合、-CH-、-O-、-SO-、-S-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-N=N-、-RC=CR-(ここで、各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ若しくはC6~C18-アリール基である)、-(CH-及び-(CF-(ここで、mは、1~6の整数である)、最大で6つの炭素原子の直鎖又は分岐の脂肪族二価基並びにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される)
を含む。
【0027】
本発明のコポリマー(P1)は、ラセミ化合物生成物の形態である。重合中の塩基の存在及び高温のため、アリル置換モノマーは、通常、二重結合の位置が側鎖に沿って変化し得るように重合中にラセミ化する。これは、二重結合が側鎖の末端又は側鎖の末端の1つ前の炭素にあり得るという事実によって互いに異なる分子の形成をもたらす。ラセミ化の量は、反応時間及び温度に依存する。
【0028】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、エポキシ基を含まないか、又はコポリマー(P1)の総モル数に基づいて2モル%未満、好ましくは1モル%未満、より好ましくは0.5モル%未満のエポキシ基を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、それがコポリマー(P1)の総モル数に基づいて少なくとも50モル%、例えば少なくとも55モル%又は少なくとも60モル%の式(M)の繰り返し単位(RP1)を含むようなものである。
【0030】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、コポリマー(P1)の総モル数に基づいて合計で少なくとも50モル%の繰り返し単位(RP1)及び(R*P1)を含む。コポリマー(P1)は、例えば、コポリマー(P1)の総モル数に基づいて合計で少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%の繰り返し単位(RP1)及び(R*P1)を含み得る。コポリマー(P1)は、好ましくは、繰り返し単位(RP1)及び(R*P1)から本質的になり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、それが、
- 繰り返し単位(R*P1)(ここで、基Gは、式(GN1)に従い、繰り返し単位(R*P1)の好ましくは少なくとも25モル%、より好ましくは少なくとも30モル%、更により好ましくは35モル%は、基Gが式(GN1)に従うようなものである)、
- 繰り返し単位(R*P1)(ここで、基Gは、式(GN1)及び(GN3)に従い、繰り返し単位(R*P1)の好ましくは少なくとも35モル%、より好ましくは少なくとも40モル%、更により好ましくは45モル%は、基Gが式(GN1)及び(GN3)に従うようなものである)、又は
- 少なくとも繰り返し単位(R*P1)(ここで、基Gは、式(GN1)、(GN2)及び(GN3)に従い、繰り返し単位(R*P1)の好ましくは少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも60モル%、更により好ましくは70モル%、80モル%又は90モル%は、基Gが式(GN1)及び(GN3)に従うようなものである)
を含むようなものである。
【0032】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、繰り返し単位(RP1)におけるTが、結合、-SO-、-C(CH-及びそれらからの混合物からなる群から選択されるようなものである。本発明のコポリマー(P1)は、例えば、Tが-C(CH-である繰り返し単位(RP1)と、Tが-SO-である繰り返し単位(RP1)とを含み得る。
【0033】
繰り返し単位(RP1)におけるTは、好ましくは、-C(CH-である。
【0034】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、繰り返し単位(R*P1)の(GN1)、(GN2)及び/又は(GN3)におけるQが、結合、-SO-、-C(CH-及びそれからの混合物からなる群から選択されるようなものである。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、Gは、以下の式の少なくとも1つからなる群から選択される。
【化7】
【0036】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、各R1が、1つ又は複数のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホン酸基、ホスホン酸及びホスホン酸基、アミン及び4級アンモニウム基を任意選択で含むC1~C12部位からなる群から独立して選択されるようなものである。
【0037】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、繰り返し単位(RP1)及び繰り返し単位(R*P1)の各R1についてiがゼロであるようなものである。
【0038】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、繰り返し単位(R*P1)において、kがゼロであり、及びjが3であるようなものである。
【0039】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、繰り返し単位(RP1)/(R*P1)のモル比が0.01/100~100/0.01、好ましくは1/100~100/1、より好ましくは1/1~12/1、更により好ましくは4/1~10/1で変動するようなものである。
【0040】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、繰り返し単位(RP1)が、式(M1):
【化8】
に従うようなものである。
【0041】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)は、繰り返し単位(R*P1)におけるR2が-(CH-Si(OCHであるようなものである。
【0042】
ある実施形態によれば、本発明のコポリマー(P1)は、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される、120~250℃、好ましくは170~240℃、より好ましくは180~230℃の範囲のTgを有する。
【0043】
任意選択の成分
コポリマー(P1)は、架橋される前に例えば1つ以上の溶媒などの任意の成分と混合され得る。
【0044】
溶媒は、特に、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジフェニルスルホン、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びクロロベンゼンから選択される極性溶媒であり得る。
【0045】
コポリマー(P1)は、1つ以上の添加剤とも混合され得る。
【0046】
添加剤は、特に、フィラー(例えば、ガラス繊維、炭素繊維)、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、レオロジー変性剤、安定剤及び顔料からなる群から選択され得る。
【0047】
コポリマー(P1)は、1つ以上の熱付加物形成剤とも混合され得る。
【0048】
熱付加物形成剤は、特に、フラーレン(C60、C70、フラライト)、ビスマレイミド(4,4’-ビスマレイミド-ジフェニルメタン)、フェニレンジマレイミド(例えば、N,N’-(1,2-フェニレン)ジマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ジマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ジマレイミド)からなる群から選択され得る。
【0049】
付加物
本発明は、上記のコポリマー(P1)を架橋することによって得られるポリマー付加物に関する。架橋は、ポリマー複合体ネットワークを作成するために2つ以上の分子が結合する反応である。
【0050】
コポリマー(P1)の架橋は、以下の工程の少なくとも1つによって得ることができる:
- 60℃~250℃、好ましくは65℃~200℃の範囲の温度で加熱する工程、
- 酸性/塩基性条件、それぞれpH<5又はpH>9に曝す工程、及び/又は
- 例えば、湿気、水又は水を生成する化合物の存在下で少なくとも30%の湿度パーセントの湿度に曝す工程。
【0051】
特に、湿度への暴露は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の湿度パーセントで行うことができる。
【0052】
コポリマー(P1)の調製プロセス
コポリマー(P1)は、様々な化学的プロセス、特にフリーラジカル-熱反応、フリーラジカル-UV反応、塩基-触媒反応又は求核触媒反応によって調製することができる。
【0053】
コポリマー(P1)を調製するためのプロセスは、アリル官能化コポリマー(P0)を化合物R-SHと反応させることを含み、この場合、Rは、-(CH)r-Si(OCHであり、ここで、rは、1~5から選択され、好ましくは、rは、1、2又は3である。
【0054】
本発明のプロセスにおいて使用されるコポリマー(P0)は、特に、化合物R-SHと反応する、2つのペンダントアリル/ビニレン側鎖を有する繰り返し単位(R*P0)を含む。コポリマー(P0)は、より正確には、
- 式(M):
【化9】
の繰り返し単位(RP0)、
- 式(P):
【化10】
の繰り返し単位(R*P0
(式中、
- Gは、以下の式:
【化11】
の少なくとも1つからなる群から選択され、
- 各Rは、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び4級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
- 各iは、0~4から独立して選択され、
- 各kは、0~4から独立して選択され、
- T及びQは、結合、-CH-、-O-、-SO-、-S-、-C(O)-、-C(CH-、-C(CF-、-C(=CCl)-、-C(CH)(CHCHCOOH)-、-N=N-、-RC=CR-(ここで、各R及びRは、互いに独立して、水素又はC1~C12-アルキル、C1~C12-アルコキシ若しくはC6~C18-アリール基である)、-(CH-及び-(CF-(ここで、mは、1~6の整数である)、最大で6つの炭素原子の直鎖又は分岐の脂肪族二価基並びにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択される)
を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、kが繰り返し単位(R*P0)においてゼロであるようなものである。
【0056】
いくつかの実施形態では、Gは、以下の式:
【化12】
の少なくとも1つからなる群から選択され、
- 各kは、0~4から独立して選択される。
【0057】
コポリマー(P1)を調製するための反応は、好ましくは、溶媒中で実施される。コポリマー(P1)を調製するための反応が溶媒中で行われる場合、溶媒は、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N、Nジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロベンゼン、アニソール及びスルホランからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒である。溶媒は、クロロホルム又はジクロロメタン(DCM)でもあり得る。コポリマー(P1)を調製するための反応は、好ましくは、スルホラン又はNMP中で実施される。
【0058】
化合物(I)/ポリマー(P0)のモル比は、0.01/100~100/0.01、好ましくは1/100~100/1、より好ましくは1/1~10/1で変動する。
【0059】
コポリマー(P1)を調製するための反応の温度は、10℃~300℃、好ましくは室温~200℃又はより好ましくは35℃~100℃で変動する。
【0060】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、繰り返し単位(RP0)におけるTが、結合、-SO-、-C(CH-及びそれらからの混合物からなる群から選択されるようなものである。コポリマー(P0)は、例えば、Tが-C(CH-である繰り返し単位(RP0)と、Tが-SO-である繰り返し単位(RP1)とを含み得る。
【0061】
繰り返し単位(RP0)におけるTは、好ましくは、-C(CH-である。
【0062】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、各Rが、1つ又は複数のヘテロ原子、スルホン酸及びスルホネート基、ホスホン酸及びホスホネート基、アミン及び4級アンモニウム基を任意選択で含むC1~C12部位からなる群から独立して選択されるようなものである。
【0063】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、繰り返し単位(RP0)及び繰り返し単位(R*P0)の各Rについてiがゼロであるようなものである。
【0064】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、繰り返し単位(RP0)においてjが2であるようなものである。
【0065】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、繰り返し単位(RP0)/繰り返し単位(R*P0)のモル比が0.01/100~100/0.01、より好ましくは1/100~100/1で変動するようなものである。
【0066】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、繰り返し単位(RP0)が、式(M1):
【化13】
に従うようなものである。
【0067】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)は、コポリマー(P0)の総モル数に基づいて合計で少なくとも50モル%の繰り返し単位(RP0)及び(R*P0)を含む。コポリマー(P0)は、例えば、コポリマー(P0)の総モル数に基づいて合計で少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%の繰り返し単位(RP0)及び(R*P0)を含み得る。コポリマー(P0)は、好ましくは、繰り返し単位(RP0)及び(R*P0)から本質的になり得る。
【0068】
ある実施形態によれば、本発明のコポリマー(P0)は、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される、120~250℃、好ましくは170~240℃、より好ましくは180~230℃の範囲のTgを有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P0)を反応させるために使用される化合物R-SHは、繰り返し単位(R*P1)におけるRが-(CH-Si(OCHであるようなものである。
【0070】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)を調製するための反応は、例えば、炭酸カリウム(KCO)、カリウムtert-ブトキシド、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸セシウム(CsCO)及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される塩基の存在下で実施され得る。塩基は、N-エチル-N-(プロパン-2-イル)プロパン-2-アミン(ヒューニッヒ塩基)、トリエチルアミン(TEA)及びピリジンからなる群からも選択され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、コポリマー(P1)を調製するための反応は、
- 少なくとも1つのフリーラジカル開始剤、好ましくは2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN)、及び/又は
- 過酸化物及びヒドロペルオキシドから好ましくは選択される少なくとも1つの触媒
の存在下で実施される。
【0072】
ある実施形態によれば、反応の終了時のコポリマー(P1)の量は、コポリマー(P0)と溶媒との総重量に基づいて少なくとも10重量%、例えば少なくとも15重量%、少なくとも20重量%又は少なくとも30重量%である。
【0073】
反応の終わりに、コポリマー(P1)は、溶液を得るために他の成分(塩、塩基など)から分離される。例えば、コポリマー(P1)を他の成分から分離するために濾過を用いることができる。次いで、溶液は、コポリマー(P1)を他の化合物と反応させるためにそのまま使用することができるか、又は代わりに、コポリマー(P1)は、例えば、凝固又は溶媒の揮発分除去により、溶媒から回収することができる。
【0074】
コポリマー(P0)の調製プロセス
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスにおいて使用されるアリル/ビニレン官能化コポリマー(P0)は、少なくとも1つの芳香族ジヒドロキシモノマー(a1)と、少なくとも2つのハロゲン置換基を含む少なくとも1つの芳香族スルホンモノマー(a2)及び少なくとも1つのアリル置換芳香族ジヒドロキシモノマー(a3)との縮合によって調製されている。
【0075】
コポリマー(P0)を調製するための縮合は、好ましくは、溶媒中で実施される。コポリマー(P0)を調製するための縮合が溶媒中で行われる場合、溶媒は、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、N-ブチルピロリドン(NBP)、N,Nジメチルホルムアミド(DMF)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,Nジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロベンゼン及びスルホランからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒である。コポリマー(P0)を調製するための縮合は、好ましくは、スルホラン又はNMP中で実施される。
【0076】
コポリマー(P0)を調製するための縮合は、例えば、炭酸カリウム(KCO)、カリウムtert-ブトキシド、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸セシウム(CsCO)及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される塩基の存在下で実施され得る。塩基は、縮合反応中に成分(a1)及び(a3)を脱プロトン化するために機能する。
【0077】
モル比(a1)+(a3)/(a2)は、0.9~1.1、例えば0.92~1.08又は0.95~1.05であり得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、モノマー(a2)は、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)又は4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(DFDPS)、好ましくはDCDPSの少なくとも1つを含む4,4-ジハロスルホンである。
【0079】
いくつかの実施形態では、モノマー(a1)は、モノマー(a1)の総重量に基づいて少なくとも50重量%の4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)、少なくとも50重量%の2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)又は少なくとも50重量%の4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、モノマー(a3)は、モノマー(a1)の総重量に基づいて少なくとも50重量%の2,2’-ジアリルビスフェノールA(daBPA)を含む。
【0081】
コポリマー(P0)を調製するための縮合重合の原理によれば、反応混合物のモノマーは、一般に同時に反応する。反応は、好ましくは、一段階で行われる。これは、モノマー(a1)及び(a3)の脱プロトン化並びにモノマー(a1)/(a3)と(a2)との間の縮合反応が中間生成物の単離なしに単一反応段階で行われることを意味する。
【0082】
ある実施形態によれば、縮合は、極性非プロトン性溶媒と、水と共沸混合物を形成する溶媒との混合物中で実施される。水と共沸混合物を形成する溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等などの芳香族炭化水素が挙げられる。それは、好ましくは、トルエン又はクロロベンゼンである。共沸混合物形成溶媒及び極性非プロトン性溶媒は、典型的には、約1:10~約1:1、好ましくは約1:5~約1:1の重量比で使用される。水は、共沸混合物形成溶媒と共に共沸混合物として反応生成量から連続的に除去され、その結果、実質的に無水の状態が重合中に維持される。共沸混合物形成溶媒、例えばクロロベンゼンは、反応で形成された水が除去された後、典型的には蒸留により反応混合物から除去され、極性非プロトン性溶媒中に溶解したコポリマー(P0)を残す。
【0083】
コポリマー(P0)を調製するための反応混合物の温度は、約1~15時間にわたり、約150℃~約350℃、好ましくは約210℃~約300℃に保たれる。
【0084】
無機構成成分、例えば塩化ナトリウム又は塩化カリウム又は過剰の塩基は、コポリマー(P0)の単離前又は後に溶解及び濾過、ふるい分け又は抽出などの適切な方法によって除去することができる。
【0085】
ある実施形態によれば、縮合の終了時のコポリマー(P0)の量は、コポリマー(P0)と極性非プロトン性溶媒との総重量に基づいて少なくとも30重量%、例えば少なくとも35重量%、又は少なくとも若しくは少なくとも37重量%、又は少なくとも40重量%である。
【0086】
反応の終わりに、コポリマー(P0)は、溶液を得るために他の成分(塩、塩基など)から分離される。例えば、コポリマー(P0)を他の成分から分離するために濾過を用いることができる。次いで、溶液は、コポリマー(P0)を本発明のプロセスにおいて化合物R-SHと反応させるためにそのまま使用することができるか、又は代わりに、コポリマー(P0)は、例えば、凝固又は溶媒の揮発分除去により、溶媒から回収することができる。
【0087】
用途
本発明の付加物は、機能性コーティングの調製に使用することができる。コーティングの表面上の化学的部位は、コーティングを疎水性、親水性、生体認識性、抗菌性、防汚性及び/又はUV硬化性にするために選択することができる。
【0088】
本発明のコポリマー(P1)は、複合材料の調製にも使用され得る。この用途において、機能性は、強化繊維への樹脂の接着性を向上させ、それにより性能を向上させる。
【0089】
本発明は、表面をコーティングするための方法であって、
a)任意選択で1つ以上の溶媒及び/又は添加剤を組み合わせて、請求項1~10のいずれか一項に記載のコポリマー(P1)を表面に塗布すること、
b)60℃~250℃、好ましくは65℃~200℃の範囲の温度で表面を加熱し、且つ/又は少なくとも30%の湿度パーセントの湿度に表面を曝すこと
を含む方法にも関する。
【0090】
本発明は、コーティングとして使用される付加物の調製における、本明細書に記載のコポリマー(P1)の使用にも関する。
【0091】
本発明は、サイジング繊維を加熱し、且つ/又はサイジング繊維を少なくとも30%の湿度パーセントの湿度に曝すことにより、樹脂とサイジング繊維との間の適合性を改善するための、樹脂を含むサイジング配合物における、本明細書に記載のコポリマー(P1)の使用にも関する。
【0092】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0093】
ここで、本発明を、以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、その目的は、例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0094】
原材料
Solvay Speciality Polymersから入手可能なDCDPS(4,4’-ジクロロジフェニルスルホン)
Covestro、米国から入手可能なBPA(ビスフェノールA)
Honshu Chemicals、日本から入手可能なBP(ビフェノール)、ポリマーグレード
Honshu Chemicals、日本から入手可能なDHDPS(4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン)
Sigma-Aldrich、米国から入手可能なdaBPA(2,2’-ジアリルビスフェノール)
Armand productsから入手可能なKCO(炭酸カリウム)
Solvay S.A.、仏国から入手可能なNaHCO(重炭酸ナトリウム)
Sigma-Aldrich、米国から入手可能なNMP(2-メチルピロリドン)
Sigma-Aldrich、米国から入手可能なMCB(メチルクロロベンゼン)
Sigma-Aldrich、米国から入手可能なDMSO(ジメチルスルホキシド)
Sigma-Aldrich、米国から入手可能なDCM(ジクロロメタン)
Chevron Phillips Chemicalsから入手可能なスルホラン
Sigma-Aldrich、米国から入手可能なAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)
Sigma-Aldrich、米国から入手可能なチオプロピルトリメトキシシラン(HS-(CHSi(OCH))
【0095】
試験方法
GPC-分子量(Mn、Mw)
分子量は、移動相として塩化メチレンを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。Agilent Technologiesのガードカラム付きの2本の5μ混合Dカラムを分離のために使用した。クロマトグラムを得るために254nmの紫外線検出器を用いた。1.5ml/分の流量及び移動相中の0.2w/v%溶液の20μLの注入量を選択した。校正は、12の狭い分子量のポリスチレン標準(ピーク分子量範囲:371,000~580g/モル)を用いて行った。数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、より高い平均分子量Mzを報告した。
【0096】
熱重量分析(TGA)
TGA実験は、TA Instrument TGA Q500を用いて実施した。TGA測定値は、窒素下で20℃から800℃まで10℃/分の加熱速度で試料を加熱することによって得た。
【0097】
H NMR
H NMRスペクトルは、重水素化溶媒としてTCE又はDMSOを用いて、400MHz Bruker分光計で測定した。全てのスペクトルは、溶媒中の残存プロトンを基準とする。
【0098】
DSC
存在する場合 - ガラス転移温度(Tg)及び融点(Tm)を測定するためにDSCを用いた。DSC実験は、TA Instrument Q100を用いて実施した。DSC曲線は、20℃/分の加熱及び冷却速度で25℃~320℃で試料を加熱し、冷却し、再加熱し、且つ次いで再冷却することによって記録した。全てのDSC測定値は、窒素パージ下で取った。報告されるTg及びTm値は、特に明記しない限り2回目の加熱曲線を使用して規定した。
【0099】
I.アリル/ビニレン変性PSUコポリマー(P0-A)の調製
官能化PPSUポリマー(P0-A)をスキーム1に従って調製した。
【0100】
共重合は、オーバーヘッド攪拌機、窒素注入口及びオーバーヘッド蒸留セットアップを備えたガラス反応器(1L)中で行う。DCDPSモノマー(143.58g)、BPA(102.73g)及びdaBPA(15.42g)を最初に容器に加え、次に共沸蒸留溶媒としてKCO(78.29g)、NMP(690g)及びMCB(170g)を加えた。
【0101】
反応混合物を、1℃/分の加熱ランプを用いて室温から190℃まで加熱する。反応混合物の温度を溶液の粘度に応じて6~8時間維持する。加熱を停止することによって反応を終わらせる。反応混合物を濾過し、メタノール中で凝固させ、110℃で乾燥させる。
【0102】
コポリマー(P0-A)は、ラセミ化合物生成物の形態である。重合中の塩基及び高温の存在により、daBPAモノマーは、側鎖に沿って二重結合の位置が変化するように重合中にラセミ化する。これは、上で示されたように、二重結合が側鎖の末端又は側鎖の末端の1つ前の炭素にあり得るという事実によって互いに異なる分子の形成をもたらす。
【0103】
アリル/ビニレン-変性PSUコポリマー(P0-A)の特性評価
GPC:Mn=10,948g/モル、Mw=37,123g/モル、PDI=3.39
TGA:474℃
DSC:175℃
H NMR:不飽和基の存在は、ポリマー中の2,2’-ジアリルBPAモノマーの組み込みを示す6.1~6.4ppmの多重項の出現によって確認された。
【0104】
II.アリル/ビニレン-変性PPSUコポリマー(P0-B)の調製
官能化PPSUポリマー(P0-B)をスキーム2に従って調製した。
【0105】
共重合は、オーバーヘッド攪拌機、窒素注入口、熱電対及びディーン-スタークトラップを備えたケトル型反応器(1L)中で行う。DCDPSモノマー(143.58g)、BPA(88.45g)及びdaBPA(7.71g)を最初に容器に加え、窒素で30分間パージする。次いで、スルホラン(470g)及び炭酸カリウム(78g)を容器に加える。
【0106】
次いで、反応混合物を210℃に加熱する。反応混合物がこの温度に達したとき、反応は、6~8時間維持される。この時間後、加熱を停止し、反応混合物を室温まで冷却させる。反応混合物を濾過し、メタノール中で凝固させ、熱脱イオン水で洗浄する。
【0107】
コポリマー(P0-B)は、ラセミ化合物生成物の形態である。
【0108】
アリル/ビニレン-変性PPSUコポリマー(P0-B)の特性評価
GPC:Mn=26430g/モル、Mw=126547g/モル、PDI=4.78
TGA:493℃
DSC:199℃
H NMR:不飽和基の存在は、ポリマー中の2,2’-ジアリルBPAモノマーの組み込みを示す6.2~6.4ppmの多重項の出現によって確認された。
【0109】
III.アリル/ビニレン-変性PESコポリマー(P0-C)の調製
官能化PESポリマー(P0-C)をスキーム3に従って調製した。
【0110】
共重合は、オーバーヘッド攪拌機、窒素注入口、熱電対及びディーン-スタークトラップを備えたケトル型反応器(1L)中で行う。モノマーDCDPS(146.45g)、DHDPS(112.37g)及び2,2’-daBPA(15.72g)を最初に容器に加え、窒素で30分間パージする。次いで、NMP(283g)及びKCO(69.8g)を容器に加える。
【0111】
次いで、反応混合物を190℃に加熱する。反応混合物がこの温度に達したとき、反応は、6~8時間維持される。この時間後、加熱を停止し、反応混合物を室温まで冷却させる。反応混合物を濾過し、メタノール中で凝固させ、熱脱イオン水で洗浄する。
【0112】
コポリマー(P0-C)は、ラセミ化合物生成物の形態である。
【0113】
アリル/ビニレン-変性PESコポリマー(P0-C)の特性評価
GPC:Mw=29,997g/モル、Mn=12,042g/モル、PDI=2.49
TGA:415℃
DSC:Tg=214℃
H NMR:不飽和基の存在は、ポリマー中の2,2’-ジアリルBPAモノマーの組み込みを示す6.1~6.4ppmの多重項の出現によって確認された。
【化14】
【化15】
【化16】
【0114】
IV.フリーラジカル反応による官能化PSUコポリマー(P1-A)の調製
官能化されたPSUポリマー(P1-A)は、スキーム4に従って以下の手順に従って調製した。上記I(スキーム1)に従って調製した12.44gのアリル/ビニレン変性コポリマー(P0-A)を60~70℃の温度で49.76gのNMPに溶解する。次いで、19.8gの3-(トリメトキシシリル)プロパンチオールを反応容器に加え、撹拌する。次いで、1.64gのAIBN(フリーラジカル開始剤)を反応容器に加え、N下で6~12時間撹拌する。温度を6~12時間70℃に維持する。次いで、反応混合物をメタノール中で凝固させ、110℃で乾燥させる。12.44gのシラノール官能化ポリマーが得られた。
【0115】
特性評価
DSC:Tg=152.2℃
【0116】
V.加熱によるポリマー付加物の調製
官能化されたPSUポリマー(P1-A)の付加物をスキーム5に従って調製した。コポリマー(P1-A)を沸騰水中で3時間加熱し、次いで架橋された材料を乾燥させた。
【0117】
特性評価
得られた材料は、高温のNMPに完全に不溶性であった。DSCによって見られる架橋後のTgの増加:152.2℃から193.3℃。
【化17】
【化18】
【国際調査報告】