(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】電気機器ユーザのコミュニティのための人工知能/機械学習駆動型評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/00 20120101AFI20221028BHJP
【FI】
G06Q50/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514733
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2020074792
(87)【国際公開番号】W WO2021043998
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テヒニ,ロニー
(72)【発明者】
【氏名】チェイム,ルイズ
(72)【発明者】
【氏名】ピアース,スティーブン
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
(57)【要約】
電気機器資産を監視するための人工知能/機械学習駆動型評価システムは、複数のユーザ/所有者によって管理される複数の電気機器資産の管理に関連付けられたユーザ提供資産データを受けるように構成されたコンピュータシステムを含む。データベース内の資産のアイデンティティは制限され、その資産を所有/管理するユーザしか知らない。コンピュータシステムは、ユーザデータを、プールされた知識データベースとともに分析することにより、監視される電気機器資産についての行動または評価の指針を生成するとともに、この行動の指針を実際の結果と比較して得られたフィードバックに基づいて分析プロセスを更新するように、構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器のための人工知能/機械学習(AI/ML)駆動型評価システム(100)であって、
複数のユーザ(114)によって管理される複数の電気機器資産を備え、
前記複数のユーザのうちの各ユーザは、前記複数の電気機器資産のうちの関連付けられた少なくとも1つの電気機器資産を管理し、
前記AI/ML駆動型評価システムは、前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)に関連付けられた前記複数のユーザ(110)からのユーザ提供資産データを格納するように構成された少なくとも1つのデータベースをさらに備え、
前記少なくとも1つのデータベースは、前記電気機器資産に関する、プールされた知識データベースを含み、
前記複数のユーザ(114)のうちの各ユーザは、前記少なくとも1つのデータベースから、関連付けられた前記ユーザによって管理される前記少なくとも1つの電気機器資産のみを識別することができ、
前記AI/ML駆動型評価システムは、前記少なくとも1つのデータベースと作動的に通信するコンピュータシステム(104)を備え、
前記コンピュータシステム(104)は、前記プールされた知識データベースとともに、前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)についての前記ユーザ提供資産データを分析するように構成され、
前記コンピュータシステム(104)は、前記複数の電気機器資産についての前記ユーザ提供資産データと、前記プールされた知識データベースとに基づいて、前記複数のユーザ(114)のうちの1人のユーザおよび前記関連付けられた少なくとも1つの電気機器資産についての前記分析から、行動または評価の指針を生成する、AI/ML駆動型評価システム。
【請求項2】
前記プールされた知識データベースは、前記複数の電気機器資産についての、専門家データ、業界データ、および資産データを含む、請求項1に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項3】
前記資産データは、前記複数の電気機器資産の管理についての手順およびレポートを含む、請求項1または2に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項4】
前記プールされた知識データベースは、前記複数の電気機器資産の種類に基づいて、種別に分離される、請求項1~3のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項5】
前記コンピュータシステム(104)は、機械学習自然言語処理を用いて前記行動または評価の指針を生成するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項6】
前記行動または評価の指針は、前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のうちの前記少なくとも1つの電気機器資産についての、パラメータ推定、データ予想、および故障予測のうちの1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項7】
前記コンピュータシステム(104)は、人工知能を使用して、前記電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のうちの前記少なくとも1つの電気機器資産について推奨される前記行動または評価の指針を生成する、請求項1~6のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項8】
前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)は、変圧器および回路遮断器のうちの少なくとも一方を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項9】
前記プールされた知識データベースは、前記複数の電気機器資産のうちの少なくとも1つの電気機器資産に対して前記複数のユーザ(114)のうちの前記1人のユーザが前記行動または評価の指針を実行した結果に応じて、前記複数のユーザ(114)のうちの前記1人のユーザによって更新される、請求項1~8のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項10】
前記コンピュータシステム(104)は、前記プールされた知識データベースの前記更新に応じて前記行動または評価の指針を決定するために前記分析を更新するように構成される、請求項1~9のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項11】
前記複数のユーザ(114)のうちの各ユーザは、前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)についての前記ユーザ提供資産データと、前記プールされた知識データベースとの前記更新された分析について、前記コンピュータシステム(104)にアクセスすることができる、請求項1~10のいずれか1項に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項12】
前記複数のユーザ(114)は、前記関連付けられたユーザによって管理される前記電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のみについての前記更新された分析に基づく、前記行動または評価の指針を受ける、請求項11に記載のAI/ML駆動型評価システム(100)。
【請求項13】
少なくとも1つの電気機器資産を評価する方法であって、
複数の前記電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)の管理に関するユーザ提供資産データをデータベースに格納するステップを含み、
前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)は複数のユーザ(114)によって管理され、さらに、
前記複数のユーザ(114)のうちの各ユーザは、少なくとも1つの前記データベースから、前記各ユーザによって管理されるそれぞれの前記電気機器資産および関連付けられたユーザ提供資産データの識別のみを行うことができ、
前記方法は、
前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のためのプールされた知識データベースを生成するステップと、
前記少なくとも1つのデータベースと作動的に通信するコンピュータシステム(104)において、前記ユーザ提供資産データおよび前記プールされた知識データベースを取得するステップと、
前記コンピュータシステム(104)を用いて前記ユーザ提供資産データおよび前記プールされた知識データベースを分析するステップと、
前記分析から、前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のうちの少なくとも1つの電気機器資産についての行動または評価の指針を生成するステップと、
前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のうちの前記少なくとも1つの電気機器資産を管理する前記各ユーザに、前記行動または評価の指針を提供するステップとを含む、方法。
【請求項14】
前記コンピュータシステム(104)と作動的に通信するディスプレイを提供するステップと、
前記行動または評価の指針を前記ディスプレイに表示するステップとをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プールされた知識データベースは、専門家データ、業界データ、ユーザ手順、およびユーザレポートを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記コンピュータシステム104は、機械学習自然言語処理を用いて前記行動または評価の指針を生成するように構成される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記行動または評価の指針は、パラメータ推定、データ予想、および故障予測のうちの1つ以上を含む、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記コンピュータシステム(104)は、人工知能を使用して前記行動または評価の指針を生成する、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記プールされた知識データベースは、前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のうちの前記少なくとも1つの電気機器資産に対する前記行動または評価の指針の実行からのフィードバックに応じて、前記各ユーザによって更新され、
前記コンピュータシステム(104)は、前記フィードバックに基づいて前記分析を実行するための1つ以上のアルゴリズムを更新するように構成される、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のユーザ(114)のうちの各ユーザは、前記複数の電気機器資産(108a,108b,108c,…108n)のすべてについての前記ユーザ提供資産データの分析にアクセスすることができ、
前記複数のユーザ(114)は、前記各ユーザによって管理されるそれぞれの前記電気機器資産のみについての前記行動または評価の指針を受ける、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術分野
概して、本発明は、電気機器評価システムに関する。特に、本発明は、電気機器ユーザのコミュニティに属する電気機器資産のための人工知能/機械学習駆動型評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
現代の電気機器資産状態診断は、業界標準および専門家の研究によって決定された規則のセットに基づいている。メンテナンスおよび診断のためにユーザが参考にすることができる、操作マニュアル、業界専門家、および経験等の多くのリソースがある。機器のユーザが機器の故障および実現されている解決策に関して経験を交換することができる、会議および集会などのようなフォーラムが存在する。
【0003】
しかしながら、これらの情報交換方法にはいくつかの欠点がある。たとえば、解決策を実現する際のフィードバックは、機器のすべてのユーザ間で簡単に共有される訳ではない。可能な解決策は、最も関係があるユーザがフォーラムに参加しなければ、彼らに届かない場合がある。さらに、特定の問題に対する解決策と、これらの解決策が必要なユーザとの接点は、ユーザがフォーラムに参加しなければ、またはフォーラムにおいてユーザが情報を共有しなければ、生じない可能性がある。また、そのような交換は匿名ではないので、情報共有が、機密性およびその他の問題が原因で、限定される場合がある。
【0004】
加えて、配電網等における電気機器資産のオペレータおよびその他のユーザは、特に複数の動作パラメータに対してオンラインセンサを使用する傾向が世界的に高まっていることに伴い、解釈し管理するのが難しい大量の動作データに圧倒される可能性がある。なぜなら、そのようなデータは、配電のさまざまな動作/組織レベルで容易に解釈できる実用的な情報としてコンパイルされていないからである。加えて、そのようなデータは、特定のユーザが所有する電気機器資産のみから集められる場合があるので、そのようなデータを集めて処理することにより、複数の所有者からの関連情報を特定し、これを適切なフォーマットで同様の種類の電気機器資産のさまざまな他のユーザに伝達できるようにすることは、極めて難しい。典型的に、所与の種類の資産の所有者は、同一種類の資産の他の所有者から学ぶまたはこれらの所有者とオープンに情報交換することがなく、その理由は、データの秘匿性、起こり得る規制、および法的問題にある。少数の資産を保有している多数の所有者が存在するので、各所有者の資産数は、そうでなければ資産数が多い場合に非常に重要になるであろういくつかの研究にとって、統計学上重要でない場合がある。そのため、この技術領域にはさらに改善が必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
上記に照らして、本開示は、複数の電気機器資産のユーザのコミュニティのための人工知能(AI)/機械学習(ML)駆動型評価システムを提供する。ある局面に従うと、AI/ML駆動型評価システムは、電気機器資産のユーザの1つ以上のコミュニティに対して提供される。このシステムは、動作データおよびこのデータの分析を、電気機器の複数のユーザ/所有者と匿名で共有することにより、資産または資産のグループの状態に関するインテリジェントデータ出力を提供するとともに、実用的な情報または推奨される応答を提供して、管理およびメンテナンスに関する、情報を得た上での決定を行うことができるように、構成されている。個々のユーザは、資産全体を確認しなくても、または所有していない資産にアクセスできなくても、資産のより大きなプールおよびこのプールから抽出された知識から、利益を得るであろう。
【0006】
さらに、電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムが必要とされており、このシステムは、システムの制御されたサブスクリプションおよび限定されたビジョンにより、ユーザのコミュニティのどのメンバーでも遠隔からいつでもアクセスできる情報を提供するが、統計的分析、およびこの分析とデータの共通プールとから得られるAI/MLアプリケーションには、フルアクセス可能である。加えて、データの分析方法を動的かつ連続的に更新することにより、電気機器資産のユーザコミュニティによる行動または評価の指針の実際の実現のフィードバックに基づく、推奨される行動または評価の指針を提供することができる、電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムが、必要とされている。
【0007】
加えて、1つ以上のデータベースを提供することにより知識データのプールを生成する、電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムが必要とされている。知識データのプールは、任意のソースから得られる電気機器資産データを有する異なるデータベースへのリンクを含むまたは生成する。任意のソースは、専門家、ユーザマニュアル、操作手順、ソーシャルメディア、業界標準、および刊行物、ならびに、監視されている各電気機器資産に関連する各種製造業者およびモデルの情報ソース等である。また、オフライン記録(診断、メンテナンスおよび管理履歴等)、およびオンラインセンサによって取り込まれたオンライン動作データ等の資産データを、ユーザから提供することもできる。さらに、プールされた知識およびユーザが収集または提供した電気機器資産データを用いて、機械学習アルゴリズムを、たとえばパラメータ推定、データ予想、確率的寿命評価、および故障予測について訓練することにより、実用的情報を出力し、電気機器の現在の動作状態に基づいて推奨される応答を提供する、人工知能分析を提供するAI/ML駆動型評価システムが必要とされている。
【0008】
本開示のさらに他の実施形態、形式、目的、特徴、利点、局面および利点は、以下の説明および図面から明らかになるであろう。
【0009】
本発明のこれらおよびその他の特徴および利点は、以下の説明および添付の図面に関して一層良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る、ユーザのコミュニティの電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムのブロック図である。
【
図2】ユーザのコミュニティの電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムのプロセスのブロック図である。
【
図3】代表的な制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示の実施形態の詳細な説明
本開示の例示としての実施形態、当該実施形態を実現し使用する方法およびプロセスを、明確、簡潔、かつ正確に説明するため、および、当該実施形態の実施、実現および使用を可能にするために、図面に示されるものを含む、ある決まった具体例としての実施形態を参照し、これを説明するために固有の表現を使用する。それでもなお、本発明の範囲は限定されないこと、および本発明は当業者が想到するような変更、変形、およびさらに他の応用を含み保護することを、理解されたい。
【0012】
図面のうちの
図1に示されるように、電気機器または資産のためのAI/ML駆動型評価システムを、総合的に数字100で示す。「電気機器」または「電気機器資産(複数の電気機器資産)」という用語は、本明細書において、1つ以上の電気的構成要素であってこれらの構成要素のユーザのコミュニティに関連付けられる1つ以上の電気的構成要素と定義されることを、理解されたい。そのような電気的構成要素を採用し得る例は、2つ以上の発電システム、送電網、配電網、産業用電力網、マイクログリッド、変電所などのうちのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせを含むがこれらに限定される訳ではない。そのような電気機器資産は、変圧器、回路遮断器、スイッチ、サージアレスタ、バッテリ、冷却システム、電力線および回線接続、中継器、またはそのようなシステムに採用し得る任意の他の装置を含み得るが、これらに限定される訳ではない。
【0013】
加えて、システム100を使用することにより、ユーザ114のコミュニティ内の異なるユーザが所有する、複数の資産タイプを含む任意の電気機器資産を監視することができる。システム100は、動作(負荷、周囲温度など)、現場試験および測定値、実験結果(典型的にはオフライン)、および/または電気機器資産の動作に対応付けられたオンラインセンサ、および人工知能(AI)システム102によって分析される電気機器資産の知識データのプールから、ユーザが提供する動作パラメータデータを、連続的に取得するように構成される。具体的には、AIシステム102は、ハードウェア、コンピュータ読取可能媒体上で符号化された命令、またはこれら双方の組み合わせで実施されてもよく、各ユーザが、所有/管理する電気機器資産およびこの電気機器資産に関連するユーザ提供の資産データしか識別できないように、アイデンティの機密性を保ちつつ、複数の電気機器資産のすべてのユーザ提供資産データに基づいて、特定の電気機器に対する行動または評価の指針等の情報を提供するように構成される。ユーザは、採用された行動の指針およびこれに関連付けられる結果に関するフィードバックを提供することにより、分析を改善し、ユーザ提供資産データおよびプールされた知識データに基づいて、推奨される行動および評価の指針についての未来の予測を改善する。
【0014】
具体的には、システム100は、ハードウェアおよび/またはコンピュータ読取可能媒体符号化命令を実行するために必要な、AIシステム102を含むハードウェアおよびソフトウェアで構成された、集中型または分散型データベースまたはコンピュータシステム104(本明細書では「コンピュータシステム104」と呼ぶ)を含む。AIシステム102は、ユーザからアクセス可能なクラウドコンピューティングプラットフォーム、中央コンピューティングシステム上でホストされてもよく、または、ユーザ114のコミュニティの1つ以上のコンピュータ上でローカルにホストされてもよい。加えて、コンピュータシステム104は、複数のオンラインセンサ106a、106b、106c、...106nから、図示のように直接、またはユーザ114から、オンライン動作パラメータデータを取得するように構成されてもよい。オンラインセンサ106a~106nは、ユーザ114のコミュニティによって所有される電気機器資産108のコミュニティの一部である複数の対応する電気機器資産108a、108b、108c、...108nに関連付けられた動作パラメータデータを監視および収集するように構成された、任意の適切な種類のセンサを含み得る。前述のように、システム100は、センサ106a~106nを用いて、任意の数および種類の電気機器資産のオンライン動作パラメータを監視するように構成されてもよいことを、理解されたい。さらに、コンピュータシステム104は、任意の構成、モデル、または種類の電気機器資産のオンラインセンサ106a~106nから、そのようなセンサ106a~106nが使用するどのようなデータプロトコルとも無関係に、オンラインデータを互換的に受信することができるので、ハードウェアに依存しない。
【0015】
コンピュータシステム104は、センサからおよび/またはユーザ114からオンライン動作パラメータデータを直接取得することに加えて、記憶システム112内のユーザ提供データからオフライン動作パラメータデータおよび他のデータを取得することもできる。記憶システム112に格納されたユーザ提供データは、電気機器資産108のコミュニティを所有および/または管理するユーザ114のコミュニティを形成するユーザ114a、114b、114c、...114nから、直接的または間接的に取得することができる。ユーザ提供データ記憶システム112は、任意の適切な大容量記憶装置またはデータベースを含み得るものであって、ユーザ114a~114nが所有および/または管理する資産について提供する、資産識別、資産所有者、資産製造業者、資産仕様、オフライン試験データおよび分析、メンテナンス情報、履歴動作パラメータ情報、性能情報などのような、電気機器資産108a~108nに関連するオンラインおよび/またはオフライン動作パラメータデータを、格納するように構成される。
【0016】
ユーザ提供データ記憶システム112および/またはコンピュータシステム104は、マルチクエリのカスタマイズ可能な動的で暗号化されたデータベースであってもよく、よって、オフライン動作パラメータデータ、ユーザデータ、および/またはオンライン動作パラメータデータは、資産専用のデータプールに格納する、またはグループ化もしくはフィルタリングして上記データプールに入れることができ(たとえば資産が変圧器なのかまたは回路遮断器なのかに基づいて分別される)、さらに、変圧器があるサイズよりも大きいまたはある製造業者によって製造されたというような特徴の任意の適切な組み合わせに基づいて、フィルタリングまたはソートすることができる。ある実施形態において、情報の共有および記憶は、ブロックチェーン技術によって実現されてもよい。また、動作パラメータデータ(オンラインおよび/またはオフライン)の分析を実行することにより、統計的記述および相関関係を提供し、傾向およびノルムを識別し、フラグを生成または異常を検出することもできる。この分析は、同様のクラスのまたは同一種類もしくはファミリーの資産108a~108nに対して選択的に実行することができる。ユーザ提供データ記憶システム112および/またはコンピュータシステム104内で、各ユーザは、それぞれの資産108a~108nからユーザが提供したデータおよび関連付けられた資産を具体的に識別することしかできないが、資産108のコミュニティから集められたデータに基づくデータの分析は、ユーザ114のコミュニティのすべてが利用できるものである。
【0017】
また、コンピュータシステム100は、プールされた知識データベース122に通信可能に結合されるように構成される。具体的には、プールされた知識データベース122は、資産108a~108nに関連付けられた複数のデータソース124a、124b、124c、...124nからプールされた資産108a~108nに関するさまざまな知識を含む。ソース124a~124nは、たとえば、ユーザ手順、製造業者専門家、業界標準およびノウハウ、業界用文献、書籍、記事、レポート、ならびにソーシャルメディアを含み得る。
【0018】
コンピュータシステム104によって実行される、「スーパーマインド(Supermind)」と呼ばれることもあるAIシステム102は、オンラインセンサ106a~106nから受信した資産108a~108nについてのオンライン動作パラメータデータと、記憶システム112からの資産108a~108nについてのユーザ提供データと、プールされた知識データベース122からの知識プールとを分析することにより、資産コミュニティ108内の各資産108a~108nの管理について推奨される行動または評価の指針を、資産専門家駆動型「知識プール」から自動的に抽出された知識に基づいて、動的に更新でき、たとえば故障モードの指針に関連する可能なシナリオを示し得る、利用可能なすべての情報、記録およびデータをサーチでき、AI/MLツールを用いて、最も適切なシナリオを、証拠を考慮して選択できる。そのような行動または評価の指針は、電気機器資産108a~108nのうちの1つ以上の損傷や故障を回避するためまたはその性能を改善するために、たとえば、メンテナンスを実行する、動作パラメータを変更する、負荷を取り除いて動作リスクを軽減する、出力および/または入力を変えることであってもよい。
【0019】
AIシステム102は、機械学習(ML)自然言語処理(NLP)の使用によって動作することにより、対応付けられた資産108a~108nのユーザ114に対して行動および/または評価の指針を含む出力140を提供することができる。たとえば、AIシステム102は、ユーザ提供データ記憶システム112からのデータ、センサ106a~106nからのオンライン資産データ(提供される場合)、および/またはプールされた知識データベース122からの知識プールの組み合わせを用いて、フィルタリングされた資産タイプについて確率的マルチシナリオ故障モード調査を実行するように、構成されていてもよい。行動または評価の指針は、最も可能性が高い行動または評価の指針、その原因および証拠、ならびにそれぞれの尤度または確率に関する意思決定プロセスを支援するための、仮説および必要な一連の証拠の確率的推定とともに、プールされた知識データベース122にアップロードされた、最新情報/知識に基づいていてもよい。
【0020】
また、システム100は、出力140を絶え間なく改善するためにAIシステム102を訓練するフィードバック機構142を含む。フィードバック機構142は、ユーザ114a~114nが受信した出力140に応答して行われた行動の結果をユーザ114が匿名で共有することを含み得る。他の実施形態は、非匿名情報共有、および/または、データプライバシー法および/またはデータプライバシー規則に準拠する情報共有を意図する。この情報は、プールされた知識データベース122およびAIシステム102に提供され、よって、統計ツールおよびアルゴリズムは、出力140について改善された予測を実現することができる。また、ユーザ114は、別のユーザ114がAIシステム102を訓練するために提供されるフィードバック142を受信することもできる。したがって、ユーザ114a~114nの各々は、ユーザ自身の経験または自身の資産だけでなく、ユーザ114のコミュニティ内の多数のユーザ114a~114nからの電気機器資産108~108nのコミュニティ全体で発生する特定の故障および故障モードならびにそれに対する応答から得られた、知識および経験にアクセスすることができる。
【0021】
フィードバック機構142は、パラメータ推定、データ予測、故障予測、またはその他の行動もしくは評価の指針を、より正確かつ有用にするという意図で、複数のMLアルゴリズムの訓練に使用することができる。仮説試験および最も可能性が高い故障モードを、根拠となるすべての証拠および確率とともに示すことができる。各ユーザ114a~114nには、それぞれの電気機器資産108a~108nの管理およびメンテナンスに関する実用的な情報および推奨が提供される。このプロセスは、動的であり、プールされた知識データベース122を更新するために、各ユーザ114a~114nによって行われたメンテナンスまたは管理の変更からのフィードバックを必要とし、次に、このフィードバックに基づいてMLアルゴリズムを訓練する。システム100は、連続ループで動作することにより、プールされた知識データベース122から利用可能な最新の情報/知識を、ユーザ114a~114nに提供することができる。
【0022】
システム100によって生成される出力140は、電子メールメッセージ、ウェブページ、コンピュータインターフェイス(GUI:グラフィカルユーザインターフェイス)、電子文書、または任意の他の媒体もしくはフォーマットを含むがこれらに限定されない電子媒体等の、任意の適切な媒体で実現されるデータを含み得る。これは、データを、任意の適切なフォーマットで、かつ、ユーザ114がそれぞれ所有し管理する電気機器資産108の管理およびメンテナンスに関する動作決定を行うために必要な適切なレベルの粒度で、提供する。出力140は、ハンドヘルド電子デバイスまたは他のデスクトップもしくはポータブルコンピュータシステムなどを含む任意の適切なコンピューティングデバイスに伝達されてもよく、このデバイスにおいて、出力140は、電子メッセージング(電子メール、テキストメッセージなど)、自動更新ウェブページなどを含むがこれらに限定されないさまざまなモードを使用して、提示される。ある局面において、出力140は、ウェブと同様のアプリケーションツールを使用して企業ローカルエリアネットワーク(LAN)を介してコンピューティングデバイスに伝達されてもよい。
【0023】
コンピュータシステム104と、センサ106a~106n、ユーザ提供データ記憶システム112、および/またはプールされた知識データベース122との間に、任意の適切なインターフェイスがある。インターフェイスの例は、オンラインデータインターフェイス110、ユーザ提供データインターフェイス120、プールされた知識データのインターフェイス130を含む。以下の説明のために、インターフェイス110~120は、たとえばETHERNET(登録商標)/TCP IPポート等の任意の適切なデータ通信インターフェイスを含み得る。さらに、オンラインデータインターフェイス110は、DNP3.0、MODBUS、IEC61850等の任意の適切なデータプロトコルを利用してもよく、またはその代わりにアナログもしくは「オンオフ」ハードコンタクト出力を含んでいてもよく、これは、より大きなデータベースがオンラインデータのすべてを組み込んでいるコンピュータシステム104に到達する前に、電気変電所ゲートウェイにおいてデジタルデータに変換されることを、理解されたい。システム100によって提供されるオンラインデータインターフェイス110は、電気機器資産108a~108nのそれぞれに作動的に取り付けられた1つ以上のオンラインセンサ106a~106nに結合されそこからデータを受信するように構成されてもよい。各資産108a~108nは、センサ106a~106nによって表される1つ以上のセンサを含み得ることを理解されたい。
【0024】
システム100によって提供されるユーザ提供データインターフェイス120および/または知識プールデータインターフェイス130は、それぞれ、ユーザ提供データ記憶システム112およびプールされた知識データベース122からデータを受信するために結合されるように構成される。データベース112、122は、たとえば、EXCEL、ACCESS、またはORACLE(登録商標)ベースのファイル等の任意のフォーマットまたは構成でデータを格納してもよい。コンピュータシステム104によって提供されるインターフェイス120、130は、OPC(オープンコネクティビティ)もしくはSQL(シーケンシャルクエリロジック)を含み得る、または任意の他の適切なコンピュータプログラミング言語もしくはルーチンの使用によるものであってもよいことを、理解されたい。
【0025】
図2を参照すると、上述のようなシステム100によって実現することができるプロセス200の実施形態が示されている。プロセス200はブロック202を含み、このブロックにおいて、複数のユーザおよび/または資産が、上記ユーザ提供資産データおよびオンライン動作パラメータデータ等の資産データを、ブロック204に提供する。加えて、ブロック206における複数のデータソースが連続的に更新されて、資産に関する専門家データ、手順マニュアル、業界データなどを、プールされた知識ブロック208に提供する。
【0026】
ブロック210において、プールされた知識データとともに、ユーザ提供データおよび/またはオンライン動作パラメータデータのAI分析が実行され、ブロック212において、推奨される行動または評価の指針が提供される。AI分析は、資産108a~108nのそれぞれのユーザにさらなる推奨応答を提供するために、システム100によって監視されている特定の種類の電気機器資産108a~108nの管理に関連付けられたエンジニアリングモデル(統計に基づく、ルールベースのシステム)を含み得る。
【0027】
したがって、AI分析は、電気機器資産108a~108nの動作パラメータの進化または変化を統計ツールを使用して識別するとともに、推奨される行動または評価の指針に応じてブロック214でユーザによって行われた行動の結果を評価することによって「学習する」ように、構成され得る。その結果、プロセス200は、ブロック216において、ユーザフィードバックを知識プール208に取り込み、ブロック218において、ユーザからのフィードバックに基づいてAI分析を改善するための訓練を提供する。このように、AI分析は、ファジー論理、ベイズ信頼度伝搬ネットワーク(Bayes belief propagation network)、ニューラルネットワーク、および/または遺伝的アルゴリズムツールなどのような、さまざまな人工知能技術を使用して、「資産経験」を分析に取り入れる。また、AI分析は、少なくとも1つの共通する特性(すなわちレーティング、付属品、製造元など)を有する資産コミュニティ内の同一または同様の資産との比較における、特定の資産108a~108nの動作パラメータ(または複数のパラメータ)の相対偏差を示すことができる。AI/MLシステムは、複数の学習メカニズム(教師あり、教師なし、および強化学習等)、ならびに、たとえば人工ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、勾配ブースティングマシン、および、とりわけエクストリーム勾配ブースティングマシン、分類および回帰ツリー、ロジスティック回帰等の派生物のような、複数種類のMLアルゴリズム(線形、非線形、組み合わせ)を利用することができる。また、AI/MLシステムは、複数種類の自然言語処理(NLP)アルゴリズムを適用して、システムによって分析された実際のデータを考慮し、シナリオおよびそれらの尤度を分類し、要約し、識別するであろう。
【0028】
したがって、本開示の1つ以上の実施形態の1つの利点は、電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムが、ユーザに、対象となるその資産についての行動または評価の指針への直接アクセスを提供することであり、この指針は、対象となる資産に加えて他のユーザの複数の資産の情報専門家評価の分析に基づくことを、理解されたい。本開示の別の利点は、電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムが、オープンかつフレキシブルなインターフェイスを提供し、このインターフェイスが、さまざまなデータベースから複数の資産についての情報を取得することができ、かつ、資産の特定の所有者の匿名性を保ちながらデータへのアクセスを統合し、分析し、提供することができることである。本開示のもう1つの利点は、電気機器資産のためのAI/ML駆動型評価システムが、行動または評価の指針の結果を監視しこの結果からのフィードバックに基づいて分析プロセスを更新するように構成されることである。
【0029】
本発明を実施するための方法(
図2参照)は、監視されている複数の電気機器資産のうちの代表的な電気機器資産としての変圧器ユニット202について示されている。変圧器ユニットの状態(資産データ204)は、変圧器ユニットに関連付けられたユーザと、AI/ML駆動型評価システムに関連付けられたサービスプロバイダとの間のサービス/加入契約に従い、AI/ML駆動型評価システムによって評価され得る。
【0030】
変圧器ユニットは、変圧器ユニットの管理および状態監視のための重要なパラメータ(動作パラメータデータ)の測定値を提供する、変圧器ユニットに接続された複数のセンサを有する。AI/ML駆動型評価システムは、変圧器ユニットの監視および評価のために変圧器ユニットに関連付けられたセンサと通信可能に接続することができ、したがって、評価のために変圧器ユニットデータ(資産データ)に直接アクセスすることができる。これに代えて、AI/ML駆動型評価システムによる評価のための資産データは、変圧器ユニットのユーザによって管理されるローカル監視および制御装置/システムのデータベースからのデータを、AI/ML駆動型評価システムと匿名で共有することにより、提供することができる。
【0031】
ユーザ提供資産データは、ユーザから連続的にまたは/およびオフラインモードで収集されたセンサ(測定)データを含み、また、ユーザによって提供される、変圧器の種類/レーティング情報、変圧器構成要素情報(たとえば変圧器ブッシングのモデル/構成)、地理的現場(場所)情報、メンテナンス履歴、現場試験結果、実験結果などのような、資産データも含む。ユーザ提供資産データは、生データとして、またはユーザとの合意に従って変圧器資産の状態/性能を評価するための処理済みデータとして、AI/ML駆動型評価システムに格納されてもよく、変圧器ユニットのユーザしかアクセスできない。同様に、AI/ML駆動型評価システムは、AI/ML駆動型評価システムによってサービスされる複数の電気機器資産のうちの他の電気機器資産ユニットから動作パラメータデータおよびユーザ提供資産データを収集する。複数の電気機器の各々に関連付けられる、収集されたデータは、関連付けられた電気機器のユーザのみがアクセス可能な、すなわち他のユーザがデータにアクセスできない、1つ以上のデータベースに格納される。
【0032】
この説明のための例において、変圧器ユニットから収集された動作パラメータデータはAI/ML駆動型評価システムで処理され(210)、たとえば変圧器ユニットについて、ある期間にわたって観察された変圧器のブッシングに関連する誘電正接(tan delta)パラメータ値に一定%の増加があることが観察される(またはユーザから与えられる)。AI/ML駆動型評価システムは、そのプールされた知識データベース208にアクセスして、AI/ML駆動型評価システムによって実行される分析210の一部として、観察されたパラメータ変動(誘電正接%増加)に関連付けられた情報を探索する。AI/ML駆動型評価システムは、プールされた知識データベースから情報を具体的に収集し行動のための評価/推奨212として提供するためのフィルタとして、1つ以上のユーザ提供資産データ204(たとえば変圧器の種類、負荷/温度関連情報、変圧器の寿命など)を利用することができる。
【0033】
図2を用いて先に開示したように、プールされた知識データベース208は、複数のユーザからフィードバック216として収集された処理済みデータ/情報、および、AI/ML駆動型評価システムに提供されるデータ/情報206から作成される。教師あり/教師なし学習/訓練218は、機械学習アルゴリズムを用いて実行され、これは、誘電正接パラメータの増加に関する情報を含む、プールされた知識ベース(たとえば技術材料および文献は典型的には人間の専門家からAI/MLアルゴリズムに提供される)を作成するためのさまざまなソース206からの情報を使用する。上記アルゴリズムは、とりわけ、起こり得る故障シナリオを構築し、進行中のパラメータ変更に関連する、最も可能性が高い趨勢を、分析の一部として選択する。増加した誘電正接値についての推奨/行動指針の抽出を含む分析は、1つ以上の実用的な情報(212、サービス/管理に関連する推奨)として、または状態の評価/寿命評価(予後)を表すデータとして、提供される。状態/寿命評価に関するそのような評価は、フィードバック216を含む複数の電気機器資産と、さまざまなデータソース206を介して収集された専門家からの情報とから行われた観察を利用するので、より正確かつより典型的であると予想される。分析および評価を用いることにより、変圧器もしくはその構成要素(ブッシング)の現在の状態を判断すること、または、故障モードもしくはある時間にわたる状態/故障の発達(未来の状態/予測)を判断することができる。評価212が、資産データ204として提供された電気機器の現在の動作状態情報に基づいて、変圧器動作パラメータ、確率的寿命評価、確率ベースの故障の種類/モードの予測などのような1つ以上のパラメータの推定値として提供され、および/または、推奨される行動指針212が、動作リスクを最小にするために、変圧器ユニットに対して実行されるサービス/動作アクティビティのシーケンスとして提供される。推奨されるアクティビティの実行の結果214、および/または将来の時間について行われた将来の予測または推定に関連する観察が、フィードバック216として提供されてもよい。
【0034】
この例において、AI/ML駆動型評価システムは、ブッシングの誘電正接値の増加に関連する情報を収集し、知識プールおよびAI/ML処理を利用して1つ以上の実用的なサービス/管理に関連する推奨を提供する。AI/ML駆動型評価システムは、サービス産業においてさまざまなユーザが類似または関連する状態/イベントを扱う経験から得られる情報、標準に基づく情報、および/または最新刊行物から得られる情報を含む、上記さまざまなソースから受けた情報を処理する。たとえば、この処理は、機械学習(ML)自然言語処理(NLP)によって実行することができ、または、ユーザ/専門家がタグを使用して照合するさまざまな共有/公開情報における情報である可能性さえある。この例では、変圧器ユニットについて、上記期間にわたるブッシングの誘電正接値の%増加に関するユーザ提供資産情報とともに報告された状態が、知識プールからの情報とともに分析されて、ブッシングの誘電正接の同様の%増加を、同様の期間および同様の資産について報告するユーザ/資産が特定され、より適切な比較および関連する推奨が得られる。
【0035】
誘電正接パラメータおよび変圧器ユニットに関連する、この説明のための例の場合、分析は、機械学習自然言語による情報の処理を含む。さまざまなソース206からの情報の抽出は、提供された専門家情報に出現する重要単語の単語/テキストクラスタおよびそれらの関係に基づいていてもよく、または/および診断/状態監視関連情報を抽出するための予め定められたキーワードに基づいていてもよい。たとえば、重要単語/キーワードは、「誘電正接」、「故障」、「故障モード」、「障害」、「破局的」、「メンテナンス」、「負荷」、「老朽化」、「寿命」などとつながりがある単語、ならびに、行動、結果または/およびそれらの成功/失敗情報を表す単語の可能性がある。AI/MLアルゴリズムを使用することにより、教師あり/教師なし訓練(学習)プロセスステップの後に、誘電正接パラメータについて抽出されたそのような情報を自動的にプールする。訓練データは、さまざまなソース206から手動/半自動で抽出された情報で構成されてもよく、これは、変圧器ユニット/類似の他の変圧器ユニットに関連する履歴情報、ならびに、変圧器ユニットおよびブッシングの誘電正接値に関するアクティビティについての文献/専門家情報、健全状態、修正/予防アクティビティ、観察された誘電正接値の増加の解決/制御の成功または失敗、対応付けられた統計的観察、および他のそのような調整された/対応付けられた情報(変圧器/ブッシングの構成、変圧器の場所、同様の変圧器/ブッシングをどこか他の場所に設置することに関する情報等)を含む。
【0036】
選択された修正/予防行動に関連する(たとえば百分率または尤度としての)成功/失敗情報に基づく、および/または変圧器ユニット/ブッシングの種類/モデルに基づく結果の統合を含む、AI/MLアルゴリズムを用いて実行されるこの分析の結果として、変圧器ユニットのユーザに、問題を解決する際または問題を先延ばしにする際に観察される成功の%とともに、実行される行動を示す推奨(たとえば予め定められた数の上位の推奨)と、関連する統計とを提供することができる。関連する統計は、誘電正接値において認められた、観察された%増加の問題に関連付けられる統計であり、すなわち、観察されたケースの数、解決済および未解決のケースの数などを提供する。推奨は、変圧器ユニットのメンテナンス/管理のための修正行動および予防的行動の双方とすることができ、誘電正接値において認められた%増加に関連する観察された状態および/または平均余命の予想に関係がある、他の潜在的な問題の警戒の推奨を含み得る。そのような行動または評価の指針は、たとえば、メンテナンスを実行すること、動作パラメータを変更すること、負荷を取り除いて動作リスクを軽減すること、変圧器ユニット(ブッシング)の損傷や故障を回避するために出力および/または入力を変えることであってもよい。
【0037】
このように、変圧器ユニットのユーザは、文献および第三者の専門知識/経験から作成された知識プールから利益を得ることができる。変圧器ユニットを管理するため、または変圧器ユニットについて観察された誘電正接の増加に関連する状態を修正するために提供された、推奨または他の要素に基づいて、変圧器ユニットのユーザが実行する行動、およびそれらの結果を、フィードバックとして提供することにより、知識プールを機械学習で強化することができる。また、AIシステムは、推奨/評価およびそれらの結果とともに参照される複数の電気機器資産の動作パラメータの改良を観察することによって学習することもできる。
【0038】
この例では、ブッシングの誘電正接値の増加に関連するイベントを使用することにより、実用的な情報(行動指針)およびブッシングの状態の評価を含む関連情報を、自然言語処理(NLP)とともにAI/ML技術を用いて、知識プールから抽出する。
【0039】
本発明の作用はブッシングの誘電正接値の増加に関連する観察について示されているが、AI/ML駆動型評価システムを用いて変圧器ユニット(または任意の他の電気機器資産)について観察される他の状態/観察(変圧器内のホットスポット、油温、部分放電レベル、含水量、溶存ガス、負荷変動、サージなど)に本発明を適用できることを、当業者は認識するであろう。
【0040】
図3を参照すると、AIシステム102、コンピュータシステム104、ユーザ提供データ記憶システム112、およびプールされた知識データベース122のうちの1つ以上等の、代表的な制御システム300の概略ブロック図が示されている。制御システム300は、処理装置302と、入出力装置304と、メモリデバイス306と、オペレーティングロジック308とを含む。さらに、コンピューティングデバイス300は、本明細書に記載の他のデータベースまたはコンピュータシステムを含む1つ以上の外部装置310と通信する。制御システム300は、システム300に関して説明した機能を実行するように構成された、スタンドアロンデバイス、組み込みシステム、または複数の装置であってもよい。
【0041】
入出力装置304は、制御システム300がローカルフィールドデバイスまたは他のエージェントまたは制御システムと通信することを可能にする。入出力装置304は、いくつか例を挙げると、ネットワークアダプタ、ネットワーククレデンシャル、インターフェイス、またはポート(たとえばUSBポート、シリアルポート、パラレルポート、アナログポート、デジタルポート、VGA、DVI、HDMI(登録商標)、FireWire、CAT5、イーサネット(登録商標)、ファイバ、または任意の他のタイプのポートもしくはインターフェイス)を含み得る。入出力装置304は、これらのアダプタ、クレデンシャル、または、データを受信するための第1のポートおよびデータを送信するための第2のポート等のポートのうちの、2つ以上を含み得る。
【0042】
処理装置302は、いくつか例を挙げると、1つまたは複数のプロセッサ、算術論理演算装置(ALU)、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含み得る。複数の処理ユニットを有する処理装置の形態として、分散処理、パイプライン処理、または並列処理が使用されてもよい。処理装置302は、本明細書に記載の動作のみの実行専用であってもよく、または1つ以上の追加のアプリケーションで使用されてもよい。処理装置302は、メモリ306に格納されたプログラミング命令(ソフトウェアまたはファームウェア等)によって定義されたオペレーティングロジック308に従ってアルゴリズムを実行しデータを処理するプログラマブルタイプであってもよい。これに代えてまたはこれに加えて、処理装置302のためのオペレーティングロジック308は、少なくとも部分的にハードワイヤードロジックまたは他のハードウェアによって定義される。処理装置302は、入出力装置304または他の場所から受信した信号を処理し所望の出力信号を提供するのに適した任意の種類の1つ以上の構成要素を含み得る。そのような構成要素は、デジタル回路、アナログ回路、またはデジタル回路とアナログ回路の組み合わせを含み得る。
【0043】
コンピュータ読取可能媒体としても知られているメモリデバイス306は、いくつか例を挙げると、ソリッドステートタイプ、電磁タイプ、光学タイプ、またはこれらの形態の組み合わせ等の、1つ以上の種類のメモリであってもよい。さらに、メモリデバイス306は、揮発性、不揮発性、一時的、非一時的、またはこれらの種類の組み合わせであってもよく、メモリデバイス306のうちのいくつかまたはすべてが、いくつか例を挙げると、ディスク、テープ、メモリスティック、またはカートリッジ等のポータブルタイプであってもよい。加えて、メモリデバイス306は、一例を挙げると、オペレーティングロジック308を定義するプログラミング命令を格納することに加えてまたはその代わりに、入出力装置304から受信したおよび/または入出力装置304に送信する信号を表すデータ等の、処理装置302のオペレーティングロジック308によって操作されるデータを格納することができる。メモリデバイス306は、処理装置302に含まれてもよく、および/または処理装置302に結合されてもよい。
【0044】
以下、本開示の具体例としてのいくつかの局面および各種実施形態についてさらに説明する。一局面において、電気機器のためのAI/ML駆動型評価システムは、複数のユーザによって管理される複数の電気機器資産を備え、複数のユーザのうちの各ユーザは、複数の電気機器資産のうちの、関連付けられた少なくとも1つの電気機器資産を管理する。AI/ML駆動型評価システムはさらに、複数の電気機器資産に関連付けられた複数のユーザからのユーザ提供資産データを格納するように構成された少なくとも1つのデータベースを備える。少なくとも1つのデータベースは、電気機器資産に関する、プールされた知識データベースをさらに含む。複数のユーザのうちの各ユーザは、少なくとも1つのデータベースから、関連付けられたユーザによって管理される少なくとも1つの電気機器資産のみを識別することができる。AI/ML駆動型評価システムはさらに、少なくとも1つのデータベースと作動的に通信するコンピュータシステムを備える。コンピュータシステムは、プールされた知識データベースとともに、複数の電気機器資産についてのユーザ提供資産データを分析するように構成され、かつ、複数の電気機器資産についてのユーザ提供資産データと、プールされた知識データベースとに基づいて、複数のユーザのうちの1人のユーザおよび少なくとも1つの関連付けられた電気機器資産についての分析から、行動または評価の指針を生成する。
【0045】
一実施形態において、プールされた知識データベースは、複数の電気機器資産についての専門家データ、業界データ、および資産データを含む。本実施形態の改良において、資産データは、複数の電気機器資産の管理についての手順およびレポートを含む。別の改良において、プールされた知識データベースは、複数の電気機器資産の種類に基づいて、種別に分離される。
【0046】
別の実施形態において、コンピュータシステムは、機械学習自然言語処理を用いて行動または評価の指針を生成するように構成される。もう1つの実施形態において、行動または評価の指針は、複数の電気機器資産のうちの少なくとも1つの電気機器資産についての、パラメータ推定、データ予想、および故障予測のうちの1つ以上を含む。
【0047】
他の実施形態において、コンピュータシステムは、人工知能を使用して、電気機器資産のうちの少なくとも1つの電気機器資産について推奨される行動または評価の指針を生成する。別の実施形態において、複数の電気機器資産は、変圧器および回路遮断器のうちの少なくとも一方を含む。
【0048】
さらに他の実施形態において、プールされた知識データベースは、複数の電気機器資産のうちの少なくとも1つの電気機器資産に対して複数のユーザのうちの1人のユーザが行動または評価の指針を実行した結果に応じて、複数のユーザのうちの1人のユーザによって更新される。本実施形態の改良において、コンピュータシステムは、プールされた知識データベースの更新に応じて行動または評価の指針を決定するために分析を更新するように構成される。さらに他の改良において、複数のユーザのうちの各ユーザは、複数の電気機器資産についてのユーザ提供資産データと、プールされた知識データベースとの更新された分析について、コンピュータシステムにアクセスすることができる。さらに他の改良において、複数のユーザは、関連付けられたユーザによって管理される電気機器資産のみについての更新された分析に基づく。
【0049】
本開示の別の局面に従うと、少なくとも1つの電気機器資産を評価する方法は、複数の電気機器資産の管理に関するユーザ提供資産データをデータベースに格納するステップを含み、複数の電気機器資産は複数のユーザによって管理され、さらに、複数のユーザのうちの各ユーザは、少なくとも1つのデータベースから、各ユーザによって管理されるそれぞれの電気機器資産および関連付けられたユーザ提供資産データの識別のみを行うことができ、方法はさらに、複数の電気機器資産のためのプールされた知識データベースを生成するステップと、少なくとも1つのデータベースと作動的に通信するコンピュータシステムにおいて、ユーザ提供資産データおよびプールされた知識データベースを取得するステップと、コンピュータシステムを用いてユーザ提供資産データおよびプールされた知識データベースを分析するステップと、分析から、複数の電気機器資産のうちの少なくとも1つの電気機器資産についての行動または評価の指針を生成するステップと、複数の電気機器資産のうちの少なくとも1つの電気機器資産を管理する各ユーザに、行動または評価の指針を提供するステップとを含む。
【0050】
一実施形態において、この方法は、コンピュータシステムと作動的に通信するディスプレイを提供するステップと、行動または評価の指針をディスプレイに表示するステップとを含む。別の実施形態において、プールされた知識データベースは、専門家データ、業界データ、ユーザ手順、およびユーザレポートを含む。
【0051】
別の実施形態において、コンピュータシステは、機械学習自然言語処理を用いて行動または評価の指針を生成するように構成される。別の実施形態において、行動または評価の指針は、パラメータ推定、データ予想、および故障予測のうちの1つ以上を含む。他の実施形態において、コンピュータシステムは、人工知能を使用して行動または評価の指針を生成する。
【0052】
他の実施形態において、プールされた知識データベースは、複数の電気機器資産のうちの少なくとも1つの電気機器資産に対する行動または評価の指針の実行からのフィードバックに応じて、各ユーザによって更新され、コンピュータシステムは、フィードバックに基づいて分析を実行するための1つ以上のアルゴリズムを更新するように構成される。
【0053】
さらに他の実施形態において、複数のユーザのうちの各ユーザは、複数の電気機器資産のすべてについてのユーザ提供資産データの分析にアクセスすることができ、複数のユーザは、各ユーザによって管理されるそれぞれの電気機器資産のみについての行動または評価の指針を受ける。
【0054】
本開示は図面および上記説明において詳細に示され記載されているが、これは例示であって限定的性質のものではないとみなされねばならない。決まった具体例としての実施形態のみが示され記載されており、本開示の精神に含まれるすべての変更および修正の保護が望まれていることを理解されたい。本明細書における単語の使用は、そのようにして記載された特徴がより望ましい場合があることを示し得るものの、それでもやはり必要ではない場合もあり、これを欠いた実施形態は本開示の範囲に含まれることが意図されてもよく、この範囲は以下の特許請求の範囲によって定められることを、理解されたい。請求項の解釈において、「a(1つの)」、「an(1つの)」、「at least one(少なくとも1つ)」、または「at least one portion (少なくとも1つの部分)」等の単語が使用される場合、請求項において特にそれに反することが記載されていない限り、請求項を1つのアイテムのみに限定する意向はないことが意図されている。「of(~の)」という用語は、別のアイテムとの関連または別のアイテムとの接続、およびこの用語が使用される文脈からわかる、別のアイテムへの所属または別のアイテムとのつながりを、意味する場合がある。用語「coupled to(~に結合される)」、「coupled with(~と結合される)」などは、間接的な接続および結合を含み、それに反することが明記されていない限り、直接的な結合または接続をさらに含むが、それが必要である訳ではない。「at least a portion(少なくとも一部)」および/または「a portion(一部)」という表現が使用される場合、アイテムは、特にそれに反することが具体的に記載されていない限り、アイテムの一部および/またはアイテム全体を含み得る。
【国際調査報告】