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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(54)【発明の名称】視線方向の決定
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20221028BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221028BHJP
【FI】
G06T7/70 B
G06T7/00 660A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515093
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020074655
(87)【国際公開番号】W WO2021043931
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】19195512.9
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522087707
【氏名又は名称】スマート、アイ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】SMART EYE AB
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】トシュテン、ビルヘルム
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA04
5L096CA17
5L096EA39
5L096FA33
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA53
5L096GA55
5L096HA05
5L096JA11
5L096KA09
(57)【要約】
ユーザーの視線方向を推定する方法であって、ユーザーの顔の画像を取得すること(S3)と、現在の頭部姿勢と、頭部姿勢と視線方向との関係と関係に基づいて、近似的な視線方向(56)を決定すること(S5)と、識別された目の特徴量に基づいて、推定視線方向(57)を決定すること(S7)と、輝きの位置および目の特徴量に基づいて、精密な視線方向(58)を決定すること(S8)と、近似的な視線方向と、推定視線方向および精密な視線方向の少なくとも1つとを組み合わせ(S10)、修正された視線方向(59)を提供することと、を含む、ユーザーの視線方向を推定する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの視線方向を推定する方法であって、
前記ユーザーの顔の画像を取得すること(S3)と、
前記画像に基づいて現在の頭部姿勢を決定し(S4)、集団ベースの頭部姿勢と視線方向との関係を格納するデータベースにアクセスし、前記現在の頭部姿勢および前記関係に基づいて、近似的な視線方向(56)を決定すること(S5)と、
前記画像中の目の特徴量のセットを識別し(S6)、前記目の特徴量に基づいて、推定視線方向(57)を決定すること(S7)と、
前記画像中の目の特徴量のセットおよび目の輝きを識別し、前記輝きの位置および前記目の特徴量に基づいて、精密な視線方向(58)を決定すること(S8)と、
前記近似的な視線方向と、前記推定視線方向および前記精密な視線方向の少なくとも1つとを組み合わせ(S10)、修正された視線方向(59)を提供することと
を含む、ユーザーの視線方向を推定する方法。
【請求項2】
前記近似的な視線方向と、前記推定視線方向および前記精密な視線方向の少なくとも1つとは、適応フィルタを用いて重み付けされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記近似的な視線方向、前記推定視線方向および前記精密な視線方向の相対的な重みは、前記近似的な視線方向、前記推定視線方向および前記精密な視線方向のそれぞれの標準偏差によって、適応的に調整される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
求められた前記視線方向のそれぞれの標準偏差の近似値は、ヨー角(43)の関数として表される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタはカルマンフィルタ(55)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記画像を取得する間に、前記ユーザーの前記顔を照らすことをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記集団ベースの関係を、オンライン較正を用いて特定のユーザー向けに調整することさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オンライン較正は、ビューパターンについての統計的な情報に基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記集団ベースの関係は、球座標系の2つの次元、例えばヨー角座標とピッチ角座標(42,43)において表される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ユーザーの視線方向を推定するシステムであって、
前記ユーザーの顔の画像を取得するための画像センサー(10)と、
処理回路(15)であって、
取得された画像に基づいて現在の頭部姿勢を決定し、集団ベースの頭部姿勢と視線方向との関係を格納するデータベースにアクセスし、前記現在の頭部姿勢および前記関係に基づいて、近似的な視線方向(56)を決定し、
前記画像中の目の特徴量のセットを識別し、前記目の特徴量に基づいて、推定視線方向(57)を決定し、
前記画像中の目の特徴量のセットおよび目の輝きを識別し、前記輝きの位置および前記目の特徴量に基づいて、正確な視線方向(58)を決定し、
前記近似的な視線方向と、前記推定視線方向および前記精密な視線方向の少なくとも1つとを組み合わせ、修正された視線方向を提供する
ように構成される、処理回路と
を備える、ユーザーの視線方向を推定するシステム。
【請求項11】
前記画像を取得する間に前記ユーザーの前記顔を照らすための1つまたは複数の光源(12a,12b)をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、視線追跡の分野、すなわちユーザーの画像を用いてユーザーの目を検出して監視することに関する。特に、本発明は、ユーザーの視線の方向、すなわちユーザーが現在どこを見ているかを決定して追跡することに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーの視線の方向は、ユーザーの顔を取得した画像から、はじめに(室内座標系における)頭部姿勢(head pose)を決定し、次に(頭部座標系における)目の姿勢(eye pose)を決定することにより、決定することができる。目の姿勢は、頭部に対する虹彩の位置に基づいて決定することができる。このタイプの視線方向検出は、時として「推定視線検出(estimated gaze detection)」とも呼ばれる。
【0003】
さらに正確な視線方向が必要とされる場合には、画像を取得する間、顔を(例えば、紫外線によって)照射してもよく、これにより、取得された画像が目の角膜中の反射(輝き)を含むようになる。光源と画像センサーとの間の既知の幾何学的関係を使って、視線方向の決定をより正確にするために、この輝きを用いることができる。このタイプの視線方向検出は、時として「精密な視線検出(precise gaze detection)」とも呼ばれる。
【0004】
両方のタイプの視線検出は、ノイズおよびドリフトの影響を受け、通常は何らかのオンライン較正が必要となる。ユーザーが見ていると予想される箇所の統計的解析に基づく較正を含む様々な方法が提案されている。特に、車両のインプリメンテーションでは、ユーザーは通常、リアビューミラーやダッシュボードコントロール等の少数の容易に識別可能な物体を見るため、このアプローチが適していることが分かっている。
【0005】
依然として、さらに良好な較正技術への要求が存在する。加えて、上記で論じた視線方向検出方法(推定視線および精密視線)はともに、画像中に瞳が捉えられるようにするために、ユーザーが画像センサーの方を向いていることを必要とする。画像中に目が存在しない場合においても、視線方向の推定を提供することが望まれる。
【0006】
先行技術は、この問題について簡潔に言及しており、さらにより簡潔に解決策を提供している。国際公開第2018/002000号は、例えば、頭部姿勢のみに基づく、すなわちユーザーが顔を向けている箇所のみに基づく、非常に近似的な視線検出(approximate gaze detection)の基礎について論じている。国際公開第2018/002000号では、視線の方向は、ユーザーの顔の平面に垂直であるとして近似されている。国際公開第2019/147607号は、視線検出のニューラルネットワークに基づくアプローチを開示しており、目を含まない画像からでも視線を検出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を軽減し、改善された視線推定を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、この目的および他の目的は、ユーザーの視線方向を推定する方法であって、ユーザーの顔の画像を取得することと、画像に基づいて現在の頭部姿勢を決定し、集団ベースの頭部姿勢と視線方向との関係を格納するデータベースにアクセスし、現在の頭部姿勢および前記関係に基づいて、近似的な視線方向を決定することと、画像中の目の特徴量のセットを識別し、目の特徴量に基づいて、推定視線方向を決定することと、画像中の目の特徴量のセットおよび目の中の輝きを識別し、輝きの位置および目の特徴量に基づいて、精密な視線方向を決定することと、1)近似的な視線方向と、2)推定視線方向および3)精密な視線方向の少なくとも1つとを、適応フィルタを用いて重み付けして、それによって、修正された視線方向を提供することと、を含む方法によって達成される。
【0009】
本発明は、頭部姿勢のみに基づく目の視線近似が十分に正確になるためには追加の情報を必要とする、という認識に基づいている。視線方向が顔の平面に垂直であると仮定するのは全く十分ではない。
【0010】
さらに、本発明は、動かないユーザー(例えば、車のドライバー、あるいはコンピュータのユーザー、しかしながら一般的には、同じ場所にとどまっており、彼/彼女の頭部のみを動かす任意のユーザー)について、特定の頭部姿勢と関連する視線方向との間の関係は、実際のところ、集団内において驚くほど一定である、という認識に基づいている。したがって、そのような関係についてのデータベースを生成し、それ(例えば、ルックアップテーブル)を用いることにより、所与の頭部姿勢についての近似的な視線方向を決定することが可能である。
【0011】
識別された目の特徴量を用いて取得される推定視線方向は、頭部姿勢のみに基づく近似的な視線方向よりも正確である。しかしながら、目の特徴量の識別がより困難で不確かになると(すなわち、光軸から遠く離れると)、推定視線方向もまたより不確か(大きな標準偏差)になる。
【0012】
目の中の1つまたは複数の輝きを用いて取得される精密な視線方向は、目の特徴量のみに基づく推定視線方向よりもさらに正確である。しかしながら、輝きの識別がより困難で不確かになると(すなわち、光軸から遠く離れると)、精密な視線方向もまたより不確か(大きな標準偏差)になる。光軸から特定の距離においては、目の中の輝きを識別することはもはや不可能となり、精密な視線方向は失われる。
【0013】
本発明によれば、推定視線方向、および/または、精密な視線方向は、近似的な(頭部姿勢に基づく)視線方向と組み合わされて、修正された視線方向が提供される。例えば、近似的な視線方向と、推定視線方向および精密な視線方向の少なくとも1つとが、カルマンフィルタのような適切な適応フィルタを用いて重み付けされ、それによって、修正された視線方向が提供される。
【0014】
カルマンフィルタ(または類似のフィルタ)は、異なる視線方向の相対的な重みが、これらの視線方向の不確かさ(例えば、標準偏差)に基づいて、適応的に調整されることを保証することができる。例えば、精密な視線方向が安定している(例えば、小さな標準偏差)の場合には、頭部姿勢に基づく近似に対して、大きな重みを付与する必要はない。反対に、推定視線方向および精密な視線方向が不確か(大きな標準偏差)の場合には、頭部姿勢に基づく近似は、より大きな重みを得ることができる。
【0015】
光軸に近い精密な視線方向は通常、小さな標準偏差を有するが、この標準偏差は光軸からの距離(頭部またはヨー角)とともに増加することに注意されたい。推定視線方向は、光軸に近い精密な視線方向よりも大きな標準偏差を有するが、その標準偏差は精密な視線方向ほど急速には増加しない。これに対して、(頭部姿勢に基づく)近似的な視線は、大きいがより一定の頭部の角度に無関係な標準偏差を有する。
【0016】
これに基づいて、決定された各視線方向のそれぞれの標準偏差の近似値は、頭部の角度の関数として表すことができる。換言すれば、ユーザーが光軸から離れた方向を向くにつれて、精密な視線(および推定視線)はより小さな重みを有するようになり、近似的な視線はより大きな重みを有するようになる。
【0017】
さらに、ノイズおよびその他の欠陥は、精密な視線方向、および/または、推定視線方向の正確な決定を時として妨げることがある。また、これらの状況では、近似的な視線方向はより大きな重みを与えられてもよく、修正された視線方向が失われず、少なくとも近似的には正確であることを保証する。
【0018】
(頭部姿勢->視線方向)の関係は集団内においてかなり一定であるため、ユーザーに特化したデータが無くても、満足のいく近似が生成される。しかしながら、ユーザーに特化した情報が用いられれば、近似の質は著しく向上する。したがって、1つの実施形態では、集団ベースの関係が特定のユーザー向けに調整される。例えば、ビューパターンについての統計的な情報に基づくオンライン較正が用いられる。そのような統計的な較正は、ほとんどの時間において運転者の視線方向がかなり少数の所定の方向に制限される車両環境において、特に利用しやすい。
【0019】
上記の関係は、6つの自由度のすべてで表現することができ、すなわち、位置および向きを含む完全な頭部姿勢を入力として、近似的な視線方向を返す。しかしながら、上記の関係がより少ない自由度を含むように単純化する方が有利である。例えば、上記の関係は、2つの自由度のみ、例えば、2つの角座標(ヨー/頭部角およびピッチ角)を有する球座標系を用いて、表すことができる。この場合には、頭部の位置の情報は、格納されている関係を調整するために用いられる。
【0020】
本発明は、発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両のダッシュボード上に搭載される視線追跡システムを図式的に示す図である。
図2a図1の視線追跡システムの詳細を示す図である。
図2b図2aにおけるカメラと光源との相対的な位置の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る方法のフローチャートである。
図4】ユーザーの顔を中心とする球座標系の図である。
図5】本発明の実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以降では、本発明の実施形態を車両の視線追跡システムの文脈で説明する。本発明のその他の実装も同様に可能であることに注意されたい。
【0023】
図1は、車両3の運転席2に座っている運転者1を示している。視線検出システム4は、運転者1の前、ここではダッシュボード5上に取り付けられている。代替的には、視線検出システム4は、ステアリングホイールコラム6に取り付けられてもよく、あるいは天井7に固定されてもよい。どのように取り付けられるかとは無関係に、視線追跡システム4は、運転者1の頭部8および目9がはっきりと見えるべきである。視線検出システム4は通常、運転者1からの距離d1が40cmから120cmの範囲、より典型的には「腕の長さ」、すなわち約60-70cmの範囲に配置される。
【0024】
図2aを参照すると、図示されている例における視線追跡システム4は、適切な光学系11が設けられた画像センサー10、例えばCMOS画像センサーを含んでいる。図示のシステム4はさらに、通常は赤外(IR)または近赤外(NIR)のような可視範囲外の光を発するように構成される2つの光源12を含んでいる。光源12は、LEDのような固体光源であってもよい。図示されている例では、光源12は、約850または940nm(NIR)を中心とする50nm帯域に集中する光スペクトルの光を発するように構成されたLEDである。
【0025】
図2aでは、光源12は、画像センサー10の両側に直線に沿って配置されている。「暗瞳(dark-pupil)」処理を採用するために、各光源と画像センサー10との間に十分な距離が必要となる。装置の水平寸法、すなわち光源間の距離d2を増加させることが望ましくない場合には、図2bに示されるように、光源12と画像センサー10との間を垂直距離d3だけ離すことが好都合である。換言すれば、光源と画像センサーとはもはや直線上には存在しない。
【0026】
図2aに戻って、画像センサー10にはさらに、光学バンドパスフィルタ13、例えば干渉フィルタが設けられている。フィルタ13は、光源12a、12bの発光スペクトルに実質的に対応する通過帯域を有するように構成されていてもよい。そのため、上記の例では、フィルタ13は、約825-875nm、または915-965nmの通過帯域を有するべきである。狭帯域の照明と狭通過帯域のフィルタリングとの組み合わせにより、画像取得システムは、例えば太陽光のような周囲光の影響を受けづらくなる。
【0027】
画像取得コントローラ14(これ以降は、簡潔にするために「コントローラ」と呼ばれる)は、画像センサー10および光源12a、12bに接続されており、画像センサー10を制御して光源12a、12bの照明下で画像を取得するようにプログラムされている。通常は、エネルギーと電力消費を節約するために、光源12a、12bは、画像センサーの電気シャッターが開いた時にのみ光を発するように制御される。光源12a、12bは、交互に駆動されてもよく(異なる光源によって照射されて取得される連続した画像フレーム)、あるいは各画像フレームに対して両方駆動されてもよい。交互の照明を用いることにより、欧州特許1,349,487号で開示されているように、(例えば、ガラスからの)妨害反射(disturbing reflexes)が抑えられる。
【0028】
実際の例としては、光源12a、12bはパルスによってトリガされ、当該パルスは1つの画像フレームを取得するのに十分な照明を提供するように選択されたデューティサイクルを有する。上述したように、各フレームについて、いずれか一方または両方の光源12a、12bが駆動されてもよい。好ましくは、光源12a、12bはパルス信号によって制御され、当該パルス信号は、そのパルス幅が画像センサー10によって1つの画像を取得するのに必要な期間に対応することを保証するようなデューティサイクルを有する。そして、画像センサー10は、このパルス信号に同期される。
【0029】
視線追跡システム14はさらに処理回路15を備えており、処理回路15は、画像センサー10によって取得された画像を受信し、これらの画像を処理するように構成されている。処理回路15は、コントローラ15に統合されてもよいし、コントローラ15から分離されてもよい。システムはまた、RAMメモリーのようなメモリーを有しており、例えば、処理回路15によって実行されるソフトウェアを格納する。
【0030】
使用時には、視線追跡システム4は、ユーザー1の顔9のターゲット領域の画像を取得するように配置される。処理回路15は、様々な情報を取得するために、センサー10からの画像を用いてユーザーの頭の位置および目の動きを追跡するように構成されている。特に、ここでは処理回路15は、ユーザーの視線の方向を取得するようにプログラムされている。
【0031】
取得された画像に基づいて、頭部姿勢、すなわち空間内の頭部座標系(head coordinate system)20における位置および向きを決定し、相対的な目の姿勢、すなわち座標系20に対する目の座標(eye coordinate system)21における位置および向きを決定することにより、視線の方向を決定することができる。照明のない状態で、頭部に対する虹彩の位置に基づいて、目の姿勢を決定することができる。視線の方向を決定するこのアプローチは通常、「推定視線」と呼ばれる。
【0032】
また、光源12a、12bを用いて目の角膜中に反射(輝き)を発生させることにより、視線の方向を決定することもできる。画像センサーに対する光源の位置が既知であれば、輝きの位置は視線の方向の決定を可能にする。視線の方向を決定するこのアプローチは通常、「精密視線」と呼ばれる。いくつかの視線追跡システムは、2つまたはそれ以上の光源を有しており、それにより、種々の照明で画像を取得することができ、したがって種々の位置における輝きを取得するこができる。
【0033】
図3は、本発明の実施形態に係る方法を示している。はじめに、ステップS1において、視線追跡が実際に開始される前に、集団についての頭部姿勢と目の視線方向との間の関係が決定され、メモリー16内のデータベースに格納される。そのような関係は、人々のサンプルからデータを集めることにより取得することができる。当該関係は、様々な方法で格納することができるが、実際的な例では、関係は、空間内の固定された頭部位置を仮定し、2つの自由度の頭部姿勢の向き(本質的には、鼻がどこを指し示しているか)と、対応する視線方向(すなわち、目がどこを見ているか)とを関連付ける。あるいは、異なる表現では、すべての頭部姿勢の向きについて、視線方向に到達する補正ベクトルが関連付けられる。
【0034】
実際の視線決定は、ユーザー1の頭部8および目9が照明された状態で、ステップS2から開始される。ステップS3において、目9を含む頭部8の画像が取得される。ステップS4において、それ自体は周知である処理によって識別された顔の特徴量に基づいて、ユーザーの頭部姿勢が決定される。
【0035】
決定された頭部姿勢を用いて、またメモリー16に格納されている関係を用いて、ステップS5において、近似的な視線方向が決定される。いくつかの状況では、この非常に荒い視線方向の近似が、唯一の利用可能な近似となり得ることに注意されたい。
【0036】
図4は、原点41がユーザー1の頭部の位置を表す球座標系を示しており、2つの軸42、43はピッチ角およびヨー/頭部角をそれぞれ表している。図4には、2つの異なる頭部姿勢の方向が矢印(ベクトル)44および45として示されている。メモリー16内の関係は、各頭部位置の方向について補正ベクトル46、47を提供し、これらも図4に示されている。ベクトル46、47の終点は、それ故、頭部姿勢および事前に格納されている関係のみに基づく、近似的な視線を表している。
【0037】
次に、ステップS6において、虹彩の位置のような関連する目の特徴量が識別され、ステップS7における推定視線の決定が可能になる。図4では、ベクトル48および49は、組み合わされたベクトル44、46および45、47によって表される近似的な視線にそれぞれ対応する、推定視線を表している。
【0038】
続くステップS8において、輝き、すなわち目の角膜中における照明の反射が(可能であれば)識別され、ステップS9において、当該識別された輝きを用いて、精密な視線が決定される。図4では、ベクトル50および51は、組み合わされたベクトル44、46および45、47によって表される近似的な視線にそれぞれ対応する、精密な視線を表している。
【0039】
最後に、ステップS5、S7およびS9で決定された様々な視線方向、すなわち近似的な視線、推定視線および精密な視線を用いて、ステップS10において、カルマンフィルタ(あるいは他の類似の適応重み付けフィルタ)を用いて、修正された視線方向が決定される。
【0040】
カルマンフィルタの動作の模式図が図5に示されている。フィルタ55は、1つ、2つまたは3つの異なる視線方向、すなわち近似的な視線56、(利用可能であれば)推定視線57、および(これも利用可能であれば)精密な視線を入力として受け取る。
【0041】
また、フィルタ50は、各視線方向について、個々の視線方向の標準偏差を表す変数値を受け取る。すなわち、近似的な視線のための1つの値、推定視線のための1つの値、および精密な視線のための1つの値である。1つの実施形態では、システムは、決定された視線方向のそれぞれについて、標準偏差の推定値を決定するように構成される。しかしながら、さらに実際的な例では、システムは、個々の視線方向の標準偏差はヨー/頭部角に相関するという仮定を設ける。この情報は、図5に示されるように、カルマンフィルタ55に入力として提供されてもよい。
【0042】
図4に戻って、各視線方向の推定された標準偏差は、破線の円46’、47’、48’、49’および50’によって表されている。円48’は視線方向48の標準偏差を表しており、他も同様である。
【0043】
軸42の近くの左側には、ベクトル44、46と標準偏差46’で表される、近似的な視線がある。対応する推定視線48は、非常に小さい標準偏差48’を有しており、対応する精密な視線50は、さらに小さい標準偏差50’を有している。これは、ユーザーの視線が中心軸42(0に近いヨー/頭部角)の近くにあり、輝きが明瞭に識別可能であり、精密な視線が比較的信頼できる(小さい標準偏差)という状況に対応している。その結果、精密な視線は高い重みを与えられ、カルマンフィルタ55からの出力は、精密な視線に非常に近くなる。
【0044】
しかしながら、ノイズまたは何らかの干渉(例えば、太陽光の突然のバースト)により、1つまたは複数のフレーム内で輝きが検出不能になると、カルマンフィルタ55は、残る視線方向56および57に頼ることができ、これにより、比較的正確な出力59を提供し続けることができる。
【0045】
ノイズまたは干渉は、精密な視線58の突然のシフトを引き起こすこともある。そのような突然のシフトは、システムによって信頼不能な決定(大きい標準偏差)であると解釈されることができ、したがって、主に近似的な視線および推定視線56、57に基づいて、修正された視線を再び導出する。
【0046】
図4の右側を見ると、ベクトル45、47と標準偏差47’によって表される近似的な視線がある。対応する推定視線49は、類似の標準偏差49’を有しており、対応する精密な視線51もまた、類似の標準偏差51’を有している。これは、ユーザーの視線が中心軸42(0から遠いヨー/頭部角)から遠くにあり、推定視線の決定および精密視線の決定がともに正確性が低く、かつ信頼性も低い(大きい標準偏差)という状況に対応している。その結果、近似的な視線56、推定視線57および精密な視線58は、カルマンフィルタ55内で類似の重みを与えられ、修正された視線59は、3つの入力56、57、58のすべてに基づくものとなる。
【0047】
当業者は、本発明が上述した好ましい実施形態に決して限定されるものではないことを理解する。それどころか、多数の変形およびバリエーションが添付のクレームのスコープ内で可能である。特に、ここで開示された視線検出システムの詳細は、例としてのみ提供されるものであり、種々の方法によって決定された視線方向を組み合わせることを意図する本発明の応用を制限するものではない。さらに、種々の視線方向の重み付けは、必ずしも適応フィルタを必要とせず、またカルマンフィルタに代えて、種々の種類の適応フィルタを用いることができる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
【国際調査報告】