(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-08
(54)【発明の名称】抗フコシル-GM1抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221031BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20221031BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221031BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221031BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221031BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20221031BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/30 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514457
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020074441
(87)【国際公開番号】W WO2021043810
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520104123
【氏名又は名称】スキャンセル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デュラン,リンダ ギリアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF02
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4C076FF36
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4C076FF63
4C076FF68
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、フコシル-GM1(Fuc-GM1)に特異的に結合可能である特異的結合メンバー、例えば抗体及びその断片に関する。本発明はまた、医学におけるこのような結合メンバーの使用及びこのような結合メンバーをコードする核酸、Fuc-GM1を検出するための方法並びに抗Fuc-GM1抗体を使用して癌を含む様々な疾患を処置するための方法にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc-セラミド(Fuc-GM1糖脂質)に特異的に結合できるが、Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc(遊離糖)には結合できない、単離された特異的結合メンバー。
【請求項2】
図2a又は2b又は2c又は3aの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)又は105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインから選択される1つ以上の結合ドメインを含む、請求項1に記載の結合メンバー。
【請求項3】
図2a又は2b又は2c又は3aの残基1~127(VH)として実質的に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の結合メンバー。
【請求項4】
図2d又は2e又は2f又は3bの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)又は105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインから選択される1つ以上の結合ドメインを含む、請求項1~3の何れかに記載の結合メンバー。
【請求項5】
図2d又は2e又は2f又は3bの残基1~124(VL)として実質的に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の結合メンバー。
【請求項6】
図2a又は2b又は2c又は3aのアミノ酸配列の残基1~127(VH)と、
図2d又は2e又は2f又は3bのアミノ酸配列の残基1~124(VL)とを含む、請求項1~5の何れかに記載の結合メンバー。
【請求項7】
前記又は各結合ドメインが、ヒト抗体フレームワークにより保有される、請求項2又は請求項4に記載の結合メンバー。
【請求項8】
ヒト定常領域をさらに含む、請求項1~7の何れかに記載の結合メンバー。
【請求項9】
前記結合メンバーが抗体又は抗体断片である、請求項1~8の何れかに記載の結合メンバー。
【請求項10】
図3aで実質的に記載される重鎖アミノ酸配列と、
図3bで実質的に記載される軽鎖アミノ酸配列とを含む、請求項8又は請求項9に記載の結合メンバー。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の単離された特異的結合メンバーと競合する、Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc-セラミド(Fuc-GM1糖脂質)に特異的に結合可能であるが、Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc(遊離糖)には結合可能ではない、単離された特異的結合メンバー。
【請求項12】
化学療法剤又は細胞傷害剤に結合させた又はそうでなければ会合させた、請求項1~11の何れかに記載の結合メンバー。
【請求項13】
請求項1~12の何れかに記載の結合メンバーと、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、担体、緩衝剤又は安定化剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
医学における使用のための、請求項1~11の何れか1項に記載の結合メンバー。
【請求項15】
腫瘍を処置又は予防する方法における使用のための、請求項1~11の何れか1項に記載の結合メンバー。
【請求項16】
腫瘍の処置における同時、個別又は連続使用のための組み合わせ調製物としての、請求項1~11の何れか1項に記載の特異的結合メンバーと、活性薬剤と、を含有する製品。
【請求項17】
前記腫瘍が小細胞肺癌である、請求項13若しくは請求項15に記載の使用のための結合メンバー又は請求項16に記載の製品。
【請求項18】
請求項1~11の何れか1項に記載の結合メンバーをコードする核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フコシル-GM1(Fuc-GM1)に特異的に結合可能である特異的結合メンバー、例えば抗体及びその断片に関する。本発明はまた、医学におけるこのような結合メンバーの使用及びこのような結合メンバーをコードする核酸、Fuc-GM1を検出するための方法、並びに抗Fuc-GM1抗体を使用して癌を含む様々な疾患を処置するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc-セラミド(本明細書中で以後、Fuc-GM1糖脂質と呼ぶ)は、細胞膜中の分子を固定するセラミド脂質成分及び細胞表面で露出する炭水化物成分から構成されるスフィンゴ脂質モノシアロガングリオシドである。これは、異なるグルコシルトランスフェラーゼ(I型膜貫通タンパク質グリコシルセラミドシンテターゼ、β-ガラクトシルトランスフェラーゼ、GM1シンテターゼ、α1,2-フコシルトランスフェラーゼ)を通じた、セラミド(スフィンゴシン及び脂肪酸)への糖及びシアル酸の逐次付加により生合成される(
図1)(Kartal Yandim,Apohan,and Baran 2013;Tokuda et al.2006)。これらの酵素のいくつかの過剰発現は、小細胞肺癌(SCLC)と関連付けられており(Martin-Satue et al.1998)、Fuc-GM1が腫瘍発達に関与することがさらに示唆される。糖鎖抗原は、癌の細胞表面で最も多く発現される抗原である(Feizi 1985)。SCLCなどの一部の腫瘍タイプにおいて、化学療法に対する最初の応答は目を見張るものであるが、化学療法抵抗性の再発がすぐに続く。新規免疫療法による介入は、薬物抵抗性の再発の克服において成功を収める場合がある(Johnson 1995)。ガングリオシドGD3及びGD2などのいくつかの糖鎖抗原は、モノクローナル抗体(mAb)による受動免疫療法の有効な標的として機能することが示されている(Irie and Morton 1986;Houghton et al.1985)。ガングリオシド抗原は、臨床試験においてワクチンでの能動免疫療法の有効な標的であることも示されている(Krug et al.2004;Dickler et al.1999;Livingston et al.1994)。実際に、KLHコンジュゲート抗原によるワクチン接種後にFuc-GM1に対する抗体価を生じたSCLC患者由来の血清は、腫瘍細胞に対する特異的な結合及び腫瘍特異的な補体依存性細胞傷害(CDC)を示した。抗Fuc-GM1抗体価関連毒性は軽度且つ一過性であり、限局型SCLCの3名の患者は、18、24及び30ヶ月で再発がなかった(Krug et al.2004;Dickler et al.1999)。
【0003】
Fuc-GM1発現は、SCLC症例の高いパーセンテージ、75~90%で示されており(Drivsholm et al.1994)、他のガングリオシド抗原とは異なり、Fuc-GM1糖脂質は正常組織では殆ど又は全く発現しない(Nilsson et al.1984;Krug et al.2004;Brezicka et al.1989;Zhang et al.1997;Brezicka et al.2000;Fredman et al.1986;Brezicka et al.1991;Nilsson et al.1986)。Fuc-GM1は、SCLC細胞株からの培養培地中、腫瘍抽出物及びヌードマウス異種移植片の血清中、並びに進行期疾患のSCLC患者の血清中に存在することが実証されている(Vangsted et al.1991;Vangsted et al.1994)。これらの報告は、免疫療法剤により標的化され得る非常に特異的な腫瘍抗原としてのFuc-GM1に関する確かな証拠を提供する。
【0004】
従って、主にFuc-GM1糖脂質などのスフィンゴ糖脂質を標的とする肺癌抗原を認識する有効な薬剤及びこのような薬剤を使用する方法が所望される。Fuc-GM1に結合するmAb(「F12」)は当技術分野で公知である(Brezicka et al.1989;Brezicka et al.2000)。さらに国際公開第2007/067992号パンフレット及び同第2016/049256A1号パンフレットは、抗Fc-GM1抗体を開示する。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、本発明は、Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc-セラミド(Fuc-GM1糖脂質)に特異的に結合可能であるが、Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc(遊離糖)には結合可能ではない、単離された特異的結合メンバーを提供する。
【0006】
本発明の単離された結合メンバーは、Fuc-GM1糖脂質に結合するが、遊離糖には結合しない。本明細書中で実施例において詳述するように、細胞膜内で抗体がFuc-GM1を確実に認識するように、最初に免疫アジュバントとともにリポソーム中に製剤化したFuc-GM1糖脂質に対してmAbを産生させた。しかし、これは高親和性抗体応答を誘導できなかった。Fuc-GM1糖脂質の免疫原性を改善するために、これをT細胞キャリアであるヒト血清アルブミン(HSA)とコンジュゲートした。これは、親和性成熟に対するT細胞の支援を提供するために、オゾン分解による脂質鎖の1つの除去及びHSAへの化学的コンジュゲーションにより達成された。さらなる免疫はFuc-GM1-HSAによって行った。予想外に、これは、Fuc-GM1糖脂質に結合するが、遊離糖には結合しないIgG抗体を産生した。抗体は一般に脂質などの疎水性部分に結合しないので、抗体結合のために脂質鎖が存在する必要があることは、非常に驚くべきことである。興味深いことに、Fuc-GM1-HSAに対して産生させたという事実にもかかわらず、これらの抗体は、1,000~10,000倍高い親和性でFuc-GM1糖脂質及び腫瘍細胞に結合した。本明細書中で示される抗FucGM1 mab、F12は、GM1にも結合し、一方で本発明の結合メンバーはGM1と交差反応しない。
【0007】
発明者らは、強力なインビボでの抗腫瘍活性を示す特異的結合メンバーを提供した。本発明の特異的結合メンバーは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及びCDCを介して、インビトロでヒトSCLC細胞に対する強力な免疫媒介性の細胞傷害活性を示す。発明者らは、細胞/グリカンコンジュゲートによって免疫することによって抗Fuc-GM1糖脂質mAbを作製した。これらのmAbの例は、本明細書中で、「FL133.63」(
図2a及びd)及び「FL133.67(
図2b及びe)と呼ぶIgG3マウスmAb、「FL134.33」と呼ぶIgG1 mAb(
図2c及びf)及び「CH134」と呼ぶhIgG1キメラAb(
図3)である。
【0008】
正常組織は2-ヒドロキシ脂肪酸含有脂質を発現しないので、本発明の特異的結合メンバーは、非常に限定的な通常の分布を有する。しかし、これらは、SCLCに強く結合する。特異性は、FL133.63/FL133.67/FL134.33/CH134.33可変重鎖及び軽鎖領域の別個の配列において反映される。本発明の特異的結合メンバーは、2-ヒドロキシ脂肪酸含有脂質上で発現されるSCLC特異的ガングリオシドに結合し得る。
【0009】
本発明の特異的結合メンバーは、好ましくは、
図2a、b、c又は3aの残基27~38(CDRH1)、54~65(CDRH2)又は105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインから選択される1つ以上の結合ドメインを含む。特異的結合メンバーは、
図2a、b、c又は3aのアミノ酸配列の残基105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を含む結合ドメインを含み得る。このような特異的結合メンバーは、
図2a、b、c及び3aで示されるアミノ酸配列の残基27~38(CDRH1)及び残基56~65(CDRH2)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインの一方又は両方、好ましくは両方をさらに含み得る。好ましい特異的結合メンバーは、
(a)
図2aのCDRH1、CDRH2及びCDRH3、
(b)
図2bのCDRH1、CDRH2及びCDRH3、
(c)
図2cのCDRH1、CDRH2及びCDRH3又は
(d)
図3aのCDRH1、CDRH2及びCDRH3
を含む。
【0010】
本結合メンバーは、
図2a、b、c又は3aの1~127(VH)として実質的に記載されるアミノ酸配列を含み得る。
【0011】
特異的結合メンバーは、
図2d、e、f又は3bの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)又は105~113(CDRL3)のアミノ酸配列を有する結合ドメインから選択される1つ以上の結合ドメインを含み得る。本結合メンバーは、
図2d、e、f又は3bのアミノ酸配列の残基105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインを含み得る。このような特異的結合メンバーは、
図2d、e、f又は3bで示されるアミノ酸配列の残基27~38(CDRL1)及び残基56~65(CDRL2)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインの一方又は両方、好ましくは両方をさらに含み得る。好ましい特異的結合メンバーは、
(a)
図2dのCDRH1、CDRH2及びCDRH3、
(b)
図2eのCDRH1、CDRH2及びCDRH3、
(c)
図2fのCDRH1、CDRH2及びCDRH3又は
(d)
図3bのCDRH1、CDRH2及びCDRH3
を含む。
【0012】
同じ又は異なる配列の複数の結合ドメインを含む特異的結合メンバー又はその組み合わせが本発明内に含まれる。従って、各結合ドメインは、ヒト抗体フレームワークにより保有され得る。例えば1つ以上の結合ドメインを、全ヒト抗体又はその可変領域の相補性決定領域(CDR)に置換してもよい。
【0013】
本発明の単離された特異的結合メンバーは、
図2d、e、f又は3bで示されるアミノ酸配列の残基1~124(VL)として実質的に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
本発明の単離された特異的結合メンバーは、
図2d、e、f又は3bの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)又は105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全てと組み合わせて、
図2a、b、c又は3aの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)又は105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全てを含み得る。本発明の好ましい単離された特異的結合メンバーは、
(a)
図2dの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)又は105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全てと組み合わせた、
図2aの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)又は105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全て;
(b)
図2eの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)又は105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全てと組み合わせた、
図2bの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)又は105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全て;
(c)
図2fの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)又は105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全てと組み合わせた、
図2cの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)又は105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全て;又は
(d)
図3bの残基27~38(CDRL1)、56~65(CDRL2)又は105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全てと組み合わせた、
図3aの残基27~38(CDRH1)、56~65(CDRH2)又は105~116(CDRH3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を有する結合ドメインのうち1つ以上、好ましくは全て
を含む。
【0015】
本結合メンバーは、
図2a、b、c又は3aのアミノ酸配列の残基1~127(VH)として実質的に記載されるアミノ酸配列及び
図2d、e、f又は3bのアミノ酸配列の残基1~124(VL)として実質的に記載されるアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本結合メンバーは、
(a)
図2aのアミノ酸配列の残基1~127(VH)として実質的に記載されるアミノ酸配列及び
図2dのアミノ酸配列の残基1~124(VL)として実質的に記載されるアミノ酸配列、
(b)
図2bのアミノ酸配列の残基1~127(VH)として実質的に記載されるアミノ酸配列及び
図2eのアミノ酸配列の残基1~124(VL)として実質的に記載されるアミノ酸配列、
(c)
図2cのアミノ酸配列の残基1~127(VH)として実質的に記載されるアミノ酸配列及び
図2fのアミノ酸配列の残基1~124(VL)として実質的に記載されるアミノ酸配列、又は
(d)
図3aのアミノ酸配列の残基1~127(VH)として実質的に記載されるアミノ酸配列及び
図3bのアミノ酸配列の残基1~124(VL)として実質的に記載されるアミノ酸配列
を含む。
【0016】
本明細書中に記載の所望の特性を有する単一の原型のmAb、例えばFuc-GM1糖脂質mAbが単離されると、当技術分野で公知の方法を使用することによって、同様の特性を持つ他のmAbを作製することは容易である。例えば、Jespers et al.,1994(Jespers et al.1994)の方法を使用して、同じエピトープ、及び従って原型のmAbと同様の特性、を有するmAbの選択を誘導してもよい。ファージディスプレイを使用して、最初に、原型抗体の重鎖を(好ましくはヒト)軽鎖のレパートリーと対にしてガングリオシド結合mAbを選択し、次に新しい軽鎖を(好ましくはヒト)重鎖のレパートリーと対にして、原型mAbと同じエピトープを有する(好ましくはヒト)ガングリオシド結合mAbを選択する。
【0017】
特異的結合メンバーは、抗体又は抗体断片、Fab、(Fab’)2、scFv、Fv、dAb、Fd又はダイアボディーであり得る。本抗体はポリクローナル抗体であり得る。本抗体はモノクローナル抗体(mAb)であり得る。本発明の抗体は、ヒト化されているか、キメラであるか又はベニヤ化(veneered)抗体であるか又は何らかの種の非ヒト抗体であり得る。
【0018】
マウス又はキメラ抗体は、患者において有害な抗マウス抗体(HAMA)反応のリスク上昇を有する(Schroff et al.1985;Azinovic et al.2006;Miotti et al.1999;D’Arcy and Mannik 2001)。従って、殆どの承認済み治療用mAbは、ヒト化又は完全ヒトIgG抗体の何れかである。
【0019】
本発明の特異的結合メンバーは、
図2aで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖と、
図2dで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含み得る。
【0020】
本発明の特異的結合メンバーは、
図2bで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖と、
図2eで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含み得る。
【0021】
本発明の特異的結合メンバーは、
図2cで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖と、
図2fで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含み得る。
【0022】
本発明の特異的結合メンバーは、
図3aで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖と、
図3bで実質的に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖と、を含み得る。
【0023】
本発明は、
図2a、b、c又は3aの残基1~127のアミノ酸配列を有するVH鎖及び
図2d、e、f又は3bの残基1~124のアミノ酸配列を有するVL鎖、好ましくは、
図2dのVL鎖と組み合わせた
図2aのVH鎖、
図2eのVL鎖と組み合わせた
図2bのVH鎖、
図2fのVL鎖と組み合わせた
図2cのVH鎖、
図3bのVL鎖と組み合わせた
図3aのVH鎖、を含む抗体とFuc-GM1含有ガングリオシドへの結合について競合する結合メンバーをさらに提供する。
【0024】
Fuc-GM1糖脂質に特異的に結合可能であるが、遊離糖(Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc)には結合できず、
図2又は3のVH又はVLドメインに対して、VH及び/又はVLドメインが少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一である特異的結合メンバーが本発明に含まれる。Fuc-GM1に特異的に結合可能であり、
図2又は3の重鎖及び/又は軽鎖と少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一である特異的結合メンバーが本発明に含まれる。好ましくは、このような抗体は、少数の機能的に重要ではないアミノ酸置換(例えば保存的置換)、欠失又は挿入により
図2又は3の配列とは異なる。
【0025】
本発明の特異的結合メンバーは、検出可能又は機能性の標識を有し得る。
【0026】
さらなる態様では、本発明は、本発明の特異的結合メンバーをコードする単離された核酸、及び前記結合メンバーの発現をもたらす条件下で前記核酸を発現させること、及び結合メンバーを回収することを含む、本発明の特異的結合メンバーを調製する方法を提供する。Fuc-GM1糖脂質に特異的に結合可能であるが、遊離糖(Fucα1-2Galβ1-3GalNAcβ1-4(Neu5Acα2-3)Galβ1-4Glc)には結合できない特異的結合メンバーをコードし、本明細書中で提供される配列と少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%同一である、単離された核酸が本発明に含まれる。
【0027】
本発明の特異的結合メンバーは、ヒト又は動物の身体の処置又は診断方法、例えば患者(好ましくはヒト)に有効量の本発明の特異的結合メンバーを投与することを含む、患者(好ましくはヒト)における腫瘍の処置方法で使用され得る。本発明は、医学における使用のための、好ましくは腫瘍の処置での使用のための本発明の特異的結合メンバー、並びに腫瘍の診断又は処置のための薬剤の製造における本発明の特異的結合メンバーの使用も提供する。腫瘍は小細胞肺癌(SCLC)であり得る。
【0028】
本発明の特異的結合メンバーが結合する抗原が本明細書中で開示される。本発明の特異的結合メンバーがより好ましくは特異的に結合可能なFuc-GM1糖脂質が提供され得る。Fuc-GM1糖脂質は単離形態で提供され得、それに対するさらなる特異的結合メンバーを開発するためのスクリーニングにおいて使用され得る。例えば、Fuc-GM1に特異的に結合するライブラリのメンバーに対して、化合物のライブラリがスクリーニングされ得る。Fuc-GM1は脂質骨格上にあり得る。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、SCLCの診断又は予後判定での使用のための、本発明の第1の態様の単離された特異的結合メンバーを提供する。
【0030】
本発明は、個体からの試料中でFuc-GM1含有GSLを検出するために本発明の特異的結合メンバーを使用することを含む、癌の診断のための方法をさらに提供する。診断方法において、本結合メンバーにより検出されるガングリオシドのパターンは、個体に対する治療選択肢を層別化するために使用され得る。
【0031】
本発明のこれら及び他の態様を以下でさらに詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書中で使用される場合、「特異的結合メンバー」は、互いに対して結合特異性を有する分子の対のメンバーである。特異的結合対のメンバーは、天然由来であってもよいし、又は完全に若しくは一部合成により作製されていてもよい。分子対の一方のメンバーは、その表面上で突出部又は空洞であり得る領域を有し、これは、分子対の他方のメンバーの特定の空間的及び正反対の構成に特異的に結合し、従ってそれと相補的である。このようにして、対のメンバーは、互いに対して特異的に結合する特性を有する。特異的な結合対のタイプの例は、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、受容体-リガンド、酵素-基質である。本発明は一般に、抗原-抗体型の反応に関するが、本明細書中で定義される抗原に結合する低分子にも関する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「処置」は、ヒト又は非ヒト動物、好ましくは哺乳動物に有益であり得る任意のレジメンを含む。処置は、既存の状態に関する処置であり得るか、又は予防的(予防的処置)であり得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「腫瘍」は組織の異常な増殖である。これは、局所的(良性)であり得るか又は付近の組織(悪性)若しくは遠隔組織(転移性)に浸潤し得る。腫瘍は、癌を引き起こす新生物の増殖を含み、SCLC並びに癌性組織又は細胞株を含む。
【0035】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、天然であれ、又は部分的若しくは全体に合成により作製されたものであれ、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性である部分、即ち抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。この用語は、抗体結合ドメインであるか又はそれと相同である結合ドメインを有するあらゆるポリペプチド又はタンパク質も包含する。これらは天然起源由来であってもよいし、又はこれらは、部分的若しくは完全に合成により作製されていてもよい。本発明の抗体の例は、免疫グロブリンアイソタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)及びそれらのアイソタイプサブクラス;Fab、scFv、Fv、dAb、Fdなどの抗原結合ドメインを含む断片;及びダイアボディーである。好ましいアイソタイプは、IgG1及びIgG3である。抗体はポリクローナル又はモノクローナルであり得る。モノクローナル抗体は「mAb」と呼ばれ得る。
【0036】
モノクローナル及び他の抗体並びに組み換えDNA技術を利用して、当初の抗体の特異性を保持する他の抗体又はキメラ分子を作製することが可能である。このような技術は、異なる免疫グロブリンの、定常領域、又は定常領域+フレームワーク領域に、抗体の免疫グロブリン可変領域又はCDRをコードするDNAを導入することを含み得る。例えば欧州特許出願公開第A-184187号明細書、英国特許第2188638A号明細書又は欧州特許出願公開第A-239400号明細書を参照。抗体を産生するハイブリドーマ又は他の細胞は、産生される抗体の結合特異性を変更してもよいし又は変更しなくてもよい、遺伝子突然変異又は他の変化に供され得る。
【0037】
抗体は多くの方法で改変され得るので、「抗体」という用語は、何らかの特異的結合メンバー又は必要とされる特異性を有する結合ドメインを有する物質を包含するものとして解釈されるべきである。従って、この用語は、天然であれ、又は全体に若しくは部分的に合成により作製されたものであれ、免疫グロブリン結合ドメインを含む何らかのポリペプチドを含む、抗体、ヒト化抗体の、抗体断片、誘導体、機能的同等物及び相同体を包含する。従って、別のポリペプチドに融合される免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ分子又は同等物が含まれる。キメラ抗体のクローニング及び発現は、欧州特許出願公開第A-0120694号明細書及び同第A-0125023号明細書に記載されている。ヒト化抗体は、非ヒト、例えばマウスの抗体の可変領域及びヒト抗体の定常領域を有する改変抗体であり得る。ヒト化抗体を作製するための方法は、例えば米国特許第5225539号明細書に記載されている。
【0038】
全抗体の断片は、結合抗原の機能を発揮し得ることが示されている。結合断片の例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.1989);(v)単離CDR領域;(vi)F(ab’)2断片、2つの連結したFab断片を含む二価断片;(vii)2つのドメインを会合させて抗原結合部位を形成可能にするペプチドリンカーによりVHドメイン及びVLドメインが連結した、1本鎖Fv分子(scFv)(Bird et al.1988;Huston et al.1988);(viii)二特異性1本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965号パンフレット)及び;(ix)「ダイアボディー」、遺伝子融合により構築される多価又は多特異性断片(国際公開第94/13804号パンフレット;(Holliger,Prospero,and Winter 1993))である。
【0039】
ダイアボディーはポリペプチドの多量体であり、各ポリペプチドが免疫グロブリン軽鎖の結合領域を含む第1のドメイン及び免疫グロブリン重鎖の結合領域を含む第2のドメインを含み、(例えばペプチドリンカーにより)この2つのドメインが連結されるが、互いに会合して抗原結合部位を形成することはできず:抗原結合部位は、多量体内の1つのポリペプチドの第1のドメインと多量体内の別のポリペプチドの第2のドメインとの会合により形成される(国際公開第94/13804号パンフレット)。
【0040】
二特異性抗体を使用しようとする場合、これらは、様々な方法で製造され得る(Holliger and Winter 1993)、例えば化学的に又はハイブリッドハイブリドーマから調製され得る、従来からの二特異性抗体であり得るか、又は上述の二特異性抗体断片の何れかであり得る。全抗体よりも、scFv二量体又はダイアボディーを使用することは好適であり得る。ダイアボディー及びscFvは、可変ドメインのみを使用してFc領域なしで構築することができ、抗イディオタイプ反応の効果を低減させる可能性がある。二特異性抗体の他の形態は、(Traunecker,Lanzavecchia,and Karjalainen 1991)に記載の1本鎖「Janusins」を含む。
【0041】
二特異性ダイアボディーは、二特異性全抗体とは対照的に、大腸菌(E.coli)で容易に構築され、発現され得るので有用であり得る。適切な結合特異性のダイアボディー(及び抗体断片などの多くの他のポリペプチド)は、ファージディスプレイ(国際公開第94/13804号パンフレット)を使用してライブラリから容易に選択され得る。ダイアボディーの一方のアームが、例えば抗原Xに対する特異性に関して一定に維持される場合、他方のアームを変化させ、適切な特異性の抗体が選択されるライブラリを作製することができる。
【0042】
「結合ドメイン」は、抗原の一部又は全てと特異的に結合し、それと相補的である領域を含む特異的結合メンバーの一部である。結合メンバーが抗体又はそれらの抗原結合断片である場合、結合ドメインはCDRであり得る。抗原が大きい場合、抗体は、エピトープと呼ばれる抗原の特定の部分にのみ結合し得る。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメインにより提供され得る。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含み得る。
【0043】
「特異的な」は一般に、特異的結合対の一方のメンバーが、その特異的結合パートナー以外の分子に対して全く有意な結合を示さない、例えば何らかの他の分子と約30%未満、好ましくは20%、10%又は1%の交差反応性を有する状況を指すために使用される。この用語は、例えば抗原結合ドメインが、複数の抗原が保有する特定のエピトープに特異的である場合も適用可能であり、この場合、抗原結合ドメインを保有する特異的結合メンバーは、エピトープを保有する様々な抗原に結合可能である。
【0044】
「単離された」は、本発明に従って、本発明の特異的結合メンバー又はこのような結合メンバーをコードする核酸が好ましくはそうあるべき状況を指す。メンバー及び核酸は一般に、それらの天然の環境又はこのような調製がインビトロ若しくはインビボで実施される組み換えDNA技術による場合はそれらが調製される環境(例えば細胞培養)において、それらと一緒に見出される他のポリペプチド又は核酸など、それらが本来会合している物質を含まないか又は実質的に含まない。特異的結合メンバー及び核酸は、希釈剤又はアジュバントとともに製剤化されてもよく、それでもなお実践的な目的に関しては単離されており-例えばメンバーは通常、免疫アッセイで使用するためのマイクロタイタープレートをコーティングするために使用される場合はゼラチン若しくは他の担体と混合されるか、又は診断若しくは治療で使用される場合は薬学的に許容可能な担体若しくは希釈剤と混合される。特異的結合メンバーは、天然に若しくは異種真核細胞の系の何れかによりグリコシル化され得るか、又はそれらは、(例えば原核細胞での発現により作製される場合)非グリコシル化状態であり得る。
【0045】
「実質的に記載される」とは、本発明のアミノ酸配列が参照されるアミノ酸配列と同一であるか又は高度に相同であるかの何れかであることを意味する。「高度に相同であるい」とは、配列においてなされ得る1~5個、1~4個、1~3個、2個又は1個の置換があり得ることが企図される。
【0046】
本発明は、その範囲内に、
図2又は3で記載されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、
図2又は3で記載される核酸配列を有するポリヌクレオチド及びそれと実質的な同一性、例えばそれと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99%の同一性を有する配列も含む。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列のパーセント同一性は一般に、最適な比較の目的のために配列を整列させ(例えば第2の配列との最良のアライメントのために第1の配列においてギャップを導入し得る)、対応する位置でアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較することによって決定される。「最良のアライメント」は、最大のパーセント同一性が得られる2つの配列のアライメントである。パーセント同一性は、配列内の同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチドの数を比較することにより決定される(即ち%同一性=同一である位置の数/位置の総数×100)。
【0047】
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、当業者に公知の数学アルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列を比較するための数学アルゴリズムの例は、Karlin及びAltschul,1990(Karlin and Altschul 1990)のアルゴリズムであり、Karlin及びAltschul,1993(Karlin and Altschul 1993)のように改変されている。Altschul et al.,1990(Altschul et al.1990)のNBLAST及びXBLASTプログラムはこのようなアルゴリズムを組み込んでいる。本発明の核酸分子に対して相同であるヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12でBLASTヌクレオチド検索を行うことができる。本発明のタンパク質分子と相同であるアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3でBLASTタンパク質検索を行うことができる。比較目的のためにギャップ付きのアライメントを得る場合、Altschul et al.,1997(Altschul et al.1997)に記載されるGapped BLASTを利用することができる。或いは、分子間の遠い関係を検出する繰り返し検索を行うために、PSI-Blastを使用することができる(Id.)。BLAST、Gapped BLAST及びPSI-Blastプログラムを利用する場合、個々のプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照。配列の比較のために利用される数学アルゴリズムの別の例は、Myers及びMiller,1989(Myers and Miller 1989)のアルゴリズムである。GCG配列アライメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)はこのようなアルゴリズムを組み込んでいる。当技術分野で公知の配列分析のための他のアルゴリズムとしては、Torellis及びRobotti,1994(Torelli and Robotti 1994)に記載されるADVANCE及びADAM;及びPearson及びLipman、1988(Pearson and Lipman 1988)に記載のFASTAが挙げられる。FASTA内で、ktupは、検索の感度及び速度を設定するコントロールオプションである。
【0048】
本発明の単離された特異的結合メンバーは、特異的なスフィンゴ糖脂質(GSL)に結合可能であるが、スフィンゴ糖脂質の遊離糖には結合できない。非常に異常なことであるが、本発明の結合メンバーは、結合するために脂質の存在を必要とする。GSLは、構造的にセラミド脂質部分(アミド結合により脂肪酸に連結されるスフィンゴシン)に連結されるグリカンからなる非常に多様な分子群である。セラミド構造は長さ及び飽和度が異なり、それがGSL種の多様性を増大させているが、多様性の主な起源はグリカン頭部基に由来する。直線的にしか結合できないアミノ酸又は核酸と比較して、炭水化物は、複数箇所で互いに結合することができる。
図2a、b、c又は3aの残基105~116(CDRH3)及び
図2d、e、f又は3bの105~113(CDRL3)として実質的に記載されるアミノ酸配列を含む、クラススイッチし、親和性成熟した抗体標的化ドメインは、Fuc-GM1ガングリオシドへのこれらの領域の結合を可能にする構造において保有され得る。
【0049】
本発明の結合ドメインを保有するための構造は、一般に、結合ドメインが再構成された免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然に存在するVH及びVL抗体可変ドメインのCDR3領域に対応する位置に位置する、抗体重鎖又は軽鎖配列又はその実質的な部分である。免疫グロブリン可変ドメインの構造及び位置は、http://www.imgt.org/を参照することによって決定され得る。
図2a、b、c又は3aの残基105~116として実質的に記載されるアミノ酸配列は、ヒト重鎖可変ドメイン又はその実質的な部分においてCDR3として保有され得、
図2d、e、f又は3bの残基及び105~113として実質的に記載されるアミノ酸配列は、ヒト軽鎖可変ドメイン又はその実質的な部分においてCDR3として保有され得る。
【0050】
可変ドメインは、何らかの生殖系列若しくは再構成されたヒト可変ドメイン由来であり得るか、又は公知のヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づく合成可変ドメインであり得る。本発明のCDR3由来配列は、組み換えDNA技術を使用して、CDR3領域を欠く可変ドメインのレパートリーに導入され得る。例えばMarks et al.,1992(Marks et al.1992)は、抗体可変ドメインのレパートリーを作製する方法を記載し、CDR3を欠くVH可変ドメインのレパートリーを提供するために、ヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーとともに、可変ドメイン領域の5’末端に向けられるか又はそれに隣接するコンセンサスプライマーを使用する。Marks et al.,1992(Marks et al.1992)は、どのようにこのレパートリーが特定の抗体のCDR3と組み合わせられ得るかをさらに記載する。類似の技術を使用して、本発明のCDR3由来配列をCDR3を欠くVH又はVLドメインのレパートリーとシャッフルしてもよく、シャッフルされた完全なVH又はVLドメインを、同族のVL又はVHドメインと組み合わせて本発明の特異的結合メンバーを提供してもよい。次に、適切な特異的結合メンバーが選択され得るように、国際公開第92/01047号パンフレットのファージディスプレイ系などの適切な宿主系においてレパートリーを提示してもよい。レパートリーは、少なくとも104個の個々のメンバー、例えば106~108又は1010個のメンバーの何れかからなり得る。
【0051】
類似のシャッフリング又はコンビナトリアル技術も、Stemmer,1994(Stemmer 1994)によって開示されており、彼らはベータ-ラクタマーゼ遺伝子に関連する技術を記載しているが、このアプローチが抗体作製のために使用され得ることを述べている。さらなる代替法は、可変ドメイン全体内で突然変異を作製するために例えばFuc-GM1 VH又はVL遺伝子のランダム突然変異誘発を使用して本発明のCDR3由来配列を保有する新規VH又はVL領域を作製することである。このような技術は、エラープローンPCRを使用したGram et al.,1992(Gram et al.1992)により記載されている。
【0052】
使用され得る別の方法は、VH又はVL遺伝子のCDR領域に対して突然変異誘発を方向づけることである。このような技術は、Barbas et al.,1994(Barbas et al.1994)及びSchier et al.,1996(Schier et al.1996)によって開示される。免疫グロブリン可変ドメインの実質的な部分は一般に、それらの介在フレームワーク領域と共に、少なくとも3つのCDR領域を含む。この部分は、第1及び第4のフレームワーク領域の何れか又は両方の少なくとも約50%も含み得、この50%は、第1のフレームワーク領域のC末端50%及び第4のフレームワーク領域のN末端50%である。可変ドメインの実質的な部分のN末端又はC末端のさらなる残基は、天然に存在する可変ドメイン領域に通常は会合しない残基であり得る。例えば、組み換えDNA技術により作製される本発明の特異的結合メンバーの構築の結果、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えばダイアボディーの作製において)又は以下で詳細に論じるようなタンパク質標識を含むさらなるタンパク質配列に本発明の可変ドメインを連結するためのリンカーの導入を含む、クローニング又は他の操作段階を促進するために導入されるリンカーによってコードされるN又はC末端残基の導入が起こり得る。
【0053】
本発明は、
図2及び3で実質的に記載されるVL及びVH領域のアミノ酸配列、即ち
図2a、b、c又は3aのアミノ酸1~127(VH)及び
図2d、e、f又は3bのアミノ酸1~124(VL)に基づく、結合ドメインの対を含む特異的結合メンバーを提供する。これらの配列の何れかに基づく単一の結合ドメインは、本発明のさらなる態様を形成する。
図2a、b、c又は3aで実質的に記載されるVH領域のアミノ酸配列に基づく結合ドメインの場合、このような結合ドメインは、免疫グロブリンVHドメインが標的抗原に特異的に結合可能であることが公知であるので、標的化物質として使用され得る。1本鎖特異的結合ドメインの何れかの場合、これらのドメインを使用して、本明細書中で開示されるFL133/4抗体と同じように良好であるか又は同等であるインビボ特性を有する2ドメイン特異的結合メンバーを形成可能な相補性ドメインについてスクリーニングしてもよい。
【0054】
これは、国際公開第92/01047号パンフレットで開示されるいわゆる階層的二重コンビナトリアルアプローチを使用するファージディスプレイスクリーニング法により達成され得るが、この方法ではH又はL鎖クローンの何れかを含有する個々のコロニーを使用して、他の鎖(L又はH)をコードするクローンの完全ライブラリに感染させ、得られた2鎖特異的結合メンバーを、その参考文献に記載される技術などのファージディスプレイ技術に従い選択する。この技術は、Marks et al.,1992((Marks et al.1992)でも開示される。
【0055】
本発明の特異的結合メンバーは、抗体定常領域又はその一部をさらに含み得る。例えば、
図2d、e、f又は3bで示されるVL領域に基づく特異的結合メンバーを、それらのC末端で抗体軽鎖定常ドメインに連結してもよい。同様に、
図2a、b、c又は3aで示されるVH領域に基づく特異的結合メンバーを、それらのC末端で、何れかの抗体アイソタイプ、例えばIgG、IgA、IgE及びIgM、並びにアイソタイプサブクラス、特にIgG1、IgG2及びIgG4の何れか由来の免疫グロブリン重鎖の全て又は一部に連結してもよい。
【0056】
本発明の特異的結合メンバーは、ヒト又は動物対象における腫瘍の診断及び処置の方法において使用することができる。
【0057】
診断で使用される場合、本発明の特異的結合メンバーは、抗体イメージングの技術分野で公知の従来の化学を使用して、本発明の特異的結合メンバーに連結され得る、検出可能な標識、例えば放射性標識、131I又は99Tcで標識され得る。標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素標識も含む。標識は、特異的な同族の検出可能部分、例えば標識されたアビジンへの結合を介して検出され得るビオチンなどの化学部分をさらに含む。
【0058】
本発明の特異的結合メンバーは、機能的標識で標識され得る。機能的標識は、癌の部位に標的化されてその破壊を引き起こすように設計される物質を含む。このような機能的標識は、リシンなどの毒素及びプロドラッグを活性薬に変換可能な細菌性カルボキシペプチダーゼ又はニトロレダクターゼなどの酵素を含む。さらに、特異的結合メンバーを、化学療法剤又は細胞傷害剤、例えばマイタンシン(DM1及びDM4)、オニド(onide)、アウリスタチン、カリケアマイシン、デュオカマイシン、ドキソルビシン又は放射性標識、例えば90Y又は131Iに結合させてもよく又はそうでなければ会合させてもよい。
【0059】
さらに、本発明の特異的結合メンバーは、処置される状態に応じて、単独で又は他の処置と組み合わせて、同時又は連続的の何れかで投与され得る。従って、本発明は、腫瘍の処置における同時、個別又は連続使用のための組み合わせ調製物としての本発明の特異的結合メンバー及び活性薬剤を含有する製品をさらに提供する。活性薬剤は、本発明の結合メンバーと相乗的に作用し得る、5-フルオロウラシル、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチン及びタモキシフェンを含む、化学療法剤又は細胞傷害剤を含み得る。他の活性薬剤は、非ステロイド性抗炎症薬(例えばアスピリン、パラセタモール、イブプロフェン若しくはケトプロフェン)若しくはオピエート(opitate)、例えばモルヒネ、などの鎮痛薬、又は制吐薬の適切な用量を含み得る。
【0060】
理論により縛られることを望むものではないが、本発明の結合メンバーが腫瘍死滅を促進するための活性薬剤と相乗作用する能力は、免疫エフェクター機序によるのではなく、むしろ細胞表面結合Fuc-GM1ガングリオシドに結合メンバーが結合することの直接的な結果であり得る。免疫チェックポイント分子に対する抗体を含む癌免疫療法は、様々な悪性腫瘍に対して、及び異なる免疫腫瘍処置モダリティーと組み合わせて、有効性を示した。
【0061】
本発明の特異的結合メンバーは通常、特異的結合メンバーに加えて、少なくとも1つの成分を含み得る医薬組成物の形態で投与される。本医薬組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤、担体、緩衝剤、安定化剤又は当業者にとって周知の他の物質を含み得る。このような物質は非毒性でなければならず、活性成分の有効性を妨害してはならない。担体又は他の物質の正確な性質は、経口、又注射、例えば静脈内であり得る投与経路に依存する。注射は、組成物の治療的投与のための主な経路であると予想されるが、カテーテル又は他の外科的チュービングを通じた送達も使用される。いくつかの適切な投与経路は、静脈内、皮下、腹腔内及び筋肉内投与を含む。液体製剤は、粉末製剤からの再構成後に利用され得る。
【0062】
静脈内注射又は罹患部位での注射の場合、活性成分は、パイロジェンフリーであり、適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容可能な水溶液の形態である。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ラクトリンゲル注射液など、等張ビヒクルを使用して適切な溶液を調製することが十分可能である。保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤が必要に応じて含まれ得る。
【0063】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末又は液体形態であり得る。錠剤は、ゼラチン又はアジュバントなどの固形担体を含み得る。液体医薬組成物は一般に、水、石油、動物又は植物油、鉱物油又は合成油などの液体担体を含む。生理食塩水溶液、デキストロース若しくは他の糖溶液又はエチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれ得る。製剤が液体である場合、これは例えば、pH6.8~7.6の非リン酸緩衝液又は凍結乾燥粉末を含有する生理食塩水溶液であり得る。
【0064】
本組成物はまた、ミクロスフェア、リポソーム、他の微粒子送達系又は血液を含むある特定の組織中に留置される持続放出製剤を介して送達され得る。持続放出担体の適切な例は、シェアドアーティクル(shared article)、例えば坐薬又はマイクロカプセルの形態の半透性のポリマーマトリクスを含む。埋め込み可能型又はマイクロカプセル型の持続放出マトリクスは、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号明細書;欧州特許出願公開第A-0058481号明細書)L-グルタミン酸とガンマエチル-L-グルタマートのコポリマー(Sidman et al.1983)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)を含む。ポリペプチドを含有するリポソームは、周知の方法:独国特許出願公開第3,218,121A号明細書;(Eppstein et al.1985);(Hwang,Luk,and Beaumier 1980);欧州特許出願公開第A-0052522号明細書;同第A-0036676号明細書;同第A-0088046号明細書;同第A-0143949号明細書;同第A-0142541号明細書;特開83-11808号公報;米国特許第4,485,045号明細書及び同第4,544,545号明細書によって調製される。通常、リポソームは、脂質含量が約30mol.%コレステロールよりも多い小型の(約200~800オングストローム)単層タイプであり、選択される割合はポリペプチド漏出の最適比率となるように調整される。本組成物は、腫瘍部位若しくは他の所望の部位に局所的に投与され得るか、又はそれが腫瘍若しくは他の細胞を標的とするように送達され得る。
【0065】
本組成物は好ましくは、「治療的有効量」で個体に投与され、これは、個体に対する利益を示すために十分である。投与される実際の量及び投与の速度及び時間経過は、処置されるものの性質及び重症度に依存する。処置の処方、例えば投与量の選択などは、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、一般的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法及び医師にとって公知の他の要因を考慮する。本発明の組成物は、既存の腫瘍、特に癌の処置及び最初の処置又は外科手術後のこのような状態の再発の予防に特に適切である。上述の技術及びプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.(ed),1980(Remington 1980)で見ることができる。
【0066】
最適な用量は、例えば年齢、性別、体重、処置している状態の重症度、投与される活性成分及び投与経路を含む多くのパラメーターに基づいて医師によって決定され得る。一般に、受容体の飽和を可能にするポリペプチド及び抗体の血清中濃度が所望される。およそ0.1nMを超える濃度は通常十分である。例えば、抗体の100mg/m2の用量は、およそ8日間にわたりおよそ20nMの血清中濃度を提供する。
【0067】
大まかな指針として、抗体の用量は、10~300mg/m2の量で毎週与えられ得る。Fuc-GM1炭水化物の飽和を可能にする濃度を超過して血清レベルを維持するために、より頻繁な間隔で抗体断片の同等用量を使用すべきである。本組成物の用量は、十分に医師の技術の範囲内であるとおり、結合メンバーの特性、例えばその結合活性及びインビボ血漿中半減期、製剤中のポリペプチドの濃度、投与経路、投与部位及び投与速度、関与する患者の臨床忍容性、患者が罹患している病状などに依存する。例えば、抗体300μg/患者/投与の用量が好ましいが、投与量は約10μg~6mg/用量の範囲であり得る。一連の連続する接種中に異なる投与量が利用され;医師は、最初の接種を投与し、次に比較的より少量の抗体用量でブースト接種を行い得る。
【0068】
本発明は、癌に対する防御免疫応答を促進するための最適化された免疫スケジュールも対象とする。
【0069】
本発明の結合メンバーは、完全に又は部分的に化学合成により作製され得る。本結合メンバーは、十分に確立された標準的な液相、又は好ましくは、その全般的な説明が広く利用可能である固相ペプチド合成法に従い容易に調製され得るか(例えばJ.M.Stewart及びJ.D.Young,1984において(Stewart and Young 1984)、M.Bodanzsky及びA.Bodanzsky,1984(Bodanzsky and Bodanzsky 1984)を参照)、又はそれらは、液相法による溶液中、又は固相、液相及び溶液化学の何れかの組み合わせにより、例えばそれぞれのペプチド部分を最初に完成させ、次いで所望され、適切である場合、存在する全ての保護基を除去した後、個々のカルボン酸又はスルホン酸又はその反応性誘導体の反応によって残基Xを導入することによって調製され得る。
【0070】
本発明による結合メンバーを作製する別の都合の良い方法は、発現系での核酸の使用によって、それをコードする核酸を発現させることである。
【0071】
本発明は、本発明の特異的結合メンバーをコードする単離核酸をさらに提供する。核酸はDNA及びRNAを含む。好ましい態様では、本発明は、上記で定められる本発明の特異的結合メンバーをコードする核酸を提供する。このような核酸の例を
図2及び3で示す。当業者は、本発明の特異的結合メンバーをなおも提供するこのような核酸に対する置換、欠失及び/又は付加を決定可能である。
【0072】
本発明はまた、上記の少なくとも1つの核酸を含むプラスミド、ベクター、転写又は発現カセットの形態のコンストラクトも提供する。本発明は、上記の1つ以上のコンストラクトを含む組み換え宿主細胞も提供する。言及したように、コード核酸からの発現を含む特異的結合メンバーの産生方法と同様に、本発明の特異的結合メンバーをコードする核酸は、本発明の一態様を形成する。発現は、核酸を含有する組み換え宿主細胞を適切な条件下で培養することによって、都合よく達成され得る。発現による産生後、特異的結合メンバーは、何れかの適切な技術を使用して単離及び/又は精製され、次いで適切に使用され得る。
【0073】
様々な異なる宿主細胞でのポリペプチドのクローニング及び発現のための系は周知である。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳動物細胞、酵母及びバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のための当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓細胞、NSOマウスメラノーマ細胞及び多くの他の細胞が挙げられる。一般的な好ましい細菌宿主は、大腸菌(E.coli)である。大腸菌(E.coli)などの原核細胞における抗体及び抗体断片の発現は、当技術分野で十分に確立されている。概説については、例えばPluckthun,1991(Pluckthun 1991)を参照のこと。培養における真核細胞での発現も特異的結合メンバー産生のための選択肢として当業者にとって利用可能であり、最新の概説については、例えばReff,1993(Reff 1993);Trill et al.,1995(Trill,Shatzman and Ganguly 1995)を参照のこと。
【0074】
必要に応じて、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び他の配列を含む適切な制御配列を含有する適切なベクターが選択され得るか又は構築され得る。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えばファージ又はファージミドであり得る。さらなる詳細については、例えばSambrook et al.,1989(Sambrook 1989)を参照。例えば核酸コンストラクトの調製、突然変異誘発、シーケンシング、細胞へのDNAの導入及び遺伝子発現及びタンパク質の分析における核酸の操作のための多くの既知の技術及びプロトコールは、Ausubel et al.,1992(Ausubel 1992)で詳述されている。
【0075】
従って、本発明のさらなる態様は、本明細書中で開示される核酸を含有する宿主細胞を提供する。またさらなる態様は、このような核酸を宿主細胞に導入することを含む方法を提供する。導入はあらゆる利用可能な技術を使用し得る。真核細胞の場合、適切な技術は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション及び、レトロウイルス又は他のウイルス、例えばワクシニアを使用した、又は昆虫細胞の場合はバキュロウイルスを使用する形質導入を含み得る。細菌細胞の場合、適切な技術は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション及びバクテリオファージを使用するトランスフェクションを含み得る。導入の後、例えばその遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することによって、核酸からの発現を引き起こすか又は発現を可能にし得る。
本発明の核酸は、宿主細胞のゲノム(例えば染色体)に組み込まれ得る。組み込みは、標準的な技術に従い、ゲノムとの組み換えを促進する配列を含むことによって促進され得る。
【0076】
本発明は、上記の特異的結合メンバー又はポリペプチドを発現させるために、発現系において上記のコンストラクトを使用することを含む方法も提供する。
【0077】
本発明の各態様の好ましい特性は、必要な変更を加えて他の態様のそれぞれに関するとおりである。本明細書中で言及される先行技術文書は、法律によって許可される最大限まで組み込まれる。
【0078】
本明細書中で開示されるFL133/4 mAbは、ADCC及びCDCを通じて強力なインビトロ細胞傷害性活性を示した。
【0079】
ここで次の非限定的な実施例及び添付の図面において、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】Fuc-GM1糖脂質の生合成経路。Cer、セラミド;Fuc、フコース;FucGm1、フコシル-GM1;Gal、ガラクトース;GalNac、N-アセチルガラクトサミン;Glc、グルコース;LacCer ラクトシルセラミド;SA、シアル酸。
【
図2a】マウスFL133.63 IgG3重鎖可変ドメインのアミノ酸及びヌクレオチド配列。数字は、抗体配列のナンバリングのための規格化されたIMGT系を指す(Lefranc et al.2009)。
【
図2b】マウスFL133.67 IgG3重鎖可変ドメインのアミノ酸及びヌクレオチド配列。数字は、抗体配列のナンバリングのための規格化されたIMGT系を指す(Lefranc et al.2009)。
【
図2c】マウスFL134.33 IgG1重鎖のアミノ酸及びヌクレオチド配列。数字は、抗体配列のナンバリングのための規格化されたIMGT系を指す(Lefranc et al.2009)。
【
図2d】マウスFL133.63カッパ鎖のアミノ酸及びヌクレオチド配列。数字は、抗体配列のナンバリングのための規格化されたIMGT系を指す(Lefranc et al.2009)。
【
図2e】マウスFL133.67カッパ鎖のアミノ酸及びヌクレオチド配列。数字は、抗体配列のナンバリングのための規格化されたIMGT系を指す(Lefranc et al.2009)。
【
図2f】マウスFL134.33カッパ鎖のアミノ酸及びヌクレオチド配列。数字は、抗体配列のナンバリングのための規格化されたIMGT系を指す(Lefranc et al.2009)。
【
図3a】ヒトIgG1重鎖定常領域にキメラ化されたマウスFL134.33重鎖可変領域のアミノ酸及びヌクレオチド配列。
【
図3b】ヒトカッパ鎖定常領域にキメラ化されたマウスFL134.33カッパ鎖可変領域のアミノ酸及びヌクレオチド配列。
【
図4】GSLフコシルGM1のオゾン分解及び還元性アミノ化を介したタンパク質担体に対するその後の結合の略図。反応性オゾンは、GSLのスフィンゴシン部分の二重結合を攻撃し、安定な遊離アルデヒド基を生成させ、次にこれを使用して還元性アミノ化の工程によってタンパク質にGSLを結合させることができる。ここで、アルデヒドは、一級アミンと反応して、最初に不安定なシッフ塩基を形成し、これは安定な二級アミンを形成させるためにさらに還元される必要がある。
【
図5】オゾン分解された、及び当初のフコシルGM1のフーリエ変換質量分析。A)オゾン分解された、及びB)当初のフコシルGM1をFTMSにより試験し、高解像度質量分析系、Exactiveを使用して分析した。分析は、脂肪アシル鎖の長さに応じて様々なフコシルGM1種を示す。フコシルGM1イオンは1価であった。説明文は存在する種の分子量を示す。
【
図6】ELISA及びウエスタンブロット分析によるHSA-フコシルGM1コンジュゲートの検出。A)620nmバックグランドに対して450nmでの吸光度を読み取るELISAにより検出されるHSA-フコシルGM1コンジュゲートの3つの試料。HSA又はHSA-フコシルGM1コンジュゲートの何れかでプレートをコーティングした。一次抗体は、抗HSA IgG抗体(MOD6 6L)又は抗フコシル GM1 mAb F12を含有する何れかのマウス血清であった。抗マウスIgG-ビオチン及びストレプトアビジン-HRPを使用して一次抗体を検出した。一次抗体を添加しなかったウェルは陰性対照とした。B)抗HSA IgG抗体(MOD6 6L)又は抗フコシルGM1 mAb F12を含有するマウス血清の何れかによって検出したHSA-フコシルGM1コンジュゲートの3つの試料のウエスタンブロット分析。レーン1~4を対照として使用し、レーン1=当初のHSA、レーン2=反応性アミノ化手順を通じて得られたが、ガングリオシドが付加されなかったHSA、レーン3=HSA-ルイスYコンジュゲート、レーン4=HSA-GD3コンジュゲート、レーン5=HSA-フコシルGM1コンジュゲート試料1、レーン6=HSA-フコシルGM1コンジュゲート試料2及びレーン7=HSA-フコシルGM1コンジュゲート試料3。抗マウスIgG-HRPを使用して一次抗体を検出した。二次抗体のみをブロットした同一の膜を陰性対照として使用した。ECLによって陽性バンドを発色させた。
【
図7】マウス血清IgGのHSA-Fuc-GM1コンジュゲート及び精製Fuc-GM1への結合。HSA-Fuc-GM1コンジュゲート(A、C、E、G)又は精製Fuc-GM1(B、D、F、H)の何れかに対する結合について、マウス血清IgGをスクリーニングした。620nmバックグラウンドに対して450nmでの吸光度を読み取るELISAによってマウス血清を分析した。二次抗体単独を対照として使用した。抗HSA IgG抗体及び抗Fuc-GM1 mAb F12を含有するマウス血清を陽性対照として使用した。
*は、一次抗体なしと比較してp<0.05であることを表し、1/100希釈のみを分析した。
【
図8】マウス血清IgGのDMS79細胞表面への結合。Fuc-GM1陽性細胞株DMS79の細胞表面へのマウス血清IgGの結合。最初に細胞を1/100希釈でマウス血清とともにインキュベートした。10μg/mlの抗マウスIgG FITCを用いて一次抗体の結合を検出した。フローサイトメトリーにより細胞を分析した。アイソタイプIgG1を陰性対照として使用し(データは示さない)、mAb F12を陽性対照として使用し、両者とも10μg/mlで使用した。抗体結合の強度を幾何平均により表す。
【
図9】Fuc-GM1発現細胞の細胞表面へのFuc-GM1-特異的mAbの結合。間接的免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析により、Fuc-GM1陽性細胞株DMS79、DMS53、H128及びH69の細胞表面への精製mAb、FL133.63、FL133.67及びFL134.33の結合を評価した。抗マウスIgG FITCを用いて表面結合を検出した。アイソタイプIgG1を陰性対照として使用し(データは示さない)、mAb F12を陽性対照として使用した。抗体結合の強度を幾何平均として表す。
【
図10】健康なヒトボランティアの全血へのFuc-GM1-特異的mAbの結合。間接的免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析により評価した、健康なヒトボランティアの全血への、A)アイソタイプIgG1、B)アイソタイプIgG3、C)抗MHCクラス1 mAb、D)mAb F12、E)mAb FL133.63、F)mAb FL133.67及びG)mAb FL134.33の結合。最初に10μg/mlの一次抗体とともに全血をインキュベートし、次に10μg/mlの抗マウスIgG FITCで検出した。分析前に、赤血球細胞を溶解させた。マウスIgG1アイソタイプ、マウスIgG3アイソタイプ及びmAb F12を陰性対照として使用した。抗MHCクラスI mAbを陽性対照として使用した。陰性対照を使用してドットプロット四分円を設定した。
【
図11】様々な精製糖脂質へのFuc-GM1 mAbの結合。620nmのバックグラウンドに対して450nmでの吸光度を読み取るELISAにより分析した、様々な精製ガングリオシドへの、A)FL133.63、B)FL133.67、C)FL134.33の結合。ビオチン化抗マウスIgG及びストレプトアビジン-HRPにより一次抗体の結合を検出した。D)F12、E)抗GD3 mAb R24及びF)抗GM1毒素CTxB-HRPを陽性対照として使用した。残りのガングリオシドに対するMAbはまだ作製されていない。
*は、ラクトシルセラミドと比較したp<0.05を表し、1/100希釈のみを分析した。
【
図12】DMS79細胞株への、精製ガングリオシドFuc-GM1とプレインキュベートしたFuc-GM1 mAbの競合的結合。2μgのmAbを、最初に5μgの精製Fuc-GM1とともに室温で1時間インキュベートした。間接的免疫蛍光及びフローサイトメトリー分析によって、DMS79細胞の細胞表面への結合を評価した。アイソタイプIgG1(データは示さない)及びMHC Iを陰性対照として使用した。F12を陽性対照として使用した。精製Fuc-GM1とプレインキュベートしなかった一次抗体も陽性対照として使用した。抗体結合の強度を幾何平均として表す。
【
図13】610個の哺乳動物グリカン標的から構成されるThe Consortium for Functional Glycomicsのグリカンアレイに対して、FL133.63及びFL134.33の結合をスクリーニングした。a)FL133.63、b)FL134.33の間の微細特異性を比較する。
【
図14】精製Fuc-GM1及びDMS79 PM TGLへのFuc-GM1 mAbの結合。DMS79 PM TGL(細胞1×10
7個/レーン)への精製ガングリオシドFuc-GM1(5μg/レーン)及び、GM1(5μg/レーン)へのA)FL133.63、B)FL133.67及びC)FL134.33の結合。免疫検出によるTLC分析によって結合を分析した。一次抗体を1μg/mlで使用した。1/10000で使用したIRDye 680CW抗-マウスIgGによって、一次抗体の結合を検出した。D)抗Fuc-GM1 mAb F12で免疫ブロットしたTLCプレートを陽性対照として使用した。E)二次抗体のみで免疫ブロットしたTLCプレートを陰性対照として使用した。
【
図15】HSA-Fuc-GM1コンジュゲートへの抗Fuc-GM1 mAbの結合。620nmバックグラウンドに対して450nmでの吸光度を読み取るELISAによって、HSA-Fuc-GM1コンジュゲートへのA)mAb FL133.63、B)mAb FL133.67、C)mAb FL134.33 D)mAb F12の結合を分析した。抗マウスIgGビオチン及びストレプトアビジンHRPコンジュゲートを使用して一次抗体を検出した。当初のHSAを陰性対照として使用した。MAb F12を陽性対照として使用した。
【
図16】精製Fuc-GM1及びDMS79細胞への抗Fuc-GM1 mAbの結合。抗Fuc-GM1 mAb(FL133.63、FL133.67及びFL134.33)を、100~0.001nMの濃度範囲の精製Fuc-GM1への結合についてELISAによって、評価した。アイソタイプIgG1を陰性対照として使用した。非線形的用量反応カーブフィッティング(GraphPad Prism)を使用して、EC50値を確立した。同じ濃度範囲を使用して、フローサイトメトリーによってSCLC細胞株DMS79への結合についてもmAbを評価した。アイソタイプIgG1を陰性対照として使用した。Graphpad Prismにおいて非線形的結合カーブフィッティング(1部位特異的結合)を使用して、Kd値を確立した。
【
図17】DMS79細胞のFuc-GM1 mAb媒介ADCC及びCDC。Fuc-GM1陽性細胞株DMS79の、MAb FL133.63、FL133.67及びFL134.33媒介A)ADCC及びB)CDC。陽性対照として抗Lewis
y/bmAb SC101を使用した。
*はp<0.05を表す。
【
図18】mAb FL134.33、FL133.63及びFL133.67のVH領域の配列。生殖系列抗体配列をアミノ酸コドンとして示す。下記で各Fuc-GM1特異的抗体における突然変異を示す。
【
図19】mAb FL134.33、FL133.63及びFL133.67のVL領域の配列。生殖系列抗体配列をアミノ酸コドンとして示す。下記で各Fuc-GM1特異的抗体での突然変異を示す。
【
図20】ELISAによる精製抗原への抗体結合の特異性。Fuc-GM1コーティングプレートを抗体とともにインキュベートし、抗マウスFc特異的又は抗ヒトγ鎖特異的IgGビオチン及びストレプトアビジンHRPを使用して検出した。MAbF12を陽性対照として使用した。
【
図21】間接的免疫蛍光による抗体の細胞表面結合の評価。mAb FL134.33、FL133.63、FL133.67及びCH134.33を細胞とインキュベートし、抗マウスFc特異的又は抗ヒトγ鎖特異的IgG FITCを使用して結合を検出した。A)細胞株を用いたフローサイトメトリーにより作成したヒストグラムB)全ての細胞株に対するGm値の棒グラフ。MAb F12を陽性対照として使用した。
【実施例】
【0081】
方法
全ての実験は、適用可能な安全性規制に従い行った。実験方法は、特定の条件に対して改変を行い、標準作業手順書に従って実施した。
【0082】
免疫
動物の作業は、Home Office project license下で行われた。使用した試薬は全て、別段述べない限り、Sigma-Aldrich(Poole,UK)から購入した。全ての免疫実験は、6~8週齢のBalb/c又はCD1マウスの何れかを使用して行った。マウスは、University of NottinghamのBiomedical Services Unitでスタッフによって、指定病原体フリー状態で飼育され、維持された。0.5mlインスリンシリンジを使用して、皮下(s.c.)又は腹腔内(i.p.)の何れかで最大100μl PBS中で希釈した抗原によってマウスを免疫した。注射の頻度は各免疫によって異なり、適切な結果の章で概説する。免疫に対するマウス抗体応答を評価するために、各免疫から7日後、尾静脈を介してマウスから採血した。血液を、最大速度(17968xg)で2分間、2回遠心分離して(SIGMA、1-15PK Microfuge,Osterode am Harz,Germany)、赤血球細胞を除去し、さらなる使用まで-20℃で血清を保管した。
【0083】
細胞培養
全ての組織培養は、クラスII安全キャビネットにおいて無菌的に行った。20% HI-FBSを添加したRPMI1640中で維持したH128及び10%HI-FBSを添加したWeymouth培地中で維持したDMS53を除き、10%熱不活性化ウシ胎児血清(HI-FBS)を添加したRoswell Park Memorial Institute培地(RPMI1640)中でヒト由来癌細胞株を維持した。新たに購入した細胞株はドライアイス中で配達され、それらを-80℃で凍結して維持した。細胞培養凍結培地を除去するために、細胞を37℃の水浴中で融解し、10mlの適切な培養培地とともに30mlユニバーサル容器(Sterilin,Newport,UK)に移した。1000gで5分間、細胞を遠心分離した。次に、上清を除去し、7mlの適切な培養培地中で細胞ペレットを再懸濁した。次に、細胞をT25 Cellstar細胞培養フラスコ(VWR,Lutterworth,UK)に移し、37℃、5%CO2中でインキュベートした。細胞が約80%コンフルエンシーに到達すると、これらを分割するか又はより大きな細胞培養フラスコに移した。接着細胞株の場合、使用済み培養培地をフラスコから吸引し、5mlの1×トリプシン/EDTAを添加した。細胞が剥離するまで(通常10分前後)トリプシン処理細胞を37℃でインキュベートした。次に、剥離した細胞を30mLユニバーサル容器に回収し、細胞に対するトリプシンの影響を低下させるために、5mlの培養培地を添加した。次に、細胞を1000gで5分間遠心分離した。上清を除去し、新鮮な培養培地で細胞ペレットを再懸濁した。次に、細胞をT75Cellstar培養フラスコに移した。それらの培養培地が消費された後(オレンジ色から黄色に変色)、又は細胞が不健康であるように見える/死滅し始めると、浮遊凝集体として育つ細胞を分割した。培養培地を含む細胞を直接T75培養フラスコに移し、10mlの新鮮な培養培地を添加した。新たに購入した細胞株のストックを増やし、維持するために、上記方法によって、80%コンフルエンシーのT75培養フラスコからの細胞を回収した。血球計算盤及び1:1の比で適用されるトリパンブルー生死判別染色を使用して、細胞を計数した。5%ジメチルスルフィド(DMSO)/適切な培養培地中で細胞を5×106個/mlで再懸濁し、2mlマイクロチューブあたり1mlを添加した(Sarstedt,Leicester,UK)。最初にバイアルを-80℃の冷凍庫に最短でも24時間入れ、次いで液体窒素に移し、それらを-170℃で維持した。
【0084】
様々な実験に対して生細胞の大きなストックが必要とされた場合、T175培養フラスコへと細胞を徐々に拡大し、使用済み培養培地を新しいものに交換し、細胞の対数相増殖を確実するために分割することによって健康な状態で維持した。非接着細胞株について作業する場合、細胞をユニバーサル容器に移し、5分間静置した。これにより、生細胞を含有する浮遊凝集体がユニバーサル容器の底に沈み、次に死細胞を含有する上清を除去することができた。次に、適切な培養培地で細胞ペレットを再懸濁し、細胞を培養フラスコに戻した。
【0085】
抗体
抗HLA-ABC(クローンW6/32)及び抗CD44はeBiosciences(Hatfield,UK)から購入した。抗CD59(BRIC 229)はIBGRL(Bristol,UK)から購入した。抗シアリルルイスa(CA19.9)、抗ルイスb(2-25 Le)、抗ルイスX(P12)、抗GD2(クローン2Q549)、抗GM2、抗Gb3、抗プロヒビチン(クローンII-14-10)はAbcam(Cambridge,UK)から購入した。抗NeuGc GM3(クローンM2590)はCOSMO BIO CO.,LTD(Tokyo,Japan)から購入した。抗CD46、抗CD14(クローンM5E2)、抗CD11c(クローンB-ly6)及びIgG1アイソタイプはBD Biosciences(Crawley,UK)から購入した。抗Lewis Y(BR96)はATCC(Middlesex,UK)から購入した。抗シアリルルイスX(KM93)及び抗CA125(OC125)はCalbiochem(Darmstadt,Germany)から購入した。抗Globo H(クローンMBr1)はENZO Life Sciences(Exeter,UK)から購入した。抗Fuc-GM1(F12)はFujirebio(Tokyo,Japan)から購入した。抗トランスフェリン(UNCONJ)はInvitrogen(Paisley,UK)から購入した。抗EGFR(IF4)及び抗カルネキシンはCell Signalling Technology(Danvers,MA,USA)から購入した。抗EpCAM(BerEP4)はDako(Cambridgeshire,UK)から購入した。抗EGFR(Erbitux)及び抗Her2(Herceptin)はNHSからの寄贈であった。抗GD3(R24)は、Memorial Sloan Kettering Cancer CenterからのPhilip O.Livingstonからの寄贈であった。ストレプトアビジン-HRPOコンジュゲートは、Invitrogen(Paisley,UK)から購入した。ウサギ抗マウス免疫グロブリンFITC及びブタ抗ウサギIgG1 FITCは、Dako(Cambridgeshire、UK)から購入した。ストレプトアビジンPEは、eBiosciences(Hatfield,UK)から購入した。コレラ毒素、Bサブユニットビオチンは、Stratech Scientific Ltd.,(Newmarket,UK)から購入した。IRDye 680RDロバ抗マウス及びIRDye 800CWストレプトアビジンは、LI-COR,Nebraska,USAから購入した。
【0086】
抗原の調製
乾燥細胞ペレット(リン酸緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄)を使用するまで-80℃冷凍庫で保管した。原形質膜(PM)を抽出するために、細胞2×108個からの細胞ペレットを一緒にプールし、連続的により小さい針(23G、25G及び最後は29G)を使用して2mlの50mMマンニトール/5mM Hepes(pH7.4)及び10mM塩化カルシウム溶液中、手作業でホモジナイズした。次に、試料を氷上で20分間静置し、次に3000×gで15分間遠心分離して、細胞内の膜及び核を除去した。上清をポリアロマー超遠心チューブ(Beckmann,High Wycombe,UK)に移し、4℃で30分間48,000×gで遠心分離して、サイトゾルを含有する上清からPM含有ペレットを分離した。次にペレットを200μlのPBSで再懸濁し、使用するまで-20℃で保管した。
【0087】
ポリアロマー超遠心チューブ中のPMペレットに直接、又は200μlのPBS中で懸濁したPMの何れかに2mlのメタノール及び2mlのクロロホルムを添加することによって、PM TGLを抽出した。次に、材料を15mlポリプロピレンチューブに移し、十分にボルテックスミキサーで攪拌し、室温(RT)にて30分間、ローラー上でインキュベートした。2000×gで10分間遠心した後、TGL含有上清を回収し、-20℃で一晩インキュベートした。翌日、試料を同じ設定で再び遠心分離し、上清を回収し、4℃で保管した。
【0088】
アジュバント
抗原に対する免疫応答を促進するために、本論題の過程において様々なアジュバントを使用した。リポソームの製剤化の際に、α-GalCer(アルファ-ガラクトシルセラミド)、α-GalCer類似体7又はα-GalCer類似体8、(ENZO Life Sciences,Exeter,UK)を脂質の残りと一緒に乾燥させた(10μg~25μg/マウス)。抗マウスCD40(R&D Systems,Abingdon,UK)、C型CpGオリゴヌクレオチド及びS.メンネソタ(S.mennesota)からのモノホスホリルリピッドA(MPLA)(InvivoGen,San Diego,CA,USA)を10μg/マウスで使用し、既に形成されたリポソームに混合した。タンパク質抗原に対する免疫応答を促進するために、フロイントの完全又は不完全アジュバントを使用した。これらを抗原と1:1の比(v:v)で混合した。
【0089】
タンパク質への精製ガングリオシドのコンジュゲーション
精製ガングリオシドを、アルデヒド含有ガングリオシドがアミン(リジン)含有タンパク質と反応して、安定なアミン結合を形成する間接的還元的アミノ化によって共有結合によりHSAにコンジュゲートした。反応性アルデヒド基をガングリオシドに導入するために、以前に記載されたオゾン分解方法(Song et al.,2011)を使用した。オゾン生成装置OZV-8(Ozone Solutions)によって、乾燥空気(Air drier MAG-600,Ozone Solutions,Hull,Iowa,US)から反応性オゾンを新たに生成させた。2:1クロロホルム:メタノールの500μlの最小体積中で1分間再懸濁した糖脂質含有試料にオゾンを通過させたところ、青色が持続した。次に、50μlのジメチルスルフィドを添加して、残留オゾンを破壊し、室温で1時間インキュベートした後、窒素流下で溶液を乾燥させた。DMSO中で再懸濁したオゾン分解Fuc-GM1(Matreya,PA,USA)を、10倍モル濃度過剰で炭酸-重炭酸緩衝液、pH>9中で再懸濁したヒト血清アルブミン(HSA)に添加した。次に反応1mlあたり10μlの1M NaOH 中の5M水素化ホウ素ナトリウム(H4BNa)を添加した。次に、各試料を室温で2時間インキュベートした。反応1mlあたり20μlの3Mエタノールアミンを15分間添加することによって、非反応アルデヒド部位をブロッキングした。コンジュゲートを、PBSに対する透析によって精製した。
【0090】
全タンパク質MALDI-TOF分析によってタンパク質-Fuc-GM1コンジュゲートを分析した。試料を調製するために、ziptip C4ピペットチップ(Millipore,MA,US)を最初に50%(v/v)アセトニトリル:H2O溶液により活性化し、次にH2O中の0.1%TFAで平衡化した。次に、15回上下にピペッティングすることによって試料をziptipのレジンに結合させた。次いでレジンに結合した試料をH2O中の0.1%TFAで15回洗浄し、溶出液(0.1%TFAを有する50%(v/v)アセトニトリル:H2O中の飽和シナピン酸)によってMALDIプレート上に分注した。
【0091】
mAbの作製
融合の少なくとも1週間前に、10%HI-FCSを添加したRPMI培地中でNS0骨髄細胞を有するいくつかのフラスコを成長させた。最も健康に見える細胞を含有するフラスコを選択し、融合の1日前に培養培地を再補給した。除去した使用済みNS0培地を-4℃で保管した。融合日に、全ての試薬を最初に37℃に加熱した。NS0細胞を回収し、4回カウントした。次に、血清不含RPMIを使用して、1000×gで5分間、2回遠心分離することによってこれらを洗浄した。免疫したマウスを屠殺し、70%(v/v)エタノールを使用して切開部位を無菌状態に保って脾臓を摘出した。針を通じてRPMI培地を脾臓に押し入れることによって、及び同時に鉗子で圧力をかけることによって、単一の細胞懸濁液を調製した。次に、RPMI培地中で脾細胞を1000×gで10分間遠心分離し、4回カウントした。次に、脾細胞をNS0骨髄細胞と10:1細胞比で融合させた。より詳細には、1×108個の脾細胞及び1×107個のNS0骨髄細胞を合わせ、1000×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、細胞原形質膜を透過処理する役目を果たす800μlのポリエチレングリコール1500を、細胞ペレット中に穏やかに1分間混合した。次に、穏やかに混合しながら、1mlのRPMI培地を1分間かけて細胞にゆっくりと添加した。さらに5mlのRPMIをゆっくりと5分間かけて細胞の上に層状に重ねた。最後に、さらに20mlのRPMIを上部に層状に重ねた。融合工程を助けるために、次に細胞を1200×gで7分間遠心分離した。上清を除去し、10%HI-FBS、5%ヒポキサンチンメトトレキサートチミジン(HMT選択試薬;Invitrogen,Paisley,UK)、5%ハイブリドーマクローニング因子(HCF;PAA,Piscataway,US)及び10%のろ過した使用済みNS0上清を添加したRPMI培地中で細胞を慎重に再懸濁した。次に、細胞を96ウェル培養プレート(Thermo Fisher Scientific,Rockford,UK)に播種し、37℃、5%CO2でインキュベートした。
【0092】
融合のおよそ2週間後、確立されたハイブリドーマがウェルの約1/3を占有したときに、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって抗原特異的な抗体の産生についてこれらをスクリーニングした。所望の特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマコロニーを、その目的が単一細胞コロニーを作製することであるさらなるクローニングのために選択した。これは、モノクローナル抗体作製における重大な段階である。これを行うために、選択したハイブリドーマを細胞0.3個/ウェルの細胞密度で96ウェル培養プレートに播種した。コロニーが再びスクリーニングを行うために十分大きくなるまで、ハイブリドーマを37℃、5%CO2でインキュベートした。全てのクローンが抗原に対して陽性結合を示すまで、クローニングを最低でも2回反復した。
【0093】
MAb精製
2回クローニングしたハイブリドーマを、10%低Ig新生児仔牛血清(Life Technologies)を添加したGIBCOハイブリドーマ血清不含培地(Life Technologies,Paisley,UK)中で、増大させた。使用済み培地を回収し、2000×gで15分間遠心分離して、細胞残屑と一緒にハイブリドーマ細胞を除去した。次に、0.2μm Minisart使い捨てフィルター(Sartorius Stedim,Surrey,UK)に通して、抗体を含有する上清をろ過した。1ml組み換えプロテインGカラム(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)を使用してFPLCによって抗体を精製し、100mMグリシンpH12で溶出し、中和後、2L PBSに対して一晩透析した。280nmで吸光度を読み取って、分光光度計によって精製抗体の最終濃度を決定した。製造者の指針に従い、マウスモノクローナル抗体アイソタイピング試験キット(ABD Serotec,Kidlington,UK)を使用した。
【0094】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
糖脂質ELISAの場合、96ウェルフレキシブルPVC平底プレート(BD biosciences,Oxford,UK)を、100ng精製ガングリオシド/ウェル又は細胞1×104個/ウェルと同等のWC TGL抽出物又は100%エタノール中で再懸濁した細胞5×104個/ウェルと同等のPM TGLの何れかでコーティングし、一晩室温で乾燥させた。
【0095】
2:1(v/v)クロロホルム:メタノール中で精製ガングリオシドを1mg/mlとなるように再懸濁した。PM TGLの抽出は、上記の抗原の調製に記載される。1mlメタノール及び1mlのクロロホルムを乾燥細胞ペレットに添加することによって、WC TGLを調製した。細胞を激しくボルテックスミキサーで攪拌し、RTにて30分間ローラー上でインキュベートした。2000×gで10分間の遠心分離後、TGL含有上清を回収し、-20℃で一晩保管した。翌日、試料を再び遠心分離し、上清を回収し、4℃で保管した。
【0096】
タンパク質ELISAの場合、炭酸-重炭酸緩衝液(pH9.6)中で再懸濁された100ngのタンパク質/ウェルで96ウェルのフレキシブルPVC平底プレートをコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。翌日、PBS中の2%ウシ血清アルブミン(BSA)でRTにて1時間、プレートをブロッキングした。次に、ブロッキング緩衝液を除去し、次いでPBS中の1%BSA中で調製した一次抗体又はマウス血清をウェルに添加した。RTで1時間インキュベート後、PBS中でプレートを3回洗浄した。適切な二次及び三次抗体によって、一次抗体の結合を検出した。次にプレートを洗浄し、ウェルあたり90μlのリン酸/クエン酸/過ホウ酸緩衝液中の3,3’5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を添加することによって発色させた。30μlの2M H2SO4の添加によって、反応を停止させた。分光光度計により、620nmバックグラウンドに対して450nmでの吸光度を読み取り、この結果を分析した。Microsoft Excelを使用して、データの平均及び標準偏差を計算した。陰性対照に対して多重比較を伴う通常の一元配置ANOVAを使用して、群間の有意差を計算し、p<0.05を統計学的に有意とみなした。
【0097】
グリコーム分析
FL133及び134mAbの微細特異性を明らかにするために、抗体をFITC標識し、Consortium for Functional Glycomics(http://www.functionalglycomics.org/static/consortium/resources/resourcecoreh8.shtml])に送り、ここでそれらを≧600種類の天然及び合成グリカンに対してスクリーニングした。簡潔に述べると、アミノリンカーとともに合成及び哺乳動物グリカンをN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化ガラス顕微鏡スライド上にプリントし、アミド結合を形成させた。この作業は、Emory UniversityのCFGのCore Hにより行われた。FG27を、室温にてPBS中1μg/mlで試験した。簡潔に述べると、マイクロアレイのプリント面に抗体試料を適用し、加湿チャンバー中で1時間インキュベートした。次に、このスライドをPBSで4回すすぎ、続いて蛍光標識された(Alexa Fluor 488)抗ウサギIgGを添加し、1時間インキュベートした。次にこのスライドをPBS中で4回すすぎ、Perkin-ElmerマイクロアレイXL4000スキャナーで蛍光を測定し、Imageneソフトウェア(BioDiscovery)を使用して分析した。
【0098】
使用したプロトコールのさらなる詳細を以下で示す:
非標識モノクローナル抗体によるグリカン結合アッセイ
1.導入:
1.1.Core Hの主目的は、プリントされたグリカンマイクロアレイを使用して、研究者により提出されるグリカン結合タンパク質(GBP)及び様々な生物の結合特異性を決定することである。
【0099】
2.参考文献:
2.1.www.functionalglycomics.org
【0100】
3.必要な材料:
3.1.グリカンがプリントされたスライド(Core D)、白色で刻印されたバーコード及び黒字で-この面に触れないでください(DO NOT TOUCH THIS AREA)と記載されている側のスライド面上にプリント。
3.2.カバースリップ(Fisher scientific,12-545F)
3.3.加湿されたスライドプロセシングチャンバー(Fisher scientific,NC9091416)又は、チャンバーの底部に湿った紙タオルが置かれたペトリ皿を使用する自家製の系
3.4.スライドを洗浄するための100mlコプリンジャー
3.5.Tris-HCl(Fisher scientific,BP152-1)
3.6.NaCl(Fisher scientific,S271-3)
3.7.CaCl2(Fisher scientific,C79-500)
3.8.MgCl2(Fisher scientific,BP214-500)
3.9.一塩基性リン酸カリウム(Fisher scientific,P285-3)
3.10.dH20
3.11.シアニン5-ストレプトアビジン(ZYMED43-4316)
3.12.適切な二次抗体、必要に応じて蛍光標識
3.13.BSA(Fisher scientific,Bp1600-100)
3.14.Tween-20(EMD Biosciences,655205)
3.15.アジ化ナトリウム(fisher scientific,S227-500)
3.16.ProScanArray Scanner(Perkin Elmer)
4.緩衝液:
4.1.TSM=20mM Tris-HCl、pH7.4 150mM NaCl、2mM CaCl2、2mM MgCl2
4.2.TSM洗浄緩衝液(TSMW)=TSM緩衝液+0.05%Tween-20
4.3.TSM結合緩衝液(TSMBB)=TSM緩衝液+0.05%Tween20+1%BSA
5.プロトコール:
5.1.洗浄緩衝液の作業用保存液を作製(TSM、TSM洗浄緩衝液及びH2O)又は試薬を集め、それらが冷蔵庫に入っている場合は室温にする。
5.1.1.緩衝液(A)TSM-20mM Tris-HCl、pH7.4 150mM NaCl、2mM CaCl2、2mM MgCl2
5.1.2.緩衝液(B)TSM洗浄緩衝液(TSMW)-TSM緩衝液+0.05%Tween-20
5.1.3.緩衝液(C)TSM結合緩衝液(TSMBB)-TSM緩衝液+0.05%Tween20+1%BSA
5.1.4.dH2O
5.2.5~50μg/mlの最終濃度又は分析に必要とされる適切な濃度となるように、抗体の特性に基づいてTSMBB又は適切な結合緩衝液中で抗体を希釈することによって100μlの試料を調製。
5.3.スライドをデシケーターから取り出し、スライドの黒い印の外側のバーコードの付近に試料名を書く。
5.4.スライドを100mlのTSMWを含有するガラスコプリン染色ジャー中に5分間入れることによってスライドを水和する。
5.5.スライドをまっすぐ立てて液体を流出させることによりスライドから過剰な液体を除去する。
5.6.黒い印の間で左端のスライド近くに70μlの試料を慎重に適用する(5.2参照)。
5.7.カバースリップの下で試料中に気泡が形成されないようにカバースリップをスライド上にゆっくりと置く。必要に応じてピペットチップでカバースリップを穏やかにタッピングするか又はカバースリップの片側をゆっくりと持ち上げることによって気泡を全て除去する。カバースリップが黒い印の間にあることを確実にする。
【0101】
薄層クロマトグラフィー(TLC)
1μg/レーンの精製脂質又はWC TGL(細胞1×106個/レーン)又は上記のように細胞株から抽出されたPM TGL(細胞1×107個/ウェル)をTLCプレート(TLCプレート上のナノシリカゲル)にロードした。大量の細胞由来TGLのローディングを助けるために、60℃に設定した加熱ブロックを使用してTGLを最初に乾燥させ、次いで最大20μLの2:1クロロホルム/メタノール中で再懸濁した。ローディング後、プレートを、溶媒1(クロロホルム:メタノール:dH2O、60:30:5)中で2回展開することによって脂質を5cmの距離まで移動させ、溶媒2(ヘキサン:ジエチルエーテル:氷酢酸、80:20:1.5)中で1回、8cmの距離まで移動させた。次に、脂質を、120℃にて20分で発色させるオルシノール(20mlの5%H2SO4中20mgオルシノール)又は免疫ブロッティングの何れかによって可視化した。
【0102】
免疫ブロッティングの場合、糖脂質を移動させた後、TLCプレートを最初にアセトン中のポリイソブチルメタクリラート50mg/50mlの薄い噴霧コートでブロッキングした。次に、PBS中の1%(w/v)BSA中、RTで1時間インキュベートすることによって、プレートをさらにブロッキングした。次に、一次抗体(プレートあたり10ml中10μg)又はマウス血清(プレートあたり10ml中で1/100希釈)中でプレートをインキュベートし、これを抗マウスIgGビオチン(1/1000)及びロバ抗マウスIRD 800 CW(LICOR Biosciences Ltd,Cambridge,UK)によって検出した。穏やかに揺らしながら各抗体のインキュベーションを行い、1時間継続した。暗所で三次抗体のインキュベーションを行った。全ての抗体をPBS中の1%(w/v)BSA中で調製した。各抗体のインキュベーション後、PBSを直接プレート上に注ぐことによってプレートを洗浄した。最後に、プレートを洗浄し、暗所で一晩乾燥させ、Odyssey SA Infrared Imaging System(LICOR)により分析した。
【0103】
抗体及び補体依存性細胞傷害
死細胞の原形質細胞膜の透過性の増加によって死細胞により放出される放射性標識クロム酸ナトリウム(Cr51)を使用して通常の食塩水中で抗体及び補体依存性細胞傷害を評価した。詳細には、2×106個の標的細胞を40μl(1mBq)のCr51(Perkin Elmer,Cambridge,UK)で標識し、最短でも1時間、37℃でインキュベートした。インキュベート後、1400×gで5分間、標識された標的細胞を25mlのSF RPMI培地中で2回洗浄した。次にこれらを25mlのSF RPMI培地中で再懸濁し、37℃で20分間静置した。次にこれらを再び遠心分離してSF RPMI培地を除去し、1mlの培養培地(10%FCS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI)中で再懸濁し、計数した。最後に、標識した標的細胞を細胞1×105個/1mlになるように再懸濁し、50μl(細胞5×103個)を96ウェル丸底プレートの適切なウェルに添加した。抗体の希釈液を、作業用希釈液が確実に最終濃度の4倍になるように培養培地中で調製した。希釈抗体の50μlの体積を適切なウェルに添加した。
【0104】
末梢単核細胞(PBMC)を、緑色のキャップが付いたヘパリンコーティングされたバキュテイナーチューブ(BD,Plymouth,UK)を使用して、実験日に健康なボランティアから単離した。最初に全血をSF RPMI中で1:1に希釈した。PBMCを分離するために、50mlファルコンチューブ中で25mlの希釈血液を穏やかに15mlのHistopaque -1077の上に層状に重ねた。加速を1に設定し、減速を0に設定して2100×gで20分間、血液を遠心分離した。次に、10mlピペットを使用してPBMCを含有するバフィーコートを回収し、2000×gで5分間、20mlのSF RPMI中で2回洗浄した。次に、PBMCを計数し、細胞5×106個/1ml培養培地で再懸濁し、100μlの細胞を適切なウェルに添加した。
【0105】
血清を調製するために、健康なボランティアからの血液を赤いキャップ付きの凝固活性化因子含有バキュテイナーチューブ(BD,Plymouth,UK)に回収した。凝固した血液を30mlのユニバーサル容器に移し、全ての赤血球細胞が確実に除去されるように2000×gで5分間、2回遠心分離した。最後に、培養培地中20%血清を調製し、100μlを適切なウェルに添加した。
【0106】
1滴(25μl)のTriton X-100を50μlの標識された標的細胞及び125μlの培地に適用することにより、最大細胞死を誘導した。50μlの標識した標的細胞を150μlの培養培地中でインキュベートすることによって自然な細胞死を評価した。直接的なPBMC誘導性の殺滅レベルを評価するために、100μlのPBMC及び50μlの培養培地とともに50μlの標的細胞をインキュベートした。
【0107】
プレートを37℃で24時間インキュベートし、その後、50μlの上清をLumaplateに移し、24時間乾燥させた。次に、TopCount Scintillation Counter(Perkin Elmer,Cambridge,UK)を使用して、Lumaplateを分析した。
【0108】
親和性研究
Biacore X(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)により表面プラズモン共鳴(SPR)の原理を使用して、親和性定数を決定した。製造者の説明書に従い、アミンカップリングを介して、多価HSA-Fuc-GM1コンジュゲート(5μg/mlの社内コンジュゲート、686応答単位/チップ)をCM5バイオセンサーチップのフローセルにカップリングさせた。同様に処理したがコンジュゲートを含まない参照フローセルを参照セルとして使用した。50μl/minの流速でFuc-GM1でコーティングしたフローセルを使用して、HBS-P緩衝液(10mmol/L HEPES、pH7.4、150mmol/L NaCl、0.005%界面活性剤P20)中で希釈し、透析した抗体のいくつかの既知の濃度から、結合速度論パラメーターを決定した。Biacore機器により提供されたカーブフィッティングソフトウェア(BiaEvaluation)を使用して、会合及び解離速度の推定値を生成し、そこから二価検体モデルを使用して親和性を計算する。
【0109】
データ分析
一元配置ANOVAダネットの多重比較検定を使用して、ELISAの結果の統計学的有意性を決定した。差異は、P<0.05のレベルで統計学的に有意であるとみなした。*の印はP≦0.05を表し、**の印はP≦0.01を表し、***の印はP≦0.001を表し、****の印はP≦0.0001を表す。
【0110】
血液に対する結合:50μlの健康なドナー血液を50μl一次抗体とともに4℃で1時間インキュベートした。血液を150μlのRPMI 10%NBCSで洗浄し、1,000rpmで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、50μl FITCコンジュゲート抗マウスIgG Fc特異的mAb(RPMI 10%NBCS中1/100)を二次抗体として使用した。細胞を4℃の暗所で1時間インキュベートし、次いで150μl RPMI 10%NBCSで洗浄し、1,000rpmで5分間遠心分離した。上清を廃棄した後、50μl/ウェルのCal-Lyse(Invitrogen,Paisley,UK)を使用し、続いて500μl/ウェル蒸留水を使用して赤血球細胞を溶解させた。引き続いて1,000rpmで5分間血液を遠心分離した。上清を廃棄し、0.4%ホルムアルデヒドを使用して細胞を固定した。FC-500フローサイトメーター(Beckman Coulter)上で試料を分析した。生データを分析し、プロットするために、WinMDI 2.9ソフトウェアを使用した。
【0111】
RNA抽出及びcDNA合成
ハイブリドーマ FL134.33、FL133.63及びFL133.67からの細胞およそ1×106個を組織培養から採取し、PBS中で1回洗浄し、500μLのトリゾール(life technologies)で処理した。ホモジナイズした試料を0.1mlのクロロホルムで処理し、遠心分離して、混入DNA及びタンパク質からRNAを分離した。0.25mlのプロパン-2-オールを使用してRNAを沈殿させ、遠心分離して小さなペレットを形成させた。次に、エタノール75%でペレットを洗浄し、RNAseフリー水中で再懸濁した。製造者の推奨に従い、RNAをDNAase(DNAse I組み換え、RNaseフリー、Roche)で処理してゲノムDNAを除去した。製造者の説明書に従い、オリゴ(dT)15プライマーとともにAMV逆転写酵素キット(Roche Diagnostics.Basel,Switzerland)を使用して、1μgの総RNAからファーストストランドcDNAを調製した。cDNA合成後、95℃で5分間のインキュベーションによって酵素を変性させた。次にcDNAを-20℃で保管した。
【0112】
可変領域PCR
アイソタイピング試験キット(Serotec.Kidlington,UK)によって抗体を事前に評価し、FL134.33がサブタイプIgG1であり、FL133.63及び133.67がIgG3(データは示さない)であると決定された。以前に公開されたプライマーセット(Jones & Bendig,1991)を使用してPCRによって可変領域を決定した。軽鎖に対して13個のVK領域特異的プライマー及び1個のCK特異的プライマー及び重鎖に対して12個のVH領域特異的プライマー及び1個の定常領域サブクラス特異的プライマーを用いてPCR増幅を行った。1Uのポリメラーゼ(AmpliTaq Gold 360,Applied Biosystems.California,USA)、各0.2mMの最終濃度の2’-デオキシヌクレオシド5’-トリホスフェート(dNTP)の混合物、1.5mMの最終濃度の塩化マグネシウム及び1μMのフォワード及びリバースプライマーの両方を使用して、50μl PCR反応を設定した。反応のホットスタート段階を95℃で5分間行った。次に、増幅を35サイクル行った:94℃で1分間、続いて60℃で1分間及び72℃で2分間。最後に、72℃で20分間、ポリッシング段階を行った。臭化エチジウムを有するTAE緩衝液中の1%UltraPureアガロース(Invitrogen.Carlsbad,USA)を用いて調製したアガロースゲル電気泳動を使用し、90ボルトで泳動して、増幅産物を評価した。UV透過照明を使用してゲルを可視化した。
【0113】
PCR生成物の精製(重鎖及び軽鎖)
残留ヌクレオチド又はプライマーのキャリーオーバーを回避し、明確な配列グラフを得るために、QIAquick Gel抽出キット(Qiagen.Venlo,Netherlands)を使用してPCR生成物を精製した。150μlの重鎖及び軽鎖PCR生成物を1%アガロースゲルにロードし、85ボルトで泳動した。DNA断片をゲルから切り出し、溶解し、製造者のプロトコールに従ってカラム上で精製した。得られたDNAの最終濃度をUV分光法(Nanodrop,Thermoscientific.Waltham,USA)により決定した。
【0114】
プルーフリーディングPCR
プルーフリーディングPCRを行うためのプライマーを、配列データに基づき、読み枠を維持し、アミノ酸配列を保存するように設計した。開始コドン、翻訳過程開始のためのKozakコンセンサス配列を考慮し、二重発現ベクターへの組み込みを可能にするための制限酵素部位を組み込んだ。鋳型としてcDNAを用いてクローニングプライマー及びプルーフリーディングポリメラーゼ(PHUsion,NEB.Ipswich,UK)を使用してPCR増幅を行った。この反応は、生成物の収率を改善するために3つ組で行った。前に述べたように50μLの反応を設定した。98℃で3分間、ホットスタート段階を行った。次に、増幅を35サイクル行った:98℃で30秒、続いて58℃で30秒及び68℃で60秒。72℃で10分間、ポリッシング段階を行った。
【0115】
PCR生成物のTOPOクローニング
プルーフリーディングポリメラーゼによって作製したPCR産物を、製造者の説明書に従い、Taqポリメラーゼ(NEB)により72℃で15分間処理して、アデニンオーバーハングを付加し、TA(TOPO)ベクター(pCR2.1,Invitrogen)にクローニングし、その後の酵素消化及びpDCOrig-hIgG1ベクターへのライゲーションのために、化学的コンピテントTOP10F細胞へと形質転換した。80μg/mlのアンピシリンを添加したLB寒天プレート又は液体培地中で、形質転換細菌を増殖させた。
【0116】
核酸の精製
適切な抗体を添加した液体培養中の形質転換細菌の37℃及び120rpmでの一晩培養物から、プラスミドDNAを調製した。両方とも製造者の説明書に従い、spiniミニプレップキット(Qiagen)を使用して少量を調製し、プラスミドマキシキット(Qiagen)で大量の調製を行った。製造者の手順に従い、以前に記載されたアガロースゲル電気泳動及びDNAを回収するためのゲル抽出キットの使用によってDNAの精製を行った。
【0117】
制限酵素消化及び二重発現ベクターのクローニング
DNAの酵素消化は、ウシ血清アルブミン(BSA)及び各酵素自身の最適緩衝液の存在下で、10μLのDNAについて、各制限酵素の8単位を添加して行った。各酵素の活性温度で2時間、インキュベーションを行った。二重発現ベクターPDCOrig-hIgG1及び軽鎖インサートを消化し、アガロースゲルで精製し、製造者の指示に従い、T4 DNAリガーゼ(NEB)を使用して16℃で一晩ライゲーションを行った。ベクター及び重鎖の第2の消化後に、ゲル抽出を介した別の精製及び16℃で一晩の第2のライゲーションを行った。各消化後、ベクターを化学的コンピテントTOP10F細胞(Invitrogen)に形質転換した。35μg/mlのゼオシン(Invivogen)を添加したLB寒天プレート又は液体培地中で、形質転換細菌を増殖させた。
【0118】
キメラ化抗体ベクターのシーケンシング及びトランスフェクション
PCR産物及びプラスミドを、University of Nottingham DNAシーケンシング施設で適切な5’及び3’プライマーを使用してシーケンシングし、GeneToolソフトウェアパッケージ及びマウス免疫グロブリンヌクレオチド配列に対するIMGTデータベースを使用して分析した。リポフェクタミン(Invitrogen)及びOpti-mem血清低減培地(Gibco,Life technologies.Waltham,USA)を使用して、CHO細胞をトランスフェクトした。それが消費されるまで、細胞を、CHO-S-SFMII培地(Gibco)中で、培地が消費されるまで浮遊培養した。上清を回収し、プロテイン-Gセファロース充填済みカラム(HiTrapプロテインG HP、GE Healthcare)を使用する分取クロマトグラフィー(Akta FPLC,GE Healthcare,Little Chalfont,UK)によって抗体を精製した。精製後、抗体を透析し、UV分光法によって最終収率を決定した。
【0119】
実施例1-FUC-GM1 mAbの作製及び最初の特徴付け:
i.p投与されるマウスの免疫あたり10μgフコシルGM1含有する古典的リポソームによってマウスを免疫した。1回目及び3回目の免疫ではアルファ-GalCerをアジュバントとして使用し、一方で2回目及び4回目の免疫では抗CD40mAbをアジュバントとして使用した。全てのマウスに4回の免疫を行った。最初の3回の免疫を2週間間隔で行い、最後の免疫は3回目の4週間後に行った。2回目の免疫以降、免疫から1週間後にマウスから採血し、血清を、精製フコシルGM1へのIgG及びIgM結合についてELISAによってスクリーニングした。免疫後、マウスは、エンドポイント抗体価1/100でフコシルGM1に対する顕著なIgG免疫応答を生じた。マウス血清IgGを、フコシルGM1を発現するDMS79細胞株の細胞表面に対する結合についても評価した。残念ながら、細胞株に対して弱い結合しか見られなかった。マウス血清は、脂質が細胞の原形質膜に組み込まれると近づくことができないフコシルGM1抗原のエピトープを認識したと推定することが可能である。
【0120】
リポソームに組み込まれた精製糖脂質が高い抗体価のIgG応答を生成することができなかったので、他の免疫方法を評価した。伝統的に、炭水化物及び糖脂質は、主にIgM抗体応答を誘発するT細胞非依存性抗原としてクラス分けされる。高親和性IgG抗体応答は、主にタンパク質抗原に応答して生じる。従って、関連するT細胞の助けがあれば、炭水化物及び糖脂質抗原に対してより大きくより一貫した高親和性IgG抗体応答を生成すると仮定された。従ってフコシルGM1をヒト血清アルブミン(HSA)にコンジュゲートした。
【0121】
タンパク質に対するフコシルGM1のコンジュゲーションは2段階工程に従った。最初に、精製ガングリオシドフコシルGM1にオゾン分解を行い、ここで反応性オゾンが糖スフィンゴ脂質のスフィンゴシン部分に存在する炭素-炭素二重結合を酸化して、遊離アルデヒド基を生成させる。次の段階で、オゾン分解されたフコシルGM1を、還元性アミノ化の工程によってHSAにコンジュゲートした。これにより、オゾン分解されたフコシルGM1の新たに生成されたアルデヒドがHSAにおいてリジンの一級アミン基と反応できるようになり、不安定なシッフ塩基を最初に形成し、これを水素化ホウ素ナトリウムにより還元すると、非常に安定な2級アミン結合を形成する。コンジュゲートの作製の模式的な代表例を(
図4)で例示する。
【0122】
オゾン分解後、フーリエ変換質量分析(FTMS)によって、当初のフコシルGM1及びオゾン分解したフコシルGM1の両方からの試料を分析した。当初の試料は、脂肪酸鎖の長さが様々であるフコシルGM1のいくつかの種を含有した。最も豊富な種の分子量は1,746Daであった。オゾン分解試料もまた、様々なサイズの脂肪酸鎖を有する種も含有した。オゾン分解フコシルGM1試料において、主な種の分子量は1,566Daであり、正確に180Daの質量シフトを示し、これはスフィンゴシン部分の喪失に相当した。さらに、当初のフコシルGM1種は、オゾン分解試料では検出可能ではなかった(
図5)。炭酸-重炭酸緩衝液中で再懸濁したHSAにDMSO中で再懸濁したオゾン分解フコシルGM1を添加した。これに、還元剤、水素化ホウ素ナトリウム(H4BNa)を添加し、この反応を室温で8時間インキュベートし、次いで100μlのPBS/EDTA緩衝液中で再懸濁した。次に、スルホ-MBS架橋剤を添加し、室温で1時間インキュベートした。
【0123】
HSA-フコシルGM1コンジュゲートの作製の成功を、ELISA、ウエスタンブロッティング及び質量分析によって評価した。ELISAでは、HSAに対するIgG抗体を含有するマウス血清(1/10,000エンドポイント抗体価)により、当初のHSA並びに全ての3つのHSA-フコシルGM1コンジュゲート試料が検出され、一方で抗フコシルGM1 mAb F12(1/10,000エンドポイント抗体価)によってHSA-フコシルGM1コンジュゲートのみが検出された(
図6A)。ウエスタンブロット分析では、3つ全ての試料におけるHSA-フコシルGM1コンジュゲートの生成も確認された。抗HSAマウス血清は、当初のHSAに、還元性アミノ化に供されたがフコシルGM1が付加されなかったHSAに、HSA-LewisYコンジュゲートに、HSA-GD3コンジュゲートに、及びHSA-フコシルGM1コンジュゲートの3つ全ての試料に結合した。一方で、抗フコシルGM1 mAb F12はHSA-フコシルGM1コンジュゲートのみを検出し、それらは67kDaの予想サイズであった。この分析は、当初のHSAと比較した場合の、HSA-フコシルGM1コンジュゲートの分子量の僅かな上昇も示した。これは、HSAへのフコシルGM1分子の付加と一致した(
図6B)。
【0124】
Fuc-GM1含有リポソーム(10μg/免疫)及びFuc-GM1陽性SCLC細胞株DMS79(細胞1×106個/免疫)とともにHSA-Fuc-GM1コンジュゲート(10μg/免疫)によってマウスを免疫した。15匹のマウスを各群マウス3匹からなる5つの群に分け、タイプ及び順序が異なる免疫アジュバントを使用した。
【0125】
群1に、最初にFuc-GM1リポソームによって3回の免疫を行い、続いてHSA-Fuc-GM1コンジュゲートによって2回の免疫を行った。アジュバントとして、1回目の免疫でα-GalCerを使用し、続く2回の免疫では抗CD40を使用し、HSA-Fuc-GM1コンジュゲートに関しては、不完全フロイントアジュバント(IFA)をアジュバントとして使用した。細胞表面上のFuc-GM1を認識可能なmAbを生成させる機会を改善するために、群2を、最初に1×10
6個のDMS79細胞によって免疫し、続いてFuc-GM1含有リポソームによって2回免疫し、HSA-Fuc-GM1コンジュゲートによって2回免疫した。2回目及び3回目の免疫ではα-GalCerを使用し、一方でHSA-Fuc-GM1コンジュゲートについては不完全フロイントアジュバントを使用した。群3を、最初にHSA-Fuc-GM1コンジュゲートによって免疫し、続いてFuc-GM1リポソームによって免疫した。HSA-Fuc-GM1コンジュゲートでは完全フロイントアジュバントをアジュバントとして使用し、2回目の免疫ではアジュバントとして抗CD40を使用し、3回目ではα-GalCerを使用した。群4は、これらの抗原の順序を逆にし;マウスを最初にFuc-GM1リポソームによって2回免疫し、続いてHSA-Fuc-GM1コンジュゲートによって1回免疫した。最初の免疫ではアジュバントとしてα-GalCerを使用し、2回目では抗CD40、3回目ではIFAを使用した。群5では、HSA-Fuc-GM1コンジュゲートによって3回免疫した。1回目の免疫ではアジュバントとしてCFAを使用し、続く2回の免疫ではIFAを使用した。これらの群及びそれらの免疫原を(表1)でまとめる。
【表1】
【0126】
マウスを、i.p.経路を介して免疫した。最初の3回の免疫は2週間の間隔で行った。群1及び2には、3回目の6週間後に4回目の免疫、及び4回目から3週間後に5回目の免疫を行った。
【0127】
1回目を除く各免疫後、マウスの尾から採血し、ELISAによってHSA-Fuc-GM1コンジュゲートへの結合についてマウス血清IgGをスクリーニングした。さらに、発明者らは、(リジン残基に連結したFuc-GM1ではなくて)Fuc-GM1のみを認識するmAbを作製することを意図していたので、精製Fuc-GM1への結合についてもマウス血清をスクリーニングした。これらの分析は、全てのマウスがHSA-Fuc-GM1コンジュゲートに対してIgG免疫応答を生じた(エンドポイント抗体価1/10,000)が、所望の精製Fuc-GM1応答を生じたのは15匹のマウスのうち6匹のみであったことを示した。群1(3×リポソーム+2×コンジュゲート)からの2匹のマウスでは、精製Fuc-GM1に対する有意なIgG応答が検出され、両方ともエンドポイント抗体価は1/1,000であった。さらに、群2(DMS79細胞+2xリポソーム+2xコンジュゲート)からの2匹のマウスでは検出可能な抗体価が存在し、マウス2Pのエンドポイント抗体価は1/1000、及びマウス2Rの抗体価は1/100であり、G5(3xコンジュゲート)からの2匹のマウスでは、マウス5Pのエンドポイント抗体価は1/100及びマウス5Rの抗体価は1/1000であった。陽性抗Fuc-GM1応答を示すマウスからのデータのみを(
図7)で示す。
【0128】
血清分析により、6匹のマウスが精製Fuc-GM1に対してIgG免疫応答を発したことが示された。これらの抗体がインタクトな細胞原形質膜の状況でFuc-GM1も認識し得るか否かを評価するために、フローサイトメトリーによりDMS79細胞への結合についてこれらをスクリーニングした。この分析から、(DMS79細胞によって免疫され、その後リポソームによって2回及びコンジュゲートによって2回免疫された)群2からの2匹のマウスのみが、細胞表面上のFuc-GM1に結合し得る抗体を産生した(GM≒500)ことが示された。Fuc-GM1特異的IgG応答を生じた他の群では、生細胞の表面にも結合したものはなく、これにより、DMS79生細胞を免疫プロトコールに含めることは欠かせない価値があったことが示唆された(
図8)。
【0129】
有望な抗Fuc-GM1 IgG応答を示すデータの獲得後、マウス2Rを屠殺し、その脾細胞をNS0骨髄細胞と融合させた。融合の5日前に、リポソーム中の10μgのFuc-GM1及びα-GalCerをi.v投与してマウス免疫応答をブーストした。確立後、ELISAによって精製Fuc-GM1へのIgG抗体結合の産生について個々のハイブリドーマコロニーをスクリーニングした。抗体結合が最大である4つのハイブリドーマを同定し、細胞0.3個/ウェルで2回クローニングした。各ラウンドのクローニング後、ELISAによって、ハイブリドーマ上清を精製Fuc-GM1に結合するIgG抗体の分泌について再スクリーニングした(結果は示していない)。クローニング後、ハイブリドーマFL133.63、FL133.67及びFL134.33を選択し、増殖させ、ハイブリドーマ上清からmAbを精製した。アイソタイプ試験キットを使用して、mAb FL133.63及びFL133.67はIgG3、カッパであることが見出され、一方でmAb FL134.33はIgG1、カッパとして同定された。
【0130】
クローニング、増殖及び精製後、Fuc-GM1陽性癌細胞株の細胞表面へのこれらのmAbの結合を評価することは重要であった。全ての抗体を、直接比較を可能にするために、10μg/mlの同じ濃度で使用した。MAb FL133.63は、細胞株DMS79には強く結合したが(GM≒1000)、細胞株DMS53への結合は弱かった(GM≒100)。MAb FL133.67は、DMS79に強く結合したが(GM≒1000)、他のFuc-GM1陽性細胞株の何れにも結合しなかった。MAb FL134.33は、DMS79には強く結合し(GM≒1000)、H128には穏やかに結合し(GM≒300)、DMS53への結合は弱かった(GM≒100)。陽性対照mAb F12は、非常に強い染色強度を示す4つ全ての細胞株に結合し、DMS79に対してGM≒2000、DMS53に対してGM≒700、H128に対してGM≒500及び細胞株H69に対してGM≒100であり;全てのmAbのうち、mAb F12のみが細胞株H69に結合した。MAb FL134.33は、細胞株DMS53への結合より強い強度で細胞株H128に結合するという点で異常な挙動を示したが;DMS53は、細胞株H128よりも大量のFuc-GM1を発現することが報告され、この結果は本明細書においてmAb F12染色により確認された(
図9)。
【0131】
3つ全てのmAbを、健康なヒトボランティアの全血に対する結合についてスクリーニングしたところ、存在する有核細胞の何れに対しても結合は示さなかった。アイソタイプIgG1、IgG3及びF12を陰性対照として使用し、抗MHCクラス1mAbを陽性対照として使用した(
図10)。
【0132】
実施例2-Fuc-GM1 mAbにより認識されるエピトープの定義
Fuc-GM1に対するmAb、FL133.63、FL133.67及びFL134.33の特異性を、一連の利用可能な精製ガングリオシド、即ちFuc-GM1、GD3、GM1、GM3、GD1a、GT1b、Gb3及びラクトシルセラミドへの結合についてmAbを試験する糖脂質ELISAによって評価した。3つ全てのmAbが、1~0.01μg/mlの濃度でガングリオシドFuc-GM1のみを認識した。陽性対照mAb F12も1~0.01μg/mlの濃度でFuc-GM1を認識する。ガングリオシドGD3は、1~0.01μg/mlの濃度で陽性対照mAb R24によって検出された。ガングリオシドFuc-GM1、GM1及びGD1aは、1μg/mlで陽性対照コレラ毒素Bサブユニット(CTxB)によって検出された。GM3、GT1b、Gb3及びLacCerに特異的なIgG mAbはまだ作製されていない(
図11)。
【0133】
Fuc-GM1へのmAb、FL133.63、FL133.67及びFL134.33の結合をさらに検証するために、精製Fuc-GM1と細胞株DMS79上で発現されるこのガングリオシドとの間の競合アッセイにおいてそれらを評価した。この実験では、mAbを精製Fuc-GM1とともにプレインキュベートし、その後、それらをフローサイトメトリーにおける一次試薬として使用した。mAb FL133.63とガングリオシドFuc-GM1とのプレインキュベーションによって、DMS79細胞株へのその結合がGM=523からGM=4に低下し、mAb FL133.67の結合はGM=201からGM=3に低下し、mAb FL134.33の結合はGM=434からGM=29に低下し、陽性対照mAbF12の結合はGM=1195からGM=6に低下した。陰性対照mAb抗MHCクラス1とガングリオシドFuc-GM1とのプレインキュベーションは、DMS79細胞へのその結合に影響を及ぼさなかった(
図12)。
【0134】
FL133/134mAbの微細特異性をさらに明らかにするために、Consortium for Functional Glycomicsによって、これらを≧600種類の天然及び合成グリカンに対してスクリーニングした。グリカンアレイへのFL133.63の結合(
図13A)は、予想外に(表2)、FucGM1(遊離糖)をチップに直接結合させたFucGM1sp0(チャート番号63)、又はFucGM1(遊離糖)を炭素9個のスペーサーを介してチップに結合させたFuc-Gm1sp9(チャート番号64)に結合できなかったことを示した。
【表2】
【0135】
グリカンアレイへのFL134.33の結合(
図13B)は、予想外に(表3)、FucGM1(遊離糖)をチップに直接結合させたFucGM1sp0(チャート番号63)には結合できず、FucGM1(遊離糖)が炭素9個のスペーサーを介してチップに結合させたFuc-Gm1sp9(チャート番号64)には非常に弱く結合したことを示した。
【表3】
【0136】
最終的に、Fuc-GM1に対するこれらのmAbの特異性は、TLC分析によっても実証された。精製ガングリオシドFuc-GM1、精製ガングリオシドGM1及びDMS79 PM TGLをシリカプレート上にローディングした。3つ全てのFuc-GM1 mAbが、精製Fuc-GM1を認識し、DMS79 PM TGLに存在するバンドは精製Fuc-GM1と同じ距離を移動した。精製ガングリオシドGM1に結合した抗体はなかった。本明細書で生成されたFuc-GM1 mAbの認識パターンは、精製Fuc-GM1及びDMS79 PM TGLを認識する陽性対照mAb F12のパターンと同一であった。驚くべきことに、mAb F12も精製ガングリオシドGM1に弱く結合し、その結合は以前のアッセイでは検出されていなかった(
図14)。
【0137】
Biacore XによるSPRによって、それらの抗原に対する抗Fuc-GM1 mAbの親和性を決定した。3つの抗Fuc-GM1 mAbの作製のために当初使用されたHSA-Fuc-GM1コンジュゲートを、分析のための標的として使用した。コンジュゲートへの抗Fuc-GM1 mAbの結合を、ELISAによって確認した。(
図15)
【0138】
HSA-Fuc-GM1コンジュゲートをCM5バイオセンサーチップにカップリングするために、チップを最初にHSB-P緩衝液で洗浄し、その後、架橋剤EDC-NHSを適用した。次に、酢酸4.5カップリング緩衝液中で希釈したHSA-Fuc-GM1コンジュゲートを、20μg/mlでフローセルに注入した。5μlの体積の注入後に、コンジュゲートの686応答単位をチップに結合させた。最終的に、未反応のカップリング剤をエタノールアミンによりブロッキングした。HSA-Fuc-GM1をコーティングしたフローセルを使用して、HBS-P緩衝液中で希釈した抗体のいくつかの既知の濃度から、結合速度論パラメーターを決定した。Biacore装置とともに提供されるカーブフィッティングソフトウェア(BiaEvaluation)を使用して、結合及び解離速度の推定値を生成させ、これから、最もよく適合するbivalent analyte modelを使用して親和性を計算した。このモデルは、二価タンパク質に対する親和性を計算するが、抗体の第1のアームの結合に対する意味のあるデータを計算することのみ可能である。このモデルによれば、Fuc-GM1 mAbは、平均結合速度定数kon(Ab FL133.63に対して3.56x10
4Ms
-1、mAb FL133.67に対して9.43x10
3Ms
-1及びmAb FL134.33に対して2.01×10
3Ms
-1)を有するが、解離速度定数koffが非常に速く(mAb FL133.63に対して0.0637s
-1、mAb FL133.67に対して0.0783s
-1及びmAb FL134.33に対して0.117s-1)、そのためこれらのmAbに対する機能的親和性は全体的に低い(mAb FL133.63に対して1.8×10
-6M、mAb FL133.67に対して8.3×10
-6M及びmAb FL134.33に対して5.8×10
-5M(表4)。
【表4】
【0139】
3つのFuc-GM1抗体のEC
50及び平衡解離定数(Kd)を、精製Fuc-GM1及びDMS79細胞においてそれぞれそれらを滴定することによって決定した(
図16)。Fuc-GM1 ELISAからのEC
50値及びDMS79細胞でのフローサイトメトリー分析により表される機能的親和性は、SPR評価により与えられた親和性よりも高かった。MAb FL133.63はFuc-GM1 ELISAにおいて1×10
-9のEC
50を有し、DMS79細胞においてKd=7.5×10
-9を有した。これは、SPRにより確立された親和性よりも1000倍高い。MAb FL133.67は、Fuc-GM1 ELISAにおいて2.1×10
-9のEC
50を有し、DMS79細胞においてKd=1.2×10
-8を有した。これは、SPRにより確立された親和性よりも100~1000倍高い。MAb FL134.33は、Fuc-GM1 ELISAにおいて9.2×10
-10のEC
50を有し、DMS79細胞においてKd=6.3×10
-9を有した。これは、SPRにより確立された親和性よりも10,000倍高い。これらの結果から、SPR分析は1価抗体結合を測定したことが示唆される。細胞表面上の抗原に結合する場合、抗体のアビディティは大きく促進される。
【0140】
実施例3-機能的アッセイ
3つ全てのFuc-GM1 mAbがDMS79細胞株に結合したことから、それらのエフェクター機能を確立することも重要であった。Mab FL134.33(IgG1)は、ADCCにより50%~80%の細胞傷害性(ドナーに依存)を実証したが、CDCによる細胞傷害性はわずか20%であった。mAb、FL133.63(IgG3)及びFL133.67(IgG3)はいずれも、ADCCにより20%の細胞傷害性を示したが、60~80%の細胞傷害性がCDCによって媒介された。これらの結果は、IgG1アイソタイプのmAbがADCCの誘導においてより強力であり、IgG3アイソタイプのmAbがCDCの誘導においてより強力であることを示した以前に報告された試験と一致する(Lopez et al.,1983,Niwa et al.,2005,Bruggemann et al.,1987,Natsume et al.,2008)。対照的に、陽性対照のマウスmAb SC101(IgG1)は、DMS79細胞の70%ADCC媒介及び80%CDC媒介細胞傷害性を示した(
図17)。
【0141】
実施例4-キメラmAb
MAbFL133.63、FL133.67及びFL134.33のシーケンシングを行い、VH及びVL鎖の配列を、プログラムIMGT/V_QUESTを使用して生殖系列IgG抗体の配列と比較した。全体として、全てのデータが体細胞高頻度突然変異の証拠を実証し、幾分かの親和性成熟の存在も示唆する。3つ全てのFuc-GM1抗体のVH鎖は遺伝子V3、サブグループ1及びアレル02にマッピングされた。生殖系列配列と比較して、mAb FL134.33のVH領域は、14個の置換突然変異及び7個のアミノ酸の変化を含有し、mAb FL133.63は8個の置換突然変異及び6個のアミノ酸の変化を含有し、一方でmAb FL133.67は、6個の置換突然変異及び4個のアミノ酸の変化を含有した(
図18及び表5)。
【0142】
FR2において、3つ全てのmAbは、アミノ酸変化M53>Vをもたらすトランジション突然変異a157>gを含有した。CDR2において、3つ全てのmAbは、アミノ酸変化S59>Rをもたらすトランスバージョン突然変異a157>c、及びアミノ酸変化S64>Nをもたらすトランジション突然変異g191>aを含有した。FR3において、3つ全てのmAbは、サイレントトランスバージョン突然変異t231>a、アミノ酸変化S83>Yをもたらすトランスバージョン突然変異c248>a及び最後にサイレントトランジション突然変異c309>tを含有した。
【0143】
MAb FL134.33はまた、FR1において、アミノ酸変化D1>Aをもたらすトランスバージョン突然変異a2>c、サイレントトランジション突然変異g9>a及びサイレントトランジション突然変異c69>tを含有し;FR3において、サイレントトランジション突然変異c198>t、アミノ酸変化I76>Vをもたらすトランジション突然変異a226>g、サイレントランジション突然変異g267>a、サイレントトランジション突然変異g273>a及びアミノ酸変化V94>Lをもたらすトランスバージョン突然変異g280>cを含有した。
【0144】
MAb FL133.63はまた、アミノ酸変化F87>Lをもたらすトランジション突然変異t259>c及びアミノ酸変化Q90>Rをもたらすトランジション突然変異a269>gを含有した。
【表5】
【0145】
3つ全てのFuc-GM1抗体のVL鎖は、遺伝子K5、サブグループ39及びアレル01にマッピングされた。生殖系列配列と比較して、mAb FL134.33のVL領域は、10個の置換突然変異及び6個のアミノ酸の変化を含有し、mAb FL133.63は、7個の置換突然変異及び6個のアミノ酸の変化を含有し、一方でmAb FL133.67は、7個の置換突然変異及び6個のアミノ酸の変化を含有した(
図19及び表6)。
【表6】
【0146】
CDR1において、3つ全てのmAbは、アミノ酸変化Y38>Dをもたらすトランスバージョン突然変異t112>gを含有した。CDR2において、3つ全てのmAbは、アミノ酸変化A57>Vをもたらすトランジション突然変異c170>tを含有した。FR3において、3つ全てのmAbは、アミノ酸変化S90>Tをもたらすトランスバージョン突然変異g269>c及びサイレントトランジション突然変異g303>aを含有した。
【0147】
MAb FL134.33はまた、FR1においてアミノ酸変化A9>Dをもたらすトランスバージョン突然変異c26>a;FR2においてサイレントトランジション突然変異g153>a;CDR2においてサイレントトランジション突然変異c195>t;FR3においてアミノ酸変化G84>Rをもたらすトランジション突然変異g250>a及びg252>a及びアミノ酸変化V101>Lをもたらすトランスバージョン突然変異g301>cも含有した。
【0148】
MAb FL133.63はまた、FR1においてアミノ酸変化T5>Sをもたらすトランスバージョン突然変異c14>g;CDR1においてアミノ酸変化S36>Gをもたらすトランジション突然変異a106>g及びFR3においてアミノ酸変化D86>Yをもたらすトランスバージョン突然変異a256>tも含有した。
【0149】
MAb FL133.67はまた、FR1においてアミノ酸変化T5>Sをもたらすトランスバージョン突然変異c14>g;アミノ酸変化S67>Yをもたらすトランスバージョン突然変異c200>a及びアミノ酸変化N92>Kをもたらすトランスバージョン突然変異c276>gも含有した。
【0150】
可変領域配列が得られているこの3つの抗体の中から、キメラ化のために選択した抗体はFL134.33であった。抗体の両方の配列のクローニングを可能にするために、プライマーをそれらに対して特異的に設計しなければならず、制限酵素部位をそれらに組み込まれなければならなかった。二重発現ベクターは、軽鎖に関して酵素BamHI及びBsiWI、及び重鎖に関して酵素HindIII及びAfeIに対する制限部位を含有する。プライマー可変領域インサートは、消化後にベクターのオーバーハングと適合するオーバーハングを生成する部位も有しなければならない。しかしFL134.33の場合、BamHIによる消化のための制限部位は、前記部位が軽鎖の内部配列にも存在したので、プライマーに付加することができなかった。そのため、BamHIのオーバーハングと適合するオーバーハングを生成する代替的な消化部位が必要であった。前記特徴を有する制限酵素はBglIIであることが見出された。
【0151】
PCR増幅及びその後のクローニング手順を行うために設計され、使用されるプライマーは、BglII制限部位を含む軽(κ)鎖フォワードプライマー5’-ATTAAGATCTAAGATGGTGTCCACTTCTCAGCTC-3’であり、BsiWI制限部位を含む軽(κ)鎖リバースプライマー5’-AATTCGTACGTTTGATTTCCAGC TTGGTGCCT-3’であった。さらに、5’-TAATAAGCTTAAGATGAGAGTGCTGATTCTTTTG-3’は、HindIII制限部位を含む重鎖フォワードプライマーであり、5’-AGAGCAGCGCTGGAGACGGTGACT GAGGT-3’は、AfeI制限部位を含む重鎖リバースプライマーであった。フォワード及びリバースプライマーの両方を用いて、及びプルーフリーディングポリメラーゼを使用して、PCR反応を設定した。アガロースゲル電気泳動における生成物の存在によって、軽及び重鎖の両方の増幅を確認した。重鎖及び軽鎖をTOPOベクターにクローニングし、選択的増殖のためにアンピシリンを添加した化学的コンピテント細胞に形質転換した。軽鎖を保有する6個のコロニー及び重鎖を保有する6個のコロニーを選択して液体培養中で増殖させ、ミニプレップによってプラスミドDNAを調製した。BamHIの内部制限部位が表す長所によって、酵素消化は、正確な配列が実際にベクターにクローニングされたか否かを知る確信的な方法を証明し得る。次に、EcoRI(クローニング部位の5’及び3’両末端に2つの部位が存在)及びBamHI+BsiWI(それぞれ、配列の中ほどの内部部位及びプライマー組み込み部位)を使用して酵素消化を行い、アガロースゲル電気泳動によって評価した。ベクターのEcoRI消化は、軽鎖についてスクリーニングした2個のコロニー、及び重鎖についてスクリーニングした3個のコロニーにおいて予想されるサイズ(400bp)の配列を示した。BamHI+BsiWIは、軽鎖についてスクリーニングした2個のコロニー及び重鎖についてスクリーニングした3個のコロニーにおいて予想されるサイズ(200bp)の配列を示した。シーケンシングを介した正確なクローニングの確認後、各重鎖及び軽鎖の1個のコロニーを選択し、後のマキシプレップを介したプラスミドDNA調製のために、アンピシリン添加培地中で一晩増殖させた。
【0152】
二重発現ベクターへのPCR産物の直接的なクローニングは、以前に相対的に非効率的であることが示されているが、それが適切に作用すると期待してそれでもなおクローニングを試行した。pDCOrig-hIgG1ベクターへの軽鎖のPCR産物のクローニング後、形質転換を行い、ゼオシン添加培地中で細胞を一晩培養した。ミニプレップによりプラスミドDNAを調製し、続いてBamHI及びBsiWIによりプラスミドの酵素消化を行った。予想は、正確な重鎖がベクターに組み込まれれば、小さな200bpバンドがゲル上に現れるということであった(配列中に存在する内部BamHIから)。しかし重鎖が組み込まれず、当初の鎖がベクター中に残存した場合、これは400bpのバンドを示す(当初の配列は内部BamHI部位を欠いた)。少数のコロニーが正確なインサートの予想されるバンド(bad)を示し、後の配列は、ベクターへの軽鎖の直接クローニングの成功を確認した。この後、1個のコロニーを選択し、後のマキシプレップを介したプラスミドDNA調製のために、ゼオシン添加培地中で一晩増殖させた。
【0153】
軽鎖がpDCOrig-hIgG1ベクターに組み込まれたことが確認されるまでに、重鎖のTOPOクローニングも準備し、プラスミドを調製した。そして、PCR産物の直接クローニングを試す代わりに、重鎖を、アガロースゲル精製及び抽出を介して、予め調製したTOPOベクターの酵素HindIII及びAfeIによる酵素消化を介して得た。重鎖のゲル精製配列を、軽鎖を含有するpDCOrig-hIgG1ベクターにクローニング後、形質転換を行い、ゼオシン添加培地中で細胞を一晩培養した。プラスミドDNAをミニプレップにより調製し、続いてHindIII+AfeI及びHindIII+BamHI+AfeIによって酵素消化した。予想は、2つのみの酵素では消化によって約400bpのバンドが示され、3つの酵素では(重鎖はその中ほど周辺にBamHI部位も含有するので)約200bpのバンドが示されることであった。小さい200bpを示したコロニーをシーケンシングのために送付し、正確なクローニングの確認後、それらのうち1個を選択し、後のマキシプレップを介したプラスミドDNA調製のために、ゼオシン添加培地中で一晩増殖させた。プラスミド調製の収率は分光法により776ng/μlであると決定された。抗体FL134.33の軽鎖及び重鎖の両方の配列を確認した後、プラスミドを使用してCHO細胞をランスフェクトした。
【0154】
配列が、ヒト定常領域にカップリングした予想されるマウス重鎖及び軽鎖可変領域を含むことを確認した後、一過性のトランスフェクションを行った。キメラ抗体CH134.33を含有する15μgのベクターを、リポフェクタミンの存在下でCHO-S細胞とともにインキュベートし、500mlの培地中で1週間浮遊培養した。mAbを含有する上清をプロテインGカラム上で精製し、pH8で溶出した。抗体の最終収量は0.4mgであった。
【0155】
抗体機能に関するアッセイ
マウス型とキメラ型との間で、並びに3つのマウス抗体間で直接比較を行うために、アッセイで試験したmAbは次の通りであった:FL134.33、FL133.63、FL133.67及びCh134.33。全ての抗体はFuc-GM1によく結合した(
図20)。これらの抗体は、様々なFuc-G
m1発現レベルを示す4つの細胞株DMS79、DMS53(ATCC.Middlesex,UK)、H128及びH69(ECACC.Salisbury,UK)に対する結合についても試験した。陽性対照は、市販の抗Fuc-Gm1(Fujirebio.Tokyo,Japan)であり、陰性対照は、マウスIgG1アイソタイプ(Dako.Stockport,UK)であった。最大のシグナルは、DMS79を除く全ての細胞株において陽性対照F12により与えられ、FL134.33がより強いことが示された。キメラch134.33は、DMS79細胞への良好な結合を示した(
図21)。
【0156】
【手続補正書】
【提出日】2022-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】