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特表2022-546768抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-08
(54)【発明の名称】抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221031BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221031BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221031BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221031BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221031BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221031BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221031BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221031BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221031BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221031BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20221031BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221031BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221031BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/08
C12Q1/02
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K47/68
G01N33/531 A
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514561
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2020074825
(87)【国際公開番号】W WO2021044014
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】10-2019-0109365
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】519039227
【氏名又は名称】ワイ-バイオロジクス・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506331240
【氏名又は名称】ピエール ファーブル メディカモン
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE MEDICAMENT
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ルキリ,ヌールディン
(72)【発明者】
【氏名】ベシュリエ-ティネ,フロランス
(72)【発明者】
【氏名】フェッレ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨンウ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ボムチャン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェウン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョンミ
(72)【発明者】
【氏名】キム,スヨン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR77
4B063QS33
4B063QS36
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA14
4C085AA27
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG05
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
新規抗VSIG4(VセットIgドメイン含有4)抗体または抗原結合フラグメントが開示される。処置方法を含むこれら抗体の使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号3、4および5の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
b)配列番号9、10および5の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
c)配列番号11、12および13の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号14、15および16の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
d)配列番号17、18および19の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号20、21および22の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
e)配列番号23、24および3の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号6、7および25の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
f)配列番号26、27および28の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号29、30および31の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
g)配列番号32、33および34の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号35、36および16の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
h)配列番号37、38および39の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号40、41および42の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
i)配列番号43、44および45の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号46、47および48の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
j)配列番号49、50および51の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号52、53および54の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
k)配列番号17、18および55の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号56、57および58の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体
からなる群から選択される、モノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
抗体が一本鎖抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体の間で選択される、請求項1のモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
抗体がヒト抗体である、請求項1または2のモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
抗体がIgA1抗体、IgA2抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、IgG4抗体およびIgM抗体の間で選択される、請求項1~3の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
抗原結合フラグメントがFab、Fab’、(Fab’)、Fv、scFv(一本鎖であるsc)、ビス-scFv、scFv-Fcフラグメント、Fab2、Fab3、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびナノボディからなる群から選択される、請求項1~3の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
該抗原結合フラグメントがscFvである、請求項1~5の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
抗体が
a)配列番号129の配列または配列番号129と少なくとも80%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
b)配列番号131の配列または配列番号131と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
c)配列番号133の配列または配列番号133と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号14、15および16の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
d)配列番号135の配列または配列番号135と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号20、21および22の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
e)配列番号137の配列または配列番号137と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号6、7および25の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
f)配列番号139の配列または配列番号139と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号29、30および31の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
g)配列番号141の配列または配列番号141と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号35、36および16の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
h)配列番号143の配列または配列番号143と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号40、41および42の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
i)配列番号145の配列または配列番号145と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号46、47および48の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
j)配列番号147の配列または配列番号147と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号52、53および54の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
k)配列番号149の配列または配列番号149と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号56、57および58の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体
からなる群から選択される、請求項1~6の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
抗体が
a)配列番号130の配列または配列番号130と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号3、4および5の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
b)配列番号132の配列または配列番号132と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号9、10および5の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
c)配列番号134の配列または配列番号134と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号11、12および13の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
d)配列番号136の配列または配列番号136と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号17、18および19の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
e)配列番号138の配列または配列番号138と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号23、24および3の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
f)配列番号140の配列または配列番号140と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号26、27および28の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
g)配列番号142の配列または配列番号142と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号32、33および34の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
h)配列番号144の配列または配列番号144と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号37、38および39の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
i)配列番号146の配列または配列番号146と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号43、44および45の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
j)配列番号148の配列または配列番号148と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号49、50および51の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;および
k)配列番号150の配列または配列番号150と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号17、18および55の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体
からなる群から選択される、請求項1~6の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
抗体が
a)配列番号129の配列または配列番号129と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号130の配列または配列番号130と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
b)配列番号131の配列または配列番号131と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号132の配列または配列番号132と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
c)配列番号133の配列または配列番号133と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号134の配列または配列番号134と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
d)配列番号135の配列または配列番号135と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れらかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号136の配列または配列番号136と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
e)配列番号137の配列または配列番号137と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号138の配列または配列番号138と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
f)配列番号139の配列または配列番号139と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れらかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号140の配列または配列番号140と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示すれかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
g)配列番号141の配列または配列番号141と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号142の配列または配列番号142と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
h)配列番号143の配列または配列番号143と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号144の配列または配列番号144と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
i)配列番号145の配列または配列番号145と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号146の配列または配列番号146と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
j)配列番号147の配列または配列番号147と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号148の配列または配列番号148と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;および
k)配列番号149の配列または配列番号149と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号150の配列または配列番号150と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体
からなる群から選択される、請求項1~8の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
抗体が内在化抗体である、請求項1~9の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
抗体が1以上のエピトープにおける少なくとも1個のアミノ酸に結合する抗体であり、エピトープが
a)配列番号2に示す配列の残基E24、V25、E27、V29および/またはT30を含むエピトープM1;
b)配列番号2に示す配列の残基D36、N38、L39および/またはT42を含むエピトープM2;
c)配列番号2に示す配列の残基Q59、G61、S62、D63および/またはV65を含むエピトープM3;
d)配列番号2に示す配列の残基I77、A80、Y82および/またはQ83を含むエピトープM4;
e)配列番号2に示す配列の残基H87、H90、K91および/またはV92を含むエピトープM5;
f)配列番号2に示す配列の残基S97、Q99、S101および/またはT102を含むエピトープM6;
g)配列番号2に示す配列の残基R108、S109、H110、T112および/またはE114を含むエピトープM7;
h)配列番号2に示す配列の残基T119、P120、D121、N123、Q124および/またはV125を含むエピトープM8
からなる群から選択される、請求項1~10の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
抗体が
a)M1のアミノ酸の少なくとも1個;
b)M4のアミノ酸の少なくとも1個および所望によりM3の残基の少なくとも1個;
c)M7のアミノ酸の少なくとも1個;
d)M8のアミノ酸の少なくとも1個;
e)M7のアミノ酸の少なくとも1個およびM8のアミノ酸の少なくとも1個;または
f)M3のアミノ酸の少なくとも1個、M7のアミノ酸の少なくとも1個およびM8のアミノ酸の少なくとも1個および所望によりM2の残基の少なくとも1個および/またはM4の残基の少なくとも1個
に結合する、請求項11のモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントを含むイムノコンジュゲートであって、ここで、該抗体が細胞毒性剤にコンジュゲートする、イムノコンジュゲート。
【請求項14】
請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖(VL)の可変領域をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖(VH)の可変領域をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体のVLまたはその抗原結合フラグメントおよび請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントのVHをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項17】
・請求項14のポリヌクレオチド;
・請求項15のポリヌクレオチド;
・請求項14のポリヌクレオチドおよび請求項15のポリヌクレオチド;または
・請求項16のポリヌクレオチド
を含む、発現ベクター。
【請求項18】
請求項17の発現ベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項19】
a)請求項18の宿主細胞を適当な条件下で培養し、
b)培養培地または培養細胞からモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントを回収する
ことを含む、請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法。
【請求項20】
請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたは請求項13のイムノコンジュゲートおよび医薬許容される担体および/または添加物を含む、医薬組成物。
【請求項21】
さらに免疫チェックポイント阻害剤を含む、請求項20の医薬組成物。
【請求項22】
該免疫チェックポイント阻害剤がCTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、IDO1、A2aRおよびB-7ファミリーに属するリガンドの何れかの阻害剤である、請求項21の医薬組成物。
【請求項23】
該免疫チェックポイント阻害剤がイピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS 936559、JNJ 61610588、ウレルマブ、9B12、PF-04518600、BMS-986016、TSR-022、MBG453、MEDI6469、MEDI6383およびエパカドスタットからなる群から選択される、請求項20または21の医薬組成物。
【請求項24】
同時、別々のまたは逐次使用のための、請求項20または21の医薬組成物。
【請求項25】
患者における癌の処置に使用するための、請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたは請求項13のイムノコンジュゲートまたは請求項20~24の何れかの医薬組成物。
【請求項26】
癌患者における免疫応答の誘導に使用するための、請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたは請求項13のイムノコンジュゲートまたは請求項20~24の何れかの医薬組成物。
【請求項27】
免疫応答がマクロファージによる炎症促進性サイトカイン遊離の誘導、CD4T細胞増殖の誘導、CD8T細胞増殖の誘導、CD4T細胞サイトカイン産生の誘導およびCD8T細胞サイトカイン産生の誘導を含む、請求項25のための、請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたは請求項13のイムノコンジュゲートまたは請求項20~24の何れかの医薬組成物。
【請求項28】
癌が膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、卵管癌、胆嚢癌、消化器癌、頭頚部癌、血液学的癌(例えば、白血病、リンパ腫または骨髄腫)、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣癌、原発性腹膜癌、唾液腺癌、肉腫、胃癌、甲状腺癌、膵臓癌、腎臓細胞癌腫、神経膠芽腫および前立腺癌から選択される、請求項25~27の何れかの使用のための、請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたは請求項13のイムノコンジュゲートまたは請求項20~24の何れかの医薬組成物。
【請求項29】
29)対象におけるVSIG4発現癌を検出するためのインビトロ方法であって、
a)該対象の生物学的サンプルと請求項1~12の何れかのモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントを接触させ;そして
b)該試薬と該生物学的サンプルの結合を検出する
ことを含み、
ここで、VSIG4の結合がVSIG4発現癌の存在を示す、方法。
【請求項30】
モノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントが検出可能標識で標識される、請求項29の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、抗VSIG4(VセットIgドメイン含有4)抗体または抗原結合フラグメントおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
癌細胞の免疫回避機構は、T細胞表面に存在する免疫チェックポイントタンパク質への結合により殺活性を有する、細胞毒性T細胞の不活性化により達成される。これにより、T細胞の活性化を増強するための標的として免疫チェックポイントを用いることにより機能回復させることを介して、ウイルス感染細胞または癌細胞を死滅できる免疫チェックポイント阻害剤の理論的背景が提供される。
【0003】
第三世代抗癌免疫療法剤としての免疫チェックポイント阻害剤は2010年に米国食品医薬品局で最初に承認され、黒色腫の臨床治験に始まり、肺癌、肝臓癌などに対する抗癌治療における優れた治療効果を示す研究結果がそれ以来続々と発表され続けている。直近の10年間では、免疫チェックポイント阻害剤は、世界的に重要な主題となっている。抗癌免疫療法剤は、癌細胞がT細胞により攻撃されるように産生される抗体であるため、既存の抗癌剤との組み合わせ治療でも、優れた効果を示すことを証明する研究結果が報告されている。今日現在で、CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4)、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)、TIM-3(T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有3)、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)、TIGIT(免疫グロブリンおよび免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフドメインを有するT細胞免疫受容体)およびVISTA(T細胞活性化のvドメインIg含有サプレッサー)を含む、種々の免疫チェックポイントタンパク質が知られている。
【0004】
VセットIgドメイン含有4(VSIG4、CRIgまたはZ39Ig)は、最近研究されている免疫チェックポイントタンパク質であり、B7関連ファミリータンパク質である。VSIG4は、肝臓、樹状細胞、好中球および休止マクロファージで高レベルで発現されるが、肺、心臓、脾臓およびリンパ節を含むその他の臓器では低レベルであり、一方、T細胞およびB細胞で発現されないことが知られている。VSIG4およびB7ファミリータンパク質は、保存的アミノ酸配列を共有し、VSIG4は、一つの完全IgV型ドメインおよび開裂IgC型ドメインを有する(Vogt L. et al., J Clin Invest. (2006) 116: 2817-2826; Helmy KY. et al., Cell (2006) 124: 915-927)。VSIG4は、コンベルターゼのサブユニットC3bへの結合により補体活性の補体第二経路を阻害することが知られる。さらに、未知T細胞受容体への結合により、VSIG4がCD4+およびCD8+T細胞の増殖を阻害できることが報告されている。VSIG4は、可溶性VSIG4-Fc融合タンパク質が実験的自己免疫性関節炎、網膜ブドウ膜炎および肝炎の発症に対して保護すると考えられることが示されたため、自己免疫および/または炎症性障害の発生と関連して研究されている(He et al., Mol. Immunol. (2008) Molecular Immunology 45(16): 4041-404)。しかしながら、VSIG4の発現が肺癌発症および高悪性度神経膠腫の予後不良などの抗腫瘍免疫の制御に関連することも最近報告されている(Liao Y. et al., Lab Invest. (2014) 94: 706-715; Xu T. et al., Am J Transl Res. (2015) 7: 1172-1180)。さらに、Jung et al. (Hepatology (2012) 56 (5):1838-48)の研究によると、抗炎症とT細胞阻害では、VSIG4の結合部位に違いがある。
【0005】
VSIG4に対する抗体は、先に公開されている(例えば、WO2020/069507参照)。しかしながら、これらの抗体はタンパク質の2形態の一方にしか結合せず、それによりその活性の部分的阻害にしか介在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、最適抗腫瘍免疫を確立できる新規抗VSIG4抗体の提供に対する必要性がなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の記載
目的
本発明の目的は、VSIG4に対する新規抗体またはその抗原結合フラグメントの提供である。
【0008】
本発明のさらなる目的は、故に、前記抗体または抗原結合フラグメントを含む、癌処置用組成物の提供である。
【0009】
上記目的を達成するための技術的方法
上記目的を達成するために、本発明は、VSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ここに開示する抗体は長いおよび短い形態のVSIG4両者に結合し、VSIG4介在抗炎症性シグナルの効率的抑制をもたらす。故に、ここに開示する抗VSIG4抗体は、処置を必要とする患者における免疫応答を活性化し、それにより患者に保護的抗腫瘍免疫を与える。
【0010】
本発明は、特に3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを有する抗VSIG4モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、CDRの配列は、配列番号3~58に示す配列群から選択される。より具体的には、ここに開示する抗体は、表2に示す3個の重鎖CDRおよび3個の軽鎖CDRを含む。
【0011】
本発明は、さらに、配列番号129、131、133、135、137、139、141、143、145、147および149のアミノ酸配列からなる群から選択される何れかの重鎖可変領域;および配列番号130、132、134、136、138、140、142、144、146、148および150のアミノ酸配列からなる群から選択される何れかの軽鎖可変領域を含む抗VSIG4モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントおよび該モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、本モノクローナル抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。
【0013】
さらに、本発明は、本ポリヌクレオチドを含む発現ベクターをさらに提供する。
【0014】
さらに、本発明は、本発現ベクターで形質転換した形質転換体をさらに提供する。
【0015】
さらに、本発明は、本形質転換体の培養によりVSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法をさらに提供する。
【0016】
さらに、本発明は、有効成分としてVSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、免疫応答を刺激するための組成物をさらに提供する。
【0017】
さらに、本発明は、有効成分としてVSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む癌の処置のための医薬組成物をさらに提供する。
【0018】
さらに、本発明は、個体に本癌の処置のための医薬組成物を投与することを含む、癌を処置する方法をさらに提供する。
【0019】
さらに、本発明は、VSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに連結された薬物を有する抗体-薬物コンジュゲートをさらに提供する。
【0020】
さらに、本発明は、i)上記抗体;ii)膜貫通ドメインおよび;iii)上記i)抗体の抗原への結合によりT細胞活性化を引き起こすことにより特徴づけられる細胞内シグナル伝達ドメインを有するCAR(キメラ抗原受容体)を含むCAR(キメラ抗原受容体)タンパク質をさらに提供する。
【0021】
さらに、本発明は、VSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む多特異的抗体をなおさらに提供する。
【0022】
発明の利益
VSIG4に結合する本発明の新規抗体およびその抗原結合フラグメントが、VSIG4に結合して、VSIG4の活性を阻害できるため、VSIG4に関係する障害に対する種々の免疫療法剤の開発のために有利に利用され得ることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】hVSIG4(S)およびhVSIG4(L)の構造および発現を示す。(A)VSIG4タンパク質の2形態の構造を説明するダイアグラム(Small et al., Swiss Med Wkly. (2016) 146:w14301による)。(B)マクロファージにおけるhVSIG4(L)およびhVSIG4(S)の発現を試験するウェスタンブロットの結果。rechVSIG4:組み換えhVSIG4(長および短);264、265および266:PBMSを単離したドナー。AF4646:ポリクローナル抗VSIG4抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)。
【0024】
図2】CD4T細胞の活性化がhVSIG4(S)およびhVSIG4(L)により阻害されることを示す。CD4細胞を、組み換えタンパク質(hVSIG4(L)-Fc、hVGIG4(S)-Fc、PDL1-Fc(R&D Systems 156-B7)またはアイソタイプ対照hIgG1(c9G4))の存在下、抗CD3 OKT3抗体(BioxCell ref BE0001-2 clone OKT3)と接触させた。CD4T細胞増殖(A)およびIFNγ遊離(B)を、フローサイトメトリーにより決定した。
【0025】
図3】VSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体をスクリーニングするためのここに開示する方法を説明するダイアグラムである。
【0026】
図4】VSIG4抗原タンパク質のための発現ベクターを説明するダイアグラムである。
【0027】
図5】精製VSIG4抗原タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。
【0028】
図6】抗原のパンニング工程の各ラウンド(すなわち、第一、第二および第三ラウンド)を介して得た陽性ポリscFv-ファージ抗体プールの特異性を試験するために実施するポリファージELISAの結果を示す。
【0029】
図7】抗原VSIG4に対する優れた結合性を有する陽性ファージの選択のために実施するELISAの結果を示す。
【0030】
図8】11個の組み換えVSIG4単一ヒト抗体のSDS-PAGE分析の結果を示す。
【0031】
図9】APC蛍光物質に結合した抗ヒトVSIG4抗体の使用によるヒトVSIG4を過発現する形質転換細胞のFACS分析の結果を示す。
【0032】
図10】11個のヒトVSIG4抗体に対するヒトVSIG4を過発現する細胞の結合特異性のFACS分析の結果を示す。(A)HEK293E:非特異的結合試験。(B)hVSIG4/HEK293E:細胞表面VSIG4への特異的結合。
【0033】
図11】11個のヒトモノクローナル抗VSIG4抗体のhVSIG4(S)およびhVSIG4(L)への結合を説明する。(A)hVSIG4(S)およびhVSIG4(L)への結合を、11個のヒト抗VSIG4抗体の元のscFvバージョンでELISAでアッセイした。(B)hVSIG4(S)およびhVSIG4(L)への結合を、11個の完全長ヒト抗VSIG4抗体でウェスタンブロッティングによりアッセイした。NRH:非還元、加熱;RH:還元、加熱。
【0034】
図12】マウスm6H8およびそのヒト化バージョンhz6H8-A2がhVSIG4(L)に結合するが、hVSIG4(S)に結合しないことを示す。(A)ウェスタンブロット:rechVSIG4:組み換えhVSIG4(長いおよび短い); 264、265および266:PBMSを単離したドナー。AF4646:ポリクローナル抗VSIG4抗体(R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)。(B)hVSIG4-His(短い形態)およびhVSIG4 Fc(長い形態)でのELISA:m9G4:アイソタイプ対照、ヤギIgG対照:陰性対照。
【0035】
図13】定義した8個のエピトープ群を有する11個のscFvヒトモノクローナル抗VSIG4抗体のエピトープマッピングのために実施するELISAの結果を示す。群のナンバリングは、抗原の配列または3D構造に関連する位置とリンクしていない。
【0036】
図14】炎症性アッセイにおける11個の完全長ヒトモノクローナル抗VSIG4抗体を試験するためのここに開示する方法を説明するダイアグラムである。
【0037】
図15】免疫抑制アッセイにおける11個の完全長ヒトモノクローナル抗VSIG4抗体を試験するためのここに開示する方法を説明するダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な記載
以下の記載は、説明のためにのみ提供し、本発明が意図する範囲を限定するものではない。本発明は、ここに示す詳細な記載および添付する図面からより完全に理解される。
【0039】
定義
特に定義されない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、化学、生化学、細胞生物学、分子生物学および医科学において当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。
【0040】
用語「約」または「凡そ」は、当業者に知られるある値または範囲についての通常の誤差範囲をいう。通常ある値または範囲の20%以内、例えば10%または5%以内(または1%またはそれ未満)を意味する。
【0041】
ここで使用する「投与」または「投与する」は、患者への、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達および/またはここに記載するまたは当分野で知られる何れかの他の物理的送達方法によるなどの、体外に存在する物質(例えば、ここに提供される抗VSIG4抗体)の、注入またはその他物理的送達行為をいう。疾患またはその症状が処置されるとき、物質の投与は、一般に疾患またはその症状の発症後に行う。疾患またはその症状が予防されるとき、物質の投与は、一般に疾患またはその症状の発症前に行う。本発明の組成物の投与経路は、標的組織への組成物の送達が可能である限り、経口および非経腸経路を含む種々の経路の何れでもよい。具体的に、投与は、経口、結腸直腸、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、経皮、鼻腔内、吸入、眼内または皮内経路を介する一般的方法により行われ得る。
【0042】
用語「抗体」および「免疫グロブリン」または「Ig」は、ここでは相互交換可能に使用する。これら用語は、ここではその最も広い意味で使用され、具体的にIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEなどのあらゆるアイソタイプのモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多特異的抗体、キメラ抗体およびフラグメントが所望の生物学的機能を保持する限り、抗体フラグメントを含む。これら用語は、特異的分子抗原に結合でき、ジスルフィド結合で相互接続されたポリペプチド鎖の2個の同一対(ここで、各対は、1個の重鎖(約50~70kDa)および1個の軽鎖(約25kDa)を有し、各鎖の各アミノ末端部分は、約100~約130またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分は、定常領域を含む)からなる、免疫グロブリンクラスのポリペプチド内のB細胞のポリペプチド産物を含むことを意図する(Borrebaeck (ed.) (1995) Antibody Engineering, Second Ed., Oxford University Press.; Kuby (1997) Immunology, Third Ed., W.H. Freeman and Company, New York参照)。各重鎖および軽鎖の各可変領域は、超可変領域としても知られる3個の相補性決定領域(CDR)および可変ドメインのより高度に保存的部分である4個のフレームワーク(FR)からなり、アミノ末端からカルボキシ末端方向で次の順番で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合に介在し得る。ある実施態様において、ここに提供する抗体により結合され得る特異的分子抗原は、標的VSIG4ポリペプチド、フラグメントまたはエピトープを含む。特異的抗原と反応性の抗体を、ファージにおける組み換え抗体もしくは類似ベクターのライブラリーの選択などの組み換え方法または抗原もしくは抗原コード化核酸での動物の免疫化により。産生できる
【0043】
抗体はまた、合成抗体、モノクローナル抗体、組み換えにより産生された抗体、多特異的抗体(二特異的抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体および上記の何れかの機能的フラグメント(該フラグメントが由来した抗体の生物学的機能の一部または全てを保持する抗体重鎖または軽鎖ポリペプチドの部分と称する)も含むが、これらに限定されない。ここに提供する抗体は、あらゆるタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、あらゆるクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4IgA1およびIgA2)またはあらゆるサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)の免疫グロブリン分子であり得る。
【0044】
用語「抗VSIG4抗体」、「VSIG4に結合する抗体」、「VSIG4エピトープに結合する抗体」および類似する用語は、ここでは相互交換可能に使用され、VSIG4抗原またはエピトープなどのVSIG4ポリペプチドに結合する抗体をいう。このような抗体は、キメラ、ヒト化およびヒト抗体を含むポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む。VSIG4抗原に結合する抗体は、関連抗原に交差反応性であり得る。ある実施態様において、VSIG4に結合する抗体は、例えば、B7スーパーファミリーに属する他のペプチドまたはポリペプチドなどの他の抗原と交差反応しない。VSIG4に結合する抗体は、例えば、免疫アッセイ、BIAcoreまたは当業者に知られる他の技術により同定され得る。抗体はVSIG4に結合し、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験的技術を使用して決定して、あらゆる交差反応性抗原より高い親和性でVSIG4に結合するとき、例えば、VSIG4に特異的に結合する抗体である。一般に、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を超え得る。例えば、抗体特異性の記載についてのPaul, ed., 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Press, New York at pages 332-336参照。ある実施態様において、目的の抗原「に結合する」抗体は、抗原を発現する細胞または組織のターゲティングにおいて、抗体が診断および/または治療剤として有用であり、他のタンパク質と顕著に交差反応しない、十分な親和性を有する抗原をいう。このような実施態様において、非標的タンパク質への抗体の結合の程度は、蛍光標示式細胞分取(FACS)分析または放射性免疫沈降法(RIPA)により決定した抗体の特定の標的タンパク質の結合の約10%より低い。標的分子への抗体の結合について、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」なる用語は、非特異的相互作用と測定可能な程度に異なる結合をいう。特異的結合は、例えば、一般に構造が類似するが、結合活性を有しない分子である対照分子の結合と比較した、分子の結合の決定により、測定され得る。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子、例えば、過剰の非標識標的との競合により決定できる。この場合、標識標的のプローブへの結合が過剰の非標識標的により競合的に阻害されるならば、特異的結合が示される。ここで使用する特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」なる用語は、例えば、少なくとも約10-4M、あるいは少なくとも約10-5M、あるいは少なくとも約10-6M、あるいは少なくとも約10-7M、あるいは少なくとも約10-8M、あるいは少なくとも約10-9M、あるいは少なくとも約10-10M、あるいは少なくとも約10-11M、あるいは少なくとも約10-12Mまたはそれ以上の標的へのKを有する分子により示され得る。ある実施態様において、用語「特異的結合」は、分子が、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに、あらゆるその他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく結合するときの結合をいう。ある実施態様において、VSIG4に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(K)を有する。
【0045】
ここで使用する用語「抗原」は、抗体が選択的に結合できる予め決定された抗原をいう。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテンまたは他の天然に存在するもしくは合成化合物であり得る。ある実施態様において、標的抗原は、例えば、VSIG4ポリペプチドを含むポリペプチドである。
【0046】
用語「抗原結合フラグメント」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」および類似する用語は、抗原と相互作用し、結合因子に抗原に対する特異性および親和性を付与するアミノ酸残基を含む、抗体の部分(例えば、相補性決定領域(CDR))をいう。抗体の「抗原結合フラグメント」なる表現により、該抗体の標的(一般に抗原とも称する)、一般に同じエピトープに結合する能力を保持し、抗体のアミノ酸配列の少なくとも5連続アミノ酸残基、少なくとも10連続アミノ酸残基、少なくとも15連続アミノ酸残基、少なくとも20連続アミノ酸残基、少なくとも25連続アミノ酸残基、少なくとも40連続アミノ酸残基、少なくとも50連続アミノ酸残基、少なくとも60連続アミノ残基、少なくとも70連続アミノ酸残基、少なくとも80連続アミノ酸残基、少なくとも90連続アミノ酸残基、少なくとも100連続アミノ酸残基、少なくとも125連続アミノ酸残基、少なくとも150連続アミノ酸残基、少なくとも175連続アミノ酸残基または少なくとも200連続アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むあらゆるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を指すことを意図する。特定の実施態様において、該抗原結合フラグメントは、それが由来する抗体のCDRの少なくとも1個を含む。なお好ましい実施態様において、該抗原結合フラグメントは、それが由来する抗体のCDRの2個、3個、4個または5個、より好ましくは6個のCDRを含む。
【0047】
「抗原結合フラグメント」は、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、scFv(scは一本鎖)、ビス-scFv、scFv-Fcフラグメント、Fab2、Fab3、ミニボディ、ダイアボディ抗体、トリアボディ、テトラボディおよびナノボディおよびXTEN(伸張組み換えポリペプチド)またはPASモチーフなどの障害ペプチドとの融合タンパク質およびポリ(エチレン)グリコール(「ペグ化」)などのポリ(アルキレン)グリコールの付加などの化学修飾により半減期が延長されたあらゆるフラグメント(ペグ化フラグメントはFv-PEG、scFv-PEG、Fab-PEG、F(ab’)-PEGまたはFab’-PEGと称される)(「PEG」はポリ(エチレン)グリコール)またはリポソームにおける取り込みにより、本発明の抗体の特徴的CDRの少なくとも1個を有する該フラグメントからなる群から選択され得るが、これらに限定されない。抗体フラグメントの中で、Fabは、軽鎖および重鎖の可変領域、軽鎖の定常領域および重鎖の第一定常領域(CH1)を含む構造を有し、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に1以上のシステイン残基を含むヒンジ領域を有する点で、Fabと異なる。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を形成するように産生される。Fvは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のみを有する最小抗体フラグメントであり、Fvフラグメントを産生する組み換え技術は、国際公開WO88/10649などに記載される。二本鎖Fv(dsFv)に関して、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は互いにジスルフィド結合により連結され、一本鎖Fv(scFv)に関して、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は一般に互いにペプチドリンカーを介して共有結合される。これら抗体フラグメントは、プロテイナーゼの使用により得ることができ(例えば、Fabは、抗体全体のパパインでの制限消化により得ることができ、F(ab’)2フラグメントはペプシンでの制限消化により得ることができる)、好ましくは遺伝子工学技術により産生される。好ましくは、該「抗原結合フラグメント」は、それが由来する抗体の重または軽可変鎖の部分的配列からなりまたはそれを含み、該部分的配列は、それが由来する抗体と同じ結合特異性および十分な、好ましくは標的に関してそれが由来する抗体の親和性の少なくとも1/100、より好ましい方法においては少なくとも1/10に等しい親和性を保持するのに十分である。このような抗体フラグメントの記載は、例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, 冷Spring Harbor Laboratory, New York (1989); Myers (ed.), Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, New York: VCH Publisher, Inc.; Huston et al., Cell Biophysics, 22:189-224 (1993); Plueckthun and Skerra, Meth. Enzymol., 178:497-515 (1989) and in Day, E.D., Advanced Immunochemistry, Second Ed., Wiley-Liss, Inc., New York, NY (1990)に見られ得る。
【0048】
ここで使用する用語「結合する」または「結合」は、生理的条件下、比較的安定な複合体を形成する分子間の相互作用をいう。相互作用は、例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用および/またはファンデルワールス相互作用を含む、非共有結合的相互作用であり得る。複合体はまた共有結合または非共有結合的結合、相互作用または力により2以上の分子を一体化する結合も含み得る。抗体上の単一抗原結合部位と標的分子上の単一エピトープ、例えばVSIG4の間の総非共有結合的相互作用の強度は、そのエピトープに対する抗体または機能的フラグメントの親和性である。単価抗原に対する抗体の会合(k)対解離(k-1)の比(k/k-1)は、親和性の指標である会合定数Kである。Kの値は、抗体と抗原の複合体が違えば変わり、kおよびk-1両方に依存する。ここに提供する抗体の会合定数Kは、ここに提供する何れかの方法または当業者に周知の何れかの他の方法を使用して決定され得る。一結合部位での親和性は、抗体と抗原の間の相互作用の真の強度を常に反映するとは限らない。多価VSIG4などの複数、反復抗原決定基を含む複合体抗原が、複数結合部位を含む抗体と接触したとき、一か所での抗体と抗原の相互作用は、第二部位での反応の確立を上げる。多価抗体と抗原間のこのような複数相互作用の強度は、アビディティーと称される。抗体のアビディティーは、個々の結合部位の親和性より、結合能の良好な指標であり得る。例えば、高アビディティーは、五量体IgM抗体で、IgGより低い親和性を有し得るが、多価に起因するIgMの高アビディティーにより、効率的に抗原と結合することを可能とすることが時に見られるとおり、低親和性を相殺できる。2個の分子が結合するか否かを決定する方法は当分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。特定の実施態様において、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、BSAまたはカゼインなどの非特異的分子への結合についての親和性より少なくとも2倍高い親和性でVSIG4に結合する。より特定の実施態様において、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、VSIG4にのみ結合する。
【0049】
ここで使用する用語「生物学的サンプル」または「サンプル」は、患者または対象などの生物学的起源から得ているサンプルをいう。ここで使用する「生物学的サンプル」は、特に生物全体またはその組織、細胞または構成部分のサブセット(例えば動脈、静脈および毛細血管を含む血管、血液、血清、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜帯血液、尿、膣液および精液を含むが、これらに限定されない体液)をいう。「生物学的サンプル」は、さらに、生物全体またはその組織、細胞または構成部分のサブセットから調製したホモジネート、溶解物または抽出物またはそれらの画分もしくは一部もいう。最後に、「生物学的サンプル」は、タンパク質または核酸分子などの細胞構成要素を含む、生物が増殖している栄養ブロスまたはゲルなどの培地をいう。
【0050】
ここで使用する用語「バイオパニング」は、ファージコート上にペプチドを提示するファージライブラリーから、標的分子(例えば、抗体、酵素および細胞表面受容体)への結合の性質を有するペプチドを表面上に提示するファージのみを選択する、工程を示す。ある実施態様において、ここで使用するバイオパニングは、ファージライブラリーを調製する工程である第一工程、ファージライブラリーと標的分子の接触を含む捕捉工程である第二工程、標的分子に結合しないファージの除去を含む洗浄工程である第三工程および目的のファージが回収される溶出工程である第四工程の4工程含む。バイオパニング例は、本明細書の実施例に示す。
【0051】
用語「遮断」またはその文法上の同等語は、抗体の文脈で使用するとき、抗体が結合する抗原の生物学的活性を阻止または停止させる抗体をいう。遮断抗体は、反応を起こすことなく抗原と合わさるが、他のタンパク質がその後その抗原と合わさるまたは複合化することを遮断する、抗体をいう。抗体の遮断効果は、抗原の生物学的活性に測定可能な変化をもたらすものであり得る。
【0052】
用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、異常細胞増殖とある程度関係する障害をいう。ある実施態様において、細胞増殖性障害は、腫瘍または癌である。ここで使用する「腫瘍」は、悪性であれ、良性であれ、全ての新生物細胞成長および増殖および全ての前癌および癌細胞および組織をいう。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」および「腫瘍」は、ここでいうとおり相互排他的ではない。用語「癌」および「癌性」は、一般に制御されない細胞増殖により特徴づけられる、哺乳動物における生理学的状態をいうまたは説明する。ここで使用する「癌」は、生物における障害細胞の望まない増殖、侵襲およびある条件下では転移に由来するあらゆる悪性新生物をいう。癌を生じさせる細胞は、遺伝的に障害されており、通常細胞分裂、細胞遊走挙動、分化状態および/または細胞死機構を制御する能力を失っている。大部分の癌は腫瘍を形成するが、白血病などの一部造血器癌は形成しない。故に、ここで使用する「癌」は、良性および悪性癌両者を含み得る。ここで使用する用語「癌」は、如何なる限定もせず、特に本発明のヒト抗体により処置できるあらゆる癌をいう。その例は、肝臓癌、乳癌、腎臓癌、脳腫瘍、胆管癌、食道癌、胃癌、結腸癌、結腸直腸癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、肺癌、上行結腸癌、子宮頸癌、甲状腺癌、白血病、ホジキン疾患、リンパ腫および多発性骨髄腫血液癌を含むが、これらに限定されない。
【0053】
「化学療法剤」は、作用機序と関係なく、癌の処置に有用な化学的または生物学的薬剤(例えば、小分子薬物または抗体または細胞などの生物学的を含む、薬剤)である。化学療法剤は、標的化治療および慣用の化学療法で使用する化合物を含む。化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管形成剤、抗エストロゲン剤、抗アンドロゲン剤または免疫調節剤を含むが、これらに限定されない。
【0054】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の起源または種に由来し、重鎖および/または軽鎖の残りが異なる起源または種に由来する、抗体をいう。ある実施態様において、「キメラ抗体」は、可変領域が異なる種のまたは他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する定常領域に結合するように、定常領域またはその一部が改変、置き換えまたは交換される、抗体をいう。他の実施態様において、「キメラ抗体」は、定常領域が異なる種のまたは他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する可変領域に結合するように、可変領域またはその一部が改変、置き換えまたは交換される、抗体をいう。
【0055】
ここで使用する「CDR」は、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VH βシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3個の超可変領域(H1、H2またはH3)の1個または抗体VL βシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3個の超可変領域(L1、L2またはL3)の1個をいう。従って、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。CDR領域は当業者に周知であり、例えば、Kabatにより、抗体可変(V)ドメイン内の最も超可変性の領域として定義される(Kabat et al., J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977); Kabat, Adv. Prot. Chem. 32:1-75 (1978))。Kabat CDRは配列可変性に基づき、最も汎用される(Kabat eta/., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置をいう(Chothia and Lesk J Mol. Bioi. 196:901-917 (1987))。CDR領域配列は、保存的βシートフレームワークの一部ではなく、故に、種々の立体構造を採用できる残基として、Chothiaにより構造的にも定義されている(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。Chothia CDR-H1ループの最後は、Kabatナンバリング慣例を使用してナンバリングしたとき、ループの長さによって、H32~H34で変わる(これは、KabatナンバリングスキームがH35AおよびH35Bに挿入を配置するからである;35Aも35Bも存在しないならば、ループは32で終わる;35Aのみが存在するならば、ループは33で終わる;35Aおよび35B両方が存在するならば、ループは34で終わる)。何れの命名法も当分野で十分に認識されている。CDR領域配列はまたAbM、ContactおよびIMGTによっても定義されている。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループの間の妥協点を表し、Oxford Molecular's AbM抗体モデリングソフトウェアで使用される。「contact」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。最近、普遍的ナンバリングシステムが開発され、広く採用されている、ImMunoGeneTics (IMGT) Information System(登録商標)(Lafranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27(1):55-77 (2003))。IMGT普遍的ナンバリングは、どんな抗原受容体、鎖タイプまたは種でも、可変ドメインを比較するよう定義されている[Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999)]。IMGT普遍的ナンバリングにおいて、保存的アミノ酸、例えばシステイン23(1st-CYS)、トリプトファン41(CONSERVED-TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd-CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J-PHEまたはJ-TRP)は常に同じ位置である。IMGT普遍的ナンバリングは、フレームワーク領域(FR1-IMGT:位置1~26、FR2-IMGT:39~55、FR3-IMGT:66~104およびFR4-IMGT:118~128)および相補性決定領域(CDR1-IMGT:27~38、CDR2-IMGT:56~65およびCDR3-IMGT:105~117)の標準化境界決めを提供する。ギャップが非占有位置を表すため、CDR-IMGT長(括弧内に示し、ドットで分ける、例えば[8.8.13])は、重要な情報となる。IMGT普遍的ナンバリングは、IMGT Colliers de Perles [Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]と指定された2D図形表現およびIMGT/3D構造-DBにおける3D構造[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC 構造data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]に使用される。カノニカル抗体可変ドメイン内のCDRの位置は、多数の構造の比較により決定される(Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol. 273:927-948 (1997); Morea et al., Methods 20:267-279 (2000))。超可変領域内の残基数が抗体が異なれば変わるため、カノニカル位置に対する付加的残基が、慣習的にカノニカル可変ドメインナンバリングスキームにおける残基番号の隣にa、b、cなどを付けて番号付けされる(Al-Lazikani et al., supra (1997))。このような命名法も同様に当業者に周知である。
【0056】
超可変領域は、次のとおり「伸張超可変領域」を含み得る:VLに24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)および89~97または89~96(L3) および26~35または26~35A(H1)、50~65または49~65(H2)およびVHに93~102、94~102または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これら定義の各々について、Kabat et al., supraに従い25の番号が付けられている。ここで使用する用語「HVR」および「CDR」は相互交換可能に使用される。
【0057】
ここで使用する「チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントを標的とし、該免疫チェックポイントの機能を遮断する、例えば、小分子、可溶性受容体または抗体などの分子をいう。より具体的には、ここで使用する「チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントの生物学的活性の1以上を阻害または減少させる、例えば、小分子、可溶性受容体または抗体などの分子をいう。ある実施態様において、免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤(例えば、ここに提供するアンタゴニスト抗体)は、例えば、該免疫チェックポイントタンパク質を発現する細胞(例えば、T細胞)の活性化および/または細胞シグナル伝達経路の阻害または減少させ、それによりアンタゴニストの非存在下の生物学的活性に比して細胞の生物学的活性を阻害することにより、作用する。免疫チェックポイント阻害剤の例は、小分子薬物、可溶性受容体および抗体を含む。
【0058】
用語「定常領域」または「定常ドメイン」は、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、Fc受容体との相互作用など種々のエフェクター機能を示す、軽鎖および重鎖のカルボキシ末端部分をいう。本用語は、抗原結合部位を含む、免疫グロブリンの他の部分、可変ドメインと比較して、より保存的なアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分をいう。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2およびCH3ドメインおよび軽鎖のCLドメインを含む。
【0059】
ここで使用する「細胞毒性剤」は、対象に投与したとき、細胞機能を阻止または防止するおよび/または細胞死を引き起こすことにより、対象体内の細胞増殖の進展、好ましくは癌の進展を処置または予防する薬剤をいう。本発明において抗体-薬物コンジュゲートとして使用できる細胞毒性剤は、細胞毒性効果または細胞増殖に阻害効果を有するあらゆる薬剤、その一部または残基をいう。このような薬剤の例は、(i)微小管阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤またはDNA挿入剤として機能できる化学療法剤;(ii)酵素的に機能できるタンパク質毒素;および(iii)放射性同位体(放射性核種)を含む。細胞毒性剤は、イムノコンジュゲートを形成するために、例えば抗VSIG4抗体などの抗体にコンジュゲートされ得る。好ましくは、細胞毒性剤は、特定の条件下、例えば酸性条件下、抗体から遊離され、それにより標的細胞に、例えば、増殖の防止によりまたは細胞毒性効果発揮により、治療的に影響する。
【0060】
ここで使用する用語「減少」は、その対照値より少なくとも1倍(例えば1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1000、10,000倍またはそれ以上)低い、対象のバイオマーカー、例えばVSIG4のレベルをいう。「減少」は、対象のバイオマーカー、例えばVSIG4のレベルをいう限り、また、対照サンプルにおけるレベルまたは該マーカーの対照値に対して、少なくとも5%(例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%低いことも意味する。
【0061】
ここで使用する用語「検出」は、定量的または定性的検出をいう。
【0062】
ここで使用する用語「検出可能プローブ」または「検出可能試薬」は、検出可能シグナルを提供する組成物をいう。本用語は、サンプルまたは対象における、ここに提供する抗体などの所望の分子の実存または存在を確認するために使用できる、物質をいう。検出可能試薬は、可視化され得る物質または他の方法で決定および/または測定ができる物質(例えば、定量化により)をいう。本用語は、活性を介して検出可能シグナルを提供するあらゆるフルオロフォア、発色団、放射標識、酵素、抗体または抗体フラグメントなどを含むが、これらに限定されない。
【0063】
ここで使用する「診断」または「有するとして対象を同定する」は、徴候および症状から疾患、状態または傷害を同定する過程をいう。診断は、特に個体が疾患または病気(例えば、癌)を有するかどうかを決定する過程である。癌は、例えば、VSIG4などの、癌と関連するマーカーの何れかの存在の検出により、例えば診断される。
【0064】
用語「コード化」またはその文法上の同等語は、核酸分子に関連して使用される限り、天然状態の核酸分子または当業者に周知の方法により操作されたとき、転写してmRNAを産生し、次いで、ポリペプチドおよび/またはそのフラグメントに翻訳され得るものをいう。アンチセンス鎖は、このような核酸分子の相補体であり、コード化配列をそこから推定できる。
【0065】
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」または「治療有効量」は、対象における所望の生物学的応答を誘発するのに、必要な投与量および期間で、有効である量をいう。このような応答は、処置する疾患または障害の症状改善、疾患の症状または疾患自体の再発の阻止、阻害または遅延、処置非存在下と比較した対象の寿命の延長または疾患の症状または疾患自体の進行の阻止、阻害または遅延を含む。「有効量」は、特に所望の治療または予防結果を達成するのに有効な薬剤の量である。より具体的には、ここで使用する「有効量」は、治療上の利益を付与する薬剤の量である。治療有効量はまた、治療上有益な効果が、薬剤の何れかの毒性または有害作用を上回るものでもある。
【0066】
有効量を、1回以上の投与、適用または投与量で投与され得る。このような送達は、個々の投与単位が使用される期間、薬剤のバイオアベイラビリティ、投与経路などの多くの変数に依存する。ある実施態様において、有効量はまた特定した結果(例えば、T細胞活性化調節などの免疫チェックポイント生物学的活性の阻害)を達成する、ここに提供する抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の量もいう。ある実施態様において、この用語は、ある疾患、障害または状態および/またはそれに関連する症状の重症度および/または期間を低減および/または改善するのに十分である、治療(例えば、抗VSIG4抗体などの、例えば、免疫チェックポイント阻害剤)の量をいう。この用語はまたある疾患、障害または状態の進展または進行の低減または改善、ある疾患、障害または状態の再発、進展または発症の低減または改善および/または他の治療(例えば、該免疫チェックポイント阻害剤以外の治療)の予防もしくは治療効果の改善または増強も包含する。癌治療の状況で、治療上の利益は、例えば癌の(例えば、癌のあるステージから次への)進行の停止または減速、癌の症状または徴候の増悪または悪化の停止または減速、癌の寛解を含む癌の重症度低減、腫瘍細胞増殖阻害、腫瘍サイズまたは腫瘍数または癌の指標のバイオマーカーレベルの低減の何れか一つまたは組み合わせを含む、癌の何らかの改善を意味する。ある実施態様において、有効量の抗体は、約0.1mg/kg(対象体重kgあたり抗体mg)~約100mg/kgである。ある実施態様において、そこに提供される有効量の抗体は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kgまたは約100mg/kg(またはその中の範囲)である。
【0067】
ここで使用する用語「エピトープ」は、抗体が結合するVSIG4ポリペプチドまたはVSIG4ポリペプチドフラグメントなどの抗原の領域をいう。好ましくは、ここで使用するエピトープは、1以上の抗体の抗原結合領域に結合でき、免疫応答を誘導できる哺乳動物(例えば、ヒト)などの動物における抗原性または免疫原性活性を有する、VSIG4ポリペプチドまたはVSIG4ポリペプチドフラグメントなどの抗原表面の局在化領域である。免疫原性活性を有するエピトープは、動物で抗体応答を誘導するポリペプチドの部分である。抗原性活性を有するエピトープは、当分野で周知の何れかの方法、例えば、免疫アッセイで決定して、抗体が結合するポリペプチドの部分である。抗原性エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。エピトープは、通常アミノ酸などの分子の化学活性表面グルーピングからなり、特異的三次構造特徴ならびに特異的荷電特徴を有する。ある実施態様において、エピトープは、糖側鎖、ホスホリル基またはスルホニル基などの分子の化学活性表面グルーピングである決定機を含み得て、ある実施態様において、特異的三次構造特徴および/または特異的荷電特徴を有し得る。エピトープは、連続残基または抗原性タンパク質折り畳みにより近位になる非連続残基により形成され得る。連続アミノ酸により形成されるエピトープは、一般に変性溶媒への暴露で維持され、一方非連続アミノ酸により形成されるエピトープは、一般に該暴露下で消失する。一般に、抗原は、数個または多数の異なるエピトープを有し、多数の種々抗体と反応する。抗体により決定されるエピトープの決定は、当業者に知られる何れかのエピトープマッピング技術により実施され得る。
【0068】
用語「完全長抗体」、「インタクト抗体」または「抗体全体」は相互交換可能に使用され、抗体フラグメントとは異なって、その実質的にインタクト形態の抗体をいう。具体的に、ここで使用する「完全長抗体」は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有するものである。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。ある場合、インタクト抗体は、1以上のエフェクター機能を有し得る。
【0069】
ここに記載する用語「グリコシル化」は、タンパク質にグリコシル基を導入するための処理方法を意味する。グリコシル化は、グリコシルトランスフェラーゼにより介在される、標的タンパク質のセリン、スレオニン、アスパラギンまたはヒドロキシリシン残基へのグリコシル基の結合により実施される。グリコシル化タンパク質は、生存組織の構成物質として使用され得るだけでなく、細胞表面の細胞認識に重要な役割も有する。すなわち、本発明によると、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントのグリコシル化またはグリコシル化パターンを変えることにより、抗体の効果が増強され得る。
【0070】
用語「重鎖」は、抗体に関連して使用するとき、約50~70kDaのポリペプチド鎖をいい、ここで、アミノ末端部分は約120~130またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、定常領域を含むカルボキシ末端部分を含む。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づき、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と称される5つの異なるタイプの一つである。異なる重鎖は、サイズが異なる:α、δおよびγは凡そ450アミノ酸含み、一方μおよびεは、凡そ550アミノ酸含む。軽鎖と組み合わせたとき、これら異なるタイプの重鎖は、それぞれ、4個のサブクラスのIgG、すなわちIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む5つの周知クラスの抗体、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMをもたらす。重鎖はヒト重鎖であり得る。
【0071】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」は相互交換可能に使用され、外因性核酸が導入されている細胞を、そのような細胞の子孫を含み、いう。宿主細胞は、継代数に関係なく、一次形質転換細胞およびそこから由来する子孫を含む、「形質転換体」および「形質転換細胞」を含む。子孫は、親細胞と核酸内容物が完全に同じではなく、変異を含み得る。元の形質転換細胞でスクリーニングまたは選択したのと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫は、ここに含まれる。
【0072】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有するおよび/またはここに開示するヒト抗体を製造する技術の何れかを使用して製造されている、抗体をいう。ヒト抗体のこの定義は、具体的に非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ここに開示するファージディスプレーライブラリーを含む、当分野で知られる種々の技術により産生できる。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)。Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)に記載の方法もヒトモノクローナル抗体に利用可能である。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74 (2001)もまた参照。ヒト抗体は、抗原負荷に応答してこのような抗体を産生するが、内因座位は障害されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化xenomiceに抗原を投与することによっても、調製できる(例えば、XENOMOUSETMテクノロジーに関して、米国特許6,075,181および6,150,584参照)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマテクノロジーにより産生するヒト抗体に関して、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)もまた参照。
【0073】
「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、キメラ抗体をいう。ある実施態様において、ヒト化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が所望の特異性、親和性および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基で置き換えられる、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある例で、骨格セグメント残基(フレームワークについてFRと呼ぶ)のいくつかは、当業者に知られる技術により、結合親和性を保持するために修飾され得る(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986)。ある実施態様において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。ある実施態様において、ヒト化抗体は、少なくとも1個および一般に2個の、可変ドメインの実質的にすべてを含み、そのCDRの全てまたは実質的に全ては非ヒト抗体に対応し、FRの全てまたは実質的に全てはヒト抗体のものである。ヒト化抗体は、所望により抗体定常領域(Fc)、一般にヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含み得る。「ヒト化形態」の抗体、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を受けている抗体である。ヒト化の目的は、ヒトへの導入のために、マウス抗体などの異種抗体の免疫原性を低減し、一方で、抗体の完全抗原結合親和性および特異性を維持することである。さらなる詳細について、例えば、Jones et al, Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)参照。また、例えば、Jones et al, Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)参照。また、例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1 :105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);および米国特許6,982,321および7,087,409参照。
【0074】
ここで使用する「同定」は、ある状態を有する対象を評価し、対象がある状態を有する、例えば、癌を有すると決定する過程をいう。
【0075】
ここで使用する用語「免疫チェックポイント」または「免疫チェックポイントタンパク質」は、T細胞などのあるタイプの免疫系細胞および一部癌細胞により産生される、あるタンパク質をいう。このようなタンパク質は、免疫系におけるT細胞機能を制御する。特に、免疫応答の監視の維持を助け、T細胞が癌細胞を殺すことを助けることができる。該免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞にシグナルを送り、T細胞機能を本質的にスイッチオフするか阻害する、特異的リガンドとの相互作用により、この結果を達成する。これらタンパク質の阻害は、T細胞機能および癌細胞への免疫応答の回復をもたらす。チェックポイントタンパク質の例は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4(CD2ファミリーの分子に属し、全NK、γδおよび記憶CD8+(αβ)T細胞に発現される)、CD160(別名BY55)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、IDO1、A2aRおよび種々のB7ファミリーリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0076】
ここで使用する用語「増加」は、その対照値より少なくとも1倍(例えば1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1000、10,000倍またはそれ以上)多い対象のバイオマーカー、例えばVSIG4のレベルをいう。「増加」は、対象のバイオマーカー、例えばVSIG4のレベルをいう限り、また対照サンプルにおけるレベルまたは該マーカーの対照値に対して、少なくとも5%(例えば5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%または100%多いことも意味する。
【0077】
ここで使用する「阻害剤」または「アンタゴニスト」は、上記免疫チェックポイントタンパク質の何れかなどの標的タンパク質の生物学的活性の1以上を阻害または減少できる、分子をいう。
【0078】
「単離」抗体は、その天然環境の成分から分離されているものをいう。ある実施態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、毛細管電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)により決定して、95%または99%より高い純度まで精製される。抗体純度の評価方法のレビューのために、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)参照。
【0079】
「単離」核酸は、その天然環境の成分から分離されている核酸分子をいう。単離核酸は、通常該核酸分子を含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、該核酸分子は、染色体外または天然染色体位置と異なる染色体位置に存在する。
【0080】
ここで使用する用語「K」は、特異的抗体-抗原相互作用の解離定数をいい、抗体の抗原に対する親和性を測定する手段である。Kが低いほど、抗体の抗原に対する親和性が高いことを意味する。
【0081】
ここで意図されるバイオマーカー、例えばVSIG4の「レベル」は、サンプル、例えば癌罹患患者から集めたサンプルにおけるバイオマーカーの定量値である。ある実施態様において、定量値は、実際に測定した絶対値からなるものではなく、使用したアッセイ形式で生ずるシグナル対ノイズ比を考慮に入れたおよび/またはアッセイ毎の癌マーカーレベルの測定の再現性を高めるために使用される較正対照値を考慮に入れた結果の最終値である。ある実施態様において、バイオマーカー、例えばVSIG4の「レベル」は、同種の任意値を(i)アッセイ毎または(ii)癌罹患患者毎または(iii)同じ患者で異なる時期に実施したアッセイまたは(iv)患者のサンプルおよび予め決定された対照値(ここでは「カットオフ」値とも称され得る)で測定されたバイオマーカーレベルで比較することが重要であるため、そのような任意値である。
【0082】
用語「軽鎖」は、抗体に関連して使用するとき、約25kDaのポリペプチド鎖をいい、ここで、アミノ末端部分は、約100~約110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分は定常領域を含む。軽鎖のおよその長さは211~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と称される2つの異なるタイプがある。軽鎖アミノ酸配列は当分野で周知である。軽鎖は、ヒト軽鎖であり得る。
【0083】
ここで使用する用語「モノクローナル抗体」は、ほぼ均一の抗体集団から生ずる抗体を示し、ここで、集団は、最小割合で見られ得る天然に存在する可能性のある数変異以外、同一抗体である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマなどの単一細胞クローンの増殖により生じ、1クラスの重鎖およびサブクラスおよび1タイプの軽鎖により特徴づけられる。ここで使用するモノクローナル抗体は、抗体が抗原に提示されたとき、単一抗原サイト(すなわち、単一エピトープ)に特異的に結合する。モノクローナル抗体は、対応する技術分野で周知である種々の方法により産生され得る。
【0084】
ここで使用する用語「ペグ化」は、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントへのポリエチレングリコールの導入により、抗体の血液中の保持時間を延長させる処理方法である。具体的に、ポリエチレングリコールでのポリマーナノ粒子のペグ化により、ナノ粒子表面の親水性が増強され、従って、生体内での速い分解が、病原体、廃棄物および外部から導入された外来物質の食作用および消化を引き起こすためにヒト体内でマクロファージを含む免疫活性による認識を阻止するいわゆるステルス効果により、阻止され得る。すなわち、血液中の抗体の保持時間は、ペグ化により延長され得る。本発明で用いるペグ化は、アミド基がヒアルロン酸のカルボキシル基およびポリエチレングリコールのアミン基の間の結合に基づき形成される方法により実施されるが、それに限定されず、ペグ化は種々の方法により実施され得る。当時、使用するポリエチレングリコールに関して、分子量100~1,000および直鎖または分枝鎖構造を有するポリエチレングリコールが好ましくは使用されるが、それに特に限定されない。
【0085】
ここで使用する核酸またはアミノ酸の2配列間の「パーセンテージ同一性」または「%同一性」は、最適アラインメント後に得た比較する2配列間の同一ヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージをいい、このパーセンテージは純粋に統計的であり、2配列間の違いは、その長さ全体に無作為に分布している。2核酸またはアミノ酸配列の比較は、伝統的に配列を最適に整列させた後にそれらの比較により実施され、該比較は、セグメントまたは「アラインメントウィンドウ」を使用して実施できる。比較のための配列の最適アラインメントは、当業者に知られる方法の手段により、手動の比較に加えて実施できる。
【0086】
対照アミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を示すアミノ酸配列について、好ましい例は、制御配列を含むもの、ある修飾、特に少なくとも1個のアミノ酸の欠失、付加または置換、短縮化または伸張を含むものを含む。1以上の連続的または非連続的アミノ酸の置換の場合、置換されるアミノ酸が「等価」アミノ酸に置き換わる置換が好ましい。ここで、表現「等価アミノ酸」は、対応する抗体の生物学的活性を修飾することなく、構造アミノ酸の一つを置換する可能性の高いあらゆるアミノ酸を示すことを意味し、これらの具体例を下に定義する。等価アミノ酸は、置換されるアミノ酸との構造相同性に基づきまたは酸性される可能性のある種々の抗体間の生物学的活性の比較試験の結果に基づき、決定され得る。
【0087】
非限定的例として、下の表1は、対応する修飾抗原結合タンパク質の生物学的活性を顕著に修飾することなく、実施できる可能性のある、可能な置換を要約する;逆置換は、同じ条件下で、本質的に可能である。
【表1】

【0088】
ここで使用する用語「薬学的に許容される」は、連邦または州規制当局により承認されているまたは米国薬局方、欧州薬局方または他の一般に認識される薬局方に、動物およびより具体的にヒトへの使用について挙げられていることを意味する。より具体的には、担体をいうとき、表現「薬学的に許容される」は、担体が組成物の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害ではないことを意味する。従って、ここで使用する表現「薬学的に許容される担体」は、生存生物を刺激することなく、投与する化合物の生物学的活性および特徴を阻害しない、担体または希釈剤をいう。担体のタイプは、意図する投与経路に基づき選択され得る。使用する各担体の量は、当分野で慣用の範囲内で変わり得る。液体溶液として調製される組成物における薬学的に許容される担体として、生理食塩水、滅菌水、緩衝化食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロールおよびこれら1以上の混合物を、生存生物に適する滅菌担体として使用できる。必要であれば、抗酸化剤、緩衝液および静菌剤などの一般的添加剤を加え得る。さらに、さらに希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤または滑沢剤を加えることにより、組成物を水溶液剤、懸濁液剤およびエマルジョン剤などの注射剤、丸剤、カプセル剤、顆粒または錠剤のための製剤として調製できる。
【0089】
ここで使用する用語「ポリクローナル抗体」は、1以上の他の、非同一抗体の中でまたは存在下で産生された抗体である。一般に、ポリクローナル抗体は、非同一抗体を産生するいくつかの他のBリンパ球の存在下、Bリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫化動物から直接得る。
【0090】
用語「対照値」、ここで使用するは、対照サンプルにおける検討中のバイオマーカー(例えばVSIG4)の発現レベルをいう。ここで使用する「対照サンプル」は、疾患がないことが知られている対象、好ましくは2以上の対象から、あるいは、一般集団から得たサンプルを意味する。バイオマーカーの適当な対照発現レベルは、いくつかの適当な対象における該バイオマーカーの発現レベルの測定により決定でき、このような対照レベルを特異的対象集団に調整し得る。対照値または対照レベルは絶対値;相対値;上限または下限がある値;値の範囲;平均値;中央値、中間値または特定の対照またはベースライン値と比較した値であり得る。対照値は、例えば、試験する対象からであるが、先の時点で得ているサンプルから得た値などの個体サンプル値に基づき得る。対照値は、年代順年齢適合群の対象集団からなどの多数のサンプルまたは試験すべきサンプルを含むまたは含まないサンプルのプールに基づき得る。
【0091】
ここに記載する方法に付され得る「対象」は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタ、イノシシ属、ヒツジおよびサルを含む哺乳動物の何れでもよい。ヒト対象は、患者として知られ得る。ある実施態様において、「対象」または「処置を必要とする対象」は、癌を有するまたは癌を有することが疑われるまたは癌を有すると診断されている哺乳動物をいう。ここで使用する「癌罹患対象」は、癌を有するまたは癌を有すると診断されている哺乳動物をいう。「対照対象」は、癌を有していないかつ癌を有していると疑われない哺乳動物をいう。
【0092】
ここで使用する対象における疾患の「処置」または疾患を有する対象の「処置」は、対象に疾患の程度が減少または予防されるように、医薬処置、例えば、薬物投与をすることをいう。例えば、処置は、疾患または状態の少なくとも1個の徴候または症状の低減をもたらす。処置は、医薬組成物などの組成物の投与を含み(しかしこれに限定されない)、予防的にまたは病的事象の開始の後の何れかに実施され得る。処置は、1回を超える薬剤投与および/または処置を必要とし得る。
【0093】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインをいう。重鎖の可変ドメインは「V」と称し得る。軽鎖の可変ドメインは、「V」と称し得る。これらドメインは、一般に抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
【0094】
用語「ベクター」は、宿主細胞に核酸分子を導入するために使用される物質である。特に、ここで使用する「ベクター」は、結合している他の核酸分子の増殖ができる核酸分子である。ベクターの一例は「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループをいう。ベクターの他の例はウイルスベクターであり、ここで、さらなるDNAセグメントは、ウイルスゲノムにライゲートされ得る。あるベクターは、導入された宿主細胞で自律的に複製できる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入により宿主細胞ゲノムに統合され得て、それにより宿主ゲノムと共に複製される。用語「ベクター」は、故に、自己複製核酸構造としてのベクターならびに導入されている宿主細胞のゲノムに取り込まれたベクターを含む。使用に適用可能なベクターは、例えば、発現ベクター、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソームおよび人工染色体を含み、宿主細胞の染色体への安定な組込みのために操作可能な選択配列またはマーカーを含み得る。
【0095】
あるベクターは、操作可能に連結した遺伝子の発現を指示できる。このようなベクターを、ここでは、「組み換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称する。一般に、組み換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドと、それがベクターの最も一般的形態であるため、相互交換可能に使用し得る。しかしながら、本発明は、発現ベクターの全ての形態、例えば細菌プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソームおよび目的の抗体の重鎖および/または軽鎖(例えば、抗VSIG4抗体)の発現を確実にするのに好都合であることが当業者に知られる他のベクター全てを含むことを意図する。当業者は、重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、異なるベクターまたは同じベクターにクローン化できることを認識する。
【0096】
ベクターは、1以上の選択可能マーカー遺伝子および適切な発現制御配列を含み得る。含まれ得る選択可能マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質または毒素に対する耐性、栄養要求性欠損補足または培養培地にない必須栄養素の供給を提供する。発現制御配列は、当分野で周知の構成的および誘導型プロモーター、転写エンハンサー、転写ターミネーターなどを含み得る。2以上の核酸分子が共発現されるとき(例えば抗体重鎖および軽鎖両方)、両核酸分子は、例えば、単一発現ベクターまたは別々の発現ベクターに導入し得る。単一ベクター発現について、コード化核酸は、一つの共通発現制御配列に操作可能に連結しまたは1誘導型プロモーターおよび1構成的プロモーターなど異なる発現制御配列に連結し得る。核酸分子の宿主細胞への導入は、当分野で周知の方法を使用して、確認できる。このような方法は、例えば、ノーザンブロットなどの核酸分析またはmRNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅または遺伝子産物発現のための免疫ブロッティングまたは導入核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験する他の適当な分析方法を含む。核酸分子は、所望の産物(例えばここに提供される抗VSIG4抗体)を産生するのに十分な量で発現されることは当業者に理解され、発現レベルを、当分野で周知の方法を使用して十分な発現を得るために最適化できることもさらに理解される。
【0097】
用語「VSIG4」または「VSIG4ポリペプチド」および類似する用語は、ヒトX染色体の動原体周囲領域に位置し、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質Z39IGとしても当分野で知られるヒトV-setおよび4(VIG4)遺伝子を含む免疫グロブリンドメインによりコード化されるポリペプチド(「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、ここでは相互交換可能に使用する)をいい、Z39IGは、免疫グロブリンスーパーファミリー、CRIgの補体受容体である。VSIG4遺伝子配列は、例えばNo. NM_007268.2、NM_001100431.1、NM_001184831.1、NM_001184830.1またはNM_001257403.1などのGenBank受託番号を有する配列により表わされる。
【0098】
VSIG4(V-setおよびIgドメイン含有4)は、免疫制御タンパク質のB7ファミリーに構造的に関連するv-setおよび免疫グロブリンドメイン含有タンパク質である。ヒトでは、2つの異なる形態のVSIG4タンパク質がある。長い形態は定常(C2型)および可変(V型)両方の免疫グロブリンドメインを含み、一方短い形態はV型免疫グロブリンドメインしか含まず、C2型がない。これら2形態を図1Aに示す。ある実施態様において、ヒトVSIG4タンパク質は、Uniprot受託番号Q9Y279の配列により表わされる配列を有する。ある実施態様において、長い形態のヒトVSIG4タンパク質は、Uniprot受託番号Q9Y279-1の配列により表わされる配列を有する。好ましくは、長い形態のVSIG4は、配列番号1に示す配列を有する。ある実施態様において、短い形態のヒトVSIG4タンパク質は、Uniprot受託番号Q9Y279-3により表わされる配列を有する。好ましくは、短い形態のVSIG4は、配列番号2に示す配列を有する。
【0099】
VSIG4は、補体受容体として機能し、補体iC3bおよびC3bセグメントへの結合により補体活性を機能的に阻害し、それによりC3bオプソニン化病原体のクリアランスに介在する。VSIG4発現は組織マクロファージに限定的であることが観察されており、リポ多糖(LPS)への応答で下方制御されることが示されている(Vogt et al. (2006) J. of Clin. Invest. 116:2817)。
【0100】
VSIG4は、抗炎症性および免疫抑制性性質を有する免疫チェックポイントタンパク質である。可溶性VSIG4融合タンパク質は炎症(Small et al., Swiss Med Wkly. (2016) 146:w14301)を阻害し、一方VSIG4欠陥はマクロファージ介在炎症を介しする(Liao et al. (2014) Lab. Invest. 94:706)。VSIG4によるマクロファージ活性化のこの阻害は、C3b非依存的と考えられる(Li et al. (2017) Nat Commun. 8(1):1322)。VSIG4は、T細胞活性化における制御機能を有する(Vogt et al. (2006) J. of Clin. Invest. 116:2817; Xu et al. (2010) Immunol Lett. 18;128(1):46-50; Jung et al. (2012) Hepatology. 56(5):1838-48; Jung et al. (2015) Immunol Lett. 165(2):78-83; Munawara et al. (2019) Front Immunol. 10;10:2892)。特に、VSIG4は、未確認T細胞リガンド受容体への結合により、T細胞増殖およびIL-2産生の強力な負のレギュレーターである(Vogt et al. (2006) J. of Clin. Invest. 116:2817)。
【0101】
多くの免疫チェックポイントタンパク質と同様、VSIG4活性は、免疫耐容性促進により、腫瘍増殖を促す。Vsig4欠損マウスの腫瘍増殖は野生型より小さく、VSIG4の不在が、腫瘍増殖を防止する免疫応答を活性化することを示唆する。VSIG4発現マクロファージの腫瘍微小環境への塊状浸潤は、非小細胞肺癌と診断された患者で観察されている(Liao et al. (2014) Lab. Invest. 94:706)。VSIG4遺伝子は、肺癌、卵巣癌、乳癌、肝細胞癌および複数の黒色腫など数種の癌細胞で過発現し、免疫応答を抑制し、腫瘍進行を促進する癌遺伝子のように作用する。高VSIG4発現は、実際高悪性度神経膠腫および患者予後不良と関連付けられている(Xu et al. (2015) Am. J. Transl. Res. 7: 1172)。
【0102】
抗VSIG4抗体
免疫チェックポイントは、生理的条件下で、自己免疫寛容維持および免疫介在組織損傷限定に重要な役割を有する。VSIG4は、休止マクロファージに発現されるB7関連免疫グロブリンスーパーファミリーに属するタイプI膜貫通タンパク質である。VSIG4は、CD4およびCD8T細胞増殖およびIL-2産生の阻害によりT細胞活性化を負に制御する共阻害性リガンドである。長い形態(huVSIG4(L))および短い形態(huVSIG4(S))の2形態のVSIG4が知られ、長い形態ではIgC型免疫グロブリンドメインである膜近位ドメインの存在により異なる。
【0103】
本発明者らは、本発明により、両形態がマクロファージに発現されることを示す。さらに、両形態は機能的である:huVSIG4(L)またはhuVSIG4(S)の可溶性バージョンは、T細胞増殖およびIFNγ産生阻害により証明されるとおり、ヒトCD4T細胞活性化を阻害する。故に、長いおよび短い形態のVSIG4両者は、タンパク質の制御活性に寄与し、これは、両者が免疫抑制を回復するために阻害されるべきであることを意味する。
【0104】
本発明は、ヒトVSIG4に特異的に結合する新規モノクローナル抗体を提供する。より具体的には、本発明は、タンパク質の長い形態および短い形態の両者に結合できる、新規モノクローナル抗体を提供する。さらに、ここに開示する抗体は、VSIG4への結合に加えて内在化を誘導し、そうして受容体の細胞表面からの除去に寄与する。これは、例えば、長い形態のヒトVSIG4にしか結合できず、内在化を誘導できない、WO2020/069507に記載の抗体などの先行技術の抗体と対照的である。
【0105】
本発明者らは、有効VSIG4遮断がここに開示する抗VSIG4抗体で達成されることを発見した。実際、これら抗体は、炎症促進性サイトカイン遊離を誘導し、マクロファージによる抗炎症性サイトカイン分泌を遮断し、T細胞活性化を促進する能力により証明されるとおり、VSIG4の抗炎症性機能を調節し、免疫抑制性性質を阻害する。ここに開示する抗VSIG4抗体は、それ故に、癌患者における抗腫瘍免疫応答の産生に有用である。
【0106】
第一の態様において、本発明は、ヒトVSIG4に特異的に結合できるモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある実施態様において、該抗体は、長い形態のヒトVSIG4および短い形態のVSIG4両方に結合できる。ある実施態様において、長い形態のヒトVSIG4タンパク質は、配列番号1に示す配列を有する。ある実施態様において、短い形態のヒトVSIG4タンパク質は、配列番号2に示す配列を有する。
【0107】
ある実施態様において、抗VSIG4抗体は、VSIG4への結合により内在化を誘導する。
【0108】
ある実施態様において、本発明の抗体の内在化は、免疫蛍光(本明細書で下記に例示される)または内在化機構に特異的な当業者に知られる何れかの方法または工程により評価され得る。
【0109】
複合体VSIG4/抗体は、抗体のVSIG4の細胞外ドメイン(ECD)への結合後内在化し、それにより細胞表面のVSIG4の量の減少を誘導する。この減少は、非限定的例として、ウェスタンブロット、FACS、免疫蛍光などの当業者に知られる何れかの方法により定量され得る。
【0110】
ある実施態様において、この減少、故に内在化の反映は、FACSにより測定され、4℃で測定した平均蛍光強度(MFI)と37℃で測定したMFIの間の差またはデルタとしてあらわされ、何れの場合も、細胞は4時間、抗体とインキュベートされた後である。
【0111】
このデルタは、例えば未処理細胞およびi)ここに記載する抗体と4時間インキュベーション後VSIG4-トランスフェクトHEK293細胞およびii)Alexa488で標識した二次抗体を使用して、抗体で処理した細胞で得たMFIである。このパラメータを次の式を使用して計算する:Δ(MFI4℃-MFI37℃)。
【0112】
MFIのこの差は、MFIがVSIG4の細胞表面発現に比例するため、VSIG4下方制御を反映する。
【0113】
有利に、ここに記載する抗体または任意のその抗原結合フラグメントは、VSIG4でトランスフェクトしたHEK293に少なくとも280、好ましくは少なくとも370のΔ(MFI4℃-MFI37℃)を誘導するモノクローナル抗体である。
【0114】
さらに詳細には、上記デルタは、説明であるが、非限定例であると解釈すべきである、次の過程により測定され得る:
a)目的の細胞と本発明の抗体を、冷(4℃)または温(37℃)完全培養培地と接触させ;
b)工程a)の細胞および、並行して、未処理細胞と二次抗体を接触させ;
c)本発明の抗体に結合できる二次標識抗体と処理および非処理細胞のMFI(表面に存在するVSIG4量を表す)を測定し;そして
d)非処理細胞で得たMFIから処理細胞で得たMFIを減じて、デルタを計算する。
【0115】
このデルタMFIから、内在化パーセンテージは:
100×(MFI4℃-MFI37℃)/MFI4℃
として決定できる
【0116】
VSIG4-トランスフェクトHEK293に存在する本発明の抗体または任意のその抗原結合フラグメントの内在化パーセンテージは、60%~および99%、優先的に61%~および96%を含む。
【0117】
ある実施態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、10×10-10~1×10-9Mに含まれるEC50でVSIG4に結合できる。
【0118】
ここで使用する「EC50」は、50%有効濃度をいう。より厳密に用語最大半量有効濃度(EC50)は、ある特定の暴露時間後、ベースラインと最大の半分の応答を誘導する、薬物、抗体または毒物の濃度に対応する。薬物の効力の指標として汎用される。それ故に、段階的用量応答曲線のEC50は、最大効果の50%が観察される化合物の濃度を表す。計数的用量応答曲線のEC50は、特定の暴露時間後、集団の50%が応答を示す化合物の濃度を表す。濃度測定は、一般にシグモイド曲線に従い、濃度の比較的小さな変化を超えて、急速に増加する。これは、ベストフィットラインの誘導により数学的に決定できる。
【0119】
好ましい実施態様として、ここで決定したEC50は、ヒトHEK293細胞に露出されるVSIG4 ECDへの抗体結合の効力を特徴づける。EC50パラメータは、FACS分析を使用して決定する。EC50パラメータは、ヒト腫瘍細胞で発現されるヒトIGF-1R最大結合の50%が得られる抗体濃度を反映する。各EC50値は、4パラメータ回帰曲線フィッティングプログラム(Prism Software)を使用する用量応答曲線の中点として計算した。このパラメータは、生理学的/病理学的状態の代表として選択されている。
【0120】
ここで使用する抗VSIG4モノクローナル抗体は、合成抗体、組み換えにより産生された抗体、多特異的抗体(二特異的抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体および上記の何れかの機能的フラグメントを含むが、これらに限定されない。抗VSIG4モノクローナル抗体は、ヒトまたは非ヒト起源であり得る。非ヒト起源の抗VSIG4抗体の例は、哺乳動物起源(例えば、類人猿、齧歯類、ヤギおよびウサギ)のものを含むが、これらに限定されない。ヒト抗体の全構造がヒトに由来するため、慣用のヒト化抗体またはマウス抗体と比較して、免疫応答を有する可能性はほんのわずかであり、故に、ヒトに投与したとき、何れかの望まない免疫応答を引き起こさない利点がある。それ故に、処置用抗体として極めて有利であり得る。従って、ヒトにおける治療のための抗VSIG4モノクローナル抗体は、好ましくはヒト化または完全ヒトである。より好ましくは、完全ヒトである。
【0121】
本発明のある実施態様によると、ここに記載する抗体は、本発明者らにより、ファージディスプレイ方法によりナイーブヒト単一鎖Fvライブラリーのバイオパニングにより産生された、VSIG4に特異的に結合するヒト抗体である。
【0122】
ファージディスプレイ方法において、機能的抗体ドメインは、それをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面に提示される。特に、VおよびVドメインをコードするDNA配列は、動物cDNAライブラリー(例えば、罹患組織のヒトまたはマウスcDNAライブラリー)から増幅される。VおよびVドメインをコードするDNAを、PCRによりscFvリンカーと一緒に組み換え、ファージミドベクターにクローン化する。ベクターは大腸菌に電気穿孔され、大腸菌はヘルパーファージで感染させる。これらの方法で使用するファージは、一般にfdおよびM13を含む糸状ファージであり、VおよびVドメインは、通常ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIに組み換えにより融合される。特定の抗原に結合する抗原結合ドメインを発現するファージを、抗原で、例えば、標識抗原または固体表面またはビーズに結合もしくは捕捉された抗原を使用して、選択または同定できる。ここに提供する抗体の製造に使用できるファージディスプレイ方法の例は、Brinkman et al., 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50; Ames et al., 1995, J. Immunol. Methods 184:177-186; Kettleborough et al., 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958; Persic et al., 1997, Gene 187:9-18; Burton et al., 1994, Advances in Immunology 57:191-280;PCT/GB91/01134;WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401およびWO97/13844;および米国特許5,698,426、5,223,409、5,403,484、5,580,717、5,427,908、5,750,753、5,821,047、5,571,698、5,427,908、5,516,637、5,780,225、5,658,727、5,733,743および5,969,108に記載のものを含む。
【0123】
上記引用文献に記載のとおり、ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域を単離し、例えば、下記のとおり、ヒト抗体を含む抗体全体またはあらゆるその他の所望の抗原結合フラグメントの産生に使用し、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含むあらゆる所望の宿主で発現させ得る。Fab、Fab’およびF(ab’)フラグメントを組み換えにより産生する技術も、PCT公開WO92/22324; Mullinax et al., 1992, BioTechniques 12(6):864-869; Sawai et al., 1995, AJRI 34:26-34; and Better et al., 1988, Science 240:1041-1043に記載のものなど、当分野で知られる方法を使用して用い得る。
【0124】
抗体全体を産生するために、VHまたはVLヌクレオチド配列、制限部位および制限部位を保護するフランキング配列を含むPCRプライマーを使用して、scFvクローンでVまたはV配列を増幅できる。当業者に知られるクローニング技術を使用して、PCR増幅VHドメインを、VH定常領域、例えば、ヒトガンマ4定常領域を発現するベクターにクローン化でき、PCR増幅VLドメインをVL定常領域、例えば、ヒトカッパまたはラムダ定常領域を発現するベクターにクローン化できる。VHおよびVLドメインを、必要な定常領域を発現する1ベクターにクローン化もできる。次いで、当業者に知られる技術を使用して、重鎖変換ベクターおよび軽鎖変換ベクターを細胞株に共トランスフェクトして、完全長抗体、例えば、IgGを発現する安定なまたは一過性細胞株を産生する。
【0125】
上記方法により産生した抗体は、抗原への親和性が増強した抗体である。用語「親和性」は、特異的抗原部位を特異的に認識し、結合する性質をいい、抗体の抗原に対する特異性と共に、高親和性は、免疫反応で重要な因子である。本発明において、ヒト化重鎖ライブラリー細胞は、重鎖可変領域の無作為変異により産生され、コロニーリフトアッセイが高抗原結合性を有する第一バリアントクローンの選択のためにライブラリー細胞で実施される。選択クローンの競合的ELISAの実施のために、各クローンの親和性を試験した。これ以外の方法で、抗原の親和性を測定する種々の方法を用いてよく、表面プラズモン共鳴テクノロジーはこのような方法の一例である。
【0126】
ある実施態様において、ここに開示する抗VSIG4モノクローナル抗体は、VSIG4タンパク質内のエピトープに特異的に結合する。具体的に、本抗体により結合されるエピトープは、変異したとき抗体結合をなくすVSIG4残基の決定により同定される。ある実施態様において、VSIG4は長バリアントである。他の実施態様において、VSIG4は短バリアントである。
【0127】
好ましくは、ここに開示する抗体は、1以上のエピトープにおける少なくとも1個のアミノ酸に結合する抗体であり、エピトープは、次のものからなる群から選択される:
a)配列番号2に示す配列の残基E24、V25、E27、V29および/またはT30を含むエピトープM1;
b)配列番号2に示す配列の残基D36、N38、L39および/またはT42を含むエピトープM2;
c)配列番号2に示す配列の残基Q59、G61、S62、D63および/またはV65を含むエピトープM3;
d)配列番号2に示す配列の残基I77、A80、Y82および/またはQ83を含むエピトープM4;
e)配列番号2に示す配列の残基H87、H90、K91および/またはV92を含むエピトープM5;
f)配列番号2に示す配列の残基S97、Q99、S101および/またはT102を含むエピトープM6;
g)配列番号2に示す配列の残基R108、S109、H110、T112および/またはE114を含むエピトープM7;
h)配列番号2に示す配列の残基T119、P120、D121、N123、Q124および/またはV125を含むエピトープM8。
【0128】
より好ましくは、ここに開示する抗体は、
a)M1のアミノ酸の少なくとも1個;
b)M4のアミノ酸の少なくとも1個および所望によりM3の残基の少なくとも1個;
c)M7のアミノ酸の少なくとも1個;
d)M8のアミノ酸の少なくとも1個;
e)M7のアミノ酸の少なくとも1個およびM8のアミノ酸の少なくとも1個;または
f)M3のアミノ酸の少なくとも1個、M7のアミノ酸の少なくとも1個およびM8のアミノ酸の少なくとも1個および所望によりM2の残基の少なくとも1個および/またはM4の残基の少なくとも1個
に結合する抗体である。
【0129】
抗VSIG4抗体のエピトープへの結合の決定は、放射活性、BIAcore、ELISA、フローサイトメトリーなどを含むが、これらに限定されない当業者に知られる何れかの方法または技術または本明細書に記載されるような方法により実施され得る。
【0130】
ある実施態様において、ここに開示する抗VSIG4モノクローナル抗体は、3個の重鎖CDRSおよび3個の軽鎖CDRを含む。好ましくは、抗体はa 重鎖および軽鎖を含み、ここで、重鎖は3個の重鎖CDRを含み、軽鎖は3個の軽鎖CDRを含む。
【0131】
好ましくは、ここに開示する抗体は3個の重鎖CDRSおよび3個の重鎖CDRを含み、ここで、各CDRの配列は、配列番号3~58に示す群から選択される。
【0132】
ある実施態様において、抗VSIG4は、配列番号3、4、5、9、10、11、12、13、17、18、19、23、24、26、27、28、32、33、34、37、38、39、43、44、45、49、50、51および55からなる群から選択される配列を含む、3個の重鎖CDRを含む。
【0133】
ある実施態様において、抗VSIG4は、配列番号6、7、8、14、15、16、20、21、22、25、29、30、31、35、36、40、41、42、46、47、48、52、53、54、56、57および58からなる群から選択される配列を含む、3個の軽鎖CDRを含む。
【0134】
好ましい実施態様は、配列番号3、4、5、9、10、11、12、13、17、18、19、23、24、26、27、28、32、33、34、37、38、39、43、44、45、49、50、51および55からなる群から選択される配列を含む3個の重鎖CDRを含む重鎖を有する、抗VSIG4抗体を提供する。
【0135】
他の好ましい実施態様は、配列番号6、7、8、14、15、16、20、21、22、25、29、30、31、35、36、40、41、42、46、47、48、52、53、54、56、57および58からなる群から選択される配列を含む3個の軽鎖CDRを含む軽鎖を有する、抗VSIG4抗体を提供する。
【0136】
他の好ましい実施態様において、抗VSIG4抗体は3個の重鎖CDRを含み、重鎖CDRは配列番号3、4、5、9、10、11、12、13、17、18、19、23、24、26、27、28、32、33、34、37、38、39、43、44、45、49、50、51および55からなる群から選択される配列を含み;そして3個の軽鎖CDRを含み、軽鎖CDRは配列番号6、7、8、14、15、16、20、21、22、25、29、30、31、35、36、40、41、42、46、47、48、52、53、54、56、57および58からなる群から選択される配列を含む。
【0137】
さらに他の好ましい実施態様において、抗VSIG4抗体は重鎖を含み、重鎖は3個の重鎖CDRを含み、ここで、重鎖CDRは配列番号3、4、5、9、10、11、12、13、17、18、19、23、24、26、27、28、32、33、34、37、38、39、43、44、45、49、50、51および55からなる群から選択される配列を含み;そして軽鎖を含み、軽鎖は3個の軽鎖CDRを含み、ここで、軽鎖CDRは配列番号6、7、8、14、15、16、20、21、22、25、29、30、31、35、36、40、41、42、46、47、48、52、53、54、56、57および58からなる群から選択される配列を含む。
【0138】
より好ましくは、ここに開示する抗体は、
a)配列番号3、4および5の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
b)配列番号9、10および5の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
c)配列番号11、12および13の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号14、15および16の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
d)配列番号17、18および19の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号20、21および22の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
e)配列番号23、24および3の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号6、7および25の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
f)配列番号26、27および28の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号29、30および31の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
g)配列番号32、33および34の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号35、36および16の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
h)配列番号37、38および39の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号40、41および42の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
i)配列番号43、44および45の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号46、47および48の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
j)配列番号49、50および51の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号52、53および54の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
k)配列番号17、18および55の配列の3個の重鎖CDRおよび配列番号56、57および58の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体
からなる群から選択される。
【0139】
好ましい、しかし、非限定的実施態様において、本発明の抗体は、
a)配列番号129の配列または配列番号129と少なくとも80%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む抗体;
b)配列番号131の配列または配列番号131と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
c)配列番号133の配列または配列番号133と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号14、15および16の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
d)配列番号135の配列または配列番号135と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号20、21および22の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
e)配列番号137の配列または配列番号137と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号6、7および25の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
f)配列番号139の配列または配列番号139と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号29、30および31の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
g)配列番号141の配列または配列番号141と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号35、36および16の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
h)配列番号143の配列または配列番号143と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れらかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号40、41および42の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
i)配列番号145の配列または配列番号145と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号46、47および48の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
j)配列番号147の配列または配列番号147と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号52、53および54の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体;
k)配列番号149の配列または配列番号149と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号56、57および58の配列の3個の軽鎖CDRを含むまたはそれからなる抗体
からなる群から選択される。
【0140】
「配列番号129と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%または98%同一性を示すれかの配列」により、3個の重鎖CDR配列番号3、4および5を示す配列、および、さらに、CDR(すなわ配列番号3、4および5)に対応する以外の完全配列配列番号129と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%または98%同一性を示す配列をいい、ここで、「CDRに対応する以外の配列」は、「CDRに対応する配列を除く」ことを意図する。
【0141】
他の好ましい、しかし、非限定的実施態様において、本発明の抗体は、
a)配列番号130の配列または配列番号130と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号3、4および5の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
b)配列番号132の配列または配列番号132と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号9、10および5の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
c)配列番号134の配列または配列番号134と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号11、12および13の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
d)配列番号136の配列または配列番号136と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号17、18および19の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
e)配列番号138の配列または配列番号138と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号23、24および3の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
f)配列番号140の配列または配列番号140と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号26、27および28の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
g)配列番号142の配列または配列番号142と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号32、33および34の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
h)配列番号144の配列または配列番号144と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号37、38および39の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
i)配列番号146の配列または配列番号146と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号43、44および45の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;
j)配列番号148の配列または配列番号148と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号49、50および51の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体;および
k)配列番号150の配列または配列番号150と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインおよび配列番号17、18および55の配列の3個の重鎖CDRを含む抗体
からなる群から選択される。
【0142】
「配列番号130と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列」により、3個の軽鎖CDR配列番号6、7および8を示す配列、および、さらに、CDR(すなわ配列番号6、7および8)に対応する以外の完全配列配列番号130と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%または98%同一性を示す配列をいうことを意図する。
【0143】
本発明の実施態様は、VSIG4を認識する抗体であり、
a)配列番号129の配列または配列番号129と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号130の配列または配列番号130と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
b)配列番号131の配列または配列番号131と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号132の配列または配列番号132と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
c)配列番号133の配列または配列番号133と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号134の配列または配列番号134と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
d)配列番号135の配列または配列番号135と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号136の配列または配列番号136と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
e)配列番号137の配列または配列番号137と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号138の配列または配列番号138と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
f)配列番号139の配列または配列番号139と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号140の配列または配列番号140と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
g)配列番号141の配列または配列番号141と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号142の配列または配列番号142と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
h)配列番号143の配列または配列番号143と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号144の配列または配列番号144と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
i)配列番号145の配列または配列番号145と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号146の配列または配列番号146と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;
j)配列番号147の配列または配列番号147と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号148の配列または配列番号148と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体;および
k)配列番号1149の配列または配列番号149と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号150の配列または配列番号150と少なくとも80%、85%、90%、95%または98%同一性を示す何れかの配列の軽鎖可変ドメインを含む抗体
からなる群から選択される。
【0144】
本発明のある実施態様によるVSIG4に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、好ましくは
a)配列番号129のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号130のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
b)配列番号131のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号132のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
c)配列番号133のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号134のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
d)配列番号135のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号136のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
e)配列番号137のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号138のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
f)配列番号139のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号140のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
g)配列番号141のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号142のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
h)配列番号143のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号144のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
i)配列番号145のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号146のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;
j)配列番号147のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号148のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体;および
k)配列番号149のアミノ酸により示される重鎖可変領域および配列番号150のアミノ酸により示される軽鎖可変領域を含む抗体
からなる群から選択される抗体である。
【0145】
より明確にするために、次の表2は、好ましい抗体の配列(CDR、フレームワーク、VおよびV)およびこれら抗体により結合されるエピトープを示す。
【0146】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0147】
VSIG4が特異的に認識される範囲内で、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、ここに記載する本発明の抗VSIG4抗体の配列しか含まないのではなく、その生物学的等価も含み得る。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特徴をさらに改善するために、抗体のアミノ酸配列にさらなる変化を付し得る。これらの修飾に含まれるのは、抗体のアミノ酸配列の欠失、挿入および/または置換である、例えば。アミノ酸のこのような修飾は、側鎖置換基のアミノ酸の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、荷電、サイズなどに基づき、行う。アミノ酸の側鎖置換基のサイズ、形態およびタイプの分析に基づき、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが全て陽性荷電を有する残基であり;アラニン、グリシンおよびセリンが類似サイズであり;そしてフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが類似形態を有することが判明している。従って、これらの考察に基づき、生物学的に、アルギニン、リシンおよびヒスチジン;アラニン、グリシンおよびセリン;およびフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは機能的に等価ということができる。
【0148】
ある実施態様において、ここに記載する抗VSIG4モノクローナル抗体は、完全長抗体、複数鎖または単一鎖抗体、VSIG4に選択的に結合するこのような抗体のフラグメント(Fab、Fab’、(Fab’)、FvおよびscFvを含むが、これらに限定されない)、サロボディ(サロゲート軽鎖構築物を含む)、単一ドメイン抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体などの携帯であり得る。それらはまた、例えば、IgA(例えば、IgAlまたはIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)またはIgMを含む、あらゆるアイソタイプであるかまたはそれに由来し得る。ある実施態様において、抗VSIG4抗体はIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)である。ある実施態様において、抗体はヒト定常領域をさらに含む。さらなる実施態様において、ヒト定常領域はIgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。なおさらなる具体的実施態様において、ヒト定常領域はIgG1である。さらに、重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖定常領域は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)タイプを有する。
【0149】
抗VSIG4抗体は、診断適用に有用な標識抗体を含む。抗体は診断的に、例えば、特異的細胞、組織または血清における目的の標的の発現の検出;または例えば、ある処置レジメンの有効性を決定する臨床試験法の一部として免疫学的応答の進展または進行のモニターに、使用できる。検出は、抗体を検出可能物質または「標識」にカップリングすることにより促進され得る。標識を、本発明の抗VSIG4抗体に直接的にまたは間接的にコンジュゲートできる。標識はそれ自体検出可能(例えば、放射性同位体標識、同位体標識または蛍光標識)であってよく、または、酵素標識の場合、検出可能である基質化合物または組成物の化学的改変を触媒できる。検出可能物質の例は、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、種々のポジトロン放出断層撮影に使用する陽電子放出金属および非放射性常磁性金属イオンを含む。検出可能物質を、当分野で知られる技術を使用して、抗体(またはそのフラグメント)に直接的に、または介在物(例えば、当分野で知られるリンカーなど)を介して間接的に、結合またはコンジュゲートできる。酵素標識の例は、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;米国特許4,737,456)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、マレートデヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコアミラーゼ、リソザイム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、ヘテロ環式オキシダーゼ(例えばウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む。適当な補欠分子族複合体は、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含む;適当な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレッセイン、フルオレッセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレッセイン、ダンシルクロライド、ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロライドまたはフィコエリスリンなどを含む;発光物質の例は、ルミノールを含む;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびイクオリンを含む;適当な同位体物質の例は、13C、15Nおよび重水素を含む;そして適当な放射性物質の例は、125I、131I、111Inまたは99Tcを含む。
【0150】
二特異的抗体
さらに、本発明は、ここに開示するモノクローナル抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、多特異的抗体を提供する。
【0151】
上記本発明の多特異的抗体は、好ましくは二特異的抗体であり得るが、それに限定されない。
【0152】
本発明の多特異的抗体は、好ましくは、ここに記載する抗VSIG4抗体が免疫エフェクター細胞特異的標的分子に結合性を有する抗体またはそのフラグメントに結合した形態を有する。免疫エフェクター細胞特異的標的分子は好ましくは免疫チェックポイントであるが、それに限定されない。免疫エフェクター細胞特異的標的分子の例は、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、TIGIT、BTLA、KIR、A2aR、VISTA、B7-H3、TCR/CD3、CD16(FcγRIIIa)CD44、Cd56、CD69、CD64(FcγRI)、CD89およびCD11b/CD18(CR3)を含む。
【0153】
多特異的抗体は、同じ抗原または2以上の別々の抗原の異なる多(二または高次)エピトープを同時に認識できる抗体であり、多特異的抗体に属する抗体は、scFvベースの抗体、Fabベースの抗体、IgGベースの抗体などに分類され得る。多特異的、例えば、二特異的抗体の場合、2個のシグナルが同時に抑制または増幅され得て、故に、1シグナルが抑制/増幅される場合よりも有効であり得る。各シグナルが各シグナル阻害剤で処置される場合と比較して、低用量投与が達成でき、2シグナルが同じ時に同じ空間で抑制/増幅され得る。
【0154】
二特異的抗体を産生する方法は、広く知られる。慣習的に、二特異的抗体の組み換え産生は、2個の重鎖が異なる特異性を有する条件下での、2個の免疫グロブリンの重鎖/軽鎖対の共発現に基づく。
【0155】
scFvベースの二特異的抗体の場合、異なるscFvのVLおよびVHを合わせることにより、ハイブリッドcFvベースがダイアボディ抗体を得るためのヘテロ二量体形態で提供され(Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,90:6444, 1993)、異なるscFvsを互いに結合することにより、タンデムScFvが産生され得る。各scFvの末端でFabのCH1およびCLを発現することにより、ヘテロ二量体ミニ抗体が産生され得る(Muller et al., FEBS lett., 432:45, 1998)。さらに、Fcのホモ二量体ドメインとしてCH3ドメインの部分的アミノ酸を置換することにより、ヘテロ二量体構造となるような「ノブ・イントゥ・ホール」形態への構造変化がなされ、これら修飾CH3ドメインは、各異なるscFvの末端で発現され、故に、ヘテロ二量体scFv形態のミニボディが産生され得る(Merchant et al., Nat. Biotechnol., 16:677, 1998)。
【0156】
Fabベースの二特異的抗体の場合、ジスルフィド結合またはメディエーターの利用による特異的抗原のための別々のFab’の組み合わせにより、抗体がヘテロ二量体Fab形態で産生され得て、特異的Fabの重鎖または軽鎖の末端に異なる抗原のscFvを発現させることにより、抗原結合価2が得られ得る。さらに、FabとscFvの間にヒンジ領域を有することにより、抗原結合価4がホモ二量体形態で得られる。さらに、次の製造方法が当業者には知られる:Fabの軽鎖末端および重鎖末端に異なる抗原のscFvを融合することにより、抗原結合価3が得られる、デュアル標的ビボディ、Fabの軽鎖末端および重鎖末端の異なるscFvの融合により、抗原結合価3が得られるトリプル標的ビボディおよび3個の異なるFabの化学融合に得られる単純な形態のトリプル標的抗体F(ab’)
【0157】
IgGベースの二特異的抗体の場合、マウスおよびラットハイブリドーマの再ハイブリダイゼーションに基づくハイブリッドハイブリドーマ、いわゆるクアドローマの製造による、二特異的抗体を産生する方法がTrion Pharmaにより知られる。さらに、異なる重鎖のFcのCH3ホモ二量体ドメインの部分的アミノ酸が、軽鎖部分を共有しながら修飾される、いわゆる「ホールおよびノブ」形態の二特異的抗体を産生する方法が知られる(Merchant et al., Nat. Biotechnol., 16:677, 1998)、ヘテロ二量体形態の二特異的抗体以外、IgGの、軽鎖および重鎖の、可変ドメインではなく、定常ドメインの2個の異なるscFvの融合と続く発現によりホモ二量体形態の(scFv)-IgGを産生する方法が知られる。さらに、ImClone Systemsから、ヒトVEGFR-2のキメラモノクローナル抗体としてのIMC-1C11に基づき、マウス血小板由来増殖因子受容体-αの単一可変ドメインのみを、二特異的抗体を産生するために抗体の軽鎖のアミノ末端に融合することが報告されている。さらに、CD20の高抗原結合価を有する抗体が、タンパク質キナーゼA(PKA)Rサブユニットの二量体化およびドッキングドメイン(DDD)およびPKAのアンカリングドメインを使用するいわゆる「ドックおよびロック(DNL)」方法に基づき、Rossi et al. により報告される(Rossi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 103:6841, 2006)。
【0158】
抗体誘導体
本発明の抗VSIG4抗体を、当分野で知られ、容易に利用可能なさらなる非タンパク性部分を含むよう、さらに修飾し得る。特に、ここに含まれるのは、診断および治療適用のための他の分子で誘導体化、共有結合的修飾またはコンジュゲートされた、抗VSIG4モノクローナル抗体である。例えば、限定的ではないが、誘導体化抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知保護/遮断基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合などにより、修飾されている抗体を含む。多数の化学修飾の何れも、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むが、これらに限定されない既知技術により実施され得る。さらに、誘導体は、1以上の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0159】
特に、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体が投与される生体における滞在時間を延長するため、上記のとおり、特に例えば、グリコシル化および/またはペグ化により、誘導体化され得る。
【0160】
グリコシル化および/またはペグ化に関して、種々のパターンのグリコシル化および/またはペグ化が、本発明の抗体の機能が維持される限り、当分野で周知の方法により修飾され得て、本発明の抗体に含まれるのは、種々のパターンのグリコシル化および/またはペグ化が修飾されているバリアントモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0161】
好ましくは、抗体の誘導体化に適する部分は、水可溶性ポリマーである。水可溶性ポリマーの非限定的例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-l,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたは無作為コポリマー)およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共ポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。ポリマーはどんな分子量であってもよく、分岐または非分岐であり得る。抗体に結合するポリマーの数は変わってよく、1を超えるポリマーが結合するならば、同じ分子でも、異なる分子でもよい。一般に、誘導体化に使用するポリマーの数および/またはタイプは、抗体の改善すべき特定の性質または機能、抗体誘導体を規定された条件下で治療に使用するかなどを含むが、これらに限定されない考察に基づき、決定され得る。
【0162】
具体例において、本発明の抗VSIG4抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合できる。具体的実施態様において、抗体は抗体フラグメントであり、PEG部分は抗体フラグメントに位置する何れかの利用可能なアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えば何れかの遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシルまたはカルボキシル基に結合する。このようなアミノ酸は、抗体フラグメントで天然に生じ得てまたは組み換えDNA方法を使用してフラグメントに操作し得る。例えば米国特許5,219,996参照。複数部位を、2以上のPEG分子の結合に使用できる。PEG部分は、抗体フラグメントに位置する少なくとも1個のシステイン残基のチオール基を介して共有結合する。チオール基が結合点として使用されるとき、適切に活性化されたエフェクター部分、例えばマレイミドなどのチオール選択的誘導体およびシステイン誘導体が使用され得る。
【0163】
具体例において、抗VSIG4抗体コンジュゲートは、例えば、EP0948544に開示の方法により、ペグ化、すなわち、共有結合したPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する修飾Fab’フラグメントである。またPoly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications, (J. Milton Harris (ed.), Plenum Press, New York, 1992); Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications, (J. Milton Harris and S. Zalipsky, eds., American Chemical Society, Washington D.C., 1997); and Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences, (M. Aslam and A. Dent, eds., Grove Publishers, New York, 1998); and Chapman, 2002, Advanced Drug Delivery Reviews 54:531-545も参照。PEGは、ヒンジ領域のシステインに結合できる。一例において、PEG修飾Fab’フラグメントは、修飾ヒンジ領域の一チオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基は、マレイミド基に共有結合およびリシン残基のアミン基の各々に、凡そ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーを結合できる。Fab’フラグメントに結合したPEGの総分子量は、それ故、凡そ40,000Daであり得る。
【0164】
他の実施態様において、放射線への暴露により選択的に加熱し得る、抗体および非タンパク性部分のコンジュゲートが提供される。ある実施態様において、非タンパク性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線はどんな波長でもよく、通常の細胞には有害ではないが、非タンパク性部分を抗体-非タンパク性部分近位の細胞が死ぬ温度まで加熱する波長を含むが、これに限定されない。
【0165】
イムノコンジュゲート
他の態様において、本発明は、細胞毒性剤とコンジュゲートされた、ここに記載する抗VSIG4抗体を含む、イムノコンジュゲート(相互交換可能に「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」をいう)を提供する。
【0166】
多くの細胞毒性剤が単離または合成されており、決定的にではないにしても、少なくとも顕著に腫瘍細胞の細胞増殖を阻害するまたは、破壊するもしくは低減することを可能とする。しかしながら、これら薬剤の毒性活性は腫瘍細胞に限定されず、非腫瘍細胞も影響を受け、破壊され得る。より具体的に、副作用が造血細胞または上皮、特に粘膜の細胞などの急速に再生している細胞で観察される。腫瘍細胞への高細胞毒性を維持しながら、正常細胞に対する副作用を制限するために、イムノコンジュゲートが癌処置における細胞毒性剤の局所送達のために使用されている(Lambert, J. (2005) Curr. Opinion in Pharmacology 5:543-549; Wu et al (2005) Nature Biotechnology 23(9): 1137-1146; Payne, G. (2003) i 3:207-212; Syrigos and Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drug Deliv. Rev. 26:151-172;米国特許4,975,278)。イムノコンジュゲートは薬物部分(すなわち、細胞毒性剤)の腫瘍への標的化送達および、非コンジュゲート薬物の全身投与が、正常細胞への許容されないレベルの毒性をもたらし得て、腫瘍細胞が排除されるべきであるところでの細胞内蓄積を可能とする(Baldwin et al, Lancet (Mar. 15, 1986) pp. 603-05; Thorpe (1985) “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,” in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (A. Pinchera et al., eds) pp. 475-506)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体両者が、これら戦略で有用であると報告されている(Rowland et al., (1986) Cancer Immunol. Immunother. 21 :183-87)。
【0167】
ここに開示するイムノコンジュゲートで使用する細胞毒性剤は、薬物(すなわ「抗体-薬物コンジュゲート」)、毒素(すなわ「免疫毒素」または「抗体-毒素コンジュゲート」)、放射性同位体(すなわ「放射性イムノコンジュゲート」または「抗体-放射性同位体コンジュゲート」)などであり得るが、これらに限定されない。
【0168】
好ましくは、イムノコンジュゲートは、少なくとも1個の薬物または医薬に結合する結合タンパク質である。このようなイムノコンジュゲートは、結合タンパク質が抗体またはその抗原結合フラグメントであるとき、通常抗体-薬物コンジュゲート(または「ADC」)と称される。
【0169】
第一実施態様において、このような薬物は、その作用形態に関して説明され得る。非限定的例として、アルキル化剤、例えば窒素マスタード、アルキル-スルホネート、ニトロソ尿素、オキサゾホリン、アジリジンまたはイミン-エチレン、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗血管形成剤、抗エストロゲン剤、抗アンドロゲン剤、キレート剤、鉄吸収刺激剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、DNA阻害剤、DNA合成阻害剤、アポトーシス刺激剤、チミジレート阻害剤、T細胞阻害剤、インターフェロンアゴニスト、リボヌクレオシドトリホスフェートレダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、エストロゲン受容体アンタゴニスト、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞周期阻害剤、タキサン、チューブリン阻害剤、血管形成阻害剤、マクロファージ刺激剤、ニューロキニン受容体アンタゴニスト、カンナビノイド受容体アゴニスト、ドーパミン受容体アゴニスト、顆粒球刺激因子アゴニスト、エリスロポエチン受容体アゴニスト、ソマトスタチン受容体アゴニスト、LHRHアゴニスト、カルシウム増感剤、VEGF受容体アンタゴニスト、インターロイキン受容体アンタゴニスト、破骨細胞阻害剤、ラジカル形成刺激剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、ビンカアルカロイド、抗ホルモンまたは免疫調節剤またはあらゆるその他の細胞毒性または毒素の活性基準を満たす新規薬物を列挙し得る。
【0170】
このような薬物は、例えば、VIDAL 2010の、腫瘍学および血液学カラム「細胞毒性物質」に結合した化合物に特化した部分に引用され、この文献を引用して引用されるこれら細胞毒性化合物を、ここで好ましい細胞毒性剤として例示する。
【0171】
より具体的に、次の薬物が、本発明で好ましいが、これらに限定されない:メクロレタミン、クロラムブコール、メルファレン、塩化水素、ピポブロメン、プレドニマスチン、ジソディック-ホスフェート、エストラムスチン、シクロホスファミド、アルトレタミン、トロホスファミド、スルホフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、トリエチルエナミン、アルテラミン、カルムスチン、ストレプトゾシン、フォテムスチン、ロムスチン、ブスルファン、トレオスルファン、インプロスルファン、ダカルバジン、シスプラチン、オキサリプラチン、ロバプラチン、ヘプタプラチン、ミリプラチン水和物、カルボプラチン、メトトレキサート、ペメトレキセド、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、5-フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン(6-MP)、ネララビン、6-チオグアニン(6-TG)、クロロデスオキシアデノシン、5-アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシン、テガフール、ペントスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、バルルビシン、アムルビシンヒドロクロライド、ピラルビシン、エリプチニウムアセテート、ゾルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびテニポシド、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロモスタット、CGS-27023A、ハロフギノン、COL-3、ネオバスタット、サリドマイド、CDC501、DMXAA、L-651582、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン-アルファ、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンジオスタチン、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、フルタミド、ニルタミド、スピロノラクトン、シプロテロンアセテート、フィナステリド、シミチジン、ボルテゾミド、ベルケイド、ビカルタミド、シプロテロン、フルタミド、フルベストラン、エキセメスタン、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レチノイド、レキシノイド、メトキサレン、アミノレブリン酸メチル、アルデスロイキン、OCT-43、デニロイキン ジフチトクス、インターロイキン-2、タソネルミン、レンチナン、シゾフィラン、ロキニメクス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:C、プロコダゾール、Tic BCG、コリネバクテリウム・パルバム、NOV-002、ウカリン、レバミソール、1311-chTNT、H-101、セルモロイキン、インターフェロンアルファ2a、インターフェロンアルファ2b、インターフェロンガンマ1a、インターロイキン-2、モベナキン、Rexin-G、テセロイキン、アクラルビシン、アクチノマイシン、アルグラビン、アスパラギナーゼ、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダウノマイシン、ロイコボリン、マソプロコール、ネオカルジノスタチン、ペプロマイシン、サルコマイシン、ソラマルギン、トラベクテジン、ストレプトゾシン、テストステロン、クネカテキン、シネカテキン、アリトレチノイン、ベロテカンヒドロクロライド、カルステロン、ドロモスタノロン、エリプチニウムアセテート、エチニルエストラジオール、エトポシド、フルオキシメステロン、フォルメスタン、ホスホテロール、ゴセレリンアセテート、ヘキシルアミノリューベリネート、ヒステリリン、ヒドロキシプロゲステロン、イクサベピロン、リュープロリド、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲステロールアセテート、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、ミルテホシン、ミトブロニトール、ナドロロンフェニルプロピオネート、ノレチミドロンアセテート、プレドニゾロン、プレドニゾン、テムシロリムス、テストラクトン、トリアムコノロン、トリプトレリン、バプレオチドアセテート、ジノスタチンスチマラマー、アムサクリン、三酸化ヒ素、ビスアントレンヒドロクロライド、クロラムブシル、クロルトリアニセン、cis-ジアミンクロロプラチン、シクロホスファミド、ジエチルスチルベストロール、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、レナリドマイド、ロニダミン、メクロルエタナミン、ミトタン、ネダプラチン、ニムスチンヒドロクロライド、パミドロネート、ピポブロマン、ポルフィマーナトリウム、ラニムスチン、ラゾキサン、セムスチン、ソブゾキサン、メシラート、トリエチレンメラミン、ゾレドロン酸、カモスタットメシラート、ファドロゾールHCl、ナフォキサジン、アミノグルテチミド、カルモフール、クロファラビン、シトシンアラビノシド、デシタビン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フルダラビンホスフェート、フルオロウラシル、フトラフール、ウラシルマスタード、アバレリクス、ベキサロテン、ラルチテレキシド、タミバロテン、テモゾロミド、ボリノスタット、メガステロール、コンドロナートジナトリウム、レバミソール、フェルモキシトール、鉄イソマルトシド、セレコキシブ、イブジラスト、ベンダムスチン、アルトレタミン、ミトラクトール、テムシロリムス、プララトレキサート、TS-1、デシタビン、ビカルタミド、フルタミド、レトロゾール、クロドナートジナトリウム、デガレリクス、トレミフェンシトレート、ヒスタミンジヒドロクロライド、DW-166HC、ニトラクリン、デシタビン、イリノテカンヒドロクロライド、アムサクリン、ロミデプシン、トレチノイン、カバジタキセル、バンデタニブ、レナリドマイド、イバンドロン酸、ミルテホシン、ビテスペン、ミファムルチド、ナドロパリン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、アリザプリド、ラモセトロン、ドラセトロンメシラート、フォサプレピタントジメグルミン、ナビロン、アプレピタント、ドロナビノール、TY-10721、リスリド水素マレアート、エピセラム、デフィブロチド、ダビガトランエテキシレート、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、デジツクス、エポエチン、モルグラモスチム、オプレルベキン、シプロイセルT、M-Vax、アセチルL-カルニチン、ドネペジルヒドロクロライド、5-アミノレブリン酸、メチルアミノリューベリネート、セトロレリクスアセテート、イコデキストリン、ロイプロレリン、メチルフェニダート、オクトレオチド、アムレキサノクス、プレリキサホル、メナテトレノン、アネトホールジチオールチオン、ドキセルカルシフェロール、シアナカルセットヒドロクロライド、アレファセプト、ロミプロスチム、サイモグロブリン、シマルファシン、ウベニメクス、イミキモド、エベロリムス、シロリムス、H-101、ラソフォキシフェン、トリロスタン、インカドロネート、ガングリオシド、ペガプタニブオクタナトリウム、ベルトルフィン、ミドロン酸、ゾレドロン酸、ガリウムニトレート、アレンドロネートナトリウム、エチドロネートジナトリウム、ジナトリウムパミドロネート、デュタステライド、ナトリウムスチボグルコネート、アルモダフィニル、デキサラゾキサン、アミフォスチン、WF-10、テモポルフィン、ダルベポエチンアルファ、アンセスチム、サルグラモスチム、パリフェルミン、R-744、ネピデルミン、オプレルベキン、デニロイキンジフチトクス、クリサンタスパーゼ、ブセレリン、デスロレリン、ランレオチド、オクトレオチド、ピロカルピン、ボセンタン、カリケアミシン、メイタンシノイドおよびシクロニケート。
【0172】
さらに詳細には、当業者は、“Association Francaise des Enseignants de Chimie Therapeutique”により編集され、“Traite de chimie therapeutique, vol. 6, Medicaments antitumouraux et perspectives dans le traitement des cancers, edition TEC & DOC, 2003”なる表題のマニュアルを引用し得る。
【0173】
あるいは、イムノコンジュゲートは、少なくとも1個の放射性同位体に結合した結合タンパク質を含み得る。このようなイムノコンジュゲートは、結合タンパク質が抗体またはその抗原結合フラグメントであるとき、通常抗体-放射性同位体コンジュゲート(または「ARC」)と称される。
【0174】
腫瘍の選択的破壊のために、抗体は高度に放射性の原子を含み得る。At211、C13、N15、O17、Fl19、I123、I131、I125、In111、Y90、Re186、Re188、Sm153、tc99m、Bi212、P32、Pb212またはLu、ガドリニウム、マンガンもしくは鉄の放射性同位体を含むが、これらに限定されない多様な放射性同位体が、ARCの産生に利用可能である。
【0175】
当業者により知られるあらゆる方法または工程を、このような放射性同位体のARCへの取り込みに使用できる(例えば“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”, Chatal, CRC Press 1989参照)。非限定的例として、Tc99mまたはI123、Re186、Re188およびIn111を、システイン残基を介して結合できる。Y90を、リシン残基を介して結合できる。I123を、IODOGEN方法を使用して、結合できる(Fraker et al (1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)。
【0176】
チオ尿素リンカー-キレーターにより結合した抗CD20モノクローナル抗体およびIn111またはY90放射性同位体からなるゼヴァリン(登録商標)(Wiseman et at (2000) Eur. Jour. Nucl. Med. 27(7):766-77; Wiseman et al (2002) Blood 99(12):4336-42; Witzig et at (2002) J. Clin. Oncol. 20(10):2453-63; Witzig et al (2002) J. Clin. Oncol. 20(15):3262-69);またはカリケアミシンに結合した抗CD33抗体からなるマイロターグ(登録商標(米国特許4,970,198;5,079,233;5,585,089;5,606,040;5,693,762;5,739,116;5,767,285;5,773,001)などのARCの分野における当業者の知識を説明するために、数例を例挙し得る。より最近、FDAによりホジキンリンパ腫の処置に細菌が承認された、アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチンに対応)と称されるADCも例挙できる(Nature, vol. 476, pp380-381, 25 August 2011)。
【0177】
本発明のさらに他の実施態様において、イムノコンジュゲートは、毒素に結合した結合タンパク質を含む。このようなイムノコンジュゲートは、結合タンパク質が抗体またはその抗原結合フラグメントであるとき、通常抗体-毒素コンジュゲート(または「ATC」)と称される。
【0178】
毒素は、生存生物により産生される、有効かつ特異的毒物である。通常アミノ酸鎖からなり、分子量は、2、300(ペプチド)から100000ダルトン(タンパク質)の間で変動し得る。低分子有機化合物でもあり得る。毒素は、多数の生物、例えば、細菌、真菌、藻類および植物によっても産生される。その多くは、きわめて有毒であり、神経毒物剤より数桁大きい毒性強度である。
【0179】
ATCで使用される毒素は、チューブリン結合、DNA結合またはトポイソメラーゼ阻害を含む機構により細胞毒性効果を発揮し得る種類の毒素を含み得るが、これらに限定されない。
【0180】
使用できる酵素活性毒素およびそのフラグメントは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ダイアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPIIおよびPAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンを含む。
【0181】
ドラスタチン、アウリスタチン、トリコテセンおよびCC1065および毒素活性を有するこれら毒素の誘導体などの小分子毒素も、ここで意図される。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管運動、GTP加水分解ならびに核および細胞分裂を妨害することが示されており、抗癌および抗真菌活性を有する。
【0182】
ここに記載するイムノコンジュゲートは、さらにリンカーを含み得る。
【0183】
「リンカー」、「リンカー単位」または「連結」は、少なくとも1個の細胞毒性剤に結合タンパク質を共有結合により結合させる共有結合または原子鎖を含む、化学部分を意味する。
【0184】
リンカーは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二機能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えばグルタラルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネート)およびビス-活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの多様な二機能性タンパク質カップリング剤を使用して、製造できる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、細胞毒性剤のアドレシングシステムへのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。他の架橋剤は、市販のBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCCおよびスルホ-SMPBおよびSVSB (スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)であり得る(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, Ill., U.S.Aから)。
【0185】
リンカーは「非開裂可能」または「開裂可能」リンカーであり得る。
【0186】
好ましくは、リンカーは、細胞毒性剤の細胞における遊離を促進する「開裂可能リンカー」である。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカーが使用され得る。リンカーは、好ましくは、リンカーの切断が細胞内環境において結合タンパク質からの細胞毒性剤を放出するように細胞内条件下で開裂する。
【0187】
例えば、ある実施態様において、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する開裂因子により開裂され得る。リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含むが、これらに限定されない細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素により開裂される、ペプチジルリンカーである。一般に、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。開裂因子は、カテプシンBおよびDおよびプラスミンであり得て、この全てが、ジペプチド薬物誘導体を加水分解し、標的細胞内で活性薬物の遊離をもたらすことが知られる。例えば、癌組織で高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼカテプシン-Bにより開裂可能なペプチジルリンカーが使用され得る(例えば、Phe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。具体的実施態様において、細胞内プロテアーゼにより開裂可能なペプチジルリンカーは、Val-CitリンカーまたはPhe-Lysリンカーである。細胞毒性剤の細胞内タンパク分解性遊離を利用する利点の一つは、コンジュゲートされたとき薬物が一般に弱毒化され、コンジュゲートの血清安定性が一般に高いことである。
【0188】
他の実施態様において、開裂可能リンカーはpH感受性、すなわち、あるpH値で加水分解に感受性である。一般に、pH感受性リンカーは、酸性条件下加水分解性である。例えば、リソソームで加水分解性である酸不安定リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニチックアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)が使用され得る。このようなリンカーは、血液におけるような中性pH条件下で比較的安定であるが、リソソームのpHに近似のpH5.5または5.0未満で不安定である。ある実施態様において、加水分解性リンカーは、チオエーテルリンカー(例えば、アシルヒドラゾン結合を介して治療剤に結合するチオエーテルなど)である。
【0189】
さらに他の実施態様において、リンカーは、還元条件下で開裂され得る(例えば、ジスルフィドリンカー)。多様なジスルフィドリンカーが同分野で知られ、例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)-、SPDBおよびSMPTを使用して形成され得るものを含むが、これらに限定されない。
【0190】
非開裂可能リンカーは、対照的に、明らかな薬物遊離機構はない。このような非開裂可能リンカーを含むイムノコンジュゲートは、内在化後細胞毒性剤を遊離する抗体の完全リソソームタンパク分解に依存する。
【0191】
非開裂可能リンカーを含むイムノコンジュゲートの例として、化学療法剤、トラスツズマブを連結したメイタンシンと組み合わせた、イムノコンジュゲートトラスツズマブ-エムタンシン-(TDM1)を例示し得る(Cancer Research 2008; 68: (22). November 15, 2008)。
【0192】
好ましい実施態様において、ここに開示するイムノコンジュゲートは、i)抗原結合タンパク質の求核基と二価リンカーの反応、続く細胞毒性剤との反応またはii)細胞毒性剤の求核基と二価リンカーの反応、続く抗原結合タンパク質の求核基との反応を含むが、これらに限定されない、当業者に知られる何れかの方法により製造できる。
【0193】
抗原結合タンパク質の求核基は、N末端アミン基、側鎖アミン基、例えばリシン、側鎖チオール基および抗原結合タンパク質がグリコシル化されているとき糖ヒドロキシルまたはアミノ基を含むが、これらに限定されない。アミン、チオールおよびヒドロキシル基は求核性であり、活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルメートおよび酸ハライド;アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基を含むが、これらに限定されない、リンカー部分およびリンカー剤の求電子基と共有結合を形成するよう反応できる。抗原結合タンパク質は、還元可能鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有し得る。抗原結合タンパク質は、DTT(ジチオトレイトール)などの還元剤での処理により、リンカー剤とのコンジュゲーションについて反応性とし得る。各システイン架橋は、故に、理論的に、2個の反応性チオール求核試薬を形成する。さらなる求核基を、当業者に知られる何れかの反応を介して抗原結合タンパク質に導入できる。非限定例として、反応性チオール基を、1以上のシステイン残基の導入により、抗原結合タンパク質に導入し得る。
【0194】
イムノコンジュゲートは、リンカー剤または細胞毒性剤の求核性置換基と反応できる求電子部分の導入のために、抗原結合タンパク質を修飾することによっても、産生され得る。グリコシル化抗原結合タンパク質の糖を酸化して、リンカー剤または細胞毒性剤のアミン基と反応し得るアルデヒドまたはケトン基を形成し得る。得られたイミンシッフ塩基基は、安定な結合を形成できまたは安定なアミン結合を形成するよう還元し得る。ある実施態様において、グリコシル化抗原結合タンパク質の炭水化物部分とガラクトースオキシダーゼまたは過ヨウ素酸ナトリウムの反応は、タンパク質における、薬物の適切な基と反応できるカルボニル(アルデヒドおよびケトン)基を生じ得る。他の実施態様において、N末端セリンまたはスレオニン残基を含むタンパク質を過ヨウ素酸ナトリウムと反応して、1級アミノ酸の代わりにアルデヒドの産生をもたらし得る。
【0195】
キメラ抗原受容体
本発明は、i)本発明の抗体;ii)膜貫通ドメインおよび;iii)上記i)の抗体の抗原への結合により、T細胞活性化を引き起こすことにより特徴づけられる細胞内シグナル伝達ドメインを含む、CAR(キメラ抗原受容体)タンパク質をさらに提供する。
【0196】
本発明において、CARタンパク質は、本発明のモノクローナル抗体、公に知られている膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインからなることにより、特徴づけられる。
【0197】
ここで使用する用語「CAR(キメラ抗原受容体)」は、免疫エフェクター細胞の特異的抗原に特異性を付与できる、非天然受容体をいう。一般に、CARは、モノクローナル抗体にT細胞への特異性を付与するために使用される受容体である。CARは、一般に細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインからなる。細胞外ドメインは、抗原認識領域を含み、本発明において、抗原認識部位は、VSIG4特異的抗体である。VSIG4特異的抗体は上記のとおりであり、CARに使用する抗体は、好ましくは抗体フラグメントの形態である。より好ましくはFabまたはscFvの形態であるが、それに限定されない。
【0198】
さらに、CARの膜貫通ドメインは、細胞外ドメインに接続するおよび天然または合成形態何れかに由来し得る。天然形態に由来するとき、それは膜結合または膜貫通タンパク質に由来し得、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154またはCD8などの種々のタンパク質の膜貫通ドメインに由来する一部であり得る。これら膜貫通ドメインの配列は、当該分野でよく知られている文献から得られ、膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインは十分に記載されているが、それらに限られない。
【0199】
本発明のCARは、細胞内CARドメインの一部であり、膜貫通ドメインに接続する。本発明の細胞内ドメインは、CARの抗原認識部位への抗原の結合により、T細胞活性化、好ましくはT細胞増殖を引き起こす性質を有することにより特徴づけられる細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外に存在するCARの抗原認識部位への抗原の結合によりT細胞活性化を引き起こす限り、タイプに関して
特に限定はなく、様々な種類の細胞内シグナル伝達ドメインが使用され得る。その例は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含み、ITAMは、CD3ゼータ(ξ)、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、CD66dまたはFcεRIγに由来するものを含み得るが、それに限定されない。
【0200】
さらに、本発明のCARの細胞内ドメインが細胞内シグナル伝達ドメインと共に共刺激ドメインをさらに含むことが好ましいが、それに限定されない。共刺激ドメインは、本発明のCARに含まれる一部であり、細胞内シグナル伝達ドメインからのシグナルに加えて、T細胞へのシグナル伝達に役割を有し、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの細胞内部分を示す。
【0201】
共刺激分子は、細胞表面分子として、リンパ球が抗原に対する十分な反応を有するために必要な分子を意味し、その例は、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1(リンパ球機能関連抗原-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2CおよびB7-H3を含むが、それに限定されない。共刺激ドメインは、これら共刺激分子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される分子の細胞内部分であり得る。
【0202】
さらに、選択的に、短オリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーは細胞内ドメインおよびCARの膜貫通ドメインを連結し得る。このリンカーは本発明のCARに含まれ得るが、細胞外抗体に対する抗原の細胞内ドメイン結合を介してT細胞活性化を誘導できる限り、リンカー長に関して特に制限はない。
【0203】
核酸および発現系
本発明は、抗体、特に抗VSIG4抗体の免疫グロブリン軽鎖および重鎖遺伝子をコードするポリヌクレオチド、このような核酸を含むベクターおよび本発明の抗体を産生できる宿主細胞を包含する。またここで提供されるのは、ここに提供する抗体または修飾抗体をコードするポリヌクレオチドに、例えば、上記高ストリンジェンシー、中または低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドである。
【0204】
第一の態様において、本発明は、抗体、特に上記のとおりVSIG4またはそのフラグメントに特異的に結合できる抗体をコードする1以上のポリヌクレオチドに関する。本発明は、特にモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを提供する。より具体的には、ある実施態様において、ここに提供する核酸分子は、ここに開示する重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする核酸配列またはそれらの何れかの組み合わせ(例えば、ここに提供する抗体、例えば、ここに提供する完全長抗体、抗体の重鎖および/または軽鎖または一本鎖抗体をコードするヌクレオチド配列として)を含むまたはそれからなる。
【0205】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の3個の重鎖CDRをコード化する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の3個の軽鎖CDRをコード化する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、3個の重鎖CDRおよびここに記載する抗VSIG4抗体の3個の軽鎖CDRをコード化する。他の実施態様はポリヌクレオチドのカップルを提供し、ここで、第一ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の3個の重鎖CDRをコード化し、そして第二ポリヌクレオチドは、同じくここに記載する抗VSIG4抗体の3個の軽鎖CDRをコード化する。
【0206】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の重鎖可変領域をコード化する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の軽鎖可変領域をコード化する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコード化する。他の実施態様はポリヌクレオチドのカップルを提供し、ここで、第一ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の重鎖可変領域をコード化し、そして第二ポリヌクレオチドは、同じここに記載する抗VSIG4抗体の軽鎖可変領域をコード化する。
【0207】
ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の重鎖をコード化する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の軽鎖をコード化する。ある実施態様において、ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の重鎖および軽鎖をコード化する。他の実施態様はポリヌクレオチドのカップルを提供し、ここで、第一ポリヌクレオチドは、ここに記載する抗VSIG4抗体の重鎖をコード化し、そして第二ポリヌクレオチドは、同じここに記載する抗VSIG4抗体の軽鎖をコード化する。
【0208】
ある実施態様において、上記抗VSIG4抗体A1956の重鎖をコード化するポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号3、4および5の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号129の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0209】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A1956の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号130の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0210】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A1957の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号9、10および5の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号131の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0211】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A1957の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号6、7および8の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号132の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0212】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A1975の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号11、12および13の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号133の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0213】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A1975の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号14、15および16の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号134の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0214】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2283の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号17、18および19の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号135の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0215】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2283の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号20、21および22の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号136の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0216】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2285の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号23、24および3の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号137の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0217】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2285の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号6、7および25の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号138の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0218】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2287の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号26、27および28の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号139の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0219】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2287の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号29、30および31の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号140の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0220】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2290の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号32、33および34の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号141の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0221】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2290の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号35、36および16の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号142の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0222】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2291の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号37、38および39の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号143の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0223】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2291の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号40、41および42の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号144の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0224】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2386の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号43、44および45の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号145の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0225】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2386の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号46、47および48の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号146の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0226】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2390の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号49、50および51の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号147の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0227】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2390の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号52、53および54の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号148の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0228】
他の実施態様において、上記抗VSIG4抗体A2455の重鎖をコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましくは、該重鎖は、配列番号17、18および55の配列の3個の重鎖CDRを含む。より好ましくは、該重鎖は、配列番号149の配列の可変領域を含む重鎖を含む。
【0229】
他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、上記抗VSIG4抗体A2455の軽鎖をコード化する。好ましくは、該軽鎖は、配列番号56、57および58の配列の3個の軽鎖CDRを含む。より好ましくは、該軽鎖は、配列番号150の配列の可変領域を含む軽鎖を含む。
【0230】
コドン縮重またはヒト抗体またはそのフラグメントの軽鎖および重鎖を発現する生物における好ましいコドンの考察により、本発明のモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖またはその抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドは、コード領域から発現される抗体の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列が変化しない範囲内でコード領域に種々の多様性を有し得て、コード領域以外の領域内で、遺伝子発現が影響されない範囲内で種々の変化または修飾を行い得る。当業者は、これらバリアント遺伝子も本発明の範囲内に入ることを容易に理解する。すなわち、等価活性を有するタンパク質が本発明のポリヌクレオチドによりコード化される限り、1以上の核酸塩基を置換、欠失、挿入またはそれらの組み合わせにより変えることができ、これらも本発明の範囲内に入る。ポリヌクレオチドの配列は一本鎖または二本鎖であり得て、DNA分子またはRNA(mRNA)分子であり得る。
【0231】
本発明によると、多様な発現系を、本発明の抗体の発現に使用できる。ある態様において、このような発現系は、目的のコード配列が産生され、続いて精製される媒体を表し、また、適切なヌクレオチドコード配列で一過性にトランスフェクトしたとき、インサイチュでIgG抗体を発現し得る細胞も表す。
【0232】
本発明は、上記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。ある実施態様において、ベクターは、目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の軽鎖をコード化する。他の実施態様において、ポリヌクレオチドは、目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の重鎖および軽鎖をコード化する。さらに他の実施態様において、ポリヌクレオチドのカップルが提供され、ここで、第一ポリヌクレオチドは目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の重鎖をコード化し、そして第二ポリヌクレオチドは、同じ目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の軽鎖をコード化する。
【0233】
本発明はまた、融合タンパク質、修飾抗体、抗体フラグメントおよびそれらのプローブをコードするポリヌクレオチド分子を含むベクターを提供する。
【0234】
目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の重鎖および/または軽鎖を発現するために、該重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、遺伝子が転写および翻訳配列に操作可能に連結するように発現ベクターに導入する。好ましい実施態様において、これらポリヌクレオチドは、2個のベクターにクローン化される。
【0235】
「操作可能に連結された」配列は、目的の遺伝子と連続する発現制御配列および目的の遺伝子の制御のためにトランスでまたは遠位で作用する発現制御配列両者を含む。ここで使用する用語「発現制御配列」は、ライゲートされたコード配列の発現および処理に影響するのに必要なポリヌクレオチド配列をいう。発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的RNA処理シグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を上げる配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;および望ましいとき、タンパク質分泌を増強する配列を含む。このような制御配列の性質は宿主生物により異なる;原核生物において、このような制御配列は、一般にプロモーター、リボソーム結合部位および転写終結配列を含む;真核生物において、一般に、このような制御配列はプロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、最小で、存在が発現および処理に必要である全構成要素を含むことを意図し、存在が有利であるさらなる構成要素、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含み得る。
【0236】
本発明のポリヌクレオチドおよびこれら分子を含むベクターが、適当な宿主細胞の形質転換のために使用され得る。ここで使用する用語「宿主細胞」は、組み換え発現ベクターが目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の発現のために導入されている細胞をいうことを意図する。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫もいうことは理解されるべきである。ある修飾が、変異または環境的影響何れかにより後代で生じ得るため、このような子孫は、事実、親細胞と同一ではないかもしれないが、なおここで使用する用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。
【0237】
形質転換は、細胞宿主にポリヌクレオチドを導入するための何れかの既知方法により実施され得る。このような方法は当業者に周知であり、デキストラン介在形質転換、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン介在トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへのカプセル封入、微粒子銃注入および核へのDNAの直接マイクロインジェクションを含む。
【0238】
宿主細胞を、1以上の発現ベクターと共トランスフェクトし得る。例えば、宿主細胞を、上記目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の重鎖および軽鎖両者をコードするベクターでトランスフェクトし得る。あるいは、宿主細胞を、目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)の重鎖をコードする第一ベクターおよび該抗体の軽鎖をコードする第二ベクターで形質転換し得る。哺乳動物細胞は、組み換え治療免疫グロブリンの発現、特に組み換え抗体全体の発現のために一般に使用される。例えば、HEK293またはCHO細胞などの哺乳動物細胞と、ヒトサイトメガロウイルスからの主要中間初期遺伝子プロモーター要素を担持するもののような発現シグナルを含むベクターの組み合わせは、ヒト化本発明の抗VSIG4抗体の発現に有効な系である(Foecking et al., 1986, Gene 45:101; Cockett et al., 1990, Bio/Technology 8: 2)。
【0239】
さらに、所望の特異的方法で挿入配列の発現を調節するまたは遺伝子産物を修飾および処理する宿主細胞を選択し得る。このような修飾(例えば、グリコシル化)およびタンパク質産物の処理は、タンパク質の機能のために重要であり得る。種々の宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後処理および修飾のための性質および特異的機構を有する。適切な細胞株または宿主系を選択して、発現された目的の抗体の正確な修飾および処理を確実にする。故に、一次転写物の適切な処理、遺伝子産物のグリコシル化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用され得る。このような哺乳動物宿主細胞は、CHO、COS、HEK293、NS/0、BHK、Y2/0、3T3または骨髄腫細胞を含むが、これらに限定されない(これら細胞株全てはCollection Nationale des Cultures de Microorganismes, Paris, FranceまたはAmerican Type Culture Collection, Manassas, VA, U.S.A.などの公的寄託期間から入手可能である)。
【0240】
組み換えタンパク質の長期、高収率産生のために、安定な発現が好ましい。本発明のある実施態様において、抗体を安定に発現する細胞株が設計され得る。ウイルス複製起源を含む発現ベクターを使用するより、宿主細胞を、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位および当業者に知られる他の適切な配列を含む適切な発現制御要素および選択可能マーカーの制御下、DNAで形質転換する。外来DNAの導入後、設計細胞を富化培地で1~2日間増殖させ得て、次いで選択培地に移す。組み換えプラスミドの選択可能マーカーは、選択に対する体制を付与し、細胞がプラスミドを染色体に安定に統合させ、細胞株内で増殖させることを可能とする。安定な細胞株を構築する他の方法は当分野で知られる。特に、部位特異的組込みの方法が開発されている。これら方法により、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位および他の適切な配列を含む適切な発現制御要素制御下の形質転換DNAが、あらかじめ開裂されている特異的標的部位で宿主細胞ゲノムに統合される(Moele et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 104(9): 3055-3060;US5,792,632;US5,830,729;US6,238,924;WO2009/054985;WO03/025183;WO2004/067753)。
【0241】
それぞれtk、hgprtまたはaprt細胞における、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223, 1977)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al., Proc Natl Acad Sci USA 48: 202, 1992)、メチオニンスルホキシミド存在下のグルタメートシンターゼ選択(Adv Drug Del Rev, 58: 671, 2006および Lonza Group Ltd.のウェブサイトまたは文献)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22: 817, 1980)遺伝子を含むが、これらに限定されない多数の選択系が、本発明により使用され得る。また、代謝拮抗剤耐性が、次の遺伝子の選択の基礎として使用され得る:メトトレキサートに耐性を付与するdhfr(Wigler et al., Proc Natl Acad Sci USA 77: 357, 1980);ミコフェノール酸に耐性を付与するgpt(Mulligan et al., Proc Natl Acad Sci USA 78: 2072, 1981);アミノグリコシド、G-418に耐性を付与するneo(Wu et al., Biotherapy 3: 87, 1991);およびハイグロマイシンに耐性を付与するhygro(Santerre et al., Gene 30: 147, 1984)。組み換えDNAテクノロジー分野で知られる方法を、所望の組み換えクローンの選択のために規定通り適用でき、このような方法は、例えば、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1993)に記載される。抗体の発現レベルを、ベクター増幅により増加させ得る。抗体発現ベクター系におけるマーカーが増幅可能であるならば、培養に存在する阻害剤のレベルの増加により、マーカー遺伝子のコピー数が増加する。増幅領域が本発明のIgG抗体をコードする遺伝子と関連するため、該抗体の産生も増加する(Crouse et al., Mol Cell Biol 3: 257, 1983)。本発明の遺伝子を発現する別の方法が存在し、当業者に知られる。例えば、本発明の遺伝子の上流の発現制御要素の結合ができる修飾亜鉛フィンガータンパク質を設計できる;本発明の宿主細胞における該設計亜鉛フィンガータンパク質(ZFN)の発現は、タンパク質産生を増加させる(例えばReik et al., Biotechnol. Bioeng., 97(5): 1180-1189, 2006参照)。さらに、ZFNは、予め決定されたゲノム位置へのDNAの組込みを刺激でき、高効率的部位特異的遺伝子付加をもたらす(Moehle et al, Proc Natl Acad Sci USA, 104: 3055, 2007)。
【0242】
目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)は、所望の抗体の発現に必要な培養条件下での形質転換宿主細胞の培養物の増殖により、調製され得る。次いで、得られた発現抗体を培養培地または細胞抽出物から精製し得る。可溶性形態の目的の抗体(例えば、抗VSIG4抗体)は培養上清から回収され得る。次いで、免疫グロブリン分子の精製について当分野で知られる何れらかの方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にFcに対するプロテインA親和性など)、遠心分離、示差的溶解度またはタンパク質の精製のためのあらゆるその他の標準技術により精製し得る。適当な精製方法は、当業者には明らかである。
【0243】
本発明の他の態様は、故に、ここに記載する抗体(例えば、抗VSIG4抗体)を産生方法であって
a)上記宿主細胞を適当な培養条件下で培養培地で増殖させ;そして
b)培養培地または該培養細胞から抗体(例えば、抗VSIG4抗体)を回収する
工程を含む、方法に関する。
【0244】
形質転換体の培養により得た抗体は、非精製状態で使用され得る。不純物を、遠心分離または限外濾過などのさらなる種々の一般法により除去でき、結果物を透析、塩沈殿、クロマトグラフィーなどに付してよく、ここで、これら方法を単独でもその組み合わせでも使用し得る。これらの中で、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどを含む親和性クロマトグラフィーが最も広範に使用される。
【0245】
医薬組成物
他の態様において、本発明は、例えば、ここに記載する抗VSIG4抗体の何れかなどの抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲート、すなわち、ここに記載する抗VSIG4抗体の1個を含むイムノコンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0246】
これら組成物は、特に例えば対象における免疫応答の刺激のために有用である。VSIG4に特異的に結合する本発明の抗体は、T細胞活性化を阻害するVSIG4タンパク質への結合によりT細胞活性化を誘導し、故に、抗体は免疫応答を刺激できる。
【0247】
ここに記載する組成物は、癌の処置にも有用である。保護的抗腫瘍免疫が、ここに開示する抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを含むこのような組成物の投与により、確立され得る。
【0248】
所望により、組成物は、下記免疫チェックポイント阻害剤などの1以上のさらなる治療剤を含み得る。組成物は、通常無菌、医薬組成物の一部として提供され、これは、通常薬学的に許容される担体および/または添加物を含む。他の態様において、本発明は、故に、抗VSIG4抗体またはそのコンジュゲートおよび医薬許容される担体および/または添加物を含む医薬組成物を提供する。
【0249】
この組成物は、あらゆる適当な形態であり得る(患者への所望の投与方法による)。ここに記載する方法で利用される組成物は、例えば、硝子体内(例えば、硝子体内注射により)、点眼、筋肉内、静脈内、皮内、経皮、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、髄腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所的、腫瘍内、腹膜内、皮下、結膜下、膀胱内、粘膜、心膜内、臍下、眼内、眼窩内、経口、局所的、経皮、吸入、注射、埋め込み、点滴、連続的点滴、直接浴標的細胞局在化灌流、カテーテル、洗浄、クレームまたは脂質組成物で投与し得る。ここに記載する方法で利用される組成物は、全身または局所投与し得る。投与方法は、種々の因子(例えば、投与される化合物または組成物および処置する状態、疾患または障害の重症度)により変わる。ある所定の場合の最も適当な投与経路は、特定の抗体、対象および疾患の性質および重症度および対象の身体状態に依存する。抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートは水溶液として製剤化され、皮下注射により投与され得る。
【0250】
医薬組成物は、好都合には、用量あたり抗VSIG4、その抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートの予め決定された量を含む、単位剤形で提供される。このような単位は、例えば、5mg~5g、例えば10mg~1gまたは20~50mgを含み得るが、これらに限定されない。本発明において使用するための薬学的に許容される担体は、例えば、処置する状態または投与経路により、多種多様な形態をとり得る。
【0251】
本発明の医薬組成物は、所望の程度の純度を有する抗体と当分野で一般に用いられる任意的な薬学的に許容される担体、添加物または安定化剤(これらすべてここでは「担体」と称する)、すなわち、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、等張化剤、非イオン界面活性剤、抗酸化剤および他の雑多な添加物の混合により、凍結乾燥製剤または水溶液として保存するために調製され得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition (Osol, ed. 1980)参照。このような添加物は、用いる投与量および濃度でレシピエントに非毒性でなければならない。
【0252】
緩衝剤は、生理学的条件に近似する範囲にpHを維持することを助ける。約2mM~約50mMの範囲の濃度で存在し得る。本発明で使用するのに適する緩衝剤は、有機および無機両方の酸およびその塩、例えば、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、スクシネート緩衝液(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸-ナトリウムグルコン酸混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-カリウムグルコン酸混合物など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)およびアセテート緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)を含む。さらに、ホスフェート緩衝液、ヒスチジン緩衝液およびトリメチルアミン塩、例えばTrisが使用され得る。
【0253】
防腐剤を微生物増殖を遅延させるために添加でき、0.2%~1%(w/v)の範囲の量で加え得る。本発明で使用するのに適する防腐剤は、フェノール、ベンジルアルコール、meta-クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンザルコニウムハライド(例えば、クロライド、ブロマイドおよびアイオダイド)、ヘキサメトニウムクロライドおよびアルキルパラベン、例えばメチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノールおよび3-ペンタノールを含む。等張化剤は、「安定化剤」として知られることもあり、本発明の液体組成物の等張性を確実にするために添加でき、多価糖アルコール、例えば3価または高級糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールを含む。安定化剤は、増量剤から、治療剤(すなわち、抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲート)を溶解するまたは変性または容器壁への付着の防止に役立つまでの範囲で機能し得る、広範な添加物をいう。典型的安定化剤は、多価糖アルコール(上に列記);アミノ酸例えばアルギニン、リシン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチンe、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニンなど、有機糖または糖アルコール、例えばラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、ミオイノシトール、ガラクチトール、シクリトール、例えばイノシトールを含むグリセロールなど;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;硫黄含有還元剤、例えば尿素、グルタチオン、チオクト酸、ナトリウムチオグリコラート、チオグリセロール、α-モノチオグリセロールおよびナトリウムチオスルフェート;低分子量ポリペプチド(例えば、10未満の残基のペプチド);タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン単糖、例えばキシロース、マンノース、フルクトース、グルコース;二糖、例えばラクトース、マルトース、スクロースおよび三糖、例えばラフィノース;および多糖、例えばデキストランであり得る。安定化剤は、活性タンパク質(例えば、抗VSIG4抗体またはこのような抗体を含むコンジュゲート)の重量部当たり、0.1~10,000重量の範囲で存在し得る。
【0254】
非イオン界面活性剤または界面活性剤(「湿潤剤」としても知られる)を、抗VSIG4抗体(またはそのコンジュゲート)の可溶化を助けるためおよび撹拌誘導凝集に対して治療タンパク質を保護するために添加でき、またタンパク質の変性を引き起こすことなく、剪断表面圧に製剤をさらすことも可能とする。適当な非イオン界面活性剤は、ポリソルベート(20、80など)、ポロキサマー(184、188など)、プルロニックポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)を含む。非イオン界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、例えば約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在し得る。
【0255】
さらなる雑多な添加物は、増量剤(例えば、デンプン)、キレート剤(例えば、EDTA)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE)および共溶媒を含む。
【0256】
本発明は、さらに、同時の、別々のまたは逐次的使用のための組み合わせ製品として、少なくとも
i)ここに開示する抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートおよび
ii)第二治療剤、例えば下記免疫チェックポイント阻害剤
を含む、医薬組成物に関する。
【0257】
ここで使用する「同時使用」は、単一および同一医薬形態での本発明の医薬組成物の2化合物の投与をいう。
【0258】
ここで使用する「別々の使用」は、異なる医薬形態での本発明の医薬組成物の2化合物の、同じ時間の投与をいう。
【0259】
ここで使用する「逐次使用」は、それぞれ異なる医薬形態での本発明の医薬組成物の2化合物の、連続的投与をいう。
【0260】
抗VSIG4抗体(またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲート)および例えば、免疫チェックポイント阻害剤などの第二治療剤の組成物は、1以上の抗VSIG4抗体(またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲート)および/または1以上の第二治療剤(例えば下記免疫チェックポイント阻害剤)の混合物として、癌の処置に有用なもしくは癌のための他の治療に補助的な他の薬剤との混合物または組み合わせとして、一回で投与され得る。適当な組み合わせおよび補助的治療の例は、下に提供される。
【0261】
ここに記載する抗VSIG4抗体(またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲート)を含む医薬キットは、本発明により包含される。医薬キットは、抗VSIG4抗体(例えば、凍結乾燥形態または水溶液として)および1以上の次のもの:
・第二治療剤、例えば下記免疫チェックポイント阻害剤;
・抗VSIG4抗体を投与するためのデバイス、例えばペン、針および/またはシリンジ;および
・阻害剤が抗体携帯であるならば、抗体を歳懸濁するための医薬グレード水または緩衝液
を含む、パッケージである。
【0262】
抗VSIG4抗体(またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲート)の書く単位用量を別々に包装でき、キットは、1以上の単位用量(例えば、2単位用量、3単位用量、4単位用量、5単位用量、8単位用量、10単位用量またはそれ以上)含み得る。具体的実施態様において、1以上の単位用量は、シリンジまたはペンに入れられる。
【0263】
有効量
所望により免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントおよびそのコンジュゲートは、一般に意図する結果を達成するのに有効な量、例えばそれを必要とする対象における癌を処置するのに有効な量で使用される。抗VSIG4抗体(またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲート)および/または免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物は、治療有効投与量で患者(例えば、ヒト対象)に投与され得る。
【0264】
有効量の決定は、特にここに提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。化合物またはコンジュゲートの毒性および治療有効性は、細胞培養および実験動物における標準製薬法により決定され得る。対象に投与すべき本組み合わせまたは他の治療剤の有効量は、疾患(例えば、癌)のステージ、分離および状態および一般的健康状態、年齢、性別、体重および薬物耐容性などの対象の特徴による。投与される本治療剤または組み合わせの有効量は、投与経路および剤形にも依存する。投与される投与量および間隔は、所望の治療効果の維持に十分な活性化合物の血漿レベルを提供するように個々に調節され得る。
【0265】
投与される抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートの量は、処置する疾患(例えば、癌)の性質およびステージ、投与の携帯、経路および部位、治療レジメン(例えば、治療剤を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用するか否か)、処置する特定の対象の年齢および状態、抗体またはコンジュゲートで処置される患者の感受性を含む、多様な因子に依存する。適切な投与量は、当業者により容易に決定される。最終的に、医師が使用すべき適切な投与量を決定する。この投与量を、適切である頻度で反復し得る。副作用が生じたら、投与量および/または頻度を、通常の診療に従い、変えるかまたは減少し得る。適切な投与量および処置レジメンは、当業者に知られる慣用の技術を使用する治療の進行のモニタリングにより確立され得る。
【0266】
有効投与量は、最初にインビトロアッセイから推定され得る。例えば、動物で使用するための初期用量を、インビトロで測定したVSIG4に対する抗体の結合親和性以上の抗VSIG4抗体の循環血液または血清濃度を達成するように、設定し得る。特定の抗体のバイオアベイラビリティを考慮に入れたこのような循環血液または血清濃度を達成する投与量の計算は、十分に当業者の能力の範囲内である。指針として、読者は、Fingl & Woodbury, “General Principles” in Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, Chapter 1, 最新版, Pagamonon Pressおよびその中の引用文献を紹介する。初期投与量を、動物モデルなどのインビボデータから推定し得る。癌などの特定の疾患の処置のための化合物の有効性の試験に有用な動物モデルは、一般に当分野で周知である。通常当業者は、ヒト投与に適する投与量を決定するためにこのような情報を日常的に応用できる。
【0267】
ここに記載する抗VSIG4抗体の有効用量は、処置する状態、投与経路および対象の年齢、体重および状態に依存して、単回(例えば、ボーラス)投与、複数投与または連続的投与あたり約0.001~約75mg/kg、または単回(例えば、ボーラス)投与、複数投与または連続的投与あたり0.01~5000μg/ml血清濃度の血清濃度を達成する範囲であってよく、またはその中のあらゆる有効範囲または値であり得る。ある実施態様において、各用量は、約0.5μg~約50μg/体重キログラム、例えば約3μg~約30μg/体重キログラムの範囲であり得る。
【0268】
投与の量、頻度および期間は、患者の年齢、体重および疾患状態などの多様な因子に依存する。投与の治療レジメンは、2週間~無期限、2週間~6か月間、3か月間~5年間、6か月間~1または2年間、8か月間~18か月間など継続され得る。所望により、治療レジメンは、反復投与、例えば、1日1回、1日2回、2日毎、3日毎、1週毎、2週毎または1か月毎提供される。反復投与は、同じ用量または異なる用量であり得る。投与を、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回またはそれ以上繰り返し売る。治療有効量の抗VSIG4抗体またはそのコンジュゲート(所望により免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ)を、単回投与としてまたは治療レジメンの間に、例えば、1週間、2週間、3週間、1か月、3か月、6か月、1年またはそれより長期の間に投与し得る。
【0269】
処置方法
本抗VSIG4抗体が、例えば、M2マクロファージ分化促進およびVSIG4介在免疫抑制阻害により、免疫応答を刺激する能力により、癌を含むVSIG4により介在される多様な状態の処置に有用となる。VSIG4阻害性経路への治療介入は、故に、多種多様な癌の処置のための炎症およびT細胞介在免疫を調節する有望なアプローチを代表する。
【0270】
ここに記載する抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートは、故に、癌の処置、マクロファージによる炎症促進性サイトカインの遊離の誘導、CD4T細胞増殖誘導、CD8T細胞増殖誘導、CD4T細胞サイトカイン産生誘導およびCD8T細胞サイトカイン産生誘導のための方法に使用でき、ここで、該方法は、それを必要とする対象に有効量の抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートを投与することを含む。ここに記載する治療方法は、ここに記載するVSIG4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントまたはここに記載するこれら抗体を含むコンジュゲートの、それを必要とする患者への投与を含み得る。ここに開示するVSIG4抗体、抗原結合フラグメントおよびそのコンジュゲートは、故に、癌の処置のための免疫、特にT細胞免疫の制御に有用である。
【0271】
従って、本発明の態様は、患者における癌の処置に使用するための、抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートに関する。また提供されるのは、癌の処置を必要とする対象におけるその処置方法、であって、患者に、ここに開示する抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートを投与することを含む、方法である。本発明はまた癌の処置用医薬の製造のための、抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートの使用に関する。
【0272】
ある実施態様において、本発明は、患者における癌の処置にしようするための、ここに記載する抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを含む組成物に関する。またここで提供されるのは、癌の処置を必要とする対象におけるその処置方法であって、患者にここに記載する抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを含む組成物を投与することを含む、方法である。本発明はまた、癌の処置用医薬の製造のための、ここに記載する抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを含む組成物の使用にも関する。
【0273】
ある実施態様において、癌は、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、卵管癌、胆嚢癌、消化器癌、頭頚部癌、血液学的癌(例えば、白血病、リンパ腫または骨髄腫)、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣癌、原発性腹膜癌、唾液腺癌、肉腫、胃癌、甲状腺癌、膵臓癌、腎臓細胞癌腫、神経膠芽腫および前立腺癌から選択される。
【0274】
ある実施態様は、癌患者における免疫応答の誘導に使用するための、抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを提供する。またここで提供されるのは、処置を必要とする癌患者における免疫応答の誘導をする方法であって、患者に、ここに開示する抗VSIG4抗体、その抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートを投与することを含む、方法である。本発明はまた、癌患者における免疫応答の誘導のための医薬の製造のための、抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートの使用にも関する。
【0275】
ある実施態様において、本発明は、癌患者における免疫応答の誘導に使用するための、ここに記載する抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを含む組成物に関する。またここで提供されるのは、処置を必要とする癌患者における免疫応答の方法であって、患者にここに記載する抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを含む組成物を投与することを含む、方法である。本発明はまた、癌患者における免疫応答の誘導のための医薬の製造のための、ここに記載する抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを含む組成物、の使用にも関する。
【0276】
ここに開示する抗体によりこうして産生された免疫応答は、マクロファージによる炎症促進性サイトカイン遊離の誘導、CD4T細胞増殖の誘導、CD8T細胞増殖の誘導、CD4T細胞サイトカイン産生の誘導およびCD8T細胞サイトカイン産生の誘導を含むが、これらに限定されない。
【0277】
抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを、さらなる化学療法剤、細胞毒性剤、抗体、リンホカインまたは造血増殖因子と混合し得る。特に、ここに記載する治療方法は、抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートと共に免疫チェックポイント阻害剤の投与を含む。免疫チェックポイント阻害剤および抗VSIG4抗体または抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートは、同時に、別々にまたは逐次的に投与され得る。
【0278】
ここで使用する「チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントを標的とし、該免疫チェックポイントの機能を遮断する、例えば、小分子、可溶性受容体または抗体などの分子をいう。より具体的には、ここで使用する「チェックポイント阻害剤」は、T細胞などのあるタイプの免疫系細胞および一部癌細胞で産生されるあるタンパク質を遮断する、例えば、小分子、可溶性受容体または抗体などの分子をいう。
【0279】
第一の実施態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4(分子のCD2ファミリーに属し、全NK、γδおよび記憶CD8+(αβ)T細胞で発現される)、CD160(別名BY55)、CGEN-15049、CHK1およびCHK2キナーゼ、IDO1、A2aRおよび種々のB-7ファミリーリガンドの何れかの阻害剤である。
【0280】
免疫チェックポイント阻害剤の例は、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗LAG-3抗体(例えば、BMS-986016)、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、抗Tim3抗体(例えば、TSR-022、MBG453)、抗BTLA抗体、抗KIR抗体、抗A2aR抗体、抗CD200抗体、抗PD-1抗体(例えば、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ)、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS936559)、抗VISTA抗体(例えば、JNJ61610588)、抗CD28抗体、抗CD80または-CD86抗体、抗B7RP1抗体、抗B7-H3抗体、抗HVEM抗体、抗CD137抗体(例えば、ウレルマブ)、抗CD137L抗体、抗OX40(例えば、9B12、PF-04518600、MEDI6469)、抗OX40L抗体、抗CD40またはCD40L抗体、抗GAL9抗体、抗IL-10抗体、PD-1リガンドの細胞外ドメインの融合タンパク質、例えばPDL-1またはPD-L2およびIgG1(例えば、AMP-224)、OX40リガンドの細胞外ドメインの融合タンパク質、例えばOX40LおよびIgG1(例えば、MEDI6383)、IDO1薬物(例えば、エパカドスタット)およびA2aR薬物を含む。多数の免疫チェックポイント阻害剤が承認されているか、現在臨床治験中である。このような阻害剤は、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピディリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS936559、JNJ61610588、ウレルマブ、9B12、PF-04518600、BMS-986016、TSR-022、MBG453、MEDI6469、MEDI6383およびエパカドスタットを含む。
【0281】
免疫チェックポイント阻害剤の例は、例えば、Marin-Acevedo et al., Journal of Hematology & Oncology 11: 8, 2018; Kavecansky and Pavlick, AJHO 13(2): 9-20, 2017; Wei et al., Cancer Discov 8(9): 1069-86, 2018に挙げられる。
【0282】
好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、LAG-3、Tim3、PD-1、PD-L1、VISTA、CD137、OX40またはIDO1の阻害剤である。
【0283】
診断方法
VSIGは、多様な癌で過発現され、VSIG4が癌の診断のための信頼できるバイオマーカーであることを示す。故に、VSIG4タンパク質に結合するここに提供する標識抗体などの試薬を、診断目的で使用して、例えば、癌などの細胞増殖性疾患、障害または状態を検出、診断またはモニターできる。
【0284】
ここに提供される抗VSIG4抗体が、ここに記載するまたは当業者に知られる古典的免疫組織学的方法を使用して、生物学的サンプルにおけるVSIG4の検出またはVSIG4レベルのアッセイに使用され得る(例えば、Jalkanen et al., 1985, J. Cell. Biol. 101:976-985; and Jalkanen et al., 1987, J. Cell. Biol. 105:3087-3096参照)。タンパク質遺伝子発現の検出に有用な他の抗体ベースの方法は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および放射免疫アッセイ(RIA)などの免疫アッセイを含む。適当な抗体アッセイ標識は当分野で知られ、グルコースオキシダーゼなどの酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(121In)およびテクネチウム(99Tc)などの放射性同位体;ルミノールなどの発光標識;およびフルオレッセインおよびローダミンおよびビオチンなどの蛍光標識を含む。
【0285】
故に、第一の態様において、本発明は、対象におけるVSIG4発現癌を検出するためのインビトロ方法であって、
a)該対象の生物学的サンプルとここに開示する抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントを接触させ;そして
b)該試薬と該生物学的サンプルの結合を検出する
工程を含む、方法。
【0286】
本方法によると、VSIG4の結合は、VSIG4発現癌の存在を示す。好ましくは、腫瘍微小環境の免疫浸潤物における抗VSIG4抗体の結合は、VSIG4発現癌の存在を示す。
【0287】
本発明はまた対象におけるVSIG4発現癌を検出するためのインビトロ方法であって、
a)該対象の生物学的サンプルと抗VSIG4抗体またはその抗原結合フラグメントを接触させ;そして
b)該試薬と該生物学的サンプルの結合を定量する
工程を含む、方法にも関する。
【0288】
本方法によると、VSIG4の結合は、VSIG4発現癌の存在を示す。好ましくは、腫瘍微小環境の免疫浸潤物における抗VSIG4抗体の結合は、VSIG4発現癌の存在を示す。
【0289】
当業者には明らかなとおり、VSIG4に結合する抗体のレベルは、後期のとおり、当業者に知られる何れかの手段により定量され得る。好ましい方法は、ELISAまたはELISPOTなどの免疫酵素アッセイ、免疫蛍光、免疫組織化学(IHC)、放射免疫アッセイ(RIA)またはFACSの使用を含む。
【0290】
本方法の工程b)の定量は、サンプル、特に腫瘍微小環境の免疫浸潤物におけるVSIG4発現レベルを直接反映する。本方法は、故に、上記のとおり、VSIG4の発現レベルの決定により、VSIG4発現癌の同定を可能とする。好ましい実施態様において、該サンプル、特に腫瘍微小環境の免疫浸潤物におけるVSIG4の発現レベルを、対照レベルと比較する。
【0291】
さらに好ましい実施態様によると、本発明は、対象におけるVSIG4発現癌を検出するためのインビトロ方法であって、
a)該対象の生物学的サンプルにおけるVSIG4の発現レベルを決定し;そして
b)工程a)の発現レベルと対照レベルを比較する;
工程を含み、ここで、対照レベルと比較して、工程a)でアッセイされたVSIG4レベルの増加がVSIG4発現癌の指標である、方法に関する。
【0292】
本発明はまた対象におけるVSIG4発現癌を診断するためのインビトロ方法であって、
a)該対象の生物学的サンプルにおけるVSIG4の発現レベルを決定し;そして
b)工程a)の発現レベルと対照レベルを比較する;
工程を含み、ここで、対照レベルと比較した工程(b)でアッセイされたVSIG4レベルの増加がVSIG4発現癌の指標である、方法に関する。
【0293】
VSIG4の発現レベルを、有利に「対照レベル」または「対照発現レベル」とも称される対照細胞またはサンプルのレベルと比較するまたはそれに対して測定する。「対照レベル」、「対照発現レベル」、「対照レベル」および「対照」は、本明細書において相互交換可能に使用される。「対照レベル」は、一般に疾患または癌がない比較可能な対照細胞で測定される別のベースラインレベルである。該対照細胞は、癌患者であっても、腫瘍の部位である組織はなお非腫瘍健常組織を含むため、同じ個体からであり得る。正常または罹患または試験サンプルを得たのと同じ疾患を示さない、他の個体由来でもあり得る。本発明の状況において、用語「対照レベル」は、患者の癌細胞含有サンプルにおけるVSIG4の発現試験レベルの評価に使用する、VSIG4の発現の「対照レベル」をいう。例えば、患者の生物学的サンプルにおけるVSIG4レベルがVSIG4の対照レベルより高いとき、細胞は、VSIG4の高レベルの発現または過発現を有すると考えられる。対照レベルは、複数の方法により決定され得る。発現レベルは、故に、VSIG4担持細胞、あるいは、VSIG4発現細胞数と無関係にVSIG4の発現レベルを規定し得る。故に、各患者に対する対照レベルは、VSIG4の対照比により指示され得て、ここで、対照比は、ここに記載する対照レベルを決定する方法の何れかにより決定され得る。
【0294】
例えば、対照は、多様な形態をとり得る予め決定された値であり得る。それは、中央または平均などの単一カットオフ値であり得る。「対照レベル」は、全患者に個々に適用可能な単一数値であってよくまたは対照レベルは、患者の特異的下位集団で変わり得る。故に、例えば、高齢男性は、同じ癌の若齢男性と異なる対照レベルを有し得て、女性は、同じ癌について男性と異なる対照レベルを有し得る。あるいは、「対照レベル」は、試験する新生物細胞の組織と同じ組織からの非発癌性癌細胞におけるVSIG4の発現レベルの測定により決定され得る。同様に、「対照レベル」は、患者の新生物細胞におけるVSIG4対同じ患者内の非腫瘍細胞におけるVSIG4レベルの特定の比である。「対照レベル」は、腫瘍細胞を模倣するよう操作され得るまたは対照レベルを正確に決定する発現レベルを生じるあらゆるその他の方法で操作できる、インビトロ培養細胞のVSIG4レベルでもあり得る。他方で、「対照レベル」は、VSIG4レベルが上昇していない群およびVSIG4レベルが上昇した群などの群比較に基づき、確立され得る。比較群の他の例は、特定の疾患、状態または症状を有する群および疾患がない群である。予め決定された値を、例えば、試験集団が、群に均等に(または不均等)分けられるとき、低リスク群、中リスク群および高リスク群などに配置し得る。
【0295】
対照レベルはまた同じ癌を有する患者の集団におけるVSIG4レベルの比較によっても決定され得る。これは、例えば、患者のコホート全体がグラフ提示され、ここで、第一軸がVSIG4レベルを表し、第二軸がコホートにおける腫瘍細胞があるレベルでVSIG4を発現する患者数を表す、ヒストグラム分析により達成され得る。2以上の別々の患者群を、VSIG4が 同じまたは類似レベルであるコホートのサブセット集団の同定により、決定できる。次いで、対照レベルの決定を、これら別々の群を最良に区別するレベルに基づき行い得る。対照レベルは、2以上のマーカーのレベルを表し得て、その一方がVSIG4である。2以上のマーカーは、例えば、各マーカーのレベルについての値の比により表わされ得る。
【0296】
同様に、見掛け上健常集団は、VSIG4の発現と関連する状態を有する集団と異なる‘正常’範囲を有する。従って、予め決定された選択値を、個体が入るカテゴリーの考慮に入れ得る。適切な範囲およびカテゴリーは、当業者の日常的を超えない実験により選択され得る。「上昇」、「増加」により、選択対照より高いことを意味する。一般に、対照は、適切な年齢層の見掛け上健常正常個体に基づく。
【0297】
本発明の対照は、予め決定された値に加えて、実験的物質と並行して試験した物質のサンプルであり得ることも理解される。冷は、同じ対象から同時に得た組織または細胞、例えば、対象からの単一生検の部分または単一細胞サンプルの部分を含む。
【0298】
好ましくは、VSIG4の対照レベルは、正常組織サンプル(例えば、VSIG4発現癌を有しない患者または疾患発症前の同じ患者から)におけるVSIG4の発現レベルである。
【0299】
VSIG4発現癌のより確定的な診断により、医療従事者は、早期に予防手段または積極的処置を用いることが可能となり、それにより、VSIG4発現癌の発症またはさらなる進行を予防し得る。
【0300】
以下に、本発明を、実施例の観点で詳細に説明する。しかしながら、次の実施例は、本発明を説明するためのみに提供され、本発明が次の実施例に限定されないことは明らかである。
【実施例
【0301】
実施例1:VSIG4の長いおよび短い形態の性質
1-1. マクロファージ上のVSIG4長いおよび短い形態の発現
VSIG4は、マクロファージで発現することが知られる。発現差異の有無を試験するために、2形態のVSIG4、すなわち、VSIG4(L)およびVSIG4(S)の各々の存在を、M1およびM2マクロファージの抽出物で探索した。
50ng/mlのIFN-γ(285-IF、R&D)をGM-CSF分化M0-マクロファージに加えて、炎症促進性M1-マクロファージに分極させた。各20ng/mlの次のサイトカイン:IL-4(130.093.922、Miltenyi Biotec)、IL-10(217-IL/CF、R&D)およびTGF-β(130.095.066、Miltenyi Biotec)をM-CSF分化M0-マクロファージに加えて、免疫抑制性M2-マクロファージに分極させた。分化M0-マクロファージを、サイトカインと37℃、5%COで2日間インキュベートした。M1およびM2分極マクロファージを8日目に得た。分極マクロファージを、100ng/ml LPS(L4516、Sigma)と4時間、37℃、5%COで反応させた。マクロファージを次いで採取し、培養培地で洗浄した。分極M1-およびM2-マクロファージ上の標的抗体の結合を、LPS活性化後フローサイトメトリーにより評価した。
15μgのM1およびM2タンパク質抽出物を、100ngのhVSIG4(L)-hFcおよびhVSIG4(S)-hFcと共にSDS-PAGEゲルで流し、膜に移し、VSIG4に特異的なポリクローナル抗体(AF4646、R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)またはヤギアイソタイプ対照でプローブした。
予測サイズの2バンドがM2マクロファージからの抽出物で見られた(図1B)。この結果は、マクロファージにおけるVSIG4の発現の先のデータを確認する。さらに、hVSIG4(S)およびhVSIG4(L)両者がマクロファージで発現されることが示される。
【0302】
1-2. 腫瘍におけるVSIG4長および短い形態の発現
腫瘍における両VSIG4形態の発現を試験した。VSIG4遺伝子はX染色体に存在し、7エクソンが遺伝子モデルで示される。これにより、選択的スプライシングにより産生される2メッセンジャーRNAが生ずる。それぞれhVSIG4(L)およびhVSIG4(S)を生ずる1個の長い形態、長-VSIG4(uc004dwh.2)および1個の短い形態、短-VSIG4(uc004dwi.2)。The Cancer Genome Atlas(TCGA)は、20,000を超える原発癌および33癌タイプにわたる調和正常サンプルの特徴づけから得たデータを含む。TCGA腫瘍発現データ(Tumor TCGA RNASeq)を使用して、ISOexpresso(Yang et al., BMC Genomics (2016) 17: 631 ; http://wiki.tgilab.org/ISOexpresso/)で2アイソフォームの発現パターンを決定した。
結果を表3に示す。
【0303】
【表3】


長および短の両VSIG4アイソフォームが腫瘍において発現される。
【0304】
1-3. hVSIG4(S)およびhVSIG4(L)によるCD4 T細胞活性化の阻害
96ウェルプレートを、100μl/ウェルで4時間、37℃で2.5μg/mlの抗CD3 OKT3抗体(BioxCell ref BE0001-2 clone OKT3)で被覆し、2回PBSで洗浄し、10μg/mlの組み換えタンパク質(VSIG4(L)-Fc(配列番号183)、VGIG4(S)-Fc(配列番号184)、PDL1-Fc(R&D Systems 156-B7)またはアイソタイプ対照hIgG1(c9G4))で被覆し、一夜、4℃でインキュベートした。ウェルを2回PBSで洗浄し、200,000の健常ドナーから陰性精製したCD4T細胞およびCFSE標識を、200μlの培養培地中各ウェルに加えた。
3日間養後、上清を新しいプレートに移し、IFN γ遊離についてMSDにより分析した。さらに、細胞を、フローサイトメトリーにより分析して、増殖速度を評価した。
図2Aは、両形態のVSIG4(VSIG4(S)およびVSIG4(L))がCD4T細胞の増殖を阻害することを示す。同様に、両形態は、CD4T細胞によるIFNγ遊離を阻害する(図2B)。
【0305】
実施例2. VSIG4抗原の産生および精製
2-1. VSIG4抗原タンパク質を発現するベクターの構築
VSIG4タンパク質クローニングのために、VSIG4用プライマー(表4)を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、Jurkat細胞cDNAライブラリー(Stratagene, USA)を増幅し、プライマーは、細胞外ドメイン(20Arg~Ser281)のみを得るために、5’および3’に制限酵素部位SfiIを含む。増幅PCR産物を、N293Fベクターカルボキシ末端でヒトFc(hFc)またはマウスFc(mFc)と融合させる(図4)。
【0306】
【表4】

【0307】
2-2. VSIG4抗原タンパク質発現および精製
PEI(ポリエチレンイミン:#23966, Polysciences, USA)の使用により、HEK293F細胞(Invitrogen, USA)を、調製したVSIG4抗原プラスミドでトランスフェクトした。その後、細胞を、7日間、無血清培地であるFreeStyle 293発現培地(#AG100009, Thermo Fisher Scientific, USA)で培養した。VSIG4抗原を含む細胞培養物を集め、10分間、5,000rpmで遠心分し、残存細胞および浮遊物を、0.22μm TOP-フィルター(Millipore, USA)を使用して除去した。プロテインAアガロース樹脂を使用する親和性クロマトグラフィーに基づき、抗原の第一精製を実施した。第一精製後得たタンパク質を、Superdex 200(1.5cm×100cm)ゲル濾過クロマトグラフィーを使用する第二精製に付した。
精製タンパク質の純度を、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)で還元条件で決定した。その結果、図5に示すとおり、精製VSIG4-hFcおよびVSIG4-mFcタンパク質の純度は95%以上であることが判明した。
【0308】
実施例3. VSIG4ヒト抗体の選択
3-1. バイオパニング
実施例2で調製したVSIG4-hFcおよびVSIG4-mFcおよびSino Biological Inc.から購入したVSIG4-his(12163-H08H)タンパク質抗原および非特異的結合の指標として使用するITGA6-Fcを、immunosorbチューブに被覆(50μg)し、続いて遮断した。
ヒト抗体ライブラリーファージに関して、細菌を、2.7×1010バラエティを有するヒトscFv(一本鎖可変フラグメント)ライブラリーに感染させ、次いで16時間、30℃で培養した。培養後、遠心分離を実施して、上清をPEG(ポリエチレングリコール、Sigma)で濃縮し、結果物をPBS緩衝液に溶解して、ヒト抗体ライブラリーを調製した。ライブラリーファージをimmunosorbチューブに加え、2時間、室温で反応させた。次いで、1回PBS-Tween20(PBS-T)および1回PBSで洗浄後、抗原に特異的に結合したscFv-ファージのみを溶出した。
増幅のために細菌を溶出ファージに再感染させるパンニング工程を介して、陽性ファージのプールを得た。第一ラウンドで増幅したファージに関して、第二および第三ラウンドパニングを、PBS-T洗浄工程数を増やした以外、第一ラウンドと同じ方法で実施した。その結果、表5に示すとおり、第三ラウンドパニング中抗原に結合したファージ数は、インプットに比してアウトプットの観点で増加した。
【表5】

【0309】
3-2. ポリファージELISA
実施例3-1のパンニング工程の各ラウンドから得ている陽性ポリscFv-ファージ抗体プールの抗原特異性を試験するため、ポリファージELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を実施した。
第一~第三ラウンドの各パニング後凍結させた細胞ストックを、OD600が0.1となるように2×YTCM(酵母抽出物10g、トリプトン17g、NaCl 5g、クロラムフェニコール34μg/ml)、2%グルコースおよび5mM塩化マグネシウム(MgCl)を含む培地に加え、2~3時間、37℃で培養した(OD600=0.5~0.7)。次いで、M1ヘルパーファージで感染後、16時間、30℃で、2×YTCMK(2×YTCM、カナマイシン35μg/ml)、5mM塩化マグネシウムおよび1mM IPTGを含む培地での培養を実施した。培養細胞を遠心分離(4,500rpm、15分、4℃)し、上清を新しいチューブに移した。96ウェル免疫プレート(#439454, NUNC, USA)で、2抗原の各々を、100ng/ウェルの量で、4℃で16時間、コーティング緩衝液を使用して被覆し、次いで各ウェルを、PBSに溶解した4%スキムミルクを使用して遮断した。その後、各ウェルを0.2mlのPBS-Tで洗浄し、第一~第三パニングポリscFv-ファージを、各ウェルに、各100μl量で加え、続いて、2時間、室温で反応させた。その後また、各ウェルを4回0.2mlのPBS-Tで洗浄し、抗M13-HRP(Amersham 27-9421-01)を二次抗体として1:2,000希釈後、抗体との反応を、1時間、室温で実施した。PBS-Tで洗浄後、OPD錠(Sigma。8787-TAB)をPC緩衝液(0.1M NaHPO、0.005M Na-シトレート、pH5.0)中で調製し、ウェルに加え(100μl/ウェル)、10分間発色させた。次いで、490nmの吸光を分光光度計(Molecular Device, USA)を使用して、測定した。
図6に結果を示し、ELISAにより、抗原の結合性が2VSIG4抗原について、第三ポリscFv-ファージで富化されたことが確認された。
【0310】
3-3. 陽性ファージ選択
高結合性を有する多クローンファージ抗体群から得たコロニー(第三パニング)を、2×YTCM、2%グルコースおよび5mM塩化マグネシウムを含む1ml 培地を使用して、16時間、37℃で96深ウェルプレート(#90030, Bioneer, Korea)で培養した。培養細胞から、OD600が0.1となるよう100~200μlを採り、次いで1ml 2×YTCM、2%グルコースおよび5mM塩化マグネシウムを含む培地に加え、2~3時間、37℃で、OD600が0.5~0.7となるよう、96深ウェルプレートで培養した。M1ヘルパーファージの感染をMOI値が1:20となるよう実施し、次いで2×YTCMK、5mM塩化マグネシウムおよび1mM IPTGを含む培地で、16時間、30℃で培養した。
96ウェル免疫プレートで、抗原VSIG4を、100ng/ウェル量で、4℃で16時間被覆し、次いで各ウェルをPBSに溶解した4%スキムミルクを使用して遮断した。その後、各ウェルを0.2mlのPBS-Tで洗浄し、16時間培養した単一クローンcFv-ファージ(各100 scFv-ファージ)を、100μl量で各ウェルに加え、2時間、室温で反応させた。その後また、各ウェルを4回0.2mlのPBS-Tで洗浄し、抗M13-HRPを二次抗体として1:2,000希釈後、抗体と、1時間、室温で反応させた。PBS-Tで洗浄後(0.2ml)、発色させ、490nmの吸光度を測定した。
結果は図7に示し、各抗原に高結合性を有する単一ファージクローンに関して、合わせて数十の単一ファージクローンをVSIG4に対して得た。
【0311】
3-4. 陽性ファージ抗体のヌクレオチドシーケンシング
上記のとおり選択した単一クローンについて、DNA-prepを、DNA精製キット(Qiagen, Germany)を使用して実施して、DNAを得た。Macrogen, Koreaに、DNAシーケンシングを依頼した。シーケンシング結果から、選択抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のCDR部位を決定した。次いで、これら抗体と生殖系列抗体群の間の類似性を、NCBIウェブページに提供されるIg BLASTプログラムを使用して、試験した(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)。その結果、39タイプのVSIG4特異的ファージ抗体を得て、11種をより具体的に特徴づけした。表2に要約する。
【0312】
実施例4. VSIG4ヒト抗体の産生
4-1. scFv形態のIgG形態への変換
VSIG4の39タイプの選択単一クローンファージ抗体をIgG形に完全変換させるために、重鎖および軽鎖の可変領域に対応するDNA配列を、それぞれSfiI/NheIおよびSfiI/BglIIの制限酵素部位を含むプライマーを使用するPCR(iCycler iQ、BIO-RAD、USA)に付した。重鎖および軽鎖PCR産物を、対応する制限酵素部位を有する各発現ベクターで消化させ、DNAをDNA-ゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。ライゲーションについて、ベクター(1μl、10ng)、重鎖または軽鎖(100~200ng、15μl)、10X緩衝液(2μl)、リガーゼ(1U/μl、1μl)および水を互いに混合し、1~2時間、室温に維持し、細胞に形質転換のために加えた(コンピテント細胞、XL1-blue)。結果物を5分間氷上に維持し、次いでヒートショックを42℃で90秒間かけた。ヒートショック後、細胞に1mlの培地を加え、1時間、37℃で培養し、続いて、LB Ampプレートに広げ、16時間、37℃で培養した。こうして得たコロニーを回収し、5mlのLB Amp培地に広げた。16時間、37℃で培養後、DNA-prepを、DNA-prepキット(Nuclogen)を使用して実施した。こうして得たDNAのDNAシーケンシングを依頼した(Macrogen, Korea)。
その結果、完全IgGに変換されたVSIG4の11タイプの抗体クローンの重鎖および軽鎖の各々が、ファージ抗体の配列に対応することが確認された。その後、配列が同定された重鎖および軽鎖プラスミドDNAを、抗体産生のために使用した。
【0313】
4-2. ヒト抗体の産生
重鎖および軽鎖を含む調製した発現ベクターを、6:4比でHEK-293F細胞に共トランスフェクションした。共トランスフェクション7日後、上清を集め、細胞および浮遊物質を遠心分離および0.22μm Top-フィルターで除去した。上清を集め、プロテインA親和性クロマトグラフィーに付して、IgG抗体を生成した。精製後、抗体をリシン緩衝液を使用して分離し、緩衝液交換を、最終再懸濁液緩衝液がPBSであるように実施した。精製抗体をBCAおよびNano-dropにより定量して、産生量を決定した。次いで、抗体を、還元条件および非還元条件各5μgの負荷で、SDS-PAGE分析に付した。従って、精製タンパク質の純度および移動性状態を決定した。
結果を図8に示し、11タイプタイプのVSIG4単一ヒト抗体が、非還元条件下で最小150kDaサイズで検出され、産生量は種々であり、すなわち、5mg/Lほど低くから、142.6mg/Lほど高いものまでであった。
【0314】
実施例5. VSIG4ヒト抗体のVSIG4結合性
5-1. 細胞表面のVSIG4への抗体結合特異性
ヒトVSIG4が過発現する形質転換細胞プールを得るために、HEK293Eを、ヒトVSIG4含有pcDNA3.1プラスミドでトランスフェクトし、次いで選択過程を、400μg/mlゼオシン(#R25001, Thermo Fisher Scientific)含有選択培地で実施した。選択過程後、VSIG4が過発現する細胞プールを、APC(アロフィコシアニン)蛍光物質に連結した抗ヒトVSIG4抗体(#17-5757-42, ebioscience, USA)を使用するFACS(蛍光標示式細胞分取)分析による、発現状態の決定により、分離し(図9B)、ヒトVSIG4が過発現するHEK293E細胞プールにおける母細胞として使用するHEK293E細胞において、APC蛍光物質に連結した抗ヒトVSIG4抗体を使用するによりVSIG4の基底発現がないことを決定後(図9A)、抗体性質分析の評価を、11タイプの抗ヒトVSIG4抗体で、これら2タイプの細胞を使用して、実施した。
VSIG4抗体による細胞結合の確認のため、0.5×10細胞を各サンプルについて調製し、抗体と、0.08μg/ml、0.4μg/mlまたは2μg/mlで30分間、4℃で反応させた。その後、細胞を、3回2%PBS含有緩衝液で洗浄し、20分間、4℃でFITC(フルオレッセインイソチオシアネート)蛍光物質に連結した抗ヒトIgG抗体(#FI-3000、Vectorlabs)と反応後、細胞を上記と同じ洗浄過程で、続いて2%FPS含有0.5ml PBSの懸濁液で洗浄した。次いで、細胞を、FACSCanto IIフローサイトメーターで分析した。その結果、11個のタイプのヒトVSIG4単一抗体全て、ヒトVSIG4過発現細胞に、濃度依存的方法で良好に結合することが判明した(図10B)。しかしながら、VSIG4の基底発現がないHEK293E細胞に結合しなかった(図10A)。この結果は、11個タイプのヒトVSIG4単一抗体がヒトVSIG4抗原に特異的に結合することを示す。
【0315】
5.2 FACS分析によるVSIG4ヒト抗体のヒト天然VSIG4への結合
一連の抗VSIG4抗体の結合性を、抗体濃度を増加させながら、ヒトVSIG4を発現するHEK293EでのFACS分析により評価した。同じ実験を、VSIG4を認識し、WO2020/069507に記載されるマウスモノクローナル抗体であるm6H8で実施した。その目的で、細胞(1×10細胞/ml)を、11個の完全Ig、抗VSIG4抗体またはm6H8各々と20分間、4℃で、FACS緩衝液(PBS、0.1%BSA、0.01%NaN)中インキュベートした。次いで3回洗浄し、適切なAlexa 488に結合した二次抗体と、さらに20分間、4℃で暗所でインキュベートし、3回FACS緩衝液で洗浄した。抗VSIG4抗体またはm6H8の結合を、ヨウ化プロピジウム(死細胞を染色)を使用して同定した生存可能細胞ですぐに実施した。各抗体で得たシグナル強度の最大をBmaxと指定し、平均蛍光強度(MFI)で表した。モル濃度(M)で表す結合のEC50を非線形回帰分析(GraphPad Prims 4.0)を使用して、計算した。
各マウスまたはキメラAbのタイトレーション曲線は、産生された全抗体が、典型的飽和プロファイルで天然VSIG4形態を認識できることを示す。各抗体の結合EC50を非線形回帰分析を使用して、計算した。EC50は、1.2×10-9~9.3×10-10の範囲であった。EC50値を表6に要約する。
【0316】
【表6】

【0317】
5.3 長いおよび短い形態のVSIG4へのVSIG4ヒト抗体の結合
第一シリーズの実験で、11個のscFv抗VSIG4抗体の長いおよび短い形態のVSIG4各々への結合を、ELISAにより試験した。試験した11抗体各々の両形態への特異的結合を、これらの条件下決定した(図11A)。
この結果を確認するため、長いおよび短い形態のVSIG4各々への11抗VSIG4抗体の結合を、ウェスタンブロッティングによりアッセイした。各場合、100ngのhVSIG4 長-hFc(L)およびhVSIG4 短-hFc(S)を、特異的抗VSIG4抗体でプローブした。図11Bに示す、予測サイズの2バンドが11抗VSIG4抗体各々で観察された。対照的に、VSIG4を認識し、WO2020/069507に記載されるマウスモノクローナル抗体であるm6H8は、長い形態のVSIG4にしか結合しなかった(図12A)。この結果は、ELISAアッセイで確認された(図12B)。
【0318】
5-4. 抗VSIG4抗体のエピトープマッピング
11個のヒト抗VSIG4抗体の各々に認識されるエピトープを線引きするために、特異的変異を担持する一連の可溶性VSIG4タンパク質に結合する能力を、ELISAによりアッセイした。使用した構築物を表7に詳述する。
【0319】
【表7】


注:hVSIG4-Fcは長いVSIG4形態である。hVSIG4-V-Fcは短いVSIG4形態である。全変異は、短い形態で行った。
【0320】
96ウェル免疫プレートで、種々の抗原を、100ng/ウェル量で、4℃で16時間被覆し、次いで各ウェルをPBSに溶解した4%スキムミルクを使用して遮断した。その後、各ウェルを0.2mlのPBS-Tで洗浄し、16時間培養した11個のscFv-ファージの各々を、各ウェルに100μl量で加え、2時間、室温で反応させた。その後また、各ウェルを4回0.2mlのPBS-Tで洗浄し、抗M13-HRPを二次抗体として1:2,000希釈後、抗体との反応を1時間、室温で実施した。PBS-Tで洗浄後(0.2ml)、発色させ、490nmの吸光度を測定した。
【0321】
アッセイ結果を図13に示す。
抗体A1956、SA1957およびSA2285により認識されるエピトープは、アミノ酸E24、V25、E27、V29およびT30の少なくとも1個を含む。
抗体A1975およびSA2290により認識されるエピトープは、アミノ酸I77、A80、Y82およびQ83の少なくとも1個を含む。残基Q59、G61、S62、D63およびV65の少なくとも1個は、SA2290のVSIG4への結合にも寄与し得る。
抗体A2283により認識されるエピトープは、アミノ酸R108、S109、H110、T112およびE114の少なくとも1個を含む。
抗体A2287により認識されるエピトープは、アミノ酸T119、P120、D121、N123、Q124およびV125の少なくとも1個を含む。
抗体A2291により認識されるエピトープは、アミノ酸R108、S109、H110、T112およびE114の少なくとも1個、アミノ酸T119、P120、D121、N123、Q124およびV125の少なくとも1個を含む。
抗体A2390により認識されるエピトープは、アミノ酸Q59、G61、S62、D63およびV65の少なくとも1個、アミノ酸S97、Q99、S101およびT102の少なくとも1個、アミノ酸R108、S109、H110、T112およびE114の少なくとも1個およびアミノ酸T119、P120、D121、N123、Q124およびV125の少なくとも1個を含む。さらに、残基D36T、N38R、L39M、T42の少なくとも1個および残基I77、A80、Y82およびQ83の少なくとも1個は、SA2390のVSIG4への結合にも寄与し得る。
抗体A2455により認識されるエピトープは、アミノ酸Q59、G61、S62、D63およびV65の少なくとも1個、アミノ酸S97、Q99、S101およびT102の少なくとも1個、アミノ酸R108、S109、H110、T112およびE114の少なくとも1個およびアミノ酸T119、P120、D121、N123、Q124およびV125の少なくとも1個を含む。さらに、残基D36T、N38R、L39M、T42の少なくとも1個は、SA2390のVSIG4への結合にも寄与し得る。
【0322】
実施例6:VSIG4ヒト抗体の内在化
11個の完全Ig、抗VSIG4抗体を、内在化アッセイで評価した。
このアッセイのために、80%コンフルエンスのHEK-VSIG4細胞(すなわち、VSIG4でトランスフェクトし、表面に発現するHEK293細胞)を、トリプシンで脱着させ、ViCellsカウンターで計数した。100,000 HEK-VSIG4細胞を、20分間、4℃で、計100μlの冷培養培地:抗VSIG4、m6H8抗体および、そのA2ヒト化バージョン、(WO2020/069507)または抗IGF1R(Hz208F2-4)の各抗体10μg/mlの存在下、インキュベートした。次いで細を2000rpmで遠心分離し、2回200μlの冷培地で洗浄した。
【0323】
時間T0:細胞を、直接200μlの1/500希釈二次ヤギ抗ヒトAlexa 488抗体と、20分間、4℃でインキュベートした。次いで冷培地で2回洗浄し、FACSで分析した。
【0324】
時間4h:細胞を、100μlの冷培地(4℃)または温培地(37℃)と4時間インキュベートした。各バッチの細胞を2000rpmで回転させ、2回200μlの冷培地で洗浄し、二次ヤギ抗ヒトAlexa 488抗体と20分間、4℃で冷培地でインキュベートした。次いで、細胞を2回冷培地で洗浄し、FACSで分析した。
【0325】
内在化のレベルを、(MFI(4℃)-MFI(37℃))に対応するデルタMFIを計算し、4℃と37℃の間で減少したMFIのパーセンテージの計算により、内在化のパーセンテージを計算した。(全MFIはアイソタイプMFI値減算後計算)。
内在化抗IGF-1R抗体、Hz208F2-4(WO2015/162292)を、HEK細胞が細胞表面にIGF-1Rを発現するため、このアッセイにおける陽性対照として使用した。
本抗VSIG4抗体は種々のレベルの内在化を示した(表8参照)。他方で、m6H8抗体およびそのヒト化バージョンA2は、如何なるタイプの内在化も誘導しなかった。
【0326】
【表8】

【0327】
実施例7:VSIG4ヒト抗体によるVSIG4抗炎症性および免疫抑制性機能の阻害
7-1. 炎症性アッセイ
抗VSIG4抗体がマクロファージの炎症性表現型を調節する能力について、サイトカイン遊離アッセイを、完全Ig、ヒト抗VSIG4抗体の各々で処理したマクロファージで実施した。実験的スキームを図14に示す。
末梢血液単核細胞(PBMC)を、EFS(Etablissement Francais du Sang)から提供された細胞吸着環からの密度勾配遠心分離により、ヒト血液から単離した。次いで、単球を製造業者の指示に従う、陽性免疫磁気細胞選択によりPBMCから精製した(130-050-201, Miltenyi Biotec)。
新鮮単球を、96ウェル平底処理培養プレート(353072, Falcon)で、50ng/ml M-CSF(130-096-492, Miltenyi Biotec)含有培養培地(RPMI 1640培地+1%ペニシリンストレプトマイシン+1%ピルビン酸ナトリウム+1%L-グルタミン+10%ウシ胎児血清に播種した。37℃、5%COで6日間インキュベートして、マクロファージに分化させた。分化M0-マクロファージを6日目に得た。
分化M0-マクロファージ上の標的抗体の結合を、フローサイトメトリーで6日目に評価した。LPS(L4516、Sigma)を、分化M0-マクロファージに最終濃度100ng/mlで加えた。試験抗体または対応するアイソタイプを、分化M0-マクロファージに3濃度(2.5μg/ml、5μg/mlおよび10μg/ml)で加えた。マウス抗体m6H8およびそのヒト化形態、A2(何れもWO2020/069507に記載)も、本アッセイで試験した。対照として、M0マクロファージの炎症促進性表現型に向けてのサイトカインの遊離を刺激することが知られる対照抗体(R&D, RefMAB2078、クローン287219、mIgG2a)を、最終濃度5μg/mlで使用した。SA1956、SA2386、SA2390およびSA2455について、50μg/ml C3b(A114、Complement Technology)を培養培地に加えた。
分化M0-マクロファージをLPSおよび試験抗体と24時間、37℃、5%COでインキュベートした。細胞培養上清を7日目に集め、サイトカイン分析のために新規V底96ウェルプレートに移した。IL-10、IL-6、IL-1β、IL-12/23p40およびTNF-αの濃度を測定した。製造業者の指示に従いMeso Scale Discoveryテクノロジーを使用して、定量を実施した(K15UQK-4およびK151AOH-4, Meso Scale Discovery)。
健常ドナー間の不均一性を考慮に入れるため、少なくとも5ドナーを評価した。各実験的状態はトリプリケートで、1回の実験で実施した。
アッセイの結果を表9に示す。
【0328】
【表9】


SA2285以外の全抗VSIG4抗体は、マクロファージによる炎症促進性サイトカイン遊離増加および/または抗炎症性サイトカイン分泌減少に至る。
これらの抗体は、故に、ヒトマクロファージの表現型の調製ができる。
【0329】
7-2. 免疫抑制性アッセイ
末梢血液単核細胞(PBMC)を、EFS(Etablissement Francais du Sang)により提供された細胞吸着環からの密度勾配遠心分離により、ヒト血液から単離した。次いで、単球およびCD4T細胞を同じドナーからのPBMCから精製した:単球は、単球を製造業者の指示に従う、陽性免疫磁気細胞選択により精製し(130-050-201, Miltenyi Biotec)、一方、CD4T細胞は単球を製造業者の指示に従う、陰性免疫磁気細胞選択による単球精製の非陽性フラクションから単離した(19052, STEMCELL Technologies)。CD4T細胞を、さらに共培養に使用するために、クライオチューブあたり15×10細胞で、1mlの凍結培地(07930, STEMCELL Technologies)中凍結させた。
新鮮単球を、96ウェル平底処理培養プレート(353072, Falcon)に、さらなるM2-マクロファージ分極のための50ng/ml M-CSF(130-096-492、Miltenyi Biotec)またはさらなるM1-マクロファージ分極のための50ng/ml GM-CSF (130-093-866、Miltenyi Biotec)の何れかを含む、培養培地(RPMI 1640培地+1%ペニシリンストレプトマイシン+1%ピルビン酸ナトリウム+1%L-グルタミン+10%ウシ胎児血清)に播種した。37℃、5%COで6日間インキュベートして、マクロファージに分化させた。分化M0-マクロファージを6日目に得た。
50ng/mlのIFN-γ(285-IF、R&D)を、炎症促進性M1-マクロファージへの分極のためにGM-CSF分化M0-マクロファージに加えた。次のサイトカインの各々の20ng/ml:IL-4(130.093.922、Miltenyi Biotec)、IL-10(217-IL/CF、R&D)およびTGF-β(130.095.066、Miltenyi Biotec)を、免疫抑制性M2-マクロファージへの分極のためにM-CSF分化M0-マクロファージに加えた。分化M0-マクロファージを、サイトカインと、37℃、5%COで2日間インキュベートした。M1およびM2分極マクロファージを8日目に得た。分極マクロファージを、100ng/ml LPS(L4516、Sigma)と4時間、37℃、5%COで反応させた。マクロファージを次いで採取し、培養培地で洗浄した。分極M1-およびM2-マクロファージ上の標的抗体の結合を、LPS活性化後フローサイトメトリーにより評価した。
【0330】
M1-およびM2-マクロファージを、古典的平底96ウェルプレートに、培養培地中20000細胞/ウェルで播種した。37℃、5%COで24時間インキュベートした。CD4T細胞を、マクロファージに、1マクロファージ:5CD4 T細胞の比で加えた。CD3/CD28ビーズ(111-32D, Gibco)を共培養に加えて、32細胞に対し1ビーズの比でCD4T細胞を活性化した。
試験抗体または対応するアイソタイプを、共培養に最終濃度10μg/mlで加えた。抗PD-L1モノクローナル抗体であるアベルマブを陽性対照として使用した。SA2386について、50μg/ml C3b(A114、Complement Technology)を培養培地に加えた。共培養中のマクロファージおよびCD4T細胞を、37℃、5%COで5日間インキュベートした。細胞培養上清を14日目に取得し、サイトカイン分析のために新規V底96ウェルプレートに移した。IFN-γの濃度を測定した。製造業者の指示に従いMeso Scale Discoveryテクノロジーを使用して、定量を実施した(K151AEB-4, Meso Scale Discovery)。
健常ドナー間の不均一性を考慮に入れるため、少なくとも5ドナーを評価した。各実験的状態はトリプリケートで、1回の実験で実施した。
アッセイの結果を表10に示す。
【0331】
【表10】
【0332】
SA2285以外の全抗VSIG4抗体は、CD4T細胞によるIFN-γの遊離を誘導し、それらがT細胞活性化を誘導することが示唆される。これらの抗体は、故に、VSIG4の免疫抑制性機能の阻害が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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【国際調査報告】