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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-08
(54)【発明の名称】アポモルフィン製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/473 20060101AFI20221031BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221031BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20221031BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221031BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221031BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
A61K31/473
A61K9/08
A61K47/06
A61K47/10
A61P25/16
A61P15/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514698
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 IB2020058246
(87)【国際公開番号】W WO2021044357
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】1912686.1
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/895,619
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522084511
【氏名又は名称】リナウン ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クラーク, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】シュール, ジャグディープ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA13
4C076BB01
4C076BB22
4C076CC01
4C076CC17
4C076DD35
4C076DD37
4C076EE23A
4C076EE49A
4C076FF36
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA57
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA81
(57)【要約】
アポモルフィンまたは薬学的に受容可能な塩を含む組成物およびデバイスが、記載される。上記組成物は、アポモルフィン、またはその薬学的に受容可能な塩の溶液、およびプロペラントを含み得る。上記溶液は、非水性溶液または脱気水を含む水性溶液であり得る。デバイスは、10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴の形態において組成物を送達するように構成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の溶液を含む組成物であって、前記組成物は、プロペラントを含み、ここで前記溶液は: i)非水性溶液であるか;またはii)脱気水を含む、組成物。
【請求項2】
前記プロペラントは、ヒドロフルオロカーボン(HFA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロペラントは、HFA-134aを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
共溶媒を含む、前述のいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記共溶媒は、有機溶媒を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は、アルコール、好ましくはエタノールを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、賦形剤を含む、前述のいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記賦形剤は、ポリマーである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記賦形剤は、ポリエチレングリコールである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記賦形剤は、0.2重量%~2重量%の量で存在する、請求項7~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記アポモルフィンは、1~50重量%の量で存在する、前述のいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項12】
前記アポモルフィンは、少なくとも5重量%、10重量%、20重量%または30重量%の量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記アポモルフィンの溶液は、水を含み、前記組成物中の水の量は、10~40重量%である、前述のいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項14】
前記プロペラントは、前記組成物のうちの少なくとも30重量%、必要に応じて、99重量%までの量で存在する、前述のいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項15】
a)前述のいずれかの請求項に記載の組成物を含むキャニスター;およびb)前記キャニスターから前記組成物を分与するためのアクチュエーターを含むキット。
【請求項16】
10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴の形態において前記組成物を送達するように構成されている、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
a)キャニスター;およびb)前記キャニスターから前記組成物を分与するためのアクチュエーターを含むキットであって、ここで前記キャニスターは、組成物を含み、前記組成物は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含み、ここで前記キットは、10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴の形態において前記組成物を送達するように構成されている、キット。
【請求項18】
i)前記アポモルフィンもしくはその薬学的に受容可能な塩は、溶液中に、必要に応じて、i)非水性溶液;もしくはii)脱気水を含む溶液中にある;および/またはb)前記組成物は、プロペラントを含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記キャニスターは、計量バルブを含む、請求項15~18のいずれかに記載のキット。
【請求項20】
前記キットは、所定の用量を送達するように構成され、好ましくはここで前記用量は、0.05mg~100mgのアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩である、請求項15~19のいずれかに記載のキット。
【請求項21】
請求項1~14のいずれかに記載の組成物を含む、分与デバイス。
【請求項22】
前記デバイスは、10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴の形態において前記組成物を送達するように構成されている、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
組成物を含む分与デバイスであって、前記組成物は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含み、前記デバイスは、10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴の形態において前記組成物を送達するように構成されている、分与デバイス。
【請求項24】
i)前記アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩は、溶液中に、必要に応じて、i)非水性溶液、もしくはii)脱気水を含む溶液中にある;および/またはb)前記組成物は、プロペラントを含む、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
スプレーデバイスであり、好ましくは、前記組成物の所定の用量を分与するための加圧用量計量式分与デバイスである、請求項21~24のいずれかに記載のデバイス。
【請求項26】
a)前記組成物を含む容器であって、好ましくはここで前記容器は、計量バルブを含む容器;およびb)前記容器から前記組成物を分与するためのアクチュエーターを含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
所定の用量を送達するように構成されており、好ましくはここで前記所定の用量は、0.05mg~100mgのアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩である、請求項21~26のいずれかに記載のデバイス。
【請求項28】
医薬としての使用のための、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
パーキンソン病または男性の勃起不全を処置することにおける使用のための、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物は、前記被験体に、局所的に、好ましくは口内投与によって投与される、請求項29に起始の使用のための組成物。
【請求項31】
前記被験体に、i)10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴の形態において投与される、請求項29または請求項30に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
被験体においてパーキンソン病を処置することにおける使用のための組成物であって、前記組成物は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含み、ここで前記組成物は、10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴の形態において投与される、使用のための組成物。
【請求項33】
前記組成物は、前記被験体に、局所的に、好ましくは口内投与によって投与される、請求項32に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
前記アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩は、溶液中に、必要に応じて、i)非水性溶液、もしくはii)脱気水を含む溶液にある;および/または前記組成物は、プロペラントを含む、請求項32または請求項33に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
前記組成物は、10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)もしくは体積中央径(VMD);および/または30%未満の微細粒子画分(FPF)を有する粒子または液滴を形成する、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含む、組成物を噴霧する工程を包含する方法。
【請求項36】
前記アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩は、溶液中に、必要に応じて、i)非水性溶液、もしくはii)脱気水を含む溶液中にある;および/または前記組成物は、プロペラントを含む、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月4日出願の米国仮出願第62/895,619号(その各々の内容全体は、本明細書に参考として援用され、依拠される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、アポモルフィンを含む薬学的組成物およびその使用(例えば、口内投与または舌下投与による、パーキンソン病または男性の勃起不全を処置することにおける使用のための組成物)に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
パーキンソン病は、100,000人におよそ20人が罹患する、慢性で進行性の神経学的障害である。上記疾患は、代表的には、安静時振戦、筋強直、運動緩慢および姿勢反射障害によって特徴づけられる。パーキンソン病の正確な病理学的経過は未知であるが、黒質におけるドパミン作動性ニューロンが進行性に破壊され、これは、基底核におけるドパミンの量の正味の減少をもたらす。レボドパでのドパミン補充は、パーキンソン病に関する現在の主な治療である。
【0004】
3~5年のコントロール期間の後に、パーキンソン病罹患者のうちの25%は、「オン-オフ(on-off)」変動を発生させ得る。これらは、上記患者が容易に動き、歩くことができる数分間から数時間の期間(「オン(on)」)と、上記患者が重度の無動を経験する期間「オフ(off)」とが交互になることによって特徴付けられる。多くの患者はまた、他の不快な「オフ」期現象(例えば、うつ、不安、パニック、疼痛、妄想およびジストニア)を経験し、これは、運動ステージと並行した時間経過をたどる。この「オフ」期間は、抗パーキンソン薬を最適投与量で与える場合ですら、1日に数回出現し得る。
【0005】
ドパミンアゴニストは、レボドパ治療と組み合わせた場合に、ジスキネジアおよび「オン-オフ」変動を減少させることが示されている。アポモルフィンは、D、DおよびDレセプターに対して高親和性を、ならびにD、およびDレセプターに対して低親和性を有する非麦角ドパミンアゴニストである。それは、以下の構造式:
【化1】
を有する。
【0006】
経口投与されかつ嚥下される場合、アポモルフィンは、肝臓を経る「初回通過(first-pass)」の際に迅速にかつ広範囲に代謝され、代謝されない薬物は、循環にはほとんど達しない。高い経口用量のアポモルフィンの投与は、この代謝を克服しようと試みるために与えられている。過剰な500mg アポモルフィンの経口用量は、振戦、強直、および無動において用量依存性の改善を生じることが示されているが、薬物誘導性腎毒性と関連する。これは、肝臓によって生成される、おそらく広範囲の初回通過代謝産物に起因する腎毒性代謝産物の結果であると考えられる。
【0007】
アポモルフィンの皮下注射は、5~15分間以内にパーキンソン病における「オン-オフ」変動の処置に有効であり、45~90分間持続することが判明している。治験は、「オフ」期の無動の一致した改善(reversal)、毎日のレボドパ要件の減少および結果として「オン」期のジスキネジアの量の減少を示した。他のドパミンアゴニストを超える利点としては、迅速な作用開始および精神的合併症の低い発生率が挙げられる。「オン-オフ」変動を有する患者における「救済療法」に関しては、アポモルフィンはまた、比較的短い半減期を有する他のドパミンアゴニストを超える利点を有する。
【0008】
薬物動態において患者間で変動が大きいことから、患者は、処置開始時に初期用量滴定期間を受ける。アポモルフィンの作用の結果として起こり得る悪心および応答は、ドンペリドンまたは他の制吐薬によって制御され得る。しばしば、長期間のアポモルフィン処置に接した患者は、これらの有害効果の再発なしに、制吐剤を中止またはその用量を減少させることができる。
【0009】
「オン-オフ」変動を制御するためのアポモルフィンの広範囲に及ぶ適用は、皮下投与の必要性によって制限される。その結果として代替の投与経路が調査されている。鼻内アポモルフィンは、パーキンソン病を有する患者において有効であることが示されたが、試験した5名の患者のうちの2名において一過性の鼻閉(nasal blockage)および灼熱感を生じた。アポモルフィンの直腸投与は、有効でありかつ皮下投与される薬物より長い作用持続時間を有することが示されている;しかし、ある種の初回通過代謝が原因で、上記薬物のより高い用量が必要とされる。さらに、作用開始の遅延は、救済療法としてのその適用を制限する。
【0010】
アポモルフィンの舌下投与がまた、研究されている。最小限の初回通過代謝が、アポモルフィンの標準的経口投与と比較して、低い用量の使用を可能にする。全ての試験において、全ての患者(皮下アポモルフィンに応答することが既知であった患者)は、完全に「スイッチが入った」。効果開始までの平均時間は、およそ30分間であり、試験の間で匹敵した。平均作用持続時間は、皮下投与と比較して、舌下投与後により長かった。不快な味および溶解の不一致から、製剤化問題が認められた。
【0011】
性機能障害を処置することにおけるアポモルフィンの使用がまた、調査されている。例えば、アポモルフィンの舌下投与は、プラシーボと比較した場合に、勃起不全に対して統計的に有意な効果を有することが臨床試験において見出された(Dulaら Urology 2000; 56: 130-135)。その文献によれば、アポモルフィンは、これが脳に対して、特に、性的興奮の根柢にある神経学的機序に対して発揮する効果に起因して、性機能および性能を促進する。アポモルフィンは、従って、性機能を促進もしくは増強する、性機能障害を処置する、性的衝動を増強する、および/またはインポテンスを低減するために使用され得る。
【0012】
最適な口内吸収のために、使用されるアポモルフィンは、理想的には、生理学的pHではイオン化されるべきではない。アポモルフィンのpKaは、8.9であるので、約9のpHを上回ると、かなりの量の薬物が遊離塩基として存在する。逆に、酸性pH(例えば、4未満のpH)では、遊離塩基としてのアポモルフィンの割合は、無視できる程度である:薬物のほぼ全てが、イオン性の荷電した形態で存在する。荷電した状態にあるアポモルフィンは、不十分にしか吸収されない。
【0013】
非イオン化の薬物の割合は、pHが7に近づくときに顕著に増大し始める;アルカリ性pHは、非イオン化薬物の増大しつつある割合を生じる。従って、最適な吸収のために、薬物は、非酸性媒体中にあるべきである。
【0014】
アポモルフィンは、大気中の酸素または溶媒(例えば、水)中の溶存酸素に曝される場合に、迅速な酸化を受け得る。従来どおり、これは、薬物の水性溶液を酸性化して維持することによって妨げられている。皮下注射用の市販のアポモルフィンは、約3のpHを有すると考えられる。これは、注射に関して意図されることから、そのpHは、全身の吸収に影響しない。しかし、上記の鼻スプレー製剤はまた、水性溶液であり、酸性であると同様に考えられる。これは、上記製剤が、鼻吸収のために最適化されておらず、報告されている鼻刺激が、上記製剤の酸性特性にかなり由来し得ることを意味する。
【0015】
酸性アポモルフィン製剤を口の中に投与することは、唾液分泌の刺激を生じる。生成された過剰な唾液は、重炭酸塩が豊富であり、これは、その酸を中和し、口内をその通常の中性に近いpHへと戻すことが意図される。その得られたpH増大は、アポモルフィンの吸収の助けとなるはずであるが、さらなる容積の唾液とともに、嚥下される薬物量も増大する。結果として、口内吸収に利用可能な薬物量は、急速に減少する。
【0016】
薬学的に安定な口内投与のためのアポモルフィンの製剤を作製しようとする試みが、以前からなされている。
【0017】
WO 97/06786は、ゼラチンおよびマンニトールを含むアポモルフィンの酸性化水性溶液を含む、アポモルフィンの迅速分与投与形態を開示する。上記酸性化した水性溶液を凍結乾燥することによって形成した固体投与形態は、口腔の中に配置されると崩壊する。
【0018】
WO 2006/120412は、アポモルフィンの水性溶液が、酸の添加によって安定化され、1つの区画の中に保持され、適切な中和緩衝液が第2の区画の中に保持される2区画システムを開示する。患者への投与の直前に、その2種の液体が混合され、酸性のアポモルフィン溶液が中和され、口へと送達される。
【0019】
WO 2012/083269A1は、一方の層の中に酸性化アポモルフィンおよび他方の層の中に中和緩衝液を含むゼアチンフィルムが作製されることを開示する。口の中に置かれる場合、そのゼラチンは溶解し、酸性アポモルフィンが中和され、それを薬物の吸収に適切にする。
しかし、アポモルフィンベースの処置の速度、有効性および簡便さを、特に、アポモルフィンの安定性に関する問題を克服する一方でパーキンソン病の処置のために最適化しようとする要求が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第97/06786号
【特許文献2】国際公開第2006/120412号
【特許文献3】国際公開第2012/083269A1号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Dulaら Urology 2000; 56: 130-135
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の要旨
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物が提供される。
上記組成物は、好ましくは液体である。上記液体は、溶液、分散物または懸濁物であり得る。
【0023】
上記アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩は、液体媒体(例えば、プロペラント)中に懸濁された粒子の形態にあり得る。上記粒子は、固体粒子であり得る。上記粒子は、液体媒体中に不溶性であってもよい。しかし、1つの実施形態において、上記組成物は、懸濁物の形態にはない。例えば、上記組成物は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の固体粒子を含んでいなくてもよい。
【0024】
好ましくは、上記組成物は、溶液である。粒子懸濁物よりむしろ溶液を提供することの利点は、アポモルフィンまたはその塩が、吸収に対して、例えば、口内投与または舌下投与を介して迅速に利用可能であるということである。固体粒子は、それらが吸収され得る前に唾液中に溶解されなければならない可能性があるので、患者におけるピーク濃度までの時間は、潜在的には遅れることがある。
【0025】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の溶液を含む組成物が提供される。
【0026】
上記組成物が、アポモルフィンの溶液を含む場合、上記アポモルフィンを溶解するために使用される溶媒は、溶存し得るいかなる酸素をも低減または排除するために脱気され得る。これは、多くの従来の方法(例えば、窒素ガスを使用してパージする)によって達成され得る。結果的に、本発明の溶液は、溶存酸素を実質的に含まない可能性がある。本発明の溶液は、実質的に溶存酸素がない溶媒(例えば、水を含む溶媒)を使用することによって形成され得る。
【0027】
上記組成物は、水を含み得る。上記溶液は、水性溶液であり得る。上記組成物は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%の水を含み得る。水の量は、5~50重量%(例えば、10~40重量%)であり得る。
【0028】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、および水を含む溶媒を含む組成物が提供される。好ましくは、上記溶媒は、溶存酸素を低減または排除するために脱気されている。
【0029】
上記組成物は、非水性溶媒を含み得る。上記非水性溶媒は、水の代替としてのものであってもよいし、水に加えてのものであってもよい。
【0030】
上記組成物は、賦形剤を含み得る。上記賦形剤は、ポリマーを含み得る。例えば、上記賦形剤は、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG400)を含み得る。上記賦形剤は、少なくとも0.2重量%(例えば、少なくとも0.5重量%)の量で存在し得る。例えば、上記賦形剤は、0.2~2重量%(例えば、0.5~1重量%)の量で存在し得る。上記賦形剤は、溶解およびエアロゾル形成を補助し得る。
【0031】
上記組成物は、水を実質的に全く、または最小限の量の水を含み得る。例えば、5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1重量%未満の水が存在し得る。
【0032】
上記溶液は、非水性溶液であり得る。
【0033】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、および非水性溶媒を含む組成物が提供され得る。
【0034】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の非水性溶液を含む組成物が提供される。
【0035】
上記非水性溶媒は、有機溶媒を含み得る。従って、上記アポモルフィンを非水性溶媒に溶解することで、上記非水性溶液が形成され得る。上記非水性溶媒は、好ましくはプロペラントを含む。従って、上記組成物は、プロペラント中に溶解されたアポモルフィンを含み得る。好ましくは、上記プロペラントは、ヒドロフルオロカーボン(HFA)を含む。適切なプロペラントの例は、HFA134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)である。他の例としては、HFA152a (1,1-ジフルオロエタン)およびHFA227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)が挙げられる。従って、非水性溶液は、アポモルフィンまたはその塩を上記プロペラント中に溶解することによって形成され得る。
【0036】
上記プロペラントは、少なくとも20重量%、少なくとも30%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%の量で上記組成物に存在し得る。上記プロペラントは、99重量%までの量で存在し得る。
【0037】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、およびプロペラントを含む組成物が、提供される。
【0038】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の非水性溶液を含む組成物であって、上記組成物はプロペラントを含むものが提供される。
【0039】
1つの実施形態において、上記組成物は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、およびプロペラントから本質的になる。
【0040】
上記プロペラントに加えて、非水性共溶媒は、アポモルフィンまたはその塩の溶解を補助するために使用され得る。上記非水性共溶媒は、好ましくはエタノールを含む。上記組成物は、従って、プロペラントおよび共溶媒中に溶解されたアポモルフィンを含み得る。従って、アポモルフィンまたはその塩を上記プロペラントおよび上記共溶媒中に溶解することで、非水性溶液が形成され得る。1つの例では、上記組成物は、HFA134aおよびエタノールを含み得る。非水性共溶媒(例えば、アルコール(例えば、エタノール))の量は、50重量%未満、または35重量%未満であり得る。
【0041】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、プロペラントおよび共溶媒を含む組成物が、提供される。
【0042】
本発明によれば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の非水性溶液を含む組成物であって、上記組成物は、プロペラントおよび共溶媒を含むものが提供される。
【0043】
1つの実施形態において、上記組成物は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、プロペラントおよび非水性共溶媒から本質的になる。
【0044】
1つの実施形態において、上記組成物は、共溶媒を含まなくてもよい。例えば、上記組成物は、アルコールを含まなくてもよい。例えば、上記組成物は、エタノールを含まなくてもよい。
【0045】
1つの実施形態において、上記組成物は、麻酔薬を含まなくてもよい。例えば、上記組成物は、リドカインまたはプリロカインを含まなくてもよい。
【0046】
出願人は、粘膜(口腔におけるような)への、例えば、口内投与または舌下投与による投与に最適化されるような方法で、アポモルフィンを製剤化し、自己酸化を防止するために十分に安定である一方で、迅速な吸収を可能にするという利益を認識している。これは、パーキンソン病における「オン-オフ」現象が非常に急速に起こり得ることから、特に重要である。
【0047】
驚くべきことに、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩が、共溶媒ありおよびなしでプロペラント中に溶解される場合に、安定性、および酸化への抵抗性を維持し得ることが見出された。これは、より複雑な送達システム(例えば、投与する前に酸性環境においてアポモルフィンを維持するという条件がある、WO 2006/120412に記載されるもの)を提供する必要性を回避する。結論として、本発明の組成物は、酸の存在を要求しないこともある。
【0048】
本発明の組成物は、少なくとも4、好ましくは少なくとも6(例えば、6~8のpH)、より好ましくは少なくとも7のpHを有し得る。上記組成物が非水性溶液である場合、上記組成物は、水と接触されるとき(例えば、口腔中の唾液に曝されるとき)、その得られる溶液のpHは、少なくとも4、好ましくは少なくとも6(例えば、6~8のpH)、より好ましくは少なくとも7であり得る。
【0049】
プロペラントを有する製剤は、それがスプレーデバイス(例えば、口内投与による有効な送達を可能にし得るエアロゾルスプレーデバイス)に容易に含まれ得ることを意味する。
【0050】
上記アポモルフィンは、遊離塩基として、または薬学的に受容可能な塩(例えば、酸付加塩、例えば、塩酸塩)として存在し得る。
【0051】
本発明の組成物は、少なくとも0.1重量% アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含み得る。本発明の組成物は、少なくとも0.5重量% アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含み得る。例えば、上記組成物中のアポモルフィンの量は、0.1%~20重量%(例えば、0.5%~15重量%)であり得る。本発明の組成物は、少なくとも20重量%のアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、少なくとも25重量%のアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩、または少なくとも30重量%のアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含み得る。本発明の組成物は、1%~50重量%のアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含み得る。
【0052】
アポモルフィンの薬学的に受容可能な誘導体は、公知である。例としては、アポモルフィンのエステル(例えば、ジエステル、例えば、ジイソブチリルエステル)が挙げられる。本発明の組成物、または本発明における使用のための本発明の組成物は、代替として、またはアポモルフィン(またはその塩)に加えて、アポモルフィン誘導体(例えば、アポモルフィンのエステル、またはその塩)を含み得る。しかし、アポモルフィンの誘導体(例えば、アポモルフィンのエステル、またはその塩)は、それほど好ましくない。例えば、ジエステルは、インビボでアポモルフィンを生じるために酵素によるまたは化学的な生体内変化を要求するプロドラッグであり得る。プロドラッグの投与は、従って、被験体においてアポモルフィンの薬理学的効果を遅らせ得る。
【0053】
本発明によれば、本発明の組成物を形成する方法であって、上記方法は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩と、非水性溶媒とを合わせるまたは混合する工程を包含する方法が提供される。上記方法は、非水性溶液を形成する工程を包含し得る。上記方法は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩と、プロペラントとを合わせる工程を包含し得る。上記方法は、実質的に空気または酸素の非存在下で行われ得る。上記方法は、非水性溶液を容器に、好ましくは実質的に空気または酸素の非存在下で添加する工程を包含し得る。
【0054】
本発明によれば、本発明の組成物を形成する方法であって、上記方法は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩と、水を含む溶媒とを合わせるまたは混合する工程を包含する方法が提供される。上記溶媒は、溶存酸素を低減または排除するために、好ましくは脱気されている。上記方法は、水性溶液を形成する工程を包含し得る。上記方法は、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩と、プロペラントとを合わせる工程を包含し得る。上記方法は、実質的に空気または酸素の非存在下で行われ得る。上記方法は、水性溶液を容器に、好ましくは実質的に空気または酸素の非存在下で添加する工程を包含し得る。上記方法は、上記溶存酸素を低減または排除するために、上記溶媒を脱気する工程を包含し得る。
【0055】
好ましくは、上記プロペラントは、空気への上記プロペラントの曝露なしまたは最小限の曝露に従って、上記容器に添加される。
【0056】
本発明の組成物は、酸素を実質的に含まない可能性がある。
【0057】
本発明の組成物は、キレート化剤および/または抗酸化剤(例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム)を含み得る。あるいは、本発明の組成物は、キレート化剤および/または抗酸化剤(例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム)実質的に含まない可能性がある。
【0058】
本発明によれば、本発明の組成物を含む容器またはキャニスターが提供される。
【0059】
上記容器またはキャニスターは、好ましくは気密式であり、従って、空気および/または酸素侵入に対して実質的に不透過性である。上記容器は、水、例えば、水分に対して実質的に不透過性であり得る。好ましくは、上記組成物を含む容器は、空気または酸素を実質的に含まない。上記容器は、水、例えば、水分を実質的に含まない可能性がある。上記キャニスターは、不活性化ガス(例えば、窒素)を含み得る。
【0060】
上記容器またはキャニスターは、アルミニウムのような金属から製造されたキャニスターであり得る。あるいは、上記容器またはキャニスターは、PET(ポリエチレンテレフタレート)のようなプラスチック材料から製造され得る。
【0061】
上記容器またはキャニスターは、適切な材料から製造され、空気または酸素の侵入を防止することが公知の物質でコーティングされたキャニスターであり得る。このようなコーティング材料の例は、ポリテトラフルオロエチレンまたはPTFEである。
【0062】
上記容器またはキャニスターは、上記組成物を分与するための出口を含み得る。例えば、上記容器は、バルブを含み得る。上記バルブは、上記組成物の所定の容積を上記容器またはキャニスターから分与することを可能にし得る。例えば、バルブは、計量バルブであり得る。
【0063】
上記容器またはキャニスターは、上記容器またはキャニスターから上記組成物を分与するために、ディスペンサーまたはアクチュエーターと適合性であり得る。例えば、上記容器またはキャニスターは、上記ディスペンサーまたはアクチュエーターと着脱可能にかみ合わせることが可能であり得る。上記ディスペンサーまたはアクチュエーターは、上記容器またはキャニスターにおけるバルブ(例えば、アクチュエーターノズル)を拡げるための手段を提供し得る。
【0064】
上記容器またはキャニスター、およびディスペンサーまたはアクチュエーターは、分与デバイス(例えば、本発明の分与デバイス)を形成するために組み合わされ得る。
【0065】
本発明によれば、本発明の組成物を含むキットが提供される。上記キットは、a)本発明の容器またはキャニスター;およびb)上記容器から組成物を分与するためのディスペンサーまたはアクチュエーターを含み得る。上記容器またはキャニスターは、好ましくは、上記ディスペンサーまたはアクチュエーターと着脱可能にかみ合わせることが可能であり得る。上記容器/キャニスターおよびディスペンサー/アクチュエーターは、別個であり得る。上記容器/キャニスターの内容物が一旦枯渇すると、上記容器/キャニスターは、交換され得る。
【0066】
本発明によれば、分与デバイス、本発明の組成物を含むデバイスが提供される。好ましくは、上記デバイスは、スプレーデバイス(例えば、エアロゾルスプレーデバイス)である。上記デバイスは、上記組成物の所定の用量を分与するように構成され得る。
【0067】
上記デバイスは、加圧用量計量式デバイスであり得る。例えば、上記デバイスは、上記組成物を含む容器またはキャニスター、および上記容器またはキャニスターから上記組成物を分与するためのディスペンサーまたはアクチュエーターを含み得る。上記容器またはキャニスターは、上記ディスペンサーまたはアクチュエーターと着脱可能にかみ合わせることが可能であり得る。1つの実施形態において、上記容器またはキャニスターは、計量バルブを含み、上記アクチュエーターは、アクチュエーターノズルを含む。使用時に、上記バルブは、上記アクチュエーターとかみ合い、上記容器またはキャニスターが、上記アクチュエーターに対して押し下げられる場合、上記アクチュエーターノズルは、上記バルブを開いた構成にして、上記組成物が好ましくはエアロゾルとして分与されることを可能にする。
【0068】
1つの実施形態において、上記キットまたはデバイスは、0.05mg~100mgのアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の用量を分与するように構成され得る。例えば、1回の適用、または1回のスプレーは、0.05mg~100mgのアポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を分与し得る。あるいは、上記キットまたはデバイスは、0.05mg~75mg、0.1mg~50mgまたは1mg~40mg アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩の用量を分与するように構成され得る。
【0069】
好ましくは、上記キットまたはデバイスは、呼吸可能な範囲にない粒度を有する粒子または液滴を送達するように構成され、それによって、口内または舌下スプレーが吸入のリスクなしに送達されることを可能にする。
【0070】
上記キットまたはデバイスは、10μmより大きい平均直径を有する、上記組成物の粒子または液滴を送達するように構成され得る。例えば、平均直径は、20μmまたはこれより大きくてもよい。平均直径は、50μmまたはこれより大きくてもよい。
【0071】
上記キットまたはデバイスは、粒子のうちの10%未満が直径10μm未満を有する、上記組成物の粒子または液滴を送達するように構成され得る。粒子のうちの5%未満が、直径10μm未満であり得る。
【0072】
上記キットまたはデバイスは、10μmより大きい空気力学的質量中央径(MMAD)を有する、上記組成物の粒子または液滴を送達するように構成され得る。MMADとは、質量で上記粒子または液滴のうちの50%が、より大きく、50%がより小さい直径をいう。粒子または液滴が肺の中へと運ばれるためには、それらは、極めて微細でなければならない(例えば、10μm未満のMMADを有する)。上記MMADは、少なくとも20μmであり得る。上記MMADは、少なくとも50μmであり得る。
【0073】
上記キットまたはデバイスは、10μmより大きい体積中央径(VMD)を含む粒子または液滴を送達するように構成され得る。体積中央径(VMD)とは、スプレーの容積のうちの半分が、より小さな液滴中にあり、その容積のうちの半分がメジアンより大きな液滴中にある場合の中央液滴サイズ(メジアン)をいう。上記VMDは、少なくとも20μmであり得る。上記VMDは、少なくとも50μmであり得る。
【0074】
上記キットまたはデバイスは、30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の微細な呼吸可能な画分または微細粒子画分(FPF)を有する組成物の粒子または液滴を送達するように構成され得る。FPFとは、5μmより小さい直径を有する放射される粒子または液滴の割合、呼吸可能な用量をいう。
【0075】
多くの方法が、粒子または液滴のサイズ分布を決定するために利用可能である。カスケードインパクター(例えば、Anderson Cascade ImpactorまたはNext Generation Impactor(NGI))は、エアロゾルのサイズ分布を得るために使用され得る。NGIは、7つの衝突ステージと最終のマイクロ-オリフィスコレクターを組む、エアロゾル粒子をサイズ画分へと分類するためのカスケードインパクターである。これは、例えば、MSP Corporation(MN, USA)から市販されている。このようなインパクターの例は、例えば、米国特許第6,595,368号に記載される。
【0076】
粒子/液滴サイズは、レーザー回折技術によって測定され得る。例えば、レーザーからの光は、空気のような透明なガス中に懸濁される多数の粒子/液滴へと向けられ得る。上記粒子/液滴は、光を散乱させ;粒子/液滴が小さいほど、その光をより大きな粒子/液滴よりも大きな角度で散乱させる。その散乱した光は、種々の角度で配置される一連の光検出器によって測定され得る。これは、サンプルの回折パターンとして公知である。その回折パターンは、上記粒子/液滴のサイズを測定するために使用され得る。粒子直径は、等しい容積の球を想定して、上記粒子/液滴の測定されたサイズから計算され得る。
【0077】
本発明によれば、本発明の組成物(例えば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物)を含む分与デバイスが提供される。これは、粒子または液滴の形態において(例えば、エアロゾルとして)組成物を送達するように構成される。上記粒子または液滴は、以下を有し得る:
i)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)平均直径;
ii)粒子のうちの10%未満が、直径10μm未満(例えば、粒子のうちの5%未満が直径10μm未満)。
iii)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)MMAD;
iv)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)体積中央径(VMD);ならびに/あるいは
v)30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満の微細粒子画分(FPF)。
【0078】
本発明の組成物の投与に適切であり得るデバイスの例は、US2018/0344950 A1に記載される。他の例としては、従来の鼻スプレーボトルが挙げられ、これは、圧力の適用によって(例えば、ボトルを押しつぶすことによって、またはポンプを使用することによって)その中に含まれる溶液の噴霧を可能にする。
【0079】
本発明によれば、医薬としての使用のための、本発明の組成物(例えば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物)が提供される。
【0080】
本発明によれば、被験体においてパーキンソン病を処置することにおける使用のための本発明に従う組成物が提供される。
【0081】
本発明によれば、被験体においてパーキンソン病を処置することにおける使用のための医薬の製造における本発明に従う組成物の使用が提供される。
【0082】
本発明によれば、パーキンソン病を処置する方法であって、上記方法は、このような処置の必要性のある被験体に本発明の組成物を投与する工程を包含する方法が、提供される。上記被験体は、好ましくはヒトである。
【0083】
あるいは、本発明の組成物は、性機能を促進もしくは増強する、性機能障害を処置する、性的衝動を増強する、および/またはインポテンスを低減するために、使用され得る。例えば、本発明の組成物は、男性の勃起不全を処置するために使用され得る。
【0084】
上記組成物は、活性成分の胃の前での吸収、すなわち、胃の前の消化管のその部分からの活性成分の吸収のために投与され得る。用語「胃の前での吸収(pre-gastric absorption)」としては、従って、口内、舌下、口咽頭、
【0085】
および食道吸収が挙げられる。投与は、局所的な、粘膜への投与によるものであり得る。好ましい例では、上記組成物は、口腔へと、例えば、口内投与によって投与され得る。あるいは、上記組成物は、鼻腔へと投与され得る。
【0086】
上記アポモルフィンまたはその塩は、好ましくは、経口投与、例えば、口内投与、および従って迅速な吸収のために最適化されているような方法で製剤化される。これは、パーキンソン病における「オン-オフ」現象が非常に急速に起こり得ることから、特に重要である。
【0087】
上記組成物は、0.05mg~100mgのアポモルフィンを提供するために、被験体に投与され得る。あるいは、上記組成物は、0.05mg~75mg、0.1mg~50mgまたは1mg~40mg アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を提供するために、上記被験体に投与され得る。
【0088】
用量の頻度は、上記被験体の状態の頻度に依存し得る。例えば、それは、パーキンソン病に罹患している患者の「オン-オフ」変動の頻度に依存し得る。前述の用量は、患者が「オフ」期を有する各時間に、例えば、各オフ期の発生時に投与され得る。
【0089】
性機能障害(例えば、男性の勃起不全)を処置する文脈において、用量の頻度は、上記被験体の望ましい性活動に依存し得る。例えば、前述の用量は、性活動に関わる前に投与され得る。例えば、それは、性活動に関わる前の1時間、30分、15分、10分または5分以内に投与され得る。
【0090】
上記組成物は、粒子または液滴(例えば、エアロゾル)として上記被験体に投与され得る。上記粒子または液滴は、以下を有し得る:
i)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)平均直径;および/または
ii)粒子のうちの10%未満が、直径10μm未満(例えば、粒子のうちの5%未満が、直径10μm未満);および/または
iii)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)MMAD;および/または
iv)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)体積中央径(VMD);および/または
v)30%未満の、好ましくは20%未満の、より好ましくは10%未満の微細粒子画分(FPF)。
【0091】
本発明によれば、本発明の組成物(例えば、アポモルフィンまたはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物)を噴霧する工程を包含する方法が提供される。上記方法は、エアロゾルを形成する工程を包含し得る。形成される粒子または液滴は、以下を有し得る:
i)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)平均直径;および/または
ii)粒子のうちの10%未満が、直径10μm未満(例えば、粒子のうちの5%未満が、直径10μm未満);および/または
iii)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)MMAD;および/または
iv)10μmより大きい(例えば、20μmもしくはこれより大きい、または50μmもしくはこれより大きい)体積中央径(VMD);および/または
v)30%未満の、好ましくは20%未満の、より好ましくは10%未満の微細粒子画分(FPF)。
【実施例
【0092】
実施例
製剤の調製
実施例1
アポモルフィンの製剤を、HFA 134aプロペラント中に1.0および10%濃度において調製した。これらの調製物の詳細を、表1に示す。
【表1】
【0093】
HFA134aを有する薬物のみの製剤の製造では、その必要とされる薬物量を、MDIキャニスターの中に秤量し、Butylエラストマー(Bespak, Kings Lynn, UK)を有する50μLを上記キャニスターに圧着させた。上記HFAを、バルブを通して充填し、製剤を、20分間超音波処理した。次いで、上記キャニスターを、バルブを下にして円陣になるように(to laager)14日間静置した。
【0094】
T-0、24時間および72時間でのHFA 134a中で製造した異なるアポモルフィン製剤の化学的安定性を、表2に示す。
【表2】
【0095】
HFA134a中1.0% w/w濃度で調製した製剤は、極めて安定であった。72時間までに不純物の兆候は生じていなかった。1.0% w/w 製剤の場合には、それらは、個々の不純物が0.2%より大きくなく、全ての未知の不純物の合計が2.0%を下回ったことから、許容基準に合格した。
【0096】
10% APIおよびHFA134a製剤に関して、測定された不純物は経時的に増大し、72時間では、0.55% w/wに増大した。0.2%を超える個々の不純物は存在しなかった。全不純物は2.0%未満であったことから、上記製剤は、仕様内であった。
【0097】
よって、これらのデータは、全ての製剤がHFA 134a中で化学的に安定であったことを示唆する。
【0098】
実施例2
アポモルフィンの製剤を、賦形剤、ポリエチレングリコール400(PEG400)ありおよびなしで、HFA 134aプロペラント中30%濃度において調製した。これらの調製物の詳細を、表3に示す。水性溶媒を、その使用前に脱気して溶存酸素を排除し、上記製剤を、酸素の非存在下で作製した。
【表3】
* 30% 濃度は、75μl バルブを介する23.2mgのアポモルフィンの送達される用量に等しい。
【0099】
上記組成物を、MDIキャニスターに添加した。
【0100】
T-0、28日間、32日間、36日間、40日間、および48日間における、HFA 134a中で製造した異なるアポモルフィン製剤の化学的安定性を、表4に示す。
【表4】
【0101】
HFA 134aプロペラント中30%濃度において調製した製剤は、酸性化されていないにも拘わらず、48日間まで極めて安定であった。
【国際調査報告】